地の文あり
すぐ終わる
裏話を考えるのが好きなので独自解釈あり
以前どっかにあけだやつを修正
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大学選抜戦の後日、各校や廃校阻止に尽力して頂いた関係者を大洗に呼び盛大な祝賀会が行われた。全て大洗がもてなす予定ではあったのだが個性的な面子故にそれぞれ各校の料理や催し物が出され想像を遥かに上回る盛り上がりとなった。
どこもかしこも騒がしく笑い声がそこかしこで湧き上がっている。一部では嬉しさのあまりに号泣してるものやノンアルコールビールやブドウジュース、果てにはノンアルコールウォッカなる不思議な飲料を飲み過ぎて倒れている者もいるが概ね平和である。
そんな喧騒から少し離れた所で先述した飲料ではなくお気に入りの紅茶をゆっくりと飲むダージリンがいた。
日が沈み涼やかな風の心地よさを感じながら目の前の光景を慈しむような目で眺めている。目を閉じてカップから立ち上る香り楽しむ。そのままゆっくりと杯を傾けコクリと風味を味わう。再び目を開けると一人の人影がこちらに近づいてくる。
「やはり騒がしいのは苦手でありますでしょうか?」
「そんな事はないわ。私だって羽目を外すときもありますもの」
「……羽目を外すダージリン殿が想像できませんね」
「そいう西さんはどうなのかしら?」
訪ねてきたのは先の全国大会後に知波単学園の隊長に就任した西絹代だった。
「ご命令とあらばこの西絹代!裸踊りでもなんでも全身全霊をもって敢行致す所存であります!」
「フフフ、そんな命令なんてしないわ。それで聞きたい事があるのでしょう?」
「ダージリン殿は何でもお見通しなのでしょうか……」
ダージリンが対面の席へ促すと「失礼します」と一言発してから姿勢よく座る。その一連の所作に気品があるのを見てやはりお嬢様学校なのだと改めて認識した。
「率直に申しますと何故我らが今回の連合チームにお声がかかったのかという事です」
「何故……とは?」
「我が知波単の隊員を悪く言うつもりはありません。ですが増援の22輌の内訳は黒森峰、プラウダ、聖グロリアーナ、サンダースで充分だったのではないのかと」
兵の練度は高いほうだと自負はしている。しかし練度が同じようなレベルでも使用する車両に大きなハンデがある。それに伝統と言えば聞こえはいいが実際は準優勝時代の二匹目のドジョウを狙った突撃一辺倒のお粗末な戦術しかない。それをあのような大事な一戦で割合にして5分の1もの兵力を割いている。
「ちゃんと疑問に思ってくれてよかったわ。見込んだ通りでなによりよ」
「はぁ……」
満足そうな笑みのダージリンとは対極に西は困惑の表情だった。
「西さんが仰るとおり確かに4校でも充分。いえ、むしろ元黒森峰の生徒だったみほさんからしたら黒森峰の増援だけのほうが動かしやすかったかもしれないわ」
「では何故」
「勝負という点だけで見ればそれが正しい事かもしれないわ。でもね、これは戦車道なのよ。健全で強い精神を育成するためのカリキュラム」
「戦車道……」
「今回の文科省の横暴に不服がある者、友の窮地に居ても立ってもいられない者。そう言った不条理や困難に瀕した時に毅然と行動が出来る強さと優しさ。それを尊重し育成しなくてはいけない」
確かに誰もが廃校に納得できず怒りを露わにする者もいた。強者が戦うのは合理的だ。しかしそう言った者を蔑ろにして得た勝利は果たして完全勝利と言えるのだろうか?きっと胸の奥に燻りがいつまでも残ってしまうし今の祝賀会のように心から楽しめなかっただろう。ただの一高校生で一人の戦車乗りである彼女はそこまで考えていたのかと思うとただただ敬服するしかなかった。
「それと、勘違いしないでほしいのだけれど心情を察してお情けであなた達を呼んだ訳ではないわ」
「それはどういう……?」
「実を言うと私はどんな状況でもみほさんが、大洗が勝つと確信してましたのよ」
「そ、それはどうして?」
「勘よ」
「勘でありますか!?ま、まあそれはいいとして一体どうして私達が呼ばれたのでしょうか」
いつの間にかダージリンの後ろに控えていたオレンジペコが空いたティーカップに新たな紅茶を注いでいく。一口、二口と飲み数秒の沈黙のあと口を開く。
「我が聖グロリアーナと知波単学園、どちらも伝統を重んじる校風。でも大会の成績には大きな差がある。これについて西さんはどう思うかしら?」
ダージリンの質問に西は考える。戦車の性能や戦術によるものだと思うがそんな分かりきった事を聞いているのではないのだろう。では彼女は何を問うているのか。
「私は『伝統に対する考え方』だと思うの」
「考え方……」
「伝統を守るというのは古いものをそのまま使い回すことではないの。勿論根本が変わることはないけれど、その根本を元に時代毎に合った使い方を使う者が試行錯誤しながら次の世代に絆げていく。それが伝統よ」
「騎士道精神や優雅さ気品が我が校の伝統。騎士道とは?優雅とは?気品とは?そういう自問自答を常に繰り返し自分なりの答えを出し導いていく。勿論間違った道を進むこともあるわ。そんな時は止まってもいい。戻ってもいい。仲間に相談してもいい。いっそ道じゃない所を進んでもいいわね。戦車に通れない所はないですし」
クスクスと笑いながら紅茶を口に運ぶ。
「今までのそちらの隊長さん達は真っ直ぐで正直すぎたから突撃という戦い方をそのまま使ってしまった。でもあなたは違う。その進む道は本当に正しいのか迷った。ねえ西さん、大洗と一緒に戦って間近で彼女たちの戦車道を肌で感じて何か得たんじゃないかしら?」
西は声も出せなかった。脳天に榴弾を打ち込まれたような衝撃だった。
「私の、いえ我らのためにそこまで……本当に心から敬服致します」
「あなただけのためではありません。高校戦車道、ひいては日本戦車道のためを思えばこそですわ」
世界大会の誘致、プロリーグの設立。戦車道の注目も徐々にあがり期待も高くなる。そんな時それに応えられる人材を育成しなくてはならない。
――若手の育成なくして、プロ選手の育成は成しえない
彼女の考えは奇しくも一大流派の家元と同じであった。
廃校阻止だけならそれこそ先述した通り黒森峰との連合だけで充分だった。しかし高校戦車道全体のレベルアップを図るならば少しでも多くの学校に参加させるべきだと考えたのだ。相手は高性能高翌練度の大学選抜チーム。負ければ引退するだけの全国大会と比べ、負ければ学園艦、そしてそこに住む人々の人生が奪われるという一戦。並大抵の緊張感ではない。これほどまでの経験は滅多に得られるものではない。それを利用しない手はない。
そして当然こんなドラマチックな世紀の一戦を世間が注目しないわけがない。自分たちの戦車道を見て新たな世代が立ち上がるだろう。そうして若いホープが生まれてくる。
戦車の道はどこまでも続くのだ。
「……あなたの目は一体どこまで見えているのでしょうか。私のような若輩者には検討もつきませんが折角頂いたこの経験、無駄にせぬよう精進いたします」
「フフフ、がんばってね西さん」
とても綺麗な敬礼をし西は去っていった。その表情は晴れやかであった。
(ダージリン様、やっぱり凄いんだなぁ……)
「見なおしたかしらペコ?」
「ふぇ!?な、なんのことでしょう!?」
本当に彼女はどこまで見えているのか、人の心までも見えるんじゃないかと思いながらペコは茶葉の用意をする。
「西さんには色々いったけれども単純に『面白い試合が見たいから』の一言につくわ」
「はい?」
「だって高校戦車道って4強ばかり注目されるじゃない。決まりきったシナリオで喜ぶオーディエンスはいないわ」
「……でも今年は違いました」
「そう、大洗女子学園はまさにダークホース。廃校撤廃のために急遽設立した10輌にも満たない寄せ集めの戦車で見事優勝。これほどまでのドラマはそうそうないわ」
「ダージリン様は第二の大洗を望む、と」
「知波単に限らずアンツィオやマジノ等の学校。そしてこれから高校戦車道連盟に参加表明をあげるまだ見ぬ学校。その中から番狂わせが起きてほしいとは思っているわ」
「気が抜けませんね」
「その上で我が聖グロリアーナが優勝するの。だから精進なさい、ペコ」
「はい!」
宴の中心を見ればそろそろお開きとなるようだった。今日が終わればまた敵同士。切磋琢磨しあう好敵手。次の世代の可能性を想像しながら大好きな紅茶を飲んでいた。
(そういえば今日は格言を言いませんでしたね……)
「そんなに聞きたかったのかしら?」
「本当に何者ですかダージリン様は!?」
おわり
ガルパン過去作
ミカ「風の吹くままに」
【ガルパン】ミカ「風の吹くままに」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1457986731/)
五十鈴華「ニンニクのライブ感」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1491836629
さようなら
乙です
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