【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【十一輪目】 (1000)
このスレは安価で
久遠天乃は勇者である
結城友奈は勇者である
鷲尾須美は勇者である
乃木若葉は勇者である
久遠陽乃は……である?
を遊ぶゲーム形式なスレです
目的
・戦わない
安価
・コンマと選択肢を組み合わせた選択肢制
・選択肢に関しては、単発・連取(選択肢安価を2連続)は禁止
・投下開始から30分ほどは単発云々は気にせず進行
・判定に関しては、常に単発云々は気にしない
・イベント判定の場合は、当たったキャラからの交流
・交流キャラを選択した場合は、自分からの交流となります
日数
一ヶ月=2週間で進めていきます
【平日5日、休日2日の週7日】×2
能力
HP MP SP 防御 素早 射撃 格闘 回避 命中
この9個の能力でステータスを設定
HP:体力。0になると死亡(鷲尾、乃木) 友奈世代のHP最低値は基本10
MP:満開するために必要なポイント。HP以外のステータスが倍になる
防御:防御力。攻撃を受けた際の被ダメージ計算に用いる
素早:素早さ。行動優先順位に用いる
射撃:射撃技量。射撃技のダメージ底上げ
格闘:格闘技量。格闘技のダメージ底上げ
回避:回避力。回避力計算に用いる
命中:命中率。技の命中精度に用いる
※HPに関しては鷲尾ストーリーでは0=死になります
戦闘の計算
格闘ダメージ:格闘技量+技威力+コンマ-相手の防御力
射撃ダメージ:射撃技量+技威力+コンマ-相手の防御力
回避率:自分の回避-相手の命中。相手の命中率を回避が超えていれば回避率75%
命中率:自分の命中-相手の回避。相手の回避率を命中が超えていれば命中率100%
wiki→【http://www46.atwiki.jp/anka_yuyuyu/】 不定期更新 ※前周はこちらに
前スレ
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立て乙
天乃「あ、貴女って人は……」
沙織「あたしがこういう人だって、久遠さんは良く分かってるはずだよ」
左手を天乃の頬に宛がって、右手を左肩へと滑らせて
沙織は微笑を含めながら囁きかける
沙織「少し意地悪だって……特に、こういうことに関しては」
天乃「…………」
確かに天乃は沙織の性格を良く分かっている
時折悪戯を含めてくること
その悪戯がとても意地悪なこともあること
自分優位な立場が確定しているときは、尚更
それでも天乃は――
沙織「それでも、久遠さんはあたしに頼んだ」
するりと下って行った沙織の右手が天乃の左手を握る
一方的に、けれど。
天乃が振りほどく余地と、握り返す余裕をしっかりと与えて。
天乃「っ」
沙織「少し、意地悪されたいんじゃないのかな?」
沙織は耳元で囁く
逃れようとする天乃の頭を無理に抑え込まず、
染まっていく頬、泳ぐ視線
それらさえも行為における一つの醍醐味であると沙織は思っているから
天乃「そ、そんなことっ」
沙織「ない?」
天乃「な、ない……」
沙織「そっか」
赤い顔、視線を逸らした否定
それは一部嘘が紛れていると言っているようなものなのだが
この追い込まれている状況においては、そうとも言い切れない
だが、沙織にはそんなことはどうでも良かったのだ
天乃が嘘をついていようが、いまいが関係ない
沙織「じゃぁ……こっち向いて」
天乃「さお――んっ」
宛がった手に力を少しだけいれて天乃の顔を固定して、唇を重ねる
いつものように軽く、重ねるだけの弱弱しいキス
潤っていて柔さのある唇は重ねれば簡単に圧し潰すことが出来るのに
しっかりとした反発をする弾力と厚みがあって
天乃「っは……んんっ」
沙織「ん……」
何かをする暇も与えずに二度目のキス
同じく弱く、同じく軽く
一方的に握るだけだった右手に少しずつ、何かが絡もうとする
沙織「こんな軽いキスだけで満足?」
天乃「え……?」
沙織「ねぇ、久遠さん。あたしは久遠さんがしたい事ならどこまでだってしても良いんだよ?」
どこまでだって、なんだって
沙織のそんな言葉が心に沁みこむ
ドキドキと、高鳴る胸が痛みを覚える
天乃「さ、沙織……っ」
一人でしているところを見られたことは分かっているし
それはどうしようもなかったことなのだから批判するつもりはない
しかし、恥ずかしさがこみあげてくる
唇に触れてくれるものがなくて寂しかった。切なかった
どうしようもなくて、自分の指を咥えていた
それでも全然……その場しのぎにも至らなかった
天乃「んっ」
ごくりと、喉が鳴る
答えない合間も触れてくる沙織の唇
それをもっと深く、もっと強く
受け入れてしまえば……良いのにと、疼く
唇がふれあうたびに体の熱は増して、
下腹部の疼きはより強くなっていく
行為をしているのに、まったく解消されてはくれない
それは焼け石に水のような、ささやかな行いだけ……だから?
天乃「さ、おり」
沙織「ん?」
天乃「っ」
意地悪しないで。
そう言えば十分だろうか?
いや、きっと沙織はこう言うのだろう
何が意地悪なのか。と
体の疼き、その意味とその理由
それがどうすれば解消されてくれるのか
そこまでの全てを分かっているはずなのに
沙織はそんな意地悪なことを、言うのだ
沙織「なぁに?」
天乃「ぅ……」
動こうとした唇が震える
恥ずかしい、言いたいけれど言いたくない
沙織は受け止めてくれる。言わなくても分かっているから
それが分かっていても、どうしようもなく心拍数は跳ね上がる
沙織「仕方ないね」
天乃「――んっ!」
沙織「んっ……っ、は……」
不意打ちに唇を重ねた沙織は少しだけ離れて笑みを浮かべると、
唇ではなく、天乃の首筋にキスをする
天乃「ひゃっ」
キスというよりは咥えるような、吸い付くような感覚で
ほんのりと汗ばんだ味のする首に唇を滑らせて、味見をしてから
すーっと舌を這わせて
天乃「やっ、ちょっ……んっ」
沙織「んー」
普段誰かにキスをされるようなことなんてない所
不慣れな感覚は天乃の体を混乱させて
少しずつ、何度も塗り重ねていくように、ざらりとした感覚が首を滑っていくむず痒さに、
天乃は少しだけ抵抗の意思を示そうと、沙織の方に手を宛がう
けれども、押しのけるほどの力は出なかった
沙織「どうしたの? や?」
天乃「く、くすぐったい……」
沙織「大丈夫、すぐに気持ち良く慣れるよ」
そう答えた沙織はまた、天乃の首筋に舌を触れさせて
天乃「やんっ!」
天乃は思わず声を上げる
完全に沙織のものとなってしまったかのようにぬるりとしていた首が空気に触れることで、
ほんの少しだけ、感覚が鋭敏になったのかもしれない
そこに重なる何かが来ると分かっていても
その覚悟を押しのけてしまいそうな、沙織の力強さと妙な優しさ
天乃「んっ、っ……」
くすぐったいのに、むずむずするのに心地良いと思ってしまう
押さえ込んだ声が小さく零れる。体の熱が高まっていく
淫らさが、増していく
天乃「っは……はっ」
沙織「まだ首だけだよ」
そこから顔を上げた沙織はわざとらしく覗かせた舌をちろりと揺らし
天乃を責めるような声色で囁く
沙織はわざと耳元で言うのだ
ほんの少し熱気の感じる、誘うような声で
ゾクリとさせることがある、ドキリとさせることがある、沙織の声
沙織「なのに……そんなエッチな声、しちゃって」
それは天乃の羞恥心を強く震わせるには十分な妖艶さを持ち合わせていた
天乃「だって……」
沙織「気持ちがいい?」
天乃「っ……」
沙織「…………」
問いかけに対して口ごもる天乃の逸らした瞳、紅潮した肌
並以上に早くなっている呼吸の上下
焦らすように見渡した沙織はうすく、笑みを浮かべて
沙織「良いよ。そのままでも」
天乃「え――んっ!」
ぱくりと首筋を咥え込み、
わざとらしくジュるジュると音を立てながら吸い上げていく
天乃「っ、く……んっ」
吸っているんだよ。と
吸われているんだよ。と
それを体と心にしみこませていくようにして――離れる
舌先から首元へと唾液を伝い落としながら、
沙織は天乃へと笑みを浮かべてみせる
沙織「普段は唇のキスから入っていくけど……こういう入り方もあるって言うことを教えてあげる」
天乃「ぅ」
沙織「おっと」
首元に触れようとした天乃の手を慌てて掴み取って
ダメだよーと、優しく言いつつ首を振る
濡れたせいでスースーとするのだろう
殺気まで這わせていた舌、吸い上げていた唇
その残留感が気になってしまうのだろう
だけど、触れられたらそれは壊れてしまう
だから、とめるのだ
沙織「久遠さんの全身……あたしが同じようにしてあげる」
天乃「ちょ、と、待って沙織。それはっ」
沙織「あたし達を呼ばないで一人エッチに縋ろうとする悪い子は……もう二度と、出来ない体にしてあげる」
天乃「縋ったわけじゃ、ない、からっ……ただ、なんか、体が、それでっ」
沙織が相手だから
結局は優しくしてくれるから
そんな頭は働いているのに、言葉は変に途切れてしまう
沙織「そんな風に焦ってる久遠さんも可愛いよ」
天乃「待って、お願い沙織私は別に満足なんて――」
沙織「出来なかったよね。知ってる」
天乃の言葉を途中で遮りながら返した沙織は、
冷や汗の浮かぶ天乃の頬の横、耳元に口を近づけて
沙織「だけど……さ」
こそばゆく囁く。
互いの呼吸が合わさると、胸と胸が触れ合って
ほんの少しだけ潰しあう
微かに感じる熱、聞こえないけれど感じる動悸
それさえも、沙織は愉しんで
沙織「見せられたあたし達だって。凄くエッチな気分になっちゃったんだ」
天乃「そ、れは……」
沙織「責任とって、貰わなきゃね」
キスをするかのような位置にまで近付きながら、キスはせず
悪戯に微笑みを向けて、天乃の腹部を服の上から撫でて裾から捲り上げていく
天乃「や……お願い、優しく……」
ぎゅっと目を瞑る天乃の仕草がまた、一段と愛らしくて
けれどもふつふつと湧き出す罪悪感に沙織は眉を潜めて、息をつく
沙織「するから安心してよ。好きな人だもん、本当に酷いことはしないって」
天乃が初心だからこそ、まだまだ純粋だからこそ
まだ自分がやりたいような行為―プレイ―はできないだろうなぁ。と
半ばやりかけていた計画を改めることにして
けれど、それはそれで、沙織は喜ばしく思う
天乃とこういうことが出来ること、それだけで十分満たされていたからだ
では、ここまでとさせていただきます
明日は出来ればお昼頃から
再開時1日のまとめ
園子「ここから先はプレミアム会員様限定となってまーす」
杏「払います!」
ひなた「大社宛に請求しておいてください」
園子「キャッシュのみの対応だよ~」
杏「そ、そんな……!」
夏凜「いや、まずあんた誰よ……」
乙
俺もプレミアム入りたい
乙
Wikiに…!続きはwikiに来ると信じたい…!
乙
さおりんキスだけでこのエロさとは…本番どんだけヤバいのか
そういや今作は日数的に恒例の夏合宿イベントはないのかな?
さおりんも大分前に許嫁にまた会うとか言ってたし
では、少しずつ
1日のまとめ
・ 乃木園子:交流無()
・ 犬吠埼風:交流無()
・ 犬吠埼樹:交流無()
・ 結城友奈:交流無()
・ 東郷美森:交流無()
・ 三好夏凜:交流無()
・ 乃木若葉:交流有(巫女の話について、ごめん)
・ 土居球子:交流無()
・ 白鳥歌野:交流無()
・ 藤森水都:交流無()
・ 郡千景:交流無()
・ 伊集院沙織:交流有(えっちなこと)
・ 神樹:交流無()
8月11日目 終了時点
乃木園子との絆 54(高い)
犬吠埼風との絆 70(かなり高い)
犬吠埼樹との絆 56(とても高い)
結城友奈との絆 76(かなり高い)
東郷美森との絆 80(かなり高い)
三好夏凜との絆 99(かなり高い)
乃木若葉との絆 72(かなり高い)
土居球子との絆 31(中々良い)
白鳥歌野との絆 29(中々良い)
藤森水都との絆 21(中々良い)
郡千景との絆 22(中々良い)
沙織との絆 81(かなり高い)
九尾との絆 52(高い)
神樹との絆 9(低い)
汚染度???%
√ 8月12日目 朝(特別病棟) ※金曜日
01~10
11~20 大赦
21~30
31~40
41~50 沙織
61~70 樹海化
71~80 夏凜
81~90
91~00 九尾
↓1のコンマ
あ
√ 8月12日目 朝(特別病棟) ※金曜日
天乃「金曜日……でも、お昼が少し近いのね」
端末が手に入り、自分の体内時計にすべてを委ねる必要が無くなって
天乃は朝起きてからすぐに精神的に病んでしまうような思いはしなくなった
その解放された気分に小さく息をついて、
昨夜の気怠さがまだ少しだけ残る体を感じ、首元に手を宛がう
舐めまわされ、触れられ続けた体は一晩休んでだいぶ落ち着いたと言えば落ち着いてはいるが
まだ少し、思考に割り込みやすくて
天乃「しっ……しないしないっ」
一人で触れてしまいそうな手を抑え込んで首を振る
やはり、少し淫らな子になってしまったのではないかと、天乃は思う
天乃「ん……あれ?」
時間を見ていた天乃はふと、声を漏らす
天乃「今日が金曜日で……っていうことは、明日夏祭り?」
沙織がまた男の子と会う日
今度は……何もできない
天乃「それどころか、私……夏凜達と夏祭りいけないのよね……」
嫌な事ばかりだった
天乃「…………」
端末が手に入って
皆に連絡を取ったりすることは出来るようになったけれど
それ以外のことは、出来ないのだ
心配だからと会うことも
何かをしたいからと出かけることも、何も
天乃「…………」
改めて考えれば、不自由で
天乃は気落ちしてしまいそうな自分を戒めるように唇を噛む
1、精霊組
2、勇者組
3、端末関係
↓2
3
3
1、勇者部HP
2、ネット掲示板
3、エッチな動画
4、エッチな方のネット掲示板
5、大赦にクラスメイトを装って電話
↓2
1
2
天乃「んー……」
勇者部のHPにいって、依頼で何かすることも考えた天乃だったが
勇者部の活動をまじめにやっているみんなの邪魔になるのは……と
その悪戯心を抑え込んで、ブラウザを開く
天乃はあまりこういうことはやらないが、話に聞いた事くらいはある
ネット掲示板
嘘と真実が住みついているその空間では、
本当に相手を傷つける暴力的な言葉こそ扱われることはないが
ほんの些細な嘘や、言葉などが所々に見られる
沙織曰く「久遠さん見たな純粋な子は見るべきじゃないよー」らしい
とはいえ、
そう言われたら見たくなるものだし、興味は沸く
何よりも……暇だった
天乃「こうなってるのね」
色々なタイトルの掲示板……というよりはスレッドというものがあり
一覧を見れrば画面を埋め尽くしてしまいそうなほどに
沢山の交流の場があった
天乃「えっと……」
タイトルを見ていくと
放送中のアニメやドラマなどだったり、
有名人に対してだったり、お祭りなどの行事から、夏休みの内容
またはその課題についてなど、たくさんのスレッドが並んでいる
天乃「ん?」
とりわけ気になるのは………
1、この前勇者部とかいうボランティア部を見かけたんだけど……
2、スレッド作成
3、妹だけど愛さえあれば関係ないよね
4、勇者部部室前立寄所
5、大赦ってさ
6、神樹様ぁぁぁぁぁ、オラにヨメをくれぇぇぇぇぇ
↓2
ksk
5
天乃「これ……大赦について書かれてるのかしら」
恐らくは大赦も監視しているであろう掲示板で
堂々と大赦の名前を出しているスレッド
そこには何が書かれているんだろうと興味本位で開く
天乃「あー……うん?」
序盤から良く分からない事ばかりで
無関係な噂だったり、顔面偏差値だのなんだのと
天乃が興味がわくようなものは見られなかったけれど
最新のレスのあたりで、気になるようなものが見えた
――けれど
天乃「シスコン? ゲーム?」
またわけのわからない会話に流れていく
前に中学校で暴動が起きた。という言葉
それは間違いなく自分たちのことだと天乃は思う
流石にそこまで公になるような規模ではなかったはず。とは思っていたけれど
意外と広まっているのかもしれない
1、全て記入・その暴動の件、知ってるわ
2、名前記入・その暴動の件、知ってるわ
3、全て記入・その話詳しく聞かせて
4、名前記入・その話詳しく聞かせて
5、静観する
↓2
【http://i.imgur.com/xyXiVpN.png】
5
3
天乃「えっと……」
書き込みをする為の部分を探した天乃は、
名前欄、メール欄、本文というスペースを最下部に見つけて、選択
画面に出てきたキーパットを操作して、入力していく
天乃「全部入力した方が良いのよね?」
名前欄に久遠天乃と入力して、
メール欄には(省略可)とあるならと、@以降の書かなくてよさそうな所を省略して
端末のアドレスを入力する
天乃「一々書き込むときにこんなの打つなんて、面倒くさいことをするのね」
それでも、それが掲示板内で何かの保証にでもなるのだろうと、
天乃は特に考え込むことなく、詳しく話を聞かせて欲しい。と入力する
天乃「詳しく話が聞け……あ、あれ?」
恐らくは自分のことに関しての話題に切り替わったものの
天乃が聞きたいことに関しては触れて貰えず
むしろ、馬鹿にされているような文章が目立つ
そして……端末が震えた
天乃「メール? え、だれ?」
夏凜達ではない、知らない誰かからのメール
掲示板を更新してみれば、メールを送ってみるかと悪戯宣言が来ていて
天乃「きゃぁっ」
一気に10通程度、知らない誰かから、どこかから
慌ててどうしたら良いのかを書き込む
けれども……返って来たのは「もう遅いのでは?」という非情な返しだった
天乃「えっ、だって名前とかメールって」
少し進むと、これは違う、これも違うと言う返しが繋がって
すぐに省略した部分を追加したアドレスまでがスレッドに書かれて
天乃「なんで、意味わからない、またメールっ!」
続々とメールが届く
勇者部のサイトから引っ張ってきたであろう天乃の画像まで添付して
本人かどうか、とか
天乃「も、もうやだっ!」
一つを拒否しても二つ三つと送られてくるメールアドレスの種類は変化して
止まる気配がなかった
http://i.imgur.com/6gXaU5A.png
千景「ちょっと貸しなさい」
天乃「えっ、あっ」
不意に現れた千景は天乃から端末を奪い取ると
何かを軽く操作してから、どこかへと電話をかけて
千景「違うわ。兄さん。私よ」
少し……どころではなく不快感を滲ませた表情ながら
声色だけは普段の千景のままで。
恐らくはあの変態こと兄に電話をしているのだろうと
天乃は思いながら、目元を拭う
なにをするのか、どうするのか
全く分からないけれど
少なくとも天乃にはどうしようもなく、縋るしかなくて
千景「……お願い。兄さん」
天乃「千景……?」
千景「はぁ……」
少し話して電話を終えた千景は疲れ切った様子でため息をつくと
端末を天乃へと差し出す
千景「アドレスは変えたわ。スレの書き込みに関しては兄さんが何とかしてくれるはず」
天乃「ありがとう」
千景「馬鹿正直に名前もアドレスも晒すなんて」
天乃「だ、だって書き込みのところに書いてあったんだもん……」
千景「だもんじゃないわ。まったく」
天乃「ごめんなさい」
久遠さんドジっ子かわいい
千景「せめて他の人みたいに名前欄を名無しの――というものにするでしょう?」
天乃「うっ」
千景「ありえないわ」
天乃「っ……」
自分で失敗してしまったことだということも
千景が怒っているのは自分の為だということも
全部分かってはいるのだ
いるけれど……天乃は、耐えられなくて
ポロリと零れた涙が布団を濡らす
千景「えっ」
天乃「ご、めんなさい……別に、千景の……」
端末の震えが止まらなかった
送られてくるメールは捨てても捨てても増えて
拒否しても拒否しても増えて
もうどうしようもない。という返答が――恐ろしくて
天乃「うっ、ぅぅぅっ」
千景「あ、え、あ、えっと……だ、誰か」
天乃は思わず……泣き出してしまう
大赦に対して、バーテックスに対して
とても強い女の子であっても、そう言うことに関しては疎く、弱く
ただの純粋で、無垢な、女の子だった
√ 8月12日目 昼(特別病棟) ※金曜日
01~10
11~20 夏凜
21~30
31~40
41~50 オニイチャン
61~70
71~80 樹海化
81~90
91~00 大赦
↓1のコンマ
あ
あ
√ 8月12日目 昼(特別病棟) ※金曜日
千景「落ち着いた?」
天乃「ごめんね」
千景「……別に」
急に泣き出すとは思っていなかったし
まさか誰の助け舟も得られないとは思っていなかったが
傍にいるだけで落ち着いてくれたことに感謝しつつ
千景は無力感から目を背けるように呟いて、息をつく
天乃「千景がいてくれてよかったわ。若葉も……きっと私と同じだろうし」
千景「流石に貴女と同じはないと思うけれど」
天乃「うーっ」
千景「はいはい、もう言わないわ」
唸る天乃の頭をぽんぽんっと叩くように撫でて
千景は思わず、苦笑する
天乃と居ると少し疲れるが、その分何かと楽しい気分になれるからだ
千景「それじゃ、私は離れるから」
1、精霊組
2、勇者組
3、千景交流継続
4、イベント判定
↓2
4
4
√ 8月12日目 昼(特別病棟) ※金曜日
01~10 若葉
11~20 夏凜
21~30 友奈
31~40 東郷
41~50 変態
51~60 風
61~70 樹
71~80 大赦
81~90 沙織
91~00 樹海化
↓1のコンマ
ぞろ目、特殊
あ
若葉「大丈夫か?」
天乃「うん」
若葉「すまない、鍛錬に出ていてな」
千景が姿を消してから少しして姿を現した若葉は
不安そうな表情を浮かべながらも天乃に身を寄せて
苦笑交じりの小さな肯定に笑みを浮かべる
何があったのか、聞いた
しかし、自分がその場にいても何も出来なかっただろうな。と
若葉は過ぎたことだから
それは、あまりシリアスに持ち込んではいけないからと
冗談のように笑って、息をつく
若葉「しかし、大量のメールを送られて泣き出したとは、見たかったな」
天乃「むぅっ!」
若葉「ぬあっ!?」
脇腹をボコりと殴られ、思わず間の抜けた声を漏らした若葉は
すまんすまん。と、笑って天乃のちょっぴり怒った表情に笑みを見せる
天乃「そこはもう弄らないでっ」
若葉「ふふっ、怒った表情も愛らしい……なんて、言うとまるで沙織のようだ。止めておこう」
天乃「本気で怒るわよ?」
若葉「そんなに怒らないでくれ、すまなかった」
沙織に毒されたつもりはなかったが
若葉は本心でその怒りの表情を愛らしく思ってしまった
もちろん、天乃が本気で怒っておらず
ちょっとむくれた感じの、
所謂女の子っぽいというか、子供っぽい仕草が
なんとも、愛らしい……
若葉「いやいやいや!」
逸れていきそうな思考を拭おうと首を振り、「大丈夫?」と
心配までしてくれる天乃になお気持ちを寄せて、若葉は嬉しそうな笑みを浮かべる
若葉「何か駄目だ……あれか。昨日の夜の――」
天乃「見てたの!?」
若葉「しまった」
天乃「しまった。じゃないわよ……眼を逸らさない」
若葉「あ、ああ」
1、心配してきてくれたんじゃないの?
2、なに? エッチしたくてきたの?
3、ねぇ……貴女は分からない? 私がえっちになっちゃった理由
4、ねぇ、明日。私を夏祭りに連れていく気はない?
↓2
4
4
天乃「……ねぇ、そんな破廉恥な乃木さんちのご先祖様に聞きたいことがあるのだけど」
若葉「やめてくれ」
天乃「明日、私を夏祭りに連れ去るつもりはないかしら?」
若葉「夏祭り……?」
ここから抜け出すことはあまり許されたことではないと
天乃自身良く分かっているのだが
それでも、出ていきたかった
だから、求める
若葉「行きたいのか?」
天乃「うん……」
若葉「九尾、問題はないか?」
若葉は一旦考え込むように目を瞑って
どこかに目を向けることもなく、目には見えない九尾に問う
そして、九尾が姿を表す
九尾「問題は大有りじゃろう。妾に代役をしろと?」
若葉「天乃の要求、叶えられるのは九尾しかいない」
九尾「ふむ……」
九尾「そうじゃのう」
天乃をじっくりと見つめた九尾は
深々とため息をついて、若葉へと目を向ける
その表情は少しばかり、悩ましげだった
九尾「まあ、よかろう。幾日もこのような場所にいては辛かろう」
天乃「良いの?」
九尾「構わぬ。主様の苦しみの片鱗でも、肩代わりしてやろう」
呆れたような言い方
しかし、何か考えていそうな表情
けれども、九尾はそれを問うよりもはやく姿を消す
若葉「ということだ。明日は昼で良いか?」
天乃「え、ええ……」
若葉「何かあったか?」
天乃「ううん……多分、平気」
九尾は良く思わせぶりなことをする
……ただの気のせいだったのだろうか
それが少し不安で
けれど、せっかく夏祭りに行けるのだからと
今は、天乃は何も言わなかった
√ 8月12日目 夕(特別病棟) ※金曜日
01~10
11~20 九尾
21~30
31~40
41~50 大赦
51~60
61~70
71~80 樹海化
91~00 沙織
↓1のコンマ
ぞろ目、特殊
あ
√ 8月12日目 夕(特別病棟) ※金曜日
何か楽しみなことがあると、時間が経つのが遅く感じる
何か嫌なことがると、時間が経つのが早く感じる
天乃「…………」
しかし、楽しみなことがあるというのに
時間の流れはいつもよりも早く感じてしまう
九尾が上手くやってくれると言っていたけれど
はたして、何をどううまくやってくれるというのだろうか
天乃「まさか……危ないことはしないわよね?」
例えば来る人来る人を惑わすとか、操るとか
あるいは……殺してしまうとか
天乃「流石に……ないわよね」
少しばかり、九尾に関わるのが怖いと感じてしまう
もしかしたら、心が本当に弱くなっているかもしれない
1、精霊組
2、勇者組
3、端末関係
4、イベント判定
↓2
4
1
1、九尾
2、千景
3、若葉
4、球子
5、歌野
6、水都
↓2
3
4
では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
九尾「……夏祭り」
九尾「聞こえる声は誰の声か」
九尾「歩みを阻むは誰が影か」
九尾「天に舞う美しき焔は――誰が命か」
乙
楽しみだな夏祭り
乙
九尾さん、いくら久遠さんの為とはいえ不穏過ぎませんかねぇ…
乙
次はタマっち先輩か
なんか最近影が薄いけどなにかあったのだろうか
では、少しだけ
やったぜ
√8月12日目 夕(特別病棟) ※金曜日
天乃「ねぇ、球子。いる?」
一人ぼっちは心細くて、嫌な考えに満たされてしまいそうで
天乃は不安になりそうな頭をふって枕にぽすんっと寝かせると
小さく、名前を呼ぶ
聞こえなかったのか、いないのか
すぐには姿を現さなかった球子だが、
天乃が目を瞑ろうとした瞬間にこっそりと姿を見せた
球子「よ、呼んだか?」
天乃「呼んだけど……どうかしたの?」
千景や九尾たちと違って、
球子は天乃から距離を保ったままで少し遠い
そんな状況から声を投げる球子は、
天乃の困った表情に、困った表情を見せる
それはどこか、不安と恐怖に満ちているようにさえ感じられた
球子「い、いっておくけど!」
唐突に声を張り上げた球子に思わずビクッとした天乃は
急にどうしたの? と不安そうに問いかける
しかし、球子その調子を崩さないままに、
覚悟を決めたかのような表情で、天乃を指差す
球子「タマは屈しないぞ! 来るならこいっ!」
天乃「えっ?」
球子「だから……えと。簡単に喰われてはやらないぞ!」
天乃「喰われる……?」
言葉の意味が分からない
喰われないぞといわれても、屈しないといわれても
天乃には球子を襲う理由も、
ましてや喰らいつくなんてことはするつもりはないし――
球子「どうせえっちなことするために呼んだんだろ?」
天乃「え……ち、違うわよっ!」
まったく考えていなかったことなのに
ほんの少しだけ、体は反応して天乃は思わず怒鳴った
球子「うぅぅ……頭が痛い」
天乃「変なこというからよ」
球子「悪かったってぇ……」
怒られバシリと頭を叩かれた球子は、
本当はまったくもって痛みの無い頭を撫でながら、演技をしつつ苦笑する
なんだかんだ怒りながらも本気で手を上げてこない天乃の甘さには
寧ろ罪悪感が沸いてきてしまうもので。
球子「昨日の件もあったからなぁ。そう思うのもやむなしだろ~?」
天乃「それは分かるけど……前にもやらなかった? こんな感じの事」
確かに以前と比べてえっちをしたいと思うことは増えてきたし
そう言う気分になってしまう頻度は格段に増えたと天乃自身感じている
しかし、誰かを襲うというような
野蛮な考えにまではまだ、至りそうもない
球子「天乃はその気にさせるのが上手いからな」
天乃「その気にって、貴女ね」
球子「誘惑するだろ。すぐ、というか……時々息遣いとか仕草がえっちだ」
ふいっと目を逸らした球子は
ほんのりと赤みがかった頬をかいて、そのままに苦笑する
球子「千景に怒られて泣いてるのはかわいか――」
天乃「本気で殴るわよ、球子」
球子「わー冗談だーっ!」
天乃「まったくもう……」
球子「呼ばれたが最後、えっちをさせられるって噂があるんだ」
天乃「何を言ってるのよ。一部始終見ているくせに」
球子「そうなんだけどな。ついにタマもやるのかもしれないとか、思っちゃったり」
冗談だと表すように笑って見せた球子は、
切り替えるようにため息をついて、天乃へと目を向ける
その瞳は天乃の記憶にある、土居球子の真剣な表情そのものだった
球子「それで、タマを呼んだからにはなにかあるんだろ?」
天乃「うん」
球子「夏祭りか? 大赦か? えっちか?」
天乃「ちょっと歯を食い縛りなさい」
1、大赦について
2、夏祭り、行く?
3、九尾が何考えてるか分からない?
4、でも、そうね。えっちがしたいのは間違ってないわ
↓2
3
1
では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
天乃「ちょっと歯を食いしばりなさい」
球子「チューか!?」
天乃「そうよ」
球子「えっ? な、なん……」ギュッ
天乃「何を驚いてるのよ……期待していたくせに」ボソッ
球子「にゃぁっ!?」ゾクッ
乙
球子もしかしてえっちなことに警戒してただけ?w
まあ若葉の淫乱っぷりを見たら分からんでもないけどさ
乙
どうせいざとなったらヘタれるくせに
沙織に舐められただけでイっちゃうような淫乱娘がなにをほざくか
ちょっと沙織さん呼ぼうぜ
乙
乙
では、少しだけ
かもん
天乃「今の大赦についての意見を聞かせて欲しいの」
球子のちょっと意地悪な言葉には目を瞑りながら、
天乃は優しい声で、けれど不安の見え隠れする声で訊ねる
しかし、当の球子は少し困った様子で笑う
球子「って言われてもなー」
球子は大社がなぜ大赦になったのか、千景に対してどういう扱いをしたのか等
悪い一面の殆どを見たことがないのだ
ゆえに、公平な判断は出来はしないし
言ってしまうのならば
球子「過去のと比べて良くないなーとは思うぞ。ただ、やってることは分からなくもない」
天乃「…………」
球子「だって、そりゃ、タマ達にとって大赦のしてることは嫌なことだし、悪いことだけど、でも。怖いものは怖いんだろうとは思う」
天乃を閉じ込めてしまうこと
天乃を敵視して少し手荒い態度になってしまうこと
その気持ちを完全に理解できるとはいえないけれど、
それでも、球子は少しなら分からなくはないと答える
球子「何かを言わなかったことだって、当事者からして見ればふざけんなってことだけどさ」
それだって、大赦にとっても、子を提供する親にとっても苦渋の決断だったに違いない
世界を守るために、生きていくために、勇者には戦ってもらわなければならない
いや、勇者になってもらわなければならない
それを、その心をへし折ってしまいそうな【真実】は、語れなかったのだろう
球子「なんて、これはタマがそうであって欲しいだけかもしれない」
天乃「意外と考えてるのね、球子」
球子「そんな意外そうな顔するな、傷つくぞ!」
あらごめんなさい。そう言って苦笑する天乃に球子は優しい目を向けてため息をつく
少し前は暗かった、寂しそうで悲しそうで、辛そうで
けれども笑えるようになった、茶化せるようになった
それは、球子にとっても温かいことで
球子「これからも、大赦は変わってくだろ」
天乃「え?」
球子「良くも悪くも、きっと大赦は変わってく。今は少し【タマ達にとっては悪い】けど、良くなるかもしれない。なってくれると思う」
天乃「どうして?」
球子「だって、天乃に敵対したら勇者全員、あの学校の何人もの生徒が敵に回るんだぞ? どうにも出来ないに決まってるからな!」
天乃「結局私? 力任せ?」
ちょっぴり意地悪な気配を込めて問いかけると
球子はそう言うの考えるの苦手だし。と、苦笑する
深く考えて仕方が無いと言いたいのだろう
球子「変えたいなら、タマ達が何とかするしかないだろ。多分なっ」
天乃「……そうね」
変わるのだろうか、変えられるのだろうか
でもきっと、変えようとする人間がいなければ
変わろうとする人間がいなければこのままずっと、続いていく
誰かが犠牲になってしまうこと
誰かが嫌な思いをして、誰かが良い思いをする
それはきっと当たり前のことで、それはきっと変えることの出来ないことで。
球子「本当にそう思ったのかは分からないけど、大赦は信じられなかったのかもしれない。知った上で戦えるんだって」
天乃「知った上で、理解したうえで、覚悟を決めたい。当事者にならなきゃ、そう思えないのは無理も無いけれど」
球子「いっそ、天乃が大赦のトップを目指せば良いんじゃないか?」
天乃「やめてよ、大赦からは誰もついてこないし、私はリーダーシップに欠けるもの」
低い自己評価を笑いながらする天乃に、
球子はそんなことないと思うけどなーと、呟く
確かに大赦からついてくるような物好きは少ないかもしれないけれど
でも、リーダーとしてやろうと思えば出来るはずだと、球子は思う
球子「親衛隊はタマ達だぞ」
天乃「夏凜に友奈に、東郷に、風に樹、若葉に千景に歌野に球子に沙織に水都。参謀は九尾?」
球子「おっかないなー」
天乃「ふふっ、誰も逆らえないわね」
未来のこと、話せるだろうか
来年のこと、高校、就職、いろんなこと
3年生になって、悩むべきことを普通じゃなかった天乃はあまり考えてはいなかったけれど
みんなで悩んで考えて、挑戦して。それが出来るだろうかと……
天乃「ねぇ、球子」
球子「頑張るさ」
名前を呼ばれただけでも、何を言われるのか何を願われるのか
天乃の表情から察した球子はしっかりと覚悟を決めている表情を見せる
球子「頑張るさ、大丈夫」
無い胸を張って見せて、どんっと叩く
自分自身を信じて
周りを信じて
自分の強い誇りを、その胸に
球子「今度は誰も失わせない。タマに――任せタマえ!」
二度と破らぬのだと、破らせぬのだと
先代勇者、土居球子は高らかに宣言する
√8月12日目 夜(特別病棟) ※金曜日
01~10 夏凜
11~20
21~30
31~40 九尾
41~50
51~60 歌野
71~80
81~90 沙織
91~00 若葉
↓1のコンマ
あ
では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
沙織「そろそろだよ」
天乃「え?」
沙織「あたし達にとっての大切で、大きな戦い」
天乃「……そっか、もう。来るのね」
沙織「うん。皆で挑む一糸纏わない大乱戦。あたし、負けないよ」
天乃「うん……うん? 何かおかしくない?」
沙織「あはは、気のせいじゃなーいっかなー」
乙
久遠さん争奪杯か
乙
以前球子の心を救ったことがここで活きてきたな
そしてすっかり久遠さんの夜の担当(意味深)と化したさおりん…w
乙
では、少しずつ
よっしゃ
√8月12日目 夜(特別病棟) ※金曜日
気づけば、夜になっている
と言っても天乃には外が見えないから、
端末の時間から今は朝だ、昼だ、夕方だ、夜だ。と
知ることができているだけ
明日は夏祭りがある。沙織が婚約者……までは行かないのだろうけど
お見合い相手と会うのも、明日だ
天乃「…………」
そっと胸に手を宛がう。以前、天乃は沙織がその相手とどうしてもデートをしなければならなかったとき、
落ち着いていることも待っていることもできずに後をつけ、
挙句の果てには飛び出して沙織に迫ってしまった
天乃であって天乃では無い、穢れの塊が原因だったその暴走
子供の影響で普段の力ごと穢れも移ろう現状、同じことが起きてしまう可能性は低いはずだ
けれど、天乃は少し不安になる
天乃「沙織……」
沙織は決して靡かないといった
しかし、そうなれば伊集院家は血を失うことになる。
だからと欲される可能性はあるし、現にお見合いをさせられているのはそう言うことでもある
だから、もしかしたらという思いが無いわけではないのだ
もちろん、そう選択するのであれば天乃は認めるつもりではある
沙織が悩んで決めたことだから
自分との付き合いと、相手との付き合いと
それを考え、悩んで、それで決めたことだから
けれど、仕方が無いと思いたくない自分もいるのだ
わがままだとは思うのだが、それでも苦楽ではなく苦を共にした間柄だから
天乃「そうじゃ、ない……かな」
ぐっと胸を押さえるように手を握り締めていく
離れてしまうことを考えると、少し痛む
沙織からの一方的な気持ちを受け取っていたのなら、
それが離れたとて、天乃が心に思うのは
やっぱりね。といった白けた感情のみだっただろう
だが、違う
天乃自身も好意を抱いている
それを偽ろうとしていたから、あの【影】は余計なことをしにきたのだ
沙織が決めたことなら、なんて逃げようとしたから。
沙織「あたしのことで悩んでたら嬉しいなぁ」
天乃「っ!」
なんの前触れも無く囁かれた声にビクリとした天乃は掛け布団を目元まで引き上げて、そうっと様子を見る
満面の笑みが見えた。照れくささの無い、自信に満ちた沙織の表情
わざとらしく唇に人差し指を当てた沙織は「んふふー」と、
明らかに察したように息づく
沙織「そんな慌てなくても襲ったりはしないよ。して良いならするけどね」
沙織はいつもの定位置であるベッド脇に腰掛けると、
ちらりと天乃へと目を向けて、しばしの沈黙を挟んで口を開く
沙織「明日のこと、覚えてたんだね」
天乃「……うん」
沙織「デート面倒くさいなぁ」
天乃「でも、行くんでしょう?」
沙織「行かなきゃお父さんが面倒だからね……猿猴は殺すことも視野に入れるべきだって言うし」
もちろん、そんなことするつもりは無いけどね。と
沙織ははっきりと答えてから少し笑う
その笑い声は楽しさ半分のまま、消え入るように薄くなって
深い、ため息が続いた
沙織「久遠さんは多分、傷つくと思うけど、ダメだっていうと思うけど。言って良いかな」
天乃「なにを?」
沙織「あたしね、その人の子供を産んでも良いかなとか、思っていたりもする」
予想していなかった
考えようとしていなかった
そんな言葉を、沙織はそんな雰囲気の無い空間に放り投げた
驚きゆえに言葉を失った天乃に、沙織が振り返る
困った表情、悲しげな笑み
沙織「伊集院家に子供残して、綺麗さっぱり出来たら良いなって」
パッパッと手で払うような素振りを見せた沙織は、すぐにその手をベッドに落として首を振る
自分で言っておきながら、自分でありえないことを言っているのだと解っている様子だった
沙織は笑う。笑いながら、どこかを見ていた
沙織「そうすれば、久遠さんの気持ちも少しはわかるかもしれないし」
天乃「本気で言ってるの?」
沙織「半分、本気かな」
天乃「私のこと、驚かそうとしてる?」
沙織「こんな嘘はつかないよ。久遠さんが何にも無いならつくこともあるだろうけど、今の久遠さんにはね」
そっと天乃の腹部に触れた沙織は、面倒くさそうに息づいて天乃の手を握る
その表情に浮かぶ感情は複雑に入り乱れていて
笑顔であるはずなのに、笑顔らしさを感じない
沙織「でも、そう言う解決って許されないんだよね。周りからも、あたし自身からも」
沙織は自分の体を抱きしめると、空想上の嫌悪感からか
ブルブルと身震いをして目を瞑る
沙織「あたし、実は男の子と付き合うとか生理的に無理かなーって」
天乃「何かあったの?」
沙織「特にはね。ただ、想像してみてぞわぞわ~って……多分、エッチしちゃったからかな」
まるでくだらないことを言うかのように沙織は笑うと、
天乃の肢体を隠す掛け布団の端を抓んで、捲る
沙織「偏見かもしれないけど、綺麗と汚いって感じかな。男の子には失礼かもしれないけどね」
天乃「深刻なの?」
沙織「想像しただけでぞわぞわーだもん。いや、過剰な想像が含まれてるかもしれないけど?」
天乃「…………」
それは悩むべきことであるはずだ
しかし、沙織はどこか冗談めかした表情で両の手を降参とばかりに上げて
ひらひらと振って呆れたようなため息をつく
沙織「それでどうやって男の子と付き合っていくんだろうって考えて、明らかに無理だなぁって」
天乃「それは……だけど、それでどうして子供が作れるって言うの? 沙織は知らな――」
沙織「知ってるよ」
実体験をすでに経ている天乃の重みのある言葉を
沙織は冷たさを感じるような平坦な声で遮ると
もう一度「知ってるよ」と、繰り返す
二度目の声が普段と変わらない分、一度目の感情を損なった声が天乃の耳に嫌に残る
沙織「一度くらいはしてあげてもいいよ。その一度ですべてが終わるなら、全然かまわないやって。怖くないと言えば嘘になるけどね」
天乃「沙織……」
沙織「ねぇ、久遠さんは男の子に抱かれちゃったあたしでも、抱いてくれる?」
1、……解らない
2、嫌よ
3、男の子を愛せるのなら、愛したらいいわ
4、貴女の好きにして。戻ってくるなら、私は受け入れるから
5、誰かのために抱かれるだけなら、そんな捨てたような体を抱きたくないわ
6、私が抱くの? 貴女が抱くんじゃなくて?
7、うん? 男の子に抱きしめられたくらいでどうして抱けなくなるの? そんな深刻? 病気でも移る?
↓2
6
4
6
4
ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
九尾「……はぁ」
九尾「お主の仕業じゃな? 猿猴」
猿猴「いや、私はどちらかと言えば女に化けて男を誘惑する妖怪だよ」
猿猴「つまり、これが私……じゃなく、伊集院沙織の本質だね」
「本質より……遺伝。かしら。沙織は私の娘だもの。実は面目の為にパパは女から男になって貰ったのよ」
九尾「なん……だと……!?」
夏凜「はいそこー、でたらめなことは言わないように!」
乙
さおりんにとってはかなり辛い決断なんだろうな…
久遠さんも早めに五郎くんとえっちしちゃったし夏祭りで覚悟決めてヤるのだろうか
乙
微NTRか……
そろそろさおりんの初めてを受け取ってもいいんじゃないかな
乙
では、少しだけ
あいよ
沙織は冗談のように話してはいるけれど
それはしっかりと考え、悩んだ上の物なのだと天乃は思う
同じく悩んで考えた天乃はその心も多少なら理解できると言えるけれど
相談を一足飛びに行為へと至ってしまった分、
その悩みを相談してくるという心持まで理解できるとは言えないし、分かっているとも言ってあげられなくて
天乃はすこし唇を噛み絞めて、息をつく
天乃「私は、みんなに受け入れてもらってるわ。もちろん、貴女にも」
相談をせずに、するべきことだと言って行為をして
ただ事後報告しただけの自分
それを受け入れて貰っている天乃としては、沙織を受け入れない理由がなかった
握り合う自分の手から沙織へと目を向けて、天乃は笑みを浮かべる
温かさを感じる柔らかい笑み
不安にまみれた心を癒してくれる、天乃の表情
天乃「貴女の好きにしていいわ。戻ってきてくれるなら、私は受け入れるから」
沙織「……………」
いまにでも泣いてしまうそうな沙織の表情
行為をすることに対して嫌悪感を示して、男の子との関りということに不快感を露にして
天乃を見つめる瞳が、揺らぐ
天乃「ただ、勘違いしないでね」
沙織「え?」
天乃「貴女に強制するつもりはないから。戻ってくることも、男の子に抱かれることも。嫌なら嫌でいい、やらなくたっていい」
それはきっと天乃の本心
天乃は本人の意思を尊重したいという考えを持っているから
自分の言葉が沙織に強制力を働かせてはいけないと、かんがえて……いや、果たして沙織の為だけだったのだろうか
沙織に無理強いしない為に、そんな言葉を使ったのだろうか
握りしめる手に力が籠る。チクリと、胸が痛む
変な緊張感に、心音が耳障りなほどに大きくなる
男の子に抱かれることで汚れてしまうなんて考えは持たないし、
沙織が居なくなってしまうかもしれないなんて心配はしていない
けれど、自分以外の、そう自分の触れることが出来ないところに別の誰かが
それも、【異性】だからというだけで触れることが出来てしまうというのが、なんだか嫌で
そんな独占欲にも似た卑しい考えを持ってしまう自分が、天乃は嫌だった
自分がやらなくて良いと言えば、やらないと言ってくれるのではないかと考える自分に嫌気がさす
そんなことを思うなら、願うなら、かんがえるなら
はっきりと嫌だって言えば良いのに
沙織「久遠さん?」
天乃「へ? え?」
声をかけられ、ハッとする
ほんの数分とはいえ無意識だったのだと、沙織に握られる手の感覚が戻るにつれて実感する
ずっと現実にいたはずなのに、どこか夢の中にいたような感覚
どこまでが現実だったのだろう、もしかして――
そう、現実逃避しようとする頭を振って痛む胸に手を宛がう
全部現実だった、ただ考えることに没頭してしまっただけで
何一つ、悪夢ではないのだと
沙織「久遠さんが嫌なら、嫌って言ってくれたら嬉しいな」
天乃の左手を握りながら、胸元に宛がわれた右手に重ねるように頭を委ねて、
沙織は静かに切り出す
安堵交じりの穏やかな声は、茶化そうとしているような声色で
天乃「……言えないわ。沙織が困るから」
沙織「良いよ。困っても。久遠さんが望むなら、子宮だって摘出しても良い。子供なんて産めなくなっても良い」
天乃「馬鹿なこと言わないで」
沙織「本気なんだけどな……」
天乃がそうしろと言わないことくらい、沙織は分かっている
いや、きっと誰にだってわかることだとは思う
だけど、それを言ってくれたら何も悩まずに済むからなぁ。と
苦笑しながら天乃の胸に顔を埋める
形を保つ下着の固さが少し煩わしく、壊れてしまえというようにぐりぐりと押し込む
天乃「ちょ、ちょっと――んっ」
沙織「ん」
何か文句を言おうとした口を唇でふさぎこんで
ゆっくりと布団の上に押し倒していく
重なる唇、開いた口、右往左往する舌と舌が一瞬触れ合って沙織が離れる
零れた吐息がぶつかり、また唇を重ねる
今度は舌がふれあっても離れない
試すように一度二度、つつき合ってにゅるりと絡んで
少しだけ交わってから離れると、どちらかの糸がつぅっと伸びて途切れる
顔の距離はほんの数センチにも満たない
天乃が意図せず閉じていた瞼を開けると、目の前に見えた沙織は少し紅潮した頬を動かして笑みを浮かべる
そしてまた――キスをする
舌のみならず、唇も絡ませ合うような熱のあるキス
胸と胸が押し付け合うように触れ合って
零れ出す吐息は徐々に熱っぽさを帯び始める
羞恥心ではなく、火照り始めた天乃の赤みがかった顔に手を宛がって軽いキス
沙織「キス、好き?」
天乃「それは……」
沙織「ないと一人エッチも満足できないもんね、好きだよね、久遠さん」
天乃「沙織が、みんながするから……」
顔を逸らしながらも言った天乃は、ちらりと横目で沙織を見る
天乃のことを小ばかにしているようにも見えるにやにやを見せる沙織は
うんうん。と、肯定して頷くと自分の唇に指を押し当てて、その指を天乃の唇に当てる
沙織「女の子って柔らかいよね、特別味があるわけじゃないけど美味しいし、クセになっちゃうよね」
天乃「本番まで、するの?」
沙織「ふふっ」
天乃の伺うような声、表情に
沙織は悪戯っぽく笑うと、耳元に口を近づけて
沙織「久遠さんが気持ちよくしてって言ったら……し・て・あ・げ・る」
天乃「っ! ば、馬鹿じゃないの……言わない、からっ」
顔を真っ赤にして声を上げた天乃の手をぐっと抑え込んで唇を重ね、舌を絡めた沙織は、
ゆっくりと離れながら怪しく笑みを浮かべて、
沙織「違うよ久遠さん、こういうのはね? 言わせるんだよ」
まるで明日が来ることを少しでも先送りにしようとしているかのように
二人は眠ることをしなかった
一人は寝させて貰えなかった。というのが正しいかもしれないが。
1日のまとめ
・ 乃木園子:交流無()
・ 犬吠埼風:交流無()
・ 犬吠埼樹:交流無()
・ 結城友奈:交流無()
・ 東郷美森:交流無()
・ 三好夏凜:交流無()
・ 乃木若葉:交流有(夏祭りに連れて行って)
・ 土居球子:交流有(大赦について)
・ 白鳥歌野:交流無()
・ 藤森水都:交流無()
・ 郡千景:交流有(ネット初心者)
・ 伊集院沙織:交流有(男の子との関係、戻ってきたなら)
・ 神樹:交流無()
8月12日目 終了時点
乃木園子との絆 54(高い)
犬吠埼風との絆 70(かなり高い)
犬吠埼樹との絆 56(とても高い)
結城友奈との絆 76(かなり高い)
東郷美森との絆 80(かなり高い)
三好夏凜との絆 99(かなり高い)
乃木若葉との絆 73(かなり高い)
土居球子との絆 32(中々良い)
白鳥歌野との絆 29(中々良い)
藤森水都との絆 21(中々良い)
郡千景との絆 24(中々良い)
沙織との絆 83(かなり高い)
九尾との絆 52(高い)
神樹との絆 9(低い)
汚染度???%
√8月13日目 朝(特別病棟) ※土曜日
01~10 東郷
11~20
21~30
31~40 友奈
51~60 樹海化
61~70 樹
71~80
81~90
91~00 夏凜
↓1のコンマ
あ
ここで来るのか…
満開の予感…
戦闘難易度判定
↓1
※一桁
※補正無し 1最低0最大
あ
■難易度
2 判定有り 満開無し ダメージ有(小)
戦闘をスキップしますか?
1、はい
2、いいえ
3、バーテックスに怒り狂う勇者たちが見たいです
↓2
1
3
では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
難易度的に満開は必要ないとは思いますが
自軍戦闘の場合は最適戦闘ではないので多少怪我が増える場合もあります
乙
出来ればみんなで夏祭りに行きたかったが…さてどうなる
乙
まあ難易度2だし若葉夏祭りデートには間に合うでしょう
乙
では少しだけ
よしきた
√8月13日目朝(樹海化) ※土曜日
夏凜「……ん」
これじゃないなと候補から取り去った服がベッドの上で宙に浮いたまま
その脇で充電器に差さった端末からけたたましい警告音が鳴り響く
いつも、こうだ
何かありそうな頃にこうやって妨害をしてくる
まるで自分達がバーテックスに全てを見られているのではないか
そんな感覚にでさえ陥ってしまいそうなほどの偶然
夏凜「今日は夏祭りだってのに……」
ため息混じりに呟き、端末を手に取る
その瞬間には、世界はその姿を光に包み込んで、瞬く間に姿を一新する
見慣れてしまった禍々しささえ感じる神秘的な樹海の世界
マップを確認仕様としたところで、着信のコールが鳴る
相手は、風だ
風『おはよー、起きてるー?』
夏凜「当たり前でしょ、起きてるわよ」
風『いつもの鍛錬?』
夏凜「ん……まぁ」
適当に言葉を返したけれど、本当は鍛錬には出かけていなかった
いつもなら確かに鍛錬に出ている時間ではあるが、
それに集中できないならと、外出用の服装を選ぼうと思っていたのだ
特に気を張る必要は無いし
どんな服装だって彼女であれば文句の一つも言わないとは思うが
久しぶりに会うのならよさげな服装。と、ある人に言われては、
少し頑張ってしまうのも無理は無いのである
そして、それを邪魔されたのだ
風『あーその反応は違うでしょ?』
夏凜「なんでも良いでしょ。どうでも良い話なら切るわよ」
風『あんまり気を立たせるもんじゃ――』
夏凜「天乃は樹海化したことくらいは感じ取れんのよ」
時間は一瞬に感じるのか
戦っている間ずっとその感覚を感じ続けているのかは解らないけれど
それは天乃を不安にさせるし、怖い思いをさせる
今日は夏祭りに出かけるというのに。だ
夏凜「あんたは、うどん食べようって時に横から焼きそば大盛り食べさせられて平気なわけ?」
風『たとえのセンスが無いけど、そうねぇ……空気読んでとは思うかも』
もちろん、状況等にもよるけれど
あまり嬉しいことではないのは確かだった
風『とにかく若葉もちょっとピリピリしてるみたいだから、2人で暴れてきなさい』
夏凜「暴れてって……」
風『若葉も夏凜も、どうせ言っても聞かないでしょ。天乃のことになると、ほんっと』
呆れたような声色ながら、嬉しさを滲ませながらいう風は、
電話の奥でため息をついて、樹と何か言葉を交わす
風『それに、すばしっこいやつもいるみたいだから。それ優先で2人にふっとばしてもらっとこうかなって』
夏凜「それが目的か」
風『まぁね。でも無理すんじゃないわよ~? 病み上がりさんっ』
夏凜「ただの経過観察だってのっ」
茶化して通話を一方的に終了させた風に軽い怒りを投げ込んで、息をつく
慌てるな、落ち着け、冷静になれ。と
燃え上がりそうな怒りを押さえ込んで、静かに怒りを溜め込む
若葉「待たせたか?」
夏凜「平気」
若葉「少々気が立っている……が、それで怪我をしては」
夏凜「天乃に余計な心配させる。でしょ? わかってるってのしゃーない」
今回の敵の数が少ないだとか、戦力的に今までと比べて劣っているとか
そう言った油断無しに、2人は軽口を叩くように笑みを浮かべて、刀を握る
天乃が見ていなくても、天乃に伝わるのだ
みんなのためにと、力を切り離す決断をしてくれた彼女に
若葉「信頼に報いるべきだからな」
夏凜「……ふぅ」
両刀を軽く振って復帰の感触を確かめながら、ゆっくりと姿勢を低く、低く
足が地面にめり込んでいくような感覚が伝わってきて――蹴り出す
夏凜「若葉、遅れんじゃないわよ」
若葉「心配するな、先代勇者の肩書きが伊達ではないことを示そう!」
赤と青。
二色の勇者、生きた時を違えた二人、しかしながら抱く思いは同じく一つ
ただただ、己が想い人のために。
MAP→http://i.imgur.com/Is0XWKa.png
移動キャラクターは夏凜です
移動先を選択してください
↓2
http://i.imgur.com/LBHvrq2.png
K7
k7
夏凜→双子座 封印判定↓1 ぞろ目または 23~32 89~98
あ
双子→夏凜 命中判定 ↓1 01~97 回避 25~34 カウンター
夏凜→双子 命中判定 ↓2 01~90 回避 ぞろ目CRT
若葉→双子 命中判定 ↓3 01~90 回避 ぞろ目CRT
蠍座→風 命中判定 ↓4 01~81 命中 56~64 カウンター
風→蠍座 命中判定 ↓5 01~55 命中 ぞろ目CRT
樹→蠍座 命中判定 ↓6 01~80 命中 ぞろ目CRT
※判定が多いので連取可です
あ
あ
あ
あい
ん
あ
ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
樹のみCRT。他、敵味方含め全回避
乙
久々に勇者部のみんなに会えて嬉しい
早く敵を片付けてしまいたいところだな
乙
まあ余裕だな
最近少し影薄い樹ちゃんがクリティカルで久々の魅せ場きたな
では、少しだけ
おk
樹→蠍座 命中CRT 734ダメージ
蠍座→風 142ダメージ
夏凜「っ」
目の前から迫ってくる双子座は、土煙を上げるほどに素早く駆ける
下手な動きでは捉えることはできないし、下手な攻撃では弾かれてしまうだけ
何度か現れてはいるけれど、それでも合わせることは難しく――
夏凜「このッ!」
封印の為に放った刀はうまく双子座の手前に突き刺さったものの、
双子座はそれを軽やかに躱して抜け出していく
封印できなければ、双子座どころかバーテックス自体が討伐困難となる
ゆえに、封印できないのであれば、と夏凜は身構え、ゆらりと姿勢を前のめりに変えていく
真っ向勝負でぶつかって、足止め
速さに対して速さでぶつかる。それしかないと
夏凜「好き勝手させないわよッ!」
全力で地を蹴り出すと爆発的な加速に髪が靡き、身体が押し込まれそうな重圧を感じて、歯を食いしばる
早ければ早いほど、身体には重みがのしかかる
走る疲労感、感じる重圧
体力が一気に奪われていく中で、右手に握る刀に力を込めて
速さと速さが衝突するように肉薄――そして
夏凜「はぁッ!」
――一閃
抵抗はあった。けれどもそれは、空気の抵抗
振り抜いた刀は空を切る
夏凜「!」
それを感じ取った瞬間、ゾワリと悪寒を覚えて頭を下げる
刹那――頭上を何かが掠めて残った髪が数本、引き裂かれて舞う
だが、終わらない
目の前で双子座の足が素早く持ち上がっていく
夏凜「っ!」
速い。何もかもが速い
夏凜は自分が最速であると自負しているわけではないが
それでも、まったく自信がないわけではなかったし
その速度を信じているからこそ、風は双子座を任せてくれたのだと思う
けれども、バーテックスの速度はそれを上回る
現れるたびに凶悪な速度を持って樹海を縦断していく異形
それはまさしく、化け物――
夏凜「ぐっ!」
躱しきれないと斜めに構えた刀に強烈な一撃
ビキリとひびが入ったような音が響き、砕け散る
あと一撃来るのが分かって、けれども防ぎきれない
それならと砕けた刀の柄を投げ捨て――目を瞑る
風が鳴く。破裂したような音
夏凜「…………」
鍛錬で散々学んだこと
学ばされたこと
完全に覚えられたとは言えないし、
何度も何度も蹴飛ばされ、殴られて、今でもそれは防ぎきれていない
けれども、少しは覚えているつもりだから
夏凜「ここかぁッ!」
叫び、目を見開き、自分の体を守るように掌底を放つ
それは、確かな重みを感じ取って弾き飛ばす
夏凜「防御はするな、するなら攻撃……悔しいけど、そのとおりね」
弾き飛ばされ後退し立ち止まった双子座と対峙しながら、夏凜は薄く笑みを浮かべて息を吐く
実戦で上手くいった。けれども偶然
だからこそ夏凜は満足しない、信じ切らない
まだまだだと、自分を叱る
夏凜「さっさと、ぶっ飛ばしてやるわ」
新しく刀を作り出し、双子座へと差し向ける
夏凜達の戦闘が始まったのを感じ取った風と樹は、
双子座よりも何倍も大きく、目に見えてしまう蠍座に向かって樹海を駆け抜けていく
二人で倒しきれるとは思えない
そもそも、天乃と違って回復阻害の効果を持っていない風たちでは、圧倒的に火力が足りないのだ
それでも、今ここで足止めをしておかなければいけない
風「樹、歌野がいないけど平気?」
樹「うん、どこまでやれるかは……解らないけど、大丈夫」
そう呟いて、胸に手を宛がう
自信を持ってと歌野さんは言った。
信じて良いと歌野さんは言った。
それが全てじゃないけれど、少しずつ、やっていけるって思えるようになったから
怖いけど、嫌だけど、それでも仕方が無いから。なんて曖昧な考え方じゃなくて
怖くても、嫌でも、それでも、自分でやり遂げたいと思えるようになったから
樹「大丈夫だよ、お姉ちゃん。私は大丈夫」
風「よろしい。行くわよ!」
大剣を担いだ風は樹よりも少しだけ先に突出すると、ぐるりと体を半転
振り回された剣を巨躯から伸びる尾へと振り落とす……が
風「!」
寸前のところで飛び跳ねるように動いて斬撃を回避
一息つく間もなく横薙ぎの一閃が風の腹部めがけて地を走る
風「このっ!」
とっさに大剣を地面に突き刺そうとするが、
蠍座の素早さには間に合わずに衝突、体が浮く
その瞬間には、目の前に針が見えた
刺されば即死させられてしまいそうな蠍の尾
バチリと閃光迸った瞬間、姿を現した犬神がそれを防ぎ――緑色の光が見えた
樹「せぇーのっ!」
風と同じく体を回転させ、勢いのついた鞭のような光が蠍座の体を穿つ
だが、止まらない
降り抜いたそれが地に足着く寸前逆に体を回転させた樹は、
もう一度振り上げて同じ場所へと攻撃を仕掛け、着地
その瞬間に地面を蹴って肉薄し――
樹「アンコールするよッ!」
素早く上下に腕を振るって傷ついた箇所に連撃を打ち込んで、飛びのく
樹「…………」
蠍座の尾が蠢いて退き、その目が自分へと向けられたように感じた樹は
しかし、恐怖に立ちすくむことなく、緊張感に満ちた表情のまま息を吐いて身構える
歌野さんなら、若葉さんなら、友奈さんなら、東郷先輩なら、夏凜さんなら
千景さんなら、球子先輩なら、お姉ちゃんなら……久遠先輩なら
怯えない、逃げない、気を抜かない
風「樹、ナイス!」
樹「うん、時間を稼ごう」
風「そうね……千景が着てくれるみたいだし。それなら樹のことはあたしが守る」
樹「じゃぁ、お姉ちゃんは私が守るね」
風「ん、よろしく」
いつまでも後ろにいるわけではないのだと
隣でも、前でも、もう歩くことは出来るのだと
信頼を寄せて、風は笑みを浮かべて剣を握る
小さいけれど、大きな背中に見えるいつ着の姿は、確かな成長を感じさせた
ターン経過 1→2
http://i.imgur.com/n96iwgx.png
若葉「あいつはすばしっこいな……」
夏凜「どーしたのよ、先代様」
若葉「撤回したくなるから止めてくれ」
夏凜の皮肉に困って答えた若葉は、ふと息を吐いて刀の感触を確かめる
先代の力を示すと言った手前、ただ素早いというだけで退くわけにはいかない
若葉「なぁ、夏凜。九尾が言っていたこと……確かめてみるか?」
夏凜「悪いけど、今日は出かける予定があんのよ。あんたも、私も。だから、どれだけ負荷がかかるのか分からないことはやれない」
若葉「それもそうか、余計なことを言ったな」
以外にも、と言ったらきっと失礼だし
怒られてしまうのだろうが、冷静に物事を考えている夏凜に感心しつつ、
近づいてくる同族の気配を感じとる
若葉「千景は樹達の援護……だな。こっちには友奈達が向かってきているみたいだ」
だとしたら、歌野と球子は巫女組の警護だろうか
真ん中に突然姿を見せることはまずないだろうけれど
それでも、最悪を想定しての布陣は決して悪くはない
けれど、思う
やはり、主の驚異的な力は攻撃の要であったのだと。
若葉「夏凜、私から確実に一撃決めて足止めする。封印を頼めるか?」
夏凜「任せるから、任せなさい」
若葉「では、行こうか」
若葉&夏凜→双子 CRT判定 ↓1 23~32 45~54 ぞろ目CRT
風→蠍座 封印判定 ↓2 01~55 封印 ぞろ目 封印
あ
ん
では、ここまでとさせていただきます
明日は出来れば昼頃から
若葉夏凜 CRT
風封印成功
双子座は恐らく落ちます
乙
勝ったな
乙
今回は絶好調だな
低難易度なのもあるけど久遠さん不在がみんなを確実に成長させてる気がする
では少しずつ
夏凜&若葉→双子座 CRT4942
若葉「私の全力を持ってお前を討つ……躱して見せろ」
自分の足が速いという自負はない。。だが、自分の剣速だけは何よりも速いという自負がある
いや、単純に負けるわけにはいかないのだ
誰にも、何にも遅れをとるわけにはいかないのだ
これは守るための力だから
じりじりと地を踏みしめながら、距離を詰める
柄を握る右手により力を込めて、その一瞬に爆発させるための火薬を詰め込んで
若葉「行くぞバーテックス……ッ!」
身動きせず警戒しているように見える双子座目がけ、目いっぱいの力で踏み出す
砂埃が舞い、びくりとバーテックスが動く
それは早かった。一瞬にも劣らない素早さだった
けれども、若葉にはそれがとてもゆっくりに見える
若葉「ふ――っ!」
カチャリ。と、鞘が鳴く
ヒュンッ。と、風が逃げ惑う
刀を握る右手に、速度の上乗せされた重みが重なる
若葉「まだだッ!」
その力ごと全力で、切り払う
若葉「その足、奪わせてもらう!」
振り抜いた一閃は双子座の体を弾き飛ばし、双子座が持つ驚異的な速度を削ぎ落す
その瞬間、数本の刀が双子座の周囲に突き刺さって柄の蕾が花開く
夏凜「さっさと潰させてもらうわ!」
夏凜の叫びに続いて光が巻き起こって双子座を包み、御霊を引きずり出して
刀がそれを穿つ……が
一つが砕けた瞬間に無数の御霊があふれ出して増殖していく
若葉「なにっ!?」
夏凜「双子座の御霊……天乃がいれば増えることも……っ」
考えて、歯を食いしばる
そんなことを思ってどうする
天乃だったら、天乃がいたら
そんなことを考えてどうするのだと
夏凜「邪魔なのよっ!」
切り払う。そして増えて、切り払う
振るう刀が強度に負けて砕け散り、新しい刀を作り出して握りしめる
一つ一つ消しても無駄だ。無尽蔵に湧き出してくる
夏凜「この……っ」
諦める気はない、逃げる気もない絶望に浸る気もない
そう、強く持った心で刀を握りしめた瞬間、夏凜を飲み込もうとさえする御霊を一閃が切り開く
若葉「今のままじゃ遅いぞ夏凜! その程度で終わりか!」
夏凜「はっ……先代様について行かせていただくわよ! 抜いてやってもいいけど!」
声が違う、雰囲気が違う
けれども煽るような言葉は彼女のそれによく似ているように思えた
だから、自然に言葉が飛び出した
それと同時に無意識に感じていた焦りが抜けていく気がして、
夏凜は薄く笑みを浮かべる
夏凜「ペットは飼い主に似るって言うけど、本当の事なのね」
若葉「そのペットとは私のことか?」
夏凜「さぁ?」
恍けて見せる
刻一刻とと制限時間が近づく中で
夏凜と若葉は平常心を保ち
焦りも何もなく、ただ、【普段通り】であり続ける
そう、いつもの訓練通り
夏凜「行くわよ若葉!」
若葉「遅れてくれるな!」
声をあ張り上げた二人は屈み合わせに向かい合って刀を握り、
無数に湧き出す御霊を片っ端から穿ち抜いて潰していく
一つ、二つ、三つ
夏凜「早く、早く、早く……もっと早く!」
御霊が増えるよりもなお早く、全てを消すために全力で刀を振るって
ガチリと、刀と刀がふれあう
増え続けた御霊が消えたのだ
若葉「!」
夏凜「っ」
若葉「そこかッ!」
視野の広がった瞬間に刀を納めた若葉が視界から消えてしまう速度で地を駆け抜ける
たった一つ、逃げるように地を滑る御霊目がけて一閃
跳ね飛ばされた御霊が破片を散らしながら夏凜の元へと向かって――
夏凜「はぁッ!」
二刀を一刀へと切り替え、若葉と同じように前傾姿勢に身構える
鞘はなく、まだ抜刀術を習得したとは言えないけれど、それでも、少しは学び取れてきている
それを示すために、夏凜は抜く
夏凜「砕け散れぇッ!」
振り抜いた一閃は双子座の御霊を確実にとらえて破壊する
その瞬間、佇んでいた双子座の体は砂となって吹き飛び、封印の光が途絶えて――どこかで光が舞う
若葉「向こうも始まったか」
風&樹→蠍座 CRT判定 ↓1 78~87 34~43 ぞろ目CRT
あ
これが勇者部の本気か…!
勝ったぞ(慢心)
風&樹→蠍座 CRT4650
風「封印開始!」
少々癪ではあるが、大赦によってシステム更新された端末は
夏凜と同様に個人での封印を可能としている
もちろん、その分効果時間は短くなってしまうが……
風「樹、いける!?」
樹「任せて!」
風と樹では、武装ゆえにその速度には差が出る
風は力に秀でており、一撃一撃に重みがあるが
その分速度に難があるのだ
ゆえに、火力がなくとも速度のある樹がその隙間を埋める
樹「全力で行きます!」
いつもなら歌野がいる
その背中を追えば間違えることはなかった、信じられる強い背中がいつも前にあった
お姉ちゃんの背中、久遠先輩の背中、歌野さんの背中
でも、今はそれがない
けれど、それでも樹はしっかりと地面を踏み込む
力強く、確かな自分の一歩を感じ取って
樹「鍬を振り下ろすような勢いで!」
光の蔓を勢いよく振り下ろす
弾かれて地に落ちた御霊は軽く跳ねて浮遊するが、その側面を大剣が叩き切る――が
風「んなっ!」
硬い。バーテックスの魂のようなものというだけあり
それが強固なものであることは風も良く分かっているし、戦ううえで感じたことではあったが、
それでも固く砕くことは容易ではないのだと、焦りを孕ませようとする
けれど、風は驚きに開いた口を閉じて、笑う
樹「お姉ちゃん、いけるよ!」
風「オーケー全力でやっちゃいなさい!」
そう叫んだ瞬間、緑色の光が風の腰回りを掴みとり、ぐるりと回転
そして上空へと放り投げる
その瞬間、その空白
御霊はそのままでも意志を持っているかのように動き出して――
樹「絶対に逃がさない!」
固い外郭を樹の足が蹴飛ばす
足りない、弱い、止まらない
顔があれば焦りから安堵へと目まぐるしく表所yが変化しているであろう御霊は
しかし、動こうとして……止まる
いや、止められた
樹「捕まえたッ!」
纏わりつく緑の光
それは御霊がもがこうと逃すまいと取りつき、固定する
風「……さすが、あたしの妹」
眼下で繰り広げられる狭くも激しいせめぎ合い
遥か上空から見守る風は嬉しそうん位笑みを浮かべて、大剣を握りしめる
何も言わなくても、動いてくれている。自分でどうするべきかを考え
戦闘においてしっかりと貢献してくれている
まるで、自分が導かれているようにさえ感じてしまうくらいに。
風「それはちょっと、あれだけど」
笑う。笑うことが出来る
気tン長官を保つべき場で、心にはこんなにもゆとりがある
それは少し危なくて、けれどとても大切なことで
風「あたしももうちょっと、努力しないとね」
姉なのだから、導くべきなのだから
本来部長であるべき人から、部長の座を委ねられたのだから
そしてなにより、数いる恋人の一人として
情けない姿を見せたくはないから
風「傷つかないほどの固さなら、打ち砕く力でたたっ斬る!」
力強く叫び、ぐるりと体を回転させて御霊へと切っ先叩きつける
その瞬間、傷さえつかなかった御霊にはビキリとひびが入っていく
だが、勢いを使い切った風にはこれ以上のダメージは難しく
けれども、風は安心して、信じて、飛び退く
樹「これで終わらせます!」
樹が入れ替わって拳を打ち付ける
傷はつかない、皹は広がらない、ダメージもない
けれど
樹「やっちゃえっ!」
御霊の中から、樹の作り出す蔓が四方に飛び出して御霊を内側から粉々に破壊する
全てが光と砂になって消滅していく中
そのあまりにもな―場合によっては惨劇―終わりに呆然としていた風は
ハッとしたように樹へと近づく
風「い、樹……? 今のは?」
樹「えっと……お兄ちゃん直伝、解剖拳……だったかな。傷口から蔓を忍び込ませて、全力全開で展開する最終奥義だって」
風「へ、へぇ……」
光りに包まれ戻り始める樹海の中で、
かなりえぐい技を平然と教える【お兄ちゃん】にこんど一発殴らせてもらおうかなと、風はひきつった笑みを浮かべていた
戦闘終了
侵食率は軽微だったため、問題なく継続していきます
√8月13日目 昼(特別病棟) ※土曜日
01~10
11~20 有
21~30
31~40
41~50
51~60 有
61~70
71~80
81~90 有
↓1のコンマ
あ
√8月13日目 昼(特別病棟) ※土曜日
天乃「やっぱり、また樹海化が起きてたのね」
若葉「ああ、だが被害はなかったし大した怪我も無かったから心配は要らないぞ」
天乃「うん……良かった」
そう言って、天乃は笑みを見せる
けれど、心配しないなんて出来ていないことも
不安をぬぐい切れていないことも、
若葉には良く分かってしまう
浮かべる笑みは悲し気で、ベッドの上の手は布団を握りしめていて
見ていることが出来ない間
ずっと怖い思いをしていたのだと分かるから
若葉「天乃」
天乃「ん? もう夏祭りに行く?」
若葉「それもそうだが……」
天乃「なに?」
若葉「…………」
これから夏祭りに行く
それを楽しみにしていたのに
なのに、樹海化を感じ取れるという無駄な力が
それをなぎ倒してしまった
若葉「いや……」
天乃「……良いのよ。別に」
天乃は笑う
笑って、ゆっくりと若葉へと目を向ける
あんまり見たくはない表情ではあったけれど
目を背けるのは、余計に天乃を傷つけてしまう気がして、
小さく、息を飲む
天乃「私には感じ取れる力がある。それは、みんなが頑張ってるんだってことを忘れない為にあるんだと思うから」
若葉「……だが」
天乃「…………」
強く、拳を握る
その渦中にいるわけじゃない
その当事者になったこともない
だから、なんて言葉をかけていいのかが分らなくて
無力さに、唇を噛む
√ 8月13日目 昼(特別病棟) ※土曜日
01~10
11~20 1
21~30
31~40 2
41~50
51~60
61~70 1
81~90 2
91~00
↓1のコンマ
ぞろ目、特殊
あ
今日は当たりをよく引くなぁ
徳の高さのおかげだな
若葉「…………」
ふと、息をついて
震えている自分の手を胸元まで引き上げていく
辛い思いをしていたのだ、
嫌な思いをしていたのだ
苦しい思いをしていたのだ
それを、目の当たりにして……
天乃「若葉……?」
若葉「無理はするな」
何もしないなんて出来ない
何も言わないなんて出来ない
だから、若葉は天乃を抱きしめる
若葉「無理はするな……怖かったのだろう? 辛かったのだろう? 」
天乃「ちょ、ちょっと……若葉、私は」
若葉「良いから、しばらくこのままでいてくれ」
天乃「なによ……私は、平気だって」
ただ一方的に抱きしめるだけだった体が
ゆっくりと抱きしめ返してくれるのを感じて、頭を抱き込むように撫でる
若葉「平気だなんて嘘は、つかなくて良い」
天乃「だって……だってっ」
若葉「いいんだ。いいんだよ……天乃」
天乃「信じて、るんだけど……っ、大丈夫だって、思ってるんだけど……」
若葉「…………」
この前話したことだろう
天乃は信じてくれているのだ
無事に戻ってくると、必ず帰って来てくれると
けれど……それでも、不安にならないわけではないのだ
九尾に話は聞いた
体はもちろんのこと、
精神的にも徐々に弱くなっていっているのだと
些細なことで泣いてしまう死、
些細なことに恐怖を感じてしまう
それこそ、純粋無垢な少女のように
曰く、それはしばらくしたら元に戻るという話だが
少なくとも、今年一杯戻ることはないだろうと若葉は見ている
なぜなら、子供の件が誘因であり、その解決は来年に持ち越される可能性が高いからだ
若葉「気にするな。怖ければ怖いと言えば良い、泣きたければ泣けばいい。私達に罪悪感を抱く必要はない」
そんなことで、信じて貰えてないなどとは言わない
見捨てられただとか、頼りにされていないだとか
訳の分からないことを考えたりもしない
若葉「みんな、分かっている。分かっているんだからな……」
固く閉じられた唇に唇を重ねて……優しく額と額をぶつける
驚いたように向けられた瞳に、笑顔を見せて
若葉「言っただろう? 君はもう、普通の少女だ。と」
ゆえに、当然なのだ
怖いのも、不安なのも、辛いのも、苦しいのも
それを誰に咎められるというのだろうか
いるのだとしたら、それは若葉が触れさせない
若葉「祭りまではまだ時間がある。少し落ち着こう。少しこうしていよう……夏凜に、笑顔を見せてやりたいだろう?」
√ 8月13日目 昼(特別病棟) ※土曜日
天乃「ほんの、一瞬でしかないのにね」
戦っていた時は普通に時間が流れているように感じるが、
戦えず、しかし樹海化を感じ取れるようになってしまうと
何かが起きた。ということだけが分かって時間が止まることもなく
気のせいだったかのように普通に時間が過ぎていく
世界が滅ぶ大きな変化がない限り
誰かが傷ついたことも、何も
だからとても不安になってしまう
それは天乃自身も分かるのだ
けれど、耐え切れず泣いてしまうのが、分からない
天乃「ごめんね、若葉」
若葉「気にするな」
天乃「うん……ちょっと、弱くなりすぎちゃったかな」
自分ではどうしようもない極端な心身の弱体化に
困ったように笑って、息をつく
天乃「もうホラー映画とかでも大泣きしちゃうかもしれない」
若葉「……観るか?」
天乃「止めてね?」
笑顔で断って、端末の時間を見てもうすぐ出ていく時間だと気づいた天乃は
若葉に目を向けて、頷く
若葉「行くか……そう言えば、服装はその制服で良いのか?」
天乃「んー……」
1、制服で
2、私服で
3、浴衣で
↓2
3
3
では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
沙織「ねぇ知ってる? 浴衣の下には下着を付けないんだってー」
天乃「さすがに馬鹿にし過ぎてない? 私のこと」
沙織「あははーだよねー」
友奈「…………」ギュッ
東郷「友奈ちゃん、どうかしたの?」
友奈「え? あ、ううん……大丈夫……」
友奈(お兄ちゃんに騙された……っ!?)
乙
さあ、夏祭りでみんなと存分にイチャイチャしようか
乙
ぽろりもあるよ!!
ポロリはないよ
女の子しかいないからナンパはあるけど!
助けてくれた五郎くんはいないし今の久遠さんはただの女の子だからヤバそう
乙
では少しずつ
天乃「浴衣……かな」
若葉「浴衣か。ふふっ……普通に私服で来ると思っている夏凜への良いドッキリになるぞ」
天乃「だと良いわね。でも、ごめんね? ちょっと手を貸して貰うことになる」
若葉「気にするな。頼られるのは悪くない」
天乃の笑みに若葉も笑みを浮かべて体に触れる
好きな人のためになることなら、頼られても全くもって苦にはならない
それが、少しばかり大変な事であるのだとしても
やりがいというものが存在する以上は、構わないし、嬉しいことだと若葉は思う
だが、天乃がされていたように
見返りは何もなく、ただただ頼りっぱなしにされるのは苦しいだろう、辛いだろう
そう考えて、沈みそうな表情になるのをぐっとこらえて天乃の体を抱き上げる
天乃「きゃぁっ」
その瞬間、悲鳴が上がった
体には触れていたが、考え事のせいで声掛けを忘れたのだ
慌てて落とさないようにとしながら、首元に手を回してきた天乃に目を向ける
若葉「す、すまない。先に声をかけ忘れた!」
天乃「お、驚くんだからっ」
かわいい
落ちないようにと堪えている天乃のむっとした声に
若葉は焦り交じりに「すまない」ともう一言付け加える
今の天乃は、ただの少女なのだ
筋肉質な体つきではありながら、穢れなどの影響によってその力はだいぶ弱ってしまっているし
精神的な部分も以前と比べて非常に脆さが表に出て来てしまっている
天乃「変な声出ちゃったじゃない」
若葉「淫らなことをしている声よりもか?」
天乃「……耳を齧ってあげてもいいのよ? 知ってるんだから」
若葉「なっ!?」
耳元でぼそぼそと囁かれ、「落とすから止めてくれ!」と
慌てて叫んで首を振る
あの時代の若葉の記憶を共有しているということはつまり、
ひなたがやっていたことも分かっているということになる
天乃「お客様、耳かきもサービスしますよ~?」
若葉「や、やめろっ。耳元で言うな! 私が悪かった」
苦笑が耳元で弾ける
ごめんね。と、楽しげな声が通り抜けていく
それはまさしく日常の中の瞬間で
若葉は自分たちが守れたのだと言う実感が湧いて、嬉しそうに笑みを見せた
√8月13日目昼() ※土曜日
若葉「ここか」
若葉達がみんなに会うよりも先に向かったのは、浴衣を貸し出しているお店
大赦に通じているようなところではないし、天乃は勇者部としてここの手伝いもしたことがあるために
店主とは知り合いだからだ
「おー君か」
天乃「浴衣を借りたくて……良いですか?」
「良いよ。好きに着て行きな」
店主の明るい返事に感謝を述べて、たくさん並ぶ色々な柄と色の浴衣を見渡して、息をつく
最後に浴衣を着たのは、2年前だ
須美と園子と3人でお祭りに行った時以来
それ以降はお祭りに行くとしても私服だったし、
何かと理由をつけていくのは避けてきた
というのも、天乃は車椅子だったから
浴衣を着るのも脱ぐのも手を貸して貰わなければいけないし
混雑する道中、車椅子を押して貰わなければいけないし、邪魔になってしまうからだ
だから、久しぶりに浴衣を着れるというのが嬉しい
天乃「これなんてどうかしら?」
桜色を基調として、蝶が描かれた柄の浴衣
光の当て方によっては桜色が白に見えるような色合いで
強すぎない色な分、柔らかさがあるようにも見えるが……
若葉「髪色と同色は避けた方が良いのではないか? 天乃ならばなにを着ても似合うとは思うが」
天乃「んーじゃぁ黒?」
若葉「ふむ……」
適当な黒色の浴衣を手に取り、天乃に重ねてみる
素材……というのは失礼だが、天乃自身大人びたイメージがあるため
同年代の少女と比べてみると、大人が着るような色合いを選んだ方が良いのではないかと若葉は思う
こんな時にひなたがいてくれれば。と
少し頼りたくなってしまうが、居ないのだから無理だ
せめて沙織に頼むべきだったのではないかと、考えてしまう
だが、彼女は彼女で今は近くにいない
若葉「黒に赤となると、どこか千景よりのイメージがあるな」
天乃「だったら、これが定番かしら?」
若葉「椿か……桜よりは天乃に似合うか?」
天乃「友奈が泣くわよ?」
そんなつもりは無いぞ。と、
困ったように言う若葉に、天乃は冗談よ。と、苦笑する
とはいえ、確かに自分にはどちらかと言えば椿なのかもしれないと天乃も思うのだ
桜が悪いわけではないが
桜はどちらかと言えば可愛らしさがあるような気がして、
どうにも。と、天乃は首を振る
若葉「水仙なんかも似合うと思うが、どうする?」
天乃「う~ん……」
みんなは違うというかもしれないが
可愛らしさのある浴衣は似合わないというのが天乃の感想だ
2年前なんかは小学校時代の浴衣が胸以外は問題ない見事な子供っぽい浴衣が着れた覚えがある
それが自分にはどうも似合わなく思えて、可愛らしいのはダメだと思ったのだ
もちろん、実際に行く際は違うのを新調した。
そのときは……確か、薄紫に朝顔の浴衣だったか。
1、若葉様、いかがいたしましょう?
2、黒に赤などの椿柄
3、紫紺に白っぽい水仙柄
4、夏凜ちゃんカラー ※赤白牡丹
5、若葉様カラー ※青を基調とした生地にトンボ柄
↓2
4
1
では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
若葉「実はここに可愛い人には見えない特殊な浴衣があるんだが」
天乃「あらほんと? 着てみて良い?」
若葉「ああ、いいぞ」
天乃「あ……でも」
若葉「?」
天乃「若葉達に見えないんじゃ、着ても意味ないわね」
若葉(信じたのか、からかってるのか読めない……が、私の負けだな)
乙
エロ浴衣着せられるのか
乙
はたして若葉様の選ぶ浴衣のセンスやいかに…
乙
意外とちゃんとした浴衣選びしてるのね
ところでイラストはどこですかイラストがないからこの安価は若葉任せだったんだと思うんだよね
ほら出し惜しみせずに出すんだよ
では、少しだけ
あいよー
天乃「そうねぇ……」
色々な浴衣をじっくりと見つめた天乃は、
ぱんっっと手と手を合わせて若葉へとほほ笑みかける
何か悪戯が来るのだろうかと若葉は一瞬身構えて
天乃「若葉様、いかがいたしましょう?」
若葉「そう来るか」
天乃「だめ?」
若葉「いや、そう言うわけではないが、私はそんなにセンスがあるわけではないぞ」
女の子ではあるのだが、西暦時代は居合道などに入れ込んでいたし、そもそも小学生だったがために
周りはともかく、若葉自身は―ひなたのせいもあるが―ファッションに関してそこまで入れ込む時期に突入していなかった
そのあとにはバーテックスの襲来もあって、おしゃれ。なんて言うものを気にすることはなかったのである
それゆえに、ファッションセンスというものは同年代に比べて著しく低いという自負があるし
言ってしまえば300年前の古臭いセンスだと若葉は思う
天乃「良いわよ。私だってそう言うこと気にしたことはないし」
若葉「…………」
普通の女の子としての生活をほとんどしたことが無いという天乃は
そのことに関して悲観する様子もなく、笑って見せる
バーテックスと戦うために、生き残るために時間をかけ
足の自由を失って、また気にすることは出来なくなって
若葉「そうか。なら私のセンスが悪くても天乃ならと気にされないか」
……笑って言う。
お茶らけたように、少しは気にするべきことを冗談事で触れて
天乃「もうっ、それは困るわっ」
若葉「分っているさ」
苦笑して天乃に目を向けた若葉は、観察するようにじっと一通り体つきを見つめて、
沢山の浴衣が並ぶ店内をゆっくりと歩き回っていく
一つを手に取っては立ち止まって唸り、首を振ったり頷いたり
少しだけ長く考え込んだり、若葉はかなり真剣に悩んでいるようで……
天乃「……そんな真剣にならなくても良いんだけどな」
真剣に考えてくれていることが嫌なわけではないし
当然ながら、むしろ嬉しいのだが、ただ、若葉が着て欲しい浴衣でよかったのだ
極端に過激だったり、子供っぽいものでなければ。という条件はあるのだが。
天乃「でも、若葉はこんなことでも真剣になるわよね」
きっと、沙織も夏凜達も、真剣に考えてくれる
愛して貰えているのだと実感できるのが、嬉しくて
天乃「あ……もう、なんなの……」
目頭の熱、ぽつりと膝上に落ちた雫
目元を拭った天乃は困り果てたようにため息交じりに呟いて、拭ってもまたあふれ出てくるそれに、
ハンカチを押し当てる
出来れば若葉には見られないようにと、若葉がいない方向に目を向けて、拭って、拭って、唇を噛む
天乃「そう言う時じゃ……ないのに」
悲しいわけじゃない、嬉しいだけ
嬉しいからこそ、温かいからこそ、弱り切った天乃にとっては刺激が強くて、感激に浸ってしまう
しばらくして、若葉が「待たせたな」と、戻ってくる頃には何とか笑みを見せることが出来た
天乃「遅いわ。待ちくたびれた」
若葉「ついつい、悩みすぎてしまってな」
天乃「そんな真剣に考えなくても良かったのよ?」
若葉「私が悩みたかったんだ。自分の中でも一番綺麗で一番愛らしいと思える天乃にしたかった」
天乃は自分ひとりの恋人ではないし、
独占欲というものも若葉にはそこまでない
けれども、見せつけてみたいとは思ってしまった
自分がこんなに綺麗にしたんだぞ。と
自分がこんなに愛らしくしたんだぞ。と
若葉「天乃はあまり好みではないと言っていたが……やはり、これだっ!」
天乃「これって」
薄い桃色を基調として、牡丹が少し大きめに描かれた浴衣
髪と同じ色は……と、最初に言っていたのは若葉なのに
天乃「若葉、駄目って言わなかった?」
疑問に思って聞くと、若葉は確かにそうなんだが……と、困ったように答えて、
照れくさそうに頬を掻く
最初の否定はただ色合いを見ただけで、深くは考えていなかった。ということだろうか
それはそれでちょっぴり悲しくなりそうな天乃だったが
真剣に悩んでくれた十数分で帳消しにして、「そっか」と、ほほ笑む
天乃「若葉はこれが似合うと思ったのね?」
若葉「あ、ああ。黒や紺も天乃は似合うと思うし、綺麗に見えると思う。大人びて見えると思う」
天乃「純粋に褒められると恥ずかしいわね……」
若葉「だけど……年相応の少女にしたかった。綺麗な大人ではなく、可愛らしい少女の天乃が見たかった」
天乃「え?」
恥ずかし気に頬をそめながら、真剣な口調で若葉は語る
本気だった、真面目だった
視界に映る若葉の表情は、本心しか口にはしていないという自信に満ちていた
天乃「っ」
顔が熱くて、若葉を直視できなくなって、顔を伏せる
嫌なわけがない、ただただ、嬉しいのだ。
誰かの前で平然と語られるのが恥ずかしいのだ
若葉「そう考えたら、これしかないと思ったんだ。天乃」
天乃「な、なに……?」
恐る恐ると若葉に目を向けて、震える声を投げかける
ドキドキと強く胸が鳴る。キスをする寸前のような
緊張感にも似た、恋し雰囲気
若葉「なってくれるか? 大人びて強い久遠天乃ではなく、少女らしく弱さもある久遠天乃に」
天乃「……なんか、受け取りたくない」
差し出された桃色の浴衣
それを受け取るということはつまり、自身が弱くなっていくことを受け入れるということでもある
そこから逃げることなく、強がることなく
みんなに甘えていくことになる
それは、迷惑ではないだろうか。お荷物ではないだろうか
死と隣りあわせで戦ってくれているみんなに、そこから退いた自分が支えて貰うというのは
天乃「畳み掛けてくるのね……最近。ずっとそんなことばっかり」
若葉「そうだな」
天乃「夏祭りで、楽しい気分になれそうだったのに」
若葉「すまない」
天乃「私、きっとすぐ泣くし、凄く甘えるし、凄く意地悪で、凄く面倒くさいわ」
若葉が差し出すままの一方で、天乃は自分の右手を強く握り締めて、俯いて
膝上の手は心なしか震えていて、スカートにシワが寄っていく
若葉「泣いても良いじゃないか。可愛いぞ。甘えたって良いじゃないか。嬉しいぞ。意地悪だって良いじゃないか。結局優しいからな」
天乃「…………」
若葉「面倒でも良いじゃないか」
若葉はそっと天乃の手に手を重ねて、膝を折って姿勢を低く目線を合わせる
今にでも泣きそうな顔が見えた
すでに泣いたと解る目元が見えた
やっぱり、少女なのだ
誰かが求める【勇者】であり続けただけで
そうあろうと、強く、強く、地を踏み締めていただけで
若葉「今まで、その面倒ごとの全てを背負ってきてくれたのは天乃なのだから」
天乃「……ずるい」
若葉「西暦時代はな、狡賢くないと生き残れなかったんだ」
天乃「何それ、嘘つき」
若葉「ああ、嘘だよ」
借り物である浴衣を汚さないように、崩さないように
優しく天乃を抱いて耳元で囁く
小さな嗚咽が胸にうずまって消えていく
それで良い、これで良い
天乃は畳み掛けるように……と言ったが、まさにその通りだ
畳み掛けた。それは嫌われても良いと言う覚悟の上で若葉が強行したこと
戦いから戻るたびに、震えているのだ
戦いから戻るたびに、泣きはらした顔を見せられるのだ
自分がそれを見るだけなら、味わうだけなら耐え忍ぶことも厭わない
けれども、不安に震え、恐怖に泣いている精神が長く持つとは思えない
いつかきっと、壊れてしまう。だから、強引にでも抱きしめてやりたいと思った
体ではなく、心も一緒に
いまならそれが、出来る気がした
若葉「私は馬鹿みたいに頑固で、正直者だ。狡賢いのはひなたの専売特許でな……ふふっ、こんなことを言ったら怒られるか」
天乃「っ、ぅ……」
若葉「もう一度問おう。我が主、久遠天乃。君は、これを受け取ってくれるか?」
そうっと体を離して、向かい合いもう一度浴衣を差し出す
泣いて崩れても愛らしいと感じられるのはやはり、自分の心故なのだろうか
そう考える若葉の目前、天乃は潤んだ瞳に微かで優しい怒りを含めて若葉を見る
こんなのはずるいと、そう、怒っているのだろう
天乃「……覚悟はできてるのね」
若葉「もちろんだ」
浴衣の上から若葉の手に手を重ねて、天乃は怒りを込めた目を一度閉じて
今度は普段とそう変わらない瞳で若葉を見る
天乃「私は面倒で、意地悪だから。怪我して帰ってきたら傷を抉ってやるわ」
若葉「気をつけないとな」
天乃「少しでも遅く帰ってきたら泣き喚いて絞め技をかけてやるわ」
若葉「残業をする気は無いな」
天乃「……私を若葉たちの好みの女の子にするのは、誰か一人ではなくみんなであることを忘れたら、死ぬわよ」
若葉「肝に銘じておく」
誰か一人でも深く傷ついてしまったら
誰か一人でも欠けてしまったら
天乃はもう二度と【無力】を受け入れることはできなくなる
日常という持つべきものをかなぐり捨てて、目を背けてしまうようになる
それは、若葉だけではなく全員が分かっていることだ
だから誰一人として本心では死ぬ気など無い
ただただ、足掻くこともできないような絶望の淵では生を諦めるほかないと覚悟を決めているだけで
元からそんな状況に陥る気など、皆無なのだ
天乃「解ったわ。それを着たい……着せてくれる? 若葉」
若葉「着付けはひなたに習ったからな。任せておけ。天乃」
着付けに少し時間はかかったが、
店主の助力を得て、天乃とついでのように若葉の着付けを終え、2人は夏祭りの会場へと向かうことにした
√8月13日目夕(夏祭り) ※土曜日
風「おーこっちこっちー!」
天乃達が到着して、あたりを見渡していると、そんな声がどこからとも無く聞こえてきて、目を向ける
夏祭りに訪れた人でごった返す道中を少し外れた入り口の脇
そこに風達勇者部が勢ぞろいしていた
風「いやー入らなくて良かったー」
樹「入ってたら合流だけで時間取られちゃいそうだったもんね」
風のほうは控えめな黄色を基調に花火のような色取り取りの花柄の浴衣
樹は白を基調にして黄緑色の小さな花が散りばめられた浴衣を着ていて
風は普段の男勝り―言うと少しむくれる―な部分はなりを潜めて女性らしさが出てきていた
樹は、いつもどおり愛らしさがある
風「そしたら暫く若葉と天乃が2人きりだしぃ? んなの許せるかーって――」
夏凜「んなこと言ってないわよ」
待っていてくれた理由を脚色しようとした風から少し離れた林の方でそんな声がはじける
見なくても解った
端末を通してではなく、生の声を聞くことができただけで、
再会する事ができた実感が沸いてきて、泣きそうになる天乃の目元を若葉が拭う
天乃「若葉?」
若葉「それはここじゃないと、私は思うぞ。必要なら、車椅子を押すが」
自分の手元から離れていく
2人きりの時間が終わるその寂しさも物足りなさも何も無く
満足げな笑みを浮かべて送り出してくれる若葉に、天乃は「ありがと」と呟いて
自分の手で車椅子の車輪を回す
逃げ出したせいで手動の車椅子は少しだけ大変で
けれど、手を貸そうとした樹を風は止めて見送る
風「少し、我慢ね」
樹「うん……」
キュルキュルと車輪が回って、回ってがたりと揺れる
ブレーキをかけて……車椅子の足置きがぶつかった
夏凜「……痛いんだけど」
天乃「私はもっと痛かった」
夏凜「…………」
車椅子に座って項垂れている状態の天乃の顔は夏凜には見えない
だから、何を考えているのか、何を思っているのか、何を浮かべているのか
夏凜には解らないはずなのに、少しの沈黙をおいて息づく
足を車椅子の足置きに押し付けるようにして
裾の上から食い込んでいくのを感じながら
夏凜は天乃との距離を詰めていく
夏凜「じゃ、もうちょっと痛くしなさいよ。その分だけ、あんたに優しくしてやるから」
鮮やかな赤色に橙と白の芍薬柄の浴衣を着込み
夏凜は袖を軽く引き上げながら、天乃の頬に手をあてがって上を向かせる
夏凜「なんて……ま、無事でよかったわ」
天乃「うん……夏凜も」
自分で言ったことに恥ずかしそうにしながら、
夏凜は天乃の無事に笑みを浮かべて、頬をかく
会いたくて、会いたくて、ようやく出会えて
言いたいことは沢山あったけれど、言うことができたのはたったそれだけの短い言葉
けれども、2人は恥ずかしそうに満足そうに、笑みを浮かべる
目の前で笑みを浮かべて貰えることが、100を語るよりも大事なことだったからだ
夏凜「それにしても、あんたが浴衣着てくるとは思わなかったわ」
天乃「嬉しい?」
夏凜「驚いたかどうかでしょ、普通」
夏凜は困ったようにそう言うと、
気恥ずかし気に眼を逸らして、ちらりと天乃を観察する
距離が近いからか、天乃には浴衣の赤色よりも頬が赤く見えるような気がした
夏凜「そりゃ、まぁ……あんたは服のバリエーションないし。新鮮で、嬉しかったわよ」
天乃「ふふっ、良かった」
夏凜「っ……」
心の底から嬉しそうな笑顔を見せる
そんな顔が見たかった。そんな顔をさせたかった
そんな感情を抱き続けて欲しかった
心の中で沸き立つ感情を吐き出しそうになって、夏凜はごくりと喉を鳴らして息をついて――
天乃「夏凜も意外だったわ。夏凜らしい可愛くて格好良くも見える浴衣……好きよ」
夏凜「う、あ、ありがと……」
出鼻をくじかれた
天乃「瞳が選んだの?」
夏凜「良く分かったわね……瞳も寂しがってたわよ。最近送迎できてないって」
天乃「学校もないし、閉じ込められてるからね」
苦笑しながら天乃は言うが、精神的には辛いことのはずで
けれどその素振りはあまり見せずに、若葉へと目を向ける
天乃「向こうでも精霊のみんながいてくれるから寂しくはないわ。大丈夫よ」
夏凜「…………」
雰囲気が揺らがない。感情の弱さも感じない
だから、本心で語っているのだろうと判断して、夏凜は小さく笑みを浮かべる
夏凜「そっ。なら平気か」
天乃「何が?」
夏凜「あんたが寂しがってたりするなら、若葉には決闘を申し込まなくちゃいけなかったのよ。この役立たずめ。って」
天乃「なら、夏凜は役立たずね」
夏凜「は?」
想定していなかった返しに素の声を返して、困惑した表情を見せる夏凜に
天乃は静かに目を向けて
天乃「皆がいても、そこに夏凜はいないもの。貴女に対する寂しさだけは、誰も埋めてはくれないわ」
夏凜「……悪かったわよ。でも、あんただって大赦に捕まったんだからお相子ってことにしてよね」
仕方がない。しょーがない
そう言い合って、苦笑して、そっと身を寄せて
手を握り合わせる
人目につくこの場所では、これが限度
でも触れ合えるというだけで、意外に満たされるものだった
若葉「友奈と東郷は何かあったのか?」
風「ちょっと遅れるって言ってたわよ。バーテックスで調子狂って浴衣の準備忘れたって」
若葉「何も無理に着てくるこ――っぅわっ!?」
言いかけた瞬間後ろからぐっと押さえ込むような力に襲われ、思わず声を上げると
おんぶしろと言わんばかりにのりかかっていた歌野が「ソーリー」と悪びれも無く謝って、背中から飛び退く
若葉「急に現れたかと思えば……」
歌野「それは言っちゃノーだよ。乃木さん。好きな子の前では、良く見せたいものだからね」
びしりと言って決めて見せた歌野に、若葉は確かにと感心して息づく
若葉も少しはそう思うことはある
遠慮したものの貸し出されて着てしまった浴衣ではあるものの、
天乃に「うん、似合ってる。瑠璃色はなんだかきりっとしてて若葉らしい」と嬉しそうに言われたときは
自分も嬉しく思ってしまった
若葉「そ――」
千景「ついさっき藤森さんに聞いたばかりでしょう。白鳥さん」
若葉「え?」
良いことを言うなと感心して称えかけたところで、
すぐ後ろから聞きなれた声が聞こえて振り向くと、呆れた様子の千景が姿を見せていた
残念ながら、浴衣は着ていないようだ
歌野「ワット!? 裏切り!?」
千景「私は言わない約束してないわ」
歌野「ぐぬぬっ」
球子「千景に焼きそば奢る約束しないからだぞー」
千景「土居さんやめて……まるで私が食い意地はってるみたいに聞こえるから」
球子「冗談冗談!」
そう言って苦笑する球子から若葉へと目を向けた千景は、上下に視線移動させて、頷く
千景「似合っているわ。乃木さん」
若葉「そ、そうか? なんだか千景に褒められると照れくさいな……」
千景「その堅苦しい口調でさえなければ、良い女性だと思うわ」
若葉「な、なんなんだ。そんな褒めても私はなにも――」
いつも違って積極的に声をかけ
優しく明るい声で褒めてくる千景の言葉がこそばゆくて
耐え切れずに赤面して退くと、千景は悪戯っぽく笑みを浮かべて若葉を見る
千景「純粋な感想よ。綺麗は綺麗。可愛らしいは可愛らしい。こういう時くらい、素直に感想を言っても罰は当たらないでしょう?」
若葉「……それなら千景も浴衣を着ればよかっただろう。きっと似合ったぞ」
千景「着替えるのが億劫だったのよ。私の過去を知る貴女なら理由もわかるかもしれないけれど、綺麗な体ではないから」
若葉「そうか」
きっとそれは誰も気にしないことだろうけれど
本人が見せたがらないのなら、無理強いはするべきではない。と、口を噤む
記憶の中の千景とはまったく違う郡千景という少女
だが、やはり、それは間違いなく千景本人で
仲良く出来なかった分、仲良くできていることが若葉は嬉しかった
風「それにしても、これだけ揃って男が0って結構あれよねぇ」
樹「お兄ちゃん呼ぶ?」
夏凜「カメラマンとしては優秀そうね……」
困ったように切り出した樹の傍ら、疲れを感じさせる声色で呟いた夏凜は
どこかにいる可能性すらあるけど。と
怖いことを言い出して、「まさかねー」という言葉が木霊する
けれども実際にはありえるんじゃないかなと、天乃は思い、見渡せば
みんなも周囲を警戒するように見て、一息つく
友奈「ごめんなさーい!」
天乃「あら」
車ではなく、徒歩で車椅子を押しながら近付いてきた友奈は
合流すると大きく息をついて「お待たせしました」と会釈する
東郷も申し訳なさそうに「ごめんね友奈ちゃん」と言いながら、みんなに謝ったけれど
仕方が無いことだと、みんな解っているから責めることはない
浴衣の準備が滞ってしまったのもそうだが、
ここまで車で来ると、送迎は大赦が手配するために天乃が見つかる可能性が高く
途中下車してここまで来る必要があったからだ
途中で水を差される可能性があるにしても
最初から再会さえ頓挫させられるのは誰も望まない
風「さて、それじゃ張り切って食べるわよー!」
友奈「おーっ!」
歌野「部長らしいわね。さすがリーダー!」
手を叩き合わせて注意を引いた風の元気の良い声に、
友奈や歌野が賛同して
千景「食べる以外にもすることはないの……?」
千景がやや呆れたように呟くと、隣に並ぶ樹が少し考え込んで屋台を指差す
樹「金魚すくいとか、射的とかもありますよ」
総勢10人の大所帯での夏祭り
騒がしくなりそうではあるけれど、お祭りなのだから多少騒いでも問題はないだろうし
それぞれのやり取りを見ていても、幸せな気分になれる
天乃「千景と樹って、意外に仲が良いの?」
比較的仲良く見える千景と樹の後姿を見つめながら、問いかけると
すぐ後ろ、車椅子を押す夏凜から答えが転がり落ちてくる
夏凜「樹があんたみたいに放っておくのが不安なタイプだから鍛錬の時良く見てるのは見るわ」
天乃「私のようにって何よ。私のようにって」
夏凜「そのままだっての」
茶化すような、笑い声。
懐かしい場所からの聞きたかった声に、天乃はむっとしながらも笑って頷く
天乃「今日は夏凜のおごりね?」
夏凜「はいはい。お任せ下さいお嬢様」
天乃「もうっ、馬鹿にしてるでしょ」
夏凜「そりゃするわよ。憂さ晴らしで」
苦笑しながら言うと「もうっ!」と一際大きな声が上がったけれど
夏凜は気にせずに笑いながら「ごめんごめん」と謝る
悪戯をしたくなる、意地悪を言ってみたくなる
本心を隠すつもりは無いけれど、そのほうが面白おかしくお祭り気分のような気がして。
なにより、本気じゃなく怒った天乃の表情は
笑顔の次くらいには好きだったから
夏凜「食べに行くか、ゲームするか。どうする?」
1、チョコバナナ
2、たこやき
3、焼きソ……うどん
4、射的
5、金魚すくい
6、水風船
7、りんご飴
8、仮面売り場
9、輪投げ
0、夏凜にお任せ
↓2
7
0
では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
安価スレじゃなくなりかける日常回は危険です
天乃「夏凜に任せるわ」
夏凜「そっか……」
夏凜「じゃぁ、あそこによさげな城っぽい建物あるんだけど行ってみる?」
天乃「あら、ほんと。洋風だけどキラキラしててお祭り会場の一つみたい。どんなところなの?」
夏凜「い、行けば分るから」
杏「とか!」
千景「貴女……なぜ出てきているの?」
杏「決まってるじゃないですか。そこに愛すべきものがあるからです」
乙
別に祭りの帰り泊まってもいいのよ?
乙
ホテルなんか行ったら沙織のNTRシーンに遭遇しそう
いや祭りでも危ないけど
乙
安価スレなのに十数レス安価が無い異常事態
日常回書きたかったんだろうなって
それよか樹と千景とかヤバくない?夢広がるんだけど
乙
平日で久々に長く読めて嬉しい
久遠さんと夏凜ちゃんがようやく再会できたり若葉と千景が大分打ち解けてたりで見所満載だな
乙なのです
そうかこれ安価スレだったな
乙
では、少しだけ
きてたか
天乃「そうねぇ……」
夏凜「なんか嫌な予感がする」
天乃が考え込むようにぼそりと漏らした段階で、夏凜は何かを察して呆れたように溢す
あら何の事かしらと恍けて見せた天乃は楽し気に笑みを浮かべていて
ほらやっぱり、と、夏凜は息づく
もちろん、そこには嫌悪感も不快感もない、ただのため息だ
夏凜「私に任せるとか、そう言うやつでしょ?」
天乃「流石夏凜、分かってるっ」
夏凜「はぁ」
嬉しそうに、楽しそうに、子供のように
今まで感じる事の出来なかった事
心の底から触れることが出来なかったことに触れられた喜びを表現して見せる天乃の無邪気な笑み
そこには心配させないように。という無理はなかった
本当に楽しもうとしていると分かる。自分の今までの日常から、非日常への切り替わりを受け入れようとしている
それが、夏凜にははっきりとわかる
夏凜「私より年下に見えるわ、あんた」
天乃「そうですか? 夏凜先輩」
夏凜「そーいうところがよ」
茶化して言う、子供っぽい笑み
年相応という丁度良い感覚が分からないのかもしれない
もしかしたら、天乃の楽しむ部分はその子供っぽいところで止まったままだったのかもしれない
そんな余計なことを考えそうな頭を振るようにあたりを見渡して、足を向ける
夏凜「良いのあった。とりあえずあれ買うわよ」
天乃「お祭り始まった瞬間に買うのがこれなの?」
夏凜「店主が怒るわよ。そんなこと言うと」
店内―と言っても野ざらし―に並ぶ商品一覧をじっくりと眺めながら、
横から飛んできた言葉に適当に答えて、ちらりと目を向ける
夏凜が初めに立ち寄ったのは、お祭りでよくよく見かけるお面を売っているお店だ
確かにお祭りに来てすぐに来るようなお店ではないのはそうなのだが
夏凜としては、真っ先に来ておくべきだったと今更ながらに思う
夏凜「これで良いか」
定番……と言っても良いのだろうか
九尾がいれば若干喜びそうな狐のお面
それを手に取った夏凜は店主にお金を渡すと、天乃の頭に付けて少し顔を覆う
夏凜「付けてなさい」
天乃「見えにくいんだけど……」
夏凜「どこにあいつらが居るか分からないから仕方ないでしょ。予防よ。予防」
一旦頭から外してお面をまじまじと見つめた天乃は
それもそうね。と夏凜の申し出を受け入れて――
夏凜「お金は要らないわよ。奢るって言ったでしょ」
天乃「そう……? ありがと」
財布を取り出しかけた手を制され、大人しくお礼を述べる
奢って貰うというのは本気ではなかったのだが
本当に奢って貰えたことが……いや、違う。と天乃は仮面をつけて、素顔を隠す
天乃「…………」
ちょっと、体が熱い。きっと顔が赤い
嬉しさに心が躍って、火照っているのだろう
百円程度の【プレゼント】だとしても、夏凜からのものだと思うとお金をかけたプレゼントよりも嬉しいと思えたのだ
天乃「似合ってる?」
夏凜「顔全部隠した似合ってる? ほど答えにくいものはなさそうだわ」
狐に浴衣が似合うかどうかが聞きたいのかと
少し呆れたように言った夏凜はお面を斜めにずらして素顔半分、晒させる
天乃「っ……」
ほんのり赤みがかった頬、光りを嫌う生き物のように、
視界が開けた瞬間から横へ逃げ出す天乃の瞳
ちらりと夏凜を見て、また逃げる
そんな愛おしさを覚える姿は、夏凜から何もかもを奪い取って……
夏凜「……可愛い」
無意識に言葉を引っ張り出す
天乃「!」
夏凜「あ、え、あ、いやっ! 」
天乃「ちが、に、似合うとか! そういうっ!」
夏凜「そーっ! そーよね。そう。あー」
無意識に近づいていた距離を弾けたように引き離して、
夏凜と天乃は互いに別方向に顔を背けて、天乃はお面をかぶる
夏凜「…………っ」
何をいまさら焦る必要があるのだろう
何をいまさら恥ずかしがる必要があるのだろう
何で今更、こんなにも……
戸惑う夏凜は自分の胸元に手を宛がって、息をつく
全く落ち着く気配がない
無意識だったのだ。何かを考えるようなことさえできずに
まるで呼吸をしただけのように「可愛い」と零してしまったのだ
それが、無性に恥ずかしかった
恥ずかしがる必要はないというのに。
もし仮に焦るのだとしても、それは天乃だけで良いはずなのに
夏凜「はぁ……ぁー……」
天乃「ね、ねぇ。夏凜。私、今とても気になることがあるんだけど」
夏凜「ん?」
付けたお面を少しだけ捲って夏凜へと振り向く天乃は、
夏凜の視線を感じてから、周りを見渡して夏凜へと視線を戻す
天乃「皆は?」
夏凜「私達が勝手に外れたから……ってわけないか」
連絡を取ろうと取り出した端末には風からの連絡が回ってきており
花火の時間までは自由行動にしよう。という提案がでかでかと表示される
気を利かせたわけではない……と、思うけど。
夏凜「ま、しょーがない。こんな祭り会場だし、各々好きに歩くのも良いんじゃないの?」
天乃「そうね」
全員で固まって歩くのも良かったけれど、勝手にはぐれたのは自分達で、
そもそも、夏凜も言ったが各々行きたい場所はあるはずだから
単独行動ならともかく、少なくとも2人以上で固まって歩いているなら、問題はないだろう
天乃「ねぇ、夏凜。次はどこに行く?」
夏凜「次か……」
人ごみで遠くまで見渡すことのできない祭り会場
よくよく見えるのは食べ物が売っているところだが……
天乃とて、空腹になることはある
けれど、何を食べても天乃には何も感じ取れない
ただ食感が伝わるのみで、その味覚は……
しかし、それは友奈も一緒だ
風と一緒に愉しむ素振りを見せてはいたけれど、食べるたびに自分の喪失を実感する
その辛さを分かち合うことは出来ない夏凜は
少しばかり罪悪感を感じて、首を振る
そんなこと、天乃は望んでいない
夏凜「射的でも行くか」
天乃「あら、夏凜先輩の手腕の見せ所ねっ!」
夏凜「どちらかと言えば東郷の見せ場だけど、やってやるわ」
そんなことを考えるくらいなら、楽しもう
勇者であることなんて、忘れて楽しんでしまえば良い
そうすれば、天乃も楽しませることが出来るのだから
天乃「あらっ、千景に樹じゃない」
千景「静かにして、集中しているの」
天乃「うん?」
射的の屋台に向かうと、人ごみで見えなかった二人の姿が見えて、
こんなところで。と声をかけた天乃のことを横目に、千景が冷たく言い放つ
狙っているのは屋台にあるぬいぐるみだ
その傍らでは樹が少し申し訳なさそうにごめんなさい。と呟く
夏凜「どうかしたわけ?」
樹「それが――」
身を寄せて囁く夏凜に対し、樹も近付いて事の顛末を話す
自由行動をして良いといわれた樹は、すぐ傍にいた千景と行動することにしたのだが、
何をしようかと考えている最中に、この射的の屋台を見つけたのだという
そして、千景が現在進行形で狙っているぬいぐるみを見つけた樹が、
あんなの取れるんですか? と千景に聞いたところ
屋台のおじさんが「そう簡単には取れないぞ。やめときな」と煽って
千景「その言葉、買ってあげるわ」
と、見事に乗ってしまったらしい
夏凜「これから?」
樹「いえ、すでに1回分の6発は使ってます」
天乃「ぬいぐるみを狙ったんじゃないの?」
樹が差し出した3つのお菓子をひとつ手にとって天乃が言うと
樹は「銃の試し撃ちです」と千景を見て言う
どうやら、本命を狙う前にどれだけ狙いとずれるのか、
火力というべきか、威力はどのようなものか
それを図るために、お菓子を三段階で狙って落としたらしい
千景「ぬいぐるみ自体に触れれば、落とし方も模索しやすいのだけど」
夏凜「……遊び、よね?」
千景「馬鹿なこといわないで三好さん。落とせないだろう。とこの人は言ったのよ。そのまま見下されて終わるなんて絶対に許せない。本気でやるに決まっているわ」
夏凜「わ、悪かったわ」
人さえも殺すような勢いで見つめられた夏凜は、怯えることはしなかった―トラウマにある本気の殺意よりは軽い―ものの
呆れ混じりに謝って、行く末を見守る
千景「いくわ」
小さく呟いてコルクの弾を一つ手に取り、指で遊び感触を確かめてから銃口に詰めると
千景はゆっくりと姿勢を屈める
弾をおいてある机の中央に引いたラインを肘が超えてはいけない
どこまで突っ伏していいのかはすでに警告を受けており、罰則は受けていないが
それで撃ち落としても景品は貰えない為、超えないように確認して、身構える
千景「――ふぅ」
普通の小さな景品ならば左下などを狙うのが鉄板ではあるが、ぬいぐるみとなれば話は別だ
左下に当てたところで、びくともしない
もちろん、そんなものはどこを狙ってもほぼ共通だろうけれど。
体の中を巡っていた空気を吐き出して、狙いたい場所から僅かに右下を狙う
そうしないと狙った位置よりも左上に行ってしまうため、撃ち損じる
これがこの銃の特徴だ
使い古されたせいか、打ち出す勢いが一部死んでいる
ほかの銃も試そうとは思ったが、手に取った相方はこれなのだから、これで行く
千景「まずは、鼻よ」
狙いを定めて、深呼吸。息を止めて数秒……
そして――引き金を引く
千景の醸し出す雰囲気、真剣さには見合わない軽い音がぽこんっと鳴って
吸い込まれたようにクマのぬいぐるみの鼻先に命中する……が、びくともしない
夏凜「全然動かないじゃない」
千景「想定内よ。三好さん。これで照準の設定が完璧だと解った。あとは弱点を見つけて当てるだけ」
撃った側の千景は冷静に答えてコルクをもう一つ抓んでころころと指で遊ぶと
別のコルクを抓んで玩び、それを銃口に詰め込む
千景「これは取り替えて。側面が削れているから空気が抜けるわ」
「お、おう……」
天乃「凄い真剣ね」
西暦時代の千景もきっと、あんな問題が無ければみんなとこうして楽しんでいたはずだ
そう思うと、少しだけ切ない気分に浸りそうにもなるし
西暦時代のみんなを呼ぶほどの余力を残せなかったことが、少しだけ悔やまれるが
今、こうしていられるのを見るとその分温かい気持ちにもなる
千景「体は弾かれる。手は太いけれど下に重い。顔に撃ってもびくともしない」
銃を構えることなくクマのぬいぐるみを隅々まで見定める千景はぼそぼそと呟きながら
少し試してみるほうが良いわね。と、呟くや否や身構えて――即射
放ったコルクは熊のぬいぐるみの耳の付け根に直撃して、ミリ単位で動いたように見えた
千景「その耳は柔らかくないのね……流石クマ。めり込むよりも抵抗感が欲しかったのよ」
満足げに言う千景だが、その表情は浮かない
というのも、ねらい目が見つかったとしても圧倒的に火力が足りないのだ
一人で二丁も不可能ではないが、その場合は照準が合わせ辛くなる
千景「三好さん。貴女、射的の経験は?」
夏凜「無いけど」
千景「話にならないわ」
夏凜「ちょ――」
千景「久遠さんは?」
天乃「多少なら。でも、千景の足を引っ張ると思うわ」
声をかける理由を察した天乃は、申しわけないけれどと辞退する
もちろん、言ったように出来ないわけではないが千景と釣り合うとはとても思えないのだ
単なる勝負事なら受けて立つ所存ではあるが、景品を落とす真剣勝負ならば――
「すみません、私にも一回分」
すらりと白い手が挙がって、呆然とする店主の目の前の机に200円が置かれ
机の上の一丁が借主の手に落ちて、コルク弾一つがキュキュッっと詰め込まれていく
友奈「東郷さん、頑張ってー」
東郷「ええ、もちろん」
友奈の可愛らしい声援を受けて、闖入者の東郷美森は試射といわんばかりに構えると
手ごろなお菓子を撃ち落して、横に並ぶ千景を見上げる
東郷「実力はこの程度で十分かしら?」
千景「……流石ね」
声には出さなかった
けれど、千景は確実に笑みを浮かべて頷きターゲットであるクマのぬいぐるみを指差す
東郷は千景の言葉を聞きうけて、これはどうかと聞いて、考えて
確実にクマを撃ち落とす方法を思案していく
友奈「あ、久遠先輩。これ食べますか?」
天乃「色々買ったのね」
わたあめ、りんご飴、たこ焼き
色々と手首にぶら下げる友奈はその中からわたあめを取り出して差し向ける
天乃「……ありがとう、貰うわ」
友奈「はいっ、どうぞ。あーん」
樹「友奈さっ」
天乃「あむっ」
友奈の手から受け取ることなく一口咥えて、溶かしていく
甘い匂いだけのわたあめは味を感じないが、溶けきらなかった砂糖のざらついた食感は確かに感じて
天乃「あら、美味しい」
友奈「えへへっ、このざらってする部分が良いんですよ」
無理をしていた頃とは違って、本当に、ただ、美味しいと感じた
友奈も味覚がなくなってしまっているのに、楽しそうで、おいしそうで
自分だけじゃないという救われた部分があるのかもしれないが
それはやっぱり、誰かと一緒に居られるからだと、天乃は思う
樹「うむむっ」
夏凜「張り合うな張り合うな」
餌づけというと聞こえが悪いかもしれないが、友奈が天乃に食べさせることができたのが羨ましいのだろう
自分もと考えているだろう樹に声をかけて夏凜は息づく
友奈も天乃もいろんな意味で子供なのだ
だから、大人では少し恥らうようなことも、この2人の間では特に気にすることも無く行えてしまう
もっとも、天乃のことだから誰が相手でも平然と出来てしまいそうではあるのだが。
その一方、裏側で力を合わせてクマを撃ち落そうとしている2人はどう撃つのかを決め終えて、身構えると
射的をしにきた子供達の「がんばれー!」という声にみんなが振り返って2人を見守る
たかが遊び、たかが射的
そうと言わせない真剣な雰囲気を醸し出す2人の一息が零れて、店主が息を飲む
千景「……行くわ」
東郷「了解」
すでに構えた2人は声を掛け合って――一つ目が放たれた
変わらない乾いた音ではあったけれど、その開始の合図がみんなの視線をひきつける
飛び出したコルクは寸分違わず耳の根元にぶつかって勢いを吸収させて
そこから秒単位遅れることなく二発目―東郷の一発目―が同じ場所に直撃する
「おぉっ!」
「すげぇ!」
2回の直撃はクマのぬいぐるみを僅かではあるが、動かし、その隙を逃すことなく千景の2回目が放たれて、
今度は逆サイドの耳の根元に直撃し――また続けて東郷の二発目が同じところに着弾
クマのぬいぐるみの耳の根元は勢いを殺すことなく受け止めてくれるため、
上手く力を加えることができさえすれば僅かではあるが動かすことができるのである
そして、それを立て続けに、それも動く瞬間を逃さずに狙えば、倒せるほどに浮かなくても浮かせることは出来る
もちろん、それには2人の精密射撃と、弾を詰める速度、照準速度
様々なものが合わさっていなければいけないのだが……
東郷「切り込むわ」
5発撃った東郷は千景の4発目がぬいぐるみを浮かせたのを確認する前に、足元めがけて撃つ
これは賭けだ
千景が上手く当てることが前提
ぬいぐるみの下部がつるつるとしていないこと前提
微かな浮遊感が最高潮に達したタイミングで着弾してくれること前提
そして――銃口の大きさが浮かせた分よりも小さいこと前提
野次馬のみんなが、黙り込む
ただただ、2人の弾の行く末を見守って……東郷の小さな笑みが響く
千景「貰ったわ」
さっきまでのリズムを崩し、千景の【5発目】が東郷の弾を追いかけ、
東郷の弾がぬいぐるみの隙間に弾かれる瞬間に重ねて着弾
僅かに押し込まれたコルクはほんの一瞬ぬいぐるみに傾きを加える
東郷「郡さん、決めて」
千景「任せなさい」
東郷の銃、千景の弾、周囲の期待
様々なものを纏め上げて、千景の精密な一撃がクマのぬいぐるみの眉間を撃ちぬく
傾きを超え、足元に潜り込んだコルクが転がり落ちて重なるように、鈍く重い音がどさりと響いた
東郷「おめでとう、郡さん」
野次馬と化していた子供達の大歓声が上がる中で、東郷は嬉しそうに千景を称える
距離が遠かったわけではないが、決して近くも無かった
言ってしまえば、友人の友人。そんな感覚でさえあった東郷との協力
その完璧な仕上がりに、千景は首を横に振って東郷を見つめる
千景「千景で良いわ……ありがとう。あなたのおかげよ。東郷さん」
東郷「郡さん……ううん、千景さんの実力あってこそよ。最後の精密射撃。完璧だったわ」
称え合い、互いの協力の感謝を込めて手と手を合わせる
ただのお祭りだと、千景は舐めていたわけではない
けれど、別に参加する必要も無いのではないか。と思ってもいた
しかし、来て良かった。と、今は思う
「お嬢ちゃん、負けたよ」
普通のお店では1000円以上はするであろうぬいぐるみを店主から受け取った千景は、
少し困ったようにぬいぐるみを見つめて、東郷へと差し出す
千景「貴女はもしかしたら必要ないかもしれないけれど、受け取って貰えるかしら」
東郷「樹ちゃんのじゃないの?」
樹「いえ、私は大丈夫ですっ」
樹のために取ろうとしているのだと思っていた東郷としては、意外なプレゼントではあったけれど
東郷は「ありがたく頂くわね」と、千景から受け取ってぬいぐるみの頭を撫でる
2年前のあの日のことを彷彿とさせるようなクマのぬいぐるみ、
園子は今どうしているのだろうかと東郷は考えて、抱きしめる
ものはきっと違うだろうが、それでも、園子が欲しがって、有り金を使い果たして手に入れたぬいぐるみ
会いに行くことができたら、これを渡そう。思い出すことができたよと。忘れてごめんねと……
千景「……何があったのかは知らないけれど、使いなさい。せっかく取ったぬいぐるみが汚れるわ」
東郷「え、あ……ありがとう」
揺らぐ視界の中で遮るように渡された優しさ
それを目元に宛がって、悲しい思いを全てそこに注ぎ込んでいく
樹「嬉しかった……ワケじゃなさそうですけど」
天乃「色々とあるのよ。昔取り損ねた因縁のぬいぐるみ。とか」
夏凜「はいはい」
急に泣きだしたのだから、何かがあったのだろうとは思うが、
天乃がそこに触れずに冗談を言ったのにも理由があるのだろうと
天乃の誇張すると宣言しているかのような茶化した言葉を夏凜はさらりと流す
友奈「それにしても、東郷さんも千景さんも凄かったなー、私には多分出来なかったと思う」
夏凜「そりゃ、殆どの人が出来ないわよあんなの」
同じ場所に連続で当てたり、もう一人が撃つ間に弾を詰め込んで身構えたり
着弾のタイミングを見計らって後ろから当てたり
勇者として銃を扱っている東郷はまだしも、千景が出来たことが驚きだった
もっとも、千景は千景でこういったゲームには手馴れていたのかもしれないが。
天乃「夏凜ちゃん」
夏凜「ん?」
ニャーとでもいいそうな甘えた声に目を向けると
物乞いをするような手皿と満面の笑みが見えて
夏凜は「あー」と屋台をちらりと見て頬をかく
夏凜「残念、順番待ちだわ」
天乃「もうっ」
夏凜「しょーが無いでしょうが、見入っちゃってたんだから」
天乃「夏凜ちゃんの格好いいところ見てみたかったのにっ」
夏凜「人も多い負い無理だっての……とりあえず、時間はかかるだろうし射的は諦めて金魚すくいで見せてやるわ」
東郷と千景のパフォーマンスもあって人だかりが出来てしまっていた射的は、
やろうとしていた人が多く固まってしまったため、暫く空きそうには無いのだ
天乃「お菓子が食べたかったのになー」
夏凜「あーもぅっ! 解った、解ったわよっ! ちょっと待ってなさい」
友奈「あっ、夏凜ちゃ」
東郷「夏凜ちゃん、本当に久遠先輩には弱いのね」
樹「あんな甘えかたされたら、多分みんなしちゃうと……あ、戻ってきました」
割り込む勢いで射的の屋台へと戻っていった夏凜だったが
当然のごとく順番待ちするべきだと子供に言われ、不戦敗での凱旋となった
夏凜 判定↓1
天乃 判定↓2
※0最低9最高
※左から-3
※右から-1
※左と右合計値
※ぞろ目はマイナス補正無し
あ
ほい
夏凜 左:右=0:8 天乃 左:右=0:6
ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
すみませんが安価を出す機会が失踪しているので
しばらくえっち回のような非安価が続くかもしれません
出せそうなところがあれば差し込んでいきます
乙
別に一本道でもいいんだよ(グリーンダヨ
これ自体がひとつのイベみたいなもんだし
乙
いちゃラブがあるならなんでもいい
乙
ぐんちゃんめっちゃ輝いてる…
できることなら生前も助けてやりたかったなぁ
乙
ゆゆゆいで見たかったのはこういうのなんだなって
友奈ちゃんのあーんにあーんする久遠さんとか最高かよ
安価スレなのに安価なしで許されるとかマジか
普通荒れると思うが
では、少しだけ
やったぜ
友奈「自由行動とは言われたけど、結局集まっちゃったね」
樹「久遠先輩ある所に勇者部アリ。ですね」
天乃「そんな私は夏凜のいるところにいるわよ」
夏凜「今日は、でしょ」
責任があるわけではないけれど
たらい回しにされてきた何かをそのまま受け止めて、息づく
天乃は車椅子だから、人ごみに紛れていてもどうしても空間が出来てくる
それが目立ってしまうというのもあるのだろうが、
一度合流してしまったら離れたくないというのが本音だと夏凜は思う
夏休みになる前は、平日は毎日会うことが出来ていたけれど、
夏休みに入ってただでさえ会えなくなったにもかかわらず、
大赦に捕まって連絡さえ取りづらくなってしまったのだから
会える時に会いたい、出来るだけ長くと求めてしまうのだろう
天乃「夏凜が堂々と私を捨てる発言を……」
東郷「当家はバリアフリー等行き届いておりますので、ぜひ」
天乃「東郷……っ!」
ぐすりと嘘泣きをして見せた天乃の手を掴んで誘う東郷の言葉に、
天乃は告白を受けてうれし泣きをしたかのような雰囲気で、名前を呼ぶ
天乃「嫁ぐわ」
友奈「わーい、私も嫁ぐー!」
東郷「ふふっ」
夏凜「なにその顔煽ってんの?」
ドヤッと漫画的な効果音でも付きそうな東郷の自慢気な表情に、
夏凜は本気ではなく怒りをにじませた呆れ顔で呟いて、付いて歩く樹は千景へと目を向ける
けれど、千景は見ていなかった
目を逸らしていた……茶番から。
樹「良いんですか?」
千景「真面目に付き合うと疲れるわ……毎日見てる私としては、だけど」
付き合うことも吝かではないし、
疲れると言っても嫌な疲れではなく、
休日を満喫した後の満足が出来る、納得できる疲れではあるけれど
どちらかと言えば、千景は見ている側の方がなんとなく好きだった
当然、淫らな行為の最中を見るのは遠慮するけれど。
樹「私は羨ましいです。久遠先輩と中々会えないので」
千景「…………」
少し寂しげにいいながら、樹は天乃の背中を目で追って、
それを見る千景は2人を交互に見ながらため息をつく
特に姉から任されたわけではないし
これと言って世話をかけなければいけないというものも千景には無い
けれど、放っておくのは気が引ける
過去の自分もそう言う人間だったのかと、気にはなってしまうが……
千景「なら、今行って来ると良いわ。久遠さんなら受け入れてくれること。私よりも樹のほうが解っているはずでしょう?」
樹「……はいっ」
満面の笑みを浮かべて、タタタッと子供らしく駆けていく
ほんの短い距離を詰めた樹は夏凜と話す天乃の隣からぐっと身を寄せて声をかける
傍から見れば夏凜と天乃の邪魔を知ったようにも見えるけれど
その場の誰も、邪魔だとは思っていない
だから、険悪な雰囲気にならないし夏凜も天乃も樹も、話し声は弾んで笑みが零れる
夏凜「天乃、こっち」
樹「あっ、金魚すくいですか?」
夏凜が足を止めて、少し遅れて足を止めた樹たち
子供が奮闘する金魚すくいの屋台を前に袖をまくった夏凜は、
樹に天乃を委ねて店主に声をかける
夏凜「一回分」
器とポイと呼ばれるすくう道具を受け取り、子供達に混じって金魚の泳ぐ簡易水槽を覗き込む
小さな赤い金魚が数十匹泳ぎ回り、その中に混じって大きな金魚。出目金と呼ばれるのが赤と黒の十数匹泳いでいて
夏凜の影が入り込んできたからか、四方に逃げ惑う
夏凜「見てなさい、私の力ぁっ!」
太鼓を打つように右腕を振り上げた夏凜は、勢い良く振り下ろす
友奈「それじゃ――」
千景「違うわ結城さん、あれは……ただ適当な動作じゃない」
水に入ったとたんに敗れてしまいそうな速さ
それじゃダメだよと言いかけた友奈の傍ら、千景だけは理由を悟ったように割って入る
千景「見てなさい」
千景に言われ目を無得たのと同時に、夏凜は水面に対して斜めにカットを入れ、衝突の勢いを軽減
かつ、その速度を残したまま水面に近いところを泳いでいた小さな金魚を器へと弾くように招く
その時間、5秒にも満たない神速のテクニック
喜ぶよりも驚いた表情を見せる友奈に千景は笑みを浮かべて「言ったでしょう」と呟く
千景「ただゆっくり入れるだけでは、金魚の泳ぐ水の動き、設置されたポンプによる酸素の流れに左右されやすい紙は簡単にダメージを追うのよ」
けれど、夏凜はいきおいをつけながら斜めに切込みを入れて
一部を水につけるだけではなく、全体をほんの一瞬で水中に差し込んですれ違うように金魚を掬い取った
そのおかげで紙には大した負担も無く1匹目の獲得に至ったのだ
千景「射的ではダメだと思ったけれど……見直したわ」
天乃「なんか良く解らないけど千景が意外とお祭り好きなのは伝わってきた」
千景「そんなことは、ないけれど……」
天乃「あるわよ。良く笑っているし」
思わず語ってしまった千景は天乃の嬉しそうな笑みが自分に向けられていることに気づいて、ふいっと目を逸らす
ときめいてしまったわけではない、と、千景は思っているが気恥ずかしさは感じてしまう
若葉と違って、天乃の笑顔のためにと奮闘してるつもりは無いが
それでも、自分の言動に喜んでもらえるのは、嬉しくて
友奈「千景さんもどうぞっ」
千景「?」
友奈の持つ小さな箱―射的で東郷が落としたお菓子―から転げ落ちた一粒
鮮やかな紫色のそれを見つめていると、
友奈が「フーセンガムです」と、笑みを見せる
鍛錬に対して真剣に打ち込んでいる姿を知っている分、
無邪気な笑顔を見せる友奈の姿はどこか、安心できるような気がして
千景は「ありがとう」と、口に含む
安いお菓子特有の初めの濃さと後味の薄さ
少しは大人の千景の口には美味しいと言えるようなお菓子ではなかったけれど
それでも、美味しいと思うことが出来てしまう――
天乃「ほら、また笑ってる」
千景「っ!」
天乃「いいのよ。笑っても。私は好きだしもっと見たいわ」
天乃は微笑む。嬉しそうに
自分のことではないのに自分のことのように
いや、きっと自分のことなのだ
天乃にとっては、みんなの喜びが自分の喜びなのだ
そう、解っていたはずなのに。
夏凜「なーにくどいてんのよ!」
天乃「ひゃぁっ!」
金魚入りの袋を頬にぶつけられた天乃が悲鳴を上げて
少し怒った様子の夏凜が眉を引きつかせながら、不敵な笑みを浮かべる
夏凜「なーにが見たいってぇ?」
天乃「え? えーっと……千景の、笑顔?」
東郷「夏凜ちゃんの格好いいところは良かったんですか?」
天乃「あっ、あー……それはいつも見てるからっ」
手を合わせてにっこりと笑みを浮かべる天乃の目の前
袋を持つ夏凜はぽりぽりと頬をかいてはにかむ
傍から見れば、満更でもなさそうな様子だが。
夏凜「そ、そう……」
天乃「うん、そうなの」
夏凜「――っで、言うことある?」
天乃「……ごめんねっ」
夏凜「許すかっ!」
ぺろりと舌を出す天乃の頬をぎゅっとつまんで、もにゅもにゅと玩びながら
夏凜はふざけたこと言うのはこの口か! と、ちょっぴり怒る
もちろん本気ではないのは丸解りなのだが。
樹「夏凜さん頑張って出目金獲ったんですけどね」
東郷「ふふっ、どうだ見たか!って振り返ったときに見てなかったからもう……ふふふっ 」
取れるとは思っていなかった大きな金魚が取れて自慢げな顔をして見せたのに
見るべき相手が見ていなかったせいで羞恥心で顔を真っ赤にしていたのを見ていた東郷は、
思い出して笑うと、ゆらりと影が迫って隣の樹が「と、東郷先輩」と怯えた声を出す
恐る恐ると見上げれば、天乃を弄り倒した手をわきわきと動かす夏凜が、見下ろしていて
夏凜「なに笑ってるのよ、東郷」
東郷「夏凜ちゃん……い、いつもと雰囲気違うような……」
夏凜「はっ、笑わせるんじゃないわよ東郷。赤っ恥かいたままで私が終わると思ってんの?」
東郷「ゆ、友奈ちゃ」
とっさに助けを呼ぼうとしたが、視界の端に映った友奈は「ごめんね」と手を合わせていて
夏凜「諦めろ!」
東郷「ひゃあん!」
無防備な首筋にペタリと冷えた手が触れて、東郷は思わず悲鳴を上げてしまった
千景「助けなくて良かったの?」
友奈「夏凜ちゃんも東郷さんも遊びなのは解ってますから」
助けなくても何か変なことが起きたりするわけでもなくむしろ、楽しくなれるだろう
そう考えたからこそ、友奈は助けを断ったのだろう
夏凜の攻撃に悲鳴を上げて少し恥らう東郷の姿を友奈は見つめて、笑みを浮かべる
友奈「……良かった」
千景「…………」
さっき泣いていたから
だから、東郷のことを心配していたし、笑えるのかどうか心配にもなっていたのかもしれない
そう思いながら、千景は友奈に声をかけることなく、納得したように息づいて第一の被害者の天乃へと声をかける
千景「久遠さん、金魚すくいやるなら手を貸すけれど?」
天乃「あら、良いの?」
千景「久遠さんが望むなら」
天乃は車椅子だから、
射的はともかく金魚すくいなどのしゃがまなければいけないような遊びは誰かの手を借りたりしなければ出来ない
だから遠慮しているだけで
本心では天乃もお祭りのゲームには参加したいのだろうと千景は思ったのだ
天乃「じゃあ、お願いして良い?」
千景「ええ」
迷惑ではないのかどうか、
今までは聞いてきたその言葉を天乃は使わずに、
ただ、千景の申し出を嬉しそうに受け取ってお願いすると
両手を差し出して、笑みを浮かべる
だが、千景はすぐには動けなかった
千景「…………」
天乃「千景?」
千景「え?」
天乃「だっこして? じゃないと車椅子からも降りられないから」
千景「そ、そう……ね。解ったわ。抱き上げるから気をつけて」
そんな当たり前のことは解っていたはずで
困惑する理由などどこにも無かったはずなのに、
一瞬躊躇ったことにおどろきながら天乃の体に触れると、
耳元に差し掛かった天乃の唇が小さく息を吐く
天乃「……見惚れちゃった?」
千景「っ!?」
天乃「きゃぁっ」
ほんの十数センチ浮いていただけではあるが、
耳元でぼそりと囁かれた千景が抱き損ねた天乃は
車椅子に尻餅をついて、ガタンッと傾いた勢いに思わず悲鳴を上げる
千景「み、見惚れたなんて……貴女は、なにを言って……」
天乃「じょ……冗談のつもりだったんだけど」
涙を目元に溜め込んだ天乃は困った表情で言って、ごめんねと続けるが、
動揺する必要も無いことで抱き損ねたのは自分だと千景はそれを拒絶して、「悪かったわ」と、呟く
夏凜「何してんのよ」
千景「わた――っ!」
怪訝そうな顔つきで近付いてきた夏凜は千景の顔を覗きこむや否や、
少し心配そうに千景の前髪を掻きあげて額に手を宛がう
良くある、熱があるのではないか。という状況だと理解するのは早かったが、
驚きこそすれ、すぐには動けなくて
夏凜「熱は無いわね……まったく。天乃が口説くから」
樹「また口説いたんですか?」
東郷「千景さん、大丈夫ですか?」
天乃「え、私が悪――」
夏凜「どう考えてもあんたよ。違うと証明したいなら、勝負よ天乃!」
刀を抜くかのように、ポイを天乃へと差し出して夏凜は笑う
夏凜「今までいろんなもので負けてきたけど……今度は勝たせてもらうわ」
天乃「夏凜との勝敗関係なくない?」
もう……と少しばかり呆れたように漏らした天乃だったが、
すぐに苦笑して千景へと目を向けると、「ごめんね」と言う
千景「…………」
恋愛対象ではない。それは確実だと千景は思う
けれど、笑顔を見るとドキドキとしてしまう
温かくて、優しくて……そう、嬉しくなってしまう
悩む千景の視線の先には、敷物の上に膝を付く天乃の姿があって
水都「どうかしたんですか?」
千景「!?」
不意に声をかけられてビクリと飛びかけると、
震えた肩を押さえ込むように誰かの手がかけられて、顔が伸びる
歌野「そんなに驚かなくても」
千景「気にしてなかったのよ」
歌野「それはアウトオブ眼中。的な?」
歌野と話していると千景の心は落ち着いて、じわじわと上りつつあった体温も平常へと引き下がっていく
見惚れたというのは案外図星だったのではないかと、千景は思う
無邪気な笑顔が可愛らしくて、心が温かくなって、嬉しくなって
だから動きが鈍って……見惚れたの? という冗談にあんなにも驚いてしまったのだ
けれど、それが解っても疑問が残る
解決しなくても良いようなことではあるのかもしれないが、千景はどうせならと
歌野へと振り向いて
千景「白鳥さん、聞いても良いかしら」
歌野「ん? オーケーどんとこーい!」
大げさな態度
つまらない質問で申しわけないと思いながら、歌野を真っ直ぐ見て
千景「……恋をするって、どんな感じなの?」
水都「え゛っ」
歌野ではなく水都から本人とは思えないような声が漏れて
固まったように動かなくなった歌野は泳ぎだしそうな瞳を逸らして苦笑した
天乃「うーん……」
両足に力が入れられない天乃は、殆ど片手で自重を支えているため
適度に引き返さないとすぐに腕が疲れてしまう
どこを攻めるべきかと覗いては引き返し、視線を感じて顔を上げると
店主のおじさんと目が合う
天乃「どこか狙い目ありますか?」
「え、あ、お、おー……そ、そうだなぁ」
非常に不自然に目を逸らした店主はこのあたり。と、水面近くにまで金魚が近付いてきている部分を指差す
ありがとう御座います。と素直にお礼を述べて、さっき千景が言ったことを意識しながら身構える
素早く、斜めに、一部ではなく全体を浸す
天乃「えいっ」
斜めに切り込んだ網は水面に近付いていた二匹の金魚を確実に受け止めて、
ピシャリと跳ねるよりも早く持ち上がり、
なぜか、おじさんが押さえていてくれた器の中にしっかりと納まる
天乃「やったっ、二匹よ、二匹。ありがとう」
「お、おう……すごいな」
天乃は二匹だけでも嬉しそうに笑ってはしゃぐと、
パシッと店主と手を叩き合わせて、「見た見た~?」と友奈たちに話しかける
友奈「二匹って凄いよねっ夏凜ちゃん」
夏凜「はっ、こっちは出目金二匹取ってやるわよ」
樹「それは流石に……」
天乃の器にはまだ二匹だが、すでに8匹も捕まえている夏凜は、
堅実に積み重ねることを捨てて、出目金を狙いに行く
出目金を追い立てるように水面に浮かべた器を動かして、
段々と二匹の出目金の距離が近付き始めたところで、右袖をもう一度捲くり上げ
網を持ち、ゆっくりと肘を引いていく
夏凜「見てなさい樹、これが三好夏凜の実力ッ!」
樹「夏凜さんがお姉ちゃん みたいになってる……」
天乃「ほら、2人とも負けず嫌いだから」
夏凜「だから見てなさいよ、天乃っ!」
格好良く決めてやるからと宣言する夏凜に、天乃は嬉しそうに頑張れーと声をかける
そして――夏凜の口元がにやりと、動く
風を切って素早く動いた夏凜の腕。
元々網に付いていた雫が空中に取り残されて落ちていく中
ピシャリと微かな接触音が水面に跳ねて網が潜り込んでいく
その入り方は、今までに無く完璧だったと言っても過言ではない
いち早く察したのは網側にいる黒い出目金だった
直進しようとしていた出目金は真横の水が揺らぎ、切り込んできた網が視界に入った瞬間、
方向を無理矢理に捻じ曲げて半転する……が、
すぐそこにいた赤い出目金は接敵に気づいておらず接触
しまった。と思う間もなくうろこに覆われた肌に強引な力が加わって
そのまま押し込まれ、赤い出目金と再び接触し、なお弾かれることなく押し込まれて――
夏凜「なっ!?」
だが、運は出目金に味方した
とっさの判断で動かしたヒレが赤い出目金を刺激したために、赤い出目金が暴れだしたのだ
その瞬間、網側に押し込まれるように潰された黒い出目金のもう片方のヒレが
散々金魚を攫ってのけていた網の弱った部分を直撃し、貫通
そこでさらに味方したのが、赤い出目金の重さだった。
黒い出目金は水槽内の出目金の中で標準的な大きさであり、重さだったが、
赤い出目金は標準よりも大きく。そして重かった
その夏凜には致命的で、押しつぶされる黒い出目金には致死的で、
枝分かれする延命を大きく左右する差は、出目金に微笑んだのである
突き抜けたヒレを動かした瞬間、重みが一気にその穴へと落ち込んで網を突き破ったのだ
ヒレから先、出目金の体が。だ
そして、
浮かぶ器の縁を掠めて水面へと戻った出目金は急いで戻って、呆然とする夏凜を見上げる
その横で、天乃がふと息を吐いて
天乃「見たか、これが金魚の代表格。出目金の力だっ」
夏凜「うぐぐぐぐっ」
天乃「ふふっ」
夏凜「笑うなっ」
格好良く決めようとした分、恥ずかしい思いをした夏凜は結局、小さな金魚8匹
堅実に積み重ねようとした天乃は、夏凜ほど上手くいかず、6匹という結果に終わった
数字的に言えば夏凜の勝利だったのだが、夏凜としては納得がいかないらしい
夏凜「いけたと思ったのに……」
天乃「そういうときもあるわよ。楽しかったんだし良いじゃない」
優しくそう言う天乃は、しょんぼりと肩を落とす夏凜の横で、
手持ち袋に入れられかけた自分の金魚を水槽の中へと逃がして、器を返す
水都「せっかく取れたのに」
天乃「良いのよ。私は育てて上げられないし」
惜しむことも無く笑う天乃はちらりと夏凜を見て、そっと身を寄せる
夏凜「ちょっ」
天乃「腕が痛いから自力じゃ戻れないのよ」
夏凜「はぁ……ったく」
落ち込む暇もくれない天乃に呆れたようなため息を付きながら、
満更でもない様子で笑った夏凜は、天乃を抱きかかえて車椅子へと座らせる
その離れかけた手を、天乃は掴んで引く
夏凜「なっ」
体制が崩れて、天乃の肩のすぐ横にドンッと手ついたけれど
天乃は予め予想していた分、驚くことなく微笑んで耳元に口を近づける
天乃「……十分、格好良かったわ」
夏凜「っ」
これは慰めでも、お世辞でも、茶化したわけでもない
天乃が本当に思ったことだった
射的に真剣になっている千景や東郷にも格好良さを感じていた天乃としては、
たかが金魚すくいなれど、その一度の行動に対して本気で、真剣になっていた夏凜の姿は
とても格好よく思えたのだ
そして本心だからこそ、想いを抱く夏凜の心はしっかりと揺れるし、悔しさを包み込むことが出来る
夏凜「失敗、したんだけど」
天乃「うん、面白かったし、可愛かった」
夏凜「うぐっ」
天乃「でも、真剣な夏凜は十分、格好良く見えたわよ」
夏凜「……あっそ」
振りほどく前にするりと力が抜けていく天乃の手から逃れ、距離を開いた夏凜は
ほんのりと赤みがかった顔を隠すように背けて、横目に天乃を見る
夏凜「それなら、ま……しゃーない」
歌野「三好さん顔真っ赤でさっきの郡さんみたいね」
千景「私は違うわ……色々と」
そう呟いて話を終わらせた千景の横で、そういえば。と
思い出したように樹が天乃へと近付く
樹「久遠先輩無防備すぎですよっ、気をつけないと危ないです」
天乃「え?」
水都「屋台の人、胸見てたし……喜んでるとき揺れてたし、普通にタッチしてるし……」
歌野「あんなの年齢関係なしにドキドキするわ。かく言う私も、久遠さんの喜んでる姿は来るものがあったし」
指折りで罪状……のようなものを羅列する水都に目を向けた天乃は、
みんなのことを見渡して「そうなの?」と問う
無防備が本当に無意識で、天然であるのだと解るきょとんとした表情には、
流石の千景もお手上げのようで……
天乃「なんでため息つくのよ」
千景「察して、久遠さん」
いくつものため息が、重なった
ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間からですが、出来ない可能性もあります
何事もなければ明日で通常に戻る予定
店主「……ふう…………」シュルッ
大地「ばれずに済んだか。カメラは上手く撮れて……おぉっ、天乃がしっかりと写っ」
ヒュンッ!
大地「おっと、危ない」
若葉「おい店主、我が主をそのような邪まな考えで穢すことないよう……その記憶。掬わせてもらうぞ」
大地「ヤなこった!」ダッ
若葉「待て、兄上! 成敗してくれる!」ダダダッ
乙
あまちか良いよ良いよ
乙
兄貴は本当に化けていそうだから困るわw
夏凜ちゃんたちとの日常がマジ尊い
乙
安価スレとは(困惑)
みんなの関係の掘り下げ回だな…つまりそして地獄が訪れるんや
乙
では、すこしだけ
よしきた
天乃「花火の時間って、まだ大丈夫?」
夏凜「まだ時間はある……わね」
言いながら端末で時間を確認した夏凜は、
もう一度「大丈夫そう」と改めて言って辺りを見渡す
花火の時間が近づいてきたからか、来た当初よりも人の数が増えているようにも見える雑踏の揺らぎ
不意に立ち止まると、後ろから来た誰かの肩が体にぶつかる
歌野「少し外れた方が良いわね。休憩休憩」
野外であっても夏場と人の量ということも相極まって蒸し暑い空気を手で払いながら、
歌野がかき分けるようにして通る道に、みんなでついていき
ぞろぞろと歩く人波から、人影のまばらな屋台外れの空間へとたどり着いて、一息つく
東郷「水都さん、平気?」
水都「うん。平気」
天乃「樹も平気?」
樹「まだまだ大丈夫ですっ」
車椅子を押して貰う二人の心配そうな表情に、
代役で押していた二人は問題ないと答えて笑みを見せる
今までしてきたことと比べれば、
群衆をかき分けながら車椅子を押すことなんて、何の苦でも無かった
特に、樹なんかは天乃に好意がある分
むしろ満足感さえあった
千景「貴女達は何をしていたの?」
歌野「気ままにウォーキング!」
千景の問いに元気よく答えた歌野は、東郷や友奈と親し気に話す水都を眺めて、
嬉しさをかみしめるような笑みを浮かべて見せる
自分たちが頑張っていたあの時代、お祭りなんて余裕はなくて一度もやったことはなかった
いつかまたやりたいと思いながらどこかもう無理だと思っていた
だから、こうして参加することが出来ただけでも嬉しくて
何かをやらなくても、何かを買わなくても、十分楽しいと思えたのだ
歌野「100歳が3回。そう考えると、意外と短いけど」
でも、300年は長かったと歌野は呟く
忘れてしまったのか、隠されたのか
歌野はまだそのあたりを詳しくは知らないけれど
でも、そのおかげで平穏な暮らしが出来ている
それが、歌野には尊く思えた
絶望しきった人々の表情を、声を、言葉を
聞いたことのある歌野にとっては、それはとても大切な事だったから
歌野「郡さんもハッピー? 良くスマイル見せるようになったし」
千景「……騒がしいのも悪くはないと思ってはいるわ」
樹「久遠さんも本当に楽しんでるみたいですし、来れてよかったです」
樹の嬉しさの染み込んだ声に、千景は小さな笑みを浮かべて「そうね」と、答える
元々感情を押し殺すつもりは無かった千景だが、
精霊らしくあるべきだという考えに基づいて、控えめになっていることも多々あったのだ
けれど、それをもう押し隠す必要がなくなったから
天乃がごく普通の少女のように生きていくことを決めたから
だから、もう千景も普通に笑い、楽しみ、喜ぶ
それこそ、久遠天乃の精霊ではなく久遠天乃の友人の一人として
歌野「そういえば、焼きそばじゃなくて焼きうどんがメインだったの! ちーちゃんどう思う!?」
千景「ちーちゃん……?」
歌野「……ダメか」
ちぇっと小さく舌打ちをした歌野は、口が滑った。と取り繕って苦笑して
もう一度どう思う? と、問いかける
歌野「お祭りといえば焼きそば! イズ、ジャスティス!」
千景「え?」
歌野「リピートアフターミー、お祭りといえば~!」
友奈「焼きうどん! いず、じゃすてぇす!」
歌野「ほぉぉぅ?」
友奈「わぁぁぁっ、ごめんなさーい!」
どこからとも無く現れた友奈の挑発的な言葉に歌野が振り向いて
友奈は一目散にごめんなさいと駆け出す
夏凜「あーあ、友奈じゃ逃げられないわよ。アレ」
天乃「まさか本当にやるとは思わなくて」
くすくすと笑う天乃は、友奈に聞こえないと解っていながら、ごめんね。と手合わせ謝罪する
歌野も本気で起こっているわけではないから、
特に止める必要も無いのだろうが、友奈は浴衣で歌野は私服
すぐにでも捕まらないなら転ぶかもしれないと警戒して
歌野「悪いこと言うのはこのマウスね! ジャッジメントを受けて貰うわ!」
友奈「わーっ!」
当たり前のようにがっしりと友奈がホールドされたのを見届けて、息をつく
天乃「元気ねぇ」
東郷「久遠先輩、年老いて見えちゃいますよ」
天乃「あらやだ……しっかりとお化粧をしているのだけど……奥様のようにはいかないわねぇ」
東郷「ふふふっ、何言ってるんですか。お若いですよ。いえ、まだまだ瑞々しいわ。私達の妻は」
天乃の茶目っ気な言葉にも冷静に対応しながら、
友奈を弄くる歌野と、それを止めに入った水都
そこから少し遅れて、呆れたようにため息を付きながらも足を向ける千景へと目を向けて
すぐ横にいる天乃へと目を向ける
東郷「久遠先輩」
天乃「うん?」
東郷「本当に、適正の年齢で。その言葉を言い合いたいです」
天乃「……流石に適正年齢でのその若々しいやり取りはちょっと」
東郷「そう返してきますか」
えー。と、若干引いたような仕草で言う天乃に東郷は笑みを浮かべて首を振る
確かに、実年齢がそのあたりになったときでもまだ、
大人びたものではなく、いちゃついているのが良く解るようなやり取りをしていたとしたら
確かに、少し見苦しいかもしれないと東郷は思う
夏凜「東郷、心配しなくても天乃の成長は止まってるから」
天乃「ちょっと」
東郷「そうね、良かった」
天乃「良くないわよ!」
「だから私は――」
そんな他愛のない会話する天乃たちから少し離れた場所で、
その場にいるみんなが聞き覚えのある声が人ごみの中から姿を見せた
しかも、男性二人を率いて
天乃「?」
夏凜「若葉?」
瑠璃色の浴衣を着込み、普段よりもさらに大人びていて
そして女性らしく綺麗な姿をしている若葉は見間違えるわけも無く
夏凜の呟きみんなの視線が向かう
千景「乃木さんね……なにをして」
歌野「意外と遊んでたり?」
水都「違うようたのん、アレ多分ナンパされてるんじゃないかな」
樹「私もそう見えます」
友奈「若葉さん凄い……」
東郷「友奈ちゃんも一人でいたらされるかもしれないわ」
ナンパされるのが嬉しいことなのかどうかはともかく
ある意味、それは異性から容姿が認められているということだとも考えられるからか
羨望の眼差しを向ける友奈に、東郷は優しく囁く
もちろん、不埒な輩にそんなことをさせる人が周囲にいるとは限らないが。
されるかどうかだけなら間違いなくされるだろうと東郷は思う
若葉「だから私は連れがいると言っているだろう……申しわけないが、付き合えない」
声をかけられるのはこれで何度目だ。と
若葉は自分の不運さに呆れながら、人ごみから抜けてなお着いてくる男性陣に振り向く
風と球子がどちらが早く食べられるか。なんていう勝負を始めるものだから、
2人から離れて他と合流しようと思ったのが運のつきだったのかもしれない
雑踏の中からは中々抜け出せない、みんなは見つからない
挙句の果てには手を引かれて人ごみから抜かれたかと思えば
見知らぬ男性からの善意を着込んだナンパ
そこから逃げ出して、また別の人に声をかけられて
少し必死になってしまったら、これだ
若葉「それに私は中学生だ。そちらは見たところ大学生……低く見ても高校生だ。釣り合わない」
「連れがいるっていっても、迷子だったみたいだけど」
若葉「迷子ではないぞ。別行動をして、これから合流する予定だったんだ」
「迷子がよく言う奴じゃん。それ」
若葉の言い分は若葉にとっては真実なのだが、
相手にとっては迷子を認めたくない子供の言い訳のように思えたのだろう
面白そうに笑って
「とにかく、さ。別行動してるってことはいても居なくても良いってことだろうし、一緒に楽しもうよ」
若葉「居ても居なくても一緒……か」
「そうそう。だから――」
若葉「ふふっ、そんな薄情な人間だったなら。私達は祭りにくるような感情さえなかったかもしれないな」
ただただ、バーテックスと戦うための道具
久遠天乃と言う勇者の代用品
その程度の存在でしかなく、日常に干渉するようなことなんて無かっただろう
そう考えて、若葉は笑う
目の前の男性陣が驚こうが、関係ない
若葉「すまない、驚かせてしまったな。つい、くだらないことを考えてしまった」
「お、おう」
その可能性は微塵もないし、そんな世界ではなかった
だから、もしかしたら、なんて考える必要は無いのだ
そして、この場のことも考える必要は無い
もちろん、初めからだが。
若葉「残念ながら、私には私が居なければ悲しむ人が居る。ほんのひと時の離別でさえ、場合によっては嘆いてしまう人が居るんだ」
思いを馳せて、嬉しそうに、切なげに
優しい声色で語る若葉を、背の低い方の男性は困った表情で見つめると
隣の友人に肘をぶつけて笑う「ダメなやつに捕まってるんじゃないか」と
そしてその友人も困り果てた表情で、恐らくは善意なのだろうが
そういう奴は後々頼り切ってくるから分かれたほうが良いかもしれないぞ。と声をかける
若葉「そうか……知らない人にはそう思えるのか」
言い方が悪かったのかもしれないと、思う
だが何かがあったとも考えずに、ただ駄目な奴だと
頼り切ってくるから分かれたほうが良いと
そう言うことが出来る現代の若者の【贅沢な無知】に、若葉は失笑を禁じえなかった
若葉「散々頑張ったんだ。その人は。沢山のものに頼られながら、沢山のものに嫌われて、壊れる寸前にまで自分を追いやって」
「は……?」
若葉「それでも、つい最近までは決して頼ってくれなかったんだ。頼らないくせに、頼って良いんだと手を差し伸べていたんだ」
馬鹿だろう。愚かだろう
普通に考えたらありえないだろう
そういいながら、若葉は言うだけ無駄だと知りながら、続ける
何もしらない彼らが、少しでも感じ取ってくれれば。と
若葉「解るか? 解らないだろう……? 何もかもを頼り切る、君達に言わせればダメな奴。それが許される。そうであれと願われる人が居るなんてことは」
「なに言ってんだ……?」
「さすがに付き合いきれないって」
ナンパをしに来た二人が逃げるように立ち去っていくのを見送って
若葉は満足げに息づいて空を見上げる
夕焼けのオレンジ色がしっかりと見える夕空は着実に夜へと近付いていく
本当に幸せだと、若葉は思う
こんなお祭りごとに現を抜かしていられる
暴力沙汰や、犯罪など起きずに、
ナンパだなんて可愛らしくさえ思えてしまうようなことができている
若葉「恵まれてるな……」
300年の歳月が齎した忘却
それは人々を無知の幸福に導いているのだと若葉は思う
大社が大赦へと変化する際、バーテックスへの露見を恐れて隠蔽をし始め
世界からバーテックスの恐怖を消し去った
それは仕方がないことだったとここにいたってもなお思う
きっと、それをしていなければ
どこかで人類は殺されていたと思うからだ
「若葉、貴女にとって、久遠さんは駄目な人?」
若葉「……駄目な人じゃないわけが無い。壊れかけるまで頑張るなんて――ん?」
周囲に人は居ないはずだった
そして、聞き馴染みある声だった
最後まで言いかけてそのことに気づいた若葉が恐る恐る目を向けると
車椅子に乗った少女が満面の笑みを浮かべる
天乃「ふふっ」
若葉「あ、天乃!?」
天乃「私はヒモになる気は無いわよ?」
若葉「それは解ってる。知らないことが多すぎて少し驚いただけだ」
どこか悲しげに言う若葉をちらりと見た天乃は、何も持てていない若葉の手を手をぎゅっと掴む
若葉の少し驚いた声が上がり、視線を感じたけれど
天乃は関係ないと若葉の手に手を合わせて指と指を絡めて握る
所謂、恋人繋ぎだった
天乃「仕方ないわ。知らない方が良いこともある。まさに知らぬが仏」
若葉「そうだな……」
優しくて、聞いていると安心する声
眠るようにゆっくりと目を瞑って
手に感じる天乃のぬくもりをより強く感じようとしてしまう
「久遠さん、その迷子の子を早く係のところに連れて行くべきだわ」
そんな落ち着いた空気を壊す一声
天乃「そうねっ、すぐにお母さんに合わせてあげるから、勇者部に任せて!」
若葉「だから迷子じゃないっ……って、今のは千景か!?」
千景「似合わないかしら……たまには、こういうのも悪くないと思ったのよ」
若葉から向けられた驚愕の視線に、千景は少し気恥ずかしそうに顔を背けて答える
本来なら歌野たちの役目だったのかもしれないが
お祭りの最中だから。と、少しだけ加わってみようと思ったのだ
不慣れで、自分に似合わないと思っていたことだからか、
冷静になってみると恥ずかしいけれど、気分的には悪くないと千景は思う
夏凜「良かったじゃない、ナンパされて」
若葉「夏凜まで言うか……されてみろ、疲れるぞ」
心底疲れたようにため息を付いてみせる若葉に、夏凜は冗談よ。と
心配そうに苦笑して、手をひらひらと振る
自分にはそう言うのは向いていないというような態度だ
天乃「疲れたなら膝の上に座る?」
若葉「枕としてなら借りたいが」
天乃「車椅子から下りなくて良いなら貸すわよ?」
若葉「ふふっ、まったく」
そんなことを言いながらも、もう一度貸してほしいと言えば本当に膝枕をしてくれる
それが分かっているから若葉は思わず笑みをこぼして、頭に触れる
天乃「ちょ、なっ」
若葉「今度、してくれ」
天乃「若――」
天乃がもう一度声をかけるよりも早く
若葉は歌野達がいる方へと近づいて行って
樹「膝枕……私も……ダメ、ですか?」
天乃「えっ?」
止まった車椅子、かけられた声
天乃はすこし困ったように首を傾げて、笑みを浮かべる
天乃「そんな遠慮がちにならなくても、全然平気よ」
若葉の願いは伝播していく
そしてきっと、そのほかの誰かの願いもみんなへと伝播して天乃に求められていくのだろう
多くと付き合うということは、つまり、それだけ求められることも増えていくからだ
01~10 夏凜
11~20 若葉
21~30 風
31~40 球子
41~50 樹
51~60 千景
61~70 友奈
71~80 歌野
81~90 東郷
91~00 水都
ぞろ目
↓1のコンマ
あ
ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
一方その頃、九尾ふんする特別病棟の久遠さん。
九尾「ふふっ、呼んだ理由……解るじゃろう?」
「く、久遠様……」グイッ
九尾「妾は退屈しておる。楽しませよ」
「で、では、その……手を……っ」ビクッ
九尾「何を言うておる。お主の体を愉しませよと、言う意味じゃ」ボソッ
「ぁっ……」
乙
帰ったら誤解されそう
乙
九尾に大赦中の女性を骨抜きにしてもらえばいざとなったら脱出しやすくなるかな?
乙
日常回出来なかった不満を大爆発させたせいで非安価スレに成り下がったと聞いて
その不満が出ないのはみんなも望んでいたからか?
では、少しだけ
かもん
「負けるなー!」
「嬢ちゃんも頑張れー!」
若葉に連れられる形で食べ物の屋台が並ぶ一角へと向かった天乃達の目の前に現れたのは、
良くある行列や雑踏ではなく、何かの催し物に群がる観客
あるいは、何らかの事象に対する野次馬の集団
聞こえる言葉は声援ばかりで、若葉へと目を向けると
若葉は小さく息づいて眼を逸らす
天乃「……なにあれ」
若葉「お察しの通りだ」
夏凜「ってことは……風と球子か」
何やっているのかと言う夏凜に樹はお姉ちゃんですから。と
笑いながら答える
若葉と天乃も、風と球子がそれ以外の誰の隔たりもなしに、
一緒に行動していたのだとしたら、こうなるのも仕方がないと思う
どちらも活発で、ちょっぴり負けず嫌いで
勝負事に興味を示すから。
水都「私には無理だな……あんな注目されるの」
友奈「水都さんもやりますか?」
水都「や、やらないやらない! というより……やれないよ」
今行われてる早食いや大食いは水都にはやれそうもないし
そもそも、目立つような行動をするのは苦手なのだ
勇者部と関わり合いを持つのだって、決して簡単ではなかったのだから
見知らぬ誰かの前でパフォーマンスなど、出来る出来ない以前に不可能だと水都は思う
歌野「みんなー、カモンカモン!」
そんなことを考えていると、歌野の声が聞こえてみんなの視線が群衆に向かう
いつ離れたのか、一足先に観客の中に紛れ込んでいた歌野は手招きをしていて
千景が少し呆れたように息づく
千景「いつの間に……」
水都「……うたのんってば」
自分たちとは正反対に行動力のある歌野の姿
その無理のない明るさに水都は笑みを浮かべて、千景へと目を向ける
水都「千景さん、行きませんか?」
千景「ああいうのは苦手だけど……はぁ」
カモンカモンと手招きする姿は視界の端
完全に眼を逸らしてもその声は聞こえてきて
千景は呆れつつも楽しんでいるように息づいて首を振ると、
仕方ないわね……と、答える
千景「久遠さんと同じように拗ねられたら面倒だから、行くわ」
友奈「凄いよ東郷さん、見てみて!」
東郷「ふふっ、ほんとね。友奈ちゃん」
天乃「誰か止める人はいなかったの?」
夏凜「逃げたから」
若葉「……返す言葉もない」
袖口緒で顔を覆って若葉は雰囲気的に逃げ出す
群衆の輪に加わった天乃達の目の前、
机のようなところには、積み重なった容器が二つ置かれていて
二人の知り合いが、向かい合って座り、焼……うどんをかき込むように食べて
風「ごち!」
球子「終わった!」
二人が同時に声を上げて容器を机にたたきつけるように置く
一瞬の沈黙、そしてジャッジらしき店主風の男性が目を瞑る
どこかでごくりと喉が鳴る
この会場以外の喧騒がじわじわとどこか空虚に響く……そして
「……引き分けだ」
ジャッジが下ったのだった
球子「普通のうどんだったらタマの勝ちだったな!」
風「ふふんっ、そう簡単にはいかないわ。アタシの女子力に敗北の二文字は無い!」
互いに結果に文句を付けたりはしなかったものの、
引き分けであることには満足いっていないのだろう、
どちらが勝てるのかと言い合って、にやりと笑う
風「お疲れ様」
球子「良い、戦いだった」
パシンッっと手を叩き合わせ、試合を終える
なぜだか盛り上がり、戦いを賞賛する大多数の野次馬の中、
風の妹である樹の「だからされないんじゃないかなぁ……」という寂しげな呟きが
妙に、天乃の耳に残る
けれど、ああいう活発というか、大胆というか
男勝りな一面に好意を抱く人が居ないとは限らない
料理人なんかは、ああやって美味しく食べてくれるような人にこそ、好意を抱く可能性もあるのだろうから
若葉「終わったか?」
風「あ、逃げた人」
球子「敵前逃亡した人」
若葉「付き合えるわけ無いだろうっ」
千景「まったくだわ。土居さんも犬吠埼さんも、周囲の目というものを考えるべきね」
球子「千景が若葉の味方になってる!?」
天乃「2人ともアレだけ食べても元気なんて凄いわね」
風「うどんだから」
球子「うどんだから」
天乃「ほんと元気ね」
呆れ混じりに笑いながら、もうすでに容器の片付けられてしまった机を一瞥する
ついさっきまでは、そこに一人につき10皿
合計20人前分の容器が積み重なっていたのだから、恐ろしい
一つ一つの量は標準より少なくなっていると思いたいけれど。
歌野「それにしても、フリータイムにしてたのにあっさりと揃ったわね」
東郷「そうですね、早かったわ」
冗談で言われた天乃が居るところにみんなが来る。というのも
間違っているわけではないと東郷は思う
もちろん、自分達からも探しにいったから、絶対とはいえないけれど
きっと、じっとしていても結局集まったはずだと東郷は天乃を見つめた
天乃「ん?」
東郷「いえ……来てくれてよかった。と」
天乃「ふふっ、九尾が快くお留守番を引き受けてくれたからね」
それが無ければ、ここに来ることはまず出来なかっただろう
九尾が向こうで何をしているのか気がかりではあるけれど
きっと、大きなことはしていないだろうと信頼を寄せて、ため息一つ
すると、友奈と樹が一つのお店を指差す
友奈「久遠先輩、アレやってみませんか?」
天乃「?」
夏凜「うどん占い?」
怪訝そうに店名を呟いた夏凜は、その付近にある看板を見つめて「はぁ?」と零す
ため息というよりは半ば呆れたような声
きっと無意識にもれたものだから、本心だろう
水都「……良く考えたね」
千景「需要がある……のね」
説明を読んだ千景も周囲を見て、何人か試している人を見て
呆れたように首を振る
とはいえ、そこまで否定的でもないのか、「イロモノも悪くは無いだろうし」と呟く
うどん占いの内容は簡単だった。
両端から先端が飛び出す穴のある特殊な蓋を用いた容器を使い
10本程度のうどんを入れ、両端から先端を出す
占いたい人は向かい合って適当なうどんを咥えて、蓋を外す
そのまま切れないように食べて、繋がっていれば運命……という
なんともくだらないものではあるけれど
お祭りということもあって、運試しに。等々楽しむ人も居るらしい
天乃「そしたら、グループ分け――」
歌野「ノープロブレム! 久遠さん、その必要は無いわ!」
天乃「えっ?」
風「天乃対全員で良いんじゃない? ほら、そう言うアレだし」
天乃「そんな大勢できるの?」
みんなと自分というところには余計な突込みを入れずに、店主へと声をかける
穴こそ十本ほどの数はあるけれど、それはもちろん、
一人か2人かがその中のいずれかを選ぶ。というだけであって
その数と同じ人数でやるようなものではない
けれど、店主は「もんだいないんじゃねぇか?」と、がさつと言うと言い方が悪いかもしれないが
大げさに笑いながら言い放って、ちょっと待ってな、と調理に入る
女の子同士でやるというのに何も言わないのは、
そういうものだと疑っていないのか
それとも、そういうものだとしても別にいいという考え方だからなのか
それとも、ただの同性の友人同士に見えるのか
天乃「根本的にそう言うものだろうと考えるわけじゃないだけだとは思うけど」
なんとなく気になったこと
だけれど聞くようなことでもないと飲み込んで、息をつく
夏凜「さて、あんたの運命の相手は誰なんだか」
天乃「こういうの、結果を気にするタイプ?」
夏凜「別に」
夏凜は嘲笑するように笑いながら、首を振る
本心だ
結果に対して無感情で居るということは無いが、それでも
その結果次第で自分のあり方を不自然に変えたり、付き合うのは無理だなんだと諦めるようなこともない
夏凜はいつも、そういう生き方をしてきたからだ
周りから、運命から、ダメだと、無理だと
突き放されるようなことがあっても、夏凜はそんなことは知ったことか。と
なら、それが必ずしも正しくないことを証明してみせる。と努力を積み重ねて、この場に居るのだ
夏凜「今更アンタと運命の赤い糸が繋がってないからって焦る気はさらさら無い」
天乃「…………」
夏凜「運命が誰を引き寄せたとしても、私はアンタとそいつの間に割り込んで、そんな糸断ち切ってやるわよ」
天乃「白い糸、だけどね」
夏凜「なら、喰ってやるわ」
天乃「!」
バッっと、浴衣の振袖部分を広げた夏凜は
天乃の顔を覆った瞬間に唇を重ねて、すぐに離れる
驚きに戸惑って、されたことに気づいて染め上がっていく天乃の瞳には涙がたまっていく
その一方、夏凜はぺろりと指を舐めて、笑う
唇と唇の間に、指を挟んだからだ
夏凜「甘い……わたあめね」
天乃「かっ、か……」
夏凜「落ち着けっての、今更恥ずかしがるようなことじゃないでしょ」
名前を叫びそうになった天乃の頭をぽんっと叩いてお面を付けさせると
夏凜は少し困ったように囁いて、天乃の手を握る
周りに人はいるけれど、なにかをしたと気づいた人は居るかもしれないけれど
その誰も、何をしたのかは気づいていないだろう
夏凜「ちょっと余裕そうなのが、意地悪したくなった」
天乃「…………」
夏凜「元に戻せそう?」
夏凜の問いに、天乃はお面を手で押さえ込むと首を縦に振って、深々とため息をつく
顔を隠していても、真っ赤な耳が見える
少し時間はかかるかと思いながら、
調理中の店主へと目を向けると、「あと少しだからな」と明るく声をかけられた
夏凜「あと少しだって」
天乃「きこ、聞こえたから」
夏凜「……本当にした方が良かった?」
天乃「ばか」
ばしりと、まったく痛くも無いぶつかったような平手が頬に当たって、
お面の隙間から羞恥心に塗れた天乃の瞳が夏凜を見る
それはとても可愛らしくて
唇でしっかりとしておけばよかったと、夏凜を後悔させる
けれど、もう一度の時間は無く
風「出来たわよー!」
運命の白い糸選びが始まった
友奈「あれ? 久遠先輩どうかしたんですか?」
風「どうせ夏凜が余計なことやったんじゃないのー?」
若葉「節操が無いな」
夏凜「若葉には言われたくないんだけど……」
天乃「い、良いからっ。やるんでしょう? 冷めちゃうわ」
まだほんのりと赤みがかった顔色の天乃は、下手に触れられるのもいやだからと
さっさと自分の分を選んで、それに続いて、夏凜達も自分のうどんを選んでいき、
一つの器を十数人が囲んでいるという奇妙な状況が出来上がった
樹「それじゃ、蓋を外しますね」
箸でうどんを抓みながら樹が声をかけ、蓋を外す
綺麗に色づいたつゆの中、うどんが入り乱れるように入っていて、
それぞれの方向へと先端が延びる
ほんのお遊びだということは解ってはいるのだが、なぜだかドキドキとしてしまう
樹「ま、まずは私が吸いますね」
左端を選んだ樹はそう言って、一度息を呑む
うどんを啜ると、決まってしまう
自分が運命の相手なのかどうか
軽はずみな気持ちでこれをしてみようと言った樹だが、いざ結果発表ともなると
どうしても、尻込みしてしまうのだ
樹はこういった占いごとに目が無い
だからこそ、夏凜とは違って結果に関しては少し気にしてしまうのだろう
樹「…………」
自分が一番手、そうでなくても確率は一緒
そう考えて、意を決して吸い込むと、するすると、一本のうどんが抜けて……
樹「外れです」
残念そうな声が漂う
結果は結果、仕方が無い
そうは思っても、付き合えてはいても
残念な気持ちを押し隠すことのできない樹に若葉は目を向けて
若葉「次は、私だな」
少しだけ力を込めて言う
別に運命ではなくても良いとは思う
けれど、出来れば、叶うなら、そう言うものであると嬉しいなと若葉は思い、
意に反して強く感じる緊張感に身を包まれて、目を閉じる
戦うときよりも緊張するとは何事か……ただの、お遊びなんだぞ……
落ち着かない心を叱りながら、「ままよ」と勢いを付けて啜る
だが、天乃の口元から器の中へと垂れるうどんにはまったく影響を及ぼすことなく
若葉は一本のうどんを啜り終えて、ため息一つ
若葉「私も外れだな。惜しい」
右端の若葉が終えて、左端の友奈が啜る
左右交互に啜る運命のお相手選びは、意外な場所で決着がついた
友奈の後に歌野が啜って、風が啜って、水都が啜ったときだった
段々と減ってきていたうどんの中の一本はゆっくりと水面にまで上り、
たるんだままだった天乃の咥えたうどんをピンッと張らせたのだ
水都「!?」
天乃「ん」
ちゅるちゅると、まるでポッキーゲームを行うように左右から食べていく
そして、あわやキスをするのではないか
そんな気さえしてくる数センチの距離で水都が食いちぎって距離を置いた
水都「く、久遠さんっ!?」
天乃「ごめんなさい、つい」
水都「危なかった……」
無意識か悪戯か、本当にキスしていたかもしれないと思う水都は自分の唇を指でなぞると
天乃を一瞥して、頬を染める
まったくもって恋愛対象などではないが
普段、天乃のえっちな姿だったり、キスしている姿だったりを見ている水都は、
意識していなくてもその光景を思い出してしまう
歌野「みーちゃん?」
水都「はっ、あ、えっ? な、なにうたのん!」
歌野「大丈夫?」
水都「な、何が? 全然平気、うん、大丈夫、したわけじゃないし!」
慌てすぎていた
いつもらしくなかった
顔の赤さを自覚させようとする体の熱が、めまいがしそうな感じだった
水都「…………」
恋愛対象ではないはずだと、水都は思う
だけど、キスくらいならしても良かったかもしれないと
食いちぎって逃げていなければ、
それが出来たんじゃないだろうかと思ってしまう
天乃「ごめんね?」
水都「あ、い、いえ」
目を向けた視線に気づかれて、視線を向けられて、
紡がれる罪悪感の言葉に水都は作り笑いで返して首を振る
してみたかった。なんていえない
みんながしているのを見て
自分もしてみたくなったのだと
そんなこと、いえるわけが無いのだと
風「我慢しちゃって」
水都「し、してません。ただ、ちょっとドキッとしただけで」
若葉「ふふっ、天乃は見つめ合うと危険だぞ。特に、【そういうこと】を知っているとな」
前回のコンマここかあ久遠さんラヴァーズオンリーでもう一回見たいイベだな
経験者のように語る若葉の言葉に、千景たちは同意するように頷くが
天乃だけは、別にそう言うつもりじゃないんだけど。と
言葉の意味を理解して、困ったように頬を掻く
普段は悪戯心、今回は若干上の空で
それはもう天性の才能のような気がしたが、水都は何も言わずに苦笑して、息をつく
千景「好奇心は猫を殺すというけれど……死にはしないわ」
天乃「なんで怖いこというの? 私って劇物指定でもされてるの?」
友奈「それは……」
樹「だ、大丈夫です! ちょっと我を失うくらいだと思うので」
天乃「何も良くないじゃないっ」
聞いた瞬簡に目を逸らした2人にちょっぴりむくれて言う
どこかからそう言う仕草を見せるから……と呆れた声が飛んできて
天乃は「もう、じゃぁどうすれば良いのよ」と落ち込む
けれども、それさえも……と夏凜は思う
結局、好意がある相手の仕草なら、基本的にはどんなものでも好ましいのだ
歌野「久遠さんはデンジャラス?」
東郷「性的な意味で」
天乃「東郷っ」
東郷「事実ですので」
天乃「もうっ!」
車椅子同士が軽くぶつかって、天乃はぐぐっと手を伸ばすが、
東郷の手には届かず、さわれるのは足くらいのもので。
天乃「東郷暫くお触り禁止!」
東郷「そんな殺生なこと……」
夏凜「余計なこというから」
その感情入り乱れる空気を客観的に見守る球子は、
決して消えない楽しく、幸せな雰囲気に笑みを浮かべて
球子「平和だなぁ……」
感慨深そうな球子の声が、妙に空気に馴染んで溶けていった
では、長くなりましたがここまでとさせていただきます
明日は出来ればお昼頃から
夏祭りイベントは残り花火のみ
乙
夏満喫してるなあ
乙
乙
今ごろさおりんは何をしてるのだろうか…
もう許嫁に抱かれてるかな?
乙
では少しずつ
√8月13日目夜(夏祭り) ※土曜日
歌野「そろそろ移動した方がよさそうね」
水都「そうだね」
周りを見れば、ちらほらと移動を始めていて
端末で時間をチェックしてみると、花火を打ち上げるような時間が近づいていた
とはいえ、天乃はふと疑問に思って
すぐそばにいる風へと目を向ける
天乃「ところで、見る場所は平気なの? 場所取りとか、そういうのは」
風「あーそれなら、特等席があるから」
天乃「特等席?」
若葉「まさか、本気でやるのか?」
球子「少しくらい平気だって……多分」
若葉達もどうするのかは聞いているみたいだが、
それには賛成なチームと、否定的なチームで二分されてしまっていたらしい
しかし、それが一番いい。という風の言葉に、
若葉はため息をつきながら「仕方がないか」と天乃を一瞥する
何も聞かされていなかった天乃だけが取り残されて
天乃「何の話? 何するの?」
夏凜「ちょっとお手を拝借」
天乃「え? はい……っ、きゃぁっ!」
夏凜に言われ、手を貸した瞬間に急速的な体の浮遊感
一気に近づいた夏凜の体に体がぶつかって、止まった
夏凜「少し我慢して」
天乃「が、我慢って、なんで……車椅子は?」
樹「それも持っていきますけど、とりあえずこの方が移動しやすいので」
天乃「移動って――っゃんっ」
がくんっと体が落ちたかと思えば、膝裏と背中に支えが入り込んで
夏凜「それじゃ、行くわよお姫様」
夏凜の顔が真っ直ぐ見えて、お姫様抱っこされているのだとすぐに分かった
天乃「な、なんかみられてる気がするんだけど」
夏凜「そりゃ、こんな抱え方してたら見られるでしょ」
天乃「じゃ、じゃぁ」
夏凜「あんた、そこまで力入らないんでしょ? おんぶして頭から落ちられたら怖いのよ」
夏凜も視線を感じているはずだが、恥ずかしいことをしているという感覚は全く持っていないからか、
平常心で答えると、人ごみを丁寧に避けて道を進んでいく
その後ろでは、若葉が東郷を同じように抱えながら、あとを追う
一人だけしているよりも、二人でしている方が
まだ、そう言うものだと思わせやすいからだろう
東郷「あの……若葉さん、大丈夫ですか?」
若葉「この程度造作もない。心配するな」
東郷「……やっぱり」
若葉「ん?」
東郷「ふふっ、いえ。なんでも」
若葉「なんだ、気になるな」
含みを持たせて笑う東郷に、若葉も微笑みかける
やはり乃木家の人間なのだと
園子の御先祖様なのだと
真剣なまなざしに園子に通じたものを、東郷は感じた
次は、来年は
彼女もいっしょに連れて来たい。そう思った瞬間だった
花火を打ち上げる会場から少し離れた建物の前で立ち止まった夏凜は、
他のみんなに目を向けると、軽く頷いて端末を取り出す
何をしようとしているのか察した天乃は夏凜へと目を向けたが、
夏凜は「大丈夫だから」と、言うだけで
天乃「ちょっと、夏凜……?」
夏凜「行くわよ!」
天乃「あんまり無茶しないでっ」
全員が一斉に姿を勇者へと切り替えて、夏凜が意気込んだ瞬間、天乃は夏凜の体にぎゅっと捕まる
そして、夏凜が小さく笑った
仕方がないなと、言うように
夏凜「支えとくから、暴れんじゃないわよ」
しっかりと天乃に告げてから
地面を強く踏みしめて――跳躍
建物の屋上へと一気に登っていく
お祭りの明かりが眼下に遠く、遠くなっていく中
天乃はずっと夏凜にしがみついていた
体に感じる優しく力強いものがあっても、
天乃は自分の体から力を抜くというのが怖かった
そのまま柔らかいゼリーのように、
夏凜の腕からすり抜けて、落ちて行ってしまいそうに思えたからだ
夏凜「ついたわよ」
天乃「へ……ぇ? あ……うん……」
夏凜の優しい声に揺らされて目を開けると、
みんなはすでに勇者服を解除して浴衣や私服に戻っていた
お祭りの会場、もうすぐ花火が打ちあがる側へと目を向けていた樹は、
気づいたように振り返えると
樹「久遠先輩、こっちです」
笑みを浮かべながら手招きして、車椅子を天乃へと向ける
天乃「………あ、あ、うん、車椅子」
夏凜「大丈夫なの?」
勇者になることが出来ていた時は、建物の高さなどどうとも思わない高さに上ったこともあるし
同等の高さの化け物を相手に戦ったことだってある
だから、何も怖いことなんてなかったはずなのに、
体はまだ、ドキドキとしていて
思わず乱れてしまう天乃の言葉を気にしてか、夏凜の心配そうな声が、上から下りる
1、大丈夫
2、もう少し、このままが良い
↓2
2
2
2
天乃「ううん、このままがいい」
天乃は夏凜が急に手を放さないことは分かっていたが、
自分は離れたくないという意思を示すように、
夏凜に触れる手に力を入れて、より体を寄せていく
夏凜「…………」
天乃の力は、今だけの話ではあるが強くない
夏凜でも振り払うことはできるし、手を離せば簡単に床に落ちて倒れるだろう
けれど、夏凜はため息をつきながら支える力だけは強くして、
夏凜「っと」
天乃「っ!」
一瞬の浮遊感
僅かにずれていた手が入れなおされて、ただでさえ近い距離がさらに近づく
夏凜「言っておくけど、今日だけだから」
天乃「……うん」
夏凜「久しぶりなのと、祭りなのと……無茶しながらだけど、来たから」
天乃「うん……」
夏凜「少しだけ、我儘聞いてあげるわよ」
後から思い出して、きっと赤くなってしまうのだろう
向こうに戻ったら
枕を抱えて、あるいは枕に顔を埋めて悶えるのかもしれない
それでも、天乃は今はこうしていたいと思ったのだ
夏凜の肩に耳を付けて、聞こえそうで聞こえない心臓の音に寄り添う
夏凜「……今日は珍しく、よくよく甘えるじゃない」
天乃「いや?」
夏凜「そんなことはないけど……」
言葉を区切った夏凜の顔を見上げると
夏凜は何かを言いたげに唇を噛み締めていて
視線に気づいたのか、偶然か
視線が交錯して、夏凜の唇が動いた
夏凜「なんていうか、最後のあんたと印象が違うからちょっと複雑ではあるけど、嬉しいわよ」
天乃「…………」
夏凜「したいこと、やりたい事、して欲しいこと。それを全部隠し持って、誰かに付き合うのが久遠天乃って馬鹿の生き方だったから」
天乃「馬鹿は流石に酷いわ」
夏凜「口が滑っただけだっての。気にすんな」
天乃「今のどこが滑ったのよ、どう聞いても言いたくて言ったようにしか聞こえなかったわよ?」
もうっ !と、腕の中で怒鳴る声
夏凜が動かなくても腕の中で動きがあるから、夏凜の体は微かに揺れる
その、自分の意思に反する揺れを心地よく思いながら夏凜は笑みを浮かべて、息をつく
天乃「聞いてるのっ?」
夏凜「聞いてるわよ。ほんと、あんたは変わったわ」
あんなにも大人びて見えていたのが
今はお姫様抱っこを自分から願い出るようになって
ほんの些細なことに、踏み込んでくる
全てが変わったわけではないし
根本的な部分はきっと変わり切れていないのだろうが
それでも、明確に変わった部分も確かにあって
夏凜「結構甘えるようになった」
年相応の女の子のような
ちょっぴりの面倒くささのある甘え方をするようになった
夏凜「すぐに泣くようになった」
子供のように、
何かに怯えるようになった、泣くようになった
天乃「夏凜……?」
それでも自分の気持ちが一切揺らがないのは
大人びた天乃だから、好きだったわけではないからだと夏凜は思う
夏凜「でも、それに応えてあげるとあんたは嬉しそうに笑う」
少し遠くで、一際甲高く、空気が抜けていくような音が響いた
夏凜「そんなあんたが、久遠天乃が……私は好きよ」
どれだけ大きな音が轟いても、その言葉は確かに心に届く
白く染め上げるような閃光が瞬いても、その表情は確かに記憶に残る
天乃「っ」
だから、その時唇に触れた感触は心でも記憶でもなく、身体に刻み込まれてしまう
夏凜「っは……ん、花火、始まったわね」
天乃「ぁ……う……か、夏凜っ」
夏凜「…………」
暗くなった空に、様々な色を持った輝く光が散っていく
大きく、小さく、時には誰かと一緒に龍のように昇りつめて花開く
そんな空を夏凜はすがすがしい表情で見つめていた
腕に抱く天乃が真っ赤な顔をして「なんで、ちょっ、ばかっ」と
もがいたり、怒鳴ったりしていても
ただ、落とすことは無いようにと腕には力を込めて、目を向けることはしなかった
天乃「っ!」
そんな余裕を見せる夏凜が、憎たらしかった
誰も見ていなかったとはいえ
自分だけ言いたいことを言って、やりたいことをやって
天乃「……それは、して欲しい、とは、思……ったけど……」
自由な右手で唇に触れて、夏凜を見る
天乃「馬鹿……っ、花火に来たのに……味気なくなっちゃったじゃない……」
花火なんて見ていられなかった
何よりも大きくうるさい音はどこか遠く、一線を敷いた別次元で行われているかのように聞こえなかった
√ 8月13日目 夜(夏祭り) ※土曜日
01~10
11~20 継続
21~30
31~40 沙織
41~50 ん? まだ花火(勇者)が散ってないよ?
51~60
61~70
71~80 継続
91~00 沙織
↓1のコンマ
ぞろ目……
あ
√ 8月13日目 夜(夏祭り) ※土曜日
東郷「終わっちゃったね」
友奈「うん……でも、楽しかったね!」
花火の余韻が残り、祭りあと
屋上に残った天乃達の中、悲し気な空気が漂いそうになったのを感じたのか
友奈が明るく声を張り上げる
若葉「ふふっ」
球子「…………」
その姿が、その声が
どうしいても、自分たちの知っている【友奈】と似通っているから
若葉は思わず笑みをこぼし、球子も声には出さずに笑みを浮かべて、首を振る
若葉「そうだな。そうだ。楽しかった。早かったが……それでも楽しめた。違うか?」
歌野「私はベリーハッピー。不満はないわ」
樹「そうですね、楽しかったです」
風「だからこそ、こんなにも名残惜しくもあるんだけどね……」
笑みを浮かべながら、風はそんなことを言って首を振ると
降参だというように両手を上げて「やめだ、やめ」と、手を叩く
風「辛気臭い顔しないの。余韻が台無しになるわよー」
千景「貴女の一言が余計だった気がするけど」
風「なにおう!」
夏凜「犬先輩うるさい」
和ませる為に頑張っていると分かっていても
騒がしすぎるのもどうかと夏凜は止めに入って、ため息をつく
夏凜「大体、変に取り繕ったって天乃にはバレるんだから、正直に言えば良いじゃない」
友奈「でも」
夏凜「……離れたくない、手放したくない。このまま車椅子なんかに座らせないで、どこかに連れ去りたい」
天乃「夏凜……?」
夏凜「私はね。そう思ってるわよ」
冗談にもとれる笑みを浮かべる夏凜の言葉に天乃はすこし驚いて、その目を見つめる
冗談ではないと、その目は語る
だって、手放せばまた……会うことは出来なくなるのだから
水都「三好さん、そんなことっ」
若葉「いや……待ってくれ。藤森さん。私達精霊は傍にいることが出来るが、夏凜達はそれが出来ないんだ。咎める事なんて出来ない」
水都「………」
千景「立場が違いすぎるわね……」
夏凜「もちろん、そんなことはしないけど」
東郷「夏凜ちゃん、目が本気だったわ」
歌野「と言っても、本当に連れ去ったらステイしてる九尾さんが何するか」
本気でやったと仮定して考えた歌野は、
それによる被害を思って困り果てた表情で息づく
少しばかり甘く見た想像をしたはずなのに
全く、何も甘さなど感じなかったからだ
友奈「久遠先輩、戻り……ますよね」
天乃「友奈まで、そんな」
寂しそうな顔をされると困るのだ
天乃も寂しいと思うから
一緒に居たいと願うから
夏凜「……ったく」
夏悪態をつきながら、天乃の頬と目元をハンカチで拭って苦笑する
夏凜「ほんとによく泣くわね、あんた」
球子「一日遅くなるって言っても平気だとは思うけどなー」
若葉「そんな保証はどこにもないが」
歌野「それはそうじ――」
水都「うたのんそれ禁止」
歌野「そーりーっ」
1、おとなしく帰る
2、沙織を探したいという
3、沙織について聞く
4、夏凜、私を連れてって
↓2
4
3
01~10 見てない
11~20 A
21~30 B
31~40 C
41~50 見てない
51~60 A
61~70 C
71~80 D
81~90 B
91~00 見てない
↓1のコンマ
あ
では、いったん中断します。22時頃には再開予定です
見ていないルート
花火は夏凜ではなく車椅子ならはっきりと見ることが出来ました
一旦乙
誰も知らないなら探すか?
一旦乙
見ていないのか…さおりん大丈夫かな
たんおつ
裏のメインイベントみたいなもんか
乙
さおりんの運命や如何に
ではもう少しだけ
天乃「ねぇ、みんなは沙織を見なかった?」
帰る前に。と、天乃は問う
天乃自身、探さないようにとしてはいたけれど
やはり、気になってはいたのだ
風「沙織? あたしは見てないけど……」
困ったように言った風は、
他のみんなを見渡したけれど、
その誰一人として、沙織の姿を見てはいないと首を振る
若葉「沙織か……」
天乃「なに?」
若葉「私も確認したわけではないが、そんな気配に近いものは感じたぞ」
千景「……向こうも私達を感じ取れたはず。なら」
球子「わざと避けてたってことか?」
球子のあたり間の一言に
全員が言葉を飲み込んで、天乃を見る
けれど、
天乃は「そっか……」と呟くだけで
友奈「沙織さん、用事があるって」
夏凜「……ま、影から盗撮しようとするような兄貴もいるし。沙織だって、ここには来るけど言えないような事情があったってことでしょ」
歌野「それだけ聞くと結構危ないけど、伊集院さんが久遠さんと一緒にいられないのは相当な理由だよね」
樹「そうですね、それなら……変に触れない方が良いですよね」
知っている精霊組と、知らない勇者達
若葉達はまるで理由を知らないように話しながら、
底には深く突っ込まないようにと誘導して、息をつく
もしかしたら沙織が自分で話ことがあるのかもしれないが
それは、沙織が話すから良いのであって、部外者が勝手に告げて良いことではないと思うからだ
水都「そ、それじゃみなさん、今日は解散。ですね」
天乃「そうね、名残惜しいけど」
夏凜「なんならも――」
天乃「そ、それはもう良いから」
花火の盛大な音さえも塗り替える自分の心臓の音
眩い光を浴びた瞼裏のように長々と続く唇の余韻
思わず赤くなる顔を覆うように首を振って、夏凜を睨む
あれほど、記憶に残ってしまうものはない
若葉「それでは、解散するとしようか」
東郷「久遠先輩、また」
樹「また、きっと」
友奈「また遊びたいです」
風「天乃、いつでも呼びなさいよ。アタシたちは勇者。でも、それ以前に天乃の友人……じゃなかった。恋人なんだから」
別れを、告げる
次はまたいつ会えるか分からないけれど、端末さえあれば連絡をすることはできる
夏凜「泣くなっての……ほらこれを貸しておいてあげるから」
そう言って、夏凜は自分のハンカチを天乃に握らせて笑みを見せる
夏凜「安静にしてなさい、あんたと、私達と、いつか出てくるその子のために」
天乃「……うん、また。絶対……ねっ?」
1日のまとめ
・ 乃木園子:交流無()
・ 犬吠埼風:交流有(浴衣、夏祭り)
・ 犬吠埼樹:交流有(浴衣、夏祭り)
・ 結城友奈:交流有(浴衣、夏祭り)
・ 東郷美森:交流有(浴衣、夏祭り)
・ 三好夏凜:交流有(浴衣、夏祭り、お任せ、このままで)
・ 乃木若葉:交流有(浴衣、夏祭り)
・ 土居球子:交流有(浴衣、夏祭り)
・ 白鳥歌野:交流有(浴衣、夏祭り)
・ 藤森水都:交流有(浴衣、夏祭り)
・ 郡千景:交流有(浴衣、夏祭り)
・ 伊集院沙織:交流無()
・ 神樹:交流無()
8月13日目 終了時点
乃木園子との絆 54(高い)
犬吠埼風との絆 76(かなり高い)
犬吠埼樹との絆 62(とても高い)
結城友奈との絆 82(かなり高い)
東郷美森との絆 86(かなり高い)
三好夏凜との絆 108(最高値)
乃木若葉との絆 79(かなり高い)
土居球子との絆 38(中々良い)
白鳥歌野との絆 35(中々良い)
藤森水都との絆 27(中々良い)
郡千景との絆 30(中々良い)
沙織との絆 83(かなり高い)
九尾との絆 52(高い)
神樹との絆 9(低い)
汚染度???%
√ 8月14日目 昼(特別病棟) ※日曜日
01~10 沙織
11~20
21~30
31~40 ばてくす
51~60 九尾
61~70
71~80
81~90 若葉
↓1のコンマ
あ
では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間か少し早めから
若葉交流スタート
「知ってるかい?」
「家畜―勇者―は」
「肥えさせて―日常を楽しませて―から」
「食べる―殺してしまう―のが一番美味しいんだ」
乙
さおりんは…さおりんはどうなったんだ…?
乙
あと一ヶ月で絶望に叩き落とすつもりか…
というか今作では9月は何日分の予定なんだろ?
乙
魔女の捕食理論はいやーキツいっす
乙
では、すこしだけ
きてた
√8月14日目朝(特別病棟) ※日曜日
若葉「おはよう、天乃。身体の方は問題ないか?」
天乃「ん……うん……」
昨日は昼からずっと夏祭りに出ていた分の疲労感は感じるものの
自分で歩いたりしていたわけではないからだろう、
後を引くような疲労感は感じなかった
そう頷くと、若葉は安堵したようにため息をついてほほ笑む
若葉「そうか、なら良いが……まぁ、起きていても大して出来る事はないからな、まだ眠いのなら、眠っていても良いぞ」
天乃「ううん、大丈夫」
やることも、出来る事も
ほとんど何もないが、寝てしまっては時間を無駄にするだけになってしまう
それに、端末は手元にあるのだ
それさえあれば、天乃は出来ないことの多い中で、出来る事が増えていくから
天乃「若葉あは沙織に会えた?」
若葉「いや、昨日から戻ってきてはいないな。気配も感じないからこの建物自体に来ていないと思う」
天乃「……そう」
寂しそうに呟く天乃は、手をきゅっと握り絞めて首を振る
沙織は自分でそれを選んだ。
天乃はそれを阻むことはしないと決めた
だから、ここに戻ってこないのだとしても
責めることなんて出来はしない
若葉「昨日は確か、伊集院家に用意された見合いの相手に会っていたんだったな」
天乃「うん」
若葉「…………」
ならばなぜ戻ってこないのか
それを考えた若葉は、真っ先に考え付いた答えを喉元でとどめて、
首を横に振る
それはない。それはない
それだけは……そう、考えて
けれど、沙織が言っていた言葉を思い出せば、
それが一番、可能性が高かった
若葉「伊集院家に戻っているのかもしれないな」
天乃「……若葉は優しいのね」
天乃「少し考えれば、一番の可能性がそれとは違うことくらい分かるわよ」
若葉「…………」
沙織は子供を作ることも……と言っていたし
いきなりそういうことをする可能性こそ低いとは思うが
距離を詰めるためにも、一晩くらいは付き合おうとするかもしれない
例えば、彼の家に行く……とか
親が決めた相手なのだから
彼の親も沙織について知っていることだろう
なら、その挨拶。ということも大いに可能性はある
天乃「……若葉は、それで悩むかもしれないと思ったから朝からいてくれるんでしょう?」
若葉「あのな、天乃。沙織は――」
天乃「知ってる。貴女が聞いたなら、私も聞いてる。あの子は私に正直に話してくれたから」
若葉「…………」
心が強く穢れる感覚はない
あの日のような……けれど、心に痛みはある
若葉「……そうだ。私は沙織について考えると思ったから。ここにいる」
天乃「…………」
天乃の俯きがちな頬に手を宛がって、優しく支えて前を向かせる
目線をじっと合わせて……息づく
若葉「本当に、君は待てるのか? 沙織が戻るかもわからないのに」
1、沈黙
2、待てる
3、待てない
4、分からない
↓2
4
4
3
天乃「……解らない」
沙織には、沙織が誰かに強制されたのではなく、
自分の意思でそうするのなら阻むことはしないし、
戻って来てくれるのなら、それも受け入れるという話をした
けれど、どうだろう
昨日沙織が避けているのではないか、という話になった時
今日、沙織がまだ帰ってきていないと聞いた時
平常心でいることが出来ていただろうか
天乃「分からない……」
天乃が強く手を握りしめるとその上から若葉は手を重ねて、
天乃が驚いたように目を向けると、若葉は首を横に振る
若葉「それ以上力を入れると怪我をするぞ」
天乃「……」
若葉「……もしかしたら、沙織はすべてを終えてから帰ってくるつもりなのかもしれない」
男性との交際
男性との行為
男性との子供
何もかもを終えてから、しっかりと区切りをつけて……
いや、もしかしたら
若葉「もしかしたら、このまま帰らないつもりなのかもしれない」
沙織は嫌なら嫌と言ってくれれば嬉しいと言っていた
天乃の想いでなら困ってもいいとも言っていた
そんな沙織に、天乃は好きにしていいと言ってしまったのだ
戻るにしろ、戻らないにしろ、沙織が決めたことならそれでいいのだと
自分の意思を押し隠して、すべてを沙織に委ねてしまった
その我儘が、沙織を困らせてはいけないと思ったから。
天乃「解ってる……から。その可能性がある事くらい、分かってるから、言わないで」
若葉「…………」
天乃「私は沙織に好きにしていいって言ったの……だから、沙織は自分の意思に従ってる、だけだから」
若葉「天乃はそれが辛いのだろう? 苦しいのだろう?」
首を横に振る
けれど、若葉は嘘は付かなくて良いと言う
沙織の全てを支配したいと思うわけではない
けれど【同性】という変えようのない絶対的な敗北に屈するというのが、嫌なのだ
沙織が本当に、本心で天乃よりもその人を愛しているのではないと分かってしまうから
自分が沙織に愛されて、愛してしまったからこその
嫌な離別だということが分かってしまっているから苦しむのだろう
その沙織の意思が、想いではなく、決意だとそう。知っているから……
天乃「……独占欲が強いのよ、私」
若葉「そうか? むしろ沙織やみんなの方が独占欲強い気がするが」
もちろん、勇者部や精霊組の輪の中でならそんなことはないと思うが
それ以外の他人。それこそ異性に対しては、
天乃のことになると激しく欲が出てくるだろうと若葉は思う
若葉「天乃が子供を作るという話になったことだってそうだ」
あれは天乃の精霊である、悪五郎が相手になったからなんの騒動もなかったというだけで会って
それ以外の男性ということになっていたら
皆はそう簡単に受け容れることはなかっただろうし
強攻した時なんかは……きっと
大変なことになっていたはずだ
若葉「天乃は沙織が好きなんだろ?」
天乃「うん……」
若葉「なら異性との関係に不安になったり、不快感を感じるのなんて普通のことだ」
天乃「そう……かしら」
若葉「そうだ」
天乃は沙織を待つことが出来るのかどうか分からないというけれど
それだって、別に不思議な事でもない
天乃はそういったことを今まで感じたことが無いから、どうしたら良いか分からないだけで。
若葉「沙織を連れ帰ってくる」
天乃「え?」
若葉「それで、もう一度しっかり話をしよう。しっかりと」
若葉はそう言い残して、姿を消す
残された天乃は、温もりの薄れていく手を胸元に当てがって抱きしめる
天乃「……わがまま」
怖かった
ただただ、怖かった
沙織がどう過ごしたのか、それを聞く事になりそうで
若葉が連れて来てしまうことが、天乃は怖くて仕方がなかった
√8月14日目 昼(特別病棟) ※日曜日
01~10 沙織
11~20
21~30
31~40
41~50 沙織
61~70
71~80
81~90 夏凜
↓1のコンマ
※ぞろ目 沙織
あ
あ
では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
天乃「……何しに来たの?」
大赦「あ、いえ……その」モジモジ
大赦「わ、私の……負けです。久遠様の言う通りでした……」ギュッ
天乃「え?」
大赦「我慢……出来ないんです。昨日のように抱いて……いただけませんか?」
天乃「九尾! 何したのか説明しなさい!」
乙
久遠さんが何かするとすぐ嗅ぎ付けてくるな大赦は…
事件発生の予感が
乙
大赦の追い討ちかな?
大赦「バテクス!沙織の婚約者!久遠さんにジェットストリームアタックをかけるぞ!」
では少しだけ
あいよ
√8月14日目昼(特別病棟) ※日曜日
「久遠様、お話がございます」
昼食を片付ける為の係との入れ替わりにやってきた神官は
会釈一つですぐにそう切り出した
機械人形にも思えてしまうような無感情な声は
今まで相手してきた人との差が激しいからか、
やはりまだ、受け入れることはできなのだろう
天乃はすこし不快そうに目を向けて
天乃「話って?」
「昨日のお話の続きになります。ご指摘頂いた点を考慮したうえで、お話してまいりました」
天乃「……そう」
昨日の話。となると天乃ではなく九尾が聞いた話だろう
それに関して何も聞いていない天乃はとりあえず。と
知っているような素振りで返して、息をつく
けれども内心、動揺はしていた
「久遠様が仰られたように、形式的に転校のみを行わせても、クラスメイトや勇者は久遠様を諦めることはないと思われます」
天乃「……でしょうね」
「また、入院という手段を講じたとしても、前回の件もありますので同様に問題が生じる可能性は極めて高いと思われます」
神官の何を考えているのか分からない声を聴きながら、
天乃は昨日の話を頭の中で組み立てていく
時期的に、通学の件に関して九尾は大赦の人間と話したのだろう
そして、天乃が転校する意思はここにきても全くないこと
形式的に天候手続きを行い、ここで引き続き保護観察することの問題
長期入院という手段を持って隔離し、ここで引き続き保護観察することの問題
九尾はそれを告げて、また考えてくるようにと言ったのだ
その件を話してくれなかったことに関して何か言うべきかとも思ったが、
昨日は戻ってすぐ休んでしまったのだ。仕方がないと言えば仕方がない
「いくつか問題点は散見されますが、久遠様にはまたご通学いただきます」
天乃「自由に。とはいかないんでしょう?」
またみんなに会えるということに関しては喜びたい思いもある
けれど、今までのようになんの縛りもなく、というわけにはいかないはずだと
天乃は警戒しながら問いかけると、神官は「はい」と、正直に答える
「大赦から一人、久遠様の世話係として改めて派遣させていただきます」
天乃「瞳や夏凜達ではなく?」
「はい。夢路さんに関しては、今まで通り送迎を行っていただきますがそれ以外にもう一人派遣させていただきます」
そう言った神官は、
学校における行動は彼女の指示にすべて従ってください。と続けて
「なお、部活動に関しては申し訳ありませんが行わずに帰宅いただくことになります」
天乃「……学校には行かせるけど、自由はないってことね?」
「何が起きるか分からない以上、久遠様を自由にしておくわけにはいきませんので」
天乃「大赦にとっての私は、相も変わらず化け物なわけ? 臆病ね」
皮肉も込めてそう言ったが神官は何一つ動じることはなく、
仮面をつけたまま天乃をじっと見つめて、会釈をする
何に対する会釈なのだろうか
まるで、神に対しての畏敬のような……
そう思うと、天乃は逆に悲しささえ感じてしまう
気丈に振舞おうとする気持ちに応えて、手と手が強く握りあっていく
「久遠様の世話係に関してですが、適正な同学年の女性徒は見当たりませんでしたので、一学年下の女性徒になります」
天乃「夏凜達と同じクラス?」
「そうなります」
天乃「それ、夏凜達には話してあるの?」
そう伺うと、神官は微動だにすることなく一拍置いて「いえ……」と呟くように答える
「勇者への追加要因では御座いませんので、世話係に関する通告は行っておりません」
仮面が神官の表情を隠し、感情を覆う
それが天乃には煩わしいと思えた
顔さえ見ることができれば、その鉄壁も崩すことができるかもれないし
有利に物事を運ぶこともできる可能性が出てくるのだが、これではそれが出来ないからだ
天乃「つまり、学校内で私と夏凜達の接触は制限されるのね?」
「過剰な接触は制限させていただく可能性が御座いますが、基本的には問題なく」
天乃「その過剰かどうかは誰が決めるの?」
「世話係の者に一任することになります。彼女は優秀ですから、久遠様の護衛も問題なく行えることでしょう」
天乃「それは……どういう意味合いでの言葉なのか聞かせてくれる?」
どこか皮肉交じりにも思えた言葉に天乃は喰いかかったが、
神官は一礼をすると「用件は以上です」とさらりと流して部屋から出て行く
天乃「……なんなのよ」
触れることすらおぞましいというかのような態度だ
世話係がどのような対応をするのかはわからないが
もしも今の神官のような態度なのだとしたらと思うと、天乃は堪えられる気がまるでしなかった
苛立ちも、悲しみも。
天乃「私は……人間……なんだから」
弱い。
脆い。
儚い。
たったこれだけのことで布団を握り締め、あろうことかその手の甲を濡らすほどに
天乃は力を失った。
大赦はもう、天乃に力を求めることはないかもしれない
しかし、彼らは天乃の脅威が薄れたことを喜ぶと同時に、まだ未知数なのだと恐れている
身体に宿したと思われる命が彼らにとっては【化物の子】であるがゆえに。
九尾「……ふむ、そうなったか」
天乃「九尾……!」
報告を怠った―といっても天乃にも落ち度はある―九尾は、
前触れ無く姿を現して、不快そうに扉を眺めて息づく
九尾「昨日、妾は少々気になってな。とある手を使って主様の学校の件を聞きだしてのう」
天乃「…………」
九尾「主様をこのまま通学させるのは難しいからと彼奴らは転校手続きを偽装し、このままここで監視する手筈だったと言うから、少し話を聞くことにしたのじゃ」
子供に童話を聞かせるかのように、九尾は言葉の一つ一つに感情を込めて
呆れ果てたため息を交えて話を進める
九尾は妖怪だが、神官よりもよほど人間らしく思えた
九尾「妾にとって、主様の学友の意思などどうでも良かったが、そもそも主様は長々とここに閉じ込められていては精神を病むと思うてな。思惑を砕いたのが、昨日の妾じゃな」
誇ることも無く、昨日報告するべきだったことを今更報告した九尾は、
天乃が疲れていたとはいえ、後日に回したことを軽率だったと考えたのだろう
罪悪感を感じる表情で天乃の頬に触れると、指で涙を拭って首を振る
九尾「報告したところで結果は変わらぬと思うておったが、覚悟はすべきことやったかもしれぬ。許せ、主様」
天乃「別に……怒ってないから。私が、我慢できないのも……そういうことじゃ……」
九尾「そうじゃな。主様はもうただの学友と身も心も変わらぬ。じゃからこそ、耐え切れぬと妾は侮った」
天乃「侮ったなんていわないで……正しいわ。間違ってない。私……きっと」
九尾「良い、良いぞ。濁流を無闇に塞ぐ必要など無い。氾濫させるくらいなら、流して流して出し尽くしてしまえ。その全ては妾らがしかと受け止めよう」
優しい九尾の言葉はまるで母親のようで
天乃は縋るようにその温もりを求めて抱きつくと、九尾も応じて優しく包み込む
√8月14日目 夕(特別病棟) ※日曜日
01~10 大赦
11~20
21~30
31~40 沙織
41~50
51~60
61~70 夏凜
81~90
91~00 友奈
↓1のコンマ
※ぞろ目沙織
あ
あ
√8月14日目 夕(特別病棟) ※日曜日
1、精霊
2、勇者
3、端末関係
4、イベント判定
↓2
4
4
01~10 沙織
11~20 友奈
21~30 夏凜
31~40 九尾
41~50 千景
51~60 沙織
61~70 大赦
71~80 風
81~90 樹
91~00 若葉
↓1のコンマ
※ぞろ目沙織
あ
あ
では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
友奈「久遠先輩、大変なんです!」
天乃「友奈?」
友奈「東郷さんが……」
天乃「何があったの?」
友奈「東郷さんが……千景さんと一緒にゲームで徹夜するようになっちゃったんです!」
天乃「……平和ね」
乙
不良かな
乙
久々の友奈ちゃんとの交流か
あとさおりんは精霊として呼び出せないのかな
無理じゃない?久遠さんは今そういう系で完全に無力だったはず
乙
では少しずつ
やったぜ
√8月14日目夕(特別病棟) ※日曜日
気配を感じ取ることは出来ないが、
理由あって出て言った若葉が黙って戻ってきてこっそりと隠れていると思えない天乃は
端末を手に、小さく息をつく
天乃「……見て、くれるかしら」
電話をすることはできない為、メールでの連絡になってしまうけれど
端末を持っているはずだから、気づかないなんてことはないはずなのだ
そのはず……なのだが。
若葉は沙織を連れ戻してくる問いって出て行ったきり
つまり、沙織の居場所がまだつかめていないか
沙織が戻ることを拒んでいる可能性がある
もちろん、ただ用事があってそれを済ませようとしているだけの可能性もあるが。
天乃「無視……されたりとか……」
沙織のことだから、きっとそれはないはず
そう思っても
喧嘩別れとかでもなく、こんなにも拒絶を感じたのは初めてで
どうなるのかが怖くて、天乃が連絡できずに居ると
先に、端末がメールの受信を知らせた
天乃「友奈……から?」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
昨日は楽しかったです
着てくれて本当にありがとう御座いました、嬉しかったです
東郷さんも千景さんから貰ったクマのぬいぐるみ大事に部屋に飾ってて、
なんだか凄い新鮮で
東郷さんはいつも綺麗で大人っぽくて、可愛いけど
でも、ぬいぐるみをぎゅーってしてる東郷さんは
いつもより子供みたいだけど、可愛くて
そう言うのが見られたのも
きっと、昨日久遠先輩が来てくれたからこそだと思います
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
天乃「お礼なんて、私こそ……」
移動したりなんだり、手を借りなければいけなかったのだから
散々迷惑をかけてしまっただろうし、楽しませてもらった
そう思いながら友奈の感謝の文面に困ったように笑みを浮かべたときだった
ほのぼのとしいた文面からいくつか改行が続いて、
書くかどうか迷ったのかもしれない【沙織さんについてなんですけど……】と
見るだけでも友奈のおどおどとした姿が想像できてしまう続きに気づく
天乃「沙織について?」
昨日、友奈は知らないといっていた
お祭りでは見ていないと言っていた
なら、嘘をついたということだろうか?
碇にも似た感情がわきあがりそうな自分の危うさを制して、一息
まずは最後まで読むべきだ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
沙織さんについてなんですけど……実は、お昼に会ったんです
家に来たとかじゃなくて
ただいつもみたいに走ってるときにたまたま歩いてて
久遠先輩が探してましたって言ったら「知ってるよ」って
なんだかちょっと、上手くいえないですけど悲しそうな感じで
何かあったんですかって、勇者部は力になりますよって
そう言ったんですけど、沙織さんは「これは流石に無理じゃないかな」って
ごめんねって
今は会いたくないから、今は話したくないから
そうしたら、逃げちゃうからって
本当は、これも言わないで欲しいって、言われたんですけど
でも、久遠先輩心配そうだったから
沙織さん辛そうだったから
あの……私じゃ力になれませんか?
もうすぐ、学校が始まりますし、学校でならきっと沙織さんと会えるから
ダメ、ですか?
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
天乃「…………」
友奈はどういう心境でこのメールを打ち込んだのだろうか
自分がまったく蚊帳の外である話に触れかけて
言わないで欲しいといわれたことを告げ口して
自分は力になれませんか。と
蚊帳の外である時点で友奈はある程度の想像をしてしまったはずなのに。
だから、天乃はそう思った
天乃「……返信、怖いでしょうね」
こういうとき、大丈夫。といわれるのが怖いと天乃は思う
そう返されたということは、つまり”力になれない”といわれているようなものでもあるからだ
もちろん、相手がその意味で使っていないのだとしても
その言葉を返された側はどうしてもそう錯覚してしまいかねない
端末を握り締めて、祈るように待っているかもしれない
端末を放り出して耳を塞いでいるかもしれない
いや、友奈の場合は後者はない
天乃「ふぅ」
とはいえ、友奈が言う学校の始まりには天乃も通学できる
つまり、
縛りはあるけれど、沙織が欠席しない限りは会うことが出来るわけで
友奈が深く考え込んでしまっていることには罪悪感を覚えるけれど
お願いした後に実は学校行けるのよね。というのも少し気が引ける
別に口止めされていない―大赦が端末の存在に気づいていない―のだから
伝えても問題は無いかもしれないが。
1、実はね。沙織……子供を作るらしいの
2、大丈夫よ。ありがとう
3、大丈夫、新学期からは私も学校行けるから
4、そうね……学校が始まったら私も行けるから。そのときにみんなで話しましょうか
5、それなりの秘密だし……友奈もなにか秘密教えてくれたら……良いわよ?
↓2
5
4
では、ここまでとさせていただきます
明日は出来れば通常時間からとなりますが
恐らくおやすみいただくかと思います
友奈「……久遠先輩」ゴロゴロ
友奈「返事……来る、かなぁ?」ギュッ
ヴィーヴィー
友奈「あ……メール見るだけなのに……凄い、緊張する」トンッ
お兄ちゃん『ランニングしてきたならいっしょにお風呂入ろう。兄妹なら普通だから』
友奈「色々普通じゃないよっ!?」
乙
ゴロゴロでお腹壊してんのかと思ったww
乙
まだ決まった訳ではないけどこの様子だとさおりんもとうとう大人の階段のぼってしまったのかな…
乙
では少しずつ
待っていたぞ
確かに、こればかりは友奈たちに相談しても仕方が無いのではないだろうか。と
天乃も沙織と同様に思ってしまう
しかし、だからと言って自分達だけで悩めば解決するのか。といわれれば
間違いなく、それはノーと答えることになるだろう
そもそも、解決できるのならば、今こうして離れ離れになっているはずが無いからだ
それに、話を聞いてもらうだけでも
自分の悩みを外に出すだけでも意味はあるとも思うから
天乃「まぁ、断ったら空元気な友奈を見ることにもなるだろうし」
それは見たくないから……ずるいなぁ。と、天乃はぼやきながらメールを打っていく
伝えてはいけないと聞いていない通学の件
そして、そのときにはみんなを集めて。と文章を添えて送る
天乃「…………」
端末を枕元に置いて、一息
友奈が沙織に会ったのは昼頃、恐らくは一人で歩いていたのだろう
なら、若葉はどうしたのだろうか……いや、若葉が向かったから沙織が出ていた可能性は大いにある
連れ戻されないようにと逃げ出した。とか
友奈が沙織に言われた言葉から察するに、そうだろう
メールを送ってからすぐに、友奈からの返事が返ってきた
解りました。と、良かったです。と、嬉しいです。と
色々と続いていく友奈からの喜びを感じるメール
短くも無いが長くも無い
しかしながら送ったメールに対しては比較的―その対象があるかは別として―長いと天乃は思いながら
文章に目を滑らせて、笑みを浮かべる
縛りはあるけれど、学校には行けるのだ
世話係を任命されたのが誰かはわからないが
恐らく、天乃に対して好意的な人物ではないことだけは想像に易い
好意的=監視が甘いということだし
付け加えて言えば、夏凜のように厳しく見えて内面では優しいような子も、きっと
天乃「……夏凜と喧嘩にならなければ良いけど」
正直な話、今の天乃には当たりの強い相手と関わる上で泣かないという自信がまったく無かった
堪えようとは思うのだが、その上限値が極めて低い
天乃が泣いたともなれば、夏凜のことだ一触即発はほぼ免れない
そして夏凜どころか、東郷たちもその可能性は無きにしも非ず。と言ったところだ
異常なほどに精神が脆くなったのは、力と同様に穢れが抜けていく影響だというが、
一番は、天乃の【強くいなければいけない】という縛りが解けた為だろう
となると、それが天乃の素の姿となってしまうのだが。
天乃「はぁ……」
ため息をつく
誰の気配も感じ取れない一人きりの空間
あと半日ほどでこの部屋から出て行くことが出来るという嬉しさはあるものの
色々と不安はあるのだ
多少勉強はしているけれど
抜けている部分もあるから、ついていけるのかどうか
そもそも、追いつくことが出来るのかどうか。とか
天乃「頑張ろう……今まで頑張って来たことよりは、ずっと」
ずっと楽だから。ずっと簡単だから
死ぬかもしれない戦いに身を投じるのと、ただの勉強
それは比べるまでも無い
天乃「もうすぐ卒業だし、進路も……考えなきゃ」
基本的には高校への進学だろうが
天乃の場合、子供のこともあってみんなと同時に入学というのは難しいかもしれないし
このまま大赦預かりになる可能性も否定は出来ない
一時的に力も何もかもを損なってはいるが、久遠家が元来持っている巫女の力は完全に失われるわけではないからだ
天乃「……進学が、良いな」
大赦預かりなどという窮屈な進路はごめんだと天乃は思う
けれど、その可能性の高さを示すような現状の扱いに
天乃はまた、深々とため息を突いた
√8月14日目 夜(特別病棟) ※日曜日
01~10 若葉
11~20
21~30 九尾
31~40
41~50
51~60 若葉
71~80 大赦
81~90
91~00 千景
↓1のコンマ
※ぞろ目 大赦
あ
√8月14日目 夜(特別病棟) ※日曜日
1、精霊組
2、勇者組
3、端末関係
4、イベント判定
↓2
4
3
1、インターネット掲示板
2、勇者部サイト
3、ギャラリー
4、えっちなサイト
↓2
4
4
では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
天乃「女の子同士……えっちな動画……見れ――」ピコンッ
天乃「えっ!? 100万!? 登録!? まだなにもしてなっ」ピコンッ
天乃「やっ、ちょ、待って……違約金って、なんでっ、私っ」グスッ
千景(またか……はぁ……動画なんて見なくても乃木さん達がいるのに……あ、今いない……わ)
千景(私が……相手、してあげた方が良い? そう、よね。仕方がない……久遠さん精霊だから、仕方がない)
千景(別に私がしたいわけじゃない。わけじゃないけど、精霊だから、仕方がないから、する……仕方がない)
乙
久遠さんの欲求が解放されてしまう
乙
久遠さんネットに弱すぎるw
しかもさおりん達ともしといてまだ女の子同士に餓えてるのか…
久遠さんはネットに関しては掲示板に実名とアドレス書き込む時点でお察しでしょ
他がほぼ完璧少女だから逆に良い
まぁ多分今まではインターネットを楽しむ余裕がなかったんだろうね
一週目では掲示板で神樹disって即BANされるくらい尖ってたのに、随分可愛くなったよね(しみじみ)
昔の久遠さんのツン要素は陽乃さんに引き継がれてる気がする
いつか陽乃さん編もやってみたいなあ
では少しだけ
ほいさ
夜の帳が下りた……と言っても部屋の明かりの有無でしかないのだが
夜になった天乃のいる部屋で、人工的な眩い光が存在感を主張していた
天乃「……駄目ね、ほんと」
日中にもあるのだが、夜になると性的な欲求がより強くなって
どうしても、淫らなことをしてしまいたくなるのだ
もちろん、なにか優先すべきことがあるのならば抑え込むことも出来なくはないのだろうが、
若葉が戻ってこない、沙織が戻ってこない
その寂しさ、その切なさは情欲の裾をグイグイと引いてくるため、天乃は耐え切れそうになくて
駄目だとは思うのだけれど、疼きを誤魔化せなくて。
少しでも。と、端末を使ってそういった何かを見ようと思ったのだ
天乃「良く分からないサイトは開かないべきよね……」
もちろん、インターネットが無法地帯なんていうことは
大赦のおかげで。というべきだろう、まったくない
どこかのサイトを開いたからといって画面いっぱいに警告文が現れたり、
心臓に悪いドッキリ映像や画像がでてくることもない
いたって健全な状況なのだ
しかし、それは同時に過度な性描写等が封殺されているということでもあるわけで。
天乃「……やっぱり、男の子じゃなくて男性になるとそれなりになるのね」
もちろん、加工が施されていてはっきりと見ることができるわけではないが
悪五郎のそれとはまるで違うのがモザイクの上からでも解ってしまった天乃は
その異様な姿を前にぼそりと呟く
一般的な思考で言えば本来自分が体を許すべき相手が持ちえるであろう生殖器は
サイト上に掲載されている画像では赤っぽく、大きく、加工を付加してなお異形で
天乃はもしかして大人のそれはバーテックスなのではないのかとさえ、思う
もちろん、そんなわけが無いとは思うが……しかし
天乃「あまり、見たいものじゃないわね」
自分にはそれが無いからと言うわけではないし、
それを持つ異性全体を馬鹿にしたり蔑んだりするつもりは無いが
天乃の性的経験上にあるのは綺麗なものばかりで、どうしても抵抗があるのだ
唇でのかかわりであれば全員だが、
肉体的な意味では沙織、友奈、東郷、夏凜、若葉……そして悪五郎の6人との交わり
悪五郎のみが異性―妖怪―だが、それも子供と言うだけあって汚れは感じさせない容姿で
女性陣は肌の白さや肉付きの違いこそあるものの、やはり綺麗に整った体付きで汚れは無かった
天乃「沙織は、これ……なのよね」
決して画像の男性がみな不衛生にしているわけではないと思う
いや、そうであると信じたいと天乃は願いながら、沙織の相手になるであろう男性の姿を思い浮かべて
天乃「なんか……嫌ね」
ぼそりと呟く
沙織の相手がこのサイト上のもののように歪と言うべきか、グロテスクだというべきか
そういったものではないのだとしても、それが沙織に触れたりするのはなんだか気味悪く思えたのだ
もちろん、沙織が受け入れるといったのなら、天乃は何も言わないつもりではいるのだが……
ふつふつと沸き立つ感情は、はたして何も言わずにいられるのだろうか
何もせずにいられるのだろうか
天乃「……若葉はこの感情、あって当然だと言うけれど」
この反応を見るに五郎くんのそれは年齢相応だったのか
あまりそうは思えずに息をついた天乃は、
画面をスクロールして、サイドにある一覧へと目を通す
行為……所謂プレイと呼ばれるものだったり、性別や担当した女優や男優のものだろうか
いくつもの名前が書かれたその一覧には、やはり、女の子同士のものもある
もっとも、ここで見ることができるものに関しては女の子というより女性同士だろうけれど。
天乃「こういうのも……あるのね」
恐らくは天乃のことを気遣っているのだとは思うが、
先を行く東郷や沙織がいてもまだされたことのない行為はいくつもあって、
元々疼いていた下腹部は刺激を求めて天乃の体内で小さく鳴く
例えば、男性器を模したものから小さな球状のものなど
幅広い形を持つ性業界の二十面相
普通の健康器具でさえ、紛れ込んでいるそれの振動を利用して、下腹部を刺激したり
物によっては挿入してしまったり
天乃「……こんなことに使ったら、怒る。よね」
端末の画面を閉じて、バイブレーションを設定して振るわせる
目先での振動はそこまで強く感じない一定のリズム
でも、敏感な部分に当てたらどうなるんだろうと、天乃は思う
思い、求める天乃はアラームで設定して、深呼吸
ゆっくりと、淫欲の窓口に宛がう
そして――
天乃「っ!」
時間を確認できなかった数秒間あるいは数分間
ドキドキと激しかった心臓の音を弾き飛ばすかのように不意に訪れた刺激は、
まさしく、痺れたような衝撃だった
ヴィーっと間延びするような振動が下着の上から、下腹部から、敏感な部分から
並のように全身へと響き渡って、共鳴するように振動は強さを増していく
天乃「はっ……ぁっ」
口から掠れた声が零れ出る天乃は離さなきゃ。と思いながら、
震える手はなおも押さえ込んだまま離れない
気持ちが良かった、初めて感じる感覚だった
温かくて、優しい沙織たちの手の感触ではなく
無機質で、乱れの無い器械の刺激
その経験がなく耐性のまったく無い天乃には猛毒にも似て
天乃「ぁっ、っ……んっ!」
昨日の夏祭りのキスだけのもどかしさも相極まって敏感になっていた天乃は
端末を押さえるのとは逆の手で口を押さえて
天乃「んんっ!」
小さく呻くのと同時に、果てを感じて
淫らな湧き水はじわじわと下着に染み込み、横になった天乃の臀部のほうへと流れ出す
天乃「ぅ……っは、はっぁ……」
ズボンから端末を引き抜くと、熱気に包まれた淫猥な匂いが立ち込めて、天乃は唇を引き締めた
まだまだ足りない、もっとしたい。もっと強く……と果ての無い性欲は貪欲に貪ろうとしているけれど、
素材ゆえではなく、染みて濡れた手と端末に目が行く天乃は罪悪感を覚えていたからだ
手はともかく、端末は若葉が心配して申請してくれたもので
兄が妹のためにとたった一日で用意してくれたもので
決して、こんなことのために使うべきではなかったはずなのに
天乃「使っちゃった……私……でもっ」
蚊に刺された部分に触れまいとすればするほどに痒みが増していくように下腹部は疼いて
リピートで震えだす端末をじっと見つめて、息を呑む
ほんのりと淫らなにおいのする手と端末
ドキドキトする胸は期待を示していて……
天乃「我慢、出来ないから」
どうしようもなく欲しくて、抗えない
エッチな子だと、淫らな子だと天乃自身も思うし、ダメだと思うのだが
それでも触れようとする手は止められない
一度口火を切ってしまった以上は、最後までするしかなかった
天乃「っはっ、あっ……んっ!」
それでも、端末だけは使うまいと手から取り除いて指で擦る
恋人と兄の思いが込められたものだから
それをこれ以上汚すのは嫌だったから
なのに
天乃「っはっ……ぁ……っ」
物足りなかった
いや、物足りなくなってしまった
あの不意を突いた痺れるような快感が、欲しくて堪らなかった
天乃「やっ……だめっ」
端末に伸びかけた手を止めて、呻いて、それでも端末に指が触れるとスリープ状態に変わっていた端末は光を取り戻して
アラーム設定画面が表示されたのを確認した天乃はダメだと思いながら設定をして、閉じた足で挟む
情欲に負けた、快楽に落ちた。天乃は自分がそんなみっともない人間になってしまったのだと
今まで以上に強く感じて、見せ付けられて、唇を噛む
天乃「それでも……我慢できないんだから……」
救いようが無いわね。と、天乃は諦めたように呟く。股に挟んだ端末を抜こうと思えない
それどころか、いつ快楽の濁流が流れ込んでくるのかと心は躍って
子供はまだ出来ていないはずの下腹部に心臓が移動したかのような脈動を感じて
汗か涎か判らない水分がズボンの中、下着の中で蒸発して、押さえ込むことのできない匂いが部屋に漏れ出して充満していき――そして
一拍の空白を置いて、予め用意されていた刺激がはじけるように天乃を襲う
天乃「ひぁっ!?」
時間がわからないという付加効果によって、
自分が設定したアラーム時間なのにも関わらず気を抜いた一瞬の隙を突かれてしまった天乃は
情けない悲鳴を上げて身悶えて、下半身全体が震えるような悦楽に心を齧られて
焼き尽くすような快感のゆっくりとじっくりと下腹部から遡る焦らすような鈍足さに身体はより疼いて
天乃「っはっ……はっ、ん……ぁっ、お兄ちゃ……んっ!」
端末を用意してくれたのは兄だから。その兄にされているような妄想が脳裏に浮かぶ。
優しい笑みを浮かべ、温かい言葉をかけながらぐっと股座にそれを押し込んでくるのだ
天乃「んっ!」
天乃が身悶えていても関係なく、寧ろより強く感じるようにと押し込み、
空いた手で優しく包むように、押し伸ばすように胸に触れながら、
ぷくりと存在感を見せる乳頭を指と指の間で挟み込んで、きゅっと締める
天乃「っんんっ、ぁっんんっ!」
敏感な部分の振動と弱い胸部の刺激に挟まれた天乃は、耐え切れないと口を塞ぎ――押し殺した嬌声を上げて
ビクビクと体を震わせながら、 息をつく
天乃「……はぁ」
端末のアラームが止まったことに気づいた天乃は小さく呟き、
口に触れた手には少しだけ自分の淫らなものがついていることにも遅れて気づく
味覚は感じないが、ねっとりとしていて、淫らな水。
それがにゅるりと口の中に入っていく―自分絵入れているのだが―せいで自分の手なのに兄のもののように思えた瞬間、空想上の兄がにやりと笑った
天乃「やっ、待っ」
兄は「まだ終わってないぞ」と言いながら、天乃の下腹部から離していた手を再び近づけて――
天乃「あぁぁっ……ぁんんっ!」
大きな振動だった。今まで感じた振動よりも強い振動
天乃は自分で設定した覚えは無いが、設定したのだから今こうして襲ってきているのだろう
果てにたどり着いたばかりで敏感な部分がより敏感になっており、
脳へと直通で繋がってしまっている状態で伝わってきた激しい悦楽は天乃の心も身体も侵して突き抜けていく
天乃「んんぅぅっ!!」
目元に涙を溜め込みながら、叫びそうな口を必死に押さえ込んで、巡る快楽に悶えて呻き、飲み込めない涎を上からも下からも垂れ流して、一瞬、放心してはっとする
天乃「や……ちゃった……」
何もかもが淫らに乱れ、びしゃびしゃで。淫猥な匂いの立ち込める空間はまるでそのための部屋のようで
様々な感情に押しつぶされてしまいそうな天乃は自然と流れ出す涙を拭うことすらできなくて。
千景「……様子を見るべきじゃなかったわ。悪かったわね」
不意に現れた千景の優しい抱擁、誘うような声
天乃はそれが何かと気づくことすらできずにしがみついて――気を失ってしまった
1日のまとめ
・ 乃木園子:交流無()
・ 犬吠埼風:交流無()
・ 犬吠埼樹:交流無()
・ 結城友奈:交流有(学校が始まったら)
・ 東郷美森:交流無()
・ 三好夏凜:交流無()
・ 乃木若葉:交流有(分からない)
・ 土居球子:交流無()
・ 白鳥歌野:交流無()
・ 藤森水都:交流無()
・ 郡千景:交流無()
・ 伊集院沙織:交流無()
・ 神樹:交流無()
8月14日目 終了時点
乃木園子との絆 54(高い)
犬吠埼風との絆 76(かなり高い)
犬吠埼樹との絆 62(とても高い)
結城友奈との絆 84(かなり高い)
東郷美森との絆 86(かなり高い)
三好夏凜との絆 108(最高値)
乃木若葉との絆 80(かなり高い)
土居球子との絆 38(中々良い)
白鳥歌野との絆 35(中々良い)
藤森水都との絆 27(中々良い)
郡千景との絆 30(中々良い)
沙織との絆 83(かなり高い)
九尾との絆 52(高い)
神樹との絆 9(低い)
汚染度???%
では、ここまでとさせていただきます
明日は出来れば昼頃から
9月突入、朝一で世話係と接触
千景「すっかり性に魅了されてるわね……平気なの?」
九尾「ふむ……まぁ、何かあればなんとかしようぞ」
千景「……あのまま学校に行くのは、危険じゃないかしら」
九尾「不安ならば行けばよい」
千景「?」
九尾「お主も生徒として、行けばよい」
乙
千景が治めてくれもいいんだよ?
乙
女の子のみならず異性も気になる久遠さん
まあ元々はノンケだったからかも知れないが…
あとさおりんの心配してるときに嫌々ながらも挿入されてしまうさおりんを想像してしまったわ
乙
性業界の二十面相とかいうセンスの塊なんなの?
それに妄想から察するに久遠さんはあれかM気質か
では、少しずつ
√9月1日目朝(特別病棟) ※月曜日
「…………」
この扉の先に、世話を任された人がいる
貴女の協力が必要になりました。そう言われたとき、
不快感もあったが、若しかしたら。という思いもあった
それは勝手に抱いた希望で、願望で
それが打ち砕かれたからと、文句を言える立場ではないと少女は思う
思うが、不快だった。気に入らなかった
何かを守るためではない、
培った経験や力を必要としているものではない
だから、不愉快だった。納得がいかなかった
過去の努力、そのすべては必要ないのだと、そう言われたようで。
「っ」
しかし、少女は引き受けた
何もない学校に通うくらいならと。
勇者としてではなくとも、【役目】に触れることで
自分を切り捨てたすべてに、見返すことが出来るかもしれない。と
「はぁ……」
憎悪に歪みそうな表情を整えて首を振り扉を叩くと、
のんびりとした返事が聞こえた
「失礼します」
天乃「そんなに畏まらなくても平気よ」
「いえ、一応先輩ですので」
久遠天乃
目の前のベッドに座る一学年上の先輩の名前を思い浮かべて、
世話係の女性とは目を細めた
大赦曰く、彼女はとても危険な人物で
危害を加えるようなことは一切してはならないと再三にわたって忠告をされるほど。
だが、少女の目に映る天乃はただの女の子だった
両足が不自由で、誰かの手を借りなければならない、弱者
天乃「ごめんなさい、手を借りて良い?」
「え、ええ」
そっと手を差し出すと、強くもない力で握られて僅かに体の重みが流れ込んだが、
天乃が車椅子に座ったのと同時に、重みは抜けて
天乃「ありがとう。それと、聞いているだろうけど。私は久遠天乃よ。よろしくね」
「…………」
手を借りなくても車椅子に移ることが出来た
そんな余裕のある表情を見せる天乃を、少女はじっと眺めて、首を振る
何か企んでいるなどと考えたら、そもそも笑顔すら怪しいからだ
全てに対し疑心暗鬼に陥ることは得策ではない
「今日から貴女の世話係を請け負うことになりました。楠芽吹です」
だが、信じ委ねることは許されない
世話係になった少女は固い意志を胸に、その手を振り払った
ここにきてついに芽吹が参戦か…
天乃「あら、手厳しいのね」
弾かれたように戻ってきた自分の手を優しく撫でながら、天乃は小さく呟く
あくまで、余裕を持たせた笑みを浮かべて。
しかし、天乃の心中は全くもって穏やかではない
ただ手を握り、挨拶を交わす
たったそれだけで、この反応なのだから
大赦の英才教育の賜物なのかもしれないし
どこかの夏凜ちゃんのように、人を寄せ付けない生き方をしようとしているのかもしれないが
いずれにしても、久遠さんちの夏凜ちゃんのように、そう易々と覆せるタイプではないと天乃は直感で思う
天乃「心配しなくても、私は危害を加えたりはしないわ」
「ある程度、反撃の手段は持ち合わせています」
天乃「……そう。無茶はしないでね」
若葉達ならばまだ自制心があるが、九尾はあるようでない
ゆえに、天乃の害になると判断した瞬間に、若葉達……いや
天乃の介入なしには、処分を免れない可能性さえあるのだ
天乃「楠さん」
「なに?」
天乃「せめて、クラスメイトとは仲良くね」
「……善処は、します」
√9月1日目 朝(学校) ※月曜日
01~10 全員
11~20
21~30 沙織
31~40
41~50
51~60 クラスメイト
71~80 友奈
81~90
91~00 千景
↓1のコンマ
※ぞろ目 全員
あ
√9月1日目 朝(学校) ※月曜日
新垣が始まり、
いやいやながらに校門を通る生徒、
友人と会って夏休みの思い出を話す生徒
感情色取り取りな景色の前で車が止まり、
車椅子に乗せられた天乃が揺られながら、おろされると
瞳「では、久遠さん。楠さん。行ってらっしゃい」
久しく会えていなかった瞳は満面の笑みで、手を振る
本当は色々と話したいことがあったのかもしれないが、
監視があっては、それも出来なかった
天乃「行ってくるわ」
「……行ってきます」
瞳の優しい言葉にも冷たさを持って答える世話係の少女には
まったく馴染む様子は見られなくて、天乃は少し困ったように笑う
これは、夏凜達も苦労するかもしれない
天乃「楠さ――」
友奈「久遠せんぱーい!」
天乃「友奈?」
もう少し忠告でもしておくべきかと口を開こうとした瞬間
友奈の元気な声が、跳んできて
天乃「ちょ、あぶな――きゃぁっ!」
友奈の体が天乃に覆いかぶさるのと同時に、
車椅子が今までになく仰け反って、悲鳴が上がった
友奈「ごめんなさい」
天乃から離れた友奈は、罪悪感に満ちてしょんぼりと頭を下げる
学校に通うことが出来るということは伝えてあったけれど
また、普通に会うことが出来るという嬉しさは抑えきれなかったのだろう
それはそれで愛らしいと、天乃はほほ笑んで
天乃「東郷は?」
友奈「東郷さんは車なんですけど……迎えの時間がまだで。そしたら、先に行ってていいよって」
本当は一緒に着たかったんですけど、と友奈は少し寂しそうに言う
天乃「そう……」
車の時間がまだ先だということは、
友奈は相当早くに学校に来た。ということだろうか
そんなに会いたかったのか。というのは、もはや考えるまでもなくて
天乃が友奈に目を向けると、友奈は「えっと……?」と
困惑した様子で、世話係の少女へと目を向けた
大赦はもちろんのことだが、天乃も話していなかったために、
興奮が冷めるにつれて、周りが見えてきたのだろう
「……貴女は、結城友奈さん?」
友奈「は、はい……そう。ですけど」
ちらりと天乃を一瞥し、友奈は不安そうに答えた
友奈「誰……ですか?」
「今回から久遠先輩のお世話係として派遣されてきました、楠芽吹です」
出だしは全く好調とは言えなかった
世話係の少女の雰囲気は相変わらず突き放すようなもので
そう言った雰囲気を容易く吹き飛ばしてくれそうな友奈ではあるが、
その態度には少しばかり物怖じしていて。
天乃「……もう少し、愛想よくとか」
「問題ありません」
天乃「そう……かしら」
どう考えても問題あるような気がすると天乃は思ったが
恐らく、何を言っても改善することはないだろう
少なくとも、今の自分と彼女の関係では確実に
そう考えて、口を閉ざす
現状の余計な一言は崩れかけのジェンガへの一突きに等しい
そんな運任せの交友関係は、お断りしたかったのだ
友奈「あ、えっと。それで久遠先輩……お昼は、部室でとか、どうですか?」
天乃「部室……ねぇ、楠さんは」
「無論、私も同席します」
天乃「……でしょうね」
1、大事な話があるの。席をはずしては貰えない?
2、仕方がないわね。楠さんにも巻き込まれて貰いましょうか
3、そうね、友奈。普通に食事をしましょうか。楠さんの件もあるし
4、ごめんね? 今日はちょっと
↓2
1
1
天乃「ねぇ、楠さん。大事な話があるの。席を外して貰えない?」
「できません」
考える事さえなく、彼女は首を横に振る
想像通りの反応に、天乃は文句の一つさえ浮かばずに、
ただ、小さく笑みを浮かべて「そうよね」と呟く
頭が固いとか、そう言う話ではない
彼女はその役目を請け負った
なにかやむを得ない事情を除いて常に、久遠天乃を監視していろ。というものを。
もちろん、監視というワードは天乃の想像でしかないが
あの大赦が登校を許可したのだ
ただの【世話係】で終わるわけが無いのは百も承知
天乃「どうしても?」
「はい」
天乃「お手洗いでも?」
「はい」
天乃「……えっちなことをする時も?」
「えっ……は? えっち……?」
初めて同様の色を見せた少女だったが
何を考えたのが、赤面した頬はそのままに
努力を感じるきりっとした表情で一息つく
「そ、そう言う類のことはさせません」
目を合わせないのは、もしかして本当にするのかという疑いがあるから。だろうか
天乃「そう……つまらないわね。ということだから、ごめんね、友奈」
友奈「あ、いえ……でも、みんなで食べるくらいなら平気ですよね?」
「私も同席することになるけれど」
そう言った世話係は、訝し気な視線を天のjへと向けてから
友奈へと目を向ける
自分を除かなければいけない大事な話
それが不快だったのだろう
言わない方が良かったかもしれない
天乃「はぁ……」
もっとも、大事な話の内容は大赦や神樹様に対する反乱等ではなく
ただ単に、沙織のことについてでしかないのだけれど。
それはブラフと考えて何か企んでいると考えてくるに違いない
疑われたところで、るボロはないけれど、少し面倒だと天乃は思う
天乃「仲良く出来るの? 楠さん」
「必要最低限は、善処します」
友奈「もっとこう、なんというか、ぱーってした方が良いと思うよ?」
「……はい?」
友奈「だ、だから。えっと楠、さん? は、カチカチというか、そういうアレだから。ひろーく感じられた方が」
「何が言いたいの?」
全く、善処するような様子ではなかった
では、だいぶ早いですが
一旦中断して、早ければ19時頃から再開します
一旦乙
メブは中々手強そうだな…あと一ヶ月でどこまで仲良くなれるか
では、もう少しだけ
「では久遠先輩、こちらを」
天乃「端末?」
「はい。私、送迎係の夢路さんの連絡先が入った端末です」
天乃「…………」
芽吹に渡された端末には言われたように、
楠芽吹、夢路瞳
この二人の連絡先しか入っていない
何らかの特殊な設定を施してあるのか、
電話帳の追加を選択すると、【これ以上は追加できません】と、注意文が表示される
インターネットに関しても、規制されていて検索さえできない
完全な連絡帳の端末
そして、操作は画面に触れるのではなくボタンをカチカチと押すようなもので
なによりも特殊なのは、パカパカと閉じたり開いたりできるタイプだという点だ
折りたためるくせに、以前までの端末よりも厚みがあるというのはあえて触れない
天乃「……新作?」
「詳しくは何も。ただ、久遠先輩の連絡用と」
天乃「そう……」
大赦なのだから、流石に新作ということはないだろうと天乃は考えを訂正して、息をつく
であれば、また細工した端末の可能性は高くて
天乃は出来れば持ちたくないと思うのだが、断れるはずもなく
「休み時間には必ず来ます。が、授業中にお手洗いに行く必要が出来たなどの際は呼んでください」
天乃「そのくらい、我慢できるから」
心配してくれていると分かるような言い方なら天乃も冗談めかして言うこともできるのだが、
芽吹の言い方はあまり、そう言った雰囲気を持っていないから
照れるようなことも、照れられない
「では、久遠先輩。また」
天乃「ええ」
一礼して去っていく芽吹が完全に視界の外へと消えていったのを確認してから、
胸をなでおろすようにため息一つ
すると、すぐ後ろからふわりと風が流れ込んできて
「久しぶりだね、久遠さん」
天乃「久しぶり」
「さっきのは、新しい女の子?」
天乃「女の子って……」
特別な意味を含ませていそうな赤らんだ表情
冗談なのかもしれないが、
心の内を見透かされたようで
天乃は思わず苦笑いを浮かべて、首を振る
天乃「二年生の子よ。こんなだから……手伝いに来てくれてるの」
「それなら私達が手を貸すのにね」
天乃「そうね」
それなら変な拘束もしてこないから、気が楽なのに
そう思った天乃は、「でも駄目なの」と困ったように呟く
……沙織は、欠席だった
√9月1日目 昼(学校) ※月曜日
01~10
11~20 千景
21~30
31~40
41~50 若葉
51~60
61~70
71~80 樹海化
91~00 風
↓1のコンマ
※ぞろ目
空白は世話係
あ
あ
ぞろ目だ、何が起こる…?
ぞろ目。生徒に紛れてくる子
1、若葉
2、千景
3、九尾
↓2
1
1
では、少し早いですがここまでとさせていただきます
明日も出来れば通常時間から
もしかしたら、お休みをいただく場合もあります
なお、土曜日は高確率でお休みになります
若葉「天乃」
天乃「え? 若……えっ?」
若葉「何かおかしいか?」
天乃「何かって……若葉、なんで男装してるの?」
若葉「それはな、天乃」ギュッ
天乃「!?」
若葉「皆の前で気にせず身を寄せる為だ」
乙
やだロマンチスト…
乙
展開次第では原作のくめゆみたいな話に繋げれるのかな?
それにしてもさおりん欠席とか凄く心配だ…
乙
…ん?ここにメブがいるって事は、讃州中学制服だよね?
かなり貴重なのでは
乙
原作ではやれないやらないを突き進むのがこのスレだし巻き卵
大赦を見返すために尽くす芽吹の懐柔は難しいだろうしこれは名采配
3年の弥勒寺さんは…ありゃ堕ちるからムリダナ
乙
みんなさおりんが一線超えたのではと言っている中、相手の男をコロコロしちゃったんじゃとか思ってたから全然さおりん出てこなくて怖い
乙
では、少しだけ
きてたか
√9月1日目昼(学校) ※月曜日
天乃「はぁ……」
少し大きめなため息をついた天乃は胸から上だけを机に乗せるようにうつ伏せる
ほんの五分程度の休憩時間あるいは授業準備時間にも、芽吹は宣言通りに天乃の所へと来たし、
2年の転入生と言う特殊な立場でありながら天乃へと近付く姿はより周囲の目を引き付けるものに他ならないにも関わらず
芽吹は近付くものは寄せ付けないといった態度をとるために、周りの好奇心は天乃への問いに切り替わって
休み休みに繰り返し聞かれては、お世話担当。と繰り返さなくてはいけなくて疲れたのだ
天乃「…………」
夏凜が担当ならまだからかったりもできたし、疲れるとしてもその分楽しめたのだが
芽吹きそうは行かない
お手洗いに行った時だってそう。中に入ろうとした―もちろん全力で拒絶した―し、
最終的には扉の前での待機が譲歩の限界だった
どれだけ厳しく監視しろといわれているのかはわからないし
どこからが芽吹自身の考えによるものなのかは不確かだが
現状、ろくでもない監視であることだけは、間違いなかった
風「お疲れ」
天乃「風……」
声に導かれて顔を上げると、一つ前の席には風が座り込んでいた
本来なら座席は離れているのだが、不在だからと借りたのだろう
天乃「ほんと、もう……疲れ果てたわよ。逃げたい……」
風「あたしも逃がしてあげたい気持ちは山々なんだけどねぇ……」
天乃「はぁ」
また、ため息。
風とて天乃を苛めるために気持ちを語ったわけではない
実際に、ここで今すぐに天乃に手を貸したいと風は思ってはいたが
手を貸せば芽吹から大赦に伝わり、何らかのペナルティが課せられるからどうしようもないのだ
しかし、本当にそんなことで風たちが何も出来ないのか。といえばそうでもない
芽吹の件に関しては、天乃が本当に追い詰められているわけでもなく、
半ば日常の一コマのように疲労感を見せているだけだから、何もしないのだ
本当に必要なときは大赦など平然と裏切るし、神樹様さえも切り倒す可能性は大いにある
風「それにしても――」
「久遠さん、お呼びだよ~」
風の声を遮るように飛んできたクラスメイトの声に、
天乃は机に伏せったまま言葉を投げ返す
天乃「居ないことにしておいて」
風「こらこら」
天乃の適当な態度に苦笑する風の一方、
声をかけたクラスメイトは「お世話の子じゃないよ」と、告げて
若葉「居留守を使うのは家にしておくべきだぞ。見なくても判るが、覗けば一目瞭然だ」
馴染み深い困った声が聞こえた
振り向けば、天乃達が着ているのと同じ讃州中学の制服に身を包み、
光を受けて美しく、風に容易く靡く金糸のような髪を後ろで一つに纏めた姿が見えた
天乃「何してるのよ……若葉」
若葉「様子を見に着たんだ。活動するにはこの方が色々と面倒が無くていいだろう?」
風「いや、戸籍と言うか。色々問題あるんじゃないの?」
若葉「その辺りは九尾が手引きしてくれたからな。問題はない」
天乃からしてみれば、九尾に手引きしてもらう方が危ない気がしなくも無いが
行き過ぎた行為こそあるけれど、それは確かに天乃の為で。
若葉の介入もあったのならば、それも抑制されているだろうし。と、天乃は目を瞑る
天乃「それで? 沙織の件もあるんでしょう?」
若葉「……言いにくいが」
天乃の問いに、若葉は言葉以上に苦しそうな表情を浮かべながら、
唇を固く結んで、首を横に振る
何を見たのか、聞いたのか
その全てを語るのかは判らないが、少なくとも良い話は聞けそうには無い
若葉「とりあえず場所を変えたい。あまり聞かせる話ではないからな」
天乃「そう……」
風「アタシは部室でみんなと――」
「久遠先輩、勝手な行動は慎んでください」
風「みんなと、食べるから」
ドアの傍から言葉を投げ込まれ遮られながらも続けて、弁当を手に持つ
自分達は部室に居るから、聞かせたくなければそれ以外の場所で。と言うことだろう
とはいえ、どこに行こうと芽吹は天乃に付いて来る
天乃「まだ行動も何もしてないわ」
「今朝、結城さんに言っていた件ですよね? 同行します」
天乃「だから、まだ何も考えてないって」
「…………」
完全に疑いを持っている表情で天乃を一瞥した芽吹は、
すぐ横に控える若葉へと目を向けて、眉を潜める
「貴女は?」
若葉「若葉だ。九重若葉」
天乃「え?」
「?」
天乃「いや、なんでも」
乃木若葉であるはずなのに、九重若葉とつけたのは九尾だろうか
だとすれば恐らく、【乃木】と名乗ることによる注目等を避けるためだろう
そんな警戒をするくらいなら、
若葉ではなく千景のほうが良かった気もするけれど……
天乃「まさか、ね」
若葉のみならず、千景たちも登校させようとしているのかもしれない
そう考えた天乃は苦笑一蹴して芽吹へと目を向ける
1、良いわ。部室に行きましょう
2、別にその話はしないけど、部室には行きたいわ
3、仕方が無いわね……また後でね。風
4、じゃぁ、楠さん。食事にしましょうか
↓2
1
1
では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
樹「……邪魔、ですね」
芽吹「……え?」
風「あー……ははっ。まぁ、そのあれよ」
友奈「見逃す予定だったんだけどね、芽吹ちゃん。どこまでもついてきそうだから。消えて貰おうかなーって」
東郷「大丈夫、貴女が消えても【隠蔽】は簡単だから。気にせず――ね」
樹「なーんて! えへへっ、冗談ですっ!」
東郷(1割くらいは)
乙
若葉からの報告は勿論、メブと夏凜ちゃんの再会にも注目だな
乙
怖いよ!
乙
今日は少し厳しいのでお休みとさせていただきます
再開は明日の通常時間から
あら珍しい、乙です
乙
思えばあと3ヶ月程度で3年目だけど日刊でほぼ無休なんだよな
金にもならないことを良くもまぁ…
乙
ゆっくり休んでください
乙
では少しだけ
やったぜ
友奈「あっ、久遠先輩来てくれたんですね!」
天乃「ええ、連れてきちゃったけど」
友奈「大丈夫です、全然」
部室に入るや否や待っていましたと歓喜の声を上げた友奈に、
天乃は笑みを浮かべながら後ろの付き添いのことを告げると、首を振る
友奈の笑顔も崩れないのは、すでに同じクラスになったということもあって会話したのもあるだろうが、
一番は【その程度で】天乃が来てくれるからだろう
樹「えっと、楠先輩……で良いですか?」
「構わないわ。別に気にする必要も無い」
それには声をかけなくても良いという意味合いが含まれていたのかもしれないが
樹は困った笑みを浮かべて「それはダメですよ」と呟く
とはいえ、出来るならばこの場に居て欲しくないという思いが樹にはあるのだと
天乃はなんとなく感じ取っていた
それは樹だけでなく、この場に居る全員にある思いだとも。
言ってしまえば、勇者部にとって芽吹の存在は【腫物】でしかないのだ
世話係とは上手い言い方で、実際は勇者部の動向を監視する大赦からの刺客
しかも、それを公言こそしてはいないが、あからさまにそう言った行動をさせるのだから
どうしようもなく苛立ちは募る
もちろん、それを表には出さないけれど。
夏凜「天乃はどうだった?」
「どうと言われても、困るわ。特に何かをしたわけでもない」
東郷「久遠先輩は何も無ければ何もしないのよ。普通に過ごして、溶け込んで。優しい先輩だもの」
勇者としての力を失うよりも前から、
天乃は特異な力を持っているからといって、何か騒ぎを起こしたりするようなタイプではなかった
もちろん、なにかがあればどこかの完成型勇者さんの暴挙鎮圧のように
たとえ車椅子の状態であっても全力を持って対処に当たるが。
下手なことさえしなければ、慕われているだけの3年生
そして、それは勇者部もそう。
何かが無ければ讃州中学に通うただの生徒でしかない
東郷「だからこそ、気に入らないこともあるの。久遠先輩を未だ警戒して、監視して……せっかくお役目から解放されたのに、今度は」
風「東郷」
東郷「風先――」
風「東郷、良いから」
言わせて下さいと言い掛けた東郷を遮って、風は首を横に振る
言うだけ無駄だと解っているし、その無駄なことで昼休みの空気が悪くなるのは避けたいからだ
ただ、風もいいたくなる気持ちはわかる。痛いほどに
せっかく神樹様から解放されたのに、今度は大赦に拘束されるのか。と
頑張って、頑張って、頑張って、尽くした結果が自由の無い生活と言うのは、あまりにも酷な話だから
風「お昼にしましょ。若葉の話もあるんでしょ?」
若葉「ああ、そうだな……いささか空気を悪くするかもしれないが」
風「そ……ま、必要な話ならしかたが無い」
若葉の言葉にしにくそうな表情から勇者部の面々は決して良い話ではないことを察して、息をつく
封を解かれたお弁当の匂いも、食欲をそそるものではあるが、
誰かが口にしたわけでもなく、誰もが箸をおいたままで
若葉「沙織に関してだが、実は今回の欠席に関して学校側は【公欠】扱いなんだ。天乃にも経験がある言い方をすればお役目ということだな」
天乃「つまり、何らかの――」
若葉「いや。お役目と言っても伊集院家の……いや、これは遠回りだな。逃げているわけではないが」
若葉は自分で自分を戒めるように握りこぶしを作ると、続けようとした言葉を振り払うように首を振って天乃を見る
哀れみを微かに含んだ表情だが、それはきっと若葉の意思ではないのだろう
気づいていなさそうだった
若葉「沙織は暫く戻るつもりが無いと……このまま暫く彼と生活を共にして、少しでも距離を詰めるそうだ」
樹「暫くって、いつまでなんですか?」
若葉「明言はしなかった。ただ、確実にいえるのは、沙織は進学を考えていないということだ」
友奈「進学……なら、就職ですか? でも、就職は」
東郷「……若葉さん、その就職と言うのは、結婚する。と言うことですか?」
友奈が言おうとした言葉を引き継ぐように東郷は問いかける
まさか、そんなことはしませんよね。という
願望のようなものが紛れているように天乃は感じた
若葉「順調に進めばそうなるだろう。もちろん、家系として優秀な伊集院家の長女が嫁ぐのではなく、婿取婚となるだろうな」
風「…………」
その場の誰もが口を閉ざし、息を呑んだ
東郷はまさか。という願望を込めたのかもしれないが
その東郷自身もそのまさかであることくらいは承知の上だった
伊集院の家には沙織しかいないから。むしろ、それ以外に無いと。
だが、それでも口を挟んだのは伊集院家の娘が沙織だからだ
天乃に憧れ、天乃に好意を抱き、誰よりも天乃に尽くそうとする、伊集院沙織だからだ
風「それ、沙織が言ったの? それとも、若葉の憶測?」
若葉「……結婚する。と言うのは沙織本人の言葉だ」
天乃「誰かに強制されたりとか」
若葉「それは無い……それは無い。あれは沙織の意思だ」
言葉の力こそ弱かったが、
二回繰り返されたそれは確かな力を持ってその場の全員の言葉を、疑いを、握り潰してしまう
天乃は小さく「そう……」と
無表情にも思える感情の不確かな顔色で呟くと、箱を開けたかのように笑う
天乃「沙織本人の意思、なのね」
樹「で、でも……でもっ」
夏凜「疑問があるんだけど、いい?」
ここが会議の場であるかのように、正しく挙手をして、夏凜が注目を一身に集める
話についていけていなそうな芽吹に対しては、一瞥をするのみで
夏凜「結婚した後について、沙織は何も言わなかったわけ?」
誰もが思う疑問だった
けれど、誰もいえなかった禁句
それを夏凜はさも当たり前のように
客人に向けて飲み物の有無を問うかのように自然と口に出した
若葉「それに関しては答えて貰えなかった。ただ……私の憶測で語るなら。戻ってこない可能性はきわめて高いだろう」
もちろん、樹海化したときは戦力の一つ―穢れに対してのみ―として参戦するだろうが
普段から天乃の傍にいるなどと言うことは無くなるというのが、若葉の憶測だった
東郷「そんなこと……」
風「確かに、結婚したら戻ってくるなんて出来ないわよね……それこそ、離婚とかしないと」
しかし、伊集院家にとってそれは致命的とまでは行かないにしても、汚点になることは間違いない
沙織が伊集院家を大赦内部から蹴落とすつもりならばともかく
そうでないならば、言葉通り取るべきだろう
夏凜「で、天乃はそれでも良いわけ?」
天乃「それは……」
夏凜「まぁ、あんたのことだから沙織に任せる。とでも言ったんでしょうけど」
夏凜は天乃が口篭ったにも拘らず、知ったように呟く
それは聞いていなかったはずの夏凜ではありえないほどに、的中していて
若葉は少し驚いた表情を見せたが、天乃は俯きがちに目を逸らす
天乃「話を聞いたの?」
夏凜「あんたの性格上、それは止めろだなんて言えないし。ましてや勧めるなんて無理でしょ」
天乃「……良く解ってるのね」
夏凜「付き合いは短いけど、密度は濃いって自負はあるから」
だからと言って、天乃の事に関して100%の自信があるかどうかといわれれば
それは微妙な話だと夏凜は思う
そして、夏凜の言った言葉は間違いが無かった
天乃は以前、そう。夏祭りの直前に沙織と話して、男性との付き合いについて話を振られて、
体を男性に許した後も自分のことを抱いてくれるか。と言う話に、
好きにして良いと、戻ってくるなら受け入れると答えた
今思えば、それは逃げの選択だったと天乃は改める
どちらにせよ強制することになるから、沙織が自由に選択できるように
そう考えての言葉だったが、結局。それは天乃自身の―本当の―気持ちを何一つ語ってはいないからだ
それが許せるか。許せないのかを。
「本人が受け入れていることなら、部外者が口を挟むことではないのでは?」
東郷や友奈、樹の目が芽吹へと向く
友人と言う立場でありながら、結婚に関して口を挟む
ああだこうだと語り合う
それは当人が嫌がっていることであるならばいざ知らず
納得した上で、意思あってのことなら口を挟むべきではないと思ったのだろう
しかし、東郷は不快感を滲ませて
友奈と樹は悲しそうに眉を潜めて首を振る
東郷「なら、部外者は口を挟まないべきだわ」
「……友人。という――」
風「楠さん。沙織が結婚するかどうかはアタシ達にとっては他人事ではないし、部外者の話でもないのよ」
「…………」
芽吹は風の不快な表情、冷めた言葉に緊張しながら息を呑む
大赦が把握していないわけではないが、芽吹の行動等に支障がある可能性もあるとして伝えなかったために
芽吹は勇者部の内輪の関係に関してはまったく持って無知なのだ
だから、友奈たちが当人同士で納得しているであろう結婚に関して意見を述べようとしている姿勢が理解できなかった
悲しそうにしている理由がわからなかった
もっとも、芽吹では無かったとしても、この場にいる全員が―沙織含め―天乃と交際しているなどと想像することはできないだろう
今この場にいない乃木家の勇者ならば話は変わるが。
友奈「久遠先輩、良いんですか?」
天乃「沙織が、決めたことなら」
若葉「……そうか」
若葉の失望した―ように聞こえた―声に、天乃は強く唇を噛む
本当にそれで良いのだろうか
いや、それで良いから見送ったはずだ
けれど……沙織が戻ってこないことまで考えていた?
どこかで、沙織なら戻ってくるからと慢心していたのでは?
考えれば考えるほど、迷いと躊躇いと後悔が浮かび上がってくる
天乃「っ……」
1、どうしたらよかったの?
2、嫌だって言ったら。沙織に無理強いすることになるじゃない
3、ねぇ、若葉。今からでも会えないの?
4、ねぇ、若葉。連れて行って。沙織のところに
5、なにも言わない
↓2
3
4
では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
天乃「連れてって。沙織のところに」
若葉「任せろ」
………。
若葉「……ここだ」
天乃「ここ……? このお城みたいなところに住んでいるの?」
若葉「ああ、そうだ。部屋で待っていてくれ。呼んでくる……っと、喉が渇いただろう。このジュースを飲むと良い」
天乃「ええ。ありがとう……ぇ?ぁ……」ドサッ
若葉「悪いな……連れていくのは良いが。報酬は前払いで貰おうか」
乙
沙織はどこまで婚約者と進んだんだろ
もう妊娠してるのかな?してないにしてももうキスくらいは夏祭り以降にされちゃったんだろうか
妄想が捗る
乙
てっきりさおりんがもう許嫁に初めてを捧げたのかとヒヤヒヤしたわ
ここからさおりん奪還なるか
乙
初デートからここまでの経緯を沙織視点で見てみたいなあ
3周目で一番ドキドキワクワクする展開だわ
15日も空いてるのが色々と想像の余地を生む
ここに至るまでのさおりんの描写が読みたい
意外にも久遠さんのおねショタの時よりも需要ある感じでワロタ
さおりんの場合は何か生々しさがあるんだよな…性的知識の差だろうか?
久遠さんが受け入れての行為と
沙織の本心では嫌がりながらの行為の差では?
行為描写もだけど心理描写が巧みだから後者の怖いもの見たさが刺激されるやつ
でもリアルが忙しい(休みが増えてる)っぽいからやらなそう
たまには胸がキュッってなる話もいいよね
3
誤爆ごめんなさい
では少しだけ
きてた
なんて答えれば良いのか、何を言えばいいのか
どんな行動を起こせばいいのか天乃には分からなかった
分からないそのもどかしさが嫌で、強く握りこぶしを作って
戻ってきても抱いてくれるかと沙織は言った
それは、戻ってくるつもりがあるから言ったのではないかと天乃は思う
戻るつもりが無いなら、初めからあん会話なんて必要なかった
沙織に嗜虐趣味が無い限り
天乃を絶望させて、苦しめて、辛い思いをさせる積もりも無い限り
戻らない予定だったのなら、あんな話はしなかったはずだ
なら、それなら……
天乃「っ」
それを言うこと正しいのかと自分に訪ねた天乃は
かき乱そうとしていそうな内心の不適な笑みに目を瞑って首を振る
天乃「私が納得できてないから」
若葉「……なら、どうする」
一時は引いたように見せていた若葉の瞳はまだ、天乃を見ていて
天乃は友奈を見る。風を見る。東郷を見る。樹を見る。若葉を見る
そして……夏凜を見る
夏凜「……好きにしなさいよ」
何も言っていないのに、
夏凜は嬉しそうな笑みを浮かべ、半ば呆れたように言って目を伏せる
後ろめたいことがあるからじゃない。ただ、天乃の瞳を見て認めたからだ
天乃「若葉、沙織のところに連れて行って」
「な――」
若葉「承知した」
「待ちなさい! 久遠先輩……いえ、久遠天乃! 勝手な行動は許されません」
監視の目前で勝手に話を進め、勝手な行動をしようとしている
そんな身勝手を許せるはずが無い
そして、たとえ大赦に通したとしても、許可されるはずがないことは明白
だからこそ、芽吹は自分自身の役割にしたがって天乃の肩を掴み、車椅子のブレーキをかけて押し留める
「身勝手な行動は慎んでください」
若葉「私の主がそれを望んでいる……阻むなら。人間とて斬り伏せるが?」
「っ!」
一見して。
いや、立ち居振る舞いはまさしく正しく生きている女性のような姿だった若葉が、
敵意をむき出しにしながら自分へと視線を向けてきたことに驚いて、芽吹は心音が緊張によって大きく跳ね上がったのを感じた
若葉「私は世界を護るべきだと考えてはいるが、別に……大赦まで護る気はない」
そう言う若葉の表情には後悔の念が感じられたが
その理由を知っている天乃は何も言わずに目を瞑る
自分達が作り上げた大赦と言う組織
それがいつ、どのような形で歪んでいってしまったのかは知らないが
当初、望んでいたようなものとはまるで違う
歪な形になって、見方によっては酷く冷酷にでさえ思えてしまうような
そんな、とてもではないが手放しで認められるような存在ではなくなってしまった
その変革の責任が自分には無いのだとしても
切っ掛けに加担している若葉は、後悔の念を抱かずにはいられない
しかい、それが無くとも若葉は天乃の味方だ
つまり、いずれにしても大赦の出方次第で若葉たちは反旗を翻す
「その言葉、直接伝えます」
若葉「好きにしたらいい。私達がそう言う側の立ち位置だということ、大赦は良く分かっているはずだからな」
夏凜「そんなこと、何の脅しにもなりゃしないっての」
呆れたように言った夏凜の視線に、芽吹は睨むように見返して首を振る
まったく理解できないというその素振りに、
友奈は険悪になりそうな雰囲気を感じたのか、困ったように見渡して
風のため息が少し大きく聞こえた
風「アタシ達は天乃を沙織のところに行かせてあげたいって思ってる。もちろん、邪魔は無しで」
「…………」
風「だけど大赦はもちろん、楠さんも天乃を沙織に会わせたくないし、そもそも自由行動なんてさせたくない」
それで間違いない? と訊ねる風は若葉とは違って落ち着いていて
風にまで攻められると警戒していた芽吹は―警戒を解いてはいないが―安堵の息をついて肯定する
だが――
風「なら仕方が無いわね。力ずくで通して貰いましょ」
風は困り果てた表情で、はっきりと宣戦布告を口にした
「……勇者の力でねじ伏せよう。と言うわけですか」
動揺に揺れそうな心身を留めるように力強く拳を握り締めて息をついた芽吹は、
普段の―多少の牽制を含めた―声色で問いかけて風を見つめる
勇者の力を使われれば、自分の負けは確定していると芽吹は分かっているが
しかし、それでも引くことは許されないと覚悟を決めて苦笑する。勇者部の面々を見渡しながら、
宣戦布告をされた立場でありながら、「やれるのなら」と煽るように
「どうぞご自由に。その代わり勇者の権利の剥奪及び久遠先輩の拘束は覚悟していただきます」
樹「えっと……楠先輩」
困惑の色を浮かべる樹の弱弱しさを感じる声に触れ、
芽吹は少しばかり不快な表情を見せつつ「なに?」と強い口調で問う
風や若葉、夏凜の力ありそうな人ならともかく、
どちらかと言えば弱者の立場にありそうな樹が妬ましく、苛立たしくて。
だが、その感情には気づいていないのか、樹は顔色を変えずに
樹「お姉ちゃんは勇者の力を使う気はないと思います。特別な力を使っても何の意味も無いと思いますから」
風「それでアタシが使う気だったら凄い恥ずかしいけど……ま、樹の言うとおり」
笑みを浮かべながら樹の頭に撫でるように触れた風は、
腰元にあてがっていた手を芽吹へと向けてにやりと笑う
風「もちろん、全員で一人を叩く気も無いわ。この中から一人だけ選んで楠さんと戦う。それで、押し通させてもらうわ」
友奈「話し合いじゃ、ダメ……なんだよね?」
やる気に満ち満ちている風から芽吹へと視線を移した友奈は、
戦うということには否定的だが、そうするしかないのかと悲しそうに呟く
答えは分かっているからか、芽吹が答えるよりも先に友奈は首を振って
友奈「勝った人が上だとか正しいとかは何か違うかなって思う。でも、芽吹ちゃんや大赦の人たちが久遠先輩と沙織さんの邪魔になるなら。私も戦うよ」
「……なぜ? 貴女にメリットはあるの?」
東郷「損するか、得するか。私達にあるのはそんなものじゃないの。ただ、大切に思う人の力になりたい。それだけよ楠さん」
戦うことは絶対に避けられないだろう。
勇者の力を用いない純粋な力での戦いと言う以上、多少の自信はあるのだろう
芽吹はそう思いながら、天乃を押さえつける手を離して、見つめる
「くだらない」
樹「……」
「とてもくだらないわね。東郷さん」
誰かの為だなんて行動する時間があるのなら、少しでも自己鍛錬に勤しむべきだと芽吹は思う
それが、なんらかの規定を破るような愚かしいことなら、なおさら
たった一人のためになるためにそれ以外の全てを犠牲にする行為など、無駄でしかない
そんな愚かなことをしている連中の自負など打ち砕けると芽吹は東郷を見つめ、風を見つめ、夏凜を見る
「良いでしょう。叩かなければ引かない。と言うのでしたらお相手します」
夏凜「先に言っておくけど、慢心してたら痛いどころじゃすまないわよ」
風「と、経験者は語る」
冗談っぽく言葉を続けた風をひと睨みした夏凜は
ふとため息をついて苦笑すると、天乃へと目を向ける
今でこそ笑い話に出来そうなものだが、アレは酷かった。と、夏凜は腹部を撫でて
夏凜「楠さんは幸運ね」
「なぜ?」
夏凜「そりゃ、天乃本人を相手にしなくて済むからよ」
本調子―車椅子は変わらない―の天乃は動きのレベルが違うのだ
もちろん、慢心さえしていなければもう少し健闘できるとは思うが、
それでも確実に勝てる保証は無いと夏凜は思う
五体満足だったらどれほどのものか
夏凜「で? 風。誰が相手すんのよ」
風「ん~楠さんに選んでもらう方が公平?」
東郷「近接戦闘で対等に戦うべきだと思うので、私は辞退します。そもそも、私が代用できる武器がありませんから」
正直に言えば弓矢を使えば良いのだが
殺傷性を抑えなければいけないし、そんなものを用意するのには時間がかかってしまう
ゆえに、それではダメなのだ
友奈「あの、風先輩」
風「どしたー?」
友奈「久遠先輩のお願いなので久遠先輩が決めたほうがいいんじゃないかな……って」
友奈の消極的にも思える小さな提案に、
風はなるほどーと呟く
樹「確かに、久遠先輩が託したい人がいいと思います」
天乃「えーっと……」
戦うのはちょっと……と言えば、みんなは控えてくれるだろうが
それはあまりいいことではないと天乃は思う
正直に言えば、鍛錬でもないのに、ましてや自分のために。
戦おうとするのはやめて欲しいのだが
みんなはみんなで本当に天乃のことを想って行動しようとしてくれている
勇者の力を使えば容易く―本当の意味で力ずくで―押し通せるのに
わざわざ、勇者の力を使わないで一騎打ちしようとしているのが、良い証拠だろう
若葉「すまないが、私も候補から外してくれ」
天乃「ええ、分かってる」
若葉は精霊だから、どうしても力を行使した状況になるからだ
だから、風、樹、友奈、夏凜
この四人の中から、託したい相手を選ばないといけない
そう考えて夏凜に目を向けると、夏凜は笑みを浮かべながら頷いて
夏凜「あんたに任せるわ。好きに選びなさいよ」
1、夏凜
2、樹
3、友奈
4、風
↓2
1
1
ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
芽吹「久遠先輩はいかせないわ」
夏凜「いや、いかせる」
芽吹「……解ってない。妊婦の体に貴女の性欲は強すぎる!」
夏凜「私達の女を勝手に侮ってんじゃないわよ……強いわよ。性欲」フッ
杏「という裏のバトルが」
千景「ないわ」
乙
芽吹と夏凜ってある意味因縁の対決になるのか
乙
とうとう大赦との全面対決となったか
勇者部のみんな格好いい
メブ達がいるから、最悪の場合は勇者部の首をすげ替える判断も有り得るだろうな。
乙
では、少しだけ
あいあいさ
天乃は、この場にいる―芽吹を除いて―全員のことを信頼している
だから、信頼できる相手といわれれば誰だって良いのだ
けれどなぜか
しかし当然に、天乃は夏凜へと目を向けて、小さく頷く
それが氏名であると察した夏凜は小さく笑って
天乃「夏凜、お願い」
夏凜「りょーかい」
些細なお願いを引き受けたかのような軽い言葉で
とても容易だと侮るかのような仕草で、
夏凜は芽吹へと目を向ける
だが、その瞳は笑ってはいても力強い意思が込められていて
その身体は、鍛錬をしっかりと積み上げた戦う者のもの
だからこそ―芽吹なら関係ないかもしれないが―芽吹はその挑発にも似た姿勢に文句を言わずに
ただ、呆れたようにため息をついて、目を向け視線を交錯させる
「倒すわ。全力で」
互いに手加減をする気もさせる気も無いと、芽吹は睨む
確かに自分は勇者選定から落ち零れた人間だが
しかし、夏凜に劣っていたことはないと芽吹は思っているのだ
戦闘の成績は互角
いや、誰かに構う夏凜と、己を鍛えることに特化した自分とでは
そこにはしっかりとした差があったと芽吹は思っていて
今でも、あの決定は何らかの間違いではなかったのだろうかという疑いは晴れていない
「感謝するわ。久遠先輩」
その過去を知っていたのかは解らないが、
三好夏凜という最も叩きのめし、己の実力を自他共に示したい相手はいなかったし
自分の相手になれる―勇者の力無しに―のは夏凜しかいないと思っていたから
夏凜「風、体育館借りられる? ギャラリーは面倒だからいないほうがいいんだけど」
風「あー……ちょっと話してみる。今すぐは無理かもしれないけど、部活を速めに切り上げて貰うくらいは出来ると思う」
少し困ったように言った風は、参謀ということなのか東郷を連れて部室を出て行く
残された天乃たちは険悪では無いがいいとは言えない空気感を払拭するように、
ため息をついて「さて」と、天乃が声を出す
天乃「2人は武器の使用は?」
夏凜「どっちも双剣での戦闘訓練を積んでるからそのままで行く」
天乃「楠さん」
「異論はありません」
天乃「なら、夏凜。木刀は4本あるかしら」
夏凜「鍛錬用に持ち歩いてるのがあるから問題なし」
夏凜が使うのは2本の木刀だが、
友奈や若葉、千景など適正に無い勇者にも貸し出すことがあるほか
折れたりすることもある為に夏凜は木刀を常に4本用意しているのだ
使い慣れている分、多少は有利に働く可能性も無いとはいえないが
芽吹はそれに関しても文句はないのだろう、何も言わずに
ただ、夏凜を真っ直ぐ見つめる
その瞳には敵意が強く宿っていて
「こんな場所で、こんなことで。また三好さんと争うことになるとは思わなかったわ」
夏凜「楠さん……ってことを除けば。私は解ってたわよ」
たとえ芽吹ではなかったとしても。
天乃の望みが大赦にとって不都合である以上阻まれることは免れることができないことだし
それを突き通すために争わなければいけないのも確実だと夏凜は思っていたからだ
そこに裏切る覚悟。は存在しない
あるのは自分の意志を貫き通そうという決意だけ
天乃と自分達のために。という思いだけ
樹「本当は私が立候補したかったですけど、夏凜さんよろしくお願いします」
夏凜「解ってるわよ。言われなくても」
突っ撥ねるような言い方ではあったが、樹は安心したように笑みを浮かべて、頷く
夏凜は解ってる。夏凜も思っている
たった一言、たった一見
それだけで樹は夏凜が自分の示そうとしたものを本当に解ってくれていると感じたから
暫くして戻ってきた風は「交渉成立!」と、勝ち誇ったような笑みで言い放って
讃州中学の体育館にて三好夏凜と楠芽吹の試合が行われることが決定した
先生に呼び出された風が、「準備が終わったわよ」と戻ってきたのに続いて体育館へと移動すると
本来ならまだ部活中の体育館は静まり返っていた
普通なら、私達が使いたいので。と申請したところで通るはずが無いが
勇者部が少し利用したい。と言うのならと
今回だけは特別、事前申請無しに借りられたのだという
東郷「夏凜ちゃん、楠さん、準備はいいかしら」
その空間に東郷の静かな声が響くと、夏凜と芽吹は同時に頷きながら
互いの手にある二本の木刀を軽く振るう
使い古されたものではあるが、まだ実用性は十分にある木刀
その傷が気になったのか、芽吹は軽く指で撫でて、ため息をつく
夏凜「始める前に、一つ聞いていいかしら」
「答える保障はないけれど」
我関せずと言いたげに目もくれず答えた芽吹は挑発しているようにも見えたが、
夏凜は気にせずに木刀を一本、芽吹へと差し向けて
夏凜「これ、何に見える?」
「?」
最初、何を言っているのかと困惑した表情を浮かべた芽吹は、
何か仕込んでいたりしないなら、と訝しげに呟いて首を振る
「ただの木刀よ」
夏凜「そ……ま、そうよね」
「何が言いたいの?」
夏凜「いや、ただ。あの頃の私と今の楠さん。それが同じかどうかを確かめたかっただけ」
まるで理解の出来ない、
迷わせることが目的のようなことをいう夏凜を疑おうとした芽吹だったが
その策略にははまるまいと考えを払拭して自分の木刀を握り締める
夏凜はといえば、何か思うところがあるのか木刀を優しく眺めて――一振り
夏凜「そろそろ始めるわ」
「いつでもどうぞ」
友奈「えっと……ルールは審判がこれ以上は危険だと判断したら……本当に良い?」
夏凜「問題ないわ」
「私も構わないわ。そう言うものよ結城さん」
夏凜のことも、芽吹のことも
心配そうに見つめた友奈は絶対に俺はしないのだろう。と
少し残念そうに「解った」と呟いて
風や樹、東郷、若葉
それぞれ四方で待機して審判の役割を担うみんなを見渡す
樹「大丈夫です、ちゃんと見てますから」
風「任せておきなさい」
東郷「大丈夫」
若葉「いざという時は止める。安心してくれ」
それぞれが不安を抱く友奈に優しく声をかけたのと同時に
夏凜と芽吹がそれぞれの位置に立つ
友奈「…………」
自分の笛のひと吹きで試合が始まってしまうことに緊張しながら、息を吸って
ぱくりと笛を咥えて目を瞑り、そして――甲高い音が体育館に響く
夏凜「…………」
「…………」
芽吹と夏凜はすぐに動くことはなく
互いに見詰め合ったまま、ただすぐにでも動けるようにと姿勢は低く、身構えて――
夏凜「――ふっ」
動いたのは夏凜だ
小さな吐息と共に全力で床を踏み飛ばした夏凜は滑るように芽吹へと接近すると、
右足が着地した瞬間に左の木刀を振り下ろし、芽吹が後ろへと引き下がったのを確認することなく
左足の遅れた到着に合わせ――右の木刀を振り上げる
「!」
軽く予想できた一撃目に続いた二撃目
初撃で後ろに飛びのいた芽吹の身体は軸足などなく普通に行けば直撃コース――だが
芽吹はとっさに木刀を衝突させると反動を用いて回避
そして、着地と共に蹴りだして肉薄すると下段からの斬り払いを放つが、
夏凜は回避せずに木刀を衝突させて防ぎ、横薙ぎの一閃
回避しきれないと判断した芽吹は木刀を構えて受け止めようとして
「っ!」
――力強く弾かれた
夏凜「せァッ!」
芽吹が耐性を崩していても、関係ないと木刀を振り下ろした夏凜をひと睨みして
「く……っ」
体制を崩した芽吹はとっさに木刀を地面に叩きつけると
それを支えの一つとして体重を預け、床を滑った木刀と共に急降下
床に倒れるか否かの瀬戸際、拳を打ち付けて横飛びに転がって距離を置き、立ち上がって木刀を構える
まだ決定的な一打はどちらにも決まっていないが、平常の呼吸に重ねて深呼吸をする夏凜の一方
芽吹は苛立ちと動揺、自ら打ち付けた拳の痛みと転がった身体のじんわりと広がる痛みに眉を潜める
芽吹は微かに。とはいえ、少しずつダメージを負っているのだ
それも、このほんの数分間で。
夏凜「楠さん……いや、今の芽吹には私の攻撃を防ぎきるなんて出来やしないわよ」
「……何を言うかと思えば」
無駄話。
だが、一切の隙もない夏凜を睨みつつ、深く呼吸をして落ち着けていく芽吹は
ごくりと飲み下して、ため息をつく
夏凜「聞いたじゃない。あんたにはこれがどう見えるかって」
「…………」
夏凜「これはね、天乃の希望であり、勇者部の総意」
「意味が解らない」
夏凜「そりゃそうでしょ。誰かのために何かを背負って戦うようになって初めて、自分の握ってるものがなんなのか解るんだから」
いや、そうじゃないか。と
夏凜は懐かしむように薄く笑みを浮かべながら、
天乃をちらりと見て、首を振る
夏凜「そうするようになって初めて、ここに意味が出来る。理由が出来る」
だから、
だから……そう
夏凜の一打一打を容易く防ぎきることなんてできはしない
夏凜「あんたのそれは誰のため? なんのため? あんたが今握ってるのはなんなのよ。あんたは今、何のために戦ってんのよ」
「…………」
夏凜「そんなことも分からないあんたに、私達の生き方をくだらないなんて言う資格なんてないっての!」
精神を責める姑息な手だと、芽吹は苛立ちを募らせて
しかし、動揺する自分がいるからこそ苛立ち、姑息な手だと侮蔑するのだと思って
強く、唇を噛んで夏凜を睨む
何を握っているのか――任された仕事の責任
何のために戦っているのか――大赦の規定のため? 自分の力の誇示?
それは。
それは……
「――黙りなさい!」
夏凜の問いに答えず、考えようとする頭を振り乱して
一心不乱に接近して木刀を振るう
上下左右縦横無尽に
型にはまったものではなく、感情的な粗雑さのある連撃だが、
一つ一つは素早く風を切り開いていく
だが、そのどれも夏凜には掠ることさえしない
夏凜「……悪かったわよ」
「!」
申し訳なさそうな夏凜の謝罪
それは決定的に芽吹の精神を引っ叩き、その苛立ちゆえの一振りが芽吹の手をすり抜け夏凜の額に直撃する
友奈「夏凜ちゃ――」
天乃「大丈夫」
不安に声を上げた友奈を制するように手を出し、天乃は夏凜から目を離すことなく言う
死ぬようなダメージではないし、予め邪魔はしないようにと言う言いつけ通りに精霊が現れなかった夏凜の額からは、
赤く滲み始めて、少しだけ血が流れ出ていく
「馬鹿にしないで!」
夏凜「馬鹿にはしてないわよ。別に」
戦いの手が止まり、叫んだ芽吹に対して夏凜は困ったように言うと、
額の血を拭って息をつき、木刀を強く握り締める
そして――
夏凜「ふ――っ!」
前触れ無く刀を振るい、芽吹のもう一つの木刀を叩き折って踏み込んで押し倒す
「っぁ!」
小さくあがった芽吹の悲鳴も気にすることなく
まるで人間同士の殺し合いだとでも言うかのように、目に向かって切先を差し向ける
夏凜「――審判」
若葉「…………」
「……まだ全然出来るわ。突き刺すなら刺したら良い。その代わり――」
若葉「いや、ここまでだ」
夏凜に声をかけられ、芽吹を見つめていた若葉はふと息を吐くと
響くような声で終了を宣言する
ふざけるなと、認められないと
抗議をする芽吹の視線に、若葉は悲しそうな……哀れむ目を向けて
若葉「忘れたのか? これは傷つけあうための試合じゃないはずだ」
「っ……」
若葉「夏凜の問いも戦いではなかったが、それに答えられなかった時点で君の負けだった」
劣るとは言い切れないにしても、自分の敗北したと言う事実を払拭したいと言ったのであればまだ、
強い信念があると言えたかもしれない
この戦いが天乃の行動を阻むか否かの戦いでなければ、きっとその思いで戦うことができたかもしれない
だが、ここにいるのも、阻んだのも
その根本が自分の意志ではなかったために、芽吹は取り乱した
芽吹自身が望んでいること、成し遂げたいこと
その何ものにも、今の自分がやろうとしていることは貢献できないと知って
自分の手にしているものは何も無い空っぽなのだと知って
夏凜「…………」
つい先ほどの謝罪の言葉が精神的に揺らす言葉を投げたと自覚しているからなのだと察して
夏凜はきっと、芽吹を無意味に傷つけたくないと思ったからこそなのだと、天乃は思う
夏凜「勝ちは勝ちだから、行かせて貰うわ。文句があるなら大赦に言えばいいし、また戦いを挑んできても良い」
認めたわけではないのだろう
しかし、動くことのない芽吹を置いて、若葉は天乃を連れ去っていき
残った勇者部の面々は声をかけ辛い芽吹を残し―友奈はかけようとした―体育館を後にする
「……このままでは、尊敬されるような何かなんて」
呻くような芽吹の呟きは誰かに届くことも無く、空気に溶け込んでいった
√9月1日目 夜(伊集院家) ※月曜日
01~10 沙織
11~20 門前払い
21~30 男性
31~40 沙織
41~50 また明日
51~60 門前払い
61~70 不在
71~80 男性
81~90 沙織
91~00 また明日
↓1のコンマ
あ
サッオリーン
では、ここまでとさせていただきます
明日は所用でお休みとなるので
再開は明後日日曜日、出来れば昼頃からとなります
夏凜「他人に甘い奴なんて馬鹿らしいと思った」
夏凜「自分よりも他人を優先するなんて無駄だと思った」
夏凜「けど」
夏凜「そんな馬鹿で、無駄な事ばかりする奴はそれが出来るだけの強さを見せつけてきた」
夏凜「抱えるものがあるからこその強さがあるのだと教えてくれた」
夏凜「だから、自分よりも他人を取る馬鹿を取ることが出来る人でありたいと思った」
乙
夏凜かっこよかった
乙
夏凜ちゃん最初の頃では考えられない位成長したなあ…
あとメブの葛藤は後々原作でもやりそう
乙
原作も似たような悩み抱えそう
夏凜の言葉は格好良いな…すげ―や
乙
では、少しずつ
√9月1日目夜() ※月曜日
天乃達が通う讃州中学から遠く離れた住宅街の一角
周辺の建物に比べ、一回りか一回り半大きな土地を持つ豪邸と呼べそうな所に、沙織はいた
伊集院家―と言っても父親―の薦めで出会った青年も一緒にいる
というのも、沙織にとって出会ってからの体感時間はだいぶ長いものだが
実際の時間は渋々付き合ったデートから会ってない日数も含めなければひと月にも満たないちっぽけなもので
それゆえ距離感は遠く、互いのことも理解できていないからと
少しでも分かり合えるように、近づけるように。と、二人で暮らすことにしたからだ
しかし、完全な二人きりということもない
沙織は生け花等の所謂絵に描いたようなお嬢様の習い事に関しては、
巫女の件もあるからと習ってはいなかったが、
炊事洗濯等の一般的な技量に関しては―良家の娘として―しっかりと学んでいるけれど
当然、全てを担う余裕があるのかと言われればそうでもない
それゆえに、家政婦もこの家にはいるのだ
もちろん、常駐しているわけではないが。
沙織「…………」
「何か悩み事かい?」
沙織「……いえ、そういうわけでは」
ぼーっと黒染めされていく外の景色を眺めていた沙織は、
すぐそばからかけられた声にいつものように笑みを浮かべて首を振る
彼は優しい人だ
何かを無理矢理に推し進めるような人間ではないし
ほんの少し無防備な姿を見せても強引に圧しかかるようなこともしない
沙織は一度一緒に入浴するかと訊ね、逃げるように断られたりもしており、
ただ奥手な可能性もあると考えているが……
時と場合によってはしっかりと攻めてくるのだから、やっぱり男なのだろう
しかしいずれにしろ
悪い人間ではないにしても、好青年であるとしても
誰かほかの女性―若い家政婦―が彼の立ち振る舞いに見惚れていても
沙織は一切感情を揺らがせることは出来なかった
人間としてはどちらかと言えば好感は持てるが
異性として考えた途端に急転直下、不快感が上回る
沙織「……仕方がない、よね」
その自分の感覚を沙織は自分で肯定する
好きなものは好きで、嫌いなものは嫌いなのだ
沙織「ん……」
考えても無駄な事
きっと矯正することは出来ないことを考えていた沙織は
鋭敏な感覚に確かに割り込んでくるものを感じて、小さく声を漏らす
少し呆れた声
でも、分かっていたのだと諦めるような声
沙織「これから友達が来るみたい……ごめんなさい。軽くで良いから準備出来る?」
「準備……というのは」
沙織「うん、貴方を紹介しないと。多分……納得とか、して貰えないだろうけど」
「納得してもらえない……か。伊集院さんのことをよく考えてるお友達なんだね……もしかして男の子かい?」
沙織「まさか。あたしには……私には男の子の友達なんていません。女の子だよ」
沙織の困った表情の中に、身を顰める嬉しさを感じて
青年は合うのが正しいのだろうかと迷うが
沙織の「あって貰わないと困るの」という言葉に頷いて、迎え入れるための簡単な服に着替えなおす
時間も時間だが、
沙織の友人というのであれば無下には出来ない
そして警戒され、拒絶され、
まず【認めないことが前提】であろうその女性をどう説得するべきか
その人にどう認めさせるのか、何が認めさせるに足るのか
青年は考えに考え、息づく
だが
天乃「……夜分にすみません。でも、【私の】沙織がお邪魔していると。聞いたものですから」
その社交辞令的な満面の笑みを前に
天乃「お邪魔、しても?」
青年は美しいと、可愛らしいと思うよりも遥か以前に――頬から伝い落ちる冷汗を感じ取っていた
沙織は天乃と若葉の目前に普通に姿を表した
客間の明らかな贅沢品と言えそうな立派な机を挟んで、天乃の向かいに座った沙織は
天乃が来たことに動じる様子はない
天乃自身も、沙織が驚かないことに対して特に言うことは無かった
というのも天乃は道中、若葉に「気付かれた」とすでに報告を受けていたからだ
精霊同士でもそうだが、
天乃は力を一時的に喪失しているとはいっても
若葉や沙織の中にいる猿猴との精霊の契りは切れていない為
天乃からは不可能でも、沙織から感知することはできるのである
沙織「夜分にすみません。って言うのは全くだよ、久遠さん」
天乃「…………」
沙織「確かにまだ寝る時間じゃないよ? 良い子がいたらねんねの時間かもしれないけど」
天乃「…………」
沙織「でも、もしかしたらお腹の中に――って、ごめん。冗談だからそんな怖い顔しないで」
天乃は終始笑みを浮かべているだけだったのだが
怯え切った青年を一瞥した沙織は仕方がないと言いたげに息づいて軽く頭を下げる
沙織としては耐えることなど容易だが、隣の彼は無理だという判断だ
笑顔まで崩れたら本気で怒っている証明になるのだが
その前段階、笑顔の静かなる怒りは笑顔の崩れた怒り以上に怖いのだ
沙織「来た理由は分かってるよ。あたしが彼と結婚するつもりだって言ったからだよね」
天乃「……ええ」
沙織「乃木さんの言葉が信じられなかった? 頼んだ伝言に嘘も偽りもないよ。乃木さんが脚色してなければだけど」
平然とそう言った沙織は若葉を一瞥すると
小さく息をついて目線を下げると、首を横に振って
沙織「あたしは結婚する……そう決めたんだ。誰かに言われたわけでも無い。あたしが、あたし自身で考えて決めたことなんだ」
天乃「…………」
沙織の瞳に嘘の揺れはない
少なくとも、沙織自身の意思で決めたということに関しては
天乃の人を見る目まで損なわれていない限り、本当に嘘ではないということになってしまう
そう考えながら、天乃は自分の掌に爪痕を残すことで心を落ち着けて、一息
脅したわけではないのに、青年は不安げに体を震わせる
天乃「この前は、そこまで話は進んでなかったじゃない」
沙織「でも、久遠さんは言ったよね。好きにしていいって」
天乃「それは」
沙織「だからだよ。だから、あたしは好きにしようって決めたんだ」
沙織の言葉遣いははっきりとしていて
あらかじめ用意しておいたことなのか、考えるようなそぶりも見せない
それは場合によっては言わされているようにも感じるだろうが
沙織の声、表情
そこに含まれる偽りは一切存在していない
天乃「た、確かに。確かに好きにしていいと……でも」
沙織「……泣いても。あたしは他の人のように揺さぶられたりはしないよ」
天乃「泣くつもりなんてない。そんな、同情で貴女に動いてもらおうなんて浅ましい女にまで落ちぶれたつもりはないわ」
そう言いながら、天乃は目元を拭う
そんなつもりはないとしても、泣いてしまう
それは、不可抗力なのだから仕方がない
1、どうして? 何がいけなかったの?
2、あの時はまだ一度抱かれるかどうかだったのに
3、貴女はそれで後悔しないの? 本気でそれで良いって思ってるの?
4、戻るつもりもないの?
↓2
4
3
天乃「貴女は後悔しないの?本気でそれで良いって思ってるの?」
沙織「後悔するかもしれない。でも、今はそれでいいと思ってる」
天乃「後悔するって、なら……」
沙織「するかもしれない。だもん」
沙織は繰り返しそうになると判断したのか
天乃が言葉の繋ぎを躊躇っているうちに沙織は答える
浮かべているのは笑顔だ
崩れることのない笑顔
沙織「そもそも、どんな選択にだって必ず後悔するポイントは存在すると思うんだよね」
天乃「私と一緒にいても?」
沙織「……そう、だね。うん、すると思う」
初めて
そう、天乃がここに来て初めて沙織が言葉に詰まった瞬間だった
余裕を表す笑みが崩れた瞬間だった
困ったような笑みを浮かべる沙織は首を振って
沙織「凄く優しくて、凄く丁寧で、凄く大切にしてくれるんだ。大赦に背いたことをしてるあたしをね。それでもって迎え入れてくれたんだ」
天乃「だから? それだから、彼が良いの? 彼を選ぶの?」
「伊集院さんとの出会いは確かに親に紡がれたものです。ですが、僕は本気で彼女を幸せにしたいと。そう思っています」
天乃「…………」
目を向けられた青年は、
天乃のことを沙織の両親と同等―沙織を想う強さ―と考えてっ丁寧に言葉を紡ぐ
沙織の両親に使うはずだったが、もはや不要とされた覚悟の言葉だ
天乃「それを、貴女は受け入れたの?」
沙織「うん」
しかし、それでもやはりまだ出会ってからの時間は心許ない
もちろん、青年は沙織を信頼しているし、好意もあるが
だから良いかと言われればそうでもないのだ
両親が構わないと言っていても、
やはり沙織の年齢もあるし、段階をしっかりと踏んでいきたいというものもあるのだ
その点で言えば、同棲というのは聊か性急すぎるものがあるのだが
これはこの際仕方がないことだと青年は思う
「えっと……久遠さんが伊集院さんを大切に思う気持ちは――」
天乃「そんな軽い気持ちでわかるだなんて言ったら、ただじゃ済まさないわ」
「っ」
沙織「久遠さん、止めて」
天乃「……貴女は酷い人だわ。最低よ。沙織」
誰がこうしたのか、誰が変えたのか
天乃は自分の体を強く抱き締めて唇を噛む
気を抜けば呪詛をも呟きそうな、そんな精神状態
天乃「彼は実際に私の気持ちなんて分かるはずがない。なのに、思う気持ちは分かるけどどうかお願いします。だなんて言おうと」
若葉「少し落ち着け」
天乃「私は冷静よ。ええ、大丈夫……平気。だって、冷静じゃなかったら彼の考えなんて読んでられない……でしょう? 違う?」
若葉「……まったく」
若葉は呆れたように言うと、優しく手を覆うように手を重ねた
天乃の強く握りしめられた拳を解くように
隙間のない指の間に少しずつ指を潜り込ませて
籠城する怒気を解放していく
無血開城とは、行かなかったが。
若葉「君の……いや、貴方の思いを悪いとは言わない。軽いとも言わない。だが、勘違いしないで欲しい。天乃の抱いているものが解るなどと」
「も、申し訳ない……」
若葉「沙織、君もだ」
沙織「…………」
若葉「私の知っている沙織は簡単に離れられる人間か? 私は否だと思う。もちろん、今までの君が偽りであるならその限りではないが」
自分の手がぬるりとした触れたくないもので濡れていく中
若葉は冷静さを保ちながら、問いかける
本当ならここから天乃を連れ出したいと内心思ってはいるのだが
それは何も解決できないとおもうから。
沙織「久遠さんは……ねぇ、久遠さんは結局どうなの? 好きにしていいって言ったのに、こうやって押しかけてきてっ!」
天乃「っ」
沙織は怒っているかのような声色で
叫ぶように天乃へと問う
結局どうしてほしいのか、どう思っているのか、どうなのか
1、一緒にいて欲しい
2、あれは……子供を作るってだけの話だったから
3、だって……私が嫌だって言ったら貴女は従うじゃない。私のお願いに、背こうとしないじゃない
4、嫌よ。彼がどれだけ良い人だとしても。私は嫌。
5、戻ってくるって、戻ってきてくれるって……そう、信じてた
6、沙織こそどうなのよ! 私の身体を好きに弄んで、えっちな体にして、えっちが好きな子にして……満足した? だから捨てるの!?
↓2
2
3
1
6
天乃「っ……」
握りしめようとした拳は若葉によって遮られて
天乃はその代わりに唇を固く縛って首を横に振ると、一息
声を荒げたい気持ちはあるし
急く部分はあるが、そうしても何も変わらないと思うから
だから、天乃は一度落ち着いて
自分の拳を握るのではなく、包み込む若葉の手を受け入れて、握る
天乃「だって……私が嫌だって言ったら貴女は従うでしょう? 背こうとしないじゃない」
沙織「……久遠さんの言葉には私への強制力があるって?」
天乃「ええ。そうでしょう?」
沙織の言葉に多少の違和感を感じながら天乃が肯定すると、
沙織は少し残念そうに笑みを浮かべて、首を振る
それはそう、否定だ
沙織「それは違うよ」
天乃「違うの?」
沙織「あたしはただ……ううん、久遠さんはただあたしが否定するようなことを言わなかったししなかっただけだよ」
天乃「でも、この前のは」
沙織「この前の話だって変わらないよ。そうするのも一つの選択だって思ってた。そうするのも悪くないと思ってた」
沙織は自分の腹部―子宮の位置―を撫でると
天乃へと笑みを浮かべて、首を振る
沙織「でも、流石に言い過ぎたとも思ってる」
天乃「本気だって、貴女は言ってたけど……」
沙織「うん、本気だった」
満面の笑み
沙織の言葉が嘘でも冗談でもないと示すその表情に
天乃は「馬鹿なことを……」と
繰り返しそうになった言葉を飲み込み若葉へと目を向ける
若葉「私を見られても困るんだがな――あ、あぁ、いや分かった、分かったから」
天乃は何か言ったわけではないが、
若葉は一人困った顔、照れくさい顔と
切り替えて、ためいきをつく
その顔はずるい。と、呟かれた気がしたが、
天乃ははっきりとは聞こえずに首を傾げて
若葉「つまり、天乃は沙織に強制するのが嫌で、嫌だと言えなかったんだ」
沙織「……本当に?」
若葉が言葉を肩代わりしたからか、
沙織は深い疑いの目こそ向けてはこなかったが、聞き返して
天乃はその目を見据えて。
天乃「それは……」
一度、口を閉じる
自分の言葉には強制力はない
それを踏まえて
それを嘘ではないと信じて
若葉「あとは、天乃次第だな」
天乃「……うん」
耳元で囁かれた優しい声に、答えて
落ちついて。と、ため息一つ
1、本当よ。本当は嫌だって。そう、言いたかった
2、あの時嫌だと言っていたら沙織は今ここにはいなかったの?
↓2
2
1
天乃「本当よ。本当は嫌だって……そう、言いたかった」
沙織「……そっか」
沙織は天乃の言葉に喜ぶことなく
むしろ切なそうに呟いて青年へと目を向けると
ごめんね。席、外してくれないかな。と
優しく。しかし強制的に退席を求めて
彼の姿が室内から出て行って数分
沈黙した沙織はふと息をつく
沙織「あたしが子供の件を話した理由はね。お父さんから伊集院家はどうなるんだと、どうするんだと詰め寄られたからなんだ」
天乃「……うん」
沙織「なら、子供を産めばいいの? 後継さえ残せばあたしはどうでも良いの?って」
分ってはいたことだけど。と
沙織は寂しそうに呟いて喜楽の微塵もない笑みを浮かべる
沙織「お父さんにとって伊集院沙織は伊集院家の過去と未来を紡ぐ紐のようなものでしかないんだ」
若葉「そんなこと」
沙織「だから、たった一回抱かれればいいんじゃないかって、子供作って産んでさようならしたらいいんだって」
そう思ったんだけどね。と沙織は続ける
沙織「お父さんも最初はそれを認めた。それでも構わないと」
天乃「なら……」
沙織「でもね、聞いちゃったんだよ。ほら、猿猴の力もあるあたしって感覚が普通の人よりも凄いから」
天乃「何を聞いたの? 嫌がってた貴女が結婚を――」
沙織「あたしを前例として、三好さん達にも優秀な次世代を産んで貰うって話」
沙織が苦笑交じりに言った瞬間、天乃の背後でバキリ。と、嫌な音が響いて
何かが床へと散らばっていく
若葉「――滅ぼすか?」
音の発生源は若葉の左手だった
天乃に握られた手の分まで力を込めた左手は
木製の椅子の木でできた部分を容易く握り砕いたのだ
そのうえで冷めた声、鋭い瞳で言う若葉に
沙織は「まぁまぁ」とまるで他人事のように歯止めをかけて
沙織「久遠さんも聞いたんだったよね。壁外調査の話」
天乃「ええ」
沙織「ということなんだよ。大きな戦い以降は壁外調査へとシフト。同時に勇者部世代の時に用意されていた候補者に端末を譲渡して勇者も総入れ替え」
天乃「……なるほど」
沙織「勇者部の皆さんにはもう手出ししません、援助もします。ただし優秀な後継をどうぞ授かり下さいませ」
若葉「それは……それは、大赦の計画か? 流石に……いや、流石に、だな。さすがに……ッ」
怒りを堪えきれないと言った苦悶の表情を見せる若葉に
沙織は「一部だけどそうだよ」と困り果てたように答える
沙織の父親も一応は大赦に携わっている人間なのだから
彼のみの計画であっても、肯定するが。
沙織「その迷惑の発端になるくらいなら、あたし一人が久遠さんとの関係を断ち切ればいいのなら。気持ちが悪くてもいいやって、思ったんだ」
確かに、伊集院家以外の家に関しては大赦に深く根付いているわけではないからか
もうすでに挨拶なしに天乃との交際を認めてくれている
沙織が離れれば問題なくなるというのも、事実ではあるが……
天乃「そんなの、駄目よ」
沙織「そうだよね」
沙織「なら、久遠さんはあたしのお父さんを説得できる?」
天乃「やっぱり、最終的にはそこなのね」
いつかはやらなければいけないと思っていたこと
しなければいけないと思っていたこと
改めて示されたそれに、天乃は苦笑をする
勇者としての戦いから
人間として、誰かを愛し欲するものとしての当たり前の戦いへと変わったのだ
沙織「前に話して分かったと思うけど、難しいよ?」
天乃「ええ」
沙織「凄く面倒だよ?」
天乃「うん」
沙織「もしかしたら見捨てた方が良かったなんて――」
天乃「後悔はしないわ」
沙織「そっか……そっか。あたしは後悔するよ」
沙織は皮肉のように呟いて、笑みを浮かべる
沙織「こんな面倒ごとがあっても追いかけて来てくれる人を、あたしは裏切ったんだって思い続けるから」
天乃「そうやって後悔をした後に膝を抱えるか先に進もうとするか。人の成否はそこにあるのよ」
諭すような一言に沙織と若葉は頷く
天乃も後悔したことはたくさんある
その中には膝を抱えたこともあるし、突き進もうとしたことだってある
今だって後悔した後に膝を抱えるのを止めた結果だ
だからこその言葉を受けて
沙織「もう少し後悔してくるよ。またね……ちゃんと。久遠さんのところに戻るから」
沙織はそう言って、青青年の元へと向かったのだった
では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
開始直後に一日のまとめ
2日目開始直後は大赦交流
大赦「ということで、優秀な遺伝子ということで選ばれた春信くんだ」
大赦「君には勇者の少女たち全員と肉体関係を持って貰う。確実に子供を作り給え」
大赦「心配することはない、生まれた赤子の世話は我々が行う。君はただ少女を犯し孕ませれば良い」
春信「や、止めてくれないか?」
園子「駄目だよ~私を自由にしない代わりに何でもするって言ったのは誰だったかな~」
春信「だ、だが演技とはいえ……中学生を……あまつさえ実妹の相手をした脚本は……」
園子「そう言うこともあるよ~」
夏凜「あってたまるか!」
乙
さおりん救出作戦開始だな
乙
春信さん前作では本当に中学生(久遠さん)を孕ませてたな
その反動か今作は凄く出番が少ないからそろそろ活躍がみたい
そしてさおりん父の凄まじいゲスっぷりよ
乙
伊集院がどの辺から大赦に食い込んでるのかわからんがちょっと大赦中枢ガバガバすぎない?
伊集院は結構上じゃないの?
まぁ力の強い子の後継が出来ないってのは人類存続させる上では致命的だしその為なら…てのはあるんじゃない?
大赦は良かれと満開の後遺症を黙秘し防人を道具扱いするからなぁ…(原作)
乙乙
大祓ぁ…(呆れ)
乙
乙
それで結局さおりんはどこまで行ったんですか!?
では少しだけ
よしきた
1日のまとめ
・ 乃木園子:交流無()
・ 犬吠埼風:交流有(沙織について)
・ 犬吠埼樹:交流有(沙織について)
・ 結城友奈:交流有(交流)
・ 東郷美森:交流有(沙織について)
・ 三好夏凜:交流有(沙織について、お願い)
・ 乃木若葉:交流有(生徒、連れて行って)
・ 土居球子:交流無()
・ 白鳥歌野:交流無()
・ 藤森水都:交流無()
・ 郡千景:交流無()
・ 伊集院沙織:交流有(再会、拒絶)
・ 神樹:交流無()
9月1日目 終了時点
乃木園子との絆 54(高い)
犬吠埼風との絆 77(かなり高い)
犬吠埼樹との絆 63(とても高い)
結城友奈との絆 85(かなり高い)
東郷美森との絆 87(かなり高い)
三好夏凜との絆 111(最高値)
乃木若葉との絆 83(かなり高い)
土居球子との絆 38(中々良い)
白鳥歌野との絆 35(中々良い)
藤森水都との絆 27(中々良い)
郡千景との絆 30(中々良い)
沙織との絆 86(かなり高い)
九尾との絆 52(高い)
神樹との絆 9(低い)
汚染度???%
√9月2日目朝(特別病棟) ※火曜日
朝になって目を覚ました天乃の視界に映るのは、もはや見慣れた特別病棟の天井だった
昨夜天乃が帰宅―どちらかと言えば連れ戻された―したのは病棟の方で
自分の家に戻ることは許されなかったのだ
芽吹の制止を振り切って沙織の元に向かうことを強行したのだから
それも止むなしというところではあるため、天乃は不快感を飲み込んでため息をつくと
軽く寝返りを打って――
「――お目覚めですか」
天乃「きゃぁっ!? えっ? な、なに、だれ!?」
寝ぼけ眼に映った大赦の仮面をつけた神官は恐ろしく不気味で
天乃は妖怪に怯えた少女のように悲鳴を上げて、布団をかき集めて抱きしめる
布団を抱くのは少しでも何かに包まれていたいから。だろうか
「ご安心下さい」
天乃「はぁ……な、何が安心……出来るのよ」
「私は久遠様に何も行ってはおりません」
天乃「そう言う問題じゃないわ」
大赦の言葉はそう易々と信じることができないということは置いておいたとしても
眠っている間傍に立たれていたというのは恐ろしくて、不安だった
天乃「それで……なんで、居るの」
まだ動揺する心を落ち着けるために深く息をしながら抱いた疑問を神官へと向けると
神官は軽く一礼してから「昨日のことですが……」と切り出す
「あのような行動はお控えいただきますよう、願います」
天乃「……それ、だけ?」
「久遠様は真実だとすれば、妖怪との子を身籠っていることになります。それに対し、あるいはそれ以外に対し影響を及ぼす可能性があります」
天乃「沙織に会う程度じゃ――」
「前例がありませんので、断定は出来かねます。ゆえに世話係の指示にはしっかりと従っていただきたいのです」
要するに「勝手な行動はするな」ということである
悪影響があるなどと言う心配など、周りに対してはともかく
天乃の身体に関しては社交辞令に等しい心配である可能性さえある
もちろん、それは邪推が過ぎるかもしれないが……
天乃の力が損なわれたのは検査で把握できているからそれを疑っていることはないだろうが
いつ取り戻せるのか不確かな以上
下手に自由にしておくのは……と言うところだろう
天乃「ねぇ、それを断ったらどうなるの?」
「久遠様のお世話係を追加で用意することになるかと」
天乃「そう……それだけの人材がいるの?」
「少々不安は残りますが、いないことはありません」
天乃「なるほど……ぅん?」
問いかけるだけだった天乃は考え込むように頷いて、ふと気づく
自然な会話だったから気に留めるほどではなく素通りしていたが、
思えば
大赦の神官が【当然のように】疑問に答えるのは明らかにおかしいのだ
天乃「その情報……流して平気なの?」
「え、あ……は、はいっ久遠様でしたら」
ある女性神官のような無感情、無機質ではなく
好きな芸能人に出会えた少女のような上ずった声で答える神官の仕草を見て
天乃は困惑した様子で首を傾げる
――明らかに、おかしい
天乃「でも、私への対策なのよね?」
「はい、その通りです」
天乃「……?」
堂々とした態度でいうのだから問題ないのだろうか
それとも天乃の知らないところで何かがあったのか
天乃は少しの違和感を感じたまま、じっと神官を見つめて
1、寝ているときに何かしたの?
2、なぜ私に話しても平気なの?
3、ねぇ、追加で派遣させる世話係ってどんな人?
4、沙織や友奈たちの子孫に関する問題、貴女は聞いてないの?
↓2
1
1
では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
千景「あれは……」
九尾「知らんぞ」
千景「まだ何も言っていないわ」
九尾「見たじゃろ?」
千景「ええ、貴女しかいないから」
乙
瞳さんではないのか…この人は一体何者なんだろう?
乙
久遠さんかっこいいから仕方ないね
乙
仮面に変声機が付いている可能性もまだ...
乙
では、少しだけ
きてたー
天乃「寝ているときに何かしたの?」
「そ、そんな恐れ多いことなど……」
天乃「本当に?」
何もかもに対して疑いをかけているわけではない
ただ、女性神官の動揺があからさまだから
これは何かしているのだろう。と、そう考えているだけだ
それに加えて包み隠さずに―秘匿命令は受けていないのかもしれないが―話してくれるのだから
疑われても仕方がない
仮面をつけているために表情をうかがうことはできないが
その奥で息を飲んだのを感じた天乃は目を細めて睨むように神官を見る
沙織達ではないのだから、寝ている間に淫らなことをされたなんていうことはないと天乃は思うが
しかし、自分の知らない間に何かされていたかと思うと、
不安で恐ろしくて全身が粟立っていくのを感じる
素肌に触れる一切を剥ぎ取って不安の全てを拭いたいとさえ思うくらいに。
「ただ久遠様があまりにも無防備にお休みになられていましたのでご鑑しょ……いえ、見守らせて頂いていただけです」
天乃「何を言いかけたのよ」
「い、意味は変わりませんが、言葉がすぐに浮かびませんでしたのでご鑑賞と言う言葉を使おうかと」
天乃「……意味、変わらない?」
鑑賞と見守るでは意味が色んな意味で変わってくる気がする上に
そこまで震えてはいないが、動揺と嘘の色が混じっていると天乃は感じて
疑いの目を向けたまま脅しをかけるようにため息をつくと
神官の方から恐怖に竦んで息を飲む音が微かに空気に交じる
そして
「ほ、本当に久遠様のお体には何も……そんな不敬なことは一切しておりません!」
天乃「は? えっ?」
感情を大きく震わせながらの神官の仕草に天乃は驚いて間の抜けた声を漏らす
理由としては疑いを拭い去ることができなければ罰せられる可能性もあるという恐怖ゆえに。だろうか
女性神官はその場に跪いたのだ
「確かに、そのような劣情を抱かなかったといえば嘘になります。ですが、なにもしておりません」
天乃「劣情って……貴女、いや、えっと……待って」
激流に流されそうな感覚を覚えた天乃はいずれ痛むであろう頭に手を宛がいながら、
女性神官に待ったをかけて一息つく
劣情とはつまりそう言う気持ちを抱きながら
自分の寝顔を見ていたということになる
その時点で身を引きたい気持ちがある天乃だが、
残念ながら自力では逃げ切れないし、酷いことをされる可能性まで出てくる
最悪、精霊を呼べば―現時点で居ないのが不穏だが―なんとかなるだろう
天乃「貴女が嘘を語っていた場合、貴女も聞いたことはあるだろうけれど精霊が貴女を断罪する。解ってるわね?」
「はい」
天乃「その上でもう一度聞くわ。本当に何もしてない?」
「誓って」
そう言った神官はもう一度額を床につける
こういう場合は謝罪というよりも信じて欲しいからだろうが
自身の権力を振るおうという気の無い天乃にしてみれば
ただただ仰々しくて恐れてさえしまいそうなものだった
「年齢に見合った愛嬌のある寝顔でした。一定のリズムで呼吸をして時々小さく声を漏らしては優しく微笑んで。
話に聞くような他人に厳しい恐ろしさなんて微塵も感じない少女の穏やかな寝息で
何か急用があったとしても憚られるといいますか、確実に躊躇うような……しかし、
頬には指を突いてみたいという好奇心を抱かせる柔軟性を感じる膨らみがあって――」
天乃「う、うん。解った。解ったわ。貴女が語りたいのは良く解ったから要約してくれる?」
聞いていないのに長々と語る神官
その全てが自分の寝顔に関してもので
天乃は恥ずかしさに頬を染め、手で顔を覆うようにしながら促すと
神官はすみません。と謝罪を口にして
「久遠様の安眠を妨げるなど言語道断だと思います!」
天乃「そ、そう」
力強く答えた神官に天乃は困り果てた様子でため息をつくと
首を横に振って目を逸らす
何が起きたのかまったく解らない
しかしながら、彼女になにかがあったのは確実だった
天乃「何があったのかしら……」
深く聞きたい気持ちと、深く入り込まない方がいい恐怖心
挟まれた天乃は結局神官に大本のことを聞くことはできなかった
ただ、天乃に対して害意―劣情はともかく―はなかったのだから
このまま放置してもいいかもしれないと天乃は思う
大赦の情報を流すだけなら、いってしまえば夢路瞳のようなもの
下手に突っ込んで余計なことになるのは避けるべきかもしれない
天乃「とはいえ、気にはなるのよね」
仮面をつけている以上どんな人物か不鮮明ゆえに断定は出来ないが
天乃が仮面をつけていない神官になにかした可能性もある
それ次第では、もうすでに面倒なことになっている可能性も否定できない
天乃「あーもう……なんなの。なんなのよあの人。気になるじゃない……というか、怖いわよ」
自分が寝ているすぐ横で
知らない人が劣情を抱きながら佇んでいたのだから
そもそも聞かなければ良かったという後悔に身震いして、
天乃は抱き寄せていた布団を手放して、身体に触れる
天乃「ま、まぁ……何かしてたらみんなが助けてくれる。わよね?」
√9月2日目 朝() ※火曜日
01~10
11~20 若葉
21~30
31~40 男子
41~50
51~60 沙織
61~70
71~80 樹海化
81~90
91~00 芽吹
↓1のコンマ
あ
では、朝の追加交流を飛ばして昼に移ります
√9月2日目 昼() ※火曜日
01~10 風
11~20
21~30 若葉
31~40
41~50 沙織
51~60
61~70 芽吹
71~80
81~90 夏凜
91~00
↓1のコンマ
あ
では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
芽吹「駄目です。久遠様は規定違反によりしばらく接触は――ひゃあっ!?」
沙織「邪魔……しないでよ」
芽吹「やっ、ちょ、どこを……やめ、いい加減にっ……んっ!」
沙織「楠さんに鋼の意思があるというのなら、それを持って邪魔をするのなら」
沙織「あたしがこの手で溶かしてあげる。心も体も、ぐちゃぐちゃにかき乱してあげる……さぁ、楠さんの大好きな戦いを始めよう」
芽吹「ふ、ふざけないで……こんなことで。私は折れたりしないわ!」
乙
メブは夏凜ちゃん以上にくっころ向きな性格してるなw
それにしても大赦の人はなんだったんだ…正体が本気で謎なんだが
乙
女騎士かな?
乙
これは良いくっころ…
しかしあの大赦の人は何者なんだろ
乙
完璧なくっころや…
大赦の人は九尾になにかされたんやないの?九尾が情報源手に入れた的なことどっかで言ってたし
乙
では少しだけ
あいよ
√9月2日目昼(学校) ※火曜日
朝から来ていた沙織だったが、若葉の言っていた公欠という特別な欠席の件もあって
落ち着くことが出来るのは昼休みからだった
授業中に天乃にちょっかい出すことも不可能ではないが、それは何か違う
沙織「くっおっんっさーん!」
天乃「ちょ、ちょっと!」
前のドアから出て後ろに回り、呼びかけながら抱き着くと
もう当たり前になった可愛らしい悲鳴と動揺に震える声
ちょっぴり怒ったような表情に迎え入れられて
沙織「すりすり~」
天乃「さ、沙織っ」
沙織は堪えきれない嬉しさを表すように頬擦りする
場所は教室、昼休みの真っただ中
風はともかくクラスメイトの目もあるというのに、沙織は容赦なくて
皆が見てるからと焦る天乃だが、周りと言えば二人の関係を疑ったりするどころか
満場一致で【沙織なら仕方がない】と言いたげに呆れ顔で笑みを浮かべていた
沙織の天乃に対する好感度が振り切れていることなど、すでに周知の事実だったのだ
「……私もやりに行っていいかな、柔そう」
「こらこら」
そして、そのクラスメイトもやりに行こうとする始末で。
一時期の壊れた姿、大赦によるお役目
色んな事を知らないが、知ってもいるクラスメイトにとっては
天乃が当たり前のように教室にいて、楽し気に過ごしているというだけで満足だった
天乃「もうっ……少し離れて」
沙織「まだ5%しか補給できてないんだけど……」
天乃「はいはい」
引っ付いてくる沙織に手を押し当てて引き離すと、乱れた制服を軽く正して一息
困ったように沙織へと目を向けた天乃は小さく笑う
昨日はいなかった。その前もいなかった
でも、今日はいるのだ
ようやく戻ってきたと実感が沸いてきて、天乃は目を逸らす
天乃「公欠の件は問題なかったの?」
沙織「大丈夫だよ。大赦の根回しに関しては解除すると向こうに伝わっちゃうくらいだからね」
公欠の取り消しは認められません。なんてわけの分からないことは出来ないだろうし
仮に出来たとしても沙織自身を通わせないことはできないのだから
これで伊集院家は動くだろうし、天乃に手を出す可能性も低くは無いが
そこはもう、天乃も覚悟の上だ
天乃「何か言われたりは?」
沙織「してないよ。まぁ、本当に大丈夫なのか? って不安そうではあったけど」
天乃「でしょうね」
天乃「あの人は、大丈夫?」
沙織「どうかな……ショックは受けてたけど」
沙織は彼との結婚の話を完全に白紙に戻した
青年からの反対も覚悟をしていたし
承諾しておきながら無かった事にするというのは裏切り以外の何ものでもないからと
彼との肉体的な交わりをすることも視野に入れていた
だが、青年は残念そうではあったものの抵抗無くそれを受け入れた
できることの全てを行ったとは言いがたい
だが、自分の思いの丈を伝えて、距離の詰まっている間に出来るだけ行動に移し
それでもなお天乃を認めさせられなかったし、沙織の心を動かすことはできなかったから
自分の傍に寄り添ってくれているのが何よりも嬉しい
だが、それが幸せでないのなら意味が無いから。と
沙織「ううん……大丈夫だと思う」
異性に対しての不快感は拭えない
しかし、それでも数人は認めても平気だと沙織は思う
もちろん、天乃との関係を認めるのかは……別だが
「久遠さ……久遠先輩」
天乃「ん」
沙織「連れて行かせないよ?」
「傍にいなければいけないので」
沙織の反抗心ある視線を受けても、芽吹は気にすることなく平坦に答えて天乃を見る
役目を全うできなかったことへの自責の念に駆られている様子は見受けられないが
どこか、不安定にも見えて
天乃は手を伸ばそうとしたが、沙織の手がそれを掴む
そうなる根本的な原因は天乃にある
だが、それはただ沙織に会いたいというだけの極当たり前の願い
それを勝手に阻害して、打ち砕かれた芽吹に対して責任を感じる必要など無い
天乃「えっと……」
「役目に変更はありません。継続して私が世話係の任につきます。異論は?」
天乃「ないけど……」
あってもどうせ認められないが。
「あのような行動は控えて下さい。学校に通いたいのであれば」
沙織「脅してるの?」
「忠告です。そう伝えろと」
淡々とした口調で述べる芽吹は、天乃のクラスメイトであり、上級生である周囲の視線を感じながら
我関せずと天乃の正面の空席を借り受けて、手持ちの弁当を机に置く
と言っても、栄養面重視で味や見た目を度外視したチキン類―コンビニ商品―とかで
昼食……特に成長期に食べるような昼食ではない
天乃「それが、楠さんのお昼?」
「はい」
天乃「そう……なんだ」
同じくストイックな感じで生きていただろう夏凜は
瞳が一緒に生活しているおかげで
栄養面に加えて見た目と味にもしっかりと拘ったお弁当を持参していたが、
芽吹にはそう言う相手がいないのかもしれない
それは寂しいのではと、天乃は思う
天乃自身が一人きりと言う孤独が苦手なのもあるが。
沙織「あたしのおかずを――」
「結構です」
沙織「そう」
最初こそ明るく声を出した沙織は芽吹の態度に適してか
興味を失った冷めた声で呟き笑みを浮かべる
内心では不快感が募っているだろうと、天乃はなんとなくだが感じた
1、一人は寂しくないの?
2、私はただ出来て当たり前のことを求めただけ。悪いことをしたなんて思わない
3、ねぇ、どうして誰かのためにあろうとすることがくだらないと思うの?
4、貴女は勇者になりたかったの?
5、ねぇ、ところで沙織はあの男の人とどこまでしたの?
↓2
5
5
3
ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
天乃「ねぇ、彼とはどこまでしたの?」
沙織「えっ、あー……それは」
ダンッ
沙織「わっ」ビクッ
天乃「……どこまでしたのって、聞いたのだけど」
沙織「ぁ、う……い、いや、べ、別にどこまでも……」
天乃「嘘だ!」ダンッ
沙織「ひぃっ!?」
杏「という流れが……」
夏凜「いや、今の天乃には無理でしょ。せいぜい沙織に体に教えてあげる。とか言われて押し倒されるくらいだわ」
乙
逆ならあるな
乙
立場逆転か…なにそれ超見たい
もしも肉体関係になってたらクラスが大騒ぎになりそう
乙
では、少しずつ
いえす
触れても突っぱねられてしまいそうな世話係から沙織へと目を向けた天乃は
小さく息をついて、味のしない食事を一口噛み締める
沙織には聞きたいことがある。とても気になることがある
けれど、それを聞くのは互いにとって嫌なことを掘り返すことになるし
その答え次第では大小の差はあるだろうが、傷つくことにもなるだろう
そう思う天乃は無心で一口分に切った卵焼きを口に運ぶ
天乃の弁当を用意したのは九尾ではなく大赦側の誰かだ
天乃の味覚がないことを把握しており、
加護のない天乃の体に支障が無いようにと栄養を考えられて作られた弁当は見た目こそしっかりとした弁当だが
その味はどうなのか分かったものではない
もちろん、不味かろうが上手かろうが、じゃりじゃり、がりがりと言うような失敗作でない限り
天乃にはどちらも大差のないものだが。
天乃「……ねぇ、沙織」
そんな味気ない食事を中断して、天乃はやっぱり。と思いを決めて目を向ける
声をかけられた沙織は「どうしたの?」と食事の手を休めることなく問う
しかし、その声は何かを悟っているかのようだった
天乃「あの男の人とはどこまでしたの?」
沙織「ん……」
ピクリと。
注視していなければ気づかないほど微かに体を揺らした沙織は、
止まった箸を動かしておかずを口に入れると、「そうだなぁ」と茶化すように呟く
沙織「気になるんだ」
天乃「気になるっていうか……」
沙織「うん?」
天乃「っ……」
問い質したわけでもない沙織の仕草に天乃は頬を赤く染めて目を逸らすと
弁当の上に乗せていた箸を掴んでご飯を一つまみ口に運ぶ
食べながらと言うのはあまり褒められたことではないのだが
何かと分散していないと、話し難くて
沙織「普通、前に付き合ってた人とどこまで行ったのか。なんて聞かないよ?」
天乃「それは……知ってるけど」
沙織「じゃぁ、どうして聞いたの?」
天乃「……気になったから。とかじゃ、だめ?」
天乃が言うと、沙織は「んー」と考えるそぶりを見せて
沙織「理由としては弱いかな」
苦笑を浮かべる
考えたのは見せかけだとそれが示していて
天乃は少し、怒ったように唸る
沙織「もしかしたら嫌なことまでしてるかもしれない。それをね、興味本位で聞かれるのは嫌なことなんだよ」
それは恋愛に限らないけど。と沙織は言う
誰かが何かを抱えているとして、そこに手を差し伸べること自体が間違ってるわけではないが
その何かを開示することを強要するのは結局、相手のストレスにしかなっていないのだと
沙織「だから、久遠さんが興味しかないなら話したくない」
天乃「…………」
沙織は笑みこそ浮かべているが、語ったことは本心なのだろう
茶化すような色も、冗談にするような雰囲気も無い
しかし、同時に罪悪感が顔を覗かせていて
天乃は唇を一旦引き締めると、箸をもう一度弁当の上に乗せて、息をつく
目は真っ直ぐ、沙織へと向けて
天乃「沙織は、あの人との付き合いは嫌なことだったんでしょう?」
沙織「……そうだね。自分で選んでおきながら、なにを言ってるんだろうとはおもうけど」
天乃「だから、私は沙織のそれを知りたいのよ。その傷は私のせいでもある。私の責任でもある。私以外の誰かに、それを癒す役目を投げたく無い」
天乃は先ほどまでの押し隠し、照れくささを滲ませた表情を一新させていて
その、自分が心奪われたものの姿に、沙織は笑みを浮かべる
天乃「ましてや、現実逃避をして時間が癒してくれるなんて考えに甘えたくない。貴女の覚悟を奪い取ったのだから……貴女の分まで背負うのが私の責任でしょう」
沙織「……そっか、試すようなことしてごめんね」
沙織に見えた罪悪感はそれなのかもしれない
申し訳なさそうに一言謝った沙織は、自分の唇に触れる
沙織「一緒にお風呂に入った、エッチなことはしてないけど、一緒にも寝たよ。それと……キスもした」
後からやっぱり嫌だとならないように
自分の覚悟をしっかりとしたものにするために
決別の意味も込めて、沙織はあの青年と唇を合わせた
それから積極的に触れ合うようにした
不快感も嫌悪感も全てを上塗りするために、頑張ったのだ
天乃「……馬鹿ね」
沙織「…………」
天乃「ううん……ごめんね」
自分が不甲斐ないばかりに、負担をかけてしまったのだと
天乃は一度戒めの意味も込めて唇を噛み、沙織の頬を拭う
天乃「でも、もう大丈夫」
沙織「……うん」
頬に触れる天乃の手に自分の手を重ねて……沙織は微笑む
学校じゃなければ
教室じゃなければ
2人きりだったのなら
そう思いながら、顔を近づけて、額と額を軽くぶつけた
天乃「今度、ね」
√9月2日目 夕(学校) ※火曜日
01~10
11~20 クラスメイト
21~30
31~40 若葉
41~50
51~60 芽吹
61~70 風
71~80 樹海化
81~90
91~00 夏凜
↓1のコンマ
あ
√9月2日目 夕(学校) ※火曜日
芽吹「昨日の今日です。寄り道せずにまっすぐ戻ることを推奨しますが」
1、部室へ
2、大人しく帰る
3、沙織
4、若葉
5、九尾
6、イベント判定
↓2
1
6
3
01~10 沙織
11~20 九尾
21~30 クラスメイト
31~40 風
41~50 友奈
51~60 芽吹
61~70 若葉
71~80 千景
81~90 樹海化
91~00 大赦
↓1のコンマ
あ
ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
天乃「沙織……」
沙織「久遠さん……」
女子(するのかな、するのかなっ、するのかな!?)
男子(前々から怪しいって思ってたけどやっぱりか!)
女子(いけっ、やっちゃえさおりん!)
男子(あれくらいならまぁ……って感じだけど、なんかえろいよな。あの二人がやってると)
乙
言ってもなんにもないだろと思ってたからちょっと衝撃だった
ますます沙織帰省編を沙織視点で見たくなっちゃった
乙
一緒にお風呂に寝てキスもしてるとかえっち一歩手前までしてたのか…ほっといたらそのまま子作りまでいってたのだろうか
メブには悪いけどさおりんと二人っきりの時間が欲しいなあ
乙
むしろよくそこまでやって青年の方が我慢できたなと、鉄の精神だぞ
ただ伝聞じゃどんな状態だったのかうよくわかんないなー
すごい好物なんで時間あったらちょっと描写してくれください(チラッ
乙
こうなったら上書きのために久遠さんもさおりんと一緒にお風呂入るしかないな!なんか介護っぽくなっちゃうけどさおりんなら問題ないはず!
すまんsage忘れた
乙
では少しだけ
√9月2日目夕(学校) ※火曜日
天乃「はぁ」
HRが終わって、開放感に満ちた教室のわっと広がる喧騒の中、
天乃は小さくため息をついて風に手を振る
残念ながら、部室に行けるかどうかわからないし
行けるのだとしても、遅れてくる世話係の芽吹を待たなければいけない
それでも風は待ってくれようとするけれど
待たせた結果行けない。というのは申し訳なくて。
風「ま、あとで連絡するわ」
天乃「うん……勇者の件もあるんだから。無理しすぎないようにね」
風「解ってる」
いつ来るか分からない最大級の襲来
それに備えて勇者部を休んでもいいのではと思うが
しかし、勇者部こそがみんなの日常なのだから。
天乃「行ってらっしゃい」
風「な、なんかいいわね」
笑顔で送り出すと、風は少し照れくさそうに
嬉しそうにはにかみながら手を振り返す
行ってきますが言えるのなら
いつか、ただいまを言いたいと風は思う
行ってらっしゃいと送り出すのだから
お帰りなさいと言わせてほしいと天乃は思う
風「じゃ、行ってきます」
天乃「ん、またね」
沙織「久遠さん、あたしに行ってらっしゃいは?」
天乃「それって求めるようなことなの?」
沙織「だって、犬吠埼さんばっかりなんだもん」
むっと膨れる沙織に微笑みを向けて
天乃はちゃんと見てるわよ。と囁いて
天乃「ごめんね、迷惑かけて」
沙織「良いよ。こうなることが分かってても、あたしは久遠さんを選んだんだから」
昨日の一件はすぐに沙織の両親へと伝わり、すぐに来るようにと呼ばれているのだ
本当は朝から行くべきだったのだが公欠の話もあって学校を優先しており
母親はともかく、父親は厳しく言ってくるだろうが
それは初めから厳しいのだから、いまさら気にするようなことでもない
そもそもの話、父親か天乃
どちらを優先するかと言われれば、沙織は迷わず天乃を選ぶからだ
沙織「それに、責任……取ってくれるんだよね?」
天乃「ええ、当然」
昼に語ったのは方便ではなく天乃の本心だ
だから、沙織の問いかけに天乃は迷い無く首肯する
沙織自身も「疑って無いよー」と、苦笑して
沙織「多分、今度久遠さんも来るようにって言われると思う。そのときはよろしくね」
天乃「正直に言えば、まだ納得させられるような言葉は浮かんでいないんだけど」
沙織「2人で頑張ろう」
天乃「根性で語れることじゃないんだけどね」
沙織の冗談なのか本気なのか分からない言葉を見送って
一人になった途端、寂しくさせないようにと気遣ったかのように、2人が姿を見せる
「久遠せ――」
友奈「久遠せんぱーい!」
放課後と言ってもまだ人の多い教室に、快活な声が響く
その少し前にかき消された声の主は上級生の目もあってか控えめだが
友奈は気にせずに教室の入り口から顔を覗かせて天乃に向かって手を振る
上級生である天乃のクラスメイト達だが、
勇者部に関しては基本、妹のような扱いをしているために
入りにくい空気は一切無い
だから、芽吹も平気なはずなのだが……そこは芽吹自身の問題だろうか
天乃「あら、珍しい組み合わせね」
友奈「夏凜ちゃんと東郷さんはすでに依頼があったので優先して向かっちゃって」
天乃「じゃぁ……貴女は役無しと」
天乃が冗談っぽく言うと
友奈は何もなかったので。と少し残念そうに
けれど嬉しそうに笑顔を見せて
友奈「えへへっ、久遠先輩のお世話係二号ですっ」
ビシッと決めて見せた友奈だが
そこには格好良さも凛々しさも無く、ただ愛らしさしかない
友奈「でも、本当は久遠先輩にお話があったんですけど、芽吹ちゃんが2人きりはダメだーって」
天乃「でしょうね」
「規則です」
一度破られたからと、それを破棄するわけには行かないのだろう
芽吹は極めて落ち着いた声で呟き、首を振る
天乃が規則で縛るのが難しい人間だと聞いてはいたが
勇者部自体があそこまで【魅了】されているとなると、手のつけようが無いと、呆れて
「結城さんの用件、私も聞かせてもらいます」
天乃「そんな勝手なこと」
そういいながら友奈に目を向けると、
友奈は少し困った様子ではあったけれど
別に変な話ではないので平気ですよ。と笑う
友奈「実は、お母さんが久遠先輩連れてって」
天乃「えっ?」
友奈「えへへっ、ちゃんとしたお話がしたいって」
友奈は照れくさそうにいいながら、大丈夫ですよ。と言う
確かに、以前夏凜の兄から友奈たちの両親は天乃との交際を認めている。と言っていたが……
1、もちろん、行く
2、楠さんがいるから……ダメね
3、楠さん、こういうのも貴女はついてくるの?
↓2
1
3
では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
芽吹「当然です」
友奈「そっか……なら、仕方がないですね」ニコッ
天乃「……友奈?」
友奈「芽吹ちゃんに教えてあげるよ。【天乃先輩】を手中に収めた私、久遠友奈の神の手ってやつを!」
芽吹「!」
天乃「えっ?」
乙
えっ
乙
ご挨拶も大事だけどメブを余りないがしろにしない方がいいかもな
そして一周目の友奈ちゃん久々に見たわ
乙
では、少しだけ
よしきた
天乃「…………」
友奈からの誘いの言葉を聞いた天乃は考え込むようにゆっくりと目を閉じ、一息
空気を吸うのに合わせて瞼を開いて芽吹を見据える
悪く言えば図々しい世話係は、少し動じたように体を揺らしたが
眼を逸らすことなく見返して来ていた
天乃「こういうのも、楠さんはついてくるの?」
「当然です。久遠先輩から眼を離すことは原則禁じられているので」
天乃「友奈とその両親との大事な話があっても?」
「むしろ、その話を聞いて報告するのも私の役目の一つなので」
隠し立てするのは無意味だと判断したのか
それとも、天乃への牽制のつもりなのか
世話係の枠を超えた役目であることを自白する
友奈「報告するようなことあるかなぁ……」
友奈は自分の両親が求める話、しようとしている話を想像して
少し困ったように呟く
恐らく、芽吹に対して言ったのではなく
ただ、考えているうちに零れてしまったのだろう
取り繕うように「芽吹ちゃんが駄目って話じゃないよっ」と続ける
「結城さんの意見は関係ないわ」
友奈「そ、そうだよね……」
厳しく否定され、思わずへこんだ友奈は苦笑しながら眼を逸らして天乃へと目を向けると
どうしますか? と、困ったように言う
友奈としては、聞かれて困るような話はしないつもりだろうし
天乃と友奈が交際していることも
結城家がその件に関して肯定的であることも大赦はすでに知っていることだ
だから、結婚云々、身体の関係云々
聞かれるのも話すのもやや恥ずかしいことではあるが
報告されてはいけないようなことは何一つとしてないだろう
友奈「お母さん達は全然、来れる時で良いよって言ってますけど」
天乃「そう……」
友奈の両親のことだから
それはそれでもすぐに行くかどうか試しているのではなく
本当に来ることが出来る時で良いと思っているのだろうけど……
「私は話を聞くだけで、口を挟むつもりはありませんので妨害される。という警戒は必要ありませんよ」
天乃「問題は楠さんがまったくの部外者ってことなんだけどね」
これが沙織や夏凜達であるのなら、
すでに複数人と交際していることは知られているため、
友奈以外に交際している人を紹介するという事もできるので
連れていくことに問題はないのだが、
全くの無関係である芽吹がいるというのが少し問題なのだ
天乃「楠さんはただの監視……じゃなかった世話係って言えば良いのかしら」
「それで構いません」
友奈「もしかしたら変なこと言うかもしれないけど、良い?」
「変な事……?」
友奈「えっと、お母さん達ってこう……グイグイッってするから」
友奈の困った表情と、押し出すような仕草に困惑する芽吹だったが、
だからと2人だけを行かせるわけには行かない。と、覚悟を決めて息を呑み頷く
「そこまで問題のある話もしないでしょう。大丈夫です。久遠先輩と結城さんだけを行かせる方が良くないので」
昨日の失態もあってか、引くわけには行かないらしい
天乃「そう……どうしようかしら」
友奈も両親も芽吹も構わないのなら
あとは天乃次第だが……
1、行く
2、行かない
↓2
1
1
ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
天乃「行くって……友奈の家ではないの?」
友奈「? そんなこと言ってないですよ」
天乃「でも、ここって……」
友奈「はいっ、結婚式会場の下見ですっ!」
天乃「まだ早いから!」
友奈「大丈夫です、お母さんたちの希望ですから」
天乃「そう言う問題じゃないのよ」
乙
メブ同行でOKなら東郷さんの家にも挨拶いきたいな
乙
結婚式場はほかの娘の意見もあるから…
乙
では、少しずつ
天乃「なら、行きましょう」
少しの不安―芽吹―はあるが、
芽吹を抜いて二人きりで行くのは現状できないし
それが出来るようになるのもいつになるか分からない
しかしかといって、両親へのあいさつを後回しにし過ぎるのは、と天乃は思って
芽吹を含めて友奈の家に行くことを決めた
友奈「えへへっ、じゃぁ瞳さんに連絡お願いしていいですか?」
「その必要はありません」
自分の端末を確認した芽吹は、端末から友奈へと視線を移して
「迎えはもう下に来ています。そこで伝えれば問題ないですから」
天乃「なら行きましょ。瞳を長く待たせておくのも可愛そうだわ」
友奈「そうですね、なら――」
「結城さんはそのままで大丈夫です」
そう言って天乃の後ろに回ろうとした友奈を遮って
芽吹が天乃の車椅子の持ち手を掴む
「これは私の役目なので」
友奈「そっか……よろしくね!」
少し残念そうに呟いて、
友奈はすぐに笑みを浮かべて天乃を託す
余計なことを言っても何にもならない。そう、、思ったのだろう
瞳「友奈ちゃ……結城様の家ですか?」
友奈「はいっ、ちょっと用事があるんです」
瞳「解りました、お送りします」
芽吹のいる手前、今までのような付き合い方をまた改める必要のある瞳は
まだ少しやりにくそうに言葉に詰まって、答える
本当なら芽吹とももう少し友好的に接したいのだろうが
夏凜のようには上手くいっていないらしい
「そう言えば、久遠様」
天乃「うん?」
「そろそろ文化祭の時期ではありませんか? 買い出し等ありましたらお連れしますよ」
天乃「そっか、もうそういう時期なのね」
瞳に言われてようやく。と反応を示した天乃に
友奈は勇者部では演劇の予定なんですけど、まだ何も。と
困ったように笑う
天乃の件や、入院、そもそものバーテックスの襲来もあって
まだ何も準備が出来ていないのだ
天乃「私のクラスも何か決めた様子はないのよね。一応、3年だから参加不参加は自由に決められるらしいけど」
友奈「参加しないんですか?」
天乃「どうするべきかしらね」
天乃は1年、2年と文化祭に参加した記憶がない
というのも、勇者としての戦いがあって、
銀を失ったことがあって
何かを楽しむ。というような精神的な余裕は全くなかったし
そんなつもりが全くなかったから
そもそも、参加自体していなかったのだ
そして、今回は……
天乃「私は自由に動けないし、こんな状況でしょう? なんか、手伝うことも出来なそうだから」
目と耳を指さして苦笑する天乃に、
友奈は悲しそうな顔をして「そんなことないですよ」と、言う
友奈も満開による後遺症はあるが、それは味覚のみで
けっして、安易なことは言えないが。
友奈「久遠先輩のクラスの先輩たちは、そんな久遠先輩も一緒に楽しめることをやると思います」
天乃「…………」
友奈「むしろ、久遠先輩が参加しないと、みんな参加しないかもしれません」
天乃「それはありえそうで困るわね」
自由参加
だからこその、全員不参加……クラスメイトならば、やりかねない
天乃「まぁ、せっかくの文化祭だもの、参加しないとよね」
皆が不参加と言い出すのもあれだが、
天乃自身、、まだ楽しんだことのない文化祭を楽しんでみたいという気持ちはある
もちろん、クラスメイトに気遣われ過ぎたりしない
迷惑になりすぎない程度で、だが。
天乃「友奈のクラスは出し物を決めたりは?」
友奈「まだです。多分、今週中にはそう言う話があると思います」
「…………」
こういう会話には口を挟まない
天乃達にだけでなく
文化祭そのものに自分は無関係だと思っているような芽吹に、天乃は目を向けて
瞳「もうすぐ着きますよ」
天乃「あら、そうなの?」
ひとまず、芽吹の件は置いておくことにした
√9月2日目 夕() ※火曜日
01~10
11~20 有
21~30
31~40
41~50 有
51~60
61~70
71~80
81~90 有
↓1のコンマ
あ
お、有り引いたか
√9月2日目 夕() ※火曜日
友奈「ただい……って、あれ?」
大きくただいまと言おうとした友奈だったが、
すぐに言葉を中断すると、
玄関に並ぶ見覚えのない靴を見つめて、首を傾げる
新しいのなら、新品の靴を買ったという話もあるが、それにはそんな様子はなくて
友奈「お客さん……かな?」
天乃「あら、それならまた今度にした方が良いかしら?」
友奈「あ、いえ。ちょっと様子を……でも、先に私の部屋に連れて行きます」
すぐに客間に連れていくのは、と
友奈は少し考えたから、天乃を自室へと連れていくことを決める
客が誰かは分からないが
せっかく来てもらって、やっぱり帰ってください。というのは
他人だろうが知り合いだろうが恋人だろうが、酷い話だと思うからだ
そうでなくても、少しは……一緒に居たいと思う
友奈らしい、というか
女の子らしい明るい色合いの友奈の部屋
窓から見える隣家の窓は、東郷の家の窓だ
友奈「じゃぁ、少し待っててください」
天乃「ええ」
友奈「もしもあれなら、その……ベッド使っても平気なので」
天乃「うん、ありがとう」
気遣う友奈を見送った天乃は、
部屋を見渡し、自分以外の人物
世話係の芽吹へと目を向ける
芽吹は興味も何もないようで、
天乃を逃がさないようにするためか、出口の傍の壁に寄りかかるようにして、待機している
友奈のベッドを使って休むのもアリだと天乃は思うが
それはそれで、芽吹に無防備な姿をさらすことになるから
少し……怖いが
1、友奈のベッドを使う
2、ねぇ、楠さんは文化祭に興味はないの?
3、楠さん、皆とは仲良く出来てる?
4、楠さんは讃州にくるまで何していたの?
5、友奈視点
↓2
1
5
side:Y
友奈「…………」
勢いで久遠先輩を部屋に連れて行っちゃったけど……大丈夫かな
芽吹ちゃんが何かしたりはしないと思うけど
久遠先輩は多分、平気だけど
芽吹ちゃんがあんまり関わりたがらないからなぁ……
教室でも、私達だけじゃなく
クラスメイトのみんなに対して冷たいし……何とかしたいけど
友奈「……今は、とりあえずお母さんに帰ってきたことを伝えよう」
考えても私では何とかできなさそうな事
それを考えるのを止めて、今へのドアを開けると
丁度、お客さんが帰ろうとしているところだった
「あら……貴女が友奈ちゃん?」
女の人だった
背が低くて、髪は久遠先輩よりも濃い桃色
目の色は少し暗い……
「うん?」
友奈「ぇ、あっ、はっ、はいっ!」
思わず見惚れていた耳に聞こえる鈴の音よりも気持ちがいい声
慌てて返事をして、眼を逸らす
綺麗な人だった
まるで、久遠先輩が大人になったみたいな人
でも、胸がだいぶ足りないような。気もする
「そう……貴女が友奈ちゃんね」
母「今帰ったの?」
友奈「う、うん……えっと」
この人は? と、聞こうとした私の視線に気づいてか、
お母さんはああ。と声を漏らして笑う
「この人は貴女の言う天乃さんのお母さんよ」
友奈「あ……」
言われてみれば……というより
久遠先輩のお姉さんではないのだから、久遠先輩に似てるなら
大人っぽいなら、そう……だよね
友奈「そうだったんですね」
「うん、そうよ」
大人でも私と変わらない身長のお母さんは
嬉しそうに私の頭に触れる
久遠先輩のようで、でも。撫でることに慣れて良そうな優しい手つき
「ちょっとお話があってきたの」
友奈「もう帰っちゃうんですか?」
「ええ。私がいたら、天乃ちゃんは話しにくいだろうし」
友奈「え?」
「ふふっ、分かるのよ。あの子がすぐ近くに居るって」
大人びた雰囲気とは逆に、なんだか子供っぽい感じのする久遠先輩のお母さんは
私を見て、私のお母さんに振り返ると
軽く頭を下げて「宜しくお願いします」と、言う
「……本当に良いんですか?」
お母さんのあまり見ない、聞かない
真剣な声と顔
話していた内容は分からないけれど
それはきっと、大切な事だったんだと思う
久遠先輩のお母さんは、「今はまだ。どうしようもないことだから」と、部屋を出ていく
友奈「っ」
咄嗟に後を追いかけて、玄関へ
久遠先輩のお母さんは私に振り返って、笑う
「色々と面倒くさい子だけど、よろしくね」
友奈「あ、あの……」
久遠先輩には家族の記憶がない
当然。お母さんの記憶も
だから、会わない。だから、何も言わない
久遠先輩にとって、他人になっちゃってるから
だから、私も何も言えなくて
でも、久遠先輩のお母さんは、満足そうな笑顔を浮かべていた
「良いのよ。あの子が今幸せなら、お母さんはそれで良いの。私も、友奈ちゃんのお母さんも。みんなのご両親も」
友奈「…………」
「またいつか、会うこともある。その時にまた話しましょう。友奈ちゃん」
では、少し中断します
再開は21時半ごろを予定しています
一旦乙
珍しい視点変更でまさかのお母様再登場か…
友奈ちゃんって結構重要そうな場面に出くわすことが多いな
一旦乙
次は結婚式だな
ではもう少しだけ
side:A
友奈「戻りましたー」
天乃「あら……何かあった?」
友奈「えっ?」
天乃「なんか、そんな気がしたから」
驚いた顔を見せた友奈に、天乃は「ないならいいけれど」と、
前言を撤回するように言葉を並べて、笑みを浮かべる
だが、違和感を覚えたのは嘘ではない
友奈が驚いた顔を見せたその一瞬
自分の感覚が間違っていなかったと確信もした
しかし、天乃は深くを聞かずに笑みを見せる
なにか、相当な問題ならば動くことも吝かではない
けれども、そこまでの深刻な問題ではないと、思ったからだ
「それで、行きますか?」
友奈「うん、お客さんも帰ったみたいだから」
天乃「さて、楠さんは何と言われるのやら」
「私はただの世話係です」
大した反応も見せない芽吹の姿に
天乃はつまらなそうな表情で「もう……」とぼやく
友奈は部屋で二人きりになっても
関係は微塵も良くならなかったのだと察して、小さく笑うだけにした
「呼び出しちゃってごめんなさいね」
天乃「いえ」
友奈の両親と、天乃は初対面ということはない
むしろ2年間のかかわりがある分、それなりの親交はあるのだ
しかし、唯一知り合いではない芽吹に気づいた友奈の母親は
天乃と友奈
そして芽吹へと目を向けて、納得したように頷く
「あら、その子も天乃さんの恋人?」
「はっ!?」
これまで動じることのなかった芽吹は、
照れるような素振りなく、ただ嫌悪感のみを感じる驚愕の表情を見せて、首を振る
あからさまな不快感だ
「私は久遠先輩の世話係です。それ以上でも以下でもなく、ただの世話係です!」
芽吹の怒り交じりの否定に
天乃はそんな強く否定しなくても。と
少し寂しそうに呟き、友奈の母親は
それならなぜいるのか……と言いたげな表情を浮かべて
「そうなのね、ごめんね……それなら少し席を外してた方が良いと思うわ」
「いえ、それには及びません」
友奈「えっと、芽吹ちゃんも聞いた方が良いんだって」
「そう……なの?」
芽吹の存在にはやや疑問を示す母親だったけれど
天乃と友奈が問題ないのなら、と承諾する
「それにしても、言った当日に連れてくるだなんて思わなかったわ」
友奈「え?」
「天乃さんにも用事とかはあるだろうし、数日開けてくるものじゃない?」
やや申し訳なさそうに
けれど怒った様子のない笑みを浮かべて言う母親の言葉に、友奈は今気づいたかのように驚いて
ゆっくりと天乃へと目を向ける
それはたしかに……そうだ
天乃「大丈夫だから、ね」
友奈「ごめんなさい」
天乃「大丈夫だから」
大丈夫だと言っても謝ってくる友奈の頭を優しく撫でて、一息つく
さて、どちらから話を切り出すべきか
話すことは間違いなく、交際についてだろう
友奈の母親から言われるのを待つか
自分から、語るか
1、待つ
2、友奈とは、結婚を前提にお付き合いさせていただいています
3、お義母様は、私が複数の女性とお付き合いするのは許せませんか?
4、私は友奈を幸せにします。もちろん、友奈以外のみんなも。誰一人老いていくことなく、愛します
5、やっぱり、お義母様も、子供が出来ないことは問題だと思いますか?
↓2
4
3
4
では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
「ええ……許せないわ」
「だって、天乃さんはまだ私を抱いてくれていないじゃない」
天乃「えっ?」
「最近、夫とはご無沙汰で……だから、聞けば母娘丼と呼ばれるものがあるらしいじゃない?」
天乃「あの、いや……えっと」
「うちの子を抱くなら一緒に抱いて!」
友奈「お母さん!?」
九尾「ありえ――」
夏凜「ないっての」
乙
姉妹丼なら予定してるんですよねえ
乙
あまり交流してないのもあってかメブのガードが固いこと固いこと
そういやメブはまだ大赦側の人間だからか名前表記がないな
乙
これには流石の久遠さんも困惑である
>>1のことだからメブーもちょろりんだと思っていた時期が私にもありました
あと流石に母娘百合丼とかいうのは新ジャンル過ぎるんじゃないっすかねぇ
乙
では少しだけ
あいよ
√9月2日目夕(結城家) ※火曜日
どうするべきかと考えて、間を置いた天乃は
友奈の母親がまだ口を開かないのを確認してから、一息
慌てる必要はないと、ただ想うこと
言わなければいかないこと、聞いておくべきこと
それを言えば良いのだと心を抑えて
天乃「お義母様は、私が複数の女性とお付き合いするのは許せませんか?」
「そうね……許せる許せないというのは、少し判断しにくいわ」
少し考えながら答えた母親は困ったように眉を顰めて
苦笑いを浮かべて、首を振る
「例えば、天乃さんが女の子で友奈や美森ちゃん達が男の子だったら、許せないと思う」
天乃「…………」
「例えば、天乃さんが男の子で友奈や美森ちゃん達が女の子だったら、許せないと思う」
そう語った母親は、偏見かもしれないけどね。と
少し申し訳なさそうに前置きする
天乃と友奈達のように同性同士ではなく、
異性同士であるだけで、語ろうとしているからだろう
「なんとなく、そういうのって風紀が乱れているというか、不純な感じがしてしまうの」
必ずしもそれがあるわけではないと分かってはいるけれど
でもね。やっぱりそう言ったことをせずにはいられないと思うから。と
母親は言って、友奈に目を向けると苦笑する
「この子も経験をしたでしょう? だから、天乃さん達にそう言うことが無いわけではない」
友奈「えっ……ぁ、ぅ」
天乃「そうですね……あります」
主に、天乃がするのではなく
天乃がされる側なのだが、あえてそれは語らない
一夫多妻というものは、男性が主導権を握っていることが多い
というのも、その強力な権力等に惹かれていたり、それによって連れられる側室という存在によって
その関係が形成されるからだ
だが、天乃に限ってはそれがない
友奈達を力などで縛り付けているわけではない
家柄等の力があるが、それを行使しての関係ではないということが、
友奈の母親にも分かっているからこそ、許せるかどうか。と言う疑問への答えが難しいのだろう
「……でも、この子も。お隣の美森ちゃんもみんながそれを望んでいて、その関係になっているのよね?」
経験……濁したそれで意味を察して恥らう我が子を見る母親は
それが決して、何らかの強制力によって望まないものだったなどと言うことはないことは
もう、十二分に分かっている
だからこそ、大赦からの娘達の関係への口出しに関して、
自分達は娘が幸せならばそれで構わない。という返答をしたのだ
「だったら、お母さんはただ天乃さん。貴女に聞きたいの」
天乃「はい」
「貴女はこの子を。みんなを、幸せにすることができますか? 誰か一人特別に扱わずに、平等に分け隔てることなく」
天乃「はい。絶対に」
友奈の母親からの言葉に、天乃ははっきりと強い意志を持たせた短い言葉で答えて、首肯する
もしかしたら、みんなを幸せにするのではなく、みんなに幸せにしてもらう方が強いかもしれないが
天乃は天乃で、みんなを幸せにしたいという意思は固い
そして、それは誰かが飛びぬけたものではなく、みんな平等でなければいけないとも思っている
誰か一人を選ばず、みんなを愛したいといった
みんなが欲しいといった
そんな愚かしい自分の責任であると、天乃は思うからだ
「……そうですか」
友奈「おかあさ――」
天乃「友奈、待って」
真面目な雰囲気の母親に、友奈が口を開こうとしたのを止めて
天乃は母親を見つめる
まだダメなのだ
このままでも交際の許可はもらえる
けれど、ダメなのだ
ましてや、友奈に何かを言わせるのではいけないのだ
1、絶対に手放しません。……なにがあっても。たとえどれほど傷つくことがあっても
2、子供を残すことは出来ないかもしれませんが、その分、それ以上に預けた後悔はさせないと誓います
3、必ず幸せにします。お役目で味わう全てを癒してなお、有り余る幸福と喜びを友奈に、みんなに。
4、幸せにします。何があっても手放したりしません。ですから、お義母様、友奈さんを私に下さい
↓2
3
3
では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
友奈(むしろ久遠先輩がされる方なんだけどな……)スッ
天乃「んっ!」ビクッ
「どうかしたの?」
天乃「い、いえっ……」
友奈(……これが東郷さんの見せてくれた痴漢プレイってやつだよね?)サワサワ
天乃「んぅ!」ビクンッ
「大丈夫……? ベット、あるわよ?」ニヤリ
芽吹(これは……これは、私が何とかしないといけないの……?)
乙
芽吹がひたすら困惑してるw
乙
友奈ちゃんがされるんじゃなくてする側ってのはなかなか斬新だなw
あと久遠さんのハーレムって実際には愛されつつもみんなが夏凜ちゃんの背中を押してるようにも見えたがあくまで平等路線でいくのだろうか
乙
流石のオマケ
>>717
夏祭り回みる限り夏凜といるときは夏凜優先だけどそうじゃないなら自由ってスタンスじゃないかな
乙
では少しだけ
よっしゃ
友奈「久遠先輩……?」
自分を止めた天乃の真剣な眼差しを受けて、友奈は少し驚いたようにぽつりと呟く
同じく目を向けられたのだと感じる母親はその目に慣れているわけではないが
しかし、以前その目をしたしていた人を知っているから、まっすぐ向き合う
無駄な言葉は紡がずに、天乃の言葉を待つ
天乃「お義母様、必ず幸せにします。お役目で味わうすべてを癒してなお、有り余る幸福と喜びを友奈に、みんなに」
「…………」
友奈の母親のみならず、皆の両親は友奈達がお役目―勇者としての戦い―で何をしているのか
どうなるのか、何があるのか……知っている
だからこそ、子供たちがしたいように、幸せになれるようにと許してくれているのもあるだろう
だから、その言葉は絶対に必要だったのだ
誰かから言われたわけではないが、天乃はお役目に関して確実に告げるべきだと思った
天乃「ですから、どうか。結城さんを……友奈を。私にください」
「…………」
母親は頭を下げる天乃から友奈へと目を向ける
慣れていないせいもあるのだろう
天乃の横でおろおろとする友奈は、まるで過去の自分のようにも見えて微笑ましい
だが、今は保たなければいけないと口を固く結ぶ
友奈「ぁ、え、えっと……お願いお母さんっ!」
机に頭をぶつけるのではないか
そう思うほどの勢いで友奈が頭を下げる
友奈は緊張感からか身体はちょっぴり揺れているが、
一方で天乃の体は微動だにしない
本当にしっかりしているのだと、何も恐れてはいないのだと
そう分かる小さな力強さに、母親は笑みを浮かべて
「良いわ、顔を上げて。天乃さん。友奈」
天乃「…………」
「色々と、まだ。子供でしかないけれど……友奈のこと。お願いね?」
天乃「……はい。ありがとうございます」
友奈の母親にも、色々と思うことはある
だが、それはこの会話において蛇足でしかない
娘を託せるか、託せないか
それ以外に必要なことはないのだ
「本当はお父さんが言うことなんだろうけど、あの人は男相手じゃないならお前に任せるって、ね」
友奈「それで……」
「でもあの人は元々、友奈が幸せならそれで構わないって言っていたし、天乃さんも少しは知っているでしょう?」
声をかけられた天乃は、首を縦に振って頷く
本当に知っているのは少しだけれど、
友奈の父親が厳格な人ではないことは天乃も分かっている
むしろ、自分のことも多少は娘のような存在としてみてくれていた
天乃「なら……改めて挨拶に来た方がいいですね」
「大丈夫だろうけど……あっ」
天乃「?」
良いことを思いついたと言いたげに目を光らせた母親に3人の注目が集まって
「どうせなら、今日は泊まっていっても――」
「すみませんが、それは出来かねます」
母親の言葉を遮った芽吹は、一礼をして母親から天乃へと目線を下げて一息つくと、
またすぐに母親の方に戻して、すみませんが。と、繰り返す
「久遠さ……先輩には現在そのようなことは許可されておりません」
「それは……どういう意味で、かしら」
大赦側ではなく、あくまで友奈たち勇者サイドの立場に当たるであろう母親の疑問を受けて
芽吹は唇を噛む
ここにいるのは全員自分の敵。そう示すように危うさを感じる雰囲気を放ち、全員へと目を向ける
「久遠先輩は現在、特殊な障害を持っており大赦が保護し治療を行っています。ですので、病院に戻らなければいけないのです」
天乃「どうしても?」
「どうしてもです」
天乃の問いかけに対する芽吹の声は冷たい
機械染みているわけではないし、そうしようと取り繕っている感はあるが、
それでもやはり、天乃は少し寂しく思う
夏凜と比べるのは失礼だろうが、やはり。相手をしにくいのだ
夏凜は寄せ付けないような様子ではあったが、実際は少し隙を見せればそれに触れてくるのに対して
芽吹は同じく寄せ付けようとはせず、隙を見せても、触れられるようにしても
それを突っ撥ねるか無視をするかばかりで
沙織のように少し強引な手法が取れれば、それもまた変わるのかもしれないが。
「結城さんには申し訳ありませんが、連れ帰らせていただきます」
天乃「……本当は泊まっていきたいけれど。すみません」
「ううん、良いのよ。大丈夫なときにいつでも」
天乃「ありがとうございます」
母親の心配そうな表情に、
天乃は出来る限り安心できるような笑みを浮かべて、友奈へと目を向ける
友奈も少し残念そうだったが、視線に気づいて、笑みを見せて
友奈「そしたらまた明日ですね」
天乃「ええ」
結城一家―父親を除く―見送りを受けて、天乃と芽吹は車に乗り込む
ここにきてから、芽吹は殆ど言葉を発していない
天乃と友奈の部屋で2人きりになったときもだ
天乃を監視すること、天乃の許可されていない行動の抑圧以外、
自分は何もしないと態度で示すように。
その間、芽吹きは殆ど無表情だったが、天乃の横にいる今は、あからさまに不快そうな表情を浮かべていた
もしかしたら、天乃の恋人かと母親に言われたとき以上に不機嫌に。
「……失望しました」
天乃「え?」
「世界を救わなければいけない立場にある勇者が、色恋沙汰に現を抜かしていたなんて」
静かに、しかし厳しく切り出した芽吹は、切り開くような鋭い視線を天乃へと向けて、さらに強く睨む
お前の存在が不快だと、不愉快だと、目障りだと
そう言うような視線だった
「それも同性間の恋愛……半信半疑ではありましたが、今回で確信しました」
天乃「……なにを?」
「久遠先輩、貴女は毒だわ。勇者を腐らせ使い物にならなくする毒」
瞳「楠さん!」
運転中ゆえに目を話せない瞳が、ミラー越しに芽吹を見ながら珍しく強い口調で名前を呼ぶが
芽吹は関係ないといわんばかりに続ける
「久遠先輩の力は注意せよ。と、伺っていましたが……なるほど。バーテックスに作られた人型の存在だと言われるのも納得です」
天乃「まだ、そんなこと言う人たちがいるのね……」
「以前起きた讃州中学の抗議。あれによって、久遠天乃は人類を分断させるための呪われた存在ではないか。という話も出ています」
もちろん、それに関しては私も極論であり結果論のようなものしかないと思いますが。と
芽吹は続けて、天乃を見る
「とにかく、勇者があのような体たらくでは人類の望みは薄い……さっさと身を引いてお役目を譲り、勝手に過ごして欲しいものだわ」
天乃「あな――」
天乃が口を開こうとした瞬間、ブレーキが踏まれて車が止まり、運転手である瞳が芽吹へと振り返る
その表情は普段の温厚さを保とうとしているが、怒りが滲み出ているのだと天乃は気づく
瞳「楠さん……それ以上は許されませんよ。大赦としても、私個人としても」
「……失礼しました」
全てを知っている人、全てを知らない人、中途半端に知っている人
一番厄介なのは中途半端にしか知らない人だ
何も知らなければ、自分は何もわからないから。と
全てを知ろうとしてくれるかもしれないし
そもそも、何か余計なことはすべきではないと自制してくれるかもしれない
だが、中途半端にしか知らない人は、
その知識だけで決め付ける。その知識だけでこうすればいいと発言する
試して無駄だったこと、試してなにか嫌なことが起きたこと
それを何も知らずに口にする
そもそも、出来もしないようなことを口にする
もちろん、それだけが全てではないけれど……今の芽吹のように
苛立ちに委ねて発言してしまうことは無いとは言えない
天乃「……別に平気だけど」
瞳「いえ」
天乃の呟きに、瞳は小さく答えてまた車を動かす
目的地に着くまで車内は沈黙に包まれていた
√9月2日目 夜(特別病棟) ※火曜日
01~10 若葉
11~20
21~30
31~40 九尾
41~50 大赦
51~60
61~70 沙織
71~80
81~90 千景
91~00
↓1のコンマ
あ
あ
√9月2日目 夜(特別病棟) ※火曜日
1、九尾
2、若葉
3、千景
4、球子
5、歌野
6、水都
7、イベント判定
↓2
7
3
7
では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
千景(ここで私を呼ぶのね……あの人を殺せとでもいうかしら……いや、久遠さんはそう言う人ではないわ)
千景「どうかしたの?」
天乃「お願い……楠さんとの嫌な言葉を忘れられるくらいに、私を滅茶苦茶にして」
千景「はっ? な、えっ……? ま、待ちなさい。それは乃木さんに――」
天乃「若葉は優しいからダメ。でも、千景なら……乱暴にしてくれるでしょう?」ギュッ
千景(そんな……そんな顔をされて……そんなことを言われて……誰が、出来るのよ)ナデナデ
乙
芽吹が硬すぎてヤベェ…交流不足だろうけどここまでか
乙
今までは比較的セリフでのみ出てた久遠さんを敵視する勢力がようやく出てきた感じだな
メブの誤解を解くのは相当骨が折れそうだ…
乙
まあなにも無理に仲良くしなくてもいいしね
乙乙
中途半端な知識しか持ってない人はめんどくさいってどこの世界でも言えるんだね
乙
では少しだけ
かもん
√9月2日目夜(特別病棟) ※火曜日
天乃「…………」
呪われた存在ではないか。ということに関しては
天乃はもともと言われることもあったし、傷ついたりはしない
そもそも、天乃の誕生日とその能力によって
一部には【悪魔の子】とさえ言われたこともあるのだ
そのような中傷にはもう、慣れている
しかし、天乃が原因で友奈達がうつつを抜かしていると
体たらくだと、失望したと
そう言われてしまったのが、悲しかった
友奈達はとても頑張っているし、
頑張っているからこそ、息抜きできる瞬間があるべきなのに
天乃「ねぇ、千景。いる?」
おもむろにそう呼んだ天乃の前に、
闇に溶け込む漆黒を身に纏った千景がゆらりと姿を表す
髪の色まで黒く、衣服に走る微かな赤色と頬の薄い色だけが
そこに千景がいることを証明する
千景「どうしたの?」
天乃「……千景見えにくい。白いワンピースとかどう?」
千景「嫌よ」
天乃「残念」
あっさりと断られ、苦笑した天乃は
ふっと息を吐いて、千景の方へと手を伸ばす
そして
人肌ほどの温かい何かがその手をそうっと包み込んで
連鎖的に、千景が困ったように顔を顰める
千景「気にすることはないわ」
天乃「あら……何の話?」
千景「惚けなくてもいいわ。久遠さんが彼女の言葉で傷つかないような人ではないって分かっているから」
天乃「…………」
千景「久遠さんは悪くない。結城さん達も悪くない。世界のために辛い思いだけをしていろと言うほうがおかしいのよ」
千景は努めて優しい声をかける
芽吹の冷たい言葉を覆い隠して無かった事にするかのように
優しく、温もりのある子守唄のように。
千景は天乃達がどうして来たのかを知っている
どれだけ我慢をして、どれだけ頑張って
それでも中々報われることがなかったことを知っている
だから、何も知らない人の失望など
何も知らない人の勝手な決めつけなど
千景は何一つ気にするべきではないと言う
千景「……気を抜くことができるからこそ、必要なときに気を張れる。強く、強靭な心でいられるのだから」
天乃「うん」
千景の思った以上に優しい言葉に、天乃は笑みを浮かべながら首肯して
穏やかな千景の視線に、目を向ける
天乃「でも、楠さんの言葉だって全てが間違っていたわけじゃないと思うの」
千景「どこが?」
天乃「私には毒があるとか」
千景「久遠さ――」
天乃「だってほら、私がいたから友奈も東郷もあんなえっちな子になっちゃったわけだし」
そのせいで天乃もまたえっちな身体にさせられているのだが。
苦笑をしながら言う天乃の言葉は想定していたような悪い話ではなく、
意表を突かれた千景は一瞬驚いたように目を見開いて、
またすぐ、呆れたようにため息を付く
千景「そこなの……?」
天乃「そうじゃない? 実際問題、風は最初男の子が好きだったはずだし」
まぁ私もだけど。と
ぼそりと呟く天乃は少し落ち着いたようにも見えるが……
1、一緒に寝てくれる?
2、千景はどう? 男の子と女の子どっちが好き?
3、けどね? あの呪われた子というのも間違いではないの
4、どうやったら楠さんと仲良く慣れると思う?
↓2
1
4
ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
千景「どうしてそれを私に……伊集院さんや白鳥さん達の方が向いていると思うけれど」
天乃「二人の根性論が通用しない可能性もあるから……特に、嫌われているし」
千景「……はぁ。なら、まずはコレとコレ」ガサッ
天乃「……? 生意気な後輩を黙らせる格好いい壁ドン術? 上の口が堅いなら下の口を緩ませろ?」
天乃「なにこれ」
千景「私の最近買ったギャルゲー(R18)と参考書(R18)よ」
天乃「えっと……チェンジで」
乙
久遠さん思ったより落ち込んではなさそうで良かった…
他の精霊はメブの話を聞いて何を思ったんだろうか
乙
千景もだんだん染まってきてるなw
乙
友奈×久遠さんのオマケをまた見てるけどいつ見ても素晴らしいな
PDF16ページとか最初は「は!?」って感じだったけど気づいたら読み終わってる
…ところでおねショタはまだですか?(チラッ
天乃の周囲が大分歪んでいるとは、最初から読んでても思うからなぁ。
メブから見たら余計に……だな。
思えば今作はそういう目線で切り込む人物が基本的に不在だったしな
その立ち位置に芽吹はかなりの適任かもしれん
その歪みが気になって見返して気づいたんだけど問題が山積みになって魅了の力について解決できてなくない?
今はもう力がないけどそれまで周囲は影響を受けた可能性が大きいよね
特に暴動?の辺りとか
乙
では少しだけ
はいよー
天乃「ところで、千景」
天乃は包まれつつあった呑気な空気を払拭するように切り替えて千景へと目を向ける
男女のどちらが好きなのかとか
それはただの繋ぎ文句でしかなかったのだと察した千景は
何を言われても良いようにと息を飲み「何?」と、努めて平静を保ちつつ問う
天乃「どうしたら楠さんと仲良くなれると思う?」
千景「どうして私に……白鳥さんや伊集院さんは良いのかしら?」
少し呆れたような千景の声
多少予想していた天乃は想定通りだったのがちょっぴり嬉しくて楽しげに笑うと
小首をかしげる千景に「ごめんね」と呟いて
天乃「二人は根性論というか、多分積極的に行けば大丈夫。みたいな話になるだろうからね」
千景「久遠さんはそれではだめと思うのね」
天乃「結構嫌われちゃってるから」
車の中の反応からして、
むしろそれどころではないと天乃は思うし、千景にも思う所はあるのだろう
納得したようにため息をついて「確かに」と、呟くと
千景「正直に言えば、私は別に無理に仲良くしなくても良いと思うわ」
天乃「なぜ?」
千景「あんなことを平気で言えてしまうのは、そもそも好意的な相手ではないと思うから」
仄かな怒りを示すように拳を強く握りしめた千景は
その振り下ろす先を探すことなくため息とともに吐き出して首を振ると
困ったように天乃を見る
なぜ仲良くしたいなどと思うのか。と言いたげに。
千景「久遠さんこそ、なぜ仲良くなりたいと……?」
千景としては、ついさっき言った通り
あんなことを言うような人と仲良くする必要はないと思っているから
そんなことを言うのだろう
きっと、それは間違いではないし、
むしろ、あんなにも嫌われてしまっているのに
仲良くなろうと考えている天乃の方が特殊なのかもしれない
自分でそれを分かっている天乃は思わず苦笑して千景から眼を逸らす
別に、後ろめたいことがあるわけではないが。
天乃「全部わかったうえであんなことを言うなら救いようがないけれど、知らないだけなら教えてあげれば良いだけじゃない?」
千景「……だけど」
天乃「解ってるわ。根本的に嫌われているって……でも、もしかしたら分かって貰えるかもしれないじゃない」
笑みを浮かべてはいるが、
どこか寂し気な雰囲気で、悲しそうな面持ちで
微かな笑みを吐き出した天乃は優しい瞳を千景へと向けて。
千景は「あぁ……」と思わず零す
千景「貴女は本当に愚かね」
天乃「ふふっ、ごめんなさい」
お茶目に見せた笑みを浮かべる天乃にむけて千景はあからさまにため息をつく
もう分り切っていたことではあるが、
天乃は甘すぎるのだ。優しすぎるのだ
だから、とてつもなく愚かなのだ
良いことかもしれないが、悪いことでもある
しかし、だからこそ救われたことがあり、救われたものを知っている千景は強くいうことも出来なくて
厄介な人だと顔を顰めて、またため息。
こんなある意味聖人君子を地で行くような大馬鹿者を化け物だの悪魔だの言う考え方を知りたいと思って
しかし、そんな生き方をしているからこそ恐ろしく思うのかもしれないと千景は思う
千景「なら、まずは楠さんについて知る努力をするべきだと思うわ」
千景「久遠さんも良く分かっていると思うけれど、歩み寄っても突き返されるなら彼女の立場に回りこむべきよ」
天乃「……それが中々上手くいきそうにないのだけど」
天乃は推測でしかないと分かっているが
しかし、芽吹に対して芽吹のことを聞いても、答えは得られないと思う
あのレベルでの嫌悪感、不快感を示しているのだから
当然といえば当然なのだが。
千景「外堀から埋めればいいわ。例えば、三好さんとか」
天乃「確かに、ある程度は知ってそうよね。後は瞳……はあまり知らないかしら。あの大赦の人からも話が聞けると良いけど」
千景「…………」
手段を思いついて嬉しそうにする天乃の一方、千景は浮かない表情で首を振る
千景「あまり無理はしないで」
天乃「無理なんてしないわよ?」
千景「楠さんと仲良くなる前に、きっと嫌なことがあるわ。ストレスは胎児にも悪影響があると聞いたから、無理はしないほうが良い」
改めて言う千景の優しい忠告
天乃は嬉しそうに笑みを浮かべて「ありがとうね、千景」と言って
千景は少し照れくさそうにそっぽを向いて「当然のことだから」と返す
天乃「うん、気をつける」
千景「……そうして頂戴」
1日のまとめ
・ 乃木園子:交流無()
・ 犬吠埼風:交流無()
・ 犬吠埼樹:交流無()
・ 結城友奈:交流有(結城家ご挨拶、芽吹と一緒、幸せにする)
・ 東郷美森:交流無()
・ 三好夏凜:交流無()
・ 乃木若葉:交流無()
・ 土居球子:交流無()
・ 白鳥歌野:交流無()
・ 藤森水都:交流無()
・ 郡千景:交流有(芽吹と仲良く)
・ 伊集院沙織:交流有(青年との関係)
・ 神樹:交流無()
9月2日目 終了時点
乃木園子との絆 54(高い)
犬吠埼風との絆 77(かなり高い)
犬吠埼樹との絆 63(とても高い)
結城友奈との絆 90(かなり高い)
東郷美森との絆 87(かなり高い)
三好夏凜との絆 111(最高値)
乃木若葉との絆 83(かなり高い)
土居球子との絆 38(中々良い)
白鳥歌野との絆 35(中々良い)
藤森水都との絆 29(中々良い)
郡千景との絆 30(中々良い)
沙織との絆 88(かなり高い)
九尾との絆 52(高い)
神樹との絆 9(低い)
汚染度???%
√9月3日目 朝(特別病棟) ※水曜日
01~10 大赦
11~20
21~30 芽吹
31~40
41~50 樹海化
51~60 九尾
61~70
71~80
81~90 沙織
↓1のコンマ
あ
サッオリーン
ではここまでとさせていただきます
明日は所用でお休みの予定です
沙織「ねぇ、久遠さん」
天乃「どうかした?」
沙織「学校でするえっちって、とても魅力的だと思うの」
天乃「……何の話?」
沙織「人が来るかもしれないトイレの個室でこっそりと、声を押し殺しながらまぐわって……ふふっ、やりたいな」
天乃「やらないわよっ」
乙
さおりん遭遇多くて笑う
婚約者関連でストレス貯まってたのか
乙
結果的に一番冷静な千景に相談して正解だったかもしれんな
メブと打ち解ける日ははたして来るのだろうか
乙
乙
今更だけど芽吹が出てきたってことはもしかして最終決戦の後もくめゆやゆゆゆ二期の辺りまで日数延長するのだろうか?
では少しだけ
やったぜ
√9月3日目朝(特別病棟) ※水曜日
天乃「ん……ぅ?」
心地の良い微睡の中で、ふにゅりと優しい圧力を唇に感じた天乃は
寝言のような微かな声を漏らしながらゆっくりと瞼を開いていく
しかし、すぐそばの何かはまだ気づいていないのか、
投げ出すようにしていた手を、愛おしそうに握ろうとしていて
天乃「……ぁ、り?」
沙織「あ、起こしちゃった?」
名前を呼んだつもりの天乃だったが、
まだぼんやりとする頭では上手く口を動かせなくて
しかし、起きたことだけは伝わったのだろう
天乃にちょっかいを出していた沙織は申し訳なさそうに眉を顰めて、笑みを浮かべる
沙織「おはよう、久遠さん」
天乃「ん……」
沙織「まだ寝ぼけてるね」
沙織のすこし大きな手が頭を撫でて、頬へと滑ると
揉むようで撫でるような手つきで柔肌を弄って、天乃はくすぐったそうな表情を見せたが
沙織は幸せそうな表情で、無関係だというように続ける
自分よりも大きな手
女の子らしい、手入れをしっかりとされたかさつきのない手
人肌の温もりのある心地の良い手
その包み込んでいくような感覚に意識が溶け込んでいくのを感じて、目を瞑る
けれど、また寝るのはダメだと沙織の手に手を重ねると、
沙織はふふっと笑って「まだ時間はあるよ」と言う
天乃「ダメよ。ちゃんと時間に余裕を持たないと」
沙織「久遠さんは真面目だなぁ」
天乃「私だけに負担がかかるならいいけど、他の人にも負担がかかっちゃうから」
沙織「そっか、じゃぁ起きないとだね」
恋人のように―恋人なのだが―優しく微笑みかけながら、
沙織は天乃の額に伸びる前髪を指で払い除けて
沙織「昨日話してきたよ。やっぱり違うと思うって」
天乃「……それで?」
沙織「伊集院家の顔に泥を塗ったのだぞ! だって」
沙織はさも自分は関係ないことであるかのように、
呆れたため息をつきながら、零す
少し前の沙織だったらしなかったかもしれないが……
猿猴を身に宿しているが故、だろう
大人としては自分の家が許婚を中途半端に進めながらも破綻させたというのは
やはり、許しがたいものがあるだろう
それは当事者同士の家の信頼関係のみならず、
それ以外から向けられるものにも少なからず影響が出てくるからだ
もちろん、沙織もそれは分かっている
自分が伊集院家の看板の一部を担っていると理解している
だが、沙織は思う
誰かが気に食わないからというだけの理由で
何も知らないが故の恐怖心があるというだけで
子供が出来ないというだけで
同性との、天乃との交際を認めないのはおかしいと
時代錯誤の政略結婚染みたことをしなければいけないのは、おかしいと
沙織「彼と彼の家族に頭を下げて、やり直してもらえるよう努めろって」
天乃「沙織はどうしたの?」
沙織「まぁ……家出するよね」
天乃「こら」
さらりと言って見せた沙織は、「あんなところにはいられないし」と
困ったように続けて、ため息一つ
失望感を滲ませた表情を浮かべ、天乃を見る
沙織「でも、あたしもただ嫌だから家出したわけじゃないよ」
天乃「あなたにできることがあるの?」
沙織「とりあえず、今まで溜めた貯金を使いつつ、中学生でもやらせてくれるバイトを探して、勉強頑張って特待で高校に通う」
天乃「それで?」
沙織「バイトを増やして払わない学費分お金を溜めつつ、家に今までの学費とかを返納していく」
理想論、夢物語
しかしながら、沙織の表情は本気以外の何ものでもない
まるで、予め計画していたかのようにはっきりと意思が直立していた
沙織「育ててくれた恩は忘れないよ。でも、縛られた生き方は嫌だから。出来ないと言われた一人立ちをしてみせて、あたしがどれだけ本気か分かって貰うつもりだよ」
天乃「仕事は見つかるの? 住む場所は?」
沙織「大分前から準備してたから大丈夫。親のコネも使ってないから平気」
天乃「……そう」
1、私のところにこれたら来てた?
2、ごめんね、迷惑かけて
3、ありがとう。そこまでしてくれて
4、なら、私も誠意を見せないといけないわね
5、ちなみに、どこ?
6、本当にそれで良いの? 間違ってはない?
↓2
1
1
ではここまでとさせていただきます
明日もできれば昼頃から
沙織「それでね、それに関しての相談なんだけど」
天乃「うん」
沙織「とりあえずあたしの体を買ってくれない? 言い値で良いから」
天乃「その仕事は辞めてお願い!」
沙織「じゃぁ……久遠さんがかうしかないよね?」
東郷「押し売り……なるほど。とりあえず勇者の剣(非殺傷)はいかがですか?」
夏凜「やめなさい」
乙
さおりんの行動力半端ないな…
だが父親も家のためなら手段を選ばなさそうなのが怖い
乙
もう婚約者おらんし
キスだけだからセーフ
乙
言い値を買う側につけさせるのはダメでは
乙
くめゆで大赦が冷酷っていうか理由があるとはいえきつく押し付けてくる組織だって解ったし
久遠さんに対する当たりの強さも誇張では無さそうなのがまた…救いがないな
では少しずつ
?
天乃「ねぇ沙織」
沙織「うん?」
天乃「もしも私のところに来ることが出来たら、来てた?」
沙織「それはもちろん」
驚きもせず、考えもせず
沙織はにこやかな笑みを浮かべながら肯定する
沙織「そもそも、それが出来るのは一番いいんだよ。あたしが一緒に暮らしたいのは、生きていたいのは久遠さん達なんだから」
天乃と一緒に生活して
問題なく生きていくことが出来るということが証明できるのが一番いいことだからだ
しかし、そんな理由があるからと
天乃のことを病棟から解放することはまずない
それが分かっているからか、
沙織は呆れたため息をついて首を振る
沙織「でも、それは出来ないよね」
天乃「ええ」
沙織「おはようからお休みまでの久遠さんを独占できるのに」
天乃「それもいつかできるわよ。このまま、何事もなく良ければ」
天乃は切なそうな表情で呟く
このまま何事もないなんて優しい世界ではない
見逃してくれる周囲ではない
それが分かっている天乃のその呟きはある意味では、祈りであり願いだ
自分の役目も含めて預けてしまった勇者部と精霊たちが
このまま無事に生きて行けるようにと。
沙織「何事もなく……何事も……うん。そうなると良いね」
天乃「……他人事なのね」
沙織「被害次第では、この世界に軽症を残しても消滅する可能性はあるからね」
天乃「…………」
沙織「でも、次で一旦お休みできるはずだから。あたし達は自由になれるはずだから。きっと大丈夫」
ヒトガタだらけの天井を見上げて、沙織は優しく言う
大丈夫だと、なんとかなると
そう微笑みかけて、天乃の頬に触れる
柔らかくて、温かい
すべすべしていて、むにりと抓める
吸い付いてみたい、愛らしい頬
今は一筋の流れが出来ていて……悲しげだ
沙織「信じよう。祈ろう。久遠さんが出来るのはそれだけしかない。でもきっと、それがみんなを強くする」
沙織は天乃の頬を指で拭いながら、囁いて唇を重ねる
普段の沙織が醸し出す淫猥な雰囲気などなかった
ただ優しく愛おしく、愛してくれていることだけが分かる唇同士の触れ合い
驚きに戸惑う天乃の前で、離れた沙織はにこっと笑って唇に指を宛がう
天乃「な、なんでっ」
沙織「恋人だからね……それに、寝込みを襲うのも良いけど。寝起きにキスってなんだか自然体じゃないかな?」
少し不衛生な感じはするけどねーと
冗談めかして笑った沙織は、怪しげな表情で「もう一回する?」と問う
すると言っても沙織は喜んでするだろうし、しないと言ってもそうだよね。と笑うだけ
勝敗などないけれど、天乃の負けは確定だ
天乃「……貴女のそう言う所。ちょっと分からない」
そっと唇に手を当てがい顔を逸らす
そんな天乃の仕草に、沙織は押し倒したい衝動を覚えて――……
√ 9月3日目 朝() ※水曜日
01~10
11~20
21~30 大赦
31~40
41~50
51~60
61~70 芽吹と
71~80
81~90
91~00 九尾
↓1のコンマ
空白は昼に移行
あ
√ 9月3日目 昼(学校) ※水曜日
01~10
11~20 クラス
21~30
31~40 芽吹
41~50
51~60 2年組
61~70
71~80 勇者部
81~90
91~00 風
あ
打ち解けるきっかけを作れるかな
√ 9月3日目 昼(学校) ※水曜日
芽吹「久遠先輩、お昼を食べましょう」
芽吹は今朝合流した時点でも、今までと何も変わらない接し方で来ていて
昼になっても、それは変わらなかった
いつものように半ば不快そうに天乃の元にやってきて
お役目という強制力の元に、芽吹は天乃と昼食をとる
そのはずだった
けれど、珍しくしっかりとした包みの弁当を持参した芽吹は
困ったように天乃を呼んだのだ
天乃「食べるならそこの席を――」
芽吹「いえ、ここではなく別のところを用意しているので」
天乃「……?」
つまり、別の場所に食べに行こうという誘いだ
そう気づいた天乃の傍ら、沙織は怪訝そうな目で芽吹を見つめ、息をつく
沙織「どういうつもり?」
芽吹「不本意ながら、久遠先輩との付き合いはもう少し改善すべきだと思うので」
沙織「………」
芽吹「そんなに疑われても、私は本心でしか語っていません」
沙織「……お役目だから?」
芽吹「端的にいってしまえばそうです」
芽吹と沙織は一触即発と言った雰囲気で向かい合う。
身動きせずただ見つめ合うだけの離れた距離感
しかし、それは何よりも近いように見えて……
昼休みの喧騒に包まれていた教室がふっと、灯を吹き消されたろうそくのようになって
沙織の長い髪が、それそのものに意思があるように蠢いてみた
沙織「楠さんは真面目だね」
芽吹「……いえ」
沙織「それ、あたしも一緒じゃダメかな」
芽吹「…………」
少し考え込んだ芽吹は、あからさまに顔を顰めてため息一つ
すでに遅い表情を切り替えて天乃を見る
芽吹「私と久遠先輩の壁になると思われるので、遠慮していただきたいのですが」
沙織「……なるほど」
かたりと沙織の座る椅子が動く
どうなるのかと不安そうな周囲の中、風だけは緊迫感に満ちた表情でいつでも止めに入れるようにと身構えていた
1、風、どうかしたの?
2、大丈夫。邪魔はさせない。でも二人きりは駄目よ。沙織も一緒
3、沙織、平気だから心配しないで。何かあるとしてもみんながいるから
↓2
1
1
2
天乃「ねぇ、風」
風「ちょっと待って今は話してる場合じゃない」
風は頬を伝う汗を気にも留めずにごくりと喉を鳴らして、息を吐く
天乃の声にもやや冷たく返して、自分の机の中の教科書を手に取る
天乃「話してる場合じゃないってどうして?」
天乃の不思議そうな声が聞こえて初めて
天乃が分かっていて声をかけたのではなく
全く気付いていないから声をかけたのだと分かったのだろう
風は驚いたように目を見開いて、沙織を見つめる
風「見えてないのね……沙織から妙な何かが飛び出してんのよ」
天乃「沙織から……?」
風「良く分からないけど、多分猿猴ってやつ。にょきって飛び出てるのよ。手が……肩のあたりから」
天乃「…………」
目を凝らしても擦っても、沙織の体に異常はない
精神を集中させても何か特別なものを感じることもない
それはそうだ
今の天乃にその類の力は何一つ残されていないのだから
天乃「でも、流石に楠さんに手を出すことはないんじゃないの?」
風「沙織がそうでも、精霊の方は分からないから……怖いのよ」
天乃「…………」
沙織には芽吹を傷つけようという意思がないはずだと天乃は思うが
しかし、今の二人を包む空気感を思うとそれも絶対とは言えなくて、唇を噛む
天乃に危害を加えようという魂胆があるとは思わない。が
もしかしたらそうなる可能性があるから
沙織は……いや、猿猴はそれを危惧して
先に芽吹を黙らせようと考えている可能性は薄くない
天乃「沙織?」
沙織「うん? なぁに?」
天乃「………」
普通だ
返事も、その高さのない落ち着いた段位の声も
振り向いた時に見せる、笑顔も
けれど風はまだ警戒を解かない
だからきっと――見えている世界は違うのだろう
1、駄目よ。楠さんを傷つけないで
2、大丈夫、楠さんと二人で食事にするわ
3、沙織も一緒で良いでしょう?
↓2
1
1
天乃「駄目よ。楠さんを傷つけないで」
天乃の目に見える沙織は何を言っているんだろうと言いたげに首を傾げたが
天乃の表情が複雑に見えたのだろう
困ったように「分ったよ」と答えて、芽吹に優しい視線を送る
少なくとも【沙織】が抱いていた敵意だけは薄れているのを確認した天乃は、
すぐ隣にいた風へと目を向けて
風「……大丈夫」
その一言に安堵の息をつく
芽吹は猿猴の気配に気づいていたのかは分からないが、
沙織の敵意が消えたのと同時に警戒心を解いて
芽吹「仕方がありません。お話はまた今度にします」
天乃「至急の要件ではないの?」
芽吹「急ぐようなことでもありませんので」
芽吹はいつもと変わらない態度で天乃のすぐ近くの空席を借りて、弁当を机に置く
天乃「それにしても、楠さんがお弁当だなんて……自分で?」
「いえ、久遠先輩の送迎係にぜひ。と」
天乃「……その時私もいなかった?」
「見つからないように渡されたので気づかなかったのかと。夢路さん曰く、久遠先輩との距離を詰めるための物。だと」
芽吹は少しばかり迷惑そうに包みを解いて弁当箱のふたを開けたが……
中身のラインナップを見て、「なるほど」と、呟く
変に偏るわけでも無く、栄養を考えられた中身で
年相応に少なすぎず多すぎもしない品数
天乃は、夏凜のために作っているからだろうとすぐに分かったが、
芽吹はあの人も鍛えているのかしら。と
少し外れた解釈をして「頂きます」と一言
天乃「……………」
芽吹も意外に普通の少女なのだ
大赦に関わった分、一部歪んでしまったことはあるかもしれないが、
それでも、壊れきっていない少女なのだと天乃は思った
√ 9月3日目 夕() ※水曜日
01~10 友奈
11~20
21~30
31~40 東郷
51~60
61~70 夏凜
71~80
81~90 樹
91~00 クラス
↓1のコンマ
あ
√ 9月3日目 夕(学校) ※水曜日
天乃が下校の準備をしていると、
昨日と同じように、しかしメンバーだけは入れ替わった二人が教室のドアから様子を覗いて
その中の一人、夏凜は天乃の姿を迷うことなく見つめて声をかける
夏凜「今日はどうする? 部活」
「三好さん、久遠先輩は連れ帰らないと……」
夏凜「大赦の都合は良いわよ。別に」
天乃が沙織に会いに行くことですら、
許可が出来ないということが不快だったのだろう
芽吹に対して沙織ほどの敵意こそ感じることはないが
不快感というべきか、嫌悪感は強く感じる
夏凜「邪魔をすんなら突っぱねるわよ」
「……三好さんまで、捕まることになるけど」
夏凜「はっ、だから何だってのよ」
芽吹の忠告に対して、
夏凜は強い不快感を含んだ声で答えると、
ぐっと距離を詰めて、睨むように目を細める
夏凜「やれるもんならやってみなさいよ……大赦と勇者部で争うってんなら受けて立ってやるわ」
「……なぜ、貴女を神樹様が選んだのか余計に分からないわ」
天乃「二人ともやめなさい、一応教室なのよ」
夏凜「……悪かったわ」
天乃の一声でハッとした夏凜は、
周囲の天乃のクラスメイトからの視線を受けてbつが悪そうに顔を顰めて
芽吹にではなく、天乃に向かって謝罪を述べて一息つく
呆れたりなんだりというよりは、
自分の中の空気を一新するためだったのだろう
張りつめる空気のひとかけらが晴れていくのを天乃は感じた
夏凜「部活くらい出ても良いんじゃないの?」
「つい最近のことも忘れたなんて言わないで」
夏凜「でも、昨日は友奈と一緒だったって聞いたけど?」
「内容が内容だから。部活なんて……それもボランティアなんて無意味な時間を許可する必要はないわ」
夏凜「……無意味?」
ピクリと反応した夏凜だったが、争うのは……と、思ったのだろう
すぐに息を吐いて脱力すると呆れたように芽吹を見て
夏凜「やってみなくちゃ分からないじゃない。あんたも参加すれば?」
「私は結構よ。久遠先輩、下校の時間です」
1、ごめんね夏凜。帰らないと
2、顔を出すくらいいいじゃない
3、良いじゃない、楠さん。やってみましょう?
↓2
3
3
やや無理矢理に車椅子の持ち手を掴まれてぐらりと揺れる
意図しない揺さぶりに天乃は悲鳴を上げかけたが
それをぐっとこらえてた天乃が持ち手に伸びる芽吹の腕に触れると
芽吹は「何か?」と不快そうに天乃を見る
その不快感がそっくりそのまま勇者部からの不快感になっていることを芽吹はまだ気づいていないのか
それとも知ったうえでまだ毛嫌いしているのか
睨むような視線を浴びせてくる芽吹に、天乃は苦笑する
天乃「良いじゃない、楠さん。やってみましょう?」
「は……?」
天乃「勇者部の部活動。体験してみましょう?」
「いえ、必要ありません」
天乃「けど……」
最初こそ驚きを見せた芽吹だったが、すぐに呆れ切った表情になって
はっきりと拒絶を口にすると
それでも食い下がってきそうな天乃の残念そうな瞳に、深々とため息をつく
「……はぁ」
天乃「ダメ?」
「しなければ素直に下校しないでしょう? 下手に争っても害のみなので少しだけ……参加します」
天乃「ということで夏凜、体験入部!」
夏凜「あんた……よくやるわね」
明らかに褒めていない素振りだったが、しかし
天乃は「そういう人間だもの」と、嬉しそうに笑って見せる
芽吹が完全に乗り気ではなく
楠芽吹に対しての選択としてはほぼ不正解だったと感じたからこその、笑みではあるが。
√ 9月3日目 夕(学校) ※水曜日
01~10 剣道部
11~20 文化部
21~30 清掃活動
31~40 猫探し
41~50 陸上部
51~60 演劇部
61~70 文化部
71~80 清掃活動
81~90 猫探し
91~00 なんにもないよー
↓1のコンマ
あ
ではここまでとさせていただきます
明日も出来れば通常時間から
夕海子「ボランティアの皆々様、ご苦労様」
夕海子「今回の依頼はこのわたくし、弥勒夕海子の通学路の一角があまりにもみすぼ――」
夏凜「えーっと……」チラッ
芽吹「私を見ないで。記憶にないわ」
夕海子「なんなんですの!お二方は……っ! 記憶にないだなんて 失礼ではありませんか!」
天乃「ごめんなさいね、こういう子達なの」
夕海子「はぁ……二人と違う柔らかな笑顔」
天乃「えっ?」
夕海子「貴女だけが、この場の救いですわ」ダキッ
乙
夕海子さんオマケで早速堕ちてるw
まあ、くめゆ勢では久遠さんと一番ウマが合いそうなのはあるけど
乙
活動内容無難なのでよかった
乙
では、少しだけ
よしきた
√9月3日目夕() ※水曜日
「……はぁ」
天乃の世話係を大赦から言い渡された、夏凜と勇者の座を競った経験のある楠芽吹は、
武器の代わりに竹箒を手に、深々とため息をつく
コンクリートの上では掃き溜めたごみが風に吹かれてカタカタと揺れる
樹「楠先輩、これも大事な仕事ですよ」
「……勇者の仕事ではないわ」
一つ下の勇者、犬吠埼風の妹である樹の言葉に、
芽吹はいつもと変わらない冷めきった言葉と視線を向けるが
樹は怯えた様子もなく苦笑いを浮かべて
勇者部の仕事です。と言う
弱弱しそうな外見と雰囲気ではあるが、しかししっかりとして見える
大人や先輩なら、良く出来た子だとほめるのかもしれないが
芽吹は【勇者ならば当たり前だ】と、何も言わずに手を動かす
不愉快ではあるが、参加してしまった以上やるのが芽吹だ
そんな芽吹の姿を見守る天乃は
やっぱり失敗だったかな。と困った様子でゴミ袋の縁を掴んで広げる
東郷「気になりますか?」
友奈「芽吹ちゃん……あんまり楽しくなさそうだもんね……」
並んでいた東郷に続いて寂しく呟いた友奈はどうしたら良いんだろうと芽吹を見る
友奈はあくまで敵対せずに友好的にいきたいと考えているのだろう
天乃としても友奈と同じように友好的に良ければと考えてはいるし
そのために千景にも相談をしたが、しかし……どうもうまくいく気がしないのだ
勇者部の体験入部を強行したは良いが
それも恐らくは悪い結果にしかなっていなさそうに思えてならない
もっとも、現状でマイナスか0だったために、大した変化はないのだが。
友奈「芽吹ちゃん、何が好きなのかとか聞いても何にも答えてくれないんだよね」
東郷「関わる事さえ嫌そうだったわね」
そう言って考え込むように顎に手を宛がった東郷は、
打開策を見いだせなかったのかため息をついて首を振る
天乃「夏凜のようにちょろければ良かったんだけ――痛っ」
ぺしりと頭を叩いた張本人は、「誰がちょろいって?」とちょっぴりお怒りな雰囲気で天乃を見つめる
天乃「冗談なのに」
夏凜「ちょろいあんたが言うからよ。私達が離れただけで、あんた寂しくなって泣くでしょ」
夏凜の軽い煽り文句に、天乃は目元に涙をにじませていく
勿論、冗談だが。
しかし、夏凜は「ちょっ、まっ」と焦って、、困って
東郷は冗談だと見抜いたのか困った様子を見せるが、夏凜の動揺は友奈にも伝播して……
友奈「久遠せんぱ――」
天乃「冗談よ。冗談だから、ねっ?」
落ち着いてもらおうと涙を拭って明るく言う
しかし、夏凜に言われたことも否定はできない
皆が離れて行ってしまったら確実に泣くだろうし、寂しさに負けて死んでしまうかもしれない
いつぞやの孤独感を思い出して認めた天乃がむっとして夏凜の手を掴むと
夏凜は何を思ったのかその手を包んで笑う
夏凜「私も悪かったわよ……あんたを一人にしないわ。絶対に」
友奈「私もですっ」
東郷「当然よ……久遠先輩を一人になんてしない。させられない。私達もね」
天乃「う、うん」
恋人たちの優しい声に天乃は思わず赤面して頷く
そういう反応をするから愛らしいのだと、悪戯がやめられないのだと
東郷は困ったように眉を顰めるが、しかし言わない
東郷もまた、そういう反応が見たいからだ
夏凜「まぁ……芽吹は色んな意味でストイックなやつだから。正直そっとしておくべきだと思うわよ」
天乃「でも……」
夏凜「勇者とはかくあるべきだ……って。私もここに来た頃思ったことを芽吹は本気で思っているしそれが正しいと信じきってる」
夏凜もそれが間違いだと思ってはいない
むしろ、考え方や在り方としては正しいのかもしれないとも思う
だが、勇者部に合っているのはそんな生き方ではない
当たり前の日常を享受し、それを守り生きていくために努力をする
そして、守りたいもののためにより強く自分の力を引き出す
そんなもので良いのだと
夏凜「私達には私達の生き方、芽吹には芽吹の生き方がある」
天乃「…………」
夏凜「……ま、あんたがそれで止まるとも思えないけど」
1、芽吹の近くへ
2、夏凜と話す
3、友奈と話す
4、東郷と話す
5、風と話す
6、樹と話す
7、イベント判定
↓2
7
7
4
√9月3日目 夕() ※水曜日
01~10 樹
11~20 芽吹
21~30 通り過がりの変質者
31~40 風
41~50 友奈
51~60 夕海子
61~70 東郷
71~80 夏凜
81~90 九尾
91~00 若葉
↓1のコンマ
これは
ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
九尾「ほれ」ペシッ
芽吹「きゃぁ!?」
九尾「ほれほれほれほれ!」
芽吹「っ……く……わ、私にあんなみっともない声を――」
九尾「くふふふっ」ペシンッ
芽吹「ゃぁっ!」ビクンッ
芽吹「こ……殺すッ!」
乙
つよい
なお、ハーレム久遠さんの五郎くんルート
【明日への希望を託して】
トゥルーエンド版が出来たので、オマケページに掲載しました
ただ、自分の趣味と書きたいように書きなぐったせいでPDFでも24ページの冗長なオマケになっている上に
所詮素人の理想に届かなかったオマケなので
暇がないのと文を読むのがそこまで好きではない人は読まない方が良いかもしれません
乙
そういや猿猴が何しようとしてたか九尾は分かるかな?
昼間のことはみんなにも伝えておきたいところだが…
乙
九尾△
そしてついにおねショタ来たのって…ん?ちょっと待ってPDF24頁ってまじでなに言ってんの?
乙乙
24項?…ちょっと何言ってるのかわからないですね(混乱)
終わったと思って風呂から出たら素晴らしいものが
こうやってwikiで補完してくれるのにはただただ感謝しかないし頭が下がる思い
冗長(めっちゃ丁寧に心理描写と前戯を重ねただけ)
いつものエロスクオリティに加えて心にくる最期
五郎くんの久遠さんへの愛がもうね…
オマケとか言いつついつもガチでやってるよね…同人誌と違って金になるわけでもないのに
本当に待ってて良かった、道理でカットしてまで時間かけた訳だよ
しかもストーリー上でもかなり重要な場面だったとは…
久遠さんもまたひとつ重いものを背負ったんだなあ
ぶっちゃけ昨今のアニメ化してるなろう作家をプロと呼ぶのなら
内容(文章)と取り組む本気度的に>>1をプロと呼んでも差し支えない気がするけどな
取り分け今回のくめゆを読んだ感じ戦闘とエロに関してはくめゆより上だと感じた
サービスページの圧倒的クオリティで笑った
wikiで話を掘り下げてくれるのはほんとに嬉しい
では少しだけ
あいよ
友奈達の明るさと、積極的な姿勢に触れてもなお
芽吹の他人を寄せ付けないような姿勢は相変わらずだった
ここにいるのは天乃の世話係というお役目の最中だからでしかないが
そのお役目の最中という縛りが、芽吹の私情を抑圧する一つの要因になっているのかもしれない
天乃「……難しいわね」
九尾「それはそうじゃろう。あの娘には勇者はかくあるべきという強い信念があるが、主様たちは全くもってそれに適して居らぬのだから」
天乃「…………」
九尾「それを理解しているからこそ、娘たちは無理に関係を紡ぐ必要はないと言うておるのじゃろうがな」
天乃のすぐ横に突如として現れた女性、精霊の中の一人である九尾は、
少しばかり呆れたようなため息と笑みを見せながら囁く
周りが止めるべきと言っても、本当にやめなければいけないということが無い限り止めようとしない天乃の頑固さを
九尾は良く良く分かっているからだ
九尾「主様の行おうとしていることは、あの小娘にとっては悪やもしれぬぞ」
天乃「……うん、分かってる」
悲しそうにつぶやき、芽吹へと目を向けた天乃は、
膝上の自分の手と手を握り合わせて、小さく息をつく
九尾が言うこと、夏凜が言うこと、千景に言われたこと
天乃とて分からないわけではないが、しかしすでに言ったように
もしかしたら分かってくれるかもしれないからだ
話を聞いて、理解して、それでもなお受け入れられないというのなら諦めるべきだと天乃も思う
しかし、まだ話を聞かせていないし、理解もして貰えていない段階で
彼女には分らない、言っても無駄だ
そう決めつけて切り捨ててしまうのは何か違うと天乃は思う
天乃「自分が傲慢な事くらい言われなくても分かってるけど……でも、寂しいじゃない」
九尾「…………」
天乃「何かがありそうなのに、関わることになったのに、それに対して何もしてあげられないなんて」
九尾「まさしく、主様は傲慢な女じゃな」
天乃「……嫌われるタイプの女よね。楠さんがあんなにも嫌悪感を示すのも分かっちゃうわ」
冗談めかして言う天乃に
分っているなら……とぼやいた九尾は口を閉ざして首を振る
言っても無駄なのは、明白だからだ
天乃「それでも私は最善を尽くしたい。私は私が思う正しさで楠さんにぶつかって、それでもどうしても嫌だというのなら引く」
九尾「関わる以上は、首を挟む以上は最後まで行く覚悟はあると」
天乃「……ええ。だって、そうしなきゃおかしいじゃない。中途半端に首を突っ込んでかき回すだけでさようなら。だなんて、間違ってるもの」
九尾「…………」
天乃の世話係として入ってきた芽吹は天乃に対してかなりの嫌悪感を示し、
勇者部のあり方を否定した
専守防衛と言うのは語弊があるかもしれないが
生き方に先に首を突っ込んだのは楠芽吹
であれば、やり返されても文句は言えない
九尾「薮蛇……と言うものじゃな。小娘は面倒なものにちょっかいを出しおった。くふふっ」
天乃「……面倒なものって」
自分のことだと察した天乃は困ったように笑う
だが、九尾は関せずと苦笑いを浮かべながら、ふと、芽吹を見ると
冗談のような空気を払拭する真面目な表情で「しかし」と呟いて
九尾「伊集院の小娘にはきつく言うておけ」
天乃「え?」
九尾「娘は楠芽吹に対してあまり良く思って居らぬが、その影響を猿めが強く受けておる。最悪消すぞ」
天乃「消すって……」
それはつまり、芽吹を殺してしまう可能性があるということだ
猿猴が、沙織が。
天乃「冗談じゃない……のよね?」
天乃は何も感じることができなかったが、
風は強く警戒していたし、猿猴の手がはみ出ているとも言っていた
あの場面でそんな冗談を言うわけもない
九尾「猿はともかく、娘ならば主様の話をしっかりと聞くじゃろう」
天乃「……うん、分かった」
九尾「時期も近い、空気が張り詰めているのも原因じゃ。もうしばしの辛抱じゃろうて」
天乃に言ったのか、自分に言ったのか
虚空を見るような九尾の瞳は遥か先の壁を見ているようで
天乃「…………」
近いのだと、思った
何も感じない
何も分からない
しかしながら、それだけは確実だと……天乃は思った
√9月3日目 夜(特別病棟) ※水曜日
01~10
11~20 沙織
21~30 九尾
31~40
41~50 千景
51~60
61~70 若葉
71~80
81~90 大赦
91~00
↓1のコンマ
あ
ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
若葉「……この戦いが終わったら、文化祭を楽しもう」
若葉「天乃の出し物を見て、他クラスの喫茶店とかを回って」
若葉「命一杯普通の学生を楽しんで」
若葉「それで、来年は高校での文化祭を楽しもうなって、思いを馳せるんだ」
乙
極めてテクニカルなデスポエムだ…
乙
若葉かわいい
乙
猿猴のやつ本気で[ピーーー]つもりだったんか…
メブの言うことに素直にしたがうべきなのかな
時期が近いってことは9月中かな
7日目か14日目…たぶん14だろうな
ここから怒濤のフラグ乱立パーティだ
乙
ってことはやっぱり10月以降も続く感じか?
久遠さん達の供物がどうなるか気になるが…
では少しだけ
かもん
√9月3日目 夜(特別病棟) ※水曜日
また、一人きりの特別な病室に戻された天乃は、寝返りを打つようにして天井の禍々しいヒトガタ達から眼を逸らすと
九尾の時期が近付いているという言葉を思い出して、手と手を握り合わせる
少し前は樹海化した。という現象自体の感知は可能だったが、
今も出来るとは限らない。だから、少しだけでも祈っておこうと考えたのだ
けれど、ふと空気が揺れたのを感じて目を向けると、普通に若葉が姿を見せていた
若葉「もう寝るところだったか?」
天乃「ううん。まだ」
若葉「そうか……」
天乃「?」
若葉の控えめな態度、
天乃がまだ起きていると分かってずれた視線が気になって首を傾げると
若葉は「大したことではないんだが」と、前置きする
若葉「天乃は分かっていると思うが、私は本来天乃の一つしたの年齢。つまりは中学2年なんだ」
天乃「そうね……それがなにかあったの?」
若葉「何というか、楠さんや千景が久遠先輩と呼んでいるのを聞くと、やはり私もそう呼ぶべきなのではないかと思えてな」
天乃「気にしなくて良いんじゃない? 夏凜だって普通に天乃って呼ぶし」
本当に大したことのない若葉の疑問に、天乃は苦笑しながら答える
天乃は別に上下関係を気にするような人間ではない
もちろん、自分から目上の人に話すときなどは礼節を欠かないようにと注意をすることはあるが
学校生活するうえで、自分の方が上だから必ず先輩と呼べと強制するほど
ちっぽけな人間ではないからだ
言い換えれば、その辺りに関して無頓着なだけなのだが。
若葉「久遠先輩、天乃先輩、久遠さん、天乃さん……下の名前で呼ぶよりも久遠先輩や久遠さんの方がしっくりくるのはなんなのだろうな」
天乃「当人に聞かれてもちょっと」
若葉「それもそうか」
天乃「でも、私はどちらかといえば久遠さんや久遠先輩と呼ばれることが多いから、馴染んでいるのかもしれないわね」
ちょっと考えて、そうなのかもしれないと若葉は言う。
他愛も無い……そう、本当にくだらない会話
芽吹が聞けばなんて時間の無駄を。と激高さえしそうな……いや、流石にそこまで短気ではないだろうが
少しでも鍛錬に時間を割いたり、時間が時間なのだから休むべきだとは言ってきそうだ
そんなことを考えて、天乃はクスクスと笑う
夏凜ならば、そこで笑うと「なに笑ってんのよ!」と突っかかってくる分接し易くからかい易いのだが
芽吹にはそれが一切無い
良く言えば隙が無く、悪く言えばつまらない
若葉「ところで、沙織の件だが」
天乃「……若葉も気になるの?」
若葉「いや、一応警戒しているというだけの話なんだが……九尾から話を聞いていただろう?」
そう言った若葉は、天乃のことを真っ直ぐ見ると
切り替えるように周囲を見渡して、ふと息をつく
相変わらずの、嫌な意味で、悪い意味で、皮肉で言えば、超高待遇の室内
いい加減窓のある普通の部屋に移動させるくらい許可してもいいはずだが
やはり、悪五郎―妖怪―との子を宿している可能性があるというのが恐ろしいのだろう
若葉「今みたいな待遇を受けている中、さらに一つ一つを監視し、禁止する楠さんの存在は沙織にとって不愉快以外の何ものでもないんだ」
天乃「…………」
若葉「しかし天乃の立場を悪くするのはと沙織が押さえ込んだ感情が累積していった結果だな。あれは」
若葉は困ったように言うと、首を振る
若葉「九尾が言ったように時間をとって話すべきだな。沙織はともかく、猿猴の不満が大きい」
天乃「ええ、そのつもりよ」
天乃の答えにひとまずの息をついた若葉は
一応私も少しは話しておくからな。と、天乃の抱く不安を払拭するように言って笑みを見せる
若葉「寝る前に不安にさせるようなことを言ってすまないな」
天乃「ううん、こんな部屋だもの。元々不安しかないわ」
もはや諦めたといった感じで、自分の境遇を笑う天乃に合わせて
若葉は「それもそうかもな」と笑う
千景の時もそうだった
今も昔も、勇者に対する扱いの心得が無いなと、若葉は思ってため息をつく
もはやそれは大赦に運命付けられたコミュニケーション能力の欠如なのかもしれない。と
若葉「……せっかくだ、一緒に寝るか?」
天乃「えっ?」
若葉「冗談だ」
天乃の驚いた声、愛らしい表情を見れて若葉は満足したのだろう
そう言って笑って――
1、良いわ。寝ましょう
2、手を引く
3、どうせなら、しましょう?
4、それよりも、情報をくれるあの大赦の人について知らない?
↓2
1
3
4
では、ここまでとさせていただきます
明日も出来れば通常時間から
水都「大丈夫だよ」
水都「もう、私は何もできない巫女じゃないから」
水都「見ているだけ、祈るだけ、守られるだけじゃないから」
水都「だから」
水都「全部終わったら畑を耕して、種を植えて、野菜を育てようね……うたのん」
乙
まるで遺言みたいじゃないか
どんだけ激しい戦いになるんだ…
乙
とりあえず沙織と話さないと
とりあえず沙織と肉体言語しよう
体に教えてあげれば嫌でも解るっしょ
…なお久遠さ(ry
くめゆも追加されるのは確定として
データはリセットされるんじゃないの?
勇者部との関係を適度に押さえて久遠さん合流とか
多分>>1ならわすゆ設定みたいにするかと
乙
では少しだけ
おk
天乃はそのまま姿をかき消そうとした若葉の手をとっさに掴んで
驚きを見せるその瞳を真っ直ぐ見上げる
若葉「……天乃?」
天乃「あ、えっと……」
言おうとした言葉はすでに用意が出来ていたけれど
手を掴んだ瞬間、ドキリと跳ね上がるものがあって
疼き、求めて、天乃は一度きゅっと胸元で握りこぶしを作って意を決する
天乃「どうせなら、しましょう?」
若葉「するって、まさかアレか?」
天乃「うん……ダメ?」
若葉「駄目ってことはないが……明日も学校がある。妊娠している可能性もあるんだ。身体に障らないか?」
若葉は傾いていた体をしっかりと天乃に向け直して
ぐっと身を屈めて天乃の頬に触れる
手に感じる肌の熱は、普段よりも少しだけ火照っているように思えた
天乃「…………」
頬に触れられた途端に唇をきゅっと締めて、瞼を閉じる
そんな誘うような仕草をする天乃はとても愛おしいと若葉は思う
思って……少しだけ距離を詰める
若葉「でも、仕方が無いか。天乃の体のことだしな……」
天乃「え?」
若葉「……その反応から察するに、沙織にも聞いていないのか?」
目を開くと、若葉の不思議そうで心配そうな表情が見えて
天乃はどうしたのかと少し不安を覚えて首を傾げると若葉は笑みを浮かべて頭を撫でた
若葉「最近、そういう気分になることが多くはないか?」
天乃「……少し」
若葉「それに関してだ」
そこに誰かがいるのか、
若葉は天乃ではないどこかへと目を向けると
少しだけ考えるように眉を顰め、何事かを呟いて首を振る
そして
若葉「天乃がそういう気分になるのは、力がその部分に集まっていってるからなんだ」
天乃「……どういうこと?」
若葉「力を使えない理由がそのまま天乃がいん……じゃなかった性的になった理由ということだよ」
若葉は天乃を優しく撫でていた手を、天乃の下腹部に宛がう
ドキドキとしながら、それでも何かしてくれるのではという期待が大きく
奥底で体は疼き始めていて、嫌がろうという様子は微塵も感じられない
つまり、そう言うことなのだと天乃は理解した
一人でやろうとしたり、誰かとこういうことがしたくなるのは、
単純に自分がそう言う人間になったのではなく
力が下腹部に集中することで感覚が鋭敏になる上に、疼くことによる錯覚に似たものなのだと
天乃「……じゃぁ、今も?」
若葉「恐らくは、な」
天乃「…………」
掴んでいた若葉の手をそっと離して「ごめんね」と言う
自分が元からそうしたいと思っていてのものでも少々アレではあるが
しかし、そうではなく何か別種の勘違いによって引き起こされている性的衝動ならば
余計に、若葉を利用しているようで嫌だったから
だから、天乃は若葉を手放したのだが……
若葉「まぁ、待て」
若葉はそう言って天乃の手を掴んで引く
その表情は崩れない
嫌悪感なんて無い
それでも構わない、そう言われているような感じで
若葉「私はただ天乃自身がそう言う人間になったわけじゃないから安心してくれ。ということだ」
天乃「どういう……」
どういうことなのか
そう聞こうとした天乃の唇は柔らかいものに包まれ、押し込まれていく
ほんのりかさつきかけていた唇が急激に潤っていく
体の仄かな熱がはっきりと感じられた
二つの吐息がふっと漏れて距離が開く
若葉「こういうことだ」
天乃「若葉……」
若葉「私は構わない……むしろ、天乃の相手は他にもいる中で私と言うのは幸運に思う」
若葉の瞳に迷いは無い
それは、若葉が何らかの抑圧でも強制によってでもなく
自分自身の意思で応じてくれていると感じさせるには十分な優しい瞳だった
若葉「ただ、体と天乃が自分のことを勘違いしないかが心配でな」
天乃「……でも、若葉のキスが私の体に余計な火をつけたのよ?」
そういいながらぐっと身を寄せると
若葉は苦笑しながら「それなら仕方がないな」と零して天乃の体を抱く
少しだけ長い夜
2人は精霊の力を用いて隠蔽しながら、影を重ねて溶け合っていく
1日のまとめ
・ 乃木園子:交流無()
・ 犬吠埼風:交流有(部活)
・ 犬吠埼樹:交流有(部活)
・ 結城友奈:交流有(部活)
・ 東郷美森:交流有(部活)
・ 三好夏凜:交流有(部活)
・ 乃木若葉:交流有(どうせならえっち)
・ 土居球子:交流無()
・ 白鳥歌野:交流無()
・ 藤森水都:交流無()
・ 郡千景:交流無()
・ 伊集院沙織:交流有(家出、私のところに来られたら、芽吹を傷つけないで)
・ 神樹:交流無()
9月3日目 終了時点
乃木園子との絆 54(高い)
犬吠埼風との絆 78(かなり高い)
犬吠埼樹との絆 64(とても高い)
結城友奈との絆 91(かなり高い)
東郷美森との絆 88(かなり高い)
三好夏凜との絆 112(最高値)
乃木若葉との絆 85(かなり高い)
土居球子との絆 38(中々良い)
白鳥歌野との絆 35(中々良い)
藤森水都との絆 29(中々良い)
郡千景との絆 30(中々良い)
沙織との絆 89(かなり高い)
九尾との絆 53(高い)
神樹との絆 9(低い)
汚染度???%
√9月4日目 朝(特別病棟) ※木曜日
01~10
11~20 東郷
21~30
31~40 芽吹
41~50 九尾
51~60 若葉
61~70
71~80 千景
81~90
91~00 大赦
↓1のコンマ
あ
あ
みんな監視がつかない朝に甘えに来るなwww
ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
この場合はお電話です
千景「……心配はいらないわ」
千景「私はミスを繰り返さない」
千景「最後まで、勇者として、精霊として尽くすから」
千景「ふふ……私は幸せよ。久遠さんと乃木っさんと、みんなのおかげ」
千景「戦いが終わったらゲームをしましょう……二人で出来る、良い新作が出たから」
千景「約束……よ」
乙
お電話かー
残念
乙
そういや電話ってあんまり使ってなかった気がする
せっかくだしたまには須美としてのお話も聞きたいな
乙
そういや東郷さんの初恋の話って天乃にもうしたっけ?
では少しだけ
よっしゃ
√9月4日目 朝(特別病棟) ※木曜日
天乃「……大丈夫」
目を覚まして早々に身体の重みや痛みがないことを確認した天乃は、
襟ぐりを軽く引っ張ってにおいを嗅ぐ
若葉と少しだけやった後にしっかりとケアを行いはしたが
自宅にいるわけではない為、当然ながら入浴などできているわけもなく
天乃「流石に若葉の匂いというか……そういう匂いが少しあるわね」
知らない人が嗅げば大丈夫。なんて言う保証はないし
沙織ならば一瞬で気が付くことだろう
もちろん、朝の準備の段階で入浴はさせてもらうから平気だとは思うけれど。
それでも気づきそうなのが、沙織だ
そう考え、苦笑する天乃の枕の下、
隠し持っていた天乃本来の端末が震えて着信を知らせる
天乃「あら、珍しい」
かけてきたのは東郷だった
東郷『おはようございます、久遠先輩』
躊躇う理由もなく電話を取ると、
すぐに東郷の穏やかな声が耳を通り抜けていく
時間的にはまだ早い部類―以前よりはだいぶ遅いが―だが
東郷の声は寝起きでもまだ眠気を感じさせるようなものでもなくて
天乃は流石ね。と感心しつつ「おはよう」と返す
天乃「どうかしたの? 学校では駄目な話?」
東郷『特別そういうわけではないのですが……その、友奈ちゃんのお母さんから話を聞いたので』
天乃「あぁ……本当かどうかって?」
友奈の母親からと切り出されて、真っ先に挨拶の件だと気づいて聞き返す
東郷の声は嬉しさ交じりの不安な声
自分の家には来てくれないのかと思っているわけではないだろうが……と
天乃は考えながら、小さく笑みを浮かべる
天乃「大丈夫よ? 東郷の家にもちゃんと――」
東郷『は、はい。それは大丈夫だと思うんですが、その。それに関してお願いがあって』
中々切り出し難そうな、考えながら一つ一つを紡いでいっているような東郷の声
面と向かって会って話すことが出来るのが一番いい内容だと思いながら
しかし、それは芽吹の関係上難しいのかなと考えて息をつく
殺したいとまでは思わないけれど
やはり、監視として存在するのは少しばかり煩わしいと思ってしまう
せめて友人になれればと、天乃は思って
東郷『いずれ、私のところにも挨拶をすると思うんですけど、出来たら。可能なら、鷲尾家の方にも報告だけでも出来たら……と』
天乃「……そういうこと」
東郷が鷲尾須美に関しての記憶を取り戻したことは大赦の知らない事実だ
しかしそれに関しては、天乃や他が教えたことにすればひと悶着ある可能性もあるけれど
きっとそこまで大きなことにはならないと思う
しかし、今はもう関係が途切れている上に、大赦内で多少なりと力を得た鷲尾家に接触したいという要望は
とくに天乃が会うという要望は、なにか裏があるのではと警戒されるだろうし、当然却下される
そこからさらに以降の接触がしにくくなる可能性もある
だから、東郷はあえてこうして電話をしてきたのだろう
天乃「そうね……一時期とはいえ、貴女の両親だったのだから」
東郷「それに、記憶を失っているからと接触も控えていると思いますし、元気にやっていると、色んなことがあって、それでも幸せですと」
そう、伝えたいんです。と
東郷は思いを馳せているような優しい声で言う
電話越しではあるが、穏やかな笑みを浮かべているのだろうな。と、天乃は感じる
1、是非行きましょう
2、九尾にまた手伝ってもらっていきましょうか。今日とか
3、そうね……なら、余計なお役目が片付いて落ち着いたら行きましょうか
4、でも結婚の報告で良いの? 須美の時って羨望っていうだけでそう言った想いは無かったんじゃないの?
↓2
4
2
ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
天乃「そうね、九尾に――ぁっ!?」ギュッ
東郷『久遠先輩――ピッ』
須美「……良いんですよ? 電話、続けても」ペロッ
天乃「っ! んっ……九……」
須美「まぁいいです。では、鷲尾家への粗品(ビデオレター)の準備を始めましょう、久遠先輩」ニコッ
乙
そのビデオレターはいくら出せば売ってもらえますか?
乙
とうとう須美までもが…
それはともかく久遠さんとの最初の出会いはどんな感じだったんだろう?
乙
では、少しだけ
天乃「ん~……」
東郷の願いを叶えられるのは、芽吹の監視が外れるか
天乃のことが大赦内部で許される存在になるか……くらいだろうが
しかし、近々起こるであろう大きな戦いを経てもなおそれらが解消される可能性は極めて低い
というのも、彼らが天乃を監視する理由は、
天乃が悪五郎との行為によって
穢れを持った子供を―まだ不確定だが―宿しているからだ
つまり、天乃が子供を産むまで監視は外れないし、
産まれても世話をするのは天乃になるのならば、
それ以降もずっと監視が外れることはない
天乃「そうねぇ」
考えに考えた天乃は、どこかの空間を見つめて
そうだわ。と、楽し気につぶやく
天乃「九尾にまた手伝ってもらっていきましょうか。今日とか」
東郷『九尾さん……ですか?』
天乃「ええ、夏祭りの時みたいに」
東郷『ですが、協力してくれるのでしょうか?』
天乃「そこは交渉次第、かしらね」
天乃は断られる可能性も考慮しながらも
大丈夫だろうという安心感を含んだ笑みを浮かべながら、言う
九尾は口では訳の分からない協力の代価を要求してくるが
結局やってくれるし、大したことはさせない
もちろん、時と場合によっては……その限りではないけれど。
天乃「一応、話をしてみるから」
東郷『……分かりました』
九尾のことを信用していないわけではないのだろうが
東郷は少しばかり不安そうに答えて、沈黙
少し間をおいてから「久遠先輩」と、割り込ませて
東郷『へんな要望とかは飲まないで下さいね? 特別、急ぎと言うわけではないので』
天乃「分かってるわ」
東郷『絶対ですよ?』
天乃「うん、大丈夫」
強くはないが、念を押してくるあたりが東郷らしく須美らしいと天乃は思って笑うと
笑い事じゃないんですよ。と
少しばかり怒ったような声が端末から零れ落ちていく
東郷『では、すみません。お願いします』
天乃「ええ」
そう答えて通話を終えて、一息ついた瞬間――ぐにゅりと脇腹がつままれて
天乃「ひゃぁっ!?」
天乃は思わず大きな声を上げて、犯人の方へと目を向ける
天乃「きゅ、九尾っ!」
九尾「勝手なことを抜かしおって、妾が協力するとは限らぬぞ?」
天乃「それっは、分かってるわ。あくまでもしてもらえれば嬉しいというだけ」
つままれた脇腹の感覚の癒えない天乃は
くすぐったさに半分、呻きながら呟いて息をつく
呼吸に重なる感覚が、くすぐったい
九尾「ふむ……」
天乃「貴女も聞いていたと思うけど別に何か裏があるわけではないし、ダメかしら?」
九尾「確かに、一応はあの娘の親でもある。報告とやらをするのは何にも間違ってはおらぬ」
天乃「何か不安なことでも?」
少し気になることがある。と言うような九尾の含みのある言葉遣いに
天乃が怪訝そうに問いかけると
九尾はこれと言ってあるわけではないが。と、前置きして
九尾「楠芽吹という小娘の相手をするのが不快じゃ。多少手を加えても良いと言うのなら、考える」
天乃「手を加えるって、何するの? 操ったりするの?」
九尾「そこまではせん。久遠天乃という人間の範囲でしかせぬ。もっとも、小娘の出方次第じゃからなにも考えてはおらぬが」
夏祭りの時に任せて以降、女性神官が一人明らかにおかしい態度になっているし
九尾のすることに不安がないといえば嘘になる
以前言っていた情報源が彼女のことなのは予想が付くけれど
問題は彼女を手玉にした方法だ
九尾はそう言った―といっても男性を対象としてだが―ことは得意な妖怪だろうから
そこまでおかしなことはしていないと信じたいが。
でも、何をするのか聞いてもまだ考えてはいないだろし
神官になにをしたのか聞いたら、それはそれで不信感があるのなら。と
協力を断られてしまう可能性がある
さて……
1、分かったわ。協力して
2、あまり過激なことはしないでね
3、ねぇ、神官がおかしいのは貴女が何かしたからよね?
↓2
2
1
では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
須美「この手が届くから、誰かを助けているだけ。届かないものにまで手は伸ばせない。久遠先輩はそう言っていました」
須美「でも、銀を失ってから久遠先輩は自分の手を引き千切ってでも、足が壊れるとしても誰かのために傷つくようになって」
須美「ずっと不安だった、ずっと心配だった。久遠先輩までいなくなっちゃうんじゃないかって」
須美「でも……もう。そんな心配はしなくて良いんですね。久遠先輩は幸せになれるんですね」
須美「それだけで、私は……須美は、満足です」
東郷(なんて言える時代が私にもあったのよね……)
東郷「んっ……はぁ……っ」ビクッ
東郷(友奈ちゃんも、今頃一人でしてたりするのかしら)チラッ
乙
東郷さんも成長したなあ(意味深)
乙
ちょうどアニメも鷲尾編だし須美や銀との思い出にも触れてみたいなあ
乙
では、少しずつ
待ってたぞ
天乃「分ったわ。協力して」
不安がないと言えば嘘になるけれど、
天乃は神官の真相を聞くこともなく頷いて、求める
芽吹の言動次第ではあるが、それでも相当な酷いことはしないというのだから
今はそれを信じて委ねるべきだろう
でなければ、いつ東郷の望みを叶えてあげられるのかも分からないから
天乃「夕方から……でいいかしら?」
九尾「うむ」
天乃「どうしたら良い?」
九尾「厠……ではなく、手洗い場か。そこに行けばよい。個室に入った後に妾が主様の代理となろう」
九尾に指示に頷いて、天乃は一息つく
九尾扮する天乃と、芽吹がどうなるかはもう委ねるほかない
考えるべきは鷲尾家に対する話だ
もちろん、結城家に話したことから大幅に変えるつもりはない
手を抜くわけでも無く、あそこで語ったことが本心で、全てだから
問題は女の子同士……というのをどう説得するかだろう
天乃「うーん……」
九尾「そこまで悩まなくても良かろう」
天乃「え?」
九尾「鷲尾家は子を生せぬ苦しみを知っておるが、子を生すことだけが人間の価値ではないと、それ以外の幸があると、知っておろう」
天乃「…………」
九尾「そして、主様らが、娘たちがどのような思いを味わっているのかも知っておろう」
例え、同性での付き合いが異常だと考えているのだとしても
それを補って余るほど天乃達の置かれている状況が異常であることも分かっているはずだから
そこで見つけた幸せを、生き方を、否定し拒絶するような人間ではないはずなのだと、九尾は思う
九尾「率直に向き合え。主様に必要なのはそれのみじゃ」
薄い妖艶な笑みを浮かべる九尾は、
さらりと天乃の髪を撫でて、姿をかき消す
普段は子供よりも質の悪い悪戯好きで、適当な九尾ではあるが、
時々年長者であることを感じさせる
ようするに掴みどころがあるのに、掴みどころがないのだ
天乃「……率直に、ね」
しかし、九尾が言うことは正しい
変にひねくれたり、捩じれていたりしたら、
逆に受け容れて貰えなくなるだろう
天乃「まぁ、私は私の想いをぶつけるだけよ」
考えすぎても、意味がない
ある意味では友奈のようにいればいいのだ
そう考えて、天乃は苦笑する
そう言ったら友奈はなんて言うだろうかと考えて
くだらないこと、他愛ないこと
それを考えられる日常というものを目を瞑って、感じる
視界に映るのは邪悪な非日常だから
いつか、目を見開いて感じられるようにと、願う
天乃「……さて」
失礼します。という声が聞こえて、天乃は頭を切り替える
さっさと準備をして、学校に行こう
√9月4日目 昼() ※木曜日
01~10
11~20 沙織
21~30
31~40
41~50 若葉
51~60
61~70 クラスメイト
71~80
81~90 風
91~00
↓1のコンマ
あ
√9月4日目 昼(学校) ※木曜日
「久遠先輩、何か企んでいますか?」
天乃「なんなの? 藪から棒に」
昼休み、いつものように芽吹を加えての昼食をとっていると
芽吹は食事をしながら、唐突にそんなことを呟いて
演技ではなく、問い返す天乃をじっと見つめた芽吹は
いえ……と、言って食事に戻る
天乃「何かあるんじゃないの?」
「ただ気になっただけです」
沙織「久遠さんはどうやったら楠さんを手籠めに出来るか考えてるんだよ」
天乃「ちょっ――」
「……されるつもりはありません」
沙織の衝撃的な……と言っても
悪戯のような感情が強く含まれているのは分かるけれど
そんな発言に対しても、
芽吹は動じる事さえなく、冷静に拒絶する
でも、沙織はそういう態度が気に入らなくて
その中にいる猿猴は、そういう態度への不満が積もり積もって
芽吹を殺してしまおうと考えるのだろう
天乃や沙織達への害悪でしかないのなら
ストレスを与えるだけの存在なら……
そう考えるのは、妖怪ならば至極当然の事だろう
天乃「沙織」
沙織「うん?」
天乃「…………」
声色に変化はなくて普通に明るい声
しかし、猿猴の手が伸びている可能性は否定できない
風がいれば、その確認もできるのだろうが……
1、やったれ壁ドン
2、沙織、楠さんにも事情があるだろうから……ね?
3、ねぇ、楠さん。少しは譲歩とかできない?
4、手籠めにするつもりはないわ。でも、少しくらい仲良くしましょう?
5、そのお弁当。美味しい?
↓2
4
2
天乃「楠さんにも事情があるから……ね?」
沙織の周囲に猿猴の影も気配も全く感じられてはいないが
天乃が念のためにとそう言うと、
沙織は少し不満そうにうなずいて
沙織「それは分かってるけど……」
天乃「お願い」
沙織「……うん」
事情があるのだとしても
どんなに優しく接しようとしても
根本から突っぱねようとする芽吹の態度は
沙織の許せる範疇をギリギリ掠めるかどうか。というものなのだろう
天乃が言うならば仕方がないというような反応だ
「むしろ、久遠先輩は誰かれ構わず接しすぎかと思います」
天乃「そうかしら」
「ご自分がどのような存在なのか……ちゃんとわかっていますか?」
天乃「私の存在……?」
「久遠先輩は大赦の中で乃木に並んで位の高い家名です。それが、そんな」
会話に気づいていない周囲の天乃のクラスメイトを一瞥した芽吹は
天乃へと目を戻して、息をつく
天乃の生き方が、芽吹は気に入らないのだろう
友奈の家から帰るときに言っていたように
「もう少し、久遠家としての自覚を持って威厳ある態度で――」
沙織「久遠さんはこのままで良いんだよ」
芽吹の言葉を遮って、沙織は言う
芽吹に対しての強い拒絶がある、声で
沙織「久遠さんはこのままで良い」
天乃「沙織……?」
沙織「久遠さんは必要な時はちゃんと、威厳があって、格好良くて、優しくて、強くて、凄いから」
「…………」
沙織「勇者部のみんなをまとめてるあたし達の久遠さんは……伊達じゃない」
何を言うかと思えば、天乃をほめたたえるような言葉で
ハッとした天乃が止めに入るよりも早く、
沙織は「だから」と、身を乗り出して芽吹に詰め寄っていく
その表情は、悲しそうで
沙織「だから、良いんだよ」
辛そうで、苦しそうで
沙織「久遠さんはのんびりしてていいんだ。優しくて、適当で……頑張らなくて良いんだよ。もう、二度と」
「……そうですか」
沙織の訴えのような言葉に、
芽吹きは少し驚いたような反応を見せはしたけれど
しかし、相変わらずの冷たい返しをして、芽吹は食べ終えた弁当をしまう
「だからこそ、私は気に入らない」
沙織「……なんで?」
「世界の真実を知りながら、それでもなお、そのようなことを言える気楽さが気に入らないから」
そう言った芽吹は、
沙織と天乃を睨むように見つめて
「……本当、その無神経さが。うらやましくさえ思う」
不機嫌そうにそう言った
√9月4日目 夕(学校) ※木曜日
天乃「…………」
どこまでもついてくる芽吹は、トイレにまでついてくるが、
流石に個室の中にまで入ってくることは無くなった
と言っても、扉のすぐ向こうにいるのだから質が悪い
九尾「……さて」
便座に待機する天乃のすぐ横で姿を現した九尾は、
そのまま姿を天乃の姿に変えて、車椅子へと座る
九尾「くふふっ、似合ってる?」
天乃「私、そんな笑い方しない」
目の前でかなりの悪だくみを感じさせるに焼けた笑みを浮かべる九尾は、
今、天乃とうり二つの容姿で
その何とも言えない違和感に天乃は苦笑いを浮かべて、首を振る
九尾「主様、夜はこの姿で妾が相手してやろう」
天乃「は、ちょ――」
九尾「静かに」
声を言上げようとした天乃の口を手でふさぎ、
しーっと、悪い笑みを浮かべた九尾は、
見つかりたくないなら少し静かにするように、と告げると
堂々と扉を開けて
「……誰かと話してませんでしたか?」
九尾「あら、気のせいじゃないかしら」
「…………」
九尾「人が入ったトイレをそうやってまじまじと見つめるのは、人としてどうかと思うけど」
疑わしそうに天乃のいるトイレの個室を覗く芽吹に、
九尾は明らかな嫌悪感と不快感を示して
「……そうですね」
目の前にいるはずの本当の天乃に気づいた様子はなく
芽吹は九尾を連れてトイレから出ていく
天乃「……なるほど、だから」
見つかりたくないなら黙っていろと言った九尾の言葉の意味を理解して
けれど、忘れていないわよ。と、天乃は呻く
天乃「自分自身との夜なんて、誰がするものですか」
それを今回の件の供物として求められたら
避けようはないのだが……
√9月4日目 夕() ※木曜日
01~10
11~20 友奈
21~30
31~40
41~50 イベント
51~60
61~70
71~80 夏凜
81~90
91~00
※ぞろ目 特殊
あ
√9月4日目 夕(鷲尾家) ※木曜日
瞳「久遠様を送ったはずなのに、また久遠様から迎えに来てほしいと言われるなんて、驚きました」
天乃「ごめんなさい」
瞳「ううん、全然」
そう言った瞳は、天乃と東郷を車から降ろすと、
天乃の髪を嬉しそうに撫でて
まるで、近親者であるかのように優しい表情で送り出す
瞳「最近、楠さんにべったりされているから、羽を伸ばしたいと思いますので。どうぞごゆっくり」
天乃「それ、大赦に聞かれたりしたら怒られるんじゃないかしら?」
瞳「構いませんよ。私は、久遠様方々の味方ですから」
東郷「すみません、有難うございます」
東郷の御礼にも、送迎係である瞳は「大丈夫」と答えて
車を止めておくと不審に思われるから。と
必要になったらまた連絡をと言い残して去っていく
天乃「それじゃぁ、入る?」
東郷「……そうですね」
東郷は緊張した様子で、鷲尾家のインターホンを見つめる
以前ここに来ていた時よりも少しだけ視線が低い
東郷「…………」
今の姿を知らされていないわけではないはずだ
記憶を失ったこと
足が動かせなくなってしまったこと
もしかしたら、また戦うことになったことは知らないかもしれないけれど
それだけは知っているはずで
東郷「……久遠先輩」
天乃「うん?」
東郷「なんて、言えば良いんでしょうか」
天乃「……」
東郷は複雑な心情をうかがわせる笑みを浮かべて、
天乃を見る
東郷「東郷美森を名乗れば良いのか、鷲尾須美を名乗れば良いのか。私は……」
天乃「……」
1、今の名前を名乗ればいいわ
2、二つとも名乗ればいいのよ
3、須美でも良いんじゃない?
4、名乗る必要なんてないわ。貴女はこの家に帰ってきた。ただ、それだけでしょう?
↓2
2
2
では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
天乃「名乗る必要はないわ」
東郷「でも……」
天乃「貴女はこの家に帰ってきた。ただ、それだけでしょう?」
東郷「…………」
天乃「だから貴女は、一言……ただいまって言ってあげればそれで良いのよ」
乙
このあと東郷さんの家にも行くのかな?
乙
やっと本当の実家に帰ってきた東郷さん…
もしもこの場面でメブも連れてたら少しは認識が変わってたかな?
本当の実家は東郷だぞい
東郷→鷲尾→東郷→久遠(予定)
こういう流れだから
乙
では少しだけ
東郷美森としてあるべきか
鷲尾須美としてあるべきか
迷いを生じさせた少女に、天乃は優しい目を向けて
小さく「良いんじゃない?」と、呟いて
天乃「二つとも名乗れば良いんじゃない?」
ほほ笑むように言う天乃は瞳を閉じていて
何を見ているのか、何を考えているのか、分からない
けれど東郷は思う
天乃の言葉はきっと、導いてくれるものなのだと
天乃「だって、貴女はいつか3つ目の名前を持つのよ? その時、また同じように悩む?」
東郷「3つ目……3つ目……ですか」
改めて言われると、無意識に受け容れていたものが意識的になって
東郷は言葉にし難い気恥ずかしさを感じて手と手を握り合う
そう、そうだ
名前を手に入れるのだ、3つ目の
もしそうではないのなら、今目の前にいる人がたくさんの名前を持つのだ
東郷「私は久遠を名乗るんですね……」
久遠三森か…
久遠美森、まだなじみの薄いその言葉は少しだけ違和感を覚える
格好いいと言われた東郷というなじみ深い名前では呼ばれなくなる……いや
そう呼ばれても良いのだ
久遠であって、鷲尾であって、東郷
それが、今ここにいる自分なのだから
その全てであって、どれか一つではないのだから
東郷「……ありがとうございます、久遠先輩」
東郷は落ち着いた様子で天乃へと礼を述べると、
呼び鈴を鳴らして、聞こえてきた懐かしい声に笑みを浮かべて
東郷「須美です。お母様……東郷美森が、鷲尾須美が、今、帰りました」
天乃「…………」
驚いた声を上げる鷲尾須美としての母の声が聞こえて
微笑む東郷の「落ち着いてください」という嬉しそうな表情が見られて
天乃は一歩下がった立ち位置から全てを見守り笑みを浮かべる
本当は、体の自由も取り戻しての再会が良かった……と
望んでしまいたくもなるけれど
過ぎた欲は身を滅ぼすことになりかねない
天乃「まぁ……」
もう大分滅びているけど。と、天乃は思って苦笑する
「お帰りなさい……」
出迎えはこの家に雇われているメイドではなく、
須美の母親自身だった
驚いた様子で、どこか悲しげに
しかし、再会を喜んでいるような……
そう、複雑な表情で
東郷「……ただいま、帰りました」
「お帰りなさい……お帰りなさい……っ」
愛しい我が子を抱くように、
母親は東郷の体を車椅子など気にせずに抱きしめる
強く、限りない優しさと愛情を持って抱く
「……貴女も、久遠さん」
天乃「お久しぶりです。お変わりなく……何よりです」
須美のことで気を病んだりしている可能性も考えてはいたが
そんな様子は無く、天乃は安堵の笑みを浮かべて、言う
須美たちが護ってくれた日常を生きるのに、
やつれていたり疲れ果てているのは違うと、そう思って強く生きているのだろう。
こんなところではと客間へと招かれた天乃たちは、
出されたお茶を一口のみ、喉を癒す
以前……と言っても二年近く前のことになるが
そのときとあまり変わりない景色の中には
所々、洋に紛れた和が感じられる
「事前に連絡もらえていたら、もっと歓迎の準備も出来たのだけど……」
天乃「大赦には極秘の訪問なので……すみません」
「やっぱり、久遠さんへの風当たりは強いのね?」
天乃「はい。今は友人の力を借りて誤魔化していますが、監視が付いているんです」
「そう……何とかして上げられたら良いのだけど」
自分達の力ではどうしようもない領域
それが、天乃に対する扱い
その無力さを感じた母親は辛そうに顔をしかめたが、
すぐにそれを振り払って
「でも、そんな無理を通してきたということは、何か大切が話があるのよね?」
東郷「……はい」
東郷は少しまた緊張を感じる表情を見せたが、
しかし、その瞳はしっかりと意思があって
1、お母様……私は鷲尾須美さんと、東郷美森さんと……みんなと、結婚をするつもりです
2、東郷に任せる
3、彼女のことも、みんなのことも必ず幸せにすると誓います。ですから……須美さんを私に下さい
4、出来れば、お父様もいたほうが良い話なのですが……
↓2
3
2
では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
天乃「………」
天乃(東郷に任せ――)
東郷「実は、久遠先輩と子供を作りたいんです」
天乃「うん!?」
東郷「IPS細胞という素晴らしい技術があるそうなのですが、私には力不足で……探し出していただけませんか!」
天乃「貴女ちょっと待っ――」
「ふふっ……実は結城さんから話は聞いていたから準備は出来ているわ」
天乃「お義母様!?」
乙
久遠さんにips棒がついたら跡継ぎ問題オールクリアだね!
乙
何気に鷲尾家は大赦の久遠さんへの仕打ちを知ってたのか…
須美なら園子や銀以上に激怒してそう
久遠さんに生えたら搾り取られてみんなに生えたら輪姦されるでしょ?
久遠さんに救いがないじゃん
乙
では少しだけ
天乃は自分が話すべきかとも思ったけれど
東郷の決意に満ちた表情を見て、口を閉ざす
報告をしたいと言ったのは、東郷だ
天乃もするべきだということに変わりはないが
しかし、この場は譲るべきだろう
東郷「私は、久遠先輩に恋をしました。この人と一緒に居たいと。幸せにしたいと、幸せにされたいと、そう思いました」
「…………」
東郷「私も、久遠先輩もこんな体です。女の子同士です……それでも、好きです」
好きなんです。
半ば祈るように声を絞り出した東郷は、母親へと頭を下げて
東郷「子供は出来ません。世間的には間違っているかもしれません。それでも――私は久遠先輩と一緒になりたいと思います」
母親は東郷が話している間、何も言わなかった
ただ黙って聞き手に徹し、
天乃を見るでもなく東郷のみを見つめていて
話し終えたのだと感じたのか、小さく息をつく
「身体に関しては致し方ないことですから、二人がそのような体だからと否定することはしません」
東郷「…………」
「しかし、同性同士であるということに関しては確かに異質だと言えるでしょうね」
きてた
母親は同性であることに関しては異論があるかのような口ぶりで
東郷の体がピクリと反応したのが天乃は横目に見えたが、
けれど、まだ何も言わない
今はまだ、母親の話が終わっていない。そう思うからだ
「でも、私達はそれ以上に異質な世界に貴女達を送り出しました。いえ、今もなお送り出している。人によってはそうであることすら知らない世界に」
東郷「…………」
母親は悲しそうに言う、辛そうに言う
目の前に、送り出したがゆえの悲しみと痛みを背負った子供達がいるからだ
「その中で見つけた幸せを、どうして非難できるのでしょうね……」
そこまで言った母親は、
それも言葉としては誤りだわ。と、自分に自分で否定を入れて首を振る
母親が今言ったことはつまり、
異常な世界に送ったのだから、異常な想いを抱いても仕方が無い。ということだからだ
母親自身もそう言っているのだと感じたのだろう
「子供が出来ないということが、どういうことだかわかってる?」
東郷「……分かってます。お母様とお父様がどのような思いを抱いていたか。全てとはいえません。ですが、ここで過ごした分だけの理解はしているつもりです」
「……そう」
東郷美森は鷲尾須美として、
多大な愛情を受け取った。広い優しさに包まれた。
それこそ、本当の我が子であるかのように。
いや、寧ろ、それ以上にだ。
だからこそ感じたこともある。思ったこともある
全てではなくとも、その片鱗を感じ取ることはできた
「貴女達には、もはや聞くまでもないことかもしれないけれど」
母親はそういいながら、薄く笑みを浮かべる
自分の問いに対して、天乃達がなんていうのかを分かっているから
「貴女達のその幸福は世界にとって異常です。辛いこともあるでしょう。苦しいこともあるでしょう。悲しいこともあるでしょう。それでも、貫き通すことが出来る?」
確かに聞くまでもないことだった
しかし、聞かなければいけないことだった
だから、東郷は答えは一つですね。と、言いたげに天乃へと目を向けて
優しく、笑みを浮かべてみせる
天乃「ここまで沢山打たれました。折れたこと、挫けたこと、壊れかけたこと、沢山……本当に色々なことがありました」
「…………」
天乃「だから私は歪です。お世辞にも綺麗とは言えないほどに」
天乃「でもそんな私を支えてくれたのが、鷲尾さんであり、東郷さんであり、勇者部のみんなでした」
一度は関係が壊れそうになったこともある
自分から突き放そうとしたこともあった
でも、それでも、繋がることを選んだ
辛いことがある。嫌なことがある。苦しいことがある。悲しいことがある
それを理解しながら、味わいながら
それでも、その先で得ることのできる幸福を手にしたいと思った。願った
だからこそだ
天乃「私は貫き通します。幸せにするために、幸せになるために。何かに歪められるのだとしても、また歪めて戻って一つに向かって貫き通す。それが久遠天乃の生き方ですから」
天乃の言葉の間、東郷も母親も閉口して言葉を聞く
天乃の言葉の端はしに辛さと、苦しさと、痛み……色々なものがあって
とても強く、重いから
天乃「……信頼は求めるものではなく、させるもの。だから信じて欲しいとは言いません」
「そうですね……」
天乃「ですが、後悔させません。お義母様、お義父様。みんなの家々にも。もちろん、みんなにも。ですから、どうか、娘さんを私に下さい」
お願いします
そう頭を下げる天乃の横で、東郷もまた頭を下げる
母親は少し考え込むように沈黙して、
ふと、息をつく
「久遠さんは信頼に足る人だと分かっています。美森ちゃんが信頼しているのだから、想いを抱いたのだから」
母親は満足げな笑みを浮かべて頷くと
頭を下げる二人に顔を上げてと言って、2人の顔が見えるとまた笑顔を見せる
「でも、後悔するかどうかは分からない。誰にもさせないように、頑張ることが出来るわね?」
天乃「はい」
東郷「……はいっ」
東郷の震えた返事に、母親は困ったように笑って
天乃へと目を向けると、落ち着いた声で問う
「久遠さんは今日、こちらに滞在することはできる?」
天乃「滞在、ですか?」
「ええ。難しいとは思うのだけど……出来ればちゃんと挨拶できた方がいいでしょう?」
天乃「そうですね……」
可能だろうか?
九尾は言えばやってくれるかもしれないが
不安は残る……というより募るけれど
1、大丈夫です
2、少し相談してみます
3、すみません、挨拶したい気持ちは山々なんですが……
↓2
2
2
1
ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
東郷「久遠先輩の良いところはあの柔らかさね。固い筋肉とは裏腹に触れるものを包み込むあの包容力」
夏凜「強いけれど弱いところ……なんていうか、まぁ……アレよ」
風「あの年齢にそぐわない妹みたいな笑顔でしょ」
樹「ふざける時は全力で、でも必要な時には頼れる背中です」
友奈「いくらでも頑張る力をくれる……きっと大丈夫だと思わせてくれる、あの雰囲気」
沙織「えっちが苦手ですぐ漏らしちゃうところ」
若葉「沙織ィ!」バンッ
乙
安定のさおりん
乙
勇者部とさおりんのセリフの落差がw
九尾が今ごろ何してるか気になるし若葉たちとも相談してみるか
乙
では、少しだけ
かもん
少し考え込んだ天乃だったが、
いい案が浮かばなかったのだと分かる表情で首を振ると
少し相談してみます。と言った
天乃「友人のこともあるので」
「ええ……でも、無理にとは言わないからね?」
あの人もそのあたりはちゃんと理解しているし、
そもそも、本当は挨拶はこなければいけないようなものでもなかったのだから。と
須美の母親は少しだけ申し訳なさそうに笑う
もちろん、来てくれたことは嬉しいだろうし
挨拶に来てくれるということは、鷲尾須美としての母親であることを認めてくれているようなもの
それが喜ばしいというのもあるだろう。
けれど、本来、鷲尾須美は居らず、東郷美森でしかなかった
そして、今も東郷美森に戻った。記憶だって、無くなっていた
そうである以上、この家に挨拶に来なければいけない。という決まりなどないはずで
だからこそ、無理を言う必要はないし無理をさせたくもないのだ
今この場で対面できるのは、少女たちの想いの計らいなのだから。
母親が席を外したのを見送ってから、
東郷は緊張感にため込まれた息を吐いて、天乃へと目を向ける
東郷「久遠先輩、帰る方が良いのでは?」
天乃「九尾に任せるのは貴女も不安?」
東郷「信用は出来ます……でも、やっぱり」
何かしそうで少し怖いので。と東郷は素直に答える
確かに、東郷が言うように不安はあるのだ
天乃も、そう感じたからこそ
委ねることなく相談すると言ったのだから
天乃「でも、ちゃんと話はしておきたいわよね」
東郷「それは、そうなのですが……」
天乃「楠さんは普段なら送り届けてからは別れるから被害に遭うことはないはずだけど……」
九尾がそう簡単に見逃すのか。という問題もあるのだ
病室まで連れ帰ることは可能だろうか?
芽吹はあのままの状態なら確実に断る。絶対に
しかし、九尾が何かをしていたとしたら
あの神官のように魅了されたような状態になって
連れ込まれる可能性はある
天乃「……そのあとの想像はしたくない」
九尾のことだ
天乃を気にしてj殺すことこそしないだろうが
それ以外の事ならば平気で行うだろう
そう、どんなことでも。だ
天乃「……九尾、呼んでも来ることは無理よね」
普段なら呼べば出てくるだろうが、
今は天乃の代わりになって、あの病室にいるか
芽吹とどこかに行っているはずだ
なら……
1、若葉に話す
2、千景に話す
3、球子に話す
4、歌野に話す
5、水都に話す
6、沙織に話す
↓2
5
6
3
ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
天乃「沙織、ちょっと話が」
沙織「ところで、ここに神樹館の制服があります」
天乃「えっと」
沙織「ここにお胸の大きかった鷲尾須美という女の子の神樹館の制服が――」
天乃「分かった、着る。あとで着てあげるから話を聞いて!」
沙織「えっちは!?」
天乃「なし!」
東郷「えー……」
天乃「なぜ貴女が残念そうに言うのか私には理解が出来ないわ」
乙
東郷さんも見たかったのか…
乙
わすゆ時代は須美と一緒に久遠さんもいじられてたのかなw
乙
そりゃみたいよ
胸だけサイズが合わない久遠さん(半年後高校生)の小学生プレイだよ?
見たいでしょ見たくないの?
乙
では、少しだけ
よしきた
天乃「…………」
九尾と繋がることが出来るのは天乃の精霊しかいない
その点を踏まえれば、相談する相手など限られてくる
その中から、天乃は出てこられるのかどうかわからないからと
端末を取り出して、沙織に電話をかける
天乃「出られるかしら?」
沙織は学生としてのものもあるが
巫女としての役割もあるために
本来ならば、周りと関わっている時間はそれほどないはずなのだ
ないのだ……が。
天乃「ん?」
端末からは圏外か電源が切れているという言葉が流れてきて
なら仕方がないと諦めようとしたところで
どこからともなく「もう一回かければでるかもしれないよ?」と、囁くような声が聞こえた
言う必要も見る必要もない
それは、沙織の声だ
東郷「伊集院先輩……いつから?」
沙織「電話が来たからすぐに行こうって」
沙織は猿猴の力を宿しているため、精霊としての力もある
その力を用いれば天乃の精霊として、近くに姿を現すことが出来るのだ
得意げな笑みを浮かべる沙織は天乃の傍に歩み寄って
沙織「ここ、須美ちゃんの家だよね? あたし、何か必要だった?」
天乃「ちょっと相談」
沙織「……さすがに人妻との――」
天乃「違うから、ね?」
ちょっぴり引き気味な反応を見せた沙織に、
天乃は即座に否定を口にして、息をつく
沙織が冗談で言ったことは流石に分かるが、
しかし、時と場合によっては冗談ではないから困るのだ
少なくとも、同年代―芽吹は分からないが―が相手なら
そういう方向性を示す可能性は大いにある
天乃「今、向こうにいる私が九尾だっていうことは言ったでしょう?」
沙織「そうだね……楠さんがエッチなことされてる可能性もあるよね」
天乃「あんまり考えたくないからそれは言わないの」
あえて九尾には何をするのかなどは聞かなかったから
何をするのかは分からないが
沙織が言ったようなことをしている可能性だってある
本来なら考えるべきことだが……背に腹は代えられなかったのだから
最悪なことにだけはならないよう祈るほかない
天乃「問題はそこじゃないのよ。実はね、今日はここに滞在……つまり泊まれない? って言われてて、どうするべきかなと」
沙織「久遠さんはどうしたい?」
天乃「お義父様に挨拶できていないから、可能ならしておきたいとは思う」
けれど、どうしても九尾が気になってしまう
信頼していないわけではないが
夏祭りの時に何かがあった神官の件もある
何もなしに任せるというのは少々怖いのだ
しかし、予定を余計に引き伸ばすのだから
相応の要求をされたり、何かがあるという覚悟が必要になってくる
沙織は考え込む天乃をちらっと見て
そうだね……と、同じように考えながら呟いて、小さく唸る
天乃の懸念を沙織は十分理解できる
目の届く範囲にいても、九尾が現界しているとなるとちょっぴり不安になるのに
今は見えない場所にいる上に
久遠天乃という存在を任せているのだ
警戒するな、信頼しろと言うのは難しい話だ
もちろん、任せている相手にもよるのだけど。
沙織「でも、九尾さんは任されてくれると思うよ。嫌々言いながら、結局ね……九尾さんは久遠さんだけのために行動するから」
天乃が求めてることに意見をしたり、嫌がったりと
その全てに関して寛大なわけではないけれど
九尾の行動は天乃のためにと九尾が思っているがゆえのものだ
その庇護下には勇者部さえ入らないから性質が悪いし、
天乃との衝突も起こりかねないのだが
天乃から求めてきたことは基本的には守る
何も言わなければ害になる人間―芽吹含めて―は殺すことも厭わないが、
過激なことはしないで。と言われれば、そこまでのことはしなくなる
沙織「過激なことはしないように言ってあるんだよね? それなら、大丈夫だと思うよ」
天乃「うーん……」
1、じゃぁ、九尾に今日一杯よろしくって伝えてもらっても良い?
2、なら、変なことじゃなければお願いも聞くから、よろしくって伝えて貰っても良い?
3、そうなんだけど、やっぱりその私だけのためって言うのが怖いわ
4、そうね……でも。やっぱり頼ってばかりじゃ可哀想だから止めておくわ
↓2
3
1
3
ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
沙織「ところで、あたしは」
沙織「久遠さんにえっちなことされてる久遠さんに」
沙織「罵りながら快楽を植え付けていくプレイがしてみたいなぁ……なんて」
天乃「……貴女、猿猴の刺激を強く受けすぎてない?」
沙織「少しだよ。少しだけ」
沙織「外の緊張感が高まるとどうしても強くなるから……しばらくしたら落ち着くよ。大丈夫」
乙
性癖が特殊すぎる…ww
乙
猿猴の影響なのか素の性癖なのか微妙に悩むなw
前作の九尾だったら躊躇なく始末してただろうしなぁ
今作では相当丸くなってると信じたいが…
乙
問題は>>1の守備範囲の広さだと思う
では少しだけ
あいよ
【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【十二輪目】
【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【十二輪目】 - SSまとめ速報
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