【城プロ】続・城娘達の日常 (18)

御城プロジェクト短編集
フランは俺の嫁

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「フランケンシュタイン城さん、あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いしますね」

「あけましておめでとー! 今年もよろしくね!」

「ああ、あけましておめでとう」

「おや? フランケンシュタイン城さん、紅をさしてらっしゃるのですか?」

「あー。凄く可愛いー! 私もしてみたいなー! どんなの使ってるの?」

「……特製の奴だよ」

「うー。教えてよー」

「すまないが用事があるので失礼するよ」

「フランケンシュタイン城さん妙にそわそわしてなかった?」

「照れただけじゃないですか?」

「……」

「む、見ていたのか主」

「……」

「危うくばれそうになったじゃないか」

「……」

「全く。まだ腫れがひかないじゃないか」


フランケンシュタイン城の唇は真っ赤に染まっていた。

おつ
ブラン城に空目した

感想ありがとう
前回みたいに毎日更新はしんどいけどネタがあれば更新していきます

 私は因幡国の鹿野城です。
 恐れ多くも家老を勤めさせていただいております。

「おはようございます殿!」

「……」

 そして私は、恋をしています。
 決して叶うはずのない恋を。
 私はいつもドジばかりで、みなさんに迷惑をかけてばかりです。
 大坂城さんみたいにみんなを守ることもできません。
 彦根城さんみたいに強くもありません。
 器量もあまりよくありません。
 ないない尽くしです。
 そして何より、私は人ではなく城娘。
 だから決して、この恋が叶うことはないんです。

「……」

「え? 戌の刻(午後八時)殿のお部屋に?」

「……?」

「い、いえ。大丈夫です。戌の刻に殿の部屋ですね。分かりました」

 殿に呼び出されちゃいました。
 うう……。何か失敗しちゃったかなぁ。

戌の刻 殿のおへや


「失礼します」

「……」

「はい」

 促されて座ります。
 殿は少し緊張? してるような表情ではありますが、怒ってるようには見えないので一安心です。

「……」

「え? あ、あの。はい……」

 殿の口から結婚を考えていると聞いたとき、一瞬目の前が真っ暗になりました。
 今まで叶わないとはいえ、諦めているとはいえ、殿はみんなのもので、誰のものでもなくて。
 でも、他の誰かのものになるなら、私は殿のことを本当に諦めなければいけません。
 きっと今まで、諦めたふりをしていて、大人ぶって、本当は諦められなくて、大好きで。
 心の臓が痛いくらいに鼓動しています。
 顔が熱くなって、頭がぐるぐるして、考えがまとまらなくて、目の奥が熱くて。
 苦しくて、喜ばないといけないのに、苦しくて。

「……?」

「い、いえ。なんでもありません。おめでとうございます」

 私は頑張って祝福しました。
 だって、大好きな人の幸せを願わなくちゃだめだから。
 殿には幸せになって欲しいから。

「……?」

「何をいってるって……。殿が結婚を」

「……」

 なぜそんな他人事なんだって、殿は不思議そうな顔をしながらいいました。
 どういうことでしょうか?

「へ? お前との結婚を考えている?」

 嫌でなければな。と付け加えました。
 嫌なはずありません。
 嫌なはずありえません。

「え。あれ? あ、なんで……。ち、違うんです、これは……」

 涙が止まりません。
 だって、嬉しくて。
 本当に、嬉しくて。

「殿!」

「……」

「私! ずっとずっと! ずっと前から。殿のこと大好きでした……」

 心の中にしまってた思い。
 ずっと、隠してきた想い。
 それが一気に弾けました。

「でも、でも! 私で……。本当に私でいいんですか? こんな私で……?」

「……」

「私は殿に迷惑をかけてばかりだし……。戦でもあまりお役に立ててないですし」

「……」

「柳川城さんのように可愛くもありません。聚楽第さんのように強くもありま――」

「……」

「え? と、殿!?」

 殿は私を抱きしめながらこういってくれました。
 『内面に惹かれて婚約を決めたのだから、なにも問題はない』と。

「……」

「へ? そ、そんな私がかわいいだなんて……」

「……」

「……殿」

「……?」

「私、寂しいのは苦手……です。だから」

「……」

「ずっと、ずーっと一緒にいて下さいね!」

 私、凄く幸せです。
 殿と出会えたのも、神様の力なのかも……しれませんね。





おしまい

「おぉ~、殿! いい所に来てくれたなぁ~」

「……?」

「悪いけど、火ぃ貸してくれない?」

 いい所に……。だなんて白々しい。
 あたいは殿がいつもこの時間にくるのを知ってる。
 そして火を忘れたのもわざとだ。
 口実を作らないと一緒にいるのさえできない臆病な自分に嫌気がさすぜ。

「……?」

「そうなんだよ。あたいも健康のために富山城印の紙巻煙草に変えたぜ」

 なんていったけど、少しでも殿と同じ物を共有したいって下らない理由で始めただけさ。

「……」

「そんなん別にいいから、早く火ぃ貸してくれよ」

「……」

「煙草咥えてこっちに来いって?」

「……」

「何する気だ?」

 え、殿の顔が近くに?

「……」

「んん!?」

「……」

「ぷっ、は。何すんだ!?」

「……?」

 こんのバカ。煙草で火を移すとか何考えてるんだよ。

「確かに火はついたけど」

「……」

「ッ。いや」

 伝えたい言葉がのどまで来ているのに、口に出てこなかった。
 あたいの気持ちは紫煙のようにふわふわと宙にただよって遠ざかる。

「……?」

 今はまだ臆病なあたいだけど、……いつか。
 いつかきっと……。力づくでも引き寄せてやる。
 あたいの心に火ぃつけた責任取ってもらうからな!

「なんでもねーよ」





おしまい

 殿が私に構ってくれなくなってどのくらい経ったかな。
 昔はたくさん遊んでくれたし、夜中厠にもついてきてくれてたのに。
 それもこれも福島城さんが改築されて、私の出番が少なくなってからだ。
 憎い、あいつが憎い。

 今日も殿は福島城さんと一緒に出陣だ。
 今日も私は所領でお留守番。
 憎い、あいつが憎い。

 ああ、また殿に迷惑かけちゃった……。
 殿。どうして私の相手をしてくれないの?
 憎い、あいつが憎い。
 ううん、わかってる。それは私のわがままだ。
 殿は悪くない、だって殿はいつもみんなに優しくて……。
 憎い、あいつが憎い。

 憎い、あいつが憎い。
 駄目なのに、仲良くしなきゃ駄目なのに、頭の中で鳴り響く。
 苦しい。どうして私が苦しまないといけないの?
 憎い、あいつが憎い。

 殿のせい? 違う。殿は悪くない。
 憎い、あいつが憎い。
 じゃあ誰が悪いの?
 憎い、あいつが憎い。
 そうか。あいつが悪かったんだ。
 憎い、あいつが憎い。

 憎い、あいつが憎い。
 憎い、あいつが憎い。
 憎い、あいつが憎い。

「ねえ、福島城さん。ちょっといいかな?」






おしまい

「殿」

「……?」

「実は私、殿のことが大好きです」

「……!」

「ぷっ。くっくっく、ふはははは!」

「……!?」

「ふぃー。今日が何の日かご存知ですかな?」

「……?」

「まあ、いいでしょう。私が教えて差し上げます」

「……」

「今日は嘘をついてもよい日なのです!」

「……」

「くっくっく。そうとも知らずに狼狽える姿は滑稽でしたよ」

「……」

「何ですか?」

「……?」

「今思い出したのですか? ええ、南蛮の文化で四月一日は嘘をついても良い日と」

「……」

「え? 今日は四月二日?」

「……」

「ふっ。その手には乗りませんよ」

「……」

「え? 本当?」

「……」

「え、あ、違います! わわ、わ。私は殿のことなんて……」

「……」

「う、あ、ひゃぁああ!」





おしまい

「お帰りなさいませ。お待ちしておりました」

「……」

「お疲れのようですね。どうぞこちらに」

「……」

「膝枕……。というものをしたいのですが、ご迷惑でしょうか?」

「……」

「はい。どうぞご遠慮なく」

「……」

「いかがされましたか?」

「……」

「『なぜ人を守ろうとする』ですか」

「……」

「そうですね。それは私がお城だからでしょうか」

「……?」

「お城とは時に矛となり、盾となる防衛拠点です」

「……」

「ですが、何よりそこに住まう者が帰ってくる場所だから。ですかね」

「……」

「守りたい。そして元気に私のもとへ帰ってきて欲しい」

「……」

「それが私の答え……。ですかね?」

「……」

「結構古いお城ですので、お守り出来るかどうか不安ではありますが」

「……ぐぅ」

「あら? 相当疲れてたようですね」

「……」

「うふふっ」

「……」

「もしかしたら母性。というものなのかもしれません」





おしまい

保守

「ふう。暑いですな」

「……」

「いえ。私はここで結構」

「……?」

「ここが一番安らぎますから」

「……」

「ええ。亀居城殿がいて吉田郡山城様がいて――。そして殿がいます」

「……」

「ここが一番心地良いです」

「……」

「もぅ。やめるノシ~」

「……」

「おっと、そろそろ止めに参りますか」

「……」

「はい。では、失礼」

「……」

「やめるノシー!」





おしまい

ええやん!

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