メタメタモンモン (49)

ぼくはメタモン。昨日人間にゲットされたよ。でも、僕のご主人様はこの人じゃないみたい。

祖父「男、欲しがっていたメタモンを捕まえてきてあげたよ。誕生日プレゼントだ」

男「わーい!おじいちゃん、ありがとう!よろしくね、メタモン!」

メタモン「むんむ!」

父「よかったなぁ、男」

母「そうよ、折角もらったんだし、おなまえを付けてあげたらどうかしら?」

男「おなまえ?えっとねぇ・・・」

メタモン「むむ?」

男「・・・・・・ムム!きょうからきみはムムだよ!」

メタモン「むむーっ!」

こうして、僕はムムになった。

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ご主人様は、いつも僕と一緒に遊んでくれる。

男「ムム、いっしょにあそぼ!」

ムム「むんむっ!」

男「きょうはおうちのなかでかくれんぼだよっ!きょうはぜったいみつけるんだから!」

ムム「むむむ!」

男「それじゃあ、10かぞえるから、そのあいだにかくれてね」

ムム「むー!」

男「いーち、にーぃ、さーん・・・」

男「きゅーう、じゅうっ!よーし、ムムはどこだー!」

男「こっちかなー・・・・・・いないっ!」

男「ここかなっ?いないなー」

男「じゃあ・・・・・・ここだっ!」

男「おふろにもいない・・・タンスのなか!」

男「も、いない」

男「むーっ、どこいったんだろ・・・」

男「・・・・・・みつかんないよー!まいったー!」

ムム「むんむっ!むむむっ!」

男「わわっ、おにんぎょうにへんしんしてたんだ!すごーい!」

ムム「むんむんむー♪」

男「くそー、つぎはぜったいみつけるんだからね!」

かくれんぼ、僕はまだ一回も負けたことが無いよ。次も負けないからね。

母「もうっ!この子はタンスの中までひっくりかえして!」

男「ごめんなさい・・・」

ムム「むむ・・・」

母「片付けるまで今日のおやつは抜きです!さ、片付けなさい!」

男「わわっ、いそげーっ!」

ムム「むむーっ!」

たまにちょっぴり怒られます。

ご主人様は学校に行っている。僕も一緒に連れて行ってもらってるよ。

男「ムム、へんしん!」

ムム「むむむーっ!」

ピカチュウ「ぴっかー!」

少女「おー」パチパチ

男「へへーん、僕のムムはすごいだろ!」

少女「私のピカちゃんそっくり・・・・・・なでていい?」

ピカチュウ「むむー・・・」ササッ

少女「あ、逃げられちゃった。ピカちゃんもいっつも撫でようとすると逃げちゃうの・・・」

男「そうなんだ」

この人は撫でる時ガシガシってするから嫌い。ご主人様はふわふわ撫でてくれるから好き。

僕のご主人様、少女ちゃんと遊んでる時すっごく楽しそう。ご主人様が嬉しいと、僕も嬉しい。

男「えー、引っ越しちゃうのー?」

少女「うん。私、アローラに行くことになったんだ」

男「やだーっ!」

少女「・・・私もやだっ!でも、行かなきゃいけないんんだもん!」

男「やだやだ!行かないで!」

ムム「むむ・・・・・・」

結局、あの子は行っちゃった。ご主人様は、すごく悲しそうだった。僕も、ご主人様が泣いてると、悲しい。

ご主人様、元気ない。だから僕、あの子になろうと思う。これが、僕の特技だから。

少女?「・・・・・・」

男「あれ?君は・・・」

少女?「・・・・・・」

男「ムム、なにやってるの?」

少女?「むむ!?」

男「ぜんぜんできてないよー。顔が(・―・)てなってるもん」

ムム「むむむー・・・」

男「あははっ!ありがとう、ムム。大丈夫、ムムがいるから寂しくないよ」

ムム「むむーっ!」

へんしんはうまくできなかったけど、ご主人様は元気になってくれた。よかった。

ご主人様に新しい友達ができた。かわいい女の子だった。

女の子「男くーん!あーそーぼ!」

男「いーいーよ!」

ムム「むむー!」

男「あ、ダメ。ムムは今日お留守番」

ムム「むむむ・・・・・・」

男「今度遊んであげるからね」

ムム「むむ!」

男「それじゃあ、行ってきまーす」

ご主人様はお友達と遊ぶのが楽しいみたい。僕はちょっと寂しい。うそ。すごく寂しい。

ご主人様が嬉しいと、僕も嬉しい。だのに、ご主人様が嬉しいのに、僕は嬉しくない。なんでだろ。

男「聞いて、ムム。女の子ちゃんがね、バレンタインにチョコくれたんだ」

ムム「む?」

男「ほら、見て。おいしそうでしょ?ムムにもちょっとあげるね」

ムム「むーむっ!むーむっ!」

男「ムム、甘いの大好きだもんね。はい、あーん」

ムム「むー・・・・・・むむっ!?むむー!むむむーっ!」

男「ええっ、どうしたの!?チョコがなにか・・・・・うわ!すごくしょっぱい!すっごいしょっぱい!」

甘いお菓子は大好き。甘くないお菓子は嫌い。

ご主人様はあの女の子とよく遊んでる。僕も遊んでほしい。

女の子「・・・・・・」

男「あれ、女の子ちゃん?」

女の子「・・・・・・」

男「ねえ、どうしたの?どうして家に・・・・・・あっ!ムム!」

女の子「!?」

男「ムムでしょ!へんしん、うまくなったね」

女の子「むむー!」

男「でもびっくりしちゃうからやめてね」

ムム「むむ・・・・・・」

今日はご主人様がいっぱい遊んでくれた。とっても嬉しい。メタメタモンモン。

ご主人様が落ち込んでる。失恋っていうのをしたみたい。

男「女の子ちゃんがね、好きな人がいるって言ってたの。その子はね、僕のお友だちだったの」

男「・・・・・・僕、どうしたらいいのかな」

ムム「むむー・・・・・・」

男「・・・・・・こんなことムムに言ってもわからないよね。ごめん」

ムム「むむーっ!」

男「遊んでほしいの?でもごめんね、そんな気分じゃないんだ」

ムム「むむっ!むむっ!」

ご主人様をなぐさめてあげたい。でも、どうしたらいいのかわからない。

女の子?「・・・・・・・・・・・・」

男「あれ、女の子ちゃん。どうしたの?」

女の子?「・・・・・・・・・・・・」ギュッ

男「うわっ!な、なに!?」

女の子?「・・・・・・・・・・・・」

男「ど、どうしたの?ねえ、何か言ってよ」

女の子?「・・・・・・む」

男「む?」

女の子?「む・・・・・・む・・・・・・」

男「・・・・・・ムム?」

女の子?「!」ビクッ

男「やっぱり、ムムだ」

バレちゃった。ちゃんとお話しできないから、なぐさめてあげられない。困った。

ご主人様に怒られた。

男「なんだよ・・・・・・僕のこと馬鹿にしてんのかよ」

ムム「む、むむ?」

男「なんなんだよ!そんなに面白いか!?僕の事バカにしてさあ!」

男「こっちは落ち込んでるの知ってて、そんなことしてるんだろ!」

ムム「む、むむ、むむむ!」

男「おまえなんか飼わなきゃよかった!出ていけ!」

ムム「む、むむ・・・・・・」

男「出ていけっつってるだろ!」

ムム「むむーっ!」

ご主人様に追い出されちゃった。何が悪かったんだろう。僕にはわからない。

ご主人様のことをもっと知らないと。今度こそちゃんとご主人様をなぐさめてあげたい。

でも、僕はご主人様がどうしたいのか全然わからない。

お家も追い出されちゃったから、一緒にいることもできない。

バレちゃったから怒られたのかな。バレなかったら怒られなかったかな。

・・・・・・人間の言葉を覚えたら、もうバレなくなるかな。

がんばって覚えよう。喋れるようになろう。そして、ご主人様にごめんなさいって言わないと。

毎日ご主人様のことを見てるよ。でも、バレちゃだめだから、石ころとかに変身してこっそり見てる。

ご主人様はどんなことをしたら喜ぶのか、怒るのか、悲しむのか。ちゃんと知らないと。

練習もちゃんとしてる。ご主人様とお話するための練習。

ムム「む・・・・・・む・・・・・・」

ムム「むむーっ!」

人間の言葉はむずかしい。ぜんぜんうまくいかない。がんばる。

ご主人様が新しい女の子と仲良くなっている。ご主人様は喜んでいる。

ご主人様は、女の子と一緒にいると喜ぶ。

ムム「む・・・・・・む・・・・・・」

ムム「・・・・・・み・・・・・・む・・・・・・め・・・・・・ま・・・・・・」

ムム「むーっ!」

がんばれば「ま」と「み」と「め」は言えるようになった。でもまだ「も」が言えない。もっとがんばる。

言葉の練習の師匠ができた。いっぱいいっぱい教えてくれる。変身も上手だ。

師匠「あ」

ムム「むぁ」

師匠「あ」

ムム「みゃ」

師匠「あ」

ムム「むぁ・・・みゃ・・・・・・あ」

ムム「むむーっ!」

師匠「ミュウ!」

師匠が言葉の話し方を教えてくれるから、前よりも言葉が上手になった。まだまだがんばる。

結構話せるようになってきた。前よりずっとずっと。

師匠「わたしはムムです」

ムム「わ、わたしは、むむ、です」

師匠「わたしは、ムムです」

ムム「わたしは、むむです」

師匠「わたしはムムです」

ムム「わたしはむむです」

師匠「ミュウ!」

ムム「むむーっ!あ、ち、がう。やったー」

師匠のおかげでどんどん言葉が上手くなってる。これからもがんばる。

師匠が人間に話しかけてみるようにって言ってた。でも、まだ不安。そう言ったら、師匠がお手本を見せてくれるって言ってた。

師匠「こうやって、人間に変身したら、もう人間の言葉しか話しちゃダメ」

ムム「む・・・・・・はい、わかりました」

師匠「それじゃあ、ちょっとお話してくるね」

ムム「おねがいします」

師匠「・・・・・・ふふっ」

師匠が歩いて、人間に向かっていった。・・・・・・あれ?あれって、ご主人様じゃ・・・・・・

師匠「ねえ、そこのお兄ちゃん」

男「・・・ん?どうしたの、君。迷子?」

師匠「ううん。ちょっと聞きたいことがあるの」

男「何かな?俺ちょっと急いでるんだけど」

師匠「すぐ終わるから。ねえ、お兄ちゃん。なにかさ、忘れてることってない?」

男「忘れてること?・・・・・・君と、会ったことあったっけ」

師匠「ううん。はじめてだよ」

男「そうだよね。じゃあ、いったい・・・・・・」

師匠「大事なお友だちのこととか、忘れたことないかな」

男「友達って言ったって、もう会ってないようなのもいっぱいいるし。誰の事かわからないよ」

師匠「ふぅーん、そうなんだ。聞きたかったのはそれだけだから。バイバイ」

男「・・・・・・なんだったんだ、あの子は。友達、か」

男「・・・・・・やべっ、急がないと。講義に遅れちまう」

ムム「むむっ!むむむっ!むむむーっ!」

師匠「ムムちゃん、言葉」

ムム「え、えっと、あの人、僕の、ご主人様、です」

師匠「そうだったの?まあいいでしょ。あんな感じで、話しかけてみるの」

師匠「実戦に勝る経験はないんだよ。さあ、行った行った」

ムム「わ、わっ」

師匠は時々スパルタだ。だけど、これをやらないと僕はちゃんとできないんだと思う。がんばる。

ムム「あ、あのっ!」

少女「はい、なんですか?」

ムム「・・・・・・えっ?」

少女「どうしました?私の顔に何かついてます?」

ムム「あ、ええっと、ご、ごめん、なさい。知り合いに、似てたから・・・・・・」

少女「ああ、人違いでしたか。それじゃあ、私は行きますね」

ムム「は、はい」

あの子は、知ってる。ご主人様と仲良しだった子。なんでだろう。胸がチクチクする。

師匠に、なんで胸がチクチクするのか聞いてみた。師匠はわからないって。師匠でもわからないことがあるんだ。

ムム「むむ・・・・・・」

師匠「ミュウ?」

ムム「師匠、わから、ないです」

師匠「ミュウ・・・・・・」

ムム「僕、病気?」

師匠「ミュウー・・・・・・?」

ムム「・・・・・・どうしたんだろ」

今日はずっと悩んでた。でも、わからない。

師匠が知り合いの子を紹介してくれた。もしかしたら、なにかわかるかもしれないって。

ムム「むむ・・・・・・」

知り合い「きゃううん」

ムム「むむ、むむむっ」

知り合い「きゃううん」

ムム「むむっ!?」

知り合い「きゃううん!」

ムム「むむ・・・・・・」

知り合いの子が、これは好きっていう感情なんだって教えてくれた。僕、ご主人様のことが好きなんだ。あれ?でも前から好きだよ?

知り合い「きゃううん!」

ムム「む、む?」

「恋」だって。好きの中でも特別な好きなんだって。・・・・・・ご主人様も、「恋」してたのかな。

恋っていうのがわかってから、ご主人様を見るとドキドキするようになった。

ご主人様に会いたい。ご主人様と一緒にいたい。ご主人様とお話したい。

でも、ご主人様は僕が嫌い。僕はご主人様に会ったらダメ。

・・・・・・僕じゃなかったら、大丈夫かな。

僕、知ってるよ。ご主人様が、どんな子を好きなのか。ずっと、見て来たから。

顔は、こう。髪が、こう。背が、これくらい。胸が、こんな感じ。おしりがこう。おなかはこうかな。足は、こうで、腕はこう。

・・・・・・うん。湖に映ってる僕は、ご主人様が好きになりそうな人間の女の子。

女「ご主人様、今から会いに行くよ。待っててね」

女「・・・・・・ご主人様じゃ、だめだよね。なんて呼ぼう」

女「・・・・・・男君、とか?」

女「ふふっ・・・・・・ほっぺが熱いや」

なんて言って話しかけたらいいか、ちゃんと予習済み。

女「あの、すいません」

男「はい、どうしました?」

女「私、ここに来たばかりで、道にまよってしまったのですが、駅ってどこにありますか?」

男「駅、ですか?えっとですね・・・・・・この道をこういって・・・・・・あっ、そうだ。折角だし、案内しますよ」

女「でも、いいんですか?」

男「はい。時間はありますから」

女「それじゃあ、お願いしますね。私、女っていいます」

男「僕は男です。さ、ついてきてください」

さりげなく知り合いになるっていうのが大事。これで、知り合いになれた。

女「また会いましたね、男君」

男「こんにちは、女さん。今日はどこに?」

女「ちょっと散歩を。まだまだ不慣れな土地なので、こうやって慣れていこうかなと」

男「あー、だったら、僕でよければ一緒にお付き合いしますよ」

女「本当ですか?ありがとうございます。本当は、1人でちょっとだけ寂しかったんです」

男「そうなんですか?」

女「はい。私、甘えん坊ってよく言われるんですよ」

男「へぇ、そうなんですか」

女「だから、男君と一緒に入れて嬉しいな」

男「!」ドキッ

うん、いい感じ。頑張って勉強したから。

男「今日は、どこに?」

女「図書館まで。一緒に来てもらってもいいかな?」

男「うん、もちろん」

・・・・・・

女「・・・・・・ポケモンと結婚した人がいた。人と結婚したポケモンがいた」

女「この話、どう思う?」

男「どう、って・・・・・・ポケモンとかぁ。女さんは?」

女「私は、そうだなぁ。ちょっとロマンチックかもって思ったり」

男「ロマンチック、か。たしかに、人間とポケモンとっていう壁を乗り越えて結婚するのは、ロマンがあるかもね」

男「・・・・・・えっ、もしかして女さんって、ポケモンと」

女「ち、違うよ!僕はそんなつもりはない!」

男「・・・・・・え?」

女「あ、あれ?僕なんか今変なこと・・・・・・」

男「いや、自分の事、僕って呼ぶんだね」

女「あっ、や、やっちゃった・・・・・・うー、もっと女の子らしくなろうと思ってたのに・・・・・・」

男「いや、でも・・・・・・いいと思うよ。女さん、元気だし似合ってる」

女「・・・・・・ほんと?」

男「うん、ほんと」

女「じゃあ、これから、僕はこのままでいこうかな」

ちょっとアクシデントもあったけど、ご主人様は受け入れてくれた。人間になってよかった。

男「ただいまー」

母「おかえりー」

女「お、おじゃましま~す」

母「いらっしゃい・・・・・・あら、あらあらあら。ちょっと男、もしかしてその子って」

男「母さん、いいから。まだそういうんじゃないから」

母「まーまー、はじめまして、男の母です」

女「は、はじめまして。女、です」

男「いいから、母さんは戻ってて」

母「はいはい。女ちゃん、男と仲良くしてあげてね~」

男「母さんっ!」

女「ふふっ、元気なお母さんだね」

男「ちょっと元気すぎるんだよ」

ご主人様の部屋に来た。ここに入るのは久しぶりだ。

男「ちらかってるけど、適当に座ってて」

女「あ、うん。このあたりでいいかな」

男「いいよ。僕適当に飲み物取ってくるから。コーヒーと紅茶、どっちがいい?」

女「あ、えっと、紅茶で。コーヒーは苦くて苦手なの」

男「はーい」

女「・・・・・・このクッション、あのときのと違う」

女「・・・・・・やっぱり、いっぱいふえてて、いっぱいなくなってるな」

女「・・・ご主人様は、僕の事、忘れてるよね。うん、きっと。そっちの方がいいんだ」

男「おまたせ。砂糖とミルクは適当に」

女「うん、ありがとう。・・・・・・あれ?この写真は・・・・・・」

男「ああ、ちっちゃいころのなんだ。おじいちゃんが、誕生日プレゼントにメタモンを捕まえてきてくれて・・・・・・」

男「その時に撮った写真なんだ。ああ、懐かしいなぁ」

女「へぇ」

この写真、まだ大事にしてたんだ。嬉しい。

男「でも、もう7年ぐらい前かな。ちょっと八つ当たりしちゃって、その時に逃がしちゃって・・・・・・」

男「・・・・・・ムムは、何も悪くなかったのにな」

女「!」

ご主人様、もう怒ってないの?なら、僕が帰ってきたって・・・・・・

男「今頃どうしてるんだろう。もう、新しいトレーナーに見つけてもらったのかな。それとも、まだ野性なのか」

男「・・・・・・どちらにせよ、僕に合わせる顔はないよ。ごめん、なんか湿っぽくなっちゃって」

女「そんなことない!」

男「えっ?」

違う、違うよ。僕は、まだご主人様のもの。そう言いたい。僕がムムなんだよって、言ってあげたい。大丈夫だよって、言いたい。

でも、それを今言っちゃったら、僕らは終わっちゃう。だから、だめ。

女「あ、いや、きっと・・・・・・いいや、絶対、そのムムちゃんも、また会いたがってるんじゃないかな」

女「だって、大事な友達なんでしょ?なら、ちょっとぐらい喧嘩したからって、嫌いになんかならないよ」

男「そうかなぁ」

女「うん、絶対ね」

だから、今はこうやって言うしかない。

ご主人様の恋人っていうのになった。好き同士がなるやつらしい。とっても嬉しい。

男「そういえば、本当に今更なんだけどさ。女の家ってどこにあるの?」

そういえば、僕のお家ってどうしたらいいんだろう。草むらに住んでます、なんて言えないし。

女「んー、この辺り、なんだけど・・・・・・ちょっと家の中散らかってて、あまり見せたくはないかな」

女「僕、どうしても掃除が苦手で・・・・・・片付けようとしても片付かないの」

こう言っておけば、来ようとは思わないよね。

男「・・・・・・もしかして、1人暮らし?」

女「えっ、そ、そうだよ」

男「あー、そうだったんだ。じゃあ、女の家に挨拶っていうのは難しいかな」

女「う、うん。実家は、もっと遠くのとこにあるから。田舎だし、来なくていいって。なんにもないよ」

男「ってことは、女は単身ここに来たんだよね。すごいなぁ」

女「そ、そうかな?」

ご主人様に嘘をつくのは気が引けるけど、仕方ないよね。

・・・・・・ご主人様との、子供ができた。今の僕は人間と同じ体だから、できるのは当たり前なんだけど。

ご主人様は責任は取るって言ってくれた。でも、ここで一つ問題ができた。

僕、戸籍ないよ。どうしよう、ご主人様とか、みんなになんて言ったらいいのか。

そんなことに悩んでいたら、久しぶりに師匠と会った。このことを話したら、なんとかしてくれるって。

師匠ってすごいなぁ。

僕は、今日。ご主人様と結婚した。

ご主人様は大学を辞めて働くって言ってたけど、お父さんがちゃんと出なさいって言って、子供は一緒に育てることになった。

僕、ご主人様と結婚・・・・・・しちゃったんだ。

女「・・・・・・あっ、今お腹蹴った」

男「本当?・・・・・・もうすぐ俺もお父さんか」

女「そうだね。僕、がんばって子育てするから。一緒に頑張ろうね、パパ」

男「うん。一緒に、ね」

僕、今とっても幸せ。だって、ご主人様とずっといっしょにいられるんだもん。

女性「ねぇ、そこのあなた」

男「あ、はい、なんですか?」

女性「何か、忘れていることはない?」

男「え、な、何って?」

女性「大事なお友だちのこととか、忘れたことないかな」

男「何を・・・・・・いや、その質問、前にも・・・・・・」

女性「・・・・・・人と結婚したポケモンがいた。ポケモンと結婚した人がいた」

男「それって、あの童話の・・・・・・それが、いったい」

女性「人は人と結婚するもの。だから、人はポケモンと結婚しようとは思わない」

女性「でも、ポケモンはどうなんだろうね」

男「えっと、意味がよく・・・・・・」

女性「本当に大切な子のこと、ずっと大事にしていた子のこと。ちゃんとわかっているかしら」

女性「・・・・・・それだけよ。じゃあね、結婚おめでとうってあの子に伝えておいて」

男「は、はぁ・・・・・・もしかして、女の知り合いなのかな?」

男「・・・・・・大切な、友達か」

男「・・・・・・ムム?」

男「いや、そんな、まさか・・・・・・」

男「・・・・・・そういえば、女って、あの童話が好きだったよね」

男「ロマンチックって言ってたけど・・・・・・」

男「・・・・・・なんで、ロマンチックって思ったんだろう」

男「・・・・・・やべぇ、いろいろと辻褄が合ってきた」

男「・・・・・・今夜、聞いてみよう」

女「おかえりなさい、あなた」

男「ただいま。なあ、女。聞きたいことがあるんだ。部屋に来てもらっていいか?」

女「え?いいけど・・・・・・どうしたの?」

男「とても大事なことなんだ」

・・・・・・

女「それで、大事なことって?」

男「・・・・・・俺が、小さい頃、メタモンを逃がしたって話したよな」

女「うん。聞いたよ」

男「君が好きな童話。人とポケモンが結婚する話だっけ。あれってさ、どこがロマンチックだと思ったんだ?」

女「え?ええっと、やっぱり、ポケモンも人間も好き同士になって、ちゃんと結ばれたって事かな」

女「だって、そもそも言葉も通じないんだよ?ポケモン側が何を言っても、人間には伝わらないんだもの」

女「そんな中でも、ちゃんと想いが伝わって、結ばれたって言うのは・・・・・・すっごいロマンチックだと思う」

男「・・・・・・そっか。ねぇ、女」

女「今度はなぁに?」

男「いや、違うな。ムム」

女「!」ビクッ

男「君は、ムムなんだろう?ずっと僕の側にいてくれて、あの時僕が追い出しちゃった・・・・・・」

女「な、何言ってるの?ぼ、僕はほら、見ての通り人間だし・・・・・・」

男「普通の人は、そこで自分のことを人間だって言ったりしない。だって、そんなの当たり前だから」

男「だから、「はぁ?」ってなるはずなんだ。なぁ、ムム。本当のことを言ってくれ」

女「・・・・・・」

ムム「・・・・・・ごめん、なさい」

男「なんで、なんで君が謝るんだ」

ムム「だって、僕、ご主人様の事、ずっと騙してて・・・・・・」

ムム「あの時も、バレちゃったから怒られて、だからきっと、ご主人様今怒ってるから・・・・・・」

ムム「ごめん、なさい。すぐに出ていくから」

男「ムム!」

ムム「ご主人様、大好きだったよ。バイバイ」

男「・・・・・・」

ムム「・・・・・・ねぇ、腕、離してくれないと出られないよ」

男「離すもんか。もう絶対に」

ムム「ダメだよ。ご主人様は、僕と一緒にいちゃダメ」

男「そんなことあるもんか」

ムム「だって、僕はポケモンで、ご主人様は人間だから、だから」

男「それがどうした!僕は君が好きだ!大好きだ!愛してる!」

男「ずっと後悔していたんだ。どうして、あの時追い出しちゃったんだろうって。今度会ったら、ちゃんと謝ろうって」

男「ムム、ごめんね。僕が間違ってた。だから、お願いだ。もう、僕の前からいなくならないでくれ」

ムム「・・・・・・いい、の?僕、人間じゃないんだよ?ずっと、ご主人様に嘘ついてたんだよ?」

男「いいさ。僕は君といっしょにいたい。いや、君がいなきゃダメなんだ」

男「ムム。僕と結婚してくれ」

ムム「・・・・・・はい。僕は、ムムは、男君の、ご主人様の、お嫁さんに、なります」

ムム「愛してるよ、ご主人様。だから、ご主人様も、これからも僕のことを愛して」

男「ああ、もちろんだよ。愛してるよ、ムム」

女性「・・・・・・かつて、人間と結婚したポケモンがいた。ポケモンと結婚した人間がいた」

女性「だけど、人間はポケモンだって知らなかった。そして、それを知った人間は、怒り狂ってポケモンを追い出してしまった」

女性「最初から知っていたら、結婚はできなかっただろう。だけど、ずっと知らなかったから、あんなにも怒り狂った」

女性「知らないってことは大切だ。だけど、知っていないと守れないものがある」

女性「・・・・・・君は、いっしょにいられるんだよね。ムムちゃん」

女性「結婚おめでとう。君たちが、ずっと幸せでいられることを願ってるよ」

少女「あれ、おばあちゃん。どうしたの?」

女性「んー、弟子の門出を祝福していたの。私にはつかめなかった幸せだから」

少女「ふーん。あ、尻尾見えてるよ」

女性「あ、ほんとだ、やばっ。ちょっと気が緩んでたのかも」

少女「まあいいや。前に言ってた男君、今度結婚式挙げるんだって。招待状もらったの」

女性「そうなの?それじゃあ、私の分もお祝いしておいて」

少女「あれ、おばあちゃんと男君って知り合いだったの?」

女性「ううん。お相手さんの方よ」

女性「・・・・・・追い出されたポケモンは、子供と共に遠くまで逃げました」

女性「そして、ようやく見つけた安住の地で」

女性「自分の子供や孫が成長して、大人になっていくのを、ずっといつまでも、見守っているのでした」

女性「めでたしめでたし、かしらね」

女性「・・・・・・ミュウ!」

USUMのメタモンイベントやったら書きたくなった。
12月からちまちま書き溜めていたものがようやく完結したので、投下。
メタモンが人間にも変身できるっていうのが薄い本が厚くなるいい設定だと思います。
メタモンって変身する対象が目の前にいないとイメージがはっきり定まらなくて、うまく変身できないらしいけど、がっちりイメージできていたら多分自由に変身できるんじゃないかな。
どの種族とも子作りできるメタモンだから人間と子作りしても問題ないよね!
メタモンを嫁にしたらいろいろとプレイが捗りそう。二次元美少女になってもらったりアイドルとか女優に変身してもらったり。
メタモンっぽさを残したまま人間っぽくなってほしい。すっごい身体柔らかそう。
悶々メタモン。

ボケモン娘か…ふぅ

なんかしんみりした

良くできた話だった 乙

メタモンの...ぬるぬるプレイ...

ちょっと泣けた

あとがきからは想像もできないほっこり感

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