モバP「本とキノコの共通項」というSSの続編です
モバP「本とキノコの共通項」 - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1465021900/)
文香「もう少し…… ですね……」
駅前広場に置かれた時計台
それを見ながら、私はそう呟いた
時刻は10時29分
という事は、あと1分もしない内に来るという事でもある
そう…… 私の…… 大切な友人を乗せた電車が間も無く
文香「どうしましょう……」
私の胸は、期待や嬉しさ、そして不安や緊張が入り交じりながら、バクバクと脈打っていて
文香「ふぅー……」
と、心を落ち着けようと、静かに息を吐く
誰かと待ち合わせて遊びに行く
そういった経験が少ない故に、私の心は私が思っている以上にのぼせているらしい
そう言えば……
そう、昨日だって中々寝付けなかった
取り敢えず、心を落ち着かせようと本を手に取ってはみたものの、全然内容が頭の中に入ってこなくて
寝たのは結局、何時もの就寝時間よりも大幅に遅れてからで
「あのー……」
それに
服だってそうだ
何時もはそれほど気にしてない筈なのに、今日はどれを着ていくべきか酷く悩んだり
「文香さん?」
文香「……えっ?」
文香「……」
「……フヒ?」
文香「……」
文香「しょっ! 輝子さんっ!?」
輝子「えっ? は、はい、星輝子… ですよー?」
文香「え? え??」
輝子「……?」
文香「……あっ」
慌てて時計台に目を向けると、時刻は既に10時30分を過ぎていて
文香「で、電車…… 来てたんですね……」
輝子「あっ、はい… 今さっき」
文香「そうでしたか……」
文香「すみません…… 考え事をしていたもので……」
文香「気が付いたら…… 目の前に輝子さんがいらっしゃったもので…… つい…… 驚いてしまって」
文香「本当に…… ごめんなさい……」ペコリ
輝子「えっ? いやっ、気にしてませんからっ!」
文香「いえ…… わざわざお越し頂いたのに、このような真似をしてしまうなんて……」
輝子「フヒッ!? ほっ、本当に気にしてないんで!」
文香「ですが……」
輝子「そっ、それより、何時かみたいに、人目を集めちゃったみたいなので…」
文香「……あっ」
輝子さんの仰る通り、何人かの人が私達を遠慮がちに見ていて
文香「どうやら…… そうみたいですね……」
輝子「い、行きましょうか、文香さん」
輝子さんのその言葉を合図に
文香「そうですね……」
私達はそそくさとその場を立ち去るのだった
文香「あっ…… 輝子さん……」
輝子「フヒッ?」
文香「似合ってると…… 思います。そのお洋服」
文香「輝子さんの雰囲気にも合ってて…… その…… 凄く……可愛らしいですね……」
輝子「……えっ、あ、ど、どうもです」
輝子「で、でも、文香さんも、き、綺麗ですよ? 凄く」
参考画像:http://125.6.169.35/idolmaster/image_sp/card_flash/l/a883d6a1227bd31f1677b3b616b2c285.jpg
文香「……あ、ありがとうございます」
文香「……ふふっ」
輝子「……フヒッ」
文香「あの…… 本だけじゃなくて…… 今度は……」
輝子「う、うん、服とか見に行きましょうか」
文香「はい…… 是非…… そうしましょう」
文香(……あっ、でも)
輝子(……あっ、でも)
文香(お店…… どうしましょうか)
輝子(お店、どうしよう)
文香(もう少し…… そういったお店にも興味を持っていれば……)
輝子(私、そういうお店全然知らないし…… 非リアの悲しい生態…… だな。フヒ…)
??『うふふ』 ←二人の脳内に想起される優しくおっとりとした声(元読者モデル)
??『大丈夫ですよぉ』 ←それでいて包容力と母性を感じさせる声(元読者モデル)
文香(……あっ)
輝子(……あっ)
文香(まっ… まゆさんだ……!) ←ゴールドポインコ様降臨時のそれ
輝子(まっ… まゆさんだ……!) ←ゴールドポインコ様降臨時のそれ
文香(……よしっ)
輝子(……よしっ)
文香「私…… 良いお店知ってるんです……!」エヘン
輝子「わ、私、良いお店知ってるんです……!」エヘン
文香「えっ」
輝子「えっ」
文香「……」
輝子「……」
文香「そっ…… そうでしたか」
輝子「そ、そうなんですか」
文香(……やはり、交友関係の広い方は違いますね)
輝子(……流石大学生。私みたいな子供とは違うな… やっぱ)
……でも
文香「楽しみですね……」
輝子「うん… 早くまたオフが来ないかなって思ったり」
文香「ふふっ…… そうですね……」
本当に…… 楽しみです
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―――
―――
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文香「どうぞ…… お入りください……」
輝子「は、はい…… お邪魔… します」
輝子「……って」
輝子「あれ……?」
ガラーン
文香「あっ…… 今日は定休日だったので……」
輝子「あ、それで… お客さんの姿が…」
文香「……」
……開店していても、余り… 居なかったり…… するんです……
輝子「ふ、文香さん?」
文香「あ…… いえ…… 定休日以外は…… もう少しはいらっしゃるんですよ……? 本当…… ですから……」
輝子「え? あ、はい?」
輝子「……あ、そういえば、定休日が有る本屋さんて… 珍しいですよね?」
輝子「私が良く利用してる、その… つ、ツタヤとか、紀伊国屋とか、定休日無いですし… 多分」
文香「……ああ、なるほど」
文香「確かに…… 新本を取り扱う書店ですと…… 定休日を設けているケースは少ないかも知れません」
文香「ですが…… 古書店の場合はそうではなく…… 定休日を設けてるいるお店も多いんです……」
輝子「……??」
輝子「あの… それって、なんでですか…?」
文香「はい…… それはですね……」
文香「都内の神保町で…… 定期的に、古書組合の会員向けに古本市が行われていまして……」
輝子「……あっ、じゃあ、その古本市の開催日を… お店の定休日に充ててるってこと… ですか?」
輝子「ふ、古本屋の人が… 市に参加するから」
文香「はい…… その通りです」
文香「それで…… 実は…… 私の叔父も…… 今日はその古本市に行っていまして……」
輝子「そ、そうだったんですか…」
文香「……はい」
文香「叔父も…… 挨拶も出来ず申し訳ない…… と、申していました」ペコリ
輝子「フヒッ!? いやっ、寧ろ休業日にお邪魔してる方が申し訳ないと言うか、ご、ごめんなさい!」ペコペコ
文香「いえ…… こちらこそ輝子さんには申し訳ない事をしてしまったと……」
文香「……それで」
文香「叔父が…… 輝子さんに渡したい物が有るようで……」
輝子「……フヒ?」
文香「あの…… 今持ってきますので…… 少しの間…… 待っていて頂けませんか……?」
輝子「え、あ、はい」
文香「……それでは」
輝子「……渡したい、物?」
文香「……お待たせしました」
輝子「あ、いや、大丈夫… ですから」
文香「それで…… これです…… お渡したい物というのは……」
つ紙袋
輝子「……え、あの」
文香「どうぞ…… お受け取りください……」
文香「叔父なりの…… 歓迎のしるし…… だと思うので……」
輝子「あっ、そういう事なら… ありがたく… 頂きます」
文香「……ありがとうございます」
輝子「いえ… それで… あの、開けても?」
文香「はい…… どうぞ……」
文香「私も…… 正直…… 気になっていたりするので…… 叔父のことなので…… 何かの本とは思いますが……」
輝子「な、なるほど… それでは…」
ガサゴソガサゴソ
輝子「……!」
輝子「これは……!」
文香「それは……?」
輝子「きっ、きのこ文学傑作選……!!」
きのこ…… 文学……?
文香「あの…… それって、どういった本なのか訊いても……?」
文香「キノコと文学という単語が並んでると…… 不思議な感じがして……」
輝子「あっ、はい」
輝子「あの、実はですね、きのこを主題にしたり、キーアイテムにした小説や詩って昔から書かれててですね」
輝子「この本は、そういった作品を選りすぐった傑作選なんです」
文香「傑作選……」ジー
輝子「たとえば…… 泉鏡花さんとか中井英夫とか、あ、あと南木佳士さんとかの作品も収録されてるとか」
文香「……!」ジー
文香「それはまた…… 名だたる文筆家の方…… ばかりですね……」ジー
輝子「やっぱり… 毒という特徴が… その… 作家の心をくすぐるんじゃないでしょうか」
文香「なるほど……」ジー
文香「確かに…… 危険であり…… 蠱惑的な感じがしますからね…… 毒というと……」ジー
輝子「そうですね」
文香「……」ジー
輝子「あ、あのー」
文香「……」ジー
輝子「文香さん?」
文香「……えっ? あっ、し、失礼しました」
輝子「…よ、読みます?」
文香「え…… あの……」
文香「ですが…… そういうわけには……」
輝子「あの、でも… そのぅ…」
輝子「本は… 人に読まれる為にあると、思うので」
輝子「あっ、勿論、もしよければ… ですけど…」
文香「……」
文香「……はい」
文香「そう…… ですね……」
文香「本当に…… その通り…… だと思います……」
文香「本当に…… 輝子さんには…… 大切な事を教えてもらってばかりで……」
輝子「フヒッ!? そ、そんな大したことは言ってないと、思うんですけど!」
文香「いえ…… 少なくとも…… 私は心からそう思っていますから……」
輝子「……な、なんか照れるぜ///」テレテレ
文香「ふふっ……」
文香「……では、すみません。読み終わりましたら…… 是非お貸しください」
文香「私も…… キノコを題材にした本を見つけたら…… お貸しいたしますので……」
輝子「あ、はい、ぜ、是非……!」
文香「……ふふっ」
輝子「……フヒヒ」
輝子「なんか… こ、こういうのって…」
文香「はい…… 良いですね…… こういうの……」
輝子「……あっ」
輝子「私も、贈り物というか… その、お土産を」
つ紙袋
文香「あ…… どうもありがとうございます……」
輝子「市販のお菓子ですが、ふ、文香さんの叔父さんの分も有るのでよろしければ…」
輝子「あと、素敵な本をありがとうございますと伝えてもらえると…… その……」
文香「あっ、はい…… 必ず伝えておきますね……」
輝子「なんか、その…… すみません、こういう事、慣れてなくて… フヒ…」
文香「いえ…… 私も…… 慣れてなくて…… こういった事に……」
文香「……あっ」
輝子「フヒ?」
文香「すみません…… いつまでも…… お構いもせずに……」
輝子「えっ、いや、お構いなく?」
文香「いえ…… 先日のお約束も有りますので」
輝子「…やくそく?」
輝子「あっ、紅茶を…?」
文香「はい…… あれから自分なりに勉強をしたつもりなので……」
輝子「そういう事なら、是非お願いします」
文香「ありがとうございます……」
輝子「え? あ、はい、どういたしまし… て?」
文香「それで…… 奥は居住スペースになっていますので…… どうぞお上がりください……」
輝子「……えと、あの」
輝子「あそこじゃだめですか?」
そう言うと、輝子さんは店内のとある一角を指差した。細くて、白くて、可愛らしい指で
文香「……あそこ?」
輝子さんの指差した先
そこには
そう、勘定台。私がこのお店の中で一番長い時間を過ごしている空間で……
実は…… 特に仕事が無いときは、台の裏側に椅子を持ち込んでは
そこに座って本を読んだり、紅茶を飲んだりしていたりする
そんな空間
……でも、何故?
文香「あの……?」
輝子「どうせなら… その… 本の中でお茶をしたいなって…」
輝子「ここって… なんだか、雰囲気が良いじゃないですか…? 本の森の中… みたいな気がして」
輝子「だから… そういう場所で… フヒ、文香さんとお茶を飲めたら… その… 幸せなんじゃないかなって…」
文香「……」
輝子「ふ、文香さん…?」
文香「……凄く、嬉しいです」
文香「私…… よくあの場所で本を読んだり、お茶を飲んだりしていて……」
文香「輝子さん言う通り…… 本の森の中に居るような気がして…… だから…… 」
私にとっては…… お気に入りの場所…… なんです……」
文香「なので…… 輝子さんがそう言ってくれて…… 嬉しいんです……
私と同じ事を感じてもらえた気がして……」
輝子「…そういうこと、だったんですか」
文香「はい……」
文香「……あっ」
文香「あのっ、本は、仕事をサボタージュして読んでいたワケでなく、特に仕事が無いときに読んでただけですからっ」
文香「仕事が有るときは、ちゃんと仕事をしていましたよ? 本当ですよ?」
文香「確かに、読書に集中し過ぎる事も有りましたが…… そういう事は滅多になくて…… 本当ですから……!」
輝子「……フヒッ」
輝子「だ、大丈夫です。分かってますから」
文香「そ、そうですか」
文香「ありがとうございます……」
文香「……あっ、話が少し、逸れてしまいましたね」
文香「勘定台…… レジが置いて有る机の事なんですが…… そこの裏側に椅子が有るので…… お掛けになっていてください」
文香「今すぐ用意しますので……」
輝子「あ、はい」
文香「それでは……」
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―――
―――
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文香「あの…… お待たせしました……」
輝子「あ、はい…… って?」
文香「は、はい……」
輝子「あの、その服は…」
文香「はい…… メイド服は…… のあさんにお借りしまして……」
輝子「ま、まさかの… メイドさんな…… 文香さん……!」
輝子「……」
文香「そのぅ…… どうでしょうか…… のあさんの服なので、少し大きかったのですが……」
輝子「……」
文香「……しょ、輝子さん?」
輝子「……えっ? あっ、す、凄く似合ってると思います!」
輝子「凄く可愛くて綺麗で、その、あの……」
輝子「……フヒッ」
輝子「バァァニングハァァーーット!!」
文香「!」ビクッ
輝子「フヒ、フハハッ!! これだよ! こういうのを求めてたんだよ!! 私はなァ!
輝子「萌えて…萌えて… 萌やし尽くされちまうぜぇッ! コンチキショォーがッ!!
」
輝子「……」
輝子「……あっ」
輝子「ご、ごめんなさい… つい、テンションが…」
文香「い、いえ…… 喜んで頂けたようなので…… 本当に良かったです……」
輝子「フヒヒ…… それはもう、凄く」
輝子「ナイス… サプライズ、みたいな?」
文香「……ありがとうございます」
文香「あの…… それで…… お茶をどうぞ」コト
文香「ケーキも…… 評判の良いお店の物なので……」
文香「残念ながら…… キノコの形をしたケーキは見つけられなかったのですが……」
輝子「い、いえ、そのお気持ちだけでも… 嬉しいですから」
輝子「それじゃあ… 頂きます…」
文香「……どうぞ」
輝子「……ん」
輝子「……美味しいです!」テーレッテレー!
文香「あ、ありがとうございます!」テーレッテレー!
輝子「その、上手く言えないんですけど… 香りが柔らかで
仄かに甘くすっきりとした味で、それでいて余韻が残るというか…」
輝子「……と、とにかくっ、本当に美味しいですから!」
文香「そう言って頂けて…… 嬉しいです」
文香「ケーキの他にも…… 色々と用意しているので…… 遠慮なさらずにどうぞ……(オカシノヤマドバー」
輝子「…フヒヒ。メイドさんが居る竜宮城とか… 贅沢過ぎだぜ…」
文香「……?」
輝子「あ、いや、なんでもないです… はい」
輝子「あの、それじゃ… いただきまーす」
文香「はい…… どうぞ……」
輝子「……ふぃーー」
文香「紅茶のおかわりは如何ですか……?」
輝子「あ、お願いします…」
文香「はい……」
輝子「なんか… 良いですね、ここって」
輝子「周りを見れば、キノコの本がきっと何冊も有って…
でも同時に、目の前には文香さんがいて… お茶とお喋りも楽しめたり」
輝子「上手く言えないんですけど… その… 静かで、落ち着くのに… ワクワクするというか…」
文香「……私にも、分かります。輝子さんのお気持ちが」
文香「私も…… そうですから……」
そう、読書好きの私にとって、本の森の中とも言えるこの空間は、心踊らせてくれるものであり
更に、今日はそんな空間に輝子さんが居て、私が淹れたお茶を美味しそうに飲んでくれている
心が穏やかで…… 暖かくて…… でも何処かワクワクともしてて……
輝子「フヒッ」
輝子「それに… その、こういう大きくない台だと、距離が近く感じられて… それがまた…」
文香「……そうですね」
学習机程の広さも無い、狭い台
だからこそ、向かい合う輝子さんとの距離が近くて
文香「失礼しますね……」
フキフキ
こうして、輝子さんの口元に付いたクリームを拭いてあげる事も出来たりして
輝子「こ、これはお恥ずかしい……///」
こんな可愛らしい表情も見られたり
文香「いえ……」
……それに、実は前々からこうやってお姉さんぶった事をしてみたかったりもする
何時もこういった事は、まゆさんやのあさんがテキパキと熟なされていて
それが本当に微笑ましく、また少し羨ましくもあったから
輝子「あの… それじゃ、私も」
文香「……?」
輝子さんはそう言うと、ハンカチを取り出して、私の口元を
フキフキ
と、優しく拭った
文香「あの…… もしかして…… 私も……?」
輝子「は、はい… その、クリームが、少し…」
文香「そ、そうでしたか……///」
輝子「あ、あの、本当に、少しだけ、でしたから…」
文香「いえ…… お手間をお掛けしました……」
……やはり
私に…… 姉役はまだ早かった…… みたいです……
けれども……
輝子「とんでもないです… フヒッ、寧ろ、恥ずかしがる文香さんが見れて… フヒ……
輝子「も、萌え… 萌えるぜぇ……!!」
喜んで頂けたようなので、これはこれで…… いいのかも……?
輝子「フヒ… フヒヒヒ……」
文香「ふふっ」
文香「……あっ」
文香「そういえば…… 本はどうしましょうか……?」
輝子「……えっ?」
文香「もう11時を過ぎてるので……」
輝子「あっ… そうですね…」
輝子「それじゃあ… 本探しを始めましょうか…」
文香「はい……」
輝子「あの… 色々ごちそうさまでした。お菓子もお茶も本当に美味しかったです」
文香「いえ…… お粗末様でした」
輝子「次は私の番だと思うので、その… あの…」
文香「はい…… 楽しみに…… 待ってますね……」
輝子「フヒッ、頑張りますっ」
文香「それでは…… まずはあちらの棚から見てみましょうか……」
文香「図鑑や博物学の本が並んでいるので……」
輝子「はい」
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―――
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掛け時計<ボーンボーンボーン
輝子「あっ… もう、お昼になっちゃいましたね」
文香「そうですね……」
文香「あの…… 輝子さん…… お昼は…… 公園で食べませんか……?」
文香「近くに…… 静かで…… きちんと手入れがされた所が有るので……」
輝子「あ、じゃあ、是非そこで…」
文香「はい……」
文香「それでは…… 着替えと準備をしてきますので…… 少しの間…… お待ちください」
輝子「……あっ、でも、ご飯はどうしましょう?」
輝子「途中でお弁当とか… 買ってくって感じで…?」
文香「いえ…… 実は、既に用意してあるので……」
文香「大丈夫です」
輝子「は、はい…」
文香「それでは…… 少しの間…… 失礼します……」
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輝子「へえ…… 確かに… 静かで良さそうな公園、ですね」
文香「はい…… 実は…… この公園のベンチでよく、本を読んだりしてるんです」
文香「高台に有るせいか…… 利用される方が少なくて…… のんびりと長居が出来て……」
輝子「へー… 私達の寮の近くにも、有れば良いんですけどね、こ、こういう公園」
文香「ふふ、そうですね」
文香「それじゃあ…… 準備をしますので……」
バッグ<ゴソゴソ
文香「ん、有りました……」
輝子「……!」
輝子「そ、それは……!」
輝子「レジャーシート……!!」
文香「えっ? あ、はい……」
輝子「り、リア充御用達として名高いアイテム……!」
文香「えと…… そうなのですか……?」
輝子「た、多分…」
輝子「その… お花見… とか、海水浴… とか、バーベキュー… とかでよく使われるアイテムなので…」
文香「ああ…… 言われてみれば…… 活動的で社交的な方々がよく…… 使われるているイメージが有りますね……」
文香「正直…… インドア人間の私が、レジャーシートを買う事になるとは思ってもみませんでしたし……」
輝子「フヒッ、私も、レジャーシートのお世話になるとか…… 考えた事もなかったですし……」
輝子「……って? その、文香さん、わざわざ買ってきてたんですか…?」
文香「はい…… 折角外で食べるなら…… と思いまして」
文香「幸い…… ここの公園は…… 芝生の立ち入り制限が行われていないので……」
輝子「な、なんか、すみません… 色々気を使ってもらっちゃって…」
文香「いえ……」
文香「では…… そこの…… 木陰の所に敷くことにしましょうか……」
輝子「あ、はい… お手伝い、します」
文香「お願いします……」
それから私達は
バサバサバサッ
と、シートを芝生に広げ、靴を脱ぎ
恐る恐るといった様子でシートに足を載せる
すると
輝子「……フヒ」
輝子「また一つ… リア充体験を… フヒッ… フヒヒ…」
と、輝子さんは嬉しそうに笑みを見せてくれるのだった
良かったです……
その笑みに、私は安堵と嬉しさを憶える
張り切り過ぎではないのかと、輝子さんに引かれてしまうのではないのかと、と心配していたから
ですが
輝子「フヒヒ… れじゃあしぃと… 良い、響き… だぜ…!」
輝子「フヒヒヒッ」
らしくもなく張り切りって、良かったです
輝子「ふ、文香さん、ありがとうございますっ」
文香「いえ…… 私も嬉しく思ってますから……」
本当に
文香「……あっ、座りましょうか」
輝子「あっ、そ、そうですね…」
文香「それで…… お昼ご飯の事なのですけど……」
文香「これを…… どうぞ……」
つ弁当箱
輝子「……こ、これは、もしかして、て、手作り… ですか?」
文香「は、はい……」
輝子「……フヒッ」
輝子「ヒャッハー!!」
文香「」ビクッ!
輝子「来たぜぇ! 遂に可愛い女の子からの手作り弁当がなぁッ!! 」
輝子「さあッ!ひれ伏せリア充共ォ! ここに本物のリア充がいるんだからなぁッ!!」
輝子「……あっ」
輝子「す、すみません…… 何度も何度も…」
文香「い、いえ…… 喜んで頂けたみたいで…… 私も嬉しいです……」
輝子「も、勿論です…! なんていっても、て、手作り、ですし… フヒッ」
輝子「あの、それで、開けても…?」
文香「はい…… どうぞ……」
輝子「そ、それじゃあ… 早速…」
弁当箱<パカッ
輝子「……おお! サンドイッチ……!」
文香「……本当は、もう少し手の込んだ物を作りたかったのですが」
輝子「……フヒ? もしかして… パンにサンドして有るこれは…」
文香「見栄を張るわけでは有りませんが、折角食べて頂くならと…… 思いまして」←聞いてない
輝子「き… の… こ…?」←聞いてない
文香「ただ…… 情けないことに…… 私の料理の腕だと…… これくらいが限界のようで……」←聞いてない
輝子「こっちのは… 舞茸とエリンギ…? こっちは… シメジとエノキ…? しかも… ベーコンや玉子も挟んであって…」←聞いてない
文香「確かに…… 見た目は綺麗とまではいきませんでしたが…… 味には結構自信があって……」←聞いてない
…じゅるり
輝子「や、ヤバい… も、もうガマンできない……!!」←ケロッグコンボのそれ
文香「レシピは…… まゆさんに教えて頂いたものなので、本当に味は良いと思いますので……」←聞いてない
輝子「い、いっただっきまぁぁーす!」
文香「ですので…… もし宜しければお食べにな――」
パクパクムシャムシャ
文香「――ってもう食べてらっしゃる!?」
輝子「えっ? あっ、た、食べちゃダメ…? もしかして…」
文香「え? その…… そういうわけではなくて…… 寧ろ…… 是非食べて頂きたいと……」
輝子「えと、それじゃあ……?」
文香「はい…… どうぞお召し上がりください」
輝子「フヒッ… では再度…… いただきます!」
パクパクパク
文香「あの…… お茶も用意してあるので…… こちらのカップに注いでおきますね」
輝子「あっ、なにから、なにまで… ありがとう、ございます」
文香「いえ……」
文香「……」
文香「あの…… お味の方は…… 大丈夫ですか……?」
輝子「はい…! すごく、美味しいですから…!!」ニコッ
文香「……」
……ふふっ
まゆさんが、料理作りを趣味にしているわけがなんとなく、分かった気がします
自分の作った料理で…… こんなにも喜んでくれる…… 笑顔を見せてくれる……
それが
文香「……また、作りますね。キノコの料理」
こんなにも…… 幸せなことだったなんて
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―――
―――
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輝子「ごちそうさまでした」
文香「お粗末様でした……」
文香「どうぞ…… これを使ってください」
つウェットティッシュ
輝子「あ、ありがとうございます」
輝子「あの…… 本当に美味しかった… です」
輝子「食べる事に夢中で… その、ちゃんと、感想言えなかった… ですけど…」
文香「いえ…… そう言ってもらえて…… 嬉しく思ってますから……」
文香「……それで、どうしましょうか」
文香「この後の予定は……」
輝子「そ、そうですね…」
輝子「前に言ってた図書館… なんて? あの、文香さんがよく利用するってトコロ…」
文香「……はい」
文香「ではそこに行きましょう……」
文香「ですが…… もう少し、休んでからにしましょうか……?」
文香「食べたあと…… 直ぐに動くのも良くないと思いますので……」
輝子「は、はい、実は、お腹が一杯で… 少し休みたいと、あの、思ってたので」
輝子「そ、それに…」
輝子「もう少し、れ、レジャーシートの上で… リア充タイムに浸っていたかったり… フヒッ」
文香「……ふふ」
文香「そうですね…… では、もうしばらく、ゆっくりしましょうか……」
―――――――――
――――――
―――
―――
――――――
―――――――――
文香「……そんな」
あれから長めの休憩を取った私達は、地下鉄を利用し目指す図書館へと辿り着きました
どれだけ大きな建物なのか、とか
こういった施設も併設されています、とか
蔵書数も何万冊も有ります、とか
柄にもなく、私は少し声を弾ませながら、輝子さんにそんな話をしつつ
上野の図書館に辿り着きました
けれども
『図書管理システムに障害が発生したため、本日は臨時休館とさせて頂きます』
図書館の扉には、そんな文言が書かれた紙が貼り付けられていて
文香「……」
輝子「……」
輝子「……えっと、そのぉ」
文香「……すみません」
輝子「フヒッ!?」
文香「こんなはずでは…… なかったのですが……」
文香「今日は…… 開館日の…… 予定…… だった…… ので……」
文香「まさか…… こんなことに……」
輝子「え、いやっ、こっ、これは文香さんのミスじゃないですし! 急に壊れたシステムが悪いわけでっ!」
文香「いえ…… 朝にでも…… インターネットで…… 調べれば…… 少なくとも…… こんなことには……」
文香「……本当にすみません」
文香「電車を利用してまでここに来て頂いたのに…… 無駄足を踏ませてしまうなんて……」
輝子「いやっ、ホント大丈夫ですから!? むしろ、ここに来るまでも楽しかったですし、そのぉ……」
輝子「あの、えっと… だから…」
文香「……」
輝子「……」
何か…… 話さなければいけない
謝罪の言葉ではない言葉を……
だって…… 謝罪をしたところで、輝子さんを困らせるだけ
それくらいは…… 自分でも分かってる
だから、話題を変える話や、この失敗を笑い話に変える話をする
それが、私のやるべきこと
……
なのに…… 気の効いた言葉一つ思い浮かばなくて
ただ、何も言えず、立ち尽くしたままで
そんな自分がまた情けなくて
つい、溢れそうになる涙をただ堪えるだけしかできなくて――
輝子「……フヒッ、次は、私が連れ回す番… だな」
文香「……え?」
輝子さんが突如、そして嬉しそうに呟いた台詞
ただ、私にはその意味が分からず
それは一体……?
そう訊き返そうとした瞬間
文香「――えっ?」
輝子さんは私の右手を握り
輝子「行ッくぜェ!!」
グイっと引っ張り
走り始めた!
文香「えっ、あの、ちょ、 行くって、何処へ!?」
輝子「何処へだとォ!?」
輝子「……フハハハッ!」
輝子「私が連れ行く場所なんて――」
輝子「――地獄しかねェだろうがよォォッ!」
文香「地獄っ!?」
輝子「ああッ! 取っておきの地獄に!!」
輝子「その湿気たツラなんぞぶっ飛ばしてッ! 何時もの、優しい笑顔に変えてくれる……」
輝子「最っ高の地獄になァッ!!」
……
……ああ
そうだ、そうだった……
私を連れ出してくれるのは…… 何時も
輝子さん…… だった
あの時、私と本だけの世界から、私を連れ出してくれた
話す事が苦手な筈なのに、懸命に言葉を尽くして
今だってそう
俯いて、自己嫌悪に浸り、過去に立ち返ろうとする私を、その小さな身体で力強く引っ張って
私の知らない世界へ
私の知らない幸せが在る世界へ
また連れ出そうとしてくれている
なら…… 私は!!
文香「あの! 輝子さん!!」
輝子「ああ゛ん!?」
文香「連れてってください! 私を…… !」
付いて行こう……! 何処までも、何処にでも!
文香「私をッ! 最っ高の地獄ってところにッ!!」
だって…… 私もそれが見たいから! 彼女と一緒に、その世界が見たいから!
輝子「……おおぉしッ! 任せとけーッ! 私に付いて来ォォォい!!」
文香「はいッ!」
輝子「ゴートゥヘーールッ! ヒャッハー!!」
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346プロダクション・事務所
のあ「へぇ、色々有ったみたいだけど、良い休日だったじゃない」
文香「はい…… 輝子さんのお陰で…… 本当に良い休日を…… 過ごさせて頂きました」
小梅「文香さん… なんだか… 朝から嬉しそうだったけど…」
幸子「そういうわけだったんですね」
文香「……一応、浮かれないよう気をつけていたつもりでしたが……」
文香「大分…… 表に出ていたようですね……」
幸子「…いや、結構な頻度で笑みを浮かべてましたけど……」
小梅「朝、輝子ちゃんが事務所に来た時も… 凄く嬉しそうだった気も…」
文香「そ、そうでしたか……」
のあ「ふふっ…… それにしても、輝子も随分と格好良い事するじゃない」
小梅「う、うん… 輝子ちゃん… カッコいい///」
幸子「確かに…… 輝子さんて、スイッチが入ると凄くカッコよくなりますよね///」
のあ「……どうして頬を赤らめてるのかしらねぇ、この子達は」
文香「そうですね…… 最初は少し驚きましたが…… ドキドキと胸が高鳴るというか……///」
のあ「……ああ」
のあ「この子も…… ふふ…… 分からないものね、人って……」
のあ「分からないと言えば…… 結局、輝子は何処に連れていったのかしら?」
のあ「最高の地獄…… と言っていたみたいだけれど」
幸子「あっ、それボクも気になります! なんだか凄そうな感じがしますし」
小梅「私も… 是非訊きたいです… 文香さんが… もしよければ… ですけど…」
文香「あ…… はい…… 構いません……」
文香「輝子さんに連れていって頂いたのは……」
文香「上野の…… 国立科学博物館で――」
のあ「へぇ…… それはまたアカデミックな地獄と来たわね」ヒソヒソ
幸子「でも、文香さんとの相性は良さそうですよね。博物館とか、美術館とか」ヒソヒソ
小梅「う、うん… 文香さんなら… 興味を持ってくれそう… だしね… 学問とか… 芸術にも…」ヒソヒソ
文香「――開かれた、菌類のふしぎ展に……」
のあ「……えぇ(困惑)」
小梅「……えぇ(困惑)」
幸子「……えぇ(困惑)」
文香「興味深い展示が数多く有って…… つい、時間を忘れて見入ってしまいました……」
のあ「へ、へぇ……」
小梅「へ、へぇ……」
幸子「へ、へぇ……」
文香「それに…… 輝子さんが発見した新種のキノコの展示もあって…… つい興奮してしまったり」
のあ「」
小梅「」
幸子「」
「フヒ… 今… 帰りましたよー」
文香「あっ、輝子さんがお帰りになったようですね……」
文香「すいません…… 私、出迎えに行ってきますので……」スタスタスタ
のあ「あ、はい」
小梅「あ、はい」
幸子「あ、はい」
「輝子さん、お帰りなさい……!」
「ふ、文香さん、ただいま、です…… フヒ… フヒフヒ」
「あの…… 今日、洋菓子店でロケの仕事が有りまして……」
「それで、そのお店に…… こんなものが売ってたんです……!」ジャーン!
「そ、それは… シイタケの… 飴細工……!?」
「他にも…… エリンギやベニテングタケの形をした飴細工も有りますよ……」ニコリ
「……ヒャッハーーー!」
のあ「……まぁ、当人が満足しているのなら、良いんじゃないかしら……ね」
幸子「そう…… ですよね、文香さん、嬉しそうでしたし……」
小梅「うん… 私も、大事なのは… その人の気持ち… だと思うから…」
のあ「……」
幸子「……」
小梅「……」
のあ「……でも、やっぱり」
幸子「……でも、やっぱり」
小梅「……でも、やっぱり」
のあ「菌類のふしぎ展はちょっと…… どうかしら……」
幸子「菌類のふしぎ展はちょっと…… どうですかねぇ……」
小梅「菌類のふしぎ展はちょっと…… どうかなぁ……」
「美味しいですか……? 輝子さん」ニコニコ
「フヒッ! 最高ですっ」ペロペロ
のあ「……まぁ、いっか(投げやり)」
小梅「……まぁ、いっか(投げやり)」
幸子「……まぁ、いっか(投げやり)」
おしり
スレタイ、正確には↓です。念の為
モバP「輝子が文香(が買ってきた飴細工)のキノコをペロペロするお話」
なぜRで書いたし
でもよかった
乙
乙
今回もすごく良かったけどあっちで書いて欲しかった
前回も読んでなかったから読んできたけどいい雰囲気で好きですわ~
乙!
さらっと新種発見してて茸生えたわ
乙
さらっと輝子が新種発見っていう凄い事為し遂げてるけど……まぁ、いっか(槍投げ)
さかなクンさん的な、専門家タレントになるのか
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