【ゼノブレイド2】マルベーニ「こっちの翠玉色の方にしよう」ペカー (98)


最終話 出逢い


~ 雲海探査船ウズシオ ~


レックス(サルベージャーとなって早数年、突然舞い込んできた報酬20万Gもの大仕事)

レックス(しかもあのバーン会長直々の指名で、内容が未探査地域での雲海調査ってサルベージャー冥利に尽きるモンと来た)

レックス(金の大きさや仕事へのワクワク感、ようやく名が売れてきたってので、じっちゃんを振り切って喜び勇んだ訳だけど――)


ニア(サルベージャーばっかで落ち着かないなぁ……)

シン「…………」

ヒカリ「……フン」


レックス(うーん、何か変な感じなんだよなぁ、この依頼人のメンツ……)


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ビャッコ「おや、どうなさいましたか、レックス様。何やら妙な顔をして」

レックス「あ、あぁ。何でもないよ、多分気のせい……かな」

ニア「ちょっとそんなんで大丈夫なの? ちゃんと仕事やってくれるんだろうね」

レックス「そこは任せろって。結構やるんだからさ、俺」

ニア「ホントかなぁ~……」


ビャッコ「まぁまぁお嬢様。それよりヒカリ様の方を見ていましたが、彼女が何か?」

ニア「ま、最初に斬りかかられたしね。ビックリしたよ、あの時は」

レックス「いや……それもそうなんだけどさ。何だろう、何か気になるっていうか――」

ニア「となると……ははーん、やっぱ子供には刺激が強すぎるよねぇ~、あのカッコ」

レックス「え? そ、そんなんじゃないって! っていうか子供って言うなっての!」

ニア「照れるな照れるな、しょうがないってあの谷間はさ~」

レックス「たにっ……あ、あぁそうだ俺モネルさんに呼ばれてるから、じゃあな!」

ニア「あ、逃げた。……後でからかいに行ってやろ」

ビャッコ「お嬢様……」



ヒカリ(……サルベージャーね、何てくだらない連中)


~ 未探査地域 ~


古代船「ザパァァァ…」


ニア「うわぁ、おっきぃ……」

レックス「おぅ。どうだった、俺達の腕はさ」

ニア「見事な手際だった。中々やるじゃん」

レックス「へへ、だろ? 俺一人の力じゃないけど、それだって――」

ヒカリ「ちょっと、何2人でサボってんの? これから船内の調査なんだから、早く来る!」

ニア「わ、わかったよ! 相変わらずキッツイなぁ……」


ヒカリ「それからそこの青いの、あなたも一緒に来なさい」

レックス「え? 俺も?」

ニア「ちょ、何でこいつも――」

ヒカリ「シンの意思よ。良いから早くする!」スタスタ

ニア「ぐむむむ……」

ビャッコ「お嬢様、どうか冷静に……」

レックス「ま、まぁとりあえず行ってみようぜ。頼りにしてるからさ、ドライバーさん」

ニア「……ふんっ」


~ 古代船 ~


ディブロ「グオォォォ!」


レックス「うわぁっ!?」ドガッ

ニア「レックス!」

ヒカリ「何よそ見してんの! ザンテツ!」

ザンテツ「あいよッ!」

シン「…………ッ」

ザシュッ ズバッ

ディブロ「グギャァァァァァ……!」ドサッ


ビャッコ「……ふぅ、ようやく倒したようですね」

レックス「いっててて……いきなり突っ込んでくるとか反則だろ」

ヒカリ「油断してるからそうなるのよ。それより……」


扉「――――――」


レックス「……随分でかい扉だな。こんなモンスターだらけの所でまだ閉まったままなのか」

ニア「かなり丈夫そうだからね。モンスターもぶち破れなかったんだ、きっと」

ヒカリ「……シン、これ」

シン「あぁ――アデルの紋章だ」

レックス(アデルの紋章……?)


ヒカリ「さ、開けて」

レックス「え?」

ヒカリ「え、じゃないわよ。何のためにあなたみたいな足手まといを連れてきたと思ってるの?」

シン「……この扉はお前達でないと開かん」

ヒカリ「そういう事。高いお金出してるんだから、早くして」

レックス「わ、わかったよ」

レックス(客だからって、何だかなぁ……)


ゴゴゴゴゴゴ……


レックス「よし、開いた――けど、何だここ……」

レックス「光ってて、台座みたいのと……」


黒モナド「――――――」


レックス「……剣? それとあそこにあるのは――」


メツ「――――――」


レックス「男……の子……?」

レックス「…………」

レックス(いや、どう見てもオッサンだろ。何言ってんだ俺……)

レックス(というか、それより)


黒モナド「――――――」ゴゴゴゴ


レックス(何だろうこの剣。凄く、引き込まれる――)


ニア「うわ、何あのイカツイ奴……」

ヒカリ「……天の聖杯よ、やっと見つけたわ」

ニア「天の、聖杯……?」

シン「…………」


レックス「――――」フラフラ

黒モナド「――――――」


ヒカリ「っ! ちょっと! それに触らないでッ!」

レックス「ッ!?」パキィン

シン「……ッ」シュバッ


ドスッ


レックス「っぐ……?」

ニア「え……?」


シン「……せめてもの情けだ。この先の世界を見ずとも済むようにな」ズッ…

レックス「な、何で――あがっ……!」ドサッ

シン「…………」ブン

黒モナド「」バキャァン


ニア「あ、ぁ……っ」

ヒカリ「はぁ、まったく余計な手間を」

ニア「シン! 何でレックスを殺した!? シン!?」

シン「…………」スタスタ


ヒカリ「ニア、モノケロスを呼んで。天の聖杯を運び出すわよ」

ニア「…………ッ!」ギュッ


…………

……



~ 楽園? ~


ゴーン……ゴーン……


レックス「……、……はっ」パチッ

レックス「あ、あれ。俺なんで寝て……ていうか、どこだ、ここ」

レックス「凄く綺麗な景色だけど――ん? 丘の上に、誰か居る……?」

レックス「……とりあえず、行ってみるか」スタスタ


ゴーン……ゴーン……


メツ「…………」

レックス「あ、あの……?」

メツ「――ウゼェ、音だ」

レックス「え?」

メツ「止まねぇんだ、ずっとな」

レックス「……この鐘の事? アーケディアでも近くに来てるのかな……」


レックス「なぁ、ここって一体……」

メツ「――楽園。昔々、神と人が共に暮らしていた場所――俺の故郷だ」

レックス「楽園……え、楽園!? こ、ここが!?」キョロキョロ

メツ「はっ、お上りさんかよ。みっともねぇ」

レックス「べ、別に良いだろ。こんなの誰でも――って」

レックス「その胸の……コアクリスタル? もしかしてあんた、ブレイド……?」


メツ「――俺はメツ。小僧、レックスってんだろ」

レックス「……何で俺の名前を」

メツ「さっき俺に……ああメンドクセェ。とにかく死んだんだよお前は、シンの奴に胸を刺し貫かれてな」

レックス「え? シン、胸……?」

レックス(…………あ、あぁ。そうだ俺、あの時……!)

メツ「思い出したか」

レックス「あああああ、た、大変だ! このままじゃ商会の皆が――ぐえっ!」

メツ「死んだっつってんだろうが、落ち着け」


レックス「げほ……く、くそぉ……! 俺は、俺は……!」

メツ「…………」

メツ「小僧――お前、楽園に行きてぇのか」

レックス「……何だよ、いきなり」

メツ「答えろ」

レックス「ま、まぁ、そりゃそうだろ。っていうか来てるだろ、今」

メツ「フン、ここは俺の記憶の世界だ。本物は小僧の世界、アルストの中心に立つ世界樹の上にある」

レックス「……幻って事か? そうか……いや、でも無理だよ。だって俺、もう……」

メツ「ま、だろうな……」


メツ「……死にたくなかったか、小僧」

レックス「……当たり前なこと、聞くなよ」

メツ「そうかい。なら――俺の命を半分やってもいいぜ」

レックス「え……い、命?」

メツ「そうだ。それでお前は天の聖杯のドライバーとして生き返り、世界樹へ登れる」

レックス「天の聖杯のドライバー……? それって」

メツ「生き返って俺と楽園を目指すか、それともこのままくたばって死ぬか。どっちか選べって言ってんだよ、メンドクセェ」

レックス「生き返る……楽園……」

レックス(…………)


レックス「……なぁ、メツって言ったか。ここは、あんたの故郷なんだよな?」

メツ「ああ」

レックス「本当に、ある……?」

メツ「無かったら、俺の頭にこんな景色はねぇだろうな」


メツ「まぁ、実際のここに何があるのかは俺も知らんが……この様子を見る限り、今のアルストよりは大分マシなんじゃねぇのか」

レックス「ここに来れば、アルストは救われるのか? 皆未来に怯えなくて、済む……?」

メツ「さぁな。或いは……かもしれねぇが」

レックス「……行ってみるまで分からないって事か。なら、答えは決まってる」

レックス「行きたくて、行ける力があるって言うなら、いいよ。行こう! 楽園へ!」

レックス「俺が、あんたと一緒に行ってやる!」

メツ「――フン。小僧如きが言いやがる」


メツ「なら、俺の胸に手を置け」

レックス「えぇ!? い、いいの……?」

レックス「…………」

レックス(いや、良いに決まってるだろ。何言ってるんだ、俺……)ピトッ

メツ「よし、吹き飛ばされんじゃあねぇぞ……!」


カッ!


レックス(な、何だこれ……すごい、力が――)


パァァァァァァァ……!



…………

……


~ 古代船 ~


メツ「…………」

ザンテツ(くっそ、重いなこの天の聖杯……)


ニア(……レックス……)トボトボ

ヒカリ「ニア、殺って」

ニア「……え?」

ヒカリ「探査船の連中。もう用済みだから、口封じ」

ニア「で、出来ないよ! あの人達、何も関係ないじゃないか!」

ヒカリ「関係ないって、あなたねぇ……」

ヒカリ「……はぁ、まぁいいわ。じゃあザンテツ、あなたが代わりに――」


メツ「――――――」ゴッ


ザンテツ「おぉ!? うおぉっ!?」ガシャァン

ヒカリ「ザンテツ!? これは……!」



レックス「――ぉぉぉぉぉおおおおおああああァ!」ドカァン!


ニア「レックス!?」

シン「…………」

レックス「ぜーっ、ぜーっ……後ろから不意打ちとは卑怯じゃないか。それが大人のする事かよぉ!」

ヒカリ「くっ……あなた……!」


レックス「メツ! 行くぞ!」ダッ

メツ「チッ、小僧ごときが指図してんじゃねぇッ!」ダッ

シン「…………」チャキッ

ヒカリ「いい。私がやるから無理しないで」


レックス「うおおおおおおお!」

ヒカリ「はぁっ!」ガキィン!

レックス「このっ……そこをどけぇっ!」

ヒカリ「無理! ったく、あのまま死んどけばよかったのに……悪いけど、もう一回死んで貰うからっ!」


ザンテツ「オラ、来いよ天の聖杯! テメェ無駄に重くてムカついてんだよオラァ!」

メツ「あぁ? 雑魚がイキってんじゃねぇよ!」


ガキィン! ガシャン! キン! ズガン!


ニア(ど、どうしよう……アタシ、アタシは……)

ビャッコ「お嬢様……」


レックス「皆! 今のうちに逃げろ! 早く!!」

ウズシオ船員「レ、レックス? 何でやりあってんだ、あいつら」

ウズシオ船ノポン「よく分からないけどヤバイも! ガチのマジで殺し合ってるも! 逃げるも!」タタタタ

ヒカリ「だから口封じするんだってば! ザンテツ、武器!」バッ

ザンテツ「あいよ、受け取れ!」

メツ「小僧!」

レックス「ああ、やらせるかぁ!」ゴオッ

ヒカリ「くっ、ああもう、ほんと鬱陶しい――、ッ!」ハッ


黒モナド「斬」

レックス&メツ「モナドォ――バスタァァァァァ!!」


ドカァァァン……!


レックス「やったか!?」

メツ「……チッ、ダメだ躱しやがった」


ヒカリ「まったく……危ないわ、ねッ!」ザン!

メツ「オラァ!」ガキィン!

ヒカリ「……寝起きにしては良い太刀筋じゃない。思い出すわ、500年前を」

メツ「ああ、俺もだよ。クソッタレが」

ヒカリ「でも――それだけね。肝心の【あの力】が全然なってない」

ヒカリ「というか、満足に使えないの? ……もしかして、自分で制限か何かをかけてる?」

メツ「…………」

レックス(500年前? あの力? 何の事だ……?)


ヒカリ「呆れた、そんなので私と戦おうっていうの? ちょっと舐めすぎ」

メツ「そうかい? どうやらお前も本調子じゃねぇみてぇじゃねぇか。なぁ、シン?」

シン「…………」ピク

ヒカリ「……ま、それは否定しないわ。でもね――今のあなたなら、それで十分よ」ダッ

メツ「チッ! 小僧、構え――」

ザンテツ「ヒャッハァ! 後ろがお留守だぜぇ!」ザシュッ!

メツ「ああくそ、メンドクセェ!!」ガキン!


レックス「メツ!?」

ヒカリ「よそ見しない!」

レックス「ぐ、うわぁ!?」ドカッ


ヒカリ「パートナーがこれだと大変ねぇ、メツ!」

メツ「言われてんぞ! ちったぁシャキッとしやがれ、小僧!」

レックス「そんな事言われても……! くそっ、まるで動きが読まれてるみたいで――ぐああッ!」ザシュッ

ヒカリ「貰った! バニッシュメント――」


ニア「――ビャッコ!!」

ビャッコ「承知! ワイルドロアアァァァッ!」ゴォ!


ヒカリ「きゃあ!? ニア、あなた……!」

ニア「ヒカリ、もうやめろよ! 相手は子供じゃないか!」

レックス「に、ニア……?」

ヒカリ「……本気で言ってるの? その子、既に天の聖杯のドライバーよ」

ニア「だとしてもさ、もっと他の方法がある筈だろ!?」

ヒカリ「はぁ……あなたって子は、本当に……」


メツ「オラァ!」

ザンテツ「うおッ!?」ドカッ

メツ「小僧、ここは一旦退くぞ! 船の奴らはもう居ねぇんだろ!?」

レックス「あ、あぁ、多分!」

メツ「なら掴まっとけ! チャクラバースト!」

ヒカリ「させないわよ! モノケロス!」


モノケロス「――――――」ガシャン ガシャン


レックス「港に居た黒い船! こいつらのだったのか!」

メツ(クソッ、エーテルがまだ……ッ!)

ニア「だから、やめろぉ!」ガバッ

ビャッコ「盾よ!」パキーン


ドガガガガガガ……


ビャッコ「ぐ、うううぅぅぅ……!」

ニア「きゃああああああ!」パリーン

レックス「! ニアがッ!」ダッ

メツ「馬鹿野郎! 離れるんじゃねぇ!」


レックス「おいっ、大丈夫かニア! ニア!?」ガシッ

ニア「……ぅ……」

レックス「くそ、気を失ってるのか! 起きてくれ、ニア!」

ヒカリ「なかなかしぶとかったわね、君。でもそれもここまでよ!」

モノケロス「――――――」ガシャン

レックス「ぐ……!」


ドガン! ドガン! ドガン!


ヒカリ「なっ!? モノケロスに砲撃!? 一体どこから……!」

レックス「あ、あれは……!」


じっちゃん「無事か、レックス!」ゴォォォォ


レックス「じ、じっちゃん!?」


シン「セイリュウ……」

ヒカリ「くっ、こんな時に……!」


じっちゃん(あれは――シン。それに、ヒカリか!)

じっちゃん「ええい、どうなってるのかは分からんが――とにかくレックス! 早く乗るんじゃ!」

メツ「おい! そこの虎!」ガバッ

ビャッコ「承知!」ダッ

メツ「小僧! 掴まれぇぇぇ!」

レックス「お、おう!」ガシッ

じっちゃん「よし! 全員、落ちるなよ!」バサァッ


ヒカリ「逃がさない! モノケロス、撃ち続けて!」


ドガガガガガガ……


じっちゃん「ぐ、ぬぅぅぅぅ!」ゴォォォォ

ヒカリ「効いてる! 船首回して、主砲用意――」

シン「無駄だ、もう射程外だ」

ヒカリ「……逃げ切ったっていうの? この私達から」

シン「そのようだな」

ヒカリ「……ッ」ギリィッ


ヒカリ「……ごめんなさい。私のせいだわ、すぐに追う」

シン「いや、いい。目覚めたのならばそれで十分だ。あとはヨシツネに探らせる」スタスタ

ヒカリ「…………」

ヒカリ「……そういう、事なら――」


……………………

…………

……



レックス(これが、俺と天の聖杯、メツとの出逢いだった)

レックス(正直、何がなんだか分からない散々な始まりだったけど……今となってはとても大切な思い出だって、自信を持って言える)

レックス(いや、それだけじゃない。グーラ、インヴィディア、スペルビア……これから先、俺達は色んな場所を冒険して、色々なことを経験した)

レックス(どれもみんな、決して忘れる事はない。目を閉じれば、全てが色鮮やかに思い出せる――)


~~~~


レックス『う、うぅ……』パチ

メツ『――よぉ、やっと起きたか。小僧』

レックス『……うひゃああああああああ!?』ガバーッ

メツ『フン、もう少し起きるのが遅けりゃ、頭を踏み潰してる所だったぜ』

レックス『ぶ、物騒な事言うなぁ……』

レックス《目を開けたら、いきなりこいつの足裏と股間が見えて超ビックリした――って》

レックス『違う、そんな事言ってる場合じゃない! じっちゃんは!? ニアとビャッコは!?』

メツ『さぁな。ここに来るまでアチコチに相当ぶち当たったからなぁ、途中で振り落とされたんだろ』

レックス『振り落とされた……な、なら探さなきゃ! 行こう、メツ!』ダッ

メツ『おい待て! 一人で……チッ、これだからガキは!』ダッ


~~~~

~ トラの隠れ家・ニア救出前 ~


メツ『で、どうすんだ。ニアを助け出すんだろ?』ムシャムシャ

レックス『ああ、でもどこに捕まってるのかサッパリ分からないよ……』モグモグ

トラ『うーん、なら街で聞き込みか何かしなくちゃダメも?』パクパク

レックス『やっぱそれしか無いかぁ……でもそうなると、メツが目立つよなぁ』モグモグ

メツ『ま、こんな色のコアクリスタルなんて、他にねぇからな』ムシャムシャ


トラ『なら、これ着るも? フード被れば、胸元までぜ~んぶ隠れるも!』パクパク

メツ『……こんな猫耳付いたの着れってのか。俺に……?』ムシャムシャ

レックス『ぷ、っくく……似合うと思うぜ~? 着てみろよ、メツゥ~』モグモグ

メツ『小僧、てめぇ……!』ピキピキ

トラ『う~ん、でも他にメツが着られるサイズのもの無いも?』パクパク

メツ『……チッ! 胸元まで隠れりゃ良いんだ、だったらこうすりゃいいだろ!』ブチブチ

トラ『あぁ~! フードの部分千切っちゃダメも~~~!!』

レックス『乱暴だなぁ、全く』モグモグ


メツ『……よし。ちぃと見栄えは悪いが、これでいいだろ。お前らもいつまでも飯食ってねぇで行くぞ!』バサッ

トラ『ももも……あれが出来たら、コスプレさせようと思ってたのに……』

レックス『こす……? まぁ後でお詫びはするからさ、今は行こうぜ。トラ!』

トラ『は~いも~……』トコトコ


レックス『にしても、侘しい飯だったなぁ……』

トラ『オトコばっかりだし、そこはしょうがないも……』


~~~~


トラ『では、目覚めるも! 人工ブレイ――』

メツ『おい、ちょっと待て』

トラ『も、も? 何だも?』

メツ『人工ブレイド、ってぇだけじゃ、あんまりにも味気無さ過ぎやしねぇか』

メツ『決めてやれよ。お前の名付けた、こいつだけの名前をよ』

トラ『そうかも……?』


レックス『……何だよ。俺の事は名前で呼ばないくせに』ボソッ

メツ『あん? どうした小僧。何か言ったか小僧。聞こえねぇぞ小僧。不満顔だな小僧。おい小僧』

レックス『俺あんたのそういう所すっげぇ嫌い!!』

ヤイノヤイノ

トラ《二人共、仲良しで羨ましいも~。トラも、ハナとそういう関係になれるかも……?》


~~~~

~ 樹梢の小径 ~


レックス『お、重い……!』ギリギリ

メツ『おいおい随分と貧弱だなぁ最近のサルベージャー様は、人一人引き上げられなくてやってけんのかよ。ええ?』

トラ『でも、どうするも? 上がれなくっちゃ、ニアって子を助けに行けないも』

ハナ『それならハナに任せますも。ゴンザレスだって引き上げられますも』スルスル

メツ『ほぅ、やるな。どっかの貧弱サルベージャー様に見習わせたいくらいだぜ、なぁ?』

レックス『く、くっそぉ~……!』


~~~~

~ スペルビア船・独房 ~


ニア『…………』


――『俺と共に、来い』――


ニア『……シン……』

ガタン

ニア『っ! 何だ? 外で何か物音が……』

ニア『……まさか、シン――』


オレダッテ! オレダッテ! オトナシクシロッテンダ! オレダッテ! ウワアアアアー! オレダッテ! オトナシクシロッテンダ! オレダッテ――


ニア《……いや違う、こんな手際が悪いのシンじゃない。だったら……》


バァン!

レックス『無事か、ニア!』

ビャッコ『お嬢様!』

ニア『ビャッコ! レックス!? アンタなんで……』


レックス『俺達を助けてくれたってのに、放ってはおけないだろ。助けられたら助け返せ、サルベージャーの心得その――いてぇ!』ゲシッ

メツ『お前のそれ長ぇんだよ、良いからさっさと行くぞ小僧』

トラ『そうだも! 早く脱出するも!』

ハナ『ですも。兵士がすぐにきちゃうですも』

ニア『メツ……それと、誰?』

ビャッコ『お嬢様の救出に協力してくださった方々です。ともかく、積もる話は後にして早く行きましょう』

レックス『あーもう、分かったよ! ほら、ニア』スッ

ニア『――……』

ニア『……う、うん』キュッ


~~~~


レックス『500年前に、アルス三つを沈めた……? メツが?』

メレフ『知らなかったのか? 全て歴史が語る真実だ』

メツ『フン……思い出したくもねぇ話だ』

レックス『……メツ……』


レックス『……分かったぞ。お前、メツを戦争の道具にする気だな!』

メレフ『野放しには出来ない、と言っている』

レックス『メツには行きたい所があるんだ……! その気持ちを、お前に閉じ込められてたまるかぁッ!』

メツ『小僧……』



~~~~


パチ パチ…


レックス『……綺麗だな、焚き火』

メツ『ああ……この揺らめきだけは、500年前から変わらねぇ』


パチ パチ…


レックス『へぇ……今も昔も、炎は同じって事か……』

メツ『ある意味では、どの大型アルスより年寄りだわなぁ。火ってなァ……』

レックス『そう考えると、凄いな。何か……』

メツ『ああ……』


パチ パチ…


レックス『…………』

メツ『…………』


パチ パチ…


ニューツ《ひ、火を点けたの、不味かったでありましょうか……》

ニア《気にすんなよ。時々ああなるんだ、あいつら》

ビャッコ《何とも渋い空気ですな……》

くだらない
ノイズだらけじゃない


~~~~

~ インヴィディア・ジェノバス大空洞 ~


ヴァンダム『オラオラどうしたぁ! それでも天の聖杯のドライバーかぁ!』

レックス『くっそぉ……! これならどうだぁ!』

メツ『待て、小僧! 力を送るのが追いつかねぇ……!!』

レックス『うおおおおおおおおお――って、あれ!?』プスン…

ヴァンダム『隙ありぃ!』グワァッ!

レックス『う、うわああああっ!?』ドサッ


ヴァンダム『……小僧、お前ドライバーになりたてだろう?』

レックス『え、あ、あぁ……』

ヴァンダム『ドライバーってのはな、独りよがりで戦っちゃいけねぇんだ』

ヴァンダム『ブレイドとは一心同体。共に戦い、守られ、時にはブレイドを守る。それがドライバーってもんだ』

レックス『……あんた、一体――』


メツ『はぁッ……はぁッ……!』ゼェゼェ

ユウ《全身タイツの筋肉が喘いでいる……》

ズオ《あらぁ~》ドキドキ


~~~~


レックス『ほらメツ、こっち来いよ。傷の手当してやるからさ』

メツ『気色悪い事言ってんなよ、小僧。俺は天の聖杯だぜ、んなもん必要ねぇよ』

レックス『そんな事言うなよ。メレフの時の事で知ってるんだぜ、俺と同じ場所に傷ができるんだろ』

レックス『俺のせいで出来た傷なら、俺に診させてくれよ』

メツ『……チッ、包帯だけ貸せ。全部自分でやる』ヌギヌギ

レックス『えぇ……しょうがないな、それでいいよ。もう』


ヴァンダム『……あれ、いいのか?』チラ

ニア『……何がだよ。いや、そういうのじゃないし……』


~~~~


ドメニコ『つ、強え……!』

メツ『ハ、テメェが弱すぎんだよ。もうちっと勉強しろや』

ドメニコ『なんだと……、うっ!? そのコアクリスタル、まさか天の……う、うわあああああ!』ダダダダ

メツ『チッ、情けねぇったらねぇぜ、オイ』


レックス『……あの人、多分罪悪感とか持ってたよな』

じっちゃん『うむ……やはり世知辛いのぅ、戦争とは』

メツ『……フン。それよりアレを相手に引かねぇとはやるじゃねぇか。見どころあるぜ、お前』

イオン『う、うん。えへへ……』


~~~~

~ 精神世界 ~


メツ『……ここは、お前が来ていい所じゃないぜ。ヒカリ』

ヒカリ『仲間外れにしないでよ。良くはなくても、私にもその資格はあるでしょう?』

メツ『フン……で、何のようだ。昔話をしに来たって訳じゃねぇんだろう?』

ヒカリ『ええ――ミノチの所の子、預かったわ』

メツ『っ! イオンをか、テメェ……!』


ヒカリ『別に私は何もする気無いけど……ほら、会ったでしょ、ヨシツネ。あいつ下衆だからさ、何するか分かんないかも』

メツ『……ッ』ギリィ

ヒカリ『私達が目覚めた場所。覚えてるでしょ、そこまで来なさい』

ヒカリ『勿論、一人でね』ニィ…




~~~~

~ カラムの遺跡 ~


ヒカリ『鬱陶しかったけど、これでお終いよ!』

ヴァンダム『レックス……! お前の戦を、戦え――ッ!!』


ザシュッ……!


ヴァンダム『――……』ドサッ

レックス『ヴァンダムさぁぁぁん!』

ヨシツネ『あーあ……下らない茶番だ』



レックス『お前ら……よくも! よくもヴァンダムさんをッ!!』ダッ

メツ『よせ、小僧!』

ヒカリ『フン、これで終わりよ!』

レックス『うわあああああああああああッ――!!』

メツ『小僧ぉぉぉーーーーッ!!』


黒モナド『――――』カッ!


ヨシツネ『ッ! これは……!?』

レックス『な、何だ、剣の形が……!』


黒モナドII『』ガシャガシャガシャ

黒モナドII『鎖』ガシャン


メツ『モナド……ジェイル……!』パキィン

ヨシツネ『ぐぅっ!? これは、僕と同じ力!?』

カムイ『ヨシツネ! このぉ!』ブン

メツ『――オラアアアァァァァ!!』ゴッ

カムイ『あぐっ! ぁ――ヨシツ、』


ドゴォォォン!


メツ『…………』

ヨシツネ『あぁ……か、カムイ? カムイィィィィ!!』

ザンテツ『嘘だろ、空間ごと消し飛びやがった……!』

ヒカリ『ふ、フフ……そう、これよ! 待ってたのよこの時をずっと!』

ヒカリ『ねぇ、メツ――!』

メツ『チィ……!』


~~~~

~ インヴィディア首都フォンスマイム・宿屋 ~


レックス『ねぇ、前にヒカリの奴が言ってた制限した力って、あれの事……?』

メツ『……あぁ。天の聖杯の本当の力――何もかもを破壊する、糞みてぇな力だ』

レックス『……そんな事、言うなよ』

メツ『あん? お前も聞いただろうが。500年前、この力はアルス三体を沈めた上、今に至るまで災いを――』

レックス『でも、その力で俺達を守ってくれたじゃないか……!』

メツ『!』


レックス『メツの力は凄いよ! 天の聖杯の噂はホントなんだって、実感した』

レックス『ヴァンダムさんが言ってただろ。力は、それを振るうものの心の形……。破壊だけじゃない、守られた人はみんな笑顔になる。あれは、そんなメツらしい力だ』

メツ『小僧……』

レックス『だからさ、そんな悪い事ばっかり言って、自分を責めないでくれよ』

メツ『…………』


トラ『アニキー! ちょっとハナの修理手伝ってほしいもー!』

レックス『あ、あぁ、分かったー!』

レックス『って事で……ちょっと手伝ってくるよ。それじゃ!』タタタタ

メツ『…………』

じっちゃん『……あの子は、ああいう子じゃ』

じっちゃん『悲しみを笑顔に変えて、明日への力とする……似とるじゃろう? アデルに』

メツ『……似てねぇよ、まだまだな……』

~~~~

~ スペルヴィア・温泉 ~


レックス『いやー、極楽極楽』

じっちゃん『おっほー、ええもんじゃの~、温泉とやらは……』

トラ『すっごいも~! 憧れだった背中の流しっこするも~!』バシャバシャ

ガラッ

メツ『遅れたな、邪魔すんぜ』

レックス『ああ、温泉お先して……る、ぞ……』

トラ『どうしたも、アニキ? そんな固まって……も、ももも……』

じっちゃん『ほぅ、これは立派なアルスじゃのぅ……』


メツ『あん? 何だよ、ジロジロ見やがって』ブラブラ


レックス『す、すげぇよ……アヴァリティア、いや、グーラか……?』

トラ『いやいや、インヴィディア、スペルビアよりも……!』

ビャッコ『なるほど、あれが世界樹。つまりは楽園……!』

メツ『のぼせてんのか、お前ら……?』


クビラ『み、認めん……! 認めんぞ、王よりも王だなどと……!』ワナワナ

ユウオウ《珍しく滾っているな……》

~~~~

レックス&メツ『モナドォ、バスタァァァァァ!!』

メレフ『ぐぅっ――!?』


ドゴォォォン……!


レックス『……あれ? メツ?』

メツ『ハ、当てる必要はねぇってんだろ?』

レックス『さっすが、よく分かってらっしゃる!』

メレフ『……またも侮られるとはな。屈辱だ』

レックス『戦う理由がないだけだよ。剣を引けって』

カグツチ『……良いだろう。ひとまずは、な』チャキ…



メツ『…………』

カグツチ『……何かしら? 天の聖杯』

メレフ『私のパートナーに、あまり不躾な視線は向けて貰いたくはないのだが』

カグツチ『メレフ様……!』

メツ『……ハン。何でもねぇよ』スタスタ

レックス《メツ……?》



~~~~

~ スペルビア・荒野 ~


ジーク『何や、ワイらの気迫にビビってチビッたんかぁ? ネコ女ァ』

ニア『誰がチビるかい! この亀頭《かめあたま》!』

レックス『!』

メツ『!』

ビャッコ『!』

レックス『に、ニア? かめあたまってのはちょっと……』

ニア『は? 何でよ』

レックス『え、いや、それは……』

メツ『はっはっはっは! なら教えてやるがなぁ、かめあたまってのは――』

レックス『わーっ! やめろってメツ! 何教えるつもりだよ!?』

メツ『あぁ? なるほど、自分で教えたいってかァ! おいニア、今晩小僧の部屋に行けば「かめあたま」をみっちり教え込んでくれるぜぇ? ハハハハハ!!』

レックス『メツゥゥゥゥゥゥ!!』

ニア『?』


ジーク《……なんや、めっちゃ疎外感……》


~~~~

~ イヤサキ村 ~


コルレル『……あんたはさ、レックスの事が好きかい?』

メツ『……さぁな』

コルレル『ふふ、そうかい。じゃあ頼んだよ、あの子の事……』

メツ『…………』


メツ『…………本当に』

コルレル『ん?』

メツ『本当に小僧を想えば。お前は俺に頼むべきじゃねぇよ』

コルレル『……あんたは……』

メツ『変な事を言った。忘れてくれ』

コルレル『……何を抱えてるのかは分からないけど、無理はするんじゃないよ。あんたも』

メツ『…………フン』


カグツチ『……メツ……』


~~~~

~ アーケディア・大聖堂 ~


レックス『……なぁメツ。英雄アデルってどんな人だったんだ?』

メツ『どうした、いきなり』

レックス『いや、ここの人たち皆アデルアデル言うからさ、ちょっと気になって』

メツ『フン……まぁ、そうだな。一言で言やぁ、すげぇメンドクセェ奴だった』

レックス『め、めんどくさい?』

メツ『ああ。ウンザリする程優しく、呆れ返るほど強く。どんな時でもしぶとく抗い、幾度も困難に打ち勝ってきた』

メツ『付き合わされる方は堪ったもんじゃなかったが……しかし、退屈はしなかったな』

レックス『褒めてんの? それ』

メツ『さぁな。……だが、そうだな。手のかかる面倒臭さに関しちゃ、小僧とそっくりだ。なぁジジィ?』

じっちゃん『うーむ、言われてみれば、そこもそうじゃのう……』

レックス『えぇ、何だよそれ!』

メツ『ほら、英雄とそっくりで嬉しいだろ? はっはっはっは!』


~~~~


メツ『シン、何でテメェがヒカリと共に居る。500年前、俺達と一緒に奴と戦ったお前が』

シン『奴の中に真理があった。それだけだ』

メツ『……女の色香に絆された、ってのはあり得ねぇな。お前に限っては尚更』

メツ『いいぜ、素直に話さねぇってんなら力づくで聞いてやる。来いよ、イーラ最強!』

シン『やってみろ……!』ダッ


~~~~


ファン『――――』

マルベーニ『――よって、彼女の魂は神の導きにより、世界樹の枝葉の先へと……』

レックス『…………』


ニア『……ねぇ、メツ。レックスの奴、ほっといていいの?』

メツ『ふん、アイツも男にベタベタされたって嬉しかねぇだろうよ。ほっとけほっとけ』

ニア『う、うーん。そっかぁ――』

メツ『…………』

ニア『…………』ソワソワ

メツ『…………チッ』ゲシッ

ニア『にゃあ!? 何で蹴るんだよ!』

メツ『その貧相な胸に聞けや、メンドクセェ』

ニア『うぅ~……』

ニア『……い、行ってきマス……』ソソクサ

メツ『ったく、ウザってぇ』


メツ『にしても……カスミのコアの形に、ブレイドの死。マルベーニの野郎、一体アイツに何しやがった……?』


~~~~

~ ルクスリア ~


レックス『うぅ……ルクスリアって寒いんだな。歩いているだけで凍えそうだ』

ジーク『ま、それが土地柄やからな。街に行けば少しは暖こうなるやろうから、それまで気張りぃ』

トラ『ぶ、ぶるぶるだも~……』

カグツチ『ねぇニア、ちょっと歩きづらいんだけど』

ニア『だってカグツチ暖かいんだもん、いいじゃんちょっとくらい』

カグツチ『だからってねぇ……暖めるならメレフ様を暖めたいのに』

メレフ『フ……気持ちはありがたいが、私は遠慮――』

ニア『じゃあメレフも一緒に来ればいいじゃん、ほら!』グイーッ

メレフ『な、やめ……ぬうっ!?』

カグツチ『ああ、嬉しいけど更に歩きづらく……!』


ジーク『はー……何や羨ましいのう。見てるだけでええ香りしよるわ』

トラ『なら、こっちもするも? 押しくらまんじゅうでポカポカだも!』

レックス『いや、俺らはいいよ。トラはともかく、俺達はむさ苦しいだけだし』

メツ『そうかい。じゃあ行ってこいや、あっちによ』ゲシッ

レックス『え゛――わあああああ!?』ガバー

ニア『えちょ、何でレックにゃあああ!?』

ギャースギャース


ハナ『レックス、ボコボコですも』

メツ『はっはっは。見ろよ、暖かそうじゃあねぇか、なぁおい』

ジーク『鬼やなコイツ』ゾッ

メツブレイド完全版かよお!(歓喜


~~~~

~ 王宮テオスカルディア ~


ルクスリア王『申し訳ないが、天の聖杯にはここで消滅して貰おう』

ジーク『なっ……!?』

メツ『ぐ――おおおおぉぉぉッ!?』ビリビリビリビリ

レックス『メツ! そんな、何でだよ王様!?』

ルクスリア王『これも、全ては世界のためだ――許せ。天の聖杯のドライバーよ』


~~~~


レールガン『――――』シュゥゥゥゥ……


ルクスリア王『ここまで、か……』

ジーク『はん、ええかげん雁字搦めを解く時が来たっちゅうこっちゃ。観念せぇや、オヤジ』

ルクスリア王『……そう、か……そうなのかもしれんな』


メツ『ハァッ……ハァッ……! クソ、情けねぇ……!』

レックス『メツ! 大丈夫か!?』

ジーク『……いやぁ、にしても随分とゴッツイ囚われの姫さんやったのう。絵面がむさ苦しゅうて敵わん』

サイカ『あれやな、いま城下町で流行っとる耽美な本――』

メレフ『さ、さぁ。そんな事よりルクスリア王に事の次第を問い詰めよう。これは許されない事なのだから』ダラダラ

ミクマリ《……メレフ、なんか焦ってない?》ヒソヒソ

ワダツミ《まぁ、ほら。宿屋の彼女に有る事無い事吹き込んだの、彼女だったからね……》ヒソヒソ

カグツチ《メレフ様……》

メツ『後で覚えとけよ、お前ら……』ゼェゼェ


~~~~

~ ゲンブの頭 ~


シン『――刹那ッ!!』キィン

レックス『ぐ――うわあああああああッ!!』ズババババ

メツ『うおおおおおおおおおッ!』ズババババ


黒モナドII『』ガシャァァァン!


レックス『け、剣が……! あぐっ!』ガッ

シン『これより胸のコアを抉る――それで、終わりだ』

レックス『ひ……ぐ、こ、こんな、所で……!』

メツ『…………』ギリッ

レックス『こんな、所で――!』


メツ『――やめやがれ! シン!!』ゴォッ


シン『!』

サタヒコ『この、力は……まさか!』

メツ『そうだよ、お前らが散々味わってきた俺の――消滅の力さ』

メツ『もし、小僧や他の奴らを殺せば、その瞬間これを暴走させる。どういう意味か、分かるよな?』

シン『……周囲を巻き込み自殺するとでも言うのか? だが無駄だ、俺は光よりも疾い』

メツ『だから止められるってか? ハッ、たかが1ブレイド如きが、天の聖杯相手に何が出来るってんだよ……!』ゴゴゴゴ


カッ!


メレフ『っ!? な、何だ?』

ニア『あちこちに消滅の力場が発生してるんだ……それも、どんどん数が増えてる……!』



ヨシツネ『し、シン……』

シン『…………』チラ

ヒカリ『……っ』フルフル

シン《……ヒカリでも、防げんか……》


シン『……良いだろう。この者達は見逃してやる』スッ…

レックス『う、あ……』

メツ『…………』ザッ

レックス『メ、ツ……俺、は……』

メツ『……フン。全く、ガキの尻拭いほどメンドクセェもんはねぇなぁ。笑えもしねぇ』ポン

レックス『っ……!』

メツ『だがな、小僧。俺は――……』

メツ『……いや、何でもねぇ。まぁ、アレだ。せっかく拾った命、田舎にでも帰って達者でやんな』

レックス『メツ……』

メツ『――じゃあな』スタスタ

レックス『ま、待ってくれ! メツ! 行くな、行くなぁ!』


レックス『メツゥゥゥゥゥ――!!』


…………

……


~~~~

~ 宿屋 ~


バキィッ!


レックス『うぐっ――!』ドサッ

ニア『はぁ、はぁ……あんた、何言ってんだよ』

ニア『全部諦めてイヤサキ村に帰る……? そんな情けない話無いだろ、レックス!』

ニア『メツが何の為に、誰の為にシン達の所へ行ったと――』

レックス『――分かってるんだよ、そんな事!』

ニア『!』

レックス『でも、どうしようもないじゃないか! 攻撃も、意思も! 何一つあいつらに届かなかった!』

レックス『それなのにどうしろっていうんだよ! 無理だよもう、俺には……!』

トラ『アニキ……』

レックス『そうさ、俺なんてメツのドライバーの器じゃなかったんだ。運良く命を救われただけ、メツもきっと、それだけだと思ってる』

レックス『その証拠に、メツだって田舎に帰れって言って――、…………』


カグツチ『……どうしたの、レックス。いきなり黙り込んで』

レックス『いや……どうして、メツは田舎に帰れなんて言ったんだろう、って』

ニア『どういう事?』

レックス『だって、あのメツだぞ。例え最後の別れだからって、そんな素直な別れ口にするかな……』

じっちゃん『…………』

ジーク『まぁ……そういう事もあるんちゃうか。ワイも同じ事になったら、サイカに真面目な事の一個二個残すと思うで』

レックス『そうかな……でもそのすぐ前までいつもの調子で煽ってたし、何か――』


サイカ『王子、王子』コショコショ

ジーク『あん? ……ほぅ』

メレフ『どうした?』

ジーク『ああ、悪いけど一先ずここで中断や。どうも、オヤジが呼んどるらしい――』


~~~~


メレフ『……その昔、英雄アデルの残したメツの剣がリベラルタスに隠されている……か。ルクスリア王も、かなりのカードを持っていたな』

カグツチ『おそらく、メツの言葉もこれを指していたのでしょう』

ジーク『ったく、オヤジも情報あるんなら最初から言えっちゅー話や、一回しばいたろかほんま……』グチグチ

サイカ『ままま、ウチらの事理解してくれたんやし、許したりぃな』

ハナ『そうですも。それを言ったら、同じ事隠してたセイリュウもしばかなくちゃならなくなりますも』

じっちゃん『え!? い、いやワシはほら、好きで隠しとった訳ではなく……そ、それよりもじゃ! 今はレックスの事が心配じゃないかの!? ん? ん?』

トラ『めっちゃ話そらしたも……』


~~~~


レックス『…………』

ニア『…………』

レックス『…………』

ニア『……アタシ、謝んないからな。絶対』

レックス『え、あ、あぁ……それは当然だよ。あの時は、俺がかなりまずかった』

レックス『その、俺の方こそ、ごめん。みっともない事言っちゃって……』

ニア『……ん。皆にも謝っとけよな』

レックス『うん。そうする』


『…………』 『…………』


レックス『……ありがとな』

ニア『な、何だよ急に』

レックス『いや、何か言いたくてさ』

ニア『や、意味分かんないし……』

レックス『それならそれでいいさ……俺、みんなの所行ってくるよ。じゃあな』タタタ

ニア『う、うん。じゃあ』

ニア『…………』

ニア『…………へへ』


ビャッコ《あー、痒い。蚤。蚤が居ますよ。目には見えない蚤が》ポリポリ



~~~~

~ エルピス霊洞 ~


レックス『ここがエルピス霊洞……アデルの作った試練の場か』

ジーク『何や、立ってるだけで息苦しくなってくるなぁ。空気が淀んどるわ』

じっちゃん『この洞窟はエーテルの流れを断ち切る性質を持っとるからのぅ。それはドライバーとブレイドとの繋がりすら奪う強力なもの、そのせいじゃろ』

ニア《なるほど、それでか……》


レックス『っていうか、そんな大切な事入る前に言ってくれよ!』

ハナ『ご主人、どうしてお年寄りって大切な情報を小出しにするですも?』

トラ『センゾーじいちゃんもそうだったも。だからきっと、ロマンってやつだも!』

ハナ『なるほど。はた迷惑ですも』

じっちゃん『ワシ、めっちゃディスられとる……?』


ジーク『繋がりを奪う、か……』チラ

アザミ『……あら、なぁに? その「こいつらとの縁も断ち切れへんかなぁ」とか言いたげな目は……?』ギラギラギラ

カサネ『いえいえ、きっと私達の勘違いですよ! ね、ドライバーさん?』カタカタカタ

ジーク『は、ははは、はは……』


~~~~


ニア『はぁ、はぁ……』フラフラ

レックス『……なぁ、やっぱり少し休んだ方が良いんじゃないか。凄く辛そうだ』

ニア『へ、平気だって。みんな頑張ってるのに、へばってらんない』

レックス『ニア……』

ニア『本当に大丈夫だよ、昔はもっと辛い状態で歩いたこともあるんだ』

レックス『昔って?』

ニア『……アタシ、さ。昔アーケディアに――』



ジーク『…………』ジー

サイカ『どないしたん? 微笑ましいアベックさんに変な目向けて。嫉妬?』

ジーク『ちゃうわい!』


ジーク『……まぁ、なんちゅーかなぁ。前も言ったが、メツが姫さんポジやといまいち絵面パッとせんよなって。あの2人見てると余計に思ってしもうての』

サイカ『まーた王子はそないな事言うー……』

ジーク『いや、考えてみぃ? 拐われたんが女の子の……例えばニア――は、今はやめとくとして』

サイカ《こういう所ピュアやなぁ……》

ジーク『そう、例えばそこのメレフやカグツチやったとして、どない思う?』

サイカ『どないて……』ポワポワポワ


■ ■ ■


メレフ『くっ……私達を捉えてどうするつもりだ』

女好きっぽい金髪『ああ、良いねぇ。その気丈な顔、かなりそそる』

眼鏡っぽい小物『どうするって、分かってるでしょう。たまにはこういうジャンルも良い……!』

メレフ『この下衆が……ッ! だが、私の心まで自由になると思うなっ!』

カグツチ『ええ、何をされようとも絶対耐えてみせる……!』

ヒスっぽい女『その強気がどこまで持つか、楽しみだね――』ニヤァ


■ ■ ■


サイカ『あ、アカン……! これは特急で行かんとアカンやつ……!』

ジーク『せやろ!? 何かもうかなり切迫するやろ!? でもこれがメツやと……?』

サイカ『あぁ……何か、のんびりしてても良い気ぃするなぁ。さっきのは瞬殺でオチそうやけど、メツは絶対オチなさそうやわ』

ビャッコ『そうですか? んほぉ、と言って容易くオチそうな気もしますが』

ジーク『な? だからなぁ、ワイはどうにも今の状況にキャスティングミスを感じざるを得んというか――』ポンポン

ジーク『あん?』クルッ

メレフ『――おもしろい想像をしているな、ジーク』ジャキン

カグツチ『ちょっと私達にも詳しく聞かせてくださる?』ボゥ

ジーク『お、おぉぉぉ……さ、サイ――おらん!? 逃げよったんかアイツ!?』

ジーク『いや、いやいやいやいやいや。あ、ちょ、ほんの冗談やんけ、あ―――!』



サイカ『二人共ー、王子がちょいグロッキーやから、休憩しよー?』

レックス『そっか。じゃあ丁度よかった、休もうぜ、ニア』

ニア『……わかったよ、ったく』


~~~~


メレフ『ふむ、どうやらここが最奥部のようだな』

ビャッコ『では、この通路の先にメツ様の剣が……?』

ハナ『こーりゃ行くっきゃねぇ、ですも』


ニア『…………』ヨロヨロ

レックス『ニア、やっぱりさ……』

ニア『大丈夫だって。まだ、平気』

レックス『……頑固だなぁ、全く』

ニア『それ、アンタにだけは言われたくないって』


レックス『……さっきの、昔の話だけど』

ニア『あぁ……何?』

レックス『ニアはさ、もっと自由でいいんじゃないかな』

ニア『え?』

レックス『居場所とかしがらみとか、そんなの関係なしにさ。気に入らない事はグーでぶっ飛ばして、言いたい事はズバッと言ってくれる方がニアらしいよ』

ニア『……何だよそれ。それじゃアタシが暴力女みたいじゃん』

レックス『ようやく気づいたのか? 鈍感だなぁ、ニアは』

ニア『だからそういうのはアンタだけには言われたくないんだっつーの!」ブン!

レックス『おっと、それだよ、いつものニア! 俺、そっちが良い!』タタタ

ニア『あ、こら待て! もう!』タタタ


ニア『……レックス……』


~~~~

~ 英霊の間 ~


幻影アデル『どう出る』『レグス』『どう出る』『どう出る』『ワース』『レグス』『レグス』『レグス』『どう出る』


ジーク『うるへええええええええ! 何やこいつら無限湧きか!?』ズバー

メレフ『そのようだな。一体一体はそうでもないが、こう集団で来られると……!』ザシュッ

トラ『ももももももももももももももも』ボコボコボコ

ハナ『ご主人、子供に群がられるボールみたいになってますも!』

レックス『くっそぉ、幾ら切ってもキリがない! このままじゃジリ貧だよ!』


ニア『はぁ……はぁ……っ、うあっ!』ガキン

幻影アデル『終わりだ!』

レックス『ニア! うぐっ!』ザクッ

幻影アデル『ワース』『レグス』『レグス』『どう出る』『ワース』『レグス』『レグス』――

レックス『ぐあああああああああッ!』ザシュザシュザシュザシュ

ニア『レックス!』


ニア《だ、ダメだ……このままだとレックスが、みんなが……》

ニア《この力を使えば――でも、でも。そしたら、また逃げなくちゃ……!》ガタガタ

ニア《ど、どうしよう。どうしよう、どうすればいいの、アタシ――》


――メツ『その貧相な胸に聞けや、メンドクセェ』――


ニア『!』



ニア『……そうだ。アタシは、もう』


ヴァンダム『――――』

ファン『――――』


ニア『怯えて、怖がって、助けられた命を見過ごすなんて』


『ニアはさ、もっと自由でいいんじゃないかな――』


ニア『もう――絶対に、嫌だぁぁぁぁッ――!』


カッ!


ブレイドニア『レックス達から、離れろぉぉぉ!!』ゴゥッ!

幻影アデル『レグ――』ドガァン!


レックス『に、ニア……?』

メレフ『その姿は……ブレイド?』

ジーク『ちとエッチすぎひんか……?』

トラ《ハナ新モードの衣装、決まったも……!》グッ


ニア『レックス、平気!?』

レックス『あ、あぁ……ありがとう。っていうか俺、傷が治ってる……?』

ニア『アタシの――マンイーターとしての力。生きたいって意志があるなら、何だって治して再生する』

レックス『……そっか、すごいな。でも良かったのか? 多分、隠したかったんだろ』

ニア『うん……でも、気づいたんだ。アタシは、もっと早くこうしたかった』

ニア『怯えとか恐怖とか弾き飛ばして、自由になって。助けられる命を助けたかったんだ』

レックス『ニア……』

ニア『メツがそれに気付かせてくれて、アンタが勇気をくれたんだ』

ニア『――大好きだよ、レックス』


レックス『え……』

幻影アデル『ハァァッ!!』ザンッ!

ビャッコ『お嬢様!』ガキン!

ニア『ちっ、まだ出てくるのかよ! 一緒に戦おう、レックス!』

レックス『あ、ああ!』ダッ


~~~~


ニア《って、意気込んではみたけど……》

シミター『――……、――』チカチカ

ニア『やっぱり、ここじゃブレイドの力は……!』

レックス『危ない、ニア!』ガキン!

幻影アデル『…………』

ニア『あ、ありがと。レックス』

レックス『…………』

ニア『……レックス?』

レックス『……俺もわかったよ、ニア』

レックス『俺も――ニアの事が大好きだ!』ガキィン!


ニア『え……?』

幻影アデル『……!』

レックス『いや、ニアだけじゃない! 皆の事も大好きだ! だから戦える!』

レックス『でも――いつも君がいたから、俺は立ち止まらなかった! そしてそれは、これからもずっと!』

ニア『レックス……』

レックス『ここも同じだ! こんな変な奴ら相手に立ち止まってられるか!』

レックス『さっさと倒して、一緒にメツを助けに行こう――ニア!』

ニア『……う、うんっ!』


幻影アデル『……戦うのだな』

レックス『! 誰だ!』

幻影アデル『お前は、戦い続けるのだな。お前以外の者達のために』

レックス『そんなの、当たり前だ!』

幻影アデル『――思い焦がれていた。お前のような者が、来る事を――!』

パァァァァ……!


…………

……




~~~~

~ モルスの断崖 ~


メツ『ぐあああああああああッ!!』

ヒカリ『何これ。くっだらない、ノイズだらけじゃない』ググ…

メツ『ぐ……や、やめろ……! 俺の記憶を――』

ヒカリ『あぁ、小僧小僧小僧小僧……どこもかしこもあいつだらけで鬱陶しい。全部消してあげるから早く返しなさい、私を!』

メツ『俺の記憶を、奪うなぁぁぁぁッ――!!』


……………………


シン『……終わったか?』

ヒカリ『ええ――この通り、修復完了』

コアクリスタル『――――』キラン

シン『天の聖杯は』

ヒカリ『あそこ。まぁ、もうタダの筋肉の塊だけど』


メツ『…………』


シン『…………』

ヒカリ『もうすぐね、シン。もうすぐ、私達の願いが……』キュッ

シン『ああ、そうだな――』


~~~~


レックス『シン! ヒカリ!』

シン『……来たのか、少年』

ヒカリ『あなたも懲りないわね。あれだけコテンパンにされたのに、まだ進もうとする』

レックス『そんな事はどうだっていい! メツは何処だ!』

ヒカリ『ああ、ソレなら――そこに転がってるわよ』


メツ『…………』


レックス『メツ!? しっかりしてくれ、メツ! メツゥ!』

ニア『お前……メツに何をした!』

ヒカリ『私の物を返してもらっただけよ。まぁ、精神はズタズタになっちゃったけど』

メレフ『精神……だと……?』

ヒカリ『俺の記憶を奪うな―、って。まぁうるさく叫んでたわよ、笑える』

トラ『お、お前……絶対許さないも!』ガチャン!

ハナ『ハナも激おこデストロイですも……!』ガシャン!



レックス『メツ……』

レックス《……ごめんな。俺が、不甲斐なかったばっかりに》スッ


ヒカリ『へぇ? 泣き叫んで突っ込んでくるかと思ったけど、結構落ち着いてるじゃない』

レックス『突っ込むだけじゃ勝てないって、お前たちに散々教えられたからな』

ヒカリ『ふぅん、でも戦いはするんだ』

レックス『ああ――俺、分かったんだ。メツが本当は何を望んでいたのか』

レックス『そのために、俺が何をするべきなのか。そして――ドライバーとブレイドの、絆の意味が!』

シン『……!』ハッ

ヒカリ『絆の意味? そんなもの無いに決まってるでしょ!』シャキン!

レックス『今度こそ二人を止める! 皆、力を貸してくれ!』ダッ

ニア『うん!』



~~~~


シン『フッ! ハァッ!!』キン! キン!

レックス『ぐっ……うあっ!』

レックス《くそっ……やっぱりとんでもなく強いッ!》

シン『刹那ッ!』シャキキキキン!

レックス『うわああああッ! っで、でも! 諦めるかぁ!』ガキィン!


メツ『……もういい、小僧』

レックス《!》

メツ『もう、拘んじゃねぇ。お前なら、いつかきっと世界樹の上に立つ。だから良い、俺の事は忘れて――』

レックス『――それじゃ、意味が無いだろ!』ガキィン!

シン『……?』

レックス『俺は、あんたと一緒に楽園へ行くって言ったんだ! だから、メツが居ないと意味がない!』

レックス『メツが傷を受ける度、痛みと一緒に安心が伝わってきた! それで分かった、本当は消えたかったんだろ! この世界から!』

メツ『……あぁ、そうさ。楽園に行って、オヤジに俺を消してもらう。それが、消滅の力を持つ俺の望みだ。分かってんならほっとけよ、無駄に付き合ってんじゃねぇ』

メツ『世界にとっても――その方がいい』

レックス『納得できるか、そんな事ぉ!』


ヒカリ『……何あいつ、一人でギャーギャー気持ち悪――、ッ!』ガキィン!

ジーク『よう分からんが黙っとき。今はヤジ入れとる場合ちゃうでぇ……!』ギギギ

ヒカリ『賑やかし風情が……!』



レックス『前にも言っただろ。メツは凄いって、皆を守ってくれたって!』

レックス『力はそれを振るうものの心の形――だから、消える必要なんて無い! あのルクスリア王だって分かってくれた! 誰も望んでないんだ!』

メツ『……!』

レックス『それでも納得出来ないなら――行けばいい、楽園に!』

シン『っ!』ギィン!

レックス『俺はメツの為に楽園に行く! そして確かめるんだ、あんたの生まれてきた意味を! 未来が何処に向かうのかを!』

レックス『もう二度とメツに世界を灼かせない! 頼りないかもしれないけど、でも、俺を信じてくれ! 』


レックス『――あんたの全部を、託してくれ――!』


メツ『――――』


カッ!


~~~~

~ ??? ~


レックス『……? ここは……』


アイオーン『――――』


レックス『これは……』

メツ『――最高に気色悪い事言ってんなよ、小僧』

レックス『メツ……』

メツ『俺の後ろ。あれが、俺達……天の聖杯に与えられた力だ』


アイオーン『――――』


メツ『抱えきれんのか、お前に』

レックス『……ちょっと、自信ないかも』

メツ『おい……』

レックス『でも、メツと一緒なら平気だ』

レックス『ドライバーとブレイドは一心同体。ドライバーはブレイドを守り、ブレイドはドライバーを守る。だろ?』

メツ『――ハ、ハハハハハ! 本当に頼りねぇなぁ、小僧ォ!』


メツ『いいぜぇ、高鳴ってきた! 共に往こうじゃねぇか! クソオヤジの待つ、楽園に――!』グッ

レックス『ああ――!』グッ


…………

……




~~~~


パキィン!


シン『なっ――!』ザザッ

ヒカリ『この光、まさか!』


真黒モナド『――――』シュゥゥゥ…

真黒モナド『理』


メツ『――オラァ!!』

シン『ッ、ぐぅッ!?』ドゴォン!

ヒカリ『シン!?』

シン《メツ……!? ば、馬鹿な……なぜ俺の速さに付いてこれる……!》

メツ『テメェに出来て俺に出来ねぇ訳ねぇだろうが! 天の聖杯だぞ俺はァ!』

シン『チィ! 絶対零――』

メツ『遅えだろぉ! おらヒカリィ! 愛しの病人サマが飛んでくぞ、受け止めろやァ!』ドガァ

シン『ぐあッ――!』

ヒカリ『シン! きゃあッ――』ゴッ


ドオォォォ…ン



メツ『……ハン、まずは一発お返しだ。ざまぁみろ』スタッ

レックス『起きてくれたんだな、メツ!』

メツ『フン、誰かさんがやかましくてよぉ。おちおち眠らせても貰えねぇ――ほらよ』

レックス『え? うわ、服が……!』ピカー

メツ『いつまでも芋クセェ格好してんな。ちったぁ垢抜けやがれ』

レックス『おぅ、サンキュ!』


ジーク『かっこええやないかァ、ボォン!』


メツ『……やっぱ止めるか、その格好』

レックス『そうだな。違うのにする』ピカー

ジーク『なんでや!?』



ヒカリ『この……よくもシンを! セイレーン!』

セイレーン『――――』キィィィ

レックス『あれは……ヒカリのデバイスか!』

メツ『チッ! こんなとこまで持ち出してんじゃねぇよ!』


ヒカリ『吹き飛べぇぇ!』

メツ『近いのは――タイタンしか居ねぇか! 来やがれぇぇぇ!』

レックス『う、うわあああああああ!!』カッ


…………

……




~~~~


~ モルスの地 ~


レックス『……大丈夫か?』

ニア『ちょっとお尻打ったけど、平気……あててて』

レックス『なら良かった。まさか雲海の底にこんな場所があったなんてな……』

ニア『うん、上昇気流が吹き上げててほんと良かった――って、そうだ他の皆は!?』

レックス『メツはそこ。気絶してるみたいだけど、俺が何ともないから怪我はないと思う』

メツ『…………』

ニア『そっか、じゃあ起きたら他の皆も探しに行こ。心配だけど、アタシらが無事ならきっと何とかなってるだろうし』

レックス『ああ、そうしよう』


~~~~


ニア『……それにしても、あれがデバイス同士の戦いかぁ。スケールが違ったねぇ~』

レックス『戦いの場所ごと纏めて壊すなんてなぁ……』

ニア『昔の戦いじゃアルス三つも沈めたって聞いたけど、確かにって感じだったね』モゾモゾ

レックス『そうだな、俺も――ぶっ』

レックス《……尻打ったのは分かるけど、無防備にお尻さするなよ。っていうか、改めて見るとブレイドのニアってすごい格好だな……》

ニア『んー? どうしたの、レックス?』モゾモゾ

レックス『い、いや、別に……』

レックス《そういや俺達、エルピス霊洞で何か凄い事言い合ったような》

レックス《あれ、じゃあ今の二人きりの状況って、これ――》

ニア『何か顔赤いけど、ほんとに平気? もしかして顔打ったりしたか?』スス

レックス『わぁ!? ちょ、ニア、近い――って』ハッ


メツ『…………』ニヤニヤ


レックス『』


ニア『ん? あ、起きたんだ、メツ。無事でよかったよ』

メツ『気にすんな、続けろ』

ニア『え、何を?』

メツ『隠すな隠すな。ほれ小僧、今こそ「かめあたま」を――』

レックス『わあああああ!? よ、よーしメツも起きたしみんなを探そうそうしよう! さぁ行くぞぅ!』ダダダ

ニア『え、うわっ、そんな引っ張るなよ! ちょっと!?』ズルズル

メツ『あー、青くせぇ青くせぇ。鼻が曲がりそうで堪んねぇよ、オイ』



~~~~


ヒュゥゥゥ…

ハナ『…………』

メツ『おぅ、どうしたよ。こんな所で』

ハナ『……この世界、凄いですも。きっと、そーとーカガクギジュツの発達した世界だったんですも』

メツ『まぁ……そうだろうな。俺でさえ全部を理解する事は出来ねぇよ』

ハナ『なのに、こんなに壊れちゃってるですも。どうしてですも?』

メツ『さぁなぁ……だが、もしかしたら。これが人の業って奴なのかもしれねぇな』

ハナ『ごう?』

メツ『前に亀の野郎が言ってたろう。人間、余裕が出来ると余計な事を考えるってな』

メツ『きっとこの世界の連中は、余裕が出来すぎちまったのさ。もっともっとが過ぎて、壊れちまった』

ハナ『……よくわからないですも』

メツ『そうかい。そりゃ良かった』

ハナ『…………』



ハナ『……ハナも、壊しちゃうですも?』

メツ『あ?』

ハナ『ハナも、カガクギジュツの結晶ですも。なら、その内この世界と同じように――』

メツ『…………』

ハナ『……いつか、ハナもご主人やアルストの世界を壊しちゃう日が、来るのかな……』


メツ『……フ、はっはっはっはっは! そうかい、世界を壊しちまうか! はっはっは!』

ハナ『?』

メツ『この天の聖杯を前にそんな大言吹かすたぁ、あのメイド狂いもとんだモンを生み出したもんだなぁ。ええ?』ガシガシ

ハナ『ももももも』グルングルン

メツ『いいぜ、もしそうなったら俺がぶっ壊してやるよ。そんでその破片をメイド狂いのとこに持ってきゃすぐに元のお前に直してくれんだろ、それで終いだ』

ハナ『メツ……じゃあ、ハナもメツがそうなったら、同じコトして助けますも!』パタパタ

メツ『ああ、楽しみにしてるぜぇ。ハハハハハ』



メツ『……ま、ぶっ壊すだ何だはともかく、互いが助けて欲しい時に助ける――約束としちゃそれでいいだろ。戻るぞ』スタスタ

ハナ『約束? なら、これするですも。これ!』ピョンピョン

メツ『あ? 何だそりゃ、ハイタッチか?』

ハナ『ご主人に教えてもらった、ノポン流約束のギシキですも。メツ、やりますも』

メツ『誰がやるかよ、バーカ』スタスタスタ

ハナ『あ! メツー! メツー!』タタタタ


~~~~


シン『…………』

メツ『……成程。だから人類抹殺ってか』

シン『少年、天の聖杯。お前達はそれでも尚、人間の味方をするというのか……?』

レックス『……確かに、マルベーニのした事は許されない事だと思う。でも、それであんたらのした事が許される訳じゃない』

シン『…………』

レックス『……あんたの目はさ、哀しすぎるんだ。まるで、初めて逢った時のメツみたいに』

レックス『あれは――消えたいと願ってる人の目だ』

シン『……面白いことを言うな、少年』

レックス『だから、止めるよ。絶対に』

メツ『……だとよ。ガキだろ、コイツ』

シン『ああ――全くだ。だが……』

カグツチ『シン……』


シン『――俺は、止まれん。邪魔をするのなら、今度こそ――』

レックス『止めるって。その覚悟は、決めてるよ――』


~~~~

~ 世界樹外郭 ~


マルベーニ『総てのブレイドは、私の手中にある。それは天の聖杯も同じ事』

メツ『ぐおおおおっ……!』ギ…ギギギ

レックス『メツ! もうやめてくれ、シンは俺達が止める! だから……!』

マルベーニ『……君の言う事は支離滅裂だな。止めるからこそ、今叩かねばなるまい――』


デバイス『――――』キィィィ…


ハナ『ものすごいエーテル反応を感じますも、このままじゃ……!』

トラ『イーラの船、おっこっちゃうも――もももぉ!?』カッ!


ズドォォォン…!


トラ『……も?』

ニア『は、外した……?』

マルベーニ『……この期に及んで私に抗うか。天の聖杯……!』

メツ『ったりめぇだろ……! 俺のドライバーはテメェじゃねぇ!』


メツ『俺は――小僧のブレイドだッ――!!』


~~~~


~ 軌道エレベーター前 ~


シン『…………』ピタ

ヒカリ『……シン?』

シン『ここから先は、一人で行ってくれ』

ヒカリ『! ……それで、いいの?』

シン『あぁ。俺はここまでだ。ここで、奴らを待つ。』

シン『いや――待てと、言われた』


ラウラ『…………』


ヒカリ『……そこに居るのね? あなたの心臓』

シン『…………』

ヒカリ『…………ッ』ツカツカツカ

シン『……ヒカリ? どうし――』グイッ


『・・・・・・・・・』


ヒカリ『……フン。精々悔しがりなさい、クソ幽霊』バッ

シン『……、……』

ヒカリ『じゃあね! バカ!』ダッ



シン『……まったく』

シン『俺には、勿体無い女だ――』


…………

……




~~~~


レックス『…………』

ニア『…………』

メツ『……おい。これから鉄火場だってのに、そんなシケた面してんじゃねぇよ。気が萎む』

レックス『あぁ、それは分かってるけどさ……』

ニア『……なぁ、メツ』

メツ『何だ』

ニア『シンは……頑張ったよな?』

メツ『…………』

ニア『シンだけじゃない。サタヒコも、ベンケイも、ヨシツネも。みんな……頑張ってたよな?』

メツ『……ああ、そりゃもうメンドクセェ程に気合入った連中だったよ』

ジーク『ついでにマルベーニもなぁ……きっとそうだった筈なんや、アイツも……』

サイカ『王子……』

レックス『……シンは、ヒカリを頼むと言った。なら、俺達も頑張ろう』


レックス『――止めるんだ、ヒカリを!』


~~~~

~ 楽園 ~


レックス『うおおおおおおおおッ――!』

ヒカリ『はあああああッ――!』


アイオーン『――――』キィィン…!


レックス『ぐッ……うわああっ!』ドガン!

ニア『レックス!』ダッ

メツ『ああクソッ! メンドクセェもん持ち出しやがって、畜生が!』

メレフ『だが、所々火花を吹き始めた。攻撃は確実に効いている!』ガィン!


ヒカリ『……どいつもこいつも、邪魔ばっかり。いい加減、鬱陶しいにも程がある……!』

レックス『もうやめろよ、ヒカリ! 分かってるんだろ!? 君のその衝動は、マルベーニの――』

ヒカリ『だとしても、私にはもうこれしかないの! イーラもシンもみんな失ったのに、諦める事なんて出来ない!』

ヒカリ『その為に頑張ってきたの、私達はッ――!』


アイオーン『――――』グオォォォ!


レックス『シンに言われたんだ! ヒカリを頼むって!』

ヒカリ『!』

レックス『シンだって本当は消えたかったんじゃない! 道を示してくれた君に、命を――』

ヒカリ『うるさい!』ゴォッ

レックス『ぐっ――!?』

ヒカリ『例えそうだったとしても、もう数え切れないくらい人が死んでるの! 許せないでしょ、あなたも!?』

ヒカリ『だったらもう、言葉だけじゃ意味がない。見せてみなさい、私にあなた達の精神《こころ》を――意思を!』

レックス『ヒカリ……!』

メツ『……そうかい、なら目ン玉カッ広げて見ろやぁ! 俺達の姿をよぉ!』

レックス『おおおおおおッ―――!!』


…………

……


~~~~

~~




アイオーン『――――』バチバチ


ヒカリ『……負けちゃった、かぁ……』シュゥゥゥ…

レックス『……ヒカリ……』

ヒカリ『何……へこんでるのよ。あなた、私に勝ったんでしょう……もっと嬉しがりなさいよ……』

レックス『でも、俺……』

ヒカリ『あーあ……でも、楽しかった。私……』

ヒカリ『もし、もっと前に出会って、あなたと同調できてれば――道は、違ったのかな……』

レックス『…………』

ヒカリ『冗談よ、私のドライバーはあの男。今更……どうしようも、ない』

メツ『……災難だったな、お前も』

ヒカリ『いいえ、そんな事……無い。だって、数百年も彼と一緒に居られたもの』

ヒカリ『だから……絶対、悪く……な――』


シュゥゥゥゥ…


トラ『……もしかして、ヒカリってシンの事が……』

メツ『やめとけ。言葉にしちゃいけねぇよ、これはな』

レックス『…………』


ゴゴゴゴゴ……!


ジーク『おわっ!? 何やこの揺れ、地震か!?』

カグツチ『ここは空の上よ。ありえないわ』

メツ『――ッ! まさか……!』ヴゥン ピッ ピッ

ニア『どうしたの? 何か分かった?』

メツ『……最悪だぜ。世界樹が崩落しかけてやがる……!』

レックス『はぁ!? 何で――って、まさかクラウスさんが――』

メツ『ああ、逝ったんだろうよ。ついでにゲートも消えて、力場も消えやがったんだ。メンドクセェ……!』

ジーク『ならこんな所とはオサラバや! とっとと逃げるでぇ!』

メツ『ああ……だが、これは――』

メツ『…………』

レックス『……メツ?』


メツ『いや、何でもねぇ。こっから5階層下がった所に脱出ポッドがある。それでアルストまで降りるぞ!』

トラ『わ、わかったも! みんな、早く行くも~!』トトトト

レックス『あ、ああ!』タタタタ

ハナ『はいですも! ハナ、ジェットモ――』ガシッ


メツ『…………』

ハナ『……も?』プラーン

じっちゃん『わ、ワシもか……?』プラーン

ハナ『メツ、どうしたですも? 逃げないんですも?』

メツ『……ああ。お前らに、頼みてぇ事があるのさ――』


~~~~


レックス『ここが脱出ポットのある場所か!』ウィーン

ジーク『おお、ぎょーさんありよるのお……で、どれに乗ったらええんや』

トラ『うーん……触れば分かるかもだけど、パッと見じゃ分からないも~……』

レックス『メツ、どうすればいいんだ? ……メツ? あれ?』

メレフ『姿が見えないな。どこに行った……?』

ハナ『…………』


メツ『――右奥の手前、三番目。それが問題なく動くポッドだ』

レックス『メツ……? 何でそんな離れた所に居るんだよ! 早く来いよ、危ないんだろ!?』

メツ『ああそうさ、危ねぇんだよ――っと!』ガッ!

ドガァン!

レックス『うわあっ!? ば、爆発!?』

ニア『一体何が――って、は……橋が落ちてるよ! メツがまだ渡ってないのに!』

メツ『良いんだよ、これで!』

レックス『何が良いんだ! どういうつもりだよ!?』


メツ『……悪ぃな。この施設、残しとくとアルストにバラバラ落ちて、ちぃとばかりシャレになんねぇ事になる』

トラ『えっと、どういう事だも?』

メツ『平たく言えば、殆どのアルスが瓦礫で潰れて死ぬ。何とかしねぇと大惨事だぜぇ? はっはっは』

ビャッコ『……成程、それをどうにかしに行くという事ですか』

レックス『でもっ、だからって残る必要ないだろ!? こんな事してまで!』

メツ『アホ。必要があるからやってんだ』

メツ『アイオーン……それがダメなら消滅の力を暴走させて、世界樹ごと消し去る。どっちにしろ俺が不可欠で、唯一の方法だ』

カグツチ『……何で言わなかったの? こんな騙し討ちみたいな形で……』

メツ『……帰っては、来れねぇんだ。こうでもしねぇと、心中しに来るガキが一人居るだろ?』

レックス『そ、そんな……!』



レックス『くそっ! だったら無理矢理にでも行ってやる! アンカーショット!』パシュッ

キュルルルル…ル…

ジーク『ダメや。ワイヤーが足りひん……!』

メツ『届かねぇよ。計算してるに決まってんだろ』

レックス『な、ならハナ! 前みたいに、俺を運んで飛んでくれ!』ガシッ

ハナ『……ぅ……うぅ……』

レックス『ハナ……?』

メツ『ハハハハハ! ああ――上出来だぜ』

レックス『まさかメツ、予めハナに……』

ハナ『約束なんですも……だから、だから……!』ポロポロ

レックス『……ッ! じゃ、じゃあスザク! じっちゃん!』

スザク『風が乱されてやがる。メツが何かをしたな』

じっちゃん『…………』フルフル

レックス『くそぉっ! なぁ、何だって良いんだ! 俺をメツの所まで……!』

ニア『レックス……』


ガシャン…! ガラガラガラ…


メツ《……もう、持たねぇな。こりゃ》

メツ『…………』パァァァ…

レックス『え――な、何だ? コアクリスタルが……』

ニア『ヒカリみたいな、完全な形に戻った……?』

メツ『小僧! お前、モルスの断崖で言ったよなぁ! 俺の全てを託せって!』

レックス『あ、ああ! 言った!』

メツ『――それが俺の全てだ! ゲートは消え、アイオーンもこれから消える。俺が居なくても、今なら抱えられんだろ!』

メツ『それに……それでお前は完全なブレイドイーターだ。マンイーターと同じ時を生きられる!』

ニア『メツ、アンタ……!』

レックス『メツ――』


メツ『オラ、行けよ! 男なら、一人で立ってみせやがれ――レックス!』


ドガァァァン!


トラ『も、ももも~!?』

サイカ『爆発!? メツは……』

ビャッコ『……行ったようですね、一人で……』

メレフ『…………』



レックス『……行こう、皆』

ニア『え……い、いいのか?』

レックス『ああ、メツの想いを無駄にする訳にはいかない。それに……ハナの覚悟もね』ポン

ハナ『レックス……』

ジーク『ほな行くでぇ! 降ってくる瓦礫に押し潰されるなんてメツに顔向けできん事すんなや!』タタタ

トラ『ジークにだけは言われたくないも~……!』タタタタ


ニア『ほら、レックスも早く!』

レックス『ああ……』


レックス《……ありがとう、メツ。行くよ、俺……!》


タタタタ……


…………

……




~~~~


アイオーン『――――』


メツ『フン……あんだけやられてまだ動くかよ。丈夫だな、コイツも』ピッピッピッ


【5:00:00】


メツ『よし、これでいい。これで、全部……』ピッ

メツ『あいつらは――無事か。チツ、何まごついてやがんだ、機械音痴どもが』

メツ『ったく……最後の最後まで、メンドクセェ――』フッ


メツ《……レックス。お前に出逢えた事、中々どうして悪か無かったぜ》

メツ《呆れる程に永い永い時の中、こんなにも高鳴った時間は他に無かった》

メツ《ああ、そうだ。本当に――楽しかったんだ》


――ねぇ、生まれてみて……どうだった?


メツ『……ハッ! そんなの、当然――』


…………

……




~~~~


レックス(……それから、メツは帰ってこなかった)

レックス(アルストに戻って、じっちゃんがでかくなって、大地が再生されて。他にも色んな事があったけど、そこにメツの姿は無い)

レックス(コアクリスタルは俺の胸にあるのに……もう、その存在を感じられる事は無いんだ)

レックス(…………)

レックス(寂しさ……とも、ちょっと違う感覚。それは最初の日、ヒカリ達と初めて会った時に感じた違和感と少し似ていた気がした)

レックス(今思えば、あれって何かの予兆だったのかな――)




ニア「おーい、レックス! ちょっと――って、何やってんだよ、そんな所でボーっとして」

レックス「ああ、いや。ちょっと考え事をさ」

ニア「……メツの事? やっぱ思い出しちゃう?」

レックス「まぁね。コアクリスタルもここにあるし、まだ実感わかなくってさ……」

ニア「そうだな……案外、ひょこっと帰ってくるかもな。なんたって天の聖杯だし、何でもありじゃん?」

レックス「はは、そうだな。そうだったら、嬉しいな……」

ニア「うん……」

レックス「……で、なんか用? 探してたんだろ、俺のこと」

ニア「あ、そうだった。新しいサルベージポイント見つけたからさ、ちょっとどんな具合か見て欲しいんだ」

レックス「お! なるほど分かった、すぐ準備するよ!」ウキウキ

ニア「まったく、楽園は見つけられたってのに、サルベージ好きは変わんないねぇ。アンタも」

レックス「そりゃね。世界樹は勿論、アルス達もああなったから雲海も色々変化してて、毎日新しい発見があるんだぜ! それに――」

ニア「それに?」

レックス「……いや、なんでもない」

レックス(もしかしたら、沈んだアイオーンを見つけられるかもしれないとか……言ったらまた呆れられそうだからな)



レックス「っていうか、ニアだって熱中してるだろ? 今だって新しいポイント見つけてきたじゃないか」

ニア「ま、まぁ……これからずっと一緒のヤツの好きな事、深く知っときたいし……」ゴニョゴニョ

レックス「よっし、スーツ装着! 行こうぜ、ニア!」タタタ

ニア「あ、ちょっと待てって! アタシより先に行ったって分かんないだろ! おいってば!」タタタ


レックス(――メツ。この世界を守ってくれてありがとう。本当に感謝してる)

レックス(俺、やっぱりまだまだ頼りないかもしれないけど、あんたから託された物――これからも抱え続けてくよ。皆や……ニアと一緒にね)

レックス(だからさ、見ててくれよな。ずっと、ここでさ――)


コアクリスタル『――――』キラン




  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄○ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
           O 。
                 アルヴィース
________    /,/\ヾ\   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
|__|__|__|_   __((´∀`\ )< という未来視だったのサ
|_|__|__|__ /ノへゝ/'''  )ヽ  \_________
||__|        | | \´-`) / 丿/
|_|_| 从.从从  | \__ ̄ホムラ⊂|丿/
|__|| 从人人从. | /\__/::::::|||
|_|_|///ヽヾ\  /   ::::::::::::ゝ/||
────────(~~ヽ::::::::::::|/        = メツブレイド 完 =



おつ
レックスとメツならうしおとらのような関係が一番しっくりくるな

おつー

乙ですも

メツブレイドもいいけど一人称私の紳士的なガチムチマッチョな第二人格も見てみたかったですも

なんか本編よりこっちの方が綺麗にまとまってるな
パーティに頼れる兄貴成分少なかったし
ヒロインは一人の方がいい



本編の矛盾や違和感をうまいセリフ回しで解消してるな、最初の出会いで楽園に行く理由を明確にしたり、じっちゃんまわりとか
メツブレイドはよ

名作なんだよなぁ

また読んでしまった。メツブレイドもエエなぁ…

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