【安価】奴隷だった(23)
私は数ヶ月前、奴隷として商人に飼われていた。売り物だから、と食事を与えられていたが、そうじゃなかったら私は何になるのだろう。
そう考えていた時期があった。今は運良く優しいご主人様に引き取られ……もちろん最初は警戒したが、酷いこともされなかった。
今の私は売り物なんかじゃなく、一人の人間なんだ。
「おはようございます。ご主人様」
まだ料理を教わっていないので、少しでも手伝おうと早起きをしている。
ご主人様は寝起きのままゆっくりと口を開いた。
「>>3」
ksk
誰がご主人やっちゅーねん
寝ぼけているのだろうか。瞼がとても重たそうだ。
「ご主人様はご主人様ですよ。他にいません」
「今朝はベーコンと卵ですよ。 それとサラダも」
ご主人様は朝に弱い。それはきっと夜更かしをしているからなのだろうけど、私は先に寝ているのでよくわからない。
二度寝させると長くなるので早めに目を覚まさせることにした。
「ご主人様、朝ですよー」
「>>6」
朝のご奉仕で起こして
いや、ちょ、だから俺としては君は同居人であって、奴隷にした覚えは無いんやけど
ご主人様は優しい。そう、ここに来てから私は奴隷ではなくなったのだ。
「では、どのようにお呼びしたらいいですか?」
自分でもにやけているのがわかったので、ご主人様の着替えで口元を隠した。いい匂いがする。
「>>8」
変態…もしくは豚と呼んでくれ
聞き間違えだろうか? 前に変態というのは良くないものだと習った。それに豚の意味もわからない。
ご主人様は特別豚肉が好物というわけでもないはずだ。
「そんな変な呼び方……できません」
冗談の通じない娘だと思われただろうか。
「>>10」
ふむ…ならば呼び捨てで男と呼んでくれ
「呼び捨て、ですか?」
ご主人様は深く頷く。それが望みだと言うのなら、私は従うだけだ。
「では今後はそのように……」
カーテンを開けると部屋中に暖かい陽が差し込む。木々の葉が少し揺れているので風も吹いているだろう。気持ちのいい朝だ。
「ただの同居人で朝に弱い男は、朝ご飯がお昼ご飯になってもいいんですかー?」
こういう時間はとても楽しい。血は繋がっていないし、髪や瞳の色も違うけれど彼は家族のように接してくれる。
「>>12」
あーどっかの美少女が抱きしめながらキスしてくれれば今日も一日頑張れるのになぁ!
それはこのお屋敷を隅から探しても見つからない。だから代わりに……
「美少女ではなく、私で良ければ」
片手で髪を抑え、もう片方の手は彼の背中に回す。ゆっくりとお互いの顔が近づく。
「ちゅ」
その瞬間、私の唇がご主人様の頬に接触した。なんてことはない。ただ身体の一部が当たっただけなのだ。
平然ともできるはずだが、再び手に持った着替えで顔を隠すことにした。
「>>14」
ふむ…では朝ご飯を頂こうか…
ん?何故顔を隠しているんだい?ん?
「知りません……っ」
意思とは反して口元が緩んでしまう。にやけた顔を見せるときっとからかわれる。嫌じゃないが、心がこそばゆくなる。
「先に行って準備してきます!」
逃げた。
ご主人様は手際よく朝食を用意した。見惚れるほどだ。いつか私もあんな風に、と思うのは悪いことだろうか?
「お茶をいれようか」
ご主人様のアップルティーはとても美味しい。大好きだ。
「これを飲むと安心します……」
「>>17」
そう言ってもらえると、入れた甲斐があるね
ご主人様も私も笑顔になる。これはきっと幸せなことで、良いことだ。
机の上には開かれた手帳があった。よく見えないが、文字がびっしりと書き記されている。今日の予定だろうか。だとしたらご主人様は忙しいのかもしれない。私に構っている時間があればいいな、と思う。
「あの、ごしゅ……男は今日は忙しいのですか?」
こんなことを聞くと、困らせてしまうかな。杞憂かもしれない。ご主人様は微笑んだままティーカップを手に取り言った。
「>>20」
ああ 今日は君と沢山することがあるからね
安価下
私の予感は良い方向に裏切られたらしい。
「今、何と……?」
「今日は休みだから、二人の時間をと思ってね」
色々なことが頭をよぎる。やりたいこと、知りたいこと、見たいもの。でもやはり一番は、彼が決めたことを一緒にやることだ。それがいい。
「沢山とは、何をするのですか?」
「まずは>>23」
ショッピング
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