幼馴染「おはよ、男」 男「結婚しよう」 (42)
幼「なによ、朝っぱらから」
男「いいじゃん。結婚して」
幼「だから、私はあんたなんかと結婚しなーいの。バカ言ってないで顔洗ってきなさい。朝ごはん作ってあげるから」
男「はーい…あーあ、またフラれちった。一度くらい結婚してくれてもいいのに」
幼「結婚するにしても段階があるでしょうが。何年か付き合ってから言うものでしょ」
男「マジで?付き合ってくれるの!?」
幼「なんでそうなるのさ。付き合いません」
男「なあんだ…」
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幼「美味いか?」
男「美味しいなあ、幼の料理は世界一だよ。毎朝作ってくれないかな。僕と結婚」
幼「しませーん」
男「ひどい…一世一代のプロポーズを断るなんて」
幼「1000回くらい言われてますけどね。あんたのプロポーズは軽すぎるわ」
幼「あ、お弁当作ってあるから持ってきなさい」
男「愛妻弁当ありがとうね。今日一日を過ごすための活気が沸いてくるよ。ああ、楽しみだなあ」
幼「愛妻弁当じゃないわよ。えー…義理弁当よ。義理弁当。ビジネスの関係でしかないんだから」
幼「早く行こうよ~。男の癖に準備遅すぎるのよ」
男「せっかちだなあ。だって、美しい幼の隣を歩くに相応しい男にならないといけないじゃない?」
幼「殊勝な心掛けですね。あんたは別にそんなことしなくても、いいのよ」
男「なんで?」
幼「……なんでも」
幼「ほら、いいから!はやく!はやく!」
男「よし、よし。うん。行こっか。わざわざ僕のこと待っててくれるんだから、やっぱり幼は優しいなあ」
幼「待ってないと露骨に落ち込むから仕方ないでしょーが。面倒くさいなあ」
男「今日も手、繋ごっか」
幼「繋ぎません。今日も、って、小学校以来繋いだことありません」
男「めっきり寒くなってきたね。雨まで降ってるし」
女「最高気温15度だってさ。どんどん寒くなってくるんだから。ああ、やだやだ」
男「冬服の幼も素敵だよ」
幼「そりゃあどうも」
男「そんなに寒いならマフラーと手袋編もうか?僕とペアの2つ。僕、細かい作業好きだからすぐ編めると思うよ」
幼「発想が女の子みたいね。学校で噂立つようなことやめてって言ってるでしょ」
男「そっか。じゃ、幼の分だけなら編んでもいい?」
幼「まあ、いいけど…ありがと」
男「色、どうしよっか。青?」
幼「うん、青」
男「幼は冷え性なんだから、風邪には気を付けてね」
幼「うん。そうする」
男「席空いたよ、座って座って」
幼「いいの?じゃ、遠慮なく」
男 「相変わらずむさ苦しいなあ。降ってるから一段と湿気が強くて気持ち悪いよ。一日くらいガラ空きにしてくれてもいいのに」
幼「あはは。パンデミックとか大災害が起きて、人口が減ったら空くかもね」
男「そっかあ。うーん、人がたくさん死ぬのは良くないもんね」
幼「満員電車は社会が正常に回ってる証拠だと思うよ、たぶん。どうせ社会に出ても毎朝こんな風に寿司詰めにされるんだから、予行練習だと思いましょう」
男「あ、幼はそんな心配しなくていいよ。主婦は電車に乗る必要無いんだから」
幼「はいはい」
男友「や、男。今日も彼女と一緒?いーいなあ、おめえ」
男「でしょ?いやあ、幼がどうしても一緒にって言うからさあ」
幼「はっ倒すぞてめえ。男友くんも、こんな奴彼氏でもなんでも無いって何度も言ってるでしょ」
男「照れちゃってぇ。かーわいいー」
幼「照れてない。お前嫌い。バカ、[ピーーー]」
男友「ひでえ」
男「悪口なんて普段言い慣れてないから、語彙が少なくて幼稚な幼もかわいいなあ」
男友「お前って明るいよな」
男友「なんでお前って幼さんと一緒に昼飯食べないの?仲いいのに」
男「幼は学校で一緒に食べること嫌がるからさ。僕だって野郎と食べててもクソつまらないのに、ひどいよね」
男友2「あ?喧嘩売ってんのか?」
男「ごめんね。思ったことすぐ口に出ちゃうんだ」
男友「根の性格が腐ってるんだろうな。お前、なんか気持ち悪いし。友達いない理由もよく分かるよ」
男「うん。おかげで僕の周りには僕を許せるようないい人しか残らないんだ。だから改善はしないよ」
男友2「勝手な野郎だよ。轢かれて[ピーーー]」
男友「[ピーーー]は言い過ぎだろ」
男友2「ごめん」
男「いいよ」
男友「羨ましいなあ…乳は無いけどすらっとした美人だし。俺も彼女欲しいなあ」
男「いいでしょ、僕の幼馴染。女神がいるならあんな姿をしていると思うよ。ああ、かわいいなあ」
男友2「幼さんの話になるとすぐトランスするからよ、きめえなあ」
男友「確かに幼さん優しいもんな。男みたいな無神経クソ野郎と何年も一緒にいてくれるんだから。俺でもたまに殴りたくなるのに」
男「この世で一番心の広い人間だからね。僕なんかのことも受け入れてくれるんだ」
男「あと、幼には普通に殴られてるよ。あんまり調子乗ってるとすぐ蹴ってくるんだ」
男友「殴られるは殴られるんだ」
男友2「あの子がそんなことするとこなんてあんまり想像できないな。相当ムカつくことばっかしてるんだな」
女友「駅前にクレープ屋出来るらしいよ」
女友2「もう無かったっけ?増えた?」
女友「うん、増えた。9軒目」
幼「ここらへんバカみたいにクレープ屋多いよね。コンビニより多いんじゃないの」
女友「それだけ需要があるってことだよね。まあ、クレープ嫌いな人間なんて存在しないしね」
女友2「下世話な話、原価もかなり安そうだし、儲かるんだろうなあ」
女友「あ、クレープで思い出した。この前さ、幼って男くんと一緒に公園でクレープ食べてイチャイチャしてたよね」
幼「げ」
女友2「お?ほんとに?つまり~?ということは~?ふたりは~?」ニヤニヤ
幼「ちが、違うったら、違う違う!あれはただ、二人で出かけて、公園でクレープ食べたってだけで」
女友「違うも何も、あたしが言ったこと反復しただけだよ。落ち着きなって」
幼「だから、変な意味なんて無いから!」
女友2「別に認めたらいいのに。家が隣同士の幼馴染みなんて、いかにもじゃん」
女友「二人で話してる時、本当に楽しそうだよ。幸せそ~に笑って。好き合ってる人同士が一緒にならないのは、勿体無いよ」
幼「……ほんとに、そういうんじゃ無いんだってば………私、なんか」
女友「え?」
幼「…なんでもない」
男「帰ろっか。幼」
幼「授業終わってすぐにこっち来ないで」
女友「お邪魔みたいだね。二人とも、また明日ね~」
男「ごめんね、女友さん」
幼「先帰ってて。私復習してるから」
男「真面目だなあ、幼は。主婦にはそんな知識必要無いったら」
幼「勉強ってのは必要かどうかじゃなーいの。やることが重要なの。私は別に勉強嫌いじゃないしね」
男「そっか。幼が言うならきっとそうなんだろね。僕も一緒にやっていい?」
幼「いいわよ。じゃ、とりあえず図書室行こっか、クラスのみんなに見られたら恥ずかしいから」
男「恥ずかしいんだ。うーわ、かっわいいー」
幼「黙れ」バシッ
男「あ、雨引いてるね、良かった」
幼「ほんとだ。私は雨好きだけどね。雨の音って落ち着かない?」
男「人間の脳の波と同じとかどうとか、なんかなんとなく落ち着く音らしいよ。同じ波は」
幼「かなり曖昧な情報ね。とにかく雨の音が好きなんだ。雨の音以外何も聞こえなくなるから」
男「幼は結構根暗だからね。音が減ると安心するんだろね。高校で友達が出来て安心したよ」
幼「私は根暗じゃない。外に出るのが面倒で、ぼそぼそとしか話せないだけよ」
男「それを根暗って言うんじゃないの?幼が暗い部屋で格ゲーに没頭してる姿とか正直キモいよ」
幼「うるさいなあ。じゃあ電気点ければいいんでしょ、点ければ」
男「幼がどれだけキモくても僕は受け入れるよ」
幼「おばさんも私の親も留守だからさ、晩ご飯私が作るよ。何食べたい?」
男「うーん…寒いから、鍋にしよっか。鶏の水炊きとか」
幼「あ、私も食べたかった。じゃ、えーと、白菜あるから、ネギもある。よしよし」
男「あと、プロテインも買うね。プロテインが切れるとイライラするんだ」
幼「好きだねえ、鍛えるの…男ってこうして見てみると大きくなったわよね。肩もがっちりして」
男「鍛えてないと、いざと言うとき幼を守れないからね」
幼「守る、ね…」
男「ああ、眠い。なんで電車に乗ると眠くなるんだろうね。外国人はあんまり電車で寝たりしないらしいよ」
幼「へえ、なんでだろ。日本人は仕事の量にスタミナがついてってないからかな。魚ばっか食べてガリガリだから」
男「でも、[ピザ]はよく寝てるイメージあるよ。アメリカ人なんてハンバーガーとコーラ以外食べないから[ピザ]しかいないはずだよね」
幼「アメリカに対する偏見が凄いわね。所詮、我々農耕民族とは体の作りが違うのよ」
男「僕もアメ公に産まれてたらなあ、もっとムキムキになれたのかなあ。僕なんか所詮ミドル級の域を出ないもんね」
幼「珍しいわね、あんたがそういうこと言うの。自分の産まれを嘆いちゃダメよ」
男「そうだね。幼の隣の家に産まれたってことが何よりも大事だもんね。幼もそう思うでしょ?」
幼「…知らないわよ、そんなの」
男「ごちそーさま」
幼「美味しかった?」
男「美味しかったよ、世界一。水炊きなんて誰が作っても同じだけど、愛はその味を億倍にも増幅させるから」
幼「お皿出して。洗うから」
男「僕も手伝うよ。終わったら映画一緒に見よう。バタフライエフェクト3とグラントリノどっちがいい?」
幼「よく3借りる気になったわね。グラントリノって面白いの?」
男「らしいよ」
幼「うぅ……ううぅー」グスグス
男「うん。面白かったね。あ、もうこんな時間だ」ピッ
幼「ああぁ!?何消してんの?何消してんの!?」
男「何って、終わったから。あとはスタッフロールだけじゃない」
幼「断りもなく切るんじゃないわよ、この野郎!」
男「え?スタッフロール見ても仕方ないじゃい、名前流れるだけでしょ」
幼「余韻を味わいたいの!私は!ED曲を必死に考えてくれた制作側の人にも失礼でしょーが!」
男「えー、変わってるなあ、幼は。黒い画面見て泣いてる幼のこと、かわいいけどバカだなあ、っていつも思ってたよ」
幼「ぶっ[ピーーー]!」ゲシッゲシッ
男「あはは、痛い痛い」
幼「あ、そうだ。あのね、この前出かけてたとこ、女友に見られてたの。どうしてくれるのよ」
男「ああ、この間のデートね。見られてたんだ。それがどうしたの?」
幼「だから、見られたくないって言ってるじゃない」
男「うーん…でも、僕、幼と並んで歩くのが生きがいなんだ。それでも幼がどうしてもって言うんならやめよっか。あーあ、残念だなあ」
幼「やな言い方するわね……ああぁ、もう。分かったわよ。我慢すればいいんでしょ!」
幼「…私もまあ、楽しいっちゃ楽しいしね」
男「ありがとう、幼。両想いだね」
幼「うるさい!」
男「じゃあ、おやすみ、幼。また明日ね」
幼「うん、おやすみ。また明日」
男「あ~、眠いなあ。幼が起こしてくれないとどうもスッキリしないよ」
幼「へえ、大変ね。慣れるまで行かないようにしましょうか」
男「そんなこと続けてたらそれこそ永眠しちゃうよ」
幼「そりゃあいいわね。試してみましょう」
男「幼と結婚するまで僕は[ピーーー]ないよ。ちょっとは僕の夢を応援してよ」
幼「なんで自分から巣穴に入らなきゃならないのよ」
後輩「先輩、おはようございます!」
男「後輩ちゃん、おはよう。今日も元気だね」
後輩「あ、幼先輩もおはようございます」
幼「あ、はい」
幼(なんだよ、その目は… )
幼(あいつもまあまあモテるようになったねえ)
幼(昔はいつもおどおどしてたのに、自信に満ちた顔するようになったし)
幼(体もがっちりして、外見は悪くないものね)
幼(…いつからこんなふうになったんだっけ?)
女友「おっはよー、幼」
幼「え?ああ、おはよう」
女友「どしたん?なんか呆けて」
幼「えーっ、と、もうすっかり秋になったなあ、って」
女友「?」
幼「だからさ、なんでもないんだってば」
女友2「ええ~?ほんとかなあ。あたし、男くんが後輩に挨拶されてるの見たよ」
幼「相変わらずの恋愛脳ね。それに関しては、本当にどうしたとかは無いの」
女友2「少しくらいは嫉妬しちゃったでしょ?」
幼「ううん…どうだろうね。嫉妬っていうか……モテる理由がいまいち飲み込めない、というか」
女友「それは嫉妬とは違うの?」
幼「分からない。…正直、男が女の子と仲良くしてるとイライラするのは認めるけどさ…」
幼「それとはまた別の部分があるんだよね」
女友2「なんにせよ、グズグズしない方がいいんじゃない。かわいい子に告白されたらあっさり付き合っちゃうかも」
幼「それは無いわよ、ないない。他の子と付き合ったりしないわよ」
女友「………」
女友2「へ~え、そうなんだー。愛されてんね、男くん」ニヤニヤ
幼「愛してるとかじゃなくて、あいつはそういう奴だって知ってるだけよ」
女友「ほんとにそう言えるのかな」
幼「……どういうこと?」
女友「えーっとね…幼が思ってるよりも速く、人は変わり続けてるってこと。なんの努力も無く今の状況を維持し続けられると思ってるのなら、甘すぎる、ってだけ」
幼「…………」
キーンコーンカーンコーン
女友「あ、予鈴。そろそろ戻ろっか」
幼(……変わる?)
幼(今の関係が変わるなんて想像できない)
幼(もしかして、私が気付いていないだけで、今と一瞬前でさえ、私達の関係は変わり続けているのかな)
幼(そんなこと、考えもしなかった)
幼(確かに私もあいつも、私たちの意志なんて関係なく、否応なしに成長させられてる)
幼(私も小さい頃からはるかに大きくなって、あの泣き虫はその私よりも頭一つ高く大きくなって、妙に男らしい顔をするようになって)
幼(私の知らない内に。何も動かない私を放っておいて、大きくなる)
幼(だからって…私にどうしろってのさ)
男「今日はわりかしいい天気だね。涼しくて気持ちいいよ」
幼「そうね。こんなふうに、大人しく秋らしい天気してればいいのよ」
男「天気に文句言うのもどうかと思うけど」
幼「春と秋が永遠に続けばいいのよ。中途半端な季節が一番過ごしやすいわ」
男「そう?僕は夏も冬も好きだよ。極端な季節にもいい所はあるからね」
幼「う~ん…そうかなあ」
男「ずっと同じような気候が続くなんて不自然だよ。季節の変化を楽しまなきゃね」
幼「変化を楽しむ、ねぇ…」
男「それに、季節ごとに変わる幼の服が見れるのはありがたいよ。もちろんどんな姿も天使のように美しいけどね」
幼「結局そこに結びつけるのね…」
男「へ~、歩きスマホ禁止条例だって」
幼「一万件も事故してるんだ。でも、罰金15ドルって結構安くない?」
男「そこまで大事故には繋がりそうもないからね」
幼「でも、信号渡りながらスマホ見てる人とかたまに…」
男母「幼ちゃん、お母さん留守でしょ?家で食べてきなさいよ」
幼「あ、おばさん。いえ、そんな、悪いですし…」
男母「いーのよ、遠慮しなくて。お母さん留守なんでしょ?」
男「一緒に食べようよ。一人で食べてても寂しいでしょ?」
幼「うーん…じゃあ、ご相伴に与ります」
男母「うふふ、よかった」
男母「美味しいかしら?」
幼「はい、とっても。すごく美味しいです」
男「幼がいるから張り切ってるんだ。それでも愛が詰まった幼の料理には敵わないよ」
幼「こら、失礼でしょ!作ってくれる人のことを考えなさい!」
男母「いいのいいの。ふふふ、愛が詰まってるんだものね?」
幼「おばさんまで、やめてください!」
男母「照れないの。幼ちゃんみたいな子がお嫁に来てくれたら嬉しいんだけどねえ」
男「大丈夫だよ、僕も頑張るから。必ず幼を貰ってみせるよ」
幼「ああ、もう…やな親子だわ…」
幼「ただいまー…誰もいないけど」
幼「はぁ~……」
幼(やっぱり、男といると楽しい。今のままでも十分だ)
幼「お風呂入ろ」
幼『ほら、泣かないの』
男『だって、ぼく……幼に守られて、怪我させて、うぐ…』
幼『いいのよ。男をいじめるあいつらが悪いの。一緒に先生に言いに行こう』
男『ひぐ、う…うん』
幼『泣き虫。私に守られるのが嫌なんだったら、やり返してやればよかったのに。ずっとあんたのこと守ってやることなんて出来ないのよ』
男『っ、うん、うん…ごめん、幼ちゃん……ぼく、もっとちゃんとしなきゃ…もう、幼ちゃんに怪我なんか、させないから』
幼『そっか。えらいえらい。これからは、ふたりでもっと頑張ろう。男がもっと強くなったら、私を守れるようになったら。え、と』
幼『私と、けっこんしよう』
幼(……小さい頃の夢)
幼(小さい頃の私って賢かったんだな。今よりもずっと。素直でまっすぐ、変わることをなんにも恐れてなかった)
幼(自分の想いを知っていて、絶対に折りたくないって思ってた)
幼「あー…もう。なんでこうなっちゃったのかな」
幼「思い出したくなかったなあ」
幼(きっと、あまりに心地いい関係に浸かりすぎて、時間を重ねるにつれもっと大切になって。この関係を壊すことが怖くなってしまったんだ)
幼「ちくしょう」
男「おはよう、幼。今朝も幼の美しいご尊顔を拝することができて…どうしたの?」
幼「え…何が?私、どこかおかしい?」
男「ちょっと落ち込んでる?大丈夫?幼の笑顔が失われるのは世界全体の損失に繋がるからね」
幼「……ええと、ごめん。落ち込んでるかも」
男「謝らなくていいよ。えっと、あんまり話したくない?」
幼「ん」コク
男「そっか。話しくなったらいつでも言って。人に言ったら楽になるかもしれないから」
幼「ありがとう…優しいね、男は」
男「え~…調子狂うなあ」
幼「はぁ~……」
女友「どしたん幼。もうみんな移動してるよ」
幼「あ、うん。考え事?してると思う」
女友「ちょっと何言ってんのか分かんないです」
幼「……えっとね、昨日言われたこと考えてて。確かに私、卑怯だったかなって」
幼「男はいっつも私のこと想ってるとか勝手な考え押し付けて、そのくせ気持ちに答えることはしなくて。だから、私は、う~ん…」
女友「いいよ、ゆっくり話して」
幼「私は、このままじゃいけないんだろうな、って。変わっていかなきゃいけないのかなって」
女友「…いいんじゃない?そう考えられるのは、きっといいことだと思う」
幼「そう、そうだよね………分かった。私、頑張ってみる。ありがとうね、わざわざこんな話聞いてくれて」
女友「いいえ、どういたしまして。頑張れ、幼」
男「お疲れさま、幼。一緒に帰ろうか」
幼「わあっ!お、男!」
男「え、ごめん。そんなに驚くと思わなかったから…えっと、大丈夫?」
幼「は、はい。大丈夫、です。帰ろうか」
男「?」
男「…………」
幼「…………」
男(なんか、気まずいな。やっぱり今日の幼はどっか変だ)
男「えっと、どっか寄る?どこでもいいから、ちょっと歩くと気分転換になるかもよ」
幼「……そうだね。うん、ちょっと歩こう。公園寄ろう。あの………話が、あるから」
男「本当?僕、なんでも聞くよ。なんでも話してね」
男「それで、話って何かな?その前にどこか座る?」
幼「そうだね。ここらへんでいっか、人もいないし。男、座ろうか」
男「うん」
幼「…………」
男「…………」
幼「あの……………男って」
男「?」
幼「なんで私なんかのことが好きなの?なんでそんなに私に気持ちをぶつけられるの?」
男「なんで。なんで好きか、か」
幼「………」
男「幼だからかな」
幼「え?」
男「なんて言えばいいんだろう。可愛いとか優しいとか、いくらでも理由を付けることは出来るけど、この気持ちにそういう理由は貼り付けたくないな」
男「僕は幼が幼だから好きになんだ。小さいころからずっと一緒だったから、幼が僕を信頼してくれているのを知っているから、誠実に気持ちを伝えたいんだ」
男「何が起きたとしても、幼が幼であるならこの気持ちは変わらないと思う」
幼「……そっか」
幼(なんか、妙に腑に落ちた)
幼(男は、私のこの気持ちも説明してくれたのかもしれない。そこまで考えてないだろうけど)
幼「わたしも……」
幼(いつの間にか男は私を追い抜いて、気持ちに追いつけないと思ったから、答えられなかった。自分をぶつけて失望されるのが怖かったから)
幼(それでも、勇気を出せ。言ってしまえ。男の信頼に答えなければいけないんだ。どれだけ怖くても、このまま男を裏切り続けてしまう方がずっと怖い)
幼「私も、男が……」
幼「男が好き。大好き。男が男だから。だから……ずっと一緒に居たい 」
幼「私と付き合ってほしい」
男「え?」
男「幼が、僕を……」
幼「うん、好き。絶対に離れたくない、離してほしくない。男以外の人なんて考えられない。他の誰よりも男のことが好き、大好き
」
男「…や……」
幼「や?」
男「っ、たあぁああああああああああああああああああああああああぁぁ!!!」
幼「うわぁ!?うるさい!聞こえちゃうでしょ!しーっ、しーっ!」
男「静かになんてなれないよ!幼!!」ギュッ
幼「ひゃあ!?やめて、抱き着かないで!」
男「いやだ!絶対に離さない!幼、僕も大好きだ!!結婚しよう!!」
幼「分かった、分かったから!回るな回るな!」
男「ううぅ……よかった、よかったあ…僕、たまに、幼は僕のこと嫌い、鬱陶しいって思ってるんじゃないかって考えたりして……不安だったんだ」
幼「はぁ……鬱陶しいは鬱陶しいけどね、あんたのこと嫌うわけがないじゃない。そうじゃなきゃあ、何年も付き合ってられないわよ」ギュッ
男「ありがとう、幼。ありがとう…産まれてくれて、一緒にいてくれて、好きになってくれて…」グスッ
幼「泣いてるの?」
男「ちょっとだけ。大丈夫、すぐに泣き止むから。僕はもう泣き虫じゃないよ」
幼「ふふ……そうね。あんたは泣き虫じゃないわ」ナデナデ
幼「そろそろ帰りましょう。親が心配しちゃうわ」
男「うん……そうだね。暗くなってきたしね」
幼「あ、そうだ……」
男「うん?」
幼「手、繋ごっか?」
男「ああ、もう着いちゃった。離れたくないなあ」
幼「そういうわけにもいかないでしょ。大丈夫よ、もう離れたりしないから」
男「そっか。そうだよね。もっとたくさん話したいけど、明日からはずっと、一緒にいられるんだもんね」
幼「うん。でも、その前にちょっと目、閉じて」
男「……うん」
幼「……………んっ」
幼「…………は、ぁ…」
男「………あはは、しちゃった、ね」
幼「えへへ……しちゃった」
幼「あんたが紅くなるなるなんて、すごく珍しいわね」
男「そういう幼だって、真っ赤だよ」
男「幼」
幼「なに?」
男「結婚しようね。きっと幸せにするから」
幼「……うん、結婚しよう。男と一緒なら、絶対に幸せになれるに決まってるわよ」
幼「……んじゃあ、また明日ね。男」
男「うん、また明日。おやすみなさい、幼」
終わり
童貞感が溢れでてる
乙
凄くいいと思った
童貞だけど
俺童貞だけどこういうの凄く好き
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