【カフェ】
サナ「…いきなり、何を言い出すの? セレナ?」
セレナ「セクハラしてみようと思うの」
サナ「それは聞いたよ。そんでもって、まったく意味がわからないよ」
サナ「優雅にコーヒー飲みながら、すました顔でそんなこと言われても、反応に困るよ」
セレナ「このカフェのコーヒーって美味しいわよね」
セレナ「お隣さんってバトルジャンキーじゃない?」
サナ「うん、そだね。バトルしか頭にないカンジだよね」
セレナ「そうそう。まあ、それはそれで格好いいんだけど、バトルに夢中すぎて張り合いがないのよ」
サナ「どゆこと?」
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セレナ「この前、お隣さんを誘惑しようとしてミニキャミソール着てみたんだけどね」
サナ「誘惑しようとしたんだ」
セレナ「うん。おへそ見せて、さりげなく腰をクネクネしてみたわ」
サナ「うわぁ」
セレナ「引かないで。私、結構、必死なの」
サナ「で? 結果は?」
セレナ「『お、似合ってるじゃん』のひと言で終わったわ」
サナ「あのバカ」
セレナ「そのあとはいつも通りね。『バトルしようぜ』よ」
セレナ「まあ、『似合ってる』って言われたから、私も嬉しくて内心飛び上がってたんだけど」
サナ「セレナはちょろいね」
セレナ「でも、後になって考えてみたらぜんぜん物足りなかったのよ」
セレナ「あれだけ露骨にセクシーな格好をしたんだから、1時間くらい、私の腰に視線が釘付けになってもいいでしょう? そうじゃなくても、チラ見しまくってもいいでしょう?」
サナ「カルムにそんなことされたら、逆に気持ち悪くない?」
セレナ「ううん。興奮する」
サナ「とんでもないことを真顔で即答したね」
セレナ「彼に襲われたい」
サナ「はいはい。そうですね」
サナ「で? セクハラしたいってのは何なの?」
セレナ「現実的に考えたら、お隣さんが私に対して積極的にアプローチすることはないと思うのよ」
サナ「いまはバトルに夢中だしね」
セレナ「うん」
サナ「セレナ、そういうところは現実的だね」
セレナ「私。リアリストなの」
サナ「へぇ」
セレナ「白い目で見ないで」
サナ「リアリストは好きな人に対してセクハラをしたいなんて言わないと思うんだけど」
セレナ「セクハラが彼を振り向かせるための現実的な方法なのよ」
サナ「話だけは聞くよ」
セレナ「例えば、私のパンツを丸めてお隣さんのカバンにたくさん詰めとくとするでしょう?」
サナ「やめなさい」
セレナ「そうすると、お隣さんは否応なしにパンツを触ったり、匂いを嗅がなければいけなくなるじゃない」
セレナ「で、それを繰り返せば、いかに鈍感なお隣さんとはいえ、野獣の心を取り戻すと思うの」
セレナ「完璧なプランじゃない?」
サナ「完璧だね。完璧にアウトなプランだね」
セレナ「まだまだプランはたくさんあるわ」
サナ「もうあんまり聞きたくないんだけど」
セレナ「例えば、彼の家にこっそり侵入してお風呂に忍び込んでおくのよ」
サナ「続けるのね」
セレナ「で、彼が入ってきたら入浴中の私と鉢合わせ」
セレナ「お隣さんは私のセクシーボディを見ることになるわ」
セレナ「それを繰り返せば、いかに朴念仁のお隣さんとはいえ、野獣の心を取り戻すと思うの」
セレナ「いつしか私は襲われてハッピーエンド」
セレナ「完璧なプランじゃない?」
サナ「…ソウダネ」
(1時間後)
サナ「たくさんの素晴らしい計画を聞かせてもらったんだけどさ」
セレナ「うん」
サナ「全部、モロ犯罪だよね。情状酌量の余地なしの悪意ある行動だよね」
セレナ「大丈夫。慎重にやるから」
サナ「そういう問題じゃないよ」
サナ「裸のプロモーションビデオを送りつけるだの」
サナ「バトルハウスの対戦相手として全裸で登場するだの」
サナ「どのプランも慎重にやってもアウトだよ。慎重だから何? って話だよ。軽犯罪だよ。捕まるよ」
セレナ「恋は障害があるほど燃えるものよ」
サナ「ブタ箱で燃え尽きる未来しかないっての」
セレナ「セクハラって意外と難しいわね」
セレナ「捕まらないセクハラってないのかしら?」
サナ「ないよ。犯罪だもの」
サナ「ポケモンじゃないピカチュウを探してるようなものだよ」
サナ「セクハラにとらわれないで正攻法で行こうよ」
セレナ「例えば?」
サナ「ん?」
セレナ「正攻法って、例えばどんなの?」
サナ「え、えっと…」
セレナ「ぜひ聞きたいわ。参考にさせて」
サナ「…」
サナ「…ストレートに『好きです』って言うとか」
セレナ「そんな恥ずかしいことできるわけないでしょう」
サナ「どの口が言ってるの?」
セレナ「サナ。それとこれとはまた別の話なのよ」
サナ「えぇ…」
セレナ「はぁ…恋って難しいわね」
サナ「いままでの話を踏まえて聞くと、反応に困るよ」
サナ「変態成分が話をより難しくしてる気がしてならないよ」
セレナ「ほら、好きな人を叩いたりしちゃうじゃない」
セレナ「私がセクハラ行為を考えちゃうのはそれと同じよ」
サナ「反動なのね」
セレナ「それそれ」
サナ「まあ、セクハラしなくてもさ、時間が経てばカルムもそのうち振り向いてくれるんじゃない?」
セレナ「そうかしら?」
サナ「うん。大丈夫、大丈夫」
セレナ「そう言われると心強いわね」
サナ「セクハラしないで気長に待とうよ」
セレナ「うん。お隣さんの服とかパンツを盗んで嗅ぐ程度で我慢しておくわ」
サナ「それもアウトだよ」
(会計後)
セレナ「…今日でサナとの距離が縮まった気がするわ」
セレナ「胸の内を明かすと友情が深まるわね」
サナ「私は見えない溝が深まった気がする」
セレナ「サナ。照れなくていいのよ」
サナ「本心だよ」
セレナ「またまた」
サナ「これはタチが悪い」
セレナ「それじゃあ、私はお隣さんのところに行ってみるわ」
サナ「何するの?」
セレナ「振り向かせるための努力」
サナ「聞こえはいいんだけどね、嫌な予感しかしないよ」
サナ「具体的には何するの?」
セレナ「彼が見てない時にこっそりスカートをあげてパンツを露出させたり」
セレナ「彼の水筒にこっそり口をつけたりしようかと考えてるわ」
サナ「その見えない努力は報われる気がしないよ」
サナ「絶対に方向性が間違ってるよ。明後日の方向に向いてるよ」
セレナ「やらない努力より、やる努力よ」
サナ「ドヤ顔で言われても困るって」
(空を飛ぶ後)
サナ「今日も特訓してるんだ? 精が出るねー、カルムー」
カルム「おー、セレナとサナじゃん」
セレナ「こんにちは。お隣さん」
カルム「おっす。バトルの相手でもしにしてくれたのか?」
サナ「ううん。さっきまで2人でお茶してて、たまたま、通りかかったから来てみたの。邪魔だった?」
カルム「気にしないって。暇ならバトル相手にでもなってくれよ」
サナ「今日はそんな気分じゃないからヤダよ」
カルム「セレナは?」
セレナ「そうね。考えとくわ」
カルム「それ、結局やらないやつじゃん」
セレナ「(お隣さんと)ヤるのはいつでもOKよ」(ボソッ)
カルム「なんか言った?」
サナ「ううん。空耳じゃない?」
セレナ「サナも結局付いてきたのね。ありがとう」(小声)
サナ「(何するか)心配だからね」(小声)
セレナ「安心してバレないようにするから」(小声)
サナ「お願いだから何もしないで。安心感ゼロだよ」(小声)
(木陰)
セレナ「お隣さんが自主練してる間に作戦を立てましょうか」
サナ「作戦?」
セレナ「どうしたらお隣さんは私に興奮してくれるのか作戦」
サナ「待とうって言ったじゃん」
セレナ「さっき彼に近づいて、汗の臭いを嗅いだら我慢できなくなっちゃった」
サナ「我慢しようよ」
セレナ「うずいちゃった」
サナ「真顔で淡々と言わないで」
サナ「冗談なのか本心なのかわからなくて困るよ」
セレナ「本心よ」
サナ「それを聞いてがっかりだよ」
セレナ「お隣さんに飛びついて、日差しの下で汗をかきながらまぐわりたい」
サナ「妙に生々しい話はやめて」
サナ「仮にそうなったとしたら全力で止めに行くからね」
セレナ「…やきもち?」
サナ「蹴るよ?」
セレナ「これは冗談よ」
(しばらくして)
セレナ「セレナの抜き打ちチェックタイム~。ぱちぱちぱち…」
セレナ「このコーナーでは、お隣さんがいかがわしいものをカバンに詰めてないかを私がチェックしていくよ~」
サナ「そのお昼のワイドショーみたいなノリ、結構好きよ」
セレナ「でしょ、でしょ?」
サナ「変態行為がないなら、あたしもちょっと中は見てみたいからね」
セレナ「サナも仲間ね」
サナ「セレナと一緒のカテゴリに分類されるのはノーサンキューだよ」
セレナ「では、開けていきましょう」
じっ…ガサゴソ…
セレナ「おっと、これは何でしょうか…」
サナ「なになに?」
セレナ「どうやら紙のようですが…はて、これの正体は…」
セレナ「…」
サナ「わお」
『好きです。付き合ってください。ミニスカートより』
サナ「まごうことなきラブレターだね。いまどき珍しい恋文だね」
セレナ「…」
サナ「露骨にショック受けてるね。顔が真っ青で震えてるし」
(少しして)
セレナ「そろそろ作戦会議を再開しましょうか」
サナ「切り替え早いね」
セレナ「うん。泣いてても仕方がないからね」
サナ「素晴らしい心がけだね。ほら、ハンカチどうぞ。目の周り真っ赤だし」
セレナ「ありがとう」
サナ「うん」
セレナ「で、どうしたらお隣さんと結婚できるのかしら」
サナ「何言ってんの?」
セレナ「ご両親に挨拶を先に済ませてみるのもいいかもしれないわね」
セレナ「それがダメなら既成事実を作ろうかしら。妊娠を偽装したり、乱暴されたことを工作したりして、無理矢理結婚に繋げるのがいいかもしれないわね」
サナ「落ち着いて」
セレナ「私は冷静そのものよ」
サナ「子供でもわかる嘘つかないの。バレバレだよ」
セレナ「だってさ、まずくない? 先越されちゃったかもだよ?」
セレナ「何コレ、焦るんだけど」
サナ「セレナって焦るんだね」
セレナ「そりゃね。泣いちゃうくらい焦ってるよ」
サナ「ところでさ、さっきからカルムのカバンに?ずりしてるのはなんで?」
セレナ「急にお隣さん成分が恋しくなったから、抱いて顔をうずめてスリスリしてエネルギー補給してるの」
サナ「エコなエネルギー補給方法ですこと」
セレナ「ついでに私の匂いをこすりつけてアピールしてるの」
サナ「動物のマーキングみたい」
セレナ「細かい努力よ」
セレナ「お隣さん。ラブレターに返事したのかしら?」
サナ「さあ」
セレナ「もし、Yesなんて言ってたら、私、とんでもないことをしそうだわ」
サナ「とんでもないこと?」
セレナ「例えば、ミニスカートちゃんを拉致して、女の子しか好きになれなくなるように調教…もとい勉強させるとか」
サナ「それは怖い」
セレナ「お隣さんに群がる子はみんなレズになってしまえばいいのよ」
サナ「もしかして、今までもそんなことしてきたの?」
セレナ「ふふっ」
サナ「そんな楽しい思い出を思い出したみたいな笑顔を見せないでよ。眩しすぎて怖いよ」
サナ「もし、あたしがカルムのこと好きって言ったらどうするの?」
セレナ「好きなの?」
サナ「全然」
サナ「仮によ。仮に」
セレナ「そうね…」
セレナ「…」
サナ「…セレナ?」
セレナ「何?」
サナ「何であたしの太ももスリスリ手で撫で始めてるの? 気持ち悪いし、怖いんだけど」
セレナ「怖くないわよ?」
サナ「いや、あたしが怖いんだっつーの」
セレナ「あら、私から離れるのね」
サナ「なんか殺気を感じるからね」
セレナ「ごめんね。何だか『出る杭は打て』って言葉が心の中で反芻されてるの」
セレナ「…万が一のことがあるしね。サナにも勉強してもらおうかしら?」
サナ「やめて」
セレナ「冗談よ。こっちいらっしゃい」
サナ「嫌。なんかもう嫌」
サナ「てゆうかさ、万が一を突き詰めると世界中の女の子に勉強させることになるよね。その考えでいくと」
セレナ「大丈夫。何年かかろうと成し遂げてみせるわ」
サナ「目的が変わってるよね、それ」
(しばらくして)
カルム「はぁ…疲れた」
サナ「お疲れ様。今日の特訓はもう終わり?」
カルム「ああ。明日、シャラシティの小さな大会に出るから、身体も休めないとな」
サナ「相変わらずストイックだね」
セレナ「だねーーーそうだ。お隣さん、タオルあるわよ。よかったら使う?」
サナ「(…それ。さっき散々、自分の顔をうずめてたやつだよね)」
カルム「ああ、いいよ。自分のあるし」
セレナ「チッ」
カルム「ん?」
セレナ「何でもないわ」
カルム「それじゃあ。そろそろ、俺は行くわ。お前らも気をつけて帰れよ」
セレナ「ええ。それじゃあね」
サナ「あ、そうだ。カルムに聞きたいんだけどさ」
カルム「何?」
サナ「さっき鞄から変な紙、はみ出てたけど、あれ、何なの?」
セレナ「…え? それ聞く?」(小声)
サナ「聞く」(小声)
カルム「…見たの?」
サナ「ごめん、ばっちり見ちゃった。熱いラブレターだったね」
カルム「うわぁ…見られたか…」
セレナ「ご、ごめんね」
カルム「気にすんなよ。ちゃんとしまっておかなかった俺が悪いんだし」
セレナ「心がズキズキ痛むわ」(小声)
サナ「セレナがカバンを漁ったわけだしね」(小声)
サナ「で、返事はしたの? てゆうか、付き合うの?」
カルム「サナはずけずけと踏み込んでくるなぁ」
サナ「いいじゃん。教えてよ」
セレナ「うん。聞きたい」
セレナ「ただし、返事次第じゃ覚悟しておきなさいよ…!」(小声)
サナ「その荒ぶる気みたいなの静めて」(小声)
カルム「返事はもうした」
サナ「で?」
セレナ「…」
カルム「断ったよ」
セレナ「…!」
サナ「だって。よかったね、セレナ」(小声)
セレナ「まあ、そうね」(小声)
サナ「自分じゃ、平静を装ってるつもりかもしれないけど」(小声)
サナ「仏みたいな顔になってるよ。慈愛に満ちた笑みがこぼれてるよ」(小声)
セレナ「超嬉しい」(小声)
サナ「カルムがモテることなんて珍しいのに、えらくあっさりだね」
カルム「るせーよ」
サナ「理由は?」
カルム「いや、今は欲しくもないかな~って」
カルム「そんな深くは考えなかったけど、『いいな』とは思わなかったんだよね」
サナ「ふうん。要するに女には興味がないと」
サナ「転じて、男好きだと?」
カルム「おいコラ、さりげなくホモに分類するんじゃねーよ」
サナ「違うの?」
カルム「断じて違う」
セレナ「じゃあ、どんな女の子が好きなの?」
サナ「お、いい質問だ」(小声)
カルム「巨乳の子かな」
サナ「うわぁ…」
カルム「引くなよ」
サナ「ここで引かずして、いつ引くのよ。今がその時だよ」
セレナ「き、巨乳…」
サナ「激しく動揺してるね」(小声)
セレナ「わ、私、巨乳じゃない…」(小声)
サナ「小さくはないけどね。確かに巨乳ではないね」(小声)
セレナ「…でも、サナよりは希望はあるかな」(小声)
サナ「ほーう、要するに喧嘩売ってるわけね?」(小声)
サナ「その哀れむような視線はやめなさい。チラ見もやめなさい」(小声)
カルム「もう、いいだろ。じゃあ、帰るよ」
サナ「うん。気をつけてね。巨乳好きのカルム」
セレナ「巨乳好きのお隣さん、バイバイ」
カルム「次に会うときはそのネタやめて」
サナ「保証しかねます」
セレナ「どうかしら」
カルム「おい」
サナ「あはは、冗談だって」
(少しして)
サナ「とりあえず、付き合ってる人もいなかったっぽいし、よかったんじゃない?」
セレナ「そうね」
サナ「セクハラもしなかったし安心したよ」
セレナ「そう見える?」
サナ「ん?」
セレナ「知ってるでしょ? 有言実行が私の座右の銘よ」
サナ「初耳だよ」
セレナ「初めて言ったもの」
サナ「でしょうね」
セレナ「お隣さんのカバンの中にこっそり仕掛けをしておいたわ」
サナ「何を仕込んだのよ…」
セレナ「ふふふ。後でお隣さんに聞いてみて」
サナ「うわー。カルム可哀想」
セレナ「よし、じゃあ今日は解散しましょう」
サナ「そだね」
セレナ「今日からバストアップ運動しなきゃだしね」
サナ「するんだ?」
セレナ「うん。サナも一緒にしない?」
サナ「…変なことをしないなら、前向きに検討しとくよ」
(しばらくして)
カルム「はあ。疲れたなぁ…」
カルム「そうだ。カバンの中、整理しとかなきゃ…」
ガサゴソ…ガサゴソ…バサッ!
カルム「ん? なんだこれ?」
『雑誌 貧乳大特集』
カルム「…」
パラパラパラ…
カルム「…」
カルム「…悪くないな」
終わり
以上ですお読みいただきありがとうございました
メモ帳に残ってたポケモンSSのひとつです
変態成分がちょっぴり多めですが結構気に入ってます
翌日、貧乳特集でサナに目覚めたお隣さんの姿が!
面白かった
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