博士「超高性能ウルトラハイパーグレート落とし穴を作ったぞ!」 (24)

博士「ただいま」

助手「あれ博士、どこ行ってたんですか?」

博士「ちょっと発明をね」

助手「発明って……どうせまたイタズラでしょう」

博士「ハッハッハ、まぁな!」

助手「で、今度はどんなイタズラを仕掛けてきたんです?」

博士「超高性能ウルトラハイパーグレート落とし穴を作ったぞ!」

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助手「超高性能落とし穴?」

博士「超高性能ウルトラハイパーグレート落とし穴だ!」

助手「このさい名前はどうでもいいでしょう」

助手「……で、どんな落とし穴なんです?」

博士「うむ、聞いて驚け」

博士「まず深さ……10000m!」

助手「10000m!?」

助手「いくらなんでも深すぎじゃないですか?」

博士「10000mぐらいなければ、超高性能ウルトラハイパーグレートとはいえんだろう」

助手「そうかもしれませんが……どうやって掘ったんです?」

博士「ワシ特製の簡易穴掘り機でちょちょいとな」

助手「落とし穴なんかより、そっちの方がすごい発明のような気がしますよ……」

助手「その落とし穴に落ちると……どうなるんです?」

助手「まさか、そのままペシャンコってことはないでしょう?」

博士「うむ、さっそく説明していこう」

博士「まず、落ちた瞬間、『ようこそ、落とし穴へ!』というアナウンスが流れ」

博士「開発者であるワシの生い立ちが紹介される」

助手「はぁ……」

博士「さらに、落下者の安全を考え、シャボン玉のような形状の絶対防御シールドが張られる」

助手「安全なんて考えてたんですか」

博士「そりゃそうだ。怪我させたり死なせてしまっては、イタズラとはいえんだろう」

博士「落とし穴内では、反重力装置が働いており、ゆっくりと落下するわけだが……」

助手「ふわふわ~って感じですか」

博士「そう、ふわふわ~って感じだ」

博士「のんびりとしたフリーフォールを楽しめるというわけだ」

博士「むろん、ずっと同じスピードじゃつまらんから、速度は変化させるがな」

博士「とりあえず、1000m地点までは特に仕掛けはない」

助手「1000m落下するってだけで、十分すぎる仕掛けですよ……」

博士「1000m地点を通過すると、音楽(ミュージック)ゾーンに突入する」

助手「ミュージックゾーン?」

博士「クラシック、ジャズ、ロック、ポップスなどあらゆるジャンルの音楽が楽しめる」

助手「へえ~」

博士「落ちながら曲を楽しめるなんて最高だろう?」

助手「落ちずに曲を楽しむ方が最高だと思いますがね」

博士「2000m地点を通過すると、一気に体が加速する。加速ゾーンだ」

助手「ほう」

博士「猛スピードで落下し、まるでジェットコースターのようなスリルが楽しめる」

助手「大丈夫なんですか? Gとか」

博士「ゴキブリ?」

助手「違いますよ! 重力ですよ!」

博士「心配いらん。先程説明したシールドが、体を守ってくれる」

博士「3000mから下は海底ゾーンだ」

助手「海底ゾーン?」

博士「3000mから4000m地点では、落とし穴内部に深海の映像が映し出される」

博士「深海魚たちに囲まれながら落下を楽しめるぞ」

助手「落下を楽しむって表現、なんていうかどこか妙ですね」

博士「4000m地点からは、宇宙(スペース)ゾーンに入る」

博士「落下者の周囲に、宇宙の映像が映し出され、まるで宇宙にいるような感覚になれる」

助手「さっきの海底ゾーンもそうですけど、落とし穴の一部にしておくのがもったいないですね」

博士「分かっとらんな……」

博士「落とし穴の一部に過ぎないからこそ、いいのではないか!」

助手「さっぱり分かりません……」

博士「落下距離が5000mともなると、お腹も減るだろう」

博士「というわけで、5000mからは食事ゾーンだ」

博士「ゆっくりと落下しながら、和洋中あらゆる料理を堪能することができる」

助手「料理はどうやって出てくるんです?」

博士「ワシが作った万能シェフが、注文すれば一秒で作ってくれる」

助手「万能シェフすげえ!」

博士「そこはワシも褒めてくれよ」

助手「あなたを褒める気にはなれません」

博士「6000m地点から7000m地点までは、リラックスゾーン」

博士「穏やかな映像と音楽で、満腹になった体を落ち着かせるのだ」

博士「7000mからはエクササイズゾーン」

博士「落下しながら、さまざまな運動を行える」

助手「至れり尽くせりですねえ」

博士「至れり尽くせりなイタズラ、がこのワシのモットーよ!」

助手「いよいよ、8000mですね」

助手「エベレスト級の距離を落ちたことになります」

博士「8000m地点からはちょっとエッチなゾーンが待っておる!」

博士「あっは~んやうっふ~んな映像や仕掛けが、落下者を盛り上げてくれるぞ」

博士「ただし!」

博士「もし、落ちているのが子供だった場合は、子供向けの仕掛けが発動する!」

博士「子供にエッチなのは教育上いかんからな!」

助手「芸が細かいですね……無駄に」

博士「ラスト1000m……9000mからは走馬灯ゾーン!」

助手「なんですか、それ」

博士「落とし穴内に仕掛けられた装置が、落下者の脳内の記憶を読み取り」

博士「まるで走馬灯のような映像を映し出してくれるのだ!」

助手「これまた縁起でもない仕掛けを……」

博士「そして、いよいよ10000m地点! ――ゴール!」

助手「いったいどんな仕掛けが待ってるんです?」

博士「それは落ちてからのお、楽、し、み」

助手(うぜえ)

博士「どうしても知りたいなら、落ちてみることだ」

助手「絶対嫌です」

博士「なお、10000mまで落ちた落下者は、高性能エレベーターで即座に地上に戻ってこれる」

博士「あ、いや超高性能ウルトラハイパーグレートエレベーターで戻ってこれる!」

助手「言い直さなくていいです」

博士「どうだ、すごいだろう!?」

助手「すごいです」

助手「テクノロジーも……そして、無駄なことにこれほどの労力と科学力を費やすその情熱もね」

博士「ハッハッハ、照れるな」

助手「褒めてないですって」

博士「それではさっそく、落とし穴に誰が引っかかるか見に行くとするか!」

ザッザッザッ… ワイワイ… ガヤガヤ…



助手「ここですか……結構人通りが多い道に仕掛けましたね」

博士「ほら、あそこのわずかに色の違う箇所が落とし穴だ」

助手「なるほど、いわれなければ分かりませんね」

博士「ふふ……誰が引っかかるか楽しみだ」

一時間経過……

助手「……誰も引っかかりませんね」

博士「うーむ、おかしいな」



三時間経過……

博士「なぜだ、なぜ誰もあの上を通らない!?」

助手「みんな絶妙に、あの上だけ通りませんね……」

一日経過……

博士「…………」

助手「…………」

博士「結局、誰も引っかからなかった……」

助手「まぁ、こういうこともありますよ」

博士「あれだけ苦労して作ったのに、お楽しみを用意したのに……誰も引っかからないのかよ!」

博士「誰も落ちないのかよ!」

博士「オチないのかよ!!!」










― 完 ―

ゴールの仕掛けはいったい

そうきたか
お楽しみの内容が気になりすぎる…

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長さ的に地球の中心余裕でぶち抜いてますねぇ

全然届いてないぞ

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