【安価】異能刀奇譚 (21)

――男の家

男(爺さんの家の蔵が取り壊されるって聞いたから、色々漁ってみたんだ)

男(そしたらこれが出た)ジャン

男(日本刀、すげーだろ)

男(しっかし立派な彫り物だ。少し汚れてるが――)

男(いい値段で売れそうだ。うしし……なんでも買えるぞ)

男(まず日本刀の売り方を検索しなきゃな。銃刀法に引っかからずに売るには、と)カタカタ

刀「おい」

男「うわっ!」

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刀「ワシを売るな」

男「な、なんだ!? 刀が喋っている!」

刀「ほう。ワシの声が聞こえるとは。やはりアヤツの血筋と見た」

男「なんだよ! どういうことだよ!」

刀「説明するのも面倒だ。お前、欲しいものはあるか」

男「金! 金さえあれば欲しいもんなんでも買えるしな!」

刀「なるほど」

刀「ワシを売る以外で金を大量に得る方法、あるぞ」

男「マジでか! 教えろ!」

刀(バカだなコヤツ)

刀(どうせバカだ。うまく使ってやろう)

刀「なんとワシは開運の刀。ワシの力を以てすれば、持ってるだけでお金ザックザクのウッハウハ!」

刀「どう?」

男「いや、開運グッズとか信用してねーから。マジ眉唾ー」

刀「えっ!?」

男「やっぱこういう訳分かんねーのはお祓いしてから売るに限るなー」カタカタ

刀「おい! ダメ! ダメだ! 売るなバカ! 他にも金を得る方法がある!」

男「何?」

刀(どうせバカだ。うまく使ってやろう)

刀「なんとワシは開運の刀。ワシの力を以てすれば、持ってるだけでお金ザックザクのウッハウハ!」

刀「どう?」

男「いや、開運グッズとか信用してねーから。マジ眉唾ー」

刀「えっ!?」

男「やっぱこういう訳分かんねーのはお祓いしてから売るに限るなー」カタカタ

刀「おい! ダメ! ダメだ! 売るなバカ! 他にも金を得る方法がある!」

男「何?」

刀「ワシを振って、そこの椅子を叩いてみろ。鞘とか抜かなくていいから」

男「えーなによー。はいはい」ぶん

メキ

メシャグシャバキ

男「」

刀「どうだ! 我が武を以てすれば、この世界の王にでも――」

男「ぼうりょくはんたーい。お祓いするなら近くの神社が――」

刀「バカバカバカバカ!」

刀「じゃあ次は真面目な話だ!」

男「しつこいなー」

刀「この世界にはワシのような”魔神と――」

刀「いや、不思議な刀を持った者がいる。そ奴らが刀を使って悪いことを企んでいるかもしれない」

刀「ワシを使って、悪しき刀使いを倒す。刀は使う者さえいなければ無力なので、売り飛ばすなりすればいい」

刀「ワシを元手にたくさんの刀を売れば、お前の欲しい金も手に入れられるだろう?」

男「おおーいいじゃん。てか、そんなにお前みたいな刀があるのかー。そりゃ売りがいがあるな」

男「いいぜ、乗った」

刀「話が分かるやつで良かったわい」

刀(ししし、騙されておるわ騙されておるわ!)

刀(我ら刀は”魔神刀”と呼ばれている)

刀(古の人間たちにより悪しき神や物の怪、果ては凶悪な罪人を刀の形に変え閉じ込めたもの)

刀(しかし、身動きが取れず封印されるがままのワシらにも抜け道が用意されていた)

刀(我らは強い精神力を以て、持ち主の精神を奪うことができる。これをすれば簡単に現世に転生することができるのだ)

刀(転生すればこっちのもの。以前のように好き勝手暴れてやるだけよ!)

刀(幸い、アヤツの血筋とは言え、この男はバカ! この程度の精神乗っ取ることは容易い)

刀(最初に我が柄を自分の意志で持たせたのも作戦の内よ。これが我ら転生の工程が一つ)

刀(あとは、”アレ”をするだけだ……)

男「金稼ぎの手段が手に入って良かった! これからよろしくな!」

刀「おう、では男よ。ワシの名を呼ぶが良い!」

男「名前? 知らないけど」

刀「いや、そんなはずはない。柄を握ったその瞬間。己が脳裏に名が浮かんだはず」

刀「呼べ!」

男「あー、あれか。えーと」

刀「ししし……」

男「↓2 刀の名前」

首斬り怨響(くびきりおんきょう)

快刀乱麻

男「快刀乱麻!」

刀「言ったな! その精神乗っ取ってや――」

刀「……あれ?」

男「?」

刀「の、乗っ取れないだとォ」

男「乗っ取るってなんだよ」

刀(こいつ、バカだと思っていたが精神力が高いのか! 乗っ取れる気がしない!)

刀(クソゥ……)

男「ちょうど仕事を探していたところだったんだ。俺、フリーターだし」

男「いっちょやってやろうぜ! 刀狩り!」

刀「ムムム……」

刀(コヤツの精神が弱ったところを狙えば転生は可能。機会を待つしかないか)ハァ

刀「うむ。よろしく頼むぞ」

男「おう! よろしくなカイトーランマ!」

男「呼びにくいな……カイトで!」

カイト「ムウ……確かに他者に真名を教えるのは良くないことではあるが……まあよかろう」

男「事件探しか。どうすればいいかなー」

男「あ、そうだ! なんでも屋! なんでも屋を始めりゃいいんだ!」

男「そうと決まれば話は早いや。このアパートを事務所にして、まずは宣伝からだな」

男「どうやって宣伝しようかなー。今はネット広告が主か? それともー」

カイト(やれやれ。全くこの男は思い立ったらもう止められない性分らしい。付き合いきれんわ)

男「なあカイト」

カイト「ム」

男「お前、他の刀もっと効率良く探せるだろ。レーダーみたいなの使ってよ」

男「妖刀なんだからそれらしいこと、やれるよな」

カイト「」

男「やんなきゃ売るぞ。俺みたいなのにこんなに必死になるところを見るに、この声が聞こえるのは何か理由があるらしいし。売られたらこまるよなー」

カイト「」ギク

カイト(そう。我ら魔神刀はある程度、素質のある頑強な器を必要としている。普通の人間では脆く壊れやすいのだ!)

カイト(それに直感的に気付くとは……バカじゃないのか!?)

カイト「あるにはある。だが、お前が思っているより便利ではない」

カイト「ワシを中心にした1里ほどの円の中で”力”を発した者だけ、ぼんやりと分かる程度よ」

男「1里の円。半径2キロいかないくらいか。うーん、微妙だなー」

刀「仕方あるまい」

ビビ…ッ

カイト「ム」

男「どした?」

――銀行

キャー!

強盗「金を出せ! 一人で来たからってバカにしてると……」

ゴロン

強盗「この警備員みたいに、たたっ斬られちまうぞ」

強盗「ほらっ早くこの袋に金を入れろ」

強盗「へへへ、上出来だぜ。それこれも全部、アンタのおかげさ」

「そうか。喜んでもらえて嬉しいよ。僕の力、信じてくれるかい?」

強盗「ああ! もっと、もっと力が欲しいくらいだ」

「良いだろう。それなら、僕の名前を呼びたまえ。ほら――」

カッ!

カイト「――反応だ。同族が近くにいる」

男「いきなりィ?」

カイト「ああ。それに悪しき意識が流れてきておる。マズイぞ」

男「悪しき意識? なるほど、悪い奴と刀がいるんだな。じゃあ倒して刀狩りっしょ。んで、転売」

カイト「売ることしか頭にないのか、お前」

男「もち! こんなに早く巡り合えるたぁ、日々の出会いに感謝! 行くぞ」ダッ

カイト「ヌウ……」

――銀行

ガシャーン!

ドガーンッ!

強盗?「あははは! 乗っ取った! 乗っ取ってやったぞ!」

強盗?「これで僕も現世に転生ができたんだ! はは……あはは……」

強盗?「この器、存分に使わせてもらうよ! ははは……」

強盗?「僕は魔神! 魔神の名を轟かせ! 魔神の世を取り戻し! 再び世界を悪意の渦に引き戻すのだ!」

強盗?「あははは!」

強盗?「もう隠す必要もない! こそこそ生きるのは性に合わないんだ! 聞け! 人間ども!」

強盗?「僕の名前は――↓2」

一賊牢刀

ドンパッチソード

一刀断罪

強盗「ドンパッチソード」

ザザ…

強盗?「クソっ、転生が完全に出来ていないらしい。あのバカの記憶が邪魔して来る! さては銀行に行く前マンガ読んでたな」

強盗?「僕の名前は”一刀断罪”」

強盗?「この世の法こそ僕。僕の意にそぐわない者は断罪!」

強盗?「このように……」

強盗?「フン!」スパッ

モブの頭「うわあああああああ~~~っ」

モブの身体「」ジタバタジタバタ

強盗?「生きたまま斬首することができる!」

強盗?「人間の苦しむ姿を見るのは楽しいなァ~~~っ! それっ! 早く金だ!」

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