【安価でのわゆ】久遠陽乃は勇者である【1頁目】 (1000)

このスレは安価で

乃木若葉の章
鷲尾須美の章
結城友奈の章
  楠芽吹の章
―勇者の章―

を遊ぶゲーム形式なスレです

目標

生き抜くこと。


安価

・コンマと選択肢を組み合わせた選択肢制
・選択肢に関しては、単発・連取(選択肢安価を2連続)は禁止
・投下開始から30分ほどは単発云々は気にせず進行
・判定に関しては、常に単発云々は気にしない
・イベント判定の場合は、当たったキャラからの交流
・交流キャラを選択した場合は、自分からの交流となります

日数
一ヶ月=2週間で進めていきます
【平日5日、休日2日の週7日】×2
期間は【2018/07/30~2019/08/14】※増減有

戦闘の計算
格闘ダメージ:格闘技量+技威力+コンマ-相手の防御力
射撃ダメージ:射撃技量+技威力+コンマ-相手の防御力
回避率:自分の回避-相手の命中。相手の命中率を回避が超えていれば回避率75%
命中率:自分の命中-相手の回避。相手の回避率を命中が超えていれば命中率100%
※ストーリーによってはHP0で死にます

wiki→【http://www46.atwiki.jp/anka_yuyuyu/】  不定期更新 ※前周はこちらに

立て乙


√2015年07月30日 夜 学校


とても大きな地震が各地を揺るがした。

それはまるで今までの日常と交代したかのように、断続的に続く。

友人の一人は「揺れて怖かったね~」と、にこやかに言う。

知人の一人は「世界の終わりかもね」と、冗談めかして言う。

日本にとって、地震はある意味では死よりも近しい存在であると誰かが言っていた。

だからというわけではないけれど【どうせ大丈夫だろう】という考えが、

子供達にはあったのかもしれない

けれど、陽乃はどうしても不安だった。

確かに、まだ小学生の私でさえ数回経験するほどに日本には地震が多い

でも、いつものように治まってくれる。とてもそうは思えなかった

陽乃「……星が、見える」

「陽乃ちゃん?」

陽乃「見えない? 沢山の星が、少しずつ少しずつ」

「え~?」

避難所になっている学校の校庭、

暇を持て余している子供たちがまばらにいる中で、隣にいたクラスメイトの子が首をかしげる


「星なんて、全然見えないよ?」

陽乃「そう?」

「気のせいじゃないの?」

陽乃「そう……なのかな」

陽乃はそれを完全に否定せずに、目を細める

見えないというのだから見えていないのだろう

少しずつ大きくなっているようにも見える、無数の星が。

久遠家は、古くからの巫女の家系であり、

とりわけ、陽乃には幼少期からみんなには感じ取ることのできない何かを感じ取れる力があった。

幽霊が見えるとか超能力が使えるなんていうものではなく、

ある種の直感めいたものだ

その予感は、よくよく当たる

良いことも悪いことも当たってしまうので、

今はそれを口にするべきではないのではないかと、陽乃は眉を顰めた


陽乃「……」

何かが来る。

それは、ただの予感だ。

空に見える星々が、少しずつ近づいてきているように見えるのも、錯覚なはずだ

そうでなければいけない

そうでなければ――と、陽乃が考えを改めようとしたときだった。

陽乃「っ…・…」

「陽乃ちゃん?」

陽乃「……大丈夫」

陽乃……と、どこからともなく呼ばれた気がして辺りを見渡す。

母親の声ではなかったけれど、

不確かではあるけれど

聞き覚えがあるようにも思える――声。

「……あっ、流れ星」

陽乃「え?」

陽乃には相も変わらず見えている星が輝く空を指さして、校庭に出ていた子供たちが騒がしくなる。

星のなかった空に、現れた星

だからこそ流れ星だと評したのだろう。

嫌な予感が強くなる。


1、校舎の中に戻るように呼び掛ける
2、クラスメイトにみんなを屋内に避難させるよう言って、声のする方に向かう
3、大人を探して、校舎に戻るようお願いする
4、声のする方に向かう


↓2

この時間は下1で良いのでは?
ksk

2


では本日はここまでとさせていただきます
明日はできれば早い時間から


なんかわすゆ時代の二次創作って見たことないからドキドキしてきた
どうしてもバッドエンドに寄りがちだよね


ついに始まった謎の多い陽乃さん編
世界は救えなくともせめて全員生存は目指したいところだな

あと上でも言われてたけど時間帯によっては下1~2を変えた方がいいかも


では少しずつ

やったぜ


陽乃「お願い……今外に出ている人みんなを校舎に戻して」

「陽乃ちゃん?」

陽乃「お願い……嫌な予感がする」

「嫌な予感って」

クラスメイトは半信半疑な様子で陽乃を見る。

小学生である陽乃の級友の男子生徒にも、時々意味深なことを言う子がいる

それはアニメか漫画かそれ以外の何かに影響されていて

その言葉通りに何かが起こるわけでもない。

陽乃「私はいかないといけないところがあるから、代わりにお願い」

「そう言われても……」

流れ星の賑わいは広がっていっていて

陽乃のお願いに反して、

校舎の中に戻るどころか校舎から出てくる人がだんだんと増えていく


陽乃「お願いみんなを校舎に避難させてっ」

隣にいる少女だけでなく、

周りにいるクラスメイト達に聞こえるように声を上げる

陽乃一人で奔走しても、きっと間に合わない

急がないといけないといけないのに、嫌な予感がする

ただそれだけしか言えないのが辛い

陽乃は歯を食いしばって、激しく高鳴る胸に手をあてがう

みんな流れ星に夢中で、

陽乃が不安を感じているのを覆い隠してしまうかのように、

笑い声まで聞こえてくる

「陽乃ちゃん、大丈夫?」

陽乃「危ないの……本当に危ないんだよ……」


↓1コンマ判定 一桁

0 00 失敗
1~5 成功
6~9 ぞろ目 大成功


「大丈夫だよ~陽乃ちゃん。すぐに地震も治まるって」

陽乃「そういうわけじゃ――」

否定しようとした瞬間――大きく地面が揺れた。

校舎に出ていた子供たちの悲鳴が上がる。

「きゃぁっ」

立っていられないほどの揺れは、今までで一番大きかったかもしれない。

陽乃はその場に膝をついていつでも走り出せるようにと身構える

陽乃「だめ……」

十数秒も続いた揺れが収まるのと同時に、

陽乃は空を見上げると、強く歯噛みする

――間に合わなかった。

信じて貰えるほどの説得力を持たせられなかったのがいけない。

クラスメイトではなく、大人に言えば変わっただろうか

初めから自分で走り回れば変わっただろうか

陽乃「逃げてーっ!」

陽乃は次第に近づきつつある星々から周りへと目を向けて、叫ぶ


「は、陽乃ちゃん……っ」

陽乃「早く立ってっ!」

隣で尻もちをついてしまっていたクラスメイトに手を差し出して、引っ張り立たせる

地震が起きたばかりで、狼狽えてしまっているみんなは、

陽乃の懸命な叫びにはっとして周りを見たが、そうではない

もう遅い、もう間に合わない

何かが来る

陽乃「校舎の中に走って……絶対に振り返らずに」

「でも、陽乃ちゃん……っ」

陽乃「良いから、早く!」

地震で倒れこんでしまった人たちの瞳には、きっとそれが見えたのだ

そして、気付いたのだ

空に見えていた流れ星が、決して星などではなかったことに

願えば叶えてくれるかもしれないなんてロマンチックなものではないことに

「ごめんなさいっ」

陽乃「急いでッ!」

――やがて、それらは降る


星のように輝いて見えた体は人など押しつぶせてしまうほどに巨大で、

不気味なほどに白々としている

やや球体めいた体つきにはクラゲの足のようなものが垂れ下がっていて、

白さを際立たせる悍ましい口のような器官が、真っ逆さまに落ちてくる

陽乃「止まっていたらやられるっ!」

その場から急いで駆け出すのとほぼ同時に

真上からではなく横からその【何か】が突撃していく

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっ!!」

陽乃「だめっ」

あれだけ、にぎやかだった夜のグラウンドを突き抜ける悲鳴

爆発したかのような轟音を立てて、校舎から煙と破片が飛び散る

陽乃「お姉さんも早――」

「たすけ――ぇ゛」

降り注ぐ【何か】に腰を抜かしてしまっていた女性の体の上半分が、かすめた何かに持っていかれる


下半分は、映画で鮫に喰われたそれのように血を噴き出すなんてことはなかった

ただただ、そこにはもう動かすべき存在がいないことを表すように力なく崩れて

次第に、血が広がっていく

陽乃「なん、で……」

そして、まるで公園に投げられたパン屑に集まる鳩のように

そこには【何か】が集まって……食い散らかす

陽乃「っ……やめて、やめてよ……なんで……っ」

『くふふっ』

陽乃「っ」

笑い声が聞こえる

どこかから、この状況を楽しむかのような声が

『宴じゃ宴、余興の始まりじゃぞ、主様や』

陽乃「誰……誰なの……」

『足を止めたら――喰われるぞ?』

陽乃「!」

慌てて横に飛ぶと【何か】がその場所に突っ込み、

その爆風にも似た突風に陽乃の体が少しだけ飛ばされる


陽乃「はっ……はぁっ……はっ」

響いていた悲鳴はいつの間にか止み、

広い校庭に生きている人間は陽乃だけになっていた

少なくとも一クラス分の子供達がいたはずなのに――もういない。

逃げ切れた人はいただろうか

どこかの建物に逃げ込んで、助かった人はいただろうか。

陽乃「みんな……っ」

陽乃の隣にいた子は、きっと体育館に逃げ込んだだろう

間に合っていれば、きっと

その体育館には大量の【何か】が群がり、

押しつぶせるはずの脆い建物の周りを漂って、

時折体をぶつけて揺らし、中から聞こえる悲鳴を楽しむようにゆらゆらと蠢く

『救いたいかや?』

陽乃「……出来るの?」

『妾ならば。妾を主様が扱えるのならば』


1、助けて貰う
2、断る

↓2

1

1


その声の主が誰なのか陽乃は分からない。

もしかしたら悪魔囁きかもしれない。

この事態がそもそもその声の主によって引き起こされた可能性だってないわけではない

そう疑ってしまうほどに、怪しくて

けれど

今、この状況を打開できるのなら――と陽乃は思った。

鬼が出るか蛇が出るか。だとしても

陽乃「お願い……力を貸して」

『よいのかや? その判断で良いのかや?』

怪しく、惑わすようにそれは声を聞かせてくる

頭の中を震わせるような、少し気味悪くさえ感じるような声色

なにより――愉しんでいる声を。

陽乃「助けられるのなら、助けたいから」

『くふふっ、せからしい小娘じゃ。良いのう、良いのう……どれ、死ぬ出ないぞ』


その女性らしき声が唐突に掻き消えて、

陽乃は空気が変わったのを感じ取って、体を強張らせた。

蠢いていた【何か】もそれに気付いたのか動きを止めて陽乃へと向く

陽乃「っ……」

ぞわぞわと総毛立つような不快感

良くないものを口にしてしまった時のように

内側から遡ってくる嘔吐感に似た気持ちの悪さ

『主様の願いを、叶えてやろう』

陽乃「ぇ……」

その声の主は、大きな狐の姿をしていた。

半透明に透けてはいるが、黄金職の毛並みがきらきらとしていて、

逆立つ尾は、九つ

ゆえに与えられた名は――九尾。

『呆けていては、喰い殺されるぞ?』

陽乃「っ!」


動きを止めていた【何か】は陽乃を危険と判断したのか

複数の【何か】は一か所に集まりだして、その形をより大きく変えていく

それは変異ではなく進化

人よりもはるかに秀でた体躯をもつ【何か】が

人間である陽乃を自分以上の化け物だとでも感じたかのような急成長

陽乃「あれは……」

『主様や、人を救いたくば――受けるしかないぞ?』

集合した【何か】は体表面を刺々しく変質させていて

丸々としていた部分はどこにもなく、弓のように形を変えている

九尾はそれが何をしてくるのかを察しているようにほくそ笑む

陽乃「……後ろは」

学校の周辺には、住宅地

陽乃が躱せば、その後ろが吹き飛ぶのだろう

陽乃「本当に、貴女の力を使えば守れるんだよね?」

『主様が扱えるのならば』


襲来した【何か】が進化していったのとは逆に、

一見、陽乃の身体には何の変りもない

小学校に通うのにも良く使う、動きやすい普段着

けれど九尾が出現する直前に感じた不快感は体に纏わりつくようにして今も残っている

九尾の力はきっとそれだろうと陽乃は判断する

人を惑わし、壊し殺すことを愉しむ妖狐

その力は幻惑か

あるいは――

陽乃「!」

考えもまとまらないうちに【何か】は光を放つ

矢とも形容されるそれは陽乃めがけてまっすぐ突っ込む

ただ人ならば、触れることもままならない

掠めるだけでも肉が飛ぶ

そんな人智を超えた【何か】の力を、陽乃は左手の甲ではじく

弾かれた矢はグラウンドの中央にまで逸れて突き刺さり、爆発する


陽乃「えっ」

『呆けておる余裕があるのかや?』

陽乃「っ!」

矢のような形状をしている【何か】は次の矢を打ち出すべく動き出している

自分の不可解な力に驚く余裕も、喜ぶような余裕もない

陽乃は意を決して駆け出す。

陽乃の手には投げるような武器はなく、体一つ

倒すためには肉薄しなければならない

じりじりと動く弓のような形をした【何か】は矢を備えて――射出する

近づいた分、斜めに打ち出された矢を真っ直ぐ駆け抜けて過ごし、

背中にぶつかる暴風を追い風として

目の前にまで迫ったところで左半身を前に、体にブレーキをかける

グラウンドの細かい砂利に滑る足をつま先で何とか保ち――

陽乃「ふっ」

急制動の勢いを乗せた蹴りで【何か】を撃ち抜く


あまりの勢いに一回転しかけた陽乃は、

下部の消し飛んだ【何か】がそのまま崩壊していくのを見送る

陽乃「ふぅ」

急な体の動きにも、息が上がっていない。

ただ身体が強化されただけではないだろう

陽乃「ねぇ――」

九尾の狐がいたところには、もう何もない

あちこちには、喰い殺された人がいた証が散らばっていて

住宅街の至る所から、火の手が上がっているのが見える

陽乃「もう……いない?」

学校とその付近に降り注いだ【何か】は

陽乃をただ殺すだけに集合してくれたのが幸いし、掃討することが出来た

その後も陽乃は、体育館からは絶対に出ないようにと言い残して

自分ならば戦うことが出来るからと、街へと駆けだした。


県内に降り注いだ【何か】はもうおらず、

空に見えていた星も今はその景色が嘘であったかのように真っ黒になるころ、

陽乃は人のいない公園のベンチで休んでいた。

陽乃「帰らないと……」

陽乃が住んでいるのは、

島国である日本の中のさらに島国ともいる四国

その北西に位置している愛媛県

代々受け継がれてきた久遠家の神社は、瀬戸内海に面している伊予市にある

陽乃の体が強化されていると言っても、走り回れば流石に疲弊する

陽乃「……」

学校で姿を見せて以降、九尾の狐は声すら聞かせてはくれない

力を与えている間は姿を見せられないのかと陽乃は思ったが、

一番最初の時点でそんなことはなかったので、そんなはずはない

ただ、姿を見せる必要がないだけだろう

『主様』

陽乃「へぇっ!? な、なに?」

『このまま、学校とやらに戻るのかや?』


学校には、かなりの被害が出ている

人命的な意味でも、建物の意味でも

今頃、周囲のより多くの人たちが避難所として利用するために集まってきていることだろう

降り注いできた【何か】は今はいないので、一先ずそれで問題ないだろうし、

陽乃が今すぐ戻らなければならないということもない。

陽乃「私のお母さんが、巫女をしているの」

『ほう?』

陽乃「お母さんはね、巫女だからって神社に残っていて……」

『主様が行くか迷い、被害がないとみて避けた道の先にある所かや?』

陽乃「見てたの?」

『うむ……少し違いはあるがのう』

九尾の狐は姿を見せず、声だけを聞かせる

他の人に声が聞こえていなければ、

独り言を言っているように見えるのかと、陽乃は少し、困った顔を浮かべて

『主様、神社に行くのかや?』


1、学校に行く
2、神社に行く
3、もうしばらくここにいる

↓2

ksk

2

1


ではここまでとさせていただきます
明日もできればお昼ごろから

もう少しだけ7/30


ついこの間まで優しい世界の話がずっと続いてたせいか久しぶりに緊張感溢れる展開のギャップが凄いなぁ
そして尖ってたころの九尾も初期の不気味さが懐かしく感じたわ


ここから天乃の記録に残ってたみたいにダウナーになってくのかそれとも別の時間軸になるのか


では少しずつ


陽乃「神社に行く」

『良いのかや?』

陽乃「もう、あの怪物はいないし……学校は大丈夫だよね?」

『一先ず治まったと考えても良かろうな。無論、絶対にとは言えぬがのう』

陽乃「……」

くつくつと喉を震わせるような笑い声を九尾の狐は漏らす。

沢山の人が亡くなった。

少なくとも学校の校庭に出ていた人の大半が喰い殺されてしまったことだろう

悲劇ではなく、惨劇

悲しいという言葉ですら侮辱にも取られてしまう現実味のないあまりにも乖離した光景が

頭の中にこびりついて離れない。

けれどそれがかえって、陽乃を冷静にさせている。

戦うことのできる自分が伏しては被害が広がる恐れもあったからかもしれないけれど

悲しみに暮れるようなことはなかったのは、

突如現れ、暴虐の限りを尽くさんとした【何か】に対しての怒りと焦りが湧いていたからだ。

戦いがひと段落ついた今でも、

喪われてしまった――と、空虚な感覚が残るばかりで、悲しさは薄い。

とはいえ、おかしく笑われるのは気持ちの良いことではない

久々に昼きたー


陽乃はどこにいるのかも分からない九尾に向けて、眉を顰める。

陽乃「あまり笑わないで」

『人ならざるものである妾に、有象無象の死を憂えることを望むのは聊か過ぎたことであろう』

聞く耳を持たない訳じゃない。

だが、あまりにも理念も思想も感性も違えている。

人が路上に転がる虫の死を悲しむことがないように、

九尾の狐は、どれだけの人が死のうと関係はないのだろう。

それに異を唱えるのは傲慢と言われるかもしれない。

陽乃「ごめんなさい」

『くふふふふっ、よいよい。今日の妾は気分が良いからのう。気にはせぬ』

鈴のように響く声で笑う九尾の狐

彼女は伝承上の妖狐であり、現実には存在していないはずの生き物だ。

それが、ほんの少しだけとはいえ姿を見せ、

今もなお声を聞かせている

夢だと思いたいけれど、まぎれもなく現実

陽乃は【何か】もその類の存在なのではないかと、考えてベンチから離れる


陽乃「ねぇ、貴女はずっと私と一緒に居たの?」

『妾は久遠の巫女に憑きしもののひと柱よ。主様のみならず、常に妾は共におるぞ』

陽乃「九尾……さん。で良いんだよね?」

『妾が九尾の狐であるのかどうかという問いならば、然り。呼び名ならば好きにするがよい』

不敬でなければ気にはせぬ。と。

九尾の狐は笑いながらに付け加える

人とは違う感性を持っている九尾の不敬に当たる境界線はどこにあるのか

それを見つけられそうになかった陽乃は、九尾を呼ぶのを諦める

陽乃「貴女は神様の遣い? それとも、悪い妖怪?」

『妾が悪しきものならば、善きものであると嘯くやもしれぬ』

そう言った九尾はくつくつと笑って、

『妾が善きものならば、善きものであると主様を安心させようとするであろう』

九尾の狐は、日本においては玉藻の前としても伝わっていたりする他に

悪しきものとされていることもあれば、神獣として崇められていることもあり、

本当の九尾の狐というものが曖昧になって伝わってきてしまっている。

悪しきものであれば、陽乃は悪魔との契約をしたことになるし

もしも神獣であるならば、陽乃は神々と契りを結んだことになる。

陽乃「分かった。なら、善い人だって信じてる」

『良いのかや?』

陽乃「良くても悪くても、貴女は死ぬしかなかった私達を助ける力を貸してくれたから」

たとえ腹の底で悪意を煮詰めているのだとしても

陽乃には、それを探り当てるほどの疑り深さが欠けていた。


陽乃「あれ……?」

公園から歩いて十数分

神社へと続く路地には何台もの車が停まっていた。

車一台分の道。

大型車なら通れないような細い道すらも埋めてしまうような乱暴な車の停め方

電柱などにぶつかった事故らしいダメージも見当たらないので、

意図的にそうされていると考えるべきだろう。

参拝するにしては――乱暴だった。

陽乃「あんなことがあった後だから、急いでいたのかな?」

『ふむ……』

人々にとってはあまりにも理不尽に多くの命が奪われた

老若男女、善悪問わずそれが取るに足らない一単位として奪われた。

そんなことがあったのだ、

近くの神社に駆け込み神々に何故と問うことも決して錯乱とは言い難い。


凄惨な災害の後だから、仕方がないと陽乃も思う。

今陽乃が冷静でいられるのだって、

自分に戦う力があるからであり、

それゆえに、決して心折れるわけにはいかないと思っているからだ。

そうでなければ自分が死ぬ。

それはまだいい。

自分の無力さで奪われるのだから、抗い敵わなかった結果だ。

だが、自分が奮い立てば守れたはずの命を奪われるのだけは認められなかった。

信憑性のない言葉で促すのではなく、

自ら動いていれば救えたかもしれない多くの命が目の前で奪われた。

断末魔の叫びが今も耳に残っている。

救いを求め、伸ばされた手がボトリ……と、落ちるのを見た。

死んだばかりの――生々しい血肉のにおいが、まだ鼻をつく。

そんなのは嫌だ。それはもう嫌だ。

だから、陽乃は今もまだ立っている。

陽乃「こんな停め方されちゃうと、通れないのに……」


道を遮断するかのように止められている車の周りを軽く歩いて、

坂道になっている側にあるガードレールを軽く触る

足を踏み外せば下水に真っ逆さまだが、何とかなる……と陽乃は思って

その反対側、塀になっている部分をよじ登る

『何をしておる』

陽乃「向こう側に行きたいの」

『そんなもの、その邪魔なものを壊せばよかろう。主様に与えた力を使えば優に破壊できよう』

陽乃「嫌だよそんなの。この力は守るためのものだよ。傷つけるためになんて」

『それは人間ではあるまい』

陽乃「壊された人が、傷つくの」

『そういうものかのう』

理解出来ないといった様子の九尾の狐の吐息に、

陽乃は小さく笑って、車を越えた先の道に飛び降りる


↓1コンマ判定 一桁

奇数 選択なし
偶数 選択あり


『……なれば、学ぶがよい』

陽乃「え?」

九尾は含みのある言葉を言い残して何も話さなくなった。

元々姿を見せてはくれないので、

そこにいるのかいないのかもわからなかったが、

声が聞こえなくなると本当に消えてしまったかのように思えるが

九尾から力を借りて以降、

色濃く感じる淀んだ雰囲気は陽乃の傍に漂っている

陽乃「学ぶって、なにを?」

しかし聞いても九尾は何も言わない。

陽乃は不思議に思いつつ、

ただ意味深に言ってみただけなのかもしれないと、考えて。

歩きなれた神社までの道を進んでいく

そして――

陽乃「あの、みなさんどうし――」

陽乃が壊さなかった車の持ち主によって、捕まった


「……戻って、来てしまったのね」

陽乃「お母さん、なに? なんなの? 私達、どこに……」

逃げられないようにだろう

両手足を拘束された陽乃は、車の荷台へと押し込まれた。

そこには陽乃の両親もいて、

ほかの車には久遠家の親族が乗せられているらしく、

久遠家に関与しているみんながどこかへ連行されているのだという。

愁いを帯びた表情を見せる母親は、

巫女の装束に身を包んでいて

「貴女には、学校にいて欲しかった」

陽乃「何か知ってるの?」

「何が起きたのかは知らない。けれど、なにが起きるのかは、知っているの」

母親は揺れる車の荷台でなんとか体を起こして、

陽乃の方に目を向ける

「陽乃ちゃんが昔に読んじゃった本を覚えてる?」

陽乃「おばあさまが凄く怒っていた本?」


母親は軽く頷くと、車が停まる

「怒ったのは、貴女が【人身御供】という言葉に興味を持ってしまったから」

陽乃「ひとみ、ごくう?」

「久遠家の先祖は神降ろしにおける、依り代の役割を担っていたの。その話に、触れそうだったのよ」

母親はむしろ止めずに聞かせてしまうべきだったかもしれない

そう、後悔したように首を横に振る

知らせていれば、母親がなぜこんな時に神社に残る必要があったのか

その話もできただろうし、陽乃に戻ることを躊躇わせることだってできたかもしれないからだ。

「依り代は、言い換えれば生贄のようなもので、私達は……捧げられる」

陽乃「さ、捧げられるって……」

「あと少し……あとほんの少しだけ貴女が寄り道をしていてくれたら」

母親は今さら言っても仕方がないことを呟き、

そうして、諦めたように目を閉じる

陽乃「お母さん、私……私ね。戦えるんだよ……降って来た化け物と。だからっ」

「陽乃ちゃん……それは、本当なの?」

陽乃「本当っ、本当だよっ、だからお話してやめて貰おうよっ、お願いっ」


「ううん、それは駄目なの。どう話しても無駄よ」

陽乃「そんなことっ」

「根強い信仰心は、こうした時に牙を剥く。それこそが救いであると、疑いの欠片もない」

母親は囁くように零して、

しかし、陽乃のことを見て申し訳なさそうに笑みを浮かべた

「でも、貴女が神様に見初められたのなら……失うわけにはいかない」

陽乃「お母さん……」

「何とかするから、大丈夫」

心配しないでね。と、母は笑う。

陽乃が転んで怪我をしたときに「痛くない、痛くない」と

頭を撫でてくれていた時のように。

気持ちを和らげようとしてくれているその優しさに、

陽乃はどうしようもなく心がざわつくのを感じた

「お母さんに、任せて」

陽乃「っ……」

力を入れても、手を縛る紐はまるで緩む様子がない

九尾の力も使えないただ人では、大人のきつい拘束はどうにもできなかった


陽乃達を乗せた車は、

法定速度も守らず、人がいなければ信号で止まることさえもせずにひたすらに突っ走った。

そうして久遠家の神社から約2時間ほどかけて辿り着いたのは、

愛媛県にやや隣接している香川県から

さらに、瀬戸大橋と呼ばれる大きな橋を越えた先にある岡山県

放り投げられるようにして降ろされた陽乃達の目に映ったのは、

酷く崩壊している街並み

人がいるような気配は殆どなく、

あちこちで火災も起きているというのに――消防のサイレンも聞こえないような状態だった。

そして、そんなゴーストタウンと化した街には【何か】が代わりに漂っている。

陽乃達を放り出すや否や、

お役目なのだと告げた人たちは拘束も解くことなく大橋の方へとまた逃げ帰っていく

泣き叫ぶ陽乃と同年代の子供達

せめて、子供だけは助けようと必死にもがく大人たち

叫び声に気付いたのかにおいに気付いたのか

漂う【何か】が次から次へと向かってくるのが見えて、絶叫がより大きくなっていった


陽乃「お願い……力を、力を貸して……」

「ごめんね、貴女に辛い思いをさせてしまう」

陽乃「お母さんっ」

母親は陽乃の後ろに這って回ると、

陽乃の手首を結ぶ紐に噛みついて湿らせ

首だけで左右に引っ張って解こうとする

陽乃「お願い、お願いだから……っ」

九尾からの返答はない

傍に居るはずなのに、

まるで自分には関係ないことであるかのように、沈黙している

「手を、動かして」

陽乃「っ……」

言われるままに、手を動かして少しだけ緩んだのを感じて強引に動かす

ぬるりとした感覚に手首が滑って、ささくれ立っていた紐を無理矢理にすり抜ける

指の関節から嫌な音がしたが、関係なかった

陽乃「九尾ーっ!」

そして――叫ぶ。


纏わりつくような不気味な感覚がまたふつふつと沸き立っていくそぶりを見せたが、

しかし、それはまたなりを潜めて

『よいのかや?』

陽乃「何がっ」

『妾の力はきゃつらの好物。ゆえに、使えば――狙われるぞ?』

ようやく反応を返した九尾は、

相変わらず状況を愉しんでいるような声色で問う

陽乃はだから無反応だったのか。と、はっとした。

陽乃が力を使えば走行中の車からだって脱出はできただろう

しかし学校でそうだったように

化け物たちは白い球体上の体を寄せ集めて進化し、

より凶悪な化け物となって姿を見せることだろう。

陽乃ならそれもなんとかできるかもしれないが、みんなを護れるという保証はない


1、力を使って戦う
2、力を使わずに、拘束を解いて逃げる


↓2

1

1


陽乃「それでも私は戦うっ!」

『ほう』

陽乃「戦っても戦わなくても奪われるなら――戦わない理由なんてないっ」

化け物がまとまって強大になってくれるなら、

戦う相手が一つになって寧ろいい。

もしかしたら守れないかもしれないが、

ここで戦わない選択をしたら、結果は変わらない。

だったら、少しでも救えるように戦うべきだと陽乃は思って

陽乃「お願い九尾、私に力を貸して」

『……良かろう。主様の望むままに』

体中に満ちていく不快感

今にも突撃しようとしていた化け物たちが動きを止める

足を拘束していた紐を片手で引きちぎって、立ち上がる

「陽乃ちゃん……」

陽乃「大丈夫だよ。お母さん。私、戦えるから。頑張れるから」


不安がないと言えば嘘になる

怖くないと言えば嘘になる

けれど、今ここで膝を折ったら奪われたくない大切なものを奪われてしまう

だから、抗う

陽乃「おか――っ!」

突撃してきた化け物を反射的に殴り飛ばして、破壊する

陽乃以外のみんなはまだ拘束された状態で、とても逃げられるような状態ではない

拘束を解こうにも、

化け物が突撃してくるため一人を解放するのにも時間がかかる

その間にもほかの人が襲われることになるだろう

陽乃「お母さん……」

今傍に居るのは母親一人、父親は少し離れた場所だ

『呆けておる場合かや?』

陽乃「っ!」


九尾の声にはっとして、慌てて突撃を回避する

蠢いている化け物は、今のところ7匹ほどだ

時間をかければかけるほど集まってくることだろう

陽乃「はっ……はぁ……」

どきどきと、異常なほどに心臓が脈打つ

まだ動き出してもいないのに、もう持久走を二周分行ったかのような疲労感がのしかかる

陽乃「大丈夫、私は……戦えるん、だからっ」

拳を握る

抗えるは己の身一つ

陽乃「はぁーっ」

深く息を吐いて、身構える

周りを漂う化け物一匹一匹に気を張り巡らせて、警戒する

ゾクゾクと体の内側で沸騰しようとしている不快感を、飲み込む

陽乃「まだ、戦える」


参考MAP:
https://i.imgur.com/OxMHybw.png


↓1コンマ判定 一桁

0 00 失敗
1~5 通常ダメージ
6~9 成功
ぞろ目 大成功

※敵→陽乃


↓1コンマ判定 一桁

0 00 失敗
1~5 通常ダメージ
6~9 回避
ぞろ目 大成功

※陽乃→敵


化け物の攻撃は、とても単調なものだった。

方向だけは当然ながら上も左右も自由自在だが、

集合体にさえならなければ――行ってくるのは突撃ただ一つ

陽乃「!」

周囲に気を配り、動きを見せた化け物へとすぐに向き直って、

人がいない方向を背にして、横っ飛びに回避する

陽乃「っはっ」

化け物攻撃は早いだけのタックルだ。

当たれば即死しかねない――アクセル全開の車のような危険度だが、

陽乃とて、常人ではない。

当たっても耐えられることは耐えられるし、その速さには対応できる

しかし問題は攻撃する場合だ

陽乃は武術を多少嗜んでいるが、本腰を入れているわけではない

ただ、好きだからと触れた程度の力

それでは――弾丸には届かない


振りぬいた拳は空を切る

恐れてはいない

食い千切られる覚悟で握った拳だ

けれど、それでは届かなかった

愛媛に現れていた個体よりも、

少しばかリ知恵のついている個体なのか、

陽乃の拳を避けて背後に突っ込んでいったのだ

陽乃「避けられたっ!」

振り返ろうとした陽乃めがけて、また別の個体が突撃する

それを回避した先で、また別の個体が突撃してくる

次から次へと、

突撃してくる化け物を避けている間に、

別の市街を襲っていた個体が陽乃のもとへと集まっていく

『主様』

陽乃「分かってるよっ!」


力が足りない

手が足りない

みんなを護りたいという傲慢さを叶えるには――陽乃は弱すぎる

「うわぁぁぁぁぁぁぁっ」

陽乃「っ!」

「こっちに来ないでーっ!」

陽乃「やめっ……」

一人、また一人

陽乃の相手をしない個体が、陽乃の見知った人々の命を奪い去っていく

押しつぶされ、砕けていく骨の音

食い千切られ、崩れ落ちる肉の音

その家族の絶叫があたりに響き渡って――また、消えて

陽乃「なんでっ、なんでなんでなんでッ!」

『主様』

陽乃「私はここにいるのにっ! 貴方達の好物はここにあるのにっ! 殺すなら私を殺してよッ!」


『騒々しいぞ小娘』

陽乃「っ」

急激に全身に絡みついてきた不快感と

腹の底から湧き上がってきた形容しがたいそれに、

陽乃は叫ぶことすらできなくなって崩れ落ちる

陽乃「あ……あ゛……」

ポタポタと、赤色の液体が口元から滴り落ちて

鉄臭さが鼻をつき、味覚を汚染していく

身体が砕けてしまうのではないかと思うほどの疲労感

陽乃「な……ぇ……?」

『代償もなしに、妾の力が扱えると思うておったのかや?』

陽乃「っ……」

『全てを救おうなど、出来ぬと知れ』

陽乃「それ……でもっ!」

立とうとした膝が震えて崩れる。

どれだけ強い意思があろうと、成し遂げられないことがあるのだと言うかのように、動きが鈍い


↓1コンマ判定 一桁

0 00 最悪
1~4 悪い
5~9 普通
ぞろ目 最良

たのむ


「陽乃ちゃん……駄目よ」

陽乃「駄目じゃ、無いもんっ」

「お願い、貴女だけでも……」

陽乃の傍にいた母親は、まだ無事だった。

その分、

陽乃から離れていた親戚が次から次へと標的となって、

陽乃と同年代だった男の子も女の子も

その兄姉弟妹も喰われてしまっている

陽乃「嫌だ……絶対に嫌だっ!」

けれど、まだ生きている人はいる

みんなを救うためには、陽乃が戦って敵をすべて倒すしかない

しかしすでに戦い続けてきたその体

疲労はピークに達していて、九尾の力を身に纏う影響もで始めている

ふらつく体では、もはや母を抱えては逃げ切ることさえままならないだろう。


『初めてにしては、主様はようやっておる』

陽乃「まだ終わってないっ!」

『まだなじみの薄いその体で無理をすれば、主様が滅びるぞ』

陽乃「それでも私は……っ」

戦えるのは陽乃一人なのだ

我が身可愛さにここで逃げたら、諦めたら――

陽乃「後悔なんてしたくないっ!」

『明日死するものが今死するだけのこと。それを守り己が死ぬ意味などあるのかや?』

陽乃「いつ死ぬか分からないなら、守る意味はあるよ」

崩れそうになりながら、立ち上がる

震える体を、歯を食いしばって耐え抜いて

吐きかけた血反吐を、まだ体を動かせと飲み下して

「無理をしてはだめっ貴女は……貴女達は人類の希望なのよ。こんな場所で失われては」

陽乃「私をぉぉぉぉぉぉぉ――見ろぉぉぉぉぉッ!」

↓1コンマ判定 一桁

 0 00 失敗
 1~4 回避
 5~9 成功
ぞろ目 大成功

※陽乃→敵

はい

頼む!

ここでまさかのゾロ目


今の自分に出来るのは殴ることと蹴ることのみ

ただ全力で、全開で

で、あるのならば。

アスファルトを打ち砕くほどに力強く――踏み抜く

陽乃「退いて死ぬくらいなら」

人智を超えた化け物の身体

体躯に見合わぬ非常識な速度

普通では届かない

頑張っただけでは届かない

だから。

陽乃「死ぬ気でぇぇぇぇぇ――」

踏み抜いた地面を抉るように蹴飛ばして、地を駆ける

滑空しているような浮遊感

瞬く間に近づく化け物の身体

自分の体が砕けてしまうかのような勢いをそのままに

陽乃「届かせてみせるッ!」

漂う化け物の体を、撃ち貫いた


勢いは化け物を貫いても止まることなく、

陽乃の体は周りを吹き飛ばす突風を巻き起こしながらコンビニに突っ込む

ガラスの破片が体を切り裂く

衝突した棚の硬さにぶつかった場所が鈍い痛みを持ち始める

陽乃「はっ……ぁ……」

血が絶え間なく流れ続ける

身体の中から上り詰めてきた吐き気に、吐血する

頭が重く、体がふらついて眩暈がする

陽乃「げほっ……はっ……」

『お主』

陽乃「なせばなるんだよ……全部が全部は無理でも。大抵、何とかなるんだよ」

崩れ落ちるようにコンビニから這い出てきた陽乃は、

それでも、まだ化け物はいるのだろうと立ち上がる

陽乃「守るんだ……私が、私が……戦える、私が……っ」

体中に痛々しい傷跡を残し、

失血死していてもおかしくないほどに真っ赤に染まった少女の姿を、

化け物から逃げ伸びた人々の多くが、目にしたという。

親戚のほとんどを失い、父親を失い、生き残った子供たちはPTSDを発症してしまうなど

決して被害は少なくはなかったが、それでも――陽乃は母親を救うことが出来た


2015年07月30日

その日、世界は化け物たちに蹂躙され奪われてしまった。

多くの命と居場所を失い、

ごく限られた場所に、人々は逃げ伸びた。

陽乃達のいる四国を除けば、

長野などのごく一部の地域のみだという

陽乃の母親曰く、八百万の神々が力を貸し与え、

人々を護る聖域を作り、見初められた者を守護者として守っているらしい。

目に見えていない場所の真偽は不明だが、

少なくとも、四国には陽乃以外にも何人かの神々に見初められた少女がおり、

それらを、政府の任命によって表に出てきた【大社】と呼ばれる組織は、勇者と呼んだ。

陽乃の母親は、勇者と呼ぶことには不服だったそうだが、

しかし、プロパガンダ的な意味合いを除いたとしても、勇者と呼ぶべきであるとされたようだった。


その大社によって、

勇者とされる子供達には招集がかけられることとなった。

香川県にある丸亀城を本陣として、

そこを改築して居を構え、勇者の鍛錬を含めた育成施設にする算段だという話だ。

陽乃の母親は

傍に置いておいた方が子供としては精神面に優しいのではと訴えたが

やはり、それも却下された。

組織の統治下にない強力な力があるのは危険だからだろう。と、

九尾はつまらなそうに鼻を鳴らしていた。

陽乃は多くを失う結果にはなったが、

それでも、本当に守りたかったものは守ることが出来た。

しかし、悔いはある

まだまだ弱くて役に立たないと苛立ちがある。

陽乃「私、もっと頑張るから。もっともっと、頑張って……今度は誰も死なないように、頑張るよ」

だから、陽乃は立ち止まろうとは思えなかった。

たとえ、化け物と戦い血に塗れボロボロになって――それでも立ち上がる姿が【バケモノ】と言われていようと。

分岐点。

1、四国に残留
2、長野に向かう

↓2

1

1

では本日はここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


陽乃さんのお母さん救えるとは思わなかったから驚いた…
それに陽乃さんも今までの心を病んでるイメージが覆りそうで予測がつかないな


陽乃ちゃん(小6?)が初っぱな命削っててヤバい…これは天乃の御先祖様ですわ
長野行かないってことは歌野は…


では、少しだけ


√2018/07/30 丸亀城


陽乃「……」

陽乃は丸亀城の天守屋根上に登って、街を見下ろす。

事件から3年経った今も四国内部に留まる陽乃は、

長野にも四国と同様の状態にある場所があると聞いたときに、

今ならまだ大社の指揮下に入ることなく

混乱に乗じて長野の方に逃げ出せるのではないかという話もあったが、

それを却下して、四国残留を選んだ

その一番の理由は、やはり母がまだ生きているからだろう。

陽乃「長野に行くべきだったと思う?」

『バーテックスとやらと戦うのならば、行くべきであったろうな』

陽乃「でも私がいないと、お母さんが……」

『そうじゃのぅ。主様が勇者などという低俗なものを享受し、大社なぞに与しているからこそ無事と言えよう』

陽乃の母親は巫女としての素質を認められており、

大社預かりのみとなっている

それは、陽乃が大社に訴え出たからこそのものであり

そうしなければ、母親はあの人々に恨まれ――殺されていたかもしれない。

来てたか


久遠家は、人身御供――人柱として捧げられなければならなかった。

そういった話がこの四国には蔓延しており、

あの神社の巫女が生き延びたせいで、

事態は一向に収拾が付かないとさえ言われ始めている。

陽乃やその母親が人身御供として捧げられたとしても

バーテックスが退いてくれる保証なんて微塵もないのにだ。

インターネットでは、燃えていく家を【お焚き上げ】とさえ言われる始末

もちろん、みんながみんなそう言った人々ではないのだけれど、

そんなことを真に受け、陽乃の実家を放火するくらいには余裕がない。

陽乃「私はここから――」

「わーかーばー、ちゃん」

陽乃のシリアスな思考を強制的に断ち切る声が陽乃のずっと下、

石垣のところにいる乃木若葉へと声をかける上里ひなたの姿があった。

乃木若葉は陽乃と同じ勇者で、上里ひなたは若葉の一番の親友でありその巫女だ


陽乃「あの二人、仲が良いわよね」

『羨望かや?』

陽乃「ん~……少しだけ。でも、ああいうのがすぐそばにあると、頑張ろうって気になれる」

『いざとなれば切り捨てるべき有象無象のひと欠片でしかなかろう』

陽乃「ううん違う。大切なのよ。あれは。あれは、私達が決して失ってはいけない温もりなんだ」

人と人とが繋がる温もり。

仮初とはいえ、平穏であるからこそ、まだ見ることのできるその光景は、

かつて奪われてしまった世界に溢れていたものだ。

だからこそ、その姿をまだ見ることが出来ることを陽乃は良いことだと思っているし、

それらを守らなければならないと、より強く思う。

『妾は、郡千景とやらに賛同させて貰おう』

陽乃「郡さんも間違ってはない。こんな非常時に悠長だって意見も分かる」

陽乃だって、今こうしている瞬間にも長野ではたった一人の勇者がみんなを護っているのだから。と、

焦りと不安は胸にある。

陽乃「でも、刀だって鞘がなければ脆い鉄でしかないもの。乃木さんには上里さんとの時間が必要だわ」


『それのみで脆いのならば、折ってしまえと言っておる』

陽乃「貴女って人は……」

『神樹とやらの贄にでもしてやった方が、人類のためであろう』

陽乃「神樹様だけ残っても意味がないわ。それを護る人がいないと」

流石に虫けらなんて言わないものの、

3年経った今も、九尾は相も変わらず人を人として見ていない。

若葉達勇者や巫女も平等に考えているので寧ろ清々しささえあった。

とはいえ、九尾が害をなすようなことは今のところないので

今言って聞かなくても、いつか聞いてくれたらいいと陽乃は思っている。

『慣れ合うなど馬鹿馬鹿しい。かつてのように裏切られるとは思わぬのかや?』

陽乃……やめて」

『封をしたところで過去も人も変わらぬ。認めよ主様、人とは救い難い愚物であると』


1、やめてッ!
2、そんなことない……人は、ちゃんと分り合えるはずよ
3、認めてどうしろって言うのよっ
4、無視して降りる


↓2

2

1


陽乃「やめてッ!」

『相も変わらず好まぬか』

陽乃「みんなを一緒にしないで……あんな人たちと、一緒にしないでっ」

『ふむ……それほど病むのなら、一思いに処分でもしてしまえばよいものを』

九尾はそれだけを言い残すと

空気に交じる不快感を薄れさせて、陽乃の中に潜っていってしまう。

3年前のあの日、陽乃達を贄と差し出した人々は今もこの神樹様に守られた世界のどこかで生きている。

そして、そんな人々から久遠家の情報は伝わって家が無くなるまでに至った。

九尾から見れば、その人たちも若葉達も変わらない人間という一つの種族でしかないのだろうが

陽乃は一緒くたに考えるつもりはないし

守る価値の有無など、考えたくなかった

考えてしまったら拳を握れなくなる気がして――

ひなた「誰かそこにいるのですか?」

陽乃「っ」

若葉「さっきの声は……久遠。久遠だろう?」


九尾へと怒鳴ったのが災いして、

下にいたひなたと若葉の声が陽乃のもとへと飛んでくる。

声を聞かせてしまった以上、居留守をする意味がないので顔を覗かせると

手を振るひなたと、

少し心配そうに眉を顰める若葉が見えた

若葉「そんなところにいないで、降りてきたらどうで……どうだ?」

陽乃「畏まらないでって言ってるのに」

若葉は陽乃の一つ下のため、

敬おうという気持ちも理解できるのだが、

久遠先輩というのを止めさせた結果、久遠さんになり、

3年間かけてようやく【久遠】になった。

出来れば下の名前で呼んで貰いたいと陽乃は思っているのだが、

それにはまだまだ程遠いようだ

若葉「やっぱり、学校も統一されて正式に先輩なはずなのに、先輩もさんもダメとは無理があります」

陽乃「私なんかに畏まってはいけないって言ってるの。貴女だって知らないわけではないでしょう?」

若葉「知っては、いますが」

陽乃「私と貴女達は対等でなければいけないの。私が上に立つわけにはいかないの。理解して」


若葉「では、久遠……さんも私を下の名前で呼んでいただきたい」

ひなた「久遠さんが下の名前で呼んでしまったら、一方的になっちゃいますよ」

若葉「それは……」

陽乃は先輩のため、若葉を下の名前で呼んでも普通だと言える

だが、その陽乃が若葉達に敬意を表して乃木さん、上里さんと呼ぶことで

若葉達なら抑え込めるという安堵が生まれ

久遠陽乃という【異物】の虞を中和させている

ひなた「残念ながら、久遠さんの力は大社ではまるで解析できていません」

そう言ったひなたは眉を顰めると、目線をかすかに下げて

ひなた「久遠さんに協力しているという九尾様がお答えして下されば変わるのですが」

陽乃「絶対に嫌らしいから、ごめんなさい」

ひなた「仕方がありませんね。やっぱり、ここは若葉ちゃんが頑張るしかありませんよ」

若葉「そう言われてもなぁ……」



1、ねぇ上里さん。長野の方に応援を出したりはしないの?
2、今そんなでは、後々大変だわ
3、乃木さん、少し手合せお願いできる?
4、乃木さんのこと頼むわね。上里さん


↓2

1

1


では本日はここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


今作の陽乃さんは早速闇こそ抱えているものの人格破綻まではしていないのが救いだな
ところで今回の九尾はほとんどテレパシーで会話してるけどあまり実体化したりしないのだろうか


九尾の声は幻聴説…いやアカンな闇深過ぎる


では少しだけ


陽乃「ねぇ上里さん。長野の方に応援を出したりはしないの?」

ひなた「そうですねぇ……今のところそういった話は出ていません」

若葉「現状は問題ないと定時連絡でも言われていますが、やはり……不安ですか?」

陽乃「片や一人、片や五人。不安がなくても最善を尽くすのなら――」

ひなた「いけません!」

ひなたは陽乃の言葉を先読みして、声を上げる。

ひなた「お気持ちは分かりますが、あまりそのようなことを言われては」

陽乃「上里さんが耳を塞いでくれていてもダメ?」

ひなた「駄目です」

申し訳ありませんがと付け加えたひなたは、若葉を一瞥すると息を吐く。

若葉が刀を抜くことが出来るとはもちろん思っていないのだが

四国における暫定的なリーダーを委ねられている若葉は、陽乃を律する義務がある。

それゆえに、陽乃がもし神樹様や大社を批判するようなことがあれば罰しなければならない。


勇者とは八百万の神々――今は、土地神と統一されている神々から力を授かり、

バーテックスに対抗し得る者達のことであり、

巫女とは、その土地神の声を聞く者のことである。

声と言っても九尾の狐のようにはっきりとした声ではなく、

何らかの象徴や暗示と言った抽象的な形――母親曰く神託を受けるのだという。

それに対して、

陽乃は土地神から力を借り受けているというわけではない上に

その協力神―とされている九尾―が大社に非協力的なため警戒されており

一時は陽乃を勇者とするのは問題があるとされたが

なまじ力の存在だけは証明できてしまったため、勇者として管理されることになった結果

陽乃の言動はやや制限されているような状態になってしまっている

陽乃「私が諏訪に行くって言ったら……」

ひなた「大騒ぎになりますね……こっそり抜け出したりなんてしたらパニック間違いなしです」

若葉「それは、もしかしなくても私の責任か?」

ひなた「ん~……十中八九咎められるのは若葉ちゃんですね」

陽乃さん中々ややこしい立場なんだな…


若葉「私に久遠さんを止めろだなんて元々無謀だろう」

陽乃「乃木さんの居合を見切れるほどの実力はないのだけど」

若葉「何を言いますか。来ると分かっていればいともたやすく躱せるでしょう」

陽乃「対応出来ないわけじゃないのに、謙遜してくれちゃうんだから」

陽乃はいやいやと否定する若葉に苦笑する。

実際の話、陽乃は若葉よりも背が低く

居合を極めんとしている若葉の瞬発力には劣っている

しかし近距離戦闘が主体の陽乃は必然的に

確実に間合いを詰め、一撃を入れるための反応速度を備えていて、

若葉も十分に体つきはいいが、近接を主体として鍛えている陽乃には残念ながら劣るところもある。

そんな互いに拮抗していると言ってもいい状態だからこそ、若葉を暫定リーダーとして

陽乃を抑え込む役割が与えられているわけだが。

若葉「間違っても、こっそり抜け出すなんてやめてくださいよ」

陽乃「前向きに考えておくわね」

陽乃がそう言って笑うと、

若葉はあまり信じていないといった様子で、笑った


ひなた「神樹様からのお声もありませんから、まだまだ大丈夫ですよ」

若葉「久遠さんは片や一人と言われましたが、白鳥は私達六人に引けを取らないと思っています」

若葉は陽乃の五人を覆すかのように六人を強調して

若葉「色々と柵はありますが、久遠さんも私達と同じ学校の先輩で仲間ですよ」

陽乃「それこそ問題発言になっちゃうわよ。私と仲良くし過ぎたら罰則を受けちゃうんだから」

ひなた「親交を深める分には問題ありませんよ」

陽乃の困った表情にひなたはそう答える。

陽乃が他の勇者たちと仲良くなること自体、大社は問題ないと思っている。

むしろ、それを好ましく思っている節さえあるのだ。

そんなことは関係なしに、仲良くなって貰いたいとひなたは思う。

ひなた「久遠さん、もしよろしければお昼をご一緒しませんか?」

若葉「ひなた」

ひなた「久遠さんの一人でいるべきという主張も一理ありますが、やはり……」


陽乃は悪しき存在であるという情報をみんながみんな鵜呑みにしているわけではないけれど

とりわけ、郡千景は陽乃を良く思っていない。

巫女であるひなたを含めた七人の中でも、最もインターネットに通じているのが千景だ

出会った当初は陽乃がそうだと知らなくても、

少し時間があれば目にしてしまうその情報を知ってしまった千景が、

貴女が死ねば助かるんじゃないの? と言ってしまったことがある。

その時に陽乃は「冗談でも言われたくない」とやや空気をひりつかせたのだ。

陽乃「私がいると、高嶋さんまで気を使っちゃうでしょう?」

若葉「それは……気にしないように私が」

陽乃「………」

その日以降、二人の関係は芳しくない

千景と一番親しいように感じられる高嶋友奈が取り持とうと努力しているが――無駄に終わっていて

そこにいることを問題とはしていないけれど

陽乃がいるとどうしても空気が悪くなりがちだ

もっとも、いてもいなくても変わらないのかもしれないが。


1、悪いけれど、遠慮しておくわ
2、ありがとう、その気持ちだけ戴くわ
3、私よりも正式な勇者を優先すべきだわ
4、分かったわ。同席させて

↓2

4

3


陽乃「ううん、やっぱり良くない」

若葉「久遠さんっ」

陽乃「私よりも正式な勇者を優先すべきだわ」

若葉「貴女も正式な勇者であるはずだ!」

陽乃「ありがとう」

若葉「くっ……」

陽乃の笑みに、しかし若葉は歯を食いしばる

ありがとうと言われても何かが成せているわけではない。

三年前、最初の襲撃を受けた島根から四国への帰路

聖域の門番であるかの如く瀬戸大橋の入り口に立っていたのが他でもなく陽乃だった。

酷く傷つき、今にも崩れ落ちてバラバラになってしまうのではないかと思うほどに覚束ない様子で

それでも、バーテックスを穿つ姿は見る人が見れば化け物だったかもしれない。

だがそれでも、若葉には勇者に思えた。

若葉「誰が何と言おうと、貴女は勇者だ久遠さん」

ひなた「若葉ちゃん……」

若葉「行こう。ひなた」

申し訳なさそうに一礼をして去っていく二人に、陽乃は笑顔で手を振って見送る


陽乃「ままならないものね」

『煩わしいと思うのならば排除すればよい』

陽乃「駄目よ。貴女、そう言って前に郡さんを殺そうとしたでしょう」

『主様の目的に小娘は不要であろう。なれば生かす意味も無し』

陽乃「郡さんがいたほうが私の負担が軽くなる。より多くの目標を達成できるわ」

九尾は不要と思えば処分してしまえが前提で

陽乃が止めなければ、今話していた若葉とひなただって殺してしまいかねない。

特に、陽乃を阻む役目を担っている若葉のことは寝首を掻くこともあり得る。

そしてそのためならば、無害と言えるひなたでさえも手にかけることを厭わない。

陽乃「とにかく、乃木さん達に手を出さないで頂戴。私がやったことにされるんだから」

『その程度の謀、主様が問われぬようになど容易く――』

陽乃「駄目って言ったら駄目なの。私は誰も死なせたくない」

『障害なぞ、排除してしまえばよいものを。難儀なものよ』

陽乃「一番簡単な手段ばかり講じていたら、通じなくなった時に積んでしまうでしょう?」

『ふむ……納得しておこう』


九尾の狐が表に干渉している不快感が薄れて陽乃は深々と息を吐く

陽乃は九尾の力を借りているが、

それに完全な適応をしているわけではない。

戦っていない時はただの不快感といった程度で済むが、

その力を全身へと巡らせ、行使するとなると多大な負荷がかかる

時間をかけ過ぎれば反動で陽乃の体が傷ついてしまう

陽乃「ほんと……ままならないものね」

大社からは危険物扱い

勇者の仲間内では腫れもの扱い

護るべき人々からは化け物扱い

それらのために頑張れば頑張るほど、体が蝕まれていく。

長野の勇者である白鳥歌野が孤軍奮闘するのではなく、

自分こそが孤独な勇者であるべきだったのだと、陽乃は思った。


√ 2018/07/30 昼 (丸亀城)

01~10 杏
31~40 若葉
51~60 球子
81~90 友奈


↓1のコンマ

※それ以外は通常


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


様々なところから邪魔者扱いな上に迂闊に動くと九尾が勝手なことしかねないから身動きも取りづらい…中々辛い状況だなぁ

あとのわゆ編に入ってから投稿量が増えてきて嬉しい


多いし早いな前は今頃開始だったはず…
この千景に前の周の千景を見せた反応をみたい


境遇がハードモードで時代もハードモードだな


では少しだけ

かもーん

√ 2018/07/30 昼 (丸亀城)


陽乃はみんなが集まっている食堂には向かわなかった。

若葉達と話したその足のまま日陰になっている石垣を探して腰かけると

朝のうちに用意しておいたおにぎりを鞄から取り出して、一口かじる

世界が奪われてしまう以前の陽乃には、到底考えられない食事だった。

以前の陽乃には、必ず傍に人がいた。

慕ってくれる人、ただ仲良くなった人

陽乃はすべての人に愛されていたとは思っていないし

嫌っている人もいるだろうことは自覚していたが、それでも愛してくれた人がいたと思っている。

それが今は、欠片もない。

殆どの人が奪われた。

あの日、陽乃の願いは聞き届けられることなく即座に避難させられなかった結果だ

護れた子もいる

けれど、ほとんどすべてを失って――

陽乃「……あっ」

無意識に力が入って、握りつぶしたおにぎりが崩れて地面に落ちる

どれだけ時間が経とうと、あの日の後悔は消えてはくれない


後悔を思い起こしてしまったからか、嫌悪感がふつふつと湧いて来る

やり場のない怒りを受けてしまったおにぎりのせめてもの抵抗力が

手のひらにベタベタと張り付いているのがまた不快感を生む。

とはいえ、それで発狂するほど子供でもなくなった陽乃は、

過去よりも今、落としたご飯のことを考える。

食べ物を粗末にすることは以前はもちろん今も許されたことではないと眉を顰めつつ

しかし拾って食べるわけにもいかず、溜息を零して気分を仕切りなおして――

若葉「こんなところにいたんですね」

声をかけられて顔を上げると、食堂で使われているトレイを持っている若葉が立っていた。

陽乃もさすがに困惑して呆然としてしまう。

若葉「なにか?」

陽乃「食堂から持ち出したらいけないんじゃなかったの?」

若葉「特別にお願いしました」

苦笑いして答えた若葉は、そのまま陽乃のそばに来ると、

隣に失礼します。と、一応は一声かけてから石垣に座る。


陽乃「何を考えているの? 正式な勇者を優先してって言ったでしょう?」

若葉「ええ、正式な勇者を優先しているつもりです」

陽乃「貴女の個人的な判断ではなく大社が定めた勇者を優先するべきだって言ったのよ」

陽乃も勇者として定められているが、

それは特例であって正式とは言い難いものになっている。

ゆえに、正式な勇者とは乃木若葉、高嶋友奈、伊予島杏、土居球子、郡千景の5名となる

しかし若葉は自分がそう思うからと陽乃を含めて、あろうことか抜け出してきたらしい。

陽乃は内側に感じる嫌悪感をどうにか飲み込む

陽乃「リーダー失格だと言われたらどうするの?」

若葉「久遠さんと郡さんを仲違いさせたまま、何も成せていない以上失格というのは妥当ですよ」

若葉は小さく笑って、膝上に置いたトレイを持ち上げる

二枚重ねだったのか、膝上には別のトレイが残った

若葉「久遠さん、こっちをどうぞ」

陽乃「え……」

若葉「久遠さんの分も、持ってきたんです」


若葉は自分の膝上のトレイが落ちないように気を付けながら、

陽乃の膝に持ち上げた方のトレイを乗せる。

トレイの上にはうどんの入っている小鉢が二杯あって、お箸も二膳用意されていて

一人分を手に取った若葉は自分の膝上のトレイに乗せる

若葉「余計でしたか?」

陽乃「余計では、ないのだけど……私が用意しているとは思わなかったの?」

若葉「その時は、自分で食べようかと」

陽乃「そう」

若葉は愛想笑いに似た笑みをずっと浮かべている

余計なことをしてしまったと思っているのなら、

初めから言ったとおりにみんなの方に行けばよかったのにと、陽乃は顔を顰める

若葉「久遠さんうどんはお嫌いでしたか?」

陽乃「ごめんなさい、有難いのだけど……やっぱり気になっちゃって」

若葉「向こうなら大丈夫ですよ。郡さんには少し異を唱えられるかもしれませんが、これも長の務めです」


若葉「私は、久遠さんの味方になりたいと思っています」

陽乃「味方……?」

若葉「長野への応援を切り出したのは、ここに居辛いからではないですか?」

陽乃「どうしてそう思うのかしら」

若葉「客観性を捨てたとしても大社や勇者、人々からの扱いを見聞きしていればそう感じますよ」

陽乃は非常に肩身の狭い思いをしている

それがたとえ理由あってのことだとしても

息苦しさを覚えるには十分で、

解放されたいと思うには事足りていて

どちらにせよ辛いのならば、他者を救済できる方に進みたいと思うものだろう。

若葉「人手不足な長野への応援、手持ち無沙汰な私達にとっては確かに合理的な提案だと私も思います」

陽乃「貴女そんなこと言ったら」

若葉「仲間の助言を聞かずして何が長か。たとえ私に上の組織があろうと貴女の長は私に他ならないでしょう」

だからこそ発言を阻ませたりはしないし絶ったりはしないと若葉は明言する


1、どうしたの? 急にリーダーらしいこと言っちゃって
2、上里さんに怒られちゃうからそういうのは駄目よ
3、それで? 貴女の推察が正しいとしてどう味方してくれるのかしら
4、そうね。正直、私はここに残るべきじゃなかったって思ってる


↓2

2

2


陽乃「上里さんに怒られちゃうからそういうのは駄目よ」

若葉「ひなたなら私の判断を後押ししてくれると思います」

陽乃「貴女は私の抑止力なのよ? それが、自ら私に肩入れするだなんて大社が黙っていないわ」

若葉「だとしても、貴女を独りにして良い理由にはならない」

陽乃「……」

若葉はひなたの名前を出してなお、陽乃のことを諦めようとしない。

暫定とはいえ、

リーダーという役目を与えられた責任を感じているのだとしたら立派だと、陽乃は思う。

けれど、本当にそれだけなのか。

これだけの決意があるのなら

ひなたが自分の後押ししてくれると信じているのなら

ひなたがお昼を一緒にどうかと誘った少し前の時間

今と同じくらいに踏み込もうとしても良かったのではないかと、陽乃は目を細めて

陽乃「私が何か企んでるかもしれないって、探りを入れてるんじゃないの?」

若葉「そんなつもりなんて毛頭ありませんよ」


若葉「助けに行きたくても白鳥を助けにはいけない。だから、せめてこの手の届く貴女だけは取りこぼしたくないんだ」

陽乃「なに、それ……」

若葉「私を拒まないで欲しい。独りにならないで欲しい」

若葉は希うように陽乃を見る。

食事よりも、陽乃のことを優先しようとしてくれているのを表すかのように

持ってきたうどんには一度も手を付けていない

陽乃は別に拒んではいない。

ただ、自分よりも優先すべき人達を優先して欲しいと思っているだけで

陽乃「貴女自分が何を言っているか本当に分かってるの?」

若葉「分かっている!」

陽乃「っ」

若葉「貴女が望むなら、私は貴女がここを出ていく協力をしたっていい」

若葉は膝上のトレイを落としかねない勢いで声を上げて

若葉「郡さんには友奈がいる。だから貴女には私……それでは駄目か?」

陽乃へと、手を差し出した


↓1コンマ判定 一桁

奇数 成功
偶数 失敗
ぞろ目 成功


陽乃「その申し出はありがたいのだけど……」

若葉「私では不服なのか?」

陽乃「問題はあるけれど乃木さんに不服はないわ」

そう答えた陽乃は自分の胸元を撫で下ろす。

ほんの少しだけ、嫌悪感が薄れたような気がした。

確証はないが、違和感がある。

もしもこれで違うのなら赤っ恥だが……それだけで済む。

陽乃「貴女、乃木さんじゃないでしょう?」

若葉「何をっ」

陽乃「乃木さんは真面目な人よ。私がお願いしたことを受けてなお、舞い戻るなんて出来ない」

若葉「どうしても――」

陽乃「それに……さっきからずっと貴女の力を使っているときと同じ感覚があるのよ。九尾」

若葉「………」

若葉は陽乃をじっと見つめて、そしておもむろにふっと笑うと

ずっと触らなかった端を手に取って、小鉢の中へと先を突っ込む

若葉「乱れのある今なら御しやすいと思ったが、なかなかどうして……難しいものだな」


陽乃「本物の乃木さんは?」

若葉「無論、上里ひなたと共に食堂にいる。これは妾の力によるまやかしだ」

陽乃「危害は加えていないのね?」

若葉「そういう契りがある」

うどんを箸で持ち上げた若葉はそれをまじまじと見つめて、ぽちゃんっと小鉢の中に落とす。

跳ねた汁がトレイに飛び散って僅かに若葉の服を汚すが、

そんなことはまるで気にせずに、苦笑する。

若葉の姿をしてはいるが、まるで若葉ではない

陽乃「どうしてこんなこと」

若葉「主様は妾にも真に心を開かぬ。であるならば、聞く者を用意せねばなるまいよ」

陽乃「だからって乃木さんの姿を借りるなんて――」

若葉「元より気など許せぬ者共の真偽不明瞭に今更思うことなどあるまい」

陽乃「………」

若葉「しかし案ずるな。妾は可能な限りに小娘を模倣したゆえ言葉の全てが偽りにはならぬ」

若葉に扮したままの九尾は、喉を鳴らす笑いを零す

それはもう、若葉の声ではなく九尾の声だった。

若葉「小娘の口から聞いてはおらぬだけのこと、心を覗き見たとでも笑えばよい」


1、二度とこんなことしないで
2、どうしてこんな嫌がらせするのよ
3、貴女、もしかしていつもこんなことしてるの?
4、だったら乃木さんである貴女が答えて。私がここにいて良いと思ってる?

↓2

4

4

4


ではここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から


コンマは九尾を見破れるか否かの判定だったのか…
でも確かに若葉が妙にイケメンだと思ったらよくよく見たらバレる前から違和感があったな


後期の若葉はともかく前期の若葉にこの対応は無理でしょ


やだ陽乃さん鋭い


では少しだけ

やったぜ


本当に若葉の見た目だけでなく思考も可能な限りに模倣しているのだろうかと、

陽乃は若葉に扮したままの九尾を見つめる

九尾の狐は、控えめに言っても性格が悪い。

今の陽乃が思い描く人間というものと比較してもだ。

だから陽乃をからかっている可能性も捨てきれない。

しかし――

陽乃「だったら乃木さんである貴女が答えて。私がここにいて良いと思ってる?」

若葉「無論ですよ久遠さん。私にとって貴女は勇者だ。蔑まれてなお護ることを放棄しない清さは私の中に羨望の念を絶やさない」

若葉――九尾は自分の胸元に手をあてがう。

そこに宿る想いに触れているかのように愁いを帯びた笑みを浮かべる九尾の瞳は陽乃を見てはいなかった。

九尾は陽乃の内心の葛藤を知っている。

だが、若葉はそれを知る由もない。

その情報の差を維持したままの九尾は陽乃へと目を向けて

若葉「みなの前を歩めるであろう勇者然としたその強かさを持つ貴女こそ、リーダーになって欲しいと思っているくらいだ」

陽乃「私が強かだなんて、馬鹿にしてるの?」

若葉「私は心折れていると思います。ひなたが支えてくれることで立ち直れるかもしれませんが、もしも孤独なら耐えられないと思いますよ」


若葉「私は久遠さんの心を知らない」

もしかしたら陰で悲しんでいるのかもしれないと若葉は首を振ると

それでも。と、上乗せして

若葉「こんな人々なんて守る価値などないと口にしないのは立派だと思います」

陽乃「……だから、私はここにいたほうが良いと?」

若葉「私はここにいて欲しいと思っていますが、それと同時にここから解放されて欲しいとも思っている。というのが正直な答えです」

若葉はそういうと、ようやく陽乃へと目を向けた。

その瞳には罪悪感と心苦しさが滲んでいて

陽乃と目が合えば、申し訳ないと言うかのように逸らしてしまう

若葉「人々が抱く過った敵愾心に、これ以上傷ついて欲しくない」

陽乃「……」

若葉「大社から貴女の素行に問題ないかという窺いが来るたび、街の人からあの娘は。という不安が聞こえるたび強く思う」

陽乃「貴女、どこまで――」

若葉「リーダーですから」

若葉は自嘲気味に鼻で笑って

若葉「だから、可能なら貴女に協力したいと思う。私だけでも貴女の味方でありたいと……思う」


若葉「郡さん達を説得できたとしても大社は貴女のその力に畏怖の念を抱き続ける」

陽乃「でしょうね……」

若葉「だから、ここにいて欲しいがいて欲しくない……答えに、なっていませんね」

若葉はそう、困ったように笑う。

若葉と言ってもこれまでの語りはすべて九尾によるもので、本当の乃木若葉の言葉ではない。

しかしながら、そのすべてではないにせよ若葉が心のうちに抱いている言葉も少なからずあることだろう

若葉は陽乃を勇者と言った。

陽乃が孤立していることを望ましく思っていないのも事実

人々や大社からの陽乃に対する不信感をリーダーとして強く感じているであろう若葉が、

陽乃をどうにかして救いたいと思ってくれている可能性も0ではない。

若葉「主様の親類縁者が贄とされたこと、それをした人間が世界に蔓延した憎悪の念の元凶であることも小娘は知らぬ」

陽乃「それを知ったら幻滅するかしら?」

若葉「知ればなおのこと憐れむであろうな。もちろん、だとしても害することを良しとはせぬであろうが」

陽乃「解放されて欲しい?」

若葉「命を賭けて守っても報われないだなんて、あんまりだろう?」


陽乃「乃木さんなのか貴女なのかどちらかにして貰えないかしら」

若葉「くふふっ……たとえ戦いの果てに尽きたとしても残る者共が価値無き命であれば徒死に同じよ」

若葉の顔で、若葉が浮かべないような笑みを浮かべる

命を賭けても報われないなんてあんまりだろう。とは、若葉の言葉だと陽乃は苦笑する。

九尾はそんなこと言わない。

陽乃「貴女にとっては、この世界に生きている人なんて護る価値無いんでしょうね」

若葉「いかにも。妾にとっては有象無象よ。護るのは主様であって妾ではない」

くつくつと笑う若葉は、

すっかり伸びたうどんの入った小鉢をトレイごと脇に避ける

若葉「手は貸す。しかし、妾は主様の望み以上に価値無き者共を救うことなどあり得ぬとゆめゆめ忘れぬでないぞ」

陽乃「あら……そういう助言をしてくれる優しさはあるのね」

若葉「難癖をつけられても困るからのう」

若葉はそういうと、体をだんだんと透過させて

若葉「主様がここを離れることも留まることも止めはせぬよ」

そう言い残して九尾が消え、残された二人分の伸び切ったうどん

陽乃はどうしたものかと、ため息をついた

√ 2018/07/30 夕 (丸亀城)

01~10 ひなた
21~30 友奈
61~70 若葉
81~90 球子


↓1のコンマ

※それ以外は通常


では本日はここまでとさせていただきます
明日は恐らくお休みをいただくかと思います

再開は明後日、可能であればお昼ごろから


早くみんなと仲良くなって陽乃に癒しを与えないとだな
あと時代が違うのもあるけど九尾の雰囲気今までとだいぶ変わってるなぁ


九尾にこんな特技があったなんて……


若葉は蔑まれていようと勇者である陽乃を羨望しつつ心配にも思ってるのか…もどかしいだろうなぁ

ここまで見る限り陽乃さんの性格って後の子孫と瓜二つな感じだな
もっと癖の強いイメージがあったから意外

今までの陽乃さんは最初は優しかったのが一族郎党皆殺しからの裏切りにあってるからね
母親が生きてる(ゾロ目のおかげ?)のがでかいよ

では少しずつ

√ 2018/07/30 夕 (丸亀城)


陽乃「ふっっ……はっ……たぁっ!」

夏ということもあって日が高い夕刻の頃、

まだまだ数を増やしつつあるセミの声がより活性化していく中に、陽乃の声が割り込む。

勇者たちはみんな夏休みの期間であろうと関係なく特訓を行う日々が続いている。

そこには陽乃も余ることなく組み込まれているわけだが、

しかしながら、陽乃は若葉達と違って独りでの特訓となっている。

というのも若葉の扱う刀や球子が扱う楯など

大社が科学や呪術的な研究方法によって少しでも解析することのできた勇者の力と違い、

陽乃の力は未知数なままだ。

大社の中には【バーテックスの力】ではないかという憶測も含まれており、

勇者達を再起不能にしてしまう恐れもあるとして、若葉達と組んでの特訓は許可されていないからだ。

陽乃「はっ……はふ……」

だから陽乃は丸亀城の天守裏でいつも一人で特訓を行っている。

道具の貸し出しは行われているのだが、陽乃の場合壊しかねないので基本的に借りることはなく

武術における踏み込みや姿勢、一つ一つの技の切り返しなどをより正確かつ素早く行う基礎練習に留めるしかない。


陽乃「……私、ここにいる意味あるの?」

学校の授業においては同室となっているものの

特訓は別、お昼も別

寮になっているところに関しては部屋が隣り合っているものの、

互いに行き来したりするような仲でもなく。

正直に言えば、陽乃は存在している意味がない。

陽乃「はぁ」

石垣に座り込んで汗を拭う

若葉に扮した九尾は「いて欲しいが解放されて欲しい」と語っていた。

あれが九尾による唆し程度のものである可能性もやはり捨てられない。

けれど、もしも若葉の本心に通ずる思いであるならば――と

考えてしまうと無碍にできるものではない。

陽乃「私の力は解析不能……ね」

きてたー


扱う陽乃自身もすべてを理解出来てはいない。

九尾曰く本領は幻を見せたりする幻惑系であると言っているが、

陽乃の攻撃の一つ一つには毒素が含まれている。

神を殺せるかはともかく、進化種でも屠れる程度の対神特効のそれは、

九尾は素知らぬ顔をしているが、

伝承の一つにある死後にばら撒かれた【殺生石】の逸話だろうと陽乃は考えている。

近づく者を害してしまう、猛毒の石。

それが能力として備わっていることで、

最も近くにいる陽乃にも不快感や嘔吐感と言った症状で現れ、

戦いが長引けば余計に苦しむことになってしまっているのではと推測する。

もちろん、これは大社にも勇者達にも話せることではない。

自分さえも害するほどの有毒な力を持っていると知られれば、陽乃の立場は悪くなる。という程度におさまらないからだ。

話していない現時点で扱いが悪いので、

九尾の狐という名前からそれを推測し、勇者を再起不能にする可能性を抱かれているのかもしれないが。


九尾はお昼に若葉を模倣していたが

あれもまた、人に化けるとされた九尾の力

性格や言動に関しては、日々若葉達を影の中から監視し取り込んだのだろう。

陽乃「ほんと……考えれば考えるほど……」

九尾の力は、どちらかと言えば対人特化である。

確かに有毒な能力もあるけれど、どちらかと言えば人を殺す毒素だ。

幻惑に関しても化かすのに関しても

目があるのか定かではないあの化け物たちというよりは、

人間に対して作用させる目的があると考えられる。

そう考えると、

九尾は復讐するのにはうってつけのことごとく危険な存在に思える。

幻などで偽る力を使えば、誰も陽乃が手を下したなんて思わない

そして、持ち主である陽乃でさえじわじわと苦しむ毒で、死を望むほどの苦痛を与えられるかもしれない

陽乃「――っ」

首を振って、考えを振り払う

それはいけない。

それをやってしまったら――母に合わせる顔がない。



1、しばらく外にいる
2、寄宿舎に戻る
3、九尾に声をかける
4、もう少しだけ特訓を続ける

↓2

1

2


01~10 ひなた
11~20 杏
21~30 友奈
31~40 千景
41~50 若葉
51~60 球子

81~90 大社

↓1のコンマ

※ぞろ目なら任意

いきなりモメそうな……


まだ日はそれなりに高いがそろそろもどっても良い頃だろうと寄宿舎へと向かうと、

その道の途中で、出会ってしまった。

勇者の中でもっとも険悪な相手と。

千景「……」

陽乃「……」

あの日以降、千景は陽乃に積極的に声をかけるような間柄ではなくなった。

けれど、陽乃を見えないもののように扱ってくれたりはせず

陽乃が居ればその目は僅かでもその姿を認めて、嫌悪感を宿したような視線を送ってくる。

千景がそれを意識して行っているのかどうかは分からないが、

少なくとも、陽乃にとっては居心地の良いものではない。

陽乃「郡さん、お疲れ様」

千景「……貴女も」

極力、明るく話しかけてみてみるものの

千景は表情を変えず、一瞥のみに留めて歩いていく

陽乃とは話す気がないというのが、強く感じられた


陽乃「高嶋さんは?」

千景「……いない、けど……?」

陽乃「それはそうだけど……」

どうして一緒に居ないのかを聞きたかったのだが、

友奈とて、一日中付き添っているわけではない。

鍛錬のあとでもあるし、まだ鍛錬中の友奈を置いてきたか、

もう少し続けるから先に帰っていいと言われたかのどちらかだろうか。

陽乃「………」

もしかしたら、昼間のように九尾が扮している可能性もある。

今は不快感を感じていないので

九尾の力が行使されていないとみて良いのだけれど――

陽乃「まだ、鍛錬中?」

千景「……用事があるって」

陽乃「そうなのね」

千景「……なに? 信じられないなら……確かめに行けばいいでしょう?」


陽乃「待って私は別に……」

千景「否定しないで……分かるの。貴女が私をどういう目で見ているかってことくらい」

千景は陽乃へと振り返り、その顔をあげて陽乃を見る

眉はつり上がっていて、怒りを感じる瞳は鋭くなっている。

陽乃「それは――」

千景「………」

陽乃「ちょ、ちょっと!」

千景は鍛錬で使っているであろう自分の武器を模した大鎌の先端を陽乃へと向ける

距離があるため、振りぬいても陽乃に当たることはないが、

戦う意思を示すそれには、陽乃も慌てて後に下がってしまう。

千景「これなら貴女を殺す心配はないわ」

陽乃「そんなこと言われたって……」

陽乃が勝とうが負けようが、

陽乃に力を貸している九尾がきっと黙っていてくれないだろう。

千景が殺す心配がなくなっても、千景を【殺してしまう】心配はなくならない。


1、確かに訝しんだけど、違うのよ……似た人がいたからつい
2、いい加減にして!
3、私は素手でだって貴女を殺せるのよ? 死にたいの?
4、良いわ。相手してあげる……その方が気も晴れるでしょ?



↓2

ksk

4


陽乃「……はぁ」

ここで勇者である千景を傷つけるのは、得策とは言えない

千景から言い出したことであるとしても、

千景がどれだけのダメージを負うか次第で、陽乃の立場は非常に悪くなることだろう

けれど、今以上に悪い扱いなどあるのだろうか。

なにより、

ここで千景に自分との力量差―あるのかは知らない―を示しておいた方が良い。

陽乃が上なら、千景もあまり威嚇するようなことはしてこなくなるだろうし

千景が上なら、陽乃は別に警戒する必要のない相手として扱って貰えると思う。

後者はとても情けなく思うが、

千景に警戒させないための手段としては、ありではある。

陽乃「良いわ。相手してあげる……その方が気も晴れるでしょ?」

千景「……余裕……なのね」

陽乃「余裕なんてないけれど、でも、そう思わない?」


陽乃は何度か握り拳を作っては開いて、手の感覚に問題が無いことを確認する

千景は木製の大鎌

普通の大鎌の重さを知らないが、

場合によっては木製の方が重いはずだけれど、問題はなさそうに見える

陽乃「郡さんは勇者の力を使っているの?」

千景「使っているわけ……ないでしょう?」

陽乃「普段から使えないの?」

千景「寧ろ……貴女は使っているの?」

陽乃「使おうと思えばいつだって使えるものじゃない?」

千景「そう……」

陽乃の場合、使いたくなくても使われているのが真実。

だが、自分の意思で使おうと思った時にすぐ使うことが出来るのも本当のことだ

特に、身体強化に関しては常時行われていると言ってもいい

しかし、千景が使っていないというのが事実なら

千景には勇者としての身体強化が行われていないということで

つまり、今の陽乃が本気の拳一発でも当ててしまったら――

陽乃「あー……」

勇者が一人死ぬことになる。


陽乃「郡さん、勇者の力を使って貰ってもいい?」

千景「素の状態じゃ勝てる自信がないの……?」

陽乃「そういうわけじゃないけど、殺したくないから」

千景「そういうために使う力ではないと思うのだけど」

陽乃は、九尾からの力の供給を断絶できない

力の制御はもちろんできているが、

それはある意味では、制御させて貰っている。というのが正しい。

九尾は陽乃の意思に関係なく力を使い、反映させられる。

陽乃が身体強化をしなくていいと言っても

千景に攻撃が当たる瞬間に作用させられたら千景の体が飛ぶことになる。

『くふふっ』

陽乃「邪魔しないで」

千景「……なに?」

陽乃「ううん、なんでも……勇者としての力、どうしても使えない?」

千景「今は……無理ね」



1、なら明日の朝、使える準備をして戦いましょう
2、じゃぁいいわ。素の状態で相手をしましょうか
3、すぐに使えない状態なんて……貴女、3年前のこと忘れたの?
4、勇者としての力がない人なんて相手をする意味がないわ


↓2

1

1


陽乃「なら明日の朝、使える準備をして戦いましょう」

千景「明日……?」

陽乃「私は郡さんと違っていつでも力を使えるのよ。今だって、本気で殴ったら殺せるくらいに」

陽乃はそう言って一気に踏み込む

地面の砂利がこすれ合う感触が靴裏から伝わって――

陽乃「ふっ!」

地面を蹴り飛ばす。

ほんの一瞬で距離を詰めた陽乃は、固く握った左手の拳を千景の顔の前で止める

跳ね上げられた砂粒が近くの木に衝突して音を立て

巻き起こった風が千景の長い髪を舞い上げていく

千景「……っ」

普段は隠れがちな千景の左目には、拳が大きく映り……また髪に隠れる

元々そこまでの距離はなかった

けれど、一瞬で詰められるほどの距離ではなかったはずなのに

躱す余裕もないほどに早く拳をつき向けられてしまったことに、千景は息を飲む


陽乃「……ね?」

千景「分かったわ……明日の朝……」

千景は少し後ろに下がって大鎌を肩に担ぐと

やや不機嫌そうにそう言って、陽乃へと背中を向ける

千景の目に、陽乃の姿は捉えられていなかった。

千景が勇者としての力で身体能力を補ったとして、

陽乃の速さに対抗できるのかと言えば、微妙なところである。

若葉は、その素早い動きに合わせて瞬間的に刀を抜いて切り捨てる早業を持っているが、

千景にはそれがない。

陽乃「……やらかしたわね」

『くふふっ、良いではないか。ただ人を屠ったところで意味もなかろう』

陽乃「勇者を殺しても悪い意味しかないわよ」

『そのつもりであろう?』

陽乃「そんなわけ、ないじゃない……郡さんはあの人たちとは違うんだから」


千景も陽乃が死ねば助かるのではないかと言ったが、

それは彼らの流布した情報を知ってしまったからだ。

実際に陽乃に手を下そうとしたことはないし

陽乃やその母親を生贄に差し出したなんてことももちろんない。

だから、陽乃には千景を傷つける理由もなかった

陽乃「郡さんはあくまで、今の関係を何とかするためでしかないわ」

『ふむ……四肢の骨を砕くかや?』

陽乃「止めてよ怖い」

『……妾としては、害する人間共にでさえ手を下さず笑みを見せている主様の方が恐ろしく思うがのう』

陽乃「………」

『よもや、人間に全幅の信頼を置いている。などとは言うまい?』

陽乃「ええ、言わないわ」

千景の姿が見えなくなるころに、

陽乃は千景と同じ寄宿舎の方に向かう

人を信じるのは難しい

けれど、仲間でさえ信じないのはいかがなものかと、陽乃は少し思っていた。

√ 2018/07/30 夜 (丸亀城)

21~30 友奈
51~60 若葉
91~00 ひなた


↓1のコンマ

※それ以外は通常


では少し中断します。
再開は21時半ごろからを予定しています。

一旦乙


ではもう少しだけ


√ 2018/07/30 夜 (寄宿舎)


夜、陽乃は自分の部屋のベッドで横になっていた。

朝や昼なら街に下りないという条件は付いているものの、

外で過ごしていることも出来るが、

夜ともなると流石に外出しないようにと厳命を下されている

煩くなかろうと隣の部屋の音が聞こえてくるなんて壁の薄さはないが、

玄関としているドアを開けたりしたら流石に聞こえてしまう

陽乃「土居さんと伊予島さんは相変わらずね」

窓を開けてみると、

恐らくは杏の部屋から二人の声が聞こえてくる

大騒ぎというわけではないが、窓を開けているのかもしれない。

陽乃「……明日、郡さんと戦うってみんな知っているのかしら」


陽乃はまだ話していないし、

恐らくきっと千景はそういうことを話すような人ではない

そうなると、完全に黙っての模擬戦になってしまうわけだが

それはさすがに許されないので、明日の朝か後で連絡を入れておくべきだろうか。

窓を開けておけば若葉の悲鳴が聞けるかもしれない。

陽乃「それにしても……早まったかな……」

はっきりさせるには良いとは思うけれど

第三者―九尾以外―を挟まないあのやり取りは聊か早計だったかもしれないと

陽乃は今更思ってしまう。

千景のことを気に喰わなかったなどではないし、

先に武器を向けてきたのは千景の方だ

だとしても――

陽乃「頭に血が上っちゃったかな……」

少し、嫌な感じがしてしまう。



1、九尾を呼ぶ
2、若葉に模擬戦の連絡
3、エゴサーチ
4、少しだけ九尾の力を使ってみる


↓2

2

2


陽乃「乃木さんに連絡しておこうかしら」

今更模擬戦を取りやめることも出来ないわけではないが、

それはそれでまた千景との関係に問題が生じるだろう。

だから後戻りもできないと考えた陽乃は、

支給されているスマホを手に取って、連絡用のツールを選択する。

支給されたスマホにはいくつかのアプリがアンインストール不可で追加されているが、

その一つに、連絡ツールがある。

そこには陽乃を含めた勇者全員と、

巫女の代表的な立場として近くにいるひなたが登録されている

もちろん、その関係者も削除できないようにもされている。

陽乃「乃木さん……あぁ」

以前千景と険悪になった後にフォローのために会いに来てくれたのだが、

若葉と陽乃のやり取りはその時の連絡が最後になっていた。

陽乃「結局、仲違いしたままなのよね」

それどころか、明日の朝に模擬戦を行うことになった。

乃木さんに少し申し訳ないなと、陽乃は苦笑する


一応、「申し訳ないのだけど……」という一文を入れてから、

千景と模擬戦を行うことを付け加えて若葉へと連絡を行う。

陽乃「さて……」

スマホを布団の上に投げて、目を閉じる。

耳を澄ませてみると、

夏のほんのり青っぽい匂いをより強く感じる

夜も元気な虫たちの鳴き声、

姿さえ見えなければ風情を感じる穏やかな時間の流れ

そして――

「なにぃぃぃぃッ!!!?」

聞き覚えのある悲鳴

窓を開ける音

「なんだなんだぁっ!?」

「今の声若葉ちゃん?」

「若葉ちゃん? 若葉ちゃん!」

球子の声と、友奈の声

そしてきっと駆け付けたであろうひなたの声。

陽乃は思わず苦笑して、

ベッドの上で震えるスマホを手に取る

表示はもちろん、乃木若葉だった。


では途中ですがここまでとさせていただきます
明日も可能であればお昼ごろから


この殴りあいでなんとか関係改善のきっかけになるといいけど…
あと今回の若葉は色々と気苦労が絶えなさそう


まあ久遠さんも夏凜とどつきあってたしな

では少しずつ


若葉『な、なにが起きてそうなったんですか!?』

陽乃「顔合わせて喧嘩を売られて買った……かな?」

若葉『なん゛……っ』

若葉の女の子らしからぬ濁った声が途切れて

電話の奥で、若葉の声ではなくひなたの宥めるような声が聞こえる

目を離している間に、

要注意人物二人が出会って模擬戦を行う話になっているのだから

リーダーである若葉の頭は相当痛いのだろうと、

陽乃はごめんなさいと手を合わせることだけしておく。

陽乃「白黒つけた方が良いかなと思ったの」

若葉『なにもいきなり模擬戦なんて……しかも勇者の力を使って』

陽乃「勇者としての実力を示しあうものだから、そこは譲れないの」

若葉『むぅ……』

本当は殺しかねないからなのだが

流石に言うわけにはいかないので、誤魔化す

きてたか


若葉『正直なところ、勇者の力を使っての私闘は避けて頂きたいと思っています』

陽乃「問題しか起こらないものね」

若葉『特に、郡さんから切り出したのだとしても原因は久遠さんにあるとされてしまう』

陽乃「事実だし」

若葉『それはそうですが……』

聞こえないように配慮したのかもしれないが、

離れた若葉の口から零れたため息が聞こえてしまう。

九尾の力を借りて以降、

そういった部分も鋭くなったような気がするのは気のせいなのかなと、陽乃は小さく笑みを浮かべる

陽乃「大社としては、やめて欲しいのかしら。それとも、叩きのめして欲しいのかしら」

ひなた『大社にはまだ伝わっていないと思いますので、分かりかねます』

陽乃「そっか」

ひなた『ただ、久遠さんの力が未知数なので怖いですね』

若葉『ひなた……』

ひなた『千景さんのこと、本当に害せずに済みますか?』

陽乃「勇者の力を使っていれば大丈夫だと思うわ」

ひなた『それが絶対かどうかが問題なんです』


ひなた『現状、久遠さんのお力は勇者にも効果的である。という可能性も考えられています』

陽乃「だからこそ、乃木さんに連絡をしたのよ」

若葉『場合によっては介入しろということですか?』

陽乃「危ないと思ったら止めて欲しいの」

若葉『それは……』

陽乃「郡さんだってただの人の力ではないから、手加減して叩けるほど弱い人だとは思えない」

ひなた『本気を出すから、自分では止められないというのはあまりにも危険では?』

陽乃「ぐうの音も出ないわね」

本気を出そうが出すまいが

九尾が裏切った瞬間に手を離れるので、それ以上に質が悪い

別の神様に切り替えられるなら切り替えたいくらいには、理不尽である。

もっとも、神々とはそういうものなのだろうけれど。

若葉『もしあれなら、私が郡さんと話して模擬戦の約束をなかったことにすることも出来ますが』

ひなた『それは難しいと思いますよ若葉ちゃん』

陽乃「確実に郡さんからあなたへの評価が悪くなるわ」

若葉『ぐ……』


若葉『しかし、模擬戦をやらせるなんてあまりにも危険だ』

ひなた『そうですねぇ……』

陽乃「でも蟠りをどうにかするためにも、ここで一発殴り合っておきたいじゃない?」

若葉『久遠さんっ』

陽乃「冗談よ。ごめんなさい」

模擬戦が言われている通り危険だと陽乃も分かっている。

しかし千景もやる気になっているし、

今の陽乃と千景の関係性を考えればはっきりするための方法としては必要な事でもある。

それは、若葉とひなたも分かっている。

だとしても――と、言うほどに陽乃の力が未知数なのだ

ひなた『若葉ちゃんがちゃんと見張って、絶対に止められるのなら私は仕方がないと思いますよ』

若葉『結局私の裁量なのか……?』



1、嫌なら高嶋さんに頼むけど……
2、もしあれなら、乃木さんが代行して模擬戦する?
3、必要なのよ。乃木さん
4、仲間内でまでごたごたしてるの、面倒くさいのよ


↓2

3

4


陽乃「仲間内でまでごたごたしてるの、面倒くさいのよ」

ひなた『え?』

陽乃「あっ、えぇと……仲間同士でいつまでもいがみ合ってるのも。ね?」

ひなた『そう……ですね』

言葉が途切れて、少しだけ鎮まる。

外から聞こえてきていた虫の声も幻聴だったかのように無音で

さっきまで入り込んできていた夏の空気感さえも薄い

陽乃はスマホを耳から離して、胸を押さえる

どきどきとしているのが、伝わってくる

さっきのは間違いなく自分の言葉だった

自分で――

若葉『その考えには、私も同意です』

陽乃「っ……」

若葉『今は襲撃がないだけでいつ来るか分からない。なによりも長野で頑張っている白鳥に失礼だと思う』

若葉はそういうと、少し間をおいて

若葉『彼女が護ってくれている今、その大切な時間を仲間で睨み合って潰すなんて最低だろう……』


若葉『だから、私はその戦いを見届けようと思います』

場合によっては介入を辞さない。と、

若葉はしっかりと付け加えて、宣言する

若葉『勇者のリーダーとして、承認します』

陽乃「……迷惑をかけるわね」

若葉『いえ、自分が不甲斐ないせいでそうせざるを得なくなっただけです。悪いのは私も同じでしょう』

本当に、リーダーには不向きだな。

そんな呟きが聞こえて、ひなたの切なげな声が聞こえた。

若葉『私に出来るのはせいぜいが責任を取ることのみ……久遠さんが真に勇者と認められてさえいれば』

陽乃「でも認められていない」

若葉『そうですが――』

陽乃「ですがも何も、そうなのよ」

若葉の顔が見えなくても

昼間のように口惜しんでいるというのが、何となく想像できる陽乃は

ベッドの上で膝を抱えて、目を瞑る

それは正しい。

自分の中には人々への憎悪が渦巻いている

そしてそれは時折顔を覗かせていて、虎視眈々と機会を窺っているようにも思える。

そんな人が真に勇者であるはずがなく

そんな人がリーダーとして先頭に立つべきではないと、陽乃は思う。


陽乃「私は、大社も郡さん達も街の人達も認めがたい存在なの」

若葉『力が未知数というだけで――』

陽乃「それ以上の理由があるのを、見て見ぬふりは駄目」

言いがかり……だとしても、それは広がりきった毒である。

火のないところに煙は立たず、久遠家が人柱の家系であることは母も語る真実。

若葉がそうではないと思っていても

無視して良い問題ではないのだ。

ひなた『久遠さん、いつかきっと分かり合える日が来ますよ』

陽乃「……本当に?」

本当にそんな日が来る?

来るとは思えない

ひなたは陽乃達が生贄として放り出されていたことを知らない。

そのせいで、大勢の親族の命が失われたことを知らない。

その怒りと憎しみがあることを――

↓1コンマ判定 一桁

0147 分岐

※それ以外は通常


陽乃は首を振って、考えを払う。

ひなたに怒鳴ったって何かが変わるわけではない

ただの八つ当たりにしかならないだろう。

陽乃「そうだと、良いけど」

ひなた『……本当、久遠さんのことを分かって貰えたらいいのですが』

若葉『そうだな……久遠さん。明日の模擬戦は了承しました。ただ、応援は出来ません』

陽乃「肩入れしちゃだめだものね」

陽乃は笑い交じりにそう言って、スマホを手放す。

スピーカーにしているので、若葉の声は聞こえる

若葉『どうか、深刻な怪我だけはしないようにお願いします』

陽乃「駄目でしょう? 怪我をさせないでください。じゃないと」

ひなた『このくらいはオッケーです。千景さんにも明日、改めて同じように言いますから』

陽乃「そう……じゃぁ、申し訳ないけれど宜しくね」

若葉『はい。おやすみなさい。久遠さん』

陽乃「ええ、乃木さんと上里さんもおやすみなさい。仲良くね」

ひなた『ふふふっ、お任せくださいっ』

ちょっとだけ弾んだひなたの声に、陽乃は微笑んで電話を切る。


陽乃「はぁ……」

スマホを充電器に挿して、脇に置く

人々と分かり合えるとは思えない。

向こうが手のひらを返してきたとして、受け入れられる気がしない。

きっと、悍ましい何かに見えることだろうと、陽乃は顔を顰めた。

勝手に人柱にされ

命懸けで救える人を救い、助かって戻ってきたら恨まれて、悪意を向けられて

仲間であるはずの勇者に睨まれ

大社という組織に敵視される立場になってしまって

陽乃「駄目……だって、分かってるけど」

九尾の言葉が分かってしまう。

救う価値などあるのかと

命を賭ける意味があるのかと

陽乃「もう、寝た方が良さそうね」

これ以上は悪いことを考えてしまいそうで

陽乃は電気を消して、眠ることにした


1日のまとめ


・ 乃木若葉 .: 交流有(長野、勇者優先、模擬戦)
・上里ひなた : 交流有(長野、勇者優先、苛立ち)
・ 高嶋友奈 .: 交流無()
・ 土居球子 .: 交流無()
・ 伊予島杏 .: 交流無()
・   郡千景 .: 交流有(模擬戦)
・    九尾 .: 交流有(処分拒絶、看破、存在の必要性)


√ 2018/07/30 まとめ


 乃木若葉との.絆 55→57(普通)
上里ひなたとの絆 55→56(普通)
 高嶋友奈との.絆 50→50(普通)
 土居球子との.絆 40→40(普通)
 伊予島杏との.絆 45→45(普通)
   郡千景との.絆 25→24(悪い)
    九尾との.絆 60→60(普通)

千景だけ絆の初期値が半分か…厳しいな


√ 2018/07/31 朝 ()

01~10 九尾
21~30 友奈
31~40 千景
41~50 若葉 ひなた
81~90 球子

↓1のコンマ


√ 2018/07/31 朝 (寄宿舎)


いよいよ、千景との決戦の日がやって来た

やってきたと言っても昨日の今日なので緊張していたわけでもない。

普通に起きて、軽く体を伸ばして

自分の身体が身長くらいしか伸びしろがないことにちょっぴり苦笑いをしながら準備をする。

いつもと違うと言えば、朝から動きやすい恰好をしている点と

バンテージを手に巻いていることくらいだ

陽乃「問題は、なさそうね」

何度か握ってみても痛みなどはなく状態良好

二度ほど素振りをしてみても、伸びる痛みなどは感じないし、体の重さもない。

軽く足を踏み込ませてみても

ひきつったり、痛みが走ったりもしない。

仲間内の戦いだというのに、これでもかというほどに万全だった


陽乃「手加減、出来るかしら」

ひなたにはああ言ったものの、

陽乃は手加減できるのならしたほうが良いと考えていた。

九尾の力が暴発する可能性があることも考えると、

思い切り振りぬくような本気ではなく、寸止めするような感覚でやっていけば

万が一何かがあっても抑えられると思っているからだ。

陽乃「……」

九尾の力がもし仮に……本当に勇者の力さえも討ち果たしてしまうものであるならば、

この戦い、陽乃は勝つべきではない。

勝てば陽乃の危険性は証明され、大社からの扱いはより厳しいものになる。

勇者達も、陽乃を邪険にすることはないと思うが

畏れを抱かせることになる。

ごたごたした蟠りが畏れ一本道になるので、楽ではあるが。


1、九尾に余計なことしないようにとくぎを刺す
2、勝つべきか負けるべきか問う
3、自分は大丈夫かと問う
4、模擬戦の場所に向かう

↓2

千景下がってるじゃん…安価なら上か下

1


陽乃「九尾、どうせ聞いているんでしょう?」

声をかけると九尾の力が微かに揺らぐ

傍に居るはずだが返事はなく、しかし聞いてはいるということだろう。

陽乃「お願いだから余計なことはしないで頂戴」

幻惑の力や、力を使っていなくても強制的に力を使わせたりと

陽乃の手を離れた行使をしないようにと、釘をさす

陽乃「真剣なやり取りだから、邪魔をされたくないし……何より郡さんを殺したくない」

『くっくっくっ、処分するのじゃろう?』

陽乃「違うって言ってるでしょう?」

『じゃが煩わしいと……主様はそう思うておるのじゃろう?』

九尾の声が頭に響く

甲高く感じる九尾の声は心までも震わせるようなもので

しかし、それは喜ばしいものではない。

陽乃「私はっ」

『自分に手を出せばこうなると、敵意を抱いた末路を見せてやればよい』

陽乃「っ……」

『命を奪わずとも、しばし動けぬようにしてやればよかろう』


陽乃「入院させるなんてそんなの……駄目よ」

『小娘一人欠けようが主様ならば容易に補えるであろう?』

陽乃「そんなことわからないじゃない」

『主様が真に力を使えば容易な事よ。無論、相応の代価を要するじゃろうが問題はあるまい』

陽乃「代価……?」

真に力を使うとはどういうことなのか

それに支払わなければならない代価とは何なのか

謎が深まるばかりの九尾は、喉を鳴らす

『四肢を砕いて傀儡のように捨ててしまえ。主様を悪とする有象無象に己の威を示せ』

陽乃「それこそ私が悪者になっちゃうじゃない」

『人間自らが浅はかであることを知らしめるには許容できよう』

出来るわけがない。

そう返す前に九尾は続けて

『憎み疎み害あるものとしていた主様がただ人であり、自らが狐の尾を踏んだことを生涯悔やませてやれば良い』

陽乃「そのために、郡さんを傷つけろって言うの?」

『人間が勇者とやらに求める尊き犠牲を出すだけのこと。バーテックスが行うか主様が行うかの違いでしかなかろう?』


陽乃「ふざけないで!」

『ふむ……』

陽乃「尊い犠牲? それだけの違い? そんなわけないじゃない……」

九尾はからかっているわけではない。

本気でそう考えて言葉にしている。

九尾にとっては勇者である千景も人間の一人……有象無象の中の一つにすぎず

陽乃の障害を排除するための道具の一つにしか考えていないのだ。

勇者が一人欠けてしまう

そんなことは陽乃が生きていくうえでどうにでもなる些細な事象であると切り捨ててさえいる。

昨日、千景が生きていたほうが良いと言ってもなお……だ。

陽乃「私は一応、勇者とされているのよ……? ただでさえ悪者扱いされているのよ?」

『うむ。ゆえに、それが誤りであったことを示すのじゃろう?』

陽乃「貴女が言っていることをしてしまったら、私は乃木さん達にまで化け物扱いされるのよっ」

『手に余る存在を高位とし崇め、敬うこと。あるいは人智を超えたものとして忌避することは人間の生存本能であろう?』

陽乃「貴女……っ」

『問題があるかや? 軽んじられている立場を明確にした結果抱かれる畏れは正しかろう』

九尾は心から困惑しているかのように、息を吐く

『それが小娘共が乖離する要因となったところで害はあるまいよ。大社なぞ、小娘共が黙ればどうにもできまい』

それの何が問題なのか

それの何がいけないのか

九尾はまるで理解が出来ないと問うかのように、零した。


1、私は仲良くしたいの
2、駄目ね……貴女と通じ合える気がしない
3、それで得られる自由に意味はないわ
4、もういい……邪魔だけはしないで
5、そんなことをしたらお母さんが護って貰えなくなる。それだけは駄目


↓2

1

3


では少し中断いたします。
再開は21時頃を予定しています

一旦乙
西暦時代の九尾は尖りに尖っていらっしゃる…


ではもう少しだけ


陽乃「それで得られる得られる自由に意味はないわ」

『ほう?』

陽乃「ただ恐れが畏れとなって、バーテックスと同じような扱いになるだけでしょう?」

勇者でも屠ることの出来てしまう危険な力

それを持つ陽乃の気を悪くしてはいけないと、よそよそしくなって

自由にされるというよりは、放置されてしまうというのが正しいだろう

与えられるのは孤独感

陽乃が日々、独りでいようとしている今を突き詰めるのと同じ結果に至る

戦いが始まれば、陽乃の力は嫌でも知られていくのだから。

それでは何も変わらない。意味がない。

陽乃「そんな自由なら、郡さんを傷つけなくたって手に入る」

『それが人間にも向けられるということを示さねば、主様に首輪をつけることを謀るやもしれぬ』

陽乃「首輪って、私は――」

『化け物。と、人間は考えるのであろう?』

陽乃「ええ、そう。そんな化け物を手懐けようだなんて考えると思う?」

『そのための手段があるならば人間は手を出す。愚かよのう? 己らに勝機があるなどと夢幻に手を伸ばす』

九尾は笑う

深く……深く、心の底から嘲り笑う


『主様は命を賭しても救う決意を抱かせる母上がおるのであろう? 人の手に落ちれば命を落とす儚きものを、守らせておるのだろう?』

陽乃「お母さんを……人質にするって。そんな、流石にそんなこと……」

『人間を、主様は信じるに値すると本気で考えられるような甘露に溺れているのかや?』

くつくつと、九尾は喉を鳴らして

『人間は主様らの命を持って救われると信ずるほどには、愚者であろう?』

陽乃「だと、しても……私が、郡さんを傷つけたところで得られる自由なんて」

『己らを害すると知り得た以上、主様を不快にさせる行いは出来ぬであろう』

仲間である勇者ですら、

暫く入院が必要なほどに打ちのめすこと

勇者ですら対抗しきれないほどに凶悪な力を持っていること

それを知ってしまったら、

人質が手元にあるという条件はむしろ悪手でしかないと悟るはずだろうと九尾は言う。

『至る先が同一であると言うならば、より利のある結果を得られるよう行動すべきではないのかや?』

陽乃「……ダメよ。意味がない。私が望んでる将来が遠くなってしまうだけだわ」

『煩わしいと、思うておっても?』

陽乃「私はそんなこと思ってないっ」

『ふむ……主様がそう言うのであればそうなのであろうな』

言葉ではそう言いつつ、

まったくそう思っていないといった声で九尾は吐き捨てる

呆れてしまったようにも感じられるその声は、陽乃の中に燻っている感情に触れた


陽乃「知ったようなこと……言ってくれちゃって」

九尾は陽乃の心にまで入り込んでいないものの、常に傍に居る。

陽乃が言葉にしたことはもちろん、

全てを察していないと陽乃は信じたいが、口にしていないことも。

陽乃「郡さんを傷つけるなんて……」

九尾の言っている通りにしたら、言っている通りになるだろうか?

なる可能性は非常に高い

陽乃の力が勇者でも討てるのであれば、それは神樹様でさえも討てる可能性まで出てくる

陽乃を刺激することで神樹様を討たれる可能性を考えれば

母親の身を護り、絶対に害さない方が得策であると大社は考えてくれることだろう

けれどそれを実行してしまったら、終わりだ

陽乃は本当に化け物になってしまう

陽乃「……駄目よ。それだけは」

何度か握り拳を作って、大きく息を吐く

どきどきとする胸を押さえて、首を振る

これから千景との模擬戦を行わなければならない

なのに、千景を傷つけるか否かを考えてしまう

それは戦うには相応しくなくて、けれど今更取りやめることも出来なくて

陽乃は模擬戦を行うべく、千景たちがいるであろう場所に向かうことにした


では途中ですがここまでとさせていただきます
明日は可能であれば通常時間から

千景との模擬戦、勝敗分岐


信じてやりたいけど九尾が本当に手を出さないでくれるだろうか…
陽乃さんにもメンタルケアしてくれそうな相方が欲しいなぁ


九尾がやベーやつ過ぎて辛い神世紀の300年間は重要だったんだな…こんなの病むわ


はるのんがどんどん闇堕ちしてしまう……


では少しだけ

かもーん


元々用意された鍛練場を今回は模擬戦の場として使用することになっている。

朝からということもあり球子や友奈たちの姿はなく

見届けと状況によっては介入を行う若葉とひなたのほかには、千景と陽乃しかいなかった。

千景「……来たのね」

陽乃「逃げるわけにもいかないじゃない?」

自分から今日の朝に仕切りなおしを要求した以上、

やっぱり今日もやめましょう

そもそも、模擬戦なんてやめましょう

そんなことを言えるわけがない。

陽乃「郡さんは大丈夫? 早起きさせちゃわなかった?」

千景「心配無用よ」

陽乃「そう……」

千景は昨日と変わらない様子で答える。

持っていた木製の大鎌は畳むことも出来る大鎌へと変わっていて、

着ているのは陽乃にも支給されているジャージだ。

千景「貴女……その格好は正気?」

陽乃「甲冑着るわけにもいかないじゃない?」

若葉「それはそうですが、郡さんの大鎌に対してその恰好は少々……」

陽乃「バーテックスとの戦いでそんなことを気にする必要があるとでも思ってるの?」


若葉の心配してくれる気持ちも悪いわけではない。

しかし三年前、生身で戦い満身創痍へとなり果てた経験のある陽乃にとってはどうでもいいことだった。

若いのだから、女の子なのだから

無理や無茶から遠ざけられる日々から一転して、死地へと投げ出された。

陽乃「この体が切り刻まれたって関係ない。死ななければ問題はないもの」

生き残るためなら体がどれだけ傷つこうとも関係はないし、

腕の一本足の一本失おうと生きてさえいればそれでいい。

千景の大鎌は確かに対人において非常に危険な代物ではあるが、

切り刻まれようと切り落とされなければ許容範囲である。

陽乃「私だって鍛えているし勇者としての力も含めれば内臓の一つや二つは殴り潰せると思うわ」

若葉「久遠さん……」

陽乃「ぁっ……あぁ、ふふっ、例えの話ね。例えの」

若葉の焦りを感じて、陽乃は慌てて笑みを浮かべる。

過去のことを思い返したせいか

それとも先ほどまでの九尾との話があってか

陽乃は【それをするつもりであるかのように】語ってしまった。

陽乃「とにかく私は切り落とされなければセーフ、郡さんは殴られたら内側に障害が残るかもしれないって思っておいて」


ひなた「セーフ? え?」

若葉「ひなた……」

特に、顔を殴り飛ばしてしまうと大変な事になる可能性が高い。

勇者としての加護によって身体強化のみならず保護機能があるならどうにかなるかもしれないが、

無ければ一撃で意識を持っていかれる

それはもちろん、陽乃であっても首を落とされたら流石に死ぬ。

それは分かっているようで

若葉「両者ともに可能な限り喉や頭部、心臓などの致命的な攻撃は避けてくれ」

千景「胸でも刺さなければいいのね?」

若葉「あぁ、それは……」

陽乃「構わないわ」

若葉「勝敗は、相手への攻撃のヒットを得点として3点先取とする」

例外として気絶させた場合も勝利とし

危険と判断した場合には審判の介入及び制止によって、中断とする

中断の際の勝敗は、中断時点での得点によって定める

これによって、引き分けもある

ひなた「久遠さん、武器の有無は大きいハンデです。本当に良いのですか?」

陽乃「武器なしに郡さんが勇者の力を使えるとしても、近接戦では私が有利だもの。ちょうどいいわ」

ひなた「……分かりました。了承はしたくありませんが、若葉ちゃん。本当に、本当に宜しくお願いしますね。千景さん、久遠さんもです」

ひなたの悲痛さの感じられる願いが鍛練場に響く


1、先攻を譲る
2、先手を打つ

↓2

※同時判定
0 00 最悪
1、7、4 防ぐ
3、8、6 回避
5、9、2 命中

1

1


陽乃「ふぅ……」

息を吐いて、心を落ち着かせる

ゆっくりと右手を前に出し、右側面を千景へと向けていく

そうして態勢を整えた陽乃は千景へと笑みを浮かべる

陽乃「……どうぞ。郡さん」

千景「馬鹿に、してるの……?」

陽乃「ううん、貴女の実力が見てみたいだけ……私の拳は、たった一度でも貴女の実力を奪ってしまうもの」

千景「っ」

千景のように鋭利な武器ではないが、陽乃の拳の一撃は重い

それは千景の内臓を破壊しない程度の物であっても

鈍い痛みを千景に産み落として、動きを鈍らせる

そうなったら、もう千景は本当の実力は出せなくなってしまう

千景「許さない……!」

陽乃「うん?」

昨日のことだってそうだ。

自分の方が上手だからと、わざわざ不利な条件での戦いを求めた。

ひなたや若葉が気にかけても、自分よりも千景が心配だと余裕を見せた。

見下されているとしか思えない。

取るに足らない程度のものでしかないと――

千景「馬鹿に――してッ!」

千景は陽乃に向かって勢いよく踏みこむ


勢いよく踏み込んで突っ込んできた千景は、勇者の力も合わさって非常に速く

手にしている大きな鎌が一閃の煌めきを描きながら陽乃へと迫っていく

飛び込むのではなく、駆け出してくる

陽乃の耳に、千景の足音は明瞭に聞こえてきていて

それがあとどれくらいで近づいてくるのかも……何となくわかる。

毛先がぴりつくような感覚は、九尾由縁の感覚だろうか

陽乃「ふっ――」

拳を固く握りしめる

右手前の姿勢をそのままに、ひと呼吸

そして――

陽乃「ったぁッ!」

ほぼ肉薄に近い距離にまで来た瞬間、

左足で踏み込むのと同時に、左手で大鎌を打ち上げる

千景「!」

若葉「なっ……」

踏み込んだ地鳴りが鍛練場に轟き、

武器を弾き飛ばされた千景の体が後ろへと仰け反る


↓1コンマ判定 一桁

0 00 最悪
1、7、4 防ぐ
3、6 回避
5、9、2、8 命中

※防ぐによる回避ー1

ほい


陽乃「っはぁっ!」

陽乃はその勢いのまま右手拳を振り抜く

態勢が崩れ、鎌は弾かれ防御には回せない

確実に決まるであろうその一撃は――しかし、空を切った。

陽乃「あら……」

直撃の刹那に大鎌での防御を捨てた千景は、

大鎌の柄を鍛練場の床に突き立ててより酷くバランスを崩して陽乃の拳を寸前で躱し、

そのまま転がって距離を取ったのだ

千景「っは……はぁ……」

陽乃「驚いた……良い判断力だと思うわ。郡さん」

千景「……ばけ……もの……」

陽乃「ええ、そう思って向かってきてもらって結構よ」

千景の大鎌を拳で撃ち抜いての迎撃

そこから間髪入れずのストレート

二度の踏み込みの轟音は言葉の裏でゆっくりと静まっていく

当たれば致命傷

その言葉に嘘偽りはないのだと、千景は自分の額を拭った。


その一方で、

陽乃は本当に千景の実力を見誤っていたと……笑みを浮かべる。

大鎌を打った拳に痛みは感じられない

空ぶった拳にも感触は残っていない。

思いのほか勢いのあった一撃は、千景の隙を突いていたはずだった。

本当なら一撃入れての戦意喪失か、

戦意喪失に至らずとも鈍らせることくらいは出来ていたのに、

千景はそれを見事に回避して見せた。

決して弱くはない。

ゆえに――手加減は不可能だ。

陽乃「はぁ……ふぅ」

何度か拳を作って開いて、息を吐く。

千景が少しふらつきがちに立ち上がったのを見てから、もう一呼吸

陽乃「化け物は、待っていてはくれないのよ。郡さん」

千景「!」

一声かけて――陽乃は一気に距離を詰めた

↓1コンマ判定 一桁

0 00 最悪
1、7、4 防ぐ
3、6、2 回避
5、9、8 命中


↓1コンマ判定 一桁

0 00 最悪
1、4 防ぐ
3、6、2 回避
5、9、8、7 命中

※防いだ分、防ぐ-1

千景強いな

はい


陽乃の千景と違い、飛ぶように距離を詰めていく

床を一気に蹴り、最小限の減速で加速させていくその詰め方は、

千景にとってはほぼ一瞬の肉薄だった

千景「っ!」

陽乃「ってぇぁッ!」

目の前にまで迫った陽乃の、左拳

千景はそれを、大鎌の柄で受け止める

陽乃「!」

千景「っぁ……」

弾き飛ばされて、千景の体が仰け反って

けれど――二度目はないと千景は踏みとどまる

彼女は侮っている

見下している

それを無いものとして目を閉じ耳を塞いで閉じこもっても――勇者になる前と何も変わらないではないか

無かったことになどなるものか

痛みを覚え、言葉に俯き、悪意に震える

そのはずなのに。

それらを今でこそ受けているはずの人は――

千景「貴女は――ッ!」

千景は歯を食いしばって、叫ぶように大鎌を振るった


その一閃は陽乃の予測を大幅に超えて素早く、肌を切りつける

勇者の力があろうと生身に変わらない陽乃の左腕からは鮮血が迸って

ゆっくりと血が溢れて流れ出していく。

大怪我というには浅く、すぐに血が止まる程度の傷

けれど、確かな一撃だった。

千景「はっ……はぁ……」

陽乃「ん……」

左の腕の部分。

千景につけられた傷を陽乃はぺろりと舐める

流れる血は、三年前に嫌というほど味わった頃と変わらない。

逆流していく胃液の不快感がない分、美味しいとさえ感じられるようで

陽乃「ははっ……あはははははっ」

千景「!」

若葉「久遠さん?」

陽乃は思わず笑ってしまう。

とても高く、響くように

体が熱い……傷なんて気にならないほどに昂っている


↓1コンマ判定 一桁

0 00 最悪
1~3 悪い
4~9 回避
ぞろ目 回避


では途中ですがここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から


※戦闘継続
※陽乃:千景=0:1


これは絶対にアカン


このシリーズのコンマバトルは一方的な戦いになることって少ないよね
でも早くも陽乃さんが暴走しそうで心配だなぁ…


激しい戦いになってまいりました


では少しだけ


陽乃「ぜんっぜん……駄目ね」

三年前、バーテックスと戦った陽乃は満身創痍になり果てていた。

体中を傷だらけにしながら失血死するほどの血を流し、吐いて

それでもなお立ちふさがって向かい来る人智を超えた化け物を殴り、蹴り討ち果たし続けた。

それに比べれば、たった数センチの裂け目など気にもならない。

ましてや流れ続ける様子もなく、手当もなしに血が止まってしまうほどのもの。

これでは軽傷とさえ言いたくない。

陽乃「……ねぇ、それで私を殺せるの?」

千景「なにを……」

陽乃「貴女にとって私はバーテックスと同類なのでしょう? なのに、この程度、たったこれだけ? それで本当に討てると思っているの?」

千景「っ……」

陽乃「貴女――戦ったこと、無いでしょう」

陽乃は自分の体の傷を舐めて、舐めて

そうして……千景につけられた傷はまるでなかったかのように綺麗さっぱり消えていく。

それは人間というよりも、獣めいた傷の手当だった。

若葉「久遠さん……なのか?」

陽乃「ほかの誰かに見えるの? 大丈夫、私は私よ」

陽乃さんコワイ…


若葉「だが……」

若葉は自分の腰元の刀の柄を握りしめながら、陽乃を見据えて身構えていた。

見た目は陽乃に相違ない

しかしながら空気がまるで違うように感じていた。

それはかつての異形でさえ劣るほどの畏れを抱かせるような何かで、

本能が居合の構えを取らせながら、体を震わせている。

ひなた「……若葉、ちゃん」

若葉「分かっている……分かっているが」

ひなたの手が、若葉の裾を掴んで離さない。

それは、あれを止めなければならないという責任感と、

行けば殺されてしまうのではないかという恐怖とが入り混じっていて

ひなた「おそらく……ですが、あれは九尾様の御力です」

若葉「九尾様……あれが、か?」

ひなた「久遠さんが傷ついたことで千景さんを敵としたのか、あの傷が久遠さんの悪い面を呼び覚ましてしまったのか分かりませんが……」

ひなたは陽乃から目を離せなかった。

神様とは違う、悍ましい恐ろしさに立っていることさえできそうになくなりそうなほどで。

大社は陽乃を化け物と言うことはあったが、これでは本当に化け物と呼ばれてもしかたがない。


陽乃「もっと深く……殺しに来てくれないと駄目だわ」

若葉「殺しに行くのは駄目です!」

陽乃「……そうしないとバーテックスは倒せないわ」

若葉「久遠さんはバーテックスではない!」

ひなた「そうですよ……久遠さんは久遠さんです」

陽乃「ふふふっ」

確かに陽乃はバーテックスとは違う

しかし、バーテックスが化け物であるならば

同じく化け物と呼ばれている陽乃もまた、バーテックスと言えてしまう。

この戦いは単なる模擬戦ではない。

勇者の力を使い、己の力を示す戦いなのだ

勇者が討つべき相手がバーテックスであるのなら、

それに通ずる陽乃は殺すつもりで挑んでいかなければならない。

陽乃「ただの模擬戦だから。だなんて思っているの? ねぇ、忘れちゃった? あの日――私達は戦いから最も遠かったのよ?」

千景「っ……忘れてなんて――」

陽乃「ううん。だとしたら殺意が足りない。憎く疎ましく苛立たしいこの私に対して……手心を加えすぎている」


1、もしかして――私が殺すつもりでいくべきなのかしら?
2、あの日……貴女は命の重さを感じられなかったのね
3、やる気がない勇者なんて、要らない。わよね?
4、少しだけ、化け物を感じさせてあげるわ


↓2

1

2


陽乃「あの日……貴女は命の重さを感じられなかったのね」

千景「私は……」

陽乃「目の前にあった命、守れるはずだった命……それが、瞬きする間にも奪われていくのを。貴女は知らないのね」

陽乃は笑みを浮かべず、悲し気に零す。

陽乃は多くの命を取りこぼした

守れるだけの力がありながら、守り切ることは出来なかった。

それを知らないのは幸福だ

しかし、それを知ることが出来なかったのは不幸だろう。

陽乃「貴女は勇者なのだから。それを知らなければいけないわ」

千景「貴女は……何者なの……」

陽乃「ふふふっ、貴女達にとっては化け物ね」

陽乃はにっこりと満面の笑みを浮かべて答える

大社からも、勇者からも、人々からも

どうしようもなく疎まれている一人の【化け物】だ。

陽乃「さ――ほら、武器を取って構えて?」

千景「っ」

陽乃「でないと私……貴女を殺してしまうから」

↓1コンマ判定 一桁

0 00 最悪
1、4 防ぐ
3  回避
2、7 若葉
5、9、8、6 命中
ぞろ目 若葉


陽乃「ふふふっ」

陽乃は笑みを浮かべ――踏み込む

摺り足程度の浮遊感

しかし踏み込む力は限りなく強く

軸足とした右足が浮ききる前に、差し出した左足のつま先で勢いを押し上げていく

そして――右拳で千景を撃ち抜く

陽乃「ふ――っ」

千景「ぁ゛っ」

構えてくれないと殺してしまう

それは、構えようが構えまいが攻撃するという宣言に他ならない。

千景もそれはすぐに分かった

陽乃が本気で殺しに来るのかどうかはともかくとして、

攻めに転じてくるのだと

けれど――足が動かなかった。

動くべきだと頭では分かっていたのに、体はどうにもならなかったのだ。

千景「あっぅっ」

踏み込んだ床鳴りさえも遠く感じるほどに、痛みに体が持っていかれる感覚

呼吸が止まって、意識が消えかけた瞬間

腹部にめり込んでいた拳が、まだ終わっていないと言わんばかりに振り抜かれる


千景「ぅ゛あっ」

殴り飛ばされた千景は受け身を撮れずに床へと衝突した勢いのままに転がって

握っていられなくなった大鎌が千景の手を離れて乾いた音と共に滑っていく

床へと倒れこんだ千景はうめき声を漏らしているので、死んではいない。

それを確認した陽乃は殴った右こぶしを軽く振り、何度か握って軽く頷いた

陽乃「郡さんって柔らかいのね」

若葉「郡さん! 郡さん平気か!?」

千景「ぁ……っ……かはっ……はっ……は……ぅ゛」

殴り飛ばされ転がったままの千景に若葉が駆け寄ると、

押しつぶされた内臓の鈍痛と圧迫感に苦しそうな声を漏らしつつ、差し出された手を払う

長い髪が床へと垂れ、千景の顔は見えなくなってしまっていたが

それでも陽乃は視線を感じた。

若葉「もうここで――」

千景「ふざけ……ないで……」

若葉「郡さん!」

千景「邪魔しないで……!」

若葉「だが……」

千景「まだ、やれるわ……あんな人に……負け……られないっ」


飲み込めない唾液を口元から滴らせ、

何度も崩れながら、震える足で立ち上がっていく千景は

ふらつく足取りで大鎌を拾うと

それを支えにして……陽乃へと向かって立って見せる

千景「はっ……はぁ……はっ、っ」

息を飲み、口元を袖で拭う

まだ整わない呼吸を無理矢理に抑え込んで顔を上げると

心配そうに立っている若葉を一瞥する

千景「平気……」

若葉「本当に平気なのか?」

千景「問題ないって言っているでしょう……っ!」

怒鳴って、腹部を押さえて崩れてしまう

それでも若葉が駆け寄ろうとすれば大鎌を振るい、

立ち上がって――

千景「負け……ない……!」

千景は痛みを堪えながら、全力で踏み込んでいく

鈍ってしまっていても、それは勇者の歩みだった


↓1コンマ判定 一桁

0 00 最悪
1、7、4 命中
3、6、2 回避
5、9、8 反撃

ぞろ目奇数 九尾


では本日はここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から

※戦闘継続 (判定次第で中断)
※陽乃:千景=1:1


今の陽乃さんは九尾に乗っ取られてるのか自分の意思なのか…
いずれにしても早めに終わらせないと千景が危ないな


もはや勝敗関係なくドン引きさせてるんだが大丈夫かはるのん?


では少しだけ

おk


陽乃「……それじゃ、駄目じゃない」

駆け込んでくる千景を見定め……そして、陽乃は何事もないかのように回避する。

千景「っ」

振り切られた大鎌は陽乃に掠りさえせず、

その勢いを戻しきるほどの余力がなかったのか

大鎌の先端はそのまま床に突き刺さって、千景を躓かせてしまう

勇者とはいえ、同じく勇者に匹敵する力を持った陽乃の一撃が相当に重かったのか

あるいは、陽乃の使う九尾の毒素によるものか。

千景は被弾前の実力を出し切れていない。

陽乃「本当に勇者なの? もしかして、勇者を騙るただ人なの?」

千景「違う……!」

陽乃「だとしたら、どうして……倒れてしまうのかしら?」

苦しそうに呻きながら、

大鎌を支えに立ち上がろうとしている千景を、陽乃は見下すように見つめる

その瞳は赤々としていて、感情を感じさせない


陽乃「痛いから? 苦しいから? たったそれだけの感覚に落ちてしまうほど、貴女は弱いのかしら?」

若葉「久遠さん言いすぎです!」

陽乃「過ぎている……? 事実を口にするだけで過ぎてしまうのなら、それはその人の線引きが甘いのよ」

若葉「人には得手不得手がある。なにより、貴女が言うように初めてなら痛みに強くなくとも仕方がない!」

陽乃「そうなの? 貴女もそうだったの? あの星降りの夜、貴女は受けた痛みに折れてしまったの?」

笑みを浮かべているのに、全く油断が出来ない

人ならざる者であるかのような威圧感

陽乃は決して大声ではないが、そのやや高まっている声色は鍛練場に強く響いて

若葉とひなたは思わず足を下げてしまう

若葉「私だって、バーテックスによる攻撃から立ち上がる余力なんてなかった……」

陽乃「勇者の力があっても?」

若葉「それは……」

若葉はバーテックスの一撃を受けて立ち上がれないほどの痛みに敗北しかけたが、

ひなたの導きによって触れた刀……生大刀と神の助力によって

若葉はもう一度立ち上がり、守れるだけの命を死ぬ気で守り抜いた。

若葉は折れかけたが、折れることはなかったのだ。

陽乃「そう。勇者の力があればこの程度では折れない。折れてはいけない。これで折れる程度なら……不要だわ」


ひなた「勇者であっても身も心も人なんですよ!」

陽乃「だから?」

ひなた「え……?」

陽乃「ねぇ乃木さん。貴女の刀がたった一度の鍔迫り合いで折れてしまう程度の贋作でも使おうと思える?」

若葉「郡さんは道具じゃない」

陽乃「大社にとっては戦争の道具であり、人間にとっては守ってくれる兵器でしょう?」

陽乃はまるで子供のように「ん~?」と、不思議そうに声を漏らす。

悩ましそうなそぶりを見せてはいるが、分かっていないわけではない

若葉とひなた……そして千景を煽ろうとしているだけだ。

陽乃「その勇者がこれではね。乃木さんのような人の足を引っ張る枷でしかないのなら……邪魔だと思わない?」

陽乃はそう言いながら、何度か握り拳を作っては開いて微笑んで見せる

しかしやはり、その笑みは恐ろしく安心を生まない

千景に対して、陽乃は殆ど感情を抱いていないように見える

危険なことを言っているのに、殺意も敵意もない

ただただ、その先に行くのに邪魔な障害物としか思っていない

千景「貴女は……私を、役に立たないって……」

陽乃「ふふふっ、順番通りなら次は私が攻める番よね?」

若葉「待ってくれ……今の貴女は正気に見えない。ここで終わりだ」


1、過保護は良くないわ
2、別に二人相手でもいいのよ?
3、止めたければ……分かるでしょう?
4、正気に見えない? だったら何に見えているのかしら?
5、別に良いけれど、この子が私に噛みつかないように躾けるって約束できる?

↓2

3

4


陽乃「別に良いけれど、この子が私に噛みつかないように躾けるって約束できる?」

千景「っ!」

若葉「躾……だと?」

陽乃「曲がりなりにも貴女がリーダーであるというのなら、この子を躾けるべきだと思うのだけど違う?」

若葉「貴女は……貴女は郡さんをなんだと――」

陽乃「弁えずに噛みついてくる子供。別に犬や猫のようにペットとして躾けろだなんて私は言ってないわ」

若葉は親ではないが、

千景が所属しているメンバーのリーダーであるならば、

長として部下の教育……躾は必要だろうと陽乃は言う。

確かにリーダーとしてある程度律することは必要だと若葉も考えている

しかしながら、それを躾というのは逃せない

若葉「リーダーとして、郡さん達を律することが出来ていないのは事実だ。しかし、いくら何でも躾というのは言いすぎではないか?」

陽乃「だったら別に教育でも指導でも何でもいいけれど、してくれるの? してくれないの?」

ひなた「久遠さん……本当に大丈夫ですか?」

陽乃「怪我ならもう治っているわ。大丈夫」

>>285
見間違えたので、無しでお願いします。

了解
5番はドS過ぎる…


陽乃「正気に見えない? だったら何に見えているのかしら?」

若葉「それは……」

正気に見えないに対し姿かたちではなく、

ただ異常であるという単純な返答を陽乃は認めるだろうか

陽乃は、見た目だけで言えば陽乃と変わりがない

しかしながら身に纏っている空気は普段の陽乃とはまるで違っていて

ひなたはそれを【九尾の御力】と言った。

ひなたがそういうのならそうなのだろう。若葉はそう考えて、息を飲む。

化け物と言ったところで、陽乃は笑うだろう

何より、さっきから自称しているのだから

では久遠さんだと答えたら? 笑われるだろうか

陽乃はにこにこと笑っている

それは愛らしく見えるが……恐ろしい

その裏で何を考えているのかがまるで読めないからだ

若葉「普段の久遠さんに比べて常軌を逸している」

陽乃「言葉を選ぶわね……狂ったように思えるってことね」

若葉「……端的に言ってしまえば、そうだ。普段の貴女なら郡さんを貶めたりなんてしないはずだ」


陽乃「普段の私なら……ね。ふふふっ」

若葉「何がおかしい!」

陽乃「あはははははっ」

おかしいと怒鳴られても、陽乃は笑う。

すぐそば出倒れていた千景がビクッと体を震わせて……引き下がったことに気付いていながら

それを無視して、笑って笑って、そうして――ふっと電源が切れたかのように笑い声が止む。

若葉「っ!」

陽乃「貴女、普段の私の心の内まで理解しているの?」

若葉「そ、こまで……理解しているとは――」

陽乃「だったら! だったらどうして私がそんなことがないと言えるのかしら?」

陽乃は一歩踏み込んで、若葉との距離を詰める

陽乃「私の噂は聞いているでしょう? 私の評価を知っているでしょう? 私の扱いを聞いているでしょう?」

迫力と、声の冷たさ

瞬きをしてくれない真っ赤な瞳が恐ろしくて、

動けずにいた若葉との距離はもう……目の前にまで来ていて。

陽乃「そんな私が……私に死ねばよかったと言ったこの子にでさえ慈愛の心を抱けるだなんて思っているの?」

若葉「く……っ」

陽乃「ねぇ上里さん。勇者が身も心も人であるならば、ただ生きているというだけで責められ続けている私は正常でいられると思う?」


ひなた「……難しいと、思います」

陽乃「それでも私は私なりに頑張って……気を遣わせないようにって気遣って、独りでいることを選んでいたの」

陽乃は薄く笑みを浮かべて、すっかり離れてしまった千景を一瞥すると

また、若葉へと目を向ける

若葉よりもわずかに背の低い陽乃は見上げるような形になるが、

その視線はまるで可愛らしさが感じられない。

陽乃「なのにすれ違う程度で嫌悪して、殺す心配はないって武器を向けられて……私にだって我慢できないことだってあるのよ」

千景「それは、貴女が……」

陽乃「疑っていた? そうね。でも、私は違うと言ったのに聞く耳さえ持たなかったじゃない」

千景「貴女が疑っていたのは事実でしょう……?」

陽乃「信じろと? 死ねと言ってきた貴女を? 面白い冗談ね」

陽乃は若葉から千景へと振り返って、苦笑する

笑っているが、目は笑っていない。

怒りの代わりとでも言うかのように、殺意が感じられた

陽乃「我慢するのにも限界があるの……だから、ね? 私は私なりに改善しようと思って――」

若葉「待ってくれっ!」

千景へと近づこうとした陽乃の体は、

若葉が腕を掴んだことで、中途半端に止まった


若葉「久遠さんが辛かったのは分かった。いや、分かっていた……なのに貴女に甘んじていたんだ」

陽乃「だから何? 貴女も邪魔をするなら排除させて貰うけど」

若葉「久遠さん、昨日の話を前向きに考えては貰えないだろうか」

ひなた「若葉ちゃん駄目です!」

若葉「ひなた……郡さんをどうにかできても、大社と民衆はどうにもならない」

世界は陽乃に対して優しい世界になることは非常に難しい

けれど、より厳しくなることはとても簡単なのだ

勇者が戦いで敗北したり、戦いに勝利したとしても何らかの被害が出れば陽乃が責められる。

あの子が人柱になりさえすれば解決するのにと、抗議が行われる可能性だって少なくない。

若葉「ここで足を止めてくれるなら、外に出られるように私が全力で手助けする」

陽乃「別に、ここで邪魔な人さえ消してしまえれば解決する話でしょ?」

若葉「貴女だって心の全てで望んでいるわけじゃないはずだ! 人を助けたいと……その一心であの場に立っていたはずだ!」

陽乃「私が人を助けたいからと言って、邪魔者の命まで助けると思っているなら大間違い」

陽乃は苦笑して、若葉の手を振り払う

陽乃「恩は仇で返されると、今この国が私に教えてくれている。価値がないと思ったなら――捨ててしまうべきだと教えてくれたの」

それは本当に心から浮かべているのではと錯覚するほど、整った笑顔だった。

嬉しそうで、悲しそうに……

若葉が目を見開いてしまうほどに、戸惑わせるような。

陽乃「郡さんは、要らない」


↓1コンマ判定 一桁

0 00 最悪
1~3 悪い
4~5 普通
6~9 良い
ぞろ目 最良

たのむ


では途中ですがここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から


これはダメだったのか…?
陽乃さんがあまりにも病み過ぎてて何らかの九尾の仕業でもないと救いようがない…


瞳が赤いってことは九尾じゃないの?陽乃ちゃんは天乃と同じなら橙色のはず

言われてみれば…まだなんとかなるか?


えらいことになってきたな


では少しだけ


若葉「ま、待てッ!」

若葉が動けなかった数秒間

たったそれだけで、陽乃はもうすでに動き出していた。

力強く蹴り上げられた鍛練場の床が軋む

窓を閉め切っているはずの場内に風が吹き込んだかのような突風が巻き起こる

数秒……1秒か2秒か

刹那ともとれるその瞬間に、若葉の目の前にいた陽乃は千景のもとにたどり着く

陽乃「 さ よ な ら 」

千景「っ!」

にっこりと、満面の笑みで拳を構えながら肉薄した陽乃は、

その勢いを丸々拳にため込んで撃ち抜く

駆け抜けた推進力、固く握りしめた拳

反り上がる弓よりも強く引き絞った腕から放たれた一撃は、容赦なく――

千景「っあ゛っ!?」

悲鳴にさえならないうめき声を漏らして千景の体が鍛練場の壁へと激突する

握られていた大鎌が手から零れ落ちて乾いた音を立てるのと同時に、

千景はその場に崩れ落ちて動かなくなってしまった

砕け散って穴が開いてしまった鍛練場の床

ジャージにはね跳んだ埃でも払うように、陽乃は裾を手で払う。

仲間の一人を殺す勢いで殴り飛ばしておきながら、

陽乃はまるで心を痛めている様子がなかった。

千景が…


ひなた「千景さ――」

若葉「待てひなた! 私が行く!」

一心不乱に駆け寄ろうとしたひなたを制し、若葉が陽乃の横を抜けて千景へと駆け寄る

若葉「……郡さん!」

横切る際に一瞥した陽乃の表情は笑顔ですらなく、

そこに感情どころか魂があるのかさえ不確かで不気味に思えて……目を背けてしまう

駆け寄った若葉は千景の体に優しく触れる。

体を打ち付けた壁には何かが立てかけられていたこともなく突起もないので二次的な損傷は見られない。

しかし、顔は苦悶に歪んでいて口からは血が流れている

幸い……と、言うことは出来ないが微かに呼吸があって死んではいなかった。

若葉「ひなた! 急いで医療班を!」

ひなた「っ……分かりました!」

若葉「郡さん……頼む。死なないでくれ」

生きているのではない。

まだ、死んでいないだけだ。

千景の呼吸は非常に浅く、空気と共に少しずつ血が漏れ出してきている。

耳をすませば、喉の奥でごぽっ……と、濁った音さえ聞こえるように感じる。

頭部にダメージはなかったように見えたが、

腹部とその内側には尋常じゃない損傷を受けている可能性が非常に高いため、下手に体を動かすことも出来ない。

万が一内臓が破裂していたり、肋骨の一部が折れていたりなどしたら

そこからさらに容態を悪化させる危険があるからだ

ひなた「若葉ちゃん……扉が開きませんっ!」

若葉「なんだと……!?」


ひなたの悲鳴のような呼び声に目を向ければ、必死にガタガタと扉を揺らす姿が見えた。

入って来た時に鍵はかけていない。

いつものように自由に出入りできる状態だったはずだ。

鍵は管理している場所から持ち出しているし、

持ち出し記録にも名前が記載されているはずなので、誰かが誤って施錠したはずがない。

はっとした若葉は顔を上げ、陽乃を睨む

若葉「貴女の仕業か!」

陽乃「助けるつもりなら、私にとっての障害だもの。それを阻むのは道理にかなっていると思わない?」

若葉「郡さんは確かに酷いことを言った。だが、それでここまでする必要があるのか!?」

陽乃「避けても避けても、立ち塞がってくる障害なら排除するべきだもの」

陽乃の声には感情による振れ幅がなく、一定の音調で

それはどこか機械めいたもののように感じてしまう。

今の陽乃にとって本当に、その程度なのだ

陽乃「だから、もし……それを救うというのなら貴女達も私の障害になり得ると思うの」

若葉「……どうしても、郡さんを殺したいのか」

陽乃「私はそれが誰であろうと関係ない。障害を排除したくて、それが郡千景という人間だっただけのこと」


若葉「そうか、それが貴女の考えなんだな」

陽乃「言っておくけれど……貴女が刀を取るのなら。私は貴女も上里さんも殺すから」

若葉「っ」

陽乃「貴女の責任で上里さんの命を賭ける覚悟があるのならどうぞ」

笑うでもなく、しかし感情を流入させたかのように声を震わせた陽乃はひなたを一瞥する。

その赤い瞳だけが、笑った。

陽乃「ただし貴女が倒れたら私は上里さんを狙う。生きていようと死んでいようと貴女の目の前で彼女の首を折る」

若葉「……貴女は久遠さんではないな。そうであるはずがない」

若葉は歯を食いしばって、それでも隠し切れない怒りを滲ませながら首を振る。

陽乃の言葉が覚悟を試そうとしているだけならまだ救いはあるかもしれない。

しかし、そうではないのだろう。

今まさに死に瀕している千景を救わせまいと阻んでいるのだから。

たとえ覚悟を持って挑んでも、合格だと言って道を開け千景を救ってくれるとは思えない。

陽乃「郡さんを諦めるのなら二人は助かる。郡さんを助けるのなら三人死ぬ。どうする?」

若葉「私が貴女に勝つという選択肢はないんだな」

陽乃「それは貴女が出来るかどうかだから」

出来るならどうぞとでも言うかのような陽乃の笑みに、若葉は千景を見てひなたを見る


ひなたは若葉や千景と違って戦闘要員ではない。

陽乃に追いかけられれば逃げ切れるわけがなく、捕まれば抵抗など出来るわけがない。

鍛練などで鍛えていて痛みに強いというわけでもないのだから、

軽く殴られるだけでも、ひなたは失神したり、体の一部を壊してしまうかもしれない。

その可能性を踏まえ、そのあまりにも弱弱しい命の責任を取って戦えるのか。

いや、戦っていいのかと……若葉は

ひなた「若葉ちゃん!」

若葉「!」

ひなた「初めに言ったはずです……宜しくお願いします。と」

若葉「ひなた……」

ひなた「お願いです若葉ちゃん。【みなさん】を救ってください」

ひなたはそう言って、笑みを浮かべる。

怖くないはずがない

なにせ、陽乃の力は圧倒的なのだから。

まるで容赦のない、化け物らしい威圧感があるのだから。

それでも上里ひなたは乃木若葉を信じている。

自分の命を賭けても良いと、乃木若葉の強さに委ねている。

乃木若葉ならば、郡千景も上里ひなたも……そして、久遠陽乃も救えるのだと。


若葉「……そうだな。そうだ」

若葉は千景の口元を拭うと、

ゆっくりと立ち上がって、自分の腰元にある刀の頭を撫でる

何事にも報いを……報復を誓った力であるのと同時に、

これは守るための力でもある。

若葉「私とひなたの二人だけのために納めてはここにある意味がないんだ」

陽乃「大切な人が殺される覚悟が、出来たのね」

若葉「逃げたって、私は結局大切な人を殺されてしまう」

立ち上がった若葉の見開かれている瞳には迷いがない。

ひなたと千景と自分

その命が懸けられている重責に竦んでいる揺らぎがまるで見えない。

若葉「言っただろう久遠さん。私にとって貴女は勇者だと。そんな貴女もまた、私にとっては大切な人なんだ」

だからこそ。

若葉はそれを言葉にして、千景から離れるようにと距離を取って深く息を吐く

重心を下げ、体を傾け柄を握る

若葉「これは貴女を救うための挑戦だ!」


↓1コンマ判定 一桁

0    特殊
1、7、4 若葉
3、6、2 互角
5、9、8 陽乃

ぞろ目 00 最悪
ぞろ目 他 最良

頼む!


陽乃「へぇ……言ってくれるのね」

陽乃は若葉の宣言を耳にして、笑う。

それを無理だと見下しているかのようで――

陽乃「ふっ――」

若葉「っ!」

けれど、容赦はない

ほんのわずかな瞬きの間に陽乃は若葉へと近づく

それはまるで陽乃が若葉の目の前にいたかのように、一瞬だった

陽乃「はぁッ!」

若葉「っぁあぁぁぁぁッ!」

振り下ろされる拳に向けて、若葉は鞘から刀を引き抜く

全力で振り抜き切り裂くための一刀

当たればただでは済まない

だが、それでも若葉は躊躇しなかった

陽乃を救うためならばと――しかし

「勇者ぁぁぁぁぁぁぁぁパァァァァァァァンチィッ!」

外部からの干渉がそれを阻む

高らかな雄たけびと共に、鍛練場の一部が爆発を起こして崩れ落ちた


友奈「はっ……はぁ……やっと抜けた」

爆発した粉塵に隠れてしまっていた闖入者、高嶋友奈は、

肩で息をしながら、焦りに満ちた表情で顔を上げた。

友奈「みんな! 無事!?」

爆発に驚いて尻もちをついているひなた、

刀を振り抜いている若葉と、それから遠く離れている陽乃

そして――倒れている千景

鍛練場をこじ開けられた安堵をするまもなく、友奈は目を見開く

友奈「ぐんちゃん!? ぐんちゃん!?」

若葉「干渉するな友奈!」

友奈「で、でも!」

若葉「ひなた! 医療班の手配を頼む」

ひなた「はい!」

友奈の制止、ひなたへの指示

それを若葉は陽乃から目を離すことなく叫ぶ

若葉「……目の前に、いたはずだが」

刀を抜き放った時、若葉の目には陽乃が目の前にいるように見えた

それから友奈の乱入まで目を離していないはずなのに、

気付けば、陽乃は遠く離れ居合の斬撃など届かない場所にいた


友奈「若葉ちゃん、どうなってるの!?」

若葉「久遠さんが悪い力に取りつかれている……と、私は見ている」

友奈「悪い、力?」

若葉「九尾の力だとひなたは言っていたが確証がない」

若葉は刀をゆっくりと鞘に納めると、

いつでも抜き放てるようにと構えたまま友奈へと声をかける

千景に駆け寄ろうとしていた友奈だが、

千景の状態が触れるべきではないと判断したからか、若葉の隣に並ぶ

友奈「久遠さん、危ないの?」

若葉「郡さんをやったのも……友奈がここに入れなかった原因も彼女だ」

友奈「え……」

友奈の戸惑った声が零れる

友奈にとって、陽乃は関わることが難しい人ではあるが、

決して害のある人ではないと見ていたからだ。

もちろん、ピリピリしたものも感じてはいたが。

友奈「若葉ちゃんは久遠さんと戦っていたの?」

若葉「いや……今も戦っているんだ」


↓1コンマ判定 一桁

0 00 最悪
1、7、4 悪い
3、6、2 普通
5、9、8 良い

ぞろ目 最良


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


悪判定から抜けないので、友奈とも戦闘出来ます


もう一回戦えるドン!(白目)


コンマの引きの悪さが痛いなぁ
陽乃さんも本当に九尾に乗っ取られてるっぽいし若葉たちを信じるしかないか…


では少しだけ


陽乃「無茶をするわね、高嶋さん」

友奈「嫌な予感がしたんだ。だから、無茶でも押し通って来た!」

陽乃「そう……貴女は勇者ね。勇者と呼んでもいい勇者ね」

陽乃は悲しそうに零すと、

それが前準備であるかのように拳を何度かつくっては開いて、ため息をつく

ゆっくりと……ゆらりと。

影の揺らめきに似た動きで友奈達へと体を向けた陽乃は、

もう一度、構える姿勢を見せた

陽乃「見物に努めるのなら手は出さない。どうする?」

友奈「ただの模擬戦なら見物もいいかな……」

そう言って、笑うかと思われた友奈だったが、

少し離れたところにいる千景を一瞥して、首を振る

友奈「でもそうじゃなさそうだから、戦うよ!」

陽乃「残念……貴女を殺す理由はきっと、私にはなかったはずなのに」

友奈「え……」

若葉「友奈!」

友奈「っ!」

若葉の怒号にはっとする

そこにいたと思っていた

会話をしていたと思っていた陽乃の姿は、もう目の前にあって――

陽乃「気を抜いちゃダメじゃない」

陽乃の引き絞られた左拳が見えて、慌てて肘を下げる

その上から陽乃の左拳がめり込んで、友奈の体は軽々と吹っ飛んで壁に衝突した

高嶋さんまでもが…


友奈「ぁ゛……」

陽乃の拳が衝突した瞬間に体の内側から響いてきた危うげな音

だんだんと痛みを増していく右腕

痺れているかのように右腕は動かせず、ただ痛みだけが大きくなって

友奈「あぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

友奈は自分の右腕がへし折れてしまっているのを目にして、たまらず叫ぶ

流石に千切れてしまうほどではないが、使い物になりそうもない

それでも意識を保っていられるのは、不幸にも――勇者だからだろう。

若葉「くっ……」

陽乃「手は抜かないわ」

友奈「ぁ……ぅ……」

しかしながら、勇者とは言っても友奈もまた人間の女の子で

腕を折られた痛みにどうしようもなく戦意が失せていく

まるでそれが零れ落ちていくかのように友奈の瞳からは涙が零れていた

若葉はそれに気を向けてしまいそうになるのを請らて陽乃を睨む。

陽乃の移動速度ははっきり言って異常だ

離れた場所にいるのかと思えば肉薄していたり

手の届く距離にいたかと思えば、まるで届かない場所にいる

それはきっと、見ているからと安心できない異質な力によるものだろう


若葉「友奈、無理はするな」

友奈「うっ……うぅ……」

若葉も勇者としてある程度の痛みに耐える覚悟をしている

しかし、千景や友奈のような一撃を受けてなお正気でいられる自信はなかった。

若葉は3年前にもバーテックスの攻撃を受けているが、

生身でも死ぬことがなかった程度……と言える。

だが、陽乃は違う

陽乃の一撃は【勇者でも死ぬ】攻撃だ。

それは陽乃も勇者だからなのか

もっと別の何かだからなのか分からないが、殺されかねないということだけは断言できる

若葉「……久遠さん、まだ続けるか?」

陽乃「だって、まだみんな生きているじゃない。生きていると私の邪魔になる。だから――最後までやり遂げなきゃ」

若葉「そうか……」

千景は相変わらず沈黙しており、友奈は戦意喪失

今この場で戦えるのは若葉ただ一人だ

それはまだいい……と、若葉は切り替える

問題は、球子と杏のどちらか

あるいはその両方がここにきてしまうことだ


球子には楯があるため、

もしかしたら陽乃の攻撃を防いでくれるかもしれない。

しかし、楯は陽乃の攻撃が予見できなければ無意味だ

その隙を容易に打ってくるだろう

それでは友奈のように殴り飛ばされてしまうだけだ

杏は言わずもがなで

他よりも身体的に劣っているあの体で陽乃に攻撃されたら一撃で死んでもおかしくない

だから、これは若葉の役目だ

ひなたも信じてくれた、乃木若葉のなすべきこと

しかし――届く気がしなかった

援軍として現れた友奈ですら一撃で飛ばしてしまう、悪魔的な力に

陽乃「……乃木さん、邪魔が入っちゃったわね」

陽乃は友奈を殴り飛ばした左手を軽く振って見せると、

無駄なことをしたと言うかのようにため息をつく

陽乃「まったく……これ以上手間が増えるのは面倒ね」



1、友奈を狙う
2、若葉を狙う
3、ひなたを追いかける


↓2

1

2


↓1コンマ判定 一桁

0 00 最悪
1、7、4、2 命中
    3 回避
6、5、9、8 反撃

ぞろ目 特殊

そい


では途中ですがここまでとさせていただきます
明日は可能であれば早い時間から


一刀両断


ここで若葉の反撃翌来るとはさすが頼れるリーダー
だけどあの高嶋さんの腕と心をへし折る九尾の力って相当ヤバいな…


若葉頼りになるなあ

では少しだけ


若葉「ふぅ……」

若葉は深く息を吐いて、指の一つ一つに全神経を集中させながら、

腰に納めた刀の柄を握りしめる

抜刀状態での戦闘ももちろん可能だが、

陽乃の速さに確実に対応できるのは、幼いころから納めてきた居合の斬撃だけだ

若葉「私は貴女を諦めない……必ず、取り戻す」

陽乃「私は私なのだけど。そう、貴女はそう考えているのね」

陽乃は驚くほどに無表情で声にでさえ感情が感じられなかった。

どこからが九尾、どこまで九尾なのか。

一刀に切り伏せたとき、陽乃の体は無事でいられるのか。

不安ばかりの中で、若葉はその考えを頭から排除する

するべきことは一つ、救うこと

出来ることはただ一つ、全身全霊の一刀にて彼女から斬り祓うこと

若葉「来るなら来い。次は、切り伏せる」

そう宣言した若葉はもう一度深呼吸をして、目を閉じる

陽乃はそこにいるのにいないような霞のような存在と言える

であれば、視覚は不要だ

口を閉じ、呼吸を止めて周囲の空気の流れを感じ取る

ほんのわずかな乱れでも感じ取れなければ一瞬の差で敗北する

ゆえに、生命維持など不要だ

あいよー


生大刀とされたこの刀

国と子の守護の為に、大敵に立ち向かうことができたかの王の神器であるならば――

守らせてくれと。

若葉は己の全てをただ一刀に込めていく

陽乃「……まったく」

陽乃は雰囲気の変わった若葉を見つめると、目を細める

正直に言ってしまえば、待ちに徹している若葉を狙う必要は陽乃にはなかった。

まだ無事なのは若葉のみだが、友奈だってまだ生きている

身構えている若葉の隣で友奈をより痛めつけても良かったのだ

しかし、しかし――だ。

ここで標的を変えるのは、陽乃自身が許せない。

あの娘は確実に勝利できると自負している

それはあまりにも傲慢だろう。

陽乃「殺してあげる」

若葉「……来るなら来いと、言ったはずだが?」

陽乃「はぁ……」

陽乃のため息が少し離れた場所で聞こえる

ミシリと、床が軋む。

そして――

陽乃「ふっ!」

次の瞬間には、耳元にも感じる距離で陽乃の声が聞こえた


若葉「っ!」

陽乃が近づいてきたような空気の流れは感じなかった

ミシリと軋んだあの音だけが、陽乃の動きを感じられるただ一つの情報だった。

では今、耳元で聞こえた声は何なのか。

本当に陽乃の物なのか。

若葉は引き抜いてしまいそうな手を抑え込む

いや、違う。

まだだ

まだ、そこに陽乃はいない

そして空気が揺れた瞬間――

若葉「っぇあッ!」

少女らしさの欠片もない闘気に満ちた声を上げて、

己の全てを込めたただ一刀を抜き放つ

生大刀とされたこの刀

国と子の守護の為に、大敵に立ち向かうことのできたかの王の神器であるならば

守らせたまえ――そう、祈り、願い

刀には確かな感触が伝わって来た

陽乃「ぐ――」

若葉「うぉぉぉぉっ!」

強い抵抗力を受けて、なお……若葉は全力で斬り払う。

手を抜けば自分が殺される

友奈も、千景も、そしてきっとひなたたちも

なにより――陽乃を救うために躊躇はなかった。


完全に斬り払った腕から重さが消えて、若葉は目を開く

すぐ目の前にいた陽乃は、

腹部を押さえ、よろめきながら後ろに下がっていく

そうして、不意に膝をついて――

陽乃「ふっ……く……ふふふっ、あははははははははっ」

若葉「っ!」

陽乃「……これは……あはははっ」

高笑いする陽乃の腹部はだんだんと赤く染まる

どこまで深く裂かれたのか、

ジャージの裾を染めていった血は下までも侵食し、やがて鍛練場の床にまで広がっていく

ぐぷ……と、不快な音が聞こえた

陽乃「はははっ……なるほど、そう。やってくれるじゃない……」

若葉「なん……」

陽乃はそれでも、ゆらりと立ち上がる

まるで操られている人形のように、

血を滴らせながら立ち上がった陽乃は抑えていた腹部から手を離す。

圧迫されていた分の血の流れが戻ったせいか――流れ出る血の量が多くなって

僅かに臓器が顔を覗かせた

それでも立っている、笑っている

血塗れの少女は――あの日見た勇者ではなく

まさしく、化け物そのものだった


↓1コンマ判定 一桁

0 00 最悪
1~2 悪い
3~6 普通
7~9 良い 
ぞろ目 最良


陽乃「はぁ……ふふっ、残念」

陽乃はそう言って笑みを零すと、ふっと糸が切れたかのように崩れ落ちていく

若葉「久遠さん!」

慌てて駆け寄って、倒れる前に抱きとめる

陽乃は気を失ってはいるものの、息はある

だが――

若葉「なっ……」

若葉が斬り開いてしまったはずの腹部の傷は一切なく、

流れていたはずの血の跡もない

ただ、ジャージが引き裂かれたようにお腹の辺りが見えてしまっているだけだ

若葉「あの一瞬で怪我を治したのか……?」

友奈「若葉……ちゃん」

若葉「友奈?」

腕を庇いながら近づいてきた友奈は、

陽乃が気を失っているのを見ると、辛そうに首を振る

友奈「腕、動かないけど……大丈夫みたい」

若葉「どういう……」

友奈「多分、そこまでが久遠さんの力なんだと思う」


へし折れて二度と使い物にならなくなったかのように見えた友奈の右腕

暫くは痺れて動かせそうにないのは変わらないが、

二度と動かせないほどに酷い状態ではなかった

友奈「なんか、それを見ちゃったら凄くずんっと気分が重くなっちゃって……」

若葉「……そうか。郡さんは?」

友奈「ぐんちゃんも、多分大丈夫……気を失ってはいるけど」

若葉「血は?」

友奈「血?」

友奈は不思議そうに言うと、少し考えるように眉を顰める

若葉が干渉するなと叫んだので、触ったりはしなかったのだろうけれど

若葉が見たとき、千景は非常に危うい状態で血も吐いていた

そんな状況を見たなら「血は?」と言われればすぐに気が付くはず。

そうではないということは、その吐血でさえ偽りだったということだろう。

若葉「いや、大丈夫ならいいんだ……大丈夫なら」

ほっとようやく安どのため息が零れたところで、

外から数人の足音が聞こえてきた。

球子「うぉわっ!? なんだこれ!?」

杏「一人で先に……あっ」

若葉「間に合わなくてよかったよ……こっちは片が付いた。みんな無事だ」


球子たちが合流してからすぐに、ひなたと共に医療班の人たちが大勢駆けつけてきた。

千景は気を失っているもの、若葉が疑った臓器の破裂といった最悪の事態もなく、

多少の打撲痕が腹部に見られる程度だった。

友奈に関しても、強烈な打撃によって一時的に麻痺しているだけだったようで、

すぐに動かせるようになっていき、大きな問題はないとのことだった。

陽乃に関しても、やはり体には傷一つ存在していなかったらしい

しかし、暴走のようなことも起こったからか

別所で一時的に入院させる必要がある――言ってしまえば隔離されることとなった。

ひなた「若葉ちゃんっ」

若葉「ああ、すまないひなた」

ひなた「いえ、いえ……無事だったなら。それで……」

念のためにと検査した若葉も、問題はなく

検査室から出た途端に、ひなたに抱きしめられてしまう。

球子と杏の二人がいないことを確認してから、若葉はひなたの体を優しく抱きしめる

若葉「彼女の殺意は間違いなく本物だった。だが、本当に殺す気はなかったのかもしれないな」

ひなた「それは、どういう……」

若葉「少なくとも久遠さんは私達を殺したくなかったのだろう。そのお陰で、彼女のために動く九尾も私達を殺せなかったんだ」


若葉はそういうと、しかし……と表情を暗くする。

彼女が叫んでいた言葉が全て偽りだったとは思えない。

久遠陽乃という少女を、大社は敵視している

この国に生きる人々の一部は彼女の家系が人柱になるべきであるという噂を信じ、

そして、彼女たちが生きていることを憎んでいる

それゆえに勇者ともそりを合わせることが出来ず、孤独になるほかなかった。

若葉「私は、彼女を勇者だと思っている」

ひなた「知っています」

しかし、大社も民衆も彼女を認めない。

彼女を化け物と、悪と、バーテックスと。

それらと同類であるかのような扱いをしている。

陽乃はそれをぐっと堪えているけれど

陽乃を苦しめている存在を、陽乃が望まないからと九尾がいつまでも許してくれるとは限らない。

若葉「このままでは、久遠さんはともかく九尾が人を殺める可能性がある」

ひなた「その可能性は……きっと、今回の件で大社も抱いたと思いますし、手は打ってくると思います」

若葉「嫌な予感しかしないな」

ひなた「そうですね……裏目に出ないと良いですが」

困ったように言うひなたの耳元に、若葉は口を近づける

若葉「……なんとか、手を回せないだろうか?」

ひなた「簡単にはいきませんよ。久遠さんはもう、ただの要注意人物ではなくなってしまいましたから」


では途中ですがここまでとさせていただきます
明日は可能であればお昼ごろから。


千景ともさらに拗れちゃったなあ


なんとかこれで陽乃さんの闇墜ちモードは解除か
理解者の若葉の存在が生命線だな


では少しずつ

よっしゃ

↓1コンマ判定 一桁

0 00 2日経過
1~2 夜 
5~7 8/1 朝
8~9 8/1 昼

√2018/07/31 夜 (某所)


地の底にいるかのような、

全身が窮屈に締め付けられる中で必死に藻掻く感覚

もう体が動かないと思うほどに酷使したあの日にも感じたのと似ている

けれど――違う。

陽乃「ぅ……」

目を開くと、天井とカーテンレールが見えて

自分が病室にいるのだとおぼろげな頭で察する

外側から内側へと

何か細く

しかし、鋭利ではないものを差し込まれようとしている痛みを覚えて顔を顰める

陽乃「……なに、これ」

合間合間を縫うかのように体に纏わりつく拘束感

陽乃の身体は病院のベッドに縛り付けられており、

腕を上げることすらできそうになかった。

「あぁ、お目覚めになられましたか。久遠陽乃様」

陽乃「だ、れ……?」

長く眠っていたわけではないはずなのに、声が酷く掠れてしまう

陽乃の傍に用意した椅子に座っていた看護師の女性は、

心配そうに顔を顰めて、自分の唇に人差し指を当てた。


「本日早朝、久遠様は乃木若葉様立ち合いのもと、郡千景様と模擬戦闘を行ったと伺っております」

陽乃「え、ええ……」

「その最中、久遠様が郡千景様を意識不明とし、高嶋友奈様を一時戦闘不能に追い込み、
乃木若葉様が久遠様を止められた……というのが、略式ですが経緯となります」

看護師はやや機械的な口調で陽乃が運び込まれた理由を説明すると

陽乃の体の拘束具に軽く触れる。

よくある革製のベルトのほかに、ご丁寧に金属製のものも使われているようで、

ジャラジャラとした音が聞こえた

「ほかの勇者様を害したことで、申し訳ありませんが一時的に拘束させて頂いております」

陽乃「一時的……って」

「安全が確認されるまでですね」

陽乃「……そう」

何が起こったのか、陽乃は覚えがない。

千景と模擬戦を行っている最中に、何か嫌なものを感じて

全身が熱くなって、そのまま意識が燃え尽きてしまったような感覚に溺れて

気が付いたら病院のベッドの上だった。

意識がないはずの自分が戦闘を継続していたということは……九尾だろう。と、

陽乃はだんだんと戻りつつある頭の回転を緩やかにしていく


陽乃「三人は?」

「……ご無事、ですよ」

看護師は何を思ったのかやや顔を顰めたが

すぐに改めて無表情になっていく

千景はまだ目を覚ましていないが、腹部に痣が残っている程度で

それもしばらくしたら消えるだろうとのことで、

友奈に至っては数日無理は控えるべきだと言われているものの、

麻痺してしまった右腕は動かせるようになったそうだ。

若葉に関しては、傷を負っていないというのだから……陽乃は思わず安堵のため息をついた

陽乃「乃木さんには感謝してもしきれないわ」

「そうですね、乃木若葉様が居られなかったら、今頃勇者様二名がお亡くなりになられていたかもしれません」

陽乃「………」

そうだ。

若葉が阻んでくれたとは言っても

陽乃が覚えていないと言っても

人々にとっては、陽乃こそが勇者を殺害しようとした最悪の存在なのだ。

看護師の感情を削いだような表情の中、瞳にだけは怒りが感じられる

憎悪が感じられる。

なぜおまえなんかを……という、嫌悪感を感じる


1、ごめんなさい、私が悪かったわ
2、そんな感情を向けると、殺されてしまうわ
3、本当にね、どうして私が勇者なのか不思議よね
4、ずっとこのままにするくらいなら、いっそ追放してしまえば良いんじゃない?


↓2

Ksk
安価なら上か下

3

1


陽乃「本当にね、どうして私が勇者なのか不思議よね」

「……久遠様は勇者とされているだけです」

陽乃「知ってる」

「ご自身の御力が危険だと、理解されているのですか?」

陽乃「十分、理解しているつもりよ」

とは言うが、陽乃も九尾の力の全てを理解しているわけではない。

あくまで、その力が危険であることは間違いないと確信しているだけだ。

陽乃「でも郡さん達が死ななかったって言うことは、勇者を殺す力はないのかも……」

「そうとは限りません」

看護師は陽乃の言葉を瞬時に否定した。

さっきまで無機質にも感じられた声には怒りが滲んでいる

陽乃以外の勇者たちはみんな、世界の期待を一身に背負っている。

希望を託されている

そんな少女たち、たった5人の内2人を殺害しようとしたのだから仕方がない。

陽乃はそう考えて、諦念を持って言葉を飲み込む

陽乃「ごめんなさい。そうであって欲しいってだけだったの……軽はずみに祈るべきじゃなかった」


陽乃は別に看護師をこれ以上憤らせたいわけではない。

可能な限り言葉を選ぼうとも思っている。

しかしながら、陽乃の言葉というもの自体が気に入らないように感じた。

それは気のせいではないだろう。

陽乃に付き添って説明しているということは、

彼女も大社の息がかかった人員とみて間違いなく、

謝罪を口にしたところで、彼女は受け入れてはくれない。

陽乃「私だって、ただの女の子でいられるのなら居たかったわ」

本当ならそうあれるはずだったのに。

3年前のあの星が落ちてきた日、それは儚い夢と散っていった。

生き残るためには力が必要だった。

友人を護るためには縋りつくしかなかった。

浅はかだと言われても仕方がない

けれど、それ以外に選択肢はなかったのだから、仕方がない

陽乃「……貴女達にとっては悪魔の力でも、私にとってはこれだけが救いだった」


友人となれたであろう勇者達を傷つける力だろうと、

民衆に忌み嫌われる力であろうと、

こうして、拘束される結果に至る要因であったとしても

陽乃にとっては、守るための力

陽乃「……理不尽だわ」

力の脅威度ゆえ、

周囲から蔑視されることを仕方がないと言っても、

それはバーテックスのように理不尽な話だ

不満が募る

怒りがふつふつと湧いて来る

ガシャンッ! と、拘束する鎖が勢いよく跳ね上がって、

驚いた看護師が椅子から転げ落ちて悲鳴を上げる

陽乃「あ……ごめんなさい」

「や、やはり……貴女は……危険です……っ!」

陽乃「つい体を動かしちゃったのよ」


久遠様とさえ言わず、

貴女と言った看護師は立ち上がることも出来ずにずりずりと距離を取っていく

そこまで怯えなくてもとは思うのだが

拘束具を引きちぎるような勢いで体を動かそうとしては

普通の人なら怖いのだろう。

特に、陽乃のような人が相手なら……

陽乃「大丈夫よ、流石に引きちぎれたりはしないから」

身体的な拘束衣に加えて、金属製の鎖

どう考えても、過剰と言える

若葉達には見せられないだろう

陽乃「……そんなに怯えるなら、傍に居なければよかったのに」

「わ、私だって……貴女なんて……ッ」

陽乃「………」

頭を上げられないせいで看護師の顔は見えないが、

嫌っていることだけは、言葉でも声色でもはっきりとわかった


1、目を覚ましたのだから報告にいけばいいじゃない
2、脅されたって逃げて良いのよ
3、ごめんなさい
4、私だって、貴女達のような人を守りたくない
5、言葉には気を付けて。私は良くても許さない人がいるから


↓2

ksk

3


陽乃「……ごめんなさい」

陽乃は彼女に危害を加えていない。

しかし、陽乃は謝罪を口にした。

そうしたほうが穏便に済むと思って

自分が我慢したらいいだけだと思って。

それは、陽乃が独りぼっちだからではなく

大社によって母が守られているからだ

陽乃「私が悪かったわ」

「………」

看護師は陽乃に対して何も言わず、

暫く沈黙が続いた後、おもむろに立ち上がる。

見えた表情は暗く、何かを言いたげに口元が固く結ばれていた。

陽乃「見ての通り、私はこんな状態だから。何かしようと思えばあなたでも出来る」

「……したら、殺すのでしょう?」

陽乃「貴女のしたことによると思うわ。私はね」


陽乃は何かされたって殺すとまでは考えたくないと思っている。

母に手を出されるのならともかく、

自分に関しては仕方がないと割り切って、耐えれば良いと陽乃は考えていた。

それで、少しでも誤解を解いてもらえるのなら

母が危険な目に遭う可能性が低くなるのなら……と

生き残るために、我慢をするつもりだった。

「……ひっ」

けれど――彼女は、そうではない。

看護師の悲鳴が上がって、目を向ければその姿は真っ黒に染まっていた。

「ぁ……あっ……」

目を見開いて、

口元を押さえて……やがて、膝から崩れ落ちていく

それでも真っ黒な何かは消えなかった

『他愛もないのう?』

陽乃「出てくると思ったわ」

世界を闇に染め上げている九尾は、

影だからなのか、九つの尾を持つ妖狐の姿をしている。

一般人である看護師には、刺激が強かったに違いない


陽乃「貴女のせいで散々だわ」

『主様が甘んじておるからよ。あまりにも……不甲斐なかろう』

陽乃「だからって……」

『あんな小娘共処分してよかろうに』

九尾は口惜しそうに言う。

陽乃が千景たちを必要としていなければ、

九尾は容赦なく、殺していたことだろう。

九尾の尾が動くたびに、ばさりばさりと床を叩く音が聞こえて、

陽乃を囲うカーテンが揺らめく

『何故、主様が耐えねばならぬ……害をなすならば、阻むならば消せばよい』

陽乃「やめて!」

『……この人間でさえ、主様は生かそうというのかや?』

九尾の尻尾の一つの影が倒れ伏している看護師へと伸びると

そこには何もないはずなのに、看護師の体が浮き上がる

四肢をだらりと下げて、気を失っている

影は看護師の身体ではなく、首に上っていくと――ぎゅっと、絞めた

「――ぁ゛っ」

気を失っていた看護師は無理矢理に意識を絞り出され、

息苦しさにじたばたと暴れだす。

「あ゛っ、がっ……ぉ゛っ、あ゛ぁ゛っぁっ!?」

陽乃「やめて……やめてやめて、やめてっ!」


絞め殺される寸前のような、醜い声が看護師の声から洩れていく

もはや意図せず、無造作に振り回される足、

首を絞める何かを掴もうとして

けれど、虚しく空を切るだけの両手

「ぉ゛あ゛……ぅ゛ぶっ……!」

びくんっと、ひと際大きく跳ねた看護師の体は、

不意に、鈍い音を立てて床へと落ちる

「ぁ゛っぇ゛っ……げほっ、げほっ……」

陽乃「大丈夫……?」

「……の……」

陽乃「あの――」

「化け物ッ!」

叫んだ看護師は、逃げ出そうとして勢いよく立ち上がるそぶりを見せたが、

何かに足を取られ、陽乃の視界から消えた途端にゴツンッと音が聞こえた

額を打ったのか、看護師はうめき声を最後に沈黙した

『この娘は主様が眠る間、このまま死ねばよいと願っておった。殺してしまおうかと考えていた』

陽乃「っ……」

『それでも主様は生かすべきと、そう……考えておるのかや?』


1、生かすべき
2、死んでもいい
3、………


↓2

1

1


陽乃「生かすべき……と、思うわ」

『主様が死することを願う非道な生物じゃぞ』

陽乃「貴女が言ってることが事実とは限らないわ」

『……ほう』

陽乃「何より、私は人を助けたくて貴女の力を借りたの。殺したいわけじゃない」

狐の形をした影が、陽乃をじっと見つめるように頭を動かす

九つの尾が立って広がる

その大きさはカーテンからはみ出していくほどだ

『甘いのう』

陽乃「……分かってる」

『主様の親類縁者を贄と捧げた存在も、それらに謀られる愚かな人間共も。主様は生かすと?』

陽乃「今の私は、そう思ってる」

九尾のため息がカーテンを浮き上がらせて、

そこに映っていた大きな影はそれに吹き飛ばされたかのように消える。

陽乃「そう、今の私は……思ってる」


心の中にある憎しみ

それが少しずつ大きくなっているのを陽乃は感じている

けれど、まだ大丈夫だ

きっとこれからも大丈夫だ

どれだけ憎まれようと

どれだけ恨まれようと

どれだけ蔑まれようと

いつか、すべてが終わったとき

母親の前で誇れる自分でありたいと、思っていたからだ

陽乃「……大丈夫、まだ、頑張れる」

目を閉じる

熱くなっていく目頭を陽乃はどうにもできなくて、

誰も拭ってはくれない涙が伝い落ちる

辛い、苦しい、悲しい

けれど、それでも。

陽乃「っ……」

陽乃は唇を噛みしめて

固く、固く……目を閉じた


↓1コンマ判定 一桁

0 00 

※それ以外は問題なし

あっぶな


1日のまとめ

・ 乃木若葉 : 交流有(模擬戦、暴走、とても悪い)
・上里ひなた : 交流有(模擬戦、暴走、とても悪い)
・ 高嶋友奈 : 交流有(とても悪い)
・ 土居球子 : 交流有(とても悪い)
・ 伊予島杏 : 交流有(とても悪い)
・  郡千景 : 交流有(模擬戦、暴走、とても悪い)
・   九尾 : 交流有(生かしたい)


√ 2018/07/31 まとめ


 乃木若葉との絆 57→56(普通)
上里ひなたとの絆 56→55(普通)
 高嶋友奈との絆 50→49(普通)
 土居球子との絆 40→38(悪い)
 伊予島杏との絆 45→43(普通)
  郡千景との絆 24→21(険悪)
   九尾との絆 60→59(普通)

千景たちは仕方ないけど九尾も下がるのか…


√ 2018 8月 1日目 朝 (某所)

01~10 九尾
31~40 若葉 ひなた
81~90 若葉

↓1のコンマ

※それ以外、無し


では少し早いですが、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


8月交流―拘留―期間、選択により短縮


今作は期間が長め(?)な関係で日数消費はあまり気にならないけど看護師すらキツく当たるとは序盤から過酷だなぁ
と言うかほとんど九尾がトラブルを引き起こしてる気がするんだがなんとかならないのだろうか…


九尾はなんだ?陽乃が思い通りにいかないからか?

>>377
現状は選択肢というより判定だからなぁ…運が悪すぎる
積極的に交流して説得するしかなさそう


九尾は守護霊みたいなもんだから今の状況に思うところあるのはわかるわ


では少しだけ

いえす


√ 2018年 8月1日目 朝:某所


陽乃が拘束されてから、月が替わった八月

一週間ほど経過してもなお、陽乃は病院に拘束されていた。

朝、目を覚ますと天井が見える

閉め切ったカーテンの外側から人工的な光が入ってくるのを感じるだけ。

陽乃の力を危険視している大社による指示で行われている拘束衣は一切緩ませることを許されていない。

腕はお腹の辺りで重ねるように止められていて、足は閉じたままだ

そんな自由のない陽乃には娯楽でさえも与えられていなかった。

病室への来客は、日に数回

世話の為に数人の看護師が恐る恐るといった様子で訪れる程度

大社から派遣されてくるお目付け役のような人も来ることはなかった。

それはおそらく、九尾が看護師を脅したからだ。

居たら居たで、嫌悪感を帯びた視線を常に向けられることになるので

ただでさえ心を病みかねない今の状態の陽乃には、それは逆にありがたささえあった。

陽乃「………」

起きてから、眠るまでの時間は陽乃にとっての空白だ

看護師が来ても、口をきいてもらえない。

そもそも声をかけると、怯えてしまう。

起きてしまうとしばらくは眠れる気もしないので、退屈で仕方がない

もしかしたら発狂しても許されるのでは? と、陽乃は考えてしまう。


『主様が望んだことであろう?』

陽乃「……こんなこと、望んだ覚えはないけれど」

『人間の一人でも絞め殺し、不敬を働くならば同様に処すとでも言えば改善もされるであろうに』

陽乃「こんな状況に追い込まれた原因の9割は貴女でしょう?」

『くふふふっ、妾の尾は九つじゃからのう』

陽乃「笑い事ではないのだけど」

九尾のからかう声に、陽乃は目を閉じる。

九尾の力がなければ陽乃も母親も、バーテックスの餌になるだけだった

九尾には、命の恩人として感謝をしなければならない

それを考えれば、陽乃は自分の意思がどうであれ九尾の命令を聞く義務があるとも言える。

気に喰わないという人々を殺すことを制止せず、

邪魔する勇者達を殺害し、大社の人たちを処分し、自由になっていくことを目指すべきかもしれない。

陽乃「私のこと、怒ってる?」

『不甲斐ない主であると思うておるぞ』

陽乃「貴女にとって、私って甘すぎる人間だものね」

『恨み憎まれ蔑まれ殺意を向けられ、己の親類縁者を殺められてなお、裁かぬ愚か者よ。甘いという言葉など、とうに過ぎたものであろう』

九尾の声は単調ではあるが、陽乃のことを不満に思っていることだけは分かる

九尾の思想と陽乃の思想は真逆と言っても良い

ただ、陽乃はそっち側に堕ちることはいつでもできる

陽乃は母がいるからこそ道を踏み外すことを拒んでおり、

それさえ割り切ってしまえば、陽乃はどこまでも染まっていくことが出来てしまう

いや、染まっていってしまうだろう


陽乃「貴女って、私がここにいても自由に出入りできる……のよね?」

『うむ』

陽乃「だったら、みんなの状況も知ってる?」

『興味はない』

九尾はそう吐き捨てたものの、情報はしっかりと持っている。

隠す必要はないらしく、若葉達の状況について話してくれた。

若葉、球子、杏は怪我がなかったので普段通りだが、

友奈は元々検査入院だったこともあり早々に退院

陽乃によってダメージを追った右腕も問題なく動かせているそうだ。

千景に関しても友奈から数日遅れて退院し、今はもう問題はないらしい。

一時的に残っていた腹部の殴打痕もすっかりなくなったという話である

陽乃「つまり、貴女の力に勇者を殺すだけの力はないのね?」

『殺めるだけなら力はあるがのう……確実に命を奪うというのであれば妾では不足であろうな』

陽乃「でも殺すことは出来ちゃうのね」

『無論であろう』

九尾の力の効力だけで勇者は殺すことは出来ないことに陽乃はひとまず安堵するが

それは効力で殺せないだけのこと。

看護師に行ったように、抵抗できない力で絞め殺すことは可能だ。


『小娘共は自由になっておるが主様はそうせぬ……』

陽乃「仕方がないでしょう……危険なんだもの」

陽乃自身も、九尾の力は危険だと思っている。

そしてそれ以上に大社が危険視しているためこんなことになった。

その大部分は陽乃が言ったように九尾の力のせいなのだが、

九尾は人間の弱さゆえの隔離だと考えているらしい

陽乃の待遇には不満なようで

陽乃が嫌がる人でなければ、どれだけの人が犠牲になっていただろうか。

『主様が望むならば、ここから出してやることも可能じゃぞ?』

陽乃「出すって……どうせ無許可でしょう?」

『いかにも。しかし、ここで無為に過ごすほど、人間に猶予はなかろう』

いつ来るか分からないバーテックス

長野の勇者が頑張ってくれているから問題ないという話ではあるが、

それだっていつまで持つか分からない

なにより、それなのにこんな状態に甘んじているのは良くないと……陽乃だって思う。

思うが……


1、いいわ。出して
2、駄目よやっぱり。余計に怖がらせたくないわ
3、人を傷つけない方法で出してくれるなら

↓2

3

3


陽乃「……人を傷つけない方法で出してくれるなら」

『くふふふ……妾を何と心得る』

陽乃「少なくとも、人の命を考えてくれる人だとは思ってない」

陽乃ははっきりと言い切る

九尾はカーテンに影を映して見せると

大きな口元に前足を宛がって、響く声で笑う

響くと言っても聞こえるのは陽乃だけで、外に聞こえる心配はない

『然り。妾が下賤な者共の命など思惟する理由などなかろう』

九尾はそう言うと、

口先を陽乃の身体に伸ばす仕草を見せる

たったそれだけで――鎖が砕けた

『しかし主様はそれを望まず、されど自由を欲するのであろう?』

九尾のくつくつとした笑い声が聞こえる

それはこれからを思い、愉しんでいるようにも感じた。

『……よかろう』

陽乃「誰も殺さずに出してくれるの?」

『妾ならば容易。されど、主様には苦難の道となろうぞ』

なにせ、陽乃はここから脱走することになるのだ。

出さねば殺すと脅せば状況も変わるが、ただの脱走ならば大社は躍起になって対処してくるかもしれない。

『くふふっ、成し遂げてみせよ。愚鈍なる我が主様よ』

では途中ですがここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から


脱走と聞くと一作目でよくやってたのを思い出すな
最もこちらは命懸けになりそうだけども…


脱走するからか九尾少し機嫌良くなってる?


遅くなりましたが、少しだけ

あいよー


『動くでないぞ主様』

そう言った九尾の影が陽乃の体を覆う。

陽乃の体を覆っていた拘束衣が一瞬にして消え去って、

肌着一枚になった陽乃はむしろ、拘束感が無いことに違和感を覚えながら体を起こす

陽乃「なんだか、変な感覚」

『人間にしては長き時を囚われておったからのう』

喉を鳴らす九尾は、影のままカーテンを払い除ける

部屋には普通の病室などにあるような棚などはなく、

監視するためと思われる機械が、天井に取り付けられているのが見えた

カーテンが締まっていても、横になっている陽乃の顔が見えるような位置だ。

陽乃「あのカメラ、大丈夫なの?」

『あれがいかなるものであろうと人間の目に映るものなれば、妾の術中には変わらぬ』

陽乃「……そう」

『問題があるかや?』

陽乃「幻術? 幻惑? の力はいいのだけど、私……この格好ででなくちゃいけないの?」


陽乃の私物ではない、病院側が用意したであろう質素な肌着

陽乃が身に纏っているのはそれだけでジャージも靴も靴下もない。

九尾の幻を見せる力がどこまで効力を発揮するのか分からないが、

たとえそれが万物におけるすべての自称を騙せるのだとしても、

殆ど裸に近い姿で外に出ていく勇気は、陽乃にはない。

もちろん、状況が状況なだけに

我儘を言ってられないとは思うのだけれど。

『問題なかろう?』

陽乃「人は色々あるのよ……」

『人間とて獣……動物であろう。羞恥心などと不必要なもの捨ててしまえばよかろう』

九尾が呆れたように溜息をつくと、カーテンが靡いた。

すると、陽乃の体は白い着物に包まれて

心なしか、ちゃんとした温もりを感じる

『これでよかろう』

陽乃「……ちゃんと服着ているのよね? 私も幻を見せられているわけじゃないのよね?」

『くふふふ、気にしなければよい』


愉快そうに笑った九尾だが、ただの冗談だったらしい。

九尾の前足が陽乃の頭を抑え込むと

九尾の力が外側から陽乃の体を包み込んで、

陽乃がいつも見ていた、看護師の恰好へと変わった

『力を衣服と変えた。案ずるな、妾の皮を被っていると言えば分かるであろう? 裸体ではない』

陽乃「……なるほど」

先ほどの着物よりもしっかりとした衣服の温もり

九尾の皮ということは、狐の毛皮のようなもののはずだが、

触れてみても、看護師の服装以上の感覚は感じられない。

とはいえ、力は力だ

陽乃「結局、力で誤魔化すしかないのね」

『仕方があるまい。ほかになかろう』

カーテンを引きちぎって代用するのもあれなので、

そこはもう、九尾の毛皮という力に満ちていそうなもので我慢するべきだ

『それはここを出るのに適した服装じゃ。耐えよ』

陽乃「……そう。なら仕方がないかしら」

ネックストラップと、その先についている社員証というべきか

写真つきのネームプレートまでもがしっかりと触れられ、感じられるのに顔を顰めながら頷く

陽乃「人を傷つけないって貴女の言葉を信じて、従っておくわ」


↓1コンマ判定 一桁


奇数 接触

※そのほか、なし

ふんぬっ


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


流石に終わってたか九尾の毛皮の衣服…戦衣の基礎かな?


接触しなかったのは良かったのか悪かったのか


後はどこまで誤魔化しが効くかだな
看護師服は病院までかもだが


では少しだけ

よしきた


陽乃「……凄い」

病室から、病院の外に出るまで

陽乃は何度か声をかけられることがあったものの

誰も、拘束されているはずの久遠陽乃だとは思わなかった。

むしろ、

同僚の一人として気さくに声をかけられるくらいだった。

『くふふっ、無論じゃ』

心なしか弾んだように感じる九尾の声

自分の力が認められるということは嬉しいのだろうか

陽乃「私、この格好のままで良いの?」

『ふむ……』

院内やその付近であれば看護師の衣装でも問題はないけれど、

ある程度離れてしまったら違和感が出てきてしまう。

それを心配する陽乃に、九尾は絡みつくように影を伸ばす。

一瞬、視界が真っ暗になったかと思えば、陽乃が普段着ていた私服に切り替わっていた。

陽乃「何でもありなのね」

『妾が知るものにしか変化はさせられぬ。万能ではない』

陽乃「貴女が知るものだけでも十分何でもありだわ」

実際にはどんな格好なのか……というのは抜きにしてしまえば、

本当に万能な力だと陽乃は思った


陽乃が隔離されていた施設は、町はずれの病院だった。

三年前の惨劇によって人口が大幅に減少することになったが、病院に余裕はない。

というのも、多くの人々が発症した【天空恐怖症候群】があるからだ。

天空恐怖症候群は精神的な病である。

症状としては、

一つ、外出を嫌うようになる

一つ、襲来時のフラッシュバックなどによる精神汚染と日常生活への影響が出る

一つ、幻覚などの症状が頻発に見られるようになり、薬を手放せなくなる

一つ、自我が崩壊し、発狂にまで至る

といったものがあり症状別4段階に定められていて、

陽乃の病室から離れるにつれて軽い症状の人が入院していたようで

ベッドに空きがあるようには感じられなかった。

そんな精神病院と呼ばれてしまうような病院の周囲の住宅には、人の気配がほとんど感じられない。

庭先の雑草が伸び切っていたり、崩れてしまった建物もある。

人の出入りがあると感じられるのは見る限りで数軒

陽乃「……この辺りも、だいぶ」

『人間の気配がまばらじゃな』


全員が死んでしまったとは考えたくない。

しかしながら大半が亡くなってしまっただろうし、

それと同じくらいの人々が心に傷を負ってしまったのだ

かつても、歩いていれば多くの人とすれ違うなんて言う人口密度は感じられなかったが、

それでも、人の気配があった。

時折聞こえる犬の声、車の音、子供たちの元気な声

確かな日常がそこにあったのだ

陽乃「………」

『主様の責ではあるまい』

陽乃「でも、私が守らなければならないことだわ。これ以上酷くならないように、これ以上戻れなくなってしまわないように」

『主様を悪としている人間じゃぞ』

陽乃「それでもよ……私は助けたいと思ったから力を借りたんだもの。たとえ、それが悪魔の力であっても……」

助けた人々から迫害されるのだとしても、

自ら選んで掴んだのだから、自分は自分の目的を見失わずにいられればいいのだ

その果てが理不尽な結末だろうと。

――本当に?

陽乃「っ」

『主様、寄宿舎に戻るつもりかや?』


総毛立つような悪寒を感じたのと同時に九尾の声が聞こえる

聞こえるのは陽乃にのみなのではたから見れば独りぼっちだが、

陽乃の身体から延びる影は体以上に大きく広がり、

近くの木陰に重なっている部分からは、狐のような顔が陽乃を覗いている

そう言った感覚に鋭敏な人がいたら、悲鳴を上げて逃げ出すことだろう。

『主様は正式な退院ではなかろう? 少々厄介なことになると思うがのう』

陽乃「そう……よね」

何も考えていなかったとはいえず、頷く。

足を止めた陽乃は近くの車止め用のポールに腰かけた。

陽乃の生活に必要な数々の私物はすべて寄宿舎の自室である

端末は取り上げられているので、無し。

当然所持金もない。

陽乃「私一文無しなのよね」

『そこらの人間に取り入ってしまえばよい。妾ならば容易じゃぞ』

陽乃「でしょうね……」

九尾の力はついさっきから十分に分からされている

そのうえで、九尾の狐の伝承を考えれば、言葉に偽りがないのは明白だった



1、友達の家に行くわ
2、それが出来るなら、寄宿舎に行くくらいは余裕でしょう?
3、このまま、四国から出たいって言ったら、どうする?
4、取り入るってどうするつもり?

↓2

1

4


では少し早いですがここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から


九尾も物騒なことさえしなければ世話焼きな良い奴なんだけどなぁ
あと友達ってもしやさおりんのご先祖…?


何気に九尾は陽乃さんとしか会話できないのか


では少しだけ

かもん


陽乃「取り入るって、どうするつもりなの?」

『魅了してしまえばよい。妾の力ならばそれも容易にこなせようぞ』

陽乃「魅了って……つまり、洗脳みたいなことをするってこと?」

『人間を蠱惑することが、主様にとって洗脳というのであればそうであろうな』

九尾の伝承は、そのほとんどが魅力的な女性として知られており、

その魅力ゆえに国を滅ぼすこともあったとさえされている。

九尾にとって、それは力の一端でしかない。

人間を魅了すること、それは九尾の誤認させる力―幻術―の一端でしかなく、

洗脳かどうかなど、彼女には関係ないらしい。

陽乃「……私を、その誰かの子供にしたりもできるの?」

『実の娘というのは状況によって無理があろうが……遠縁の娘としてなら無論じゃ』

陽乃「でも、貴女としては子供なんて不自由だと思うのでしょう?」

『異論があるかや? 子は親という厄介な存在がおるではないか。解放されて早々に己に枷をつける必要張るまい』

陽乃「それは」

九尾の言いたいことも、陽乃は分かる

けれど、と……陽乃は顔を顰めた

陽乃「それってつまり、誰かの恋人とかそういう存在に成り代わるってことでしょ? 無理だわ」


陽乃は首を振って、九尾の影から目を背ける。

三年前、まだ平和だったころの陽乃には異性同性関係なしに友人がいた。

しかし、あくまで友人であって恋人ではない。

何より、まだ高校生にも至っていない陽乃には、大人の女性という立ち位置は聊か無理があるだろう。

陽乃自身もそう思っているからか、困った顔で息を吐いた

陽乃「百歩譲って、娘という立場ならどうにかなると思うわ」

『娘ならば何の心配もいらぬ』

九尾ははっきりと言い切る

『妾の力ならば、容易じゃぞ』

陽乃「それは分かっているんだけどそもそも、誰かの子供なんて……」

九尾の力ならば絶対になり切れるという信頼はある

ただ、陽乃が鳴りきる誰かの保護者は亡くなったか、天空恐怖症候群によってどうにもならなくなってしまったか

とにかく、悲しい過去を持っているということになることだろう

そして、そのことに同情されることだろう

陽乃はそれが受け入れられなかった


『ふむ……ならば主様は妾の連れ子とするのも一つじゃな』

陽乃「貴女に人の心がわかるの?」

『うむ。人間の雄の心を奪うなど容易いことよ』

九尾はくすくすと笑う

とても楽し気なのに、底知れない不安を感じる声

九尾に騙されてしまった人がどうなってしまうのか……

陽乃は最悪の想像をしかけて、息を吐く

陽乃「その人、どうなっちゃうの?」

『仮初とはいえ妾の旦那様となるお方じゃ。少しは妾に付き合ってもらわねばならぬからのう?』

笑み交じりの少し高い声で答えた九尾は喉を鳴らして、

尻尾の影がゆらゆらと揺れる

それと同時に風が吹いて、木々がざわめいた

『死なせはせぬが……どうにかなるであろうな』

死ぬかもしれないが死なせはしない

陽乃との口約束にも満たない言葉を、九尾は守るつもりのようだ


陽乃「あの子の家なら……」

『主様を知る人間に会うのは危険じゃろうて』

陽乃「ん………」

『その娘が絶対に裏切らぬ人間であるならばよいがのう? そんな人間などおらぬ』

九尾は断言する

心なしか影の口元が唸るように動いたように見えた

陽乃「あの子は優しい子よ。私の一番、近くにいたの」

『それが娘の本性かや? 今と過去とは違えておろう?』

陽乃「ええ」

三年前と、今は違う。

なにより、三年間一度も連絡を取っていないのだ

過去の関係をすべて放棄していなかったとしても、

彼女だって子供だから周りの言葉に逆らえるだけの力は持っていないはずで

裏切られないという保証はない

圧力によって屈してしまったことを裏切りというのは――理不尽だろうか。

陽乃「どうしたものかしら……」


1、九尾の連れ子設定
2、誰かの子供になりきる
3、恋愛げぇむ
4、友人に会いに行く
5、寄宿舎へ
6、四国を出る
7、ホームレス

↓1

4


↓1コンマ判定 一桁

0 00 最悪
1~3 悪い
4~5 普通
7~9 良い
ぞろ目 最良

こい

ではここまでとさせていただきます
明日は可能であれば少し早い時間から


うーむとことん引きが悪い…
もし追い返されるようなら九尾の連れ子作戦もありだが…


まあ3年会ってなかった子が突然来ても困るよね……


では少しだけ


陽乃がかつて住んでいた伊予市

比較的人通りの多かった通りも閑散としていて、

どこかから人の叫び声が聞こえるとまた別の悲鳴が響いて来る

三年前の恐怖の伝播

元に戻れるという保証はなく、

外の世界に蔓延っているバーテックスを殲滅でもしない限り、

鬱屈とした死の空気は晴れないのだろうと陽乃は市内を歩きながら思う。

陽乃「あっ」

様子を確認しながら歩いていた陽乃は店の一つの前で足を止める。

立ち寄ったことのない個人商店はシャッターが下りており、

営業はしていないようだが、そのシャッターに描かれた落書きに陽乃は足を止めざるを得なかった。

陽乃「……私の家、無くなっちゃたせいかしらね」

シャッターには生き延びた久遠家、おそらくは陽乃に向けての憎しみが言葉にされている。

なにも無関係のところにこんなことしなくてもと思うが

陽乃の実家や神社が放火されたことを考えれば、それがただの暴徒化しているよりはましなのかもしれない。

彼らは【久遠家の責任】というものを信じてしまっている。

人身御供など聞いたこともないだろうに、そうであったのだと断言している。

陽乃「クシナダヒメになった気分だわ……家には白羽の矢じゃなくて白煙が上がったけど」


嘲笑めいた笑みを零した陽乃は、シャッターの文字を軽く撫でて首を振る

陽乃の影におさまっていた九尾はシャッターに映りこむと、その瞳を陽乃へと向けた

『それでも、主様は守らねばというのかや?』

陽乃「私が守るのは私自身の心よ」

人を救う価値がないなどと切り捨ててしまったら、

心までもが彼らの言うような化け物になってしまうかもしれない

陽乃「なんて……ただ、私は人でありたいだけだわ」

『人間ならば恨み、憎み、怒り、己を虐げる者共に相応の報復を与えるものじゃろう』

だが、陽乃はそうしない。

それを是とする九尾を止めさえしている

『主様は化け物じゃろう。あ奴らの語る理不尽ではなく、ただ人になり得ない存在じゃ』

陽乃「……愚かだって思うんでしょう?」

『愚問であろう』

陽乃「貴女も災難ね。そんな人……そんな化け物に憑いてしまったんだから」

『久遠の人間がここまで愚者に育つとは、妾も思わなんだ』

くつくつと笑った九尾は影を翻す

『主様が手を出さぬから助長する。下手に伸びてからでは草の根を狩るのも難しかろうに』

陽乃「だとしても、踏み外したくはないの」

九尾の不満げに零れた吐息を感じたが、陽乃は気にせずにその場からは離れてまた歩く

友人の家に辿り着くまで数人見かけたが、誰一人として陽乃に気付くことはなかった。


陽乃の友人の家は幸い崩れたりしておらず、人が住んでいる気配が感じられる。

インターホンに手を伸ばした陽乃は、押すか迷って息を吐く

音信不通になって、三年

それは陽乃が自分の意思で交流を断ったのではなく

大社による言動の制限によって生じた弊害として、旧知の仲であっても断たざるを得なくなっただけだ。

だが、それでも相手から見れば一方的だっただろう。

陽乃「ねぇ、私は久遠陽乃として見られるのよね?」

『主様がそれを望んだのであろう?』

陽乃「そうだけど」

『妾はすべきではないと忠告し、主様はされど会うと決めた。なれば何を恐れる。己が望んだならばゆくがよい』

それの結果がいかなるものであろうと、

自らが選び進むと決めた道すがら、翻すなどという行いを九尾は是としない。

分かっている。

陽乃は自分でも、そんな中途半端なことはしたくないと思っているけれど

彼女は一番の友人だった。

多くの人々が自分を誹謗中傷する中で、しかし彼女はそうではないと心のどこかで思っている。

だから――。

陽乃「はぁ……」

勇者らしからず、緊張に高鳴ってしまう胸に手をあてがって深呼吸

そうして、インターホンを押した


数秒もまたせずに、インターホンから元気な声が聞こえてくる

何度も何度も聞いた声

陽乃の家で、彼女の家で、

インターホン越しに、電話越しに……繰り返し聞いて馴染んだ間接的な声色

誰が来たのかちゃんと確認しないのは相変わらずで、

在宅を知らせるためだけの応答をした彼女の部屋を駆ける音が玄関口へと近づいて

「はーい!」

勢いよく玄関の扉が開いた。

「どち……あっ」

陽乃「……久しぶり、ね」

「………」

緊張からか声が上ずってしまったものの、

陽乃の友人は、しばらく呆然としてそれを聞き逃したのか

はっとして辺りを見渡すと、扉を盾にするようにして――

「帰って!」

強く拒絶を叫んだ

つらい…


「あの日、助けて貰えたのはすごく感謝してる……でも、もう二度と会いに来ないで」

陽乃「待っ」

扉は固く締められて、続けざまに鍵が締まる音が響く

鍵だけでなくドアチェーンまで使ったのだろう

金属の音が聞こえた

陽乃「待って……」

『ふむ……』

陽乃「ダメッ!」

自分自身の影が、

陽の光もなく不自然に彼女の家の方に伸びていくのが見えて、

陽乃は叫んで制止する

影は止まって、狐の口に似た先端が開くように揺れた

『躊躇う必要はなかろう。勇者とやらとは違って主様の力にはならぬ』

陽乃「それでも……っ」

友人に、待ってと伸ばせなかった手を固く握りしめて

陽乃は首を振る

九尾は殺すつもりなのだ


1、ごめんなさい
2、無事、なのね……元気でやっているのね?
3、一つだけ聞かせて、拒絶は貴女の意思だって、思っていいの?
4、何も言わずに立ち去る

↓2

4

3


陽乃は少し考えて、インターホンをもう一度押す

出てくれなければそれで終わり

普段は数秒も待たせないインターホンは、

一分以上、沈黙して

諦めて立ち去ろうとしたところで「待って」と声が聞こえた

『……なに?』

陽乃「一つだけ聞かせて欲しいの」

そうだと言われるのが怖い

けれどこのまま曖昧にしていたって、きっとそうなのだろうと心は勝手に疑う。

だからはっきりさせようと、陽乃は意を決して

陽乃「拒絶は……貴女の意思だって、思っていいの?」

『………』

陽乃「お願い……それだけ、聞かせて貰えればすぐに居なくなるから」

同情を求めてしまっているような声

歯を食いしばっても

違うと言って欲しいと願う心は出てきてしまう

けれど――。

『そうだよ。私が、陽乃ちゃんに会いたくない』


『陽乃ちゃんと会ってるのが知られたら、もうここにいられなくなっちゃうから』

陽乃「……そっか」

小学校時代は、学校が惨劇の場となったこと、

精神病を患ってしまった教師や生徒が多数出てしまったことで

暫く休校していたという話を聞いている。

そこから今まで

友人に何があったの分からないけれど、

きっと、陽乃のことで色々とあったのだろう

その他大勢が知らなくてもクラスメイトは知っていた

その子供達から親が話を聞いていたかもしれない

そして、それらから……彼女は「あの娘を知っているだろう?」となったかもしれない

陽乃「そうだったんだね」

だとしたら、仕方がない

だったら、どうにもならない

陽乃となんて関わり合いになりたくないだろうと……

陽乃「うん……分かった」

『その……感謝は、してるから』

陽乃「いいよ。出来ることをしただけだから……ただ、それだけだから」

陽乃はそう言って、笑おうとして

上手く、笑えそうもなくて――

インターホンの画面には映らないように顔を隠しながら、足早に立ち去った


『良いのかや?』

陽乃「仕方がないでしょ……私と関わってたら巻き込まれちゃうんだから」

友人の家からしばらく歩いて、よく遊んでいた公園のベンチに腰掛ける

時間はまだお昼ごろだが

公園には人の姿はまるで見られず、

あまり、遊ばれているような雰囲気は感じられなかった

陽乃「私と一緒に居るだけで、あの子の家族を不幸にしてしまうなんて、私が嫌だもの」

『気に病む必要はなかろう。恩が有りながら仇と返す愚物なれば、使い捨ててしまえばよい』

陽乃「九――」

『異を唱えるならば処分してしまえばよい。問題が生じるというならば妾が腹に入れてやろう』

陽乃「貴女……」

『無論、妾は戯れておるわけではないぞ』

利用できないならば処分してしまえばいい

利用できるなら利用して処分してしまえばいい

九尾はそれを明言して……反り立つ尻尾の影をくるりと丸める

『あやつは生かしておく価値があるかや? 主様』

陽乃「私の友達なの」

『今もかや? 切って捨てられた、今でもかや?』


わざとらしい言葉遣いで問いかけてきた九尾は、

ベンチに座ったまま、何も言わず首を振る陽乃を見つめて、目を細める

影が不自然に伸びて陽乃の隣に人の形を作ると

それは次第に物質化して、完全に人間……

陽のも知っている、上里ひなたの形をとった

ひなた「そしたら、どうしますか?」

陽乃「……上里さんもできるのね」

ひなた「久遠さんの状況は……控えめに言っても悪いです」

一つ、帰れる場所がない

一つ、所持金も所持品もない

一つ、認識を誤魔化さなければ捕らえられてしまうかもしれない

九尾は指を立てながらそう話して

困りましたね。と、ため息をついた

ひなた「数人、殺してもかまいませんか?」

陽乃「上里さんの声でやめて……」

ひなた「運が良ければ一人で済みますよ? お金を持っていそうな人を――」

陽乃「駄目だって言っているでしょう」


1、寄宿舎に帰るわ
2、もう、ここを出ていく
3、貴女の娘になるわ
4、しばらく一人にして
5、大丈夫だと思っていたけれど……やっぱり、辛いわね


↓2

1

1


√ 2018年 8月1日目 昼:

01~10 ひなた
21~30 友奈
40~50 千景
61~70 若葉
81~90 球子


コンマ判定 ↓1


ではここまでとさせていただきます
明日も可能であれば少し早い時間から


帰宅したとたんにまたもや千景と遭遇か…
お互いに真逆の闇を抱えているからかやたらと縁があるな


まだまだ序盤なのに怒涛の鬱展開の数々だな…


まああのまま話さない方が気まずいからこれからのこと考えると早く会えて良かったかも

では少しずつ


せめて家が無事ならば家に帰ることも出来るが、

無事ではない陽乃は、寄宿舎に戻るしかなかった。

九尾は途中までひなたの姿でついてきていたが、

勇者に遭遇するのを警戒してか、人目がなくなったあたりで影と消えて

寄宿舎と学校となっている丸亀城の中間に近い道で、彼女と出会ってしまった。

陽乃「ぁっ……」

千景「?」

声に気付いて足を止めた千景だったが、

陽乃を見ても嫌悪感を感じさせるような表情を浮かべていない。

千景「なにか?」

陽乃「えっと……」

千景「体のことなら、もう平気よ」

千景は怒っていないどころか

普段、陽乃に向けているような嫌な感情さえも向けてはこない

あの模擬戦によって変わったのかもしれないが

陽乃はそう思えなくて、もしかして。と、影に視線を落とす。

『うむ。久遠陽乃としてでは問題があろう。あやつには別の人間に見えておる』

千景「どうしたの……? 伊予島さん」

陽乃「えっ」

千景「土居さんなら、見ていないけれど……」

誰が最初に幻術と気付くかな


千景の目には陽乃が伊予島杏に見えているらしい。

なぜ杏なのかと陽乃は困惑したけれど、友奈を選ばなかったのは正解だろう。

千景は勇者の中で一番友奈と親しくしている。

親しくしている……というよりもさせて貰っているように思えるのだが、

どちらにしても、ちょっとした違和感を疑問に思うかもしれない。

その点、杏たちならば誤魔化しやすいし、気にすることも少ないはずだ

陽乃「あぁ、その……怪我は本当に大丈夫?」

千景「……平気よ。もう痛みもない」

陽乃でなくても千景はやや冷ややかな反応をする。

それなりに明るく接するのは友奈だけで

杏が気遣っていても、あまり良い反応を見せてはくれない

陽乃「久遠さんは――」

千景「知らないわ……あんな人」

千景は久遠という言葉だけで顔を顰めると、

吐き捨てるように呟いて、首を振った。

模擬戦は合意の上で行ったものだったし、陽乃自身は何があったのか記憶にないけれど

話を聞いただけでも、語られる以上に何か良くないことがあったことだけは分かっている


陽乃「なにが、あったのかな……」

千景「また……その話……?」

陽乃「えっ、ぁっ……その……」

千景は陽乃―彼女にとっては杏―に目を向けると、

その奥を見透かそうとしているかのようにも感じる尖った瞳を細めて、

少しだけ、嫌悪感を見せた。

千景「貴女は……ずっと彼女を気にかけているわね」

陽乃「それは……」

千景「けれどそんなこと関係なく……彼女は殺そうとするわ……」

千景の表情に影が差す

噛みしめていると分かる唇が固く結ばれて、

拳が戦慄くのが見えた

千景「あの人は高嶋さんを傷つけた……ッ!」

陽乃「っ」

千景「貴女だって……殺される……すり寄ろうだなんて無駄よ……」

声を張り上げてしまったことにはっとして、

またいつものような声色で忠告を口にする

杏を気にしているというよりも、

陽乃を畏れている彼女の言葉には、怒りが滲んでいるように感じた


1、陽乃に戻して貰う
2、郡さんは、久遠さんを殺したいと思ってる?
3、千景さんは、久遠さんを殺したいと思ってる?
4、久遠さんだって苦しんでいると思います……多くの人を護ったのに、ただ恨まれるだけで
5、もし、傷つけたのが久遠さんの意思ではなかったら?


↓2

1

5


陽乃「もし……」

聞いて良いのだろうか?

今の自分の言葉は、すべてが伊予島杏の言葉となってしまう。

彼女の知らない場所で、

彼女の姿で、彼女の声が……言葉を紡ぐ。

なのに……けれど。

でなければ、陽乃は知ることが難しいだろうから。

心の中で、杏に詫びながら陽乃は杏の姿で千景を見る

陽乃「もし、傷つけたのが久遠さんの意思ではなかったら?」

千景「乃木さんも言っていたわ。彼女は彼女ではなかったって……」

陽乃「………」

千景「高嶋さんはそれを信じるって言った」

千景は、自分もそうしてくれるような

少しだけ、寄り添うような雰囲気を感じさせながらも……鼻で笑う

千景「ありえないわ」

陽乃「っ……」

千景「彼女の意思かどうかなんて……そんなことはどうだっていい」

千景は杏から目を逸らし、

怒りに震える拳をゆっくりと開く

千景「あの人は私達を殺そうとした……それに変わりなんてないでしょう……」


千景「伊予島さん、貴女は……例えば、土居さんが目の前で殺されかけても彼女を擁護するの……?」

陽乃「そんなこと……っ」

千景「あり得ない。だなんて……言わせないわ」

千景は否定の言葉さえ言わせない

陽乃には近づこうとしない千景の足が動く

一歩一歩、杏に見える陽乃のもとへと近づいて

千景「あの人は上里さんさえ殺すと言っていたらしいわ……一般人である彼女でさえ、あの人は殺す気だった……」

陽乃「なっ」

千景「そんな人が、五人の内三人を殺そうとした人が……残り二人だけは見逃すとでも……?」

威圧するように千景は言う

久遠陽乃は確実に殺すのだと

若葉も、湯女も、千景も、ひなたも

そして、残される二人、杏と球子でさえも

彼女はそう断言する

そうではない可能性を――一切、考えてはくれない

千景「媚び諂って……すり寄って……命乞いでもしたら……見逃して貰えるとでも思っているの……?」

陽乃「そんなことっ」

千景「無駄よ……だとしたら、高嶋さんが被害に遭うことはなかった」


千景「三年前……死ねばよかったのに……」

陽乃「そんなっ……こと……っ」

生きたくて、死にたくなくて

大切な人を護りたくて……一生懸命に頑張った。

それは多くの人に恨まれるほどのことだったのだろうか

それは、死ねばよかったのにと言われるほどの悪い行いだったのだろうか

理不尽だ……あまりにも。

確証もなく身勝手に人柱とされただけでなく

死に物狂いで生き残り、人々を救ったことが呪われるようなことだと……

――なれば。

陽乃「っ」

首を振る

それは答えてはならない言葉

九尾のそれとは違う

憎悪に満ち満ちた、決して触れてはいけない闇

千景「分かったら、あんな人なんて関わらない方が良い」

陽乃「……」

千景「別に……私はどうでもいいけど……高嶋さんが悲しむと思うから……」


千景が踵を返すと、

九尾の影が千景のもとへと素早く伸び――

千景「ふぐっ」

何もない、平坦な場所で千景が転ぶ

数秒動かなかった千景は顔を上げて

陽乃―杏―の姿を思い出して振り返り、逃げるように走っていく

『……殺めるなと、主様が言わねば刈り取るものを』

陽乃「ごめんなさい……」

『妾が、排除してやっても良いのじゃぞ』

九尾の声は今までになく優しかった。

しかしながらその言葉は厳しく、重い

陽乃はそれに何も言わず、

千景の姿が見えないことを確認して、また寄宿舎の方へと向かって歩く

陽乃「貴女、皆殺しにする気だったのね」

『くふふふっ、無論。本気であれば生きてはおらぬがのう』

陽乃「……脅しにしても、そこまでしたらどうなるか考えなかったの?」

『どうなれど、阻むものなり得るならば――消せばよいだけであろう』

九尾の声は仄かに笑みを含んで、少しだけ響いて感じた


01~10 ひなた
21~30 友奈
61~70 若葉
81~90 杏


↓1のコンマ

※それ以外は通常


陽乃が部屋に帰ると、

元々散らかっていなかった部屋は誰かの手が入ったかのように、保たれていた。

掃除がされ、

カーテンが開けられて……窓が開いていて

陽乃「……馬鹿なことをする人がいるものね」

『伊予島杏。であろうな』

陽乃「どうして?」

『郡千景曰く、娘はお主を気遣っている。なれば、この場を保つのも不思議ではあるまいよ』

陽乃「……なるほど」

確かにそう言われれば、そうかもしれない

陽乃と杏は殆ど関わり合いになった覚えはないけれど

彼女はとても優しい人だ

勇者でなくてもよい、温もりのある心を持っている

陽乃「さて……」

その優しさには悪いが、

ここから出ていかなければならない

その準備をしようかというところで、

九尾のせいで伸びる影に別の誰かの影が触れた

ひなた「杏さん……?」

陽乃「上里さん……」


扉は締まっていたはずだが、

音もなく開かれたのか、音に気付かなかったのか

恐らくは後者だろうと陽乃は自分の無防備さに眉を顰めてひなたへと顔を向ける

九尾の幻覚を見せる力は、

今もなお、伊予島杏と認識させているらしい

ひなた「どうして……こちらに?」

陽乃「上里さんこそ、どうして……」

ひなた「上里……?」

陽乃「あっ、あはは……久遠さんのこと考えてたのでつい」

ひなたは不思議そうに首をかしげたが、

深く掘り下げるつもりはないようで

そうだったんですね。と、笑みを浮かべて部屋を見渡す

みんなと一緒に居る場面が限りなく少ないせいで、

普段、杏がひなたをどう呼んでいるのかも分からず、誤魔化すしかなかった。

上里さんに疑問を抱いたのなら「ひなたさん」だろうか。


見たところ、ひなたには体のどこかを庇うような様子もないので、

殺そうとしただけで全く手は出さなかったのだろう。

その心を読んでか、

九尾もそれには『然り』と息を漏らした。

陽乃が予め止めなければ殺されていたので

とめておいて良かったと、改めて思う。

ひなた「この部屋を見て、どう思いましたか?」

陽乃「え?」

ひなた「若葉ちゃんの部屋も似たようなものですが、もう少し……生活感が感じられるんです」

もしかしたら私のせいかもしれませんけど。と、

ひなたは笑いながら呟いて、

陽乃の部屋の、8割が何もない棚を一瞥する

ひなた「その点、久遠さんは私物をほとんど持っていません。一番初め、読書や映画が好きだと言っていたのに」

陽乃「それは……」

街には行けず、誰かに代理を頼めるわけもない。

通販なんてもってのほかで

そうなってくると、陽乃には私物らしい私物を入手することなんて難しい話だった

ひなた「瀬戸大橋を護った勇者である彼女が、疎まれ、憎まれ、呪われ、蔑まれ……趣味に触れることさえできない部屋にいたんですよ」

陽乃「………」

ひなた「酷い、話ですよね」


1、陽乃の姿に戻して貰う
2、ひなたさんも、久遠さんに殺されかけたんですよね?
3、久遠さんはどうなるんでしょうか?
4、噂……どうにか払拭することは出来ないのでしょうか?


↓2

4

1


では少し中断いたします
再開は22時頃を予定しています

一旦乙
ひなたや杏は優しいな…そして千景との溝の深さが辛い


ではもう少しだけ


陽乃「まず……上里さん、ごめんなさい」

ひなた「はい?」

一言先に謝った陽乃は、ふっと……息を吐いて

自分の影を見下ろして、頷く

九尾はそれだけで察したのだろう

影が揺らめいて、口が開いた

『よいのかや?』

陽乃「…………」

ひなたには聞こえない九尾の声

唐突な謝罪に困惑するひなたの前で陽乃が頷くと、

九尾の、幻覚を見せる力が解かれていく

ひなた「なっ……」

陽乃「……ごめんなさい。私なのよ」

ひなた「どうや……って……いえ、それは、想像が……」

驚愕に後退りしていくひなたは、

背後の壁に背中をぶつけて、下を向いてしまう

ひなた「千景さん達にも施した……幻を見せる力ですね?」

陽乃「そう……幻覚を見せるの。幻惑、誤認させるって言ってもいいかもしれない」


ひなた「ここには、荷物を取りに?」

陽乃「まぁね……行くところがなかった。というのもあるけれど」

陽乃は薄く笑って、ひなたから目を背ける

唯一頼れそうだった友人には

二度と会いに来ないでと突き放されてしまったし、

自宅は三年前の火事で焼け落ちているのでどうしようもない。

自宅にバーテックスが落ちてきたことによって帰る場所を失った人々のいる仮設住宅もあるにはあるが、

陽乃はきっと……そんな場所に行ったら襲われることになる。

ひなた「まるで気付きませんでした」

陽乃「ほんと、驚きよね」

若葉の姿で現れたり、ひなたの姿で現れたり、

陽乃を杏に見せたり、一般人に見せかけたり

千景や友奈を重傷に勘違いさせたり

言ってしまえば何でもありだ

陽乃「……ごめんなさいね。貴女の話、私が聞いて」

ひなた「あっ……あぁ、えぇ……まぁ……ふふっ、他人に話すのは良くても本人に聞かれていたとなると……」

恥ずかしいものですね。と、

ひなたは照れくさそうに笑って見せてくれる

陽乃は勇者を殺そうとした悪魔のような人で

ひなたのことですら手にかけようとした、許しがたい人のはずなのに


ひなた「久遠さん、せっかくですからここでお伝えしておきたい話があります」

ひなたは柔らか威空気を引き締めるように声色を少しだけ変えて

陽乃のことをまっすぐ見つめた

恐怖か、緊張か

唇はきゅっと結ばれている

ひなた「大社は、久遠さんの勇者としての権利を剥奪することを検討しています」

陽乃「なるほどね」

ひなた「あまり、恩恵はなかったと思いますが」

陽乃「……まぁ」

母親を匿ってくれている。という部分だけはかなりの恩恵を得られていると言っても良いけれど、

それ以外の点においては、何の恩恵も得られてはいなかった

寧ろ、縛りがきつくさえ感じられて、窮屈だ

陽乃「それ、乃木さんには?」

ひなた「いえ……若葉ちゃんは、久遠さんのことを本当に勇者だと慕っていますから」

陽乃「そう、言われてもね……」

ひなた「いかなる理由があったとしても、あの日……瀬戸大橋の手前でバーテックスに立ちはだかっていた姿は勇者だったと思います」

ひなたはそう言うと、ふっと息を吐いて

ひなた「民衆の声が……あまりにも大きいんです。貴女を差し出せと」


1、だったら、差し出してしまえば良いと思うわ
2、大社はどうするって?
3、ほんと、嫌われちゃってるわね
4、ねぇ……追放したことに出来ないかしら?


↓2

ksk

3

4

ではここまでとさせていただきます
明日は可能であればお昼ごろから


戦いで大きな被害が出たからならまだしも戦う前から四面楚歌状態だな…


救いがない…


では少しずつ


陽乃「ほんと……嫌われちゃってるわね」

ひなた「街の人達に関しては嫌われているというより……期待されているというのが正しいかもしれません」

人々は陽乃を人身御供として差し出すことで、

救われるかもしれないという話に希望を抱いている

そして、本来の役目を逃げ出したという罪の烙印を押されてしまった陽乃は、

まだ子供である若葉たちに重責を担わせるくらいよりも、

供物として差し出すことへの罪悪感が薄いのかもしれない。

それらが集うことで……より、声が大きくなっていく

ひなた「久遠さんを供物とすることは、勇者が戦う以上の希望なんです」

陽乃「私が死ぬことで治まるなんて……」

『ふむ……ないとは言えぬぞ』

陽乃「え?」

ひなた「?」

『久遠家は人身御供で捧げられる家系であるが、それを除いても神々に仕え平安を守る巫女でもある』

陽乃「そんな話……」

『主様の神社では、年に一度行われている特別な祭事を知っておろう?』

九尾はひなたには聞こえない状態のまま、

とても重要なことを、軽く話す

陽乃「えぇと……大体三月ごろにやるやつ?」

『うむ。それが名残として残っておった調和の祭事じゃ』

旧暦で2月、新暦で言えば大体2~4月の初午の日に行う祭事

陽乃も巫女として手伝うことのあったそれは確かに、主祭神の一人である平穏を護った神の御姿を借りている

『久遠とはそもそも、その平安が永遠に続くようにと授けられた名じゃぞ』

きてたか


ひなた「あの、久遠さん……?」

陽乃「あぁ、ごめんなさい」

ひなたには九尾の声が聞こえていないので

陽乃が一人で俯いて独り言ちているようにしか見えない

九尾だって、ひなたにも声を聞かせることは可能なのに、

それを不要として聞かせないのだから、困ったものである

ひなた「九尾さん……と、お話を?」

陽乃「ええ」

ひなた「本当に、特別なんですね……」

陽乃「あら、代わってくれる?」

陽乃の特別は、残念ながら人々から忌避されるようなものであり、

陽の個人としては、

誰かが代わりになってくれるのであれば、なって貰っても良いと思う

もちろん、自分たちの命の保証がされることが前提ではあるが。

ひなた「いえ……私にはとても……」


人々を四国へと連れ帰って来た勇者、乃木若葉

その巫女として付き添って来た上里ひなた

ひなたは、見初められた巫女の中でも適性が随一であるとされていて

大社からの信頼も厚い

大社からも、他の巫女からも頼りにされているのだ

しかし……ひなたは浮かない表情で首を振る

ひなた「巫女としての適性が最も高いのは、おそらく久遠さんだと私は思っています」

陽乃「そうかしら? 無垢じゃないわよ。私」

ひなた「そもそも、精霊とされている九尾の狐は神獣の一種であるともされていて、神に等しい位の高さを持っているんです」

陽乃「そうなの?」

『くふふふっ、さてのぅ?』

知ってはいるが、あえて訊ねた陽乃に九尾は嘯く

声色は柔らかいので、ひなたの誉め言葉に少し喜んでいるのかもしれないと、

陽乃は眉を顰めた。

ひなたは、九尾に聞いたその言葉が自分に向けられたと考えてか、頷いた。

ひなた「はい……ですので、私が仮に九尾さんのお声を聞くとなると神託という形になって、抽象的な何かを見せられることになるだけだと思います」

陽乃「普通に会話することは出来ない……?」

ひなた「恐らくですが」

『ふむ……』


九尾は悩ましげな声を漏らして、ひなたの方へと影を伸ばしていく

殺意も敵意も感じられず、

むしろ、ひなたの言葉に喜んでいたので、害はないだろうと見過ごすと

不意に、ひなたが悲鳴を上げた

ひなた「なっ、なっ……きゃっ……」

陽乃「何してるの?」

『くふふっ、いやなに……少し試しただけのこと』

九尾がくつくつと笑って影を引っ込めていくと

顔を赤くしているひなたは体を抱きしめるようにして、

壁に沿ってズルズルと、座り込んでしまった

ひなた「い……今のは……」

陽乃「九尾が上里さんに近づいたの。大丈夫?」

ひなた「はい……ただ、その、ぞわぞわっとして……腰が抜けてしまって」

『主様のように、あやつに取り入ることは妾には出来ぬ』

陽乃「それって声を聞かせることも?」

『それは可能じゃぞ。妾が人の形を取り人間の領域に降りてやればよいだけじゃからのう』

それとは違って。と、九尾は続ける

『主様は己の体を依り代とした神降ろしを行っておるのじゃが……あやつにもその器はある。しかし、妾を降ろせば器が砕ける』

陽乃「つまり、代わりには出来ないって言いたいのね」

『うむ。妾とは合わぬ』


1、だったら、人の姿で出てきてあげてくれない?
2、でも、上里さんに器があるってことは神様を降ろせるのよね?
3、あんまり変なことしないであげて
4、それで……上里さん。急で悪いのだけど。私、ここを出ていくことにするわ


↓2

1

1


陽乃「だったら、人の姿で出てきてあげてくれない?」

『必要があるかや?』

陽乃「その方が話がスムーズに進むでしょう?」

『ふむ……』

九尾は少し不満そうな吐息を漏らしたが、

ひなたの方へと顔の部分を向けると、

公園でしていたように、

ベッドに腰かける形で影を人の姿へと作り替えて――

千景「これで、良いかしら?」

陽乃「っ……」

ひなた「どうしてわざわざ……千景さんの姿を」

千景の姿を取って見せた九尾は、

陽乃を一瞥すると、鼻で笑って両手を上げて見せる

千景「私は嫌だって……言ったけれど、彼女がどうしてもって言うから」

陽乃「嫌がらせってわけね」

千景「そう思うなら……勝手にどうぞ」


千景が陽乃の部屋にいるのは異様としか言えない。

もちろん、実際には九尾であって彼女ではないのだけれど

雰囲気は、彼女そのものだ

その千景はベッドの上に座ったまま、陽乃ではなくひなたを見る

千景「私と話したいなんて……上里さんは……変な人ね」

ひなた「申し訳ありません……」

陽乃「上里さん……?」

怯えたように声を絞り出すひなたは体を震わせていて

目を見開いて、ゆっくりと頭を下げていく

陽乃にとって今の九尾はいつもと変わりない

ただ少しばかり不機嫌なだけの様子だが、ひなたにはそう感じられていないのだろう。

だんだんと呼吸が荒くなって――唐突に千景が笑い声を零した。

千景「ふふっ、ごめんなさい」

ひなた「っ……」

千景「別に、貴女を取って食おうとか思っていないから安心して」

笑みを浮かべた千景は、

陽乃のことを見ると、肩をすくめて見せて、その姿をまた別の勇者

ひなたが最も身近に感じられる乃木若葉へと切り替える

若葉「すまない。少し試してみたくなってな……怖がらせるつもりはなかったんだ」


ひなた「若葉……ちゃ……」

若葉「ひなたは確かに巫女の適正とやらが高く感じられる。だが、それはあくまで……素質があるというだけだ」

陽乃「えっと……つまり何が言いたいの?」

若葉「あまり無理をさせるな。という事だ」

自分が無理をさせたことは棚の上にあげ、

額に汗を浮かべて、

肩での呼吸にまで動揺してしまっているひなたをベッドの上に寝かせた若葉―九尾―は、

その横に腰かけて、ひなたの汗を拭う

若葉「生れ落ちてから神々と共に在った久遠さんとひなたでは、強度に天と地の差がある。と言えば分かるだろうか?」

陽乃「ええ、それなら……分かるわ」

若葉「器はあるが脆すぎる。久遠さんに行ったように力を纏わせたりしたら、ものの数分で精神が崩壊する」

ひなた「っ……はぁ……神託を受けた疲労感の、比では……ありませんでした……」

若葉「そうだろうな。ひなたに与えたのは神託ではなく祟りに近い物だったからな」

陽乃「え……九尾っ!」

祟り。

それは人間が成し得るものではなく、

超自然的な何等かによって引き起こされる、呪い以上に危険なものだ

それをしたとあってはさすがに咎めるべきだと声を上げた陽乃を制するように、若葉の姿をした九尾は息をつく

若葉「ひなたは私を神の御使い足る神獣であると評した。なら、私が害する理由はない」

陽乃「でも、祟りなんて」

若葉「近い物だと言っただろう? 毒にも薬にもなり得る神に近しい私の加護だよ」

九尾は若葉の体で、若葉の声でそう優しく声をかけると

ひなたの前髪を軽く払って、額に口付けをする

若葉「私を神獣と呼んだこと。殺めてやると言った私に臆せず歩み寄るその愚かさへの褒美だ」


若葉……九尾の口づけを受けたひなたはゆっくりと瞼を閉じて、眠ってしまった

吐息は聞こえるので、別に亡くなったわけではない

若葉「全く……人間というものは愚かだな」

陽乃「上里さんは大丈夫なのね?」

若葉「私の加護の重さに耐えられず眠っただけですよ。じきに目を覚まします」

陽乃「上里さんが気に入ったの?」

若葉「久遠さんさえ言わない神獣と言った娘ですよ? そのうえ、殺意を向けた私に歩み寄ろうとしたんだ。褒美の一つもくれてやるさ」

そう言って笑った若葉は隣で眠るひなたを一瞥すると、

もう一度若葉らしい笑みを浮かべて見せて、小さく息を吐いた

褒美とは言うが、気に入っているようだ

若葉「ただ人で唯一守ってやるというだけですよ」

陽乃「私の部屋で寝ていたら不信じゃない?」

若葉「どうせ伊予島しか来ないですよ。勇者の中でも貴女は近づいてはいけない人ですから」

若葉は困り顔で零し、

ひなたを起こさないようにとベッドから立ち上がる

若葉「さて、これからどうする? まさかこのままここに居座るわけにもいかないだろう?」


1、焼け落ちた自宅
2、焼け落ちた神社
3、国外
4、公園
5、いいえ……姿を変え続けて潜伏するわ


↓2

5

2


陽乃「神社に行きましょ」

若葉「久遠家の神社か? あそこで暮らすつもりか?」

陽乃「敬語を使わないの?」

若葉「ひなたは寝ているんだ。もういいだろう」

九尾はそう吐き捨てると、

一応はひなたを一瞥してから、ため息をつく

若葉「久遠さんがそうしたいというのなら、構わないが……有様に嘆かないことだ」

陽乃は自宅や神社が放火され、

焼け落ちたという話を聞いただけで

その現場を見たわけでも、

そのあとの惨状を目にしたわけでもない。

九尾はそれを思ってか、困ったように首を振る

若葉「一応、姿は変えておく」

陽乃「もし、私だってバレたら?」

若葉「死人が増える」

陽乃「……分かったわ。宜しく」

陽乃が陽乃だと知られた場合、

九尾は陽乃に手を出そうとする人々を容赦なく殺すだろう

そうならないようにと、陽乃は九尾へと声をかけた


↓1コンマ判定 一桁

0 00 最悪
1~3 良い
4~6 悪い
7~9 普通
ぞろ目 最良

ふみゅ

なんか判定だといっつも1~3ばかり出るイメージ


√ 2018年 8月1日目 夕:神社(壊)


久遠家が管理していた神社は、それなりに規模の大きいものになっている。

本殿を除いて社が九つあり、

それぞれに祭神が祀られている

いや――祀られていた。

陽乃「……酷い有様だわ」

神社は本殿のみならず、目に見える全てが焼け落ちていた

それが延焼してしまったのか

狙ってそうされたのかは考えるまでもないだろう。

『主様、九美社に向かってくれるかや?』

陽乃「いいけれど……」

参拝順路に従って、

しかし、見るも無残な状態に顔を顰めながら、

本殿の裏……正しくは南に存在していた九美社に向かう。

赤と白を基調とした木造の社は、見る影もない

陽乃「……駄目ね」

『ふむ……見るまでもなかったが、やはりすべて落ちておるのう』


陽乃「ただ、それなりに片付けがされてるわ」

『ほう?』

陽乃「放火されて、焼け落ちて……ボロボロだけど、そのまま放置されたわけじゃないみたい」

『盗人がいたようじゃがのう?』

陽乃「それとは別」

九尾は分かっているだろうけれど、陽乃はあえて否定する

九美社から離れ、ほかの社や本殿も見て回ったが、

九尾が言うように盗みに入られた形跡がある。

明らかに焼失ではなく、消失しているものが複数あったし、

酷いものは何かでたたき割られていたから、確実だろう

陽乃「一応、雨風はしのげそうね」

『本気でここに住むつもりかや?』

陽乃「他に行けそうなところないでしょ?」

ここから近い実家に帰ることも考えたが、

そこはむしろ、周囲の目がある可能性が高い

見つかった場合にその人が殺されることを考えると

雨風がしのげる本殿に隠れ住むのがベストだろう


『外に出てしまうのも手ではあるじゃろう』

陽乃「そんなことしたらお母さんがどうなるか分からないじゃない」

『乃木と上里に言うてみたらどうじゃ』

陽乃「その二人なら……」

助けてと言えば、二人なら助けてくれるかもしれない

たとえ陽乃が勇者の権利を剥奪されたとしても

母親を匿うことに協力してくれるかもしれない

ただ、母親はそれを望まないだろう

陽乃の母は、あくまで巫女として大社に属しているだけだ。

それがなければ、匿われるなんて拒否することだろうし

陽乃の代わりに、人身御供として喜んで捧げられるはず。

陽乃「はぁ……」

『主様の母親は、本来ならば死していた人間じゃぞ』

陽乃「だとしても、助けられたじゃない」

『そうじゃ。主様は不要な人間を助け、己に枷をしておる。無駄で愚かで阿呆じゃのう』


喉を鳴らして笑った九尾は、

焼け残っている本殿の一部分

そのさらに片隅で座り込んでいる陽乃の隣に人型を作りだす

友奈「こんな場所で隠れていなくちゃいけないなんて……おかしいです!」

陽乃「こんな場所でも、私の大切な場所なんだけどね」

友奈「あ……ごめんなさい。でも、雨しか防げませんよ」

扉なんてない

鍵なんてない

屋根となれる程度のものがあるくらいで、

強風なら、容赦なく雨が吹き込んでくるだろう

友奈「帰ってきて貰えませんか? あのことなら……全然、問題ありませんからっ」

陽乃「それをやったのは貴女でしょ」

まったく。と、

陽乃は呆れてため息をつく

友奈の姿をしているが九尾は九尾だし

例の件を行ったのは、その九尾だ


球子「仕方がないだろー……ああでもしなきゃ、久遠陽乃の力は示せない」

陽乃「本気を出さなかったくせに」

球子「そもそも、勇者自体が本気を出していないからな」

そう言った九尾は、

先刻言っただろう? と、球子の声で笑う

球子「久遠さんがしてるのは神降ろし。完全に同じことは出来ないにしても、勇者はみんな神降ろしに類似した現象を引き起こす器がある」

陽乃「それって……ほんと?」

球子「もちろん、久遠さんのように常時行うなんて出来ないだろうけどなー一時的にならできるはずだぞ」

球子の姿で

球子らしい仕草をして見せるものの

浮かべている笑みには、九尾の怪しさが感じられた

球子「タマだってきっと凄いことが出来るぞ。まぁ、その反動で大変な事になるだろうけどな」

陽乃「私よりも酷いことになりそうっていうのだけは分かる」

巫女の中で最も適性があるひなたでさえ、

神降ろしすることで、壊れてしまうと九尾は言った。

神の力を借り受ける勇者であれば、ひなたよりも耐えることは出来るかもしれないが

やはり、その影響は大きいだろう


神社に逃げてから、九尾と二人きり

今までよりも話をしてくれるので

思っていたよりは寂しさを感じないけれど

部屋とさえ言えないありさまには、さすがに心が疲弊する

友人に拒絶され、千景に死ねと言われて、

唯一休むことの出来ていた部屋にはもう戻ることは出来なくなって

布団いちまいさえない焼け落ちた本殿で、寝泊まり

わびしいどころの話ではない。

だからこそ、九尾は寄り添ってくれているのかもしれないが。

千景「久遠さんは現状、敵しかいないと言っても良いわ」

陽乃「最低でも半分は貴女のせいだけど」

千景「本当にこのまま逃げ隠れし続けるだけでいいの?」

陽乃「言っておくけれど反旗を翻すなんて、私はしないからね」



1、郡さんの姿は止めてくれない?
2、ねぇ、勇者が使える神降ろしって具体的にはどんなものなの?
3、そう言えば……最初に貴女、私に憑いているひと柱って言ってなかった?
4、それで? 貴女はほかに何ができるって思っているの?
5、例の……貴女の子供になる作戦はまだ有効?


↓2

4

3

5


では本日はここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


あの九尾から信頼を勝ち取るとはひなた流石だな
あと若葉たちに色々化けてる九尾だけど前まであった自前の人間体は今回無いっぽい?


ひなたは好かれる子なんだな
これで何か変わるんだろうか

では、少しだけ


陽乃「ところで……さっきの話で思い出したんだけど」

千景「なに?」

陽乃「………」

千景と身を寄せ合っているという違和感に陽乃は眉を顰めて

これは九尾なのだと頭を振って、目を瞑る

千景の顔、千景の身体、千景の声

だが……九尾だ

陽乃「貴女、最初に私に憑いているひと柱って言っていなかった?」

千景「あぁ……言ったわね」

陽乃「あれってどういうこと? まさか……」

千景「そうね。せっかくここにいるんだから説明したほうが良いかもしれないわね」

千景はそう言うと、陽乃の方に目を向ける

表情があまりにもにこやかで気味悪くさえ感じてしまうが、

それは千景に対して失礼だろう

千景「九尾の狐はこの神社で言う九美社を主として存在している。つまり、貴女が本来降ろす神は私とは別にいる」

陽乃「ん……と? もしかして主祭神として崇めていた神様……?」

千景「そう。上里さんが神様に愛されていたように、貴女もまたここの神々に愛されているから力を借りられるのよ」

九尾は困り顔で「けれど」と呟く

千景「厄介なことにこの有様よ」

陽乃「火事で焼け落ちたのが問題なの?」

千景「人間だって、自分の家が焼かれたら怒るでしょう?」

陽乃「あ……」

貴女には縁のないことだったわね。と、

九尾は嫌味たらしくぼやいて、ため息をつく

千景「そのうえ、帰る場所がなくなる。そうなったらどうすると思う? ねぇ? 久遠さん」


久遠家が奉っていた神々は、

神社への放火によって居場所を奪われている

それに憤りを覚え、愛している……らしい陽乃がこんな状況に陥っている

さて、神々はどうなっているだろうか?

九尾は悍ましささえ感じさせるような表情を見せると

ニヤリと口元を歪ませる

それは人の作り出される口の大きさを超えているようにさえ、見えてしまう。

千景「貴女に憑いている神で最も厄介なのは、伊邪那美命でしょうね」

陽乃「イザナミ様……」

千景「かの神は愛と誓約に重きを置き死を誘うのよ……分かるでしょう? 貴女の境遇は、彼女にとって人間を滅ぼすに値する裏切りの中にある」

陽乃「それって、貴女よりも不味いの?」

千景「ふふふっ、私も九尾として死を与える性質はあるけれどかの神は私のそれなんて足元にも及ばないわ」

九尾はそれが軽いことのように言うが、

九尾が足元にも及ばない死の性質を持っているとなると、

勇者でさえ……神々でさえ、その力の影響を受ける可能性が高い

そして、その神が人々に怒りを覚えている

陽乃「その神様が、貴女のように私の主導権を奪う可能性は?」

千景「さぁ? 私の預かり知らないことよ。言っておくけれど、いくら貴女でもかの神を扱うのは命を削るわ」

陽乃「九尾の力でも血反吐を吐くんだけど……」

千景「そう言えばそうだったわね……残念ながら、貴女の神は器を壊しやすいみたいね」

死神の話題久しぶりだな


それでも九尾はまだましな方らしい。

というのも九尾の場合、

死に至らしめる毒素を持っているから血反吐を吐くことになっているだけで、

かの神……伊邪那美命のように死に関する【祟り】を持っているわけではないからだ。

千景「大地母神でもあるかの神は、しかしながら地の神ではなく天の神よ」

陽乃「天の神……って、神樹様と正反対だわ」

千景「そうね。乃木さんの刀、生大刀の主である大国主神の上の上……元をたどった先にいる神は貴女も知っているでしょう?」

陽乃「それって、イザナギ様のことよね?」

千景「そう。その神が裏切りの果てに作りたもうた子供の子が大国主神」

ここぞとばかりに、罵って見せた九尾は、

それを悪びれもせずに、鼻で笑う

流石にいかがなものかと陽乃は思ったのだが、

九尾は人間ではなく、信仰心もないからどうでもいいのだろう

千景「そんな存在とその賛同者たちが護るこの国は、伊邪那美命にとって守る価値なんて存在しえないと言っていい」

陽乃「………」

千景「端的に言えば凄く相性が悪い。神樹様とそれに属している勇者達みんなと、貴女はね」

九尾は色々と詳しく

言い換えればまどろっこしく話してくれているが

つまるところ【しびれを切らしてこの国を滅ぼすこともあります】というわけである。


千景「今はまだ、貴女が滑稽にも人を殺めることを良しとしないからなりを潜めているけれど、危ないわね」

陽乃「危ないって、止めてよ……私の手で人を殺させる気?」

千景「久遠さん、一番の友人に裏切られたでしょう?」

陽乃「あれはっ」

千景「そういうのを、かの神は大いに嫌うのよ」

千景はお手上げとばかりに、手を上げて首を振る

お茶らけて見せてはいるが、その言葉は本気だ。

伊邪那美命は代々見守り続けてきた久遠の子である陽乃のことを愛している

その愛娘が人々に裏切られ続けているのだから救いようがないだろう。

千景「最初に契りを結んだのが私で良かったわね……久遠さん」

陽乃「ちょ……っと……」

九尾はニヤリと笑いながら陽乃に覆いかぶさるように動き、

陽乃の身体に手を這わせる

千景「かの神にとって契りは絶対。私がただの社の主でありながらかの神々よりも表に出られているのはそのおかげなのよ」

千景の声が耳元から聞こえる

千景の体は真実を暴けば九尾のはずだが、

人肌に等しい温もりがあって、本当に千景のような錯覚を覚える

千景「貴女もまた神々に愛されている。そして、その神のひと柱は貴女の境遇を憂い、世界に憤りを覚えていることを忘れないで頂戴」

陽乃「わかっ……た、から、離れて……」

千景「人間は密着することを最も記憶する事柄としているでしょう? 思い出……だったかしら?」

陽乃「違うからっ、その知識は間違ってるからっ!」

千景の体を突き飛ばしてしまうようで気が引けてしまっていた陽乃を一瞥すると、

千景―九尾―は「そうなのね」と呟いてあっさりと離れた。


敵対したあげく、死ねばよかったのにとまで言われた相手と抱き合うなど

思い出どころか、トラウマになりかねない。

もちろん、抱き合うとまでは行かなくても

このくらい会話が長続きさせられるまでになれれば良いとは……思うけれど。

それはきっと、バーテックスを倒すよりも難しいことだろう

千景「何でもいいけれど、ちゃんと覚えておいて。貴女が本気ならかの神は喜んでその力を貴女に貸し与えるわ」

しかしそれは当然ながら諸刃の剣

陽乃の体を酷く蝕んで、

最悪の場合……いや、最終的に死に至らしめることになる

九尾の力とはまるで違う、祟りを起因とした死の力だ

陽乃「分かった、覚えておくから。二度とさっきみたいなことしないで」

千景「私の身体じゃ不満なの……? 上里さんのようにメリハリのある体が良ければ、そうできるけれど?」

陽乃「他人の身体でそういうことしないでって言ってるの。頭おかしくなるから」

じっとりとした視線をぶつけながら、

自分の身体を撫でまわしている九尾に言い捨てて、目を背ける

千景の顔で、千景の声で

彼女がやりそうもないことをやってこられると対応に困る

それが長引けば長引くほど本来の千景との接し方が分からなくなってしまうし、

彼女の突き放すような物言いに心が痛むことになってしまう

千景「そう……まぁ、人肌恋しければ要望に応えてあげるわ。貴女の質問にも、可能な限りその誰かで答えてあげる」

陽乃「お気遣いありがとうね」

その九尾の言葉が本当に本当なのかは定かではないけれど、

そうして接してくれるというのは、孤独にならなければならない陽乃にとっては辛くて

けれど、少しはありがたいことだった。

√ 2018年 8月1日目 夜:神社(壊)

01~10 若い人
61~70 若葉 ひなた
ぞろ目 特殊

↓1のコンマ

※それ以外は通常


√ 2018年 8月1日目 夜:神社(壊)


陽乃「あぁもう……っ」

ひなた「どうかしたんですか?」

陽乃「蚊も蛾も蟻も蠅もたっくさんいるんだけど……」

ひなた「それはそうですよ。ここ、放置されて三年経っているんですよ? 彼らにとっては良い住処になっています」

ひなた……の姿になっている九尾は、

陽乃と違って虫など無関係のように楽しげに笑う

本当のひなたがどうなのかは分からないが、

少なくともカブトムシの雌に似ている、触覚の生えた黒いやつ

それの死骸を指でつついて転がすことはないだろう

ひなた「私としては、餌が豊富でありがたいんですけどね」

陽乃「ちょ、ちょっと上里さんの顔でそれ食べようとしないで!」

ひなた「それなりに美味しいですよ?」

陽乃「やめてっ!」

平気な顔で虫を摘まんで口に運ぼうとするひなた―九尾―の手を掴んで止めて

逆の手で掴んで虫を向けてくる九尾の手を、おもいっきり弾く

虫が完全に駄目というわけではないが

流石に、食べられるほど平気なわけではない


ひなた「困りましたね……虫が苦手ですとここでは寝られませんよ?」

陽乃「苦手じゃないけど寝てるときに服の中に入られたりしたりしたら嫌でしょ?」

ひなた「ん~……私は別に気にしないですね。体中這い回られるのには慣れていますし」

陽乃「えぇ……」

にこやかな笑みを浮かべるひなたから目を逸らして、

少し離れた先、屋根が崩れたところから差し込んでくる月の光を見上げる

九尾のようにとはいかなくても

慣れていかなければいけないのだろうと陽乃はため息をつく

ひなた「出来ることもありませんし、眠ってしまったらどうですか?」

陽乃「寝てるときのことで悩んでいるんだけど……」

ひなた「ふふふっ、そうでしたね。私は眠る必要がないので見張りをしておきますよ」

陽乃「上里さんの姿で?」

ひなた「そこはもちろん。私の本来の姿でですよ」

普段は影に潜んでいる九尾は、

周りに人もいないからか、ひなたの姿でグッと体を伸ばす

陽乃は神社に来る途中に自販機で買ったペットボトルの水を一口飲んで

膝を抱え込んでいく

陽乃「お腹空いた」

ひなた「食べます?」

陽乃「虫は嫌」

目も向けずに断って、持ち出した財布の中を見る

一応、勇者として扱われるにあたって多少の報奨金が与えられるので

それなりにお金はあるのだが、むやみやたらと使い潰していいものでもない


では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


かなり重要な情報が聞けた代わりに神社跡地でサバイバルする羽目になるとは…
とはいえ今までよりは少し空気が軽くなった気がするな


イザナミは酒呑童子クラス(それ以上)の切り札だな
それはそうと若葉の前でひなたが虫を食べるドッキリやらせてみたい


ホームレス中学生はるのん
この先どうなってしまうのか

では少しだけ


ひなた「食事にくらいお金は使ったほうが良いと思いますよ? 私はともかく久遠さんは人間ですし」

陽乃「そうは言うけれど……」

ひなた「三年間、勇者として囲われる条件としてお金頂いていますし、多少は問題ないでしょう?」

陽乃「これから増えることないのに?」

ひなた「あぁ……」

そんなことまるで考えていませんでしたと言うような声を上げた九尾は、

面倒くさそうに顔を顰めると、

その表情のままに「人間って面倒くさいですね」と、ひなたの声で悪態をつく

陽乃「そう、面倒なの」

ひなた「では、久遠さんはお仕事をなされてみては?」

陽乃「未成年なうえに住所不定なんだけど……」

ひなた「住所はここではだめなのですか?」

陽乃「駄目に決まってるでしょう。こんな……ボロボロな場所」

必要以上に調査されるとは限らないけれど

念のため、実家や神社の住所は使わない方が良いだろう

陽乃「それに、一番の問題は連絡手段を持っていないことよ」

ひなた「スマホですか……ん~……盗ってきましょうか?」

陽乃「駄目に決まってるでしょう……もう」

何回同じことを言わせるのかと

陽乃は九尾を一瞥して、ため息をついた

よっしゃ


ひなた「では、正式に入手してしまうのはどうでしょう?」

陽乃「正式にねぇ……スマホを契約するためには家が必要よ。身分証明だって」

ひなた「身分なら私がどうにかできますよ」

陽乃「家は?」

ひなた「身分がどうにかできれば、借りることくらい出来るのではありませんか?」

九尾は簡単に言うが、簡単な話ではない

身分をどうにかできるのであれば、連帯保証人としての立場は九尾が補えるだろう

しかし、それに際して最も重要ともいえる収入証明が出来ない

もしかしたら、九尾の力でそれさえもどうにかできるかもしれないが。

陽乃「手続きの全てをどうにかできちゃうの?」

ひなた「そうですねぇ……契約に関してどれだけの情報が必要なのか私にも分からないので何とも」

そう言った九尾は、しかし、含みのある笑みを浮かべている

そこには自負が感じられて、月明かりを受けてもいない瞳が怪しく輝くのが見えた。

九尾はどうにかできる自信がるのだ

どう化かしてやろうかと、状況を愉しんでいるのだ

ひなた「久遠さんが望むのでしたら、全力でお手伝いいたしますけど……どういたしますか?」

陽乃「どうするって言ったって……」


かなり問題はあるが、

九尾の力でそのほとんどをどうにかして、

ちゃんとしたところに住むことが出来るのなら、それはそれでいいのかもしれないと陽乃は思う。

無残に破壊された社、目に見える埃

雨風を吹き込ませてしまう崩れた屋根

至る所に散らばっている昆虫の死骸

気を抜けば、腕や足を這おうとする不快感

自分で選んで飛び出してきてしまったが、

今のこの状態をずっと続けていくことは精神的な負担が大きい

今はまだ耐えられることも

いつかは耐えられなくなってしまうかもしれない

そうなったとき、この状況を作らせた世界を憎まずにいられるのだろうか?

ひなた「私はちゃんと、苦難の道になると言いましたよ」

陽乃「言ってたわね……ちゃんと」

九尾の力で不正をするか

自分の選んだ道ゆえ、我慢するか

陽乃は悩ましさを誤魔化すように九尾を横目に見る

九尾は視線に気づいて、笑みを浮かべた。


1、考えとく
2、取り合えず、ご飯買いましょ
3、明日にでも、その手続きやってみましょう
4、いいわよ。このままで

↓1

1

ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


シリアス展開的な意味での過酷さ加えて生活的な意味でも過酷になっていくな
それにしても陽乃さんが消えて大社は今頃どうなってるんだろうか


はるのん家出編なんかおもしろいな
大赦もそうだけど勇者たちもどんな感じになってるか気になる

では少しだけ


陽乃「考えておく」

ひなた「早いうちに決めたほうが良いですよ。私の力だって、万能ではありませんから」

陽乃「何言ってるのよ」

すれ違う人、関わる人みんなに陽乃であることを気付かせない

九尾の話からある程度の書類等も誤魔化せるとするなら、

九尾の力は誤認させるという部分に置いて

万能としか言いようがないほどの影響力を持っている

謙遜できる代物ではない……が、九尾扮するひなたは苦笑する

ひなた「私が近くにいるならともかく、離れると力が弱まってしまうのでちょっとした違和感で気付かれてしまうんですよ」

陽乃「例えば?」

ひなた「私が近くにいられた場合、本来いないはずの久遠さんに食事を与えていると認識できます」

けれど。と、九尾はなぜだかとても嬉しそうに微笑む

ひなた「離れていると、ベッドにぶちまけていることに気づきます」

陽乃「貴女がいればそれに気付かないことに驚きなんだけど」

ひなた「私は基本的に、相手にとって違和感がないように見えるようにしているだけなんですよ」

陽乃「乃木さん達に化けていたのは?」

ひなた「そこは私のお遊びですよ」

やっぱり、何でもありなのだと陽乃は困ったように笑って

今のひなたの姿はさっきの話の影響なのだろうかと、目を瞑る

土や草のにおい、虫が集まるような鼻を付くにおい

それを弾くように、ふんわりと感じるひなたのにおい

これも、九尾による偽りだろうか

来てたか


陽乃「じゃぁ、今頃病院は大騒ぎなのね」

ひなた「でしょうねぇ……最も、あの人達の心が【余計なことをしませんように】と強く祈っているなら明日の朝までは大丈夫ですよ」

陽乃「明日の朝……あぁ、入浴の時間ね」

ひなた「そうです。久遠さんに最も触れる瞬間ですから、私がいなければそこまで誤魔化しきることは不可能です」

居れば誤魔化せるのね。と、言いたくなったけれど、堪える

影となった状態で看護師の首を締めあげて、

伸びてきた手がそれに触れることが出来ないという異様な光景を目にしていた陽乃は

触覚を偽ることくらい朝飯前なんだろうと適当に割り切った

陽乃「上里さんから報告が上がるかしら?」

ひなた「その心配はないかと」

陽乃「?」

九尾は月明かりを望むように顔を上げると、

目を細め、ゆっくりと閉じて笑みを浮かべる

何かを受信したかのような雰囲気に、陽乃は眉を顰めた

陽乃「どうして言い切れるの?」

ひなた「私は上里ひなたですよ? 完全一致ではないにしてもその思考と行動方針の大部分は真似られていると思います」

その頭で考えれば。と、九尾は言う

ひなた「話すとしても一番信頼できる若葉ちゃんにだけ。でしょうね。少なくとも大社には黙秘しますよ」


大社に、陽乃が来たことを正直に話したところで何の利益もない

なぜ逃がしたのか、なぜすぐに連絡しなかったのか

勇者達は何をしていたのか……等々

ひなたが責められることになるのが目に見えている

それだけ陽乃のことを危険視しているというのは分かるし、

陽乃に協力的であると困るから、そういう素振りを見せたら罰せられるという印象を強める必要もあることだろう

しかし、それらは裏目に出る

千景は「だから――」と、零すだろうけれど

陽乃を想ってくれている伊予島杏や、まだ諦めていない高嶋友奈は大社のやり口に不満を抱くかもしれない

陽乃の逃走に憤りを覚えはするが、杏が陽乃側なことで分からなくもないとしてくれるであろう土居球子もきっと同じ

そこに、若葉まで加わるとなれば……大変な事になる。

ひなたとしては、その方向になるのは避けたいはずだ

ひなた「大社は久遠さんがいなくなったことで血眼で探し始めるはずです。私がいる以上、気付かれることはあり得ませんが万が一もあります」

陽乃「……分かってるけど」

ひなた「人々を騙し続けることが苦しいなら、いっそのこと結界の外に出ていくのも一つの手ですよ」

陽乃「それは……」

ひなた「お母様のことを思う気持ちも分かりますが……逃げ出した以上はそんな生易しさは捨てるべきでしょう」

大社は危険極まりない陽乃を連れ戻すためならば、

母親を、陽乃から見た人質として扱う可能性がある。

もちろん、表立ってそんな動きはしないはずだがそれらしい動きは見せてくるはずだ

ひなた「私は言いましたよ。人間の一人でも殺してしまうべきだと……それを拒んだのは久遠さんです」

陽乃「上里さんの声で言わないで」

ひなた「少なくとも私は味方ですよ。若葉ちゃんだって……だから、大丈夫です。貴女は独りではありません」

九尾は――

ひなたは……陽乃に寄り添うようにしていた体を傾けて、

膝を抱えていた陽乃の身体を抱きしめるように腕を回す。

陽乃「だから、他人でやらないでって言ってるのに……」

ひなた「ふふっ……千景さんはあれですけど、私は大丈夫ですよ」

九尾はそう言って、離れようとはしなかった


↓1コンマ判定 所持金

コンマ一桁目×万円(9x xの部分)
コンマ二桁目×千円(x9 xの部分)

※ぞろ目なら倍


1日のまとめ

・ 乃木若葉 : 交流無()
・上里ひなた : 交流有(九尾)
・ 高嶋友奈 : 交流無()
・ 土居球子 : 交流無()
・ 伊予島杏 : 交流無(部屋整理)
・  郡千景 : 交流無(陽乃の意思だとしても)
・   九尾 : 交流有(逃走、非殺傷、姿を見せる、神々、考えておく)

√ 2018/08/1 まとめ

 乃木若葉との絆 56→56(普通)
上里ひなたとの絆 55→56(普通)
 高嶋友奈との絆 49→49(普通)
 土居球子との絆 38→38(悪い)
 伊予島杏との絆 43→43(普通)
  郡千景との絆 21→21(険悪)
   九尾との絆 59→61(普通)
   
所持金:4万8千円

訂正

所持金:4万8千円 → 8万4千円


√ 2018年 8月2日目 朝:神社(壊)

05~14 大社
25~34 若葉
53~62 誰か
89~98 ひなた

ぞろ目 特殊

↓1のコンマ

※それ以外は通常


√ 2018年 8月2日目 朝:神社(壊)


朝は思っていた以上に不快感の募る目覚めだった

不思議にも羽虫の音は聞こえなかったが、

服の中に入り込んだ虫の感触に発狂しかけの絶叫をあげて飛び起きた

数匹の虫が手と足とでぐちゃりと潰れたが、

それにはもう、叫ぶよりも呆然とする一方で……

シャツの裾からポトリと落ちた六本足の虫からは、目を背けた

陽乃「あぁ……もう……」

杏「久遠さん、大丈夫ですか?」

陽乃「朝から不快感で最悪だけど……今日は伊予島さんなの?」

杏「久遠さんは平坦より起伏のある体の方が好みだと思ったので」

陽乃「あれは郡さんだったからダメだったの。いや、郡さん以外でもお断りだわ」

溜息をつきながら首を振る

夏の暑さに汗ばんだ前髪が額に張り付く感覚に不快感は増すばかりで

手で払って、申し訳程度に水気を払った

陽乃「誰か来たりした?」

杏「誰も来ていませんよ。平和なものです」


杏「夜も静かでしたし、まだここに探しに来た様子はありません」

陽乃「そう……」

杏「周囲の建物から様子を窺う視線も感じないので、普通の人間にはまだ連絡していないようです」

陽乃「まだというより、しないでしょうね」

杏「やっぱり、そう思います?」

九尾扮する杏は怪訝そうな表情で頷く

九尾も一般人に久遠陽乃が逃亡したことを周知する気はないだろうと考えていた。

民衆の全てではないが、それなりの規模の人々が陽乃を人身御供とすることに希望を抱いている。

その陽乃が街のどこかにいるとなれば大騒ぎになるだろう

それを除いても、久遠陽乃は化け物だという噂も流れているので、

そんな人物を取り逃がしたとなれば、大社が終わるかもしれない

九尾は、くすくすと笑う

杏「いっそのこと、私達が周知して転覆を謀るのはどうでしょう?」

陽乃「なにその、滅亡しそうな選択」

なしなし。と、陽乃は軽く払って外に出る

夏場のイヤになるほど晴れ渡っている空を見上げる

神樹様の結界の中のため、真実ではないらしいが

見る限りでは、本物と変わりのない空をしている

雲一つない晴天なのは神樹様の計らいなのか、偶然か。


風通しのいい廃屋と化した本殿

夏の夜から朝にかけて過ごすには具合は非常に悪い。

そのせいで汗ばんだ体には、

僅かな動きにも反応して、肌着が密着する

どうせ自分だとバレないのなら全部脱ぎ散らかしてしまおうかだなんて考えが浮かぶほどだ

陽乃「ねぇ、九尾……伊予島さん」

杏「何でしょう?」

陽乃「私、まだ大丈夫かしら」

杏「大丈夫、とは?」

もじもじとして、気まずそうに顔を背ける陽乃を見つめる杏……九尾は、

眉を顰めて、首を傾げた

杏「なんの話ですか?」

陽乃「だ、だから……その、私、臭ってない?」

陽乃は実質、二日間入浴をしていない

それに加えて、この季節

肌のべたつく不快感からダメだろうな。とは思いつつ聞いてみると

九尾は「あぁ」と得心が言ったように頷く

杏「まだ獣臭くないので平気では?」

陽乃「人間基準で!」

杏「えぇ……っと、そう、ですね……」

言葉にはせず、濁すような呟きを漏らしながら目を逸らす

駄目な事だけは、分かった


陽乃「着替えれば何とかなるかな」

杏「お洋服だけでも清潔にしておくのは良い選択だと思います」

陽乃「ありがと……」

とぼとぼと本殿に引き返した陽乃を見送った九尾は、

さて……と、息を吐く。

今のところ、陽乃側で大社の動きは感じられないが

丸亀城の方では動きがあったことだろう。

上里ひなたに大社が接触したことで、

連鎖的に勇者達へと伝わっていくことになる

一般の人間を派遣できない【化け物】である以上、構成は二人、三人での班を作っての捜索

上里ひなたにも殺害を予告してきた人物が捜索対象であるため、

ひなたは大社預かりとなって一時的に大社の施設預かりとなるそうだ

これは恐らく、陽乃を巫女と認めている乃木若葉への牽制となることだろう

杏「……私達が見つかることはあり得ないけれど」

相手が望む姿を見せるというやり方では、

久遠陽乃という存在を望んで捜索に当たってくる以上、勇者に看破される

常に固定化した別の人間に見えるようにしておくべきだろう

陽乃「お待たせ……あぅ」

杏「まずはご飯ですか? それともお風呂? それとも私ですか?」


1、お風呂!
2、食事!
3、街を散策
4、身分詐称で家を借りる
5、焼け落ちた家に行く
6、貴女って言ったら何してくれるのよ

↓2

1かなぁ

1


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


そりゃさすがに夏場の野宿は虫だらけで大変だよな…
あと陽乃さんのお風呂シーンにちょっと期待


羽虫がいない?九尾が食ったな?


夏はほんとにすごしにくいと思う
キャンプ趣味だけど虫が嫌で冬にしかしない

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ひなたと勇者(千景以外)は味方してくれるならどこかで話をしておきたいな
ただ千景に関しては現状だとすぐモメそうだけど…

では少しだけ


陽乃「お風呂!」

杏「そんなに気にする事ですか?」

陽乃「九尾の力で誤魔化せるとしても、私が無理なの……」

体が汚れていれば汚れているほど、虫が群がってくるという話を聞いた覚えがある

それの真偽などどうでもいいし、実験する気もない

ただただ、体の不潔感が精神を蝕んで病むことだけは避けたいと陽乃は思う

こういう時、男の子だったら多少は我慢できるのだろうか? なんて思ったが、

自分はそうではないので、考えるだけ無駄だ

杏「確かに、伊予島杏に言わせればちょっと距離を取りたいかもしれないです」

陽乃「悲しくなるから止めて」

昨日だって、友人の家、丸亀城、神社とすべてではないけれど歩き回っていた

それに加えて野宿

陽乃だって、そんな状態の人とは可能なら距離を取るだろう。

陽乃「……吐きそう」

杏「だから、食事をとらなかったんですね」

陽乃「ん……」

正直に空腹を訴えるお腹を擦って、

飲んだらお腹を壊すであろう水場から目を背ける

120円ほど使うことになるけれど、しかたがない


陽乃は、神社から徒歩30分ほどの距離にある日帰り入浴の可能な温泉施設に来ていた。

陽乃の実家と神社があった伊予市は愛媛県の中で中予地方に属しており、

都市としては松山の方が当然上なのだが、伊予市にも一応温泉施設が存在している

陽乃「着いた……」

杏「お疲れ様です」

神社から歩き続けてきた陽乃は、

帰りも同じなのだろうかと気が狂いそうにもなったが、

日が暮れてから移動するなどしたらどうにかなるのではないかと、考えを改めて、施設案内を見る

陽乃「よしっ」

杏「日帰り、ですか?」

陽乃「これなら300円で良いのよ。これを毎日って考えると月に約1万円かかるけど」

杏「だとしたら回数券を買いますか? 12日で約2千5百円なので、お得ですよ」

陽乃「そもそも毎日じゃなく、隔日で……」

杏「あぁ、当然ですけど私を勘定に加えないでくださいね? 私は不衛生になりようもない体なので」

手をパタパタと振って意思を見せる杏……九尾を一瞥して、

陽乃は少し考えて頷く

九尾は偽る同行の前に、霊体のため汚れの心配がないそうだ

それはとても羨ましいのだが……そうなるわけにはいかない

そもそも、九尾は陽乃の影に隠れて入り込むことが出来るので支払いの必要がない

お風呂もご飯も一苦労だな…


陽乃「ん~……」

さっさと決めて入浴してしまいたいが、

回数券を購入するかどうかはかなり重要なことだ

回数券を買ってすぐに利用したい。というのは聊か気が引けるけれど

それくらいに切羽詰まっているし、子供だからどうにか通せるだろう

陽乃「九――あれ」

顔を上げると、傍に居たはずの九尾は隣におらず

施設の中を覗いているのが見えて、近づく

陽乃「どうしたの?」

杏「ここって、宿泊施設も兼ねているんですよね?」

陽乃「ええ」

杏「だったら、宿泊している人間に偽ってしまうのはどうでしょう?」

3年前は、旅行者やビジネスマンの宿泊施設として存在していたが、

それらが断たれた現在では四国内向けに開放された施設となり、

ここに限らず、そう言った施設は以前よりも低価格での宿泊が可能になっている

主な利用者は気分転換などで別の地区に来るような人たち

そう言ったものでないと呼び込めない等の諸問題があるのだろうけれど、陽乃達には関係ない

陽乃「でも……」

杏「人間を殺めるわけでもありませんし、姿を借りて入浴するだけですよ。良いじゃないですか」

お金、無いんですよね? と、九尾は笑みを浮かべる


確かにお金はないし

九尾の提案に乗ってしまえば、お金をかけずに利用することが出来る

入浴する際はまた別の姿を取ってしまえば、中にまで調べに来ることはないはずなので

同一人物との遭遇は限りなく最小限にできるはずである

しかし、これは理不尽から逃げるための幻惑ではなく、

私的利用のための幻惑だ

これを許可してしまったらあれも良いかこれも良いかと、不正に対して緩んでしまう気がする

とはいえ……背に腹は代えられないし

お腹と背中がくっつきそうな状況では、あんまり長考したくない

正直に言って、九尾の発言は魅力しかない。

陽乃「そんなことしたら……」

杏「たくさんの命を救って、なのに罵倒され、蔑まれ……少し利用するくらい罰も当たりませんよ」

耳元の九尾……杏のささやきに陽乃はぐっと唇を噛む

そう言われてしまうと、まぁ確かに。と頷きたくもなる

300円くらい払わなくたっていいじゃないかと。

杏「誰も傷つきませんよ。人間達も、久遠さんも。みんなが幸せになれます」

陽乃「あぁもぅ……っ!」


1、お願い
2、駄目、普通にお金払う(-300)
3、駄目よ。回数券買うわ(-2500)
4、一日だけ宿泊(-4000)

↓2

2

2

VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
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陽乃「駄目、普通にお金を払うわ」

杏「良いんですか?」

陽乃「伊予島さんだって、不正は好まないでしょう?」

杏「確かに、もうそれ以外にない……そうしなければ命が危ないという状況でもない限りしたくありません」

そう答えた九尾は、ふっと息を吐いて陽乃を見る

杏「それでも、まずは誠心誠意お願いして……ですね」

陽乃「でしょう?」

お金には限りがあるけれど、

まだ、使ったらなくなってしまうほどでもない

このまま一生この生活を続けるとは限らない

だったら、可能な限り真っ当に生きていくべきだ

姿を偽らなければいけないというのはあるけれど

それは仕方がないことだ

杏「分かりました。久遠さんはほんと、馬鹿ですね」

陽乃「はいはい」

九尾は貶しつつ、笑みを浮かべて一礼すると

瞬く間に影の中に溶け込んで消えていった


先払いの入浴料金を支払い、

バスタオルの貸し出しで追加で100円を支払う

脱衣所は意外と狭いけれど、棚上の窓を通して入ってくる光で明るく

何より、虫がいないというのが心地いい

陽乃「……寝れる」

ひなた「駄目ですよ。寝たりしたら」

陽乃「出てこないんじゃなかったの?」

ひなた「まぁまぁ、良いじゃないですか」

笑ってごまかした九尾は、

陽乃の隣にある空いている棚を開けて、着ていた衣類を畳んで入れていく

朝というのもあってか、脱衣所には他の人の姿は見えない

よくよく見てみると、

脱衣所の棚の鍵は陽乃達の使っている棚を除いて全て差さっている

どうせ貸し切りみたいなものだし、と

特に隠すことなくさっさと扉を開けると、湿気の強い空気が脱衣所へと流れ込む

浴室の床は御影石張りで、壁は少しばかりの石板が埋め込まれていて若干の高級感を感じる

が、陽乃は一瞥するのみで真っ直ぐシャワーのもとに向かう

ひなた「あら……良いんですか?」

陽乃「まずは髪を洗って顔も体も全部綺麗にするの」

ひなた「かけ湯……は後ですか」


入る前に見えた注意書きを思い出して首をかしげる九尾をよそに、

さっさとシャワーの蛇口緩める

水、ぬるま湯、お湯……と

寄宿舎のシャワーよりもあっという間に変わっていく

陽乃「はぁ……」

ひなた「んっ……落ち着きますね」

陽乃「このまましばらくシャワーを浴びていたい気分だわ」

雨のように降りしきるシャワーのお湯を浴びながら、

俯き、目を閉じ、流れ落ちていく滴の音を聞く

陽乃「余韻に浸るのh湯船に浸かってからにしましょ」

ひなた「そうですねぇ」

ぼさぼさで、脂っぽさを感じる髪がお湯で異臭を放つが

暫くお湯で流し、

柑橘系の少し甘さの感じる備え付けのシャンプーを使って髪を洗う

やりすぎは良くないが、

2回洗って一度髪を触って、確かめる

陽乃「……痛みそう」

ひなた「宿泊セットを持ち出すべきでしたね」

陽乃「荷物多くても困るから良いのよ」

洗えるだけましだと割り切って、

ボディーソープを手に取って、体に塗るようにして洗う

少しだけ爪を立てて、可能な限り丁寧に――

ひなた「えいっ」

陽乃「ゃっ!」

ひなた「後ろは私が洗ってあげますよ」

なぜだか機嫌のいい九尾は、手伝ってくれた


では途中ですがここまでとさせていただきます
明日はできれば少し早い時間から


できる時に身も心もリフレッシュしておくのは大事だな
にしても九尾はひなたの姿によく化けるけどが気に入ってるのだろうか


九尾は神獣扱いしてくれるひなたのこと気に入ってるぞ


お風呂一つでこんな苦労するなんてな


では少しだけ


ボディソープのボトルキャップを外した九尾は、

それを陽乃の身体へと垂らしていく

陽乃「ひぁっ……!」

ひなた「任せてください」

陽乃「なっにを……」

九尾の……今はひなたの細い指先が、陽乃の背中に触れる

爪を立てるようにしている指は、

陽乃の肌を掻き毟るようにしつつ

押し切らない力加減で泡ごと汚れをかすめ取っていく

陽乃「んっ……」

九尾は、唐突さを除けば、優しい手つきで陽乃の体を洗っていく

首の裏は抑えず揉むようにしつつ、引き戻すときだけは指を立てて

そこから肩へと指を立てたまま掻いて、肩もみをする要領で鎖骨の辺りに向かう。

ひなた「スポンジ……でしたっけ? あれを買いませんか?」

陽乃「無駄遣いはしたくないのだけど」

ひなた「あったほうが、体を綺麗にできると思いますよ」

寄宿舎時代はそうしていたからこその提案だろう

提案した九尾は、無理にとは言いませんけどね、と

陽乃から手を離してボトルを手に取る

よっしゃ


ひなた「……私が洗っていいなら、無くても良いかもしれませんが」

陽乃「あな――ゃんっ」

腕に触れていた九尾の手は、

事故ではなく意図的に前へと動いて、乳房に触れる

陽乃の悲鳴をものともせず、

ひなたの手は陽乃のそこまで大きくはない膨らみを揉むようにして洗う

陽乃「ちょ、ちょっと……っ」

ひなた「隅々まで洗ってあげます」

陽乃「前は良い、前は自分で……下も自分でやるからぁっ!」

では仕方がない。

そう言った感じで陽乃の下腹部に下りて行った手首をつかみ、

引き留めて叫ぶ

少し後ろに下がってしまったからか、ひなたの胸の柔らかさが背中に触れたが

本人ではないからか、それに対する反応は一切ない

ひなた「そう、恥ずかしがらなくても良いじゃありませんか」

陽乃「良いわけないでしょ……もうっ!」

振り払われた九尾はちょっぴり残念そうだったが、

両手を上げて「分かりました」と、引き下がった


九尾の助力も得て綺麗に汚れを落とし、

九尾の指示もあってかけ湯をしてから

お湯がたっぷりと注がれているお風呂に入る

ジェットバスや露天、サウナなどいくつかの種類があるようだけれど

何はともあれ、まずはゆっくりと浸かりたかった

陽乃「んっ……っ、はぁ……」

湯船の中から肩の上にまでゆっくりと腕を上げて、

ぐぐっと体を伸ばす

拘束衣と鎖でがちがちに固められて一週間、座り込む形での野宿

そうして疲れ切った体が解されていくのを感じて、沈み込むような感覚に目を瞑る

ただのお湯ではなく、温泉であることを強調するかのようにほんのりと感じる硫黄のにおい

一人きり……九尾扮するひなたも含めれば二人で貸し切りの状態は、

ただでさえ安らげる空間を、より居心地のいい空間に昇華させてくれる

陽乃「ふぅ……」

ひなた「若葉ちゃんも良い顔しますけど、久遠さんも可愛らしい顔をするんですね」

陽乃「お風呂で気を遣うなんて、イヤだわ」

ひなた「それには一理ありますね……せっかくの入浴ですから、体だけでなく心も癒されたいです」

思った以上に人間らしいことを言う九尾に目を向ける


陽乃「どうしたの急に人みたいなこと言っちゃって」

ひなた「今は【私】ですから。相応のことも言いますよ」

陽乃「そう……」

ひなた「寝苦しそうでしたからね。今ならあのぶくぶくしているところでも寝られるのでは?」

ぶくぶくしているところというのは、ジェットバスのことだろう

下や両側面に吹き出し口がある浅めのところに横になるものだ

場所によっては縦型のもあるという話だが、ここにあるのは横になるタイプ

陽乃「3つあるみたいだし、九尾もどう?」

ひなた「お付き合いしますよ」

通常の湯船から上がり、横に併設されていたジェットバスに横になる

ぶくぶくというよりはぼこぼこと言った感覚の勢いは、

腰や肩などに程よい刺激を与えてくれる

横からの流れもあって、どこか包み込まれているような感じがして

騒がしさはあるけれど、寝られるかもしれないと陽乃は目を瞑る

ひなた「ふふふっ……位置調節すると、胸が揺れますね」

陽乃「喧嘩のセールスはお断りよ。疲れたくないわ」

ひなた「違います。ほら、見てください。球子さんに見せたら面白い反応が――」

陽乃「上里さんは間違いなくそんなこと言わない」


九尾の売り言葉には淡々と返して、ひらひらと手を振る

戻した手が緩やかな胸元に触れるのは多分仕方がないことだろう。

同年代である千景が慎ましやかで、年下のひなたと杏は大きい

全くないわけではないので、絶望することはないけれどもう少し大きくなれたのだろうか。なんて思うこともある

しかし、近接戦闘を主とする陽乃は、

寧ろスレンダーであるべきではないだろうかとも考えている

そうつまり、別に胸なんて大きくなくても良いのである

ひなた「久遠さんも、十分魅力的な体つきだと思いますよ」

陽乃「それはどうも」

ひなた「張り合いがないですね……」

陽乃「休ませて頂戴」

ひなた「だから胸も出っ張りが――」

陽乃「このっ」

ジェットバスから勢いよく体を起こすと、

横になっている九尾はひなたの瞳で陽乃を見る

ひなた「ふふふっ」

にっこりと笑うひなた

九尾だと解っていても、ひなたの声と笑顔で存在していることに変わりはない


髪からポタポタと滴る音、温かい空気の中

肌を撫でて行く滴

内側に籠る熱が対消滅していくのを感じて、

陽乃は九尾を叩いてやろうかとした手を湯の中に下ろす

陽乃「サウナ行きましょう、サウナ」

ひなた「そういうところ。私好きですよ」

陽乃「上里さんの顔じゃなかったらグーだったからね」

ひなた「殴ってもいいんですよ? 友に牙を立てることも時には必要です」

ひなたらしい笑みは変わらずに、瞳だけが赤色に染まる

九尾は人間が人間に対して、

好意よりも悪意を抱くことが出来る生き物であると認識している

そして陽乃はそれを好まず、しかしながら周囲は無関係に陽乃に憎悪する。

ゆえに、陽乃には友であれ牙を立てる悪意ではない覚悟を持っていて欲しいのかもしれない。

陽乃はそれを何となく察しながら、

それでも目を背けて「行きましょう」と促す

ひなた「そうですね」

九尾はそれに文句も言わずに、薄く笑みを浮かべて陽乃に並んでサウナへと向かう


ひなた「これは……体力を浪費するのでは?」

陽乃「休憩室でも休むから良いの」

300円のもとを取ってやるとでも言うかのように陽乃は答える

体を綺麗にできただけで、十分元は取れている

とはいえ、追加で100円支払ったわけで。

もう少しばかり休憩室で休んでも罰は当たらないだろうと思う。

逃亡生活は、まだまだ先が長い。

表立って母親を人質として扱うことはないと思うけれど、

それを仄めかす何かは間違いなくあるはずだ

そうなる前に、少しでも休んでおきたい

疲弊した心ではきっと、それを許すことなんて出来ないだろうから。

ひなた「出たらもう一度シャワーを浴びたいですね」

陽乃「そうねぇ」

ひなた「こういう場で裸になれるのなら、外でも裸で良いのでは?」

陽乃「無理に決まってるでしょ。外は男の人もいるんだし」

ひなた「服を着ているように見せてあげますけど」

陽乃「でも裸なんでしょ?」

ひなた「まぁ」

陽乃「無理」

考えるまでもない。

九尾はそれで平気なのかもしれないけれど、陽乃には無理な話だ


√ 2018年 8月2日目 昼:温泉施設


入浴を済ませるころには人入りも増え始めてきた昼頃

陽乃は8畳ほどの休憩室で体を休めていた

陽乃「っ……」

昨夜から何も食べず、

水を飲んでいるだけのお腹は空腹を訴えるあまりに痛みさえ感じる。

出来得る限りへこませてみてはいるものの、

小さな音は鳴ってしまう

ひなた「お昼、食べたほうが良いのでは?」

陽乃「でも」

ひなた「死にますよ?」

陽乃「ん……」

調理をしたり、

何か保存できる場所があるなら多少安く済ませられるが、

今の陽乃にはそんな設備も施設もない

陽乃「コンビニでおにぎり一つくらい、買うべきよね」

ひなた「ここの食事処は利用されないのですか?」

陽乃「高い」

ひなた「あぁ……なるほど」


1、家に近いコンビニに寄る
2、神社に近いコンビニに寄る
3、ここで少し眠っておく
4、九尾と話す


↓2

2

1


↓1コンマ判定 一桁

奇数:友奈・球子

√ 2018年 8月2日目 昼:コンビニ


ひなた「あれ? 神社はこっちでは?」

陽乃「真っ直ぐ帰ったってしょうがないでしょ」

ひなた「あそこにコンビニ……? が、ありますよ?」

陽乃「こっちのコンビニに好きなおにぎりが売ってるの」

ひなた「なるほど」

陽乃の実家と、神社はそれなりに近い位置関係にあるが、

それでも数店舗あるコンビニはどちらかに近い方向にそれぞれ違うお店がある

神社に近い方が悪いとは言わないが、

貴重なお金を使って、おにぎりを買うのだから

贅沢はしないにせよ好きなものが買いたい

その考えが、裏目に出たのだろうか

友奈「まぁまぁ」

球子「だってさぁ……」

友奈「くお……きっと、何か事情があったんだよ」

目的のコンビニには、友奈と球子

勇者のペアがいた


では、途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば少し早い時間から


わりと早い段階で高嶋さんたちとばったり遭遇するとは…
陽乃さんの今の惨状見たらどう思うだろうか


ばったり会っちゃったな笑


子孫はけしからんスタイルしてたけど陽乃さんはそれほど巨乳願望はなかったのは意外
スリーサイズが地味に気になる

緩やかな胸元で絶望的に無いわけではなくスレンダーであるべき(スレンダーではない?)ってことは陽乃さんのお胸は75~80くらいじゃないか?
運動系でウエストは引き締まって65~
ヒップは不明

それで身長160cm…普通に良い体してそう


では少しだけ


陽乃「えっ……」

二人の声が聞こえて、思わず棚の影に身を引っ込める

九尾はいつの間にか姿はなく、陽乃から延びる影の中にそれらしい形が見えた

陽乃「ちょ、ちょっと」

『妾がおらぬ方が良かろう』

陽乃「別の人の姿で出てきていたらいいじゃない」

『ふむ……』

一見、久遠陽乃としての姿ではないとしても

一人でここにいるというのが、聊か不安になる

ついでに、お腹も鳴る

友奈「どこ行っちゃったのかな、久遠さん」

球子「家なんて住めるような状態じゃなかったからなぁ」

友奈「そうだね……」

球子「……あれは、ちょっと、なぁ」

声が消え入る

陽乃はそうっと棚の横側から顔を覗かせて、二人を確認する

かもーん


二人はおにぎりやお弁当、サンドイッチが陳列されている棚の前で話をしている。

陽乃を探すために伊予市にまで出てきて、お昼を食べようという感じだろうか

どうせなら飲食店にでも入って貰いたかったが、

近くにあったからコンビニを選んだ……のだろうか。

陽乃「コンビニを変えた方が良いかしら」

『状況を鑑みるに、どこかに乃木若葉らもおるじゃろう。変えるだけ無駄じゃな』

陽乃「そうよねぇ……」

分かり切っていたことだが、若葉達もいるはずだ

二人の話から察するに見てきたのは家の方だ

であれば、若葉達は神社の方を見に行ったかもしれない

友奈と球子が偶然出会ったのではなく、チームとして行動しているなら

若葉、杏、千景がまた別のチームとして行動していると考えるのが妥当だろうか。

一人は残ってひなたの護衛というのもあり得るけれど

少なくとも、千景が一人にはならないだろう

陽乃「どうする……」


1、ここから逃げる
2、あえて話かける
3、盗み聞き


↓2

1

2

2


陽乃「……ちょっと、行ってみるわ」

『あまり妾の力を過信する出ないぞ』

陽乃「はいはい」

過信はせずとも、信頼しても良いのが九尾の力だ

軽く答えて体を前に出す

すぐ横のドリンクコーナーに陽乃の姿が映ったが、

見えたのは、陽乃ではない別の少女

どこかで見たかと思い返して――

温泉施設のところで横を通った少女だと気づく

陽乃「あんな一瞬で……」

『姿かたちならば、絵画を見れば十分じゃ』

自慢気な九尾の声を聞き流し、

友奈達のもとへと近づく

陽乃「あの……」

友奈「えっ?」

球子「ん?」

陽乃「さっき、久遠さんがどうとか、言っていませんでしたか?」


友奈「久遠さんを知ってるの?」

陽乃「えっと……小学校の頃ですけど」

球子「最近、見たりは?」

陽乃「いえ、それは」

最近見たも何も、本人なのだが、

友奈と球子には違和感なく別人に見えているようで

特に気にする様子はなかった

陽乃「それより、久遠さんがどうかしたんですか? その、色々悪い噂も流れてて……あの日以降、学校からいなくなってて」

友奈「だ、大丈夫だよ!」

球子「ゆ――」

友奈「久遠さんは善い人だよ。悪い噂で聞くような人じゃないよっ」

友奈は、焦った笑顔で首を振ると

陽乃の噂を否定して、別人に見えている陽乃の手に触れる

陽乃にしようとして、けれどできなかった距離感だ

友奈「でも、悪い噂ばっかりで、嫌な思いしちゃってるかもしれなくて……」

陽乃「そう、ですか」


友奈は、陽乃のことを思って悲しそうな顔をしている

もの言いたげな雰囲気の球子も、

家を見てきたからか、困った様子で

球子「久遠さんの家は、知ってるか?」

陽乃「あぁ……知ってます。盛り上がってた、ので」

実際に現場を見たわけではなく聞いただけ

けれど、見せて貰ったインターネットの情報は、

とても、盛り上がっていた

お焚き上げだとさえ、言われていた

久遠の血筋を人身御供としての人類の救済

その可能性に懸けている人々の暴走

陽乃「………」

生きていることを、人々は望んでいない

死んでくれることを、人々は望んでいる

友奈「ねぇっ!」

陽乃「なっ、なに……?」

ぐっと手を引かれて、思わず声が上ずる

友奈「久遠さんと仲良かったなら……久遠さんが行きそうなところとか分からないかな!」


1、分からないです
2、えぇっと……一番仲が良かったお友達、かな?
3、どうしてですか?
4、神社、でしょうか?
5、貴女達、なんなんですか?


↓2

4

4


では本日はここまでとさせていただきます
明日は可能であればお昼ごろから


高嶋さんたち勇者全員来てるとなるとどのみち誤魔化しきれないだろうしな
バレたら連れ戻されるのだろうか


まあ和解はしておきたいしなあ


では少しずつ


陽乃「そうですねぇ……久遠さんが行くとしたら神社でしょうか?」

球子「神社ぁ?」

怪訝そうな顔つきをする球子だが、

友奈は笑顔のまま「神社って久遠さんのところの?」と、聞いて来る

陽乃「多分、ですけど」

陽の本人が言っているので、間違いないことだし

実際に陽乃は神社で野宿をしていた

聡い人なら、直近で誰かがいたことに気付くことだろう

『良いのか主様』

陽乃「ん……」

良いか悪いかで言えば、あまり良くない

神社は雨風をそれなりに凌げる無料の拠点としては悪くないけれど

考えようによっては、居心地は悪い

替えがきかないわけではない

一歩寄り添って様子を見るための餌としては……良いと言える


陽乃「神社にはいかれたんですか?」

球子「あー……ほかの友達が、な」

勇者とは言えないのだろう

友達と言った球子は自分の発言に眉を顰める

球子にとって、杏は親友に値する

しかし、若葉や千景はどうだろうか。

若葉は言えるかもしれないけれど、

千景は……仲間であっても友人ではなさそうに感じる

友奈「私達、久遠さんに会いたいの……」

陽乃「……どうして、ですか?」

友奈「それは……」

友奈の表情が曇る

決して、明るい理由での捜索ではなく、

そこに後ろめたさがあるからこその表情。

嘘をつくことが苦手……というより、

直球的な友奈に偽れというのは、酷だろう。

友奈「えっと」

球子「本当に噂通りの奴なのか知りたいんだ」


友奈の言葉に被せるように言った球子は

その表情に偽りを感じなかった。

裏に色々と考えはあるのかもしれないが、

陽乃が本当にその噂通りの存在であるのかどうかを知りたいのも、本心だと言える

陽乃「でも、久遠さんって大社のところにいるのでは?」

球子「それはだなぁ……えーっと、あれだ。言われてる通りの奴なら逃げてるかもしれないだろ?」

友奈「タマちゃん!?」

陽乃「あははっ」

この二人を組ませたのは誰なのか

陽乃は考えて乃木さんだったら、ちょっと失敗だったんじゃないかと思わず苦笑する

もちろん、

千景と友奈を組ませると、千景が友奈を護るためと張り切ってしまうので不可

千景と球子を組ませると、うまくいかなそうで不可

となれば、消去法的にこうなるのだろうけれど

陽乃「そういうこと、あまり大きな声で言わない方が良いですよ」

球子「お、ぉう……」

陽乃「ですが、もし本当にどこかにいるとしても……居場所があるだなんて思いますか?」

きてたか


陽乃「家も神社も人が住めるような状態ではなくて、あんな噂のせいで頼れる人なんていないのに」

友奈「………」

球子「だから……えっと」

陽乃「?」

何か言おうとして、陽乃を見て球子は言い淀む

もしかしたらと、陽乃は即興で名前を組み立てる

陽乃「あぁ、私は【はる】だよ。久遠さんの陽で、高橋陽」

適当に、小学生の頃よくよく聞いた苗字と、自分の名前の一つを使って偽名を作る

陽という漢字が、久遠陽乃と同じだったから仲良くなった。なんて、

繋がりも付与した誰かさんの名前

友奈「私は友奈! 高嶋友奈。高は――」

陽乃「うん、高いに嶋だよね? 友奈は友の奈」

学校に似た名前がいたんだ。と嘘をつき、

後から球子の名前を聞く

球子「えっと、陽の言う通りだ。だから私達が探してるんだよ」

陽乃「久遠さんのお友達なんですか?」

友奈「そうなれたらいいなって、思ってるんだ」


友奈は、少し残念そうに笑う

友達になりたくてもなることが出来ないことを悲観しているのかもしれない

陽乃は千景との確執、民衆の憎悪

大社からの偏見

それらによって、他人を寄せ付けまいとしていた。

友奈がいくら寄り添おうとしたところで

それがまた引き剥がされないという保証はない

裏切られないという保証はない

友奈がどれだけ、自分の心を語っても

陽乃にとってそれは結局【他人の言葉】でしかないからだ

信じて欲しいと。それを望むこと自体が傲慢である

そう言えてしまうほど、久遠陽乃は世界に裏切られている

友奈「だからってわけじゃないけど……良かったら少し久遠さんのお話聞かせてくれないかな?」

球子「友奈……それは」

友奈「探すのも大事だけど、話を聞くのも大事だと思う」

久遠陽乃が大社の下にないことを言ってしまっているようなものなのだけれど

友奈達は気付いていないようだ


1、それはちょっと
2、いいですけど……お二人にだけですよ?
3、ところで、上里さんはどちらに?
4、大社は、久遠さんを探し出してどうするつもりなんですか?


↓2

4

2


陽乃「ん……」

『主様』

陽乃「………」

九尾の問に応えられるわけもなく、自分の影を見下ろす

影の中の瞳は陽乃をじっと見つめると

暫くして闇の中に消えていく

陽乃がそうするのなら……と、判断したのだろう

陽乃「良いですけど……お二人にだけですよ?」

球子「そ」

友奈「うんっ、分かった!」

球子「ちょ、友奈!」

友奈「はるちゃんがそうして欲しいっていうんだから、そうしようよ」

ね? と問いかけてくる友奈に球子はたじろぐ

明るく、まっすぐ

球子も似た性格ではあるけれど、そこにはない純粋さもあって

球子はグッと歯噛みして、頷いた

球子「若……友達にも言ったらダメか?」

陽乃「そこは、お二人の良心にお任せします」

ニコッと笑った陽乃は、

そこでなんですけど……と、続ける

陽乃「お話しする代わりに、お昼……食べさせてくれませんか?」

『主様、まさか……っ』

九尾の唖然とした声に、陽乃は苦笑いで誤魔化した。


二人と一匹……三人にどう思われようと

今は九尾以外は陽乃だと認識していないので、

節約できるのなら節約しようという中々な強かさのある強請りを友奈は快諾し、

陽乃の勧めでコンビニから、手打ちうどんの店に移動した。

奢りだから高いお店。などということはさすがにせず

地域的には人気があるというくらいの、ごく普通のお店だ

友奈「わぁ……こんなお店があったんだね~」

陽乃「角っこに隠れているので、知らないとスルーしちゃうんですね」

木目調のシックな雰囲気のあるテーブルと椅子が並ぶ店内

椅子の上には申し訳程度の座布団が敷かれていて、テーブルの下に荷物置き

自分で取ってという感じのサイドメニューの小鉢の入った棚

3年前と変わらない様子ではあるけれど……店員は、若い。

陽乃「………」

陽乃が最後に行ったときは、まだおばあさんが注文を受けたりしていて

子供が来ると、サービスだよ。と、好みの天ぷらをつけてくれたりしていたのが、懐かしい

球子「どうしたー?」

陽乃「あ、いえ……私、釜玉で」

友奈「じゃぁ、私は肉ぶっかけ!」

球子「はぁ、じゃ、タマも釜玉で! タマだけに」


注文したうどんが来るまでの間に、

友奈と球子の二人に話してしまおうかと、陽乃は周りに人がいないのを確認する

他に人がいると、久遠という言葉を出しただけで、大変な事になるかもしれないからだ

ならお店に来るなという話だが、

それはそれ、これはこれ。

昨夜からの空腹には勝てないのである。

陽乃「これから、話すけど……これだけは約束して欲しい」

友奈「うん、分かった」

球子「あぁもう……聞く前に頷いてどうするんだ」

友奈「だって――」

陽乃「変なお願いじゃないよ。ただ、あの人の名前は一切出さないこと。これを約束して」

友奈「っ……」

陽乃「理由は、わかってくれるよね?」

元気よく答えてくれた友奈は、

その理由を分かるからこそ、表情を曇らせる

久遠陽乃という名前は、毒薬だ

人を狂わせてしまう、巻き込んでしまう言うべきではない名だ

かつて、映画にもなった魔法世界の有名作に出てきた登場人物のような扱いだが、

それも、やむなしである


1、あの人は、小学校時代は明るい人でしたよ。昼休みに男子に交じってることもあるくらい
2、映画の話題とか、本のお話すっごく好きですよ。図書館で良く本を借りてました
3、元々、あの人を嫌ってる人は少なくありませんでした
4、優しい人ですよ。あの日だって……一生懸命に守ってくれたんです

↓2

2

3


陽乃「元々、あの人を嫌っている人は少なくなかったんだ」

球子「性格悪かったとかか?」

友奈「タマちゃんっ」

球子「冗談だって」

球子に目を向けた友奈は怒っているようには見えないものの不満が感じられて

陽乃は「まぁまぁ」と宥めて苦笑する

初めから嫌われていたというなら、

本人の問題を考えるのが普通だろうとは陽乃も思うからだ。

とはいえ、性格の良し悪しはともかく

自分の問題だったとは、思う

陽乃「あの人、みんなに優しくしようって感じで……それが、人によってはうざかったみたい」

分かりやすく言うなら、【いい子ちゃんぶっている】だろうか。

陽乃の分け隔てのない接し方は、教師からの印象は良かったし、

友人だって多かった

けれども、だからこそ気に入らないという人は出てくる


陽乃「あの人は、気にしなかったけど……ううん、気にならないふりしてたけど。それを分かってた」

友奈「虐め、とか」

陽乃「まさか。表立ってそんなことしたところで跳ね返るだけだからね」

あったのは、陰口をたたかれること

手洗い場などで、ぼそりと

体育の時に少し危ないプレーをされること

虐めとはされない程度の、絶妙な事をしてきていた

陽乃「だから、かな……今の世論もそこまで堪えてないんじゃないかな」

球子「でも、凄いことになってるのに」

陽乃「それでも、だよ」

もっとも、一番の友人だった人に拒絶されたときは

流石に呆然自失としてしまいそうになったけれど

陽乃「あの人は多分もう、誰かのためなんて考えはしないかもしれない」

友奈「そう、かな?」

陽乃「うん。だって、どれだけ寄り添ったって背中から刺されるかもしれない。首を絞められてしまうかもしれない。そんな状態なんだよ?」

誰かのために頑張ったところで報われるとは思えない。

誰かを信じたところで傷つくことが目に見えている

だから――

陽乃「高嶋さんと土居さん。そのお友達。みんなが仲良くしようとしてもあの人は受け入れたりしないと思う」


言い過ぎ、かもしれない。

けれどそれでもと来てくれなければ……信じることは出来ない

いや、そう来てくれたとしても、陽乃は仲良くできないと思っている

何せ、陽乃は神さえも殺せる可能性を秘めているのだから

大社も民衆も、

久遠陽乃という人物を肯定してくれることはないだろう。

陽乃はそう、割り切っている

今はまだ、表に大きく出てきていないから問題ないかもしれないが、

いずれ、勇者の存在は大きくアピールしていくことになる

そうなったとき、

件の化け物と仲良くしているとなったらどうなるか。

信用は……落ちていく

陽乃「二人が何なのかは、詳しく聞かないよ。けれど、あの人には近づかない方が良いと思う」

球子「そんな話聞かされて――」

陽乃「だからこそだよ。悪名高いあの人が本当は良い人。だから何? その噂に巻き込まれて、二人まで悪く見られるよ」

友奈「そんな……」

陽乃「放っておいた方が良い」


友奈と球子は気付いていないけれど、これは陽乃本人からの拒絶だ

球子は少しばかり粗雑で、けれど気遣ってくれている

友奈は優しく感じるけれど、何か別の何かもあるような……そんな感じではあるが

やはり、気にしてくれていて。

だからこそ、陽乃は拒む

その優しさは、自分に向けるべきではないと。

友奈「でも……だったらそれこそ私達だけでもちゃんと仲良くなりたい」

友奈は神妙な面持ちでそう切り出すと、

満面にはなりきれない笑みを浮かべて

友奈「だって、く……あ、陽……先輩は優しい人だって思う」

陽乃「優しい……?」

友奈に優しさなんて見せただろうか

みんなに優しくしようという人だったと語りはしたが、

そう思えるほど語ってはいない

友奈「いつも、先輩はみんなが悪い空気にならないようにって、気を使ってくれてたんだ」

球子「友奈っ!」

友奈「えっ、あっ……」

球子の声に友奈ははっとして口を塞ぐ

陽乃の学生時代を知らないのに先輩と言い、気を使ってくれたとみてきたかのように言う

それは、友奈が陽乃と今なお関わりがあると言っているような話だ


陽乃「……二人は」

「お待たせしました」

陽乃達と同年代位の若い少女が、

三人分の注文をお盆に乗せて運んできた事で

陽乃の言葉は遮られた

二人は大社の人なの? なんて、分かり切ったことを聞こうとしたけれど

聞いたって、特に意味はない

友奈と球子は

それはもう誤魔化せないと答えてくれるかもしれないが。

陽乃「ここのうどんも美味しいよ。食べよっか」

友奈「そ、そうだねっ」

球子「お、おうっ」

ぎこちない雰囲気

けれど、一口食べれば、友奈は「ほんとにおいしい」ととても嬉しそうで

球子はあそこの店も良いけどここも……と呟く

陽乃はそんな二人を見て、

気付かれないように小さく笑みを浮かべ、隠すようにうどんを口に運んだ


食べ終えるころには、話はいったんお流れとなっていたけれど、

友奈と球子はさすがに忘れなかったらしい

運ばれてくる前のちょっとした気まずさを感じる

本当は聞くまでもないけれど、

この、赤の他人の状態で深く入り込んでは

この体の本当の持ち主が厄介ごとに巻き込まれてしまう可能性がある

会計を終えて店を出て、二人に振り返る

陽乃「ご馳走様でした」

友奈「へっ?」

陽乃「……奢って頂いたので、追及はしません」

ただ。と、続ける

陽乃「これ以降、出来るだけ私には関わらないでくださいね」

間違えても、

久遠陽乃の件で話した間柄であることは触れないようにと、念押しする

そうしておけば、本人が関わる可能性は減らせるはずだ

友奈「うん、分かった」

残念だけどね。と、友奈は笑う


1、本当にお願いね。本人に迷惑をかけるのは忍びないから
2、また……いつか。平和になったら
3、久遠さんをお願いしますね。きっと、あの人は押しに弱いですから
4、大社に、久遠さんのお母さんがいるはずなので、きっと大丈夫ですよ

↓2

2

3


陽乃は少しだけ考える

このまま別れても問題はないけれど

それでいいのだろうかと。

友奈と球子、勇者達がどう頼まれて陽乃を探しているのかは不明だが、

決して明るい理由ではないことだけは分かっている

しかしながら、友奈は表情を曇らせた。

頼まれているからやっているだけで、決して、それに賛同できているわけではない

思うところがあって

しかしそれを口には出来ていない

いや、もしかしたら仲間内では話し合っているかもしれない

千景はだとしても……陽乃を敵視する

けれど、友奈と球子、杏と若葉

そして、最後に出会ったひなたは、きっと。

陽乃「久遠さんをお願いしますね。きっと、あの人は押しに弱いですから」

友奈「う、うん……任せて!」

友奈は驚きつつも、

嬉しそうに、笑顔でそう答えた


友奈達と別れ、しばらく歩いた街角で足を止める

九尾は影の中に混じったまま、姿を見せていない

陽乃「もう出てきても良いんじゃない?」

『愚か者め』

陽乃「だって、高嶋さん……辛そうだったんだもの」

『良いではないか。苦しませてやれ』

陽乃「良いわけないでしょう、もう」

とはいえ、流石に話し過ぎてしまっただろうか。

お願いします。押しに弱いよ。なんて言えば、友奈は全力で寄ってくる

それは、自分が今まで望まなかった結果になるというのに

九尾の愚か者という言葉は、正しい。

陽乃はそう思って笑う

『主様、神社に戻るのかや?』

陽乃「どう、しましょ」

神社に行くんじゃないかって言ってしまったのだ

必ず、あの二人はそこに行くだろう



1、神社に行く
2、あえて寄宿舎
3、四国を出ていく
4、別の棲家を探す


↓2

ksk

1


ではここまでとさせていただきます
明日は、出来れば通常時間から

接触判定無:確定


あれだけ痛めつけられてなお諦めない高嶋さん本当に勇者だな
一方遭遇したのが若葉か杏だったら見破れてたのだろうか


次はわかばたちか


では少しだけ


陽乃は結局、神社へと戻ることにした

あの話の後だ

少なくとも友奈と球子は待ち構えていることだろう

それでも、陽乃は神社への砂利道を歩く

かつて、塞ぐほどに停まっていた車を想起させる狭い道

側面の塀に映った影が、狐の形へと変質する

『主様、おるぞ』

陽乃「高嶋さんと土居さん?」

『いいや……全員じゃな』

陽乃「全員……?」

みんなが探しに出ていることは想定内

友奈と球子で組み、ほかに人がいなかったことから

若葉、千景、杏の三人で別行動中という憶測

きっと、それは正解だったはずだ

友奈達に【神社に行くかもしれない】という情報を与えた結果、そこで集合となったのだろうか

いや、友奈と球子の性格からして

あの話は心のうちに止められる……と、思いたい

もちろん、話しても構いはしないが。


陽乃「様子は、分かる?」

『ふむ……少し時間があれば確認もできるが』

陽乃「向こうにあなた一人で行くってことでしょ?」

『そうじゃな。さすがに、あの場にいる面々を知るくらいしかできぬ』

くつくつと喉を鳴らした九尾だが

そこに誰がいるのか、察知できるだけで能力的には十分だ

『乃木若葉は、上里ひなたから主様に付いて任されておる。下手な手は打たぬと思うが……』

陽乃「郡さん。でしょう?」

『うむ』

一番の問題は、やはり千景だ

彼女だけは説得どうこうといった状態にないのは、

逃げ出した昨日、杏の姿で出会った時にそこら辺は諦めている

それくらいに、彼女との溝の深さは絶望的だった。

陽乃「全員って言うことは郡さんもいるんでしょ?」

『然り』

陽乃「ん~……」

仲直りはしたいけどなぁ…


友奈と球子の見であれば、久遠陽乃として出ていくのもやぶさかではなかった

しかし、千景がいるとなると話は別だ

陽乃としては、ここで間で争う気は毛頭ないのだけれど

そうは問屋が卸さない。だろう。

友奈達が乗り気でなくとも、千景は全力で乗ってくる。

手段は問わない、久遠陽乃を連れ戻してくること。

最悪の場合、戦闘も許可する。となっている可能性は十分ある

現に、球子と友奈は大きめの鞄やリュックが身近に見えた

千景だったら、明らかだっただろう。

『主様の蒔いた種じゃぞ』

陽乃「郡さんとの関係悪化は貴女にも責任があるってば」

『ふむ……じゃから殺せと』

陽乃「それこそ取り返しが――」

『失せれば、取り返すものもあるまいて』

陽乃「またそういうこと言う……」

究極的に

いや、単純に自分のことだけを考えるのであれば

邪魔だてする……生きにくくしてくる余計なものは排除するのが合理的である

それらのせいでこんな状況に陥っているのだからなおさら

――だから

陽乃「っ……」

首を振る

塀の方に下がって足元を見つめ、深呼吸

いっそここで全員――なんていうのはあり得ない。


1、偽っていく
2、陽乃の姿で出ていく
3、別の場所に行く


↓2

2

2


陽乃「……九尾」

『主様』

陽乃「言いたいことは分かるけど、お願い」

『どうなっても知らぬぞ……主様』

今の千景の前に自分の姿で出ていくのは自殺行為と言える

しかし、ここで出ていかなければ、もう大社に横やりを入れられない状況での対面は無理かもしれない

余計な尾鰭が付く前に収拾をつけるのが難しくなるかもしれない

だから、ここは勝負に出る

『言うておくが、主様が危うければ妾は容赦せぬぞ』

陽乃「ええ……」

そんな状況に追い込まれてしまったら、

きっと、そんな悠長なことは言っていられない

陽乃は意を決して、足を進める

陽乃「……郡さんのことは、乃木さんが止めてくれる」

『そうできるとよいがのう』

陽乃「大丈夫……たぶん」

若葉の実力は認めている

だが、問題は本気になった千景だ

それも含めて大丈夫だと、陽乃は信じて神社へと向かった


神社へと向かうと、

九尾が言っていた通り5人が揃っていた

友奈、球子、千景、杏、若葉

全員がバラバラになることはなく、

揃って、本殿のところにいる

陽乃「……高嶋さんが話したわけではないだろうし……」

『主様がいた痕跡を見つけたようじゃな』

陽乃「あぁ、やっぱり?」

完全に綺麗にしたわけではないが、

それでも、3年間の積み重ねがあった汚れに、一日の野宿は色濃く残る

陽乃「次は、もっといい場所を見つけなきゃ」

『そうじゃのう』

陽乃「さて……」

なにに対しての同意なのか

陽乃はあえて考えずに、5人の下に向かって

陽乃「どう? 私の新しいおうちなんだけど、素敵でしょ?」

笑い交じりに、声をかけた


若葉「なっ……」

友奈「ぐんちゃん待ってっ!」

千景「……いくら高嶋さんでも、待つ気はないわ」

友奈が掴んだ手を振り解いて、

千景だけが、陽乃に向けて武器を手に取る

突っ込んでいかないのは、模擬戦での出来事があるからだろう

あれだけ一方的にやられる結果に終われば、

無計画に陽乃に手を出そうとは思わない

もちろん、無防備でいようとも思えないのだろうが。

千景「よく、顔を出せたわね……」

陽乃「私、住む場所がないから」

友奈「ぐんちゃん!」

友奈が間に割って入っても

ひりつく空気が和らぐ気配はない

杏「久遠さん……私達は戦いに来たんじゃありません」

陽乃「ん、武装してるように見える?」

杏「そう……ですね」

両手を広げて見せた陽乃だったが、

元々が近接戦闘なのもあって、千景は警戒を解く様子はない

杏は少し困った表情で考えて、また口を開く

杏「大社から久遠さんを連れてくるように頼まれています」


では途中ですがここまでとさせていただきます
明日はできれば少し早い時間から


千景が高嶋さんの呼び掛けに応じないとか余程陽乃さんのこと恨んでるんだな…
攻略どころか仲直りすらできるビジョンが見えないのが辛い


大社は連れ戻して何する気なんだろうな


遅くなりましたが、少しずつ


何となく――というより

そうだろうと思っていた陽乃は苦笑する

陽乃「やっぱり?」

若葉「大社は久遠さんを連れ戻し、管理下に置こうとしている」

陽乃「そうなるでしょうね」

勇者を害し、看護師を殺しかけ、

あまつさえ、逃げられない監禁場所からの逃走劇

管理すべきと思うのは当然だろう

千景「……戦闘許可も出ているわ」

陽乃「貴女を見ればわかる」

千景「投降するなら、怪我をしなくて済む」

球子「止めといた方が良いんじゃないか?」

千景「……なに?」

友奈「ぐんちゃん……やめよう?」

球子を睨みつけた千景を、友奈が制止する

模擬戦で敗北したのだから、ここで武力行使したところで勝てないだろう

そう思われていると感じたであろう千景の苛立ちに、

球子は目を伏せて、陽乃を見る

球子「どうせ本気になったら、タマ達を全滅させられるんだろ?」


陽乃「一人二人なら可能かもしれない。けれど、それは乃木さんがいない前提での話になるわね」

若葉「……冗談は止めてくれ」

陽乃「実際、貴女は止めてくれたでしょう?」

若葉「あれは運が良かっただけだ」

陽乃が……嫌、九尾が本気だったなら

若葉は自分はここにいられなかったと思っている

それは若葉だけでなく千景や友奈も同じで

もしもその結果だったなら、球子や杏もいなかったことだろう

若葉「まず……一つ確認したい」

陽乃「なに?」

若葉「貴女は本当に久遠さんで良いのだろうか?」

九尾が偽っているのではないか

それを確認したいのだろう

だが、言葉で言って信じるだろうか

若葉や友奈、杏は信じるだろう

球子も渋々頷くだろう

しかし、千景は――

『やはり殺――』

陽乃「止めてってば」



1、私は陽乃本人よ。証拠はないけれど
2、九尾お願い。出てきて
3、どうやったって証明は出来ないわ。ごめんなさい
4、逆に聞くけど、どうしたら信じてくれる?


↓2

1

2

また体を乗っ取るのは勘弁…


陽乃「九尾お願い、出てきて」

『またか』

陽乃「お願い……大事なことなの」

陽乃がそうお願いすると、

九尾は悪態をつきながらも、陽乃の隣に影を伸ばす

それはゆっくりと人の形を作り始めて

そうして――上里ひなたが姿を見せた

若葉「なっ……なん……」

ひなた「まったく、若葉ちゃんったら疑り深いんですから」

杏「嘘……」

球子「見た目も声も瓜二つだぞ?」

驚きに戸惑う勇者の面々をよそに、

九尾であるひなたは陽乃を一瞥して、肩をすくめる

ひなた「私が、九尾だったんです」

陽乃「ちょっ」

若葉「う、嘘だ……っ!」

ひなた「ふふふっ、もちろん嘘ですよ」

九尾はそう言うと、ひなたの姿を崩し――かつて見た、九つの尾を持つ狐へと姿を変えた


杏「こ、れが……」

九尾「いかにも……これこそが妾の姿」

九尾はそう言いながら九つの尾を動かして、地面を叩く

砂埃が巻き上がって、わずかに地鳴りのような音が響き始める

若葉達は呆然として

千景だけが敵意をむき出しにして九尾へと大鎌を向けていた

九尾「ふむ……」

陽乃「九尾、駄目よ」

九尾「少し、牽制するだけじゃ」

陽乃「九――」

陽乃が止めるよりも早く、九尾は尻尾を駆使して砂嵐を巻き起こす

陽乃を含め、全員が視界を奪われたのはほんの数秒だったが、

それが晴れるころには、もう。九尾の業は終えていた

陽乃「え……」

友奈「あ、あれ……?」

陽乃の隣に九尾はおらず、代わりに友奈がいる

それだけなら高嶋友奈に化けたと考えられるが、

問題は、若葉達の側にも友奈がいることだった


千景「高嶋さん……?」

千景はすぐ隣にいる友奈を見て、声をかける

千景の隣にいる友奈は驚いた表情で千景を見ると、

もう一度陽乃の隣にいる自分を見て、目を見開く

友奈「ぐ、ぐんちゃん落ち着いて! 私はここにいたよ!」

友奈「ち、違うよぐんちゃん! 煙がバーッてきて、気付いたらこっちに……」

千景「ま、待って……そんな」

千景の隣と、陽乃の隣

両方の友奈が同時に言葉を発して千景を止める

どちらかは本当に九尾だ

警戒していなければ一方的に嬲り殺される可能性もある

しかし、どちらが本物で偽物なのか

それを見分けるのは簡単ではない

陽乃「ちょっと……冗談でしょ……」

千景に攻撃させないという意味では、きっと完璧だ

しかし、神経を逆なでしてしまったような気もすると、陽乃は思わず声を漏らした


友奈「く、久遠さんは分かる……?」

陽乃「え……」

陽乃はすぐ隣の友奈に問われ、眉を顰める

千景の隣にいる友奈もはっとして

陽乃の方を見つめる

陽乃「えっと……」

二人の友奈に対し、球子や杏が質問をするが

両者ともに、正解を言い当てている

それを耳に通しながら、陽乃は隣の友奈を見つめる

分かるか分からないかで言えば、分かる

はっきり言ってしまえば、茶番だ

九尾も友奈も動いていない

陽乃の隣にいる友奈こそが、九尾だ

だが、それを正直に言っていいのだろうか?

言ってしまったら、千景と対等に話せなくなってしまうのではないだろうか?



1、さぁ? 分からないわ
2、こっちにいるのが本物よ
3、そっちが本物よ
4、まずは武装解除してくれない?

↓2

4

4


陽乃「まずは武装解除してくれない?」

千景「何を……いうかと思えば」

千景は武装解除する気がないのか、

友奈達よりも一歩だけ前に進んで武器を構える

それでも、二人の友奈両方に目を向けて、警戒は怠らない

若葉「郡さん、今は従っておくべきだ!」

千景「何を言っているのか分からないわ」

友奈「お願いぐんちゃん! 久遠さんと話をさせて!」

陽乃「は?」

自分の隣の友奈……つまり九尾がそう叫んだことに、

陽乃は思わず顔を顰め、すぐに誤魔化す

向こうの友奈はこっちの友奈が偽物であると分かっているはずなので

茶番どころではないだろう

千景「っ」

友奈「お願い、ぐんちゃん」

千景「高嶋さん……」

二人の友奈にとめられて、それでも千景は大鎌を手にする

だが、その腕を杏と球子、そして若葉が止める

杏「今はどうか治めてください……九尾さんが本気なら私達を殺せてしまうなら。一人警戒していてもダメです」

球子「そうだぞ。タマ達みんなで力を合わせなきゃどのみち全滅だ」

若葉「今は、頼む」


では途中ですがここまでとさせていただきます
明日は可能であれば通常時間から


いまこそ若葉たちの団結力が試される時だな
そして九尾の行動が吉と出るか凶と出るか

今後は暴走しないという保証を示せれば良いけどなぁ
そもそも暴走の原因はどこにあるんだっけ


すみませんが本日はお休みとさせていただきます
明日は可能であれば通常時間から

乙ですー
休載は久々かな?

乙乙
まあゆっくり休んでやー


では少しだけ


千景「何を悠長なことを言っているの……?」

若葉「気持ちは分かりますが、落ち着いて欲しい」

千景「分かる……? 貴方が……?」

陽乃へのいら立ちの一部を若葉へと向かたかのように冷ややかな声が若葉へとぶつけられる

しかし、若葉はその差し込むような雰囲気に物怖じすることなく、

ふっ……と、息を吐いて千景をまっすぐ見る

若葉「私だって、ひなたを殺されかけた」

千景「………」

若葉「そして、今、その件によってひなたは大社に連れて行かれている」

若葉はそう言うと千景の武器を押さえる手を離し、腰元にある刀の柄へと伸ばす。

指の一つ一つに力が込められて、握りこまれる

若葉は凛とした佇まいはそのままに、瞳だけに強く闘志を宿していく

若葉「……分かって欲しい」

球子「そうだぞ。下手なことして久遠さんが抵抗したらどうする? 守れる自信があるのか?」

杏「久遠さんが憎しみだけで対抗できる相手かどうか、郡さんが一番よく分かっているはずです」

よしきた


若葉達の説得を受けて、

千景は傍らにいる友奈を見て、陽乃の隣にいる友奈を見る

千景にとって、高嶋友奈こそが今この場で最も優先的に守るべき人だ。

九尾はその友奈に姿を替え、どちらにいるのか分からないようにしている

もし万が一、陽乃側にいるのが友奈であるなら、

陽乃はいつでも友奈を害せる

千景が勇者の力でどれだけ頑張ろうと、僅かな瞬間を与えてしまう

それだけで、陽乃は友奈を殺すことが出来るかもしれない

もし、千景の隣にいるのが九尾ならば、彼女は情け容赦なく首を刎ねるだろう

まずは武器を手にしている千景

そうして、若葉、球子、杏……最後に友奈

いや、彼女の性格が悪いのであれば身動きできない千景に対して、友奈の死を見せつけることだろう

千景はそこまでを考えて、考えて

ギリッ……と歯ぎしりを響かせて、大鎌の切っ先で地面を抉る

千景「……高嶋さんを傷つけたら、殺すわ」

陽乃「私はそんな気ないのだけど……」

友奈「大丈夫だよ。ぐんちゃん……久遠さんは、大丈夫」

陽乃の隣にいる友奈は白々しいことを言って、

心配そうに陽乃を一瞥し、千景を見つめる


陽乃「とにかく私は戦う気はないわ。もちろん……死ぬつもりもないから、来るなら抵抗するけれど」

向こうが殺しに来るのなら、流石に九尾に待ったはかけられない

もちろん、殺しことはないようにと務めるけれど

それがどこまで通用するのかは分からない。

陽乃が千景の隣にいる本物の友奈に目を向けると、彼女は意を決したように頷く

陽乃「郡さんもその状態だからどっちが本物の友奈か話すのは後で良いかしら」

若葉「私は構わない」

陽乃「えぇと……それで何の話だったかしら」

杏「久遠さんが本物かどうか。という話ですね」

陽乃「あぁ……本物。だけど信じられる?」

千景「無理ね……貴女も含めて偽物の可能性が高い」

陽乃「でしょうね」

千景のさっぱりとした断言に、陽乃は苦笑する

言われるまでもなく、そうだろう

ひなた本人に見間違える化け方が出来て

友奈が二人いてどちらが本物なのか見分けがつかなくなっている

もちろん、後者に関しては友奈の協力あって成り立っているのだが。

陽乃「それで……連れ戻しに来たんだっけ……」



1、悪いけれどそれは無理ね
2、今まで通り寄宿舎で過ごしていいなら良いわ。そうじゃなければ、お断り
3、……戻らないと上里さんが戻らないんでしょう? なら良いわ。戻ってあげる


↓2

2

2


では短いですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


戻ってくるのは同じでも監禁か寄宿舎生活ならできれば後者がいいけど…
それにしても千景の殺意が高過ぎてどうしたらいいのか


千景と仲直りしたいなあ


遅くなりましたが少しだけ

やったぜ


陽乃「そうねぇ……」

勇者達はともかく、

大社は気絶させてでも連れ戻してきて欲しいと思っていることだろう。

そうしなければ、街中に爆弾が仕込まれているようなもの……だろうか。

陽乃は少しだけ考えて

それは言い過ぎかもしれないと、苦笑する

陽乃「今まで通り寄宿舎で過ごしていいなら良いわ。そうじゃなければ、お断り」

今までも不自由は多かった。

けれど、お風呂に入れるのが良い

ご飯だって普通に食べられる。

千景「あな――」

若葉「分かりました。交渉します」

何かを言いかけた千景を制して、

若葉が答える

交渉しなければ、その希望が叶わない

そう言った若葉に、陽乃の隣にいる友奈が目を細める

陽乃「仕方がないわ」


大社としては、陽乃を管理下に置いておきたいはずだ

何かやらかさないように、

勇者達を傷つけないように

ちゃんと管理しておきたいだろうし、

陽乃の力を解析したいと思っていることだろう。

寄宿舎に戻せば、陽乃はまた勇者達に危害を加える可能性がある。

陽乃がそんなことをしないと言って、信じるだろうか

答えは否だ。

しかし、陽乃が寄宿舎に戻ることを拒めば、

脅威は街の中へと消えることになる

大社は必ず、陽乃が戻ることを許可してくれる

けれど……絶対にいい顔しないだろう

杏「交渉するにあたって、久遠さんにはもう一日だけ街にいて頂く方が良いですね」

陽乃「戻ったらだめなの?」

若葉「大社の方に連れて行って良ければ」

陽乃「あー……」


陽乃の要望通りに寄宿舎に戻してしまうと、

連れ戻してきたにも関わらず

大社から勇者への信頼に影響がある。

特に、一番友好的である若葉とひなたに迷惑がかかることになる。

今までの関係と同様にそこまでの関係でなかったならそれでよかったけれど

九尾も気に入っているひなたに迷惑をかけてしまうと、

九尾は恐らく……止まってはくれない

そうなったら、終わりだ。

隣にいる友奈の方に目を向けてみると

拳を握りしめているのが見えた。

九尾は九尾でも、今は友奈である以上……感情の出し方は友奈のようだ

友奈「久遠さん」

陽乃「分かってる……上里さんが大変だものね」

赤い瞳の友奈

その目が細まっていくのを一瞥し、陽乃は頷く

陽乃「それで? 私はまたここにいたらいいのかしら?」

杏「いえ……久遠さんさえよければですけど……私の家に来ませんか?」


では短いですがここまでとさせていただきます
明日は可能であれば早い時間から


まさかのお泊まり


これからは千景攻略が鍵になりそう

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そういえばここまで杏本人とはあまり交流してなかったから丁度いいかも

タマともそこそこ交流できそう


では少しだけ

おk


陽乃「伊予島さんの……?」

杏「はい」

陽乃「大丈夫、なの?」

陽乃の噂はこの四国全土に広まっている

全人口ではないかもしれないが、

老若男女問わず、多くの人がが知っていることだ

それは、杏の両親であっても例外ではない。

いくら杏からの紹介とは言え、周囲の人々から嫌われている人間を連れ込むのは良く思わないはずだ

陽乃「私のこと、知っているんでしょう?」

杏「知っています」

陽乃「だったら――」

杏「大丈夫です。あの日、久遠さんを見たのは私だけではありません」

陽乃「………」

杏はもう一度大丈夫です。というと、

久遠さんさえよければですから。と、続ける


友奈「久遠さんをここにもう一日いさせるのは、不安です」

陽乃の隣にいる友奈はそう言うと、陽乃へと目を向ける

心配している瞳

ここよりは、杏のところに厄介になったほうが良いという考えを感じる

この友奈からしてみれば、伊予島毛にどんな災難が降りかかろうとも、

陽乃が無事ならそれでいいのだ

球子「でも杏はどうするんだ?」

杏「わたしも久遠さんと家に残るつもりだよ」

球子「だったらタマも残るぞ!」

若葉「土居さん!」

球子「杏一人残していけっていうのか?」

杏「タマっち先輩……」

球子「杏が残るならタマも残る」

陽乃「そこは伊予島さん次第になるわね」

杏「……久遠さんは、私と一緒に来てくれるんですか?」



1、ええ、その方が良いわ
2、一緒に野宿しましょ
3、悪いけれど……やめておくわ


↓2

1

1


↓1コンマ判定

1,3,9 杏


陽乃「ええ、その方が良いわ」

杏「良かった……」

安堵したように零した杏は、

ほっと胸を撫で下ろすと、球子へと目を向ける

球子の視線を感じて笑うと

僅かに視線を逸らし、目を閉じて……開く

杏「タマっち先輩と私と久遠さんの三人で外泊許可をください」

若葉「分かった」

友奈「大社が認めてくれるかな……」

若葉「事後承諾で押し通す。久遠さんを寄宿舎に連れ込むよりはマシだろう」

やや強硬手段だが、

陽乃が条件を飲まなければ戻らないと言っている以上

そうするのが最善だった。

なんなら寄宿舎に連れ帰っても良かったのか。とでも言えば良いと、若葉は答える

陽乃「上里さんを連れて行かれて、気が立ってるわね」

友奈「……大丈夫。ひなちゃんは問題ないよ。私が付いてる」

陽乃にしか聞こえないように傍らの友奈は囁く


千景「……私」

友奈「ぐんちゃんは私達一緒に戻ろう?」

千景の隣にいる、本物の友奈の言葉に千景は眉を顰める

本物か偽物か。

まだわかっていない千景の敵意を感じても友奈は笑みを浮かべる

弾かれる可能性を考えながら、それでも手を差し伸べた

友奈「あんちゃん達を信じよう。久遠さんを……信じよう?」

千景「……高嶋さん」

若葉「私と友奈、郡さんは戻る。土居と伊予島は久遠さんと……」

陽乃「?」

若葉「お願いしますよ。久遠さん」

問題を起こさないでくださいと言いたげな視線を受けて、

陽乃は肩をすくめて笑って見せる

専守防衛

陽乃はそれを主に置いているつもりではある。

九尾も、害があると判断さえしなければ、

人間自体を有象無象として関わることさえしない。

陽乃「大丈夫よ。大丈夫」

球子は不安だが、杏がいれば問題はない

あるとすれば……杏の両親とその周囲だ


若葉「それで、どちらが本物の友奈なんです?」

友奈「どちらも何も、最初から動いてないですよ」

陽乃の隣の友奈、九尾はその姿を消し去って、答えとする。

千景はそれを見送ってから大鎌を畳み、収納すると

陽乃を睨んで……目を背ける

千景「せいぜい……大人しくしておくことね」

陽乃「この神社で寝泊まりしなくていいなら、蝶が止まれるくらい大人しくなれるわ」

『虫が入り込むではないかや?』

陽乃「うるさいやめて、あれトラウマになりそうなんだから」

千景「……何言っているの?」

陽乃「こっちの話。とにかく承知したわ。伊予島さんの厚意、仇で返さないと誓うわ」

そう千景に微笑んでみたものの、

千景はそれを全く信じていないようで、目もくれない

そんな千景を見て、友奈は困ったように肩をすくめて陽乃に笑みを見せる

友奈「あんちゃん、タマちゃん。宜しくね」

球子「あぁ、任せとけ」

友奈の突き出した拳に、球子もこつんっとぶつけて頷く

そうして杏、球子、陽乃を残し、

若葉、千景、友奈は神社を後にした


√ 2018年 8月2日目 夕:

0 00 最悪
1~3  良い
4~6  普通
7~9   悪い
ぞろ目 最良

↓1


√ 2018年 8月2日目 夕: 伊予島家


杏と球子と共に杏の実家へと向かった陽乃は、

親友に忌避されたと言うこともあって、

いくら杏の両親でも……と、あまり期待はしていなかった

杏が言うから受け入れてはくれるが、嫌悪感を感じるだろうと。

しかし、それが杞憂であるかのように、伊予島夫妻は迎え入れてくれた

「いらっしゃい、話は聞いているわ。久遠……陽乃さんね?」

陽乃「は、はい……すみませんが――」

「大丈夫。そんなに気にしなくていいの」

杏「久遠さん、大丈夫ですよ」

陽乃「でも……」

「まず上がりなさい。込み入った話はそれからでもできる」

渋る陽乃に杏の父はそう声をかけて、招く

球子「お邪魔しまーす!」

杏「あっ、タマっち先輩手を洗ってください!」

上がっていく二人

残った陽乃を杏の母親は見つめて、微笑む

「あの人、表情はあれだけど……貴女のこと嫌っているとかではないから安心して良いからね」

陽乃「あ……はい。ありがとうございます」

靴を脱いで、

片足跳んでいる球子の分も一緒に揃えて上がると、

杏の母親は「しっかりしているのね」と、笑みを見せた


では途中ですがここまでとさせていただきます
明日は可能であればお昼ごろから


散々酷い仕打ち受けてきた分、杏の周りが暖かい…
そしてやっと運も向いてきていい感じだな


杏は陽乃さんのこと結構好意的に見ているけど、タマは未知数だよな
ちょっと心配


判定はご両親の受け入れ度だったのかな
なんにせよよかった


では少しずつ

来てたか


リビングへと上がると杏の父、杏、球子がすでにいて、

予め連絡を貰っていたからか、お菓子と飲み物が用意されていた

杏「久遠さん、どうぞ」

球子「まだ手を洗ってないだろーっ」

杏「久遠さんはちゃんと洗ってから来るから良いの」

球子「あんずーっ」

茶番……ではないだろう。

杏と球子の関係が垣間見えるのを横目に、

陽乃は手洗い場へと向かって、手を洗う

『ふむ……入浴しておいて良かったのう』

陽乃「ほんと……あんな状態で人様の家に上がるなんて出来ないわ」

リビングへと戻って、球子の隣に座る

杏の隣は、球子が許さない

「改めて、いらっしゃい。久遠陽乃さん。土居球子さん」

陽乃「今日はすみません、急に」

「良いのよ。驚きはしたけれど……友達が家に来るなんて、初めてで、嬉しい限りだわ」

杏「お母さんっ」

球子「寄宿舎では、いっつも仲良くさせて貰ってる……ます」

球子のちょっぴり詰まった物言いに、

杏の母親はにこやかに笑って「ありがとう」と答えた


杏は小学生の頃病弱で一度、原級留置となっている

そのため、1年、2年と仲良くなった友人達からは一つ遅れ、

年下のクラスメイトと同じ学年となってしまった。

それがきっかけで、だんだんと疎遠になり、独りになることが増えた。

杏はそう言った経験もあって、家に友人を呼んだことはないのだ。

いや、呼べなかったのだ。

陽乃「私は……その、とてもと言うほどではありませんが、良くして頂いています」

杏「……あ、えっと、久遠さんはね。伊予市の方なんだって」

「知っているよ。話も噂も、色々と耳にするからね」

杏「お父さん、久遠さんは――」

「分かっている。見ればわかる……噂ほどの極悪人なら、こんな顔つきはしていない」

陽乃を見つめ、

そう言い切った杏の父は、自分の前に置かれているティーカップに口をつけたが、

杏の母親はそれを一瞥して「何言ってるんだか」と苦笑する

「あなたの人相判断なんて、映画で見たマフィアが参考じゃないの」

「ぶふっ」

球子「うわっ」

「も、申し訳ない――お前が余計なことを言うから」

「あなたが下手なこと言うからでしょ。もう、球子さん大丈夫?」

球子「あ、はい……大丈夫です」

杏「顔にかかってるよ、タマっち先輩」


伊予島家は、父も母も、杏自身も

みんながみんな、優しく仲の良い……温かい家庭だったのだろう

陽乃の家だって、悪くなかった

仲が良くて、温かくて

神社の神主や巫女というのもあって、週末に家族でお出かけ……なんていうのは滅多になかったけれど

それでも、仲は良かった。

陽乃「………」

『主様』

陽乃「……大丈夫」

杏の家族に魅せられたからと言って

自分のそれを奪った人たちを殺そうとは思わない

死んでも良いとは思うけれど、殺す気はない。

動悸が強くなるのを感じて深呼吸をすると、球子が気付く

球子「なんだ?」

陽乃「大したことじゃないわ」

杏「具合が悪いなら、休まれますか?」

「もしあれなら、夕飯の時間になったら起こすから休んでいて良いのよ?」


1、休む
2、休まない


↓2

1

1


陽乃「そう……ですね、休ませてください」

「布団は――」

杏「大丈夫、私のベッドを使って貰う」

「そう? なら、杏と球子さんの分も用意してあるからね」

球子「タマのベッドは?」

杏「タマっち先輩は私とお布団」

球子「……抱き枕付き?」

杏「何言ってるのタマっち先輩」

球子は杏を抱き枕にするつもりなのだろう

困った様子の杏に「抱き枕」と言ってぎゅっと抱き着く

陽乃「邪魔ものが行くお部屋はどこかしら?」

杏「タマっち先輩離れてっ」

球子「ベッドはあげても杏はあげないからなっ」

陽乃「ええ、肝に銘じておくわ」

杏「タマっち先輩っ」

杏に押し離されて、球子はようやく離れたものの

その目は陽乃を見ている

九尾の幻惑の力を見せられて、

いつすり替えられるかもわからず……警戒しているのだろう


案内された杏の部屋は、綺麗にされてはいたが……8割が本だった

本棚はみっちりと本が納められ机の上も、本の山だ

球子「寄宿舎以上だな」

杏「あはは……だ、大丈夫。寝る場所はあるから」

『寄宿舎は寝台の上にも書物があったぞ』

陽乃「貴女ね……」

九尾がどこまで侵入しているのか気になるものの、

聞いたら何が出てくるかは分からない

杏の招きに応じて、ベッドを借りる

杏「熱とかはありませんか?」

陽乃「大丈夫」

球子「あんな場所で寝るからだぞ。横にすらならなかっただろ」

陽乃「分かるの?」

球子「どう寝たのかくらい分かる。虫よけも何もない。本物のサバイバル。タマでもやらない」

陽乃「虫が服の中を這いずってる感触はトラウマになるわ」

杏「えぇ……」

球子「そこでタマを見るなっ! 流石にタマも引く!」


陽乃「あら、もしあれなら一緒にガチバルやろうと思ったのに」

球子「ガチバル?」

杏「タマっち先輩……?」

陽乃「二日間食事と風呂無し、廃墟で座って寝るの」

球子「良いな――ってぇなるか!」

球子は声を張り上げてベッドを叩く

大声を出さないでと諫める杏をよそに、

陽乃は薄い掛布団を引き上げて体を覆う

ぼふんっと空気の抜けたベッドは、埃を感じない

杏「でも、久遠さん全然いい匂いですよ」

球子「確かに臭くないな」

陽乃「ちょ……嗅がないで! 朝温泉入ってきたのよ」

布団をめくろうとする球子を押し返して、布団を死守する

昨日の朝まではベッドの上だったが、拘束具の有無でまるで感触が違うし

杏のベッドは、

寄宿舎で使っているものよりも、陽乃が家で使っていた物よりも、良質に感じる

陽乃「……良いご両親ね」

杏「はい……でもきっと、久遠さんがいなければ今はもういなかったと思います」


陽乃「買い被り過ぎだわ」

杏「いえ……だって、久遠さんはあの当時からバーテックスと戦っていたじゃないですか」

車で逃げる道中、飛来する白い化け物に突っ込んでいく人を杏は見ている

両親だって……避難所に現れた化け物を片っ端から殴り飛ばしていく人を見た。

襲い来る異形――バッテックスを打倒していく少女

車を吹き飛ばし、建物を崩壊させ、人間を喰らいつくす化け物に対抗し得る

それは確かに、言いようによっては化け物だったかもしれないけれど、

間違いなく……勇者だった

杏「久遠さんは多くの命を救いました。誰が何と言おうと……久遠さんを恩人だと思っている人はいます」

球子「杏……」

杏「今生きている人々には希望がありません。だから、あんな酷い噂であろうと希望と掲げて縋ってしまうんです」

陽乃「なら、どうすると?」

杏「私達が勇者として、希望になればいいんです。いつか襲撃があっても、確実に勝利して、守り抜くんです」

勇者がいれば、大丈夫だと

いつか、失ったあの日を取り戻すことが出来るのだと

そう思わせられるような活躍をして見せるべきだと……杏は言う

杏「そのために、力を貸して貰えませんか? 私達と……仲良くなっては貰えませんか?」


1、私と仲良くなると死ぬわよ
2、考えさせて
3、気持ちは嬉しいけれど……問題が解決するまでは駄目よ。大社が煩いわ
4、その言葉は重いわよ。責任とらないからね?


↓2

4

4


陽乃「言っておくけれど……その言葉は重いわよ。責任とらないからね?」

杏「……承知の上です」

球子「杏、本気か?」

杏「うん。私は久遠さんの力になりたい」

足手纏いなのは分かっている

力不足なのも分かっている

けれど、杏は陽乃を一人にはしたくないと思う

誰も寄り添ってくれない英雄の物語など、杏は好みではない

たとえその英雄が望んでいるのだとしてもだ

陽乃「噂を知っているのに?」

杏「関係ありません」

陽乃「周りの人から、色々言われるのよ?」

杏「周りから浮くのは慣れています」

球子「待て杏」

一人先行していく杏の肩を叩いて、球子が止める


杏「タマっち先輩」

球子「杏が本気なのは分かった……正直、そんな無理はして欲しくない」

でも、と球子は言う

球子「どう言ったって無理そうだからタマも一緒だ」

陽乃「本気なの?」

球子「本気だ。悪いか?」

グッと距離を詰めてきた球子は、

ベッドに横になっている陽乃の目線に合うよう屈んで、杏の肩を掴む

杏がどうしてもと言うのなら付き合う

そして、杏を護る

球子「杏がこんな様子なんだ。久遠さんだって断り切れないだろ?」

陽乃「………」

球子「だから、タマもだ。どうせ友奈も若葉もだろうし……仕方がない。付き合ってやる」

杏「そんな嫌々は駄目だよタマっち先輩」

球子「……杏が杏だって証拠も、久遠さんが久遠さんだって証拠もないんだ。仕方がないだろ」

九尾の力ゆえに信用は出来ない

自作自演の可能性だってある

それでも、杏が杏だと信じて球子は言う

球子「でも、杏が偽物だったとしたら……久遠さんは一人が寂しいから誘ってることになる。だったら付き合うしかない」

だろ? と、球子は苦笑した

では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


両親が救われたのもあってか杏の陽乃さんへの思い入れが若葉たち以上だな
今回は杏が陽乃さんのヒロイン候補になりそう


頼れる仲間みたいなのが増えるのは嬉しいな

伊豫稲荷の話はデータ2の頃から出てたけど、
伊予市の名前が出たのは初めてか?


すみませんが本日は所用のためお休みとさせていただきます
明日は可能であれば通常時間から

乙です

今日も休載?


遅くなりましたが、少しだけ
時間も時間のため、安価は無しです


陽乃「……何よ。それ」

もちろん、今ここにいる杏は本物だ。

九尾の作り出した……あるいは、九尾が化けた偽物などではない。

しかし、球子はそれを知らない

そして――きっと、昼間に陽乃が友人として接触したことがきっかけで

杏の今の押しの強さに抗えないとみているのだろう

陽乃「私は別に……」

『寂しいのかや?』

陽乃「そうじゃない」

球子「違うのか?」

陽乃「貴女には言っていないわ」

九尾に言ったのよと取り繕うが、球子は訝しそうな表情を見せる

杏「久遠さんには、聞こえるんですか?」

陽乃「信じるの?」

杏「ひなたさんから話は聞いてますし、神社でも見せて頂いたので」

陽乃「……なるほど」

ひなたがどこまで話しているのかは知らないが、

九尾が陽乃のみに言葉を聞かせるというのを、信じるつもりのようだ

普通なら、独り言を言う変な人となりそうなものだが。


杏「そのひなたさんですが――」

陽乃「大社の施設なんでしょう?」

杏「はい。ただ……問題は大社がひなたさんを久遠さん寄りの人だって考えていることです」

球子「杏……?」

杏「タマっち先輩もひなたさんと若葉さんが久遠さん寄りの人だっていうのは分かってるよね?」

球子「ん~……まぁ、何となくは」

あやふやな答えを返す球子に苦笑いを浮かべた杏は、

陽乃の方へと向き直って、真剣な表情を見せる

杏「前回……若葉さんは久遠さんを倒しましたが、本当に斬ったわけではありません」

友奈や千景が大怪我とまではいかなかったにせよ

治療が必要な状態にされたことには変わりがない

それにもかかわらず、陽乃はほぼ無傷だった。

それはもちろん、九尾の力があってこそなのだが

大社はそう考えずに、若葉が仲間よりも陽乃を優先したと考えている

そう考えていない人もいるが、そうではないか……という疑いがかかっていることが重要なのだ

杏「大社は若葉さんの抑止力として、あえてひなたさんを組織下に置いておくつもりの可能性があります」


それは言い換えれば、

陽乃を寄宿舎に戻す代わりに、ひなたが大社預かりになる可能性があるということだ

それも、非常に高く。

巫女としての能力が高いがゆえに、害されるわけにはいかないと言う建前で。

それに対して抗議することは出来る

使える文句もいくつか考えられるが、果たして……それが通じるかどうか。

陽乃「やっぱり私、逃げたほうが良いかしら」

杏「今更どうにもなりませんよ」

球子「若葉が直訴に行ったんだ。ここから逃げるってなったら余計ややこしくなるだろ」

陽乃「そう、よね……」

自分の境遇を優先するのは、人として必然と言えなくもない

しかし、今の酷い環境の中で良くしてくれた人を道連れにするのは少し違う。と、思わなくもない

陽乃がそう思い悩むような少女だからこそ、九尾は悪態をつく

『……気にすることはなかろう』

陽乃「まぁ」

心配をすべきはひなたよりも大社だ

ひなたに何かがあれば、この妖狐が影を伸ばすだろう

そうなった場合は、あまり考えるべきではない


では短いですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


なんか申し訳ないな


事実上ひなたが人質にされるわけか…
助けたら助けたでもっと拗れそうだしどうしたものか

VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
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遅くなりましたが、少しだけ

よしきた


杏「久遠さんはやっぱり、優しい人ですね」

陽乃「上里さんが相手だからよ……みんなのことを考えられるわけじゃないわ」

杏「それが普通だと思いますよ」

誰も彼もに手を差し伸べ気を回せるのは、普通とは言えない

自分の友人知人にそうできるのが……良い所だろう

人々に嫌われ、大社に敵視されながら、

勇者とも敵対に近い関係にあってなお、ひなたのことを考えられるのなら

それは優しいと言えると、杏は思う

杏「ひなたさんなら大丈夫です。巫女の適正があるある以上、どうにかできるとは思えませんから」

陽乃「そうなんだけどね」

ひなたは若葉の傍に居たいだろうし、若葉はひなたが傍に居てくれた方が良いだろう

ひなたが大社預かりになったからといって若葉が千景のようにならないとは思うけれど。

千景はきっと……貴女のせいよ。とでもいうはずだが、

それに関してはひなたがどうなっていようが変わらないので、関係はない


陽乃「……乃木さんの説得次第、かしら」

球子「でも、あの大社が説得を受け付けるか?」

杏「ひなたさん連れて行くの……一方的だったからね」

事情の説明はしてくれたものの、だから連れて行く。という一点張りで

一緒に行動したほうが安全だと言う若葉の言葉は受け入れて貰うことが出来なかった。

だからこそ、

若葉は事後承諾で杏たちの外泊を押し切ってやろうと言うのだが。

ひなたを取られて腑抜けるのではなく

やり返してやろうと言うのは……少し、感心する

杏「久遠さん、眠くありませんか?」

陽乃「まさか、今までのが寝物語だったわけじゃないでしょう?」

杏「そうですね」

小さく笑った杏は、少し休んでください。と、球子を引っ張る


球子「あんずっ……久遠さんを一人にしたら――」

杏「そんなこと言ったら、私達寝れなくなっちゃうよ」

球子「……交代で見張るか?」

陽乃「私の寝込みを襲おうとしたら、殺されちゃうわよ」

茶化すように言う陽乃だが、それは冗談ではない

陽乃は眠っている間に起きていることを制止することは出来ないため

寝込みを襲おうとした何者かがいた場合、

九尾がそれをどうにかしてしまうのを止めることが出来ない

陽乃「絶対、やったらだめだからね」

球子「そう言われると――」

杏「駄目だよタマっち先輩」

球子「分かってるって」

冗談だってといった球子は、後で少し……とちょっぴり思ったものの、

しかし、神社でのことを思えばやはり委縮せざるを得ない

球子「まぁ、ゆっくり休むんだぞ」

陽乃「ええ……二人もね」

陽乃は頷いて微笑み、目を閉じる

質の良いベッドに、陽乃は緩やかに眠りへと誘われるのを感じた


√ 2018年 8月2日目 夜:伊予島家

01~10 九尾
30~39 友奈
51~60 杏
61~70 若葉
86~95 球子

↓1のコンマ

※それ以外は通常


では短いですがここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から


タマっち先輩は九尾の力を見てるのと杏の心配で警戒心がちょっと強めだな…千景と違って話せば分かってくれそうだけど
一方で積極的に味方する杏のターン継続か


心を開ける人間が必要な状況だから助かるな


では少しだけ

かもーん


√ 2018年 8月2日目 夜:伊予島家


夕食と入浴を終えて、

寝間着がないと言うことで……陽乃は杏の母の寝間着の予備を借りることとなった。

球子は杏の予備を借りた。

杏「久遠さん、ゆっくり休んで良いんですよ?」

陽乃「無理言っているんだから、少しくらいはね」

食事後の洗い物、風呂の準備

それを陽乃は自主的に手伝っていて、

母親も杏もそんなことしなくても良いのにと、ちょっぴり申し訳なかった

陽乃は杏の友人で、客で、そして何よりも勇者である。

一宿一飯の恩義という言葉はあるものの、

そうしなければならないと言うものではない。

杏「ほんと、噂と違いすぎていて困っちゃいます」

陽乃「噂だと、私は傍若無人……暴虐無人の方が良いかしら? そんな人なのかしら」

杏「殆どそんなものです」

陽乃「伊予島さんがそうして欲しいならするけれど」

陽乃が茶化すように言うと、

杏はお願いですから止めてくださいね。と、苦笑する


杏「久遠さんって、読書もお好きでしたよね」

陽乃「ええ、だから正直……伊予島さんの部屋は私にとって魅力的だわ」

至る所に文庫本が置かれている部屋

ちらりと見て覚えのあるタイトルも散見されるが、

そうではないものも多い。

文庫本の総量としては、杏の方が上のようにも思えた

陽乃「私が読書好きだなんて、誇張も良い所ね」

杏「いえ、そんな……」

陽乃「小学生の頃、色々あったんでしょう? 今は大丈夫なんだったかしら」

杏「勇者の力を授かってからは体調を崩すことも無くなって、落ち着いています」

陽乃「勇者の力……ね。貴方は私と伊予島さん達の力の違いをどう見てる?」

杏「どう……と言われても困りますけど」

そうですね。と、杏は呟く

杏「少なくとも同質ではないと思います」


細かく言うのならば、

勇者達が神樹様から供給される力を利用しているのに対し、

陽乃は、九尾もそうだが神樹様を一切介さずに力を利用している

そのため、大社が解析することは出来ないし

それを実現させるためには

陽乃に力を貸している九尾の全面的な協力が必要になってくる

勇者の力が水であるのなら、

陽乃の力は油だと言っても良いのかもしれない

杏「神様の性質自体が違う……大社の考えや噂の言葉を借りるのであれば、天の神と地の神。それくらいの違いはあると思います」

陽乃「そう」

『妥当な理解であろうな』

九尾や陽乃の協力がなければ、そこまでが限界だろう

陽乃の力が九尾以外にもあるとか

陽乃の力が人体にも悪影響を及ぼしたり、本当に神様も殺せるというところにまで到達はしない


陽乃「そう言う、神様が云々って小説はあったりする?」

杏「えっと……そう言うのは、無いですね」

陽乃「そう……」

陽乃の神社が無事ならば、多少の文献が残されていたはずだが、

残念なが焼失している

一般の神社やお寺、資料館にも神様に関するものはあるが、

陽乃……久遠家のことに関しての物は存在していないだろう

せめて神様を扱った物語が読めれば……と思ったけれど、今は難しい

杏「あの、久遠さん」

陽乃「なに?」

杏「タマっち先輩、悪気はないんです。ただ、私のことを心配してくれているだけで」

陽乃「大丈夫よ。そのくらい分かってる」

球子の反応くらいで敵対しているだなんて思うつもりはない

陽乃「せめて、郡さんくらい敵意むき出しじゃないと」

杏「冗談になりませんよ」

陽乃「ふふっ、ごめんなさい」


1、どうしたらいいのかしらね、ほんと
2、ありがとうね。助かるわ
3、本当に大丈夫? 怖くないの?
4、バーテックスが来る頃には、長野……どうなっちゃうのかしらね


↓1

4


では短いですがここまでとさせていただきます
明日は恐らくお休みをいただくことになると思います

再開は明後日、可能であれば早い時間から


そういえば四国での初戦闘は一ヶ月後だったっけ
うたのん達と接触できる機会あるかな


さすがに長野までは手回らないかもねえ
今自分のことすら精一杯だし

遅くなりましたが、少しだけ


陽乃「バーテックスが来る頃には、長野……どうなっちゃうのかしらね」

杏「長野……白鳥さんの件ですよね」

陽乃「ええ……」

現状では定期連絡も行えており、

向こうでの戦闘は行われているものの、問題はないという話だ

だが、それがいつまで持つのか。

長野はここと違って、たった一人の勇者が守っている

物量作戦で押し込まれる可能性はあるし、

一日ではなく、連日の襲撃で疲弊させることも可能だ

今日は無事でも、明日は?

明日は無事でも、来週、来月……

長野が無事であると言う保証はない

杏「久遠さんは長野の方に行きたいと?」

陽乃「ここで時間を潰しているくらいなら、行くべきとは思うわ」

なるべく諦めないし


杏「ですが、戦装束がまだ万全ではありませんし……四国の守りを無くすわけにはいきません」

陽乃「それは分かってるけれど、じゃぁ……長野は捨て駒なの?」

杏「………」

杏も陽乃も、

長野が大局的に考えれば、必要な犠牲として考えられているとみている。

勇者の力があるとはいえ、

ここおから長野までの道のりは決して楽ではない

救出に行くのは簡単ではなく、

行けたとして、救出できるとは限らない

ましてや、長野の勇者だけならば可能性もあるが……一般の人たちは連れ帰ることは不可能といっても良い

そうなったら、長野の勇者は出てくることを望まないかもしれない

陽乃「必要な犠牲があるって考えには一理ある。けれど、それを認めるかどうかはまた別の話だわ」

杏「久遠さんは、関係ない県の人たちも救いたいと?」

陽乃「仮に……仮によ?」

陽乃はあえてそう前置きして、咳払いする

この言葉で勘違いされては困るからだ

陽乃「仮にも勇者であるのなら、そこに生存者がいると知りながらただ手を拱いているだけなんて……許せると思う?」


杏「それは……」

それは、きっと勇者と呼ばれるもの考えなのだろう

しかしながら、もし……それを成し遂げられるのだとすれば

それはもはや勇者などではなく。

陽乃「思う?」

杏「あ……い、いえ。思いません」

勇者ならば捨て置けない

なんとしてでも救おうとするだろう。

だが、陽乃はそれを成し遂げたとて……認められるだろうか?

いや、陽乃はそもそも誰かに認められたいなどと思っているのだろうか

ただ単純に、そうあるべきではない。と、思っているだけなのではないかと、杏は思う

だとしたら、やはり陽乃は……ただただ、優しい人でしかない

それ以上に、優しすぎる人でしかない

杏「あの……久遠さん」

陽乃「なに?」

杏「もし、長野に行けるのなら行きたいって思いますか?」


陽乃「あら。良い回答したら長野旅行プレゼントして貰えるの?」

杏「そういうわけではないですけど……」

陽乃「ふふふっ、冗談よ」

長野に行けるのなら長野に行きたいのか

救えるのなら救いたいのか。と、、杏は聞きたいのだろうと陽乃は苦笑する

濁したわけではないが

ついさっきはちゃんと答えなかったからだろう

陽乃は、自分が生き残ることを主としているけれど

だからといって、周りを見捨てられるわけではない。

長野に行くことが出来て、

そこで戦っている勇者を救えるのならば……と、考えないことはない。

陽乃「大社に、伝える?」

杏「伝えたところで、久遠さんのことは良く考えて貰えないと思います」

陽乃「そうよねぇ……」


1、バーテックス、叩きのめしたいかな?
2、行けるのなら行きたいわ。ここにいたって、ね?
3、勘違いされると困るのだけど……私、別に人助けしたいわけじゃないからね?


↓2

2

2


では短いですがここまでとさせていただきます
明日は可能であればお昼ごろから


うたのん達だけを助けるならまだしも諏訪の人達全員となるとなぁ…


陽乃長野へ行くのか

遅くなりましたが、少しだけ


陽乃「行けるのなら行きたいわ。ここにいたって……ねぇ?」

杏「それは、そうかもしれません」

長野までの道のりは決して楽なものではない

辿り着いたとしても、そこでの生活は辛く苦しいものであることだろう

しかし、それがどのようなものであろうと、

ここで民衆に恨まれ、憎まれ、疎まれ

大社から敵視され、勇者と一触即発の状態でいるよりは

陽乃のことを知る人のいないであろう長野にいる方が、ずっといいはずだ

杏「久遠さん、長野に行かれるんですか?」

陽乃「ちょっと、考えたけど……」

陽乃はそう言って、苦笑する

陽乃「そうしたら、私絶対に見つからないじゃない? 大変な事になるわよね?」

杏「なりますね……でも、大社なら困らせても良かったと思います」

自分たちが困ることも分かってはいる

しかし、それを望むのならそうしてくれても良かったと……杏は思う

きてたか


杏「捜索は大変になると思いますけど、仕方がありません」

陽乃「捜索だけじゃないでしょ……乃木さん達が手引きしたのかもしれないって話にまでなると思うわ」

杏「ひなたさんは大社預かり、若葉さんがリーダーから外されて拘束……でしょうか?」

それでも軽い方だろうか

最悪、指名手配されていたっておかしくはない。

もちろん、指名手配された場合、

陽乃が街に解き放たれたと言うことになるので、

民衆は激高するか血眼で陽乃を探し出そうとするか。

とにかく、良いことにはならない

杏「でも、久遠さんは自分のためを考えたほうが良かったと思います……」

陽乃「そう?」

杏「寄宿舎に戻る許可が出されたとしても、以前よりも厳しい監視が付くと思います」

勇者が行うのか

巫女が行うのか

もっと別の誰かが行うのかは分からないが

少なくとも、一人でいさせては貰えなくなるだろう


陽乃「私って、考えてみれば劇物指定の――」

杏「そんなことないです」

陽乃「そんなことあるでしょう? 私や貴女が思いたくないとしても」

少なくとも大社や、民意ではそうなっている

それは陽乃や杏がどう言おうと関係ない

杏の両親は快く迎え入れてくれているが、

その近隣の人々が快く思ってくれているとは限らない

杏「久遠さん、長野遠征、提案してみますか?」

陽乃「どうせ却下されるわ」

杏「それはあくまで、全員で良くという話だと思います」

杏はそう言うと、少しだけ考えて……眉を顰める

杏「久遠さん一人……あるいは二人、三人なら許可されるかもしれません」

陽乃「でもねぇ……」

杏「不安ですか?」

陽乃「長野に行くこと自体は問題ないけれど……」

陽乃は、母親の保護を頼んでいる

陽乃が遠征に行ったことで

母親の安全が保障されなくなる可能性が0とは言えない


陽乃「私、母がいるのよ……神社で想像はつくだろうけど……」

杏「巫女……ですか?」

杏の窺うような声に、陽乃は頷く

陽乃の母は巫女として大赦に与している

だとしても、久遠の人間であることに変わりはなく、

大社内でその名は伏せられて入るものの、

いつ、なにがあるのかは分かったものではない

杏「お母さんが心配で、ここを離れられないんですか?」

陽乃「ええ、そうなるわね」

杏「……大社が、いえ、大社は信じられない。ですよね」

大社に全幅の信頼を置くことができるのであれば、

何の躊躇もいらないだろうが、そうではない

大社もそれを抑止力としたいはず

であれば、下手なことをしないという信頼は置いても良いかもしれないけれど。

杏「でも、久遠さんの力は証明できていますよね?」

陽乃「乃木さん達には悪いことをしたと思ってるわ」

杏「でも、そのおかげで勇者でさえ止められない可能性が出てきました……それが自分たちに向くことを、大社は恐れているはずです」


陽乃の力が、かなり危険なものであることが証明された以上、

大社は陽乃の機嫌を大きく損ねるようなことは絶対に出来ないはず。と、杏は思う

それをしてしまったら、世界が崩壊する可能性さえあるからだ

杏「きっと、お母さんは大丈夫ですよ」

陽乃「……だと、良いけれど」

杏「人は、信じられませんか?」

陽乃「そんなこと……」

杏「助けても、助けても……悪魔だなんだって、石を投げられる。そんな相手を信じるなんて、神様でもしたくないと思います」

寧ろ神様だからこそ、

そんな人間は救うどころか、神罰を与えて処刑するのではないだろうか

そうしない陽乃は、神ではない

もちろん、悪魔でもない

杏「これから、頑張りますね」

陽乃「伊予島さん……」

杏「いつか、久遠さんに信頼して貰えるように……なんて」

口にしていたら怪しいですね。と、

杏は照れくさそうに笑みを浮かべた


√ 2018年 8月3日目 朝:伊予島家

03~12 杏
37~46 球子
51~60 若葉
89~97 友奈

↓1のコンマ

※それ以外は通常


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から

一日纏めは明日


今回の杏は陽乃さんにとってありがたい救世主だなぁ
そして二人の急接近でタマっち先輩との三角関係になるのだろうか


タマっち先輩と絡みたかったな


ただただお母さんが心配だなあ


遅くなりましたが、少しだけ

よっしゃ

√ 2018年 8月3日目 朝:伊予島家


朝目を覚ますと、ちゃんとした天井が見える

カーテンに遮られた穏やかな陽射しが感じられて、

体を包む布団は柔らかで、

背中と腰を支えるベッドは程よい反発がある

陽乃「……朝、だわ」

朝なのはもちろん、家の中

ちゃんとした寝床

昨日が最悪だったが、それ以前もしばらくはまったく良い目覚めではなかったため、

陽乃は二度寝でもしてしまおうかと、目を瞑る

もちろん、自分の家でも部屋でもないため

流石に、本当に二度寝をするつもりはないが。

陽乃「ん……」

頭だけを傾けて、横を見る

床には杏と球子が並んで寝ていて、

まだ、静かに寝息を立てていた


陽乃「監視はどうしたのかしらね……」

二人とも、しっかりと眠っている

寝たふりをしているのでなければ、

陽乃が起きても起きないという状況は非常にまずい

陽乃が本当に監視しなければいけない存在だった場合、逃亡されかねない

陽乃「貴女、何かした?」

『いいや、妾は何もしておらぬ』

陽乃「それでこの状況なの?」

『うむ』

陽乃「………」

勇者としての危機感が足りないのか

陽乃のことを信頼してくれているのか

後者ならばいいのかもしれないが

そうではないのだとしたら、聊か問題があるだろう

『何じゃ、小娘どもが戦力的に不安かや?』

陽乃「そんなことはないけど……信頼されているのかなって思っただけよ」


陽乃「私が敵だったら、寝首をかくところだわ」

『ほう?』

陽乃「本当にはやらないわよ」

静かに仲良く寝ている球子と杏

平和を感じられるその光景を、陽乃は壊したいとは思わない

むしろ、守ってあげたいと思う

陽乃「私は別に、蚊帳の外だって良いのよ……」

もう、交わりたいとは思わない

誰かと親密になって、

その相手に裏切られるのなんてお断りだ

その人に、奇異の目を向けられるのなんて嫌だ

その人が、自分のせいで巻き込まれるのが嫌だ

だから……自分は一線の外でもいいと陽乃は思う

陽乃「だからって、犠牲になる気はないけど……」

『抜かせ』

陽乃「………」

九尾の鋭い一言に、陽乃は黙って目を瞑る

陽乃が本当にどう考えているかなど、九尾にはお見通しなのだ


1、ねぇ、貴女の力なら長野に行ける?
2、貴女、勇者のこと嫌い?
3、上里さんはどう?


↓1

1


では短いですがここまでとさせていただきます
明日は可能であれば通常時間から

あれ、一日まとめは?
なんにせよ乙


陽乃さんもすっかりトラウマだらけだな…
せめて杏とだけでも信頼できるようになるといいな


1日まとめ忘れてるな時間も遅いしお疲れそう


こっちでのこといろいろ解決しないまま長野に行くのも怖いな

昨日できなかったので、本日は少しだけ

やったぜ
後一日のまとめも

1日のまとめ

・ 乃木若葉 : 交流有(再会、九尾、寄宿舎になら、杏の家)
・上里ひなた : 交流無()
・ 高嶋友奈 : 交流有(再会、九尾、寄宿舎になら、杏の家)
・ 土居球子 : 交流有(再会、九尾、寄宿舎になら、杏の家、休む)
・ 伊予島杏 : 交流有(再会、九尾、寄宿舎になら、杏の家、休む、長野)
・  郡千景 : 交流有(再会、九尾、寄宿舎になら、杏の家)
・   九尾 : 交流有(姿を晒す)

√ 2018/08/2 まとめ

 乃木若葉との絆 56→58(普通)
上里ひなたとの絆 56→56(普通)
 高嶋友奈との絆 49→51(普通)
 土居球子との絆 38→40(普通)
 伊予島杏との絆 43→46(普通)
  郡千景との絆 21→21(険悪)
   九尾との絆 61→61(普通)


陽乃「ねぇ、貴女の力なら長野に行ける?」

『敵が現れた場合には主様が戦う必要はあるが、可か不可で言えば可じゃな』

陽乃「瞬間移動とか出来ない?」

『阿呆か主様は』

陽乃「無理なのねやっぱり」

『当たり前じゃろう』

九尾は当たり前のことを問う陽乃に呆れたように零す

もちろん、陽乃も九尾がそんな特殊な力を持っているとは思っていない

ただ、九尾の力だけで四国から長野までの距離を踏破できるのかが気になったのだ

九尾の力は強い

本気であれば若葉達勇者を一蹴できるだけの力を持っている

しかしその分陽乃への影響は大きく、

長く力を使えば使うほど、陽乃は体を蝕まれていくことになる


それを避けるためには、道中で一時的にでも力を解除するか

敵が出てくるまでは、本当に生身でいる必要がある

後者ならばともかく前者である場合、陽乃は酷く疲弊することになるだろう

陽乃「無事に辿り着ける?」

『ふむ……戦闘での消費がない前提になるであろうな』

無論、道中に一度も先頭をしないと言うのは不可能である可能性が高く、

その場合は戦闘の規模も影響するだろうが

単独で行く場合、命の保証は出来ないと考えておくべきだと、九尾は思っている

特に、陽乃の場合は。

『……一人で行くならば、死ぬと思うておく方が良かろう』

陽乃「あら、私がそんなに弱いって言いたいの?」

『主様は弱い人間じゃろう。己に仇なす有象無象すら切り捨てられぬのじゃからな』

陽乃「………」

『救いを求めている人間がいたとして、主馬は放っておけぬであろう?』

たとえ、そこがバーテックスに塗れていようと

生きている人間がいるのだとしたら

陽乃は素通りできないと、九尾は見ている

それが出来ないのであれば、諏訪まで一度も戦わないと言うのは不可能だろうし

無事に……というのも諸刃の剣である陽乃の場合は厳しい


陽乃「……そう」

『ゆくつもりかや?』

陽乃「さぁ?」

無事に辿り着ける保障があるならばともかく、

そうではないのだとしたら、陽乃は行かないべきだ

しかし、昨夜杏に言ったように、

陽乃はここにいるよりも、諏訪に行ったほうが精神的には楽だと言うのがある

大社だって、唯一の砦の中に猛毒があるよりは

外の世界に出ていってくれた方が、言葉にはしないだろうけれど嬉しいだろう

それによって、諏訪が延命出来たり

もう一人の優秀な勇者と巫女が救われるのなら、なおさら。

千景だって、きっと喜ぶだろう

そして、どうか野垂れ死んでくれと願うことだろう

陽乃「……私、ここに居ない方が良いのは事実なのよね」

『うむ……そうであろうな』


杏や若葉達といった

陽乃に好意的な人間も皆無ではないけれど、

しかしながら、望まれていないと言うのが、民意というものになってしまうだろう

その悪いイメージを払しょくしたいのであれば、

それもやはり昨日話したように、何らかの功績を立てるべきで

諏訪の勇者と巫女を含めた人々を救出してくるというのは、

これ以上ないほどに素晴らしいものであると言える

しかし……それが一人で可能かというと、微妙だった。

もちろん、

陽乃が往復することで―力の影響で―死にかけるというのを考慮しなければ、

どうにかできる可能性はあるが。

陽乃「……貴女は、私が行くって言ったら反対する?」

『ここで朽ちるよりは、善き選択であろう』

陽乃「そう……」

行くと言う選択も、悪くはないかもしれない

陽乃はそう考えながら……ベッドの横

並んで眠る二人を見つめる

陽乃が諏訪に向かうと言った時、勇者達はどんな反応を見せるのだろうか


では短いですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


一人で難しいなら何人かついてきてくれないかなあ
厳しいか


とにもかくにも一旦若葉たちと相談してみたいな
あと他の子は絆が改善したのに千景だけ一切動かないとは…

憎悪というものはその人の価値観がひっくり返るような相当大きな出来事がないと晴れないものだ

今日もお休みだろうか…
急に休載率が高くなってきて少し心配だな


遅くなりましたが、少しだけ

かもーん


陽乃「貴女はどこまでもついてきてくれるのよね?」

『そういう契りであろう』

陽乃「……貴女が言うと、ちょっと怪しい」

陽乃はそう言って笑うと

ゆっくりと瞼が上がっていく杏へと目を向けて、軽く手を振る

寝ぼけているであろう杏の目は陽乃へと向かわず

少し時間が経ってからようやく

杏の目が閉じるかどうかの迷いから解放されて、陽乃を見つける

陽乃「……おはよう。体は大丈夫?」

杏「久遠さん……?」

陽乃「ええ、状況……分かってるかしら?」

杏「ぁ……はい……」

まだ覚醒しきっていなかった杏は、ようやく頭が働き始めたのだろう

陽乃から目を背けると

すぐ隣でまだ眠っている球子を見る

杏「おはようございます、久遠さん」

陽乃「ええ、おはよう」


杏「久遠さんは、朝早いんですね……」

陽乃「早くはないわ……昔に比べたら全然遅い」

杏「そうなんですか?」

陽乃「昔はあと2、3時間前に起きてた」

陽乃は神社の娘として、

ある程度の手伝いもやっていたため、

早ければ4時ごろには起きていた

今は6時頃が基本なので

陽乃個人としては、ずいぶん怠惰になったものだと……

少しだけ思うところがある。

杏「……出ていかなかったんですね」

陽乃「あら、どうして?」

杏「昨日、あんな話をした後だったので、もしかしたら……なんて」

陽乃が長野に向かってこっそりとここを出ていくのではないか。と

杏は少しだけ考えていたのだ

杏やその周囲の人が優しかろうと、

それ以外の人々がそうではないのなら、やはり……陽乃が出ていく理由になるからだ


陽乃「そんなことして……メリットがないわ」

まだ杏たちに見つかっていない状態ならばいざ知らず

今はもう、杏たちに発見され、

杏の願いを聞いて、伊予島家にまで来てしまっている

若葉達にも交渉を持ちかけているし、

この状況で逃げ出したとなれば、

今はまだ悪くない関係ですら、悪化させることになってしまう

運良く長野の人々を助けられたとしても、

陽乃には戻ってくる場所なんてなくなってしまうことだろう

陽乃「行くとしても、話がついてからになると思うわ」

杏「やっぱり……行かれるんですか?」

陽乃「どうかしらね……」

杏「あの……もし、行かれるのなら……」

杏はそう言って

少し躊躇いがちに……続きを口にする

杏「私も一緒に連れて行ってもらえませんか?」


1、駄目よ。遊びじゃないの
2、貴女……戦えないでしょう?
3、あら……命を張って私の味方だって証明でもしたいの?
4、まだ行くか決めたわけでもないんだから、早計だわ


↓1

3


では短いですがここまでとさせていただきます。
明日は可能であれば通常時間から


なんという杏の押しの強さよ
この杏なら陽乃さんの心の支えになってくれるかも


杏が2週目の樹ちゃんっぽくなってきてる感


ついて来てくれるならこの上なく心強いなあ

2人とも理想のために自己犠牲しちゃう気がするので、ストッパーが1人欲しい

遅くなりましたが、少しだけ


陽乃「あら……命を張って私の味方だって証明でもしたいの?」

杏「いえっ、そんな……そんなつもりは……」

陽乃「……そうだろうと、そうでなかろうと……私は、貴女を護ってあげることなんて出来ないわ」

一緒に連れて行って欲しいと言う気持ちは嬉しい

ありがたいって思う

もちろん、陽乃は守らないと言いながらも守るだろう

守れないと言いながら、可能な限り守ろうとするだろう

けれど、陽乃は杏を絶対に守ってあげられるなんて自負はない

陽乃「最初の襲来とは、わけが違うのよ」

杏「それは分かっています……でも、だったら、久遠さんだって同じはずです」

陽乃の実力はまだまだ未知数で

杏は、自分が想像しているよりもずっと強い力だと考えている

けれど、だとしても

敵が無数にいるであろう外の世界は、陽乃であっても決して楽ではないはずで。

杏は、そんな場所に一人で行かせたくないのだ

おk


杏「命を張って味方だって証明したいだなんて思ってはいません」

けれど、戦いは命懸けなのは間違いではないし、

そう考えれば、命懸けで味方だと証明したいと言うのも間違いではないのかもしれないと思う

しかし、杏にはそんな思惑はない

杏「久遠さんの力になりたいんです」

陽乃「伊予島さん……」

杏「それが結果的に弾除けでしかないというのなら……久遠さんの言ってることが正しいかもしれません」

でも。と、杏は首を振る

杏「私は久遠さんに、味方だと思って貰うためにこの命を捨てる気はありません」

それは、悪手だ

間違っても取ってはならない手段の一つ

禁忌だと言っても良い

そうなれば、球子は激怒するだろう

そうなれば、千景は「やっぱり」と口にする。

自分の死が、陽乃の孤立を加速させると分かり切っている以上

杏は、絶対にそうならないようにしなければならない

杏「私は……久遠さんにいなくなってほしくないんです」


杏「久遠さんが長野にたどり着く可能性を高めたい。そして、こっちに戻ってこられる可能性を高めたいんです」

陽乃「本気?」

杏「……はい」

陽乃が単独で長野にたどり着けたとしても、

勇者と巫女以外は置き去りにしてくるなんて非道な真似はまず不可能だと杏は見ている

どれだけ悪い噂が流れていようと、

口では厳しいことを言ったりしているとしても

陽乃は、目の前にある命から目を背けられる人間ではないと思っているからだ

であれば、陽乃は無理してでも全員を連れ帰ろうとするだろう

死ぬ気はない

生きていたいと言いつつも、

誰かを護るために命を投げ出せてしまうであろう陽乃を、

杏は、たった一人で行かせたくはないと思っているし、

今は非力な勇者でしかないとしても、

陽乃が生還する可能性をわずかにでも高められるのであれば

杏は同行したいと思っている

杏「一人でなんて……無茶はしないでください」


杏「今まではともかく……今は、力になってくれる勇者がいるって、少しだけでも思ってください」

信じて欲しいとは言わない

頼りにしてくれとも……言いたいけれど言えない

しかし、それでも

陽乃と同じような志を持っている勇者がいる

陽乃とは違うとしても、

命を救いたいと思っている人はいるのだと……思って欲しい

陽乃から見れば

それらは頼りなく、足手纏いでしかないのかもしれないが

だとしても……少なからず力になれるはずなのだ

杏「交渉、してみませんか?」

陽乃「交渉って……大社に? 無理よ。許可されるはずがないわ」

杏「全員は不可能でも、半分……久遠さんを含めて3人程度なら、許可が出るかもしれません」

陽乃「私は大社にとっての忌み子のようなものなのよ? あり得ないわ」

大社のみんなとは言わずとも、

一部は【陽乃が勇者を殺して帰ってくる】と思うかもしれない

そう思わずとも、一人でも死なせたりすれば……そうだったのだと思われてしまう

陽乃「……無理よ。危険すぎる。私一人で行く方がマシだわ」


では短いですがここまでとさせていただきます
明日は可能であれば少し早い時間から


これ杏たちと合流前に長野に行ってたら陽乃さんが大変なことになってたんだろうなぁ…


二人も抜けて四国が大丈夫なんだろうか

大社視点だと、長野を切捨てて天乃も巻き添えにするべきで
同行を許可するとは思えんよな


遅くなりましたが、少しだけ

よしきた


杏「ですが……」

陽乃「そもそも、言った通り私は忌み子みたいなものなのよ? 他の勇者を同行させるとは思えないわ」

杏「監視目的という可能性は?」

陽乃「街中への捜索とかならともかく、四国外へ出ていく私を監視させるメリットがないでしょう?」

外に敵がおらず、

安全かつ確実に陽乃を追跡出るならばいざ知らず、

貴重な人員が消耗するかもしれない監視任務になど、つかせるとは思えない

陽乃「私が行くと言うのなら、勝手に行けと言われるかもしれないけれど……伊予島さん達は止められるはずよ」

杏「……やっぱり、そうなってしまうのでしょうか」

陽乃「十中八九」

杏「あの……」

陽乃「言っておくけれど……こっそりついて行くのは無しよ」

杏「ですよね……すみません」


陽乃「私のことを考えてくれているのは良いのだけど……命を捨てる真似は許容できないわね」

許可を得ていない、強引な手法ということは

陽乃と杏の二人きりになる可能性もあると言うことだ

なぜなら、球子は確実に止めるからだ

であれば、命を捨てるに等しい

陽乃「……大社は長野を切り捨てるつもりなのかもしれないわ」

杏「久遠さんっ!」

陽乃「あら……貴女は言わないでくれるでしょう?」

杏「それはそうですが……あまり言わない方が良いと思います」

その可能性は十分に考えられることだけれど

しかし、だからといってそれを口にしてしまうのは問題がある

大社からの不評を買うのは

陽乃にとってはもはや些細なことかもしれないが、

より面倒なことにならないためにも、避けるべきだと杏は思う

杏「……それが、事実だとしてもです」

陽乃「……そうね」


√ 2018年 8月3日目 昼:伊予島家

03~12 球子
37~46 若葉
51~60 友奈
89~97 杏

↓1のコンマ

※それ以外は通常

√ 2018年 8月3日目 昼:伊予島家


陽乃は、一先ず伊予島家に泊めて貰うと言うことになっているが、

一泊だけになるとは……限らない

というのも、

陽乃が出した要求である、寄宿舎に戻れるなら。という条件を飲むかどうかの答えが出るまでは下手に移動は出来ないからだ

球子は街に出るくらいなら良いんじゃないかと言うけれど、そんなわけもなく

暇を持て余していたところに、一本の電話がかかってきた

伊予島家のものではなく、杏のスマホへの着信

送信元は、高嶋さん。と表示されていた

杏「……友奈さん?」

杏は相手が友奈であるかを確認すると、

スピーカーにしても問題ないかを確認してから、陽乃達にも聞こえるように切り替える

友奈『みんな、まだアンちゃんのおうちにいるの?』

球子「いるぞ~」

友奈『そっか、良かった……久遠さんは大丈夫ですか?』

陽乃「九尾が返事しているとは、考えないわけ?」

友奈『あははっ……電話じゃ確かめることはできませんし』

なにより。と、友奈は笑いながら言う

友奈『信じたいって……思っていたらいけませんか?』


では短いですがここまでとさせていただきます
明日もできれば少し早い時間から


杏と同じく陽乃さんの味方してくれる高嶋さん
それを殴り飛ばした九尾は一度ごめんなさいしないとだな


長野行き誰がついてくるのかもドキドキするな


遅くなりましたが、少しだけ


陽乃「あら……優しい心構えね」

友奈『その方が良いと思いませんか?』

陽乃「私は、思わないわ」

杏「久遠さん……」

信じるか疑うか

相手の真偽がどちらにも考えられるならば

陽乃は友奈とは正反対に信じないと即答する

信じたところで……

あるいは、一度は信じあえたとしても

結局裏切られて培った分の傷を負わされるのであれば、

そもそも信じないのが一番だと陽乃は苦笑する

その経験があるからこそ、

陽乃はそもそも信じたくないと言う

陽乃さん…


友奈『……そうですか』

残念そうに零した友奈は、

少しばかり沈黙して……ふと、ため息をついたのがスマホから聞こえてくる

いつも明るく気遣いの出来る友奈でも、

陽乃の拒絶にはため息も零れてしまうのだろう

球子「友奈ー疲れてるのか?」

友奈『ううん、大丈夫だよタマちゃん……私より、若葉ちゃんかな』

杏「若葉さん……やっぱり、説得は……」

友奈『うん……上手くいっていないみたいなんだよね』

陽乃の条件は、今までのように寄宿舎で暮らさせて貰うと言うものだ

一言で言えるものだし、

以前と変わらないという点ではとても簡単な話に聞こえるが、

大社からしてみれば、

貴重な戦力を殺しかけた危険人物を

再度、貴重な戦力である勇者達のそばに置くと言うことになる

それは、

とても簡単だがとても許容できることではない

しかしながら、拒めば陽乃は消えていなくなるかもしれない

それを悩みに悩んでいる

そして悩み続ける間、ひなたは大社の下にいなければならない


友奈『若葉ちゃんがお願いしてるんだけど……勇者が殺される可能性があるっていう話でね』

杏「若葉さんは殺すはずがないって言っているんですか?」

陽乃「そんなこと言って、誰が信じてくれるのよ」

球子「だな。タマ達がどう言ったって大社が信じるわけがない」

友奈『タマちゃんの言ってる通りみたいなんだよね……』

杏「大社は逆に要求してきているんじゃないですか?」

友奈『………』

杏の言葉に、友奈は黙り込む。

事実だ。

大社は陽乃の要求を呑むことなく、

別の案を提示している

もちろん、若葉がそれを呑まないからこそ、

大社もどうにもできていない

友奈『大社からは、久遠さんを病院に戻さなければひなちゃんを戻せないって言われているみたいなんだよね』

杏「えっ……」

友奈『久遠さん……かなり、難しいです』

陽乃「それはそうでしょう。当然だわ」


1、乃木さんに代わって貰えない?
2、いいわ。戻ってあげる
3、じゃぁ、長野に行かせて貰えるか聞いてくれない?
4、嫌よ。私は寄宿舎に戻れないならお断りよ
5、上里さんには九尾の加護があるって伝えてあげて。私は……止めないわ


↓2

1

1


では短いですがここまでとさせていただきます
明日は可能であれば通常時間から

3


ひなたを人質に取るとか大社とことん悪手だなぁ
板挟みの若葉のことも心配だ…


九尾がキレそう


遅くなりましたが、少しだけ

やったぜ


陽乃「ねぇ、高嶋さん」

友奈『はい?』

陽乃「そこに、乃木さんはいる? 変わって貰いたいんだけど」

友奈『若葉ちゃんは……あ、ちょっと待っててください』

ベッドが軋む音が聞こえて、

強引に足を突っ込まれた靴の底が擦れる音と共に、扉が開く音が響き、

軽い足音が続いて……扉が叩かれるのが聞こえた

友奈『若葉ちゃーん!』

球子「……寝て……は、ないか?」

陽「同じ部屋にいないなら別にいいのだけど……」

友奈『久遠さんがお話したいって』

若葉『何!?』

電話の奥で誰かが倒れる音がして

一目散に駆け込み、扉が開いて……

若葉『今、繋がっているのか?』

陽乃「乃木さん、お疲れ様」

若葉『久遠さん……』

陽乃「話は聞いているわ」


若葉『友奈……』

友奈『ごめんね……でも、言うべきだと思って』

若葉『……久遠さん、話を聞いているならそういうことだ』

陽乃「上里さんを大社預かりにしておくのは、聊か問題が大きいわね……」

ひなたは巫女としての能力が非常に高い

陽乃を戻そうとしない若葉への当てつけなどではなく、

単純に、

危険人物の隣に、力のない重要人物を置いておくわけにはいかないというものだろう

ただ、それは九尾が気に入らない。

上里ひなたは、若葉の幼馴染であるのと同時に

九尾の寵愛を受ける人物でもある

ゆえに、問題がある

陽乃「ただ、それをどうにかするためには私は寄宿舎に戻して貰えない」

若葉『そのようだ……』


陽乃「乃木さん、別案は出しているの?」

若葉『私や友奈が必ず傍にいて目を光らせておく……とは言ったが、無駄だった』

陽乃「病院に連れ戻す以外は認められないと」

若葉『大社は久遠さんの力を完全に畏怖している……あぁ、友奈。あとで電話は返す。部屋に戻ってくれ』

友奈『え、でも……』

若葉『二人で話したいんだ』

友奈『……うん。分かった』

友奈の返事が返ると、足音が聞こえてドアの締まる音が二回

1つは友奈で1つは若葉だろう

若葉『そっちの二人も頼む』

球子「何言ってるんだ若葉! そん――」

杏「良いから行くよ。タマっち先輩」

球子「こらあんず! 放っ……」

杏に引き摺られるようにして球子がいなくなり、

部屋の中に残された陽乃はスマホのスピーカーを解除すると、

耳元にまでもっていく

陽乃「内緒話なんて……物騒ね」


若葉『何も物騒な話じゃないんだ……ただ、聞かれると困る』

陽乃「……というと?」

若葉『久遠さん、九尾の力の一端を私たちに見せてくれただろう?』

陽乃「ええ」

若葉『その情報……私達は大社に伝えないようにしておこうと思ったんだが……』

陽乃「郡さんが伝えたんでしょう? 隠しておく義理がないもの」

若葉『……っ』

陽乃「想定の範囲内というか……仕方がないことだわ」

若葉達に力を見せた時点で、

陽乃は九尾の持っているその力が大社に伝わることも覚悟していたし

九尾だって、

大社にその情報が向かうことも分かっていて、応じたのだ

陽乃「……そのせいで、大社がより警戒を強めたってわけね」

若葉『ああ、十中八九それが歯止めになった』

陽乃「郡さんを責める必要はないわよ? 勇者としての義務を果たしただけだわ」

若葉『そうか……すまない』

陽乃「貴女が謝る必要はないのだけど……」

若葉『それで……これはひなたからなんだが』

若葉はそう言うと、

気を引き締めるように……ため息をつく

若葉『私には構わず、久遠さんを寄宿舎に戻して欲しい。だそうだ』


では短いですがここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から


勇者部の時と違って千景に嫌われすぎてみんなで一致団結ができないのは辛いな…


まあ嫌われるのもしょうがないよなあんなことあった後だし……

まあ原作からして大団円ってわけでもないからなぁ

こうなってくるといよいよ長野向かうよりほかないのかなあ
不安だし杏だけでも付いてきてほしい


遅くなりましたが、少しだけ

はいよー

かもーん


陽乃「上里さん……」

若葉『ひなたはそういうやつなんだ』

自己犠牲すればいいと考えているわけではないが、

しかし、それで陽乃のことを救い、

それが若葉の為になるのであれば……ひなたは大社預かりになることを受け入れる

たとえその結果みんなに会えなくなるのだとしてもだ

陽乃「悪いけれど、それは駄目だわ」

若葉『……いいのか?』

陽乃「ええ、それでいいわ」

若葉も、酷く疲れが感じられる

陽乃のこと、ひなたのこと、千景のこと、大社のこと

考えるべきことが多くて、手いっぱいなのだろう

ひなたを若葉から奪うのは得策ではない

もちろん、九尾からしてもダメだ


若葉『しかし……ならどうする』

陽乃「そうねぇ……」

若葉は、陽乃に敬語を使うことも忘れるほど、悩んでいる

陽乃としては別にそれでもいいので、

それについてとやかく言うつもりはないが

それほどに追い詰められているというのは……無視できない

陽乃「結論、私と上里さんを一緒には出来ないということね」

若葉『端的に言ってしまえばそうなる』

陽乃「………」

陽乃が寄宿舎に戻るのなら、ひなたは解放されない

陽乃の行方がつかめない状態でも、ひなたは解放されない

陽乃が大社預かりでなければ、ひなたは解放されない

若葉を従える目的と、優秀な巫女を守る目的

大社は、ひなたを護るという名目で行動しているが……結局

両方満たせる良い判断だ。と、言うべきだろうか


もちろん、それは褒めているのではなく皮肉だ

大社が実際に若葉を押さえるのは二の次と考えて

本当にひなたの保護だけが目的であったのだとしても……皮肉だ。

さて……どうしたらいいのだろうか

陽乃が大社預かりに戻るのが、大社にとってのベスト

だが、陽乃にとってはそれは最悪の一手

あんな息苦しい生活はお断りだ

だから……ひなたを諦めるか

ひなたを返さなければ、神樹様を枯らせるとでも脅すか

それとも……

考えれば、手はある

しかし、

ひなたを返して貰った上で陽乃が望んだ生活をするための手は

大社を今まで以上に脅す必要がある

それは、あまりいい方法とは言えない


では短いですがここまでとさせていただきます
明日は可能であれば少し早い時間から


そのまま長野に行ってもひなたは捕らわれの身のままなのか…
これは困ったな


所在不明だと困るってことだから大社に長野行きますって伝えれば大丈夫なんじゃね

すみませんが本日はお休みとさせていただきます。
明日は、出来る限りお昼ごろから

連絡乙です
多忙なのかここのところ急に投稿ペースが落ちてきて心配だけど楽しみに待ってます


いま話が動き始めて面白いところになって来たので毎回楽しみに待ってます


遅くなってしまいましたが、少しずつ

おっしゃ


若葉『私は……可能なら避けたいが、ひなたを大社預かりにして久遠さんを呼び戻そうと考えていた』

ひなたもそれを望んでいるし、

最善の策ではないにしても、妥協案の一つとして絶対に選べないものでもないと考えていたからだ

しかし、それを強行するのは陽乃の望むところではない可能性も考慮して躊躇っていた若葉は

それを完全に却下された今、打つ手はないと言っても良い

もちろん、反旗を翻してやろうか。という脅しも使えなくはないが

若葉達に使えるものではない。

若葉『だから……久遠さん、寄宿舎かひなた。どちらかを諦めて貰うことは出来ないだろうか……』

たとえ寄宿舎でなくとも、

最低限の自由は保障して貰うつもりだと、若葉は苦しそうに言う。

若葉だって、みんなでまた寄宿舎に……と、考えていただろうから。


1、そうねぇ……なら、寄宿舎を諦めるわ
2、上里さんが、望んでるなら
3、ねぇ……私、長野に行っても良いかしら?


↓2

2

3


陽乃は少し考えてから……口を開く

陽乃「ねぇ……私、長野に行っても良いかしら?」

若葉『なにっ!?』

陽乃「っ……長野よ。長野……白鳥さんのいるところ」

若葉『そ、それは分かっているっ!』

急激に近く、大きくなった若葉の声から逃れるように、陽乃はスマホを離す。

突拍子もないことを言ったつもりはないけれど、

若葉にとっては想定外だったのかもしれないと……息をつく

陽乃「だめ?」

若葉『それは、単独で……という話か?』

陽乃「人員を他にも出して貰えるのならそれが一番だとは思うけれど、難しいんじゃない?」

若葉『正直、それに関しては久遠さんを寄宿舎に戻す以上に難色を示すと思う』

若葉はそう言って、ただし。と付け加えた

若葉『久遠さん単独でという話でなら……大社は要求を呑んでくれる可能性がある』


陽乃「そうなの?」

若葉『これは邪推というか……内密の話でお願いしたいのだが……』

若葉はそう前置きして

若葉『大社は、久遠さんを長野に派遣することで体のいい厄介払いが出来ると考えるかもしれない』

陽乃「それはまた……」

状況から察するに、

悪く言えば長野は捨て駒であり、

ここ、四国本陣の準備が整うまでの必要な犠牲と考えられていると考えられる。

もしそうであるならば、

そこに陽乃が向かうことで時間稼ぎが延長できるし

道中で終わり辿り着けなかったとしても、敵の数を大幅に減らし

今後の負担を軽くしてくれる上に……勇者や神樹様の脅威の一つが消えることになるからだ。

若葉『反対に、同行者が容認されない理由は言わずもがなだろう』

陽乃「まぁねぇ……最悪、私が殺す可能性もあるものね」

若葉『私達はそんなことしないと確信しているが、大社は信じないだろうからな……』


若葉の残念そうな声が尻すぼみ気味に消えていき、

溜息が零れたのが電話口から聞こえてくる

やはり、若葉もつかれているのだろう

若葉『長野への遠征、本気か?』

陽乃「ええ」

若葉『………』

電話は繋がっているものの、

向こうからの音が聞こえなくなる

考えに考えているであろう若葉は、しばらくしてから「久遠さん」と呼びかけてきた

陽乃「なに?」

若葉『大社に長野遠征を要望として出すのは構わない』

陽乃「何か条件があるの?」

若葉『単独でしか許可が出なかった場合……行くのは諦めて貰えないだろうか?』


今でも十分に陽乃の状況が詰んでいるのは若葉も知っているだろう

その苦肉の策として長野に行きたいと言っていることも

若葉は理解しているだろう。

けれど、それでも若葉は単独で長野に行くことは認めたくなかった。

若葉『久遠さんの力は信頼している……だが、それでも絶対ではない』

若葉や、友奈

他の勇者メンバーが単独で行くのに比べたら、その生存率ははるかに高いはずだ

しかし、だとしても確実という保証がない。

遠征中に連絡が取れるとは限らないし、もしものことがあったら目も当てられない。

若葉『私は、久遠さんにいなくなってほしくないんだ』

陽乃「そんな――」

若葉『畏怖すべき力であるとしても、貴女の力は起死回生の一手だ。誰かが死ぬ戦いも、貴女がいれば死なずに終えられるかもしれないんだ』

陽乃「過大評価だわ」

若葉『いいや……貴女は誰かが死ぬなんて見過ごせない。だから絶対に、助けるはずだ』

なんという信頼なのかと、陽乃は眉をひそめた


1、良いわ。じゃぁ、単独許可だったら諦める
2、ごめんなさい。単独でも行かせて貰うわ。貴女の評価を信じるのなら。分かるでしょう?


↓2

1

1

1


ではここまでとさせていただきます。
明日もできれば通常時間から


流石に単独で遠征は多分ゲームオーバーフラグだろうしなぁ
でも残るなら少しでも待遇改善してほしいけど…


とりあえず単独での長野行きは無しか
話がどう転がるかドキドキするなあ


では少しだけ

いえす


陽乃「良いわ。じゃぁ、単独許可だったら諦める」

若葉『すまない』

陽乃「仕方がないわ。私だって無謀だと思うし」

陽乃だって、自分の力を過信したいとは思わない。

今の自分の状況を変えたいとは思うけれど、

わざわざ死にに行くつもりはない。

もちろん、それ以外に道がないというのなら、行くしかないけれど。

陽乃「でも、だからと言って上里さんを向こうに置いておくわけにはいかないわ」

若葉『なら、大社の下に戻るのか?』

若葉は自分自身に問いかけるような小さい声で呟くと、

陽乃が何かを言うよりも前に、口を開く

若葉『それもダメだ。何されるか分かったものじゃない』

陽乃「あれもダメこれもダメ……私達、ダメな事しかないわね」

若葉『せめて大社からの扱いが私たちと同等ならよかったんだが……』


陽乃「もしもそうだったなら……郡さんのことを除けばすべて解決かしら」

若葉『……そう、だな……』

若葉は、無理矢理に暫定的なリーダーという役目を押し付けられて、

問題を抱えている陽乃と、陽乃を敵視している千景やほかの勇者達とを取り持たなければならない。

そしてそれは、さらに大社や民衆に対してもだ。

今は陽乃を連れ戻せという大社に対し、

陽乃の要求通りに、寄宿舎に戻す程度で収めて貰えないかを交渉している。

その結果、若葉の大切な人が奪われた状態にある

若葉は軽はずみなことを言ってしまったのではないかと申し訳なさそうに零したが、

そう言いたくなるのも無理はないだろうと陽乃は笑う。

陽乃「ほんと、私が勇者じゃなかったら良かったのにね」

若葉『いや、それは困る……問題は多いかもしれないが、それを補って余りある力を持っている』

若葉は陽乃の力を、九死に一生を得るための切り札のようなものだと考えている。

さっきも言った、起死回生の一手。

陽乃に気にするなとは言えないけれど、

民衆や大社の声に惑わされて欲しくないと、若葉は思っていた。

若葉「それに、たとえ九尾の力がなかったとしても……貴女は勇者になっていたはずだ」


陽乃が正式な勇者であったなら、

大社から疎まれることも、民衆から恨まれることもなく、

普通に、若葉達と同じ勇者として敬われる立場にあったことだろう。

そうだったなら……と、若葉と陽乃は互いに考えて、

しかし、そうではないのだからと首を振る

陽乃「私の価値は、この力だけではないって言いたいんだって思っておいてあげる」

若葉『ああ……それで頼む』

少なくとも、見分けがつかないほど完璧に見た目を変えることができ、

勇者やバーテックスに対しての決定打を持っている

陽乃のそんな力は魅力的なものだ。

しかし、陽乃が本当に勇者足る理由とされるのは……これだけ恨まれ憎まれていても命を救ってしまうところにある。

それは、もしかしたらいいことではないのかもしれないが……勇者としては重要な芯の部分。

若葉『伊予島達は……大丈夫だったか?』

陽乃「ええ、伊予島さん達も、ご両親もとてもよくしてくれたわ」

若葉『それは良かった』

安心したように言う若葉は、もう分かっているかもしれないが。と、続けて

若葉『申し訳ないが……今はまだ寄宿舎に戻ることは出来ないから、伊予島に伝えて貰えるだろうか?』

宿泊は延長できるか

延長できないならば、どこか宿に泊めて貰うことは出来るか。

その話が両親へと伝わると――二つ返事で宿泊延長が決まった。


√ 2018年 8月3日目 夕:伊予島家

03~12 杏
37~46 球子
51~60 両親
89~97 九尾

↓1のコンマ

※それ以外は通常


では短いですがここまでとさせていただきます。
明日もできれば通常時間から


とりあえず今は杏の家に居候しながら大社の返事待ちでいいのかな


伊予島家でもう一泊か、杏とご両親には頭上がらないな
あと今回の若葉は色々な案件抱えてて原作以上にストレス溜めてそう


九尾の変身能力でなんとかごまかしつつ誰か長野に連れて行けないかな?


昨日は出来なかったので、今日は少しだけ

やったぜ

√ 2018年 8月3日目 夕:伊予島家


陽乃「すみません、昨日だけでなく今日も……」

「あらあら、良いのよ……いつもは夫と二人だけだから、にぎやかで楽しいわ」

陽乃「賑やかなのは、土居さんのおかげですよ」

陽乃、杏、球子

陽乃は本来、アウトドア派でもあるのだが、

今ではすっかりインドアな人間となっており、

どちらかと言えば静かな方だ

それは元からインドア派になるしかなかった杏も同じで、

その二人を引っ張るようにして明るいのが、球子だった。

「それにしても、陽乃ちゃんって、お料理が上手なのねぇ」

陽乃「小学校の頃は手伝いで良く作っていたので……和食、ばっかりですけど」

こんな世界になってからは、食堂を利用するのも気まずく、

自炊が基本の生活になっているため、洋食や中華もそれなりに作れるようにはなっている。

「でも、無理せず休んでいて良いのよ?」

陽乃「こんなに良くして頂いているのに、何もしないのは……なんだか、居心地が悪いので」


「ふふっ……本当、立派なのねぇ」

陽乃「私の友人は、損な性格だって言いますけど……」

友人以上の繋がりである九尾のことだが、

精霊だというわけにもいかないので、友人として扱う

陽乃にしか聞こえない九尾の声は『誰が友人なのかや?』と、

嘲笑するように笑っているが、無視する

陽乃「あ、これ……揚げますか?」

「待って待って、揚げ物は私がやるから大丈夫よ。万が一のこともあるから、ね」

陽乃「そうですね……なら、洗い物やっておきます」

「ありがとう」

陽乃「……いえ、こちらこそ。ありがとうございます」

こんな関係を、彼女にも期待していたのだろうか。

期待してしまっていたから……拒絶されたのがあんなにも辛かったのだろうか。


料理で手伝えることが減って来た陽乃は、

一旦、キッチンから離れてリビングの方へと向かう

平日の今日、杏の父は仕事でいないので

今の家にいるのは杏の母親と、陽乃と杏と球子の4人だけだ

九尾も含めれば、5人だろうか。

杏「久遠さん、お料理も好きだったんですか?」

陽乃「ん~ん。出来たってだけ」

球子「ほらっ、だから言ったろ~? タマの方が絶対に好きだって」

杏「タマっち先輩が好きなのはキャンプ料理でしょ。普通の料理じゃないよね」

球子「キャンプで作るのも普通の料理だぞ~……」

ムッとする球子と、楽しげに笑っている杏

二人を一瞥して、陽乃は二人から少し離れた場所で、溜息をつく

これからどうなるのか……まだ、先のことは分からない


陽乃は、若葉と話した内容のほとんどを二人に伝えている

千景が大社に陽乃のことを話した件については避けたが、

それ以外のことは二人にも共有したのだ。

特に、陽乃が長野に行くことを打診したうえで、

許可が単独だったら諦めるが、単独でなければ長野に行くということも。

話を聞いていた杏が、

単独ならば諦めてくれることに安堵していたが、

球子は、単独だろうとそうでなかろうと、

無謀だと……乗り気ではない様子だった。

もちろん、長野にいる勇者を救出するということに関しては、球子もすべきだと思ってはいるけれど

しかし、だとしても危険が過ぎる

陽乃「………」

若葉や杏たちの考えている通り、

やはり、ほかの勇者を引き連れての許可は難しいだろう。



1、九尾と話す
2、土居さん、伊予島さん……鍛練、する?
3、もしダメだったら……どうしようかしらね
4、ねぇ、スマホ借りられる?
5、イベント判定


↓2

5

3


ではここまでとさせていただきます
明日も可能な限り、通常時間から


今回のタマは杏が陽乃さんを凄く気にかけてる分冷静というかブレーキ役みたいな感じだな


でも長野の二人救出出来たらリターンもデカいよなあ
こっから先まあまあジリ貧なだけに


では少しだけ

来てたか


陽乃「もしダメだったら……どうしようかしらね」

球子「病院には戻りたくないんだろ?」

陽乃「可能な限りね」

球子「だったら……」

球子は神妙な面持ちで呟くと、

深く考え込むように俯いて……杏へと目を向ける

球子「……どうするんだ?」

杏「タマっち先輩……」

今それを考えようって話なんだよ。と

少しばかり呆れたような笑みを浮かべた杏は小さく息をつく

病院には戻さない

そのうえで、ひなたを大社から取り戻す

杏「もしあれなら……ずっとこの家にいても良いのでは?」

球子「杏っ!」

杏「だって、それが出来たら一番いいって思わない?」


この家なら、陽乃を悪く扱い人はいない。

陽乃を悪く言うこともなく、

人様の家という点で陽乃は居心地悪く感じてしまうかもしれないが、

監視され続けるような、嫌な思いをすることはきっとなくて

だから……と、杏は思う

杏「お父さんもお母さんも、久遠さんのこと大切にしてくれますよ」

陽乃「それは分かってるけれど……」

それはさすがに迷惑も過ぎる話だ

陽乃としては、この家の居心地は良い

かつてのようにはいかないし、

他人の家なので居住まいをどうしても正してしまう

杏「お母さんたちなら、喜んで――」

陽乃「……だとしてもよ。伊予島さん」

それでも十分にありがたい話だが、

しかし、陽乃は抱えている問題が大きすぎる

ほんの数日間ならともかく、

これから先、長く陽乃を家に置いておくというのは、伊予島家には荷が重い。

それが大社からの命令であるならば従うほかないが、

そうではないなら避けるべきであろう

陽乃「私のいた場所が……どうなったかは、貴女も見て来たでしょう?」


あれがもう遠い過去の話であるならば、

陽乃も、もうきっと大丈夫だろう。なんて、

一応は警戒しながらも、伊予島家が問題なく、

大社を黙らせられるのであればお世話になっていたかもしれない。

しかし……その火はまだ燻っている。

それが、この家にまで降りかからないとは限らない

球子「久遠さんは、ここがあの神社みたいになるって思ってるのか?」

杏「タマっち先輩?」

陽乃「ならないとは限らない」

球子「なるとも限らないだろ」

陽乃「なる可能性がある……そのリスクが――」

球子「だったら護ればいいだろ……」

球子は素っ気なく、口を挟む

向ける目は睨んでいるようで、怒っているようで。

球子「それくらい、あんたなら護れるだろ?」

杏「タマっち先輩……そんな言い方……」

杏の宥めるような声にも、

球子は少しばかりむくれた様子で、そっぽを向いた


では短いですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


伊予島夫妻は陽乃さんの第二の両親になるかもだし絶対に護らないとだな


タマっちご機嫌斜めじゃん


遅くなりましたが、本日はおやすみとさせていただきます。
その分、明日は可能であればお昼ごろから

乙です
お昼再開に期待


遅くなりましたが、少しずつ

よっしゃ


陽乃「良いのよ、伊予島さん」

杏「ですが……」

目を合わせてくれない球子は、

ソファに浅く腰掛けていて、ふんぞり返っているようにさえ見える

球子は、千景ほどに嫌っているわけではないけれど

陽乃のことを良く思っているわけでもなく、どちらかと言えば嫌ってさえいる

ただ、杏が協力をするというから、敵意をむき出しにしたりはしないだけで。

陽乃「土居さんは、私が気に入らないのね」

球子「……気に入らないに決まってるだろ」

陽乃「やっぱり、例の噂があるから?」

球子「………」

球子は答えない

答えることなく陽乃を人睨みして、テーブルの上のお菓子を摘まむ

抓まれたお菓子は、小さく軋んで……砕け散る

球子「噂なんて、タマはどうだっていい」

陽乃「なら、どうして?」

球子「護れるくせに、護れないっていうところが嫌いなんだ」


球子「本当は護れるんだろ? この家も、杏の両親も、杏も……みんな」

鍛練で手合せをしている球子は、

友奈や千景が決して弱い勇者ではないことを知っている。

だから、その二人をうち倒した陽乃なら、

簡単に守り通して見せるだろうと球子は思っている。

球子「護れるなら護れるって言えばいいじゃないか……」

なのに、本人はそんな自信がないようにふるまっているし、

あくまで、陽乃は自分以外の人を護る気がないようなそぶりを見せている

それは、杏がついて行くと言ってもだ

球子「それで、協力して貰えばいいじゃんか」

陽乃「………」

球子「噂がなんだよ……それでも協力するって杏が言ってるんだぞっ」

球子は苛立たしそうに、お菓子で汚れた手で拳を固く作り出すと

何かを言いたそうに唇を歪ませて、杏を一瞥する

球子「だったら……ちょっとくらい、信じたって良いんじゃないのかっ?」


球子「タマを信じなくても良いから、杏くらいは」

杏「何言ってるのっ?」

球子「……護れるんだろ? 久遠さんなら」

陽乃「保障はできない」

大社がどれだけ警戒していようが

民衆から忌み嫌われていようが、

球子や若葉達に信頼されていようが、

陽乃は、その力を絶対だとは考えない

陽乃「……護れるだなんて、思えないのよ」

杏「でも、久遠さんは護ってくれたじゃないですか」

陽乃「護れただけよ。護れるわけじゃないわ」

それは球子に睨まれたとしても、譲れない。

自分の力を過信するには――陽乃は多くのものを失い過ぎたのだ



1、悪いけれど、伊予島さんは貴女が護って頂戴
2、私だけじゃないわ。貴方の力でだって、護れるとは限らないの。己惚れるべきではないわ
3、別に、信じたって良いけど……
4、信じられない私に任せて平気なのかしら


↓2

3

3


陽乃「別に信じたって良いけど……」

杏「ほ、本当ですかっ?」

陽乃「けれど信じるのと護るのとでは、話は別よ」

陽乃の今の噂や状況を踏まえてなお、

協力的な杏たちのことを信じることはやぶさかでもない

もちろん、全幅の信頼を置くことまでは出来ないけれど

ただ、護ることは約束できない

それだけは、約束したくはない

陽乃「貴女達が私に協力的だってことは信じてもいいわ。でもね、護るだなんて約束はしない」

球子「そんなに自信がないのか?」

陽乃「ええ、そうよ」

護ってあげられる自信はない

みっともない自衛だと嘲笑されても良い

陽乃は笑われようとも、

絶対に助けてあげるなんて約束をする気は、微塵もなかった


陽乃「もちろん、私の力が及ぶ範囲でなら護ってあげることもあるけれど、絶対だなんて言わないわ」

バーテックスと戦う勇者の一人として、

他の勇者と協力することはあるし、

ないとは思うけれど、一般人が巻き込まれていたならば、

陽乃はどうしようもなく助けてしまうことだろう

けれど、護り切るだなんて約束は出来ない。

陽乃「自分の身は自分で守って頂戴」

球子「……護れなかったら責められるってことか?」

陽乃「護れたって責められるけどね」

杏「タマっち先輩いい加減落ち着いてよっ」

球子「っ……」

杏「久遠さんは護りたくても護れなかったことを心配してるの……どれだけ力があっても、無理なことはあるって」

杏は、自分の力にだけは自信を持つべきだと思う

いや、陽乃には信じていて欲しい。

しかし、杏自身がその自分の力が絶対であることを信じられてはいない

だから、それを押し付けることはできなかった

杏「……でも、久遠さん。久遠さんは勇者の中でおそらく一番強力な力を持っていることだけは、忘れないでください」

その陽乃が、倒せないバーテックスがいたとしたら、

それはもう、人類の敗北を意味すると、杏は考えていた。


陽乃「私が一番だなんて……」

杏「友奈さん達を負かしたんです……そう思うべきですよ」

杏はその戦いを見ていないので、

実際にどのようなやり取りがあったのかは分からないが、

結果から見れば、

陽乃が友奈と千景を叩きのめすほどの力を持っており、

若葉は運が良かっただけだと否定していたが、

若葉はそれを切り伏せられるほどの力を持っている。

しかし、九尾の人を模倣出来る力が真価を発揮したら、勝ち目はないだろう。

若葉に……上里ひなたの姿で近づけばいいだけなのだから。

もちろん、

陽乃がそんなことをするなどとは、思っていないが。

バーテックス相手でも、

瀬戸大橋の前でたった一人で防衛していたということを加味するならば、

一番は陽乃だろう。

それに関しては、球子も認めるしかない。

陽乃「私よりも若葉の方が強いわよ。じゃなかったら、あなた達がここにいないもの」

杏「怖いこと言わないでください……」


事実、九尾が排除していた可能性もあるので、冗談だとは言えないが、

それを言っても仕方がないことだろうと、陽乃は飲み込む。

実際に若葉は九尾を止めてくれた。

たとえ、あの時の九尾がまだ本気ではなかったとしても

若葉だって、本気ではなかったはずだ

若葉にとって、あの時戦っていたのは久遠陽乃で、

きっと、殺すつもりで戦うことはできなかっただろうから。

陽乃「大丈夫よ、乃木さんがいるならね」

球子「なんだ、若葉のことは信頼してるんだな」

陽乃「一応、彼女はリーダーだもの」

球子「ならタマがリーダーだったら信じたのか?」

陽乃「私のことを、止めてくれたならだけど」

球子「一度くらい――」

杏「ダメだよタマっち先輩、危ないから」

球子「……分かってるよ」

杏に止められて、球子は戦うことを断念する

戦えたとしても、若葉が戦った時と同じような状況でないのなら、

判断基準には出来ない


√ 2018年 8月3日目 夜:伊予島家

03~12 九尾
37~46 大社
51~60 両親
89~97 杏

↓1のコンマ

※それ以外は通常


では短いですがここまでとさせていただきます
明日も可能であれば、お昼ごろから


タマが陽乃さんに対していまいち素っ気なかったのは千景とは違う理由とはいえ普通に嫌ってたからなのはちょっとショックだったなぁ
そしてこれを聞いて九尾は何を思うのだろうか…


まあこれに関しては煮えきらない陽乃さんも悪い気がする

今日は休載かな?

昨日できなかったので、本日は少しだけ

おk

√ 2018年 8月3日目 夜:伊予島家


『あの小娘は殺めても良いのではないかや?』

陽乃「誰のこと? まさか、土居さんとは言わないでしょうね」

『言うとも』

くつくつと喉を鳴らすように笑った九尾は、

不意に息を引き込むような音を立てて陽乃から伸びる影が揺らめく

九尾は冗談めかした声色だが、本気だろう

『あの娘は伊予島杏が主様について行くと言って聞かぬことに、不満を抱いている』

陽乃「……盗み聞きしたのね」

『無論、ただの嫉妬ではあるまいよ。それにて、主様が守護することを約束出来ぬことに……であろう』

陽乃「それは、だって……出来ない約束なんて……」

『であろうとも、主様に付き従おうという愚か者がおる。それが己が思う者であるならば、癪にも触る』

陽乃「………」

『己が救うと決めた娘よ。あやつも』

陽乃「貴女、いったいどこまで……」

九尾は、陽乃の影に潜んでいるように見せてはいるが、

別に離れることが出来ないわけではない

陽乃と会話をしていない時、

九尾はいつも、どこかへと足を運んでいるのかもしれない


『あやつが護ると誓おうとも、主様には恩が有ると返されるのはさぞ憎かろう』

九尾はネガティブな話をしているとは思えないほど明るい声でそれを語る

九尾が本当に見聞きした情報を話しているとは限らない

騙っているだけである可能性もないとは言えない

九尾は影となっていて、その表情は読めない

もっとも見せていたとして、察せられるかは微妙だが。

陽乃「土居さんは嫉妬しているようなものなのね……貴女の言葉が本当なら」

『くふふっ、であろうな』

陽乃「なら、私が伊予島さんを絶対に守るって約束したら、蟠りはどうにかなるのかしら」

『主様の力まで疑ってはおらぬじゃろう』

陽乃「……なら、私が単独でなら長野にいかないって言ったのは、良かったのね」

陽乃が単独であろうと行く気であったならば、杏は無謀な旅に付き合ってくれていただろう。

それは球子の望まない流れだろうし、

きっと……最悪の結果になっていたはずだ。


『なんじゃ主様、行かぬのかや?』

陽乃「行かない予定よ……流石に無謀だもの」

不可能ではないが、

可能と言えるかは微妙なところの一人旅

杏がついてきてくれたところで、

それが可能と言えるまでに引き上がるかと言われればそうでもないので、

単身ではしないのがベストと言える。

それはそれで、ここでどうするべきかという問題が生じるのだけれど。

1つ、一人で長野に行く

これは、今のところは断念する予定

1つ、このまま伊予島家に住まわせて貰う。

これは大社が確実に難色を示すだろうが……ごり押すことは可能だろうか。

杏の両親ということもあって、杏が取り入られるのを懸念して阻止される可能性はある。

1つ、四国内での逃走劇

これも……面倒なことにしかならないので、避けるべきだろう


1、ねぇ、あなたならどうする?
2、上里さん……大丈夫かしら
3、ねぇ、あなたってどこまで盗み聞きしてるの?
4、土居さんと仲良くなれるかしら?
5、貴女……この家と、伊予島さんのご両親を護り切れる自信はある?


↓2

1

5

2


では本日はここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


これ長野に単独で行ってたら本当にバッドエンドだったかもな…
しばらく伊予島家に居候となると杏も残ってくれると嬉しいけどどうなるんだろうか


マジでどうしたらいいんだろな

お休みかな…?
最近火曜の休載率が高めな気がする

遅くなりましたが、昨日できなかったので少しだけ
安価出す手前まで

やったぜ


陽乃「ねぇ、一つ確認したいことがあるのだけど」

真剣な声色でそう切り出した陽乃を見つめるようにしていた影が、

ゆらりと揺らめいて瞳を閉じる動きを見せる

陽乃「貴女……この家と、伊予島さんのご両親を護り切れる自信はある?」

『ほう?』

陽乃「どうなの?」

『妾が守護する理由がなかろう』

陽乃「自信がないから?」

『くははははは! 妾にそれが有用だとでも思うとるのかや?』

陽乃の挑発めいた言葉は、九尾には意味をなさない

むしろ、笑えてさえ来てしまうのだろう

高笑いした九尾は特別怒った様子もない

『主様が守護すればよい』

陽乃「そうできない時もあるでしょう?」

『ふむ……なるほど』

多少の興味も湧いていないような声

考える素振りを装った呟きを残した九尾は、ふっと息を引く

『伊予島杏の肉親二人の守護など、妾の尾が例え一つであっても容易であろう』


陽乃「絶対に?」

『無論じゃ。下賤な人間共の悪意なぞ、妾にとっては赤子のようなものよ』

陽乃「……本気で、言ってるのね」

『いかにも』

笑み交じりに答える九尾は、

影の尻尾を揺らして見せて、口を大きく開く

声のない笑みを浮かべているのだろう。

それは少しばかり、不気味に見えた

だが、九尾はそう言う存在なのだ。

人々の信仰を戴く神に近き獣であれば、

人に偽り、人を騙り、歪ませ崩壊させようと画策する悪意でもある。

ゆえに、人々の憎悪など、悪意など

九尾にとっては取るに足らない些細な現象に過ぎない。

それを阻むのも、叶えるのも、容易

『もっとも、妾に委ねるならば心するがよい』

陽乃「……ダメとは言わせてくれないのね」

『もちろんだとも』

九尾はそう言って、影を揺らす

『害をなすならば殺す。勇者ならば利用価値もあるが、単なる人間風情にそれはなかろう』


九尾は千景たちでさえ、害になるなら殺してしまえと言うような存在である。

勇者である千景たちを殺そうとするにも拘らず、ただの害意ある人々を生かしておくわけがない

陽乃を憎悪する人間を生かしているのは、

あくまで、それ以上の害になっていないからだ

しかし、それが目の前に現れたのならばその命を見逃してやる道理はないし、

目の前に現れるだけでなく障害となるのであれば排除する。

それに、迷いはない

『主様が伊予島杏の肉親を妾に守護せよというのであれば、排斥のみならず排除することを許容すべきじゃ』

自分の力……と言っても、九尾の力を借りた状態も含めるのだろうが

それで守り切る自信がなく、

九尾自身にまで助力を願うのであれば、多少の死人は諦めるしかない

陽乃「私に頑張れって?」

『うむ』

陽乃「そう……」

守れるように頑張れと

諦められるように頑張れと

いずれにせよ、頑張れと……陽乃は眉を顰めて、首を振る

陽乃「……私がそんな約束できないって、知ってるくせに」

『それを知っていようが、妾には関係のないことであろう』

九尾は素っ気なく、答えた

では短いですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から

VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
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護れるかどうかは陽乃さんの頑張り次第か…
どのみち穏便にはいかなさそうだけど


陽乃さんただでさえメンタル不安定なのにここに来て死人出したらもう立ち直れないのでは…


遅くなりましたが、少しだけ

かもーん


陽乃「貴女を頼るなら、諦めなくちゃいけないのね?」

『うむ……無論、人間が手を出さぬというのであれば、妾が排除することもなかろう』

専守防衛と言えばいいのか、

九尾は、向こうから来ないのであれば手を出さないつもりのようだ

もちろん、九尾ならば手を出してきたとしても命を奪うことなく無力化するのは可能だろう

しかし、それはそれこれはこれというものなのか……

殺す以外の選択肢を取るつもりは毛頭ないらしい

『主様が人間に手を出せぬよう働きかければよい』

陽乃「それこそ無謀な話じゃないの」

『なせばなるであろう?』

陽乃「無理なこともあるの……特に、今の私では火に油を注ぐだけよ」

『乃木若葉に代行を頼めばよかろう。あ奴の言葉ならば、大社はともかく民衆ならば聞くやもしれぬ』

陽乃「……だと良いのだけど」

『じゃが、今の勇者はただの言の葉でしかなかろう』

勇者としての実績不足

バーテックスに対抗している姿を目撃した人々もいるだろうけれど

それだけでは、まだ足りない


1、あとどれくらいで襲撃があるとか分かるの?
2、ねぇ、貴女の力でどうにかできない?
3、イザナミ様の力を使えば、長野にたどり着ける?
4、良いわ……害意があるなら最悪死なせてもいい。でも、警告をしてあげて


↓2

3

1


↓1コンマ判定 一桁

00  長野の最後なら

0~4  不可
5~9  大雑把
ぞろ目 確定


陽乃「ねぇ、九尾はあとどれくらいで襲撃があるかどうか分かったりするの?」

『妾は預言者ではないぞ』

喉を鳴らす九尾は呆れたように呟いて、否定する。

『そのようなもの、妾にはわからぬ』

陽乃「……そう」

落胆はしない

九尾とはいえ、万能な妖怪ではないのは分かっている

ただ、もしかしたらと思っただけで。

陽乃「やっぱり、神託がこない限りどうしようもないのね……」

『大社とやらが神樹による神託にすべてを委ねておるからのう』

バーテックスと戦うための準備は当然行うだろうけれど、

神樹様が神託をくれない限り、

大社も勇者も、外部に対しては最小限の行動しかしないはずだ。

少なくとも、長野には……

『そんなに、長野の勇者が気がかりかや?』


『会ったこともなく、話したこともなかろう?』

陽乃「ええ、まぁ……」

長野の勇者との連絡はすべて暫定リーダーである若葉が行っており、

陽乃はあくまで、若葉から聞かされた情報しか知らない。

向こうには勇者が一人しかいないこと

巫女でさえも、一人しかいないこと。

勇者は白鳥歌野と言う名前であること

日々、戦いに明け暮れて……摩耗していること。

『それを救う義理があると?』

陽乃「ずっと戦っているなら、乃木さん達よりも戦闘面で役立つと思わない?」

『ふむ……』

陽乃「きっとバーテックス戦で活躍してくれるはずだし、私が楽になる。生き残れる確率も上がるわ」

それに、外部からくる勇者ならば、

ここに渦巻いている偏見の影響も受けないかもしれない

陽乃「魅力的でしょう?」


所謂、ハイリスクハイリターンだと陽乃は嘯く

生存率を上げたいというのは本音ではあるけれど

ただ、一番は違う。

黙って見殺しにするのが嫌なだけだ

手を尽くしてなお救えなかったのならばいざ知らず

それさえもせずに……というのは、受け入れがたい。

『妾と化かし合いをする意味もあるまいに』

九尾はその心の内を察してか

嘯いたことなど気にも留めずに、楽し気な笑い声を零す。

影はゆっくりと立体的になって……人の形を作り上げる

ひなた「では、手を打ってみますか?」

陽乃「……あるの?」

ひなた「大社が、巫女が受け取る神託によって行動するのであれば……神託を与えれば良いんですよ」

陽乃「貴女の力で、化かすつもり?」

ひなた「そうです。巫女に偽りの神託を授け、長野へと向かわせるんです」

九尾の惑わしの力を使って、神託を与える

もしもそれが可能なら、大社でさえ……操れることになるが。

ひなた「言っておきますが、幻を見せるくらい私なら造作もありませんよ?」


では途中ですがここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から


九尾、まさか神託の偽装ができるとは…
あとは他の勇者たちをどれだけ連れていけるかだな


そんな裏技が……


昨日もできなかったので、少しだけ。

あいあいさ


陽乃「そんなことして平気なの……?」

ひなた「騙すこと自体は平気ですよ。何の問題もありません」

陽乃「バレたりは?」

ひなた「永久的にその幻を見せるならともかく一時的に認識させ、それを記憶させるというのは容易です」

幻覚を見せ続けるのは労力がいるが、

幻覚を見た。という記憶を残すこと自体は、九尾の力に限ることではない

それに関しては、幻覚を見せられるであろう巫女側の問題になる

ひなた「神託を受ける巫女が、それを神託であると認識さえしてしまえば問題はありませんよ」

陽乃「貴女……今までそんなことしてないわよね?」

陽乃がそう言うと、

九尾が扮しているひなたは眉を吊り上げて、苦笑する

ひなた「そんな無意味なことをする理由はありませんよ」

陽乃「それもそうよね……」

ひなた「勇者である白鳥さんを仲間に引き入れるのは、リスクもありますがリターンも大きいと判断しました」

だから、特別ですよ。と、

九尾はまるで本当にひなたであるかのような笑みを浮かべて見せる


ひなた「しかし、久遠さんも認識している通り単独ではリスクの方が大きいです……」

陽乃「どうにもならないかしら?」

ひなた「以前も言いましたが可か不可で言えば可ですよ? それこそ……伊邪那美の力を用いてしまえば……」

たとえ、、周囲をバーテックスで埋め尽くされようとも

敵からの攻撃においては無傷で切り抜けられるだろうと九尾は話す。

陽乃は伊邪那美の力を使ったことはないけれど、

それは九尾よりも強力で、危険であることだけは先日聞いている

ひなた「ただし……それではリスクが大きすぎます」

陽乃「……それは駄目ね。最終手段だわ」

ひなた「最終手段だわ。ではありませんよ……無しです。高確率で死にますよ」

長野にいけるか否かで言えば可だが、

やはり、身体的負担を考えれば九尾以上に重く、死ぬ確率が高くなるだけだ

ひなた「ですので、偽の神託を出しましょう。勇者を連れ出せるように」

陽乃「それをして、こっちはどうなるの?」

ひなた「四国ですか? 連れ出す人数にもよりますけど、襲撃があった場合に結界が壊されれば全滅するかもしれません」

陽乃「……なら」

ひなた「少数精鋭。久遠さんを含めて3人か4人で行くという形にしたらどうでしょう?」


ひなた「戦力分散的に考えて、若葉ちゃんはこっちに残すことになりますけど」

陽乃「そうなると……郡さんも連れていけないでしょう?」

陽乃との関係の良さを考えると、千景は無理だ。

杏は自分が行きたいというはずなので、それについて来る形で球子もいる。

3人なら、陽乃・杏・球子になるだろう。

4人ならば、追加で友奈になる。

陽乃「乃木さんと郡さん二人きりにはできないし……郡さんを置いて高嶋さんを連れ出せないわよね……」

そんなことをしたら、千景の怒りはもうどうにもならないところにまで到達するかもしれないし、

最悪、一人四国を抜け出して追いかけてくるだろう

それを考えると、陽乃を含めて3人がベストだろうか

襲撃が確実に起きないと分かっていれば、全員を連れていくこともできるけれど。

陽乃「私と、伊予島さんと土居さん……貴女の見立てで行けると思う?」

ひなた「正直、難しいと思いますよ。杏さん次第かと……彼女が本当に戦えるのかどうか。そこですね」

戦闘のスタイルで言えば、

バリバリの前衛である陽乃、遠距離であろう球子と杏という形になっている。

陽乃が最前線で敵を引きつけた上で杏が各個撃破し、球子は杏を護りつつ……臨機応変に撃破するという流れになる。

杏が上手く戦えないという状態では、球子と陽乃の負担が大きい

陽乃ならどうにかなるだろうけれど

流石に、杏を庇いながらでは……球子は物量に押しつぶされる可能性がある


では、短いですがここまでとさせていただきます
明日は可能であればお昼ごろから


まあ勇者たちの精神面でも四国側の防衛の観点からいっても3:3が一番かなあとは思う


そもそも行動時期が原作よりも早いから陽乃さん含めて変身すらしてないけどどうするんだろう
あと死神の力ってこの時から九尾が止めるほど強いのか…



>>974
>>510見る限りでは酒呑童子クラスでは?


では遅くなりましたが、少しだけ

来てたか


陽乃「本当に勇者として戦えるのか確かめた方が良いのかしら……」

ひなた「そうですね。それが一番かと……」

ただ一つ問題が。と、九尾は困ったように眉を顰める

ひなた「彼女たちの為に作られている戦装束が完成していないんですよ」

陽乃「……それって重要なの?」

ひなた「そうですねぇ……」

神樹様の力の借り受けて大社が生み出そうとしている戦装束は、

生身では人間の身体能力を多少強化した程度に過ぎない勇者の体を、

より格段に能力向上させられる……予定である。

当然ながら、力の系統が不鮮明であるというのを理由に陽乃の分は製造されていないが、

それがあるのとないのとでは大きな差がある。という話である

ひなた「つまり、煮えたぎる鍋に素手で触れるか耐熱手袋を使うか程度の違いかと」

陽乃「重要なのね……いつごろ完成しそうなの?」

ひなた「さて……どうでしょうね。あと一ヶ月……二ヶ月もしかしたら半月でいけるかもしれません」

私には知る由もないことですよ。と、

九尾はひなたの顔で笑う


陽乃「それがない場合、伊予島さん達って……」

ひなた「さて、どうでしょうね。そこは分かりかねます」

陽乃「そこも、でしょう?」

九尾の嘯くような声色に陽乃は怪訝な表情を浮かべつつ、追及はしない。

九尾のことだから、

杏たちが本当に戦力にならないのかどうか

その程度の調査はしていてもおかしくはないはずだけれど。

陽乃「……でも、そうなってくると神託での強制派遣って危険じゃない?」

ひなた「そう……ですね。最悪長野には久遠さんお一人での到着もあり得ます」

陽乃「ダメじゃない……それ」

ひなた「久遠さんがお守りするか、お二人には強くなって頂くか……せめて装束の完成を待つか」

陽乃「………」

装束が完成していないとなると、

十中八九、今回の許可は下りないだろう

そのうえで偽の神託を出し……強制派遣をするかどうか。


1、神託、出して貰える?
2、とりあえずそれは候補に入れておくってことで
3、神託は無しよ。危ないわ

↓2

3

2


陽乃「とりあえずそれは候補に入れておくってことで良い?」

ひなた「そうですか」

陽乃「不満そうね」

ひなた「そう見えます? 確かに、少しだけ不満はありますが」

陽乃「……なに?」

ひなた「別に、余計な人間のこと考えなくていいのでは? と、思っているだけです」

ひなた……九尾は、冷めた瞳で陽乃を一瞥すると

扉の方へと目を向ける

ひなた「久遠さんは自分の命のことだけを考えていればいいんですよ」

陽乃「良くないわ」

ひなた「いいえ。道半ばで力尽きるような二人の勇者を代償に優秀な一人の勇者を連れ出せるなら十分だと考えるべきですよ」

陽乃「九尾……」

ひなた「私は真剣に言っているんですよ? からかっているつもりは微塵も――」

陽乃「そういう考え、嫌いだわ」

ひなた「……そうですか」

落胆したように肩を落とし、ひなたはそのまま影の中に溶けていく

相変わらず、九尾は陽乃とひなた以外は特別、庇護下に置くつもりはないらしい


1日のまとめ

・ 乃木若葉 : 交流有(長野、単独断念)
・上里ひなた : 交流無()
・ 高嶋友奈 : 交流有(電話、若葉に変更)
・ 土居球子 : 交流有(不許可の場合、信じてもいい)
・ 伊予島杏 : 交流有(味方の証明、不許可の場合、信じてもいい)
・  郡千景 : 交流無()
・   九尾 : 交流有(長野にいけるか、伊予島家の守護、襲撃の予兆、偽の神託)

√ 2018/08/03 まとめ

 乃木若葉との絆 58→62(普通)
上里ひなたとの絆 56→56(普通)
 高嶋友奈との絆 51→52(普通)
 土居球子との絆 40→43(普通)
 伊予島杏との絆 46→50(普通)
  郡千景との絆 21→21(険悪)
   九尾との絆 61→63(普通)


↓1コンマ判定 一桁

  0 連行  
1~6 不許可
7~9 単独許可
偶数ぞろ目 遠征許可 


↓2コンマ判定 一桁

1,3,9 で周辺住民


√ 2018年 8月4日目 朝:伊予島家

03~12 大社
37~46 若葉
51~60 球子
89~97 杏

↓1のコンマ

※それ以外は通常
※若葉の場合、一桁奇数で訪問

√ 2018年 8月4日目 朝:伊予島家


伊予島家にお世話になって二日目

杏のもとに若葉からの連絡が入り、

長野への遠征は許可が下りなかった旨が伝わってきた

単独だろうと、誰かを連れてでも許可が下りなかったため、

若葉はいったん、陽乃を大社預かりではなく寄宿舎で預かることにするつもりだという。

陽乃に害されることを警戒してひなたは大社預かりになるそうだが、

若葉もひなたも、それについては合意の上だ。

陽乃「……困るわ」

球子「どっちかが大社管理になる必要があるなら仕方がないんじゃないか?」

杏「久遠さんに害意がないことを伝えられば良いんだけど……」

球子「それができれば苦労しないんだろ?」

球子は顔をしかめながらも、

一応、考えてはくれているようで、気難し気な唸り声を零す。

球子「ひとまず、どっちかにするしかないと思うぞ」


杏「ひなたさんか久遠さんを大社預かり……」

陽乃「余計な禍根を残さないためには、私が大社の方に行くべきなのよね」

球子「郡さんのことがあるからなぁ」

千景は特別ひなたを気にしているわけではないけれど、

それを理由に陽乃に突っかかってくる可能性がある。

なので、陽乃が言うようにひなたを大社に残さずに

陽乃が大社のところに戻るべきだ

しかし、それは陽乃自身が好んでいないし、

だからこそ、若葉とひなたは自分からひなたを大社預かりにすることを選ぼうとしている

杏「久遠さんが協力的だと分かれば……ううん、それでも難しいかな」

球子「脱走があるけどなー」

杏「あぁ……」

陽乃「仕方がないじゃない……色々あったのよ」


1、大社預かりの間にあったことを話す
2、九尾の力を解析させれば、どうにかなるかしら
3、ねぇ、勇者としての鍛練をしましょう?
4、ねぇ、電話借りても良い?


↓2

1

2

1


では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から


杏たちの戦装束が出来てないとなると偽神託しても同行させるのは厳しいか…
若葉には悪いけど場合によっては単独で行かざる負えないかもな


一緒に行けるように修行開始なのかな?
頑張れ!

すみませんが本日はお休みとさせていただきます
明日はできれば通常時間から

乙ですー
そろそろ次スレだね

そうだね

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