【FEif】カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」―4― (1000)

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・北の城塞『図書室』―

クーリア「白夜侵攻部隊が移動を開始したようですね」

フリージア兵「はい、無限渓谷を越えに掛る時間は大凡、三日ほどかと」

クーリア「白夜での陣地形成に掛る時間を加味すれば、あまり長い時間事を起こしてはいられないと見るべきでしょう。それで暗夜王都攻略の手筈ですが……」

フリージア兵「はい、地方部族の方は既にクーリア様と共に動く意思を見せています。現在、白夜への物資経由を行う拠点に多くの賛同者が潜り込んでいます」

クーリア「それと、例の攻城装備ですが……」

フリージア兵「現在、王都に比較的距離の近い村々に分解して運び済みです。現在は組み立ての作業に取り掛かっていると報告を受けています」

クーリア「わかりました」

フリージア兵「あとは、カムイ様達が無事に転移魔方陣を完成させているかどうかですが」

クリーア「その点は心配などしていませんよ。カムイ殿はむしろ私たちの合図を待ってくれているはず。そして、私達は彼女を信じると決めている、だからこそこうして同士を集い、時を待っているのですから」

フリージア兵「そうでした、申し訳ない、この場に至って……」

クーリア「気にすることではありません。それでは、引き続き状況の共有に努めるようお願いしますよ」

フリージア兵「はい、わかりました」

 タタタタタッ ガチャ バタン

クーリア「暗夜王都ウィンダム、そしてクラーケンシュタインの攻略。これで白夜侵攻の勢いを崩すことができればよいのですが…」

「……カムイ殿」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1466084140

このスレは、『カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?』の続きとなっています。

 最初の1スレ:カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」
 カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1438528779/)

 所々にエロ番外のある2スレ:【FEif】カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」―2―
 【FEif】カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」―2― - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1443780147/)

 アクアが暗夜兄妹と和解した3スレ:【FEif】カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」―3―
 【FEif】カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」―3― - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1456839703/)

 個人妄想全開の暗夜ルートになっています。
 オリジナルで生きていたキャラクターが死んでしまったり、死んでしまったキャラクターが生き残ったりという状況が起きます。
 ご了承のほどお願いします。

 主人公のタイプは
 体   【02】大きい
 髪型  【05】ロング・セクシーの中間
 髪飾り 【04】ブラックリボン
 髪色  【21】黒
 顔   【04】優しい
 顔の特徴【04】横キズ
 口調  【私~です】

 長所短所には個人趣味の物を入れ込んでいます。 

 長所  心想い【心を好きになる(誰とでも結婚できる)】
 短所  盲目 【目が見えない(ただそれだけ)】

 ※時々、番外編を挟むことがあります。
 番外の場合は『◇◆◇◆◇』を付けています。

○カムイの支援現在状況●

―対の存在―
アクアA
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)

―城塞の人々―
ギュンターB++
(恋愛小説の朗読を頼まれています) 
フェリシアB+
(カムイに従者として頼りにされたい)
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
フローラC+
(すこしは他人に甘えてもいいんじゃないかと言われています)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)

―暗夜第一王子マークス―
ラズワルドB
(あなたを守るといわれています)
ピエリB
(弱点を見つけると息巻いています)
マークスC+
(イベントは起きていません)

―暗夜第二王子レオン―
オーディンB+
(二人で何かの名前を考えることになってます)
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)
レオンB
(カムイに甘えてほしいと言われて、いろいろと考えています)

―暗夜第一王女カミラ―
ルーナA
(目を失ったことに関する話をしています)
カミラA
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ベルカC+
(イベントは起きてません)

―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼB++
(昔、初めて出会った時のことについて話しています)
ハロルドB
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィC+
(イベントは起きていません)

―白夜第二王女サクラ―
サクラB++
(カムイと二人きりの時間が欲しいと考えています)
ツバキB
(イベントは起きていません)
カザハナC+
(イベントは起きていません)

―カムイに力を貸すもの―
シャーロッテB++
(返り討ちにあっています)
スズカゼB
(おさわりの虜になったようです)
サイラスB
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB
(イベントは起きていません)
モズメC+
(イベントは起きていません)
リンカC+
(イベントは起きていません)
ブノワC+
(イベントは起きていません)
アシュラC+
(イベントは起きていません)
フランネルC+
(イベントは起きていません)

 仲間間支援状況

●異性間支援

・レオン×カザハナ A
・ジョーカー×フローラ A
・レオン×サクラ A

・ベルカ×スズカゼ B
・ラズワルド×ルーナ B
・ラズワルド×エリーゼ B
・ブノワ×フローラ B
・エリーゼ×ハロルド B
・オーディン×ニュクス B
・ベルカ×スズカゼ B
・オーディン×アクア B

・サイラス×エルフィC
・モズメ×ハロルドC
・ギュンター×ニュクスC
・レオン×エルフィC
・アクア×ゼロC
・ルーナ×ハロルド C

・ラズワルド×リリス B消滅
・ゼロ×リリス C消滅

●同性間支援

・リンカ×アクア A
・ピエリ×カミラ A
・フェリシア×ルーナ A
・フローラ×エルフィ A
・レオン×ツバキ A

・ギュンター×サイラス B
・ベルカ×エリーゼ B
・フェリシア×エルフィ B
・シャーロッテ×モズメ B

・エルフィ×モズメ C
・シャーロッテ×カミラ C
・ピエリ×リンカ C
・ピエリ×ルーナ C
・ピエリ×フェリシア C
・ジョーカー×ハロルド C
・アクア×ルーナC

・ピエリ×リリスC→消滅

 今日はスレ立てだけになります。

期待

建て乙
番外長すぎて本編何処まで行ったか忘れたけど

乙です今回も楽しみにしてます!
R版って専ブラでは見れないんだっけ?

見れるぞ

この板を登録したのと同じ手順でやればOK

>>10
出来た
ありがとう

◆◆◆◆◆◆
―白夜・イズモ公国『大広間』―

カムイ「もう、大丈夫なんですか、カゲロウさん?」

カゲロウ「ああ、改めて礼を言わせてほしい。ありがとう、カムイ様」

カムイ「いいえ。気にしないでください、それよりもありがとうございます、こうして話をする機会を与えてくれて」

サイゾウ「別に構わん。もう、お前達がこちらに来ていることは王都に知れ渡っている頃合いだ」

レオン「恐れることはないってことかな?」

サイゾウ「どう思おうがそちらの勝手だ。だが、このイズモの中で何もせずにいるのなら、何もするつもりはない」

カムイ「もう少しサービスしてくれてもいいんですよ?」

サイゾウ「ふっ、その軽い口調は相変わらずのようだが、敵であるお前達にこれ以上のオン城は不要。ここまでの随伴でフウマの件は終わりを迎えているのだからな」

カゲロウ「カムイ様。命を助けられた立場だが、私も白夜の人間。暗夜の人間であるカムイ様たちを、この先に入れるわけにはいかない」

レオン「……まぁ、たしかにその通りだよ」

サイゾウ「俺たちはお前達がここから動かぬように見張るつもりだ。白夜王国へ向かおうというのなら刺し違えようとも、足止めさせてもらう」

カムイ「穏やかじゃありませんね」

サイゾウ「穏やかな戦いなどあるわけがない。そうだろう?」

カムイ「たしかに、その通りです」

レオン「それにしても意外だね」

サイゾウ「?」

レオン「僕たちはサクラ王女たちを連れてここに来ている。だからまずはサクラ王女の身柄を引き渡すように、交渉してくるかと思っていたんだけど。なぜそうしてこないのかと思ってね」

サイゾウ「……」

レオン(……サクラ王女がすでに暗夜のために戦っていると踏んでいるのか。それとも、何か別の理由があるのか。どちらにせよ、サクラ王女たちを白夜に引き渡すには状況が出来上がってない可能性が高いということか……)

カゲロウ「サクラ王女は無事なのか?」

カムイ「大丈夫ですよ。こちらのレオンさんがここまで身を呈して守ってくれましたから」

レオン「ちょ、姉さんいきなり何を言い出すんだ!」

カムイ「いえ、実際身を呈して守ってくれましたし」

カゲロウ「そうか…。レオン王子、今ここにおられないリョウマ様に代わって礼を言わせてほしい。ありがとう」

レオン「いや、王族として当然のことをしただけだよ。サクラ王女に何かあったら、戦争の終結にもっと多くの血が流れることになるからね」

サイゾウ「だが、ガロンは交渉をするつもりはないと見える。フウマでの話が確かならば、すでに暗夜の大侵攻は始まっている…そうだろう?」

カムイ「ええ、お父様は白夜を滅ぼすつもりです。私達がこちらに来た目的は橋頭保としてこのイズモ公国を占拠して、テンジン砦攻略までに本隊と合流、サクラさん達を使って交渉をすることです」

サイゾウ「……なるほどな、それが暗夜王子がサクラ様を守ってきた理由というわけか?」

レオン「どう捉えてもらっても構わないけどね」

カゲロウ「その計画を聞いた以上、尚更あなたを通すわけにはいかない」

カムイ「先行作戦通りならばそうですけど、私達がここにいるのは違う理由です。それを勘違いされては困ります」

カゲロウ「……違う理由?」

サイゾウ「……フウマでコタロウに聞いていたな。お前たちの側に付かないかと」

カムイ「ええ」

サイゾウ「そして俺の問いに白夜の敵になるつもりもないと言っていたが」

カムイ「そのままの意味ですよ。白夜の敵になるつもりはありません、私たちの敵は決まっています。ですから、お願いがあります」

サイゾウ「願いだと?」

カムイ「はい、お願いです」

カゲロウ「その願いとはなんだ?」

カムイ「はい、イズモから私達が出ることを許してくれませんか?」

サイゾウ「戻るだと?」

カゲロウ「一体どこへ?」

カムイ「……私達は、これから暗夜に戻ります」

サイゾウ「戻って何をするつもりだ」

カムイ「はい、暗夜の首都を落としてきます」

カゲロウ「……」

サイゾウ「……」

カムイ「……」

カゲロウ「……あなたは何を言っている、意味がわからない……」

サイゾウ「…ふざけているのか?」

カムイ「私はまじめです。伊達や酔狂でこんなことを言うつもりはありませんし、現在の暗夜の侵攻を抑えるのが私の目的ですから。そのために私は王都を落とします」

サイゾウ「仮にその話を信じたとして、それが抑止力になり得るという保証はない。そのままの勢いで白夜を攻める者たちもいるはずだ」

レオン「戦争を続けるのに必要なのは投資に見合うかどうか…。そして父上に従っている軍属や貴族は父上じゃなくて自分が得られる富に固執してる奴らが大半だ」

サイゾウ「……」

レオン「今の彼らは侵攻じゃなくて宝探しに興じてる。白夜の大地は彼らにとって落ちてる宝石のようなものだからね。それを彼らは見過ごすつもりはない。暗夜と白夜の土地は違いすぎる。あらゆることが利益になる」

レオン「でも、それは自分たちがそれを行う基盤である領地があってこそのこと、暗夜の王都が落ちたとなれば八割は暗夜王都奪還に躍起になる。そうなれば、知らぬ白夜の土地で戦う暗夜の進行速度は格段に落ちるはずだし、なにより侵攻に賛成的でない者たちの心も揺らぐはずだ」

カゲロウ「レオン王子、すべての民がそれに従っているというわけではないと聞こえるが?」

レオン「それは白夜も変わらないことだよ。それにすべての民が白夜を滅ぼすことを目的に動いていたら、僕たちはイズモを強襲制圧していた。あそこでキミ達を助けることもなかったよ」

カゲロウ「そうか。皮肉なものだが私達は、暗夜の民に救われたということか」

カムイ「今後は時間との勝負になります」

カゲロウ「?」

レオン「現在、暗夜は多くの徴兵のために、従わない村の大規模な焼き払いを行った。恐怖という鎖で今の侵攻軍は出来上がってる。それが白夜に対する攻撃心に変わるのも時間問題だ」

サイゾウ「……」

カムイ「私は暗夜の民に白夜を滅ぼすという心を持ってもらいたくはありませんし、そんな人たちに白夜が滅ぼされていく姿を見たくはありません。私は白夜を滅ぼすために、暗夜に付いたわけではないんです」

サイゾウ「……」

カムイ「……」

カゲロウ「……サイゾウ」

サイゾウ「わかっている。同士討ちしてくれるというのなら、それに越したことはない」

カムイ「サイゾウさん……」

サイゾウ「……お前のその酔狂な発言とその願い、確かに聞き届けた。イズモを越えて王都を目指さぬ限り、お前たちを攻撃したりはしないと約束しよう」

カムイ「ありがとうございます、サイゾウさん」

サイゾウ「……礼などいらん。元々、こちらに選択肢を与えるつもりもなかったのだろう?」

カムイ「サイゾウさんだけじゃありませんよ。私自身にも選べる選択肢はありません。だって、私にも道はたった一つしかないんですから……」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
―イズモ公国・中央広場―

カムイ「……ふぅ」

カムイ(二日くらい前まで、ここでお祭りがお祭りがやっていたとは思えないくらい静かになっていますね)

 テトテト

カムイ(……なんだか、寂しい感じがしますね)

???「どうしたの?」ピトッ

カムイ「ひゃあっ!」

アンナ「あら、もしかして気づいてなかったの。驚かせちゃったみたいね」

カムイ「その声はアンナさんですか?」

アンナ「覚えてもらえて光栄よ。しかも暗夜の王族さんになんて」

カムイ「流石に覚えますよ。いっぱい散財してしまいましたから、ところでお祭りのほうはどうでしたか?」

アンナ「ええ、数十年に一度の入れ替わりのお祭り、暫定で大成功ってところ。あんまり娯楽品は戦争ムードだと売れないものだから、大量在庫って辛いわね。来年には新しいものができるから、流通流行の最先端を揃え続けないといけないから」

カムイ「そうなんですか」

アンナ「ええ。はぁ、私の姉妹はうまく稼げてるのかしら?」

カムイ「姉妹ですか?」

アンナ「ええ、これでもいっぱいいるの。暗夜王国に誰か商売に行った気がするけど、暗夜の大攻勢の噂は聞いてたはずだから、それに見合ったものを持っていったとは思うんだけど……。上の姉なら問題ないけど私より下の妹だったら、ヘマするかもって思っちゃって」


カムイ「そうなんですか。でも離れていてさびしくないんですか?」

アンナ「寂しくないってわけじゃないけど。なんだかんだ、姉妹揃ってお金主義だからね。だから、こんなに稼いだ女の商人がいるとか聞くと、悔しさ七割、闘争心二割り、安心一割って感じで安定するのよ」

カムイ「七割は悔しさなんですか」

アンナ「ふふっ、姉妹揃って稼ぐことしかないからね。心配する時は、ほんと稀ね」

カムイ「……私はそのお役に立てましたか?」

アンナ「ええ、おかげさまで。次の日から、結構な人が来てくれるようになったからくじは大成功。カムイ様は良い客寄せパンダだったわ」

カムイ「お客さんを前にそう言うですか」

アンナ「だって、自覚はあるんでしょ? カモにされたって言う」

カムイ「まあ、ありますよ。これでしばらくは貯金生活ですから」

アンナ「で、他に誰かいないの。気前良くお金使ってくれそうな人は」

カムイ「………」

カムイ(そう言えばルーナさんはセール品とかにすごく弱いんでしたか……)チラッ

アンナ「? どうしたのかしら?」

カムイ(なんでしょうか。会わせてはいけないような気がしてならないというか……)

カムイ「すみません。あまり散財癖のある人は思いつきません」

アンナ「そう、残念……。でも、カムイ様の傍にいればすぐにでも散財してくれるのかしら?」

カムイ「今はないから無理ですよ」

アンナ「それもそうね、無い袖は振れないっていうし、そうだローンでもいいけど?」

カムイ「お断りです」

アンナ「いけずぅ……ん?」

 タタタタタッ

アクア「カムイ、すぐに来て頂戴」

カムイ「どうしたんですか?」

アクア「合図が来たわ。もう準備を終えて、みんな集まっているわ」

カムイ「! わかりました」

アンナ「ふふっ、もう行っちゃうのね。何かわからないけど、頑張ってね」

カムイ「はい、アンナさんも撤収作業のほう頑張ってください」

アンナ「ええ。ああ、それとカムイ様」

カムイ「?」

アンナ「私はできればこんな縁日で稼ぐつもりだから、戦争が終わってほしいって考えてる。だから色々と終わったらこんなお祭りするつもり、その時はまたお金いっぱい落として頂戴ね」

カムイ「いっぱいは難しいかもしれませんね」

アンナ「ふふっ、そう。それじゃ行ってらっしゃい」

カムイ「はい、アンナさんもお元気で」

 タタタタタッ

アンナ「……さてと……それじゃ、次の商売にむけて準備を始めようかしら!」

~~~~~~~~~~~~~~~~~

 タタタタタッ

カムイ「すみません、遅くなりました」

アクア「これでみんな揃ったわね」

 ブォンブォン

マークス「この中に入れば、あの暗夜の地に戻れる。そういうことなのか」

カミラ「空の入れ替わりが終わってちょうど二日くらいかしら。もう、お父様が率いる侵攻部隊もおおよそ半分以上は、無限渓谷を越えたということになるわね」

エリーゼ「……絶対、止めてみせるんだから。サクラ、安心してね!」

サクラ「は、はい。ありがとうございます、エリーゼさん」

カムイ「それじゃ、まずは私達で行きましょう。後続の方、私達が消えてから三十秒後に入る形でお願いします」

アクア「カムイ、手を」

カムイ「はい、マークス兄さんも」

マークス「ああ。カミラ」

カミラ「ええ、エリーゼ」

エリーゼ「うん、サクラも手をつなご!」

サクラ「はい、それじゃ、レオンさんで最後ですね」

レオン「別に手を繋がなくても良いと思うんだけど。まぁ別に構わないけどさ」

カミラ「うふふっ、なんだか不思議ね。こうして手を握りながら入っていくなんて」

アクア「雰囲気は出ると思うわ」

マークス「確かにそうかもしれないな」

カムイ「うふふっ。それでは皆さん、行きましょう」

 カッ カッ カッ

 シュオオオオンッ

「私たちの成すべきことをするために……」

今日はここまでで

 3スレの1000にガチレズという単語があったので、スケベは『ヒノカ×セツナ』で行きたいと思います。
 この話の二人の関係性で話を書くと思います。
 
 今週の土曜日でFEif発売一周年、時間が経つのは早いですね。

このスレもあと2ヶ月で1周年か(しみじみ)

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・北の城塞『訓練場』―

クーリア「……」

 ガサガサッ カッ カーッ

 パシパシ

フリージア兵「そっちはどうだ?」

フリージア兵「はい、間もなく……終わりました!」

フリージア兵「よし、上の者聞こえるか―!」

 ナンデスカー!

フリージア兵「文様の最終確認を頼む!」

クーリア「よろしくお願いしますよ」

 マカセテクダサイー!

 ……モンヨウホコロビナシ。カタチニモンダイナシ、トトノッテイマス!

フリージア兵「よし、降りて魔力の供給を手伝え。では、クーリア様」

クーリア「はい、出来次第始めてください」

フリージア兵「はっ」

~~~~~~~~~~~~~~~~~

フリージア兵たち「……」

 シュォォオオオオンッ

クーリア「……」

フリージア兵たち「……」

 シュォオオオンッ

 シュパアアア

フリージア兵たち「おおっ」

クーリア「どうやら起動には成功したようですね。あとはカムイ殿が準備を終えているかどうかですが……」

 ブォン ブォン ブォォォン

フリージア兵「魔方陣の同調を確認!」

クーリア「ふっ、心配することもなかったようですね」

フリージア兵「はい。魔力供給を安定させます。全員、集中しろ!」

『了解!』

 シュオオオオォォン!!!!

クーリア「……」

 シュタッ シュタタタッ

 スタスタスタッ

カムイ「不思議な感覚ですね。自分がまるで砂になったように感じます」

カミラ「七重の塔で賢者様が行ったのにそんな感覚はなかったわね。さすがは賢者様ということかしら?」

レオン「人間を微分子レベルで分解、再構築してるのかもしれないけど、ぶつけ本番でやることじゃ無かったね。最悪、ここに全員が混ざり合った肉塊が現れることになったかもしれないし」

アクア「でも、こうして成功したから問題ないわ。それに転移が失敗した時点で、死んでしまっているだろうから気にすることもないはずよ」

エリーゼ「アクアおねえちゃん、結構怖いこと言うよね」

サクラ「アクア姉様、時々怖い話を私に聞かせてくるんです。そう言う話をする時の顔してます」

アクア「ふふっ、続きが気になって聞いてくるのはサクラだったはずだけど?」

サクラ「あ、アクア姉様の話は怖いけど、続きが気になってしまうんです」

エリーゼ「怖いもの聞きたさってやつだね!」

マークス「しかし、こうして無事に戻ってこれたのだから、それでいいだろう」

カムイ「そうですね。……スンスン、暗夜の匂いがします」

エリーゼ「匂いでわかるの!?」

サクラ「さすがはカムイ姉様ですね」

レオン「そこは褒めるところなのかな?」

 カッ カッ カッ

クーリア「どうにか転移魔法成功したようですね、カムイ殿」スッ

カムイ「クーリアさん、お久しぶりです」ギュッ

クーリア「ええ、お久しぶりです」

カムイ「すみません、ここまでの準備をすべてお任せするような形になってしまった上に、魔法陣の件もすべて任せきりで」

クーリア「いいえ、私はできうる限りあなたの指示に近づけているだけに過ぎませんので」

カムイ「そうしていただけただけでも、クーリアさんにお願いしてよかったと思います」

クーリア「もったいないお言葉です。ところで、スズメたちはこちらに来るのですか?」

カムイ「いいえ、スズメさん達にはイズモ公国で情報収集に務めてもらっています。戻るまでの間に起きたことをできる限り知りたいので。白夜には踏ん張ってもらえるように祈るくらいしか、今できることはありませんから」

クーリア「わかりました。それでは早速作戦会議を始めましょう。来ていただいたばかりですが、あまり時間があるというわけでありません」

カムイ「はい、わかっています。皆さん、後続の方たちのことをお願いします」

フリージア兵たち『お任せください、カムイ様』

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
―北の城塞『図書室』―

カミラ「結構様変わりしたわね?」

エリーゼ「すごい、これって王都の全体地図だよね……。あっ、地下の通路も書いてある。すご~い」

クーリア「古い書物などを引っ張り出して色々と調べつくしましたので」

レオン「かなり時間が掛ったんじゃないのか?」

クーリア「ええ。ですが、ちょっかいを出してくる者たちもいませんでした。なにせ、フリージアの民はカムイ殿の計らいで戦争に参加せずにぐうたらしている。そう王都の連中には思われているようですからね」

アクア「参加してる戦いが違うから、間違ってないわね」

クーリア「ええ、色々と準備が楽でした……考えることだけはですけどね。では皆さん、こちらに各自お掛けください」

 ガタッ ガタッ ガタンッ

カムイ「…それでクーリアさん、現在の状況はどうなっているんですか?」

クーリア「はい。現在ガロン王率いる侵攻軍は無限渓谷を越えをほぼ終えつつあります。そして多くの物資補給路を確保のために王都の兵も外へ出ているため、王都の防衛能力は低くなっている状態。この提案はガロン王のものによるそうで、よほど横槍が入らない自信があるようです」

カムイ「そうですか。でも、流石に王都を空にするとは思えませんね」

マークス「クーリア、王都防衛の最高責任者はわかるか?」

クーリア「残念ですが、最高責任者が誰かは定かではありません。ですが、王都防衛を任されている者たちならば、調べは付いています。こちらの二名が指揮する部隊が残っているようです」

 パラッ

レオン「えーっと、竜騎兵部隊のナハトに重装甲騎兵部隊のブリッツか。となると、やっぱり王都への道を守ると考えるべきだね」

クーリア「はい、王都入口は一つしかありませんので」

クーリア「確かにクラーケンシュタインを越えた先にある田園地帯の山からという方法もありますが、あそこは多くの民家が密集しています」

クーリア「また、王都の貧困街や地下街の非戦闘員などはこの地域に誘導する流れになっているので、こちらから攻めるという選択肢はありません。さすがに城と民家ならば、大抵の敵は城へと逃げるはずです」

カムイ「……はい。となると、真正面から正々堂々と戦っていくことになりますね」

エリーゼ「ねぇ、留守の間に来てるのに、正々堂々なのかな?」

アクア「エリーゼ、戦争はそういうものよ。軍隊のいない留守を狙って侵攻したり、一人を多人数でボコボコにするのは基本戦術ね」

レオン「それに真正面からぶつかりに行くのは自殺行為。僕たちの持ってる戦力だと、やっただけで好き放題に蹂躙されかねない」

カムイ「暗夜に攻撃を仕掛けてくる存在がいないと思っている今しかありません。それにこれくらいしなければ、私達は負けますから。真っ向勝負を起こすつもりなら、もっと兵力を整えないといけません」

レオン「力がないならここを使うしかないよ」トントンッ

カミラ「そうね。それで、ここからどうするの? いくらお父様の率いる侵攻部隊が渓谷を越えていたとしても。こっちは王都を落とさないといけない、王都で何かしらことが起きれば、今は補給路の最終構築に出ている兵も戻って来るし、最悪お父様も戻って来るわ」

クーリア「ええ、こちらも色々と作戦は練っています。レオン殿、これをご確認いただけますか?」

レオン「ああ、わかったよ……」

マークス「どうだ、レオン」

レオン「理屈は理解できるけど、あまりいい作戦とは言えないっていうのが僕の判断だよ、補給拠点を襲って王都からできる限り兵を送るように仕向けるなんて。囮の生存率はかなり低い」

クーリア「承知の上です。今回の王都攻撃を承諾してくれた我らと同じ地方部族の方々も自分達が囮ということを理解しております。そして、王都を落とした直後に戦闘が終わるわけではないこともです」

カムイ「……なら、私達はその囮が早めに終わるように王都を、そしてクラーケンシュタインを落とすだけです」

クーリア「そう言っていただけると心強い限りです。それとカムイ殿、今回の指揮を担当する方ですが」

エリーゼ「それはカムイおねえちゃんでしょ?」

クーリア「……そうあれれば良いのですが。そうはいかないのです。カムイ殿は……」

カムイ「はい……。マークス兄さん、お願いしたいことがあるんです」

マークス「なんだ?」

カムイ「今回の戦い、マークス兄さんには先頭に立って戦っていただきたいんです」

マークス「……理由を聞かせてもらおうか」

カムイ「私にはシュヴァリエ公国での戦いで王族として認められたという悪評が付き纏っています。ですからマークス兄さんに私をただの武器として扱ってほしいんです。マークス兄さんに認めてもらうためにここにいるという、そんな体で」

マークス「……カムイ、お前はそれでいいのか?」

カムイ「はい。私の言葉について来てくれるのは、ここに来てくれた仲間達とフリージアの皆さんだけですから」

エリーゼ「でもでも、こんなに協力してくれる人が集まってるんだよ? おねえちゃんが戦うから、みんな集まったのに、おねえちゃんが先頭に立たないほうが――」

クーリア「エリーゼ殿。残念ですが我々以外にカムイ様の事を信頼している者はいません。ここまで集めた同志に向けて、私はカムイ様の名前を一度も出したことはないのですよ」

エリーゼ「えっ……どうして」

クーリア「……もう地方の部族の方々の多くはカムイ殿を見限っていますし、カムイ殿の名前を出すだけでも疑惑を向けられかねない、それが今のカムイ様を見る人々の目です」

エリーゼ「そんな、そんなこと、だってカムイおねえちゃんはあの時、戦いたくないのに戦わされてただけなのに……」

 ポスッ ナデナデ

エリーゼ「カムイおねえちゃん……」

カムイ「いいんですよ。むしろ、私なんかが背負うには重すぎることをマークス兄さんに押しつけてるだけなんですから。でも、そう言ってもらえてとてもうれしいです、ありがとうございます、エリーゼさん」

エリーゼ「……うん」

マークス「カムイ……」

カムイ「これはマークス兄さんにしか頼めないことです。レオンさんでも、カミラ姉さんにもエリーゼさんにもできません。お父様の近くにいた暗夜王国第一王子であるマークス兄さんにしか、お願いできないんです」

マークス「……」

カムイ「お願いします……」

マークス「……」

カムイ「……」

マークス「カムイ、今の私はお前に剣を預けている身、そう言ったはずだ」

カムイ「マークス兄さん……」

マークス「私はお前の剣だ。そしてお前にならこの身を預けられると考えている。ならばお前の言葉に従わない道理はない、この肩書がお前の目指す道の役に立つのなら、使ってもらって構わない」

カムイ「……ありがとうございます。マークス兄さん」

マークス「ふっ。クーリア、同士に私の名前を通し意思を伝えよ。暗夜第一王子マークスは、古き暗夜を見切り新しき暗夜の夜明けを目指して先頭に立ち剣を振るうとな」

クーリア「わかりました、マークス殿」

カムイ「では、引き続き作戦会議を進めましょう」

クーリア「はい、それでは――」

レオン「その前にクーリア。一つ質問があるんだけど、いいかい?」

クーリア「なんでしょうか、レオン殿」

レオン「城壁に沿って備えられているこの凸マークだけど、これは何を表しているんだい?」

クーリア「それは攻城装備ですね」

レオン「攻城装備ね。凸一つにつき五、それが十あるということは五十もあるっていうこと? いったいこの量をどうやって手に入れたんだ?」

クーリア「ええ、元々攻城に関しては我々も手を焼いていまして。どうにか三十は集まっていたのですが、せめてあと最低十は欲しいということで、いろいろとこそこそと動いていたのです」

レオン「一体どこから?」

クーリア「それが、ある商人がガロン王に白夜での戦いに必要になるかもしれないと来たのはいいものの、必要ないと追い返されて大量在庫を抱えているとのことでしたので。特別セール価格ということで十個の値段で二十個売ってくださいました」

エリーゼ「へぇー、そうなんだー。どんな人だったの? やっぱり筋肉モリモリな男の人?」

クーリア「いえ、儲かるならなんだっていいという、赤髪の女性でした。これじゃ大損だと悪態を吐いていましたが」

カムイ「……え?」

アクア「カムイ、どうしたの?」

カムイ「いえ、なんでもありません」

カムイ(さすがにそんなことはありませんよね……偶然でしょう)

カミラ「でも、攻城装備っていうことは半額でもそれなりにしたんじゃないの?」

クーリア「まぁ、さすがに一括払いは不可能なのでローンを組まされてしまいました。しかし、背に腹は代えられませんし、装備不足で準備が進まないという事態は避けたかったので」

カムイ「ふふっ、なおさら負けられない戦いになってしまいましたね」

クーリア「ええ、娘たちがここにいたらどやされていたかもしれませんね。何年ローンなのかとか、フリージアの者も止めなさいとか、徹底的にいじられてしまうかもしれませんので」

カムイ「戦争が終わった後の目標もできてしまったようですね」

クーリア「目標は無いよりあった方がいいですよ。まぁ、あまり楽しいものではありませんが」

カムイ「さて、問題はどう攻めるかということですね。王都の入口はどのようになっているんですか?」

クーリア「はい、王都側と外側にそれぞれ門があり、跳ね橋がそれぞれ下がることで通行が可能になります。片方だけ下がったところで、王都に入ることは叶いません」

レオン「王都への道を確保するためには、王都側の跳ね橋と外側の跳ね橋の両方を下さないといけない」

カムイ「外と内を取らないことには王都内部への侵攻は不可能ということですね」

クーリア「ええ、城門はおそらく重装甲騎兵を主力としたブリッツの部隊。城壁周辺は竜騎兵を主力としたナハトの部隊がそれぞれ守っているでしょう」

レオン「そこでこの攻城装備の出番ってことなんだろうけど、実際この攻城装備はなんなんだい?」

クーリア「魔力を与えることで飛距離を向上させることのできるカタパルトです」

レオン「カタパルトか……。魔法での飛距離と攻撃力の向上は期待できるけど、これで王都の城壁を壊せるとは思えないし、数回やれば相手は隠れることを覚えるはずだ」

クーリア「ええ、それこそが狙いでもありますから」

レオン「?」

クーリア「流石に攻城装備を整えたところで、二層の城壁を破ることはできません。それに外壁と内壁の間は湖ですから、城壁の破壊は現実的ではありませんよ」

レオン「じゃあ、なんでカタパルトが必要なんだ?」

クーリア「城壁攻略に携わるのはシュヴァリエの者たちです。彼らにとってのカタパルトはただの攻城装備ではないようなので」

レオン「どういうことだい?」

クーリア「ええと、つまりですね――」

~~~~~~~~~~~~~~~~~

クーリア「――――というわけです」

レオン「馬鹿げてる……」

カミラ「なんだか乱暴ね」

アクア「ええ、そもそもそれって耐えられるのかしら?」

クーリア「魔法でその部分は大丈夫だと思います。それに元々は反乱の最終攻撃の案で王都を襲撃する際にそうする予定だったそうです。元から用意していたカタパルトはあの時に全てが破壊されたそうですが、こうして五十台準備出来たのは運のいいことです」

カムイ「シュヴァリエの方たちも参戦するんですね」

クーリア「はい。今の暗夜に対する戦いを望む者たちとなると、限られてしまうのが現状です。シュヴァリエの方々は今回の戦いには協力的ですが、カムイ殿が受け取ることになる視線に暗い色が付くことは免れないでしょう」

カムイ「覚悟しておきますよ。それに私はマークス兄さんに認めてもらうために、この戦いに参加している体なんですから。ね、マークス兄さん?」

マークス「たしかにそうだが……」

カムイ「だから、大丈夫です。新しい暗夜に縋るために媚を売る軽い女を演じてみせますから」

アクア「………」

カムイ「それでクーリアさん、現在できるようなことはなんですか?」

クーリア「今すぐに侵攻を開始するというのは無理です。ですが、補給拠点への攻撃を始めることは可能でしょう」

カムイ「では、補給拠点の攻撃指示をお願いします。あと、この戦いに参戦する方々を王都に最も近い村に集めて頂けませんか?」

クーリア「わかりました。攻城装備は先行して配置を済ませることにしますが、よろしいですか?」

カムイ「はい、くれぐれも王都攻略での先走りがないようにお願いします」

クーリア「皆さん聞きましたね。これより暗夜攻撃の最終準備に入ります。補給拠点への伝達、明日の真夜中に同時に事を起こすように指示を出すように、無限渓谷へと向かう者は越えさせてはなりませんが、王都に知らせに行く者は逃がし、王都の兵の救援要請が早く通達されるようにしなさい」

フリージア兵たち「はい」

カムイ「こちらは王都からの兵団出兵を確認後に集結。時を見計らって王都に攻撃を仕掛けます。暗夜に巻きつくこの状況を破壊するために、皆さんの力をお貸しください」

一同『はい、わかりました!』

カムイ「では、行動を開始してください」

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・補給拠点A―

暗夜兵「それはそっちだ。たく、なんでこんなところで補給なんてしなくちゃいけねえんだよ?」

暗夜兵「仕方ねえだろ。補給も重要なんだからよ」

暗夜兵「補給路を守る必要なんてねえよ。今さら白夜がここまで攻めてくることもねえんだ。あーくそ、あの軍属の野郎についてもこんな後方勤務じゃ、戦果も期待できやしねえ」

暗夜兵「それにしても、今日も地方部族の奴ら黙々と働いてやがるな」

暗夜兵「けっ、ここでちゃんとしてればいずれ褒美でももらえるって考えてるんだろうが。甘いよな、地方部族はどんなに頑張ったって地方部族のままだってのによ」

暗夜兵「その点、あのフリージアって部族はうまくやったもんだぜ。あのカムイ王女に引き抜かれたんだからな。今はあの城塞でぬくぬく戦争が終わるのを待ってるんだってよ。いいねぇ、白夜は今や下からは王族の先行部隊、上からはガロン王様率いる本隊が迫ってんだからよ。白夜を潰して富を得た時に、被害も出さずにいられる。すげえ玉の輿だ」

暗夜兵「まったくだぜ」

 コロンコロンコロン

暗夜兵「おい! 何か落ちたぞ!」

部族「……」

暗夜兵「てめえ、今落としただろ。戦場に送る物資を落として置いて、気付かねえとか、なにやって――」

 ドゴンッ

暗夜兵「がっ」ドサッ

暗夜兵「おい、何いきなり倒れて――」

部族兵「……」

暗夜兵「!? な、てめえ、一体何を!?」

 タタタタッ

 ブンッ

 ドガッ バキッ

暗夜兵「ぐえっ…」ドサッ

部族兵「よし、こっちは仕留めた」

部族兵「わかった……そっちはどうだ!」

部族兵「こっちも終わった。よし、それじゃ始めるぞ」チャキッ

部族兵「……王都の方は本当大丈夫なんですかね?」

部族兵「ああ、大丈夫だ。あのマークス王子がクーリアの元に付いたという話だ。地方部族の私達にも手を差し伸べてくれたあの方を信じることになんら迷いはない。ここで私達が囮を引き受け、たとえ死ぬことになったとしても、必ず暗夜に光をもたらしてくれるはずだ」

部族兵「ああ、やはり王族といえどガロン王のやり方は非道極まりないと判断したということだ。まぁ、一人を除いてだろうがな」

部族兵「ああ、あのカムイ王女は状況によっていい顔をしているだけに過ぎなかった。ふん、結局は模範的な暗夜貴族に過ぎないということだろう」

部族兵「まったくだな。よし、準備出来たぞ」

部族兵「よし、全員火を準備しろ。ここまで虐げられてきた日々、その終わりを迎えるために。我々の命は新しい暗夜の礎となるかもしれない、だがそれを恐れることなく戦い続けるのだ」

『おおおおおおーーーーーー!!!!』

 タタタタタタッ

 ボワッ ボワッ

 ボオオオオオオオオッ

 今日はここまでで

 城や都を攻める際にルートを選べたりするのが結構好きだったりします。
 シュヴァリエ式カタパルト運用方法。
 
 この先の展開を安価で決めたいと思います。
 参加していただけると幸いです。

◇◆◇◆◇
・カムイが話しかけるキャラクター

 ギュンター
 フェリシア
 ジョーカー
 フローラ
 ラズワルド
 ピエリ
 マークス
 オーディン
 ゼロ
 レオン
 ベルカ
 エリーゼ
 ハロルド
 エルフィ
 サクラ
 ツバキ
 カザハナ
 シャーロッテ
 スズカゼ
 サイラス
 ニュクス
 モズメ
 リンカ
 ブノワ
 アシュラ
 フランネル

 >>37 >>38
(重なった場合は次の書き込まれたキャラクターになります)

◇◆◇◆◇

・カムイが参加する攻略戦

1.装甲騎兵部隊のブリッツが守る王都正門
2.竜騎兵部隊のナハトが守る王都城壁

 こちらは先に3回あがったものにしたいと思います。

 こんな形でよろしくおねがいいたします。

エリーゼ
城壁

騎士の誓いだ
正門で

正門

城壁

正門

城壁

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・王都付近の寒村―

フリージア兵「現在、王都から出陣した討伐隊は予想通り反乱の始まった補給拠点に向かって進軍を開始、見たところでは危機感を抱いているように思えないとのことです」

レオン「まぁ、現在の暗夜の状況を見れば危機感を覚えることはないはずだよ。この補給拠点の攻撃もわずかな部族の反乱だと考えている今なら、こちらの攻撃はうまく決まるはずだ」

クーリア「この寒村に王都攻撃の者たちも集結しつつありますし、カタパルトもほぼすべてが初期地点に展開済みですので、うまく決まればすぐにでも正門と城壁を落とすことができるでしょう」

レオン「ああ、このままいけば日暮れには出陣を開始して、夜には攻撃を仕掛けられるだろうね」

クーリア「ええ……。それよりもレオン殿はよろしいのですか?」

レオン「なにがだい?」

クーリア「いえ、他の方と離れてこのように作戦会議をしていただけるのは心強いですが、今は皆と過ごされた方が……」

レオン「問題ないよ。それに、作戦はギリギリまで粘るべきだ。僕は兵士を消耗品のように考える戦い方は好まない、最適な場所に配置して、それで叩くのが僕の戦術だ。犠牲もできる限り抑えないといけない。それにこの戦いに協力的な貴族が仕切っている地方部族はマークス兄さんが戦闘表明を出したからどうにかなるけど、ほかの地方部族はクーリア、君がまとめ上げなくちゃいけないんだ。だから、こうして最後の確認をするんだよ」

クーリア「それもそうでした。申し訳ない、レオン殿」

レオン「でも、この指示を出した人間はかなりの量を補給拠点の奪還のために派兵したように思える。本陣を叩かれる可能性が現状少ないからと言って、ここまで大胆に兵を動かしてる。もしかしたら、あまり頭を使って戦う奴じゃないのかもしれないね」

クーリア「派兵は全体の七割以上といわれています。白夜が攻めてくる可能性はほとんどないわけですから、それよりも補給拠点の奪還に手間取って、白夜侵攻大隊への補給が滞らないようにするほうを選んだのかもしれません」

レオン「僕達が戻ってきてるということも、本当に大規模な反乱が起きることも相手は知らないんだからね。どちらにせよ、補給拠点の囮には頑張ってもうしかない、こっちは長引けば長引くほど結束が離れかねない、寄せ集めなわけだからさ」

クーリア「しかし、ガロン王も結構大それたことをします。まるで暗夜を守るつもりがないようにも思えなくないほどに、王都防衛に割いた兵の数は少ないのですから」

レオン「もしかしたら、本当にそうかもしれない」ボソッ

クーリア「?」

レオン「なんでもない。それよりも最後の詰めをしないといけないから、ちょっと姉さんと兄さんを呼んでくることにするよ」

クーリア「はい、わかりました。私はこちらで待機しておりますので」

レオン「ああ」ガタッ

 バサッ バサァ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~
―カムイの天幕―

カムイ「少しだけ慌ただしくなってきたようですね」

サイラス「そうだな」

カムイ「しかし、私たち以上に王都の兵たちは大変だったのかもしれませんね」

サイラス「たしかに補給拠点の八割で反乱が起きたとなれば、王都の兵も出ないといけないはずだ。のんびりしてられると思ってた奴もいるんじゃないかな?」

カムイ「眠っているところを叩き起こされたようなものですね」」

サイラス「俺もただの城内勤務だったら、この反乱の鎮圧に出て行ったかもしれないな」

カムイ「そうですよね。確かサイラスさんは元々は城内勤務だったんですよね」

サイラス「そうだな。でもカムイがこうして表に出てきてくれて正直助かったかもしれない」

カムイ「なんでですか?」

サイラス「おまえがまだこの時まで城塞に縛り付けられていたら、俺は城内でのんびり剣の訓練をしてるだけだっただろうからな。こんな風におまえと戦える日々じゃなかったら、体は鍛えられても精神は怠けることになりかねないし、それに俺はお前の故郷を滅ぼすために剣を振ってたかもしれないって思うと。今こうして共に闘えることは嬉しいことだと思うんだ」

カムイ「サイラスさんは騎士なんですから。それに誓いを重んじるサイラスさんは、命令を守るんじゃないんですか」

サイラス「ははっ、カムイ、俺の持ってる騎士の誓いは、友の誓いって言った方がいいかもしれない」

カムイ「友の誓いですか?」

サイラス「ああ、昔から親に言われてた。この世で一番得るべきものは繋がりで、その初めになる友愛の心は繋がる一歩になるってさ」

カムイ「ふふっ」

サイラス「な、なんだ。何か変なこと言ったか?」

カムイ「いいえ、サイラスさんはやっぱりサイラスさんなんだなって思いまして。私と遊んでくれたのも私の願いを叶えてくれたのも、友愛の精神からなんですね」

サイラス「も、もしかして、カムイは俺が上に言われたからそうしてたって思ってたのか」

カムイ「ええ、だって、目が見えない昔の私なんて、ただの面倒の掛る子供なだけじゃないですか」

サイラス「……たしかに、最初の頃はそうだったかもしれない」

カムイ「それが普通ですよ。目が見えない分、いろいろと迷惑を掛けましたし、転んですぐに泣いたりしてましたから」

サイラス「そうだな、積み木に足をひっかけて倒れたりしただけでも泣いてたからな」

カムイ「ええ、泣くたびにサイラスさんの名前を呼んでた気がします。サイラスぅ~って、ふふっ、あの感触が懐かしいです」

サイラス「感触?」

カムイ「はい、剣をうま振えた時、泣いているとき、サイラスさんは私の頭を撫でてくれたじゃないですか、その感触を思い出してしまったんです」

サイラス「……」

カムイ「ふふっ」

サイラス「なぁ、カムイ」

カムイ「なんですか? サイラ――」

 ナデナデ

カムイ「えっと、サイラスさん?」

サイラス「こ、こんな感じだったかな?」

 ナデナデナデ

カムイ「んっ、とっても、懐かしいです」

サイラス「……カムイがしてほしいっていうなら、まだ続けるよ」

カムイ「じゃあ、少しだけこのままでお願いします。とっても懐かしい、サイラスさんの手は何時までも温かいんですね」

サイラス「温かいのが友情だからな」

カムイ「サイラスさんの温かさは昔から変わりません。あの時からずっと、友情なんですね」

サイラス「…友情か」

カムイ「?」

サイラス「いや、なんでもない。もう少し続けるか?」

カムイ「サイラスさんが続けたいなら、続けてもいいですよ」

サイラス「なっ、カムイ……」

カムイ「ふふっ、冗談です。もう少ししてもらってもいいですか?」

サイラス「ああ、まかせろ」

 ナデナデ ナデナデ

サイラス(カムイの髪、サラサラしている)

カムイ『えへへ、サイラスの手、温かくて、優しいからわたし大好きなんだ……もっと撫で撫でしてぇ。んふふっ、サイラス大好きっ!』

サイラス(……もう少し甘えてくれたりしないかな……そのあの頃みたいに……)

カムイ「サイラスさん?」

サイラス「な、なんでもない。ささっ、俺もそろそろ装備の点検に戻ることにするよ」

カムイ「はい、ふふっ、撫で撫で懐かしくてよかったですよ。サイラスさん」ニコッ

サイラス「そう言ってもらえて光栄だよ、カムイ」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

カムイ「……」

カムイ「どうしましょう。表だって行動しない方がいいということで、天幕待機にしましたが思ったよりも暇ですね……」

カムイ(サイラスさんはもう装備点検に戻ってしまいましたし。私はできうる限り戦闘以外での接触は避けた方がいいでしょう。現に、私がいるということで不安を覚え始めている人がいるそうですし……)

カムイ「はぁ、自分で蒔いた種とはいえ、なんだか寂しいものですね……ん?」

 タタタタタッ

カムイ「足音?」

 バサッ

エリーゼ「カムイおねえちゃん、いるー?」

カムイ「あ、エリーゼさん。ちゃんといますよ、どうしたんですか?」

エリーゼ「えっとね、カムイおねえちゃん、寂しがってないかなって思って」

カムイ「……な、なんでそう思ったんですか?」

エリーゼ「えへへ、カムイおねえちゃんって思ったよりも寂しがり屋なんだってアクアおねえちゃんが言ってたから、その一人で寂しくないのかなって……」

カムイ「アクアさん、そんなことを言ってたんですか」

エリーゼ「うん。その、もしかして迷惑だったかな……」

カムイ「……いいえ。少し寂しくは思っていましたから」

エリーゼ「えへへ、それじゃ、えいっ!」
 
 ボスンッ

カムイ「あっ、ふふっ、いきなり膝上に座っちゃいますか?」

エリーゼ「うん、カムイおねえちゃんの膝の上、温かいから大好き!」

カムイ「ふふっ、前もこんな風に乗られちゃいましたから、外はどんな状況なんですか?」

エリーゼ「えっとね、いっぱい人が集まり始めてて、マークスおにいちゃんの場所にいっぱい挨拶に来てる。でも、やっぱりカムイおねえちゃんのことを聞くと、すごく不満そうな顔になっちゃう」

カムイ「仕方無いですよ。他の皆さんはどうですか?」

エリーゼ「ううん、なにも問題無いよ。でも、なんか嫌だよ、おねえちゃんだけ目の敵にされてるみたいで……。あの場にはあたしたちもいたんだよ?」

カムイ「あの時、私が指揮官でしたから、指揮官がシュヴァリエを攻撃を指示したんですから。間違ってませんよ」

エリーゼ「そんな……」

カムイ「ごめんなさい。せっかく私に会いに来てくれたのに、こんな話ばっかりしてしまって。もっと楽しい話をしたいですね」

エリーゼ「ねぇ、カムイおねえちゃん」

カムイ「はい、どうしました」

エリーゼ「えっとね、久しぶりになんだけど……あ、あのね」

カムイ「?」

エリーゼ「その、あたしの顔を触ってくれないかな……」

ガタッ

カムイ「どうしたんですか、突然」

エリーゼ「カムイおねえちゃんがちゃんと触ってくれたのって一年以上前なんだもん」

カムイ「たしか成長したか確認してってエリーゼさん、せがんできたときですよね?」

エリーゼ「うん」

カムイ「……そのいいんですか。私が顔に触る理由、エリーゼさんは知ってるのに」

エリーゼ「前にも言ったけど、みんな知ってるよ。それにカムイおねえちゃん、この頃、人の顔触ってないみたいだから……」

カムイ「確かに、この頃はアクアさんに止められていましたからね」

エリーゼ「だから、その、カムイおねえちゃんが良ければ、あたしの……顔触ってもいいよ?」

カムイ「……そうですね。それじゃ、お言葉に甘えさせてもらいますね」

エリーゼ「それじゃ、一回降りて――」

カムイ「いいえ、このまま失礼しますね、エリーゼさん」ピトッ

エリーゼ「ひゃっ、んっ、カムイおねえちゃん、後ろからは……、ひゃぅう」

カムイ「ふふっ、動いちゃ駄目ですよ。前から触るのもいいですけど、こうやって後ろから触るのも何だかいいですね。ふふっ、そんなもじもじして、どうしたんですか?」

エリーゼ「んんっ、カムイおねぇしゃっ…。そんな、首筋ぃ、ダメだめだよぉ……」

カムイ「いい声です。エリーゼさんも、こんな声をあげちゃうくらいになっちゃたんですね……。こんなに小さくて可愛いのに。ふーっ」

エリーゼ「んひゃぁあっ。だめ、前から、前から触られるより、すごくはずかしいよぉ、んああぅううっ」

カムイ「そうなんですか、いいこと聞いちゃいました。他の人にも試したいです。それにしてもエリーゼさんの髪、本当に長くていい匂いがしますよ。ふわふわしてて、とってもとっても心地いいです」

エリーゼ「やっ、めじりにゆ、ゆびっ、ひっかけちゃ、だめぇ……」

カムイ「目尻もいいですけど、やっぱりエリーゼさんは首の、この当たりですね」サスサス

エリーゼ「アッ、くぅん」

カムイ「エリーゼさんの喉のまんなか、ここに触れると体がしびれちゃうんですか?」コスコス

エリーゼ「あっ、うううっ、カム、イおねえ、ちゃっ、んんっ。やっ、へ、へんな、へんなこえ、でちゃうぅう。んやっ、あふっ、ひっ、んんあっ」

カムイ「ああ、いいです。いいですよ、エリーゼさんの声、とっても可愛いっ。もっと、もーっと私の耳に聞かせてください」クニクニ

エリーゼ「ふあああっ、のど、くにくにしちゃ、だめ、だめだよおねえちゃんっ」

カムイ「ふふっ、喉がうねってますね。それに、口が開いたままですよ?」

エリーゼ「ら、らってぇ。んっ、あたし」

カムイ「エリーゼさんの顔、今からいっぱい触ってあげちゃいます。喉はずっと触ってあげますから、いっぱいコロコロ顔を変えちゃってくださいね」コスコス シュッシュッ

エリーゼ「ふぁ、おねえちゃ、んにゅ、んんっ」

カムイ「エリーゼさんの口、小さくて可愛い、鼻も小さいですし。本当に可憐で、とっても柔らかい。まるでケーキみたい、どんな味がするんですかね?」サワサワ

エリーゼ「あぅうんっ。は、からだぁ、あつくなっちゃう、カムイおねえちゃんっ」

カムイ「ええ、エリーゼさんの体、とっても熱くなってます。こんなに熱くなるなんて、顔はどうなってるんですか?」

エリーゼ「わからない、わからないよぉ。いや、いやっ、んんぁああっ」

カムイ「可愛い御凸、後ろから触るとなんだか違う感じがします。ふふっ、柔らかい……」

エリーゼ「はぁはぁ、カムイおねえちゃん……」

カムイ「いっぱい堪能させてもらいました。ありがとうございます、エリーゼさん。なんだか、とってもドキドキしました」

エリーゼ「あ、あたしも、すごくドキドキした。その、恥ずかしかったから」

カムイ「ええ、あんなに可愛い声をあげるなんて思いませんでした。ちゃんと成長してるんですね」

エリーゼ「そ、そうなの?」

カムイ「ええ、前より可愛くなってますから」

エリーゼ「ううっ、きれいになってるって言って欲しかった」

カムイ「ふふっ」

カムイ「でも、どうしたんですか。突然、顔を触ってもいいなんて」

エリーゼ「うん、その、前のこと。あたしが嘘付いてたこと…」

カムイ「私はもう気にしてませんよ」

エリーゼ「ううん、あたしが嫌なの。カムイおねえちゃんに嘘を吐いてたあたしの姿を、おねえちゃんに覚えてて欲しくなかったの。だから……」

カムイ「エリーゼさん」

エリーゼ「ご、ごめんなさい」

カムイ「何も謝ることなんてありませんよ。むしろ、私の中のエリーゼさんはどんどん新しい魅力で溢れてますから」

エリーゼ「カムイおねえちゃん……」

カムイ「だから何も気にすることはありませんよ」

エリーゼ「……ありがとう」

カムイ「ふふっ」

エリーゼ「えへへ、おねえちゃんぎゅ―ってしてほしいなっ」

カムイ「わかりました。いいですよ、エリーゼさ――」

 タタタタタッ

 バサッ

レオン「姉さん、ちょっといいかな?」

エリーゼ「………」

レオン「どうしたんだい、エリーゼ?」

カムイ「レオンさん、どうかしました?」

レオン「打ち合わせをしたいから、ちょっと来てもらえないかなって思ったんだけど……」

カムイ「わかりました。エリーゼさん、残念ですけどまた今度してあげますから」

エリーゼ「う、うん」

エリーゼ「うーっ」ジーッ

レオン「なんで、僕をそんなに睨みつけるんだ?」

エリーゼ「なんでもないよ、ふーんだ!」

 タタタタタッ バサッ

レオン「なんなんだ?」

カムイ「はぁ、本当にレオンさんは空気を読んでください、あと二分くらいは遅れてきてくれたら……」

レオン「なんで、こんなに言われなくちゃいけないの?」

カムイ「それよりも、打ち合わせということは……」

レオン「ああ、寒村にほとんどの部隊が集合してる。最後の確認に入ろうと思うから姉さんにも話に参加してもらいたいんだ。マークス兄さんもすでに向かってる」

カムイ「そうですか」

レオン「うん、だから来てもらえるかな?」

カムイ「ええ、断る理由はありませんよ」

レオン「それじゃ、付いて来て」

カムイ「はい」

◆◆◆◆◆◆
―王都近くの寒村・クーリアの天幕―

マークス「なるほど、それが今回の戦いの手順というわけか」

クーリア「はい。ですので、私は主に攻城装備の部隊を預かることになります。まずは正門への攻撃をマークス殿、そしてカムイ殿にお願いしたいのです」

カムイ「はい、わかりました。それでそちらの戦力は足りているのですか?」

クーリア「残念ながら、完全というわけではありません。ですのでカムイ殿の戦力を少しばかり貸していただけるとありがたいのですが」

カムイ「はい、構いません。レオンさん」

レオン「攻城装備と手段を見る限り、竜騎兵と歩兵がいた方がいいのかな?」

クーリア「ええ、カタパルトに空きがありますので、歩兵はカムイ殿の臣下の方が入り次第、入れ替える予定です。あとはシュヴァリエの兵たちが問題なく運んでくれるはずです」

カムイ「運んでくれなくては困ります。王都に入るためには二つの跳ね橋を下さなければいけないんですから」

クーリア「ええ、心得ています。では、この流れでよろしいですか?」

マークス「ああ、構わん」

レオン「僕も問題ないよ」

カムイ「私もそれに従います。クーリアさんの方もよろしくお願いしますね」

クーリア「はい、それでは準備が出来次第、行動を開始するとしましょう」

カムイ「はい」

マークス「カムイ」

カムイ「なんですか、マークス兄さん」

マークス「カムイは私と共に来てくれ、すまないがお前には派手に動いてもらわないといけない」

カムイ「はい、覚悟はしていますから」

マークス「すまない」

カムイ「謝らないでください。それにマークス兄さんに役目を押し付けたのは私なんですから、戦場では頼りにしていますよ」

マークス「ああ、私もお前を頼りにしている。正門を攻める者たちの選抜はカムイに任せる、よろしく頼んだぞ」

カムイ「はい、わかりました」

カムイ(……ついに始まるんですね)

(この戦いが……)

 第十八章 前篇 おわり

○カムイの支援現在状況●

―対の存在―
アクアA
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)

―城塞の人々―
ギュンターB++
(恋愛小説の朗読を頼まれています) 
フェリシアB+
(カムイに従者として頼りにされたい)
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
フローラC+
(すこしは他人に甘えてもいいんじゃないかと言われています)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)

―暗夜第一王子マークス―
ラズワルドB
(あなたを守るといわれています)
ピエリB
(弱点を見つけると息巻いています)
マークスC+
(イベントは起きていません)

―暗夜第二王子レオン―
オーディンB+
(二人で何かの名前を考えることになってます)
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)
レオンB
(カムイに甘えてほしいと言われて、いろいろと考えています)

―暗夜第一王女カミラ―
ルーナA
(目を失ったことに関する話をしています)
カミラA
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ベルカC+
(イベントは起きてません)

―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼB++→A
(昔、初めて出会った時のことについて話しています)
ハロルドB
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィC+
(イベントは起きていません)

―白夜第二王女サクラ―
サクラB++
(カムイと二人きりの時間が欲しいと考えています)
ツバキB
(イベントは起きていません)
カザハナC+
(イベントは起きていません)

―カムイに力を貸すもの―
シャーロッテB++
(返り討ちにあっています)
スズカゼB
(おさわりの虜になったようです)
サイラスB→B+
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB
(イベントは起きていません)
モズメC+
(イベントは起きていません)
リンカC+
(イベントは起きていません)
ブノワC+
(イベントは起きていません)
アシュラC+
(イベントは起きていません)
フランネルC+
(イベントは起きていません)

今日はここまで

 久々に顔を触れて、カムイはとても満足しているし、顔を触ってるだけだから健全。
 
 この先、戦闘に参加するキャラクターを選んでいこうと思います。
 参加していただけると幸いです。
 まず、ジョブ一覧を張り付けたいと思います。

○仲間ジョブ決定一覧●
―対の存在―
・アクア(歌姫)

―城塞の人々―
・ジョーカー(パラディン)
・ギュンター(グレートナイト)
・フェリシア(ストラテジスト)
・フローラ(ジェネラル)

―暗夜第一王子マークス―
・マークス(パラディン)
・ラズワルド(ボウナイト)
・ピエリ(パラディン)

―暗夜第二王子レオン―
・レオン(ストラテジスト)
・オーディン(ダークナイト)
・ゼロ(ボウナイト)

―暗夜第一王女カミラ―
・カミラ(レヴナントナイト)
・ルーナ(ブレイブヒーロー)
・ベルカ(ドラゴンマスター)

―暗夜第二王女エリーゼ―
・エリーゼ(ストラテジスト)
・ハロルド(ブレイブヒーロー)
・エルフィ(グレートナイト)

―白夜第二王女サクラ―
・サクラ(戦巫女)
・カザハナ(メイド)
・ツバキ(バトラー)

―カムイに力を貸すもの―
・ニュクス(ソーサラー)
・アシュラ(上忍)
・フランネル(マーナガルム)
・サイラス(ボウナイト)
・スズカゼ(絡繰師)
・ブノワ(ジェネラル)
・シャーロッテ(バーサーカー)
・リンカ(聖黒馬武者)
・モズメ(弓聖)

 この先の展開を安価で決めたいと思います。参加していただけると幸いです。
◇◆◇◆◇
 カムイと同行することが決まっているキャラクター
 ・アクア
 ・マークス

◇◆◇◆◇
 騎馬戦力(パラディン・グレートナイト・黒天馬武者)
・ギュンター
・ジョーカー
・ピエリ
・エルフィ
・リンカ

>>60
>>61

◇◆◇◆◇
 遊撃騎馬戦力(ボウナイト・ダークナイト)
・ラズワルド
・ゼロ
・オーディン
・サイラス

>>62

◇◆◇◆◇
 後方支援(ストラテジスト限定)
・フェリシア
・レオン
・エリーゼ

>>63

◇◆◇◆◇
 その他の戦闘(歩兵限定)
・エルフィ
・フローラ
・ルーナ
・ハロルド
・サクラ
・カザハナ
・ツバキ
・ニュクス
・アシュラ
・フランネル
・スズカゼ
・シャーロッテ
・ブノワ
・モズメ

 カムイと共に攻略に携わる二人

>>64
>>65

 カミラと共に城壁攻略戦に向かう歩兵キャラ

>>66

 ベルカと共に城壁攻略戦に向かう歩兵キャラ

>>67

 キャラが重なった場合は次の書き込みが優先される形になります。
 ちょっと、安価数が多いのですが、参加していただけるとありがたいです。

エルフィ
R17.9くらいだよなあ

エルフィ

リンカ

ピエリかラズ
サイラスにはカムイは渡せん

ここは後方支援だよな?
エリーゼ

エリーゼ

>>60>>61で笑う
ルーナ

フローラ

取りすぎかもしれんがサクラ

速すぎぃ!
ベルカだよね、ニュクス

乙です
エリーゼ選んで良かった、捗ります

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・王都ウィンダム『王都正門』―

ジェネラル「……ブリッツ隊長」

ブリッツ「ん、なんだぁ?」

ジェネラル「今回の補給拠点への攻撃、どう思われますか?」

ブリッツ「決まってる、陽動さ」

ジェネラル「では、なぜ留守にするような形に……」

ブリッツ「それが上の命令ってことだよ。まぁ、ガロン王様と一緒に多くの兵が御留守の時を狙いたいと考えれば、こうして遠くの補給拠点を襲ってそこに援軍を送らせるっ

てのは、簡単に思いつく作戦だからな。しかし我らは軍人、上が金を鉄だと叫べば、黄金の鉄ですって応答するのが使命ってもんだろ?」

ジェネラル「……はぁ」

ブリッツ「補給拠点の奪還に向かった奴らが出立して一日と半分、この補給拠点への襲撃が陽動なら、そろそろ……」
 タタタタタタッ

アドベンチャラー「ブリッツ隊長ー」

ブリッツ「おう、なんだ?」

アドベンチャラー「目視距離に軍勢を確認しました」

ジェネラル「もう反乱を抑えて戻ってきたっていうのか?」

アドベンチャラー「いやいや、仕事早すぎますから。多分違いますよ」

ジェネラル「じゃあなんだ?」

アドベンチャラー「多分、敵の本隊」

ジェネラル「なんだと!?」

ブリッツ「ほら、言わんこっちゃない。あーあ、補給拠点に向かった奴らは勝ち組だな。間に合えば後ろから手柄がもらえる。間に合わなくても生き残れる。王都防衛組は貧乏くじ筆頭になっちまったな」

ジェネラル「何を言いますか、ブリッツ隊長! この正門は難攻不落、それを三十余年以上維持してきたのです。負けるはずだありません!」

ブリッツ「そりゃそうさ。何せ、一回も攻められたことなんてないんだからよ、あっはっはっは!」

女アドベンチャラー「たしかに一回も攻められたことがないなら、難攻不落ですよね、ブリッツ隊長冴えてます」

ブリッツ「だろぉ?」

ジェネラル「もっと慌ててくださいよ!」

ブリッツ「それもそうだな。よし、そこのお前」

ソシアルナイト「はい」

ブリッツ「城壁防衛のナハトに伝えろ。跳ね橋をあげて、防御に努めるようにってな。外から上にあがるには竜かファルコンが必要になるから、のこのこ飛んできたのを撃ち落とせるように準備しとけって。あと、城にも伝令送っとけ、出来れば援軍も欲しいってさ、なにせこっちは防御だ。相手に守るものなんてのは指揮官くらいなもんだ。今の状態、数の上では負けてんだからよ」

ソシアルナイト「わかりました」ガチャ バタン

ブリッツ「それじゃ、玄関口に行くか。おい、ボウナイトは俺と一緒に来い、ジェネラルは指示が出るまで待機、痺れ切らして突っ込んだ奴は終わった後に城壁磨き一週間だからな。アドベンチャラーは引き続き、敵の監視、先走りするような敵の粗相やろうにはバリスタ当てておとなしくさせてやれ」

女アドベンチャラー「わかりましたー」

ジェネラル「一体、誰が来るんだ?」

ブリッツ「そんなの考えるまでもねえさ。暗夜王国の敵、それ以外のなんでもねえんだからよ」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
―暗夜王国・王都ウィンダム『外堀』

エリーゼ「えっと、これで本当にしゃべれるの?」

ニュクス「ええ、作戦区画内だったら会話できるはずよ。声を含んだ空気を圧縮して、送ってるって言えばいいのかしら? 少しだけ行き来に時間が掛るのが問題だけど」

カムイ「いいえ、それにしても何時の間にこんなものを?」

ニュクス「いつでもいいでしょう? それに連携が取れれば、それだけ優位に立てるのが戦いというものよ」

マークス「ああ。さっそく使わせてもらうぞ、ラズワルド状況はどうだ?」

 ザザザー

ラズワルド『こちら、ラズワルド。……どうやら、補給拠点奪還の命令を出した奴よりは手ごわそうです』

マークス「……」

『もう、防御準備に入り始めてる。正門前に重装兵の軍勢、跳ね橋も上がり始めてます。見たところ竜騎兵の姿は見えませんが、すでに準備を始めているのかもしれません』

マークス「さすがに正門を任されているだけはあるということだな。何か動きがあれば連絡をしろ」

ラズワルド『わかりました』

ルーナ『それにしても、これ便利ね。ずっと、幻影魔法とかは囮作戦とかに使うものかと思ってたけど、こんな使い方もあるなんて……』

ニュクス「情報の伝達だけなら、声だけ送ればいいだけよ」

ルーナ『たしかにそれもそうね。この技術、あたしにも教えなさいよ』

ニュクス「残念だけど、これは私のもの、門外不出だから」

ルーナ『もっとサービスしてもいいじゃない』

ニュクス「……ふふっ、お断りよ」

マークス「無駄話はそこまでにしておけ。何か動きがあり次第、連絡を頼む」

ラズワルド・ルーナ『わかりました』

ニュクス「……はぁ、まったく何でもかんでも欲しがるものじゃないわ」

カムイ「そうかもしれませんね。それでどうしますか、マークス兄さん」

マークス「うむ、思ったよりも敵の展開は早い。奇襲できればと思ったが、これは真っ向勝負の流れになりそうだ」

カミラ「こちらの戦力は城壁と正門を合わせた数よりは上かもしれないけど、拠点を真正面から落とすとなると、少し辛いものがあるわ」

カムイ「かといって、ここで戻る選択肢はありませんよ。戻っているうちに伝令が防衛拠点に向かえば、一日も経たずに帰ってくるでしょうし」

マークス「こちらには情報伝達の速度がある。それを使って落とすしかない」

サクラ「うまく行くんでしょうか?」

ニュクス「私の技術をなめないでほしいわね。これでもかなり時間を掛けて作った代物なのよ?」

サクラ「ご、ごめんなさい」

ニュクス「ちょ、ちょっと、泣きそうな顔しないでよ……」

カミラ「あらあら、サクラ王女に意地悪して、大人気ないわよ」

ニュクス「そんなことしないわ。でも、サクラの言ってることも一理ある。過信するのは良くないのは確かね」

サクラ「ニュクスさん……」

ニュクス「もう、すぐに嬉しそうな顔をするものじゃないわ」

サクラ「えへへ」

ニュクス「はぁ……」

ベルカ「ニュクス、揺ら揺らしないで頂戴」

ニュクス「あ、ごめんなさい」

ベルカ「はぁ、子守に来たんじゃないんだから、しっかりして」

ニュクス「あ、あなたまでそんなことを言うの?」

ベルカ「だって、あなた子供でしょう?」

ニュクス「大人の女性だって言ってるでしょ!?」

マークス「話はそこまでだ」

 ザザッ パカラ パカラ

マークス「クーリア、われわれに敵の意識を引き付ける、その間に攻城装備の準備を済ませ、出来次第連絡を頼む」

クーリア「はい、分かりました。では、城壁組は私に続いてください」

 パカラパカラパカラ
 バサバサバサ

カミラ「それじゃカムイ、おねえちゃん頑張って来るわね」

カムイ「はい、それとサクラさんのことをお願いしますね」

サクラ「大丈夫です。私も武器はは使えますけど、何より多くの人の傷を癒してあげたいんです。だから……」

カムイ「サクラさんらしい理由です。ですが気を付けてくださいね」

サクラ「はい、カムイ姉様!」

ベルカ「少し揺れるから、ちゃんと掴まってて」

ニュクス「ええ、少しは加減して頂戴」

ベルカ「大人の女性だから?」

ニュクス「……ベルカって思ったよりも性格悪い気がするわ」

ベルカ「暗殺しかしてなかったからかもしれないわ」

ニュクス「なら、頷くだけでもいいでしょ。カムイ、城壁は私達がどうにかするわ。こっちには情報の共有っていう武器がある、有効打に繋がるタイミングで指示を頼むわ」

カムイ「ええ、わかっています」

ベルカ「城壁のことは任せて、任務は必ず達成するわ」

カムイ「はい、よろしくお願いしますね」

 バサバサバサッ

エリーゼ「この先の広場から、坂を上った先が正門だよ」

マークス「よし、正門下段広場に入――」

 ザザザザー

ラズワルド『こちらラズワルド、マークス様』

マークス「私だ、どうした?』

ラズワルド『正門建造物入口から広場に向かう影があります。数は四、全員騎兵みたいです』

マークス「編成はどうなっている?」

ラズワルド『グレート・ナイトが一、残りはボウナイトです。偵察かもしれませんが、先制攻撃にも注意してください』

マークス「わかった、行動開始時に合図を送る、それまでは待機せよ。カムイ、下段広場に敵が向かっている」

カムイ「先手を打ちますか?」

マークス「やめておこう。ここは私とカムイだけで行く、他の者たちはそれぞれの所定の位置で待機、すぐにでも戦闘が始められるように待機せよ」

『わかりました』

アクア「私はカムイと一緒に行くわよ」

エリーゼ「ならあたしもいくよ!」

エルフィ「エリーゼ様が行くならわたしもどうこうするわ。それに壁になるにはわたしが適役だもの」

マークス「いいだろう、付いてこい!」

 パカラ パカラ ヒヒーン

ブリッツ「さてと、敵さんの様子はどうかな。敵の規模がわかればこっちの取るべき行動も、ってなんで五人しかいないんだ? 下から俺たちの姿は見えないはずなんだが……」

敵ボウナイト「五人か、一体誰だ? おい、望遠鏡を」

敵ボウナイト「はいよ」

敵ボウナイト「さてと、どれどれ……」

マークス「……」

敵ボウナイト「!? あれはマークス王子。どうしてこんなところに!?」

敵ボウナイト「いや、それだけじゃない、あそこにいるのはエリーゼ王女、それにカムイ王女もいる」

敵ボウナイト「アクア王女までも、これはいったい……」

ブリッツ「……まずは確認でもしておくとするか。お前ら準備しておけ、俺が左手をあげたら赤、右手なら白だ。それとお前は、俺と来い」

ボウナイト「はい!」

ブリッツ「さてと、おらあああっ」グググッ

 ガチャ ギィィイイイイ ガチャン

マークス「!」

敵ボウナイト「……」カチャ

カムイ「……」

エルフィ「みんな、わたしの後ろに」

カムイ「いいえ、エリーゼさんとアクアさんを守ってください。さすがに三人ではエルフィさんの盾に収まらないでしょうから」

マークス「それに、向こうも本気で射るつもりではない」

 ザッ ザッ ザッ 

ブリッツ「ここは暗夜王国の王都ウィンダムに至る正門。白夜侵攻の先行作戦中であるマークス王子がどうしてこのような場所におられる?」

マークス「……」

ブリッツ「失礼した、俺は正門守備隊隊長のブリッツ」

マークス「暗夜王国第一王子マークスだ」

ブリッツ「では、問いかけに応えてもらう、マークス王子も含めた王族の方々がなぜここにおられる。話では侵攻作戦のために白夜に赴いているはずでは?」

マークス「父上の暴走を止めるために戻ってきた。この戦いに正義はない、滅ぼすためだけの戦いを終わらせる。そのために王都ウィンダムを開放させてもらう」

敵ボウナイト「今の言葉って……」

敵ボウナイト「そう云う意味だよな?」

ブリッツ「そうか、ならもうかしこまる必要はないよな。まったく、なんでこんなタイミングで来るんだ、あと少しで隠居生活を送れたかもしれないっていうのにな」

カムイ「暗夜が白夜を滅ぼした世界でですか?」

ブリッツ「結果的にはそうなるだろうな?」

マークス「ブリッツ、こちらも戦うのは本意ではない。降伏するのならば部下の安全は保障しよう。だが、拒むのであれば」カチャ

ブリッツ「……容赦しないってことか」チラッ

敵ボウナイト(ブリッツ隊長、準備OKです)コクリッ

ブリッツ(上々だ)

マークス「さぁ、答えを聞こう」

ブリッツ「ああ、すまんすまん。まさか王族がこの件を仕組んでいたとは思わなかったんでなぁ。だが、これでも留守を任されてる身、上の命令に従うのが軍人ってもんだ。王族のマークス王子にはあまり実感がわかないかもしれないが」サッ

ブリッツ「これでも三十余年は誰も攻めてこない正門を守ってんだ……。一回くらい実績を作らせてくれ、よっ!」ブンッ

マークス(スレンドスピア、動きはいいが……)

 サッ
 キィン

カムイ「……大丈夫ですか、マークス兄さん」

マークス「ああ」

ブリッツ「うーん、先手必勝ってわけにはいかないか……」

 タタタッ ザザッ

カムイ「ここで、決めます」ダッ

敵ボウナイト「おっと、隊長には近づかせねえよ」パシュッ
 
 タンッ

カムイ「!」サッ

 バシュッ ボオオオオオオッ

マークス「あれは……」

アクア「煙ね、赤い。敵の合図のようだけど」

ブリッツ「よし、後続のジェネラルと合流するぞ。お前は少しだけ時間稼ぎしたら戻れよ」タタタタッ

敵ボウナイト「わかりました。そらっ」パシュッ

エルフィ「エリーゼ様!」キィン

エリーゼ「エルフィ!」

エルフィ「大丈夫、あなたはわたしが必ず守るから……。よくもエリーゼ様を狙ってくれたわね?」

敵ボウナイト「敵だから仕方ねえだろ」

エルフィ「はあああっ!」

 サッ

敵ボウナイト「あぶねえあぶねえ」

 パシュッ パスッ
 キィン キィン

カムイ「マークス兄さん」

マークス「全員攻撃開始を開始しろ。ラズワルド、状況はどうなっている」

ラズワルド『こちら、ラズワルド。煙でよく見えないけど、煙の中をジェネラルの大隊が進行しているみたいです。接触までもう時間そんなにないですよ?』

マークス「ふっ、向こうも煙幕でこちらの動きはわかるまい。今のうちに陣を張り、入ってきたジェネラルを迎え撃つ」

ルーナ『って、あたしたちこのまま監視してるだけ!? そんなのつまらないんだけど?』

マークス「ああ、もはや監視をできる状態ではない。すぐに合流しろ」

ラズワルド『わかりました。ほら、ルーナ乗って、移動するよ』

ルーナ『ようやく、動けるのね。ちゃちゃっと済ませるわ。ちゃんと残して置いてよね!』

カムイ「!」

敵ボウナイト「てやああっ」ブンッ

カムイ「はっ」キィン

敵ボウナイト「そらっと」

カムイ「っ、せいっ」ブンッ

 ザシュッ

敵ボウナイト「ぐおっ、いてえじゃねえか……」

カムイ「投降したらどうですか?」

敵ボウナイト「はっ、全く確認できない距離に援軍がいるんだろうが、伝令を走らせてもこっちの援軍のほうが早い。逃げ帰る準備でも――」

カムイ「はたしてそうですか?」

敵ボウナイト「え?」

 ドドドドドドッ

 ウォォォォォ!!!!!

 ウオオオオオオオ!!!!!

敵ボウナイト「」

敵ボウナイト「えっ、なんでこんな早いんだよ!? こんなの聞いてねえし!」

カムイ「こちらは繋がってますので、ね!」ブンッ

 キィン ザザッ

敵ボウナイト「なにが繋がってるってんだよ。ちくしょー」パシュッ

 パシュ パシュ
 ブリッツタイチョー、ソッチニゴウリュウシマス!

敵ボウナイト「隊長、あいつ悲鳴上げてます。それと敵の援軍が……」

ブリッツ「え、なんだこの速さ……すごい伝達力、一日で白夜に行って帰ってこれるくらいの早さなんじゃないかこれ?」

敵ボウナイト「あー、さすがに逃げてきましたね」

敵ボウナイト「まぁ、俺でも逃げるよ。あんな軍勢みてたらホラ吹くのも辛いし」

ブリッツ「俺だって逃げるさ。仕方ねえ、でも煙もいい感じに広がったんだ、これに紛れて合流するぞ」

敵ボウナイト『はい!』

 パカラパカラ

敵ボウナイト「ま、待ってくださいよ、隊長!」

~~~~~~~~~~~~~~~~

 モクモクモク

マークス「ここで待機し、ジェネラルが入ってきたところを叩く」

カムイ「はい」

エリーゼ「でも、なんか全然足音とか聞こえないね?」

アクア「慎重に進んでいるのかもしれないわ。自分たちで仕掛けた行動だとしても、敵に狙われるのは覚悟してるはずだから」

 パカラ パカラ

ラズワルド「お待たせしました。マークス様」

ルーナ「やっと合流できた、ってなんで進まないのよ?」

フローラ「流石にこの煙幕の中を進んでも各個撃破されるだけ、ここで待つのが得策よ」

リンカ「あたしならこの煙幕の中をいけるが……どうする?」

マークス「飛んで行っても、撃ち落とされるだけだろう。まずは様子を伺うしかない」

エリーゼ「あっ、煙が晴れてきたよ!」

 ………

カムイ「気配が何もありませんね」

マークス「何もいない……となると」

ラズワルド「……あー、色つきの煙だから何かと思ったけど、そのためだったんだね」

ルーナ「完全に防御陣営を作り上げたみたい」

マークス「……なるほど。ジェネラルを進めて交戦すると見せかけて、籠城の準備を整えたということか」

アクア「見たところ、外側城壁の守りも出来る限り正門防衛に回ったようね」

カムイ「そうですか……マークス兄さん」

マークス「ああ、あのブリッツという男には悪いが、始めさせてもらうとしよう」

 ゴソゴソッ

マークス「クーリア、正門建造物に敵が集中した。外側城壁上部は手薄になった」

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・王都城壁周囲―

クーリア「わかりました。始めさせていただきます」

フリージア兵「クーリア様」

クーリア「はい、布を外して準備を始めなさい!」

 バサァ バサァア

クーリア「第一隊の目標は外側城壁上の兵士歩行路。第二隊の目標は内側城壁の歩行路です。第一攻撃準備!」

 ガチャ ガチャ ギリギリギリギリ

 ドサッ
 
フリージア「投石、固定完了!」

フリージア兵「魔力補強開始……補強終わりました」ポワアアアッ

フリージア兵「角度固定完了、風の誤差修正完了しました!」

クーリア「では……放て!!!」

 バシュ バシュ バシュ 

 ヒューーーーン

 ドゴンッ ドゴンッ ドゴンッ!!!! ギャアッ

 イッタイドコカラキタ!? 

クーリア「……あと二回ほどでしょうか。準備をおねがいします、シュヴァリエの方々」

シュヴァリエ兵「ああ、任せておけ」

「一気に肉薄して、奴らの度肝を抜いてやるさ……」

今日はここまで
 
 ブリッツはこんな感じです。

 FEif発売一周年おめでとう。
 一周年記念、つまりリリスがプレイアブルになる可能性があるってことですよね……

一周目おめ
これってシューターの見た目でいいのかな
リリスは覚醒のDLCのインバースとかみたいならワンチャン
なおそのDLCが出ない模様

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・王都ウィンダム『正門砦前』―

部族兵「うおおぉぉおおおっ!!!」

 ドゴンッ バシュッ

ジェネラル部隊長「怯む必要はない、我らが鉄壁の守りを見せつけてやれ!」

ジェネラル群『わかりました』

 バシュッ ザシュ

部族兵「ぎゃあ!」

部族兵「こちらも押し負けるわけにはいかない。全員、進めぇ!!!」

 ワーワー!

女アドベンチャラー「……人数は多いけど、まだ変な動きはしてないかな?」

ボウナイト「すまん、今戻った」

女アドベンチャラー「遅い。一人で装填観測射撃は面倒だった」

ボウナイト「それで、ここから見ててどうだった?」

女アドベンチャラー「完全にこっちの動きを完全にリ貸してるってわけじゃないけど、城壁上部への攻撃タイミングが奇麗に纏まってたね」

ボウナイト「やっぱりか。こっちもすぐに、伝達できればよかったんだけど」ガチャガチャ 

女アドベンチャラー「向こうは最速で情報伝達ができるんじゃないかな?」

ボウナイト「かもな。なら、籠城で長引かせる以外にないって隊長が零してたぞ。とりあえず、できる限り牽制する」ガコンッ

女アドベンチャラー「わかった、装填準備出来た?」

ボウナイト「ああ、間隔はできる限り詰めてみせるさ。あと、落ちそうになったら逃げてもいいって隊長が言ってたぞ」

女アドベンチャラー「……わかった。それじゃ、攻撃するよ」

ボウナイト「はいよ、三点射でいくぞ」ガチャ ガチャ ガチャコン

女アドベンチャラー「攻撃開始」ガチャンッ

 バシュ バシュッ バシュッ!

~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ヒュン バシュッ

部族兵「があっ」ドサッ

 ザシュッ
 
部族兵「あああっ!!!」ドサッ

エルフィ「エリーゼ様! くっ、すごい衝撃ね……」キィン ゴロンゴロン

エリーゼ「エルフィ! えいっ」シャラン

エルフィ「ありがとうエリーゼ。それにしても、こっちの人数が多くてもこれはなかなか抜けないわね」

 ヒュンッ 

エリーゼ「エルフィ、次が来るよ!」

エルフィ「受けるだ――」
 
 サッ

 ガキィン
 
フローラ「すごい、手が痺れるわ」

エルフィ「フローラ」

フローラ「エルフィさん、大丈夫?」

エルフィ「ええ、ふふっ、ありがとう」

フローラ「気にしないでください。それよりも、あの正門砦のバリスタをどうにかしないといけませんね。部族の方々も奮闘していますが、この坂では投入戦力が決定されてしまいます」

カムイ「こちらの兵すべてを使うのは無理そうですね」

アクア「それに、私達が前に出ないことで、不信感を抱いている者もいるかもしれない。このまま負けることはないけど、士気の低下は抑えられそうにないわよ」

ラズワルド「あのバリスタは内部に入り込んでる構造だから上から侵入するしかない。でも、ここから飛んで近づこうにも、バリスタに気づかれて撃ち落とされかねないよ」

ルーナ「かと言って、ここでもたついててもこっちの犠牲が増えるだけね。まだ援軍も来てないみたいだから、どうにかしないと……」

マークス「……」

カムイ「マークス兄さん」

マークス「心配するな、考えがまとまったところだ。リンカ」

リンカ「なんだ、マークス」

マークス「作戦を考えた、頼めるか?」

リンカ「唯一の空戦力はあたししかいないから別に構わないぞ」

マークス「よし、敵を分断し包囲撃破の布陣を作り上げるぞ」

マークス「まずはエリーゼにフローラ、敵の左端の注意を引いてほしい」

エリーゼ「わかったよ、マークスおにいちゃん」

フローラ「はい。お任せください」

マークス「ラズワルドとアクアは、フローラとエリーゼの攻撃に敵が反応したと同時に部族の者たちに指示を出し左の敵を釘付けし固定。反対側も同じように強襲し、敵中央集団に包囲出来そうだと思わせられるような戦列を作り上げてくれ」

ラズワルド「わかりました」

アクア「やってみるわ」

マークス「中央に穴が出来た後、エルフィを先頭に敵陣突破を図りつつ、リンカ、カムイ、ルーナは私に続いて敵の穴を抜け正門砦に肉薄する。敵の中に入り込めば、バリスタも早々飛んでこないはずだ。最後にその通過した穴に割り込んで挟撃し、包囲を完成させる」

マークス「正門砦に肉薄後、リンカはカムイを乗せ城壁上部に向かい、上部の監視を排除、そのまま二人でバリスタを叩き、正門への道を開放しろ」

カムイ「わかりました。マークス兄さん」

マークス「では、正門砦を落とすぞ」

フローラ「エリーゼ様、私の陰から出ないようにお願いいたします」

エリーゼ「う、うん……」

フローラ「やはり、エルフィさんじゃないと不安ですか?」

エリーゼ「そ、そんなことないよ、フローラ」

フローラ「ふふっ、ありがとうございます。私が敵の攻撃を受け切りますから、後方に隠れて敵への攻撃をお願いします」

エリーゼ「わ、わかったよ。でも、あたしにもできるかな?」

フローラ「無理に倒す必要はありませんよ。飽くまで私たちの目的は敵の興味を向けることです二人ならすぐに潰してしまえと、相手の横一列が崩れればそれでいいんです。大丈夫、エリーゼ様には指一本触れさせませんし、そんなことになったらエルフィさんに叱られてしまいます」

エリーゼ「フローラ……」

フローラ「それじゃ行きましょう」ガシャンガシャンガシャン

エリーゼ「うん」パカラパカラ

ジェネラル「右側面より突出してきた敵兵あり! 攻撃開始!」ブンッ

 キィン

フローラ「っ!」

エリーゼ「えーーい!」シュオン ドゴンッ

ジェネラル「ぐっ! あのジェネラルの陰に隠れている奴をねらえ! 奴の魔法がなければすぐに押し潰せるはずだ!」

フローラ「エリーゼ様、陰に!」

エリーゼ「!!」

 ヒュンヒュンヒュン
 キィンガキィン ドゴッ

フローラ「くっ」

エリーゼ「フローラ!」

フローラ「大丈夫、牽制を続けてください。前列じゃなくて、後列のを怒らせるように」

エリーゼ「わ、わかったよ。ええいっ!」ボワッ シュオオンッ ドゴンッ

 イテェ! クソッ、コッチガコウゲキデキナットオモッテ

フローラ「エリーゼ様、更に飛び火させる感じで広げてください」

エリーゼ「う、うん! えいっ、えーいっ!」ボワ ボワワッ 

 ヒュンヒュン 
 キィン ドゴッ ドガッ

フローラ「……さすがにキツイ。でもエリーゼ様をお守りするのが今の私の使命、はぁっ!」ブンッ

 ザシュッ

ジェネラル「ぐっ、があああっ」ドサッ

ジェネラル「貴様! 全員、あの二人を囲むようにしろ! 敵に動きはない、さっさと押しつぶせ!」

 ザッ ザッ ザッ

フローラ(動き始めた。でも、まだ足りない……)

エリーゼ「フローラ、すぐに手当てしないと……」

フローラ「いいえ、そんな時間はありません。まだ敵にちょっかいを出し続けてください」

ジェネラル「これでどうだ!」ヒュンッ

 ガキィン

フローラ「きゃ……、ま、まだです」

エリーゼ「フローラ! やっぱり、ダメだよ。このままじゃ……」

フローラ「いいえ、大丈夫です。エリーゼ様、お優しいのは素晴らしいことですが、今は一気に詰め寄られると作戦すべてが終わってしまいます。あと少し私が耐えればいいだけのことです。ですから、こちらに興味の無さそうにしてる奴らの注意を」

エリーゼ「……わかった。でも、後続が来たらすぐに抜けて治療させてね」

フローラ「はい……、楽しみにしてます」

エリーゼ「それじゃ、当たって!」ボワッ

ジェネラル「がっ、てめえ。よくも当てやがったな!」ガシャ ガシャ

フローラ「エリーゼ様が子供だから、尚更イライラが募ってしまうみたいですね」

エリーゼ「その言い方、ひどいよー」

フローラ「ふふっ、ごめんなさい。でも、これで―――」

アクア「二人へと方角を変え始めた。横から殴り込んで釘付けにできそうよ」

ラズワルド「よし、ここの皆はフローラとエリーゼ様の援護に向かって。可愛い女の子を守るよ!」

部族兵「行くぞぉおおお!」

 ウオオオオッ ダダダダダッ

ラズワルド「よし、反対側も始めるよ。アクア準備はいいかな?」

アクア「ええ、早くカムイを送ってあげたいもの、手早く終わらせるわよ」ヒュンヒュンヒュン チャキッ

ラズワルド「すごく気合入ってるね、アクア」

アクア「もちろんよ」

ラズワルド「……よし、みんな準備はいい?」

部族兵「はい!」

ラズワルド「アーマーキラーを装備してっと。それじゃ、行くよ!」ヒヒーン

 パカラパカラ
 ドドドドドッ

ジェネラル「あちらの援護は!?」

ジェネラル「いや、向こうは向こうで任せておけ、こちらにも敵集団が来るぞ。全員武器を構えろ!」

ラズワルド「躍らせてあげる!」チャキッ

ジェネラル「死に踊るのは貴様だ、これでもくらえ!」ブンッ

アクア「させないわ」トスッ キィン

ジェネラル「ぐっ!」

ラズワルド「アクア、ありがと。それじゃ、これで!!!」 ブンッ

 ガギッ ギギギギギギッ ガゴンッ グサッ

ジェネラル「ぐおぉっ」ドサッ

ラズワルド「はい、おしまい!」

フローラがジェネラルだということをつい忘れそうになってしまう…

ジェネラル「ちっ、そこの穴を埋めろ!戦列前へ!」

ラズワルド「くっ、そこはとらせない!」

アクア「♪~ ♪~」

ラズワルド「これは、アクアの歌。なんだろう力が湧いてくる、これなら!!!」パカラッ パカラッ タタッ ブンッ

 ギギギギ ブシャァ

ジェネラル「ぐふぁ」ドサッ

部族兵「このまま押し込むぞ!」

 バシュバシュ
 ヒューン

部族兵「正面よりバリスタ接近!」

 ザシュザシュシュ

 ギギャア!!!

ジェネラル「よし、一歩でもいいから詰めろ、敵を進ませるな!」

アクア「させないわ」

ジェネラル「ちっ、この歌姫風情が!!!」ブンッ

 サッ
 
アクア「……ショーの時間よ」タタタッ

 ブンッ ガキィン ブンッ ドゴッ

ジェネラル「がっ、ヘルムが外れ……」

アクア「はぁっ!!!!」シュンッ

 ザシュッ

ジェネラル「ぐえああっ」ドサッ

アクア「……ごめんなさい」

ラズワルド「僕のアーマーキラーは必要ない気がしてきたよ」

アクア「アーマーに有効なら使うべきよ」

ラズワルド「いや、だってアクア、君は……」

アクア「なに?」クルクルクル シュパッ

 ザシュッ

ジェネラル「ぐおおおっ」ドサッ

ラズワルド「ううん、なんでも無いよ」

部族兵「二人が道を開けた。一気に接近、横列を三名後ろに回し、敵を誘え!」

 ウオオオオッ
 ウケキレ、チュウオウノモノタチハ、ソクメンカラカコイコメ!

 ザッ ザッ ザッ

アクア「……中央が移動を始めたわ」

ラズワルド「うん、マークス様、今ですよ!」

女アドベンチャラー「あの隙間……! 次装填して」

ボウナイト「はいよっ!」ガチャ ガチャ ガチャコンッ

 キリキリキリキリッ

女アドベンチャラー「先に打ち込んで牽制しないと、崩される可能性がある」

 バシュ バシュ バシュ!

 ヒューーーン

女アドベンチャラー「これなら……」

ボウナイト「いけそうか?」

 パカラ パカラ

女アドベンチャラー「……あ、だめそう」

マークス「エルフィ、道を作れ!」

エルフィ「はい、てやあああああっ」ガシッ キィン ガキンッ

女アドベンチャラー「……敵の重装騎兵がねじ込んできた……。向こうの位置から見えてないはずなのに。やっぱり、情報伝達がおかしいくらい早いし、どちらにしても、これで包囲が完成するかも……」

ボウナイト「こりゃ、間違いないな。次装填するぞ」

エルフィ「はああああっ!!!!」

 パカラパカラッ
 
 ゲシッ

ジェネラル「げふっ!」ゴロゴロンッ

ジェネラル「行かせ――はうっ」ドゴンッ

ジェネラル「くそ、行かせるか。これでも――」

リンカ「背中を見せてる暇はないぞ!」ザシュ

ジェネラル「がはっ」ドサッ

リンカ「カムイ、振り落とされてないか?」

カムイ「はい、大丈夫です。それにしても、かなり大旦那作戦ですね」

リンカ「ああ、まったくだ。だが、こういう作戦のほうが単純であたしは好きだ」

カムイ「ふふっ、リンカさんらしいです」

ルーナ「話してないでさっさと進みなさいよ。敵が呆けてる時間は短いんだから!」

リンカ「わかっている。はぁ!」

 パカラパカラッ

マークス「残りの兵は私に続き、左右に別れてジェネラルの軍団を包囲しろ。いくら固き守りでも相手は人間だ。囲まれれば成す術はない!」

部族兵「いけぇ! 敵を完全に包囲しろ!」

 ドドドドドドッ

ラズ→アクアってアクア様じゃなかったか?

ゥヮァクァッョィ

 パカラパカラ
 タタタタタッ

エルフィ「敵の層を抜けたわ……!」

ジェネラル部隊長「でやああっ」ブンッ

エルフィ「っ! はぁっ!」ボコッ

 ザッ ジャキッ

ジェネラル部隊長「ちっ、抜けて来たというのか……!?」

エルフィ「カムイ様、わたしの後ろに」ボソッ

カムイ「わかりました」

ジェネラル部隊長「そこにいるのはカムイ王女。ブリッツ隊長の話は本当だったということか! 暗夜の裏切り者め、ここで死ぬことがガロン王様への唯一の謝罪となりえる。だからここで死ねぇ!!!」ブンッ

 キィン

マークス「…そうはさせん」

ジェネラル部隊長「まさかマークス王子まで、これは何という悪夢か。暗夜王国を混乱させる存在が王族たちであるなど、なんと、なんたることだ!」

カムイ「なんだか、先ほどのブリッツさんより、暗夜王国を思っている雰囲気がありますね」

マークス「たしかにな。だが、何を言われようとも変わりはしない」

ジェネラル部隊長「正門を死守する、交戦準備!」

ジェネラル・グレートナイト『はい!』ジャキッ

ルーナ「はいはい、ささっと倒して抜けるわよ」

マークス「うむ、ルーナ。共にいけるか?」

ルーナ「あたしを誰だと思ってるわけ。そんなの朝飯前よ」

 グゥゥ~

エルフィ「ご飯って聞いたら、お腹すいちゃった」

ルーナ「しっかりしなさいよ」

エルフィ「ええ、エリーゼのことが心配だから、すぐに片付けるわ」

 ごめんなさい、ラズのアクアの呼び方は『アクア様』でした。もうしわけない

カムイ「リンカさん、ただの馬のように振舞って壁に進んでください、そして寸前のところで……」

リンカ「よし、わかった。あたしとカムイは先行する」

カムイ「兄さんと他の皆さんは………という形でおねがいします」

マークス「ああ、わかった。任せたぞ、リンカ、カムイ」

カムイ「ええ、任せてください」チャキッ ガシッ

リンカ「カムイ?」

カムイ「さすがに落ちたくはないので、掴まっても構いませんよね?」

リンカ「ああ、任せておけ」

 バシュン バシュン バシュン
 ヒューーーーン

 ドガンッ ドゴンッ!!!!

マークス「カタパルトの第二攻撃が始まったようだ。こちらも待ってはいられない、この砦をここで落とす!」

エルフィ「バリスタはわたしが引きつけるわ」

 パカラ パカラ

カムイ「?」

アクア「どうにか間にあったわ」

ラズワルド「うん、なんとかね」

カムイ「アクアさん、それにラズワルドさん。エリーゼさんとフローラさんは一緒ではないのですか?」

アクア「ええ、フローラが少し負傷したから、エリーゼが手当てをしてるわ。命に別条はないから、すぐに復帰できるはずよ。それと、エルフィ」

エルフィ「なに?」

アクア「フローラから伝言を頼まれて、その、ちゃんと守り切ったわ、って」

エルフィ「……ふふっ、ありがとう」

アクア「カムイ、マークス。私達はエルフィの援護に回るわ」

ラズワルド「うん、援護するよ」

エルフィ「ええ、よろしくね。それじゃ、行くわ!」

 パカラパカラ

女アドベンチャラー「三人動き始めた、最初に牽制うちで三点射、次に横列一斉射して釘付けにするから、装填器具の変更準備をして」

ボウナイト「あいよ。横列一斉射に切り替えの準備……完了だ」カチャ カチャ カチャ ガチャンッ

女アドベンチャラー「発射」バシュ バシュ バシュ

女アドベンチャラー「交換して」

ボウナイト「よし、ボルト外して、取り替えてっと……よし、完了。装填開始」カチャ カチャ カチャ ガチャン

ボウナイト「装填準備完了だ!」

女アドベンチャラー「…………見つけた」

 ググッ

アクア「まだこちらを狙ってるみたい。ラズワルド、ジグザグに動いて、やり過ごしましょう」

ラズワルド「ああ、さっきと同じなら避けられ――」

エルフィ「いえ、ラズワルド。そこから動かないで」パカラッ

ラズワルド「え!」

 バシュンッ!!!!

エルフィ「はぁっ!!!!」スッ ガシッ

 ザシュン キィン ザシュン!

ラズワルド「一斉射撃!?」

アクア「しかも面攻撃、さっきとは違う方式ね。あのまま行動していたら、当たっていたかもしれないわ」

エルフィ「……よかった」

ラズワルド「横三射、釘付けにするつもりみたいだね。敵にちょっかいを出しながら、バリスタの意識を僕達に向けさせ続けよう。下手に分散すると、マークス様たちの方をを狙い始めるかもしれない」

エルフィ「ええ、わかったわ」

マークス「リンカ、今だ! はぁっ!!!」シュオンッ バシュッ

 キィン!

ジェネラル部隊長「くっ、ぬっ?」

ルーナ「そーれっと!」ブンッ

 ガキィン

ジェネラル部隊長「王子と小娘は私が止める。お前達は孤立した敵前衛を追い掛けて仕留めろ!」

グレートナイト「わかりました。このまま孤立した奴らを城壁に追い込むぞ」

ジェネラル「はい」ガシャンガシャン

ジェネラル部隊長「くくっ、カムイ王女はマークス王子が合流してくれると信じているのかもしれないが、それは果たされんぞ」

マークス「たしかにな」

ジェネラル部隊長「?」

マークス「貴様が倒されるまでは果たされない。そういうことだ」

ジェネラル部隊長「ぐぬぬ、暗夜を導く王族の意味を忘れ、このようなことに加担する王族に意味などない! しねええ」ザッ ググッ ブンッ

 バチィン キィン

ルーナ「ちょっと、あたしもいること忘れないでよね」

ジェネラル部隊長「でやああっ」ググッ バチン

ルーナ「よっと、力有り余ってるわね。でも、あんたよりあたしは強いから、さっさと諦めなさいよ」

ジェネラル部隊長「口だけならなんとでも言える。くらえええっ」クルクルクル バシュ

ルーナ「っ!」

マークス「そうはさせん」カキィン

ジェネラル部隊長「ちっ……、小癪な真似を……」

女アドベンチャラー「あいつ、二対一みたいだね」

ボウナイト「援護するか?」

女アドベンチャラー「いや、それよりも敵のグレートナイトとボウナイトを牽制する。正門に向かってきたのは騎兵みたいだけど、後続がいないなら下の奴らでも各個撃破できるはず。今は合流させないようにするの重要よ」

ボウナイト「わかった、次、装填完了」

女アドベンチャラー「はい」バシュッ 

エルフィ「来るわ、ラズワルド!」

ラズワルド「わかったよ」サッ

 ザシュン ザシュン キィン!

アクア「♪~ ♪~」

ラズワルド「よし、調子でてきた。それっ」パシュッ

 キィン

ジェネラル「そのような攻撃で倒せると思っているのか?」

ラズワルド「さすがに固いね」

アクア「至近距離なら負けるつもりはないけど、バリスタに狙われては流石にそうもいかないわ」

エルフィ「ええ、でも、ここで敵を引き付けるのがわたしたちの役目よ」

アクア「たしか、進みたくても進めない感じだったわね」

ラズワルド「たしかそうです」

アクア「歯がゆいけど、今はそうするしかないわ」

 バシュンッ

ザシュン キィン ザシュンッ

アクア「エルフィ、大丈夫?」

エルフィ「ええ、わたしは大丈夫。でも、盾が先に壊れちゃうかも……」

ジェネラル部隊長「どうだ、どうだ! この槍捌きに手も足も出ないかぁ!!!」

ルーナ「はっ、下手くそね」

ジェネラル部隊長「なにぉ?」

マークス「まったく、この程度ならば剣で受ける必要もない。やはり暗夜王国の武力の質は下がったと言わざるを得ないようだ」

ジェネラル部隊長「なにおおおおおっ!!!?」

マークス「悔しければ、この私の身に一撃だけでも当てて見せよ。はぁっ!!!!」ブンッ
 
 キィン キィン キィン

ルーナ「あたしからもサービスよ」ブンッ

 ガッ キィン カチャ 

マークス「ルーナ、退け」

ルーナ「はいはい」サッ

 ブンッ ドガシャンッ

ジェネラル部隊長「ここは通さん。絶対に、通すわけにはいかない!!!」

マークス「……」

ジェネラル部隊長「ここは三十余年もの間、難攻不落と謳われた王都ウィンダムの正門。それを、それを暗夜王国の王族に崩されるなど、暗夜の歴史にあってはならないこと。暗夜を思うのであれば、今すぐにでも剣をおさめるのは貴様たちのほうではないか!」

マークス「暗夜を思うからこそ、私は剣をおさめるつもりはない!」

ジェネラル部隊長「はっ、マークス王子にはガロン王様の大義が理解できないと見える」

マークス「それで構わない。私は、よもや父上のその大義を理解したとしても従うことはないからだ!!!」ダッ

リンカ「どうだ?」

カムイ「気配を読む限り、三体向かってきてます。もうすぐ壁ですか?」

リンカ「ああ、タイミングはあたしに任せてくれるか?」

カムイ「もちろん」

グレートナイト「これでも食らうがいい!」ブンッ

 ヒューン ドスンッ

 サッ

リンカ「外れだ!」

ジェネラル「右に回り込んで、逃げ道を塞ぎます」ガシャンガシャン

グレートナイト「よし、お前は左を抑えろ!」

グレートナイト「わかりました」パカラパカラッ

リンカ「……」

グレートナイト「よし、もうすぐ壁に達する。全員、スレンドスピア準備!」チャキッ

ジェネラル「用意よし」チャキ

グレートナイト「こちらもよし!」チャキッ

グレートナイト(壁の前で反転するところを狙えば一本は刺さるはず、倒れたところを接近して叩き潰してやる)

リンカ「カムイ、行くぞ!」

カムイ「はい、お願いします」
 
 パカラ パカラ ダッ ダダッ

グレートナイト「今だ、放てぇ!」

ジェネラル「おらぁっ!」

グレートナイト「はぁ!!!」

 ブンッ ブンッ ブンッ

リンカ「飛べ!」ガシッ

バサァ
 ガッ
 ダダダッ

 バサバサバサ

グレートナイト「なっ、ファルコンだと!?」

 ドス ドス カァン

カムイ「リンカさん、このまま砦の真上に!」

リンカ「ああ、まかせろ」

 バサバサバサ バサーッ

カムイ(気配は二つ……、片づけましょう)チャキッ

ランサー「なっ!?」

カムイ「はぁっ!!!!」ブン ザシュッ

ランサー「ぎゃあっ」ドサッ

ランサー「て、敵!? どこから」チャキッ

リンカ「こっちにもいるぞ」クルクルクル ザシュリ

ランサー「が、ぐううっ!!!!」フラフラ

 ゴロゴロゴロゴロッ ドサッ!

ボウナイト「え、なんだ? 上から……」

カムイ「はああっ!!!!!」

ボウナイト「な、カムイ王女!? ちっ!」チャキッ

カムイ「せやあああっ!!!」ブンッ グチャリッ

ボウナイト「がっ……くそっ。俺らが逃げてから来てくれってんだ……よ」ドサッ

女アドベンチャラー「え、こんなの聞いてない」チャキ パシュッ

リンカ「てやああっ!!!」キィン ダッ

女アドベンチャラー「!」

リンカ「喰らえ!!!」ダッ ドゴンッ

女アドベンチャラー「ぐっ、がぁ、まだ、まだぁ!!!!」チャキ パシュ

リンカ「くっ」

 ダッ

カムイ「……」

女アドベンチャラー「そこっ!」パシュッ

 サッ

女アドベンチャラー「も、もう一回なら―」

カムイ「……はああっ!」

 ザシュッ

女アドベンチャラー「あ、……ああっ」

カムイ「はぁ……はぁ」

女アドベンチャラー「ははっ、ついて……ないや……。隊長……」クタリッ

カムイ「……」スー、グチャリ

 ブンッ ビチャ

リンカ「カムイ、制圧出来たみたいだ。あと、これが門を開けるための仕掛けじゃないか?」

カムイ「わかりました。それを使ってみてください」

リンカ「わかった。んんんっ、おらあああっ」ガチャ

 ガラガラガラガラ

 ガ゙ラガラガラ ゴゴゴゴゴッ

ジェネラル部隊長「!? 門が! くそっ!!!!」

マークス「余所見をしている暇はない!」

ジェネラル部隊長「!?」

マークス「はぁああああ!!!!」ブンッ ガキィン ギィィィイイイイイイ

 ドガンッ

ジェネラル部隊長「ぐっ」

ルーナ「てやっ!」クルクルクル ブンッ

ジェネラル部隊長「ちぃ! なぜだ、なぜ祖国に牙を剥く!?」

マークス「祖国であるからこそだ。抵抗を止め、降伏しろ」ダッ チャキッ 

ジェネラル部隊長「降伏などありえん!ありえんぞぉ!!!!」ダッ

マークス「……」

ジェネラル部隊長「うおおおおああああああっ!!!!!」ブンッ

 サッ

「すまない」

 ザシュンッ

ジェネラル部隊長「がっ、ぐぅ、ごあっ……なぜ、こんな戦いを……こんなことをする……」

マークス「暗夜という……国のためだ」ズシャァ

ジェネラル部隊長「はっ、はははっ、ブリッツ隊長……もうしわけあり、あ……り……ませ……」ドサッ

ジェネラル部隊長「」

マークス「……」チャキンッ

 タタタタッ

カムイ「マークス兄さん!」

マークス「カムイ、よくやってくれた。ここにいる敵の残存戦力は正門が落ちない限り戦い続ける。正門を落とし、ここでの戦いを終わらせるぞ」

カムイ「はい」

 タタタタタッ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

―王都ウィンダム城壁外部―

 カチャ カチャ グググッ

クーリア「準備できました」
 
カミラ「へぇ、こんなことするのね?」

クーリア「ええ、私の魔法でどうにか補助はしましたので、大丈夫なはずです」

サクラ「なんだか、怖いです」

カミラ「さすがにね。私の竜も今回ばかりは少し怯えているわ。でも大丈夫、あなたはできる子だもの、初めてのこともきちんとね?」ナデナデ

 クォオオオンッ

サクラ「えへへ、なんだか気持ち良さそうな鳴き声ですね」

カミラ「ええ、ここを撫でられると落ちつくし、機嫌も良くなるのよ」

サクラ「そうなんですか」

カミラ「今回のことは初めてのことだから、緊張をほぐしてあげないといけないわ。ベルカもそうしてる、ほら」

 ナデナデ

 キュオオンッ

ベルカ「大丈夫、お前は強い子だから」

ニュクス「喉を鳴らしてるけど、あなたにべったりね」

ベルカ「カミラ様に仕え始めてから、ずっと一緒にいた子だから」

ニュクス「ふふっ。でも、ベルカも少し不安みたいね?」

ベルカ「そんなことないわ」

ニュクス「ふふっ、そうやって何度も撫でてるのは、あなたも不安に思ってるから」

ベルカ「……そう」

ニュクス「大丈夫、私もいるから安心しなさい」

ベルカ「私としては、あなたがしっかり掴まっていてくれた方が安心できる」

ニュクス「え?」

ベルカ「あなたがはしゃぐと、揺れて仕方がないから」

ニュクス「……はぁ、心配して損したわ」

ベルカ「ふふっ」

ニュクス「まったく、ふふふっ」

サクラ「すごくリラックスしてますね」

カミラ「ええ。それで、サクラ王女もリラックスできたかしら?」

サクラ「はい、もう大丈夫です。それに、カミラさんはとっても温かくて、すごく安心できます」

カミラ「ふふっ、安心できるなんて、信頼してくれてるみたいな言い方ね」

サクラ「信頼してます。だってカミラさんはとっても素敵な人ですから」

カミラ「……ありがとう、サクラ王女」

サクラ「そんなお礼なんて……」

カミラ「さっ腰に手を回して。準備が終わったみたいだから」

サクラ「はい、……えへへ。やっぱりとっても温かいです」

カミラ「ふふっ」ナデナデ

サクラ「ううっ、カミラさん、くすぐったいですよ」

カミラ「可愛いからついつい撫でたくなっちゃうのよ」

サクラ「は、恥ずかしいです」

カミラ「ふふっ」

クーリア「カミラ殿、全ての準備が整いました」

カミラ「こちらの準備も終わってる。始めてもらって構わないわ」

クーリア「では、始めますよ」

 スッ

ベルカ「……」

ニュクス「……」ギュッ

カミラ「……」

サクラ「……」ギュウゥッ

カミラ「ふふっ、大丈夫」ナデナデ

サクラ「はい」

クーリア「……」

 ブンッ

クーリア「射出開始!」

 バシッ バシッ バシッ!!!!!!

 ヒュオオオオオオッ……

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・城壁上部―

アドベンチャラー「畜生、攻撃が何時来るかもわからねえじゃねえか」

アドベンチャラー「大丈夫だ。もう第一城壁に誰か到達している。カタパルトの攻撃が来るとわかったら合図してくれることになっている」

アドベンチャラー「ナハト隊長の部隊もようやく動き出そうとしてる。さすがに敵の竜騎兵が来る前にどうにかしねえといけないからな」

アドベンチャラー「ああ、牽制するように城壁の外飛びやがって。ただ、カタパルトを打つときだけは降りてるみたいだな」

アドベンチャラー「って、浮かんでる竜がいなくなってるぞ。ってことは――」

 ピーーーーーー

アドベンチャラー「!? 投石が来るぞ! 全員、隠れろ!」

アドベンチャラー「……」

 …………

アドベンチャラー「?」

アドベンチャラー「あれ、こないぞ」

 ……サ……バ……サ

アドベンチャラー「? なんだこの音は――」

シュヴァリエ兵「……」バサバサ バサバサ

アドベンチャラー「!!!! 竜騎兵!!!」チャキッ

シュヴァリエ兵「ふんっ」ザシュ

 ビチャ

 ウワアア、リュウキヘイガ、グアアアアッ

アドベンチャラー「な、なんだ。なんでこんな、今さっきまでいなかったのに、それに来るのが早すぎるだろ!」チャキッ パシュッ

 ザシュッ

 グギャアアアアッ ドサリッ

 バサバサバサバサ
 バサバサバサバサ

アドベンチャラー「ちっ、撤退だ。城壁上部から跳ね橋拠点まで戻れ!」

 バサバサ バサバサ

カミラ「……すごいわね。いきなりこんなに接近できるなんて」

サクラ「は、はい。本当に早いですね」

ベルカ「かなり無茶だったけど、国境では行わなかったのは本当に王都でこの手を使うつもりだったということね」

ニュクス「ええ、カタパルトに竜を乗せて一気に飛ばして送るなんて、無茶にもほどがあるけど、ここまで効果があるなんて……」

カミラ「とにかく私たちも跳ね橋拠点に向かいましょう」

「正門への攻撃も始まっているはずだから……」

 今日はここまで

 ジェネラル殺しの槍さばき歌姫アクア。

 カタパルトは一般的な投射装置なので、シューターの形ではない感じです。
 竜×カタパルトとなると、闇晦ましの城を思い出してしまう。

 弓砲台は範囲と一点射を切り替えられるみたいなのもいいかなと思った。

アクアの戦力的な扱いはどうなってるんだ公式にしても
竜の血を引いてる王族は強いみたいな設定あるし普通に強いのか

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・王都ウィンダム『正門建造物』―

ブリッツ「そうか、正門砦は落ちたかぁ……」

ボウナイト「戻ってこないところを見ると三人は死んじまったみたいですから。それで、ブリッツ隊長は降伏なんてしないんですよね?」

ブリッツ「……はぁ、流石に三十年も暗夜王国に仕えて飯喰らってきたからな。俺にも通したい筋っていうものがあるからよ。だから、お前達は乗らなくてもいい船だ。降伏しても問題ねえぞ」

ボウナイト「何言ってんすか。隊長との戦いは楽しいんで、離れるつもりはないですよ」

ボウナイト「それに、まだ負けたって決まったわけでもないですし、何か策があるんでしょ?」

ブリッツ「まぁ、あるにはあるさ。運が良ければ、戦力を五分五分にできるはずさ」

ボウナイト「なら、それで行きましょう。隊長の指示通り動きますんで」

ボウナイト「これでマークス王子を倒して反乱鎮圧すれば、最高の老後が迎えられますよ」

ブリッツ「はははっ、報酬をたんまりもらって静かな場所で暮らすか。といっても、正直形に持っていけるかどうかも微妙な策で戦うことになるがいいのか?」

ボウナイト「作戦なんてそんなもんですよ。敵に一方的にされるのはあれなんで、早く指示をください」

ブリッツ「……」

ブリッツ「よし、まずは王族集団が先頭切って現れることを全員で祈ろうか」ガチャン

ボウナイト「わかりました。……うぬぬぬ、王族よ先頭を切ってやってこい!」

ブリッツ「よし、御祈り終了。それじゃここに入れる入口を正面意外完全に塞げ、これ開けるの無理だって思えるくらいにな」

ボウナイト「わかりました。よーし全員聞いたな、一つ残らず塞いでいくぞ!」

 オオオオオーー!!!!

ブリッツ(……ナハトの方は……。いや、考える必要もないか。こっちはこっち、あっちはあっちで戦うしかねえんだからな。はぁ、最後の仕事がこんなのってのは、お互いに辛いねぇ)

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・王都ウィンダム内部『跳ね橋拠点周辺』―

 バサ バサッ!

カミラ「ここで止まりましょう」

ベルカ「もう、始まってるみたい」

サクラ「ですね。シュヴァリエの兵隊さん達が圧してるように見えますけど……」

ニュクス「勢いだけはこちら側にあるみたいだけど……」

 バサバサバサッ

シュヴァリエ兵「祖国の敵、くらええええっ」ブンッ

ナハト「先端が揺れているぞ。素人が!」キィン ガキィン

シュヴァリエ兵「ぐっ、うおおおっ」

ナハト「落ちていくがいい」シュオオンッ ボウウウッ

 ボワッ!!!!

ドラゴンマスター「ぎゃあああっ」

 グオオオオオッ

 ドサリッ

ナハト「おい、ほかの連中に伝えろ。こいつらは弱い、弱い癖に吠えるだけの敗残兵だ。恐れる必要はない、命を丁寧に奪ってやれ」

敵ドラゴンマスター「わかりました。一度暗夜に立て突いて生き残らせてもらったって言うのに、身の程わきまえねえ馬鹿どもだよ。今度はシュヴァリエっていう国そのものがこの世から消えかねないっていうのによぉ!」ブンッ

 ギャアアッ

ナハト「こんなレベルで反乱を起こしたとすれば、滑稽な国だ。我々は拠点の防御を固めに戻る。ここは任せた」

敵ドラゴンマスター「はい、ナハト隊長! 全員、押し返し改めて自覚させろ! いくら立て突いても、無意味だということをな!」

 オオオオーーーッ!

カミラ「……このままだと駄目ね」

ベルカ「ええ、最初は良かったみたいだけど、向こうの体制が整い始めてる」

ニュクス「圧倒的に技量に差があるみたいね……。悔しいけど、戦力が五分五分でも、どうにもならないわ」

サクラ「は、早く助けにいかないと……」

カミラ「そうしたいところだけど……。このまま行動するのは危険ね」

ニュクス「こちら側の竜騎兵が落とされ始めて、侵攻していた歩兵がパニックになりかけてる。このまま散り散りになったら、各個撃破されるわよ」

カミラ「ええ」

サクラ「どうにか敵の竜騎兵を分断できれば……」

カミラ「なら答えは単純ね。私が分断してくるわ」

サクラ「え、何を言ってるんですか? あの中に一人で行くなんて危険すぎます!」

カミラ「ふふっ、危険は承知の上、それに私が誰かを忘れていない?」

サクラ「え?」

カミラ「私は暗夜の第一王女、お父様に認められた力を持ってる、それも戦況をひっくり返すことのできる力をね」

サクラ「……カミラさん」

カミラ「だから心配しないで、分断じゃなくて、すべて蹴散らしてしまえば――」

サクラ「だ、駄目です!」

カミラ「さ、サクラ王女?」

サクラ「カミラさんにもしものことがあったら、駄目なんです。そんなことになる可能性がある場所に、援護や計画も無しにカミラさん一人だけを送り出すなんて、そんなことできません」

カミラ「サクラ王女……」

ニュクス「サクラの言う通りよ。カミラ、そういう風に自信満々なのはいいことだけど、そんな心境が命取りになりかねないわ」

カミラ「ニュクス、私の力を信用してないの?」

ニュクス「力なら信用してる。でも一人でも包囲されれば袋叩きにされるだけ、あなたの技術も信じているけど何度も行えるものじゃない。なにより、みすみす貴女を失えるほど、私たちの戦力に余裕があるわけじゃないわ」

カミラ「……」

ベルカ「私はカミラ様の命令でここにいる。カミラ様はルーナに正門で戦うように命令を出したけど、私は必要な空戦力としてここに来ただけ、まだカミラ様から命令をもらってないわ」

カミラ「……ここで待機してと言われたら?」

ベルカ「従う。私はカミラ様の臣下だから……」

カミラ「……」

ベルカ「でも、私はカミラ様の戦いに力添えがしたい、そう思ってる」

カミラ「ふふっ、うふふふっ」

ベルカ「?」

カミラ「いえ、ベルカがおねだりするなんて思わなかったわ」

ベルカ「こ、これは////」

ニュクス「愛されてるわね、カミラ」

カミラ「ええ。ふふっ、ベルカは本当に可愛いわ」ナデナデ

ベルカ「カミラ様、今は作戦中///」

カミラ「そう、それじゃ、一段落したら部屋で可愛がってあげる」

ベルカ「っ///」

サクラ「な、何をするつもりなんですか!?」

カミラ「なら、サクラ王女も一緒にどうかしら?」

サクラ「え、遠慮しておきます……」

ニュクス「はいはい、今後の予定は後で決めて頂戴」

カミラ「それもそうね」

ベルカ「……それで、どうするの。カミラ様」

カミラ「少しだけ考えがまとまったわ。全員聞こえる?」

シュヴァリエ兵『カミラ王女。こちらは今、分断され――』

カミラ「あなた達の協力が必要なの。お願いできる?」

シュヴァリエ兵『こ、こちらも今――』

カミラ「お・ね・が・い」

シュヴァリエ兵『………わ、わかりました』

ニュクス「どうして、そんな色のついた声で告げるのよ」

カミラ「男はこういう声に弱いものよ。特に戦って疲弊してるときは、単純になったりするものよ。それに私達だけであれはどうにかできるものじゃない。あと、このまま事を起こそうとしてもサクラ王女が許してくれないもの」

サクラ「……な、なんで私の所為みたいになってるんですか」

カミラ「だって、サクラ王女が先に言いだしたことじゃない、それにその要望に私も答えてあげたいから、ね?」

サクラ「ううっ、カミラさん意地悪です」

カミラ「ふふっ」

シュヴァリエ兵『そ、それでカミラ王女。何をすればいいのでしょうか?』

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

敵ドラゴンマスター「けっ、もう足踏みか」

敵レヴナントナイト「結局は勢いだけの集団だ。我らの前には、成す術もあるまい」

敵ドラゴンマスター「まったくだ。ここをさっさと片付けて、報告に戻るぞ」

敵レヴナントナイト「ああ、こちらから攻め――」

 ボウッ ボワー

 サッ

敵レヴナントナイト「ちっ、どこからだ」

 バサ バサ バサ

 シュッ ブンッ ズシャア

敵ドラゴンマスター「ぐあああっ」ドサッ

カミラ「一人目ね」

敵レヴナントナイト「カミラ王女!? まさか、正門からの報告は本当のことだったというのか!?」

カミラ「それっ!」ブンッ

 ガキィン バギッ ヅチャッ

敵レヴナントナイト「ぎゃああぁぁぁぁ」ドサリッ

カミラ「弱いわね」

 バサバサバサ

 バサバサバサ

カミラ「ふふっ、新しいのが来たみたいね?」

敵ドラゴンマスター「王族であろうとも、一人でのこのこやってくるとはいい度胸だ」

敵レヴナントナイト「他の者たちの士気をあげるために突撃してきたのだろうが、何の意味も――ぐげああっ」ザシュッ

 ヒュオオオオオ ザンッ

ベルカ「上がガラ空きよ」

敵ドラゴンナイト「なっ、貴様」

カミラ「余所見なんて、余裕ね。……燃えつきなさい」ボワッ

 ボウウウッ

ドラゴンナイト「あぐあ、あづぁあああああ」ボワワワッ ドサリッ

カミラ「上出来よ、ベルカ」

ベルカ「それよりもカミラ様、本隊が来るみたい…」

 バサバサバサバサ

カミラ「数はそこそこね。もう少し引っ張り出せればよかったけど。ベルカ、例の場所で別れましょう?」

ベルカ「命令のままに」

 バサバサバサ

敵ドラゴンナイト「二手に分かれたぞ」

敵レヴナントナイト「よし、俺たちは王女のほうを追い掛ける。お前達はあともう一つだ」

敵ドラゴンナイト「了解、残り、俺達に続け!」

 バサバサ 
  バサバサ

 バサバサバサ

ベルカ「……」チラッ

敵ドラゴンナイト「ちっ、ちょこまかと逃げやがって!!!」

ベルカ(追ってきたのは四割くらいね……)

ベルカ「……ニュクス」

ニュクス『ええ、聞こえてるわ』

ベルカ「穴に奴らが来る、準備して」

ニュクス『わかった、誘導は任せるわ』

ベルカ「……」チャキッ

 ブンッ クルクルクル ザシュッ

 クキャアアアアア!

敵ドラゴンナイト「落ち着け、くそ、前を取られていては、こちらから投げられん!」

敵レヴナントナイト「どけ、魔法ならいける」シュオォンッ バシュッ

 ドゴンッ ガラガラガラ

敵ドラゴンナイト「下手くそ!」

敵レヴナントナイト「うるさい!」

ベルカ「ここね、っ!!!」ググッ
 
 バサバササッ

敵ドラゴンナイト「上に逃げたぞ! 上昇し――」

ベルカ「はっ!」ブンッ ズシャアアッ

 グギャアアア

敵レヴナントナイト「ちっ、くそっ、足止めなどで止められるとでも――」

ニュクス「全員、前方が止まった。今よ、攻撃開始!」

 チャキッ バサッ

シュヴァリエ兵「くらえっ」パシュ パシュ

シュヴァリエ兵「おらああっ」シュオオンッ

 ギャアアアッ

敵レヴナントナイト「なっ、別動隊がこんなに!? 早く上昇しろ!」バサバサ

 スオオオッ

敵レヴナントナイト「よし、上を取った反――これは影!?」バッ

シュヴァリエ兵「こちらも攻撃開始!!!」ブンッ

 ザシュシュ!!!

敵レヴナントナイト「な、何時の間に!!!」

ニュクス「そちらより、こっちの情報は早いだけよ。落ちなさい!」スオォォ ドゴォン

 バチュンッ

ベルカ「……こっちはうまく行った。カミラ様……」

カミラ「そう、わかったわ」

ベルカ『こっちは移動しながら、敵の兵力の分断を続けるわ』

カミラ「ええ、よろしくね」

 サッ ササッ

カミラ「ふふっ、こっちにもいっぱい来てくれたみたい」

敵レヴナントナイト「たとえ王族であろうとも、包囲すればこちらの勝ちだ。嬲り殺しにしろ!」

敵ドラゴンマスター「わかりました。数人、俺の後に続け!」

 バサバサバサッ

カミラ「こちら、カミラ。サクラ王女、準備はできてる?」

サクラ『は、はい。でも、気を付けてください。敵が一組別行動で動いてます。おそらく、カミラさんを先の空域で包囲するつもりです!』

カミラ「ありがとう。でも、今から道は変えられないわ。だから、少しだけ無茶しっていいかしら?」

サクラ『……わかりました』

カミラ「あら、さっきまで一人はダメって言ってたのに?」

サクラ『一回だけ、一回だけですよ』

カミラ「ええ、わかってる、サクラ王女。無茶は一回だけにするわ」

サクラ『本当に一回だけですからね!』

カミラ「ふふっ、必死になってサクラ王女は可愛いわ。私だって死にたくはないもの、大丈夫、ちゃんとあなたの元に向かうから、機嫌を直してちょうだい」

サクラ『ちゃんと戻ってきてくれたら直します』

カミラ「ええ、ちゃんと戻るから、そちらの準備もお願いね?」

サクラ『はい、頑張ってください。カミラさん』ブツッ

カミラ「サクラ王女、少し頑固なところが玉に瑕だって思ってたけど。そこが一番可愛いところだって気づいてしまったわ、ふふっ」

 バサバサバサ

敵ドラゴンナイト「よし、回り込め!!!」

 バサササッ

カミラ「来たみたいね。大丈夫、おまえならきっと出来るわ」ナデナデ

 クオオンッ

敵ドラゴンナイト「一斉攻撃!」バッ

敵ドラゴンナイト「おらああっ!!!!」ザ

敵ドラゴンナイト「せやああっ!!!」

 バサバサバサッ

敵レヴナントナイト「見つけた、魔法の準備!!!」シュォンッ

カミラ「行くわよ」ガシッ ググッ

 クオオオオッ!!!

 バサッ バサッ

敵ドラゴンナイト「くらえっ!!」ブンッ

カミラ「遅い。それじゃ、小鳥も捕まえられないわ」サッ

敵ドラゴンナイト「なら、これで。はああっ!!!」

カミラ「いいところにきてくれてありがとう。切り込みのいい材料としてね?」チャキッ ブンッ グサッ

 ギャオオオオンッ

敵レヴナントナイト「喰らえッ!!!!」ボワワワッ

カミラ「ふふっ、場所を交代よ」ブチチィ サッ サッ

 ボワァ!!!

敵ドラゴンナイト「あぎぃあああっああああ」ドサッ

敵レヴナントナイト「ちっ、前方抑えろ!!!」

 バサバサバサ

敵ドラゴンナイト「先回り、間に合ったぞ。全員で囲い込め!」

カミラ「……ここはとってもきつそう。だから無理やり開いて通ってあげる」シュオンッ

敵レヴナントナイト「たわけ、その身が切り裂かれていくのを死にながら悔いるがいい!」ブンッ

カミラ「それっ」シュオオオンッ バチィン

敵レヴナントナイト「はっ、そのような攻撃――!?」

カミラ「行くわよ、上にあがって!!!」バサバサバサ

敵レヴナントナイト「な、ここで急上昇!? 追うぞ!!!」バサバサ

カミラ「……」

カミラ(案の定追ってきたみたい。それじゃ――)

カミラ「ここね」ググッ

 クルッ ヒューン

敵レヴナントナイト「なっ、急反転だとっ!?」

カミラ「はああっ!!!」ブンッ

 ズビシャ プシュー ゴロンッ ドサッ

カミラ「っっ!!!」

カミラ(地面が迫ってる。視界も辛い…………でも、ここで立ち直らないと。サクラ王女の機嫌が直らない!!!)

カミラ「はああああっ!!!!」ググッ

 クオオオンッ

 バサバサ ヒュオンッ

敵レブヴナントナイト「ちっ、抜けられたぞ! 全員このままの高度でいい、追え!!!」グオンッ

カミラ「……よく頑張ったわね」ナデナデ

 バサバサバサ

カミラ「あとは任せるわ、サクラ王女」

サクラ「わかりました、カミラさん。それでは、皆さん準備をお願いします」

シュヴァリエ兵「はい」カチャ

サクラ「……」カッ キリキリキリ

 バサバサ

サクラ「もう少しです…」

敵レヴナントナイト「―――」

 バサバサ!

サクラ「今です!!」

 ザザッ ザッ

 パシュッ パシュッ

 ザシュッ ザシュ

 クォオオオオンッ ドサッ

敵レヴナントナイト「なっ。ぐへぁ」ドサリッ

シュヴァリエ兵「す、すげぇ、こんな簡単に……よし、間髪入れずに次の攻撃に移るぞ!」

シュヴァリエ兵「は、はい! くらえッ!」パシュッ

 パシュッ
 ドサッ ドサリッ

カミラ「……こちらを見縊って慢心していたのかもしれないけど、思った以上にたくさん落ちるわね。これで敵の士気も少し下がったと思うけど……。ん、あれは……」

暗夜兵「ぐっ、ぐあああっ」

カミラ(負傷した敵兵みたいね。でも、あんなところで倒れていたら」

シュヴァリエ兵「おい、ここに生きている奴がいるぞ!」

カミラ「……」

カミラ(この距離からじゃ止められそうにないわ。残念だけど……)

シュヴァリエ兵「止めを刺してやる、死ねええ!」

サクラ「だ、ダメです!!!!」

 タッ タタタッ サッ

サクラ「な、何をしようとしているんですか!」

暗夜兵「な、なにを……ぐっ」

サクラ「大丈夫です、少し待ってください」ポワンッ

シュヴァリエ兵「な、なにをしているんですか!? それは敵ですよ」

サクラ「もうこの人は戦う意思なんてありません、そんな相手を手に掛けるなんてことをしてはいけないんです。確かに私達は跳ね橋拠点を落とすために来ています。ですが、敵の命を奪い尽くすために来てるわけじゃありません。奇麗事だとしても、私はこんな風に弱った人を殺してしまうような行為を容認できません!」

シュヴァリエ兵「ですが……」

 バサバサバサ

カミラ「サクラ王女の言う通りにしなさい」

シュヴァリエ兵「カミラ王女、何時牙を剥いてくるかもわからない者に手を差し伸べるなど」

カミラ「そうね、でも今すぐ動けるような状態じゃないし、なによりここで無抵抗な物を殺すのは、今までの暗夜と何も変わらない。シュヴァリエは暗夜にいる人間をすべて殺すためにこの戦いに参加したのかしら?」

シュヴァリエ兵「そ、そんなことは!」

カミラ「なら、サクラ王女の言うことは間違ってないでしょう?」

サクラ「カミラさん……」

シュヴァリエ兵「……わかりました、カミラ王女。武器や鎧は募集させてもらう。サクラ王女に感謝するんだな」ガシッ

暗夜兵「ぐっ、ううっ」

カミラ「ふふっ、物わかりのいい子は好きよ。あなた達はこの周辺の建物を制圧して、手当てができる場所を確保してちょうだい。その間、私達は跳ね橋拠点の制圧に向かうわ。武装解除して現れた敵は、ちゃんと受け入れるようにしなさい。いいわね?」

シュヴァリエ兵「はい、全体に伝えておきます。では……」

 タタタタタッ

カミラ「ふふっ、流石の頑固さっていうことかしら?」

サクラ「カミラさん、ありがとうございます。その、味方してくれて」

カミラ「いいのよ。サクラ王女はなにもおかしなことは言ってない。だから私は賛同したのよ」

サクラ「でも、……こちらから攻撃して、それを救うのはなんだか矛盾してるって思うんです。なんだかおかしいって……」

カミラ「でも、サクラ王女は意思を曲げなかったわ」

サクラ「それはカミラさんが味方してくれたから……」

カミラ「いいえ、私がいなくてもあなたは曲げなかったと思う。どんなに声が小さくなっても、押し負けそうになっても、あなたは曲げられない芯があるの。だから、自信を持って」

サクラ「カミラさん」

カミラ「ふふっ、よかった。それに機嫌も治ったみたいね」

サクラ「だって、ちゃんと戻ってきてくれましたから……無事でよかったです」

カミラ「ありがとう」

ベルカ「カミラ様」

ニュクス「どうにかうまくいったみたい。こちらの士気も上がってるわ」

カミラ「ベルカ、ニュクス」

ベルカ「それで、次の命令は何、カミラ様」

ニュクス「ええ、次はどうするのカミラ?」

サクラ「カミラさん、次の指示をお願いします」

カミラ「それじゃ、ささっと終わらせましょう、私たちのお仕事をね」

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・王都ウィンダム『正門建造物・前』―

マークス「……どうだ?」

部族兵「駄目です。すべての正面以外の出入り口は完全に塞がれています。上部、壁面などから侵入はできそうにありません」

マークス「……入口から来いということか……」

アクア「間違いなく罠ね……。残りの兵の数はそれほど多くないはずだけど」

マークス「敵の正門守備隊は?」

部族兵「はい、包囲をしていましたが、現在その包囲を抜けてこちらに向かいつつあります。このまま、ここで待っていては、我々が包囲されかねません」

ラズワルド「中に入って偵察ってわけにもいかないし」

カムイ「道をわざわざ一つに限定しているということは、こちらの分断を狙っているのは間違いないでしょう」

エリーゼ「マークスおにいちゃんどうするの?」

マークス「あまり時間はない。罠だとわかっているとしても、ここを落とさねば、王都への道は開かれん。ならば、行く以外に他はないだろう」

エルフィ「先頭はわたしとフローラに任せて」

フローラ「ええ、私達以外に壁になる人たちはいませんから」

マークス「では頼めるか?」

エルフィ「はい、マークス様」

フローラ「お任せください」

カムイ「では、エリーゼさん、マークス兄さん、アクアさんを最後尾に。中央をルーナさん、ラズワルドさん、リンカさんと私。先頭をエルフィさん、フローラさんで進みましょう」

『はい』『わかったわ』『わかったよ』

マークス「よし、では行くぞ!」

~~~~~~~~~~~~~~

ボウナイト「どうだ?」

ボウナイト「よし……来たぞ、どうやら最初のお祈り効果はあったみたいだぜ」

ボウナイト「わかった……ここら辺で、今だ!」ブチィ

 ガラガラガラガラ
 
 ドガシャンッ ガラガラガランッ

ボウナイト「敵の人数は?」

ボウナイト「こっちよりは少ないかもしれない」

ボウナイト「勝率はあがったかね? よし、俺たちも所定の位置に向かう。ここをもう守る必要もないからな」

ボウナイト「ああ、ブリッツ隊長の援護に回るとしよう」

 タタタタタッ

ブリッツ「よし、野郎ども。準備はできてるな!」

暗夜兵『おおーっ!!!!』

ブリッツ「それじゃ、始めるぞ。最初で最後の正門防衛だ。全員、気張っていけ!」

 ウオオオオッーーーー

ブリッツ「さてと、どう出る。暗夜の王族さん達よ?」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・王都ウィンダム『跳ね橋拠点』―

ナハト「現在どうなってる?」

レヴナントナイト「どうやら、敵に王族がいるという話はデマではないようです。カミラ王女らしき人物を多くの者が確認しています。現在、敵の攻勢に再び活気が戻っているようです」

アドベンチャラー「こちらに向かってくる者たちの影あり、その中にカミラ王女と思われる人物もいます!」

ナハト「……そうか。だが、相手が誰であろうと、暗夜の留守を預かっている身だ。暗夜への忠誠を貫く騎士の道に迷いはない。お前たちも、そうだろう?」

レヴナントナイト「はい、この道に変わりはありません。我々はナハト隊長について行く次第です」

ナハト「わかった。全員、飛び立つぞ。こちらに向かってくる敵を迎え撃つ」

ドラゴンマスター「正門への増援はいかがしますか?」

ナハト「いや、問題ない。こちらはこちらの用を終わらせる、それから考えればいいことだ」

ドラゴンマスター「はい!」

 ザッ ザッ

ナハト「……行くぞ」

 クオンッ

「正門が落とされようとも、ここが落ちなければ問題ないのだからな」

今日はここまでで

 あと二回くらいで、十八章は終わります。

 サクラの可愛いところは、少し頑固なところだと思ってる。

 例のヒノセツエロ番外のスレをどういう風に運用するべきか考え中。
 何か向こうでも本篇的な物を書くべきなのか、番外だけにするべきか……

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・王都ウィンダム『正門建造物』―

 ガシャン ガゴンッ……

カムイ「相当な無茶をしてきますね」

マークス「くっ、全員無事か!?」

エリーゼ「う、うん。大丈夫だよマークスおにいちゃん!」

エルフィ「! みんな伏せて」

フローラ「私たちの陰に隠れてください」

 パシュ パシュンッ
 キィン シュンッ

リンカ「ちっ、やはり罠か」

アクア「そんなこと百も承知よ」

ラズワルド「だけど、ここまで派手にしてくるなんて思わなかったよ。まさか、態勢を立て直しつつある味方も入れないようにするなんてさ」

ルーナ「でも、これであたしたちだけにできたんだから、敵としてはうまく行って万々歳ってところでしょうね。正直、腹立つわ」

カムイ「腹立たしいかもしれませんが、敵も必至ということです。ブリッツさんなりに王族の半数を倒して、わたしたち全体の士気を挫くのが狙いでしょう」

アクア「そうね、マークスが倒れる事態になれば、それだけでこちらの結束は紐解けかねないわ……」

ルーナ「ちょっと、ここには勝つために来たんだから、それ以外のこと考える必要なんてないんだからね」

マークス「ルーナの言うとおりだ。私は負けるつもりはない、その心配は無用だ」

カムイ「そうですね。それで、どうしますか?」

マークス「カムイ、ルーナとアクアを連れて右翼から進め」

カムイ「はい、わかりました」

ルーナ「ふふん、あたしがちゃんと護衛してあげるんだから、大船に乗った気持ちでいなさい!」

アクア「大船ね……」

ルーナ「ちょっと、なんで不安顔なわけ?」

アクア「少しね……」

ルーナ「少しって何よ! 失礼しちゃうわ。ねぇ、カムイ様」

カムイ「……」

ルーナ「何か言いなさいよ!」

カムイ「はい」

ルーナ「カムイ様、あたしのことおちょくってるんでしょ!?」

カムイ「ごめんなさい、カッカしてるルーナさんが可愛かったもので」

ルーナ「おちょくったことは認めるわけ?」

カムイ「あ……」

ルーナ「まったく、でもその様子なら余裕よね。それじゃ、あたしが前を行くから、援護頼むわよ」

カムイ「ええ、わかりました」

アクア「私が倒すはずだったとか、そういう苦情は受け付けないわよ」

ルーナ「別にそんなことで声なんて上げるつもりないから!」

マークス「次にリンカとラズワルドは私と共に敵の左翼を叩く。リンカ、このような内部だが飛べるか?」

リンカ「どんな場所でも飛んでみせるさ。それに、こいつも動きたくてうずうずしている。あたしも体が熱くなってきているしな」ヒヒン

ラズワルド「ははっ、リンカはいつも体が熱くなってそうだね」

リンカ「ああ、熱くなりやすい性格だからな」

ラズワルド「それは頭のことじゃないかな。どちらにしても、頼りにしてるからね」

リンカ「任せておけ」

マークス「ラズワルド、先頭を任せられるか」

ラズワルド「わかりました。単身突破しようとしている体で、相手との距離を詰めればいいですか?」

マークス「ああ、危険な役割だが。頼まれてくれるか?」

ラズワルド「もちろんです。マークス様」

マークス「よし、リンカは私と共に敵への急襲を行う」

リンカ「わかった」

マークス「エルフィとフローラは機動歩兵の意識をできる限り引きつけた後に撃破してほしい、エリーゼはその補助に回ってほしい」

エリーゼ「わかったよ。マークスおにいちゃん」

フローラ「エルフィさん、どうしましょうか?」

エルフィ「難しいことはわからないわ。とりあえず、わたしが走り回って注意を引きつけて戻ってくるのはどうかしら?」

エリーゼ「それは危険だよ、絶対駄目だからね!」

エルフィ「ご、ごめんなさい、エリーゼ様」

フローラ「ふふっ、私たちはいるだけでも目立つ見た目ですから。それとエリーゼ様をお守りしながらの囮役、とてつもない重労働になりそうね」

エリーゼ「フローラも今さっきあんなに無茶したばっかりなのに、無理は――」

フローラ「先ほどの傷はエリーゼ様に癒していただきました。またもう一度貴女様を守る壁として、役に立たせてくださいね」

エリーゼ「フローラ……」

エルフィ「フローラ、それはわたしの役目だから」

フローラ「ええ、だから二人でエリーゼ様をお守りしましょう。それが一番賢くて、問題ない方法よ」

エルフィ「それもそうね。エリーゼ様、絶対にわたしとフローラの陰から出ないようにお願いします」

エリーゼ「うん!」

エルフィ「攻撃が止んだみたい……」

フローラ「それでは、マークス様。私達が先に出ます。以降はそれぞれのタイミングで動いてください」

マークス「ああ、すまないが任せたぞ」

フローラ「重装で来ているのは私とエルフィさんだけですから。それでは」ガシャンッ ガシャガシャ ガシャン

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ボウナイトE「敵前衛が来たぞ」

ボウナイトF「攻撃開始!」

 パシュッ パシュッ

 キィンキィン

ブリッツ「敵の壁が止まったぞ。重装騎兵部隊は奴らを先に片づけ、撃破後に反転し、敵の各個撃破にあたれ」

グレートナイトA「わかりました」

 ドガシャンッ

 ガシャンッ パカラパカラ

グレートナイトA「敵をここで打倒するぞ。一同、突撃!!!」

グレートナイトBCD「うおおおおっ!!!!」

 ドドドドドッ

エルフィ「フローラ、前方からグレートナイト、数は四」

フローラ「まずは一人倒したいところね。エリーゼ様、敵の一番最初に到達する相手にウィークネスを頼めますか?」

エリーゼ「今すぐでいいの?」

フローラ「いいえ、タイミングは私に達するぎりぎりでお願いします。今行っても、異変に気付かれて違うのがやってくることになるから、そうなったら袋にされかねないので」

エリーゼ「そ、そんなのうまくできるかわからないよぉ」

フローラ「大丈夫、あなたはカムイ様の妹なんです、自信を持ってください」

エリーゼ「フローラ……」

フローラ「……」

エリーゼ「わかった、やってみる! エルフィ、フローラに先頭がぶつかったら、すぐにフローラを助けてあげて」

エルフィ「はい、このハンマーで助けだすわ」ガチャッ

グレートナイトB「敵、ジェネラル1、グレートナイト1、その後ろにストラテジスト!」

グレートナイトA「構わん、この距離ならストラテジストの攻撃魔法は届かん。勢いでジェネラルを吹き飛ばし、そのまま小突いて全員潰すぞ!」

グレートナイトC「先行は私に任せていただけますか!」

グレートナイトD「よし、いけっ!」

グレートナイトC「はい、行きます!!!」

フローラ「来たわ」グッ

グレートナイトC「いくらジェネラルであろうと、このアーマーキラーは耐えられまい!!!」ジャキッ

エルフィ「フローラ!」

フローラ「気にしないで、エリーゼ様。頼みました」ググッ

エリーゼ「……」

グレートナイトC「くらえっ!!!!」ググッ

 パカラ
 パカラ パカラ

エリーゼ(……今!)

エリーゼ「ウィークネス!!!」クルクルクル シュオンッ

グレートナイトC「はぁあああ!!!」ブンッ

 ガキィンッ ギギギギィ バキィ

 バチュッ ガランガランッ 

フローラ「っ!!!!」ググッ

グレートナイトC「……くっ、力が……」

フローラ「間に合って良かった。それじゃ御返しですよ」ニヤッ ドンッ

グレートナイトC「!」

エルフィ「はぁああああ!!!」ブンッ

 ドガンッ ガンッ ゴロゴロゴロ グチャッ

グレートナイトA「! 全員、足元に注意しろ!」

グレートナイトBD「わかりました!」ササッ

フローラ「はぁはぁ、体がもちませんね。こんなことばかりじゃ」

 パカラ パカラ

エリーゼ「リライブ!!!」シャランッ

フローラ「エリーゼ様。前に出られては危ないですよ」

エリーゼ「今はフローラの傷のほうが危ないよ! ヘルムと盾がボロボロになってるのに!」

フローラ「まだ、敵の脅威は去っていません」

エリーゼ「だめだよフローラ、そんな状態じゃ、次の攻撃は耐えられないよ!」

フローラ「よ、避けられればどうにか」

エルフィ「重装は避けるんじゃなくて、みんなの盾になるのが仕事よ。その状態じゃ、仕事はできないわ」

フローラ「エルフィさん」

エルフィ「エリーゼ様、少し下がってフローラの手当をしてください。ここはわたしが持たせます」

グレートナイトA「いくら同じ重装備であろうとも、三人に敵うと思うか!?」

エルフィ「やってみなければわからないわ」

フローラ「エルフィさん、一人では難しいです。ここは――」

エルフィ「少しくらい、エリーゼ様の前でいい恰好をさせて、今日はエリーゼ様をフローラが守ってくれてる。いいことだけど、その少し悔しいのよ」

フローラ「エルフィさん?」

エリーゼ「え、エルフィ?」

エルフィ「……」チャキッ グルグルグル カンッ

フローラ「そう、エリーゼ様のこと大好きなのね」

エルフィ「もちろんよ。わたしは日夜エリーゼ様のためになることを考えてるもの。エリーゼ様のために考え、エリーゼ様のために――」

フローラ「わかってるわ。それじゃ私の怪我が治るまでは、任せてあげる。その代り、やられたりしたら承知しませんから」

エルフィ「ええ」

エリーゼ「す、すぐに戻るから! フローラ乗って!」

 パラカパカラ

グレートナイトA「構わん、奴を打ち潰せ!」

グレートナイトBD「いけええっ!!!」

 ダッ

エルフィ「はああああっ」ドドドドッ カチャ ブンッ!!!

 ドゴンッ

グレートナイトB「ぐっ、だが、こちらからも」ブンッ

 ガキィン

エルフィ「受け切りよ!」ブンッ

 ドゴンッ

グレートナイトB「ぎゃへぁあ」ドサッ

グレートナイトA「ちっ、Bがやられたか」

グレートナイトD「なら、あいつらを先に!!!」パカラパカラ

グレートナイトA「早まるな、そいつに背中を見せる必要はない。まずはこいつからだ!」

エルフィ「はああっ」キィン

 ガキィン

グレートナイトD「ちっ、この怪力女め!!!」ブンッ

エルフィ「きゃあっ」ドゴンッ ガランガランンッ

グレートナイトA「よくやった、もう奴に盾はない。挟撃するぞ!」

グレートナイトD「はい、これでおわりだ!!!」

エルフィ「っ!!」



フローラ「エルフィさんが! ここからじゃ間に合わない。わたしの怪我が治っても、これでは……」

エリーゼ「だいじょうぶ、あたしにまかせて」バッ ガシッ 

フローラ「まかせてと、言われても、この距離じゃ」

エリーゼ「間に合わせるから、フローラはあたしより少し離れた場所でハンマーを振れる準備をしておいて」

フローラ「え、なんでこの場で振るんですか?」

エリーゼ「もう時間がないから、準備して」

フローラ「わ、わかりました」

エリーゼ「敵が飛んでくるから、それをハンマーで打ち返して」

フローラ「え!?」

エリーゼ(この距離なら届くはず……)

 ブンッ チャキッ シュオン

エリーゼ(……距離はDがAより後ろ、なら!!!)

 グオンッ

エルフィ(左は受け切れるけど、右は――)

グレートナイトA「くらえええっ」ブンッ

グレートナイトD「しねえええっ!!!」ブンッ

エルフィ「はあああっ!!!!」スッ

グレートナイトD(よし、この直後なら、しねえええ)ググッ

エリーゼ「ドロー!!!」シュオンッ フワッ

 シュオンッ

グレートナイトD「!? えっ、あの怪力女が消え――」

フローラ「はあああっ!!!!」ブンッ

 ドゴォンッ ヒヒーンッ
 ゴロゴロゴロ ドサリッ

フローラ「本当に敵が飛んできたわね……思いっきり殴っちゃったけど……」



グレートナイトA「なっ、Dはどこに行った!?」

エルフィ「わからないけど、捻り潰してあげる」ガシッ グッ ドゴンッ

グレートナイトA「がっ、!?」

エルフィ「はぁっ」ブンッ ドグチャ

グレートナイトA「」

エルフィ「あともう一人は……」

エリーゼ「エルフィ!!!!」

フローラ「エルフィさん」

エルフィ「エリーゼ様、フローラ。敵があと一人……」

フローラ「それなら向こうで伸びてるから問題ないわ。それよりも、エリーゼ様」

エリーゼ「うん、リライブ!」シャランッ

エルフィ「エリーゼ様、ありがとう」

エリーゼ「ううん、エルフィも無茶し過ぎだよ……」

エルフィ「その、ごめんなさい」

フローラ「ふふっ、エルフィさんも私も、エリーゼ様を心配させてばかりね」

エルフィ「そうね、ふふっ」

エリーゼ「もう、二人とも……少しは反省してよ……」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ラズワルド「見つけた!」パシュッ

 サッ

ブレイブヒーローA「全員、敵の攻撃に気を付けつつ距離を詰めろ! 敵は一人だ!」

ブレイブヒーローBC「はい!」

ラズワルド「躍らせてあげるよ!」カチャッ

マークス『ラズワルド、十時の方角に弓兵だ』

ラズワルド「!?」サッ

 パシュッ

アドベンチャラーD「ちっ、気付かれたか」

ラズワルド「あぶなかったー。ありがとうございます、マークス様」

マークス『気を付けるんだぞ』

ラズワルド「はーい」

ブレイブヒーローB「一人でのこのこやってくるとは、いい度胸だ」

ラズワルド「なら、一人だけで来てくれてもいいんだよ?」

ブレイブヒーローC「暗夜に立て突く貴様らに対して礼儀など必要ない。そんなものは額縁に飾るにも値しないぞ」

ラズワルド「そういうのは、僕を倒してからにしたらどうかな。とりあえず、攻撃だよ」チャキッ

 パカラパカラ ザンッ

 キィン

ブレイブヒーローA「屋内では馬の完全な実力を引き出せはしないはずだ。囲んで撃破しろ!」

ブレイブヒーローB「ああ、こっちから回り込め!」

ブレイブヒーローC「Dは違う方角に逃げられないように、牽制射撃!」

アドベンチャラーD「わかった。そっちには行かせねえぞ」パシュッ

ラズワルド(一人だけだから囲んで殲滅するつもりだね。なら、意図的に送られるとすればあの角近くかな)

ラズワルド「マークス様、近々この先の角で包囲されそうになるので、おねがいします」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

マークス「リンカ、お前は上を取り包囲完成の瞬間に急襲、敵の出鼻を挫け。私は弓兵を片づけて合流する」

リンカ「わかった。行くぞ」バサバサバサ

マークス「よし……はぁっ!!!」パカラパカラ

アドベンチャラーD「よし、そこだ」パシュッ

 キィン

アドベンチャラーD「よしよし、そのまま囲まれちまえ」

 パカラパカラ

アドベンチャラーD「ん?」

マークス「ひれ伏せ!!!」ダッ ブンッ

アドベンチャラーD「なっ、こっちは陽動じゃなかったのか!? ちぃ」チャキッ

マークス「せいっ、はぁああ!!!」ザシュッ ブシャア

アドベンチャラーD「うぎゃああああっ」ドサッ ドササッ

 パカラパカラ

ブレイブヒーローB「よし、入りこんだぞ。ここで」

リンカ「はあああああああああああっ!!!!!」ヒュン

 ゲシッ

ブレイブヒーローB「あぎゃ、うぶっ」グチャ

ブレイブヒーローC「なっ、上から!? Dは何をしている!?」

リンカ「残念だけど、弓兵ならもう倒されてるはずだ。行くぞ!」クルクルクル

ブレイブヒーローC「くそっ。A、そっちは任せる俺はこっちをやる。うおらあああっ」ブンッ

リンカ「あまい」サッ

ブレイブヒーローC「ちぃ、はぁ! せいっ」ブンッ ブンッ

リンカ「燃え尽きろ!」

 ブンブンッ バサッ ヒュンヒュンヒュン ザシュッ!!!!!

ブレイブヒーローC「がふっ……」ドサッ

ブレイブヒーローA「はああっ」ブンッ

 キィン カキィン

ラズワルド「これで終わりだよ!」

 ググッ ヒヒーンッ

 ガバッ ダッ ザシュッ!

ブレイブヒーローA「ぐっ、うおおおあああっ」ドサリッ

ラズワルド「ふぅ、どうにかなったよ」

マークス「ラズワルド、無事か?」

ラズワルド「あ、マークス様。援護ありがとうございます」

マークス「礼はすべてが終わってからにしておけ、エルフィたちが中央の機動戦力を掃討をおえている。一気に進み、ここを制圧するぞ」

ラズワルド「はい!」

 タタタタタッ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ルーナ「アクア様、カムイ様、正面に四人。準備はいい?」

アクア「ええ、いいわ」クルクルシュタン

カムイ「はい、いいですよ、ルーナさん」チャキッ

ジェネラルA「ここは通すな。攻撃態勢!」

ジェネラルB「投擲攻撃開始! てやあっ」ブンッ

アクア「甘いわ」ガキィン

ランサーC「敵来ます」

ランサーD「長槍準備完了です」

ジェネラルA「よし、俺達が敵の攻撃を引き受ける」

ジェネラルB「お前達は我々を盾に敵を攻撃、これ以上進ませるな!」

 ジャキッ

ルーナ「完全に通路を塞いでるわ。前列にジェネラル、後列がランサーね」

カムイ「進ませないつもりのようですね」

アクア「ルーナ、援護すればいいのよね?」

ルーナ「そうだけど、あれをどうするつもりよ? まっすぐに当たってどうにかなるものじゃないわ」

アクア「大丈夫、ルーナがどちらか決めてくれればいいわ。ああいう壁は片方が潰れれば、それで終わらせられるはずよ」

ルーナ「そ、そう、じゃああたしが右を引き付けるから、カムイ様は左を引きつけてもらえる?」

カムイ「はい、わかりました」

アクア「私はルーナの援護に回るわ」チャキッ

ルーナ「おねがい。それじゃ、攻撃開始よ!」

カムイ「私が先に仕掛けますので、ルーナさんは右が攻撃を仕掛けようというタイミングで、攻撃を加えてくれますか?」

ルーナ「いいわよ。援護のタイミングはアクアに任せるから。それじゃ、カムイ様!」

カムイ「はい、てやあああっ」ブンッ 

ジェネラルA「来たか、だがその程度の攻撃、屁でもないわ!!!!」キィン

ランサーC「せいっ」ザシュッ

カムイ「もらえませんよ、そのような攻撃は!」サッ

ジェネラルB「横がガラ空きだぞ、裏切り者!」ブンッ

 キィン

ジェネラルB「ぬっ!?」

ルーナ「残念だけど、あんたの相手はこのあたしよ。えいっ!!!!」ブンッ

 ガキィン

ジェネラルB「そのようなへなちょこ刃が効くと思ったか!?」

ルーナ「ならもう一回。はあっ」

ジェネラルB「あまいぞ。小娘が!!!!」ブンッ

 サッ

ランサーD「そこだ!」ザシュッ

ルーナ「っ、か弱い乙女に何してくれんのよ!」

ランサーD「うるさい、手に物騒な物を持ってなにが、か弱い乙女だ」

アクア「確かにその通りね。ルーナ、伏せなさい」

ルーナ「えっ?」

アクア「はやく」

ルーナ「これで、いい?」

アクア「ええ、ありがと。はぁっ」タンッ

ルーナ「あぐっ、ちょ、なに人に乗って――え?」

アクア「……」フワッ

 ドンッ

ジェネラルB「なっ、俺を踏み台に!?」

ランサーD「な!?」

アクア「せいっ」ザシュッ

ランサーD「あがっ」ドサッ

ランサーC「な、越えてくるなんて!!!!」

アクア「はっ」ドゴッ バキッ ドンッ ドサッ

ランサーC「ぐはっ」

アクア「……後列は終わりね」

ジェネラルA「貴様、調子に乗るなよ!!!」グルンッ

カムイ「背中を向けては、その重厚な盾も意味がないですよ!」ググッ バシッ

ジェネラルA「ぐおぉおっ」ガシャンッ ドサッ

カムイ「おわりです」ドスッ

ジェネラルA「がはっ」ドサリッ

アクア「これで――っ!」サッ

 ブンッ

ジェネラルB「ちぃ、よくも俺を踏み台にしてくれたな!!!!! この歌姫ごときがああっ!!!」

ルーナ「ちょっと、あたしがいること忘れてるんじゃないの。背中を見せるなんていい度胸して――」

アクア「はあああっ」クルクルクル バシッ ドゴンッ

ジェネラルB「がっ、盾が、あっ、槍が!?」

アクア「せいっ!!!!!」ドゴンッ

 ガランガランッ ズサササッ

ジェネラルB「」

アクア「ふぅ……」

ルーナ「今のはあたしが倒すところでしょ!?」

アクア「ごめんなさい、でも苦情は受け付けないって言ったでしょう?」

ルーナ「なにその、身軽な行動。危険だとか思わないわけ?」

アクア「ええ、できることだと思っていたもの」

カムイ「アクアさんはとても身軽なんですね。気配が浮いた時は何をしているのかと思いましたけど」

ルーナ「……あたしこれからカムイ様の援護に回るから。そのカムイ様、先頭お願い……」

カムイ「いいんですか? むしろ、アクアさんの援護を……」

ルーナ「い、いいから。べ、別にアクア様が接敵するたびに一発で敵を昏倒させそうで、あたしの援護とかいらなそうだなって思ったとか、そういうことじゃないから」

アクア「……ルーナ、この戦いが終わったら一回、腕相撲しましょう?」

ルーナ「な、なんでよ!?」

アクア「腕相撲は友情の証だって、リンカが教えてくれたのよ」

ルーナ「なに、その友情確認!?」

カムイ「アクアさん、友情を確かめ合うのいいことかもしれませんが、今は先に進みましょう」

ルーナ「そうそう。それに終わってからのほうがちゃんと出来ていいじゃない?」

アクア「そうね」

ルーナ(多分、やらないと思うけど……)

カムイ「では、進みましょう。その前にルーナさん、ちょっと失礼しますね」ギュッ

ルーナ「え、ちょっと、なんで手を握るのよ」

カムイ「少し機嫌を損ねてると思ったので」

ルーナ「そ、そんなこと、ないわよ……ちょっと、そんな指を絡めないでくれない」

カムイ「ルーナさんは私の援護をしてくれるんですから、少しばかり緊張をほぐさないといけません。」

ルーナ「そ、それはそうだけど。これすごく恥ずかしいし……でも、ありがとう、慰めてくれて」

カムイ「いいですよ。それじゃ行きましょう。たぶん、この先に敵の大将が待っているはずですから」

 タタタタタッ

 ニギニギッ

ルーナ「……カムイ様の手、柔らかいわね」

ルーナ(そ、それになんだか、そのドキドキしたというか……)

ルーナ「……き、気の所為ね。それよりも、早くカムイ様の後を追わないと……」

 ガシッ

ルーナ「あ、アクア様。早く行き――」

アクア「ふふっ」

ルーナ「……」ゾワッ

ルーナ(な、なに、この悪寒!? 笑顔なのに、なんで怖いの?)

アクア「ねぇ、ルーナ。やっぱり今すぐ腕相撲をしましょう? 友情を確かめるために」

ルーナ「だから、今はそんな時間じゃ、え、なに、ちょ、腕やめ、いた、いたい、ちょ、まって、なに、なんでニコニコして、こわいこわいから、いや、やめっ、ごめん、ごめんなさい。ってなんで、あたし謝ってるの!?」

「なんでぇ!!!」

 ドゴンッ

 今日はここまで

  リンカの友情の証はアクアに受け継がれたのだ。

  日付が変わってしまったけど、レオン誕生日おめでとう

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・王都ウィンダム『跳橋拠点』―

カミラ「みんな、ここを落とせばクラーケンシュタインへの道はもうすぐよ」

ベルカ「カミラ様、部隊の展開を確認、敵が攻撃態勢に入ったわ」

カミラ「ええ、わかったわ。サクラ王女、準備はいいかしら?」

サクラ「はい、大丈夫です」

ニュクス「こちらも準備出来てるわ。ベルカ、援護のタイミングはあなたに全部任せるわね」

ベルカ「わかった」

カミラ「みんな作戦は教えた通りにお願い、それじゃ攻撃を開始して」

 バサバサバサッ

ナハト「腐っても王族、その影響力はあるはずだ。単独行動を取った今を狙うぞ。お前たちだけ俺に続き、残りは各自の判断で敵を撃破せよ」

ドラゴンナイトA「はい」

ドラゴンナイトB「わかりました」

レヴナントナイトC「カミラ王女、暗夜王国を裏切った報い、受けてもらうぞ」

ナハト「全員、攻撃を開始しろ!」

 バサバサッ

カミラ「……どう?」

サクラ「後方から四騎。その中に他の人たちとは見た目が違う方がいます……」

カミラ「指揮官かしら? どちらにせよ好都合ね。サクラ王女、威嚇してもらえるかしら?」

サクラ「はい、大丈夫です」チャキッ キリリリッ

カミラ「それじゃ、攻撃して」

サクラ「はい!」パシュッ パシュンッ

 ヒュン ヒュンッ

ナハト「構うな、この状況化で早々当たるものではない。逃げるのに必死になっているのかもしれん。追い込むぞ」

ナハト(しかし、逃げ続けて、相手をおちょくるばかりとは、卑怯な目狐王女め)

ドラゴンナイトA「どうします、このまま追いかけっこばかり続けていても」

ドラゴンナイトB「まったく来ない援軍など期待でき無い状況ですので、早期決着が望ましいかと」

レヴナントナイトC「ちっ、王城の連中は何をやってんだ」

ナハト「使えん援軍に期待する必要はない。我々の手柄を与える必要もないのだからな。この先の空域で一気に距離を詰める、挟撃の準備をしろ!」

ABC「はい!」

 バサバサバサ

サクラ「敵が二人一組に、片方が上がりました」

カミラ「この先で捕まえる気ね。さっきと同じ無茶をしちゃおうかしら?」

サクラ「あの、無茶は……」

カミラ「わかっているわ。それにサクラ王女が乗っているのに、そんなことをするわけないもの」

サクラ「カミラさん……」

カミラ「心配しないで、私たちのラストアタックの準備は整ってる。次の空域で指示を出すから、いつでも射れるように準備しておくのよ」

サクラ「はい」

 バサバサバサッ

ナハト「後方から指揮をするつもりか。よし、周りに護衛のいない、この合間に落とすぞ」

ドラゴンナイトA「はっ」

 バサバサバサッ

ベルカ「通過したみたい」

ニュクス「それじゃ行きましょう。援護は任せておきなさい」

ベルカ「ええ、でお、こんな簡単な作戦に気付かないなんて」

ニュクス「必死な時ほど気付かないものよ。特に人間っていうのはね」

ベルカ「そんなもの?」

ニュクス「ええ、そんなものよ。そして、そんなところを突いてどうにか勝てるのが私達の側なのよ」

ベルカ「行くわよ」

 バサバサ

ナハト「…カミラ王女、見つけたぞ」

カミラ「あら、まだ私を王女と呼んでくれるのね?」

ナハト「ああ、暗夜を裏切った最低の王族としてな……。そして、その背中にいるのは白夜の捕虜のようだ。ここまで生かしてもらった恩を仇で返すか?」

サクラ「暗夜王国に生かしてもらってきたわけじゃありません。私をここまで助けてくれたのはレオンさんです!」

ナハト「大きな口を叩く、そのような口が叩けないようにしてやろう。暗夜王国に立て突いた愚かな王女と一緒にな!」

カミラ「あらあら、物騒ね。でも、それが私達になるかどうかは分からないわよ?」

ナハト「なに?」

カミラ「ふふっ、二人一組で上を抑えたのは褒めてあげるけど、もっと周りを見ないと、ね?」

ドラゴンナイトA「貴様、何を言って――」

ナハト「っ! 反転しろっ!」

ドラゴンナイトA「えっ」

ベルカ「遅いわ」チャキッ ブシャアッ

ドラゴンナイトA「ぎぎゃああああっ」ドサッ ドサンッ

ベルカ「ニュクス」

ニュクス「わかってるわよ。はあっ!」ボッ シュオン

 ボワッ

ナハト「ふんっ、甘いぞ。餓鬼が!」サッ

ドラゴンナイトB「ナハト隊長!」

レヴナントナイトC「ちっ、どこかに隠れてたのか。援護に向かうぞ!」

サクラ「上空から来ます!」

カミラ「それじゃ、射抜いてあげなさい」

サクラ「はい。その、ごめんなさい!」パシュッ

ドラゴンナイトB「がっ、ぐううっ。白夜の豚があああっ!」

レヴナントナイトC「おい、そのまま行くな! 態勢を立て直してからにしろ」

ドラゴンナイトB「うるせえ、そうか、そこの白夜の姫が王族たちをたぶらかしたに違いない! レオン王子もその小さな体で従わせたのだろう、この――」

サクラ「レオンさんは、そんな人じゃありません!!!」パシュッ

ドラゴンナイトB「かふっ」ドサッ

サクラ「はぁはぁ、レオンさんは私たちの命の恩人なんです。そんなレオンさんのことを酷くいうなんて許しません!」

カミラ「そうね、言って良いことと悪いことがあるとするなら、今のは言ってはいけないことよ。女の子は繊細でデリケートなんだから」

レヴナントナイトC「ちっ、このままでは」

ナハト「だが、貴様らを倒せば、少しは……」

カミラ「……いいえ。私たちを倒したとしても変わりはしないわ」

ナハト「なに?」

カミラ「ふふっ、あなたが隊長で間違いなさそうね?」

ナハト「それがどうした?」

カミラ「ふふっ、あなたが来てくれたおかげで、向こうは個別指示で動いてるのがわかったから、もう私たちの勝ちは決まってるのよ」

ナハト「何を言っている……」

カミラ「見てればわかるわ。ほら……」

ナハト「?」

 パシュパシュパシュ

 ヒューーーーーンッ

 ドゴンッ ドゴドゴンッ

ナハト「投石攻撃、くっ」

カミラ「ふふっ、クーリア」

クーリア『はい、カミラ殿。いかがでしたか?』

カミラ「ええ、跳ね橋拠点周辺に結構なかず落ちたみたい、合図と攻撃は済んだからその場を離れて、逆上した跳ね橋周辺のが行くかもしれないから」

クーリア『はい。これより正門の者たちと合流に向かいます』

カミラ「ええ。ふふっ、この状況下で隊長不在、跳ね橋拠点は持つのかしらねぇ?」

ナハト「ちっ……」

レヴナントナイトC「ナハト隊長、ここは私が――」

ベルカ「それは無理よ」バッ チャキンッ

ニュクス「喰らいなさい」ボワッ

レヴナントナイトC「くっ」

ナハト「……前に出たのが仇となったか……」

カミラ「私が皆に与えた指令は拠点の占拠だけ、もう多くの兵が跳ね橋を囲って攻撃を仕掛けてるでしょうね?」

ナハト「それがどうした。我々の暗夜への誓いはお前たちなどに負けはしない。たとえ死のうともな」

カミラ「それは誓いじゃないわ。見栄よ」

レヴナントナイトC「言ってくれるな目狐め!」

ナハト「ふっ、貴様に見栄に見えるならば、やはりカミラ王女は暗夜の王族ではないということだろう。我々にとっての祖国は今ある暗夜王国、貴様らが得ようとしているものではない」

カミラ「そう、なら掛って来なさい。元の暗夜王国第二王女カミラが、あなたを送ってあげるわ」チャキッ

ナハト「……はあああっ!」

第二ではなく第一でした。もうしわけない

レヴナントナイトC「一人だけでも道連れにしてやる!!!」ブンッ

ベルカ「っ」キィン

ニュクス「はあっ!!」

レヴナントナイトC「ぐっ、まだ落ちんぞ!」

ニュクス「もう戦っても無意味よ、降伏しなさい」

レヴナントナイトC「無意味ではない! 我々は暗夜王国のために戦っているのだ。暗夜王国がある限り! この戦いは終わりはしない!!!」

ベルカ「そう、その志は立派だと思う。でも、ならもう容赦はできない」ブンッ

 ザシュッ ブシャー

レヴナントナイトC「がああっ、ぐぅう、うおおおっ」パラパラパラ シュオオンッ

ニュクス「ええ、残念だけど。あなたの戦いはここで終わりよ」シュオンッ ドゴンッ

 ビチャンッ ゴロゴロゴロ

ベルカ「……あとは」

ニュクス「……カミラの相手だけね」

ナハト「暗夜王国に仕えてきた身ならば、わかるはずだ。この愚かな行為が!」

カミラ「残念だけど、私は今まで暗夜王国のためにことを行ってきたわけじゃないの。だから、あなたの言葉には賛同できないし、それを否定するつもりもないわ」

ナハト「なんだと……」

カミラ「ごめんなさい。あなたみたいに愛国心がある人には信じられないことかもしれないけど。私は暗夜王国に対して愛国心なんて持っていないわ。私が大切にしているのは家族だけだもの」

ナハト「ならば、なぜ父であり国王でもあるガロン王様の願うものと違う道を歩もうとする!?」

カミラ「……もう、お父様はこの世にいないからよ」

ナハト「何を言っている」

カミラ「理解する必要はないわ。あなたはあなたの信じた暗夜王国を思って逝きなさい。それが一番幸せなこと、私はその幸せを否定してこの先を目指すつもりよ。あなたの役目は終わった。もう、ここを守る必要はないわ」

ナハト「黙れ! 勝手に言わせておけば!!!! その身は王族でありながら国を思わず、家族である王を裏切る行為まで、そんなアバズレに負けるわけにはいかん、いかんのだ!!!」

 バッ

カミラ「サクラ王女」

サクラ「はい。てやっ」パシュッ

 バシュ

ナハト「ぐあっ、ちっ…はっ」

 バサバサバサ

カミラ「本当にごめんなさい」

 ザシュンッ ブシャアアッ


 ドサッ 
  ドサリッ

サクラ「カミラさん……」

カミラ「……さあ、跳ね橋拠点に向かって、跳ね橋を下ろすわよ」

ベルカ「ええ」

ニュクス「わかったわ」

 バサバササッ

 残りは夜くらいに

◆◆◆◆◆◆
―王都ウィンダム『正面建造物』―

 キィン ガキィン

ラズワルド「はぁはぁ、マークス様。ここは僕たちに任せて、先に進んでください」

リンカ「ラズワルドの言う通りだ。ここはあたし達に任せて、敵の親玉を倒しに行け」

マークス「しかし……」

ラズワルド「これ以上、時間を掛けるわけにもいきません。外で戦ってる双方の犠牲を出来る限り抑えないと」

リンカ「そうだ。だからマークス、早く」

マークス「わかった、すぐに終わらせる、何とか持ちこたえろ」

ラズワルド「よし、リンカ敵を押し返すよ」

リンカ「ああ、行くぞ!」



 キィン ザシュッ 

ルーナ「はぁはぁ、カムイ様の援護に徹してたけど、このまま持ちこたえてたらマークス様たちと合流できないかもしれないわ」

アクア「そうね。カムイ、ここは私達が引き受けるわ。だから、敵の指揮官の元に向かって」

カムイ「いいんですか?」

ルーナ「いいって言ってるでしょ。それとも何、あたし達がいなくて不安だったりするの?」

カムイ「……いいえ、ではこの場をよろしくお願いします」

アクア「ええ、任せて頂戴」

~~~~~~~~~~~~~~~~

 ガチャン ゴゴゴゴゴゴッ ガガガガガガガガッ

ブリッツ「……これは敗北の音だな」

ボウナイトA「これって、向こうの跳ね橋が下りてる音ですよね」

ボウナイトB「思ったよりも早く向こうの拠点は取られたか。王都側が落ちたとなったら、流石にここを守る意味無しだな」

ブリッツ「まったくだ。最後の守りは俺たち三人、味方も分断されてるからこっちには来れない、本当に戦う意味もねえな。これじゃ」

 パカラ パカラ
 タタタタタッ

ブリッツ「どうやら、俺たちの元にも訪れちまったようだなぁ」

ボウナイトA「ええ、こっちから仕掛けたら負けですよ、この戦い」

ボウナイトB「俺の視かけじゃ、仕掛けられても負けだな」

ブリッツ「裏表同じ柄のコインで勝負を仕掛けられてるようなもんだな」

ボウナイトA「相手と同じ内容に掛けるくらいしか道がないですね」

ブリッツ「まったくだ」

 パカラッ
 タタタタッ

マークス「……ここのようだな」

カムイ「そのようですね、眼の前に気配が三人」

ブリッツ「待ちくたびれたぞ。マークス王子にカムイ王女」

マークス「ブリッツ、今すぐすべての戦闘行動を中止し投降せよ。この正門もわれわれに制圧されつつある。この戦いにもう意味はない」

ブリッツ「そうか、だが断る」

ボウナイトA「隊長に同じく」

ボウナイトB「俺も同じく」

マークス「お前たちの敗北は目に見えている。これ以上戦う必要はない」

ブリッツ「ははっ、お前達に命を救ってもらおうっていう歳でもないんでな」

ボウナイトA「俺もブリッツ隊長以外の命令に従うつもりはないですね」

ボウナイトB「そういうことなんで、説得は無駄だよ、マークス王子様よ」

カムイ「あなた達は、命が惜しくないのですか?」

ブリッツ「カムイ王女、あんたはまだまだ若いから時間も湧かないだろうが、俺は結構長く生きてきたんでね。暗夜王国に長い間、飯を食わせてもらってきた」

ブリッツ「そして、最後にもらった仕事がこの正門の死守、しかも隊長にまでなっちまった。たとえ負けるとわかっていても、今さら仕事を放棄なんてできねえんだよ」

カムイ「そんな終わりを目指してどうするんですか?」

ブリッツ「へっ、確かにな。だが、そういうあんたは何を目指して戦ってんだ?」

カムイ「え?」

ブリッツ「……いや、いいか。すまんすまん、若いのを見るとこんなことを聞いてみたくなっちまってなぁ、俺も相当歳だな」

ボウナイトA「隊長、まだ未婚じゃないですか。はぁ、流石にその歳じゃ買えるのも少なそうですけどね」

ボウナイトB「候補が一人いましたけど、今回の戦いで死んじまったしな」

ブリッツ「え、そんなのいたのか? まぁいいか。それでマークス王子よ、我々は三人でも正門最終守備隊ってわけだ……」

マークス「たった三人でここを守れるわけがない、諦めて――」

ブリッツ「そうやって誤魔化すな。マークス王子、我々を斬ることに何を躊躇する? ここまでのことをしでかして暗夜をひっくり返したい何かを秘めているんだろう? その道に少しでも奇麗な結果を入れようなんて、そんな甘っちょろいことを考えてるわけじゃないだろうな?」

マークス「……」

ブリッツ「いくら奇麗な宝石揃えても、あんたがいるのは血の池だ。血の中に一度沈めることになる輝きなんて、一度拾い上げても奇異な目に見られるに決まってんだからよ。特に俺みたいな頑固野郎はな……」

マークス「……」

ブリッツ「どうなんだ?」

マークス「お前の言う通りだ……」チャキッ

マークス「お前たちの意志、確かに聞き入れた。よもや、話すことはない」

ブリッツ「……くくっ。まったくいい目をするもんだ。それを砕いてやりたいね。最後の勝負を仕掛けさせてもらう。AにB、最後の準備だ」

ボウナイトA「わかりました」

ボウナイトB「はいよー」

マークス「カムイ、私はあのブリッツと一騎打ちに挑む。二人の敵を任せられるか?」

カムイ「はい、わかりました。手出しは無用ですね?」

マークス「ああ」

ブリッツ「それじゃ、行かせてもらうぞ!!!」ヒヒーンッ

マークス「はぁっ!!!」ヒヒーンッ

カムイ「行きます!」タタタタッ

ボウナイトA「俺達はこちらの相手をします。最後くらい女性と踊りたいですからね」パシュッ

 キィン

ボウナイトB「まったく、踊るなら奇麗なダンスホールとかにしてくれよなぁ」

ボウナイトA「あんたはどちらかといえば、ベッドの上がいいんでしょう?」

ボウナイトB「確かにその通りだよっと!!!」

カムイ「はあっ!!!」ブンッ

 キィン ギギ ギギッギッ

ボウナイトA「今です!」

ボウナイトB「よっし、くらえ!」パシュッ

カムイ「当たりませんよ」

ボウナイトA「動きの激しい王様ですね」

ボウナイトB「目が見えてないとか、ほんと役に立たねえ情報だな」

ボウナイトA「では二人で攻め落としましょう」

ボウナイトB「おう、わかったぜ」チャキッ

カムイ(剣に切り替えましたか、ですが近接距離戦なら負けるつもりはありませんよ)

マークス「はあっ!!!」ブンッ

 ガキィン

ブリッツ「ちっ、くそ重い剣だ。こんな剣を受けたのは、ここに務めて初めてかもしれないな。しかし、なんだか少しだけ荒さが目立つ気もするが……」

マークス「荒さか、確かにあるのだろう、今の私の剣にはな」

ブリッツ「ほぉ、でもその口ぶりじゃ、その荒さが何かをわかってるみたいだな。いいねぇ、若いってのは、すぐに考えを変えられてよぉ」

マークス「考えは変わっていない。変えようとしているのは歩むべき道だ。この私が見つけるべき、誰かのものではない、私だけのだ」

ブリッツ「歩むべき道ねぇ。ははっ、若いのが言うとどうしてこうも希望に溢れた言葉になるんだか。いや、違うか。マークス王子はその希望を見据えているってことかもしれねえな」

マークス「見据えているつもりだ。そうでなければ、お前をここで斬ることを私は選ばない」

ブリッツ「……ははっ、自信満々だねぇ。それじゃ、その自身がどれほどのものか見せてもらおうか!」

マークス「!」

 サッ

 ドゴンッ

マークス「三十余年もの間、この正門を守ってきた実力は伊達ではないということか」

ブリッツ「まあな。この仕事を締めくくるのが王子との一騎打ちっていうのは、何とも華やかでいいもんだよ」

マークス「そう言ってもらえて光栄だ」

ブリッツ「へへっ、王子にそう言ってもらえるんなら、タダ飯喰らってたのも悪くなかったな」

 ガキィン

 ズサササササッ
 ズサササササッ

マークス(次で――)

ブリッツ(終わりだな――)

 ザシュンッ

ボウナイトA「ぐっ、終わりですか……」ドサリッ

カムイ「……次です」

 タタタタタッ

ボウナイトB「あー、剣に変えたの失敗だなこりゃ、だけどやらねえとな」

 パカラパカラ
  パカラパカラ

カムイ「……ん?」

カムイ(馬が接近してきている。でも、馬の動きが不規則で、上に気配がない……。ということは)

カムイ「こちらですね!」ダッ

ボウナイトB「げっ、馬だけ送って肉薄しようって思ったのに、気付いてんのか!」

カムイ「降伏しますか? 降伏するなら今のうちですよ」

ボウナイトB「しつこいんだよ。それに、お前自身はそんなこと微塵に思ってないだろうが」

カムイ「え?」

ボウナイトB「まったく、その場限りの発言って感じで伝わってこねえんだよ。マークス王子の発言は色々と思うことはあったがカムイ王女、てめえはなんだか無機質だ。心が動かねえよ」

カムイ「なにを……」

ボウナイトB「まぁ、言ってる俺自信もよくわかってねえけどなっ!」ダッ

 ブンッ ガキィン

カムイ「っ!」

ボウナイトB「よし、これならいけるかもしれねえ。押しきれええええ!!!!」ググググッ

カムイ「ぐっ、うあああああっ!!!!」バシッ ドガンッ

ボウナイトB「がっ」ドサッ

カムイ「はああああっ!!!!」

 ドスリッ

ボウナイトB[ぐぁああああ!!!! がはっ、うぐっ、がっ……」

カムイ「はぁはぁ……」

ボウナイトB「へへっ、負けちまった……た」

ボウナイトB「」

カムイ「はぁ……はぁ……」

マークス「………」

ブリッツ「……」

 ザッ

マークス「……!」パシンッ パカラパカラ

ブリッツ「望むところだ!!!!」パシン パカラパカラ

マークス「……」

ブリッツ「……」

マークス「そこだ!!!!」

ブリッツ「くらええッ!!!!」

 ズシャン……

マークス「……」

ブリッツ「……」

 ポタ
 ポタタッ
  ポタタタタタッ

ブリッツ「まあ、こうなる……な。ごふっ……」ガチャンッ カランカラン ドサリッ

マークス「ブリッツ、お前が守ってきた正門はこの先も暗夜の民を守っていくものだ。私はそのお前が守ってきた者を引き継いでいく、お前の命を私がもらい受けた以上、それが私の背負うべき道になる。だから、休んでくれ……」

ブリッツ「」

マークス「……カムイそちらはどうだ?」

カムイ「マークス兄さん。こちらも片付きましたよ」

マークス「そうか、カムイは正門の橋を下ろす作業に入ってくれ。私はここの制圧が完了したことを皆に知らせる」

カムイ「わかりました」

カムイ「多分これですね……。はっ、はあっ」ガチャンッ

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ
  ガタンガタンッ
   ガチャ ガチャガチャ ドゴンッ!!!!

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

部族兵「?」

暗夜兵「な、なんだ?」

暗夜兵「! み、見ろ。正門の橋が!!」

部族兵「跳ね橋が下りて行く……ということは!」

マークス「皆の者、よく聞くがいい!正門はわれわれの手に落ちた。戦いを続ける者たちは武器を納めよ。ここでの戦いはわれわれが勝利した」

暗夜兵「そ、そんな。ブリッツ隊長……」

暗夜兵「ま、負けたというのか……」

マークス「よもや、これ以上ここでの戦いは望まなぬ。暗夜の将兵は直ちに武装を解除し戦闘を中止せよ。繰り返す――」

~~~~~~~~~~~~~~~~~

カムイ(マークス兄さんの言葉にはあって、私にはないもの……)

カムイ(あの時、あの方の言葉は、ただ私の動揺を誘うための言葉だったのでしょうか……)

カムイ(でも、現に私は少し動揺していた……その場限りという言葉に、流されていめているような意味のこもったその言葉に……)

カムイ「いいえ、そんなことはありません。まだ私は考えて行動してるはず、流されないようにしているはず……」

カムイ(なのに、どうしてこんなにも、不安があふれてくるのですか……)

 シュオオオンッ

カムイ(……不安が消えていく……。竜石がまた?)

 ガサゴソッ スッ

カムイ「今、あなたはどんな色をしているんですか……。私が見つけるべき光の色がもしもこの色なのだとしたら……」

カムイ(それは一体、どんな色の光なんですか……)

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・王都ウィンダム・王城クラーケンシュタイン『王の間』―

ゲパルトP「正門が完全に落ちたということですか?」

暗夜兵「はい、現在多くの反乱勢力が王都に入り込み始めています。現在、多くの住人の混乱を抑えるために奔走している模様です」

ゲパルトS「動くの早いね、どうする兄さん?」

ゲパルトP「いち早く市民と接触し、交渉を行うつもりですか。くっ、本隊の不在を狙われたとしてもこの体たらく、ガロン王様やマクベス様にどう申し開きをすれば……」

 ガチャンッ

???「どうやら、王都に反乱勢力が流れ込んできたみたいだなあ?」

ゲパルトS「あっ、ガンズ様。どうするのこの状態」

ゲパルトP「すぐにでも部隊を編成して正門の奪還と、反乱勢力の鎮圧を始めるべきです。城を包囲される前にどうにかしておくべきです」

ガンズ「何言ってんだ。わざわざこっちから向かう必要はねえ。ここで待ってるだけでも別に構わねえよ」

ゲパルトP「ここで待っていても包囲殲滅されかねません。ここは――」

ガンズ「ああん。この王都防衛の指揮官は俺だ、口応えするんじゃねえ。前戦に行く前のウォーミングアップにはちょうどい相手だ」

ゲパルトP「ウォーミングアップとは思えません、こんな予期せぬ事態」

ガンズ「予想できねえか、実はそうでもねえ。ガロン王様は、この反乱を予期してやがったんだからな」

ゲパルトS「へぇ、すごい。さすがはガロン王様」

ゲパルトP「ガンズ様、今の言い方ではあなたも知っていたということですね。では、なぜ多くの軍勢を陽動と思われる反乱の討伐に充てたのですか? それに正門の危機に関して増援を向かわせなかったのは……」

ガンズ「そんなこともわからねえか? 簡単だよ、俺たちの手柄を多くするためだ」

ゲパルトP「手柄ですか?」

ガンズ「前にも言っただろ? 死んでる奴らは全員的だったってことにするってよ。がっはっはっは」

ゲパルトS「さっすがガンズ様。でも僕としてはいっぱいいっぱい殺したいところなんだけど」

ガンズ「ああ、確かに殺せねえんじゃつまらねえさ。だが安心しろ、この先相手にするのはほとんど死にかけてる奴らだけだ。思う存分殺しまわれる。あいつら反乱勢力は、ウィンダムの民も守らないといけないからなぁ」

ゲパルトS「わかった、王都の民も反乱に関わってたってことで、皆殺しに行くんだね。さっすがはガンズ様!」

ガンズ「へっ、その心意気はいいもんだ。だが、殺すなら楽な方がいい、そうだろ?」

ゲパルトP「……ですが、そう楽に殺せるものでは――」

ガンズ「だから、ガロン王様が授けてくれた、置き土産を使わせてもらう」

ゲパルトP「置き土産、ですか?」

ガンズ「ガロン王様はこの魔道具の使用権を俺に委ねた。つまり、俺が使うべきタイミングで使って構わねえってことだ。どんな犠牲も顧みないで構わねえ、暗夜王国が形的に守られれば、問題ねえ。そう言われてるからなぁ」

ゲパルトP「一体何を使用するつもりなんですか?」

ガンズ「使ってみてのお楽しみだ。その代り、誰ひとりとしてこの王城から出るなよ。死にたくなかったらな」

ゲパルトP「それは一体……」

ガンズ「よし、準備に入るぞ。ゲパルト弟は俺と一緒に起動準備を手伝え。兄のほうは防御拠点を狭めて強硬にしておけ」

ゲパルトP「わ、わかりました」

ゲパルトS「それじゃ、兄さん。少しガンズ様の手伝いしてくる」

 ザッ ザッ ザッ

ガンズ「へへっ、ガロン王様は最高だな?」

ゲパルトS「はい。いくら殺しても怒らないし、むしろ殺せば殺すほど報酬をくれるからね」

ガンズ「今回、調子が良ければ三桁は殺せるだろうなぁ。どんな悲鳴を上げていくのか楽しみだぜ」

ガンズ(ガロン王様が何を考えてるのかなんて俺は知らねえ。俺はただ、殺せるならそれで構わねえんだからよぉ。それにガロン王様にとってこの王国の民も、前線で戦う兵士とまるで変わらねえと来た。なにせ――」

(王都防衛のために、民が死んでも一向に構わない、そう俺に言ってくれたんだからなぁ?)

 第十八章 終わり

カムイの支援現在状況●

―対の存在―
アクアA
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)

―城塞の人々―
ギュンターB++
(恋愛小説の朗読を頼まれています) 
フェリシアB+
(カムイに従者として頼りにされたい)
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
フローラC+→B
(すこしは他人に甘えてもいいんじゃないかと言われています)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)

―暗夜第一王子マークス―
ラズワルドB
(あなたを守るといわれています)
ピエリB
(弱点を見つけると息巻いています)
マークスC+→B
(イベントは起きていません)

―暗夜第二王子レオン―
オーディンB+
(二人で何かの名前を考えることになってます)
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)
レオンB
(カムイに甘えてほしいと言われて、いろいろと考えています)

―暗夜第一王女カミラ―
ルーナA
(目を失ったことに関する話をしています)
カミラA
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ベルカC+
(イベントは起きてません)

―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼA
(昔、初めて出会った時のことについて話しています)
ハロルドB
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィC+→B
(イベントは起きていません)

―白夜第二王女サクラ―
サクラB++
(カムイと二人きりの時間が欲しいと考えています)
ツバキB
(イベントは起きていません)
カザハナC+
(イベントは起きていません)

―カムイに力を貸すもの―
シャーロッテB++
(返り討ちにあっています)
スズカゼB
(おさわりの虜になったようです)
サイラスB→B+
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB
(イベントは起きていません)
モズメC+
(イベントは起きていません)
リンカC+→B
(イベントは起きていません)
ブノワC+
(イベントは起きていません)
アシュラC+
(イベントは起きていません)
フランネルC+
(イベントは起きていません)

今日はここまでで

 次回、ガンズ魔道具に染まるっ。

 一周年記念リリスのプレイアブル化まだですか?
 いっぱいパルレして、ピエリとコンビ組ませたいの!

 次の展開を安価で決めたいと思います。参加していただけると幸いです。

◇◆◇◆◇
 カムイが話し掛ける人物
(今回の城門戦闘参加メンバーで支援A以下のキャラクターのみ)

・エルフィ
・マークス
・リンカ
・ラズワルド
・フローラ

 >>169>>170

◇◆◇◆◇
 支援イベント発生の組み合わせ
(今回の城門戦闘参加メンバーのみ)
 
 支援発生確定組
 『サクラ×カミラ』
 『ニュクス×ベルカ』

・エルフィ
・アクア
・マークス
・リンカ
・ラズワルド
・エリーゼ
・ルーナ
・フローラ

 一組目>>171>>172
 二組目>>173>>174

 こんな感じでよろしくお願いいたします。

ラズ

乙、久しぶりの安価だな
マークス

ルーナ

ガンズが魔法を使えるわけないだろ!
リリスは正直…
ラズワルド、ダメならルーナ

カミラ、ダメならフローラ

カムイ会話と他のペア会話の重複おkだったっけ?
ダメなら>>172、エリーゼで

連投だけど>>173とはエルフィで

◇◆◇◆◇
―王都ウィンダム―

カミラ「……」

サクラ「…じーっ…」

カミラ「?」

サクラ「じーっ」

カミラ「どうかしたの、サクラ王女?」

サクラ「いえ、な、なんでも無いです」

カミラ「ふふっ、そう言いながらも私を熱く見つめているじゃない。そんなに見つめられたら穴が空いちゃうわ」

サクラ「ご、ごめんなさい」

カミラ「見つめていたことを認めちゃうのね」

サクラ「あっ、えっとその……」

カミラ「ふふっ、いいのよ、それでどうしたのかしら?」

サクラ「……あの、は、恥ずかしくないのかなって思って……」

カミラ「恥ずかしい?」

サクラ「そ、その、カミラさんいつも肌蹴た服を着てるじゃないですか。その、男の人に変な視線をもらってるんじゃないかと思って……」

カミラ「もしかして、私のことを心配してくれてるの?」

サクラ「カミラさんは私より大人です。でも女性なんですから」

カミラ「ふふっ、ありがとう、サクラ王女。でも、私のこの格好に回りは馴れているわ。だから、いきなり見た眼を変えたら逆に視線をいっぱい集めちゃうかもしれないわ」

サクラ「そ、そうでしょうか?」

カミラ「ええ、そういうものよ。ところで、サクラ王女」

サクラ「はい、なんですか? カミラさん」

カミラ「サクラ王女から見て、どこが一番肌蹴ていたのかしら?」

サクラ「……えっ」

カミラ「ふふっ、男性がどこを見てるかは大体わかるけど、サクラ王女がどこがを一番見てたのか、すごく興味があるわ」

サクラ「そ、それは、い、いえませーーーーん!!!」タタタタタッ

カミラ「あらあら、うふふっ。顔真っ赤にして走っちゃって、とっても可愛いわぁ」

【カミラとサクラの支援がCになりました】

◇◆◇◆◇
―暗夜王国・郊外の森林―

ニュクス「………隠れてないで出てきたらどう?」

ベルカ「……」

ニュクス「ベルカ……。そう、この頃私を監視していたのはあなただったのね」

ベルカ「…気づいていたの」

ニュクス「ええ、昔向けられたことのある気配を感じたから、でもそれが仲間のだと思うのに時間が掛ったわね。長生きしてると、そういう視線には敏感になってしまってるのに、心は柔らかくなってしまったみたい」

ベルカ「……」

ニュクス「誰かに依頼されたんでしょう。私を殺すように……」

ベルカ「……」

ニュクス「たしかに、今から殺す相手に答える義理もないわね。さっさとすませなさい」

ベルカ「……訳を聞かないの?」

ニュクス「聞く必要もないわ。聞いたところで、私の罪が許されるわけじゃないもの。それより仕事はきっちりこなすのが、殺し屋として務め、そうでしょう?」

ベルカ「……」

ニュクス「……」

ベルカ「あなたは何者なの?」

ニュクス「……さぁ、それは私が知りたいくらいね。用がないなら私は行くわ。もしも、また殺すと決めたらこういう静かな場所でお願いね。死ぬ時くらいは静かな場所で死にたいから」

 ガサッ ガササッ

ベルカ「……」

【ニュクスとベルカの支援がCになりました】

◇◆◇◆◇
―王都ウィンダム―

ルーナ「ラズワルド!」

ラズワルド「うわ、ルーナどうしたんだい? 今日は無駄になんか元気みたいだけど」

ルーナ「いや、その、この前まで色々と心配掛けたから……。そのご要望に応えて元気にあいさつしただけよ。べ、別に無理して振舞ってるってわけじゃないからね」

ラズワルド「そっか……。ルーナは強いよね。僕なんかに比べてさ」

ルーナ「な、何よ。今日は元気ないわね」

ラズワルド「あー。あはははっ、ちょっと夢を見てさ……元の世界のことをね」

ルーナ「……」

ラズワルド「いくら戦っても戻ることのない世界なのにさ。どこかでそれが取り戻せる日が来るんじゃないかって。そんなことあるわけないのにさ」

ルーナ「……」

ラズワルド「あっ、ごめんごめん。なんだかしんみりな話しになっちゃった。えっと、そうだ。このあとお茶でもいこうよ。おいしい場所いくつも知ってるからさ」

ルーナ「ふふっ」

ラズワルド「な、なんで笑うんだよ」

ルーナ「素直に言いなさいよ、ちょっと不安になってるって。あたしとあんたの仲なのに水臭いじゃない。あんた言ってたでしょ、力になれることはできる限りするからって。ならあたしがそれをあんたにしても問題ないでしょ」

ラズワルド「ルーナ」

ルーナ「あんたに支えてもらってばっかりな状態なんてまっぴらごめんよ。同じくらい支えて支えて支えまくって、あたしに頭が上がらないようにしてあげるんだから」

ラズワルド「そういうところは張り合うところじゃないんと思うんだけど。でも、なんだかそういう方がルーナらしいかな。なんて言うか、ストレートに優しくしてくると、何か裏があるんじゃないかって思えてくるし」

ルーナ「言ってくれるじゃないの。でも、今日くらいは一緒にいてあげるわ。その、前のお返しにね///」

ラズワルド「ルーナ……ありがとう」

ルーナ「な、真面目な顔していうんじゃないわよ……。その、ありがとう」

ラズワルド「それじゃ、いっしょにお茶に行こっか!」

ルーナ「はぁ、結局変わらないわね、あんたは……。ちゃんとおごりなさいよ」

ラズワルド「もちろんだよ、それじゃ行こっか?」

ルーナ「はいはい」

【ラズワルドとルーナの支援がAになりました】

◇◆◇◆◇
―北の城塞―

エリーゼ「…フローラ、ごきげんうるわしゅうですわ……」

フローラ「え、……エリーゼ様、どうかしましたか?」

エリーゼ「な、なんでもないですわ……」

フローラ「? なんだかいつもより言葉が固い気がしますけど、」

エリーゼ「そ、そんなことないよー。はっ、そ、そんなことないですわ」

フローラ「あの、エリーゼ様、本当に大丈夫ですか?」

エリーゼ「……フローラ……。あたし、ひぐっ」

フローラ「!? ど、どうされたんですか。も、もしや私が何か気に触ることでも……」

エリーゼ「ち、違う。違うから、その、これはあたしが……」

フローラ「とりあえず、落ち着きましょう……」

フローラ「すぐに紅茶を淹れさせていただきますね」

エリーゼ「うん……」

~~~~~~~~~~~~~~~~~

フローラ「それでいかがされましたか?」

エリーゼ「あのね、この前『エリーゼ王女は言動が幼すぎる、まるで子供のようだ』って、大臣たちが話してるのを聞いちゃって……」

フローラ「それであのような挙動不審な言動を……」

エリーゼ「ねぇねぇ、フローラから見てあたしって子供っぽい?」

フローラ「……そうですね。とても元気で可愛らしいと思います」

エリーゼ「そ、それじゃ駄目なの。子供っぽいままでいると、体も子供のままで育っちゃうって、この前読んだ本に書いてあったの!」

フローラ「それは子供に戒めを教えるための内容だからかもしれません」

エリーゼ「え、じゃあ、そんな本を読んでるあたしは、子供ってことなのかな……」

フローラ「いいえ、そんなことはありませんよ。本を読んでその通りに実践するエリーゼ様はとてもえらいと思いますから」

エリーゼ「……ねぇ、フローラ」

フローラ「はい、なんでしょうか?」

エリーゼ「あたし、大人になりたい!」

フローラ「え?」

エリーゼ「だから手伝ってほしいの!」

フローラ「……あの、誰かに手伝ってもらったからと言って大人になれるわけでは――」

エリーゼ「お願い、フローラ! フローラは大人だから、黙っててくれるよね? ね?」

フローラ「……わかりました。エリーゼ様のお願いです。私で力になれるかどうかは分かりませんけど、力添えさせていただきますね」

エリーゼ「わーい、ありがとー。じゃなかった、ありがとうですわ」

フローラ「……大丈夫でしょうか」

【エリーゼとフローラの支援がCになりました】

 仲間間支援の状況

●異性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・レオン×カザハナ
・ジョーカー×フローラ
・レオン×サクラ
・ラズワルド×ルーナ←NEW

【支援Bの組み合わせ】
・ベルカ×スズカゼ
・ラズワルド×エリーゼ
・ブノワ×フローラ
・エリーゼ×ハロルド
・オーディン×ニュクス
・ベルカ×スズカゼ
・オーディン×アクア

【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
・モズメ×ハロルド
・ギュンター×ニュクス
・レオン×エルフィ
・アクア×ゼロ
・ルーナ×ハロルド

【消滅した組み合わせ】
・ラズワルド×リリス
・ゼロ×リリス

●同性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・リンカ×アクア
・ピエリ×カミラ
・フェリシア×ルーナ
・フローラ×エルフィ
・レオン×ツバキ

【支援Bの組み合わせ】
・ギュンター×サイラス
・ベルカ×エリーゼ
・フェリシア×エルフィ
・シャーロッテ×モズメ

【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
・シャーロッテ×カミラ
・ピエリ×リンカ
・ピエリ×ルーナ
・ピエリ×フェリシア
・ジョーカー×ハロルド
・アクア×ルーナ
・ベルカ×ニュクス←NEW
・フローラ×エリーゼ←NEW
・カミラ×サクラ←NEW

【消滅した組み合わせ】
・ピエリ×リリス

今日はここまで
 
 フローラ×エルフィは支援会話Aになっていたので、フローラ×エリーゼとさせていただきました。

 戦闘終了後のカムイの会話する相手の安価と、キャラクター同士の安価は別物なので被っても問題はありません。
 今度からは、戦闘後のキャラクター選び安価は支援Aに達している組み合わせを張り付けておこうと思います。
 今回は混乱させてしまい申し訳ありませんでした。

~第十九章~

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・王都ウィンダム『監視塔』―

 ヒュオオオオオオッ

ラズワルド「……うーん、どういうことかな? こんなに王都に入り込まれてるのに全く動きを見せない、何か策でもあるのかな?」

ラズワルド「……僕達が王都を離れてる間に、何か仕掛けが施されたってことなのかな? それとも……」

 カツッ カツッ カツッ

ラズワルド「?」

カムイ「ラズワルドさん、様子はどうでしょうか?」

ラズワルド「カムイ様。なんて言えばいいのかな、敵にまったく動きがなくて。王城のリッチを考えれば、抑えるべき要所があるはずなんだけど、そこはおろか中央広場から王城に至る第一関所を取り返しにも来ない」

カムイ「籠城戦の構えなのかもしれませんね。下手に兵力を奪還に向かわせるより、籠城戦に持ち込んで討伐大隊の帰還を待っての挟撃を狙っているのかもしれません」

ラズワルド「この状況で、それが成功するとは思えないけどね」

カムイ「そうですね。そうでしたこれを、喉が渇いていると思いまして」チャプン

ラズワルド「ありがとうございます、カムイ様。んくっ、んくっ、ふぅ~、生き返ったよ」

カムイ「ふふっ、どういたしまして。それより、ここまで私たちの侵入を許しているということは、何か手があると考えるべきですね」

ラズワルド「そうだね。だけど、それがどういうものなのか全くわからない。王都正門と城壁を僕達が攻撃している間、一度も王城から援軍が来なかったことを考えると、やっぱりこの二つは見捨てたことになる。だから、それ相応の価値があるものだとは思うんだけど……」

カムイ「……」

ラズワルド「カムイ様、どうしました?」

カムイ「いいえ、ラズワルドさんがいつもより真面目なので、少し不思議に思っただけですよ」

ラズワルド「いつもよりって酷いですよ。僕はいつだって真面目に考えてますよ、特に女の子をお茶に誘う時は、お店のチョイスに余念ないんですから」

カムイ「ふふっ、その割には成果が伴ってないと思いますよ」

ラズワルド「そ、それは言わないお約束ですよ、カムイ様」

カムイ「そうですね、言わぬが華というものですね」

ラズワルド「口に出されてからじゃ意味ないんですけど……」

カムイ「ふふふっ、ごめんなさいラズワルドさん」

ラズワルド「……やっと柔らかい表情になったね、カムイ様」

カムイ「え?」

ラズワルド「さっきの戦いから、何か考えてるみたいで、少し気になっていたんです」

カムイ「そうでしたか……」

ラズワルド「すみません、その詮索するようなことをして……」

カムイ「いえ、いいんですよ。それに気にしてもらえたのは少しだけ嬉しいので」

ラズワルド「それで、一体どうしたんですか?」

カムイ「だ、大丈夫ですよ。心配してもらった上に話まで聞いてもらおうとは思っていませんから」

ラズワルド「迷惑になるなんて思ってるなら、それは間違いですよ。僕はあなたの力になりたいんです。僕はカムイ様を守りたいんです、たとえ些細なことであってもです」

カムイ「ラズワルドさん……」

ラズワルド「その、僕じゃ力になれませんか? カムイ様」

カムイ「いいえ、そうじゃないんですけど。その」

ラズワルド「?」

カムイ「……なんだか、告白を受けているみたいで。なんだか気恥しくて」

ラズワルド「え、あ、いや、これはそういう意味じゃなくてですね」

カムイ「はい、わかってますよ。ふふっ、照れてるんですね、とっても可愛いですよ」

ラズワルド「少しドキドキしちゃいましたよ。あまり、からかわないでほしいんですけど……」

カムイ「それもそうですね……」

カムイ「こんな風に自分のことを誤魔化しているのはわかっていますから……」

ラズワルド「カムイ様?」

カムイ「すみません、こんなに悩むことなんてなかった今までなかったので、こうやって意識を逸らそうとしてるのかもしれません。ふふっ、私の悩み事が不安を感じてることだとしたら、ラズワルドさんはどう思いますか?」

ラズワルド「……」

カムイ「やっぱり、子供みたいだと思いますよね……」

ラズワルド「カムイ様、僕はそうは思わない」

カムイ「え?」

ラズワルド「ははっ、悩みの理由なんて人それぞれだし、僕にだって悩みはあるよ。でも、カムイ様の悩みに比べたら、その、結構不健全なものですから」

カムイ「もしかして、励ましてくれてるんですか?」

ラズワルド「ええ、それでカムイ様の気持ちが和らぐなら安いことですから」

カムイ「……ふふふっ、やっぱりラズワルドさん思ったよりも真面目な人なんですね」

ラズワルド「思ったよりは余計ですよ」

カムイ「いいえ、ありがとうございます。少しだけ話せて気が楽になりました。なんだかんだで守ってもらいましたね」

ラズワルド「気にしないでいいから、あ、でも、お礼なら今度一緒にお茶でもどうかな?」

カムイ「そうですね、考えておきます。では、私は戻ります」

ラズワルド「わかった。引き続き監視を続けるね」

カムイ「はい、おねがいします」

◆◆◆◆◆◆
―王都ウィンダム・中央広場へと進む街道『道沿いの宿営地』―

カムイ「マークス兄さん。いらっしゃいますか?」

マークス「カムイか、入っていいぞ。……それで、現在の状況はどうなっている」

カムイ「はい、監視を続けていたラズワルドさんからは、敵に目立った動きがなしと」

マークス「不気味なほどにな。すでに中央広場にて王城攻略の準備も進んでいる。もうじきすべての準備が整うことだろう。住民たちの誘導も、現在大きな混乱もなく進んでいるようだ」

カムイ「王都の皆さんが指示に従ってくれるので、こちらの作業もこなしやすいですね」

マークス「ああ、そうだな……」

カムイ「? どうしました、マークス兄さん」

マークス「カムイよ。お前は今回の戦いで悩む必要はない」

カムイ「悩む必要はないとは、一体……」

マークス「無自覚なのかもしれない。カムイ、城塞を出た頃に比べて、今のお前は表情が豊かになった。正直悪い意味でな」

カムイ「悪い意味ですか?」

マークス「ああ、この頃のお前は苦い顔をしてばかりで、今も影が差している。前のように無邪気に笑うこともあまりなくなったようにも思えてな」

カムイ「そんなことは……いえ、そうですね。マークス兄さんの言っていることは間違ってないでしょう。先ほど、ラズワルドさんにも心配されてしまいましたから」

マークス「カムイ、お前は私達の家族であり、私にとっては大切な妹だ。こうして、お前の目指す道に縋り戦っている私が言えた義理ではないのかもしれないが……」

カムイ「はい?」

マークス「私たはお前のことを心配している。今回の件、本来ならお前に非難が向かわない形であるべきだった。あのとき、舞踏会で父上が示したオ前の功績、反乱鎮圧という成果は来るべき日の先に暗い影を落とすだけのものだ……」

カムイ「来るべき日…ですか?」

マークス「ああ、戦争が終わりを告げた先にある穏やかな日々のことだ。今まで父上の進む道にそれがあると信じてきた。しかし、それは終わりを迎え、私は今お前の進む道にその可能性を見ている」

マークス「だからこそ、不安が過る。そうした穏やかな日々を、お前は手に入れることができるのかと……」

カムイ「マークス兄さんは心配症ですね」

マークス「心配に思ってもいいだろう。カムイには無邪気な笑顔が良く似合うのだ。今のように悩んでいる顔よりもな」

カムイ「それはすごく昔のことじゃないですか?」

マークス「初めて出会った時がそうだったからな。第一印象というのはそう簡単に変わるものではない。私にとってのカムイは、いつでも無邪気に笑っている妹だったのだから」

カムイ「もう……。でも、マークス兄さんにとって、私は無邪気な女の子のままなんですね」

マークス「同時に世間知らずという印象も変わっていないな。箱入り娘とはこういうものをいうのだなと思ったほどだ」

カムイ「世間知らずって」

マークス「今思えば、どこでも着替える癖をどうにかするべきだったな。最初の任務の時、目の前でいきなり着替えを始めて驚いたとサイラスが言っていた。お前はそういう所に無関心すぎる」

カムイ「やっぱり、問題ありますか」

マークス「ああ、カムイ、お前は王族だ。王族であることは、それだけで模範であることを求められる、それを忘れないことだ」

カムイ「そうですか、わかりました。では、マークス兄さんや家族の前で着替える分には問題ありませんよね?」

マークス「な、何を言っている」

カムイ「ふふっ、冗談ですよ。なんですか、もしかして赤くなっているんですか?」

マークス「はぁ、まったく、人をからかうときはそういう笑顔を浮かべるのだな。はぁ、しばらくの間、目が離せそうにないな」

カムイ「でも、マークス兄さんは初めて会った時から変わりませんね」

マークス「なに?」

カムイ「はい、こうやって私のことを色々と考えてくれていましたから」

マークス「…カムイ」

カムイ「マークス兄さんは、あの頃から知っていたんですよね。私が暗夜の人間ではなくて、白夜の人間だということを」

マークス「……ああ」

カムイ「ふふっ、ずっと一人で何とかしてきたと思ってましたけど、今考えればマークス兄さんにいっぱい助けてもらってたんですね」

マークス「カムイ、お前は私を怨んでいるか?」

カムイ「何をですか?」

マークス「……事実を知っていながら、それを伝えることもせずに隠し続けてきた私をだ……」

カムイ「いいえ、怨んでなんていませんよ。むしろ感謝しているといえばいいかもしれません」

マークス「なぜだ?」

カムイ「あの頃私が、自分が違う国の生まれで、捕らわれて暗夜に来たことを知ってしまっていたら、ここに私はいなかったかもしれません」

マークス「しかし、もっと早くに知らせていれば、お前にこのような道を――」

カムイ「……いいえ。もっと悪いことになっていたかもしれません。むしろ、私はマークス兄さんがそう判断してくれたことがとてもうれしいです。だって、そのおかげで私はこうして皆さんと家族になれた、それだけでもうれしいことです」

カムイ「それに、あの頃の私は偽りの兄妹を受け入れられるほど、できた人間じゃなかったと思います。多分、恨みを抱えていくことになったのかもしれません。だからマークス兄さんの嘘は、私にとって救いの嘘なんですよ」

マークス「救いの嘘……か」

カムイ「はい、悪意の嘘と善意の嘘があるなら、マークス兄さんがくれたのは善意の嘘です。だから、そんなに思い悩まないでください」

マークス「そうか……」

カムイ「ですから、私はマークス兄さんの前ではお着替えできるんですよ?」

マークス「信頼の証なら、もう少し健全なものにしてもらえないか。その、目のやり場に困るような行為は、王族として問題がある」

カムイ「そうですか、それだとやっぱり、これですね」

 ギュッ

マークス「カムイ?」

カムイ「ふふっ、マークス兄さんの手、やっぱり男の人の手なんですね。とっても固いです」

マークス「う、うむ……」

カムイ「……マークス兄さんの道が見つかりますように」

マークス「おまじないか」

カムイ「はい。私にできることなんて、これくらいですから」

マークス「いや、それだけでも十分だ。しかし、こうされてばかりというのも兄という立場上、不甲斐無い気持ちになる」

カムイ「お返しなんて大丈夫ですよ」

マークス「いや、これでは私の気が済まないのでな。少しは兄らしいことをお前にさせてくれないか?」

カムイ「ふふっ、わかりました。楽しみにしてますね」

マークス「ああ」

 タタタタタタタッ

部族兵「マークス王子、よろしいですか?」

カムイ「時間のようですね。私は待機に戻ります」

マークス「わかった。作戦の打ち合わせが終わり次第、動き始める。皆に準備をするように伝えておいてほしい」

カムイ「わかりました、それでは……」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ザワザワザワ

クーリア「ここまで動きがないというのは、正直予想外ですね」

マークス「うむ、この状況を見るに籠城で時間を稼ぎ、反乱鎮圧に向かった者たちを待っていると考えるべきだろう。しかし、王城の立地を考えれば、それは愚行とも取れる」

部族兵長「なにせ、王城は下。我々は上から好きな所へ攻撃を仕掛けられるのですから。それを見越して、守るべき拠点を絞っているのかもしれませんが」

シュヴァリエ兵長「ふっ、我々の竜騎兵に任せていただければ、すぐにでも急襲し、突入路をたちまち確保してみせましょう。なに、もはやクラーケンシュタインなど、袋小路の中にあるも同然ですからな」

クーリア「これ以上、敵の籠城準備に時間を与える必要もないかと思います。王都住民の多くは指示に従ってくれていますので」

マークス「そうか。それで、負傷した者たちは?」

クーリア「はい、現在跳ね橋拠点に医療本部を設置、敵味方問わず負傷した者たちへの治療、休息場所にあてています」

シュヴァリエ兵長「な、敵を助けるなど、そんなことをする必要はないはずだ」

マークス「われわれの目的は暗夜王都の奪還にある。敵の兵士を一人残らず皆殺しにすることではない」

シュヴァリエ兵長「ですが、いずれ反旗を翻してくるかもしれません。その可能性は先に根絶やしにしなくては!」

マークス「シュヴァリエ出身であるお前の言葉の意味、それはわかっているつもりだ」

シュヴァリエ兵長「では!」

マークス「だが、それではわれわれは父上と同じ道を辿ることになる。父上のように疑わしきものをすべて排除していくという行為を行うために、われわれは王都に攻め入ったのではない。もしも、同じことで勝利し王都を落としたとしても、いずれは同じ理由でわれわれは滅びていくことになるだろう」

シュヴァリエ兵長「そ、それは……」

マークス「今すぐにそれをできるとは思っていない。シュヴァリエに父上が与えた傷は深く重いことも理解している。だが、それを向けるべき相手は戦いの最中だけだ」

マークス「そして部族の者たちも、ここまで長きに渡って迫害を受けてきたことは理解している。そして、それがこの戦いに参加する理由となったことも。だからこそ、その事柄と決別してもらいたい……。この戦いは相手に同様の罰を与えるためのものではない。暗夜に新しい光を与えるための戦いであるからだ」

シュヴァリエ兵長「……」

部族兵長「……」

マークス「もしも、それをそれぞれ多くの者を率いる兵長であるお前達が望まぬというのな――」

シュヴァリエ兵長「マークス王子、我々はまだ何も言っていない。先に答えを詮索しないでもらえるか?」

部族兵長「と言いながらも、あなたの答えは決まっているのでしょう、シュヴァリエ兵長」

マークス「……答えを聞かせてもらえるか?」

シュヴァリエ兵長「このまま、シュヴァリエの仇だって蛮行を繰り返して、シュヴァリエの騎士たちは降伏した人間すら手に掛ける恥知らずと思われたkない。我々は暗夜王国とは違う、この戦いの力はマークス王子の言葉通り、戦いの時だけ刃として扱わせてもらう。あなたの指示を受け入れるよ」

マークス「部族兵長」

部族兵長「マークス王子、わたしたちの目的は部族としての独立です。ですが、王都との交流は将来必要不可欠でしょう。今行ったことは平和になった世になればなるほどに、影響が出てくること。たとえ敵であろうとも、それは王都ウィンダムの民。将来の通商相手を失い、悪い噂ばかりに身を窶すつもりはありません」

クーリア「ふっ、中々に狡猾なことを言われますね」

部族兵長「さすがに独立してめでたしめでたしとはいきませんから。ですから、マークス王子、あなたのその道に私たちも従い、共に行きましょう」

マークス「感謝する」

シュヴァリエ「いいえ。それで、敵捕虜や王都住民の誘導が終わり次第、総攻撃といきますか?」

マークス「ああ、全兵に通達。住民の誘導、および防衛陣の構築が完了次第、クラーケンシュタインへと攻撃を開始すると!」

一同『はい!!!』

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・王都ウィンダム・クラーケンシュタイン『王の間、奥の空間』―

ゲパルトS「すごく大きいですね。でも、これって僕たちも危ないんじゃないですか?」

ガンズ「安心しろ。クラーケンシュタインには特殊な結界が張られてる。だから、一方的にじわじわ奴らをなぶれるってわけだ」

ゲパルトS[へぇ~、流石はガロン王様。メリットしかないってすごいよねー」

ガンズ「まぁ、餓鬼や今にも死にそうな野郎は衰弱死しちまうかもな。がっはっはっは、べつに関係ねえけどよ」

ゲパルトS「うんうん、ガンズ様。これって発動した瞬間の出力がすごいみたいですよ。近距離にいたら一気に死んじゃうじゃないかな?」

ガンズ「はっ、うれしそうに言ってやがる癖に、何の心配してんだ? どうせ、敵は中央広場を抑えて、そろそろ攻めてくるつもりだろ。なら、俺たちも景気付けに脅かしてやるべきさ。もっとも、それでこっちの勝ちになっちまうがよ」

ゲパルトS「まあいいや、人が死ぬならそれでいいし。それじゃ、起動始めるよー」

ガンズ「ああ、景気よく行けぇ!」

 シュオオオオンッ

ゲパルトS「うん、これくらいかな。でもすごい話だよね、ガンズ様」

ガンズ「何がだ?」

ゲパルトS「所々で見れる暗夜王国のシンボルみたいなものが、こんなにいっぱい人を殺せる魔道具だなんてさ」

ガンズ「いいじゃねえか。暗夜王国のシンボルにふさわしい機能だ。これを見越してガロン王様は暗夜王国の守備を手薄にしてたんだろう。もっとも、マクベスの野郎は多分知らされてないんだろうぜ。こんなものがあるなんてよ」

ゲパルトS「マクベス様も知らないことを知らされてるって、ガンズ様はガロン王様に信頼されてるんですね!」

ガンズ「信頼か、それは違うな」

ゲパルトS「ちがうの?」

ガンズ「ガロン王様は人殺しが楽しいっていう理由だけで、処刑されるはずだった俺を引き抜いたんだよ。それ以外に俺は取りえなんてねえからな。まったく、イかれてる話だろ?」

ゲパルトS「たしかに、普通じゃないかなー」

ガンズ「だから俺は信頼されてるんじゃねえ。ただ人を殺せって言われてるだけなんだよ。それで俺は満足してるから問題ねえ。人を殺せるなら誰だっていい、弱けりゃなおいい。女子供も容赦しねえ、捕虜になった奴も関係ねえ。生きてるなら、殺して手柄にしてやる、死人は全員敵なんだからよ」

ゲパルトS「そんなに手柄を集めて、何をするんですか?」

ガンズ「そうだな、いずれは一国の王になって、そして戦争を続けてやるさ。暗夜も白夜も関係ねえ、目に見える者を殺して破壊する。そんな最高な国の主になりたいねぇ」

ゲパルトS「あははははっ、ガンズ様は面白い。でも、そうだよねー、僕も殺したいなら誰でも殺すから。相手が暗夜の人間でも白夜の人間でも、女でも男でも、子供でも大人でも、悪人でも善人でも、殺したいこっちには関係ないことだからねー」

ガンズ「ああ、そういうことだ。結局死んだら肉の塊、価値なんてありゃしねえ。だから、派手に殺しちまおう」

ゲパルトS「わかったよ、ガンズ様。それじゃ、これで魔力注入終わり。それじゃ起動っと」

 フオオオンッ シュォオオオオンッ

ゲパルトS「あと、これは……なんか腕に付けられそうだけど……」

ガンズ「これは俺のもんだ。へへっ、力が湧いてくる、何百、いや何千人もぶち殺せそうな気分だ……」

ゲパルトS「すごい。それじゃ戻ろうよ、兄さんが退屈そうにしてるかもしれないし!」

ガンズ「ああ。がっはっはっは、この俺がいる間に攻めてきたことを後悔させてやる。なぁ、カムイ王女よぉ?」

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・クラーケンシュタイン『練兵場』―

部族兵「……敵はいるか?」

シュヴァリエ兵「いや、影も形もないな。おかしい、ここまで侵攻してきたというのに、攻撃はおろか敵の影すら見ないとは」

部族兵「そうだな。見つかって矢の雨を掻い潜ることになると思ってたんだけど」

シュヴァリエ兵「壁沿いの建造物にも人の気配はなかったから、ここいらに住んでいた奴らも王城内部に入り込んだのかもしれない。そう考えると、やはり籠城で遠征組が帰ってくるのを待つことにしているということか?」

部族兵「だが、籠城してるだけでどうにかできるとは思えない。あと少しすれば突入ルートも選別化されて、要所にあった配置がなされる。完成したら、あとは一気に攻め落とすだけだからな」

シュヴァリエ兵「そうだな」

部族兵「それにしてもこの像見ろよ。練兵場にはいささか大きすぎるオブジェだよな」

シュヴァリエ兵「ああ、中央広場から王城へと続く道の入り口あたりにもあったな。確か暗夜竜とかいう竜の像だったか?」

部族兵「たしかそうだったな。まったく悪趣味な像だぜ、王都を抑えたらさっさと取り壊して、資源にした方がよさそうだ」

シュヴァリエ兵「言えてる」

 ブォンッ

シュヴァリエ兵「え!?」

部族兵「どうした?」

シュヴァリエ兵「いや、なんか目が光ったような気がして……あれ?」

部族兵「何言ってんだ。ただの像だぞ、像。生きてるわけじゃねえし、目だってただ彫ってあるだけじゃねえか。さすがに疲れが出てきたんじゃないか?」

シュヴァリエ兵「あ、ああ。そうかもしれない。さすがにお前を乗せて慎重に飛び回っていたからな……」

部族兵「言ってくれるじゃねえか。よーし、戦闘が終わったら俺のおごりでビールをおごってやるよ。疲れた体にはいいもんだからな」

シュヴァリエ兵「おっ、本当か。それは楽しみだ!」

部族兵「おう、それじゃ中央広場に報告するから、監視は任せた」

シュヴァリエ兵「わかった。たくっ、びっくりさせやがって、この気色悪い竜の像が!」ゲシッ

 ……
 ……

 シュオオオオォォォン!!!!

シュヴァリエ兵「へ?」

部族兵「こちら先行観察Aチーム。現在、王城近辺の練兵場、ここら一帯に敵の影はありません」

シュヴァリエ兵「お、おい!」

部族兵「なんだよいきなり。今報告中――」

シュヴァリエ兵「ぞ、像が!」

部族兵「え? 何を言って……」

 シュオオオオオオオオッ

部族兵「お、お前何した!?」

シュヴァリエ兵「いや、ちょっと蹴っただけだ。というか、それだけで何か起きるわけないだろ!?」

 シュオオオオオオオォォォ

シュヴァリエ兵「な、なんだこの禍々しい感覚は……」

部族兵「どちらにせよ、報告だ。こちらAチーム。練兵場にある竜の像に異変あり、これより警戒態勢に――」

 ズオオオオオオ――

部族兵「入――あぐっ、ゴホゴホッ、うぎぃ、ぐぎゃあああ。いでぇ、がらだが、いでぇえ、うぐぅ、うげああああ」ドサッ

シュヴァリエ兵「うげあああああっ。あぐっ、あああっ、ゴホゴホゴホ。ガハッ、ゴフッ、ヒュー……ヒュー……ゲホッ」

部族兵「あ、ぐっ、死にた―――……」パタリッ

 コロコロコロコロコロッ カツンッ
 ザザザザザッ ザー ザー

『こちら中央広場、多数の負傷者発生、作戦地域から撤退を開始! お前たち早くその像から離れろ! 離れないと……ううっ、うぎぃあ、あがっ、ごほごほ、ビチャ…… ザザッ ザザザザーーーーーーーブツンッ』

 バリンッ パラパラパラッ……

○カムイの支援現在状況●

―対の存在―
アクアA
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)

―城塞の人々―
ギュンターB++
(恋愛小説の朗読を頼まれています) 
フェリシアB+
(カムイに従者として頼りにされたい)
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
フローラB
(すこしは他人に甘えてもいいんじゃないかと言われています)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)

―暗夜第一王子マークス―
ラズワルドB→B+
(あなたを守るといわれています)
ピエリB
(弱点を見つけると息巻いています)
マークスB→B+
(何か兄らしいことをしたいと考えています)←NEW

―暗夜第二王子レオン―
オーディンB+
(二人で何かの名前を考えることになってます)
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)
レオンB
(カムイに甘えてほしいと言われて、いろいろと考えています)

―暗夜第一王女カミラ―
ルーナA
(目を失ったことに関する話をしています)
カミラA
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ベルカC+
(イベントは起きてません)

―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼA
(昔、初めて出会った時のことについて話しています)
ハロルドB
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィB
(イベントは起きていません)

―白夜第二王女サクラ―
サクラB++
(カムイと二人きりの時間が欲しいと考えています)
ツバキB
(イベントは起きていません)
カザハナC+
(イベントは起きていません)

―カムイに力を貸すもの―
シャーロッテB++
(返り討ちにあっています)
スズカゼB
(おさわりの虜になったようです)
サイラスB+
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB
(イベントは起きていません)
モズメC+
(イベントは起きていません)
リンカB
(イベントは起きていません)
ブノワC+
(イベントは起きていません)
アシュラC+
(イベントは起きていません)
フランネルC+
(イベントは起きていません)

今日はここまで

 クラーケンシュタインって攻められたら、ほぼ負けな気がするんだよなぁ

 暗夜竜の像
「発動時10マス以内の敵味方ユニットに体力100%のダメージ」
 白夜竜の像
「清らかな心でいられる」
 
 二つの像はこんなイメージ
 

白夜竜適当すぎワロタ

なんかワロタ
いや本編は笑える状況じゃないが

◆◆◆◆◆◆ ―暗夜王国・王都ウィンダム『中央広場』―

 シュオオオオオオオンッ

部族兵長「全部隊、警戒を怠らないように。可能な限り像から離れて様子伺うのです」

マークス「部族兵長、こちらの被害は?」

部族兵長「マークス王子……。多くはありませんが、像付近に待機していた者は絶命したようです」

マークス「敵の罠に嵌ったということなのか……。先行偵察に出た者たちは?」

部族兵長「戻ってきた者はいません。魔法具が壊れ連絡手段がなくなっているのかもしれませんが、正直……」

マークス「そうか……」

 シュオオオオオオオ

部族兵「兵長! 像の発光が収まり始めています」

部族兵長「マークス王子、今のうちに破壊するべきでは? そうすれば先ほどの奇怪な現象も……」

マークス「いや、それが狙いなのかもしれん。それよりも、民への被害は?」

シュヴァリエ兵長「はい、今のところはありません。しかし、先ほどと似たことが大規模発生したら、さすがに……」

マークス「くっ、一体あれはなんだというんだ?」

 ワーワー ザワザワ

レオン「……」

ニュクス「レオン王子……あの仕掛けだけど」

レオン「ああ、発光は収まったけど、止まったわけじゃないみたいだ」

ニュクス「正直こんなものが暗夜王都に仕掛けられてるなんて、夢にも思わなかったわ」

レオン「僕も同じだよ。正直、信じたくはないんだけど……」

マークス「レオン、ニュクス、何か分かったのか?」

レオン「憶測だけどね、ちょっと失礼するよ」

 タッ タッ タッ

マークス「レオン、像に近づくのは――

ニュクス「マークス王子、もうさっきの様なことは起こらないわ。レオンもそれをわかってるから近づいてる、だから安心して」

マークス「わかった」

ニュクス「……。それで、レオン王子、どうかしら?」

レオン「……もう発動は済んだみたいだから、ただの像になってるね。大本は別の場所にあるんだろうけど、このまま放っておくと取り返しのつかないことになる」

マークス「取り消しの付かないことだと?」

ニュクス「今、暗夜王国全体に大きな魔法が掛けられているわ。それも敵味方関係なく作用する、無差別なものよ」

レオン「今の影響は微々たるものだけどね」

部族兵長「暗夜王国全体っていうのは、どのくらいの範囲で?」

レオン「僕の憶測だけど王都がすっぽりと収まるくらいだと思う。しかも徐々にその効力を増してる。あと十数分もしない内に、身に感じられるくらいになるはずだ」

マークス「これは、王都防衛のための仕掛けということか?」

レオン「多分ね。王都の奪還が不可能と考えられた時に使うものなんだと思う。敵味方も関係なく、その生命力を吸い上げて、衰弱させるためのね」

ニュクス「まだ毛ほどにも影響がないのは、発動した魔力を張り巡らせている最中だから。たぶん、この暗夜王国全てに届くように、地形に術式を彫り込んでいるんでしょうね」

マークス「そんなものが……」

カムイ「でも待ってください、それではこの王都にいる住民の命は……」

レオン「籠城してる奴らにとっては民は二の次ってことだよ。民の命を考えてるならこんなことはしない。もしかしたら、後々僕達が王都で大虐殺をしていたことにするための布石なのかもしれないけど」

ニュクス「そこまで敵が考えているかを考える暇はないわ。いずれにしても、このまま魔法具の力が増幅されていけば、私たちも動けなくなるのは明白だもの。敵は待っているだけでも、私達に勝つことができるというわけ」

マークス「衰弱したところを見計らい、攻撃を仕掛けてくるということか……」

ニュクス「ええ。これを使っておいて王城に引き籠ってるのは、あそこが唯一この王都の中でこの魔法具の効果を受け付けないからだと思うわ。同時に魔法具の大本もあると考えるのが自然ね」

部族兵長「となると、ここで話をしている時間はなさそうです。シュヴァリエ兵長、王城への急襲のために兵の輸送をお願いできるか?」

シュヴァリエ兵長「断る理由はない……、ないのだが、こちらも疲弊した竜が多くなってきている。話を聞く限り、竜もその魔法具の影響を受けるならば、とても全てを動かせる状態ではない。先鋭を募って短期決戦を挑む以外にあるまい」

マークス「よし、シュヴァリエ兵長。動ける竜を掻き集めよ。こちらは突入部隊の編成を行う」

シュヴァリエ兵長「はい、わかりました」

 バサバサバサッ

クーリア「ガロン王ならばどう出るかはわかりませんが、現在の指揮官は容赦のない人間のようですね」

マークス「いや、たとえ今ここに父上がいたとしても、この魔法具を使用したかもしれない……」

クーリア「まさか、仮にも暗夜の王ですよ?」

マークス「暗夜王国に立て突く者を一掃できるのならば、今の父上も容赦はしないだろう。それをさせないためにもわれわれは、われわれのすべきことをするまでだ」

クーリア「マークス殿……」

部族兵長「マークス王子、よろしいですかな?」

マークス「部族兵長。ああ、突入部隊の編成についての話だ、お前たちも――」

部族兵長「いえ、マークス王子。私たちはこちらで待機し、負傷した者や体の弱い住民たちへの支援活動に当たることにします」

クーリア「部族兵長」

部族兵長「クーリア、決して突入することに臆してというわけではない。私たちなりに考えたことだ」

マークス「……」

部族兵長「残念ながら、私たちの力はマークス王子の臣下たちに到底及びません。幸い私達には医療魔法の心得があります故、今最善の選択を思えば、これが一番と思ったのです」

マークス「こちらの支援も過酷なものになるぞ」

部族兵長「戦いに向かわれる皆様に比べれば荷の軽いことです。それにここで意地を張って戦力そのものの質を下げ、その結果すべてが水泡に帰するなどあってはなりません。ですから、王城のことはよろしく頼みます」

マークス「……わかった。では、負傷者と民への支援、よろしく頼む」

部族兵長「はい、お任せください」

クーリア「マークス王子、私も負傷者に随伴しようと思います。よろしいですか?」

マークス「ああ、そちらは任せたぞ」

クーリア「ええ」

マークス「レオン、ニュクス」

レオン「なんだい、マークス兄さん?」

ニュクス「なにかしら、マークス王子」

マークス「この魔法具の大本、その場所は探れるのか?」

レオン「そのことに関しては心配しないで、こんなに強力な魔法具だから、場所の特定くらいは簡単にできるよ」

ニュクス「ええ、王城に少し近づくだけでも探れるはず。これだけ駄々漏れに魔力を放出してる物体なんだから」

マークス「頼りにしているぞ。よし、われわれとシュヴァリエの者たちで王城へと向かう。各自、準備に取り掛かれ!

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・クラーケンシュタイン『大広間』―

ゲパルトP「……王城の拠点を縮小しましたが、これほどまでに縮小して大丈夫なのでしょうか? 外に斥候を出しているわけでもない、籠城するにしても、もう少しするべきことがある気が……」

 ギィィィイイ

ゲパルトS「兄さん、お待たせー」

ゲパルトP「戻ったようですね、ガンズ様の手伝いはこなせましたか?」

ゲパルトS「問題なくこなしたよ。それよりも、敵は来てないわけ?」

ゲパルトP「まったく……。そろそろ総攻撃を仕掛けてくる頃合いなのですが」

ガンズ「総攻撃か、いずれはしてくるさ。まぁ、そんな数は来ないだろうがな」

ゲパルトP「ガンズ様……その腕に持っている者は?」

ガンズ「景気良く相手を殺せる魔法具だよ。魔力が低くても使える優れもんだ。それよりも、ゲパルト兄弟は俺と一緒に行動するようにな。安心しろ、手柄ちゃんと分け与えてやるさ」

ゲパルトS「ガンズ様、手柄じゃなくて殺せる人間にしてほしいかな。殺すのが好きなんでよ、僕は!」

ガンズ「がーっはっはっは!!! そうそうだったな、見つけたら殺して構わねえさ。衰弱して今後役に立ちそうにない住民だって判断したら、殺して敵にしちまいな」

ゲパルトP「……ガンズ様、今の発言ですが」

ガンズ「ああ、何おかしな顔してんだ? いつかシュヴァリエで言っただろ、死んだ奴は全員敵だってよ。だから暗夜王国の人間は一人も死んでねえ、そうだろ?」

ゲパルトP「先ほどまで行っていたことと、関係があるということですか?」

ガンズ「おいおい、弟に比べて兄はなんだか丸くなったか? お前は今俺の部下、俺の命令に従うのが筋だ、違うか?」

ゲパルトP「……その通りです、ガンズ様」

ガンズ「わかってるなら、変なことを言うんじゃねえ。さぁてめえら、ピクニックの準備を始めておけよ。手柄を立てて、全員一気に昇進するぞ」

 オーッ ピクニックイクゾー!
 サイコウダナ
 チクショーボウリョクサイコウダゼ!

ガンズ「へへっ、最高だ。心して奪ってを楽しそうにやりそうな奴らばかりでよ」

ゲパルトP「……弟」

ゲパルトS「なに、兄さん?」

ゲパルトP「一体何をしたのですか?」

ゲパルトS「気にすることないって兄さん。どうせ、今さら止める必要もないんだし、今止めたらいっぱい入り込んできちゃうだろうからね。それにしてもあいつらが王都に攻めてきてくれてよかったよ。今ならどんなに殺してもいいし、むしろいっぱい褒めてもらえるんだから。もしかしたら兄さんと僕合わせて100人越えできるかもしれないよ!」

ゲパルトP「……敵でしたら歓迎です」

ゲパルトS「死体になったら敵なんだから、気にせず殺しちゃえばいいんだよ」

ゲパルトP「死体になったら……ですか」

暗夜兵「でもよ、殺すだけじゃあれだよな。いい女とか転がってるだろ、それでちょっと遊ばせてもらおうぜ」

暗夜兵「そうそう、あの住宅地近辺に良い姉妹がいるんだよ。こういう時、守られた民は俺達兵をねぎらうのが筋ってもんだからな」

暗夜兵「お、それいいな。しかし、話じゃ衰弱しまくってるから、あまりに激しくすると死んじまうかもしれねえぞ?」

暗夜兵「死んだら俺達はこう報告するんだ。哀れなことにここの住民は反乱に加担していた。我々は正義の元に剣を振り下ろして、これを取り除いたってな」

暗夜兵「それ傑作だぜ、ぎゃはははははははっ!」

ガンズ「へへっ、やっぱりこうじゃねえとな……」

ゲパルトS「ガンズ様、笑ってますよ?」

ガンズ「こんなに陽気な手柄稼ぎは早々ねえからな、愉快になるってもんだぜ」

ゲパルトS[たしかに言えてます。あはははははっ」

ガンズ「がーっはっはっは!!!!」

ゲパルトP「……」

マクベス『残念ですが、間違っているかどうかというのを決めるのは、その場で加担している人間では無いのですよ』

ゲパルトP「……」

 バタンッ!!!

 タタタタタッ

暗夜兵「た、大変です。ガンズ様!」

ガンズ「ん、どうした?」

暗夜兵「そ、それが……」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

暗夜兵「ちっくしょう、どうなってやがる!」
 
 バサバサバサッ
 ズオオオオオッ

 ガシャンッ ドゴンッ バラバラバラッ
 ギャオオオオオッ

シュヴァリエ兵長「おらあああああっ、一番乗りだ!!!!」

 ザン ブシャアアッ

暗夜兵「がふっ……」ドサッ

シュヴァリエ兵長「全員続けええ!!!!」

シュヴァリエ兵達「うおおおおっ!!!!」

 バザバザバザッ
 ガシャンッ ドゴンッ

シュヴァリエ兵長「敵を釘付けにしろ」

シュヴァリエ兵長(さて、こちらの準備は整った。マークス王子、あとは任せるぞ!)

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・クラーケンシュタイン『上部連絡橋』―

 タタタタタッ

カムイ「レオンさん、こちらなんですか?」

レオン「ああ、王の間の方角に魔法具の大本があるみたいだからね」

アクア「早いところ止めてしまわないと、王都その物が機能しなくなる可能性があるわ」

マークス「ああ、このまま攻めいる。敵は正面口での戦闘に気取られているはずだ。今なら王の間へできる限り近づけるはずだ。カムイよ、閃光を頼めるか?」

カムイ「わかりました。ちょっと、心細いですね」

 パシッ

アクア「私も一緒よ、安心して」

カムイ「頼もしいですね」

アクア「先に扉があるわ」

 ザザッ

アクア「……」

カムイ「開けますね……」

 ガチャンッ ギイイイイィィ

 タタタタタッ

カムイ「……」

アクア「誰もいないみたいね」

 パカラパカラ

エリーゼ「もしかして、みんな入口を守りに向かっちゃったのかな?」

マークス「それにしては、あまりにも静かすぎる」

レオン「そうだね、こういう時は大抵――」

 ヒュンッ

 キィン カランカランカランッ

カミラ「隠れてるのはいいけど、一人だけが攻撃なんて、待ち伏せの意味がないわよ?」

「挨拶みてえなもんだ。これから首だけになっちまう王族たちによぉ」

 ダッダッダッ ジャギンッ

ガンズ「……」

マークス「ガンズ……」

ガンズ「これはこれは、お久しぶりですマークス王子。いや、糞王子って言えばいいか? ガロン王様の崇高な使命を反故にして、あんたに攻めてくるような野郎なんだからな?」

レオン「そういうお前は、民を守るという選択を取らない野蛮人だね?」

ガンズ「野蛮人で結構だ。そもそも、こんなことで死ぬような弱弱しい連中、暗夜王国には必要ねえ。優秀なやつを選んでると考えれば、俺のやってることは暗夜王国のためになる」

カミラ「そう。でも弱くなった獲物を狙うだけの口実にしか見えないわ」

エリーゼ「そーだそーだ!」

ガンズ「けっ、可愛げのねえ王女だ。まぁいい、てめえらはこれから俺の攻撃を首で受け止めることになるんだからよぉ!!!」

 ザザザザザザッ

暗夜兵たち「へへっ」

ゲパルトP「……」チャキ

ゲパルトS「まんまとここに来るなんてね。ガンズ様、冴えてます」

ガンズ「てめえらの目的くらい俺にだって読めるんだよ。なにせ、てめえらにとっての一番の問題は、無駄に犠牲が出ることだろ?」

レオン「さすがに脳が筋肉で出来てるような奴でも、これは簡単すぎたってことだね」

カムイ「そういうことでしょうね」

ガンズ「これはこれはカムイ王女」

カムイ「お久しぶりですね、ガンズさん」

ガンズ「けっ、こんなことをしでかすなら、アミュージアで前置きせずに切り殺しておけばよかったぜ」

カムイ「その節はどうも」

ガンズ「ちっ、やっぱりてめえは気に入らねえ」

カムイ「あなたに気に入られようとは思っていませんよ。すぐに、発動している魔法具を止めていただけますか?」

ガンズ「仲間なら聞いてやってもいい、だが今のてめえは敵だ。そんな命令聞けるわけもねえだろ?」

マークス「民を守ることが父上よりお前に与えられた任務であろう!」

ガンズ「こんなことしておいて未だにガロン王様を父上と呼ぶのか、調子のいいことだぜ。生憎、俺は王都を守れと言われてるが、民を守れなんて言われてねえ。なまっちょろいんだよ、てめえらは。戦う気もなく服従する民なんていらねえんだよ。死んだ方が食料の節約になるってもんだ」

マークス「貴様……」

ガンズ「それにな、てめえらのなまっちょろい中で特にムカつくのはてめえだ、カムイ王女」

カムイ「私ですか?」

ガンズ「ああ、最初の任務の時からな。なによりも、その戦い方が気に入らねえ。正義だ理想だなんて言葉で着飾りやがって……。そんなに怖いのか、化けの皮が剥がれちまうのがよ?」

カムイ「……何が言いたいんですか?」

ガンズ「決まってんだろ、その力だよ。立て突く奴らを皆殺しにしてきた力、その暴力のことだ」

マークス「貴様が振るう力と、われわれが振るう力は似て非なるものだ!」

ガンズ「王子は黙ってな。俺が話してんのは、そこのカムイだ」

カムイ「ガンズさん、あなたの振う力はただ殺すための力ですよね?」

ガンズ「ああ、そうだ。この力を使って蹂躙するとすげえ気持ちがいい。殺す快感はたまんねえもんだ、何度やっても飽きやしねえ。血が出て肉が裂けて人が死ぬ、最高の悦楽だからな。加えて人を殺せば手柄になる今のこの状態は、俺の生き方にピッタリってもんだぜ」

レオン「最低だね」

ガンズ「なんとでも言えばいい。だからな、そうやって暴力を着飾って使う奴らに虫唾が走るんだよ」

カムイ「着飾ってなどいません。目指すべき道、至るべき道がなければ力を振るう必要はないんです。でも、私達には目指すべきものがあります、そのために戦う必要があるのなら、剣を握り戦うことは間違いでははないでしょう?」

ガンズ「けっ」

カムイ「あなたにはわからないかもしれませんが、私達は――」

ガンズ「『達』ってつけるんじゃねえ。臆病者の腰ぬけ野郎が」

カムイ「え……」

ガンズ「こうして暴力に色々と着飾れて安心してるんだよ、てめえは。自分自身が剣を振るう理由なんて、どこにもありはしねえくせによ」

アクア「カムイは自分のためにだけ剣を振るう、あなたのような野蛮人じゃないわ」

ガンズ「はっ、そうだな。そういう姿を見て、てめえらはカムイの元に集まったんだろ? 実際、この反乱も王子がすべて準備したわけじゃねえ、そうだろ?」

マークス「この反乱を率いているのはこの私だ」

ガンズ「形だけだろ。王子、てめえだけじゃこんな準備はできねえ。できたとしてももっと後だ。政略なんざ俺には分からねえが、純粋に暴力を集めるには時間が足りねえんだよ。てめえが贔屓してる地方部族だけじゃな……」

マークス「筋肉だけの男だと思ったが、そういうわけでもないようだな」

カムイ「ガンズさん、私には目的があります。この戦争を終わらせるという目的が、そのために私は戦っているんです」

ガンズ「それはてめえ自身の求めてるものじゃねえだろ? 着飾った理由を誇らしげに掲げてんじゃねえ」

カムイ「何を言って――」

ガンズ「理解できねえか? てめえは暴力を覆って覆って、見えないくらいまで着飾らねえと戦うことのできねえ臆病ものだって言ってんだよ」

カミラ「カムイへの悪口はそこまでよ。あなたみたいな野蛮な男に、カムイがたどってきた道を侮辱する権利なんてないわ」

ガンズ「たどってきた道か。俺には行き当たりばったりを力に理由を巻きつけて歩いて来ただけのクズにしか見えねえけどな? てめえらも結局、カムイの暴力を覆うための理由でしかねえのによぉ?」

レオン「だからなんだい? それでも僕たちは姉さんを信じて戦うだけだよ」

エリーゼ「うん、それで暗夜のみんなもサクラの故郷も助けて見せるんだから!」

ガンズ「いいな、暴力を目的や理想を貫くための力だと言い切れる立場にいるなんてな。てめえの持ってる暴力は誰かの理由が無いと振えねえ、空っぽなもんだっていうのによぉ?」

カムイ「……私は」

ガンズ「はっきり言ってやる。カムイ王女、てめえの力は空っぽだ。何もねえ癖に人を殺して道を進んでるだけで、俺みたいな人殺しと何も変わりはしねえ。クズの暴力なんだよ……」

カムイ「……」

カムイ(空っぽ、私は空っぽだというのですか?)

カムイ(イザナさんに言われたように、私には求めるものがないから……)

カムイ(戦争を終わらせるという目的も……)

カムイ(愛する人や弱き人を救いたいという理想も……)

カムイ(私が戦う理由では無いと……)

カムイ「……」

カムイ(だけど、今、どちらかを掲げられるのであれば……)

 ――私は……――

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 1.偽りであろうとも理想を掲げる

 2.偽りであろうとも目的を掲げる
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 先に3回選ばれた道へと……

えっ、なにこれは…
両方とも嫌な気しかしないし、誰か死にそうだけど
ここは理想

1の理想でお願いします。

せっかくだから俺は赤の目的を選ぶぜ

理想かな

 2……理想へ



カムイ「私は……」

アクア「カムイ、奴の言葉に耳を貸す必要はないわ。あなたを動揺させるために言葉を並べてるだけにすぎない。あなたは、あなたの道を進めばいいだけ」

カムイ「アクアさん……、ですが」

アクア「いい、あなたが何を選ぼうとも、私達は共に歩むためにここにいるの。今、あなたの心に浮かびあがるものがあったのなら、それがカムイの掲げる戦う理由なんだから」

カムイ「……すみません、アクアさん。あなたには支えられてばかりですね」

アクア「それがあなたとの約束だったでしょう?」

カムイ「……そうでしたね」

カムイ(私は、愛する人や弱き人を救いたい。そんな理想を掲げて行きたい。たとえ、それが偽りだったとしても……)

カムイ「……」チャキッ

ガンズ「また繕いやがって、まぁいい。おい野郎共、こいつらを殺せばそれで終わりだ。ピクニック前の準備体操に丁度いい、全員殺せ!」

マークス「行くぞ、カムイ。安心しろ、お前にはわれわれが付いているのだからな」

カムイ「はい、ありがとうございます」

カムイ(……たとえ、この剣が皆さんを守るというもので覆われているだけで、それが私の求めるものでなかったとしても)

(今はそれを掲げて、戦うしかないんですから……)

こういうのは1を選ぶのが王道ってオウガバトルで習った

 ここまでで
 
 すいません、理想だったのに2と表記してました。申し訳ない
 1の理想で進みます。

 指針選択で物語終わりまでの間に仲間の誰かが死ぬことはないので、お気楽に選んでみてください。
 暑い日にリリスを抱きしめたらひんやりしてそうだなとか思った。
 ひんやりリリスを抱きしめながら眠る、ピエリリスください。

 この先の展開を安価で決めたいと思います、参加していただけると幸いです。

◇◆◇◆◇
 カムイと行動を共にする確定メンバー
・マークス
・ピエリ
・ラズワルド

◇◆◇◆◇
 騎馬戦力
・ギュンター
・ジョーカー
・エルフィ
・リンカ
・ゼロ
・オーディン
・サイラス

>>227

◇◆◇◆◇
 後方支援(ストラテジスト限定)
・フェリシア
・レオン
・エリーゼ

>>228

◇◆◇◆◇
 その他の戦闘(歩兵限定)
・アクア
・エルフィ
・フローラ
・ルーナ
・ハロルド
・サクラ
・カザハナ
・ツバキ
・ニュクス
・アシュラ
・フランネル
・スズカゼ
・シャーロッテ
・ブノワ
・モズメ

>>229
>>230

 このような形でお願いいたします。

オデン

よかったよかった
理想を選んだばかりに小を切って大を取るカムイはいないんだな
レオンかルーナ

ルーナで覚醒組を揃えたい

あいかわらず敵が魅力的でいいなあ

おつ
ガンズの言っていることには理の欠片もないな
札人が趣味のブタ野郎がてめーの都合だけしゃべくってんじゃねぇーぞこのタコがッ!って奴だ
イザナに言われて多少自覚していたからと言ってこの程度の奴の暴論に動揺させられるとはここのカムイらしくないが大丈夫か

おっとすまねえ安価書き忘れた
>>230の分はスズカゼ

カムイ自身芯を持って戦えてなかったのは最初っからじゃない?
臆病でどこか流されやすいのはいろんな場面で見て取れるからなあ
それにガンズの言葉もどこか悔やんでるような印象もあるし、批判はしづらいなあ

戦うための動機付けや理由が周りに言われてのもので
自分自身で考えてないから気に食わないんだろうなぁ
結局、アクアに言われないと立ち直れないし
操り人形みたいに見えるのは本編と同じだな

カムイっていうキャラは境遇的に強気に出やすい性格じゃないからなあ
世界平和のために身内裏切ってでもクーデターするってだけでただの札人鬼の説教なんぞドブに捨てるくらいに十分に正義を持っているとも思えるが、やっぱり血縁じゃないから心の底では浮いてしまっているのだろうか
透魔編ならまだしも暗夜編ifで信念を持てって言われてもどうするんだろう?最近白夜きょうだい空気だし

フランネルにもDEBANを与えてください

正義は持ってるけどそれは他のみんなも一緒
戦争の終結だって人々を救うのだって誰もが持ってる気持ちだろうしな
カムイにはその先に求めている何か、が無くて周りの人に使われるだけの武器や道具になってるのが気に障るんだと思う

「物語が終わるまでの間に」

>>233
自身で道を選ぼうとしてはいるんだけどねえ

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・クラーケンシュタイン『王の間への道』―

 タタタタタタタッ
  ドゴンッ

カムイ「どうにか、ここまで突入できましたね」

マークス「ああ、しかしここまで来られたのはわれわれだけのようだな」

ラズワルド「後続の敵は他の皆が抑えててくれるみたいだから、僕たちでここを突破して魔法具を破壊しないと」

レオン「魔法具だと思われる魔力の気配は……、」この先からみたいだね」

ピエリ「この先には王の間しかないの」

オーディン「今暗夜王国全体を包み込んでる魔法具の大本が、この先にあるのか……」

ルーナ「何ビビってんのよ。いつもだったら禍々しい力が集まってるとか、そういうことを言ってそうな気がするんだけど?」

オーディン「……正直、禍々しすぎて言葉か見つからなくてな……」

ルーナ「え、そんなにまずいの、これ……」

レオン「魔力も強力になってるからね。おそらく、ここに来るまでの間に効力が増したんだと思う」

スズカゼ「どうにかして止めないといけません。このままでは、外にいる方々の被害が増すばかりです」

カムイ「必ず止めましょう。レオンさん、場所の見当はついているんですか?」

レオン「さっきピエリが言った通り、この先には王の間くらいしかないから、おそらくはその近辺にあるはずだよ」

カムイ「王の間を目指す以外に道はなさそうですね」

レオン「そうだね。でも、敵は簡単に行かせてくれそうにはないみたいだよ」

カムイ「そのようですね……」チュキッ

 ダダダダダダッ

ゲパルトS「ガンズ様の護衛だから相手できないかなって思ってたけど、抜けて来てくれるなんて思わなかったね」

ゲパルトP「……弟よ、手加減はしないように。敵は裏切り者であろうとも王族、一筋縄ではいかないはずです」

ゲパルトS「もともと手加減なんてしないよ。全力で殺して、叫び声をあげてもらいたいんだから。誰が一番いい声をあげそうかな?」

ゲパルトP「しかし、暗夜のために振るうと決めた剣で、まさか王族を斬ることになるとは。暗夜と共に歩んできたのならば、その正義に殉ずるのが高貴なものの役目では?」

マークス「今の暗夜に正義はない、そのような暗夜に私の命を使うことはできない」

ゲパルトP「正義はないですか……。お言葉ですが、私たちの側からすれば、あなた方こそが暗夜という正義を崩す悪でしかありません。そんな暗夜の敵に与えるのは無慈悲な死のみ。我々は間違ってなどいないのですから」

レオン「数多くの民を危険にさらす選択をしているのによく言えるね」

ゲパルトP「ガンズ様はあなた達という反乱分子を排除するために選択をされただけです。これを行うことになった原因はあなた達であることは揺るぎない事実。あなた方こそ剣を納め、行いを恥て潔く自害されるのがいいでしょう。暗夜王族としての誇り、そして暗夜を思うのであるならば」

マークス「われわれにはわれわれが信ずる道がある。それを曲げるつもりはない。この選択が間違っていることを認めることはない、どんなことがあろうともだ」

ゲパルトP「同じように、我々も間違いを認めることはありません。残念です、暗夜の王族としての誇りが少しばかりは残っていると期待したのですが……。弟よ、準備は出来ていますね?」

ゲパルトS「もちろんだよ。兄さんは前置きが長いんだから。で、殺しても問題ないよね?」

ゲパルトP「生きていようと死んでいようと問題ありません。暗夜に立て突く愚か者は、たとえ元王族であろうともいに行く以外に道はありません」

ゲパルトS「よし、それじゃ、容赦する必要はないってことだね!」

 ザザザザッ!

暗夜兵たち「ゲパルト様、指示をお願いいたします」

ゲパルトS「うんうん、上出来だよ。兄さん、僕は前戦に出るけど、そっちはどうするの?」

ゲパルトP「私は王の間入口の防衛陣を作り上げます。弟よ、やりたいようにやって構いません」

ゲパルトS「それじゃ、首だけにしとくね、いっぱい持ってくと思うから、楽しみに待っててよ」

ゲパルトP「はい、期待してます。お前達は弟の護衛に回ってください。残りは私と共に防衛陣の構築へ、終わり次第、弟の部隊と合流します」

ゲパルトS「ははっ、兄さんが来るころには倒す相手なんていないかもしれないよ?」

ゲパルトP「そうなっているといいですね。では、ここで反乱の大本を根絶やしにしましょう」

 ウオオオオオッ!

ゲパルトP「第一攻撃準備!」

アドベンチャラー部隊「全員、弓を引き絞れ!」

ゲパルトP「放て!」
 
 パシュ パシュシュ

ゲパルトS「それじゃ、僕について来て。敵を全員消し炭にして首だけにしに行くよ!」

 タタタタタタタッ

マークス「流石に易々と通してはくれないようだ」

ピエリ「うう、この一本道だと面攻撃されたら避けられなくなっちゃうの」

レオン「竜を使って馬を持ち込んで、ここまで強行突破してきたのはいいけど」

カムイ「王の間まで行ければよかったんですが、そうはいかないようですね」

マークス「それよりもカムイ、戦えそうか?」

カムイ「大丈夫です。それに戦えなかったら、ここまで一緒に来られてはいませんよ。大丈夫です、足手纏いにはなりませんから」

ピエリ「大丈夫なの、ピエリもみんなもとっても強いの。カムイ様より、先に死んじゃったりなんてしないの。だから安心するのよ」

スズカゼ「そうですね、ピエリさんの言う通りです。ですが、今の言葉ではカムイ様が私たちよりも先に死んでしまうと取られかねませんね」

ラズワルド「そんなことにならないように僕達がいるんだよ。それで、どうやって攻めよう?」

ルーナ「果敢に飛び込んで、バッタバッタとやっつければいいのよ。敵よりも機敏に動いて、機動力で翻弄するしかないんじゃない?」

オーディン「普通に挟撃が無難なんだが……」

レオン「そうだね、流石に全員で向かっても面制圧されかねないから、ここはオーディンの案で行こう」

オーディン「え、マジですか?」

レオン「ああ、マジだよ」

マークス「しかし、ここは一本道だ。脇道は先の十字路しかない」

レオン「たしか、壁一枚先は廊下があったはずだよね?」ポスポス

ラズワルド「確かそうだった気がしますけど。レオン様、何をしよ――」

レオン「ブリュンヒルデ!!!」シュオオオンッ ドゴンッ ガラガラガランッ

マークス「大胆な真似をするな……」

レオン「壁は治せるけど、人の命は治せないからね」

マークス「たしかに、その通りだ」

レオン「よし、これで侵攻路は二つになった。オーディン、ルーナ、ラズワルド、ピエリは僕が合図を出したら一気にここから進んで、十字路からの奇襲を仕掛けてくれないかな」

オーディン「わかりました。ご命令の通りに」

ルーナ「わかったわ。でも、合図を出したらってことは、レオン様達は何かをするってことよね?」

レオン「そうだよ。その奇襲がうまく行くように、ここで敵を引きつける役目だ。僕たちは王族だからね、殺して首を取ればいい手柄になるって考える奴もいるだろうから」

マークス「ああ、われわれはいい餌になるはずだ」

ラズワルド「マークス様、大丈夫なんですか?」

マークス「心配無用だ。むしろ、ピエリとラズワルドも気をつけよ。横合いからとはいえ、敵に肉薄するのだからな」

ピエリ「うん、ちゃんと気を引き締めるの!」

スズカゼ「では、私はその囮役のお手伝いということですね」

レオン「ああ、すまないが手厳しい量を抑えることになると思う」

スズカゼ「構いません。それに、私も新しい術を実践するいい機会ですので」

カムイ「新しい術ですか?」

スズカゼ「はい、ですので先行は私にお任せください」

マークス「構わない。だが、大丈夫なのか?」

スズカゼ「ええ、多分、一度も白夜と戦ったことのない方になら、効果的でしょう」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ランサーA「ちっ、ずっと隠れてばかりだ」

アドベンチャラーG「よし、前線を少し上げるぞ。十字路手前まで前進、ゲパルト様、いかがしますか?」

ゲパルトS「仕方無いよね。出てこないなら、このまま押し潰せばいいし、出てきたら袋叩きにするだけだし。というわけだから、全員で一気に押しつぶすよ!」

ランサーA「よし、行くぞ。このまま前進して、全員殺してやる!!!」

 カラコン カランコロン パシュッ

ランサーA「ぐへあ」ドサッ

 カランコロン

スズカゼ『……』

ゲパルトS「一人目が出てきたよ、全員で攻撃しちゃえ!」

アドベンチャラー部隊「攻撃開始!」パシュパシュ

 サッ サッ パシュッ

ボウナイトB「ぐっ、飛び道具だからっていい気になるなよ!」チャキンッ

ボウナイトC「少し前に出るぞ! 下がれる前に袋叩きだ!」

スズカゼ『……』フッ

ボウナイトC「けっ、澄まし顔しやがって、今すぐ殺してやる!!!」

 パカラ パカラ

ボウナイトB「三方向からなら、そう簡単には避けられまい!」

グレートナイトD「まずは一人だ!!!」ガシャンガシャン グッ

三人『とった!』


スズカゼ「そうですね。まずは一人目です」

 バッ カラコンッ バシュバシュ
 ドスッ ドススッ

ボウナイトB「がぁ、ぐああうっ」ドサッ

 カランコロン カラカラコロン

 ダッ ダッ

ボウナイトC「くそ、もう一人隠れていたの……か?」

スズカゼ『……』

スズカゼ「やはり、これを始めてみる方には、やはり驚かれるものなのですね」

ボウナイトC「同じ奴が二人!?」

グレートナイトD「関係ない、どちらも殺しちまえば――」

 ダッ

カムイ「失礼しますよ!」ザンッ

ボウナイトC「ちっ、こっちからもか!」

グレートナイトD「くっ、このままでは!」

  タタタッ 

ゲパルトS「これで、どうかな!」シュオオオンッ

カムイ「っ!」

マークス「そうはさせん!」ザッ キィン

ゲパルトS「いいところだったのに……」

カムイ「やああっ!!!」ブンッ

 サッ

ゲパルトS「そん攻撃じゃ当たらないよ。前線をあげるよ、このまま押し潰すから!」

アドベンチャラー部隊「了解、十字路にて攻撃展開を開始!」

スズカゼ「レオン様、敵の後列が十字路で展開を始めました」

レオン「よし、オーディン、頼んだよ」バッ

 シュオオオンッ

ゲパルトS「レオン王子にマークス王子、それにカムイ王女か。すごいね、これだけ殺せれば、出世なんて簡単そう」

レオン「そんな簡単に殺せると思わないことだね」

ゲパルトS「ははっ、たしかに簡単だと悲鳴もつまらないからね。だから、いっぱい足掻いて死んでよ」

レオン「お断りだね。いけ、ブュリュンヒルデ!」

ゲパルトS「なら、こっちもライナロック!!!」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ピエリ「壁を壊して王城の中を走り抜けることになるなんて、思わなかったの!」

ラズワルド「レオン様も結構大胆なことするよね」

ピエリ「でも、そのおかげで敵の裏が取れそうなの。一気に殲滅して、サンドイッチにしてあげるの!」

ラズワルド「そうだね、みんな、準備はいいかな?」

オーディン「ああ、望むところだ。ふっ、蒼穹のラズワルド、漆黒のオーディン、そして……いいものはないか?」

ルーナ「なにがよ?」

オーディン「お前とピエリに合う、なにか、こうグッとくる言葉が……」

ルーナ「ちょっと、変な二つ名を付けないでくれない? そんなおこちゃまごっこ、二人だけでやっててよ」

ピエリ「オーディン、何か悩んでるの? 戦いの最中に悩んだらその隙を突かれて死んじゃうかもしれないのよ」

ルーナ「別に気にしなくて大丈夫よ。ピエリもお子様の仲間入りなんてしたくないでしょ?」

ピエリ「ピエリはピエリなの。子供だとか大人だとか関係ないから気にしないの」

ルーナ「そう、でもあたしはそんなのごめんだからね。変な二つ名なんて付けられたくないんだからね」

ラズワルド「ルーナ、今くらいは乗ってくれないかな?」

ピエリ「そうなの、ルーナも一緒に参加するの!」

ルーナ「な、なんでそうなるわけ?」

ラズワルド「うん、なんだかんだで、僕たち三人が集まって戦うのが久しぶりで、うれしいみたいなんだよね」

ルーナ「……」

オーディン「ひ、久しぶりに三人で戦うことにワクワクしちゃ悪いのか!?」

ラズワルド「悪くないよ、僕も久しぶりでワクワクしてるからね」

オーディン「そ、そうやって、俺をおちょくるつもりなんだろ。わかってるんだからな!」

ラズワルド「これでも、そう思う?」

オーディン「?」

ラズワルド「僕は蒼穹のラズワルド、舞踏剣ミスティック・ソードの使い手!」

オーディン「ラズワルド」

ラズワルド「ちがうでしょ、漆黒のオーディン」

オーディン「そうだな、蒼穹のラズワルド!」

ルーナ「なんか、盛り上げてるところ悪いけど、そのミスティック・ソード、どう見ても弓よね?」

ピエリ「えへへ、二人ともとっても楽しそうなの」

オーディン「流石は蒼穹のラズワルド、弓でありながらも剣である舞踏剣ミスティック・ソードを使いこなすか。ならば、漆黒のオーディンたる俺も禁断魔書カイザー・クヴァールを使わざるを得ない」

ルーナ「……それって、あんたの魔法書よね? なんか表紙が見えなくなるまで黒で塗りたくってた」

オーディン「禁書故に、その表紙の名前すら外部に漏らしてはいけない。これはそういうものだ」

ルーナ「そう言う設定なのね。ピエリわかったでしょ、こんなのに付き合ってたら碌なことに――」

ピエリ「なんだか面白いの!」

ルーナ「あんた、正気!?」

ピエリ「それならピエリはね。血が大好きだから、鮮血のピエリでいくの! 武器は血みどろランスで決まりなのよ!」

ルーナ「ピエリまで乗り気になってる……ああもう、あたしだけ仲間外れみたいじゃない」

オーディン「さすがはピエリだ。というわけでルーナも二つ名と名前装備をもって戦うしかないぞ。そうだな、イメージ的に紅蓮。紅蓮のルーナ!」

ルーナ「ぐ、紅蓮って。ああもう、それでいいわ。じゃあ、紅蓮のルーナ、えっと武器は……」

ルーナ(何か、何か思い出せる名前、名前……ちょっとだけ弄ればいいだけだし……ここは)

ルーナ「終剣・ソードブラスターの使い手よ……、は、はずかしい///」

オーディン「終剣・ソードブラスターか。なんかどこかで聞いたことがあるような……」

ラズワルド「確かにキルソードだから間違ってない気もするけど……」

ピエリ「しゅうけんってなんなの?」

オーディン「一振りする度に終わりを齎す剣ということだな……。なんだこれ、解剖するとめちゃくちゃ強そうなんだが」

ルーナ「も、もういいでしょ。思いだしたのはこれくらいなんだから、真面目にその恥ずかしいし////」

ピエリ「うふふっ、顔真っ赤にして可愛いの。紅蓮のルーナ、鮮血のピエリと一緒に守るために敵を皆殺しにしていくの」

ルーナ「いいけど、二つ名も含めて呼ばないといけないの?」

ピエリ「当り前なの」

ルーナ「はぁ……わかったわよ」

オーディン「しかし、鮮血のピエリか……。良くその姿を見てるからか、まさに二つ名って感じだ。しかも見た眼は青なのになぜに鮮血?と思わせるあたりが、何より最大のポイントになっている」

ラズワルド「なんて言うか、僕とルーナの蒼穹と紅蓮って、見た目そのままだよね」

オーディン「ふっ、漆黒のオーディンは見た目じゃない。俺の中にある力が――」

ルーナ「今のあんたはダークナイトじゃない」

オーディン「う、うるさぁい!」

ピエリ「そろそろ、曲がり角なの。ピエリが先に飛び込むから、紅蓮のルーナはピエリがえいってしたら、すぐに追撃してほしいのよ」

ルーナ「任せておきなさい。その、鮮血のピエリ……」

ラズワルド「僕と漆黒のオーディンは後方から支援攻撃して、すぐに敵に白兵戦を仕掛ける。それでいいよね?」

オーディン「ああ、任せておけ、蒼穹のラズワルド!」

ピエリ「それじゃ、突撃なの!!」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

アドベンチャラーE「ちっ、ちょこまかと動いてやがる。味方に当たるかもしれないから、ここは杖で支援を……」

 パカラ パカラ

アドベンチャラーE? 十字路の先から音?」

 パカラ パカラ パカラ!!!

 ザッ

ピエリ「鮮血のピエリの攻撃なの。えいっ!!!」ザシュッ

アドベンチャラーE「ひぎゃああああっ」ドサッ

アドベンチャラーF「なにっ!? この先に繋がっている通路などなかったはず。くそ、間に合え――」

ピエリ「今なの!」

 ダッ

アドベンチャラーF「!?」

ルーナ「てやあああああっ!!!!」ザシュッ ドゴンッ ズザザザザッ

アドベンチャラーF「ぐぼぁ……」ドサッ

ルーナ「ふふん、一人やったわね」

ピエリ「今のところ、紅蓮のルーナって言いながら攻撃しなきゃ駄目なのよ」

ルーナ「は、恥ずかしくて言えるわけないでしょ!?」

アドベンチャラーG「何をごちゃごちゃ言ってやがる。だか、この距離なら、こっちの方が――」

 パシュ グサリ

アドベンチャラーG「がっ、くっ腕が」

 パカラパカラ チャキンッ

ラズワルド「蒼穹のラズワルドの剣、舞踏剣ミスティック・ソード、避けられるなら避けてみなよ! はあああっ」ブンッ

アドベンチャラーG「ぎえっ」ドサッ

 パカラパカラ ヒヒーンッ!!!

オーディン「漆黒のオーディン参上! くらえ、必殺アウェイキング・ヴァン――」

ピエリ「アドベンチャラーの部隊は倒したの。サンドイッチを完成させるのよ!」

ルーナ「ちょっとあたしを置いてくんじゃないわ! ちょっと、乗せなさいよ!」

ラズワルド「さてと、ここからは真面目にいかないと。マークス様に合流することだし……。オーディン早く行こう」

オーディン「……いじけてない、いじけてないから。ああ、みんな、待ってくれよぉ!」

~~~~~~~~~~~~~~~

グレートナイトD「援護がまったく来ない、どうなっているんだ!?」

ゲパルトS「あ、後ろやられたみたいだ」

ボウナイトC「何をのんきに言っているんですか!?」

ダークナイトH「背後から迫る者たちを押しのけ、ここは兄上様と合流するべきかもしれません」

ゲパルトS「なんで? 別にいいじゃんないかな、ここで殺し殺されるのも」

ダークナイトI「な、何を言われますかゲパルト様。このままでは、あなた自身も死に兼ねないのですよ?」

ゲパルトS「うーん。そんなに悪いことかな? だって殺してるってことは殺される可能性もあるし、なにより人が死ぬのっていいよね。殺すのは好きだけど、死に行くのは他人でも自分でも死に際の叫び声なら関係ないわけだし」

ダークナイトJ「ですが、あなたに死なれては兄上様に申し訳――」

ゲパルトS「あはははっ、そんなことどうでもいいよ。二人で100人殺せないのは残念だけど、こんなに殺しても殺されてもいっぱい叫び声が聞ける場所からにげるなんて勿体ない。それに、後ろのあれを抜けるのも相当難しいと思うけど」

 パカラパカラ

グレートナイトD「ちっ、横隊突撃か。どこかに穴を空けられれば」

ゲパルトS「王子たちも攻めに転じ始めたみたいだよ」

マークス「はああっ、そこをどけっ!!!」バシュンッ

カムイ「押し上げさせてもらいます!」

ススカゼ「一思いに楽にして差し上げます。はあっ!!!」

レオン「よし、このまま挟撃で終わりだ!」

暗夜兵「ぎゃあああっ」ドサッ ドサリッ

ボウナイトC「このままじゃ全滅だ! 手柄を取る前に死にたくなんてねえ、後退だ、後退するぞ!!!」

マークス「逃がさん! レオン、ピエリ達に向かっている最前列の兵の動きを止められるか?」

レオン「任せて、兄さん。よし、フリーズ!!!」シャラン

ボウナイトC「よし、このまま突っ切って――」

 シャランロン……

ボウナイトC「ぐっ…な、体が動か……なぜ――っ!」

ピエリ「これでお休みなのよ」ザシュッ

ボウナイトC「がふっ……」ポタポタポタ…… ドサリッ

ダークナイトH「くそ、これでも食ら――」シュオ――

オーディン「その魔法は見切った。必殺、アウェイキング・ヴァンダー!!!!」シュオッ バシュンッ!!!

 ザシュンッ ゴロンゴロンゴロン

ゲパルトS「首飛んじゃった。いい死に方だけど、声が聞こえないから――!」

 タタタタッ ダッ!

ルーナ「目がお留守ね!」ブンッ

 ザシュッ

ゲパルトS「ぐっ、痛いね。でも、まだまだ死ねないから、御返し。ミョルニル!」シュオンッ

ルーナ「しまっ―――」

ピエリ「ルーナ!!!」

 パカラ ドンッ ドゴンッ!!!

ルーナ「ううっ、え?」

ラズワルド「間一髪、だったかな?」

ルーナ「ラ、ラズワルド!?」

ラズワルド「ははっ、いつつっ!」

ルーナ「ちょっと、あんた何に庇って」

ラズワルド「理由なんて必要ないよ。ルーナが危なかったから、助けた。それだけでいいでしょ?」

ルーナ「……あ、ありがとう」

ピエリ「ルーナ、無事でよかったの。ラズワルドもルーナも下がって手当してもらうの、この子はピエリが相手をするの!」

ゲパルトS「惜しかった、体がバラバラになるくらいにして放ったのに。それで、キミはどんな声で鳴いてくれるのかな? すぐにきかせてよ!」

 シュオオンッ
 サッ

ピエリ「それは無理な相談なのよ」

ゲパルトS「なら無理やりするだけかな」

ピエリ「一つ聞きたいの、あなた殺すのが好きなの」

ゲパルトS「殺すのも好きだけど、もっと好きなのは死ぬときなんだ。みんな死にそうになるといっぱい声をあげて、それがとっても心地良いんだ。僕も死ぬ瞬間になったら、あんな風に声をあげるのかな? 興味はあるんだけど、全然そんな機会が来ないから」

ピエリ「……なら、その願いをピエリが叶えてあげるのよ」クルクルクル チャキンッ

ゲパルトS「どっちのかな?」

ピエリ「死ぬのは一度だけなのよ。それで終わり、何回も来ないの。だからピエリ、みんなのために戦うのよ」

ゲパルトS「それで?」

ピエリ「ピエリはね、守りたい人の最後が、こんな最後じゃないようにしてあげたいの。本当なら、こんな風に戦いで死ななくてもいはずなの。そうなるようにピエリは戦うの」

ゲパルトS「僕はそれはつまらないかな。痛みに苦しむ声が聞けないなんてさ」

ピエリ「だから、あなたにはその最後をあげるの。いっぱいいっぱい悲鳴をあげちゃう、そんな最後にしてあげるのよ」

ゲパルトS「……あははっ、それはとっても楽しみだね!!!」シュオンッ!

ピエリ「いくの!!!」ヒヒーンッ パカラ

 パカラ パカラ
 タタタタタッ

ピエリ「はあああっ!!!」バシュッ キィン

ゲパルトS「これで、悲鳴をあげてよね!」シュオンッ ドゴッ

ピエリ「きゃああっ、い、痛いのぉ…」

ゲパルトS「痛そうだね。でも、まだまだ死ねないでしょ? もっともっと声をあげて死ねるはずなんだから、もっと苦しませてあげる!!!」パラパラパラ

ゲパルトS「ライナロック!!!」ヒュオンッ

ピエリ「っ!」サッ

 ドゴォンッ

ゲパルトS「ちっ、まだ動けるの。動かないでいいのにさぁ」

ピエリ「はぁはぁ、そういうわけにはいかないのよ。まだまだ、この戦いが終わるまでピエリ戦い続け無いといけないの。あなたに負けてなんていられないのぉ!」

ゲパルトS「そういうのじゃなくて、悲鳴上げてって言ってるんだよ!」シュオンッ

ピエリ「んっ、今なの」パシンッ
 
 ダッ ダ ピョンッ

ゲパルトS「飛んだ!?」

ピエリ「ひれ伏せなの!!!!!」クルクルクル ブンッ

 ザシュリッ バシュンッ ゴロンッ ブシャアアアッ

ゲパルトS「がっ。うぐうううううっ、う、腕、おとされ……ぎいぃ、ぐあああっ」

ゲパルトS「ま、まだ。殺せる! これ……なら!!! ギンヌンガガ――」

ピエリ「終わりなの」ザシュッ

 ブシャアアッ……

ゲパルトS「あぐっ…ああ、あがああっ。はははっ、ぶ、無様な声、しか、でない」

ゲパルトS「ぜんぜん、ぜんぜん、たのしく、ないんだ。ははっ、自分がし、死ぬとき…が、こんな、につまらないなんて……期待、はずれだ……よ。兄……さん…、もっと、人をころし……て、た……」クタリッ

ピエリ「……」

ダークナイトI「ゲパルト様!? くそ、ここはもういい、兄上様と合流するぞ。生きている者は後退せよ!」

 タタタタタタツ

ラズワルド「ピエリ、大丈夫かい?」

ピエリ「ラズワルド、ピエリは大丈夫なの。それよりも、ラズワルドは平気なの?」

ラズワルド「なんとかね。レオン様に治療はしてもらえたし、ここで立ち止まるわけにはいかないからさ」

ピエリ「たしかにその通りなの」

 タタタタタッ

カムイ「ピエリさん。お怪我はありませんか?」

ピエリ「少しくらっちゃったの。でも大丈夫、それにちゃんと皆を守れたの!」

カムイ「はい、ありがとうございます、ピエリさん」ナデナデ

ピエリ「カムイ様に褒めてもらえて、ピエリとっても嬉しいの! 早く次に行かないといく準備を始めるのよ」

マークス「よし、このまま王の間入口へ攻めいるぞ!」

◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・白夜平原『暗夜宿営地』―

マクベス「それは本当ですか?」

メイド「はい、本日の輸送分が届いていないということです」

マクベス「すぐに視察隊を王都へと派遣するとしましょう。何かしら問題が起きているのかもしれません。まぁ、輸送装置の故障か、もしくは脱輪による立ち往生かもしれませんが」

メイド「はい、わかりました」

マクベス「白夜への本格的な攻勢を開始しようというこのタイミングですか。物資の補給ラインは綿密に作り上げていますし、無限渓谷のラインはほぼ我々が抑えている以上、白夜に邪魔はできないはずですし。ふむ、何もないと良いのですが」

メイド「では、マクベス様」

マクベス「ええ、こちらの命令書を例の方々にお渡しください」

メイド「こちらをですね。中身は?」

マクベス「別に隠す必要もないでしょう。王城に残っているガンズたちへ前線部隊への参加命令を記したものです。視察隊にはそのままガンズたちと入れ変わりになるように書いてあります。もしも何か言われても、私の判断であると伝えるのですよ」

メイド「わかっております。やはり、この方々は戦績を残されなかったのですね」

マクベス「ええ、全く攻めず、お零れすら拾えない無能のようですから、何も問題の起きない王都でのんびりしているのが性に合っていることでしょう。それに、彼らに比べればガンズたちのほうが戦果を出せるはずです」

メイド「わかりました。ところでマクベス様」

マクベス「なんですか?」

メイド「その……本日の紅茶はいかがしますか?」

マクベス「今日は大丈夫ですよ。こちらに来てから作戦指示書のまとめや伝令など、多くをあなたに頼んでいますのでね。今日は命令書を届けていただければ、休んでもらって構いません。明日も白夜の守りを崩さねばなりませんので」

メイド「はい、わかりました。今度、お立てしますね」

マクベス「ええ、楽しみにしてますよ」

 バサッ バサッ

マクベス(今、ここには多くの物資はありますが、あと一か月も持ちはしません。それくらいは補給を任された者たちも理解できるはずですが、やはり戦線に居ない以上、危機感がないということなのでしょうか?)

マクベス「しかし、物資さえどうにかできれば、白夜を攻め滅ぼすことなど容易いこと、何の問題もありません」

「遅くとも、明後日には物資は届くはずですからね……」

今日はここまでで
 
 暗夜で反乱が起きていることをマクベスはまだ知らない
 

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・クラーケンシュタイン『王の間入口付近』―

ゲパルトP「……そうですか、弟は戦死しましたか」

暗夜兵「敵はこちらに向かっています。ここは王の間に敵を誘い込んでの、包囲殲滅で行くべきでは?」

ゲパルトP「いいえ、ガンズ様からの命令は入口の死守、ここで敵を食い止めます」

暗夜兵「しかし、相手は王族です。ここは王の間に陣取って迎え撃った方が……」

ゲパルトP「ガンズ様は逆転の秘策がある、そう言っていました。そして、準備のために時間が必要だとも」

暗夜兵「そ、それは本当ですか!?」

ゲパルトP「ええ、それらが整うまで、我々は敵の侵攻を抑える必要があります。大丈夫、我々が負けることなどありえません」

 タッ タッ タッ

暗夜兵「敵が視界に入りました」

ゲパルトP「全員交戦準備に入ってください。前には出ず、ラインを維持して敵の侵攻を抑えるように待機。ガンズ様の準備が完了するまで、時間を稼ぐのです!」

~~~~~~~~~~~~~~~

ラズワルド「カムイ様、敵は王の間入口に防御陣を築いているみたいです」

オーディン「見たところ、向こうから攻めてくるつもりはないみたいだな」

ルーナ「厄介ね、さっきの奴らみたいにラインをあげてくるようにも思えないわ」

カムイ「厄介なのは承知の上ですよ。この状況に至って防御に徹しているということは、何か手があるのかもしれませんね」

スズカゼ「現状あるとすれば、後方からの増援を待っているのかもしれません。ですが、それ以外となると、どういったものなのか予想ができませんね」

ルーナ「逆転の秘策がまだあるってこと? あたしたちの仲間も含めて多くが王城に入り込んでるこの状態を逆転するって、相当強力な一手なんじゃない?」

ピエリ「みんな一瞬で血みどろになっちゃうようなのかもしれないの」

マークス「まさに奥の手というものだな」

レオン「でも、あながちその可能性だってある。まだ発動させてない魔法具が無いとは言い切れないからね」

マークス「そうなるな。その準備が終わるまでの間を死守するのが奴らの役目ということだろう」

カムイ「レオンさん、敵はどのような編成ですか?」

レオン「前衛に重装兵と重装騎兵。後衛に弓兵、隊長であるゲパルトの兄の方も後衛にいるみたいだね。単純に見たところだと、前衛が攻撃を受けて、その合間に後衛が攻撃を仕掛けるっていう、典型的な防衛陣だ」

カムイ「なんとか端を崩せれば、動きの遅い重装兵をすり抜けて、後衛を攻撃できそうですね」

レオン「短時間で終わらせるなら、それしかないと思うよ」

カムイ「ええ、それで行きましょう。ピエリさん、ちょっといいですか?」

ピエリ「どうしたの、カムイ様」

カムイ「攻撃で前衛に穴が出来た場合の突撃ですが、私を乗せて行ってもらえますか?」

ピエリ「わかったの。でも、カムイ様が前に出て戦う必要なんてないのよ?」

カムイ「いいえ、そういうわけにいきません。それにピエリさんにも無理をさせてしまいますし、一人よりは二人のほうが成功率も上がりますよ」

ピエリ「それもそうなの。突撃する時はちゃんと掴まって、振り落とされないようにするのよ?」

マークス「よし、われわれは一点を崩す。その後は敵の連携を崩すために面攻撃へと移行、後方の一掃はカムイとピエリに一任する。任せたぞ」

カムイ「はい、マークス兄さん」

ピエリ「はいなの、マークス様」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ジェネラルA「……敵、来ます!」

ジェネラルB「本当にこれで持たせられるのか?」

ジェネラルC「持つか?じゅない、持たせるんだよ! 逆転の秘策、その準備が整うまでな!」

グレートナイトD「準備か、本当にうまく行くのか?」

ジェネラルB「実は隠し通路があって、そこから逃げてたりしてな?」

ジェネラルA「縁起でもねえこと言うなよ。俺達、完全に見捨てられてんじゃねえか」

ゲパルトP「無駄話はそこまでです。弓を構えてください」

アドベンチャラーたち『弓構えました』

ゲパルトP「各自目標は自由、敵を一人でも多く足止めするのです」

 パシュパシュパシュパシュ
 
 サッ ササッ

 パカラ パカラ 

マークス「行くぞ、ジークフリート!!!!」シュオンッ ギィン

ジェネラルB「ちっ、俺かよ!?」

ジェネラルC「いいから耐えろ! 俺たちには施しもあるんだ。あと、これでも後で飲んどけ」ポイッ

 パシッ

ジェネラルB「おっ、特効薬か。ありがとよ」

アドベンチャラーE「それに傷ならすぐに直してやる、ほらリライブだ、これで大丈夫だろ」

ジェネラルB「ああ、だけど、戦いが終わったら体自体はボロボロになってそうだ……」

 キィン ガキィン

ラズワルド「なるほどね、二列横隊にしてるのはこれが理由だったんだ」

オーディン「ああ、分厚いジェネラルに補助職を付けて長い間耐えられるようにしてるみたいだ。だが、この漆黒のオーディンの前にはどのような盾も無意味だと知ることになる。そうだろ、蒼穹のラズワルド!」

ラズワルド「もう二つ名の時間は終わってるから。だけど、そうだね。物理に強い分、魔法への対抗手段はあまり持ってないだろうから。ピエリとカムイ様のために、一つ穴をあけないとね」

オーディン「ああ、わかってるさ」

ラズワルド「僕が弓で牽制するから、その隙を魔法で叩けるかい?」

オーディン「任せとけ!」

ラズワルド「それじゃいくよ。それっ」パシュッ

 キィン

ジェネラルB「そちらか! くらえっ」ブンッ

 スッ

ラズワルド「今だよ、オーディン!」

オーディン「行くぜ、これでもくらえっ」シュオンッ バシュッ!!!

ジェネラルB「ぐおおっ」バチュンッ

オーディン「よし、これな――」

ジェネラルB「……御返しだ」ニヤッ

 ガシュンッ!

オーディン「えっ、ぐああああっ!!!」バチンッ

ラズワルド「なっ、オーディン!?」

ルーナ「ちょっと、何いきなり倒れそうになってんの!?」

オーディン「ぐっ、なんだこの痛みは………」ポタ ポタタッ

レオン「オーディン、大丈夫かい?」

オーディン「な、なんとか。くそぉ、一体何が起きたんだ、攻撃が当たったと思った、いきなり痛みが……」

ジェネラルB「へへっ、魔法はいてえからな。一方的にもらうのはごめんなんでよ」ヒュオン ヒュオンッ

レオン(前衛の壁役の顔、薄くだけど文様が刻まれてる。もしかして、これは……)

レオン「魔法での攻撃は止め、物理攻撃で敵を削るんだ!」

ジェネラルA「流石に王子、気付いたようです」

アドベンチャラーE「だが、その指示のおかげで敵の攻撃が物理一辺倒、受けるのがかなり楽になったんじゃないか?」

ジェネラルB「そうだな。しかし、やはりきつい、特効薬のむぞ!」ゴクゴクゴク

ジェネラル「ふっはっはっは、我らが壁の厚さに怖れ慄くがいい!」

 ガシャンッ ジャキッ

マークス「すぐに突き崩せると思ったが、そう易々とはいかないということか……」

レオン「敵は体に直接文様を刻んでるからね。おそらく、魔法攻撃に対する呪詛の類だね。受けた魔法攻撃をすべてとは言わないまでも、相手に無条件で返す、そういうものだと思う」

オーディン「すみません、レオン様。俺としたことが不甲斐無い……」

レオン「いや、僕も気が付かなかったから、最悪大事な臣下を一人失うかもしれなかった。本当に無事でよかった」

オーディン「ううっ、心配してくれてありがとうございます」

スズカゼ「不幸中の幸いですね。しかし、こうしてみると単純でありながら手堅い編成です。特にこちらが攻めるしかないとなると、敵の優位はさらに増すのかもしれません」

レオン「通常攻撃程度じゃ回復処置と後方支援で元通り、唯一の魔法で叩こうにも向こうには施しがある。いくら対重装装備があっても一撃じゃ倒れないし、最悪そのまま敵の集中砲火をうけることになる。どうしたものかな?」

オーディン「あの、レオン様。一ついいですか?」

レオン「なんだい?」

オーディン「この施しですけど、発動までに少し時間が掛ってました。もしかしたら、そこを突けるんじゃないかと」

レオン「……なるほどね。そういう仕掛けだとすれば、どうにかできるかもしれない」

 ヒュンッ キィン
  ヒュン ヒュン

ジェネラルC「どうやら、敵は面攻撃に切り替えるみたいだぞ」

グレートナイトD「激しい攻撃だが、こちらには補助も道具もある。このまま抑え続ければ!」

 パシュ パシュ

ジェネラルC「そのようなひ弱な攻撃では」

グレートナイトD「この壁は崩せない!」

アドベンチャラーG「そういうことだ」

 シャランシャラン

スズカゼ「そうですね。ですが、これで準備は整ったということです」

 タタタタタタッ

ラズワルド「ルーナ、準備はいいかい?」

ルーナ「いつでもいいわよ。だけど、これだけじゃ倒し切れないんじゃない?」

ラズワルド「流石に一回じゃ難しいかな。でも、僕達が作るのは下地だから、問題はないはずだよ」

ルーナ「それもそうね。それじゃ、行くわよ!」

 タタタタタッ

ジェネラルA「こっちは白兵戦か。いい度胸だ!」

ジェネラルB「よっし、全力防御ぉおおおお!!!」ガシンッ

 タタタタタッ

ルーナ「大き過ぎて邪魔なのよ!」ブンッ

ラズワルド「これで倒れてくれてよね!」ブンッ

 ガギィン ギギギギギギギギギ ガギィン 

ルーナ(っ、やっぱり固いわ。アーマーキラー一回じゃとてもじゃないけど破壊しきれない)

ラズワルド(流石に一撃ってわけにはいかないよね……)

ジェネラルA「ぐううっ、効きますね。ですが、まだ倒れていません!」

ジェネラルB「もう少し力があれば、俺達を倒せたかもしれないのにな。おらぁ、今度はこっちの番だ!」

 キィン カキン

ルーナ「やっぱり、力は強いわね。だけど、これだけダメージを与えられれば」

ラズワルド「多分いけるはずだよ。ルーナ下がるよ」

 キィン ガキィン

  ササッ サササッ

ジェネラルA「逃げましたか……。ううっ、流石に傷が深い、回復を」

アドベンチャラーE「ああ、少しだけ待て。俺も回復に回ったら、弓での支援ができなくなるぞ?」

ジェネラルB「関係ねえさ。どうせ、向こうの物理なんてひ弱な攻撃だけだし、唯一の脅威な魔法もさっきのでビビって使ってこないは――」

 パカラ パカラ
  パカラ パカラ

レオン「いくよ、オーディン」

オーディン「ええ、でも、本当に大丈夫なんですか?」

レオン「ああ、僕の考えが通りなら、奴らはこれで終わりだよ」

オーディン「わかりました。レオン様の言葉を信じます! いくぜ、必殺アウェイキング・ヴァンダー!!!!」

レオン「ライナロック!!!!」

 シュン バシュッ!

 シュオオオオオッ ドゴォォオン!

ジェネラルB「が、ぐぎゃああああっ!!!!」ドサリッ

ジェネラルA「ぎゃう!」バチュンッ!!!

 ドチャ ビチャリッ……

 ………

オーディン「何も来ない?」

レオン「体が生きてないなら、施した術も発動できないからね」

オーディン「な、なるほど」

レオン「そういうわけだから、道は作ったよ。二人とも」

 ダッ パカラ

ピエリ「ありがとうなの、行くのよ!」

カムイ「はい!」

アドベンチャラーE「くそ、こちらの二名がやられた!」

アドベンチャラーF「E、俺が前に出る! お前は――」

カムイ「ピエリさんは、前衛の相手をお願いします」

ピエリ「わかったの、それじゃ攻撃開始なの!」クルクルクル カシュッ

 ダッ

アドベンチャラーF「シャイニングボウなら、この距離でも間に合うはずだ!」シュオオオンッ

ピエリ「こっちよりも早いの!?」

アドベンチャラーE「F、俺も援護にまわ――」

 ダッ シュオオオオオオンッ

アドベンチャラーE「なっ、この光は!?」

カムイ・竜『失礼しますね』

アドベンチャラーE「くそぉ!!!!」チャキッ

カムイ・竜『はあああああっ』ブンッ ザシュンッ ブシャアアッ

アドベンチャラーE「ぐ、ぐぞぉあああ」ドサッ

アドベンチャラーF「なら、てめえだけでもあの世に送ってやる!!!」パシュッ

 バシュンッ

ピエリ「ひゃあっ!!! うううっ、痛いけど今度はピエリのほうからなの、てやあああっ!!!!」ブンッ ザシュッ

アドベンチャラーF「おぶっ……」ドサッ ビチャリッ

 ドゴンッ!!!!

アドベンチャラーG「! 右端が崩されました! このままでは包囲されてしまいます!」

ゲパルトP「くっ、Iは私と共に横の穴を埋めに回ってください」

ダークナイトI「あ、穴を埋めるって――うわあああっ!!!」ドゴンッ

カムイ・竜『……』

ゲパルトP「……裏切りの王女……」

カムイ・竜『それで構いませんよ。それで、ここからどうされますか?』

ゲパルトP「愚問ですね。戦い抜きますよ、そんな言葉で変わるほど、私の力は空っぽではないのです、あなたを斬り伏せるつもりです」

カムイ・竜『これ以上の抵抗は無駄です。部下と一緒に投降してください」

ゲパルトP「お断りです。あなたのような人に屈する理由はありません。私には信じているものがあるのです」

カムイ・竜『生きていれば、まだそれを信じ続けられるかもしれないんですよ?』

ゲパルトP「……ふっ、ガンズ様が言っていたこと、少しばかり私にも理解できた気がします。本当にあなたという人は、心にもないことを言えるのですね?」

カムイ・竜『これ以上の戦いは無意味だと言っているんです』

ゲパルトP「それはあなたの言い分です、カムイ王女。私にとっては意味のある戦いです。あなたにとっては無意味な、この戦いでさえも」

カムイ・竜『無意味な戦いではありません』

ゲパルトP「無意味ではないですか、そうですね。ここまで戦ってきたことを考えればそうでしょう。多くの方々は、これが無意味な戦いとは思っていないでしょう」

カムイ・竜『ですが、あなたの側にこれ以上戦うメリットはありません。死んで行くだけの戦いに身を投じることなんて』

ゲパルトP「死んで行くだけですか。ただ死んで行くだけ、そう考えているならあなたには愛国心など欠片もないのでしょう」

カムイ・竜『何を言っているんですか?』

ゲパルトP「…私は嬉しいのですよ。反逆者の中の王族、その中の一人よりも愛国心を持っていると思えることが。そして、その愛国心を褒めてくれた方がいる。それが育っていくことを楽しみに思ってくれた方がいるのです。その方にお仕えする時が来るのを楽しみにしていました。いずれ、あの方の信じる御仁の作る暗夜で、この愛国心を育んでいけるのだと。まだ、その希望を私は捨ててはいません。ここであなたに降伏したら、それを得ることはできなくなってしまうのです」

カムイ・竜『新しく生まれ変わった暗夜で――』

ゲパルトP「新しく生まれ変わった暗夜ですか、そんなものに興味はありません。そして、あなたの言葉は私のとって信じるに値しない、薄っぺらい者です。時間の無駄だと正直に言わせていただきます」

カムイ・竜『……』

ゲパルトP「私はあなたを殺すつもりです。あなたを殺したら、次は他の者を、次から次へと殺します。私の希望はそうやって紡がれるものなのですから。だから、あなたのその空っぽな力の剣を、今ここでへし折って差し上げましょう!」ダッ


カムイ・竜『薄っぺらいとしても。今、ここで折られるわけにはいかないんです!』ダッ

 キィン 

ゲパルトP「くっ、やはり力が強い……。まったく、この世の中というのは理不尽極まりない。心がなくても力を持っているだけで、崩されてしまうとは」

カムイ・竜『私には掲げているものが今はあります。それを否定されたくはありません』

ゲパルトP「否定ですか、ならば、ガンズ様の言葉をさっさと否定すれば良かったんですよ。私に言葉も同じように、否定すればいいのです!!!」ダッ

カムイ・竜『っ、うるさいんです!!!』ブンッ

ゲパルトP「ぐおっ、うぐうううっ!!!!」ドサッ ゴロゴロゴロ チャキィ ガタンッ

 ダッ

ゲパルトP「はああああっ!!!!」ブンッ

カムイ・竜『当たりませんよ』バッ ドゴンッ

 ゴロンッ ドサッ ドサリッ ガッ グググッ

ゲパルトP「がっ、ぐううううっ。まだ、まだ、倒れるわけにはいかない……がほっ」ビチャッ ヒタヒタ ガシッ チャキッ

カムイ・竜『なぜ、こんなになってまで。もう、戦うのはやめてください!』

ゲパルトP「嫌だと何回言わせるのですか?」

カムイ・竜『これ以上は死んでしまいます!』

ゲパルトP「当り前です。私は死んででもこれを貫きます。あなたは自分の命を費やしてまで、することなどないのでしょう。そんなあなたから見れば、私のしている行為など……ごふっ……。哀れに見えるのかもしれませんが、それで構わないんですよ」

カムイ・竜『なぜ、ですか……』

ゲパルトP「それが……私が命を推して求める。私の生き様だからです!!!!」ダッ

カムイ・竜『!』

ゲパルトP「はあああああっ!!!!!」

 タタタタタタッ






 ザシュンッ



 ポタ ポタ ポタタタタッ

 ズル ズルズルズル ドサリッ

 カランカランカラン……

 
ゲパルトP「」

カムイ・竜『……』

 シュオオオオンッ

カムイ「……生き様……私には…」

カムイ(リリスさんが命を掛けて私を守ったように、クリムゾンさんがシュヴァリエのために命をささげたように……。命を推してでも成し得たい、貫きたいことを皆持っているのなら……)

カムイ(私は……)

 ……イ!

カムイ(私は……)

 …カ…イ!

カムイ(私には……!!!)

「カムイ!!!!」

カムイ「!!!」

マークス「カムイ、しっかりするんだ」

カムイ「マ、マークス兄さん。他の皆さんは?」

マークス「すでに、ここの制圧は完了している。敵は降伏した」

カムイ「そう、ですか……」

マークス「カムイ、今は何も考えるな」

カムイ「兄さん……」

マークス「今するべきことを、お前はわかっているはずだ。今はそれだけを考えていろ」

カムイ「はい、わかりました。すみません、心配をおかけして……」

マークス「気にするな。よし、これより王の間へと向かう、全員、何が待っているかはわからない。十分に注意せよ!」

カムイ「……」

カムイ(そうです、今はこの戦いに集中するべきところです、だって――)

(私自身のことは……これが終わった後でも遅くはないはずだから)

今日はここまで

 ゲパルト兄弟はこんな感じです。
 次か次あたりで、この十九章前篇が終る予定です。

おつ

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・クラーケンシュタイン『王の間』―

 ガシャンッ ガシャンッ
  ガシャンッ ガシャンッ

ガンズ「へへっ……、これで十分か?」

 ギギギッ ギイイイイイイイ 

 タタタタタタタタッ

カムイ「ガンズさん、もう逃げられませんよ。魔法具を停止して投降してください」チャキッ

ガンズ「なんだ、もう気やがったか? ゲパルト兄弟もなんだかんだ言ってやがったが、所詮は口だけの雑魚だったな」

レオン「部下に戦わせるだけで自分自身は安全な場所に隠れているお前に、それを言う資格はないよガンズ」

ガンズ「へっ、俺はこの王都を預かってる身だ。あいつらは俺の部下、上の命令は絶対……。そう言えばカムイ、たしかてめえもそう言ってたよな?」

カムイ「ええ、そう言いました。ですが、仲間と共に闘わないあなたに言われたくはありません」

ガンズ「へっ、部下なんてのは使い捨ての消耗品と同じ、一つの物事で使い切って新しいのを補充すりゃイイ。次に来るやつも、その次に来るやつも、そうやって俺自身の欲望を満たすために、命令通りに動いてればいいんだよ」

レオン「ほとほと呆れるね。こんなのが上司だったらと思うとゾッとする」

ガンズ「なんとでも言いやがれ。そう考えるとあいつらはあまりにも使えねえ、こっちの準備が整うよりも先に死んじまったからよぉ。骨のねえ奴らばっかりだぜ」

マークス「そうか。ならば貴様の策が間に合うことはない、速やかに武器を捨て降伏せよ」

ガンズ「残念だったな、その推測はハズレだ」

 ゴゴゴゴゴゴッ

マークス「な、なんだ!?」

レオン「この先で、魔力が膨張してる……まさか、あの魔法具の!?」

ガンズ「推察通りだ。リミッターを壊させてもらったからな。これで誰も魔法具の効果から逃げられねえ、俺を除いてな」ジャラジャラ

レオン「その魔法具は……」

カンズ「言わなくてもわかんだろ、そういうものだってことくらいはな……。あとで弱弱しく抵抗してくる奴らを皆殺しにするためには必要だからなぁ」

カムイ「ガンズさん、あなたという人はどこまで人を殺せば気が済むのですか?」

ガンズ「へっ、気が済むことなんてねえさ。てめえこそ、いつまでそうやって巻かれて戦ってんだ? いい加減イライラも我慢の限界ってところまできてやがる。俺に対して怒りも覚えてねえのによぉ?」

カムイ「そんなことは……」

ガンズ「俺は自分がどんな人間かわかってるつもりだ。だからてめえらの甘ったるい言葉なんかに揺れるつもりはねえ、一人でも多く殺してえ、殺したくてたまらねえ。こうやって王城の結界でも耐えられ無いレベルにまで膨張した魔法具で、誰かが死ぬと考えただけで昂っちまう。俺はそういう人間なんだよ」

カムイ「だからなんだというんですか……」

ガンズ「へっ、だからな必死な奴ってのはそれなりに見分けられるつもりだ。わかるんだよ、カムイ。てめえの言葉には必死さも何もありゃしねえ、俺に対しての憎悪なんてこれっぽちもありゃしねえ。ただ、俺のしていることが間違っているってことを指摘してるだけだ。根本的に許せないなんてお前は思っちゃいねえんだよ。てめよりか、相手を騙そうと必死こいてるガキの三文芝居の方が鬼気迫ってるかもしれねえな?」

カムイ「……そんなことは」

 バツ

レオン「カムイ姉さん。あいつの言葉に耳を傾ける必要はないよ。こうやって言葉で煽って、時間を稼ごうとしているすぎない。それに僕としてはこいつの声をもう聞きたくもない」

ガンズ「へっ、ならもっと聞かせてや――」

レオン「黙れ、僕はお前のような奴を誇りある暗夜の住民だとは思わない。国としての発展望むわけでもなく、ただ破戒することだけに固執するお前のような存在は、過去にも未来にも暗夜王国に不必要な存在だ。そんな下世話な身でも、死ぬ場所が玉座の近くだってことに感謝してもらいたいくらいだよ」

ガンズ「そうかいそうかい、なら俺を雇ったガロン王様は、すげえ節穴ってことになるぜ」

レオン「そうだろうね。お前を雇った奴は間違いなく節穴だよ。国の行く末を考えない、そんな奴だろうね」

マークス「ガンズ、貴様のしていることはただの殺戮に過ぎず、そしてその身にある考えに暗夜を、そしてそこにある者たちを守るものではない。お前が消耗品だと告げた者たちも暗夜の民に他ならない。貴様が歩む道に意味などありはしない、その身に終わりのない欲望を吊るしているだけだ」

ガンズ「ああ? 望んで何が悪いんだ」

マークス「貴様の欲望はわれわれの敵である。戦うことではなく殺戮だけを望む、貴様のような存在を許すわけにはいかない。貴様が切り捨てた者たちも暗夜の民。そしてそれらを守ることが、私の掲げる正義の道だ!」

カムイ「二人とも……」

ガンズ「がーっはっはっは!!!! なるほどなぁ。これは傑作ってもんだ」

マークス「何がおかしい!?」

ガンズ「おかしい、どこもかしこもおかしいってもんだ。哀れだな、本当に哀れだぜカムイ。てめえは巻かれるだけじゃ足りねえみてえだな?」

レオン「カムイ姉さんをこれ以上侮辱するなら、容赦はしないよ」

ガンズ「おぉ、こええこええ。だがな、ここでてめえらは御終いだ。哀れなことも知らずに、死んで行けるんだ、俺に感謝してほしいもんだぜ」シュオン シュオン

レオン「!? あの魔法具、他になにかあるのか!?」

ガンズ「へへっ、おらあああああっ!!!!」ガキィン

 シュオオオオオオンッ ドボドボドボド……
 
 バチャンバチャン
 グルンッ

ノスフェラトゥ「グオォォォォ!!!」

ゴーレム「フオオオオオオオッ!!!!」

ガンズ「集めた生命力があれば、いくらでも呼び出せる。もうそろそろこの城にいる奴らにも影響が出始める。死んじまっても別に構いやしねえ。てめらをまとめてミンチにしたら、じっくり他の奴らを皆殺しにしてやるよ」

カムイ「そんなことは絶対にさせません!」

レオン「姉さん、魔物は他の皆に任せて、僕たちはガンズを討とう」

マークス「ラズワルド、ピエリ。魔物の列を崩し、道を拓け!」

ラズワルド「はい、わかりました、マークス様。行くよ、ピエリ!」

ピエリ「わかったの。マークス様、ピエリいっぱい頑張っちゃうのよ!」

レオン「オーディン、ルーナ、それにスズカゼも。同じように魔物を引きつけて道を作ってほしい。僕たちが通過した後は無理をせずに堪えてくれれば……」

オーディン「お言葉ですが、無理をするなってのは無理な注文ですよ、レオン様」

ルーナ「そうそう、それに無理しないとそのうちノスフェラトゥの缶詰が出来上がりそうだし、そんな暑苦しいの嫌だからね」

スズカゼ「はい、それにゴーレムの急所は心得ていますので、レオン様たちへ攻撃をさせるつもりもありません。無理をしてもいいのであればですが」

レオン「……仕方ないね。三人とも無理して構わない。だけど、互いの位置には気を配るんだよ」

カムイ「……ガンズさん」

ガンズ「へっ、それじゃ掛ってこいよ。てめえの空っぽな剣で、この俺を殺せるんだったらな!!!」

 バッ

 グオオオオオオオオッ!!!

~~~~~~~~~~~~~~~

 ザシュッ

ノスフェラトゥ「グォォォォォッ……」ドスンッ

ルーナ「はぁはぁ、これで何体目よ?」

 ザシュッ ブシャッ ドサンッ

ラズワルド「僕は十五体目かな。湧き出る水の如しって感じ、本当に斬っても斬ってもキリがないよ」

ピエリ「泣き言言わないの!……四時の方角のゴーレムがこっち見てるの」

スズカゼ「わかりました。あれは私にお任せください」

ピエリ「任せるの。ラズワルド、反対側からまたノスフェラトゥが来てる、攻撃態勢に入って、ピエリはこっちのを相手するの!」

ラズワルド「ほんとだ、またいっぱい来てる」

ルーナ「つべこべ言わずに避けて反撃よ。ほら、いつも踊ってるみたいに華麗に動いてみせてよ。ラズワルドらしい戦い方っていうのをね」

ラズワルド「簡単に言ってくれるよ……」

 チャキッ

ラズワルド「でも、可愛いルーナにリクエストされたら踊らずにはいられないね!」ダッ

 クルッ タッ シュパ スパッ ブシャアアアッ

ノスフェラトゥ「グオオオオオオッ!」

ラズワルド「それじゃ、僕と踊ってもらうよ!」

 ダッ ズシャ バシュッ

 タタタタタッ

ルーナ「まだまだ、倒れるには早いわ。あたしとの踊りも残ってるんだからね。ラズワルド、ダブルで決めるから。合わせなさいよ?」ダッ

ラズワルド「ははっ、踊りながら戦うのも悪くないね。こうやって、楽しく戦えるんだからさ!」ダッ

 ズシャッ バシュンッ ブシャアアアアアアッ ドスンッ!!!

ルーナ「よっし、決まったわね」

ラズワルド「うん、上出来だよ。ねぇ、ルーナ」

ルーナ「なによ?」

ラズワルド「今度なんだけど、いいお店を見つけたら一緒に――」

ルーナ「こんな時にばっかじゃないの? それに、それとこれは別話なんだからね」

ラズワルド「えぇ……」

 グオオオオオオッ ブンッ グンッ ブォン

オーディン「ふっ、風が囁いている。ここて倒れるのは俺ではない、貴様だとな」バサバサバサッ

 シュオンッ ザシュッ!
 グオオオオッ ダッ

オーディン「ふ、一発では足れないか。流石は黒き深淵から生まれし異形の住人。だが、次の攻撃でお前は!」

ピエリ「えいなのっ!」

 ブシャアアアアッ ドサリッ ゴロゴロゴロゴロ

ピエリ「これで二十なの! まだまだいっぱい倒すのよ。あ、オーディン、そんなところで立ってると危ないのよ」

オーディン「ちょ、ちょっとまてーい!」

ピエリ「なんなの、オーディン。今戦闘中なの、あ、わかったの二つ名をつけろってことなの? 漆黒のオーディンどうしたの?」」

オーディン「ぐっ、その名で呼んでくれて嬉しい。じゃなくて、今の俺の獲物だったんだよ」

ピエリ「そうだったの? ピエリ気付かなかったの」ブンッ ズビシャアア

オーディン「あのあと、俺の新しい必殺技が炸裂するはずだったんだ。いろいろと口上も考えてたのに、どうしてくれるんだよぉ」シュオンッ ザシュッ ブシュアアアアッ

ピエリ「新しい必殺技なの? 悪いことしたの、次は邪魔しないの、ピエリ約束はまもるから安心してほしいの」ザシュッ グリグリ ブシャアアアゥ

オーディン「本当に頼むぜ。俺にはまだ使っていない技が多くあるんだからな」シュオンッ バチュンッ グチャリ

ピエリ「そんなに技があっても意味無いと思うの。ピエリ、必殺技とかわからないけど色々あっても手持無沙汰になっちゃう気がするの」ズシャッ ゴロゴロゴロ ガキィン

オーディン「使いべきタイミングで使ったほうが輝くだろ!? ほら、今まで最強と思われていた技で倒れない敵、誰もが叶わないと思ったその時、格制した新たな技とか、そういうのすごくいいだろ?」シュオンシュオン ボボボボッ ビシィ バギィ ブチャンッ!

ピエリ「ピエリ、よくわからないの。でも、花してる時のオーディンとっても楽しそうなの。だから、少し楽しみにしてるのよ」

オーディン「ならば、今すぐ見せてやるさ。よし、そこの――」

ピエリ「やっつけちゃうの! オーディン、敵がまた増えてきたの、一緒にいっぱい倒すのよ!」バシュッ ビチャンッ!

オーディン「……ああ、わかった。必殺技を繰り出したいのに、くそぉ……」

スズカゼ「ゴーレムの急所は開いた仮面の奥ということですが……。一人で戦うには少々無茶をしなければいけないようですね」

ラズワルド「いや、一人じゃないよ」

スズカゼ「? ラズワルドさん?」

ラズワルド「なんだか移動しながら戦ってたら、スズカゼがあまり近づけなくて困ってるみたいだったからね。ルーナと連携しながら移動してきたんだけど」

ルーナ「ちょっと、ラズワルド。スズカゼと一緒に早くゴーレムをどうにかしてよ。あいつの岩石、正直避けるのだけで鬱陶しいんだから!」

スズカゼ「そうですね。ルーナさんの手を煩わせ続けるのも問題です。早急に処理しましょう」

ラズワルド「うん、それで僕はどうすればいいかな」

ルーナ「ラズワルドが変なふうに踊って、ゴーレムの注意を逸らす。逸らして蓋が開いたところをスズカゼが攻撃、これできまりよ!」

ラズワルド「ルーナは?」

ルーナ「あたしはここでノスフェラトゥを食い止めるから」

ラズワルド「流石にこの量を一人でどうにかするなんて危険だ」

ルーナ「平気よ。あたしを誰だと思ってるわけ、こんなのおちゃのこさいさいなんだから」

スズカゼ「たしかにルーナさんほどに腕に自信のある方なら、可能でしょう」

ルーナ「ほら、スズカゼもそういってるんだから――」

スズカゼ「ですが、そんな場所にか弱い女性を一人にしていくわけにはいきません」ガシッ

ルーナ「え? ちょ、何して!?」

ラズワルド「なんか、ごめんスズカゼ」

スズカゼ「いいえ、ラズワルドさんにお任せすべきかと思いましたが」

ラズワルド「いいや。僕が何を言っても聞かないと思うから、むしろ助かったってところかな?」

ルーナ「ちょっと、二人して何話してんの!? お、おろしなさいよ!」

スズカゼ「ええ、あそこのゴーレムを片づけた後に」

ルーナ「今すぐよ、今すぐ!」

ラズワルド「それじゃ、陽動を開始するから、スズカゼ。攻撃は任せたよ!」ダッ

スズカゼ「はい、ルーナさん。ちゃんと掴まっていてください。少々動きが荒くなってしまうと思いますので」

ルーナ「ちょっと、勝手に話を進め。きゃっ」ガシッ

スズカゼ「すみません、派手に動き過ぎましたか?」

ルーナ「そ、そんなことないけど。動くなら、動くって言いなさいよ」

スズカゼ「そうですね、今後は気を付けます」

ルーナ「ええ、今後は気をつけてよね。それじゃ、ちゃちゃっと倒して終わらせるわよ」

スズカゼ「はい、もちろんです」

~~~~~~~~~~~~~~~

 タタタタタッ

 グオオオオオオッ!!!

 ザシュッ バシュッ グシャアアッ

マークス「邪魔をするな!」

レオン「くそっ、あと一歩だって言うのに」

ガンズ「へへっ、悔しい顔したって現実は変わらねえぞ。てめえら何ぞ、俺に触れることさえできねえまま、衰弱していくんだからよぉ?」

カムイ「くっ、このままでは本当に……」

ガンズ「そうだな、このままいけば俺の勝ちだ。お前の仲間も全員倒れるだろうな。安心しろよ、俺が一つ一つ懇切丁寧に首を刎ねてってやるからよぉ。お前は髪引っ張って引きずりまわして、目の前で仲間の首が落ちるところを見物させてやる」

カムイ「そんなむごいことを、どこまであなたは腐っているんですか」

ガンズ「いいねえ、いいねえ。てめえは少しばかり仲間っていうのを大切には思ってるみたいだから、それを殺してやるたびにどんな顔をするのか、楽しみで仕方ねえ」

カムイ「ガンズさん、あなたという人は……」

ガンズ「殺してえか。俺を殺したいなら、そこでうだうだしてねえで、さっさと来ればいいじゃねえか? なぁ、カムイ!」

カムイ「ううっ、はあああっ!!!!」ドゴンッ ズビシャアアア タタタタッ

マークス「カムイ!? レオン、あとを追う――!?」

 グオオオオオッ ブンッ

レオン「くそっ、これがガンズの狙いか!?」

マークス「カムイ!」

カムイ「はぁはぁ、ガンズさん……」

ガンズ「ようやく一対一だ。カムイ……」ジャランッ

カムイ「私を信じてついて来てくれた仲間を、あなたの欲望を満たすための差し出すわけにはいきません」

ガンズ「そうか。そりゃそうだよな、てめえにとって仲間は大事な受け皿だからな……そう簡単には手放さねえよな?」

カムイ「受け皿、受け皿とはなんですか」

ガンズ「受受け皿だよ。てめえがいらなくなったものを受け取ってくれる、体の良いもんだ。しかも選り取り見取りだからな、てめえは本当に幸せものだ。何時でも巻きつけた理由で戦えるし、それを捨てられるんだからな」

カムイ「捨て……られるですって?」

ガンズ「ああ、あの二人の糞王子を見てて気づいたぜ。てめえに比べて、あの二人の言葉は中身があッたように感じたぜ。内容は甘っちょろすぎて吐き気を覚えるくらいだけどな。死にたくねえって俺から必死に逃げてる餌と同じくらいなものはな。おかしいもんだ、あんな二人がてめえみたいな空っぽにどうしてついて行こうとするのか、全くわからねえ」

カムイ「それはあのマークス兄さんもレオンさんも、それぞれが道を選んでくれたからです」

ガンズ「それがてめえの手放したものだってのは、もちろんわかってんだろうな?」

カムイ「私が……手放したもの?」

カムイ(なんですか、それは……私が手放したって……)

ガンズ「てめえにとっての仲間っていうのはな、てめえの安い頭で考えた目的やら理想やらを受け取ってくれる受け皿でしかねえんだよ」

カムイ「そ、そんなことはありません! 私は、私はちゃんと……理由を持って」

ガンズ「それはてめえの理由じゃねえだろ? 偽り掲げて何が理由だよ。てめえの理由はただの文字でしかねえ、それも誰もが共有できる仲良し財産、てめえ自身の財産はどこにもねえことを早く認めちまえよ」

カムイ「わ、私は。私は失えないんです、もう失ってしまうことは許されないんです!!! 私はもう、あのような思いを……」 

ガンズ「あの青い髪の奴のことか?」

カムイ「!!!!」

ガンズ「たしか、リリスって名前だったか? てめえみたいなのを構って全身ズタボロになって死んだんだってな? てめえを信じた結果だとすれば、まあ、妥当ってもんだぜ」

カムイ「なにが、なにが妥当なんですか!?」

ガンズ「てめえみたいな、空っぽな主にとって一番困る臣下っていうのがどんなのか、わかってんだろ?」

 ドクンッ

カムイ「い、一番困る……臣下……」

ガンズ「ああ、てめえみたいな空っぽでも……いや空っぽだからわかるはずだ。予想していたこと以外の進言をしてくる臣下っていうのは、本当に困る存在だよなぁ? カムイ」

カムイ「……な、なにを言って」

ガンズ「てめえにも面倒だって思う存在があるだろうさ」

カムイ「私が面倒だと思う、存在……」

ガンズ「もしかしたら、てめえの斬ってきた中にそんな奴がいるかもしれねえな――」

「てめえの考えた目的やら理想やらを受け入れてくれないような奴が、一人くらいはな?」

今日はここまで
 
 すべてのルートで、思考がぶれないガンズが一番心が強いと思ってる。
 次で前篇が終わります。

何かガンズが因縁あるライバルキャラみたいな感じになってるな

ガンズマクベスがいろんな意味でつよい
魅力的なキャラのベスト2みたいな感じだわ

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・クラーケンシュタイン『王の間』―

ガンズ「そうだろ、カムイ。てめえにとって一番困るのは言ったとおりに動いてくれない、お前の意思を汲み取ってくれない、そういう奴らさ」

カムイ「違います、そんな、そんなことは!!!!」

ガンズ「へへっ。たしかあの反乱が起きる前に来客があったな。シュヴァリエの騎士、確かクリムゾンだったか?」

カムイ「!!!」

ガンズ「あの反乱でクリムゾンも死んだって話だが、報告じゃあいつを殺したのはカムイ、てめえらしいじゃねえか? わざわざ話をしに来てくれた奴を斬り殺すなんて、薄情なもんだぜ」

カムイ「殺したくて殺したわけじゃありません!」

ガンズ「そんなに叫んでも殺した結果は変わらねえだろ? てめえのことだ、思っちまったんだろ。なんで話を聞いてくれねえんだ、こっちはこんなに言ってやってるのに、どうして理解してくれねんだとか、そんな甘っちょろいことをな」

カムイ「な、なぜ……それを……」

ガンズ「言ってんだろ。それなりに分かるってな。てめえが考えてるより俺たち人間は自己中心的なんだよ。自分で考えてると繕って、結局は周りの理由に便乗するお前が、それをよく体現してるだろう? でも当然だ、てめえは引連れて歩いてるんだ。意見を述べるより周りの考えをさも自分の考えのように示した方が楽だし安全だ、別に恥じる必要はねえ。そしていずれは愛想を尽かされて見捨てられていけばいいんだよ」

カムイ「み、見捨てられるって……」

ガンズ「がっはっはっは。わからねえか、今のてめえに人が付いて来てるのはな、いるだけで箔が付くからだよ。実質的にお前の後には褒美も名誉もあるさ。そうしたもんについて来てるだけ、ただ空っぽのお前になんて誰も付いて来るはずもねえ、そうだろ?」

カムイ「あ……」

ガンズ「何もないてめえは、いずれ何もかも失うっていくのさ。戦いが終わった後、てめえに残るのは薄汚く陣営を変える裏切りの紋章だけ。だれもてめえを庇いやしない。いや、かばってくれる奴がいるかもしれないな。もちろん、そいつらも同じレッテルを貼られて生きていくことになる。裏切り王女カムイの腹黒臣下としてな……」

カムイ「……そ、そんなことは――」



カムイ(……そんなことはありえない、そう言えればいいのに。私にはそれを否定することが出来ない……)



カムイ(ガンズさんの言葉が耳にこびり付いて離れない……)

ガンズ「……」カッ カッ カッ

カムイ(どういう形であれ、私は反乱を鎮圧して王族に名を連ねた……。そして、今はマークス兄さんに率いられる形で戦っている。ガンズさんの言うとおり、今の私は状況に応じて陣営を変える姑息な女として見られてるんでしょう。それはこの先どんな道を選んでも変わらないことで、そのことを庇う誰かがいたら、その人も私と同じように……)

ガンズ「……」カッ カッ カッ

カムイ(なら、私はここで死んでしまっていいんじゃないでしょうか? 私が死んでもマークス兄さんなら、今戦う道を見つけているマークス兄さんなら、きっとみんなを引っ張ってくれる。私みたいな、何も求めていない人間に従って戦うよりは……)

ガンズ「へっ、もう言い返せねえか。まぁそれでいい、てめえの首はガロン王様の手土産にさせてもらうからよぉ? 感謝しな、一撃で首をぶっ飛ばしてやる。この俺なりの最大の慈悲ってもんだ!」ググ

カムイ「……」

カムイ(もう……私はいなくても……大丈夫ですよね……。私が掲げた理想は偽りで、それは皆の理想なんですから……)

カムイ(誰も迷ったりなんてしないはずだから……。もう私は、必要ないんです……)カチャンッ

ガンズ「おらあああっ!!!!」ブンッ!!!






 ガキィン!!!!



カムイ「……え」

 ギギギッ ギギッ

マークス「させんぞ!」

ガンズ「ちっ、糞王子……てめえ!」

マークス「はああっ!」バシィン

 ザザザザザッー

カムイ「……マークス兄さん。どうして……」

マークス「なにを不思議な顔をしている。カムイ、戦えぬのならこのまま下がりレオンと合流せよ。この男は私が斬り捨てる」

ガンズ「いいところで邪魔しやがって……。兄貴なら、死にてえって顔してる妹に引導を渡してやればいいじゃねえか? それが優しさってもんだろ?」

マークス「それは無理な注文というものだ。お前が殺人快楽をやめられないように、私にも折れてはならない道というものがある」

ガンズ「へえ、そうかい。ならその道ってやつを、今すぐへし折ってやるぜ!!!」シュオオオオッ

マークス「これは魔法具から力を得ているのか!?」

ガンズ「見ろよ、てめえのような糞王子なんか目でもねえ、体に力が溢れるのがわかるぜ。さぁ、その神器もろとも砕け散って、無様な死に姿を晒せええ!」

マークス「ぐっ、くっ!」

ガンズ「おら、どうした!! こんな蛮族上がりの攻撃も受け切れねえのか? 傑作だぜ、空っぽ王女にヘボ王子、こんなのが世界を救うとかほざいてるなんてなぁ!」

マークス「はああっ、ジークフリート!!!」シュオンッ ザシュゥ

ガンズ「へっ」キィン

マークス「なに!?」

ガンズ「がーっはっはっは。糞王子、てめえはカムイより必死みてえだが、力が弱すぎんだよ。今のこの俺にそんな攻撃が聞くとでも思ってんのか? 痒過ぎて笑いが止まらねえよ」

マークス「ちっ、カムイ何をしている。早くレオンと合流しろ!」

カムイ「いいんです。もう……私は……」

マークス「……カムイ」

カムイ「どうせだめなんです。私には……私には何もありはしない。マークス兄さんのように、私は自分の求めるものなんて見つけられない……。そんな私が、これ以上生きていても……。生きていたとしても」

マークス「カムイ、お前に死という道を選ばせるつもりはない」

カムイ「どうして……」

マークス「お前はここで死んでいい人間ではない。まだ、お前にはやるべきことがある」

カムイ「マークス兄さんが命を掛けて私を守る必要なんてありません! 私にはそんな価値なんて……」

マークス「それは私が決めることだ。ガンズと私自身の命、それを二つ乗せたとしても、お前には及ばないと考えている」

ガンズ「はっ、俺の命までこんなガキに与える気はねえよ。てめえの命だけで釣り合わせな」

マークス「貴様の命では足しにもならないという意味だ。その生き方は羽毛のほうが尊く感じられるほどだからな」

ガンズ「へっ、ならその羽毛よりも軽い命で奪ってやるさ。てめえらの命が、俺よりも価値のねえ命だってことをよ!!!」ダッ

 キィン キィン ガキィン!

マークス「カムイ、お前は暗夜の闇でも光り輝く星と同じだ。私が道を失ってもなお、どのような場所でも光輝く希望そのものに思えた。だからこうして、私はお前のために命を賭け戦える」

カムイ「マークス兄さん……」

マークス「カムイ、約束したはずだ。道が見つかるまで私はお前のための剣になると」

カムイ「兄さんはもう道を見つけているじゃありませんか」

マークス「ふっ……手厳しいことをいうな」

カムイ「兄さんならみんなを率いていけるはずです。私なんかよりも、もっとうまく、うまくことを勧められるはずなんですだから……」

マークス「カムイ、すべてがうまく行くことなどこの世にありはしない。どんなに努力しようとも、どんなに報われようとしても、全力で戦ったとしても。得られる結果が来るわけではないのだ」

カムイ「なら……」

マークス「だがらこそ、カムイよ、失敗を恐れるな。お前はまだ真白で、それゆえに偽りに身を馳せているのかもしれない。だが、それをお前は今理解しているのだろう?」

カムイ「ですが……私が元から何かを求めていれば、こんな……こんなことには!」

マークス「カムイ、過去にもしもを求めるな」

カムイ「!!!」

マークス「ここにやり直す術などありはしない、なにより、その考えはお前の道を否定する甘い幻想にすぎん。あがいて戻るのなら私もあがこう、だが現実は戻ることはない。そして人は空想で動きはしない、人が唯一動くのはその身が決めた意思、ただそれだけだカムイ、私はお前の兄として、生きていてほしいと願っている。だからこそ、私はここで命を賭ける!」

カムイ「だ、だめです。マークス兄さん!」

マークス「ふっ、私がガンズに負けるわけがあるまい。本気で行かせてもらうぞ」

ガンズ「ごちゃごちゃうるせえ、さっさと来いよ。そろそろ、どうにかしねえと、全員倒れて行動不能になっちまうからなぁ!」

マークス「私は負けん!!! はぁっ!!!」

カムイ「あ……」

カムイ(私はリリスさんの次に……マークス兄さんさえも失うというんですか……)

マークス「ぐぅっ、くううっ」

ガンズ「へへっ、もう疲労の色が見えてきてるぜ。そうだよな、てめえの言うとおりうまく行くわけねえんだよ。どんなにうまくやろうとしてもな、そうそう思惑どおりに事は進まねえんだよ!」ガシッ

マークス「!?」

ガンズ「おらあああっ!!!」ブンッ

マークス「くっ!!!」ドサッ サッ

カムイ(……前と同じように)

カムイ(リリスさんが死んでしまった時のように、叫びをあげて暴走して……)






 ドクンッ





カムイ(それで、いいんですか?)

 ドクンッ

カムイ(どうして、ガンズさんの言葉にこれほど打ちのめされているのか。理由をわかっているのに、それから目を逸らして、また同じように誰かに支えられたいと願っているこんな私のままで……)

 ドクンッ
 ドクンッ

カムイ「……」

 ドクンッ

カムイ(いいわけなんてない……)

 ドクンッ

カムイ(もう、私の背中を皆が押してくれている。この偽りはみんなからもらった力で、これ以上のものなんてもらえるわけがない。欲しがりを続けているのは多分、応えるのが怖いから……)

カムイ(皆の信頼に応えて、それが砕けていくのを見たくない、だから私は命を掛けて戦ってなんていなかった)

カムイ(私には何もない。それは認めなくちゃいけないことで、今すぐ見つけられるものじゃないこともわかってる。だけど、探しに行く事はできる。なら、もう歩み始めるしかない。後でなんてのは卑しい逃げ口上で、それ以外の何ものでもない……私は逃げる理由だけはいつだって見つけていたんだ。なら、探すのだって同じように見つけていける)

カムイ(マークス兄さんは私に悩む必要はないと言ってくれました。でも、それはやっぱり難しいみたいです)

 タタタッ

カムイ(だって、私は――)

 タタタタタタタッ!

カムイ(私であるために、この道を進むと決めてここにいるんですから!!!)

 ダッ

 キィン ドサッ

マークス「くっ!」

ガンズ「これで終わりだ糞王子! しねええええっ!!!!」ブンッ

 ガキィン!!!!!

マークス「!!!」

ガンズ「なっ!?」

カムイ「はああっ!!!!」

 ブンッ

カムイ「マークス兄さん、大丈夫ですか」

マークス「カムイ!」

ガンズ「へっ、いきなりでビビっちまったぜ。そこでブルブル震えてればいいのによぉ。空っぽで偽り掲げるしか能のねえ女らしくよ」

カムイ「そうですね。あなたの言うとおり、私は空っぽで偽りで戦ってきました。あなたの言うとおり、それしか能の無い女です」

ガンズ「なら、無能なりに死ぬのが――」

カムイ「ですが、そういうわけにはいきません」

ガンズ「なにぃ?」

マークス「カムイ……」

カムイ「マークス兄さん。すみません、私への気遣いを無駄にしてしまうことになりそうです」

マークス「……ふっ、かまわん。だが、本当に……」

カムイ「……大丈夫です。もう、皆さんの信頼を受け止められない私のままでいるつもりはありませんから」


マークス「そうか、だとしても私の立場は変わらない」チャキッ

カムイ「マークス兄さん?」

マークス「言っただろう、私は己が道を見つけるまでお前の剣となると。信頼するお前の剣であるとな……」

カムイ「あの……マークス兄さん」

マークス「どうした、カムイ?」

 ギュッ 

マークス「か、カムイ。なぜ手を……」

カムイ「信じてくれてありがとうございます。こんな私を……」

マークス「……私だけではない、他の者たちも同じ思いだ。お前は一人ではない。私達がお前と共にいるのだからな……」

カムイ「はい」ニコッ

 シュオオオオオオオオオンッ

ガンズ「な、なんだ!?」

マークス「!? ジークフリートから光が、ぐっ……こ、これは一体!?」

 シュオオオオオオオンッ

カムイ「夜刀神が反応している? まさか、マークス兄さんも、暗夜の勇者……」

 シュオオオオオオオオオオッ

マークス「剣の形が、変化していく!?」

ガンズ「ちっ、構わねえ、今すぐに終わらせてやる!!!うおおおおおおおっ!!!!」ブンッ

 シュオンッ!
 チャキッ
 
カムイ「させません、はああああああっ!!!!」ブンッ

 ガキィン!!!!!

 ピシ ピシシシシッ
 バラバラバラバラ

ガンズ「なっ!? 俺の武器が――!!!」

カムイ「今度はこちらから行きます。てやあああああっ!!!!」ダッ ドゴンッ

ガンズ「ぐおおあああっ」ダッ ズザザザザッ

ガンズ「ぐおっ!!! カムイ、てめえ!!!!」

カムイ「すみませんが、あなたの言葉にもう揺らされたりはしません」

ガンズ「へっ、すぐに変われるか。てめえの中にある卑しい考えも、そう簡単には変わらねえ」

カムイ「その通りです。その通りだからこそ、私はここであなたを倒して先に進まなくてはいけないんです。私の道を作り上げるために!!!!」

 ドンッ ガシィン

ガンズ「がっ……ぐおおおっ。このやろう!!!!」

 タタタタタッ

マークス「ガンズ、貴様の野望はここで終わりだ」ブンッ

 ブシャアアッ

ガンズ「ぐぎゃああっ。うぐぐっ、調子に、のりやがってええええ!!!」ダッ

カムイ「……」

ガンズ「死ね、死ねえええ死ねって言ってんだよ!!!! てめえのてめえのあり方なんて、認めるわけにはいかねええんだぁああああ!!!!!」

カムイ「もう折れたりしません!!!!」ダッ

 ザシュンッ

 ビシャアアッ 

ガンズ「うごああああああっ……俺となにも変わらねえくせに……、ちくしょうっ……」ドサッ

カムイ「さようなら、ガンズさん」チャキッ

ガンズ「」

カムイ「……はぁ、はぁはぁ……。ぐっ、はぁはぁ……」

マークス「カムイ、大丈夫か?」

カムイ「は、はい。なんとか……。ごめんなさい、今は動けそうにありません。それよりも……早く魔法具を」

マークス「しかし、ここにお前を置いて行くことなど――」

 パカラパカラパカラ

レオン「兄さん、姉さん、無事だったんだね」

マークス「レオン、すまない。あの場を一人で任せてしまった」

レオン「構わないよ。それよりガンズは……」

ガンズ「」

レオン「どうやら、二人には敵わなかったみたいだね。まぁ、心配はしてなかったけどさ」

カムイ「マークス兄さんのおかげです。それよりも早く魔法具の停止しないと……」

レオン「わかってる。兄さん姉さんのことは任せたよ」

マークス「ああ」

 パカラパカラ

カムイ「はぁ、あっ……」クタリッ

マークス「カムイ」ダキッ

カムイ「マークス兄さん、すみません」

マークス「なに、気にすることはない。それより、カムイ。お前の剣だが……」

カムイ「ええ、一体なにが起きたのかわからないんですが……。これは、マークス兄さんも暗夜の勇者だったということですよね。でも、どうして……」

マークス「……ふふっ」

カムイ「なにを笑っているんですか?」

マークス「いや、わかっていないのかと思ってな。カムイ、まずは礼を言いたい。私を信じてくれたこと、とてもうれしかった。お前が私を信じ心を開いてくれたことをジークフリートから感じた。そしてその直後に夜刀神は光り始めた」

カムイ「え?」

マークス「これはカムイが私を……いや私だけではない、皆を信じると決めてくれたその証だと思っている」

カムイ「私が皆を信じると決めた証……ですか」

マークス「ああ、だからカムイよ。私はお前に振われる剣ではなくなるだろう」

カムイ「そうですね、もうマークス兄さんは見つけているんですから、私の剣として戦い続けるのは宝の持ち腐れです」

マークス「ふっ、そう言ってもらえるならば、私も私の道に誇りを持つことができるだろう。そして、お前の兄として、そして支える仲間として歩んでいくとここで誓おう」

カムイ「マークス兄さん、ありがとうございます……」

 チャキンッ

カムイ(夜刀神……)

カムイ(あなたも私を信じてくれているんですね。私が空っぽな時も共に戦ってくれて……私を守ってくれた……。ずっと、偽りだった私に戦う力をくれた……)

カムイ「ありがとう……夜刀神……私は大丈夫です――」ギュッ

「もう、逃げたりしません。私と皆と……そして共に歩んで来てくれたあなたに誓って……」



 十九章 前篇おわり

 今日の本篇はここまでで

 剣を女の子が抱きしめてる姿って、なんだか興奮する。
 ジークベルト×オフェリア×ソレイユの番外と、スケベ番外は十九章の終わりくらいになると思います。

  
 






 ここから、2スレくらい、適当に書いた暑い夜のピエリリス番外。

◇◆◇◆◇











ピエリ「あつい、あついの!!!! このままじゃ、ピエリとけてなくなっちゃうの! お水のお風呂にはいっても、出たら結局熱いから関係ないの!!!!」

リリス「ピエリさん、文句ばっかり言わないでくださいよ」

ピエリ「ううっ、でも熱くて眠れないの。どうすればいいの、ピエリ寝不足なんて嫌なのよ」

リリス「……眠れない時は抱き枕を使うといいって聞きましたよ」

ピエリ「そうなの、でもひんやりしてる抱き枕なんて知らないの。そうだ、フェリシアとフローラなら体ひんやりしてる筈だから、とっても気持良さそうなの! リリス、二人を連れてくるの!」

リリス「ごめんなさい、ピエリさん。フェリシアさんとフローラさんは里帰りしてるんです」

ピエリ「使えないの……。ならリリスでいいの」

リリス「え、熱苦しくないですか?」

ピエリ「人じゃなくて、竜になるの。竜のリリスって体がツルツルしてるから、なんだかひんやりしてる気がするのよ」

リリス「私が眠れないじゃないですか!」

ピエリ「仕方無いの。騎士団に努めてるピエリと厩舎係のリリスだと、せきにんのおもさ……みたいなのが全然違うのよ」

リリス「あながち酷いこと言いますね?」

ピエリ「ふえええええんっ、眠れない、あつくてねむれないのぉおおおお!!」

リリスもう……今日だけですからね」

ピエリ「わーいなの!!!」

~~~~~~~~~~~~~~~~~

ピエリ「うふふっ、思ったとおりなの」

リリス「そ、そうですか」

ピエリ「うん、リリス、スベスベしててとっても柔らかくて、ひんやりしてるのぉ」ナデナデ

リリス「ひゃっ、ピエリさん変なところ触らないでくださいよぉ」

ピエリ「ピクピク反応して可愛いの。もっとぎゅーぎゅーしてあげるのよ」ギューッ

リリス「はうっ、ちょ、ピエリさん!」

リリス(ピエリさんの胸元に顔が、あっ、なんだかいいにおいがします)

ピエリ「? リリス、なにしてるの? 胸元、なんだかくすぐったいの」

リリス「い、いえ、なんでも無いですよ。え、えへへへ」

ピエリ「おかしなリリスなの。でも、なんだかこうして一緒に寝るのなんだか楽しいの」

リリス「そうですか」

ピエリ「そうなの。ピエリ、こうやって誰かと一緒にお布団で寝るの初めてだから……ううっ」

リリス「どうしたんですか?」

ピエリ「今さらだけど、なんだか恥ずかしくなってきちゃったの」

リリス「本当に今さらですね……。でも、なんだか嬉しいです」

ピエリ「?」

リリス「だって、こうしてピエリさんに頼りにされて、なんだかとっても嬉しいんです。ふふっ、おかしいですよね。誰かに尽くすことを仕事としてるのに、なんだかピエリさんに頼まれるのは、なんだかその、特別な気がしているというか」

◇◆◇◆◇









ピエリ「リリス……。そんなこと言われると、もっともっと頼りにしちゃうのよ」

リリス「いいですよ。もっともっと頼りにしてください」

ピエリ「それじゃ、後ろ向いてほしいの」

リリス「? こうですか」

ピエリ「えいっ」ギュギュッ

リリス「ひゃぁ!」

ピエリ「んーっ、リリスの背鰭とお腹のポンポンとっても気持ちいの」モミモミ

リリス「ん……、ひうっ…背鰭スリスリしちゃ、ひゃうっ、お腹、モミモミしないでくださいぃ」

ピエリ「……ふにゅ……」

リリス「はぁはぁ、ピエリさん?」

ピエリ「スゥー スゥー」

リリス「……眠っちゃったんですね。私の体ってそんなにすべすべしててひんやりしてるんでしょうか」

ピエリ「えへへ~」

リリス「ふふっ、困った人ですねピエリさんは、あなたに抱きしめられて私はとっても熱くなってるって言うのに、私のことを振り回して、でも、そんなところがピエリさんなんですよね」

ピエリ「むにゃむにゃ……んー、りりすぅ……」ギュウー

リリス「もう、甘えん坊さんですね。ピエリさんは本当に子供なんですから」

ピエリ「……」ペロッ

リリス「ひゃああああっ!!!ちょ、ピエリさん、首筋舐めっ、あっ、だめ、そこ、弱い、弱いんです。やめてっ」

ピエリ「ピエリ、甘えん坊でも子供でもないの」

リリス「お、起きてたんですか!? やっ、だめ、そんな、お腹触りながら、あうっ、背鰭、首舐めちゃ……」

ピエリ「ピエリのこと、子供扱いした罰なの。甘んじて受けるのよ」

リリス「き、騎士団の責任の重さがあるんじゃ」

ピエリ「そんなのより、リリスに罰を与える方が重要なの。熱い夜にするのよ」

リリス「ちょ、まって、ピエリさっ、ひゃうっ……もうぅ、らめぇ、背鰭そんなコリコリしたら、んやっ、駄目だからぁ!!!!」

「あっ…ひゃっ、んやああっ、っぅう……きゅううううううんっ!!!!!」

 おわり

 今日はここまでで

 本篇は暗夜編でファイアーエムブレムを完成させるとすると、ここら辺で夜刀神は暗夜になるべきかなという感じの流れで、ピエリリスはいつもどおりです。

 次の展開を安価で決めたいと思います。参加していただけると幸いです。

◇◆◇◆◇

カムイが話し掛ける人物
(今回の戦闘参加メンバーで支援A以下のキャラクターのみ)
・マークス
・ピエリ
・ラズワルド
・オーディン
・レオン
・スズカゼ

 >>310>>311

◇◆◇◆◇

 支援イベント発生の組み合わせ
(今回の戦闘参加メンバーのみ
 すでに支援Aになっている組み合わせが選ばれた場合やキャラクターが被った場合は、次の書き込みのキャラクターにしたいと思います。)

・マークス
・ピエリ
・ラズワルド
・オーディン
・レオン
・スズカゼ
 
 支援Aに到達している組み合わせ
『ラズワルド×ルーナ』

 一組目『>>312>>313
 二組目『>>314>>315

 このような形でよろしくおねがいいたします。

  

 

マークス
>>306
わかる

レオン

 すみません、仲間間支援イベントの選択キャラクターにルーナが入っていませんでしたので、こちらだけ再安価します。

◇◆◇◆◇

支援イベント発生の組み合わせ
(今回の戦闘参加メンバーのみ
 すでに支援Aになっている組み合わせが選ばれた場合やキャラクターが被った場合は、次の書き込みのキャラクターにしたいと思います。)

・マークス
・ピエリ
・ラズワルド
・オーディン
・レオン
・スズカゼ
・ルーナ
 
 支援Aに到達している組み合わせ
『ラズワルド×ルーナ』

 一組目『>>313>>314
 二組目『>>315>>316

 申し訳ありませんが、このような形でよろしくおねがいいたします。

ルーナ

ピエリ

スズカゼ

オデン

◇◆◇◆◇
―暗夜王国・兵舎―

ルーナ「はぁ、かなり遅くなっちゃった。こんな遅くまで賊が活動してるなんて思わなかったわね。ピエリはいっぱい殺して勝手に帰っちゃうし」

ルーナ「それにしても、今日のピエリは上機嫌だったわね。ノスフェラトゥの時より、なんだか楽しそうだったけど。人のほうが感触が違うとかそういうこと? まあいいわ、少し小腹が空いたし、軽く夜食でも……って、あれ、誰かいる?」

ピエリ「……」

ルーナ「ピエリ?」

ピエリ「あ、ルーナなの」

ルーナ「あ、じゃないわよ。後始末を全部あたしに押しつけて帰るなんて、今度したら承知しないんだから……って、なんでさっきの格好のままなのよ!?」

ピエリ「? 何かおかしいの?」

ルーナ「当り前じゃない。ここはキッチンなんだから、そんな汚れた格好でいると食材に問題がでかねないんだから……」

ピエリ「……そうなの。ごめんなの」

ルーナ「謝るんだったら、最初からどうにかしておきなさいよ。奇麗になりたいって言ってたけど、その姿が奇麗だなんて全然思えないのにね」

ピエリ「そんなことないの。ピエリが知ってる一番きれいな人も、こういう格好してたの。だから、ピエリもそうなりたいのよ」

ルーナ「……あー、なるほどね。ノスフェラトゥの血は苦手ってそういうことだったわけね」

ピエリ「ノスフェラトゥの血は緑なの。でも相手が人間だといっぱい返り血浴びて奇麗になれるの。だからピエリ、いっぱいえいってしちゃうの!」

ルーナ「ふーん、それで誰なわけ? そのあんたが認める奇麗な人っていうのは」

ルーナ(まぁ、返り血浴びて真赤って考えると、あまり良心的なやつじゃなさそうだけど)

ピエリ「うん、お母さんなの」

ルーナ「……えっ?」

ピエリ「お母さん、とってもきれいだったの。最後に見たときね、こんな恰好だったのよ」

ルーナ「ピエリ、それって……」

ピエリ「……ピエリ。もっともっと血みどろになれば、お母さんみたい奇麗になれるはずなの……」

ルーナ「ピエリ、一緒にお風呂に行くわよ」

ピエリ「え?」

ルーナ「いいから行くわよ。奇麗になりたいのはわかったけど、このままいたら衛兵にあたしも一緒に衛兵に怒られちゃうし」

ピエリ「怒られるの嫌なの」

ルーナ「あたしだって嫌よ。だから行きましょう」グッ

ピエリ「うん、早くお母さんみたいに奇麗になりたいの」

ルーナ「ピエリ、そんなにならなくてもあんたは奇麗よ」

ピエリ「? そうなの?」

ルーナ「ええ。だから、今度一緒に出かけない?」

ピエリ「一緒にお出かけうれしいの。ルーナとお出かけ楽しみなの!」

ルーナ「証明してあげるから、あんたはそんなことしなくても、大丈夫だって……」

【ルーナとピエリの支援がBになりました】

◇◆◇◆◇
―暗夜王国・倉庫―

オーディン「はぁ、じゃんけんに負けたとはいえ、こんな埃被った倉庫の整備をしないといけないなんてよぉ。はぁ、さすがに骨が折れそうだ」

スズカゼ「こんにちは、オーディンさん。ものすごく困ったような顔をしていますが、一体どうされたのですか?」

オーディン「困った顔、違うなこの想像を絶する広大な空間に蠢く者たちを前に、作戦を練っているのだ」

スズカゼ「なるほど、この倉庫の清掃を始めたい、ですがあまりにも中が渾沌としていてどうするべきか悩んでいるというところですね」

オーディン「……。えっと、つまりその通りです」

スズカゼ「やはりそうでしたか。オーディンさんは中々に興味深い言葉遣いが多いので、うまく訳せているか不安でしたが」

オーディン「……まさか、貴様も選ばれし者だというのか!?」

スズカゼ「そうですね、オーディンさんがそう思うのでしたら。私もまた選ばれし者なのでしょう」

オーディン「おおっ……ここまで乗ってくれるのか。正直、少し嬉しい……」

スズカゼ「オーディンさんが嬉しそうでなによりです。ですが、今はこの倉庫を片づけるのを先にしましょう。オーディンさん、私も力をお貸ししますので」

オーディン「……いいのか。俺に触れると暗黒の力に犯されてしまうかもしれない、お前を巻き込むわけには」

スズカゼ「心配は無用ですよ。それに、どんなものに飲まれようとも私は私です。それでは取りかかることにしましょう。これは二人掛かりでも、日が暮れそうな物量ですので、気を引き締めていくとしましょう」サッ

オーディン「あ、ああ……」

オーディン「……」

オーディン「なんでだ。なんで、ちょっと負けた気分になってんだよ。まるで、本物に出会ってしまったような……」

オーディン「……そんなわけないか。ふっ、スズカゼ、俺よりも先に先に足を踏み入れるとは、だが何も恐れることはない。今日でこの世界も終わりを迎えるのだからな! いくぞっ!!!」ダッ

【スズカゼとオーディンの支援がCになりました】

今日はここまで
 
 ピエリの闇、その奥深くにあるのは、母親に会いたいという思いなのかも知れないって思った。

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・王都ウィンダム『クラーケンシュタイン』―
 
 ~クラーケンシュタイン陥落から二日後~

マークス「それで王都全体の復旧状態は?」

クーリア「はい、魔法具も止まり、敵王都守備隊もすべてが降伏しました。被害についてですが、やはり魔法具の影響は凄まじかったようです。特に多かったのは子供と老人、次いで敵捕虜の中でも重症であったものたちです」

マークス「そうか。民には辛い時期なるやもしれないが、それをわれわれでカバーしていこう。とくにこの機に乗じて略奪を企てようとする者たちで出てくるだろう。警戒を怠らぬようにな」

クーリア「はい、わかっております。マークス殿」

マークス「次にシュヴァリエ兵長」

シュヴァリエ兵長「はい、なんでしょうか、マークス王子」

マークス「ミューズ公国への使者についてだが」

シュヴァリエ兵長「お任せください。すでに我らの使者がミューズ公国へと向かいました。それに――」

部族兵長「私たちの使者も、先ほどディアへと向かい、明日にはノートルディア公国に達する見込みです。前にあった襲撃時間のこともありますので支援活動の一貫も兼ねて送らせていただきました」

マークス「うむ、ありがとう。それで注意を引くために戦ってくれていた者たちについては……」

クーリア「はい。すでに王都陥落の話は暗夜全土に上がっており、遠征部隊を後追いするように追撃部隊も出立しています。囮の者たちは散り散りになりながらも、合流地点である黒竜砦に向かっていることでしょう。何も問題はありません」

マークス「クーリア、わかっているだろうが」

クーリア「はい。敵を殲滅するつもりはありません。押し出すように無限渓谷を渡らせる予定です。王都を失った今、彼らも無理に王都奪還などしないでしょう彼らには今最高指揮官がいませんのでね。なにより軍師マクベスやガロン王にこの件を伝えるためにと移動することでしょう。追撃部隊には深追いをせず、無限渓谷に防衛陣を築ける状況を作り上げるよう指示を出しておきました」

マークス「わかった。それと、周辺の部族の多くが王都に向かっているという話だが?」

部族兵長「ええ、まあ長いものには巻かれろというものでしょう。噂を聞いてマークス王子の元に忠誠を誓いたいということですが。兵力になるかはわかりません」

マークス「そうか。これで父上が仕切る侵攻部隊の補給線を一時断てたとはいえ、この先どう転がっていくかはわからないものだな」

クーリア「そうですね。暗夜での戦いという意味ではこれで終わりですが、未だに白夜との戦争状態は継続しています。私達に求められる次の動きを考えれば……」

マークス「おそらくそうなるだろう。できる限りの案をまとめてすぐにでも行動を起こす必要があるな。シュヴァリエ兵長、そして部族兵長は引き続き王都の警備、治安維持に努めてほしい」

シュヴァリエ兵長・部族兵長「わかりました」

 ガタンッ
 
 ガチャ バタン

マークス「……すぐにでも離れなければならないというのは不安になってしまうものだな」

クーリア「確かにマークス殿がこのクーデターを表向きに成功させたというのは真実です。ですが、その状況だからこそ、再び戦線に立たれることを民衆は理解してくださるはず。その真意を測れない者たちもいるでしょうが、それが結果的に良い方角に進むのであれば、その行動は間違っていません」

マークス「そうなるといいのだがな」

クーリア「そうですね。ですが、今回の戦いで色々と良かったこともあるというものです」

マークス「?」

クーリア「カムイ殿のことです。私はカムイ殿のために戦うと決めていましたので。闘いが終わった時の彼女は、何やら見違えるような雰囲気を持っていました」

マークス「……そうか、クーリアにそう言ってもらえるのならば、カムイはたしかに歩み出せたということかもしれないな」

クーリア「歩み出したということですか。あのカムイ殿がさらに強い志を持って歩き始めたというと、まさに虎に翼というというもの」

マークス「それをカムイに言ってもやんわりと否定することだろう。カムイはそういう人間だ」

クーリア「それもそうでしたな」

 ガタッ

クーリア「おや、どちらへ?」

マークス「ああ、少し妹の様子を見てくる。戦いが先日のことだ、少しは心配になってしまうのも仕方がない」

クーリア「わかりました。私はしばし資料をまとめておりますので」

マークス「すまない」

クーリア「気にしないでいただきたい。それに、間接的にも私はカムイ殿に従っているだけですので」

マークス「食えない男だな。失礼する」

 ガチャ バタン

―クラーケンシュタイン『休憩室』―

カムイ「ん、ん……」

 カサッ ゴソッ

カムイ「……スースー」

 ガチャンッ

マークス「カムイ、起きているか?」

カムイ「んっ、んえ?」

マークス「カムイ、もう目覚める時間だぞ」

カムイ「マークス兄さん……。すみません、おはようございます……」

マークス「すまないな。昨日も王都まわりの魔物を一掃するために動いてもらっていたというのに……」

カムイ「いいんです。今の私にできる行動はこれくらいのことですから。暗夜での私の役割はマークス兄さんの忠実なる剣ですし、それが王都の安全に繋がるなら安いものです」

マークス「そう言ってもらえると助かる」

カムイ「いいんですよ。気にしないでください、私にできることはこれくらいだって理解してるつもりなんですから。それにあの窮地で私を救ってくれたマークス兄さんには、こんなことで恩を返し切れません」

マークス「恩はもう返してもらっていると言っているだろう?」

カムイ「信じてくれたということでお相子というのは、なんだか私が腑に落ちないんですけど」

マークス「そう言ってくれるな。妹からこれ以上求めるなど、兄として顔が立たないのだ。わかってほしい」

カムイ「ふふっ、わかりました。もう、このことについては何も言いません、安心してくださいね?」

カムイ「でも、どうしたんですか?」

マークス「? 何がだ?」

カムイ「いえ、こんな風にマークス兄さんが起こしに来ることなんてなかったのに。あったとしても幼いころくらいだったと思ったのですが」

マークス「ああ、その兄らしいことをしようと思ってな」

カムイ「兄らしいこと、ですか?」

マークス「ああ、昨日疲れ果てているだろうから、寝坊してしまうのではないかと心配してな。案の定、いつもなら起きている時間に起きていないようだったから、私の心配は間違いではなかったということだ」

カムイ「ああ、そういうことだったんですか。ふふっ、ありがとうございます、マークス兄さん。でも、疲れ果てていると思ってくれるなら、もう少し休ませてくれても……」

マークス「残念だが、そういう甘やかしはしないつもりだ」

カムイ「意地悪ですね。でも、そういうのがマークス兄さんらしいって思います。優しいけど厳しいところは厳しい、そんなところが」

マークス「そ、そうか……」

カムイ「ふふふっ、照れてるんですか。なんだかんだで、厳格なマークス兄さんのイメージだけを持った人が見たら、驚いちゃいそうな姿ですよね」

マークス「はぁ、でも、お前が以前のようになってくれたこと、私は嬉しく思うぞ。カムイ」

カムイ「そう考えると、マークス兄さんは私を変えてくれた男性ってことになりますね」

マークス「う、うれしいが。もっとやわらかい表現で頼む」

カムイ「うふふっ」

カムイ「それじゃ、着替えますね」

マークス「ああ、私は――」

カムイ「んしょ、えっしょ」ヌギヌギ

マークス「な、なにをしている!?」

カムイ「え、何って着替えですよ? さすがに寝間着のままというわけにはいきませんから」

マークス「その通りだが、私がここにいるんだぞ?」

カムイ「ええ、それがどうかしましたか? 兄妹なんですから、気にすることもないじゃないですか」

マークス「そ、それは、いや、だめだ、駄目だカム――」

カムイ「すみません、マークス兄さん。ベッドに置いてある服を取っていただけますか?」

マークス「いや、それくらい自分で」

カムイ「お願いします、兄さん……。兄さんにしか頼めないんです……」

マークス「……わ、わかった。わかったから、その甘い声をやめるんだ」

カムイ「え、そうなんですか? 異性の方に服を取ってもらう時はこうした方がいいと、カミラ姉さんから教わったのですが」

マークス「カミラ……」

マークス(なぜだ、怒りよりも多く感じるこの賞賛の感情は……)

マークス「こ、今回だけだ。これでいいか?」

カムイ「はい」

マークス「着替えが終わり次第、議会室に来るように頼む」

カムイ「ええ、わかりました。ふふっ、なんだかまだ顔が赤いみたいですよ、マークス兄さん」

マークス「あ、兄をからかうんじゃない」

カムイ「ふふっ、わかりました」

 ガチャ バタンッ

マークス(……カムイ、思った以上に立派だったな)

マークス(だが、やはりカミラほどではないな)

 スタスタスタ

リョウマニキ…

―クラーケンシュタイン・廊下―

レオン「それでマークス兄さんに起こされたってわけ?」

カムイ「はい。なんとも面目ない話です」

レオン「でも、確かに昨日の掃討戦は大規模だったからね。そのおかげもあって、たぶん生きてきた中で魔物出現率が限りなく低い状況が出来上がってるね」

カムイ「これから先のことを考えると、王都の安全は確実な物にしたいですからね。それを考えたら族も魔物も危険要素に変わりありませんので」

レオン「たしかにね。こう考えると最初の流れから変わってるとはいっても、着実に目指すべきものには近づけてるってことになるね」

カムイ「ええ、それも皆さんのおかげです」

レオン「違うでしょ、姉さんだって今回は頑張ったんだから」

カムイ「そ、そうでしょうか?」

レオン「マークス兄さんから聞いたよ。ガンズとの戦いで、あいつの言葉に揺らされていたって」

カムイ「……ええ。いろいろと曝け出されてしまいましたから……。私の弱い部分を多くを指摘されて戦えないほどになってしまうくらいに。本当に今まで偽ってきたこともあって、情けなくなってしまいますよ」

レオン「でも、その分姉さんは歩み出したんでしょ? なら、今はそれでいいんじゃないかな?」

カムイ「それでいいですか?」

レオン「うん。僕はそう思うよ。それにすぐに変われないことくらい、姉さん自身が良くわかってることじゃないかな?」

カムイ「うっ……それは、そうですね」

レオン「ならもう大丈夫だよ。今までの姉さんは自分がどういう人間なのかをわかってなかっただけなんだから。分からないことはわからない、でもわかってるならもうどうすればいいかわかるはずでしょ?」

カムイ「……たしかにそうですね。はぁ、レオンさんの前ではなかなか立派なおねえちゃんじゃいられませんね」

レオン「立派なお姉ちゃんって」

カムイ「はぁ、レオンさん朝起こしに行く以外に、私にお願いしてくれないじゃないですか」

レオン「あ、あれでも最大譲歩してるんだよ!?」

カムイ「どうしてですか。本当は甘えたいって零したレオンさんはどこに行ってしまったんですか?」

レオン「確かに甘えたいって言ったけど、いつもってわけじゃないよ。それに……」

カムイ「それに?」

レオン「多分、一度いっぱい甘えたら、甘えるのをやめられなくなっちゃいそうで――はっ!」

カムイ「うふふっ」ニコッ

レオン(しまった、口が滑って。ああ、もうっ!!!)

レオン「ちがう、今のは違うから」

カムイ「へぇ、そうなんですか。ふふっ、甘えたら、甘えるのがやめられなくなっちゃいそうなんですか?」ナデナデ

レオン「うわっ、姉さん。なんで頭を撫でて、そんなに撫でないでよ!」

カムイ「ふふっ、本当は甘えたいのに甘えたら歯止めが利かなくなっちゃうからなんて、本当はどんな風に甘えたいんですか?」

レオン「ちょ、ちょっと、耳元でささやかないでくれな――はぅっ」

カムイ「私、結構気になてるんですよ。子供の頃からずっと、ずっとレオンさんがため込んできた甘えたいって気持ちがどういうものなのかなって」

レオン「そ、そんなこと言えるわけが……」

カムイ「ふふっ、言えないようなことなんですか?」

レオン「そ、そんな変なことじゃ……」

カムイ「だったら、今私に頼んでもいいんですよ」

レオン「え?」

カムイ「今、この周辺に気配はありませんから。今ならレオンさんの望むことを一つ叶えてあげられます」

レオン「……」クルクル

レオン(ほ、本当に誰もいない……のか?)

カムイ「安心してください、嘘なんて吐いてませんよ。それで、お姉ちゃんにどんなことをしてもらいたいんですか?」

レオン(ちょ、ちょっとまって、まずい。このままじゃ流され、だ、だめだだめだ。落ち着くんだ、僕。落ち着いて……この状況から抜け出さないと――」

カムイ「レオンさん」

レオン「な、なんだい。姉さ――」

カムイ「おねえちゃんに、いっぱい甘えてくださいね?」

レオン「………」

レオン「……してくれるかな」

カムイ「?」

レオン「抱きしめてほしい……」

カムイ「わかりました」ギュッ

レオン「……姉さん」

カムイ「大丈夫ですよ、誰にも言ったりしません。私はレオンさんのおねえちゃんなんですから」

レオン「ごめん、もっと強くしてもらってもいいかな……」

カムイ「はい」ギュウウッ

レオン「……」

レオン(昔から肩肘張らないで、こうやって甘えられてたら良かったのかな……)

カムイ「ふふっ、レオンさん。体中とっても温かくなってますよ」

レオン「うん、姉さんも温かい」

カムイ「ええ、もう大丈夫ですか?」

レオン「あと少しだけ。少しだけこのままでいいかな?」

カムイ「はい、わかりました。レオンさん」

レオン「うん、ごめん。姉さ――」

カムイ「謝らなくていいんですよ、私が甘えてくださいってそう言ったんですから」

レオン「……そうだったね」

カムイ「ええ、だから大丈夫です」

レオン「……もう大丈夫。ありがとう、姉さん」

カムイ「いいえ、どういたしまして。それじゃ行きましょうか?」

レオン「うん」

 今日はここまでで
 
  レオンもおねえちゃんパワーには敵わなかったよ。

おねえちゃんパワーは人類の持つ力の中でオカンパワーに並ぶ強さを誇るからな

~~~~~~~~~~~~~~~~

―暗夜王国・クラーケンシュタイン『議会室』―

 ガチャ バタンッ

アクア「カムイ、遅かったわね」

カムイ「アクアさん、おはようございます」

カミラ「ふふっ、レオンのことを起こしに行ってたのかしら?」

カムイ「そうですね、レオンさんの奥深くに眠っているものを、先ほど目覚めさせたところですね」

エリーゼ「奥深く眠ってる?」

アクア「カムイ、なんでオーディンみたいな表現を……あれ?」

レオン「な、なんだいアクア?」

アクア「……レオンから少しだけカムイの匂いがするわ」

カミラ「え、本当?」

エリーゼ「そ、そんな匂いするかな?」

レオン「な、何を言ってるんだい、アクア……」

アクア「冗談よ。ねぇ、そうでしょう、カムイ?」

カムイ(なぜかわかりませんが、アクアさんから重たい視線を感じますね……)

マークス「まったく、お前達は朝から騒がしいものだな。一体何があったのだ?」

カミラ「マークスお兄様。アクアがレオンからカムイの匂いがするっていうの。それで、みんな興味津々になっちゃってね」

レオン「カミラ姉さんもやめてよ!」

マークス「ふっ、レオン。別に問題がないなら、憮然としてればいいことだ。それに甘えることに別段問題もないだろう」

レオン「甘えることって……え?」

マークス「やはり通路というのは中々視線が通る場所だ。そうは思わないかレオン」

レオン「」

カムイ「それでマークス兄さん、私たちをここに集めたのは……」

マークス「ああ、今後のことについてのことだ。今、暗夜王国は二分されているが、今後の方針を含めて話をしなければならないと思っていた」

カムイ「なるほど、そういうことですか。わかりました、アクアさん隣の席、よろしいですか?」

アクア「え、ええ。いいわよ」

カムイ「ありがとうございます」

アクア「……」

カムイ「アクアさん、どうしましたか?」

アクア「いいえ、なんでも無いわ……」

マークス「まずは簡単な状況の確認をすべきだろう。われわれとしての暗夜王国、父上が率いる暗夜王国、そして――」

レオン「未だ戦争状態にある白夜王国……だね」

マークス「ああ、私たちの出現はある意味第三勢力と何ら変わりはしない。そして、現在の戦力規模だけで言えば、五分五分と言ったところだろう」

アクア「三勢力ですから三割三分といったところね」

レオン「僕たちは政治的に優位な位置にはいる、それを活かして周辺諸国との繋がりを強くしていくのも手かもしれないけど」

マークス「うむ、あまり時間はない。クラーケンシュタイン陥落の話は父上、いや白夜へ出兵している者たちの耳にも届いていることだろう。父上を乗っ取っている異形神に選択の隙は与えないようにしたい」

カミラ「ということは、お兄様なりに考えていることがあるということよね?」

マークス「ああ、私は暗夜を率いていくことになる。その上で父上とは違う道を歩むつもりだ。だが今の間、多くの公国との繋がりはできうる限り、留めていくことにする」

レオン「いいのかい?」

マークス「……確かに国同士の繋がりは多くあったほうがいいだろう。だが、今この大陸全土は戦いに疲弊している。戦いを望まない小さい集落の者たちを駆り立てるような真似はできない」

レオン「……わかったよ。でも、困ったことがあったりしたらいつでも相談して。力になるからさ」

マークス「もちろんだ。私だけで暗夜を導いていけるとは思っていないのでな。その言葉が私にとって最大の励みとなるだろう」

カミラ「ということは、暗夜王国じゃないことを話すために私たちを集めたということね?」

マークス「ああ、そういうことになる。カムイよ」

カムイ「は、はい」

マークス「これからのことをお前に聞きたい。私はお前を支える剣だ。この意味、理解できるだろう?」

カムイ「……はい」

アクア「カムイ、あなたは……」

カムイ「大丈夫です。それに私の状態をちゃんとみんなにも知ってもらいたいと思いますから」ガサゴソ コトッ

アクア「そ、それは……」

カムイ「これからの話の前に、皆さんへお聞きしたいことがあります。これはアクアさんが私を助けるために私に施してくれた竜石です。皆さんには、これが何色に見えますか?」

アクア「カムイ……」

カムイ「……」

マークス「私の瞳に映った通りに言えばいいのだな?」

カムイ「はい」

マークス「……深い黒といえばいいだろう。暗黒にも似た色をしている」

カムイ「そうですか……」

レオン「これは姉さんの持ってる獣の衝動なだけだ。そんな気にすることなんて」

カムイ「いいえ、これに含まれているのは私の弱さ、獣の衝動なんて言葉は都合のいい逃げの一手です。それに私の弱さは弱弱しいものじゃなくて、こんなに黒くて卑しい逃げの感情でしかないんですよ」

エリーゼ「そ、そんなこと。だって、カムイおねえちゃんはずっと頑張ってきたんだよ? それが逃げるための感情だなんて」

カムイ「いいえ、私は悩んでいてもそれを完全に打ち明けることはしなかった。みんなの意見に耳を傾けて精査するのではなくて、みんなの意見を自分の意見のように扱って悩むことから逃げていたんです。多分、今回も同じように逃げていたら私は終わっていたかもしれません、もう限界だったと思うんです」

カミラ「限界って」

カムイ「あの時、マークス兄さんを助けることを選択していなかったら、シュヴァリエよりもおぞましい形で、私は自分を無くていたかもしれません。ガンズさんの言葉にどこか納得している自分がいたのはわかっています。私は空っぽな剣に色々な物を巻いて戦ってきたのですから」

アクア「そんなことないわ。カムイはいつだって誰かのために――」

カムイ「それをイザナさんに指摘されたんです、アクアさんは知っているでしょう?」

アクア「っ……。そう、だったわね……」

カムイ「アクアさんには色々と支えていただいています。もちろん、まだまだアクアさんには力になってもらいたいですし、私もあなたの力になりたいです。だけど、私はここまでみんなを引き連れてきた責任を負う必要があるんです」

アクア「……カムイ」

カムイ「大丈夫です。あなたとの約束はちゃんと守ります、見つけたらちゃんアクアさんに一番におしえますから」

アクア「わ、わかったわ。ありがとう」

エリーゼ「なんだかアクアおねえちゃんとっても嬉しそうだね」

カミラ「ふふっ、やっぱり妬けちゃうわね。どんな約束をしてるのかしら?」

カムイ「それは秘密です」

カミラ「アクア、今日はお風呂に入りましょう?」

アクア「遠慮しておくわ」

エリーゼ「すっごい笑顔で否定してる!」

マークス「ではカムイ、お前としての意見を聞かせてもらいたい。今後どうするべきかを」

カムイ「はい、私としては白夜との和平を考えています」

エリーゼ「白夜との和平……。じゃあ、白夜との戦争が終わるの!?」

カムイ「ええ、暗夜を救うためだけに私の戦争を始めたわけではありませんから。それにこれ以上の戦いは続けるべきではありませんから」

アクア「白夜との和平……ね」

カムイ「白夜が暗夜のことを良く思っていないのは確かです。ですが、その拗れを永遠に続けていくわけにはいきませんから」

マークス「なるほど。だが交渉の場を何時設ける?」

カムイ「タイミングは今か後かの二択ですね」

レオン「……今か後ね……」

カムイ「一つは、このまま無限渓谷を越えてお父様の部隊を制圧してから白夜との交渉の後。もう一つは今に交渉して共同戦線を構築することでしょうか」

マークス「……そうだな。カミラ、お前はどう思う?」

カミラ「そうね。私はこちらに被害が大きく出ない方がいいと思っているわ。それにサクラ王女に安心してもらいたいもの、私は先に交渉を試してみるべきだと思うわ」

エリーゼ「あたしも同じだよ。これ以上、サクラの故郷が危険にさらされるようなことになってほしくないから」

マークス「わかった。レオン、アクア、お前たちの意見は?」

レオン「正直、白夜がこちらの交渉に乗ってくるかどうかはわからないけど、それは後でも先でも変わらないからね。それに無限渓谷から攻め入ったとして、それが父上たちを本格的な白夜制圧に駆りたてかねない。今はどちらにも敵がいるという状態だから、この均衡状態の間に、交渉はしてみるべきだと思う」

アクア「私もレオンの意見に同じよ。奴が何を考えているのかはわからないけど、どちらにも対処しなくちゃいけない今の状態なら、そう簡単に扇動することはできないはず。なら交渉の席を設けて、試してみる価値はあるわ」

マークス「なるほどな」

カムイ「その、マークス兄さんはどうお考えですか?」

マークス「私も交渉については同意だ。現在の状況を考えるに、無限渓谷から攻撃を仕掛けるのもできるが、こちらの動きは渓谷越しに監視されている。それに、今はまだ物資なども充実し、状況を維持することが出来ているはずだろう。向こうにはマクベスもいる、あれでいて色々と考える男だ。今は存分に考えさせておこう」

エリーゼ「でもでも、考える隙を与えない方がいいって」

マークス「私が気にしているのは悪意に付け込む異形神についてだけだ。マクベスが人間であることに変わりはない。奴も軍人であるならば暗夜にとっての最善を選ぼうと考えるだろう。人という種を亡き者にしようとしている異形とちがい、マクベスには信じる道がある。状況を変えないままならば、その信じる道のために最善手を模索し続けることだろう」

レオン「……確かに、あいつならそうするだろうね……」

カミラ「マクベスのこと、評価してるのね?」

レオン「……あいつは区切りが出来る奴だ。その点が驚異であることに変わりはないからね」

マークス「二つを同時に相手にするという考えは捨てているだろう。マクベスの一手が定められる前に、私達は私たちの目指すべき道へと一歩進もう」

カムイ「では、マークス兄さん」

マークス「ああ、現状での有力手はこれしかないと私も思っている」

カムイ「はい。では、こちらでの役目を終えたら私達はイズモへと戻りましょう」

レオン「それじゃ、これで会議は終わりでいいかな?」

マークス「ああ。カムイ、今後の方針はお前にすべてを委ねることになる、それでいいか?」

カムイ「はい、構いません。私のするべきことだと思っていますから」

マークス「うむ。それと、もう一つお前達に頼みごとがある」

アクア「なに、マークス?」

マークス「今日の夜、父上の書斎前に来てはくれないか?」

カミラ「お父様の……」

エリーゼ「お部屋……」

レオン「兄さん、もしかして……」

マークス「ああ、私は一度探してみたいと思う」

「今はもういない、父上が目指したもの。その道、これまでの道の記憶をな……」

 仲間間支援の状況

●異性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・レオン×カザハナ
・ジョーカー×フローラ
・レオン×サクラ
・ラズワルド×ルーナ

【支援Bの組み合わせ】
・ベルカ×スズカゼ
・ラズワルド×エリーゼ
・ブノワ×フローラ
・エリーゼ×ハロルド
・オーディン×ニュクス
・ベルカ×スズカゼ
・オーディン×アクア

【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
・モズメ×ハロルド
・ギュンター×ニュクス
・レオン×エルフィ
・アクア×ゼロ
・ルーナ×ハロルド

●同性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・リンカ×アクア
・ピエリ×カミラ
・フェリシア×ルーナ
・フローラ×エルフィ
・レオン×ツバキ

【支援Bの組み合わせ】
・ギュンター×サイラス
・ベルカ×エリーゼ
・フェリシア×エルフィ
・シャーロッテ×モズメ
・ピエリ×ルーナ

【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
・シャーロッテ×カミラ
・ピエリ×リンカ
・ピエリ×フェリシア
・ジョーカー×ハロルド
・アクア×ルーナ
・ベルカ×ニュクス
・フローラ×エリーゼ
・カミラ×サクラ
・スズカゼ×オーディン←NEW

○カムイの支援現在状況●

―対の存在―
アクアA
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)

―城塞の人々―
ギュンターB++
(恋愛小説の朗読を頼まれています) 
フェリシアB+
(カムイに従者として頼りにされたい)
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
フローラB
(すこしは他人に甘えてもいいんじゃないかと言われています)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)

―暗夜第一王子マークス―
ラズワルドB+
(あなたを守るといわれています)
ピエリB
(弱点を見つけると息巻いています)
マークスB+→B++
(何か兄らしいことをしたいと考えています)

―暗夜第二王子レオン―
オーディンB+
(二人で何かの名前を考えることになってます)
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)
レオンB→B+
(カムイに甘えてほしいと言われて、いろいろと考えています)

―暗夜第一王女カミラ―
ルーナA
(目を失ったことに関する話をしています)
カミラA
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ベルカC+
(イベントは起きてません)

―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼA
(昔、初めて出会った時のことについて話しています)
ハロルドB
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィB
(イベントは起きていません)

―白夜第二王女サクラ―
サクラB++
(カムイと二人きりの時間が欲しいと考えています)
ツバキB
(イベントは起きていません)
カザハナC+
(イベントは起きていません)

―カムイに力を貸すもの―
シャーロッテB++
(返り討ちにあっています)
スズカゼB
(おさわりの虜になったようです)
サイラスB+
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB
(イベントは起きていません)
モズメC+
(イベントは起きていません)
リンカB
(イベントは起きていません)
ブノワC+
(イベントは起きていません)
アシュラC+
(イベントは起きていません)
フランネルC+
(イベントは起きていません)

 今日はこんな感じで。

 改めて考えると、エリーゼってサクラよりも年下なんだよなって思った。

 この先の展開を安価で決めたいと思います。参加していただけると幸いです。

◇◆◇◆◇
 
 ジョーカー
 ギュンター
 フェリシア
 フローラ
 マークス
 ラズワルド
 ピエリ
 レオン
 ゼロ
 オーディン
 ベルカ
 ハロルド
 エルフィ
 サイラス
 ニュクス
 ブノワ
 シャーロッテ
 モズメ
 リンカ
 サクラ
 カザハナ
 ツバキ
 スズカゼ
 アシュラ
 フランネル

 カムイと話をする人物を二人(支援A以下限定)

 >>344
 >>345

ニュクス

◇◆◇◆◇
 アクア
 ジョーカー
 ギュンター
 フェリシア
 フローラ
 マークス
 ラズワルド
 ピエリ
 レオン
 ゼロ
 オーディン
 カミラ
 ベルカ
 ルーナ
 エリーゼ
 ハロルド
 エルフィ
 サイラス
 ニュクス
 ブノワ
 シャーロッテ
 モズメ
 リンカ
 サクラ
 カザハナ
 ツバキ
 スズカゼ
 アシュラ
 フランネル

 支援イベントのキャラクターを決めたいと思います。
(すでにイベントが発生しているキャラクター同士が選ばれた場合はイベントが進行、支援状況がAになっている組み合わせの場合は下のキャラクターとの支援になります)

 >>346>>347

◇◆◇◆◇
進行する異性間支援の状況

【支援Bの組み合わせ】
・ベルカ×スズカゼ
・ラズワルド×エリーゼ
・ブノワ×フローラ
・エリーゼ×ハロルド
・オーディン×ニュクス
・ベルカ×スズカゼ
・オーディン×アクア

【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
・モズメ×ハロルド
・ギュンター×ニュクス
・レオン×エルフィ
・アクア×ゼロ
・ルーナ×ハロルド

 この中から一つ>>348
(会話しているキャラクターと被ってしまった場合は、その一つ下のになります)
 
◇◆◇◆◇
進行する同性間支援

【支援Bの組み合わせ】
・ギュンター×サイラス
・ベルカ×エリーゼ
・フェリシア×エルフィ
・シャーロッテ×モズメ
・ピエリ×ルーナ

【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
・シャーロッテ×カミラ
・ピエリ×リンカ
・ピエリ×フェリシア
・ジョーカー×ハロルド
・アクア×ルーナ
・ベルカ×ニュクス
・フローラ×エリーゼ
・カミラ×サクラ
・スズカゼ×オーディン

 この中から一つ>>349

 このような形でよろしくおねがいいたします。

すみません、タイミング早かったです

ラズワルド

カムイとの話はニュクスラズワルドで良いんだよな?
ルーナ

オーディンは覚醒ペアと支援ないのか…
オデン

フランネル

アクアオーディン

ベルカスズカゼが二つあるよ

安価を勘違いしてました

指定内ならベルカ×エリーゼ

◇◆◇◆◇
―暗夜王国・兵舎―

オーディン「……困った」

ルーナ「何困ってんのよ。あんたらしくないわね」

オーディン「ルーナ、共に悠久の時を越えし選ばれし者よ。ここで俺に語りかけたのは必然ということだ」

ルーナ「悠久って大げさに言ってくれるわね」

オーディン「大げさってわけでも無いだろー。とにかく、お前に頼みたいことがある」

ルーナ「ふーん。まぁ、聞くだけ聞いてあげるわ。それで困ってることってなんなわけ?」

オーディン「ああ、この鮮血戦器・ブラディマリーについてのことだ」

ルーナ「ただのキルソードでしょ?」

オーディン「……ブラッディマリーだ」

ルーナ「それで、そのキルソードがどうしたのよ?」

オーディン「いや、その、訓練兵に一人、俺と同じく深淵の道を歩みし者を見つけた。今日、その者に教えを請われた。この鮮血戦器・ブラディマリーに相応しい必殺技、その伝授の方法についてな」

ルーナ「……そっ、それじゃ失礼するわね」

オーディン「ちょ、ちょっとまてーい!」

ルーナ「なによ、そういう必殺技なんて、あんたの独壇場じゃない。あたしが手伝う必要なんてないでしょ」

オーディン「た、確かに必殺技は考えているんだが。その……演出がどう頑張っても一人じゃできそうにないんだ。だから手伝ってくれよぉ」

ルーナ「演出って……はぁ、名前だけ渡して『時が来れば剣が応えてくれる』みたいな事を言えばいいんじゃないの?」

オーディン「それがそうもいかなくてな」

ルーナ「どうしてよ?」

オーディン「だってよぉ、必殺技の伝授なんだぜ!? 雰囲気って重要だろ。そいつも、やっぱり天候が関係あるんですか、日実はとか……供物の準備は必要なのか色々と聞いて来て――」

ルーナ「それにポンポンポンポン答えて、一人じゃ準備できなくなったわけね」

オーディン「……はい、そうです」

ルーナ「はぁ、わかったわよ。今回はあんたの遊びに付き合ってあげるわ」

オーディン「ほ、本当か!」

ルーナ「ええ、その代り、あたしの装備品を一つ残らず整備してくれる。中々多くて手が回らないのよね」

オーディン「それは買い過ぎてるからじゃ……」

ルーナ「なんか言った?」

オーディン「なんでもない、ふっ、では契約成立だ、ルーナ」

ルーナ「はいはい」

【ルーナとオーディンの支援がCになりました】

◇◆◇◆◇
―暗夜王国・小さな湖―

オーディン「それっ!」

 チャッ チャチャチャチャチャチャッ パチャンッ

オーディン「ど、どうだ!」

アクア「及第点ってところかしら」

オーディン「これで及第点って厳しすぎないか?」

アクア「物事は厳しく見た方がいいものよ。でも、変な言葉を入れなくなった分、記録は伸びたわね」

オーディン「変な言葉じゃない。あれは俺の力を増幅するものであってだな」

アクア「そうね。あなたにとってはおまじないみたいなもののようだし」

オーディン「御まじない、アクア様の歌みたいなものですか?」

アクア「一緒にはされたくないけど。そうね、歌は今私が使ってる御まじないね」

オーディン「今?」

アクア「ええ、昔は嫌なことがあったりしたら、こうしてたわ」ポイッ
 
 ボチャンッ……

アクア「嫌だったことを水面に見立ててね、石を投げつけていたのよ。虐めてきた人のこととか、気に入らなかったこととか。昔は声を出して歌うことはあまりしなかったの、それを聞かれることさえも嫌がられていたから」

オーディン「アクア様」

アクア「一緒に石を投げてくれる人もいなかった。この遊びに気づいた時、本当の意味で一人になってたのかもしれないわ」

オーディン「一人、何を言っているんですかアクア様」

アクア「え?」

オーディン「スプラッシュプリンセス・アクア。この漆黒のオーディンに技を与えしもの、つまり俺達は師弟の契約を結んでいる。、故に一人では無い」

アクア「……何を言ってるの?」

オーディン「だ、だから、その俺も今一緒に遊んでるんです。一人なんかじゃありません。それに、俺も一緒に遊んでるのにそんな一人で遊んでるみたいなこと言わないでくださいよ。悲しくなるじゃないですか」

アクア「……ふふっ」

オーディン「な、なんで笑うんですか!?」

アクア「いいえ、ごめんなさい。こうして一緒に遊んでるのに、なんだか距離を取るような発言をして」

オーディン「良いんですよ。それに今のうちだけです。すぐにアクア様の記録を越えてみせます。弟子が師を越えるのは王道ですからね」

アクア「ふーん、言ってくれるわね。それじゃ、本気を出して相手をしてあげないと」

オーディン「え?」

アクア「オーディン、横に立って私と同時に投げて見て。格の違いを見せつけてあげるわ」

オーディン「お、お手柔らかにお願いします……」

アクア「ふふっ」

【オーディンとアクアの支援がAになりました】

◇◆◇◆◇
―暗夜王国・エリーゼ邸―

エリーゼ「それでね、ここのケーキなんだけど、とっても甘くておいしいんだ」

ベルカ「ええ」

エリーゼ「ここのはね、チョコレートのほろ苦さに混じってるナッツの香ばしさがマッチして、とっても食べやすいんだよ。ベルカってカッコいいから気に入ってくれるかなって思って!」

ベルカ「そう」

エリーゼ「それと、それとね」

ベルカ「ねぇ、エリーゼ様」

エリーゼ「ん、どうしたの。ベルカ」

ベルカ「どうして私にこんなに良くしてくれるの?」

エリーゼ「え、なんでって……」

ベルカ「それになんだか、私にケーキを食べさせるのことだけが目的のように思えないから、どうしてと思って」

エリーゼ「え、えーっとなんのことかなー」

ベルカ「……」

エリーゼ「……その、えっと」

ベルカ「……」

エリーゼ「ご、ごめんなさい。その、やっぱり嫌だったよね……」

ベルカ「いいえ、嫌というわけじゃない、それに怒っているわけでもないわ」

エリーゼ「?」

ベルカ「エリーゼ様が奨めてくれるケーキはとてもおいしい、カミラ様の準備してくれるものに引けは取らないわ」

エリーゼ「……そう言ってもらえるととっても嬉しいよ」

ベルカ「だから、エリーゼ様が私に何を求めてるのかわからなくて困っている」

エリーゼ「その、ベルカってあんまり笑顔見せてくれないなって……。だからベルカもおいしいケーキいっぱい食べたら笑ってくれるかなって、思って……」

ベルカ「エリーゼ様……ありがとう」

エリーゼ「そ、そんな、お礼を言われることじゃないよ。ごめんね」

ベルカ「ううん、色々と考えてくれてありがとう。でも、ごめんなさい、笑うのは苦手、無理に笑おうとするとこうなってしまうから」クワッ

エリーゼ「うわ、こわいこわいよ!」

ベルカ「ごめんなさい。ねぇ、エリーゼ様、一緒にケーキ、食べましょう?」

エリーゼ「え、だ、大丈夫だよ。これはベルカのために用意したものなんだから」

ベルカ「私だけじゃ、食べ切れないから。それにエリーゼ様と一緒にケーキを食べたい。駄目?」

エリーゼ「だ、駄目じゃないよ!!! それじゃ、お互いに食べっこしよ。あ、お皿が足りない、用意するからちょっと待っててね! えへへ~」

 タタタタタッ

ベルカ「……ふふっ」

【ベルカとエリーゼの支援がAになりました】

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・王都ウィンダム『中央広場』―

カムイ「……ここら一体の整備は終わったみたいですね。昨日までの魔物討伐の甲斐もあって、多く人が歩けるようにはなったようですし……」

カムイ(夜にお父様部屋でしたね。しかし、異形神ハイドラがガロン王の痕跡を残しているのかどうか、わからないところですけど……)

カムイ「情報が手に入るのであれば、今のうちに得ておくべきでしょう」

 ヨーシ、スコシズツイクゾー!
 ハイ!

カムイ「多く人が集まっていますが、確か暗夜竜の像があった場所。そう言えば昨日、ニュクスさんが解体指揮に当たっているんでしたね、ちょっと寄っていきますか」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

新生暗夜軍「ニュクス様、こちらの宝玉を使用してもよろしいんでしょうか?」

ニュクス「ええ、これで離れていても情報のやり取りができるはずよ。あまり遠すぎると出来なくなってしまうとは思うけどね」

新生暗夜軍「いえいえ、それにしてもこれは素晴らしいものです。ありがとうございます」

ニュクス「そう言ってもらえると助かるけど、まだ改良が必要だから。終わったら返却をお願いね」

新生暗夜軍「もちろんです。よし、俺たちも取り壊しの作業に取り掛かろう。ニュクス様、何かありましたら連絡しますので、対応よろしくお願いしたします」

 タタタタタッ

ニュクス「……これですべきことは大方終わったわね。これほど大掛かりな魔法具、とてもじゃないけど今の技術では作り上げることは出来ないはずだけど、一体誰が作り上げたのかしらね?」

カムイ「ニュクスさん、どうしたんですか。なにか考え事でも?」

ニュクス「あら、カムイ。もう歩いて大丈夫なの? 昨日の討伐の疲れがまだ残っていると思うのだけど……」

カムイ「確かに少し疲労はあります。でもこうして歩かないと体が鈍ってしまう気がして。それに像の解体指揮をニュクスさんがとっていると聞きましたので様子を見に、進行具合はどうなってるんですか?」

ニュクス「大方の準備は終わったから、本格的な解体作業に入る予定……と言っても、これが完全に解体されるまでウィンダムにいられるとは思っていないけど」

カムイ「暗夜竜の像、とても恐ろしい魔法具でしたね」

ニュクス「ええ、正直どうやって作られたのか、皆目見当が付かない存在ね」

カムイ「ニュクスさんにも皆目見当が付かないんですか?」

ニュクス「ええ、でもそれでいいのかもしれないわ。こんなもの、この先の時代で誰かが思いつくまで、闇に眠っていればいい存在よ。正直、永遠に眠っていた方がいいと思えるほどにね」

カムイ「ニュクスさんにそこまで言わせるんですね」

ニュクス「そういうものを作りだしたことがあるからかもしれないわ」

カムイ「え?」

ニュクス「私が犯した罪は知っているでしょう。その中でいくつも禁忌と呼ばれる魔法を作り上げてきた。相手を殺すためだけに使う、そんな魔法をね……」

カムイ「相手を殺すためだけですか」

ニュクス「ええ、暗夜竜の効果事態は王都防衛に対して絶大な効果を持っている。けど、今回のことで印象が殺戮と畏怖だけになってしまった。この先、どんなことがあっても悪いことにしか使われない技術よ。だからある意味、どんなに研究しようとも理解できないことが救いかもしれないわね」

カムイ「……そう考えると、白夜竜の像も暗夜竜の像と同じ仕掛けなのかもしれませんね」

ニュクス「白夜竜の像?」

カムイ「ええ、暗夜の者たちが白夜に攻め入ってこないよう、結界を張り巡らせるというものでした」

ニュクス「そう、もしかしたらその像の出自も、こちらの像と同じなのかもしれないわね」

カムイ「すでに壊されてしまいましたから、それを探ることはできそうにありませんね。それより、先ほどの話ですが」

ニュクス「私の作りだした魔法についてよね?」

カムイ「はい、私としてはニュクスさんが使うのであれば存在を消す必要などなかったのではないかと思うんですが」

ニュクス「ふふっ、確かに私が使う分には問題ないかもしれないけど、その禁忌をこの体になったあとに使ったことは一度もなかったわ。私が生み出したものはね、使うだけで人々の恨みを募らせるものだから」

カムイ「使うだけでですか?」

ニュクス「ええ、だから私はその術を全部消し去った。誰にも理解されないように、誰も使えないように。その結果かしら私についての伝承は『禁忌のダークマージ・ニュクス』なんていう、子供に言い聞かせるための怖い話みたいなものになったのよ」

カムイ「怖い話。怖い話というのは?」

ニュクス「悪いことをしないように子供に言い聞かせるものよ。嫌いな物を食べないでいるとニュクスに食べられてしまうとか、夜更かしする悪い子はニュクスに攫われてしまうとか、そういうものよ。一度、陽気な飲んだくれにその話をされた時は、笑うのを抑えるので精いっぱいだったけど」

カムイ「不思議なものですね。自分のことがそのように伝わっているというのは」

ニュクス「ええ、私が犯した罪はもっと酷くおぞましいものだというのにね」

カムイ「ニュクスさんはそれを悔いているんですよね。でしたら、もう許されてもいいと思いますよ」

ニュクス「悔いたからと言って、それが許されるかどうかはわからないものよ。世界に誰か一人でも、それを許さないものがいたとするなら。それは永遠に許されないことよ」

カムイ「永遠なんてこの世には無いと思います。その場に留まっていることなんて、たぶんできないことなんだと思います。私も歩きださなければ、終わっていたように、現状のままというわけにはいかないと思うんです」

ニュクス「若いのによく言うのね?」

カムイ「若いからかもしれません。人は長く生きすぎると、考えから動けなくなってしまうらしいですから」

ニュクス「それは遠まわしに私が老けてるって言っているみたいに聞こえるわ」

カムイ「ふふっ、そんなことないですよ。だって、こうやって御凸を摩ると」スリスリ

ニュクス「ひゃっ、んっ、か、カムイ!」

カムイ「こんなに可愛くて甘い声をあげちゃうじゃないですか」

ニュクス「こ、これは体の成長が止まってるだけで、んやっ、ふひぃんっ」

カムイ「撫で撫ですると体をくねらせて、本当にニュクスさんの御凸は敏感ですね。ずっと前に触ったのに体はしっかりと覚えてくれてるから、とっても楽しい」

ニュクス「そ、そんなこと、な、な…ひゃふんっ、んくっ、ふああああっ」

カムイ「……ふふっ、体中熱くなってますよ、一体どうしたんですか?」

ニュクス「あ、あなたが私の……んっ、そこばっかり、さわっては……ううんっ」

カムイ「そこって、なんだか抽象的ですね。いらぬ誤解を与えてしまうじゃないですか」

ニュクス「なら、やめなさ…いいっ!!! んああっ。もうっ、やめてぇ」

カムイ「そうですね。あと三十回くらい触れたら、解放してあげますよ。久しぶりですから、少し歯止めが利きません」

ニュクス「そ、そんな、そんなに触られ続けたら、だめ、子供、子供に戻っちゃう……からぁ」

カムイ「いいじゃないですか。子供になっても、ちゃんと私が面倒をみますよ。だから安心してくださいね?」ピトッ シュッシュ

ニュクス「んやっ、うええん。カムイ、いじめ、いじめないでぇ」

新生暗夜軍「えっと、ここはどうすればいいんだ? すまないが、ちょっとニュクス様に訪ねてくれるか?」

新生暗夜軍「はい、わかりました。これに声を掛ければいいんだよな」ゴソゴソ

新生暗夜軍「すみません、ニュクス様。一つご質問が、よろしいですか?」

 ザーザザッ

ニュクス『ふあっ、いやっ、爪たて、立てないで、たてないでぇ……』

カムイ『柔らかいですよ、ニュクスさん。とってもすべすべしてて。触れる度に体がピリってして、ふふっ、体は子供なのに反応はとってもいやらしいなんて』

新生暗夜軍「……」

新生暗夜軍「ニュクス様はなんと?」

新生暗夜軍「……」

新生暗夜軍「どうしたんだ?」

新生暗夜軍「……」

ニュクス『ひゃんっ、はぁ、んっ、はぁ、んんうっ……こんなのだめ、そこ、いじめないで、いじめないでぇ。ふああああんっ!!』

カムイ『ふふっ、あと三回ですよ?』

ニュクス『さ、三回も、耐えられない。耐えられないからぁ。もう、許して、許してカムイ、カム、んっ、はぁはぁ、だめ、そこ、中心だめ、だめぇ…』

新生暗夜軍「……」

新生暗夜軍「どうしたんだ、お――」

新生暗夜軍「静かにしてください」

新生暗夜軍「へっ?」

新生暗夜軍「今いいところなんです……」

~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・中央通り―

ラズワルド「カムイ様、少しは人の顔を触る場所は考えた方がいいですよ?」

カムイ「あそこは構造的に死角でしたから、問題ないと思ったんですけど」

ラズワルド「ニュクス、死にそうなくらい顔を赤くしてましたよ。それに、なんか暗夜竜の周りで作業していた人たちが、カムイ様とニュクスを見る目がおかしかった気がします」

カムイ「たしかに、少し変な物を感じましたね」

ラズワルド「少しっていうか、かなりおかしいものだった気がするんですけど」

カムイ「ふふっ、今度ニュクスさんに会った時、謝っておかないといけませんね。部屋でいっぱいしましょうって」

ラズワルド「今度は裸足で逃げ出していきそうですね」

カムイ「逃がしませんけどね。やはり、まだ閑散としていますね。この中央通りの周辺はまだまだというところでしょうか」

ラズワルド「うん、地下街のほうはだんだんと活気を取り戻しつつあるみたいだけど、表はそううまくいかないみたいだから。ああっ!」

カムイ「どうしたんですか」

ラズワルド「はぁ、ここの喫茶店の女の子、とっても可愛いんだ。だけどしばらくの間は休業みたいだね。あーあ、イズモに戻る前に一度顔を見たかったなぁ」

カムイ「ふふっ、ラズワルドさんらしいです」

ラズワルド「それに、ここにカムイ様とお茶に来たかったんです。この前、考えてくれるって言ってくれたので、ウィンダムの件が終わったらと思ってたんだけど」

カムイ「ふふっ、そうでしたね。でも、まだ返事はしてませんよ」

ラズワルド「考えてくれるってことは、八割方、大丈夫って思ってますよ、僕は」

カムイ「前向きですね、ラズワルドさんは」

ラズワルド「カムイ様も前向きですよ。だって歩みだされたんですから、あの戦いの最中で……」

カムイ「ええ、すみません。いろいろと心配させてしまいました」

ラズワルド「気にしないで。それに、やっぱりカムイ様はそういう柔らかい表情が似合ってます。とっても素敵ですよ」

カムイ「素敵……ですか?」

ラズワルド「うん、前みたいに悩んでるカムイ様は見てて辛かったから。それをどうにかできない自分にも腹が立っていたんです」

カムイ「そうですか……。でも、あの戦いの前にあなたに話ができて、私は良かったと思います。本当にありがとうございます、ラズワルドさん」ニコッ

ラズワルド「あ、えっと、こちらこそ……」

カムイ「ですから、そのお礼も兼ねて一緒にお茶でもどうですか?」

ラズワルド「え、いいんですか!?」

カムイ「はい。でも、今回は私からのお誘いですので。ラズワルドさんの勝利記録にはなりませんよ?」

ラズワルド「手厳しいですね」

ラズワルド「うっ、なんかそう言われると、負けたみたいでなんか嫌だな。でも、カムイ様とお茶できるなんて夢みたいだね。それにカムイ様から誘ってもらえるなんて」

カムイ「夢じゃありませんよ。こうすれば――」ギュッ

ラズワルド「うわっ、カムイ様。いきなり手を取らないでくださいよー。びっくりしちゃうじゃないですか」

カムイ「いいじゃないですか。それに、こうすれば夢じゃないってわかりますから」ググッ

ラズワルド「カムイ様?」

カムイ「すみません。まだまだ私は未熟です。こうして歩み出したことが夢なのではないかと思ってしまうんです。すみません、まだまだ弱い私のままで、このように縋ってしまって」

ラズワルド「いいえ、そんなことないですよ。カムイ様ここまで立派に戦ってこれたんですから。それに、ちゃんと歩み出すことが出来てるんです、それは夢なんかじゃありません。カムイ様が自分の意思で選んだことだから……」

カムイ「ラズワルドさん」

ラズワルド「大丈夫です。それにカムイ様が心細いと言ってくれるなら、いつでもあなたの手を握ってあげます。君がそれを望むなら、いつでもどこでも、僕にできることの一つがそれなんですから」

カムイ「……ふふっ」

ラズワルド「な、なんですか。またいきなり笑って」

カムイ「だってラズワルドさん、前と同じように告白みたいな言葉なので。そんなに何回も多様してると、女の子に軽い人って思われちゃいますよ」

ラズワルド「ひ、ひどいですよ。カムイ様」

カムイ「でも、ラズワルドさんにそう思っていただけて、私はとても嬉しいです。前まではそれを受け止めることを恐れていましたけど、今はそれをちゃんと受けとめたいってそう思います。ラズワルドさんの私を思ってくれる心、とっても温かく感じますよ」

ラズワルド「な、なんだか恥ずかしいよ。こうやって面と向かって言われると」

カムイ「ふふっ、私と話をするといつもラズワルドさんは照れてばかりですね」

ラズワルド「そ、それはカムイ様が……。はぁ、なんだかんだでカムイ様は変わりませんね。そういうところは」

カムイ「ふふっ、それじゃ。行きましょうかラズワルドさん」

ラズワルド「えっと、どこにですか?」

カムイ「今私が使っている部屋です。御茶しましょうって言ったじゃないですか。大丈夫です、おさわりはしませんから」

ラズワルド「え、いきなり部屋って……」

カムイ「はい、ジョーカーさんにおいしい紅茶を淹れてもらって、そこでお話をしましょう?」

ラズワルド「……わかってたけど、なんだか腑に落ちないなぁ」

カムイ「ふふっ、二人だけのお茶はちゃんとラズワルドさんからお誘いしてくださいね。私は待っていますから」

ラズワルド「はい、わかりました。カムイ様」

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・クラーケンシュタイン『ガロン王の書斎』―

 ガチャ ギィィィ バタンッ
 ボッ

マークス「……ここに入るのは何年振りだろうか?」

レオン「僕が記憶して限りだと、十年ぶりくらいになるかもしれないね」

エリーゼ「あたし、入ったことないから昔はどうなってたのかわからないけど、これって」

カミラ「ええ、そうね。ここ数年は使われた形跡がないわ。埃もすごいことになっているし、寝具も穴だらけ、とてもお父様の部屋とは思えないわ」

アクア「……体を操られていたから、眠ることも必要なかったんでしょう。あれはもう動く屍と変わらないものだったようだから」

カムイ「色々なものが乱雑に置かれているようですね。これはベッドですか……」

マークス「まずはその資料から探ってみるとしよう。レオン明かりを灯してくれるか」

レオン「わかったよ」

 ボウ ボウッ ボウッ

カムイ「私には何が置いてあるかは理解できてもどういうものかはわかりませんね」

カミラ「確かに目が見えないカムイには資料を探すのは無理というものね。お姉ちゃんたちが探してる間、カムイは少し休んでて」

カムイ「すみません、お役に立てなくて」

エリーゼ「ううん、カムイおねえちゃんが気にすることじゃないよ。だけど、これって数年以上前の物なんだよね。役に立つのかな?」

マークス「父上の書斎は許可がない限り入ってはならない、それに命令の伝達の多くは王の間で行っていたこともある。だがエリーゼの言う通り、ほとんどがすでに終わったことばかりのようだ」

レオン「そうだね、ここで得られる資料は多くの人間でも目を通せることばかりだ。ハイドラがすでに手を回してそういった資料を捨て去ったのかもしれない」

カミラ「となると、ここを探しても意味はないということかしら?」

エリーゼ「うう、お父様……」

アクア「……お母様についても何か残っているかもしれないと思ったけど、ほとんどが役に立ちそうにないものばかりね」

マークス「結局、空振りということか……。すまない、何かあると思ったのだが……」

カムイ「……?」

アクア「カムイ、どうしたの?」

カムイ「この暗幕……」バサーッ

エリーゼ「これって、武器?」

マークス「父上のコレクションだろう。幼い頃、私もよく見せてもらっていたものだ」

レオン「僕も記憶にはあるかな?」

カミラ「私もあるわね。たしか、一番奥にブリュンヒルデとジークフリートが飾ってあったはずだけど……」

カムイ「この先ですか」バササー

エリーゼ「あれ?」

アクア「まだ、ジークフリートとブリュンヒルデがあるみたいね」

カムイ「それぞれ二本ずつ、存在しているというのですか?」

マークス「それはないと思うが……」

 ガチャッ パラパラパラパラッ

レオン「いや、これは贋作みたいだね。外見はかなり精巧に作られてるけど、中身は何もない空っぽだ。メモを取るくらいしか使い道はないよ」

 ガチャッ ブンッ ブンッ

マークス「こちらもだ。重さもすべて同じだが神器としての力はどこにも感じない。それに剣というよりは芸術品というべきものかもしれないな」

エリーゼ「ねぇ、贋作って何?」

カミラ「そっくりの偽物のことよ。だけど、なんでこんな偽物をお父様は作ったのかしら?」

エリーゼ「何も納まってないのが気になったからかな?」

アクア「そうね、もしくはこうしておく理由があったのか……」

レオン「……もしかして」

マークス「レオン?」

レオン「マークス兄さん、ここに本物のジークフリートを置いてくれないな?」

マークス「ああ、わかった。これでいいか?」

 ガシャンッ

マークス「何も起きないな?」

レオン「……」

 ボウッ

エリーゼ「あ、見て壁が!」

カミラ「薄く光ってるみたいね」

マークス「これは……」

レオン「予想通りだね、あとはここに僕のブリュンヒルデを置いて……」

 ガチャンッ ボウッ

 ボッ ボッ ボッ ボボボボボッ

カミラ「炎が何かを描いて……これは……」

アクア「暗夜の紋章?」

 ガシャンッ ガシャンッ ズゴゴゴゴッ

エリーゼ「な、なに今の音……」

カムイ「ベッドの下からのようですね」

マークス「レオン、そちらから押してくれ」

レオン「わかったよ兄さん。いくよ、せーのっ!!」

 ズサー ズサー ズサー ゴトンゴトン

 ビュオオオオッ

エリーゼ「なにこれ、階段だよね? あっ、風の音も聞こえる……」

カミラ「隠し通路……。脱出用のものかしら?」

マークス「いや、父上は逃亡という選択肢を取る人ではなかった。これはそう言ったものではないのだろう」

レオン「贋作が入ってたのは、ここを開かせないためだったのかもしれないね」

カミラ「だけど、とても暗い場所みたい。風が来ているということは空気に問題はなさそうだけど……」

アクア「進んでみるほかないわ。なにか罠があるかもしれないけどね」

カムイ「ここは私が進みます」

マークス「危険ではないのか?」

カムイ「構造なら私の方が把握するのは容易いです。それに、このまま調べずに行くことなんてできないでしょう?」

マークス「ああ、その通りだ。ラズワルド、ピエリ、中に入れ」

 ガチャ

ピエリ「はーいなの!」

ラズワルド「お呼びですか、マークス様……。って、これなんですか!?」

ピエリ「すごいの、床に大きな穴があいてるの! 風の音、ビュービュービュービュー聞こえるのよ。ビュービュー、ビュービュー、すっごく大きいの!」

ラズワルド「ぴ、ピエリ。そんなこと言っちゃ駄目だよ!」

カミラ「もう、ピエリ駄目よ。そんなはしたないことを言っちゃ」

ピエリ「二人ともどうしたの?」

エリーゼ「あたしも、なにか問題があったのかな?」

ラズワルド「いえ、エリーゼ様は気にしなくて大丈夫です」

マークス「二人とも、私達はこの床下に入ろうと思う。ピエリはカムイと共に先頭を、ラズワルドは後方から従順しランプで明かりを確保して欲しい」

ラズワルド「わかりました」

ピエリ「わかったの! カムイ様、ピエリが一緒に歩くから問題ないの。ビュービューからも守ってあげるのよ」

カムイ「はい、よろしくおねがいしますね。ピエリさん」

マークス「それでは行くとしよう」

 カツンッ カツンッ カツンッ

 ヒュオオオッ

ピエリ「先が真っ暗で怖いの」

カムイ「大丈夫です。この先におかしな場所はないようですから、足元はそれほど崩れていません」

アクア「所々に通風用の細工が施されているみたいね。音は大きいけど、それほど強い風は来ないみたい」

マークス「このようなところがあるとはな」

レオン「後方は明るくなってきたけど、結構降りたよね?」

カミラ「そうね。一体どこまで続いているのかしら?」

アクア「まるで地獄に進んでいるようね」

エリーゼ「あ、アクアお姉ちゃん。こ、怖いこと言わないでよ!」

ラズワルド「あながち冗談じゃない気もしてきました、マークス様」

マークス「ラズワルド、縁起でもないことを言うな」

 カツンッ カツンッ

カムイ「ん?」

ピエリ「カムイ様、どうしたの?」

カムイ「いえ、この先で階段は終わりのようです」

ピエリ「あっ、扉があるの!」

マークス「ピエリ、頼めるか?」

ピエリ「任せてなの。カムイ様、少し下がってるのよ」

カムイ「はい、おねがいします」

ピエリ「……いくの」

 ガチャッ ギイイイイィィ

 カツンッ カツンッ

ピエリ「誰もいないの」

カムイ「特にこれと言った罠の気配もないようですね。ピエリさん、明かりをつけられるようなところはありますか?」

ピエリ「えっと、あったの。これを差し込んで……できたの!」

 ボウッ ボウッ ボボボボッ

エリーゼ「書斎より大きい場所だね……」

カミラ「そうね。だけどさっきよりも埃が積まれてるから、書斎よりも前に使用されなくなったところなのかもしれないわ」

マークス「ここで父上は一体何を……」

レオン「奥に暗幕があるみたいだけど」

カムイ「私が取り外してきます」

アクア「また武器でも置いてあるのかしら?」

エリーゼ「さっきと同じことするのかな?」

マークス「わからない。そちらはカミラ達に任せる。レオン、私達はここの資料を」

レオン「わかったよ」

ピエリ「カムイ様、手伝ってあげるの!」

カムイ「すみません、ピエリさん。それじゃ向こうのを引いてください」

ピエリ「わかったの、えいっ!」

 バサササーッ
 バササササーッ

ピエリ「……これ、なんなの?」

カムイ「ピエリさん?」

カミラ「ピエリ、なにがあって……!!!!」

エリーゼ「え、ま、まさか、これ、これって……」

マークス「なにがあった。カミラ、エリーゼ……。なっ」

レオン「……そういうことなんだね」

カムイ「み、皆さん、何を見ているんですか!?」

アクア「カムイ」

カムイ「アクアさん、何があるんですか? 教えてください、ここに一体何が……」

アクア「……正直、どこかで体は乗っ取られているだけだと思っていた。だから、こうして見せつけられると恐ろしいことだと思えて来るわね」

カムイ「どういう意味ですか?」

アクア「カムイ、そこには死体があるのよ」

カムイ「死体、ですか……?」

アクア「ええ、もう骨になっているけど。外装から誰かは理解できるわ」

カムイ「誰なんですか? その死体の人物っていうのは……」

アクア「決まっているでしょう。唯一ここに、今まで入り込めていた人物は一人しかいないでしょう?」

カムイ「……もしかして、そこで死んでいる人というのは……」

エリーゼ「……」

レオン「……」

カミラ「……」

アクア「……」

マークス「このような形で、あなたの亡骸を見つけることになるとは思ってもいなかった―――」





「暗夜王……いえ、父上……」

仲間間支援の状況

●異性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・レオン×カザハナ
・ジョーカー×フローラ
・レオン×サクラ
・ラズワルド×ルーナ
・アクア×オーディン←Aになりました

【支援Bの組み合わせ】
・ラズワルド×エリーゼ
・ブノワ×フローラ
・エリーゼ×ハロルド
・オーディン×ニュクス
・ベルカ×スズカゼ

【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
・モズメ×ハロルド
・ギュンター×ニュクス
・レオン×エルフィ
・アクア×ゼロ
・ルーナ×ハロルド
・ルーナ×オーディン←NEW

●同性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・リンカ×アクア
・ピエリ×カミラ
・フェリシア×ルーナ
・フローラ×エルフィ
・レオン×ツバキ
・ベルカ×エリーゼ←Aになりました

【支援Bの組み合わせ】
・ギュンター×サイラス
・フェリシア×エルフィ
・シャーロッテ×モズメ
・ピエリ×ルーナ

【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
・シャーロッテ×カミラ
・ピエリ×リンカ
・ピエリ×フェリシア
・ジョーカー×ハロルド
・アクア×ルーナ
・ベルカ×ニュクス
・フローラ×エリーゼ
・カミラ×サクラ
・スズカゼ×オーディン

○カムイの支援現在状況●

―対の存在―
アクアA
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)

―城塞の人々―
ギュンターB++
(恋愛小説の朗読を頼まれています) 
フェリシアB+
(カムイに従者として頼りにされたい)
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
フローラB
(すこしは他人に甘えてもいいんじゃないかと言われています)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)

―暗夜第一王子マークス―
ラズワルドB+→B++
(あなたを守るといわれています)
ピエリB
(弱点を見つけると息巻いています)
マークスB++
(何か兄らしいことをしたいと考えています)

―暗夜第二王子レオン―
オーディンB+
(二人で何かの名前を考えることになってます)
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)
レオンB+
(カムイに甘えてほしいと言われて、いろいろと考えています)

―暗夜第一王女カミラ―
ルーナA
(目を失ったことに関する話をしています)
カミラA
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ベルカC+
(イベントは起きてません)

―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼA
(昔、初めて出会った時のことについて話しています)
ハロルドB
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィB
(イベントは起きていません)

―白夜第二王女サクラ―
サクラB++
(カムイと二人きりの時間が欲しいと考えています)
ツバキB
(イベントは起きていません)
カザハナC+
(イベントは起きていません)

―カムイに力を貸すもの―
シャーロッテB++
(返り討ちにあっています)
スズカゼB
(おさわりの虜になったようです)
サイラスB+
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB→B+
(許されることとはどういうことなのかを考えています)←NEW
モズメC+
(イベントは起きていません)
リンカB
(イベントは起きていません)
ブノワC+
(イベントは起きていません)
アシュラC+
(イベントは起きていません)
フランネルC+
(イベントは起きていません)

今日はここまでで
 
 色々とミスが多くてすみません。
 今後は二つレスを使用しての安価の場合は、その有無を書こうと思います。

 こういうくぼみに何かを入れて隠し通路が出現するギミックはロマン

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・クラーケンシュタイン『ガロンの書斎・隠し部屋』―

マークス「書斎で待機していてもらえるか?」

ピエリ「わかったの、何かあったらすぐに呼んで欲しいのよ」

マークス「すまない。それとここで見たことについてだが……」

ラズワルド「分かっています、安心してください」

マークス「ありがとう」

 バタンッ

マークス「レオン、遺体の状態はどうなっている?」

レオン「軽く調べてみたけど……全身の水分という水分がなくなってる意外に目立った外傷もない。ここで衰弱死したって考えてもいいけど、そうなると僕達が見てきた父上は一体なんだったんだろう?」

カミラ「そうね。だけど、ここにお父様がいたのなら、私たちの見てきたお父様は全て偽物だったということ?」

エリーゼ「それはないよ! だってあの時、おとうさま、ちゃんとあたしのこと助けてくれたし、みんなのことちゃんと覚えてたもん!」

アクア「奴にしてみれば、エリーゼを生かしておく必要はなかったはずだから、あそこで助けることもなかったはずよ」

カムイ「では、偽物でもないとすると一体……」

アクア「考えるにも、なにも手がかりがない状態だと」

カムイ「確かにその通りですね……」

レオン「いや、手がかりが全く無いってわけじゃないみたいだよ」

カムイ「どういうことですか、レオンさ――」

レオン「これだよ」

 ドサッ

マークス「レオン、これは?」

レオン「父上が残した手記、多くは魔法具について書かれているみたいだけど、その中でこれだけは違うね」

 ペラッ

マークス「ふむ、日誌のようなものか。だが、毎日記録をしていたというわけではないようだ」

レオン「そうだね。あっ、ここに王妃が亡くなったことが書かれてる」

カミラ「とても落ち込んでいたのね、お父様。ここからの手記のほとんどは事務的なことばかりになっているもの」

マークス「気落ちしているような素振りは見せていなかったが、それが父上の強さだったのかもしれないな」

エリーゼ「だけど、ほんとうに真白なページばっかり……」パラパラパラパラッ

マークス「む、エリーゼ、今のページに戻してくれ」

エリーゼ「うん、ここ?」

カミラ「事務的な文面は変わらないみたいだけど。ここから先は文字の量が多くなってるみたいね?」

レオン「ここで何かあったっていうことかな、えーっと何々?」

―今日の未明、正門に亡命者が現れた。シェンメイと名乗る歌姫とその子供の二名。
 現在は兵舎にて身柄を拘束している。どこの国からの亡命者かは明かしていない、注意深く動向を探るべきだろう―

マークス「これは、シェンメイ王妃が暗夜にやってきた日のことか?」

レオン「みたいだね。この子供っていうのは……」チラッ

アクア「ええ多分私のことよ。予想通りといえるけど、やっぱり最初はガロンにもこう思われていたのね」

カミラ「たしかにね。エカテリーナ王妃が亡くなった傷も癒えてない最中だもの、いろいろと勘ぐってしまってもおかしくないわ」

レオン「亡命。そういえば、アクアはどういう経緯で暗夜にやってきたんだい?」

カミラ「そうね、私も気づいた時にはアクアがいて、お父様の子供と思っていたから気にしたこともなかったから」

アクア「ごめんなさい、あまり覚えていないのよ。お母様もそのことについては教えてくれなかったから……」

エリーゼ「そうなんだ……。生まれた場所がどこかわからなくて辛くないの?」

アクア「ふふっ、心配してくれてありがとうエリーゼ。でも今は皆がいてくれるから大丈夫、寂しくなんてないわ」

カムイ「ですが、こんな警戒しているお父様に、シェンメイさんはどう近づいて行ったのでしょうか?」

アクア「それは………どうしたのかしら? 想像できないわね」

マークス「ふむ、それも気になるところだ、次に移るとしよう」

レオン「うん」ペラッ

―驚くほどに胆の座った女だ。
 わしの前に至ってなお、気品と清楚さ、何よりも臆しないその態度、ただの亡命者とは思えないものを感じる。
 歌姫という身分も偽りであろう。奴の要求はアクアと共に静かに過ごせる場所、それ以外は何も要らないと言っていた。
 質素なものだと周りの者たちは感心していたが、わしの目は誤魔化せん。奴は何か大きな目的を持ってここに来たのだろう。
 少しばかり泳がせて、奴の動きを探ることにしよう。とても尻尾を出すような尻軽には思えぬが、暗夜で何かを企てようと考えているのであれば、死を持ってその愚かな行いを悔やませてやる―

レオン「……なんていうか、お父様の趣味がわかってくるね」

マークス「そうだな、母も胆の座った女性であった。気品にあふれるというよりは、女戦士と言った方がいいタイプであったかもしれない」

カミラ「でも、アクアのお母様への疑惑は膨れ上がるばかりだったみたいね」

アクア「……なんだか、不安になってきたわ」

エリーゼ「だ、大丈夫だよ。そ、それにおとうさまはアクアおねえちゃんのおかあさまのこと愛してたんでしょ?」

アクア「それはそうだけど、一緒にいるところを見たこともなかった。すべてお母様の話だけだったもの」

カムイ「不安ばかりが膨らみますから、今は考えないことにしましょう」

マークス「しかし、尻尾を見せない相手を前に、あの父上がただ待っているだけとは到底思えん」

レオン「そうだね。しばらくの間はシェンメイの動向について書かれてる。歌を歌ったり、城の雑務を手伝ったり、アクアとのんびり過ごしていたりとかか。でも、これといったあやしい行動を取っているわけじゃないみたいで、父上も地団駄を踏んでいたみたいだね」

カミラ「だとすると、このままの流れを続けるなんてこと、お父様が選ぶわけないわよね?」

マークス「ああ。だとすると……これだな」

レオン「だね。シェンメイを自室に呼び出したみたいだ。父上らしいというか、なんというか……」

カミラ「直々に呼びだしなんて、他の妃が嫉妬したでしょうね

エリーゼ「でも、ここのページ、なんだか変だよ?」

アクア「何が変なの?」

エリーゼ「えっと、ここの部分なんだけど、なんかさっきまでと書き方が違う気がする」

マークス「……」

―彼女を監視しているうちに、どうやらわしは取り込まれてしまったようだ。彼女の歌声を聴くたびに心が躍動するのを感じる。あの歌声にわしは絡み取られてしまったのだ。今日、間近で歌を聞いて理解した。わしは心揺らされているのだと―


マークス「こ、このような文字を父上が」

レオン「なんだか筆が軽やかだね。滑るように書いたみたいだ」

カミラ「あまり想像できないわ」

エリーゼ「アクアおねえちゃんのお母様って、歌が上手だったんだね」

アクア「ええ、とてもね」

カムイ「お父様を魅了するほどの歌声ですか、一体どんなものだったんでしょうね」

レオン「それじゃ、次に移るよ」

―今日もシェンメイの歌を聞いた。聞けば聞くほどにシェンメイの姿が脳裏をよぎるようになる。
 エカテリーナを失い、新しい妃など得ようと思わなかったわしとは思えないほどだ。
 シャンメイは不思議な女だ、芯が強いというのに儚げに思えてくるのだ―

エリーゼ「なんだか読んでると、くすぐったくなっちゃうね///」

カミラ「とてもお熱だったのね、お父様」

レオン「なんだか、父上の印象と異なりすぎて頭が混乱してきたよ」

マークス「そうだな」

アクア「………」

カムイ「アクアさん、どうしたんですか?」

アクア「いいえ。なんでもないわ。次に進めてくれる?」

エリーゼ「うん、わかったよー」

 グッ ジャランッ

カムイ(これはペンダントの音?)

アクア「……」

―シェンメイを部屋に呼び、ここへと招いた。
 昔、作り上げた秘密の部屋だと告げればおかしそうに笑う。
 なぜかと問えば、こんなものを見せたがるので子供みたいですという。青いペンダントと共に揺れるその笑顔が記憶に残った。
 あの笑顔だけは、彼女の着飾らないものなのだと思うと心が温かくなるのを感じた。
 何年もの間、このような感情を忘れていた気がする。シェンメイの歌を聞くたびに心がどこか晴れていくような、そのような気持ちになるのだ―

カムイ「晴れていくよう……ですか」

カミラ「初恋を思い出していたのかもしれないわね」

エリーゼ「初恋って、思い出せるものなの?」

レオン「どうだろうね、僕にはわからないけど」

カミラ「そうよね、レオンは初恋中だもんね?」

レオン「そ、そういうことを言うのやめてくれないかな!?」

マークス「しかし、こうも仲が進んでいくとは、何とも複雑な気持ちになってくるものだ」

アクア「……」

マークス「アクア、どうした?」

カムイ「もしかして、シェンメイさんが記憶とは違う人物だということで、悩んでいるんですか?」

アクア「そういうわけじゃないわ。それにガロンの手記を見る限り、その通りの人よ。今のところは……」

カムイ「アクアさん、大丈夫ですか?」

アクア「大丈夫よ……」

カムイ「嘘ですね。先ほどからペンダントを不安そうに握ってるみたいじゃないですか」

アクア「あっ……」ジャランッ

カムイ「アクアさん、何を怯えているんですか?」

アクア「………感付かれてないと思っていたんだけど、気付かれてたのね」

カムイ「あなたが心配なんです、どうかしたんですか?」

アクア「……私も知らなかったことがあると思うとね」

アクア「この問題に関して私は全てを知っているつもりだった。だから、この先に何があるのかわからないことに、怯えているのよ」

カムイ「……」

アクア「ごめんなさい。みんなに打ち明けられることを打ち明けたのに、また押しつけるようなことになってしまって……」

カムイ「謝ることじゃありませんよ。それに怖かったら手を伸ばして、私達と繋がってください。ペンダントでもいいですけど、となりにいる私たちのことも遠慮なく頼ってください」

エリーゼ「うん、アクアおねえちゃん、大丈夫だよ。あたしも一緒にいるからね!」

アクア「……ありがとうエリーゼ」

レオン「まったく、僕たちのこと少しは信用してよね」

カミラ「そうね。そんな風に壁を作られちゃうと、おねえちゃん悲しくなっちゃうから」

マークス「どんな出来事があろうとも、乗り越えられる。アクア、お前が私たちを信じてくれるならな」

アクア「……そうね、ごめんなさい。続けてくれるかしら、レオン」

レオン「わかったよ」

レオン「だけど、しばらくの間はシェンメイが王妃になったことに関して触れてるだけで、他にこれといったことは起きてないみたいだよ」

マークス「このまま、何事もなく行けばよいが、そういうわけではないだろう」

 ペラッ ペラッ ペラッ
 トンッ

レオン「カミラ姉さん?」

カミラ「そうみたいね。残念だけど、ここまでかしら?」

マークス「どういうことだ?」

カミラ「ここから、話が変わるみたいよ。シェンメイ王妃からお父様に直接アプローチがあったみたいね……」

―シェンメイが明日部屋に来る、話があるということだ。
 現在、無限渓谷を含めた停戦ラインに関する話をあげている最中ではあるが、彼女のためになら時間を作ろう。彼女は多くを話してはくれない、いずれその時が来てくれればと思う。
 この暗夜に何をしにやってきたのか、それを教えてくれるのではないかと期待している。
 彼女の力になれるのであれば、これ以上に嬉しく思うことなどないのだ―

レオン「確かに今までは父上からシェンメイ王妃に何かしら話をしていたみたいだし、それに無限渓谷の停戦ラインっていうのは……」

マークス「ああ、白夜との戦争に一つの区切りを迎えさせるためのものだったはずだ。まさかこの時期に議題が上がっていたというのか……」

カムイ「つまり、ここで何かが起きたということですね……」

アクア「そういうことになるわね。お母様は一体何を……」

レオン「確認するしかないよ。それじゃ次に進むよ……」

 ペラッ

―昨日のことは靄が掛っているように感じる。
 シェンメイの言葉の意味が理解できていなかったからかもしれない。
 だが彼女が言うには、わしにはもうそれが入り込んでいるのだという―

―その者が何者であるかを彼女は答えなかった。
 答えなかったが、それは確かにわしの中にいるのだと彼女は言い、それはいずれわしを喰い殺すという。
 シェンメイのペンダントが輝き、歌が響くたびにわしの中にシェンメイが溢れてくるのは、埋め合わせているからだと彼女は言う―

―シェンメイは言っていた。
 わしが抱いているシェンメイへの感情は偽りであり、それを利用していたと。
 そうしなければいけなかったのだと言っていた。その思いはただの仮初で、本心故のものではないのだと―

―シェンメイは今まで見たことがないほどに泣き出し、わしに謝罪していた。
 世界を救うために、わしという人間の心を弄んだと吐露し、涙を流すその姿を見ていられなくなった―

―優しく抱きしめてやればシェンメイは静かに石を取り出し、
 わしにこれを持つことを進めてきた。シェンメイはそれをわしが持つことを望んでいた。
 これであなたは守られるから、これを身に付けてほしいとも言っていた。半透明の奇麗な石を持つようにと―

―その時の返答だけはちゃんと頭に残っている。
 わしは守れる側では無い、その者が誰かは知らない、この思いが偽りであろうとも関係はない。だから、これは振り回される者に与えるべきものだと。
 石を押し返し、わしはシェンメイを抱いた。
 あの石がなんであるかはわからない。わからないままでいい、わしには必要のないものだ―

―そして夢の中にそれは現れた……
 わしの形をした、わしのように感じる、わしではない存在―

―今、こうして筆を執っているからこそわかる。
 あれがシェンメイの言っていた奴なのだろう。
 あれがわしを喰い殺す存在なのだろう。
 あれが……シェンメイの倒すべき敵なのだろう。
 それにわしは屈するつもりはない……―

―どのような手を使ってでも、こいつを殺してみせよう。暗夜王の名の下に―

 今日はここまでで

 あのペンダントの効能って実はこういうものなんじゃないかという感じの話。
 シェンメイは世界のためなら命すら投げ出す、そんなタイプの女性だと思う。

マークス「自分と同じ姿をした、自分でないものか……」

レオン「シェンメイ王妃の言葉通りに捉えれば、かなり前に奴が父上の中に入り込んでいたみたいだね……」

アクア「ええ、それにお母様は気づいていた。ガロンが認めていない心の隙間、それをお母様は歌の力を使って埋めていたのかもしれないわ。だけど、ガロンが本当にお母様を愛していたかは……」

カムイ「お父様がシェンメイさんを愛していたのかどうか、それを考えても仕方ありませんよ。もう、確かめる術はないんですから」

カミラ「それに、アクアのお母様もお父様のことを救おうと動いてくれた。それだけは間違いないこと。だから、それ以外のことを考える必要はないのよ」

アクア「そうね、ごめんなさい」

カムイ「いいんですよ。それにしても異形神はこんなにも前に糸を張り巡らせていたんですね」

レオン「あまり頑張ってほしくないことだけどね。だけど、シェンメイ王妃の言葉を紐解くと何かしらの保険があるみたいだったけど」

マークス「この石のことか」

カミラ「これがどんなものなのかはわからず仕舞いね。だけど、これであなたは守られるっていうのはどういう意味なのかしら?」

カムイ「それはわかりませんが、お父様は押し返したみたいですね」

マークス「ああ、守られることを父上は良しとしなかったということだ。どんなことがあろうとも守られるわけにはいかないという、そういう思いだったのだろう」

エリーゼ「でも、負けちゃったんだよね。おとうさま……」

アクア「どんな人間にも弱みはあるということよ。それはガロンだって例外じゃない。特にそれを認められなかった分、気付けなくなってしまうものよ」

カミラ「そうね……。誰しも、認めたくないもののはずよ」

アクア「ええ。それを責めることはできないわ」

マークス「レオン、他には何か書かれているか?」

レオン「いや、これ以上のことは書かれてないみたいだ。奴の存在を気にして、書くことをやめたのかもしれない。だけど、父上がこの戦争に一つの終わりを迎えさせようとしていた時に、奴が絡んできたことに間違いはないね。白夜との停戦ラインは確かに確立されていたんだから」

カミラ「停戦ね。もしかしたら、私たちも争うことなく出会っていたかもしれないわ」

カムイ「そうですね。でも、それを考えても仕方ありません。今考えるべきもしもはこのさっきのことであるべき……そうですよね、マークス兄さん」

マークス「ああ。われわれの方針は変わらない」

エリーゼ「マークスおにいちゃん、おとうさまが死んじゃってることをみんなに知らせようよ。そうすれば、みんな偽物の言うことなんて聞かなくなるはずだよ!」

マークス「エリーゼ……。すまないが、父上が死んでいるということを表向きに発することはできない」

エリーゼ「ど、どうして!? だって、ここにおとうさまはいるのに」

レオン「父上が死んでいることを表に出せば、白夜侵攻部隊に亀裂が生じるかもしれない。それを聞いてエリーゼの言うとおり離反者が出る可能性もある。だから、本来ならすぐに公表するべきことだよ」

エリーゼ「だったら、どうして……」

レオン「戦争をどうにか終わらせるためだよ」

エリーゼ「どういうこと?」

レオン「僕たちの敵は異形神だよ。だけど、それを言ったところで事情を知らない人間が信じるわけない。白夜を長年に渡って攻撃してきた事情がどうであろうとも、指導者がそれを行ってきたことは覆せないようにね」

エリーゼ「あ……」

レオン「僕たちが王都を手に入れた。だけど、ここで父上が亡くなっていたことを公表すれば、僕たちはその悪意を背負うことになる。白夜にとっての倒すべき相手を変えさせちゃいけない」

マークス「奴には最後まで父上でいてもらう必要がある。暴君としての父上でいてもらわなくてはならない。白夜とわれわれにとっての敵として……。これがどういう意味かはわかっているつもりだ」

エリーゼ「……」

カムイ「エリーゼさん」

エリーゼ「ううん、だいじょうぶだよ。カムイおねえちゃん……。わかってる。おにいちゃんもおねえちゃんも、本当はおとうさまにこれ以上悪いことをさせたくないって、もう休ませてあげたいって思ってることも。だけど、そうできないんだよね……」

カミラ「ええ」

マークス「エリーゼ、父上をわれわれで送ってあげよう。父上が作り上げた暗夜をわれわれが引き継いでいく、それにこのまま父上を置いて行くことはできない」

エリーゼ「うん、おとうさま喜んでくれるかな?」

カミラ「大丈夫、きっと喜んでくれるわ。だって、お父様はエリーゼのことをとても大切に思ってくれていたんだから」

エリーゼ「えへへ、そうだとうれしいな……」

マークス「私は準備に取り掛かる。カミラ、父上を運ぶ作業を手伝ってくれるか?」

カミラ「そのつもりだから、安心してちょうだい」

エリーゼ「あ、あたしも手伝う!」

マークス「エリーゼ……。ではお願いできるか?」

エリーゼ「うん、まかせて!」

マークス「上からシーツを持ってくる、すまないが待っていてくれ」

 ガチャ バタンッ

レオン「……」

アクア「レオン、どうしたの?」

レオン「いや、父上の姿形を奪ってるわりに、こうやって暗夜王都を簡単に明け渡しているのはなんでかなって思って。暗夜を内部で分裂させて争いを助長させるのが目的だとしても、なんだか腑に落ちない」

カムイ「まだ何か手を考えているということですか?」

レオン「いや、手を考えているに決まってはいるはずだよ……。このままいけば、戦争は終わりを迎える。奴がどういう存在なのかはわからないけど、奴が望むのは戦争の長期化だった。だとすれば、王都を僕達が襲撃する可能性だって見越していたと思うんだ」

カムイ「あえて取らせたということですか?」

レオン「考えたくないけどね。そう考えてみると、奴はまだ遊んでるだけなのかもしれない」

カムイ「遊んでいるですか……」

レオン「僕達がどう動くのか、見て楽しんでいるだけに過ぎないんじゃないかって。戦争を長く続けることや、人々の間に軋轢を生み続けるには現在の暗夜の状況は好都合なはず。それをあえて、崩せる状態を作りあげたんじゃないかって」

アクア「この暗夜王都防衛の配置は、あえてされたものと考えてるわけね?」

レオン「ああ、何か意図的に僕達が攻められるように仕向けたように感じられる」

アクア「意図的に……ね」

カムイ「ですが、今の状況的優位は変わりませんよ」

レオン「優位という点ではね。でも、勝利しているわけじゃない。全体的に見たら、僕たちはようやく一歩相手に近づいたくらいなんだから」

アクア「レオンはこのことも織り込み済みと考えているのね」

レオン「安心するにはまだ早いっていうのが僕の判断だよ」

アクア「勝って兜の緒を締めよという言葉あるわ」

カムイ「?」

アクア「成功したからと言って気を緩めず、一層引き締めなさいっていう意味よ」

カムイ「兜ですか、レオンさん、それはいったいどういうものなんですか?」

レオン「こっちのヘルムみたいなものだよ。と言っても姉さんが付けることはないと思うけどね」

カムイ「なんですか、私はいつも気が抜けてるって言いたいんですか?」

レオン「そういうわけじゃないから」

アクア「私は気が抜けてると思うけど?」

カムイ「アクアさんは酷い人ですね」

レオン「今は悩んでも仕方無い、それにすでにするべきことは決まってるんだ。父上を弔って、僕たちにできることをするために戻らないといけない。そうじゃなければ、暗夜王都を手にした意味がなくなるからね」

カムイ「ええ」

◆◆◆◆◆◆
―暗夜王国・北の城塞『広場の離れ』―

 ボワッ ボウウウウウッ

エリーゼ「これで、おとうさま。天国に行けたのかな?」

カミラ「ええ、ちゃんと行けたはずよ。だから心配しないで」

エリーゼ「うん」グスッ

マークス「……」

レオン「……」グスッ

エリーゼ「レオンおにいちゃんも、泣いてるの?」

レオン「そ、そんなわけ……」

カミラ「こんな時に意地を張ることはないわ。泣きたかったら泣きなさい。それがお父様のためにもなるんだから」

レオン「カミラ姉さん……ごめん。少しだけ、まだ父上が生きているのかもしれない、そう思っていたから……」

マークス「私もだ。心のどこかで父上は戻ってきてくれる、そう思っていた。いや、思っていたかった」

エリーゼ「……うん。ほんとうにさよならなんだね……」

カミラ「ええ……。本当に思い通りにいかないものね……」

マークス「だからこそ、私達はこんなにも生きることをに必死になっているのかもしれない。自分の得たい結果を得るために……」

 ボウウウウウッ

カムイ「……」

アクア「皆と一緒じゃなくていいの?」

カムイ「アクアさん……。私はあそこにいてはいけませんから」

アクア「どうして?」

カムイ「皆さんの中に混じられるほど、私にはお父様への思いはありません。そんな私が入っていい場所ではありませんから。アクアさんは行かなくていいんですか?」

アクア「あなたと同じようなものよ。私のお父様もガロンじゃない、だから気持ちを共有することはできないわ」

カムイ「そうですか」

アクア「でも、こうしてあなたがいてくれるから、少しだけホッとしているわ……」

カムイ「私もです。どんなに寄り添おうとしても、絶対にそこに至れないものというものはありますからね……。私達が兄妹という強い絆を持っていても、ガロン王を本当のお父様と思うことは、もうできませんから」

アクア「ええ、そうね……」

カムイ「ところで、アクアさんは先ほどから何を考えられていたんですか?」

アクア「え?」

カムイ「そんな感じがしたんです」

アクア「ふふっ、ちょっとお母様のことを考えていたのよ」

カムイ「シェンメイさんのことですか?」

アクア「ええ……。ちょっと思うことがあってね」

カムイ「その……」

アクア「?」

カムイ「あまり、私が言っていいことかはわかりませんけど。アクアさんにとってシェンメイさんが素敵なお母様であったらなら、それでいいのではないでしょうか?」

アクア「……」

カムイ「アクアさんが信じているシェンメイさんのことを信じ続けることが、一番大切なことじゃないかと思うんです。こうして書かれていたとしても、アクアさんのことを大切にしてくれたシェンメイさんの姿が変わるわけじゃありません。ですから――」

アクア「ふふっ」

カムイ「?」

アクア「ごめんなさい。珍しく困ったような顔をあなたがするから、大丈夫、そういうことを思っていたわけじゃないの」

カムイ「では、一体何を?」

アクア「お母様は本当に強い人だったんだと思ったの。私と一緒にいる時は何時も笑顔で支えてくれて、怖いことがあって眠れない夜は耳元で子守歌を歌ってくれて……。私の髪を愛おしく撫でてくれる。そんな人だったの」

カムイ「素敵な人ですね」

アクア「私の前ではお母様は、ずっといつものお母様だった。何時見ても私に向ける笑顔は優しくて、それが私は大好きだった。笑顔の陰で戦っていたなんて、私は全然気付けなかった。それがとても悔しいの」

カムイ「仕方ありませんよ。シェンメイさんはアクアさんに心配を掛けたくなかったんです。亡命のこともあって、これ以上不安を与えないようにと考えて、そうしたんでしょう」

アクア「……だとしても、話してほしかった。お母様が悩んでいるのなら、力になってあげたかったから」

カムイ「アクアさんに思われて、シェンメイさんは嬉しく思ってるはずですよ。子供に思われるというのは、親にとってとても素晴らしいことだと私は思いますから」

アクア「そうかしら?」

カムイ「そうですよ。それに比べたら、私の慰めなんて太刀打ちできそうにありませんから」

アクア「そんなことないわ。あなたが声を掛けてくれて、こうして思ったことを口に出して、それを聞いてもらえる。こんなにうれしいことはないの」

カムイ「そんな大げさですよ」

アクア「いいえ、誰かが隣で私の大切なお母様の話を聞いてくれる。それだけでも尊いことなのに、その相手があなたであることがとてもうれしいの」

カムイ「私なんかでいいんですか?」

アクア「ええ、あなただから」ピトッ

カムイ「アクアさん?」

アクア「あなただから、私はこうして話をできる。それに、もしかしたら……」

カムイ「もしかしたら、なんですか?」

アクア「……」

カムイ「……」

アクア「ふふっ、何を言おうとしていたのか忘れちゃったわ」

カムイ「えぇ、ここまでひっぱて置いてそれはないですよ……」

アクア「うふふ」

カムイ「はぁ。でもここから先のことが、うまく行くといいですね」

アクア「大丈夫。もう、あなたは歩み始めた。どんな道筋だったとしても、必ずそこに至れるわ」

カムイ「どんな道筋だとしても、ですか……」

アクア「ええ、あなたの道はあなただけの道だから。それにあなたの道は私の道でもあるのよ?」

カムイ「そう言われると照れてしまいます。アクアさんの言葉はなんだかポカポカしてて、くすぐったいです」

アクア「ねぇ、私のことが頭に浮かんだりすることはある?」

カムイ「え、そうですね。さすがに見たことがないので難しいかもしれません」

アクア「それもそうね……。ごめんなさい」

カムイ「なんで謝るんですか? それとも、そうなったほうがアクアさんは嬉しいんですか?」

アクア「な、何を言い出すの。調子に乗らないで」

カムイ「ふふっ、ごめんなさい」

アクア「……がんばりましょう、この先も戦いが終わるまで」

カムイ「はい、戦いが終わるまで一緒に……」

カムイ(理想と目的の挟間にある私の道は真黒なのでしょう。でも、私はその道を進むと決めてここにいる。今までその暗闇から離れていた。思いだせば単純でしたね。私が掴んだのは光じゃなくて暗闇だったんですから)

カムイ(その暗闇の中をもがいて進むことが私の選んだ道で、そこでなければいけないんですね。私が至る道というのは……)

◇◇◇◇◇◇
―白夜王国・シラサギ城『ヒノカの部屋』―

セツナ「……」

ヒノカ「んっ、ううんっ……セツナ」ギュッ

セツナ「……大丈夫ですよ。ヒノカ様、私はここにいます……」

ヒノカ「……スゥスゥ」

セツナ「……?」

アサマ『セツナさん、起きていますか?』

セツナ「起きてる。どうしたの、アサマ?」

アサマ『すみませんが、二人でお話をと思いまして……』

セツナ「ここじゃ駄目?」

アサマ『はい、できれば……』

セツナ「そう、わかった」バサッ

 シュルルッ キュッ

セツナ「……」チラッ

ヒノカ「スゥー スゥー」

 スーッ スーッ バタンッ

セツナ「アサマ、夕方ぶり」

アサマ「はい。すみません、ヒノカ様のことをすべて任せてしまって」

セツナ「いい。アサマにだって辛いことくらいある」

アサマ「その言い方では、まるで私が辛いことなど何もない、畜生のようだと言っているようです」

セツナ「少し前まではそう思ってた。アサマはいつも顔色が変わらない」

アサマ「それでは仏頂面の者たちは、皆辛いことなどないことになってしまいますよ」

セツナ「うん、でもアサマはそうじゃないってわかったから」

アサマ「……はぁ。あなたのような人に感づかれるとは、私も修行が足りませんね」

セツナ「修行したらどうにかなるなら、私にも教えてほしい。それをヒノカ様に教える」

アサマ「……セツナさん」

セツナ「ヒノカ様、すごく苦しんでる。この頃、求めてくる回数も増えてきた」

アサマ「……」

セツナ「もう、頻度なんてわからない。だけど、私はタクミ様より弓がうまいわけじゃないから、こういうことでしかヒノカ様を支えられない。それでヒノカ様が安心してくれるなら、それで私は構わない。でも、このままでヒノカ様が良くなるとは思えない、だから……」

アサマ「ふふっ」

セツナ「?」

アサマ「いえいえ、今の私たちの姿を元のヒノカ様がご覧になったら、何を言うのかと思いましてねぇ」

セツナ「今日は槍でも降るのかとか、そういうことを言うのかな?」

アサマ「いえいえ、何か企んでいるのではと勘繰られるのが関の山ですね」

セツナ「……そうかも」

アサマ「……あの方は脆い、それをお守りしようと気づいた時にはもう遅かったというのが、私が唯一神の前で告げる罪になるでしょう」

セツナ「アサマ、疲れてるの? そんなこと言うなんて」

アサマ「ははっ、たぶん疲れているのでしょう。すぐに話を終えて休みたいところです」

セツナ「……それでアサマ。話っていうのはなに?」

アサマ「いいえ。もう答えはもらったようなものですので。ですが、ここまでお呼びしたので、一応はお聞きしておこうかと」

セツナ「?」

アサマ「セツナさん、私はヒノカ様のためにこの命を掛けるつもりです。この先、暗夜の攻撃が増し、刃がヒノカ様に達しようものなら、その前の壁にでもなるつもりですよ」

セツナ「アサマ。それは私も同じだよ」

アサマ「そうですね。それはわかっていました。ですが、私のお話はそれとは違う頼みごとです」

セツナ「頼みごと?」

アサマ「はい、私からあなたに頼みたいことです。正直、私が望むことはこれくらいしかありませんので」

セツナ「まずは言って、そうじゃないと返事ができないから」

アサマ「そうでしたね。私があなたに頼みたい約束というのは」

アサマ「―――――」

セツナ「……」

アサマ「以上です。頼まれていただけますか?」

セツナ「……うん、いいよ。アサマから頼まれるなんて、私も成長したってことだよね?」

アサマ「本当にわかっているんですかね?」

セツナ「わかってる。だから安心して、私とアサマだけの約束だから……」

アサマ「助かりますよ、セツナさん」

 ギィ ギィ

ヒノカ「セツナ、セツナどこに――。アサマ?」

アサマ「おはようございます、ヒノカ様」

セツナ「ヒノカ様、駄目ですよ。ちゃんと服を来てください、風邪引いちゃいます」

ヒノカ「あ、すまない」

アサマ「まだ夜は明けてませんので、ゆっくり御休みになってください」

ヒノカ「んんっ、アサマも一緒に寝よう」

セツナ「それは駄目」

ヒノカ「ん。セツナ?」

セツナ「ヒノカ様の布団は私の特等席、指定席だから」

アサマ「ふふっ、仕方ありません。ヒノカ様、またいずれということにしましょう」

ヒノカ「そうか、わかった……」

アサマ「では、これで失礼ます。セツナさん、ちゃんとヒノカ様を部屋まで送ってくださいよ」

 タッ タッ タッ

ヒノカ「……アサマは私と寝るのが嫌なのだろうか?」

セツナ「照れてるだけ。アサマもヒノカ様のこと大好き。私が保証します」

ヒノカ「そうか。嬉しい」

セツナ「それじゃ、ヒノカ様部屋に戻りましょう。冷えますから」

ヒノカ「ああ。セツナ……部屋に戻ったら……」

セツナ「……はい」

 ギィ ギィ ギィ

~~~~~~~~~~~~~~~~

―シラサギ城『リョウマの部屋』―

リョウマ「そうか……」

サイゾウ「確認は取れていませんが、すでに噂は流れています」

リョウマ「暗夜王都で謀反、それが成功した。確かにイズモ公国からお前が持ち帰った情報通りなら、これを成し得たのはカムイたちか」

サイゾウ「そう考えるのが妥当かと思います」

リョウマ「わかった。それより体のほうは大丈夫なのか、カゲロウ」

カゲロウ「はい。ですが、以前のように動くことはできなくなってしまい、申し訳ありませぬ」

リョウマ「お前が生きて帰ってきてくれただけでも俺は嬉しい。それにあの傷だ、無理に戦うことはないんだぞ?」

カゲロウ「いえ、まだリョウマ様の戦いは終わっておりませぬ。その戦いが終わった時が、私もただのカゲロウに戻るときです」

リョウマ「……すまない。それでサイゾウ。その謀反の件、強硬派も感づいているのか?」

サイゾウ「それは間違いないかと……」

リョウマ「……わかった。今日はこれで終わりとしよう。二人とも、御苦労であった。下がって休め」

サイゾウ・カゲロウ「御意」

 ササッ

リョウマ「カムイは進むべき道を進み始めたということか……。暗夜の地で、お前はお前の道を……」

リョウマ「……わかっていたというのにな」

「俺ではそこには至れない。それをこうも付きつけられてしまうことになるなんでな……」

 十九章 おわり

今日はここまでで

 ガロンとシェンメイって、NTRな関係だなっておもった。

 次から休息時間に入りますので、安価のほう参加していただけると幸いです。
  
◇◆◇◆◇

 ジョーカー
 ギュンター
 フェリシア
 フローラ
 マークス
 ラズワルド
 ピエリ
 レオン
 ゼロ
 オーディン
 ベルカ
 ハロルド
 エルフィ
 サイラス
 ニュクス
 ブノワ
 シャーロッテ
 モズメ
 リンカ
 サクラ
 カザハナ
 ツバキ
 スズカゼ
 アシュラ
 フランネル

 カムイと話をする人物(支援A以下限定)

 >>404
>>405

 まだ続きます

◇◆◇◆◇

 アクア
 ジョーカー
 ギュンター
 フェリシア
 フローラ
 マークス
 ラズワルド
 ピエリ
 レオン
 ゼロ
 オーディン
 カミラ
 ベルカ
 ルーナ
 エリーゼ
 ハロルド
 エルフィ
 サイラス
 ニュクス
 ブノワ
 シャーロッテ
 モズメ
 リンカ
 サクラ
 カザハナ
 ツバキ
 スズカゼ
 アシュラ
 フランネル

 支援イベントのキャラクターを決めたいと思います。

 >>406>>407
(すでにイベントが発生しているキャラクター同士が選ばれた場合はイベントが進行、支援状況がAになっている組み合わせの場合は下のキャラクターとの支援になります)

◇◆◇◆◇
進行する異性間支援の状況

【支援Bの組み合わせ】
・ベルカ×スズカゼ
・ラズワルド×エリーゼ
・ブノワ×フローラ
・エリーゼ×ハロルド
・オーディン×ニュクス

【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
・モズメ×ハロルド
・ギュンター×ニュクス
・レオン×エルフィ
・アクア×ゼロ
・ルーナ×ハロルド
・ルーナ×オーディン

 この中から一つ>>408
(会話しているキャラクターと被ってしまった場合は、その一つ下のになります)
 
◇◆◇◆◇
進行する同性間支援

【支援Bの組み合わせ】
・ギュンター×サイラス
・フェリシア×エルフィ
・シャーロッテ×モズメ
・ピエリ×ルーナ

【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
・シャーロッテ×カミラ
・ピエリ×リンカ
・ピエリ×フェリシア
・ジョーカー×ハロルド
・アクア×ルーナ
・ベルカ×ニュクス
・フローラ×エリーゼ
・カミラ×サクラ
・スズカゼ×オーディン

 この中から一つ>>409

 このような形でよろしくお願いいたします。


ラズワルド

支援A以下ってことはAはセーフってことになっちゃうぞ
サクラ

ニュクス

ガロンが有能
ベルカ

オデンルーナ

ピエリ×ルーナ

◇◆◇◆◇
―暗夜王国・北の城塞―

ニュクス「ベルカ、少しいいかしら?」

ベルカ「!?」

ニュクス「身構ないで、別にこの前のことをどうこう言いたいわけじゃないから」

ベルカ「……なに?」

ニュクス「ちょっと、悪い気配を感じたからね」

ベルカ「?」

ニュクス「失礼するわよ」ガシッ

ベルカ「何をして――」

ニュクス「動かないで……」ガサゴソッ

ベルカ「………っ」

ニュクス「……これね。少し痛いから、我慢して頂戴」

ベルカ「え?」

 バチンッ

ベルカ「っ!! 何を――」

ニュクス「ごめんなさい。でも、これでもう大丈夫よ」

ベルカ「?」

ニュクス「小型の使い魔が貼りついていたわ」

ベルカ「!?」

ニュクス「相手が誰かは知らないけど、あまり感心できる相手じゃないわね。その使い魔は用事がすんだらあなたも殺すつもりだったようだから」

ベルカ「……どうして助けたのよ?」

ニュクス「私が死ぬことに関しては何も言うことはないわ。でも、巻き込まれてあなたが死ぬ必要もないというだけの話よ」

ベルカ「……でも、まだ依頼は続いてるわ」

ニュクス「そう、それじゃ、今殺してもいいわよ。恩を感じる必要もないわ、それに今は誰もいないから問題ないわ」

ベルカ「……次の機会にするわ。今は、そういう気分じゃないのよ」

ニュクス「ふふっ、わかったわ。今度も一人でいるところを狙えるといいわね?」

ベルカ「……」

【ベルカとニュクスの支援がBになりました】

◇◆◇◆◇
―暗夜王国・儀式予定地―

ルーナ「こんな広いところ使うわけ!?」

オーディン「ああ、最高の舞台だろ!」

ルーナ「なんでこじんまりとしたところでやらないのよ」

オーディン「ふっ、儀式は大きくやるべきだ。すでに魔法陣も準備して、あとは天気を待つだけだからな」

ルーナ「準備はいいのね。それで、あたしに何を頼みたいわけ?」

オーディン「ああ、見てくれ。この強大な闇の象徴を!」

ルーナ「ただの木で作り上げた張りぼてじゃないの」

オーディン「違う、これは儀式の質を高めるダークオブジェクト。鮮血戦器・ブラディマリーに力を与える会場だ」

ルーナ「はいはい、それでなにするわけ?」

オーディン「ああ、裏に来てくれ」

ルーナ「……へぇ、上がれるようになってるのね。それで、所々に置いてある箱はなに?」

オ-ディン「その中には、儀式に使用する供物が入っている。聖なる供物がな」

ルーナ「……聖なる供物って、これただの紙吹雪じゃない」

オーディン「ちゃんと裏に文様を刻んでいる。これ一つ一つにちゃんと力が込められているのさ」

ルーナ「ほんとだ、無駄に気合入ってるわね……」

オーディン「その供物を捧げる作業をお前に任せたい。この儀式が成功させるため重要な役割を任せたいんだ

ルーナ「そんな重要な役目頼まれたくないんだけど。ちなみにあんたはなにするわけ?」

オーディン「ふっ、よくぞ聞いてくれた。まず、俺は鮮血戦器・ブラディマリーに取りついた不穏なアトモスフィアと対峙し、その可能性を問いただし、奴の望みに耳を傾け、そのために供物を捧げようと誓うわけだ」

ルーナ「はぁ、また変な段取り組んだわね。ちゃんとうまく行くわけ?」

オーディン「当り前だ。俺は漆黒のオーディン、この力は不可能を可能にする力なんだからな」

ルーナ「……ふふっ」

オーディン「な、なんだよ」

ルーナ「なんでもない。それじゃ、あたしはその創作劇のどこで手を出せばいいのか、ちゃっちゃと教えなさいよ。完璧にやり遂げてみせるから」

オーディン「そ、そうか。呆れて帰られるかと思ってた」

ルーナ「その代り、約束はちゃんと守ってよね?」

オーディン「ふっ、漆黒のオーディンに二言はない。きっちり磨き上げてみせるさ。だから頼りにしてるぜ、ルーナ!」

ルーナ「ええ、任せておきなさい」

【ルーナとオーディンの支援がBになりました】

◇◆◇◆◇
―暗夜王国・大通り―

ピエリ「えへへ~、ルーナとのお買い物、とっても楽しかったの!奇麗な洋服とか、お化粧とかいっぱいしてもらえて、ピエリとってもきれいになれたのよ」

ルーナ「ふふっ。途中、お化けみたいになってたけどね」

ピエリ「そうなの、あれ酷いのよ。ピエリのお肌傷ついちゃうかと思ったのよ。でも、とっても楽しかったから許してあげちゃうの」

ルーナ「ありがと」

ピエリ「えへへ~。でも、やっぱりお母さんみたいな奇麗じゃなかったのよ」

ルーナ「当り前でしょ、ピエリはピエリなんだから」

ピエリ「そんなことないの、いつかピエリもお母さんみたいになって、きれいになって見せるのよ。そうすれば、きっとお母さん、ピエリのこと……」

ルーナ「……」ギュッ

ピエリ「んっ、ルーナどうしたの? ピエリの手を握って――」

ルーナ「ピエリ。あんた、母さんに置いてかれたって思ってるんでしょ?」

ピエリ「……どうして、わかるの?」

ルーナ「あたしもね、母さんに置いてかれちゃったからわかるのよ。ピエリが母さんのことをすごく引き摺ってるって」

ピエリ「ルーナもピエリと同じでお母さんいないの?」

ルーナ「ええ、もういないわ」

ピエリ「そうなの……。ルーナもピエリと同じだったのね。ならピエリの気持ちをわかるはずなのよ」

ルーナ「……わかるわ。だけど、わかるからこそ、このままじゃいけないって言ってんの、あたしは」

ピエリ「どうしてなの? ピエリ、もう一度お母さんに会いたいの……奇麗になったピエリのこと、いっぱいいっぱい抱きしめてほしいのよ」

ルーナ「……ピエリ」

 ポタポタ

ピエリ「ううっ。ピエリ、ずっとずっとお母さんみたいになりたかったの。お母さんみたいになれば、お母さんが近くにいてくれるって思えるかもしれない……でも、全然そんなことなかったの。どんなに頑張って奇麗になっても、お母さん会いに来てくれなかったの……。でも血みどろになるとね、脳裏にお母さんが出てきてくれるの。ピエリ、お母さんに会えるなら……」

 ダキッ ギュウッ

ルーナ「……馬鹿ね」

ピエリ「馬鹿じゃないの。ピエリ、真面目なの……」

ルーナ「ううん、馬鹿よ。そうやってまっすぐに母さんのこと好きなのに、母さんのこと困らせるような事してるんだから」

ピエリ「ピエリ、お母さんのこと困らせてるの?」

ルーナ「ええ。母さんていうのはね、子供に死んでほしいなんて思ってないものなの。あたしの母さんが、間接的にあたしに守るために戦いに向かっちゃったように。……あたしの母さんも……」

ピエリ「……ルーナ、泣いてるの?」

ルーナ「へっ、あ、これはその……」

ピエリ「……ルーナもお母さんのこと思い出してたの?」

ルーナ「だ、だれがあんな奴のこと思い出して……。もう、止まりなさいよっ……」ポタポタ

ピエリ「……えいなの」ギューッ

ルーナ「あぅ、ピエリ?」

ピエリ「ルーナとピエリ、なんだか似てるの。泣き虫なところとか、お母さん大好きなところとか、髪を二つに結んでるところとかも、ピエリとお揃いなのよ」

ルーナ「べ、別にピエリに合わせてるわけじゃないから!」

ピエリ「ルーナ。心配掛けてごめんなの。ピエリ、お母さんのことでルーナのこと困らせたくないのよ」

ルーナ「いいの? あたしが言ってること、間違ってるかもしれないわよ」

ピエリ「ううん、間違ってるとかじゃないの。ピエリ、お母さんに安心してもらいたいの。ちゃんと奇麗になって、いつか会いに行きたいのよ。お母さんみたいになりたいなんて、もう思わないの」

ルーナ「そう、それじゃ、二人でどんどん奇麗になってくわよ。母さんに負けないくらい奇麗になって、いつか驚かしてあげないとね」

ピエリ「うん。ありがとうなの。ピエリ、ルーナ大好きなのよ」

ルーナ「照れるわね……。……ありがと、ピエリ」

【ルーナとピエリの支援がAになりました】

◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・イズモ公国『大広間』―

イザナ「暗夜王都の件、うまくいったみたいだね~」

カムイ「はい。ところで、私がお願いした件についてですが……」

イザナ「こっちに情報が来た時点で、できる限り簡潔に流しておいたよ。まだ疑心暗鬼とは言える部類だけど、暗夜の王都で何かがあったっていうことは、少なからず白夜のお偉いさんは知ってるんじゃないかな~。それも無視できない程度にね……」

カムイ「そうですか。すみません、私たちでは説得力がないとわかっていたとはいえ、このように情報拡散を任せることになってしまって」

イザナ「構わないよ。それにご褒美がもらえたからね~」

カムイ「?」

イザナ「一皮剥けたキミが目の前にいる、それだけでもボクとしては十分すぎるご褒美だよ~」

カムイ「あなたにご褒美をあげるために、決めたわけじゃないんですが……」

イザナ「でも、そうなるともう一度キミのことを占う必要があるかもしれないね。不透明なキミの未来が、どんな色になったのか興味が湧いて来ちゃったよ」

カムイ「調べるのは別に構いませんよ」

イザナ「やっぱり、カムイ王女は未来に興味はないってことかな?」

カムイ「そうですね。前に言ったように私は信じるつもりはありませんよ。私の未来は私が決めることですから」

イザナ「そう、キミの考えはわかったよ。それじゃ、ボクも覗くのはやめることにしようかな~」

カムイ「別に私の意見を気にしなくてもいいですよ?」

イザナ「大丈夫、ボクはキミと同盟を組んでる。そんな中でボクだけ先に覗くのは良くないことだからね~」

カムイ「わかりました。それで、次のお願いなのですが――」

~~~~~~~~~~~~~~

イザナ「ふーん、なるほどね。少し時間が掛ると思うけど……準備は整ってるんだよね?」

カムイ「はい。必要な物はすべて、あとはイザナさんに。この事は出来れば早急にお願いします」

イザナ「ははっ、人使いが荒いね」

カムイ「そんな人使いの荒い人に協力すると言ったのは、あなたじゃないですか。今さら手離したりしませんからね?」

イザナ「おぉ、こわいこわい。困ったなぁ、ここを出る前のキミだったら、もう少し遠慮してくれたかもしれないのに」

カムイ「あまり時間もありません、ぐずぐずと手を拱いているわけにもいきませんから」

イザナ「善は急げってことだね~。そういうのボクは好きだよ~。勇ましいし、なによりも貪欲な感じがしてね」

カムイ「私に勇ましいっていうのはいりませんよ」

イザナ「じゃあ、なんて表現するんだい?」

カムイ「単純に必死になっているだけです。選べるものに意味があるうちに、それを手繰り寄せることにただ必死になっているだけ、勇ましさなんてどこにもありませんから」

イザナ「そうかい、キミがそういうならこれ以上は何も言わないよ。その件は何か動きがあり次第伝えるからね~」

カムイ「ありがとうございます」

イザナ「いいよ、いいよ~。それより、しばらくはここに滞在するんだよね?」

カムイ「出来ればそうさせていただきたいところですが……」

イザナ「何を遠慮してるのかな~。ボクとキミとは同盟関係、こういうことは気にしないでいいよ。それにお祭りも終わって、少し寂しくなっちゃったから、滞在してくれるとうれしいな~」

カムイ「そうですか、では御言葉に甘えさせてもらいます」

イザナ「よ~し、それじゃ滞在できる場所をすぐに準備するからね~」

カムイ「はい、よろしくお願いしますね」

 スーッ スーッ パタンッ

カムイ(滞在ですか……。暗夜王都の件で皆さん疲れている。ここで一息吐けますね……)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
―イズモ公国・大通り―

 シーン

カムイ「……何時もはこんなものなんでしょうか……」

カムイ(歩いている人の気配もあまりありませんし、お店がやっている音も聞こえませんね……)

ラズワルド「あれ、カムイ様? どうしたんですか、こんなところを一人で歩いて」

カムイ「ラズワルドさん。いえ、気分転換にと思いまして。ラズワルドさんは、またナンパ……ですよね?」

ラズワルド「そこは疑問形にして欲しいんだけど……」

カムイ「ふふっ、それで収穫はどうでしたか?」

ラズワルド「ちょっと、周りの気配を探ってから聞かないでくれないかな……」

カムイ「ごめんなさい。やっぱり、あまり人は出歩いていないんですね」

ラズワルド「そうだね。なんて言うか、お祭りも終わった反動なのかもしれない。戦争っていう日常が戻ってくると、みんなこうやって閉じ籠っちゃうのも仕方ないからさ」

カムイ「だめですよ、ラズワルドさん」

ラズワルド「え?」

カムイ「戦争が日常なんて、そんなのいけません。それに私達は戦争を終わらせるために戦っているんですから。私達にとっての日常は、戦争が終わった先のことなんですから」

ラズワルド「そうだね……。ごめんよ」

カムイ「そうですよ。町に女の子が歩いてないからって、ネガティブになるなんて」

ラズワルド「いや、歩いてますよ?」

カムイ「歩いてたんですか?」

ラズワルド「はい、目の前に」

カムイ「?」

ラズワルド「ははっ、カムイ様のことですよ。そこでなんですけど、今からお茶なんてどうですか?」

カムイ「私とですか?」

ラズワルド「はい。それにこの前、誘ってくださいって言ってたじゃないですか。この先に、開いてる場所があるんです。そこでよかったらなんですけど……」

カムイ「そうですね、それじゃそこに行きましょうか?」

ラズワルド「え、いいんですか?」

カムイ「約束通り、ちゃんと私だけを誘ってくれたじゃないですか。それにラズワルドさん、何か私に話しがあるみたいですから」

ラズワルド「……うん、それも含めて話がしたいんだけど、いいかな?」

カムイ「ふふっ、わかりました。案内してくれませんか?」

ラズワルド「はい、こっちです」

ラズワルド「………」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

カムイ「へぇ、個室のお店なんですね」

ラズワルド「うん、これがこのお店のイチオシらしいですから、どうぞ」

カムイ「はい、とても甘い匂いがします。それじゃ、失礼して、はむっ」

ラズワルド「……おいしい?」

カムイ「はい、ラズワルドさんも食べてみてください。とてもおいしいですよ?」

ラズワルド「そう、それじゃ僕も……。うん、おいしい」

カムイ「はい……それで話というのはなんでしょうか、ラズワルドさん」

ラズワルド「……えっと、その」

カムイ「話してください、流石に私にもわからないことはあります。ですからちゃんとラズワルドさんに話してもらいたいんです」

ラズワルド「すみません。その……僕はカムイ様の役に立てているのかなって」

カムイ「突然どうしたんですか?」

ラズワルド「……僕の目的は覚えてますよね?」

カムイ「ええ、ちゃんと覚えていますよ。神器を巡り合わせるでしたね。どうにか、二つの神器が共鳴を果たしました」チャキッ

ラズワルド「……綺麗ですね」

カムイ「はい。名前については暗夜としています。暗夜で紡いだ私たちの絆の光、もちろんラズワルドさんもこの輝きの中一人ですよ」

ラズワルド「カムイ様は、そう思ってくれるんだね……」

カムイ「……何があったんですか?」

ラズワルド「……カムイ様は一度、戦う意味を見失ったんですよね?」

カムイ「そうですね……。暗夜の戦いを越える前の私は、それを失っていました。自分が進むべき道から逃げて、みんなの願いがさも自分の願いのように振舞っていたんです。それに気づかなければ、みんなを失っていたかもしれません」

ラズワルド「カムイ様はとても強いよね……。僕なんかと違ってさ」

カムイ「ラズワルドさん?」

ラズワルド「ははっ、笑っちゃうよね。どこかで僕らがちゃんとしなくちゃいけないって思ってたのに。もう至るべき場所の見当がつかないんだ」

カムイ「……」

ラズワルド「ごめん。話せないことがあるってあの時言ったのに、ほとんどのことを僕はもう覚えてない……。カムイ様が悩んでるから、力になってあげようって思ってからじゃなきゃ気づけないなんてね……。本当に僕は何のためにここまで戦ってきたのか……」

カムイ「……失礼しますね」

 ギュッ

ラズワルド「カムイ……様?」

カムイ「手が震えてますね」

ラズワルド「……男なのに情けないですよね、格好悪いし……」

カムイ「いいえ、そんなことを言ったらみんなを率いているのに、今まで本当のことから目をそらしてきた私の方が情けなくて格好悪いです」

ラズワルド「……カムイ様は背負っているものが…」

カムイ「いいえ、使命の大きさなんて関係ありませんよ。その使命にどれだけ真剣に向き合うことができるかのほうが、何よりも重要ですから。私はそれから逃げていたんです。どんなに埋めようとしても格好なんて付きませんから」

ラズワルド「だけど、カムイ様はこうして戻ってこれたじゃないですか」

カムイ「そうですね。どうにか戻ってこれました」

ラズワルド「僕はもう思い出すこともできないんです。それは、もう……」

カムイ「諦めて、ここで歩みを止めてしまうんですか?」

ラズワルド「……」

カムイ「……」

ラズワルド「…止まりたくなんてない。だけど、これからどうすればいいのかなんてわからない、僕は結局……」

カムイ「ラズワルドさん。その話せないことを覚えていたとして、これからのことがすべてわかるのですか?」

ラズワルド「そんなことは……」

カムイ「なら問題なんてありません。それにそれを忘れてしまったからと言って、私はラズワルドさんを恨んだりなんてしません」

ラズワルド「どうしてですか……」

カムイ「決まっています。言ったでしょう、この夜刀神・暗夜の輝きは皆さんとの輝きだと。私があなたをここまで連れてきたんです。それをどうして恨むことができるんですか?」

ラズワルド「カムイ様……」

カムイ「それに、ラズワルドさんと私の位置は何も変わりませんよ。私が歩み始めたのはこの前なんです、だからここから一緒に歩み出してみませんか?」

ラズワルド「一緒にですか?」

カムイ「はい」

ラズワルド「その……いいんですか?」

カムイ「ええ、それにラズワルドさんはまだ私にしてくれた約束、覚えてくれているんですよね?」

ラズワルド「……はい」

カムイ「でしたら、それを続けてください。あの約束は私をラズワルドさんに繋げてくれた絆そのものなんですから」ナデナデ

ラズワルド「……頭をいきなり撫でないでくれませんか!?」

カムイ「ふふっ、だって、どこか泣きだしそうな気がしたので。私の勘違いかもしれませんけど、我慢してくださいね」ナデナデ

ラズワルド「……カムイ様」

カムイ「はい、なんですか。ラズワルドさん」ナデナデ

ラズワルド「僕にもう一度、誓わせてくれませんか?」

カムイ「……あなたがもう一度、それで歩み出せるのでしたら」

ラズワルド「うん、カムイ様」

ラズワルド「僕は君のことを守っていきます。この戦いが終わるまで……」

カムイ「はい、頼りにしていますよ。ラズワルドさん。というわけで、その絆の証に」

ラズワルド「えっと、カムイ様?」

カムイ「はい、あ~んですよ?」

ラズワルド「ちょ、そ、そんないいですよ」

カムイ「ふふっ、恥ずかしがっちゃって。大丈夫です、ここは個室誰も見てませんよ」

ラズワルド「そ、そうですけど////」

カムイ「ふふっ、いいじゃないですか。今日はデートなんですから、少しはそれっぽく楽しみましょう? というわけで、あ~ん」

ラズワルド「……あ、あーん」パクッ

カムイ「ふふっ、おいしいですか?」

ラズワルド「はい、とっても……おいしいです」

カムイ「それはよかった。これからもよろしくお願いしますね?」

ラズワルド「はい、カムイ様」

~~~~~~~~~~~~~~~~~
―イズモ公国・宿泊施設『カムイの部屋』―

カムイ「……ふぅ、今日は色々と回りましたね」

カムイ(ラズワルドさんもルーナさんと同じように……。何が原因かはわかりません。ですが見立てだと、たぶんあの方も――)

 トントントンッ

サクラ『あ、あの、カムイ姉様、いらっしゃいますか?』

カムイ「どうぞ、入ってください」

サクラ『し、失礼します』

 スーッ スーッ バタンッ

サクラ「こんばんは、カムイ姉様」

カムイ「どうしたんですか。結構遅い時間だと思いますが」

サクラ「その、今日はカムイ姉様と一緒に眠りたくて……」

カムイ「私とですか?」

サクラ「そ、そのやっぱり、ご迷惑ですか?」

カムイ「いいえ、そんなことはありませんよ。そうです、他の皆さんも誘って一緒に――」

サクラ「あ、あの」

カムイ「はい? どうしましたか?」

サクラ「そ、その」

カムイ「?」

サクラ「ね、姉様と二人っきりがいいんです……」


カムイ「え……」

サクラ「ご、ごめんなさい。その…変なことを言ってしまって。今のは忘れてくだ――」

カムイ「ふふっ。サクラさん」

サクラ「カ、カムイ姉様。今のはですね、そのえっと……」

カムイ「ふふっ、あたふたして可愛いですね。そんな可愛いサクラさんが私と二人きりで過ごしたいだなんて……。なんだか聞いて私もドキドキしてしまいました」

サクラ「い、今のは間違いと言いますか。その、わ、忘れてくださ――」

 ナデナデ

サクラ「ふぇ?」

カムイ「ふふっ、いいですよ。今日はサクラさんだけのお姉ちゃんになりますね」

サクラ「え、えっとその、本当に良いんですか?」

カムイ「はい。では、失礼しますね」ガシッ

サクラ「わっ」

 バサッ

サクラ「あっ」

サクラ(私、姉様に後ろから抱き締められてる……)

カムイ「ふふっ、サクラさんとっても柔らかいです」サワサワ

サクラ「ひゃっ、へ、変なところさわらないでくださ――」

カムイ「ふふっ、前と同じとってもいい匂いがしますね」スンスン

サクラ「ひゃっ、首筋に、あふぅ……」

カムイ「とっても可愛いですよ、サクラさん」

カムイ「一緒に過ごしたいって言ったのはサクラさんじゃないですか」

サクラ「そ、それはそうですけど……あふっ、だめ、ですぅ」

カムイ「ふふっ、サクラさんの香りが強まった気がします」

サクラ「そ、そんなこと……」

カムイ「前は私の匂いを先に食べられちゃいましたから、今日はこっちが先制ですよ」スンスン

サクラ「あふっ、姉様、だめ、だめですよぉ……」

カムイ「……ふふっ、堪能しました」

サクラ「も、もう。カムイ姉様……」

カムイ「すみません。でも、サクラさんは私にこうしてもらえて、なんだか嬉しそうですね」

サクラ「……うれしいです。カムイ姉様に触れてもらえて。こうして、二人っきりの時間を作っていただけて」

カムイ「サクラさん」

サクラ「……カムイ姉様とは、姉妹のように過ごしてみたかったんです。でも、そんなこと簡単に口に出来ません……。エリーゼさんやカミラさん、アクア姉様。カムイ姉様と一緒に過ごしたいって思ってる人はいっぱいいる中で、こんなお願いをしてるんです」

カムイ「……」

サクラ「ごめんなさい」

カムイ「謝ることなんてないですよ。それにこうやって直接口に出して甘えてもらえるのは、姉冥利に尽きますから」

サクラ「カムイ姉様……んっ」ギュッ

 ギュウウッ

サクラ「姉様の体、とっても温かいです。今日だけは私だけの姉様なんですよね……」
 
カムイ「もちろんですよ。いっぱい甘えてください、今までずっと離れていたのに、私のことを気にしてくれていた分、いっぱいいっぱい……」

サクラ「姉様の香り……。とっても落ち着きます……」

カムイ「ふふっ、胸元がくすぐったいです、よしよし」ナデナデ

サクラ「んっ。姉様、もっと、もっと撫でてほしいです……」

カムイ「はい。ごめんなさい、サクラさん」

サクラ「なんですか?」

カムイ「あなたは私のことを昔から思ってくれていたのに、私があなたを知ったのはまだ最近で……。そんな私でもいいのかと、少し不安になるんですよ」

サクラ「いいんです。カムイ姉様も私の姉様で、それは絶対に変わらないことなんですから」

カムイ「……ありがとうございます。サクラさん、もっと強く抱きしめてもいいですよ?」

サクラ「はい」

 ググッ ギュウウッ

 ドクンッ ドクンッ 

サクラ(……カムイ姉様の鼓動が、私の中に入り込んでくるみたいで、気持ちいい……)

サクラ「カムイ姉様、手を握ってもいいですか?」

カムイ「はい、どうぞ」

サクラ「……えっと、これで」

カムイ「? なんだかすごい握り方ですね。指の間に指を入れるなんて、くすぐったいです」

サクラ「この方が強く姉様を感じられる気がして、その駄目ですか?」

カムイ「いいえ、そんなことないですよ。むしろ、私もそう感じますから」

サクラ「その……」

カムイ「ふふっ、なんだか向かい合って布団に入って手を繋いでるなんて、なんだか恋人同士みたいですね」

サクラ「こ、恋人って////」

カムイ「ふふっ、冗談です」

サクラ「も、もうっ!」

カムイ「怒ってるけど、手は離さないんですね。とっても可愛いです」

サクラ「ううっ、姉様は意地悪です」

カムイ「ええ、遠慮はあまりしませんよ。だって、こんなに私に素で接してくれてるサクラさんに遠慮なんてしたら失礼じゃないですか」

サクラ「なんだか複雑です」

カムイ「ふふっ」

 ドクン ドクン

カムイ(サクラさんの鼓動を強く感じます。どれくらいの時間、サクラさんは私のことを思ってくれていたんでしょうか……。私が攫われて、もう一度出会って、そして暗夜に付いた私を追いかけてきてくれたあなたは、やっぱりとても強い人なんですね)

カムイ「サクラさん」

サクラ「なんですか、姉様」

カムイ「ありがとうございます。私をここまで思ってくれて……」

サクラ「そんな、私は……。でも、姉様にそう思ってもらえてとっても嬉しいです」

カムイ「ふふっ、それじゃ、お話をしましょう。いっぱい、いっぱい、眠くなるまでいろんなことを」

サクラ「はい、その私からでいいですか? 姉様にお話ししたいことがいっぱいあるんです」

カムイ「はい、いいですよ。私も体験したことをいっぱい話してあげますね」

サクラ「たのしみです。では私から、その昔のことなんですけど―――」

◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・白夜平原・暗夜侵攻軍駐屯地『天幕』―

マクベス「……これが現在の状況ですか」

メイド「はい、マクベス様。白夜の状況は変わりませんが、主に本国の変化ですが……」

マクベス「……無限渓谷周辺は新生暗夜を名乗る者たちによって封鎖。渓谷を大きく迂回しようにも、大人数で行くのは自殺行為に他なりませんし、わずかな部隊で奪還できるほど甘くはないでしょうな」

 カチャッ コポコポコポ

メイド「どうぞ、マクベス様」

マクベス「ありがとうございます……」

マクベス(正規の暗夜軍兵はまだこちらの命令で動きますが、貴族の者たちは無限渓谷への攻撃しか考えていないようだ。大方自身の領土の心配をしているようですが……。今攻め込んで、それを奪い返せるとは思えない)

マクベス「…まさか、このようなことになるとは。頭が痛いですねぇ」

メイド「マクベス様、今日はお休みになられるべきだと思います。昨日からまともに眠っておられないようですから」

マクベス「お心遣いは嬉しいですが、考えなくていけないときですので」

メイド「……そうですか」

マクベス(本来なら使えない一大隊をガンズやゲパルトたちと入れ替えるはずだったというのに…)

メイド「マクベス様、次に現在集まっている作戦に対する意見ですが――」

マクベス(優秀な兵を失って、残ったのは自分の領地のことを気にする者たちだけとは……)

メイド「あの、マクベス様?」

マクベス(このままでは……)

メイド「マクベス様!」

マクベス「! 失礼、少し考え込んでしまったようで。それで、多くの者は何と?」

メイド「七割の貴族は白夜侵攻を中止し、暗夜王都の奪還に向かうべきと。残りの者たちはガロン王様の指示に従うべきと言っております」

マクベス「ガロン王様も今悩まれておられる。私達にできるのは、その悩みが少なくなるように、作戦を組上げておくことです。マークス王子が王都を占拠したという話が本当ならば、たぶん何か特殊な策を使ってカムイ王女が何かをしたのでしょう」

マクベス「ですから、今はカムイ王女が次にするであろうことを考えて手を打たねばなりません。ですから、今はあらゆる状況の精査が必要です」

メイド「わかりました。では、私は資料を整えに掛ります。必要な物がありましたら、お声掛けください」

マクベス「いえ、あなたは休むべき――」

メイド「いいえ、私はマクベス様のメイドです。マクベス様のお役に立つのが仕事、体調管理に問題はありません。ですので、私をどうぞお使いくださいませ」

マクベス「……まだ、ミスをするほどではない、ということですね?」

メイド「はい」

マクベス「わかりました。では、残りの食糧備蓄と武器リストを出してください。それが終わり次第、負傷者のリストから一週間で隊列に復帰可能な者たちを洗い出す作業に取り掛かるように」

メイド「はい、わかりました。それと紅茶でしたらいつでもお声掛けくださいませ。集中できるよう、最高の一杯をお淹れいたしますので」

 タタタタタッ

マクベス「ふっ、紅茶はいつでもですか。まったく、変わりませんね。さて……」

マクベス(……ガロン王様は王都陥落の一報から顔を出されていません。ですが大丈夫、ガロン王様にもお考えがあるはず。それにこの侵攻作戦を私は任されているのです。そのガロン王様の信頼を裏切るわけにはいきません)

(ガロン王様、ご心配なさらずにお待ちください……このマクベス、必ず次の一手を作り上げてみせましょう)

 休息時間1 おわり

○カムイの支援現在状況●

―対の存在―
アクアA
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)

―城塞の人々―
ギュンターB++
(恋愛小説の朗読を頼まれています) 
フェリシアB+
(カムイに従者として頼りにされたい)
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
フローラB
(すこしは他人に甘えてもいいんじゃないかと言われています)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)

―暗夜第一王子マークス―
ラズワルドB++→A
(あなたを守るといわれています)
マークスB++
(何か兄らしいことをしたいと考えています)
ピエリB
(弱点を見つけると息巻いています)

―暗夜第二王子レオン―
オーディンB+
(二人で何かの名前を考えることになってます)
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)
レオンB+
(カムイに甘えてほしいと言われて、いろいろと考えています)

―暗夜第一王女カミラ―
ルーナA
(目を失ったことに関する話をしています)
カミラA
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ベルカC+
(イベントは起きてません)

―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼA
(昔、初めて出会った時のことについて話しています)
ハロルドB
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィB
(イベントは起きていません)

―白夜第二王女サクラ―
サクラB++→A
(カムイと二人きりの時間が欲しいと考えています)
ツバキB
(イベントは起きていません)
カザハナC+
(イベントは起きていません)

―カムイに力を貸すもの―
シャーロッテB++
(返り討ちにあっています)
スズカゼB
(おさわりの虜になったようです)
サイラスB+
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB+
(許されることとはどういうことなのかを考えています)
モズメC+
(イベントは起きていません)
リンカB
(イベントは起きていません)
ブノワC+
(イベントは起きていません)
アシュラC+
(イベントは起きていません)
フランネルC+
(イベントは起きていません)

 仲間間支援の状況

●異性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・レオン×カザハナ
・ジョーカー×フローラ
・レオン×サクラ
・ラズワルド×ルーナ
・アクア×オーディン

【支援Bの組み合わせ】
・ラズワルド×エリーゼ
・ブノワ×フローラ
・エリーゼ×ハロルド
・オーディン×ニュクス
・ベルカ×スズカゼ
・ルーナ×オーディン←Bになりました

【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
・モズメ×ハロルド
・ギュンター×ニュクス
・レオン×エルフィ
・アクア×ゼロ
・ルーナ×ハロルド

●同性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・リンカ×アクア
・ピエリ×カミラ
・フェリシア×ルーナ
・フローラ×エルフィ
・レオン×ツバキ
・ベルカ×エリーゼ
・ピエリ×ルーナ←Aになりました

【支援Bの組み合わせ】
・ギュンター×サイラス
・フェリシア×エルフィ
・シャーロッテ×モズメ
・ベルカ×ニュクス←Bになりました

【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
・シャーロッテ×カミラ
・ピエリ×リンカ
・ピエリ×フェリシア
・ジョーカー×ハロルド
・アクア×ルーナ
・フローラ×エリーゼ
・カミラ×サクラ
・スズカゼ×オーディン

 今日はここまでで

 休息時間はあと三、四回くらいです。ピエリはソシアルナイトの時の格好が一番可愛いので、パラディンの時もああいう感じにしてほしかった。

 この前の安価で以下がそれも含むと知って、恥ずかしさに死にたくなった。
 
 世界樹V、楽しみ。

 この先の展開を安価で決めたいと思います。参加していただけると幸いです。

◇◆◇◆◇

 ジョーカー
 ギュンター
 フェリシア
 フローラ
 マークス
 ピエリ
 レオン
 ゼロ
 オーディン
 ベルカ
 ハロルド
 エルフィ
 サイラス
 ニュクス
 ブノワ
 シャーロッテ
 モズメ
 リンカ
 カザハナ
 ツバキ
 スズカゼ
 アシュラ
 フランネル

 カムイと話をする人物(支援A未満限定)

 >>432

 まだ続きます

 

◆◇◆◇
 支援イベントのキャラクターを決めたいと思います。

 アクア
 ジョーカー
 ギュンター
 フェリシア
 フローラ
 マークス
 ラズワルド
 ピエリ
 レオン
 ゼロ
 オーディン
 カミラ
 ベルカ
 ルーナ
 エリーゼ
 ハロルド
 エルフィ
 サイラス
 ニュクス
 ブノワ
 シャーロッテ
 モズメ
 リンカ
 サクラ
 カザハナ
 ツバキ
 スズカゼ
 アシュラ
 フランネル

 >>433>>434

(すでにイベントが発生しているキャラクター同士が選ばれた場合はイベントが進行、支援状況がAになっている組み合わせの場合は次書き込みキャラクターとの支援になります)

◇◆◇◆◇
進行する異性間支援の状況

【支援Bの組み合わせ】
・ベルカ×スズカゼ
・ラズワルド×エリーゼ
・ブノワ×フローラ
・エリーゼ×ハロルド
・オーディン×ニュクス
・ルーナ×オーディン

【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
・モズメ×ハロルド
・ギュンター×ニュクス
・レオン×エルフィ
・アクア×ゼロ
・ルーナ×ハロルド

 この中から一つ>>435

(会話しているキャラクターと被ってしまった場合は、その一つ下のになります)
 
◇◆◇◆◇
進行する同性間支援

【支援Bの組み合わせ】
・ギュンター×サイラス
・フェリシア×エルフィ
・シャーロッテ×モズメ
・ベルカ×ニュクス

【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
・シャーロッテ×カミラ
・ピエリ×リンカ
・ピエリ×フェリシア
・ジョーカー×ハロルド
・アクア×ルーナ
・フローラ×エリーゼ
・カミラ×サクラ
・スズカゼ×オーディン

 この中から一つ>>436

 このような形で、すみませんがよろしくお願いいたします。

エルフィ

レオン

エルフィ

アクアとゼロ

カミラ シャーロッテ

◇◆◇◆◇
―暗夜王国・演習場―

エルフィ「レオン様、この前はありがとうございます」

レオン「この前…。ああ、食堂での料理のことかな? 別に気にしなくてもいいよ、少し変わったものが出てきたと思うからね」

エルフィ「いいえ、あのような赤いスープは初めてで抵抗がありましたけど、とてもおいしかったです」

レオン「そう言ってもらえると嬉しいよ。でも、中々手に入らないし、いつも専属の係に頼まないと作ってもらえないものだからね」

エルフィ「そうみたいですね。トマトですよね、わたしの住んでいたところでは出回っていない野菜なので」

レオン「うん、調理は当たり前だけど、水洗いしてそのまま食べてもおいしいんだ。でも、食べたことない人は見た目で倦厭したりするんだけどね」

エルフィ「見た目故かもしれません。あれほど真っ赤なものですから」

レオン「でも、エルフィは気にせず食べたよね? どうしてだい?」

エルフィ「レオン様が奨めてくれるものですし、そのお腹がとても空いていたので……」

レオン「ははっ、エルフィらしいね。暗夜でも育つ環境ができるといいんだけど、ここはいい環境じゃないからね。土壌以前に気候的な問題もあるし、受け入れられるのにも時間がかかりそうだから、今は高級食材として貴族間でしか出回っていない。一般の人たちに普及すれば、色々な料理を作り上げてくれそうな気がするんだけどね」

エルフィ「ふふっ」

レオン「?」

エルフィ「思ったよりも楽しそうに話されるので、おかしく思ってしまって。わたしもこの味は好きです。今度、わたしもトマトで何かを作ってみます」

レオン「エルフィ、料理はできるのかい?」

エルフィ「はい。よくみんなに手伝いを頼まれます」

レオン「そうなのかい?」

エルフィ「わたしがいると食材を揉みほぐしたり、汁を搾り出したりするのが楽で助かるといわれますから」

レオン「エルフィ、それは料理ができるとは言わないよ……」

【エルフィとレオンの支援がBになりました】

◇◆◇◆◇
―暗夜王国・小さな湖―

ゼロ「アクア様がここにおられるということは、俺の話を聞いてくれるということですね?」

アクア「ええ、そういうことになるわね。それで、私に何を話してくれるのかしら?」

ゼロ「……そうですね」

アクア「……」

ゼロ「……あの」

アクア「どうしたの?」

ゼロ「その、お呼びしておいてなんですが、何を話せばいいのか……」

アクア「そう、困ったものね。私もあなたが話をしてくれるとばかり思っていたから、何も話題を持ってきてはいないわ」

ゼロ「そうですか……」

アクア「難しいものね、何気ない話題を考えるのって。いえ、何気ない話題なんて本来考えることなく出てくるから何気ない話題なのかもしれないけど」

ゼロ「たしかに。俺はいつも意図的に気に入らない奴らの顔をどう歪ませてやろうかとアイディアを絞ったりはしますが、こう裏の無い会話は浮かばず仕舞いで……」

アクア「ふふっ」

ゼロ「なんですか?」

アクア「前回、私に話しかけた時には裏があったということになるわね?」

ゼロ「……そうなりますね」

アクア「はぐらかさないのね?」

ゼロ「ええ、はぐらかす必要がないので。言ったでしょう、俺はアクア様とお話がしたいんです」

アクア「そう、だけど共通の話題がないわ。さすがに過去の暗い話で華を咲かすのもどうかと思うし」

ゼロ「盛り上がりはするでしょうが、それは何か違う気が……」

アクア「ええ。それじゃ、そうね……朝食のことでも話しましょう?」

ゼロ「いいですよ。アクア様はなにを食べたんですか?」

アクア「私はパンだったわ」

ゼロ「奇遇ですね、俺もパンでした」

アクア「そう」

ゼロ「……」

アクア「……これでいいのかしら?」

ゼロ「わかりません。ですが、話は出来てますね」

アクア「そうね。こうしていれば、いずれはスッと会話ができるのかもしれないわ」

ゼロ「なるほど……。しばらく続けますか?」

アクア「そうしましょう。それじゃ、次の話だけど……」

【アクアとゼロの支援がBになりました】

◇◆◇◆◇
―暗夜王国・兵舎―

シャーロッテ「てへへ、ありがとうございます~。そうなんですよぉ、朝から一生懸命作ってきたんですぅ。え、そうなんですか、とってもうれしい。あのぉ~、団長さんがよろしければぁ、今度から毎日作ってきますけどぉ。え、本当ですか、頑張っちゃいますね。それでは~」

 テトテトテト

シャーロッテ「よぉっし、これで下準備は万端ね。チョロイわ~。これでちょっとずつ距離を詰めていければ……念願の玉の輿――」

カミラ「……」

シャーロッテ「あ、あれぇ、カミラ様?」

カミラ「シャーロッテ」

シャーロッテ「どうしたんですかぁ? ここはカミラ様のような方が来るような場所じゃないですよぉ?」

カミラ「ふふっ、ちょっと気になることがあってきたんだけど……。とんだ見当違いだったみたい」

シャーロッテ「け、見当違いですかぁ?」

カミラ「ええ、前は心配に思ったけど、そんなこと思う必要もないってわかってしまったのよ」

シャーロッテ「……」

カミラ「そうやって、何人の男にすり寄ってきたのかしら?」

シャーロッテ「な、何のことですかぁ?」

カミラ「恍けないでいいわよ。さっきからここまでのこと、全部見てたから」

シャーロッテ「趣味悪いわね、王族だからってそういうことしていいと思ってるの?」

カミラ「そう、それがあなたの本性なのね……」

シャーロッテ「あっ……。え、えっとこれは、そう持病の発作が……」

カミラ「発作ね? 私からすれば、さっきの姿のほうが発作を起こしてるように見えるけど?」

シャーロッテ「……いちいち癇に障るわね。ええ、そうよこっちが素よ、文句ある?」

カミラ「文句はないわ。でもそうね…、どうしてあんな男に手を出すの?」

シャーロッテ「団長のこと?」

カミラ「ええ、悪い噂のこと、この前ははぐらかしていたけど、あなたは知っているんでしょう?」

シャーロッテ「知ってるに決まってんでしょ?」

カミラ「なら、どうして?」

シャーロッテ「決まってるわ、お金を持ってるからよ。王族として育ってきたカミラ様には分からないかもしれないけど、これでも幸せになるために私は努力してる、それを邪魔しないでほしいんだけど」

カミラ「心配しないで、興味の無いことをするつもりなんてないわ。さっさと、その発作を直して媚を売り直してきたらどう?」

シャーロッテ「……そうさせてもらうわ。ふんっ……」

 タタタタタッ

カミラ「色々手を出してる同士、お似合いなのかもしれないけど……」

カミラ「幸せになるために努力……ね」

【シャーロッテとカミラの支援がBになりました】

◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・イズモ公国宿泊施設『共同広場』―

マークス「白夜への書簡はすでにイザナ公王に手渡したということだな」

カムイ「はい、イザナさんは私達に最大限協力してくださるそうです。書簡の返事も少しすれば来るとは思います」

カミラ「一番の問題は書簡をリョウマ王子が受け取ってくれるかどうかだけど、大丈夫かしら?」

レオン「それに関しては心配いらないんじゃないかな?」

エリーゼ「どうして?」

レオン「まだ、イズモは表向きには白夜の味方。現に、僕たちの侵攻を止めてるようにも見えるし、リョウマ王子の人格を聞く限りだとまっすぐに向かってくる感じもする。状況を確認せずに動くとは思えないんだ」

カムイ「それに書簡はリョウマさん宛てのもので、イザナさんの名義の元送られています。テンジン砦に幽閉されているユキムラさん達を按じて、リョウマさんが誰かしらを派遣しているのであれば、その方が回収してくれると思います。今でもリョウマさんが白夜の全権を握っているのであれば私たちの意思を伝えることで――」

マークス「交渉の席を準備できるかもしれないということか」

サクラ「……」

エリーゼ「ねぇねぇ、サクラ」チョンチョン

サクラ「エリーゼさん、どうしたんですか?」

エリーゼ「リョウマ王子ってどんな人なの?」

サクラ「リョウマ兄様ですか。その、とてもまっすぐな人で何時も難しい顔をしてますけど、本当はとても優しくて強い人といえばいいでしょうか」

エリーゼ「へぇー、なんだかマークスおにいちゃんに似てる気がする」

マークス「ふむ、事実一度刃を交えただけだが、あの気迫は確かに強烈であったからな。あの力強い視線は今でも記憶に残っているくらいだ」

カムイ「そのリョウマさんですから、まっすぐに返事をしてくれると思っています。受け入れる、受け入れない。話を聞く、話をしない。それによって、私たちのするべきことも決まってきますから」

カミラ「そう、リョウマ王子のこと信じているのね」

カムイ「信じているというよりは、そうあってほしいというのが本音なんですけどね……。調子の良いことだと理解はしていますが、今はそう思うことしかできませんから」

サクラ「……大丈夫です」

カムイ「サクラさん?」

サクラ「リョウマ兄様は、リョウマ兄様のままです。だから、きっと大丈夫です」

カムイ「……そうですね。リョウマさんは白夜のことを考えていましたから、普通の人なら逃げ出してしまいたくなるような状況の中にいたはずなのに、今でもそこに立っているんですから……」

サクラ「私、リョウマ兄様を助けてあげたいです。」

カムイ「ええ、もちろんです。と言っても、今はイザナさんから返事を頂くまでは何もできない状態なので、これと言って手は考えられません」

アクア「そうね。どちらになろうとも、この問題だけはその時になってからでないと具体的なことは決められないわね」

レオン「出来る限りのことは僕がしておくから、姉さんは今の間休んでおいてよ」

カムイ「すみません」

マークス「気にすることはない。それに皆、お前のために何かをすることを嬉しく思っている」

カミラ「そういうことよ。それにカムイはまだまだ見つけている途中でしょ?」

カムイ「そうですね。不甲斐無くてすみません」

エリーゼ「謝らないでよ。カムイおねえちゃんは何も悪くないんだから」

サクラ「そうですよ。それにようやく道が見えてきて、それが見えてきたのはカムイ姉様のおかげなんですから」

アクア「カムイ、だから大丈夫。あなたはあなたの道を見つけるようにして……。今は時間がある、だから、あなたは今、あなたのために時間を使って頂戴……」

カムイ「……すみません、皆さん」

アクア「違うわ。こういう時は、ありがとうって言って。その方が、私たちも嬉しいから」

カムイ「はい、ありがとうございます」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~
―イズモ公国・宿泊施設『中央広場』―

カムイ「私のおかげですか……」

カムイ(そんなことはありません。不甲斐無い私を皆が支えてくれたからここまで来れただけなんですから。でも、それに甘えているわけにはいかないんですよね……)

カムイ「私の見つけるべき道……ですか」

 ドスンッ

カムイ「?」

 ドスンッ ドスンッ

カムイ「すごい音ですね。それになんだか揺れも……中央広場からのようですけど。一体……」

 タタタタタタッ

エルフィ「はあああっ!!!」ググググッ ドスンッ

エルフィ「でやああっ!!!!」ドスンッ
 
エルフィ「はぁ、はぁ……ふぅ。準備は終わり……」

カムイ「その声、エルフィさんですか?」

エルフィ「カムイ様、どうかしましたか?」

カムイ「いえ、その偶然通りかかりまして。もしかして訓練でもされていたんですか?」

エルフィ「ええ、時間があれば訓練をしてますから」

カムイ「すごいですね。私ではすぐに根をあげてしまいそうなことをしている気がします」

エルフィ「そうでしょうか?」

カムイ「ええ、そうですよ。それに、なんだか重いものを持ち上げていたみたいですから」

エルフィ「はい、白夜には重さの丁度いい松の木が多くあるんです。長さもいいので、訓練の効率がとてもいいんです」

カムイ「ふふっ、それは良かったですね」

エルフィ「その……カムイ様。何かお悩みなんですか?」

カムイ「え?」

エルフィ「いえ、違うならいいんです。でも、もしも悩んでいるのでしたら」

カムイ「……そうですね。悩んでいます、でも、すぐに考えつくようなものではないので、中々難しい問題ですから」

エルフィ「よろしければ、わたしに聞かせてくれませんか?」

カムイ「いいんですか?」

エルフィ「はい」

カムイ「そのですね――」





エルフィ「望むものですか?」

カムイ「はい。すみません、あまりにも抽象的なもので」

エルフィ「そうですね。あまり深く考えたことのないことですから」

カムイ「……エルフィさんはどうして戦っているんですか?」

エルフィ「エリーゼ様のためです」

カムイ「すぐに出てくるんですね?」

エルフィ「はい、わたしが王城兵になったのも、エリーゼ様にもう一度会いたかったからで、エリーゼ様を守ることを第一に考えて鍛えています」

カムイ「そうなんですか……。いいですね、そういった強い思いがあるというのは」

エルフィ「カムイ様にはないのですか」

カムイ「それを今探しているんです。こんな時になって遅いとはわかっていますし、そんな簡単に決まることでもないと思います。それでも見つけないといけないんです」

エルフィ「カムイ様……わたしは頭で考えるのが苦手です」

カムイ「?」

エルフィ「この道もエリーゼ様にもう一度会いたいという思いだけできめました」

カムイ「みたいですね」

エルフィ「だから、わたしはカムイ様のように考えて決めることは得意じゃありません。でも、こんなわたしでも見つけられるんです、カムイ様にもきっと見つけられるはずです」

カムイ「エルフィさん……」

エルフィ「ですから、その、困った顔をされると困ってしまいます。その、どうすればいいのか本当にわからないんです」

カムイ「……すみません。なんだか、いっぱい悩ませてしまったみたいですね」

エルフィ「いいえ、わたしが聞いたのに、力になれなくて」

カムイ「いいえ。少しだけ気持ちは楽になりました……」

カムイ(……悩んでばかりでもいけない、そういうことなのかもしれませんね)

カムイ「エルフィさん」

エルフィ「なんでしょうか?」

カムイ「この後の訓練、私も参加していいですか?」

エルフィ「カムイ様もですか?」

カムイ「はい。その、この頃体を動かしてなかったので、それに動けば何かが変わるかもしれませんから……」

エルフィ「わかりました。それでは、これを付けてください」

カムイ「これといいますと」

 ジャラッ 

カムイ「あっ」ゴロンッ

エルフィ「え、カムイ様?」

カムイ「びっくりしました。すごく重たいですね」

エルフィ「重りです。これを付けて走り込みに行く予定だったので」

カムイ「これを付けてですか……」

エルフィ「その、無理はしないでもいいですよ」

カムイ「いいえ、参加すると言ったのは私ですから。それに今は疲れ果てたい気分なんです」

エルフィ「そうですか。ふふっ、変わっていますねカムイ様は、わたしと同じ訓練をしたいという人はいませんから」

カムイ「すみませんけど、今日はよろしくお願いします」

エルフィ「はい、それじゃそろそろ、いきま――」

カムイ「その前に……」

エルフィ「?」

カムイ「重りを少し減らしてもらっていいですか。このままじゃ、走ることもままなりません……」グググッ

エルフィ「ふふっ、わかりました」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
―イズモ公国・宿泊施設『カムイの部屋』―

カムイ「……疲れましたね」

アクア「たしかに思考が固まってしまうのはよくないことかもしれないわ」

カムイ「はい、今日はエルフィさんに助けてもらったのかもしれません。ずっと考えてばかりで、私は同じ場所をぐるぐる回っていたのかもしれませんから」

アクア「そう。私たちじゃ気付けない切り口かもしれない……。少し悔しいわ」

カムイ「?」

アクア「なんでも無い。それよりも白夜の話だけど、私は強硬派のことが気になるわ」

カムイ「アクアさんが暗夜に来ることになった理由も、強硬派に捕まったからですよね?」

アクア「ええ。あの頃の強硬派には勢いがあったし、なによりもリョウマ自身が反逆者を排除する行動に加担していた事もあったから」

カムイ「……リョウマさんを慕う多くの人たちも未だ幽閉されているのでしょうか」

アクア「そうね。だけど、実際生きているのかどうかはわからないわ」

カムイ「……」

アクア「……ごめんなさい。悲観的なことを言いたいわけじゃないの、でも」

カムイ「わかってます……。その可能性を考えなくてはいけないことも。そうなっていてほしくはありませんけど……」

アクア「ええ……」

カムイ「どちらにせよ、イザナさんの連絡を待たないことにはどうにもなりませんから」

 トテトテトテッ

アクア「誰?」

???『? ここはカムイ王女のお部屋じゃなかったかな?』

アクア「私がいたらおかしい?」

???『あはは、ごめんごめん。ちょっと失礼するよ~』

 スーッ

イザナ「やっ、カムイ王女」

カムイ「……噂をすれば影ということでしょうか?」

イザナ「なになに、ボクのことでも話してたのかな?」

カムイ「ええ。で、私を訪ねてきたということは……」

イザナ「……」

アクア「書簡の件の返事が来たということね」

イザナ「いや、ちがうよ~」

アクア「違うの?」

カムイ「少し身構えたのに、違うんですか?」

イザナ「さすがにまだ返事は来ないよ。ボクの使いは早いけど、さすがにね」

カムイ「では、一体何の用ですか?」

イザナ「うん。今日までキミたちのこと見てたんだけど、やっぱりあんまり元気がないようだから、体を休められることはないかな~って思って色々と考えてたんだ」

カムイ「そうだったんですか……すみません」

イザナ「気にしない気にしない。そこで、こんなのはどうかなって思いついたからカムイ王女に確認に来たんだけど」

アクア「あまり煌びやかなの困るわ」

イザナ「うん、大丈夫。きらびやかとか、そういった催しとかじゃないから」

カムイ「どういったものなんですか?」

イザナ「イズモ公国はなんだかんだ宿泊地としても有名で、結構それ目的で来てくれる人もいるから、今回はそこでゆっくりしてもらおうかなって。これはボクのささやかなおもてなしなんだけど、どうかな?」

アクア「カムイ、どうするの?」

カムイ「そうですね。話を聞いてからでもいいでしょう。それで、そのおもてなしというのは……」

イズモ「みんな疲れてるみたいだから、ここはひとつ――」






「温泉でもどうかな~って」

○カムイの支援現在状況●

―対の存在―
アクアA
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)

―城塞の人々―
ギュンターB++
(恋愛小説の朗読を頼まれています) 
フェリシアB+
(カムイに従者として頼りにされたい)
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
フローラB
(すこしは他人に甘えてもいいんじゃないかと言われています)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)

―暗夜第一王子マークス―
ラズワルドA
(あなたを守るといわれています)
ピエリB
(弱点を見つけると息巻いています)
マークスB++
(何か兄らしいことをしたいと考えています)

―暗夜第二王子レオン―
オーディンB+
(二人で何かの名前を考えることになってます)
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)
レオンB+
(カムイに甘えてほしいと言われて、いろいろと考えています)

―暗夜第一王女カミラ―
ルーナA
(目を失ったことに関する話をしています)
カミラA
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ベルカC+
(イベントは起きてません)

―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼA
(昔、初めて出会った時のことについて話しています)
ハロルドB
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィB→B+
(一緒に訓練をしました)←NEW

―白夜第二王女サクラ―
サクラA
(カムイと二人きりの時間が欲しいと考えています)
ツバキB
(イベントは起きていません)
カザハナC+
(イベントは起きていません)

―カムイに力を貸すもの―
シャーロッテB++
(返り討ちにあっています)
スズカゼB
(おさわりの虜になったようです)
サイラスB+
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB+
(許されることとはどういうことなのかを考えています)
モズメC+
(イベントは起きていません)
リンカB
(イベントは起きていません)
ブノワC+
(イベントは起きていません)
アシュラC+
(イベントは起きていません)
フランネルC+
(イベントは起きていません)

 仲間間支援の状況

●異性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・レオン×カザハナ
・ジョーカー×フローラ
・レオン×サクラ
・ラズワルド×ルーナ
・アクア×オーディン

【支援Bの組み合わせ】
・ラズワルド×エリーゼ
・ブノワ×フローラ
・エリーゼ×ハロルド
・オーディン×ニュクス
・ベルカ×スズカゼ
・ルーナ×オーディン
・レオン×エルフィ←Bになりました
・アクア×ゼロ←Bになりました

【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
・モズメ×ハロルド
・ギュンター×ニュクス
・ルーナ×ハロルド

●同性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・リンカ×アクア
・ピエリ×カミラ
・フェリシア×ルーナ
・フローラ×エルフィ
・レオン×ツバキ
・ベルカ×エリーゼ
・ピエリ×ルーナ

【支援Bの組み合わせ】
・ギュンター×サイラス
・フェリシア×エルフィ
・シャーロッテ×モズメ
・ベルカ×ニュクス
・シャーロッテ×カミラ←Bになりました

【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
・ピエリ×リンカ
・ピエリ×フェリシア
・ジョーカー×ハロルド
・アクア×ルーナ
・フローラ×エリーゼ
・カミラ×サクラ
・スズカゼ×オーディン

 今日はここまでで

 気づけば一年経っていました。時の流れは速いですね。

 仲間間支援の組み合わせを決めたいと思います。参加していただけると幸いです。
◇◆◇◆◇

 アクア
 ジョーカー
 ギュンター
 フェリシア
 フローラ
 マークス
 ラズワルド
 ピエリ
 レオン
 ゼロ
 オーディン
 カミラ
 ベルカ
 ルーナ
 エリーゼ
 ハロルド
 エルフィ
 サイラス
 ニュクス
 ブノワ
 シャーロッテ
 モズメ
 リンカ
 サクラ
 カザハナ
 ツバキ
 スズカゼ
 アシュラ
 フランネル

 支援イベントのキャラクターを決めたいと思います。

 >>453>>454

(すでにイベントが発生しているキャラクター同士が選ばれた場合はイベントが進行、支援状況がAになっている組み合わせの場合は下のキャラクターとの支援になります)

◇◆◇◆◇
進行する異性間支援の状況

【支援Bの組み合わせ】
・ラズワルド×エリーゼ
・ブノワ×フローラ
・エリーゼ×ハロルド
・オーディン×ニュクス
・ベルカ×スズカゼ
・ルーナ×オーディン
・レオン×エルフィ
・アクア×ゼロ

【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
・モズメ×ハロルド
・ギュンター×ニュクス
・ルーナ×ハロルド

 この中から一つ>>455

(会話しているキャラクターと被ってしまった場合は、その一つ下のになります)
 
◇◆◇◆◇
進行する同性間支援

【支援Bの組み合わせ】
・ギュンター×サイラス
・フェリシア×エルフィ
・シャーロッテ×モズメ
・ベルカ×ニュクス
・シャーロッテ×カミラ

【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
・ピエリ×リンカ
・ピエリ×フェリシア
・ジョーカー×ハロルド
・アクア×ルーナ
・フローラ×エリーゼ
・カミラ×サクラ
・スズカゼ×オーディン

 この中から一つ>>456

 このような形ですみませんがよろしくお願いいたします。

絆の秘湯かな
覚醒組が見たいので
オーディン

ラズワルド

オーディンルーナってセーフだっけ?
ダメならブノワフローラ、もしくはベルカニュクス

片方のキャラがすでに選択されてる組み合わせはどうなるんだったっけ
アクアルーナが不可ならカミラサクラ

あとどこに前の支援があったかレス番だけ書いて欲しいなあ
今回のシャロカミラ支援とか完全に忘れてるわ

さて、一眼レフの用意でもするか

松の木がでかくてびっくりしたw
うちのアクアはあんなの振り回してるんかww

◇◆◇◆◇
―暗夜王国・兵舎―

ラズワルド「オーディン、ちょっといいかな?」

オーディン「なんだ、蒼穹のラズワルド。俺は新しい必殺技の試験運用に忙しい」

ラズワルド「それだよそれ。少しはやる場所考えてよ、特に考える場所とかさ」

オーディン「考える場所? 俺はいつも工房で考えている。秘術や奥義の制作過程を知られてはならないからな」

ラズワルド「……君の新作って、ゾティアックムーンスラッシュだよね?」

オーディン「な、なんでそれを!? まさか、お前もついに天啓を得たということか!?」

ラズワルド「……オーディン、この頃、夜中の兵舎に変な声が木霊してるって噂があるんだけど」

オーディン「なに……。この兵舎にも悪霊がいるということか」

ラズワルド「ここまで言っても気づかないんだね。悪霊っていうのはオーディン、君のことだよ!」

オーディン「え?」

ラズワルド「あのね、必殺技考えるのは別にいいんだけど。ちょっと、テンションをどうにかしてよ。昨日、君の部屋の前を通って驚いたんだよ?」

オーディン「もしかして、廊下まで漏れてた?」

ラズワルド「駄々漏れしてるよ。それにすごく子供っぽいんだけど……」

オーディン「声が漏れてることは俺に非がある。だが、子供っぽいとは心外な。これは新たなる呪術の開発、全身全霊を込めて挑んでいるだけだ」

ラズワルド「駄目だ、こっちに来てから余計酷くなってる……。でも、このまま続くとオーディンだけ、兵舎を追いだされる事態になっちゃうよ?」

オーディン「まてーーーーい!そ、それは困るぞ」

ラズワルド「なら、取るべきことをしないとね。それにレオン様に迷惑を掛けるわけにはいかないだろ?」

オーディン「ぐっ、それもそうだな。わかった、何とかしておく」

ラズワルド「はぁ、まったく目を離すとこれだからなぁ……」

【オーディンとラズワルドの支援がCになりました】

◇◆◇◆◇
―暗夜王国・兵舎『ルーナの部屋』―

 キュッ キュッ キュッ

オーディン「よし、これで最後の一個だ。それにしてもこんなに使うわけないのに、どうして買うんだ?」

ルーナ「うっさいわね。物はあったほうがいいのよ」

オーディン「結局使わなかったら意味ないと思うが……」

ルーナ「はいはい、つべこべ言わずに最後の整備やっちゃってよ。あんたの整備の腕は知ってるんだからね」

オーディン「わかってる。それにしても、正直意外だったな」

ルーナ「なにがよ?」

オーディン「いや、儀式の内容を聞いたら、手伝うのを止めると思っていたんだ」

ルーナ「……なにそれ、あたしのことそんな薄情者だと思ってたわけ?」

オーディン「だ、だってよぉ。昔、気持ち悪いって言われたこともあったし、説明してる時はテンションが高くなってただけで、実際説明の後怖かったんだからな……」

ルーナ「そんなことまだ気にしてんのね、あんた」

オーディン「う、わるいか?」

ルーナ「ううん、悪くないわ。それに、やっぱりあんたはずっと変わらないって思うと、なんだか安心できるし」

オーディン「?」

ルーナ「実を言うとだけど、供物の説明あたりで面倒くさそうだから逃げようかと思ってたわ」

オーディン「えぇ……」

ルーナ「でも、あんた言ったじゃない『この力は不可能を可能にする力』って」

オーディン「当然だ。現に儀式は成功、鮮血戦器・ブラッディマリーに新たなる力、クリムゾンブレイヴを与えたのだからな……。ふっ、あいつの喜んでいた顔、とても良かった」

ルーナ「それもあるけど、あんたを見てるとね、どんな不可能でも実現できるそう思えてくるの。前の戦いであたし達が救えたものがあったみたいに、ここでもあたし達に救えるものがあるはずだって」

オーディン「ルーナ……」

ルーナ「……ちょ、そんなマジマジと見ないでよ、恥ずかしいじゃん」

オーディン「ふっ、ふははははははっ!!!!」

ルーナ「!」

オーディン「安心しろ、この俺がいる限り不可能などありはしない。新たなる力を覚醒した漆黒のオーディンが――いたー!」

ルーナ「まったく、調子に乗らないで、あたしも一緒に戦ってるってこと忘れないでくれない? 誰かのお荷物になるつもりはないんだからね」

オーディン「まぁ、それもそうだな。よし、この装備の整備が終わったら、久しぶりに手合わせでもしようぜ。俺の新しい必殺技を見せつけてやるからよ」

ルーナ「ふーん、言葉ばっかりで当てられない未来しか見えないけど。いいわ、相手してあげる」

オーディン「言ったな。よーし、すぐに終わらせるから待ってろよ!」ガチャガチャ

ルーナ「……」

ルーナ「……変わらない奴がいるのって、結構心強いんだからね」ボソッ

オーディン「何か言ったか?」

ルーナ「なんでもない。って、ちょっと余所見しないでよ、壊したら承知しないからね!!!」

【オーディン×ルーナの支援がAになりました】

・支援C[4スレ目・352]
・支援B[4スレ目・411]

◇◆◇◆◇
―暗夜王国・カミラ邸『ルーナの宿泊部屋』―

ルーナ「来たわね、アクア様」

アクア「ええ、それで私の寝癖を倒すっていう話だけど……」

ルーナ「ふふん、あたしあんまり寝癖とか付かないから使わなかったんだけど、やっぱり買っておいて損はないってことね!」ガシャンッ

アクア「瓶? すごい量だけど」

ルーナ「ふふん、市場とか王宮で使われてる寝癖直しよ。アクア様、いつも寝癖を直す時、水だけでどうにかしようとしてるでしょ?」

アクア「ええ、実際直るもの」

ルーナ「直ってるかもしれないけど、見えないところで髪の毛が痛んでたりするのよ。アクア様、髪がとってもきれいなのに、こんなことで傷つくなんていやじゃない?」

アクア「……あまりそうは思わないけど」

ルーナ「アクア様が気にしなくてもあたしが気になるのよ。その炎を纏ったような髪をゆらゆらされると、すぐにでもサラサラにしてあげたくなるわ」

アクア「……そう」

ルーナ「それじゃ、まず王宮でよくつかわれてるこれにするわね。ちょっと準備が必要な高級品よ」

アクア「そう、お手柔らかにね」

ルーナ「もちろん。えっと、確かこれとこれを合わせて、これを……」

アクア「……」

ルーナ「配合比率は2:8……あれ、3:7……」

アクア「もしかして、うろ覚えなの?」

ルーナ「え、そ、そんなわけないじゃない。あたしが買ったものなんだから、ちゃんと使い方はわかってるから……うん、これでよかったはず。それじゃ、行くわよ!」

アクア「……え、えぇ」

 ペタペタペタッ

ルーナ「ふふんっ。髪の毛にどんどん馴染んでいくわ」

アクア「冷たい……」

ルーナ「我慢して、これで炎みたいな寝癖もたちまち清流のような流れに……」

 シャキーンッ

ルーナ「……」

アクア「……」

ルーナ「……あれぇ」

アクア「……」

ルーナ「……もしかして、間違え――」

アクア「……ねぇ、ルーナ」ニコッ

ルーナ「は、はひっ」

アクア「寝癖を直してくれようとしてくれてありがとう。私もあなたに恩返しがしたくなったわ。同じもの、あなたの髪に塗ってあげるわね?」

ルーナ「う、ううん、大丈夫、それにあたし寝癖なんて――」

 ダキッ ドサッ

ルーナ「はうっ!」

アクア「遠慮しないでいいわ。それに自分で買ったものがどういうものなのか、ちゃんと知らないとね?」ネトーッ

ルーナ「あ、アクア様。ご、ごめん。ごめんなさい、ゆる、ゆるし――」

 ワシャワシャッ

ルーナ「きゃああああああっ」

【アクアとルーナの支援がBになりました】

・支援C[3スレ目・283]

◆◆◆◆◆◆
―白夜・イズモ公国『大型温泉施設』―

 カポーン

 テトテトテトッ
 ゴシゴシゴシッ バシャー

 チャプン

カムイ「ふぅ~」

 チャプン

アクア「ふぅ……」

 チャプン

エリーゼ「はふぅ~、きもちいい~」

 ムニュン

カミラ「ふふっ、やっぱり私の方が大きいわね」

カムイ「入って早々、おっぱい触らないでくださいよ、カミラ姉さん」

カミラ「いいじゃない。姉妹同士じゃない、それにおねえちゃんとってもうれしいのよ」

エリーゼ「わかったー、カムイおねえちゃんと温泉に入れたからだね!」

カミラ「ええ、ここに来て夢が叶うなんて思ってもいなかったもの。贅沢を言っていいなら、二人っきりで体の洗いっこがしたいわ。隅々まで奇麗にしてあげる、おねえちゃんとっても上手なのよ?」

アクア「……」

エリーゼ「あれ? アクアおねえちゃん、どうしてカミラおねえちゃんから視線を逸らしてるの?」

アクア「なんでも無い、なんでも無いの。隅々まで洗われるのが怖いとか、そういうわけじゃないの」

エリーゼ「?」

アクア「だから気にしないで……」

カムイ「それにしても温泉ですか。お風呂とはまた違うんですね」

カミラ「ええ、それにそれぞれ効能もあるらしいわ、ちなみにここは美容に効果があるみたいね」

カムイ「美容ですか。女性に人気が出そうな温泉ですね」

イザナ『たしかに女性に人気だったよ~』

アクア「!?」

エリーゼ「この声、イザナさん、だよね?」

カミラ「あらあら、さっきカムイの胸を触ってたところ、見られちゃったかしら?」

イザナ『ごめんごめん、驚かせちゃったみたい。隣は男の湯になってるんだよ~』

カムイ「そうだったんですか」

カミラ「この板は、そのための仕切りということだったのね」

イザナ『うんうん、混浴っていうのもあるけど。疲れが取れないかもしれないから、今回は無しにしといたからね~』

アクア「混浴にしてたら、女性陣全員であなたを張り倒しに行ってたところよ。命拾いしたわね」

イザナ『おぉ、こわいこわい。ともかく、いっぱいくつろいでね。大丈夫、変なのがいたらすぐに叩き落としておくから』

カムイ「変なのとはなんですか?」

カミラ「変なのねぇ……一体何のことかしら?」

アクア「こういう温泉には、壁をよじ登ろうとする変な奴らがいるものなのよ」

エリーゼ「壁をよじ登るの?」

アクア「ええ、まぁ、向こうにはイザナがいるから大丈夫だと思うし、そんなことをしたら命の保証がないことくらいわかっているはずよ」

カムイ「命がけの壁登りですか。逆に浪漫溢れる行為な気がしてきました」

アクア「勘違いしてるかもしれないけど、愚かな行為だからやめておきなさい」

カムイ「ふふっ、アクアさんが言うなら愚かな行為なんでしょうね。わかりました、私はしないようにします」

アクア「しないのが当り前よ」

カムイ「ふふっ。アクアさん、ちょっと寄ってもいいですか」

アクア「ええ、いいわよ」

カムイ「それじゃ、あうっ」バシャンッ

 フニュン

アクア「あっ……ちょっと、やっ、ふとももに手、入って……はうっ」

カムイ「すみません、ちょっとバランスが崩れてしまいました。ふふっ、やっぱりアクアさんの体はとっても柔らかくていいですね」サワサワ

アクア「それ以上触ったら、沈めてあげるけど?」

カムイ「冗談きついですね、アクアさんは」

アクア「……」

カムイ「あ、はい」

アクア「でもよかったの?」

カムイ「なにがですか?」

アクア「…その、あなたの体には……」

カムイ「ああ、傷のことですね。アクアさんが気にすることじゃありません。それに私は気にしていませんから」

アクア「でも……」

カムイ「ふふっ、アクアさんは可愛いですね」ナデナデ

アクア「もう、からかわないで」

カムイ「ふふっ、大丈夫です、傷痕なんてみられてもへっちゃらですから」

カザハナ「うん、あたしもあんまり気にしないかなぁ。そういうのを見られるのは」

カムイ「その声は、カザハナさん?」

カザハナ「うん、サクラ様がカムイ様と一緒に入りたいから来ちゃった。ほら、サクラ様」

サクラ「う、うん。あ、あのカムイ姉様、その御一緒しても、よろしいですか?」

カムイ「ええ、もちろん。私の横なんかでよければ」

サクラ「う、うれしいです。そ、それじゃ失礼しますね……」

サクラ「はぁ~、こんなに大きな温泉、久しぶりで懐かしいです」

カザハナ「サクラ様、いいお湯ですね~」

サクラ「はい、とっても温かくて気持ちがいいです」

カザハナ「ふふっ、んー、はぁ~」グググッ

アクア「カザハナ、その体……」

カザハナ「へへっ、傷だらけでしょ? だけど、あたしは全然気にしてないし、見られても別に構わないよ。これはあたしがサクラを守ってきた勲章だから、全然気にならないよ」

サクラ「その、いつもカザハナさんについて行って、よく怪我をしそうになってたんです。その時、いつも守ってくれて……」

カムイ「そうだったんですか」

カザハナ「うん、その、さっきの話だけど、カムイ様もその気のことは、そう思ってるのかなって」

カムイ「そうですね。この傷は私とアクアさんとの絆そのものですからね」

アクア「傷が絆って、まるで私がカムイに何かしてるみたいじゃない」

カムイ「ふふっ、あんなに激しいことをしたじゃないですか」

アクア「そ、その言い方は勘違いされるからやめて」

カザハナ「でも、こんなにお風呂が大きいと泳げちゃいそうだよね。一回、泳いでもいいかな? いいよね、いくよー!」

レオン『カザハナ、周りの迷惑になることはするんじゃない』

カザハナ「えっ、レ、レオン王子!?」

カザハナ「何、女の子同士の会話に聞き耳立ててるのよ。この変態王子!」

レオン『カザハナの声が大きいだけだよ! まったく、姉さんやサクラ王女に迷惑を掛けないようにしなよ。もう、子供じゃないんだからさ』

カザハナ「う、うるさいなぁ。もう、こんなところまで説教しなくても……」

レオン『転んだりしたら危ないだろ』

カザハナ「……ふぇ?」

レオン『傷のことだってあるし、サクラ王女を心配させるのはよくない。なにより、カザハナだって女の子なんだから、気を付けたほうがいいからね』

カザハナ「い、言われなくたってわかってるし。なによ、もう、いきなり女の子とか……ブクブクブクブク」

サクラ「ふふっ、カザハナさんもレオンさんの前では女の子になっちゃいますね」

カザハナ「ちょ、ちょっとサクラ、変なこと言わないでよ!」

サクラ「ふふっ、わかってますよ。カザハナさんも女の子ですからね」

カザハナ「ちが、そうじゃなくて、もう、サクラの馬鹿!!!」バシャンッ

サクラ「うふふっ。でも、やっぱり私は女性らしくないんでしょうか。その、胸もないですし、体つきだって……」

エリーゼ「さ、サクラ、大丈夫だよ。もう少しすれば、あたしもカミラおねえちゃんみたいな立派なレディになれる。だからサクラだって大丈夫!」

サクラ「カミラさんみたいな、ですか……」

カミラ「ふふっ、どうしたのかしら?」バインッ

サクラ「……やっぱり、男の人ってお胸の大きい人が好きなんでしょうか?」

カミラ「ふふっ、その男の人って隅に置けないわね。こんな二人の女の子に意識されてるなんて、両手に花ね、レオン?」

サクラ「わ、私はレオンさんのことなんて一言も……」

カミラ「ふふっ、どうしたのかしら? そんなに顔を赤くして、サクラ王女はレオンにどう思われたいのかしら?」

サクラ「え、えええっと、それは……」

レオン『ねえ、二人とも、その話やめてくれないかな……』

サクラ「れ、レオンさん。き、聞こえてたんですか!?」

レオン『うん、サクラ王女も思ったより声が大きいからね。とりあえず、周りのみんなから色々な視線を受けてるから、もうその話はやめてほしいんだけど』

サクラ「そ、その、ごめんなさい……」

アクア「レオン、女の子に謝らせるなんて駄目じゃない」

カミラ「ふふっ、アクアは厳しいわね」

サクラ「はぁ、レオンさんを困らせてしまいました……」

 チョンチョン

シャーロッテ「ねぇ、サクラ様」

サクラ「シャーロッテさん、どうしたんですか?」

シャーロッテ「いや、その、今のレオン様とのお話なんですけど……」

サクラ「やっぱり、男の人はお胸が大きい女性の方がいいんですよね。シャーロッテさんも大きいから、うらやましいです」

シャーロッテ「えーっと、そのことじゃなくて、カザハナのことなんですけど」

サクラ「え、カザハナさんのことですか?」

カザハナ「あ、あたしのこと?」

シャーロッテ「ねぇ、カザハナ」

カザハナ「うん、なに?」

シャーロッテ「もしかして、レオン様に裸を見られてたりする?」

カザハナ「」

サクラ「し、シャーロッテさん。ど、どうして、そう思うんですか!?」

シャーロッテ「いや、傷の話は確かにあったけど、今のレオン様の言い方、体中に傷があること知ってるみたいだったから」

アクア「……たしかにそうね。体の傷のこと、知ってるような言い方だったわ」

カミラ「そうね。それにレオンだって推測でそんなことは言わないわ。カザハナのこと、ちゃんと女の子として見てあげてるみたいだったから」

シャーロッテ「っていうわけなんだけど。サクラ様、実際のところどうなのよ?」

サクラ「えっと、その……あ、あの~、カザハナさん」

カザハナ「////////////」

エリーゼ「うわっ! カザハナ、すごく真っ赤になってる!!」

シャーロッテ「へっへっへ、カザハナ。一体どこでその体を見られたのか、言いなさいよ」

カザハナ「な、あ、あれは生命の危機だっただけ、それだけだから!!!」

シャーロッテ「つまり、見られたのは認めるってことね。レオン様もやっぱり男、その後はもちろん――」

レオン『これ以上、僕を苦しめるのをやめてくれないかな!?』

 今日はここまでで

  ドラマCD発売か、財布が軽くなるな

カムイ「もう、レオンさん。そんな大声出しちゃいけませんよ」

レオン『大きな声を出したくなるよ。こっちの身に少しはなってくれないかな?』

カムイ「なってくれと言われましても、私にはそういった方は思い当たりませんから……」

カミラ「そんな、私の愛情はカムイに届いていないというの?」

カムイ「カミラ姉さんからはいっぱい愛情を頂いてます、安心してください」

カミラ「あら、そう言ってもらえておねえちゃん嬉しいわ。今度は体で触れ合う愛情にしましょう?」

カムイ「ふふっ、体の洗いっことかですか?」

シャーロッテ「……カムイ様って良くわからないわね」

カムイ「なにがですか?」

シャーロッテ「その、カムイ様って恋とかしたことあるの?」

カムイ「恋ですか、すみません流行には疎くて」

シャーロッテ「特に流行とかじゃないんだけど、もしかして恋とか以前の問題に異性と同性の境界とか気にしてなかったり」

カムイ「異性と同性って、男性も女性も変わらないですよ。その人はその人なんですから」

アクア「男か女かは問題じゃないって意味みたいだけど。曖昧な答えね、シャーロッテはもっとまっすぐな答えを欲しがってるわよ」

カムイ「え、違うんですか?」

シャーロッテ「こっちの方面、まったく鍛えられてないのね、カムイ様って」

エリーゼ「えへへ。カムイおねえちゃんって、そういうことはあたしよりも知らなそうだよね。あたしの恋愛小説、ちゃんと読んでるの?」

カムイ「本は読めませんから、ギュンターさんに時々読んでもらっています。でも、私にはまだ難しい表現が多くて、理解するために意味を聞いてるんですけど、はぐらかされてしまいますね」

アクア「多分、それは教えない方がいいっていうギュンターなりの優しさよ」

カムイ「教えてくれた方が私としては嬉しいんですけど」

ルーナ(正直、顔を触る癖のあるカムイ様がそういう意味を知ったら、もっと手がつけられない気がするけど……)

アクア「ルーナも私と同意見のようね」

ルーナ「ちょ、あたしの頭の中、勝手に読まないでよ。でも、あたしもそう思ってるわ」

アクア「私もよ」

カムイ「でも、なんだか皆さんがうらやましいですね。私はそういうのが全く分かりませんから……。心配したりとか、そういうことを思うことはできるんですけど。なんでなんでしょうね?」

シャーロッテ「なんでなんでしょうねって言われても。っていうか、そういう気配りができるんだったら、あの顔タッチ少し自重できるでしょ」

カムイ「あれは別腹ですから。ああ、なんだかそう言われると触りたくなってきました。シャーロッテさん、すこし触らせてください」

シャーロッテ「お断り、私の顔は安くないもの」

カムイ「ちょっとだけでいいですから」

シャーロッテ「ちょっとだけでもやらせたら、離さないでしょ」

カムイ「ああっ、振られてしまいました。アクアさん顔を触らせてくだ――」

アクア「ふふっ、悪戯好きな手はこれかしらね?」ガシッ グググッ

カムイ「あうっ、いたっ…」

カミラ「流れるように取ったわね」

エリーゼ「すご~い」

アクア「慣れれば木を持つより簡単よ」

シャーロッテ「さらっとすごいこと言ってるけど、カムイ様って思ったよりもアクア様にべったりですよねぇ」

カムイ「そうでしょうか」

アクア「そ、そうかしら?」

カミラ「……そうね。カムイはアクアのこと、アクアはカムイのことが気になって仕方がない関係だものね」

アクア「な、なに言って――」

カムイ「それは気になりますよ」

アクア「え、カムイ?」

カムイ「アクアさんは仲間ですから、それに私となんだか似てる気がして放っておけないんです」

アクア「……そ、そうね、仲間だものね?」

カムイ「ええ、もちろんですよ。よかった、否定されたらどうしようかと思いました」

アクア「そんなことないわ……」

カムイ「ふふふっ」

アクア「……」

ピエリ「アクア様、なんだかすごく不満そうな顔してるの」

カミラ「そうね、アクアとしてはもう一歩踏み出した存在になりたかったのかもしれないけど、カムイには少し難しいことなのかもしれないわね」

ピエリ「もう一歩ってどんなのなの? ピエリ、よくわからないのよ」

カミラ「ふふっ、そうね。とっても大切が欲しかったのかもしれないわね?」

ピエリ「とっても大切。ピエリ、カミラ様のこととっても大切に思ってるのよ」

カミラ「ふふっ、ありがとう。でも、お友達のルーナのことも忘れちゃ駄目よ?」

ピエリ「!? カミラ様、ピエリとルーナがお友達名の知ってたの?」

カミラ「もちろん、私の可愛い臣下だもの、それに……ほら」チラッ

ピエリ「?」チラッ

ルーナ「あっ……」プイッ ワシャワシャ

カミラ「ふふっ、ピエリと話したそうにこっちを時々こっちを見てるのよ。素直じゃないところがとっても可愛い。そうだ、ピエリも洗いっこしてきたらどう?」

ピエリ「洗いっこ……、わかったの。ピエリ、洗いっこしてくるの!」

カミラ「ふふふっ、それじゃ、仲良くなれる洗いっこの方法、教えてあげる」

ピエリ「本当なの!?」

カミラ「ええ、とっても距離が近くなる洗いっこの方法ね」

ルーナ「……」チラチラッ

フェリシア「ルーナさん、ピエリさんを誘ってきたらどうですか?」

ルーナ「え、なに、なによ、何を誘うっていうのよ!?」

フェリシア「ふふっ、さっきからピエリさんとカミラ様の方ばっかり見てるじゃないですか。さっき、カミラ様と目が合って逸らして、カミラ様とても楽しそうにしてました」

ルーナ「そ、そんなことないわ。べ、別に話がしたいとかそういうわけじゃなくて、その、二人並んでるのを見ると、その目が自然と向いちゃうっていうか」

フェリシア「?」

ルーナ「ほら、あの二人結構なもの持ってるでしょ……」

フェリシア「あー、たしかにうらやましいです。どうやったら、あんな大きくなるんでしょうか」

ルーナ「あたしが聞きた――」

 ペタペタペタタタッ

ピエリ「ルーナ、一緒に洗いっこするの!」ダキッ

ルーナ「うわあああっ、ちょっとピエリ、いきなり抱きつかないでよ! っていうか、背中に胸当ててんじゃないわ!」

ピエリ「裸だから仕方ないの。フェリシアもいっしょに洗いっこするの、ピエリが背中をいっぱいゴシゴシしてあげるの。こうやって――」ニュルンニュルン

ルーナ「ふあぁっ! ちょ、え、なに、何してんの!? ピエリ、本当になにしてんのよ!」

フェリシア「はわわわ、ピエリさん、ルーナさんの背中に体押し付けて何してるんですか!?」

ピエリ「カミラ様がこうやって洗ってあげると喜んでくれるって、さっき言ってたの。ルーナの体、ピエリのお肌で奇麗にしてあげるのよ」

 ワシャワシャ ニュルンニュルン

ルーナ「やっ、背中、すごいっ、弾力……ふぁ、なにこれぇ」

ピエリ「えへへ、石鹸まみれになるのよ!」ニュルンニュルン ワシャワシャ

ルーナ「ううっ、こうなったらフェリシア、あんたも巻き添えになりなさい」ダキッ

フェリシア「ふぇえええ、なんで私までぇ……。いや、腰に手まわしちゃ、はうううっ」

ああ^~

支援広げててよかった
俺は改めてそう思った

エリーゼ「あそこのみんな、何やってるのかな」

ベルカ「エリーゼ様には関係の無いことよ」

エリーゼ「え~。そうだベルカ、私たちも体の洗いっこしよ?」

ベルカ「え?」

エリーゼ「そのね、ベルカともっと仲良しになりたいの。だめ?」

ベルカ「いいえ、その。人の体を洗ったことなんてなくて、だから力加減とかうまく出来ないかもしれないから」

エリーゼ「そんなの気にしなくて大丈夫。それじゃ、先にあたしがベルカの体洗ってあげる。それを真似すればいいだけだから、大丈夫だよ」

ベルカ「……そう、ならいいわ」

エリーゼ「うん、それじゃ行こっ!」バシャンッ

ベルカ「……!」

カミラ「ふふっ」

ベルカ「え、えっと、カミラ様、これは……」

カミラ「ベルカもそんな顔できるようになったのね、とっても嬉しいわ」

ベルカ「その……////」

カミラ「ふふっ、照れて可愛いわ。今度はもっと表情を柔らかくして、みんなと接してあげてね。さっ、エリーゼが待ってるから、行ってあげて」

ベルカ「ええ」

 ペタペタペタ

エリーゼ「えへへ、それじゃ、まずは髪から洗ってあげるね。えへへ、ベルカの髪って短いけどサラサラしてて気持ちいい」

ベルカ「あ、ありがとう。その、エリーゼ様の手……」

エリーゼ「も、もしかして力強かった?」

ベルカ「ううん、その優しくて気持ちいい……」

エリーゼ「えへへ~、カミラおねえちゃんによく洗ってもらってるからかな。ここらへんとかいつも解してくれるんだー」

ベルカ「そう……」

エリーゼ「うん、これくらいかな。それじゃ流してあげるね」

ベルカ「ええ、お願い」

 ザバー

エリーゼ「それじゃ、次は背中だ。よぉーし、それじゃ、よ、よろしくおねがいします!」

ベルカ「うん、おねがい、エリーゼ様」

エリーゼ「うん、がんばるよー」

 エリーゼサマ、アライニククナイデスカ?
 ウウンソンアコトナイヨー、ベルカノハダ、ナンダカヤサシイカンジガスル。エヘヘ、モットモットアラッテアゲルネ!
 
カミラ「ふふっ、みんな仲良しそうで何よりね」

カムイ「私も混ざりたいです。あの中なら、どこを触っても許される気がしますから」

カミラ「あらあら、下心丸出しじゃない。そんな悪い子はお姉ちゃんと一緒に百数えるまでお風呂に拘束しちゃうわ」ガシッ

カムイ「掴まってしまいましたね」

アクア「まったく、人にちょっかい出してばかりなのはよくないわ」

カムイ「それもそうですね」

シャーロッテ「でも、本当にカムイ様って、そういった経験無いんですね。その歳で初恋もまだなんて、このまま一生一人身だったりして」

カムイ「そうですね。でもそれもいいかもしれません」

アクア「それって、この戦いが終わったらあなた、一人でどこかに消えようとかそういうこと?」

カムイ「いいえ、違いますよ。それはそれで、ちょっと寂しいですし、黙ってどこかに行くなんて卑怯な真似はしませんよ」

シャーロッテ「じゃあ、どうして?」

カムイ「なんて言うか、その私ってわがままですから、流石に生涯一緒となると気疲れしてしまうんじゃないでしょうか」

シャーロッテ「わかってるなら、直せばいいのに。カムイ様、王族なんだから結婚したがる男なんて腐るほどいると思うわ」

カムイ「ふふっ、でも私としてはそういう結婚はしたくはないですね。幸せな結婚っていうのは良く聞きますから、そういうのなんだかいいなって思いますから」

シャーロッテ「はぁ、夢見てるわね。っていうことはあれかしら、初めてのキスはレモン味とか思ってたりして」

アクア「ふふっ、カムイならそう思ってそうね」

カムイ「キスですか……」

カミラ「ふふっ、カムイの唇、どんな味がするのかしらね?」

シャーロッテ「カミラ様、舌舐めずりしすぎ」

カムイ「あの……」

カミラ「どうしたの、カムイ。もしかしておねえちゃんに、初めての口づけをくれるの?」

カムイ「いえ、普通はレモンの味がするものなんですか?」

シャーロッテ「初恋は甘酸っぱいっていうから、そういうのと関連づけてるだけね。実際、その時食べてたものとかで決まるものよ」

カミラ「ロマンスの欠片もないわね。カムイに悪影響が出たらどうしてくれるのかしら?」

シャーロッテ「いや、カミラ様のほうが」

アクア「でも、カムイ、どうしてそんなことを聞いてくるの?」

カムイ「いえ、なんというか、その違っていたので……」

カミラ「違っていたって何が?」

カムイ「うーん、なんて言うか、潤いくらいしかなかったような気がしたので」

シャーロッテ「潤いって、その言い方だとカムイ様、まるで経験済みみたいに聞こえるんだけど」

カムイ「ええ、まぁ……」

シャーロッテ「え、キスってあれですよ。唇と唇が触れ合う奴、頬とかにチュッじゃないやつですよ?」 

カムイ「そのキスです」

カミラ「……」

アクア「……」

シャーロッテ「……え、まじ?」

カムイ「はい」

カミラ「そう、……おねえちゃんに黙ってカムイの初めてを奪うなんて、その相手どうしてあげようかしら?」

アクア「そうね。カミラ、私も加勢するわ。大丈夫、力加減はできてるつもりよ」

カミラ「ふふっ、頼もしいわ」

アクア「ええ、久しぶりに腕がなるわね」

シャーロッテ「と、とりあえず、その相手って誰だよ?」

カミラ「そうね、まずは倒すべき相手を見定めないといけないものね」

アクア「さぁ、カムイ。あなたの初めてを奪ったのが誰か教えなさい」

カムイ「えっと……」

シャーロッテ「流石に声に出すのが憚れるなら指さすのだけでもいいから」

カムイ「そうですか、じゃあ」ビシッ

カミラ「えっと、アクアの先にあるのは、仕切りね」

アクア「つまり、男湯にいる誰かが犯人というわけね」

シャーロッテ「まさか、もうキスする相手が出来てるなんて、カムイ様も隅に置けないわ」

カミラ「カムイ、ありがとう。おねえちゃん達、ちょっと用事ができたから、大丈夫、少し懲らしめてくるだけだから」

アクア「ええ、それじゃ失礼するわね」

シャーロッテ「ねぇねぇ、カムイ様。その相手の名前、教えてもらってもいいで――。あれ、カムイ様、指動いてますよ」

カムイ「ええ、だって私の指差した人とは見当違いの方を探しに行こうとしているので。まだ指を向け続けてるだけなんですけど」

シャーロッテ「……カミラ様、どうやら違うみたいですよぉ」

カミラ「あら、仕切りじゃない方角になってるわ。……それに、私たちのほうを向いてるみたいね?」

アクア「この先にいるのかもしれないわ。左右に避けて方角を確認しましょう」

カミラ「そうね」

 サッ サッ

カミラ「それで指はどこを示し……あら?」

シャーロッテ「……マジ?」

アクア「……」

カムイ「……」ビシッ

 テト
 テトテトテト

アクア「……ねぇ、カムイ」テトテトテト

カムイ「はい、なんですか?」ビシッ

アクア「……なんで、その指は私を追いかけ続けているの?」テトテトテト

カムイ「私は言われたとおりにしているだけですよ?」ビシッ

アクア「そう、私の動きに合わせて移動するなんて。相手はすごい動きができるのね」テトテトテト

カムイ「……」ビシッ

 テトテトテト ピタッ

アクア「……ねぇ、カムイ」

カムイ「はい、なんですか?」

アクア「その……」

「これは何かの間違いよね?」

今日はここまでで
 
 ピエリ×ルーナもいいなぁ。
 キャラクター同士の支援ですが、今までの過程を探し出してどこにあるかを提示したいと思います。

 ↓こんな感じになると思います。
【支援Aの組み合わせ】
・ルーナ×オーディン
 C[4スレ目・352] B[4スレ目・411] A[4スレ目・460]

 次の更新の時に、一覧を出せると思いますので、よろしくおねがいします。

おお、ありがとう
かなり面倒なこと要望しちゃって申し訳ない

ピエルーナは両方とも母親に並々ならぬ思いを抱いてるところとか、両方とも子供っぽいとかいいよね
というか覚醒組は二作品でキャラに愛着持ちやすく、設定の重さもあって非常に使いやすい気がする

乙です
塔が高くなってまいりました

カミラ「ねぇ、アクア。正直に言ってちょうだい。そうじゃないと、このまま皆の前で揉みくちゃにしてしまいそうだから」ガシッ

アクア「ちょっと、カミラやめて。手を抑えられたら、前隠せないわ」

カミラ「女同士じゃない、気にすることはないわ。それよりも私は事実を知りたいの」

アクア「私だって知りたいわ。カムイ、そういう冗談はやめて頂戴」

カムイ「いえ、一応キスと呼ばれるものはしたのですけど」

カミラ「ふふっ、カムイはこういうことで嘘は言わないわ。だから、アクアとはキスしてる筈なのよ」

アクア「わ、私は身に覚えなんてないわ!」

シャーロッテ「往生際が悪いですよ、アクア様。ここで否定するのは女が廃るってものですよぉ」

アクア「シャーロッテ、あなたとても楽しそうな顔をしてるわね」

シャーロッテ「ええ、まぁ。こんな面白い事、放っておくわけないじゃないですか、あまりそういう話聞きませんし、ギャラリーも増えてますから」

 ワクワクワクワク ドキドキドキ

アクア「くっ……ねぇ、カムイ」

カムイ「はい、なんですか?」

アクア「あのね、正直に言ってほしいの。これはあなたなりの冗談よね? 少し私をからかってみようって思っただけ、そうよね?」

カムイ「冗談でこんなことは言いませんよ。その一応、キスですから……」

アクア(なんなの、その初々しい表情は……。私は、本当に身に覚えがないのに…)

カミラ「そうね、冗談じゃないなら、それをなかったことにしようとしてるアクアにお仕置きが必要ね」モニュ

アクア「あっ……んぅ…やめっ……カミラ、胸の形、変に……はああっ」

カミラ「ふふっ、ならちゃんと認めちゃいなさい。私だってこんなことをアクアにしたくないわ。アクアはいつでも素直で可愛い私の妹なんだもの、もっとかわいく愛でてあげたいから」モニュ ムニュ ニュルンッ

アクア「はぁ、はぁ……。やっ、んああっ」

カミラ「ふふっ、体が火照ってるわよ。こんなに体を硬くして、大丈夫二人のことを認めないってことじゃないの。ただ、いつの間にそんな仲になったのか、教えてほしいのよ」

アクア「わ、私とカムイは、そ、そんな仲じゃ、っ……ないわ」

カミラ「そう、あくまでもしらばっくれるのね。それとも、カムイとはそういう関係じゃないのに、唇を奪っちゃったのかしら? ううふっ、とっても悪い子、教育が必要ね」

アクア「だから、私は、私は知らない、知らないっていってるじゃない!」

カミラ「ふふっ、知らないなら知ってることをしゃべってもらわないといけないわ」サワサワサワッ

アクア「あうっ、ううっ、あああっ、いやっ、だめっ、さ、さわっちゃ、ひゃうんっ」ビクビク

カミラ「どこで奪っちゃったのかしら。カムイの部屋、それともアクアの部屋? それとも白昼堂々?」

アクア「しらない、しらないわ。本当に、何も知らないのよ! はううっ」

カミラ「だーめ、膝をつかせてなんてあげないわ。ふふっ、どこまで強情でいられるかしら?」

アクア「はぁ、はぁ……っ!」

cero:Cってそういう…

シャーロッテ(おかしいわね……アクア様が嘘吐いてるように見えない。なんて言うか、ばれてるけど無実を主張してるってわけじゃないみたいなのよね)

シャーロッテ(でも、カムイ様がこんな悪意のある嘘を言うなんて思えないし、なんかおかしい。というよりも、アクア様がしたなら覚えてるはずだし……されても確かに覚えてそうよね……)

アクア「ふぅー、はぁー。ふあああっ」

カミラ「あらあら、なんだかお風呂なのに汗かいて来ちゃったかしら?」

シャーロッテ(このままにしておくと、カミラ様が行けない場所までいきそうだし、アクア様の危険が危ないわ)

カムイ「カミラ姉さん、それ以上する必要は……」

カミラ「いいのよ。お姉ちゃんがしたくてしてることだから大丈夫、カムイはなにも気にしなくていいのよ」

アクア「カ、カムイ……みな、みないでぇ」

カムイ「いえ、目が見えてないので見えませんので、大丈夫ですか?」

アクア「だ、大丈夫なわけ……」
 
 サワッ

アクア「ひゃっ、くぅんっ……」

カミラ「ふふっ、そろそろ話す気になったかしら?」

アクア「だ、だから……私は――」

シャーロッテ「ねぇ、カムイ様」

カムイ「なんですか、シャーロッテさん」

シャーロッテ「あの、一つ聞きたいんですけど。どちらからキスされたんですかぁ?」

カムイ「どちらから……ですか?」

シャーロッテ「はい、アクア様からですか、カムイ様からですか?」

カムイ「私からですよ?」

 ピタッ

シャーロッテ「カムイ様……」

カミラ「それは本当なの、カムイ?」

カムイ「はい、その緊急事態でしたので」

シャーロッテ「緊急事態? 何が緊急事態だったんですか?」

カムイ「えっと、アミュージアでのこと、カミラ姉さんは覚えてますよね? あの湖でのことを」

カミラ「湖……もしかして……」

アクア「はぁはぁ、んっ、はぁはぁ、あの時のこと?」

カムイ「はい、その、アクアさんが溺れかけていたので、その咄嗟に……ですね」

シャーロッテ「とっさに?」

カムイ「えっと、水の中でアクアさんにキスをして、その息をですね……」

アクア「……あ」

アクア(あの時、感じた温かさって、カムイが私に………)

カムイ「アクアさんが完全に溺れてしまわなくて本当に良かったです。でも、ごめんなさい。てっきりアクアさんも覚えているのかと思っていたので」

アクア「そ、そう。そういうことだったのね。ふぅ、なら私が身に覚えがないのは当然よね……。気を失う寸前のことだったんだもの」

カミラ「なるほど、そういうことね。紛らわしいことを言うものじゃないわカムイ。おねえちゃんてっきり、アクアに組み伏せられて唇を奪われたのだとばかり……」

アクア「カミラは私のことなんだと思っているのかしら?」

カミラ「でも、組み伏せたら逃がさないでしょう?」

アクア「……どうかしらね?」

カムイ「す、すみません、その私の言い方が足りなかったようで」

シャーロッテ「なんてオチだよ。しかも、これって実際ノーカウント判定よね」

カムイ「これってノーカウントなんですか?」

カミラ「そうね。ねぇ、カムイ。その行為はアクアが好きだからしてあげたの?」

カムイ「私はアクアさんのことは好きですよ」

カミラ「ふふっ、そうね。カムイは皆のこと大好きだもの。だから言い方を変えるわ、アクアのことを助けたいから行ったのよね?」

カムイ「そうですね。そうなります」

カミラ「そう、だったらカムイの初めてはまだ先みたいね」

カムイ「え、そうなんですか。でも、唇と唇が触れたらキスで、それが初めてなら――」

カミラ「ふふっ、カムイのキスはまだまだ子供のキスよ。そこに助けたいとかそういう感情じゃないものが必要になるのよ」

カムイ「そうなんですか?」

カミラ「ええ、深い愛情だったり」

シャーロッテ「独占欲とかね」

カムイ「深い愛情と独占欲ですか?」

シャーロッテ「そう、誰にも渡さねえとかそんな感じの奴。そういう風に思える相手にするのが本当のキスかもしれないわ」

カミラ「ふふっ、私としては愛情のほうがいいと思うわ」

カムイ「そうですか……」

カムイ(なら、私がしたことというのは、子供の背伸びみたいなものだったということですよね……)

カムイ「なんだか複雑です」

 ガシッ

カムイ「?」

アクア「カムイ」ニコッ

カムイ「あ、アクアさん?」

アクア「ふふっ、人の唇を勝手に奪った挙句、見ているだけで助けないなんていい度胸ね?」

カムイ「あの、その……ごめんなさい」

アクア「……はぁ、もういいわ。別にあなたが私を助けるためにしてくれたことだもの、それに子供のキスに動じる私じゃないわ」

カムイ「そ、そうですか……」

アクア「そうよ。だから別に気にしないで頂戴、ちょっと変な汗かいちゃったから、体を洗って来るわね」

カムイ「あ、なら私がお手伝いします。その、ご迷惑をおかけしてしまったので」

アクア「はぁ、変なことしないわね?」

カムイ「はい、もちろんです」

アクア「ふふ、ならいいわよ」スッ

カムイ「?」

アクア「床は濡れてるから、滑ったりしたら怪我をしてしまうもの。別に他意はないわ」

カムイ「あ、ありがとうございます」ギュッ

 ペタペタペタ

カミラ「ふふっ、仲良く手を繋いで、なんだかほほえましいわ」

シャーロッテ「でも、なんだか不思議な光景よね。同性同士だけど、なんていうか……」

カミラ「なら、私とカムイもそう見えるのかしら?」

シャーロッテ「……姉と妹ね。あの二人のオーラには及ばないわね」

カミラ「そう、おねえちゃん悲しいわ……」

カムイ「あの、アクアさん」

アクア「なに?」

カムイ「その、アクアさんはやっぱり嫌でしたか? その私にキスのようなことをされたのは……」

アクア「嫌とか以前の問題よ。それが私を助けるために必要な行為だったのなら、それをとやかく言うつもりはないわ。でも、本当にそういうことをするのなら、一度相手に聞いてからにしなさい。嫌われてしまうわよ?」

カムイ「はい。肝に銘じておきます。先ほどまで、いっぱいカミラ姉さんに触られてましたけど、大丈夫でしたか?」

アクア「大丈夫なわけないわ。正直、恥ずかしさで死にそうよ。あれ以上続いていたら、あなたを殺して私も死ぬつもりだったわ」

カムイ「ふふっ、でも私はアクアさんには生きていてもらいたいですね。たとえ私が死んでしまったとしてもです」

アクア「悪い冗談はよして頂戴。そういうことは思っても口にすることじゃないわ」

カムイ「それを言ったらアクアさんだって、今のは冗談でも――」

アクア「ふふっ、冗談だと思う?」

カムイ「あ、はい」

アクア「……」ピトッ

アクア(私の唇に、カムイの唇が触れていたのよね……)

アクア(柔らかかったのかしら? ……だめね、ほとんど思い出せない。でも、あの時体に入り込んできた暖かいあのぬくもりは心地よかった……)

カムイ「アクアさん、流しますね?」

アクア「え、ええ。おねがい……」

 バサーッ

アクア「……ねぇ、カムイ」

カムイ「……どうしたんですか?」

アクア「その、許してくれるならなんだけど……」

カムイ「はい」

アクア「あ、あなたの唇に指を触れてもいい?」

カムイ「え?」

アクア「別に嫌ならいいわ」

カムイ「別に構いませんよ。何時も私は触ってるんですから、どうぞ」

アクア「そう、なら失礼するわね」スッ

 クニュッ

カムイ「んゆっ……」

アクア(カムイの唇、とても柔らかい。下唇もふっくらして、なにより温かい)クニクニ プニュプニ

カムイ「あっ、んんっ」

アクア(これが私の唇に……触れてたのよね…)フニフニ

カムイ「はふっ、アクア、さん。なんだか、くすぐったいです……」

アクア「そう、私にキスをした時もくすぐったかったの?」プニプニュンッ

カムイ「その、水の中だったので、潤いはすごく感じました……」

アクア「そう」

アクア(あの温かさは感じられない、もしかしたら――)

アクア「……」ズリュッ

カムイ「あっ、んんゆっ!?」

カムイ(アクアさんの指が、口内に入ってる……)

アクア(カムイの口の中、ぬるぬるしてるわね。ここは内頬も柔らかい……)

カムイ「あふっ、ん、れろ。んちゅるっ」

アクア「!」

アクア(指、舐められてる……。カムイの舌が私の指を……とっても暖かくて柔らかい……)

カムイ「ひゃひゅひゃひゃん……。れろ、じゅるるっ」

アクア「カ、カムイ……ご、ごめんなさい」チュポンッ

カムイ「んっ、はぁ。んっ、ふふっ、ちょっとびっくりしちゃいました」

アクア「か、カムイ大丈夫だった?」

カムイ「台城ですよ。でも、口の中に指入れてくるなんて、ふふっ、なんだかゾクゾクしちゃいました」

アクア「こ、これはその……指が滑っただけよ。ほら、顔も濡れているから、こうツルって……」

カムイ「はい。ふふっ、ちょっと舐めたり吸い上げたりしちゃいました。私のした子供のキスより、なんだか大人っぽいことを要求されちゃった気がします」

アクア「舐めたりしたのはあなたよ、私はしてなんて言ってないわ」

カムイ「そうですね。でも、なんだか指は嬉しそうにくねくねしてましたよ。気持ち良さそうにしてた感じもします」

アクア「……さぁ、私にはわからないわ。それよりも流してくれるんでしょう? は、早くして頂戴」

カムイ「わかりました。ふふっ、もしかして赤くなってます?」

アクア「なってなんていないわ」

カムイ「そうですか、なんだか残念です。私のことでアクアさんが顔を赤くしてくれると、なんだかとってもうれしいんですけどね」

アクア「そ、そう////」

カムイ「ふふっ、それじゃ奇麗にしますね?」

アクア「ええ、おねがいね?」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

カムイ『もちろんです、今さっきいっぱいカミラ姉さんに取られていじられてましたから、私が優しく洗ってあげますよ』

アクア『そ、そこは自分で洗えるから、よしてぇ、んやぁ、あっ、んっ、んんっ、ふあああっ』

オーディン「……」

ラズワルド「……」

マークス「……」

イザナ「あはは~、なんだかこっちはしんみりしちゃったねぇ。みんな立ち上がろうともしないし、一体どうしたのかな~?」

マークス「イザナ公王、私達は今精神を集中している最中、ただそれだけだ。この体勢他意はない」

ラズワルド「そ、そうです。ただそれだけですから。そうだよね、オーディン?」

オーディン「そ、そうだ。だから気にしないでください、お願いします」

イザナ「いいねいいね~。若いっていいことだよね。はぁ、こんなに大人数で使うのは久しぶりだから、なんだか新鮮でいいよ~。本当に、こんな時間が長く続けばいいのにさ。困ったもんだよね~」

 タタタタタッ

イズモ公国兵「失礼いたします。イザナ様、よろしいでしょうか?」

イザナ「ん、どうかしたかな?」

イズモ公国兵「はい、実は……」

イザナ「……そう、わかった。すぐに戻るから、準備をしておいてくれるかなー」

イズモ公国兵「わかりました、ご準備を終えてお待ちしております」

 タタタタタタッ

イズモ「さてと、それじゃボクは先に上がらせてもらうよ。みんなは落ち付くまでゆっくりしてから出てくるといいよ~」

マークス「ああ、久しぶりの休養を与えてくれて感謝している。皆でゆっくりさせてもらう」

イズモ「そう言ってもらえると、準備したかいがあるよ。それじゃボクはこれで」バサーッ

 ドドンッ

ラズワルド「え!?」

オーディン「なん……だと!?」

イズモ「どうしたんだい? 別に男同志、隠すこともないからね~」ドドンッ

マークス「……これが器の大きさということか」

イズモ「個人差だと思うけどね~。それじゃ、御先に失礼するよ~」ドドンッ

ラズワルド「……すごく堂々としてたね」

オーディン「ああ、堂々としていた」

マークス「……そうだな」

ラズワルド「でも、どうしたんだろね。いきなり抜けていっちゃったけど……」

オーディン「至急の用事だろう。黒き知らせが舞い込んだに違いない、悠久の時を得て新たな次元へといざなうためのな」

マークス「悪いものでなければよいが、今だけは忘れておくとしよう。この時間だけは、ただ休むためだけにあるべきなのだからな……」

ラズワルド「そうですね。それにしても……」

ピエリ『あー、カムイ様とアクア様も洗いっこしてるの! ピエリもまざるのー!』

カミラ『ふふっ、それじゃおねえちゃんも混ざっちゃおうかしら。体を使って奇麗にしてあげるわね』

エリーゼ『たのしそう! ベルカ、あたしたちも混ざろっ!』

ベルカ『あれはだめ。一緒に温泉に入って待つ方がいい、それがエリーゼ様のためになるわ』

フェリシア『ルーナさん、大丈夫ですかぁ?』

ルーナ『うう、ピエリの攻撃であたしもう動けない……あとで連れて行って……』

シャーロッテ『洗い場の一か所、すごい泡まみれになってるわね』

カムイ『どうですか、アクアさん。奇麗になってきましたか?』

アクア『ひゃっ、だめ、そんないっぱいの手で、はううっ、んやああっ』

 ワーワーワー

ラズワルド「ううっ…どうしてよう。全然落ち着かない……」

マークス「くっ、このままではまずいな。よし、水風呂に行くぞ!」

オーディン「今すぐにでも!」

 バサーッ
 
 テトテトテト
 
 バチャンッ

マークス「……」

ラズワルド「……」

オーディン「……」

マークス「ふっ」

ラズワルド「ふぅ~」

オーディン「はぁ~」

「…………落ち着いた」

 仲間間支援の状況-1-

●異性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・レオン×カザハナ
 C[本篇の流れ] B[3スレ目・300] A[3スレ目・339]
・ジョーカー×フローラ
 C[1スレ目・713~715] B[1スレ目・928~929] A[2スレ目・286]
・レオン×サクラ
 C[1スレ目・511~513] B[2スレ目・297~299] A[3スレ目・797]
・ラズワルド×ルーナ
 C[1スレ目・710~712] B[2スレ目・477] A[4スレ目・177]
・アクア×オーディン
 C[3スレ目・337] B[3スレ目・376] A[4スレ目・353]
・ルーナ×オーディン
 C[4スレ目・352] B[4スレ目・411] A[4スレ目・460]

【支援Bの組み合わせ】
・ラズワルド×エリーゼ
 C[1スレ目・602~606] B[3スレ目・253]
・ブノワ×フローラ
 C[2スレ目・283] B[2スレ目・512]
・エリーゼ×ハロルド
 C[2スレ目・511] B[2スレ目・540]
・オーディン×ニュクス
 C[1スレ目・839~840] B[3スレ目・284]
・ベルカ×スズカゼ
 C[3スレ目・252] B[3スレ目・315]
・レオン×エルフィ
 C[3スレ目・251] B[4スレ目・437]
・アクア×ゼロ
 C[1スレ目・866~867] B[4スレ目・438]

【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
 C[1スレ目・377~380]
・モズメ×ハロルド
 C[1スレ目・514~515]
・ギュンター×ニュクス
 C[3スレ目・246]
・ルーナ×ハロルド
 C[3スレ目・375]
・カザハナ×ツバキ
 C[3スレ目・772]
・アシュラ×サクラ
 C[3スレ目・773]

 仲間間支援の状況-2-

●同性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・リンカ×アクア
 C[1スレ目・888~889] B[2スレ目・285] A[3スレ目・254]
・ピエリ×カミラ
 C[1スレ目・752~753] B[2スレ目・478] A[2スレ目・513]
・フェリシア×ルーナ
 C[1スレ目・864~865] B[1スレ目・890~891] A[1スレ目・930~931]
・フローラ×エルフィ
 C[1スレ目・471~472] B[3スレ目・338] A[3スレ目・377]
・レオン×ツバキ
 C[1スレ目・492~493] B[1スレ目・870] A[3スレ目・798]
・ベルカ×エリーゼ
 C[2スレ目・284] B[3スレ目・301] A[4スレ目・354]
・ピエリ×ルーナ
 C[3スレ目・249] B[4スレ目・317] A[4スレ目・412]

【支援Bの組み合わせ】
・ギュンター×サイラス
 C[1スレ目・926~927] B[3スレ目・316]
・フェリシア×エルフィ
 C[1スレ目・367~368] B[2スレ目・541]
・シャーロッテ×モズメ
 C[3スレ目・248] B[3スレ目・285]
・ベルカ×ニュクス
 C[4スレ目・176] B[4スレ目・410]
・シャーロッテ×カミラ
 C[2スレ目・476] B[4スレ目・439]
・アクア×ルーナ
 C[3スレ目・283] B[4スレ目・461]

【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
 C[1スレ目・423~425]
・ピエリ×リンカ
 C[3スレ目・247]
・ピエリ×フェリシア
 C[3スレ目・250]
・ジョーカー×ハロルド
 C[1スレ目・426~429]
・フローラ×エリーゼ
 C[4スレ目・178]
・エルフィ×ピエリ
 C[3スレ目・771]
・カミラ×サクラ
 C[4スレ目・175]
・スズカゼ×オーディン
 C[4スレ目・318]
・ラズワルド×オーディン
 C[4スレ目・459]
・サクラ×エルフィ
 C[3スレ目・774]

今日はここまでで

 途中、イザナがイズモになっていたみたいですみません。
 支援を確認していたところ、やったのに表記されていなかった組み合わせがいくつかありました。支援一覧の時はこの形で、安価の際はどこにあったのかをなくして、従来通りに表記して行こうと思います。
 ドラマCDのデータROMにリリスのボイスが入ってたらいいな……

 あと数回でこの休息時間が終わる予定です。番外のほう、かなり遅れて申し訳ない。

乙です

男湯側でこのおたわむれが発生したらどうなるのか気になります!

◆◆◆◆◆◆
―白夜・イズモ公国『大広間』―

イザナ「カムイ王女、ここ数日で皆ゆっくり休めたかな?」

カムイ「はい、おかげさまで」

イザナ「それは良かったよ~。いろいろと楽しく過ごしてもらえてボクとしてもすごくうれしいな~」

アクア「私を見ながら言わないで。それよりも、カムイだけじゃなくて私たちも呼びだしたのは、話に進展があったからよね」

イザナ「うん、ボクもこんなに早くに返事が来るとは思わなかったからね。白夜からカムイ王女の書簡に対する答えが来たんだよ」

マークス「それが信用できる根拠はあるのか?」

イザナ「残念だけど今のところはないんだ。ボクもこれに目は通したけど、これがリョウマ王子の返答かどうかは今のところわからないからね」

レオン「なるほどね、だからサクラ王女もここに呼び出したわけだね? その親書の印や、筆跡が本物かどうか調べるために」

イザナ「そういうことになるね。というわけでサクラ王女、この親書なんだけど、確認してもらえるかな」

サクラ「は、はい……失礼しますね。えっと…」

エリーゼ「サクラ、どう?」

サクラ「……」

エリーゼ「あれ、サクラ?」

サクラ「………」ポタポタ

カミラ「サクラ王女、大丈夫?」

サクラ「え、何がですか?」ポタポタ

カミラ「あなた、泣いているわよ?」

サクラ「え? あ……」

エリーゼ「ど、どうしたのどこか痛いの?」

サクラ「あっ、ご、ごめんなさい。その、とても懐かしくて……」

レオン「サクラ王女……」

サクラ「すみません、心配をお掛けてして……もう大丈夫ですよ。レオンさん、そんな心配そうな顔をしないでください」

レオン「な、なんで僕だけなんだい。エリーゼだって心配そうにしてるじゃないか!」

エリーゼ「心配に思うのは当たり前だよ!」

サクラ「ふふっ、二人ともありがとうございます。……こうやって懐かしくて涙を流すことになるなんて思ってもいませんでした。それくらい、私は暗夜にいたんだなって思うと、なんだか不思議な気持ちになります」

アクア「でも、暗夜で過ごしてきた時間は嘘ではないわ。サクラもちゃんと成長しているもの、それは決して無駄なものではないはずよ」

サクラ「はい、私もそう思います」

マークス「それで、実際のところはどうなのだ、サクラ王女。この親書、信じられるものなのか?」

サクラ「はい、この印は白夜の王族が用いる物で、文字もリョウマ兄様のものです」

エリーゼ「つまり本物っていうことだよね。サクラのおにいちゃんもこの戦争を終わらせたいって思ってるってことだよね?」

サクラ「きっとそう思ってくれてるはずです。だって、兄様は今も白夜を守るために戦っているはずで、戦争の終結を望んでいると思いますから」

カミラ「それで、リョウマ王子の親書には何が書かれているの?」

カムイ「サクラさん、内容を簡潔でよろしいので読み上げていただいてもいいですか?」

サクラ「はい、だいじょうぶです。それではいいですか?」

カムイ「では、お願いします」

サクラ「……暗夜王国王女カムイ、書簡確かに拝見した」

『暗夜において大規模な謀反が起きたことはすでに耳にしている。そしてカムイ、お前から俺に宛てて書簡が届けられたということは、お前たちはその謀反で何かしらの成果をあげたということだろう』

『お前たち、新しい暗夜がこの戦争の早期終結を望んでいるというのならば、その証明が不可欠になるだろう。カムイ、以下のことを俺はお前に要求したい、それが最初の歩みとなるはずだ』

カムイ「……やはり、全てを信じてもらえるわけではありませんね」

マークス「そうだな。しかし、親書の内容を見る限りでは否定的というわけではない。むしろ、好意的とも取れなくはないだろう。」

エリーゼ「それで、サクラのおにいちゃんの要求っていうの一体なんなの?」

サクラ「はい。えっと、交渉の場はテンジン砦、数日後、イズモに使いが向かうので準備をしておいてほしい。次に交渉の間、イズモ公国より交渉人員以外の出国の制限、暗夜の代表者はカムイ王女以外の一名であること、護衛は最低限に留めること、最後に……」

カムイ「どうしました、サクラさん?」

サクラ「……その」

アクア「サクラ、言えないようなことなら私が代わりに読み上げるわよ?」

サクラ「いいえ、大丈夫です。えっと、最後の条件はサクラ王女とその臣下の返還、だそうです」

カムイ「……サクラさんたちの返還ですか」

カミラ「たしかに、ずっと暗夜に捕らわれていたサクラ王女と臣下の身柄を要求するのは当然といえば当然ね」

レオン「……こちらにリスクのあることを向こうは述べてきた感じかな。護衛の数は最低限、道中のこともあるから少なすぎるわけにもいかないし、難しい問題だね」

カムイ「それは臨機応変に対応していくしかありませんよ。そのイズモに来る使いの方に、見定めてもらうのが一番でしょうから」

カムイ「リョウマさんの条件にあるサクラさんの身柄の引き渡しに関しては断る理由はありません。リョウマさんにとって、サクラさんは肉親なのですから。それに……」

サクラ「カムイ姉様、私は大丈夫ですから、話してください」

カムイ「はい。この手紙の内容を聞く限りではまだ大きくことを動かしているというわけではない気がします。サクラさんが戻ってくることで、リョウマさんとしては私達、新しい暗夜が信頼に値する勢力であるということを印象付けたいのかもしれません」

マークス「内部的に王族の立場は弱くなりつつあると、カムイは考えているのだな」

カムイ「はい。それにもしも王族の立場がまだ強いのでしたら、リョウマさんが直々にここにやって来たんだと思います。たぶん、あの人はそういう方だと思いますから」

カミラ「そうしたくても出来ない状態にある……ということかしら?」

カムイ「私はそう考えています」

アクア「そうね、暗夜の情勢が変わったとしても、白夜そのものに大きな変化があるわけじゃないわ。ウィンダムの陥落も多くは伏せられているでしょうし、暗夜側が白夜を油断させるために流しているデマと考えている人もいるはず。もしくはうやむやにしておきたいのかもしれない」

カムイ「それがどんな方々なのかは分かりませんが、そういった方々に悟られないように、リョウマさんは動いているのかもしれません」

エリーゼ「あたしたちがサクラのおにいちゃんに親書を送ってることは証明にならないのかな?」

アクア「多分、それを公表するには材料が足りていないと思うわ。サクラが無事であることは、少なくともその証明に力添えできるものになるはずだし。たぶん、レオンもそのことを少しは考えていたんじゃないかしら?」

サクラ「もしかして、交渉材料っていうのは……」

レオン「うん、サクラ王女達には僕たちと白夜を繋ぐための懸け橋になってもらおうと思っていたんだ。カザハナやツバキと一緒に白夜に返還することができたらって。ごめん、こんなことを頼む形になってしまって」

サクラ「いいんです。それに私にできることの中で、それが一番意味のあることだと思います。だって、レオンさんが頑張って考えてくれたことですから。私はレオンさんの判断を信じます」

レオン「サクラ王女……。ありがとう」

カミラ「ふふっ、照れて可愛いわね」

レオン「もう、からかわないでくれないかな?」

サクラ「うふふっ」

マークス「この親書を読む限りでは、すでにわれわれを監視している者がいるということだな」

カムイ「ええ、そうなるでしょう。多分、使いの方を含めて五、六人くらいだとは思いますが。暗夜を名乗っている私たちを監視することは当然のことですし、さすがにすぐさま信用するというわけにはいかないでしょう」

マークス「たしかにな。カムイが同伴することを禁止しているのは、やはり白夜としての遺恨故なのかもしれない」

カムイ「いえ、私が白夜の人間であることは、それほど問題ではないと思います。多分、私という存在そのものが刺激の強すぎるものだということかもしれません」

マークス「だから、あえて遠ざけたということか?」

カムイ「リョウマさんの考えていることのすべてがわかるわけではありません。でも、私が現れた時期とで戦争が本格化した時期は同じです。あの日あの時、私がいたことでミコトさん……お母様やたくさんの方々が命を落として、時を同じくしてマークス兄さんたちは私を連れ戻すために無限渓谷を越えてきたんですから」

マークス「……たしかにその通りだ」

カムイ「リョウマさんも多分それを感じているのかもしれません。そんな私がその交渉の場にいないことで次の段階に進めるのであれば、それが最善の選択だと私は思っています」

アクア「カムイはそれでいいの?」

カムイ「はい、それに交渉が進めば、いずれ私も白夜の人々と顔を合わせることになるでしょう。だから、今はその指示に従うことが最良だと私は考えています」

カミラ「……そう。ねぇ、マークス兄様、私もテンジン砦に向かわないことにするわ」

マークス「カミラ?」

カミラ「ごめんなさい。できれば私もサクラ王女と一緒に行きたいところだけど、一人顔を合わせない方がいい相手がいるのよ。もう少し落ち着いた頃じゃないと、すぐに殺し合いを始めちゃうかもしれない相手が一人……ね」

アクア「……ヒノカのことね」

カミラ「ええ、同じお姉ちゃん同士だもの、あの子の気持ちがわからないわけじゃないの。だから、和解の準備が整うまでは、できる限り接触しない方がいいって思ってるわ。それにカムイにおねえちゃんが二人いても何の問題もないもの。ね、カムイ?」

カムイ「確かにそうですね。そうなれば、レオンさんとエリーゼさんはおねえちゃんが三人になるんですね」

エリーゼ「アクアお姉ちゃんもいるから四人だね!」

アクア「私もカウントされるのね。ふふっ、少し嬉しいわ」

マークス「なるほど、わかった。では私とレオンでテンジン砦に向かおうと考えているが。どうだろうか?」

レオン「それなんだけど兄さん。王族は僕一人だけでいいと思う。わざわざ兄さんが向かう必要が今あるとは思えないんだ」

マークス「レオン、どうしてそう思うのだ?」

レオン「僕はまだ白夜のことを完全に信用してるわけじゃない。これが罠じゃないとはまだ言えないし、なによりもこちらに対して同等の条件じゃない。サクラ王女達を返した瞬間に攻撃される可能性だってある」

サクラ「レオンさん……」

レオン「ごめん、サクラ王女。僕だって白夜と手を取ってこの戦争を終わらせたいとは思ってる。でも、それを願っているからこそ、その分そういったことは考えないといけない。それに僕が殺されるならまだしも、兄さんが殺されたとなったら、新しく歩み始めた暗夜は指針を失うことになりかねない。それは何としても阻止しなくちゃいけない」

カムイ「……新しい暗夜の指針ですか」

レオン「この最初がうまくいけば、次の大きな交渉の場で兄さんも出席する必要が出てくるはずだよ。だから、今この段階ではその必要性はないと僕は思う。それに僕の約束も果たしたいんだ。サクラ王女たちを無事に白夜にちゃんと返してあげるっていう、僕個人としての約束を。だから兄さん、今回は僕に任せてもらえないかな?」

マークス「わかった。レオン、お前にその役目を任せたい、いいか?」

レオン「もちろんだよ、兄さん。そういうことだからサクラ王女、テンジン砦までの道中は僕にまかせてほしい」

サクラ「……はい、頼りにしてます。その、えへへっ」

レオン「ど、どうしたんだい?」

サクラ「そ、その、堂々と言われると少し気恥しくて」

レオン「カザハナに返すのに時間掛りすぎだってどやされそうだけどね。テンジン砦に赴く王族の代表は僕が努めると、それでいいかなカムイ姉さん」

カムイ「はい、すみませんがよろしくおねがいします、レオンさん」

レオン「うん、任せてよ、姉さん」

◆◆◆◆◆◆
―白夜イズモ公国・宿泊施設『カムイの部屋』―

カムイ「皆さんには今回の件はすでに伝えました。あとは、誰を護衛として向かわせるかということですね……」

カムイ(出来るなら、私が直接行ければいいのですが、そういうわけにはいかないのが歯痒いものですね……)

 コンコン

カムイ「誰ですか?」

スズメ『カムイ様、スズメです。少しお話がありまして、こうして参った次第です』

カムイ「話ですか、どうぞ入ってください」

スズメ「失礼します。こんな夜分に申し訳ありません、カムイ様」

カムイ「いいえ、まだ眠る時間には早いですから。それでお話とは一体なんでしょうか?」

スズメ「はい、その私たちにテンジン砦への護衛を任せていただけないかと」

カムイ「スズメさんたちがですか? しかし、あなた方にとって白夜は……」

スズメ「はい、それは理解しています」

カムイ「……どうして、そのようなことを?」

スズメ「故郷に戻りたいという思いは私たちも同じです。もちろん、私達がそのままサクラ王女たちと共に白夜に帰ることは叶わないでしょう。ですが、テンジン砦まで近づける今、故郷に足を踏み入れたいのです」

カムイ「スズメさん……」

スズメ「私達はわずかな生き残りですが、この命はあなたに預けています。あなたが私たちを疑うのでしたら、それに従いましょう。私たちの力が人を救うためではなく、悪意のために使われると考えているのなら……」

カムイ「……スズメさんはクーリアさんに約束されたんですよね?」

スズメ「はい、この命はカムイ様に預けております。そして、クーリア様から教えて頂いた技術も、人を救うために使うと」

カムイ「……なら、私はそれを信じます。スズメさん達とクーリアさんが紡いできたここまでの関係、そしてそのあり方を。サクラさんたちの護衛、よろしくおねがいしますね」

スズメ「はい、命に代えても果たさせていただきますので……」

カムイ「ええ。数日後に白夜の使いが来ることになっています。それまでに準備を終えてください」

スズメ「はい、わかりました……。あの、カムイ様」

カムイ「なんでしょうか?」

スズメ「こうして、もう一度白夜の地に足を付けることができたのは、あの日、あのマカラスであなたが私たちを生かしてくれたからです。ありがとうございます」

カムイ「……いいえ、私は無責任あなた達を生かしてしまっただけです。スズメさん達が生きることをあきらめなかった結果が、今華開いている。私の力であるはずないんです」

スズメ「……謙虚なんですね。それに優しい方です。普通の人なら、私達に護衛など任せないはずですから」

カムイ「優しいわけじゃありませんよ。むしろ、優しい方ならあなた方を行かせはしません、白夜に一度見捨てられたあなた方を送ることなど……」

スズメ「そうですか……」

カムイ「はい」

スズメ「では、なぜ許可をしてくれるんですか」

カムイ「簡単です、あなた達を信頼しているからですよ」

スズメ「……そうですか。ふふっ、本当にカムイ様は変わった人ですね」

カムイ「変わってるとは酷いですね。これでも真面目に考えているんですけど」

スズメ「ふふっ、そういうことにしておきます。それでは失礼いたしますね、カムイ様……」

カムイ「はい、おやすみなさい、スズメさん」

スズメ「はい、おやすみなさい……」

 コトンッ



スズメ「カムイ様は私たちを信頼してくれるのですね……」



スズメ「……本当に……甘い人ですね」

 タッタッタッタッ

◇◇◇◇◇◇
―白夜王国・テンジン砦『独房』―

 ………

 ガサッ

ユキムラ「……誰ですか?」

???「ユキムラ様、モズです」

ユキムラ「モズ? どうしました、まさか白夜の包囲網が崩れましたか?」

モズ「いえ、暗夜の侵攻はどうにか抑えられています。強硬派の者たちも、できる限り抑えているようですので、しばらくは大丈夫かと」

ユキムラ「そうですか。それで、あなたがここに来たわけを聞かせていただけますか」

モズ「はい、リョウマ様より託を預かってまいりました……」

ユキムラ「リョウマ様からですか?」

モズ「はい、暗夜で起きたとされる謀反の件、耳にしておられますか?」

ユキムラ「ええ、看守の間でも噂されています。ですが、まだ確証はないと」

モズ「はい、その件ですが。イズモ公国にその謀反を起こした新生暗夜の者たちがおり、白夜との会合を望んでいるということです」

ユキムラ「それは本当ですか?」

モズ「はい」

ユキムラ「……リョウマ様はなんと?」

モズ「その会合を受ける方向で考えているそうです。第一会合の場所は、ここテンジン砦となっています」

ユキムラ「そうですか、わかりました。モズはこのまま、イズモへと向かうのですか?」

モズ「はい、会合に参加する者たちを連れ、一度こちらに戻る予定となっています。新生暗夜との同盟が確立されれば、我々はガロン王率いる者たちと同等以上に戦えることでしょう」

ユキムラ「そうですか……」

モズ「ユキムラ様、もう少しの辛抱ですのでお待ちください」

ユキムラ「ふっ、もう長い間をここで過ごしているのですから、待つのは馴れたものです。それよりモズ、あなたも気を付けるのですよ」

モズ「はい。では、これよりイズモ公国へと向かいます」

ユキムラ「ええ、わかりました。吉報を期待してますよ」

「白夜にとって、とても良い、そんな吉報を……」



 休息時間 おわり

○カムイの支援現在状況●

―対の存在―
アクアA
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)

―城塞の人々―
ギュンターB++
(恋愛小説の朗読を頼まれています) 
フェリシアB+
(カムイに従者として頼りにされたい)
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
フローラB
(すこしは他人に甘えてもいいんじゃないかと言われています)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)

―暗夜第一王子マークス―
ラズワルドA
(あなたを守るといわれています)
ピエリB
(弱点を見つけると息巻いています)
マークスB++
(何か兄らしいことをしたいと考えています)

―暗夜第二王子レオン―
オーディンB+
(二人で何かの名前を考えることになってます)
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)
レオンB+
(カムイに甘えてほしいと言われて、いろいろと考えています)

―暗夜第一王女カミラ―
ルーナA
(目を失ったことに関する話をしています)
カミラA
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ベルカC+
(イベントは起きてません)

―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼA
(昔、初めて出会った時のことについて話しています)
ハロルドB
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィB+
(一緒に訓練をしました)

―白夜第二王女サクラ―
サクラA
(カムイと二人きりの時間が欲しいと考えています)
ツバキB
(イベントは起きていません)
カザハナC+
(イベントは起きていません)

―カムイに力を貸すもの―
シャーロッテB++
(返り討ちにあっています)
スズカゼB
(おさわりの虜になったようです)
サイラスB+
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB+
(許されることとはどういうことなのかを考えています)
モズメC+
(イベントは起きていません)
リンカB
(イベントは起きていません)
ブノワC+
(イベントは起きていません)
アシュラC+
(イベントは起きていません)
フランネルC+
(イベントは起きていません)

 仲間間支援の状況-1-

●異性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・レオン×カザハナ
 C[本篇の流れ] B[3スレ目・300] A[3スレ目・339]
・ジョーカー×フローラ
 C[1スレ目・713~715] B[1スレ目・928~929] A[2スレ目・286]
・レオン×サクラ
 C[1スレ目・511~513] B[2スレ目・297~299] A[3スレ目・797]
・ラズワルド×ルーナ
 C[1スレ目・710~712] B[2スレ目・477] A[4スレ目・177]
・アクア×オーディン
 C[3スレ目・337] B[3スレ目・376] A[4スレ目・353]
・ルーナ×オーディン
 C[4スレ目・352] B[4スレ目・411] A[4スレ目・460]

【支援Bの組み合わせ】
・ラズワルド×エリーゼ
 C[1スレ目・602~606] B[3スレ目・253]
・ブノワ×フローラ
 C[2スレ目・283] B[2スレ目・512]
・エリーゼ×ハロルド
 C[2スレ目・511] B[2スレ目・540]
・オーディン×ニュクス
 C[1スレ目・839~840] B[3スレ目・284]
・ベルカ×スズカゼ
 C[3スレ目・252] B[3スレ目・315]
・レオン×エルフィ
 C[3スレ目・251] B[4スレ目・437]
・アクア×ゼロ
 C[1スレ目・866~867] B[4スレ目・438]

【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
 C[1スレ目・377~380]
・モズメ×ハロルド
 C[1スレ目・514~515]
・ギュンター×ニュクス
 C[3スレ目・246]
・ルーナ×ハロルド
 C[3スレ目・375]
・カザハナ×ツバキ
 C[3スレ目・772]
・アシュラ×サクラ
 C[3スレ目・773]

仲間間支援の状況-2-

●同性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・リンカ×アクア
 C[1スレ目・888~889] B[2スレ目・285] A[3スレ目・254]
・ピエリ×カミラ
 C[1スレ目・752~753] B[2スレ目・478] A[2スレ目・513]
・フェリシア×ルーナ
 C[1スレ目・864~865] B[1スレ目・890~891] A[1スレ目・930~931]
・フローラ×エルフィ
 C[1スレ目・471~472] B[3スレ目・338] A[3スレ目・377]
・レオン×ツバキ
 C[1スレ目・492~493] B[1スレ目・870] A[3スレ目・798]
・ベルカ×エリーゼ
 C[2スレ目・284] B[3スレ目・301] A[4スレ目・354]
・ピエリ×ルーナ
 C[3スレ目・249] B[4スレ目・317] A[4スレ目・412]

【支援Bの組み合わせ】
・ギュンター×サイラス
 C[1スレ目・926~927] B[3スレ目・316]
・フェリシア×エルフィ
 C[1スレ目・367~368] B[2スレ目・541]
・シャーロッテ×モズメ
 C[3スレ目・248] B[3スレ目・285]
・ベルカ×ニュクス
 C[4スレ目・176] B[4スレ目・410]
・シャーロッテ×カミラ
 C[2スレ目・476] B[4スレ目・439]
・アクア×ルーナ
 C[3スレ目・283] B[4スレ目・461]

【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
 C[1スレ目・423~425]
・ピエリ×リンカ
 C[3スレ目・247]
・ピエリ×フェリシア
 C[3スレ目・250]
・ジョーカー×ハロルド
 C[1スレ目・426~429]
・フローラ×エリーゼ
 C[4スレ目・178]
・エルフィ×ピエリ
 C[3スレ目・771]
・カミラ×サクラ
 C[4スレ目・175]
・スズカゼ×オーディン
 C[4スレ目・318]
・ラズワルド×オーディン
 C[4スレ目・459]
・サクラ×エルフィ
 C[3スレ目・774]

今日の本篇はここまでで。
 
 このまま、ジークベルト×ソレイユ×オフェリアの番外に入ります。

◇◆◇◆◇




 ある、晴れた昼下がり、日課としている剣技の稽古を終えたジークベルトは一息ついていた。
 彼の目線に映るのは何時もの暗がりの暗夜の空ではなく、晴天という言葉が似合う青々しい空で、ここが暗夜王国ではないことを改めて教えてくれる。
 白夜と暗夜の交流を目的とした王族の息子たちを入れ替えて十日ほど過ごすというこの催し、最初はどうなることかとジークベルトは不安で仕方なかったが、今やそれに対する心配は無くなっていた。
 今頃、シノノメやキサラギも同じように暗夜で過ごしているのかもしれない、そう考えると心がやんわりとなっていく。
 剣を収めて自身に割り当てられている宿舎へと向かう。体に確かな疲れはあるが、午後からの予定を考えると休んでいられないと鼓舞するような気持にもなるというものだ。
 暗夜ではまず見ない襖を開いた。
 そこで、ゴソゴソという音が聞こえたので顔を上げると――

「ふー。いっぱい汗かいちゃったよー。あー、服が汗で張り付いて、んもぅ、気持ち悪いなぁ」
「な、なにをしてるんだソレイユ!」

 今まさに汗まみれの上着をポイッと脱ぎ捨てんとするソレイユがおり、そこから逃げるようにジークベルトは襖を勢いよく閉め、改めて部屋を確認する。間違いなくそこはジークベルトに宛てられた部屋である。だからなぜここにソレイユがいるのか、それが全く分からなかった。

『あれ、ジークベルト?』
「ソレイユ! な、なんで私の部屋にいるんだ」
『え、あたしがジークベルトの部屋にいたらおかしいかな。主君と臣下の間柄なんだし、気にすることじゃないと思うけど』
「ただいるだけなら気にしない。でもなんで、私の部屋で服を脱ごうとしているんだ!」

 ジークベルトは内心バクバクと動く己の臓を抑え続けていた。
 まるでタイミングを見計らったかのように、開けた瞬間に服を脱ごうとしていたソレイユの姿が脳裏を過る。
 脳裏を過ったことを叱り付ける様に、彼は己の頬に戒めの平手を喰らわす。
 背中越しではあったが髪に隠れた彼女の背中は汗に濡れてとても情熱的だった。背筋の窪みに掛かる陰影、それだけでも真面目なジークベルトには重い攻撃だったのだ。
 そんな彼の苦悩など露知らず、ソレイユは悪びれた様子もなかった。
 服に掛けた手はそのままに、襖越しに楽しそうな笑みを浮かべている。

◇◆◇◆◇




『この前、外で着替えるのは良くないって言われたから、中で着替えてるんだ。主君の命令は守らないといけないからね!』
「言ったことを守ってくれるのはいい事だけど、なんで私の部屋である必要があるんだい!?」
『だって、ジークベルトすぐに戻ってきてくれないんだもん。こっちは連絡があるから待ってたっていうのにさ。それに、ジークベルトも午後から軍議に参加することになってたんだから、自室で待機しててほしいかな』

 矢継ぎ早に展開されるソレイユの言葉にジークベルトは痛いところを突かれていると理解した。
 午前中、ジークベルトにするべきことはなかった。軍議の準備は終わっていたし、見直しも今から始めるという予定だったのだ。
 だが、どこに向かうかを伝えていなかったことは確かにまずかったかもしれないと、今になって自身の落ち度に気づいたのだ。

(ソレイユは私を待っていてくれたのか、汗だくになっているというのに。それを考えれば行き先を宿舎の誰かに伝えておけばよかったのかもしれない。そのことでソレイユに苦情を言うのは間違っているのかもしれない)

 ジークベルトはそう考える。
 問題が起きてしまった以上、それを元から止める術があったのならそうすべきだというのにそれをしなかったこと、自身の落ち度を認めた。
 ジークベルトはため息と共にソレイユに謝る。ソレイユとしても謝られるようなことではないと思っていたからか、それに対して別に気にしていないと漏らしていた。だからジークベルトはこの話は終わったのだと思って、襖をもう一度開いた。
 そして間髪入れずに閉めた。
 そこに広がっていた肌色多めの不思議空間にジークベルトは頭を抱えていた。今の話を聞いていてどうしてそうなるのか、説明が欲しかった。
 先ほどの風景を塗り替える肌色の爆弾を前にジークベルトは顔を真っ赤にして、今まさに走り出したい衝動に駆られていた。黒い上下の下着と揺れる彼女の髪、何よりも外から差す太陽の明かりでくっきりとわかる胸の影、そして腹部を流れて臍を摩る様な汗の軌道。
 口では見ていないと言いたいが、脳裏にはコンマ刻み気に入った情景が刻み込まれていた。仕方ない、男なのだから、ジークベルトも男なのだから……。

◇◆◇◆◇






「仕方ない……わけない。私はなんてことを、一度ならず二度までも。しかも、先ほどのことを思い出せば、ソレイユが仲で着替えをしていることくらい……」

 そこでまた頭の中に先ほどの情景が思い出される。
 主に背中を流れる汗に、臍を撫でるように滴った汗についてその軌道も綿密に覚えている。
 そこにばかり目が向く理由を彼自身理解していなかった。
 一刻も早く逃げ出さなくてはいけないと、ジークベルトは目線を静かにあげ、襖に向けて振り絞るように声を出す。

「す、すまない。悪気があったわけじゃないんだ、まさか、その、下着だけになっているなんて思ってなくて。わ、私は下の広場で待っているから、着替えが終わったら――」

 降りてきてくれと綴っていたところで、襖にうっすらと影が映る。誰かはわかったソレイユだ。ソレイユの手が静かに襖に触れると、うっすらと隙間が出来上がる、上に顔が見えるが、それ以上に腰とちらりと見える下着にばかりジークベルトの目は向いていたのだ。

「もう、なんでまた襖閉めるかなー?」
「いや、それは、その――」
「それとも、やっぱりばっちぃ?」
「え?」
「あたしの……体」

 その問い掛けにジークベルトは答える事無く、全力疾走で逃げ出した。顔を真っ赤にしながら。

◇◆◇◆◇





「はぁ、はぁ、はぁ………ああ、私はいったい何をしているんだ……」

 午後の軍議の準備をほったらかして何をやっているのかと、ここになって自分を叱責する。
 そして、先ほどのことを忘れようとするが、その光景は脳裏を過る度にむしろ鮮明化されていく。
 こんなことで王子が務まるのかと自己嫌悪の嵐に苛まれながら、どうにか気持ちを落ち着かせて手頃な椅子に腰かけた。
 大通りの道は白夜と暗夜どちらの人間も歩いており、かつていがみ合っていたことが嘘のようにさえ感じられる場所になっている。その平和さとは裏腹に、ジークベルトの内面は全く穏やかではないのだ。

「いったいどうすれば……」
「あれ、ジークベルト。どうしたの、こんなところで」
「あ、ああ。オフェリア、こんにちは」
「こんにちは。どうしたの、そんなに深く悩んで、ジークベルトらしくないよ」
「あはは、私だって悩むことはあるよ」
「そう、なら何で悩んでるの?」

 その問い掛けにジークベルトは答えることが出来なかった。なにせ、臣下の裸が目に焼き付いて離れないんだ、などと言えるわけもない。しかも相手はオフェリアでソレイユの親友と言える間柄だ。言うだけで、何が起きるかなど安易に予想ができる。
 幸い、何で悩んでいるのかを口にしていないのだ、わかることもないだろうとジークベルトは考える。
 そうだ、午後の軍議のことで悩んでいる事にしようと顔を上げると。

「もしかしてソレイユのこと?」
「どうしてわか――あ」

 そこまで口にしたところでジークベルトは顔を覆った。
 一生の不覚、ソレイユの事となればオフェリアも聞き流すということはしないだろう。何があったのかわからないなら分かるまで聞いてくるのだろうから。

「何があったのか、聞かせてくれる?」

 案の定逃げ場は無いようで、ジークベルトは腹を括ってその出来事を口にする。
 戻ったらソレイユがいたこと、ソレイユの着替え姿を見てしまったこと、しかも二度も。そして逃げ出してきたことを。
 すべてを話せば荷が軽くなると誰かが言った。だが、ソレイユの体を流れた汗のことに触れることは出来なかった……いや、触れたらどうなるかなどジークベルトは百も承知だったのだから。さすがに己が釘付けになったところなど、口にできるわけもない。

◇◆◇◆◇



 それらを一頻り聞いたオフェリアは、見事に険しい顔をしていた。
 とても険しい顔だ、ジークベルトを睨むような視線で見てから、顎に手をやり何かを考えている。
 何を考えているのか、新しい斬新な処刑方法だろうか。それとも、このことをソレイユの父に報告するのだろうか?
 ジークベルトの中に浮かんだのは後者である。ラズワルドは見た目軽い男であるが、自身の娘に対する考えはとても尖っている。娘が柔肌を見られたとなれば、たとえマークス王の息子であるジークベルトであろうとも、説教の一つや二つはするに決まっている。そして、結果的にそれが父上の耳に入れば、民の支持に影響してしまうやも知れない。
 その予想に震えながらオフェリアを見ると、考えが纏まったようでうんうんと何度か頷いて、ようやく口を開いた。

「はぁ、ソレイユにも困っちゃうよね」
「え?」
「話を聞いてるかぎり、ジークベルトに悪い点なんて見当たらないから」
「オフェリア、君は私を責めないのか?」
「確かに女の子の着替えを覗いたのは良くないよ。だから、これはその罰だと思ってね?」

 そう言ってオフェリアは静かにデコピンを彼に食らわせる。
 少し力強い、額がとてもヒリヒリするが、ジークベルトはとても救われるような思いだった。
 もしかしたら、オフェリアのおかげでどうにかなるかもしれない、そう思えただけでも前に進める気がした。

「ありがとうオフェリア、もう大丈夫だよ」
「そう、よかった。いつも通りのジークベルトになったね。でも、もしかしたらこの先もそういった不幸がおきるかもしれないわ」
「それは肝に銘じておくよ。だけど、これ以上オフェリアにどうにかしてもらうわけにはいかない。私自身が気を付ければどうにかできることだと思うからね」
「だめだよ。そういう時はすべての物事が悪い方角に流れちゃうの。私の中のエキゾチックハートがそう囁いているわ」

 そのエキゾチックハートとやらがどんなものかジークベルトには全く見当のつかないものであったが、多分選ばれし者を目指している彼女の感性がそう告げているのだろう、現にオフェリアの言葉には自信が溢れている。

◇◆◇◆◇





「すごい自信だね」
「当たり前よ。信じることはすべて何もないところから始まるの、私の自信は何もない場所で生まれて今の私の力になってるものなの。だから、私にはわかるのジークベルトにこの先同じような災難が付きまとうって。このままだと、ソレイユの着替えを十五回は見ることになると思うよ」

 さらに不安を煽る文句は彼の心を激しく揺らす。ここまで自信満々の彼女が、これまた自信満々にこの先も災難が付き纏うと言っているのだから、先ほどから精神に揺らぎが生じているジークベルトには心地よい揺さぶりだった。

「そ、それは困る。ただでさえ、ソレイユの着替えを見てしまった罪悪感で身が持たないというのに」
「あはは……、なんだか災難だよね、お互いに」
「? 何か言ったかい、オフェリエア」
「ううん、何でもないよ。それより、ジークベルトにはこれを」

 そう言って彼女は腰に下げた袋よりそれを取り出すと、勢いよくジークベルトに手渡した。
 とても赤い宝石で見ているだけでも吸い込まれそうになるそれは、まるで炎のようだとジークベルトは思う。

「これは?」
「これはね、不思議な力を封じ込めた宝石。守護石アレクサンダーよ」
「アレクサンダー」
「そう、この常闇のオフェリアが認める高ランクの守護石よ」
「いいのかい? これを私なんかが」
「うん。それにソレイユのことでジークベルトにこれ以上、迷惑を掛けられないから。あとで、ちゃんと言っておくけど、それだけで運命を変えられるかどうかはわからないから。肌身離さずじゃなくても、近くに置いておくだけで効果があるはずよ」

 オフェリアの視線はとても真剣で、それにジークベルトは固唾を呑んだ。
 彼女はジークベルトの臣下ではなく、従弟のフォレオの臣下である。そんな彼女が手助けしてくれている。そう考えるとジークベルトの胸に熱いものがこみ上げてくる。これは多分、信頼だろう。そうとてもとても暖かく感じる、故に信頼だと彼は思った。

「そのすまない。私が不甲斐ないばかりに、君に親友を叱る様な役回りを……」
「ふふっ、ならジークベルトも女の子の裸を見たくらいじゃ動じないくらいになるのもいいかも? そうすれば、この先気にしなくて済むようになるかもしれないよ」
「そ、そんなことできるわけない。戦闘中の怪我とかならそうかもしれないが、今はそういうときじゃない。男女にも慎ましさを――」
「もう、ジークベルトは硬いよ。でも、そこがジークベルトらしいところだと思うし、それにジークベルトがそういう風になっちゃうのって、全然想像できないかな」

 女性の裸を見ても動じない、むしろ何をしているんだと淡々と述べるような姿というのは、オフェリアでもそうそう思いつかないもので、もちろんジークベルトもそのような人間になれる自信などなかった。

「なるつもりはないよ。それに今も目のやり場に困っているくらいなんだ。慣れることなんて到底できはしない……」
「?」
「そ、その……君の衣装は……その」

 そう告げてジークベルトはさっと目を逸らす。目の前にいるダークマージの正装に身を包んだオフェリアから。

「どうしたの、ジークベルト。その、やっぱりおせっかいだったかな?」
「いや、そういうことじゃないんだ。むしろここまでしてもらって申し訳ないくらいに思ってる。この埋め合わせはいつか必ずさせてもらうよ」
「そう、それじゃそろそろ行かないといけないんじゃない?」
「え?」
「もう軍議の時間迫ってるんじゃないかな?」
「あ……すまない、こんなところまで気を使わせてしまって。私はすぐに向かうことにするよ。ありがとう、オフェリア」
「ううん、それより、頑張ってね」

 そんな彼女の声援を受けてジークベルトは走り出し、少ししてからオフェリアも走り出した。ジークベルトの部屋でストリップに興じた友人をとっちめるために。

◇◆◇◆◇



 ジークベルトの部屋は未だに襖が閉じられたままであった。どうやら、ジークベルトは軍議の資料を持たずに向かったらしい。いや、一度は前に戻ってきたのかもしれない、でも――

『うふふっ、うふふふっ』

 こんな不気味な笑いが木霊しているとわかればすぐに踵を返すことだろう。ため息を交えて襖を叩き、オフェリアは部屋に入り込んだ。

「ああああああああっ、赤い顔したジークベルトかわいいよぉぉぉお!!!」
「また始まってる……」

 部屋のど真ん中、脱ぎ捨てた服の中心で愛を叫ぶソレイユにオフェリアはまたかと呆れていた。
 ふさふさの後ろ髪を揺らして、先ほどまでのことを思い出しては奇声を上げている。聞こえるように一歩踏み出すと、それはグルリンとこちらを向いた。

「あ、オフェリア、どうだった? どうだった!? 顔を赤くしたジークベルト、すっごくかわいかったよね? ね?」
「勢いよく近づいてこないで。ジークベルト、すごく困ってたわ」
「困ってた、困ってたの? どんな感じに困ってたの!?」

 前のソレイユの姿を知っていたら、誰もが目を疑うことだろう。あの、女の子を追いかけまわすことに執念を燃やしていた彼女が、ジークベルトという異性を気にかけているのだから。
 思えば一か月前、オフェリアがソレイユに呼び出された日からだろう、彼女の印象が変わってしまったのは。

『オフェリア、どうしよう……。あたし、ジークベルトの……』
 
 その時のソレイユの様子は覚えている。もじもじして、でもどこか初々しく、初めて生まれた感情に戸惑う姿。オフェリアはその姿にエキゾチックハートの輝きを感じていた。乙女の
心が躍動するという奴だ。自然と身構え、正座して、ソレイユどうぞぶちまけろと彼女は待ち。

『ジークベルトの赤面顔が見たくて見たくてたまらなくなっちゃったんだ……』
『え、なに?』
『あ、あたしの着替えを見て走ってく姿にきゅんきゅんしちゃったんだ!』

 矢継ぎ早にジークベルトが恥ずかしそうに走っていく姿に体が感動してしまうと叫ぶソレイユに、オフェリアはよもや困惑を通り越して、精神の自壊を始めようとしていた。
 何かの間違いだろうと聞いた、どうやら間違いない。
 何が可愛いのかを聞いた、軽く一時間ソレイユは語ってくれて、内心もう帰りたいと心で泣いた。
 そして、関わりたくないと思ったところで、拘束され協力を強要された。
 最初は抵抗したオフェリアだったが、ソレイユの見つけてきたマジックストーンの提供の前に脆くも崩れ去り、今こうして二人は話をしている。
 そう、この二人はグルだった。

◇◆◇◆◇




「とりあえず、これ以上ジークベルトに変なことしたら臣下の任を外されかねないから注意しないとだめだよ」
「でもでも、ジークベルトの赤い顔を見るためには、どうにかして接触しないとだめだよ。確かに遠距離から見るのもいいけど、あの真面目なジークベルトの顔がだんだんと段階を踏んで――」
「ジークベルトの赤色変化評論はやめて。私、全然理解できないし、ソレイユと距離を取りたくなっちゃうから」
「大丈夫、オフェリアもジークベルトの可愛さに気付けたら私の気持ちがわかるはずだよ。あの変化をマジマジと見たらもう、止められなくなっちゃうよ!」

 どうやらソレイユの中のジークベルトの赤面顔というのは、自身の臣下としての未来や信頼と呼ばれるものを担保にできるほど、価値のあるものらしい。
 いや、価値があるからといって欲望に忠実に動いて良いわけではないのだが。今のソレイユにそんな社会的道徳や人間的理性の話をしても、すべてはリビドーを満たす材料だという暴論を掲げかねない。。
 そして何よりオフェリアが怯えていたのは、このソレイユが自爆した爆風がこちらに及びかねない現状であったのだ。なんとかして、ソレイユが自爆するのを抑えたい、そう考えた彼女は一つ手を講じていた。

(ジークベルト、ごめんね。でも、こうしないとあなたも私も救われないから)

 ソレイユはジークベルトのことを異性として意識しているわけではない。
 彼が赤面しながら狼狽している姿にかわいいよぉぉぉお!!!と叫んでいるのであって、ジークベルトの人柄そのものにほれ込んでいるわけではないのだ。
 ならばどうするかと考えた。そして悪魔的な発想を思いついたのだ。
 ジークベルトも少なからずソレイユの事は認めているし、ソレイユだって今は赤面フェチズムであるが、そこから輪を広げていくことが出来るかもしれないと考えた。つまり、もう二人をくっつけてしまえばいい、そんな暴論に至ったのである。
 だが、ソレイユにジークベルトの事好きなの?と聞けば、大好きだよ、あの赤面!と優雅に答えるだけなので、こういった質問をするつもりはなかった。
 ならばどうするか常闇のオフェリアは考えた。考えて、ならばとあることを思いついたのだ。

◇◆◇◆◇



「ソレイユ、貴方の赤面ライフ、それをさらに増幅する作戦を実行するわ。これで、多分ジークベルトの赤面接種の回数を少なくできるはずよ」
「え、なにそれ、そんなすごいことを考えるなんて、さすがはオフェリアだね!」

 ソレイユはどこか興奮気味にそう言葉を連ねる。
 子供のような輝いた笑顔であるけれど、その瞳はギラギラしているので全く愛嬌がなかった。女は愛嬌というのは多分文字の綴り間違いだと彼女を見れば誰もが思うに違いない。
 そんな彼女にジークベルトを生贄に捧げるという業の深さに、オフェリアはいけない何かを感じつつも、その準備を始める。
 取り出したのは水晶が二つ、それをソレイユの前に置くと、静かに呪文を唱える。
 瞬く間に透き通った水晶の中にコスモの輝きが宿り、まるで吹き荒れる大嵐のような渦が生まれると、やがてそこに世界が映し出される。
 そこは多くの人が座っている場所で皆真剣に話を聞いている。

『であるからして、このような状況であった場合は――』

 少しして声も聞こえてきた。水晶に大判の紙を映し出された所で、ソレイユは思い当たる事を口にした。

「これってもしかして、今行われてる軍議の様子だよね。これって監視魔法の応用?」
「ええ、これを作るのに、結構苦労したの。光景も音も申し分ないから成功ね」
「でも、これがいったい何の役に立つのさ?」

 ソレイユの指摘はもっともであった。
 軍議の話を聞いてもためにならないというわけではないが、今ソレイユが欲しているのはジークベルトのアヘ顔、もとい赤面である。
 忽ち興味を失ったソレイユであったが、少ししてそれは変化する。

『議長、発言よろしいですか』
『許可します』
『はい、ありがとうございます』

 その声はよく聞いている声、とても凛々しいその声にソレイユの体は自然と反応し、水晶に目が向けられる。

「あれ、今の声って……」
「ふふっ、ソレイユならすぐにわかるよね。こっちの水晶の視界はジークベルトの目線のものなの」

 そうオフェリアは自信満々に告げる。
 確かにこの光景の中にジークベルトは映っていない。しかし、今発言しているジークベルトの声は良く聞こえるのだ。

「すごい、すごいよ。ところでこれってジークベルトのどこについてるの?」
「眉間ね」
「え、どうやって付けたの?」
「ん? ソレイユの裸を見たから、その罰だよってデコピンしてあげたの。そしてこの水晶は……」
「うわぁ、すごい!」

 もう一つの水晶にはジークベルトを見上げた構図の光景が映し出され、議長に向けて自身の意見を告げる姿があった。
 この光景にソレイユは感心した。この手際の良さに。
 そう、先ほどジークベルトにしたデコピン、そして守護石アレクサンダーの正体とはこれで、この監視装置の構築をオフェリアはジークベルトを励ましつつ行ったのである。
 正直、心が罪悪感でいっぱいだったのはジークベルトよりもオフェリアであったのだが、自分の安全を確保するために背に腹は代えられないのが、今の彼女の状況でもあった。

◇◆◇◆◇



「さすがオフェリア! でも、これで何がわかるの?」

 しかし、ソレイユにはこの監視機構で何がわかるのかわかっていなかった。それにオフェリアはため息を漏らした。

「ソレイユ、今の貴方の攻撃は着替えだけ。それは確かにジークベルトの弱点であることに変わりはないわ」
「そうだね、ジークベルトはあたしの着替えを見るたびに、子供みたいに走り出すから。ああもう、かわいいよぉ」
「そう、確かにそのとおりね。でも同じ攻撃がずっと通用するわけじゃない。いずれ、そのアプローチは通用しなくなるかもしれない」

 ソレイユに電流走る。
 それはずっと気にしていなかった部分であり、彼女の十八番に錆が生まれた瞬間でもあった。少しだけ彼女は否定しようと考える。
 あのジークベルトが女性を大事に思っているあのジークベルトが、あたしの着替えに動じなくなる?
 想像してみた、今日と同じように部屋で待ち伏せしてタイミングよく着替え始めたところに彼が入ってくる。
 ソレイユは何気なく振り返り彼と目線が合う。いつもならここで一、二、三、四と段階を踏んで赤くなっていくジークベルトなのだが、一向に変化はない。むしろ見慣れてしまったという穏やかな顔で、着替えるのはいいけど人目は気にしたほうがいいよと告げ、準備をササッと終えて部屋を出て行ってしまうのである。

「いやあああああああああっ!!!!!」
「うわっ」
「いやだ、いやだよぉ。あたし、そんなそんな素の顔でいられたら、生きていけないよぉ。ジークベルトは初心のままで、初心のままでいてくれないと困るのにぃ」
「……」

 想像で号泣するソレイユにオフェリアの顔はもう何をすればいいのか全く分からなくなっていた。
 むしろ、この計画自体間違いだったのではないかと思えるほどに、である。
 でも、ここまで突き進んできてしまった以上、止めることが出来ないのが人の性だった。

「ね、わかったでしょう。いつかそういう日が来てしまう前に、新しい弱点を見つけないといけないの」
「オフェリアぁ。いっしょに、いっしょに見つけて、お願いだから」
「大丈夫、ちゃんと手助けするから」
「オフェリア、ありがとー!」

 熱い抱擁があった。
 オフェリアとしては内容が内容なだけに素直に喜べないのだが、ソレイユのそれは信頼を含んだまさに魂の抱擁だった。
 そして、監視が始まった。

「でも、どういったことを見ればいいのかな?」
「ジークベルトの視線と、その時の様子を確認しながら、ジークベルトの気恥ずかしさが爆発する現象を見つけるの。それを応用していけば、いくつも方法が生まれるはずよ」
「なるほどね、それじゃ目を皿にしてでも見つけ出してみせるよ!」

 ジークベルトはどのようなタイミングで赤面するのか?
 その赤面するタイミングを見計らい、それをものにできるのかどうかは二人の頑張りに掛かっていた。

◇◆◇◆◇



 掛かっていたのだが、状況は混迷を極めた。
 あろうことか自身の意見に対する質問や反対にジークベルトは臆せずの姿勢を貫いていた。赤面もない、むしろいつも通りというレベルで何も彼は変わっていない。
 これにはオフェリアも驚き、ソレイユはあまりの退屈さに欠伸をする始末である。

「ねぇ、オフェリア」
「なに、ソレイユ」
「これって、意味あるのかな?」

 議題は最終局面に入っていた。入っているのだが、如何せん、話が何一つ上がらない。
 いや議題は問題なく進んでいるのだが、ソレイユとオフェリアの間には何一つ話題がないのである。
 沈黙のまま長時間が過ぎ、議題に対して独自のツッコミを二人も入れ始める頃になって、オフェリアはジークベルトが赤面するような弱点など女性関連以外で無いのかもしれないと思い始めていた。
 ジークベルトの視線は議題と配られた資料を行き来するだけ、真面目に観察対象としてはつまらない、そして本当に何も起きる事無く軍議は終わりを迎えてしまったのだ。
 常闇のオフェリア、まさかの失敗にうなだれつつあった。
 そして、アレクサンダーはジークベルトの服の中にしまわれてしまい、眉間からの情報だけが頼りの綱となったが、その足はまっすぐに部屋を目指している様子だった。

「これって、一直線に部屋に戻ってくる流れだよね」
「そう…だね」
 
 すでに観察する気も起きないようで、ソレイユはスタンバイに入っていた。そう、また着替えをする準備である。
 できればそれは阻止したいのであるが、今は仏頂面ジークベルトばかりを見ていたソレイユ、赤面ポイントがあまりにも足らなかった。だから補給するしかない。
 スクワット、腹筋、腕立て伏せの三コンボはみるみる汗を分泌させていく。部屋の中に熱気が生まれ始めていた。
 非常にまずい。できれば私はここから抜け出したほうがいいと動こうとした時、ガシッと掴まれた。
 ソレイユである。

「な、なにしてるのソレイユ?」
「オフェリア、やっぱりオフェリアにもジークベルトの赤面の良さを教えたくなっちゃった」
「え、遠慮していいかな?」
「ううん、オフェリアにこれだけいろいろしてもらったのに、仲間はずれっていうのは良くないって、それにオフェリアも虜になれば、新しい突破口が見つかるかもしれないよ」
「わ、私はそんなのに興味ないから。あ、マジックストーンが私を呼んでる気がするわ」
「それは気のせいだよ。それじゃ、まずは汗まみれになろっか?」
 
 そう言ってソレイユはオフェリアに熱い抱擁を与える。
 すでに熱くなった体温もそうだが、今日はそれなりに気温があって、瞬く間にオフェリアの額に汗が浮かび始めた。
 特殊すぎる状況にオフェリアの頭はクラクラしていたが、その瞳は転がっている水晶玉を見つめている。
 ジークベルトの視線は、もうこの寄宿舎の入り口に入り込んでいた。さすがにもうソレイユも部屋に戻ったから大丈夫なはずと、慢心の台詞を口にしながら。接触まであとわずかな時間しかないというのに、ペトペトと互いの汗が混じり合い始める。
 ジークベルトの視線が階段を上がり始める。さすがに暑さでクラクラしてきて、ソレイユが着替えなら持ってきてあるからと零す。
 ダークマージの格好といえど、こうも汗でべっとりしてるのは困る。この不快感からすぐに抜け出したいと思ったところで、視線にソレイユの準備した着心地のよさそうな服が目に留まる。
 哀れにも水晶玉は役目を失い、今や部屋に迫りつつあるジークベルトの将来ばかりを映していた。

「それじゃ、今のうちに着替えちゃおうよ、ジークベルトが来る前にさ。ほらね?」
「そ、そうだね」

 ジークベルトが来る前に着替えれば問題ない。
 オフェリアは正装に手を伸ばす。
 ソレイユも手を伸ばす。
 ジークベルトが部屋の引き戸に手を伸ばす。
 それらが一斉に動きだした時、悲鳴、赤面と興奮、そして脱兎のごとく逃げ出した彼の足音だけが離れていった。

◇◆◇◆◇




 結論から言えば、ジークベルトが赤面した姿にオフェリアは感動を覚えなかった。
 ソレイユはまた可愛いよぉおおと叫ぶ人形となってしまい、着替えを終えたオフェリアは落ち込んでいた。
 どうすればよかったのかなどわかりはしない。手元に残ったのは、ジークベルトに迷惑を掛けてしまったという事実だけである。
 これ以上調べても何の意味もないと監視用の水晶は砕いて、最後にジークベルトの眉間につけた呪術を外そうと考えているのだが、どんな顔で会えばいいのかと悩んでいるのが現状である。

「はぁ、どうすればよかったのかな?」

 多分、答えなどない。むしろ答えがあっては困ることだ。
 だからこそ、どう顔向けすればいいかわからず、こうして広場で悩みを募らせている。

「オフェリア」
 
 だからそう声を掛けられたことは驚きだった。振り返ると、ジークベルトが頭を下げてそこにいた。

「え、ジークベルトなんで頭を下げてるの?」
「すまない、君のその、肌を見てしまって……」
 
 彼は謝る。いやいや、謝るのはこちらの方だとオフェリアも頭を下げた。
 二人して一通りの押し問答を終えたあたりで、ようやく静かに笑いが起きた。

「私もまだソレイユが部屋にいるかもしれないと考えていれば、こんな事にはならなかった」
「ううん、私の力不足よ。本当なら、こんなことにならないようにできたかもしれないのに。アレクサンダーの力、ちゃんと使いこなせなかったから」
「いや、アレクサンダーの力はちゃんと機能していたよ」
「気休めはやめて、私は結局なにもしてないわ……」
「いや、本当に機能していたよ。あんなことの後だったから、頭がごちゃごちゃになって、うまく話せない気がしていたのに緊張も何もしてなかった。いつもならこううまくはいかなかったよ」
「それはジークベルトがちゃんとしてたからで、私はなにも」
「ううん、部屋にいたのもソレイユのことを説得してくれていたんだよね。オフェリアには色々と用を任せっきりで、本当にどうお礼をしたらいいのかわからないくらいだよ」

◇◆◇◆◇



 そうジークベルトは言ってくれた。
 ジークベルトは甘んじない、自分に厳しく他人に優しくできるそういう人だと改めてオフェリアは認識する。

「そんなことないよ。だって、ソレイユのこと止められなかったから」
「オフェリアが頑張ってくれただけでもうれしいよ。もう慣れていくしかないかなって思ってる。こうやって何度もソレイユの着替えと重なっちゃうとなると、予防策でどうにかできるかはさすがにわからないけどね」
「本当にすごいよね、ジークベルトは……私とは全然違う、努力できる人だよね」
「ふふっ、人はそれぞれ違うのは当たり前だよ。オフェリアはソレイユと私のために頑張ってくれた。それだけでもう十分釣り合ってる。だから気にしないでほしい」

 そう言ってジークベルトは顔を静かにオフェリアに向けると、その眉間を静かに差し出してきた。
 その仕草はまるでこの呪術を剥がしてほしいと言っているようで、オフェリアの心拍数は一気に跳ね上がった。
 まさか、ばれてる!?
 身構えたところで、ジークベルトが視線を逸らして言う。

「そ、その、さっき君の肌を見てしまったから、先ほどと同じようにしてもらって構わない。これは、私なりのけじめだ」
「ジークベルト……」

その瞳は申し訳ないという気持ちでいっぱいで、オフェリアに罰を実行してほしいと静かに訴えている。
 それを理解して彼女は指を静かに構えて動かす。自分の施した呪術を消し去るように、私とソレイユの分だと、ベシンベシンッ。
 少しだけ、ジークベルトの眉間が赤くなった。

「ははっ、今日はオフェリアに叱られたばかりだね。でも、ありがとう私のために色々としてくれて」

 ジークベルトはその表情を緩やかに変え、ゆっくりと優しい笑みへと変えてから、オフェリアに礼をした。
 その時だった。
 確かにオフェリアの心がドクリっと動いた。
 その変化にオフェリアはとても困惑した。困惑しながらも、もう一度ジークベルトを見れば、その笑顔にまた心拍数が上がる。
 このまま、ここにいちゃいけないと彼女は理解して、もう遅いからと自身の宿舎へと逃げるように退散した。
 まさか、そんな馬鹿なと思いながら。
 しかし、確かに高鳴りつづける胸を押さえながら……

◇◆◇◆◇



 オフェリアが部屋に戻ると、そこにはソレイユがいた。
 ソレイユは大変満足していた。先ほどまでの姿が嘘のようで、そのギャップにオフェリアは素直に驚く。

「あ、お帰り、オフェリア」
「お帰りじゃないよ。ジークベルト、これからは慣れるように努力するって言ってた。これ以上、困らせるのはやめようよ」
「そうなんだ。それじゃ、今度からは合法的にジークベルトの前で服が脱げるよ。慣れるためだから仕方ないよね。えへへ~」

 悪びれた様子もなく今後の方針を口にする彼女を横目に、オフェリアは腰を下ろした。
 先ほどのことを思い出して、まさかそんなことはありないと思いながらも、ふとソレイユへと目を向ける。
 ソレイユはジークベルトのことを異性としては見ていない、ただ赤面した彼が可愛くて仕方ないのだという。
 オフェリアはその事実に体を震わせていた。

「ね、ねえ。ソレイユ」
「なに、どうしたのオフェリア?」
「う、ううん、何でもない」

 そう零して彼女は頭から布団を被る。今日は色々あって疲れているだけだ、そう疲れているだけなんだ。
 そう言い聞かせながら目を瞑る。瞑ると今日の事が少しばかり思い出されていく。
 今日という日常の一ページ、その一ページの他愛のない事柄の中に、一つきらびやかに光る物があった。
 常闇のオフェリアを白日のオフェリアにしかねないそれは、とてもまぶしく意識したら最後、もう頭の中はそれだけになってしまう。
 その現象に、オフェリアは声にならない悲鳴を上げた。動悸息切れが、きらびやかな世界が一挙に彼女を襲いくる。

(ちがう、違うに決まってる。そう、私は選ばれし者、常闇のオフェリア。これは悪い夢よ)

 そう言い聞かせて見るものの、それがこびりついて離れない。それを言葉にしたくて疼いている。
 多分、これを言ったら楽になれる、それはわかった。わかっていたが言ってしまったらすべてが終わってしまう気もする。
 でも、言いたい。言いたくてたまらない。そうだ、耳をふさいで言えばいいんだと、オフェリアは耳を塞いだ。
 これで聴こえないと、訳の分からない言い訳で自分を納得させる。実際耳をふさいだところで、聞こえなくなるわけはないのに。
 だが、もう、オフェリアは我慢できなかった。

「ジークベルト……」

 思わず名前を口にしてしまった。順序を間違えたと思ったがもう後には引けない。
 堰き止めていたものを放出するように、オフェリアはその言葉を口にする。楽になるために、素直になるために。

「可愛かったぁ……」

 安堵の息のように漏れたその言葉が暗い中に木霊した。幾分か気持ちは楽になった。これなら大丈夫と安堵の息を漏らす。

◇◆◇◆◇



 しかし布団に迫る黒い影が一人、そのか細い安堵の息に聞き耳を立てていたのだ。その顔は暗黒微笑を浮かべ、静かにその手を布団に乗せて、静かに握ると口を開く。

「ふふっ、そうだよね。ジークベルトは可愛いよね、オフェリア」

 間髪入れずに布団を剥がし取る黒い影。外に漏れていたとは思っていなかったオフェリアは激しく狼狽するも、聞き耳を立てていたソレイユを誤魔化すことはできなかった。

「ふふっ、オフェリアもジークベルトの可愛いところ、見つけちゃったんだね」
「ち、ちがう、ちがうの。こ、これは昨日手に入れた魔石が可愛いって言っただけで」
「本当に?」

 そのソレイユの言葉は、まるで鋭い矢のようだった。
 否定すればいいのに、それを否定することを心が拒んでしまった。
 精神が否定することを拒絶していた。
 ソレイユはすでにこれを体験しているのだろう、つまり経験者と未経験者、知っている者と知らない者では、知っている者が有利になるものだ。

「ねぇ、オフェリア。別に恥ずかしい事じゃないんだよ。誰かの仕草を可愛いと思うなんて、結構普通の事だったりするんだから。あたしが今でも女の子は好きでありながら、ジークベルトの赤面を可愛いと思ってる。そうこれは普通の事なんだよ」
「ふ、普通の事。これって普通の事なの?」
「そうそう。だからあたしに教えてよ、オフェリアがジークベルトのどこに可愛さを感じちゃったのか」

 よもや蛇に睨まれた蛙となったオフェリアに成す術はなかったし、何よりもこの今感じているものを誰かに聞いてもらいたいとオフェリアは思い始めていた。
 不思議なことに、感動というのは一定を越えると他者にも見てもらいたいと思ってしまうものなのである。
 ソレイユがオフェリアにそれを示していたように、オフェリアもまたソレイユにそれを示したいと思ってしまっていた。
 ジークベルト、暗夜王マークスの息子。
 その肩書以上の価値をオフェリアは見出してしまった。気になる異性としてではない、そうそのわずかな行為に彼女は魅入られているのだ。

◇◆◇◆◇



「か、可愛かった」
「うん、それで、なにが可愛かったのかな?」

 心を魅入られ、そして今まさに開放していく。
 甘い誘惑にオフェリアはもう縛られ、身動きが取れない。
 熱にうなされるように、空気を求める魚のように、声が漏れていく。

「じ、ジークベルトの、ジークベルトの………」
「うんうん」

 ソレイユはその目覚めを祝福する。
 親友が同じようにそれに目覚めることを、そしてオフェリアも感じていた。
 その目覚めという深い穴に落ちていく快感が体の芯を貫くころには、もうその頭の中はあの時の衝撃で満たされ、もう上ることさえできなくなった。

「私、ジークベルトの笑顔が、笑顔が可愛くて、可愛くてぇ!!!」

 落ちていく、落ちていく、奈落の底へと落ちていく。
 落ちているのにオフェリアの心は幸福に満ち溢れていた。それがもう我慢することなどないと気付いたゆえであることを、彼女はまだ理解できない。
 でも、理解できないからと言って感じることが出来ないわけではないだ。
 ここに、オフェリアは陥落し、その渦に飲まれた。

「ジークベルトの笑顔が、笑顔が可愛くて仕方ないよおおおおおおおおぉぉ!!!」

 オフェリアの叫びにソレイユは共感した。
 その趣向は理解できないが、可愛いということを肯定するその姿勢は素晴らしいし、何よりも仲間が出来たこと、それこそが何よりもソレイユを奮い立たせた。もう一人じゃない、どんなことでもできる気がした。
 二人は互いの好きなことで夜を明かす。友情が塗り重なっていく、まるでミルフィーユのように、何層にもわたって。
 この友情ミルフィーユ、食べたら胸焼け必死である。
 そして、この先二人の犠牲となっていくことであろう彼をうらやむべきか、それとも哀れに思うべきなのか、それは誰にもわからない……




 ジークベルト×ソレイユ×オフェリア番外 おわり

今日はここまでで

 ジークベルトは赤面と笑顔が結構可愛い。

 次にやる番外を決めたいと思います。参加していただけると幸いです。

◇◆◇◆◇

 1、ディーア×ミタマ
 2、リリスの多世界観察記2
 3、ピエリ×ルーナ(百合)

 この中で最初に三回あがった物にしたいと思いますので、よろしくおねがいいたします。

1 乙女心が躍動してしまったのかな?

同じく1で

ピエルーナ

3かな
うーん不穏、白夜と協力はできるのか

リリスかルーナで迷うけど、3のルーナピエリで
しっかしピエリは百合に使いやすいなあ、たまには>>1が書いた他キャラの百合も見てみたいけど

ヒノカ×セツナのR板ガチレズが内定してるぞ

◆◆◆◆◆◆
―白夜・イズモ公国・宿舎『大広間』―

エリーゼ「はぁ、あたしも行きたかったなぁ、テンジン砦」

カミラ「ふふっ、レオンとサクラ王女が向かってから、そればっかりね。レオンのことが心配かしら?」

エリーゼ「それもあるけど、サクラたちとは、しばらくお別れだって思うと……」

カムイ「そうですね。今回の件がうまく行くということは、サクラさん達とはしばらく離れ離れになるということですからね」

エリーゼ「うん、そのね白夜との話し合いがうまくいくのはいいことだってわかってる。でも、やっぱり寂しいから……」

カムイ「なんだか不思議ですね。元々は忘れてくださいなんて、そんなことを言っていたのに、今ではこうして離れ離れになることを寂しく思ってしまっているなんて」

エリーゼ「えへへ、そう思うのはね。カムイおねえちゃんもサクラのこと大好きだからだと思うよ」

カムイ「エリーゼさんがそう言うですから、そうなんでしょうね」

カミラ「ふふふっ。つまり、サクラ王女と最後まで一緒にいられるレオンがうらやましくて仕方ないのね、エリーゼは」

アクア「そういうことね、ふふっ、エリーゼらしいわ」

エリーゼ「もう、みんな笑わないでよ」

カムイ「ふふっ」

エリーゼ「ああ、カムイおねえちゃんまで、ひどいよー」

カムイ「ごめんなさい。でも、こうしてゆっくりと待つことができるのはとてもうれしいことです。その点ではモズさんに感謝しなくてはいけませんね」

マークス「白夜の使者のモズという男とカムイは知り合いだったようだが、一体どういう経緯で知り合ったのだ?」

カムイ「私が最初にすることになった任務でお世話になった方です。ガンズさんのことで色々と迷惑を掛けてしまいましたが、私のために色々としてくれれました」

アクア「だけど、あの男の目線は厳しいものだったわ。久しぶりに見た仇敵を睨みつけるような視線だったもの」

カムイ「当然ですよ。私は白夜を裏切った女なんですから。しかも、与えられた恩を仇で返した人間、モズさんにとっては二度も自身を騙した人間といっても過言ではないはずです」

マークス「すでに過ぎ去ったことはどうすることもできない、これから正しくしていく以外に手はあるまい。この会合はそのための第一歩なのだからな」

カムイ「はい。皆さんが出立してから、今日で三日目ですね」

アクア「モズの話では途中で部族の村に立ち寄るという話だったから、今日あたりそこに辿りついているのかもしれないわね」

カミラ「たしか風の部族と言っていたわね」

マークス「ああ、そこで一晩休んだ後にテンジン砦を目指すという話であったな」

カムイ「正確には、到着したという意味で一度足を止めているのでしょう。さすがにテンジン砦は最前線と言ってもいい場所にありますから、合図を待たずに進むことはできないということかもしれません」

カミラ「そうね、向かったらテンジン砦が攻められている最中だったなんて、想像したくないもの」

アクア「白夜なりに考えていることがあるということね」

マークス「しかし、風の部族の長か。一体どのような人物なのだろうか?」

カムイ「長というくらいですから、とても屈強な方かもしれませんよ」

カミラ「わからないわよ。すごく小さな子供かもしれないわ。こう、可愛がってあげたくなっちゃうようなね」

アクア「どちらになるのかしら、私もさすがに族長のことを知ろうと思ったことなんてないもの」

エリーゼ「うーん、この答え合わせって結構先になりそうだね」

カムイ「そうですね。そう考えると先に答えを知ることのできるレオンさんがうらやましいですね」

エリーゼ「レオンおにいちゃんに直接、聞けばいいんじゃないかな?」

アクア「レオンのことだから、自分の目で確認するといいみたいなことを言ってくるかもしれないわね」

カムイ「たしかに、レオンさんならそういうかもしれませんね……」

◆◆◆◇◇◇
―白夜・風の部族村・烈風城『長の間』―

 パラッ パラッ

モズ「……以上が本日、この地に滞在する人数になります、フウガ様」

フウガ「うむ、確認した。そう難しい顔をするのではない。先日立ち寄った際にモズの提案を私は承った。それを直前になって反故にする誇りなど、持ち合わせていないつもりだ」

フウガ「そしてその者たち、そうかしこまらなくてもいい。ここまでの旅路、いくら街路とはいえ少々堪えているだろう」

レオン「心遣いに感謝します。僕は暗夜王国第二王子レオン、此度の滞在を承諾してくれたこと感謝しています」

フウガ「なに気にすることはない。言葉の通じるお前たちと、言葉の通じないノスフェラトゥとでは雲泥の差だ。それにサクラ王女とその臣下は、白夜の使者であるモズより、レオン王子のことを信頼しているようだ」

サクラ「そ、そんな。そんなことは」

フウガ「ふっ、先ほどからお前の視線は暗夜の王子を行ったり来たり、まるで花婿を親に紹介する機会を伺う娘のようにさえ思えてくるほどだ」

サクラ「な、何を言い出すんですか! あっ、その、えっと、ご、ごめんなさい。声をあげてしまって」

フウガ「ふははっ。どうやら私の勘違いであったようだ。すまないすまない」

ツバキ「でもー、確かにそんな感じだったよねー」

カザハナ「なんていうか初々しいって感じしてるかな~」

レオン「二人とも少し静かにしててくれないかな」

フウガ「ふっ、別に気にすることでもない。むしろ、こう賑やかなことに問題はないと思っている。それが暗夜と白夜の人間との戯れであるのであるならば、尚更のことだ」

レオン「その……フウガ王、一つお聞きしたいことがあります」

フウガ「なんだ、レオン王子」

レオン「この……この戦争は僕たち暗夜が仕掛けたものです。そんな僕らがこうして和平を望んでいる、そのことをあなたはどうお考えですか……」

フウガ「……それは、私達がこの戦争に大きく関わっていないことを前提に聞いているのだな?」

レオン「……はい」

フウガ「わかった。正直に言えば虫が良い話であろう。その話、暗夜の主権を握ろうと、お前達が暗夜の人間であることに変わりはない。暗夜を恨み、暗夜への負の清算を行おうと考える者たちは、この白夜という地で生きている者たちにも多くいることだろう」

モズ「……」

フウガ「白夜と暗夜の確執は長く続いて来た。この村もノスフェラトゥの襲撃を幾度か受け、その度に死に伏したものもいる。こうしてお前達が腰を据えることを、心の中でよく思っていない者たちがいることもな」

レオン「……」

フウガ「それを踏まえて言えば、今回のことも何かしらの策ではないかと考えてしまうのも確かだ。お前たち暗夜がしてきたすべてのことが、たとえお前たちの舌ことではないとしても……。長く続いて来たことを、そう簡単に崩せはしないようにな」

レオン「……」

フウガ「だが、それももう終わりを迎えつつあるのだろう。今やこの戦いは誰に向けられているのか、ここから見ている私たちでは理解できないものになっている。あの日、多くの人間がこの村を通り、暗夜の地に向かった。とても弱弱しく怯えている者たちばかりがな」

サクラ「まさか、それは……」

フウガ「その凶行までに何があったのか、それを私は知らない。知らないが、その時ばかりは私も理解した。この争いは今までの小競り合いや互いを守るための戦いとは違うとな。故に、私達はこの戦いに直接的な参加を否定している。誰ひとりとして、この戦いを終わらせるために戦っているとは公に口にしたりなどしていない、そんな戦いなのだからな」

レオン「戦いを終わらせるために戦っているわけじゃない……か」

レオン(前まで僕もそんなことを父上に言っていた気がする。白夜との戦いの先、その先の先の戦いを考えて戦う。あの時の僕は今のように戦いを終わらせるために考えていたわけじゃないのかもしれない……)

フウガ「……だからこそ、自身の村を守ること民を守ることを選んだ私の話を聞き、真面目に考えてくれるお前達を私は信じてみたく思うのだよ」

サクラ「フウガさん……」

レオン「だけど、もし僕達が――」

フウガ「何かを企んでいるかもしれないと言いたいのだろう? 人の心の内などそう簡単に理解できるものではない。だが、この誰もが自身の中に生まれた悪意から逃げるために戦いを続ける中、お前達が目指す道は違うものだと感じられた」

レオン「それだけで僕たちを信じるのかい?」

フウガ「……いいや、それだけでは無いさ」

レオン「?」

フウガ「ふっ、すべてを言うつもりはない。言葉にせずとも行動で示すことが何よりその証となると私は考えている。レオン王子は言葉だけの相手を信じ、ここまで歩んできたのか?」

レオン「命を掛けてまで信じることなんてできないだろうね」

フウガ「そういうことだ。そして、それはもう私の目の前に示されている。これ以上の論議に意味などありはしない。とりあえず、今日はゆっくりと休み、明日の会談に備えるといい。何か入用ならば、伝えてほしい」

サクラ「あ、ありがとうございます。フウガさん」

フウガ「なに、友の娘とこうして話ができることは、とてもうれしいことだ。こちらこそ礼を言わせてもらう。ありがとう」

サクラ「友の娘?」

フウガ「おっと、いかん、いかん、昔の話をしたくなるのは年老いた証かもしれん。まだまだ老い落ちるには早いというのにな、このような場所で昔話を聞くのも退屈だろう。ツクヨミ」

ツクヨミ「はい、フウガ様」

フウガ「この者たちを宿舎へ連れて行ってもらえるか? 道中、野営もあったであろうことだ、湯釜の準備も怠らぬように頼んだぞ」

ツクヨミ「わ、わかった。暗夜の者たち、わ、私に付いてくるがよい」

フウガ「ふっ、少し緊張しているようだな、ツクヨミよ。大丈夫だ、この者たちは村に害をなす者たちではない」

ツクヨミ「き、緊張などしていない! さぁ、早く行くぞ」

レオン「……なんだか子供が背伸びをしてるみたいだな」

サクラ「でも、ツクヨミさんを見てもなんでか疑問が上がらないんですよね」

レオン「うん、なんでかな……」

レオン(僕たちの周りにツクヨミのような人間、ニュクスは……いやあれは逆だ。じゃあ、なんで――)

カザハナ「?」

レオン「……」

カザハナ「なによ、レオン王子。ちゃんと静かにしてたわよ!?」

レオン(……見た目大きくても子供みたいにお転婆なのがいるからか)

サクラ(カザハナさんって、思ったよりも子供っぽいところ多いですよね)

ツバキ(あー、この二人カザハナは子供っぽいとか思ってるみたいだなー。うん、意地の張り方とか、簡単に挑発に乗っちゃうところとか、まんま子供だもんねー)

カザハナ「なに、なんなのこの空気!? ちょっと三人とも、なんであたしを見て微笑ましい顔するの!?」

ツクヨミ「お前たち、早く来ないか!!!」

レオン「ああ、すまない」

ツクヨミ「………」

レオン「どうかしたかい?」

ツクヨミ「いや、お前は何も言わないのだなと思ってな」

レオン「ああ、もしかして君の見た目のことかな。見た目で人を判断するつもりはないよ、それにここの長であるフウガ王に信頼されている君の実力は、確かなものなんだろう? 改めてよろしく、暗夜王国第二王子のレオンだ」

ツクヨミ「……そ、そうか。いや、それほどでもあるがな。ここで呪い師をしているツクヨミだ、よろしく」

レオン(なるほど、褒められると増長するタイプか、思った以上に子供な感じがするな。背も低いから拍車が掛ってる気がする)

カザハナ「へぇ、フウガ様と比べると、全然小さいよね、あなた」

ツクヨミ「小さいというな!」

カザハナ「いやいや、フウガ様すごく大きいでしょ、あたしより全然大きいし」

ツクヨミ「当り前だ、フウガ様がこの部族村の長、とても大きく私の師でもある御方なのだ」

サクラ「ふふっ、ツクヨミさんはフウガさんのことが大好きなんですね。そんなに堂々と言えることじゃありませんから」

ツクヨミ「そ、そうだな。とても尊敬しているのはたしかだ」

カザハナ「あはは、照れて可愛いところもあるのね」

ツクヨミ「!!!」

レオン「カザハナ、このままからかいを続けるようなら、一人でイズモに帰ってもらうよ?」

カザハナ「ご、ごめんなさい」

ツクヨミ「よ、よい。私も大人げなかった」

レオン「それじゃ、行くとしようか。ツクヨミ、改めて案内よろしく頼むよ」

ツクヨミ「ああ、任せるといい」

◆◆◆◇◇◇
―白夜・風の部族村・宿舎『中庭』―

サクラ「……あまり眠れません、もう夜だというのに……」

サクラ(明日はテンジン砦会合なんですよね……。早く寝ないといけないのに。少し外を歩いて気分転換でもしましょう)
 
 テト テト

サクラ「……白夜で見る月はとても久しぶりですね……」

サクラ(いつかリョウマ兄様やタクミ兄様、そしてヒノカ姉様にアクア姉様。みんなと見上げた月も、このようなものだったのでしょうか……)

サクラ「……ううっ」グスッ

サクラ(い、いけません。こんなところで泣いてしまうなんて……)

 ガサガサッ

サクラ「ひっ、だ、誰ですか!?」

スズメ「? その声はサクラ様ですか……私です」

サクラ「ス、スズメさん?」

スズメ「こんばんは、サクラ様。こんな夜分にどうされました? 明日は早くからテンジン砦に向けて出立する予定ですよ?」

サクラ「えっと、その月が見えたので……。スズメさんは?」

スズメ「ふふっ、そうですね。サクラ様と同じでしょうか。こうして王都に近づけば近づくほど、私の故郷から見える月に似てくるからかもしれません。こうして月を見たくなりました」

サクラ「……あ、あの」

スズメ「はい、いかがしましたか?」

サクラ「えっと、ちょっとだけお話をしませんか?」

スズメ「お話ですか?」

サクラ「は、はい。その、少し目が覚めてしまっているので、スズメさんがよろしければなんですけど、少し眠くなるまでお話を……」

スズメ「……ええ、構いませんよ。向こうに腰を下ろせる広場がありますから、そこでどうでしょうか?」

サクラ「いいですよ」

スズメ「ふふふっ、ではこちらです……」

サクラ「はい……」

サクラ「スズメさんの故郷はどこになるんですか?」

スズメ「王都より南に位置している場所です。スサノオ長城よりも離れですが、川などにも恵まれている場所です。奇麗な桜が見頃を迎えると、幾本も開花してとてもきれいなんです」

サクラ「そうなんですか。もしかしたら、カザハナさんなら知っているかもしれませんね」

スズメ「カザハナ様がですか?」

サクラ「はい、その、私が言うのも恥ずかしいですけど。カザハナさんは桜が好きなんです、その私と同じ名前で同じくらい可憐だからって」

スズメ「そうですか。ふふっ、サクラ様も慕われているんですね。いつか、故郷の風景をサクラ様に見せて差し上げたいものです」

サクラ「……ごめんなさい。その、スズメさん達も一緒に白夜に戻ることができればいいんですけど。そういうわけには……」

スズメ「今回は私たちの里帰りが目的ではありませんから。サクラ様にカザハナ様、そしてツバキ様が白夜にお戻りになられるのが目的です。そこで色々とあるでしょうから、サクラ様方のほうが大変だと思います」

サクラ「大変なのは間違いないと思います。でも、それが私だけにしかできないことなら、それを全うしないといけないって思ってます。カムイ姉様にレオンさん、そして皆のために……」

スズメ「ふふっ、サクラ様はとても強くなられたのですね。白夜にいた頃のサクラ様は、あまり表に立つこともありませんでしたし、こうして何かをいうことも少なかったように感じられますから」

サクラ「そうですね……。多分、私にできることなんて何もないと思っていたからかもしれません」

スズメ「だとすれば、今のサクラ様はとても成長されたことになりますね」

サクラ「私なんてまだまだです。それに、ここまで歩いてこれたのは私だけの力じゃありません。多くの人に出会って、暗夜という世界に触れて思ったんです。何も変わらないって、白夜も暗夜でも同じような問題を抱えている人はいて、そこに国による違いはないんだって」

スズメ「サクラ様はとても優しい方ですね。私はそう思うことができないかもしれません」

サクラ「スズメさん……」

スズメ「ごめんなさい。でも、今の話を聞いていると、やっぱりサクラ様にとってカムイ様とレオン様は、少し特別な方のようですね」

サクラ「はい。お二人がいなかったら、私はもう生きていなかったはずですから……。スズメさんにもそういう方はいらっしゃるんですか?」

スズメ「そうですね。サクラ様と同じようにカムイ様は私の命の恩人ですし、クーリア様は私達にやるべきことを選ぶ力をくれました。たぶん、私たちが最も信頼し、信じることのできる人はこの二人なのかもしれません。カムイ様は私たちのあり方を信じ、クーリア様は私たちの力が人を助けるために使われると信じてくれてます。それに私も応えたいと思っています」

サクラ「きっと出来ますよ。スズメさんたちなら……」

スズメ「ふふっ、ありがとう。いずれこの戦争が終ったら、改めてクーリア様やフリージアの皆さんにお礼をしたいと考えています。平和になった白夜に、皆さんを招待してあげたいんです。私たちの故郷であるこの国に……」

サクラ「そんな先のことまで考えてるんですね。私は明日のことで頭がいっぱいで、とても先のことまでは……」

スズメ「無理に考える必要はありませんよ。それに先のことは机上の空論、良いことも悪いことも考えなくてはいけませんから」

サクラ「レオンさんはもしものことを考えてました……。とても大切なことだからって……」

スズメ「レオン様は慎重な方ですから仕方のないことですよ。でも、そんなレオン様のこともサクラ様は理解している、それはとても素晴らしいことだと思います」

サクラ「……だから杞憂に終わってほしい、そう思うんです……」

スズメ「そうですね。私もそう思います、そのために来ていることは間違いなんですから。カムイ様が私達に護衛を任せてくれたのも、そうなるための御まじないなのかもしれませんね」

サクラ「御まじないなんかじゃありません。カムイ姉様は本当にスズメさん達を信じて、皆さんに護衛を任せてくれたんだと思います」

スズメ「サクラ様……」

サクラ「大丈夫です。それに、ここにいる私達がそう思わないわけにはいきません」

スズメ「……」

サクラ「きっと、ここから繋ぎ合わさってくれるはずです。カムイ姉様と私たちの思いは、白夜の人たちに……きっと届くはずです。だから、御まじないでもなんでも無いんです……」

スズメ「……ふふっ、私もそうなることを祈っていますよ」

サクラ「はい、んっ、ふああああ……あっ、ご、ごめんなさい」

スズメ「ふふっ。どうやら、良い時間だったみたいですね。もうサクラ様は御休みの準備が整ったみたいですから」

サクラ「ご、ごめんなさい、その」

スズメ「気にしないでください。では、サクラ様お部屋までお送りします」

サクラ「は、はい。そのすみません」

スズメ「気にしないでください、明日に備えないといけませんからね」

サクラ「はい、明日もよろしくお願いします。スズメさん」

スズメ「ええ、任せてください……サクラ様」

 スタスタスタ




サクラ(こんなに多くの人が戦いが終わることを望んでいるんです――)




サクラ(だから、きっと、きっと届くはずですよね……)




(白夜の人たちにも……)

今日はここまで

 次の健全番外はピエリルーナということで。
 例の番外は月の終わりごろになると思います

◆◆◆◆◇◇
―白夜王国・テンジン砦が見える丘―

レオン「あれがテンジン砦か……」

カザハナ「うん、久しぶりに見るかな。あのいっぱいの外堀とか」

ツバキ「そうだねー。見た感じだけど、暗夜軍もここまではまだ攻め込めてないって感じなのかな?」

サクラ「よかった……」

レオン「ウィンダム陥落で侵攻軍は混乱しているだろうし、今はそれをどうにかしている最中かもしれない」

カザハナ「えへへ。なんだかんだで運がいいのかもね、あたしたちって」

レオン「こういうことを運の良し悪しで済ませたくは無いんだけど、今はカザハナの意見に賛成かな」

カザハナ「でしょでしょ。それに、テンジン砦にはリョウマ様も来てるはずだし、このままとんとん拍子にうまく行くんじゃないかな」

レオン「カザハナは楽観的だね、ある意味羨ましいよ」

カザハナ「まぁね。だって、戦争が終わるかもしれないんだから、そういう風に考えたくなるよ。それとも、レオン王子はまだ戦争が続いてほしいとか……」

レオン「そんなことあるわけないだろ」

カザハナ「だったら、明るいことを考えようよ。その方が気も楽になるからさ」

レオン「……ふふっ、参考にさせてもらうよ。参考にね」

カザハナ「えへへ。ところでレオン王子、あのさ……」

レオン「?」

カザハナ「ありがと……」

レオン「突然なんだい?」

カザハナ「だって、一応今日でお別れなわけだし……。その、いろいろとレオン王子にはお世話になってきたわけだから……」

ツバキ「たしかに今日で一度おわかれなんだよね。でも、なんだかあっという間だった気がするなー。カムイ様を追い掛けて掴まって、レオン様の家で楽しく過ごして、なんて言うか長かったはずだけど、良好みたいに感じられたかな」

レオン「はははっ、ツバキもそういう風に言うなんてね。正直、そういうことはカザハナが言うと思ってたんだけど」

カザハナ「なによそれ、あたしだけはしゃいでたみたいな言い方」

レオン「最初にお風呂に入らせろって言ってきたのは誰だったかな?」

カザハナ「うっ。そ、そういうふうに昔のこと掘り返さないでよ、可愛くない!」

レオン「あの、僕だって男なんだ。可愛いって思われたくないんだけど?」

カザハナ「ふーん、でもカムイ様とかに可愛いって言われたら照れそうだよね。なんだかんだでレオン王子って、甘えたがりなところあると思うから」

レオン「な、そんなことあるわけないだろ!///」

カザハナ「あ、顔赤くしてる、図星ってことだね」

レオン「カザハナが僕を怒らせてるだけだよ! そうやって人にちょっかいを出す癖、直したらどうだい。何時まで経ってもお転婆っていうのはどうかと思うけど?」

カザハナ「なんですって!?」

サクラ「うふふっ」

カザハナ「さ、サクラ、なんで笑うの!?」

サクラ「ごめんなさい。レオンさんと出会ってからカザハナさん、口喧嘩ばっかりでしたから、このまま白夜に戻ったら静けさに負けて寂しそうにしてそうだなって思うと、なんだかおかしくて」

カザハナ「ちょ、何言ってんの!?」

ツバキ「……そうだね。レオン様もしばらくの間、こうやって言い合う相手がいなくなっちゃいますからねー」

レオン「どうしてそうなるわけ!?」

カザハナ「そ、そうだよ。それにレオン王子とはそういうの一切ないんだからね。その、あの時はゾーラの術の所為ってだけだし……」

サクラ「ふふっ、そうですか」

ツバキ「そういうことにしておこうかなー」

レオン「そういうことじゃなくて、そうだったんだよ!」

カザハナ「ううっ、サクラこそいいの? レオン王子と離れ離れになっちゃうんだよ?」

サクラ「え、そうですね。たしかにそうですけど、私は大丈夫です。だって、平和になったらまた何度でも会えるんですから、今はそのために必要な別れなんだって思ってます」

カザハナ「サクラ、そんなこと考えてたんだ……」

サクラ「はい。だから心配はしてませんけど……」

ツバキ「ということは一番困りそうなのはカザハナだけってことだね。そんなにレオン様と離れるのが嫌なら、カザハナだけでも暗夜に残る?」

カザハナ「そ、そんなことできるわけないでしょ! サクラの元を離れるなんて、あたし臣下なんだよ!?」

レオン「そうだね、それには僕も反対するよ」

カザハナ「……そ、そう」

カザハナ(……やっぱりいない方がいいってことかな)

レオン「目に見えて落ち込まないでくれないかな」

カザハナ「べ、別に落ち込んでるわけじゃないから、ふーんだ」

レオン「はぁ、別にいない方がいいってわけじゃない。ただ、約束をちゃんと果たしたい。君たちをちゃんと白夜に返すっていうね」

カザハナ「……レオン王子」

レオン「ちゃんと返すって約束した。そんな中、カザハナが残ったらその約束が果たせなくなるし、できれば戦場からは離れてもらいたいのが本音だね」

カザハナ「……そうだよね、あたしってレオン王子に命を救われてるんだよね……」

レオン「それはもう気にしないでいい」

カザハナ「あ、あたしが気にするの。その、いつかちゃんと借りは返すから」

レオン「そうならないことを祈ってるよ。それより僕なんかに会いたいって言うなら、一度白夜に戻って落ち着いてから来てくれればいい。僕はどこにも行ったりなんてしないさ。色々とやることが多くて、王都からは出られないだろうからね」

カザハナ「そ、そう。まぁ、仕事にもまれてるレオン王子の顔を確認するために行ってあげてもいいかな……」

レオン「ははっ、その時はちゃんと客人として出迎えさせてもらうよ、カザハナ」

カザハナ「う、うん」

レオン「僕はスズメたちの様子を見てくる。モズが戻ってくるのはあと少しだろうから、移動できる準備は整えておくんだよ」

サクラ「はい、わかりました」

 スタスタスタ

カザハナ「……」

サクラ「ふふっ、カザハナさん、体がカチンコチンですよ?」

ツバキ「中々恥ずかしいよねー。お礼を言うのも、こうやって誘われるのも」

カザハナ「う、うるさいなぁ。もう……」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

スズメ「はい、それぞれ携帯をお願いします。では、テンジン砦に向かう人員ですけど――」

レオン「スズメ」

スズメ「……。レオン様、どうされましたか?」

レオン「……あの日の生き残り全員が今ここにいる。そう姉さんからは聞いてる」

スズメ「はい、どんなことがあったにせよ、ここ白夜王国は私たちの故郷です。こうして足を踏み入れられただけでも――」

レオン「……故郷を見るのが目的だなんて言われて信用できると思うかい?」

スズメ「……」

レオン「……」

スズメ「ふふっ、レオンさんはやはり私たちのことを危惧していらっしゃるのですね?」

レオン「当り前だ。会合の場で何かをするんじゃないかって正直気が気でない」

スズメ「そうですか。なら、私たちをここに置いて行くのもいいと思いますよ? 不安要素を連れていくほど、レオン様は甘くない御方だと思っていますが……」

レオン「……」

スズメ「うふふっ」

レオン(……僕だってできればそうしたい。白夜が何を考えているのかそれはわからない。でも、それ以上にスズメ達のほうが幾分におかしいことをしかねない)

スズメ「どうしたのですか。一言おっしゃってくれればいいんですよ、私達に外で待っていろと……」

「そ言っていただければいいんですから……」

 短いけど、今日はここまでで

 秋にスマホでFE出るらしいけど、どんなのになるんだろうか……

SRPGらしいけどどうなるんだろう
稼ぎ系は間違いなくDLCにしそうだけどな
艦これとかみたく、頑張れば課金なしで全ユニット加入できればいいんだが

どうせみんな課金する

レオン「挑発的な物言いだね……」

スズメ「……」

レオン(スズメたちは白夜を追われた身だ。その怒りがここで爆発しないという絶対の保証はない。そんなことになれば、サクラ王女たちを白夜に返すことも、姉さんがここまでしてきたことが無駄になる)

スズメ「そう怖い顔をしないでください、レオン様」

レオン「そういう顔にさせてる原因がよく言うね。できれば外で待っていろと言いたい、白夜の者たちに不穏な印象を与えたくはない。だけど、スズメ達が中に入れるかどうかを決めるのは僕じゃない。それをあなたは理解している」

スズメ「はい、理解してますよ。主導権を握っているのはこちらではなくあちらですから。ふふっ、本当は戻ってきたモズさんに私たちの監視をするように進言するつもりだのかもしれませんが、主導権が向こうにある以上そんなことを口に出すこともできませんよね?」

レオン「……スズメ、おまえたちは何が目的で護衛を名乗り出たんだ」

スズメ「護衛を引き受けること、それが私たちの目的。故郷を見るというのは確かに方便です」

レオン「僕には理解できない。ここはお前達を死地に送った国なんだ。サクラ王女や僕たちを護衛するためっていうのは、正直釣り合わないよ」

スズメ「どうしてそう思うんですか?」

レオン「……言い方は悪いかもしれないけど、僕たちとスズメは会ってまだ間もない。話だって多くしたことはないし、現に僕はあなたを信用してない。スズメも僕には他人行儀でどこか反発的だ。正直信頼しているとは思えない」

スズメ「……ふふっ、ふふふっ」

レオン「何がおかしい?」

スズメ「いえ、たとえ血が繋がっていなくても、レオン様はカムイ様の弟さんなんだと思いまして、うふふっ」

レオン「僕は姉さんより甘くないよ。」

スズメ「いいえ、甘いですよ。だって、こうして私達に言葉を掛けてくれる。それにどうやら私達の身を少しばかり按じているような節もあります」

レオン「…当たり前だ。どんな形でもスズメ達は僕たちの仲間だし、何か起きたらそれだけで姉さんが悲しむことになる」

スズメ「ふふっ、姉さんですか。本当にカムイ様のことを信頼しているんですね」

レオン「そうだね。もしも、姉さんの指示じゃないのにスズメ達がここにいるんだったら、風の部族村で待機しててもらっていただろうからね」

スズメ「でも、カムイ様のお心を信用しているからこそ、レオン様は私達に注意してくれているんですよね?」

レオン「……だとしたらなんだい?」

スズメ「ふふっ、カムイ様はおかしな御方ですけど、私もあの人のことを信じていますから」

レオン「……」

スズメ「あんなに誰かを信じることを続けられる人はそうそういないでしょうから、信じることから歩みが始まるとするなら、あの人はすでに誰とでも同じ距離に立っているんでしょう。敵でも味方でも、手を伸ばしたら触れられるようなそんな距離でいつも人と接している。カムイ様は思ったより人を疑うのが苦手な人なのかもしれません」

レオン「そうかな?」

スズメ「普通ならレオン様の言うとおり、私たちを護衛に充てたりなんてしませんよ。多分、カムイ様の前提は信じることなんだと思います。それが私たちをこの任に当ててくれた理由だと思ってますから。そして、レオン様も同じように、カムイ様の信じた私たちのことを信じてくれてるのかなと」

レオン「買い被りすぎだね。こうやって注意をしてるのは釘を刺すためで、心配しているからじゃない。そこは間違わないでほしいね」

スズメ「ふふっ、私たちのするべきことは護衛だけです。そこにまで釘を刺されてはたまりませんから。でも安心してください、私たちはカムイ様の命令を遂行しますので」

レオン「ここは折り返し地点なんだけどね」

スズメ「それもそうですね。ふふふっ」

 ザッ ザッ ザッ

レオン「?」

モズ「お待たせしましたか?」

レオン「いや、それで僕達はテンジン砦に入れてもらえるのかな?」

モズ「はい、すでに会合の準備は整っているとのことです。ここまでお待たせして申し訳ない」

レオン「気にしなくていい、それに僕達が会合を申し込んだんだから、むしろ準備を整えてくれたこと、感謝してるよ」

モズ「……その、カムイ様にお伝えしてもらいたいことがあります」

レオン「?」

モズ「ありがとうと、こうしてまた私達は助けられようとしている」

レオン「……わかったよ。でも、会合が終わってからでもいい事だと思うけどね」

モズ「……そうか。少しばかり浮足立っているのは私のほうかもしれません。では私に付いてくるようにお願いします」

レオン「ああ」

レオン(リョウマ王子と顔を合わせるのは初めてのことになる。けど、兄さんもサクラも姉さんもまっすぐな人だと言っていたから、こちらの要望をまっすぐに伝えるのがいいかもしれない。姉さんの願いを伝えるだけでも十分なはずだし、今の白夜の状況も味方してくれるはずだ……)

レオン「それじゃ、行こうか」

スズメ「はい……」

◆◆◆◆◆◇
―白夜王国・テンジン砦『内部通路』―

モズ「すみません、できれば多くの方々がいる中で話をしたかったのですが」

レオン「いや、構わない。白夜側にも不安があるのはわかってるし、護衛のスズメたちもこうなることは理解していたみたいだからね」

モズ「もうしわけない」

サクラ「いいんですよ。でも、リョウマ兄様に私はなんと声を掛ければいいんでしょうか」

レオン「ただいまって言えばいいんじゃないかな。いろいろと話はあるかもしれないけど、最初はそれでいいと思う」

カザハナ「そうそう、それだけで十分だよ。久しぶりにサクラを見て、もしかしたらリョウマ様が涙ぐむかもしれないし」

サクラ「あ、あまり想像できません。リョウマ兄様が涙ぐんでいる姿なんて……」

ツバキ「リョウマ様もサクラ様が無事な姿を見られるだけでほっとするはずだよ。それに話なら会合が終わった後にゆっくり出来るはずですから」

サクラ「そ、それもそうですね。えへへ、ありがとうございます」

モズ「では、こちらを進んでください。私はスズメ達の部屋にて待機しますので」

レオン「わかったよ。ここまでありがとう、モズ」

モズ「いえ、それでは……」

 テトテトテトッ

レオン「それじゃ、僕たちも行くとしよう」

サクラ「はい」

上級武将「おお、サクラ王女様。よくぞご無事で……」

白夜兵「私達一同心配していたのですよ。暗夜に捕らわれたという知らせがあってから、ずっとずっと……」

サクラ「あ、ありがとうございます。えっと、私達はみんな無事です。その心配させてしまって、すみませんでした」

上級武将「いえいえ、サクラ王女がご無事ならば……。おや、そちらが暗夜の王族の代表者のようですが?」

レオン「ああ、暗夜王国第二王子のレオンだ。会合の承諾、感謝しています」

上級武将「そうでしたか、ではこちらへお座りください」

レオン「わかったよ。ところで、リョウマ王子はどちらに?」

カザハナ「そう言えば、リョウマ様。この部屋にいないみたいだけど」

上級武将「もうしわけない、リョウマ様はまだこちらに到着してはいないのです。リョウマ様からの指示は受けておりますので、まずはこちらの意思をお伝えしておくべきかと思いまして。何せ昨日の夜にリョウマ様への伝令が向かったばかりですから」

レオン「……リョウマ王子は今日、テンジン砦に到着できるのかい?」

上級武将「心配されるのも致し方ありませんが。私たちもリョウマ様の到着をお待ちしているのです。ですからまずは話だけでも始めることにしましょう。暗夜の王子殿はこちらへ、サクラ王女様と臣下のお二人はこちらにお座りください」

レオン「まずは僕から白夜王国へサクラ王女、臣下であるカザハナとツバキの返還したい」

上級武将「わかりました。それはリョウマ様がこの会合の最低条件でしたので、そちらから宣言していただけるならばこれほど良いことはありません」

レオン「流石にそういうことを忘れるつもりはないよ。というわけだから、サクラ王女たちはこれで晴れて自由の身だよ」

サクラ「はい、その、ありがとうございます。私たちをここまで連れてきてくれて……」

レオン「気にしないでいい、約束だからね」

上級武将「では、会合を始めましょうか」

レオン「ああ、さっそく本題に入らせてもらうよ。現在、僕たち革命を起こした新生暗夜は暗夜のほぼ半分を手中に収めて無限渓谷のルートを抑えている」

上級武将「なるほど、つまりガロン王率いる旧暗夜の侵攻部隊は孤立しているということですか」

レオン「ああ、いやガロン王率いる旧暗夜の侵攻軍は白夜平原に陣取っていますが、いずれ補給もままならない彼らの戦闘力は落ちていくでしょう。ですが今は多くの戦力を動かせる力を持っていると思います。正直、それを白夜がすべて受け切れるとは思っていない」

上級武将「それを視野に入れて同盟の提案を?」

レオン「ああ、旧暗夜打倒に僕たちも協力は惜しまないつもりだ。そして、旧暗夜を打倒したその後の支援も惜しまない、この戦いを終わらせて暗夜と白夜の間に続いて来た確執に終わりを迎えたい、そう考えている」

上級武将「なるほど、わかりました。すでに旧暗夜から王都を開放したあなた方が私達と共に闘ってくれるのであるならば、それはとても心強いでしょう」

レオン「それじゃ同盟の件は――」

上級武将「ええ、もちろん。暗夜を打倒し、平和を取り戻すことに反対などしませんよ」

サクラ「それじゃ……」

上級武将「はい、この先暗夜の文字を見なくてもいい、そんな世の中になるのでしたら同盟を組むことは必至ですからね」

サクラ「では、このまま共に手を取っていけるんですね?」

上級武将「ええ、もちろんですよ。リョウマ様に良いご報告ができそうです」

カザハナ「えへへ、とんとん拍子に事が進んだよ。やったね、レオン王子」

レオン「……」

カザハナ「レオン王子、どうしたの?」



レオン(……今)






レオン(……今、なんて言った?)

レオン「今……」

上級武将「どうされました?」

レオン「あなたは暗夜そのものがなくなった世界、そんなことを言っていたようだけど……それはどういう意味かな?」

上級武将「一体何を言い出すのかと思えば……」

カザハナ「そ、そうだよ。レオン王子、いきなり何言いだして……」

上級武将「まったく、一度聞いたことに疑問を抱くのはよくありませんよ。ここはそういう場なのですし、あなたもそれくらいのことは理解しているでしょう?」

サクラ「え、それはどういう」

上級武将「サクラ王女様もお忘れですか? この先暗夜の文字を見なくてもいいと言ったのですよ」

レオン「……否定しないんだね。その言葉……」

上級武将「ええ、暗夜という国、いえ文字が無くなることは素晴らしいことです。あなた方も暗夜を終わらせるために、ここまで来たのでしょう。ならば、私たちの目的は共通と考えていいでしょう? 暗夜がなくなった世界、それはとても素晴らしい世界なのですから……」

サクラ「な、何を、何を言っているんですか……」

レオン「……白夜がこの先、この大陸を支配していくと言っているように聞こえる発言だね」

上級武将「人聞きの悪いことを、元をたどればこの戦争の発端は暗夜だ。長き間、攻撃をしかけ結果的にミコト女王を殺し、この国を混乱に陥れた。それを水に流せと言っているのですか? やはり暗夜の人間は王族も含めて恥知らずの蛮人ばかりのようだ。自分たちの行ってきたことを忘れ、白夜に同盟を持ちかけてくる。王都ウィンダムの陥落というのは実は虚言であり、敗走しているのかもしれませんな」

白夜兵たち『あははははははっ』

カザハナ「な、あんたたち言わせておけば!!!」

レオン「カザハナ、静かにしているんだ」

カザハナ「レオン王子! だってこんな、こんな言い方されて!」

上級武将「カザハナも暗夜に捕らわれていたのだろう、ならわかるはずだ。暗夜がどんな国であったかをその目で見て、その身に味わってきたのだろうからな?」

カザハナ「な、何が言いたいの?」

上級武将「おやおや、これ以上を私に言わせようというのか、おぞましい行為をその男から受けてきたのでしょう? そうやって暗夜を庇うのも頭も体も懐柔されたからかもしれない」

カザハナ「っ!! 言わせておけば!!!」

サクラ「カザハナさん!」ガシッ

カザハナ「は、放して、サクラ! いくらなんでも今のは許せない! レオン王子が何をしてくれたのかなんて知らないのに、あんなこと、あんなこと!!!」

サクラ「わかっています。でも、抑えてください」

カザハナ「……うっ、うううっ」

サクラ「配下が失礼しました。皆さんが考えられていることは当然だと思います、白夜がこうして危機に直面している原因が暗夜がしかけてきた戦争にあることは間違いありませんから」

上級武将「さすがはサクラ王女様。兄であるリョウマ様の意向をよく汲んでくださる。でしたらわかりますね、この現状の白夜を癒すのに必要なことがなんであるのか。暗夜という存在は今後の歴史には必要ないのです。悲しみの清算はそうして行われるべきだと。リョウマ様は民のことを考えてこの条件を出されているのですから」

サクラ「そうですね。それがリョウマ兄様が出されたものだとするならです。この言葉の意味、わかっていただけますね?」

上級武将「私達はリョウマ様の代わりと言っているではありませんか」

サクラ「……リョウマ兄様はとてもまっすぐな人です。こんな風に人を蔑んだりはしませんし、あなたのような人に今回の会合を任せるとはとても思えません」

上級武将「……」

サクラ「……私はどちらかが滅びる未来なんて望んでいません。リョウマ兄様にそれを伝えに来たんです」

上級武将「まさか、サクラ王女様まで暗夜に情が移ったのですか?」

サクラ「……そう思ってもらって構いません。どんなことを言っても、あなたは曲げてしまうでしょうから、だから私はリョウマ兄様との直接の話し合いを求めます。この会合を受けてくれたのはリョウマ兄様で、あなたじゃありません。だから、私はあなたを信用することができません」

上級武将「……白夜の人間よりも暗夜の人間を信じるというのですか?」

サクラ「私が信じるのは信じようと決めた人だけです。リョウマ兄様とお話しできない限り、私は白夜に戻るつもりはありません」

レオン「サクラ王女!?」

サクラ「こうして場を準備してもらえたことは嬉しいです。でも、私達が話をしたい相手はリョウマ兄様で、あなたではないんです」

上級武将「……」

カザハナ「サクラ……」

ツバキ「サクラ様」

サクラ「ごめんなさい。これは私の独断です。カザハナさんとツバキさんは白夜に戻られても……」

カザハナ「何言ってんの。あたしはサクラの臣下なんだから、いつまでも一緒だよ。それに、正直すぐにでもイズモに帰りたい気分よ」

ツバキ「そうそう。だから里帰りはまた今度になりそうかなー。こんなに無駄な話を聞くことになるなんて、正直思ってなかったけどね~」

上級武将「……それがサクラ王女様の答えというわけですか」

サクラ「はい」

上級武将「そうですか」

 スッ

上級武将「とても残念ですよ」

 パシュンッ



 
 ドスッ……

 ポタポタ……






レオン「ぐっ……うああっ」

 ドサッ

カザハナ「レオン王子!?」

ツバキ「レオン様!?」

サクラ「レオンさん!」

サクラ(腹部に深く矢が刺さってる。いったいどこから――!)

 カタカタカタカタッ カシュッ 

サクラ「か、絡繰人形……。まさかレオンさんをここに座らせたのは……」

上級武将「さすがに隠れているこれには気づきませんでしたか……。暗夜の王子というのも大したことはないということですね」

サクラ「なんでこんなひどいことを……」

上級武将「酷いこととは失礼ですね。こうしてすぐに死なない程度の傷で抑えているというのに。あの日、王都広場で行われた惨劇に比べれば、生易しいくらいですよ」

レオン「はぁ……はぁ……ううっ、ぐあああっ」

カザハナ「レオン王子。出血がひどい、今すぐ手当てを――」

白夜兵「動くな」チャキッ

カザハナ「なっ、このままじゃ死んじゃうんだよ!?」

白夜兵「知ったことか、暗夜の人間だ死んでも別に構わん」

カザハナ「構わないって!!!!」

 ガシッ

レオン「ぐっ、言う通りに、言う通りにするんだ……」

カザハナ「でも、でも。このままじゃ、レオン王子……」

レオン「たのむ、こいつらはお前たちのことだって容赦なく切り捨てるつもりだ。だから、大人しく…して、ぐあぁっ」

カザハナ「う、ううううっ」ポタポタ

ツバキ「…まさか、白夜の人間にこういうことを仕掛けられるなんて思ってもいなかったよ」

上級武将「敵に対して攻撃するのは当然のことですが?」

ツバキ「なら、俺たちも攻撃したらどうかな~。俺たち、どうやら暗夜に汚染されてるらしいからね~」

上級武将「自覚があるなら口を閉じた方がいい。少しでも長生きしたければの話ですが」

ツバキ「……」

サクラ「……どうしてこんなことをするんですか」

上級武将「どうしてとは、またおかしいことを言われるのですね」

 ザザザッ ザザザッ

白夜兵『……』チャキッ

白夜兵『……』チャキ

上級武将「白夜が正義である以上、悪が暗夜であることは間違っていないんですよ」

カザハナ「な、何言って。ガロンが率いてる暗夜とあたし達は――」

上級武将「はははっ、やはり懐柔されているようだ。新旧どちらであろうと暗夜はいらないと言っているんです。むしろ――」

「残っていたら困るんですよ。我々としては、とてもね……」

今日はここまでで

 課金キャラクターにリリスがいるなら、課金まっしぐら

課金キャラクターにすらリリスが居ない可能性(小声)

いるに決まってんだろ!…いるよな?

回復キャラとかイベント限定とかなら…可能性はゼロじゃない

 とりあえず、エロ番外をあげました。

【FEif】セツナ「ヒノカ様…?」
【FEif】セツナ「ヒノカ様…?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1472664951/)

 前置き無しにいきなり始まる感じになってます。

サクラ…もう白夜の全てを信じられなくなりそう。
ここまで白夜兵を殺したいと思ったのは初めてだわ

暗夜にもガンズとブノワがいるように、白夜にもいろんな派閥があるのは当然だからなあ

さりげなくブノワさんを何かの勢力のトップ扱いするのはNG
あの人はただの田舎者であり同時に唯一神だから

しかしここまでタクミがやや空気だしちょっと前まで意外と冷静だったのが不穏だ

◆◆◆◆◆◆
―テンジン砦『謁見の間』―

サクラ「残っていたら困るって、一体何が困るって言うんですか!!」

上級武将「あなたにはわからないことですよ。一人のうのうと暗夜で過ごしてきたあなたのような方には……」

サクラ「……わかりたくありません。こんな、こんなことをする理由なんて……」

上級武将「でしょうね。よもやあなたは王族でもなんでも無いと言っていい、ただの小娘ですよ。リョウマ様も馬鹿な御方だ、あのような裏切り者の王女を信用し加担しようとするなど、まったくもって愚かなことだ……」

サクラ「リョウマ兄様に何をしたんですか!?」

上級武将「おやおや、人聞きの悪い……。まだ何もしていません。まだ何も……、ですがこのままではどうかもわかりません。なにせ……敵であるはずの暗夜に白夜を売ろうとしていたと知れた日には……。少なからず信じていた方々も、見限り去ってしまうことでしょう」

カザハナ「なによ、それ……」

サクラ「あなた方は、一体何がしたいんですか。白夜はこんな、こんな非道なことをする国じゃなかった。みんな、みんな……笑い合って、辛い時は助け合って……そうやって、歩んできたじゃないですか…」

上級武将「あなたは私達と共に歩んでいない。ただそれだけのこと。おい、他の部屋に通した者たちは?」

白夜兵「はい、すでに何名か送りました。もう処理に掛っているかと……」

上級武将「そうか。奴らには非道な暗夜の兵として屍になってもらう。そうそう、サクラ王女にも協力していただきますよ」ガシッ

サクラ「あうっ、い、痛いっ!!」

レオン「さ、サクラ王女……ぐっ、サクラ王女に何をさせるつもりだ!」

白夜兵「だまれ、死に損ないが!」ドガッ

レオン「ぐあっ……」

サクラ「レオンさん!」

上級武将「……なるほど、そういうことか。おい!」

白夜兵「へへっ、わかりました」ガシッ チャキンッ

レオン「っ!」

白夜兵「下手に動くとどうなるか、わかるよな?」

カザハナ「レオン王子!!!」

ツバキ「レオン様!」

サクラ「レオンさん!!!」

レオン「そうかい……これが、お前たちの交渉方法、ってことかい……」

上級武将「さぁサクラ王女、協力していただけますよね? 大丈夫です、あなたと臣下の安全は保証いたします。あなた方にも活き活きと表通りを歩いていただかなければ、あの極悪非道の暗夜王国から生きて帰ってきた英雄として」

カザハナ「英雄って……英雄って何よ!? 極悪非道!? 自分の顔を鏡で見てから言いなさいよ!」

ツバキ「……サクラ王女に言わせるつもりなんだね。ここで起きたことを都合のいいことに偽って……」

上級武将「偽りとはなんのことですか? 暗夜がサクラ王女様とその臣下を盾に降伏を迫った。だが、我らはそれに屈することなく暗夜を蹴散らし、無事王女たちを助けだした。それがこの先に残る史実になることだ。後世にとって偽りでは無い」

カザハナ「なんなの、なんなのこれ……。意味わからない、意味がわからないよ!!! なんで、どうして、どうしてうまくいかないの。もう、嫌だよ。こんな、こんなの……」

上級武将「ええ、本当に嫌になるというものだ。暗夜が滅びを受け入れないばかりに、このようなことをすることになるなんて。か弱いサクラ王女の髪を掴んで協力をせがむことになるとはね……」ググッ

サクラ「きゃっ……ううっ……」

上級武将「サクラ王女、お解かりですね? あなたの返事次第ではあちらにいる蛮族の王子に赤い花を添えなくてはいけなくなります。大丈夫です、あなたが協力してくれるのであれば、蛮族一人の命をしばらくは保証します」

サクラ(……嘘です。この人の声にレオンさんを助けるなんて意思は感じられない)

上級武将「ただ、テンジン砦で暗夜から脅しのような話があった。そして、捕まっていたあなた達を私達が助け出してくれたと、話してくれればいいだけです。この知らせで民衆に希望と結束が生まれることでしょう、とても素晴らしいことではないですか」

サクラ(……希望。どうしたら、それが希望に見えるんですか……。それじゃ、戦争が終わらない。暗夜で出会った信じたい人たちが、戦いの終わりを望んでいる人たちに、また同じ時代を、争う世界を続けさせてしまう……)

サクラ(だけど、受け入れなかったら……。レオンさんの命が……)

レオン「……サクラ王女」

白夜兵「へっ、なんだなんだ話を聞いたから命乞いでもするつもりか?」

上級武将「はぁ、今さっきまでの威厳の良さはどこにいったというのですか。自分の命が危ういと感じた瞬間にすり寄るように声をあげる……。やはり王子であろうと暗夜の蛮人であることに変わりは――」

レオン「…黙れ。お前らに言うことはなにもない」

白夜兵「ああ? 口の訊き方に気をつけろよ、な!」ドガッ

レオン「ぐっ」ビチャ

 ピチャ ピチャ……

サクラ「も、もうやめてください。こんな、こんなひどいこと……」

上級武将「おやおや、そんな可愛らしい声で懇願されては、心がとても痛みます。でしたらちゃんと言葉にしてもらわなくては……ねぇ?」ググッ

サクラ「ううっ、わかり――」

レオン「だめだ、サクラ王女、従っちゃ……だめだ……」

白夜兵「だから、黙っていろと言ってんだろうが!」ドスッ

レオン「あぐっ……うううっ」

サクラ「レオンさん、もういいんです。大丈夫、必ず必ずなんとかします、だから、だから――」

レオン「良くない……それは絶対に……」

サクラ「なんで、どうして……」

レオン「僕は……」




「君たちに……汚れてほしくない……」

サクラ「え……」

レオン「サクラ王女の白夜を信じる……信じているその思いを裏切っちゃいけない……」

サクラ「レオンさん……」

白夜兵「汚れてほしくないか?。すでに汚れきった暗夜の人間は国同様に隅々まで黒ずんでそうだがな。あっははははは」

レオン「当り前だ……」

白夜兵「……あ?」

レオン「暗夜は黒い。でも、ただの黒じゃない。気高き黒だ……。力、策略、計略、どんな行為であろうとも、その先に暗夜の気高さを残し続けることのできる。暗夜がやったことをお前達が忘れないほどに、それが僕たちの暗夜だ。だからこそ、そんな僕達が相手をしていたのは何ものにも汚れない白の意思を持った白夜だった。やったこと、行ってきたことに蓋をするお前たちとは違う!」

白夜兵「てめえ、言わせておけば!!!」

上級武将「……止めておけ、こちらを挑発して殺させるつもりだろう。残念だが、その手には乗るつもりはない。さぁ、サクラ王女、こんなことを抜かす蛮人を救えるのはあなただけです。他の誰でもない、あなただけ、考えなくてもわかることでしょう?」

サクラ「……」

サクラ(……私達が帰ることを望んでいた白夜は……今はもう……ここにはないんですね)ギュッ

サクラ(温かい日々も、楽しかった日々も。優しかったあの頃にはもう……)

 スッ

カザハナ・ツバキ「……」コクリッ

サクラ(カムイ姉様、ごめんなさい……私は……)





 カチャンッ

上級武将「さぁ、サクラ王女……」

サクラ「……」ボソッ

上級武将「? なんですか?」

サクラ「……やです」

上級武将「はい?」

サクラ「……嫌っていったんです!」ザシュッ

 ダッ

上級武将「がっ……。こいつ、櫛を腕に、刺しやがった!!!」

サクラ「カザハナさん、レオンさんを!!!」

カザハナ「うん、てやああっ!!!」ダッ

白夜兵「なっ、うがっ……」ドタッ ガシャンッ

レオン「あうっ」フラッ

カザハナ「レオン王子!」ダキッ

白夜兵「貴様ら、調子に乗りやが――」ダッ

ツバキ「余所見は良くないなー。やあっ!」ドガンッ

白夜兵「うげっ……」ドサッ

レオン「ぐっ、サクラ王女……」

サクラ「レオンさん、しっかりしてください」

レオン「……ははっ、無茶するね……。ツバキもカザハナも……さ」

カザハナ「そうかも……出会った当初だったら、レオン王子のこと見捨ててと思うけど」

ツバキ「俺も同感」

レオン「ならなんで、助けるかな……」

カザハナ「サクラの命令だから、それにまだレオン王子に借りを返してないからね。返すなら今がその時だからね……」

ツバキ「俺はサクラ様の命令だからかな~。どっちにしても、分の悪い戦いに掛けちゃった感じはするけどね」

サクラ「あの日、私と一緒にカムイ姉様を追い掛けてくれたときから、分の悪い戦いだったと思いますよ……」

 タッ タッ タッ……

上級武将「……それがあなたの答えですか、サクラ王女? こんな状態で何がしたかったのかわかりませんが、今なら戯れとして――」

サクラ「偽りでも口に出したくないだけです。私は、私は確かに暗夜で過ごしていただけです。だから、こんなことを言う資格さえないかもしれないのはわかってます」

上級武将「……」

サクラ「でも、私は白夜の皆が再び戦いに飲み込まれかねないことに手を添えられません。汚れていく白夜の手助けはできません。カムイ姉様の選んだ道を、私が捻じ曲げることはできません。私はあの人を信じて、ここにいるレオンさん達を信じてます……。それを曲げるわけにはいかないんです」

上級武将「そうですか……もっと、賢い方かと思いましたが。見た目どおり子供だったということか……」

「全員、抜刀せよ」

 チャキッ チャキッ

白夜兵『……』

上級武将「サクラ王女とその臣下は戦闘で死亡、その仇である暗夜王国王子を斬り伏せた。そういうことにしましょう、暗夜に染まった王族にはもったいない最後だ」

ツバキ「すごい、呆れて言葉が出ないかなー」

カザハナ「ええ、ちょっと信じたくないくらいにね」

サクラ「……皆さん、ごめんなさい。こういう時も頑固なままで」

カザハナ「いいよ。サクラといっしょに歩んできたんだからそういうところわかってるつもりだし、曲げられないよね。絶対にさ……」

サクラ「はい」

レオン「だけど、正直ここまでかな……」

カザハナ「……さすがにね、借りとか返せそうにないかも」

レオン「気にしないでいい。こうやって話す時間ができたんだ……。十分かもしれない」

ツバキ「満足しちゃだめじゃないかなー」

レオン「それじゃ、ここからどうやって挽回する?」

ツバキ「あはは、ちょっと考える時間が欲しいところだけど、向こうは許してくれそうにないね」

レオン「だね……」

上級武将「ふっ、賢い選択をすれば。少し長くは生きられたというのにな」

サクラ「だとしても、あなた達の言う通りになるつもりはありません」

上級武将「そうですか。では、暗夜に寝返った裏切り者をここで処断するとしよう。サクラ王女、最後くらい王族らしく――」

サクラ「……王女と呼ばなくてもいいです、私もあなた達に王女と呼ばれたくはありません」

上級武将「そうか」

 シュキンッ

上級武将「ではここで死ぬといい、我らの敵!!!」

 ダッ

上級武将「はああああっ!!!!」ジャキッ

サクラ「っ!」

 ブンッ





 キィン

サクラ「……え?」

上級武将「なに!?」

モズ「うううおおおおおおっ!!!!」ドンッ ガキイン

レオン「も、モズ……?」

???「モズ様だけではありませんよ」

 スタッ

レオン「え……、スズメ?」

スズメ「どうにか間に合ったみたいですね。酷い怪我……脱出するよりも先に治療を優先しないければ…、移動してる間に力尽きてしまいますね……」

レオン「どうして、ここに……」

スズメ「レオン様は言っていたでしょう、私達が白夜を信用していないと、だからここに来られたんですよ」

レオン「……」

サクラ「も、モズさん! スズメさんまで……」

モズ「サクラ王女様、お下がりください」

上級武将「ちっ!!! モズ、なぜ貴様がここに来られる!?」

モズ「……王族の危機であるならば、それだけで理由としては十分だろう! はああっ!!」キィン

スズメ「モズ様」

モズ「スズメ、サクラ王女様たちを任せた!」

スズメ「わかりました。レオン様、肩をお貸しください。まずはこの部屋を出ます」

レオン「出て、どうするんだ……外にも敵が…いるだろう?」

スズメ「他の者たちが抑えてくれています」

レオン「他の者たちって……まさか」

スズメ「言いましたよね、私たちの役目は護衛だと……安心してください、皆簡単にやられたりはしませんから」

レオン「僕は君たちにあんなことを言ったんだ。なのに……」

スズメ「そういうことで職務を放棄するほど、子供ではありませんから」

レオン「……すまない」

スズメ「そういう謝罪はここを抜けてからです。まずは傷を癒しましょう。このままでは長くは持ちませんから」

ツバキ「通路に敵はいないみたいだよ」

カザハナ「サクラ、早く行こう!」

サクラ「は、はいモズさんも!」

モズ「いいえ、ここで引くわけにはいきません」

サクラ「モズさん……」

モズ「サクラ王女様……。あとは頼みました」

サクラ「……はい! ご武運を……」

モズ「……御意」

 タタタタタタッ

白夜兵「貴様ら、逃がし――」

 バシュッ

白夜兵「がっ、ぐああああっ」ドサッ

モズ「……行かせはせん」

上級武将「ほぉ、躊躇なく同胞を手に掛けるか……」

モズ「ああ、護衛と俺を一緒に始末しようと考えていたようだからな。そんな者たちを同胞として見れるとでも思っていたか?」

上級武将「ふっ、何も起こさなければ。夢を見たまま楽に死ねたというのにな。モズ、今からでも遅くはない、王族など見限り我らの側に付け。今すぐ奴らを追って殺してくればいい。そうすればお前の命だけは――」

モズ「……この命は白夜を守るため、そしてリョウマ様の信じる道と白夜へ費やすためにある。貴様らのような白夜の皮を被った獣の住む国のためではない……」

上級武将「そうか、この数を一人で相手するのか? ほとほと無謀だな……」

モズ「なに、無謀では無い。私の目的はお前らを皆殺しにすることでは無い」

上級武将「?」

モズ「白夜にとって良い吉報が、必ず訪れるよう――」

「彼の者たちを生かして返すことだけだ」

今日はここまでで

 ゲーム本編にもう一回モズが出てきてほしかったなぁ。モズはクーリアと同じで捕まえられないから、結構歯痒いよね。
 この頃、更新遅めで申し訳ない。
 次でこの章の前篇が終わります。

ええんやで
おつ

おつでした
ハラハラしたー

◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・テンジン砦『謁見の間へと続く通路』―

 ポタッ ポタタタッ

レオン「ぐっ、くっ……」

カザハナ「ちょっと、しっかりしてよ。ここで死んだりしたら許さないからね」

レオン「あたリまえだ……。こんなところで死ぬつもりはない……よ。くぅ……ああっ……」

スズメ「思った以上に出血がひどい、殺傷能力の高い矢が使われているのかもしれません。まずは、矢を抜いて応急処置を施さないと……」

レオン「だ、大丈夫だ……それよりも早くテンジン砦から脱出を……」

カザハナ「いやいや、そんな辛そうな顔して言っても説得力無いからね!?」

ツバキ「そうそう。それに無茶して死んだりしたら、俺達との約束果たせなくなるけど、それでいいのかなー?」

レオン「……それは困るよ」

サクラ「なら、どこかで矢を抜いて応急処置を、そうすれば痛みも和らぐはずですから……」

レオン「すまない。こんなことになってしまって……」

サクラ「謝らないでください。レオンさんが何かをしたわけじゃないんですから……」

レオン「ありがとう、サクラ王女」

レオン「それで、ここからどうするつもりなんだい? 部屋の連中はモズがどうにかしてくれているとしても、このテンジン砦から外に出るのは……」

スズメ「すでに砦全体は完全に包囲されていると思います。大方、袋の鼠だと思われていることでしょうから……」

カザハナ「そう考えると豪華な袋小路だよね。城一つ丸々なんてさ」

レオン「それくらい、僕たちに使い道があったってことだろうけどね。まぁ、それに乗るつもりはないけどさ」

ツバキ「だけど、ここから出るのってかなり難しいみたいだね。でも、スズメの話し方を聞く限りだと、何か手があるように聞こえるけど?」

スズメ「モズ様に色々と話を聞いておきました。私達が離れていた間にテンジン砦の内部も色々と変わったらしくて、設備が増えているそうです」

カザハナ「え、そうなの!?」

レオン「変わったのは……外の守りだけじゃないってことか」

スズメ「その設備を利用できれば、ここからの脱出も可能かもしれません」

サクラ「……行きましょう。モズさんが後方を抑えてくれている間に……」

カザハナ「うん、そうだね。このまま、まっすぐ進めばいいのかな?」

スズメ「はい、間に合えば仲間がいるはずですから、急いで合流しましょう」

 タタタタタッ

~~~~~~~~~~~~~~~~

 ガンッ ガンッ

白夜兵「おらぁあ!」ブンッ ブシャアアッ

追われた者「ぐあああっ」ドサッ

白夜兵「死ね!」グッ ザシュッ

追われた者「うげっ……」クタリッ

白夜兵「けっ、暗夜の人間が刃向ってんじゃねえ! このまま押し殺せ!」

 ドタドタドタッ
 ガキィン

追われた者「ちっ、細い通路だから抑えられてはいるが……。このままでは――」

追われた者「踏ん張れ、あと少しで来てくださるはずだ。ここを突破されては……」

追われた者「わかってる!! うらあああっ」ググググッ

白夜兵「へっ、攻撃を受けるだけか、そんな防御だけしてねえで攻撃して来いよ、腰ぬけ野郎が!」

追われた者「武器を持っていながら未だに、ここを通り抜けられないてめえらの方が腰抜けじゃねえのか? それともへっぴり腰にでもなってるのかもしれねえな?」

白夜兵「その減らず口、いつまで叩いてられるか見物だなぁ!?」

 キィン キィン ガキィン

追われた者(一対一に持ち込めるとはいえ、こちらは寄せ集め程度、スズメ様たちは間に合うのか?)

 タタタタッ

追われた者「足音、まさか!?」サッ

 タタタタッ

カザハナ「はぁはぁ、あっ、いた! いたよ、あそこに!」

追われた者「皆様、よくぞご無事で!」

スズメ「すみません、遅くなりました。どうにか持ちこたえてくれたようですね、ありがとうございます」

追われた者「ええ。ですが、話は無用です。俺らはここでしばらく攻撃を受け止め続けます、こちらの中に例の仕掛けはありましたから、それを使ってここから脱出を……」

スズメ「わかりました。ですが、すぐにそれを使って降りるわけにもいきません。レオン様が負傷しています、少しの合間、ここを死守できますか?」

追われた者「ええ、もちろんです。俺とあいつがいれば、あんなへなちょこな野郎どもなんて、簡単に抑えられますから」

サクラ「あなた方はどうするんですか?」

追われた者「俺たちの心配はいりません。それよりも、今はレオン様への処置を優先してください。レオン様の傷の具合はわかりませんが、早く処置するに越したことはありません」

追われた者「そういうことだ。だから、早くこちらへ!」

 ガチャンッ

サクラ「わ、わかりました。スズメさん、レオンさんを私に」

スズメ「はい、レオン様、サクラ様の方へ」

レオン「あ、ああ。うぐっ」ポタタタッ

サクラ「血が……すぐに処置を始めます。カザハナさん、中にある包帯や杖をあるだけ集めてください」

カザハナ「任せて、ツバキも手伝いなさいよ」

ツバキ「わかってる。俺は麻酔の類がないかも探してみるよー」

サクラ「お願いします」

 タタタタタッ

追われた者「スズメ様、中に入り次第錠前を……」

スズメ「え?」

追われた者「ここの扉はかなり頑丈にできてるんで、それだけで少し足止めになりますから」

スズメ「……いいんですね」

追われた者「はい。それに、これが俺たちの使命ですから」

スズメ「……」

追われた者「だから、大丈夫です。さぁ、早く!」

スズメ「……わかりました。また会いましょう」

追われた者「ええ、またお会いしましょう。スズメ様」

 ガチャンッ 
 ガシャンッ ガゴンッ!

スズメ「……」

サクラ「スズメさん、手を貸してください、お願いします」

スズメ「わかりました」

サクラ「レオンさん、今から下しますね……」

 ドサッ

レオン「はぁ、はぁ……ぐっ、……はぁ……」

サクラ「……顔色が、早くしないと」

スズメ「まず服を破ります。少し痛みますが我慢してください」ビリッ ビリリッ

レオン「がっ……ぐあぁ……」

サクラ「……傷口を見る限り、深く入り込んでます。でも刺さっている場所に重要な器官はないのは不幸中の幸いですね。慎重に取り出せれば……」

レオン「さ、サクラ王女、そんな悠長なことはしてられない。一気に終わらせるんだ……」

サクラ「そんな、矢先が折れてしまったら……」

レオン「触ればわかるけど……これは一本丸々鉄で出来てる、だから折れることはないはずだから……」

サクラ「……ですが、その死にそうなくらいに痛いですよ」

レオン「それくらいわかってる。スズメ、僕の体を抑えてくれるか、たぶん相当暴れる……と思う……」

スズメ「はい、わかりました。それと布は使いますか?」

レオン「お願いするよ。出来る限り楽にしたいからね……」

カザハナ「サクラ、包帯とか医療杖はあるだけ持ってきたよ!」

レオン「カザハナ、お前も僕の体を抑えてくれないか」

カザハナ「え、いきなり何言って、そんな肌を露出させながら、え?」

レオン「一気に……これを引き抜く、かなりの激痛のはずだ。だから、僕が暴れないように抑えてほしい」

カザハナ「な、なんだそういうこと……って、大丈夫なの!?」

レオン「多分……大丈夫じゃない……」

サクラ「その麻酔などの薬は……」

ツバキ「見てきたけど、そういうものはなかったね。ここは医療用の部屋だからあると思ったんだけど、ごめん……」

レオン「謝らなくていい。今できる最善を行うしかない。この先、これを付けたままで移動し続けることはできないし、これは変わった形をしてる矢のようだからね」

カザハナ「それ、本当……?」

レオン「ああ、馬に乗ったら、内部の損傷が進むことになりかねない。逃げ切るためには、ここで取り出しておくしかないんだ」

サクラ「……わかりました。でも、私じゃ力が足りません」

レオン「それもそうだったね。ツバキ、頼めるかな?」

ツバキ「……わかったよ。躊躇せずに抜いて構わないんだね?」

レオン「ああ……。覚悟はできてる」

サクラ「その、私は……何をすれば……」

レオン「サクラ王女」

サクラ「私は力が強いわけじゃありません。矢が抜けるまでできることなんてなにも――」

 スッ

レオン「なら、僕の手を握っていてもらえるかな? その、かなり力強く握るかもしれないけど……」

サクラ「レオンさん……」

レオン「……どうかな?」

サクラ「はい、わかりました」ギュッ

レオン「ありがとう、サクラ王女」

スズメ「レオン様、この布を口に……かなり分厚いので思いっきり噛んで構いませんから」

レオン「ああ、はぐっ」ググッ

ツバキ「それじゃ、まず抜きやすくするために少しだけ動かすよ……」ググッ

レオン「っ!!!!!」

 ビチュ グチュ……

レオン「ーーーーっ!!!!!」ググッ ジタバタ

サクラ「っ! レオンさん、大丈夫、大丈夫ですよ」

カザハナ「うっ、ちょっと、少しは暴れないように我慢してよ」

スズメ「そう簡単に制御できるものではありません。痛みというのはそういうものですから」

 グチュ グチチッ

ツバキ「……この角度なら、一気に引き出せる感じがする。レオン様、準備はいいかな?」

レオン「ふーっ……ふーーッ……」コクリッ

ツバキ「……っ!!!」ググッ

 ギチュチュ ブチャアアッ

 ブシャアアッ!!!

レオン「――――――!!!!! ――――――!!!!っ!!!!!」

 ドタッ ジタバタ 

カザハナ「レオン王子、大丈夫、大丈夫だから! 死なない、絶対に死なないから!」

サクラ「レオンさん、大丈夫。私たちがいます。大丈夫です、もっと強く手を握ってください」

レオン「―――――っ!!!!」ギュウウウッ

サクラ「っ!!! もっと、力を入れてもいいです。痛い分、私が受け止めますから!」

ツバキ「―――これで、終わりだよ!」

 グチャンッ

 ブシュウウゥゥ

レオン「んーーーっ!!!! ぐうあああっ!!!!!」ドサッ

サクラ「ツバキさん、矢は!?」

ツバキ「はい、この通り」ポタタタッ

サクラ「ありがとうございます。これから止血しますから包帯と薬を!」

 ポタポタ ベチャリッ 

ツバキ「……それにしても、本当にすごい形だなー」

カザハナ「ちょっと、そんなの今はどうでもいいでしょ!」

ツバキ「それもそうだねー。サクラ様、俺がレオン様の体を支えるんで、その間に傷口に処置をお願いしますね」ポイッ カランカランッ

サクラ「はい」

レオン「はー、はー……うぐうううっ」

サクラ「スズメさん、医療杖で痛みを和らげてください、お願いします」

スズメ「わかりました。はいっ!」シャランッ

カザハナ「あたしも手伝うよ。こんなところでメイドの修行が役に立つなんて思わなかった。えいっ!」シャランッ

 ポワアアアア

レオン「はぁ、はぁ、……はぁ、……はぁ。ううっ……」

 クルクルクル キュッ 
 
サクラ「……お、終わりました。レオンさん、もう大丈夫ですよ」


レオン「……」

サクラ「レオンさん! ま、まさか、そんな――」

レオン「……はぁ……はぁ……」

スズメ「大丈夫、意識を失っているだけです。さすがにあの痛みを耐えたんですから、気を失っても仕方ありません」

サクラ「よかった。私、てっきり…」

 ギュウウッ

サクラ「よかったぁ……」

ツバキ「これでレオン様の怪我は一段落かな。うん、ここからは俺が背負っていくよ」

サクラ「はい、お願いします」

カザハナ「それで、ここからどうやって脱出するの?」

スズメ「モズ様から聞いた話だと、この奥に……。この取っ手ですね。んんっ!」

 ガラガラガラッ ガタンッ

カザハナ「え、何これ?」

スズメ「昇降機とよばれる設備だそうで、ユキムラ様が設計されたものだと聞かされました」

ツバキ「これに乗ればいいのかな?」

スズメ「はい、急いでください」

カザハナ「待って、外の人も呼ばないと――」

 ドサッ グサッ

 グアアアアアッ……

サクラ「!! 今の声は……」

スズメ「……」

 ドゴンッ!!

カザハナ「うわっ! 一体何!?」

 クソッ、セジョウシテヤガル!
 コザカシイマネシヤガッテ オラァ オトナシクデテコイ!

サクラ「そ、そんな……」

スズメ「みなさん、早く乗ってください。破られるのも時間の問題です。早く!」

ツバキ「カザハナ、サクラ様、早く!」

カザハナ「もう、なんでこうなるのよ!」

サクラ「……ううっ、ごめんなさい……」

 タタタタッ
 
 ドゴンッ ドゴンッ ドゴンッ

スズメ「これを下ろせば!」ガチャンッ

 ガコンッ ガラガラガラガラ
 ゴーーーーッ

 ドガシャンッ!!!!

白夜兵「どこに隠れやがった!!! さがせ!」

白夜兵「昇降機が作動しています!」

白夜兵「ちっ、狼煙を上げろ。奴ら、地下坑道を使って、外に出るつもりだ!」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~
―テンジン砦『地下坑道』-

 タタタタタッ

追われた者「こちらです!」

ツバキ「あいつら、さっきの昇降機から追い掛けてきそうだけど……」

スズメ「そう思ったので、縄を斬り落としておきました。多分、あそこから追ってはこられないでしょう」

カザハナ「それにしても、あの設備は何に利用してたのかな?」

サクラ「それもそうですけど、ここは一体……」

追われた者「戦線で負傷した兵や場所を移動するためにテンジン砦を中心に張り巡らされている地下坑道だそうで、この道は一番外堀に位置している砦に繋がってます」

サクラ「あの設備は負傷者や人員を移動させるためのものだったんですね……」

カザハナ「でも、ここを使われるなんて思ってなかったってことだよね。こんなに一直線に迎えるってことは……」

追われた者「流石に外からやってきた我々が気付くとは思っていなかったのだと思います。おかげで外堀の砦は見張りはわずかだったので、手早く制圧できました」

スズメ「それは良かったです。最初は武器庫から武器を奪って強行突破くらいしか考えていませんでしたから……」

ツバキ「ははっ、強行論は現実味がないから勘弁してほしいなー」

スズメ「私もそう思います」

追われた者「見えました、あれが出口です」

 ガチャンッ

 タタタタッ

追われた者「敵の動きはどうだ?」

追われた者「ああ、どうやら坑道を使ってることに気づいたみたいだ、敵の駆け馬がこっちに向かってきてる。かなりの数が来てるところを見ると、何が何でも逃がすつもりはないって感じだ。って、サクラ様、無事だったんですね!」

サクラ「そのごめんなさい。私達を逃がすために幾人かの人が……」

追われた者「そうですか……。ですが、今は悔いる時間も惜しいです。すべてのことは脱出し、安全を確保してからにでもしましょう」

サクラ「……はい、わかりました」

スズメ「それで馬の方は?」

追われた者「準備は終わっています。サクラ様、あちらに馬を準備してあります、一刻の猶予もありません、スズメ様も準備をお願いいたします」

サクラ「わ、わかりました。ツバキさん、引き続きレオンさんのこと、お願いできますか?」

ツバキ「任せてください。カザハナはサクラ様をちゃんと守るんだよー」

カザハナ「任せてよ。そういうわけだからサクラ、かなり揺れると思うけど我慢してね」

サクラ「その、ほどほどにお願いしますね……」

 タタタタタッ

 ヒヒーンッ

スズメ「このまま、まっすぐ走り抜ければ風の部族村へと続く道に出られます。敵もテンジン砦本陣に集結していたようですから、追手を振り切るには今しかありません」

サクラ「スズメさん達はどうするんですか?」

スズメ「安心してください、私達もサクラ様たちが出てすぐに後追いかけますので。今回の件はすぐにカムイ様へお伝えすべきでしょうから、皆さんは先にイズモ公国までお戻りください」

サクラ「……死なないでくださいね……」

スズメ「はい、もちろん。護衛は最後までお守りするのが仕事ですよ。安心してください」

サクラ「約束ですよ?」

スズメ「はい、約束です」ギュッ

サクラ「……はい」

スズメ「では、出発してください。レオン様のこともありますので」

サクラ「あの、今度またスズメさんの故郷のお話、聞かせてくれますか?」

スズメ「はい、サクラ様がお望みになるのでしたら……夜通しお話しさせてもらいますね」

サクラ「夜、夜通しですか」

スズメ「ふふっ、冗談です。ではご武運を祈っています」

サクラ「……はい。スズメさん……また、また会いましょう…」

スズメ「ええ、またいつか、お会いしましょう…サクラ様」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 タッ タッ タッ

スズメ「これで全員ですか……」

追われた者「はい、スズメ様を含めて十人ですね」

スズメ「……そうですか。少なくなってしまいましたね、二十五人いたはずなんですけど」

追われた者「元々、皆覚悟の上でここにいますから、あとは追手の足止めが俺たちの最後の仕事ですな」

 チャキッ
 ガタンッ ゴトゴト

スズメ「武器は?」

追われた者「少しばかり、と言っても俺達のようにわずかながらの知識を得ただけのペーペーにどうにかできる相手では無いと思いますが。できて嫌がらせですかね?」

スズメ「時間を稼げばいいんです。勝てと言っているわけじゃないんですから……。サクラ様たちが、危険地帯を抜ける合間の時間を稼ぐのが私たちの役目です」

追われた者「たしかにそうでしたね。思う存分、嫌がらせしてやりましょう。俺達にできる限りの方法で…」

スズメ「ええ、それが私達にできる唯一の復讐で、私たちの終着点なんですから……」

スズメ(そう、それが私達が望んだ……。私たちの終着点……)

スズメ(心の中で、どこか望んでいた。何か問題が起きることを……。サクラ様達には悪いとは思っていても、こうした問題が起きたことを私達はどこか喜んでいた。なぜならこの心にある憎悪の心はそうは消せやしないから)

 ザッ

スズメ(白夜という国に裏切られた心の傷は一生付いて回る、どんなことをしても拭えない。どんなに優しくしてくれた人がいたとしても、どんなに強い思いを秘めて戦う人の元にいたとしても。私たちはそれを消すことが出来ない。それはあの日、あなたに助けられた日から変わらないものです)

 ググッ ガチャンッ

スズメ(私達も今の白夜と何も変わらない、大きな黒い悪意の一つでしかなかった。でも、そんな私たちのことをカムイ様は受け入れてくれた……)

 ギイイイィィィ

スズメ(……相反しているのに、カムイ様は私達を信じてくれた。その信じる心も、いずれ私達が崩す日がやってくる。これは絶対に抑えられない、いつか平和になった時にそれが膨れ上がって抑えられなくなる可能性もある……だから私たちは、あなたから離れる道を選ぶ。少しでも奇麗に見える、そんな形で……)

 ガタンッ

 ドドドドドドッ

追われた者「すごい量ですね……」

スズメ「ええ。こんな戦闘能力の低い私達には、もったいないほどに」

追われた者「皆準備はできてます。スズメ様」

スズメ「ええ、わかりました。それでは行きましょう、わずかでもいい、一歩でもいい、サクラ様達が逃げられるまでの時間を稼いで、復讐を遂げましょう」

スズメ(それが私達が唯一できる復讐、カムイ様から離れ、そしてお前たちの思惑の一つを台無しにしてやること。それが私たちの選んだ道……)

スズメ「……」

スズメ「行きましょう!」

 タタタタタタッ

 ドドドドドドッ

白夜兵「一人残らず殺せ、生き残らせる必要はない!!!」

追われた者「うおおおおおおっ!!!!」

スズメ「やあああっ!!!」

スズメ(カムイ様、道を違える私たちを――)

スズメ(あなたの信じる心を利用して、こんな形で違えていく私たちを――)

白夜兵「おらぁ!!!」ブンッ

 ザシュッ ビシャッ ゴトンッ……

 ドサリッ ブンッ


 ザシュリッ


スズメ(どうか許してください……)

◇◇◇◇◇◇
―テンジン砦『謁見の間』―

 ザシュッ

白夜兵「ぐぎゃああああっ」ドサッ

モズ「はぁはぁ、んぐっ。ふっ、砦にこもってばかりのせいか、腕が鈍っているようだな。お前達は」

上級武将「ひ、ひぃいいい。貴様、よくも貴重な兵たちを!」

モズ「貴重な兵か、裏切り者一人始末することもできず、屍と化したこいつらがか?」

上級武将「舐めるなよ。貴様ら指示を受け実行する者たちに、我々の苦悩がわかってたまるものか」シャキンッ

上級武将「白夜は絶対的な正義なんだ。わかるか、どんなことも儀を持って行われたこと、それを否定されるわけにはいかないのだよ!!!」

モズ「……ならば剣をなぜ抜いた? 結局貴様らは……」

上級武将「だまれだまれ、貴様のような裏切り者に殺されるわけにはいかん」

モズ「そうか、ならば、全力で掛って――」

 ギィ ギィ ギィ

モズ「むっ?」

モズ(後方から一人、こちらには気づいているようだが、殺気は感じられない。誰だ?)クルッ

 ギィ ピタッ

モズ「え――」

 バシュッ グサッ

モズ「あ、え?」

 ポタポタ ポタタタッ

モズ「そ、そんな。なぜ、なぜ、こんな、どう――し」

 バシュバシュッ グサグサグサッ

モズ「―――」ドサリッ

???「……」

上級武将「お、おぉ。すみません、このような無様な姿を、こいつ暗夜の者たち寝返り、不意打ちで我々を……」

???「それはいいのです。それより、これでは数が足りませんね……」

上級武将「もうしわけありません、奴らを逃がしてしまい。大丈夫、この裏切り者のモズも含め、すぐにでも王女の首を――」

???「その心配には及びません。今日までありがとうございます」

上級武将「そ、そんな私は――」

???「では、最後の役に立ってくださいね」バシュッ

上級武将「―――っ!!! がっ、な、なぜ……わ、わだしゅは……げごぉ」ドサッ ビシャッ

???「なぜといわれましても――」

「失敗したあなたが役に立てるのは、こういうことだけということですよ」



 第二十章 前篇 おわり

 今日はここまでで

 FE新作来年に延期か、ちょっと残念。その分、来年の楽しみが増えた感じ。

 例のR18スレで次にやる番外を決めたいと思います。参加していただけると幸いです。

◇◆◇◆◇

 1.リリス「あの、もう一度言ってもらえますか?」アクア「仕方ないわね」
 2.ミタマ「すぅすぅ」ディーア「また寝てるのか?」
 
 この二つのどちらかで、どっちも鈍足で更新していく感じです。
 先に三回あがったほうにしようと思っていますので、よろしくおねがいします。

  

リリスで
スズメは好きだったのに悲しいなあ

?って誰だ暗夜側なのか、それとも白夜か
この撤退マップは実際にやりたいなあ
毎ターンHPが減るレオンを背負って逃げれるだけ逃げる索敵マップは絶対楽しい

自分もリリスかな、一応義理の従姉妹同士だし

この白夜兵どもを見てると、ガンダムigloo終盤のゲスいチンピラ連邦兵を思い出すな。

百合豚なのでリリスアクアで
いやこの二人なのかは分からんけども

FE新作はどうなるのかな、SRPGの新作とはいえスマホゲーなんだし

◆◆◆◆◆◆
―白夜・イズモ公国―

 ザァァァァァァァ

サクラ「………」

 ピチャ ピチャ ピチャ

 スッ

サクラ「あ…、カザハナさん?」

カザハナ「サクラ、もう戻ろう? 傘があってもこんな雨の中じゃ、体冷やしちゃうよ…」

サクラ「もう少し、もう少しだけ、待っていてもいいですか……」

カザハナ「……サクラ」

サクラ「……約束……したんです。また、また会いましょうって……。それで、戻ったら故郷のお話を夜通しでしてくれるって……」

カザハナ「……うん」

サクラ「だから、もう少しだけ……ひぐっ……もう、も……すこし……ううああっ」

カザハナ「サクラ……ずっと一緒にいてあげるから。一緒にずっと、ずっと待ってよう、ね?」

サクラ「うう、カザハナさぁん……。うあああああっ」

カザハナ「うん、いっぱい泣いていいよ。もう、我慢しなくていいんだよ。あたしだけしか聞いてないからさ」

サクラ「なんで、なんで……こんなことに……。スズメさん達はなにも、なにも……ううっ」

カザハナ「うん、何も悪くないよ。スズメたちは何も悪くない。……だから……サクラはいっぱい泣いていいんだよ……」

 ザァァァァァ

レオン「……」

 ピチャ ピチャ
  バサバサ…

レオン(サクラ王女……)

 タタタタタッ

レオン「……?」

カムイ「……レオンさん」

レオン「姉さん。どうしたんだい、もう会議の部屋に向かってたんじゃ……」

カムイ「エリーゼさんからサクラさんがまた門の前にいて、レオンさんが様子を見に行ったと聞いたので、少し気になってしまって」

レオン「サクラ王女はカザハナと一緒にいるから大丈夫だよ。それよりもみんな待ってるんでしょ? 僕たちもいかないと」

カムイ「そうですね……」

 テトテトテト

カムイ「サクラさんの様子は……」

レオン「……今さっき泣いていた。ずっと耐えてたんだと思う。ある意味だけど安心した……かな」

カムイ「レオンさん達が戻って来てからもう五日が過ぎてしまいましたね……」

レオン「うん。正直、悪い夢だって思いたいくらいだけど、これが僕たちの置かれてる現実だって、この傷が教えてくれる。逃げちゃいけないって、そういわれてる気がするんだ」

カムイ「レオンさんはとても強いですね」

レオン「姉さんこそ大丈夫なのかい?」

カムイ「……大丈夫ですよ。それにレオンさんやサクラさんはあの場にいたんです。私が崩れるわけにはいきません。それに、レオンさんとサクラさんのおねえちゃんなんです。だから、辛かったら言ってください」

レオン「……ありがとう、姉さん。あんまり頼りがいはなさそうだけど」

カムイ「ひどい言われようです」

レオン「ははっ」

カムイ「ふふっ、久々に笑ってくれましたね。レオンさんは笑顔がとても可愛いはずですから」

レオン「からかわないでよ」

カムイ「ふふっ」

 タタタタタッ

アクア「二人ともここにいたのね」

レオン「アクア」

アクア「そろそろ会議が始まるわ。エリーゼが心配していたから、あとでちゃんと謝っておきない。特にレオンはね?」

レオン「わかった。はぁ、別に心配しなくてもいいんだけどね。僕は先に行くよ」

カムイ「ええ」

アクア「カムイも早く来なさい」

カムイ「あ、私もでしたね……」

アクア「まったく……」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
―イズモ公国『謁見の間』―

カミラ「レオン、怪我はもう大丈夫なの?」

レオン「大丈夫だよ。途中で風の部族村で必要な処置は済ませたし、治療魔法でほとんど治ったからね」

マークス「だからと言ってまだ無茶はしないようにな。必要な時に動けないのではどうしようもなくなってしまう」

レオン「わかってるよ。正直、すぐにでもそんな時になってしまうかもしれないけどね」

マークス「うむ……。レオンとサクラ王女たちの情報は大方すべてまとめ上がっている。会合の結果を改めて確認することもあるまい」

アクア「そうね。強硬派の考えていることでいくら討論を重ねても仕方がないわ。徹底抗戦の構えと言っても過言じゃない」

カミラ「過言でも軽いわ。向こうとしては暗夜が存在していること自体が許せない、そう言っていたのよね?」

レオン「そうなるね。向こうとしては、戦争が終わった時にあるのは白夜だけであるべき。そう思っているみたいだから……」

カムイ「白夜だけであるべき……ですか」

マークス「土地を欲しているというわけではないだろう。そもそも白夜の土地は暗夜の何倍にも豊穣だ。わざわざ痩せた土地が多くある暗夜を欲する理由は見当たらん」

エリーゼ「うーん……暗夜があったら困ることがあるってことかな?」

カムイ「困ることですか?」

アクア「エリーゼ、それはどういう意味?」

エリーゼ「ほら、レオンおにいちゃん言ってたでしょ。その、暗夜はない方が都合がいいとか、そんなことを相手の武将が言ってたって……」

レオン「……ああ。それの意味がわからないんだ」

カミラ「都合がいいという意味ね。たしかに本来なら暗夜が無くなることを目標に掲げたら、都合じゃなくて悲願とか、そういうニュアンスになるはずよね?」

アクア「暗夜が白夜に接収されることや、暗夜がなくなることで何かを得られるということでしょうけど。一体何を得ようとしているのかしら?」


カムイ「……名誉などでしょうか?」

マークス「名誉という分には聞こえはいいが。それは都合とは言えないだろう。それこそ、名誉を求めるならば部の悪いことを切り捨てていくはずだ」

レオン「普通ならね。だから、そういった名誉なんてものをあいつらが考えてるようには思えない。もっと、単純な物を求めてる気がする」

エリーゼ「それって、なんなのかな?」

レオン「それが分かれば苦労しないよ。だけど、今はこれからのことを考える必要が出てきた……」

マークス「ああ、同盟会談は強硬派によって抑えられてしまっている。テンジン砦は未だに難攻不落の場所であることは確かだ。何よりも、侵攻軍に時間を与えてしまう結果になった」

カムイ「そうでした、侵攻軍の動きは?」

マークス「偵察の話では、部隊を整え始めているらしい。近々動きがあることは間違いない。それが暗夜王都奪還のためなのか、テンジン砦攻略のためなのかはわからないがな」

レオン「駐屯を続けるためには物資が必要だ。それが減ってくれば自然と動きは決まってくる。マクベスもそれはわかっているはずだからね」

カムイ「……今の現状だと白夜の戦力は分断されている。そう考えた方がいいのでしょうか?」

レオン「いや、分断されてるということはないよ。むしろ、戦力事態は上がっているかもしれない」

アクア「……サクラのこと?」

レオン「ああ、サクラ王女は僕たちの側にいる、その事実は変わらないし、それを利用されるのは目に見えているからね。彼らの中での筋書きは、サクラ王女が人質であることに尽きるわけだから……」

マークス「その場にいなかった者たちに対しての説明こそ、真実ということになるか。父上が本当の目的を隠していたのと同じように……」

カミラ「でも、リョウマ王子が囚われたとなれば、王族を支持する層の反発は免れないはずじゃないかしら?」

レオン「……強硬派はリョウマ王子に売国の疑いを掛けている。今回のテンジン砦での一件はリョウマ王子が密かに行っていたものだった。今、国を引っ張るべき主が暗夜との密会で同盟を結ぼうとしていた。そして結果的にそれは、果たされなかったし、テンジン砦では確かに戦闘が行われた」

カムイ「私たちが和平交渉とテンジン砦に入り込み、凶行に及んだ……。そういう辻褄にするつもりなんですね。でもそれだけでリョウマさんを信じていた方々を戦力として扱うことは――」

アクア「……なるほどね」

カムイ「アクアさん?」

アクア「単純な話よ。現に、カムイは一度これと同じことをガロンに要求されたことがあるわ」

カムイ「え?」

アクア「シュヴァリエ公国で起きた反乱の鎮圧。その際にあなたが拒めないように仕向けられたことがあったでしょう?」

カムイ「あの時は、マークス兄さんが……まさか」

アクア「多分、強硬派はリョウマの処罰をチラつかせている。リョウマをテンジン砦の一件、その元凶として公表することは無くても、それを民衆に発信するという脅しだけで事足りる。向こうのしていることは許されないことだけど、戦力を手に入れるためにする行動としては汚くても間違ってはいないわ」

カムイ「……どうしてこんなことを」

アクア「それは相手に聞かないとわからないわ。だけど……」

カミラ「どうしたの?」

アクア「少し不思議なの。強硬派がここまでまとまっていることが」

マークス「? 理由はどうあれ、暗夜を打倒するという意思の元集まっているからではないか?」

アクア「そうかもしれないけど、強硬派は王族との溝を深めてばかりだった。今回の件をリョウマが公にしていなかったことを考えても、リョウマの命令をすんなりと受け入れていたとは思えない」

レオン「……強硬派を動かしてる誰かがいるって言うことかい?」

アクア「ええ。もしかしたら奴の手がすでに回っている可能性だってある……」

カムイ「まさか!!!」

アクア「結界がすでに機能していない。その合間を縫って白夜にもその毒が浸透してると考えれば……今の状況も説明が付く」

カムイ(……そうやってこんな事件を起こしたっていうんですか。スズメさん達を奪って、サクラさんたちやレオンさんを傷つけたというんですか……)

カムイ(異形神ハイドラ……)

アクア「……」

~~~~~~~~~~~~~~~~~
―イズモ公国『カムイに充てられた部屋』―

 コンコンッ

アクア「カムイ、いる?」

カムイ「はい、いますよ」

アクア「……」ジーッ

カムイ「な、なんですか?」

アクア「……思ったより落ち着いているのね」

カムイ「……ええ、前までの私だったらまた塞ぎこんでいたかもしれません。それくらいに多くの人を失ってしまったんですから」

アクア「カムイ……」

カムイ「私はスズメさん達を救えなかった……。最後まで裏切られる選択を与えて、死地に追いやって、私はここで吉報を待ち続けていたんです。無責任に」

アクア「あなたはここから出られなかった。見張りがいなかったとしても、それがリョウマとの約束だった。強硬派が邪魔をしなければ、すべてはうまく行っていたはずよ」

カムイ「……」

アクア「それに、最悪を本当の意味で予期していたスズメ達以外がテンジン砦に向かっていたら、誰ひとりとしてここに帰ってくることはなかったわ。レオンもサクラも、カザハナやツバキも……」

カムイ「……みんな、テンジン砦で命を落としていたでしょう」

アクア「ええ。まず間違いなくね……」

カムイ「だから私は背負いますよ。スズメさん達が命を掛けてまで、レオンさんやサクラさんを生かしてくれたその意味を、私は背負っていかなくちゃいけない。そんな気がするんです」

アクア「……はぁ」

カムイ「え、どうしたんですか。アクアさん」

アクア「いいえ。あなたがまた倒れてしまったらどうしようかと思っていたのだけど。無用な心配だったみたい」

カムイ「いいえ、こうしてアクアさんが話に来てくれたことはうれしいですよ」

アクア「世事はいいわ」

カムイ「お世辞じゃありませんよ。こうして、アクアさんが声を掛けに来てくれたことは、たまらなくうれしいんですから」

アクア「……そ、そう///」

カムイ「? どうしたんですか」

アクア「いいえ、なんでもないわ……」

カムイ「ふふっ、おかしなアクアさんですね」

アクア「……カムイ。この先は辛い戦いになるわよ。形はどうあれ……」

カムイ「わかっています……白夜との戦いは避けられそうにありません。でも、皆がいます、だから戦っていけるんです」

アクア「……その通りね」

 ドタドタドタドタッ

 バンッ

カザハナ「はぁ、はぁ、はぁ。カ、カムイ王女!」

カムイ「カザハナさん? どうしたんですか、そんなに急いで――」

カザハナ「大変なの、ちょっと正門まで来て!」

アクア「一体どうしたというの?」

カザハナ「いっぱい、いっぱい人が来てて……」

カムイ「スズメさん達ですか!?」

カザハナ「ううん、スズメ達じゃない……。でも、あたし達は知ってる人たちで……」

アクア「カザハナたちは知っている人達って、一体……」

カザハナ「いいから、来て!」

カムイ「アクアさん」

アクア「そうね。まずは向かってみましょう。考えるのはそれからでも遅くはないわ」

カムイ「ええ、カザハナさん、案内してください」

カザハナ「うん、こっち!」

カムイ(……やはり、多くの時間を休ませてくれるわけでは無いんですね)

 タタタタタッ

◇◇◇◇◇◇
―スサノオ長城『王族の離宮』―

タクミ「……」



タクミ『何かの間違いだ。兄さんが、兄さんがそんなことするはずがない!!!』

白夜兵『ですが、テンジン砦にて暗夜の一行が和平を結ぶという話で現れ内部へ侵入し、サクラ王女を人質に武装放棄を促してきた事実は変わらない。しかも、彼らはリョウマ王子の書簡を持っていた。我々はそれを知らされていない、リョウマ王子の軽率な行動で、テンジン砦では多くの死者が出た。勾留は当然の処置だ』

タクミ『だとしても、こんな、兄さんは白夜をここまで!』

白夜兵『これ以上の話はありません。それとも、タクミ王子もこの剣に絡んでいたというのですかな?』

タクミ『そ、そんなことはない!』

白夜兵『ならば気にすることはないでしょう。まさか、あなたまでも暗夜に夢を見ているとしたら、王族の信用は地に落ちてしまうかもしれません』

タクミ『な……』

白夜兵『さぁ、お引き取りください。我々も王族の方々のことを信じたい。リョウマ王子のことも、タクミ王子のこともです。……ですがそのためには結果が伴わなければ。言葉だけの行為に価値など無いことくらい、裏切り者を知っているあなたならば理解しているでしょう?』

タクミ『……』

タクミ「……くそっ!!!!!」ガシャンッ

タクミ「どうして、どうして兄さんが、兄さんが捕まらなくちゃいけないんだ……。悪いのは、悪いのは全部暗夜じゃないか。なのに、なのにどうして!!!」

 ピチャンッ ピチャンッ

タクミ「はぁはぁ……」

タクミ(水面の僕の顔、なんて酷いんだ……。このまま行けばリョウマ兄さんは処刑される可能性だってある。そうなってしまえば、ヒノカ姉さんもどうなるかわからない。サクラも切り捨てられてしまうかもしれない。どうすれば、どうすればいいんだ……)

 ピチャン……ピチャン

白夜兵『結果が伴わなければ―― 裏切り者を知っているあなたなら――』

 ピチャン ピチャン

タクミ(……裏切り者、あの裏切り者がいたから、いたからこんなことになったんだ……)

 ピチャン ピチャン

タクミ(あんなの姉さんでもなんでも無い。あれは敵だ、兄さんはあいつに騙されただけだ)

 ピチャン ピチャン…

タクミ「……そうだ」

タクミ「……結果を出せばいいんだ」

タクミ(今回の件、兄さんが書簡を出したとするならあいつだ。あいつはイズモに、イズモ公国にいるっていう話は聞いた。なら……首を取って戻ればリョウマ兄さんの疑いも晴れる……)

タクミ「取り戻せる……」

タクミ「取り戻せるんだ……。リョウマ兄さんの地位も強かったヒノカ姉さんも、サクラも……全部元に戻る……」

「カムイを……殺せば、全部、元に……」

 今日はここまでで

 タクミくん、久々の出番でした。

 R18スレのほうですが、リリスが主人公な感じの話で、内容は真面目じゃないです。

タクミはやっぱりこの世界線でもラスボスになってしまうのか
しっかし誰が来たんだろうなあ

ヒノカのほうがラスボスっぽい

 R18スレのほうを始めました

 【FEif】セツナ「ヒノカ様…?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1472664951/)

 前回のセツナ×ヒノカスレを使い回しています。
 基本的にエロでキャラ崩壊で軽い、そんな内容です。

◆◆◆◆◆◆
―白夜・イズモ公国『謁見の間』―

 ザワザワ ザワザワ

マークス「何やら騒がしいようだが?」

カミラ「そうね、どうやら関所の方みたいだけど……」

エリーゼ「なんだか怖いよ……」

 タタタタタタッ

 トントン

イズモ兵「イザナ様……」

イザナ「どうかしたのかい?」

イズモ兵「はい、先ほど関所に……」

イザナ「へぇ……それは急だね」

イズモ兵「いかがいたしますか?」

イザナ「関所は広いからそこで休ませるように、だけどまだ国の中には入れちゃだめだよ~。その集団の代表者がいるならここに通して。直接話がしたいからね~」

イズモ兵「はっ」

 タタタタタッ

マークス「イザナ公王、一体何が起きている?」

イザナ「悪いことかもしれないね~」

レオン「悪いこと?」

エリーゼ「また……何か起きるの?」

カミラ「エリーゼ、大丈夫よ。私達がいるから、怖くなったらおねえちゃんにちゃんと言ってちょうだい。優しく抱きしめてあげるから」

エリーゼ「うん、ありがとう、カミラおねえちゃん」

カミラ「ふふっ」

 タタタタタッ

 トントン

イズモ兵「イザナ様、代表者をお連れしました」

イザナ「それじゃ、入ってもらえるかな~?」

???「……」

 スーッ

 テトテトテトッ 

イザナ「正直予想してなかったお客さんだね~」

ツクヨミ「……」

レオン(ツクヨミ、どうしてここに?)
 
 テトテトテトッ スタッ

ツクヨミ「イザナ公王、私は風の部族村の代表ツクヨミだ。こうして謁見の許してくれたこと――」

イザナ「いやいや、そう固くならないでいいよ。そんな堅さなんて言うのは、非常事態の足枷だからね~。今は相手がなんなのかとか、そういうことを考える暇はないみたいだから。君たちは切羽詰ってる……違うかな?」

ツクヨミ「……ああ……そのとおりだ…」

イザナ「うんうん、素直なのはいいことだね~。それじゃ、本題に入ろうか。ツクヨミ、君がここに来た理由を教えてくれるかい?」

ツクヨミ「……風の部族村は白夜王国から攻撃を受けた……」

マークス「なに!?」

レオン「なんだって!?」

ツクヨミ「襲撃があったのは三日前だ。私は族長であるフウガ様に命じられ、民を率いてここまでやってきた。その……」

イザナ「なるほどね~。大体の事情はわかったから、まずは関所にいる人たちをゆっくりと休んでもらおうかな。それじゃ、避難してきた人たちの誘導を始めてくれるかな」

イズモ兵「わかりました」

 タタタタタッ

ツクヨミ「すまぬ」

イザナ「いいよいいよ、困った時はお互い様っていうからね~。それに風の村には色々とお世話になってる。だから気にしないでいいよ~」

ツクヨミ「そ、そうか」

イザナ「そうそう、それに……ボク個人の約束事がある。ただ、それを済ましてるだけだから気にしないでほしいかな~」

ツクヨミ「ありがとう」

 ガタッ
 テトテト

レオン「久しぶりだね、ツクヨミ」

ツクヨミ「まさか、こちらから会いに来ることになるとは思っていなかった……」

レオン「たしかにね、見たところ怪我はないみたいでよかったよ」

ツクヨミ「ああ、傷はもう大丈夫なのか?」

レオン「おかげさまでね……。それより、何が起きたのか詳しく教えてくれないか。僕達が出発した後、何があったのか」

マークス「うむ、ツクヨミよ。お前が見たすべてのことを教えてほしい。話すのは辛いかもしれんが――」

ツクヨミ「大丈夫だ、気にしないでいい」

レオン「ありがとう。それで一体何が……」

ツクヨミ「ああ、それが……」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~
―イズモ公国『関所』―

カムイ「三日前にですか?」

風の部族「ええ、突然のことでした。明朝、まだ皆寝静まっていた頃、突然危険を知らせる鐘の音が響き渡って、慌てて飛び起きました。何が起きたのか、多くの者がわかっていませんでしたが。族長であるフウガ様が多くの兵に指示を出し、私達のような戦う力を持ち合わせていない者に、村から逃げる準備をするように伝えておりました」

アクア「まだ、白夜は来ていなかったのに?」

風の部族「はい。ですが、フウガ様はよくない風を感じられていたのかもしれません。私たちの荷造りの暇など与えないといわんばかりに、白夜の兵が攻めてきました」

カザハナ「そんな、同じ白夜の土地で過ごしてきたのに、どうして攻撃なんか――」

風の部族「白夜の兵は言っていました。怨むなら暗夜に手を貸した主を怨めと……。白夜の裏切り者を信じる愚かな者たちを信じた、お前ら自身を呪えと……」

カムイ「……」

風の部族「ですが、私はあなた方を怨むつもりはありません。フウガ様が認め、そして力を貸すことを約束した方々なのですから。それに、テンジン砦で何があったのかを私達は聞いています。だからこそ、あの言葉に従うわけにはいきません」

アクア「そう、ありがとう。長い時間歩いてきたんでしょう? ゆっくりと休んでちょうだい」

風の部族「はい、ありがとうございます……」

 テトテトテト

カムイ「……カザハナさん、サクラさんは?」

カザハナ「サクラは憔悴してる人たちの看護に回ってる……」

カムイ「そうですか……」

カザハナ「……辛いはずなのにね。帰って来てから今日まで、スズメ達が帰ってこないことを受け止めて、いっぱいいっぱい我慢してさ。今日、やっと涙を流せたばかりなのに。こんなのあんまりだよ……」

カムイ「……カザハナさんはサクラさんの傍にいてあげてください」

カザハナ「カムイ様?」

カムイ「サクラさんの傍には、昔から寄り添ってくれていたあなたが必要です。サクラさんを守ってあげてください」

カザハナ「……うん、わかってるよ。あ、レオン王子に、サクラのことはあたしに任せて、レオン王子のすべきことをするように言っておいて」

カムイ「ふふっ」

カザハナ「え、なんで笑うのよ」

カムイ「いいえ、ちゃんとお伝えしておきます。ですから、サクラさんをよろしくお願いします」

カザハナ「うん!」

 タタタタタッ

アクア「……たしか部族の代表者は、ツクヨミと言っていたわね」

カムイ「はい、気配から推測するとニュクスさんと同じくらいの背丈でしたか。でも、こうして民を安全に逃がすために体を張った族長さんに信頼されている方ですから。間違いはないでしょう」

アクア「ええ、ツクヨミはイザナに話をしに行ったんだと思う。関所から国内への誘導が始まったところを見ると、イザナは彼らを受け入れることにしたみたいね」

カムイ「本当によかったです」

アクア「ええ、マークス達はツクヨミから詳細な話を聞いているはず。私たちも部屋に戻ったほうがいいわ」

カムイ「はい。それにしても、ここに来て風の部族村を襲撃したのは、力を見せつけるためでしょうか?」

アクア「単なる報復かもしれないわ。それも周りの部族の村に影響を与えかねないカたちでね。風の部族は規模こそ小さいけど、実力を兼ね備えた戦士が多くいると聞いたことがあるわ」

カムイ「量より質ということですか?」

アクア「そんな集落が攻撃されて落ちたとなれば、誰も暗夜に手を貸さなくなるでしょう。もともと白夜に属していないとしても、明日もわからないとなれば……」

カムイ「白夜についておくべきということですね」

アクア「ええ。少なくとも、周りの部族に協力を求めることはできない。それだけは理解しておいたほうがいいわ」

カムイ「……そうですね」

アクア「急ぎましょう」

カムイ「はい」
 
 タタタタタッ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
―イズモ公国『謁見の間』―

ツクヨミ「以上が、今起きていることと、その推測だ」

レオン「……なるほどね。僕たちへの報復と地域部族への牽制、それを両立させるのに風の部族村は都合が良かった。そういうことになるね」

カミラ「でも、その地域部族への牽制だけど。それが少し駄目な方角に傾いているようね」

マークス「そのようだな。そしてツクヨミの話、それが本当だとするならば。恐怖から逃れるため独自に逃げ出す者たちも出てくるだろう」

イザナ「ボクとしては辿りついてくれるなら受け入れるつもりさ。だけど、辿りつけない人たちについてはどうにもできない。さすがにイズモを守る人員はそれほど多くないから、探索隊を出すのは難しいかな~」

レオン「わかってる。カムイ姉さんとアクアが戻ってきたら――」

 スーッ パタンッ

アクア「待たせたかしら?」

マークス「いや、そうでもない。それに、その様子だと関所に行っていたようだな」

カムイ「え? どうしてわかるのですか」

マークス「服が湿っているからな」

カムイ「あっ」

カミラ「ちゃんと乾かしなさい、風邪をひいたらみんな心配するわ。もちろん、アクアもね」

アクア「カミラ、ありがとう」

エリーゼ「カムイおねえちゃん。サクラは大丈夫なの?」

カムイ「ええ、カザハナさんが付いていてくれてますから。だから、レオンさんも心配しないでくださいって、カザハナさんが言ってましたよ」

レオン「はぁ、僕が心配することは織り込み済みってことね。なら、サクラ王女のことはカザハナに任せるよ。僕たちも早々に考えないといけないみたいだからね」

マークス「そうだな。われわれにはわれわれにしかできないこと、それを考えるしかあるまい」

アクア「関所にいる人たちから、少なからずの話は聞いたわ。何が起きたのかも、襲撃のこと、あと白夜の言動とかね」

レオン「地域部族への圧力に関しては?」

カムイ「それはここに来るまでにアクアさんと話しました」

レオン「そう、なら、これからのことは?」

アクア「いいえ、それはしてないわ。さすがにそれはみんなとするべきでしょう?」

レオン「それじゃそこからになるね。ツクヨミ、お願いできるかい?」

ツクヨミ「ああ、この地図のここなんだが……」

カムイ「……」

ツクヨミ「そこの……」

カムイ「……私のことですか?」

ツクヨミ「そうだ。目を瞑っていたら、地図は見えないだろう?」

カムイ「すみません、私は目が見えないのです」

ツクヨミ「……からかっているのか?」

カムイ「いいえ、からかっていませんよ。あまり見て気持ちのいいものでは無いと思いますが――」パチ

ツクヨミ「!!!」

カムイ「瞼の下はこの有様です。だから私のことは気にせずに話を続けてください」

ツクヨミ「そ、そうか。その、すまなかった……」

カムイ「いいえ、謝ることはありませんから」

ツクヨミ「……再開するぞ、この付近は妖狐の山といわれている場所だ。地元の者も、まず通り抜けはしない場所になっている」

カムイ「どうしてですか」

ツクヨミ「それは――」

アクア「この山には妖狐の里があると言われているの」

エリーゼ「ようこ?」

アクア「狐に姿を変える種族でね、その里があるといわれていて、白夜王国の者も不用意に立ち入ったりはしないそういう場所。間違って里に入り込んだら最後、生きては帰れないといわれているわ」

エリーゼ「怖いところだね……」

ツクヨミ「……すでに風の村は落ちている。そして、村が落ちたという話が広がるのに少なくとも一日はかかろう。その間に、白夜はイズモ公国への基本的な道を抑え終えたはずだ」

カムイ「……正面から攻めても、私たちの戦力では足りそうにありませんね」

マークス「……なによりも風の部族村への交易路は無数に走っている。村を目指すとなるとどこかを通るしかないが、それぞれの交易路は大きく離れているというわけでは無い」

エリーゼ「どこを通っても、罠かもしれないってことだよね……」

カミラ「ええ、戦闘を開始すればすぐに伝令が回る。白夜には天馬隊もいるはず、増援や伝令を防げるとは思えない。相手にとって白夜の領土は庭のようものだから、まっすぐに当たっても返り討ちにあうだけね」

アクア「……そう考えると、下手に攻めに行くのは得策ではないわ」

カムイ「なるほど、だからこその妖狐の山なんですね」

エリーゼ「……あ、もしかして、ここを通っていくの?」

マークス「ああ、妖狐の山は白夜でも有数の危険地帯、そこを通るなどと奴らが考えることはないだろう」

ツクヨミ「妖狐の山を抜ければ、風の村近辺に出ることはできる。今、イズモへと向かって来ている白夜の目を誤魔化せるはずだ」

イザナ「なるほどね~」

カムイ「ですが危険では無いのですか?」

ツクヨミ「安全な道順は頭に入っている。その通りに進めば、妖狐の里に足を踏み入れることはないはずだ」

カムイ「……頼もしいかぎりですね。これなら風の村に早く到着して、皆さんを救い出すことできるかもしれません」

ツクヨミ「では――」

アクア「カムイ、待って」

カムイ「アクアさん?」

アクア「カムイ、それを実行するとなればイズモは手薄になる。相手はテンジン砦での件もあるけど、風の村に問答無用に攻撃を加えたような者たちよ。それがここに攻めてくるのがどういう意味か……わからないわけじゃないでしょう?」

カムイ「……ですが」

アクア「冷静に考えて、それに向こうもこちらが妖狐の山を越えてくることを見越している可能性だってある。ここはイズモで暗夜からの増援を待ってから進むべきよ。それに逃れてきた民がいる以上、それを守るのも私たちの役目よ」

ツクヨミ「その点は心配ない。私も含め、呪術に理解のあるものも多数いる。守ってもらおうというつもりはないのだ」

アクア「だけど、敵の規模がわからない以上、イズモの防衛を割くわけにはいかない。それがわからないわけじゃないでしょう?」

ツクヨミ「だが、それでは……間に合わぬかもしれないではないか!」

アクア「!」

ツクヨミ「……私もできるならば、できるならばフウガ様を助けに向かいたい。向かいたいのだ。だが、フウガ様は村の皆を私に託した。だから、だから……お前たちを、頼るしか……」

アクア「それは……」

イザナ「はいはい、言い合いはそこまででだ。ツクヨミの言い分もわかるし、アクアの考えもわかるからね~。だけど、ここでボク達が争うのはお門違いかな~」

ツクヨミ「……すまない」

アクア「いいえ、私の方が悪かったわ……」

ツクヨミ「いや、いいのだ。私もまだまだ子供だ、フウガ様の言葉を選ぶのであれば、ここは任された民の安全を優先するべきだというのに……」

カミラ「そうかもしれないけど、その感情はとても大切なものよ。可愛い坊や」

ツクヨミ「か、可愛くなどない!!」

カミラ「顔を赤くしちゃって可愛いわね。でも、あなたがそのフウガという人をとても心配しているのはわかった。それはとても大切な物、だから割り切ってはだめよ」

ツクヨミ「……あ、ありがとう」

カミラ「ふふっ、素直でいい子ね」

マークス「イザナ公王はどう考えている?」

イザナ「ん、何をかな?」

マークス「この先のことだ」

イザナ「イズモ公国の王としてと聞かれたら、カムイ王女たちには残ってもらいたいのが本音かな~。ボクの国、兵士の数が少ないからね~」

マークス「そうか」

イザナ「だけどマークス王子、ボクはカムイ王女が選んだ選択に従う。ただそれだけだよ」

マークス「……わかった」

イザナ「カムイ王女、正直時間はあまりない。向こうはとてもじゃないけど待ってはくれそうにないからね」

カムイ「イザナさん……」

イザナ「大丈夫、ボクはキミが何を選択をしても受け入れて協力する。ここにいるみんなはカムイ王女を信じているし、キミも信じている。そうだよね?」

カムイ「……はい、その通りです」

ツクヨミ「……」

カムイ(風の村を占拠したのは強硬派、敵とみなした相手に何をするかはわかったものではありません。最悪、今から動かなければ手遅れになる可能性もある。そうなれば、風の村で拘束されているフウガさん達はタダではすみません……)

アクア「……」

カムイ(ですが、それを行えばアクアさんの言う通り、イズモの防衛は疎かになる。今から増援を頼んだとしても、それが到達するのが間に合うかどうかなんてわからない)

一同『……』

カムイ(だとしても……)

カムイ(私が……)

―私が選ぶ道は……―

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 1.妖狐の山を通り、制圧された風の村へと向かう

 2.増援が到着するまでの間、イズモの防衛に努める
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 先に3回選ばれた道へと……

目の前の人を救えなくて世界再生なんて(ry
1で

1

1

1 理想に生きてこその

~~~~~~~~~~~~~~~
1の道へと……
~~~~~~~~~~~~~~~

カムイ「……そうですね」

イザナ「どうやら、決めたみたいだね~」

カムイ「はい。マークス兄さん」

マークス「なんだ、カムイ?」

カムイ「今から出立の準備を始められますか?」

ツクヨミ「!」

マークス「わかった、皆に指示を出しておこう。レオン、お前は暗夜へと連絡をイズモ防衛のための増援を手配しろ」

レオン「わかったよ、兄さん。そういうわけだから、僕達は作業に入ることにするよ」

カムイ「はい」

 タタタタタタッ

ツクヨミ「……その」

カムイ「?」

ツクヨミ「ありがとう……。私の願いを聞き入れてくれて」

カムイ「それが最良と判断しただけですよ。ところでツクヨミさん、風の村までのルートを作っていただけますか? 私達にはそれが必要になりますので」

ツクヨミ「あ、ああ。もちろんだ、今すぐ取りかからせてもらう!」

カムイ「よろしく頼みますね」

ツクヨミ「うむ、数刻で作り上げる。しばし待つのだ」

 タタタタタッ

アクア「……カムイ」

カムイ「すみません、アクアさんの言っていることも理解しているつもりです。でも、私は……」

アクア「ううん、わかっているわ。それにあなたには放っておくことはできないでしょう?」

カムイ「はい……」

アクア「ふふっ、あなたはそういう人だから、こうなるとは思っていたわ。さぁ、決まったからにはすぐに準備を始めましょう。向こうは待ってくれない、早く決めたのなら時間を無駄にはできないわ」

カムイ「ええ、その通りです」

カムイ(……妖狐の山、何事もなく通り抜けて風の村に至ることができるといいんですが……)

◇◇◇◇◇◇
―白夜・妖狐の山『妖狐の里付近』―

 タタタタタッ

 グオオオオッ!!!

 ザシュッ
 ガシュッ
 
 ウギャアアアアッ

 キャアアッ!!!
 バシュッ
 ゴロンッ ビチャッ……

???「……これで全部?」

???「多分全部だよ。今日もいっぱい殺しちゃったけど、こんなに多くヒトが来るなんて何か起きてるのかな?」

???「さぁね、どんな理由でも里に近づいたらどうなるか。どんな理由であろうとも、入ったらこうなることくらい知ってるはず。結局は嘘を吐いて、ボクたちを殺して毛皮を手に入れようとしてるだけじゃないかな」

???「さっき、小さい子で遊んでたら首が変な方に向いて動かなくなっちゃった。アタシ悪いことしちゃったのかな?」

???「里に入り込んで来たのがどんなに小さいヒトでも、容赦する必要はないよ。間違ってるのは、勝手に入ってくる人間たちなんだからさ」

???「でも……。たすけて、たすけてって言ってたよ」

???「そうだね。でも、そういう言葉に騙されて毛皮を剥された仲間は何人もいる。だからよそ者を相手に油断しちゃいけない」

???「ここはボクたちの里、守れるのはボクたちだけ。やってくるヒトが善人か悪人かなんて関係ない……。たとえ――」

「ここに入って来たのが偶然だとしても……ね?」

○カムイの支援現在状況●

―対の存在―
アクアA
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)

―城塞の人々―
ギュンターB++
(恋愛小説の朗読を頼まれています) 
フェリシアB+
(カムイに従者として頼りにされたい)
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
フローラB
(すこしは他人に甘えてもいいんじゃないかと言われています)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)

―暗夜第一王子マークス―
ラズワルドA
(あなたを守るといわれています)
ピエリB
(弱点を見つけると息巻いています)
マークスB++
(何か兄らしいことをしたいと考えています)

―暗夜第二王子レオン―
オーディンB+
(二人で何かの名前を考えることになってます)
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)
レオンB+
(カムイに甘えてほしいと言われて、いろいろと考えています)

―暗夜第一王女カミラ―
ルーナA
(目を失ったことに関する話をしています)
カミラA
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ベルカC+
(イベントは起きてません)

―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼA
(昔、初めて出会った時のことについて話しています)
ハロルドB
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィB+
(一緒に訓練をしました)

―白夜第二王女サクラ―
サクラA
(カムイと二人きりの時間が欲しいと考えています)
ツバキB
(イベントは起きていません)
カザハナC+
(イベントは起きていません)

―カムイに力を貸すもの―
シャーロッテB++
(返り討ちにあっています)
スズカゼB
(おさわりの虜になったようです)
サイラスB+
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB+
(許されることとはどういうことなのかを考えています)
モズメC+
(イベントは起きていません)
リンカB
(イベントは起きていません)
ブノワC+
(イベントは起きていません)
アシュラC+
(イベントは起きていません)
フランネルC+
(イベントは起きていません)

●異性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・レオン×カザハナ
 C[本篇の流れ] B[3スレ目・300] A[3スレ目・339]
・ジョーカー×フローラ
 C[1スレ目・713~715] B[1スレ目・928~929] A[2スレ目・286]
・レオン×サクラ
 C[1スレ目・511~513] B[2スレ目・297~299] A[3スレ目・797]
・ラズワルド×ルーナ
 C[1スレ目・710~712] B[2スレ目・477] A[4スレ目・177]
・アクア×オーディン
 C[3スレ目・337] B[3スレ目・376] A[4スレ目・353]
・ルーナ×オーディン
 C[4スレ目・352] B[4スレ目・411] A[4スレ目・460]

【支援Bの組み合わせ】
・ラズワルド×エリーゼ
 C[1スレ目・602~606] B[3スレ目・253]
・ブノワ×フローラ
 C[2スレ目・283] B[2スレ目・512]
・エリーゼ×ハロルド
 C[2スレ目・511] B[2スレ目・540]
・オーディン×ニュクス
 C[1スレ目・839~840] B[3スレ目・284]
・ベルカ×スズカゼ
 C[3スレ目・252] B[3スレ目・315]
・レオン×エルフィ
 C[3スレ目・251] B[4スレ目・437]
・アクア×ゼロ
 C[1スレ目・866~867] B[4スレ目・438]

【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
 C[1スレ目・377~380]
・モズメ×ハロルド
 C[1スレ目・514~515]
・ギュンター×ニュクス
 C[3スレ目・246]
・ルーナ×ハロルド
 C[3スレ目・375]
・カザハナ×ツバキ
 C[3スレ目・772]
・アシュラ×サクラ
 C[3スレ目・773]

●同性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・リンカ×アクア
 C[1スレ目・888~889] B[2スレ目・285] A[3スレ目・254]
・ピエリ×カミラ
 C[1スレ目・752~753] B[2スレ目・478] A[2スレ目・513]
・フェリシア×ルーナ
 C[1スレ目・864~865] B[1スレ目・890~891] A[1スレ目・930~931]
・フローラ×エルフィ
 C[1スレ目・471~472] B[3スレ目・338] A[3スレ目・377]
・レオン×ツバキ
 C[1スレ目・492~493] B[1スレ目・870] A[3スレ目・798]
・ベルカ×エリーゼ
 C[2スレ目・284] B[3スレ目・301] A[4スレ目・354]
・ピエリ×ルーナ
 C[3スレ目・249] B[4スレ目・317] A[4スレ目・412]

【支援Bの組み合わせ】
・ギュンター×サイラス
 C[1スレ目・926~927] B[3スレ目・316]
・フェリシア×エルフィ
 C[1スレ目・367~368] B[2スレ目・541]
・シャーロッテ×モズメ
 C[3スレ目・248] B[3スレ目・285]
・ベルカ×ニュクス
 C[4スレ目・176] B[4スレ目・410]
・シャーロッテ×カミラ
 C[2スレ目・476] B[4スレ目・439]
・アクア×ルーナ
 C[3スレ目・283] B[4スレ目・461]

【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
 C[1スレ目・423~425]
・ピエリ×リンカ
 C[3スレ目・247]
・ピエリ×フェリシア
 C[3スレ目・250]
・ジョーカー×ハロルド
 C[1スレ目・426~429]
・フローラ×エリーゼ
 C[4スレ目・178]
・エルフィ×ピエリ
 C[3スレ目・771]
・カミラ×サクラ
 C[4スレ目・175]
・スズカゼ×オーディン
 C[4スレ目・318]
・ラズワルド×オーディン
 C[4スレ目・459]
・サクラ×エルフィ
 C[3スレ目・774]

 今日はここまでで

 氷の部族の名前がフリージアで『氷の血』を覚える絆ユニットの名前もフリージア。
 なら『風の血』と『炎の血』を覚える絆ユニットの名前=部族としての名前かもと調べた結果。
 風の部族『ツユクサ』
 炎の部族『ナズナ』
 なんだかパッとしない。


 ドラマCD買った。データディスクにリリスがなかった。……辛い。


 この先の展開を安価で決めたいと思います。参加していただけると幸いです。

◇◆◇◆◇
 次の戦闘に参加するキャラクターを決めようと思います。

○仲間ジョブ一覧●
―対の存在―
・アクア(歌姫)

―城塞の人々―
・ジョーカー(パラディン)
・ギュンター(グレートナイト)
・フェリシア(ストラテジスト)
・フローラ(ジェネラル)

―暗夜第一王子マークス―
・マークス(パラディン)
・ラズワルド(ボウナイト)
・ピエリ(パラディン)

―暗夜第二王子レオン―
・レオン(ストラテジスト)
・オーディン(ダークナイト)
・ゼロ(ボウナイト)

―暗夜第一王女カミラ―
・カミラ(レヴナントナイト)
・ルーナ(ブレイブヒーロー)
・ベルカ(ドラゴンマスター)

―暗夜第二王女エリーゼ―
・エリーゼ(ストラテジスト)
・ハロルド(ブレイブヒーロー)
・エルフィ(グレートナイト)

―白夜第二王女サクラ―
・サクラ(戦巫女)
・カザハナ(メイド)
・ツバキ(バトラー)

―カムイに力を貸すもの―
・ニュクス(ソーサラー)
・アシュラ(上忍)
・フランネル(マーナガルム)
・サイラス(ボウナイト)
・スズカゼ(絡繰師)
・ブノワ(ジェネラル)
・シャーロッテ(バーサーカー)
・リンカ(黒天馬武者)
・モズメ(弓聖)

◇◆◇◆◇
 カムイと行動を共にする固定キャラクター
・フランネル

◇◆◇◆◇
 カムイと共に闘うキャラクターを四人
『フランネル以外誰でも』

一人目 >>678
二人目 >>679
三人目 >>680
四人目 >>681

同じキャラクターなどで被った場合は下にスライドする形になりますので、よろしくお願いします。

騎馬特攻もち軍団相手に出せない仲間が多すぎるww
フローラ

アクア

キヌちゃんもいるのか…
ルーナ

カザハナ

やっとフランネルに活躍のチャンスが…

◇◆◇◆◇
―白夜・妖狐の山―

 ザッ ザッ ザッ

マークス「思ったよりも険しい山のようだな……」

エリーゼ「はぉはぁ、疲れたよ……」

レオン「確かにね。戦闘がないことに越したことはないけど、ツクヨミのくれた地図、見事に急勾配の連続だね」

カザハナ「でも、こんなに急勾配だし、その妖狐の件もあるから誰も使わないのは納得だね。これで侵攻してくる白夜軍の目を欺いて村に早くたどり着ければ」

サクラ「はい、風の村にいるフウガさんたちを助けだせます……あっ」フラッ

ツバキ「大丈夫ですか、サクラ様」

サクラ「は、はい。ごめんなさい……」

カザハナ「さすがに疲れもたまってくるころだから仕方ないよ。それに、あたしも疲れてきたよ」

アクア「そうね。カムイ、ここで一度、休息を取りましょう」

カムイ「はい。さすがにこのまま進み続けるわけにもいきませんから、私はフランネルさんと一緒に周囲の確認をしてきます。フランネルさんの嗅覚、信用してますよ」

フランネル「おう、任せてくれよな」

アクア「待ってカムイ、私も付いて行くわ」

カムイ「いえ、アクアさんも少し休んでください。私とフランネルさんで――」

アクア「あなたは目が見えないでしょう? それにフランネルが周辺の匂いを嗅ぎ分けることに集中するなら、あとは目の役目が必要よ。大丈夫、安全だとわかったら私も休むから」

カムイ「わかりました、よろしくお願いしますね」

フランネル「くんくん……とくに獣の匂いはしない、大丈夫だぜ。それにしても、白夜の山もいいもんだな」

アクア「そうね、こんなにも奇麗だもの」

フランネル「そうだろ、見ろよこれ。トカゲのしっぽだぜ!」

カムイ「アクアさんが奇麗というんですから、とても奇麗なトカゲのしっぽなんですね」

アクア「……言いたいことが違う。私が言っているのは景色のことよ。そんな変な物のことじゃないわ」

フランネル「変なものじゃねえし、でも、いっぱい面白いもんが落ちてるよなー」

カムイ「フランネルさん、あまりはしゃぎすぎないでくださいね」

アクア「……言ったでしょう? 目が必要だって」

カムイ「さすがはアクアさんですね……」

フランネル「大丈夫、ここら辺は全然匂いはしねえし、それに地図の通り歩いてるならその里に入ることもないんじゃねえか?」

カムイ「それもそうですけど、心配するに越したことはありませんから……」

フランネル「うーん、良くわからねぇけど。カムイが困ってるなら力になるぜ」

カムイ「ふふっ、ありがとうございます。フランネルさん」

フランネル「べ、別に俺がそうしたいわけじゃねえし。マークスにもカムイの頼みはできる限り聞くように言われてるだけだし」

カムイ「はい、そういうことにしておいてあげます」

フランネル「それにしても、結構ピリピリしてるんだな妖狐っていうのはさ」

アクア「そうね。縄張り意識が強いというのとは違うものだと思うわ」

フランネル「だとしても入ってきた奴を問答無用に攻撃するっていうのは、ちょっとわからねえ……」

アクア「フランネルの故郷もこういった場所なの?」

フランネル「こんな明るい場所じゃねえけどな。確かに密漁でやってくる人間はいるけど、入ってきたら問答無用っていうわけじゃねぇし」

カムイ「そうなんですか?」

フランネル「なによりも人間って簡単に死ぬ、こっちに仕掛けてきたわけでもないのに攻撃すると面倒が多いし、なにより少し脅せば迷って入ってきた奴は走って逃げるぜ。わざわざ逃げた奴を追い掛ける意味なんてないから、それで終わりってことも多いぜ」

カムイ「……思ったより優しいんですね。フランネルさんは」

フランネル「べ、別に優しくなんてねぇし!!!」

アクア「ふふっ、尻尾が大きく揺れているわよ」

フランネル「こ、これは。向こうにお宝があるって気がしてるだけで、恥ずかしがってるわけじゃねえからな!」

 タタタタタッ

カムイ「あっ、行ってしまいました。不機嫌にしてしまったでしょうか?」

アクア「そうね、逃げだしたのはともかく、高速で尻尾が揺れていたから、不機嫌というわけではないはずよ」

カムイ「……そう言えばアクアさん、フランネルさんの尻尾にときめいたりしないんですか?」

アクア「残念だけどフランネルの尻尾にときめくことはないわ。たしかにモフモフしてそうだけど……」

カムイ「ふふっ、アクアさんのお眼鏡に叶いませんでしたか」

アクア「そうなるわね」

カムイ「ふふっ、妖狐もふさふさの尻尾を持っているのかもしれませんけど。今はできれば会いたくないものです」

アクア「そうね。会うのなら、もっと違う場所であってほしいわ」

カムイ「どんな場所で会いたいですか?」

アクア「そうね。正直、場所はどこでもいいの。でもこの山の中だけはごめんね……」

カムイ「そうですね。でも場所じゃないなら一体?」

アクア「平和になった世界であるならどこでもいい。そう思っているわ」

カムイ「ふふっ、たしかにそうかもしれませんね。平和な世界でアミュージアなどもいいかもしれません」

アクア「妖狐がアミュージアまで足を運ぶものかしら?」

カムイ「ガルーであるフランネルさんもアミュージアにいたんですから、可能性はありますよ」

アクア「……彼は迷い込んだだけだと思うわ」

カムイ「たしかに、そうかもしれませんね」

アクア「ふふっ」

アクア「大方見て回ったけど、ここ周辺は特に問題はなさそうね」

カムイ「そのようですね。ツクヨミさんの地図のおかげで、どうにか風の村に無事にたどり着けそうです」

アクア「ええ、あとはフランネルが戻ってくるのを待てばいいだけだけど……。一体どこへ行ったのかしら?」

カムイ「そうですね。本当にお宝を見つけたのかもしれません」

アクア「……恥ずかしくて赤くなった顔が冷めるのを待っているだけかもしれないわ」

カムイ「ふふっ、だとするとなんだから可愛らしいく――」

 タタタタタッ

フランネル「おーい!」

カムイ「大丈夫です、置いてったりなんてしませんから、そんなに急いで戻ってこなくても……」

フランネル「臭うんだよ」

アクア「臭う?」

カムイ「もしかして、私達ですか?」

フランネル「ちげえし。この先あたりから風に乗って漂ってくる臭いがある」

カムイ「もしかして、妖狐ですか?」

フランネル「それっぽい獣の臭いもある。でも、それよりもっと強い臭いが漂ってる」

アクア「それはなに? 勿体ぶってないで、早く言いなさい」

フランネル「血だよ。血の臭い、しかもかなり濃いやつだ。結構な数が死んでるみてえだ」

カムイ「!!!!」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◇◇◇◇◇◇
―妖狐の山・妖狐の里『近隣の小川』―

 ザシュッ バシュッ ドサッ

迷い込んだ村人「ひぃ、ひぃいいいいい!!! 後生だ、ただ、ただ俺達は、この山を越えたかっただけなんだ!!! お前らとやりあうなんてそんなつもりは!」

 ガブッ ブチィィ バリンッ

迷い込んだ村人「うぎゃあああっ……」

迷い込んだ村人「きゃああっ! だれか、誰か助けて!」

 タタタタタッ ダッ

妖狐「がううううっ」ダッ ガブッ

迷い込んだ村人「あぐっ、いや、いやあああっ……や、やだ……、あぐっ、はら、喰い、ぐぃ、あぐっ、ごほっ……」

 ガリッ ボリッ ブチャンッ

迷い込んだ村人「や、やめろ、よせ! 話しを話を聞いてくれ!」

???「……残念だけど。入りこんできちゃった以上、見過ごすことはできないんだ」

迷い込んだ村人「な、なんでだよ! ただ、ただ間違えて入っただけじゃねえか! 俺達はただ、ただ逃げて来ただけなんだ。だから、だから、見逃し――」

 シュオオオンッ ブンッ バチュンッ ドサ ドサッ……

迷い込んだ村人「あえ? なんで、俺、体からはなれ……ごふっ」

???「……どんな理由だったとしても。入り込んで来たなら容赦はできないんだよね」

妖狐「ニシキ様、逃げた集団がいるみたいだぞ」

ニシキ「誰か追いかけてるのかい?」

妖狐「キヌとその取り巻きが追い掛けてる。さすがはニシキの跡を継ぐだけはある。先陣を切っていくんだからな」

ニシキ「そうだね。キヌは自慢の後継者だからね。それじゃボクたちも追いかけて合流するよ。逃げたのが罠だったらキヌが危ないし、もしも罠ならそんなものが通用しないって教えてあげないといけないからねぇ」

 ダッ

迷い込んだ村人「はぁはぁ!!! 早くこっちだ。追いつかれちまうぞ!!」

迷い込んだ村人「わ、わかってる。くそっ、まってくれ!」

 タタッ タタッ タタッ

 ダッ

妖狐「ぐおおおおっ!!!」

迷い込んだ村人「うわああっ。あぐっ、うぎゃああっ」ジタバタ

 バシュッ ブシャアアアアッ

迷い込んだ村人「ヒュー……ヒューッ」ドサッ

妖狐「ひとり殺りました。キヌ様」

 ダッ

キヌ「うん、わかったよ。一人も逃がしちゃ駄目だよ、それが里の皆を守ることに繋がるって、ニシキさん言ってたから」

キヌ(里の皆を守るのが里の長の使命なら。アタシだってそれをできるようにならなくちゃいけない。いずれ、アタシが里の長になるってニシキさんが言ってた、なら、アタシだって!)

 シュオオオオオンッ

迷い込んだ村人「くそっ、お前ら早く逃げろ! 少しだけでも足止めしてやる!」チャキンッ

キヌ「……そんなのでどうにかできると思ってるの?」

迷い込んだ村人「うるさい。おら、化け狐共、掛ってこいよ!」

キヌ「うん、そうさせてもらうね」ダッ
 
 シュン シュン シュンッ

迷い込んだ村人「は、早い!?」

キヌ「恨んじゃやだよ……。これも里のためだから」

 バチュンッ ブシャアアアッ

 ドサッ

妖狐「グルルルルルルッ」

 タタッ タタッ タタッ

迷い込んだ村人「だめだ、こっちは塞がれたぞ!」

迷い込んだ村人「なら、こっちに行けば!」

 ザザッ 

妖狐「グルルルルルっ!」

迷い込んだ村人「こっちもだめだ」

迷い込んだ村人「ど、どうするんだよ。もう逃げ場なんて」

キヌ「……終わりだよ」

迷い込んだ村人の子供「おかあさん、怖いよ……」

迷い込んだ村人「お、お願いします。この子、この子だけでも助けてください。私は、私はどうなっても――」

妖狐「……」バシュッ

 プシャアアッ ドサッ

迷い込んだ村人の子供「え……おかあさん……?」

 ドクドクドク……

迷い込んだ村人の子供「おかあさん?」

キヌ「大丈夫だよ。すぐにおかあさんの元に送ってあげるから、寂しくなんてないからね……」

妖狐「……」

キヌ「やっちゃって」

 ダッ

迷い込んだ村人「ひっ!!!!」

 ザッ ザザッ

 キィン ガキィン!!!!

キヌ「え!?」

カムイ「……そうさせません!!!」

 ブンッ

 サッ

妖狐「グルルルルッ……」

キヌ「……どこから現れたの!?」

迷い込んだ村人「あ、あんたら一体!?」

カムイ「詮索は後です、早く逃げてください」

迷い込んだ村人「あ、ああ。いくぞ、今のうちだ!」

キヌ「逃がさないで!」

妖狐「がうううっ!!!」

 ダッ

カムイ「カザハナさん!」

カザハナ「任せて。ちょっと、足止めさせてもらうよ!」ヒュンッ
 
妖狐「!」サッ

妖狐「ぐおおおおっ!!」ダッ

迷い込んだ村人「こっちにきた!!!」

 ドシンドシンッ ザッ

フローラ「させません」

 ガキィン

フローラ「早く私よりも後ろへ逃げてください」

迷い込んだ村人「あ、ああ! いくぞ坊主、なにしてんだ!」

迷い込んだ村人の子供「おかあさん、おかあさんは?」

迷い込んだ村人「いいからいくぞ!!!!」ガシッ

迷い込んだ村人の子供「あ、おかあさん、いやだ、おかあさん!!!」

 タタタタタッ

カムイ「……間に合いませんでした……」

アクア「カムイ……」

カムイ「……すみません、皆さんに戦いを強要するような形になってしまって」

アクア「いいえ、あなたならそうすると思っていたもの、だから何も問題はないわ。あの子の母親は残念だけど……」

ルーナ「あんなの見せられて黙ってられるわけないでしょ。目の前で母親を殺すなんて、サイテーね」

キヌ「……里を守るためだよ」

フランネル「どう見てもさっきも何もないような奴らばっかりだったけどな。脅して帰らせればいいじゃねえか、それだけで里は守れるだろ?」

ニシキ「そういうわけにもいかないんだよね……」

 タタタタッ

キヌ「ニシキさん。アタシ……逃がしちゃったよ」

ニシキ「そうだね。でも、キヌが無事でよかったよ。それに、ここにいるのは包囲できたからね」

 ザザッ ザザッ

妖狐「ガルルルッ」

カザハナ「!? 周りからまた出てきたよ」

フローラ「かなりの大軍みたいですね。カムイ様、後ろへお下がりください」

ニシキ「はじめまして旅人さん。この匂い、もしかして暗夜のヒトかな?」

カムイ「そうですね。こうして出会ったのも何かの縁ですから、ここはお互いに引きませんか? わざわざ逃げていった方々を追い掛ける必要もないでしょう?」

ニシキ「……ははっ、そうかもしれないけど。それはできないかな」

アクア「どうして?」

ニシキ「今さっきのヒトたちがキミたちの待ってるここにボクたちを誘導していた可能性だってある。ボクはね、外で会うヒトのことは大好きだけど、ここで会うのは勝手が違うんだ」

カムイ「……どう見ても戦う意思を持たない、人たちだとしてもですか?」

ニシキ「それを決めるのはキミたちじゃない、ボクたちのほうだよ。だけど、わかることがあるとすれば――」

「キミたちは間違いなく、戦う意思を持ったヒトたちだってことくらいかな……」

今日はここまでで
 
 キヌが子世代でなかった場合を考えたら、やっぱりニシキの後継者かなって感じ。ニシキ×キヌでさらに速度と魔防が加速する。

 ゲーム本編で思うが、ビーストキラーなどの獣特効装備一式の主人公達が「ここを通りたいだけなんです」って言っても信用してもらえるわけない。

確かに
フランネル×ベロアでバ火力は実際やりたい
他にも子世代キャラを1ユニットとして出す可能性はあるのかな、期待していいのか

ゲーム内のイメージだと妖孤は幻術とスピードで相手を翻弄するトリッキーな柔タイプ、逆にガルーは頑丈な体と拳から繰り出される重い一撃で真っ向から力でねじ伏せる剛タイプだと感じました。

◆◆◆◆◆◆
―白夜・妖狐の山『小川のある場所』―

カムイ「私達はこれ以上の争いをするつもりはありませんよ?」

ニシキ「そっちから勝手に入ってきて争いも何もないよね? ボクたちの里に近づいたらどうなるかは、ずっと前から知れ渡ってる。お客人でもないヒトを歓迎できるほど、ボクたちはここでお人好しのままじゃいられない」

カムイ「あの方たちに戦意がないことくらい。理解していたはずでしょう、私達に戦う意思があるのを見抜いているなら――」

ニシキ「言ったはずだよね。それを決めるのはこっちの方だって」

カムイ「……」

ニシキ「ボクたちの毛皮は高く売れる。それを知っている以外にヒトがノコノコやってくる場所じゃないんだ。だからここに入り込んだヒトをボクたちは一人として帰すつもりはないよ」

キヌ「……ニシキさん」

ニシキ「キヌ、ここですべて殺して絶ったほうがいい。誰かが生き残ってしまえば、仇打ちに来るやつらも現れる。ボクたちの里に近づくことがどういうところなのか、ヒトに理解してもらわないといけない。それがボクたちとヒトとの付き合い方だからね」

キヌ「……うん。アタシは守るよ。それが里を守ること、なんだよね?」

ニシキ「うん。この頃は多く人がこの山に入り込んできた。それもこれで最後だよ……」

カムイ「戦うしかないというんですか」

ニシキ「本当に残念だよ。キミ達の一行はボクたちの警戒線を越えないように移動してたから、何もしなかったのに……自分たちから越えてきたんだからね……」

カムイ「!」

アクア「まさか、最初から気付かれていたというの?」

フランネル「おかしいぜ。今みたいな臭い、全然してなかったのによ……」

ニシキ「見たところキミもボクたちに似た種族みたいだけど、ボクたちの真骨頂はこういうものだから……」

 クルクル ボンッ

カザハナ「え、消えた!?」

フランネル「くそっ、臭いまで消せるのか、すげぇな」

フローラ「これはもしかしなくても幻術の類ですね……」ジャキッ

アクア「……妖狐の名前は伊達では無いようね。カムイ、場所はわかる?」

カムイ「はい、気配は分かります。ですが、相当な数が隠れているみたいですね……」

ニシキ(……あのカムイと呼ばれているヒト。視覚じゃなくて気配でボクたちのことを察してるみたいだ……見たところ目を閉じてるけど、どちらにせよ、いつも見たいにはいかないかもしれない)

キヌ(ニシキさん、どうするの?)

ニシキ(なにも変わらないよ。ここに来た人には容赦なく死んでもらうだけ、キヌこそ準備はいいのかい?)

キヌ(うん、アタシは大丈夫だよ。後継者としてニシキさんに見てもらえてるんだもん。アタシだけ里で待ってるわけにはいかないから)

ニシキ(そう、ならいいんだ。それじゃ、みんな準備はいいかな?)

 コクリッ

ニシキ(それじゃ、いくよ……)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

妖狐「シャアアアッ!!!」ダッ

フローラ「くっ、カザハナさん、真後ろです!」

カザハナ「っと、本当にどこから来るかわからない。見た目を偽るなんて、ゾーラのこと思い出すからやめてほしいんだけど!」

ルーナ「つべこべ言ってないで、二人一組! フランネル、ちょっと前に出過ぎないでよ!」

フランネル「そんなこと言われてもよぉ。こいつら早すぎるからすぐ詰めねえと、また草に隠れちまうじゃねえか」

カムイ「そうですね。それに思ったよりも大胆に詰めてきますよ。皆さん、注意を――」

 ボンッ シュタタタッ

妖狐「しゃあああっ!!」ダッ

 バシュッ

カムイ「ぐっ、はああっ!!!」ザンッ

 ザシュッ

妖狐「ぐううっ!!!」サッ ボンッ

アクア「カムイ!」

カムイ(攻撃を加えるために躊躇せずに攻めてくるのもいる。こちらの間合いに簡単に入り込んでくるなんて……)

カムイ「中々に手厳しい攻撃をしてきますね……」

カザハナ「フローラ、カムイ様の援護に回らないと!」

フローラ「わかってる。ルーナ!」

ルーナ「なに? こっちもかなり忙しいんだけど!」

フローラ「カザハナをあなたに任せるから、代わりにフランネルを回してくれる?」

ルーナ「別にいいけど、壁にはならないわよ」

フローラ「私が今は壁の立場よ。それにカムイ様の傷を癒すのが最優先。だからお願い」

ルーナ「わ、わかったわ。フランネル、フローラが前に出るって言ってるけど、付いて行く?」

フランネル「ほ、ほんとか?」

フローラ「ええ、早く来て頂戴。戦うのは好きなんでしょう?」

フランネル「そういうお前はどうなんだよ?」

フローラ「そうね、あまり得意ではないけど。カムイ様に危害を加える方に容赦をするつもりはないとだけ、言っておくわね」ヒュンヒュンヒュン カチャッ

フランネル「すげえ形の槍だけど、なんだそれ?」

フローラ「買ったけど使う機会がなかったから、ここで使おうかと思ってね」

フローラ(アンナ商会で買った獣狩り一式、こんなところで役に立つとは思わなかったわ)

フローラ「カザハナ、あなたもこれを使って」ポイッ

カザハナ「え、うわっと、なにこれ、禍々しい形してるけど」

フローラ「獣相手に有効という触れ込みよ。とりあえず、試してみましょう」

カザハナ「まさか、ぶつけ本番!?」

フローラ「大抵のことはぶつけ本番よ。そういうわけだからカザハナのことをよろしく頼むわ、ルーナ」

ルーナ「分かったわよ。カザハナ、一気にカムイ様の元まで行くわよ」

カザハナ「う、うん。フローラ……」

フローラ「なに?」

カザハナ「その……」

フローラ「心配しないでいいわ。あなたに色々と教えること、まだ残っているもの」

カザハナ「そうだね。それじゃ、任せたから!」

 タタタタタッ

フランネル「で、俺はどうすればいいんだ?」

フローラ「シンプルに行くわ。私が攻撃を受け止める、その隙にあなたが攻撃」

フランネル「いいのかよ。あんたより俺の方が堅いかもしれないぜ?」

フローラ「生憎だけど、堅さと冷たさなら私の方が何倍も上なの。言うこと聞かないなら、凍らせてあげるわよ?」

フランネル「へへっ、面白いな。わかった、フローラの言う通りに動くからよ」

フローラ「ふふっ、そう言ってもらえると嬉しいわ。それじゃ、準備して」

 ザザザザッ

妖狐「グルルルルッ!!!」

フローラ「!」ジャキッ

 ダッ

イケメン須賀京太郎様に処女膜捧げる同人誌を見たいです

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

カムイ「はあああっ!!!」ブンッ
 
 ザシュンッ

妖狐「クオオオオオンッ!!!」ドサッ

カムイ「はぁはぁ……」

妖狐「グルルルッ」ダッ

 ザッ

アクア「カムイ、後ろ!」

カムイ「!」サッ

妖狐「グルルッ! シャアアッ!」ダッ

カムイ(回避が間に合わない!!!! 受け止め――)

 タタタタッ

ルーナ「カザハナ!!!!」

カザハナ「あたれええええ!!!」シュパッ!!!

 ザクッ ザクククッ ブシャアアアッ……

妖狐「クオオオオオッ」ドタンッ ドサッ クタリッ

カザハナ「よし、カムイ王女!」

ルーナ「よしっと、ここは少し受け止めるから、その間に治療しちゃいなさいよ」

カザハナ「わかってる。それっ!」シャランッ

カムイ「カザハナさん、ありがとうございます」

カザハナ「お礼はいいから、これからどうする? このまま戦ってたらさすがに……」

カムイ「ええ、数が一向に減る気配はありませんから、このまま、防戦を続けるというわけにもいきません……」

カザハナ「さすがに、全部さばき切れないよ。フローラも頑張ってくれてるけど……」

カムイ「長くは持ちませんよね……」

アクア「ねぇ、カムイ、さっき話をしていた二人の妖狐のことだけど、覚えている?」

カムイ「はい、確かニシキさんとキヌさんでしたか……」

アクア「ええ、おそらくだけど、あれがここで戦っている妖狐を束ねているのだと思うわ」

カムイ「……もしかして、彼らを倒せば」

アクア「ええ、妖狐たちは撤退するかもしれないわ」

カムイ「なら、それで行くしかありません」

カザハナ「でもどうやってそれをおびき寄せるの? こうやって木の葉隠れされて見た眼もわからないんじゃ……」

アクア「一か八かだけど方法がないわけじゃない。といっても、これはあくまでも私の推測だから、そうなるかはわからないの」

カムイ「推測ですか?」

アクア「ええ、彼らは里を守ることを一番に考えてる。彼らが腕の立つ妖狐であるなら、最後の一線をきっと守りに来るはず。だけど、もしもうまくいかなかったら退路を完全にふさがれて孤立してしまう」

カムイ「一か八かの作戦ですね……」

アクア「ええ」

カムイ(……このまま防戦していれば、いずれ彼らがやってくる可能性もあります。でも、それまで皆が持つかどうかは……)

 トントンッ

カムイ「! カザハナさん?」

カザハナ「カムイ様、それに掛けてみるしかないんじゃないかな。こっちの人数じゃ、このまま圧し潰されちゃうのは目に見えてる。なにより、時間を相手に与えたら、他の標的を探し始めるかもしれないよ」

カムイ「逃げていった方々と他の皆さんを狙い始めるかもしれない、ということですよね……」

カザハナ「うん、たぶん逃げた人たちは他の皆が保護してくれてるし、たぶんこっちに何人か向かってくれてるとは思うけど、あの長にすぐに届くわけじゃない。あたしたちが一番近くて、終わらせられる可能性があるなら賭けてみる価値はあると思う」

カムイ(……そうですね。だからこそ、私は待つことじゃなく進むことを選んだんですから……)


カムイ「アクアさんの案で行きます。カザハナさんは私達と一緒に同行してください。ルーナさん、フローラさんとフランネルさんの援護に加わって、できる限り敵を引きつけるようお願いします」

ルーナ「ええ、わかったわ。結構な量だけどどうにかしてあげる」

カムイ「そして、私達は妖狐の里だと思われる方角に向けて足を進めます。出来る限り隠れているような素振りをしながら、里に潜り込むのが目的のように……」

アクア「わかったわ」

カザハナ「うん、わかったよ」

カムイ「それぞれ、行動を開始してください」

◇◇◇◇◇◇

キヌ「ニシキさん、ヒトの一部が里の方角に向かって進み始めてる」

ニシキ「……そういうことか。結局、狙いはボクたちの毛皮っていうことだね……」

キヌ「どうするの?」

ニシキ「どうするもないよ。ボクたちがするべきことは決まってる。キヌ、ボクと一緒に来てくれるかな?」

キヌ「うん、いいよ! アタシも里を守りたいし、なによりニシキさんの力になりたいもん!」

ニシキ「いい子だね、キヌは」ナデナデ

キヌ「んゆっ……ニシキさん……くすぐったいよ」

ニシキ「……」

キヌ「ニシキさん? どうかしたの?」

ニシキ「いいや、なんでもないよ。早く終わらせて、小川で水浴びでもしようか……。キヌの奇麗な尻尾に血の匂いが染みついたりしたら大変だからね」

キヌ「えへへ~、そうだ、ニシキさんも一緒に水浴びしようよ。一緒ならもっと気持ちいい気がするんだよ」

ニシキ「まったく、ふざけてないで行くよ」ダッ

キヌ「あ、……うん」ダッ

 タタッ タタッ

キヌ(……本当はこんな風に人を殺すためじゃなくて、遊びでニシキさんと一緒に走り回れたらいいのに……)

キヌ(あのヒトは戦うつもりはないって言ってた。多分、それは間違ってない。現に、割り込んできたあのヒトは威嚇するだけだった……)

キヌ(でも、仕方無いよね……。ヒトは里に近づいちゃいけない、それは大きく広まってるこの山の仕来りで、ヒトとアタシたちの関係……)

キヌ(そうしないと、ニシキさんの後継者として認めてもらえないもん。だから――)

(殺しちゃっても、恨まないでよね……)

今日はここまでで
 
 キヌが白夜王国編の道中で仲間になるとしたら、やっぱりニシキを探しに来てという流れかなとか思った

彼らを殺さずにすむ結末はないのか
しっかし狐マップはもう後半だし悲しいなあ
最初っから読んでたから余計に

でもフランネルの場合(白夜編)と違って、ニシキ達って馬鹿だろ?
疑心暗鬼に陥って売らなくても良い喧嘩を売って(軍隊相手に戦いを仕掛ければたとえ勝っても相応の犠牲を払うことになる)、返り討ちに遭って結局全滅しているんだから。
正当防衛だったにもかかわらず、なぜか暗夜編のカムイを叩いている人もいるが…。

特にこの話では何の罪もない民間人達を手にかけているから皆殺しにされても文句は言えない。

どこにカムイ叩いてるコメントがあるんだよ
それに妖狐は毛皮が高く売れるとかで襲われることもしばしばなんでしょ?
それなら相手が善良な一市民であろうと、そこからどこに漏れるか分からない以上、口を封じた方がいいだろうし
軍隊なら人数も多い分そのリスクも増す
先制攻撃されるくらいなら奇襲して殺した方がいいしさ

ちょっと言葉が足りなかった、カムイを叩いている人はここにはいないけど、叩いている人がいたのは2ちゃんねるのアンチスレの人だった。
2ちゃんねるのアンチスレのことを持ち出すのは不適切だったかもしれん、すまん。

ここに迷い込んで来た市民は別に妖狐達を捕捉していたわけじゃないし、先ずは様子見でどうなつもりでここに来たのか見極めてから行動を起こしても遅くはなかったし、そのまま立ち去るならそれで良しだ。
それに、入り込んで来た奴はわざわざこちらから姿を現して問答無用で[ピーーー]なんてことをしていたら、いずれ討伐隊だって組織されかねない。
少なくとも、民間人を手にかけたことで殺されても文句は言えないと言うのは間違いないだろう。

たとえ、奇襲が成功して一時的に有利になっても少人数の奇襲でそのまま押し切れるほど軍隊は甘くはない、いずれは態勢を整えられてこちらが不利になる。
たとえ勝っても相応の犠牲が出るのは間違いないし、今度は対策を立ててもっと大戦力で来るかもしれない。
少なくとも、カムイ達の様な正規軍相手に喧嘩を売ったのは事は下策に間違いないだろう。

今のカムイ一行は少人数だろ
そもそもここにしろゲームにしろニシキが襲いかかったのは先人の知識から先に殺したほうが良いっていうことなんだし
遅かった例があって、里の非戦闘員を守らなければいけないからこその戦いだろうしなあ
多分、皆殺しにすることで、そもそも人を寄り付かせなくするってのも目的だろうけど

というかif自体の議論がしたいなら本スレ行けよ

今回の話では少人数が割って入られた形になるが、ゲームじゃあ多人数相手に仕掛けているからな。
里を守る為にその先人の知識に頼って戦力の整っている相手に喧嘩を売って、返り討ちに遭って全滅させられているから本末転倒と言えるがな。
まあ、議論はこれで終わりにしとく。

とりあえず今回の話で言えることは、どんな理由があるにせよ一般市民を手にかけたニシキ達は皆殺しにされても文句は言えないと言う事だ(要は賊の討伐と大差がない)。
正当防衛でもあるし、一切の情けをかける必要もない相手だから遠慮なく皆殺しにして構わないわけだ。
いわゆる「捕虜はいらんぞ」と言ったところか。

うーんこのガイジ

触んなよ
長文句点でスレチとか地雷に決まってるだろ

アクアちゃんかわいい
まで読んだわ

◆◆◆◆◆◆
―妖狐の山『妖狐の里への道』―

カムイ「……どうやら、こちらの方角で大方あっているようですね」

カザハナ「それは良いけど、どうやって迎撃するの?」

カムイ「彼らにとってここは庭も当然、ですから短期決戦でリーダー格を倒す以外に道がありません」

アクア「今私達を追ってきている数は?」

カムイ「気配は三つ、それぞれが二人一組の編成のようですから、六匹というところでしょうか」

カザハナ「こっちは三人なのに……」

アクア「敵を倒すのに同じ数で戦う必要なんてないわ。どちらにせよ、その中に彼らが入っていることを信じるしかなさそうね」

カムイ「ええ、でも、彼らが里の仕来りを守り続けているのなら、最終ラインを守るために現れるはずです。それに私たちを追ってきてる先頭の組は、他の者たちと動きがまるで違います」

カザハナ「あたしには何が追って来てるのか、まったくわかんないんだけど……」

アクア「私にもわからないわ」

カムイ「……私だけ変な物が見えているみたいな話に聞こえるのですが……」

アクア「ある意味そうともいえるわ」

カザハナ「実際そうだよね。あたしたちには見えてないわけだし」

カムイ「……なんか腑に落ちません」

 タタタタタッ

カムイ「! 一組が前に出てきました。左右で分かれたところから考えて、挟み打ちにするつもりですね」

アクア「無駄に左のほうがうるさい音をあげているわ」

カムイ「左は音が大きいですが距離は保ったままですが、右の気配が急速に近づいている。どうやら左は意識を向けさせるのが目的のようですね」

カザハナ「それでどうするの?」

カムイ「左を警戒している体で、右を討ちましょう。遅れてやって来ると思われる左は私が仕留めますので、二人は右をお願いします」

アクア「わかったわ」

カザハナ「うん、わかった」

 ザザザザザッ

カムイ(左の音が激しくなって、右の気配はあと数十歩くらいの距離……)

 タタッ タタッ

 バサッ!!!!

妖狐「グオオオオオオッ!!!!」

カムイ「今です!」

アクア「はああっ!!!」ドスッ

妖狐「キャウッ!!!!」

アクア「カザハナ、やって!」

カザハナ「うん。せりゃああっ!」パシュッ

 グサッ グチチッ ブシャアアッ――ドサリッ

 タタッ ガサガサッ

カムイ「そこです!!!」チャキッ ダッ
  
 ドスリッ!

妖狐「クオオオオオンッ……」クタリッ

アクア「これで、まずは一組ね」

カザハナ「どうする。このまま、同じように迎撃していく?」

カムイ「そうしたいですが、足を止めると包囲殲滅されかねませんし、なにより同じ手は使わないでしょう」

カザハナ「じゃあ、どうするの?」

カムイ「このままさらに先へと進んで敵を焦らせましょう。私達の目的が里だという勘違いをリーダー格にしてもらわなくてはいけません」

カザハナ「凄い挑発方法だよね、これ……」

アクア「ええ、だけどこっちも仲間の命が掛かってる。ルーナやフローラが大きく動いてくれてるから、こっちにはこれだけしか来てないともいえるわ。十分に引きつけられているみたいだけど、状況も悪くなり始めてるはずよ」

カザハナ「そうだよね。だけど、あれだけいた妖狐があたしたちの追撃を任せてるってことは……」

カムイ「ええ、リーダー格が私たちを追ってきている可能性は高いです。このまま誘い出して仕留めましょう」

アクア「……でも、さっきの動きで向こうもこちらが視覚に頼っていないことに気づいたはず。違う形で仕掛けてくるのは間違いないわ」

カムイ「ええ、それでも負けるわけにはいきません……。先へ進みましょう」

 タタタタタッ

ニシキ「二人やられた……くっ」

キヌ「ニシキさん、今の動き」

ニシキ「ああ、間違いなくあのカムイってヒトは視覚で判断してない。幻術で急襲じゃ、懐にも入り込めない相手だよ」

キヌ「……このままじゃ、あのヒトたちが里に……」

妖狐「ニシキ様」

ニシキ「ああ、あんなのが里に入ったら、身を潜めてる者たちも見つかって殺されかねないからね。ここで確実に殺さないとだめだ」

キヌ「……ニシキさん。アタシが先行して注意を引くよ」

ニシキ「キヌ、それはダメだ。キヌはまだ戦いを始めて日が浅い、素質は十分にあるけど……」

キヌ「里に何かあってからじゃ遅いってニシキさん言ってたよね。あのヒトが里に向かってる以上、全力で里を守るのがアタシたちの役割。里に一番近づいて来たヒトを相手にするのが長の証明でもあるって……」

ニシキ「……キヌ」

キヌ「アタシ、いつかニシキさんから長を継ぐかもしれないんだよ。なら、ここで役に立てなかったらその資格なんてない。だからニシキさん、アタシがあのヒトたちの注意を引くよ。大丈夫、ニシキさんの役目を奪ったりなんてしない、アタシはまだ後継者候補なんだから、ニシキさんの戦いをちゃんと見て、見習う場所は見習いたいから……」

ニシキ「……わかったよ。キヌ、あのヒトの注意をできる限り引くんだ。お前たちもキヌについて行ってくれるかい?」

妖狐「わかりました。キヌ様、指示通りに動きましょう」

キヌ「うん、ありがとう。それじゃ、ニシキさん、行ってくるよ!」

 ボンッ タタタタッ

ニシキ(無茶はしないでよ、キヌ……)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ルーナ「ちょっと、フランネル! あんた前に出過ぎよ!」

フローラ「安心してください、フランネルよりも前に私が出ますから」

フランネル「そういうことだから、安心して戦えるぜ!」

ルーナ「あんた、男なんだから少しは守る側にまわりなさいよ!」

フランネル「だってよぉ、フローラが前を譲らねえんだから仕方ねえだろ」

フローラ「当り前です。フランネルも強固であろうと地肌なんですから。それに……彼らの牙は思ったよりもあなたに効果があるようですし」

フランネル「うぐっ……わ、悪かったな」

ルーナ「え、そうなの?」

フローラ「ええ、さっき少しもらったみたいで、思った以上に辛い顔をされてましたから」

フランネル「フローラ! そういうこと言うなよ、カッコ悪いじゃねぇか……」

フローラ「死ぬよりはマシでしょう? それより、渡した薬はちゃんと使いましたか?」

フランネル「使う暇なんてねぇよ。こんなに敵が迫ってんだぜ?」

フローラ「……ルーナ、フランネルを一番後ろに下げるから、前に出てきて」

フランネル「ちょ、なんでそうな――」

フローラ「あなたはさっさと傷を癒しなさい。癒せたらまた前に出させてあげるわ」

フランネル「俺は――」

フローラ「口応えするようなら――」

 チャキッ

フローラ「動けないようにするわよ」

フランネル「……こえぇ、わかったよ。傷を癒せばいいんだろ」

ルーナ「……」

フランネル「なんだよ?」

ルーナ「いや、なんかご主人に叱られて落ち込んでる犬みたいで、なんていうか哀れで……」

フランネル「哀れって言うなよな! くそー、待ってろよ、すぐに傷を癒して……うおおおっ、これ、すげぇ沁みる!」

ルーナ「はいはい、痛みが治まるまでここで待ってなさいよ。それとあたしの大活躍、見てなさいよね」

フローラ「ルーナ、私が盾受けした敵を前に出て攻撃してもらえる?」

ルーナ「ええ、任せておきなさい。でも、ちゃんとフォロー頼むわよ。さすがに前に出て孤立とか洒落にならないんだから……」

フローラ「安心しなさい、一人になんてさせないわ」

 ガシャガシャンッ

フローラ「今の私がすべきことは、敵から仲間を守ることだもの」

ルーナ「……あ、ありがと」

フローラ「お礼はいいです。敵が来ます、準備してください」

ルーナ「!」

 タタッ タタッ タタッ

妖狐「シャアアアッ!!!」

フローラ「はあああっ!!!!」ガシャンガシャンッ ガンッ

 ドゴン ドゴンッ!

フローラ「っ!!!!」

 タッ

ルーナ「甘いわよ!」ブンッ ザシュッ

 ドサッ

ルーナ「一匹!」

 ザザザザザッ

妖狐「グオオオオンッ!」

フローラ「させませんよ!」ドゴンッ

 ドサッ ドサリッ

ルーナ「ありがと」

フローラ「はぁ、はぁ。重たい」

ルーナ「流石に、そんな重たいの着こんでたらね」

フローラ「エルフィはすごいわ。この鎧にさらに重りを付けてるらしいわ」

ルーナ「なにそれ……」

フローラ「私にはこれが限界だけど、彼女は――」

 ボンッ

妖狐「グオオオオオッ!!!」

ルーナ「! フローラ、危ない!」

フローラ「!」

 タタタタッ

 シュオンンッ ドドンッ

フランネル「させねぇ!!! おらあああっ!!!」ブンッ

 ドゴンッ!!!

妖狐「キャフッ!!!!」ドサッ ゴロゴロゴロ グテリッ

フローラ「……フランネル」

フランネル「へへっ、どうだ。俺の力もすげぇだろ?」

フローラ「……ええ。ありが――」

フランネル「いや、別に助けたくて助けたわけじゃねえぞ。俺も活躍したいってところで敵が現れただけなんだからな! だから、別に礼とかいらねえからな!」

フローラ「……」

ルーナ「……」

フランネル「……な、なんだよ」

フローラ「はぁ、そんなに尻尾を振り振りされて言われても、説得力がありません」

ルーナ「そうね。っていうか、逆になんか腹が立つ」

フランネル「な、助けたのにそれはないだろ!?」

フローラ「あら、助けたくて助けたんじゃないんでしょう?」

フランネル「うぐっ。そ、そんな風に言わなくてもいいだろぉ……」

フローラ「……ふふ、冗談よ。改めてありがとう、助かったわ」

フランネル「お、おうっ///」

ルーナ「尻尾振ってないで、さっさと準備しなさいよ。また囲まれ始めてるんだから!」

フランネル「へへっ、わかったよ。行くぜ!」

フローラ「ええ、どこからでもかかって来なさい」

ルーナ「……正直、様子を見ながら小出しで来てほしいところなんだけど……」

ルーナ(どうにかこっちに敵を引きつけられたけど、このままじゃ。ミンチになっちゃいそう。カムイ様、頼んだわよ……)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

カムイ「来ましたね……。数は三、一匹かなり早動きの者がいます」

アクア「もう一匹足りないわね」

カムイ「……離れた場所で待機しているようですが、どう出てくるのでしょうか?」

カザハナ「だけど、向こうは幻術で姿を隠してるわけじゃないみたい……」

カムイ「?」

アクア「相手は幻術を解いているわ。おそらく、小細工は無用ということね」

カムイ「なら、こちらも小細工はほとんどできませんね」

カムイ(あの高速で移動しているのがリーダー格なら、あれをどうにか倒せれば……)

アクア「カムイ、あの高速で動いているのは……」

カザハナ「あれが妖狐のリーダーかな?」

カムイ「どちらにせよ、ここで決着を付けます。あの早く動いている妖狐を狙います、敵の動きに注意してください」



キヌ(……やっぱり、アタシを狙ってるみたい。他の二人は周囲を気にしてるのに、あの目を瞑ってるヒトだけはアタシを見抜いてる……)

妖狐(キヌ様)

キヌ(うん、たぶんだけどアタシたちの接近に合わせてニシキさんも動いてくれるから、どれだけ注意を向けられるかかな)

妖狐(では?)

キヌ(命懸けになっちゃうけど、いいかな……)

妖狐(もともと、里を守ることは命を懸け。キヌ様、あなたの案に乗ることに問題はない)

キヌ(うん、それじゃいくよ……)

 ザザザザザザッ

アクア「来たわ」

カザハナ「っ! 草むらに隠れて姿が見えにくい!」

カムイ「三匹同時に来て……! アクアさんカザハナさん、私の近くに――」

キヌ「させないよ!!!!」

 ズザザザザザッ

カムイ(! さらに早く!?)

キヌ「はあああっ!!!」

 ザッ ダッ ドゴンッ

カムイ「ぐっ!!!!」ドサッ

アクア「カムイ!」

 ダッ

妖狐「グオオオオオッ!!!!」

アクア「っ!」

 パシュッ バシュンッ!!!!

妖狐「キャウウウウウッ!!!」ドサッ

アクア「カザハナ!」

カザハナ「アクア様、カムイ様の援護に向かって!」

 ズザザザザッ

 シュオオオンッ

妖狐「グオオオオッ!」

 ザシュンッ

カザハナ「きゃあああっ、ぐっ、このぉおおお!!!」 

 ブンッ ブンッ

 サッ ササッ

アクア「!」

カザハナ「アクア様、早くカムイ様の元に行って、さっきまで離れてた奴が大回りに向かったから」

アクア「でも、あなたは!」

カザハナ「片付けたら必ず行くから、今はカムイ様の援護に向かって。大丈夫、こんなことで死んだら、もうとっくに死んでるくらいの体験してるんだからさ」

アクア「……わかったわ。すぐにどうにかしてくるから……」

カザハナ「うん」

アクア「ええ」

 タタタタタッ

妖狐「グルルルルルッ」

カザハナ「それじゃ、来なさい。相手になってあげる!」ダッ

カムイ「ぐっ……」

カムイ(くっ、傷が……。思ったよりも、深く入り込んでる)

キヌ(……どうにか引きはがせた。つぅっ!!!)

 ポタポタタタッ

キヌ(あの状態で攻撃を当ててくるなんて、本気で殺すつもりで攻撃を仕掛けたのに……。でも、相手もかなりの深手を負ってる、今ならアタシでも――)

カムイ「はぁ、はぁ」

キヌ「……逃げないで里に向かったりするからだよ。認められたヒト以外は里にいれちゃいけない。それがアタシたち一族がずっと守ってきたことなんだから、だから恨まないでよ」

カムイ「………」

キヌ「……」ダッ

キヌ(このヒトたちを殺して、ニシキさんに少し認めてもらって、いつかアタシが長になったら、もう少し形を変えてみせる。ニシキさんだって、本当はただ入って来ただけの人たちを殺すことに疑問をもってるはずだもん。だから、それをアタシが直してみせるから、だから今だけは――)

キヌ「ごめんね……」

 グオオオオオオッ!!!!


 チャキッ

カムイ「……そこです」

 ブンッ

 ビシャッ……

 ビチャッ

 ポタ ポタタタッ……

キヌ「あっ……え、あっ、こふっごほっ……どうし……て……」

カムイ「……」

キヌ「やだ……よぉ。ニシキさ……ん、いや、だよぉ……」ズルズル ドサッ

カムイ「……」

キヌ「しに……たく、な……い……。ニシキさん、アタシ……ごほっ、ごふっ……」

カムイ「……」

キヌ「また、ニシキさんと……」

 クタリッ

キヌ「」

カムイ「……」

 ザザッ ザザッ ダッ

ニシキ「キヌ……?」

 テトテトッ

ニシキ「……キヌ、なんで眠っているんだい? まだ、敵は残っているんだよ?」

キヌ「」

ニシキ「……キミがキヌを殺したんだね……」

カムイ「そうなります……」

ニシキ「……そう、ならキミの体を引き裂カないといけない。キミみたいなヒトの血で雨を降らせないといけない」

 シュオオオンッ ザッ コフーッ

ニシキ「キヌ……、大丈夫だよ。キミを殺したヒトはキミと同じ場所にはいかないから……ここに近づこうとするヒトへ警告するための標識にでもなってもらうからね……」

 ダッ

 ブンッ カキィン

カムイ「!」

ニシキ「キヌが付けてくれた傷のおかげで、キミを殺すのにそれほど時間はかからないよ。他の仲間もみんな引き裂いて標識にしてあげる。可哀そうだからみんな並べておいてあげるから、少しは感謝してほしいな」

カムイ「そうなるつもりはありません」

ニシキ「それを決めるのはボクたちのほうだよ。そして、もう妥協するつもりもない、ヒトを絶対に近づかせないための標識になるのがキミたちが辿る道だよ。だから、まずはキミからそうしてあげる!」

 ザッ バシュッ ザンザンッ

カムイ「くっ、ううっ!」

ニシキ「ははっ、早く死んでよ。次がいっぱい待ってるんだからさ……」

カムイ「……死ぬつもりはありません!」ブンッ

 ガキィン

ニシキ「……」

カムイ「はぁ、はぁ」

ニシキ「美しくないヒトが、美しいキヌを殺して生き残れると思っているのかい? 虫唾が走るね。だから、これで終わりだよ……」ダッ

 シュンシュン

カムイ「!」

カムイ(速い!)

ニシキ「血の雨を降らせてよね。ボクの気が晴れるくらいいっぱいね……」

 ダッ グルグルグルッ ザンッ

カムイ(間に合わない!!!)

 タタタタッ

アクア「これでも喰らいなさい!!!」ブンッ

 バシュッ

ニシキ「くっ!!! ぐああっ」

カムイ「アクアさん!」

アクア「カムイ、今よ!」

カムイ「はい」

ニシキ「くっ、許さない。キヌを殺しておきながら、生きていこうなんて!」

カムイ「行きます!」

 ダッ ジャキッ

ニシキ「勝手に入ってきたヒトが、仕来りを破って侵入してきたヒトが、生きてキヌが死ぬ。そんなこと、許せない!!!!」

 ダッ シュオオオオンッ

ニシキ「はああああっ!」ブンッ

カムイ「やああああっ!!!」ブンッ

 ザシュリッ……

 ポタポタッ ポタタタッ

ニシキ「あ……」

カムイ「……」

ニシキ「……なんで。なんで……勝手に入ってきたヒトであるキミたちに、ボクたちが……」

 ズルズル ブシャリッ

 テト テトテトッ

カムイ「私達がしたことを許す必要なんてありません……だけど――」

ニシキ「?」

カムイ「ごめんなさい……」

ニシキ「え……」

カムイ「……」

ニシキ「……あはは、謝られちゃったよ……。これじゃ、ボクたちが馬鹿みたいじゃないか……ごふっ」

 テトテト スッ

 ナデナデ

キヌ「」

ニシキ「キヌ……寒いから一緒に寝てもいいかい……。ボクも、キミの元に行きたいから……」

 ドサッ

ニシキ「……は、はは……ごめんよ、キヌ……。ボクは……最後まで――」

ニシキ「キミを……認めてあげられなかった……」

「ごめん……よ……」

今日はここまでで
 
 次でこの章が終わります。
 
 ニシキは仕来りを頑なに守リ続けるタイプ。キヌはおかしいと思ったところを変えてみようと考えるタイプかなって思った。

 選択肢安価の結果で、イズモ防衛戦が選ばれていたらヒサメを出す予定でした。

かなしいなあ


暗夜ルート故に仕方なしか

民間人を手にかけている事に関してはこいつらはガンツみたいな奴らと大して違わないし、ついさっきまで散々民間人を殺しておいて何勝手な事をほざいているんだよとしか思えない。自分たちは今まで散々殺しておきながら(しかも民間人を)いざ自分の身内が殺されたら喚き散らすとか、我儘にも程がある。戦場で[ピーーー]以上は殺される覚悟はあるだろうが。

ついでに言えば、カムイは襲い掛かってきた暴漢を返り討ちにしただけで謝る必要は全くない。
むしろ「そうやって先人の教えを守る事に固執し、思考停止して自分で考える事を放棄し、無能な判断で多くの罪無き人々を殺し、仲間達を犬死させた事をあの世で詫び続けるが良い」ぐらい言っても良いぐらいだ。

みんな頭の中ではいろいろ考えてるけど書かないだけだからいちいち長々と書くのやめて短くまとめて♡

ここはお前の日記帳じゃないぞガイジ

触れちゃらめえええ(番外リリス感)

君のコメント楽しみだしトリップつけてくれよなー頼むよー

じゃあ短く2行でまとめてみる。
相手はこっちの話も聞かずに民間人だろうが問答無用で殺しにかかってくる連中なんだ、たとえ皆殺しにしても謝る必要なんか欠片も無い。
先人の教えかどうかは知らないが、思考停止せずに自分で考え、状況を踏まえてケーズバイケースで臨んで、もっと柔軟に対応しろ馬鹿がッ!!

ところで、トリップって何?

ガチの掲示板初心者なら半年ROMってろよ

カムイの目的は平和な世界だし、まだ人を[ピーーー]人が死ぬことに忌避感持ってるだろ
ガンズとかと違って、矛を交えずにすんだ可能性もあるわけで

そもそも登場人物が全員冷静に客観視して物を言えると思ったら間違いだぞ
主観にしたって読者とカムイと妖狐では色んな考え方も違うし
戦闘中で負ければ里が危ないかもしれないって場面で今までの常識とは正反対のことしろってのは無理がある

2行でも長すぎるしキモすぎるから次からクソ駄文は1行以内に収めて♡

すでに二桁以上は殺しているし、そこは正当防衛なんだから割り切れよとしか思えない。
ニシキ達はガンツ達と同じだろ?少なくとも話し合いの余地が無かったという点では同じだ。一方的に民間人達を殺戮し、停戦を呼び掛けたカムイに対して取り付く島もなかっただろ。

そもそも、里が危険さらされたのは(もっとも、それ自体が被害妄想だが)民間人達を殺戮していて、その騒ぎを聞きつけてカムイ達が介入して来たからなんだが。
結果的に自分達の疑心暗鬼が里に危機もたらしたわけだから、馬鹿じゃないの?と思えるんだけど。

よし分かったから名前欄に好きな言葉をいれよう

もう都度NG入れて触れないのが一番でしょ
なんなら触れるヤツも一緒に入れとけ

◆◆◆◆◆◆
―白夜・妖狐の山『川の合流地点』―

 タタタタッ

カムイ「……皆さん、無事でしたか」

フローラ「はい、カムイ様もご無事で何よりです」

フランネル「それにしてもびっくりしたぜ。さっきまで敵意丸出しだったのに、踵を返すように逃げていったからよぉ」

ルーナ「様子を見る限りだと、作戦はうまくいったってことよね?」

アクア「ええ、どうにかね。リーダー格を失っても攻撃を続けてくる可能性もあったけど、里に私達が侵入するのを防ぐために駆け足で里の防備を固めることにしたようだから」

カザハナ「うん、そうだね。なんとかなってよかっ――いつつっ……」

フローラ「カザハナ?」

カザハナ「あははっ、ちょっと攻撃を受けちゃっただけだから。これくらいどうってこと――」

フローラ「痩せ我慢はよしなさい。背中の出血、隠し切れていないわよ?」

カザハナ「あ、えっと、これは……」

フローラ「カムイ様、少しばかりカザハナの傷を癒しますので、先に戻ってください」

カムイ「いいんですか?」

フローラ「ええ、それに追い打ちがあるようでしたら私が撃退しますので、安心してください。それよりも、助けた方々の様子も気になります」

カムイ「わかりました。では、ルーナさんもここに残ってお二人の支援をお願いできますか?」

ルーナ「任せておきなさい。どんな奴が来ても返り討ちにしてあげるわ」

フランネル「追い打ちがあるかもしれないなら、俺が残ってもいいぜ?」

フローラ「今からカザハナの傷の手当をするって言っているのだけど?」

フランネル「ああ、だからこそ俺みたいなのが必要になるだろ。まかせとけって、指一本触れさせたりしな――」

フローラ「あなたがいると治療ができないので、カムイ様と一緒に同行してください。わかりましたね?」

フランネル「な、なんでそんな顔で言うんだ? 意味わからねぇ」

アクア「デリカシーに欠けているのはどうかと思うわ」

ルーナ「あんた男なんだから、察しなさいよね!」

フランネル「そんなこと言われてもよぉ」

カムイ「フランネルさん、もしかしたら敵の別動隊が逃げた人々の元へ向かっているかもしれませんので、私と同行してください。もしも戦闘がまた起きるようでしたら、あなたの力が必要になります」

フランネル「そ、そうか? ま、まぁ、そこまで言われちゃ仕方ねぇからな……」フリフリ

アクア「喜んでるみたい、やっぱり単純ね」

フランネル「うるせー!」

カムイ「私とアクアさん、フランネルさんで様子を見てきます。フローラさん達はカザハナさんの手当が済み次第、合流してください」

フローラ「はい、わかりました」

ルーナ「わかったわ。それじゃ、ちょっと傷口見るわよ……」

カザハナ「……っ……ちょ、ちょっと優しくしてよ!」

フローラ「じっとしてればすぐに終わるわ。優しくもしてあげるから、我慢しなさい」

カザハナ「ううっ、わかったわよぉ……」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

フランネル「それにしても話を聞かない奴らだったな」

アクア「そうね。でも、彼らには彼らの守るべきものがあって、それを守るために攻撃してきたに過ぎないわ」

カムイ「……出来れば戦いを回避したかったのですが……」

アクア「それは誰も同じよ。だけど、あなたは襲われている人たちを放っておけなかった。その行いは間違ってなんていないわ」

フランネル「よくわからねえけど、カムイは嫌々にあの襲われてる奴らを助けたわけじゃねえんだろ? なら、それでいいんじゃねぇかな……」

カムイ「そう考えていいんでしょうか?」

フランネル「ああ、それに命が助かったんだし、別に悪いことしたわけじゃねえんだからさ」

アクア「フランネルは思ったよりも単純なのね」

フランネル「難しいことは苦手なんだよ。それにあの妖狐だっけか。あいつらの考えがわからねえわけじゃねぇ。怪しい奴がいたら、さっさと排除すれば結果的に安全っていうのは分からないわけじゃねえし、リスクは承知の上だろうからな。だから、カムイが気にすることじゃねえってことだよ」

カムイ「……」

フランネル「な、なんだよ……」

カムイ「…もしかして、私を慰めてくれているんですか?」

フランネル「わ、悪いかよ……。見た眼大丈夫そうにしてるけど、なんか違和感があるからよぉ。御節介だったか?」

カムイ「いいえ。ありがとうございます、少しだけ気分がよくなりました」

フランネル「へへっ、そうか!」

アクア「……」

カムイ「アクアさん?」

アクア「なんでも無い、気にしないで」

カムイ「そうですか?」

アクア「それよりも、向こうから声が聞こえるわね」

カムイ「え?」

 ワー ワー ザワザワ

フランネル「本当だ。血の臭いも混じってるし、逃げた奴らもいるんじゃねえか?」

カムイ「かもしれませんね。人数的にはマークス兄さん達と合流しているのかもしれません」

アクア「まずは行ってみましょう」

カムイ「はい」

 タタタタタッ

カミラ「二人とも治療のほうは終わったかしら?」

エリーゼ「うん、今終わったところだよ」

サクラ「はい、応急処置は終わりましたから、これで大丈夫なはずです」

カミラ「ありがとう、それじゃ向こうで休んでちょうだい。カムイが帰ってくるまでゆっくり待ちましょう」

エリーゼ「うん、サクラ。行こう?」

サクラ「はい」

 タタタタタッ

カミラ「カムイたち、遅いわね……」

 タタタタタッ 

アクア「カミラ!」

カミラ「アクア、それにカムイも。みんな無事だったのね。おねえちゃんとっても心配したのよ」

カムイ「すみません、心配をおかけして。その、逃れてきた皆さんは?」

カミラ「安心して頂戴、逃げてきた人はちゃんと保護したわ」

カムイ「妖狐の集団は里へと戻っていますから、下山するなら今のうちです。それを伝えようと思うのですが、逃げてきた方々はどこに?」

カミラ「向こうに代表者がいるわ。私が伝えてきてもいいけど?」

カムイ「いいえ、私から直接伝えようと思います」

カミラ「そう、それじゃ任せるわね。ところで、ルーナ達はどうしたの?」

カムイ「今、カザハナさんの治療をしているところです。少ししたら合流すると思いますので」

カミラ「わかったわ。野営をするにも、ここは少し危ないもの、今日中に安全圏にまで脱せるように動カないといけないから、みんなに行動できるよう準備をさせるわね」

カムイ「はい。私達は代表者の元へ向かいましょう」

アクア「そうね」

フランネル「そうだな!」

 タタタタッ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

代表者「そうですか。助けていただいた上に、安全に下山できるようにしてくれるとは、誠にありがとうございます」

カムイ「いいえ、それよりも申し訳ありません。私達がもっと早くに気が付いていれば……」

代表者「いいえ。あなた達がいなければ、私達は全滅していたはずです。何とお礼を言ってよいのか……本当にありがとうございます」

カムイ「……あの、一つお聞きしてもいいですか?」

代表者「はい、なんでしょうか?」

カムイ「なぜ妖狐の山を通ってきたのですか?」

代表者「……私達はイズモ公国へと向かうために、この山を通ってきました。もちろん、妖狐の話は昔から聞いています。だとしても、私たちは……」

アクア「なぜ、そんな無謀なことをしたの? あなた達は妖狐のテリトリーに入り込んでしまっていた。とても、この山について詳しいとは思えない。なのに、ここに入りこんできた。その理由は何なの?」

代表者「そ、それは……」

カムイ「それは?」

代表者「……き、気にしないでください。もう、私達だけでも大丈夫ですので、あなた方も急いでいるのでしょうから」

アクア「いいえ、そうはいかないわ。確かに妖狐が容赦なく襲ってきたのは間違いない、でもあなた達がここに来た理由、それははっきりさせておかないといけない」

カムイ「それにイズモを目指しているのでしたら、その理由も教えていただきたいんです。一体何が起きているのかも」

代表者「……そ、そうかしれませんが…」

カムイ(どうして言い辛そうにしているんでしょうか? まるで、私達に聞かせたくないような――)

 ヒュンッ!

 サッ

 コツン、コツン、コロコロコロ……

アクア「……一体何のつもりかしら?」

代表者「な、こ、これは。違うのです、これは」

 ヒュンヒュン

 サッ サッ パシッ

フランネル「……石だよな、これ。特に何か仕掛けがあるわけじゃないみたいだけど、あぶねえな」

カムイ「その藪の中にいるのは誰ですか?」

 ザザッ ザザッ

村人たち「……」

若い村人「……」

代表者「な、何をしているんだ!!! こんなことをして――!!!」

若い村人「村長こそ、なにしてんだ。なんで、そんな奴らに頭を下げてやがる? こいつらに感謝なんてする必要ねえし、わざわざ口ごもる必要もねえんだよ!」ブンッ

 サッ

カムイ「一体何の話をして――」

若い村人「てめえら、暗夜王国の人間だろ? そんな格好してる奴らが白夜王国の人間だとは思えねえからな」

カムイ「ええ、私達は暗夜王国の人間です」

若い村人「てめえら知りたがってたよな? 俺達がどうしてこんな妖狐の山を横断してるのかってさ。俺たちだってな、こんなところ近づきたくもねえ。危ないことは百も承知だった」

フランネル「なら、なんで近づいたんだよ?」

若い村人「……の所為だ」

カムイ「え?」

若い村人「てめえらの所為だって言ってんだよ!!! なにが暗夜だ、なにが白夜だ。てめえらの戦争に俺たちを巻き込みやがって、俺たちを助けて英雄気取りか?」

代表者「やめるんだ!」

若い村人「いや、やめねえ! 俺達はここまで平和に過ごしてきた、平和に過ごしてきたんだよ。てめえら暗夜の嫌がらせとかもどうにかして生きてきた。何が領土拡張だ、てめえらみてえな戦争しかできねえ民族は、自国で争ってればよかったんだ」ブンッ

カムイ「……」

若い村人「風の村に駐屯してる白夜軍は、暗夜の人間を通した疑いのある村を焼き打ちにするって言ってる。表の街道はすべて抑えられて、いつ来るかもわからねえ白夜の連中におびえるのはまっぴらだった。だから動いた。安全な場所に逃げるために、危険を冒してここを通るって決めた。いくつかの村が山を抜けてイズモに向かうことを決めていた。危険を承知でだ!!!」

アクア「……」

若い村人「わかるか? 俺たちの村も含めて、多くの村が恐怖に怯えて暮らしてきたんだ! てめえら暗夜と白夜の戦争に俺達は関係なく生活を続けてこれてたのに、てめえらが俺たちを巻き込んだんだ!」

 ガシッ

若い村人「返せ!」ブンッ

カムイ「……っ」

 コトンコトンッ……ツゥー

アクア「カムイ!」

フランネル「なんで避けねえんだ」

カムイ「……」

若い村人「返せぇ、返してくれよぉ、女房を返してくれよぉ……。なんで、こんな……こんな理不尽なことにまきこまれて死ななくちゃいけねえんだよぉ……」

カムイ「……」

若い村人「てめえらは命の恩人なんかじゃねえ……。疫病神だ。俺達がこんな目にあったのはお前達が、お前達が戦争を始めたからだ……」

カムイ「戦争を始めたから……」

若い村人「俺たちの知らないところで、戦争しろよ! 俺達の知らないところで殺しあえよ! 俺達の生きてる場所を巻き込まないでくれよぉ……。うううっ、うああああああっ……」

カムイ「わ、私達は……」

代表者「……何も言わないでくだされ」

代表者「あなた方に助けられたこと、それには礼を言いたい。それは間違いないのです」

カムイ「……」

代表者「ですが、私達はあなた方を怨んでいます。たとえ、どんな理由であれ、あなた方が戦争を運んできたのですから……」

カムイ「……」

代表者「これは一生消えない傷です。どんなに月日が経とうとも、ここにいた私達はそれを忘れることはありえません。ですから、もう、私達に関わらないでいただきたい……。それが私たちの唯一の願いであり、これ以上の怨みを募らせないための行為だと思いますから……」

フランネル「なんだよそれ……」

代表者「どうか、お願いします……」

カムイ「……わかりました」

アクア「カムイ……」

カムイ「この地図を、これに記されている通りに進めばイズモに辿りつけるはずです……。着いたら、燃やしてしまって構いません」

代表者「……ええ、使わせていただきます」

カムイ「はい」

代表者「では……失礼いたします」

若い村人「ううっ、うぐうっ……」

 ザッ ザッ ザッ

アクア「カムイ、傷の手当をするわ」

フランネル「傷薬、少しだけ残ってるぞ」

アクア「ええ、ありがとうフランネル。少し沁みると思うわ」

カムイ「っ……すみません」

アクア「謝らないで。あなたはなにも悪いことはしていないわ」

カムイ「……」

カムイ(……私が戦争を始めた)

カムイ(そう、あの日。私は私の戦争を始めた……。本当なら、白夜王国と暗夜王国だけの戦争だった。その中で私が新しい戦争を始めて、そして新しく巻き込まれた人たちがいて、怨みも生まれた)

カムイ(なら、私はそれを体に巻きつけていけばいい)

アクア「カムイ?」

カムイ「……大丈夫です。傷の手当てありがとうございます。フランネルさん、アクアさん」

フランネル「気にすんなって」

アクア「ええ」

カムイ「行きましょう。皆さんが待っているはずですから……」

カムイ(この体は咎を背負うには小さいけど……、欲張ってもいいですよね)

 シュオオオオンッ

カムイ(毒を受けて飲み込むのなら……。好都合な、そういう体なんですから……)

◇◇◇◇◇◇
―白夜王国・テンジン砦『兵舎』―



タクミ『必ずカムイを……あの裏切り者を殺して、リョウマ兄さんの潔白を証明してみせるから』

リョウマ『タクミ、無茶はするな。まだ、前線は安定していないんだぞ』

タクミ『兄さんは僕のことが信用できないの? ヒノカ姉さんは僕のことを頼ってくれた、たとえ心がボロボロだからだとしても、姉さんは僕を必要としてくれた! なのに兄さんは僕を頼ってくれない……どうしてなんだ!』

リョウマ『俺はお前たちを失うわけにはいかない。ただ、ただそれだけだ……』

タクミ『なんだよ、その言い方。僕じゃ、あいつに勝てないそう言ってるんだよね? わざわざ負ける戦いをする必要はないって、そう言いたいならそう言えばいいんだ!』

リョウマ『タクミ……』

タクミ『リョウマ兄さんはすごいよ。だけど、今の兄さんには何もできない。できる立場にいない、なら僕が守る。僕が守ってみせる。そして取り戻すよ。僕達、そしてリョウマ兄さんのいるべき場所も。だから行ってくる、リョウマ兄さん』

 カツンカツン

 ガチャンッ ガシャンッ!!!

タクミ『必ず殺してやる。カムイを、あの裏切り者を、必ず……必ず!!!』



タクミ「はっ!!!!」ガバッ

タクミ「は……はぁ……」

タクミ「……また、兄さんと話した夢、ううっ、なんで、こんな後悔しているみたいに……」

 コンコン

タクミ「誰だい?」

オボロ「タクミ様、私です」

タクミ「オボロ? もう出立の時間?」

オボロ「はい、全員準備はできております。あとはタクミ様の指示通りに」

タクミ「わかった。全員に門前に集合するよう伝えてくれるかな」

オボロ「はい、わかりました」

 タタタタタッ

タクミ「あいつを殺す。そうすれば、全部元通りになるんだ」

 ピチャン ピチャン……

タクミ「お前は僕が殺してやる……」

「それが僕が今望む、一番の願いなんだから……」

 第二十章 おわり

○カムイの支援現在状況●

―対の存在―
アクアA
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)

―城塞の人々―
ギュンターB++
(恋愛小説の朗読を頼まれています) 
フェリシアB+
(カムイに従者として頼りにされたい)
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
フローラB
(すこしは他人に甘えてもいいんじゃないかと言われています)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)

―暗夜第一王子マークス―
ラズワルドA
(あなたを守るといわれています)
ピエリB
(弱点を見つけると息巻いています)
マークスB++
(何か兄らしいことをしたいと考えています)

―暗夜第二王子レオン―
オーディンB+
(二人で何かの名前を考えることになってます)
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)
レオンB+
(カムイに甘えてほしいと言われて、いろいろと考えています)

―暗夜第一王女カミラ―
ルーナA
(目を失ったことに関する話をしています)
カミラA
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ベルカC+
(イベントは起きてません)

―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼA
(昔、初めて出会った時のことについて話しています)
ハロルドB
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィB+
(一緒に訓練をしました)

―白夜第二王女サクラ―
サクラA
(カムイと二人きりの時間が欲しいと考えています)
ツバキB
(イベントは起きていません)
カザハナC+
(イベントは起きていません)

―カムイに力を貸すもの―
シャーロッテB++
(返り討ちにあっています)
スズカゼB
(おさわりの虜になったようです)
サイラスB+
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB+
(許されることとはどういうことなのかを考えています)
モズメC+
(イベントは起きていません)
リンカB
(イベントは起きていません)
ブノワC+
(イベントは起きていません)
アシュラC+
(イベントは起きていません)
フランネルC+→B
(イベントは起きていません)

●異性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・レオン×カザハナ
 C[本篇の流れ] B[3スレ目・300] A[3スレ目・339]
・ジョーカー×フローラ
 C[1スレ目・713~715] B[1スレ目・928~929] A[2スレ目・286]
・レオン×サクラ
 C[1スレ目・511~513] B[2スレ目・297~299] A[3スレ目・797]
・ラズワルド×ルーナ
 C[1スレ目・710~712] B[2スレ目・477] A[4スレ目・177]
・アクア×オーディン
 C[3スレ目・337] B[3スレ目・376] A[4スレ目・353]
・ルーナ×オーディン
 C[4スレ目・352] B[4スレ目・411] A[4スレ目・460]

【支援Bの組み合わせ】
・ラズワルド×エリーゼ
 C[1スレ目・602~606] B[3スレ目・253]
・ブノワ×フローラ
 C[2スレ目・283] B[2スレ目・512]
・エリーゼ×ハロルド
 C[2スレ目・511] B[2スレ目・540]
・オーディン×ニュクス
 C[1スレ目・839~840] B[3スレ目・284]
・ベルカ×スズカゼ
 C[3スレ目・252] B[3スレ目・315]
・レオン×エルフィ
 C[3スレ目・251] B[4スレ目・437]
・アクア×ゼロ
 C[1スレ目・866~867] B[4スレ目・438]

【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
 C[1スレ目・377~380]
・モズメ×ハロルド
 C[1スレ目・514~515]
・ギュンター×ニュクス
 C[3スレ目・246]
・ルーナ×ハロルド
 C[3スレ目・375]
・カザハナ×ツバキ
 C[3スレ目・772]
・アシュラ×サクラ
 C[3スレ目・773]

久しぶりに見たけどあっさりキヌが死んですごいショックだったわ...
子世代までこうもなると辛い

●同性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・リンカ×アクア
 C[1スレ目・888~889] B[2スレ目・285] A[3スレ目・254]
・ピエリ×カミラ
 C[1スレ目・752~753] B[2スレ目・478] A[2スレ目・513]
・フェリシア×ルーナ
 C[1スレ目・864~865] B[1スレ目・890~891] A[1スレ目・930~931]
・フローラ×エルフィ
 C[1スレ目・471~472] B[3スレ目・338] A[3スレ目・377]
・レオン×ツバキ
 C[1スレ目・492~493] B[1スレ目・870] A[3スレ目・798]
・ベルカ×エリーゼ
 C[2スレ目・284] B[3スレ目・301] A[4スレ目・354]
・ピエリ×ルーナ
 C[3スレ目・249] B[4スレ目・317] A[4スレ目・412]

【支援Bの組み合わせ】
・ギュンター×サイラス
 C[1スレ目・926~927] B[3スレ目・316]
・フェリシア×エルフィ
 C[1スレ目・367~368] B[2スレ目・541]
・シャーロッテ×モズメ
 C[3スレ目・248] B[3スレ目・285]
・ベルカ×ニュクス
 C[4スレ目・176] B[4スレ目・410]
・シャーロッテ×カミラ
 C[2スレ目・476] B[4スレ目・439]
・アクア×ルーナ
 C[3スレ目・283] B[4スレ目・461]

【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
 C[1スレ目・423~425]
・ピエリ×リンカ
 C[3スレ目・247]
・ピエリ×フェリシア
 C[3スレ目・250]
・ジョーカー×ハロルド
 C[1スレ目・426~429]
・フローラ×エリーゼ
 C[4スレ目・178]
・エルフィ×ピエリ
 C[3スレ目・771]
・カミラ×サクラ
 C[4スレ目・175]
・スズカゼ×オーディン
 C[4スレ目・318]
・ラズワルド×オーディン
 C[4スレ目・459]
・サクラ×エルフィ
 C[3スレ目・774]

今日はここまでで

 カザハナのカムイ支援はC+ではなくBになっています。表記ミス、申し訳ありません。
 今回のスレは21章とピエリ×ルーナ番外で終わりになると思います。

 この先の展開を安価で決めたいと思います。参加していただけると幸いです。
 
◇◆◇◆◇
 カムイと話をする人物(今回一緒に戦ったAに達してないキャラクター限定)

・フランネル
・フローラ
・カザハナ

 >>764

◇◆◇◆◇
 戦ったペアの中で支援が進行する組み合わせ
(カムイと話をする人物に選ばれたキャラクターを選んで大丈夫です)

・フランネル
・フローラ
・アクア
・ルーナ
・カザハナ

 一組目>>765>>766

 二組目>>767>>768
(キャラクターが組内で被った場合は次の安価のキャラクターになる形です)
 
 このような形で、よろしくお願いいたします。

フランネル

フローラ

ルーナ

重複していいならルーナ、だめならアクア

王道を往くカザハナ

他人に無関心で、非常に自己中心的で世界に関心がない
という海外版でアズーラが言ってた欠点を体現したような村人だった

カムイアクア透魔支援じゃなかったか?
しかしこのスレのルーナの人気よ
やっぱりツンデレは神なんやね

助けたはずの民衆に責められる、まるでザンボット3だな。
暗夜がやってきた事で責めるならともかく、白夜の無能な軍事政策の被害を他国の性にするとか八つ当たりでしかないし、馬鹿だなこいつら。
カムイ達が寛容だったから良かったものの(カムイ達がその気なら皆殺しに出来る)、自分達が生殺与奪を握られている立場を自覚せず一部の馬鹿が暴走して狼藉行為に走る、こんな馬鹿共の面倒を見ないといけない村長に同情をする。

完全に暗夜が仕掛けたせいだし狼藉は別にはたらいてないし村長も恨んでるって言ってるんだよなあ

暗夜の嫌がらせ(ノスフェラトゥが出した被害など)とかは完全に暗夜側の落ち度だけど、「暗夜の人間を通した疑いのある村は焼き打ちにする」は完全に白夜側の落ち度だろ。
命を助けてくれた人達に石を投げるのが狼藉行為でなければ何なんだ?しかも相手は王族だったし、本来ならその場で首チョンパでも文句は言えないだぞ。
村長が恨んでいると言ったのは代表者として村人達の総意を言っただけで他の連中よりは冷静に対応していたぞ。

それもそもそも暗夜が戦争を仕掛けたからってちゃんと村人が話してくれてるんだよなあ
というか嫁を戦争で亡くした人間に冷静な判断強要するのは酷だろ
実際は違おうが、この人たちにとってカムイ一行は命を助けてくれた以前に戦争をもたらして平和を奪った奴らなんだから
村長が冷静なんじゃなくて、恨んでる相手だろうが冷静に対処できるからこそ村長なんだぞ
民が死んで村も捨てなきゃいけなかったのに負の感情抱かない長がいるか

作中の登場人物にもそれぞれに人生があり立場があり感情も考えもあるのをちゃんと理解してるか?

名探偵コナンで好いてる女性が留守番してる別荘に火をつけてかっこよく救出して自分に惚れさせようって事件があったよな 知ってて誰が惚れるかって話ですわ
白夜がキレたのももともと暗夜のせいだし その場で首ちょんぱだの皆殺しだの完全に眷属ガロンと同じ考え方

長文は>>1のssだけで充分よ

戦争を引き起こした責任を暗夜に求めるのは理解できるが、白夜のイカれた政策の責任まで暗夜に求めるのは筋違いだろ。
その責任はあくまでも白夜軍の上層部にあるし、文句があるなら白夜に言うのが筋だろ(もっとも、直談判した所で良くて門前払い、悪ければ殺されるだけだが)。
暴走したのが十代の血気盛んな思春期の子供ならまだ大目に見れるが、暴走していたのは立派な大人だ。その当たりはどうなんだ?
少なくとも、生き残って安堵している人達からすれば「余計な事をしやがって」って思うだろうな。
内心恨んでいても村長は冷静な対応をしているから、一部の暴走して筋の通らない感情論を喚き散らしている馬鹿達がより酷く見える。
カムイ達がこの村人達を狼藉行為をされた報復に殺したりはしないだろうけど、その気になれば出来るだろ。
例えば、もし助けたのがガンツ達みたいなのだったら(まずありえないが)間違いなく皆殺しされるし、もしピエリがその場にいたら少なくとも、石を投げた奴らは殺されている。
要はこの村人達はカムイ達の寛容さ甘えているんだよ。

こいつ理屈捻じ曲げてカムイだけやたら擁護して他の奴に八つ当たりしてるしジョーカーじゃね?

とりあえず同一人物だとわからないと議論しにくいから名前欄になんか文字列入れて(トリでも可)

◇◆◇◆◇
―白夜・イズモ公国『市場』―

ルーナ「……ふーん、こういう柄もあるのね」

カザハナ「あれ、ルーナだ。ねぇねぇ、何してるの?」

ルーナ「ん、カザハナ。べ、別になんでも無いわよ」

カザハナ「いやいや、あんなに何かを凝視しておいて何もないからって言われても、全然説得力無いから。それで何見てたの?」

ルーナ「……これよ」

カザハナ「これって、浴衣だよね?」

ルーナ「そうよ……浴衣」

カザハナ「へぇ~、暗夜の人なのにこういうのに興味あるんだ。なんだか以外……」

ルーナ「なによ、興味を持っちゃ悪いわけ?」

カザハナ「ううん、ぜんぜん。むしろ、ルーナがどんな浴衣に興味を持ったのは気になるかな。ねぇねぇ、どれが着てみたいって思ったの?」

ルーナ「いや、別に着てみたいって思ったわけじゃないし、それに浴衣なら一着持ってるんだから」

カザハナ「え、そうなんだ」

ルーナ「ふふん、あたしが自分で作った一品よ。ここに置いてある物よりすっごいんだから。でも、こんな時だから、あんまり着る機会もないんだけどね」

カザハナ「じゃあ、今度あたしに見せてよ、すごく興味があるからさ」

ルーナ「ちょっと、何勝手に決めてるわけ?」

カザハナ「だって、どんなものか気になるんだもん。それに浴衣だって着てもらいたいって思ってるはずだもん」

ルーナ「そんな口車に乗ると思わないでよね。それにあたしの浴衣姿を簡単に拝めると思ってるわけ?」

カザハナ「いいでしょ、減るものじゃないし。……それとも、自信がないの?」

ルーナ「な、言ってくれるわね。いいわよ、あたしの浴衣姿を見せつけてあげるんだから、覚悟しておきなさい!」

カザハナ「うん、楽しみにしてるね!」

【ルーナとカザハナの支援がCになりました】

◇◆◇◆◇
―暗夜王国・王都ウィンダム『地下市場』―

フローラ「ん、あの方は?」

ルーナ「うーん、五つで一つおまけだからってこんなに買っちゃったけど、どうやって帰れば……あれ、あんたはカムイ様のとこの……」

フローラ「フローラです。たしかカミラ様の臣下の方でしたね。あなたも買い物に?」

ルーナ「ええ、前の討伐戦でお金がもらえたからね。いっぱい買い物しようって思ってたから、見て見てこれ、五つで一つおまけに付いてくるから、こんなに買っちゃった」

フローラ「はぁ、それは別に構いませんが、そんな量のお皿を買ってどうするつもりですか? 今日はカミラ様のご自宅でパーティのご予定でも?」

ルーナ「そんな予定ないわよ」

フローラ「では、なぜこのような量を、あなたはいっぱい食べる人のようには見えませんが……」

ルーナ「そ、その目に付いたからよ」

フローラ「え?」

ルーナ「目に付いたから買ったのよ」

フローラ「……そうですか。まぁ、自身のお金ですから、それをどう使うかは人それぞれですけど、豪快に買い物をされる方なんですね。ふふっ」

ルーナ「あ、今笑ったわね。あたしより荷物少ないじゃない。あたしの勝ちね」

フローラ「そうですね。私の負けですね、それではこれで……」

ルーナ「ちょ、ちょっと待ちなさいよ」

フローラ「なんですか?」

ルーナ「こんな量、一人で持って帰るのは難しいから、ちょっと手伝って」

フローラ「さすがにそれを手伝うメリットが私にはありません」

ルーナ「ちょ、仲間が困ってるんだから。ちょっとは、手伝ってもいいでしょ!?」

フローラ「そうは言われても……手当たり次第に買って帰れなくなっただけのあなたに手を差し伸べる必要があるのか……」

ルーナ「ううっ、仕方無いじゃない。こう、いっぱい買いたくなっちゃうんだから」

フローラ「……はぁ、わかりました。今回だけですからね?」

ルーナ「そうこなくっちゃ! あ、落として割ったりしたら承知しないからね!」

フローラ「……では、私は運ばない方がよさそうですね」

ルーナ「あ、うそ、うそだから、手伝ってください、おねがいします」

フローラ「そこまで言うなら、お手伝いいたしますね」

ルーナ「あ、ありがと……」

フローラ「最初から、そう言ってください。それじゃ行きましょう?」

ルーナ「ええ」

【ルーナとフローラの支援がCになりました】

今日は支援だけで、本篇は明日ということで
 
 ルーナの浴衣関連の話はマイユニじゃなくてオボロとか白夜組であったらなぁって思う。

Lunaと朧で月に関係する感じの名前だしな
あとカザハナとの支援は性格的に普通に見てみたかったなあ
ハイドラ倒すまでに支援Aまで持っていけるだろうか
なぜセツナなのか、いや可愛いし弓聖も有用なんだけども

◆◆◆◆◆◆
―白夜・妖狐山の麓の廃村『大きな屋敷』―

ベルカ「そう、わかったわ、カミラ様」

カミラ「……ええ、二人ともお願いできるかしら?」

ルーナ「まかせてよ、それにあたしたちはカミラ様に仕え続けるって話だったでしょ? カミラ様の

命令ならどんなことでも聞いちゃうんだから」

カミラ「うふふ、そう言ってもらえると嬉しいわ」

ルーナ「でも、足がほしいわね。正直、周辺まで歩いて調べるのはちょっと骨が折れちゃうし」

カミラ「安心して、ルーナと仲のいい子に話をしておいたから」

ルーナ「それって誰?」

カミラ「ふふっ、もう準備を終えてるはずよ。ほら、噂をすれば……」

ルーナ「?」

 タタタタタッ

ピエリ「ピエリなの! ルーナにベルカとお出かけするって聞いたから、早起きしたのよ!」

ルーナ「ピエリ、わかってるわけ? 今からどこに行くのかとか、何のために行くのかとか」

ピエリ「わかってるのよ。大丈夫なの、静かにするし勝手に敵を殺したりしないのよ」

ルーナ「……少し心配ね」

ベルカ「……そうね」

ピエリ「ぶー、ピエリだってちゃんとできるのよ!」

ルーナ「ふふっ、冗談冗談。それじゃカミラ様、あたしたちはもう行くわね。夕暮れ前には目的地についておきたいから」

カミラ「ええ、お願いね」

ベルカ「出来る限り、情報を収集して戻って来るわ」

ピエリ「カミラ様、行ってくるの!」

カミラ「ふふっ、行ってらっしゃい」

ピエリ「……」

カミラ「?」

ピエリ「カミラ様、行ってきますのキスしてほしいのよ」

カミラ「あらあら」

ルーナ「何言ってんの? そんなことねだってないで、さっさと支度しなさいよ」

ピエリ「だめ……なの?」

カミラ「ふふっ、ピエリは甘えん坊ね」

ピエリ「……」

カミラ「気を付けていってらっしゃい」チュッ

ルーナ「なっ!」

ベルカ「……」

ピエリ「わーいなの! ほっぺにちゅーされちゃったの。ピエリ、ルーナ達と一緒に頑張ってくるのよ」

カミラ「ふふっ頑張ってね。あら、どうしたの?」

ルーナ「べ、別に悔しいとかそういうんじゃないし……」

ベルカ「……ええ」

カミラ「二人も気を付けてね?」チュッ チュッ

ルーナ「い、行ってくるね!」

ベルカ「その、いってきます」

カミラ「ええ」

 タタタタタッ

カミラ「……みんな、無事に戻ってきてちょうだいね」

 テトテト

カミラ「だれ?」

エリーゼ「うーん、カミラおねえちゃん……?」

カミラ「エリーゼ、どうしたの。まだ早い時間よ?」

エリーゼ「ベルカ、いなくなってたから……」

カミラ「あらあら、一緒に寝ていたの?」

エリーゼ「うん……その、ベルカは?」

カミラ「ちょっとお出かけよ。ふふっ、眠り足りないなら、お姉ちゃんと一緒にもう一度寝ましょう?」

エリーゼ「うん、カミラおねえちゃーん……」ダキッ

カミラ「ふふっ、甘えんぼうさんね」

エリーゼ「う……ん……あたたかい……」スースーッ

カミラ「ふふっ。よいしょ、やっぱり軽いわね」

 テトテト……

カミラ「?」

カムイ「カミラ姉さん」

カミラ「ふふっ、おはようカムイ」

カムイ「おはようございます、カミラさん。もしかしなくてもルーナさん達ですよね?」

カミラ「ええ、もう三人は向かったわ。カムイはどうしたの? 今はゆっくり休んでおきなさい」

カムイ「そうなんですが……その……」

カミラ「……」

カムイ「……」

カミラ「私はエリーゼともう一度眠るわね。カムイも混ざりたかったら混ざりにいらっしゃい?」

カムイ「わかりました、混ざりたくなったら混ざりに行きますね」

カミラ「ふふっ、待ってるわね」

カムイ「はい」

 テトテトテト

~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ポスリッ

カムイ(ここにも誰かが住んでいたんですよね…)

カムイ(あのあと、どうに山を越えて、ここに辿りついて……)

カムイ(誰か人がいるかと思ったら誰もいない廃村で、なのにここには最近まで営みがあった気配が溢れていて……)

カムイ(多くの家に慌てて出ていったような痕跡が残っていて……)

カムイ(この村をこんな風にしてしまったのは……多分、私なんでしょうね)

 ゴソゴソッ カランッ

カムイ「……便利な体と便利な思考です。すぐに消えて行ってしまうんですから……」

 カランカランッ

カムイ「とても軽い、指ではじくことができるくらいに、軽い……」

カムイ「……」

 タタタタタッ

カムイ「?」

フランネル「あれ、カムイ。何してんだ?」

カムイ「……フランネルさん?」

フランネル「おう。それにしても昨日まで戦いと移動ばっかりだったのに、よく起きられるな」

カムイ「それはフランネルさんも同じですよね?」

フランネル「へへっ、それもそうだな。それでどうしたんだよ、やっぱりあの傷、痛むのか?」

カムイ「いえ、大丈夫ですよ。小さな傷ですし、それに私が受けると決めた傷ですから……」

フランネル「……やっぱり、あえて避けなかったんだな。カムイなら、簡単に避けられそうなもんだったから、どうしてかわかんなかったけどよ。なんで、あの石避けなかったんだ?」

カムイ「……その、私自身への言い訳かもしれませんね」

フランネル「言い訳?」

カムイ「相手の怒りを理解できている、本来そんなことできるわけがないのに。そうあることで自分の罪を軽減しようとしてるのかもしれません。処方術と言ってもいいのかもしれませんね。そうやって逃げているだけなんでしょうけど」

フランネル「……そっか。いろいろ大変だな」

カムイ「?」

フランネル「そういう風に色々と考えて疲れねえのかなってさ。俺なんてそういう風に終わったことを気にするのは苦手だからよ、大抵のことは寝れば忘れちまうからな」

カムイ「私が怪我したことは覚えてるのに?」

フランネル「そ、それとこれとは話が別なんだよ。その、カムイは仲間だし、心配だからよ……」

カムイ「……」

フランネル「な、なんだよ?」

カムイ「いいえ。フランネルさんは本当に仲間思いな方なんだと思って、ありがとうございます」ナデナデ

フランネル「ちょ、撫でるなよ」

カムイ「ふふっ、でも尻尾すごく振り振りしてますね。気配がすごいです」

フランネル「こ、これは風に揺れてるだけで」

カムイ「無風状態なんですけど、でもありがとうございます」

フランネル「まぁ、マークスもカムイのこと気にしてたからよ」

カムイ「ええ、いろいろと心配をかけっぱなしですね」

フランネル「そうだぜ、このままじゃマークスの眉間の皺がこんなんになっちまうかもしれねえな」

カムイ「安易に想像できます」

フランネル「目、見えねえのに?」

カムイ「マークス兄さんの皺がどんな感じかは、ちゃんと触って覚えてますからね」

フランネル「それって触って確かめてたから、すごくしわを寄せてたんじゃねえのかな?」

カムイ「ふふっ、そうかもしれません」

カムイ「ところで、フランネルさんはこんな朝からなにをしてたんですか」

フランネル「おおっ、ここってすげぇもんがいっぱいあるからよ! 昨日からそれを探そうって決めてたからな。ほら、これとかどうだ。虫の抜け殻だぜ! それからそれから――」

カムイ「はいはい、順番に聞きますから」

フランネル「……そういえば、カムイってこういうの嫌がらないのか?」

カムイ「見えませんから、ちゃんと触ってからでないと判断できませんので」

フランネル「ああ、なるほどな! それじゃ、今度俺のお宝いっぱい持って来てやるからよ、楽しみにしててくれよな」

カムイ「ええ、楽しみにしてますね」

フランネル「へへっ」

◆◆◆◆◆◆
―白夜・廃村『大きな屋敷・広間』―

マークス「カミラ、先行偵察の件はどうなっている?」

カミラ「安心して、今朝ルーナ達が出立したわ。ピエリも一緒にね」

マークス「そうか、ピエリにしてはすんなりと言うことを聞いたものだな」

カミラ「ふふっ、とっても仲良しだもの。それより、ここはかなり街道から離れた村みたいだけど、白夜兵が来たような気配はないのね」

レオン「昨日の夜、オーディン達に監視をさせていたけど、野生動物が数匹様子を伺って人がいるとわかったら踵を返してた。人が離れてそれほど時間は経ってないんだろうね」

カムイ「焼き打ちが行われる前に村人が逃げ出したということでしょうか」

マークス「ならばいずれ来る可能性もあるだろうが、私は正直それはないと考えている」

アクア「どうして?」

マークス「今、強硬派はイズモにわれわれがいると考えているし、局面上二つの勢力を相手にしていることに変わりない。風の村制圧を優先したのは、旧暗夜よりもわれわれを脅威と見たということに他ならない」

カムイ「ですが、戦力的には私達と彼らでは……」

マークス「ああ、現在白夜に入り込んでいる戦力の差は圧倒的だが、暗夜王国の実権を握っているのはわれわれだ。今、増援の無いこの状況でそれを折るつもりなのかもしれない」

レオン「……正直、何かしらの打算をしているとは思えない。旧暗夜軍がそれほど侵攻出来ていないとなると、今勢いを持っているのは僕たちと考えるのは自然だからね」

マークス「それを含めて白夜は短期決戦でわれわれを排除するはずだ。その過程で近隣の村の焼き打ちは行えない。何よりも、仲間に引き込むということも難しいだろう。もともとここ周辺はノスフェラトゥの脅威が少なからずあったとしてもほとんどが農村部、戦力にはならないだろう。できるとすれば、補給線としての役割だ。逆らえば殺されるとなれば、協力する村がほとんどだろう」

レオン「加えて、白夜にもハイドラの息が掛ってる存在がいると仮定すれば、奴は暗夜と白夜を動かせる立場にいる。このタイミングで暗夜の攻勢を速めることだって奴にはできるはずだから、僕達に残された時間は少ない」

アクア「だから、今、私達がイズモにいるという勘違いのままに兵を動かしてもらうしかないわ」

カムイ「そうですね……。イズモのことは増援到達までイザナさんとツクヨミさんに任せるほかありません。私たちは、私たちのするべきことに着手しましょう」

エリーゼ「うん。それで風の村がどういう場所かはわかってるの?」

サクラ「ツクヨミさんから頂いた村の全体図がこちらに」ガサッ

カミラ「ごめんなさいね。昨日はすぐに休みたかったはずなのに、先行の偵察のためにもう一枚写しを作ってもらって」

サクラ「いいえ、早くフウガさん達を助けてあげたいから……お役に立ててうれしいです」

カミラ「ふふっ、サクラ王女はいい子ね」ナデナデ

サクラ「は、はずしいですよ、カミラさん……」

マークス「では、その見取り図を参考に作戦を何通りか立て、先行偵察の者たちが情報を持ち帰り次第、最終案を練り上げる。村の解放は短期決戦で望むことにしよう」

レオン「そうだね。カムイ姉さんには――」

アクア「大丈夫、私が横で教えるわ。いいかしら?」

カムイ「はい、お願いします、アクアさん」

アクア「気にしないで……」スッ ナデナデ

カムイ「アクアさん?」

アクア「少し腫れているわね」

カムイ「心配してくれてありがとうございます。でも、大丈夫ですから……」

アクア「そう……。痛くなったらちゃんと言うのよ?」

カムイ「ふふっ、心配症ですね、アクアさんは。あのとき、ちゃんと治療してくれたじゃないですか」

アクア「治療したからと言って、すぐに傷がいえるわけじゃないわ。だから、気にしないで言ってちょうだい」

カムイ「わかりました。痛くなったら言いますね」

アクア「ええ」

 ホントウニイタクナイ?
 ダイジョウブデウスヨ?

エリーゼ「……なんか、おねえちゃんたち見てると、ムズムズするよ」

サクラ「わ、私もです」

マークス「ふむ、なんだろうこの気持ちは。レオン、説明できるか?」

レオン「兄さん、変なこと言わないでくれないかな。あと説明を求めないでよ」

カミラ「うふふ」

アクア「な、なによ」

カミラ「なんでもないわ、気にしないで」ニヤニヤ

アクア「……」

カムイ「それじゃ、始めましょうか。まずは――」

カムイ(……ハイドラの動きも気にはなりますが、今は風の村の解放が先決ですね。こちらが先に村を解放できれば、敵の先行部隊を挟み打ちにして降伏を迫ることもできるはずですから……)

カムイ(風の村、一体誰が守っているのでしょうか……)

◇◇◇◇◇◇
―白夜・風の村・烈風城『長の間』―

白夜兵「もう夜か……。我々もここで燻っているというわけにはいかないというのに……」

 コンコン

白夜兵「失礼します。ご報告が」

白夜兵「戻ったか、それで捕らえた者たちについてか?」

白夜兵「ええ、それもありますが他にも」

白夜兵「そうか、まずはここの部族の者たちについてだが」

白夜兵「特に何も言いません。というよりも、本当に何も知らないといった具合です。正直、タダ飯喰らいですから、生かしておく価値もないと思いますが?」

白夜兵「なに、もう少し様子を見てから処刑すればいい。その後、暗夜に裏切られて殺されたとでもすればいいのだからな」

白夜兵「あー、その手がありましたね」

白夜兵「それと、他に報告があるという話だったが」

白夜兵「はい、後続の部隊が来るという話です。これがその一覧です」

白夜兵「なになに……」

白夜兵「……」

白夜兵「ふんっ、今さら王族が出向いて何を考えているのか。暗夜と同盟を結ぼうとしていた王族が…」

白夜兵「いかがしますか?」

白夜兵「まあいい、我々は命令の通りにことを成すだけ、もちろん我々が信ずる主のな?」

白夜兵「はい」

白夜兵「王族と連中に手柄を渡すつもりなどない。後続は後続らしくここの警護でもしていればいい……」

白夜兵「従うと思いますか?」

白夜兵「その選択など与えるつもりはない。後続の到着予定は?」

白夜兵「早くとも三日後かと」

白夜兵「よし、後続の到着と同時に我々はイズモへと侵攻を開始する。全員に移動の準備を整えておくように伝えよ」

白夜兵「わかりました。では……」

 タタタタッ

白夜兵「今さら王族に何ができるというのだ……」

 タッ タッ タッ

 ガタンッ



 スタッ

ベルカ(欲しい情報のほとんどを勝手にしゃべってくれたから……色々と探る必要がなくなった)

 テトテト

ベルカ(それに情報管理も甘い。こういった報告書を置いて行くなんてね……おかげでこっちは楽ができるけど……)

 カサッ

ベルカ(後続としてここに来る一団のリストね。名前ばかりみたいだけど、これはこれで役には立つはず)

 カキカキカキッ

ベルカ(ざっと八十名くらいね。王族も混じっているみたい……。だけど、王族の影響力はほとんどなくなっているみたいね)

ベルカ(それにさっきの話を聞く限り、後続の王族にここは任せて、今いるすべての兵がイズモに向かう予定ということ。となると、留守を預かるのは王族とその直属部隊。かなり手強いとは思うけど戦いを仕掛けるなら、その隙になるかもしれないわ)

 クルクル ストッ

ベルカ(……村人の場所はルーナとピエリが調べているはず。内部調査はここまでね)

 スッ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
―白夜・風の村『離れの丘』―

ルーナ「パッと見ても、五百位ね。この量をあたしたちで相手するのは難しそう」

ピエリ「そうなの。これに戦いを挑むのは嫌なのよ」

ルーナ「村人が隔離されているのは離れの塔みたいだから、同時に確保となるとどっかに敵を集中させるしかないって言うのに、人質を盾にされたらそううまくもいかないし、あーもう!」

ピエリ「ルーナ声が大きいの。ばれちゃうのよ」

ルーナ「わ、わるかったわね」

ピエリ「いろいろと書き写しておくから大丈夫なの。ピエリたちがするのは情報収集なのよ?

ルーナ「……それもそうね。それにしても字が汚いわね」

ピエリ「なの! ピエリは読めるのよ?」

ルーナ「他の皆も読めなきゃだめでしょ。あたしが書くから、ちょっとかしなさい」

ピエリ「うー、はいなのぉ……」

 カキカキカキ

ルーナ「それにしても、ベルカが侵入してから結構経ったけど、帰ってこないわね。もしかしてヘマしたんじゃ……

ピエリ「それは大丈夫だと思うの。ずっと静かなまま、ベルカが見つかったら騒ぎ始めるはずなのよ」

ルーナ「それもそうね……。もしかして、ばれそうになって動けなくなってたりとか?」

ベルカ「ルーナじゃないから、そんな心配は無用よ…」

ルーナ「うわっ!!! びっくりした!」

ピエリ「あ、ベルカなの。お帰りなのよ」

ルーナ「脅かさないでよね。それで、どうだった?」

ベルカ「多く情報が手に入った。これ以上の長居は無用よ」

ルーナ「ふーん、結構時間かかったわね。もっと早くに終わると思ってたけど」

ベルカ「驚くくらい早いわ。正直、明け方まで侵入している可能性もあったくらいだから」

ルーナ「うそ、ここで野営なんてしたくないんだけど……。早く済んでよかったわ」

ベルカ「それで、捕らわれてる村人の位置は?」

ルーナ「うん、それは調べ済み。村の周りの見張り台とかは地図のまま見たいだけどね。あとはこっちの動きが間に合うかだけど……」

ベルカ「そればっかりはどうにもならないことよ。だけど、おおよその時間はあるわ」

ルーナ「そうなの?」

ベルカ「ええ、だから早く戻りましょう? ぐずぐずしている暇はないわ」

ピエリ「うん、早く帰るの。みんな待ってる筈なのよ」

ルーナ「そうね。それじゃ、ピエリお願い」

ピエリ「なの! しっかりつかまってるのよ!」

ベルカ「行きましょう……」

 パカラパカラパカラ

 バサバサバサッ

○カムイの支援現在状況●

―対の存在―
アクアA
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)

―城塞の人々―
ギュンターB++
(恋愛小説の朗読を頼まれています) 
フェリシアB+
(カムイに従者として頼りにされたい)
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
フローラB
(すこしは他人に甘えてもいいんじゃないかと言われています)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)

―暗夜第一王子マークス―
ラズワルドA
(あなたを守るといわれています)
ピエリB
(弱点を見つけると息巻いています)
マークスB++
(何か兄らしいことをしたいと考えています)

―暗夜第二王子レオン―
オーディンB+
(二人で何かの名前を考えることになってます)
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)
レオンB+
(カムイに甘えてほしいと言われて、いろいろと考えています)

―暗夜第一王女カミラ―
ルーナA
(目を失ったことに関する話をしています)
カミラA
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ベルカC+
(イベントは起きてません)

―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼA
(昔、初めて出会った時のことについて話しています)
ハロルドB
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィB+
(一緒に訓練をしました)

―白夜第二王女サクラ―
サクラA
(カムイと二人きりの時間が欲しいと考えています)
ツバキB
(イベントは起きていません)
カザハナB
(イベントは起きていません)

―カムイに力を貸すもの―
シャーロッテB++
(返り討ちにあっています)
スズカゼB
(おさわりの虜になったようです)
サイラスB+
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB+
(許されることとはどういうことなのかを考えています)
モズメC+
(イベントは起きていません)
リンカB
(イベントは起きていません)
ブノワC+
(イベントは起きていません)
アシュラC+
(イベントは起きていません)
フランネルB→B+ NEW
(宝物を見せることになっています)

●異性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・レオン×カザハナ
 C[本篇の流れ] B[3スレ目・300] A[3スレ目・339]
・ジョーカー×フローラ
 C[1スレ目・713~715] B[1スレ目・928~929] A[2スレ目・286]
・レオン×サクラ
 C[1スレ目・511~513] B[2スレ目・297~299] A[3スレ目・797]
・ラズワルド×ルーナ
 C[1スレ目・710~712] B[2スレ目・477] A[4スレ目・177]
・アクア×オーディン
 C[3スレ目・337] B[3スレ目・376] A[4スレ目・353]
・ルーナ×オーディン
 C[4スレ目・352] B[4スレ目・411] A[4スレ目・460]

【支援Bの組み合わせ】
・ラズワルド×エリーゼ
 C[1スレ目・602~606] B[3スレ目・253]
・ブノワ×フローラ
 C[2スレ目・283] B[2スレ目・512]
・エリーゼ×ハロルド
 C[2スレ目・511] B[2スレ目・540]
・オーディン×ニュクス
 C[1スレ目・839~840] B[3スレ目・284]
・ベルカ×スズカゼ
 C[3スレ目・252] B[3スレ目・315]
・レオン×エルフィ
 C[3スレ目・251] B[4スレ目・437]
・アクア×ゼロ
 C[1スレ目・866~867] B[4スレ目・438]

【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
 C[1スレ目・377~380]
・モズメ×ハロルド
 C[1スレ目・514~515]
・ギュンター×ニュクス
 C[3スレ目・246]
・ルーナ×ハロルド
 C[3スレ目・375]
・カザハナ×ツバキ
 C[3スレ目・772]
・アシュラ×サクラ
 C[3スレ目・773]

●同性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・リンカ×アクア
 C[1スレ目・888~889] B[2スレ目・285] A[3スレ目・254]
・ピエリ×カミラ
 C[1スレ目・752~753] B[2スレ目・478] A[2スレ目・513]
・フェリシア×ルーナ
 C[1スレ目・864~865] B[1スレ目・890~891] A[1スレ目・930~931]
・フローラ×エルフィ
 C[1スレ目・471~472] B[3スレ目・338] A[3スレ目・377]
・レオン×ツバキ
 C[1スレ目・492~493] B[1スレ目・870] A[3スレ目・798]
・ベルカ×エリーゼ
 C[2スレ目・284] B[3スレ目・301] A[4スレ目・354]
・ピエリ×ルーナ
 C[3スレ目・249] B[4スレ目・317] A[4スレ目・412]

【支援Bの組み合わせ】
・ギュンター×サイラス
 C[1スレ目・926~927] B[3スレ目・316]
・フェリシア×エルフィ
 C[1スレ目・367~368] B[2スレ目・541]
・シャーロッテ×モズメ
 C[3スレ目・248] B[3スレ目・285]
・ベルカ×ニュクス
 C[4スレ目・176] B[4スレ目・410]
・シャーロッテ×カミラ
 C[2スレ目・476] B[4スレ目・439]
・アクア×ルーナ
 C[3スレ目・283] B[4スレ目・461]

【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
 C[1スレ目・423~425]
・ピエリ×リンカ
 C[3スレ目・247]
・ピエリ×フェリシア
 C[3スレ目・250]
・ジョーカー×ハロルド
 C[1スレ目・426~429]
・フローラ×エリーゼ
 C[4スレ目・178]
・エルフィ×ピエリ
 C[3スレ目・771]
・カミラ×サクラ
 C[4スレ目・175]
・スズカゼ×オーディン
 C[4スレ目・318]
・ラズワルド×オーディン
 C[4スレ目・459]
・サクラ×エルフィ
 C[3スレ目・774]
・ルーナXフローラ←NEW
 C[4スレ目・781]
・ルーナXカザハナ←NEW
 C[4スレ目・780]

今日はここまでで 
 前回、明日と言いながら更新できず申し訳ない。もう歳かな……

 ニンテンドースイッチで新作とかでたらいいな

 次の展開を安価で決めたいと思います、参加していただけると幸いです。

◇◆◇◆◇
・カムイと話をする人物(支援Aになってないキャラクター)

 ジョーカー
 ギュンター
 フェリシア
 フローラ
 マークス
 ピエリ
 レオン
 ゼロ
 オーディン
 ベルカ
 ハロルド
 エルフィ
 ツバキ
 カザハナ
 シャーロッテ
 スズカゼ
 サイラス
 ニュクス
 モズメ
 リンカ
 ブノワ
 アシュラ
 フランネル

 一人目 >>807
 二人目 >>808

 まだ、次レスあります

◇◆◇◆◇
進行する異性間支援の状況

【支援Bの組み合わせ】
・ラズワルド×エリーゼ
・ブノワ×フローラ
・エリーゼ×ハロルド
・オーディン×ニュクス
・ベルカ×スズカゼ
・レオン×エルフィ
・アクア×ゼロ

【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
・モズメ×ハロルド
・ギュンター×ニュクス
・ルーナ×ハロルド
・カザハナ×ツバキ
・アシュラ×サクラ

 この中から一つ>>809

◇◆◇◆◇
進行する同性間支援

【支援Bの組み合わせ】
・ギュンター×サイラス
・フェリシア×エルフィ
・シャーロッテ×モズメ
・ベルカ×ニュクス
・シャーロッテ×カミラ
・アクア×ルーナ

【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
・ピエリ×リンカ
・ピエリ×フェリシア
・ジョーカー×ハロルド
・フローラ×エリーゼ
・エルフィ×ピエリ
・カミラ×サクラ
・スズカゼ×オーディン
・ラズワルド×オーディン
・サクラ×エルフィ
・ルーナ×フローラ
・ルーナ×カザハナ

 この中から一つ>>810

 このような形ですみませんが、よろしくお願いいたします。

>>804最後のクロスが大文字になってるよ
オーディン

シャーロッテ

ラズワルド×エリーゼ

レオンエルフィかアクアルーナ

カミラとサクラで

◇◆◇◆◇
―暗夜王国・市街地【おしゃれなカフェテラス】

ラズワルド「はぁ、今日もだめかぁ。おかしいなぁ、さわやかに話しかけてるはずなんだけど……」

ラズワルド「でも、こんなことで諦める僕じゃないよ。気を取り直して――。ねぇねぇ、そこの髪の長いきれいな人、僕とお茶でもどうかな?」

???「え? あ、ラズワルド……」

ラズワルド「あれ、どうして僕の名前知って、これはもう運命……って、あれ?」

???「……」

ラズワルド「もしかしてエリーゼ様? どうしたんですか、その格好」

エリーゼ「え、えっとその……」

ラズワルド「髪下したんですね。全然印象違うから、後ろ姿じゃ分かりませんでしたよ」

エリーゼ「……」

ラズワルド「? どうしたんですか?」

エリーゼ「ねぇ、この格好大人っぽい……かな?」

ラズワルド「そうですね、大人っぽいと言われると……」

エリーゼ「……やっぱり、大人っぽくないよね」

ラズワルド「すみません」

エリーゼ「ううん、いいの。誤魔化さないでくれてありがと」

ラズワルド「でも、どうして髪を下したんです?」

エリーゼ「この前、ラズワルド言ってくれたよね。見た目から変えてみたらどうかって……」

ラズワルド「はい」

エリーゼ「あたし、いっぱい服は持ってるんだ。大人っぽくて綺麗な服もあるの。でも、それを着てもみんな可愛いとしか言ってくれなくて……」

エリーゼ「……もう、これくらいしかできなくて……。ごめんね、あたしラズワルドのアドバイス、活かせなかった……」

ラズワルド「……そんなことないですよ」

エリーゼ「ラズワルド?」

ラズワルド「他のみんなはどうかわかりませんけど、僕は髪下したエリーゼ様のこと、きれいだって思いましたから」

エリーゼ「……お世辞は――」

ラズワルド「お世辞なんかじゃありません。それに、エリーゼ様が頑張って考えたことがちゃんと僕には伝わってます」

エリーゼ「ほんと?」

ラズワルド「……はい。それに可愛いエリーゼ様もきれいなエリーゼ様も知ってるのは僕だけなら、それはそれでなんだか特別な感じがしますし、それにエリーゼ様はエリーゼ様です。何か困ったりしたら聞いてください、力になりますから」

エリーゼ「ありがと、ラズワルド」

ラズワルド「はい、で、その、どうですか?」

エリーゼ「?」

ラズワルド「僕、一応エリーゼ様のことをお茶に誘ったわけなんですけど……」

エリーゼ「……ラズワルド、今日もダメだったの?」

ラズワルド「ははは……」

エリーゼ「……ふふっ、いいよ」

ラズワルド「ですよね。それとこれとは話がちがい――え、いいんですか!?」

エリーゼ「うん、あたしもラズワルドがいっぱい頑張ってること知ってるもん。ラズワルドに認めてもらったから、今度はあたしが認めてあげる番だから!」

ラズワルド「あはは、ありがとう、エリーゼ様。それじゃ、空いてる席に行こう?」

エリーゼ「うん!」

【ラズワルドとエリーゼの支援がAになりました】

◇◆◇◆◇
―暗夜王国・北の城塞『アクアの部屋』―

アクア「ねぇ、もういいと言っているでしょう?」

ルーナ「だめよ。あんな下手くそな終わり方で、あたしは満足しないんだから」

アクア「配合に失敗したのはルーナよ。それに私は大丈夫って……」

ルーナ「確かにそうだけど、毎日毎日ボンバーヘッドじゃ大変でしょ? 水洗いに行く時、周りから奇妙な目で見られたりとかさすがに嫌なんじゃない?」

アクア「慣れるものよ。結局そんなものだから、今は気にしてないから」

ルーナ「だったら寝癖直しを使うのになれた方がいいわよ。これで同時に保湿効果もあるんだから。あたしに任せておきなさい」

アクア「……」

ルーナ「やっぱり、信用できない?」

アクア「いいえ、なんて言うかこういうことを気に掛けて来てくれる人はいなかったから……」

ルーナ「そうなの?」

アクア「ええ、暗夜での思い出にいいものなんてなかったし、白夜では自分の立場もあったからかもしれない。周りのみんなの距離もどこかあったわ。白夜での兄妹たちは、そうでもなかったかもしれないけど」

ルーナ「ふーん、ならあたしに遠慮する必要はないからね。あたしが好きでやってるだけだし、その頑固な寝癖をあたしの配合した寝癖治しで倒したいだけだから」

アクア「物好きね、いえ、負けず嫌いと言った方がいいかしら?」

ルーナ「う、うるさいわね」

アクア「……ふふっ」

ルーナ「ちょっと、何笑ってくれるわけ?」

アクア「ごめんなさい。ルーナってこんなよくわからないことで、私を気に掛けてくれる人だとは思っていなかったから」

ルーナ「ちょ、その言い方、あたしがよくわからない子みたいな言い方じゃない!?」

アクア「ふふっ、そういう意味にとってもらってもいいわよ」

ルーナ「取るつもりないし! ふふん、それじゃ今日は事前に付けておけば、朝の寝癖も解消っていうの試すわよ」

アクア「前のは試さないの?」

ルーナ「あれは朝用、まだ配合の割合完璧じゃないの、だから今日は事前に倒す方を試すわ。そうすれば朝からさらっさらの髪で過ごせるんだから!」

アクア「ふふっ、ありがとう。だけど――」

ルーナ「?」

アクア「ルーナもお揃いで付けて頂戴、被害を被る時は発案者も一緒じゃないとね?」

ルーナ「……望むところよ。見てなさいよ、あたしとアクア様、揃ってさらっさらにして見せるから!」

アクア「ふふっ、期待してるわ」

【アクアとルーナの支援がAになりました】

◆◆◆◆◆◆
―白夜・廃村『近くの小川』―

カムイ「……」

カムイ「………」

~~~~~~~~~~~~~~~~~

カミラ『ルーナ達が持ち帰ってきてくれた情報通りとなると、白夜の王族とぶつかることになるわね』

カムイ『その、風の村に向かっているのは一体誰なんですか?』

カミラ『それは――』

~~~~~~~~~~~~~~~~~

カムイ「……避けては通れない戦いということですか」

カムイ(わかっていたはずです、こうなってしまった以上、戦うことになることくらい……。それが誰であろうとも、戦わなければならないことを…)

カムイ「……嫌なものですね。わかっていたとしても……」

カムイ(だとしても……進むために私達は……)

 ザッ ザッ ザッ

カムイ「?」

シャーロッテ「何してんの。こんなところで」

カムイ「シャーロッテさん?」

シャーロッテ「みんな準備を始めてるっていうのに、なんだか余裕ね?」

カムイ「はは、余裕なんてありませんよ」

シャーロッテ「そう? はたからだと川の流れをゆったり見てるようにしかみえなかったけど?」

カムイ「私は目が見えませんから、小川の流れを見ることはできませんよ」

シャーロッテ「少しくらい茶化した返ししなさい、こっちがなんか微妙な気持ちになるから」

カムイ「ふふっ、すみません」

シャーロッテ「まったく、ちょっと横いい?」

カムイ「良いですよ。そんな改まることもないじゃないですか。シャーロッテさん、私といると気が楽になるって言ってくれたから遠慮しないでください」

シャーロッテ「それはそうだけど、今は話が違うわ」

カムイ「?」

シャーロッテ「今、あんた暗い顔してる。女が暗い顔していいのは、いい男に振られたときだけって相場が決まってんの」

カムイ「……べつにそういうわけでは」

シャーロッテ「ああ、もう。素直になれって」

 クシャクシャ

カムイ「あふっ、何をするんですかシャーロッテさん」

シャーロッテ「誤魔化せてると思ってるかもしんないけど、日に日にそういうの隠せない顔になってるからね?」

カムイ「え?」

シャーロッテ「ふふん。そんなんじゃ、恋愛も碌に出来ないわよ。顔に出やすいのはよくないからね」

カムイ「前、恋愛出来そうにないって、シャーロッテさんに言われたはずですけど」

シャーロッテ「まぁ、今のままじゃ難しそうだけど」

カムイ「太鼓判押されちゃいましたね」

シャーロッテ「褒めてないから、あと誤魔化すなって言ってんだよ」

カムイ「……シャーロッテさんは、私が悩んでる時になるんですか?」

シャーロッテ「気になるっていうよりも、気軽に話しかけちゃいけないみたいになるでしょ?」

カムイ「ふふっ、そういう風に思ってくれてるんですね」

シャーロッテ「まぁ、王族にも変なのがいるっていう見本だったりするし、本当にあんたは変わってるよ」

カムイ「むー、ひどい言われようです。けど、それでよかったかもしれません」

シャーロッテ「なんで?」

カムイ「だって、シャーロッテさんとこうやって、いっぱいお話ができる仲になれましたから。ふふっ、恋愛とかよくわかりませんけど、こうやって自分のことをいっぱい話して教えてくれてうれしいですから」

シャーロッテ「なに、恥ずかしいこと言ってんだよ。あー、はずぃ///」

カムイ「ふふっ、シャーロッテさん。そっぽ向いてるんですか。変わりませんね、うふふ」

シャーロッテ「……そう、なら」グイッ

カムイ「わふっ……」

 ギューーーッ

カムイ「……シャーロッテさん、温かい」

シャーロッテ「……余裕なのがムカつくわ」

カムイ「ふふっ、私にとってはご褒美ですから」

シャーロッテ「ご褒美ね。本当に変わってるわ、カムイ様は」

カムイ「はい、ふふっ、シャーロッテさんのお胸、とっても柔らかい……」

シャーロッテ「ここまでさせてあげてるんだから、ちゃんといい男紹介しなさいよ」

カムイ「ふふっ、私にそんなことができると思いますか?」

シャーロッテ「しなさいよ。この戦いが終わったら、パーティーとかに呼んでくれるだけでいいわよ。あと、よかったらだけど……」

カムイ「?」

シャーロッテ「あたしが恋愛の極意、あんたに教えてあげる」

カムイ「え、私がそういうのに疎い方がいいんじゃないんですか?」

シャーロッテ「たしかにそうだけど、その、あたしだけいい男を手に入れたってなったら、なんか、その……わかるでしょ?」

カムイ「ふふっ、わかりました。シャーロッテさん直伝の恋愛極意の伝授、楽しみにしてますね」

シャーロッテ「ふふっ、あたしの伝授はスパルタだから、覚悟しておきなさい」ナデナデ

カムイ「はい。それじゃ、シャーロッテさんをいっぱい堪能させてもらいますね」スンスン

シャーロッテ「え、ちょ、そんな深く顔埋めてなにや――、てめっ、匂い、そんな嗅ぐんじゃ、ひゃふっ、谷間に鼻、あたってるって!」

カムイ「はぁ、なんだかとっても気持ちいい匂いですね。すごくいいです、これがシャーロッテさんの匂いなんですね。触ったらもっと出てきそう……」スンスン フニフニ

シャーロッテ「ひゃうっ、ちょっと、胸先触りながら、嗅がないでって、言って――んっ、っく、ふぁん」

カムイ「……ふふっ、やっぱり、シャーロッテさんは良い声を出してくれるから、大好きです」

シャーロッテ「褒めてねえからな、それ。お、ぼえてて、おけよ!!」

カムイ「はい、いっぱい覚えておきますね、シャーロッテさんの匂いも、声も、感触も……いっぱい体に染み込ませますね?」フニフニ

シャーロッテ「そっちじゃねえから!」

カムイ「うふふっ」

シャーロッテ「笑わないでくれない?」

カムイ「ふふっ」

シャーロッテ「人の話聞けよ……」

カムイ「……」ギュッ

シャーロッテ「はぁ、世話が焼けるわね。本当に……」ナデナデ

カムイ「あっ……んふふ……気持ちいいです……」

シャーロッテ「そう、それじゃ、もう少しこうしてあげる」

カムイ「……はい、ありがとうございます」

◆◆◆◆◆◆
―白夜・廃村『小さな家屋』―

オーディン「……ここに新たな力は覚醒する。アウェイキングヴァンダーを越えし、暗黒魔術の誕生はこの後の戦いを左右する。俺の右手も持つかどうか……」

 フルフルフル ガシッ

オーディン「ふっ、だがこの封印されし右腕に纏った漆黒を操るこの俺、漆黒のオーディンに不可能は……ない!!!」

オーディン「今、アウェイキング・ヴァンダーは新たなる力へと覚醒する! いでよ――」

カムイ「えいっ」ピトッ

オーディン「ひっひゃああああん!!! だ、だれ、だれだれだれ!?」

カムイ「オーディンさん、私ですよ」

オーディン「って、カムイ様、首筋にタッチやめてくださいよ!」

カムイ「いくら声を掛けても、反応しなかったので」

オーディン「え、そうだったんですか……。その……」

カムイ「ええ、すごい小さな声で呼んでたんですけど……熱心だったみたいですね」

オーディン「そこ、もう少しボリューム上げてくださいよ。くっ、どんな形であろうとも淫靡手をつかいたいということか!」

カムイ「ふふっ、だって、触ったほうがオーディンさん、とってもおもしろい動きをするじゃないですか。気配が機敏に動いてて楽しいんです」

オーディン「俺、弄ばれちゃった……」

カムイ「それで一体何をしているんですか?」

オーディン「ふふっ、よくぞ聞いてくれました。この先の戦い、激戦が予想される。聖戦と言っても過言では無いだろう激しい戦いが訪れるはず……」

カムイ「そうですね……」

オーディン「だからこそ、漆黒のオーディンは新たな力を覚醒する時が来た。その場にカムイ様は立ち会っているということです。今から仕切り直しますから、そこで見て――」

カムイ「……あの、オーディンさん」

オーディン「はい、なんですか?」

カムイ「名前はもう決めたんですか?」

オーディン「もちろんです。新しい力、とても強大な力……おっと、心配はいらない。この漆黒オーディンに使いこなせない力など存在しませんから」

カムイ「そうですか……少し残念ですね」

オーディン「え、ざ、残念?」

カムイ「はい。なにかの名前を一緒に考えましょうって、前約束したじゃないですか。なのに新しい力の名前を一人で決めてしまうなんて」

オーディン「……あ」

カムイ「忘れてたんですね。私との約束……」

オーディン「あ、あのそのですね。これは……」

カムイ「……」

オーディン「す、すみません」

カムイ「ふふ、いいですよ。それに時間を取ると言いながら、ここまでオーディンさんと過ごしていない時間のほうが多かったこともあります。でも新しい力の名前ですか、なんだかいいですね」

オーディン「でしょう!? ワクワクしますよね」

カムイ「だからこそ、一緒に考えたかったんですけどね?」

オーディン「うっ……それはその……」

カムイ「ふふっ、冗談です」

オーディン「……だけど、この名前だけは俺一人だけで考えていたと思います。どんなことがあっても、きっと……」

カムイ「どうしてですか?」

オーディン「……ふっ、それには答えられない。俺の中に溢れる力がどよめき、錯乱した精神はさまよう亡者のように――」

カムイ「そんな風に言うと、この淫靡手で、もう一度首筋を撫でちゃいますよ?」

オーディン「勘弁してください。おねがいします」

カムイ「なら、訳を話してください。その、本当に話したくないことでしたら……」

オーディン「……いえ、カムイ様に聞いてもらうべきかもしれません。その、あなたには話しておかないといけない、そう思いますから」

カムイ「……わかりました。おねがいします」

オーディン「はい。……その、ラズワルドとルーナから、俺のしたい話を聞いてるんじゃないかと思います」

カムイ「え?」

オーディン「……俺達がするべき使命に関する話です」

カムイ「……もしかして、オーディンさんもお二人と同じように」

オーディン「ええ。ほんと情けない話で、俺も同じです。神器を巡り合わせることはおぼろげにおぼえてます。でも、それが何に至るのか、そもそもそれが何に報いる行為なのか、もうわからないんです」

カムイ「……そうでしたか。その、オーディンさん……」

オーディン「大丈夫ですよカムイ様、俺は大丈夫です。確かに俺が辿るべき道はもうわからない。多分、俺達が持ってるこの神器を巡り会わせる使命はカムイ様、あなたと俺たちの間にある最初の絆だと思ってます」

カムイ「私とオーディンさん達との最初の絆ですか?」

オーディン「はい。二人もその最初の絆を信じてるからこそ、今もここにいられます。俺ももちろん、その中の一人です。だからこそ、俺が次に信じるべきはカムイ様、あなたです」

カムイ「オーディンさん」

オーディン「だから、俺は前の力、アウェイキング・ヴァンダーと決別して、新しい力を手に入れようと考えたんです。それが俺がこの先信じるカムイ様との絆の証……、そう思ったんです」

カムイ「そうだったんですね」

オーディン「……」

カムイ「でも、前の力と決別する必要はありませんよ?」

オーディン「え? なん――」

 ギュッ

オーディン「え、ちょ、か、カムイ様!?」

カムイ「それは捨てちゃ駄目なものだからです。それを捨てたら、オーディンさんはいずれ後悔することになる気がします」

オーディン「……カムイ様」

カムイ「オーディンさん、使命を忘れていたとしても覚えていなかったとしても、そこに最初の物があるのならそれは身に付けていくべきものです」

オーディン「……カムイ様との絆、それと一緒に扱ってもいいんですか?」

カムイ「もちろんです。むしろ、あなたがそれを許してくれるなら。私との絆を一緒にしてあげてください。私との絆がそれに勝るかはわかりませんけど」

オーディン「……なら、カムイ様。今度こそ、一緒に何かの名前考えましょう」

カムイ「オーディンさん?」

オーディン「それが、俺とカムイ様の絆の形にぴったりだって思いますから、カッコいい名前一緒に考えましょう?」

カムイ「……ふふっ、面白いですねオーディンさんは」

オーディン「ええ。ですから、ちゃんと決まるまで俺は死んだりしません。もちろん、カムイ様もですよ?」

カムイ「はい」スッ

オーディン「?」

カムイ「今度は忘れないでくださいね?」

オーディン「ふっ、もちろんだ。この漆黒のオーディン、新たなる誓いを――」

カムイ「えいっ」ピトッ

オーディン「ひゃひいいいいっ、なんでいきなり首筋触るんすか!?」

カムイ「ふふっ、からかいたくなっただけです。ただそれだけですから」

オーディン「最後でからかわないください。はぁ、これがなければかっこよく決まったのによぉ……」

カムイ「それじゃ、そろそろ準備に入ってくださいね」

「今日には出立しないといけませんから……」

今日はここまでで

 シャーロッテは抱きしめたらとてもいい匂いがすると思う

シャロはいいにおいしそう
ふわふわしてる
でもおなかかたそうでいい

だいたいみんないい匂いかいい臭いしそう

フランネルはくさい

◆◆◆◆◆◆
―白夜・廃村『大きな屋敷』―

 ガラッ カタンッ

マークス「皆の準備は整たようだな」

カミラ「ええ。あとは風の村に向けて進むだけね」

エリーゼ「でも、急がないといけないよ」

アクア「そうね。出来る限りの情報の精査は終わった。あとはできる限り、こっちの思う通りに敵が動いてくれるのを願うだけね」

カムイ「果たして動いてくれるでしょうか?」

レオン「ベルカの持ち帰った情報を精査した上で考えれば、たぶん相手は乗ってくれるとは思うよ。正直、今回はかなり自信があるよ」

サクラ「私も多分、大丈夫だと思います……」

カムイ「サクラさん……」

サクラ「テンジン砦での出来事がありますし、リョウマ兄様のこともあるはずですから……」

マークス「それも含めての手だ。こちらの目的が決まっている以上、これで行くしかあるまい」

カムイ「そのためにも、できる限り白夜の方々の命を奪わないよう無力化が必要になりますね……」

レオン「正直、そうしないといけないのが今回の戦いの一番辛いところだと思ってるよ。向こうは確実に殺しに来るだろうからね」

マークス「だが、強硬派と王族派が入れ替わるのなら、こちらも無茶は承知で敵の無力化に努めねばなるまい。王族派との交渉の余地は残っている以上な」

カムイ「はい。できれば王族の方たちとは話し合いが出来ればと考えていますので」

アクア「……だとしても、受け入れてもらえるとは思えないわ」

カムイ「わかっています。私が暗夜に付いた事実は永遠に変わらないことですからね。だからこそ、私は暗夜の立場で出来る限りあがいて行くしかありません。すみませんが皆さん、よろしくおねがいします」

サクラ「大丈夫ですよ、カムイ姉様」

エリーゼ「任せておいて! あたし、カムイおねえちゃんのためにいっぱい頑張るから!」

カミラ「ふふっ、それじゃ出発しましょう。先行は……」

レオン「今回はゼロとオーディンにお願いしたよ。ベルカとルーナはまだ疲労が残ってるだろうからね」

カミラ「ふふっ、ありがとう」

マークス「よし、では全員集合次第、出立しよう」

 ゾロゾロゾロ

カムイ「……」

アクア「カムイ、行きましょう」

カムイ「はい、アクアさん。あっ」

 カランカランッ コロコロッ

アクア「これは竜石……また色が濁っているみたいね」

カムイ「そうですね。嫌になってしまいます、私自身の心の弱さというのは」

アクア「……風の村には彼がいるわ。絶対にね」

カムイ「わかっています。だからこそ、ここは踏ん張りどころです」

アクア「踏ん張りどころね……。私にはどこもそうに思えるけど?」

カムイ「ふふっ、なら私は毎度毎度踏ん張ってることになりますね。足がとても強固になりってそうです」

アクア「何時も裸足だから、確かにそうかもしれないわ」

カムイ「ふふっ」

アクア「久しぶりの再会ね……」

カムイ「ええ、でも、こんな再会じゃない方がいいです。こんな互いに殺しあうような再会なんて……正直ごめんですから」

 タタタタタッ

◇◇◇◇◇◇
―白夜・風の部族村烈風城『王の間』―

 ガタンッ!!!

タクミ「何を言って……」

白夜兵「何度も言っている通りです。我々の出立はあなた方の遠征到着依頼よりも先に決まっていたこと、今さらそれを変えることはできません」

タクミ「なら僕たちの部隊分、人数を入れ替えればいい。僕たちのほうが――」

白夜兵「はっはっは、さすがにそれは難しいことです。我々はタクミ王子様に後続をお任せするつもりでしたので、すでに出立の準備は整っている故、今さら予定の変更などできません。イズモ攻撃の手筈は出来上がっており、我々の到着と同時に始まることが決まっています」

タクミ「……」

白夜兵「なに、白夜を裏切ったあの王女の首は我々が持ち帰りますから、ご安心ください」

タクミ「それじゃ駄目だ。あいつは、あいつは僕がこの手で!!!」

白夜兵「威勢はいいですが。すでに決まりは決まり、その決まりを覆すとなると、また一から作戦を練り直さなければなりません。イズモに籠城している裏切り者と暗夜の軍を叩かなければ、さらなる増援がやってくる。タクミ王子様はテンジン砦でもう一方の暗夜の相手をされる方が先決でしたでしょうに……」

タクミ「……っ」

白夜兵「ですが、ここまで来てしまったのです。残っている住民の監視をよろしくお願いします。一度、暗夜に寝返った人々に手を差し伸べるのも、王族のご役目でしょうからなぁ。はっはっは」

 ガチャッ バタンッ

タクミ「……くそっ!!!!」

タクミ(どうして、なんで僕の邪魔をするんだ。このままじゃ、どうにもならないっていうのに!!!)

 ガチャッ ギィイイ

オボロ「タクミ様?」

タクミ「オボロ?」

オボロ「その、大丈夫ですか?」

タクミ「あ、ああ、だいじょうぶだよ、それより駐屯していた部隊はなんて?」

オボロ「それが……もう止めることはできそうにありません。私たちのことなんて気にもしませんでした。ヒナタが色々と案を出してますけど、聞く耳持つとはとても……」

タクミ「……僕たち王族に気を払う必要はもうないってことかよ。くそ……」

オボロ「タクミ様……」

タクミ(僕が僕があいつを討たないといけないんだ。あいつを討って、僕がみんなを……みんなを守らないといけないのに!!!)

 ドクンッ

タクミ(なのに、どいつもこいつもどうして邪魔ばかりするんだ!!!!)

 ドクンドクンッ

「……ミ様」

「…クミ様!」

タクミ「!!!」

オボロ「タクミ様!」

タクミ「すまない……その、えっと……」

オボロ「……タクミ様。大丈夫ですよ」

タクミ「オボロ?」

オボロ「私はタクミ様とともにあります。どこへでも付いていきます。どんなことでも従います。ですから一人で悩まないでくださいませ、辛いことがあったら申してください。私はあなたの力になりたいんですから……」

タクミ「オボロ……ありがとう」

オボロ「あ、も、もうしわけありません/// その、出過ぎたまねを……」

タクミ「いや、少しだけ気が楽になったよ。オボロは僕を信じてくれるんだよね」

オボロ「もちろんです、タクミ様……そ、その、ヒナタの様子見てきます!」

タクミ「うん、よろしく頼むよ」

オボロ「は、はいぃ」

 タタタタタッ ガチャ バタンッ

タクミ「……捕虜の管理に時間を割くわけにはいかない。あいつを僕の手で倒さないといけないのに、こんなところで時間を使うわけにはいかないっていうのに……」

 ズキッ

タクミ「ううっ、頭が……。ううっ」フラフラッ……

 ピチャン ピチャン ピチャン

 コッチヘ……クルノダ……

 コッチヘ

タクミ(……誰かが、呼んでる……? 誰……)フラフラッ

 ギィィイイッ ガチャンッ

~~~~~~~~~~~~~~~~~

オボロ「……」

タクミ(うん、よろしく頼むよ)

オボロ「タクミ様……」

ヒナタ「何やってんだ。オボロ、そんなニヤニヤして」

オボロ「ひゃああっ! ヒ、ヒナタ!?」

ヒナタ「すげえ驚き方だな。まぁいいけど、ちょっととなりいいか?」

オボロ「別に遠慮なんていらないわよ」

ヒナタ「そっか、それじゃ……」

オボロ「その様子じゃ、駄目だったみたいね」

ヒナタ「ああ、面目ねぇ。あいつら取りつく島もありゃしなかったぜ」

オボロ「そう……本当にどうしてこんなことになったのかしらね……」

ヒナタ「……戦争が原因だって言うのが一番簡単だけどよ」

オボロ「……あたしにはあいつが原因としか思えない。あの裏切り者しかいないわ」

ヒナタ「……カムイ王女のことだよな?」

オボロ「ええ、あの裏切り者が全てをむちゃくちゃにしていったのよ。あいつが裏切らなければ……」

ヒナタ「たしかにそう言われればそうだけどよ。すべてをそれの所為にするわけにもいかねえ気がする」

オボロ「ヒナタ、あの裏切り者の方を持つつもり?」

ヒナタ「そんなわけねえよ。あの王女は裏切り者で俺たちの敵だ、それは変わらねえ。だけど、テンジン砦の件だけはそうなのかわからなくなってんだ」

オボロ「どういう意味よ?」

ヒナタ「スズメを覚えてるか?」

オボロ「スズメ……誰だったかしら?」

ヒナタ「俺達がマカラスに行った時、連れて行った罪人の中にいた巫女だよ」

オボロ「ああ……あのタクミ様に暴言を吐いてた奴ね。それがどうしたの?」

ヒナタ「俺はあいつの顔を覚えてる」

オボロ「そう、律儀ね。言われるまで思い出しもしなかったわよ?」

ヒナタ「そのあいつに似た死体がテンジン砦にあった」

オボロ「……え?」

ヒナタ「あの時テンジン砦にいた白夜の兵たちは、暗夜が騙し打ちをしかけてたから、それをどうにか迎撃したとも言ってた。なのにあったのはこっちの死体だけで、本来なら晒されるべき暗夜側の死体はなかった。明らかに不自然だろ?」

オボロ「そのスズメの死体は、白夜に本当に戻ってきていたからとかじゃないの?」

ヒナタ「……あの時、スズメは白夜に帰るつもりはないって言ってた。そんな奴がテンジン砦に白夜としているなんて考えられない。あるとすれば、暗夜としてここに来たってことだと思う。でも、ならあの死体は暗夜軍の死体として処理されるべきなのに、なぜか味方の死体として処理されてた……」

オボロ「……」

ヒナタ「なんか、混乱させるために色々手を回してるみたいに感じてよ……」

オボロ「でも……その死体がスズメだという確証はあるわけ?」

ヒナタ「それはねえ。だけど、俺にはそう見えた。見えちまったんだよ」

オボロ「……」

ヒナタ「だから全てを王女の所為にはできねえ。全部が王女を理由に終わりにするには、なんか色々起き過ぎてる気がするんだよ……。それで、ああもう、なんて言えばいいかわかんねえ……」

オボロ「そう、ヒナタはまっすぐなのね。私はそう思うこともは出来ないわ」

ヒナタ「……ああ。わかってるって、オボロはタクミ様一筋だもんな」

オボロ「な、何言ってるの////」

ヒナタ「へへっ、さてと、とりあえずは村民が収容されてる塔を見てくるぜ。どれくらい食料が必要なのかとか、色々調べねえといけねえからな」

オボロ「ええ、おねがいね」

ヒナタ「おうよ!」

オボロ「……ねぇ、ヒナタ」

ヒナタ「ん、なんだ?」

オボロ「もしも、あなたの口にしたことが真実だとしたら、どうするの?」

ヒナタ「……わからねえ。だけど、一つだけ確かなことはあるぜ」

オボロ「それはなに?」

ヒナタ「俺もオボロもタクミ様の臣下だってことだ」

オボロ「……ふふっ」

ヒナタ「……ふっ」

オボロ「そうね、その通りだわ。私達が仕えるべきは白夜ではなくてタクミ様、ただ一人だもの……」

ヒナタ「そういうこと。そんじゃな」

 タタタタタッ

オボロ「……」

オボロ(ねぇ、タクミ様……。私達はあなたを信じています……)

オボロ(だから、私達を頼ってください……どんなことでも――)

(力になりますから……)

 第二十一章 前篇おわり

○カムイの支援現在状況●

―対の存在―
アクアA
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)

―城塞の人々―
ギュンターB++
(恋愛小説の朗読を頼まれています) 
フェリシアB+
(カムイに従者として頼りにされたい)
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
フローラB
(すこしは他人に甘えてもいいんじゃないかと言われています)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)

―暗夜第一王子マークス―
ラズワルドA
(あなたを守るといわれています)
ピエリB
(弱点を見つけると息巻いています)
マークスB++
(何か兄らしいことをしたいと考えています)

―暗夜第二王子レオン―
オーディンB+→B++ NEW
(二人で何かの名前を考えることになってます)
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)
レオンB+
(カムイに甘えてほしいと言われて、いろいろと考えています)

―暗夜第一王女カミラ―
ルーナA
(目を失ったことに関する話をしています)
カミラA
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ベルカC+
(イベントは起きてません)

―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼA
(昔、初めて出会った時のことについて話しています)
ハロルドB
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィB+
(一緒に訓練をしました)

―白夜第二王女サクラ―
サクラA
(カムイと二人きりの時間が欲しいと考えています)
ツバキB
(イベントは起きていません)
カザハナB
(イベントは起きていません)

―カムイに力を貸すもの―
シャーロッテB++→A NEW
(返り討ちにあっています)
スズカゼB
(おさわりの虜になったようです)
サイラスB+
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB+
(許されることとはどういうことなのかを考えています)
モズメC+
(イベントは起きていません)
リンカB
(イベントは起きていません)
ブノワC+
(イベントは起きていません)
アシュラC+
(イベントは起きていません)
フランネルB+
(宝物を見せることになっています)

●異性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・レオン×カザハナ
 C[本篇の流れ] B[3スレ目・300] A[3スレ目・339]
・ジョーカー×フローラ
 C[1スレ目・713~715] B[1スレ目・928~929] A[2スレ目・286]
・レオン×サクラ
 C[1スレ目・511~513] B[2スレ目・297~299] A[3スレ目・797]
・ラズワルド×ルーナ
 C[1スレ目・710~712] B[2スレ目・477] A[4スレ目・177]
・アクア×オーディン
 C[3スレ目・337] B[3スレ目・376] A[4スレ目・353]
・ルーナ×オーディン
 C[4スレ目・352] B[4スレ目・411] A[4スレ目・460]
・ラズワルド×エリーゼ
 C[1スレ目・602~606] B[3スレ目・253] A[4スレ目・812]←NEW

【支援Bの組み合わせ】

・ブノワ×フローラ
 C[2スレ目・283] B[2スレ目・512]
・エリーゼ×ハロルド
 C[2スレ目・511] B[2スレ目・540]
・オーディン×ニュクス
 C[1スレ目・839~840] B[3スレ目・284]
・ベルカ×スズカゼ
 C[3スレ目・252] B[3スレ目・315]
・レオン×エルフィ
 C[3スレ目・251] B[4スレ目・437]
・アクア×ゼロ
 C[1スレ目・866~867] B[4スレ目・438]

【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
 C[1スレ目・377~380]
・モズメ×ハロルド
 C[1スレ目・514~515]
・ギュンター×ニュクス
 C[3スレ目・246]
・ルーナ×ハロルド
 C[3スレ目・375]
・カザハナ×ツバキ
 C[3スレ目・772]
・アシュラ×サクラ
 C[3スレ目・773]

●同性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・リンカ×アクア
 C[1スレ目・888~889] B[2スレ目・285] A[3スレ目・254]
・ピエリ×カミラ
 C[1スレ目・752~753] B[2スレ目・478] A[2スレ目・513]
・フェリシア×ルーナ
 C[1スレ目・864~865] B[1スレ目・890~891] A[1スレ目・930~931]
・フローラ×エルフィ
 C[1スレ目・471~472] B[3スレ目・338] A[3スレ目・377]
・レオン×ツバキ
 C[1スレ目・492~493] B[1スレ目・870] A[3スレ目・798]
・ベルカ×エリーゼ
 C[2スレ目・284] B[3スレ目・301] A[4スレ目・354]
・ピエリ×ルーナ
 C[3スレ目・249] B[4スレ目・317] A[4スレ目・412]
・アクア×ルーナ
 C[3スレ目・283] B[4スレ目・461] A[4スレ目・813]←NEW

【支援Bの組み合わせ】
・ギュンター×サイラス
 C[1スレ目・926~927] B[3スレ目・316]
・フェリシア×エルフィ
 C[1スレ目・367~368] B[2スレ目・541]
・シャーロッテ×モズメ
 C[3スレ目・248] B[3スレ目・285]
・ベルカ×ニュクス
 C[4スレ目・176] B[4スレ目・410]
・シャーロッテ×カミラ
 C[2スレ目・476] B[4スレ目・439]

【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
 C[1スレ目・423~425]
・ピエリ×リンカ
 C[3スレ目・247]
・ピエリ×フェリシア
 C[3スレ目・250]
・ジョーカー×ハロルド
 C[1スレ目・426~429]
・フローラ×エリーゼ
 C[4スレ目・178]
・エルフィ×ピエリ
 C[3スレ目・771]
・カミラ×サクラ
 C[4スレ目・175]
・スズカゼ×オーディン
 C[4スレ目・318]
・ラズワルド×オーディン
 C[4スレ目・459]
・サクラ×エルフィ
 C[3スレ目・774]
・ルーナ×フローラ
 C[4スレ目・781]
・ルーナ×カザハナ
 C[4スレ目・780]

 今日はここまでで。
 次回、戦闘準備パートです。
 ここは風の村、風神弓の威力も上がる……気がする。

上がればいいのになあ

弓の前にブリュンヒルデをなんとかしてさしあげろ

◇◇◇◇◇◇
―白夜・風の部族村『収容塔』―

フウガ「……」

 カッ カッ カッ

フウガ「む……」

タクミ「……あんたがこの村の長、なんだね」

フウガ「ほぅ、スメラギの息子か。こんなところに足を運んでくるとは思っていなかったぞ」

タクミ「父さんを知ってるんだね。そんな人間が暗夜に味方をするなんてね……」

フウガ「ふっ、暗夜に味方か。確かに、この状況を見ればそう思うのも仕方ないだろう、それがここに攻撃を加えてきた者たちの信じる現実なのだからな」

タクミ「否定はしないんだね……」

フウガ「否定する必要があるのか?」

タクミ「あんたたちはなにを信じてる。誰を信じているっていうんだ?」

フウガ「……少なくとも白夜では無いと答えておこう。本題に入れ、己のために建前を用意する必要などないのだからな」

タクミ「……そうかい」

フウガ「……」

タクミ「僕たちの戦列に加われ。そうすれば今回の件、すべてを水に流してあげるよ」

フウガ「戦列か、それはなにに対する戦列だ?」

タクミ「決まってる、白夜を裏切ったあいつを殺すための戦列だよ。あんたたちが加わってくれるなら、僕はすぐにここを出てイズモに向かえるんだ。あんたたちも罰せられることはなくなる、お互い悪い話じゃないと思うけど?」

フウガ「なるほど、捕虜の相手などしている暇はない。そう言いたいようだな」

タクミ「……」

フウガ「しかし交渉に来たにしては、穏やかではない。その手に握りしめているものがその証だろう。そう思わないか?」

タクミ「ああ、交渉に来たわけじゃないからね。僕は命令をしに来ただけだ。従わないなら……」

フウガ「……」

タクミ「わかるよね、この状態ならどう答えるのが正解なのかくらいさ……」

フウガ「ふっ、命をいつでも奪える立場か。まるで神にでもなったような気分だろう。スメラギの息子とは思えぬ、低俗さだな」

タクミ「……早くしてくれないかな。こっちは急いでるんだ、早くあいつを殺さないといけないんだからね……」

フウガ「そうか。ならば貴重な時間を使わせたことは詫びなくてはならないな」

タクミ「?」

フウガ「お前の提案に乗るつもりはない。ここにいる者たちは私を含め、今の白夜をよく思っていない。故にこの力を貸すことは無い」

タクミ「……従わない、そういうことだね?」

フウガ「ああ」

 ガチャガチャチャ ガキチャコンッ

 ギィイイイッ

フウガ「……」

部族民「フウガ様……」

フウガ「このようなことに付き合わせる形となってしまったな。もしも、この中に戦列に加わりたいというものがいるなら、拒みはしないが……」

部族民「そんな冗談は酒を飲んでも言うつもりはありませんよ」

部族民「そうです。ここに残って戦ったのは私たちの誇りのため、あの者たちに力を貸すためではありません。むしろ、フウガ様の言葉に安心しているくらいですから。フウガ様は間違ってなどおりません……」

フウガ「……すまぬ」

 カツン カツン カツン ジリッ

タクミ「馬鹿だね。こんなところで意地を張って死ぬなんて、素直に従えば命を繋げられたのにさ」

フウガ「命を繋いだところで、あとは操られるだけの人生だろう。悪意という名の連鎖に飲まれ、気付けば何をしてるかもわからんそんな生物になり果てる、そんなものに喰わせる力はない。お前が意地と蔑んだ、私達の誇りを喰らって身を満たすのだな……」

タクミ「……安心して一撃で仕留めてやるからさ、時間が無いからね。少しはありがたく――」

フウガ「ご託を並べて何になる、さっさとやるがいい。それとも……まだ気が変わってくれかもしれないなどと甘いことを考えているのならば、見当違いもいいところだ」

タクミ「なに?」

フウガ「お前が屈したことがすべての人間に通用すると思わないことだ……。それがたとえ死の間際であろうとも、屈しない者は最後まで屈指はしないのだからな」

タクミ「!!!!」



 ドクン

 ドクン ドクン


タクミ(こいつらを殺せば、すぐにでもあいつがいるイズモにいける、いけるんだ)

 ドクン ドクン ドクン

タクミ(捕虜を殺せばここは放棄しても問題ない、もう監視するべき相手もいなくなる。ならやれ、今すぐ、こいつらの首を飛ばせ、飛ばせ……)

 ドクンドクンドクンドクン

(飛ばすのだ、あの女を殺しに行くために……、こいつらをすべて殺せばすぐにでも向かうことができる)

(さぁ、殺せ……殺せ……)

 殺せ!!!!

タクミ「っ!!!」グッ

 ガタンッ!!!

タクミ「!」

 タタタタッ!

白夜兵「タクミ王子様、こちらにおられましたか!」

タクミ「なんだい、今僕は――」

白夜兵「それが……暗夜軍と思われる一団が現れました!」

タクミ「っ、なんだって!? イズモからここまで突破されたって言うのか!?」

白夜兵「わかりません。おかしなことに撤退してきた兵もいない状態で、私たちも何が何だか分からず困惑している限りで――」

タクミ(どういうことだ。イズモからの配送兵がいないということは、どこか別の道を使ってやってきたってこと? 明らかに数が劣勢なのにこんな場所に現れるなんて、そんなことをする奴が……)

タクミ「……まさか」

白夜兵「え?」

タクミ「……そうだよ、こんなことをしてくるのはあいつしかいない、あの裏切り者しか……」

タクミ(まさか、向こうから来てくれるなんてね……)

白夜兵「タクミ様?」

タクミ「案内するんだ、早く!」

白夜兵「はい、こちらへ! オボロ様、ヒナタ様はすでに出ておられます!」

 タタタタタタタッ

~~~~~~~~~~~~~~~~

オボロ「忌々しいわね。こっちを睨んでばかりで、攻めてくる気配もないわ」

ヒナタ「そうだな」

オボロ「それにしても、一体どこから湧いて出たのかしらねぇ」

ヒナタ「わからねえ。けど……それは関係ねえ。向かってきたなら相手するだけだ」

オボロ「ええ、そうね……」

ヒナタ「それにしても全く動かねえ。様子を窺ってるだけじゃねえか?」

オボロ「そうね、流石におかしいわ……」

 タタタタタッ

タクミ「オボロ、ヒナタ」

ヒナタ「待ってたぜ、タクミ様」

オボロ「タクミ様、お待ちしておりました」

タクミ「それで、状況は?」

ヒナタ「さっきからずっと睨めっこでさ。あいつら、全く攻めてくる気配がねえから困ってる」

オボロ「数もそれほど多くないみたいです」

タクミ「望遠鏡は?」

白夜兵「弓に付けてあるものでしたら、すぐに御貸しできますが」

タクミ「それでいい」

 カチャッ カコンッ

白夜兵「こちらです、どうぞ」

タクミ「……」

タクミ(たしかに明らかに少ない。正面から戦おうとしてるには明らかに戦力が不足してる)

タクミ(仮にイズモでの戦闘に白夜が敗走していたら、先に知らせが届くはずだし、今ここから見えてる敵の戦力はそれを跳ね返すほどにあるとは思えない。先に敗走兵が来ることはないんだ。なぜならあいつは裏を突いてここまでやってきたんだから。元からそんな奴だ、一筋縄じゃいかない。だからこそ、考えそうな次の一手は……)

オボロ「タクミ様?」

タクミ「オボロ、僕たちの兵はほとんどここに来ているみたいだね」

オボロ「はい」

ヒナタ「すぐに攻めてくるかと思って冷や冷やしたからな。正直なところ、拍子抜けっていうか……」

タクミ「……今正面の防備は固い、そういうことになるね」

タクミ(だとしたら……)

ヒナタ「で、タクミ様。どうすんだ? このまま睨めっこなんて――」

タクミ「わかってるよ。オボロ、全部隊に戦闘準備に入るように伝えてくれるかい」

オボロ「わかりました。では、戦線を上げ――」

タクミ「その必要はない。必要最低限の人数だけここに……、残りは合図とともに動ける準備をしておいてくれないか」

オボロ「え? それはどういうことですか、タクミ様」

タクミ「今回はこっちが奴の裏をかく……そのつもりだからだよ」

◆◆◆◆◆◆
―白夜・風の村『修練場』―

 ガッ ガッ

 スタッ

カムイ「崖を登るような場所にあるなんてすごいですね、この修練場。私も城塞での修練はよく屋上で行っていましたけど、この行き来の方法ならすぐにでも力が付きそうです」

アクア「普通はこんな行き方なんてしないはずよ」

カムイ「それもそうですね。アクアさん、大丈夫ですか?」」

アクア「大丈夫よ、そんなに力が弱いわけじゃないし。ちゃんと、カミラが先行して縄を付けてくれたから思いのほか楽よ」

カムイ「それもそうですね……。それにしても、見事に誰もいないように感じますが……」

アクア「正面からの総攻撃を想定して、ほとんどの兵が動いたのね。見渡す限り、人影はないようだから……」

サクラ「うっ、うう……はうっ」

アクア「サクラ、手を」

サクラ「は、はい。ありがとうございます、アクア姉様」

アクア「……」

サクラ「アクア姉様?」

アクア「タクミとの戦いは避けられないはずよ……。肉親と戦うことになるわ」

サクラ「……確かにそれは怖いです。でも、私もカムイ姉様と一緒に戦うって決めたんです。私だけ事の成行きを見ているわけにはいきません。それに、もしもタクミ兄様が間違ったことに手を貸そうとしているのなら、それを私は止めたいんです」

アクア「……そう、強くなったのねサクラは」

サクラ「私もそう思います」

カムイ「サクラさん……」

サクラ「そんな心配そうな顔をしないでください、カムイ姉様。私も共に戦うって決めたんです」

カムイ「はい、頼りにしています」

アクア「少し移動しましょう。他のみんなも上り終わる頃合いになるわ」

カムイ「そのようですね、サクラさんもこちらへ――」

???「サクラから離れろ、この裏切り者!」

 キリキリキリ パシュッ

カムイ「!」サッ

サクラ「カムイ姉様!」

アクア「カムイ!」

カムイ「……大丈夫です。というよりも、今の攻撃当てるつもりはなかったようです」

???「……」

カムイ「ですが、ここにあなたがいるということは、そういうことですよね……」

 ザッ

カムイ「タクミさん……」

タクミ「出し抜けると思っていたみたいだけど、その手には乗らないよ。カムイ……」

カムイ「何ヶ月ぶりでしょうか、マカラスであったのが何年も前のように感じます」

タクミ「馴れ馴れしく話しかけないでくれないかな。裏切り者の声なんて断末魔だけで十分なんだよ……」チャキッ

アクア「タクミ!」

タクミ「あんたもだ、アクア。元から暗夜の人間だったあんたに名前でなんて呼ばれたくもない」

アクア「っ……」

サクラ「タクミ兄様、武器収めてください! カムイ姉様たちと争う必要なんてないんです!」

タクミ「サクラ……そう言うようにカムイに脅されてるんでしょ。テンジン砦でサクラを盾に降伏を迫ったって聞いてる。親族である僕に対してなら有効かもしれないからそうさせられてる。そうだろ、カムイ!」

カムイ「そんな事をするつもりはありませんよ。私はサクラさんに強要などしていません……」

タクミ「なら、その証拠を見せてくれるかな?」

カムイ「証拠……ですか?」

タクミ「ああ、サクラをこちらに返してもらう。裏切り者の傍に置いておきたくなんてないからね」

アクア「……カムイ」

カムイ「……」

サクラ「カムイ姉様」

カムイ「……わかりました。お任せします」

サクラ「はい……」

 カツンカツン……

サクラ「……」

タクミ「さぁサクラ、一緒に帰ろう。もうサクラが戦う必要なんてない、僕がみんなを守って見せる。だから戻ろう白夜王国に、みんなが待ってる場所に……」スッ

サクラ「……」

タクミ「サクラ?」

サクラ「タクミ兄様……タクミ兄様は今の白夜王国に何も疑問を抱かないんですか……」

サクラ「タクミ兄様はテンジン砦で起きたことを知りません。私達をカムイ姉様たちは白夜に帰すためにここまで連れてきてくれた。なのに、それをあそこにいる方たちは利用しようしたんです。そんな場所に私は戻れません」

タクミ「何を言ってるんだサクラ! サクラは正真正銘の白夜王国の王女なんだよ!? なのに、なんで戻れないなんていうんだ!」

サクラ「……今の白夜王国は私が信じてきた白夜王国じゃないから。ずっと、ずっと白夜で生きてきました。だから私は帰れないんです」

タクミ「サクラが帰ってくれば、僕たち王族四人が揃う。みんな、みんなが僕たちのことをもう一度認めてくれる……認めてくれるかもしれないんだ!」

サクラ「タクミ兄様……」

タクミ「サクラ、こっちに戻ってくるんだ。頼む、僕が僕が守って見せるから……みんなをみんなを……」

サクラ「それは、誰から守るんですか……」

タクミ「え……」

サクラ「タクミ兄様は誰から、ヒノカ姉様をリョウマ兄様を……そして私を守りたいんですか……」

タクミ「なんで、そんなことを聞くんだ。サクラはそんなことをもう気にしなくても――」

サクラ「もう、目を逸らすことはできないんです。私をここまで守ってきてくれた人たちや、死んでしまった人たちのためにも。だから、私は今の白夜へ戻ることはできません、タクミ兄様」

タクミ「……」

サクラ「私は私を守ってきてくれた人たちを信じてます。だから、もう戻れないんです。タクミ兄様……」

タクミ「サクラ……」

 ドクンッ

タクミ「あんたが……」

 ドクン!

タクミ「あんたが、誑かしたんだ……」

 チャキッ シュォン

カムイ「そうかもしれませんね。でも、だとしたらどうするんですか?」

タクミ「あんたに死んでもらうだけだ」

アクア「タクミ……」

タクミ「あんたが死ねば、丸く収まるんだ。閉されているリョウマ兄さんも、おかしくなったヒノカ姉さんも、そうやって騙されてるサクラも、平和だった白夜も、全部が戻ってくるんだ」

サクラ「タクミ兄様……」

タクミ「カムイ、あんたを殺して証明してみせる。あんたがいなければ全てが上手く行くっていうことを、あんたが死ねばすべて元に戻るってことも、全部、証明してやる!!」

 バシュンッ

 ヒュオオオオオオオオオオッ

サクラ「これは鏑矢の音……」

アクア「……さすがにタクミがここにいるとなると、そういうことよね……」

カムイ「ええ、そのようです」

 ガタンッ

 ダダダダダダッ ガチャリッ

 ザッ

白夜弓兵「……」カチャコッ

オボロ「……」チャキッ

ヒナタ「……」チャキッ

サクラ「こんなにいっぱい……」

アクア「見たところ、ほぼすべてを送り込んできたみたい。私たちの動き完全に読まれていたようね」

カムイ「そうみたいですね」

タクミ「ははっ。どうせ、僕なんかに動きを見破られるわけもないって思っていたんだろうけど、それは大きな間違いだよ。正面に意識を向けさせて、僕たちを背後から襲う。そのつもりだったんだよね?」

カムイ「……」

タクミ「ふふっ、図星だから何も言い返せないよね。突然敵が現れたから誰かと思ったけど、こんなことするのはあんたしかいないってすぐにそう思ったよ。どうだい、見下してた相手にこうやって裏をかかれるのはさ?」

カムイ「……だとしてもこのまま蹂躙されるつもりはありません」チャキッ

カムイ「全員、準備してください!」


 ドクン
 ドクン……

タクミ(あんたに悩まされてきた日々を今日で終わりにできる……。あんたを殺せばきっと――。この僕を忌々しく傷め続ける痛みからも解放される……)

 ドクン……

(殺せば、すべて戻るんだから……ね)

今日はここまでで
 
 必中の弓についてるあれは望遠鏡なのか、それともサイトなのか……個人的な望遠鏡だと思ってる

 この先の展開を安価で決めたいと思います。参加していただけると幸いです。

◇◆◇◆◇
 アタックチームを作ります。
 各キャラクターのジョブ一覧

―対の存在―
・アクア(歌姫)

―城塞の人々―
・ジョーカー(パラディン)
・ギュンター(グレートナイト)
・フェリシア(ストラテジスト)
・フローラ(ジェネラル)

―暗夜第一王子マークス―
・マークス(パラディン)
・ラズワルド(ボウナイト)
・ピエリ(パラディン)

―暗夜第二王子レオン―
・レオン(ストラテジスト)
・オーディン(ダークナイト)
・ゼロ(ボウナイト)

―暗夜第一王女カミラ―
・カミラ(レヴナントナイト)
・ルーナ(ブレイブヒーロー)
・ベルカ(ドラゴンマスター)

―暗夜第二王女エリーゼ―
・エリーゼ(ストラテジスト)
・ハロルド(ブレイブヒーロー)
・エルフィ(グレートナイト)

―白夜第二王女サクラ―
・サクラ(戦巫女)
・カザハナ(メイド)
・ツバキ(バトラー)

―カムイに力を貸すもの―
・ニュクス(ソーサラー)
・アシュラ(上忍)
・フランネル(マーナガルム)
・サイラス(ボウナイト)
・スズカゼ(絡繰師)
・ブノワ(ジェネラル)
・シャーロッテ(バーサーカー)
・リンカ(聖黒馬武者)
・モズメ(弓聖)

 次から安価です。

◇◆◇◆◇
先頭メンバーを決めたいと思います。参加していただけると幸いです。

・カムイと一緒に戦うメンバー
 
>>858
>>859
>>860

・オボロが率いる部隊と戦うメンバー

>>861
>>862
>>863

・ヒナタが率いる部隊と戦うメンバー

>>864
>>865
>>866

 一度選ばれたキャラクターが書きこまれた場合、次の書き込みが適用になります。
 少々人数が多いですが、よろしくお願いいたします。

乙、いよいよタクミ城かー…タクミもオボロもヒナタもどうなるんだろうか

安価はギュンターでお願いします

タクミなんざ怖かねぇ!
多分近くにいる叫び兵法者と槍聖×2がやばそう
エリーゼ

ルーナ

タクミがこれならヒノカ姉さんはもっと怖い
サクラ

オロチとかの結末を考えるとなあ
オボロと白夜隊を当てたいのでここはツバキ

じゃあカザハナ
なんか躊躇してくれそう

サクラとツバキとカザハナで白夜組がトリプってしまった
うーんじゃあ…
リンカ

モズメさんで。白夜ゆかり縛りですか(笑)

じゃあアクア
相手も胃が痛そう

果たして戦巫女バトラーメイドとかいう回復役の集いは、魔王オボロの攻撃を耐えきる事ができるでしょうか?
アクア(ゴリラ)、リンカ(見た目がゴリラ)、モズメ(弓聖超火力ゴリラ)の可愛い女子3人に相手してもらえるオウヨ

◆◆◆◆◆◆
―白夜・風の村『修練場』―

キリキリキリキリキリ……

タクミ「放て!!!」

白夜弓兵たち「っ!!!」

 パシュ!

 ヒュンヒュン

暗夜重装甲兵隊長「防衛陣を組む、いそげ!!!」

 ザッ ガタガタンッ!!!

 キィン カシュンッ

カムイ「皆さん!」

暗夜重装甲兵隊長「ふぅ、どうにか間に合いました。カムイ様、側面の攻撃はわれわれが受け切りますので下がってください」

カムイ「はい、わかりました。くっ、敵の攻撃でこちらも離れ離れになってしまったようですね」

アクア「そのようね。ここにいるのはこれだけ、向こうは予想通りあなたを狙っているみたいよ」

カムイ「ええ、ある意味予想通りですけど、ここまで散り散りにされるとは思いませんでした」

ギュンター「カムイ様、如何いたしますか」

カムイ「ギュンターさんは私と一緒に来てください。他の方は――」

ルーナ「あたしもいるわよ。このまま敵陣に乗り込むでしょ?」

エリーゼ「カムイおねえちゃん、あたしも付いてくよ!」

カムイ「エリーゼさん、ルーナさん……わかりました。槍兵の方々はルーナさんとエリーゼさんの護衛をお願いします。先頭は私とギュンターさんが務めますので、指示があり次第出られるようにお願いします」

ルーナ「わかったわ。それじゃ、あたしについて来てくるのよ!」

暗夜槍兵「はい、私達がお供いたします」

ルーナ「ふふっ、頼りにして――」

暗夜槍兵「エリーゼ王女様!」

エリーゼ「うん、よろしくね! みんなも気を付けてね……」

暗夜槍兵「はい!」

ルーナ「ってちょっと、あたしにも付いて来なさいよ!」

カムイ「それで、敵はどう動いているんですか?」

ギュンター「包囲するために向かっているという状況、敵の包囲網の完成を阻止しつつ、敵の中枢へと向かうのが得策かと」

カムイ「ですね。私たちはこのままタクミさんを目指します。重装甲兵の皆さんは状況を見て移動しつつ敵の弓攻撃を引きつけてください」

暗夜重装甲兵「わかりました。全員、武器は収納し盾を支えるのに全力を尽くせ! 第一班は私と共にカムイ様に随伴、残りは後方の弓を抑えつつ後続を援護しろ!」

カザハナ「カムイ王女、あたしたちも一緒について行くからね」

カムイ「カザハナさん、それにツバキさんも……」

ツバキ「うんうん、それにサクラ様をお守りするんだったら、最適な形だと思うからねー」

サクラ「カムイ姉様、私も付いていきます」

カムイ「はい、わかりました。離れないようにしてくださいね」

サクラ「はい!」

リンカ「流石に王族直属の部隊だ、攻撃がすさまじいな……。だがもう少し距離を取れば攻撃は届かなくなる……」

アクア「ねぇ、リンカ。この高さをしばらくの間、飛んでいることはできる?」

リンカ「ああ、それくらいならどうにかできる、何かあるなら力を貸すぞ」

アクア「ありがとう。すぐ先にある合流地点に向かいたいから協力して」

リンカ「わかった」

アクア「それとモズメ、ちょっといいかしら?」

モズメ「なんや、アクア様」

アクア「合図を出したら援護をお願いできる? その相手を殺さないようにして、かなり難しいとは思うけど出来るかしら?」

モズメ「出来るかわからへんけど、援護の件まかせとき」

アクア「そういうわけだから、リンカすぐに準備して、あの合流地点へ先回りするから」

リンカ「ああ、わかった」

 バサバサッ

アクア「カムイ、先に行くわ」

カムイ「え、アクアさん?」

アクア「すでに動いているのがいるから、先に行って足止めして来る。リンカ」

リンカ「ああ、行くぞ」

モズメ「カムイ様、先に失礼するで」

 タタタタタッ

カムイ「私たちも行きますよ」

~~~~~~~~~~~~~

 タタタタタッ

白夜剣聖部隊「いそげ!!! タクミ王子様の部隊が敵の動きを抑えている間に包囲を完成させる!」

ヒナタ「ああ、一気に斬り込んであいつらの足を止める!」

ヒナタ(この先の道を抑えれば、あいつらが進むのは難しくなるはず。そうすれば――)

白夜剣聖「よし、奴らよりも先に――」

 バサッ バサッ……

ヒナタ「! あぶねえ、下がれ!」

 ダッ

白夜剣聖「!?」

リンカ「はあああっ!!!」ブンッ

 ガキィン

白夜剣聖「ぐぉ、不意を突かれたが、踏み込みが足りん! うおおお――」

 ダッ

アクア「確かにリンカのは踏み込みが足りないわ。でも、私のはどうかしら?」スタッ

 グッ ドゴンッ

白夜剣聖「ぐおおおおあああああっ」ドサッ ドタンッ

アクア「ふぅ。リンカ、ありがとう」

リンカ「なに気にするな」

ヒナタ「ちっ、下を飛んできたのかよ!」

白夜剣聖「ええい、この裏切り者どもが!!!」ダッ

ヒナタ「まて!」

 パシュッ
 ザシュッ

白夜剣聖「ぐあああっ、あ、足が……いてええっ」ドサッ

モズメ「……案外簡単に当たるもんやな。いかんいかん、牽制にもう三射……えいやっ!」

 パシュパシュシュ

ヒナタ「はああっ!!!」
 
 キィン キィン キィン

モズメ「全部落とされてもうた……」

アクア「別に構わないわ。相手の足は止められたからね」

 ダダダダダッ

カムイ「アクアさん!」

アクア「カムイ、ここは私達に任せて進んで頂戴。タクミの場所まではかなり大回りしないといけないし、他の部隊が道を抑え始めているわ」

カムイ「ですが……」

リンカ「大丈夫だ、矢もちゃんと防いでもらってる。ここで全員、抑えてやるさ。だから心配しなくていい」

モズメ「だから心配せんでええよ。あたいたち負けるつもりはあらへんし、カムイ様にだけできることがあるはずやって思うんよ」

アクア「だからここは任せて、先に行って……」チャキッ

カムイ「……わかりました。ご武運を!」

 タタタタタッ

白夜剣聖「ちっ、待て!!!」

モズメ「いかせへんよ!!!」パシュッ

白夜剣聖「!」

 ダッ シュキンッ キィン

ヒナタ「……」

白夜剣聖「ヒ、ヒナタ様」

ヒナタ「さすがにただの女の子ってわけじゃないからな。用心した方がいい。ここまでやって来たってことは精鋭ってことだろうからよ」

白夜剣聖「は、はい。もうしわけありません」

ヒナタ「いいってことよ。それにしてもあのわずかな時間で攻撃するなんてな。さすがにこっちの方が早く動けたと思ったんだけどよ」

アクア「ええ。負けるわけにはいかないもの……」

リンカ「……そういうことだ。マカラスの時以来だな、ヒナタ」

ヒナタ「リンカ……。お前も生きてたんだな」

よく考えたらヒナタはモズメがカムイに救出されたとき居たんだよなあ
悲しいなあ

リンカ「ああ、カムイに助けてもらった。あいつは何でもかんでも引き入れるそういう奴だからな、それよりもお前もっていうのはおかしな言い方をするな」

ヒナタ「……あの場所で助けられたのはお前だけじゃないんだよな……。スズメや他の奴……少なくともあの時、タクミ様が撤退したときに生きていたのは全員か?」

リンカ「そうかスズメのこと、お前は覚えてるのか。お前が知ったら澄まし顔でも喜んだかもしれないな……」

ヒナタ「……ああ。正直、覚えてなかった方が良かったかもしれねえ。こうして、もともと白夜に属してたあんた達と戦うことになるのに、嫌な重しになっちまったからな」

白夜剣聖「ヒナタ様」

ヒナタ「そんな不安そうな顔すんな。もう、何を守るか決めてんだ」
 
 シャキンッ

ヒナタ「俺はタクミ様の臣下だ。タクミ様のために戦う、目の前にいるのが敵ならそれを斬り伏せる。それがタクミ様を守ることに繋がるだからな……」

アクア「なら、私たちもあなた達を眠らせるだけよ。すごく痛いだろうから……覚悟しなさい」ジャキッ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ルーナ「よかったの? アクア様達だけにあれを任せて」

カムイ「後続の重装甲兵の方々もいます。それが間に合えばきっと大丈夫です」

ルーナ「そ、そう……」

カムイ「ふふっ、ルーナさんとアクアさん仲良しだったんですね」

ルーナ「え、そんなわけないし。アクア様、あたしが渡した寝癖直し全然使ってくれないし、この前なんでそれで文句いって――」

エリーゼ「ルーナってアクアおねえちゃんの寝癖の世話するくらい仲良かったんだね」

ルーナ「ちょ、これはその、えっと。そう、ここで倒れたりしたら寝癖直しの効能の話とかできなくなるし!」

カムイ「ふふっ、顔真っ赤ですよ」

ルーナ「ああもう!!!」

ギュンター「無駄話はそこまでです。敵は陣を作り上げているようです」

暗夜槍兵「……弓装備の者はいないようです。それに敵の壁は厚いですが、数自体はそれほど多くはありません。各個撃破出来れるかもしれません」

カムイ(すこし足を止めて対処すれば抜けられるくらいの数ということですか?)

カムイ「ルーナさん、この先を抜けたらどう動けばいいんですか?」

ルーナ「この先を抜けたら右へ一直線、突き当たってまっすぐ行けば、あの王子のいる場所に着ける感じね。数はそれほど多くないから足止めて無力化するのもありだと思うけど……」

カムイ「まっすぐ抜けられるなら、ここで安全に対処をします。ギュンターさん、距離をゆっくり詰めます」

ギュンター「わかりました」

サクラ「回復は私達に任せてください、カザハナさん、ツバキさん準備してください」

カザハナ「わかったよ。ツバキ、あんたも早く準備して」

ツバキ「もうとっくに出来てるよー。カザハナの準備が――」

 ガチャンッ……

ツバキ「……ん? この音……」スッ

カザハナ「え、どうしたのツバキ」

 ガタンッ 
 ザザザッ

ツバキ「これはまずいね……」

サクラ「え……あっ!」

 ザッ

オボロ「……全員、行くわよ……。サクラ様以外は皆殺しにして構わないわ」

白夜兵法者「はい」

白夜槍聖「サクラ王女の臣下もですか?」

オボロ「ええ。タクミ様はサクラ様が無事であるなら、それでいいと言っていたわ。ならその通りにことを成すだけよ」

白夜槍聖「わかりました」

カザハナ「あれ、オボロだよね。すごい形相してるけど……」

ツバキ「このままじゃ挟まれる…」

サクラ「カムイ姉様!」

カムイ「サクラさん、どうしました?」

サクラ「後ろから別の部隊が現れて、このままじゃ……」

ギュンター「ここで足を止めては完全に包囲されますぞ」

カムイ「作戦を変更、一点突破を試みます。ギュンターさん、敵の前線列に向かって突貫して道を作ってください!」

ギュンター「仰せのとおりに」

カムイ「ルーナさんと槍兵の方々は私に半数随伴し、ギュンターさんの突撃と合わせえて穴を開けます! 残りの方々は重装甲兵と共に後方の敵を受け止めてください!」

暗夜槍兵「わかりました。エリーゼ王女は後方から支援をお願いします」

エリーゼ「うん、任せて!」

暗夜重装甲兵隊長「サクラ様たちはわれわれより後ろへ下がって、敵の攻撃の届かない範囲に!」

エリーゼ「あっ、カムイおねえちゃん、前にいたのがほそ道に入り込もうとしてる!!!」

カムイ「道が細い分厚みを増すつもりですね。一刻も猶予もありません、ギュンターさん!!!」

ギュンター「お任せを! はぁ!!!!」

 ヒヒーンッ 
 パカラパカラ!

白夜兵法者「暗夜の老兵が、今すぐ地獄に送ってやる!!!」

ギュンター「老兵と見くびっているとはな。まだ若いものに負けるつもりはない!!!」

 ギュッ
 
ギュンター「……行くぞ!!!!」

 ヒヒヒーンッ!!!!

 ダッ

白夜兵法者「敵、突っ込んできます!!!」

白夜兵法者「恐れる必要はない!!! 迎撃準備!!!」

ギュンター「甘いっ!!! でやああっ!!!!」ブンッ

 ガシュッ ガキィン!!!!

白夜兵法者「うおおおあっ!!!」ドサッ

カムイ「今です! ルーナさんは右の部隊へ肉薄して道を切り開いてください!!」

ルーナ「任せておいて。いくわよ、はあああっ」ダッ

 ブンッ

白夜兵法者「ちぃ、小癪なまねを!!!」

暗夜槍兵「これでも食らえ!!!」ブンッ 

暗夜槍兵「おらああっ」ブンッ

 ザクッ

白夜兵法者「ぐあああっ、ぐっ、足ばっかりねらいやがってぇえ!!!」

暗夜槍兵「正直、足ばっかり狙ってる俺達って、なんだかすげえ卑怯だよな」

暗夜槍兵「いいんだよこれで!!! 」

白夜兵法者「ちっ、抜けられるぞ!!! 阻止し――」

エリーゼ「そうはさせないよ、フリーズ!!!」シャランッ

サクラ「私たちも、えいっ!」シャランッ

カザハナ「それ!」シャラランッ

ツバキ「少しの間、動かないでねー」シャララランッ

 ナンダ、カラダガウゴカンッ!!!
 クソッ!!!

カムイ「今です、一気にここを抜けます。全員全速前進!」

 タタタタタッ

暗夜重装甲兵隊長「よし、われわれも続け!」

暗夜重装甲兵「は――っ!!!」ザッ

 タタタッ

オボロ「逃がさないわよ……」チャキッ

暗夜重装甲兵「うおおおっ!!!」ガサッ
 
オボロ「やあ!!!」ダッ

 ブンッ

 ガギィン

暗夜重装甲兵「ぐっ、なんだこの重さは……」

オボロ「……」ギロッ

暗夜重装甲兵「ひっ……」

オボロ「さっさと死になさいよ。タクミ様の邪魔をする暗夜の蛆虫が――」ギギギギッ ガキィン

暗夜重装甲兵「うあああっ!!!!」

 ガシャンガシャンッ

 ダッ

暗夜重装甲兵隊長「させんぞ!!!」ダッ

 ガキンッ

暗夜重装甲兵「た、隊長!」

暗夜重装甲兵隊長「私に構わずカムイ様と合流しろ! この女、一筋縄ではいかない……」

オボロ「暗夜の人間が白夜の土地を踏んで、生きて帰れると思わないことね……」

暗夜重装甲兵隊長「ぐっ、このままでは」

オボロ「終わりよ。やああっ!!!」ダッ ガギンッ
 
 ブオンッ カランカラン……

暗夜重装甲兵隊長「しま――」

オボロ「死ね……」クルクルクル ザッ

サクラ「させません、七難即滅!!!」シャランッ

暗夜重装甲兵隊長「!!!」シュオンッ

 スカッ

オボロ「……ちっ」

 シュオンッ ドサッ

暗夜重装甲兵隊長「え、さ、サクラ様」

サクラ「行きましょう、皆さんが待っています」

暗夜重装甲兵「隊長はやく!!! フリーズの効果が切れる前に!!!」

暗夜重装甲兵隊長「あ、ああ! 全員、進め!!!!」

 タタタタタッ

ギュンター「全員合流しました」

カムイ「……抜けてこのままいけばいいのかもしれませんが――」

ルーナ「間違いなく追いつかれるわね、この状態だと」

ギュンター「どういたしますか。ここで彼らを抑えて無力化しますか?」
 
カムイ「ここにいるのはアクアさん達が相手にしている方々の比ではありません。この量をすべて相手にするとなると……」

カムイ(それにオボロさんの気配は、明らかに他と違うものがあります。ここでどうにかしたほうがいい。しかし、ここで迎撃の構えに入れば、タクミさんは必ず攻撃部隊を差し向けてくる。挟まれたら、もう対処なんてできない――)

カムイ「どうすれば……」

 チョンチョン

カムイ「?」
 
サクラ「あの……カムイ姉様」

カムイ「サクラさん、すみません。大丈夫です、ちゃんとタクミさんの元に――」

サクラ「いいえ、カムイ姉様。ここは私達に任せていただけませんか」

カムイ「サクラさん!?」

サクラ「お願いします。たぶん、私がタクミ兄様の前に辿りついても、なにも届かないと思うんです」

カムイ「ですが、こんな危険なところに」

サクラ「……どこも危険に決まってます。大丈夫です、私には一緒にここまで来てくれたカザハナさんとツバキさんがいます。それに私に今できる最大限のことは、カムイ姉様たちがタクミ兄様の元へと辿りつけるように手助けすることだと思うんです」

カムイ「サクラさん……」

サクラ「……」

暗夜重装甲兵隊長「カムイ様、この先には弓兵が多く待機しています。ですが、ここに少なからず壁を作れば、相手の侵攻を送らせられるはずです。私と数名がここに残って侵攻を阻止しますので、残りを連れてお進みください」

カムイ「ですが、あの量を――」

暗夜重装甲兵隊長「われわれは盾になるのが仕事です。それにサクラ様には先ほど助けられました、そのご恩は返さなければいけません。ですから、サクラ様をわれわれに守らせていただけませんか?」

カムイ「……」

暗夜重装甲兵隊長「……」

カムイ「必ず守り通してください、これは命令です」

暗夜重装甲兵隊長「はい。よし、部隊を二つに分ける。私と数名だけでいい。この道は狭い、簡単に壁はできる。サクラ様よろしいですね?」

サクラ「は、はい!」

暗夜重装甲兵隊長「大丈夫です、必ずお守りいたします」

サクラ「……はい」

カザハナ「あたしたちも準備しよ」

ツバキ「そうだねー。できれば、こういうことはあのテンジン砦の奴らにしたかったけどさ…」

カザハナ「つべこべ言わない、もう来るよ!」

カムイ「……」

サクラ「……」コクリッ

カムイ「残りはこのまま進みます。一気にけりを付けます」

 タタタタタタタッ

暗夜重装甲兵隊長「全員、持ち場に付きましたサクラ様」

サクラ「はい……みなさん、ここが正念場です」

 ギュッ

サクラ「誰ひとりとして進ませ手はいけません! 守り切ります!!!」

◇◇◇◇◇◇

タクミ「オボロの策に気づいたんだね、あいつは抜けたみたいだ」

白夜弓兵「はい。もうすぐ接近してきます。このままでは近距離戦闘になります。いかがしますか?」

タクミ「ううん、大丈夫だよ」

白夜弓兵「え?」

タクミ(感じる……ここの竜脈が、僕にどう使ってほしいのか……)

タクミ(心の中の何かが言ってる、どうすればあいつを殺せるのか……)

タクミ「……全員弓を構えて、あいつを狙うようにね」

白夜弓兵「この距離では届き――」

タクミ「いいから構えて」

白夜弓兵「わ、わかりました」

白夜兵法者「では、我々はここへ至る道を固めます」

タクミ「ああ、お前達が壁だからね。あそこの奴らみたいに抜かれないでよ」

白夜兵法者「はい、全員気合い入れろ!!!」

白夜兵法者「応!!!」ジャキッ

 タタタタタッ

タクミ「全員、構えたね?」

白夜弓兵「はい……」

タクミ(……さぁ、竜脈。僕の願いに応えてくれるよね……?)

 シュオンッ

 フオオオオオ――――

タクミ(風が僕達に味方してくれる。あいつを殺す風を起こしてやる……)チャキッ

 キリキリキリッ

タクミ「…………すぅーーーー」

タクミ(この僕が!!!!)

「射て!!!!!」

今日はここまで

 オボロの形相を前にしたらジェネラル装備でも逃げ出す自信があります。

おつおつ
あと本当に今更だけど>>843コンマすごいね

風の里マップのギミックの風で吹っ飛ばされるタクミが見える

◆◆◆◆◆◆
―白夜・風の村『修練場』―

 シュオオオオオンッ!!!!

エリーゼ「!!!! カムイおねえちゃん!」

カムイ「これは竜脈!?」

 ヒュオオオッ!!!!

暗夜重装甲兵「いきなり風が強く……!!」

 ヒュンヒュンヒュン

暗夜重装甲兵「全員、盾を構えろ!!! 後ろ気をつけろ、前方から矢が来るぞ!!!」

カムイ「くっ、皆さん盾の影へ!」

 ビュオオオオオオオッ!!!!

 キィンキィン キィン!!!!

 ドスドスッ

暗夜槍兵「ぐええあああっ」ドサッ

暗夜槍兵「あぐっ、うぎゃ、がふっ…」ドサッ

暗夜槍兵「くそっ! エリーゼ王女様とカムイ王女様は我々よりも前にお入りください!」

ギュンター「こちらですカムイ様、エリーゼ様もお早く!」

カムイ「ですが……」

暗夜槍兵「あなたがやられることはあってはなりません。早く!!!」

カムイ「わかりました。エリーゼさんは私よりも内側へ」

エリーゼ「うん、その……」

暗夜槍兵「気にしないでください。それよりももっと内側へ入ってください。よし、後方の連中は頭を低くしておけ、ヘルムを役立てて耐えろ!」

暗夜槍兵たち「おうっ!!!」

 ヒュンヒュンヒュン

 ビュオオオオッ

ギュンター「それにしてもこの異常な風は……」

カムイ「この風が巻き起こる直前に竜脈が作動しました。たぶん、タクミさんが竜脈を使ったのでしょう。このまま進み続けるのは難しいですね……」

エリーゼ「でも、このままここで立往生してたら、みんなやられちゃう……」

カムイ「ええ、どうにかしなければいけません。ですがこの風では……」

カムイ(くっ、動こうにも動けません。タクミさんは私達が全員で来てもこうするつもりだったんでしょう。こうして結果的に分散したことで包囲されるのを回避できたというのは皮肉ですね……)

 シュオン……

カムイ(ん?)

 シュオン……

カムイ(この、気配は……)

エリーゼ「あ、カムイおねえちゃん……」

カムイ「エリーゼさんも感じましたか?」

エリーゼ「う、うん。今の竜脈が出来た時のだよね……」

カムイ「ええ、タクミさんが起動させたことによって、他の竜脈も活発化したのかもしれませんが、今すぐにどうにかできるわけではありません……」

エリーゼ「この風、どうにかしないと……」

カムイ「ええ、ですが……」

カムイ(おそらく、敵の別動隊が私達の後方に向かい始めているころでしょう。こちらの仕掛けは間に合わない……。どうすれば……)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

白夜剣聖「くらええええっ」ブンッ

 キィン カシュッ

アクア「……力だけじゃ駄目よ。こうやって受け流されることも勘定に入れておきなさい!」

 ガシッ ドゴンッ

白夜剣聖「ぐふっ……」ドサッ

 タタタタタッ

アクア「!」

ヒナタ「はあああっ!!!!!」ブンッ

リンカ「アクア、手を!」スッ

アクア「ええ、はいっ」パシッ

 サッ バサバサ

ヒナタ「ちっ」

 クルクル チャキッ

リンカ「これでどうだっ!」ブンッ

ヒナタ「あらよっと……!」サッ

モズメ「そこや!!!」パシュッ パシュッ

 ヒュンヒュン

 キィンキィン

ヒナタ「おっと……、へへっ、中々やるじゃん……本当によ」

リンカ「ああ、負けられないからな……」

 タタタタッ

白夜剣聖「ヒナタ様、ご無事ですか」

ヒナタ「おうよ、ピンピンしてるぜ。一人伸びちまったみたいだけどな……」

白夜剣聖「我らも加わります。このまま押し切りましょう」

ヒナタ「ああ、早くしないと後続の重装甲の兵隊が来るからな。それでタクミ様のほうは?」

白夜剣聖「はい、裏切り者の王女を罠におびき寄せたようです」

ヒナタ「そっか、なら早くここを抑えて行かねえとな」

白夜剣聖「ええ」

ヒナタ「……」チャキッ

リンカ「! アクア、カムイ達が……」

アクア「え?」

アクア(カムイの周辺だけ風の動きが意図的に操られている……)

リンカ「なんだあれは、風があそこだけ激しくうねってるみたいだぞ」

アクア「……そう、タクミのことを侮っていたのは私たちのほうかもしれないわね。この力、間違いなく竜脈のものよ」

リンカ「どうする。あたし達だけでも助けに向かうか?」

アクア「風の動きが複雑よ。リンカの腕を信用していないわけじゃないわ。でも、あの暴風圏に近づくだけでも一苦労なのに、加えて攻撃を避けるなんてとてもできないわ」

リンカ「ならどうする? ここでこいつらの相手をしていたら……」

アクア「……いいえ、手はあるわ。彼らの後ろにある広場が見える……」

モズメ「広場は見えるけど、なにかあるん? あたいには何も見えへんよ」

リンカ「あたしにも見えないが……」

アクア「竜脈が現れたわ。力の流れを読む限りだと、風を操ることができるはずよ」

モズメ「はぇ~、そんなこともわかるんやな……」

アクア「まぁね……。それで……その……」

アクア(あれを起動するためには、この敵陣を突破しないといけない、そのためにはリンカの強力が不可欠。でも、そうなると……モズメが一人で孤立することになる)

リンカ「アクア?」

アクア「……いえ、このまま三人で防衛を続けて、後続の兵が合流してから――」

モズメ「……アクア様」

アクア「モズメは――」

モズメ「気にせんでええよ。あたい、どうにかして見せるから、だから最初の考え教えてほしいんよ」

アクア「……」

モズメ「たしかにあたいはもともと兵士でもなんでも無い、ただ普通に暮らしてただけや。それで死にそうになってたところをカムイ様に救われてここまで来たんや。そんな今、カムイ様が危ない目にあってるってわかるのにできることせんのは間違ってる思うんよ」

アクア「モズメ……」

モズメ「あたいはカムイ様のために命をかけたいんよ。それに、もしかしたらあたいより、動いたアクア様達のほうを追い掛けるかもしれへんし。結果的にあたいが一番楽っていうこともありえる話やから。だから、アクア様。あたいを信じてほしいんよ。カムイ様のために命使うって決めてる、このあたいを……」

アクア「……そう。リンカ」

リンカ「ああ、いつでもいいぞ」

アクア「敵を抜けて竜脈を目指すわ。準備してちょうだい」

リンカ「わかった」

モズメ「アクア様、ありがとう……」

アクア「気にしないで。その代り私達が戻るまで、絶対に耐え抜いて頂戴……。やられたりしたら承知しないわ」

モズメ「……任せとき」チャキッ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

暗夜重装甲兵隊長「全力で支えろ!!!」

白夜兵法者「うおおおおおおっ!!!!」グググッ ブンッ!!!!

 ドゴンッ

暗夜重装甲兵「ぐううっ」

カザハナ「だ、大丈夫!? えいやっ」シャランッ

暗夜重装甲兵「たすかりました」

白夜兵法者「ふんっ、魂まで暗夜に売ったか、カザハナ」

カザハナ「……覚えててくれる人もいるんだね。正直、もうサクラ様以外忘れられてる気がしてたけど」

ツバキ「ここにいる人たちは覚えてるんじゃないかなー。まぁ、相手からしたら僕たちのほうが悪者な気もするけどねー」

サクラ「カザハナさん、ツバキさん。援護の手を休めないでください!」

カザハナ「わかってるよ」

白夜兵法者「そんな暗夜の服に身を纏うとは、王族に仕える身として恥ずかしくないのか! 剣を捨て暗夜の奉仕服に身を包むなど!」

カザハナ「ちょっと、奉仕服って何よ!?」

ツバキ「まぁ、メイドってそういう風に取られても仕方ないからねー」

カザハナ「何よそれ、確かにこの服着てレオン王子に奉仕したことはあるけど……」

ツバキ「うわぁ……」

サクラ「それすごく誤解されそうな発言ですよ、カザハナさん!!」

カザハナ「え? だって奉仕したのは――」

サクラ「もう、それまでにしてください!!!」

白夜兵法者「……やはり、貴様らはもう白夜の人間では無いのだな……。ならばここで果てろ!」

白夜槍聖「せやあああっ」タタタタッ

カザハナ「そういうわけにはいかないのよ! はぁっ!」スパッ

 ザシュッ

白夜槍聖「ぐっ、まだまだ!!!」

白夜兵法者「オボロ様。ここは我々で盾を一気に崩しましょう」

オボロ「ええ、援護頼むわね。そこのあなたはその体に刺さったの抜いて来なさい」

白夜剣聖「は、はい。オボロ様」サッ

オボロ「いくわよ。タクミ様に近づけないあの裏切り者の王女を殺しにいくためにね」

 タタタタッ

暗夜重装甲兵「絶対に通さ――」

オボロ「ああ?」クワッ

暗夜重装甲兵「ひっ」

暗夜重装甲兵隊長「気負けするな。足に力を入れろ!!!」

暗夜重装甲兵「は、はい!!!」グッ

オボロ「まったく、どいつもこいつもタクミ様の邪魔ばかりして、本当に目触りな害虫が……さっさとどきなさいよぉ!!!!」ブンッ

 ドゴンッ

 ベゴンッ

暗夜重装甲兵「へっ、盾がひしゃげた!?」

オボロ「死になさい」ブンッ

 シュパッ シュパッ

オボロ「! はああっ!!」クルクルクル

 キィン キィン

暗夜重装甲兵「あっ俺……」

暗夜重装甲兵隊長「今のうちに下がれ! 早く!」

暗夜重装甲兵「は、はい!!!」タタタタッ

オボロ「……本当にそちらの味方なのね、あなた」

カザハナ「そうなるかな」

オボロ「わからないわ。あんな国で生きてきた人間の味方をするなんて言う行為……。いや、わからないは違うわね、わかりたくもないわ」

カザハナ「あたしも今の白夜で剣を振う意味がわからないよ。あのテンジン砦で何があったのか、あんたは知らない……あそこでどれくらいの人が殺されたのか知らないから!」

オボロ「ええ、知らないわ。知らなくても別に構わない、暗夜に味方したものは無条件で悪よ。多くのものを奪ってく暗夜が消えてなくなりすれば、そんな心配もなくなるもの」

ツバキ「ふーん、なら俺達が来るまでタクミ様がここにいたのはなんでなのかなー。タクミ様はカムイ様のことを倒すために来たのなら、ここにいることはないはずなんだけどねー」

オボロ「……」

ツバキ「もう今の白夜は王族の力を必要となんてしてない、利用できるものとしか考えてない。だからここで捕虜の世話係をさせられてたんじゃないかなーって俺は思うんだけど。違うかな?」

オボロ「挑発してこっちを惑わそうとしてるのなら、甘い考えよ」

ツバキ「……手痛いね」

オボロ「ねぇ、あなた達サクラ様を大切に思っているなら、どちらに戻るべきかは考えなくてもわかるでしょう? 暗夜が滅びれば、白夜は元に戻るわ。裏切り者もいなくなる、そう考えれば――」

カザハナ「オボロ、それ真面目に言ってるの? 今の白夜が暗夜を滅ぼしたくらいで元に戻ると思ってるわけ?」

オボロ「ええ、戻るわ。暗夜がすべてを狂わせてる、悪いものが消えされば、しかるべき形に戻るだけ。あの頃みたいな穏やかな白夜が戻ってくるわ」

カザハナ「戻ってくるわけない!!!」

オボロ「!!!」

カザハナ「サクラがサクラがどれだけ、どれだけ傷つけられたと思ってるの? 本当なら……白夜との戦いは終わるはずだった、あたしもツバキもサクラもスズメたちも一緒に白夜に……白夜に帰れるはずだった!それをあいつらは壊したの。そんな場所に戻ることなんてできない。サクラをそんな白夜に帰せない、ただそれだけだよ」

オボロ「……」

サクラ「カザハナさん……」

カザハナ「……気にしないで、サクラにまた同じこと言わせたくないだけだから。それにあたしも口にしたかったの。もう帰らないって……」

ツバキ「俺の分は残してくれないんだねー。残念だなー」

カザハナ「ツバキは最初に色々言ってたでしょ……」

ツバキ「うん、それと今さら何だけどカムイ様。危ないことになってるんじゃないかって思うんだけど……」

カザハナ「え? って、あれ何!?」

サクラ「すごい風ですね。さっき、竜脈が発動した気配がありましたけど、それが影響しているのかもしれません」

ツバキ「あのままだと、後方から動いてる別動隊に挟み撃ちにされちゃう気がするんだよねー」

カザハナ「今から追いかける?」

サクラ「いいえ、その、オボロさんたちの奥、あそこに竜脈の気配があります。多分、風を操ることのできるものだと思うんです」

ツバキ「そういうことですね。サクラ様、わかりました」

カザハナ「うん、わかったよサクラ。いつでもいけるよ」

サクラ「すみません、隊長さん。お願いできます」

暗夜重装甲兵隊長「ご命令の通りに、われわれはあなた方を守る壁なのですから……」

サクラ「ありがとうございます。皆さん、一つ先の広場まで敵を押し上げてください。私も……」チャキッ シュオンッ

サクラ「戦います……」

暗夜重装甲兵隊長「よし、全員、敵を押し上げる。戦列」

暗夜重装甲兵たち「おおおおおーーーーーっ!!!」

 ザッ ザッ

白夜兵法者「なっ、前進してきた!?」

白夜槍聖「はっ、血迷ったか!? 一気に押し崩して――」

ツバキ「なら、これをあげるよ。ウィークネス!!!」シュオンッ

カザハナ「サクラ、今だよ」

サクラ「はい。少し、痛いの我慢してください!」ググッ パシュッ

 ズビシャンッ

白夜槍聖「ぐああっ!!!」ドタッ

カザハナ「サクラ、次は左のが来るから仕掛けるよ!」クルクルクル

サクラ「はい。カザハナさん、杖を振り回さないでください」

カザハナ「ごめんね。いくよ、ウィークネス!!!」シュオンッ

白夜兵法者「ぐぬぬっ、こんなことが……」

サクラ「ごめんなさい。でも、今の白夜に負けるわけにはいかないんです!」パシュッ

 ズビシャ……

サクラ(このまま、竜脈まで行ければ。カムイ姉様、待っていてください……)




オボロ「………」

オボロ(どうして、どうして、そんなに信頼しあえるの……)

オボロ(あの暗夜にいて、どうしてそんなに信じあえるのよ)

オボロ(そんな風に振舞うのはやめなさい……)

オボロ(暗夜は私から何もかも奪ってく。全部、奪っていく、白夜を守るという意思も奪ってく……)

オボロ(なら最後に私に残るのは……)

オボロ(タクミ様……だけ)

 チャキッ トントンッ

 ググッ ググッ

オボロ(タクミ様、私を……)

(最後まで信じてくれますよね…………)

今日はここまで

 竜脈『タクミが使うと弓射程+2、一定エリアの移動力強制1』みたいなの
 日付は過ぎたけどオボロ誕生日おめでとう。
 

◆◆◆◆◆◆
―白夜・風の村『修練場』―

 ダダダダダッ

サクラ「カザハナさん、ツバキさん! そろそろ広場に差し掛かります。入口を守っている方たちにウィークネスを!」

カザハナ「わかったよ」

ツバキ「わかりました。俺たちの術の効果が見えたら、一気に切りこんでもらえるかな?」

暗夜重装甲兵隊長「わかりました。全員、敵を吹き飛ばすぞ」

暗夜重装甲兵たち「はい!」

カザハナ「いくわよ。ツバキ」

ツバキ「カザハナこそ、遅れないようねー」

カザハナ「ふん、馬鹿にしないでよ」

ツバキ「はは、準備出来てるってことだね。それじゃ、行くよ」

『ウィークネス!!!』シュオンッ

 グォンッ……

白夜槍聖「ぐっ、また面妖な技を!!」

白夜兵法者「怯むな、敵が来る!!」

暗夜重装甲兵たち「うおおおおおおっ!!!!」

タタタタタッ ガシィン

白夜槍聖「ぐおっ!!!!」

暗夜重装甲兵「このまま押し切れ!!!」

白夜兵法者「くそ、このままでは――」

オボロ「前衛開けなさい!」

 ダッ

オボロ「行かせないわ!!!」ダッ

 ググッ ブンッ

 ガキィン!!!!!

 ズザザザザーーー

暗夜重装甲兵隊長「そう簡単にはいかないか」

オボロ「舐めるんじゃないわよ!!!!」ググッ

暗夜重装甲兵隊長「ぐぐっ、まだまだああああ!」ドゴンッ

ツバキ「カザハナ、オボロにウィークネスを使うから足止めしてくれるかな?」シュオンッ

カザハナ「わかったよ。……オボロ、痛いと思うけど我慢してよね。はあっ!」パシュパシュ

ツバキ「ウィークネス!」

ツバキ(これなら――)

オボロ「はぁ!!!」サッ

 パシュンッ

 キィンキィン

カザハナ「うえぇ、今の避けたの!?」

ツバキ「避けられちゃったね……」

オボロ「……はぁはぁ、……んぐっ」

オボロ(体力が……でも、まだまだいける……)

白夜兵法者「オボロ様!」

オボロ「ちゃんとしないさい。ここはタクミ様に任された場所なのよ。私達が負けるわけにはいかない、こんな暗夜で過ごしてきた奴らに負けるなんて許されないわ」

白夜槍聖「お、オボロ様……」

オボロ「早く隊列を組み直しなさい。大丈夫よ、私達が戦う理由は一つだけ、それを信じて戦うだけ……そうでしょ?」

白夜兵法者「は、はい。全員気合い入れろ!!!」

白夜兵たち「おうっ!!!!」

オボロ(そう、負けられるない。タクミ様が信じてくれているはずだから。奴らがここに入り込もうとしてるのは何か理由があるから。なら、それを絶対に阻止してみせる……タクミ様のためにも!)

オボロ「来たら抑える、引いたら攻める。相手に判断の隙を与えちゃ駄目よ」

白夜兵たち「はい!」チャキッ

カザハナ「すごい統率力、すぐに士気が戻っちゃった」

ツバキ「うん、正直一人一人相手にしてたら間に合わない……。どうしたらいいのかな……」

サクラ「……あの、カザハナさん、ツバキさんよろしいですか?」

カザハナ「サクラ? 何かいい方法思いついたの?」

サクラ「はい。そのかなり危険だと思います……」

カザハナ「いいから話してよ」

サクラ「あの……向こうはオボロさんを中心に戦っていて、正直このまま真正面で相手をしていても辿りつけ無いと思うんです」

ツバキ「確かにね。オボロの威圧が周りに伝染してるみたいにも感じるよ。みんな魔王みたいな顔してるからね」

カザハナ「般若の見本市みたいになってる……」

サクラ「だからといってこのまま手をこまねいていたら、カムイ姉様たちがやられてしまいます」

カザハナ「それはわかってる。それでどうするの?」

サクラ「強行突破して竜脈を起動させます。そうすれば私にオボロさんの意識が向くと思うんです。その隙を突きます」

ツバキ「ちょっとサクラ様、その竜脈って敵陣のど真ん中にあるんですよね?」

サクラ「はい……」

カザハナ「ちょっと、いくらなんでも危険過ぎるよ!」

サクラ「わかってます。でも、今できる最大限を考えたらこれくらいしかないって思うんです。カザハナさんとツバキさんには敵の足止めに心血を注いで、私が到達できるように支援をお願いします」

カザハナ「サクラ……」

サクラ「おねがいします。たぶん、オボロさんは私達が何か理由があってあの場所を目指してることを察してる気がするんです。だから、その目的がわかった時だけ隙が生まれる……そう思うんです。だから、お願いします」

ツバキ「……」

カザハナ「……」

ツバキ「……わかりましたサクラ様」

カザハナ「ツバキ!?」

ツバキ「サクラ様の判断、信じますよ。カザハナは嫌かい?」

カザハナ「……それは……だって危険なんだよ?」

サクラ「覚悟してます。だから、カザハナさんの協力が不可欠なんです。私は竜脈に集中する必要があります、だから……」

カザハナ「……」

サクラ「……カザ――」

カザハナ「はぁ、わかったよ、こうなったらサクラは話を聞かないもんね。任せて、相手の動き完全に止めるから安心して竜脈まで向かって、起動させちゃってよ」

サクラ「ありがとうございます、カザハナさん、ツバキさん。あの――」

暗夜重装甲兵隊長「道を作ればいいのですね?」

サクラ「はい。あの地点まで……作れますか?」

暗夜重装甲兵隊長「無理ではないかと。ですが、到達したとして長く維持はできないかと」

サクラ「五秒でも持たせてくれればそれでいいです。私が竜脈に入り込んで起動させれば、タクミ兄様に仕えているオボロさんなら気づくはずです。あの人の隙は、たぶんそれくらいしかありませんから……」

暗夜重装甲兵隊長「わかりました。全員、一点突破を試みる、一歩後退し準備に入れ!!!」

カザハナ「サクラ、フリーズの準備整ったよ」

ツバキ「こっちも準備できました」

サクラ「はい……」

サクラ(手筈は整ってる。あとは私が勇気を振り絞るだけ……)

 ギュッ

サクラ(カムイ姉様、私が助け出してみせます……)

サクラ「行きます!」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 バサバサッ

白夜剣聖「敵、突っ込んできます!!」

ヒナタ「正面からってことか。おもしれぇ、いくぜ!!!」ダッ

 チャキッ シューー キィン

ヒナタ(一撃だけとは思えねえ。たぶん、避けた後にもう一撃……来る可能性が高い、なら先に斬りおとす!!!)

アクア「リンカ、ヒナタの攻撃と同時に急上昇よ」

リンカ「わかってる。振り落とされないようにしろよ」

アクア「ええ」ギュッ

リンカ「よし、うおおおおおっ!!!」バサバサバサッ

ヒナタ「はあああああっ」ブンッ

 サッ バサバサバサッ

ヒナタ(急上昇、このまま刀を振り上げれば、届く!!!)サッ

 タッ ブンッ

アクア「っ! リンカ、槍を!」

リンカ「!」ブンッ!!

 キィン!!!

ヒナタ「ちっ……」サッ

リンカ「アクア、すまない」

アクア「いいのよ。思ったよりもヒナタの攻撃が速かったから、間に合ってよかったわ」

リンカ「どちらにせよ、助かった」

アクア「礼はあとにして、今ならいける」

リンカ「ああ、いくぞ!」

 バサバサバサッ

白夜剣聖「俺たちの頭上を!?」

ヒナタ「ちっ、何する気かわかんねえけど、逃がす――」

 パシュッ

ヒナタ「っ!」

 サッ

モズメ「余所見してたらあかんよ」パシュパシュッ

 キィンキィン

ヒナタ「そうだったな。……お前、あの村の生き残りだよな……」

モズメ「……せやな。でもそんなこと関係あらへん。今は敵同士なんやから、それとも見逃してくれるん?」

ヒナタ「そうはいかねえ。俺は俺の信じる道が何かわからなくなっちまってるからな。だから今はタクミ様を守ること以外の道がねえからな」

モズメ「……あたいも同じや。だから、倒されるわけにはいかんのや」パシュ

 シュパッ キィン

ヒナタ「正面の相手は弓だ、俺ともう一人いればいい。残りは向かったあの二人を追え」

白夜剣聖「はい!」

 タタタタタッ

ヒナタ「任せるぞ」

白夜剣聖「はい、ヒナタ殿。お任せください」チャキッ

モズメ(……相手は二人。一人動きを止めても、もう一人に接近されるはずやな。正直避け切れるかわからへん……)

『私達が戻るまで、耐えて頂戴……』

モズメ(気負けしたらそれで終わりや。まず一人、一人どうにかする。アクア様が信じてくれたんやから、わずかな間耐えればええだけの話……)

モズメ「……」カチャッ チャキ……

 キリリリリリッ

白夜剣聖「ヒナタ殿。私を盾にしてください」

ヒナタ「いいのか?」

白夜剣聖「はい。奴の腕はとてもいいです。正直、避けられるものじゃありません」

ヒナタ「ああ、たしかにな。あれでただの村に住んでたとは思えねえよ」

白夜剣聖「ははっ……。接近で来ても私では手加減ができません。ですが、ヒナタ殿でしたら出来るでしょう?」

ヒナタ「何言って」

白夜剣聖「ははっ、あなたはとてもまっすぐな方ですからね。できれば降伏させたい、本心ではそう考えてる」

ヒナタ「俺はそんなふうに考えたりなんて――」

白夜剣聖「そうかもしれませんね。ですが、私はそういうあなたのまっすぐなところ、いいと思います。ですから、私が矢避けになります。準備を……」

ヒナタ「……あんがとよ。期待には応えるさ……。こんな俺を信じてくれたんだからよ……」

白夜剣聖「はい」ジリッ

モズメ「……すぅー、はぁー……」

モズメ(距離、詰めて来よるな……。さすがに殺さないように言われる以上、当てる場所に注意せなあかん……)

モズメ(外すつもりはあらへんそうなると、もうヒナタさんは止められへん。前衛請け負った人も打たれることは勘定に入れ取るはず)

モズメ「…熊だったら小刀だけでも倒せる自信はあるんやけどね……」

モズメ(……でも、できることやるしかあらへんよ。運良く敵が二人だけになったんやから、これでどうにかできないでどうするんや……)

 ギリッ

モズメ(あの時みたいに、楽になることばっかり考えてええことなんてあらへん。あの時の村の時とは違うんやから……)

モズメ(全部、真正面から受け止める。それで全部受け止めて――)

白夜剣聖「!」ダッ

ヒナタ「!」ダッ

 タタタタタタッ

モズメ(きちんと捌き切ったる……!)スッ

 シュパッ!!!!

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◇◇◇◇◇◇
―白夜・風の村『修練場・中心部』―

 ヒュオオオオオッ

白夜兵法者「すごい……奴らの侵攻が完全に止まっている。さすがはタクミ様だ!」

白夜弓兵「タクミ様、抑え込みはほぼ完了しています」

タクミ「わかった。後続隊に指示を出す、もう逃げられないように囲い込む、最後の仕上げだよ」

白夜弓兵「はい、鏑矢準備!!」ガサゴソッ

タクミ「ははっ、まんまと罠に嵌って無様だね……。僕たちを裏切って暗夜に味方したあんたみたいな奴の最後としては、すごくお似合いだね」

タクミ(白夜を……いや、みんなを狂わしておいて楽に死ねるなんて思ってないよね。暗夜に味方するくらいならあのとき死んでしまえばよかったんだ)

タクミ(あの日、義母さんと一緒に、一緒に死んでいたら僕は……こんなに悩まないで済んだ。みんな、こんなに狂わなかったはずだ。あんたが、暗夜を選んだあんたがあそこで死んでいれば……こんなことになんてならなかった)

 チャキッ シュオンッ

タクミ(あんたはあそこで死ぬべきだった……僕たちのために、白夜のため、なにより――)

(我のためでもあるのだからな……)

今日はここまでで
 
 そろそろピエリの誕生日だなぁ

ウィークネスはルナクラでもボス相手くらいしか使った覚えがない
フリーズ、ドローあたりは良く使ったんだけど

あと、よくキャラの誕生日とか覚えてるなww

◆◆◆◆◆◆
―白夜・風の村『修練場』―

モズメ「……そこや!」

 パシュッ

白夜剣聖「くっ!!!」

 キィン

モズメ(早い! これ以上接近させたらあかん!) 

 パシュシュッ

 キィン ザシュ

白夜剣聖「ぐっ、ヒナタ殿! あとは――」

ヒナタ「ああ、任せろ!!!」

 タタタタッ

ヒナタ(このまま弓ごとぶっ叩く!)

ヒナタ「ハアアアアッ!!!!」ブンッ

モズメ「!」チャキッ

 キィン

ヒナタ「ちっ……」

モズメ「くぅ……」

モズメ(弓に鉄板貼っておいて正解やった……けど……)

 グググッ カシィン!
 
 ボロボロ

モズメ「壊れてしもた……」

ヒナタ「……すげぇな。思いっきり振り切ったのに、受け切るなんてよ」

モズメ「間けられへんから、でもこれはもう使えへん……」

ヒナタ「だろうな、それで俺に丸腰で戦って勝てると思ってるのか?」

モズメ「丸腰じゃ勝てへんよ」

ヒナタ「……つまり、丸腰じゃねえってことか?」チャキッ

モズメ「……どうやろな?」ジリッ

ヒナタ(降参するようには見えねえ…。ってことは何か隠してやがるな……)

モズメ(ほな、いくで……)タッ

 チャキンッ

ヒナタ(小刀? まさかの白兵戦かよ。ならこっちも遠慮なく行かせてもらうぜ。痛いだろうが、少しは我慢してくれよな!)タッ

モズメ(来た。小刀に釣られたんやろうけど、流石にこれで戦えへんわ)

 ポイッ

ヒナタ「な、武器を捨てた!?」

 パシッ
 スチャッ
 
モズメ(近距離弓なら、こっちの方が先に準備できる!)

ヒナタ(短弓! くそ、それが狙いか!)タッ

モズメ「当たってや!!!」

 パシュッ!!!

 ザシュッ ポタタッ

ヒナタ「ぐっ……」

モズメ(当たったには当たった……。せやけど、浅い!)

ヒナタ「へへっ、びっくりしたぜ。そんじゃ今度はこっちが驚かせる番だ」ダッ

モズメ「!!!!」

 チャッ キリリリッ パシュッ

ヒナタ「はぁ!!!」ブンッ

 キィン キィン
  キィン カキィン
 
ヒナタ(このまま懐に入り込んで足を叩き伏せる。足を折れればそれで終わりだ!)

モズメ「はっ、せいやっ!」パシュ パシュッ

 サッ サッ

  タッ ジリッ

モズメ(懐に入ろうとしとる。なら――)

ヒナタ「もらった!!!!」

 ブンッ

モズメ「甘いでっ!」タッ

 パシュッ

 キィン

ヒナタ「っ……。後ろに飛びながら射ってくるのかよ」

モズメ「出来れば避けへんでほしかったわ」

ヒナタ「無茶言うなよ……」

モズメ「そこは少し負けてくれへん? 市場のおじちゃんなら負けてくれると思うんよ」

ヒナタ「残念だけど、俺はそういうことしたくねぇ頑固な店主ってことだよ。このまま続けるなら、本当に命を奪うかもしれねえ」

モズメ「……やっぱり、あたいを殺すつもりで攻撃してへんかったやな」

ヒナタ「あんたもそうだろ? 当てる場所、全部急所じゃねえし、さっきの攻撃胴体に当てればいいのに足を狙ってたじゃねえかよ」

モズメ「当たり前や、それをカムイ様は望んでる。それに従うって決めてるから、あたいはその通りに戦うんよ」

ヒナタ「……そんなんでいいのか。甘い気がするぞ」

モズメ「それでいいんよ。それにどんなものも同じやけど、殺す方が簡単で甘いと思うんよ。殺した後のことなんて、いろいろと理由を付けられるもんやから」

ヒナタ「理由付け……」

モズメ「動物を殺したのは何か悪いことが起きそうだったからとか、山に供物としてとか聞こえはええけど、実際殺した理由を薄めてるだけやし、戦ってる以上はそれが普通なんよ。だから、そう考えるとカムイ様は難しいことばっかりしとる。戦ってる以上、殺すことより生かすことの方が何倍にも面倒なことのはずやのに」

ヒナタ「……」

モズメ「あの日助けられた時もそう。あたいなんて放っておいたほうが楽やったんよ。怪我なんてせえへんかったし、あたいなんかに気を掛ける事もなかったはずやから。助けようとしたけど助けられなかったで片付けるのが一番周りが納得できることだったりするんよ」

モズメ「でも、カムイ様はあたしのこと助けてくれて慰めてくれた。面倒なことを背負い込んでいくあの人の力になれるなら、あの人の望んだことにあたいは全力になるだけなんよ」

ヒナタ「……なるほどね。それが正しいってことか?」

モズメ「あたいに聞いても答えなんて出ると思ってないやろ。あたいはあたいの戦うことを言っただけや……」チャキッ

ヒナタ「……それもそうだな。なら少しだけ変えさせてもらう」クルッ

モズメ「……」

ヒナタ「命まではもらわねえ。だが、腕一本は覚悟しろよ」ジリッ

モズメ「元からしとる……あんたもかなり痛いから覚悟しいや!」

ヒナタ「そうか。それじゃ、行くぜ」

 ザッ

モズメ「!」パシュ

 キィン

モズメ「っ」

モズメ(さっきよりも動きが早くなっとる。懐に入り込んで攻めの姿勢崩して仕切り直さんと!)

 タッ

 パシュパシュッ

ヒナタ「ちっ」

 タッ 

 キィン キィン

ヒナタ「……」チャキッ

モズメ「……」ギリリリッ

モズメ(次が最後……)

ヒナタ(次の仕切り直しはねえ……、ここで決める!)

ヒナタ「……!」ダッ

モズメ「!」チャキッ パシュッ!!!

ヒナタ「そこだ!!!!」ブンッ

 ザシュッ

モズメ「―――っ!!!」

ヒナタ(……)

モズメ「捉えたで……」チャキッ

ヒナタ(ちっ、浅い!!!)

モズメ「勘忍しいや!!!」

 シュパッ

 ザシュンッ!!!!

ヒナタ「ぐっ……まだまだああああ!!!」

ヒナタ(負けられねえ。こんな形で、負けられねえんだ。ここで、ここで負けちまったら、どうにか受け入れたものが崩れる、それを崩すわけにはいかねえんだよ!!!)

 ググッ ダッ

 シュタッ スタッ ザッ サッ
 
モズメ(速い……! でも、この動きなら――!)

モズメ「そこや!!!」パシュッ

 パシュッ ザシュンッ!!!

ヒナタ「ぐぅ、もろにもらっちまった。けど、俺の勝ちだ!!!」ダッ

 チャキッ

ヒナタ(この距離なら避けさせねえ……腕の一本は確実に飛ばせる。これで終わりだ!!!)

モズメ(あかん、この距離じゃ。だめや、回避が間に合わへん!)

ヒナタ「おらああああっ!!!!!」

モズメ「――――っ!!!」

 ブンッ

 バサバサバサ!!

???「はあああああっ!!!!」

 ブンッ

 キィン!

モズメ「えっ……あ……」

リンカ「どうやら間に合ったみたいだな。やあああっ!!!」ブンツ

 キィン

ヒナタ「ぐっ……」ダッ

 ズサササーッ

モズメ「リンカさん?」

リンカ「ぼけっとするなモズメ! まだ戦いは終わっていない!」

モズメ「わ、わかっとるよ」カチャッ 

ヒナタ「はぁはぁ、くそっ」

ヒナタ(さっきの矢の痛みが……。もう走りだせねえ……)

ヒナタ(動いたらすぐに飛んでくる。あんなの避けられる状態じゃねえ……)

ヒナタ(……そうか、俺負けちまったんだな)

 ポロポロ

モズメ「あんた、泣いとるんか……」

ヒナタ「ははっ、みてえだ……。情けねえよ、こんだけ頑張って、マカラスのこととか。タクミ様のしたこととか、そういうの全部受け入れて、タクミ様を支えるためにとかそんな風に思ったばっかりなのにさ。もう足がちゃんと動いてくれねえ」

リンカ「……」

ヒナタ「あんたらを追った奴らは?」

リンカ「あたしとアクアでボコボコにしてやったさ。今は全員、静かに眠ってる。安心しろ、殺してはいない」

ヒナタ「そっか……すげえな」

モズメ「まだ戦うん?」

ヒナタ「……いや、もういい。疲れちまったからな。降参だよ、降参……」

 カチャンッ……カシャンッ

リンカ「わかった……。ちょうど後続が到着したみたいだな」

モズメ「あうっ」クタリッ

リンカ「お、おい、大丈夫か? 斬られているみたいだな」

モズメ「みたいやね。……リンカさん」

リンカ「なんだ?」

モズメ「あたい、命張って闘えとるかな?」

リンカ「……もちろんだ。さぁ、傷口を見せてくれ、軽いが応急処置してやるからな」

モズメ「えへへ、ありがとう……」




ヒナタ「……」

ヒナタ(タクミ様、すまねえ。やっぱり俺、あの時からずっと引っ掛かりが取れなかったのかもしれねえ。どこかで、タクミ様のこと、本当に信じられてたかもわからねえ)

ヒナタ(あの時にもう、俺は……タクミ様を信じられなくなってたのかも知れねえから……)

ヒナタ「タクミ様……ごめん……」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

暗夜重装甲兵隊長「行けぇ! 敵陣の一点でいい、突破し道を作り上げろ!」

 ガシャンガシャンガシャンッ

白夜兵法者「させるか!!!」ダッ 

 ガシッ

サクラ「カザハナさん、あの方に!」

カザハナ「わかったよ、ウィークネス!!!」

 シュオンッ

白夜兵法者「ぐぬっ――」

暗夜重装甲兵隊長「そこだ、一気に突き上げろ!」

暗夜重装甲兵「おらああああっ」ドゴンッ

白夜兵法者「ぐああああっ」ドサッ

サクラ「今です! 一気に道を作り上げてください!」

 ウオオオオッ!!!

オボロ「ちっ、全員先頭集団の進路をふさいで、早く!!!」

白夜槍聖「わかり――」

ツバキ「残念だけど、そこで止まっててくれるかなー。フリーズっと!」

 シュオンッ

白夜槍聖「なっ、くっ、体が。うごか――」

暗夜重装甲兵「どけっ!!!」ドゴンッ

 グオオオオッ
 ドサッドササッ

暗夜重装甲兵隊長「よし、先頭は私が固める。左右、敵の侵攻を許すな!」

白夜兵法者「オボロ様、敵が入りこんできます!」

オボロ「一点でいい、さっさと崩して分離させ――」

 パシュッ ヒュン
 
 キィン

オボロ「――なっ」

サクラ「……」

オボロ「サクラ様……」

サクラ「オボロさん……邪魔をしないでください」

オボロ「……」

ツバキ「サクラ様!」

サクラ「大丈夫です。ツバキさんは、向かってくる方たちの足止めを続けてください。オボロさんは私が抑えます」パシュッ

オボロ「っ!!!」キィン

カザハナ「サクラ、早く。前方に攻撃が集中してる。長く持たないよ」

サクラ「はい」

 タタタタタッ

オボロ(そこに何かあるのはわかる。でも、それを止められないなら何の意味もない。どうにかしてでも止める)

オボロ(……裏切れない。裏切れない、裏切れないのよ。タクミ様を支える臣下として――)

オボロ(裏切れないのよ!!!!!!)

 ダッ ガシッ

白夜槍聖「オボロ様?」

オボロ「あんたたち、合図したらこういう風に動いてちょうだい)

白夜槍聖「わ、わかりましたが何をなさるつもりですか」

オボロ「奴らの狙いを阻止して壁を壊すわ。だから他のみんなも準備しなさい……」




サクラ「はぁはぁ、見えた! 皆さん大丈夫ですか?」

カザハナ「うん、まだ全然耐えられるって、早く用事済ませてさっさと退こう?」

サクラ「はい」

サクラ(あ、これがその竜脈ですね。予想した通り、この竜脈で風の動きを変えられるはず!)

サクラ「今から起動させます。その間は――」

カザハナ「わかってる。ちゃんと守ってあげるからね」

サクラ「ありがとうございます。えっと、ここですね」

サクラ(これでカムイ姉様の援護を……そして同時に……)

サクラ(私も悪い子になっちゃったかもしれません。だけど、こうするしかないんです。許してください……)

 フワッ ヒュオオオオッ

暗夜重装甲兵「……敵の戦列が入れ替わるぞ。全員、気を引き締めろ!」

 タタタタタッ

白夜兵法者「オボロ様、サクラ王女が何かを――」

オボロ「絶対にさせないわ! やるわよ!」

白夜槍聖「はい、全員屈め!!」

 ザッ

 タッ

白夜槍聖「今だ!」スッ

 ダッ

白夜重装甲兵「なっ、人を踏み台にして!?」

オボロ「あそこね……」

サクラ「……」

オボロ(タクミ様の妹のくせに、それを受け入れないあんたなんて白夜の王女でもなんでも無い。そんなに邪魔したいなら、こっちも手加減なんてできないわ)

オボロ(私から、私から奪おうとするあんたは敵、ならそんなの殺しても……構わない。私にとって守りたいものは――)

タクミ『オボロは僕のことを信じてくれるよね』

オボロ(タクミ様だけで十分なのよ!!!)

 チャキッ

暗夜重装甲兵隊長「くっ、サクラ様!!!!」

カザハナ「サクラ!!!」タタタッ

ツバキ「くっ、間に合わない!!!」

サクラ「……」

オボロ「死ね……」チャキッ

 パシュッ

 ザシュッ

サクラ「……」

オボロ「……あ……」

 ドサッ ドササッ……

サクラ「……」

オボロ(何が起きて……)

サクラ「……」

オボロ(なんで私はサクラ様を見上げて……いったいどうして……。なんだか胸が痛い……)

 スッ
 ビチャ……

 ドクンッ

オボロ「あ……」

オボロ(血……。私、撃たれたの……?)

オボロ「あぐっ、うぐうう……」

白夜槍聖「オ、オボロ様!!!」ダッ

サクラ「止まってください」チャキッ

白夜槍聖「なっ、サクラ王女……」

サクラ「投降してください。オボロさんを助けたかったら」

白夜槍聖「サクラ王女、やはりあなたは暗夜にその心まで――」

サクラ「勝手に思いたければ思ってもらって構いません。でも、あなた達が戦いを続けるというのでしたら、私達はオボロさんへの救命処置を始めることができません……」

白夜兵法者「あなたが暗夜の片棒を担ぐなど、タクミ王子もあなたを救うためにここまで来たというのに!」

サクラ「……だとしても、今の私はあなたたちに従うわけにはいかないんです。早く武器を収めてください」

白夜槍聖「……くっ」

オボロ「あ、あんたたち なにを、やってるのよ……」

白夜槍聖「お、オボロ様。動かれてはいけません!」ポタタタッ

オボロ「私になんて構わず、さっさと攻撃しな……さい。こっちは、もう勝てる形なのに、なんで躊躇しているのよ……うぐっ」ポタタタッ

オボロ「今動かないで、いつ動くのよ……。こんなところで裏切るわけにはいかないの、タクミ様を失望させたくない……あぐっ」ドサッ

サクラ「……」

オボロ「やめて、奪わないで…。私の、私の戦う理由を…奪わないで……」

サクラ「……それを私達は奪わないといけないんです」

オボロ「いや、いやよ……。タクミ様、私はまだ、まだ戦える…戦えるから……。みんなも戦って……」

サクラ「オボロさん……」

オボロ「見限られたくない。タクミ様に……必要ないって思われたくない。ずっとそばで支えていくのよ。だから、負けるわけにはいかない……のに……」ポタタタッ

 ザザッ ザザッ

オボロ「タク……様……」クタリッ

 ポタタタタッ

白夜槍聖「オボロ様!!!」

サクラ「カザハナさん、ツバキさん!」

カザハナ「う、うん!」チャキッ

ツバキ「……わかりました」チャキッ

白夜槍聖「くっ、サクラ王女、あなたという方は!」

サクラ「……あなた達が決めてください。このまま戦いを続けるのかどうかを。オボロさんの言葉の通りにするのか、それともオボロさんを助けるのか……。それを決めるのはここにいるあなた達です。オボロさんを救えるのはあなた達しかいないんです」

白夜槍聖「では、サクラ王女はなにを救うために、ここで戦っているのですか」

サクラ「……皆さんを含めた、多くの人たちです。そして、それを成し得ることができるのはカムイ姉様だけだと信じています。そして、みなさんはタクミ兄様を信じてここに来てくれた。今の白夜ではなくて、タクミ兄様を信じて」

白夜槍聖「だからこそサクラ王女、あなたのことも私達は――」

サクラ「私のことを王女と呼んでくださって嬉しいです。その言葉も偽りでないと分かります。だからこそ私は……そんなあなた達が汚れて欲しくはないんです」

白夜槍聖「サクラ王女……」

サクラ「私はもう白夜の王女を名乗れる立場にはいません。だからこれはただの一人の戯言と言ってもいい事だと思います。でも、私達が戦いを続けても戦争が終わりません、ずっとずっとそれが続いて行くだけ、そんなことは終わらせなければいけません」

白夜槍聖「……」

オボロ「……」ドクドクドク……

サクラ「私たちにオボロさんを助けさせてください。そして、私の大切な家族を……、タクミ兄様を今の白夜という呪縛から解くために力を貸してください……」

白夜兵法者「……」

白夜槍聖「……サクラ王女、あの裏切り者はタクミ王子を……救えるのですか?」

サクラ「……はい。少なくとも私はそう信じています」

白夜槍聖「……」

サクラ「……」

白夜槍聖「……全員、武器を納めろ」

白夜兵法者「……」カチャンッ

白夜槍聖「サクラ王女、あなたのその言葉を信じたこと、後悔させないでください」

サクラ「後悔はさせません、絶対に……。……カザハナさん、ツバキさん。オボロさんへの応急処置を!」

カザハナ「う、うん。ツバキ、オボロの体を起こして傷口を塞ぐから」

ツバキ「わかったよ。途中で起きたりしたら、そのまま首を持っていかれそうだなー」

カザハナ「つべこべ言ってないで、はやく!」

 ガサゴソガサゴソ

サクラ「……」スタッ
 
 ヒュオオオオッ

サクラ「……カムイ姉様……あとはお願いします」

 シュオンッ
 シュオオオオオ

サクラ(私にはもう、ここで信じることしかできないから……)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ヒュオオオオーーッ

白夜剣聖「ぐぐぐっ、なんだこの力は……」クタリッ

白夜剣聖「くそ……」

アクア「……」シュンシュンシュン カチャッ

アクア(リンカの援護は間に合ったはず。さすがにこの人数をどうにかできるかは不安だったけど……、意外と何とかなるものね)

アクア「ん?」

 シュオオオオオオオオ……

アクア(……もう一ヶ所の竜脈の気配、それにこの波紋…)

アクア「サクラ、頑張ったのね。私も早く……」

 スッ シュオンッ

アクア(それにしても、最初に発動した竜脈。あれは元々この地にあったものではなかった。ここにあった竜脈のほとんどは活性化するには弱すぎるものの、それが噴出したのは意図的に生み出された竜脈の影響、そんなことができる者がいるとすれば……あいつしかない)

 シュオオオオオッ

アクア(あいつの野望はまだ終わってない。それはカムイと私達が目指そうとしている場所を隠そうとしてる)

アクア(悪意を増幅させて、終わらない戦いを呼び寄せることをまだ続けるというなら、それを私は阻止するだけ)

アクア「……多分、あそこに奴はいる」

アクア(間違いなく形は違うけど、でも確かにいるはず。だとすれば、ここまでのことを予想しているなら、奴の本当の狙いは……)

 ビュオオオオオオオッ

アクア「そんなことはさせない、絶対に……」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◇◇◇◇◇◇
―白夜・風の村『修練場・中央』―

 ヒュオオオオオッ
 
白夜弓兵「タクミ様、風が!」

タクミ「……ヒナタとオボロが負けたみたいだね」

白夜弓兵「いかがしますか、タクミ様」

タクミ「いいよ、二人とも時間をちゃんと稼いでくれたんだ。ここであの裏切り者を殺せばそれで勝ち、こっちの別動隊も動いてる。さすがに竜脈の効果をどうにかされるとは思ってなかったけど、あいつはもう詰んでるんだからね」

タクミ(そう、もう、殺すための道筋はできてる。一直線道で回避行動も取れない中、どうやって両方の攻撃を受け止め続けるか見物だね)

白夜兵法者「敵、こちらに前進してきます」

タクミ「仕上げだよ、兵法者は前方を受け止める準備、弓兵は攻撃態勢に入って。あいつらを蜂の巣にしてやるんだ」

白夜弓兵「はい」

白夜兵法者「別動隊、敵の後続に接触します」

タクミ「……よし、一斉正射!!!」

 パシュ パシュシュ

 ヒュンヒュン!

タクミ(はははっ、これで終わり。もう、あとは時間の問題、そうだろカムイ!!!)




 ドドドドドドッ


 
白夜弓兵「む、あれは……」

タクミ「? どうしたんだい?」

白夜弓兵「いえ、正面入り口を守っていた者たちでしょうか、あそこから続々と」

タクミ「何をしてるんだ。正面にも暗夜兵はいたのにどうして―――」

タクミ(…いや、あれは白夜の部隊じゃない……あれは――)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
ルーナ「ちょっと、まだなわけ!?」

カムイ「もう少しだと思います。どうにか正面の攻撃が止んで態勢を立て直せました。あと少しだけ耐えるだけで済むはずです!」

エリーゼ「このままじゃ、医療杖も壊れちゃう……どうしよう」

カムイ「大丈夫、必ず、必ず間に合うはずです――」

 ドドドドドドドッ

カムイ(この足音は――)

白夜兵「むっ、なんだ。援軍か? お前らこっちだ、この戦列に加われ! この暗夜の者たちを――」

???「ああ、参加させてもらおう」チャキッ

「お前たちと戦っている、その暗夜の者たちの戦列にな!」ダッ

 バシッ ドゴンッ

白夜兵「ぐああああああっ」ドサッ ドササッ

白夜兵「な、一体何が!?」

風の村の民「……」タタタタタッ

白夜兵「な、貴様ら牢にいたはずでは――」

風の村の民「出てきたんだよ!」ブンッ

 ドガッ ズザサー

ギュンター「どうやら間に合ったようですぞ。カムイ様」

カムイ「そのようですね……」

白夜兵「ぐあああっ!!!」ドサッ

???「お前がカムイか?」

カムイ「はい、すみません。このように巻き込む様な形になってしまって」

???「なに、気にするな。元よりここは私たちの村……」

フウガ「助けに来てくれたおまえたちを手助けすることに何の迷いもありはしない」

カムイ「はい、ありがとうございます」

フウガ「私はフウガだ。しかし、話をしている暇など今はない。いくぞ皆の者!」

風の村の民「フウガ様、わかりました。全員、ここにいる奴らを抑え込むぞ!」

 ウオオオオオオッ

フウガ「でいやあああっ!!!」ブンッ

 バキィン ドササッ

フウガ「ここの者たちは任せて進め。なに、お前達が負けるとは思っていない、積もる話はすべてが一段落してからでも遅くはない」

カムイ「はい、お願いいたします」

フウガ「ああ……気をつけろ。あの王子、何かよからぬ気配がした……」

カムイ「……わかりました。気を付けていきます」

フウガ「うむ、……その剣が導く道、見させてもらうぞ」

カムイ「はい……。皆さん、仕上げです」

「行きましょう」

 ダッ

今日はここまでで

 残り二回でこの章、終わります。
 サイファにリリスのカードが来たようですね(にっこり)

おつんちん

◆◆◆◆◆◆
―白夜・風の村『収容塔』―

 ~十数分前~

 ガチャンッ ガチャンッ ガコンッ

 ギィィィイイ

ゼロ「レオン様、終わりました」

レオン「ああ、多分この中にいるはずだ」

オーディン「はい、レオン様」

 ザザザッ

フウガ「ほう、何か外が騒がしいと思っていたが。よもや助けが来るとは思わなかった」

レオン「フウガ公王……」

フウガ「フウガでよい。こうして命を救われることになったのだからな、感謝しきれんよ」

レオン「いや、あなた方が抵抗し時間を稼いでくれたからですよ、僕達がこうしてここに来られたのは」

フウガ「そうか、ツクヨミの計らいということか。まったくどうして親離れできぬ奴よ」

レオン「……確かにそれもあるけど、僕達がこうして来たのは助けるためだけじゃない。ゼロ、オーディン」

オーディン「はいこちらにあります。言われた通り全部新品同然に仕上げましたよ。この輝き、まるで暗雲立ち込める世界に――」

ゼロ「ふっ、新品同様の矛で敵を突けるなんて、最高だねぇ。俺の腕もビンビンなっちまうなぁ……」

レオン「……」

フウガ「ふっ、個性的な臣下を携えているようだな。そしてそこにある多くの武器、それを使いこなすには手数が足りないようにみえるが?」

レオン「言ったでしょ、助けるためだけにここに来たわけじゃないって。でも、フウガ公王がそれを望むならそれでも構わないけど?」

フウガ「ふっ、意地の悪い問いかけだな。答えなど決まっているというのに……。皆の者、よいな?」

 コクリッ

レオン「ありがとう。こっちは戦力がカツカツだからね。断られたらどうしようかと思ってた」

フウガ「ふっ、ここまでされたのだ、返さねばならん。それにレオン王子、お前達をこちらに向かわせた者、カムイともじっくり話をしたいのでな」

 ガシッ グググッ

フウガ「これより、戦列に加わろう」

レオン「ああ、姉さんたちを助けに向かってほしい、ここは僕達だけで何とかなるからね」

フウガ「心得た……暗夜の王子よ」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
―白夜・風の村『修練場』―

カムイ(ここにフウガさん達が来たということは、レオンさんたちが正面の制圧を始めたということ。あとはこの中枢を叩けばそれで終わりです)

タクミ「……あと一歩なのに、どうして邪魔ばっかりするんだよ、あんたってやつは!!!」

カムイ「ギュンターさん、エリーゼさん、正面の壁役の排除をお願いできますか?」

ギュンター「任されました。エリーゼ様、右の処理お願いいたします」

エリーゼ「う、うん、うまくできるかわからないけど、やってみるよ」チャキッ

ルーナ「大丈夫。うまく決めたらあたしがぱぱっとやっちゃうから。だから成功することだけ考えなさい」ナデナデ

エリーゼ「……」

ルーナ「あ、えっと、そのこれはね。安心できるおまじないっていうか。な、なによ、文句ある!?」

エリーゼ「な、なんで怒るの!? でも、ありがとうルーナ、なんだかホっとちゃった」

ルーナ「あ、安心したならいいのよ」」

ギュンター「では、参りますぞ!」パカラッ

白夜兵法者「敵がきます!」

白夜兵法者「たった一人だ、さっさと抑え込め!」

ギュンター「はあああっ」チャキッ

エリーゼ「いくよ……ドロー!!!!」ブンッ シャラン

 シュンッ 

 ポンッ

白夜兵法者「へ!?」

ルーナ「御苦労さま。とりあえず眠ってなさい!」ドゴッ

白夜兵法者「げひっ」ドサッ

白夜兵法者「なんと面妖な攻撃を――!」

ギュンター「余所見とはいい度胸だ。はあああっ」ブンッ

 ドゴンッ

白夜兵法者「ぐああああっ」ドサドササッ

カムイ「今です! 重装甲兵の方々を先頭に弓の攻撃から隠れながら前進してください!」

 ザッザッザッ

タクミ「くそっ、あの裏切り者だけを狙うんだ。あいつを殺せば、この戦いも終わりになる!! 全員、第二射準備!」

 ヒュンヒュンヒュンッ
 カキィンキィン

カムイ「それでは次の段階ですね。ルーナさん、敵陣を私と一緒に撹乱しに行きます。先頭をお願いできますか?」

ルーナ「わかったわ。あたしが先頭で引っ張ってあげるんだから、ちゃんと付いて来なさいよね」

カムイ「はい、頼りにしてますよ」

ルーナ「任せて、あたしにかかればあんな奴らちょちょいって倒せちゃうんだから」

カムイ「はい。ギュンターさん、全体的な戦力を右に集中して敵の意識を引きつけてください」

ギュンター「わかりました。右の陣を厚くします。エリーゼ様、中心からカムイ様たちの援護をおねがいしますね」

エリーゼ「うん、おねえちゃんもルーナもがんばってね」

ルーナ「はいはい、あたしの華麗な活躍見ておきなさいよ」

カムイ「では、一気に攻め上げます」



タクミ「射て!!!!」

 パシュパシュパシュ!

 キィンキィンキィン

タクミ「敵の陣、右側が突出し始めた。あそこから一点突破で来るつもりか? なら……」

 バッ

タクミ「全員、右の陣に攻撃を集中、敵の突破を阻止するんだ!!」

ギュンター「やはり大軍を恐れたか。しかし、まだまだ甘いぞ」

エリーゼ「おねえちゃん、敵の攻撃がほとんど右に向いたよ!」

ルーナ「それじゃ、行くわよ」

カムイ「ええ、目標は正面の弓兵部隊です」

ルーナ「わかってる。ノンストップで駆け抜けるから、転んだりしないでよ」

カムイ「何もない場所では転べませんよ」

 ダッ

 タタタタタタッ

白夜弓兵「! 敵二人きます!」

白夜弓兵「はっ、死ぬ気か。たった二人で抜けられるとでも――」

エリーゼ「……そうはさせないよーだ。フリーズ!!」シュオンッ

白夜弓兵「なっ、う、うごけ――」

ルーナ「一番乗り!!!」ブンッ

 ドガンッ!!!!

カムイ「二番乗りですね、はああっ!!!」ザンッ

 ドスンッ

タクミ「何をしてる。入り込んだ二人を殺せ!!!」

 ガサガサッ

ギュンター「よし、今が勝機だ。進め!」

 ザッザッザッ

白夜弓兵「て、敵。前進してきます!!!」

白夜兵法者「くそ、迫ってくる奴に対処しろ!」

ルーナ「あたし達がいること忘れてんじゃないわよ」ドゴンッ

カムイ「失礼しますよ」バシュッ

白夜兵法者「ぐああああっ!!!」ドササッ

タクミ「くそっ、隊列を立て直すんだ今すぐ!!!」

タクミ(なんだよこれ、僕が僕が有利だったはずなのに!)

白夜弓兵「敵にこのままでは包囲されます!」

白夜弓兵「くそっ、ちゃんと敵の侵攻を抑えてくれ!!!」

白夜兵法者「こちらも手いっぱいだ」

白夜弓兵「このままじゃ、囲まれて嬲り殺しにされる!」

タクミ「怯むな! まだ、まだ僕たちの負けじゃない!!! 一点でもいい穴をあけてそこから崩すんだ!」



ルーナ「さてと……かなり引っかき回したけど、これ相手側かなり悲惨な形になってるんだけど。まるで玉ねぎを一枚一枚スライスしていくみたいに、もうボロボロよ

カムイ「こちらの策がうまく嵌ったということでしょう。風の村の方たちの増援を見て、少し萎縮したこともあるはずです」

ルーナ「それでどうするの? このまま戦いを続ける? 正直大将までは遠いから、相手の死傷者が増えるばっかりよ?」

カムイ「そうですね……敵をさらに細分化して、タクミさんを孤立させます。ギュンターさん、こういう風にできますか?」

ギュンター「わかりました。すぐに仕掛けさせます」

カムイ(さて、どうでますか?……タクミさん)

白夜弓兵「くそっ、開け!!!」パシュッ

 キィンキィン

カムイ「……このまま押し切ります。総員準備!」

タクミ(あれは!!! 前に出てくるなんていい度胸だよ。それが命取りだってこと教えてやる!!!)

タクミ「全員、あの箇所に攻撃を集中させるんだ。あそこはまだ薄い、全員で攻撃してあいつを追い詰める!」

 パシュシュシュ
 ヒュンヒュンヒュン

暗夜重装甲兵「!!!」

 ザザザッ

白夜弓兵「道が開いた!!!」

タクミ「今だ、僕に続け!」

カムイ「くっ!」タッ

タクミ(ははっ、カムイそこにいるのはわかってる。今度こそ、この風神弓でお前を!!!)

 タタタタタッ

カムイ「……」

タクミ「くらえっ!!!」パシュッ

カムイ「……」サッ

タクミ「待て!!!!」タタタタッ

白夜兵法者「タクミ様!!! 全員遅れを取るな!!」

 タタタタタタッ

ギュンター「……ふむ、今ですエリーゼ様」

エリーゼ「うん!!!! フリーズ!!!」

 シュオンッ

白夜弓兵「がっ、体が!!!」

 タッ タスッ

白夜弓兵「お、おい、何を止まっている!」

白夜弓兵「体が動かねえんだよ。くそ、なにがどうなって――」

暗夜重装甲兵「今だ! 陣を戻せ!!!」

 ザザザザッ

タクミ「!?」

 ザザザザザッ

 ガシャンッ!
 ガシャンッ!!!

白夜兵法者「タクミ様!」チャキッ

白夜弓兵「か、囲まれた!?」

暗夜重装甲兵「動くな。この包囲状況、よもや説明する必要もないだろう」

暗夜槍兵「……」チャキッ

白夜兵法者「くっ……」

タクミ「な、なんだよ。なんなんだよ、これは!!!」

カムイ「なんだではありませんよ。ただ、私の仕掛けたことにタクミさんがものの見事に引っ掛かっただけ、ただそれだけのことです」

 ジャリッ

 ザザザザッ

 ガシャンッ

タクミ(くそ、完全に孤立した……。罠だったんだ、僕の前に姿を見せて攻撃する箇所を決めさせて、そこを一瞬だけ手薄に……。僕が選ぶ選択を先読みして――)

タクミ「カムイ!!!」

カムイ「タクミさん、もう終わりです。これ以上の戦いに意味はありません。どんなにあなたがあがいても、この状況を変えることはできません」

タクミ「黙れ黙れ!!! あんたは何時だってそうだ、そんな風になんでもわかっている顔、虫唾が走るんだよ」

カムイ「私には何も分かりませんよ。わかっているなら、こんな戦い起きていません」

タクミ「わからないかな、あんたが死んでいればこんな戦い始まらなかって言っているんだ。あんたは、あんたはあの時死んでいればよかったんだ。そうすれば、母さんは死なずにすんだ。あんたがあんたが殺したんだ!!!」

カムイ「…そうですね。私が生き残って、ミコトさんは死んでしまった。こんな私をどうしてミコトさんが助けてくれたのか、今でも分かりません。私より、ミコトさんが生きるべきだったと今でも思います」

タクミ「なら、今すぐにでも死んでくれないかな。あんたが死ねば、王族の汚名は消え去る。また民から信頼されるようにもなる。すべてが元に戻るんだ!」

カムイ「……私の命一つですべてが元に戻るなら、こんな命切り捨てています」

 チャキッ

カムイ「……でも、私が死んでも状況は何も変わりません」

タクミ「変わるさ。あんたが死ねば――」

カムイ「では私を殺したあと、タクミさんはどうするんですか?」

タクミ「……なに?」

カムイ「先のことですよ。私を殺して、サクラさんを取り戻して、王族の地位を取り戻したそのあと……。あなたは何をするんですか?」

タクミ「……」

カムイ「私という復讐の対象を失ったらタクミさん、あなたは――」

タクミ「黙れ……」

タクミ「黙れ、黙れ黙れ黙れ!!!!」

 チャキッ シュオンッ

タクミ「あんたに何がわかる」

カムイ「……分かりません。私はタクミさんじゃありませんから、わかるわけもありません」

タクミ「だろうね、当たり前だ。あんたは白夜の人間じゃない、僕の家族でもない! だからこそ、あんたは僕たちにとって毒なんだ! その首を取って晒しあげて、後悔せてやる。僕たちを、僕たちを裏切ったことを!!!」チャキッ

カムイ「……」チャキッ

タクミ「死ね、カムイ!!!」パシュッ

 シュパッ

 キィン

カムイ「やあああっ!!!」ブンッ

 サッ

タクミ「甘いんだよ!」パシュ

 バシュンッ

カムイ「ぐっ!!!」

ルーナ「カムイ様!!! 今―ー」

カムイ「手出しは無用です!」サッ

タクミ「はっ、ここに来て正々堂々としても意味なんてないのに、何やってるのさ?」

カムイ「あなたなんて私一人で十分というだけです」

タクミ「……いい気になるなよ!!!」タタタタッ

タクミ(このまま、ハチの巣にしてやる!!!)

 パシュッ
 パシュッ

 キィンキィン

 ダッ

カムイ「いい気分になんてなりませんよ。こんな戦いなんて!」

タクミ「なにがだよ、ここまで白夜と戦って来たくせに。お前が倒してきた白夜の民は――」

カムイ「私が白夜の人間を倒してきたのは事実です。でも私にとっては白夜も暗夜も関係はありません」

タクミ「関係あるさ。関係があるからこうやって戦っているんだ!!!」ドゴッ

 キィン ガキィン

カムイ「なら、その関係を捨てればいい。暗夜も白夜も関係ない、人は人を信じて生きていけるはずだから!」

タクミ「はっ、この状態でよくもそんなこと言えるよ!!! あんた初めて会った時言ってたよね。すぐに信用なんてできないし、しない方が普通だって」

カムイ「ええ、そうですよ。だからこそ、相手を理解して行かなくてはいけないんです。その道を、これ以上壊されるわけには行かないんです」ダッ キィン

タクミ「くっ!!!! この距離でも――」チャキッ

カムイ「そこです!!!!!」

 ブンッ

 バキィン
 
 フォンフォンフォン カラカラカラー
 
タクミ(風神弓が、しまっ――)

カムイ「……タクミさん。私はあなたのことを思った以上に知りません。あなたが私を怨む理由もです。だからこそ、そんなものに負けるわけにはいかないんです」

タクミ「僕は――」

カムイ「だから、あなたのその怨みを果たす機会、ここで奪わせてもらいます」

 ドスンッ!!!!!

タクミ「がっ……ううっ、くそっ……」

タクミ(駄目だ、気を失うな。失ったら、失ったらもう、果たせなくなる……。僕が、みんなを皆を守って、あいつよりも皆に、みんなに思われる家族に……家族になる……ん……だ……。僕が……みんなを……)

 ドサリッ……

カムイ「………」

ルーナ「……カムイ様」

カムイ「ここにいる白夜の兵に告げます。タクミさんは倒れました。これ以上の戦闘を続けるならば、その命を保障できません。武器を捨て投降してください」

白夜兵「……くそっ……」ガシャンッ

 カランッ ガランッ ゴトッ……

エリーゼ「カムイおねえちゃん、白夜の人たち武器を置き始めたよ」

カムイ「そうですか……。エリーゼさん、負傷者の手当てを優先してください。ルーナさんはその手伝いをお願いします」

ルーナ「わかった。ほら、エリーゼ様早く行くわよ」

エリーゼ「う、うん!」

カムイ「……はぁ、はぁ……)

カムイ(……どうにか、これで―――)

 パシュッ
 
 ズビシャッ……

カムイ「えっ……」

 ポタポタタタッ

カムイ「あぐっ、うううっ、あああっ」

ギュンター「! カムイ様!!!」

 パシュッ

ギュンター「くっ」キィン

カムイ「ああっ、ううっ」

カムイ(こ、これは風神弓……ま、まさか――)

 ジャリッ

タクミ「……」シュオンッ チャキッ

カムイ「タクミさん……」

タクミ「しねばいい……。しねばいいんだ……」

 パシュッ

カムイ「!」

ルーナ「はあああっ!!!!」キィン

カムイ「はぁはぁ、ルーナさん……」

エリーゼ「カムイおねえちゃん、すぐに治療するから!!!」

ルーナ「しっかりしなさい。それにしても、負けたふりして立ちあがって攻撃とか、卑怯極まり――」

タクミ「……」フラフラ

エリーゼ「……こ、これって……」

ギュンター「エリーゼ様、お下がりください」

ルーナ「……まさか、こいつ……」

カムイ「……あなたは……誰ですか……」

タクミ「ははは……そんなのどうでもいいことだよ……」

「あんたがしぬいがいのことなんて、どうでもいいことなんだからさ……」

今日はここまでで 昨日はタクミの誕生日だった。おめでとう

 あと一回でこの章が終わります。
 今年は最後にピエリ×ルーナとピエリリスやって終わりだと思います。

おつー

 シャランッ

エリーゼ「これで多分大丈夫だよ、カムイおねえちゃん」

カムイ「ありがとうございます、エリーゼさん。ですが、このまま逃げるというわけにはいきません」

タクミ「……」

エリーゼ「この感じ、あの時のおとうさまと同じ……」

ルーナ「……すごい威圧感、人間とは思えないわね」

カムイ(まさか、これがハイドラだというのですか? 私達が倒すべき敵、それが今目の前にいるというんですか……)

白夜兵「……」

タクミ「おまえたち、なにをしてる。ぼくはたおれてなんていない、まだまけじゃないんだから、そいつらをころすんだ……はやく」

白夜兵「た、タクミ様……」

タクミ「……なんで、ぼくをそんなめでみるんだよ……。そのめをむけるあいてはぼくじゃないはずだ……」チャキッ

カムイ「ギュンターさん!!!」

ギュンター「はい、てやあっ!!!」ダッ ザッ

 パシュッ

 キィン!!!

白夜兵「タクミ様、な、なにを――!!!」

タクミ「たたかわないなら、しねばいいんだ。ぼくのめいれいにしたがわないなら――」

白夜兵「た、タクミ様……。わ、我々は!」

 ザッ

ギュンター「私より前に出た者は守り切れませんぞ」

白夜兵「くっ……」

 パシュッ

ルーナ「はあっ!!!」ブンッ

 キィン

ルーナ「どうやら見えてるの皆敵って考えでよさそうね」

ギュンター「ああ、そのようだ。それにしても何という殺気。いや、殺気だけといえばよいのかもしれませんな」

カムイ「ええ、この気配、レオンさんの屋敷で相対した見えない者たちと同じです……」

カムイ(だとすると、すでにタクミさんは……。いや、そんなはずはありません。さっきまでのタクミさんとは明らかに別人過ぎる。さっきの私の攻撃で命まで奪えたとは思えない……)

タクミ「……あはははっ。なにもしてこないならこっちからいくよ」チャキッ パシュッ

 キィン

タクミ「はやくしね。すぐしね。ぼくのまえでいきたえてよ。そうすれば、こんなあくむからはかいほうされる。あんたさえいなくなれば!!!!」パシュッ 

カムイ「くっ……」

タクミ「みんなしねばいい、ぼくにひつようなものなんてなにもない。あんたをころせるならそれでいい……」

カムイ「タクミさん、あなたはここまで共に来てくれた方々に矢を向けるのですか!? その刃は私だけに向けるべきもののはずです!!」

タクミ「いいんだ。けっかてきにあんたがくるしめばそれでいい、それでいい――」

???「そう、それでいいのだ……カムイ」

カムイ「!!!!」

カムイ(今の威圧……)

タクミ「……」チャキッ

カムイ(間違いない。今一瞬だけタクミさんの殺気とは違うものがありました……)

タクミ「……」パシュッ

 キィン

カムイ(明確な悪意、殺すためではなく苦しませることを目的とした明確な悪意……)

カムイ(このまま放っておけば、タクミさんは容赦なくここにいる人を殺す、誰もを平等に殺していく。私が死んでタクミさんが正気に戻ったとしても、誰かがタクミさんの蛮行を聞き伝えればいい。それだけで、新しい悪意が生まれる。それを止めるためには――)

カムイ(タクミさんを殺すしかない……でも、そんなことできるわけがない)

カムイ(それをしてしまったら、結局元に戻ってしまう。溝はもう埋まらない。戦争はこの先も続いて行く、人が死に絶えるまで。それをさせないためにここまできたというのに!!!)

 ギリッ

タクミ「……」

カムイ(これが人間すべてを怨むほどの悪意、それが望む筋書きだというんですか!!!)

 パシュパシュッ

ギュンター「ぐっ、カムイ様」

ルーナ「きゃああっ」ドサッ

エリーゼ「ルーナ!!! やめてよ、こんなこと!!!!」

タクミ「しね……さっさとしんでよ。おまえがしねば……もう、それでおわりなんだからさぁ!!!!」

カムイ(終わるわけない。私が死んだとしても、あなたは絶対に終わりになんてしない、それがあなたの目的だから)

カムイ(なあ、私はそれに抗う。私は救ってみせると決めたんです、そのために私はここまで来たのだから!!!)

カムイ「あなたに負けるわけにはいかないんです!!!!」

 


 バサバサッ

カムイ(これは、羽の音……?)

???「ええ、その通りよ。あなたに屈するわけにはいかない。だから私は皆と歩む道を選んだのだから!」

カムイ「その声は、アクアさん!)

アクア「カムイ、ここは任せて、少しだけでもいい、タクミの意識を逸らしてちょうだい」

カムイ「わかりました。はああっ!!!」

タクミ「……」チャキッ 

 パシュッ

 キィン

リンカ「なんとか間に合ったな」

アクア「ええ、ありがとう。リンカ」

リンカ「気にするな。それよりも、早くした方がいい。タクミの様子がどう見てもおかしいからな」

アクア「ええ。リンカ、この距離を維持して頂戴。あと、絶対に動かないで頂戴、流石に動かれると難しくなるから」

リンカ「ははっ、こんな上空でか、狙われたら最後だな」

アクア「大丈夫、カムイを信じて。あと、私のこともね」

リンカ「当たり前だ。その代わりとして特等席で聞かせてもらうさ。あんたの歌声をな」

アクア「ふふっ……」

アクア(終わった後、カムイに怒られてしまうかもしれないわね。でも、これだけは私にしかできないことだから……命を掛けてでも、カムイの力になるために……)

 スゥー

アクア「ユールラリー ユレリー」

 ♪~
  ♪~
   ♪~

カムイ「こ、この歌は……」

ギュンター「ふむ、アクア様のようですな」

エリーゼ「この歌って……」

ルーナ「アミュージアの時のものと一緒……っていうことは……」

タクミ「うぐ、うあああっ、ぐあああああっ……」

カムイ「!!!」

タクミ「うああっ、頭が……ぐうあああっ」

 カランッ 

カムイ(風神弓が落ちた、今なら!!)

カムイ「ルーナさん!」

ルーナ「ええ、ちょっと拝借するわよ」ヒョイッ

タクミ「はぁ、はぁ、…んぐっ、貴様ら……」

カムイ「……タクミさんを返してもらいます」チャキッ

タクミ「ははっ、ふはははっ、貴様一人で何ができる。何もできないことを誰よりもわかっているはずだ。なのにもがく、それは見ていて面白いものだ」

カムイ「負け惜しみですか」

タクミ「ははっ、負け惜しみか……。ならその負け惜しみで、もがいてもらうとしよう……」

 ジリッ ジリリッ
 
カムイ「なっ!!」

カムイ(崖の方角に、まさか!!!!)ダッ

???(自分の力の無さを痛感するがいい。結局お前は、何もできはしない。どこまでもがこうとも結果は変わりはしない)

カムイ(だめです、それはそれだけは!!!!)

???(その中でもがき続けるがいい……カムイ!)

 フラッ

カムイ「タクミさん!!!!!」ダッ

エリーゼ「え、カムイおねえちゃん!?」

ギュンター「お待ちください、カムイ様!!!」

ルーナ「ちょ、あんた!!!」

カムイ「はああっ!!!」

 バッ

 ヒュオオオオッ―――――

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

タクミ(……頭が痛い。さっきからずっとずっと。それもようやく晴れてきたのに……)

タクミ(なんだよその顔、なんでそんな辛そうな顔してるんだよ。辛いのはこっちなのに……)

タクミ(裏切ったあんたにそんな顔する権利なんてないんだよ。裏切り者は裏切者らしく、笑っていればいいんだ。その方が、こっちは気が楽になるっていうのに、どうして――そんなに僕のことを心配してるんだよ)

 フワリッ

 ヒュオオオオオーーーー

タクミ(空を飛んでる……。いや、落ちてるだけか。そうか、たぶんこれで終わりってことだよね……)

タクミ(あんたは家族でもなんでも無いって突き放してるのに、どうしてそんな風に僕を見れるのか、最後まで分からなかったけど……)

タクミ(もしも、あんたが白夜に残ってくれたら、ちゃんと弟として接することができたのかな)

 ヒュオオオオオーーー

タクミ(もう、遅いけど、このまま落ちて死んで行くだけだ。……多分、僕があんたを殺したとしても、何も変わらないことくらい……わかってる)

タクミ(でも……僕は……それくらいしか……考えられなかった)

タクミ「ごめんよ……みんな……。不甲斐無いままで……」

タクミ(もう、僕は……)



 ヒュオオオオオーーーー


 パシッ

タクミ「えっ」

タクミ「なんで、あんたがここに……」

カムイ「やっと、届いた……」

 チャキッ

カムイ「はあああっ」ドスッ

 ガキィン ギイイイイィッ

カムイ「止まってください!!!!!」

 ギギギギィ

 ブチッ バシュッ
 ビチャッ

 ガシュンッ

 ポタタタタッ

カムイ「ははっ、何とかなるものですね……」

タクミ「……」

カムイ「大丈夫ですか、タクミさん……」

タクミ「どうして、こんなことをするんだよ……」

カムイ「タクミさんあまり動かないでください。腕がとても痛いんですから……落ちてしまいますよ」

タクミ「何が痛いからだよ……こんなことして、僕は敵だよ。あんたを殺そうとしてきた、なのにどうして……」

カムイ「言ったじゃないですか。あなたから怨みを果たす機会を奪わせてもらうって……だから、もうタクミさんから奪うものなんて何もありません。もう終わったんです」 

タクミ「だからって、なんで助けるんだ。勝手に落ちて死にに行ったんだ。なら、こんなことしてまで助ける必要なんて……」

カムイ「……タクミさんに死んでもらいたくなかったからですよ」

タクミ「馬鹿だよ、あんたは。一歩間違えたら、死んでいたじゃないか。戦いに勝ったのに、その相手を助けるために命を掛けるなんて。僕が後々あんたを殺すことだってあり得るっていうのに……」

カムイ「そうですね、それもあるかもしれません。でも私の理由は変わりません、私はあなたに生きていてほしいんです。タクミさんに……」

タクミ「……だから、なんでそう……うぐっ……」

カムイ「腕を貸してください。私の首に回して、はい……。これでしばらくは大丈夫ですよ。足場がある場所で止まって助かりました」

 ドクンドクン

カムイ「タクミさんの心臓の音、とても心地良いです」

タクミ「なにをいってんだよ、こんな時に」

カムイ「こんなときだからですよ……。今は私に任せてください、もうすぐ助けが来てくれますから、少しだけおねえちゃんでいさせてください……」

タクミ「……そんなのごめんだよ……。でも、今だけは……あんたに任せるからね……」

カムイ「はい……」

タクミ「……」

タクミ(……温かい……なんでこんなに温かいんだよ……)

タクミ(くそ……くそ……)

 ギュッ

(僕の負けだ……。姉さん……)

 第二十一章 おわり

○カムイの支援現在状況●

―対の存在―
アクアA
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)

―城塞の人々―
ギュンターB++
(恋愛小説の朗読を頼まれています) 
フェリシアB+
(カムイに従者として頼りにされたい)
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
フローラB
(すこしは他人に甘えてもいいんじゃないかと言われています)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)

―暗夜第一王子マークス―
ラズワルドA
(あなたを守るといわれています)
ピエリB
(弱点を見つけると息巻いています)
マークスB++
(何か兄らしいことをしたいと考えています)

―暗夜第二王子レオン―
オーディンB++
(二人で何かの名前を考えることになってます)
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)
レオンB+
(カムイに甘えてほしいと言われて、いろいろと考えています)

―暗夜第一王女カミラ―
ルーナA
(目を失ったことに関する話をしています)
カミラA
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ベルカC+
(イベントは起きてません)

―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼA
(昔、初めて出会った時のことについて話しています)
ハロルドB
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィB+
(一緒に訓練をしました)

―白夜第二王女サクラ―
サクラA
(カムイと二人きりの時間が欲しいと考えています)
ツバキB
(イベントは起きていません)
カザハナB
(イベントは起きていません)

―カムイに力を貸すもの―
シャーロッテA
(返り討ちにあっています)
スズカゼB
(おさわりの虜になったようです)
サイラスB+
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB+
(許されることとはどういうことなのかを考えています)
モズメC+→B NEW
(イベントは起きていません)
リンカB
(イベントは起きていません)
ブノワC+
(イベントは起きていません)
アシュラC+
(イベントは起きていません)
フランネルB+
(宝物を見せることになっています)

今日はここまでで

 さり気にカムイの胸に顔をうずめるタクミだった。

 なんか無駄に長くなり過ぎて申し訳ない。
 今年の本篇更新はここまでです。
 年明け、新しいスレを建てようと思います。
 
 24日にルーナピエリ
 25日にピエリリスで終わる感じです。

お疲れ様
タクミもようやくだなあ…ずっと追ってるから感無量というかなんというか
しかしこのスレのピエリとルーナ人気は異常だと思う(こなみ)

おつおつ
ヒノカか…

 ルーナ×ピエリ 番外

◇◆◇◆◇

 それはまさに唐突な出来事と言えた。雪が降り、目に見えて寒々しくなった暗夜王国、その王城たるクラーケンシュタイン、そこにルーナは呼び出されていた。
数日前に大規模なノスフェラトゥ討伐を最後に、今年の遠征予定は無い。また、ルーナが所属していた隊は全体から見ても抜きんでた成果を収めたこともあり、年明けまでの休暇を頂いていたのである。
 ルーナにはしたいことがあった。 だからその準備を始めようと決めていた。しかし、その翌日朝に現れた伝令から城に来るように急かされ、内心気分は傾いている。
 大きな扉を開き中央廊下を直進して、マークスの執務室にたどり着く。
 予定に水を差されたのだから、何かしら大事な要件なのだろう。そうでなければ文句の一つも言ってやるわと意気込んで扉を開ける。
 大量の書類、それらがきちんと整理整頓されて置かれている。ルーナの部屋とは大違いに整ったその部屋の中央にマークスはいた。

「むっ、ルーナか。よく来てくれた。すまないな、お前には休みを出したというのに」
「別にいいわよ。むしろ、休みを無くしてまで呼ばれたわけが聞きたいんだけど」

 世間話などは良いからさっさと本題に入ってほしいと、ルーナは捲し立てる。その語尾に感じ取れる威圧にも似たもの、とても王に向けるものではないが、そういった遠慮なく言ってくるところをマークスは認めていた。認めていなければ多分、いや絶対にルーナはここにいられなかっただろう。

「ああ、そのことなのだが、先日昔の文献を漁っていたらこのような物が出てきた」

 そういってマークスが静かに本を手渡してくる。かなり古い本で年号を見る限りガロンさえまだ生まれていなかった頃のものらしい。
 その本の読んでもらいたいと思われる場所には帯があり、それをルーナは捲る。捲ると何やら昔に描かれたであろう絵画の写しがあった。
 初老の男の絵だ。口に蓄えた髭、どこか優しい表情もあり、パッと見て人当たりは良さそうな男。それだけなら何も気にしないのであるが、ルーナもさすがにその絵の意味不明さに首を傾げた。

 その初老の男は何から何まで赤いのだ。帽子も服も何から何まで赤い、こんな服で戦場を歩いていたら、すぐに的にされるのではないか思えるほどに真っ赤である。赤い甲冑ならば百歩譲る。しかしどう見ても布細工で戦う風貌にも思えない。背中に背負っている白い袋に武器があるのかと思ったが、清潔感溢れる着色が成されていて、とてもそういった武器の類が入っているようには見えなかった。
 ルーナはその絵を丹念に見た。だが、結果的に何もわからなかった。わからなければ質問する以外に道はないと顔を上げる。

「えっと、マークス様。これってなんなの?」
「ああ、その昔暗夜に存在していたというある集団の絵だ。話によると、毎年の年末にそのような格好をして街をうろついていたらしい。諸説にはこれを退治しようとした者たちもいたと聞く」

 もう一度その者たちを見る。
 年末、雪降る街を赤い服を着た謎の集団が闊歩する。考えただけでも恐ろしいことだ、これを退治しようとした者たちの意思、わからないわけでもなかった。
 しかし、それと呼び出されたことに何の関係があるのか、ルーナには皆目見当がつかない。まさかだと思うが、これの目撃情報があったのか。ノスフェラトゥを大量討伐している隙を突いて暗夜王国内にこんな奴らが現れた、そういうことなら非番の自身に声が掛かったのも頷ける。

「なるほどね、こういう格好してるやつを片っ端から捕まえろってことでしょ? あたしがすぐに全員捕まえてあげるんだから。それでそいつらは何処にいるの? 当然、大体の目星はついてるんでしょ?」

 ルーナは熱意に燃えていた。それもそうだろう、彼女にはやらなくてはいけないことがあるのだ、それを考えたらこんな仕事さっさと終わらせるに限る。それで済むものだと思っていた。
 だからである、一向にマークスが頷かないことに何やら嫌なものを感じた。

「あのー、マークス様」
「ルーナ、残念だがそういった仕事ではない。ルーナに来てもらったのは闘ってもらうためではないのだ」
「じゃあ、何のためにあたしは呼ばれたわけ?」

 ルーナの質問にマークスは一度下を見て、そしてゆっくりと顔を上げたのだった。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

12月の24日というのはただの平日である。
その日が来たからと言って、仕事が休みになるわけでもないし、ノスフェラトゥが大量に発生するといったことが起こるわけでもない。
 朝から寒さに震えながらも、人々は己の生活をいつも通りに始める。そんな普通の日なのである。そんな普通の日、朝から暗夜王国の各地で不思議な出来事が起きていた。
 それを見た住民は口々に言う。何が始まるのか?と。
 多くの住民がその様子を眺める中、ルーナはいつも通り偉そうにも不機嫌そうにも見える顔で、用意された箱の中身を逐一確認する作業を進める。
 今日は雪がまだ降り始めていないこともあって、作業は捗っている。しかし、彼女の心中はとてつもない大吹雪であった。

「なんでこんな格好しなくちゃいけないのよ」

 ルーナは自身の格好に視線を下ろして悪態を吐く。
 全身真っ赤の服装、自身の髪の色よりもさらに赤いその服装にため息が止まらない。あの本に描かれていた集団と同じ格好をしている。唯一ちがうとすれば下が白いふわふわが付いたスカートなことくらいだろう。

「なにが、ルーナになら任せられる!よ。っていうか、なんで男の連中はズボンなのに女はスカートなわけ?」

 スカートの発案者はマークスだった。そしてこの企画もマークスが思いついたもので、その理由は例の集団が何を行っていたかに起因する。

 例の赤い集団はこの時期、すべての人に平等に資源を惜しみなく渡していたのだそうだ。それは貴族であろうと貧困街の者たちであろうと平等に、である。つまり赤服の彼らは良いことをしていたのだという。だからマークスは思ったのだ。1年の終わり、そういった催しがあってもよいではないかと。その結果、この催しが企画され実行されるに至った。
 そしてマークスは赤が似合うだろう人物を考え、その人物としてルーナが思い浮かんだのだという。そう、完全に巻き込まれただけであった。
 白夜から取り寄せた薄い布生地のおかげで生足は防げているものの、この格好は何とも言えないものがあった。多くの男性たちはマークス王の趣味に涙を流していたが、女性たちからの視線はいささか冷たいものである。しかもその冷たい視線は一緒に仕事をする男たちに向けられていることから、マークス王の狡猾さが伺えた。

「……はぁ」

 もう始まってしまったからにはしょうがないと思いながら、ルーナは個人的に持ってきた箱に手を伸ばして開ける。
 中身を確認して、またため息を漏らしてそれを閉じると顔を上げた。時間的に間に合うかどうかわからないこともあって、その焦りが心の中で猛吹雪になっている。

「仕事終わったら、早く完成させないと……」
「何を完成させるの?」

 突然聞こえた声にルーナは驚いて振り返った。

「うわっ、ピ、ピエリ。いきなりなによ!!!」
「ん、ルーナどうしたの? 箱の中、何か変な物でも入ってるの?」

 ルーナが閉じた箱を指差すピエリがそこにいた。同じように赤い上着に赤いスカート、薄地の赤い靴下、頭に乗せた赤い帽子は彼女がピョンピョンと動く度に軽やかに揺れる。どう見ても楽しんでいる子供そのもので、その能天気さをルーナはとてもうらやましく思う。

「ちょっと、一応仕事なんだから、ちゃんとしなさいよ」
「わかってるの。えへへ、この服ピエリ好きなの上も下も赤くてとってもきれいでとってもカッコいいのよ」
「はいはい、くるくる回るの止めなさい。スカートの中見られちゃうでしょ」
「別に減るものじゃないと思うの」
「女として最低限の配慮くらいしなさいって言ってるの」
「はーい、わかったのー」

 はしゃぐのを止めたけれど、ピエリは終始ニコニコと笑っていた。ニコニコと笑っているけど、歯が顔をのぞかせているその笑顔は果たしてこれからすることに向いているのかと言われると疑問が浮かぶ。共に剣を振るっているルーナから見て、その笑顔は敵を殺しているときによく見る顔だからだ。子供が見たら脱兎のごとく逃げ出すかもしれない。

「大丈夫かしら?」
「ルーナ、何が大丈夫なの? ピエリにちゃんと教えるの」
「別に何でもないわ。それよりもあたしたちの場所決まってるんだから、さっさと行くわよ」

 どうにかこのけったいな格好への羞恥心を消し去って、ルーナはようやく出発の準備を整える。白夜の職人がこの人のために組み上げた特注のソリに配布するケーキが入った箱を丁寧に入れていく。戦争が終わってから行われる大々的な行事ということもあって、その気合の入り方はすさまじいものだ。なにせ配布するケーキの箱には氷の魔術が掛けられており、明後日くらいまでなら保つことが出来るという配慮までなされている。正直、少々やりすぎだった。

 ルーナが属するグループが行うのはこの中央広場周辺、すでに人々が垣根のよう集まり様子を伺っていた。誰もがあの箱の中身が気になっているといった具合である。

「箱の中身、みんな気になってるみたいなの」
「話を聞いてなかったら、気になるわ。それにあたしたち、絶対怪しい集団にしか見えてないだろうし」
「えへへ、でも、みんな喜んでくれたらうれしいの」
「まぁ、貰って悪いものじゃないとは思うわ。このケーキの監修って、ピエリがしたんでしょ?」
「そうなの! マークス様からピエリにしかできないって言われたの。ピエリのケーキは絶品だから、皆美味しいって言ってくれるはずなのよ。だから残した人はえいっしちゃうの」

 手をシュッシュと動かしながらピエリはそう言う。これは冗談ではない、真面目にそうするつもりだということをルーナは理解していた。ピエリは子供なのだ。見た目は成長した大人に見えても、さっきの笑みから見える無邪気さには子供特有の軽さがあったように、やはり子供という印象をルーナは持ち続けている。

「はいはい、でもその場で食べろなんて言っちゃだめだからね。やっぱり家に帰ってから食べたいはずだから」

 そんな釘を刺して、ルーナはソリを引く馬の背中を撫でると歩き始める。
 ルーナとピエリの担当場所はそれぞれ別々なので、一度ここで別れることになった。

「それじゃ、終わったらここでね?」
「うん、わかったのー。ピエリが最初に来て待ってるのよ」
「ふふん、あたしの方が先に終わらせて先に待っててあげるんだから、負けるつもりないわよ」
「えへへ。ならピエリも負けないように頑張るのよ」

 当たり触りの無い返答を貰い、ルーナは歩み始めた。その手に個人的な思いを込めた箱も持って、その中身を仕事の合間に完成させるために。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ケーキの配布は順調に進み、残りの数もあとわずかほどになる。
 ピエリ監修ベリーケーキも残りが少なくなってくるにつれて、イベントそのものの終わりが近いことがわかり始めてくる。

「しょっと、あと少しだからがんばらないとね」

 多分交代はないだろうという時間、ルーナはお渡し会場に設営された天幕の中でいそいそとしたかった作業を始める。朝確認した時に比べれば、完成まであと少しと言ったところで、ルーナは声を掛けられるまでせっせと作業を続けることにする。
 その手元にあるのはかなり長めのマフラーだ。寒い季節、特に年中寒い場所が存在する暗夜領では重宝するものだが、すこしだけそれは歪な物でもあった。形になっているしほつれてはいないのだが、全体的にどこか不格好に見える。だからこそ手作り感が半端なかった。

(……どうしよう、想像してたのと全然違う……)

 ルーナの中の想像では綺麗に分かれた灰色と白が均等の二層を描いている物であったが、現在出来上がっているのは均等と呼べるものではなかった。灰色のエリアに白が混じりこんでいたり、あべこべになっていたりとルーナが当初思い描いていたものとは似ても似つかぬものである

(……どうしよう。これはちょっとあれよね……)

 無地の物とはいざ知らず、二色に挑戦した故だった。
 でも、ここまできてやり直すというわけにもいかない、なにせ今日は12月24日で、あげる相手の誕生日なのだから。

(……はぁ、よく考えてみると、おかしい話よね。世界救ってさっさと帰るはずだったのに、こんな風に残ってプレゼント作ってるなんて……)

 元々この世界の住民じゃないこともあった。だから関係なんて言うのは最低限で済ませようと考えてきたっていうのに、ルーナは多くのつながりを持っていた。主のカミラとも相棒のベルカもそうだ。思った以上に、あの世界からここにやってきた者たちは、人との繋がりを捨てきれない。だからその分、割り切ることが難しくなる。この世界との別れを。
 それを考えたら、縫い上げていく手が少しだけ遅くなったのを感じた。

(はぁ、ダメね……。こういう時にどうしてそういうこと考えちゃうかな)

 いつか別れが来るとして、それがいつになるのかもわからないことはルーナにもわかっている。ハイドラから受けた加護も無くなった今、どのようにこの世界から消えていくのか想像は出来なかった。

(……やだなぁ。そういうの……)

 まるで自身の母親のようだと思った。
 何も言わずにどこかへと行って帰ってこなかった母親と同じ、そんな藪は踏みたくなかった。だけど、何れその日がやってくる。
 異物は取り除かれるべきで、その摘みだされる方法なんてものを選べるわけはないからとルーナは手の動きを速めていく。考えると嫌なスパイラルに嵌っていく気がしたからだ。
 今はこれだけをやっていればいいと身を引き締めて、残り僅かな作業に没頭し始めてみたけど、最後の場所だけが何だか縫えない。これを縫い終えたら消えてしまうような錯覚に陥って、気が付くと指が止まりそこから動けなくなっていた。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「ルーナ、遅かったの。ピエリの勝ちなのよ」

 蟠りが残った足で撤収を終えて戻ってくるとすぐにルーナを見つけてピエリが駆け寄ってくる。ルーナよりも早く撤収準備を終え、広場で待っていたピエリは満足そうに駆け寄り、勝負が自分の勝ちだと嬉しそうに告げた。

「うん、そうね」
 だが、それに対して何か言い返す気力もなかったルーナは素っ気なく言葉を返すしかない、それにピエリの表情が神妙なものになる。

「ルーナどうしたの? 何か変な物でも拾って食べたの?」
「そんなんじゃないわよ……」
「嘘なの、いつもなら悔しそうな顔をするの。それにぴへえええええんって嘘泣きもしてないのよ」
「さすがにしないわよ!!!!」

 思わず大きな声を上げると、ピエリは朝と同じような笑みを浮かべていた。すごく安心したように。

「えへへ、元気出たみたいなの」
「べ、別に元から元気よ。そう、元気だから……」
「変なルーナなの」
「で、なんであんた着替えてないのよ。その格好じゃ寒いでしょ。雪が降ってくる前に戻らないと、風邪引いちゃうから」
「確かに少しだけ寒いの。でもこの服、赤くてとってもいいの。だからもらって帰ることにしたの。ルーナも持って帰るの、持って帰ってこの格好のままパーティするのよ」

 そうしてピエリはてくてくと先を歩み始める。ルーナが付いてきてくれると確信して後ろを振り返ることもなく。そこには幼い思考特有の信頼があった。きちんと見てくれているという無邪気な思考、それをルーナは裏切れなかった。着替える事無くピエリの後を追いかけて、横に並ぶとピエリは嬉しそうに肩を寄せた。
 二人で歩く街路はどこか寒々しいけど、多くの家々に灯る明かりが照らしてくれているから視覚的には暖かかった。
その暖かさと比例するように隣にあるこの世界の繋がりが近くにあればあるほど、不安がルーナを包み込んでいく。考えなければいいことを考えてしまったと後悔しても、そう簡単に拭えない、それを拭うようにピエリの肩に肩を摺り寄せた。

「はぁ、息が真っ白なの。はぁ~はぁ~、えへへ、見てなの。ピエリの息、モコモコ雲みたいで面白いの」
「そうね……」

 素っ気ない返事をしてルーナは思考の渦に落ちていく。
 手に握った小さな箱の中にはあと少しで完成するプレゼントが入っている。今日には完成させる予定だっただけに何とも言えない気持ちになっていた。
 気分が浮かない、あれほどやる気になっていたのに、完成させたいという気がなくなっていく。こういう風に何か物事に参加していると……この世界とのつながりを強く感じてしまう。それがいつか来る終わりの到来に震えているのだと、ルーナは百も承知だった。

「ぶー、ルーナ、やっぱりおかしいの」
「そんなこと……」
「だってルーナ、ピエリの話真面目に聞いてないの。何か考え事してるの……。何か困ってるなら話をしてほしいのよ。ピエリ、ルーナのお話なら聞いてあげられるの」

 ピエリが右腕に絡みついて上目遣いに聞いてくる。どこでそういうのを覚えるのかわからないけど、同性相手に使うものじゃないとルーナは内心笑った。
 心の中で笑顔を作っていると暖かいものがこみ上げてくる気がした。多分、親愛というものだとルーナは思う。同じように髪を二つに結んでいること、強くて可愛いところ、そして母親にある種の執着心を持っていること……
 前、母親のことでルーナはピエリを支えた。ピエリが至ろうとしている理想の人、それにどうやって向かおうとしているのか。人を殺し、血を浴びることで、ピエリはどんどん母親に近づいている気になっていた。綺麗になっているという実感を、ピエリは死んだときの母親の姿から得ていた。ピエリにとって綺麗な女性というのは、この後にも先にも母親しかいない。だから、ピエリは最後血に塗れて死ぬ道を選ぶ気がしたのだ。
 あの日、血まみれのままにキッチンに立つピエリをルーナは思い出す。お母さんになれた気がしたのかもしれない。でも、その時にルーナはその道からピエリを引きずり出すことに決めた。

 ルーナは知っているから、親は誰しも子供に死んでもらいたくなどないのだと。少なくとも、ピエリはその中に入っているのだと。一緒にお出かけして服を買って、綺麗になる方法を色々と考えて、そして気づけばルーナとピエリの距離はこれほどに近くなっていた。
 だから、その上目遣いの視線も含めてピエリに負けてしまったのかもしれない。ルーナの足は止まってしまった。

「……ねぇ、ピエリ」

 少しだけ息を吸い込んだ。吸い込んで、その言葉を口にする。遅くても早くても、それはいつかやってくるのなら、先に伝えておこうと思った。だって、こうしてピエリが腕を組んでくれているのだから、ルーナを逃がさないように腕はがっちりと抑えられている。
 多分、今ここで消えてなくなるなんて意地悪はしないと思う。なにせ今日はピエリの誕生日、その当日に消えるというのは出来すぎている。そう思うと今が一番いい機会だと、心の蓋が開いた気がした。

「あたしがいつか……どこか遠いところに行っちゃうって言ったら、どうする?」

 出てきた声はどこか震えていた。寒さの所為じゃなかった、暗い世界を彩る民家の明かりも、今はどこか寂し気で、それを聞いたピエリの顔からは笑顔が確かに消えた。

「……ルーナ、どこかに行っちゃうの?」
「うん。多分……。ちがうわ、絶対にどこかに行っちゃう。それも凄く遠いところに」

 一度希望的なことを言おうとした。多分とか、もしもの話とか。冗談っぽくしようとして、でもそういう茶化しはしたくなかった。もう決まっている事、誤魔化すにはピエリとの絆は強すぎたから。それがほつれてしまうかもしれない。
告げてからそう考え、怯えて顔を下ろすと真剣なピエリがそこにいた。子供っぽいその顔は、今は真摯に向き合う瞳を携えている。

「ピエリ……?」
「大丈夫なの。ルーナ、心配しないでなの」

 腕を抱く力がさらに増した気がした。赤と赤が重なって混じり合うように、ピエリの髪にルーナの髪が触れる。毛先が静かにピエリの頬に触れると、どこかくすぐったそうに笑顔が戻り始める。
 だから、こうやって覚悟を決めて口にしたルーナの方が腑に落ちないという顔をした。

「どうして、そういう顔できるのよ」
「そういう顔ってどういう顔なの?」
「その、別に気にしてないみたいな顔よ。あたしがいなくなっても、寂しくないように見えるっていうか……その……つまりそういうことよ」
「どういうことかわからないの。でも、ルーナがどこかに行っちゃったら、ピエリとっても寂しいのよ」
「言葉と顔が合ってないって言ってるのよ。寂しいんだったら、そういう…顔しなさいよ……」
「……だって、今ルーナはピエリの隣にいるの……。こうやって――」

 腕から離れたピエリがルーナを正面から抱きしめて胸に耳を当てる。突然の行動にルーナは言葉を失っていたが、それに構わずピエリは言葉を紡いでいく。

「抱きしめてるからわかるの。お胸の音もちゃんと聞こえる。ルーナの匂いもする、ちゃんと目の前にいるのに悲しむことなんてできないの」
「でも、いつかいなくなっちゃうって言ってるの、わからないの?」
「ピエリ、ルーナに会ってお母さんのこと色々思い出せたの。お母さんは、ピエリの中にいてくれてるの。でも、それはちゃんとピエリと一緒にいてくれたからなの。いつかルーナがどこかに行っちゃうのは寂しいの。本当はね泣きたいの。でもそしたらルーナ、大泣きしちゃうの」
「し、しないわよ!!!」

 そう言いながらも、すでに色々とルーナは限界だった。目尻に溜まった物に風が当る度に冷たい鋭いものを感じる。でも、泣いて溜まるかと無理に踏んばった。零したくないと頑張る、でも、それを見ているピエリはそれを簡単に壊しにやってきた。

「ピエリと同じでルーナも本当は泣き虫さんなの。だから、そうならないようにしたいの。ピエリ、ルーナと過ごす思い出まだまだほしいの。いつかわからないのに悲しむ思い出なんて欲しくないのよ。ルーナとの思い出は一緒に過ごした思い出だけ欲しいの。だから、ルーナ、泣いちゃいやなの」

 そろそろと手が伸び、ルーナの目尻に優しく触れると溜まっていた雫が零れた。

「ルーナもピエリみたいに笑うの。いっぱい楽しいことしてその日まで過ごすの。いつか分からないことなんて、気にしないの。ピエリが一緒にその日までいてあげるから、心配しないでなの」

 咄嗟にルーナは両目を拭った。零れた雫に合わせておくから流れてきた物を隠すために、ここまでさんざん考えてきたというのに、ピエリはルーナの心配を全部壊していった。

 こんなの反則だ。
 あたし、すごくかっこ悪いじゃないの。
 思ったことを頭にのせても、ピエリに本当の意味で慰められてしまったことは違いなくて、その無垢な笑顔をもう一度見るために何度も目を拭った。

「ルーナ、目が真っ赤かなの」
「だ、誰のせいだと思ってんのよ」
「泣いたルーナの所為なの。ピエリの所為じゃないの。ピエリの所為だっていうなら、ピエリを捕まえてみせるの」

 そう言ってピエリは抱き着いていた腕を離れて走り始める。
 ルーナはそれを追いかけ始めた。
 雪の積もった街路に響き渡る二人の足音。誰もいないように感じてしまう静かな世界の中で、確かにルーナの視線にピエリの姿はあった。
 その視線を隠すように雪がチラつき始める。白い白い雪、淡い雪も強さを増せば、先を見ることが出来なくなる。いずれ来る未来を暗示するようにも思えるそれ、でもルーナにはもう関係なかった。怖がる必要はもうないのだ。

(なら、別にフライングしてもいいわよね……)

 そう考えると、ルーナは手に持っていた箱の鍵を開ける。中に入っていたのはあとわずかで完成という形のマフラー、それを構うことなく手に取ってピエリとの距離を詰める。

 足の速さなら負ける気はなかった。
 みるみる距離は狭まっていく。あと数歩というところでピエリの方がバテ始め、その肩に手が触れた。

「うーーっ、掴まっちゃったの」
「ええ、捕まえたわよ。それ!!!」
「わふっ、これ……なんなの?」

 首に巻かれたそれを見てピエリは目をぱちくりさせる。ルーナは明後日の方角を見ながら、顔を少し赤らめた。

「誕生日プレゼントよ。まぁ、まだ出来上がってないから。その、家に帰るまでお試しっていうことで、ほら、雪降ってきたし……」

 白と灰色、あべこべ模様の長いそれをピエリは不思議そうに眺めて、そして垂れている片方を手にするとルーナの首にも掛けた。

「ちょっと、なに?」
「ルーナもつけるの。こうすればとってもあったかいの」
「ちょっと、これはあんたへのプレゼントなんだから」
「ピエリのプレゼントなら、ピエリが好きに使わせてもらうの。だからルーナも一緒に巻かれるのよ。これであったかいでしょ?」

 押し切られる形で首にマフラーが巻かれ二人の距離が更に近くなると、ルーナの顔は真っ赤に燃えた。

「ふふっ、ルーナのお顔真っ赤なの。お顔でスリスリしてあげるの」
「ふにゃっ、やめ、ちょ、はずかしいっ、んだから、もうっ……」

 猫のように頬ずりをするピエリに何を言っても聞かないと諦めて、ルーナはゆっくりと足を進め始める。目と鼻の先にあるピエリ、マフラーで繋がった互いの体はさらに寄り添うように腕を絡め合う。いずれこれも解かれていくけど、今はここで繋げていることが重要だった。

「なんだか恋人同士みたいなの」
「恋人ねぇ……。正直、相手が子供っぽいわ……
「ぶーっ、ルーナの方が子供っぽいの」
「ピエリに言われたくないんだけど!?」

 言い合いが始まっても腕の力が緩むことはなかった。
 むしろ、言い合いが続けば続くほどに、その力は増していく。
 ルーナは離さないように、ピエリはどこかに行かないように。
 互いが互いの繋がりを確かなものにするように、二人は道を歩いていく。
 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 いずれ来るかもしれない、避けられない別れを知りながらも。
 その足は確かに、その未来に向かって進んでいく。
 一緒にいられる時間を多く続けるために……




 ルーナピエリ番外 おわり

 午前中はここまで

 ピエリ、誕生日おめでとう!

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 久々に早く起きました。
 時折の休みに主人が帰ってくるこの場所に未だに住んでいる私が、こんなに朝早く起きるのは久しぶりの事で、こうして目を覚ませられるものなんだなと思った。
 寝返りで乱れた髪を櫛で梳かし着馴れた服ではなく、今日のために準備してもらったディアンドルに袖を通す。
 いつもと服が違っているのは特別なお仕事をすることになっているからで、この仕事を引き受けることになったのは私自身に原因があったります。

「うん、これで良さそうですね」

 衣装鏡に映ったいつもと違う服装を確認して、一度くるりとその場で一回転。ふわりとスカートが浮く、真上から見れば綺麗な円を描いているのかなって思いながら、最後に髪の準備に取り掛かる。
 主であるカムイ様に貰ったカチーフではなく、ある子に前貰ったリボンで髪を纏め、扉を開いて廊下に出て窓から外を見る。
 今日の空はとても澄んでいて、そんならを見上げながら私は今日一日の役目を考える。

(はぁ……、確かに誕生日を知らなくてプレゼントを用意していなかった私が悪いとは思いますけど……)

 城塞を出て厩舎小屋に向かい、前に比べて少なくなった馬の一頭借りて寒い世界に飛び出す。寒いけど、あの子は遅れると直ぐに癇癪を起こす。それで時間が遅れたりすると私の所為にされるので、それは出来れば回避したかった。

「ふふっ」

 でも、癇癪を起している姿を思い浮かべて笑ってしまうのは、なんだかんだで私が楽しみにしていることの証明で、気づけば手綱を力強く持って速度を上げていた。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 その子は貴族のお嬢様で、大きな屋敷を持っている。その屋敷も今日だけは騒がしく、多くの装飾が施されていていつもとはまるで違う雰囲気を醸し出していた。
 馬を引き連れて私が至ると、門の前で待機している知り合いのメイドさんと目が合う。合ったと共にすぐさま深々とお辞儀されたので少しだけ戸惑った。いつもなら軽い会釈くらいなのだが、今日に限って来賓にする深々としたものだからだ。

「おはようございます、リリス様」
「そんな様なんて大丈夫ですよ。いつもリリスって呼んでくれてるじゃないですか」
「そうですね。でも、本日のリリス様は特別なお客様ですから、ここは少々冷えます。ご案内いたしますので、どうぞこちらへ」

 そう促されて、私は色々と準備の進んでいる館の中を進んでいく、外で立っていたのは私を待つためのようで門が閉まる音を遠くに聞いた。作業している人々はそれぞれの従事服に身を包み、その作業に没頭している姿はどこか圧巻で、一人指定があったとはいえディアンドルであることに少しだけ浮いていることを自覚する。

「ふふっ、お嬢様からご指定があったそうですね」
「はい、私もできればいつもの服装が良かったんですけど……その、誕生日プレゼントを、用意し忘れて……」
「そうだったのですか? お嬢様とリリス様は戦争の頃からのお知合いのはずでは?」
「……その、誕生日に関しては全く知らなかったんです。戦争が終わった時は出会って半年以上経過してましたから。それに――」

 私自身そういうのがわかりませんからと告げようとして、思わず口を閉じた。

「それに?」
「その、知り合って長く時間が経ってから聞くのって恥ずかしいじゃないですか……」
「ふふっ、そういうことですか。でも、そんなあなたのおかげでお嬢様は――」

 と、メイドさんも何かを言い掛けて口を閉ざすと、にっこりと笑みを浮かべた。この自分だけ知っていることを、渦中の相手に見せつけている顔、私はあまり嫌いじゃなかった。だけど、やっぱり気になる。

「私のおかげって一体……」
「ごめんなさい、これ以上は言えません」

 そう言って話を切り上げて、吹き抜けのホールの階段をのぼり、来賓室に到着する。いつも以上に綺麗になっているその部屋を一望してからソファに促され腰を下ろす。それに合わせて、紅茶が準備され私の前に差し出された。シナモンが加わったその紅茶の香りが鼻を擽る。

「では、お嬢様をお呼びいたしますので。ここでお待ちくださいませ」

 その言葉に深々としたお辞儀をして彼女が退室し、それと同時に紅茶を口にしてすぐに考え込む。

 今さっきの話、私が誕生日を知らなかったことであの子が得をするという意味だとは思うけど、一体何の得をするのでしょうか?

「……わかりません。そもそも、知らなかったことって結構失礼なことですよね……」

 それなりに交友がある人が自身の誕生日を覚えていなかったらと考えると、とても悲しいとは思う。なにせ、少しは期待したいものだと思うから、小さくてもいいからお祝いをしてもらいたいと思うのが、誕生日というものだろう。

「うーん、まったくわかりません」

 紅茶をもう一口、口の中に広がる味を確認しながら、再び考える。
 しかし、考えて考えてもまったく答えは出てこない。私自身が誕生日というものを知らない所為もしれなかったけど。
 ただ――

「確かにすごく嬉しそうでしたね……」

 記憶に思い出せる、今日のことを告げてきたあの子はとても子供のようにうれしそうな顔をしていた気がする。
 もう一口紅茶を啜ったところで、結構な時間が経っていることに気が付いて、私は腰を上げた。もう紅茶も空っぽになってしまって、何か問題でも起きたのではないかと来賓室から外に出る。
 あの子の部屋は二階の奥だったと廊下を進んでいく、一度角を曲がった突き当りにある部屋がその部屋だった。だから角を曲がってドアの前で待機するメイド数名を見て、どうやら何かあったようだと理解する。
 私の登場にメイドの方々は照らし合わすように互いにアイコンタクトを取る。そして私に状況を話し始めた。
 それに呆れて息が漏れた。本当の手筈なら、来賓室にあの子がやってきて始まることになっていたけど、このままメイドの方々の手を煩わせるのもあれだと思うと、すぐに口が動いた。

「わかりました。あとは私に任せてください」
「いいんですか?」
「はい、それに、今日は元々そういう日ですから。皆さんにも担当されていることがあると思いますし……」

 そう私は告げる。告げたけど、一応私はお客様的な立場なわけで、すぐに了承するとは――

「ではリリス様、あとはお願いいたします」

 思えなかったのに、すぐに私の提案を受け入れてそそくさと去って行ってしまう。これは信頼されていると取ることにして、私は扉をノックした。

『まだ、まだなの。もう少し、もう少しなの―』

 中から可愛らしい声が聞こえる。耳を澄ませば衣擦れの音もするし、何やらパタパタと歩く音もした。朝からそんなに張り切る必要はないと思うんですが、やっぱり楽しみにしているということなんでしょう。少しだけ笑みをこぼして、私は扉を静かに開ける。中には下着姿で衣装鏡の前でてんやわんやしている子がいた。

「……まだ入って来ちゃダメなの、お洋服選び終わってないのよ」

 鏡に一瞬だけ映った私を確認して、その子はまた試着作業に戻る。
 パーティーの本番は夜だけど、昼間から来賓される人もいる。その時の服を選んでいるみたいだけど、全然決まる気配はなかった。
 だからメイドの方たちは困っていたんですね。まったく本当に子供なんだからと思いながら、私はそこの横に立った。
 私が横に至ったところで、彼女がこちらに視線を向ける。まだ結んでいない髪は私より少しだけ薄い青色で、その毛先にはピンクでとても奇抜で、初めて見た人でも覚えるような色している。そして何よりも男性なら目を釘付けにされそうな大きな胸があって、下着姿なのにそれを隠す事はしてなかった。

「下着姿はよくないですよ」
「なら、リリスが着付けしてほしいの。今日のリリスはピエリのメイドなのよ」

 そう堂々と彼女が言ってきて、その自信満々の顔にクスリと笑うと、私はその解れている止め紐を手に取った。

「はい、それがピエリさんのお望みでしたら……」

 今日の私はピエリさんの専属メイド、それがピエリさんの誕生日を知らなかった私がするべきことで、同時に誕生日プレゼントになるらしい。だから今日一日はピエリさんに振り回されるんだろうなと、内心苦笑した。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「そろそろ参加される方々がお見えになる時間でしょうか」
「多分そうなの。リリスは着付けお上手なの」
「ふふっ、ありがとうございます。でも、ピエリさんのドレスは綺麗な見た目ですけど、着付けの方法がシンプルですからね」
「そうなの?」
「はい、カムイ様のあの衣装はすごく時間が掛かりますから。他にもカミラ様やエリーゼ様のドレスなんかも着付けが難しいものばかりなので、こういうシンプルなのは結構久しぶりです」

 四着目の淡いピンク色のドレスの着付けを終えて、私は一息ついた。
 ピエリさんの持っているドレスの数はなんだかんだお嬢様ということもあってかなりの量だったりする。さっきまで選んでいたこともあって数は少なくなっているけど、あと六着はピエリさんに着られるのを待っている気がした。

「リリス、どう? ピエリ可愛くなれてるの?」
「そうですね……」

 パーティーということもあって、いつも二つ結びにしている髪は頭の上に纏める形になっている。よく料理をしている時の格好だけれど、二つ結びの時に比べると大人っぽい雰囲気があるからドレスに合うと思った。

(まるでパイナップルみたいだなぁ、なんて言って怒られたことありましたね)

 初めてその髪形を見た時、そんなことがあったなって思いながらクスリと笑うと、その記憶の中と同じようにピエリさんがむくれる。

「ぶー、リリス笑ったの。そんなにおかしかったの?」
「あ、これは違います。あー、でも違わないかもしれません」

 むくれてプリプリと怒っていると髪がゆらゆらと揺れるから、さらにパイナップルっぽく見える。青い外見でも中は子供の夢が詰まっていると思うと、ピエリップルは甘酸っぱい果肉じゃなくて、甘くて蕩ける果肉が入っているのかななんて思った。

「うー、今日のリリスはピエリのメイドなの。だから、綺麗って聞かれたら綺麗って答えるの」
「はいはい、綺麗ですよー」
「今は可愛いか聞いてるの。リリス、ピエリの言ってくれたこと、覚えてないなんて酷いのよ」
「ふふっ、ごめんなさい。それでどうしますか、そろそろお時間ですし、あと一着、できても二着といったところですよ」

 それを聞いてピエリさんはうなり始めた。

 ピエリさんなりにこれだという服を選んでいるとは思う、すべてを着てから決めたいという思いはあるのだろうけど、やっぱり時間が押していた。選ばれた服のこの中で、一着だけが選ばれるとするなら、その服はすべての服の期待を背負っていくんだろう。正直、私はそういう立場に立つのは真っ平だなって正直に思った。
 そんなことを思った矢先――

「うー、リリスはどれがいいと思う、ちょっと選んでみてほしいの」

 ピエリさんがそんなことを言い出した。
 いやいや、今背負っていくのはまっぴらごめんと思ったばかりなのに。なんなんですか、その私が選んだ服にするという意味にも取れそうな提案は。心の中でも読んでいるのかという視線をピエリさんに向けるけど、彼女は何も悪びれた様子もなく、まだ選ばれていない残り六着の中から選ぶように聞いてくる。流石に辞退したかった。

「あ、あの、さすがに私が選ぶというのは……」
「ダメなの、ピエリが今日のリリスの服を決めてあげたから、今度はリリスがピエリに似合いそうな服を選ぶの。これは命令なのよ」

 えっへんと胸を張るピエリさん、どうやら選ばなければ話が進まないようだった。
 ピエリさんの期待するような瞳に晒されながら、私は六着のドレスに目を通していく。通していくけど、ピエリさんのイメージに合う服というのがあまり無かった。というよりもさっきまでの四着はそれなりにピエリさんだったけど、ここにある六着は私から見てピエリピエリしていない気がした。

「うーん」
「どうなの、リリスはどれがピエリに似合うと思うの?」
「その……」

 目線を六着以外の物へと向けていく、衣装棚には先ほどまで選定されていたけどここに並ぶことが叶わなかったものがいっぱい並んでいて、その中にある一着に視線が引かれる。多分、この色は最初の四着にあるものだと思う、だけど純粋さと雰囲気が違っていた。

 私の中にあるピエリさんのイメージは子供だった。自分よりも弱いものを殺していく残虐性は子供特有のものだし、あらゆる物事の受け止め方に遠慮がない子供そのものだから、それをイメージしていると純粋さというものを求めてしまう。
 だから、そのヒラヒラと揺れる白いレースの入った純白といっていいドレスがある意味私が抱くピエリさんのイメージそのもので、下着の黒は残虐性、上のドレスは物事に対して遠慮なしに対峙する姿勢と考えると、これかなと手を伸ばしていた。

「……これ、ですかね?」

 その白いドレスを見てピエリさんは無言になった。
 二つの瞳がゆったりとしたまま私を見ている。いい感触かなって思ったところで、その目がいぶかしげなものに変化した。相手に気を遣うことを知らない、思ったことをストレートに言ってくる私の中のピエリさんのイメージそのままに。

「それ、ピエリ全然違うって思ったの」
「そうですか。私の中のイメージだとこんな感じですから、ピエリさんは子供ですから」
「ピエリは子供じゃないの。立派な大人なのよ。お胸見るの、こんなに大きいのよ! それにカミラ様も言ってたの、大きな胸の膨らみは何でもできる証拠って、だからピエリはリリスよりも大人なの!」

 ドレスの上から胸を強調するように手に取ってゆさゆさとする。うん、全く持って子供で殿方が見たら目線に困る様な事だが、雰囲気を大事にする殿方からは情緒がないと鼻で笑われそう。実際私も後者だった。
 ドレスは脱がしていく過程で見える柔肌が良いと、社交界の場で話し合う男たちもいた。それには私も同意見だった。

「はいはい、ドレスに皺が寄っちゃいますから。ふふっ、どうやらピエリさんのお役に立てなかったみたいです」
「そうなの! リリス、こういうことはダメダメなのよ。この中から選んでほしかったのよ」
「ふふっ、そうでしたね。すみません、もう一度考えさせてください」

 そのドレスから手を離して再び六着に目を戻す。ならと残虐性が開花した後に現れる赤を選ぶ。人を殺した時に吹き出る色、ピエリさんにとっての幸福色、汚れていない白いピエリさんを汚していくだろう色。まるで血飛沫を受けたように赤が刺されているそのドレスを選んだ。

「えへへ、やっぱりこれなの。ピエリ血の色大好きなの」
「まぁ、やっぱりピエリさんと聞くと大抵はこのイメージを皆さん持ちますからね」
「でも、リリスは違ったのよ。ピエリ、白なんて似合わないの」
「これでピエリさんと一緒にいる時間、それなりに多いと思っていますし、信頼されてなかったら、こんな役目を与えられることはなかったと思いますから」

 それを聞いて、ピエリさんの顔が少しだけ赤くなった。
 純粋に照れているみたいで、その仕草はやはり子供っぽく何とも言えない可愛らしさがある。そして、それに反比例するように成長している体が不格好に思えて、空気を抜く様に私は小さく笑った。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「おおーっ、ピエリさん。いやいや、今年も一段とお美しくなられたことだ」
「ありがとうなの! 伯爵さんのおひげもこの前より、もっとキュートになってるの」
「ははっ、そう言われたくて朝から入念に仕上げたからね」
「えへへ、でもお腹大きくなってるの。太りすぎなのよ」
「これでも絞った方なのだぞ」
「まだすごく肉汁でそうなの。豚さんと間違えて輪切りにしちゃいそうなの」

 パーティーの来客に挨拶をするピエリさんの後ろで、私は直立不動のままワインを持って待機する。ピエリさんから誰かの場所に行くことはほとんどない、向こうからこちらにやってくるという形だ。
 ピエリさんの子供のような振る舞いを多くの人は知っている。お転婆だ、空気が読めない、ズコズコ言ってくるし、気に入らないことがあればすぐに泣き始めると、大人が一番対応したくないタイプであることは明白で、それを避けているのか話しかけてくる人はほとんどいなかった。
 先ほど豚さんと間違えてと言われた伯爵様は、毎年毎年参加していることもあって、すべて大らかに受け止めている。というか、話をしている間、すごくうれしそうにしていたから、多分至福の時間を味わっているのだと思った。

「では、私はお父様とお話をしてまいりますので、この辺で失礼いたしますぞ」
「うん、パーティー楽しんでってなの。中央の大きなケーキはピエリも頑張ったからぜひ食べてほしいのよ」
「おおっ、それはとても楽しみだ。では……」

 ルンルン気分で去っていく伯爵様を見届けてピエリさんが歩き始めると、私もその後を追って足を進めた。
 足を進めても、多くの人たちは挨拶をするが話しかけてきたりはしない。あの伯爵様の様な方は多くはいないのだということは理解できた。なんというか、祝ってはいるけど、少し寂しく感じる誕生日パーティーだと思った。
 だけど――

「ふふーん。えへへ」

 ピエリさんは思った以上に嬉しそうだった。多分、あの伯爵様は毎年行われているこの誕生日会で話しかけてくる数少ない人の一人なんだろう。それもあって気分が高揚していると考えれば筋が通った。
 接近してくる人がいないからスムーズに会場を移動できるのはいいことで、ピエリさんは中央の配膳テーブルが並ぶ場所にたどり着く。そこには今日のために用意された料理が大量に置かれていて、その中でひときわ目立つのが大きなケーキだった。多分、さっきの話に上がっていたケーキとはこれのことだと思った。

「リリス、ピエリも手伝ったケーキなのよ。美味しいベリーを入れたから最高の味に仕上がってるの」

 案の定、それをピエリさんは誇らしく私に見せつけてくる。これがピエリさんの魅力だと思う。自分のしたことに自身を持っていること、私はそんなに自信家じゃないから、そんな風に思うことなんてできない。

「ふふっ、ピエリさんは本当に料理が上手なんですね。私じゃとても作れませんから」
「リリスも練習すればできるようになるの。だから、ピエリのお料理いっぱい食べて、覚えるのよ」

 ピエリさんはケーキをカットして小皿の上に乗せると、私の方に向いてくる。そしてフォークで一口分掬って、あ~ん、と差し出してきた。

「ちょ、ピエリさんなにを……」
「早くぅ、リリス食べるのよ」
「これって、立場的に私がやるべきことなんじゃないんですか?」
「え、リリスもしてくれるの?」
「いえ、私だけがすれば――」
「リリス、ピエリの作ったケーキ食べたくないの? ひどい、ひどいの……ひっぐ」
「あー、食べたいです。すごく食べたい、あー、ピエリさんの作ったケーキ食べたいですねー」
「それじゃ、すぐに食べるの。はい、あーんなの!」

 満面の笑みで急かすピエリさん、周りメイドさんたちの視線が一斉に集まっている気がする。というか、仕事しないでいいんですかというくらいに皆が見ている気がした。
 だけど、このまま放置したらピエリさんがまた癇癪を起してしまうし、今日はピエリさんの誕生日なわけで私は覚悟を決める。

「あ、あーん」

 遠慮がちに口を開ける、スーッと入ってきたフォークとケーキが口に入るとベリーの酸味のと甘味が広がる。噛みしめる度にベリーの果肉が弾けて、口の中に広がるクリームの甘味が層になっていく。スポンジも程よい柔らかさと甘味で、口の中に広がる味をしつこくないものへと変えていく。極上ベリーケーキというだけあって、文句なしにおいしかった。

「ど、どうなの? おいしいの?」

 でも、なぜか聞いてくるピエリさんは少しだけ不安そうにしている。なんだか私の知らないピエリさんで、なんでだろうと思った。もっと自信満々においしい?って聞いてくれてもいいのになんて、思いながらすべてを味わって飲み込んで、素直にとってもおいしかったと私は答える。

 その答えにピエリさんが今日見た中で一番の笑顔を返してくれる。自分の作った料理を褒められてうれしかったということだと思う。なら、それをピエリさん自身も味わうべきと、その手に持った小皿を取ると、フォークで掬ってピエリさんに差し出す。

「それじゃ、今度はピエリさんの番ですね。はい、どうぞ」
「う、うん。あ~んなのー」
「はい、あ~ん」

 ピエリさんは私とは違って躊躇することなくケーキにぱくりとか噛みついた。ちゅるんという音がしそうな感じにフォークから唇を離すと、そのまま残りのケーキも食べさせてと目でせがんできた。

「はい、それじゃもう一口、あ~ん」
「あ~ん。んんー、リリスが食べさせてくれるケーキは格別なのよ」
「誰がやっても同じですよ。ピエリさんのケーキはとってもおいしいんですから」
「ううん、リリスがしてくれる方が一番おいしいの。ピエリ……そう思ってるのよ」
「え?」
「もう、残りも早く食べさせるの!」

 なぜだか、また顔を赤らめるピエリさんを見て苦笑する。照れ隠しのようにケーキを食べさせてと口を大きく開けて、私がケーキを運ぶのを待っていた。口の周りにはケーキのクリームがついていて、ケーキを全部食べさせてすぐにナプキンでその口を拭う。

「んにゅ、りりしゅ……ふにゃ」
「少しだけ我慢してくださいね」
「ふにゅ……ひやっ……んんんーっ」
「はい、綺麗になりました」

 先ほどまで、クリーム塗れの子供だったピエリさんはいなくなって見た目だけは大人のピエリさんが現れる。それと同時にホールの中央に空間ができ始め、二階の踊り場に楽器が多く並び始めた。

「これからダンスみたいですね。ダンスに参加される方々が集まっているみたいですよ」
「……あ! そうだったの! リリス、ここで待っててほしいのよ!!!」

 そう言ってピエリさんは一目散に会場を走っていく。追いかけるべきなのだろうけど、ここで待っているようにと言われた以上、私は動けない。よく見ると、走り始めたピエリさんに合わせて数名のメイドさんがそのあとを追っていくのが見えた。
 何か、私の知らないところで準備が成されているようで嫌な予感がした。そしてそれはすぐ目の前に現れる。

「じゃっじゃーん。リリス、これ見てなの!」

 そうとても楽しそうにピエリさんが現れる。その身に着けているドレスを見て私はやっぱりそういうことですよねと、溜息を漏らす。
 ピエリさんは白いドレスを身に着けていた。元々選んでいたものじゃない、私が持つピエリさんのイメージで選んだあの白いドレスだ。
 無邪気にそれを見せびらかすピエリさんの姿はやはり無邪気で、その青とピンクの混ざった髪のおかげで白いドレスがさらに際立っている。

「ふふーん、リリスが選んでくれたドレス、とってもヒラヒラしてるの」
「なんで、私の選んだドレスを着るんですか。もっとこう、違うのにしてもよかったのに」
「だって、リリスが選んでくれたのよ。だって、今日のリリスはピエリのメイドさんなの。メイドさんを立たせるのも主人の役目なの」

 どこでそう言ったことを覚えてくるのかわからないけど、つまりは私が選んだドレスを見せびらかしたいということらしくて、なんだかこんな衆人の中に自分が思っているピエリさんのイメージを見せびらかしているみたいで、恥ずかしさを覚えてしまう。
 少しだけ顔が熱くなっているのを感じていると、私は手を引っ張られる。気づけばピエリさんに手を引かれてダンスの行われる場所に向かっているようだった。

「リリスはピエリと踊るのよ」
「え、わ、私ダンスなんて久しぶりなんですよ」
「ピエリも久しぶりだから問題ないの。それに、ピエリはリリスと一緒に踊りたいの」

 演奏が静かに始まる。私は否定の言葉も躊躇の言葉も出せないままにダンスの中心にピエリさんと一緒にいたった。
 伴奏に合わせてピエリさんがステップを静かに刻み始めて、私もそれに合わせて覚えている限りに合わせ始める。私とピエリさんが始めたのをきっかけに、周りの人たちも輪に加わり、まるで大輪の花が開くように人々が動き始めるた。

「えへへ、久しぶりって言ってたのに、リリスうまく出来てると思うの」
「ピエリさんも上手ですよ。本当に久しぶりなんですか?」
「……えへへ、実は違うの。少し前から練習してたのよ。リリスがピエリに付いてこれるか心配なの」

 少しだけ挑発するような笑みを浮かべるピエリさん、だんだんとダンスの難易度は上がっていく。姿勢もかなりきついし、何よりもここから足のステップが情熱的な物になってくる。でも、私はとても楽しかった。
 対面に見えるピエリさんの笑顔は頭上に光るシャンデリアよりも美しく感じるし、自分が選んだドレスも軽やかに舞っている。メイドの役目を任されただけでも、信頼の証だと言えるのに、私の選んだものを身に着けてくれて、尚且つこうやってダンスにも誘ってもらえた。普通のメイドならばこんなに名誉なことはないと思う。

「どうして、そんなに私の選んだものにしてくれるんですか?」
「今日の専属メイドはリリスなの。だからなの、それだけなのよ」

 どこか顔を赤らめて、ピエリさんがそういう。それが堪らなく愛おしくも感じた。
 交わることなんてないと思っていたお父様が憎んだ世界との繋がり、多分私みたいな中途半端な存在にはもったいないほどの物だと思う。
 だから、それを感じさせてくれるピエリさんに今日をめいいっぱい楽しんで貰いたくて、私はそのステップを刻み続けた。
 いくつものダンスを重ね、永遠に続くと思える夜の宴。そう思わせるようにして、盛況のままに誕生日パーティーは終わりを迎えた。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「えへへっ、やっぱりリリスは抱き枕に最適なの」

 真後ろから聞こえる声と温かみを感じながら、私は最後の役目たる抱き枕になり果てる。
 誕生日パーティーが終わって、体を清めたりといろいろと物事を行い終えた頃、ピエリさんの部屋に置かれた大きな時計は、今日という日が残りわずかであることを知らせる。
 もう終わりになろうという矢先で、ピエリさんは最後の命令を出してきて、私は人間から竜へと姿を変える。久々になるこの姿、いきなりの変身で体が寒さに慣れていなかったからか、すぐさまピエリさんのいるベッドの中に私は飛び込んでいた。

「ううっ、寒いです」
「寒いの? ならピエリが抱きしめてあげるの、こうやって包み込んであげるから、リリスすぐに暖かくなるはずなのよ」

 ぎゅうっと音が聞こえてくるくらいに、ピエリさんが私を引き寄せる。背中の鰭にピエリさんの膨らみが押し当てられ、その場所がとても暖かくなってくるのがわかった。

「もう、そんなに押し付けないでくださいよ。私、全然ないんですから」
「揉んだら大きくなるってカミラ様言ってたのよ。ピエリがリリスの揉んであげてもいいのよ」

 そう言いながらピエリさんが私のお腹を手で撫でてくる。ピエリさんは私のお腹のことをモチモチポンポンと言っている。それはなんだかたるんでいる気がして、少し嫌な気持ちなのだけど……

「きゅぅ……」

 触られるのは存外嫌いじゃないから、口に出せないでいる。

「えへへ、リリスのモチモチポンポン、とっても柔らかくて暖かくて触り心地がとってもいいの。頬ずりもしたくなっちゃうのよ」

 お腹をサワサワされていると、途端に眠気が増してくる。気持ちがいいから、それに合わせて眠気も歩み寄ってくるのかもしれない。大きく口を開けて欠伸をする。人の時とは違って目尻にまで達している口角もあって、私は大きく口を開いた。

「リリス、とっても大きな欠伸なの……」
「すみません。まだ今日が終わってないのに」
「ううん、いいのよ。リリス、今日はピエリのためにいっぱい頑張ってくれたの。だから、最後はご主人様のピエリがリリスにご褒美を上げる番なのよ」

 そう言って私はピエリさんと向き合う形になる。向きを変えると、そのまま胸に引き寄せられる。石鹸とピエリさんが混じり合った甘い匂いがした。

「リリス、温かくなったの?」
「はい、とっても。あ、尻尾……んっ、くすぐったいですよ」
「えへへ、リリスの尻尾足で捕まえちゃったの」

 ピエリさんの足が私の尾鰭を絡めとる。くすぐったいのに暖かて、その所為で私の眠気が急速に力を増し始めていた。

「んっ、……ピエリさん。私、もう、眠くて……」
「そうなの? まだまだ夜はこれからなのよ?」
「ごめんなさい……でも、今日はあと少ししかないから……」
「ぶー、少しはサービスしてほしいのよ」
「今日だけって約束じゃないですか……。それに、ピエリさんの抱き枕になるのが私の最後の仕事だと思ったんですけど……なにか、私にしてほしい事、まだありますか?」

 寝ぼけ眼に私は聞く。ピエリさんの胸の感触とか、股に挟まれた尾鰭に感じる温かみとか、色々と男性だったら眠気を吹き飛びそうなものばかりだけど、実は何度も抱き枕代わりにされていたこともあって、私には態勢がついてしまっていた。
 だから、もう眠気に抗うことが難しくなっている。でも、ピエリさんがあと数分以内にしてもらいたいことがあったら、それくらいならしてあげられるかなって思った。
 それにピエリさんは少しだけ、少しだけ考えて。こんなことを言ってきた。

「わかったの、それじゃリリス。ピエリよりさきに眠っちゃうの」
「……それでいいんですか?」
「そうなの。それだけでいいのよ。今日のリリスはピエリのメイドさんなの、だからピエリの命令守らないとだめなのよ」

 それは多分、疲れ果てている私を思っての事かもしれなかった。なんだか、最後の最後で気を使わせてしまった気がして、少しだけ申し訳ない気持ちになった。

「大丈夫なの、そんな悲しい顔しないでほしいの。ピエリがご褒美あげてるの、だから素直に受け取ってほいいのよ」
「ふふっ、すごいご褒美ですね。それに命令ならしかたないです……」

 一瞬だけ、部屋にある時計に目を向ける。もう針は残りわずかでしかない。それが終わったら、今日の一日メイドは終わり、なら最後の命令に従って私は役目を終えよう。

「ピエリさん……おやすみなさい……」
「リリス、お休みなの……」

 頭を優しく撫でる感触を最後に、私は暖かい夢の中に落ちていった。

~~~~~~~~~~~~~~~~


 時計の針が誕生日を通り過ぎた部屋の中で、リリスの寝息が静かに漂ってる。
 胸の中に納まって心地よさそうに眠っている姿を見てると、胸の中が途端に熱くなって大きく深呼吸した。
 今日はずっと心臓が鳴りっぱなしで、それは数日前からずっとのことだった。。

「……リリス、ごめんなさいなの」

 あの日、リリスがピエリの誕生日を知らないことがとっても嬉しかった。何でも言うことを聞いてくれるかもしれないって思って、リリスに誕生日だけピエリのメイドさんになってほしくて、だから今日のことをお願いした。
 リリスはすぐに受け入れてくれて、朝から言われた通りの服を着てピエリの下に来てくれた。メイドのみんなと話し合って、ドレスの事とかも全部リリスが決めてくれるように段取りも組んでた。
 リリスといるととっても楽しくて、時々胸が熱くなって、なのに時々しょんぼりってしちゃう。そして、今はとっても胸がドキドキしていて、リリスの顔が触れている胸がの音が聞こえちゃうんじゃないかって、手が少し震える。
 心地いいけど、なんだか痛い、嫌じゃないけど、好きじゃない。よくわからないものがピエリの中にあった。
 それから逃げだせるかもしれないって、メイドに教えられたことがあって、それをしようって思った。
 だけど、それを誕生日の内に頼めなかった。だって、それを誕生日の内にお願いしたら、多分リリスはすぐにしてくれると思う。リリスは仕事とか使命とか、ピエリが良くわかってないものを割り切ってできる子だと思うから。
 だけど、今日ドレスを選んでくれた時、リリスはピエリが選んだものじゃないものを選んでくれた。ピエリにはとっても似合わないと思ってた白いドレスも、リリスに選ばれたら着たいってすぐに思えた。

「リリス……」
 
 抱きしめる手が強くなる。リリスが近くにいるのがとっても嬉しかった。
 ケーキも本当においしいって言ってもらいたかったのはリリスだけ、ダンスを踊りたかった相手もリリスだけ、ピエリはリリスと誕生日を過ごせればそれでよかった。
 だけど、本当にしたいことは誕生日を越えた先にしたかった。だって、誕生日にしたり、リリスに頼んでしてもらったら……。全部、意味のないことになってしまう気がして、それがとっても嫌だった。
 ピエリにとっての誕生日は、今まで欲しいものが全部手に入るものだったのに、これだけはそういう特別じゃない日に欲しいって思った。
 昔のピエリが今のピエリを見たら……、たぶんおかしいって顔する気がする。
 視線を下げると、リリスの顔がある。健やかに眠っている、人の時とは違う竜の時のリリスの顔。でも、どんな顔もピエリにとってはリリスでそれを見るとやっぱり胸がトクリッと音を立てた。目の前が蕩けたみたい、顔は熱くて頭はフラフラする。でも、瞳の中にはリリスがいて、その中に一番はっきり見える場所に、また胸が鳴った。

「リリス……」

 時計の針はもう境界線を越えてるから、魔法はもう使えない。
 誕生日の魔法が解けてるからピエリはただのピエリに、リリスはいつものリリスに戻る。魔法はもともと使えないからこれでよかった。
 少しだけ、リリスの体が震えてる。寒いからかもしれないって体を寄せた。
 一回、二回、三回、もう一度深呼吸して、息を呑む。
 そしてゆっくりと、その柔らかそうなそこに近づいた。


◇◆◇◆◇

 ピエリの誕生日。
 その魔法が解ける24時の先。
 その先のことは、彼女だけの秘密になった……


 ピエリリス誕生日SS 終わり

 これにて、今回のスレは終了します。
 ここまで読んでくださった方々ありがとうございました。

 そろそろ、公式さんリリスの誕生日情報を開示して……

 ルーナとピエリの番外は、このスレにおけるピエリとルーナの支援を前提にしているので、そちらを読んでからのほうが、二人の関係性がわかりやすくなると思います。

 来年になったら新しいスレを立てようと思いますので、よろしくお願いいたします。

 最後に、現在のキャラクター関係の一覧を貼り付けたいと思います。 

○カムイの支援現在状況●

―対の存在―
アクアA
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)

―城塞の人々―
ギュンターB++
(恋愛小説の朗読を頼まれています) 
フェリシアB+
(カムイに従者として頼りにされたい)
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
フローラB
(すこしは他人に甘えてもいいんじゃないかと言われています)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)

―暗夜第一王子マークス―
ラズワルドA
(あなたを守るといわれています)
ピエリB
(弱点を見つけると息巻いています)
マークスB++
(何か兄らしいことをしたいと考えています)

―暗夜第二王子レオン―
オーディンB++
(二人で何かの名前を考えることになってます)
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)
レオンB+
(カムイに甘えてほしいと言われて、いろいろと考えています)

―暗夜第一王女カミラ―
ルーナA
(目を失ったことに関する話をしています)
カミラA
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ベルカC+
(イベントは起きてません)

―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼA
(昔、初めて出会った時のことについて話しています)
ハロルドB
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィB+
(一緒に訓練をしました)

―白夜第二王女サクラ―
サクラA
(カムイと二人きりの時間が欲しいと考えています)
ツバキB
(イベントは起きていません)
カザハナB
(イベントは起きていません)

―カムイに力を貸すもの―
シャーロッテA
(返り討ちにあっています)
スズカゼB
(おさわりの虜になったようです)
サイラスB+
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB+
(許されることとはどういうことなのかを考えています)
モズメB
(イベントは起きていません)
リンカB
(イベントは起きていません)
ブノワC+
(イベントは起きていません)
アシュラC+
(イベントは起きていません)
フランネルB+
(宝物を見せることになっています)

仲間間支援の状況-2-

●同性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・リンカ×アクア
 C[1スレ目・888~889] B[2スレ目・285] A[3スレ目・254]
・ピエリ×カミラ
 C[1スレ目・752~753] B[2スレ目・478] A[2スレ目・513]
・フェリシア×ルーナ
 C[1スレ目・864~865] B[1スレ目・890~891] A[1スレ目・930~931]
・フローラ×エルフィ
 C[1スレ目・471~472] B[3スレ目・338] A[3スレ目・377]
・レオン×ツバキ
 C[1スレ目・492~493] B[1スレ目・870] A[3スレ目・798]
・ベルカ×エリーゼ
 C[2スレ目・284] B[3スレ目・301] A[4スレ目・354]
・ピエリ×ルーナ
 C[3スレ目・249] B[4スレ目・317] A[4スレ目・412]
・アクア×ルーナ
 C[3スレ目・283] B[4スレ目・461] A[4スレ目・813]

【支援Bの組み合わせ】
・ギュンター×サイラス
 C[1スレ目・926~927] B[3スレ目・316]
・フェリシア×エルフィ
 C[1スレ目・367~368] B[2スレ目・541]
・シャーロッテ×モズメ
 C[3スレ目・248] B[3スレ目・285]
・ベルカ×ニュクス
 C[4スレ目・176] B[4スレ目・410]
・シャーロッテ×カミラ
 C[2スレ目・476] B[4スレ目・439]

【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
 C[1スレ目・423~425]
・ピエリ×リンカ
 C[3スレ目・247]
・ピエリ×フェリシア
 C[3スレ目・250]
・ジョーカー×ハロルド
 C[1スレ目・426~429]
・フローラ×エリーゼ
 C[4スレ目・178]
・エルフィ×ピエリ
 C[3スレ目・771]
・カミラ×サクラ
 C[4スレ目・175]
・スズカゼ×オーディン
 C[4スレ目・318]
・ラズワルド×オーディン
 C[4スレ目・459]
・サクラ×エルフィ
 C[3スレ目・774]
・ルーナ×フローラ
 C[4スレ目・781]
・ルーナ×カザハナ
 C[4スレ目・780]

 最後に埋めも兼ねて安価をしたいと思います。
 参加していただけると幸いです。

◇◆◇◆◇
 カムイの様子を見に行くキャラクター(支援Aのみ)

・アクア
・ラズワルド
・ルーナ
・カミラ
・エリーゼ
・サクラ
・シャーロッテ

>>995までの合計が多かったキャラクターにしようと思います。
 995の時点で同票がいた場合は>>996のキャラクターになります。

◇◆◇◆◇
 最後に次にやる番外を決めたいと思います。
 これは最終書き込みのものに決まります。

・『ミタマの二頭筋事情』
・『もしサクラ隊がレオンじゃなくてカミラに匿われていたら?』
・『ガンズが笑う時』
・『マキュベス第二幕』
・『リリスの多世界観察日記2』

 この五つのどれかにしようと思いますので、すみませんがよろしくお願いいたします。

◇◆◇◆◇
 
 また、次のスレへの誘導はないと思いますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、また次のスレで……、よいお年を

セレナさん

カミラ

ルーナちゃん!

番外どれもおもしろそう
シャーロッテ

カミラ

ルーナ

唯一の男であるラズが見たかったなあ
あっちでは散々な目に遭ってるし

全員1000狙いかこれww
踏み台ガンズ

サクラifで

多世界観察日記2

サクラがカミラに…の話で

手堅くサクラifで
今年はありがとー楽しかったです

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom