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アタシ福田のり子はアイドルになった。
女の子にとっての憧れ。
男の人にとっては…違う意味で憧れ?なのかな?
そんなアイドルが、アイドルの中でも今をときめく星たちが集まる765プロで、
アタシはアイドルになった。
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オツカレサマナノデス-!
キョウモガンバッタゾ..ブイ
ステ-ジキラキラデシタネ-
モウ!フワフワシテナイデ!シュウエンゴハキッチリストレッチシナイト
アハ!ダイセイコウダッタンダシイイジャン,ウチアゲハファミレスデイイカナ?
「みんなお疲れ!今日の公演もバッチリだったな」
「のり子もお疲れさま、ほれタオル。ちゃんと汗拭かないと風邪引くぞ」
「ふぃ~…ありがとね、プロデューサー」
シアター公演も回数を重ね、ようやく舞台にも慣れてきた。
かわいい衣装を着てキラキラのステージの上でアイドルの歌を歌う。
ちょっと前のアタシには考えられなかったけど、それでも少しずつ、アイドルに近づけているのかなと、公演が終わるたび、そんなことを思う。
多少の前後はあるものの、シアターのみんなは大体同期と言っていい。
…なんだけど、ステージのセンターを務める子や照らすライトの何倍も輝く子を見ると、ただ、凄いなぁと、こういう子こそアイドルなのかなと、そんなことも思ってしまう。
シアターの公演ではオリジナルの楽曲の他に、765プロの先輩たちが歌ってきた楽曲を披露する、セルフカバーメドレーが組み込まれる。
このパートは凄い。
もちろんシアターオリジナルのステージも、ファンのみんなの声援とペンライトが嬉しく、頼もしい -初めてのソロ披露のときはずいぶん助けてもらった気がする- けれど、このパートばかりは少し、ほんの少し、不安を一緒に連れてくる。
音の壁、光の渦。
765の先輩たちが歌い、一緒に育ててきたステージが、真正面から向かってくる。
そのたびに、本当にアタシが、福田のり子が、765プロのアイドルでいいのかな、なーんて。
口に出したことはないけれど。
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ステージがない日もアイドルはアイドルだ。
アイドルは楽しい。
TVやラジオ、雑誌など、向こう側にいた人たちが色んなところに連れて行ってくれる。
もちろん、連れ回されるのは性に合わない。
行く先々の現場が、期待してくれるファンが、通りすがりのファン候補生が、何より自分が、その一瞬一瞬を楽しめるように思いっきり楽しむ。
その甲斐あってか、今ではそこそこ仕事も増えて…そういえば最後の1日オフっていつだっけ?
今日もすっかり仲良くなったTV局での撮影が終わり、次の仕事の打ち合わせのため、暮れつつある太陽を背に、1人事務所へと帰路につく。
どんな楽しいことが待ってるかな。えへへ。
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「のり子にはソロで『私はアイドル』を歌って貰おうと思う」
今日の報告と直近のスケジュール確認が終わり、次回公演のセットリストに話題が移ったところでの、プロデューサーの一言である。
「この前まつり達も歌ってたし、曲はわかるよな?連続での選曲にはなるけどファンからのアンケートで人気でさ、他の子が歌ってるところも見たい!って」
私はアイドル。
オリジナルは春香と伊織。
かわいらしい曲調とちょっと生意気な歌詞の、いわゆる"いかにも"な曲だ。
それにしても…
「ア、アタシは他の曲の方がいいんじゃないかな…はは」
「ほら、このセトリだとGO MY WAY!!とかポジティブ!とか、アタシっぽいっていうかファンのみんなも盛り上がると思うんだよね」
「私はアイドルは…ほら!翼とか茜なんかも似合うよね?」
あわててまくしたてる。
よりによって、といえば言葉が悪いけど、この曲は。
"かわいらしい曲調"の部分はアイドルなんだから覚悟を決めるとしても、問題は歌詞だ。
さっきは"ちょっと生意気"なんて言ったけど、そんなもんじゃない。
きっと本当にかわいくて、自信満々で、そういう子が歌ってこそのこの曲だ。と思う。
さてはドッキリか!このやろー!
と、プロデューサーを睨みつけてみれば、
…じっとアタシを見る目は真剣で
「んーそうか?でもな、あれだ。俺が聞きたいんだ。のり子の私はアイドル」
「ま、考えといてくれ」
そんなことを言われた。…気がする。
よく覚えていない。
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考えといてくれ、なんて言われた割に、翌日からレッスンは始まって、アタシはといえばボーカルの先生と絶賛居残り中だ。
「のり子ちゃんの跳ねる声、この曲にはぴったりなんだから。まずは曲を自分のものにすること、次回までに頑張ってきてね」
レッスンスタジオ閉館の時間がくれば、その日が100%の出来だろうと…そうでなかろうと、レッスンは解散となる。
ちっとも達成感を得られないまま無茶な宿題だけを獲得し、帰宅することとなった。
"曲を自分のものに"って言われても…。
正直、レッスンがうまくいかないのは想定どおりだった。
曲も歌詞もしっかり頭に入ってる。
楽譜通り音はとれているはずだし、先生に言われた跳ねる声ってのもそれなりに意識して歌えたはずだ。
だけど、肝心の、この曲を歌うアイドルの気持ちっていうのがちっともわからない。
~きっとわーたーしがいちばんっ
~でもあなったーもそーこそこかも
…むぅ。
ほんとにこれアタシが歌うの?
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悩みがあろうとあるまいと、アイドルはアイドルだ。
アイドルは忙しい。
今日のお仕事は律子さんと春香のラジオにゲストで出演。
劇場公演の宣伝も兼ねて。
60分番組の倍くらい喋ったところで収録か終わり、次の仕事までの空き時間に3人でお茶をすることになった。
「そういえばのり子ちゃん!次の公演、カバーコーナーでは何歌うの?乙女とかSTARTとか、私の歌やってくれたら嬉しいんだけどなー。きっと似合うと思うし!」
「そうね、でもそろそろ前向きな元気曲以外も挑戦してみていいんじゃない?、livEとか歌ってみたら映えるかも。っと、それで?プロデューサーはどの曲がいいって?」
「あはは…嬉しいことに春香の曲、なんだけどね」
「むぅ!わた春香さんの曲でその表情とは!さては太陽のジェラシーだ!あの曲難しいから」
「難しいけどのり子なら歌いこなせるんじゃない?浮かない表情ってことは…IWantものりのりでやるだろうし」
「IWant歌ってみたいなー…。はは、実はアタシの…私はアイドルを、聴いてみたいって」
「私はアイドル!懐かしいなー!楽しい曲だよね、うん、のり子ちゃんの声とぴったりかも!でもそれならなんで悩んでるの?」
「うん、先生もそう言ってくれるんだけど、どうも歌詞が」
「あの歌詞を歌ってる自分ってのが想像できなくて…」
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「確かにはじめは頭にくる曲だなーって思ったけど、「こら」あ、曲、曲調が頭のなかでループし続けるというか。」
「でもあの歌詞だよ?伊織は…なんとなくイメージ通りだけど、春香はそういうタイプには見えないし」
「あら、のり子たちシアター組はまだ知らないかもしれないけど春香も結構「律子さん」そういう子よ?わがままで猪突猛進というか「律子さんっ!」」
「!?」
「あーもうのり子ちゃん!違「でもね、必ずしもそういう子が歌うってわけじゃないと思うわ。あの曲はね」…う」
「よし、先輩から一つ宿題追加。プロデューサーから言われたこと、考えてみて。あなたの"私はアイドル"が聞きたい、そう言ったんでしょう?」
「うぅ~ヒント!」
「ヒントは無し!ここは払っておいてあげるからもう少し考えていきなさい、行くわよ春香」
「ちょっと律子さん!パフェ、パフェがまだですよ!…もう!のり子ちゃんまたね、公演楽しみしてるよ」
スミマセン,リョウシュウショヲ
ア!リツコサンズルイ!
んー。アタシの私はアイドル。
…アイドル。
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あれからそれなりに日が進み、レッスンも佳境に差し掛かる。
レッスンを重ねるたびに積み上がるのは不安ばかり。
今日に至っては先生に
「大丈夫!のり子ちゃんは本番に強いタイプだから」
なんてことを言われる始末。
悶々としたまま事務所の前を通れば…
まだ電気がついてる。
きっとプロデューサーだ。
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「プロデューサー!アタシやっぱりダメかも!ヒント!ヒントを!」
事務所の扉を開けるなりPCに向かうその人に、アタシを悩ませる犯人に、声をかける。
「曲変えてくれ、とは言わないんだな。よかった」
ヒントどころかまた難問が飛んできた。
確かに、曲を変えてほしいわけじゃない。
この曲を、春香や伊織が、シアターの仲間も、765プロが歌ってきたこの曲…だから?
「まぁいいや、ちょうどいい。次の公演のポスター案出来上がったんだけど、ほれ、どうだ」
ポスターは公演毎にデザインが変わる。
セットリストのなかでメインに組まれる子、オリジナルのソロ曲やユニット曲のセンターを務める子を中心に、その公演出演メンバーが全員登場する。
今回は…
「あんまりいい表情してたからさ、プロデューサー権限ってやつだ」
中心にはいっぱいに引き伸ばされた…アタシ?の笑顔。こんな写真…。
「前回のやつだよ。バックで踊ってた曲だけど、うん、楽しそうで、カメラマンも最高の一枚ができましたって」
「ヒントだっけ?そうだな、"基本的には一本気だけど 時と場合で移り気なの"って見方によっちゃのり子っぽいって思わないか?」
???
「いつでも全力投球!かっこいい仕事もかわいい仕事も、バラエティもドキュメントも。移り気ってあんまりいい印象の言葉じゃないけど、ほら所詮言葉だ」
「歌詞のとおり、楽譜通り歌うのも大事だけど、だろ?」
!………。
「ヒントは以上、早く帰って休みなさい。あ、そうだ。前にも言ったけど、のり子の"私はアイドル"を聞くの、楽しみにしてるんだ。だから、な」
「うん、ありがとう。アタシ…ううん、楽しみにしててね!」
「おぅ」
「じゃ、また明日!プロデューサーも、早く帰んないとダメだよー」
バタン
先ほど勢いよく開けたばかりの戸を閉めて、次の公演に向け、きらめく星空を見上げながら、1人自宅へと帰路につく。
どんな楽しいことが待ってるかな。えへへ。
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―――
「のり子ー『私はアイドル』、そろそろだぞ!スタンバイ!」
公演も終盤に差し掛かり、765プロカバーメドレーのパートが始まったところでの、プロデューサーの一言である。
「どうだ、いけそうか?」
私はアイドル。
オリジナルは春香と伊織。
かわいらしい曲調とちょっと生意気な歌詞の、いわゆる"いかにも"な曲だ。
それにしても…
「んーわかんない。でもアタシってば本番に強いタイプみたいだし」
「とにかく、アタシらしく、楽しんでくるね」
「そうか、そりゃ楽しみだ。いってこい」
パンっと背中を叩かれ、舞台袖からステージへ。
「 」
後ろでなにか言われた。…気がする。
アタシはもうステージに夢中で、みんなの歓声と笑顔以外はよく覚えていない。
―――
―――
アタシ福田のり子はアイドルだ。
女の子にとっての憧れ。
男の人にとっては…違う意味で憧れ?なのかな?
そんなアイドルが、アイドルの中でも今をときめく星たちが集まる765プロでも、
アタシはアタシのまま。
アタシのままで、私はアイドル。
~きっとわーたーしがいちばんっ♪
~いまかがっやーいてーいるみたいっ♪
―――
おしまい。
のり子かわいい。
おつ
のり子らしい話でいいね
乙です
福田のり子(18)Da/Pr
http://i.imgur.com/B5qPFMQ.jpg
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>>6
天海春香(17)Vo/Pr
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秋月律子(19)Vi/Fa
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乙かわいい
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