このSSは、なんやかんやあって深海棲艦化した艦娘(深海棲艦含む)と仲良く過ごしていくスレです。
>>1は、16夏から先のことはよく分からないのでその辺りをご了承ください。
安価を出すところまでは書き溜めておりますので少々お待ちください。ウォスパ可愛い。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1509259899
「――全軍に、告ぐ。未来のため、に、命を棄てて、くれ」
声が震える。だが、それでも言わなければならない。
後ろには、下卑た笑みを浮かべる海軍大将と、銃をこちらへと向けている憲兵が。
軍の規律を守るための憲兵が個人と癒着しているなど破綻している。そう心の中で愚痴るが、何も変わらない。
玉砕命令が出されたことで、無線からは困惑の声が聞こえてくる。
――無理もない。突然『死ね』と命令されて『はいそうですか』となるわけがない。
いくら造られた存在の艦娘だとしても、心はある。彼女らは機械では、兵器ではないのだ。
だが、そう思っているのは自分だけ。他の人は道具としか思っていない。
どうしようもない事実がそこにある。
「――それは貴方の意志で出す命令か?」
胸を突き刺す冷たい声――我が鎮守府の艦娘の総括を務める旗艦『長門』のものだ――が無線から届く。
――怖い。
今まで苦楽を共にしてきた仲間から拒絶されるのが。
――だが、今自分がやったことが『それ』と同じことだ。
だから受け止めなくてはならない。
「どうした?提督」
「――ああ、俺自身の意志で出す命令だ」
――国のために、死んでくれ――。
言い切った。言ってしまった。
涙が止まらない。こんな命令を出す自分が惨めで。
死を恐れるあまり、仲間を切り捨ててしまった自分が愚かで。
「――了解。私たちが暁の水平線に勝利を刻む礎となろう」
優しく返された長門の声を最後に、無線から聞こえる音はノイズ一色となった。
心が壊れた音がした。
立つことすらままならず、地面に崩れ落ち、泣いた。ただひたすらに。
邪悪な笑い声が後ろから聞こえる。
――こんな世界、壊れてしまえばいい。
そして今世界を、自分を、呪った。
軍が所有する島への航路中。提督は甲板でただぼうっと突っ立っているだけだ。
「災難だったなぁ。部下が皆おっちんじまうなんて」
憲兵が近づいてきて嘲る。心底楽しそうな笑みを浮かべて。
「黙れ」
「あんたが悪いんだよ。深海棲艦の生態調査と嘯いて治療なんかしてさ」
「黙れ」
「大将の言う通りにしてればこんなことにはならなかったのになぁ!」
憲兵に腹を蹴り飛ばされる。もう暴力による痛みなど感じなくなった。
これは自分に対する罰。長門たちを死なせておいて、のうのうと生きている自分への。
「ほら立てよ。軍人ならシャキッとするべきだろ?」
言葉に従い立ち上がろうとする。同時に、空に暗雲が立ち込めてきた。
「はぁ。時化ってくるとかふざけんなよなぁ」
「そんな予報は無かったな」
「こりゃ揺れるな。あと少しで到着だったのに…ったく」
表向きには、天皇陛下から受け賜った艦隊を喪った罰として流刑されていることになっている。
――実際には、ただ秘密裏に行われる処刑でしかないのだが。
「ん?通信か。はいこちら警備部隊。…は?電探に感アリ?」
刹那、船体が大きく揺れる。
「つっ!」
「え…?あぁ…うわああぁぁぁあ!」
提督は衝撃に耐えられず甲板を転げ、憲兵は海へと投げ出された。
その後、砲撃が憲兵の落下地点に落ち、紅く染まる。
「深海棲艦か…!」
深海棲艦が現れる時、一定範囲の海域が時化るのだ。
このタイミングで出現したということは、当然だろうがこの船の撃沈だ。
どう足掻いても、ここで死ぬ。
人類では、艦娘に勝つことすら出来ないというのに、個々の性能で艦娘に数段勝っている深海棲艦に勝てるはずがない。
そして船に数発の魚雷が直撃、輸送船は爆沈した。
水底へと沈む体。肺の酸素が、次第に増していく水圧で押し出される。
歪んだ視界が捉えた幾重もの光。そのどれもが蒼い輝きを放っていた。
――予定よりは早く死ぬな。まぁ、自業自得ではあるか。
提督は嘗ての行いを振り返り自嘲する。『部下殺し』を犯した自分は死んで当然だ。
自分を信じて戦ってくれていた部下を見殺しに、いや『死ね』という命令を下した。
自分の命が惜しかった。ただそれだけで。
――何級だか知らないが、殺すならサクッと頭を潰してくれ。
然るべき報いが来ることを内心歓喜しながら、ニヤリと笑う。
――俺は痛いのが苦手でね。
意識が保てない。既に、脳への酸素の供給は止まっていた。このまま放っておいても、自然に命を落とすだろう。
――ドザエモンにする気とはえげつないな。苦しいじゃないか。
化けて出てやる、と死の間際に冗談を言い、意識を手放した。
――眼前にいた、白髪の女性に妙な既視感を覚えて。
――思えば、昔から自分は駄目な人間だった。
病弱な母の手助けもせず、部屋で本を読んでばかり。
学校では誰とも話をすることがなく、いつも図書室の片隅で本を読んで隠れていた。
気に掛けてくれた先生を避け、学校から逃げ出すこともあった。
本を読んで、勉強も怠ってはいなかったのに、秀才と言われるほどの頭も無かった。
そう、自分はどんなに頑張ろうと凡才でしかなかった。
実際には凡才以下だったのだろうが。
そして、無意義に過ごしていたある日、大本営から『赤紙』が送られてきた。
今まで迷惑を掛けた罪滅ぼしに、と軍属を選ぼうとする自分を母は必死に止めた。
だが、そんな母を振り払って海軍へと進んだ。その時の泣きじゃくる母の顔は、今でも忘れることができない。
どうしてその時母は泣いていたのか、今なら分かる気がする。
きっと母は、寂しかったのだ。
――今の自分ですら、寂しいのだから。
ただでさえ病弱で、夫はいなかった。そして、唯一の子供である自分が外に出ていく。
病弱なせいで心細かったであろう母に対する最低な親不孝だろう。
今、親不孝を重ねているのだが。
親より早く死ぬなど、それこそ最低だ。殉職手当で補えるものではない。
――どうしようもない息子でごめん。
それが、自分の言える懺悔の言葉だった。
海軍兵学校に入学して、一番に驚いたのは、艦船に乗って戦うのではなく、『艦娘』という船の魂――船魂という――を宿した少女たちを率いて戦うことだった。
実際に鎮守府に派遣され、眼にした少女はあまりにも非力に見えた。
その数瞬後にはバーベルのように持ち上げられていたが。
必死に采配を考え、引き際を見極め、何とか艦隊を維持してきた。
何度目かの大規模作戦の後。静かな夜に合わせるかのように、それは流れてきた。
「ウ…ァ…」
白い髪をした女性が砂浜に倒れていた。デスクワークの気晴らしに、と歩いていた時に、それと出会った。
「グゥ…!」
女性は立ち上がり、よろめきながらもこちらを睨む。しかし、また地面に倒れ伏す。
素人目に見ても酷い傷をしていた。頬には深い切り傷があり、全身の四割ほどが煤けていた。
恐らく戦闘で負った傷なのだろう。そして、態度からして彼女が敵だということはよく分かる。
「ウ…ウゥ…」
何度立ち上がろうとしても、手、足に力が入らないのか震えてばかりの女性。
敵なら助ける道理はない。だが、見捨てたら人として終わってしまう気がした。
「立てるか?…無理、だよな」
「触ル…ナ…」
この傷でよく意識があるな、と感心しながら、女性を背負う。
「っつつ…。文系にはしんどいな」
「ヤ…メ…」
体をもぞもぞと動かして、細やかな抵抗をする女性。
だが、傷ついた体では満足な抵抗も出来なかった。
「…辛いんだろう。だから助けるだけだ」
「これは、俺個人の意志で行うことだから。大丈夫、酷いことはしないよ」
「ウ…」
提督がそう言うと、抵抗を止める女性。無駄だと判断したのだろう。
満月の浮かぶ空を見て呟く。
――今日のことは一生忘れないだろうな。
眼が覚めると眼前には綺麗な天井が映っていた。
――ここはどこ?
女性――空母ヲ級――は思考する。
提督と思しき男性に背負われたところまでは憶えている。しかし、その記憶と今の状況が結び付かなかった。
――牢屋には見えない。恰好もおかしい。
清潔な白一色に染められた部屋。右腕には点滴の針が刺さっており、捕虜の恰好とは思えない。
ここは医療施設だ。まさか、あの男が――。
思考は、扉の開かれた音で中断された。
「…良かった。起きてたんだな」
ヲ級は訝しむ。男の手の上にあるトレーの中身は何なのか推察する。普通のオートミールなのか、それとも毒入りのものなのか。
「…警戒して当然か。ちょっと待ってて」
男――提督――は、その考えを見透かしているかのように行動する。
一口、そのオートミールを口にする。
「毒入りじゃない、と理解してくれればいいんだけど、な…」
自分よりも体の弱い男が食べたのだ。毒は無い。そう判断してヲ級は受け取る。
「…行動デ示シテクレテアリガトウ」
男は驚いたような顔をするが、すぐに微笑み答える。
「どういたしまして」
――彼なら信じてもいい。
些か早計だ、と心の片隅では思っていながらも、目の前の男が嘘を吐けるほど出来た人間ではない、と考える。
――なら、今はその好意に甘えよう。
口にしたオートミールは優しい味わいで、とても美味しかった。
「ドウシテ貴方ハ提督ニナッタノ?」
それは素朴な疑問。
提督は、ばつが悪い顔で答える。
「――逃げたかったんだろうな。きっと」
「逃ゲタカッタ?」
ヲ級はもう一度問う。しかし、返答は無かった。
「…ゴメン」
「君が気にすることじゃないよ」
提督は頭を撫でる。ぎこちなくはあったが、そのぎこちなさが心地良い。
「体は大丈夫か?」
ヲ級は首を横に振る。
「そうか…」
提督の顔が険しくなる。無理もない。今の彼は敵を匿っている反逆者だ。大本営にバレてしまえば銃殺刑は免れない。
「モシモノ時ハ、私ヲ殺セバイイ」
どうせまた生き返る、と言おうとしたところで、遮られた。
「殺すとか殺されるとかは嫌なんだ…。それに、君とこうして話が出来ているんだ…。なら、きっと他の人とも…」
――ああ、彼は優しすぎる。
ヲ級は思った。優しいが故に、非情になり切れないのだと。厳しく出来ないのだと。
「貴方ハ優シイネ。デモ、ソレガ貴方ノイイトコロ。無クサナイデネ」
貴方のそういうところが私は好きだから、と続けたら、提督は涙を流した。
「そんなことを言ったのは…。君と長門だけだよ…」
それは嬉し涙ではなく、虚しさから来る涙だったことをヲ級は知らない。
ヲ級との対話を終え、部屋を出る提督。すぐ傍の壁には、長門が寄りかかって立っていた。
「…すまない長門。このことは内密に…」
対する長門は平然と言い放つ。
「はて、何のことやら。私が見たのは、怪我をした民間人の手当てをする優しい提督だけなのだがな」
「え…?」
「ほら、食器は私が洗っておくから提督は休むんだ。彼女のことが気になって碌に寝てないだろう?」
――これが、連合艦隊旗艦の、日本を背負っていた艦の器の大きさか。
伊達ではない、と内心感嘆しながら、謝辞をする。
「ありがとう…。このお礼は今度必ず…」
「ふふふ。それなら今度酒でも共に嗜もうか」
「それくらいならお安い御用だよ」
手を振り給湯室へと歩いていく長門を見送る。
――やっぱり、長門には敵わないな。
――懐かしい記憶だ。
これが俗に言う走馬燈なるものなのだろう。きっと目を開けば閻魔大王とご対面だ。
さあ、どんな地獄を宛がわれるのか楽しみだ。
目を開くとそこには――。
――苔生した岩が見えた。
理解が追い付かない。たしかにあの時死んだはず――。
――意識を失っただけか?
だとすればここはいったい。
纏まらない思考を纏めようとするが、余計に悪化していく。
しかし、すぐ傍にいた『それ』を見た瞬間、思考が全て止まった。
「…ふふふ…。目が覚めて良かったよ」
「長…門…!?」
間違えたのかと思った。だが、間違っていなかった。あの時既視感を覚えた『それ』は、長門だったのだ。
「その…恰好は…」
綺麗だった長い黒髪は真っ白に。その亜麻色の瞳は朱色へと変わっていた。
「既に私『たち』は艦娘から離れた存在でね。深海棲艦に近い存在なのさ」
「――おれの所為か」
「原因としてはある。だがそれはきっかけでしかないよ」
これは私『たち』の意志だ。長門ははっきりとそう答えた。
「俺が悪いんだろう!憎いんだろう!ならば殺せ!それでお前たちが救われるなら喜んで…」
「――私『たち』は恨んではいないよ。寧ろ、貴方を救いにきたんだ」
「――」
「む…。頭がパンクしてしまったか?なら、一つ一つ教えていこうか」
「――まず、提督が無理していたのは全員にバレていたよ」
やっぱりか、と提督は落ち込む。あれほど声が震えていたのだから、当然かもしれないが。
「いや、寧ろバレて正解だったさ。もし、貴方自身が出した玉砕命令だと判断したなら、私たちは純粋な深海棲艦になっていたよ」
理解が追い付かない。大本営のデータベースには『沈んだ艦娘は全て深海棲艦と化す』と記されていたのだから。
「あながち間違いではないな。厳密には、憎悪や虚無感といった負の感情を抱いたまま沈めば『そうなる』のさ」
「私たちの心にあったのは『貴方を救いたい』という想い。それだけだ」
「…俺を救う理由なんて無いだろう…」
提督は、消え入りそうな声で呟く。その心は、もう壊れていた。
たとえ、信頼している人に再会しても、彼女らを裏切った自分の罪は消えない。
寧ろ、そんな愚かな自分を許容する彼女らを見て、どれほど愚かな存在だったのかを痛感させられている。
「…なら、なぜ貴方は泣いていたんだ?」
「それは――」
言いたくても言えなかった。男としてのプライドという、醜いものがそれを許さない。
「そんな顔をするな。抱きしめたくなってしまうよ」
クス、と女の子のような笑みを浮かべる長門を見た、提督の心は限界を迎えた。
「抱きしめろ。そして、そのまま縊り殺してくれ」
もう生きたくない、辛い思いをしたくない。提督はそうはっきりと言った。
「――生きるということは、苦しさの連続だよ。艦としての記憶が殆どの私が言うのも何だがな」
長門。日本を背負い、いや、背負ったが為に戦うこと――兵器としての使命を果たすこと――が出来なかった。そして、最期は水爆の標的艦にされ、水底で眠りについた。
そんな彼女が言う苦しさは、常人の考えられるそれではない。だが、提督の心は悲鳴を上げる。
「貴方は、私たち『兵器』を『人間』として見てくれた。『人間』として生きることの歓びを教えてくれた」
「私たちにとってはそれで充分なのさ。救う理由なんて、な」
壊れたはずの心が軋む。彼女らの想いを踏み躙ってもいいのか、と。
「…意味が分からないんだよ…!どうして俺を救おうだなんて…!」
提督の中では、彼女の言っていたことと、自分を救うことが結びついていなかった。
「なに、単純な推理さ。提督が出すような命令ではなかったからな。脅迫されている、と考えれば、あの行動にも納得がいく」
「態々全滅させるんだ。貴方を殺すための口実作り、といったところだろう」
淡々と進めていく長門。しかしその目は、真っ直ぐに提督を見つめていた。
「私は、貴方が殺されることなどあってはならない、と思っているからな。それに――」
――彼女たってのお願いだ、断れんよ。
と続けた。すると、岩陰から顔を出す女性が一人。
「君は――」
そこにいたのは――。
「わ…私のこと…。憶えて…る…?」
――間違いない。この頬の傷痕を持つ女性など一人しか知らない。
「ヲ…級…!?」
「私の名前ってそっちだとヲ級なんだ…。私に名前なんか無いんだけどね」
でも憶えてくれてて良かった、と微笑むヲ級。
「まぁ、敵として戦っていた以上、識別する必要があるからな」
そこに、提督が『ヲ級』と呼んだ理由を説明する長門。
ヲ級は納得したようで、本題を切り出す。
「私、あそこを逃げ出してからずっと提督を見てたの」
「もし、命に危険が及んだ時に助けてあげられるように」
「そして、長門たちが沈んだから提案したの」
――私たちと一緒に提督を助けよう、って。
ヲ級は、はっきりとそう言った。
対する提督は未だに理解出来ないでいた。
「何で君まで俺を助けようとするんだ!」
――理解は出来ている。だが、納得したくないのだ。
どうしようもないほど愚かな自分を助けようとする人がいることを。
「私は言ったよ。貴方の優しさが好きって」
「私は貴方の優しさに救われたから。だから、今度は私が助ける番なんだ」
「――」
もう嫌だ。彼女らに自分の存在が肯定される度に、自分を否定したくなってしまう。
「…まったく、世話の焼ける方だな」
呆然と立ち尽くす提督を、抱きしめる長門。慈愛に満ちた声で、優しく囁く。
「たとえ姿が変わっても、私は私だ。貴方を慕い、貴方を愛し、貴方のために戦う、長門型一番艦。連合艦隊旗艦の長門だ」
「それでも、貴方が私たちを拒むのならそれでいいよ。だけど――」
――自分を否定するのだけはやめてくれ。
言った。言い切った。一切の隠し事をせず、本心を伝えた。
提督は、それを拒もうとした自分に嫌悪感を抱いて、泣いた。
「ごめんな…。ごめんな…!長門…皆――」
――情けない提督でごめんな。
長門は微笑み、答える――。
――情けなくなどない、人間らしくていいじゃないか。
「うあぁ…。ああぁぁぁあ…」
枯れたと思っていた涙が、また目から流れていく。
壊れていた提督の心が、少しだけ癒えた。
涙は止まり、心は落ち着いた。冷静になった提督は、話を切り出す。
「…俺を助けた理由は分かったよ。だけど、目的が分からないんだ」
「目的は、提督と共に生きることさ。後は貴方の指示に従うだけだ」
即答する長門を見て、提督は苦笑する。
「欲を出してくれた方が嬉しいんだがな。俺は君たちに償いがしたいんだから」
「それなら、私たちと一緒にいると約束してくれ。別れるのは辛いからな」
またもや即答。
「…それ前提での話なんだが」
提督は頭を抱える。話が一向に進まないのだ。
「そうだ。私の仲間を紹介するね」
突然、手を叩いたヲ級がそう言った。
「仲間…って深海棲艦の方たちか?」
「うん」
ヲ級は当然のように頷いて肯定するが、提督の心には不安がよぎる。
「…深海棲艦化した長門たちはまだいい。完全に敵の立場の俺は排斥されるんじゃないか?」
提督の疑問はもっともだ。現時点で、提督が味方だと証明できるものはない。
元艦娘の娘らが証言することで、証明することは不可能ではないだろうが、失敗する確率が高い。
だが、ヲ級はその考えを否定する。
「私が逃げた時に助けてくれた仲間だから大丈夫。怖がらないで」
提督の顔を胸に沈める、ハグのおまけつきで。
「分かった。分かったから離してくれ」
必死にもがいて抵抗する提督。その光景を見ている長門はただ、微笑んでいた。
「…君が言うことなら、信用するしかないな」
「ありがとう」
解放され、手で顔を隠しながら提督は言う。それに対して、ヲ級は平然と答える。
「しかし…。これからどうすればいいんだろうな…」
ため息を吐き、岩の隙間から見える水中を眺める。
この場所は異常だと理解できた。少なくとも、水面から射す光量から見て数百m以上の水深の場所に、ここは位置している。
眼前の光景から、ここが水中にあることも理解できるが、水が入ってこないことが疑問だ。
「水が入らない理由は、空気の膜で隔絶しているからさ」
「ナチュラルに心を読まないでくれ」
長年の付き合いだ、と言う長門を見て頭を抱える。考えが読まれるって辛い。
「この場所は、鎮守府の施設を再現してる場所だよ。もう鎮守府と呼んでいいと思う」
そうか、と返し、この後どうするかを考える。
海水でベタベタになっていると思った体は、綺麗になっている。
おそらく、誰かが風呂に入れたか、体をタオルで拭いたりしたのだろう。
――迷惑を掛けたな。
そう心の中で謝罪し、行動を考えるがなかなか纏まらない。
出来の悪い頭が恨めしく感じた。
どうする?ナニする?↓2
長門以外の艦にあえないか?
上で
誰に会いたい、とかのリクエストがあれば直下にどうぞ。無ければ自分の鎮守府から何人かピックアップします。
陽炎
羽黒
お任せします
十分ほど考えて、ようやく思いついたのが他の艦娘と会うことだ。
だが、まだ長門とヲ級しか見ていない提督としては、他の娘の安否を確認したいのだ。
提督は立ち上がり部屋を出ようとするが、ここがどこなのかすら分からない。
立ち上がった提督を見て、長門とヲ級は部屋を後にする。
その時に長門がアイコンタクトをする。
――貴方に会いたい娘がいるから、待っていてくれ。
提督は首を傾げながらも、了解の意を示す。
椅子に座って、見慣れない天井を見上げる。お世辞にもいい光景とは言えない。
しばらくすると、ドアの付いていない入口から、大きな黄色いリボンが首を出す。
そして、ひょこっと顔を出し、笑顔を浮かべる。
例によって、髪色や瞳の色が変わっていたが、明るい雰囲気から誰かは理解できた。
「司令~!やっぱり無事だったのね!」
小走りで近寄ってくる陽炎。
その目尻には涙が溜まっており、今にも零れだしそうだった。
「陽炎か…。あの時は済まなかった…」
提督は誠心誠意、深々と頭を下げる。
それを見た陽炎は、提督の頭を掴み、上を向かせた。
「別に私は怒ってないわよ。怒ってるのは…浦風ね。後で顔合わせしてあげなさい」
提督の表情が曇る。普段温厚な浦風が怒っているのだから、よっぽどのことだと思ったからだ。
しかし、浦風もここにいることが分かって内心、安堵していた。
「まったく…。司令の置かれていた状況を知っちゃったら、私は怒ったりできないわよ」
蒼白い瞳が、真っ直ぐに提督を射抜く。その視線に耐えかねて、提督は目を背ける。
「はぁ…。そんな後ろ向きな司令は好きじゃないわ」
陽炎は手を離し、踵を返す。そして、再度口を開く。
「早くいつもの司令に戻って。いつもの司令と楽しく話すのが、私は一番好きなのよ」
ばーい、と手を振り部屋を後にした陽炎。先ほどまで手が添えられていた頬に手を当て、提督は下を向く。
「情けないな…。何もしてあげられない自分が…」
陽炎の手が震えていた。心に深い傷を負っていたはずの陽炎に、励まされた。
しかし、自分はそんな陽炎に何もしてあげられなかった。
そんな自分が、情けなかった。
「…俺が生きてる意味は、あるのかな」
何も出来ない自分が恨めしい。
そんな気持ちを表す言葉が、無意識のうちに口から出ていた。
「…駄目だ。こんなことを言っていたら。前向きにならないと」
顔を数回殴り、思考をリセットする。
「…痛いな。憲兵に殴られた時は何も感じなかったのに。なんでだろうな」
心が少しだけ癒え、痛みを痛みと認識出来るようになった体が、危険信号を脳へと伝えた。
「どうすればいいのかな…。皆に許してもらえるには…」
赤くなった手を見て呟く。その言葉を、陽炎は聞き逃さなかった。
「司令が思い詰めることは無いでしょ…!悪いのは大将たちなんだから…!」
蒼白い瞳は光を帯び、海中へと向けられる。
「司令をここまで追い詰めた責任…。いつか償って貰うわよ…」
陽炎は音を立てず、部屋へと戻った。
Hey提督!次やることを教えてくだサーイ!↓2
味方の人数と拠点の確認
↑
拠点はどこにしますでしょーか。サーバー、地名、好きなものを直下にお願いします。
リンガ
※元々居た鎮守府は>>1のを流用します。
提督は、未だ深い闇に包まれている外を見る。
僅かな光が照らしているそこは、本でしか見たことがない神秘的な景色。
だが、自分一人ではそこには行けない。入った直後に水圧でお陀仏だ。
先ほどの陽炎の顔を思い出す。喜んでいるようで、悲しんでいるようにも見える表情を。
そんな表情をさせてしまった自分に嫌悪感を抱きながら、これからどうするべきか考える。
「色々と知らないとな…。ここのことも、皆のことも」
現時点の状況を理解しなければ、行動を起こすことが出来ない。
そう判断した提督は、長門を捜しに行く。
部屋を出て、廊下を歩く。上も下も、全てが苔生した岩で構成されている。
左を見れば、辺り一面に海があり、右を見れば岩がある――。
――見れば見るほど不思議な場所だ。
そんな思いを抱きながら、あてもなく捜し続ける。が、後ろから声を掛けられてそれは中断された。
「話は終わったようだな。どうだった?」
いつものように、余裕を持った表情を浮かべる長門とは対称に、提督の表情は険しい。
「…前向きになれ、と言われたよ」
長門は顎に手を当てて微笑む。
「当然だな。もっと前向きに考えるべきだ。貴方は」
その言葉を聞いて、提督の表情は曇る。
「忘れてしまったよ…。前向きに考えるのがどんな感じだったか」
「…言い方が悪かった。いつものように振舞ってくれたらいい、ということさ」
「…頑張るよ」
長門は提督の手を握り、先導する。その間に、長門は一言呟いた――。
――私たちの期待が、存在が重みになっているなら、哀れだよ。私たちも。
長門に手を引かれて辿り着いた部屋には、妙に小綺麗な机と箪笥があった。
「出来る限り、執務室を再現してみたんだ。どうだろうか」
周りを見渡すが、壁が岩であること以外は元鎮守府のそれと変わらない。
「…凄いな。ここまで再現出来るのは」
「駆逐艦の娘たちが張り切ったからな。褒めてあげてくれ」
そうする、と返事をし、机の引き出しを開ける――。
――元鎮守府ではそこに名簿が入っていたはずだ。
その考えは当たっていた。そこには、綺麗に整頓された艦船名簿が入っていた。
パラパラと流し見ていくが、変わっているところは写真以外にはない。
いや、深海棲艦の者が増えてるところは大きく変わっている。
「人数は…結構増えてるな。場所も、ここはリンガ付近か。だいぶ遠くまで運んだんだな」
「追撃から逃れるためさ。仕方ない」
元鎮守府はラバウル。激戦区として名高かったエリアだ。
「ん…?」
気になるページがあったので、少しだけ戻る。
そこには、給糧艦である間宮や伊良湖の書類まであった。
「…どうして彼女たちもいるんだ」
その疑問はもっともだ。給糧艦は、その性質上戦闘には出れない。即ち、轟沈しない。
沈むことがない彼女たちがいるのはおかしかった。
「元鎮守府からスカウトしてきたのさ。一人でも欠けているのは嫌だろう?」
「…本気過ぎて怖いよ」
ここまでキッチリと準備していることが何より怖かった。
――もし、ここで自分が断っていたら。
そう考えたら身震いする。
「…ますます引くわけにはいかなくなったな」
頭を抱え、ため息を吐く。そして、腹を括った。
照らす月の下で安価です!↓2
本日は一旦終了します。続きは夜11時頃です。
旦乙
安価下
深海の子達ともコミュニケーション取っておかないとね
一旦乙
どうする?的な安価で進むってことは安価の取り方次第でクーデターを起こす戦闘スレにも単なるイチャイチャスレにもなるってことかな?手広いな
>>35、どのように進めるかは自由です。イチャコラしてもよし、大将たちを滅☆殺してもよし、です。
陸上に上がって行動するのも可能だったりしますが、人数に制限が出ますわよ。
予定よりも早く用事が終わったので再開なのじゃ。
執務室に設置されている窓からも、水中が見える。
間取りがどうなっているか気になっている時、後ろで物音がした。
振り返ってみると、本のように積み重なっている深海棲艦たちが。
「あ、あはは…」
一番下にいるのはヲ級。重くないのだろうか。
「…ふむ」
長門は、数秒ほど思考してから部屋を出ていく。
「仲間なんだ。仲良くしてあげるんだぞ」
どちらに言ったのか分からなかったが、もし自分に向けたものだったら、と思い提督は返事をする。
それと同時に、深海棲艦たちも返事をした。
お互いがお互いを見合わせ、沈黙が流れる。気まずい空気が漂う中、レ級と思しき少女が口を開いた。
「本当に長門たちの提督なのか?」
情けない提督だがな、と返事をするが、レ級は笑う。
「情けない…!ここから逃げ出してない時点で結構タフだよあんた…!」
腹を抱えて転げ回るレ級を見ていると、昔近所に棲み着いていた野良犬を思い出してしまう。
そして無意識に、レ級の頭を撫でていた。
「ぷっ…ハハハハ…!面白い人だなあんた!」
逃げ出してないから面白いのか、このような反応をしたから面白いのか。提督は判断出来ない。
不意にレ級は立ち上がり、自己紹介を始める。
「っと、自己紹介してなかったな。僕は…艦娘からはレ級って呼ばれてる。航空、砲撃、魚雷、潜水艦攻撃、何でもござれってね」
深海棲艦に名前は無いし、好きに呼んでくれていいよ、とレ級は最後に付け加える。
「名前が無い?」
疑問がストレートに口から出てしまった提督は、慌てて謝罪する。
「あはは、いいって。真実なんだから怒りようがないよ」
「僕たちは、他の娘を『こんな奴』っていう感覚で憶えてるんだ」
「だから、固有名詞が無いんだよ」
当たり前のように言っているレ級に驚く提督。
だがそもそもこちらだって、敵のことを容姿でカテゴライズしてる程度で、正式名称を知っているわけではない。
「ゴメン、一つ訂正。潜水艦がいたら砲撃できないや」
頭に手を当てて無邪気に笑うレ級だが、その戦闘力は異次元だ。
防空棲姫という化け物のことがあるので、霞んで見えてしまうが。
それでも強力な存在ではあるが、もしまた敵になったと考えるだけで、頭が眩む。
味方とはいえ、目的が分からない時点で最悪の事態を想定していなければならない。
「…私も、名前はない」
次に口を開いたのは、こちらが『北方棲姫』と呼んでるものだ。
実際に見てみると、写真よりも幼く見える。
「よろしく…」
ペコリ、とお辞儀をする北方棲姫に対して、提督の表情は苦々しい。
それと言うのも、色々な特殊作戦で、三式弾を搭載した長門たちに攻撃をさせていたからだ。
昔、作戦とはいえ何度も傷付けてしまったから、気まずいのだ。
「あの時は仕方なかった。だから気にしてないよ」
「う…」
穢れない瞳で、真っ直ぐ見据えられて思わず目を背ける。
――どうして、皆俺を敵視しないんだ。
レ級が話し始めてから、和やかな雰囲気が漂い続けている中で小さく呟く。
心を読んだように、北方棲姫が話し始める。
「今の提督は、私たちにとって、あの時助けられたヲ級…で合ってる?と同じ」
「だから、私たちも助ける。これが恩返しだって、お姉ちゃんに教えてもらったから」
「――」
――無駄じゃ、なかった。
提督は涙を流しながら、思う。
もし自分が助けてなかったら、襲撃された時点で死んでいた。いや、そもそも襲撃も起きず、射殺されていた。
自分が正しいと思ってしたことが今、実を結んだことを理解して、涙が流れた。
「大丈夫…?」
心配そうに、下から見上げてくる北方棲姫に、大丈夫、とだけ伝える。
その目には、少しずつ光が戻っていく。提督の心も、少しずつ前を向き始めた。
私自身も…時々安価が要りますね。↓2
深海鎮守府の現状を知りたい、歩き回る
そもそも何で戦争してるんだ?
ってか攻撃してたことを気にしてるけど戦闘してたのと同個体なの?
うーん…。こりゃどっちを拾えばいいのかな。>>40は安価というより、自分への質問な気がします。誰か助けて。
安価はその上にする
>>40にはきちんと答える
両方やればいいんじゃない?
>>41、ではそうします。アドバイス感謝です。まずは返答から。
>そもそも何で戦争してるんだ?
理由は触れる予定なので伏せたいけど、強いて言うなら人間側(大本営)の大ポカです。深海棲艦側は被害者。
>ってか攻撃してたことを気にしてるけど戦闘してたのと同個体なの?
ゲームで言うサーバー毎に、深海棲艦はそれぞれ同じ個体です。また、ゲーム内みたいに何百万人も提督はいません。
数百人程度がそれぞれの場所に配置されています。
優しいってか甘っちょろいだけよなぁ……
提督たちは執務室を出て、鎮守府内を散策する。
ヲ級は所用があると言って、水中にそのまま飛び込んだ。
水が入ってこないか心配したが、杞憂だったようだ。
「しかし、凄い場所だな。ここは」
空気は安定して供給され、水が入ってこない。まさにファンタジーと言っていい光景だ。
「あーそれね。水が入ってこないのは、僕たちが使ってるバリアとかを応用してる…らしい」
「謎技術で運用されてるとか怖いんだが」
「そっちの建造とか入渠だって謎技術でしょ」
確かに、と提督は納得し、移動を再開する。
北方棲姫は左手で引き、レ級はなぜかおんぶしている。
思ったよりも軽かったが、それでも重い。特に尻尾の部分が。
「へへ~。楽ちん」
「楽しい?」
「まあまあかな」
二人が他愛のないをしている間、提督は辺りを見回している。
――分かってはいたが、間取りは全然違うな。
自分の記憶があてにならないことに落胆して、提督はレ級たちに頼み事をする。
「すまないが、鎮守府の案内をしてくれないか?」
「分かった。まずはどこから?」
提督は数秒思考し、食堂とだけ答えた。
「了解。僕の指示通りに動いてよ提督号!」
提督は頷いて返答し、レ級が出す指示通りに動く。明らかにおかしい指示も混ざっていたが、それにも従った。
数分ほど掛けて食堂に到着したが、人が誰もいない。
「まあ今の時間はなー。間宮とかが準備してるくらいかな」
「…本当にいるのか。間宮さんたちも」
「美味いよ。間宮の飯」
「それくらい分かりきってるよ」
鎮守府に配属されて最初の数日間、母親の食事を思い出して食事の度に泣いていた。
それほどまでに、懐かしい味がした。
「そっか。なら次はドックとかだけど、正直教える必要は無いかな。すぐ近くだし」
レ級が指差した先には、短めの廊下と壁に複数の入り口があった。
「前二つが大浴場。奥の四つが普通の温泉的な風呂。インテリアを参考にしたやつ」
変なところにも全力なんだな、と口から零れそうになったが、どうにか押し止める。
「宿舎は反対側の廊下だよ。こんくらいでいい?」
「ああ。ありがとう」
宿舎と聞いて、提督は考える。
――この先に、皆が。
急に考えが纏まらなくなる。前を向き始めても、否定されるかもしれない、という考えが頭を離れない。
それでも、提督はどうするかを決めなければならない。
安価にしましょうか。↓1
意を決して進む
開幕ジャンピング土下座からの宙返り土下座
>>47が予想を飛び越えてて草生えました。↓1、↓2に会いに行く艦娘をお願いします。複数指定可能です。
第六駆逐体
5航戦
震える手を必死で抑える。
――覚悟は決めた。だから怯えるな。
そう自分に言い聞かせ、提督は一歩ずつ進んでいく。
気を利かせてくれたのか、二人はどこかに消えていた。
「ありがとう」
そう呟き、提督は宿舎へと入った。
宿舎の廊下は非常に短く、目視だが20mほどしかないと確認できた。
――昔はこの三倍はあったのにな。
本来とか違う景色を見て、提督は自分の責任を痛感する。
どうすれば回避できたのか。どうすれば皆が沈まない未来を選べたか。
そんなことばかり考えるが、過ぎたことを悔やんでも意味が無い。
「…そうだ。陽炎にも言われたじゃないか…。もっと前向きになれって…」
――どうすれば許してもらえるか。それだけを考えよう。
そう意気込み考えてみるが、手段は一つしかなかった。
「何を考えているんだ、俺は…。俺が出来ることなど、誠意を見せること…謝ることしかないじゃないか…!」
顔を上げ、目の前の部屋に入る。そこには、料理本を広げて話し合う第六駆逐隊の姿があった。
「皆…!ごめん…!あんな命令を出す、どうしようもない提督でごめん…!」
「それで、も…。皆がいる、のを見て…嬉しく思った…!そんな資格は…無いって分かって、るけど…嬉しかったんだ…!」
止まらない涙を拭い、必死に声を絞り出す。
「れでぃーを待たせるなんて…!ばかよっ…司令官はぁっ…!」
「不死鳥の通り名は伊達じゃないさ…。そう簡単には…死なないよ…」
「もう大丈夫よ司令官…!私がいるから…!だから…!」
「ひぐっ…。えぐっ…。本当に…助けられたのです…!司令官さんを…!」
「ごめんなぁ…。怖い思いをさせて…本当にごめん…!」
そして、皆を抱きしめながら泣き続けた。皆の涙が収まり、笑顔が戻るまで。
「あの時は辛かったよ…。司令官があんな命令を出すとは、信じられなかったからね…」
涙が収まり、いの一番に口を開いたのは響。
淡いライトブルーの髪は黒く変色していた。
「そうだよな…。辛かったよな…。俺があんな命令を出さなかったら…」
「それは駄目だよ」
首を振って、響はそれを否定する。
「あの命令がなかったら、司令官は死んでいた。だから、きっとこれが最善だよ」
最善なんてない、と提督は心の中で漏らす。
「…この話はたらればでしかないよ。皆ここで生きている。私はそれだけでいいと思う」
「…そうだな」
咎められないのが、辛かった。自分の責任で起きた惨劇なのに、悪くないと庇われてるのが。
「そうよ!司令官が生きてるんだから、それでいいじゃない!」
「そ、そうなのです!司令官さんがここにいるなら、電たちがやったことにも意味があるのです!」
「ま、まあ?れでぃーの私はこれ以上欲張らないし?でっでも、ほうびはあってもいいわよね!?」
ずいっと顔を近づける暁。その大きな瞳に吸い込まれそうだ。
「…ありがとな。俺なんかのために」
褒美になるのか分からないが、一人一人順番に頭を撫でていく。
――思えば、昔もこうやって撫でていたな。
最近のことなのに、随分と懐かしく感じる。
「荷物も運んでくれたんだってな…。皆よく頑張ったよ。…俺が言っていいことじゃないだろうけど」
「えへへ。もっと私たちを頼ってくれてもいいのよ?」
――この言葉も懐かしい。ちょっと変わってるけど。
もう一度、皆を抱きしめる。そして、自分の罪の重さを再認識した。
――こんなに真っ直ぐ信じてくれてた娘を、俺は。
「してほしいことがあったら言ってくれ。俺に出来ることなら何でもするよ」
「あ!それじゃあ…」
第六駆逐隊は皆で顔を見合わせて、料理本の一ページを指差す。
「今度、このオムライスを味見して!」
皆のお願いはとても可愛らしかった。思わず、微笑んで応えてしまった。
許されるか分からなくても。否定されるとしても。それでも。
――俺は謝らないといけない。そうしないと、罪を、怒りを受け入れることすら出来ないから。
※本日はここまでです。次回は今週の火曜日(夜)予定です。駄文で申し訳ございません。お疲れ様でした。
乙
乙です
おつ
こういうの好きよ
やっとPCに触れた…。五航戦の分だけでも今回で終わらせます。
「今、ここにいる娘って誰がいる?」
提督の問いに、電がおずおずと答える。
「えっと…。今は電たちしかいないのです…」
「そっか…」
――誰もいないのなら仕方がない。
そう思った提督は、立ち上がって執務室へと向かおうとする。
「司令官!私たちは何があっても、司令官の味方よ!」
と、はっきりとした声で言う雷。満面の笑顔を見せる雷が眩しい。
部屋を出る前に、もう一度皆の頭を撫でて、部屋を後にする。
天井から吊るされたランプだけが照らす鎮守府。
薄暗い宿舎の通路を通り、食堂に出る。
そして、執務室へと通じる廊下を目前にしたところで、提督は出会った。
「提督…」
「提督さん…。目、覚めたんだ」
「翔鶴…。瑞鶴…。すまなかった…」
頭を下げる提督に対し、翔鶴は涙を流し喜ぶ。
しかし、瑞鶴は。
「そう。それで、何がすまなかったの?」
提督は息を吞む。明らかに、今までの娘とは反応が違う。
「…恨んでるか。当然だよな」
「…え!?恨む!?なんで、私が提督さんを恨む必要があるのよ!」
提督は困惑するが、瑞鶴は驚愕が止まらない。
全く違う反応をする二人を見て、翔鶴はただ、おろおろすることしか出来ない。
「…はぁ~…。なるほどね…。提督さんの言いたいことは分かったわ」
提督は、なぜ恨んでいると考えたのか。その理由を瑞鶴に説明した。
「確かに、翔鶴姉についてのことは私も頭にきたわよ」
「だけど、それで提督さんを恨んで何かが変わるの?」
「…変わらないかもしれないが、怒りが収まったりするかもしれないだろう」
提督は苦言を呈すが、速攻で瑞鶴は斬り伏せる。
「その怒りは、簡単に収まったらいけないものでしょ!」
その気迫に提督は気圧される。
資材が少なく、采配が自由に出来なかった影響で、練度は平均をギリギリ超える程度だった。
相対的に未熟だった瑞鶴が見せた気迫は、加賀をも超えているように見えたのだ。
「提督さんが出した命令でショックを受けたのは事実よ!でも!提督さんが脅されてたことも知ってるの!」
「確かに私たちは沈んだわ。体も結構変わっちゃったし」
「…で、提督さんを恨んだら元に戻るの?戻らないに決まってるわよね」
瑞鶴の言葉を、聞き逃さないように心で聞く。瑞鶴の真っ直ぐな目は、提督の目を逸らさせることを許さなかった。
「過ぎたことをいつまでも悔やんだって、何も変わりはしないのよ」
「忘れちゃダメなことだけど、そこで躓いていたら何も出来ないわ」
「…あの時、翔鶴姉が沈んだ時もそうよ。どんなに悔やんでも、敵は待ってはくれなかった」
マリアナ沖海戦で、瑞鶴の姉、翔鶴は撃沈された。
そして、真珠湾攻撃に参加した空母の最後の生き残りとなった瑞鶴は、最期の戦場となったレイテ沖海戦を終えるまで、奮戦した。
「翔鶴姉がいなくなった時は悲しかった。だけど、ここで私が戦わなかったら、翔鶴姉の命は無駄になってた」
「提督さん。どんなに苦しんでも、辛い思いをしても、そこで止まったら皆無駄になっちゃうのよ?」
――本当にその通りだ。
瑞鶴の言葉は、提督の心を射抜いた。このままでは駄目だと、提督に思わせた。
「…提督さんが強い心を持ってないことは知ってる。だけど、進もうとすることは出来るはずよ」
「提督さんが前を向いているなら、私も一緒に戦うわ」
私たちの提督だもの、と付け加え瑞鶴は右手を握り、提督の左胸に当てる。
――だから、シャキッとしなさい。
提督は自分を叱責する。瑞鶴を見くびっていたことを。
「…強い娘だよ。瑞鶴は。お世辞抜きで、加賀にも勝るんじゃないかって思った」
「へっへーん。伊達に訓練を続けちゃいないわよ」
瑞鶴の言葉で提督はどこかが吹っ切れたのか、後ろめたい気持ちがいつしか無くなっていた。
「ありがとな、瑞鶴。おかげで悩んでる自分が馬鹿らしく思えたよ」
「これからも『五航戦』を御贔屓に!なんちゃって」
一連のやり取りを見た翔鶴は、心の底から安堵する。
――瑞鶴。あなたは、そんなに強くなってたのね。
嬉しさを覚える反面、ほんの少しだけ寂しさを覚える翔鶴だった。
目標、母港執務室の安価!やっちゃって!↓2
※今回はこれで終了です。次回は水曜日(夜)開始予定です。今度こそは…。
kskst
乙
「怒ってた」という浦風も気になるけど欲望を優先だ
安価は執務室で今後どうするか考え事をしていると鈴谷&熊野がやって来るで
人物指定が駄目なら前半だけでお願いします
今日は日を跨ぐ前に戻ってこれました。今から再開なのです。
把握
翔鶴たちと別れ、廊下を進んでいく。
翔鶴たちは、つい先ほどまで海中を警備していたらしく、入渠を済ませてくるようだ。
――海中で艦載機をどう使うのかな。
そんな疑問を浮かべながら、執務室を目指す。
気が付くと、執務室前に到着していた。
ドアノブに手を掛け、扉を開く。壁に無理矢理取り付けているからか、妙に重い。
本棚から海図を取り出し、艦船名簿の最初のページに記されている現鎮守府の緯度、経度から現在位置を把握する。
「…リンガ泊地から数十kmほど離れているのか。本気で探索されたら厳しいかもしれないな」
何も、潜水艦で海中を探索する必要はない。
駆逐艦や軽巡洋艦に、ソナーを積載して調べるだけでも充分脅威となり得る。
見つからないようにするために拠点を移すにしても、場所が限定されるだろう。
人が寄り付くことのない無人島か、今回のように海底に居を構えるくらいしか、今の我々では出来ない。
――もし、鎮守府の人たちの助けを得られれば。
一瞬思ってしまったことを掻き消す。
もう、他の人を頼ることは出来ない。
頼れるのは、信じられるのは、この鎮守府にいる仲間たちだけだ。
「…それでも、止まってはいられない、な」
皆から投げかけられた言葉を思い出し、集中する。
今の自分たちに出来ることを、ひたすら考える。
だが、そう簡単には思いつかない。
はぁ、と大きなため息を吐いて机に伏せる。
提督が今知っていることが少なすぎるため、考えから不確定要素が消えないのだ。
――誰か、色々な情報を知ってる人が来てくれたら。
「ちーっす。提督、元気になったんだって?」
「もう、はしゃいじゃって鈴谷ったらはしたないですわ」
「熊野だってソワソワしてたじゃん?」
「そ、それは言わないって約束したじゃありませんの!?」
その願いが神へと届いたのか、執務室に二人の来訪者が。
頭脳派の艦娘ではなかったが、提督には二人が救世主のようにも見えた。
「提督、なんでそんな神を崇めるような目してんの…?」
「タイミングが神だからさ…」
提督は、今まで何をしていたかを鈴谷たちに説明する。
「はっはぁ~ん…。それで鈴谷たちが神様に見えたってわけね」
「私たちが持っている情報で良ければ、教えますわよ」
「本当に助かるよ」
熊野は、机に広げっぱなしにしている海図にメモをしていく。
「私たちのいる場所はここで合っていますわ。そして、現在リンガ泊地は拡張予定ですの」
「鈴谷たちの航空隊が確認したから、間違いないよ~」
「資材の搬入量から考えて…。付近の小さな無人島にも簡易型の港を設置するようですわね」
「艦隊の配置可能数を増やすつもりか…。大規模な敵襲に備えてるのかな」
リンガもまた、ラバウルと同じく激戦区である。補強する理由としては、それだけでも充分だ。
「しかし…。よりにもよって、泊地の拡張よりも港増設に資材を充てるのか…?」
何かきな臭いものを感じるが、提督はそれがどういうものかが分からない。
「…いや、遊撃しやすくするための増設の可能性もあるか」
――今は、出来ることを見つけるのが優先だ。
まぁ、安価は嫌いではないけれど…。↓2
ksk
ちまちまあってもラチがあかない
広い場所で全員と会って今後どうするか、
どうして欲しいのか全体会議
提督は、鈴谷たちが入室してきた時の言葉を思い出す。
『ちーっす。提督、元気になったんだって?』
この言葉から推察するに、誰かが情報を全体に伝達している、ということだ。
「鈴谷、皆に集まるように言えるかな?」
閃いた提督は、鈴谷に問う。その答えは、たった一言だった。
「出来るよ」
「頼む」
「オッケー」
頷いた鈴谷は、一度海中に戻る。そして、耳元に艤装を取り出して口を開く。
――提督が皆に逢いたいっていってるよん。
口を開いた数秒後。雪崩のように艦娘たちが質問を投げかける。
「うるっさぁ…。頭パンクしそうだよ…」
一度艤装を外して、皆が落ち着くまで待つ。
その間、鈴谷は集合場所をどこにするか考えていた。
「鎮守府は無理矢理住めるようにしただけだからなぁ。皆が入るスペースは無いし…」
「…いや、食堂を一回片付けたらギリギリ入る…かな?」
全員を収容することが出来るか、鳳翔に話を聞く。
――鳳翔さん。食堂に全員入れるのって出来る?
返答はイエス。それを聞いた鈴谷は、瞬時に皆へと伝達する。
――やることが終わったら、食堂にすぐ集合して!
鈴谷の言葉を聞いた艦娘は、全員が同じタイミングで了解、とだけ言う。
「うっへぇ…。こういう時の連帯感凄いなぁ…」
自分が同じ立場に立っていたらどうなるかを考えるが、頭を数回横に振って思考を切り替える。
「…急いで風呂入んなきゃ。ベタベタした状態で出たくないし。あ、熊野に伝えておかなきゃね」
鎮守府に戻り、熊野を執務室から呼び出して先ほどのことを伝達する。
「承知いたしましたわ。提督には私が伝えておきます」
「ありがと!今度アイス奢るね!」
楽しみにしています、と熊野は返し、執務室に戻る。
――あああ!早く髪とか洗わないとー!
駆け足で風呂に向かう鈴谷だが、途中で一回ずっこけてしまった。
熊野から話を聞いた提督は、食堂を目指して執務室を出る。
「食堂に集合、か。やっぱり大きな部屋は全く無いんだな」
「少ない土地を有効活用した結果ですもの。仕方ありません」
「提督は食堂で待っていてくださいまし。私は他の方々に伝えてきますわ」
「…ありがとな」
丁寧なお辞儀をして、熊野は小走りで消える。
ゆっくり廊下を歩いていると、隣の水中からいきなり何かが飛び込んできた。
「ブゥッ!?」
「提督さん!意識は大丈夫なん!?うちが誰か分かる!?」
飛び込んできた何かの正体はすぐに判明した。
「浦…風…だろ…?」
「うん!浦風よ!」
衝撃で上手く回らない頭で、今の状況を分析しようとする。
同時に、浦風が怒っている、という陽炎の言葉を思い出す。
「そういえば…。浦風が怒ってるって聞いたんだけど…」
「そりゃ怒っとるよ!なんで脅迫されてたことを黙っとったんじゃ!」
提督は口を紡ぐ。そもそも、脅迫されたのは出撃後だったからだ。
大本営から出撃命令が出され、それに従って全艦を出撃させた。
この時に違和感を感じたが、命令無視は重罪。即ち、死に繋がることであったため、従うしかなかった。
――この時までは、脅迫されるとは露にも思わなかった。
「…事情があるようやね。だけど…それはうちにも言えんことなん…?」
涙を浮かべ、消え入りそうな声で問う浦風。
提督は、自分に嫌悪感を抱きながら答える。
「…脅迫されたのは出撃後なんだ。だから…言えなかった…」
「そう…なんや…ね…」
一筋の涙が零れる。それを拭いながら、浦風は言葉を紡いでいく。
「でも…。うちも、浜風も、皆が味方じゃけん…!もう、同じような目には遭わせんけん…!」
「だから…。隠し事はしないでほしいんよ…!辛くてたまらんから…!」
「…ああ。しないよ」
「約束したけえの…!」
胸に顔をうずめて泣く浦風を、提督は抱きしめることしかできなかった。
※本日はこれで終了となります。次回は今日の同じ時間よりも早く更新したい…。お疲れ様でした。
大本営ほっとくのはよくないね
乙
向こうは状況を完全に把握してないと思うからこのまま雲隠れしとく方がいいかも
開墾とかしてマイクラ+牧場物語でもしようぜ
すみません。今日ちょっと更新は無理そうです…。日曜日ならできるはずです。申し訳ない…。
金曜は更新が出来なくて申し訳ございませんでした…。今から再開なんやて工藤。
「恥ずかしいとこ、見せてもうたね…」
涙が止まり、頬を赤らめる浦風。提督は、申し訳なさそうに言葉を零す。
「俺がちゃんとしていたら、こんなことにはならなかったのかなぁ…」
その言葉を聞き逃さなかった浦風は、言葉を荒らげる。
「提督さんは頑張っとったよ!過ぎたことなんじゃけん、気にせんでええよ…」
しかし、語尾に近づくにつれて言葉が弱々しくなる。
「頭では、うじうじしてても、たらればを言っても仕方がないって理解しているんだ」
「だけど…。分かっていても、してしまうんだ…」
女々しい自分が嫌になる。仕方がないと分かっているのに、前向きに進もうと思っているのに、立ち止まってしまう自分が。
「…それは個人の問題じゃけん、うちは口出しできんよ」
「じゃが、無理して変えないけんもんとは思えんなぁ…」
そう言う浦風の顔は悲し気だった。
「…それより、これからのことを考えるんが先決じゃ」
「そのための招集なわけじゃろ?」
提督はゆっくり頷いて肯定する。
「ん。鈴谷さんが言ってたことから推測しただけやけど、そうだとは思っとったよ」
「早う食堂に行かんとね。皆を待たせるのは気が引けるけえ」
浦風は提督の手を引く。その顔は少し嬉しそうだった。
「ふふっ。傍から見りゃあ恋人のように見えとるんかね?」
「俺なんかが恋人になっても、どうしようもない気がするけどな」
提督の顔は、どこか虚しいようにも見えた。
浦風に手を引かれ、食堂へと到着した。
そこには艦娘、深海棲艦合わせて二百余名がすし詰め状態になって待っていた。
やはり、艦娘は皆深海棲艦のような髪色になっている。
覚悟はしていたが、思っていたよりも提督の精神が摩耗する。
彼女たちをこうしてしまったのは、紛れもなく自分の責任なのだから。
そんな考えが、提督の頭から離れない。
「て…提督…。すまないがそこから話を頼む…」
人混みの中から何とか顔を出せた長門が指示を出す。
その指示を聞くと、浦風は提督から離れる。
「提督さんの言うことなら皆信じてくれるはずじゃけえ、そう緊張せんでもええよ」
その言葉はありがたかったが、提督の心を追い詰める。
――同じような目には遭わせられない。だが、俺が指示を出したらまた同じ結果が出るかもしれない。
――どういう指示を出せばいい?どういう指示を…。
そこで提督は閃く。それが、自分の存在を否定するようなものでも、躊躇わず選んだ。
「…脅迫されていたとはいえ、皆を沈めてしまったことは心から詫びる」
どんなことがあろうとも、実行してしまった時点で罪だから。
「俺を殴ってもいい。何なら、腕や脚の一二本もぎ取っても構わない」
それで、自分が傷つくことで赦されるのなら。
「だけど、俺一人では何も出来ない。何も知らない」
戦うことも、大した采配を執ることも出来ないから。
「だから、何か意見があるのなら、どんな些細なことでも言ってくれ!」
今の自分では、どうすればいいのか、どうするのが正解なのか、考えることすら出来ないから。
直下から↓3までにどうするかの案を募集します。案とそれを発言する艦娘をセットでお書きください。方言難しすぎて死ぬ…。
霞 大本営もこちらの動きを完全に把握していない
だが提督が消えたから探して入ると思う
当分はほとぼりが冷めるまで隠れる
ただし訓練、それもこちらに付いてくれる深海潜艦と連携出来る様に合同で訓練する
霧島
そもそもなぜ深海を保護したことでここまでされることになったのか
もっと元をただせばなぜ我々は戦うことになったのかを知るべき
深海と提督それぞれ知っている情報をすり合わせて何かわからないか確認
内容次第ではもっと遠くへ逃げるべきか近くで反攻の機を待つべきかわかるのでは?
金剛
責任を取ってくれるって言うならとりあえずケッコンしてくだサーイ!
「はぁ~…。少しは自分で情報を集めようっていう自主性は無いのかしら…」
言われてみればそうだ、と霞の言葉を聞いて思う提督。
しかし、心のどこかで接触を恐れていた提督に、その考えが浮かんでくることは無かったのだ。
「まぁいいわ。それは後々聞くとして。具申させてもらうわね。足柄、ちょっと上げて…。ありがと」
足柄に持ち上げられ、頭を出す霞。それと同時に、霞の意見具申が始まる。
「海軍の動向から見て、大本営はこちらの動きを把握しきれていないわ」
「だけど、クズ司令官を乗せた海軍お抱えの輸送船が沈んだ以上、血眼になって捜しにくるでしょうね」
あちらとしては、顔に泥を塗られたわけなので当然だ。
「だから、あたしはほとぼりが冷めるまで、行動を控えるべきだと思うわ」
見つかってしまえば元も子もない。提督は霞の言葉を聞いて頷く。
「でも、その間何もしなければ、意味が無くなる。そこで、同時に合同訓練を行うことも具申するわ」
「深海棲艦たちとの、か?」
そうよ、と霞は返し、話を続ける。
「あたしたちと違って特殊な能力を持っている人もいるわけだし、連携出来るようになったら戦略の幅は広がるでしょ?」
「なるほど…」
確かに、彼女らのような強者と連携出来れば、戦闘もかなり優位に運べる。
深海棲艦単体ですら苦戦したというのに、そこに艦娘たちも加われば、鎧袖一触と言っても過言ではなくなるだろう。
「いい意見だよ。さすが礼号組旗艦の霞だ。頼りになる」
「ふん。そもそも、頼りにならないといけないのはクズ司令官でしょうが」
「頼りに…なる日は来ないだろうなぁ…」
「最初から諦めるなぁ!」
「私もよろしいでしょうか?司令」
次に手を挙げたのは霧島。断る必要もないので発言を促す。
「では遠慮なく。私としては、司令が処刑される理由に納得がいきません」
「敵の治療をした…。つまり、敵と繋がっていた時点で、理由になると思うが…」
そこです、と霧島は提督の発言を止める。そして、霧島は発言を再開する。
「そもそも、その時は『尋問するための治療』という名目がありました。筋が通っているわけですから、処刑に走るのはおかしいです」
「根本的な問題になりますが、どうしてこの戦争が始まったのか。その原因を知らないと、大本営を潰しにいけません」
「確かに…。ちょっと待って」
突然物騒な単語が聞こえたので話を一旦中止させる。聞き間違いであってほしい。
「はい?」
「大本営を潰すの?」
「はい」
残念ながら聞き間違いではなかった。表情はあまり崩れていないが、内心怯えている提督であった。
「コホン…。つきましては、お互いが持っている情報を開示、不明な点の解明をするべきだと私は思います」
「内容次第では、反攻の機会を窺うべきか逆に逃げるべきか、変わってきますので」
霧島の言葉を聞いて、提督の表情は険しくなる。
実は、軍のデータベースにも理由は載っていないのだ。
まるで、都合の悪いことを消しているかのようにすっぽりと、その部分だけ抜けている。
また、艦娘がどのようにして生まれたのか。それすらも記載されていなかった。
当然、艦娘にはデータベースへのアクセス権は譲渡されていない。兵器でしかないものに持たせても意味が無い、という判断だろう。
「いや…。入隊時に当時の大将が言っていたな」
――これは、我々を突如攻撃してきた不埒者への報復である。
「報復…ですか」
「この言葉は嘘だろうな…。真っ当な理由なのに、隠す必要性が何もない」
提督の持っている情報は少ない。どんなに頑張ろうと、少佐から上に上がれなかった提督だから仕方もないのかもしれないが。
「取りを務めるのはもちろん、私デース!」
元気な声が聞こえてくる。不思議と安心した提督は、金剛の発言を待つ。
「Dutyを取ってくれるんデスよネ?」
「出来る範囲のことだけどな」
「じゃあとりあえずケッコンしてくだサーイ!」
その安心は一瞬でご臨終を迎えた。
「…血痕?」
「No!Marriageの方に決まってマース!」
「却下」
「Why!?」
どこぞの少女芝居漫画のような顔をする金剛だが、提督は気にせず話を続ける。
「理由がどうであれ、一度お前たちを沈めておいてどの顔して結婚するんだよ…」
いくら受け入れられようと、その事実は変わらない。消えはしない。
「Mmm…。律儀な人ですネー」
「…もう、俺に幸せになる資格は無いんだよ」
目の前の光景が、それを示している。
「Hey提督ぅー。Happyになる資格が無いのは、あのCrazyなPsychopathデスヨー」
「振り回されただけの提督が、悪いわけがないデース」
「うっ…」
やめろ。そんな真っ直ぐな目で見ないでくれ。そんな思いが提督の頭に浮かんでくる。
そして、目を逸らしながら提督は答える。
「…この件は一旦保留だ。考えさせてくれ」
「イヨッシャーーーーー!」
金剛のガッツポーズが、妙に印象に残った。
どの案を選択するかの多数決です。1が>>76、2が>>77、3が>>78です。↓1~3での多数決です。
3
2
自分で書いた以上安価としては2を推すけど1と2は平行して行うべきだし可能なのでは?
3はいつでもいいしいつまでもダメかもしれないけどw
>>84、まぁ確かにそうなんですけどね…。何分慣れてなくて…。次回から同時進行するべきか考えてみます。
シングルタスク了解ー
三人の意見を纏めた紙を見て、ため息を吐く。
「霞と霧島の意見が重要だな…。金剛は気が楽になったっていう点では助かったけど…」
「…ンン?」
首を傾げる金剛。
「…ごめん霞。この意見は本当に重要だって分かってる。だけど、真実を知ってからでも遅くは無い…と思うんだ」
「ふん。あたしたちはあなたの指示に従うだけよ」
そう言う霞は、今も足柄に抱えられている。親子みたいで可愛らしい。
「あと金剛。結婚の件なんだけど…」
「…!」
見ただけでソワソワしているのが分かる。こんなダメ人間のどこがいいのか。と提督は思う。
「…まだ付き合ってもいないのに結婚はどうかと思うんだ。だから、ごめんなさい」
「Nooooooooooo!」
金剛、轟沈。
「あー…。というわけで、だ。霧島の意見を今回は最優先したいんだ。異論はあるかな?」
返答は沈黙。即ち肯定だった。
「…ありがとう。なら、長門と霧島、ヲ級以外は各自自由に行動してくれ」
その言葉を皮切りに、入渠する者、食事に移行する者、休憩する者に分かれる。
なお、金剛は比叡に抱えられていた。
「ふむ。霧島は発案者だから理解出来るが、なぜ私も選んだんだ?」
理由は一つ。連合艦隊の旗艦だからだ。だが、
「…いや、詮索するのは無粋か。光栄に思うよ」
「私も疑問かな。他にも上位の深海棲艦がいるのに私なんて」
「…他の人はまだ交流してないからさ。ちょっと怖いんだ」
こちらが、こちらに、何度も苦しめられた人もいる。だから、何をされるか分からない。それが怖かった。
「敵意を持ってるなら参加しないと思うけど…。まぁいっか」
「それだけ私が信頼されてるってことなのかな」
クスリ、と微笑むヲ級。その顔が、妙に色っぽくて提督は目を逸らしてしまう。
「ここで立っていては話が出来ませんし、執務室に行きませんか?」
「あ、ああ。そうだな」
執務室に入り、椅子を三つ設置する。
左から長門、ヲ級、霧島の順番だ。
「俺が知っている情報は先ほど言った通りだ」
「ヲ級。君はどんな情報を知ってるんだ?」
ヲ級は指先を唇に当て、天井を眺める。思考しているのだろう。
「んー…。私が教えられたのは、人が私たちのテリトリーを侵したからって言ってたけど…」
「大本営の過失じゃねぇか!」
許容範囲を超えてしまい、つい叫んだ提督。
長門に手で座るように促され、慌てて椅子に座る。
「…まぁ、提督が怒る理由も分かるがな。私たちが戦っていた理由は、上層部の失態の尻拭いなのだから…」
正直、私も怒ってるよ、と長門は付け加える。
「………」
「だ、大丈夫か…?」
「大丈夫です」
全然大丈夫そうに見えない霧島。青筋を立てて、眼鏡にヒビが入っているのだから、当然だ。
「ん?待てよ。じゃあなんで俺は処刑されそうになったんだ?」
戦争の発端は理解出来た。しかし、処刑された理由が未だに分からない。
「それは…ゴメン。思い当たる節が無い」
「そうか…」
結局、理由は分からずじまいだった。
だが、原因が理解出来たのは大きな進歩だ。
「…これからどうするのか、が一番の問題だな。霞の意見に従って訓練を行うか…。それとも…」
根本的な問題は解決していないが、一歩前進した。
山城?大丈夫?安価よ?↓2
フミィ
合同訓練
平行して深海組のことを知ろう
あれ、>>87で一部の文が抜けてる…。詮索~の前の、だが、の続きは『敢えて言わない』です。夕食を取ってくるので暫く空きます。
済ませてきたので再開します。合同訓練に参加する艦娘と深海棲艦を、後ほど募集します(6名ずつ)。
流石に怖いとか腑抜けた理由で深海側のリーダーに会わないとか言ってる場合じゃないぞ提督よ
副提督を頼むくらいの誠意を見せないと
「…いや、やっぱり霞の意見に従うか。上手くいけば、他の深海棲艦とも交流出来るかもしれない」
提督の言葉を聞いた長門と霧島は、合同訓練に参加する人を集めるために部屋を出た。
ヲ級も、そんな二人に釣られて部屋を出る。
「ふぅ…。何というか、今までの努力や結果を否定された気分だよ」
上層部の尻拭いのための戦争とはいざ知らず、罪滅ぼしのために軍属となった。
必死に勉学に励み、艦娘たちを率いて、地道に勝利を重ねてきた。
その努力は、水泡と帰した。
「でも…。なんでなんだろうな。それでも、死んでほしくないと思ってる自分がいる」
死んで当然のような人たちなのに、殺そうとは思えない。
「はぁ…。俺ほど軍人が向いてない人間はいないな」
――どうせなら、新聞記者や作家でも目指せば良かったかな。
そんなことを思っていたら、ドアが勢いよく開かれる。
「提督!準備が整ったぞ!」
「早すぎだろう…」
どんな手を使ったのか、僅か数分で長門は戻って来た。
だが、準備が整ったのなら自分も参加しなければ。
そう思い、提督は席を立つ。
「えっと…。誰が参加するんだ?」
その問いに、長門は意味深な笑みで返す。
「見てからのお楽しみ、か…」
言葉を聞いて頷いた長門は手を差し伸べる。
「どこで訓練をするのかな」
「上だ」
「姿を隠すんじゃなかったのか…」
「あちらからは有象無象のうち一つにしか見えんよ。時間だって夜だからな」
時計を見ると、針は9時を指していた。外も光が無いので、完全に夜だ。
「でも、夜だとよく見えないぞ。俺はただの人間だから」
その言葉を聞いた長門は、一つの双眼鏡を手渡してきた。
「強奪した双眼鏡を明石に改修させた。所謂暗視スコープだ」
提督は腹を括るしかなかった。今こそ、怖がる自分を御する時なのだ。
「提督は小さく縮こまってくれ。でないと、死んでしまうからな」
「えぇ…」
ただの人間の提督にとっては、海上との往復ですら命懸けだった。
↓1~6に艦娘と深海棲艦をセットでお書きください。もし被ってしまった場合は最安価を投げます。
レ級
夕雲
那珂ちゃん
軽巡棲鬼
武蔵 南方
センダイ=サン
深海双子棲姫
長門
戦艦水鬼
しかし、深海側から見た海戦理由については、精査しなくて大丈夫かな?
深海からの上からの情報を又聞きしたのを信じるだけでは、陸上にいた時と同じことの繰り返しになりかねないと思う
提督がヘタレすぎて中々突っ込んだことしたがらないから安価でリーダーに無理矢理会いにいかせるしかないんじゃないかなー
安価下
大鳳とソ級
>>100、書いてる自分が言うのも何ですが、思いっきりヘタレです本当にありがとうございました。
時間が掛かって申し訳ない…。
長門に抱えられて海上に出ると、そこには既に全員揃っていた。
「…長門を合わせて24人か。よく集めたな」
「そこは、まぁ色々とやったのさ」
メンバーは、左に夕雲、那珂、武蔵、川内、大鳳、レ級、軽巡棲鬼、南方棲戦姫、深海双子棲姫、戦艦水鬼、ソ級の11名。
右には、霧島、金剛、翔鶴、瑞鶴、鈴谷、熊野、陽炎、浦風、暁、響、雷、電の12名だ。
「連合艦隊同士で戦った方がいい訓練になると思ってな。つい張り切って集めてしまった」
「凄い…。凄いんだが…」
「目のやり場に困る人がいるんだよなぁ…。前隠して…」
首を傾げる南方棲戦姫。顔からして無自覚である。
「別に減るものじゃないいいでしょ?」
「こっちが困る…。本当に…」
「ふぅん…。じゃあ一応隠しておきましょう」
そう言って、ビキニを着る南方棲戦姫。最初からそうしてほしかった。
「川内は夜戦だから来た感が凄いな」
「分かる?やっぱ夜はいいと思わない?」
「…俺はそうは思えないな。いや、綺麗な星が見える分には好きだよ」
ムスッとした顔をする川内。好きとも言ってるんだから、別にいい気もするが。
「…よし、それじゃあ訓練を開始しようか。流れとしては…」
「ちょいちょいちょ~い!待ったー!」
那珂が手を挙げて中断させる。
「那珂ちゃんそっくりな娘がいるんだよ!?アイドル二人とか凄いって思わないの!?」
「いや、全然」
「那珂ちゃんの存在が否定された気がする」
そう言われても、アイドルのことを全く知らないのだから仕方ない。
「アイドルとはなんだ?」
対する軽巡棲鬼は、アイドルそのものを知らなかった。
「提督…ふむ。元気そうで何よりだ」
「楽しそうだな…」
「ああ!かつて鎬を削った強者と肩を並べ戦えるなど、高揚せずにはいられんよ!」
拳を合わせて不敵に笑む武蔵。よほど楽しみにしているのだろう。
「まぁ、怪我しないように頼むよ…」
「歓談はそこまでにしてもらうよ。あくまで、私たちは訓練のためにここに来たのだからな」
「ルールは単純。ペイント弾を用いた模擬戦で、多く被弾させた側の勝利となる」
「勝った方には事前に伝えた通り、提督に好きなことを要求出来る。良識の範囲内で収めるようにな」
何か聞き捨てならない言葉が聞こえた気がした。
「最後に一つ。これは連携強化を図る訓練だ。双方、連携して行動するよう心掛けるように」
「それでは各自、配置につけ!30秒後に模擬戦を開始する!」
長門が言い終わると同時に、それぞれが固まって距離を開けていく。
そして、長門の砲撃を合図に模擬戦が始まった。
直下コンマで連携具合を判定します。基準は30、70となります。
てい
ゾロ目かぁ…。再判定とかした方がいいのかなぁ…。少し意見をお願いします。
そも30 70の意味がよくわからんからなんとも
低いほどA軍高いほどB軍有利、ゾロ目は何かいいことが起きますとか予めきちんと決めてから判定求めて貰わんとゾロ目出ただけで悩まれても正直こっちが困るんですがw
やっぱり、再判定は無しの方向で進めていきます。少々お待ちください。
>>106、あー…。確かにそうですね…。ゾロ目が出る可能性をそもそも考えていなかった大馬鹿ですハイ。
30より小さいなら、連携が取れてないので艦娘側が有利に。70より大きいなら、上手く連携が取れているので連合側が有利、となります。
とりあえず今回はそのまま進めます。グダグダですみません…。
「ちょっ…。こんなの制空権とか持ってかれるに決まってるじゃない!」
「瑞鶴!直上!」
「チッ!直掩機!迎撃に向かって!」
空を覆う無数の艦載機。どちらが制空権を有しているのか、それは歴然だった。
「主砲!敵を追尾し…!不味い!」
体を大きく逸らし、霧島は砲撃を回避する。
「ありゃ、外れたかぁ…。なら」
レ級の尻尾がうねり、レ級は歪んだ笑みを浮かべる。
「近づけばいいよなぁ!」
そして、高速で霧島に接近。尻尾で喰らおうとする。
「Shit!私を無視して霧島を落とせると思うなんてアマアマですネー!」
「んなぁっ!?」
金剛は、尻尾を横から抱きかかえてジャイアントスイングをする。
飛んで行った方向には――。
「ふごぉっ!?」
「あっ…。ごめん」
那珂がいた。そして見事に下敷きとなった。
「ありがとうございます。お姉さま」
「No problem。さぁ、ドカンと撃っちゃってくだサーイ!」
「では」
更に、狙いすました狙撃の如き砲撃がレ級を穿つ。
「うっそぉ!?これで実質轟沈判定!?」
今回は被弾数だけしか見ていないが、実際の模擬戦では既に轟沈判定が出ている。
しょぼくれたレ級は、尻尾に寄りかかる。
「むぇ~…。こんなあっさりやられるかぁ…?ショックだわ…」
「うわぁ…。金剛さんたち凄いなぁ…」
「私たちも、いいところを見せなければなりませんわね」
頷いた鈴谷は、艦載機を発進。熊野は前進して、魚雷を放つ。
「きゃ!危ないわねぇ…」
艦載機の爆撃を間一髪避けた夕雲。
しかし、その場所は魚雷の射線上だった。
「あうっ…!もう、制空権を取れてても…。全然押されてるじゃない…!」
魚雷の直撃を受けながらも、後退していく夕雲。
しかし、間髪入れずに暁たちが急襲する。
「一人なんだ。狙われて当然だろう?」
「ご、ごめんなさい!なのです!」
「はぁ…。私が先行しすぎたのがそもそもの原因かしらねぇ…」
自戒の言葉と共に、夕雲は戦域ギリギリまで下がっていく。
「あれ、あんたもやられたのか?」
「ええ…。失敗しちゃったわ」
レ級は戦闘を眺めているが、夕雲は下を向いている。
「…駄目ね私。もう一度戦ってくるわ」
「いってら~」
手と尻尾を振り、レ級は夕雲を見送る。
「…僕も戻るかな。流石に何も出来ないのは恥ずいし」
そしてレ級は、長門のところへと向かった。
銃弾が飛び交う中、長門は笑んでいた。
「ハハ!敵にして改めて思ったよ。素晴らしい連携だ。第六駆逐隊」
「あ、ありがとうございます!」
カチコチ固まりながら答える暁に、長門は主砲を発射。同時に距離を開ける。
「援護が必要かしら?」
背中合わせになる長門と南方棲戦姫。
「いや、問題ない。武蔵たちの救援を頼む」
「あらそう?なら私は失礼するわね」
そう言うと、南方棲戦姫は深海双子棲姫の方へと向かう。
深海双子棲姫は、武蔵と共に、金剛、霧島、五航戦、陽炎、浦風を相手にしていた。
「まったく…。本当に厄介な連携だ…!こちらはこちらで自由に動きすぎだ…ん…?」
暁たちが後退し、距離を大きく開ける。
「なんだ…?近距離の砲撃を警戒したのか…。…いや、あれは…!」
そして、大量の爆雷を海に投下する。
「きゃあぁぁぁぁ!」
それは、近くで雷撃のチャンスを窺っていたソ級を直撃した。
顔だけを出しているが、目尻に涙が浮かんでいる。
「うぅ…。今の空砲になってたの…?」
「なってたよ。私たちだって中身を確認してるからね」
「数が原因なのかしら…。ああ…耳が痛い…」
「ごめんなさい!張り切って投げすぎちゃったわ!」
そんなやり取りを見た長門は呟く。
「…戦闘にすらなっていないな…」
「よっ、大丈夫か?」
無邪気に問うレ級に、長門は苦々しい顔で返答する。
「あと数十秒で終わるぞ…」
「…負けじゃない?」
「ああ。負けだ」
連合側は全員、ペイント弾でピンク色に染まっている。
それに対して、汚れが目立っていたのは武蔵、戦艦水鬼と肉弾戦を行った霧島くらいだった。
「いやはや、失敗だったよ。まさか、連携強化のための訓練で連携の恐ろしさを教えられるとはな」
「あれ反則でしょ。尻尾掴まれたら何も出来ないよ」
「艦爆を使えば良かったじゃないか」
あっ、と口を手で覆うレ級。
もう何も言えなかった長門は、ため息を吐く。
「これで連合艦隊旗艦を名乗っているのだからな…。情けないよ…」
「えーっと…。ご愁傷様…?」
右手で頭を抑える長門の肩を叩くレ級。
尻尾も悲しそうに項垂れていた。
「…連携って何だっけ」
小島から眺めていた提督は思う。
根本的な戦力差を帳消しにする艦娘たちの連携。
そして、深海棲艦が自由に行動をするせいで連携そのものが消滅している連合。
「こりゃ…。俺たちが付け入る隙があったわけだよ…」
大きな問題が発生し、頭を抱える提督だった。
今のメンバーの中で交流する艦娘か深海棲艦を↓1~3で募集です。
※今回はこれで終了となります。次回予定は火曜日です。グダグダですみませんでした(土下座)。
武蔵
南方
戦艦水鬼
ゾロ目でぐうの音も出ない惨敗だし深海側も連携の大事さをよく理解して熱心に訓練・座学に勤しんでくれるでしょ
本番で露呈しなかっただけ良かった
凄い遅れてしまった…。時間が無いので、書き溜めた分と少しだけ投下して今回は終わります。安価を投げるところまでは進める予定。
「負けた…か。戦うことに固執していたのが原因だろうな。猛省せねば」
砂浜に座って黄昏る武蔵。てんで戦闘のことは分からない提督だが、今回の訓練では連携の差がモロに出ていたことは分かる。
だが、その原因は。
「…武蔵は悪くないよ。というより、悪い人は誰もいない」
深海棲艦だって、今まで味方とすら連携を取ってこなかっただろう。
そんな彼女らにいきなりそれを求めるなど、傲慢でしかなかった。
「慰めはいらないぜ。私にだって悪い部分はあるからな」
「…思い詰めないようにな」
まさか、と言い武蔵は笑う。
「それに、霞の狙いはここにあったのだろう」
「…なるほど。連携の重要性を認識させるのか」
ここまであっさりと負けたのだ。
彼女らだって、連携を取らなかったことが原因だと判断し、学ぶ意欲が湧いている。はずだ。
「彼女は素晴らしいよ。教官としての才がある」
――まったくだ。
過去に霞の助言を貰った時のことを思い出す。
確かに、口は悪く感じるかもしれない。だが、霞の指摘は的確だ。
言葉をよく聞けば、より良い司令官になってもらおう、という思いが汲み取れる。
「霞はただ厳しいだけだよ。俺にも、自分にも」
霞が見切りをつけた時。それが、本当の終わり。
罵倒されている間こそ、気に掛けられている、期待されている証拠なのだ。
「失望させないように頑張らないと、な」
武蔵は左手で提督の背中を叩く。
「提督こそ思い詰めすぎだ。もっと余裕を持て」
「ずっと気を張っていたら、いつかは限界を迎えるぞ?」
一瞬、提督の思考がフリーズした。
「…?どうした?何か変なところでもあったか?」
「…いや、大丈夫だ」
「ならいいがな」
――気を張るな、とか言われても、それ以外を知らないんだけどな。俺は。
その独白は、夜へと消えた。
「スペック上は勝ってるはずなのに、何故か負けちゃうのよね」
いつの間にか傍によって、そう零した南方棲戦姫。
「…言い方は悪いけど、囲んで棒で叩けば、強い動物だって死ぬものさ」
「あ、何となく分かったわ」
分かってくれたか、と提督は安堵する。
「つまり、こっちももっと強ければいいのね」
――駄目だ。全然分かってない。
提督は内心、肩を落とす。
「…冗談よ。流石に、連携するべきだっていうことは分かってる」
ほっ、と提督は息を吐くが、南方棲戦姫は更に話を進める。
「だけれど。私はあなた達のことを知らないのよ。提督のことも」
「分からないのに、どうやって連携すればいいのかしら。教えてくれる?」
ずいっ、と顔を近づける南方棲戦姫。それに思わず、提督は目を逸らす。
「…何に怯えているの?失うこと?それとも、死ぬこと?」
違う、と提督は返すが、南方棲戦姫は納得していない。
「だったら、どうして怯えているのよ。私たちが怖いのならそう言えばいいじゃない」
「私たちだって脳無しってわけじゃないの。言ってくれれば、対応くらいはするわよ」
それでも、提督は目を逸らしたままだ。
「…過去に私たちを攻撃したのを気にしてるの?可愛らしいところがあるのね」
クスクスと笑う南方棲戦姫は、指先を提督の唇に当てる。
「別に、私たちはどうとも思ってないから安心して。最初からその気なら、既にあなたは肉塊になってる」
南方棲戦姫の目が紅く光る。
「…あなたがそれを望むのなら、今ここでしてあげるけど」
その言葉に、提督は首を横に振って答える。
――まだ死ねない。死んでしまったら、皆の覚悟が無駄になってしまう。
そんな提督の思いを汲み取ったのか、南方棲戦姫は手をどける。
「なら、私たちを信用でもいいからしなさい。でないとこれ、外すわよ?」
そう言って、南方棲戦姫は指先をビキニの紐に引っ掛ける。
「分かった。信じるから外さないで。そのままでいてくれ」
「言質取ったわよ」
そう言い残し、どや顔をしながら南方棲戦姫は去っていった。
南方棲戦姫に弄ばれたような気分のまま、砂浜に座る提督。
そこに、一つの人影が近寄ってくる。
「あれが迷惑を掛けたようだな」
「あれ?…ああ、南方棲戦姫のことか。大丈夫だよ」
「そうか。ならいいのだが」
戦艦水鬼から、長門や武蔵と同じような雰囲気を感じていた提督だが、その雰囲気は実際にはもっと禍々しかった。
「隣。構わないか?」
「あ、ああ」
失礼する、と言って座り込む戦艦水鬼。その目は、水平線の彼方を見据えている。
広がる沈黙。なかなか開かない口。
話すことを諦めて沈黙に身を委ねていた提督だが、戦艦水鬼の発した言葉によってそれは中断される。
「貴様は性格が悪いな。態々惨敗させて、連携の重要性を考えさせるとは」
「…いや、このような言い方する必要は無かったな。失礼を詫びよう」
一礼をする戦艦水鬼に、提督は問い掛ける。
「…今回の訓練で、君が改善するべきだと思った点はある?」
「枚挙に暇がないな。特に、自由奔放に動く者が多すぎる。…言うまでもなくこちら側だ」
レ級と深海双子棲姫のことだろうか。
「…まあ、一番の問題点は我々の認識不足だな」
「今回の問題点は後日報告書を提出するから気にしなくていい。あの少女に渡した方がいいか?」
そうしてくれたら助かる。そう返すと、戦艦水鬼も了解した、とだけ発し、また無言となる。
無言の空間は、敵艦隊の接近を認識するまで続いた。
海中に潜り、上手くやり過ごした一行は、鎮守府へと帰還する。
まず行ったのは、報告書の作成。
戦艦水鬼も出してくれるが、別視点から見た物もいるだろうと思い、作業に入っている。
日付は変わり、宿舎は消灯された。
鎮守府の中でも、執務室だけは淡い光に包まれている。
「…はぁ~…。これでいい…かな…」
連合側の問題点と改善法を纏めた書類を計20枚。
コンピューターが無いから仕方は無いとはいえ、手書きはやはり疲れるものだ。
封筒に入れて、霞宛ての報告書類とだけ書いておく。
既に真っ暗になっている廊下を歩く。
深海にあるが故にかなり冷えており、靴音も反響して不気味な雰囲気を醸し出している。
誰もいないはずの厨房からはガサゴソ音が聞こえるが、無視して宿舎へと入る。
まだ、どこに誰がいるのか分からないので、虱潰しに捜そうと思ったら、そこに彼女は立っていた。
「…やっぱり、来ると思ってたわ」
「済まないな…。もっと早く終わらせれたら良かったんだが」
「もしもの話をしないで頂戴。ほら、よこしなさい」
霞の伸ばす手に、書類を掴ませる。
しっかりと受け取った霞は、踵を返しながら言う。
「確かに受け取ったわ。遅くまでお疲れ様。早く布団で休むことね」
その言葉を聞いた提督は微笑み、返す。
「霞こそ、お疲れ様」
しかし、既に霞は帰っていた。
自室へと戻り、布団に潜ったところで思い出す。
「今日、ご飯を食べてなかったな」
第一日 終
思ったよりも体は空腹だったようで、突然、本当に突然目が覚めた。
糖分不足で重い頭を支え、よろめきながら食堂へと向かう。
しかし、食堂で朝餉と洒落こんでいるのはごく僅か。
首を傾げながらも、提督は配給を待つ。
「おはようございます。提督」
「おはよう…。うぅ…頭が重い…」
「食事をしていなかったんですから、当然です」
そう言いながらも、白飯をかなり多めによそう鳳翔。
今日の朝餉は白飯、味噌汁、焼き魚の三点セットだ。
シンプルだが、それがいい。
更に、鳳翔は小さなチョコレートを数粒、お盆に乗せる。
「糖分補給も重要ですから忘れないでくださいね」
「ああ…。気を付けるよ…」
軽く会釈をして、席へと座る。
「いただきます…」
両手を合わせ一言。そして、白飯を思い切りかき込む。
一日ぶりのマトモな食事に、胃が喜ぶどころか、一瞬戻しそうになる提督。
「ゲホッ…。少しずつ食べないと死にそうだな…」
一口一口、よく咀嚼して胃に収めていく。
「ご馳走様でした」
最後にもう一度手を合わせて、お盆を返却台へと持っていく。
相変わらずランプに照らされているだけの薄暗い鎮守府だが、光が無いよりは数百倍マシだ。
そう思いながら、風呂へと向かう。
――流石に、この時間から入浴してる人はいないだろう。
提督は温泉の方の浴場へと入っていった。
木曾だ。お前に最高の安価を与えてやる。↓2
※短いですが、今日はこれで終了となります。次回更新予定は金曜日です。お疲れ様でした。
風呂に入ってるやつを指定して欲しいとか内容ちゃんと書こう
中枢
乙
おつ
南方(全裸)
>>123、本当にそうですね…。反省…。今から再開デス。
扉を横にスライドさせると、まずそこには脱衣所が。
壁に設置されている棚に置かれている、計四個のバスケット。
確認するが、そこには何も置かれていない。
「よし、のんびりと入れそうだ」
服を脱ぎ、綺麗に畳んでバスケットの端に揃える。
反対側の壁には丁寧に纏められたタオルがある。
それを一つ手に取り、浴室の扉を開ける。
「あら、意外と大胆な人なのね」
「失礼しました」
そう言って提督は扉を閉めようとするが、南方棲戦姫の手で阻止される。
深海棲艦に対して、提督…人間の力はあまりにも非力だ。当然、簡単に扉は開かれる。
「どうして逃げるのよぉ」
ジト目で提督を見る南方棲戦姫。提督はそっぽを向きながら返答する。
「異性と風呂に入ったことはないし、そもそもそういう関係じゃないだろう…」
「フフ…アハハ…!ウブで可愛いわホント…!」
口を押さえて笑う南方棲戦姫を尻目に、外に出ようとする提督。
しかし、呆気なく捕まってしまう。
「別にどうこうするつもりはないわ。ただ、話がしたかっただけなのよ」
「あなたのことが知りたいの。腹を割って話すには、ここはうってつけでしょ?」
それにしたって風呂は無いだろう、と思う提督。
だが同時に、ここまで純粋に、ただ自分のことを知るために行動する彼女を、避けるのは問題がある、と思った。
「…せめて、前とかは隠してくれ」
「肯定した、と考えていいのね?」
「それでいいよ…」
頭を抱え、体を洗いに行く提督と、上機嫌でタオルを取る南方棲戦姫。
提督のことを知るために歩み寄る南方棲戦姫。
行動におかしいにところがあろうとも、その心は真っ直ぐに――。
提督は一度髪を濡らして、髪を洗う準備を終える。
その後ろに、南方棲戦姫は忍び寄る。
そして、手にシャンプーを取ろうとした提督の手を掴む。
「…何してるの」
「髪を洗ってあげようかなって」
「大丈夫だよ…。親切なのはありがたいけど、これくらいは自分で出来るから」
「つべこべ言わない。こういう時は言葉に甘えるものよ」
でも、と言おうとしたところで、提督は口を紡ぐ。
何を言っても、彼女が引き下がることは無いと思ったからだ。
「それじゃ失礼~」
そう言って、南方棲戦姫は手を髪に潜り込ませる。頭皮に触れる指先のせいで、こそばゆい感じがする。
「短い髪ねぇ。男の子って皆こうなのかしら」
「…そうでもないかな。同期には長髪の男もいたから」
同期と言っても、数十人程度しかいなかったが。
「ふぅん…。恋バナとかはあるの?」
「…ないよ。…思えば、そんな浮ついたものとの縁はなかったな。ずっと勉強してた」
昔から要領が悪かったが故に、理解するまでに何回も、何十回も、反復して勉強をしていた。
そんな生活を続けていたらいつしか、娯楽や恋愛、友人といったものとの縁は一切無くなっていた。
「昔からそうだ…。俺はつまらない人間だった…。哀れなものだよ」
「悲しいわねぇ…。まぁ、過去は過去、今は今よ。これから楽しめばいいじゃない」
「…楽しみ方とか、分からないんだけどな」
――本を読んだりするのなら、俺は好きなんだけど。
終わったわよ、という声を聞き、感謝を述べる。そして、体を洗うために南方棲戦姫と距離を置く。
流石にそこまで関与する気はないのか、南方棲戦姫は湯船に浸かる。
「体を洗うなんて、結構汚れとか気にするタイプ?」
「体を洗って入らないと汚いだろ…。昨日は色々あって入れなかったし尚更だよ」
母親が病弱だったこともあって、その辺りには特に気を遣っていた。
清潔にしておけば、母親が体調を崩しにくくなると思って。
「…母さん…。どうしてるのかな…」
病弱な母は元気にしているのだろうか。
それとも――。
提督の心に不安がよぎる。
「…いや、もっと前向きに、だ。きっと元気にしてる。きっと…」
そう、暗示のように呟く提督を見て、南方棲戦姫は首を傾げる。
――母さんってどんなものなのかしら。
そんな疑問は、湯船に溶けて。
↓2に、何か聞きたいことがあれば記載してください。
私らに慣れたらリーダーとあってちゃんと話しなさいよ?ヲ級に聞いたけど知りたいことあるんじゃないのと水を向ける
追撃で私明日から貴方のヒショカン?やるから早く慣れてねと力技で押し込む
↑
体を洗い終えた提督は、湯船に浸かって手足を伸ばす。
「ふぅ…。こうやってゆっくり風呂に入れたのは久しぶりだ」
「えぇ?あっちでもそんなに大変だったの?」
「皆が沈んでから…ずっと尋問を受けてたよ…」
苦々しい顔で提督は返答する。
「…ごめんなさい。辛いことを思い出させたようね」
「…いや、いいよ。どうせ過去のことだから」
――過去に囚われているあなたが言っても、説得力は無いのだけれど。
口から出そうになった言葉は、胸の中に押し止めて。
南方棲戦姫は、言おうと思っていたことを思い出す。
「そうだ。あなた、知りたいことがあるのよね?空母の子…ヲ級から聞いたんだけど」
「え?うん」
頷く提督を見て、南方棲戦姫は話を続ける。
「だったら私たちに早く慣れて、リーダーとちゃんと話をしないと」
「そっか…。そうだよなぁ…ん?」
頭を抱えていた提督は、不意に顔を上げる。
そこには、豊かな南方棲戦姫の胸が。
「あら、大胆ねぇ」
「ご、ごめん!」
慌てて別の方向を見る提督と、微笑を浮かべる南方棲戦姫。
「大丈夫よ。それより、何か気になったんでしょ?」
南方棲戦姫は、提督の発言を促す。
「ああ。リーダーが誰か。それがピンと来なくてな」
「それね。まぁ、仲良くなったら自然と分かるわよ」
再度頭を抱える提督。面白く思った南方棲戦姫は、更に追い打ちを掛ける。
「それと私、明日からヒショカン?をさせてもらうから。早く慣れるのよ~」
そう言って、南方棲戦姫は風呂から出る。
「え!?秘書艦!?ちょっと待って!おーい!」
その叫びが、南方棲戦姫へと届くことは無かった。
「南方棲戦姫が秘書艦かぁ…。でも、好意的なだけまだいい方なのかな…?」
彼女とは、深海棲艦の中でも、度々弄られることがあるとはいえ、概ね良好なコミュニケーションが取れている。
「まぁ、頑張って慣れていくしかないかな」
軽く伸びをして、湯船から体を出す。
冷水で体を少し冷ましてから、浴室を出る。
「ふぅ。いいお湯だった…。…あれ?」
タオルで体を拭いていると、着替えの隣に何かが置かれているのが見えた。
気になって近づいてみると、何かの正体が冷水が入ったコップだと分かった。
「…ありがとう」
――どういたしまして。
提督がそう言うのに合わせて、声がどこからか聞こえてきた気がした。
軍服に袖を通し、ボタンを留める。未だに、この全身を軽く締めているような感じには慣れない。
コップの水を飲み干して脱衣所を出るが、人気は入浴前よりも減っていた。
「どこかに出掛けているのかな…」
霞の案で、基本待機するよう言われていたはずなのに。
疑問が浮かぶ提督だが、それを頭の片隅に追いやる。
「…俺なんかよりもよっぽど利口な娘たちだ。何か考えがあるんだろう」
執務室に戻って何かしようと思ったが、現時点でやることは特にない。
完全に手持ち無沙汰になった提督は、頭を悩ませる。
「参ったなぁ…。前だったら攻略作戦のシミュレーションとかが出来たんだけど…」
この考えに行き着く時点で、自分がどうしようもないほどに社畜と化していることに気付く。
「…一度でもはっちゃけるべきだったのかな。自分がつまらない人間過ぎて悲しくなってきたよ」
鈴谷や漣たちのような柔軟な頭が欲しいと思った提督だった。
ぷっぷくぷぅ~!安価だぴょん!↓2 どうするかをお書きください。
そういえばブラ鎮で酷使されてる艦娘らを保護してこちら側に引き込めないだろうか考察する
食堂で注文取りでもしながら最後まで地上にいたと思われる間宮伊良湖に自分が連れ出された後何か動きがあったか尋ねる
長門がいたらどうやって鎮守府に侵入したのか聞く
そういえばブラ鎮で酷使されている艦娘らを保護してこちらに引き込められないだろうか考察する
今は潜伏期間だが計画を立てて下準備するぐらいはいけそうでは
確か天龍が遠征先でそうな子らを見たと言ってたような
一度天竜に聞いてみよう
長門がいるかの判定です。直下コンマが20以上なら成功となります。
まかせとけ
ふと食堂に戻ってみると、先ほどとは打って変わって賑わいを見せていた。
合計二百余名の艦娘、深海棲艦に対して、食堂側の人数は僅か三名。
全員が一度に来ることはあり得ないとはいえ、二割ほどが訪れるだけでも、凄まじい負担になるだろう。
「…何もせずに時間を浪費するくらいなら、だ」
提督は意を決して、厨房近くの受付に入る。
「鳳翔、受付と調理を同時に担当するのは大変だろう。受付くらいはさせてくれ」
「いえ、提督がこちらで働く必要は無いですよ」
「いやいや、こちらも手持ち無沙汰なんだ。頼む」
「ですが…」
こちらが引き受けようとすると、あちらがそれを阻止してくる。
同じようなやり取りが数十秒続いたが、突然終わりを迎える。
「鳳翔さーん!こちらの煮物をお願いします!伊良湖は今手が離せませんー!」
――ナイスゥ!伊良湖!
そんな魂の叫びが、提督の中でこだまする。
「あぅ…。すみません提督。少しの間だけお願いします…」
申し訳なさそうに頭を下げて、煮物の調理へと向かう鳳翔。
それを見送った提督は、顔を軽く叩いて気合を入れる。
「俺でも出来ることを、少しでも多くやらないとな」
――ただでさえ、ここにいる間は穀潰し同然なんだから。
第一波が過ぎ去るまでの一時間、提督はひたすら受付で応対をしていた。
「はぁ…。はぁ…。こんな作業を毎日フルでしてるなんて…。凄いな…」
「お疲れ様です提督。はい、お礼の間宮アイスですよ」
コトリ、と机に置かれた間宮アイス。
「あ、ありがとう…」
しかし、満身創痍になっている提督は口を付けることが出来ない。
「辛そうですね…。伊良湖で良ければマッサージいたしますよ?」
「いや…大丈夫…」
どう見ても大丈夫そうに見えない提督を心配する伊良湖。
なお、鳳翔は昼食用の仕込みのため、絶賛食材と格闘中である。
「でも、ここにこれて良かったわね。伊良湖ちゃん」
「はい。あの鎮守府にいても、楽しいことは無かったですから」
そう話している二人の表情は深刻だ。
「何かあったのか…?」
机に突っ伏したままの提督の質問に、二人は答える。
「はい。少なくとも、大将たちは残された資料や資源のことでずっと揉めてました」
「苛立ってたのか、ご飯にすら難癖を付けてきたんですよ…。おかげでご飯を作りたくなかったですもん…」
「それにセクハラ行為も度々行われましたね。まだ接触程度なのでマシな方でしたが」
「うわぁ…」
どこまで上層部は腐っているのだろうか。正直怒りが収まらない。
「でも、提督たちはいつも美味しそうに食べてくれますから、作ってて楽しいですよ」
「はい!ご飯は皆で楽しく食べるものですからね!利権争いをしながら食べるものじゃないですから!」
伊良湖の声に感情が異常なまでに篭っている。さぞかし酷い目に遭ったのだろう。
「…色々と大変だったんだな。そっちも」
「まぁ…。はい…」
「ほ、ほら提督さん!間宮さん特製の間宮アイス、早く食べないと溶けちゃいますよ!」
「あ、ああ。そうだな」
何か誤魔化された気がしないでもないが、詮索しない方がいいのだろう。
気持ちを切り替えて、器に丁寧に盛られたアイスにスプーンを沈める。
硬いようで軟らかい、絶妙な硬さのアイスは、口に入れた途端に溶けていく。
優しくも濃厚な甘さが口いっぱいに広がり、それほど主張するでもなく静かに消える。
控えめに言って、至高のアイスクリームだ。
「美味しいよ。ありがとう、間宮」
「いえいえ、喜んでくれたのなら、作ったこちらも嬉しいですよ」
微笑む間宮の顔を見ると、こちらまで気分が良くなってきた。
手助けは必要ないらしく、提督は厨房を出て食堂の椅子に座る。
すると、そこに二つのグラスが置かれる。
「…長門、まだ夜じゃないのにお酒は…」
「ここにいたら、昼も夜も無いよ」
「まぁ…そうだが…」
グラスにワインを注ぐ長門。その目はどこか、憂いているようで。
「…どうした?」
「いや…。何でもないよ。何でもない…」
そう言う長門の表情は、僅かに曇った。
踏み込まない方がいいと思った提督は、別の話題を振る。
「そういえば、間宮たちはどうやって連れてきたんだろうな」
「ああ…。大したことをしたわけではないが、多少強引に行かせてもらったよ」
「強引…?奇襲した…とか?」
長門は首を横に振る。どうやら違うようだ。
「同型の艦娘とすり替わって、隙を見て連れ出して来たんだ」
「すり替わった娘たちは…。うん、今頃深海棲艦になり果てているだろうな」
「犠牲者がいるのか…。…いや、俺を助ける時点で何人も死んでるんだ…。今更…か」
「提督が悔やむことは無い。手を汚すのは我々の仕事だよ」
その言葉を聞いた提督も、表情が曇る。
彼女たちにばかり、辛い思いをさせている自分が愚かで。
「…一応言っておくと、私たちも普通に街に潜入したりは出来る」
「気分転換でもしたければ、その娘と共に行けばいいよ」
暗い雰囲気を変えるためか、長門はあまり関係のないことを話す。
しかし、暗い雰囲気のままでいるのもよくないと提督は思い、その話に乗る。
「気分転換、か。そういうこととは縁が無かったからなぁ…。経験するのもアリ…なのかなぁ…」
「ああ。楽しむのも、重要なことだと思うぞ」
「では、私は所用があるのでな。失礼するよ」
そう言って長門は席を立ち、どこかに行く。
「…ワイン、一杯しか飲んでなかったな」
元々、彼女は酒を飲むタイプではない。何か嫌なことがあって、気を紛らわせるために飲んだのだろう。
「長門も長門で、抱えすぎな気がするんだよなぁ…」
お前が言うな。そんな言葉が聞こえた気がする。
はぁ…安価はあんなに蒼いのに…。↓2 自由安価です。誰とどうする、等自由にお書きください。
※>>137、有言実行とはやりますねぇ!本日の更新はここまでとなります。次回更新は火曜日予定です。お疲れ様でした。
乙
皐月にかわいいねと慰めてもらう
うーん これかーちゃんまずいなあ
姿をくらませても反逆者の母として晒し者にされるだろうし、ことを起こすとなると人質にされる
救出しても病弱じゃ海底生活は無理だし陸に匿うあても病院の手配もできない
コミュ障だから頼れる同期もいなけりゃ致命傷レベルのヘタレだから見殺しにしたら後を追いかねない
無理だなこれw
>>143、そんな時の人海戦術!二百人くらいいれば陸地に家を建てて匿って看病も出来るはず!
あと、同僚とは必要最低限のコミュは取れるくらいには、コミュ力はあったりします。プライベートは…ナオキです…。
同僚は各鎮守府に派遣されている(設定の)ため、交渉は一応出来る…はずです。遅くなったけど安価を出すところまで進めるでヤンス。
長門が注いだワインに顔が映る。
その顔は、どこか落ち込んでいるようにも見える。
――なんで、こんな顔をしてるんだろうな。
そう思いながらワインに口を付けるが、少しだけ口に含んで終わってしまう。
「う。やっぱりワインは無理だな…。カシスソーダやジンジャーハイボールの方が美味しい…」
グラスを机に置き、その隣に倒れ込む。
グラスへと向けられる提督の視線。その先に、何かがやって来た。
「司令官?どうしたの?」
目をパチクリさせる皐月。その顔は無邪気なようにも見えて、心配しているようにも見えて。
どこかいたたまれなくなった提督は、何でもない、とだけ返す。
「そうは見えないけどなぁ」
皐月の呟いた言葉に、提督の体が僅かに跳ねる。それを見た皐月はクスリ、と笑う。
「何かあったんじゃないか。そうやって悩んでて、かわいいね」
皐月は、小さな手で提督の頭を撫でる。傍から見れば事案であるが、あいにく憲兵はここにはいないし、ここまで出動もしてこない。
「かわいい…か。そんな言葉は俺には似合わないと思うよ。男だし」
「ううん、かわいいよ。一人で悩んでる姿がさ」
――悩んでいるわけじゃない。
そう反論しようとしたが、言い返せなかった。
――じゃあ、なんで俺はあんな顔をしていたんだ?
一つの疑問が浮かび、思考を独占する。しかし、答えは出ない。
「辛い時は、誰かの胸を借りたら楽になれるんだって」
「…司令官、何だか辛そうだったから。ボクの胸で良ければ貸すよ?」
それは、悪魔の甘い誘惑。
受け入れてしまえば、戻れなくなるかもしれない罠。
だが、突き放す選択肢があったのに、提督は選べなかった。
断ったら、皐月に申し訳ない気がして。
そして提督は、その甘い誘惑を受け入れた。
「…ごめん皐月。少しだけでいいから…そのままで…」
「…うん、いいよ。ボクので良ければ、いくらでも」
――本当にかわいいよ。司令官。
皐月の微笑みは、どこか蠱惑的にも見えた。
「…大丈夫?まだ必要かい?」
「…いや、もう大丈夫だよ。ごめんな」
「ううん。役に立てたなら嬉しいや」
明るい笑みを浮かべる皐月。姿は変わっても、心は変わらない。
そんな当たり前のことなのに、それを改めて実感してしまう。
――長門や金剛たちだって、変わってなかったのに。どうしてそう思ってしまったんだろう。
疑問が一つ消えると、また新しい疑問が生まれる。
延々と続くいたちごっこは、思考を切り替えて終わらせる。
「んん?司令官はこのワイン飲まないの?」
「え?ああ。苦手だからね。ならなんで注いでるんだって話だけど」
「じゃあボクが飲むよ。いつもビールだし」
そう言って一息に飲み干す皐月。ワインはジュースじゃないんだぞ!
「っぷはぁ~。こっちも美味しいかも」
「…それは良かった」
提督は、軽く皐月の頭を撫でる。幼い外見の駆逐艦相手にはついやってしまう。
夕立とかの例外もいるが。
「んっ…。もう少し強くしてもいいんだよ?」
「いや、これ以上強くしたら髪が崩れちゃうからさ。そういうのは嫌じゃないか?」
「ボクは、司令官のだったら全然いいけどね」
「そういうものなのかな?」
「そういうものなんじゃない?」
女性の思考はよく分からない。
首を傾げる提督に皐月は手を振って、宿舎へと帰っていく。
そんな二人を物陰から見ていた艦娘が一人。
「て…提督がLolita complexだなんて…!?」
アホ毛が揺れる。動揺している心を表しているかのように。
意外に優秀な安価ってよく言われるクマ。↓2 自由安価です。お好きなものをお書きください。
※今回はこれで終了となります。短くて本当に申し訳ございません…。次回予定は金曜日です。すみません…。
やっぱり皐月ちゃんはかわいいね
隠れて調査なら艦歴的に青葉、潜水艦ズか
長門と青葉、潜水艦たちを呼んで母親がマズイんじゃないかと不安を口にして調査の是非を相談
書き始めようと思っていたら、寝落ちしてこんな時間になっていた…。本当に申し訳ないです…。今から投下していきます。
グラスを厨房に返し、チョコレートを一粒つまむ。
風呂で、暗示するように言っていた言葉を思い出す。
『きっと元気にしてる。きっと…』
今の自分は、建前上では裏切り者、若しくはスパイだ。
――もしかしたら。
最悪の事態を想定してしまった提督の行動は早かった。
考えるよりも先に、体が動いた。
「提督ぅー。ちょっとイイですカ?」
壁からひょこっと顔を出して問う金剛に、提督は悲し気に返す。
「ごめん金剛。今は無理だ」
言葉が出ると同時に、提督は隣を走り抜ける。
「…もしかして、避けられてますかネ…?」
走り抜けた提督を見てそう呟いた金剛。
しかし、提督は焦った様子で鎮守府中を走る。
「…まぁ、大切なPalaverがあるなら優先させまショウ」
あれほど焦っているのなら、よっぽど重要なことがあるのだろう。金剛はそう考えていた。
「ふむ…」
提督と別れてから宿舎に戻った長門は、霞から渡された書類に目を通していた。
「やはりネックは深海棲艦たちの認識か。連携を重要視している者は皆無に等しい…。このままでは少々厳しいかもな」
壁に吊るされた写真を見やる。
その写真は、初めて大規模作戦を突破した時の記念写真。
まだあどけない提督と、彼に飛びついている金剛が印象的だった。
写真の端で腕を組んでいる長門の顔つきは若干険しい。
「まったく…。あの頃の私がこうなるとは。夢にも思っていなかったよ」
壁掛け時計が示す時刻はヒトマルマルマル。即ち朝十時。
「兵器でしかないはずの私たちも、変わるものなのだな」
「心というのは、実に不思議なものだ…」
国のためではなく、ただ一人の人間のために命を懸ける。
そう変化した覚悟に、心に、長門は思いを馳せる。
「…その心の変化を心地よく思う私がいる。兵器失格だな。私は――」
――だが、それでいい。提督と共に歩めるならば。それで。
ワインが効いてきたのか、微睡みに誘われる長門。しかし――。
「すっすまない長門!ゼェ…潜水艦の娘たちと…。ハァ…。…あ、青葉を集めてくれないか…」
――息絶え絶えでそう言う提督の声で、長門の意識に掛かった靄が吹き飛ぶ。
「潜水艦たちと青葉を…?そこまで慌てているということは、余程の理由があるのか」
「ああ…。君たちに関係していることではないが…。俺にとっては本当に大切なんだ…」
提督の目を見た長門は頷き、部屋を飛び出す。
「二分お時間を頂戴する。執務室に必ずや連れて来よう」
「ありがとう…。長門…」
――提督が望むことなら、喜んでするさ。
その呟きは、長門の心の中で消えていく。
再度執務室へと走って戻った提督は、机に項垂れる。
「ゼェ…。ゼェ…。走るのとか…久しぶり…すぎて…。ハァ…死ぬ…」
頭痛がする頭を押さえ、もう一つチョコレートを口にする。
「あと一粒か…。まぁ、気休め程度なんだがな…」
憲兵の手によって勾留されてから、満足な食事を摂れなかった提督の脳は、未だに糖分不足に悩まされている。
「これも数日の辛抱だ…。食事はマトモになったから、やがて頭痛は無くなるだろう…」
休憩を取るために目を閉じる提督の耳に、騒がしい声が入り込んでくる。
「提督!イクたちを呼んだのね?」
「はっちゃんたちに用があるって何なのでしょう…」
「ゴーヤたちはあっちでもあまり仕事無かったしねー。オリョールも水上艦で偶に行くくらいだったし」
「…ドイツ派遣は大変だったのね」
「青葉をお呼びということは…取材ですか?」
「皆、今は静かにしておこうか。提督にとっての一大事のようだ」
シン、と静まり返る執務室。提督は顔を上げて、暗い表情で話し出す。
「俺…今は裏切り者とかスパイってことになってるだろう?」
「ああ。それに加えて、陛下から受け賜わった艦隊を喪失した愚か者という称号も。…いや、裏切り者云々は当事者内で使われているだけか」
「つまり愚か者のクソ提督、というわけか…。間違ってないな。万年少佐だったし」
おそらく何らかの操作が行われていたのだろうが、そんなことはどうでもいいし、証明のしようがない。
「…話を戻すよ。そんな俺の姿が消えたわけだ。母さんにも監視の目が行っていてもおかしくない」
あちらが死んだと認識しているか、姿を消したと認識しているか。それは些細な問題だ。
重要なのは、海軍の顔に泥を塗った男の親族が監視されるか否か、だ。
スパイ行為に等しいことをしていたわけだし、艦隊を壊滅させてもいる。
この二つだけでも、泥を塗る行為としては申し分ないだろう。
「…確かに、な。つまり、母親の救出を依頼したい、と?」
「…そうじゃないよ。母さんは病弱だから、ここに匿っても設備等の問題で体調を崩しかねない」
「…心配なんだ。母さんが酷い目に遭っていないか。苦しんでないかって…」
提督の声が更に小さくなる。
「…はぁ。提督は素直じゃないのね」
見ていられなくなったイクが、口を開く。
「要は、その母さんって人が心配だから調査してほしいってことなのね?」
「…ああ」
小さく頷く提督の頭をコツン、と叩いて、イクは胸を張る。
「イクたちは潜水艦。つまり、隠密行動のスペシャリストなのね!それくらい朝飯前なの!」
「そうだよ!提督の大切な人なら、助けたりする理由としては充分すぎるでち!」
「そういうことなら、青葉を呼ばれたのも納得です!」
快く引き受けてくれる彼女たちに、提督はただ感謝する。
「して、母さん様の特徴と住所をお教えいただきますか?」
「住所は――だ。特徴…というか、歳の割に幼く見えるよ。それに見た目も君たちに近い」
「…私たちに?」
頷いた提督は、考えるように言葉を紡ぐ。
「母さんは…たぶんアルビノなんだと思う。本人から聞いたことは無いんだけど…」
「もしアルビノだったとしたら、病弱なのも何となく…分かる」
「ふむ。先天性白皮症か。それは厄介だ」
腕を組む長門だが、続けて疑問をぶつける。
「年齢は?幼く見えると言っていたが」
「…四十過ぎ…のはず。見た目は真面目に、菊月とかと変わらない。というか、それよりもまだ幼い」
「…深海棲艦みたいだな」
それでも母さんは母さんだから、と返す提督に、長門は頭を下げる。
「…ふむふむ。了解しました。調査に向かいますね!」
「あっ!先越されちゃうのね!」
いの一番に飛び出した青葉と、それを追って走り出す潜水艦組。
捕まったりしないか心配だ。
「…私はもう失礼するよ。酒が回ったのか、少々眠くてな」
「…ああ。何度も頼って、すまないな」
「気にするな。私も、嫌な気はしていない」
静かに閉められる扉。それをずっと、提督は見つめていた。
第三安価…何してるの…?↓2 自由安価でごぜーます。
いなさそうなのでkskstです。
さっきすっぽかした金剛の所に要件を聞きに行きがてらものすごく甘い茶を所望する
誰もいなくなった執務室を後にして、廊下を歩く。
外には神秘的な光景が広がっているはずだが、人間でしかない提督の目では、僅かに光が差していることしか分からない。
急いでいたとはいえ、先ほど声を掛けてきた金剛を放っておいてしまった。
そのことが申し訳なく思った提督は、金剛を捜しに行く。
一番人が多いであろう食堂に行っても、金剛はいない。
どうしたものかと頭を悩ませる提督。そんな彼に、一人の艦娘が声を掛けた。
「提督さん、そんなとこに突っ立って、何かあったん?」
「浦風か。いや…ちょっと金剛を捜していてな…」
小首を傾げて、下からこちらを覗き見る浦風。
提督の言葉を聞いて、浦風は開いた口を押さえる。
「…どうした?」
「あ、いやぁ…。金剛姉さんなら、風呂に少し前に入ってったんよ」
物騒なことを呟いていたことは、敢えて言わない。
「そうか…。しばらく待たないといけないかな」
「んー…。あ!ちょい待っとって!」
そう言って、小走りで浦風は走っていく。
待つこと数分。手にトランプを持って、浦風は戻って来た。
「待つなら、何か娯楽は必要じゃけんねぇ。うちとしては、おしゃべりしたいんだけど。気を遣わせるのも、どうかと思うてな」
「…お話くらいは大丈夫だけど」
どこか表情の暗い提督を見て、浦風は考え込む。
「うーん…。提督さん。ご飯、ちゃんと食べとる?」
今日は食べた、とだけ返す提督。
その言葉を聞いた浦風は、途端に不機嫌になる。
「…駄目じゃ!じゃけんそんな顔しとったんやね!」
ずいっ、と顔を近づける浦風は鬼気迫って見えた。
「ご飯は元気の源じゃ!ちゃんと食べてちゃんと寝る!そうせんと、何も出来んよ!」
「う…」
タジタジになる提督を見て、浦風の表情は申し訳なさそうになる。
「…まぁ…。昨日は色々あったけえしゃあないし、その前も…うん…。急にごめんね…」
「…ご飯を食べる時間はあったんだ。食べてなかった俺が悪いよ」
「ううん。悪いのはうちらじゃ」
「いや、俺の方だよ」
一進一退にすらならない、責任の押し付け合いならぬ請け負い合い。
そんな茶番も、やがて終わりを迎える。
「Mmm…。紅茶の茶葉が少なくて困るネー。…提督ぅ!?」
軽く上着を羽織っただけの金剛が、食堂へとやって来た。
「あ、金剛姉さんが来たけえ、うちはもう退散するね!」
猛ダッシュで宿舎へと走っていく浦風。ミニスカートなのは気にしていないのか。
「…すまないが前は隠してくれ。あと、少し話がしたいんだけど、時間はあるかな?」
「おOKOK。今からでも大丈夫ですヨー」
小走りで進む金剛の後を、提督はついて行く。
「少しだけWaitをお願いするネー」
頷いた提督は、部屋の外で待つ。
数分後、しっかりとおめかしをした金剛が扉を開ける。
「Sorry提督。もう入っていいヨー」
「失礼します」
丁寧にお辞儀をして、提督は部屋に入る。
テーブルには、一つのティーカップが。その中には、紅茶が入っている。
「これは提督の分だから、お好きに飲んでいいデスヨー」
「…金剛は飲まないのか」
「…茶葉が切れちゃいましてデスネ…」
物資補給という新たな問題が浮上したことに、提督は頭を抱える。
「…ああ。すまないが、砂糖をいっぱい入れてもらえるか?」
「もう入れてるヨー。どうせまたLack of sugarだと思ったからネー」
「ありがとう」
「You're welcome」
何気なく返す金剛はどこか、嬉しそうだった。
「…うん、美味しい。凄く甘くなってるけど、今はそれがありがたいよ」
「いつ来ても、私たちは歓迎するネー」
「…ああ。また来るよ。絶対に」
思えば、あちらにいた時もこんな会話をした気がする。
いつものように糖分不足で倒れかけて、紅茶を淹れた金剛たちがお見舞いに来たり。
その度に、手が空いたら部屋に向かうと約束したり。
あの時の日常が戻って来た感じがした提督は、思わず顔が綻ぶ。
「…杞憂でしたネー。あの時話をしなくて良かったデス」
その呟きに、提督が気づくことは無かった。
それが、金剛にとってはありがたかった。
「…さっきは何で呼び止めたんだ」
提督の問いに、満面の笑みで金剛は答える。
「何があっても、提督に対するBurning loveは止まらないって伝えたかっただけデース!」
今までに見たどの金剛よりも輝いて、美しく見えた。
そして、無意識に提督の口から言葉が零れる。
――俺にはもったいない娘だよ。本当に。
同じく、金剛もその呟きに気付くことは無かった。気付けなかった。
安価一触よ。心配いらないわ。↓1 またもや自由安価です。
※今回の更新はこれで終了となります。次回は日曜日…。つまり今日の夕方辺りとなります。昨日は本当に申し訳ございませんでした…。
ロリおかんっていいよね…。ではまた夕方にお会いしましょう。お疲れ様でした。
乙です
>>135
18時終業のはずが21時まで残業…うごごご。今から書いていきます。
「紅茶、美味しかったよ。また飲みに来る」
「OK。今度は高級茶葉をPrepareしておくネー」
「はは…。それなら、補給線をどうにかして作らないとな」
「Yes!ConnectionをMakeしたり、補給艦を襲ったり、やることはたくさんネー!」
「…それだ」
「What?」
提督がそう発すると、金剛は首を傾げる。
なぜそれだ、と言ったのかが分からない。
「俺たちは、現時点では補給手段が皆無だ。金剛の言う通り、補給艦を強襲するくらいしかない」
「そこで、金剛が言ったコネ作りだ。上手くいけば、安定して物資を調達出来る。…上手くいけば、だけど…」
「もしFailedした場合、私たちの居場所が知られますネ…」
「………」
提督は無言になる。思いついたのはいいが、勝率が限りなく低いのだ。
何せ、提督たちの手札は全くない。精々、深海棲艦を利用出来ることと、隠密行動に長けていること。それくらいだ。
何か、糸口が見つからないか。必死に思案する提督の頭に、一筋の光明が差す。
「…前に天龍が意見具申してきたことがあったな…。もしかしたら、今でも…」
「提督?」
「すまん金剛、天龍に会いに行ってくる!」
また、提督は部屋をダッシュで飛び出す。
「…慌ただしい人ですヨー」
――でも、それだけ本気で向き合ってくれてるわけ、ですからネー。
開きっぱなしの扉に視線を向けながら、金剛は微笑んだ。
場所は変わって、たった十畳の広さの修練所。
剣を構える天龍と、槍を優しく持つ龍田。
部屋の片隅で、木曾が指を鳴らす。その合図を皮切りに、二人は距離を縮める。
「フッ」
天龍を放つ鋭い右薙ぎを、龍田はクルリ、と回転させた槍で受け止める。
「そぉれ」
同時に、槍を上に投げて肉薄。右の掌底を打ち込むが、上体を反らされて直撃はしなかった。
上体を反らす力を利用して、天龍はサマーソルトキックを仕掛ける。
しかし、龍田が素早くバックステップに転じたため、それも失敗に終わった。
「今日は白なのねぇ」
ようやく落ちてきた槍を掴み、クスクスと笑いながら龍田は言う。
「色を言うな。大したことじゃねえだろ」
「あらら。照れると思ったんだけどなぁ」
「ハッ。戦いの最中に照れてどうすんだ。そんなんで隙を見せるか…よっ!」
先ほどと同じく、天龍は突撃をして右薙ぎを。対する龍田は、槍を振り下ろす。
両手で剣を持ち、槍を往なす。そこに、龍田の回し蹴りが迫る。
「ビンゴ」
天龍は前屈みになり、床に両手を付ける。それを軸に、下から上へと、龍田よりもコンパクトな回し蹴りが入る。
「きゃ!」
シバータ。カポエラの技である。
咄嗟に反応した龍田は、腕をクロスさせて受け止めるが、片足だけでは支えきれず壁へと吹き飛ばされる。
「…俺の勝ち、だな」
「やぁん。負けちゃった」
壁に項垂れる龍田の首に、剣を添える。勝敗はここに決した。
「…次は俺だな」
剣を肩に掛ける木曾と、苦笑いをする天龍。
「いや、今日はもう終いだ。客人のようだぜ」
そう言って入口を見やる天龍に釣られ、二人も入口へと目を向ける。
そして、大きな音を立てて戸が開かれた。
「天龍!少し話せるか!?」
「ああ。まずは提督が落ち着いてから、な」
提督の息が落ち着くまで、天龍たちはしばし、休憩へと入った。
「…で、何用で態々ここまで来たんだ?」
壁にもたれ掛かりながら、ゼリー飲料(中身はただの水)を飲み干す天龍。妙にその姿が様になる。
「天龍が前に意見具申したこと。憶えているか?」
「あれか。もちろん憶えてるぜ」
右手で髪を掻き上げる天龍。どこか後悔しているようにも見える表情が、提督には辛い。
「まあ、あの時は作戦前だったから仕方なかったがな。それでも、見捨てるみたいでしんどかったよ」
「…すまないな。俺が戦力をしっかり増やしておけば、そっちにも割けたんだが…」
「おいおい。資源とかも考えたらあれ以上は無理だろうに。そう背負いこむなよ」
ポンポンと背中を叩く天龍。叩く音が大きいのと、背中が痛いのは気にしないことにして。
「まあ言いたいことは分かったよ。そいつらを助けたいんだろ?理由は色々あるんだろうが」
「俺は構わねえぜ。寝覚めが悪かったしな。今、その鎮守府が現存してるかは知らねえけど」
「…いや、やってくれるだけでも嬉しいよ」
「そりゃ重畳」
目を閉じた天龍は、静かに寝息を立てる。余程疲れていたのだろう。
「…訓練お疲れ様」
提督は上着を掛け、外に出る。
「あらぁ…?天龍ちゃんを置いて出ちゃうのぉ…?」
「…男の俺にどうしろっていうんだ…」
「おんぶしてあげればいいじゃない」
「…死ぬ」
「しょうがないわねぇ」
ひょいと天龍を抱える龍田。どこにそんな力があるのだろうか。
「女の子には、秘密が付き物よ?」
心を読む能力を持っている艦娘は、いったい何人いるのか。
少し気になった提督であった。
慢心しては駄目。全力で参りましょう。↓1 自由安価です。
母親の現状発覚
備蓄庫の視察をしつつ説得可能な提督の心当たりを考えてみる
慎重で疑り深い方が大本営の言動に疑念を持ってるかもだから望ましい
天龍を龍田が背負っている間、剣を持ってみようかと考えたが、艤装の一部なのでどうせ持てないと思い、手を戻す。
「しかし、天龍がここまで眠るのは初めてだ。提督がいて安心したのかもしれないな」
「まさか」
そんな他愛のない会話をしながら、宿舎に向かう。
食堂行きの廊下に差し掛かった辺りで、三人とは別れる。
薄着になったことで、肌寒くなった提督は蹲る。
「…深海だから水は冷たいし、当然だよな」
どうしたものかと思考する提督。深海に小さく瞬く光が、それに徐々に近づいていく。
「…なんだあれ」
一つ、二つ、三つ、四つと、数を増し、大きくなる。
「まさか…な。まさか…。早すぎるだろ…。流石に」
しかし、残念ながら、それは現実だった。
「青葉、ただいま戻りました!」
「うぅ、負けちゃったのね…」
「情報収集のプロフェッショナルに勝つのは無理でしたね」
「…怖いなぁ…。たった2時間くらいで、本土と往復も含めて情報収集を済ませてくるなんて…」
「むむ。引かれている気がします」
もう訳が分からない提督は、諦めたように話を聞く。
「…それで、どんなことが分かった?」
「えっとですね…。母さん様は本当に若く見えましたね。もしや二十歳なのでは?」
そんな年齢だったら、そもそも自分は産まれてないと心の中でツッコミを入れる。
「…冗談です。色々洗ったのですが、母さん様に接触する人はいませんでした。監視も今のところは全然」
「海軍や憲兵が出向いた記録や情報も無かったでち」
「…でも、少し苦しそうにしてたのね。何かの病気に罹ってるの?」
「…いや。普段から辛そうにしてたよ。…監視も無いということは、気にされてないのか?」
一縷の望みが出てくるが、現実的に考えると、それはないと分かってしまう。
「…ただ単に、衰弱死するとあちらが予想しているだけ、か。手を出すまでもないよな。正直…」
どれほど病弱なのかは、自分が一番知っている。それ故に、一々干渉しなくても、勝手に自滅すると分かっている。
そんな考えが出来る自分が恨めしくて、怒りがこみ上げる。
「…おそらく、海軍とかが母さんを狙うことは無いだろうな。なら、俺たちに出来るのは…」
「母さんを迎え入れられる設備を整えること。ですね?」
「…うん。ハチの言う通りだ」
最低でも、様々な医薬品は必須だろう。それと、無菌室というわけではないが清潔な場所。
あとは点滴類や介護食品も必要だろうか。
「地上に安全な場所があれば…。それが一番いいんだけど…」
中々消えず、積み重なっていく問題。だけど、処理していかないことには、何も始まらない。
「やれることはあるはずなんだ。それを積み重ねれば、きっと実を結ぶ日が来る」
「ですね!青葉も全力を尽くしますよー!」
「潜水艦組もやるでちよ!」
「おー!なのね!」
安価の中からこんにちわー!ゴーヤだよ。↓2 いつもの自由安価だゾ。
※本日の更新はこれで終了となります。次回更新予定は月曜日です。お疲れ様です(鳥海並感)。
ksk
提督の健康管理って誰がやってたんだろ
明石?
乙
明石や大淀?
食事関係で鳳翔さんや萩風とかも声かけそう
この場合用があるのは健康オタクじゃなく医師相当の資格持ちだよなあ
母親どころか提督まで病気アピの記述だらけ
乙乙
面白そうなスレみつけたでち!
>>169、>>170、明石は医療機器の操作担当、大淀は簡単なバイタルチェックと血糖値測定の担当です。
実際に診療出来る艦娘は、残念ながら現時点ではおりません。
とはいえ、点滴といった簡単な処置なら提督を含めた艦娘全員が習得しています。深海棲艦は…(目を逸らす)。
鳳翔さんや萩風等といった料理上手な人は、偶に差し入れを送りに行ってました。
>>171、一応、提督自体は健康体です。小食な上、日頃の業務に時間が取られすぎて満足に食事が出来ない環境に在ったため、よく倒れかけてました。
母親の都合上、匿うなら医師系の方がいた方が安全です。不測の事態が想定されますので。
>>172、嬉しいレスをありがとうございます!これからも面白く出来るよう、精進します。
今から更新していきますです。今回で心当たりのある提督は、最大で三人ほど出す予定です。設定は作っていますが、要望があれば募集するかもです。
全てはコンマ神の導きのままに…。
「では!私たちは入渠してきますね!」
敬礼をして、そそくさと退散していく青葉たち。提督も、手を振ってそれを見送る。
「金剛は、茶葉が無いと言っていたな…」
鎮守府全体の備蓄はどうなのか、確かめる必要がある。
もし、食料が少なくなっているとしたら、死活問題になり得る。
「備蓄庫はどこにあったかな…」
まだ鎮守府の構造を把握出来ていない提督は、ウロウロと廊下を往復する。
「提督?どうして廊下でウロウロしているの?」
「ん?…矢矧か。ちょっと迷ってるんだ…」
後ろから声を掛けられたので、提督は振り向く。そこには、矢矧が荷物を抱えていた。
「迷ってる…。ああね。まだ目が覚めて一日しか経ってないもの。当然よね」
「う…。早く憶えないと、皆に迷惑が掛かるよなぁ…」
「そうかしら。それで、どこに行きたいの?」
提督は矢矧に目的地を伝える。すると、矢矧は小さく微笑んだ。
「ちょうど、私も装備を置きに行くところだったのよ。ついてきて」
気を遣っているのか、ゆったりとしたスピードで歩く矢矧。
隣を歩きながら、段ボールから顔を出す魚雷を見て、質問をする。
「これは五連装酸素魚雷か?」
矢矧は首を横に振る。
「酸素魚雷じゃないわね。明石にも分からないそうよ」
「なんだそれ…」
「一発だけ、無人島に試射したの。その時の航跡には緑色の粒子が存在、直撃後は通信不良になったのよ」
普通の魚雷ではまずあり得ない現象だ。そもそも、魚雷内部は空気か酸素で満たされているのが普通のはずだ。
「…直撃後の空気中にも、粒子が散布されていたわね。まぁ、危険だし不明な装備だから、今から封印しに行くの」
「…それがいいよ。俺も、そんな装備が安全な物だとは思えない」
深海棲艦になったことで、開発する装備にも差異が生じているのだろうか。
少し気になるところではあるが、今はそれよりも優先するものがある。
思考を戻して、先に進んでいる矢矧の後ろを追う。
矢矧の後を追い十分ほど歩くと、重々しい鉄の扉が二つ、眼前の壁に取り付けられている。
「んっ…。…ごめんなさい。扉、開けてもらえるかしら。横にスライドすれば開くから」
「分かったよ。…ふんっ!…むぐぐぐぐ…」
「…ごめんなさい。提督の力じゃ開けられない扉だったわ」
「だよなぁ…」
どう見ても、人間の力で開くものとは思えない。
提督の考えを肯定するかのように、上部に駆逐艦及び潜水艦の接触を禁ず、と書いてある。
矢矧は荷物を下ろし、扉を押す。扉はゆっくりと横に動いていき、中身が露わになる。
無造作に吊るされたランプの電気を点けると、壁一面に掛けられた装備が。
一つ一つにお札が貼られており、危険な物だと一目で分かるように配慮されている。
「…これでよし…っと」
魚雷にお札を貼り、壁に立て掛ける矢矧。軽く伸びをして、提督の方を向く。
「それで、どうしてここに用があったのかしら?」
「あー…。食料とかの備蓄を確認したいんだ」
「それなら、隣の備蓄庫ね。そっちは誰でも開けられるはずよ」
矢矧の言葉を聞き、もう一つの扉の前に立ち、提督は扉を押す。
先ほどとは打って変わって、あっさりと扉は動く。
備蓄庫の中には、大量の野菜と調味料、精肉が、種類毎に整頓されて置かれていた。
「…凄い量だな…」
「これでも、二週間分くらいしか無いのだけれど」
何百人も食事をするのだから当然ではあるが、これほどの量で二週間しか保たないとなると、実艦の間宮や伊良湖の凄さがよく分かる。
「米俵は…何個あるんだこれ」
奥のドアを開けた先には、部屋を埋め尽くすほどの米俵が安置されていた。
「…二週間は問題なし、と。その間に、補給線をどうにかしないとな」
紙に備蓄庫内の情報を書き留めながら、同期や先輩、後輩のことを思い出す。
直下コンマで人数を決定します。基準は30(一人)、60(二人)、90(三人)です。
↓1~3で、提督の特徴とかを安価で募集するかどうかのアンケを取ります。協力いただければ幸いでヤンス。
我々だとお便利なチートキャラ出すからお任せで
進行も滞るし
出来合いでいいけど候補から選ばせて欲しい
では、候補の提督の簡単なキャラを幾つか書いておきます。↓2、3で安価です。番号と場所(サーバー名)をお書きください。
有能度は皆同じくらいです。ご自由にお選びください。自分は風呂と食事を済ませてくるので、23時頃に再開します。
1…控え目オドオド同期提督(女性)
2…武人系同期提督(女性)
3…子犬系後輩提督(女性)
4…明るい同期提督(男性)
5…兄貴系先輩提督(男性)
6…ベテラン系先輩提督(男性)
6
ごめんエンター押しすぎた
鯖は舞鶴
安価下
3トラック
お待たせしました。再開前に、舞鶴所属の提督の番号を直下にお願いします。
6
まず頭に浮かんだのは、トラック泊地に配属されている後輩。
勉強中によく顔を出しに来ては、クッキーを差し入れてどこかへと去っていく。
海軍兵学校に在籍していた時は、そんなことが何回もあった。
提督となった後でも度々合同演習を行い、お互いの艦隊の練度を上げてもいた。
『先輩みたいな人ばかりなら、戦争なんか起きないと思うんすよね~』
無邪気にそう言った彼女の顔が、印象的だった。
今の彼女の階級は少将。
自分と違って優秀な子だ、と提督は心の中で自嘲する。
戦争そのものに疑念を抱いている彼女なら、こちらと共に戦ってくれるかもしれない。
そんな希望を抱くと共に、彼女も巻き込もうとしている自分に、提督は嫌悪する。
次に浮かんだのは、海軍兵学校で何度も指導をしてくれた、舞鶴鎮守府の中将。
彼の教えを受けたからこそ、今まで大規模作戦を突破することが出来たと言っても過言ではない。
提督に様々な兵法を教えた、偉大な人だ。
『普通の勝利を重ねること。それがどれだけ素晴らしいことかを知らない愚か者が多すぎる』
『戦争とは、その普通の勝利の積み重ねによって決まるものだ。決して忘れないようにな』
普通の作戦しか立てることしか出来ない自分に、自信を持たせた言葉。
それは今も、心の中で生きている。
――彼ほどに聡明な方なら、大本営のことを疑って、何かの準備を進めているかもしれない。
だが、本土にある舞鶴に、他の提督に悟られることなく接触すること。
これが一番難しい問題だ。
「少しずつ、堅実に進めていけばいい。そうすればやがて、大きな成果になるんだから」
鎮守府全体の方針も、少しずつ固まっていく。
抜錨!鳥海、安価します!↓2 自由安価でございます。
ksk
深海達のたまり場を探してグループに混ざって慣れる努力
第六駆逐隊との約束
料理の味見
深海棲艦たちと友好的な関係を築くことは、コネ作りのための第一歩。手札を補強するために必要なことだ。
純粋に、これから共に戦う人たちだから仲良くしたいということもある。というより、そっちが本音だったりする。
既に矢矧は、別の場所に移動している。何やら仕事があるようなので、引き止めることはしなかった。
「…どこかにヲ級とか南方棲戦姫とかがいないかなぁ…」
「呼んだかしら?」
「うわぁ!?」
呟くと同時に、壁代わりの水面から顔を出す南方棲戦姫。もうどこにいても驚かない気がする。
「驚かないでよぉ。私だって、ショックは受けるんだから」
「ご、ごめん…」
ペコペコ頭を下げる提督を見て、南方棲戦姫は微笑を浮かべる。
「まぁいいわ。私に何か用があるの?」
「え?…ああ。深海棲艦の人たちとも仲良くしたくてさ。いつも集まっている場所とかがあれば、案内してほしくて」
「お風呂で言ってくれたら、連れてってあげたのに」
「…あの時は色々あったから…。そこまで思いつかなかったよ」
そういうことなら仕方ないわね、と返す南方棲戦姫は、提督を抱きしめる。
「え…?ええ…?」
「ちょっと飛ばすわよ~」
そして水中へと引き摺り込み、高速で泳いでいく。
「大丈夫?息、ちゃんと出来てる?」
「モガムググガ…!」
胸に顔を押し付けられている提督は、力無く返事をする。
提督の周りは空気で覆われており、水圧が掛かる心配は無い。だが、当の本人は怯え切っている。
――早く顔を離したい。だけど、離したら死ぬ可能性があるから離せない…。助けて長門。
深海棲艦たちのたまり場に到着するまでの数十分間、提督は精神の生と死の狭間を反復横跳びしていた。
「…ほら、到着したから起きなさい。ねぇ~」
南方棲戦姫は、ペチペチと提督の頬を叩く。十回を超えたところで、提督は目を覚ます。
「…ハッ!?」
「おはよう。もう入口だから、シャキッとするのよ」
顔を上げた提督は辺りを見回す。見たところ、ここはどこかの海底洞窟のようだ。
ゆっくりと起き上がり、背中を伸ばす。
襟や裾を整え、ボタンをしっかり最上部まで留める。シャキッとするのなら、これくらいはしなければ。
意を決して、目の前の空洞へと入る。
そこには小さな円卓状の岩と、岩を中心として遠く離れたところに、円形のベンチが何重にも設置されている。
「ここは…」
「私たちが作った会議室、といったところかしらね」
装飾が施されてないため寂しく感じるが、謎の威圧感を感じる。
ベンチに座っているのは、ほぼ全ての種類の深海棲艦。
円卓には中枢棲姫、深海海月姫、戦艦水鬼、空母棲姫、港湾棲姫、北方棲姫が座っている。
なお、北方棲姫は港湾棲姫の膝上で眠っている。
「貴様もこっちに来い」
手をこまねく戦艦水鬼。状況からして拒否権は無いに等しく、おそるおそる提督は円卓に近づく。
「そう怯えるな。別に取って喰おうとしているわけじゃない」
「フフフフ…。可愛いなぁ…。食べたくなるじゃないか」
「…やめろ。不用意に威圧するな。味方なのだからな」
「そういうこと…だ。まぁ…仲良くしよう…な?」
戦艦水鬼、空母棲姫、中枢棲姫、深海海月姫の順に言葉を発する。
特に、空母棲姫の発言に危機感を覚えた提督は、南方棲戦姫の近くに寄る。
「…ハハハ!だいぶ好かれているようだな。南の」
中枢棲姫が笑いながら言う。それに対し、自信あり気に南方棲戦姫は言葉を返す。
「これも人徳ってものかしらねぇ。そっちはどう思う?」
流れ弾が港湾棲姫へと飛ぶ。
「え…。私に振られても…困る…」
しかし、それを何とか回避した港湾棲姫。
常人が見れば卒倒するであろう光景。
それを目の当たりにしても、意識を保っていられる提督。
案外、メンタル面の強化はされているのかもしれない。
深海棲艦に聞きたいこと、一緒にしたいことがあれば↓1~3にお願いします。
※今回はこれにて終了でございます。次回更新は火曜日予定ですが、水曜日になる可能性があります。ご了承いただければ幸いです。
今回もお疲れ様でしたァン!(CV.杉〇智和)
まず艦娘達たちを受け入れてくれたことのお礼、次に自分の命を救ってくれたことのお礼
それから現状ふわーっと頭の中にあるプランを説明
大本営の嘘を確認するために開戦前後の出来事を教えてもらう
自己紹介と一人一人としっかり握手
資源とかどこで確保してるの?
海底から採取してる仮定があったがホント?
それと資源の輸送であの腹の大きい輸送船は目立つ上に他の鎮守府の艦娘に鎮められそう
数回ならうちの艦娘が所属誤魔化して味方のフリして輸送できるが?
モガモガ言ってるのは移動の数十分の間提督は水じゃ無く乳で溺れかけてたのか
うらやまけしからん
>>193、憲兵がいたら連行案件でしたねぇ…。その憲兵たちも腐ってるわけなのですが。
お待たせしました。今から再開しやす。昨日は連絡してた方が良かったんじゃないかと少し後悔。
「…色々と言いたいことはあるけど、これだけは絶対に言っておきたいんだ」
提督がそう言うと、深海棲艦全員が視線を向ける。
敵意は感じないが、威圧感にも似た何かを感じ、体が強張る。
それでも、はっきりと言わなければならない。
――彼女たちには、大きすぎる恩があるからな。
「…深海棲艦になった娘たちを受け入れてくれて、本当にありがとう」
ここ数日で何度頭を下げたか分からない。だからといって、支障があるわけではないのだが。
頭を下げる提督を見て、ベンチに座る深海棲艦はざわつく。
ヲ級もまた、心配そうに提督を見つめ、レ級は欠伸をして寝転がっている。
「如何なる理由があろうと、彼女らは沈んだ時から我らが同胞(はらから)だ」
「故に受け入れるのは道理。感謝されることではない」
淡々と返す中枢棲姫。その目に映るは、未だに頭を下げたままの提督。
「同胞…か…」
嘗て敵であったはずの艦娘を受け入れたのも、肉体が深海棲艦化して、近づいたからなのだろうか。
「…それともう一つ。俺なんかを助けてくれてありがとう」
提督がそう言うのと同時に、中枢棲姫は提督に近づいて、首を掴んで持ち上げる。
「ぐ…!?」
「…ちょっと。手荒なマネはしないでちょうだい」
中枢棲姫は、諫めようと歩み寄る南方棲戦姫を睨む。
「………」
その目を見て、南方棲戦姫はその場で静止する。
「…貴様には人としてのプライドは無いのか?一々自分を卑下して…。虫唾が走る」
「生きるため…に…仲間を…棄てた俺だ…。価値とか…あるわけが…がぁ…!」
首を掴む力が強くなる。中枢棲姫の目は怒りを孕んでいた。
「貴様のその物言いを、彼女らが望んでいるわけがないだろう!」
「ッ!?」
そして、中枢棲姫は手を離す。
「貴様は艦娘たちを罵倒されて笑っていられるか?怒るよな?」
「それと同じだ。貴様が卑下する度に、彼女らの行動を否定されているようなものだ」
「貴様の立場は以前とは違う。皆の想いを、覚悟を背負っている。そのことを自覚したのなら、言動には気を遣え」
「貴様が下に見られるということは、我々全員も見下されているのと同義なのだぞ」
「………」
それは、彼女なりの警告であり慰め。
多少厳しい言葉を投げかけないと、変わらないと思った故の厳しさだった。
「…なんでだろうな。正しいと思っていること全てが、裏目に出ている気がするよ…」
下手に出るというより、自分を貶めることで自分を守ってきた提督。
過去の経験が、提督の心に蓋をしている。
しかし、中枢棲姫の発破をきっかけに少しずつ、その蓋を開けようと提督の心はもがいていた。
重苦しい雰囲気が辺りに漂う。
その中で、提督は何かを呟いている。
「はぁ。しょうがない人ね」
見かねた南方棲戦姫は、提督に発言を促す。
「ほら。他に言いたいことがあるんでしょう?言いたいことははっきり言わないと」
「…ああ」
小さく頷いた提督は、数秒思考して口を開く。
「…ある程度だけど、今後の行動は考えたんだ」
「まず、暫くの間は姿を隠して、監視の目を逃れる。その間は、深海棲艦と艦娘の連携強化に時間と労力を割きたい」
「…まぁ、昨日の合同訓練で身に染みたわけだからな。…なぁ?」
「…んぁ…!?」
レ級を一瞥しながらそう述べる戦艦水鬼。うたた寝をしていたレ級は、すぐに目覚めて反応する。
「次に、大本営が戦争の理由を隠しているのが理解出来ないんだ。だから…」
「何があったのか教えろ…と」
「…そうだよ」
顎に手を当てながら、提督の言おうとしたことを言った中枢棲姫。その目は若干の愁いを帯びていた。
「…いいだろう。幾らかは話す」
「我々の役目は海を守ることだ。人が汚した海を浄化し、資源に還元して平等に分配することで牽制を行う」
「戦争さえ起きなければ、浄化は追い付くからな。資源を送れば、無駄な戦争は起きないと踏んでいた」
「不可侵の契約を結んでいた我々は、浄化と還元に注力出来た」
「…しかし、強欲な人どもは我々の住処を突如攻撃した。資源と技術への欲が出たのだろうな」
「あくまで、我々は反撃したに過ぎない。あちらが停戦すれば、我々もやめるつもりだ」
しかし、一度付いた火は消えるまで燃え続ける。
戦争という火も同じ。どちらかが滅ぶか降伏という水を掛けるまで、決して消えることのない炎。
「…開戦から数ヵ月。艦船しか動員しなかった人が、突然艦娘を挙って使いだした」
「…理由は分かっている…が。それは言えん。自分で知るべきだ」
平和に過ごしていたのに、突然襲われた。
そんな辛いことがあっても、共に戦ってくれる。
彼女らが求めているのは、嘗て享受していた安寧なのだろうか。
それとも――。
――それよりも、今は優先することがある。
「あと、資源のことなんだが…」
「資源は我々が生み出し、海底に保管しているだけだ。食料以外は心配しなくていい」
即答する戦艦水鬼。予測されていたのだろうか。
「即答か…。…次に資源の輸送なんだが、ワ級では目立つ上に簡単に沈められるんじゃないかな?」
ワ級は非情に脆い艦だ。flagshipは中々の耐久と火力を持つが、通常の個体とeriteは非情に弱い。
「ああ。対策として、陽動部隊と輸送部隊に分けたりしているが、何せ腹が目立つからな」
ベンチに転がっているワ級。その腹はスリムになっている。
おそらく、腹の膨らみ具合が積載している物の量なのだろう。
「…艦娘を使って味方のフリをすれば、数回の輸送なら出来ると思うけど…」
だが、これはその場しのぎにしかならない。
やがてバレてしまうため、補給線の構築等は必須だろう。
「必要な時は声を掛ける。艦娘は虎の子とも言っていいものだからな。取っておきたい」
現時点では、警備はそこまで厳重ではない。
つまり、深海棲艦化した艦娘を認識していないということだ。
そのアドバンテージを消失するのは痛すぎる。
「…最後に、話は変わるけど自己紹介と握手がしたい」
「…ほう?」
「南方棲戦姫が言っていたんだ。『あなたのことを知らないのに』って」
「共に戦うんだ。俺が怖がっていたら、自分を隠していたら、信頼も何も出来ないだろう」
――それに、謝りたいから。怖がっていてばかりで、知ろうとしなかったことを。
心の中でそう呟いて、一言一言、表現に気を遣いながら話し始める。
「今更だけど、俺が提督と呼ばれてる人だ。呼び方は好きにしていいよ」
「趣味は読書くらいのつまらな…コホン。趣味は読書で、星を見るのも好きかな」
「お粥とかなら得意だから、言ってくれたら振舞うよ。えっと…。これからよろしく」
途中で中枢棲姫に睨まれた提督。表現に気を遣っただけ、まだマシだっただろう。
自己紹介を終え、ベンチに座る深海棲艦と握手をしていく。
ヲ級は握手を通り越してハグを、レ級は尻尾で甘噛みをしてきたが、それ以外は案外普通に進んだ。
最後に中枢棲姫と握手をして、解散となる。
終わったと同時に、南方棲戦姫は提督を連れて鎮守府に戻った。
後を引かないようにという気遣いなのだろう。
もう少し話をしておきたかった提督だが、彼女の厚意を無駄にするわけにはいかなかった。
まだ夕方だったが、提督は夕食を済ませて布団に着く。
昨日は夜遅くまで起きていたから、今回は大目に睡眠を取るためだ。
中枢棲姫に言われたことを思い出す。
「…今まで、俺は皆に嫌な思いをさせてたのかな」
悪い方向に進んでいく思考。
それは、力尽きて眠るまで続いた。
第二日 終
※本日の更新はこれで終了となります。安価も出せてないし、駆け足気味ですみませぬ…。次出す安価の予定は自由安価です。
次回予定は土曜日です。お疲れ様でした。
いくらポジティブに安価を取ってもネガティブに行くスタイル
乙です
おつおつの
>>199、過去のトラウマが原因なので、それをどうにかしないとなかなかネガティブ思考から脱却出来ません。
一応、中枢棲姫さんによって多少は矯正されました。でも、まだ当分は続きかねません。
今更ですが、ちょっと提督がアレ過ぎる気がしないでもない。再開ですん。
age忘れでふ…。
三度目の正直age…。
マルナナマルマル。午前七時。
早いと感じるか、遅いと感じるかは人それぞれのこの時間。
一人の深海棲艦が、執務室を訪ねた。
「提督?約束通り、私が来たわよ~?」
南方棲戦姫。深海棲艦の中でも、特に友好的な女性である。
手には朝餉を乗せたお盆があり、三粒のタブレッツが添えられている。
「…返事は無し、か。とりあえず入るわね」
かちゃりと音を立て、扉を開く。
目の前の机には、誰もいない。
「…まだ寝てるのかしら」
南方棲戦姫は首を傾げ、辺りを見回す。
後ろには、先ほど入って来た廊下に続く扉があり、左には提督の寝室に続く扉が。
右には、書類を保管している棚と、箪笥が並んでいる。
「提督を起こす…のはやめておきましょう。疲れてるのかもしれないし」
南方棲戦姫は、机にお盆を置いてチラリと棚を見る。
「…とすれば、やることは一つよね~」
棚に近づき、一冊の本を手に取る。
「提督の鎮守府日誌、ご拝見~」
ボロボロになっている鎮守府日誌。
何が書かれているか興味を持った南方棲戦姫は、楽しそうに日誌を開いた。
―――――――――――――――
二〇一三年 四月二三日 快晴
修練カリキュラムを終え、第三〇期生の新米提督が各地に配属された。
俺の配属された鎮守府は、激戦地のラバウル基地。
まだ未熟である自分を、最前線で鍛えるための采配だろう。
初期艦は吹雪型一番艦、吹雪。真面目ないい子だ。
まだ未熟な我々だが、共に成長して日本を、民間人たちを守る軍人になりたい。
そうすれば、母さんが誇れる息子になれるのだろうか。
少なくとも、母さんを失望させるような軍人にはなりたくはない。
…中将の教えを活かせば、立派な軍人になれるはずだ。
卒業するまで、一緒に勉学に励んだ後輩のためにも、昇進出来るように努めねば。
―――――――――――――――
二〇一三年 五月一日 雷雨
沖ノ島海域攻略戦で大敗を喫した。
幸い犠牲者は出なかったが、実力不足を痛感した。
艦娘たちもそうかもしれないが何より、指揮をする自分自身が誰よりも未熟だった。
一航戦や金剛、比叡、摩耶、吹雪には痛い思いをさせてしまった。
二度と同じことが起きないよう、一層努力を重ねなければ。
皆頑張っているのだから、提督たる俺が一番頑張らなければ、示しがつかない。
情けない自分を信じてくれているから、こちらも応えなければならない。
それが、俺に出来る唯一のことだから。
―――――――――――――――
二〇一三年 五月四日 曇り
情けない。書類整理中に倒れてしまった。
見舞いに来てくれたのは嬉しかったが、自分の所為で鎮守府全体の仕事が滞ったことを考えると、自分が恨めしくなる。
この点滴が終わったら、遅れた分を取り戻すために睡眠時間を削って、書類整理に充てるとしよう。
追伸
赤城が深夜、おむすびを振舞ってくれた。
辛子高菜と鮭の二つのおむすびだ。
味は言うまでもなく美味だった。
今度、間宮さんのパフェとかを奢ってみよう。
いつも戦いのことばかり考えていて、彼女が少々心配だ。
これで、楽しいことを知ってくれたら嬉しいのだが。
―――――――――――――――
「…凄いわね。二回に一回くらいは自虐してる」
十ページほど読み進めたところで、日誌を閉じる。
「これ以上はやめておきましょう。闇が深そうだし」
どういう経験をしたら、ここまでネガティブになれるのか。
少し怖くなった南方棲戦姫だった。
日誌を棚に戻し、机に腰を下ろす。
「あら」
先ほどは気付かなかったが、茶封筒が机に置かれていた。
『深海棲艦の懸念点と仮訓練プログラム 霞より』
「これ…。一昨日の合同訓練の書類?大したものね」
ずっしりとした封筒を片手で持ち上げる。
「…南方棲戦姫か。おはよう」
「おはよう提督。髪、ぼさぼさね」
「…勝手に直るよ」
提督は、机に置かれているお盆を見ている。
「どうぞ。あなたが食べると思って持ってきたものだから」
「…ありがとう」
寝起き故か、はたまた昨日のことを引きずっているからか。
どこか暗い雰囲気の提督。
「…暗いわねぇ。くすぐるわよ?」
「やめて。弱いんだ」
「弱点発見ね」
軽くからかって雰囲気を明るくしようと試みる。
功を奏したのか、提督は微笑む。
「ほら、冷めないうちに早く食べなさい。間宮たちに悪いでしょ」
「…そうだな」
今日の朝餉は、浅漬けと卵焼き、お吸い物だ。
当然のように、白飯は山盛りになっている。
「う…。流石に、二日連続大盛りは辛いな…」
「あらら、私も食べた方がいい?」
「うん…。食べられる分は食べるから、残りをお願い」
「任されました~」
結局、提督は四割ほどしか食べることが出来なかった。
全軍、この安価に続けッ!↓2 自由安価でげす。
メイド・イン・ヘブン!時のksk!
あれ?
もしかして資源マスの資源って君達がリサイクルしてくれた物が陸にデーンと置いてあるのを艦娘が拾って帰ってるの?
と素朴な疑問をぶつける
行動に余裕があるなら霞の文書を長門を呼び3人で精読
「ごちそうさま」
「美味しかったわねぇ」
空になった食器をお盆に纏めて、机の隅に移す。
ふと、昨日の会合から思っていた疑問を思い出し、南方棲戦姫にぶつける。
「…気になってることがあるんだけどさ」
「はい」
「出撃した時、偶に資源を回収してくることがあるんだ」
「もしかしなくても、君たちが作った物だよね?」
「正解~」
ピースをして返す南方棲戦姫。なぜかどや顔付き。
「不必要な分は、陸に揚げたり輸送艦を使って不足している部隊に送ったりしてるのよ」
「そもそも、この戦争自体不毛な争いだから。敵に取られようが気にしないわ」
何というか、資源の分配等で揉めている上層部が愚かに思えてきた。
実際愚かだったのだろうが。
「それと、霞って子から書類よ」
「わっとと…。凄い数だな…。アイスとかを今度奢るかな」
手渡された書類を机に広げる。
「すまない、南方棲戦姫。長門を呼んできてもらえるか?」
「…あの人、今も寝ているわ。陸奥の言うことだから間違いないはず」
ワインを飲んだだけで、彼女がここまで寝たことは無かった。
――ずっと、働きづめだったのか。長門には迷惑を掛けるな。いつも…。
申し訳なさを胸に抱えながら、書類を精読していく。
―――――――――――――――
深海棲艦合同訓練 各艦の懸念点と個別訓練プログラム(仮)
戦艦レ級
砲撃、雷撃、航空、対潜。どれを取っても優秀な艦だが、気分次第な上に遊んでしまう悪癖有り。
戦闘に対する意識を改める必要有り。早急に対応するべし。
個別訓練プログラム(仮)
以下略
―――――――――――――――
潜水ソ級
本人の戦闘への意識は悪くはないが、積極性が皆無。また、通信手段が無いためだと思われるが、協調性が低い。
深海棲艦との通信手段を確立させるように意見具申する。特に、潜水部隊との意思疎通があまりにも困難である。
以下略
―――――――――――――――
軽巡棲鬼
好戦的…積極性があるのは評価出来るが、周りへの配慮が無い点は危険。
最悪の場合、単艦で敵軍に突撃する可能性有り。注意を促すべし。
以下略
―――――――――――――――
南方棲戦姫
状況把握、配慮、いずれも良好。しかし、友軍と複数の敵を相手取る時の連携を友軍に任せがち。
混戦時は、判断に遅れが生じる場合有り。先ほど挙げた欠点が、より顕著に表れると思われる。
以下略
―――――――――――――――
戦艦水鬼
友軍への配慮が行き届いているが、積極性が低い。
友軍を守ることを優先するのも良いが、戦闘が長期化するため過度に行うのは望ましくない。
せっかくの高火力を無駄にしている傾向にあるため、今よりも攻撃に集中させるべし。
以下略
―――――――――――――――
深海双子棲姫
今回の合同訓練で、最も連携が危ぶまれる深海棲艦。二人だけの世界を創るが故に、戦闘も放棄しかねない。
友軍のことを殆ど気にしないのは危険な兆候。早急に、周囲と信頼関係を築かせるように。
そうしなければ、孤立して轟沈する可能性も否めない。味方を喪うのは勘弁願う。
以下略
―――――――――――――――
全体の方針(仮)
当面は、座学やミーティングを重ねて相互理解と知識の習熟、重要性の理解に努める。
ほとぼりが冷めた後に、実際に訓練することで更に重要性を理解させる。
但し、連携を精神的な理由で望まない艦娘、深海棲艦がいる可能性もあるため、予め通達をして本人の確認を得ること。
以上
―――――――――――――――
「…凄い辛口だなぁ…」
「む…。私も少しは考えて動こうかしら」
懸念点は比較的短く纏められていた。
しかし、個別の訓練プログラムが非常に多かった。
年単位で行うつもりと思ってしまうくらいに。
「…とりあえず、最初の間は様子見かな」
「どう転ぶかが分からない以上、最初から全て決めるのは早計だ」
「…まぁ、この書類は非常にありがたいものよね」
言葉を肯定するために頷く提督。
欠点が纏められているのは、指導する側としてもやり易い。
優秀な娘だと改めて思う。
「通信手段をどうするかは明石と要相談か」
機械のことに関しては、明石の右に出る者はいない。
謎兵器を作ったのも明石だったか。
「しかし…。こうして見ると、連携させるのが如何に大変なのか分かるなぁ…」
「同じ艦隊で連携を取るのですら、大変だったはずよ。違う存在なら、尚更よね」
「うーん…」
戦闘については、陣形や戦術以外はてんで分からない。
細かい打ち合わせについては、本人たちに一任した方が良さそうだ。
暁よ。一人前の安価として扱ってよね。↓1 自由安価なのねん。
提督がぶらぶらと歩いてたら白露型の水着姿あり組が深海組で水着姿ありのキャラに水着着せてた
提督は夏姫のあのケツを見たとかでww
大きい紙に
連携の練習をおこなっていく事
これは皆で生き残るために大事であること
連携をしたくない人は今夜執務室に来てくれればお話し伺います
食堂に来ない人に会ったら伝えてください
と大書して食堂に掲示
書類を封筒に戻し、机の引き出しに直す。
「俺はお盆を戻してくるよ。君は自由にしてくれ」
「分かったわ。適当に海でも泳いでくるわね」
体を伸ばして、海に潜る南方棲戦姫。
深海棲艦でも、ストレッチとかは必要なのだろうか。
扉を開け、食堂を目指す。食堂前までは基本的に一本道である。
「もう少し間取りを変えたら、住みやすくなってたと思うんだけどなぁ」
今更何を言おうと、変えることは出来ないが。
「…何やら騒がしいな。お酒でも飲んでる人がいるのか?」
食堂に連なる分岐路に着いたところで、声が聞こえる。
「…夕立と白露の声…かな。あとは…小さくてよく分からないな」
自由奔放な夕立がいるとはいえ、そこまで問題があることはしてないだろう。
そう考えた提督は、食堂に入るために右折する。
「………」
そこには、水着を着た白露、時雨、村雨、夕立、海風が。
更に、ノリノリで水着を着ている戦艦水鬼と空母棲姫、恥ずかしそうに着る港湾棲姫。
諦めたように着る集積地棲姫と、無表情でジュースを啜る重巡棲姫が。
潜水棲姫も水着を着ており、ビーチパラソルを肩に担いでいる。
「…何してるの」
口から出た率直な感想。
あちらからすると、提督がいることが予想外だったようで、夕立と戦艦水鬼、空母棲姫、重巡棲姫以外は慌てふためく。
「てっ提督!あの、僕はその、違うからね!」
「違うって何よ!村雨は…夕立が着たいって言うから仕方なく…」
「ノリノリだったのに酷いっぽい!?」
「…?なぜ恥ずかしいのだ?尻尾付き、分かるか?」
「さあ、分からないわ」
「うぅ…。恥ずかしい…。なんで鎮守府でこんな格好を…」
そして、全員の恰好を認識した提督は後ろを向く。
「おっと、逃げることはないじゃないか。ウブで可愛いなぁ…」
空母棲姫は、提督の首に腕を掛けて引き寄せる。
提督の背中に当たる双丘が、提督の心を削り取る。
「あ…その…。離れてくれると…助かる…」
「…女性経験が無いのか。提督なのに」
「…資格が無いからな。俺には」
中枢棲姫がいたら、速攻で昇竜拳をしてきそうな言葉を呟く提督。
興が削がれた空母棲姫は、提督から離れてセーラー服を着込む。
「…アホらしくなった。食器は片付けておく」
無理矢理手からお盆を取り、厨房へと空母棲姫は消えていった。
「えっと…。どうして、態々こんなところで水着を?」
「ぽい!」
勢いよく手を挙げる夕立。何か言いたいようだ。
「深海棲艦の人たちも、水着を着てたっぽい!」
確かに、一六年の夏に行われた大規模作戦では、水着を着た深海棲艦がいるという報告があった。
「昔は敵だったけど、今は味方だから。だから、一緒に水着を着たかったっぽい!」
――なるほど、分からん。
一緒にお揃いの恰好をしたかった風なことを言っているのは分かるが、どうして、よりにもよってこんなところで着るのか。
そこが分からなかった。
「…夕立がいいことをしようとしたのは分かったよ。だけど、次からは場所を弁えような」
頭を撫でながら、優しく諭す。こんなことで一々怒鳴りつけるのも馬鹿馬鹿しいし、怒鳴るのは苦手だ。
「えへへ…。気をつけるっぽい」
「ぽい、じゃなくて気をつけてほしいなぁ」
口癖なだけだろうから、ちゃんと今度から守ってくれるはずだが。たぶん、きっと、メイビー。
「…港湾棲姫の腕の爪、外せたんだな」
「いや…これはその…」
妙に歯切れが悪い。後ろめたいことだったのだろうか。
「私たちは、ある程度は肉体を変えられる。過去に、マイナーチェンジ版と戦ったことがあるだろう?」
「…棲姫や水鬼とかのことか…?」
頷く戦艦水鬼。どうやら当たりのようだ。
「その場に合った肉体に変えているだけだ。今の私は、そちらで言う戦艦夏姫だな」
「私は重巡夏姫ね」
そう言いながら、尻尾…腹尾?で甘噛みしながら持ち上げる重巡棲姫。
尻尾持ちの習性の可能性が浮上してきた。痛くはないけどヌメヌメする。あと怖い。
「私は港湾夏姫…って、二人は逃げたの…?」
いつの間にか、残りの二人の深海棲艦が消えていた。
「一人はたぶん引き籠ってゲーム。もう一人は…水底で寝るんじゃないの?」
サラッと言う重巡棲姫。引き籠ってゲームって。ニートじゃあるまいし。
「…俺はもう行くよ。なんかその、ごめん」
そそくさと逃げていく提督の手を、戦艦水鬼は掴んで問う。
「おや、水着を着ている女性がこんなにいるんだ。何か言うことがあるんじゃないか?」
提督は、頬を赤く染めながらそっぽを向き、答える。
「…綺麗だよ、皆。直視出来ないくらいにね」
それを聞いた艦娘、深海棲艦たちは笑みを浮かべる。
「そうかそうか。綺麗…か…。フフッ」
「お、俺はもう行くな!」
手が緩んだ隙に、走って逃げる提督。
後を追うでもなく、皆はただ、余韻に浸っていた。
コミュターイム!(不定期)でザンス。
↓1~3にコミュりたい艦娘((深海棲艦)を両方合わせて三人まで)と、彼女らとナニするかをオナシャス!センセンシャル!
※今回はこれで終了です。次回予定は日曜日だから今日です。同じ時間に始めると思います。お疲れ様でした!
先程のワインで酔っちゃってる皐月を介抱
そろそろゆっくりヲ級と2人でお茶しながらお話しはいかが?
今の時点で決まったこと、決心したこととか報告したいかなぁと
早いかな?
一番問題が根深そうな双子姫
説得というよりは先ずは人となりをしって相互理解から
ちょっと底が見えたなー
狭小で集まれる場所がほとんどないと分かってる拠点で平時に水着の見せ合いしてただけなのに馬鹿馬鹿しいからって理由で怒鳴りつけるの我慢したとか
効果的だと判断して反抗されないと思ったら怒鳴りつけたんだろうか
この病的に卑屈な童貞何かきっかけあれば反動でとんでもない暴君に生まれ変わる素質ある
さあ書くゾ^~と思ったら朝になっていた…。
な、何を言ってるか分からねえだろうが、俺も何をされたのか分からねえ…。
寝落ちだとか気絶だとか、そんなチャチなものじゃあ断じてねえ…。もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…。
すみません寝落ちしてました(土下座)。火曜日こそは、ちゃんと投稿します。すみませんでした(…。
>>220、あー…。文章を見たら、そう捉えてもおかしくないですね。怒鳴る云々は、過去が原因で基本行いません。
このDTはネガティブ過ぎて、自分にそんな資格ハーとか言い出すので…。今回は中枢棲姫さんの忠告がありましたが、忘れた頃にネガってくる。
ですが、暴君になるかと言われると…(目逸らし)。母親が死んで仲間が軒並み乙ったらあり得るかも…としか言えません。書き溜め分の投下です。
ちょっと幕間というか、後輩のお話も入れておきます。蛇足とでも思っておいてください。先輩は次回です。
某日 トラック泊地
「ラバウル基地の提督と仲が良いみたいだが、どういう関係なんだ?」
ライトで照らされた密室で、中年太りの男性が問う。
「どういうって…。先輩後輩ってだけっすよ。大将殿」
言葉とは裏腹に、少将――後輩提督――は鋭い眼つきで大将を見やる。
彼女は一つの疑念を大本営に抱いていた。
一定の戦果を常に挙げている先輩が、いつまで経っても少佐から昇格出来ていないのだ。
一年提督として勤務すれば中佐まで、二年なら大佐まで昇格するのを約束されているのに。
そして、先輩と連絡出来ないようになっている。
電話に至っては、電話番号そのものが消滅している不自然さだ。
――もしや、先輩は大本営によって消されたのではないか?
その疑念を確かめるべく、後輩は大将と駆け引きをしている。
「そうかそうか。…では、何か不審な点は無かったかな?」
「別に…。先月だって、普通に合同演習をしてご飯を一緒に食べただけですし」
水面下で行われる腹の探り合い。
「ところで、先輩と連絡出来ないんすけど、何かあったんですかね?」
一瞬、大将の口角が下がった。
それを見逃さなかった後輩だが、敢えて追及はしない。
木乃伊(ミイラ)取りが木乃伊になっては敵わない。
広がる沈黙の中後輩は、大将が口を開くのを待つ。
「…殉職したよ。まあ当然か。未だに少佐から上がれなかった能無しだ」
――先輩のことを知らないくせにほざくなっす。
胸に燃ゆる怒りは押し込めて、表面を取り繕いながら後輩は返す。
「殉職っすか…。かなり戦力はあったはずなんすけどね…」
「おや、知らないのか。あれは残存艦隊を全て出撃、轟沈させた前代未聞の大馬鹿野郎だったよ」
「その現場に偶然居合わせたんだが、滑稽だったよ」
「出世欲に駆られて、貴重な艦娘を喪うなど…。我々に譲渡してくれた方がまだ有効活用出来ただろうに」
「あははは…」
反吐が出そうになるが、何とか我慢する。
――あの人が出世のために艦娘を潰す?もう少しマシな嘘を吐くんすね。
今の言葉で、疑念は確信へと変わった。
――大本営が、いや、目の前の男こそが、先輩を謀殺した元凶だ。
いつか、然るべき時が来たら。
その時は、この男を。
「うぅ…。狭いとはいえ、なにも食堂で着替えなくても…」
せっかく二つの大浴場があるのだから、そちらで着替えた方が色々と良かった気がするが。
発育のいい娘が多かった先ほどの光景は、些か提督には刺激が強すぎた。
「司令官ー!良かった…やっと見つかった…」
ぜぇぜぇと息を切らす水無月。なぜ自分を捜していたのか分からない提督は、
「どうした?何かあったのか?」
と問い掛ける。対する水無月の返答は、意外とあっさりとしていた。
「あ、うん…。さっちんが酔ってるから、介抱してほしいんだ」
「…え!?皐月は結構お酒に強かったはずだけど…。あ」
そこで昨日、長門は一杯だけしか飲んでいなかったことを思い出す。
「まさか…。あのワイン一本を丸々飲んだんじゃ…」
「飲んでたね。少し前から」
いつの間にワインを貰っていたのだろうか。調査を頼んでから、長門はずっと寝ていたはずなのに。
だが、酔っている人を放置するわけにはいかない。
早く行った方が良さそうだが、まずは現状を確認しなければ。
「皐月はご飯を食べたのか?」
水無月は首を横に振りながら答える。
「ううん。何も食べてないよ」
とすると、お粥とかを作った方がいいか。お酒だけというのは非常に不味い。
「じゃあ、俺は簡単な食事を作ってから行くよ」
「分かった。こっちもさっちんに言っておくね」
勢いよく走り出す水無月。駆逐艦の娘はよく、あんなに元気に走れるものだ。
――俺は、本を読んでただけだったしな。…それが、あれの原因だったんだろうけど。
「ぐ…!う…!?」
よろめいた提督は、壁にもたれ掛かる。
「嫌だ…。嫌なのに…どうして皆は俺を…」
忌まわしき記憶。それは、ふとしたことで簡単に蘇る。
心の傷を治すには、それを乗り越えるか、違うもので塞ぐしかない。
「…大丈夫だ…。同じ目に遭うことは、今はないから…」
しかし今は、目を背けて誤魔化すことしか出来ない。
乗り越えられる心の強さが今の彼には無い。
既に彼の心は、何度も壊されているから。
たとえ癒えたとしても、傷ついた、壊れた事実は変わらない。
その傷は確かに、提督の心を蝕んでいる。
厨房に移動し、調理を始める。
本当に簡単な料理、お粥を作っているだけである。
だが、この系統の料理が最も、提督が得意であり、思い出がある料理だ。
母親を看病する時は毎食、多少は味付けを変えていたが同じ物を作っていた。
体に染みついているそれは、まさにルーティーンのようで、手際よく調理を進めていく。
「…これくらい、かな」
土鍋いっぱいに入ったお粥。
今の皐月がどれほど食べるのか分からないので、なるべく多目に作っておいた。
冷めないうちに(すぐ冷めるような物ではないが)皐月へと届けるために、提督は小走りで向かう。
開かれたドアから中を見ると、二段ベッドの下の方で布団から顔を出す皐月と、隣で水を注いでいる水無月が。
「おまたせ皐月、水無月」
「あっ、司令官。水無月は行くね。ごゆっくり~」
そそくさと退散する水無月。心なしか、悪戯をしている子供のような笑みを浮かべていた。
「…?それより皐月。お粥を作ってきたんだ。食べるかい?」
隣の椅子に腰を下ろす。すると、皐月は口を大きく開く。
「ん。ほ~らしれいかん~。早く食べさせてよぉ~」
いつもとは違い、まるで甘えるような声を出す皐月。
戸惑いつつも、提督はお粥を匙に取り、息を吹き掛けて食べやすいように冷ます。
「あ~…んむ…♪」
それを満足そうに頬張る皐月が何だか新鮮で、提督も、口を開けては入れ開けては入れを繰り返す。
あっという間に、土鍋いっぱいのお粥を平らげた。
「えへへ~…。しれいかんが、分身してる~」
ゆらゆらと揺れる皐月は、メトロノームのように見える。
皐月は、揺れながら提督に抱き着く。
「本物は捕まえたよぉ。ぎゅー…♪」
頬を紅潮させながら、皐月は顔をお腹にうずめる。そして、先ほどとは打って変わって、弱々しく口を開く。
「しれいかん…。ボクたちを置いて行かないで…。一人に…しないで…」
それは、純粋な願い。普段は奥に押し込んでいる、皐月の本心。
それがポロッと、お酒によって緩くなった心の隙間から出てしまった。
――いや、安心したから、の方が正しいのだろうか。
少しずつ、抱きしめる力が強くなる。返答を待っているのだろう。
提督もそれに応えるように、皐月を抱きしめる。
「…置いて行かないよ。そんなこと、してたまるか」
一度、孤独を味わわせてしまった。だから、次も味わわせるわけにはいかない。
「何があっても、俺はもう君たちの前から消えない。だから…」
「だから…?」
――君たちも、いなくならないでくれ。
その言葉を聞いた皐月は微笑み、静かに寝息を立てる。
解放された提督はもう一度、皐月を優しく抱きしめ、一言呟く。
――おやすみ、皐月。
そして、音を立てることなく、部屋を後にした。
土鍋を片付けた提督は、食堂の机を見渡す。
そこでは、深海双子棲姫が仲睦まじく談笑していた。
一見、ほのぼのとした雰囲気が流れている。
しかし、二人の目には、お互いの姿しか映っていない。
大井と北上たちと同じように見え、全く違う。
彼女らは、本当に『自分たち以外はどうでもいい』と思っている。
霞が提出した書類を思い出す。
―――――――――――――――
早急に、周囲と信頼関係を築かせるように。
―――――――――――――――
過去の行いを鑑みれば、拒絶されるのは目に見えている。
昨日の握手だって、彼女らからしたら、他の人がしていたから仕方なくやった、程度の認識だろう。
――それでも、関わらないといけない。
これからは仲間なのだ。提督だって、仲間を喪う目には二度と遭いたくない。
だから、まずは理解する。
彼女らがどういう人なのかを。それからでも遅くないはずだ。
まずは相手を知り、そして分かり合う。
――きっと出来る。
そう信じた提督は、腹を括って声を掛ける。
「…誰?邪魔しないでくれる?」
冷たい視線が、提督の全身を突き刺す。
やはり、その目には提督は映っていない。目の前にいるというのに。
「…邪魔したいわけじゃないんだ。ただ、君たちのことを知ろうと…」
刹那、黒い方が襟を掴む。
「…忘れたわけじゃないから…!あなたが…あなたが私たちを傷つけた…!」
実際に攻撃をしたのは艦娘だ。
だが、その命令を出したのは提督だ。
提督がそんな命令を出さなければ、彼女らが傷つくことは無かった。かもしれない。
「罰は受けるさ…!それだけのことを君たちにした…」
「だけど…その上で君たちのことを知りたいんだ…!」
「はぁ!?私たちのことを知って何になるのよ!」
「仲間…だから…。昔は敵だったとしても…今は違う…から…」
襟を掴む手が固まる。同じように、二人は硬直していた。
「何言ってるの…。今は味方でも、過去は消えないでしょ…?」
白い方が口を開く。
「そうよ…。あの悲しみが…苦しみが消えるわけじゃない…!」
忌々しげに、黒い方も同調する。
「そうだよ…。過去が消えることはない…。でも…!」
「それでも…!君たちだって大切な仲間なんだ…!喪いたく…ない…んだよ…」
立場は違えど、共に歩む者たち。
それを喪うのは、辛いものだ。
喪う怖さを、痛みを知っているから、提督は動いた。
自分を拒絶する二人を、理解しようとした。
「…バカみたい。私たちに話しかけようって」
「…でも、あなたみたいなバカは一人しかいないでしょうね」
二人は顔を見合わせ、一緒に口を開く。
「「あなたのこと、憶えたわ。おバカさん」」
そして、微かに笑い、二人は水底へと消えた。
深海双子棲姫が消えた方向を見る。
何の変哲もない、廊下へと続く通路。
その先にある、ただの水の壁。
「知ることは出来なかった…。…けど憶えてもらったのなら…前進した、かな」
一般人Aではなく、提督として。二人の脳に、はっきりと記憶された。
それは、確かな進歩だった。
「ふふ。凄いね提督は。あの二人に憶えられるなんて」
「わひゃっ!?」
ピトッと首筋に当てられる冷たい手。
堪らず、提督はビクンと飛び跳ねた。
「ふふふ…。びっくりした?」
子供のように笑うヲ級。右手にはペットボトルが握られている。また、触手にはコップが。
「久しぶりに、お話がしたいんだ。大丈夫かな?」
「え?ああ。大丈夫だけど」
その言葉を聞いたヲ級は満面の笑みを浮かべ、席に座る。
それにつられて、提督も前の席に座る。
「どうぞ」
「ありがとう」
コップに注がれた緑茶。市販のラベルが貼られているところ、どこかから買ってきたものなのだろう。
「それで、どう?ここの生活には慣れた?」
「あ、うん。ちょっと寒いくらいだから大丈夫」
「ふぅん…。私がギュッてしたら温かくなるかな?」
「それはちょっと…」
「ふふ」
何気ない会話が暫く続く。
その後で、提督は決心したこと、これからのことを話す。
「…これからさ、どうするか決めたんだ」
「へぇ。どんなこと?」
「…まず、深海棲艦の人たちを理解する。これは昨日言ったけどね」
それでも、それだけ本気なのだと伝えるためには必要だ。
だから、何度でも言う。
「次に、他の提督…俺が信頼している人と交渉して、補給線の確保をする」
無自覚の兵糧攻めを喰らっているのと同義なこの状況。
どうにかしなければ、このままではジリ貧だ。
「その後どうするか…はまだ決めてないんだ…。先に何でも決めるのはどうかと思って…」
先に全ての行動を決めてしまうと、不測の事態に対応出来ない。
そのため、当面の目標を立てて遂行し、目標に到達出来たら、その時の状況を判断してまた新しい目標を決める。
このスタンスで進めていくことを決めている。
「…うん。いいと思うよ」
「私たちがいくら口出ししても、最後に決めるのは提督だから」
「…私は、何があっても提督について行くけどね」
この純粋な心に、提督は救われた。
だから、それに報いなければならない。
信じてくれる彼女たちのために。
↓2 自由安価です。
※短いですがこれで終了です。水曜日に更新できなかったら、土曜日になると思います。お疲れナス!
kskst
曙
最初はあんたはクソ提督どころかへタレ提督と罵るが
でもあんたは私みたいなひねくれ者を見捨てずにいてくれた
だから逃げたいのなら逃げてもいいのよ、協力もしてあげる
逃げたら恨まれるけど恩があるから一緒についててあげてもいいのよ
ここに残って女に囲まれて堕落してもいいのよ。善ではないがしれでもあんたを受け入れてくれる子もいるだろう
ただ、どの道を選ぶにしてもちゃんと決断してよねと言う
全員ではないがそれでもあんたを受け入れてくれる子もいるだろう
一番修理が必要なのは提督だな
メンヘラとDT拗らせてるのが面倒くさすぎるw
修理ってかもう解体必要なレベルだがな
こんな自分でも慕ってくれるヲ級や長門達に少しでも感謝し報いたい気持ちあるならとっと覚悟決めろと
鎮守府運営かと思ったらまさかのメンヘラ男の介護スレだしな
ちゃんと行動させようと安価取っても溜息ものの行動になってここまで共感も応援もする気が湧かない主人公も珍しいw
このまま先細る補給とともにここでゆっくり朽ち果てさせたほうが良かったかも知れんね
その辺は安価で遠隔操作する楽しみはあるかな
確かに優しさや謙遜は美徳だが提督はそれをはき違えてるただのダメ男じゃねえか
ヲ級達はそんなダメ男に釣られて貢ぐ(養う)哀れな女と変わらないし、盲信に近いものすら感じる
これ程未来が暗い組織も珍しいよ
>>234、DTとメンヘラが備わり最強に見える。なお。
>>235、流石に、何度もしっかりするように言われてるのでちゃんと動きます。これでネガってたら…ね…?
>>237、やっと始まる鎮守府運営。提督の性格を拗らせすぎたと後悔なう…。
>>238、提督自身は文句なしのダメ人間ですね。ヲ級と艦娘たちが提督について行くのにも、一応理由がありまして…。
凄い提督がディスられてて若干ゃ草。気持ちは分かりますよ、ええ。今回はちょっと無理そうです…。
完成した中将編だけでも投下します。火曜日なら再開出来るはず…。
二〇一X年 ある日の舞鶴鎮守府
「王手、です」
「ふむ…。では、私はこれを使うか」
パチリと、駒を打つ音が部屋に響く。中将と提督は、将棋に興じていた。
「う…。どうすればいいんだ…」
提督が王手をかけて十手後、逆に提督が王手をかけられていた。
「…参りました」
「悪くはないが、視野が狭いというか、先入観に囚われているというか」
中将は将棋盤の上の、王手をかけた桂馬を手に取る。
「…物事の解決方法は一つじゃない。先ほどだって、あの王手から抜け出すことも容易だったし、王手をお前がかけた時も勝っていた」
「正しいと思ったことでも、それ以外に手段が在るのか考えろ。それが、起死回生の一手となり得る」
「…承知しました」
深々と頭を下げる提督。
それを見て、中将は桂馬を戻す。
「…して、他にも将棋を指す人はいないか?」
「…いえ、存じ上げませんが…」
右手で頭を押さえながら、中将は口を開く。
「最近、指す相手がいなくてな…。提督の存在はありがたく思っている」
「無論、提督のことも評価はしている。度々、提督の戦果を耳にするぞ」
「嬉しい限りです」
頭を下げる提督だが、それを見て中将は睨む。
「…謙遜は美徳だ。だが、謙遜と卑下は違う。そこを理解しろ」
「…理解しています。ですが、今更変わりはしませんし、変えられないものだと思います」
――何が、提督をここまで悲観的にさせたのだ?
そんな疑問が浮かぶが、悟られないように隠す。
「…もういい。ラバウルまで距離はあるんだ。養生して帰ることだ」
「はい。失礼します」
一人になった和室で、中将は頭を抱える。
――どうして、お前はこうも自分を卑下するのだ。
中将は、部下一人矯正出来ない未熟さを恨めしく思った。
途中で切れてるがどうした?
よく読め次は早くても明日だ
お ま た せ 。残業ばっかりで辞めたくなりますよ~仕事~。saikaisystem,stand by.
「クソ提督、今話せる?」
椅子に座っていると、曙が声を掛けてきた。
「うん。大丈夫だけど」
「じゃあついてきて」
そう言って、曙は提督の手を引いて歩く。
座ったままだった提督はこけかけるが、何とか態勢を整えて歩き出す。
曙が連れてきたのは、食堂の片隅。垂れ幕によって隠されている場所。
「…ここなら、見られないわよね」
チラリと提督は後ろを見る。壁には、何かで削られたような跡が。
しかし、それが曙に関係しているものではないだろう。
「ねえクソ提督。あたしが鎮守府に配属された時のこと、憶えてる?」
「…ああ」
それは、鎮守府正面海域の脅威を排除した時のこと。
それを称し、大本営から一人の少女が配属された。
『綾波型駆逐艦の曙よ。本日付でここの所属になるわ』
海軍式の敬礼をする曙。
『俺がこの鎮守府の提督だ。まだ未熟で頼りないが、それでも良ければよろしく』
それに応え、提督も敬礼をする。
『…あんたの方が上官なんだから、下手に出るのはおかしいでしょ』
提督の物言いに嫌悪感を抱き、曙は物申す。
『まだ未熟だからな。艦としての記憶を持つ…経験がある君たちの方が上のはずだよ』
『呆れた…。クソはクソでも、色々とアレな方のクソ提督じゃない』
『あはは…。否定は出来ないかな』
罵倒されたというのに、反論もせず受け止めた提督に、曙は苛立ちを募らせる。
『あー…もうっ!少しも言い返さないなんて、クソ提督じゃなくてヘタレ提督じゃない!』
『もういいわ!あんたと話していたら、こっちまでナヨナヨしてくる!』
強くドアを閉めて、曙は出ていった。
『凄い罵倒されたなぁ…。俺が未熟だから、なのかな』
それに対し、提督はどこ吹く風、とでもいうような感じだった。
「懐かしいなぁ…。あれから四年…か」
「…普通に考えたら、初対面で罵倒するあたしなひねくれ者、見捨てるはずなのよね」
感傷に浸るように零していく曙。その表情からは、どういう感情なのか読み取れない。
「罵倒には慣れてるよ。殴られるよりはよっぽど楽だし」
提督の発言に目を見開くが、意識を戻して、曙は話を続ける。
「…提督の過去は知らないわ。…だけど、あんたはあたしを見捨てなかった。あんなことを言ったあたしを、一人の人間だと言ってくれた」
「それは確かな、変えようのない一つの事実よ」
「まぁ…。感謝はしてるわ。一応。たぶん他の人も同じよ」
そして、曙は提督の顔を掴む。
「いきなりこんな状況に直面して、どうしても逃げたい時もあると思うわ。その時はそうして構わない」
「あたしも、その時は手伝ってあげる」
提督は、その提案を拒む。
「…それは駄目だ。皆に申し訳が立たない」
「…どうしても、だから。あくまで、最後の手段よ」
「逃げたら、皆から恨まれるでしょうね。だけど、恩があるし…。その時は、一緒にいてあげても…いいわよ…」
語尾が弱くなりながらも言う曙。一回目を背けながらも、視線を戻して再度口を開く。
「それに、何もしないでここで堕落してもいいわ。全員ではないでしょうけれど、受け入れる子もいるはずよ」
――そういう風に出来ているのがあたしたち、だし。
咳払いをして、どうにか押し込める曙。
「コホン!…まぁとにかく、どんな道を選ぶかはクソ提督の自由」
「だけど、選ぶなら後悔しないように、自分の意志で決断すること。いい?」
きっとこれは、彼女なりの励ましだろう。
いつまでもうじうじしてる自分への。
――何度腹を括ってるんだって話だしな。俺も。
腹を括ってばかりで、行動に起こしていない。
そんな自分とはさよならをしなければならない。
それを、そんな簡単なことを自分は出来なかった。
だけど。
――これほど皆に言われて、それが出来ないとしたら、それこそ末代までの笑い者だ。
「…大丈夫だよ、曙。迷惑を掛けたな」
「ふん…。手の掛かる提督の下に就いて大変ったらありゃしないわ」
そう言う曙の顔は少し楽しそうで。
「あはは…。俺も精進しないとな。人間として」
「まぁ、期待しないで待ってるわ。マトモな人間になるところを、ね」
手を振って垂れ幕の外に出る曙。
――別に、逃げてもあたしとしては良かったんだけど。
思わず口から零れた言葉の意味を思い出し、曙は顔を少し赤く染めながら、風呂へと向かった。
アンカニング…ラァァァァァブ!↓1 自由安価にゃしぃ。
曙の件以降も似た様な事はあった
早霜BRR再開で顔を出して少し飲んでいたら
早霜と従業員の不知火も似た様な事を言ってきた
逃げてもいい、堕落してもいいと
曙が去った後、食堂に再度顔を出すと、せっせと荷物を運ぶ不知火の姿があった。
「おや、司令。そのようなところで何をしているのでしょうか?」
「ん?ちょっと駆逐艦の娘と話をして、な」
うんうんと頷く不知火。納得したのだろう。
「それより、その大荷物はどうしたんだ?」
「諸々の許可を頂いたので、早霜のバー再開のための物資搬入です」
「…というと、間宮さんや長門たちの許可かな?」
こくりと頷き、不知火は口を開いた。
「はい。提督の許可を頂かなかったのは詫びます。申し訳ありませんでした」
「いや、別に駄目とか言うわけじゃないけど…。娯楽とかは必要だろうし…」
「早霜としても、再開の要望があったからそれに応えたのだそうです」
鳳翔のところで、談笑しながら酒を飲むのも悪くなかったが、個人的には、静かに飲むのが好きだった。
提督にとって、早霜のバー再開は結構嬉しいことだ。
「そうだ、司令も一杯どうですか?久しぶりに飲むのですし、早霜もきっと喜ぶでしょう」
「そっちが良ければ、是非そうさせてもらうよ」
「では、不知火についてきてください」
不知火の後を追い、宿舎を進む。
階段を何度も上がり、宿舎の最上階へ。
通路の最奥に、それはあった。
ドアには『OPEN』と書かれた看板が掛けられている。
「チッ、手が塞がってるから開けられないわね。すみません司令、開けてくれますか?」
「分かった」
ゆっくりドアノブに手を掛け、引く。
カランカランとベルが鳴り、扉が開く。
「不知火さん、お疲れ様…あら、司令官もですか?」
「ええ。搬入中に会ったから連れて来ました。不知火に何か落ち度でもありますか?」
「いえ…問題ないですよ…。うふふ…」
カウンターにタンブラーが置かれ早霜は、不知火の木箱からカシスリキュールを取り出す。
タンブラーに氷を入れ、リキュールを注ぐ。
次に、炭酸水をリキュールの約二倍ほど注いで、マドラーで丁寧に、上下に混ぜてからサッとかき混ぜる。
「ごめんなさい。ロックアイスがあれば、もう少し上等な物が作れるのですが…」
提督は一口、カシスソーダを口にしてから答える。
「…いや、充分美味しいよ」
「良かったです…」
安堵したように、早霜は息を漏らす。
そして、どこか暗い雰囲気を漂わせて早霜は顔を近づける。
「司令官…。二日前と比べると、明るくなりましたね…」
「…色々と発破を掛けられてね。流石に、これ以上悩んでもいられなかったんだ」
「そうですか…」
早霜はカウンターから出て、提督の隣の椅子に座る。
「そうやって、前を向いて進むのもいいと思います…」
「ですが、どうにもならない時が来るかもしれません…」
ポツリポツリと言葉を発する早霜。その目は、髪に隠れて窺えない。
「その時はどうぞ、私たちを頼ってください。共に、ここから逃げ出しても構いません…」
「司令官が、私たちに縛られることもないのですから…。私は、喜んで司令官を受け入れますよ。ふふ…」
そう言った早霜は顔を上げる。その潤んだ瞳に吸い込まれそうで、思わず目を背ける。
「不知火も同意見です。不知火たち艦娘は、司令のために尽くすように作られた存在です」
「何があってもこの命、司令に捧げましょう」
そう述べる不知火の瞳は、どこまでも真っ直ぐに。
感情が本当にあるのか考えさせるほどに、それは真っ直ぐだった。
「…生憎、君たちの中で誰かを棄てられるほど、俺は精神がタフじゃなくてね」
「こうなってしまったなら仕方がないよ。最期まで共に進むさ。無論、全員でな」
少しの間続く沈黙。
当然、それは簡単に崩れた。
「そうですか…。何があっても…私は司令官を見ていますよ…。たとえ、この身が朽ちても…ふふふふ…」
「下す命があれば、いつでもお呼びください。不知火が完遂致します」
「…君たちこそ、俺に縛られることはないんだよ」
「そういう存在ですので、仕方がありません」
不知火の瞳に、提督が映る。
それは揺れることなく、ただ真っ直ぐと。
安価戦隊、出撃します!↓1 自由安価でげす。
明石を訪問
水中通信機開発指示
深海化したことで艦娘に起きた精神的肉体的変化の所見を報告させる
酒を飲み終え、外に出た頃には、時間は夜になっていた。
不知火たちはバーで客を待っているつもりらしく、既に食事は終えているとのことだ。
「目下の課題は…と」
メモ帳を取り出し、問題を箇条書きしているページを開く。
「…水中での通信手段が欲しいって霞は書いていたな。明石に打診してみるか」
今の時間は、食堂が賑わってる頃だろう。
――もし明石がいなくても、他の娘から情報を得られるはずだ。
そう思い、提督は食堂へと向かった。
「あれ?提督もご飯ですか?」
「夕張か。明石がどこにいるか知らないかな?」
「うーん…。最近はずっと工廠に籠りっきりですねぇ」
どうしてかと提督は問うと、夕張は待ってましたと言わんばかりに熱弁する。
「それはですね!こんな体になってからというもの、原理不明の謎兵器が偶に開発されるようになったんですよ!」
「それで、今は少し前に開発された粒子内蔵魚雷のメカニズム、特殊効果の解明に勤しんでいるんです!」
「そもそも、粒子が散布されることで通信が妨害されるということは、粒子が持っているであろう何かしらの電波による干渉も考えられて…」
「も、もういいよ…。正直何を言っているか途中から分からないんだ…」
「あー…。提督文系ですからね」
こんなことなら、兵器関連の文献も読み漁っておくべきだった。
そんなことを思う提督に、夕張は再度口を開く。
「とりあえず、明石とお話したいなら工廠に行ってください。ご飯も持って行ってあげてくださいね」
「あ、場所とか分かります?執務室辺りの廊下なんですけど」
「場所は何とか、ね。ありがとう」
軽く手を振って、夕張の前を歩いていく。
「…なるほど。何かの微粒子が崩壊することで出来てるのか…」
「フォトン…は理論上崩壊しないしなぁ…。でも、そこを深海棲艦の不思議パワーでどうにかしてると考えれば辻褄が…。ううむ…」
魚雷の内部にある小さな発生器を分解して、頭を悩ませる明石。
未知の物質、テクノロジーを前にして、技術者の好奇心が刺激されていた。
「…まあいっか。性質の方は…通信妨害と、重力等の影響の減衰、物質に付着すると表面を滑面化させる…かな。何だこれ…」
「ともかく、一旦保留かなぁ…。設備が足りない…」
椅子にもたれ掛かる明石は、水を一杯飲み干す。
コンコンコンと工廠中にノック音が響く。
「はぁーい。入っていいですよ~」
「お疲れ様、明石。晩御飯にしようか」
「おおぅ。提督、気が利いてますね~」
このこの、と肘で提督を小突く明石だが、疲れているのが目に見える。
「とりあえずご飯だ。あと、しばらく休憩しような?クマが酷いぞ」
「あはは…。提督に言われるとは、世も末ですね…」
「普段は逆だったからなぁ…」
感傷に浸る二人。思えば、随分と昔のことに思える。
「それで提督、ご飯を届けに態々来たわけではないでしょ?」
「え?ああ。水中用の通信機を開発出来るかな?ってね…」
「…なるほど。深海棲艦と共に戦う以上、有って損は無いですからねぇ」
「二日ください。その間に終わらせます」
「自分のペースで大丈夫だよ…」
工作艦としての意地です、と意気込む明石。
悪い方向に向かないといいのだが。
「あ、それと、私たちの精神、肉体の変化を纏めた書類がそこの机に」
「…随分頑張ったようで」
「えへへー。今度パフェ奢ってくださいねー」
「それくらいなら喜んで」
何気ない会話をしながら、書類を取る。
そこにはこう記されていた。
―――――――――――――――
艦娘の深海棲艦化による変化
身体的変化
細胞レベルで深海棲艦に近づいており(同じではない)、耐性が上昇している。有志の検証によると、マグナム、日本刀までなら耐久可能。
代償として、艤装への適合性が著しく低下。深海棲艦の細胞を艤装に組み込んで、無理矢理装備させている現状である。
また、艦娘からの性質反転が起きていることが確認されている。具体的には、艦娘の加護の無力化である。
精神的変化
大きな変化は見られないが、肉体が変わったことに認識が追い付かなくて、不安定になっている娘がいる可能性がある。
なお、全体的な傾向としては、生命への執着心が損なわれている。(提督のことは皆信じてますよ!大丈夫!by明石&大淀)
―――――――――――――――
私も、新しい安価欲しいなぁ~。きらきら…にひっ!↓1 そ の た め の 自 由 安 価
※これで今回は終了でごわす。次回は水曜日だから今日!てなわけで皆さん、オツカレサマドスエ!
資源の運搬をしていた潜水艦らが戻ってきた
鎮守府時代ではオリョクルーは苦しい時以外はしない様にしてたが
必要な時には酷使してたのが心苦しい
だが今の彼女らは疲労があっても明るい
大本営から解放されて本当の意味で提督と自分達の為に頑張れるのが嬉しいからだ
なんか気持ち悪い安価とる奴が常駐しだしたな
npcの反応まで事細かに指示しまくってら
書類を見て、一つ気になることがあったため、それを問う。
「執着心が損なわれている…ってどういうことなんだ?」
「んー…」
人差し指を唇に当てて、黙考する明石。数秒して、口を開いた。
「何というか、『死ぬのが怖くない!』って感じですかねぇ。一度経験したから、なのかもしれません」
飛び込みとかと同じ感覚なのだろうか、と提督は思う。
したことは一度も無いのだが。
しかし、良くない傾向だとも思う。
このままでは、自分の命を軽視した行動を取りがちになってしまいかねない。
「…だけど、死んだらそこで全てが終わるんだ。…しないでくれ。絶対に」
「分かってますよぉ。恐怖心が無くなったりしただけで、死にたいわけじゃないですし」
「…でも、恐怖心が無いのか危険なことだよ」
恐怖心が無いということは、どんなに危険なことでも、躊躇わずに実行出来るということだ。
死ぬ気がある無いとかは関係ない。そんな行動を起こせることが問題なのだ。
「…まぁ、恐怖心があるのは、自己防衛のためらしいですしね。無いと困ることもあるかもしれませんね」
「恐怖心があったが故に、人間は進歩してきた。それを失うのは、不味いことなんじゃないかな…」
死ぬのが怖いから医療が発展した。夜が、暗闇が怖いから、光源に関する技術が確立した。
――殺されるのが怖いから、敵を殺す武器が造られた。
「…提督の言うこと、私は良く理解出来ないですけど。だけど、心配してくれてるのなら、嬉しいですね」
「心配だよ…。もう二度と、喪いたくないから…」
前に進む意志は持っているが、それとこれとは別である。
大切な人を喪うことの辛さ。それを忘れてしまっては、人として終わってしまうだろう。
「…だから、そんなことが起きないように、俺が頑張らないといけない」
「それが、俺なりに考えたケジメでもあるんだ」
「…提督が望んだことなら、私は何も言いません。決断することは提督に、人間にしか出来ないことですからね」
それは、自分という存在が兵器でしかない、と暗に示しているようだった。
「…暗い話はやめです!やめや」
「ゴーヤ!戻りましたー!」
「なの!」
暗い雰囲気をぶち壊す潜水艦組、爆誕。
「い、イクちゃんたちおかえり!どれくらい手に入った?」
一人一個ずつ抱えているドラム缶。心なしか、軽く見える。
「えーっと…。燃料は600、弾薬は100あるかないかくらいなのね」
「鋼材とボーキは?」
「ラバウルの廃倉庫内はもうダメでちね。廃棄された油田も、そろそろ枯れそうかなぁて…」
「むむむ…。やはり、他人が使った後の物だから期待は出来ないですね…」
カリカリと家計簿に記載していく明石。
資源の収支を家計簿に書く人なんて、彼女しかいないんじゃあるまいか。
「あー…。深海棲艦の人たちは、資源を自力で作ってるらしいけど…。貰ってこようか?」
「駄目です。その資源は彼女たちに使わせてください。自分たちの分は、自分たちで賄わなきゃ」
「深海棲艦の人たちにも申し訳ない…と、はっちゃんは思います」
「なんだかんだで頼ってばかりでしたから。これくらいは自力でどうにかしないと、彼女たちに悪いです」
そこまで言うのなら、こちらも黙るしかない。
最悪の場合は、こっそり頭を下げて融通してもらおう。
「そういえば、資源はどれくらいあるんだ?」
「んーと。大型建造をフルで五回分ですかねぇ。私たちの出撃分は、それぞれでどうにかしているので減らないですよ」
ざっと35000。それが我々の全資源。
相当上手くことが運んだ中規模作戦を突破出来るくらいだろうか。
どこかの提督が『資源は二万で充分なのよ』とか言っていたが、その程度で済むわけがない。
「…出撃するにしても、まだ警戒網はあるだろうから無理だしなぁ…」
「今は潜伏期間ですから。はっちゃんたち的には、そっちの時間の方が長いかもですね」
「まぁ、焦ってもいいことは無いしね。出来ることを進めていくしかないか」
鎮守府内でも出来ることは案外あるものだ。
無為に過ごすくらいなら、それをしていく方がいいだろう。
安価隊、発艦はじめッ!↓1 じゆーあんかちほー
ぽっぽちゃんと遊ぶ
ああああ!寝落ちしてたァァァァァ!すみません金曜日再開です(自害)
すみません…。嘔吐下痢症に罹りました…。インフルエンザも併発してるかも、だそうです…。
復帰するまでもうしばらくお待ちください…。申し訳ない…。
了解
お大事に
了解
>>1がクソッタレになってしまった……
いや、ホントお大事に
ノロウイルスはマジ地獄
結局、インフルエンザにも感染してました。ようやく快復しましたので、明日から再開します。皆も体調には気をつけよう!
ああ、やっぱそのコンボ食らったか……
冬場は併発や連続発症あるからお大事に。治ったと思って油断するのも危ないから気をつけて
了解
ごめんなさいー…。今日も本当に少ししか更新出来ないです…。書き溜めする暇がナッシング…。
外に出てまず思いついたのは、深海棲艦の人たちとの交流だ。
現時点では険悪とまではいわないが、どこか壁があるようにも提督は感じている。
あちらとしても、人間と関わるのは初めてだろうから仕方のないことなのだろうが。
それでも、好意的に見てくれている人もいる。
――その人たちと友好を深めておいた方が良さそうだ。
下卑た考えだな、と心の隅で自嘲しながら提督は思う。
そんな中、後ろから裾を引く感覚が。
「ん?」
振り向いても、そこには廊下が広がっているだけ。
「下見て。私はこっち」
「え?あ、ごめん…」
下を見ると、そこにはちょこんと立っている北方棲姫が。
「どうしたんだい?」
提督が問うと、北方棲姫は、
「提督と遊びたい」
とだけ返す。
「いいけど…。遊ぶっていっても、何をすればいいのかなぁ…」
ここ鎮守府は、娯楽があまりにも少ない。というか皆無だ。
浦風がトランプを持っているらしいが、生憎、提督は『大富豪』と『ババ抜き』くらいしか知らない。
二人で遊ぶゲームじゃないのは確定的に明らかだ。
「ん」
顎に手を当てて、思考する提督。そんな彼に、少女は両手を向ける。
「…?」
「アレ…レ級…?にもしてたの。お願い」
その言葉を聞き、北方棲姫が望んでいたことを理解する。
「…それくらいのことなら喜んでするよ」
「ありがと」
提督が背を向けると、北方棲姫は背中に飛び乗る。
予想はしていたが、軽い。非常に。
幼子と変わらない外見をしているから当然ではあるのだろうが。
それでも、軽いのだ。
彼女が、一人で壊滅的な被害を出すことさえあり得る、強力な存在であることを忘れてしまいそうになるほどに。
北方棲姫を背負い、鎮守府をしばらく巡り歩く。
鎮守府巡りを終えたところで、北方棲姫は口を開く。
「…私は、今まで遊んだことはなかった」
「守られることはあっても、遊ぶことは無いの。私たちは世界の防衛機構、それが形を、命を持っただけだから」
世界の防衛機構。海を守ることが、それを意味しているのだろう。
「…でも今日、提督と初めて遊んだ。遊びという経験をした」
「人間からすれば、大した遊びじゃないと思う。だけど、それは私にとって大きな意味があるの」
たしかに、普通の人にとっては、おんぶをして適当に歩くことなど、遊びとは言えないだろう。
それでも、彼女にとっては、初めてのことだった。
「ありがとう、提督。遊びは楽しいということを、私は知ることができた」
「楽しいという感情を、理解出来…た気が…する…」
そう言って、寝息を立てる北方棲姫。
肉体的には、子供と変わらないのだろう。
「楽しい…か。俺は何をして、楽しいと感じていたんだろう…」
北方棲姫の言葉を反芻し、提督は記憶を辿る。しかし、思い当たるものが全くない。
精々、読書程度のものだ。
内心虚しく思う提督の傍。の水壁から、港湾棲姫の顔が突然、飛び出して来た。
「…!?」
「ご、ごめんなさい。驚かすつもりじゃなかったの…」
ペコペコ頭を下げる港湾棲姫だが、すぐに顔を上げる。
「あの、その子を渡してくれる?そろそろ戻らないといけないから」
「あ、ああ。こちらこそすまなかった」
背負っていた北方棲姫を抱きかかえ、港湾棲姫に手渡す。
大事そうに抱えた港湾棲姫は、再度頭を下げて海へと消えた。
「…もう夜も更けたな。風呂くらいは済ませなきゃ」
提督は執務室から着替えを持ち出し、風呂へと向かった。
直下に、誰が風呂にいるかor乱入してくるかをオナシャス!センセンシャル!
※クッソ短いですが、今回はこれで終了にさせていただきます。次回は水曜日予定です。先週はホントすみませんでした(ドゲザー)。
金剛四姉妹
一人なら比叡で
お待たせしました。今から再開しやす。
「…よし、いないな」
脱衣所に入ってまず行ったことは、バスケットの確認。
前に行った時は、服は無かったのに南方棲戦姫がいた。
しかし、今は深夜。深海棲艦は皆、別の拠点――たまり場――に戻っている。
即ち、フリーということである。
ゆっくり戸をスライドさせるとそこには無人の風呂が。
誰もいないことに安堵し、提督はシャワーを浴びる。
全身を洗ってから湯船に浸かり、ため息を漏らす。
「ふぅ~…。やっぱり風呂はいいなぁ。疲れが取れる」
だらんと脱力している提督は、だらしないとしか言いようがない。
今は一人だからそれでもいいのかもしれないが。
「…あれ?何か騒がしいな…」
何やら外から声が聞こえる。それも四人分。
「…いやいや、流石に入って来るようなことはしないだろう。性別とか考えたら…」
「失礼します」
――そう思っていた時期が私にもありました。
提督の考えを飛び越してくるのが艦娘である。南無三。
「…入浴中なんですけど」
「知ってますよ。でも、裸の付き合いとか言うじゃないですか。親交を深めようと思いまして」
「オレ、オトコ。キリシマタチ、ジョセイ。OK?」
「OK。あ、別に襲う気でも襲われる気でもありませんよ?司令のことを信頼してるから、こうしているんです」
こちらも、艦娘を襲う気になどなれない。
第一そんな対象として見ていないし、もし抵抗されたら瞬く間にミンチと化す。
百害あって一利なし、である。
「…でも、せめて前とかは隠そうよ…」
「き、霧島…。姉さまたちも…。提督が困っているみたいですし、一度出た方が…」
「駄目。司令とは、まだ一度も腹を割って話してませんから。司令の本音、比叡は聞きたいです」
「話すから…。とりあえず隠して…」
榛名以外、堂々と立っているものだから色々と見えかねない。
突然湯気が濃ゆくなったので、どうにか回避出来てはいるが、それがいつまでも続くとは限らない。
「まぁ、私たちもDelicacyがNothingでしたからネー…」
仕方ないといった感じでバスタオルを体に被せる金剛。
それを見た他の三人も、同じようにする。
目のやり場が無かったので、従ってくれてありがたかった提督であった。
直下、↓2に、何か話したいことがあったらお願いします。
まだ安価が取られるまで当分かかりそうなので今回はこれで終了にします。申し訳ない…。
安価は下にずらします。次回予定は来週の火曜日となります。
治そうとは思っているがなかなか治らない自虐癖をなんとかできないだろうか相談
時々このスレを見てるけどいつもではないからなあ
俺は起きてたが他を見てた
一月近く音沙汰無しで申し訳ありませんでした…。色々と立て込んでました。本日の昼から再開出来ます。本当に申し訳ありません。
舞ってた
キター
昼というか夕方だなこりゃ…。遅れてすみません。今から再開します。
「本音…本音かぁ…」
比叡の言ったことを思い出し、思考する。だが、これといったことがない。
別に彼女たちに不満を持っているわけでも、何かを取り繕っているわけでもない。
提督としては、普段から本心を曝け出しているつもりである。
「別に拘る必要は無いですよ?こんな悩みがあるーとか言ってくれるだけでも、私は嬉しいですから」
「は、榛名も同意見です!」
「同じく。さあ、存分に吐き出してください」
そんなことを言いながら、ずいっと体を近づける三人。
「こんなに優しいSisterを持てて、私は嬉しいデース」とか言ってないで少しは抑えてほしい。
そんな提督の想いは届くことなく、金剛は比叡たちの後ろから眺めている。
妙にウズウズしているように見えるのは、気のせいだと思っている。
「悩み…。あっ」
何かに気付いたように、提督は口に手を当てる。
「何ですか?何ですか!?」
更に距離を狭める比叡。流石に近すぎる気がする。
「あーっと…。その…。前に中枢棲姫に色々と言われたんだ」
「それで、自虐しないように気を付けてるんだけど…。どうにも上手くいかなくて…」
言動には気を付けているが、体に染みついたそれは払拭出来ない。
――艦娘側の視点から何かアドバイスが貰えれば。
答えが分からない提督は、何にでも縋るつもりでいた。
「なるほど…。では、艦隊の頭脳たる霧島がチャチャッと解決いたしましょう」
胸を張り、自信満々といった感じで言い張る霧島。これなら期待できそうだ。
「まず司令。司令は自分のことをどう評価していますか?」
「大した取り柄のない凡人以下の存在」
「ダウト」
なんでさ。
「いや…。自分のことを駄目な存在と思っていたら、そりゃ自虐するでしょう」
「まずはそこをどうにかしないと、ですね」
霧島が腕を組んで思考している間に、榛名が隣に寄って問う。
「あの…。提督はどうして、そんな風に思っているのですか?」
「あ、それは私も気になるなぁ。お姉さまもですよね?」
「Yes」
何でって言われても、と口に出して提督は黙考する。
数秒ほどしてから再度、口を開いた。
「…実際、俺は凡人以下だからね。皆の指揮をしていた時とか顕著だったよ」
「常人以上に努力を重ねたにもかかわらず、常人と同等の働きしか出来なかったんだから」
駄目でしかないよ、と提督は笑う。不変のことなんだからしょうがない、とでも言っているように。
「…本当に駄目な人が、艦隊を運営出来るわけないじゃないですか」
ジト目で提督を見やる比叡が零す。
「あの命令が下されるまで撤退こそすれ、轟沈はしなかったでしょ?」
「百人以上いた鎮守府を機能させながら、円滑に運営してたんですから充分凄いと思いますよ」
何度も倒れたけどね、と返す提督。比叡の表情がふて腐れたようになる。
「…解決策、ではありませんが、アドバイスはあります」
思考を終えた霧島は、提督の目の前に進む。
そして、ハキハキとした声で言い放つ。
「はっきり言っておきます。司令は自己評価が低すぎです」
「え?」
理解出来ない、とでも言わんばかりに首を傾げる提督。
「だって低すぎでしょう?あれだけ仕事をしておいて、役立たずとか笑えない冗談ですよ」
しかし、それでもそう思わせてしまう環境に提督がいたのではないか。
そう考えると、霧島の心にも痛みが生じた。
「…過去の人たちがそうだったとは断言出来ませんが、今のことなら言えます」
「司令が思っているほど、周りの評価が低いとは限りませんよ」
出来る限り優しい言葉で投げ掛ける。
――色々な娘の態度を見れば分かるはずなのに、しょうがない人。
――でも、そこで否定してしまうところが司令らしいわね。
そんな提督を哀しく思った霧島だった。
まるで嵐のように過ぎ去っていった金剛型四姉妹。
入浴を終え、執務室へと戻る。その間に、小さな光が幾つか見え、消えていく。
「あの光は何だろうな。他の提督の艦娘か、あの娘たちか」
今は誰も出撃していないはずなので、おそらく敵だろう。
近づいてこないということは、気付かれていないと見ていいだろう。
情報だけを目的としているのなら、何も言えないが。
「…まあ、明日くらいには何か分かるだろう…。たぶん」
執務室へと入るが、誰かがいるわけでもなく。
手探りで自室の扉を開け、布団に倒れ込む。
「いいところ…か。うーん…」
出来る限り挙げてみようと思った提督だったが、何も出てこなかったので諦めて眠りに付いた。
第三日 終
静寂が広がる鎮守府を、女性が駆ける。
給糧艦・間宮がとある通信を傍受し、それを伝えるために執務室に向かっている。
そして、その部屋主は起きたばかり。
勢いよく間宮が扉を開けると、ちょうど自室から出てきた提督が怯む。
「お、おはよう」
「おはようございます。今日のご飯はサンマのつみれ汁ですよ」
「それは楽しみだなぁ」
「…じゃなくて!報告があるんです!」
何を報告しに来たのか、と提督は問い、間宮は返答する。
「ラバウル、リンガ方面の基地に『深海棲艦の捜索を中止、通常業務へと戻れ』という指示が出たんです」
「これで、行動出来るようになったのか…」
捜索されなくなることの恩恵は大きい。
こちらの行動の幅が広がるので、他の提督と接触することも出来るだろう。
同じく、鎮守府を攻略することも。
「…数日間だけど、身を潜めていたんだ。こちらも打って出ないと、それはそれで問題だ」
ようやくまともな行動が出来るようになったことに、提督は喜びを感じた。
↓2 自由安価 止まるんじゃねえぞ…。
潜水艦を建造しよう
秋月型や皐月文月を交えた深海対空訓練
「海上で堂々と動けるなら…」
艦船名簿を取り出し、駆逐艦の部分を捲っていく。
「ひいふうみい…。よし、ちょうど六人か」
「ええと…。秋月型の娘たちと皐月ちゃん、それに文月ちゃん。対空に強い娘ばかりですね」
提督は頷く。
これからのことを考えれば、防御面の強化が最優先だと提督は考えた。
前は、海域で待ち構えている深海棲艦に対抗するので、同時に相手にするのは最大でも十二人だった。
しかし、今は攻められる側。不特定多数の艦娘を相手取る必要がある。
それはつまり、今まで以上に対空戦闘での練度が求められているのと同じだ。
だから、警戒が解かれている間に、対抗出来るようになっておきたい。
その時になって後悔しても遅いから。
「今から、海上で対空訓練をしようと思ってね。だから、朝御飯を食べる時間は無いかな…」
申し訳なさそうに提督は言うが、間宮は不満を隠さない。
「そんなだから、倒れるんですよ…」
「う…」
「…まあいいです。あとで訓練に参加する娘に、おにぎりと魔法瓶を持たせますから。ちゃんと食べてくださいね」
「…ありがとう」
間宮の優しさが五臓六腑に染み渡る。それ以上に申し訳ない気持ちでいっぱいだが。
「私が参加する娘に連絡しておきますから。提督は深海棲艦の娘たちの方をお願いします」
「ああ。本当にありがとう」
「いえいえ。提督たちも頑張ってくださいね」
静かに扉が閉められる。
静かになった執務室で、提督は顔を二回叩く。
――気を引き締めろ。二度と喪いたくないなら。
「ふわぁ…。これが司令官の朝御飯?寂しくない?」
「仕方ないだろう。ただでさえ、補給が出来ないから節制しなければならないのに、僕たちの分の食事を作らないといけないのだから」
初月がきっぱりと、言い淀むことなく言い切る。
「でも、これからは補給艦を襲えるからね。豪華にはなるはずだよ」
「豪華な食事…。私は、今のままでもいいんだけど」
「あたしもいいかなぁ~。ご飯はそんなに食べられないしぃ」
「…そろそろ提督が来るみたいですね」
涼月の言葉を聞き、艦娘たちは海中を見やる。
水中を漂う黒い影は、少しずつ大きくなる。
そして、それは正体を現した。
「ん…と。提督、もう大丈夫だよ」
「ありがとう、ヲ級。それに、レ級と空母棲姫も快諾してくれて助かったよ」
「いーよいーよ。僕だって暇だったし」
「…私も退屈だったしな」
ケラケラと笑いながらレ級が答え、空母棲姫がそれに同調する。
「あれ…三人だけ、ですか?」
深海棲艦をそれぞれ見て、照月は首を傾げる。
「確かに、積載数は圧倒的な方々ですが…」
「俺もそう思ったんだけど…。何か、とっておきがあるらしくて」
「そういうこと。ほらほら、早く始めようぜ」
レ級の言葉を聞いた艦娘たちが距離を取る。
豆粒程度の大きさになったところで、訓練開始という掛け声が無線で届けられた。
直下コンマ判定でございますです。~30でE敗北、~70でA勝利、~00でS勝利となります。
はい
「…それで、とっておきってどういう…」
「こういうこと…だ!」
レ級が言うのと同時に、深海棲艦たちは指を噛み千切り、血を海に振り撒く。
赤く濁った海水が、徐々に黒に染まっていく。
「まっ、数時間もしたら消えるんだけど」
「…!?」
いつの間にかレ級はelite、ヲ級は改へと姿を変えていた。
「さあさあ、新たな僕たちの誕生だ…!」
そして、黒い海水が凝縮して、赤い光がこちらを向く。
海水は人へと形を変え、液体だった表面が、肌のように白くなる。
「………」
レ級、ヲ級、空母棲姫が新たに三人ずつ、目の前で誕生した。
しかし、それらは言葉を何も発さず、黙々と艦載機を射出する。
「さて…と…。贋作だけにやらせてないで、私たちもやろうか」
「ああ」
「りょーかい」
空を無数の艦載機が覆い尽くす。朝のはずなのに、夜のように真っ暗だ。
――もしかして、複数の同型艦と会敵していたのって、これが理由なのか?
目の前の光景を見て、一つの謎が解けた気がした提督だった。
「わぁ~。いっぱいだねぇ~」
「滅茶苦茶だが…。まあ、僕たち秋月型が四人もいれば、問題ないだろう」
「ふぅ…。長10cm砲、目標左舷の艦載機!撃てぇ!」
凛々しい声で初月が叫び、それに呼応するように長10cm砲が火を噴く。
まるでカトンボのように墜ちていく艦載機だが、普段とは数が違う。
本来であれば、半分近くは墜としていたのだろうが、今回は一割にも達していない。
だが――。
「長10cm砲ちゃん!照月たちの力、提督に見せつけちゃお!」
「私たち秋月型は防空艦!墜とせなければ、存在理由が無くなります!弾幕を強化して!」
長10cm砲がありったけの弾を撃ち出す。
それは的確に、急降下する艦載機を穿っていく。
「秋月姉さん…凄い気迫…。私も負けてられませんね」
電探が感知する艦載機の数が減ってきている。それでも圧倒的で、空を埋め尽くすほどなのだが。
「…もしこれが実戦だったら、私はどうすべきか…。いえ、実戦も訓練も変わらない。私は防空艦。…ならば、役目を果たすのみ!」
「一機たりとも近づけさせるわけにはいきません!全主砲、撃て!」
涼月も姉、妹たちと同じように対空射撃を行う。
秋月型四人による対空射撃は航空戦力を根こそぎ削り取る。
「銃身が焼き付こうと構わない!僕たちは防空艦だ!艦載機を一機残らず墜とすだけ!」
「照月!涼月!私と初月が左舷を請け負います!二人は右舷を!」
「「了解!」」
そして、黒い空から光が差し込んできた。
「わっとと。文月、大丈夫かい?」
「大丈夫だよ~。皐月ちゃんこそ、気を付けてね」
「もちろんさ!」
背中合わせで機銃を連射する皐月と文月。
秋月型ほどではないがそれでも、数多の艦載機を海へと沈める。
「ボクたちだって、対空射撃は出来るんだよ!」
「第二次改装をしたからねぇ~。あたしも頑張らないと」
射撃、射撃。更に射撃。
機銃の摩耗を無視して、ただひたすらに機銃を連射する。
「皐月ちゃん!」
「うん!」
不意打ちのように降下してきた艦載機は、文月向かって一直線に進む。
「しないよ。仲間を司令官を守るためにも、撃ち漏らしたりなんか絶対にね!」
皐月の機銃が放った銃弾は、艦載機を蜂の巣にし、爆ぜさせた。
訓練を開始して五分。
空を覆い尽くしていた艦載機は全て、海の藻屑となった。
「へっへーん。これが、睦月型の力だよ!」
「文月も、やる時はやるんだから~」
仲良く腕を組み、ピースをする二人。
その笑顔は、太陽のように眩しかった。
※今回の訓練に参加した艦娘を艦隊に組み込んだ場合、航空戦での損害を減衰されるようになりました。
「へぇ…。あの数を墜としたかぁ。凄いね、提督の艦娘は」
感心しているように零すレ級。その目は、真っ直ぐと艦娘たちに向けられている。
「…俺が凄いわけじゃない。あの娘たちの実力と努力が本物なだけ、だよ」
そう言って、提督はおにぎりを頬張る。具は焼き鮭だった。
「フフ…。いいなぁあの目。私は好きだ」
不敵に笑む空母棲姫。言葉から棘は感じられず、寧ろ晴れ晴れとしているように聞こえた。
「…うん。全力で私たちも当たって良かった。これで、あの娘たちは大丈夫」
魔法瓶のカップに汁物を注ぎながら、ヲ級は口を開く。
「ああ…。だけど、これだけじゃ足りない」
「他の娘たちも強化しないと…。かな?」
「だいたい合ってる。でも、それよりも先に褒めないと、だよね」
手渡された汁物を飲み干し、帰って来る艦娘たちを眺めていた。
――皆、訓練お疲れ様。
提督は順番に、艦娘たちを労っていく。
その間、後ろでヲ級はただ、その光景を優しく見守っていた。
死の果てに、安価は無い!↓1 自由安価!
偶には駆逐艦らと遊ぶ
遊ぶ場所を↓1で決定します。屋内(鎮守府)なのか、屋外(この場合はどこで遊ぶのかも記述)なのかもお願いします。
屋内
遊ぶ駆逐艦を↓2までで募集します。
うーちゃん
じゃながなが
うぅ…。また寝落ちしかけてた…。すみませんがこれで終了です。次回予定は明後日くらいです。
遊ぶ中で行う予定だった安価を先に出しておきます。二人に聞きたいこと、提案したいこと、何でもOKで↓2までです。お疲れ様でした。
気分転換に深海駆逐級との散歩
・・・という名前のジェットスキー
トランプのダウト
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