鈍色の涙【亜人だらけ】 (29)
このSSは男「僕の生徒は亜人だらけ」の二次創作となっています。
本家とは違う設定などあるかもしれませんが、どうか目をつぶってください
そしてどうかベールクレアの可愛さを知ってください
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本を何冊読んだかなんて覚えてない。
気づけば身近にある物だったし、それを読むことになんら抵抗はなかった。
そうして本を読み漁るうちにいつしか神童と呼ばれ、成長した今も天才と呼ばれている。
ほかの人と何が違うのかなんてわからない。
ただ本で知ったことを利用しているだけ。
知っていることを利用するなら、道具を使って狩りをする獣だっている。
創意工夫発想。そこから組み立てる理論は全部書物から培った知識だ。
だからこそ私は私のことを天才だなんて思わない。そう
自分では他人となんら変わりないつもりだった。
天才ではない。できて当たり前。普通のこと。むしろなんでできないのかが不思議でたまらない。
だからなぜそんなことができるのかと尋ねられたら私はこう答えるだろう。
息をして、心臓を動かして、見て、聞いて、感じて、言葉を発する。私がやってるのはその延長線上。なにも特別なことはない。あなたは息をすることに理由はあるの? と
そんな態度が表れていたのだろうか。天才ともてはやし近づいてきた人たちは眉をひそめて去ってしまった。
別にそんなことはどうでもいい。すごいと言われたかったわけでも、人からもてはやされたかったからでもないし。
それに孤独には慣れているから。
この水銀でできた体と同じように私の心は冷たくて硬い。
だから孤独にも慣れているんだ―――そう、思っていた。
あいつが来るまでは。
「ベールさん。寝てるの?」
「起きてるわよ。それと気安くベールと呼ばないで。ベールクレアと呼びなさいよ」
性格にはその言葉のせいで覚醒したのだけれどどうでもいい。
珍しく独白染みた夢を見ていた。夢はあまり見ないほうなのだけれど。
ムニッ
「あいたたたた、ごめん、ごめんなさい。ベールさん!」
本当、教師のくせに学ばないやつ。そんな奴が私の夢に出てきたことが気に食わなくて頬を抓ってやった。
私と違って暖かくて柔らかい皮膚。
それがさらに気に食わなくて、私は眉間の皺を深くした。
赤毛でくせっけの丸眼鏡。顔は地味な女顔。体格は細くて情けない。珍しくもない畑でとれるようなそんな人間。
唯一の長所は一般人よりは頭が良いということだけれど、短所がそれを打ち消すどころか虚まで落とし込んでいる。
短所、こいつは人の話を聞かない。
ベールと愛称で呼ぶなと何度も言っているのに、こいつはずっとベールと親しみを込めて呼んでくる。
神経が図太いのだろうかこいつは私が激怒してもただ笑って受け流すだけ。どんなことをしても困ったような顔で笑うのだ。
何をしても私の前から消えないのが―――なんだか気持ち悪くてモヤモヤする。
それでなぜこの男は私の研究室に入り込んで私の寝顔を観察していたのだろうか。
通報してやってもいいのだけれど、しないでおく。
これは私の最低限の恩情だから。
「それで、なにか用なの?」
「えっとね、これなんだけど」
と言って懐から出してきたのは一冊の本。
また何か面倒なものかしら。
わざわざ私のところに持ってきたのだからただの本ではないはず。魔本の類かしら。
「困ったら、私のところに持ってくるのね。自分で解決できないの?」
「うん。迷惑かけるね。ベールさん」
ほらまたこいつは笑ってうけながす。私のとげだらけの言葉が刺さらない。
私は手袋をはめてその本を受け取った。
接触―――反応なし。
浸食反応も見られない。
まぁ、そんな危ないものだったら懐に入れてなんてこないでしょうけど、細心の注意を図っておくにこしたことはないわ。
「どこで見つけたの?」
「えっと」
聞くと口ごもってちらりと天を仰ぐ。なに、どこで手に入れたのよ。本当に危ないもんじゃないわよね。
「森の中の、塔で。まぁ」
「………あんたが呪われたあの場所? また行ったの?」
「ちょっとね。なにか解決できるものはないかって。探してたらそれ見つけたんだ」
こいつには危機管理意識ってものがないのかしら。戦闘力を持たない人間が森のほうに行ってみなさい。不良連中に絡まれて身ぐるみはがされるのがオチよ。
こいつに不良連中をあしらう手段はないだろうし、運が良かっただけなんだから。もう、気をつけなさいよね。
私は凡人故の想像力の欠如にため息をつきながら本を開いた。
なに、これ。
ちらりと目を通しただけで私は絶句した。
これは拷問された犠牲者の書記?
ひたすらに苦しみや悲しみ、向ける宛てのない懺悔の言葉を綴っている。拷問の内容は見ているだけで辛くなって、背筋が寒くなるような悪趣味なもの。それは人格を否定するような。例えば皮膚中に焼き印を押し付けられるような感じ。
被虐された者の叫びが殴り書きされていた。
なんでこんなものが、学園内にと思っていた私にもう一冊の本が差し出された。
書記と比べて半分の厚さもない。
私はそれを受け取り目を通すとさらに言葉を失った。
魔本ではない。だけどそれと同じくらい、いや、それを超えるぐらい厄介なもの。
「あんた、バカなの?」
「ごめん。僕だけじゃどうしようもできなくて」
学園の根本たる秘部。学園の急所たりえる事実。学園が今まで隠し通してきた暗部。
こんなものが世に知れたら、学園の存続が危うくなる。
そんな大ごとをこの馬鹿は持ってきたのよ!!
私は怒り心頭で本を閉じた。
誰に向けて怒ってるのかもわからない。こんなものを持ってきたこいつにか。それともこんなことをしでかしたやつにか。
それとも悪たるもの全員にか。
とにかく私は怒っていた。
怒っていても時間は経つ。
あいつは私にこの二冊を預けてそそくさと去っていった。
頼るのはいいけど、その無責任さはなによ。
信頼の証?
はっ。いらないわよ、そんなの。
ただ私は私の責任感に従って行うだけ。
別にあいつのためになんかじゃないわ。
「はぁ。気が重いわ」
私は二冊の本を大切にカバンの中に入れ、帰宅する準備を整えた。
ベルスタシアはもう帰っているかしら。確か今日は用事がないはず。
帰りに屋台で買い食いでもして帰ろうかしら。この疲れ切った頭には糖分が必要。
これは私に残った数少ない女性らしさ、ってやつかしらね。
こんな嫌われ者でも乙女だから甘いものは好き。
そんなことをあいつに言ったらなんだか苦笑いしそうね。
ムカつくわ。
「まいどあり~☆」
桃色のハーピィ店主からクレープを受け取る。
中身はイチゴとチョコで生クリーム多め。
スライムだからどこからでも吸収できるのだけれど、慣例として他種族と同じ口を作っている。手のひらから食べてたら不気味だろうし、ほかの人の食欲を削ぐに違いない。
買ったからにはおいしそうに食べる。それが義務よね。
味覚細胞を集中させてクレープを頬張る。甘い。ひたすらに甘い。
だけどこれが疲れている私にはちょうど良かった。イチゴの酸味で後味も軽い。
気が付けばあと一口になっていて、もう一つ買ってしまおうかと思案したが夕食のことも考えて断念。
また明日、クレープを買おう。私はそう硬く決意して家路を急いだ。
夕食を食べ終えて自室に籠る。
もちろんあの本を解析するために。
私は座りなれたウッドチェア(といってもお椀みたいなものだけれどね)に体を預け、溶けて一塊となった体から腕と頭だけを出した。
本当は読みたくない。けれども知っておかなければならない。
なぜなら本があるのならば私はそれを読み理解しなければならない。
そんな脅迫めいた感情に追われ私は書記を読み進めた。
「あれ?」
負に満ちた悲しみの叫び。
それは日を追うごとに徐々に薄れていっている。
そしてそれに反比例して出てくる「あの人」という名詞。
それに応じて増える甘い恋の言葉。
一体これはなんだ。
拷問されていたはずよね。なのに今やこの書記は思春期の乙女の感情をなぞった淡い恋物語―――いや違う。
似合わないかもしれないけれど、私だって恋愛小説は読んできた。だから恋愛自体を理解してはいないけれどその造形は理解しているつもりよ。
でもこれは甘酸っぱいものではない。恋を知らない少女。愛されなかった少女が抱いた偏執染みた恋心。
まるで世界が恋に満ちたかのような。
拷問という痛みによって増幅された強い恋愛感情。まるでこっちの心を蝕んでくるかのような重くて甘い―――
アナタノスキナヒトハダァレ
「ひっ!」
声が聞こえた気がした。
感情の奔流に飲まれすぎたせいかしら。この書記の少女が私に語り掛けてきたかのような。
いや、そんなことはあり得ない。そんな非現実的なことあるわけないわ。
―――幽霊がいる世界だけど。
自分の否定を冷たい私が嘲笑う。
思わず抱いてしまった恐怖を頭を振って消し飛ばす。
私はいつだって冷静。そう評価されてきたのだから。
冷静かつ冷徹にして冷血。そう他者が私を表現したのだから。
私はそう願われるままにあるしかない。それが私を縛り、守る呪縛なのだから。
「落ち着きなさいベールクレア。あなたは冷静かつ冷徹にして―――」
ばぁんっ!
「ひうっ」
「ベールちーん!」
大きな音を立てて私を驚かした犯人は私の姉。ベルスタシアだった。
「ノックぐらいしてよね」
冷静を装いながら苦言を呈する。でもよかった。
あのままだったら思考の海に沈んでいった。そうなったら私はしばらく戻ってこれない。
そこは感謝しておく。言葉にはしないけど。
「あれ、なに読んでるのベールちゃん。面白い? ねぇ、面白いの?」
「面白くなんかないわ」
「そっかぁ」
「それでどうしたのよ。いきなり私の部屋まで来て」
と尋ねるけどそう珍しいことじゃない。それどころか我が姉はどうでもいいことでよく私の部屋を訪れる。
別に嫌ってわけじゃないけど…
「えっとね、えっとね。聞きたいことがあって、それでね」
「落ち着いて。何を言ってるか耳に入ってこないわ」
我が双子の姉にして性格は真逆。でもそこがお互いの欠点を埋めあうようになっているからそれこそ双子らしい。
「ベールちゃん。先生のこと………好き?」
………………は?
私があの愚鈍かつ凡念にして盆暗を?
「そんなわけないじゃない」
と一笑に付す。あり得ない。なんで私があんな男のことを
「そっか。えっとねえっとね。私、えっとその」
ちょっとまって嫌な予感がする。
まるで三文芝居じみた安直かつありきたりな
「先生のこと、好きになっちゃったかも!!」
そんな台詞を―――
「きゃー、言っちゃった! 私言っちゃった!」
頬に手を当てて、顔を赤らめ―――ないわね。私たちの肌の色銀色だもの。
ありきたりな恋する乙女的反応を示す我が姉は頭を振って恥ずかしそうにしている。
恥ずかしいなら言わなきゃいいのに。実に不毛な話。
恋愛なんて出来やしないのよ………私たちには。
「でね。でね。今度先生とデートするんだけど」
へー。実にどうでもいい話。
だけどあの盆暗。生徒に手を出す度胸はあるのね。インポテンツかと思ってたわ。
「どんな服着ていけばいいかな! 先生はどんなのが好きかな!」
「知らないわよ」
「えー。だってベールちゃん物知りだから」
「アカデミックな話ならできるわよ。でもそんな知識は私にないの。お望みなら魔術回路構成の個人における最適化についての論説ならしてあげてもいいわよ」
「ぎゃー。頭が痛くなる~!!」
私の姉には難しい話が一番。鎮静剤なんて必要ない。
でも残念ね。議論は嫌いじゃないのだけれど
―――そういえばあいつともよく議論してたわね。大体私があいつに教えるほうが多いんだけれど。
姉の恋話を適当にあしらう。真面目に聞いてたら細胞が死滅していくわ。
それこそ拷問―――拷問、か。
おとぎ話の囚われの姫と王子様みたいね。なんだったかしら、吊り橋効果? 認知的不協和理解?
書記中の出来事としてそんな何かがあったのだろうと想像する。
尖塔の囚われ姫の童話みたいね。
幼いころから高い塔に幽閉されたお姫様に、毎晩語り掛ける吟遊詩人の話。
彼女にとってはそれが世界。吟遊詩人からもたらされる情報がこの世のすべて。
それが偽りの世界だとしても彼女はそれを信じるしかない。
実際は世界に花は満ち溢れてなくて、人々は争い、愛なんてとうに忘れられた世界だったとしても彼女の世界は平和。
彼女はその世界を愛するがゆえに世界である吟遊詩人に恋をした。
そんな話を私はとても滑稽だと思って聞いてたわね。
でもこの子はまさにこの囚われの姫だった。
「ありがとうベールちゃん! 頼りになるのは可愛くて賢い妹だよね!!」
「可愛くはないわ」
ありがとうと感謝されても私自身どう返答したのか覚えてない。無意識化で適当な相槌を打っていたのだから。
だけどどっと疲れた。
慌ただしく部屋を出ていく姉を見送り私はウッドチェアに沈む。
もうベッドに行く余裕すらないわ。
行儀は悪いけれどこのまま寝てしまいましょう。
どうせ、だれも咎めはしないのだから。
貴方の好きな火とはだぁれ
乙女の心を燃え上がらせるのは
貴方の好きな飛とはだぁれ
乙女の感情を羽ばたかせるのは
貴方の好きな秘とはだぁれ
乙女の秘めたる唇の奥に潜むのは
貴方の好きな灯とはだぁれ
乙女の人生を照らし出すのは
貴方の好きな卑とはだぁれ
乙女の恥を晒したいのは
貴方の好きな人はだぁれ
乙女の心に眠る愛しきものは
「ねぇ、ベールクレアさん。ちょっといいかな」
「はぁ!?」
なんだか嫌な夢をみていた気がする――――
………見てたのよ。
さすが私。夢で見たことはすべて記憶している。
こういうとき、私の優れた頭脳が厄介よね!
「・……はぁ」
嘘でしょ。
なんであいつの顔が出てきたのよ。
それに声も。
私そんなキャラじゃないし。
恋愛対象になんてなるわけないし。
きっと、ベルが昨日あんなことを私に言ったから―――
そのせいと思い込んでも
冷静かつ冷徹にして冷血な私が肯定する。
あァ、私はあの人が好きなんだと。
夢に出てきたから好きになる。
私がそんな奴じゃないってことは私が一番よく知ってる。
私がずっと目を背けていた事実。
私がそうであれと思っていた秘密。
私の意志が決して許さない規律。
そう。
私はあいつが好きで
私はあいつを好きになっちゃいけなくて
私はあいつを愛してはいけない
だって私は―――
一旦認識した事実というのは厄介で、あいつの顔が頭から離れない。
姉が恋した相手とわかっていても、自律できない。
あァ。あの人と交わりたい。
元々私たちの一族は『強欲』だ。
一度欲しいと思ったものは何がなんでも手に入れたくなる。
でもベルが好きな相手を後出しで奪い取れる?
私はできない。
天真爛漫なあの子の笑顔を汚すことはできない。
理性と本能の間に挟まれ苦しむ私は、苦手な恋愛小説の主人公のようで。
恋は化学反応と理解していても、それでもその根っこは根深い。
冷静かつ冷徹にして冷血な私がすべてを奪い取れとささやく。
それはだめだ。絶対にそれは。
私は誰にも好かれちゃいけない。
だって―――
「あなたの好きな人は彼なのね」
はっきり聞こえた。
昨日はまだ幻聴だと否定できた。
なのに今回は聞こえてしまった。
耳元でささやく吐息すら感じてしまった。
その方向を向くけれど当然誰もいない。
変だ。私は変だ。
今の私は『恋』だ。
「ひ、引きこもるべきね。すべてが終わるまで」
数少ない残った理性をかき集めてそう判断する。
私の研究所。私の城。私だけの場所にいれば誰にも侵されない。
あそこにいれば私はベールクレアでいられる。
私はベールクレアでなければならないの!
扉の鍵を閉める。
いつも座っている椅子に深く腰を掛けて目を閉じる。
冷静になれと願ってなんども深呼吸を繰り返す。
OK。私は私。ベールクレアよ
「それでいいの?」
声が聞こえた。はっきり。
部屋の中に響いている。全方向から私に向かって投げかけられているよう。
「! 誰。誰なのよ!!」
「私は――――貴方が知っているもの」
「私は知らないわ。何も知らない」
「私は知ってるわ。あなたの想い。貴方の恋心全て」
なにがわかるっていうのよ。私の何がわかるっていうのよ!!
「だって、貴方は私を知っているから。だから私も貴方を知っているのよ」
「理論的じゃないわ」
「恋は理論的じゃないの」
「私は誰も好きじゃない」
「そう。そこまで否定するのなら。見て頂戴」
「私の結末を」
呑まれた。
精神干渉を受けている。
抵抗できない。いくら抵抗しようとしても魔術式ひとつ作れない。
天才ベールクレアをこうも押し付けるこの力はなに!?
ずぶずぶと心を何かが這いずり回るかのような嫌な感触。
その感覚はどんどん深くまで沈んでいき
そして
私に景色を見せた。
そして理解した。
彼女の結末を。
愛され
裏切られ
首を刎ねられるまで
裏切りに対する怒りと悲しみと後悔。
いろんな感情が渦巻いたものが私を満たす。
なぜなぜこんなことに
体を十に分けてもこんな苦しみにはなりはしない。
いや千に裂いてもここまで苦しくはならない。
苦しい。
苦しい。
アァ、クルシイ
こんなに心砕かれるなら
あァ、心砕かれるなラ
アノヒトヲモットアイシテオケバヨカッタナァ
「ベールさん。用事ってなに? 鍵かかってて入れないんだけど、いる?」
目を覚ました。あいつの言葉で覚醒した。
それと同時に体と心にまとわりついていたものがスッと消える。
「え、私呼んでな―――」
手の中に違和感。
硬く冷たい感触。
重心が絶え間なく移動するからおそらく液体。
私は視線を下げて自分が握っているものを見た。
私はこれを知っている。
惚れ薬だ。刷り込みを利用して相手の心に自分を植え付ける薬。
知っている。理解している。だけど興味なかったし、作った覚えはない。
なのに持っている。なぜ、どうして。
瞬間頭に石をぶつけられたかのような衝撃が走る。
そして思い出した。
これを作ったのは私だ。
そしてあいつを呼び出したのは私だ。
「鍵、開けたわよ」
私は扉の鍵を開けた。
そして数歩下がると疲れた顔のあいつが扉を開ける。
あいつの肩には私の分身が乗っていた。
「いきなり急いでって言うから疲れたよ。もしかしてあの本について大変なことがわかったの?」
大きく息を切らしながらあいつが尋ねる。
私とそう変わらない身長。
しかも今は疲れている。
私は惚れ薬のコルクを外し、後ろでに構えた。
「あまり大きな声で言えないの、ちょっと顔を近づけてくれるかしら」
「え? うん」
なんの疑いもなく私に顔を近づけてくる。
グイッ
あいつの口にガラス瓶の口を押し込み無理やり口を閉ざさせる。
そして鼻をつまむとあいつは苦しみながら中身を飲み干した。
「けほっ、げほっ、ベールさん、いったい何を」
男→ベールクレアの好感度 【100】
あいつの目が潤む。
頬が赤く染まる。
そして私をじっと見つめて
「好きだよ。ベールさん」
愛の言葉を囁いた。
もう誰にも盗られない。
私だけのもの。
愛すのならば、愛せるのならば
もっと、ずっと愛するべきだ。
私はそう理解したから。
「えぇ、私もよ」
顔が近づく。
10センチ
9センチ
8センチ
7センチ
6センチ
5センチ
心拍音が高くなる。細胞が震える。
4センチ
3センチ
2センチ
1センチ
「んっ」
0センチ
唇と唇が重なる。
私はその瞬間に色んなものを見た。
「愛してるよ。ベールさん」
「ずっと愛してあげるわ」
そして私は涙を流した。
以上です。
個人的にはベールにはイチャイチャよりもビターな展開が似合うと思うのです。
っていうかそれがベル一族の宿命かと。
お気に召さなかったらすいません。人外好き様。
別にイチャイチャしても構わんぞ
ベル一族は悲恋の一族
ベールのイチャイチャも見たいです。お願いします。
ベールは隠しきれてない好意を漂わせてる所が好き
亜人だらけSS増えろ
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