モバP「依田は芳乃と海へ」 (20)
芳乃(空はわたくしたちを包み込むように高くー)
芳乃(海はどこまでも無限に広がりー)
芳乃(そのような世界を、一点の翳りなきお天道様が照らしておりますー)
芳乃(まさしく、海水浴日和でありましてー)
芳乃(そのような日に、かの者と二人でこちらの海にこられたのは僥倖でありー)
芳乃(人っ子一人とは言わずともー。そこまで活気があるわけではない浜辺でありましてー)
芳乃(感覚的には、かの者と二人きりのようなものでありますー)
芳乃(そんな今のこの現状は、わたくしには、行き過ぎた幸せかもしれませぬねー)
芳乃(しかし、手に入ったのなればみすみす捨てるわけにも参りませぬー)
芳乃(精一杯、この幸せを享受しましょー)
芳乃(……)
芳乃(……そう考えていたのが、先刻のわたくしでありましてー)
芳乃(自らの思いに従いー、海を満喫しー)
芳乃(少々疲れてきたので、浜辺へと戻りましたー)
芳乃(そのような状況のわたくしが、今考えているとことはー)
芳乃(……)
芳乃(……あついのでしてー)
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芳乃(海で遊ぶ間はよかったのですがー)
芳乃(一度陸へと上がり、休息をとるとー)
芳乃(……あついのでしてー)
芳乃「……うへー」
芳乃(パラソルがわたくしたちをさえぎってはくれますがー)
芳乃(それでも暑いものは暑いのでしてー)
芳乃(もう一度海に身をゆだねるという手もありますがー)
芳乃(かの者に一言も告げずに言ってしまうのは、心配をかけさせることになりますー
)
芳乃(ゆえにわたくしはー、このパラソルの下でかの者を待たねばならぬのですがー)
芳乃(……あついのでしてー)
芳乃「……」
芳乃「……」
芳乃(かの者を座して待つつもりではありましたがー)
芳乃(いっそ寝転べば少しは楽やもしれませぬー)
芳乃「……」
芳乃「……」ゴロン
芳乃「……ふむー」
芳乃(あまり変わらないのでしてー)
モバP「お疲れか、芳乃」
芳乃「!」ビクッ
芳乃「おや、そなたー」
芳乃「見られてしまいましたねー」
芳乃「きゃー」
モバP「……寝転がるくらい、そんなに恥ずかしがることでもないだろ」
芳乃「それはどうでしょー?」
芳乃「少なくとも私はこんなにも肌が真っ赤っ赤にー」
モバP「真っ白だな」
芳乃「……うむー」
芳乃「あの日焼け止めはとても効果の強いものだったようでしてー」
モバP「だな」
モバP「……っとそうだ、ほら」
芳乃「……こちらはー?」
モバP「かき氷だ……知らないのか?」
芳乃「……じー」
モバP「冗談だ冗談、そんなににらまないでくれ」
モバP「芳乃のために買ってきたんだよ」
芳乃「おやー」
モバP「あっちでたまたま見つけてな」
モバP「さて、どっちの味にする?」
モバP「こっちがイチゴで、こっちがブルーハワイだ」
芳乃「ふむ……」
芳乃「では、せっかくですからイチゴ味をいただきましょー」
モバP「わかった。はい」
芳乃「ありがとうございますー」
芳乃「そなたに最大限の感謝をー」
モバP「いえいえ」
モバP「ほら、早く食べないと解けるぞ」
芳乃「それもそうでしてー」
芳乃「では、いただきましょー」
モバP「ああ、いただきます」
芳乃「あむっ……」
芳乃「……ほわぁー」
モバP「美味しいか?」
芳乃「ほわぁー……」
モバP「……聞くまでもなかったな」
芳乃「あむあむー」
モバP「だいぶ食べるペース速いな」
芳乃「美味しいものには手が止まらないのが人でしてー」
芳乃「あむあむー」
モバP「その気持ちはわかるけどな……」
モバP「でも、ゆっくり食べたほうがいいぞ」
芳乃「忠告、心にとどめて置きましょー」
芳乃「あむあむー」
モバP「いや、実践してくれよ」
芳乃「それとこれとは別でしてー」
芳乃「あむあむー」
芳乃「はわぁー……」
モバP「……」
モバP「……まあ、芳乃がそれでいいならそれでいいけど」
モバP「頭痛くなってもしらないからな」
芳乃「ほわぁー……」
芳乃「……ねーねー、そなたー」
モバP「ん、どうした?」
芳乃「そちらはどのような味でしてー?」
モバP「ブルーハワイだけど……食べたことは?」
芳乃「ありませぬー」
芳乃「ブルーハワイとは、いかな味ー?」
モバP「うーむ……」
モバP「……なんていったらいいんだろうな」
芳乃「今食べてるのに、わからないのでしてー?」
モバP「いや、説明するのが難しくてな……ブルーハワイはブルーハワイ味って感じで」
モバP「ふーむ……知らない芳乃に説明するには……」
モバP「……」
モバP「……一口食べるか?」
芳乃「おや、よろしいのでー?」
モバP「ああ、一口くらい別にいいよ」
芳乃「……ふむー」
モバP「たぶん食べてもらったほうが早いと思うからな」
芳乃「……わかりましたー。ではいただきましょー」
モバP「ん、わかった」
モバP「じゃあほら、一口とりな」
芳乃「うむ、ありがとうございますー」
芳乃「では、一口をー……あむー」
芳乃「……ほー」
モバP「どうだ?」
芳乃「……こちらも美味しいのですがー」
芳乃「確かにこれは、何味ともいいがたくー……」
モバP「だろ?」
芳乃「なるほど……これがブルーハワイなのですねー」
芳乃「……しかし、今の私はイチゴ色ー」
芳乃「こちらのほうが好みでしてー……うまうまー」
モバP「……ほんとに気に入ったんだな」
芳乃「それはそれは、とてもー」
芳乃「……よろしければ、そなたも一口いかがー?」
モバP「ん、いいのか?」
芳乃「うむー」
芳乃「かき氷もまた、分かち合えば幸せでしょー」
芳乃「そなたから幸せを受け取りましたゆえー、次はそなたに幸せをー」
モバP「……じゃあ、いただこうかな」
芳乃「わかりましてー」
芳乃「では、あーん」
モバP「……は?」
芳乃「……そなたー。あーん」
モバP「いやいや、自分でとるよ」
芳乃「わたくしのすくったものではダメでしてー?」
モバP「そういうわけじゃ……」
芳乃「なれば、こちらかどうぞー」
モバP「……」
芳乃「そなたー。ねーねーそなたー」
モバP「……わかったよ」
芳乃「ではー」
モバP「ああ」
モバP「……あむ」
モバP「……」
芳乃「いかがー?」
モバP「……ああ、美味しいな」
芳乃「でしょー?」
芳乃「ふぅ……大変、美味なるものでしたー」
芳乃「今、わたくしの心はイチゴ色の感動でみちておりますー」
芳乃「そなたへ、最大を超えた最大の感謝をー」
モバP「……本当に気に入ってくれたんだな」
芳乃「それはもうー」
芳乃「いくらでもおかわりできそうでしてー」
芳乃「でしてー……」
芳乃「……買ってきてもー?」
モバP「……まあ、いいけど」
芳乃「ありがとうございましてー」
芳乃「では、行ってまいりますー」
モバP「……お腹壊すなよ」
芳乃「……とと」
芳乃「お店はどちらー?」
モバP「あっちにまっすぐ行けばすぐ見つかるよ」
芳乃「かしこまりましてー」
芳乃「ではー」
モバP「ああ、行ってらっしゃい」
モバP(……ほんとに気に入ったんだな)
芳乃「戻りましてー」
モバP「またイチゴなんだな」
芳乃「本日のわたくしはイチゴ色ー」
芳乃「あむあむー」
芳乃「あむあむー」
モバP「……」
芳乃「……じーと見つめて、どうしましてー?」
モバP「本当に美味しそうに食べるなとおもってな」
芳乃「とても美味しいものですからー」
芳乃「あむあむー」
芳乃「あむあむー」
モバP「……」
芳乃「あむあむー」
芳乃「あむあ――」
芳乃「――ぐむー」
モバP「あ、来たか」
芳乃「頭、きーんときましてー……」
芳乃「ぐむー……」
モバP「だから言ったのに……」
芳乃「……誘惑に負けず、忠告を聞いておけばよかったのでしてー」
芳乃「むー……」
芳乃「……ふぅ」
芳乃「なんとか治まりましてー」
芳乃「食べ過ぎたら、頭が痛くなる……忘れてはなりませぬと、心に刻みましょー」
モバP「ああ、覚えときな」
芳乃「では、残りをー」
芳乃「あむー」
芳乃「んー……やはり、美味しいのでしてー」
芳乃「あむあむー」
芳乃「……おっと、また手が進んでしまいましてー」
芳乃「あの痛みはもうこりごりでありー」
芳乃「ゆっくり、ゆっくりとー……」
芳乃「あむー」
芳乃「……うまうまー」
モバP(……可愛いなぁ)
芳乃「ふむ、ごちそうさまでしてー」
モバP「満足できたか」
芳乃「うむ、満足できましてー」
芳乃「はぁー……とても幸せなひと時を過ごせましてー」
芳乃「とこしえの宝となるでしょー」
モバP「……そんなにか」
芳乃「そんなにー」
芳乃「たかがかき氷と思うかもしれませぬがー」
芳乃「そなたと味わい、楽しむこの時はかけがえのないものとなりましてー」
芳乃「……そなたはそうは思いませぬかー?」
モバP「……ああ、思うよ」
芳乃「ふふー」
芳乃「……ねぇ、そなたー」
芳乃「もしよければ、わたくしについてきていただいてもー?」
モバP「ん、どこに行くんだ?」
芳乃「……先ほど、あちらに洞穴を見つけましてー」
モバP「へぇ……そんなところがあったのか」
芳乃「うむー。遠目でしか見てはいませぬがー、なかなか良きところかとー」
モバP「そうなのか」
モバP「……よしっ、つれてってくれるか?」
芳乃「ふふー」
芳乃「では、そなたを導きましょー。ついてきませー」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
モバP「おぉ……」
モバP「さすが、洞穴なだけあって、涼しいな」
芳乃「うむー、快適快適ー」
芳乃「……ですが、これ以上進むのは止めましょー」
モバP「そうだな」
モバP「明かりもないし、怪我をするかもしれないし」
芳乃「おや、心配してくれるのでしてー?」
モバP「当然だろ」
芳乃「……ふふー」
芳乃「ようやく……二人きりになれましてー」
モバP「いや、今日はずっと二人きりだろ?」
芳乃「確かに感覚的にはそうでありましたがー」
芳乃「しかし、周りにはたくさん人がおりましてー」
モバP「ああ……まあな」
芳乃「……ですが、今は二人きりでしてー」
芳乃「この奥にも、手前にも、人の気配は感じずー」
芳乃「さらには人払いの術もかけましたゆえー」
モバP「……そんなことできたのか、芳乃って」
芳乃「さぁ、どうでしょー? うふふー」
芳乃「とにもかくにも、今、わたくしとそなたは二人きりになりましてー」
芳乃「……二人きり、というものは奇妙な魔法のようなものー」
芳乃「抑えていたタガが、いとも容易く外れてしまいますー」
モバP「……」
芳乃「身構えなくともー、そのようにおかしなことはしませぬよー?」
芳乃「ただ、少しだけ私の作り話を聞いてほしいのでしてー」
モバP「作り話?」
芳乃「うむー」
芳乃「……と、いってもそう長いものではありませぬー」
芳乃「ふと、頭に浮かんだ話を紡ぎたくー」
芳乃「いかがー?」
モバP「ああ、かまわない」
芳乃「ありがとうございましてー」
芳乃「では……こほん」
芳乃「これは、昔々はその昔」
芳乃「人を導くことを生業としていた娘の話でしてー」
芳乃「それはとても優秀な娘でありましたー」
芳乃「訪れるものの悩みを聞き、答えへと導きー」
芳乃「人を最良の結果に辿り着かせるー」
芳乃「そのような力に秀でておりましたー」
芳乃「その評判は遥か遠くの地へ届くほどでしてー」
芳乃「連日、人が娘に導きを請いましてー」
芳乃「……そして、娘もまた、これこそが自らの役目だと信じておりましたー」
芳乃「人の役に立つため」
芳乃「ただそれのみを行動原理としー、毎日を過ごしておりましたー」
芳乃「娘の行動はほとんどが他がためでありましたー」
芳乃「しかし、娘はそれに疑いを持つことはなくー」
芳乃「生涯、人を導くことこそがわたくしの生まれた意味なのだとー」
芳乃「確かに、そう思っていたのでしてー」
芳乃「……しかしー」
芳乃「あるとき」
芳乃「その娘は、人に導かれましたー」
芳乃「……はじめこそ、人を導くため、と動いていたはずなのにー」
芳乃「いつのまにか、自らが導かれる側になっていたのでしてー」
芳乃「……そして、導かれた先では様々な世界が広がっておりましてー」
芳乃「そのどれもが、導く側であった娘には見えないものでしたー」
芳乃「ゆえに、どのようなものでさえも、楽しく思いー」
芳乃「どのようなものでさえも、幸せに感じたのですー」
芳乃「それは、たとえば誰かとかき氷を食べるという些細なことでさえもー」
芳乃「娘は、導きし者に感謝を捧げましてー」
芳乃「導くことしか知らぬ私を導いてくれて、とー」
芳乃「……それからの、娘はほんの少しだけ変わりましたー」
芳乃「生業は変わっておりませぬしー、思想も行動原理も変わりませぬー」
芳乃「ただ……時間が増えたのですー」
芳乃「娘が、誰かの導き手ではなくー、娘として過ごす時間がー」
芳乃「導きし者とー……その先に出会った者とー……ねー?」
モバP「……」
芳乃「……」
芳乃「ふむー……何か反応がほしいのですがー」
モバP「いや、最後まで聞いてからにしようかとおもってな」
芳乃「……おやー、わたくしとしたことが締めるのを忘れていましてー」
芳乃「では、めでたしめでたし、とー」
モバP「適当だな」
芳乃「ふと、思いついた話ですゆえー」
芳乃「ふむー……もう少し練るべきだったやもしれませぬー」
モバP「……そうだな」
モバP「最後まで、聞きたかったな」
芳乃「最後までー?」
モバP「ああ」
モバP「この話はまだ途中だろ?」
芳乃「……」
芳乃「何ゆえそう思うのでしてー?」
モバP「だって、この話には導かれた先がまだないじゃないか」
芳乃「……」
モバP「娘はまだ導かれているんだ」
モバP「これはあくまでその最中の話までしか書かれていない」
芳乃「……」
モバP「きっとこれから先にも、いろいろなものに出会うだろう」
モバP「その中には楽しいものだけじゃなく、辛いものにだって出会うはずだ」
モバP「だけど、きっと芳乃なら……いいや、芳乃と一緒なら越えて行ける。俺はそう信じてるよ」
芳乃「……」
モバP「そうして数々のものを乗り越えて、いつかは到達点に辿り着けるはずだ」
モバP「……いいや、連れて行くよ。必ずな」
芳乃「……ねー、そなたー」
芳乃「これはわたくしの話ではなくー、作り話でしてー」
モバP「……ああ。そうか、そうだったな……」
モバP「ははっ、少し感情移入しすぎたみたいだ」
芳乃「感受性が高きことは良きことかとー」
モバP「いやいや、芳乃の話が上手ったからだよ」
芳乃「おや、お褒めいただきありがとうございますー」
モバP「……まあ、何はともあれだ」
モバP「娘が導かれた先に辿り着くその時を待ってるよ」
モバP「だから、そのときはもう一度話の続きを聞かせてくれ」
芳乃「ふふー、任せませー」
芳乃「わたくしが良き話を紡げるよう、期待していますよー、そなたー?」
モバP「はは、期待するのはこっちだよ」
芳乃「おや、そうでしたねー」
芳乃「ふふー」
芳乃「……」
芳乃「ねぇ、そなたー?」
モバP「ん?」
芳乃「娘は導かれてはおりますがー、導く側でもありましてー」
芳乃「二人は、互いに導きあい、真なる道へと進んでおりますー」
芳乃「ゆえに、もしやそなたには思いもよらぬ結末へ辿り着くかもしれませぬねー」
モバP「はは、なおさら楽しみだな」
芳乃「うむ、期待していてくださいませー」
芳乃「……うふふー……♪」
おしまい
[水影のうなさか]依田芳乃はとても良きものでしてー、ってノリと勢い。
かき氷でめちゃくちゃはしゃいでる特訓前よしのん本当可愛かったし、特訓後の『うふふー』はなんか今までのよしのんにない新たなる一面が見える笑い声でとてもよかったです。
誤字脱字、コレジャナイ感などはすいません。読んでくださった方ありがとうございました。
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おつおつ
乙
水着よしのんはよいものだ
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