ふと気がつくと、俺は記憶を失くしてしまっていた――
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一体俺に何があったのか。
今まで俺は何をしてきたのか。
必死に思い出そうとするが、さっぱり思い出せない。もどかしい。
おそらくもう、思い出すことはないだろう。
俺の近くに、一人の男がいる。
泣いている。
どうやら俺に起こった事態をとても悲しんでいるようだ。
俺は推測する――俺とこの男はきっと強い絆で結ばれていたのだろう。
俺とこの男はさまざまな冒険を重ね、困難苦難を乗り越え、
俺はこの男の喜怒哀楽を全て受け止めてきたのだろう。
ついさっきまでの俺はそれらを全部覚えていた……はず。
なのに、今の俺は全く思い出せない。本当に申し訳ない限りだ。
男が泣き叫ぶ。
「頼むぅっ……頼むよぉっ……!」
思い出してくれ、ということなのだろう。
だが、どんなに懇願されても、無理なものは無理なのだ。
俺にはどうすることもできない。
泣きわめく男を尻目に、俺はあらためて自分に残る記憶を整理することにした。
俺とて、全てを忘れ去ってしまったわけではない。
こんな俺にも覚えていることが、たった一つだけあった。
自分が何者か、ということについてだ。
俺はゲームソフト――
近くで泣きわめいている、俺で遊んでいたであろう男よ。
どうか最初からやり直して下さい。
―終―
おきのどくですがぼうけんのしょは
デン!
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