モバP「助けてスイーツファイブ! 」 南条光「アタシを呼んだか!」 (14)

時刻はまもなく午後三時。

業務に支障が出るほどではないが、なんだか小腹が空いてきた。

頂き物の羊羹があったな、いやいやここはスポンサー様提供のケーキを、なんて思案していると、くう。と、急かす腹の音。

いやいや待て待て、焦るんじゃない。俺は腹が減っているだけなんだ。

ああ、だがしかし、迷ってしまってとてもじゃないが決められない。

そうだ、こんな時に助けてくれるヒーローがいたはずだ! 

いざ呼べその名を高らかに!

「助けてスイーツファイブ!」


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なんて雰囲気を作って叫んでみる。

すると。

「アタシを読んだか!」

真後ろから声が響いた。

「うおおわあっ!?」

「うわあっ!? 何!?」

驚きに声を上げると、相手もつられて同じく驚く。

姿を改めると、スイーツファイブのリーダー、南条光だ。

「え、いや、ゴメン。まさか本当に来るとは思わなくって……と言うか、いた?」

「え? あ、うん。なんかプロデューサーが一人でブツブツ言いながら部屋中歩いてて、どうしたのかなー……って」

見られてーら。恥ずかしい。

「邪魔しちゃ悪いかと思ったんだけど、助けを求める声が聞こえたからさ。呼んだでしょ?」

「いや、本当にいるとは思わなかったんだけど、まあいいか。実は──」

かくかくしかじか

「事情はわかったよ…… 。そういう事ならスイーツファイブに任せて!」

ありがてえ、ありがてえ。

「じゃあ、ちょっと出撃翌要請するから」

そう言ってスマホを取り出す。

「ちょっと待っててね!」

そして、スイーツファイブの他の面々へだろう、電話をかけ始めた。

あ、この子が自分でやるんじゃないのね。


prrr──

もしもし、志保さん? あ、今スイーツファイブの……え、撮影のイメトレ? パフェの食べ歩き? ……そっかごめんなさい! 頑張ってね!

「槙原さんは忙しいって?」

「なあに、よくあるよくある! 次だ!」

prrr──

法子ちゃん? 光だけど、今大丈夫? あ、有香さん達とドーナツショップに並んでる? あ、ううん、全然! 大丈夫だよ、気にしないで! それじゃ!

「ドーナツは無し、と」

「想定内だ! ヒーローは一度や二度じゃくじけない!」


prrr──

かな子さん! 助けて! お腹を空かせた人が……え? いや、かな子さんじゃなくて……ダイエット中? 衣装が? ああ……が、頑張ってください!

「……ダンスレッスンだけじゃなく、ランニングも基礎メニューに加えるか」

「えっと……もうすぐだから! もうちょっとだけ待って!」

prrr──

愛梨さん! 今大丈夫ですか!? はい、プロデューサーがお腹を空かせてて……はい、スイーツファイブとして……え、イヤだ?

な、何で……アタシですか? いや、確かに練習はしてますけど……はい……はい、わかりました、頑張ります。

嫌な言葉が聞こえたが、気にしないことにしよう。

「どうだった?」

「他の人みんな忙しいみたいで……愛梨さんはわかんないんだけど」

どうにも歯切れが悪く、もじもじとしている。まあ製菓要員いないもんね、どうするんだろう。

十時さんについてはわかんないんだな? 本当だな? と確認する勇気はとても無く、続きを促す。

「だ、だから……アタシがホットケーキ作っても、いいかな? 食べてくれる?」

「ぐぅっ」

「えっ?」

あまりの可愛さに、思わず変な声が出る。

頬を赤らめ上目遣いでそんな言い方……ふう、致命傷ですんだぜ。

「だ、大丈夫……?」

落ち着け、俺はプロデューサー。プロデューサーはうろたえない。

「いや、何でもない。作ってくれるならありがたくいただくよ」

「そ、そう? じゃあ、ちょっと待っててね」

そう言い残し、調理場へ小走りで駆けてゆく。

いやあ、怖いね、クリティカル。

──

「お待たせーっ!」

「お邪魔しまーす」

30分ほどで、南条さんが戻ってきた。

お腹の空き具合は、もはや小腹ではなく中腹と言えるほどだ。

「お疲れ様。では早速…….おや?」

1人、増えている。

「何の用だね本田くん。私はこれからおやつタイムなのだが」

「ふっふっふ、さすがだね、プロデューサー。この世紀の美少女本田未央ちゃんを前に、よくそんなセリフが言えたものだね」

何やら意図を含んだ笑みをこちらに向ける。いや、本当に何しに来たんだろう。

「用件は?」

「うっす! ぴかるんがホットケーキ作ろうとしてたんで、ハッパかけたっす!」

「アタシ一人でできるかなって思ってたんだけど、未央さんがアドバイスしてくれたんだよ」

あ、そうなんだ。ありがとうございます。

「まあ、ほんとにちょっとアドバイスしただけだけどね。手は出してないから、純度百パーセントぴかるんのホットケーキだよ!」

「でも、おかげでうまく焼けたんだ! ありがとう、未央さん!」

「なーに、いいって事よ! お礼に今度、私にもホットケーキ食べさせてね!」

「うん!」

勝手に盛り上がる二人を見て、相性いいなーこの子ら。今度ユニットでも……なんて考えていると、クルリとこちらに向き直る。

「よーうし、さあ行けぴかるん! プロデューサーにおみまいしてやるのだ!」

「ああ! 行くぞ、アタシの必殺ホットケーキを喰らえ!」

そう言って、焼き立てのブツをこちらへ突き付けてくる。

え、[ピーーー]の? 死ぬの? 俺。とは口には出さず突っ込みを入れつつ。

「いただきまーす」

見た目は均一なきつね色をしており、中までムラなく火が通っているのがわかる。

その上に乗っている溶けかけのバターと、しっとりと染み込んでいるメイプルシロップの美しさたるや。

皿を持った時の重量感も良く、しっかり食べ応えがありそうだ。

バニラビーンスの甘い香りを楽しみつつ、フォークを立てる。サクリ、と音がした。

一口程度のサイズに切り分け、バターの欠片を乗せ、口に運ぶ。

瞬間、口の中で感動が沸き立った。

表面はサックリ、しかし中はふんわり。ほのかなバターの塩みが、メイプルシロップの甘さを引き立てる。

これは、すばらしいものだ。

「うーまーいーぞー!」

思わず立ち上がり叫んでしまう。

「本当!?」

ああ、本当だとも、南条さん! 君のホットケーキは最高だ!

「やったー!」

そう言って、嬉しそうに跳ね回る南条さん。見ていてこちらも嬉しくなる。

「そんなに美味しいの? どれ、私も一口……」

「触るなちゃんみお、これは俺のだ」

ホットケーキに伸びた手を、ピシャリと諫める。

「えー、一口くらいいいじゃん、ケチ!」

「いいわけないだろ、これは俺のために作ってくれたホットケーキだぞ!」

「ちぇー。ぴかるん、今度私のも作ってよね、絶対」

「うん、約束だ!」

ゆーびきーりげーんまーんと小指を絡めて歌い始めた。仲いいねえ、君ら。

「よし、約束! じゃあまたねー!」

指切りを済ませると、それだけ言って、もと来た廊下を走っていった。

本当にこれだけのために来てくれたのか。


「美味しいホットケーキ焼いてあげなよ、南条さん」

「うん、頑張る! お母さんと特訓だ!」

「よし、その意気だ! また俺にも食べさせてね!」

「ああ!」

こうして世界は救われた!

ありがとうスイーツファイブ!

僕らのヒーロー、スイーツファイブ!

劇場版 アイドルマスター シンデレラガールズ Sweetches対スイーツファイブ~世界最後の日~を見るまでは [ピーーー]ない

本田さんが来てくれたのはダイス神のお導きです

とりま一言だけ
メル欄に入れるのはsageじゃなくsagaな?
だからフィルターに引っ掛かってピーーになる

ああ、専ブラ変えてから設定いじってなかったわ。ありがとう。
まあこんな事もあるさ

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