【安価】ラーメン鎮守府 (98)

息抜きスレです。某所でやっていたラーメンスレの続きになります。
(中断中のものはどこかで回収します)

提督と嫁のゴーヤと提督補佐の強面とその他もろもろが、
ラーメンについて語ったり有名店に行ったりするだけのスレです。
シリアス要素は多分ありません。たまに安価は使います。更新はかなり遅めです。

主な面子の設定だけ軽く紹介します。

・提督
ラヲタ。30代前半。副業で鎮守府内に休日限定のラーメン屋を開いている。階級は少将。

・ゴーヤ
でち公。21歳。提督の嫁。ラヲタ化しつつある。料理は上手いほう。

・提督補佐
ラヲタ。28歳。色々多忙な提督の補佐をやっている。駆逐艦担当。教員免許を持っている。顔が893だが口調は丁寧。

・響
合法ロリ。22歳。お偉いさんの娘でフリーダム。ジロリアン。

・磯風
味覚障害者。16歳。某有名ラーメン店の信者。某店のコピーを作っては被害を拡散させている。

・潮
非ラヲタ。16歳。常識人で被害者。

なお、店の紹介は独断と偏見によるものです。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1566183299





第1話 磯風事変






……ミ゛ーンミンミミンミ゛ーン……

……ミ゛ーンミンミンミ゛ーン……


「ぐぞあづい」

俺は執務室のデスクに突っ伏していた。エアコンは付けてるが、ちっとも利きやしねぇ。
それもこれも「冷房の設定は28度」とかのたまう、あの腐れ環境省のせいだ。

「あづいでちね……」

向こうのテーブルでは同じようにゴーヤが溶けている。いつものスク水の上に制服を羽織っている。
本来なら「てめーはそんな格好してるんだから泳ぎやがれ!!」と叫びたいのだが、そんな気力もない。外は37度。外に出るだけでも自殺行為だ。

「演習中止、業務は全鎮守府でデスクワークのみ。……それでなんでこんな死にかけてんだよ……」

「政治が悪いでち。エネルギーぐらい好きに使わせろでち。艦娘がガンガンにクーラー利かせて何が悪いんでちか」

「……一応俺ら公務員だからな……ちきしょう、鎮守府も民営化しやがれ……」

「てーとく偉いんだからそうすりゃいいじゃないでちか」

「やだよそんなくっそ面倒なこと……あー、ラーメン食べてえ」

ゴーヤが「はぁ?」と俺を見た。

「正気でちか?このくっそ暑い中?」

「山形にはな、冷やしラーメンってのがあるんだよ。醤油の利いたヤツな……あれが食いてえ」

「あーそういう……去年食べた『よし丸』の『冷やし味噌つけ麺』も良かったでちね……」

「あー……出汁氷入りのな。キュウリ入りでほぼほぼ宮崎の冷や汁だったが、あれはあれでありだったな……」

そこまで言うと、俺は話す気力を失った。セミの声だけが、執務室に響く。


それを破ったのは、重いノックの音だった。


「失礼します」

「おお、遠藤補佐か。どうだ、駆逐艦の方は」

「皆集中力を欠いてて大変ですよ。『世間は夏休みなのにどうして勉強なのぉ』やら『タピりたい』やらなんやら。
特に重症なのが……こいつです」

遠藤補佐の秘書艦、潮に支えられていたのは、髪がボサボサでスッカリ生気を失った……磯風だった。

「ね、磯風ちゃん。しっかりしようよ……」

「……私は、もう、生きている意味などないんだ……放っておいてくれ……」

「物騒でちね。どうしたんでち一体」

磯風の目がギョロリと俺を見た。瞳には涙が溢れている。

「司令……あなたなら分かってもらえるはずだっ…………!!!」

「何がだよ。いつも通り『悪魔食え』と言ってこん……」

「それができるなら苦労はしないっ!!」

部屋に響き渡る大声に、皆がビクッと動きを止めた。

「本当、どうしちゃったんですか磯風ちゃん……話せば楽になりますよ?」

「食べてない」

「は?」

「食べてないんだ。もう2ヶ月。一杯も」

「ラーメンを?」

こくり、と弱々しく磯風が頷く。

「どうしてでち。家元の所に行けば……」


「それが、無理なんだ。……家元の奥さんが腰を悪くして、もう2ヶ月営業してない」


「家元?何ですかそれは。磯風ちゃんが『悪魔』『悪魔』うるさいのは知ってますけど」

キョトンとした顔で潮が言う。

「……潮、世の中には知らなくていいことが山ほど……」

「知らなくていい!?あれこそ至高だ!!貴様も知っているだろう??」

「いや、万人に勧められるかは……二郎よりはまだいいとして……」

「馬鹿者っ!『総本家』の『悪魔』こそラーメンの完成形なのだっ!!あのような豚の餌と比較するなど愚の骨頂っ!」

遠藤補佐が慌てている。俺は溜め息をついた。

「あのなぁ磯風。そりゃ家元のラーメンは旨いぞ?だが、『がんこ』食うなら別に他にもある……」

「訳がなかろうっ!……神保町の『覆麺』にも、橋本の家元の弟さんがやっている分店も、祖業の地西早稲田にも行ったさ……。
しかし満たされんのだっ!!家元のっ!『悪魔』でなければっ!!」

「あのー」

恐る恐る潮が手を挙げている。

「そもそも『悪魔』も『総本家』も『家元』も、一切知らないんですけど……」

「あー、でちね。一般人の潮には荷が重かったでち。てーとく、説明するでち」

「何で俺が」

「てーとく以上にラーメンに詳しいのはこの鎮守府、いや全鎮守府探してもいないでち。はよするでち」

「……わーったよ……」

俺は椅子に座り直した。

「まずどこから知りたい?ちと長くなるが」

「えっ、そんなに長いんですか……」

「日本のラーメン史を語る上では外せねえからな。そりゃ長くなる」

※潮の答え

1 家元って何者なんです?
2 総本家って何ですか?
3 悪魔って何ですか?
4 あ、怖いんでいいです

※3票先取

1

1

1

こっちでもよろしくおねがいします

「家元って何者なんです?」

訝しげに訊く潮に、磯風が失望したと言わんばかりの大きな溜め息をついた。

「家元を知らんとは……私は悲しいぞ、潮」

「って普通のJKは知らんから、な?潮は別にしょげなくていいぞ、こいつがおかしいだけだ」

「おかしいとは何だっ!家元こそラーメン界のかm……むぐむぐっ……」

磯風の口を遠藤補佐が後ろから塞ぐ。

「……それ以上やってると、怒りますよ?」

ビクッと磯風が震え、「ふぁい……」と大人しくなった。
遠藤は年下だが、威圧感は俺の比じゃねえな……伊達に明治のラグビー部出てねえわ。
ロリコンだのなんだの言ってからかうのはもうやめとこう、うん。

「で、質問の答えだ。家元とは『一条流がんこラーメン総本家』創業者にして店主、一条安雪氏のことだ。御歳72歳、だったかな」

「72!?おじいさん、なんですね……」

「まーな。ラーメン屋始めて約35年、アマチュア時代含めて45年もラーメン作り続けてる伝説のじいさんだ。
家元以上にキャリアあんのって、雷文の『女帝』宇都宮さんぐらいじゃねえかな。あとは吉村家の吉村総帥とか、三田二郎の社長とか……まあそのぐらいの人よ」

「そ、そんなに長くラーメン作ってるんですね……」

「まーな。とにかく面白いじいさんだよ。軽妙洒脱にしてそのこだわりたるや半端なもんじゃない。ラーメン語らせたら一晩中喋るしな。
店先で自分の作ったラーメンをうめえうめえとか言って食う店主は、家元だけだろうな。
見た目も仙人っぽいが、中身もまさに『ラーメン仙人』だ」

潮がほえーと口を開けている。

「……そんな人、いるんですねえ」

「まあカリスマよ。プロになってからはずーっとだ」

※潮の次の質問

1 じゃあ総本家って何ですか?
2 悪魔って何ですか?

※2票先取

1

2

2

「じゃあ……いつも磯風ちゃんが言ってる『悪魔』って何なんですか?そんな名前のラーメンなんて……」

「潮よ、分かっちゃいない。『悪魔』こそ至高の……むぐむぐ」

「だ か ら 騒ぐのはやめましょうね?ん?」

また暴れようとする磯風を遠藤補佐が※にこやかに※制した。……そんなんだから睦月組や海防艦のガキたちに恐れられるんだよなあ。

「……すっげー説明が難しいな。実は悪魔ってのは、昔と今じゃ意味が違うんだよ。少なくとも、俺の解釈じゃ」

「へ?悪魔って『下品』の強化版じゃ??」

ゴーヤが意外そうに言う。まあ間違いじゃないのだが。

「まあ悪魔が何であるかを説明するには、そもそもがんこラーメンとは何ぞやから始めなきゃいけない。
さあここでゴーヤよ。がんこラーメンは何ラーメンだ?」

「へ?何ラーメンって……牛骨?でも総本家で食べたのは、どう見ても違うでち……」

「どちらも正しい。昔のがんこは牛骨だった。店の看板代わりの牛骨がそれを示している。
がんこの一門も、今でも大体は牛骨だ。そして、家元もかつては牛骨スープに強い縮れ麺、そして出汁の効いたしょっぱいスープを出していた。
だが、驚くべきことに、ごく最近家元は『牛骨を使ったのは数年ぶり』と発言している」

「え?某大百科には牛骨って……じゃあゴーヤが食べたあれは、何だったんでち?」

「それこそが本来の意味の『悪魔』──いや『ヒロポン』だ。最近はヒロポンとも言わなくなったが。
元々悪魔は、家元の父親が満州にいた時に覚えてきたラーメンを改良したものらしい。粘度の高い黒いスープで、恐ろしくしょっぱい。
ただ、あまりに癖が強いんで、一般受けはしなかったらしい。ひたすら旨味を煮出すから、ブレもあるのかもな。
そこで家元は、牛骨のレギュラーラーメンの他に月1で悪魔を出すようになった。それが、今の四谷三丁目に移転するまでの『悪魔』──と理解している」

「ん?てことは、今は毎日……」

「そうだ。毎日悪魔スープだ。ただ、かえしをどのぐらい入れるかによって呼称が違う。
まずかえしを入れないのが『100』。かえしを入れるのが『下品』。これとは別に、清湯の『上品(自由が丘)』もあるな。
そして、かえしをたっぷり入れたものが……『悪魔』。かえし自体が旨味の塊だから、悪魔の旨味たるや暴力的ですらある。
だが、しょっぱい。とてもしょっぱい。この上に通常の倍の具材を半分の水で煮出す『賄い悪魔』があるが、あれは磯風じゃなきゃ食えんな。
とにかく、潮は自由が丘でいいぞ。あれでも十分旨いからな」

「……そこまでしょっぱいんですか?」

「てかご飯が欲しいな。タッパーに白飯入れてくる奴もいるぞ。悪魔肉がな、またうめえんだよ……」

いかん、よだれが出てきた。あそこの肉は、間違いなく日本3指には入るんだよなあ。

磯風がニヤニヤしながらこちらを見ている。

「司令よ。『スペシャル』については語らぬのか?今年のゴールデンウィークは至福にして至上だったというのに……」

俺はゴーヤを見た。

「あー。行ったよな?」

「でち。……旨かったでち」

ゴーヤがなぜか顔を赤らめている。何を考えてるんだこいつは。

「……スペシャル?」

「ああ。特別な素材で作る悪魔だよ。今年は……」

ここで切ります。提督とゴーヤが食べたのは何ラーメンでしょうか?
ヒントはゴーヤのリアクションです。

精力がつきそうな物かな?
牡蠣とかスッポンあたり?

すっぽんだったね

【5月4日】

「……すげえな」

「……でち」

「今何時だ?」

「11時ちょっと過ぎでち。……2時間コース?」

四谷三丁目駅を降りて3分。目の前にあったのは、70人ほどの大行列だった。

「いや、いつものスペシャルでもここまでは並ばないぞ?」

「……まあ確かに滅多に出ないヤツでち。気持ちは分かるけど……」

「まあ、な。スッポンスペシャルは今までもあったが、20kgは……初だな」

#

「スペシャル」。それはがんこ総本家が日曜限定で出す特別な悪魔だ。以前は月1や年4ぐらいだったが、最近は毎週やっている。
このため、スペシャル翌日や翌々日のスープは「不純」と呼ばれるスペシャルと通常のミックスになることが多い。
休業日を考えると、実は通常営業の方が少なかったりするのだが……まあそれはさておき。

スペシャルの具材はまさに多種多様だ。赤海老、毛蟹、鮟鱇、牡蠣といった高級食材が多いが、中にはフジツボ、カメノテといったゲテモノもある。
この前家元は焼き百足を食ってたから、そのうち虫スペシャルなんてやりださないかと恐れているほどだ。


そして、今日のスペシャルは……スッポン。
それも、通常10kg~12kgの具材量を20kgまで高めた、濃厚スッポンスペシャルだ。


#

「……どんな味なんでちかね」

「俺も通常のは食ったことがあるが、20kgはなぁ。……なんだよその手つきは」

サワサワと、ゴーヤの手が俺の尻を触っている。……こいつは。

「……最近ご無沙汰でち。だから今日はこれ食べていっぱいするでちっ」

「食う前から発情する馬鹿がどこにいるんだよ……それに周りの視線をちったあ気にしろっ」

見るからに非モテのラヲタたちの鋭い視線が、俺に突き刺さる。……俺は特大の溜め息をついた。


「子供が欲しいでち」というのが最近のゴーヤの口癖だ。艦娘は法的な結婚こそフリーだが、妊娠・出産は原則固く禁じられている。
深海棲艦との戦争は終わりに近づいているが、それでもそれが終わるまでは……ということらしい。
一応上に掛け合って、ゴーヤの妊娠許可は取ったものの、多忙な日々でそもそもそういう機会がない。

というわけで、ゴーヤとたまにする時はこれでもかというほど搾り取られる。
まあ、そもそもゴーヤ自身性欲が非常に強いというのもあるわけだが……


というわけで、今日ここに来たのも精力増進という意味がないわけではない。スッポン20kgの威力を試したい、というわけだ。

「全くいけずでち。後で覚悟す……ん?」

ゴーヤが誰か見付けたようだ。

「誰かいたか?磯風?」

磯風は総本家の信者だ。狂信者、といってもいい。親の代からだから筋金が入っている。
駆逐艦を連れては次々と悪魔を食わせ、大半は爆死し、一部は信者にさせている──それがうちの磯風だ。

しかし、ゴーヤは首を振った。

「違うでちね。あれは……」

※安価下3まで、行列に並んでいる艦娘は?
※コンマが最も高いものを採用します。

天龍

ガングート

陽炎

「あれは……陽炎か?」

俺たちの5人ほど前、陽炎は落ち着きなさそうにキョロキョロと辺りを見ている。何やってんだ……っと視線が合っちまった。

「あっ、司令っ!!」

「お、おお……どうしたこんなとこで」

この落ち着きのなさ、磯風のような総本家の信者じゃなさそうだな。まるで猫の群れに投げ込まれたモルモットみたいな目だ。

陽炎は……

01~70 い、磯風が悪魔悪魔って言うから……好奇心半分で……
71~90 同行者あり(再安価、駆逐艦限定、関係は……)
91~00 陽ちゃん、誰か知り合い?(男連れ)

ほい

陽炎は涙目で俺たちの所へ来た。

「し、司令!た、助かったわ……。こんなお店だって知ってたら行かなかったのに……」

「何があったんだよ?磯風に命令されたか?」

ブンブン、と陽炎が首を振る。

「違うのよ……。ただの好奇心だったの。磯風の奴が、あんまり悪魔だの総本家だの言うから……。
磯風には迷惑かけるなってキツく言ってたんだけど、どんなとこなんだろうと思って。一度食べないと、叱れないじゃない」

「真面目な陽炎らしいでち。磯風なんて無視すりゃいいんでち」

「……そ、そうなんだけど。でも、この空気……私には耐えられないわ」

俺は行列を見渡した。客の多くは男性。女性もポツポツいるが、皆黙って列に並んでいる。
誰かと喋っている奴も、ラーメンの話題ばかりだ。あ、俺らもか。

「その分だと、行列に並ぶのは……」

「初めてよ。でも、最後まで並ばないと負けた気がして……」

「損な性分でちね。さすがネームシップというか。確か、実際に長女だったでちね」

陽炎はコクン、と頷いた。陽炎型は皆血縁関係はないが、真面目な彼女は学級委員的なポジションとしてとりまとめ役を買って出ていた。
同じ陽炎型でも駆逐艦勢屈指の問題児、磯風のお守りは大変だろう。

「まあいい、これも人生経験だ。それに、悪魔じゃなくて自由が丘や100食う分には総本家は相当旨いぞ。
あ、今日はスペシャルだから自由が丘はちょっと勿体ないが」

「『自由が丘』?『100』?」

「あー、それはこれから説明するわ。せっかくだし、俺らと一緒に食うか?」

「やったぁ!じゃあ奢ってね、司令!」

こういう辺りは年相応だな。俺は苦笑した。

※70以上でもう一人艦娘登場

はい

※もう一人の艦娘は?
※安価下3まで、コンマがもっとも大きいものとします。

浜波

浜風

夕雲

若葉

浜風

※浜風としますが、一度判定を噛ませます。

01~75 普通の浜風(JC3)
76~00 合法な浜風(26歳、防衛省直轄)

大人浜風がいたねそういえば

中断します。なお、この浜風は洗脳済みです。

読み返して設定ミスがあったので訂正。JC3→JK1ですね。

スッポンは簡単すぎましたね。なお、過去にはスッポンと牡蠣のダブルスープというのもあったようです。

速報ですが、9月1日のスペシャルより総本家の営業再開だそうです!
いやー、良かった良かった……

その時、入口の辺りにまた見慣れた顔が……。

「ん?あれは浜風さんでち?」

ゴーヤの言葉に、片目が隠れたボブカットの少女が顔を赤らめて会釈した。
……この遠慮がちな感じは「浜風さん」ではないな。うちのだ。

「浜風か。お前も奇遇だな」

「……こんにちは。陽炎もですか」

「浜風!?あなたもなぜここに」

浜風はチラリと入口に目をやった。

「勿論、家元のスペシャルを食べるためです。磯風は今日は来られないというので、私が来ました」

「……お前もか」

俺は頭に手をやった。ただ第十七駆逐隊の絡みで磯風とは一緒にいることが多い彼女だ。まあそういうこともあるか……。

「当然です。磯風は明日来るそうですよ。……朝4時に」

「朝4時ぃ??バッカじゃないの??」

陽炎の叫びに、やれやれと浜風が首を振る。

「陽炎は分かってないですね。明日が何の日か知ってますか?」

「知るわけないじゃない!そもそも、ここに来たのだって初めてだし」

「ああ、そうでしたか。提督は*勿論*ご存知ですよね?」

……知るわけがない。総本家にはたまに行く程度で、信者というほどではないのだ。
言葉に詰まる俺を見て、浜風は盛大な溜め息をついた。

「……それでもラーメン屋店主ですか。……いいでしょう、教えてあげます。
明日は家元のラーメン稼業45周年記念スペシャルの日なのです」

「『45周年記念スペシャル』ぅ?何だそりゃ」

表情に乏しい浜風にしては珍しく、ふふんと胸を反らした。その豊かな胸部装甲に行列客が釘付けになる。


「ビックリしますよ。原価率50%、セミ海老、旭ガニ、そして金華ハム。超高級食材を惜しげもなく投入した塩スペシャルです。
もう二度とやらないと家元もおっしゃってるほどですよ。……3500円、どうです?」


……ふあっ?

「さ、さんぜんごひゃくえん??それ、ラーメンなの??」

「い、意味が分からないでち。今まで聞いたラーメンの中で最高値でち……」

陽炎もゴーヤも驚愕している。俺もだ。

高級ラーメンといっても、せいぜい1000円台だ。「神名備」で2000円弱、「くろき」の松坂牛ラーメンでもここまで高くなかったはず……。
ジャンルはやや違うが、東京駅の「頂上麺 筑紫楼」のフカヒレ姿煮ラーメンですら3200円だ。
はっきり言って、常軌を逸した価格設定としか言いようがない。

「……どうです。朝4時から並ぶのも理解できるでしょう」

「いや、さすがに4時は……」

「でも家元は4時から椅子準備すると言ってますよ。磯風の目が血走ってました。『絶対一番乗りしてやる……』と」

「頭おかしいでち。てことは、磯風は……」

「ええ、前泊するそうです。私も行きたかったのですが……提督、任務免除は」

「ねーよ。遠藤がブチ切れっぞ。そうか、磯風がやたら真面目だったのは明日休み取るためだったのか……」

磯風も大概だが、家元も家元だな。何をどうすればこんなラーメンを考え付くのか……。
本音を言えば俺も食いたいが、残念ながら明日はこちらの営業日だ。……くそっ。

「あ、順番が来ましたね。では、お先に」

店内に入っていく浜風を見て、陽炎が震えている。

「……ねえ、こんな意味分からない店なの?」

「家元の考えは俺にも及びが付かんな。まあ、素直に並んでおこうぜ……」

総本家どころかラーメン初心者にこれは強烈だわな。実際に食ったらどうなることやら。

#

そして待つこと2時間弱。ようやく俺たちはカウンターに座ることになった。
家元は相変わらずの手つきで湯切りをしている。

「らっしゃい。おお、横須賀の大将!久し振りだねぇ。今日は奥さん連れかい」

「ええ、ご無沙汰してます。……何かうちの駆逐艦たちが迷惑かけてるようですみません」

「ハッハッハ!いやあ、磯ちゃんにはこっちこそ世話になってるよ。次々と新しいファンが増えてって嬉しい限りだねぇ。
浜ちゃんもさっき来たね。会ったかい?」

「はい。何か磯風、朝一で来るとか」

「おお、浜ちゃんから聞いたよ。あそこは親子二代で世話になってるからねえ……。
ってこの子は見ない顔だねぇ。初めてかい?」

「はっ、はいっ……」

硬い表情で陽炎が返した。家元はいつもの調子で切り出す。

「あっさり味が『自由が丘』、濃いのが『下品』。スープを楽しみたいなら『100』だね。お嬢ちゃん、どれにするかい?」

※陽炎の選択は……

1 自由が丘
2 下品
3 100
4 悪魔
5 大悪魔

※3票先取

1

5

注:大悪魔=前述の「賄い悪魔」です。

5

5

5

中断します。磯風に吹き込まれてしまったのですね。

なお、筆者も賄い悪魔は食べたことがありますが、濃過ぎて脂汗流しながら食った記憶があります。
総本家は100が一番無難ですね。

「だ……大悪魔でっ!!」

家元が「正気か?」と言わんばかりに顔を歪めた。

「……お嬢ちゃん、初めてでそれはないよ。大悪魔──賄い悪魔は、毎日ここに来て、味が分かるようになって、初めて旨いと言える代物だ。
初めてなら無理は言わない、自由が丘にしときな」

冷や汗を流しながら、ブンブンと陽炎が首を振る。

「いえっ、やりますっ!磯風が、『総本家の真髄は大悪魔』って言ってたし……負けてられないわ」

「あれは磯ちゃんだから大丈夫なんだけどねえ……どうなっても知らねえよ?」

渋い顔で家元がカウンターの奥に向かう。

「陽炎……マジでキツいぞ?絶対に食えないと断言できるんだが」

「いいの。ネームシップとして、磯風には負けてられないんだからっ」

「妙な対抗心燃やしてんなあ……真面目にどうなっても知らんぞ」


家元が目の前でスライサーを使いチャーシューを切っていく。……これが実に旨い。
これに濃厚な「悪魔肉」が加わるわけだ。1100円でも高くはない。

チャッチャッと湯切りがされ、俺たちの前に丼が供された。

「ほい、『100』が2つに『大悪魔』。……お嬢ちゃん、無理はすんなよ?」

丼からはふわりと魚介系の香りが漂う。麺はいつものハード系縮れ麺だ。


ズズズズッッ


勢いよく啜る。最初に感じたのは、まろやかなコク。それがジワリと、とても長く続く。
蓮華でスープを掬うと、僅かにとろみを感じる。スッポンのコラーゲンか。

「……美味しいでち!!前に食べたスッポンのより、さらにスープが麺に絡むというか……」

「だな。12kgもスッポンの頭を使ってるから、余韻が長いな。コクも深い」

悪魔肉を箸でリフトアップする。茶色い液体が、丼へと滴り落ちた。
口にすると、柔らかく甘い脂がスッポンの旨味と合わさり蕩ける。……至福の一時だ。

「んまいなぁ……ゴーヤ、タッパーは」

「抜かりないでち。やっぱり悪魔肉には白米でちねぇ」

総本家ではライスは持ち込みしかできない。しかし、悪魔肉には米だ。磯風ともこの点では一致している。

ふと陽炎を見る。……

※陽炎の様子
01~80 一口目でフリーズ
81~90 脂汗を流しながら無理して食べている
91~97 き、キツいわね……(何とか食べている)
98~99 そ、そこまで濃くもない?(普通に食べている)
00 ンまーいっ!!味に目覚めたぁっ!!!

はい

さあどうだ

「………………………」

箸を置いたまま絶句している。丼の中身は全く減っていない。

「あーあ、言わんこっちゃない」

家元が呆れたように言う。そらそうよ。

「……こ、濃すぎて……」

「横須賀の大将、丼替えてやんな。『100』なら食えるだろ」

「ですねぇ。ほら陽炎、それ寄越しな」

01~70 ギブアップ
71~99 嫌ですっ、食べますっ!
00 ん……!?

布教失敗か

目に涙を浮かべながら、陽炎がそっと丼を俺の方にやった。

「……よ、よろしくお願い、します……うぐっ」

「全く……忠告はちゃんと聞くもんだぞ?自分で何でも抱え込もうとするのが、お前の悪いとこだ。食べ掛けだが
文句は言うなよ」

「す、すみませんっ……えぐっ」

泣きながら陽炎が箸を取った。……さて。


目の前にあるのは茶色……ではなくどす黒い液体。そこにチャーシューと悪魔肉、卵がある。……具は箸休めになるとしても……こりゃ見るからにキツいな。

「てーとく、大悪魔って食べたことは?」

「ない。悪魔はたまに食うが……『100』の方がスープの骨格がハッキリしていて、好きなんだよ。
大悪魔は、来店頻度が低いこともあって避けてた」

額に冷たいものを感じる。……これ、食えんのか?


ズズッ…………


「うぐっ」


いかん、「遭難」するっ!俺は直感した。


最初に感じたのは、強烈すぎる塩分。舌が麻痺するのではと思えるほどの、だ。
次に来たのは、濃厚すぎてエグ味すら感じるほどの旨味。烏賊が特に強く出ている気がする。

……味◯素を直接舐めると、旨味が強すぎて苦味とエグ味を感じる。だから化調は、匙加減が難しいのだ。
しかし、これは……無化調なのに同等の旨味を感じる。確かに旨味ジャンキーにはこっちなのだろうが……

「てーとく、大丈夫でち?」

「い、一応な……陽炎は?」

01~30 半分食べてギブアップ
31~60 何とか食べている
61~95 あ、美味しい……
96~99 ……磯風の言ってたことが分かったわ……
00 ンまーいっ!!

はい

さすが長女
偉いな

「うっ……ズルルッ……」

何とか食べているみたいだ。ただ「100」でもしょっぱいのか、大分無理して食べてるな。「自由が丘」ならそんなこともなかったのだが、後の祭りだ。

……まあ、俺もあまり人のことを言っている余裕はない、か……

ご飯を箸休めにしながら、極濃でとろみがかかったスープと麺を腹に流し込んでいく。
脂汗が流れているのが分かった。これは食事ではない。格闘だ。

#

半ば自棄になりながらも完飲したのは、10分少し経ってからのことだった。

「……家元、すまん」

「災難だったねえ、大将。明日磯ちゃんに会ったら、しっかり言っておくよ」

陽炎も何とか全部食べきったようだ。……完全に放心状態だが。

「明日は来ないのかい?」

「ああ……営業日なんすよ。すんません」

「しょうがないねぇ。今度、休日にカミさんと行くよ」

「あはは、楽しみにしてますよ。それじゃ」

#

……しかし、家元が来ることはなかった。奥さんの骨折で、長期休業してしまったからだ。

#

「……ということがあってだな」

遠藤補佐が「ああ」と手を叩いた。

「陽炎がGW明けからやけに殊勝だったのはそういうことだったわけですか」

「そういうことな。というわけで、潮はこの馬鹿の口車に乗せられるんじゃねえぞ?」

「馬鹿とは何だっ!大悪魔こそ悪魔の中の悪魔、至高の逸品だと……むぐむぐ」

ニコリ、と遠藤補佐が笑う。

「だ か ら だ ま れ」

磯風の顔が青くなった。これは俺には真似できねえな。

「なるほど……私にはまだ早いお店みたいですね」

「早い早くない、というよりラーメン食い慣れて味が分かる奴向きだな。
『自由が丘』でも濃いめだし、二郎ほどじゃないが好き嫌いは分かれるね。
まあ、オンリー・ワンの店だよ。あれは家元しか作れねえ。……再開しねえかなぁ……」

そう言った瞬間、ゴーヤが叫んだ。


「……本当でちかっ!!!」


「どうした急に」


「9月★日スペシャルから、営業再開でちっ!!女将さん、治ったそうでちよ!!」


「マジk「本当かっ!!!!」」

磯風がゴーヤのスマホを奪い取った。そしてボロボロと涙を流す。

「……やっと……やっと総本家が、家元が戻ってくる……!!
よがった、ほんどうに゛よがったよ゛ぉ……!!!」

磯風はそのまま10分ぐらい泣き続けた。

それを響に写真に撮られ、ばら蒔かれた結果2人が決闘したらしいが、それはまた別の話だ。

とりあえず復帰1話はここまで。

なお、本当に営業再開は間近です。行列がヤバいことになりそうですが。

次回は未定ですが、ラーメン以外の店も出します(但し麺類)。
とりあえず、このどれかで多数決します。

1 後楽園のラムつけ麺
2 大阪の超行列店
3 市ヶ谷の超濃厚味噌
4 「山」

3票先取です。

3

2

3

1

1

3
くるり行きのバスを市ヶ谷か飯田橋から出してほしい

>>65
なんで?

>>66
なんでって
そら最寄り駅から絶妙に距離があって歩かされるからよ
…ただワイが当時知ってる店や場所と今は違ってたりすんのかな

>>67
場所はそう変わってないですね。店名は変わりました。

>>68
回答感謝です
この冬にでも久しぶりに伺いますかね…市ヶ谷だとテキサスステーキなんかも行きたくなります

総本家、日曜に試験営業だそうです。取り急ぎ。

私用で行けませんでしたが、11時前に締め切ったそうです……
9時前で80人待ち……((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル






第2話 濃くて熱くて硬いのがお好き






「うげえ……何じゃこりゃ」

鎮守府に着くなり、俺は唖然とした。

「……酷いでちねこれは」

台風一過、横須賀第5鎮守府の現状は惨々たるものだった。訓練場には枝が散乱し、ガラスもいくつか割れている。伊達に史上最強の台風じゃなかったわけだ。
前日夜まで何もなかったもんだから甘く見ていた。一応風が止むまで艦娘には待機を命じていたが、来てみりゃこの有り様。宿舎は大丈夫だろうか。

「とりま、片付けから入らにゃあかんな。破損部の修理のため、上にも連絡しねえと」

「そうなるでちね。これを機に建て替え申請したらどうでちか?」

この鎮守府の建屋は古い。元は確かどっかの偉いさんの別荘だったらしくそれなりの趣はあるが、木造で空調の効きは良くない。
いつの間にうちは横須賀でも結構な大所帯になっている。増築で誤魔化してきたが、この本庁舎もそろそろ潮時か。

「だなあ。……てことは、防衛省に出向かなきゃいけねえか。明日にでも行くかねえ」

「了解でち。ついでに、店にも予算が下りればいいけど」

「俺の趣味でやってることだからなあ……特例で副業許可してもらってるだけでも、ありがてえと思うべきだろうが」

俺は溜め息をついた。その時、ドアをノックする音が聞こえた。

「おう、入れ」

※安価下3まで艦娘募集、コンマが最も高いものを採用

川内

浜風

ジョンストン

あきつ丸

※浜風はどちらの浜風か

3の倍数 防衛省の浜風
それ以外 鎮守府の浜風

「失礼します」

「うおっ!!?……って何だ、『うちの』か」

入ってきたのは浜風だ。片目が隠れるほど長い前髪に、16歳としては相当な巨乳。典型的な「浜風」の特徴、だが。
俺はこいつを別の「浜風」とよく間違える。防衛省本省直属の精鋭にして、元新聞記者。うちの青葉の先輩でもある「浜風」がそれだ。
今は防衛省の広報担当をやっている。その関係上顔を会わせることも多く、どうしても一瞬判別に迷う。

同じ名前の艦娘は、大体顔が似ていることが多い。しかしこの2人は特に似ている。血縁関係がないのが驚きだ。

「また防衛省の方と間違えましたか、提督」

「いや、ちょうど防衛省に行くって話をしてたんでな。そっちの用件は」

「宿舎に倒木が。幸い、怪我人はいませんでしたがご相談に」

「あちゃあ、やっぱ被害があったか。そっちの修繕も合わせて申請しないとだな」

ゴーヤが頷く。

「でち。急ぎでやった方がいいでちね」

「……しゃあねえな、明日にでも行くとするかね。浜風、確か駆逐艦寮の今月の寮長はお前だったな。被害状況をまとめてくれ、明日提出する」

「はい。……提督、明日私も同行していいですか」

「ん?何でまた」

浜風の表情は晴れない。

「実は……昨日食べれなかったんです」

「何を?」

「総本家の復活初日です……不覚でした、磯風のように前泊して朝4時から並んでいればっ……!!」

唇を噛み、目には涙が浮かんでいる。……あ、そうだったよ。こいつも総本家信者だったわ……。

「あー……11時過ぎには売り切れだったらしいな……」

「この浜風一生の不覚ですっ……!!そこで、代わりに何か、美味しいラーメンを、と。
市ヶ谷は美味しい店が多いと聞いてます。提督なら、総本家とまではいかずとも美味しい所をご存じかと」

「ああ、そういう……。ゴーヤ、いいか?」

「構わないでち。でもどこがいいでちかね?ドゥエ・イタリアン?斑鳩?庄のもあるでち」

「んー、悪くはねえが……総本家信者相手にそのセレクションは上品過ぎるな。もっと濃いのじゃないと満足しねえだろ。
となると……あそこだな。そこそこ防衛省からも近いし」

俺の頭にあるラーメン屋が浮かんだ。店名は変わったが、味は変わらず旨い。ここなら満足するだろう。

01~50 通常進行
51~75 話は聞かせてもらったよ
76~95 話は聞かせてもらったであります
96~00 上の2人両方

はい

一旦切ります。

なお、昨日一番早かったのは4時20分だったらしいです。

#

「……手配が付き次第、現地の視察を。その上で見積もりを出しますので」

「しゃあねえな。千葉の方の被害が酷いから、そっちの対応が優先だもんな。
こっちからもできることはねえか?」

宿舎の改修には少しかかってしまうらしい。被害が甚大な千葉南部の支援のため、こっちには手が回りにくいとのことだ。

「そうですね、ボランティアで艦娘が来れば実務的にも士気的にも大きいと思います。
それについては、後ほど担当を」

若い制服組がくいっと眼鏡の位置を直した。

「浜風、悪ぃな。しばらく不便をかけることになりそうだ」

「仕方ないです。苦しいのは私たちだけではないですから」

「ボランティアの選定は、戻ってからでちね。馬力のある戦艦か、空母か……重巡もありでちか」

「まあ、そんなとこか。連中なら、喜んで志願するだろ」

部屋を出て、復興支援の担当部署に向かう。部署の前は制服組で溢れていた。
艦娘もちらちらいる。もうボランティアに動いている鎮守府もあるらしい。

01~30 担当は普通の男性
31~65 担当は「浜風」
66~80 担当は龍驤
81~00 自由安価

ほい

安価いいのなら響

※自由安価です。安価下3まででコンマが最も大きいもの
※知り合い設定になります。所属は防衛省直属です。

>>85
響だとすると特殊設定になりますね。

鳥海

あきつ丸

秋津洲

※あきつ丸のため特殊設定です(あきつ丸は元々陸自出身という設定)

「ちょっとここで待っててくれ。終わる頃にはちょうど腹も減るだろ」

受け付けには長蛇の列ができている。人数が多いからか、ブースがいくつかあるようだ。

「次の人、いいでありますよー」

……ん?この口調は……

「失礼しま……あ」

「所属を……あ」

入るなり固まった。やる気なさげに机に肘を付いた、色白で巨乳の美女。典型的なあきつ丸だが……この不真面目さは。

「……おま、何でここにいるんだ」

「人手が足りんのでありますよ。で、元の職場に駆り出されたということであります」

口をとがらせてあきつ丸が言う。こいつは、うちのあきつ丸だ。
元第一空挺団の猛者だが、そのやる気のなさは人後に落ちない。趣味は人をからかうことと飲酒。
響と組ませたら何が起こるか分からないということで、極力2人の接点は持たせてないようにしているが……悲しいことにこの2人、仲がすこぶる良い。

「上司に連絡もなしか」

「連絡したら止めるでありましょう?」

……何か隠してやがんな。普通なら、防衛省から俺に派遣依頼の連絡があるはずだ。それもなしにこいつがここにいるということは……。

「……響に弱み握られたか」

ビクッとあきつ丸が固まった。脂汗がだらだらと流れている。

うちの響は、ただの「響」ではない。本名、北別府響。北別府防衛大臣の一人娘にして、うちの治外法権だ。
つまり、その立場を利用して強権を発動できる立場ということでもある。特に元陸自のあきつ丸には、色々モノを言える立場っちゃ立場だが。

※響が握った弱みは?3票先取

1 ギャンブルで借金を作った
2 男関連でどうしても響の助力が必要になった
3 問題行為を揉み消してもらった
4 自由安価

※自由安価歓迎です

3

2

2

2

「あー……今それを言わなきゃダメでありますかね」

あきつ丸の目が珍しく泳いでいる。これは余程の弱みと見た。

「……男絡みか」

ビクッと彼女が反応した。まあ、そのぐらいだろうな。

うちのあきつ丸は豪傑扱いされてはいるが、男性に対する免疫はまるでない。
というより、普通に接している分には問題はないが、「恋愛対象と意識した瞬間」にフリーズするらしい。
元陸自の艦娘の一人でうちの恋バナ好き四天王の一角、蒼龍による情報だ。

「あはは……参ったでありますねぇ……。
ちょっと、うちの新人憲兵君の住所と家族構成と現状の恋愛状況について……」

「あー、山本のことか。ああいうのが好きなのか、お前」

色白の顔が一気に真っ赤になる。こんな側面あったんかよ。

山本は神奈川県警からの出向だ。童顔だが筋肉質の身体で、非情に素直だ。憲兵長にも可愛がられている。
奴を見る翔鶴の目がかなりアレだったわけだが……あきつ丸も同じ年下属性とは思わなかった。

「……でそのために響の権力を使ったと。てかそんなのを入手してどうするつもりだよ」

「そっ、それは……特定の交際者がいなければ、と、遠くから見守ろうと……」

「怖えーよ。夜道でお前の白い顔見たら幽霊か何かだと思うわ。
てか同僚をストーカー化する手助けをしようとしてるとか……どういう考えだよあの馬鹿」

※50以上で響登場

でろー

はい

「愉しい以外に何かあるのかい」

後から急に声がした。あきつ丸は固まっている。

「ひ、響殿……何故ここに」

振り向くとスーツ姿の響が、いつも通りの無表情で立っていた。
普段と違い、こうしてみると年相応には……うん、見えない。

「お父様の手伝いだけど。私だって一応防衛省の人間なんだ、いても不思議ではないだろう」

「初耳だぞ」と言いかけたが俺はそれを飲み込んだ。こいつに常識を適用する方がおかしい。
そもそもが飛び級でプリンストンを卒業した天才児だ。大卒扱いで防衛省にいて、かつその事実を俺に隠すことなぞ造作もない。

俺は溜め息をついた。

「……本当にあきつ丸をからかうためか」

「そんなわけあるわけないじゃないか。親友を思うが故の行動だよ。
親友に恋人ができれば、それはそれは嬉しいことじゃないか」

白々しいな。というか、最初の発言と既に矛盾しているわけだが。

「はぁ……まあいいわ。俺は疲れた。とりあえず申請はちゃんと通してくれ、飯食って帰るわ」

「……せっかくですから、自分もご一緒してよろしいでありますか?昼休みですし」

「私も行こう。腹が大分すいた」

時計を見るともうこんな時間だ。断る理由もない、か。

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