暗い夜道を歩く、バイト帰りの青年。
その目の前に、突如男が現れた。
しわくちゃの上着を着ており、普通でない、というのは明らかだ。
「待ってたぜ……」
「お前は……!」
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「てめえ、よくも俺の彼女を奪ってくれたな」
「何をいってるんだ。彼女はとっくに君とはもう別れる、と告げたじゃないか」
「うるせえ! おおかたてめえがあいつを脅したんだろ!
俺と別れなきゃひどい目にあわしてやる、とかなんとかよ!」
「そんなことするもんか!」
口論が始まった。
「あいつは俺の女だ! すぐに別れろ!」
「断る! 彼女は君の暴力や自己中心さに耐えかね、僕を選んでくれたんだ。
それを逆恨みするなんて、筋違いもいいところだ!」
「なんだとぉ!?」
青年は気弱そうな外見に反して、理不尽には容易には屈しない、という気骨を持っていた。
追い詰めるはずが、正論と気迫で逆に追い詰められ、男はナイフを取り出した。
ナイフの切っ先はブルブル震えている。
「さあ、別れろ!」
「そんなもの振りかざしても無駄だ。君こそ、いさぎよく彼女から手を引くことだ」
まるで相手にしない、という風に青年は踵を返した。
次の瞬間、青年の背中に刃が刺さっていた。
何度も何度も、刺しまくった。
やがて、暗がりでも分かるほどに血まみれになり、道路に倒れる青年を見て、男は我に返った。
「人を……殺しちまった……」
元々、男には刺すつもりはなかった。ナイフはあくまで脅しのために準備した道具だった。
「君の言うとおりにしよう」という言葉がもらえれば、それでよかった。
しかし、青年の毅然とした態度が、男を凶行に駆り立ててしまったのだ。
とんでもないことになった……と俺は思った。
どうしてこんなことになってしまったのか、俺には分からなかった。
本来なら、俺は逃げるべきではないのかもしれない。
しかし、周囲を見回すと、パトロール中の警官がこの一部始終を目撃していたことが分かった。
俺はすぐさまこの場から離れることを決意した。
俺は止めていた自転車に乗り、明かりもつけずに慌てて走り出した。
全身に鳥肌が立っていた。
すると、
「待てーっ!!!」
事件を目撃していた警官が、必死の形相でペダルをこぎ、俺を追いかけてきた。
俺は逃げながら、幾度となく後ろを振り返る。
警官は変わらぬ必死さで、俺を追い続ける。
俺には理解できなかった。
なぜあの警官は、こんなにも俺を追い回すのかを。
二台の自転車による追いかけっこはしばらく続いたが、
追跡は止みそうにないし、足が痛くなってきたので、ついに俺は自転車のブレーキをかけた。
警官は達成感をにじませた笑顔で俺に迫ってきた。
「よしよし、ようやく観念したか」
俺は当然の疑問を口にした。
「ちょっと待って下さい! 俺たちの目の前で殺人事件が起こったっていうのに、
なんであんたは俺を追いかけてきたんですか?
俺はあんたがいるから大丈夫だと思って、通報もせず、あそこから逃げたのに……」
この問いに対し警官はこう答えた。
「バカ野郎! 刃物持った殺人犯なんて危ない奴を追うより、
自転車の無灯火運転を取り締まった方が、安全に手柄立てられるからに決まってんだろ!」
― 終 ―
えぇ…?
おもしろかった
乙
これ日本の話?
するっと語り手が変わって騙されたよ
おつ
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/01/08(日) 19:18:03.61 ID:RVzhTg5lo
とんでもないことになった……と俺は思った。
どうしてこんなことになってしまったのか、俺には分からなかった。
本来なら、俺は逃げるべきではないのかもしれない。
しかし、周囲を見回すと、パトロール中の警官がこの一部始終を目撃していたことが分かった。
俺はすぐさまこの場から離れることを決意した。
ここで変わったのか
そこで無灯火運転の男の視点になったんだね
面白かったよ
「男」と「俺」は別物だからな
いやいやみんな何言ってんだよ。
「バカ野郎! 刃物持った殺人犯なんて危ない奴を追うより、
自転車の無灯火運転を取り締まった方が、安全に手柄立てられるからに決まってんだろ!」
って。
後で責任追及されたら手柄どころじゃないだろ
>>18
そこにいなかったって言えばいいんじゃね(適当)
警官なら銃持ってるだろ
この間四発も両足にぶちこんだ猛者が現実にもいたし
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