「大洗女子学園は8月31日をもって廃校となった」
会長がその言葉を口にしたとき、私も含めてみんな信じられないと言った顔をしていました。
みんなそれぞれに反論の言葉を叫びましたが、受け入れるしかありませんでした。
私たちの廃校撤回のため頑張った全国高校戦車道大会はなんだったんだろう...
私、西住みほは転校先の振り分けが決まるまでの仮住まいとなる学校へ向かうバスの中でぼんやりとそんなことを考えていました。
それからの日々は早いもので、各々転校の手続きのため実家に帰ったり、夏休みという事で旅行に行ったりして、あっと言う間に過ぎました。
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二学期の始業の予定日だった一週間前、私も荷物をまとめて実家に帰ります。
沙織さん、華さん、優花里さん、麻子さん、戦車道のみなさんにお別れを告げ、戦車道から逃げた熊本へと帰ります。
短い期間だったけど、みなさん本当にありがとね...
熊本に着いて、最寄りの駅からの移動はお姉ちゃんに頼んでいます。
時間にうるさいお姉ちゃんだけど、今日はまだ来てません。
どうしたのかな...
ぼんやりとそんなことを考えていたら、家にある移動用の戦車が大きなエンジン音を立てて来ました。
「みほ」
戦車から出てきたのはお姉ちゃんじゃなくて、お母さんでした。
「お、お母...さん...」
喧嘩別れみたいな感じで大洗に飛び出して、数ヶ月...
ちょっと気まずいです。
「お帰りなさい」
でも、お母さんは何事も無かったようにちょっぴり微笑んで私を乗せてくれました。
家までの帰り道、私とお母さんの間には会話はありません。
聞こえるのは戦車のエンジン音だけ、すごく気まずいです。
勇気を出して口を開きます。
たわいもないことです。
「あ、あの…お姉ちゃん…は…?」
「まほは学校、あなたを迎えに行けなくてとても悔やんでいたわ。あの子が一番あなたを心配していたから」
そっか...
ありがとね、お姉ちゃん。
「あのねっ、お母さん...」
私はもう一度勇気を振り絞ります。
ありったけの勇気を振り絞ります。
でも、お母さんはそんな私を横目に視線さえも私に向けようとせず、真っ直ぐ正面を向いて帰路を急いでいるようです。
「心配かけて…迷惑かけて…ごめんなさい...」
私はそう伝えるとすぐに下を向きます。
膝の上に乗せていたバックに付けたボコのキーホルダーが戦車のエンジンの震度でブルブル震えています。
まるで私の心を映し出しているみたいに。
「そうね、心配したわ。すごく、すごく...」
その言葉はなんとなくずっしり重いものがありました。
私はギュッと唇を噛み締めます。
「でもね、みほ...私の方こそごめんなさい」
「…!?」
驚いて私は顔を上げて、お母さんを見ます。
相変わらず視線は戦車の主砲のように、真っ直ぐ正面を向いています。
「あなたの気持ちを分かってあげようともしないで...」
「そっ、そんな...」
「あなたたちが優勝した戦車道大会のあと、まほに言われたわ」
お母さんは少しだけ微笑んで続けました。
「『みほはみほの戦車道を見つけました、西住流とはまた違う新しい戦車道を...だから、私は私の戦車道、西住流を継ぎます』...ってね」
「お姉ちゃん...」
「だからあなたはあなたの戦車道を歩みなさい、それもまた戦車道だから...」
正直まほってみほがしほさんと話そうと覚悟さてたのを無駄にしたよなしほさんも普通に気づいてたしあそこで和解できたずだったんじゃ
まあまほの気持ちも実際わかるし確実に和解できるって訳じゃなかったけどさ
私はグッと涙を堪えます。
でも、すぐにあふれてしまいました。
その涙はお姉ちゃんへの尊敬の気持ち、お母さんへの申し訳ない気持ち、そして2人への感謝の気持ちが具現化した涙だったのかもしれません。
「それにしても、準決勝でのあの踊り?あれは無いわ」
「えぇー...!?」
お母さんはフフッと笑いながら、それでも運転を止めることなく走り続けました。
それからは、あったはずの蟠りのようなものはすっかりと無くなって、仲睦まじい親娘の会話が続きました。
戦車道の話、大洗での話、お姉ちゃんが犬を飼った話...
普通の話です。
そんな会話が幾つか続き、もうすぐ家と言うところでお母さんは運転をしながら私に尋ねました。
「みほ、あなたはこれからどうするの?」
お母さんは少しだけ私の方を見て聞きます。
私はすぐにその質問の意味を理解しました。
今後、戦車道を続けるのか、あるいは...
でも、私はすでに決めています。
__霞、お願いがあります。
__…はぁ?なにそのお願い。喧嘩売ってんの?
__いいえ。至極全うに、真剣にお願いしています。
__だとしても、私が頷く根拠が見当たらないわね。
__一度は断ると思っていました。でも、なんだかんだで霞は私達を助けてくれます。
__だとしたら、甘く見られたものね。いつから私は便利屋になったの?
__便利屋などではありません。霞は私達の仲間であり、駆逐艦のリーダーです。
__ふん。なら…
__同時に、私達のお母さんでもあります。お母さんは、手のかかる子供を助けてくれますよね。
__アンタ達が勝手に呼んでるだけでしょうが!
並行して読んでるヤツが誤爆されると凄いビックリするww
「続けるよ、私戦車道好きだから」
さらに私は続けます。
ちょっとだけ強い口調で。
「みんなとは離れてしまったけど、みんなが私に戦車道を教えてくれたから!」
「そう...」
「それに、信じてくれたお姉ちゃんやお母さんのためにも」
「いいのよ、無理しなくても...?」
「ううん、もう一度戦車道と向き合いたいから」
それに、見つけたから、私の戦車道。
お母さんは少しだけ口元をほころばせて、頑張りなさいと言ってくれました。
家に着いて、戦車から降りると、見慣れた自宅の風景が広がっていました。
戦車のエンジン音は消え、聞こえるのは忙しなく鳴く蝉の声です。
いわゆる劇場版初期案かな?
期待。
誤爆した人はちゃんと気づいて再投稿できてんのかねぇ。
歯抜けに後から気づくと、かなり凹むぞ。
その中にワンワンと吠える声が聞こえます。
お姉ちゃんとお姉ちゃんの飼っている犬です、どうやら散歩に向かうところのようです。
「みほ、おかえり」
「ただいま、お姉ちゃん」
「うん」
お姉ちゃんは少し微笑んで頷きます。
隣の犬も私を祝福してくれているようで、尻尾を振っています。
「おかえりなさいませ、みほお嬢様。」
「あっ、菊代さん。ただいま。」
うちの家政婦さんの菊代さんです。
先日、転校の手続きで一時帰省したときには、ちょうど外出中で会えませんでした。
犬が私の足元に来て、しきりに頬ずりをします。
とっても可愛いです。
「散歩に行くの?」
「ああ、みほもどうだ?いや、長旅で疲れているか...」
「ううん、疲れてはないけど、荷物とかあるし...」
「いいわ、私があなたの部屋に運んでおくわ」
戦車から降りたお母さんがそう言ってくれました。
私はお言葉に甘えて、ありがとうと言うとお姉ちゃんと散歩に出かけました。
お姉ちゃんとお母さんに駅から送ってもらった道を、今度は歩いて駅の方角に向かいます。
一時帰省のとき、お姉ちゃんに駅まで戦車で送ってもらった道です。
やっぱり、ここはなんにも変わらないです。
「転校先は、もう決まったのか?」
「ううん、振り分けの資料が家に届く予定なんだけど...」
文科省から学校経由でお家に届く予定になっています。
私の転校先は一体どこになるのか、まだなんにも知りません。
もしかしたら、またみんなと一緒になれるかもしれないし、でももしかしたらみんなと離れ離れになって遠い学校になるかもしれません。
「そうか...」
真意はその時わかりませんでしたが、お姉ちゃんは少し寂しそうに言います。
それに反して、散歩がよほど嬉しいのか犬はお姉ちゃんが握っている綱をぐいぐい引っ張ります。
「また黒森峰だったらいいな」
「...え?どうして?」
「いや、だって...」
お姉ちゃんは少し恥ずかしそうに頬を書きながら答えます。
「黒森峰だったら、またみほと一緒に戦えるだろ」
「...?」
お姉ちゃんは私の一つ年上の3年生、私たちが優勝した全国戦車道大会が最後の大会なはずなのに、一体どうして?
「どういうこと...?」
まほさん…まさか…?
「私には戦車道しかないからな...確かに大会にはみほ達に敗れはしたが、まだ秋の国体が残っているからな」
ふふっとお姉ちゃんが笑いながら言います。
あ、そっか...すっかり忘れていました。
大洗での廃校撤回のことで頭がいっぱいだったので。
「ああ、でもこれからはどうするんだ?みほ」
んもう、お母さんもお姉ちゃんも...
お姉ちゃんには言ったのに。
「お姉ちゃんも心配かけてごめんね...でもね、お母さんにも言ったけど大丈夫だから」
「お母様も...?」
「うん、お母さんにもお姉ちゃんと同じこと聞かれて」
ふむ、とお姉ちゃんは顎に手を当ててなにか考えているようです。
そして、これまで歩きながら会話をしていた私たちでしたが、お姉ちゃんが急に立ち止まります。
私は急に立ち止まったお姉ちゃんに振り返ります。
「あのな、みほ...私よりも、誰よりも心配していたのはお母様なんだ」
お姉ちゃんは難しい顔をしています。
そんなお姉ちゃんの顔を見ていたら、私は言葉に詰まります。
よかった、留年したかと思った
「なんだかんだ言っても、お母様はみほの事が心配なんだ」
「うん...ちゃんとわかってる、ありがとねお姉ちゃん」
「ほら、久しぶりなんだしお母様とも話してあげてくれ。ここからなら、まだそう離れていないだろう」
優しい笑みを浮かべるお姉ちゃんを残して私は一人で歩いて帰ります。
ふと、振り向くとお姉ちゃんは手を振ってくれました。
本当にありがとね、お姉ちゃん。
お家に着くと、お母さんは家の前に立っていました。
腕組みをして、神妙な顔で佇んでいました。
「お母さん?」
「あら、みほ...もう帰ってきたの?」
お母さんは不思議そうな表情に変わって私に尋ねます。
いつもはお姉ちゃん、1時間くらい散歩をしているので不思議に思ったそうです。
「お母さんはどうしたの?」
「いえ、客人が来ていたので見送りをね」
「あ、荷物ごめんなさい」
にっこりと微笑んで、いいのよとお母さんは言いました。
客人が誰だったのかは分かりません、でもお母さんがあんな顔をしていたのできっと大切なお客さんの、大切な話だったんだろうなと思います。
国体か、続き気になるなる
それにしほさんのこの客人が伏線かな
作者はよ
その日は早めに寝ました。
ここ最近は遅くまで、優花里と戦車の話とか、華さんと沙織さんのカレー屋さんの話とかを聞きながら、笑って寝ていました。
麻子さんは相変わらずぼおっとしていて、起きているのか寝ているのかわからなかったけど...
でも、もうそんな日々は終わってしまいました。
寂しくボコを抱いて、一人で眠ります...
翌朝はいつも通り起きました。
夏休みでも風紀委員の皆さんのちょっぴりだらしない点呼があったので、それが染み付いていたから。
一階の居間に行くと、朝食の準備がされていました。
どうやら、すでに私の分だけになっているようです。
「みほお嬢様、おはようございます」
「おはようございます、菊代さん」
菊代さんが作ってくれた朝食を手早く済まし、静かな午前中をお姉ちゃんの犬の隣で過ごします。
日差しはギラギラと暑いんですけど、日陰は時折風が吹いて涼しいです。
こんな日もいいなって思うけど、やっぱりみんながいる騒がしい日々が懐かしいです。
そんなことを考えていたら、菊代さんが何やら持ってきてくれました。
>>18は同室の友人のいたずらです
すみません、自演ではありません
同室の友人の前で書いてるのか……(驚愕)
自演でも良いから続き書いてくれよな!
国体なら故郷枠使えば他県に住んでいても同じ代表チームに入れるんだけどな
「冷たい麦茶ですよ、どうぞ」
「わぁー、ありがとう」
「それと、こちらが届いておりました」
菊代さんから透明なグラスに入った、氷入りの麦茶と、麦茶よりちょっと薄い茶色の大きな封筒を手渡されます。
封筒には文科省と大洗女子学園の文字、なんだか心がキュッとなります。
麦茶を一口飲んで、平らな地面に置いて私は丁寧に封筒を開けます。
中には複数枚の資料が入っていました。
一番上から順に目を通します。
複数の学校名が印刷されたそのプリントには、聞いたことないような学校がずらりと並んでいました。
どうやら、文章の内容からしてこの中からの選択制のようです。
その中に、見覚えのある学校名が記されていました。
私は何度もその学校名を読み直します。
そして、お母さんとお姉ちゃんの顔が思い浮かびます。
私の心は初めから決まっていたのかもしれません。
その日の夜、用事で出ていたお母さんと学校から帰ってきたお姉ちゃんを、私が出て行くきっかけになった、あの畳の居間に呼びました。
「どうしたんだみほ、そんなに改まって」
「えっとね、お姉ちゃん...それからお母さん、私決めたの」
「決めたって、なにを?」
お母さんはきょとんとした顔で聞きます。
なんだかちょっぴり手が震えます。
「転校先、私黒森峰にする...」
「そうか...」
お姉ちゃんはふっと息を吐いて言いました。
お母さんは、静かに一度だけ頷きました。
「みほとまた戦えなくなるのは少し残念だな」
「えぇー...っ!?」
三人一緒に笑います。
こんな日々が来るなんて思わなかった。
あの日々は失ってしまったけれど、今あるこの日々を大切にしようと、私は静かに誓いました。
2学期の始業前に荷物を持って黒森峰の学園艦に乗り込みます。
大洗の学園艦と比べるとやっぱり大きいです。
学園艦に乗り込む生徒の列にお姉ちゃんと並んでいると、後ろから誰か駆け寄って来ました。
「隊長っ、おはようございます!」
「エリカ、私はもう隊長ではない。エリカが隊長だろ。」
「はいっ、失礼いたしました隊長!」
「...」
お姉ちゃんはため息をつきます。
逸見エリカさんです。
今はお姉ちゃんの後を継ぎ、黒森峰の隊長をされています。
「あなた、結局黒森峰に帰ってきたのね」
「あ、えっと...その...」
「みほが帰ってくると伝えて、一番喜んでいたのはエリカだったような気がするが...」
「なっ...ち、違います隊長...!」
「だから私はもう隊長ではない...」
エリカさんは少し頬を赤く染めて、慌てて撤回します。
お姉ちゃんは、またため息をついています。
PCの前で正座し、更新ボタンを押し続け、8時間が経過いたしました。
「みほ、みほが黒森峰を去ってからなんだかんだエリカも心配していたんだ」
「ごめんね、逸見さん...ありがとね」
「なっ...べ、別に心配なんかしてないわよ!」
クルッと後ろを向くエリカさんは、少し恥ずかしそうでした。
でも、顔だけチラッとこちらを向いて私にいいます。
「別にっ、あなたを認めたわけじゃないから、勘違いしないでよね!」
「うん、またよろしくね逸見さん」
「それと...」
今度は顔さえも向けないでエリカさんは言います。
お姉ちゃんはまたもやため息をつきながらも、その顔は少し笑っていました。
エリカだけでなく小梅ちゃんも活躍させて~
「前みたいに、エリカでいいわよ...」
「うんっ、よろしくねエリカさん」
「ちょっとっ!馴れ馴れしいわよっ!」
エリカさんは振り返って慌てます。
その顔はさっきよりももっと頬を赤らめていました。
黒森峰の制服、学園艦、お姉ちゃんにエリカさん…
当たり前なんで今更なんですけど、改めてまた戻ってきたんだなと実感させられます。
学園艦内の寮は以前使っていた部屋と同じでした。
私が黒森峰を去ってから、そのまま空室が続いていて、事務の方の計らいで同じ部屋にしてくれました。
部屋に持ってきた荷物を置いて、学校へと向かいます。
荷物を置いていると、隣の部屋からドタバタと忙しない物音が聞こえてきます。
きっと、荷物を整理しているんだろうな、明日から学校だし。
お姉ちゃんとエリカさんに、荷物を置いたら学校の戦車道のミーティングに参加するよう言われています。
ドタバタしている隣の人には帰ってきてから挨拶をしようと思って、学校へ向かいます。
帰りになにか買っていかなくちゃ...
通い慣れた学校までの道、でもなんだか新鮮です。
ちょっと堅苦しい久しぶりに着た黒森峰の制服は、なんだか動きにくいです。
学校に着くと、戦車道専用のミーティングルームへ向かいます。
道中、戦車道の方に声をかけられます。
おかえりとか、またよろしくね、とか。
帰ってきたんだなと、実感します。
ミーティングルームに着くと、みなさん集合された後でした。
現隊長であるエリカさんがミーティングを始めます。
「それでは始めに、改めて本日より戦車道への参加者を紹介する、ここへ」
エリカさんは私に目で合図を送ります。
私はエリカさんから離れた位置に座っていたので、ゆっくりと歩いて壇上へ向かいます。
「先日、隊長より通達があった...」
「だからエリカ、私はもう隊長ではない」
会場からはクスクスと笑い声が聞こえてきます。
エリカさんは顔を赤らめて言います。
「静かにっ!本日付で黒森峰戦車道に合流することになった...」
「西住みほです、大洗女子学園から転校してきました。よろしくお願いします」
私は頭を下げます。
今更だけど、すごく不安でした。
戦車道から、黒森峰から逃げた私を、再びみんなが受け入れてくれるのか...
確かに、道中声をかけられたけど、みんながみんなそうじゃないと思って...
でも、そんな心配は不要でした。
みんな拍手でおかえりと言ってくれました。
私は頭を下げたまま、必死に涙を堪えます。
「それからもう一人、本日より戦車道に参加する者が...」
「逸見隊長、まだ到着されていないようです」
「なにやってんの!?」
私はばれないように涙を拭いて顔を上げます。
会場が騒ついて、エリカさんは少し苛立っているようでした。
そんな会場の空気を一変させるように、ミーティングルームの扉が勢いよく開きます。
そこには両手を膝に付き、大きく息を整える人がいました。
「遅れて...っ、申し訳ござ...いません...!」
その人はどうやら必死に走ってきたようで、息を整える間も無く壇上へ駆け足で向かいます。
私は気づけば、目から大量の涙が溢れ出ていました。
両手で口を覆い、目の前の光景が信じられませんでした。
誰だ?
やっぱ自演しちゃう作者はダメだね
よくわかるわ
ゆかりんか
楽しみにしてる奴もいるから水差すような事言うな
乙です。
他のメンバーの近況も知りたい所ですね。
>>35
梓ちゃんの可能性も…
乙です!
黒森峰の生徒は心が広いなぁ
少なくとも、表向きは。
みほの行動に批判的だったのは直接優勝逃した3年生とまほに心酔してたハンバーグだけだろうからある意味妥当
>>39
某尼に書かれていた、コミック版のレビュー思い出した(自分未読です)
お役所が転校の選択肢に黒森峰を加えたのは悪いことじゃないんだろうけど、
優勝常連の黒森峰を人材面で更に強化することが、
高校戦車道にとって良い事とは思えないのよね
弱小校の人材面での補強を図るべきだと思ってしまう。
短期的に見ればトップがさらに強くなる方が良くなってるように見えるもの
広い視野で長期的に判断できる偉い人がいたらそもそも優勝したところを廃校になんてしないと思うの
実家が熊本にある以上、黒森峰を候補に加えるのは普通であろうて
しぽりんが押し込んだんだろ
「あっ、あの...!秋山...秋山優花里ともうしますっ...途中迷ってしまい遅くなりましたっ、誠に申し訳ありません。不束者ですが、よろしくお願いします!」
私の顔はもう涙でぐちゃぐちゃになっていたと思います。
こんな形で再会できるなんて、少しも考えていなかったからです。
「お久しぶりです、西住殿っ!」
「優花里さんっ...どうして...っ」
「まずは涙を拭いてください、西住殿」
優花里さんは愛用のリュックサックからハンカチを出して手渡してくれます。
相変わらず、たくさんの道具を持ち歩かれているみたいです。
「西住みほ、秋山優里花、以上2名が本日より参加する」
エリカさんはそう言うと、私に手を貸してくれて席まで送ってくれました。
優花里さんも一緒に送ってくれます。
なんだか嬉しさや恥ずかしさで、なにがなんだか分からない感じでした。
結局その日のミーティングは私と優花里さんの紹介のためだけのミーティングでした。
寮までの帰り道は優花里さんと一緒に歩いて帰ります。
ゆかりんだったか…さすが忠犬
「また西住殿とこうして下校できるなんて夢のようであります」
「私も、また優花里さんと一緒に帰れるなんて思ってもみなかった」
「西住殿にそう言って頂けて、嬉しいですぅ!」
両手でくしゃくしゃっと頭の両サイドをかくその仕草は、とっても可愛いです。
そんな優花里さんを見て、なんだか自然と和みます。
「ところで、優花里さんはどうして黒森峰に...?」
「私は...」
先ほどとは打って変わって優花里さんは少しうつむいて寂しげに語ります。
こんな表情の優花里さん、初めてです。
「転校先の学校の一覧、たくさんの学校が並んでいました。でも、届いて数日はその資料を見ることもできなくて...」
「そっか...」
「やっぱりみなさんと戦車道を続けたい、私は心の底からそう思いました...でも、それは私のわがままです」
「そんなことないよ、私だってみんなと...一緒に...」
私は立ち止まって言います。
心がチクチク刺されるようでした。
だってそれは、叶わない願いだから。
「五十鈴殿や武部殿、冷泉殿...そして西住殿...みなさんが友達になってくれて、そしてみなさんと友達になれるきっかけをくれた戦車道を私は本気でやりたいと思いました」
「優花里さん...」
「あえて厳しい環境に自分を置き、本気で戦車道に向き合い、友達になってくれた皆さんへの、そして戦車道への感謝すること...それが私のせめてもの恩返しだと、そう思いました...」
「...」
「でも、まさかこうしてまた西住殿と戦車道ができるとは思ってなかったであります」
優花里さんはちょっと目に涙を浮かべて敬礼します。
私もちょっとだけ涙目になりながら、優花里さんに敬礼を返します。
寮に着く頃には辺りは夕焼けに染まっていました。
どうやら優花里さんとは同じ寮のようです。
階段を上りながら優花里さんは言います。
「よかったら今度遊びに来てくださいね、西住殿」
「うん、同じ寮だしよろしくね」
「はいっ、各種レーションも取り揃えているのでっ!」
「いや、それはどうなのかな...」
私の部屋の階に着いたので、部屋の方に向かいます。
すると優花里さんも後ろからついてきます。
「あれ、優花里さんもこの階なの?」
「はい、えぇっと...そこの部屋であります」
と、言うと指差したのは私の隣の部屋でした。
ああ、あのドタバタは優花里さんだったのか...
その日はさよならを言って別れます。
明日からは学校が始まり、それぞれ別々の学校生活が始まります。
優花里さんとは同じ学校だけど、沙織さんや華さん、麻子さんはどこの学校なんだろう...
ちょっぴり心配です。
さおまこはどこ行っても即戦力だろうな
もう一人はコミュ力お化けだしいけるやろ
間違えたはなまこだ
>>51
さおりんも免許持ち出しなー
翌日から、学校が始まります。
とても緊張して、なんだか入学式のことを思い出します。
隣の部屋の優花里さんと一緒に登校して、学校の事務室で改めて転校の手続きをします。
持ってきた手続きの書類を渡すと、転校先の教室へと案内されます。
必修選択科目が同じという事もあってか、優花里さんとは同じクラスになりました。
どうやら、戦車道を受講している生徒はまとめられているようです。
私は黒森峰に戻って来たという事で多少顔なじみの友達がクラスにはいたのですが、優花里さんは正真正銘の転校生なので少し不安そうでした。
ですが、そんな心配はどこ吹く風で持ち前の明るさと戦車の話ですぐにクラスに馴染んでいました。
始業式という事で、その日は午前中で終了。
午後からは戦車道の練習があります。
まるで部活のようです。
その日の戦車道の練習もミーティングから始まります。
でも、隊長であるエリカさんは担任の先生に呼ばれて遅れてくるそうです。
エリカさんの到着までみなさんお喋りをして時間を潰します。
私も隣に座る優花里さんとお話しします。
そんな時、私に小梅さんが声をかけてきました。
「西住副隊長、またよろしくお願いしますね」
「いやいや、私はもう副隊長じゃないよ」
小梅さんはきょとんとした顔をします。
あれ、私なにか変なこと言ったかな?
私もきょとんとした顔をすると、小梅さんは「ああ、そっか」と言ってニコッと笑って少し離れた席に座りました。
小梅さんが席に着くと同時にエリカさんがやってきました。
壇上に向かい、ミーティングが始まります。
「間も無く国体の選考会が始まる、それに伴い隊長ら3年生と、私たち2年生で協議を重ねた結果...」
「いやだから、エリカ私は...」
「いいんです!隊長は隊長で!」
エリカさんにツッコミを入れたお姉ちゃんをエリカさんが制します。
お姉ちゃんは少ししゅんとした顔をします。
そんな二人の様子を見て、会場内は笑いに包まれます。
「隊長は私、逸見が担当させてもらう」
エリカさんがそう言うと拍手が起こります。
私もあわせて拍手をします。
「それと、副隊長には赤星小梅」
「はいっ!」
少し離れた席の小梅さんが大きく返事をして立ち上がります。
周りからはおおー、と言った声が上がって拍手が起こります。
エリカさんはさらに続けます。
「それと、西住みほ」
ん?
あれ?
今、私の名前が...
私も小梅さんのように立ち上がります。
小梅さんの様にとは言っても、立ち上がると言う動作が同じであって、意味合いは全く違います。
その時、先ほどの小梅さんの笑みの理由を理解しました。
「まっ、待ってください...私は...」
私は反論します。
昨日転校してきたばかりの私が副隊長だなんて...
隣の席に座っていた優花里さんは目をキラキラさせてこっちを見ています。
やめてよ、優花里さん...
「私は昨日転校してきたばかりで...それに私よりもっと相応しい人が...」
私は弱々しい声で反論をします。
それを聞いてエリカさんは不満そうな顔をして、こちらを見ています。
そんな顔を見ると言葉に詰まります。
「私が推薦したのよ、何か文句ある?」
「え、えっと...」
エリカさんはさらにムスッとした顔で言います。
私はなにも言えません。
「私も賛成だ」
「お、お姉ちゃん...」
お姉ちゃんが立ち上がってそう言います。
2人の視線が私に注がれます。
その視線から目をそらすように周りを見ると、みんなの視線が私に注がれていることに気づきました。
「それに、この意見は...2年生みんなの意見でもあるのよ」
エリカさんが腕組みをしていいます。
お姉ちゃんと小梅さんも同意するかのように静かに頷きます。
「私が...副隊長...?」
「また西住殿がコマンダーですねっ!」
優花里さんがヒャッホウと言わんばかりの勢いで立ち上がって言います。
それに合わせて周りからも声が上がります。
「やっぱりあんなすごい試合する人を差し置いて副隊長なんてできないよ!」
「そうだよ、今度はうちでよろしくね!」
「やっぱり西住さんじゃなきゃ!」
顔が熱くなります。
たぶん真っ赤っかです。
「あ、あの...」
私はか細い声で続けます。
周りなんて見る余裕はありません。
うつむいて続けます。
「副隊長としてうまくみんなをまとめれるかどうかわかりませんが...私でよろしければ、よろしくお願いします...」
大きな拍手と歓声が巻き起こりました。
そのあとは優花里さんや小梅さん、その他いろんな人に握手を求められました。
気にはなっていて今朝がたようやく最初から読んできた。
おもしろい導入じゃないか。
物語がどんなふうに動き始めるのか、とても楽しみ。
その日は一人で学校を後にしました。
優花里さんから「今日は野暮用がありまして、申し訳ございません」と言われていたからです。
戦車道のミーティングルームから校門までの間、ミーティングの内容を思い返します。
あの時は場の勢いと言うか、正直みんなに乗せられた感じで副隊長を引き受けましたが...
今になってものすごい不安に駆られます。
戦車道の歴史の中で全国大会10連覇と言う記録を少なくとも私は聞いたことがありません。
そんな大記録目前の試合をぶち壊したのは他ならぬ私なのに、そんな私が副隊長だなんて...
「あ、みほさん!待ってたよ」
「こ、小梅さん...」
校門を出た直後に赤星小梅さんから声をかけられました。
夕焼けに染まる空を背景に笑顔で手を振ってくれました。
笑顔が素敵でとても絵になります。
「どうしたの、そんなに暗い顔して?」
「え、いや...そ、そんなことないよ?」
「具合悪い?」
小梅さんは私の顔を覗き込むように見つめます。
大丈夫だよ、と答えるとそっかと言って微笑みます。
「みほさん、もしよかったら時間あるかな?」
「...?」
「お茶でもどうかなーって」
特に何かしらの用事があるわけでもなく、一人で帰るだけだったので、小梅さんのお誘いを受けることにしました。
と言うよりも、一人で居たくなかったんです。
小梅さんに連れられてお茶をしに行く店は、黒森峰時代によく戦車道のみなさんと通い慣れたお店でした。
実際はお茶ではなく、黒森峰自家製のノンアルコールビールを提供してくれる、喫茶店と言うよりもちょっとしたバーみたいな雰囲気のあるお店です。
部活動などの下校時刻と重なっていたので、店内には黒森峰の制服を着た生徒でごった返していました。
「みほさんもこれでいい?」
「うん、大丈夫だよ...あ、お金出すよ」
「いいよ、私が誘ったんだし。今日は、ね」
カバンから財布を出そうとすると、それよりも先に小梅さんに制されます。
今度は私から誘わなくっちゃ。
黒森峰自家製のノンアルコールビールと小梅さんオススメのレアチーズケーキを持って、店員さんに席に案内してもらいます。
生徒でごった返している中、比較的周りの静かな席に通してもらいました。
みほ梅はいいなぁ…
「じゃあまず...みほさんお帰りなさい」
「あ、ありがとう」
席に座るや否や小梅さんから乾杯を求められます。
右手にグラスを持って、小梅さんのグラスにカチンと乾杯します。
「それで、さっき考えていたのはやっぱり副隊長のこと?」
「......っ!?」
ゲホッと私は咳き込みます。
いきなり自分の心を読まれていたように、核心を突かれたからです。
口に含んだチーズケーキをノンアルコールビールで流し込んでから答えます。
「うん...やっぱり私が副隊長だなんて...」
「そうかな?エリカさんも言ってたけど、本当に二年生みんなの意見だよ...?」
「そこを疑ってるわけじゃないんだけど...でも...」
ちょっぴりドキドキします。
嫌なドキドキです、心臓の妙な鼓動を感じてもう一度ノンアルコールビールを流し込みます。
「先輩たちの最後の大会を、それも一年生の私が潰して...それに黒森峰に泥を塗った形になって...」
「うん...確かにあの後一部の三年生の間ではみほさんに対する批判の声もあったのは事実だけど...」
「やっぱり...そうだよね...」
私は両手を膝の上に置いてうつむきます。
知ってたことだけど、やっぱり他の人の口から言われると、あの時の判断が間違いだったと思えてきます。
「でもね...」
良スレの予感
小梅さんは右手に持っていたグラスをテーブルに置いて、私の方をまっすぐ見て、目と目を合わせて言います。
「あの時、一年生のみほさんを副隊長にせざるを得なかった、その実力しかなかったって自分たちのせいだって先輩たち後悔してたよ」
「そ、そんな...」
「自分たちの実力が無かったのが原因なのに、結果はどうあれ努力して頑張った一年生を妬み嫌い文句を言うのはおかしいって...その結果みほさんが居られなくなる環境を作り出してしまって本当に申し訳ないことをしてしまった、って」
膝の上に置いた両手はいつの間にか握り拳に変わり、静かに震えていました。
もう小梅さんの方を向く事も出来ません。
涙をこらえるので精一杯です。
「エリカさんも最初はみほさんに対してツンツンしてたけど、大洗戦で負けてから彼女なりに何か学ぶことがあったんじゃないかな?口には出さないけど、きっと認めてるんだよ、みほさんのこと」
「その通りだな」
小梅さんの後に続いた声は私の後ろからのものでした。
私は思わず後ろを振り返ります。
目にいっぱい貯めた涙を憚らず、振り向きます。
「店員さんが教えてくれたんだ、一緒にいいか?」
「おねえ...ちゃん...」
声の主はお姉ちゃんでした。
ノンアルコールビールのグラスを片手に、小梅さんの隣の木製の椅子を引くと、静かに座りました。
「打てば必中、守りは固く、進む姿は乱れなし...そんな西住流の教えの元、黒森峰戦車道は一時代を築いて来た」
お姉ちゃんは座るや否やグラスを片手に持ったまま語り出します。
視線は私にも小梅さんにも向けられてはいません。
ただ、鋭くて熱い我が姉ながらかっこいい目つきです。
「それが故にマニュアルに囚われた堅苦しい戦車道になってしまっていた...他校は日々努力や研究を重ね、我が校を打ち破る事を目標に精進していたわけだが、私たちはどうだっただろうか...ただ、言われた練習を機械的にこなし、マニュアルを覚え、その型に当てはめて試合をする...今考えれば負けて当然だ、前進することはおろか、後退さえせず自ら考えることすら忘れていたわけだからな」
うーんこの優しい世界
パンチのあるおバカ短編も好きだが、こういう、しっぽりと展開していく長編も良いものだ。
そこまで言うと、お姉ちゃんは座って初めてグラスを傾けます。
一口飲んでから、視線を私に向けます。
「大洗女子に負けてから、黒森峰戦車道の空気は一変した。なあ、小梅」
「はい、そうですね」
フッと笑ってお姉ちゃんはまたグラスを傾けます。
私はそれに対しキョトンとした顔で答えます。
「みほ、今日のミーティングどうだった?」
「え...み、ミーティング...?」
いきなりの質問に私は答えられません。
正直、緊張のあまりなにも覚えていなかったからです。
あたふたする私の姿を見てお姉ちゃんが答えを教えてくれます。
「以前の黒森峰で、戦車道中に笑うことなんてあったか?強豪校、10連覇と言う肩書きを守るため、みんな死ぬ気で練習に励んでいた、もちろんミーティング中で笑いが起こることなんてなかっただろ?」
「あ、そう言えば...」
言われてみればその通りです。
みんなが真剣に、それこそあまり良い例えではないかも知れないけれど、相手を、人を殺すような目で練習に励んでいました。
「肩書きを守るために一生懸命練習に励むことは悪いことだとは思わない。だが、私は大洗女子と戦って本来の戦車道を見つめ直すきっかけを掴むことができた。それはきっと私だけでなく、エリカも小梅も、他の選手たちもそうだろう」
「みほさんたちがお互いを信じ合い、助け合い、廃校撤廃のためだったのに楽しそうに、それでいて一生懸命に戦う姿を見て、本当の戦車道ってこれなんだってみんな思えたんだよ」
お姉ちゃんに続き小梅さんも同意するように言います。
あの頃の私たちは、いえ少なくとも私はただただ一生懸命で、試合中にそんなこと思えたことなんてありませんでした。
「これから意見がぶつかることもあるかもしれないけれど、みほさんのおかげで今の黒森峰戦車道があるって誇っていいと思うよ」
「ああ、小梅の言う通りだ。みほは、みほの戦車道をしたらいい」
イケメン金髪王子須賀京太郎様に処女膜を捧げる麻子ちゃん早よ
お見合い編早よ
お姉ちゃんと小梅さんの最後の言葉に、こらえていた涙が一気に流れます。
もう、今日だけで何回泣かされるんだろう...
私はその場で周りを憚らず、号泣してしまいました。
小梅さんも、さすがのお姉ちゃんも動揺してしまったようで、とても慰められました。
それからは、戦車道の話はひとまず置いておいて、何気ない普通の会話が続きました。
まるで女子高生みたいに…ってこれ、たしか前にも言ったような…
それから一通りおしゃべりをして、それぞれの寮へと帰ります。
別れ際に二人にありがとうと伝えると、次は優勝したときにと言われました。
一人で寮まで歩いて帰ると、寮の入り口で優花里さんが一人で愛用のリュックサックを抱く形で座っていました。
私は慌てて優花里さんに駆け寄ります。
「優花里さんっ!?どうしたの!?」
「ああ、西住殿っ!お待ちしておりま…?」
優花里さんの大きな瞳に私の顔が映ります。
心配する私をよそに、優花里さんはきょとんとした顔でこう続けます。
「西住殿、なにかありましたか…?」
「いや、聞いているのは私なんだけど…どうしたの、なんで?」
「いえ…なんか、こう…うまく言えないのですが…」
リュックサックを抱いたまま、ガバッと立ち上がってにっこりと笑う優花里さん。
ちょっとびっくりしてのけぞる私。
「すっきりした顔になられましたね!」
「そう…かな…?じゃなくて、何かあったの優花里さん!?」
「ええぇーっとでありますね…」
そう言うと抱いていたリュックサックをガサゴソとあさり始める優花里さん。
いったい何が出てくるんだろう…
「西住殿の黒森峰にお帰りなさい会を開こうとレーション各種を買い揃えて、待っていたんでありますよ!」
「もう、優花里さんったら…」
「ささ、参りましょう!」
そう言われて私は優花里さんい手を引かれ、階段を駆け上がります。
ちょっぴり痛いけど、ありがとね優花里さん…
「ささっ、こちらへ!」
と、優花里さんは自室の扉を開きます。
室内は真っ暗…、ちょっぴり怖いなと思ったそのときです。
室内からパンパンと言う爆発音と中に舞う紙ふぶき…
そして「西住さんおかえりなさい」とかかれた横断幕。
戦車道の同級生のみなさんでした。
それからは言うまでもありません、私の顔はまたしても涙でぐちゃぐちゃです。
本当に、優花里さんに友達が少なかったと言う事実が嘘だと思えるよ…
後から聞いた話だったのですが、お帰りなさい会を開くにあたって小梅さんが私がギクシャクしないようにまず話をしてからと提案してくれたそうです。
小梅さんも来てくれたらよかったのに…
本当に、小梅さん、優花里さん、それに同級生の戦車道のみなさん…ありがとね。
俺の住む世界も、このくらい優しい世界だったら良かったのに…
翌日、搭乗戦車が振り分けられます。
エリカさんは乗り慣れたティーガーⅡの隊長兼車長、お姉ちゃんも同じくティーガーⅡに、私はお姉ちゃんが隊長として乗っていたティーガーⅠに、優花里さんは私が無理を言って私のティーガーⅠに装填手として乗車してもらうことになりました。
国体戦車道大会での車両数は決勝戦以外は15両までの編成となってます。
エリカさん、小梅さん、私の各5両ずつの中隊を編成する作戦で戦い抜いていくそうです。
大会までは中隊に別れて練習を行い、週末には大会に参加しない主に1年生や引退した3年生も加わり、10両ずつの模擬戦を行います。
そんな模擬戦をお姉ちゃんと小梅さんチーム、エリカさんと私のチームで行ったとき事件は起きました。
前日の大雨で練習場は全体的にぬかるみの多い足場の悪い状態でした。
小梅さん、私がフラッグ車で行われた模擬戦は均衡した緊張感のある模擬戦でした。
残りの車両数は小梅さんチームが3両、私たちのチームが6両と倍の差がついていました。
ぬかるみのある場所で足を取られ動けなくなった私たちフラッグ車は小梅さんチームに一気に攻められます。
ですが、これは作戦であえてぬかるみにはまるように見せかけ、誘き寄せて周囲に隠れて配置している車両でえいってやっつける、プラウダ高校のような作戦でした。
ですがエリカさんから通信が入ります。
「ヤークトティーガー前へ!フラッグ車を守りなさい!」
「まっ、待ってください!」
重戦車ヤークトティーガーがその厚い装甲を活かし、盾になります。
盾になるヤークトティーガーがもちろん集中砲火を浴びて、白旗が上がります。
「しゅ、周囲の皆さん発砲を始めてください...!」
小梅さんチームは周囲の車両に気づき、一気に押し切ってきます。
慌てて押し切ってきたこともあって指揮が混乱し、なんとか勝つことができました。
ただ、ヤークトティーガーに乗車していた皆さんが模擬戦とは言え心配です。
模擬戦が終わって、ヤークトティーガーの皆さんに声をかけます。
「大丈夫だった...?」
「大丈夫ですよ!ヤークトの装甲は厚いですから!」
私はホッと胸を撫で下ろします。
確かにヤークトティーガーはエリカさんの中隊の車両でした。
でも、私はちょっぴり納得がいきません。
「エリカさん、どうしてあそこでヤークトを...?」
「決まってるじゃない、一気に攻め立てる相手からフラッグ車を守るためよ」
「でも、作戦はそういう作戦ではなかったはずです」
「はあ?フラッグ車が落ちた時点で試合は終了なのよ、あなたも分かっているでしょ?」
国体戦車道大会のルールも殲滅戦ではなくフラッグ戦です。
それは分かっています、でも...
「あの場面で無理をしてヤークトを盾に使うより、包囲を縮めて一気に叩けていたと思います...」
「まだそんな甘いこと言っているの!?いい?戦いにはいつだって多少のリスクが...」
「それくらいにしておけ、エリカ」
熱くなるエリカさんを、小梅さんとやってきたお姉ちゃんが制します。
小梅さんは苦笑いでこちらを見ています。
「エリカの言いたいことも分かるし、みほの言いたいことも分かる、意見がぶつかる事はいいことだ、よく話し合っておけ」
「はい...」
私とエリカさんはうつむいて返事をします。
その日、結局もう一度話し合われる事はありませんでした。
私は荷物をまとめて校門を出たところで、忘れ物に気づいて戦車道のミーティングルームに戻ります。
ミーティングルームの扉に手をかけた時、中から話し声が聞こえてきます。
「あの時、無理してヤークトを盾に使わなくてもよかったんじゃないかな?」
「あなたもあの子も甘いのよ、考え方が」
「そうかな...私たちは周囲を包囲されている事に気づいてはいたけどあそこまで早く攻められるとは思ってなかったし、ヤークトが入ってきたことで指揮が混乱してしまったのは私のまとめる力がなかっただけで、みほさんの作戦なら押し切ることができたかもだよ」
その声は小梅さんとエリカさんでした。
私は扉に手をかけたまま、立ち聞きします。
ちょっと性格悪いかな...
「絶対に、絶対に次の大会は優勝したいの...どんな手を使っても、どんなにみんなに批判されても」
エリカさんの低く、重い声が聞こえてきます。
ドア越しでも、エリカさんの表情が想像できる声でした。
「どうしてそこまで勝利にこだわるの?」
まるで私の疑問を肩代わりしたように小梅さんが尋ねます。
どんな手を使っても...
どんなにみんなに批判されても...
そこまでエリカさんを動かす理由が私も知りたかったんです。
「隊長と戦える試合が最後だから...笑ってこの黒森峰を引退してほしい...それに」
「それに...?」
「隊長を任せてくれた隊長に、『お前達なら大丈夫だ』って安心してほしいから...」
次の瞬間、私は思わず扉を勢いよく開け放ってしまいました。
二人のビックリした表情に、私もビックリしてしまいます。
ちょっと勢いつけすぎたかな...
「なっ...あなたねっ!どこから聞いてたの...」
「え、えと...それは...」
食らいつく様な勢いでエリカさんが近ずいて来ます。
正直ちょっぴり恐かったです。
「まあまあ逸見さん落ち着いて...」
「あのねっ!エリカさん...今日はごめんなさい...もっと副隊長としての自覚を持つべきだった...」
「あなたねっ...」
エリカさんは私の両肩を鷲掴みにします。
その手は少し震えているようでした。
咄嗟に小梅さんが私とエリカさんの間に入って、エリカさんを制します。
私の両肩から離れたエリカさんの手はぶらりと垂れ下がります。
「私こそ...悪かったわ...あの模擬戦はあなたが隊長だったのに、なんの相談も無しに...」
エリカさんはうつむいて、私と小梅さんから目をそらして、そう言いました。
小梅さんはホッとした顔をしてニッコリ微笑みます。
「そ、そんな...私こそエリカさんの気持ち分かってあげられなくてごめんなさい...」
「いいのよ...でも、今度の試合は絶対に勝つ...絶対に優勝する、いいわね!?」
「もちろん!私もエリカさんと同じ気持ちだから!」
「試合によってはフラッグ車として出てもらうこともあるから、覚悟しなさい!」
エリカさんはニヤリと笑って私を指差します。
その日から、良き友達、良き仲間、そして良きライバルとして、互いに互いを支え合い、時に指摘し合い、たまに(基本的に私だけ)罵られ、鍛錬を積みました。
そして明日、いよいよ全国国体戦車道大会が始まります。
更新遅くなってすみません
一応、ここまでで前半終了ですが書き溜め分が無くなってしまいました
書くペースが遅いので小出しする感じになっていますが、それでも無くなってしまいました
後半分を少し書き溜めしてから更新を再開します
申し訳ありません
乙乙です!
乙です。
1週間程度ならば余裕で待てますので書き溜め頑張って下され。
乙。なら俺は2週間までなら待つからがんばれ
乙です
楽しみにしてます!
全国国民体育大会戦車道大会、通称国体は秋に行われる高校生戦車道二大大会の一つです。
もう一つは大洗女子学園の生徒として戦った夏の大会です。
夏の大会を最後に三年生は引退し、新チームとして挑むことになる国体ですが、お姉ちゃんの様に優秀な選手や大学でも戦車道をする選手はこの国体にも参加するのが通例になっています。
今日対するエキシビジョンでお世話になった知波単学園は新チームでこの大会に参加しています。
「あっ、西住さん!お久しぶりであります!」
一回戦の会場で、試合開始前に声をかけられました。
長い黒髪がとってもきれいな、知波単学園体長の西さんです。
相変わらずというかなんと言うか、笑顔で敬礼して声をかけてくれました。
「お久しぶりです、西さん」
「大洗女子と共に戦った聖グロリアーナとプラウダ連合チーム戦以来でありますな…あ」
そこまで言った後に、西さんは顔を曇らせます。
私はきょとんとして西さんの顔を見つめます。
「あの…大洗女子学園は…大変残念です…」
「ああ…いえ、気にしないでください。仕方の無いことですよ」
すみません、としゅんとした顔をしながら西さんは頭を下げます。
慌てて私は顔を上げてくださいと言いました。
「しかし、西住さんは黒森峰に行かれたのですね」
「はい、他の転校先の学校もあったんですけど、戻った形になっちゃいまして…」
「そうでしたか。私も久しぶりにお会いできて嬉しいであります」
そう言って敬礼をする西さんの会話の中に不思議な点がありました。
西さんは“私も”と言ったのです。
私は西さんに尋ねました。
「ああ、西住さんはまだお知りではなかったのですね…と言う事はまだお会いになってない…」
「えと、と言いますと…?」
「おーいっ!福田はいるかぁー!?」
くるりと私に背を向け、西さんは知波単学園の集団が居るほうを向き大声で手を振ります。
すると集団の中から、一際背の低いお下げで眼鏡の女の子が駆け寄ってきます。
「す、すみません西体長っ…どうされたでありますかっ!?」
「ちょっと福ちゃん、まだバレーの続きなのにいきなり駆け出してどうしたのさ」
あっ!と私は思わず声を上げてしまいました。
それは紛れも無く、アヒルさんチームのバレー部の皆さんでした。
「バレーボールと言うものがあんなに過酷だとは思わなかったであります!大体、一方的に顔面にボールをぶつけられるだけのスポーツなど…」
「いやぁー、福ちゃんがしっかり受け止めてくれないからさぁー」
おおっ!
バレー部の4人は知波単か
バレー部は八九式だったからねぇ。
知波単が丁度いいか。
典子の胃に穴が空きそうだが
しかし皆楽しくやってんのは若干寂しい
バレー部と知波単は相性抜群すぎる…w
福田さんの隣で笑顔いっぱいの部長だった磯辺さんは頭をかきながら答えています。
それに対し、地団駄を踏みながら半べそをかいて怒る福田さん。
ちなみに磯部さん以外の三人は私に気付いているようでしたが、磯部さんがいつ気付くか、そしてその反応を見るがために二人の後ろでクスクス笑っています。
「おい磯辺…今日はバレーではなく戦車道の大会だと言っただろう…福田も眼鏡をしっかりかけ直せ」
「えー、でも私たちは心にいつでもバレーボールをモットーにやっていますからっ!」
「はあー…それはそうと、久しぶりじゃないのか磯辺」
久しぶり?誰が?そう呟いてようやく磯辺さんと目が合いました。
あっ!と磯辺さんの声が聞けた瞬間、私と残りのバレー部の三人で声を出して笑います。
「西住隊長っ!?どうしてっ…って言うかその服は!?…じゃなかった、いつから!?」
「最初からここに居たよ、全然気付かないんだもん磯辺さん」
「あ、私だけじゃないんですよほら他の三人も一緒で…」
磯辺さんはそう言うと後ろを振り返り、バレー部の三人を指差します。
指を指されて、三人はよりいっそう大きく笑います。
「部長、ぜんっぜん気付かないんですもん」
「私たちは最初から気付いてましたよ」
「そーですよ、部長ずっと福田ちゃんとバレーコントしてて」
気付いてたなら教えてくれ、と今度は磯辺さんが地団駄を踏みます。
その様子を見て私と西さんもよりいっそう大きな声で笑います。
「西住隊長が黒森峰の服を着ていると言うことは、今日はライバルとして戦うんだな…」
磯辺さんがボソッとそう呟きました。
心がチクリと痛みます。
そして改めて知波単学園のジャケットを着たアヒルさんチームの皆さんを見ると、少し泣きそうになってしまいました。
「そうだな…だが、試合は試合だ。でも、昨日の敵は今日の盟友と言うだろう」
西さんはにっこり笑って磯辺さんを見てそう言います。
それから私に向き直って同じ笑顔をくれます。
「よしっ、バレー部の力を西住隊長に見せてやれっ!バレー部ーぅ…」
磯辺さんがそう言うと、他の三人が磯辺さんの周りに集まって来ました。
そしてみんな揃って大きな声で、
「「「「ファイトーっ!!!」」」」
いつものやつです、不思議と元気がもらえます。
福田さんは相変わらずムスッとした表情でそれを眺めていました。
「ほら、福ちゃんも一緒に…」
「絶対嫌でありますっ!大体、バレー部じゃないであります!」
また大きな笑いが起きました。
その後、西さん、磯辺さん、福田さん、近藤さん、河西さん、佐々木さんによろしくねと言って試合の待機位置へと向かいます。
いいですね
試合はこう言ってはなんですけど、黒森峰の一方的な展開になりました。
磯辺さん率いるアヒルさんチームの皆さんに二両、そして今や知波単名物となったと言われる総突貫で二両、合計四両はやられましたが、エリカさんの慌てず的確な指示のお陰で危なげなく初戦をものにしました。
ただ、当のエリカさんは四両も撃破されてしまったことに多少の不満と、自分自身の指示の判断を悔やんでいるようでした。
私自身、撃破されることは仕方ないと思うし、むしろ四両の被害で殲滅戦ではなく、フラッグ戦の試合で全車両を撃破出来たことは十分すぎる戦果だと思いました。
エリカさんは大体毎回こんな感じなので、私も周りも特にフォローは入れません。
お姉ちゃんでさえも「そうだな」の一点張りです。
でも、これは決して煙たがっている訳ではなく、エリカさんの向上心をみんな認めているからです、知ってのことなのです。
少なからず、そんなエリカさんに憧れる後輩もいると聞きます。
私自身もエリカさんのあの向上心はちょっぴり羨ましいです。
試合後のミーティングの後、優花里さんが私とエリカさんのところへやって来ました。
「先ほど二回戦の抽選がありまして、次の対戦相手の発表がありました」
「さすがだね優花里さん」
「はっ…ま、また西住殿に褒められてしまいまし…」
「いいから早くいいなさい…!」
エリカさんは優花里さんをギロリと睨みます。
その顔つきに思わずビクッとなってしゅんとなる優花里さん、エリカさんもそんなに睨まなくても…
「え、えぇーっと…次の相手はアンツィオ高校のようですね」
「アンツィオ高校…アンチョビさんか…」
「懐かしいでありますね!」
アンツィオ高校…
それは、全国戦車道大会の二回戦で戦った高校です。
知波単学園との試合前もそうでしたが、最近ことあるごとに大洗女子学園でもことを思い出してしまいます。
いけないな、と思っているとエリカさんの声で今は黒森峰なんだと現実に引き戻されます。
「アンツィオ高校はたしか…イタリアの戦車を使う高校だったわよね?」
「そうであります!豆戦車ことCV-33、カルロベローチェの軽快な走りとその機動力を活かした…」
「他の戦車は?」
優花里さんがカルロベローチェの話で盛り上がろうとしているところに蓋をするようにエリカさんが話をさえぎります。
ちゃんと聞いてあげればいいのに、と私は少しだけ苦笑いします。
優花里さんはがっかりした顔で、質問に答えます。
「CV-33が大多数を占めていますが、他にはM41型セモヴェンテ…それと重戦車のP40ですね…」
「わかったわ、もう下がっていいわよ」
「ああぁー、西住殿ぉぉぉー…逸見殿に不当な扱いを受けましたぁぁぁ…」
優花里さんが私に泣きついてきます。
それを見てエリカさんはニヤリと不敵な笑みを浮かべます。
「後で戦車の話、しようね」
「ああぁー、さすが西住殿ですぅぅ…逸見殿とは違いま…」
「ちょっとあなた、気持ちが変わったわ、二人で反省会する?」
「か、勘弁してくださいでありますぅー…」
一回戦の知波単学園との試合の三日後、二回戦のアンツィオ高校との試合があります。
試合の翌日はミーティングが行われました。
チーム全体としての反省点、それから各中隊に分かれての細かいミーティング。
小梅さんが言っていたように昔と違って和気藹々とした雰囲気の中でも、内容はとても締まったミーティングが行われました。
その翌日には、前日から戦車の整備を行う機甲科の整備部門を担当する方々に混じり、各戦車の調整を行いました。
ここでは優花里さんの戦車トークが炸裂です。
整備部門の担当の方顔負けのマニアックな知識が次から次へと披露されます。
試合を翌日に控えた試合前日は陣形や作戦の入念な確認と、練習後に再び細々とした整備に時間を当てました。
黒森峰戦車道では日々その日の活動内容を日誌にまとめ、保管する事が決まりになっています。
最終日の担当は私、活動内容の欄に作戦内容の確認と記入し、改行して戦車整備と書き込みます。
最後に記入者の欄に西住みほと書いて、日誌の棚にしまいます。
先ほどまで騒がしかったミーティングルームも今では静まり返ってしんとしています。
そんなミーティングルームを後にしたところでエリカさんとすれ違います。
「あなたまだいたの?」
「うん、日誌の記入があったから。エリカさんは?」
戸締りよ、とエリカさんは言うとポケットから鍵を取り出しミーティングルームの扉に鍵ををかけます。
鍵をかけ終わると、左手に持っていた校章の入った黒のカバンに鍵をしまって、エリカさんは私に向き直ります。
「あなた、少し時間ある?」
「う、うん...問題ないけど...?」
「そう、なら付き合いなさい」
そう言うと、そそくさと歩き出すエリカさん。
慌てて私はエリカさんの後ろについて行きます。
「それにしても、エリカさんが誘ってくれるなんて...」
「なに、何か文句ある?」
少しにやけたのかな、私の顔を見てムスッとして答えるエリカさん。
ちょっぴり嬉しくて、と答えるとエリカさんは何も言わずに歩く速度を上げます。
エリカさんと向かったのは、小梅さんに誘われた時と同じお店でした。
学校からも近いし、みんなよく利用するお店だったので落ち着く店です。
いつもより少し遅い時間という事もあって、小梅さんと来た時よりも店内は落ち着いていて、本来の雰囲気が漂っています。
「あなたは何にするの?」
注文票とにらめっこするエリカさんに尋ねられ、私は前回と同じくノンアルコールビールとチーズケーキを注文します。
エリカさんはコーヒーとチョコレートケーキを注文します。
ちょっぴり大人っぽいです。
「あっ、お金...」
「今日は私が付き合わせたんだから気にしないで」
「いやでも...」
「何か文句ある?」
前回も小梅さんに出してもらったから、と言うとならなおさらよと言われました。
お礼を言って私は出し掛けた財布をバックにしまいます。
「じゃあ今度は小梅さんと三人で、優勝祝いだね」
「あなたの奢りで戦車道全員貸切でお願いするわ」
「えぇぇー...!?」
ニヤリと笑うエリカさん。
何だか冗談に聞こえないよ...
通された席に座って無言のまま、一口私はノンアルコールビールを、エリカさんはコーヒーを飲みます。
「どう、学校には慣れたかしら?」
沈黙を破ったのはエリカさんの方でした。
しかも、ちょっぴり意外な質問で。
「うん、みんな仲良くしてくれるし優花里さんもいるし...もちろんエリカさんも」
「秋山優花里はどう?」
気恥ずかしそうに私の話題と目を逸らすエリカさん。
フフッと自然と笑みがこぼれます。
「優花里さんもみんなに馴染んでいるみたいだよ」
「そう」
「心配してくれて、ありがとね」
「べ、別にそんなんじゃないわよ!ただ...そう、疑問に思っただけよ!」
照れ隠し、なのかな?
エリカさんは慌てて答えます。
コーヒーカップを握り直し、勢いよくカップを傾けて、
「熱っ...!!」
もう、慌てすぎだよエリカさん。
手に持ったコーヒーカップをコースターに起き、急に真剣な表情を浮かべ、エリカさんは私の目を見て尋ねました。
「もしも...もし、また去年の決勝のようなことがあったらあなたはどうする?」
どうしてそんなことを聞くのか、私は不思議に思いました。
でも、手に持ったままだったグラスを私もコースターの上に置いてエリカさんの目を見て答えます。
「きっと、また助けると...思うかな...」
そう、とボソッと答えるとエリカさんは顔を伏せます。
前髪に隠れてエリカさんの視線は見えません。
「どうしてそんなこと聞くの?」
私はエリカさんを見たまま聞きます。
でもエリカさんは顔を上げずに伏せたまま、視線もおそらく上げずに低い声で答えます。
「別に意味なんて無いわよ...ただ、聞いてみたくなっただけよ」
なんとなく、ですけどその答えは何かを隠した答えだったと思います。
私はそれ以上追求することはしませんでした。
代わりにこう言います。
「お姉ちゃんがね、私は私の戦車道をしたらいいって言ってくれたんだ...だから、エリカさんもエリカさんの戦車道をしたらいいと思う...」
そう伝えてもエリカさんは顔を上げません。
やっぱり何か悩んでいるのかな...
「ちょ、ちょうどこの店のあそこらへんの席で...」
と言うところまで言うと、ガバッとすごい勢いでエリカさんは顔を上げます。
身を乗り出して、私に食いかかる勢いで一気にエリカさんの顔が近づきます。
「隊長に!?いや、隊長も来たの!?あなたっ、ズルイわよ!」
「ええー...そこなの...?」
後に聞いた話だと、小梅さんに誘われた日エリカさんも誘われたそうです。
ですが、エリカさんは大会への手続き等の処理が残っていたために参加できなかったそうです。
あーあ、お姉ちゃんが言うとかっこいいセリフなのに、私が言ったらこんな感じになるのか...
と、ちょっぴり残念な気もしました。
ですが、エリカさんはなにやら吹っ切れた感じのようでしたので、結果オーライです。
それから元気を取り戻したエリカさんはとにかくお姉ちゃんの話ばかりでした。
お姉ちゃんのかっこいいところ、優しいところ...
自分のお姉ちゃんのことなのに、なんだか私も嬉しくなります。
それが吹っ切れてのものなのか、それとも本心を隠すためなのかは結局のところ分かりませんでした。
結局9割型お姉ちゃんの話で終わりを迎え、それぞれ帰宅します。
お礼を言って、それから...
「明日はよろしくね!」
「なに言ってるの、あなたも副隊長としてしっかり中隊をまとめなさい」
「うん!絶対勝とうね!」
エリカさんは不敵な笑みを浮かべます。
そして私を指差して声高々に言います。
「絶対優勝よ」
私も声高々に、もちろん!と答えて手を振り別れました。
いよいよ明日は二回戦、対する相手はアンツィオ高校です!
乙です。
みほも結構なじんできましたね。
アンツィオは誰が行ったんだろう…
やっぱ沙織と…、あと1年かな?
期待。
アンツィオといえば食
食といったらあのひとだろ
食べ物が美味しいし、CVが大好きで生け花の器にしたいとかいってたしねぇ
しかし華がアンツィオに行ったら食事代が…誰かがストッパーにならないとな
あとはひなちゃんがいるからカエサルかな?ほかの歴女3人は付いていくかどうかはわからんけど
乙です
みほもエリカと良い関係でよかった
次はアンツィオか…戦車の性能が圧倒的だけどどうなるかな?
アンツィオにはたかちゃんは居そうだが他の3人は居るかな?
試合会場に到着するやいなや、なにやら美味しそうな匂いが食欲を刺激します。
やっぱりと言うか案の定と言うか、予想通りといいますか...
会場には所狭しとアンツィオ高校の生徒がお店を出店しています。
パスタにピザ、デザートのお店など戦車道の大会と言うよりは軽いお祭りのようです。
「アンツィオ高校はいつもこんな感じらしいですよ」
試合開始時間が一時間程度遅れるとアナウンスがあったので、会場内を優花里さんとぶらぶらします。
特に行きたい場所もあるわけではなかったので、本当の意味でぶらぶらです。
一応、財布をポケットに忍ばせてはいます。
「ペパロニ殿の作るナポリタンは絶品なんですよ!」
「すごく美味しそうだったもんね!」
優花里さんがトロンとした顔で、アンツィオ高校の偵察に行った時に食べたペパロニさんのナポリタンを語ります。
うーん、思い出したらお腹が減って来ちゃった。
試合開始までまだまだ時間があると言うことで、優花里さんおすすめのペパロニさんのアンツィオ特性ナポリタンを探しに行くことにします。
広い会場内を歩いていると一際大きな声を張り上げてお客さんを集めているお店がありました。
手際の良いその仕事は、動画で見たそれです。
さあ、誰が来るのか・・・
「アンツィオ名物、特性ナポリタンだよーっ、ささっ並んだ並んだーっ!!」
次々とお客さんが吸い込まれるようにして行列を作って行きます。
手早いその仕事ぶりは、まるで本場の料理人のようで驚きます。
私も優花里さんとその列に並びます。
たくさんの人が並んだ行列も、あっという間にはけていきます。
あの仕事ぶりを見るとそれも納得です。
「はいはいっ、次々っ!」
ペパロニさんの掛け声とともに、私たちの番がやってきます。
正面に立つ形になったのですが、ペパロニさんはその手を休めることはしません。
その手は忙しなく動き続け、パスタをサラッと鍋に投入します。
「あれっ、アンタたちは」
「お久しぶりです、ペパロニ殿!」
チラリと私と優花里さんを横目で見たペパロニさんは、その時初めて手を止めました。
ひたいの汗を手の甲で拭い、蛇口を捻って手を洗います。
「たしか...大洗の秋山優花里と西住みほ!...だったかな?」
「正解であります!」
優花里さんの顔が、それこそお花が咲いたようにパッと明るくなります。
それとは対照的に、ペパロニさんはキョトンとした表情で私たちの顔を見つめます。
「いや、なんでまたそれは黒森峰のジャケットなのに...コスプレかなにかかい?」
「違いますよぉ...我々は廃校に伴って黒森峰に転校したんでありますよぉ...」
優花里さんは悲しげな表情でそう答えます。
それにしてもコスプレって...
ペパロニさんはそれを聞いてビックリした表情で驚きます。
まるで大洗女子学園が廃校になったこと自体初耳だったかのように。
「えっ!?廃校っ!?そんなことドゥーチェ言ってたっけなぁー...」
その驚き具合を見る限り、初耳のようでした。
目を大きく見開いて、あんぐりと口を広げて頭の中の記憶を探るペパロニさん。
一応は全国ニュースになってたんだけどなぁ...
戦車道優勝校・大洗女子学園廃校決定、って...
「あっ、いや...そーいや言ってたな!あれ、ドゥーチェだったかな...ま、いっか!」
頭をかきながら、ニシシっと笑うペパロニさん。
食べていきなよ!とそう言って、調理に戻ります。
大ぶりのフライパンに動画で言っていたようにケチケチせずオリーブオイルを流し込み、お肉を豪快に炒めます。
新鮮な卵を片手で割って手早くかき混ぜます。
そこからアンツィオ特性トマトペーストが加わると、一気に食欲を刺激する香りが辺りに広がります。
鉄板に乗ってやってきたパスタに合わせて、具材をパスタの上に盛りつけます。
「はいよっ、300万リラ」
「ええーっ、いつの為替レートですか!?」
と、優花里さんがお決まりのツッコミを入れます。
三人の間に笑いが起きます。
そこからもう一人前のナポリタンの調理をペパロニさんが始めた時に、後ろから声をかけられました。
会長は自責の念で自殺してそう
桃ちゃんあたりは、西住が悪いと八つ当たりしそうな雰囲気しかぬい
「グデーリアン...?」
思わず、えっ?と声を漏らして私たちは振り向きます。
そこに立っていたのは紛れもなくエルヴィンさん、左衛門佐さん、おりょうさんです。
「エルヴィン殿っ!?左衛門佐殿に、おりょう殿まで!?」
「久しぶりだなグデーリアン...ん?隣に居るのは...」
「お久しぶりです、エルヴィンさん」
優花里さんはちょっぴり涙を浮かべて飛び跳ねて再会を喜びます。
私はペコリと頭を下げると、三人は驚いた顔をして大きな声で、
「西住隊長っ!?」
と、声を揃えてそう言います。
驚いた三人の顔を見て、私はにっこり笑います。
それと同時に、三人が着るジャケットはアンツィオ高校のパンツァージャケットであることに気がつきます。
「まさか西住隊長とグデーリアンに会えるなんて思ってもみなかった」
「私たちも嬉しいであります!ね、西住殿っ!」
「うん!みなさん元気そうでなによ...」
と、そこまで言いかけたところで、私はあることに気がつきます。
やはりアンツィオにはカバさんチームが来てたか
カエサルはひなちゃんと一緒かな?
エルヴィンさん、左衛門佐さん、おりょうさん...
あれ、一人足りない...
最初から少し違和感はあったんですけど、改めて会話を交わすと違和感しかないような気がしてなりません。
「そう言えば、カエサルさんは?」
と、聞くと途端に三人は暗い顔をして俯いてしまいました。
あれ...何かまずいことを聞いちゃったかな...?
隣に居る優花里さんをチラッと横目で見ると、キョトンとした表情をしています。
優花里さんもカエサルさんの行方は知らないようです。
そんな重い空気を一変させたのは、ペパロニさんでした。
「そーいやー、転校してきた四人も大洗だったなー!ドゥーチェが言ってたな!ほら、ナポリタン五人前持ってきな!!」
ニシシっと笑ってペパロニさんが合計五人前のナポリタンを作ってくれました。
冷めるからお代はまた今度ー!と言って、店裏のテーブルに案内してくれました。
五人揃ってペパロニさんが作ってくれた特製ナポリタンを食べます。
「カエサルは、その...」
ナポリタンに舌鼓をうっていると、エルヴィンさんが低い声で語り始めました。
相変わらず暗い顔をされています。
もしかして、四人揃って転校できなかったのかな...
やってんのかな
そういえばカルパッチョさんもいないなぁ(棒読み)
「カエサルは、その...なんだ...」
「徳川家三代目将軍、徳川家光のようにな...」
エルヴィンさんに続いて左衛門佐さんが口を開きます。
カバさんチームお馴染みの歴史人物に例えるあれです。
「縁起でもないぜよ...ただ、二人は仲がいいだけぜよ...」
と、おりょうさん。
うーん、どんどん暗い方向に話が進んで行っているような...
その時です。
「もー、たかちゃんったら!」
「あはは、すぐひなちゃんは騙されるんだから!」
笑い声と共にアンツィオ高校のジャケットを来た女の子が二人、やって来ました。
ペパロニさんのナポリタンを持って店裏のテーブルにやって来たのはカエサルさんと、カルパッチョさんです。
二人はすぐに私と優花里さんに気がつきます。
「あれ、西住隊長!?どうしてここに!?」
カエサルさんは私たちの顔を見てびっくりしてあわや、手に持ったナポリタンを落としそうになります。
私はにっこり微笑んで、お久しぶりですと声をかけます。
「驚いたなぁー、まさか西住隊長とグデーリアンが黒森峰だなんて...」
「うん、私も驚いたよ。四人がアンツィオ高校にいるなんて」
そこから、七人でナポリタンを食べます。
転向後の話とか、アンツィオ高校での話、あとカエサルさんとカルパッチョさんの話とか...
カルパッチョさんまずいですよ
「そろそろ試合だし、集合場所に行きましょうか。エルヴィンさんも左衛門佐さんも、おりょうさんも遅れないように来てくださいね」
「そうだねひなちゃん。それじゃ西住隊長、試合は正々堂々いい試合を」
「うん、よろしくね」
ナポリタンを食べ終わって、カエサルさんとカルパッチョさんは一足先に待機場所へ向かいます。
二人の姿が見えなくなって、優花里さんがツンツンと私を突きます。
優花里さんの方を見ると、優花里さんは残された三人の方を見てと言わんばかりに視線を送ります。
そこにいたのはズンと重い空気を漂わせた三人でした。
そこで初めて三人の感情を理解した私は慌てて声をかけます。
「いや、ほら...二人は幼馴染なんだし、取られたとかそういうんじゃー...」
「「「はあぁぁぁ...」」」
逆効果でした。
三人の特大のため息です。
大丈夫かな、こんな調子で...
いよいよ、二回戦アンツィオ戦開幕です。
今気付いたけど、家光のように、ってことは、尻奉公のことか?
・・・イタリアにはな、試作戦車だが時速70キロもだした快速戦車がいるんだぜ・・・
試合の内容は...こう言ってはなんですが、圧勝でした。
一回戦には出場していたというP40の姿は無く、全15両中12両がカルロベローチェ、残りの3両はセモヴェンテと言う構成もあってか、黒森峰は一両の損害も出すことなく無傷で二回戦突破という結果になりました。
「いやぁー、まさか黒森峰に転向していたとは思わなかった。惨敗だが、いい試合だった」
試合後、アンチョビさんに声をかけられます。
両手で握手を求められます。
「いえ、こちらこそありがとうございました」
「ったく、P40があればもっとまともな試合が出来たのかもな」
ボソッと悔しそうに呟くアンチョビさん。
その後ろから頭の後ろをかきながら、ペパロニさんがやって来ました。
「P40、修理代が無くて間に合わなかったっすからねぇー」
「お前のせいだろ!!ったく、最後の試合だと言うのに...」
そうアンチョビさんが言うと、みるみるペパロニさんの表情が曇ります。
少し青ざめた感じが、と言うか血の気が完全に引いて涙を浮かべています。
「さ...いご...?」
「何度も言ってただろ!この試合が最後、私の高校戦車道の引退試合だって!ったく、ペパロニは...」
大きなため息をつきながらアンチョビさんはペパロニさんの表情にその時初めて気がつきます。
ペパロニさんのその表情を見たアンチョビさんは、慌てた表情に変わります。
ほ
「ぺ、ペパロニ...?」
「そんな...嫌だよドゥーチェ...嫌だ嫌だ嫌だ...!」
周りを憚らず泣きじゃくるペパロニさん。
ついに両手で顔を覆うようにして、大きな声をあげて泣き始めます。
それを見てアンチョビさんの目にも涙が溢れます。
「泣くな!そしてワガママを言うな!私だって...私だって嫌だ!」
「ドゥーチェより、もっとそれ以上に嫌だぁぁー...!」
そして二人は完全に抱き合って泣き叫びます。
野球で例えるならば最後の夏の甲子園、その試合が終わってしまったのです。
この大会が終われば、今シーズンの高校戦車道大会は終わりを迎えます。
それはつまり、アンチョビさんと共に戦える試合がもう無いことを意味します。
「やめろ、ペパロニ!私は...私は、お前達と共に過ごせたこの戦車道に未練なんてない!!」
「まだドゥーチェとやりたい事たくさんあったのに...!パスタ茹でてピザ作って食べて、他にもたくさん...」
「戦車道関係ないじゃないか!」
いつの間にか二人は笑顔になっていました。
ですが、目にはたくさんの溢れる涙。
なんだかとっても切ない気持ちになります。
良いですね
乙です
待ってた!
しかし沙織さん当たりは連絡先教えてくると思うが
黒森峰、携帯、PC禁止で外部との連絡は寮の古い黒電話一丁
事前申請して許可がおりないと使用不可とか
「随分と慕われていたようだな...私もあんな風にここを去れたらいいな」
「お姉ちゃん...」
フフっと笑ってお姉ちゃんが後ろからやって来ます。
そして、私の肩にポンっと手を乗せて、
「だが私はまだ引退するつもりもないし、泣いて引退するつもりもない」
「うん、分かってる」
頼むぞ、とそう言い残しお姉ちゃんは去って行きました。
その後、アンツィオ高校は盛大にアンチョビさんのお疲れ様会を夜遅くまで開き、大会関係者の方から盛大に怒られたそうです。
試合の翌日、知波単学園戦の後と同じように反省会、もといミーティングが行われます。
とは言っても、無傷で二回戦突破と言うこともあってか、これと言って反省点があるわけではありません。
どちらかと言うと、次の三回戦、準々決勝の対戦相手の発表とその相手に対する作戦内容の確定がミーティングの主題です。
「次の三回戦、準々決勝の相手が決まった」
全員が集合した後、エリカさんが足早に壇上に上がります。
空気がピンと張りつめます。
「次の相手は、サンダース大付属。優勝候補の一角よ」
サンダース大付属...
ケイさん率いるアメリカの戦車を中心に構成された、リッチな学校です。
裕福さもさることながら、優勝候補と言われるだけあって実力も兼ね揃えた学校です。
「これまでの一回戦、二回戦の情報によると...M4シャーマンを中心にM4A1シャーマン、あとファイアフライの構成のようね」
どうやら、大洗女子学園と対した時と同じ構成のようです。
この中でも特に注意すべき戦車は...言うまでもありません。
「特に今大会では一回戦、二回戦共にファイアフライの活躍がめざましいようね...秋山優花里!」
「はいっ!一回戦、二回戦の情報によると...合計30両中、総撃破数の21両中、三分の二に当たる13両が二両投入されたファイアフライによって撃破されているであります!M4シャーマンを使った誘導作戦が今回のサンダース大の作戦のようでありまして、ファイアフライの有効射程距離が約3000mなのでその範囲内に誘導し撃破する、と言った作戦でありますね。ちなみに、ファイアフライはアメリカで開発されたシャーマンをイギリスが独自に改修を行い17ポンド砲を...」
「そこまでで結構よ」
名前を呼ばれた私の隣に座っていた優花里さんがサンダース大付属のファイアフライについての説明を行います。
マニアックな話に入る前にエリカさんが話に割って入ります。
しゅんと残念そうな顔をして静かに座る優花里さん。
なんだかんだこの二人は結構仲良しさんで、優花里さんはいつもエリカさんにいじられています。
「どこからそんな情報を仕入れて来たの?」
「はっ、西住殿!ファイアフライの話でありますか!?」
「いや...ファイアフライのマニアックな話の方じゃなくて...」
ミーティングの邪魔にならないように、小声で優花里の耳元で囁きます。
ファイアフライの話は前にも話してくれたよ優花里さん...
ミーティングの邪魔にならないように、小声で優花里の耳元で囁きます。
ファイアフライの話は前にも話してくれたよ優花里さん...
「戦車道新聞でありますよ、定期購読してるんですぅ!」
「あぁ...なるほど」
「あとでお見せしますねっ!あ、西住殿が一面でありましたよ」
え...?
私が...?
新聞の一面って言った?
急に顔が熱くなります。
「わっ、私が...?」
「はいっ!二回戦後のアンチョビさんと握手を交わすシーンが一面で、トップでした!」
顔から火が出そうとはこの事です。
なんなら湯気も上がって来そうです。
「ちょっと西住みほ!秋山優花里!話聞いてる!?」
エリカさんに名指しで怒られてしまいました。
この話はひとまず置いておいて、今はミーティングに集中します。
ミーティングが終わって、人数が減って来た頃に優花里さんが噂の戦車道新聞を持ってやって来ます。
もうその笑顔と言ったら、ニッコニコです...やめてよ優花里さん...
「これでありますよ、西住殿っ!」
優花里さんが言っていた通り、二回戦のアンツィオ高校戦の後、アンチョビさんと握手を交わす私が一面トップでデカデカと掲載されていました。
再び顔が熱くなります。
「『王者不在の国体高校戦車道大会、優勝候補はやはり黒森峰か!?』...ふーん、なんだか気に入らないわね」
「「っ...!?」」
後ろから音もなく忍び寄って来て新聞の見出しを読んだのはエリカさんでした。
その顔はムスッとしていて、言うまでもなく不満そうです。
慌てて優花里さんが話します。
「え、えと...対サンダース戦の情報収集であります!」
「だいたいなんで隊長じゃなくて、あなたの写真なのよ...」
「そこですか!?」
エリカさんの言葉に笑いながら仰け反る優花里さん。
その通りだよ...私じゃなくてお姉ちゃんだったらよかったのに...
「それにしても、2両で21両中13両撃破って凄いね」
さらに後ろからひょっこり顔をのぞかせてやって来たのは小梅さんです。
小梅さんも会話の中に入って来ます。
「サンダースにはナオミとか言う優秀な砲撃手が居たわよね?」
エリカさんは腕組みをして考えます。
大洗女子学園での戦いでも、ナオミさんの乗車するファイアフライに何両もやられました。
「ナオミさん以外にも優秀な砲撃手を育てたのかな?三軍まであるって聞いたことあるし、その選手がついに花開いたとかかな…?」
小梅さんも唸りながら考え込みます。
やはり、ナオミさん以外に優秀な砲撃手がいることは数字からして明確です。
最近みほ梅分が足りない
元大洗の人か?
砲撃の名手、サンダースは何もかもアメリカンサイズだから食べ物も当然アメリカンサイズ
つまり・・・
「西住殿がいれば敵無しですよねっ!ねっ、西住殿っ!」
「いやぁー…それはどうかなー…」
「そうよ、この子が一撃で撃破されるってことだってありえるんだから」
「なんですとっ!?」
「何?冷静な分析だと思うけど?」
「まあまあ、二人とも落ち着いて」
プンプンの優花里さんと、済ました顔のエリカさんを間に入ってなだめながら苦笑いする小梅さんです。
いつもの流れですね。
「まあ、みほ以外にも誰がいつ撃破されてもおかしくない。冷静な判断が勝敗を分けるだろう」
「お、お姉ちゃん!?」
「隊長っ!?」
どこからとも無く音もたてずにお姉ちゃんが後ろからやって来ました。
まったく気がつかなかった…
「隊長はやめろエリカ…私のことは、せめてさん付けか先輩にしてくれ」
「わかりました隊長!」
まったく変わってない…
これもいつものやつです。
そしていつものようにお姉ちゃんはため息を漏らします。
「ちょうどいい、明日の作戦について少し話し合いたいと思っていたところだった。このファイアフライだが…」
そこからお姉ちゃんも交えて、5人で明日の作戦の入念な話し合いが始まりました。
そしていよいよ準々決勝、相手は優勝候補の一角、サンダース大学付属高校です!
(○・▽・○)モチョダヨー
ddd
ほ
このスレも廃校になったのか・・・
まだだまだ終わらんよ
ho
まだかなー
ho
ho
ho
ho
ho
ho
更新途切れてしまいまして申し訳ありません
仕事の関係で急遽海外の方へ行っておりましたので、更新できませんでした
もう、読んでくださる方いらっしゃらないかもしれませんが、続き書かせてください
準々決勝の試合開始前、私の隣にいるのはお姉ちゃんでもなく優花里さんでもなく、エリカさんでも小梅さんでもなく、対戦相手のサンダース大付属の隊長ケイさんでした。
「まあまあ、ミホー!楽しんでってよ!」
バンバンと肩を叩かれる私...
私の前の大きな机の上に並べられているのはフライドチキンやポテトと言ったいかにもアメリカの食事と言った食べ物と2リットルのコーラ。
試合が始まる前にもかかわらず、すでにパーティがサンダース大付属の待機所では始まっていました。
そもそもなぜ私がサンダース大付属の待機所にいるかと言う話は、二時間前に遡ります。
その日、試合会場が近かったと言うこともあってか試合開始の三時間以上前に会場入りしました。
学園艦からティーガーⅠにティーガーⅡ、ヤークトティーガー、エレファント、マウス...
出場する全ての車両を会場に下ろします。
それから最終整備を済ませてもまだまだ時間が余ります。
作戦の最終確認を全体で行ってもまだ時間を持て余します。
「だいぶ時間余っちゃったね」
隣で待機している優花里さんにボソッと声をかけます。
私の声とは裏腹に、ウキウキした声で優花里さんは答えます。
「私はこの試合前のピンと張り詰めた空気も好きですよ!なにせ準々決勝ですからね、ベスト4を決める戦いですよ!」
優花里さんのその答えに、胸の辺りがキュッとなります。
胸に手を当てるとドキドキしていて、その鼓動が身体中に響いています。
緊張...してるのかな...
私は胸に手を当てたまま立ち上がります。
続き来てホント良かった
楽しみにしてたんよ
待ってた。乙。
大洗は潰れたけど、日本にとっては
解散したホワイトベース隊みたいな頼もしさを感じる
「ちょっと...散歩してくるね」
「え...あ、はい...私も付き合いましょうか?」
表情に出てたのかな...?
私の気持ちを汲み取るように優花里さんは不安げな顔で心配してくれます。
ううん大丈夫、と答えてそそくさとその場を立ち去ります。
心配かけちゃったかな。
でも、試合前に更に余計な心配をかけたくなくて一人で気持ちを落ち着かせに行きます。
波打つ鼓動を胸に、賑やかな会場を後にして拓けた道路に出ます。
両側にある少し寂しくなった木々を横目に、ゆっくり鼓動を落ち着けるように歩きます。
準々決勝、ベスト4...
優勝、引退...
いろんな言葉が頭の中を駆け巡ります。
優花里さん、エリカさん、小梅さん、お姉ちゃん...
みんなの顔が次々に思い浮かびます。
落ち着こうとする気持ちとは反対に、どんどん胸の鼓動は速さを増して、体中からその音が溢れ出てきそうです。
急にはっと我に帰ると、目の前にコンビニが見えて来ました。
とにかく何か飲み物でも、と思ってコンビニに駆け込みます。
勢いよく、コンビニに駆け込んでしまって入り口で買い物を済ませた方とぶつかってしまいました。
「ごっ、ごめんなさい...!!」
私は相手の顔も見ず、謝罪の弁を述べ深々と頭を下げます。
やっちゃった...
待ってた乙
「Wow!びっくりした、ミホじゃない!」
あれ、私の名前を...?
とっさに勢いよく顔を上げると、そこには笑顔で手をヒラヒラと振るケイさんがいました。
「どうしたの、そんなに慌てて?」
「いや、えっと...」
「立ち話もなんだし、外のベンチで話しましょ!」
とりあえずコンビニでお茶を買って、ケイさんの待つ外のベンチへと向かいます。
こっちこっちー!とケイさんは笑顔で大きく手を振ります。
ベンチに腰掛け、とりあえず一口買って来たお茶を流し込みます。
ふぅ、と息を吐くとケイさんはそんな私を見て心配そうに顔を覗き込みます。
「大丈夫?落ち着いた?」
「はい...大丈夫、です」
「そう、よかった!」
ニカッと笑って、手に持ったコーラの缶をプシュッと開けるケイさん。
それを一口飲むと、長い脚を組んでから、大空を見上げます。
「ミホがあんなに慌てるなんて珍しいわね」
「あはは...すみません」
「なんかあったの?」
視線はそのまま、ケイさんは私に問います。
私は素直に胸の内を語りました。
急に準々決勝という言葉を聞いて、優勝を意識して、お姉ちゃんが引退することを再認識して、勝手に緊張して...
それを聞いたケイさんは大笑いして笑い飛ばします。
「アッハハハハ!そんなことで悩んでんの!?」
「そ、そんなことって...」
「いい、ミホ?That's 戦車道!これは戦争じゃない、楽しんだ者がwinnerよ!」
その言葉を聞いて、正確にはその言葉を聞いてかどうかわからないけれど、私の鼓動はすっかりおさまっていました。
楽しんだ者が勝ち...
「それでもまだ不安?」
「いえ、だいぶ落ち着きました」
「そう...それはまだ本調子じゃないってことね」
そう言うとケイさんは、ポケットからケータイを取り出し素早く操作すると、それを耳に当てます。
言うまでもなく電話です。
しばらくするとケイさんの電話の相手が出たようで話し始めます。
「あ、アリサー?ええっとねー、今さっきのコンビニにいるんだけど、ちょっと迎えに来てくれない?そうそう、よろしく頼んだわよー」
「えと、じゃあそろそろ私は...」
お茶を手に持ったまま、私は立ち上がろうとしました。
ですが、私の腕をグッと掴んでそれをケイさんが阻止します。
「まあまあ、待ちなよミホ。なんなら送ってって上げるから。それに、一人で帰れる?ここからだと、黒森峰の待機所までだいぶあるよ?」
「そ、そうなんですか...?」
その疑問は送ってもらえることに対するものではなく、黒森峰の待機所からだいぶ離れていると言うことに対する疑問です。
そう言えば...
考え事をしていたせいで、帰り道がわかりません...
迷子です。
サンダースには誰が来てるんだろう…
どこで会えるんかな
そんな会話をしていると、ケネディジープに乗ったアリサさんがやって来ました。
聞いた話によると、一応会場内ではあるので運転許可が下りていることと、軍用車両であるため区分を戦車としているので運転できるそうです。
「さあ、ミホ!Here we Go!」
グイッと腕を引っ張られ、私はアリサさんの運転するケネディジープに(半ば強制的に)乗り込みます。
乗り込むとすぐにケイさんは、
「アリサ!飛ばして!!」
「Yes mum!」
「ちょっ...待って...いやぁぁぁぁぁ!!」
「アッハハハハ!さいっこうにExcitingね!」
と、言う風にして連れ去られて今に至るわけなんです。
さすがは三軍まであると聞くサンダース大付属、多くの選手がパーティを楽しんでいます。
「さあーミホ、楽しんでってー!」
「は、はぁ...」
「そうねー...気分が落ち込んだ時は...髪型でも変えてみたらどうかしら?ね、アリサ!」
ケイさんはそう言うと、アリサさんと私の両側に立ちます。
慌てて二人の顔を見る私、嫌な予感がします。
「行くわよ、アリサ」
「Yes mum!ヘアサロン車はあっちです」
「え、あ...いや、ちょっと...」
結局ズルズル引きずられるようにしてヘアサロン車まで連行されます。
戦車道の試合前に、しかも準々決勝の試合前にヘアサロンなんて...
と言うよりも、さすがはサンダース大付属と言ったところです。
ヘアサロン車に連れ込まれ、すぐに車内の椅子に座らされます。
椅子に座らされるや否や、隣にある小さなテーブルに氷の入ったストロー付きのお茶が準備されます。
もう美容室みたいです、ヘアサロン車だと言うことを忘れさせられます。
「そーいえば、オットボール軍曹は元気ー?」
「あ、優花里さんですか?はい、元気です」
「彼女のフワフワのあの髪はすごくcuteなのよね!」
「は、はぁ…はわわわぁ…」
ケイさんはそう言いながら、私の髪の両サイドをクシャクシャとして、頭を左右に振ります。
私はそのせいでうまく話せません。
「そうね!ミホとユカリはbest friendみたいだし、お揃いにしてみたらどうかしら!」
「え?あ、ちょっと…」
「さあ、決まったところで Let's go!」
ケイさんはそう言うと、自分のポケットからケータイを取り出し、すばやく操作して、画面を美容師に見せます。
それから、あっという間に美容師さんにカールヘアーアイロンでグルグルに髪の毛を巻かれます。
ほ、本当にこれで大丈夫なのかな…
そう思っていると、手早くヘアーワックスで髪の毛をグシャグシャにされたかと思うと…
「Wow!ミホ、すっごく似合ってるわよー!」
ho
本当に一瞬の出来事でした。
そのタイミングでケイさんが少し大きめの鏡を持ってやってきました。
通常美容室のいすの前には鏡があるのが普通なのですが、このヘアサロン車は目の前に外の風景が広がっています。
なので、私はケイさんの持ってきた鏡で初めてその自分の姿を見ることになりました。
その鏡に映った私の髪形は、まんま優花里さんの髪型そのものでした。
優花里さんの特徴でもある両サイドもそのまま再現されています。
「こ、これが…私…?」
なんだか本当に優花里さんになったみたいです。
自然と、いえ不思議と口元がほころんでしまいます。
そのときです。
胸のポケットがブルブルと震えているのに気がつきます。
「あ、電話…」
私はそう呟いて、胸のポケットからケータイを取り出します。
表面の表示には“優花里さん”の文字が表示されていました。
慌てて通話ボタンを押し、耳に受話器を当てます。
「も、もしもし…優花里さ…」
「西住殿ぉぉぉ!!どちらにおられるのですかぁぁぁ!?」
もうその声だけで優花里さんが慌てているのが想像できます。
髪の両サイドをクシャクシャにしてあちこちを駆け回って私の名前を叫びまわってそうな勢いです。
「お、落ち着いて優花里さ…」
と言ったその瞬間でした。
私の手の中にあったケータイはその中から無くなっていました。
はっと後ろを向くと、ケイさんが私のケータイに耳を当てていました。
保
ho
ho
ho
ho
ho
mo
ho
>>1以外の保守は月一でいいよ
保守
ほ
も
ho
mo
保守
このSS好きなんだがなぁ…
このまま落ちるの惜しいし
ハーメルンあたりに上げ直すとかどうですかね
作者さんもうここ見てないかもしれんけど
保守
保守
保守
保守
保守
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません