「冨岡さん、私と……一日だけ夫婦になってくれませんか?」
水柱たる冨岡義勇は、蝶屋敷の一室に呼ばれた。
雪の降る中、鬼狩りに向かう前日だった。
まだ少女の面影が色濃く残っている落ち着いた乙女の名は胡蝶しのぶ。
この蝶屋敷の女主人である。
「……。どうして、俺を選んだ?」
頬を赤らめたしのぶは、やや視線を逸らして応えた。
「……。冨岡さんは不器用ですから。浮いた話一つありませんし
その分だとお嫁さんも中々捕まらないでしょう?」
義勇は、じっとしのぶを見つめた。
復讐の炎に若い身を焦がし、恋も知らないこの乙女が貞操を捧げるという。
それも、亡き姉の願いに僅かながらに応えたい真摯な想いから。
「いずれ私は、鬼を道連れにして死ぬ女です。
ふしだらな申し出なのは承知の上、冨岡さんとの関係は誰にも口外致しません。
手向けとして彼岸まで携えて行きます」
# # #
「上弦の鬼を倒す話です」彼女の可憐な唇が開いた「正確には、姉を殺した鬼、ですが……」
蝶屋敷の応接間に招かれた義勇は、差し出された茶を飲みながら粛々と聞いていた。
しかし、抑揚のない彼女の話し方とは裏腹にその奇策は凄まじいものだった。
「花毒を摂取し自らの肉体そのものを毒に変え
わざと鬼に喰われる……その案を御館様はご存知なのか」
「いえ、まだ御館様にも継子にも話していません。打ち明けたのは冨岡さんだけです」
喉が無性にひりついていた。義勇は出された茶をいつの間にか飲み干してしまっていた。
「……。胡蝶、安易に命を投げるな」
義勇は言った。
「姉を殺された辛さは分かる。仇の鬼の討伐に命を睹すほどの覚悟も、だ。
だが、柱としての責務を忘れるな。
後方支援で鬼狩りに貢献する事も立派な職務だ」
実際、対鬼の毒に関してノウハウのある胡蝶しのぶは薬にも精通していた。
蝶屋敷は救護部隊として鬼狩りに出る者たちには
欠かす事の出来ない存在であり、救われた命も多い。
彼女を失う事は今の鬼殺隊にとっても痛手なのだ。
義勇は説得に努めたが、彼女の決意は固かった。
あの鬼だけはどうしても自身が討たなければという執念が彼女を支配していた。
「……一つだけ約束してほしい。俺たちは仲間だ、決して一人で突っ走るな」
「はい」
その時向けた彼女の笑みはどこか寂しく儚げだった。
「……それで、俺を呼んだ訳は?
まさか服毒の手伝いをさせるためでもないだろう」
「……」
しのぶは心なしか顔をうつむかせ、言い出しかねているようだった。
「逝く間際に姉に言われました……鬼殺隊を辞めるようにと。
私に剣士の素質がないという事だと思いますが」
「……」
「それに、……姉は普通の女の子として私に生きてほしいと思っていたんです。
私が、屋敷の女の子たちに思っているように……
姉の遺志に逆らったまま死地に赴く、これが私の大きな心残りです。
普通の女の子としての幸せを一日だけでも感じられたら
姉への免罪符代わりになるのではないかと……」
冒頭の彼女の申し出を、結局義勇は受け入れた。
それが志半ばに散った彼女の姉、そして覚悟を決めた若い同僚に対する情というものだ。
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しかし、思うように時間は取れなかった。
本当の恋人のように気の利いた小旅行の一つでも計画出来たら良かったのだが
生憎鬼殺隊の任務は二人にそれを許さない。
結局ある日の夕刻から明け方までの半日を使う事で妥協した。
場所は蝶屋敷だが、間の悪い事にその日は負傷者が多く
本来女主人が寝所に使う場所を開放して患者を寝かせた。
……逢引の場所は風呂場しか残されていなかった。
屋敷には大勢が入れる大きな檜風呂があり、男は女よりも後に入るしきたりがある。
義勇は誰もいなくなった湯船に一人で浸かり、しのぶが現れるまで天井の木目を見ていた。
「失礼します」
静かに脱衣場への戸が開き、しのぶが入ってきた。
その華奢な身には薄布一枚纏っているのみだ。
白磁にも似たすべらかで美しい白肌からは、乙女の薫りがそれこそ花のように発していた。
義勇はしのぶをじっと見つめた。
死地に向かう前の、一晩のみの慰めに抱く女をその瞳に刻み込む。
そこに在る、儚くも気高い美貌は男を見惚れさせるのに充分だった。
「ふふ……のぼせてませんか?」
しのぶはそう言いつつ、身を纏っていた布を畳み、湯べりに置いた。
手に収まるかどうかという大きさの乳房は品の良い形をしていて、良家の子女に相応しかった。
贅肉の見当たらない細腰の下には、逆三角に生え揃った柔らかい春草が慎ましく乙女を隠している。
肩から桶の湯が袈裟がけに流れ落ちていく様は、彼女の持つ瑞々しい美しさを一層引き立たせた。
「……冨岡さん、あまり見つめないで下さい」
胸乳を軽く押さえたしのぶは、羞恥に頬を染めた。
その様子は普段の大人びた彼女からすると、年相応に愛らしかった。
しのぶが湯に半身を浸すと、そのまま義勇の隣に座って寄り添った。
「……本当に良いのか?」
「今更ですよ、冨岡さん。良くなければ、貴方にこの体を晒してません」
しのぶはコロコロと笑いながらつんつんと義勇のそそり立つ肉刀を興味ありげにつついた。
少女は恐れと好奇の入り交じった瞳でそれを見つめる。
触るなとも言えず、義勇はしのぶの好奇な指遊びに身を任せていた。
「……結構、大きいですね……」
しのぶの細指が一本また一本と義勇のものに絡み付き、最後には掌全体で雄を包み込んだ。
掌に痕が付くかと思うくらいに、それはビクンビクンと幾度も脈動し、硬く膨れて反り返る。
その肉欲に押し切られるように、義勇は無言でしのぶの肩を抱き寄せて唇を奪った。
彼女の全身から立ち込める花香が彼の鼻腔をしきりにくすぐってくる。
果肉にも似た甘く柔らかな唇を愛しく吸っているうちに
どちらからともなく相手の口へとに舌を滑り込ませた。
二人は夫婦のように互いの舌を絡ませ、じんとした優しい痺れを感じていた。
「あはぁ……」
義勇の口づけがしのぶの唇から首筋に、首筋から胸に降りていく。
大きく稔った乳瓜を掌に乗せて可憐な尖端を赤子のように吸った。
男に乳を委ねていると、しのぶは体の奥から優しい気持ちがじんと溢れていくのを感じた。
舌は蝸牛のようにゆっくりと乳下からヘソに、ヘソから下腹へと降っていく。
「あっ……」
綺麗に整った春丘に義勇の口づけが訪れた。
誰にも嗅がせた事のない卑香が、彼の鼻孔に潜り込んでいく。
閉じていた両脚を無理やり開くと、彼女は真っ赤になった顔を両手で隠した。
しかし、彼の前には未踏の花丘が惜しげなく晒されていた。
「あっ……んっ……冨岡さぁんっ……」
猫が皿の水を飲むような音が、ピチャッピチャッ、と、風呂の中に反響する。
優しく淫らな感触が最も敏感な箇所を何度も舐め回して来るのをしのぶは感じていた。
ほどよく肉のついた両股に義勇の頭を挟んで、舌が踊る度に
熱い吐息を漏らし、時に可愛い喘ぎも添えた。
「はぁぁ……、冨岡さん……だめぇ……」
彼の口で一度昇ったしのぶは、四肢の力を解き、石畳の上に背中を預けてとろけ切った。
彼女は義勇の顔を下から見上げた。
いつもと同じ、感激も感動も見当たらない無表情な彼の顔があった。
しのぶは少し不満げに目を反らした。
自分が恥ずかしい場所をさらけ出して、しかも心地良くなったと言うのに
相手にさしたる感動が見えないのは不公平に思えた。
仮初めの夫婦と言えども、彼女はこの時
自分を悦ばせた冨岡義勇という異性に胸を騒がせていたのだ。
そんな悔しさからだろうか、彼女は大胆にも義勇の前で自らの美しい花弁を左右に開いて見せた。
朝霧に舞う桜色の蝶とでも形容すべきそこは、たっぷりと男の愛撫を受けて良い具合に解れていた。
「優しく、してくださいよ……?」
義勇はパンパンに膨れた尖端を花門に潜らせ、前方に腰を落とした。
「っ……あはぁぁ……ッッ……!」
秘めていた乙女の薄膜がこの時初めて悲鳴を上げた。
義勇はしのぶの柔尻を下から掬い上げつつ、ゆっくりと根元まで己を挿し入れた。
「入ったぞ……」
小さく鋭い破瓜痛と慣れぬ異物感を抱えて戸惑うしのぶに、義勇は囁いた。
腰に力を込めて彼が少し引くと、ゾクゾクとする肉の擦れが彼女の体に起こった。
彼はそのまま彼女の華奢な体を抱き締め
覆い被さりながら、肉欲の塊をしきりに抜挿し始めた。
苦痛の色を呈していた彼女の喘ぎは、やがて徐々に女悦のそれに代わっていった。
どんな乙女であろうとも男の芯に一度貫かれていれば
やがてそのカラダは牝色を纏っていくものらしい。
「あっ……、んうっ、……冨岡さんっ……!」
風呂の中でしきりに響く交音に、たっぷりとふしだらな露がまぶされていく。
しのぶの発する蠱惑的な花香に当てられた義勇は
義理という感情も理性も忘れて熱い痴情をひたすら少女の体に打ち込む。
まだ早いさえ思われた乙女の花園は
逞しい雄の熱気に当てられて、みるみるうちに大人の様子を見せ始めていった。
「冨岡さん……っ、あんっ……、冨岡さん……っ!」
切なさを胸に込めたしのぶは、義勇の腰にその細脚を絡み付けた。
狭い乙女の隘路は彼のを咥え込んだまましきりに吸い付いた。
義勇は歯を食い縛って更に数合しのぶの花穴を攻め立てたが
やがて天井を見つめて背を反らし、濃種を捧げた。
繋がった箇所から溢れるように流れていく魂の奔流を感じながら
しのぶは目尻に快涙を光らせる。
義勇の雄はビクビクと強かに律動し、なお熱い精を注ぎ込んでいた。
# # #
「ハァッ……ハァッ……冨岡さん……?」
しのぶは初めて昇りつめた余韻に浸っていた。
彼女の体奥では義勇のそれがまだ幾分かの残精を流し入れている。
それが終わらないうちに、彼は彼女の腰を自らの腰上に抱き寄せた。
図らずも四つん這いになり、丁度正座している彼の腿の上に彼女は尻を置く姿勢で繋がった。
「冨岡さん……、あのっ、もう……」
義勇はそれに応えず、すべすべとしたしのぶの白尻を下腹に抱え寄せた。
硬度の衰えぬ雄はまたもや深くその身を彼女の肉の祠に隠した。
「あん……っ! あっ……! やん……っ!」
リズミカルに義勇の腿上でしのぶの花尻は音を弾ませる。
秘めた菊蕾を男に覗かれながら犯される自分に、彼女は耳朶まで赤くした。
しかし、それとは裏腹に結合部は一層蜜露を溢れさせて感じ入っている。
最早最初に合った破瓜痛は蜜波の彼方へと散り失せていた。
その代わりに訪れた甘く切ない痴悦の温もりが、彼女の肢体を淫らに騒がせている。
「ああ……冨岡さん、私……っ!」
義勇はいつしかしのぶの両手を逆手に取っていた。
両手を繋がれた彼女は丁度手綱を結ばれた馬のようだった。
美しく可憐な愛馬は、無意識に自らの牝尻を
男の腰上で激しく上下に弾ませて、あの熱い種を求めていた。
義勇はやや腰を浮かせて、しのぶを攻め立てた。
体勢を崩した彼女は、すがるように雄芯に貫かれた花穴をすぼませた。
きゅううと締まったその穴に彼は鍛え上げた足腰で数十合の強かな痴挿を浴びせ続けた。
バランスと、幾度も貫いてくる花穴の妙悦に気を奪われ
彼女はされるがままに高い声を風呂中に響かせた。
「あはぁ……っ、やぁんっ……! いくぅ……いくのぉ……っ!」
先程よりも大きく力強い牝悦がしのぶの全身を駆け巡り、充たしていった。
それと同時に、義勇も彼女の肉奥へと熱い蜜酒を惜しげもなく注ぎ込む。
病みつきになる肉塊のリズムに刻まれながら、彼女の熱い奥底にまた戦友の子種が宿っていった。
「胡蝶……」
義勇はなおもしのぶを離そうとはしなかった。
覚悟を決めた戦乙女への厚い手向けか、それとも情欲に耽り
ただただ牝として彼女を好ましいと思っただけか、あるいはその両方か。
義勇は四つん這いになった彼女の肢体に覆い被さり、激しく雄芯を前後させ、美しい花弁を蹂躙した。
「やぁっ……だめですよぉ……! こんな、犬のような格好で……っ!」
背中に密着した義勇の逞しい胸板から彼の熱い鼓動が響き伝わる。
それに呼応するかのようにしのぶの心鼓も高鳴った。
彼女の麗乳は彼の手によって淫らに形を歪ませている。
誰もいない風呂の中で夫婦は一対の獣と化して深く交わり合った。
互いが互いの肉に宿る痴悦を嬲り、禽獣のように貪り合う。
「だめぇ……! あ……赤ちゃん……っ、欲しくなっちゃいますっ……!」
脳髄が蕩けそうなほどに甘い声色をしのぶは漏らした。
今の彼女は鬼殺隊の蟲柱ではなく、一人の乙女になっていた。
恋を知らずに男と交わり、仮初めの夫婦となって種を求める乙女に。
「……んぁ……! 深いぃ……!」
義勇は正座をして、しのぶの上体をそのまま引き寄せた。
雄芯の通ったまま、しのぶは義勇の脚に稚児のように腰を落とした。
「今俺たちは夫婦だ、胡蝶」義勇が抑揚のない声で囁いた「水柱・冨岡義勇の子を孕め」
それだけ言い終えると、石畳の上に彼はしのぶを横に寝かせた。
華奢で軽い彼女の右脚を盛り上がった肩に担いで、彼は再び攻め始めた。
一層深く激しく蕩けた箇所を突き攻めてくる男のそれに
可憐な乙女の情炎は大海の浮かんだ笹舟のように翻弄され続ける。
戦乙女の踝や踵に優しく口づけしながら、義勇はこの時
己の種を恋しがる彼女を心の底から愛した。
自らもそう演じているのか、それとも本気で思っているのか。
その真相は風呂に満ちた湯気の中に溶けてしまっている。
既に二度雄酒で満たされた花壺は、やらしく雄に吸い付き
内へと引き寄せ、離すまいとすがり付く。
「胡蝶……俺の手向けを受け取れ……!」
「ああ……! 来てぇ……冨岡さん……! 貴方の熱いの、私に沢山下さい……っ!」
全身を火照らせた二人は互いの体に溶けていくような錯覚に包まれた。
やがて幾筋もの閃光が二人の脳裡に瞬き、甘い痙攣をもたらす。
それと共に、重く深い痺れと夥しい白濁がしのぶの内を逆流し、再び熱く満たしていった。
「ああ……ありがとぉ……」
しのぶは夢見心地の中で、操を捧げた男に感謝した。
義勇は物も言わずに勢いの落ち着いた雄芯を引き抜いた。
石畳の上に伸びたしのぶは、四肢を擲って白い泥のように微睡んでいる。
蹂躙された花孔はすっかり牝の表情を覚え、注ぎ込まれた雄の白蜜を
とろとろと溢しながらなおも欲しがるようにひくついていた。
歓びの色を纏った彼女の涙が二筋、光った。
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あの初夜以降、胡蝶しのぶは決して冨岡義勇と同衾しようとはしなかった。
翌朝から二人は何事もなかったかのように、また職務たる鬼狩りに精を出した。
彼女が孕んだという噂は全く鬼殺隊に聞かなかった。
恐らく服用を始めた藤毒によって、胎児はすぐ流れてしまったのだろう。
那田蜘蛛山で竈門兄妹を守った際、鬼を憎しと
禰豆子をも殺そうとするしのぶを彼は押さえつけた。
その時点で驚くほど彼女の力は衰えていた。
もう全身にあの花毒が回っていたに違いない。
彼女の体から馥郁と薫る藤香も、日増しに濃くなっていった。
# # #
せわしく変化を続ける屋敷の中で、鎹鴉が悲報と共に隊士たちの頭上を飛んでいく。
胡蝶しのぶの死亡……それは予期されていた末路だった。
冨岡義勇は眉一つ動かさず前進した。
しのぶならきっと死して道を開き、必ず鬼に一矢報いてくれるに違いない
そう信じて屍の向こうにいる鬼を目指して進んだ。
――あの時に嗅いだ彼女の豊かな花の薫りを、想い出しながら。
以上です
乙
こういうのでいいんだよこういうので
乙い
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