ことり「だってずっと一緒だから」 (18)

海未「ことり、これが歌詞のメモです。」

ことり「うん!ありがとう!これで衣装のアイデアとか、考えてみるね♪」

海未「いつもありがとうございます。無理は禁物ですよ?」

ことり「大丈夫大丈夫~♪」


 ―――これがことりと海未ちゃんの、いつもの、変わらない会話。

 いつからだろう、海未ちゃんのことを好きと思ったのは。

ことり「すれ違っても分からないくらい…君も僕も大人に…」

 海未ちゃんが紡ぐ言葉が好きで、衣装のアイデアのためにって皆より早めにこの詩が見られるのが嬉しくて。

ことり「海未ちゃんも昔と比べるとかなり書き慣れてきてるよね。たぶん。」

 海未ちゃんのことを、昔からよく知ってるのはことり以外は穂乃果ちゃんぐらいなこと、それも嬉しくて。

ことり「今回はどんなのがいいかなぁ?可愛いのより落ち着いたやつがいいかなぁ…?」

 海未ちゃんを可愛くしたり、かっこよくしてみたり。そんなことが出来るのもことりだけ。

ことり「えへへ…悩むなぁ~♪」

ことり「手芸屋さん…ちょっと寄ろうかな。」

 もちろん皆の衣装もしっかり考えて作らなきゃいけないわけだから、材料を切らしちゃダメ、です。

 2月末はバレンタインデーとホワイトデーの間だし、あんまり意識しなくて済むんだ。

ことり「あっ…」

 ―――今日はそんなことなかったみたいだけど。

ことり「彼氏さんに贈り物…かぁ。」

 たまたまポップが出ているのを見かけただけ。でもちょっと気分は―――ブルーになっちゃう。

 バレンタインデーも、ホワイトデーも。普通は、違う。

ことり「…はぁ。」

 思いついたイメージに合いそうなフリルとか、もこもこをカゴに入れる。その動きが少し荒れてたかもしれない。

ことり「女子高なのになぁ…」

 小さい頃よく読んだ少女漫画。そこでは、女の子たちがお互いに好き合っていたの。

 女子高だから、きっと、きっとそんな風になるんだって思って―――いつもの3人で入学出来て嬉しいなって思ってる。

ことり「まぁ…海未ちゃんは確かに女の子からモテモテなんだけど…」

 女子高に入ったからって、普通じゃないことが普通じゃなくなることはなかった。

 女の子同士の深い友情は確かによく見ることはあるけど、愛情は…どうなのかな?


 ―――ことりは…おかしいから。

 どの俳優がかっこいいとか、そういうの…気持ちが分からなかった。

 玄関のドアを開けて、いつも通り自分の部屋まで来て、荷物を置いてベッドに倒れこむ。

ことり「海未ちゃん…今日も可愛かった。」

ことり「やっぱり―――好きだもん。」

 穂乃果ちゃんが不意に~~くんがかっこいいって話をするときがあるの。

 確かに、決して女の子じゃ表現できない何かがあったりするのは分かるんだけどね。

穂乃果『穂乃果もあんな人と結婚出来たらなぁ~!』

 そう言われると。困る。

 幼馴染の幸せだから、もし出会いがあれば応援すると思う。―――でも、その気持ちは一生分からない。

 ことりが変なんだってことは分かってるんだけど、穂乃果ちゃんにどんな人が好み?って聞かれても答えられない。

 その時は、恥ずかしくなって―――海未ちゃんの方をちらりと見た。少し微笑みながら、ことりたちを見てた。

 海未ちゃんは―――どう思ってたのかな。

ことり「んぅぅ…」

 ぎゅっとしてた羊さんのクッションを横に置いて、もう一回海未ちゃんの綴った詞を眺めてみる。

 ここに海未ちゃんの気持ちが詰まってる気がして。

ことり「ずっと一緒…」

 どういう気持ちでこの言葉を選んだの?

ことり「いつものみんな…」

 いつも。海未ちゃんのいつもって、どんなの?

 ことりが見てるいつもとは、違うのかな?

ことり「考えても…仕方ないのに。」

 ほんとはね。分かってるよ。

 海未ちゃんは名家の娘だもん。許婚とは言わなくても、きっと誰かと結ばれるのは決まってるんだって。

 ―――それが、ことりにはなれないってことだって。

ことり「うっ……」

 ましてや、女の子ですらないって。わかってるんだ。

ことり「ふっ…うぅっ…」

 だから、考えたって無駄なのに。幸せな未来なんてないこと、知ってるのに。

 ことりの知らない誰かが、海未ちゃんの、『これから』を奪ってくんだ。ことりの知らない海未ちゃんを―――知るんだよね。

ことり「はっっ、はぁ…はぁ……う゛っ!」

 ―――そう思うだけで…

ことり「う゛っ…え゛ほっっ!!げほっっ!」

 いつも、吐き気がする。

ことり「やだ…っはあ……やだよ…」

 洗面所の鏡、こんなに疲れたことりの顔をいつも嫌ってくらいに見せてくる。

 毎日こうして…海未ちゃん想えば想うほど。気持ち悪さが大きくなって。

ことり「こんなに好きなのに…」

 好きでいなければきっと、こんな目に遭わずに済んだんだよね。

 でも好きになっちゃったんだ。どうしようもないの。

ことり「はぁぁ……何してるんだろ。」

 水を流して、汚いものを全部ゆすいでいく。

 ことりの中の汚い気持ちも、きれいにしてくれればいいのに。

ことり「……お部屋戻ろうっと…」

 テーブルの上に置きっぱなしにしてある海未ちゃんの詩。

ことり「ずっと一緒。」

 お互いに、今は知らない誰かと仲良くなって、付き合って、結ばれて、それぞれの家庭をもっても、それでもずっと一緒だから。

ことり「そういう…ことなんだよね。」

 海未ちゃんと恋人になって結ばれて、ずっと一緒に居られる。そんな夢をみることもある。でも海未ちゃんのこの言葉の意味は、違うんだよね。

ことり「そう―――これが普通…普通なんだよ。」

 だからことりも、海未ちゃんの望む通り、普通に、普通に生きてかなくちゃいけないんだ…よね。

ことり「…うぇっ。」

 そんなこと考えるだけでまた、吐き気がするけど。

 ―――ことりが普通に生きていかなくちゃいけなくなる、その時まで、その時までは。

ことり「海未ちゃんの衣装はね…もう浮かんでるんだぁ。」

 ―――ことりが、海未ちゃんの隣にいてもいい、今だけは。

ことり「これを海未ちゃんに着せたらね…もっと可愛くなるからね…?」

 ことりが海未ちゃんを可愛くしてあげる。かっこよくしてあげる。

 ことりが海未ちゃんを、もっともっと皆に好きって言ってもらえるような素敵な女の子にするの。

ことり「海未ちゃん…大好きだよ。―――もっと綺麗になってね。」

 いつの間にか波打ってたスケッチブックを取り出して、鉛筆を走らせる。

ことり「……次こそは気持ち悪くなったりせずに完成させるから、ね。」

 海未ちゃんが望む未来で、ずっと一緒にいるために。

 今日も、海未ちゃんを想って。糸を、紡ぐの。




 ―――これがことりから海未ちゃんへの、いつもの、変わらない想いだよ。

ちゅんちゅん。お退屈様でした。


HTML化依頼を出します。



過去作です。

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>>16
乙した。ことうみで気に入ってるssがあれば教えてくれまいか

をつ

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