【モバマス】《日常と三毛猫》 (30)

【前川みく】

前川みくは遅刻した。

だが、彼女は幸せな気分だった。

朝から猫と遊べたからだ。

彼女がその猫を見つけたのは学校に向かう途中のことだった。

前川みくはいつも通りの時間に寮を出た。

彼女は空き地のそばを通りかかった。

まんじゅうのように丸まっている猫を見つけた。

猫は三毛猫だった。

ずんぐりむっくりしていた。

猫は放置されたコンクリートブロックの上で寝ていた。

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前川みくはカバンから猫じゃらしを取り出して、近づいた。

三毛猫は目を開けた。

じっと猫じゃらしを見つめた。

トコトコ近づいてきた。

そして嬉しそうにじゃれた。

前川みくの表情は緩んだ。

夢中になった。

しばらく遊んでしまった。

2本電車に乗り遅れた。

「前川が遅刻なんて珍しいな」

担任の教師は微笑んだ。

前川みくは申し訳なさそうに頭を下げた。

だが後悔はしてなかった。

猫と過ごした時間は楽しかったからだ。

猫の写真も撮った。

あとでPチャンに話をしよう。

あとでPチャンに写真も見せてやろう。

そう考えてまた心が弾んだ。

前川みくがいなくなったあと、三毛猫はあくびをした。

眠気が覚めてしまった。

三毛猫はゆっくりと歩き始めた。

【島村卯月】

島村卯月は困っていた。

自分のバックの上に猫が乗っていたからだ。

彼女は公園で渋谷凛と待ち合わせをしていた。

早く来すぎていた。

トイレに行っておこうと1度その場を離れた。

持っていたバックをうっかり置いたままにしてしまった。

幸いにも盗まれることはなかった。

だが珍客が現れた。

ふてぶてしい表情の三毛猫だ。

三毛猫は島村卯月のバックの上で身体を丸めていた。

気持ちよさそうに目を閉じていた。

それで島村卯月は困った。

スマートフォンのカメラを起動させた。

写真を撮った。

改めてどうすべきか悩んだ。

「猫さん。すみません。それは私のバックなんです……」

彼女は控えめに猫のひたいを突っついた。

三毛猫はうっとおしそうに目を開けた。

島村卯月をいちべつするとまた目を閉じた。

彼女は狼狽した。

「……気持ちよさそうに寝てますし。起こすのはしのびないですね」

島村卯月はバックの隣に腰を下ろした。

尻の部分が汚れないようにハンカチを引いた。

そして猫を間近で見た。

思わず笑みがこぼれた。

人差し指で猫の頭を撫でた。

毛並みは整っていた。

ツヤツヤしていた。

三毛猫はうなった。

不機嫌そうな声だった。

島村卯月はだらしなく表情が緩んだ。

まもなく渋谷凛がやってきた。

渋谷凛も表情を緩めた。

彼女は猫に反応したわけではなかった。

「卯月。何にやけてるの?」

渋谷凛は苦笑した。

島村卯月は喜んだ。

この出来事を話したくて仕方がなかった。

「あのですね。凛ちゃん♪」

2人が話している間に三毛猫はカバンから飛び降りた。移動した。

三毛猫はうるさい場所があまり好きではなかった。

【塩見周子】

塩見周子は事務所近くのベンチに座っていた。

レッスンの合間、休憩時間だった。

彼女は冷たい紅茶を飲んでいた。

コンビニで買った無糖のものだ。

飲み干すとペットボトルの飲み口を唇で覆うようにして咥えた。

そのまま上を向いた。

「んー」と喉から音を発した。

音が反響して、ペットボトルが震動した。

唇に震動が伝わって心地よかった。

両親やプロデューサーが見たら「だらしない」と指摘されるに違いなかった。

頭を小突かれること想像して口元が緩んだ。

口からペットボトルが落ちた。

やってしまった、とペットボトルを拾おうとしてしゃがみこんだ。

三毛猫を見つけた。

塩見周子は「お」と声を漏らした。

周囲に目をやった。

ネコジャラシは生えていなかった。

残念だと思った。

猫は気まぐれだ。

そしてこちらから関わろうとするとすぐ逃げる。

経験からなんとなくわかっていた。

だから塩見周子はベンチに戻った。

少し離れたところから三毛猫を眺めた。

日陰で丸くなっていた。

三毛猫は塩見周子のことを見ていた。

いい毛並みだなぁとぼんやり思った。

5分後、猫はのっそりとした動作で歩き始めた。

塩見周子の座っているベンチに向かってきた。

ヒョイと飛び乗った。

隣で丸くなった。

塩見周子はむふふと笑った。

手を伸ばしてあごを撫でた。

猫は憮然とした表情で目を閉じていた。

「撫でてんだから喉くらい鳴らさんかーい」

彼女は優しい手つきで三毛猫を撫でていた。

レッスン再開の時間になると立ち上がった。

三毛猫がちらりとこちらを見てきた。

「じゃあね」

塩見周子は小さく手を振ってその場を離れた。

柚っ!!

【喜多見柚】

喜多見柚は下校中に猫を見つけた。

友達と別の道で別れて、彼女は1人だった。

退屈していた。

喜多見柚はご機嫌になった。

三毛猫は少し太っていた。

三毛猫は威風堂々した様子で道を歩いていた。

のしのししていた。

喜多見柚は猫の後を追いかけた。

三毛猫は喜多見柚の存在に気づいた。

振り向いてじっと見た。

逃げ出すかなと喜多見柚は思った。

だが、三毛猫はまるで意に介さなかった。

ふんと鼻を鳴らしてまた歩き始めた。

喜多見柚はフンフン鼻歌を歌いながら後を付いていった。

三毛猫は塀の前で立ち止まった。

塀は1メートルほどの高さだった。

三毛猫はじっと上を見つめた。

「おや? 上に乗りたいのカナ?」

三毛猫はやや太っていた。

身軽そうには見えない。

喜多見柚は猫の隣にしゃがみこんだ。

三毛猫の頭をわしわし撫でた。

猫は不機嫌そうに目を細めた。

だが、塀の方から目を切らなかった。

喜多見柚は恐る恐る三毛猫を抱き抱えた。

三毛猫はされるがままだった。

だらんとしていた。

彼女は猫を塀の上に乗せてみた。

手を離すと三毛猫は塀の上を歩き始めた。

「ン? 乗りたかったの? 乗りたくなかったの?」

喜多見柚は首をひねった。

三毛猫はどちらでもよかったとでもいうように歩き始めた。

途中、民家と民家の間の狭い隙間に入って行ってしまった。

喜多見柚は猫を見送った。

今日もいいことあったなと得した気分になった。

【高森藍子】

高森藍子は可愛らしい被写体を見つけた。

ころころした体型の三毛猫だった。

猫は事務所の非常階段の前で日向ぼっこをしていた。

高森藍子はそっと近づいた。

シャッターを切った。

カシャ、カシャと小さな音が鳴った。

指先に小さな震動が伝わった。

三毛猫はじっと彼女の方を見た。

高森藍子は微笑んだ。

三毛猫はむすっとした。

高森藍子は相好を崩した。

三毛猫はあくびをした。

高森藍子は悩んだ。

悩んだ末にそっと手を伸ばしてみた。

三毛猫の耳の裏側を触った。

毛が伸びてフサフサしていた。

猫は嫌がらなかった。

とても触り心地が良かった。

高森藍子は幸せな気持ちになった。

しばらく猫と戯れていた。

「おや、藍子ちゃん。何をしてるんですか? ずいぶん嬉しそうな顔をしていますが」

高森藍子は日野茜に声をかけられた。

「茜ちゃん。あのですねーーー」

高森藍子は猫を紹介しようとした。

しかし、猫はほんの一瞬目を離した隙に立ち去っていた。

ちょっと残念だった。

「そこに三毛猫ちゃんがいたんですよ」

彼女は日野茜に写真を見せた。

日野茜も笑顔になった。

「丸々としていて美味しそうですね!」

「茜ちゃんは猫を食べるの?」

「い、いえっ! ただの比喩ですよ!?」

「知ってます♪」

2人は笑った。

【一ノ瀬志希】

一ノ瀬志希は健康そうな三毛猫を見つけた。

彼女は喜んだ。

ちょうど新薬が出来たところだった。

先ほどプロデューサーに飲ませてあった。

だから生物の体調に影響を及ぼすものではないとわかっていた。

一ノ瀬志希は「おいでー♪」と手招きした。

手のひらにおやつカルパスを乗せた。

餌付けしようとした。

カルパスには副作用のない睡眠薬を練りこんであった。

だが、三毛猫は警戒していた。

一ノ瀬志希が痺れを切らして近づこうとすると逃げ出した。

残念だと思った。

彼女は三毛猫との別れをとても惜しんだ。

【二宮飛鳥】

二宮飛鳥は自動販売機でコーヒーを買った。

甘めのコーヒーだ。

ベンチに腰掛けて飲んでいると三毛猫を見つけた。

彼女は周りを見渡した。

誰もいなかった。

彼女は缶を置いた。

そっと近づいて猫を抱きしめた。

三毛猫はゴロゴロと喉を鳴らした。

二宮飛鳥は自分の顔を猫のお腹に埋めた。

猫の体温は人間よりも高い。

ぬくぬくとしていた。

ほのかに獣臭さを感じた。

だが、毛は柔らかかった。

「に゛ぇー……」

三毛猫は変な声を出した。

二宮飛鳥は笑顔になった。

このロンリーキャットを飼ってしまおうかと悩んだ。

1匹狼同士気が合うだろうと確信した。

肉球をぷにぷに触りながら悩んだ。

二宮飛鳥は1度、猫を下ろした。

腕を組んで再考した。

唸っていると肩に手を置かれた。

「何してるんだ。飛鳥?」

プロデューサーに声をかけられると飛鳥は固まった。

「生物学的な興味があっただけなんだ」

二宮飛鳥は誤魔化した。

「いきなり何の話だ?」

「キミはどこから見ていたんだい?」

「いま来たばかりだけど」

「そうか」

二宮飛鳥は安心した。

三毛猫はすでにその場を去っていた。

二宮飛鳥が猫を愛でている現場を、宮本フレデリカは目撃していた。

宮本フレデリカはニッコリと笑顔を浮かべた。

【高垣楓】

高垣楓はオープンカフェにいた。

新田美波とお茶をしていた。

高垣楓の膝の上に三毛猫は乗っていた。

いびきをかいて寝ていた。

高垣楓は猫の背中を指先で撫でた。

ゴツゴツした背骨の形がわかった。

「ねぇ。この猫ちゃん可愛いです。なんて♪」

高垣楓は嬉しそうに呟いた。

新田美波は微笑んだ。

この人は昼から飲んでいるのかもしれないと疑った。

高垣楓は酔っていなかった。

平常運転だ。

「美波ちゃんも。抱いてみる?」

「気持ちよく寝ている猫ちゃんに悪いので。そっとしておいてあげましょう」

「そうですね……では、もうしばらく話していきましょうか。店員さん。お茶のおかわりをお願いします♪」

2人は帰るところだった。

だが、30分だけ時間を延ばした。

高垣楓が席を立つと、猫は礼も言わずに立ち去った。

【プロデューサー】

夜になるとプロデューサーは玄関のドアに向かった。

下の方に取り付けられた小さな扉の鍵を開けた。

猫用の出入り口だった。

ご飯を食べていると三毛猫は帰ってきた。

飼っている愛猫だ。

プロデューサーは満腹でベッドに倒れこんだ。

三毛猫はベッドに飛び乗ってきた。

腹の上で丸くなった。

プロデューサーは猫を撫でた。

行儀のいい三毛猫だった。

愛想もよかった。

プロデューサーによく甘えてきた。

最近、「ふてぶてしい三毛猫」の話が事務所でよく挙がった。

うちの猫とは大違いだとプロデューサーは思った。

三毛猫はプロデューサーにだけ懐いていた。

顔に近づくと?を舐めた。

しばらくするとスヤスヤと眠り始めた。

終わり

以上です。お読みいただきありがとうございました
我が家のふてぶてしい愛犬を撫でながら思いついた話です。猫は飼っていません。そして私は猫アレルギーです。眺めているのは好きなんですけどね

まーた「?」が?になってますね……
そぉりぃ……

ほお、です
ほっぺたです

ほほ


ならうまくいくのかな?

あ、できました
すみません。連投を

今後「ほお」ではなく「ほほ」でいきます

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