姉と僕と(121)
〈姉と僕と朝〉
「じゃあ父さん起こしてくるから、男はお姉ちゃん起こしてきて」
「わかった」
私と母は毎朝の習慣として父と姉を起こしにいく。
私達が起こさなければ寝坊して、そのまま遅刻してしまうからだ。
母は一階の和室へ向かい、私はゆっくりと階段を登り姉のいる部屋へ向かった。
姉の部屋の前で立ち止まりコンコンとノックを鳴らして部屋の中に入り、気持ち良さそうに寝息をたてている姉に語りかける。
「姉ちゃん起きて」
男「姉ちゃん起きて」
姉「んぅ」
男「起きないと遅刻するよ。ほら、おきておきて」
姉「ぅるさいなぁ」
男「はやく目を開けて体を起こさないと歌を歌うよ」
姉「やぁだ」ゴロン
男「だったら起きて。そして朝ごはん食べて仕事行って」
姉「……おきた」
男「その言葉は体を起こしてから言って」
姉「……おきた」ムクリ
男「おはよう、姉ちゃん」
姉「おはよう、男」
男「二度寝しないで早く下に来てね。あと暑くてもちゃんと服着て寝たほうがいいぞ」
姉「だぁって、あついんだし、しょうがない」ウトウト
男「あーもう、寝ないで!」
姉「心配しなくても着替えて下行く」カックカック
男「二度寝しても知らないからね」
男(心配だなぁ)
母「じゃあ食べましょうか」
父姉男「「「いただきます」」」
母「はい、いただきます」
男「姉ちゃんもいい加減スッとおきてほしいなぁ」
母「本当よ。父さんも早起きを覚えてちょうだい」
父「もう無理だろうなぁ……」
母「まったく」フフッ
姉「わたしは朝弱いんだから仕方ない……はず。取り敢えず、男が起こしに来ればいい」
男「……はぁ」
父「なんだか母さんに似てきたな」モグモグ
母「ほら、早く食べて出発する準備しなさい」
父「じゃあ男、戸締まりよろしくな」
母「のんびりしすぎて遅刻しないようにね」
姉「気を付けて大学行くんだよ。イヤホンしながら自転車乗らないこと、昼にメール送るから授業中はあんまり携帯いじり過ぎないように」
男「毎日言わなくてもわかってるから早く行けって」
姉「ん、行ってきます」ニコッ
男「行ってらっしゃい」
男「……」
男(大学行く準備するかぁ)
死ぬまで月30万を受け取る方法が野口英世2枚で可能。
やらないやつ馬鹿だろ
goo.gl/3dtVP
〈姉と僕と友〉
友「おはよう、男」
男「おはよう」
友「何か言うことは?」
男「……何もないです」
友「小学生の頃から一緒に登校して、毎日待ち合わせの時間に遅れてくるお前を待つ俺に何もないと?」
男「5分の遅れくらい許して」
友「俺は毎日5分前にはここにいるぞ?」
男「……学校行こうぜ」
友「まったく、んじゃ行くか」
男「どうせ講義が始まる20分前には着くしもっとゆっくりしてもいいと思うの」
友「ギリギリよりは余裕をもって着いた方がいいだろ。お前はゆっくり来すぎ」
男「ギリギリを攻めて行くのが趣味でして」
友「なに意味の分からないこと言ってんだよ」ケラケラ
友「食堂行こうぜー」
男「行こう行こう、お腹空いた」
友「今日の定食はなんじゃらほい」
友2「席取っとくぞ」
友3「俺たち弁当組の貢献に感謝しろよな」
男「はいはい」
ヴーヴー メールダヨ
男「ん」
友「お姉さんからのメールか?」
男「そう」
友「昼になるとすぐ送られてくるよな。あっ、ハンバーグ定食で」
男「サバの味噌煮定食でお願いします。職場に友達居ないんだろうかと心配になるよ」
友「ははは、美人なのにお前が絡むとちょっと残念だよな」
男「残念具合は友妹ちゃんも凄いだろ。お前のことになると凄い面白いぞ」
友「そんなことねぇよ。家じゃ俺に暴言吐きまくってるし、なんか嫌われてんだよなぁ……」
男「いい子なんだけどな」
友「お前には優しくて嫉妬すら覚える」
男「お義兄さん」
友「やめろ」
ヴーヴー メールダヨ
男「……」
友「お姉さんからか?なんて来た?」
男「……怖いから見ない」
姉「……」
姉友「怖い顔しながら携帯見てどうしたの?」
姉「弟が何か変な発言をした気がして、メール送ったんだけど返信が来ないの」ジー
姉友「いつもの弟くんタイムだね。いい加減弟離れしなさいよ」
姉「難しいこと言わないでよ」
姉友「あんたここじゃ凄い人気なんだし彼氏も簡単に作れるよ?」
姉「別に興味ないし」
姉友「24歳にもなってブラコンってどうよ」
姉「いいじゃん別に。好きなのはいいことだと思うの」ムスッ
姉友「あんたと知り合いたい男共からのお誘いを断ってる私の気持ちも考えなさいよ……。今度奢りでどっかに連れてって」
姉「ありがとう。じゃあ手羽先食べ放題へ連れてってあげる」
姉友「うわぁ」
〈姉と僕とゲーム〉
男「よっと」ピコピコ
姉「……」ジー
男「うっし」ピコピコ
姉「……」ジー
男「よしよし」ピコピコ
姉「……」ジー
男「ふぅ」
姉「このボスは強いの?」
男「強くはないけど楽しいボスだよ」
姉「ふーん」
男「ひま?」
姉「男がゲームしてるとこ見てるのが好きだから大丈夫」ニコッ
〈姉と僕と料理〉
姉「母さん達は今日も帰りが遅いみたいだし、夜ご飯は何を作ろうか」
男「冷蔵庫の中には何入ってる?」
姉「卵と牛乳あるしカルボナーラでも作ろう」
男「粉チーズもあるしすぐ出来そうだね」
姉「パスタは簡単で素晴らしい」
姉「それとも別の食べたかったりする?」
男「パスタでいいよ。普通に好きだし」
姉「そっか。じゃあベーコン切って」
男「あいあい」
姉男「「ごちそうさまでした」」パンッ
男「美味しかった」
姉「そうでしょう、そうでしょう」ニコニコ
姉「明日も私の料理食べたい?」
姉「(ミートソース作って明日も美味しいパスタを……)」
男「姉ちゃんに任せると毎日パスタになるからなぁ……パスタ以外も作ってくれると嬉しい」
姉「……じゃあ明日は男が夜ご飯作りなさいよ」ムッ
男「中華しか作れないけどそれでいいなら」
姉「だったら一緒に何か新しい料理にでも挑戦しようか?」
男「おぉ、やるやる」
姉「何を作ろうか……」
男「和食、洋食、中華」
姉「中華は男が作れるし……」
男「んー……」
姉「まぁ、買い物中に決まるでしょ」
姉「じゃあ明日駅まで迎えに来て。そこからまっすぐスーパー行って買い物しよう」
男「わかった。電車乗ったら連絡して」
姉「りょーかい♪明日が楽しみ」ニコニコ
〈姉と僕と買い物〉
友「おとこー、帰りに本屋寄っていこうぜ」
男「ごめん。今日はまっすぐ帰るわ」
友「そっかぁ、なんか用事でもあんの?」
男「姉ちゃんと買い物行くから家で連絡来るの待ってようと思ってな」
友「へぇ、じゃあ俺も家に帰っかな」
男「明日一緒に本屋行こうな」
友「おう。じゃあな、また明日」
男「また明日」
男「お茶美味しいなぁ」
ヴーヴー デンワッデンワッ
男「もしもし」
姉『男、もうすぐ電車に乗るから』
男「あいあい」
姉『それだけー。んじゃバイバイ』ブチッ
男「……」
男「なに作るんだろう……」
姉「んー?」キョロキョロ
男「……」
姉「おっ、いたいた」
姉「お待たせっ」
男「待たされた」
姉「ふふっ、じゃあ買い物行こうか」
男「結局何を作るか決めたの?」
姉「んふふー、実はいいものを見つけてね♪」
男「いいもの?」
姉「じゃん!コレ美味しそうじゃない?」
男「おー、美味しそう……でもこれなんて料理だっけ?」
姉「パエリアって料理だよ」
男「はぇー、作るのに必要なものは?」
姉「私が自転車押すから調べといて♪」
男「……わかった」
姉「自転車なんて久しぶりだ♪乗れるかな……?」
男「そのスカートじゃ乗りにくくない?」ポチポチ
姉「街中だとスーツでも自転車乗ってる女の人いるしイケるんじゃない?」
男「転んだら知らない人ってことにして横を素通りするから」ポチポチ
姉「えー!じゃあ男の足を掴んで転ばせてやる」
男「巻き込まないでくれ」
姉「恥ずかしい時も常に一緒だよ」
男「そんなんイヤだぁ」
姉「んふふ、にやにやしてないで早くレシピ探して」ニコニコ
男「えっ、にやにやしてた……?いやいや、してないよね?」
姉「ほら行くよー」チリンチリーン
男「あっ!待って置いてかないで」
姉「はやく来なさーい」
〈姉と僕とゲーム2〉
男「……」ガクガクブルブル
姉「……」ジー
男「……ヒェッ」ピコピコ ガクブル
姉「……?」キョロキョロ
男「……」ガクブル
姉「……!」
男「……マジで怖い」ガクブル
姉「(この孫の手で男の太もも擦ってみよう♪)」
男「BGMで盛り上げるのは本当に卑怯だと思うの」ガクブル
姉「……♪」ソーッ、スッ
男「ヒャァァァァァァ!?」ピョン
姉「あはははははは!!」ゲラゲラ
男「あ、へっ、な、なに!?太ももになんか触られた!?」
姉「あははは!! ひぃ、息、できない!あはははははは」ゲラゲラ
男「姉ちゃんがやったのか!? その孫の手で? 本当に、もうっ……!もー!」
姉「そんなにヒヒッ、跳ねるイヒヒッ、とは思わなくて」ゲラゲラ
男「もー!」
部長「カンパーイ!」
部員「「乾杯!!」」
男「乾杯」スッ
友「かんぱーい」カチャン
男「こうやって飲むのは久しぶりだな」
友「映画とかは行くんだけどな」
チュウモンオネガイシマース
男「先輩達が遊びたいだけかもな」
友「ははっ、一緒に騒いでやろうか」
男「勘弁してくれ」
友「でも、こんな空気もすきだろ?」
男「まぁ……好きだな。てか、お前もそうだろって」
友「ん」
「お・と・こくーん」ドスッ
男「う゛っ……。先輩、重い……」
先輩「女性に向かって重いとはなんだ重いとは!」
友「あはははっ」
先輩「お前はなに笑ってんだ。練習キツくすんぞ」キッ
友「ウッス」
男「脅さないでくださいよ。友とペア組んでる俺も辛くなるじゃないですか」
先輩「あんたらはもっと先輩を敬いなさい。まぁ、お酒の席だし多目に見てあげましょう。」
友「お前が重いとか言うから練習キツくなるところだったぞ!」
男「だって重いんだもーん!」
先輩「あんたらねぇ……!!」
男「で、何の用ですか。あっちでお酒飲んでたじゃないですか」
先輩「就職決まってない組が暗い話しかしないからこっち来たの」
友「あぁ、それは嫌ですね」
先輩「でしょー!で、周りを見渡したら可愛い後輩が二人で飲んでるから……来ちゃった」
男「来ちゃったって……それから早く退けてくださいよ」
先輩「仕方ないなぁ……」ノソ ノソ
友「女性とベタベタしやがって。 来週は一人で登校してやる!」
男「どうせ寂しくなって次の日からはまた待つくせに……」
友「実際一人で登校するのは寂しいから困る」
男「慣れって怖いねぇ」
先輩「女性とベタベタっていうけど、友くんも後輩ちゃんと仲いいじゃない。あれは違うの?」
友「後輩はなんか、「色々教えてください」って言って来るから教えてるだけですよ」
男「ふーん」ニヤニヤ
先輩「ほぉー」ニヤニヤ
友「……何ですか」
先輩「素敵な青春じゃないって思って」
男「お前に春がやって来たのかって思って」
友「先輩うるさいですよ。男は黙れ、お前に春を語る権利はない」
男「あぁ?お前の知らないところで春があったかも知れないだろ?」
友「いーや、無いね!何年友達やってると思ってんだ。それと実際来てないだろ!」
男「来てないけど、なんかあれだよ。そう、あれだ」
友「うるさいぞ。黙って枝豆食ってろ」
男「……」パクッ
先輩「あははは、相変わらず面白いわねぇ」ゲラゲラ
友「あ゛ー、そろそろ帰るか」
男「そうだな」
先輩「……」スー スー
男「せんぱーい、起きてください」ペシペシ
友「すっかり寝ちゃったな。ザルなお前のペースに合わせて飲んじゃってたし仕方ない」
男「どうすっかなぁ……先輩って一人暮らしだっけ?」
友「あぁー、前にそんな事言ってたな」
男「じゃあ姉ちゃん呼んで家に泊まってもらうか……」ハァ
友「大丈夫か?お姉さん怒んない?」
男「でも残す方が危ないだろ……」ピッピッピッ
友「財布とか見て住所探すとかは?」
男「他人の鞄なんて漁れねぇよ」
友「わかる」
男「もしもし……終わったんだけどさ。うん、駅前まで迎えに来てくれると嬉しい。うん……あっ、友と先輩も乗せていい?」
友「……」
男「ん。じゃあ駅前までお願い」ピッ
友「お世話になります」
男「うん。じゃあもう少しここで時間潰すぞ」
友「……少し酔ってるだろ?」
男「なんで?」
友「決断力がある」
男「いつもバリバリ決断力あるよ」
男「おっ、来たぞ」
ブーン キュッ ウィーーーン
男「早かったね」
姉「まあね、友君久しぶり」
友「お久しぶりです」
姉「それで、先輩というのは……どこ?」ニコニコ
男「……」ダラダラ
姉「その背中に背負っている女の人?」ニコニコ
男「……ハイ」ダラダラ
姉「……取り敢えず車に乗って」ムスッ
男「ありがと」ガチャン
友「お世話になります」
姉「で、その子の家はどこ?」
男「知らない」
姉「……わかった。じゃあ友君の家に行こうか」ブーン
友「ありがとうございます」
男「母さん達は家にいる?」
姉「居るよ。二人で映画見てる」
男「そっか」
姉「……」
男「……」
友(ヒェッ)
~朝~
先輩「んっ……」パチリ
先輩「んー?」ムクリ
先輩(ここはどこ?)
先輩「えっと、男くん達と飲んでて……うっ、頭いたい……」
ガチャ
姉「あっ、起きました?おはようございます」
先輩「おはようございます……」
先輩(わっ……凄く綺麗な人)ボー
姉「楽しいからってお酒を飲みすぎちゃうのは駄目ですよ。悪い人にお持ち帰りされちゃうかもしれないんですから」
先輩「はい……。えっと、あなたは……?」
姉「私は男の姉弟で、姉と言います」
先輩「男くんのお姉さん……?」
先輩「えっ、お姉さん!?じゃあここは……男くんの家ですか!?」
姉「はい。お店で寝てしまって、置いていくわけにもいかないから家に連れて来たんですよ」
先輩「迷惑をかけてしまいすみません……うぅ」
姉「そんなに落ち込まないでください。別に大丈夫ですよ」
姉「あと、もうすぐ朝御飯が出来るのですが、一緒に食べませんか?」
先輩「いいんですか?」
姉「はい。聞きたいことも沢山ありますし……」
男「おはよう」
母「おはよう、今日は遅いわね」
男「飲み会の後だし……あと土曜日ってことで起きれなかった」
母「お姉ちゃんなんか早起きして先輩さんとお話してたわよ」
男「えっ、姉ちゃん早起きなんかしたのか……。先輩となに話してたの?」
母「あんたのサークル内でのことを楽しそうに聞いてたよ」
男「うぇ……。で、先輩と姉ちゃんは?」
母「先輩さんを家に送ってるとこ」
男「帰ったのか……。先輩驚いてたりした?」
母「起きたとき少し混乱してたらしいわよ」
男「そっか。すこし強引なことしちゃったし謝っておこう」
先輩「~という感じで、男くんは楽しそうですよ!」
姉「そっか、楽しそうならよかった」ニコニコ
先輩「……男くんはあまり学校のことは話さないんですか?」
姉「そうね、でもあなたから色々聞けて楽しかったわ」ニコニコ
先輩「それはよかったです。あっ、ここら辺で下ろしてもらえれば大丈夫です」
姉「そう?」キュッ
姉「それじゃあね。また飲み会で潰れたら男に頼みなさい」
先輩「送ってもらってありがとうございます。もう潰れないように気を付けますので大丈夫です」ヘヘヘ
姉「ん。気を付けて帰ってね。」ニコニコ
先輩「はい、ありがとうございます。さようならー」
先輩(美人でカッコいい人だったなぁ)
姉「一緒にお酒飲もう」ガチャン
男「帰って来て早々どうしたんだよ。あとノックぐらいしてくれ」
姉「なんか飲みたくなって」
男「……別に付き合うけど、今から?」
姉「うん」
男「昼から酒飲んじゃったら素敵な土曜日が潰れるよ?」
姉「私にとっては十分素敵な事だからいーの」
男「そっか」
姉「ん。じゃあ一緒にコンビニに行っていろいろ買ってこよう」ニコニコ
男「はーい。準備するから少し待ってて」
姉「ふふっ」ニコニコ
男「……なにニコニコしてんのさ」
姉「なんでもなーい。さっ、早くコンビニ行こう」
男「わかったら」
姉「うんっ」
姉(あー♪わがまま聞いてくれる弟が居て幸せだなー)
姉(先輩さんはいい人だけどもう少しだけ独占させてね♪)
─────
───
─
姉「お酒のおつまみ無くなっちゃってさ……何かない?」
父「昼から何飲んでんだ……」
母「冷蔵庫の中漁って何か作ってみたら?」
男「おーいいね。漁ってみよう」ガチャ
男「冷蔵庫に豚のブロックがありました」
姉「はい」
母「私が買いました」
男「我々はお酒のおつまみが欲しいです」
姉「はい」
男「角煮を作ろう」
姉「わー」パチパチ
父「素晴らしい提案だ。晩酌が少し豪華になるな」パチパチ
母「楽しみね」パチパチ
男「頑張って作るから二時間くらい待っててね」
姉「手伝わなくても大丈夫?」
男「任せんしゃい!」
─────
───
─
姉「美味しい!」
母「柔らかく出来たじゃない」
父「角煮なんて食べるの久々だけどすごく美味いぞ」
男「それはよかった」
姉「本当によくできてるよ。また作ってね」
男「りょーかい」
姉「じゃあ次はこのお酒飲もっか。今度は私がお菓子でも作ってあげる」
男「楽しみに待ってる」
母「じゃあ私はローストビーフ作るわね」
父「オレはロールケーキを作ってやろう」フンス
母「あら、お父さんの作るケーキ美味しいから楽しみ」ニコニコ
男「そうだね」
姉「ふふっ、じゃあ飲もー♪」ニコニコ
乙
友2「男の好きな音楽ってなんか変だよな」
友3「わかる。俺達が知らない曲ばっかだよな」
男「そうか?」
友「有名な人とかも結構知ってるよな?」
友2「そうじゃなくて」
友3「一緒にカラオケ行ったときも知らない曲ばっかり歌うんだぜ?」
男「流行りの曲も歌ったりするだろ」
友2「しかも暗い曲かバラードだぞ?テンション上がんないよ」
友「お前なに歌ってんだよ……」
男「だって好きなんだもん」キャピ
友2「もんってなんだ、キモいぞ」
男「ハイ」
友「流行りの曲も歌えるんだし合わせてやったら?気持ちよくは歌えないけどな」
男「姉ちゃんとカラオケ行ったときは大丈夫なんだけどなー」
友2「えっ、男は姉とカラオケ行くのか」
友3「すげぇな。俺は兄弟とカラオケ行くなんて無理だぞ」
友「わかる」
男「でもな、姉ちゃんは歌めっちゃ上手いからこっちが疲れるんだ」
友「意味がわからない」
友2・3「「おれも」」
男「1回でもいいから本当に歌が上手い人とカラオケ行ってみ?こっちも頑張って歌わなきゃってなる」
友「へぇ」
友2「で、男の姉はどんな曲歌うんだ?」
友3「どんな感じでカラオケ行ってるのかも気になるな」
男「どんな感じかぁ……」
─
───
─────
姉「久々のカラオケだー!」
男「確かに久しぶりだね」
姉「いっぱい歌うぞー♪」
男(頑張って歌わなきゃ……)
姉「月子さんと、ヨエコと、えっちゃんと」ポチポチ
男「俺も曲入れよーっと」ポチポチ
姉「よし!……ん?」チラッ
男(何を歌おうか……カラオケ来ると毎回歌う曲に困る)
姉「あれ歌ってよ。昔やってたアニメの曲」
男「あーいいね。最初はそれにしよう」ポチポチ
姉「さぁさぁ、歌うぞぉ~♪」ニコニコ
─────
───
─
男「てな感じで結構長い時間歌ってるな。多分だけど、俺の好きな曲は姉の影響が大きいのかもな」
友2「仲よさそうでいいなぁ」
友3「正直羨ましいな。俺も兄弟とカラオケ行ってみっかな」
友「あー、俺も妹連れて……無理だろうなぁ」
男「妹ちゃんなら付いていきそうだけどな」
男「まぁ、姉ちゃんと一緒に行くカラオケは楽しいよ」
友2「今度さ、男の家行って男の姉を見に行かね?」
友3「いいなそれ。休日に行くのがいいか?」
友「おいおい……」
男「まぁ、来るなら遊ぶけど……。お前ら家遠いじゃん」
友2「そうなんだよなぁー。行きも帰りも面倒くさい」ハァ
友3「おい友。お前は家近いんだし遊びに行くついでに写真とか撮ってきてよ」
友「いやだよ。流石にキモいぞ」
男「なんでそんなに見たいんだよ……」
友2「男の姉ってなんか気になる」
友3「わかる」
男「なんか嫌だな。お前らはうちに来るな」
友2・3「えぇー!」
男「面倒くさがらずに頑張って遊びに来たら、ご褒美として人生ゲームやらせてあげよう」
友「あれか、真面目にやると半日かかるんだよなぁ」
友2「まぁ、いつか遊びに行くよ」
友3「うんうん」
男「楽しみにしてるよ」
おつ
周りの人達は楽しそうにお酒を飲んでいる。
私の隣には姉友が座っていて、酔いが回ってきたのかいつもより少しうるさい。
飲み会は好きでも嫌いでもない。しかし、どちらかと言えば嫌いだ。
「姉さんどうぞ!」「姉さん僕にも注がせて下さい!」「いや!俺が次ぐ番だ!」
私は姉友とゆったり飲んでいたいのにそうはいかない。こんな風に男性達が寄って来るのだ。
男性達と関わり過ぎると良い事がない。そう、職場の女性達から陰湿な嫌がらせを受けるのだ。
新人の頃は、上司や先輩、同僚に対して「はいっ!」と愛想よく、仕事に慣れるため努力を重ねていた。
それだけなのに、
「顔がいいだけ」「スタイルがいいだけ」「実際は酷い性格をしている」
いつの間にか同僚の女性達から影でそう言われていた。
何もしていないのに、ただ新しい環境に馴染もうとしていただけなのに。
あぁ、嫌な事を思い出してしまった。
「下心丸出しで近付くんじゃないよ!姉は私と飲んでんのー!」
姉友が私に抱きつきながら男性達を牽制する。
少し息苦しいが心地よい。
注がれた酒を飲みながら姉友へお礼を言う。
「ありがと」
「いいよ。でもあんたは少しくらい抵抗しなさいよ!そのまま酔ってお持ち帰りなんてされたらどうするのよ!」
酔っぱらってお持ち帰りなんて事はあり得ない。
一般人からすれば私は"酒豪"や"ザル"と言われる部類の人間なのだろう。自分の限界は知っているがまだまだ先であり、基本的に酔っぱらうまで飲むのは弟の前だけ。
「でも少し羨ましいわ。私も男共に群がられてみたい」
「そんなに良いことないわよ。職場の女性達から嫌われて嫌な気分になるだけだし」
「女って面倒よねー」
目の前でふわふわし始めた姉友が何か言っているが無視しよう。
あぁ、男は今何をしているのだろうか……。
明日は一緒にゲームでもしよう。人生ゲームを幼稚園から半日かけてやるのもいい。ホラーゲームをやらせて怖がっているのを見るのも楽しいかな。
服を買いに出掛けるのも良いわね。
何だかんだ言いながらも付き合ってくれる、それを分かった上で私は弟を振り回すのだ。
姉弟とはそういうものである。
「隣いいですか?」
声に反応し視線を動かすと後輩の男性が立っていた。
「いいよ。何か飲む?」
「いえ、あまり得意ではないので」
「そう、飲み会は楽しんでる?」
「ええ、まぁそれなりに。でも少し絡まれて大変でした」
と前を指差した。
大きな男性が隣に座っている人へ肩を組み、大きな声で喋っている。
私はあまり話したことはないが、いい人らしいと姉友が言っていた。
「あの人か……酔うと面倒だよね」
適当なことを言いながら酒を飲む。どうでもいい事、自分の興味がない事は適当に流してしまうのが私の悪い癖である。
姉友へ視線を向けると、私に抱きついたまま寝息を立てている。シャツに涎が付かないことを祈るしかできなかった。
「あ、あの、先輩はいま……」
「んー?」
嫌な予感がする。
凄く面倒で、今すぐここから逃げ出したい。
何故このタイミングで姉友は寝ているんだ!
彼はそのまま勇気るように、覚悟を決めたように言葉を絞り出す。
「いま、つ、つつ」
「……いま、コップが空なのでお酒を注ごうかなと」
「ほんと? ありがとう」
そのままコップを差し、世間話を始める。
内心ヒヤヒヤした。
違う話なのであれば私の自意識過剰というだけで済むのだ。
私は、誰かとお付き合いをして結婚をする、素敵な事だとは思うが今はあまり考えてはない。
学生の頃もよく告白されたが全て断ってきた。知らない男性も知人の男性も全て断ってきた。
多分だが、求める男性の基準が弟になっているのだと思う。この基準を越える人が現れる事を願おう。
~~~~~~~~~~~~~~~~~
飲み会も終わり、ふらふらと心もとない足取りの姉友と後輩の男性と一緒に駅へ向かう。
姉友と一緒に飲みに行くと毎回こうなってしまう。
「だ、大丈夫ですか? ちゃんと帰れます?」
不安そうに後輩の男性が聞いてくる。
「大丈夫、ちゃんと迎え頼んでるから」
「えっ 、タクシーとか呼んでましたっけ」
彼もよく私の事を見ていると思った。
飲み会が始まってから終わるまで、私は自分の携帯を使って連絡などはしていない。
では何故、迎えを頼んでいると言えたのか。
私は飲みに行くとき、必ず家族に伝えている。行き先と近くの駅、飲み終わり帰る時間をだいたい把握し家族は必ず迎えに来た。
今回もきっと駅前で並ぶ車の列のどこかで待っているだろう。
あっ、見つけた。
「君はちゃんと帰れる?」
「はい、飲んでいないので意識もハッキリしています。 なのでちゃんと帰れますよ」
「そっか、気を付けて帰ってね」
「そっか、気を付けて帰ってね」
そう言って先輩は僕から離れていく。
傍らにいる姉友さんへしっかり歩いてと注意しながらある車へ向かっている。
運転席を見る。
そこには若い男性が座っていた。
先輩はその男性と話す。
今まで見たこともない素敵な笑顔で話す。
自分の中が、心臓が、心が両手で潰されているような感覚になる。
痛い、苦しい、そして辛い。
僕は優しい先輩に憧れていた。そして好きになっていた。勝手に舞い上がっていたのだ。
しかし、それは今日で終わり。
「あぁ、痛いなぁ」
これ以上心に傷をつけないように、視線を下げ、自分の世界に入り、ゆっくりと地下鉄へ足を運ぶ。
失恋は辛い。
姉「結構待った?」
男「いや、さっき来たばっかだよ」
姉「そっか、でもナイスタイミングだよ。姉友の子守りが面倒で面倒で」
男「あはは、姉友さんは今回もウチでお泊まりって感じ?」
姉「うん。あっ、明日ひま?」
男「特に用事とかは無いけど……」
姉「じゃあ予定開けといて。一緒に遊ぼう」
男「えー、別にいいけどさ」
姉「ふふっ、じゃあ帰ろうか」
姉「おとこー?」ガチャ
男「なに? あとノックぐらいしてよ」
姉「そんなに細かいことを気にしてると父さんみたいに禿げちゃうよ?」
男「髪は母がたの遺伝子って言うし大丈夫でしょ……多分」
姉「禿げたら潔くスキンヘッドにしようね」ボフッ
男「で、どうしたの? 何をしに来たのさ。 あとベッドに寝転がらないで」
姉「久々に男のギターを聞きたいなと思って来ちゃった。 さぁ、弾くがよい」スンスン
男「弾くから枕嗅ぐのは勘弁してくれ。流石に恥ずかしいから」
姉「んー」スンスン
男「聞けって」
姉「聞いてる聞いてる……」ギュー
男「もう、本当に恥ずかしいから止めてほしい。で、なに弾いて欲しいの?」ジャーン
姉「バラード系聞きたいな。気持ちよく寝れそうなのがいい」
男「ん、りょーかい」
─────
───
─
男「~♪」
男「……ん?」
姉「……」スー スゥー
男(寝不足だったんかな? 夜ご飯出来たら起こすか……)
姉「んっ、んぅ……」
男(もう少しだけ弾いてよう)
姉「ほら、せっせと歩く!」
男「なんでそんなに張り切ってるのさ」
姉「せっかく新しい服を買いに来たんだもん。楽しまなきゃ」
男「じゃあ俺はいつもの所で服見てるから、姉ちゃんも自分の好きな服屋さん行「却下」」
男「……」
姉「却下します」
男「……」
姉「単独行動は許しません」ニコニコ
男「試着回数は少なめで……」
姉「ふふっ、頑張って男にぴったりの服を選んであげるね」
男「着せ替え人形だけはやめてね」
姉「あっ、このお店見て行こう?」
男「俺そこで服買ったこと無いんだけど」
姉「じゃあ新しいところを開拓していこう」
男「……はい」
姉「うーん」
男「ちょっと」
姉「少し待ってね……。こっちもなかなか」
男「いつまで悩んでんだよ」
姉「男はもっと派手な服着ても似合うと思って……、これとかどう?」
男「嫌いじゃないけど、学校へは着ていきたくない」
姉「えー? 格好いいのに……、買ったら来てくれる?」
男「あったら着ると思う」
姉「じゃあ買ってあげる。絶対に着てね」
男「母さんから服代貰ってるし、それを買わなくても」
姉「気にしなくていいの。着る服も増えた方が楽しいでしょ?」
男「……ありがと」
姉「~♪」
姉「これとかどう? 似合う?」
男「似合う」
姉「じゃあこれは?」
男「似合う」
姉「……」
男「……?」
姉「じゃあコレは?」
男「似合ってるけど、俺はあんまり好きじゃない」
姉「ふむふむ」
男「なんだよ、似合ってるのは本当だよ」
姉「まぁコレはいいや。じゃあ次、これとかどう?」ニコニコ
男「いいと思う」
姉「そっかそっか♪」
男「あんまり買わなかったね」
姉「ピンと来た物しか買わないからねぇ。でもいい服も買えたし満足」
男「そっか、俺もいい服選んでもらえて満足」
姉「んふふ、ちゃんと着てね? 学校にも着てってね」
男「ん、頑張るよ」
姉「持ってる服のレパートリーが少し増えて良かったね」
男「涼しければパーカーとか買ったんだけどなぁ」
姉「パーカー大好きだもんね。夏が終わったらまた買い物行こうね」
男「うん」
友2「ん? おーい」
男「友2じゃん。何してんの?」
姉「?」
友2「家族と買い物。 で、男の隣にいる美人さんは誰だ。 まさか、俺達に隠れて彼女つくってたのか!?」
男「ちげーよバカ、 俺の姉ちゃんだよ。 一緒に服見に来たの」
姉「男の友達なの? こんにちは~」ニコッ
友2「はうっ」ズキューン
友2「こ、こんにちは! 友2って言います!」
姉「男がお世話になってます。この子、大学じゃどう? 楽しく過ごしてる?」ペコリ
友2「はい! いつもつるんでる奴らと一緒に楽しく過ごしてます!」
姉「ふふっ、それは良かった。これからも仲よくしてやってね」ニコニコ
男「友2は家族が待ってんだろ。ほら、帰れ帰れ。 姉ちゃんも話してないで帰ろう」
友2「ちっ、おい男、今度遊びに行くからな! 絶対に遊びに行くからな!」
姉「遊びに来てくれるの? 友君以外に来るのは珍しいからなんか嬉しいわ~」
男「いいから帰ろう! じゃあな友2、月曜日に会おう」
友2「おう、じゃあな男。お、お姉さんもさようなら!」
姉「うん、バイバーイ」ニコニコ
友2(うぉー! めっちゃ綺麗な人だった、緊張したー!)ドキドキ
友2「よし、遊びに行く決心がついたぞ!」
>>1で語ってる「私」ってだれ?
男は一人称が「俺」だから違うよね?
>>69
oh……気付かなかった
これは自分のミスです。許してヒヤシンス
『うぅ、どこ……』
『そんな泣いてどうしたの? 』
『お、お姉ちゃん……』
『そんなに服汚して、何か探してるの?』
『……うん』
『じゃあ一緒に探してあげる』
『そ、それは……うぅ』
『よしよし、泣かないの。大丈夫だから、何を無くしたの?』
『お、お姉ちゃんが作ってくれたキーホルダーを、無くしちゃって……』
『あら、ランドセルに付けてたのに落としちゃったの? それも公園端の草むらで?』
『うぅ……』
『大丈夫だから、言ってごらん?』ナデナデ
『と、友達が、女の子みたいなキーホルダーだなって、取られて、投げ合って、そのまま草むらに飛んでいって……うぅぅぅ』ブワッ
『そっか……』
『僕は、何も出来なくて……。それで今探してるの』
『もうすぐ暗くなるし、どうしよう……。 新しいの作ってあげようか?』
『あれがいい…… 』
『そっか、じゃあ頑張って探そう!』
『いいの?』
『お姉ちゃんに任せなさい!』
─────
───
─
随分昔の夢だ。小学一年生頃か?
あの時の俺は、気弱で泣き虫で、回りの奴らに苛められていた。すぐ苛めは無くなったけど、あまり思い出したくはない。
「……」
体を起こし、机の上に置いてある財布を見た。
高校生の時、誕生日プレゼントとして、姉が選び、母が買ってくれた財布。
その財布には、少し黒ずんだピンク色の小さなビーズで作られたウサギのストラップが付いている。
姉ちゃんが俺に作ってくれたキーホルダー。
小さい頃の記憶の中でも鮮明に覚えている物の一つ。
保育園へ行っていた記憶もあるが流石に曖昧だ。だが、このウサギだけは、姉ちゃんが作ってくれたこのウサギだけは覚えている。
とても嬉しくて、はしゃいで、心から大切にしようと思えた。
無くした時も、新しいものを作ろうかと勧められたが断ってコレを探した。
日が暮れるまで探し続け、なんとか見つけ出したのを覚えている。
「起きるか」
姉ちゃんは、このストラップが付いている財布を見る度に
『まだ付けてくれてるの? ありがと。でも、もう汚いでしょ? 』
と笑いながら言う。
姉ちゃんは外してほしいのかも知れないが、俺は壊れるまで使い続けてしまうだろう。
愛着と言えばいいのか、ただ使っていたいのだ。
よく友達からシスコンと言われる事があったが、全くもってその通りだなと実感する。
「姉離れしなきゃなぁ、機会があった何かやってみっか」
独り言を呟きながら、いつもと同じ朝が始まった。
男「姉離れをするぞ!」
友「ははは、冗談が上手いな」
男「冗談なんかじゃない、俺は本気だ」
友「いやいや、考えろって。 お前が姉さんから離れられるか?」
男「……」
友「な? 諦めろ」
男「い、いや、俺はやるぞ! 」
友「お姉さん大好きでもいいじゃない。どうしたんだよ急に」
男「俺は物事の基準に姉が入っている。それをなんとかしたいと思って……」
友「基準って、例えば?」
男「姉が早く帰ってくるから友達の誘いを断る」
友「うん」
男「女性の基準が姉になっている」
友「あー」
男「持っている物のセンスが姉のチョイスによるもの」
友「ホッケの形した筆箱とか凄いよな」
男「とても深刻だと思わないかね」
友「別にいいと思うけどな」
男「くっそう、反対意見は許さん! 何をすればいいか話し合うから付き合え」
友「面倒くさい」
男「……妹ちゃんとは最近どうなんだ?」
友「うっ……、あんまり会話しない」
男「もうすぐ誕生日だな。何かプレゼントは?」
友「……」
男「妹ちゃんと仲のいい俺が聞いてやらんでもない」
友「……わかった。手伝うよ」
男「流石は友だ。信じてた」
友「まず、お姉さんから離れる方法をいくつか挙げていこう」
男「おう」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
姉「んー」ピコピコ
男(友と話し合ったのはいい、後はちゃんと実行出来るかどうか……)
姉「おとこ、このボス強くて勝てない」ピコピコ
男 (友が色々な方法を考えたけど……。まずは、『距離を置く』から始めるか)
姉「この攻撃がズルい」
男(でも、距離を置くってなんだよ! 何をすればいいのか分かんないぞ…… )
姉「ねぇ、聞いてる?」
男(うーん)ウムム
姉「……」
男「ん? なに?」
姉「このボスが倒せない」
男「あー、そいつ強いよね。コツはね──」
男 (あ、ここでコツを教えなければ『距離を置く』の第一歩になるのでは?)
姉「コツは?」
男「コツは、お、教えない」
姉「……なんで?」
男「えーっと……」
姉「姉がこんなに困っているのに?」
男「そ、それは」
姉「そっかぁ、困っている姉を見捨てるんだぁ」
男(何だこれ)
姉「わたし、男に見捨てられちゃうんだぁ」
男 (笑顔でなんてことを……。しかし、耐えろ……耐えろ……)
姉「悲しいなぁ」
男「ほ、ほらもう少し頑張ってみなって」
姉「ふーん?」
男「通常攻撃は見えてたし、もう少しやれば簡単に倒せそうな気がする」
姉「そう? じゃあ、もう少しだけ頑張る」
男「うん」
姉「それでも勝てなかったら手伝ってね」
男「あい」
─────
───
─
友「で、姉の圧力に屈したと?」
男「はい」
友「もう諦めよう。 男に姉離れは無理だ」
男「ばか、そんなに早く諦めてどうする」
友「てかさ、遊んでたゲームってお前の部屋のゲーム機で遊ぶやつだろ?」
男「そうだけど」
友「お姉さんがお前の部屋で遊んでたって事だよな?」
男「あぁ、急にどうした」
友(お姉さんが部屋に居ることが当たり前となっている。これが一つの問題か、なら──)
友「姉が部屋に遊びに来るってのが、まず普通じゃないと思うんだ」
男「え、そうなの?」
友「俺は妹しか知らないけど多分」
友「だから次は──」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
男 (『お姉さんを部屋から追い出してみよう』か……)
男 (うーん、どうやって追い出せばいいんだ……)
男(変にやっちゃうと怒る……? いや、悲しそうな表情するんだろうなぁ)ウーン
男「これはもう無理かもなぁ」
姉「何が無理なの?」
男「姉離れ」
姉「へっ?」
男「そうそう……ん?」
姉「……」
男「い、いつから俺の部屋にいた?」
姉「ついさっき」
男「……」
姉「そう……」
男「ち、違う。その、あの」
姉「昨日少し変だったのは……それが原因?」
男「……ハイ」
姉「で、無理だろうという結果がでたと」
男「……ハイ」
姉「……」
男「……」
男(ぬぅぅぅ! 恥ずかしいし辛い!)
姉「したい?」
男「何を?」
姉「姉離れ、したい?」
男「……」
姉「わ、私は……」
姉「姉弟として仲がいい方だとは思ってるけど、男にとって迷惑なら、離れたいなら私も努力する」ポロポロ
姉「何かきっかけがあったんでしょ? 男のためになるなら私は──「待って!」」
男「俺が姉離れしようと試みたのは事実だぇど!」
姉「……っ」
男「経緯を話すから、泣かないで一旦落ち着いてくれ。 えーっと、牛乳温めて来るから待ってて」
姉「……ん」
─────
───
─
男「──という事でして」
姉「やっぱり私のせいで」
男「まぁ、好きなものとか考え方が姉ちゃんに影響されてるしのは事実だけど。 その……」
姉「……?」
男「少し距離を置こうとして気づいたんだけど、別に嫌いじゃない。この事に対して引け目を感じたりもしてない」
姉「……」
男「確かに俺の中で姉ちゃんが軸になっている所もあるけど、それでもいいかなって」
男「無理に離れて悲しむ姉ちゃんなんか見たくないし……」
男(姉ちゃんが泣いてる姿が一番キツかった……。もう見たくない)
姉「……じゃあ姉離れしなくていいの?」
男「うん」
姉「私は……迷惑じゃない?」
男「迷惑なんかじゃないよ」
姉「そっか」
姉「……」
男「ごめん、俺のせいで悲しませちゃって」
姉「お風呂入ってくる」
男「え、うん」
男(やっぱり怒ってるよな……)
姉「あとで仕返しするから覚悟しておくこと。これでチャラって事にしてあげるから」
男「ん」
姉「じゃあ、また後でね」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
友「よう男、実践してみた……か?」
男「おはよう友」
友「えっと、何かあったのか?」
男「何もなかった」
友「凄い目が腫れているのは?」
男「気のせい」
友「……姉離れの方はどう?」
男「姉離れは諦めた。お前の言った通り、姉が大好きというこをと胸に刻んで生きていくよ」
友「そ、そっか、よかった……な?」
男「あぁ、お前のお陰だ」
友「じゃあ行くか」
男「ん」
やったのか?
>>85
修正前
男「俺が姉離れしようと試みたのは事実だぇど!」
修正後
男「俺が姉離れしようと試みたのは事実だけど!」
誤字ユルヒテ
姉友「気のせいだといいんだけどさー」
姉「なに」
姉友「少しね、少しだけ目が腫れてない?」
姉「……そう?」
姉友「何かあったでしょ」
姉「……感動する映画を見て泣いたの」
姉友「姉は映画で泣いたりしないって知ってるよ。うーん、あんたが泣くことと言えば……」
姉「……」
姉友「弟くん絡みでしょ?」
姉「……」ビクッ
姉友「分かりやすい。喧嘩でもした?」
姉「喧嘩はしてない」
姉友「じゃあ何か言われちゃった? 」
姉「え、えーと、その……」
姉友「ここじゃあ言いにくい? 正直気になって仕方がないんだけど」
姉「うっ……、仕方ない。 仕事終わりご飯食べに行こう」
姉友「そこまで周りに聞かれたくない事なのね……。じゃあ、今日は私が奢ってあげる」
姉「ん」
姉「──っていう事があって」
姉友「姉離れしようとする弟くん凄いじゃん。それに比べてあんたは泣くほど悲しかったのか」
姉「よくわからないんだけど泣いちゃって……」
姉友「まぁ、お互いに軽く依存しあってるみたいだしねぇ」
姉「わ、私はそんなに依存してない……と思う」
姉友「どの口が言うんだか」
姉「うぅ……」
姉友「で、そのあとの仕返しは何したの?」
姉「へ?」
姉友「弟くん大好きなあんたがどんな仕返ししたのかなーと思って」
姉「そ、それは……」
姉友「ここじゃ誰にも聞かれないしいいじゃん。聞かせてよ」
姉「……かき」ボソッ
姉友「ん、なんて? もう一回」
姉「……耳かき」
姉友「耳かき?」
姉「そう」
姉友「耳かきが仕返しなの? ご褒美とかじゃなく」
姉「仕返しというか、お仕置きというか」
姉友「それがお仕置きになるの?」
姉「うん。男は耳かき嫌いだから」
姉友「流石に嫌いといってもお仕置きって……」
姉「男は綿棒で耳の入り口を少しだけ掃除したりはするよ? でも、綿棒もそうだけど耳かき棒とかで奥から掻き出すのはダメみたいなの」
姉友「自分でやるからじゃなく? 人にやってもらうのもダメなの?」
姉「昔はお母さんの膝上で泣きわめきながら耳かきされてたわ」
姉友「家族でも拒絶するってよっぽどね……。 え、えーと、じゃあお仕置きしたときの弟くんはどうだった?」
姉「それは──」
おつ
─────
───
─
お風呂を上がり、自分の部屋へ戻った。
蛸の形をした座布団に座り、小さい頃から居る犬のぬいぐるみをぎゅっと抱き寄せる。
「よかった……」
ふと安堵の声が漏れる。
男から"姉離れ"という言葉が出た瞬間、自分の中から何かが溢れてしまった。
感情をコントロールするという事を忘れて、無我夢中に男の気持ちを勝手に汲み取り、男から離れようと頭を回転させていたのを思い出す。
「なんで泣いちゃったかなぁ」
一人で焦って慌てて、そして泣いてしまった。
小さい頃から今まで沢山触れ合ってきた。その全てが、男にとって迷惑と思われていたら……。
少し考えただけでも涙が溢れてしまう。
しかし、男は迷惑だとは言わなかった。
その言葉で凄く救われた気がする。
「でも、いつかは離れていくんだよね……」
いつかは離れていく。
これはお互いに言える事だ。私も、男も、いつかは結婚して自分の家庭を持つ日が来る。
でも、もう少しだけ男に甘えていたい悪い自分が居る。
姉という力を行使して、男と遊んでいたい。そんな関係をもう少し、もう少しだけ続けても……。
「……」
考えていると、コンコンと扉を叩く音が鳴る。
そして扉が開き──
「姉ちゃん、来たよ」
「ん」
男がやって来た。
少しだけ怯えているように感じる。仕返しとは言ったがそこまでビクビクされるとは思わなかった。
仕返し。
何をするかまったく考えていなかった。
お風呂に入っている時も男の事で頭がいっぱいで、姉友に重度のシスコンと言われても仕方がない。
「姉ちゃん?」
「あっ、ごめん。 仕返しの内容を考えてて」
「俺が姉ちゃんに酷いことしたのは事実だから……。どんなのでも受けるよ」
どんなのでも受けてくれるらしい。
男が嫌がる事と言えば何だろう。
一週間ぐらい会話しないとか、私から男へ近付かないとか……。
無理だ。
私が耐えられない。
さっきまで男から嫌われているかもと思い悩んでいたのに、考え付くのはこんな下らない事ばかり。
今日、今この場で終わるような事をしよう。
「……!」
ふと、机の上に置いてあるペン立てに視線がいく。そこに刺さっている一つの棒を見て、そして決めた。
「久々にアレしよっか」
「あ、アレってなに?」
私は立ち上がり、自分の机へ近づく。
そしてペン立てに刺さっている棒を手に取り、満面の笑みを浮かべながら男へ見せる。
「これ」
「そ、それはちょっと……」
「んー?」
「う、あ、あの」
慌てる男をジっと見つめる。
そうだ、これはいい機会だ。
男へ甘えたい私の悪い部分が顔を出す。
これは、仕返しというよりお仕置きだ。
悪事を働いた弟へ贈る躾。
「私は耳かきの準備してくるから待っててね」
「いやっ、その」
「……」
「はい、待ってます」
「よろしい。楽しみに待っててね」
凄く気分が高ぶってきた。
理由は明確、男をいじめる事が出来るから。
悪い自分が、私の理性を崩し始めている。もう、誰にも止められない──
「ふふっ」
徹底的やってやろう。
男に耳かきの、私がやってあげる耳かきの素晴らしさを教えてあげなきゃ。
耳かきが嫌いでも蕩けるくらい、全力で尽くして、虜にしてしまうくらい──
そんな事を考えながら、私の部屋には無い綿帽子付きの耳かきと綿棒、そして細長いピンセットを手に取り、自室へ戻った。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
折り畳み式の小さなテーブルを出し、その左側に座る。
テーブルの上には持ってきた耳かき、部屋にあったティッシュとデスクライトを置いた。
「はい、頭乗っけて」
ポンポンと膝を叩く。
男はこわばった表情のまま、私に背を向けてゆっくりと膝の上に頭を乗せる。
太もに男の頭の重さを感じると共に、短い髪がチクチクと刺さり、こそばゆい。
体がガチガチになり大きく震える男を見て、少し頭を撫でる。
しかし、震えは収まらない。
まぁ、これは仕方がないのだ。男は昔から耳かきが嫌いで、泣きながら耳かきをしてもらっていたのだから。
そっと顔を覗き込むと、男の視線は定まらず、今にも泣き出してしまいそうだ。
その姿を見て、私の体は火照り始めていた。
お腹の奥からじわっと熱が溜まり、少しだけ息が荒くなる。
いつもなら、『嫌なら、止めようか?』とでも言っているところなのだろう。
しかし、今回は違う。
───これは、私を泣かせたあなたへのお仕置き
───姉として、弟へ贈る躾
「じゃあ始めるね」
「なるべく早く終わらせて……」
男は涙を浮かべながらそう言った。
だが、その願いは届かないであろう。
虐めたい訳じゃないのに、涙を流しながら悶える男の姿を想像し、それを望んでいる。
可哀想と思っていても、頭と体が言うことを聞かない。
左手で耳たぶに優しく触れる。
男の体が少し反応したが気にせず触り続け、耳全体へ指を滑らせた。
外側の溝は思っていたより綺麗だ。
しかし、耳の中はそうでもなく、取りがいのある耳垢が見える。
「じゃあ外側からやっていくね」
そう言って、溝を耳かきで優しく掻いていく。
外側だけはある程度綺麗にしてるだけあってあまり手応えは無いが、カリカリと掻いているうちに垢が集まってきた。
「入り口は綿棒で掃除してるだけあって綺麗だね」
「き、綺麗だったらやる必要無いでしょ……!」
「でも少しずつだけど耳垢が集まってるよ」
垢を匙の先に溜め、耳の溝全体をゆっくりとなぞりながら掬い上げる。
すると男の体がガクッと揺れた。
「んっ……!」
「男……? あんまり動くと危ないよ」
「はぁ、んぐっ……はぁ」
聞こえていないのか、それとも余裕が無いのか男は呼吸を乱しながら震え続けてる。
目尻からは涙が溢れだし、頬を伝って私の太ももへ流れ出す。
手足は伸びきらず、少し曲げた状態で力み、震える体を無理やり押さえ付けている。
「耳の中を掃除するんだから、もう少し落ち着いて欲しいな」
「うぅ……」
「もう泣き始めちゃったの? 仕方ないなぁ……」
「危ないから暴れちゃ駄目よ。大丈夫だから、怖くないから……ね?」
「……っ、うん」
耳元で囁かれた瞬間、自分の知らない謎の感覚に襲われた男。
震えは収まり、力んだ四肢が脱力し始め、温かい何かが身体全体を覆う。
体を覆った謎の感覚が腹部へ向けて流れだすと、そこを中心に心地よい快感へ変わり、全身へ広がり出す。
それは一瞬にして全身を駆け巡り、意識が奪われそうになる。
「落ち着いた?」
「だ……い、じょうぶ」
そんなわけない。
男はひとり驚き混乱する。
耳かきに怯えて震える体と、逃げ出したい気持ちを必死に抑えていた筈なのに、一瞬だけ恐怖から解放され、全てを受け入れてしまった。
姉からの言葉に対し、体が無意識に動き頷いていたのだ。
まるで催眠術にでも掛かった人のように、まるで自分が操り人形にでもなったかのように。
「ふぅ……、ふぅ……」
「ん、よしよし」
そっと男の頭を撫で続ける。
これほど素直に受け入れるとは思ってなかった。
相変わらず涙を流してはいるけど、さっきよりは震えも軽くなって、呼吸も落ち着きてる。
『怖い、無理』と言いながら逃げ出すと思っていたけど……、流石にそんなことないか。
肺に穴空いて入院してたら遅くなりました
痩せすぎには注意しましょう。
気をつけてな
落ち着いたところで耳穴を除き込む。
ある程度自分で掃除しているだけあって、間近で見ない限りは綺麗に見える。
「外側は綺麗だけど奥が汚い」
「耳かき嫌いなんだし……。仕方ないじゃん」
「ふふっ、でも今回は耐えてね」
「わかってるよ。お、お仕置きだから」
「ん。綺麗にしてあげる」
耳たぶを摘まんで引っ張り視界を広げる。
耳かきをそっと耳孔の内側へそっと近付け、匙となっている先端を内壁へ当て、優しく皮膚の部分をそっと撫で上げる。
するとまた、男の身体がビクンと跳ねる。
「大丈夫? 痛かったら言ってね」
「大丈夫……だから、気にしないで」
怖すぎて体が拒否反応でも起こしているのか?
さっきから男の流す涙が私の太ももに伝って少しくすぐったい。
先ほどと同じ所へ匙を当て、同じ力で撫でるように掻くと、ボロボロと細かい耳垢が取れていく。
男の耳の中ではジャリジャリという音が響いていたりするのだろうか。
掻いてる付近を同じストロークで何度か往復した後、少し奥へ進んでいく。
少し大きめの耳垢が発見した。
気合いを入れよう、本番はここから。
ここからは、もっと残酷に男をいじめるとする。
耳かきを耳垢と内壁の隙間に滑り込ませペリペリと剥がしていく。
しかし、全部は剥がさない。内壁に少しだけ張り付いた状態で残し、棒を耳孔から引っ込め、ピンセットと持ち換える。
私が思うに、男は耳掻きが嫌いという訳ではなく、耳のなかで感じる異物感が苦手なのだ。
今この瞬間も不快感に耐えているのだろう。しかし、それと同時に耳かきの気持ちよさも感じている気がする。
このまま虜にしてしまおう───
ピンセットを差し込み、耳の中で細い先端をカチカチと鳴らす。
「ね、姉ちゃん!」
「なに?」
「それ怖いからやめて」
「カーチカチ、カチカチ……」
「やめてって……。あ、あと、耳元で囁くのもやめてほしい」
「ふーん、耳元で囁かれるのも嫌いなんだ?」
「き、嫌いじゃないよ。 でも、なんか変だから、その……」
あぁ、本当に可愛くて、愛しい。
男はきっと何かをはぐらかしたのだ。
しかし、私には分かる、分かってしまう。
きっと男の耳はそういう事なのだ。敏感で、誰にも触れられたくない、そういった意味の込められた場所。
私は、その領域に足を踏み入れ弄り倒している。
「……」
「どうかした?」
「ちょっとニヤニヤしてた。 気にしないで」
優越感か、それとも男を支配している事への喜びか、少しだけ悦に浸ってしまう。
切り替えなくちゃ。
この事はまた別に日にとっておこう。
手に持つピンセットに力を入れ直し、剥がれかけの耳垢を目指す。
「サクッと取っちゃうから、おとなしくしててね」
「りょ、了解」
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