待てますか…? (31)
デレマスssです
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「待てますか?いいから待てるかどうかだけ答えてください。」
そう、言われたのは何年前だっただろうか。
あのとき、ウエディングドレスは仕事だったな。
まだ早いってずいぶん怒られたっけ、でも仕事はしっかりこなした。
待合室で二人きりになった時の真っ赤の顔は忘れられない。
「連れっててくれるところ、みたもの、全部素敵な思い出です。」
こんなことを言われたらドキッとしちゃうよな。
アイドルとして、女の子として最高の景色を見せなきゃ、そう思わせられたよ。
「プロデューサーさんといると、私…笑顔になっちゃいます」
仕事をこなしていくうちに少しづつ信頼してくれるようになったっけ。
一番信頼していますなんて言われた時もあったよな。
ステージ上で泣いてたの恥ずかしがってたけど、舞台袖では俺も泣いてたんだよ。
絶対に見せなかったし気づかせなかったけどな。
「本当はそんなにできないけど…でも、誰かに期待されると頑張っちゃうんです。」
経験を積んで自信に満ちているように見えた君でもそういう風に思っていたことはこの時知った。
ひたむきに努力する姿を見て、それでも理想に負けそうになって折れそうになって、でも俺の、ファンの期待を軽く上回るパフォーマンスに目を奪われっぱなしだったよ。
「名前で呼んでください。」
最初は苗字で呼ばないと怒ってきたくせにいつの間にかそう言ってくれるようになったよな。
いつの間にか俺だけじゃなくて仲間にも、ファンにも名前で呼ばれることを嫌がらなくなった。
アイデンティティの一つとして認めるようになった。
自分の嫌いだったところを好きになれる人はそういない。本当に強い子だ。
「これから頑張るのは…誰かの憧れになること。パーティーの主役になります!」
そう決意した君の笑顔は…正直ドキッとしたな。
一回り以上離れた子に対して持ってはいけない感情を抱いたんだ。
「私、アイドルのお仕事楽しいです。」
知ってるか、ああいわれた時めちゃくちゃ嬉しかったんだぜ。
一人前の女の子じゃなくて、一人前のアイドルになるってセリフ…さ。
いろんな感情が込み上げてきたよ。アイドルを大好きになってくれもした。
俺はお前をトップアイドルにするって、そう決めた。
他にも、いくつも記憶は浮かんでくる。思い出す必要もない。
そうしなくても頭に出てくるくらい俺の脳裏に刻まれてるんだ。
「もう一度言っておきます。いつか、私が本当に大人になる時、その時まで待っていてください。」
こう言われたのは彼女の小学校の卒業式の日だったか。
あの時の彼女は真剣に、そう本当に真剣に俺の目を見てそう言ったんだ。
透き通った茶色の瞳、若干揺れ動いて潤んでいたな。
小学生らしくない大人びた子で、周りからもそう扱われていた彼女だったけど、俺は彼女の等身大を必死に探して付き合ってきたつもりだった。
でもあの目を見たときは彼女の成長速度に驚いてしまったよ。
俺は。あの時なんて言ったんだっけか。
誠実に、間違いのないように、多少の誤解も生まないように考えた言葉をかけたのは間違いないけど、忘れてしまったよ。
何年かけてもお前をトップアイドルにする。そう決めたことだけは伝えられたよな。
「まだまだ子供ですけど…大人になったら、見てくれますか。」
彼女の卒業式の一年後、そう言われたっけな。
実はさ、君にずっと目を奪われてたんだよ。隠してたけどな。
サラサラした髪が揺れててさ、君はなんてきれいなんだろう。
そう思ってしまったんだ。
俺は本当になんて答えたんだろうな。しっかり者の君に、年下の子の面倒も見てくれて、憧れに近づこうと努力し続けた君に半端な返事をしたはずがないのにな。
「LMBGのみんなといた時間は…かけがえのない宝物です、解散した今でもこれ以上ない仲間です。」
リーダーをしたがってたよな。
お前はLMBGで本当に成長できた。
大人のアイドルとのユニットが多かったお前は子どもばっかの環境に身を置くことが少なかったから、若葉さんは別としてもまだまだ未熟なメンバーをよくまとめてくれたよ。
あの経験はその後も役に立ってたよな。
「みんなと過ごして少し大人になれた気がします。」
君は美しく魅力的になった。
薫やみりあ、舞たちたくさんの煌きに負けない、最高のパフォーマンスを見せてくれた。
あの時のステージは今でも見返すよ。恥ずかしがって怒るけどさ。
それでもなんだかんだ言って一緒に見てくれる君は本当に愛おしい。
今でも連絡を取り合ってる子はいるんだろう。
祝福、してくれるかな。
「高校生になった私は、どうですか。大人に近づけたでしょうか。それとも、もう…」
今でも思い出せる。
熱望していた自分で歌を作る夢が叶って、夏樹や涼、久美子たちと遅くまで作曲して、文香や桃華、沙織なんかと辞書を引きながら作詞して、やっとできた歌を披露した日、そう言ったよな。
あの時のお前は大人だったよ。断言できる。
もう、守る存在じゃない。ともに仕事をしていく最高の相手になった。そう確信できた。
でも、俺は意地悪だったな。満足させたらだめだ。そう思ってあえてまだ足りないって言ったな。
一瞬だけ悔しそうな顔をしたけど、その後満足そうに
「そうですよね、ここでとどまってなんていられません。」
そう言ったんだ。こっちの意図を完全にわかって、そう言ったお前の頼もしさったらなかったなあ。
「…一緒に遊びに行ってください。アイドルとしてでも子どもでもなく、一人の女の子の相手として。」
あのステージの次の年、本当に決めたんだろうな。
自分が俺を手に入れるんだって。
レッスン着で、汗も拭かずにそう言ってくれた。上気した顔は激しいレッスンのせいだけじゃなくて、俺は、そこに女の子を見てしまったんだよな。
首になる、いやそれどころか信じてくれた幾人もを裏切ると解ってても、欲望に負けたんだ。
約束の日に目いっぱいオシャレした君は最高に魅力的でさ、何度タガが外れかけたかわかんないよ。
一線は超えなかったけれど、アイドルとプロデューサーの関係としてはアウトになったな。
結局この日の後も二人で出かけて、よりにもよって俺から告白するんだから。
信じられないよな、何歳も下の、しかもアイドルに。
でも、嬉しそうな君をみたらこの先何があっても守るって思えたんだ。
もちろん関係は全力で秘密にした。
「プロデューサーさん、私…私…、トップアイドルに成れました、成れましたよね。」
ドームライブ、これ以上ない舞台で、めちゃくちゃ緊張してて、しかもソロパートでのトリを務めた日、間違いなく登壇者の中で最高の輝きを見せた日、俺に聞いたよな。
ああ、自信を持って言えるよ、お前はトップアイドルに成った。
そう言った後初めて号泣したところを見せたよな。
何人もの仲間もライバルも引退して、そんな中でも研鑽を積んでいくつも最高の歌を作って、最高傑作を歌った姿さ、伝説のトップアイドルの一人になぞらえて。「輝きの向こう側」を見た者って賞賛されたよな。あの時は俺も本当にうれしかったんだぜ。
あの後、少しづつアイドル活動から作詞作曲に仕事をシフトしてったな。
「皆さん、私は今日アイドルを引退します。本当に夢のような日々で、たくさん成長して、たくさんの仲間に囲まれて、信頼できる人たちに育ててもらって、なにより多くの人、皆さんに応援してもらえて幸せでした。」
引退の日、そう言ったよな。
俺のほうが泣いちゃったよ、ファンも、アイドルの仲間もボロボロ泣いててさ、でも笑ってたよな。
人を笑顔にする、アイドルとしての最高の仕事を君は成したんだ。アイドルを引退すること、めちゃくちゃ寂しかったんだぜ。
でもまあ、そうしなきゃキスもできなかったんだけどな。
いくつもいくつも記憶が浮かんで止まらない。なあ、今日は結婚式だな。みんな喜んでくれるよな。アイツも…
「プロデューサーさん、そろそろ…」
「ああ、そうだな。でもプロデューサーさんはもうやめようぜ。」
「フフッ、そうですね、あなた。」
「…!ああ。」
俺はなんて幸せ者なんだ。
「永遠の愛を誓いますか?」
「はい。」
神父に合わせて返事をする。
「誓いの口づけを…」
「幸せにするからな、千枝」
最愛の彼女、今日からは妻の名前を呼び、唇をつけた瞬間
「…っ!?っつ…!」
熱い…!?脇腹…?思わず振り向く。
「プロデューサーさん、待っててくれるって言ったのに、どうして…どうして!!!」
俺が、トップアイドルにした、もう一人の大切な人、橘ありすが俺のことを刺していた。
美しい茶色の目は赤に汚れてしまっている。
失血の量はなかなかに夥しい。痛い、痛い、痛い。
「ああ、ああああああああ!」
半分狂ったように俺のことを刺すありす。もう痛くもない。妙に冴えた頭で考える。
なぜ、彼女は披露宴に誘っても返事をくれなかった。約束通りトップアイドルにした。なぜ。
「待っててくれるって言ったのに…!私の好意をどうして…どうして弄んだっ!!!」
そう言われて気づいた。
ああ、俺はなんて間違いをしたんだろうか。
ありすを、壊してしまった…
…薄れゆく視界のなかで最愛の君、千枝を見る。
ああ、ウエディングドレスの君は本当に美しい。願わくはその美しさを永遠に…
千枝の姿を目に焼け付けた。俺は君を―――
最期は、狂ったようなありすの目が映った。
…薄れゆく視界のなかで最愛の君、千枝を見る。
ああ、ウエディングドレスの君は本当に美しい。願わくはその美しさを永遠に…
千枝の姿を目に焼け付けた。俺は君を―――
最期は、狂ったようなありすの目が映った。
これで終わりです、よくわかんない、気分悪くなった等ありましたら申し訳ないです
あっやべ最後ミスった
そっちのどんでん返しか……
まぁたしかに刺されるわな
ミスリードとか伏線とか全然だからどんでん返しと言うより単なる超展開やん
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