通行人A「今日はハロー注意報出てるな」
通行人B「注意しないとな」
男「……?」
男(なーにいってんだ、あいつら。この辺に海はないし、波に注意する必要なんか……)
ドドドドド…
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男「な、なんだ!?」
外国人A「ハロー! ハロー! ハロー!」ドドドドド
外国人B「ハロォォォォォ!」ドドドドド
外国人C「ハロー! ハロー! ハロー! ハロー! ハロー!」ドドドドド
男「あだだ……ひどい目にあった」ボロッ…
テレビ『痛々しい事故のニュースです』
テレビ『高速道路で、玉突き事故が発生しました。中継をご覧下さい』
男「うわぁ~、ひどいなこりゃ」
男「……って、この高速道路、おかしくないか!? 道路が透けてるんだけど!」
男(透明な高速道路……透明高速道路? いや、まさかな……)
≪月極駐車場≫
男「ここも駐車場になったのか……最近増えたよなー」
部下「いかがですか、会長?」
会長「うむ、いい駐車場だ。これで我が月極グループの駐車場事業はさらに発展するというものだ」
男「げ、月極グループ!?」
刑事「失礼」
男「はい?」
男(やけにハンサムな人だな)
刑事「私は刑事のニコラスという。話を聞かせてもらいたい」
男「ニコラス刑事!?」
刑事「こういう男を見なかったかね?」サッ
男(いかにも政治家っぽい男だけど……)
男「いえ、見てませ――」チラッ
有権者「今度の選挙で、あなたに一票を入れるんですか?」
政治家「決して悪い話じゃないと思いますよ?」
男(いた!)
政治家「どうか、この高級レストランのお食事券で、私に清き一票を……」
有権者「はぁ……」
刑事「コラーッ!」タタタタタッ
政治家「し、しまった!」
刑事「汚職事件の現行犯で逮捕する!」ガチャッ
男(なんつうしょぼいお食事券……いや汚職事件なんだ……)
ビュゴォォォォォォ…
男「な、なんだ?」
男「ものすごい風が吹いてきた! それも一つじゃない! 四つぐらい吹いてきたぁ!」
台風父「さぁ、どんどん北上していくぞ!」ビュゴォォォォォ
台風母「一家でピクニックなんて久しぶりね!」ビュゴォォォォ
台風息子「低気圧にならないうちに、急がないと!」ビュゴォォォ
台風娘「みんな、待ってよー!」ビュゴォォ
ビュゴォォォォォォォォォォォォッ
男「台風……一家か……」
キャプテン「今日は野球の全国大会だ! しまっていくぞ!」
部員「おう!」
キャプテン「最初の対戦相手はどこだったっけ?」
マネージャー「一回戦はスリランカとの対決よ! 二回戦はフィリピンとイタリアのどちらか……」
男「本当に全ての国が参加する大会らしいな……」
青年「ニーハオ」
男「ニ、ニーハオ」
青年「ボク、中国地方から来たんですけど、道を教えてもらえますか?」
男「いいですよ! ところで、ご出身は? 鳥取? それとも島根かな?」
青年「北京です」
男「……」
男(中国地方ってか、中国だな)
青年「シェイシェイ!」
男「どーもー!」
男「……」
男(おかしい、さっきから何かがおかしい)
男「ハロー注意報、透明高速道路、月極グループ、ニコラス刑事、お食事券……」
男「もしかして、俺は……変な世界に迷い込んでしまった?」
男「たとえば、子供がよくやる勘違いが現実化した世界、みたいなところに……」
高校生「やったーっ! 東大に受かった! 四月からは思う存分海を監視するぞ!」
若者「イタ飯行こうぜ! 本格チャーハン作る中華料理屋があるんだ!」
おっさん「半分ぐらい弁当食ったから、食間服用の薬飲まねえと……」
男(やっぱりそうだ……!)
男(東大と灯台がごっちゃになってるし、イタ飯はイタリア料理だし)
男(食間は食事と食事の間だってのに……)
男「あ、あれは……!」
男´「さ、今日はディズニーランドに連れてってやろう」
妻「ありがとう、あなた!」
幼女「ワーイ!」
男(俺……!? 俺がもう一人いる!)
男(俺が美人の奥さんと結婚して、かわいい子供まで連れてる……)
男´「すまなかったな。このところ家族サービスできなくて」
妻「いいのよ、あなたは一部上場企業でバリバリやってるスーパーエリートなんだから」
幼女「一部上場ー?」
男(……そうか)
男(俺は子供の頃、結構出来がよくて、将来はバリバリ働くビジネスマンになると我ながら思ってた)
男(大きくなれば、誰かしらと結婚できるだろうと思ってた。だけど実際には――)
男(俺がものすごい大人になるってのも、大きな勘違いだったってことか……)
幼女「パパ、なんで一部だけなの? 全部上場しないのー?」
男´「!」
男´「何をいっている!?」バシッ
幼女「きゃっ!」
男「え!?」
男´「いいか!? 上場ってのはな、東京証券取引所に株式を公開することだ!」
男´「一部上場というのは、東証一部に上場することなんだよ!」
幼女「ひっ……」
妻「あなた、よくある勘違いじゃないの」
男´「こいつは俺の子だぞ! 俺の子が、こんなバカな勘違いしてるのを許せるものか!」バシッバシッ
幼女「うぇ~ん!」
男´「このバカ娘が! 今日はもう引き返して、経済の勉強だ!」
男(なにやってるんだ、こいつは……いや、俺は!)
男「やめろ!」
男´「!? ……な、俺!? 俺がもう一人!?」
男「そう、俺はお前だ……ただし、お前に比べると、だいぶうだつが上がらない人生を送ってるがな」
男「だけど、俺は……よくある子供の勘違いをあんなに叱るような奴じゃない!」
男「そこだけは俺の方が勝ってる! それは勘違いじゃない!」
男「それだけは断言してやるぅぅぅ!!!」
男´「……」
男´「できたじゃないか」
男「え?」
男´「明らかに自分より上の“自分自身”に対して、しっかり意見を言えたじゃないか」
男「あっ……」
男´「お前は自分を大したことのない人間だと思ってるようだが、そんなことはない」
男´「それこそが、大きな勘違いなのかも……」
男(あっ、俺の姿が……この世界から消えていく……)スゥゥ…
…………
……
……
……
男「……ん」
男(今のは、夢……? いや、それにしては生々しかったな……)
男(俺よりはるかに優れた俺に意見を言った時の爽快感は、まだ胸にしっかり残ってる……)
男(“俺はものすごい人間”ってのは、確かに子供の頃の勘違いだったのかもしれない)
男(だけど、“俺は大したことのない人間”ってのも、大人になった俺の勘違いなのかもしれない)
男(俺だってもっと頑張れば、“結構やる時はやる人間”くらいには、なれるのかも……)
男(もしかしたら、勘違いかもしれないけど……頑張ってみるか!)
~ END ~
時には勘違いして突き進むことも必要だな
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