武内P「島村さんが私の?」卯月「お気に入りですよね!?」 (34)

注意事項

・武内Pもの

・武内Pもの




武内P(……気のせいではないようです)

卯月「……」チラ

武内P(最初は何かの間違いだと思っていたのですが……)

卯月「……」チラチラ

武内P(数日ほど前から、島村さんがチラチラと私を見るようになり――)チラ

卯月「……ッ!?」ガタッ

武内P「あの……島村さん」

卯月「ま、ママに電話するの忘れてました! ちょっと外に出ます!」バタバタバタッ

武内P「あ――」

武内P(目が合わさると今のように慌てて離れてしまいます)

武内P(何か私が気にさわることをしてしまい、嫌われて避けられているのかとも考えましたが……)

卯月「……」コソコソ

武内P(私だけしかいない部屋にこうして戻ってくるので、避けられてはいないようです)

武内P(悩み事があるものの、なかなか言い出せずにいるのでは……)

武内P(ここは多少強引にでも!)ガタッ

卯月「プロデューサーさん?」


ズン、ズン


卯月「……え、あの?」アトズサリー


ズンズン、ズン


卯月「プロデューサー……さん?」サラニアトズサリー


ズンズンズンズン


卯月「わっ」トンッ





島村卯月
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武内P「島村さん。私に何か、話たいことがあるのではないでしょうか」

卯月「あ――」

武内P「どうか私に話してもらえ――」

卯月「プ、プロデューサーさん……」

武内P「……!?」

武内P(体を震わせながら、潤んだ瞳で見上げる島村さんを見て、ようやく私は自分がしていることに気づけました)

武内P(島村さんの悩み事を聞こうと必死なあまり壁際まで追い込み、怯えさせてしまうとは……っ)

武内P「失礼しま――『あ、あの!』――島村さん?」

卯月「そ、そのまま手を……壁にあててもらっていいですか?」

武内P「壁にですか? その、まずは離れた方が――」

卯月「だ、ダメです! そのまま! そのままでお願いします!」

武内P「わ、わかりました」

武内P(島村さんの意図はわかりませんが、こんなことをした私に悲鳴をあげずにいてくれるのです。言う通りになければ)

武内P「こう、ですか?」

武内P(心なしか一時期話題になった壁ドンのような体勢ですね)

卯月「……」

武内P「島村さん?」

卯月「えへへ♪」フニャア

武内P「!!?」

武内P(それは、初めて見る笑顔でした)

武内P(太陽のように明るくて、見る者に暖かさを与える笑顔ではなく――頬にまったく力が入っていない、緩み切った笑顔。見る者に癒しと脱力を与える笑顔)

武内P「いい……笑顔です」

卯月「え?」

武内P「ンンッ。あの……もういいでしょうか。もし誰かに見られでもしたら、誤解を与えかねません」

卯月「誤解、ですか?」

武内P「ええ。だからソファの方で話しましょう」

卯月「誤解……なんですか?」

武内P「……?」

武内P(なぜ可愛らしく頬を膨らませるのでしょう。理由がわからないのは、私が女心がわからないからか、悩みを抱えている島村さんの心情が不安定なためなのか……)

武内P(ともかく一度落ち着いて話を聞かなければ)

武内P「……先ほどは失礼しました。島村さんが私に何か話したいことがあるように見えて、それが悩み事ではないかと心配して、つい」

卯月「き、気づいていたんですか」

武内P「島村さんの様子を見るに、話しづらいこととは思いますが、どうか私に話してもらえないでしょうか。力になりたいんです」

卯月「いえ、その! 悩み事――と言えば悩み事なんですけど、たいしたことじゃなくてですね!」

武内P「島村さんが悩みを抱えていることには変わりありません。そして悩みを抱えている島村さんを見ていると、私は不安になってきます。ですから、どうか」

卯月「不安にですか? プロデューサーさんが?」

武内P「はい。今はまだ大丈夫ですが、悩みのせいで島村さんが体調を崩したりしないかと、不安で仕方ありません」

卯月「うー。そんなこと言われたら、話さなきゃいけないじゃないですか」

武内P「す、すみません」

卯月「……笑わないでくれますか?」

武内P「当然です」

卯月「えっとですね。この前のことなんですけど、美穂ちゃんと響子ちゃんに言われたことが、気になって仕方がないんです」

武内P「小日向さんと五十嵐さんに……ですか?」

卯月「ふ、二人ともプロデューサーさんが……」

武内P(お二人が私のことを? 街を歩いていたら警察の方に職務質問をされ、応援まで呼ばれたのを見られてしまったのでしょうか? それとも悪役の公爵令嬢を演じてみないかと、なぜか路上でスカウトされてしまった件――)





卯月「プロデューサーさんが私のことを、お気に入りに違い無いって言うんですよ、もう♪」エヘヘ





武内P「……………………ん?」

卯月「二人とも、プロデューサーさんのことをわかっていないですよね! プロデューサーさんは担当しているアイドルみ~んな大切で、ヒイキになんかしたりしないのにアハハ」

武内P「あの……悩みというのは?」

卯月「で、でも思い返してみるとですね! 確かにプロデューサーさんは私に一番かまってくれて、優しくて頼もしくて――でもそれは私がダメだったからで。でもひょっとしたら! 二人の言う通り、私がお気に入りだったからかも……と考えれば考えるほど、わからなくなってきたんです」

武内P「……なるほど、悩む理由はわかりました。そして私に確かめようにも、尋ねにくい内容ですね」

卯月「なかなか言い出せなくて……『フフ―ン! 私はカワイイですからね! プロデューサーさんのお気に入りですよね!?』って練習してきたのに」

武内P「!!?」

卯月「せっかく幸子ちゃんに指導してもらったのに……」

武内P「輿水さんが……協力してくれたのですか?」

卯月「はい。もっと自信をもって、誇らしげな顔をするようにとか、ボクの次にお気に入りという自信を持つようにと指導してもらえました!」

武内P「こ、輿水さん……」

卯月「それで、その……どうなんでしょうか?」

武内P「……」

武内P(確かに私は島村さんには強い思い入れがあります。あの日に出会えた笑顔は私にとって忘れられないもので……アイドルをプロデュースすることへの自信を失っていた当時の私は、すがるような気持ちで島村さんが所属していた養成所に向かいました)

武内P(そういった意味では確かに島村さんは私のお気に入りと言えますが――思い入れがあるアイドルは島村さんだけではなく、皆さんです)

武内P(しかし――)

卯月「あの……」ソワソワ

武内P(不安と期待が入り交じったこの姿を見て、島村さんだけが特別ではないなどと、私にはとても言えません……っ!!)

武内P「そう……ですね。言われてみれば、確かにそうかもしれません」

卯月「!!?」

武内P(島村さんは先ほど、私がアイドル皆を大切にしていて、ヒイキはしないと言ってくれました。そんな島村さんなら、天狗になって仲間とトラブルを起こすことも無いでしょう)

武内P「アイドルの皆さん全員に平等でいようと心掛けてはいますが、島村さんのことになると、うまくいっていないかもしれません」

武内P「他の皆さんに申し訳ありません……」

卯月「そ、そんなことありませんよ! プロデューサーさんはちゃんと皆を大切にしているって、私たちわかっていますから!」

武内P「そう言っていただけると助かります。ただ今後、私が島村さんを特別扱いするようなことがあれば、止めてもらっていいでしょうか。自分では気づかぬうちに、ということもあるかもしれません」

卯月「はい、わかりました! プロデューサーさんはそんなことしないとは思いますけどね♪」

武内P「そうありたいと思っています。それとこの話ですが――」

卯月「も、もちろん秘密にします! プロデューサーさんのお気に入りが私だなんて……えへへ」

武内P(島村さんはこんな私を頼りにしてくれている。その私のお気に入りということで島村さんのモチベーションが上がるのなら、否定はしなくていいでしょう)

武内P(それに、お気に入りというのは別に嘘というわけでは――)

卯月「プロデューサーさん?」

武内P「……ッ!?」

卯月「なんだか遠い目をしてましたよ?」

武内P「いえ……なんでもありません」

武内P(妙なことを考えそうになってしまいましたが、うまく島村さんの悩みは解決できました)

武内P(これで大丈夫です)





――うまく悩みを解決できた。大丈夫。
私はこの時、本気でそう思っていたのです。
あんな事になるなんて、夢にも思っていませんでした――

※ ※ ※



未央「なあなあ、しぶりんさんや」

凛「……なに、未央?」

未央「ここ数日、私たちのしまむーの様子がおかしかったじゃありませんか」

凛「そうだね。本人はこっそりやっていたつもりなんだろうけど、鈍感なプロデューサーに気づかれるぐらいバレバレだったね」

未央「愛しのプロデューサーから目を離せないのかなあ~、とからかえるのは楽しかったわけですが、プロデューサーをチラチラ見ている理由については黙秘されました」

凛「未央がからかいすぎたからでしょ? 卯月ったらほっぺた膨らませてたじゃない」

未央「怒っても可愛いしまむーさんサイドに問題がある」

凛「……で、今日は様子が違うね」

未央「違いますなあ」





武内P「先日P.C.Sでテレビにゲスト出演した件ですが、普段と比べて3%近く視聴率が良かったそうです」

卯月「3%もですか!? それってすごいことですよね!?」

武内P「もちろんです。番組のプロデューサーからは、また来月ゲスト出演できないかというオファーがあり、これを引き受ける予定です」

卯月「そ、それってもしかして、番組のレギュラーになれる可能性もあるんでしょうか!?」

武内P「……申し訳ありません。その話は、私が断ってしまいました」

卯月「……え?」

武内P「相手方から『この調子で数字を出し続けられるのなら、ぜひレギュラーに迎えたい』とおっしゃっていただけたのですが、これ以上レギュラー番組を増やすのは島村さん、小日向さん、五十嵐さんの体調や学業に支障をきたしかねないと判断しました」

卯月「そうなんですか。私、アイドルのお仕事が増えるかもってことしか考えていなくて」

武内P「島村さんの意志を確認しないまま、返事をしてしまい申し訳ありません。ですが、無理をして体を壊すようなことはあってはならないと判断しました」

卯月「あ、ああ! 謝らないでください。私の考えが足りなかっただけですから。プロデューサーさんは! 間違っていません♪」

武内P「島村さん……っ」





渋谷凛
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http://i.imgur.com/q3G3cfX.png

本田未央
http://i.imgur.com/gYKv0TP.png
http://i.imgur.com/32PjyWw.png

凛「……卯月、テンション高いね」

未央「お気づきなのはその点だけですか?」

凛「……プロデューサーと、距離が近いね」

未央「最初から、膝がくっつきそうな距離だったよね」

凛「うん。で、それから膝がくっついた。卯月がくっつけたね」

未央「膝をくっつけたまま素知らぬ顔で話を続けるしまむーに、プロデューサーはどうしたものかと困り顔でした」

凛「ここであからさまに離れたら、卯月を傷つけないか心配してたのかな?」

未央「そこで我らがプロデューサーは少しずつ、少しずつ秒速ミリメートルでしまむーの膝から膝を離し――」

凛「何とかできた数センチの距離を、今あっさり戻されたね」

未央「何が二人にあったのか。なぜしまむーがあそこまで自信たっぷりにプロデューサーにくっつくのか。カツ丼を用意しながらゆっくり問い詰めたいところですが……」

凛「私は今からトライアドプリムス、未央はポジティブパッションの仕事だね」

未央「クソッ。取り調べは明日にしといてやらあ!」

凛「未央。声が大きいよ」

武内P「そのため、P.C.Sのスケジュールに余裕がある時は出演を――本田さん?」

卯月「未央ちゃん?」

凛「私たち、次の仕事があるからそろそろ行くね。二人っきりだからって変な事したらダメだよ、プロデューサー」

武内P「渋谷さん!?」

卯月「り、凛ちゃん! プロデューサーさんはそんなことしません!」

凛「……じゃあ卯月。プロデューサーに変なことさせないでね」

卯月「が、がんばります」

未央「がんばらないとできないのか(困惑)」

卯月「み、未央ちゃん~~~っ」

凛「それじゃあ行こうか、未央。行ってきます」

未央「行ってきまーす!」

武内P「気をつけて行ってください」

卯月「ん~、行ってらっしゃい」


ガチャ、バタン

やったー
武内Pものだー

卯月「もう、二人とも変な事を言うんですから」

武内P(……おそらくは、島村さんと私の距離が近いのが原因なのでしょう)

武内P(もう数日しても島村さんの距離感が今のままなら、その時は注意しなければ)

武内P「さて、先ほどの話の続きですが、ゲスト出演で成果を出し続ければ制作側からの評価が――」


ガチャ!!


武うづ『?』

莉嘉「Pくーん! 助けて、助けてぇ!」ギュウウウウッ

武内P「じょ、城ヶ崎さん!? 何があったのですか?」

卯月「……」

莉嘉「お、お姉ちゃんが……お姉ちゃんが!」

武内P「……ッ!? 城ヶ崎さん、いえ美嘉さんの身に何か――」


カツーン、カツーン


莉嘉「ヒッ……」

武内P「城ヶ崎さん? 大丈夫で――」





「ねえ……莉嘉はここ?」





武内P「……城ヶ崎……さん?」

美嘉「フフフ……莉嘉、ここにいたんだ。あんなことやらかして、さらに……コイツに抱きしめられるなんて」

武内P「……ッ!!?」

卯月「……」ジーッ

莉嘉「ぴ、Pくん……助けて、お願い」

武内P「……城ヶ崎さん。お姉さんに何をしたのですか?」

莉嘉「あ、アタシは悪く無いもん! アタシはただ――」





莉嘉「お姉ちゃんが鼻提灯含らませて寝ていたから、パジャマのボタン外してエロ面白くしてから写メとって加蓮ちゃんに流しただけだもん!!!」





武うづ「」

美嘉(腹チラ鼻提灯)「アタシがどんだけ……加蓮にからかわれたと思うの? 挙げ句の果てに、ソイツに抱きついて」

莉嘉「お、お姉ちゃんが怖いからだもん! お願いPくん! Pくんからもお願いしてくれたら、お姉ちゃん許してくれるから!」

武内P「……」ヒョイ

莉嘉「……Pくん?」

武内P「どうぞ、美嘉さん」ポン

莉嘉「Pくん!? 裏切ったの!?」

武内P「その……度が過ぎたイタズラをした以上は、お叱りは受けなければ」

美嘉「だいたい裏切るも何も、コイツとの付き合いはアタシの方が長いんだからね。美嘉さんってね★」

卯月「……」ジーッ

莉嘉「あ、ホントだ! さっきPくんお姉ちゃんのこと名前で呼んだ!」

武内P「それは城ヶ崎さんがこの場に二人いたからです」

莉嘉「だったら名前で呼ぶのはアタシでもよかったじゃん! 俺の莉嘉――って!」

美嘉「こら、バカ言ってるんじゃないの。じゃ、騒がせてごめんね★ ほら、行くよ莉嘉!」

莉嘉「……ドナドナド~ナ~ド~ナ~♪」


バタン


武内P「……ゴホン。どこまで話し――島村さん?」

卯月「……」バッ

武内P「あの……何をしようとしていましたか?」

武内P(姉妹が去り、話を戻そうと島村さんを見ると、プロレスラーの手四つの構えのような体勢で硬直していました)

卯月「こ、これはですね」ジリジリ

武内P「……説明しながら、なぜ距離をつめるのでしょうか」ジリジリ

卯月「……」

武内P「……」

卯月「り、莉嘉ちゃんが抱き着いていいのなら、私だっていいじゃないですか!?」

武内P「いいわけがありませんよね!?」

卯月「ど、どうしてですか~?」

武内P「その……城ヶ崎さんはお姉さんが怖くて、私にしがみついてきたのです。島村さんが脈絡もなく、私に抱きつこうとするのは違います」

卯月「脈絡が無い……流れ……なるほど」

武内P「島村さん? どちらへ?」


スタスタ、ガチャ、バタン


武内P「……打ち合わせはまだ、終わっていま――」


ガチャ!!


卯月「Pくーん! 助け、助け……えっと」

武内P「」

卯月「///」

武内P「あの……島村さん」

卯月(できないよー!! 莉嘉ちゃんみたいに飛びついて、頭を思いっきりプロデューサーさんの胸にこすりつけたいけど、そんなことできるはずないよー!!)

武内P「島村さんがなぜ、城ヶ崎さんのマネをしようとするのかはわかりませんが、城ヶ崎さんよりお姉さんなのですから……」

卯月「で、でも! 私はプロデューサーさんのお気に入りなんですよね? ヒイキにして欲しいとは思いませんし、プロデューサーさんにそんな悲しいことさせるわけにはいきませんけど……莉嘉ちゃんならいいって、莉嘉ちゃんをヒイキにしているじゃないですか!」

武内P「……城ヶ崎さんならいいというわけではなく、先ほどの件は不意を打たれたからです」

卯月「不意を……」ガタッ

武内P「待ってください。不意を打てば許すとは言ってません」

卯月「でも凛ちゃんや蘭子ちゃんが好きな漫画だと、師匠の不意を打つのが修行の一環にあったりしますよ」

武内P「私は島村さんの師匠ではありませんし、島村さんも武人を目指していませんよね?」

卯月「でも――プロデューサーさんのお気に入りではありますよね?」

武内P「それは……」

卯月「それとも――私よりも莉嘉ちゃんの方がお気に入りなんですか?」

武内P「城ヶ崎さんはまだ子どもなんです」

卯月「私だってまだ子どもですよ。莉嘉ちゃんみたいにプロデューサーさんに甘えてみたいんです」

武内P「……島村さんは確かにまだ未成年で、年上に甘えたいこともあると思います。ですがその場合、私の方に問題が起きるので」

卯月「問題?」

武内P「島村さんはまだ未成年ですが……大人の女性と、変わらない部分もあるからです」

卯月「え…………………………ええええええええええぇぇぇ!!?」

武内P「そういうわけで、申し訳ありませんが……」

卯月「え……でもプロデューサーさんの周りには、ちひろさんや楓さんみたいにキレイな大人の女性が多いじゃないですか。それに比べたら私は子どもだから、大丈夫――」

武内P「大丈夫なわけが、ありません」

卯月「そ、そうなんですか」

武内P「そうなんです」

卯月(抱きついちゃダメなのは悲しいけど……プロデューサさんは、私をちゃんと女性として見てくれているってことなら)

卯月「えへへ♪」

武内P(……なぜ喜ぶのでしょうか?」





自称普通のバスト
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※ ※ ※



――翌日



武内P(今日は島村さんと神崎さんが同じテレビ局で、それぞれ別の番組の収録をしています)

武内P(収録が終わる時間がだいだい同じ予定なので、他の346所属のアイドルも含めて迎えに行ったのですが――)

武内P「これは……いったい」

小梅「あ、プロデューサさん……。迎えに来てくれたんだ。ありがとう……♪」ナデナデ

武内P「お疲れさまでした白坂さん。あの、これは? だいだい想像はつくのですが……」

小梅「うん……きっと、プロデューサーさんの想像どおり……だと思うよ」ナデナデ

小梅「よしよし。二人とも……プロデューサーさんが、迎えに来てくれたよ」ナデナデ

蘭子「ぴぃ……ぴぃ……ぴぃ……」ガクガクガク

幸子「カワイイ……ボクはカワイイ……カワイイからへいきへっちゃら……覚悟したから」ホワァン

武内P(ホラー番組特集への出演。白坂さんが大丈夫であることはわかっていましたが、残る二人の反応は予想以上ですね)

武内P「神崎さん、輿水さん。二人とも大丈夫ですか? 何か飲み物を持ってきましょうか?」

蘭子「ぴぃ……ぴぃ……わが、とも?」

幸子「たとえ命枯れても……ボクカワイイ……プロデューサー、さん?」


ガバッ!!


蘭子「わがともー! わがともぉー! わがともおぉー! ちどいですよおおおぉ! わた、わたし怖くって怖くって……ヒック」ギュウウウウッ

幸子「ぼ、ボクは絶叫系もドッキリもサバイバルも大丈夫ですけど、こういうのはダメって知ってましたよね!? 言ってましたよね!? カワイイ子をイジメたいにもほどがありますよね!?」ギュウウウウッ

小梅「……」ジーッ

武内P「その……申し訳ありませんでした。白坂さんと仲が良い同年代を用意して欲しいと――白坂さん?」

小梅「……怖かった」ギュウウウウッ

武内P「え?」

小梅「私も怖かったから……慰めて」

武内P「は、はあ」

蘭子「わがともぉ……」

幸子「ボクがいいって言うまで……ちゃんとかわいがってください」

小梅「プロデューサーさん……」ウットリ

武内P(ここは二人が落ち着くまで待つしかありませんね。とはいえ――」


ムニュウ、サワサワ、サスリサスリ――


武内P(あまり体を押し付けないでほしいのですが。それと心なしか、白坂さんの手つきが妙な動きをしているような)

武内P(こんなところを誰かに見られたら誤解を――)


ガチャ


卯月「すみませーん。遅くなりまし――」

友紀「幸子ちゃーん。お姉ちゃんが迎えに――」

武うづ「」

友紀「なんだこれは……たまげたなあ」

武内P「ご、誤解です! これは――」

友紀「どうせホラー番組の出演で怯えた二人にしがみつかれて、どさぐさにまぎれて小梅ちゃんにも抱き着かれたんでしょ?」

武内P「……その通りです。理解していただけで何よりです」

友紀「でも許さん」

武内P「!!?」

友紀「幸子ちゃん怖がりながらお姉ちゃんを待っているだろうなあ、今日はたっぷりかわいがろうなあと思いながら急いで来たのにそれを奪うだなんて! 幸子ちゃんを返して! どすこいと一岡君と大田君も返して!」

武内P「あの……輿水さん。姫川さんが迎えにきてくれたので――」

幸子「ダメです。まだかわいがりが足りません」

卯月「……」ジーッ

友紀「ほら見なよ卯月ちゃん。CPのプロデューサーってば、幸子ちゃんの幸子ちゃんを堪能してるよ。ちなC(カップ)」

幸子「なっ……何を言い出すんですか友紀さんは!?」ガバッ

友紀「あ、離れた。残留宣言はもういいの?」

幸子「KBYDの収録がまだありますからね。ほら、ボクが離れたんですから二人も離れてください!」

蘭子「……よかろう、我が魔翌力も満たされた。我が友よ、今こそ凱旋の時!(うーん、落ち着いたからいいですよ。プロデューサー、帰りましょう!)」

小梅「ちぇ……」

卯月「……」ジーッ





武内P(あれから輿水さんは姫川さんと収録に向かい、私は本日の仕事を終えた神崎さんと白坂を寮に送りました)

武内P(その後、CPルームに島村さんと一緒に戻ったのですが――)





卯月「……」ジーッ

武内P(テレビ局からずっと、島村さんが無言で私を非難がましい目で見ているのです)

武内P「あの……」

卯月「莉嘉ちゃんだけじゃなく、蘭子ちゃんと小梅ちゃん、幸子ちゃんも抱きついていいんですね」

武内P「たいへん怯えていたので、仕方なく。それに皆さんまだ子どもですから」

卯月「幸子ちゃん。Cカップだそうですね」

武内P「……ッ」

卯月「蘭子ちゃんにいたっては、お気に入りだったCカップのブラジャーが合わなくなったって、落ち込んでました」

武内P「~~~~~っっっ」

卯月「それに小梅ちゃんは、全然怖がってなかったですよね。抱き着いている間も、プロデューサーさんの体を確かめるように指でなぞってました」

武内P「」

卯月「皆はいいのに……私は、私だけは……抱きついたらいけないんですね」グス

武内P「ま、待ってください! 誤解です!」

卯月「私は……プロデューサーさんのお気に入りじゃなくて……むしろ――」

武内P「!!?」

武内P(このまま言わせてしまってはいけない。私の頭にはそれしかありませんでした)

武内P(そして取り繕った言葉では島村さんを止めることはできないと直感した私は、とっさに彼女の肩に手を乗せ――)





武内P「私にとって貴方は、特別な存在です」





卯月「――ッ!?」

武内P「貴方に誤解を与えてしまったことは、申し訳ないと思います」

武内P「情けないとは思いますが、これからも島村さんに誤解を与えるような形で他のアイドルと接することになると思います。ですがそれは……島村さんとは違う対応になるのは私の個人的感情ではなく、一人一人と向き合った結果です。平等であろうとすることと、対応が全員同じであることは違うからです」

武内P「言い訳がましいことを言ってしまいましたが、これだけは覚えていてください」

武内P「私にとって貴方は、特別であるということを」

卯月「……本当ですか?」

武内P「本当です」

卯月「信じて……いいですか?」

武内P「信じてください」

卯月「――はい。信じます♪」

武内P「……良かった」

卯月「ご、ごめんなさいプロデューサーさん。莉嘉ちゃんはドアを急に開けてから飛びついてきたんだし、蘭子ちゃんも幸子ちゃんも本当に怖がっていたから仕方が無いことはわかってはいたんです。でも……私はダメなのにって思うと、何だか胸がモヤモヤしちゃったんです」

武内P「島村さん……」

卯月「でも、もう大丈夫です。プロデューサーさんはどんな時でも私の味方で、頼っていい人だってわかっています。そ、そして――」


ガチャ


凛「お疲れ様ー」

未央「今戻ったよん♪」

卯月「――私が特別な人だって」

武内P「あ」

卯月「プロデューサーさん? どうしまし――あ」

りんみお「」

武うづ「」

武内P(私の両手は、島村さんの両肩に乗せたままでした。その状態での島村さんの今の言葉)

武内P(誤解と言って信じてもらえないのも当然で、一から事情を離した結果――)

――

――――

――――――――



武内P「……もちろん、渋谷さんも私にとって特別な存在です」

凛「ふーん。まあわかってはいたけどね。スカウトの時の入れ込みようったらすごかったし、『私は貴方のプロデューサーですから』……だもんね?」

武内P(こうして正座をさせられて、皆さんが特別なアイドルであることを弁明しています)

未央「え、なにその話? 未央ちゃん知らないよ!」

凛「ん、まあね。でも未央なら切り札の一つや二つ、持ってるでしょ」

未央「……私の心境のように雨が降り注ぐなか、プロデューサーは私の目を見つめながら『私は……このまま貴方(たち)を失うわけにはいきません』って。キャッ♪」

武内P「」

凛「やるじゃん。さすがは未央」

未央「フフ―ン。たとえ相手がしぶりんでやしまむーでも、そう簡単には負けないよ。プロデューサーは未央ちゃんが守護る!」


<二人とも~。後がつかえているから、終わったら横に行ってよー


ワイワイ、ガヤガヤ


凛「……後ろに並んでいたことには気づいていたけど、こうして振り返ってみるとけっこうな数だね」

武内P(おそらく私が二人に必死で弁明している姿を、CPルームに用事があった人が見てしまったのでしょう。私はもちろん、渋谷さんと本田さん、それに島村さんもそこに注意を払う余裕など無く、その人は目の前で起きていることを面白おかしく周りに広めてしまったようで――)





李衣菜『そんでねー! プロデューサーがあのでっかい体を恐縮させてたせいか、それとも凛ちゃんが蒼いオーラをまとってたからかわかんないけど、もう凛ちゃんの方が大きく見えてね! 隣にいる未央ちゃんも口は笑ってるけど目は全然笑ってなくて、卯月ちゃんがアタフタしながら助けるけどそれがかえって二人を煽ってしまったみたいなの。それを見て、ああ、これが修羅場ってやつなんだ。初めて見たけど――ロックじゃんって』

みく『ごめんなさいPチャン。このアホはみくがしめとくから』

李衣菜『なっ――アホって何さ!? だいたいしめるって、猫キャラのくせに魚も締められないみくが偉そうに!』

みく『アホかオマエは!? 魚を締められる女子高生なんてそうそういないにゃ! 育ちの良い家庭的な女の子キャラっていう、ロックと真逆な方向にどんだけ突き進めば気が済むの!? このキュートアイドルが!!』

李衣菜『なにを~!?』

『む~~~、解散だ(にゃ)!!!』

武内P(話を大きく広げてしまった犯人は、前川さんに引きずられていきました。今ごろ再結成をしている頃でしょう)

武内P(それにしても……)チラ

フレデリカ「ねえねえ聞いたシューコちゃん。ここに並んでいたら、お兄ちゃんが告白してくれるんだってー」

周子「それはそれは。こんな大勢の前で複数に本命宣言をするだなんて、兄君さまってばエローイ」

フレデリカ「わ~、エローイ」

武内P(面白半分で並んでいる人もいる一方で――)

アナスタシア「ニェーット……」

智絵里「大丈夫……プロデューサーさんは見捨てたりしない……プロデューサーさんは、そんなことしない」

武内P(なぜでしょう。普段はそんなことは絶対に無いのに、今は目が合わさるだけで背筋が凍るのは)

卯月「プロデューサーさん」

武内P「島村さん……」

卯月「だ、大丈夫です。私はその……こういう修羅場みたいな空気は苦手ですけど、がんばって味方します」

卯月「だって私は――」





卯月「プロデューサーさんの、お気に入りですから♪」





~おしまい~

最後まで読んでいただきありがとうございました

しまむーは(無自覚)魔性の女
多分クラスの男子にちゃんみおと同じぐらい思わせぶりな態度をとっていると思います、はい

今回久しぶりにしまむーを書きましたが、ご理解しなければしまむーを書くつもりはありませんでした
というのも一年ほど前から「なぜ俺は大天使しまむーにへそ下辺りがむずがゆいなんて言わせたんだ……?」と悩んでいるからです

試しにしまむーを普通に書いてみた【武内P「私の愛が重い?」】はなかなか良い出来だったので悩みは深まり、答えがでるまでしまむーは書かないと決めていたのですが、今回はご理解してしまったので例外です

これまでのおきてがみ(黒歴史)デース!


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しまむーは暗黒軍の軍師だからちかたがない

やっぱりあんたか!

ごめん細かいかもだけど
李衣菜はみくのこと「みくちゃん」って呼ぶからね

>>16
その気持ち悪い下書きをやめればもっとマシになるよお前は

今回もいいね
武うづ自体は意外にも正統派で驚いた

>>21
やだなあ、ニコニコ大百科のシンデレラガールズ呼称表で確認しながら書いてるからそんなミスするわけ――

<前川みく → みく、みくちゃん

……どうやら途中から変わって、アニメ時点では「みくちゃん」みたいですね
ご指摘ありがとうございます

シンフォギア好きな割にはシンフォギアとのクロス見たことないな

>>22
君は「下書き」って言葉を辞書で引いてから書き込もうね 恥ずかしいから

全員揃ってよかったね(目を逸らしつつ)
ところでへそ下うずいてないけど

おつおつ

こっちだと反応がダイレクトにくるよね
もちろんむこうでも即フォローしたけどさ

武うづはよい

へそしたは事故の産物だったか、通りで最近出番が少ないと思った
それはそれとして、しまむーは再起のきっかけにもなってるだろうし特別であるのは間違いなさそう

杏とか美波とか書くと言っていたSSはいつ投下されるのか楽しみです

へそした卯月に惹かれた人間だからそう思ってることにショック

今回の覚醒後卯月はご理解するのも止むやし

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