【艦これ】提督「この絶望的な海へと」【あんこ】 (316)
自分のコンマを使っていきます
リハビリ(のリハビリ)です
申し訳無い
人間が大海原を駆け支配していたのはもう一昔前のこと。
そこは今ではもう悪鬼の如き化け物どもの巣窟である。
航空機による輸送すら滞るそんな時代。
あらゆる戦力は細く心許ないシーレーンに集中している。
人間は消耗品である。
“ 艦娘 ”は道具である。
それ以上の価値など有りはしない。
けれど、人間たちは諦めない。諦めることなどできない。
数多の犠牲を払ってでも勝負に出ていかなければ人間たり得ない。
世界の支配者たる我々が、霊長の長たる我々が屈するなどあってはならない。
敵を粉砕し、矜持を破壊し、尊厳さえ踏み躙らなければこの地に立つことさえできない。
生み出した化け物どもさえいつかは捨てる。
その覚悟と傲慢を胸に、いつ果てるとも分からない世界へーーーー
提督「…………」
【性格】
コンマ一桁
0.1……真面目
2.6……クズ
4.5……熱血漢
3.7……冷静
8.9……好戦的
【出自】
コンマ二桁
0.1……一般中流家庭
2.3……軍人家系
4.5……華族のボンボン
6.7……貧乏家庭
8.9……財閥系の次男
ゾロ目偶数……サイコパス
ゾロ目奇数……聖人
提督「家の為、国の為、人々の為、ねぇ……ふぅん? 」
【経歴】
コンマ一桁
0.普通
1.普通
2.ルーキー
3.普通
4.ルーキー
5.ベテラン
6.アホ
7.切れ者
8.畜生
9.普通
ゾロ目……ハイリスクハイリターン野郎
開幕絶好調ですね
サイコパス提督か
提督「どうでもいいことを延々と……」
【ルックス】
0.普通
1.普通
2.超絶イケメン
3.普通
4.普通
5.ただののっぽ
6.普通
7.普通
8.ドドドド不細工
9.ただのチビ
ゾロ目……筋肉ダルマ
ワロタ
キャラ濃すぎィ!
提督「自分を痛め付けるのも……いや、鍛えるのもさすがに飽きてきたな」
【目的】
0.安泰に
1.殺せればそれだけでいい
2.はつこひ
3.殺せればそれでいい
4.今は家の命令に
5.殺せればそれでいい
6.今は家の命令に
7.内乱
8.艦娘
9.今は家の命令に
ゾロ目……全部
提督「さて……そろそろ、来るか」
【最後に大事なこと】
01~33……速度
34~66……バランス
67~99……火力
00……そんなものは無い
人類が急速に衰退しつつある中で希望は、生まれた
“ 艦娘 ”と呼称されるそれらは、生きる兵器だ
海原を疾走し、砲弾の雨を抜け、化け物の腹に穴を開ける
吹き飛ばされた身体すら修復し、砲弾を放ち、海を赤く染める
女でありながら、兵器
兵器でありながら、兵士
兵士でありながら、女
円環に惑う彼女らは果たして俺の楽しめるものを見せてくれるのだろうか
【提督】
性格:クズ(サイコパス)
出自:軍人を多く輩出してきた家系
経歴:切れ者としてハイスピードな出世を続けている
ルックス:筋肉ダルマ
軍人となった目的:当面はお家の意向に従いたい
大事だと思うもの:火力
マッチョな切れ者サイコパス…濃すぎる!
金田一にいそう
提督「どうせ戦うのなら主力は火力を重視するべきだろう」
隠れながらコソコソと相手の裏を掻く、否
スピードを生かし慌てた敵を翻弄する、否
戦場とは計算と経験によって支配するゲーム盤だ
味方の損害を限り無く少なく留め
敵方のクズどもを最大限痛め付ける
破壊に必要なもの、それは真に火力をもって他には無い
焼き尽くせ、燃やし尽くせと目が吼える
絶望の喘ぎを聞かせろと耳が聳つ
肉の炭化した匂いを嗅がせろと鼻が泣く
味方すら恐懼する命令を出せと喉が渇く
己の痛覚に快感を齎せと魂が期待している
提督「重巡が二隻、空母が二隻、戦艦が二隻か」
他にも手駒はいるけれど
当面自由に使える道具は、その六隻らしい
脳筋じゃない筋肉ダルマとか勝てる気がしない
【重巡】
一桁目と二桁目
ゾロ目は狂……強化して再度
0.青葉
1.足柄
2.羽黒
3.高雄
4.愛宕
5.Prinz Eugen
6.Zara
7.最上
8.鈴谷
9.筑摩
事情により独断的面子なのはお許しください
提督「豪運王子と最上川くんか……なるほど」
【空母】
一桁目と二桁目
ゾロ目は狂……強化して再度
0.赤城
1.蒼龍
2.加賀
3.飛龍
4.雲龍
5.Graf Zeppelin
6. Intrepid
7.Aquila
8. Ark Royal
9.大鳳
事情により独断的面子なのはお許しください
ドイツ二人か
提督「またしてもドイツの未熟児と桜花輸送船ね……は? 」
【戦艦】
一桁目と二桁目
ゾロ目は狂……強化して再度
0.Bismarck
1.伊勢
2.陸奥
3.比叡
4.Гангут
5.山城
6.Littorio
7.大和
8.Richelieu
9.Nelson
事情により独断的面子なのはお許しください
提督「御召艦と旧時代最高峰の女、か。…………いいな、いいぞこれは。最高だ! 」
現在ほぼ自由に動かせる艦娘
【重巡】
Prinz Eugen
最上
【空母】
Graf Zeppelin
雲龍
【戦艦】
比叡
大和
Prinz「私は重巡、Prinz Eugen。よろしくね! 」
最上「ボクが最上さ。大丈夫、今度は衝突しないって」
Graf「私が航空母艦、Graf Zeppelinだ」
雲龍「雲龍型航空母艦、雲龍、推参しました」
比叡「金剛お姉さまの妹分、比叡です」
大和「大和型戦艦、一番艦大和。推して参ります! 」
提督「…………楽にしていいぞ」
ここ、横須賀からの反攻に際して最大限自由に動かせるのは今のところこの六隻のみ
「はい! 」なんて元気な返事を返してきた六隻の目はやる気に満ちている
かつての艦艇には無い肉の身体
かつての艦艇にしか無い鋼の無骨さ
そのどちらがいいかというと、決まっている
鋼の船体を轟音と共に進ませる船の方が万倍いい
兵器には兵器であるという実感が必要なのだ
殺される者、殺す者
それは双方にとって意識を変える鋭利な刃物だ
けれど、まぁいいだろう
これから先、俺の手腕でどこまでできるか試すのも面白い
取り敢えずは、火力重視の配置という願いを叶えてくれた愛しの我が家に感謝しておこうではないか
そして、何かを殺すことにしか進めない彼女たちに祝福を与えようではないか
提督「歓迎しよう諸君。我々は、今日この日よりこの国を、世界を救う鬼となる。
私に直接戦うことなどできはしないが、しかし。
諸君と戦い、笑い、怒り、泣き、時に傷付くことを誓おう。
私たちは家族だ。家族であり、戦友であり、そしてーーーー
ーーーー我々は一つだ。
心にも無いことを満面の笑みで言い放った
その俺を見た彼女たちの顔はきっといつまでも忘れないだろう
傑作中の傑作、それは最高の道化だった
そのうち、その顔が絶望に染まるのか
それとも希望通りに歓喜を炸裂させるのか
それさえ、今は俺の采配次第なのだから
提督「さて、早速出撃しなければ横須賀どころかこの国が終わるわけだが」
この国は今シーレーン防衛に重点を置いている
置き過ぎる程に置いた結果は太平洋側での圧倒的な蹂躙だった
護衛艦は焼き討ちの様に燃やされた挙句乗員ごと捕食され
タンカーは遊び半分に燃料を奪われ餓死を待たれ
迷える漁船はつまらないものの様に真っ二つにされ
人は、怯えながら近海をコソコソと漁場にするしかないグズに成り下がったのだ
だがつまらないことに海を跋扈する化け物どもはほぼ陸には上がれないらしい
陸に上がれないどころか陸地の近くにさえ殆ど寄っても来ない
そのため封鎖されたに等しい海も一見眺めただけでは静かだ
最上「呉にも行けたはずなのに横須賀なんて来てボクたちの指揮を執ろうとしたのはなんで? 」
提督「さて、ね……ま、そのうちな」
0.力試し
1.Extreme
2.力試し
3.Extreme
4.力試し
5.Extreme
6.力試し
7.Extreme
8.撃滅
9.撃滅
ゾロ目……覇道へ
中型の艦艇に座乗し指揮を執っていたわけだが、しかし
正直、驚きを隠せないどころか隠すことすら忘れていた
俺の子飼とも言うべき大和たちはある種分隊長とも言えるのだが
彼女たちから入る無線は冗談かと思う程に勝利と歓喜で溢れていたのだった
仕舞いには横須賀近海どころか周辺の海域にまで進出する始末
度重なる戦闘によって興奮した彼女たちは脳内麻薬が命じるままに敵を蹂躙し続けた
平時は人間並の力しか持たない彼女たちも一度海上に出れば悪鬼と化す
屠り、屠り、屠り、そして消し炭になってさえ屠殺の様な軽さで敵を引き裂いていく
万全には万全をと装備弾薬もバックアップ要員さえ用意したのが裏目に出たのだろうか
あまりにもゲーム感覚を強く持ち過ぎた所為で却って冷静に分析できてしまったのだろうか
俺の予測と采配が悉く当たってしまったのも不味かったのは確かだろう
指揮官を信頼できれば兵士は倍の力でも軽く出してしまう
そんなことを、思い出した
そのときには黒血を全身に纏い硝煙の臭いを纏わりつかせた彼女たちが
満面の笑みと高揚を携えて、帰投してきた後のことだったのではあるけれど
開幕からコンマ神の手洗い祝福受けてて草
大和「あなたは最高です! 提督」
最上「ははっ、まさか一戦目からこんな、こんなっ」
Prinz「最初はこんな国の人間なんてって思ってたけど
Graf「中々にやるではないか、Admiral」
雲龍「私が、こんなに戦えることを教えてくれて、ありがとうございます」
比叡「ヒエー! 」
提督「……せめてお前も何か言え」
俺は負けたかったのか、否
それでは不満か分かるのか、否
戦果を見てもそれは明らかだった
思う様采配を振るい道具を最大限に生かして完全なる勝利を得た
軍部や政府の覚えは大変目出度く、実家からは滅多に無いお褒めの言葉さえ送られてきた
多種多様なメディアの取材申し込みも既に多く寄せられ
今回の大勝利は意気消沈していた人々の活気を与えたと号外さえ出たという
では俺は喜んでいるのか、否、否、否、否!
つまらない実家の名誉なんて気にしたわけじゃない
下らない理想の為に指揮を執ったわけじゃない
俺は、俺の為に軍人になり、俺の為に出世を繰り返した
俺は、俺の為だけに今回も勝利した、筈だ
けれど、何かが、引っかかっている。何か、物足りないのだ
敗北を知りたいとかそのうち言い出しそう
別にグロい死体を見たいわけではない
凄惨な死体なんてものは軍人でなくたってこのご時世どこでだって見ることができる
乏しい資源、荒廃した海辺、荒んだ人心
暴騰した犯罪率は世界的に見ればまだマシだったのだったか
何が、何が俺に必要なんだ
ただ、つまらないままに生きてきたことは認めよう
お家の意向のままに出世を重ねてきたことも同じだ
いつか己の目標なんてものが見つかればいいとは思っていた
その為に周囲を認めさせる為だと己を偽り自分を殺してきたことも認めよう
それが国の為人々の為になったことは瑣末事なのだ
人々を救ったことには何も感じない
お家の為になったことなど寧ろ腹立たしい
国なんぞ無能なグズどもの集まりであってどうでもよろしい
艦娘どもは道具の分際で俺を誉めそやしやがる
どうした、いや、どうすればいい
ここまで簡単に事が運んだのはどうしたことだ
簡単に進んだ未来に俺はいないではないか
何故、何故ここにおいても何をすればいいのか分からない
俺は、結局はまだ、迷子のままなのだ
提督「…………ふぅ」
劇的な、あまりにも劇的な勝利から十日
漸く身辺が落ち着いてきたある日の午後
纏わりつく艦娘どもを笑顔と忍耐で追い払い
鳴り響く取材斡旋の電話は軍令部や海軍省に押し付けて
美しい夕陽を眺めながら黒々としたコーヒーを飲んでいる
相も変わらず人生の迷子になったことは一先ず棚上げだ
これから何度でも出撃の機会はあるだろう
まさか国家的英雄の反攻作戦に反対などしまい
装備の開発は前にも増して快調らしい
技術屋どもは一々五十歩百歩の進捗など送ってこないでほしいが
気分転換に女を抱きに出るのもいい
最近は激務であまり触れてこなかった感触だ
或いはこの鬱屈が加虐に目覚めてくれるかもしれない
そうなれば、目の前でそれを創り出してしまうことにも意味があると思えるのだが
提督「さて……どうしたものか」
【日常パートこそ危険だと思うの】
0.艦娘
1.急襲
2.父親
3.風俗
4.父親
5.艦娘
6.役人
7.艦娘
8.軍人
9.艦娘
ゾロ目……陸軍(はぁと)
提督「いや待てよ? あいつらだって今はただの女なわけだが……」
性産業の世話にでもなろうかと考えていたときのこと
ふとした思い付きに少しだけ鬱屈が晴れた様な気がした
“ 艦娘 ”
彼女たちは本当に不可思議な存在だった
鉄やボーキサイトの錬成によって生まれることもある
人間を憑座に生み出すこともできる
海上で発現することさえある
しかも人外の超常的な力を行使して化け物に打ち勝つ能力を秘めている
そして、その全てが、女だった
提督「男にもなれるのなら喜んでなったものを、な」
この世に本気で楽しめるものを見つけたことが無い様な俺にだって
興味を惹かれているものは幾つか有る
その最たるものに、近付いてみるのもいいだろう
或いは彼女らがつまらないものであったとしたらそれもいい
放置してしまうもよし、諦めて雑談で時間を潰すのもいい
幸い俺の元にいる彼女らは全員が見目麗しい女たちだ
或いは心を堕とすか、それとも無理矢理身体を壊すか
何にせよ救国の英雄が誹られることなど無いだろう
悪辣なことをするなど想像もされないに違いない
提督「暇潰しとしては、もってこいではあるな」
【はい】
0.Prinz
1.雲龍
2.最上
3.重巡組
4.大和
5.戦艦組
6.Graf
7.空母組
8.比叡
9.全員
ゾロ目……執務室襲来
なるほど重巡
でもよく分からない組み合わせ
そしてぶっ飛んで行方不明な展開
そのうちまた来ますのでよろしくお願いします
ありがとうございました
おつ!
果たして今回はどうなることやら…バッドエンドだけは勘弁な!
おつおつ
復活おめ
おつおつ
とりま提督はミスターアンチェインをイメージすることにしました
少しだけ投げていきます
また来ますので……
Prinz 「だからね? Admiralは絶対Bismarck姉さまを気に入ると思うの」
最上「どうかな? あれで中々何考えてるのか分からない人だし」
Prinz 「そんなわけ。男の人なんて考えてることは皆一緒なの! 」
最上「うーん……金髪美女に夢中になる提督かぁ」
Prinz 「……」
最上「……」
Prinz 「……」
最上「……」
Prinz 「……不気味だね」
最上「あの筋肉ダルマで必死に笑顔つくろうとしてる姿はちょっとね」
提督「…………何か問題でも? 」
Prinz 「?! 」
最上「?! 」
別に彼女たちにどの様な評価を下されてもどうということは無い
寧ろ、俺がそんな姿を見せるに値する相手なのならば、素晴らしい
紹介してくれ、と頼んだときは何とも言えない顔をされてしまったが
人様を化け物か何かの様に見るんじゃない
化け物は自分たちじゃないか
【楽しい楽しい日常】
0.二人について
1.この前の戦果について
2.最上について
3.二人について
4.提督について
5.Prinz について
6.提督について
7.次の出撃について
8.提督について
9.二人について
ゾロ目……所謂“ 秘書艦 ”について
【二人について】
提督「どうかな。これでも甘いものには目が無くてね」
Prinz 「美味しい! すっごい美味しいよこれ! ね、最上? 」
最上「ははは……ま、美味しいけど……意外だね、提督」
提督「よく言われる。だが時々息抜きが無いと鍛錬に励みつつ執務など取れん」
実際は甘い食べ物など値段の割に大した楽しみではないので好きでも嫌いでもなかったが
けれど女というものは得てしてこういった話題に飛び付くものだ
時折いる甘味の嫌いな女もまさか上官との談笑を拒否などしまい
正直に苦手だと言えるのならその次があるかもしれないくらいの違いである
提督「ま、摂ればその分汗として流さなければならないのが辛いところだが……二人とも」
Prinz「うん? 」
最上「何? 」
提督「俺はあまりクドクドと言葉を並べるのが好きじゃない。結論だけ言えと言ってしまうタイプだ」
最上「知ってる」
Prinz「まぁ、分かりやすい人なだけ助かるけど。それで? 」
提督「二人は、“ どのタイプの ”艦娘なんだ? 」
Prinz「……」
最上「……」
提督「言いたくないのならば構わない。今後の査定や作戦に関わる訳ではないからな」
【楽しい楽しい雑談】
一桁目:Prinz
二桁目:最上
0.元人間
1.工廠建造
2.海上ドロ
3.元人間
4.工廠建造
5.海上
6元人間
7.工廠建造
8.海上ドロ
9.分からない
ゾロ目……ふふ、覚えてないの?
Prinz「んー……別に隠すことでもないし。私は海上で発見された迷子ちゃんだよ」
最上「ボクは……ボクも別に言ったっていいけどさ、そんな情報ボクらの経歴が載った書類で確認できるよね? 」
Prinz「最上? 」
提督「そうだ。俺はそもそもお前たちの生まれなんかに興味は無い。だから見てもいない」
最上「それなら、何で今、訊いたの? 」
提督「なに、意味なんて無いさ。強いていえば雑談レベルでも出されたくない話題だと俺が理解するだけだ」
最上「…………」
Prinz「あー……あ、えーっと」
その顔を出さない様に注意した方がいいぞ、幸運王子
それでは気を遣っていると言ってしまっているのと同じだ
最上だって、そんな殊更辛そうな顔をするんじゃない
また、見たくなってしまうじゃないか
最上「ううん……いや、本当問題は無いんだけど……そっか」
提督「……あぁ」
気を遣っていると主張する様な声音ではなく
さりとて無関心の冷たい声ではなく
俺の低い声はどうやら相手を安心させることができるらしい
本心ではなくても相手を油断させられるのは、いい道具だと常日頃思っている
そもそも彼女たちの履歴書なんていうものは配属が決まった日から分かっている
なんなら既に暗記しているまである
最上は、元人間の艦娘だ
最上「ボクは元々提督と同じ……うん、人間だった艦娘さ」
Prinz「最上……」
知っている
最上「事情はちょっと言いたくないけど……まぁ、止むに止まれぬ、ってやつかな」
提督「なるほどな……」
最上「……」
Prinz「……」
提督「……紅茶のお代わりでも淹れてこよう」
最上「あ、あぁ……うん」
茶葉を蒸らしカップを温めながら考える
やはり、艦娘というのはどこも同じなのだ、と
基本的に艦娘とは人外の化け物ではあるものの思考は人間だ
悲しければ泣き、痛ければ叫び、嬉しければ笑い合う
故に彼女らへの給金は破格だ
サラリーマンの生涯賃金など数年働けば稼いでしまう
だから、犯罪率が高騰し貧富の差が蔓延した世界では最上の様な者も多い
過去を捨て生命を繋ぐために戦場に出る
そしてそれは文字通りの転生であった
過去の、艦娘になる前の自分を覚えていられるかはフィフティフィフティ
適合者の中でも数百人に一人の割合でしかないという
だから、本来であれば“ どんなタイプの ”などというのは瑣末なことだ
海上での発見だろうが工廠産の人造だろうが化け物であることに変わりは無い
親なんてものはいないし、帰る家なんてものは存在しない
国家と世界がそれだ、と冗談の様に教えこまされる
けれど、やはり当人や周りにとっては違うらしい
“ あれは、金と美貌の為に自分を売った悪魔の成れの果てだ ” と
最上が過去を覚えているのかは分からない
彼女の履歴書は無味乾燥なもので、彼女の感情に関わる部分には一切触れていなかった
本来であれば俺としてもどうでもいい切り捨てるべき些事であった
寧ろ抉り出さない方が最上もまともに戦えるだろう
けれど、何か気になったのだ
Prinzならば自らが海上産であると言うのは分かっていた
数日見た彼女の感情からも
それに暗記している経歴から特に隠すことでもないということからも
Prinzが言った後、最上がどう反応するかが気になった
よもや怒りに燃えるなどということは無いと思っていたが
提督「…………つまらんな」
本当に、つまらなかった
まるで予想通りの一度観た演劇の様な流れ
ショックを受けた様な顔をして
俺とPrinzの表情を確認して
目を伏せて吃って
それから諦念を滲ませて真実を告げる
提督「俺の予想に反してみることさえできないのか、あいつは」
紅茶のお代わりを持って行ったときには、元通り
既にPrinzとメイクや冬物について話していた
もうあの話は、終わり
そんな無言のメッセージさえ、俺が紅茶を代えるなんていう分かりやすいそれへの返答だった
本当に、本当に、あいつらは
提督「つまらないやつらだな」
提督「分かりやすいフラグは立った気がするが……最上だけに入れ込むのも面倒だろうな」
【暫くまだ日常。勝ってよかったね】
0.Prinz
1.雲龍
2.最上
3.重巡組
4.大和
5.戦艦組
6.Graf
7.空母組
8.比叡
9.全員
ゾロ目……執務室襲来
大和「提督? しっかり休んでいますか? 」
提督「ん? まぁ、しっかりかどうかは知らないが……そこそこにはな」
大和「……」
お前には関係無いだろう、とは言わない
俺自身の性格なんかではなく、それは彼女たちにとっても重要なことだからだ
自分たちが生命を預ける上官が体調不良で万全ではないなんて酷い悪夢だろう
比叡「司令は余裕でしょー。三日くらいなら寝なくても平然としてそうだし」
大和「ちょ、比叡さんっ」
提督「当たらずと雖も遠からず、だが……ま、睡眠は取っているさ。いつ敵が来るかも分からないからな」
本当は面白いことがいつできてもいい様に、だが
まぁ、嘘を言っているわけではない。睡眠はしっかり取っている
大和「そうやって適当なことを言っているとそのうちーーーー
比叡「ヒエー……」
大和がつまらないことを長々と話し始めた
折角上官が時間を取って雑談に興じてやろうというのに……まったく
半分寝た様な顔で聞いている比叡もそれはそれでどうなんだ。一応は敬すべき相手だろうに
提督「…………はぁ」
時刻は夕方十五時を僅かに過ぎたところ
気分としてはもう今日は終わった様なものだ
だからこそ、大和からの茶の誘いに乗ってみたのだが
【紅茶ぱーりー】
0.二人について
1.この前の戦果について
2.最上について
3.二人について
4.提督について
5.Prinz について
6.提督について
7.次の出撃について
8.提督について
9.二人について
ゾロ目……所謂“ 秘書艦 ”について
ちょっと用事入りました
また、そのうち……
おつー
大和「そういえば……提督」
提督「うん? 」
大和の説教染みた話が脱線に脱線を重ねて武蔵への愚痴に変わった頃
既に比叡は睡魔に負け、大和ですら俺かカップに話しかけているのか分からなくなっている様な頃
漸く思い出した様に話が俺に回ってきた様だ、遅い
これならば先程から今までの時間に明日の出撃編成くらい組めたと思う
大和「提督のことを、聞かせていただいても? 」
提督「大和たちが面白がる様なことは無いと思うが」
比叡「お説教以外ならなんでもいいですよー……ふぁ」
大和「いえいえ、私たちは籠の鳥で外の話なら何でもいいんです。
況してやそれが“ 私たちの提督 ”のお話ならーーーー
【果たして核心に迫れるか】
0.筋肉について
1.今後について
2.実家について
3.実家について
4.筋肉について
5.子供の頃について
6.今後について
7.実家について
8.筋肉について
9.今後について
ゾロ目……大和について
【今後について】
大和「それなら……今後はどの様な作戦をお考えですか? 」
提督「今後、か」
知らず知らず渋面をつくっていたのかもしれない
大和は俺が話したくないと思っていると勝手に察してくれたらしい
話したくないというよりは実家や幼少時の話など特に語る記憶を持たないだけなのだが
まぁ、確かに嘘っぱちの即興トークを聞かされるよりは彼女たちも今後について話された方が有意義だろう
それを彼女たちが認識することなど無いだろうが
提督「そうだな……知っての通りお前たちの活躍で横須賀近海どころかこの国の太平洋側は随分と安全になった」
大和「とは言ってもそれはこの国沿岸の極局地的な話でしょう? 」
提督「まぁな。精々が多少安心して漁師たちが海に出られるくらいか」
比叡「私たちはどうせ軍の徴発でご飯くらい食べられますけどね」
提督「そう言うな。あれはあれで徴発しなくなれば俺たちの評判もずっとよくなるというものだ」
比叡「ふぅん……そんなものですかねぇ」
大和「ん、んん……まぁ、食糧の話はいいでしょう。私たちにできることはあまり無い分野です」
提督「そうだな」
大和「ですけれど……大和たちが敵を蹴散らした所為であちらも反撃の用意をしているでしょう」
比叡「寧ろその方がいいんじゃない? 各個撃破するなんて面倒ですし」
大和「比叡さんっ」
提督「まぁ、待て大和。比叡の言っているとことは雑に過ぎて頭の悪さを露呈しているが正しいといえば正しい」
大和「はぁ」
比叡「ヒエー! さすが司令話が分かる」
お前の耳は特注なのか、と言いたいところである
あまりにも都合良く聞いたり聞かなかったりし過ぎではないか
提督「横須賀近海は彼ら深海の化け物どもの勢力圏における空白地帯になってしまっている。
今までのデータを分析すればその後の動きは猿でも分かる単純さだ」
そう、彼らは陸には近寄らないくせに海は網羅したがるのだ
大敗を喫して空いた穴は是非とも埋めたい筈だ
大和「それでは、こちらから攻めるのではなく万全の態勢で彼らを迎え撃つと? 」
提督「その方が損害は少ないだろうな。こちらも無駄なコストを払う必要が無い」
大和「…………そう、ですか」
提督「? 何か、不満か? 」
大和「いえ、提督の判断に否やを唱えるつもりは
比叡「大和さんはですねー、まだまだ暴れ足りなくて身体が疼くとかなんとかさっきも熱べぅえらっ?! 」
大和「…………黙って」
提督「やり過ぎだろおま……いや、まぁそれでも構わないよ、俺は。寧ろこちらから攻めるべきだ」
大和「提督? 」
提督「大攻勢とはいっても敵の本丸などどうせ出ては来まい。
精々が太平洋側の勢力をある程度集めてこちらに来るだけだ」
大和「それとて私たちが経験したことの無い規模になることは間違い無いでしょう? 」
提督「そうだ。だからこそ、俺は出来る限り敵の戦力を削っておくべきだと思う。
お前たちには、いや、俺たちにはそれができる。だろう? 」
大和「……」
比叡「……」
「…………」
いつしか、不満顔で心の裡を燻らせていた大和も
眠気との戦いに負けて雑な反応をしていた比叡も
それから談話室中に散らばっていた艦娘や将兵たちも
皆が、俺の話の観客となっていた
まるでそう、これから出征を迎える兵士たちに最期の言葉を与える様に
こういうとき、俺の低く通る声はとても便利な道具となる
ーー人間は、負け続けてきた
その耐え難い汚辱に、しかし反駁など有ろう筈も無い
ーー人々は、鬱屈し犯罪に手を染める者までいる
何人かの聴衆が目を伏せ目を瞑ったり呻きの様なものを吐く
彼ら彼女らの中にもいるのだろう。被害者であるのか加害者であるのかなど知らないが
ーーだがお前たちには、できるじゃないか
ーー我々人類の叡智、不屈の闘志、積み重ねてきた悲劇への反骨が、それをさせるのだ
そうだ! そうだ! 俺たちには! 私たちには!
冷めていく俺の心とは裏腹に、談話室の熱は加速度的に上がっていく
聴衆はいつしか、ただの群衆に成り下がっている
ただ俺の誇大妄想染みた煽動に乗るだけの馬鹿な木偶にまで
ーー大人しく敵を待つなど国が許しても俺が認めない!
ーー俺たちが、お前たちだけがこの先の未来を勝ち取る力と意志を持っているのだ!
ーーこちらから会いに行ってやろうではないか。敵の驚く顔を粉砕してやろうではないか!
ーー我々に負けなどあり得ない!
そうだ! 負けるなんてあり得ない!
ーーだが、お前たちの何人かは二度とこの地を踏めないだろう、それでもいいのか!
構いません! 人々の為に! 国の為に! 妻の為に! 息子の為に! 大切な人々の為に!
瓏々と響くバリトンと、熱に浮かされた烏合の集と
意志と闘志の乖離がキチガイ染みたユニゾンを練り上げていく
ーーお前たちは皆救国の鬼子とならなければならない
彼らを死に駒にできないのは、確かだ
ーーお前たちは敵に慈悲など掛けてはならない
化け物へ与えるのは惨めな死であらねばならない
ーーお前たちは! 皆次の一戦で死ぬのだ!
それでいい、そうであっても変わらない
俺が楽しいのならば、どうとでもなるがいい
精々遺族年金くらいは多めに出るのかもしれないが
ーー約束しよう! 今週末には、お前たちが海の先で敵を屠っているであろうその未来を! 栄光ある未来を!
栄光ある未来を! 栄光ある未来を! 栄光ある未来を! 栄光ある未来を!
栄光ある未来を! 栄光ある未来を! 栄光ある未来を! 栄光ある未来を!
栄光ある未来を! 栄光ある未来を! 栄光ある未来を! 栄光ある未来を!
栄光ある未来を! 栄光ある未来を! 栄光ある未来を! 栄光ある未来を!
栄光ある未来を! 栄光ある未来を! 栄光ある未来を! 栄光ある未来を!
提督「…………これで、答えになったかな? 」
大和「へ? ぁ、え……ぇ? 」
比叡「ヒエー! さっすが司令ですねぇ! 」
提督「…………」
何も考えていなかったのか素直にテンションを上げている比叡と
熱気に当てられ場の空気に没入していた大和と
吐き気のする空間を自分で創り出した俺と
兎も角、これで後には引けなくなった、けれど
上官や軍令部への根回しは簡単だろう
この先の戦闘だって俺にならばどうにかなる
結局、そこに俺の求めるものがあるのならば、他は瑣末事だ
提督「…………幸せなやつらだな、まったく」
この熱気が鎮守府中に広がれば戦意は高揚するだろう
その効果と意味を考えれば、これがただの無駄な演説だったとは言えない
それだけが、今は重要なことだった
提督「あと三日、か」
こちらから打って出るという上申はすんなり通った
加えて新しいバックアップや資材までくれるらしい
まったく、くだらないものだ
【日常がここで終わらないといいね】
0.Prinz
1.雲龍
2.最上
3.重巡組
4.大和
5.戦艦組
6.Graf
7.空母組
8.比叡
9.全員
ゾロ目……執務室襲来
なるほどまた戦艦組……なるほど
空母組が今のところ空気未満
取り敢えずまた休憩いただきます
おむおつ
大和「提督! 」
提督「うん? 」
執務室に缶詰になっているのも飽きてきた頃
誰かを暇潰しの相手にしようと談話室という名の演説場へ
どこに座ろうか、それとも茶菓子でもいただこうかと考えていたとき
入室した途端に声を掛けてきたのは、大和
ついでにまたもや眠たげな顔の比叡もいる
お前はもう少し寝た方がいいんじゃないのか
大和「いよいよですね! 大和、今から腕が鳴ります! 」
比叡「私もまぁ、そこそこ? 」
提督「そこそこでは困るんだがな……っと、ここ座るぞ」
さすがに今回は無駄に疲れることをしたくない
目を輝かせた大和を見ればまたぞろ熱の籠った抱負でも熱弁されそうではあったが
提督「…………」
【第二回紅茶ぱーりー】
0.二人について
1.比叡について
2.大和について
3.二人について
4.提督について
5.大和について
6.提督について
7.比叡について
8.提督について
9.二人について
ゾロ目……所謂“ 秘書艦 ”について
大和型一番艦、大和
旧い時代、今際のこの国が生み落した稀代の鬼子
本来であれば敵を紙屑の様に薙ぎ払う筈だった最終兵器
けれど、時代は彼女を選ばなかった
勝てる筈の無い無謀な作戦に浪費され
終局たかがプラモや映画でしかその栄華を見せなかった時代錯誤
大和「提督? 」
提督「ん? あ、いや……そうだ大和、聞きたいことがあったんだ」
大和「私に? 提督が? 」
嘘でしょう? そんな表情がありありと
それがどんな意味なのかは敢えて訊かない、興味が無い
提督「あぁ……お前のーーーー
【鬼が出るか蛇が出るか】
0.戦意について
1.経歴について
2.戦後について
3.戦意について
4.経歴について
5.戦後について
6.戦後について
7.戦意について
8.経歴について
9.戦意について
ゾロ目……身体について
提督「お前のその、戦意についてだ」
大和「戦意、ですか」
比叡「ヒエー……お姉さまぁ…………Zzz」
話の中心が大和になったことで面倒な流れだとでも思ったのだろう
比叡は上官の前だというのに余裕の表情でどこかへ飛び立った
だからお前はしっかり寝ろ。お姉さまが寝させてくれないとでもいうのか
提督「あぁ。確かに艦娘の中には狂気染みたバトルジャンキーもいるにはいる。
“ 大和 ”はその中でも前身を含めて戦いを望む者が多い様だが」
大和「えーっと……」
提督「お前の戦意が高いことは、喜ばしいことだ。今現在俺が使える駒の中ではお前が文句無しに最大戦力だからだ」
大和「……戦、力」
提督「だがそれは戦場に限った話だ。俺はあくまで戦場での指揮を揮うだけの存在。
お前の戦意が高いのを喜ぶのは指揮官としての俺だけだ」
大和「あの、お話が見えません」
提督「悪いな、どうも口が上手くないんだ、俺は」
大和「そ、そんなことは」
提督「構わない。そうだな……面倒なことは、無しだ」
ーーお前は何故、そこまで戦いたいんだ
大和「…………」
提督「いや、答えにくいのなら構わ
どうせ俺には理解できない答えしか返ってはこないだろう
それならば、敢えて彼女の戦意に傷を付けてまで訊ねようとは思わない
そう伝えようとしたときのことだった
大和「待って、ください。私が、戦いたい理由は」
提督「あぁ」
それは、とても簡潔で、そして、共感できるものであった
立場も何もかもが、異なった存在だというのに、それは
とても、何か甘美な感情の共有だった
ーー私は、それしか与えられていませんから
ーー私は、戦うことこそが意義だと、周囲も、私の意識すらそう言うのです
ーー戦え、戦って殺せ、そして死ね、と
ーーだから、私は戦うのです
大和「私が、本当に欲しい未来を見つける為に」
提督「大和型一番艦大和、ね……なるほど、多少は面白い、かもしれん」
何の為に戦うかは与えられた影だけれど
その先を得る為に敢えて従ってやっている
少なくとも、俺はそう判断したのだ、彼女の意志を
それならば、従ってやろうではないか
一方通行の共感と仲間意識を気取られること無く
彼女が何かを見つけることが、自分にも意味のあることだと願って
【作戦開始のお時間です】
0.敵艦隊本体
1.遊撃隊
2.雑魚
3.雑魚
4.敵艦隊本体
5.遊撃隊
6.遊撃隊
7.敵艦隊本体
8.雑魚
9.雑魚
ゾロ目……陽動作戦(はぁと)
なるほど……なるほど
今日のところはここで中断します
何度も変に中断して申し訳ありませんでした
ありがとうございました
おつおつー
おつおつ
今日は本当に少しだけです申し訳無い
【主力が会敵したのは、どうやら遊撃隊のようです】
提督『……やられた』
大和からの通信は極簡潔なものだった。
敵艦見ゆ、攻撃に入る、交戦中、敵艦隊殲滅せり。
大和『そもそも大した戦力を用意していなかった可能性もありますが』
提督『有り得ない。敵が大艦隊を編成する前にこちらから打って出たんだ。
あちこちに点在していることはあっても中途半端に集まっているとは考えられない』
大和『ですから、戦力を集中する途中だったのでは、と』
提督『…………』
大和『提督が座乗している艦の周辺にも、こちらの遊撃艦隊の周辺にも敵影は無いのでしょう? 』
提督『あぁ……それならば横須賀鎮守府に奇襲をかけるべきだ、が』
大和『そちらにも現れてはいない』
提督『…………』
横須賀のやつらなどどうでもいいが俺の地位を保全するためには無傷でいてもらわねば困る。
どうせならばあのクズどもだけ焼かれてしまえばいいのだが、そうもいかない。
大和『…………周囲を警戒してみますか? 雲龍さん? 』
雲龍『いけるわ。いつでも言って』
提督『いや、要らんだろう。通常の警戒態勢で構わない』
雲龍『そう……』
大和『…………各要港部等の拠点からも? 』
提督『あぁ。横須賀隷下の各拠点は何も言ってこない。気付く間も無く焦土にされていれば分からないが』
大和『ご冗談を。だとして緊急回線を繋ぐ間も無く消滅させられたと?
まさか大規模な妨害電波なんて彼らに発生させられるはずが……』
提督『…………』
大和『…………』
提督『…………』
大和『…………? 』
提督『…………ふん』
大和『はい? あの、提督ー? 』
提督『…………よし』
大和『? 』
提督『…………面白いことしてきやがるな』
大和『は? 』
提督『残敵があれば掃討しつつ最大速度で帰ってこい。すぐ、仕事になる、かもしれん』
大和『はい? あの、ちょ提督! 』
提督『通信終わり』
大和『えっ、ちょっ私にも説明しっ
提督「……………………」
今回の作戦は敵が大反攻に入る前にこちらから打って出て出鼻を挫くというものだった。
敵が大艦隊を集結させるであろうことはこれまでの蓄積データからも十分な蓋然性で予想されている。
しかし、敵は見えない、攻めてはこない。
中途半端に集まった統制もままならない集団が数個。
敵はどこに行ったのか。
決まっている。伊豆諸島よりも外回りに九州方面へ向かっていったのだ。
硫黄島に詰めた馬鹿馬鹿しい程の防衛戦力も挟撃を狙った大和たちも無視して佐世保へ一路。
それからその後五島列島や対馬を抜けて呉を攻める、なんていうことはさすがに考えられない。
それではさしもの大艦隊も我が国の最強戦力に敗北乃至大損害を被るだろう。
化け物どもの損得など知ったことではないので損害を無視して吶喊した可能性も無いではないが、しかし。
恐らく彼らはそのままシーレーン方面の手薄な防御を破砕するつもりだ。
俺ならそうするし、誰だってそうする。
そちらを取られてはこの国は首元に刃を突き付けられたに等しい。
漸く解放した太平洋方面の防備も削らざるを得ないだろう。
台湾付近か、それともフィリピン付近か。まさかブルネイやベトナムまで入り込む程の勢力があるとは……
提督「…………さて、どうするか」
このまま横須賀で黙りを決め込んでも俺の評価は下がらない。
こちらとて再度横須賀から硫黄島までの海域はほぼ平定したのだ。
それならば佐世保や呉、ブルネイに通報して敵への注意を促せばいい。
さすがに敵の接近よりはこちらの連絡の方が、早い。
それとも大和たち主力のみを輸送機に載せて運んでみるか。
本土の上を飛べば撃ち落とされる心配もまず無い。
敵に滅茶苦茶にされたシーレーンのどこかを奪還、乃至攻撃させてみるのは面白いだろう。
彼女たちの働き如何によってはさらに俺の評価は上がる。
それに、或いは大和が見つけるべき何かも見つかるかもしれない。寧ろ、今となってはそれだけが好材料。
提督「…………五分、ですらないな。ブルネイとてまず落ちまい」
艦娘が全身をフル励起したのなら一時間も掛からずに合流できるだろう。
況してや無駄に疲れる演説で士気が振り切れた彼女たちだ。
そのまま輸送機に載せたとしてより高揚する可能性が高い。
提督「…………」
しかし、予測が外れている場合はどうにもならない。
どこかの海域に潜んでいるのか、東北方面へと抜けていったのか、はたまた影の様に一瞬で硫黄島を制圧したのか。
そのどれかであるのなら横須賀で待機していなければならない。そうでなくてはこの国が太平洋を臨むことは二度と無いかもしれない。
……それはそれで、面白いかもしれないが。
提督「考えがまとまらんというのも愉快な……む? 」
目の前には、誰が置いたか十面ダイス。
海図や大和たちとの通信設備、それから参謀たちの私物。
その中にあって、それは一際輝いて見えた。
提督「ふ……これで失敗したら、大和がキれるな」
そもそもこの国の人々や政府は半狂乱になるだろうが、知ったことか。
どうせこんなもので作戦を決めたなど誰も信じまい。
提督「俺に運がまだあるのかどうか、試してやろうじゃないか。……ほぅら」
コロンコロン、コロコロ、コロン……
賽は、投げられる。今から、何処かへ。
才は、決められる。今から、未来へと。
祭は、始まる筈だ。悪夢か、祭典かが。
提督「ふ、ふふふふふ……はははははっ」
久々に、心からの笑みが滲み出る。
凍った表情筋が笑みの振動で崩れ去る様だった。
【祈れ】
0.横須賀待機
1.横須賀待機
2.南方へ
3.南方へ
4.南方へ
5.横須賀待機
6.横須賀待機
7.南方へ
8.横須賀待機
9.南方へ
ゾロ目……出せる限りを南方へ
これだけです申し訳無い
明日、というか今日はたぶんもうちょっと早く多目になんとか
ありがとうございました
おつおつ
残念ながら今日も少ししか……なのでsageのまま
大和「正直に言えば、意外でした」
提督「俺が動かせる戦力を横須賀に全て残したことがか? 」
一部、俺の管轄からも佐世保にやられてしまったが問題無い。
彼ら彼女らは軍令部や陸軍、複雑に絡み合った権力の渦に飲み込まれたと思えばいい。
元より、そんな不安定な戦力など当てにしてなどいないし、計算になど入れている筈が無いのだから。
大和「ええ。提督は、倒せる敵を全て倒し尽くしたいと渇望する様な人だと思っていましたから」
提督「少し、違うな。倒すべき敵を認識することができる、くらいなのが俺だ」
大和「はぁ……」
提督「そろそろ分かるさ。俺とお前は、似ているんだから」
大和「? 」
提督「望むものが何なのかすら分からないままでは、死ぬに死ねないだろう? 」
大和「まぁ…………似ている? 私と、提督が? 」
横須賀への帰路で大和たちと合流してから暫く。
佐世保やラバウルを始めとして内地から外地まで全てに通報は終えている。
敵は、きっと南方かその途上に現れる。
俺が何かを見つけるのなら、それは追い込まれ仮面を剥がれたとき。
大和が何かを見つけるのなら、それは同胞を傷付けられ憤怒したとき。
それに、戦うのなら敵の動きと位置を把握していた方がやりやすい。
佐世保かはたまた外地のどこかを餌にできるのならばそれを選ぶべきだ。
躊躇いなど、あってはならない。
雲龍「提督! 軍令部からの通信回しますッ! 」
提督「おう。……さてさて、俺の運はどこまで導いてくれるのかーーーー
【転進】
0.佐世保
1.南シナ海
2.呉
3.南シナ海
4.佐世保
5.呉
6.南シナ海
7.呉
8.佐世保
9.三箇所全て
ゾロ目……硫黄島近海
提督「ふっ、ふふふふふふ……あっははははっ! 」
Prinz「」
最上「」
比叡「……Zzz」
GZ「気色悪い……このAdmiralが高笑いなど明日は槍でも降るのか? 」
雲龍「私潜水艦じゃないから海に逃げられないのだけれど」
大和「そういうこと言ってる場合じゃないでしょう比叡さんはこんなとき寝ないでくださいGrafさんも変に達観しないで提督はいい加減笑うのやめて! 」
提督「ふふふ……いやいや、悪いな……しっかし、やってくれるな化け物どもは」
軍令部から急報が入るとほぼ同時に各地から凶報も入電してきた。
佐世保、呉からはこちらの予想通りに大規模な敵群を確認しただちに迎撃に入るとの旨。
南方、南シナ海方面からはルソン海峡を越えて突如敵艦載機が侵攻してきた旨。
こちらとしても太平洋の敵を確認できなくなった時点でかなりの大軍だと予想はしていた。
けれど、まさか三方面に無謀ともいえる特攻染みた攻撃を仕掛けてくるなんて分かる筈が無い。
彼らの目的は何だ? 横須賀周辺にできた空白地帯を捨ててまで得たいものとは?
太平洋に残存する戦力を糾合してまで南方へ進撃する戦略的意義とは?
シーレーンを確保すればこちらの喉元を突けるからか?
それとも、佐世保と呉の二大戦力を削ぎ落とすことに決めた?
いや、そもそも考えなどは無く、自分たちの損耗を度外視して弱そうな相手を狙った?
分からない。分からない、全くもって意味不明、荒唐無稽な二正面作戦だ。
しかもそれは、二正面どころではない上に自らの吶喊である。
だが、俺としてはこれでいい、望むべくもない至上の選択肢だ。
提督「どうする大和。どこに行きたい? 」
大和「はぁ? この大事なときに冗談なんて言ってる余裕が大和たちにあるわけ
提督「待て待て、待てよ。……参謀! 」
「はっ」
提督「輸送機の用意は? 」
「命令通りに! 今すぐにでも発てます! 」
提督「ご苦労。……いくぞお前ら。弔い合戦だ」
大和「ちょっ、提督! 」
Prinz「大和さんさっきからそればっかだよねー」
比叡「『ちょっ、提督! 』」
最上「っふっ……や、やめてよね、無駄に似てるし」
雲龍「ふっ、ふふ、うふっ」
GZ「貴様は何故変なところでツボに……」
呉はどうにかなるだろう。戦力から見ても、それからこの国の生命線といえる観点から見ても。
それは佐世保とて、同じ。そして、南方とて失えばこの国の全てが干上がると言っても過言ではない。
どこを助けたとて結果はきっと変わらない。どこだって助けを求めているだろう。
ならば助けてやろうじゃないか。
怠惰に政争に明け暮れる呉の盆暗どもも。
日和見主義を越えて烏合の衆と化した佐世保も。
努力し続けることに酔った掃き溜めの南方も。
提督「主力は俺と来い。艦? んなもん要るか間抜け。指揮など無線さえあればどうとでもなるだろうがッ」
まともに指揮を執れるであろう将校に戦力を割り振ってやる。
彼らならばそこそこに力を発揮して戦局を有利にしてくれるだろう。
それから横須賀の守りは最低限に。これ以上敵も戦力を回せまい。
なるほど、確かに敵は俺の裏をかき横須賀や硫黄島を無視する奇策に出た。
しかし、それはそれ以上を望むことのできない下策中の下策だ。
余程の無能か内通者がいない限り、こちらの勝利は揺るがない。
であれば、あとは如何にして被害を最小限に食い止めることができるか否か。
つまり、如何にして俺の名を上げこの世に現出した地獄で大和たちを躍らせるか。
連戦に次ぐ連戦の果て、業火の先に何を見ようとするかの意志がものを言うだろう。
提督「ふっ、あははっ……いいぞ、これはいい。まるで世界が俺の為にあるみたいなものじゃないか、これは」
一路、南方へ。
戦術輸送機を飛ばし、途中から身体と艤装を異常励起した艦娘に向かわせればルソン周辺まで六時間もかからない。
あちらはそれまで好きにルソンだろうがパラワンだろうがブルネイだろうが攻撃してくれればいい。
こちらはその分出会いのときまで好きに作戦と祝杯についてでも練ってやろう。
横須賀の、俺の手駒は今のところほぼ無傷。
そして、俺にはこの国の戦力がどれだけ消耗しようと何らの呵責も自責も無い、存在し得ない。
精々今後の生活や指揮に影響が出さえしなければ構わない。
勝利、いや、成功しか有り得ない。
なんて、なんてこれは、
提督「心踊る、素晴らしい戦果なんだろうな、なぁ大和? 」
大和「はぁ……? いいから早くッ、早く乗ってください! さもないと担いででも乗せますよ! 」
提督「はいはい」
望みを得る為の戦闘へさらなる望みを掛けよう。
何をも得られないのならば、結局は今と、何も変わらないのだから。
【ローリスクハイリターン】
0.ハード
1.ハード
2.ノーマル
3.ノーマル
4.ノーマル
5.ハード
6.ナイトメア
7.ベリーイージー
8.ハード
9.イージー
ゾロ目……はぁと
中途半端な上に全くと言っていい程進まない……
でもまだ変なコンマは出てないですね!
たぶん今日も来ます
ありがとうございました
おつー
気になる
大和『これはッ……! 』
焼き爛れ四肢に乱れしか無い黒ずんだ死体でも見つけたか。
それとも海に撒き散らされた重油と硝煙の臭いに狂気したか。
ブルネイまで到達した大和からの無線は絶句と無言から始まった。
提督「自分を失うな、大和。お前の目の前にあるものが悲しみを帯びている分だけお前は鬼にならなければならん」
大和『て、提督……』
吐きたくも無い戯言を、事実だけは本音に乗せて囁いてやる。
俺とて彼女の働きとその先の未来に期待しているのだ。
ここで壊れられてしまうのは本意では、ない。
雲龍『北西から敵艦載機ッ! 間も無く戦闘に入りますッ』
大和『ッ……よくも、よくもぉっ! 』
提督「精々鹵獲が一体くらい残ることを祈ってるよ、通信終わり」
存外冷静な最上から詳しい敵の艦隊についての情報が入る。
分析する将校の手元を見てみれば、これは中々。
提督「いいとこここに来るまでに減らされたか。
南方部隊もまぁ雑魚ではないということなのか……この程度ということなのか」
【ノーマルモードMVP】
0.大和
1.比叡
2.雲龍
3.Graf
4.最上
5.Prinz
6.戦艦組
7.空母組
8.重巡組
9.轟沈判定へ
ゾロ目……全員(はぁと)
雲龍「この私が殊勲艦だというの……? 」
提督「なんだ不満か? 」
雲龍「うぅん、嬉しいわ……いい気持ち」
提督「あぁ。敵の空母機動部隊に仕事をさせなかったこと、一生の誉れにするがいい」
終わってみればなんていうことも無い。
呉、佐世保、南方のシーレーン防衛を担う部隊はその全てに於いて敵を退け、撃滅に成功した。
横須賀から臨む太平洋周辺を含め、各地から掻き集められた敵性体は全て海の藻屑と成り果てたのだ。
この国からすれば、否、人類という視点から見てもこれは重大な歴史的勝利である。
この国の玄関口を突破し、それに慌てた敵に無謀な策を取らせ殲滅。
そこには何らの落ち度も無い完全勝利がある。
そして、南方で援軍として急行した大和たちには手放しの賞賛が与えられる。
敵の動きをよく分析し、勝利を揺るがないものに確定させた彼女たちの働き。
中でも緒戦から疲労を堪えつつも終始優位な戦闘となったのは、
偏に空母機動部隊を抑えた雲龍たちの仕事であることを特筆すべきである。
かつての艦艇時代には特攻兵器の輸送途中に沈むという不名誉。
この時代においても一航戦や五航戦には一歩劣ると見做されている彼女たち。
それでいてなお奮起し、この国の為、人類の為の勝利に甚だ貢献したのである。
これを褒めずして何を褒めるのか。
、とは横須賀に残留させた無能共や帝都で踏ん反り返っていた年経共の談である。吐き気がする。虫酸が走る。
提督「今回の勝利においてお前は紛れも無く、最高の誉れに相応しい」
雲龍「そう……そうなの、この、私が」
普段から何を考えているのか分からない彼女だけれど、今なら誰にでも分かるだろう。
その感情が喜びに溢れ、名誉と戦績に身を震わせるその狂喜を。
この国が誇る海の鬼子たる大和ではなく。
ドイツより派遣された豪運王子や同輩となる伯爵ではなく。
誰よりも冷静な最上でもなく。
かつては御召艦であった比叡でもなく。
過去現在に於いて何らの名誉も持たず。
寧ろ不名誉な負の遺産を受け継ぐしかなかった彼女。
その彼女が艦隊最大の名誉を得る。
これ以上、一体何を望むというのだろうか。
雲龍「提督の……あなたの、お陰です。あなたが私に道を示してくれた」
提督「違うな。俺は全員に対して発奮を求め皆に指示を与えたに過ぎない。
お前の戦果は、お前のみによって成し遂げられ、お前だけが得るべき誉れよ」
雲龍の崇拝にも似た歓喜など下らない。寧ろ唾棄すべきものだ。
俺にとって一等重要なのは大和の顔だ。
下馬評からもそのスペックからも戦場に於いて最大戦果を挙げるべきと宿命付けられた女。
その顔がそれでもなお同輩への祝福と勝利の歓喜に沸いているのか。
それとも我が名を頂きに到達させられなかった悔恨に沈んでいるのか。
はたまた未来への光を見つけられなかった絶望に唖然としているのか。
俺にとって重要なのは、今のところそれだけだった。
つくづくサイコやなぁ
雲龍「あの、玉露と羊羹を用意してみたのですけれど」
提督「ん? あぁ……先に食べておけ。俺もじきに貰う」
雲龍「はい。……………………それでは、意味が無いのに」
最近鬱陶しい程に纏わりつく雲龍もこれはこれで悩みなどあるのだろう。
或いは、大和の様に俺と同じ存在意義と望みへの渇望かもしれない。
それならば、最近あまり話せていない大和を切り捨て入れ込んでもみるのだが。
【MVPボーナスですの】
0.提督から
1.雲龍から
2.雲龍から
3.提督から
4.雲龍から
5.提督から
6.雲龍から
7.提督から
8.提督から
9.雲龍から
ゾロ目……あなたは、誰ですか?
求めよ、さらば与えられん。
聖書などという伝統と蓄積だけが取り柄の紙束に用など無いが、しかし。
自ら進んで求めねば欲しいものを得られないのもまた事実。
自ら望むことは、時に他者の欲求を癒すこともあると誰かが言っていたのだったか。
提督「……雲龍」
雲龍「何? 」
提督「俺はクドクドと説明するのは苦手、というかなんなら嫌いだが
雲龍「知っていますよ。大和さんたちも言っていましたし、見たままです、あなたは」
提督「……」
雲龍「……何? 飛行甲板に興味があるの? 」
提督「あ? 」
雲龍「冗談よ。……ま、それはそれで、いいけれど」
玉露に、茶菓子の羊羹に、戯言に。
夕暮れの執務室は、またと無いトークタイムだ。
今なら、そう彼女の心を奪り掛けている今ならば、いける。
多少の無茶も、或いは反対に切って捨てる無慈悲や無感情も。
それが全て、流れて行くような、そんな、雰囲気だった。
【楽しい井戸端】
0.悩みは無いのか
1.呉へ、行かないか
2.お前そのものを欲しい言われたら、どうする
3.欲しいものは無いか
4.欲しいものは無いか
5.呉へ、行かないか
6.悩みは無いのか
7.呉へ、行かないか
8.欲しいものは無いか
9.悩みは無いのか
ゾロ目……全部
提督「それならばいい、単刀直入に言おう。呉へ、行かないか」
雲龍「は、はい? 」
余程予想していなかった言葉だったのだろう。
目を見開き素っ頓狂な声を出す雲龍など滅多に見られない情景である。興味が有るわけではないが。
提督「呉の大将から話が来ていてな。あちらにいる加賀と交換、いや配置転換をしないか、と」
事実である。呉の大将は今回挙げた戦果からいたく彼女を気に入ったらしい。
余談だが艦娘はこの世に複数存在する。それも全く同じやつらが、だ。
横須賀だけでも“ 雲龍 ”など何隻も在籍しているし、
“ 大和 ”ですらこの国どころかアメリカやドイツ、フランスにだって派遣されている。
彼女たちはその生育過程と環境以外を全て同じにしている同一体だ。
人間からの変化か、人工的な工廠生まれか、海でのドロップか。
その程度の差しか彼女たちには、無い。
特に軍の高官ともなれば彼女たちの個人差になど興味を持ちよう筈も無い。
性格や思考がほぼ同一であってスペックと限界も同じならば、仕方が無い。
寧ろ子飼の化け物をどうにか自分好みの兵器にすることにこそ意味があるのだ。
だから、今回のオファーは凄まじい栄転と誉れである。
それも実際は兎も角、長年呉を守り抜いてきた歴戦の大将が自分を欲している。
それは言うなれば、ただの量産型兵器が人格を認められたということだ。
呉にだって“ 雲龍 ”はいる筈である。
それでいてなお、自らを渇望される。
仮令それが狭い箱庭でしか通用しない欺瞞だとしても。
雲龍にとっては、この上無い、幸せである。
提督「俺としては、まぁ……受けるべきだと思う。
言ってはなんだが俺はこのまま安穏とさせている気は無いしな」
暗に、お前をこれまで通り使うつもりだと。
いつか使い潰して捨てるかもしれないのだと。
衝撃から立ち直れない彼女に、畳み掛ける。
自信があった。
彼女は呉への栄転ではなく、俺の下にあることを望むだろう、と。
少々筋肉質に過ぎるものの我ながら美丈夫と言えるルックス。
極限まで損得と切り捨てを徹底した指揮。
戦うことに於いて部下を鼓舞することに長けたアジテート能力。
そして、利益と仮面の果てに生まれた分厚い仮初の意志。
重要なのはその選択じゃない、理由である。
彼女が、どんな言葉を吐くのか、それが、問題であった。
雲龍「お断り、してください」
果たして。
提督「ほう……安定した生活と、いつかの解放を捨てるのか? 」
その決意と苦悶に満ちた顔は、何を見せてくれる。
雲龍「そんなもの、要りませんから。私は、私はーーーー
傲慢な男と、決然とした女と。
いつしか陽は更に傾き、そろそろ電灯を点けねばならない時間に差し掛かっている。
0.あなたの下で戦いたい
1.あなたをこそ、望んでいるのです
2.あなたの下にいたい
3.最も私を使える人の下にいたい
4.あなたの下で戦いたい
5.最も私を使える人の下にいたい
6.あなたの下で戦いたい
7.最も私を使える人の下にいたい
8.あなたの下にいたい
9.あなたの下にいたい
ゾロ目……あなたを野放しには、できない
(最近コンマ大人しいな)
雲龍「あなたの下に、いたいのです」
提督「…………」
下らない恋愛ドラマならばここで主題歌でも入るのだろう。
戦争映画ならば盛大に死亡フラグでも立つか。
それかある種の媒体ならば身体の線や表情でもアップになるだろうか。
事実、雲龍の瞳を見れば何か秘めていたものを吐露しようという意志が見える。
安易な恋など糞食らえ、と言いたいところである。
けれどふと思い、舌打ちを全力で隠す。
存在意義を薄く否定され続けてきた彼女の戦意を高めたのは誰だ。
戦果を誇示する目的とはいえ過剰なまでに彼女の功績を称えたのは誰だ。
外面の為と言いつつ四方八方にいい顔をし続けたのは誰だ。
全て、自分である。
ただでさえ異常な時代、狂気に渦巻く環境である。
そこに於いて人や化け物の意志を捻じ曲げることなど簡単だと言ったのも、自分である。
これも全て、自分の蒔いた種なのか。
確かに、一面なら見れば彼女を受け入れてしまうことに問題は無い。
彼女をパートナーとすれば今後無駄なアピールには煩わされにくくなるだろう。
彼女への口撃を暗黙の理由として誰か気に入らない者を左遷するのも、可能だ。
それに彼女はその事務能力にしても十分であり、何よりその戦果とポテンシャルは誰もが認めるところである。
なんならば、彼女のその肢体は男の獣欲を煽る魅力に溢れている。
先月だかそれくらいに風俗に行こうかなどと考えていた自分にとっては、ありがたいかもしれない。
けれど、メリットもあれば当然デメリットも存在する。
無駄なアピールが減少したとしてもそれが確実に無くなるわけではない。
寧ろ戦場に於いて歪んだ倫理を拵えた女が略奪愛などに凝ったという話さえある軍内である。
それに、彼女の戦意と安定感は増すかもしれないがその他については定かではない。
大和たちならば表向きは何も言わないだろうが、その内心など分かったものではない。
雲龍を受け入れるということは、反対に雲龍以外の感情を遠くする、ということでもあるのだ。
博打として、面白くないわけではないが、しかし。
雲龍「使い潰されても構いません。なんなら飽きたら捨ててください。それで、いいの」
提督「…………」
自らの感情を独白めいて零し続ける雲龍の意志など最早関係無い。
これは、俺の、俺だけの問題である。
軍内の立場、部下の統御、煩い実家を黙らせる方法、そして煩わしく思ったときの切り捨て方。
あまり多くない様に思えるメリットと比べてそれはいつかの鬼札となるのか否か。
雲龍「私、これでもそれなりに自信はあるのだけれど……」
雲龍はいつの間にか上着を脱ぎ執務椅子に座る俺の背中から抱き着いてきている。
首元に触れる大きな肉塊の暖かさや耳元に当たる吐息が艶かしい。
どうする、どうすればいい。
彼女を確実に捨て切れる確たる根拠があれば、簡単に許容することが、できるのだが。
提督「ま、待て待て……雲龍? 」
雲龍「何? 拒むなら……今しか許さないけれど」
果たして拒むことを許してもらえるのか、彼女の瞳はそこまできている気がする。
あすなろ抱きの様に椅子の背もたれまで含めて女としては背の高い彼女に抱き竦められているこの状況。
胸板を這う手指は既にただ抱き締めているというには度を越した動きに変わっていて。
何も触れ返していない筈の雲龍はけれど、その息を少しずつ上気させている。
提督「お前の意志と決意を否定しようとは思わない。それは、お前だけの尊い尺度だ」
雲龍「そう……そうね、この想いを否定する様な男になんて、興味、無いわ」
牽制はしかし、何の牽制にもならず単にこちらを肯定されただけで終わる。
拒絶ではないが許容でもない。その意志が、どうにも伝わらない。
提督「その意志を否定などしないが……なぁ」
雲龍「だから、何? 初めてだし怖くなってきたら、逃げてしまうかも」
そんなことは知ったことか。俺としてはまだ許容を決めたわけではないし、大和の心とその先を捨てたわけではないのだ。
せめて、せめて彼女の意志に、何か楔を打ち込んでおかなくてはならない。
切り捨てることのできる材料を、離反しないという確証を。
提督「その意志の源泉は、何だ。有能な指揮官としての評価か、それとも戦場に出してくれる者への焦燥か。
まさか人間として俺を好いたなどど世迷言はほざくまい」
雲龍「傷付くわね……でもそのストレートに鋭利な言葉も意志も、私は」
提督「答えろ。お前の意志を否定はしないが、その根幹を答えねば、俺はお前を認めない」
雲龍「…………」
無言になった雲龍がその荒い息遣いはそのままに腕へ力を込める。
力を励起すればこのまま俺の胸板を内蔵や椅子の背もたれごと挟み潰すことも可能な位置。
首に触れる果実は既にただ触れるわけではなくぶつかり合って撓んでいる。
その肉に興奮と渇望を覚える一方でしかし、ただ溺れるだけでは本末転倒だと脳が警鐘を鳴らしている。
彼女の最後の答え、それが大事だ。
認めようじゃないか。
この場において大和の未来など棚上げせざるを得ない。
俺は今このとき、雲龍型航空母艦の憑座たる女に、一歩遅れて懐まで進ませてしまったのだと、認めねばなるまい。
雲龍「戦わせてくれること、一番効率的に使ってくれること、それから人間的な好意」
ーーそのどれもがあって、私は初めて人間になれた気がするの。
壊れている、歪んでいる、それともこれが彼女たちの普通なのだろうか。
分からない、分かってはならない、分かることなど最早罪でしかない。
雲龍「でも、そうね……あなたに私の気持ちを伝えるのならば」
提督「……あぁ」
さぁ、受けて立とうじゃないか、雲龍。
たかが気持ちなどというもののために俺のこれからを歪ませられるなどあってはならない。
お前の答えに価値が無いと判断すれば、そのときは。
雲龍「私はーーーー
0.あなたを愛しているの、ただ、それだけ
1.ビジネスパートナーとして見ているの
2.ビジネスパートナーとして見ているの
3.あなたの覇道を見てみたい
4.媚を売るべき男だと思ったの
5.あなたの覇道を見てみたい
6.あなたを愛しているの、ただ、それだけ
7.ビジネスパートナーとして見ているの
8.あなたの覇道を見てみたい
9.あなたを愛しているの、ただ、それだけ
ゾロ目……あなたの狂気に、染まってみたい
なるほど……なるほど
暫く来なくて申し訳ありませんでした
今日はたぶんこの辺で
また、お願いします
ありがとうございました
おつー
雲龍「あなたを愛しているの、ただ、それだけ」
提督「ーーーーーーーー」
ストレートに心臓へ届く刃。
それは言うならば心臓に届き鼓動を支配するのと同時に脳を灼く麻薬だった。
胸板を這う手指の艶かしさも。
首筋に当たる凶悪な果実の熱も。
耳元に吹きかけられる吐息と声音も。
この部屋に存在するただ二人だけが感じることのできる空間全てが。
一瞬にして、止まった。
彼女にとってはきっと一世一代の吐露。
そして俺にとっては、単なる落胆と冷静に決めた、許容。
ただ単に好かれているのならば、構うまい。
なんだかんだと理由を付けていても、他者の好意を跳ね除けるのは難しい。
その肉への乾きも、誰かと共にあることの安定も、周囲からの社会的評価も。
嫌われているよりは余程動かしやすい駒じゃないか、それでいいじゃないか。
それに極々僅かな可能性だとしてもいつしか愛なんてものに溺れることができるかもしれない。
分からないもの、理解できないものを馬鹿にするなどそれこそ馬鹿の行いである。
分からないからこそ、その足元に真理がある可能性を捨て切るのは悲しいことだ。
提督「……………………最初に言っておく。俺は今のところお前に興味なんぞ、無い」
雲龍「ッ…………か、構わないわ。この一瞬でもあなたを私に呉れるなら。その目を向けさせてみせる」
提督「そうか。…………離せ」
雲龍「…………イヤ」
提督「聞き分けの悪いガキは嫌いだ。離せ」
雲龍「…………」
提督「…………」
雲龍「…………」
その、傷付けられた自分に酔った様な顔が一等不愉快だということを、いつか彼女は理解するだろうか。
時刻は夕暮れ、処は執務室。
あるのは冷めた玉露と、食べかけの茶菓子と。
後ろを見なくても、分かる。
きっと彼女は、雲龍は傷付けられた顔で潤んだ瞳を伏せているだろう。
俺の胸板から離れていった両腕は自分を抱いているか、所在無さげに垂らされているか。
ただ、差し込む夕陽がおしえてくれている。
彼女は、身動きせずにまだ俺の後ろにいるのだと。
提督「…………俺はこういうやつだし、お前を見ることなんて永遠に無いかもしれん」
雲龍「構わないわ」
提督「構わない、ではない。そうであってほしい、そうであってくれなくてはならない。
それくらい無いと付き合いきれない男だと思うがな」
雲龍「知らない。知らないわよそんなのッ……そんなに言うなら返してよッ! 私の気持ちを返してよッ! 」
提督「返せるものなら熨斗付けて返してやる」
雲龍「ッ……」
背中に当たる声は次第に湿り気を帯びていき。
これ以上続ければ、或いは更に取り返しの付かないことになるかもしれない。
手酷い扱いをしているとはいえ言質の様な形で受け入れると言ってしまったのだ。
ただ単に断ってしまえばよかったものを、何かを得ることができると錯覚したか、見誤ったか。
けれど、もうここから真っ当に逃げることなどできはしないのだ。
提督「はぁ…………」
雲龍「…………」
泣く女は、嫌いだ。
今までのつまらない人生で何度か通過したそれは経験則。
ヒステリックに叫ぶ女とほぼ毎日顔を合わせた幼少時代。
周囲との軋轢と差異に気付かず失敗と誤魔化しを続けた学生時代。
集団での生活に順応したものの時に現れる個人的好意を持った相手への対処。
母親、同級生、そしてその他。
そのどれもが、結局はただそれだけの存在でしかなかった。
それ以上になってくれると期待して、勝手に裏切られて。
いつしか期待することを止め社交的で少々無口な殻を被った。
内面でも元々の異質さが肥大し研磨されていっているというのに、そのままに。
だから、今の状況は非常によろしくない。
泣く女は、嫌いだ。
けれど、泣かせる男はもっと嫌いだ。
そんな面倒を背負い込む自分も。
その程度の立ち回りもできない自分も。
そして、何か重要な切掛を見落とした自分も。
提督「…………知っていると思うがもう一度言うぞ」
雲龍「…………」
提督「俺はクドクドと何かを説明するのが苦手だし、嫌いだ」
雲龍「…………」
提督「来週末は完全にオフだ。マルハチマルマルに正門前に来い。服装は自由だ」
雲龍「ん、んんっ? 」
提督「以上。俺は仕事の続きをしなくてはならん。さっさと出て行け」
雲龍「…………」
提督「…………」
雲龍「…………」
提督「…………何だ? 」
雲龍「ふふ…………あなた、モテないのに変なのにばかり好かれてきたでしょう? 」
提督「ーーーーーーーー」
泣く女は、嫌いだ。
泣かせる男は、もっと嫌いだ。
だが、泣き真似をする女なんて、大ッ嫌いだ。
執務室を軽い足取りで退出した雲龍の背を反芻しつつ、
その思考と行動が俺に与えてくれるかもしれない変化と希望について考えた。
けれど、そんなあやふやなものに答えなど、終ぞ、出ることなどなかったのだった。
雲龍「…………ふふ」
提督「…………」
大和「…………? 」
比叡「…………Zzz」
最上「このお菓子、ふわふわで美味しいねぇ~ 」
Prinz「Schnittenは伯爵の得意料理なんだ、ね? 」
Graf「まぁ、な。…………だがなんなんだ、この状況は」
提督「そんなもの俺が知りたい。執務中だぞ、俺は」
【三度幸せな日常、或いは転機】
0.艦娘
1.急襲
2.父親
3.風俗
4.父親
5.艦娘
6.役人
7.艦娘
8.軍人
9.艦娘
ゾロ目……陸軍(はぁと)
提督「っ、はぁ……デスクワークばかりでは鈍るな、さすがに」
ベンチプレスはいい、実にいい。
何も考えず、身体が勝手に動いてくれる。
集中していなければ身体を壊すトレーニングが最もいい。
考えることといったらくだらない瑣末ごとやうんざりする些事ばかりなのだ。
だから、重いものでも持ち上げて物理的に負荷が掛かっているだけの方が、余程いい。
【お次は】
0.Prinz
1.雲龍
2.最上
3.重巡組
4.大和
5.戦艦組
6.Graf
7.空母組
8.比叡
9.雲龍
ゾロ目……執務室襲来
Graf「Admiral、ちょっとだけ、いいか」
提督「うん? 」
トレーニングを一通り終えシャワーを浴びた後のこと。
明日のトレーニングメニューを脳内で修正していたときのことだった。
廊下でいきなり声をかけられた所為でほんの少しだけ間抜けな返事をしてしまった。
目の前の女はそんなこと気に留めていなかったようだが隙をつくらないに越したことは無い。
Graf「話、というか、なんというか……Admiral」
提督「だからなんだ」
Graf「あー……いや、私もあなたと同じで長々説明するのは苦手なんだ、簡単に言うぞ」
提督「構わない。俺としてもその方がいいからな」
早く終わるに越したことは無い。
さっさと執務室に籠ってやり残してきた仕事を終わらせなければならないのだ。
Graf「その、雲龍のことなん
提督「よし分かった。甘い菓子でもどうだ? 俺もコーヒーにはそれなりに一家言あってな」
Graf「は? いや、先程既にその話は聞いたしコーヒーも頂い
こいつは、危険だ。
そういえばあまりにも唐突に降って湧いた出来事だったので忘れていた。
いや、未だに続く横須賀から硫黄島までの海域に関する処理や、
南方での戦果と被害の報告に関わる残務に追われて考える余裕も無かったか。
それとも週末に約束してしまった逢瀬で口止めできたと安易に考えてしまっていたか。
取り敢えず、雲龍と伯爵閣下は今のところ二人部屋の同室だった。
殊更仲が良いようには見えなかったが、しかし。
女というものの話好きを侮っていたかもしれない。
これがただ単に、妙な浮かれ具合への質問程度だったらば、どんなにかいいだろう。
間抜け顔で執務室まで引き摺られていくことを諦めた彼女を見遣る。
返ってきた目線は、どうもまた面倒なことを言いそうで。
提督「勘弁してくれ……」
まるで空虚な自分に誰かが面倒ごとを投げ込んできてくれているのかと錯覚する程だった。
そんなお世話は、できれば金輪際止めてほしいと切に願っているのだが。
…
………
……………
Graf「昨日今日と妙に浮ついているだろう、彼女は」
提督「気の所為だろう、とは言えないな」
Graf「そうだろうとも。Admiralは無口で口下手とはいえ鈍感な男ではない筈だからな」
提督「……それで? 」
鈍感であったのならばどんなによかったか。口には出さないが心からそう思う。
いっそ無感動に接するのではなく単に何にも気付かない方が楽だろう、恐らく。
Graf「雲龍が何故ああなっているのかなどどうでもいいのだがな」
提督「あぁ」
Graf「Admiralまで浮つくのはどうかと思うぞ、さすがに」
提督「は? 」
Graf「は? 」
提督「……ん? 」
Graf「……なんだ」
提督「え、いや……は? 」
Graf「? なんだ……気付いていなかったのか? 」
提督「……………………は? 」
Graf「元々大して感情を表に出さないんだ、
それが少しでも溢れていれば多少付き合いのある者には分かるぞ、恐らく」
提督「…………」
Graf「私としては大和が本命なのだろうと勝手に思っ……Admiral? 」
提督「…………」
Graf「Admiral? …………おい! 」
提督「ッ……あ? 」
Graf「はぁ。…………なんだ、雲龍との関係が暴露るのはそんなにショックだったのか? 」
提督「いや、それは無い。面倒だとは思うがどうということもないからな」
Graf「ほう? 否定すらしないと? 」
提督「別に意味が無いからな。単に、この前の戦闘での功績に対して報いてやろうとしているだけだ」
Graf「? 」
提督「鳥籠の鳥を一瞬でも外へ。俺という監視は着くが」
Graf「なるほどつまりデートというや……はぁ? 」
提督「あ? 」
Graf「いや失礼……あぁ、そうか、なんだもうそこまでなのか……」
提督「いや、何を勝手に勘違いしているのかは知らないというか知りたくもないがな、Graf Zeppelinくん」
Graf「その怖気を振るう呼び方は止めてくれないか、Admiral」
提督「急に真顔になるな馬鹿。……なぁ、Graf」
Graf「? 」
雲龍と出掛けること自体は然して問題ではない。
本来軍施設から艦娘を出すことは殆ど御法度の様なものだが、しかし。
俺の権限と彼女の功績を盾に取ればその程度は造作も無いことだ。
それに、彼女と関係を深くしそれが周囲に漏れることも想定済み、許容済みだ。
あの夕陽の執務室で、その辺の損得と動き方は既に決めているのだから。
問題なのは、そんなことではなかった。
提督「俺が、浮ついているように見えたと宣ったな、お前」
Graf「宣うなどと……いや、確かに上官に投げ掛ける雑談としては不適切だったかもしれないが」
ーー謝ろうか?
なんて、薄い笑みを返してくる彼女を見て、思った。
Graf Zeppelinという女はそれなりにユーモアを持っている女だ。
そして、俺にとって面倒ごとを持ち込む女その三だかその四だ、きっと。
提督が特異的なので普通に甘い展開がいいゾ~これ
Graf「ん、んん……ま、まぁ、そうだな。浮ついている、というのは少し語弊があったかもしれない」
提督「ほう? 」
Graf「なんというかだな……Admiralは普段から無口で時々無感動にも見える御仁だが」
提督「あぁ」
Graf「決してコミュ症とかいうやつではないし喜怒哀楽もある普通の人間だ」
提督「そうだと嬉しいね」
Graf「茶化すな。これでも真面目に……あぁ、Admiral」
提督「あ? 」
Graf「浮ついているなどと言ったが、あなたは今ーーーー
中々喋りやすい女なのだな、なんていう稚児染みた感想などどうでもいい。
その答えが問題なのだ。それだけさえ知れればどうでもいいとさえ言える。
まさか、俺が感情を無意識に表へ出していたなんて。
そしてなにより、その感情に喜びが含まれている可能性があるなんて。
もし、それが本当なのなら或いは雲龍という女を、俺はーーーー
【伯爵閣下のお見立て】
0.期待している、のかな
1.恐怖、しているのではないか
2.恐怖、しているのではないか
3.期待している、のかな
4.期待している、のかな
5.恐怖、しているのではないか
6.恐怖、しているのではないか
7.期待している、のかな
8.期待している、のかな
9.心底、楽しみにしているように見えるよ
ゾロ目……目で追う程あれがいいのか?
何だか最近安定していますね……
IDは全然安定しないのに
取り敢えず未だにというかまたもや行き先は不明ですが、
またよろしくお願いします
ありがとうございました
おつおつ
コンマ神はエンターテイナーだからね、今は溜めのターンかな?
追いついたぞ
Graf「期待している、のかな。私はそう感じたよ」
提督「ほう……? 」
Graf「この先に起こり得る何かに期待しているというか……いや、本来なら彼女とのデートに期待しているのだろうが、うぅん」
提督「うん? 」
Graf「…………私はAdmiralと会ってまだ日が浅い。間違っているのなら申し訳無い。忘れてほしい、が」
提督「なんだ」
彼女が言い澱むなんて、珍しいことだ。それこそ俺と彼女はまだ会って日が浅いので的外れな感想であるかもしれないのではあるが。
左右に目を走らせこちらに気持ち身を乗り出した彼女は何と言うだろうか。
ここは俺の執務室であって他人はいないし覗きや盗聴器なんてものへの心配は無いのだけれど。
そんなことをしてしまう程、憚られることなのだろうか。
Graf「あなたは、私たちの戦果に期待することはあっても、私たちそのものには期待していないと思っていたんだ」
ーーだから、雲龍に期待しているなんて、あなたも普通の人間だったのだな。私は、嬉しいよ。
…
………
……………
提督「それにしても……大和といい雲龍といい、Grafといい」
中々面白い面子であることは、素直に喜ばしいことだ。
比叡「?! っは? ね、寝てませんっ、寝てませんったら! 」
提督「そうか寝てたか。一人で静かに寝やすい様に金剛とオフが被らないようにしてやろう」
比叡「」
【あと数日で約束の日】
0.艦娘
1.急襲
2.父親
3.風俗
4.父親
5.艦娘
6.役人
7.艦娘
8.軍人
9.艦娘
ゾロ目……陸軍(はぁと)
提督「ドレスコードのある店に行こうなどとは言わん、言わんが」
雲龍「背中は出しておくべき? それとも肩だけでいい? 」
提督「…………いっそ全裸で引き摺っていってやろうか? 」
雲龍「あら、ベッドに連れていってくれるなら嬉しいけれど男って裸より着衣の方が好
意味不明な程の露出思考である。センスの無い女と街を歩く趣味は無いが露出狂と出歩く趣味はもっと無い。
なんなら無難な私服で出てこさせて幾つか見繕ってやろうかと考えていた、そのときである。
「女川要港部より入電! 女川沖に突如敵性体出現! 援軍求むとのこと! 」
提督「ヘリを出せ! 大和たち他動ける奴だけでいい! 時間のかかるやつは海から回り込ませろ! 」
大和「はい! 」
Prinz「はいはーい」
最上「仕方無いなぁ……三隈たちと映画観る約束してたのに」
雲龍「…………殺す」
何か無表情で恐ろしい呟きを残していったやつのことなんぞ、知らん。知らんといったら、知らん。
取り敢えず、今後の作戦展開の為に要員を集めておいたことは僥倖だった。
精々女川の警戒網をすり抜けてきた奴らだ。あまり大規模な戦力ではないと思うが、どうだろうか。
大和『準備、完了致しました! いつでも発てます! 』
提督「ん、そのまま行ってくれ。俺が行くまでもない」
大和『はい。……一つ、よろしいでしょうか』
提督「あ? 」
大和からの無線はヘリの出す爆音で聞き取り難い。改良が必要だな、なんて。
大和にはこの落ち着きを慢心と取られただろうか。
大和『もう少し、横須賀に戦力を残していくべきでは? 』
提督「尤もな話だ。だが、要らん」
大和『何故? 』
提督「何故? 何故といってそれは決まっているだろう」
ここを、餌にするからだ。
大和『ーーーーーーーー』
提督「さっさと行け。……最上、合図を」
最上『まったく……面倒になったらボクに押し付けるのはやめてほしいね。……すみませーん! 出してくださーい! 』
横須賀と硫黄島から出している哨戒にだって限界はあるだろう。
女川が近海まで敵を近付けてしまったことからも警戒が万全ではないことが分かる。
けれど、それならばどうすればいいというのか。
横須賀を後生大事に守って隷下の要港部や哨戒部隊が消耗するのを待つのか。
それとも前回の様に敵が攻勢を掛けてきたときに順次撃破していくのか。
そんな悠長で緩慢なことをやっていればどの道人類に未来は無い。
ならば、こちらから隙をつくってやればいい。
敵襲に対しては全力の対応を。敵襲の次には背水の陣を。
それでいい、それがいい、これがいいのだ。
提督「お前もそう思うだろう? 豪運王子」
Prinz「少なくとも理には敵ってないと思うけど……私じゃなくて大和さんか雲龍さん残せばいいのに」
提督「それでは意味が無い。吶喊の鋭鋒たる大和や緒戦で敵を減らせる雲龍はあちらにやらなければ意味が無い」
Prinz「ふーん……でもGrafも残したじゃない? 」
Graf「これがAdmiralの判断ならば私は従うが」
Prinz「私も文句なんて無いけど、さ。ちょっとよく分からないかなって」
提督「…………」
俺の子飼で女川へ遣ったのは大和を筆頭に比叡、雲龍、最上だけだ。
後は全て今すぐ出せる戦力のみ。
対してこちらに残したのはドイツ組二人。他にも太平洋を北上する後発組と残留部隊がそこそこ。
合わせてしまえばまだまだ守備には十二分である。
寧ろ女川の警戒網が予想以上に阿呆だった場合は大和たちの方が余程悲惨な目に合うだろう。
提督「急襲というのは本来なら別の意味も持つべきなんだよ、王子」
Prinz「はいはい、決定には従いますって」
Graf「あとは彼女たちに期待するだけだな。……今回は他の箇所からは通報が無いようだし」
Prinz「今のところは、ね」
提督「お前がそれを言うと洒落にならん。もっと言え」
Prinz「ばーか。……別の意味って? 」
提督「自分で考えろ間抜け」
Prinz「はぁ? 」
提督「あん? 」
Graf「やめておけ。それこそ間抜けだろうが」
遠巻きにこちらを見る参謀や下士官たちの呆れ顔がいっそ心地いい。
それでいいんだ、お前たちは。お前たちには今までもこれからも、そして永劫に期待などしていない。
喪って初めて価値を実感するものを探そうとする戦いに、お前たちなどまるで不必要なのだから。
【横須賀近海】
0.大艦隊
1.特に何も
2.大艦隊
3.何か疎らに
4.特に何も
5.何か疎らに
6.大艦隊
7.何か疎らに
8.特に何も
9.特に何も
ゾロ目……ごーとぅーへーる(はぁと
「閣下! 」
提督「あん? 」
「こ、こちらに向かってくる大規模な敵影を確認致しましたァッ! 」
提督「そうかい。……ほらな? 王子」
Prinz「まッッッッたく意味分かんないんですけどぉ? あと無視してたけど王子って言わないで! 」
Graf「ほら行くぞ王子。敵が待ってる」
Prinz「あ、ちょ! 王子って言わないでよGra……伯爵! 」
Graf「はいはい」
隙を見せれば、というか何というか。
忽ち姿を見せてくれるのは運なのか敵の慧眼なのかそれとも隙など関係無くそういう宿命なのか。
或いは、そう。
提督「化け物と通じる反逆者がこちらにいるのか。まったく……愉快なことだな」
「女川へ遣る予定だった戦力は途中で転回させてこちらと挟撃の態勢を取らせますッ」
提督「あぁ、そうしろ」
急ピッチで用意させた第二陣は海上から反転し横須賀から出撃する部隊と共に敵の大艦隊を殲滅。
速戦で決めることはできないだろうが好き勝手無尽蔵に沸きやがる化け物どもにはもう一度地獄を見せてやる。
女川に現れた急襲部隊、否、陽動部隊は大和たちで十分だろう。
寧ろ、こちらが本丸と分かった時点で引き返させてもいい、いいが。
提督「大和たちにはそのまま行かせろ。今更戻ってこさせるのも面倒だ」
「は、はぁ」
困惑顔の下士官は内心馬鹿な上官だとでも思っているだろう。
今やこの国随一の重要性と戦略性を持つ横須賀と、地方にある隷下の要港部。
その優先順位も分からないのかと。そこまでしてあちらを守るべきだと考えているのかと。
当然、その様なことは有り得ない。戦略的にも個人的にも東北の一要港部など知ったことではないのだ。
それでも、大和たちをあちらに遣り主力を欠いた状態で防衛に当たるのには意味がある。
一つはそもそも現戦力での防衛が可能であると判断したこと。
俺とて確認された敵戦力とその未知数な部分を勘案して指示を出している。問題無い。
一つは大和に多くの戦果を与えるということ。
大和とてこちらの大艦隊を相手取りたいだろうがそれでは十分な戦果を得られる保証が無い。
大和が少ない僚友と共に死地を切り抜け己の未来を見通すことが重要なのだ。
一つはドイツ勢二隻の反応を知りたかったこと。
別に彼女たちが深海の化け物どもと通じているなどとは考えていない。
けれど、結局は彼女たちもドイツ軍からの客分に過ぎない。
こちらも同じ様に戦力をあちらに派遣しているとはいえ他人は他人なのだ。
着実に、且つ急激に名を挙げた横須賀とこの俺に対して何を思うのか。
単純にそれが知りたかった。
それから最後。
ーーーー十面ダイスの存在である。
Prinz『沈めても沈めても湧いてくるんだけど! ねぇ? 本当に大和さんたちは来ないわけ?! 」
提督「無線なんてできるうちは余裕だろう。適当にやっとけ」
Prinz『あぁもう! Dumm! Dumm! Ich bin dumm! 私って本当馬鹿! 』
提督「そうだな」
Prinz「ッ! こんな阿呆な上官がいるんならこんな国に来なければよかッーーーー…………
突然Prinzからの通信が途絶えた。ただそれはPrinzが沈んだだとか機器が破壊されたとかいう意味では無い。
敵を挟撃する為に転回させた味方が背後を突き始めたのだろう。
Grafたちならば艦載機によってその到来を予期していたかもしれない。
けれど、海を駆け敵の放つ砲弾を躱しながら無線中の王子様には分からなかったようだ。
いや、そもそもそれを期待していたわけではあるのだが。
(コイツ……コンマ神を認識しに来ている……っ!)
味方を奮起させる方法は幾つかある。
今回の横須賀防衛の場合は大きく分けて、二つ。
女川へ出した援軍第二陣が反転して敵の背後を突くことをおしえておく方法。
そして逆にそれを伝えず全力での正面突破を目指させる方法。
前者であれば一定の安堵感と余裕、敵への優越感と耐えることへの安定を生む。
後者であれば強制的吶喊の必要性と焦燥感、敵への恐怖と耐えることへの無駄さを生む。
精神的な正負、そのどちらが必要かを判断するのは指揮官にとってとても重要な資質だ。
現代の戦闘においては当然前者が優先されるし、後者など間抜けの取る選択である。
けれど、今回俺はそちらを採った。
何故ならばそれは十面ダイスが選んだからに他ならない。
前回の作戦時に運と未来を託した十面ダイス。
今回は幾つかの思惑と並行して最初からこれを使っているのだ。
有能な指揮官にあるまじき愚行。
否、愚行を通り越して敗退行為と言えるだろう。
それでも、俺はこの賽子を手放さない、手放せない。
こいつの魅力に取り憑かれた、とかいうことでは決して無い。
これが一種の賭けであることは揺るがない、が。それだけではない。
迎撃部隊の配置には細心の注意を払っているし、
複数の小隊長たる“ 旗艦 ”からの通信には片っ端から微調整を指示している。
ただ、Prinzたち“ 子飼 ”には曖昧で不十分な情報しか与えなかった、それだけである。
提督「大和や雲龍、Grafもいいが……期待できる駒は多いに越したことは無いしな」
前回の作戦では艦隊どころか国家最高峰の戦果を叩き出した雲龍を筆頭に俺の子飼たちが一躍その名を上げた。
それはそれで重要なことではあったが、しかし。
俺とその部下たちばかりが名を上げるのでは意味が無い。
俺たちがセットだと認識されてしまっては、
度を越した英雄視によって自由な動きを制限されてしまう恐れがある。
酷ければ体のいい最終兵器として横須賀に留め置かれてしまうかもしれない。
それでは今回の作戦で大和が己の望みを見出すことができなかったときに次戦を望めない。
或いは戦闘の中で掴めるかもしれない俺自身の生きる意味、存在意義を探す何かへの道が閉ざされてしまうかもしれない。
それでは、意味が無いのだ。
あくまで有能な指揮官、有用な護国の兵器でなくてはならないのだ、俺たちは。
負けてはならず、優秀過ぎてはいけない。
一定の戦果を上げることが前提条件であり、最終成功目標なのである。
他の僚友たちに戦果を上げてもらえばどうせ俺の評価はまた上がるわけであるし、
彼ら彼女らの自信や戦意に繋がるであろうし、
横須賀としても国家としても面目は保たれる。
提督「そろそろ新しい直属を増やす上申もしたかったしな」
ーーこれでは今まで以上の戦果を望めないやもしれません。
したり顔で肥え太った軍令部や無能な政治家に談判する自分を想像して自然と笑みが零れた。
よもや護国の英雄となりつつある俺の、それも自分たちに媚びる素直な男の要求を断りなどすまい。
ーー直属の部下が増えれば、更に皆様の力となれるのです。
嗚呼、愉快極まりない。参謀たちがおらず戦場からの指示を仰ぐ通信が無ければ思い切り高笑いでもしてやるところだ。
こんなにも虚無で、何を望めばいいのかも分からないというのに、何故だろう。
何の希望も見出せない出来損ないだというのに、何かが途轍も無く面白い。
提督「“ 艦娘 ”とは面白い者たちばかりだ。もっと、もっと欲しい。全ッ然足りん!
彼女たちがきっと、俺に俺の明日を呉れる筈だから」
通信は大分頻度と緊急性を減らしている。
もう時期敵は殲滅され、勝鬨と喜びが爆発し、そして賛辞と謝辞が溢れるだろう。
提督「あとは大和と雲龍たちだが……参謀? 」
「はい? 」
提督「大和たちからの通信が来たらすぐに伝えろ。というか俺に代われ」
【皆さんの戦果】
0.大和
1.比叡
2.雲龍
3.Graf
4.最上
5.Prinz
6.該当者無し
7.ドイツ組
8.該当者無し
9.該当者無し
ゾロ目……全員(はぁと)
…
………
……………
提督「マジかよお前」
Graf「は? 」
提督「何でもない。……あの配置と情報でMVPとかマジ? 」
Graf「……は? 」
終わってみれば当然の如き大勝利であった。
横須賀近海に現れた敵大艦隊は殆ど戦果を上げることさえ出来ずに挟撃され撃滅。
女川に現れた陽動部隊は駐留部隊の堅実な迎撃と大和たちの危なげない攻撃で殲滅。
至ってシンプルであり完璧なまでに予想通りのそれは、至ってシンプルで完璧なまでの勝利となった。
どうやら警戒網を潜り抜け急に現れた敵はオホーツク海やベーリング海から割かれた部隊であったらしい。
急激な波状攻撃によって戦力を削られ防衛に必死であったため気付くのが遅れた、とロシア側は主張しているようである。
その真偽は好意的に見積もっても十分以上に怪しいがしかし、その先は政治屋の仕事である。
ロシア政府が急速に勢力を盛り返したこの国に随分と消極的な攻撃を仕掛けた可能性は高いが、
彼らが大打撃を被ったのは事実なのだ。
対してこちらは彼らの怠慢を自力をもって斥けている。
俺たちにとっては然程の問題も無い。
問題なのは寧ろ個人的な思惑が一部大外れしたこと。
大した情報を与えずまずまずの戦果であることを期待した飛行船伯爵が、
何故か戦果第一の功績を上げたことである。
提督「…………はぁ? 」
Graf「褒められこそすれ呆れられる筋合いは無いと思うが」
提督「何機落として何隻沈めたって? 」
Graf「そんなもの数える余裕が無かったと言っているだろう。それよりいいのか? それは」
ヒラヒラと大雑把な報告書を弄びながらGrafが差したのは書類の山であった。
報告書には目を通したし大体の上申や今後の展望を纏めたもの、
作戦立案や会議に関する資料は既に粗方捌ききっている。
今この執務机に鎮座しやがってくれているのは、
Graf「取材申し込みに代議士からは会食への誘い、
海軍省への入省を勧めるものから各種実業家からの援助申し込み、
他には見合いの……クク、ラヴレターだらけだな。随分と人気者じゃないか」
提督「…………」
既に勝利からはほぼ二日経っている。
最初のうちは執務の為だといって放置し誤魔化していたが時間が経ってしまうとそうもいかない。
この下らない些事の山など本音を言えば今すぐ焼却処分してしまいたいくらいである。
何度か燃やさなければならない程積まれているのは見ているだけでも不愉快な気分が湧き上がってくるが。
提督「何枚かやろうか? 今なら俺も推薦状くらい書いてやるが」
Graf「戯言を。私はこの国の人間ではないから役人になどなれないし代議士や実業家にとっても旨味が少ない。
ましてや良家の子女とお友達ごっこをする趣味など無いよ」
提督「ふん。…………こいつらは取り上げて明日処理する」
Graf「ま、Admiralも疲れてはいるだろう。休むのも重要な仕事というやつだな」
提督「あぁ」
Graf「…………」
提督「…………」
Graf「…………」
提督「…………コーヒーのお代わり、要るか? 」
Graf「貰おう。Admiralのコーヒーは私でも見習いたいところがある稀有なものだからな」
時刻は既に夜半。真っ暗な外からは二日前の喧騒が嘘の様な静かな潮騒しか聞こえない。
建物内も静まり返って皆が戦闘とその後の祝勝会による疲れから回復していないと伝えてくるかの様。
執務室には今回のMVPであり、本人は決して認めないが所謂“ お姉様 ”目当ての僚友から逃げてきた伯爵閣下ことGraf Zeppelinと俺だけ。
提督「あいつにも十分ラヴレターなんてきてると思うけどな」
Graf「何か言ったか? 」
提督「何にも」
【リザルトボーナスのお時間】
0.女はデートで何処へ行きたがるものなんだ
1.ドイツへ帰りたくはないか
2.お前そのものを欲しい言われたら、どうする
3.欲しいものは無いか
4.欲しいものは無いか
5.ドイツへ帰りたくはないか
6.女はデートで何処へ行きたがるものなんだ
7.ドイツへ帰りたくはないか
8.欲しいものは無いか
9.女はデートで何処へ行きたがるものなんだ
ゾロ目……全部
なるほど……なるほど
相変わらず安定してますね……
またよろしくお願いします
ありがとうございました
ニアゾロ目はちょくちょく出てるけどね
乙
おつおつ
信じていいのかな、
【ドイツへ帰りたくはないか】
Graf「帰りたいと思うのか? 」
提督「大抵の人間は故郷にいつでも帰りたいと思うだろうな」
Graf「そうだな」
提督「…………」
Graf「…………」
どちらからともなく冷めかけたコーヒーカップを口元へ。
味と香りに拘ってはみたものの結局はただのコーヒーである。
淹れ方にまで拘り何度も試行錯誤を加えてこれならば何ということも無い。
コーヒーが好きな人間には絶賛されるがそんなものより本当に欲しいものや好きなものを見つけたい。
Graf「ふぅ……Admiral」
提督「あん? 」
Graf「あなたが帰れと言うのなら、帰るよ。私は正直この国にいたいとも思っていない」
提督「そうか」
Graf「Admiralは中々に面白い人間だ。あなたに恋なんてしているわけではないが何か、惹かれるんだ」
提督「…………」
Graf「ま、Admiralの立場では帰れと言うことなどできないだろう。……ふふ、そう渋面などつくるな。私はーー
【応え】
0.次の作戦が終われば、帰ろうか
1.帰る場所など無いんだよ
2.戦場で生を終えたい
3.次の作戦が終われば、帰ろうか
4.“ Bismarck ”を見つけたいんだ
5.戦場で生を終えたい
6.帰る場所など無いんだよ
7.戦場で生を終えたい
8.次の作戦が終われば、帰ろうか
9.帰る場所など無いんだよ
ゾロ目……恋をしてみたい
【次の作戦が終われば帰ろうか】
Graf「それで、いいだろう? 」
提督「別にここにいてくれても構わないが」
Graf「あなたにとってはね。あなたは何をも望んでおらず何をも望んでいる。そんな人に私は不要だ」
提督「……ほう? 」
真っ暗な外と暖色系の僅かな執務室に二人。
足を組みコーヒーの香りを楽しむ女が嘯いた。
大和や雲龍ですら気付かない、否、興味を向けない俺の内面に目を向ける女。
ある意味では危険で、また別の意味では期待せざるを得ない。
Graf「私はこれでも激情家で愛国主義者で人類主義だ。
誰の幸せも願わないクズと仲良しごっこをするのにも限界があるよ」
提督「だが俺はある種の無垢な人間とも言える。
お前が俺を正義や奉仕に目覚めさせることができたなら、それは
Graf「不可能だ。あなたの様に虚無を抱えそれでいてなお自らの幸福を探求する化け物に私は勝てない」
提督「…………」
コーヒーを一気に飲み干した女は再度嘯いて立ち上がった。
その立ち姿ですら今となっては神々しい。俺が求めていたもの、それは共感者だったのかそれとも理解者だったのか。
Graf「断言してやろう。まともなやつはあなたを幸せになどしてやれない。
そしてあなた程振り切れた存在に私は今まで出会ったことなど、無い」
ーー帰って退役できるよう、精々頑張るさ。
好き勝手喋り散らかして去った女の残り香は、いつに無く、甘く感じられた。
…
………
……………
提督「あれでこの国の艦娘なら根回しも楽なんだが」
最上「何か言った? 」
提督「いいや。……留守は任せたぞ。参謀もいるが俺の権限は一部お前に預ける」
最上「大層なことしてくれちゃって……怒られるよ? 」
提督「大切な女との逢瀬より大事なものなどあるまいよ」
最上「ばーか。……提督でも、冗談って言えたんだね」
提督「あん? 」
【約束の日です】
0.冬服
1.ペアマッサージ
2.カフェ
3.ペアマッサージ
4.遅刻女
5.カフェ
6.冬服
7.カフェ
8.冬服
9.ペアマッサージ
ゾロ目……ランジェ
雲龍『おはよう』
提督『おう。……閉めるぞ』
雲龍『ん』
正門前、時刻はマルナナヨンゴー。八時集合だがまぁ妥当なところだ。
これで時間にルーズな女だと分かれば一生誘わないと決めていたのでこれでよかったのだが。
雲龍『ありがと。ドア開けてくれるなんて紳士なのね』
提督『馬鹿言え。これくらいで女の評価が上がるくらいなら誰だってする』
雲龍『そうね、別に上がりはしないわ。しなければ下がるけれど』
提督『ハンッ』
あれから大体一時間と一時間と少し。
適当に流した車を街中目に付いたのカフェで止めこのあとの予定を訊いてみる。
予定は男が組むもの、なんて考えられていたとき用にプランは用意してあるが実際どうでもいい。
俺にとって興味があるのは雲龍の内面と行動そのものだし、彼女にとって俺といられればどこでも構わないらしい。
雲龍「あなたの淹れたコーヒーの方が美味しいわ」
提督「そりゃどうも」
そこそこに落ち着いた雰囲気で薄暗い店内には客があまりいない。
街中の雰囲気がいいカフェなど常時人がいるものだがこれは穴場の様なものだったか。
髭をたっぷりと蓄えたマスターのおすすめはブレンドだったが確かにあまり美味くはない。
然程興味の無い俺でさえそう思うのだから雲龍にとっては歴然としたものだったのだろう。
雲龍「それにしても……凄い車ね、あれ」
提督「大したものじゃない。お前でも買えるさ」
普段は鎮守府の敷地に放置されている俺の愛車はシボレーのコルベット。
前世代までのリトラクタブルは廃止されており511馬力のパワーは乗っていて心地がいい。
エッジの効いたフォルムが気に入って購入したが他人を乗せたのは初めてである。
雲龍「それでも、ね。ツーシータなんて初めてだったし」
提督「そ。……初めてついでに訊くがどこか行ってみたいところはあるか? 」
考えてみれば、そうだ。プランはあるものの彼女の希望に沿った方がいいだろう。
何せ艦娘ときたら面倒な行程を幾度も経て得る監視の中での外出許可か男をつくるしか外には出られない。
彼女にとっては外で見るもの全てが新鮮なものと言っても過言ではないだろう。
雲龍「あら、こういう場合は殿方が決めてくださるものじゃなくて? 」
提督「お前に希望が無いなら幾つか考えているが……明日の朝まで時間をもたせられるかは正直自信が無い」
暗に夜も二人だと牽制球を投げてみる。
美味くないといったコーヒーを啜る、顔を顰める、カップを置く、瞑目する、口の端をやや上げる。
それだけの動きが、どこか性格を感じさせて少しだけ楽しい。
雲龍「そう……うぅん、それなら、私行ってみたいところがあるわ」
提督「何処だ。よっぽどのことが無ければそこでいいぞ」
どうやら夜のことに関してはまだ話はしないらしい。
確かに誘ったのは俺だし彼女はその先も許すと先日言っている。
それを断ったのがそもそも俺なわけだから無反応というのも頷ける。
好きだと言ったのは自分だけれど女のプライドくらいはある、といったところだろうか。
雲龍「私はーーーー
【何処へなりともあなたとならば】
0.水族館
1.教会
2.水族館
3.ホテル
4.映画館
5.教会
6.映画館
7.教会
8.映画館
9.水族館
ゾロ目……敵襲(はぁと)
【教会】
提督「こんなところに来て何がしたかったんだ、お前は」
雲龍「何がしたいとかじゃなくて、来てみたかっただけ。意味なんて無いわ」
髭面のマスターが精一杯の愛想を振り撒いてサンドウィッチを勧めてくるのを退け、暫く。
鎮守府からカフェ、カフェから教会なんて中々経験できることではない。
雲龍「私たちは教会にとって忌み子同然。そもそもセックス以外でできる生命に混乱をきたしている」
ヒラヒラ、ヒラヒラと。
白いマキシ丈のワンピースはこの場においては新婦と見えなくもない。
ジャケットを羽織った俺からすれば寒いだけだと思うのだが別にどうともないらしい。
そういうところが籠の中の鳥だと言ってしまえばそれまでではあるのだが。
雲龍「適合した人間を破壊しての“ 憑依 ”、鉄や油を組み合わせての“ 建造 ”、敵を屠った海上の“ 顕現 ”。
宗教家にとってどれが一番マシなのかしら」
提督「そりゃあ人間の艦娘化だろうよ。それだけなら人権を無視した人体改造だと雑に批判できる」
中立的無宗教、或いは消極的多信教と言えるこの国では問題無いが、
クリスチャンの多い地域では未だに艦娘とそのあり方に批判や疑問が多く投げかけられているらしい。
一般人に対して情報統制を敷き不要な情報を与えない様にしているとはいえ、
インターネットの発達したこの時代においてそれには限界がある。
生命と地位の惜しいまともな人間が暴露することなどあり得ないが、
ドロップアウトした無能者や偽善によって奮起した馬鹿が時々人々を沸かせるのだ。
教会とて表向きは特に情報を得ているわけでは無い。
それ故に非人道的な行いを各国が行なっているのではという注意喚起と警告が関の山である。
だが実際は各国と背後で繋がっているのであって持っている情報は下手な国よりも余程優位だ。
だから、彼らにとっても結局艦娘とは使役する対象であって保護する対象では、ない。
神は、化け物を助けない。
雲龍「私たちは望んじゃいないのに。戦うことしか知らないのに。それしか許されないのに」
ヒラヒラ、ヒラヒラ。
無人の教会を舞う美しい蝶。
ヒラヒラ、ヒラヒラ。
舞う蝶はいつしか神父の立つべき壇上まで上がっている。
俺は、そこから少し離れた長椅子に座っている。
雲龍「いっそ無関心の方が余程嬉しいわ。目につく人間といえば好色な目か嫌悪の目ばかり」
提督「……」
雲龍「嬉しいことなど滅多にありはしない。自由が無いことを嘆くより、何も無い中での禍福を楽しみたいの」
提督「……」
壇上の雲龍がこちらを睥睨する。
射抜こうとするかの様な目は俺を見ている様で、その実人類全てを憎んでいるかの様で。
雲龍「ここまで来てよ、お願い」
提督「はいはい」
壇上に上がり、彼女の目の前に立つ。
女性としては高身長な部類の彼女もさすがに俺の前では小柄に見える。
暇と鬱屈に耐えかね鍛えに鍛えた結果の筋肉。
鎧に覆われた身体は彼女にとってどんなものなのだろう。
提督「だから、媚びてみたのか」
雲龍「それもまた、一つ。有能でお金持ちで名家出身のあなたの女になれば道が拓けると思った」
提督「正しい。それは悲しい程に正しいが、間違っている」
瓏々と、それも演劇の様に大袈裟に、誇張甚だしく。
自分でも場所と雲龍の雰囲気に飲まれているのが分かる。
実際には鬱々しい女のまどろっこしい愚痴を聞いているだけではあるのだけれど。
それでも、何かこの空気からは逃れられない。逃れようと思わないのが不思議だった。
雲龍「キス、してよ」
提督「何故? 」
雲龍「言ったでしょう? あなたの女になりたいからって」
抱き着き、身体を押し付け、擦り合わせ、湿った息を吐く。
まるで俺の身体に自分の意識を浸透させる様なそれは、途轍も無く男の庇護欲と欲情を誘う。
雲龍「でも、それだけが理由じゃない。あなたが欲しい、私を受け入れてほしい。
大和さんには渡さない、Grafにだって渡さないし他の女なんて存在も認めません」
言って。胸板から上目遣いでこちらを射抜く。
射抜かれた、射抜かれてしまった。
心を見透かす様な澄んだ瞳は、逆にその心の奥を見せてしまっていて。
彼女が、嘘を吐いていないことが、分かってしまう。
それは一人の女の、真愛しと言えた。
提督「…………足りない」
雲龍「え? 」
提督「足りないよ、雲龍。ただ俺を欲しいって言う女なんて自慢じゃないがそれなりにいたし、いる」
雲龍「……」
提督「それが金や、容姿や、地位や、家柄、もしかすると政略結婚染みた媚びだとしても、同じだ。
俺にとってお前が大切であるのは未だに有能な部下であることだけ」
女として一つの完成形とさえ言える容姿や身体も。
ぼんやりとして抜けている様で気配りのできる優しさも。
内に秘めたる闘志や向上心も。
それは俺にとって終局ただの情報でしかない。
提督「お前と寝てみればきっと楽しいだろう。お前を愉しませてみるのもそれすら愉悦の極みだ。
それでも、それでも俺には“ ただの愛情 ”に呉れてやる真心など無い」
雲龍「…………それなら」
ここまで言われてなお、その意志は挫けない。
なんと尊いことだろう。なんといじらしいことだろう。そしてなんと気高く美しいことだろう。
仮に俺がまともな人間だったのなら、今頃はお互い幸せな家庭でも築いていたのだろうか。
俺を射抜く艶やかで潤んだ瞳は、一層力と輝きを増していく。
雲龍「それならーーーー
【教会、二人】
0.私に溺れさせてみせるわ
1.あなたを真人間にしてみせる
2.便利な道具を極めてみせるわ
3.あなたが飽きるまで愛し続けるわ
4.便利な道具を極めてみせるわ
5.あなたを真人間にしてみせる
6.あなたを真人間にしてみせる
7.便利な道具を極めてみせるわ
8.あなたが飽きるまで愛し続けるわ
9.あなたが飽きるまで愛し続けるわ
ゾロ目……あなたと死ぬしか、無いわ
わーお……わお?
楽しくなってきたなぁ……
少ないですが今日はこの辺で
またよろしくお願いします
ありがとうございました
やっぱりな(レ)
やっぱコンマ神ってエンターテイナーだわ
乙
溜めに溜めてこのタイミングでかよ……コンマ神、アンタぁやっぱりわかってるねえ
おつおつ
これはこれはw
やっぱこええよぉ~
雲龍「それなら、あなたと死ぬしかないわ」
提督「…………」
無人の教会、ただ二人壇上に立つ役者に言葉など無く。
女の一言で空間は全ての歪みを正し切り、澄んだ。
雲龍「私たち化け物に後なんてあると思って?
あなたに受け入れてもらえないなら、私は死ぬ。
振られた後はあなたの憐憫も周囲の嘲笑も私には耐えられないから」
提督「…………」
雲龍「シアン化カリウムの経口致死量は150mgから300mgと言われているわ」
言って、彼女が取り出したのは何の変哲も無い小瓶。
鎮守府のどこかで見た覚えも監督した覚えも無い。
この先生き残れたのならばその出所を調べないとならないな、なんてどうでもいいことを漠然と思った。
雲龍「あなたを羽交い締めにして口移しで飲ませてあげる。あなたが死んだ後、私も死ぬわ」
提督「…………」
ここで死んでしまうのもまぁ、悪くない。
特に楽しいものも無く、趣味と言える趣味も無く、好いた女もおらず。
人生の夢や目標を探し続けた人生だと思えば然程酷いものでもない。
けれど
提督「お前に選択肢を遣ろう」
雲龍「選、択肢? 」
怪訝な顔で俺の顔を見つめる雲龍は未だ気付いてはいまい。
お前に俺は殺せない。半端な化け物に殺されてやる程俺の価値は安くない。
そこには何らの保証も根拠も無いけれど、それでも真理と言える正当である。
提督「一つ。このままホテルなり鎮守府なりで俺を溺れさせてみる」
雲龍「却下。正直一晩じゃ自信が無いわ。処女だし」
提督「一つ。死してなお俺の為に生きる程の道具であれるよう自分を圧殺することを覚えてみる」
雲龍「却下。あなたの側にいないと仮令生き延びてもそこに意味なんて無いわ」
提督「一つ。俺を真人間にしてみる」
雲龍「却下、いえ、不可能よそんなことは。私が惹かれた男は、そんなことでは変わらない。
そんなことで変わるただの人間を好きになんて、ならない。
クズであることを越えてでも欲しい男なのよ、あなたは」
ここで自分に負けてくれればどんなにか幸せだろう。
俺にとっても、そして彼女にとっては特に。
提督「それからば問う。今ここで俺が生命惜しさにお前を受け入れると言えば、お前はここで自死と殺害を諦めるのか」
雲龍「…………」
未だ胸板に抱き着き上目遣いを続ける雲龍が視線を逸らした。
たじろいだその弱さがお前の命取りだったと、いつか後悔するがいい。
結局はお前も、化け物以前にただの女に過ぎないのだ。
まともな“ 人間 ”に使えるジョーカーの一つは、愛という瑣末事に他ならない。
提督「悪い、少し意地悪し過ぎたか? 」
雲龍「え? 」
提督「俺は確かにお前の言う通りクズだが……それでも好きでもない女と遊びに出掛ける程飢えてはいないよ」
真っ赤な嘘だ。ここまできていると既に赤軍よりも赤い。
風俗に行くかどうか悩んでいた人間の精神が禁欲に耐えられる筈が無い。
提督「それはまだ持っていろ。この後、やっぱり耐えられなくなれば、使ってくれて構わない」
雲龍「…………」
雲龍が取り出した小瓶を懐に、仕舞う。
所詮その程度、幾ら化け物と誹りを受け常人には考えられない凄惨な戦場に立とうとも、女は女である。
愛した男を殺すことなど、それも自らの身体を蝕みつつも消し去ることなどできはしない。
提督「お前が俺を感じられないなら……感じさせてやるよ。
肉の喜びが欲しいなら、素直にそう言えばいい」
ーー“ 人間 ”は、“ 女 ”は、愛を実感できない不安から道を踏み外すんだ
囁き流し込んだ声は、的確に雲龍の耳を脳天まで貫いたらしい。
目に見えて、彼女の震えは収まり、逆に体温が上がり心音が激しく脈打つ。
お前は人間で、女で、そしてただの雲龍に過ぎない。だから惑いも仕方の無いことだ。
混ぜ返し意味を反転させ意義を破壊した言葉は最早彼女にとっては俺そのもの、彼女の心そのものに他ならない。
そしてそれが同一であるという錯覚は彼女の思考を鈍らせていく。
相互理解という枷の締め付けは支配と隷属の道具に他ならない。
提督「…………忘れられない夜に、してやるよ」
雲龍「ッ…………」
逡巡し惑い思考を再トレースする機会など与えない。
分からぬ内に唇を奪い舌を潜り込ませその意志を蕩かせる。
冷めた思考とは裏腹に彼女の安堵と従順からくる肢体の熱さが俺の獣欲をも昂らせていく。
このまま、このまま、このままでいい。
その行動と理由の浅薄を知らず後悔していろ間抜け。
善がらせ気を遣り失神したとして構うものか。
お前はもう、これから俺の道具に成り果てるしか道が無い。
それを幸せと感じているうちは、お前にも全力で応えてやろう。
駐車場の車に戻るのももどかしく、そこからホテルに行くのも煩わしい。
乱れた姿と冷静な心象風景と。
殺そうとした女と殺されなかった男と。二人、その立場は、きっと今まで通りである。
何も、変わったことなど、無い。
まだ
提督「お前が俺を感じられないなら……感じさせてやるよ。
肉の喜びが欲しいなら、素直にそう言えばいい」
ーー“ 人間 ”は、“ 女 ”は、愛を実感できない不安から道を踏み外すんだ
囁き流し込んだ声は、的確に雲龍の耳を脳天まで貫いたらしい。
目に見えて、彼女の震えは収まり、逆に体温が上がり心音が激しく脈打つ。
お前は人間で、女で、そしてただの雲龍に過ぎない。だから惑いも仕方の無いことだ。
混ぜ返し意味を反転させ意義を破壊した言葉は最早彼女にとっては俺そのもの、彼女の心そのものに他ならない。
そしてそれが同一であるという錯覚は彼女の思考を鈍らせていく。
相互理解という枷の締め付けは支配と隷属の道具に他ならない。
提督「…………忘れられない夜に、してやるよ」
雲龍「ッ…………」
逡巡し惑い思考を再トレースする機会など与えない。
分からぬ内に唇を奪い舌を潜り込ませその意志を蕩かせる。
冷めた思考とは裏腹に彼女の安堵と従順からくる肢体の熱さが俺の獣欲をも昂らせていく。
このまま、このまま、このままでいい。
その行動と理由の浅薄を知らず後悔していろ間抜け。
善がらせ気を遣り失神したとして構うものか。
お前はもう、これから俺の道具に成り果てるしか道が無い。
それを幸せと感じているうちは、お前にも全力で応えてやろう。
駐車場の車に戻るのももどかしく、そこからホテルに行くのも煩わしい。
乱れた姿と冷静な心象風景と。
殺そうとした女と殺されなかった男と。二人、その立場は、きっと今まで通りである。
何も、変わったことなど、無い。
まだ
雲龍「…………♪ 」
最上「ゆうべはおたのしみでしたね」
提督「おう悪いな」
最上「」
提督「あん? 」
Prinz「私は別にいいけど……ねぇ? 」
比叡「? 」
Prinz「……マジ? 」
Graf「やれやれ……一体何がいいやら、理解に苦しむよ」
【いつか遠く臨んだ理想まであとどれだけ】
0.艦娘
1.急襲
2.父親
3.風俗
4.父親
5.艦娘
6.役人
7.艦娘
8.軍人
9.雲龍
ゾロ目……陸軍(はぁと)
…
………
……………
「分かっておろうな。さすがにお前も功績を上げすぎた」
提督「いえ、まだ足りません、全く足りない。それどころか不十分なまであり得る」
下らない、吐き気がする、今すぐその臭い息を吐く口を縫い合わせてやりたい。
軍令部からやってきたそれはそれは偉い無能な豚のお言葉曰く。
俺はどうやら一司令官に収まっていていい人材ではないらしい。
ゆくゆくはこの国の政治と軍事を束ねる人間になるべきだとかなんとか。
実に、下らない。子飼いの軍人が功績を上げるのに邪魔な俺をさっさと取り込むか飼い殺しにしたいだけだろうに、回りくどいことだ。
いっそ暗殺でも計画してくれればいいのだが。
それならば一思いにぶち殺して差し上げるというのに。
「それはそれは。まだ、お前にはここでやることがあると? 」
提督「ええ。まだ我々は横須賀から硫黄島までの細いラインを得たに過ぎません。
我らが為すべきは臣民の為、この国の全てを平穏にすること、違いますか? 」
「それは……そうだが、うぅむ」
唸る芝居すら大仰に。
物理的に肥え太りこれ以上ないだろうその身体は醜さを通り越して毒であると言えよう。
お前程度が俺の未来への希望を捨て去ることなど許さない。
貴様程度に潰されるのなら、いっそ踏み躙りこの世から消してやる。
雲龍との一件以来、どうも精神的な昂りが抑えきれない。
多いときには二晩も三晩も連続して一晩中雲龍を啼かせてやっている。
俺としては行き場の無い鬱屈を極上の身体で発散でき、
彼女としても“ 愛されている ”実感を肌で、内臓で感じることができる。
それでいてなおこの鬱屈と苛立ちというのは、そろそろ潮時ということなのか。
たかが肥えた無能の言葉に一々腹を立てるなど、あってはならない無様だ。
提督「寧ろこちらからお願いしたい。物資でも、命令でも、でき得るなら俺の直属の部下を増やしてください。
その判断が間違いではないと、必ずあなたの為にもなると僭越ながら自負しております、閣下」
「…………」
ただ、純粋にこの国の為に働きたいのだと。
野心など無く下心を想像されるなんて耐えられないと。
真っ直ぐに見つめたその細い豚の様な目を邪気無く見つめる。
今、ここから離れてしまうのは、得策ではないのだ。
「…………そう、か」
やけに勿体をつけたが何のことは無い。
与し易い相手であればそのまま引き抜くなりなんなりした筈。
けれどできないのならば、精々恩を与えて貸しの枷で奴隷にしてやる。
そんな浅知恵が透けて見える下手な芝居が漸く終わりを告げたのだ。
「…………ならば、これからも精進するが良い。陛下の為に、国の為に、人々の為に、身を粉にして、働け」
提督「はっ」
【乖離する意志と女とその他と】
0.指輪
1.ブルネイ
2.物資
3.指輪
4.物資
5.艦娘
6.指輪
7.艦娘
8.物資
9.艦娘
ゾロ目……お・み・あ・い(はぁと)
大和「な、何ですこれ」
提督「貰った。以上」
山と積まれた物資は様々だった。
流されたのか正規の品なのかはたまたあの豚野郎個人の思惑か。
取り敢えず目に見える事実は、山積みの物資のみである。
【あと数日で約束の日】
0.艦娘
1.急襲
2.父親
3.風俗
4.父親
5.艦娘
6.役人
7.艦娘
8.雲龍
9.艦娘
ゾロ目……陸軍(はぁと)
提督「あいつで遊んでやるのもいいか……む」
雲龍ばかりに構っていても結局は鬱屈を多少紛らわせるだけに過ぎない。
まだまだ大和やGraf、もしかすると比叡や最上、その他の奴らだって俺に希望を見せてくれるかもしれない。
虚無が無くなるよう、明日を眩しく思える様に、今日も生きていこう。
【落ち着いた、かな? 】
0.Prinz
1.雲龍
2.最上
3.重巡組
4.大和
5.戦艦組
6.Graf
7.空母組
8.比叡
9.全員
ゾロ目……うんりう
諸事情によりここまで
申し訳無い
明日はちょっと昼頃にも来られるかもしれなくもないです
またよろしくお願いします
ありがとうございました
おつおつー
おつ
Prinz「“ 建造 ”、しないの? 」
提督「あん? 」
最近あまり重巡組と話していなかったな、なんて。
瑣末事ではあるもののどんな道具であれ整備と確認は大切なものである。
万が一不満なんて溜め込まれていては目も当てられないし、
何か興味の湧くことを口走ってくれるかもしれない。
どうせ喫緊の任務なんてものは無いのだし。
そんなことを思いつつ、Prinzと最上を執務室の応接スペースに呼んでみたところである。
最上「そうだね。異常なスピードで鍛えられた所為でボクももう“ 改 ”だよ」
Prinz「Admiralがそれ以上を望むんなら別だけど……どうなの? 」
それ以上とはつまり、“ 指輪 ”のことであろう。
一定以上の能力を得た艦娘と人間が契りを結ぶことによって成るステップアップの呪法。
何のことは無い、それはただの精神感応装置だ。
畏怖であろうと恋慕であろうとそれが閾値を超えていればそれで良い。
何がしかの精神的繋がりが深まっていれば作動するのだ、あれは。
俺はそれを使って、いない。
そうであれば“ 建造 ”によって手駒を増やすのが定石である。
軍全体としては軍令部や海軍省、国会の議論と承認を経て一定の数を保たれている。
けれど俺が異常な速度で海域を平定したとはいえシーレーン方面は未だ魔鏡だ。
一日でも数十隻単位で沈み、“ ドロップ ”し、その数との調整が図られている。
そして俺には艦娘を生み出す権限が付与されている。
鎮守府や警備府、その隷下の要港部責任者だけに与えられた特権。
事後承諾すら許される最高の栄誉。
これを与えられるというのはつまり、叛乱など企図しないと信頼された者だけなのだ。
それをせず、しかも指輪さえ使ってはいない。
彼女たちならずともその理由は是非訊いておきたいところなのだろう。
自分ではなくとも友軍が強化されればそれだけ生き残るチャンスが増えるということなのだから。
提督「そうだな……あぁ、考えておく」
別に然程の理由なんてものは、無かった。
ただ単に子飼の彼女たちには戦力として満足しているのもあるし、
自由に動かせないとは言ってもそれは無茶をできないだけということ。
横須賀に配備された艦娘やほぼ全ての将兵は事実上俺のものだった。
だから、わざわざ子飼を増やして面倒な書類を相手にしたくなかっただけなのだけれど。
それを彼女たちに言う必要性など、無い。
Prinz「ふぅん……ま、いいけど。ちなみに私は指輪待ってるからね? 」
最上「あ、ボクもボクも。提督が相手ならまぁ、構わないよ」
提督「…………」
俺としては今すぐここで投げつけてやっても一向に構わない。
許可などとうの昔に出ているし彼女たちなら変に舞い上がって増長などしまい。
そして彼女たちにとってもそれはその程度のこと。
形としては指輪だがそこには男女の機微など存在しない。
それを嘆いていた同期がいたがあれは無駄にロマンティストなだけなのだ。
艦娘とは本当の意味で夫婦になどなれないし、隠れて契りを結んでいたとして指輪は別のものを用意しているだろう。
俺なら、そうする。
たかが精神感応装置に愛など込めていられるか。
提督「だがまぁ……一応聞いておいてやる。お前たちは誰が欲しい」
Prinz「Bismarck姉さま! 」
最上「三隈か鈴谷か熊野」
提督「…………」
つまらない、実につまらない。他に何か無いのか。
提督「はぁ……」
彼女たちは同じ存在が複数いてもその自我に異常をきたさない。
人間ならば自我に何らかの異常が見られると思われているのだが、
そういうことが報告されたことはなく、それも彼女たちの化け物らしさだと認識されている。
だから例えばPrinzにとってはその “ 姉さま ”は彼女の認めた“ 姉さま ”しか存在しえない。
この鎮守府やドイツ本国にだって“ Bismarck ”は何隻も生きて動いている。
それでも彼女が認めるのはその生涯でただ一人だけなのだ。
提督「まぁ、そのあたりの化け物らしさには興味が無いわけでも……む」
【やる? やっちゃう? 】
0.やらない
1.やる
2.やる
3.やらない
4.やらない
5.やる
6.やる
7.やる
8.やらない
9.やらない
ゾロ目……いっそ指輪にするか
ヤッたぜ。
【建造しましょうか】
Graf「なんだ、工廠の存在など忘れているのかと思っていたよ」
提督「馬鹿言え。必要性を感じていなかっただけだ」
Prinz「私たちで満足していたとか腑抜けたこと宣うんですよこの人ー」
Graf「それはそれは。……全員要るな。あなたの子飼は」
雲龍「…………要らないのに」
比叡「……Zzz」
大和「ちょっと比叡さん……えぇ」
最上「このよく分からない面子と初対面かぁ……ボクは嫌だね」
提督「…………それは俺が一番言いたいんだが」
【スペシャルなセレクトですよ! 】
0.武蔵
1.金剛型
2.雲龍型
3.武蔵
4.最上型
5.雲龍型
6.Bismarck
7.Bismarck
8.金剛型
9.最上型
ゾロ目……“ 二人目 ”
提督「やはり選ぶなら火力だな」
Prinz「そりゃそうでしょ。Bismarck姉さまを引けるよう祈っててね? 」
Graf「残念だが……」
Prinz「はい? 」
比叡「Zzz……っはっ?! あれ? なんかこれはいい予感? 」
最上「なんだこの野生児」
【なるほど】
0.金剛
1.金剛
2.比叡(はぁと
3.霧島
4.榛名
5.金剛
6.榛名
7.榛名
8.霧島
9.霧島
ゾロ目……しゃーないあと一隻ガチャやるか
【野生児の勘】
金剛「紅茶が飲みたいネー! 」
提督「あ? 」
比叡「お姉さまぁぁぁぁぁぁぁぁ! 」
金剛「oh? oh! 比えぐぅえっ
比叡「何か知らないけどお姉さまがいるぅぅぅぅ! 」
Prinz「…………えーっと」
雲龍「何かたぶん敵になりそう」
Graf「お前にとってはそうかもしれんな。私にとってはどうでもいいことだが」
最上「取り敢えず頭使ってくれるか微妙なのは分かった」
大和「全く流れについていけないのですけれど……」
提督「…………離してやれ、比叡」
比叡「はい? 」
金剛「死ぬデース……生まれて早々に妹の腕の中で沈むぅ」
【ユカイナナカマガ! ミンナマッテルゼ! 】
0.サド
1.普通
2.マゾ
3.サド
4.普通
5.サド
6.マゾ
7.普通
8.マゾ
9.普通
ゾロ目……病ンデレ
エスDEATH!
金剛「ふぅ…………紅茶かけてやりたい」
比叡「? 」
金剛「んー、なんでもナッシーング! さ、部屋に案内するネー」
提督「…………何か少しだけ親近感みたいなの湧いたんだが」
Graf「勘弁してほしいものだな。あなたと似たようなやつなど要らん」
最上「うーん……うん? 」
大和「一瞬寒気がしたんですけど」
Prinz「最後の感想言う人みたいになっちゃってるよね大和さん」
大和「はい? 」
提督「取り敢えず俺は当分建造などせんぞ。そう決めた」
Prinz「えぇ~……」
提督「なんだあの鬱陶しいやつは、まったく」
…
………
……………
金剛「Hey! 提督ぅー。スコーンつくってきたネー」
提督「そりゃどうも。……なんだそれは」
金剛「? 」
比叡「お姉さまぁ」
提督「アホの極みとはいえそんな蕩けたアホ面で執務室に来るやつではなか……いやいい。
面倒を起こさないならある程度は感知しないからな、俺は」
金剛「ふふ……たぶん懸命な判断デース」
【今日も今日とて】
0.艦娘
1.急襲
2.建造
3.風俗
4.父親
5.艦娘
6.役人
7.艦娘
8.雲龍
9.艦娘
ゾロ目……陸軍(はぁと)
提督「こんなことなら最初からシーレーンでの出世を目指すべきだったか」
別にいつまでも戦場に身を置きたいバトルジャンキーなんかではないのだが。
それでも、結局艦娘たちが輝くのはそこをおいて他に無い。
俺が未来へ希望を抱くのはこの鬱屈を消してくれる何かを見つける為だ。
その何かは、こんなにも平穏で暇な鎮守府の奥に、無いと思う。
【誰を探すんです】
0.Prinz
1.雲龍
2.最上
3.重巡組
4.大和
5.戦艦組
6.Graf
7.空母組
8.比叡
9.金剛姉妹
ゾロ目……うんりう
提督「なんだ」
Prinz「だーかーらー! やっぱあと一回、一回で諦めるから! 」
最上「はは……比叡さんの変わりよう見てたら何かスイッチ入っちゃったみたいでさ」
勘弁してくれ。ただでさえ面倒な上申書類を書かされた上に金剛の相手までしていたのだ。
そう何度も何度も部下を増やしていられるものか。
提督「却下だ。俺にメリットが無い」
Prinz「むぅ、お姉さまはそれはそれは物凄い美人ですよ? 」
提督「知ってる。横須賀にももういるからな」
Prinz「あとあと、すっごい強い! 」
提督「知ってる。横須賀にももういるからな」
Prinz「あとあとあと、私の戦意が高まる! 」
提督「おい最上。この前の演習についてだが報告書が遅れている」
最上「え? え、あぁ……ごめんちょっと纏めにくくてさ。そろそろ終わるよ」
提督「早めにしてくれ。それをまた纏めて上にあげなきゃなら……なんだ」
Prinz「むぅー……むぅー……むぅー! 」
男の腰にしがみ付き唸る女。
腰にくっついた女を見る男。
その横で困った顔をする女。
提督「…………なんだこの面子。廊下だぞここ」
平和ー
Prinz「おーねーがーいー! Bismarck姉さまー! 」
最上「もうその辺にしておいた方が……えぇっと」
提督「…………」
Prinzの口車に乗せられて試してみた初建造。
出てきたのはどこかおかしい金剛。
彼女たち艦娘の性格は生まれた瞬間でも多少は違うらしい。
それが建造であれドロップであれ人間からの“ 転生 ”であれ。
だとしてもあれはさすがに何か薄ら寒いものを感じる。
正直面倒を増やすのはもううんざりなわけだが。
提督「…………お前が決めろ最上。コーヒーを飲みたいというなら用意してやるし茶菓子が欲しいなら好きなものを用意しよう」
最上「は? え? ここでボクに振るぅ? 」
Prinz「最上様ぁー! 」
最上なら面倒なことなど選ぶまい。
最上とPrinzの関係が変化するかもしれなかったが知ったことか。
それで連携が崩れる様ならそのときこそどちらかをシーレーンにでも飛ばして建造してやろう。
最上「はぁ。提督も辺なところでヘタれるというかなんというか……うん、そうだねーーーー
【はい】
0.これ以上はやめなよ
1.やってあげなよ
2.やってあげなよ
3.次の戦果次第で考えてあげてよ
4.やってあげなよ
5.やってあげなよ
6.次の戦果次第で考えてあげてよ
7.次の戦果次第で考えてあげてよ
8.これ以上はやめなよ
9.これ以上はやめなよ
ゾロ目……身体で媚びれば?
【賢明ですね】
最上「これ以上はやめなよPrinz」
Prinz「えぇー? 最上までそういうこと言うの? 」
最上「ボクや提督はまぁ面倒になったら逃げるからいいけどさ……自然に後ろ確認できるかい? 」
Prinz「? …………ッ」
最上「分かった? ああいうのがいるんだからさ、君ももう少し考えて行動した方がいいよ」
Prinz「」
ブンブン、ブンブンとかなりの勢いで首を縦に振るPrinz。
然もありなん、廊下の反対側には隠れてこちらを見る雲龍が。
正直腰に抱き着かれていた辺りから辺な視線を感じていたわけだが、やはり彼女か。
提督「宥め賺して腰を振るのも面倒なんだからな……本当に考えて生きろよ、Prinz」
Prinz「分かった、分かったから……でも、いつかちゃんとやってね? 」
提督「はいはい」
今夜あたり執務室は早めに出て私室に行っていた方が良さそうだ。
あれは、中々長くなるだろう、きっと。
何があそこまで彼女を病ませたのかなど知りたくもないが、しかし。
それもまた、鬱屈を少しでも紛らわせる糧となるならば喜んで相手をしよう。
雲龍「ふふ……」
提督「離れろ暑い……いい加減起きる時間だぞ」
雲龍「いいじゃないまだ……あと少し」
提督「…………はぁ」
昨夜は何ラウンドだったか。
思い出そうと思えば思い出せるがそんな無価値なことなどしていられない。
取り敢えず、今日の予定を思い出して未だに身体を擦り付けてくる雲龍を引き剝がさなければ。
【本日のご予定は】
0.艦娘
1.急襲
2.建造
3.風俗
4.父親
5.艦娘
6.役人
7.艦娘
8.雲龍
9.艦娘
ゾロ目……陸軍(はぁと)
いやー平和平和
平和って素晴らしい
今日も短いですがこの辺で
ありがとうございました
あああああ
平和だなー(メソラシ
おつー
おつおつ。さあ暴走はっじまるよー。
陸軍がきたらなにが何が起きるんです?(すっとぼけ)
提督「外してはならない素晴らしい用事があるんだよ……離れろ」
雲龍「ん……仕方、無いわね」
ある種偏執的で狂的な執着を見せてはいるものの雲龍は基本的に聞き分けがいい女だ。
明確な殺意ではなく他の選択肢を自ら狭めた状況での短絡的殺人衝動だったのも僥倖だっただろうか。
時折どうにもならない様な目で見つめられることはあれど、それは溶かせない程では無い。
今だって名残惜しさを存分に醸し出しつつも引き下がる様は女として寧ろ惹かれる部分である。
こちらとて彼女の身体から離れるのは割に後ろ髪を引かれるものだ。
陸軍軍人の非公式な訪問など予定していなければそのまま貪ったとて他の男には責められまい。
提督「朝食は? 」
雲龍「要らない。……コーヒーだけ、淹れていって? 」
提督「……ん」
この場面だけ切り取れば幸せな恋人同士にも見ようが、なんて。
愚にもつかない、何の意味も為さない幻想を見た。
ただその幻想を心から楽しめるリアルにすることができるのなら、俺は。
提督「……他の何だって捧げて見せるものを」
…
………
……………
提督「つまり何か。俺の権限を使って横須賀にそちらの手駒を配置しろと? 」
「忌憚無く誤解無く不躾に端的に言えば、そうです。
能力は十分以上ですし今までのキャリアは実に海軍らしいものでもあります」
下らぬ決裁事項を処理し、下らぬ応対へ。
神経質そうな見るからに陸軍将校らしい男は公式には軍に籍を置いていない男の筈だ。
銀縁の眼鏡に手を遣る姿にはその辺りにある一流企業の顧問弁護士といった風情しか見受けられないのではあったけれど。
「おかしいとは思わないですか? 各国、いや全世界の各海域に同時多発的に現れた敵性体と、
その後ほぼ同時に開発実戦配備された“ 人型 ”の関係を」
提督「別に。俺の様な一介の軍人にとってはこの国を守る術こそが重要ですからな。
そこに国家の闇があろうと大国の権謀術数が働こうとどうでもよろしい」
実際、本音である。
悪意と悪辣が全てだとは言わないがそもそも軍人や政治屋などそういうものなのだ。
変な理想を持った人間はまともな軍人になどなれないし、
逆にまともな軍人はまともな人間である筈など無い。
俺にとっては生命を張る大和たち艦娘が近くにおり、
雲龍やGrafといった俺に何がしかの未来を見せてくれる者がいることだけで十分。
それ以上など望まないしそれ以上を与えようなどと言われても不要だとしか言いようが無い
「…………しかし」
提督「しかしもへちまもあったものかよ」
「ーーーー」
勧め、諂い、懇願し、願い、さらに諂ってみればその先に出てくるのは知れたもの。
予想など、するまでもない。直接的であれ間接的であれ、恫喝より他にはあるまい。
「……こんなことは言いたくありませんし使いたい手でもありませんがね、
あなたは危うい、とても不安定だ。急激に台頭した人間にこの国は冷たい」
提督「知っている。知っていてなお、俺にははいそうですかと受け入れるメリットが見出せない」
「…………」
鼻白んだりは、しない。
彼とてくだらぬ権力闘争の一部だなどとは理解しているのだ。
そういう相手の事情くらいは分かっているし、だからこそ強気でいることもできる。
けれどもそれを曲げさせてでも俺に肯わせなければ自分の立場が無いのだ、彼は。
だから、彼は彼にできる最大限の歩み寄りを見せざるを得ない。
それが俺に対しての鬼札となるか、それとも単なる譲歩となるか。
それすら、今はまだ俺の掌の中にある。
「…………提督閣下」
提督「なんだ」
「…………ーーーー
【どう転んでも】
0.女を
1.物資を
2.この世の真理を
3.女を
4.女を
5.物資を
6.この世の真理を
7.この世の真理を
8.物資を
9.陸軍の全面支援を
ゾロ目……南方の暑さは堪えるでしょうな
コイツが一番欲しくなさそうなものを…
【ハズレ】
「女を、付けましょう」
提督「あん? 」
「彼女の動きと意志を見て決めてください。期限など長くはありませんが……ま、次の作戦が終わる頃には」
提督「承りました、と。……今更んなもんに惹かれる程初心だと思われているのか、俺は」
まさか女で籠絡してしまえばいいと判断されているわけではなかろうが。
だが、世界と思想の違う女が近くを這いずるのを高みから眺めているのも悪くは無い。
使えなければ嬲るもよし、襤褸布の様に使い捨ててしまうのも構わない。
或いは拾い上げて愛でてみるのも一興であってーーーー
提督「…………雲龍は、どうしようか」
また、ダイスの世話になってみるのも、また一興であろうか。
…
………
……………
あきつ丸「暫く世話になるであります」
提督「はいはいどうぞお手柔らかに」
あきつ丸「ふむ…………」
提督「…………」
あきつ丸「…………」
提督「…………」
あきつ丸「…………」
提督「…………」
あきつ丸「…………」
提督「…………」
あきつ丸「…………あれは? 」
提督「気にするな。いつものことだからな」
あきつ丸「はぁ……? 」
雲龍「…………変なことしたら、殺す」
大和「…………うぅん、また余計な」
Graf「暴露ているじゃないか……やれやれ」
【また陽が昇る】
0.艦娘
1.急襲
2.建造
3.風俗
4.父親
5.艦娘
6.役人
7.艦娘
8.雲龍
9.艦娘
ゾロ目……陸軍(はぁとはぁと)
提督「で、今度はどこだって? 」
大和「それがーーーー
執務中轟音響き見てみれば。
もうもうと立ち込める白煙の先には何か面白くないものが。
それが何であれ叩き潰し首元を締め付け生を後悔させてやらればならない。
こんなにもかったるい昼日中、あと少しで書類を片付けた昼寝でも決め込むか雲龍でも呼ぼうと思っていたのだが。
【割と遅かったね】
0.海軍改革派
1.深海
2.海軍保守派
3.深海
4.海軍保守派
5.海軍改革派
6.深海
7.深海
8.深海
9.深海
ゾロ目……殺る陸軍
一割くん久々やん()
【内輪揉め、よくないもんね】
大和「ここまで砲弾が届いたのは届いたのですが……」
提督「よく分からんがあれだけだったな。その割に至近ではあったがクソったれ」
執務室が轟音と共に揺れた割にはその先が、無い。
この近くまで敵を近付けてしまったことに青くなった哨戒班が敵を素早く沈めたのだろうか。
短いスパンで大規模な戦闘を指揮してきた所為か何か物足りない。
もっと血湧き肉躍り内臓が吐き気に震える凄惨な戦闘でなくては。
比叡「ふぁ……寝ていい? 」
最上「ボクは何も言わないけ
金剛「ひーえーいー? 」
比叡「ヒッ」
雲龍「艦載機の情報だとまだいるけど……出る? 」
提督「まぁ、あれで終わりってことは、な。頼む」
雲龍「了解」
Graf「やれやれ、やっと祖国に帰る理由とタイミングができたな」
轟音が轟いた瞬間に艦載機を飛ばした雲龍によれば戦闘はまだ続いているらしい。
なるほど確かに耳を澄ませれば爆音が遠くで炸裂する特有の音は聞こえてくるが、しかし。
提督「敵もそろそろ破れかぶれになってきたな……そろそろシーレーンに行くか北方に出張るかそれとも、む? 」
久々にまた、着弾。だがこれも然程効果は無さそうだ。先程の砲弾よりも、まだ遠い。
最上「ボクは出なくてもいいよね? 」
Prinz「私もパス、したいかな」
こちらから出たのは話も聞かず飛び出した大和に満面の笑顔で妹を引き摺っていった金剛。
それから艦載機を先行させている雲龍にgraf。
あきつ丸はいつの間にかどこへなりと去っている。
彼女がいなくなった辺りで陸軍や海軍のよく分からない派閥が急襲でも仕掛けてきたのかと思いはしたのだが。
それはまぁ期待外れ、もとい杞憂だったようである。
あきつ丸「失礼。どうしても手洗いに行きたくな……何か? 」
提督「ーーーー」
最上「提督が絶句するってさ……えぇ……」
Prinz「女の子としても不正解でしょそれ。陸軍なの? それともこの国? 」
結局、アホ面提げた陸軍女に硝煙の臭いでも嗅がせてやろうということで全員出撃させた。
結果としては然程どころか何らも面白みも無いものである。
破れかぶれだか最期の悪足掻き的吶喊だが何だか知らないがご苦労なことであった。
MVPなど決めるまでも無い程のそれは、一方的虐殺である。
…
………
……………
提督「ご苦労。休め」
雲龍「ん……お風呂」
Graf「私は要らなかったな」
あきつ丸「何も文字通り引き摺らなくとも」
最上「それならあれみたいにしてほしかったかい? 」
金剛「へーい比叡? なんだか膝が真っ赤デース」
比叡「ヒッ……お姉さまが引っ張ったから擦り剥……いえいえいえいえなんでもありまっ
あきつ丸「」
大和「…………影が薄い」
Prinz「ここで影濃いとかより余程マシかと」
【それでも一応決めますけどね? 】
0.大和
1.比叡
2.雲龍
3.Graf
4.最上
5.Prinz
6.金剛
7.ドイツ組
8.あきつ丸
9.うんりう
ゾロ目……全員(はぁと)
最上「ボクが殊勲ねぇ……いや結構嬉しいっちゃ嬉しいけど」
半日どころか数時間で終了した近海での戦闘から暫く。
網を抜けられた代わりに通常の何倍も無理をして敵を撃滅した哨戒班には労いだけを与えた。
感動と信頼を湛えた目を向けられたが知ったことか。
どうせならば自分たちを餌に強大な艦隊でも召喚してみせろ、とは言わない。
雲龍や大和、特に何故か内面を知られているGrafは別として俺は今のところ英雄的な好人物である。
あくまで、素に近い俺は子飼の彼女たちにしか知られてはならないのだ。
提督「寧ろお前の練度ならいつでもあり得た話だろうよ」
最上「そう? そうかも。だってボクは、横須賀の英雄サマの部下だもんね? 」
提督「ハンッ」
【戦果リザルト】
0.……建造、だろう?
1..……建造、だろう?
2.お前そのものを欲しい言われたら、どうする
3.欲しいものは無いか
4.欲しいものは無いか
5.……建造、だろう?
6.甘味でいいか?
7.甘味でいいか?
8.欲しいものは無いか
9.甘味でいいか?
ゾロ目……全部
【訊いた方が早いよね】
提督「で、欲しいものはないか? 」
最上「欲しいもの? 」
提督「雲龍にはまぁ……忘れろ」
最上「はいはい、次」
提督「Grafにはあー……忘れろ」
最上「はいはい。……酷くない? 例の一つも出せないの? 」
提督「…………」
他人の出してやったコーヒーを美味そうに飲みやがる。
甘味が好きなのだから砂糖もたっぷりだろうと用意してやったのだがそれには全く手を付けていない。
俺もコーヒーはブラックというタイプなので必然、卓の砂糖は手付かずのままである。
これはこれでGrafに勧められたそれなりにいいものなのだが、無意味であった。
提督「すまんな。……で? 」
最上「よくそれでモテるよね……いや、そういうところが好かれてるのは分かるけどさ」
溜息一つ、角砂糖一つ。
俺の話は今まで使わなかった角砂糖が必要な程苦いのだろうか。
いや、どうでもいいのだが、何か気になる。
気になるということに対して気になり過ぎる所為で、
本当の好奇心など行方不明になる程には僅少な興味ではあるのだが。
最上「それならボクはーーーー
【一歩進んで】
0.提督、って言ったらどうする?
1.姉妹、かな
2.戦場、かな
3.平穏、かな
4.平穏、かな
5.姉妹、かな
6.戦場、かな
7.平穏、かな
8.姉妹、かな
9.戦場、かな
ゾロ目……全部
本日の一割(二回目)
最上「提督、って言ったらどうする? 」
提督「ーーーー」
どうする? どうしたもこうしたも無い、拒否するだけだ。
そう答えてしまえば楽なのは分かっている。
これまでの俺ならば仮面をきつくして表情と声音だけは柔らかに応えていただろう。
けれど、その手はどうにも使いにくい。
雲龍と公然の仲になってしまっていることもあるし、
何より最上が何を考えているのかが読み切れない。
元々どこか遠くから俯瞰する様に喋る女ではあったのだ、彼女は。
カタログだけを見れば目の前にいる女は至極簡単な相手である。
最上型一番艦の最上改、航空巡洋艦の力を宿した元人間の憑座。
普段は屈託無く笑う冷静で時折見た目に年相応な姿も見せる少女。
元人間であることに何某かの想いを秘めた兵士かつ兵器かつ化け物である女。
最上「これでもボクは提督に興味があってさ」
提督「…………」
最上「別に今すぐ抱いてくれとか雲龍さんと同じ扱いをしてくれとは言わないけど……ふふ」
クスクス、クスクスと。
彼女は何が楽しいのか喉の奥深くから心底に見える笑みを浮かべた。
そこには邪気など窺えず、けれど優しさや揶揄いなど見えずただ曖昧な最上そのものだけが見える。
最上「ボクが元人間だって話はしたよね? いや、それとも知ってて訊いたのかな、あの時」
提督「…………」
変わらずただ笑みを浮かべ、コーヒーを啜り、角砂糖を弄び。
切れ者などと言われようと、それは結局情報を論理的に並べ解釈する場面でこそ発揮される能力なのだ。
人間擬きの化け物が浮かべる笑みの意味など俺に分かるはずも、無い。
最上「で、提督は知らないだろうけどボクさ、前の記憶があるんだ」
提督「! 」
前の記憶とは、つまり艦娘となる前、人間時代の記憶だろう。
フィフティフィフティとは言われつつもその実殆どの元人間が失ったはずの、過去。
最上は自らが後の己に託した情報でしか知り得ないはずのそれを知っているという。
記憶はただ記憶として、情報ではないそれは真に彼女を形作っている意志の武装だ。
最上「まぁ、最低な記憶ではあるんだけど……ふふ、提督? 」
提督「ッ…………な、んだ」
笑みは、微笑みへ。カップを置き掌で角砂糖を握り潰し。
邪気など無かったはずの笑みは一瞬で黒い嗤いへ。
これが、これこそが彼女の、本質なのだろう。
最上「…………あはっ」
【第一部完? 】
0.いつかあなたを、殺してあげる
1.君に取り入って抜け出したいんだ
2.いつかあなたに、救われたのさ
3.君に取り入って抜け出したいんだ
4.いつかあなたを、殺してあげる
5.いつかあなたに、救われたのさ
6.君に取り入って抜け出したいんだ
7.いつかあなたを、殺してあげる
8.君に取り入って抜け出したいんだ
9.いつかあなたに、救われたのさ
ゾロ目……異母妹
最上「君に取り入って抜け出したいんだ、いつかさ」
提督「……あくまで艦娘であるのは仮の姿だと? 」
最上「当たり前だろう? 衣食住が保証されてお金が貰えておまけに可愛い女の子になれるときた。
あの最低な生活から抜け出せるんなら何だって捧げたさ」
それこそ、人を殺すことだってね。
彼女の、最上の黒い笑みは暗にそれを指している気がして。
その意志と生への志向に背筋が震え冷や汗が垂れた。
けれど、所詮その程度の戯言止まり。予想の範囲は超えてこない。
俺に取り入ることで次の幸せを得ようとするなど、寧ろ可愛い望みである。
“ 建造 ”された艦娘や“ ドロップ ”された艦娘たちはそうでもないが、
元人間の艦娘には一定数最上の様なやつがいる。
その殆どは記憶ではなく、人間を止める前の日記や手紙といった情報によって志向を決める。
極貧生活から抜け出す為の手段であったり口減らしの為に売られたためであったり。
或いは人生に絶望しつつも自死する勇気すら無い最後の希望であったり。
最上「ボクは前の記憶を引き継いでいるのさ。その人間最後の瞬間記憶が無くなると思って願った、最後が」
ーーイイ男と結婚して金持ちになることだったんだ。
提督「…………ハンッ」
最後の一言と共に彼女が浮かべた笑みは、もう黒くは無い。
無邪気で、ただ幸せに憧れる少女のものだった。
…
………
……………
提督「所詮はただ暗い経験をした程度の女か」
金剛「うん? 」
提督「いいや別に。……比叡はいいのか? 」
金剛「んふ、今はお部屋でお寝んねしてるデース」
提督「そうかいそりゃ残ね……お寝んね? 」
金剛「ん? 」
あきつ丸「はぁ……自分の部屋は金剛姉妹の隣なのでありますがそれはも
大和「結構ですよそんなの……あーあーきーきーたくありませーん」
【平和っていいなぁ】
0.Graf
1.どこぞが
2.建造
3.艦娘
4.父親
5.艦娘
6.役人
7.最上
8.雲龍
9.艦娘
ゾロ目……陸軍(はぁとはぁと)
【そんなに高い割合でも無い筈】
提督「何故気付けば誰かを探しているのか」
自問には当然答えを返してくれる者などおらず。
そして自答など有りはしない。いや、無くてもいいと思っているのだ。
提督「これで俺が単に欠陥品だとか……ふん、幸せや嗜好を楽しめないなど未練が無くなるな、今すぐ」
腕のいい精神科医にそう言われれば本気で自死を選ぶだろう、俺というやつは。
それくらいには、何が楽しいのかも分からずいつも誰かを探している。
【そして今日も今日とて】
0.Prinz
1.雲龍
2.最上
3.雲龍・Graf・最上
4.大和
5.あきつ丸
6.Graf
7.金剛
8.比叡
9.雲龍・Graf・最上
ゾロ目……うんりう
なるほど……なるほど
何にも進まないようでいてそれなりにフラグとコンマは消費してますね……
短いですが今日はこの辺で
ありがとうございました
おつおつ
このモガミンすき
雲龍とバトりそう
あきつ丸「は? 」
提督「お前に与えられた任務を吐け。下らん嘘もいいが我ながら嘘には敏感だぞ、俺は」
執務がひと段落した後、誰かを探して適当に会話でもしようと思っていたのだが、止めた。
時間が無い時間が無いと頻りに繰り返していた陸軍将校の顔が浮かんだ訳ではないが、しかし。
雲龍とこのままズルズルと身体の関係だけを深めていればいずれ破綻がやってくるだろう。
Grafがドイツへ帰るか否か、帰るとしてそのまま無条件で政府に丸投げしてしまえば後が怖い。
最上が俺に取り入ると宣言してからは宣言通り公私に渡って干渉してくるようになっている。
面倒な問題をこれ以上増やさないためにも、芽の段階で一つ潰してしまおうと思ったのだ。
提督「俺とお前はある意味で最も近い共犯者足り得る関係だ」
あきつ丸「自分にメリットが無い」
提督「あるさ。面倒な任務からすぐに解放してやる。
お前は逃げもせずぼんやりと過ごし俺が俺の目的を達成するまで生きていればいいんだ」
あきつ丸「それができるのならば協力するのも吝かではない、が」
提督「戯け。元よりお前にそれ以上の選択肢などありはしない」
あきつ丸「…………」
提督「…………」
我ながら頭が回るとは思うが、それはその程度のものだ。
有能であって無能ではない、本当にその程度。
類稀な才能を持った人間では決して有り得ない。
だから、己の意志と感情そのままに、直裁な質問を。
【意志とは何か】
0.吐く
1.吐く
2.取引
3.吐かない
4.吐かない
5.吐く
6.吐く
7.吐かない
8.(嘘を)吐く
9.吐かない
ゾロ目……将校殿に忠誠を
【素直って大事】
あきつ丸「…………ある将校殿がいましてな」
提督「あぁ」
あきつ丸「あの方は……いや、彼はかつて人倫に悖る屑だったのであります」
提督「あぁ」
言葉にしてみればそれは単純明快な話だった。
人格的にクズだった男が善人であることに目覚めたとかいう三文芝居。
野心と上昇の情熱を失った男が、初めて国の為に立ち上がった、というお話。
駆け上がるという目的においては絶対的正しいことしかしてこなかった男が、
ただその目的だけは正しく、それでいて間違った方法で。
あきつ丸「彼はその権力中枢に食い込んだ立場から知ってしまったのであります。
この国が、旧列強がどれほど悪どいことを為し続けているのかを」
語られるこの世界の真実になど興味は無い。
知っていて手札になるのならば覚えてもいよう、けれど俺が知りたいのはそんなことでは、ない。
俺は俺の、俺の周りの変化さえ見通せられればそれでいいのだ。
大局的な視野などとうに捨ててダイスに任せてさえもいるのだから。
提督「それで? その清く崇高な理念を持つ陸軍軍人は何が望みでお前を寄越したって? 」
あきつ丸「…………自分は、自分の任務はーーーー
【手段と目的の是非など問わず】
0.陸と海の橋渡し
1.ただ、真実のその先を
2.技術を奪う
3.陸と海の橋渡し
4.技術を奪う
5.ただ、真実のその先を
6.技術を奪う
7.ただ、真実のその先を
8.陸と海の橋渡し
9.陸と海の橋渡し
ゾロ目……提督殿を籠絡するため
よいあきつ丸…か?
【技術って大事ですよね】
あきつ丸「自分の任務は海軍が持つ艦娘やそれに付随する技術を盗み取ることであります」
提督「ほう……? 」
確信めいた追求を深める俺への諦念か、それとも露悪と自己悲哀を纏った陶酔からくる自棄か。
或いはそういった弱い女を演じて取り入ろうと考えているのだろうか。
その判断はつきかねたけれど、あきつ丸は勝手に話を進めていく。俺は、ただ聞き続けている。
あきつ丸「世界で同時多発的に起こった“ 深海棲艦 ”の出現とその後各国が生み出した“ 艦娘 ”。
そのあり方など将校殿たちでさえ興味の無いことではある」
提督「所詮は造られた化け物であると? 」
あきつ丸「あぁ。しかも造られた理由は追い求められるのに今生きる自分たちにはクズゴミ程度の関心しか持ってはくださらない」
自嘲して、それから本心に見える笑みを。
本気でビジネスパートナーになろうと思ったわけではなく。
そもそも俺など信じてはいないがどうせ誰も信じることなどできないのだと。
彼女の顔はそう、語っていた。
露悪的に語られた彼女の任務と言い渡された命令と。
それをこの先、暴いて晒して、何かの道具にしてしまうのは、いいのかもしれない。
俺とて彼女やその生き方になど興味は毛程も、沸いているわけではなかったのではあるけれど。
…
………
……………
提督「あれが本心であるのかさえ怪しいところではあるが……む」
雲龍「何? 私以外の女の話? 」
提督「さてね。……善人であるとか悪人であるとか、どうでもいいなって」
雲龍「そうね。だってあなたは悪人だし、でも好きだし」
提督「…………」
あきつ丸はその任務を語らせたまま放置している。
それが真実であれ虚偽であれ、何か手を打つべきではあると思うけれど、それでも。
彼女の言っていたことが真実だとしてこちらが技術を隠す必要など、万に一つも無い。
俺自身職と地位を失い路頭に迷ったとしても殺されたとしても、然程の後悔すらきっと感じ取ることはできないのだから。
【つまらぬとしても愉快だとしても人生は先へ】
0.Graf
1.どこぞが
2.建造
3.艦娘
4.父親
5.艦娘
6.役人
7.最上
8.雲龍
9.艦娘
ゾロ目……陸軍(はぁとはぁと)
本日の一割
身体を痛め付けていたときのこと、もとい全身に負荷を掛け精進を重ねていたときのことである。
息急き切ってトレーニングルームに駆け込んできたるは大和。
息をつく間も惜しいとばかりに、叫んだ。
心惑い、先行きも分からず頼りにしてくるその姿。
それは果たして俺がここに来てすぐ抱いた彼女への期待に、敵っていただろうか。
緊急事態だとしても栓無きことを今日も、思う。
大和「! ーーーー! …………! 」
提督「はいはい」
0.呉
1.帝都
2.呉
3.南方海域
4.南方海域
5.呉
6.帝都
7.南方海域
8.帝都
9.南方海域
ゾロ目……陸軍
【戦火は燃え続け】
大和「ルソンもパラワンもブルネイもベトナムも、敵方の総攻撃が鋭く次期に落ちると! 」
提督「間に合わんな、それは」
冷静に、あくまで冷静に。
既にそれを失った大和を眺めやり、ぼんやりと呟く。
彼女の言が間違っているとは思わない。だからそれはきっと正確な情報なのだろう。
だからこそ、パナイやマレーシア、シンガポールがまだ生きていると察することはできる。
それでも、その救援に間に合うのかどうか、怪しいところである。
着替えの時間すら惜しみトレーニングウェアに制服を纏い軍帽を被りながら考える。
何故敵の接近に気付かなかったのかなどどうでもよろしい。
先日こちらが撃滅したにも拘らず再度大攻勢を仕掛けられる敵の事情だって知らなくとも良い。
考えることに意味があるのは、こちらが今から打って出て勝てるのか、それだけだ。
提督「救援には誰を出した」
大和「まだ、誰も。急報から未だ三分も経っていません」
提督「そうか」
言われてみれば、確かに。
ここ横須賀の大権を握っているのは、俺だ。
そして彼女たちに全面的な指揮の才能を認められているのは、俺だ。
彼女たちが俺に無断で出撃することなど、確かに有り得ないことではある。
けれど、それではつまらないではないか。
それが成功すれば褒めてやってその思考を知ってみたいと思うだろう。
失敗すれば糾弾し、玩具やサンドバックにしてみるのもいいだろう。
そんなことはおくびにも出さないけれど、それでもやっぱり、つまらない。
別に命令違反や背任でだけは、裁かないというのに。
大和「南方に現れた敵方なのですが……その」
提督「あぁん? 遠慮など不要だ、言え」
大和「ん…………えっと」
大和が言い淀むなど、珍しい。
一刀両断一気呵成、何は無くとも己の意志と理想だけは持つ女。
そんな女が、まるで恐ろしい上官を前にしたかの様にまごつくなんて、本当に珍しいことである。
逆説的に、それこそが俺の興味を引いた。
大規模であるのならば素直に興奮して大和や雲龍を送り出すなりするだろう。
あまりにも小規模ならば南方の守りやこの国の衰えを嗤うだろう。
それだけで俺の興味が刺激それたのではない。
何某かが起こったときの、大和反応が俺を、笑わせてくれるのだ。
大和「…………」
提督「時間が無ぇんだろうが。さっさと言え、間抜け」
大和「…………」
切羽詰まり廊下を走る中でも彼女は息切れ一つしていない。
息急き切ってトレーニングルームまで来た割にすぐさま身体の代謝を励起して息を整えやがったのだ。
それなのに、彼女が言い淀むなんて、いよいよ俺の興味は最高潮。
この楽しきこと無き世を、疾走しなければならない程生きさせてくれるのならば、それでいい。
『おもしろき こともなく世を おもしろく』
いつかの偉人もそんなことを言っていたではないか。
下の句にも意味があって大層なことを言っていたような気もするがそこに興味は無い。
ただ、つまらないこの世を愉快なものに、それだけで十分なのだ、俺にとっては。
【正念場】
0.この国を破壊できるほどの
1.規模だけは、小さいのですけれど
2.分隊が横須賀へ
3.この国を破壊できるほどの
4.規模だけは、小さいのですけれど
5.分隊が横須賀へ
6.分隊が横須賀へ
7.規模だけは、小さいのですけれど
8.分隊が横須賀へ
9.この国を破壊できるほどの
ゾロ目……周辺国は平穏を取り戻しました(はぁと)
ちょっとタイムいただきます
大体たぶんきっと戻ってきますすみません
たんおつ
提督楽しめそうね()
たんおつ
コンマ神がビンビンでいらっしゃる、鎮めて差し上げろ
提督「いるかてめぇら!」
Graf「はいはい」
最上「何? 」
大和「総員装備を整え集まっています。他の皆はもうヘリに」
集まっていたのは空母、重巡、それから戦艦の代表者とも言える者たち。
他にも俺が目を掛けている軽巡やら駆逐やらの代表が集まっている。
彼女たちに指示を出せばすぐさま艦隊を組んで南方になり防衛になり行くのだろう。
提督「そりゃ重畳。……お前らを今から大尉にする。さっさと編成組んでヘリに乗っていけ」
大和「は? 」
提督「細かい指示や組み分けはヘリの中で出す。いいからさっさと乗り込め馬鹿ども」
大和「いや、あの、提督自ら出てくるのは危け
提督「うるせぇ張っ倒すぞ大飯食らいのホテル女」
大和「」
Graf「やれやれ……いや、そうくるとは思っていたがな」
最上「それでこそさ。ボクはどうせ提督が死ねばただのゴミに逆戻り。やってやるしかないんだ」
敵を倒すのならば、倒しきり平穏を取り戻すのならばここを置いて他には無い。
俺にとって何か明るい未来を見つける道は戦場以外には存在し得ない。それは素直な感想だ。
それならば、この国を取り巻く戦場を無にする可能性など失ってはならない。それが道理である。
けれど、この戦闘がただの戦闘であるなどあり得ない、許されない。
この国の存亡を賭けた史上最大とも言える大海戦。
大和たち俺の子飼も誰が沈み誰の身体が失われるかなど俺にも分からない。
もしかすれば大和たちどころかこの国そのものが消滅するかもしれない。
南方海域に散る味方が目算を誤った可能性も無いではないが、無視。
そんなことに希望を見出す程俺は甘くはないし、この国も馬鹿ではない。
提督「__参謀は待機。万が一俺たちが負けた場合すぐさま横須賀は放棄しろ! 以上」
指示を出し、走り出す。
この先に何があるのかなんて知ったことではないし、予想もできない。
けれど、この戦闘で、否、本気で生死を分ける戦場に何かを見つけられないのならば、その時は。
提督「抜け殻になって怠惰に生きて戯けて……それもまた、次の道だろうよ」
大和「配置につきました、提督!」
「順次、出せます! 数分以内に全機が! 」
大和が出した配置完了の声とほぼ同時に参謀からの報告。
俺も一機の軍用ヘリに乗り準備はとうに済んでいる。
いよいよ、最期だろうか、それとも望みを得るだろうか。
或いは、己の業を見つめ諦めざるを、得ないだろうか。
提督「よし、ではこのまま本土上空を通過し南ぽッ…………ーーーー
指示を出す刹那、無線を引ったくられる。
ぶん殴り奪い取り銃を向けようとその誰かを確認し、俺は
【旗】
0.Graf
1.雲龍
2.雲龍
3.最上
4.最上
5.Graf
6.雲龍
7.Graf
8.最上
9.あきつ丸
ゾロ目……従順な部下は深海棲艦じゃないと思った?
雲龍「んっ……ぁ、…………ゅるっ……、っ、あはっ」
提督「ーーーー」
殴り飛ばそうと上げた手は絡め取られ、押さえ付けられ。
睨みつけようと考えた思考すら巻き込んで捩じ伏せられ。
奪われたるは生命ではなく、唇だった。
一瞬の出来事ではあったけれど、貪る様に、何かを確かめるように。
吸い付かれるだけ吸い付かれて、こちらの意志など御構い無しに、ただ。
彼女は、雲龍は乗っている軍用機が別の筈だったのだけれど、何故。
雲龍「生きて帰ってきたら、いえ、生きて帰ってくるのは決定事項だけれど」
ーーあなたが私の提督で、よかった
ーーあなたが待っていてくれなくたって構わない
ーーあなたがいるなら私は勝手に帰ってくる
ーーあなたが私を壊して、生んだの
ーーあなたが殺せと命じれば、死ねと命じれば、私は
ーーあなたが、あなたが、あなたがあなたがあなたが、あなたが!
雲龍「死んで泣いてくれると分かっているのなら、死んでも見るのだけれどね? 」
ーーそれを見れないなら、意味なんて無いから、帰ってくる
雲龍「だって私の為に泣くあなたを見たいから。あなたの、下へ」
時間にすればきっと十数秒。
咄嗟に無線の所為にしてだんまりを誤魔化した。
混乱し、惑乱し、ただ勢いのままに放たれた言葉は、未だ俺の心を、掻き乱している。
…
………
……………
提督「…………」
大和『あと少しで会敵します! 』
最上『あ、ボクたちもだ』
Graf『あと少しで祖国へ帰れたものを……まったく恨むぞ? 』
数時間の移動などこの高揚と緊張と吐き気にかかれば一瞬で。
気付けばいつの間にか大和たちに細かい指示を与えていた。
この国最大級の火力を操る破壊の申し子、大和。
全ての能力を姉への想いと戦闘に振った、比叡。
俺のようなクズに心を売り慰めを望んだ、雲龍。
俺に対し興味も無く帰還を望む Graf Zeppelin。
自らの出自と葛藤を明かし媚態を見せた、最上。
ただ楽しいことを望む顔で戦う魔 Prinz Eugen。
それから度を越したサディストであり妹に歪んだ感情を向ける金剛と、
何か諦めきった姿と無力感に同調できそうなあきつ丸と。
彼女たち八隻は皆全て別班として行動させた。
俺の子飼たる彼女たちはその経験日数の差こそあれ、皆俺が認めた者たちなのだ。
彼女たちが力を越えて働き負けることはあっても、
その力が間違っていることなどあり得はしない。
“ 艦娘 ”とはつまり精神感応兵器に他ならない。
言葉やジェスチャによる指示を与えられるのは人間と同じではあるけれど。
ある閾値を越えれば指示どころか視界や判断さえ共有できる。
どんな理由であれ戦意に昂ぶった女たちの感情が俺の心を戦いへの破壊衝動に灼いていく。
波濤、快晴、どこからか漂う硝煙と肉の焼ける臭い。
殺せ、殺せ、殺し尽くせと叫ぶ俺の心と。
彼女たちが各々持つ勝利と生き残りへの葛藤と。
その全ての感情が俺を支配して、俺の曇った未来が彼女たちに流れ込んで行く。
愛だ崇拝だと、そんな名前など瑣末なことである。
要は、俺が認めたという、たったそれだけのことで彼女たちはその身を戦場に投じていくのだ。
自らの死など下らないことだと吐き捨てるような身軽さで。
大和がその血走った目から“ 霊気を宿した光 ”を放つ。
大和の感覚として、その近くに艦載機を放つ雲龍の感覚として。
それから周囲の海上を疾る大和に与えた班員の感情を受け取る大和感覚を通して、知覚する。
精神感応兵器たる彼女たちとのシンクロは、このままいけばやがて極限に達するだろう。
もしかすると彼女たちの死が俺への死とすらなるかもしれない。
痛みも、悲しみも、きっと本人にさえ分からぬ千々に乱れた感情すらも。
けれど、感情とはそういうものであって逆の歓喜さえ与えてくれるのだ。
大和が得るかもしれない答えも。
雲龍が願う俺との未来すらも。
彼女たちの高揚した感情に触れ、震える。
そして彼女たちが知覚する俺の感情への怖気にすら、熱が迸った。
愉快愉快愉快、愉悦もここまでくると痛みにさえなる。
提督「策は与えた、後顧の憂いなど有りはしない、感情と感覚さえ共有できる」
負けることなど、万に一つもあり得ない。
この国が、大和たちが負けないとう意味では決して無い。
彼女たちがこの絶望的戦闘から生き延びればそれで良い。
けれど仮令負けて沈んだとしてその痛苦を俺は知覚する。
共有した高揚感は絶望感にこそ最大限研ぎ澄まされるだろう。
だから、人生への刺激というのならいっそ一隻くらい沈んでしまえ。
そんな感情さえ湧いてきて、そして彼女たち全員に何某かの悪意と興味は伝わっただろう。
けれどその先、生きるか死ぬかなど、どうということもないのだから構うまい。
提督「さぁ見せてみろ! 俺が、俺がこの世に生きる愉しみを!
それが勝利の喜びであれ、愛する女であれ!或いは手痛い敗北であれ、俺は! 」
ーーその全てを、受け入れよう
【この先何があろうとも】
0.痛み分け
1.死ぬがよい
2.痛み分け
3.一隻
4.一隻
5.ふっつーに撤退
6.二隻
7.痛み分け
8.一隻
9.ふっつーに撤退
ゾロ目……完全勝利。この国は解放されました(はぁと)
……^ ^ ?
ありがとうございました!
ヒエッ
盛り上がってきた?
コンマ神「楽しんでいただけたかな?」
コンマ神「楽しんでいただけたかな?」
連投スマソ
次回作にご期待展開…?
おつー
緋蜂かな?
陰蜂かな?
いよいよもって死ぬがよい
そしてさようなら
時間無いのでさらっとリザルトだけ……
あれから一ヶ月。
この国近海どころか南方シーレーン付近にすら敵は殆ど現れていない。
あの大海戦の後に確認された敵性体はたった四隻がそれぞれ単艦で、というものに過ぎなかった。
燃やし、溶かし、灰に変え、八裂きにしつ沈め。
燃やされ、溶かされ、穿たれ、塵にされ沈んだ。
誰が誰であったのかも分からない程損壊した死体ばかり。
化け物体質の恩恵によって脳内麻薬すら無意識に操る艦娘ですらPTSDを患う程のそれは悪夢。
軍用ヘリによる高速輸送によって到達した大和たちもその例に漏れず悪鬼となった。
殺し、殺し、殺し、只管に殺し続けたあの一日。
二日目からも同輩の屍を越え魍魎と化した艦娘たちは戦い続けた。
この国を救う為に立ち上がった化け物たちは己の破壊衝動に負け羅刹に果てたのだ。
半減した彼女たちの中には帰還した際、血塗れで嗤っている者さえいた。
それから徐々に落ち着き自らを取り戻す者、耐え難い心的ストレスに落ちる者、人格がもう修復不可能なまでに破滅した者。
我らは、勝った。
多大なる犠牲の果てに。
そして、彼女たちは帰ってきた。
その人格を失い、ただカタログスペックのみは維持した“ 本人 ”のままに。
「何度でも言おう、それも高らかに誇り高く。
我々は、勝ったのだ。かつてどの国どこの誰をも成し遂げ得なかった、大勝利を遂げた」
提督「…………」
「貴様が生きているのさえ奇跡であると思う程の激戦によってではあるがな。我らは、勝ったのだぞ」
相も変わらず執務室では帝都からやってきた軍人が何事かほざいている。
そんなことは既に百も承知だと怒鳴ってやりたいのだがそんな気力も無い。
一ヶ月経ったとはいえ艦娘だけでなく多くの将兵が南の海に散っていった。
俺としてはそのような瑣末事に心を痛めるなど有り得ないのだが、しかし。
“ 良い上官 ”として慰撫に努め時に共に涙を流した俺がそんな本音を表に出すことは、できない。
嫌でもここは心痛甚だしいのだと疲労感を出しておかねば余計な仕事を増やすことになる。
「……まぁ、良い。貴様の部下たちは誠に悪鬼中の悪鬼といえる化け物揃いだった」
提督「残念ながら彼女たちはただの女でしたよ。化け物と言える程の何かは持ち得ていなかった」
「謙遜などするな。それこそ、彼女たちに申し訳なくなるだろう」
提督「…………そうでありましょうか」
謙遜、なんかではなく、本音である。それも心底からの。
化け物は化け物であってそれ以上にはなれないし、それ以下になる女を俺は歯牙に掛けない。
だから、内心ではこんなにもつまらない結果になったことを彼女たちに八つ当たりしたい気ですら、あるのに。
嗚呼、彼女たちは、あの戦いでーーーー
【戦果リザルト:大和】
0.カタワ
1.PTSD
2.轟沈
3.PTSD
4.轟沈
5.カタワ
6.生還
7.轟沈
8.轟沈
9.轟沈
ゾロ目……人間としての生活を
提督「大和は……まだ戦い足りないと申しておりましたがね」
「それはそれは……大和中の大和、誠我が国の誇りよな」
横須賀の、つまり俺の動かせる最大戦力たる大和は、見事に生還したのだ。
それも、たった一人で艦隊分以上の働きを成し遂げて。
PTSDを患ったり身体の一部を失うことも無く、穏やかな笑みと悲しみに満ちた表情で、ゆったりと。
提督「あの規模で次の望みが見つからないとは……あいつに望むのを止めるべきだろうか」
「あ? 」
提督「いえ、独り言です」
それから、あの常に寝ている様な姉キチ御召艦はーーーー
【戦果リザルト:比叡】
0.カタワ
1.PTSD
2.轟沈
3.生還
4.轟沈
5.轟沈
6.PTSD
7.轟沈
8.カタワ
9.轟沈
ゾロ目……人間としての生活を
開幕一割…飛ばすねぇ
「女として身体の一部を失うというのは……いや、軍人としては誉れであろうが」
提督「生きているだけで十分だと、比叡は言っておりました」
PTSDに苦しまされるよりは、きっと何倍もいい終わりだったのだろう。
その笑顔に陰が見え隠れしたとしても、ベストの終わりではなかったとしても。
彼女は、まだ終わっていない。
比叡といえば何は無くとも、姉である。
サディスト地味た新参ではあったが戦いに対しての姿勢は真面目なものでーーーー
【戦果リザルト:金剛】
0.生還
1.PTSD
2.PTSD
3.轟沈
4.轟沈
5.轟沈
6.カタワ
7.轟沈
8.轟沈
9.カタワ
ゾロ目……人間としての生活を
「彼女らにまともな戸籍やバックボーンが無いとはいえ……どうにか報いたいものよ」
提督「そうですな」
金剛は、沈んだ。
それはもう、盛大に。
大和が蹂躙したその先すら臨み、掃討を繰り返す内の反撃。
味方の大部分を転回させたった一人、大部隊を地獄送りにするのと引き換えに。
きっと何か、彼女たちの心に刻まれたドラマもあったのだろう。
比叡は、悲愴感など微塵も見せない。
あれだけ慕った姉を喪い、己の身体を一部失ってなお、笑う。
「元人間であればまだ、その遺族もいるのだが……」
提督「その“ 遺族様 ”に金が渡ることを望む艦娘などおらぬでしょうよ」
そうだろう? 最上。お前なら、絶対に望まない筈だ。
【戦果リザルト:最上】
0.PTSD
1.カタワ
2.轟沈
3.PTSD
4.轟沈
5.轟沈
6.カタワ
7.轟沈
8.轟沈
9.生還
ゾロ目……人間としての生活を
「そうか……いや、そうであろうとは思うのだが」
提督「どうせならば仲の良かった同輩にでも還元してやればよろしいのです。
私としては、彼女らに何かしてやるよりはしめやかに、勝手に祈ってやることが一番、そう思いますが」
最上もまた、沈んだ。
元人間として、冷笑的な人格も見え隠れさせ始めていた矢先の悲劇。
彼女ならば喜劇だと笑って終わらせただろうか。
まさか、彼女が間抜けな僚友を庇い致命傷を受けたなど、戦闘前の俺は信じなかっただろうが。
何より、彼女本人すらそんなもの鼻で笑い飛ばしただろう。
「他国からの預かりものもまた面倒ではある。同じだけの“ ドロップ ”を揃えるのも今では儘ならぬ」
提督「そもそも敵性体が殆ど現れませんからな」
結局、Prinz Eugenにはまともな形で自らの“ お姉さま ”に会わせてやることができなかった。
本当に会いたかったのかどうかは、今もって分からないことではあるが。
【戦果リザルト:Prinz Eugen】
0.カタワ
1.PTSD
2.生還
3.カタワ
4.轟沈
5.轟沈
6.轟沈
7.轟沈
8.PTSD
9.轟沈
ゾロ目……人間としての生活を
提督「沈んでしまったのならばそれで終わり、ただ傷痍の身となってしまった者に関しては」
「左様……こちらで世話をすることになろうな」
提督「ま、サイバネティクスも進化しております。その内義手や義足を付けて出撃できることにもなるでしょう」
自ら豪運を語るPrinzは、その発言通りに帰還してきた。
ただその身の一部を失い、笑みもまた暗いものにして。
ーー実力が足りなくて運だけだから、こうなったのよね。
力無く笑ったその顔を見れば、実力など関係無い戦いであったことは一目瞭然だった。
それでも、生き残った他の仲間を慰めるその姿に、前を向く信念を感じたのではあるけれど。
「それからな……陸軍のやつらも五月蝿い」
提督「あぁ……あきつ丸やまるゆも大勢出撃させましたからな」
横須賀や呉に残した艦娘もいたけれど、それは極々一部。
陸軍の艦娘については寧ろ、その殆どを出撃させた。
まぁ、俺の部下であるあきつ丸は政治的背景など関係無く出撃させたのだけれど。
【戦果リザルト:あきつ丸】
0.轟沈
1.PTSD
2.轟沈
3.生還
4.轟沈
5.カタワ
6.PTSD
7.轟沈
8.轟沈
9.カタワ
ゾロ目……人間としての生活を
提督「とは言っても彼女ら本人は然程不満など申しておりませんが」
「そうか……ま、共に同じ釜の飯を食い戦い抜いた者たちよ。帝都に燻るクズどもとは違う、か」
お前もその一人だろうが、とは言わない。
言っても意味が無いし、何より人格的には俺より優れているのだろうから。
あきつ丸も確かそんなことを言っていた。
ーー尊敬できるのは提督殿でありますが、それは戦時だからこそであります。
平時には無用の長物、それが俺らしい。
我ながらそれを聞いたときには笑いを堪えられぬ程面白いと思ったものだ。
互いに手の内を見せ合いビジネスパートナー地味た関係だった女にそれを言われるとは。
提督「ビジネスパートナーといえば……いや、あいつはパートナーの部分だけは否定するだろうが」
あと少しで祖国に帰る筈だったGraf Zeppelin。
彼女に関しては運が無かった、そうとしか言いようが無かった。
諦めた様な顔で出撃した彼女も、また激戦に次ぐ激戦を戦い抜きーー
【戦果リザルト:Graf Zeppelin】
0.カタワ
1.PTSD
2.カタワ
3.PTSD
4.轟沈
5.轟沈
6.轟沈
7.生還
8.轟沈
9.轟沈
ゾロ目……人間としての生活を
PTSDだけは引かないあたりこの提督の艦娘らしいな
戦い抜き、そして帰ってきたのだ。
空母でありながら撤退せず奮戦した挙句、本人すら失笑する名誉の負傷とやらを受けて。
提督「本人が希望すれば帰国させてしまうのも手でしょう。
あちらはこの国よりも人権には五月蝿いのです」
「あぁ。助力に感謝はしているが戦えぬ者を大勢養う余裕は無いのだしな」
提督「……ええ」
外国人に対して冷淡なのはどこも同じなのだろうか。
Grafに訊けばきっと一度は否定してみせ、更にきつい一言を返してくれるのだろう。
冷淡なのではない、そもそも気にすらしていないんだ、とかなんとか。
「…………そういえば、足りているか? 」
提督「は? 」
「女は、足りているか、と。貴様もこの一ヶ月働き詰めだっただろう」
提督「ーーーー」
やにわに、一言。
あくまで真面目な話なのだ、とその実下卑た顔で。
前言は撤回しなければならない。
この将校も人格など破綻している。俺と同列だ。さっさと消えてくれ。
【戦果リザルト:雲龍】
0.カタワ
1.PTSD
2.カタワ
3.生還
4.PTSD
5.轟沈
6.轟沈
7.轟沈
8.轟沈
9.轟沈
ゾロ目……人間としての生活を
???!!!?!?!?!??!???!?
ま、また来ます……少なくてすみません
ありがとうございました
これはメインヒロインの貫禄ですわ(白目)
おつつ
ここでゾロとかコンマ神マジエンターティナー
【まとめ】
大和……生還
比叡……カタワ
金剛……轟沈
最上……轟沈
Prinz Eugen……カタワ
あきつ丸……カタワ
Graf Zeppelin……カタワ
雲龍……人間としての生活を
大和「!!??!!!??wwww!??!!?」
正直一人勝ちしたと思ったぞ……コンマ神やりやがったな!
乙
やはりこのスレのコンマ神はおかしい(褒め言葉)
なんというか…
コンマ神ってやっぱエンターテイナーやわ
くっそワロタwww
やっぱここの1はコンマ神に愛されておる……
プリンちゃん…
大和さん!?
初期ではメインヒロインの風格を漂わせてた大和さん
どうしてこうなった
まぁ、この後はコンマも無いので……ゆっくり書き込んでいきます
よろしければどうぞ
…
………
……………
某日、横須賀にて。
集ったのは、同じ喜びと悲しみを背負った者たち。
大和「失われた全ての生命に、そして生きながらえた私たちの明日に」
比叡「明日に」
Prinz「明日に」
あきつ丸「明日に」
Graf「明日に」
私たちは、勝った。
あらゆる国が追い求める安寧を数多の犠牲の果てに、得たのだ。
五体満足でこの地に立てた者などそう多くはない。
私たち、つまり提督直属の部下の中では私と、それから雲龍さんの二名のみ。
それとて、八人、そう八人だ、八隻では決してない。
八人の中で六人が生き残り、無傷で生還した者が二人もいる。
しかもその一人は英雄の妻として、人間となれたのだ。
類稀な英雄とその妻と、万雷の喝采で認められこそすれ、誰一人反論など唱えようはずも無い。
仮令女の方が、化け物の最たる者だとしても。
Prinz「やーんなっちゃうなぁ……腕の傷口見る? 」
Graf「要らん。自分ので間に合っているからな」
比叡「足じゃないだけマシですって。この義足の使えないことなんの」
あきつ丸「ある意味では自分が一番マシではありますね。
まぁ片目を失うということが良きことであるのならば、でありますが」
大和「…………」
Graf「そんな顔をするのはやめておけ。
貴様は私たちには遠く及ばない戦姫であったのだ。寧ろ誇るべきだろう」
Prinz「そ、あの意味分かんない提督が撤退を命じても戦った私たちが悪いの」
あきつ丸「あれが撤退を命じるにも拘らず戦ったといえば聞こえはいいが……いや、馬鹿なことをしたものでありますね」
比叡「本当本当。あの損得と戦術の鬼の命令無視したんだもん」
大和「…………」
場所は提督の執務室。
あの激戦から二ヶ月と少し、漸く落ち着いた鎮守府で、祝勝会などではない、私たちだけの集まり。
初期から私たちの頭脳役だった最上、途中から加わったにも拘らずすぐさま溶け込み護国の鬼となり沈んだ金剛。
これは、彼女たちを弔う集いだ。
ただ、しめやかに穏やかに行われるそれは悲劇と記憶の、忘れられない空間だった。
Prinz「まぁ、でも……ねぇ? 」
Graf「私の名誉に掛けて誓うがな、雲龍は私たちすら及ばぬ境地にいたのだ」
Prinz「知ってるけど……でもさ」
比叡「…………」
あきつ丸「…………」
大和「心からの祝福とは参りませんが……それでも、提督は提督として十二分に働きました。
雲龍さんもその身に余る攻勢を耐え敵方に打撃を与えたのです」
Prinzの言いたいことは、分かる。分かり過ぎる、程に。
その本音を終ぞ見せなかったように思える彼と。
彼だけに執着しあれだけ望んだ勝利と戦果さえ度外視して戦った彼女。
彼らが幸せを謳歌することに何某か蟠りが残るのは、仕方がない。
ましてや最上と金剛という最も近い同輩を失い、多くの僚友さえ海の藻屑として捨てたのだ。
人によっては、幸せに笑うことさえ暫くは慎めと怒気を湛えるだろう。
提督「さて、俺のクズさを肴にでもしているのかな」
大和「て、提督っ」
Prinz「まっさか。我らが英雄様を謗ることなどありましょうや」
提督「言ってろ。……俺の兄貴と弟、ついでに妹が結婚相手を探しているが? 」
Graf「願い下げだな。貴様の血族など見なくてもうんざりする程だし
比叡「司令が義理の兄妹とかねぇ……本当願い下げ」
あきつ丸「自分は別にそれで……いや、分かっているでありますよ。
これがここの祝福であることなど」
入ってきたるは私たちの提督だ。
現世に舞い降りた軍神の名も高らかに、文字通り化け物地味た戦果を挙げた女を妻にした英雄。
護国の鬼神たる彼を崇め敬いこそすれ、瑕疵を論うことなど、あっては、ならない。
ならない筈では、あるのだけれど。
大和「…………結局横須賀からは離れられないそうですね」
提督「ん? まぁな。妻がいる身でまさか地中海や北方に出向くわけにもいくまい」
相変わらず外面だけはいいのだ、この男は。
表情だけを見たならば、それはまさに英傑の貌であって、爽やかながらも益荒男の気質を感じさせる偉丈夫だ。
この上妻を労わる夫の顔まで見せられたらば、なんと酷い仕打ちだろう。
この男が生きていれば当面この国に心配など欠片も要らない、そう思わせる勝者の余裕では、あるのだけれど。
私たちにだけは、分かってしまう。
その裏で、他者など笑って切り捨てる悪魔の顔が。
Prinz「ふん……今日はその奥様はいないようだけど? 」
提督「あぁ、あいつはもう自分一人だけの身ではなくなったからな。家に置いてきた」
Prinz「……は? 」
Graf「……お早いことで」
比叡「どーせ雲龍さんが“ 解体 ”されてから盛りまくったんでしょ……それにしても早過ぎるけど」
あきつ丸「四週間や五週間で分かることはあるらしいが……ま、祝いの言葉くらいは贈ってやるであります」
提督「どうもどうも。涙が出るね」
大和「…………二人に、傾けてあげてください」
強引に、終わらせよう。それが私にできる唯一のことだ。
最上が嘲笑すべき同輩の為に沈み。
金剛が身体を張って殿を務めあげ。
私以外の四人が身に一生消えない傷を負ったのだ。
ならば致し方あるまい。女として、否、“ 人間 ”として。
禍福を共有した女が一人、地位も男も子供も、女としてあらゆる幸せを得たのであるならば。
多少の妬っかみくらい、許してほしいものである。
けれど、仲間が仲間を貶す様な場面は見たくはない。
そうであるなら、強引に、強く強く、退けない程に幕引きを。
失った仲間の想い出でも、語っている方が、余程健全であろうから。
提督「俺たちの仲間である最上と金剛両名の明日に」
大和「! 」
提督「俺たちの中にあいつらは、生き続ける。俺たちが忘れない限り、俺たちが戦うことを止めない限り」
大和「ッ……明日に」
Prinz「ふん……明日に」
Graf「明日に」
比叡「明日に」
あきつ丸「明日に」
その顔が嘲笑に満ちていたのならば、殴り飛ばし下手をすれば殺していただろう。
けれど、その顔は、心から彼女たちの死を悼んでいるようで。
比叡もあきつ丸も、それにPrinzもGrafも、その顔に嘘を見出せなかったようで。
救われたのか、それともただ過去のものにされてしまったのか。
それは、永遠に分からないのだろうけれど、でも、よかったのだろう。
盃を交わし、呷り、また一献。
まず初めにPrinzが意識を失い、Grafが最後の矜持を守る為に自室へ消えて。
比叡はいつの間にか寝て、金剛との夢に還り。
あきつ丸は、きっともう横須賀へは帰らない次なる任務へと旅立ち、そして。
大和「これでもあなたには感謝しているのですよ、提督」
提督「そりゃありがたい。……ん」
大和「ありがとう。今生もう一人生まれるかも分からない妻子持ちの英傑に二人きりで酌をされるなんて光栄です」
提督「ほざけ。……俺は、お前にこそ惹かれていたのかもしれない」
大和「…………」
真っ直ぐ、射抜く様な鋭い鏃の如き眼光を向けられた。
今すぐ逸らしてしまいたい欲求に駆られ、抗う。
正直に言えばずっと苦手だったその曖昧で深過ぎる闇の様な眼光も。
気付けばどこか柔らかく暖かい灯火を僅かに宿していた。
大和「雲龍さんに、怒られますよ? 」
提督「構うものかよ。あれは、俺に惚れているからな」
大和「莫迦。女の嫉妬を甘く見過ぎ」
提督「そうかな? いや、お前を愛人にでもしようかと思っていたんだが」
それは冗談混じりの戯言なのか、それとも英雄色を好むという腐った格言の通りなのか。
興味を持ってはいけないのだろうけれど、悲しいことに少しだけ、ほんの少しだけ、希望が灯って、
そして自らフッと息を掛け、消した。
大和「あんまり幻滅させないでくださいな。……はい、最後の一杯にしておきなさい、旦那様」
提督「ーーーー」
暫時、瞠目して。それから獰猛な笑みを浮かべた彼。
彼は物分かりがいい、寧ろ良過ぎる。だから、これで終わりなのだ、私たちは。
この一瞬、少しだけ夫婦っぽいお遊びをして、終わり。これ以上は、進まない、踏み込ませない。
それが彼の為であり、私の最後の矜持だ。
提督「お前とは別の出会い方をすればよかったのかもな、大和」
大和「だとしてきっと雲龍さんと幸せになったでしょう、あなたならば」
提督「そうだといいな、うん」
今度は一度、瞑目して。
また私を射抜いて、そして笑って。
提督「大和」
大和「……はい」
提督「明日への希望は、見出せたか? 」
大和「そうであるとも言えず、そうではないとも、言えません」
提督「ほう? 」
大和「このままドイツやフランスの援軍として転戦するのもよし、
雲龍さんの様に慕うべき殿方に尽くすもよし、
或いは横須賀で後進を育成し来るべき戦いに備えるもよし」
提督「あぁ」
大和「私は……そのあらゆる未来への、布石となることに決めました」
提督「…………」
大和「私の幸せは、私だけが見通す未来のどこかにあるのです。
何か一つの目的を探すなんて、私には難し過ぎますから」
提督「…………大和、本当に
大和「言わないで。あなたに誘われたら、揺らいじゃうじゃないですか」
提督「…………」
大和「…………」
提督「…………ふ、そうだな、そうだろう、な」
大和「ええ、そうですとも」
言って、少しだけ後悔。駄目押しに頷いて、もう少し後悔。でも、それだってきっといつかの幸せなのだと信じていく。
私は、大和型戦艦一番艦大和の憑座たる艦娘大和であり、そして大和という名を得た、人間。
目の前で酔ったふりをする悪い男になんて嵌ってやるものですか。
寧ろ、私を一番にしなかったことを後悔させてやらなくては、なんて。
得られたかもしれない幸せに背を向けた、そんなありふれた女の、これは一夜の、ちょっとした記憶なのでした。
(´;ω;`)ブワッ
…
………
……………
「おかえりなさい、あなた」
「あぁ、ただいま。……身体は? 」
「心配し過ぎ。まだまだ、あなたの執務くらい助けられたのに」
帰宅して、暖かい妻に迎えられて、ただその幸せを甘受して。
まぁ、これはこれで悪くはないと、思う。
俺は、決めたのだ。ダイスの力になど頼ることなく、何かを信じるのだと。
信じるのならば、ただ与えられる妄信的で絶対的だと信じることのできる愛に身を捧げるのだと。
「今日は飲んできただろうけれど……飲む? 」
「お前が酌をしてくれるのなら」
「ふふ……馬鹿ね、そんなのあなたから答えを言っているのと同じ。飲み足りないのね? 」
「あぁ」
彼女は、俺のしたいことやしてほしいことを不思議と見通してくれる。
敵の動きや部下としての感情など造作も無く把握できた俺ではあるけれど。
それだけは、彼女にはきっといつまでも敵わない。
「あ、そうそう……お口か胸くらいなら、いいけど? 」
「ばーか。そこまで猿じゃねぇよ。休んどけ」
別に彼女がまだそこまで腹を重荷にはしていないことなど分かっている。
艦娘ではなくなったとしても人一倍丈夫なのだ、我が妻は。
それは何度も何度も、寧ろ彼女から求めてきた幾夜で理解している。
それでも、この曖昧模糊としていながらも何かを掴めそうな幸せの為に、耐える。
彼女の肢体も、その愛しか含まれない無垢の献身も。
幾度も味わったからこそ今すぐにでも貪りたい気持ちはあるのだけれど、それでも。
耐えることが、彼女を想うことが己の幸せに繋がるのだと、信じている。
否、信じることにしたのだ、俺は。
「寧ろだな……おい」
「何? 」
「休暇を、取った。今度、温泉にでも行こう。悪いが親父や兄弟も呼んでいるが」
「……いいの? 」
「何が? 」
「私、これでも認知くらいで我慢しようと思っていたのだけれど」
言って、何かまた続けようとして、目を伏せて、顔を背けて。
嗚呼、これが、何か、幸せということなのだろうか。
誰かを信じて踏み出したのならば、踏み出した分だけ相手が歩み寄ってくれて。
その歩み寄りが幸せなのだと信じた相手の愛を包んでやって。
包んだ愛を感じてまた自分も言いようの無い暖かさに、酔って。
「泣くようなことじゃ……心外な」
「だって、あなたクズでしょう? 」
「違いないが……これでも変わろうとしているんだ、俺なりに」
大和との語らいは言うに及ばず。
PrinzやGrafといった俺に多少の反感を持っていた部下の心にも寄り添おうとしたつもりだ。
あきつ丸や比叡といった一歩引いた視点を持つ部下にも歩み寄ろうとしたつもりだ。
つもり、つもり、つもりだけ。
けれどそのつもりが、いつか積もって何かに変わると、信じて。
せめて、愛すると決めた女には信じてもらいたいし、否定されたくない。
「ま、それでもまだ信じるわけには、いかないけれど? 」
「お手上げだ、それじゃあ。何か? またダイヤの指輪でも贈ろうか? 」
「要らない。そんなものこれ一つで十分。……ね」
「ん? 」
「指輪がどうして高いか、知ってる? 」
「お前を大事だと、美しいと、愛すると信じた分の誠意」
馬鹿真面目に、割と本音で答えて、笑われた。
そんなに笑わなくたって、いいと思うのだが。
「これはね、あなたがあなたじゃなくなったとき、死んでしまったときの、保険なの。
自分がどうにかなったとき、残された妻を、子を、路頭に迷わせない為の、財貨」
「俺はまだまだ死ぬつもりじゃないが」
「それも知ってる。それにまだまだ死なせてあげるわけないじゃない。この子が生まれたら次の子もすぐ、ね? 」
「…………」
「あなたが呉れたこれは、私たちを想う心そのものなの。
それはいつか売れる財貨であって、そして唯一無二の決意表明。愛してくれる、証」
「…………」
「だから、二つ目なんて要らないわ。ただ、何度でも愛して、キスでも一差し、呉れればいい」
「…………」
自然と、手と手が絡み合う。
腰に回した手が暖かな肉を柔らかく掴む。
女としては高身長な彼女も、身体だけは鍛え抜いた俺からすれば然程高くない。
その身長差がいいの、なんて臆面もなくピロートークで言われたときには困ったものだけれど。
でも、確かにこれはいいのかもしれない、なんて。
妻と、子供と。
その二人を一人で包み込んで自分を安心させる為には、これが必要なのかもしれない。
「ふふ……ねぇ、覚えてる? 」
「朝になっても欲しがり続けたくせに鬱血痕が恥ずかしくて宅配便を受け取りにいかなかったこと? 」
「莫迦。……私があなたを殺そうとしたこと」
頤を指で上げて覗いた瞳、それが暗闇の猫の様に、細まる。
まるで見通せない深淵を覗く様に、逃がさないと叫ぶ様に。
「やめたわ、そんなの。殺してなんて、あげないから」
「それは嬉しいね」
「嬉しい? ご冗談を。……あなたが私とこの子以外を見たら、一生許さない」
「構わない。見る気も無い」
「どうだか。今夜あたり大和さんでも口説いてきたんじゃないの? 」
「ーーーー」
「…………そんなわけないだろう? 」
「ふふ……そうね、ええ、そうでしょうとも……んっ」
面倒なことを囀る唇は黙らせて。
そのまま絡み合うわけにはいかないけれど、どちらからともなく寝台に倒れて。
いや、彼女の身体を労ったつもりであって、下敷きなのは俺。
どちらからともなくというのはつまり、俺が倒れ込んだのか、彼女が押し倒したのかということ。
「っ……ん…………他の女の臭い」
「当然匂いくらいは……ッ」
「だーめ。それも、駄目、許さない。上書きしないと」
「……ッ」
吸われて、噛まれて、今度は労わる様に舐められて。
抱き締めた獣に貪られるのも、まぁ悪くはない。
正直なところ、まだ幸せなんてものを実感できているとは思えないけれど。
それでも、彼女が大切だというのは紛れも無い、事実だ。
俺がまだ本当に幸せではないのだと、それすら理解して黙って愛してくれて。
何もかも、他の女なんて瑣末なことどころか今までの鬱屈すら上書きしようとしてくれて。
「嗚呼……俺は、なんてッ……! 」
「仕合わせ、そうに決まっているわ」
「だって、私がこんなにも、仕合わせなんだもの、ね? 」
咲いた花に食われるなんて、なんて、何?
これが幸せだというのなら、甘んじて受け入れよう。
寧ろ、これを信じた自分が間違っているなど、認めない、認めたくはない。
俺が、俺自身がこれを、彼女を幸せそのものだと、しんじたのだから。
「あぁ……お前が幸せなら、救われるさ、何もかも」
いつか夢見た幸せを、きっといつか、本物に。
おわり
ヤンデレ艦娘にはこれぐらい変わった提督じゃないと釣り合わないってはっきりわかんだね(少し前のイムヤ回を見ながら)
建ったフラグとコンマによっては色々と
暴れるPrinzとか妹を虐める金剛とかキレる比叡とか
あと冷笑的な最上とか祖国に帰れなくて絶望するGrafとか
陸軍と提督と幸せと正義に惑うあきつ丸とかあったんですが……
割に早く終わってしまいましたね……
まぁ、何はともあれそれなりに長々とお付き合いありがとうございました
割と暇なのでまた早めに新しいのを建てるかと思います
改めてお付き合いありがとうございました
>>306
あのイムヤは終始運が悪かった印象
最初放置され最後はようやく相思相愛になったと思ったらコンマ神に記憶消し飛ばされるというね
乙
やっぱコンマ神っているんやなって
おつおつ
大団円じゃないですかねこの(コンマ神が憑いてる)>>1の物語としては
楽しかった!
また頼むよ……コンマ神も
おつです。いやあ、巧いなあ。
こういう一癖二癖あるキャラ書かせたら本当に巧いですね。着地の仕方含めて実にお見事でした。
過去作プリーズ
あんこで板内を検索すれば出てくるぞ
乙です
【艦これ】平和に揺蕩う海を眺めて【あんこ】
【艦これ】平和に揺蕩う海を眺めて【あんこ】 - SSまとめ速報
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