にこ「モテモテになる呪い?」 希「うん」 (23)


にこ「なんで呪いなんて物騒な言い方するのよ。モテモテになるっていい事じゃない」

希「言い方なんてなんでもええやん。とにかく、にこっちにその呪いを掛けておいたから」

にこ「ぬぁに勝手な事やってんのよ! ・・・だけどねぇ、そんな呪い意味ないわよ。なんたってスーパーアイドルのにこにぃわぁ、既にモッテモテの―――」

希「明日から変化があると思うから楽しみにしててね。ほな~」スタコラ

にこ「最後まで聞きなさいよ!」



にこ「・・・・・まったく。なんなのよ、モテモテになる呪いって。ほんっと胡散臭いんだからあいつは」








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翌朝 通学路


にこ(モテモテになる、か)

にこ(・・・・・なに気にしてんのよ私は。昨日は希にちょっとからかわれただけじゃない。なんの前触れもなくいきなりモテモテになるなんて、そんな非科学的な事起こる訳ない)

にこ(今日はいつも通り学校行って、いつも通り過ごすだけよ。気にしない気にしない)


にこ「・・・・・・」

にこ「・・・・・・」ソワソワ


にこ(あーもうっ・・・。ちょっと楽しみにしている自分がムカつく・・・)

にこ(さっさと学校いこっ)スタスタ



 真姫「・・・・・・」テクテク

にこ「あっ」

真姫「ん? あっ」

にこ「おはよう」

真姫「おはよ」カミノケクルクル

にこ「一緒に行こう」

真姫「んっ」


にこ「・・・・・・」テクテク

真姫「・・・・・・」テクテク


にこ「・・・・ね、ねえ」

真姫「何?」

にこ「その・・・なんていうか・・・。真姫ちゃん、にこの事どう思う?」

真姫「どうって何よ」

にこ「例えばよ。例えば・・・。にこにーの傍にいると、こう・・・胸ドキドキするっ! みたいな?」

真姫「別に」カミノケクルクル

にこ「そ、そう・・・・」


にこ「・・・・・・」テクテク

真姫「・・・・・・」テクテク


にこ(なによ、いつも通りじゃない。やっぱり呪いなんてデタラメね)

にこ(はーあ。少しでも期待した私がバカだった)




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学校


にこ「それじゃまた」

真姫「んっ」

にこ(さて、三年生の教室に―――)


   タッ タッ タッ タッ タッタッ

 < にっこちゃーん!!


にこ「えっ?」クル

ガバッ

にこ「きゃあ!? り、りんっ?!」

凛「にこちゃんにこちゃんにこちゃんにこちゃーん!」頬スリスリスリ

にこ「ちょっ、ちょっとなんなのよっ?!///」

凛「あのね、あのね、凛ね、凛ね、にこちゃんの事が、だーいすきにゃ!」ギュウ

にこ「分かった分かったから/// ちょっと離れなさいって」

凛「やだっ」


花陽「にっ・・・にこちゃん!」

にこ「あら、花陽。おはよう」

花陽「おはっ、お、おはようございまっす・・・」モジモジ

にこ「? どうしたの?」

花陽「あ、あのっ、そのぉ・・・。花陽ね、にこちゃんとっ、で、デーt・・・いっ、一緒にアイドルについて語らいたいと思いましてっ!」

にこ「どうしたのよ、そんなに緊張して。花陽とならいつだってかまわないわよ」

花陽「はぅぅぅ//// 嬉しいです~///」クラクラ

にこ「そ、そう/// そんなに喜ばれると私も嬉しいわ///」


ヒフミ「「「矢澤先輩!」」」

にこ「へっ? あ、ああ、貴女達は確か二年の」


ヒデコ「きゅ、急にすいません」

フミコ「今はプライベートだとは思うんですが・・・」

ミカ「私達やっぱりどうしても矢澤先輩のサインが欲しくて!」

ヒフミ「「「お願いします!」」」ペコッ

にこ「う、うん、い、いいよ」サラサラ

ヒフミ「「「きゃー!/// ありがとうございます!!」」」ピョンピョン

ミカ「あ、あの、あ、握手しても・・・いいですか?」

にこ「いいよ。いつもライブ手伝ってくれてありがとう」ニコッ ギュ

ミカ「わああ!/// 私もうこの手一生洗わない!」

ヒデコ「あっ、ずるい! 私も私も!」


 一年生「みてみて! あそこに矢澤先輩がいる!」

 二年生「うそうそっ?! わわっ、本当だ! あっ! こっち見たわよ! わーっ!/// きゃー!///」


にこ「な、なんなのかしらこれ」ポカーン

にこ(・・・・・・でも、悪い気はしないわね)

にこ「へっ、ふへっ」テレテレ



---------------
三年生教室前


にこ「ほらっ、凛は一年生でしょ。もう離れて自分の教室に行きなさい。遅刻するわよ。花陽も」

凛「うーっ・・・。わかったにゃ・・・。また後でねにこちゃん!」タタッ

花陽「にこちゃん! 楽しみにしているから!」


にこ「はいはい。またね」




  一年生「・・・・・・」キョロキョロ

にこ(? あの子。私のロッカーの前で何してるんだろう)


  一年生「・・・・・・」...カチャ ...スッ

  一年生「・・・・・・」...パタン タッタッタッ


にこ「・・・・・」

にこ(・・・・私のロッカーに何か入れてどっかに行っちゃった。何なのかしら)


にこ「・・・・・・・」カチャ キィ

にこ「わっ?! な、なにこれ?」

にこ(手紙? がたくさん入れられてる・・・?)ピラッ

にこ(ちょっと読んでみよう)カサ

にこ(わぁ。オシャレな便箋。気合入ってるわね~。なになに?)


手紙『大好きです私のお姉さまになってください云々』


にこ「へっ?///」

にこ(ファンレター・・・? というより、ら、ラブレターってやつからしらこれは・・・・・///)

にこ(えっ、この手紙の山、全部ラブレター・・・? ・・・ふっ。にゅふふ///)ニヤニヤ

にこ(お母様。矢澤にこ、苦節18年にしてようやくラブレターをもらいました)

にこ(しかもこんなにたくさん! ふっ、ふふっ、にーっこっこっこ! モテ期到来!!!)




絵里「にこ」

にこ「ひゃ?! な、なんだ、絵里。おはよ」

絵里「ええ、おはよう。ねえ、にこ。その手紙は何?」

にこ「ああ、これ? いや~実はさぁ。これラブレターなのよねぇ。しかもこれ全部! うふふっ、にこにぃ~わぁ、み~んなのモノなのにぃ、困っちゃうわ~、ふふっ、ふふ」クネクネ

絵里「へえ。確かにそれは困るわね」スタスタ ズイッ

にこ「な、なによ?」タジッ

絵里「にこ。その手紙にはこう返事しなさい」ズイッ 壁ドンッ

にこ「きゃ?!///」

絵里「 “好きって言ってくれてありがとう。でもごめんなさい。私にはもういちばん大好きな人がいます。それは同じ三年の―――” 」顎クイッ

にこ「?!////」ドキッ

絵里「あ・や・せ え・r」顔近づけ

にこ「あっ/// あっ/// うっ、あっ、にっ、にこにーはみんなのモノだからだめなのおおお!」脱兎

絵里「あら、逃げられちゃった。ふふふ。カーワイイ♪」






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放課後


にこ「はぁ/// はぁ///」フラフラ

にこ(朝からずっと色んな人に迫られて・・・・/// こんなの慣れていないからさすがに疲れたにこ・・・)

にこ(少しでいいから、どこかで休憩したい)




  <愛してる~ばんざ~い  ――♪


にこ(あっ、真姫ちゃんの声だ)


  <ここでよかった~  ――♪


にこ(相変わらずいい声に綺麗なピアノ。音楽室かな。ちょっと行ってみよう)




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音楽室


真姫「~~♪」

 カラカラ

真姫「にこちゃん?」

にこ「ちょーっと失礼するわよ」

真姫「?」カミノケクルクル

にこ「ねぇ、聞いてよ真姫ちゃ~ん。モテモテにこにーがひとたび歩くと、あっちできゃーきゃー、そっちでもわーわーの大騒ぎでね~。もう心休まる暇もなくってぇ~。一瞬でみんなをメロメロの虜にしちゃう大銀河宇宙No.1アイドルの辛い所ねー。そんなんで、ちょっと疲れからここで休ませてもらおうと思ったの」

真姫「そう」

にこ「この調子じゃ明日からタクシー通学しなきゃダメかな~~」

真姫「いいんじゃない」

にこ「そうだね~」


真姫「・・・・・・・」

にこ「・・・・・・・」


真姫「・・・・・・・」

にこ「・・・・・ねえ」

真姫「何?」

にこ「その・・・真姫ちゃんはなんともないの? この超絶美少女にこにー様を目の前にして落ち着かなくなったりとか、ラブレターを渡したくなっちゃったりとか、デートに誘いたくなったりとか。遠慮しなくてもいいのよ?」

真姫「今朝もそんなこと言ってたわね。別になんもないわよ」

にこ「本当に? ほんと~に無いの? ちょっとくらいあるでしょ! 今日のにこちゃんはいつもと違うなーとか! にこの傍にいて何か思った事ないっ?」ズイッ

真姫「思った事って言われても・・・」

にこ「ん~?」

真姫「ま、まあ・・・その・・・」

にこ「その?」ズズイッ ワクワク

真姫「しいて言うなら・・・」

にこ「しいて言うなら?」


真姫「今朝会った時、髪ちょっと短くしたんだ、とは思ったけど」


にこ「へっ? 髪?」

真姫「うん」

にこ「最近はまだ髪切ってないけど」

真姫「ふーん」

にこ「ふーん、て・・・。えっ? それだけ?」

真姫「そうだけど。って言うか、そっちこそなんなのよさっきから。鬱陶しいわよ」

にこ「なっ?! ウルトラセクシーダイナマイトにこにこプリティ大統領がせっかく声を掛けてあげたってのに鬱陶しいとは何よ!」

真姫「にこちゃんが鬱陶しいから鬱陶しいって言ってるの」

にこ「かっちーん! せっかく真姫ちゃんをにこにーハーレムに加えてあげようかと思ってたけど、やーめた!」

真姫「なにそれ意味分かんない。そんなのこっちからお断りだわ」

にこ「んっもう! 別にいいよっ、これからみんなでカラオケ行く約束あるからにこは行くけど、真姫ちゃんなんて知らないから! じゃあね」タッタッタッ

真姫「・・・・・・」








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翌朝 通学路


にこ「ふぁ~・・・・」

にこ(昨日はワイワイとたくさん人に囲まれて結構遅くまで過ごしちゃったからまだ疲れが残ってるわね)

にこ(でも今日もがんばらないと! それがみんなに愛を届ける矢澤にこにこの宿命だから!)



 凛「にゃ、にゃ、にゃん」タッタッタッ
 
 花陽「りんちゃんまって~・・・」



にこ「あっ、りーん、はなよー」

凛「あっ、にこちゃんだ! おっはよー」

にこ「おはようっ」バッ

凛「? どうしたの? すしざんまいみたいなポーズを取って」

にこ「え? どうって・・・」


 真姫「・・・・・・・・」テクテク


凛「あっ! 真姫ちゃんだ!」タタッ ガバッ

真姫「きゃ?! り、りん!」

凛「真姫ちゃん真姫ちゃん真姫ちゃんまっきちゃーん!」頬スリスリ

真姫「ちょ、や、やめなさいって」

花陽「真姫ちゃん、おはよう」

真姫「おはよう」

花陽「ねえ、真姫ちゃん、昨日の英語の宿題やってきた? ちょっと自信なくて」

真姫「やってきたわよ。後で答え合わせしましょ」

凛「本当?! 答え合わせしよう!」

花陽「凛ちゃん。人のやってきた答えをただ写す事は、答え合わせとは言わないんだよ」

凛「にゃははー・・・」


にこ「あ、あれ・・・?」ポツーン





---------------
学校


凛「それでさー、あそこのラーメン屋さんがさー」

花陽「うんうん」

真姫「・・・・・・・」テクテク

にこ「・・・・・・・」テクテク


凛「あっ、もうこんなところまで来ちゃった。にこちゃんじゃあね。真姫ちゃんかよちん、教室行こうっ」

にこ「えっ? あ、あの、ちょっと!」

凛「どうしたにゃ?」

にこ「えと、その・・・。あっ、そうだ、は、花陽っ」

花陽「?」

にこ「今日の放課後に、アイドルについて語り尽くさない?」

花陽「今日の放課後? ご、ごめんなさいっ。今日は凛ちゃんと遊ぶ約束してて・・・」

凛「そうだよにこちゃん。凛のかよちん取っちゃ、めっ、にゃ」

にこ「そ、そっか・・・・」

花陽「また今度に是非!」

にこ「わ、分かったわ。そうする」


  まきりんぱな「~~~~」テクテク


にこ「・・・・・」ポツーン

にこ「・・・・・」キョロキョロ


 一年生「先輩! 今日も可愛いですね!」

 二年生「な、なによっ/// 褒めたって何にも出ないわよ///」


にこ「・・・・・・」


 ヒデコ「ねえねえ、昨日発表のA-RISEの新曲聴いた?」

 フミコ「聴いた聴いた! せつない愛の歌だったよね~。もう胸がキュンキュンしちゃった」

 ミカ「演出もすごかったよね。今度の穂乃果たちのライブの参考にしよ」


にこ「・・・・・・」 ....トボトボ





---------------
三年生教室前


にこ「・・・・・・」カチャ

にこ(・・・・・いつもの私のロッカー。ラブレターなんて入ってない)


 <わーっ きゃー


にこ「はっ」

にこ(この歓声は・・・。よしっ・・・!)クルッ

にこ「コホン みんなおまたせーっ! みんな大好きにこにーだーー・・・よっ・・・・・?」



 二年生「絢瀬先輩! チョコレートが好きだって聞いたので、手作りチョコを持ってきました! 食べてください!」

 絵里「あら、ありがとう」

 一年生「生徒会長様! あ、あの・・・/// こ、この手紙読んでくださいっ!!///」

 絵里「ええ、後で読んでおくわ」

 <絵里せんぱーい こっちみてー!
 <きゃー♪



にこ「・・・・・」 ...シュン

にこ「・・・・・・・」 ...トボトボ

絵里「あっ、にこじゃない! にこー! おはよー!」ブンブン

にこ「・・・・あ、う、うん。おはよう。・・・アンタも毎日毎日後輩達に囲まれて大変ね」

絵里「大変なんてそんな。みんな応援してくれているんだから、とても嬉しい事よ」

にこ「・・・そうね」


取り巻き「・・・・・」ジロ-ッ


にこ「は、はは・・・・」

にこ(愛しのエリチカお姉さまといつまでも話さないで、・・・っていう空気ね)

にこ「じゃ、じゃあ、私はこれで・・・」スタスタ

絵里「ええ、またね」






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放課後


にこ「はぁ・・・・」 ....トボトボ


にこ(昨日は何もしなくても色んな人が私に好きって言ってくれた。近くにいるだけで嬉しいって言ってくれた。それなのに・・・今日は誰も私に見向きもしない。だからこうして私一人で寂しく過ごしてる・・・)

にこ(昨日のあれはなんだったの・・・? 夢でも見てたのかな・・・・? い、嫌・・・そんなの嫌・・・。またみんなから好かれたい。どうしたらまたみんな私を好きになってくれるのかな・・・?)


にこ「うーん・・・・・」


にこ(そもそも好きってなんだろう・・・? 分かんないや・・・・)

にこ(分かんないのに、今まで私って、好きだの愛だのの歌を聴いたり歌ってたの?)

にこ(なんかすごくむなしい・・・寂しい・・・悲しい・・・。なんで、なんで・・・こんな嫌な気持ちにならなきゃならないの・・・?)





希「やっほ。にこっち」


にこ「・・・・希?」

希「どしたん。やけに暗いやん」

にこ「・・・・・っ」グッ ダンッ

希「わっ?! ちょ、ちょっと、なんなん?」

にこ「アンタ・・・!」

希「怒ってるの?」

にこ「私に何をしたのよ!」

希「だから言ったやん。モテモテになる呪い」

にこ「ああ! 確かに呪いだったわ! 昨日はモテモテだったけど今日になったら昨日の事はみんな覚えてないみたいで・・・! そのせいで私、凄く辛いんだけど! やっぱり私って、誰からも好かれていなかったんだ・・・これが現実、私はアイドル向いてないのかな・・・とか、嫌な事一杯考えちゃって・・・! ほんっと恐ろしい呪いね! アンタは軽いイタズラのつもりだったのかもしれないけど、私は・・・!」

希「まあまあ」

にこ「なんで・・・なんで、中途半端に夢を見させて、いきなり辛い現実を突きつけるようなことすんのよ!」

希「呪いの効力があるのは一日だけだから」

にこ「だったら! 毎日その呪いを私に掛けなさいよ!」

希「それはできるけど。にこっちは本当にそれでいいの?」

にこ「はあ? なにがよ!」

希「いいの?」

にこ「っ・・・・・・」


希「・・・・・・」

にこ「・・・・・・」


にこ「・・・・・やっぱいいわ」

希「そか」

にこ「私がみんなから好かれないのは自分が原因だもの。それを自分でなんとかしないで呪いに頼っても、得られるのは偽物の好き。そんなのあったって、余計にむなしくなるだけよ、きっと」

にこ「・・・・ごめん、掴みかかったりして」

希「ええんよ」



にこ「・・・・・・」

希「・・・・・・」


にこ「・・・・・帰る」

希「うん、また明日」


にこ「・・・・・」 ....トボトボ

希「ねえ、にこっち」

にこ「・・・・・」

希「あの呪いね、正確に言うとにこっちがモテモテになるんじゃなくて、にこっちの周りの人が理想としている『愛情表現』をにこっちにしたくなる、ってだけなの」

にこ「・・・・・・それが何?」

希「ううん、大したことじゃないんやけど。例えばさ、『愛情表現』を知らない人がいたとして、その人が呪いに掛っているにこっちと接したらどうなるんかな~、って思って」

にこ「さあね。いつも通りなんじゃないの。じゃあね」スタスタ

希「せやね。ふふっ」






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矢澤宅


にこ「ただいま~・・・」

こころ「お姉さま! お帰りなさい! あの・・・ちょっと悲しいお知らせが・・・」

にこ「えっ? どうしたの?」

こころ「これを見てください・・・。今日掃除をしていたら出てきて・・・」スッ

にこ「これは髪の毛?」

こころ「はい・・・。これはお姉さまの髪です。実は昨日、寝ているお姉さまの前髪を虎太郎が勝手に切ってしまったようで・・・」

にこ「ええっ?!」

こころ「ここに鏡があります。見てください」

にこ「今朝鏡を見た時は全然気が付かなかったけど、どれどれ・・・」ジーッ

にこ「んっ? えっ? 虎太郎はどこを切ったの?」

こころ「ここ。ここです」

にこ「あー・・・。本当だ。言われてみれば、ここだけちょっと乱雑に切られているわね。まあ、これくらいならすぐに整えられるからいいわ」

こころ「それなら良かったです。なんで髪を切ったのか虎太郎に聞いたら、髪が目に当たってて痛そうだったから、だそうで。でも、女性の髪はとても大切な物だから勝手に切ってはいけないと、私からは厳しく叱っておきましたよ!」

にこ「そう。でも、虎太郎も悪気があったわけじゃないんだから程々にね。それと、まだ一人ではさみを使わないよう言っておかないと」

こころ「そうですね」



にこ「でも本当に良かった。切られた髪がちょっとで。自分でも気付かなかったぐらいだし、誰も気付いてないわよね」

にこ「・・・・・・・・・・・・・あっ、そういえば昨日―――」



~~~~~~~~~~~~~~~~

真姫「今朝会った時、髪ちょっと短くしたんだ、とは思ったけど」

~~~~~~~~~~~~~~~~



にこ(えっ? う、うそっ。真姫ちゃんは気付いてた? なんで? 偶然? いや、でも、だって・・・こんな些細な事、毎日私の事をよほど注意深く見てなければ気付くわけないし・・・)

にこ「・・・・・・」

こころ「お姉さま?」キョトン


にこ(真姫ちゃんは私の事をずっと見てた・・・? どうして・・・? もしかして私の事を・・・? いやいや何自惚れているのよ私は・・・。今日現実を突き付けられたばっかりじゃない・・・。私はそんなに簡単に人から好かれる人間じゃないの)

にこ(特に真姫ちゃんからはそう。真姫ちゃんは初めて会った時からずっと、私に対しては無愛想だし。何かと突っかかってくるし。それに、私が呪いに掛ってもなお、真姫ちゃんはいつも通りだったし)

にこ(・・・・・いつも通りだった―――)



~~~~~~~~~~~~~~~~

希「『愛情表現』を知らない人がいたとして、その人が呪いに掛っているにこっちと接したらどうなるんかな~」

にこ「さあね。 “いつも通り” なんじゃないの」

~~~~~~~~~~~~~~~~



にこ「・・・・・・えっ?」

にこ(真姫ちゃんは “いつも通り” にすることしか『愛情表現』を知らないとしたら・・・・・・・・・・・)

にこ(えっ? えっ? ま、待って待って! だとしたら、呪いとか関係なく、真姫ちゃんはずっと前から私の事・・・)


    トクンッ




にこ「えっ、う、うっそ/// や、やだ//// はっ/// はぁ////」 ...ヘナヘナ ペタン

こころ「お姉さま?! へたり込んでしまってっ、どうしました?! どこか具合が・・・?」オロオロ

にこ「だっ、大丈夫っ。だいじょうぶだから・・・。はぁ、うっふっうぅ///」トクン トクン

にこ(な、なにこれ/// 息が整わない//// 恥ずかしっ/// 顔あっつ///)顔を手で抑え


こころ「あ、あの・・・」オロオロ

にこ「だ、大丈夫。こころっ。そっ、そろそろ洗濯物がか、乾いてるはずだから、取り込んできてくれるっ、かしら?」

こころ「は、はい・・・。行ってきますね」トテトテ


にこ「はぁ/// はぁ///」トクン トクン


にこ(落ちついて・・・落ちていて・・・はぁ、ふぅ・・・)

にこ(・・・・私、昨日―――)



~~~~~~~~~~~~~~~~

にこ「かっちーん! せっかく真姫ちゃんをにこにーハーレムに加えてあげようと思ったのに、やーめた!」

真姫「なにそれ意味分かんない。そんなのこっちからお断りだわ」

にこ「んっもう! 別にいいよっ、これからみんなでカラオケ行く約束あるからにこは行くけど、真姫ちゃんなんて知らないから! じゃあね」

~~~~~~~~~~~~~~~~



にこ(・・・・・こんなこと真姫ちゃんに言っちゃったっけ)

にこ(こんなこと言われたら、真姫ちゃんどう思うかな。きっとすごく嫌な気持ちになるよね)

にこ(だって、真姫ちゃんは、ずっと前から私の事・・・・)

にこ(い、いや・・・まだそうと決まったわけじゃない・・・。真姫ちゃんには本当に全くその気は無くて、だからずっと前からいつも通りだったのかもしれない。・・・・分かんないけど)

にこ(分かんないのだったら・・・・)



にこ「はぁ・・・・はぁ・・・・」

にこ「・・・・・・・確かめなきゃ。・・・・確かめなきゃ!」








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翌日 放課後
音楽室



真姫「~~~♪」 ポロン ポロン


 カラカラ

真姫「? ・・・・にこちゃん」

にこ「・・・・・・」スタスタ

真姫「何の用?」カミノケクルクル

にこ「・・・・・・」スタスタスタ ズイッ

真姫「な、なんなのっ?」タジッ


にこ「真姫ちゃんは、私のこと 好き? 」

真姫「藪から棒に何なのよ」

にこ「答えて!」ズイッ

真姫「なっ・・・。べっ、別に、そんなことどうだっていいでしょ」

にこ「どうでもよくない! 好きか嫌いかで答えて!」

真姫「うっ・・・。んっ、まぁ・・・・・。ス、す・・・・・き」

にこ「好き?」

真姫「きっ、嫌いではないわ」

にこ「あーもう! 好きか嫌いかのどっちかって言ってるでしょ!」

真姫「そっちこそなんなのよもう、鬱陶しい」

にこ「じゃあこうして!」真姫の手を取り

真姫「な、なに・・・・?」

にこ「私の事が好きならこのまま手を握ってて。嫌いなら手を離して」

真姫「はぁ? 意味分かんない。私は今ピアノを弾いているの。邪魔しないでよね」

にこ「だったら手を離せばいい」

真姫「っ・・・」

にこ「・・・・」



真姫「・・・・・・・・」

にこ「・・・・・・・・」


真姫「・・・・・・・・・・」

にこ「・・・・・・・・・・」



真姫「・・・・・・・・・・」

握っていない方の手はいつもの癖で髪を触っていたけど、しばらくしたらその手をゆっくり降ろして自身の膝の上でギュと丸めた。
その丸めた手は、少しだけ震えている。


真姫「・・・・・・・・・・」 ...キュ

握っている方の手は、弱々しく、たどたどしく、私の手を握り返してくる。


真姫「・・・・・・・・・・////」

そして、背けた顔の、横髪の隙間から見える頬が、綺麗な赤色に染まっている。

そんな彼女を見た私は――――――――



   少しは “本当の好き” が何なのか分かった気がしました。

                      矢澤にこ








おわり

ブリブリかよ


ありがとうございました。

おつ

はい神

素晴ら

つまんね

最高か?

これめっちゃええやつや…

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