【安価】「異世界に来た」 (19)
平凡な日常というのは惰性で日々を過ごし、生きる意味を見い出せない者からしたら退屈この上なく、生活する為の作業をひたすらに繰り返すだけなのだ。
でも
今自分の置かれている状況を鑑みて、その惰性で生きた日々を有難く思う日が来るとは思いもしなかった。
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「はぁはぁ…!はぁはぁ…!!」
手に持った得物を倒れている生き物に突き刺す。何度も、何度も。鈍い感触。初めての感覚。
多かれ少なかれ幼い頃に小さい生き物を殺した経験は誰しもあるだろう。
だが、大型となれば話は別だ。流石に犬や猫くらいのサイズの生き物を殺したという奴は中々居ない。
殺した事があると言う奴が居るならば、そいつは異常者だ。
だが、今回に限っては俺は違う。
何故ならこれは、そうせざるを得ないからだ。
「はぁ……はぁ……!し、死んだ…のか…?」
誰がその問いに答えるでも無く、一目瞭然だ。
先程まで虫の息だったその生き物は、完全に息絶えている。
「……や、やった……」
力無く言葉を吐き、安心感から脱力してその場に尻もちを着く。
緊張で強ばった身体の力を抜き、息を整えて、先程殺した生き物を見る。
「…殺した……いや、殺せた……んだな」
改めて身体が、手が震える。それも当然、つい先日までただの一般人だった俺が、今は命のやり取りをしているのだから。
「はは…怖ぇ……怖ぇよ…くそ…」
泣き言が溢れてくるが、そんな事を言った所で何も変わらない。俺は手を握り締め、自分の置かれている状況を身体に染み込ませる。
覚悟を決めたつもりだったが、流石にまだ切り替えるには経験が足りないみたいだ。
「…っ!」
背後の茂みが揺れる音がした。俺は咄嗟に刺したままの死体から得物を抜き取り、身構える。
増援かもしれない、だが、やるしかない。
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「……ん…」
硬い。閉じた視界の中、それが最初に出た感想だ。
「え……え!?」
間違えて床で寝たのかと思い、起き上がるとそこは見知らぬ土地。いや、町だった。正確には町外れとでも言うべきか。
「え!?ここ!!…どこ…?」
変な夢かと思い頬を叩いてみるが、ちゃんと痛い。まさか誘拐?俺を!?
「いやいや!……ふぅーー…落ち着け…」
月並みだが、窮地に立たされた時こそ冷静にという精神を思い出し、深呼吸をする。
まず、夢ではない。そして、誘拐にしたってこんな所には置かない。
まずは周囲を確認……確認!?
「マジか……」
今居る目視出来る範囲に3名程倒れていた。
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倒れている人達の簡易プロフ
1人目 安価下2
2人目 安価下3
3人目 安価下4
性格は表現や理解力不足で拙くなるかもしれませんがお許しを
渋谷坂 鳴音(しぶやざか なるね)
女子高生
基本はお気楽マイペースだがやや臆病な性格。
特異な状況下では顔には出さないが内心ビビったりしてるし、冷静を装うために安全なところまで逃げたりする。
平均より身長も胸も小さい体格。つまりチビ。
運動音痴だが射撃武器の扱いはわりと得意なスナイパータイプ。目が覚めた時には何故かボウガンを持っていた。
カーソン
20代後半の軍人で民兵組織との戦闘中に意識を失った
性格は陽気で冗談好き
特技は白兵戦で格闘術が使える
残ってる武器は血がついたナイフと弾切れの銃のみ
イルド
背の高い坊主頭の白人。古代ローマじみたトーガを着ている。文明を嫌い哲学を愛する変人。
生物の解体や毒草の見分け方、原始農業だとの現代では役に立たない知識が豊富。
まず近くに制服を着た女子高生。身長は低めだな。驚いた事に手にはボウガンが握られている、何をしてたんだ?
そして少し遠くには外人?チョッキを着ているな。一般人のソレとは違う筋肉質な体躯、手にはナイフと銃。軍人か?
その外人の近くに長身で白人の坊主が倒れている。服装はなんて言うんだろうか。勝手なイメージだがローマの人とかが着そうな服だ。
まだ目が覚めていないが、恐らくこの人達も俺と同じ境遇のはずだ。
とりあえず近くの女子高生を起こしてみよう。
「おーい、生きてますかー」
肩を掴んで軽く揺らしてみる。効果はあったのか小さな呻き声と瞼が動いた。
「…ん…んぇ……」
「お、おはようございます」
「え…えっ!?って…うぇ!?ここどこ!?」
女子高生は俺を視認すると驚いたのか目を見開いて素早く飛び退くと、同時に置かれた環境にも驚愕している。
「あ、貴方!誰ですか!?」
とりあえずと言わんばかりに手に持っていたボウガンを俺に向けてくる。俺も条件反射的に両手を上げて敵意は無いとアピールする。
まぁこの女子高生の反応は正しい。
「ちょ、落ち着いて下さい。俺も君達と同じで訳が分からないんです」
「…?君達?」
女子高生は今ので察したのか、辺りを見回して少し遠くに倒れている2人にも気が付き、暫く沈黙して考え込むとボウガンを下ろした。
「…なるほど、そうなんですね。あ、コレ突然向けちゃってごめんなさい!」
「いやいや、分かってくれたならそれで…」
判断力と適応力が早いな、個人的には助かるが。
「じゃあ他の2人も起こしちゃいますね。貴女は少し待っててください」
「あ、はい!すみません!お願いします!」
●●
あれから残りの2人を起こし、女子高生と同じやり取りをして何とか落ち着いて話を出来る状況にした。
なんと驚いた事に、海外の人であろう人と言葉が通じるのだ。
ついでに軍人は起こした直後にナイフを首元に突き付けられたりしたが、まぁ致し方ない。
坊主の人は起こした時は特に動揺を見せず、落ち着き払った態度で会話から入れた。
俺達の居る場所は町外れの廃墟みたいな場所で、とりあえず1箇所へと集まり自己紹介をする事にした。
「エホンッ…俺の名前は──」
主人公のプロフ
安価下
山野 博之(やまの ひろゆき)
赤いキャップが特徴で平均的な体系の大学生
サッカーをやっていて運動は得意、勉強はそこそこ
進んで人と関わろうとはしないが、直ぐに仲良くなれるコミュ力がある
「──山野博之、大学生です。特にこれといった特技は無いけど、サッカーやってます」
女子高生と軍人が軽く反応してくれた。こんな状況下だが、照れくさくなってお気に入りのキャップを目深く被った。
「あ、じゃあ次は私ですね」
女子高生はそう言うと立ち上がり、尻に付いた汚れを払う。目覚めた頃より大分落ち着いていて、これが本来の彼女なのだろうか。
「私の名前は渋谷坂鳴音、女子高生です。あ、このボウガンは…なんであるのか分かりません。あはは…」
なるほど、自分の所持品じゃないのか。
鳴音は言い終わるとまたその場に座り、次は片膝を曲げて座る軍人が銃をいじりながら喋りだした。
「俺はカーソン。人殺しだ」
その一言に緊張が走った。頭で危険だと理解しても身体がすぐに動かないのは何故だろう。
「ははは!おいおい、冗談だ冗談。本気にするなよ。俺はただの軍人さ」
起こした相手が殺人鬼でしたなんて笑えない冗談だ。それにこの人なら簡単に……いやいや変な考えはよそう。
「俺からは以上だ。ヘイ、次はアンタだぜ」
「………」
順番を投げられた坊主の白人は、俺達を順に一瞥すると立ち上がってその場から去ろうとし、その際に小さな声で名を告げる。
「……イルドだ」
最初から思っていたが、愛想が無い。イルドと名乗る坊主は周辺の廃墟の跡を触ったりしていて、何かを調べているみたいだ。
イルドの名前だけの自己紹介を終えると、町の方から人が歩いて来ている事にカーソンが気が付き、教えてくれた。
段々と近付いてくるその人物は、パッと見てシスターを彷彿とさせる風貌の女性だ。
イルドは変わらず辺りを触り、カーソンは気にした様子も無く、ただ座って見据えているだけ。
俺と鳴音だけが身構えた。
そのシスターは声の聞こえる範囲で立ち止まり、深々と頭を下げるとゆっくりと頭を上げ、にこやかに笑う。
「ようこそ、漂流者達」
シスターは俺達の事を、そう呼んだ。
●●
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2401番。ここが今日から俺が住む部屋になる。
荷物といった荷物も無く、部屋に入ってすぐにベットへと腰掛ける。
「ふぅ……」
落ち着ける場所に来ると、ドッと脱力する。
時間にしてそんなに経ってない筈なのに、この急激な疲れ。
柔らかな布団へ背を寝かせ、ここまでの出来事を振り返ろう。
まずこの町の名前はレムリアというらしく、別称で古都とも呼ばれるそうだ。
中世の街並みが広がり、フランスへ旅行をした事があるならばその街並みに近いなという印象を持つだろう。
次に通貨。金銀銅貨の3種類がこの世界の通貨だ。先程この施設にて支給された軍資金。
これで日々の食事と装備を新調する。足りない分は稼がないといけないらしい。
そしてこの施設。シスターに案内されたのは漂流者組合という大型のモーテルみたいな所だ。
他の漂流者は出ているのか、俺達以外の人は見かけなかった。
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大体こんな感じだろうか。帰る方法やなんでこの世界に来たとかは分からないらしい。
それにしたって装備を整えるってなんかゲームみたいな感覚だ。
漂流者はこの世界では町での仕事をやらせてもらえないので、魔物を狩るのが仕事になる。
魔物ってどんなのだろうか。やっぱ最初はスライム?ゴブリン?そういった雑魚を狩って生計を立てるのかね。
他の皆はこれからどうするんだろうか。
群れるのも自由、己のみで戦うのも自由、受付の人に言われたあの言葉、皆はどう考えるんだろうか。
鳴音は女子高生だし小さいし、イルドは何考えてるかよく分からないし。
あの中だとカーソンは軍人って事もあって正直心強い。
手を組めるなら組みたいが、カーソンからして俺と組む見返りはあるのかと聞かれると困るな。
乗り気なら話は早いが。
「うーん…」
まだ昼だけど、疲れているし、ひとまずは寝るか。
起きてから考えよう。
●●
「ひーふーみー…」
私、渋谷坂鳴音はパンを齧りながら、お昼頃に頂いた小袋から硬貨を出して残金を確認している。
お部屋に案内された後は自由行動となり、とりあえず私はお腹が減ったので町の露店からパンを幾つか購入したのだ。
「もぐもぐ……んー、パン一つで銅貨2枚の価値だから…」
日本貨幣に変換してみるもしっくりと来ず、段々と面倒くさくなって来たので何とかなるだろうと、お金をしまってパンを貪る。
空腹を満たしていくと、この後の事を考え始めて気が滅入る。
ベットに投げたボウガンを手に取り触ってみるが、引き金を引く以外に使い方なんて分からないし、弾となる矢も無いし。
今後もこれを使うとなれば使い方と矢の補充が必要になる。ちょっと面倒くさい。
でも、直接斬ったりするより遠くから戦えるのなら、私の性に合っているかも。
「はぁ……っていうか、なんでこんな事になっちゃったんだろ。お母さん心配するだろうなぁ」
不思議な事に心配という感情は薄く、むしろこの現実感の無い環境に対しての期待が強いのが本音。
パンの包みを雑に丸めると、ゴミ箱へと投げる。
「…よっし。行きますか」
まずは協力者を見つけないと。
魔物と戦うなら数が多いに越したことはないもんね。
安価下
コンタクトを取る相手
鳴海視点なら無難に博之だろうか?
山野さんにしよう。同じ日本人だし、他の2人はちょっと怖いしね。
「おっとと」
私は備え付けの姿鏡の前で少し身だしなみを整える。別にこんな事気にしなくても良いんだけど、気になっちゃうよね。
「…コスメとかも揃えようかな」
髪をセットし直して、準備完了。
ま、そこはお金と相談だね。
●●
コンコン。
木製の扉をノックする音が聞こえる。眠りが浅かったのか耳を刺激するそれで、俺は目を覚ます。誰だろうと思いながらも目を擦り、身体を起こして入口へと向かう。
「はーい、誰ですか?」
「あ、山野さん!私です!渋谷坂です!」
渋谷坂…あ、鳴音か。俺は扉を開ける。
「渋谷坂さんでしたか、先程はどうも。どうかしたんですか?」
「ちょっとご相談が……あれ、もしかして山野さん寝てましたか?ごめんなさい起こしちゃって」
「大丈夫ですよ、お気になさらず。あ、中入ります?」
「あ、入ります!お邪魔します!」
鳴音を中へと入れると扉を閉める。
これはチャンスだな、今後の件を鳴音にも相談してみよう。
中へと入った鳴音は椅子へと座り、俺はベットに腰掛ける。
「実は俺も話したい事があってですね、丁度良かったですよ」
「え?私にですか?」
「そうです。でも先に渋谷坂さんからどうぞ」
「あ、はい。えっとですね~…良かったらなんですけど~…私と協力しませんか?」
なるほど、鳴音も俺と同じ考えだったんだな。
これなら話が早い。
「おぉ、偶然ですかね。全く同じ事を俺も話そうと思ってたんですよ」
「えっ、ホントですか?」
「はい。この先有利に物事を進めるなら人数が必要かなって思ってて」
鳴音が目を輝かせる。
「ですよね。1人より2人、2人より3人…ですね!」
「ははは、良いですね。じゃあ協力関係を結ぶという事で…?」
「はい、宜しくお願いします」
鳴音が握手を求めてきたので、それを握り返す。
第一段階は完了かな。
「あ、山野さん。もし良かったらなんですけど…」
「はい?」
「敬語じゃなくてタメ語で話しませんか?実は私堅苦しいの苦手で…えへへ」
「あー…」
言葉遣いは元の世界な人としては常識だけど、知らない土地だしな。言葉を崩して話せるのは楽かもしれない。
「…ダメですか?」
「分かった。これでいい?」
「っ!やった、良かったぁ」
「あはは、改めてよろしくね。あ、あと渋谷坂って呼びにくいから鳴音でもいい?」
「うん全然良いよ、皆そう呼んでたから。そしたら私も…あれ、ぇと…」
「博之」
「ごめんね、あんまり記憶力が…」
「苗字で呼ばれる事の方が多いからね。好きに呼んでくれて良いよ」
「じゃあ、博之君って呼ぶね」
君か、いや別に良いんだけど。君か。
「おーけー、それで良いよ。そしたら他にも声掛けてみるか?」
「え、もしかしてあの2人に?」
苦虫を潰したような顔をする鳴音。そんなに嫌か?頼れると思うんだがな。
安価下
仲間を増やす?Y/N
Y
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