主人公「学校一週間休んだら世界がゾンビで溢れてた」【たまに安価】 (212)


 2016年6月末日。

 そろそろ期末試験の勉強を始めようかなー、なんて学校帰りに呟いた。

「うわ、そんな事言うなよ、明日雪降ったらどうするんだよ!?」

 並んで歩いていたクラスメイトの啓吾(けいご)が心底嫌そうな顔でこちらを見る。

 おいおい、俺の勉強に対する熱意を知らないのか。

(……雪が降るくらいには冷えていたりもする)

「つーか、お前顔色悪くね?」

 啓吾が心配そうにこちらを見た。よせやい照れるじゃないか。

「体調は悪くないけど、少し関節が痛いかな」
「インフルじゃねぇのか?」
「マジで? この季節に?」

 やった!! 学校休める!!

 高校二年生にもなってこの発想。心底の屑である。

「病院ちゃんと行けよ。俺はかかりたくないから先に行くぜ!」

 啓吾……付き添ってくれないのか(寂)。

「……………家で寝てれば何とかなるだろ」

 俺は病院に行かなかった。

 熱がある感じではないし、きっと季節の変わり目に当てられたんだろう。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1465803563


「……ようやく治ってきたかな」 

 それから一週間が経つ。

 思ったよりも身体は悲鳴を上げていたらしく、僕は学校を休み続けた。

 熱はないのに気だるさだけが延々と続き、病院に行くほどではないけど登校することはできない。

 ラインで心配の声が毎日届くが返すのすら億劫だった。

(まるで生きる事を身体が拒絶しているみたいだった)

 例えるならお腹は減っているのに食べ物に手が伸びないような。

 トイレだけは何とか行く事ができたが、何度か危なかった。

「……一番最初に沸いて来るのが性欲とはね」

 むらむらと下半身にエネルギーが溜まっている。

 風に揺れるカーテンさえも裸の女性が艶めかしく踊っているように見えた。

「エロ画像で抜くかな」

 久しぶりにスマホに手を伸ばす。

 いつも一桁しかなかった電池残量がマックスだ。

「うわ、ライン通知が三桁いってる……」

 開くのすらめんどくさくなるな、これ。

「とりあえずまとめサイトでも見るか」

 人間は多くの知識を取り入れたら強くなった気になれる。それが正解不正解であるかは関係ない。

「……なんだ、これ?」

 まとめサイトにまとめられた掲示板のタイトル。

 そのほとんどが災害に関する事だった。

「世界おわた。ゾンビになりたくない。死にたくない。水を買え。街は危険だ」

 いつの間にかネタサイトにすり替わったのだろうか。ブラウザを閉じてヤフゥーッニュースを開く。

「……更新されて、ない?」

 日付を見る限り、三日前から一切更新されていない。

 どっかの都知事がクビになった事が大きく書かれている。こんな事ありうるのだろうか。

(あれ……? そう言えば僕、三日前から……)

 背中の汗がべっとりと気持ち悪い。



 僕が最後に家族と会ったのは……





「んぐっ、んぐっ、んぐっ」

 三日間も飲まず食わずでいた所為か、麦茶が酒のように美味しい。いや、酒の味は知らんけど。

「テレビは……駄目か」

 どの局もご迷惑をおかけしますと表示されたまま動かない。

 電気が通っているのだから一つくらいは放映されているかと思ったのに……。

「バイオハザードか……」

 漫画や映画でよくある設定だ。

 突如一般人がゾンビと化して襲いかかってくる。ゾンビに噛まれた人間はゾンビになって他の人を襲う。その繰り返しだ。

「三日前に起きたって事は相当数の人間がゾンビになってるだろうなぁ……」

 もちろんあれはファンタジーな話であり、実際はあんなに増えたりしないと思う。

(インフルエンザとかの感染と違って感染者はゾンビになるんだ。誰が近づくだろうか)

 あるいは潜伏期間が長ければ既に大多数の人間がゾンビになってもおかしくないだろう。

(もしかして今までのあれが……?)

 いや、もしそうなら僕もゾンビだという事だ。思考する事ができて水分補給ができるゾンビが主流なら世界はパニックになったりしない。

「とりあえずラインでも見るか……」

「皆を助けたいと今までありがとうの嵐だ」

 クラスメイトのグループラインは阿鼻叫喚だった。

 死を目前にして少しでも綺麗な魂でありたいと思ったのか、まるでゲームの主人公のような振る舞いをしている。

 人は皆、本質的に中二病なのだろう。

 個人ラインは三日前からぱったりと送られていない。

 残念ながら啓吾も僕なんかに気を使っている暇はないという事か。

「家族からのラインもないって事は……」

 僕の事が嫌いか、あるいは……。

(いや、希望を持とう……)

 少なくとも妹は生きているはずだ。

 あの子は僕に似ず賢いし運動神経も良い。

(これからどうしようか……)


安価
1、まずはこの家を補強して外からゾンビが入ってこないようにしよう。
2、妹を助けに行こう
3、両親を助けに行こう
4、啓吾を助けに行こう
5、クラスで一番可愛かった佐々木さんを助けに行こう


安価下1

2

「やっぱり妹を助けに行くべきだよな」

 両親は大人だ。何かあった時に自分の行動は自分で責任とれる。もしかしたら妹を助けに行っているかもしれないし。

「中学生とはいえ、スマホを持たせるべきだったな父ちゃんよ」

 たぶんびっぱーかなんじぇい民の父ちゃんは妹に近づく男に警戒していたからな。それが裏目にでたようだ。

(まとめ民で良かった)


「こんなもんか……」

 とりあえずまとめで培ったサバイバル知識を活かし、水や食料、布、ライター、妹のパンツ(洗っている奴かどうか選別済み)、ストレス発散の為にハンターハンター一冊、包丁とハサミ、電池数本とアルミホイル、サランラップ、ガムを用意した。鞄はパンパンだが、布が多いので重くはない。

「よし、行こう」

 がちゃり、ドアを開けるとそこは……。

「うぅ……あぁ……」

 ゾンビの世界でした。

 溢れかえるゾンビ、ゾンビ、ゾンビ。

 腐った肉の臭い。壁に衝突した車から漏れるオイルの臭い。

 ずっ、ずっ、と足を引きずるゾンビ。猫背で顎の上がった顔から漏れる「あぁ、うぅ」という音。

 現実で起きるゾンビパニックは予想以上に漫画や映画そのものだった。




 ごっ。


 ゴルフクラブ(7番アイアン)がゾンビの頭を吹き飛ばした。

「父ちゃんが金持ち気分を味わう為にかったクラブ……一発で折れ曲がったな」

 五千円くらいしたって言ってたけど……すまん。

「うぅ……あぁ」

 顔の半分を失ったゾンビは手脚を動かしながら立ち上がろうとしていた。

(もしかして顔を失っても動くのか?)

 専門的な事は分からないけど、もしかしたら寄生虫のように命令する何かが身体の中にいるのかもしれない。

(もしくは身体全部が脳みそみたいになってるとか)

 単純な動き(膝や足の関節を使わずにゆっくりとずり歩く)くらいなら単細胞が寄生してもできるのかも。

(だとしたらゾンビ映画のように頭を吹き飛ばしても意味がない?)

 単純な動きしか出来ない分、誰かが監督した走るゾンビ映画のような事はならないだろうけど、集団相手の危険性が増した。

(絶対に多数に囲まれないようにしよう……)

 希望を見いだすとすれば、こんな遅い動きに妹が捕まるはずがないって事だ。

「絶対に生きてる……絶対にだ」

いったんここまでにします。妹の特徴をいくつか置いておきますので安価お願いします。

安価↓1
口調
1お嬢様?口調 例「お兄様」「ふざけないでください」
2元気っ子口調 例「兄貴!」
3冷静口調   例「……兄さん」
4冷酷口調   例「死ねばいいと思います」
5その他

安価↓2
容姿

安価↓3
特技


お願いします!!安価が被ったら↓になります!

3

兄より背が高く、スタイルもいい

あと眼鏡

足が速い

プログラミング

続き10レスくらい行けたら行きます!

背が高くて眼鏡でクールJC了解いたしました!


「……くそ、一回くらい文化祭に行くんだった」

 あんな父親だから当然妹は女子校に入れられた。

 駅二つ離れた山に立つ私立の学校だ。

(だけど山の傾斜をゾンビが歩けるとは思えない。ますます妹が生存している可能性が高まった)

 僕はとても嬉しかった。

 特に妹と仲が良い訳ではなかったけど、それでも家族が生きていて喜ばない奴なんていない。

 問題は……。

「あぁ……うぅ……」
「お……おぉ……」
「ごぽっ……ごぽっ……」

 街を闊歩する死体の群。

 死体の多くは目が飛び出していて気持ち悪い。

 上を向いているゾンビは口の中で腐った血をゴプゴプいわせている。

「駅近くは人で溢れかえるだろうから、川原沿いを行くべきだな」

 金八先生のオープニングにできそうな川原が中学校近くまで続いている。

 あそこを辿ればリスクは減るはずだ。

川原

「ゾンビはいるけど斜面を転げ落ちて上がれないみたいだ」

 受け身も取れなかったのか立ち上がれていないゾンビも沢山いる。

 上の道路は見渡す限り数人しかいない。

「正解だっ――」


 ――パァンッ!!


「え?」

 聞き慣れない音。何かが破裂したような。

 漫画のようにそれが銃声だとすぐに気付く事はできなかったが、続け様に叫び声が上がり理解する。

『そこのお前!! 手を上げろ! 撃つぞ!』

 声の主は川向うから黒い何かを構えていた。

(銃? あんな少年が?)

 身長一メートルと少しくらい。

 半ズボンに白いTシャツ、黒いランドセル。

 紛れもない小学生が、銃をこちらに向けていた。

(なるほど、警官から盗んだのか……)

 周りを見るとパトカーが川に突っ込んでいる。

 遠くではっきりしないがモデルガンというより拳銃に見えるしな。

「俺は君を襲う気はない! 見逃してくれ!」

 この距離があればいくら拳銃と言えど僕を殺す事は不可能だろう。

 少年の技術で当てられる訳がないからだ。

『ま、待て! 荷物を置いて行け!』

 女の子にさえ思える可愛らしい声。

 どうやら僕の荷物がお目当ての様子だ。

(音に対してゾンビの反応が鈍い。ゾンビ映画のように耳が聞こえる訳ではないのか?)

 だとすればパンデミックが起きた原因が分からない。やはり空気感染による潜伏発症だろうか。

 もしそうなら僕や目の前の小学生がゾンビになっていない訳がない。抗体を持っていればあるいは……。

「……君! 血液型は!?」

『び、B型!』

 小学生は反射的に応えた後、しまったという顔をした。可愛らしい。

(僕がAB型だから血液型に依る説は否定された)

 いや、今はまだ感染かどうかも分かっていないんだ。変に決めつけるより分からないまま慎重になった方が良いだろう。

「悪いな! 僕は行かなくちゃ!」

『ま、待って!!』

 小学生は一人で不安なのか僕を追いかけようと斜面に足をかけた。

「ばか! あぶな――」

『うわぁああああ!?』

 ずるりとこけた小学生。お尻を擦りながら下に滑り落ちて行く。

「くそっ!」

「待ちたまえ!」

 突如、僕の腕が掴まれた。

「ひえっ!?」

「危険だ! 諦めたまえ!」

 僕の腕を掴んだ制服の女性。見ると近所の女子高の制服だ。

 黒髪ロングの和風な装い。目つきは少し鋭いが、かなり美人。

 肩には円い筒を担ぎ、腰には……刀?

「ぼ、僕を殺す気ですか!?」

「あっ……、いや、すまない。これは護身用だ」

「あなたは?」

 いや、名前を聞いてる場合じゃない。小学生が悲鳴を上げている。

「私は大和涼香(やまとすずか)、こう見えて武道など嗜んではいない」

 ふふんと自慢げに胸をはる女子高生。いや、見ず知らずの人間に無力だと言っていいのかよ。


 1、そんな事より小学生を助けなきゃ!

 2、大和さんの言う事を聞いておこう。


安価↓1

選択で主人公が死んだりはしません。

登場人物に変化が起きる場合があります。

2

2

そもそも銃持った相手に近づくとかねーし

(……まぁ、俺も彼に義理がある訳じゃないしな)

 それどころか命を狙われ脅された関係だ。助ける必要もないか。


 ――パァン! パァン!


 消費されていく銃。もちろんゾンビに命中するはずもない。

 ゾンビは臭いで判断しているのか少年の存在を感知し、近寄って行く。

『うわぁああああああ!!』

 甲高い悲鳴と共にゾンビが少年の肩を噛んだ。続けて別のゾンビが頭を噛み、また別の這いずるゾンビが足を噛む。

 しばらく傍観していると、大和さんが僕の手を掴んだ。

「べ、別に君に好意を抱いている訳じゃないぞ。単に怖いからだ」

 古風?な喋り方なのに言っている事はヘタレが過ぎる。

 僕の好きなゾンビ漫画にもこういう出で立ちの女性がいるけど、彼女は嬉々としてゾンビを斬り殺してたなぁ。

(まぁ現実は甘くないという事か……)

 しばらくして肉の一部を失った小学生がゾンビとして動き始めた。

 どうやらゾンビの噛みつき行為は捕食ではなく仲間の増殖にあるらしい。

(確定したのはゾンビに噛まれればゾンビになるという事)

 とある海外ドラマはすでに人類全体がゾンビになる素養を持っていて、衰弱がゾンビ化に繋がっていたけど、あの小学生の成り方を見る限り感染の方が可能性高そうだ。

「ところで君は今からどこに行くんだね?」

「え? 僕は山中女子中まで」

「やまなかに? 家族でもいるのかね?」

「ええ、妹が」

「では是非私を連れて行きたまえ。山中卒業生だ」

「……本音は?」

「一人で生きる自信がないからだ」

 またしてもふふんと胸をはる大和さん。うん、分かりやすくて良いな。

「じゃあ刀を預かっても良いかな」

「私に扱える物ではない。もちろん良いのだが……」

「?」



「君は私を護ってくれるか?」



1、分かりました。貴方を護りましょう。
2、いや、妹の命優先ですが。
3、自分の命優先ですが。

安価下1

1

「分かりました。貴方の命を護りましょう」

「ほ、ほんとか!? ほんとにほんとか!?」

 うわぁ、美人が泣くほど喜ぶ姿とか見られる日が来るとは……。

(護りたい、この美人)

「でも、何でそこまでして生きたいんだ? ゾンビしかいないのに」

「もちろん理由は一つ」

「………」


「痛いのが怖いからだ!」


「へぇ」

「反応が薄い!」

 へたれ可愛い女子高生が仲間になったけど、正直お荷物感がやばい。

 この人すぐ人質になったり罠にかかったりして仲間に迷惑かけるタイプのキャラだろ。

「ところで君の名前は?」

「……南路(なんじ)」

「なんじ? 変わった名前だな」

「良く言われる。まぁ、気軽に南(みなみ)って呼んでよ」

 まぁもちろん偽名だ。この人が僕を騙している可能性だってゼロじゃないからな。

 終わった世界で名前なんて何の意味があるって話だけど、生きている人数が限られているという事は変に追いかけられると名前なんかの情報が重要になってくるという事だ。

(もちろん某掲示板から借りた名前だ)

「分かった。南、よろしく頼む」

「じゃあ、行きましょうか」

「ああ」

「………」

「………」

「え?」

「ん?」

「いや、案内……」

「それは無理だ。口で案内する」

「はぁ?」

「君は愚か者か? 前を歩くとか怖くて出来る訳がないだろう」

「………」

 うん、現実は甘くない。

いったんここまで!

中学校の状況をお願いします!(妹は生きている設定です)


1、ほぼ壊滅。数人の生徒と先生が生き残っている。
2、数十人生き残っている。主従関係がある。
3、ほとんど生きている。数グループに分かれて戦争状態になっている。


安価下1

1

1


 緊張感のない話だが、斜面を登る事もできない情けないゾンビに怯える事など出来なかった。

 むしろ知らない女性と手を繋いで歩いている事の方が心臓に与える刺激は強い。

(人生で一度も彼女のいない僕には刺激が強すぎます!)

 加えて利き手で持っている刀はずっしりと重い。この先の武器としては頼りがいがあるような荷が重いような微妙な感覚だ。

「大和さんは……」

「大和、もしくは涼香で良いぞ。女子高育ちの私は異性と接触の機会がなくて大体呼び捨てだったからな」

「じゃあ、大和」

「涼香で良いぞ」

「………」

「ん? 遠慮しているのか?」

(最初から言え……)

 少し一緒にいれば分かる涼香の鬱陶しさ。

 可愛さ余って憎さ百倍だ。女特有の陰湿な部分がないだけマシだが。

「……涼香の家族は?」

「………ああ、心配するな。私の両親は海外でゾンビになっているだろう」

(何だか声のトーンが変わったな。哀しみを乗り越えたというよりは……)

 最初から両親に対する心配など一切していないような。

「そうか。じゃあ俺の家族の心配をしてくれ。少なくとも妹は生きていると思うんだ」

 瞬間。涼香は僕の手を強く握った。

「それが君の本質か? 正直惚れてしまうぞ?」

「いや、良く分かんないけど……」

「あぁ……うぅ……」

 川に沿って歩いたからと言って、ゾンビが大人しくしているかと言えばそうでもなかった。

「下がってろ涼香。つーか手を放してくれ」

「いや、怖くて手が離せん」

「……他意はない!」


 ふに!


「ひゃぁん!?」

 僕は思い切り涼香の胸を揉んだ。彼女は思い切り跳び上がると僕の手を放して距離をとった。

「き、ききき、君! いくら親しい仲とは言えいきなり女性の胸を触るだなんて許されない行為だぞ!」

「はぁっ!!」

 涼香の言葉に耳を傾けている暇はない。

 僕は思い切り刀を振り下ろした。


(くそっ! 胴体は骨が多くて勢いが削がれた!)


 素人の自分はいかに骨が硬いか想像できなかったのだ。

 まるで鉄に当たったかのような硬さに手が痺れてしまった。ゾンビの左肩から背骨までも到達せず刀は止まっている。

(抜こうにもゾンビが手を伸ばして……っ)

 早くも嫌な予感が的中した。

 僕はあまりにも大きな力を手に入れて調子に乗ったのだ。

 使いこなせない力はないのと同じなのに。

「折れたらごめん涼香!」

「えっ!?」

 僕は刀から手を放すとゾンビの胴体を思い切り蹴飛ばした。

「ごひゅっ!」

 口からどす黒い液体を吐きだすゾンビ。ご飯に箸を立てたような形で刀の柄が天を向く。

「どっこいしょ!」

 ゾンビのヘソ辺りを足で押さえ思い切り刀を引っ張り抜く。心臓が動いていないのか血管から血が噴き出す事はなかった。

(刀として使うのはやめよう)

 バットのようにした方が使いやすいだろう。

「だけどその前に……」

「南?」

 涼香の声を無視し、僕はサラリーマンの姿をしたゾンビの首に向けて刀を振り下ろした。

「かった!?」

 首の骨も太くて硬い。

 何度か振り下ろしてようやく首の切断に成功する。

「………やっぱり動くか」

「どういう事……?」

 涼香が首を傾げた。

 僕は説明しようにも知識が足りないのか適切な言葉が思い浮かばなかった。


 続けて腕と足を切断してみた。

 アダムスファミリーの手みたいに動くかと思ったけど、意外にも動くのは胴体だけだった。

(胴体に何かしらの命令器官ができているのか?)

 そう言えば頭も動いていない。内臓の筋肉だけがゆっくりと動き、切断面から大腸らしきものが漏れだしている。

「首を切り落としても意味がないってことか……」

「君は随分と容赦がないな。何か経験があるのか?」

「いや、強いて言うならゲームや漫画かな?」

 大人はゲームや漫画を否定するけど、僕達は別にそこから取り入れた知識で働きたい訳じゃない。

 知識の枠を広げる事でより多くの可能性に手が届くようになるんだ。

 今だってゾンビの映画を見た事無い人よりは効率良く動けている。後は想像と行動の繰り返しだ。

「なるほど、私はそういう物を一切読まない所為で君の足を引っ張りそうだ。本当にすまない」

「大丈夫。他の全てでも足を引っ張ってるから」

「……酷いな君は。凹みそうだ」

「いや、凹まないのか……」

 正直これからの事を考えると涼香には精神的に強くなってもらわないと困る。

 ストレスを多く感じて耐性を身に付けてもらいたいんだけど……。

(まぁ、お荷物はお荷物として端っこにいてもらえばいいか)

「それで、この人達は何と呼べばいいのだろうか」

「ゾンビって知ってる?」

「言葉くらいは……」

「いや、ゾンビって内容知ってなきゃ言葉を知ってても無意味だと思うけど」

 想像の産物なんだから字面だけ見て何の意味があるんだ……。

「ゾンビって言うのは動く死体の事」

「死体が動くのか!?」

「動いてるじゃん。そこらへんに」

「あの人達は死んでいるのか!?」

「……何だと思ってたんだよ」

「……病気かと」

(そう言えば……)

こんなに動きが遅くて素人の高校生が普通に出歩けるくらいなら
警察や自衛隊なら余裕で駆除できそうだが

「ふむ、ではこの携帯する他人の運命という状態になっているのだね?」

「うん、全然違うけどね」

 涼香はハンターハンターを読みながら何かを分かっている気になっていた。

「要は動く死体ってのは自分の意思で動かず、近づく人間を襲うように出来ているから危険だって事。絶対に近づいたら駄目」

「ああ、それは重々承知している。なるべく君の傍にいよう」

(それは僕から言う言葉では……)

 清々しいほど僕だよりで図々しい。

 何だか逆に愛着がわいてくる。まるでペットみたいな……。

「十分くらいで着くかな……」

「川から離れるが大丈夫だろうか」

「まぁそこは慎重に行こう」

「分かった」

 川から学校のある山に向かうには、どうしても大通りを通らなければならない。

 それ以外は路地裏の細い道と獣道くらいしかなく、より危険が増すからだ。

「あの橋を渡ろう。誰もいないみたいだし」

 橋にはバスが一台止まっているだけで誰もいない。

 恐らく運転手が逃げ出して乗客も逃げたのだろう。

「……大丈夫だろうか?」

「バスの入口は片方しかないから、その逆をいけば襲われる心配はないよ」

「君は天才だな」

「……よく言われる」

食料の確保をどうにかしなきゃだな、店なんざ機能してないだろうし、缶詰かなんか欲しいな

(それにしても日本の警察や自衛隊なら鎮圧できそうなレベルなのにな……)

 ゾンビの動きを見ていると、危機感が薄れて行く。

 そりゃ一人や二人くらいなら多数のゾンビに負けたかもしれないが、大型車に乗ればまず負けることなどないだろう。

(もしかしたらこの町はすでに“荒らされた跡”なのかな)

 もっと凄いゾンビ。

 それこそ走りまわったり意思を持ってたりするようなゾンビがいる可能性だってある。

 この町はすでにそれに襲われた後であり、残ったゾンビは子供で成長しているとか……。

(もしそうなら、この町のゾンビだって強くなる事も考えられる……)

「なぁ涼香」

「なんだ?」

「もし涼香以外の人間が死んだら涼香はどうする?」

「……間違いなく泣くだろうな」

「その後」

「……君を探す」

「いや、俺も――」


「君は私を護ると言った。先に死ぬなんて許さんよ」


「……っ」

 氷のように儚い笑顔。

(惚れたら駄目だ。惚れたら“涼香の死”に耐えられなくなる)

 僕の中でこの子が生き残るシナリオは限りなく弱い。きっとどこかで無残に死ぬだろう。

 残された僕が彼女の事を簡単に忘れられるようにしがらみをもってはいけない。

 ……そう思っていたのに。


「まぁ、努力はするけどさ」

「君だけを頼りにしている」

「へいへい」


 嬉しさと共に不安が増していく。


>>31
こういうジャンルじゃ警察・軍隊組織は無能か黒幕が潜んでいるかの2択じゃないか

大通り

「……うじゃうじゃいるな」

「中学校の生徒も沢山いるようね」

 学校から逃げてきたのだろう、体操服姿の子もいる。

 百人以上のゾンビを相手に通り抜ける道はあるだろうか。

「そう言えば君はゲームが得意と言ったね」

「いや、得意とは言ってないけど」

「車を動かすゲームはなかったのか?」

「……! む、無理だって! ゲームと現実は……」

 いや待て、急にMT車を動かす事は出来ないだろう。だけどAT車ならあるいは……。

「鍵さえあればできるかも」

 つい最近、父とこれからの免許について雑談したばかりだ。

『AT車はおもちゃだ。ブレーキ踏んだまま鍵回してシフトをDに合わせれば走るんだから』

 ……うん間違いない。Dに合わせれば車は動く。

「ゾンビが乗っていない車を探そう」

「ちょうどあそこにあるぞ」

 大通りの端っこにある比較的大きな車。あまり車が好きではない僕が名前を思い出せるはずはないけど、この大きさならゾンビに負けないだろう。

 逃げ出したのかドアも開いており、中を見ると鍵がささったままだった。

「初めてのドライブが無免許の青年運転手とはね」

「何で分かるんだよ」

「それは……秘密だ」

「適当に言っただろ」

「ふふっ、どうかな」

 安全運転を心がけるつもりだけど、間違えてアクセルを踏み込むかもしれない。

「シートベルトしとこう」

「分かった」

 父の言葉通りブレーキを踏む。


 ブォオオオオオオン!!


 間違えた。これがアクセルか。

「試運転と言う訳だな」

「……まぁね」

いったんここまでにします! 続きはまた明日にでも!


とても期待している

>>31
警察や自衛隊で発症した人がいたとか
またはまだ状況がわからないうちに混乱を治めようとしてガブリ
保護しようとした相手がゾンビでガブリ
最初ゾンビだなんて思わないだろうし混乱が起きたときに最初に動くのが警察自衛隊だからやられやすいんじゃないか

江戸時代じゃないんだからみんな一度はゾンビ映画見たことあるだろうし噛まれて感染してる人を
見たらヤバいってのはすぐわかるだろう。なんかの映画みたいに走り回るゾンビならアウトだが

実際問題ゾンビが出たからってそれが治るかどうかとか自衛隊上層部がおなじみの硬さで考えてる間に下の隊員がどんどん感染して行って気付いた時にはもう手遅れだったとかそういうオチじゃね?
映画とかで見てるからって現実で起こってすぐ対応できるかっていうと怪しいし

流石に自衛隊バカにしすぎ

少しだけ更新します! 皆さま外枠が気になっているようですので、少しだけそこら辺を……

小笠原諸島から西南数十キロの海洋


「つまり……そのうぃふぃ?」

 スーツ姿の男が報告書に書かれた単語を読み上げようと必死に口を歪ませた。

「いえ正式名称は、……えっと、まぁ呼び方は何でも良いです。とにかく今世界中の無線ルーターから発せられている電波は人間をゾンビに変えてしまうのです」

 白衣の中年男性は苦々しい表情で叫んだ。

 だが、スーツの男はいまいち要領を得ないのか首を傾げる。

「だが……電波だろう? 人間をどうにかできるのか?」

「どうにかできる出来ないの問題ではないのです。既に人類の八割はゾンビと化し、残りの二割もそのゾンビに噛まれて二世代目と化しているのです」

「何故二割の人間はゾンビにならんのだ?」

「予測に過ぎませんが……」

「教えてくれ」

「……ゾンビに変える電波の受信機はここ、心臓です。爆発的なエネルギーを生み出す心臓を利用して人を生きる屍にするのです」

「ふむ」

「不整脈を知っていますか?」

「ああ、心臓の鼓動が不規則なリズムになることだろう?」

「大きく言えばそうです」

「それと何の関係が?」


「ゾンビ電波を受けてもゾンビになっていない一般人のほとんどが多かれ少なかれ不整脈を患っています」

「つまり……病人と言う事か?」

「いえ、不整脈自体は病気と言えるレベルに達していない場合がほとんどでしょう。自覚症状すら持っていない人の方が多い」

「無理やり不整脈になればゾンビにならなくて済むのか?」

「ええ、不整脈でない人でも運動をして心臓に負荷を掛けていたり、アトラクションなどの刺激を受けている場合は同じ効果を得られるでしょう。……ただし、電波がある限りずっと負荷を掛け続けなければいけませんが……」

「大体時間にして何時間に一回脈が乱れればゾンビにならんのだ?」

「……脳が死を迎える前に脈が乱れれば大丈夫でしょう。ゾンビ化してしばらくは心臓も動いてますので大体10分から一時間以内なら大丈夫かと」

「短いな……だが、そのタイミングで心臓に刺激を与えれば良いのだろう?」

「ええ、そうですね。避難できた者達でペースメーカーに似た物を作っております」

「それがあれば耐えられるか? 本土に戻って電波の発信源を壊しに行けるか?」

「……実はもう一つ問題が」

「……難儀な事だ」

「動物なのですが――」

山中女子中学校 校門前

「車の移動は正解だったね」

「適当に言ってみたのだが、当たる時もあるのだな私は」

「………」

 ゾンビ達は何故か車が苦手みたいだった。のろのろと動く鉄の塊から逃げるように離れたのだ。

「もしかして鉄が苦手だったりして」

「君は天才か?」

「……いや、決めつけは良くないな。やめておこう」

「天才で慎重とは恐れ入った。将来良い嫁になれそうだ」

「なりたくないですけど」
 
 だからと言って涼香を嫁にするのは勘弁だ。夫婦生活が上手く行くはずがない。

「さて、久しぶりの母校だがグラウンドもゾンビでいっぱいだな」

「女子校とか本当ならテンションあがるのにな」

「私がいるだろうに」

「………」

「泣くぞ?」

面白い


 妹が通っている中学校。

 多くの生徒がゾンビになり、妹だけ例外というのは希望的観測が過ぎるというのに、やはり緊張感が足りない気がする。

(……あまりにゾンビが間抜けだからか?)

 いや、それも違うな。以前に比べたら死の危険性が高まっている。そう言う意味では警戒心は高い。

「……目が覚めたらこんな世界になってたからか?」

「何を言っているんだ?」

 助手席でシートベルトを外しながら涼香が首を傾げた。横目で見る彼女も可愛い。

「いや、こんな世界になったのに緊張感が足りないなって」

「ああ、そう言う事か。安心しろ、私もだ」

「恐怖心の塊なのに?」

「確かに痛いのは怖い。死ぬのも怖い。だが、不思議とこの状況に慣れてしまっている自分がいる」

「……だよな」

 これじゃあまるでゲームをしているみたいだ。

「変な電波にでも当てられたかな?」

 ……なんてな。

おいフラグやめろ

「映画や漫画なら音に警戒する所だけど……」

 この世界に現れたゾンビは耳が聞こえていないみたいだ。

 嗅覚はあるのか人間が近づけば襲いかかるけど、物音を立てないように動く必要はない。

「明日葉(あすは)ーーーー!! いるのかーーーーっ!」

「ひぃ!?」

 僕が力の限り叫ぶと涼香がビクリと肩を震わせた。ごめん、言うべきだった。

 全校舎に届くように叫んだつもりだったが、返事はない。

「駄目か……」

「……もしかしたら、あそこかも知れないな」

「ん?」

 涼香がまるで名探偵のように顎に手を置いた。名前の通り涼しげな表情から発せられる声は透き通っている。

「この学校は寮もやっているんだ。山側にあるし防音設備もしっかりしているから声が届いていないのかも」

「……可能性は高いな」

 寮なら食料もあるだろうし、どちらにせよ向かうべきだろう。

「だが心配事が一つある」

「ん?」

「寮というだけあって部屋数がかなり多い。電気が点いていなければ薄暗く、ゾンビが現れてもすぐに気づけないかもしれない」

「……まずは電気を通す事を考えた方が良いかもな」

「電気設備は職員室で管理しているから一番左側の校舎だな」

「そっちはそっちで大人のゾンビもいるってことか」

 問題はこれから出会うゾンビが今までののろまゾンビと同じ保障はないって事だ。

「どうする?」

プロローグ ラスト

「順番は……」

1、職員室→寮
2、寮→職員室→寮
3、寮(暗くても探索)
4、他の校舎
5、周囲を周ってみよう

安価下1



第一章の最初は妹視点からになります(数レスほど)。

少し離れますので安価お願いします!

3

3了解です!

では、続きー。


 私には高校生の兄がいる。

 名前はまだない。

 嘘、晶(あきら)って女の子みたいな名前。


 結論から言うと、私は晶の事をずっと片想いしている。


 彼の物語にとって、この結論は要らないかもしれない。だけど私の物語において、この事実はとても重要なのだ。



 ――新たな私の物語は三日前から始まる。

「はぁ、だりぃ。授業サボりてー」

 隣の席の藍子が股を広げて呟いた。彼女なりの私へのアピールなのだが、正直彼女のパンツを見た所で私は興奮しない。

「藍子、二人きりの時に、ね?」

「……おう///」

 私はこの学校では『お姫様』で通っている。最初は兄が好きである事を隠す為に女の子好きを演じていたのだが、いつの間にか本気にした子が私に告白してきたのだ。まぁ、彼女達も思春期で女の子しかいないこの学校で青春したいのだろう。私は何となくそれを受け入れていた。

「なぁ、前の席の島田、ずっと上を向いてね?」

 藍子が島田さんの背中をツンツンと刺した。不良の藍子にとって大人しい島田さんは遊び相手にちょうど良いのだろう。

「あぁ……うぅ……」

「え?」

 私と藍子は同時に首を傾げた。

 声のような空気漏れのような音が教室中から響き始めたからだ。

「な、何? どっきり?」

「……分からない。でも逃げた方が良さそう」

 幸い、私達は一番後ろの席だった。

 三十人近くの女子生徒が天井を向いて「あぁうぅ」と唸る光景はかなり異常だった。

「先生はどこに……?」


 がん。がん。がん。


 教師の三田村は入口にいた。

 彼もまた上を向いたまま、のろのろと入口にぶつかっている。

 あまりにも歪んだ光景に藍子は私の手を強く握った。

 私にとっても藍子にとっても「隣の席の子が健常である事」は幸運だった。

「行こう!」

 私達は一目散に廊下へと飛び出した。

 そこには――、

「おぉ……ごぽっ」
「……うぅ」
「あぁ……あぁ」


「なんだよ……これ」

 まるで避難訓練のように女子生徒達が廊下へと出ていた。

 だが、そのほとんどが上を向いていて、のらりくらりとずり歩いている。

「藍子……刺激しない方が良いよ」

「分かってるけどよ!?」

 私達の教室は校舎二階の中央にあり、逃げる為には謎の症状を見せている同級生達をかいくぐるか、窓から飛び降りるしかない。


1、飛び降りる
2、かいくぐる
3、教室に戻る


安価下1

「……飛び降りよう」

「はぁ!? マジで言ってんのか!?」

 何だか私は時間がないような気がした。

 兄がゲームをしている所をいつも隣で見ていた所為か、物語の分岐点がどのタイミングで起きるかピンと来るようになった。


(たぶん……それが今)


「くそっ! 後でキスするからな!」

「……キスは駄目」

 ファーストキスは兄と決めている私は、下半身を触らせる事はあってもキスは許していない。

 藍子は少し哀しい顔を見せた後、窓際の生徒を押しのけて窓をガラリと開けた。

「たぁああああ!! いでぇ!?」

 藍子の声が響く。どうやら無事なようだ。

「……私も」

 落下の衝撃で眼鏡を落としてはいけないと内ポケットに入れる。運動はできる方だから、着地もおそまつな事にはならない……と思う。

 サッシに手を掛けると、下から藍子が手を振っているのが見えた。

「今行く……」



  助けて……。



「え?」

 今、教室の中から声が聞こえたような……。


1、戻る
2、飛び降りる


 安価下1

1

1

「……少し待ってて」

「えっ!? はっ!?」

 私は藍子にそう告げると、教室へと戻った。

「何これ……」

「あぁ……ぐじゅっ」

「いた…い」

 どうやら声の主である委員長の夏子はクラスメイトに食べられる寸前だったようで、身体中を数人の生徒に噛みつかれた状態で倒れていた。

「夏子!」

「来ちゃ駄目!」

「……っ」

 夏子は最後の力を振り絞って叫んだ。

「私は……もう、だえいたい…なんだが……いしきか……ぼぉと……きえ」

「……夏子」

 だんだんと生気を失っていく夏子。さらに彼女へと群がるクラスメイト達。

(ゾンビ映画みたい……)

 そうだ。これは兄がよくやっていたゲームに出てくるゾンビだ。

「行かなきゃ……」

「明日葉先輩!」

「え?」

 窓際から声が聞こえた。

「こっちからの方が安全です!」

「美佐子?」

 一年生の遠藤美佐子は窓側に少しだけ出っ張っている踊り場のような場所から私を呼んだ。

「彼氏として姫の命を救いに来ました! ……なんて///」

 そう、美佐子もまた私と付き合っている。藍子も「こいつならまぁ良いか」と許すほど人懐っこく可愛い後輩だ。

「こちらから伝っていけば、安全に降りられます」

「わかった」

 藍子とは降りてから合流しよう。

 私は美佐子の下へと向かった。

「いやぁ、いきなりのバイオハザードに美佐子もびっくりです!」

 踊り場を慎重に伝いながら、美佐子は大袈裟に驚いた。

「やっぱりあれはゾンビになってるのかな?」

「うーん、どうですかね? 普通なら噛みつかれて感染するはずですが……」

「ウィルスとかだったら私達もゾンビになってるもんね」

「ゾンビになったら明日葉先輩の首筋をカプカプ出来る訳ですね!」

「……その前に突き落とすかも」

「じょ、冗談ですから!」

「分かってる」

 美佐子は藍子と違って私を笑わせに来る事が多い。

 どちらも全く違うタイプだけど、共通しているのは「どこか兄に似ている」と言う事。

「ここから降りられます」

「……分かった」

 太い配管を伝い、私達は難なく降りる事に成功した。

「ふぅ、救出任務成功です」

「ありがとね、美佐子」

「えへへ、お礼はチューで!」

「それは無理」

「ちぇっ! 何でチューは駄目なんですか!?」

「……結婚相手としかしないって決めてるから」

「じゃあ、私は無理じゃないですかぁ!?」

「法律を変えたら?」

「なるほど!!」


 ごめん美佐子、法律を変えても無理なの。

 だってファーストキスは……。


「お前ら! 無事なのか!?」

「田中!?」

「……先生?」


 体育教師田中の声が響いた。

 私達はこの時、逃げるべきだった。

 セクハラ教師として嫌われ敬遠されていた彼に頼る事、その危険性をもっと――。

回想終了。

山中女子中学校 寮 一室。


「藍子、嫌なら無理しなくても……」

 下着姿の藍子が部屋から出ようとしていた。その表情は固く、これから起きる事に対して身構えているようだった。

「何言ってんだよ。こんな事になった以上、あいつに頼らないと生きていけないだろ」

「でも……」

 “身体を捧げる”代わりにゾンビから命を護ってもらうなんて……間違っている。

「心配するな、お姫様。お前を行かせたりはしねぇからよ」

「そうですよ! 先輩は最後まで綺麗でいてもらわなくちゃ!」

 美佐子もまた下着姿だった。田中の好みだとか言われて縞模様の下着だけで生活を強いられている。

 彼女が処女を失った二日前、田中の精液を必死に掻き出す美佐子を見て私は泣いた。

 美佐子も藍子も私の為に身体を張っている。

 私の事を愛し、護ろうとしているのだ。

(……じゃあ、私は?)

 私は兄に片想いし続けている。

 二人との関係は幻想で夢のようなものだ。

 そこに恋も愛もない。

 なのに、二人とも……。

こういうジャンルじゃ絶対にいるな、そういうキャラは

「ごめん、ごめんね。私の為に……」

「泣くな明日葉。私はそんなお前を見たくねぇから身体張ってんだよ」

 藍子が私の首筋にキスをした。優しい口づけだ。

「明日葉先輩は私が」

「……ああ、頼む」

 藍子が部屋から出て行く。

 私の為に。

 幻想の姫を護る為に、女騎士は悪魔に身体を捧げる。

(私は……何をしているの?)

 兄が生きている保障もないのに、目の前の大切な二人を裏切って。

「……ねぇ、美佐子」

「どうしました?」

「私は――」



 瞬間、私の心臓はドクンと跳ねあがる。



『明日葉ーーーーーっ!! いないのかーーーーー!?』

 私にとっての王子、兄の声が聞こえたからだ。

主人公視点

「やっぱり暗いな……」

 少しでもリスクを減らそうと職員室へ行かずに直接寮に向かったのだが……失敗だったろうか。

「手を繋ぐべきだと思うのだが?」

「えっと……、警戒しなきゃいけないから俺の服でも掴んでて?」

「分かった」

 むんずと僕の服を掴む涼香。ほんと分かりやすい女の子だ。

「……幸いほとんどの扉が閉まってるから、抑えつつ進んで行こう」

「ゾンビはドアノブを掴めないものね」

「もしかしたら人間が管理しているから扉が閉まっているのかも?」

「……天才ね」

「いや、ただの仮説だから」

「仮説なんて単語を簡単に使うなんて……あなた科学者?」

「だったらこのパニックの原因も分かるんですけどね」

 ゾンビ映画やゲームと似てるようで全然違う現象。

 少なくとも原因さえ分かればスッキリするのに……。

今日はここまで!ご意見ご感想ありがとうございます!明日も続けようという気になります!

実は主人公には特殊な能力が備わっているのですが、三つの中からお選びください。(戦況が大きく変わるほどの能力ではありません)


1、どんな状況下も冷静でいられる能力
2、暗闇でも普通に見える能力
3、リミッターが解除されて、限界以上の力が出せる能力(ただし反動あり)

安価下1


では! おやすみなさい!

3

ロマンは3

めっさ面白い期待

3は厨二的で好き

でもそれ割とがっつり戦況を変えそうなきがしないでもない

3は今までの雰囲気壊すから1で良かった

たぶん火事場の馬鹿力的な事でしょ
車でお手玉はできないけど一時的に人を抱えて走る事はできるとか

まああまり多用はしてほしくないな

ボス戦程度で

外骨格出現させたり口からビーム出したりしなければそれでいいです

限界以上の射精能力かもしれない…
おつ

米国某所


「ふむ、それではあなたは昔からアルミホイルを頭に巻いていたと?」

「ええ、電波が有害である事は重々承知していました。ブッシュの心臓を貫いた弾丸も電波に誘導されていたのです」

 私は苦笑いを浮かべながらも、アルミホイルを頭に巻いた巨漢を心底馬鹿にする事はできなかった。

 何故なら世界中で起きているゾンビパニックは私の会社が率先して広めた技術の副作用であり、当時は彼と同じように『それをする事が使命である』と確信していたからだ。

(あまりに太りすぎた事で心臓に負荷がかかり、結果的に生き延びられていると彼に伝えるべきか……)

 アパートの一室。体重二百キロを越えていそうな男。頭にはアルミホイル。

 私は彼を幸運な男とは思えない。

「私は行くが、君はどうする?」

「あんた科学者だろ? 俺は科学者が嫌いなんだ。一緒に行く訳ない」

「そうか」

 残念ながらすでに職業と言う概念は崩壊している。

 私は元科学者であり、今はただの絶滅危惧種だ。

「ペットボトルの水は飲むか?」

「ああ、悪いね。喉が渇いてたんだ」

「じゃあ、行くよ」

「じゃあね」

 私は彼に背を向けた。

 自ら動く事すらままならない可哀相な男。

 彼はどう世界と折り合いを付けるのだろうか。

 これから先、食事を運んでくれるママも、おむつを変えてくれるパパもいないというのに。

中国某所

「じゃあ、そのウィルスは拡散しなかったのか?」

「恐らく。元々感染力はほぼないに等しいウィルスだった。唯一の特徴が“ひたすらにしぶとい”だけ」

「増えたりはするのか?」

「適合する宿主がいればあるいは。だが、計算では一億人に一人だ」

「……ゾンビパニックが起きていなければ私達は捕まっていただろうな」

「そうだな。まさか私達のような大学も出ていない人間が“人類進化ウィルス”を作り、手違いで外部に解き放ってしまうなど誰が予想しようか

「で、人類進化ウィルスとやらに適合したらどのような症状が出るんだ?」

「ええ、まずはインフルエンザのように関節が痛くなります」

「ふむ」

「熱は出ない。ただし、一週間ほど生きる気力を失います」

「何故だ?」

「生物としての構造がガラリと変わるからです」

「ん?」

「ああいえ、もちろん生殖行動もできますし三大欲求もそのままです。見た目も変わりません」

「???」

「うーん、私も学校で習うような知識はないので言葉にしにくいですが、化物のような力を手に入れます」

「凄いじゃないか」

「いえ、筋肉の伸び縮みが進化しただけで骨や関節の強度が変わる訳ではありません。一度や二度なら耐えられるでしょうが、多用すればすぐに動けなくなるでしょう」

「……そうか」

「元々私達に課せられた使命は人類を進化させる事。結果的に人類を超越した存在にさせる必要はなかったのです」

「他に変化はあるのか?」

「そうですね……」

「一番面白いと思ったのは、エネルギーを酸素ではなく水素から取り入れる点です」

「ほう? 今流行りの水素水か?」

「まぁ、過程は違いますが、結果として膨大なエネルギーを生み出すという点は同じです」

(水素水が本物かどうかはおいといて)

「その方が効率が良いのか?」

「そうですね……水の中でも生きられる事くらいでしょうか」

「なんと?」

「肺胞の能力が数百倍に強くなってますので、水を水素に変え、血液がそれを送り、膨大なエネルギーを得ます」

「まさか筋肉が強くなるのも?」

「ええ、水素の力ですね。だから骨や関節が先に壊れるのです。もしかしたら筋肉の付け根が千切れるかも?」

「ふぅむ、そんな怖ろしいウィルスをどうして外に出したんだ?」

「……彼女と喧嘩してむしゃくしゃしたんですよ」

「…………なるほど、やはり君は科学者ではないという事か」

「ははは」

「笑いごとではないだろう」

「いえ、ゾンビの溢れた世界で笑いごと以外は存在しませんよ」

「……まぁな」

主人公視点

「明日葉ーーーーっ! いないのかぁ!?」

 薄暗い廊下を叫び声が駆け抜けて行く。

 だが、一向に返事がない。

 ゾンビも音で反応しない所為か、廊下に出てこようとしない。

「……いや、なるほど。やはりこの施設はゾンビではなく人間が支配しているみたいだ」

「え? 何で分かるの?」

「床を見て欲しい」

 涼香の指差す先に視線を向けると、白い廊下が薄く汚れていた。

 血が付いていたのだろうか。赤い絵の具を伸ばしたような色だ。

「ここから逃げ出したのなら血を拭く必要はない。ゾンビに支配されていたらなおさらね」

「へぇ、推理とか得意なのか?」

「ええまぁ、友達がいなかったから推理小説ばかり読んでいたの」

「……ぼ、僕は友達だからな」

「……………ええ、そう、そうね」

「?」

 含みのある言い方が僕は気になった。

 今までの発言からしても、涼香は僕の事を知っている風だった。

 その理由はもしかして――、


1、オンラインゲームの知り合い?
2、ストーカー?
3、僕が記憶を失っている?


 安価下1

「ねぇ、もしかして涼香ってオーバーウォッチやってない?」

「ゲームや漫画はした事無いと――」

「リーパー使いのキルリアじゃないの?」

※リーパーは見た目死神のサイコパスっぽいおっさんキャラです。

「……………」

「チームの中でキルリアだけがリアルの情報を教えてなかったからさぁ」

「………」プルプル

「そりゃそうだよね。ボイスチェンジで低いおっさん声にして、事あるごとに汚い言葉を吐き散らしていたキルリアだって認めたくないよね?」


 瞬間、涼香は飛びあがってダイナミック土下座に走った。


「い、今までゲームで暴言吐いて申し訳ありませんでしたぁあああああ!」

「やっぱり……」

 キルリアはスキルこそ中の下だったけど、いつ誘っても参加してくれたのと、暴言の多さが面白くて仲間として認められていた。

 僕に対してはかなりキツイディスが多かったけど、まさか女の子でこんなに可愛かったとは……。

「じ、実はアギトのツイッターだけはチェックしてて、位置情報も載っていたので……」

 アギトとは僕の事だ。確かにツイッターに関しては無知でたまにしか呟かなかったから間違えて位置情報も乗せたかもしれないけど、まさかそれを頼りに来るなんて……。

「い、いつも暴言吐いてましたけど、本心ではないですから!!」

 しかもキャラまで崩壊しているし……。

「もしかして古風キャラを気どってたのも?」

「……アギトがハイスクールオブザデッドの先輩が好きだから……」

「本当はアニメや漫画も?」

「……大好きです」

 顔を真っ赤にして頷く涼香。何から何までウソだった訳か……(苦笑)。

「じゃあこれからはキルリアって呼んだ方が良いかな?」

 騙されていた仕返しとして、わざと言ってみる。

「……涼香がいいです。はい」

「まぁ僕も名前に関しては嘘を吐いてたしね。おあいこにしとってあげるよ」

「……ありがとうございます」

「もしかして現実では敬語キャラなの?」

「はい……ごめんなさい」

「何から何まで違うんだね。どっちが本性?」

「……どっちも違うかもしれません。本当の私は――」


 バァンッ!!

 突如として、扉が開かれる。

 そこには、僕の良く知る女性の姿があった。


「……に、兄さん」

「明日葉……っ」


 黒髪に眼鏡、クールな表情の中に見え隠れする優しさ。

 僕の妹だ。間違いない。


「大丈夫だったか!?」

「大丈夫。絶対に会えると思ってた」

「ああ、僕もだ!」


 明日葉を抱きしめると、後ろに可愛らしい女性の姿があった。


「彼女は?」

「あ、えっと……」

「お初にお目にかかりますお兄様! 私は美佐子と言いまして、明日葉先輩と――」



「美佐子はただの後輩!!!」


「明日葉?」

「せん……ぱい?」

 妹から発せられた大きな声。クールな彼女は大声を出す事などほとんどない。

 見ると美佐子ちゃんの顔が真っ青になっていた。何か信じられない事が起きたみたいに。

「……あっ」

「………」

 ハッとする妹と、怒りさえ含む美佐子ちゃん。

 僕は何となく察した。



1、妹と美佐子ちゃんはただならぬ関係だと。
2、二人は仲が悪いと。
3、彼女は男が嫌いなのだと。


 安価下1
 

3

「あ、ご、ごめん。女子校に男が来るなんて嫌だったかな」

「……お兄様は黙っててください」

「あ、はい」

 どうやら違ったみたいだ。

 美佐子ちゃんは妹を睨みつけたまま動かない。

 妹は罰が悪そうに彼女を見つめている。

 一体何が……。

「だからキスも許さなかったんですね」

「……ごめん」

 キス? 魚の? え?

「私達が田中に犯されてる時も、先輩はお兄様の事ばかり考えていたんですね」

「それは違う。私は……」

「言い訳は聞きたくない!! あんな汚らしい物をぶちこまれても我慢してきたのは全部先輩の為だったのに!!」

「……っ!」

 僕も涼香も察してしまった。

 新しい世界は残酷で、妹は知らず知らずのうちに人を傷つける側に回ったのだろう。

 私達と言うくらいだから、きっと他にもいるんだろう。

「裏切り者! 私は! 私はっ!!」

「美佐子……」




「今の話は……本当なのか?」




 美佐子ちゃんのさらに後ろ、下着姿の女の子が声を発した。

 目つきは鋭く、金に近い茶髪、いかにも不良と言った感じの女の子。

 茫然とした表情で、彼女は妹に聞いた。

「……ごめん」

「……は、ははっ、はははっ! わ、私達が処女を失ってる間、お前は兄貴の事ばかり考えてたのか?」

「それは……」

「黙れよっ!! ぶっ殺してやる!!」

「っ!!」

 殺気立つ不良娘に対し、妹はビクリと肩を震わせた。

 僕は妹を護る為に一歩前に出る。

 すると不良娘と美佐子ちゃんを押しのけ、熊のような男が僕の前に現れた。

 顔は不細工を極め、肌は脂ぎっている。パンツ一丁で腹はぼっこりと出ていて毛が汚らしく生えている。

「おいおい、お前達の愛するお姫様がまさかお前達を裏切ってたとはなぁ?」

 田中という二人を犯した男だろう。確かに女子なら生理的に受け付けない存在と言っても過言じゃない。

「くそっ、こんな事なら最初から……」

 涙を流しながら怒る不良娘の肩を田中が抱いた。脇毛が汚らしく茂っており、妹にも涼香にも見せたくはなかった。

「だから言っただろ? あいつの事を護っても無駄だ。俺にやらせとけってな」

 下卑た笑いを浮かべながら、田中が勝ち誇る。

 このままでは妹が殺されたり犯されたりしてもおかしくない。



1、逃げよう
2、戦おう
3、説得しよう


 安価下1

2


 場合によっては戦うという意思を示そう。

 しがらみを残したままではストレスが強すぎる。相手を屈服させてでも関わらないと誓わせるべきだ。

(……ただ、勝てる気がしないんだよなぁ)

 相手は二メートル近いんじゃないかと思えるような巨体。対して僕は妹よりも背が低い173センチ。

 格闘技経験もなく、喧嘩すらしたことない。

(刀はある。だけど脅しになるか……?)


「……あんたらと妹に何があったか知らんが、僕達はここを出て行く。二度と関わらないでくれ」

「何を勝手なっ!?」

 美佐子ちゃんが怒りをあらわにする。

 断片だけ聞いてると最もな怒りだ。

 だが、ここで引く訳にはいかない。

「勝手じゃない。妹を責めるのはお門違いだ。善悪で言うなら中学生を襲ったそこのおっさんを責めろ」

「正論ですね」

 涼香がうんうんと頷く。頼むからキルリアにならないでくれよ。

「田中! どうするんだよ!!」

 不良娘の叫び声に田中は下卑た笑みを浮かべたまま顎に触れた。

「そうだなぁ、お前らのま●こも気持ち良かったが、そこの二人の味も知りたいしなぁ……」

 ……こいつ最低だ。

「お姫様のお兄様とやらも、どうやら喧嘩すらしたことのないもやしのようだし? 空手も柔道も経験のある俺がボコボコにしてやるのもいいな」

 マジか……、やばいな。

「……分かった。やるというのならこちらにも考えがある」

 僕は刀に手をかける。

 あくまで脅しの手段だが、最悪槍のように突き刺せば素人でも武器になるだろう。

「どこから持ってきたのかしらんが、お前の腕力で俺を斬り殺したり刺し殺したりできると思ってるならやって見るが良い」

「別に殺せなくても良い。病院の機能していない今、傷さえつければお前は痛みと共に死ぬだろう」

 はったりにはったりを重ね、脅しを掛けて行く。

 腕力で勝てなくても口なら負けていない。平和な世界において喧嘩で勝てる相手じゃないけど、この世界なら負けはしない。

「ふん、減らず口を。そうなったら死ぬ前にお前の妹を犯しまくってやる」

「……っ!」

 そうか、そうだった。俺には二人も護らなきゃいけない人がいた。

 妹はもちろん、涼香だってこんなおっさんに犯されて欲しくない。

(こうなったら……)


1、二人を外に逃がそう
2、刀を抜いて美佐子を斬ろう
3、和解を提案しよう



安価下1

1

正直妹の自業自得過ぎてなんかな…
というか、近親相姦ネタは必要だったのか?

「二人とも、外に逃げろ。後から追いかける」

「え、でも」

「……兄さん」

 心配そうに僕を見つめる二人。

 いや、二人がいない方がマシと言う話なんだけどな。

「明日葉ーーーーっ!!」

 不良娘が妹に殴りかかろうと飛び出す。

 僕はとっさに刀を不良娘に向けた。

「っ!!」

 刀の切っ先が彼女の顔に向くと、理性を取り戻したのか立ち止まる。

「明日葉ぁ、お前、逃げたらぶっ殺すからな」

「……藍子」

「私も許さないですからね」

「……美佐子」

 なんだか身内が責められると僕の心まで痛くなってくるな。

「って、早く行け! 僕を信じろ!」

 二人を突き飛ばすように追い払い、三人と対峙する。

 改めてみると、漫画などと違い女子中学生は子供にしか見えない。正直負ける気がしない。

 対して巨漢のおっさんは勝てる気がしない。ひょろガリ主人公がおっさんを圧倒するなんて夢の話なのだ。

(……問題は僕の心か)


1、三人とも殺すのがベストか……
2、女子中学生二人は生かすべきか……
3、こんな世界でも人殺しは駄目だろう……


安価下1

2

(元はと言えば妹が原因でこうなった部分もある……、やっぱり二人を殺すのは間違ってるか……)

 殺意さえ持っている二人を殺さないメリットがあるようには思えないけど、人間として守るべき心はある。

 だけど、目の前のおっさんは女子中学生二人を犯し、さらに俺の知り合いを犯そうとしている。生きている価値などない。

「……えっと、藍子ちゃんと美佐子ちゃん…だっけ? 二人は下がっててくれないかな」

「何で貴方の言う事を聞かなきゃいけないんですか?」

 美佐子ちゃんが反抗するように前に出てくる。

 瞬間――、

「良い子だ美佐子!」

 と、田中が美佐子の背中を蹴飛ばした。

「……っ!」

 とっさに僕は彼女を抱きかかえるも、それを見越していた田中が拳を大きく振り上げた。

「お前のような顔だけが取り柄の男は大嫌いなんだよ!!」

 美佐子ちゃんの頭ほどありそうな拳が僕の頬を破壊しようとした。

(くそっ!!)

 僕はせめてもの抵抗で田中の拳を掴もうとした。衝撃を緩和できるかと思ったからだ。

 力を、欲した。



 ――バキンッ!!


「あ……」

「え?」

 僕は一瞬、何が起きたか分からなかった。

 田中の拳を掴もうと全身に力を込めた所までは覚えている。


「……ぁ」


 じゃあ、僕が抱きかかえている“身体が半分に折れ曲がった少女”はなんだ?

「ぐ、ぎゃぁああああ!?」

 “僕の手の中で肉塊になった田中の拳”はどういう原理で?

「い、いや……」

 藍子ちゃんが腰を抜かしている。

 それもそうだろう。美佐子ちゃんの頭と踵がくっつき、田中の拳が砕け散った光景を見せられては正気でいられるはずがない。


 そして、僕はどうなっているかというと――、


(どれが田中の手で、どれが僕の手か分からないな……)


 ぐちゃぐちゃに潰れた手。握った拳がさらに強い力を持つとどうなるんだろうと妄想した事があるけど、手の甲を突き破ったりはしないみたいだ。

 ただただ指の骨が砕けるだけ。それだけだ。

「ごぼっ……」

 美佐子ちゃんの口から大量の血が流れ出た。

 ……殺すつもりじゃ、なかった。

ちょっとご飯食べて来ます。……なぜご飯前にこれを書いたのか。では。

やっぱりリミッター解除より別の能力の方が良かったな
なんかいかにも主人公補正とかご都合主義って感じになっちゃうし

うわぁ噛まれる!

覚醒・・・!

うわぁ殺される!

覚醒・・・!

だけはやめて欲しい。

悲惨な結果になってるから別にお約束主人公っぽく無いんじゃ無いの
もっとかっこよく発動してくれて女子侍ってハーレムにしたかったけど打ち砕かれたわ、でも面白強い続き読みたい

ご都合主義になれば良いのですが……

また少し中国某所にもどります!

リミッターが外れるとはいえ過剰じゃね?

中国某所 

「ヤンさん。さっきはなんであんな嘘を吐いたんですか?」

「ああ、彼女と喧嘩した事?」

「そうですよ! ウィルスを流したのは意図的な事だったのに!」

「それを言った所であいつらが協力するとは思えん」

「……まぁ、あの人達はいち早く電波の有害性に気付いた癖に、最後まで黙ってたんですからね」

「彼らの立場を考えれば、仕方ない事だ」

「一人っ子政策において、労働力として戸籍すらなく生を受けた子供達」

「富豪の一人が彼らを買い取り優秀な者を選び抜いていった」

「彼らはえっと、自分達の事をなんて呼んでるんだっけ?」

「白旗(はくき)と名乗っています」

「……アレルギーみたいな存在だな」

「清潔な環境を手に入れたからこそ生まれた病気と言う意味ですか?」

「いや、アレルギー自体は昔からあった。ただ、医学が追いついていなかったり、淘汰されたりで気付けなかっただけだ」

「……この時代だからこそ人類を滅ぼせたという事ですか」

「ああ、文明が彼らを育ててしまった。因果な事だよ」

「でも、あれが適合すればきっと……」

「はは、どうだろうね。結局の所、私達は日本人に頼まれただけの雇われだ」

「花村さんでしたっけ、あの人は一体何者なんでしょう? 世界が滅びるのを知っていて、私達にウィルスを作らせる資金があるのに、直接的な解決はしようともしない」

「誰でもいいさ。この先の世界がどうなろうと私には関係ない」

「……本当に死ぬのですか?」

「それを死ぬというのならな」

「コンピューターに意識を投影し、プログラムの中で生きる。それを私は生まれ変わるとは認めません」

「ならば自殺だ。私は自殺する」

「……分かりました。管理は任せてください」

「ああ、良い夢を見させてくれ」

「……はい」

「……逝ってしまわれた」

「ヤンさん、あなたはご自身を科学者だと認めていませんでしたけど、私にとってあなたは十分科学者でした」

「……一人、か」

「ふふっ、趣味のコスプレも見てくれる相手がいなければ意味がないわね。本物のチュンリーが現れたって日本でも人気が出た事もあるのに……」

「………進化ウィルス、か」

「ヤンさんの夢、私が適合していればあるいは……」



 ビーービーーッ!!



「反応!?」

(ヤンさんが開発した有害電波を利用して過剰に水素が消費された場所を特定するプログラム)

「………………あっ、日本?」

(……ヤンさんの夢、私が引き継ぐべきだわ)

「この適合した人、恐らく筋肉の暴走で身体が壊れているはず。下手すれば骨が砕けたり筋肉が剥離していてもおかしくない」

「私がいればこの人を何とかする事ができる……」

(小型飛行機と船を使えば三日で着くはず)

「待ってて、ヤンさん………と私の夢」

また小一時間離れます!


安価おいておくのでお願いします!


主人公の身体を治す方法


1、他者のアミラーゼを口移しで接種する
2、母乳を接種する
3、他者の尿を直接飲む
4、他者の血を飲む

安価下1

お願いします!

2

主人公視点


 痛みはなかった。


「あ、あぁああああぁあぁあ!?」

 悶える田中を見下ろしながら、僕は潰れた左手を上下に振る。

 ぼとり、ぼとり、人差し指と薬指が落ちた。

 身体は痛みを感じているのか、左腕がかすかに震えている。

「ば、化物……」

 不良娘が恐怖に顔をゆがめている。

 化物、化物か。確かにこれは化物と言われても不思議じゃない。

(僕はすでにゾンビと化しているのか?)

 すでにこの町から去った可能性のあるゾンビと同じ存在になっているとか。

(あの一週間の病気がきっとこれを引き起こしたんだろう)

 今なら分かる。僕は一週間で化物になったのだ。

 だけど、不思議とその結果を受け入れていた。

 すでに狂った世界だ。ただの人間でいるより妹を護れる可能性は高まる。

「えっと……藍子ちゃんだっけ?」

「ひっ!?」

「あ、落ちついて、ちゃんと距離を取るから」

「……な、なんだよ?」

「あのさ、確かに妹がした事は君に対する裏切りだ。許しがたいのも分かっている」

「………」

「だけど、さっきも言った通り、諸悪の根源はこの男だ。だから――」


1、僕が彼を殺すから妹は許して欲しい。
2、君が殺して終わらせてほしい。
3、二人とも殺してあげるから終わりにしよう。


 安価下1

1

「僕が彼を殺す。だから妹の犯した罪はなかった事にして欲しい」

「なかった事……?」

「そう、妹はきっと君に対する罪を償えない。君が許したいと思っても、彼女の強さがそれを許さないだろう」

 妹はきっと土下座だって靴舐めだってする。

 だが不良娘はそんな事を求めているんじゃない。ただ自分と同じ所に来てほしいだけだ。

 そんな事は出来る訳がない。妹は強くて優しくて、不良娘にとって一つか二つ上の存在であり続けるだろう。

(だから……なかった事にする)

「じゃあ、あたしは何なんだよ。こいつに犯され、汚され、大切なあんたの妹に裏切られた私は一体何なんだよ!」

「……それは」



1、僕が責任を取ろう
2、そこからは君が決める事だ
3、分からない



安価下1(連続で申し訳ない、不良娘をメインキャラにするか決めかねているので)

1

2

1

何だかんだいいヤツだった主人公もクソキャラになっちゃったなぁ
なかったことになんて出来る訳ないだろうに…

「妹の不始末だ。僕が責任を取ろう」

「……本気で言ってんのか?」

「ああ、僕は妹の想いを受け止めない。同時に君さえ良ければ受け皿になろう」

 幸い顔のつくりは似てるし……なんて言うのはおかしいか。

「……あたしの為に、こいつを殺して明日葉の気持ちに答えないってのか?」

「先に証明する」

 僕は刀の先を田中に向けた。

「ひっ!?」

 痛みですっかり弱気になっている田中は、片手で刀を持っている僕に怯えていた。

「あの世で償え」

 右目から後頭部へと刀が突き刺さる。さっきの力の余韻か、刀はスゥと頭蓋骨を抜けた。

「……が、あ、い……こ」

 血を噴き出しながら倒れこむ田中。僕と不良娘はそれをただジィと眺める。

「……こいつに汚されたあたしを受け入れてくれるのか?」

「正直な話、それは関係ないけど妹の罰として受け入れようとしている。それでも良ければ」

「どうせあたしは大切な人に捨てられた可哀相な女さ。あんたが面倒見てよ」

「分かった。でも君はまだ女子中学生なんだ。もっと可愛くしてくれた方が好きになれるな」

「ばっ!? ちょ、調子にのんじゃねぇ!!」

 顔を真っ赤にする藍子。大丈夫、怒ったり恥ずかしがったりする元気があれば何とでもなるさ。

(問題は……妹だな)


 

というより自分が興味ない人間に対して冷たいだけじゃね?
まあ俺はそう思ったから1には違和感を感じた(安価取れなかったから仕方ないね)

裏切るのはいつだってできるやん?(ニッコリ)

せやな

「どうしたんですか!? その手!?」

 藍子と僕は二人の下へ向かった。

 明日葉は僕の手を見て卒倒し、涼香は躊躇う事無く僕の腕を掴んだ。

「いや、ちょっと暴走して……」

「ゆ、指が落ちる暴走って一体何があればそうなるんですか!?」

「……リーパーが現れたとか?」

「冗談は怒りますよ?」

 何だかすっかり涼香の尻に敷かれている感じはある。

「……ちょっとあんた、あたしの旦那にちょっかいかけないでくれる?」

「え?」

 藍子が涼香の腕を掴んだ。なるほど、今時の女子中学生は独占欲が強いらしい。

「旦那って……え?」

「いや、それがさ――」


 ぽつり。


「雨?」

 ぽつ、ぽつ、ぽつ、ざぁああああああああ!!

 突如としてバケツをひっくり返したような大雨に、僕達は度肝を抜かれた。

(……あれ? 手が痛い?)

「ぐっ……い、いったぁ……」

「アギト!?」

「どうしたんだよ!?」

 心配する二人の声が遠くに感じる。

 襲いかかってきたのは指をむりやり引っこ抜かれたような痛み。ギリギリとペンチで指の付け根を潰すような。

米国某所

「なんだよこれ!? のろまのゾンビが走りだしたぞ!?」

「がぁああぁぁあぁあぁぁぁあ!」

「サノバビッチ! 間抜け面のまま全速力かよ!?」

「ぐっ!? ち、力も強い!?」

「ヘルマン!? うわぁあああ!?」


英国

「助けてぇえええ!?」

「がぁぁあああぁああ!」

「くそがぁ! 離せぇええええ!」

「ごぁあがぎぁああ!」


某国某所


「雷雲や雨の影響で電波が乱れると、ゾンビが活性化するだと?」

「はい、人間だった頃のように動き回り、五感の代わりに電波を介して人間を探すようになります。幸い知恵はありませんからドアノブを回したり階段を昇ったりする事はできません。ですが痛みを知らない彼らは窓ガラスや木のドアくらいならブチ破るでしょう」

「……他に考えられる異変の条件はあるか?」

「後は………いえ、これは都市伝説に近い話でして……」

「言え」

「……実は、日本の大学が開発した次世代コンピュータージュゲムというのが、インターネット等を利用して自我を持つ事に成功したとか」

「それが?」

「……電波を介して人間を操る事も出来るだろうと言われていました」

「まさか……」

「ゾンビを操るくらいは……」

「やはり神は世界を滅ぼそうとしているのか?」

山中女子中学校グラウンド


「あぁあぁがあぁあぁああ」

「げがぎががががが」

「ごぎょ、ごげ、ごがががが」


「あれ……何?」

「わ、分かんないよぉ」

 明日葉達と別の校舎で、沙織と美咲はひっそりと生き延びていた。

 少ないお菓子を分けあって、安全な教室で毎日救助を待っていた。

 だが、突如降り始めた大雨でゾンビ達の様子が激変しているのを見た二人は、希望を失った。


 ――ガシャァアアンッ!!


「ひぃ!?」

「入ってきた!?」

「ごぎょげがが」

 まるでマリオネットのように首を揺らしながら、人間離れした動きで二人を囲むゾンビ達。

 何十人ものゾンビが彼女達を取り囲む。

「か、神様……」

「くそっ、なんで急に……」

「がぁあぁぁぁあぁああ!!」


 血飛沫が教室に舞う。

 二人にとっての不幸は、ゾンビに襲いかかられただけではなかった。

「い、痛い! いたいよぉ!!」

「が……っ、ぐっ」

 獣のように動き回るゾンビ達は二人を肉片一つ残さないように“食し続けた”。

 雨が降った地域では、同様の現象が多く見られ、油断していた生き残り達が次々と殺されてしまった。

 それは雲がなくなり太陽が見えるまで続いた。


 山中女子中学校に雨が降り始めてから太陽が見えるようになるまで、およそ――“六時間”かかった。


 第二章 地獄の始まり

今日はここまで!

雨が降った時のゾンビは、どのゾンビ映画よりも探知能力に長けています。

女子中学校の寮で用意できそうな物で脅威から身を守る術を考えてください。

メンバー
・主人公 左手が使えないが動く事はできる
・涼香  自他共に認めるヘタレ
・明日葉 優秀だが藍子と溝が出来ている
・藍子  口は悪いがよく働く


安価下>>125までか、もしくは明日続きを始めるまでで安価して頂いた方法で身を守ります。

※ゾンビの異変に気づいてから襲われるまでおよそ3分です。


では!

防火シャッターや非常扉を閉鎖、出入り口が二ヶ所以上あるところに立てこもる

消火器やモップなどの柄、などを調達し、可能な限り厚着して露出を減らす

可能なら寮中のケータイや固定電話を鳴らしまくり撹乱してみる

屋外に出るのは死にコースか

階段が二ヶ所以上あるなら上の階の適当な部屋で迎撃する
武器はそれなりの重さがあって投げやすい物と
1メートル前後の棒状の物かそれに近い物を

ロープがあるなら窓際で垂らさないでおいて
階段を塞がれた時の為の脱出口としたい

AED確保しといたほうがいいかな

涼香と藍子で1階の出入り口を鍵ごとしめてから、窓がある部屋の扉も閉めておく
その間に主人公と妹で油などの滑るようなものと音を出せるものを集めておき、音を出せるものはいくつか残して窓から投げ囮にする
終わったら(あるなら)最上階に避難し、途中各階で防火扉を閉じつつ階段に油をこぼしていく
加えて最上階にの防火扉の前には家具などでバリケードを建設していく

いけるならペットボトル、釘、ライター、ドライアイス、ガソリンを集めて有事に備える

音は聞こえないんじゃなかったっけ?
電波が重要だから電気機器を集めた方がいいかも

沢山の生き残る知識ありがとうございます!

この物語の前提として、

ゾンビ側

1、ゾンビがいくら頑張っても日本の建物で破壊できるのは木造建築アパート(かなり古い奴)の扉レベルまでとする。
2、ゾンビの上をゾンビが這い上る事があっても、階段を駆け上る事はできない。
3、雨が降った時のゾンビは電波を介して人間を感知する。雨にぬれている限りは持続する。
4、屋内で雨が入らなくても、身体が濡れている限りは雨ゾンビのまま。乾けば下に戻る。(ただし、口を開けた状態で内臓に雨が入れば長時間そのまま)
5、肩を回す事はできない。顎を動かして噛みつく事はできる。雨ゾンビは筋肉を動かして肩を回したような状態にする事は可能。(関節は破壊されていく)

人間側

1、怪我の治りは現実と同じレベル
2、捻挫レベルでは走る事ができるが、骨折で走る事は不可能。(ひびが入ったくらいでは大丈夫な場合もある)
3、ゾンビに噛まれた場合、感染症と同じで助かる場合と助からない場合がある。ただし、判断に困る為一分以内に二か所噛まれた場合は絶対にアウト。
4、火事場の馬鹿力は存在するが、意図して出せる事はない(うぉおおおおとか言って出る物ではない)。
5、主人公以外の登場人物はどんなフラグがあっても状況によっては死ぬものとする。(逆に主人公のみはフラグによってどんな状況でも生き残る場合がある)

「ぐっ……だ、大丈夫」

 雨のせいだろうか、人間らしい痛みが左手と左腕の関節を襲ってきた。今は耐えられない痛みではないが、走りまわったりできそうもない。

「手当しますので中に入りましょう。えっと、金髪のあなた、薬箱のようなものは置いてあるかしら?」

「あ、ああ、取ってくる!」

「キルリア……? 手当とか……できる、のか?」

「その名前で呼ぶなんて大分混乱していますね。大丈夫、全く自信はないけど医者の娘として出来る限りの事はするわ」

 医者の娘だったのか。これから先も頼れそうだな。

「……っ!」

 焼けつくような骨の痛み。雨の影響がここまで強いとオカルト染みた妄想が膨らんでくる。

(考えられるのは太陽光、もしくは電波……)

 おじいちゃんの家に遊びに行った時、箱型のテレビの上にアンテナ受信機がついていた。おじいちゃんは「雨の日は映りが悪いんじゃあ」と言っていた。

 もしかしたら電波は雨や雲に影響されるのかもしれない。

「……ねぇ、アギト」

「どうした?」

「あれは……何?」

 涼香の指差す方向。

 寮から校舎へと向かう道、大量の雨に妨げられた視界の先にいたのは――、

「がぁごgぁがぁがぁlげぁがぁ」



 ――ゾンビの群れだった。



(動きが変わった!? 雨の所為か!?)

 幸運だった。

 もし雨で自分の変化を気にしていなければゾンビ相手に油断していただろう。

「涼香! 扉を閉めろ! 明日葉! 起きろ! 寝てる場合じゃない!」

「……っ!」

 流石に涼香も迫りくるゾンビに対して危険を感じたのだろう、すぐに扉を閉めた。

 だが、寮の扉は同時に何人も入れるように両開きのドアとなっている。さらに見た目を重視してガラス扉だった。

「締めました! でも鍵はかけれません!」

 悪戯で鍵を閉められないように、両側ともキーが必要になっていた。

「どっちみちあの勢いじゃ破られる! 向こうの防火扉を閉める準備をしてくれ!」

「は、はいっ!」

 防火扉は中央階段から東西に分けるように締める様式となっていた。

 そして、僕は痛みで藍子が走って行った方角を見ていなかった。


涼香が向かった扉は、

1、西
2、東


安価下1コンマ判定 右端の数字が、

偶数 藍子は東に向かった
奇数 藍子は西に向かった


同じ安価での判定ですのでお願いします!

「……あれ? 私……」

 ガァンッ!!

「……っ!?」

「明日葉、振り向くな! 立て! こっちだ!」

 僕は外を見ようとする明日葉の顔をグイと前に向け、右手で思い切り引っ張り上げた。

「痛い!」

「あ、ごめん、でも走れ!!」

 どうやらまだ力加減ができないらしい。握りつぶさなくて良かった。


 ガシャァンッ!!


「走れ! 走れ走れ!!」

 僕も明日葉も一目散に走り、防火扉の隙間をくぐった。

「んっ!」


 ガァンッ!! ガンガンガンッ!!

 
「今のは一体……」

 相変わらずクールな妹だ。この状況でも声のトーンが変わっていない。

「アギト分かる?」

「……たぶん、雨の影響でこうなったんだろう。今までのゾンビとは何もかもが違う」

「ドアも開けられる?」

 明日葉の疑問に僕は即答する。

「もしそうなら抵抗するだけ無駄。殺されよう」

「……確かに」


「薬箱! 持ってきた!」


 藍子が真っ白な箱を抱えてこちらに走ってくる。

「ありがとう、手当てするから貴方達は向こうの非常扉がちゃんと閉まってるか確認してきてちょうだい」

「何で向こうに非常扉がある事を知ってんだ?」

「貴方達の先輩だから」

「わ、分かった! 見てくる!」

 走り去る女子中学生二人。開いてない事を祈るばかりだ。

「……痛そうですね」

「うーん、もう痛みが振り切れて熱いだけになったかも」

「私が足手まといだからこんな事に……」

「……涼香」

 とても死神使いのキルリアとは思えない発言に僕は笑いそうになった。

 だけど、彼女の泣きそうな顔を見ると笑うよりも先にする事があるみたいだ。



1、頭を撫でる
2、頬を撫でる
3、肩を撫でる
4、キスをする
5、励ます


 安価下1

「……え?」

 僕は涼香の頭を撫でた。いや、もちろん犬みたいに撫でまわしたりはしない。妹が満点のテストを渡してきた時に誉める感じで。

「お前を護るって言ったろ。その対価を貰おうと思って」

「……あ、いえ、それはっ……わ、私が貰ってる感じですが?」

 あわあわと慌てる涼香。なんて可愛い人なんだ。

「涼香の事をもっと知るまで、僕は死ねないな」

「わ、私の事……ですか?」

「うん、とりあえず一つ分かったのは、涼香の頭は凄く小さくて撫でやすいって事」

「……高揚しすぎてデス・ブロッサム撃ちたいです」※リーパーの必殺技で敵を一網打尽に撃ち抜く銃技。

「いや、僕も死ぬから」

「ふふっ、冗談です」

「扉は全部大丈夫か」

 一応二階へと非難した僕達は藍子の部屋で作戦会議を開いていた。不良娘の割にピンクの小物が多く、キティちゃんのような女の子が好きそうなデザインが目立つ。

「お、おいっ、あんま見るなよ馬鹿!」

「旦那として嫁さんの趣味は知らないとね」

「……ぐぅ」

 年下の不良娘妻なんてどれだけの属性を持っているのやら。

「兄さん、それは本気なのですか?」

「明日葉……」

 そうだった。トラブル続きで忘れてたけど藍子と明日葉は……。

「明日葉、あんたのした事は許せない。あんな奴に中だしされたあたしの気持ちなんて一生分かりやしないだろう」

「……藍子」

「だけどな、あたしはあの時本気だった。あんたと違って本物の為に身体を張ったんだ」

 藍子はおもむろに立ち上がると、あぐらをかく僕の膝の上に乗った。

「藍子っ!!」

 妹が鬼のような形相に変わる(初めて見た)が、藍子は動こうとしなかった。

「本気で生きればいつか報われる。あんたの欲しかった兄貴はあんたの所為で傷つけられたあたしの物になったんだ」

「……っ」

「違うか?」

 藍子が僕の目を見た。明日葉に見えない位置だった所為か、彼女は今にも泣きそうな顔をしている。

(本当は辛いんだ。今でも妹の事が好きで、でも許せなくて……)

 何とかしてやりたいと思った。

 でも、女性同士の恋愛な上に妹は家族である僕を想っているという。

 複雑すぎてどうすればいいか分からない……。


 ただ、一つ言える事があった。

「明日葉、僕は君の兄だ。それは一生揺るがない。何よりも固い真実だ」

「……はい」

「だから妹の償えない罪は僕が引き受ける」

「えっ?」

 妹の顔が絶望に染まる。

 僕の答えを察したのだろう。

「藍子ちゃんの気が済むまで僕は彼女の物だ。もちろん所有物と言う意味ではない。心と心の繋がりだ。彼女が君に全力で示した絆に対し、僕は全力で返さなければならない」

「……………っ!」

 妹が泣いた。泣いて飛び出した。

「明日……っ」

 哀しそうな顔で手を伸ばす藍子。今すぐ追いかけたいのだろう。

「……私が行きます」

 涼香が代わりに妹を追いかける。本当にいてくれて良かった。

「ところでえっと、名前……」

 他人に名前を聞くのも恥ずかしい年頃か。可愛いな。

「この世界ではアギトで生きて行こうかと思ってる」

「アギト?」

「ああ、えっと、オンラインゲームの名前なんだけど」

「どんなゲーム? あたしゲーム実況とか良く見てたから知ってるかも」

「オーバーウォッチって言うんだけど」

「あ、え? もしかして……え?」

 藍子の顔が真っ赤に染まる。

 もしかしてこのパターンは……。

「チーム救世主≪メシア≫のアギトさん!?」

「あ、ああ、まぁ、チーム名なんかあったっけ?」

 そう言えばチームの一人がゲーム実況してるって言ってたっけ。僕達の声も反映するからって。

(いつか見ようと思ってたけど、まさかこんなつながりが出来ていたとは……)

「あ、あた、あたし……、アギトさんののんびりした口調から繰り出される一撃必殺のスナイパーに憧れてましたっ」

「そんなのんびりだった……かな?」

 たしかにキルリアはもちろん仲間の中に暴言を吐く奴は多かったけど……。

「まさか明日葉のお兄さんだったなんて……」

「偶然だね、あはは」

「………………っ!」

 今更距離が近い事に恥ずかしくなったのか、藍子は飛びのいて距離を取った。

「……明日葉とずっと仲直りできないのかな…」

「藍子はしたいの?」

「………うん」

 僕がアギトだと知ったからか、随分と素直になってくれた。

 このまま説得したいけど、妹の為に彼女の意思を曲げるのも誠実じゃないし……。


「アギト! 妹さんが外に出ようとしています!」

「!!?」

「放してください」

「落ちつけよ明日葉、今外に出て行ったらどうなるか分かってるだろ?」

 どうやら僕は妹を過大評価していたようだ。

 彼女ならきっと分かってくれる。分かって全てが上手く収まると、楽観視していた。

 だが、妹は少し出来が良いだけで、結果的に友達を裏切る事をしでかすような子だった。その辺の中学生と大差なかったのだ。

「逃げるのか?」

 藍子が勝ち誇った風に言った。それが強がりであると僕にはすぐ分かったが、明日葉は肩をピクリと震わせた。

「何とでも言いなさいよ。私が全部悪かったんだから私が責任を取る。だから貴方は兄さんに付きまとわないで頂戴」

「……ふん、それはあたしの勝手だ。アギトがあたしの憧れのゲームプレイヤーだって知ったからにはあんた関係なしにあたしはアギトと一緒にいる」

「……っ! それじゃあ出て行く意味がない!」

「出て行く奴に関係ないだろ? 勝手に妄想して満足すればいいじゃねぇか」

「藍子……、そんなに私の事を嫌いになったの?」

「ああ今の明日葉嫌いだね。お姫様だった頃の綺麗な瞳が澱んじまってる」

「……っ」

「アギトさんだってそう思うだろ?」



1、思う
2、思わない

安価下1

2

「いや、明日葉の目はずっと綺麗だよ。藍子だってそう思ってる」

「……っ!! ば、ばーか! そんな訳あるかばーか!!」

「藍子……っ」

 顔を真っ赤にして否定する藍子、嬉しそうに涙ぐむ明日葉。うん、なんだこの百合百合展開。

「二人とも仲直りするまでこの部屋から出るな! お兄ちゃん&旦那命令だ!」

「「へぁ!?」」

 僕は涼香の手を引っ張って部屋から飛び出した。

 きっかけさえあれば仲直りできる。


 だって元々は好き合ってた二人なのだから。



いったんここまでです。


かなり重要な多数決安価するのでお願いします!


1、この女子寮を拠点にしばらく生活する
2、新たな場所を求めて旅に出る


安価下>>147まで多数決

動かなければ安定を得られますが、街はどんどん変わっていきますし食料も減って行きます。

逆に動けば危険性が増します。



ご協力お願いします!

2

安易に仲直りしないで欲しかったな。本気で好きだったからこそ裏切られたら絶対許せないはず
可愛さ余って憎さ百倍っていうし女の恨みは怖い。人の心を弄んでおいてそれはないだろう

こんな世界で喧嘩してたらどっちも死ぬエンドしか見えないし
ゾンビ映画的に

>>144 そこは考えましたが、人って意外と自分が割を食った時は許してしまう事があるんですよね。それに寮住まいだった藍子にとって彼女(彼)だった明日葉は全てであり、しかも実の兄を好きと言う「弱い部分」を見てしまった訳で。

まぁ、しこりは確実に残っているので主人公がどっちかに偏ると爆発するかもしれませんね!(無責任)

では、2の外に出る方向で行きます!

都内某所

「……去った、のか?」

「どうやら雨に濡れると暴走するみたいね」

「この雨が異様な酸性雨である事と関係あるのだろうか?」

「貴方が禿げている事と関係ないと思うわ」

「ばっかもーん! ワシは人類の未来のために禿げたんじゃ! 君のような大学生が弄って良い事じゃない!」

「でも、私の身体には興味があるのでしょう?」

「……ど、どどど、童貞ちゃうわい!」

「ふふっ、四十近く離れてるのに貴方の方が可愛く見えるわ」

「科学者はいつまで経っても子供なんじゃい!」

「……真面目な話、花村さんの計画は実行可能なんですか?」

「まぁ、あいつも変わった生徒だったな。二十年前、まだ携帯が普及し始めた頃から電波の危険性を訴えていた。学会の邪魔がなければ今頃はヒーローになっていたじゃろう」

「花村さんの子供なら欲しいかも」

「むっ、この世界で子供を産むなんて自殺行為じゃぞ!」

「あー私一回子供産んでるんで大丈夫だと思いますよ。なんならまだ母乳出るんで飲みます?」

「ばっかもーん!!」

「www」

米国某所 暴徒集団リガール

「へいボーイ。お前の持っていたこの装置はなんだ?」

「そ、それは大事に扱ってくれ! 壊すとマズイ事が起きる!!」

「俺はなんだと聞いているんだが?」

「ひっ!!? そ、それは――」

「ベン! 行っちゃだめ!」

「ははっ、元気の良い姉ちゃんだ。だが周りを見てみろ、ここには男しかいない。その意味が分かるか?」

「……………ベン、愛してるわ」

「チェルシー、僕もだよ」

「さっきから俺の質問に応えず二人でいちゃつきやがってぇええ!」

「答えよう、リガールのリーダーさん」

「……早く言え」

「それは音声認識の電波発生装置。設定者の声に反応してゾンビが動き出す」

「……おい、それは――」


『発動、“この場にいる全ての人間を喰らい尽くせ”』


「な、何を!?」

「ひぃいいい!? ゾンビ共が暴れ始めた!?」

「ぐぎゃぁあああ!? か、噛まれたぁ!?」

「こ、こいつら階段を昇ってきやがる!?」

「それだけじゃねぇ! 梯子も使ってやがる!」

「ぐぎゃぁああああ!?」

数日後 以前大柄の男と喋っていた男性


「……ミッチェル、ベン、君達はこの装置を護る為に…」スチャ

「だが、私にとって必要なのは装置よりも君達の方だったのに……」

「テロメア 音声認識 コードG19 マスターをベンからリックへ」

『テロメア 音声確認 コードG19を承認します マスターをベンからリックへ』

「……これでテロメアの生き残りも私だけか」

(以前、花村と言う男が語っていた計画。あれが続いていればあるいは……)

「日本か……遠いな」


「ぉお、おおぉごぽっ」


『発動 私の意識下に従え』


「………」スッ

「最悪ゾンビに船を漕がすか……」

(車で移動すると生き残った者に襲われる。ここはゾンビ共に走ってもらうか)

「行こう。えっと、君は今日からフィリップだ」

「………」コクリ

「……言葉も返してくれると嬉しいのに」ハァ……

中国北部

「始皇帝、どうやら花村は日本に向かったようです」

「そうか。生意気な奴め」

「放っておいたら我々の計画に支障が出るでしょうか?」

「いや、逆だ。あいつの研究が完成すればゾンビは新たな労働力として使えるはずだからな」

「では、監視役だけ送りますか?」

「そうだな。女を送れ、とびきり美人の、だ」

「接触も許可すると?」

「そうだ。お前はやはり優秀だな。リーフェイ」

「始皇帝に誉めて頂き、光栄です」

「候補はチャオリーか?」

「はい、チャオリーとその妹リーリンがよろしいかと」

「ふむ、日本人はロリコンが多いからな。よろしい。二人を向かわせなさい」

「はっ! 後、ヤン博士の所にいたチュライが日本に向かったとの情報が」

「放っておきなさい。ヤンの研究は我々の覇道になんの傷も与えない」

「はっ!!」

(世界を崩壊させてまで始めた覇道、必ず成功させなくては……)

>日本人はロリコンが多いから
反論できねえww

主人公視点 雨が降ってから二日後

「僕はこの場所から動いた方が良いと思う」

 僕の言葉はよほど意外だったのか、藍子と明日葉が目を丸くした。二人はぎくしゃくしながらも仲直りをしており、隣同士で座っている。

「私も賛成です。ここには浄水施設がありませんし、食べ物にも限りがあります」

「昨日職員室から地図を拝借したんだ。これを見てくれ」

 僕はここら近辺が細かく載った地図を広げた。

「まず、北の複合施設。この辺で最も大きな商業施設だね」

 そこにはホームセンターを始めとして百近くの店が並んでいる。生き残っている人がいる可能性はもちろん、これから生きる為の道具がわんさか存在しているだろう。

「次に西の発電所。ここが壊れれば街は電気を失うだろう」

 最近出来たばかりの発電所で、ほとんど機械が管理している未来型の発電所だ。都市に電気が通っているのもそこのおかげで、この都市にいるつもりなら一度行った方が良いかもしれない。

「それから南の浜辺、魚を獲ったり野菜なんかも残ってると思う」

 農業が盛んな地域で、年寄りが多く人は少ない。起伏も激しいのでゾンビに襲われる心配もないかもしれない。

「後は東京に向かうなら東の高速道路に乗るのが一番かな」

 パンデミックが起きたのは昼間だ。恐らく高速道路には車が沢山残っているだろう。だが、逆に言えばガソリンや車は豊富にある。乗り継いで行けば東京に向かえない事はない。

「装備はどこに行くかによって決めよう。遠くに行くならしっかり準備しなきゃいけないしね」


 僕達は話し合った結果、


1、北の複合施設に行く事に決まった。
2、西の発電所に行く事に決まった。
3、南の浜辺に行く事に決まった。
4、東京に向かう事に決まった。


安価下1

1がいいなぁ

1か…犬飼ってる婆さんに注意しなきゃ

1なら母乳が出る人もいるだろう

宗教ババアとかいませんように…

正直人類の八割ゾンビ化で雨になると活動的になって電波で居場所わかるとか
もう人類終わっただろって思うわ。なんか黒幕っぽいのいるけどこいつ倒した所でどうにもならんというか

まだかな

今日は書けそうにないです><
北の複合施設了解です。

施設の構造だけ書きます!

≪複合施設の構造≫

●ショッピングモール棟●
・スーパー×1
・服屋×5
・赤ちゃん用品×1
・本屋×1
・ゲームセンター×1
・ボーリング場×1
・駐車場四階まで(入口は東西)
・フードコーナー店舗×10
・ペットショップ×1
・靴屋×1
・美容院×1

●ホームセンター棟●

●電気屋●
・天田電機
・ジョーシキ

●テニスコート●

●噴水公園●

今日は安価だけ残して去ります!


安価下1

複合施設に生き残っている人数

0~1000人まででお願いします!

11人

少ねぇww

ペットショップ怖いなぁ…

青果売場とかはないのか

スーパーに含まれているんじゃないか?

更新は夜かな?(・∀・)ワクワク

できらぁ!!

11人の構成から行きます

敷島篠子(24歳)・真美(6歳)
親子で生き残った稀有な例。ただし、真美は逃亡の際に足に大きな怪我を負っており、衰弱(それでゾンビ化が免れている)、常に寝たきりの状態になっている。


笠井成人(31歳)
横領が原因でクビになったばかりの元サラリーマン。性格は極めて屑で娘から離れられない篠子に言い寄っている。背は低く不細工。気は弱い。


相良きらら(16歳)
心臓の病気でバレーを諦めた元気っ子。ショートカットで体躯はしなやか、貧乳である事を若干気にしている。笠井が篠子に近づかないように見張っている。


鮫島リオン(21歳)
元いじめられっ子。現大学生。苦しい高校時代をバネにして明るく生きていた。


増田佳代子(78歳)
目も耳も悪いお婆ちゃん。ヘルパーがゾンビ化して困っている所を助けられた。


安田厚子(41歳)
まだまだ元気なおばちゃん。17の娘がゾンビ化し、戸惑っていた所で増田を見つける。彼女の世話をしてあげている。


梅谷薫(19歳)
格闘技経験があり、相当やんちゃ。暴力的だが馬鹿ではないらしく、この状況で孤立する危険性を分かっている為、大人しくしている。


木藤ささみ(28歳)
元風俗嬢。顔も体型もそれほど良くない。基本的に男性を信頼しておらず、ここの男性陣も騙して喧嘩させてやろうと思っている。かなりコンプレックス持ちでややこしい。


八重田源蔵(81歳)
かなり偏屈な爺。基本的に何も語らず、ホームセンターの一角に自分の縄張りを作っている。


11人目を作ってください。
名前と年齢、詳細をお願いします。


安価下1

横瀬兼雄(41歳)

高翌利貸。欲張りだが
ストイック。郊外の
屋敷に独りで住んでいる。


 北の複合施設へ行く事に決まった僕達は学校の中で使えそうな物を探した。

 まずまず雨が降りそうもない晴天の日を狙って、各自バラバラに探索する。

 都合の良い事にゾンビ達は僕らに襲いかかろうと寮の周りに集まっていた為、本校舎に人はほとんどいなかった。

 僕は職員室へと向かう。

 複合施設にはスーパーもあるから調味料なんかは必要ないだろう。

 涼香が保健室でこれから必要そうな薬を選んでくれているから、僕は出来る限り仲間を護れる武器を見つけたい。

(左手が使えないのは痛いな……)

 あの時の力、上手く使えれば仲間を護る力になるけど、今の所自滅する爆弾だ。ゾンビは無数にいるのだから一度でも使えばゲームオーバーだろう。

「お金……も要らないよな。逆に何が要るんだ?」

 いざ何でも持っていけるとなると迷ってしまうな。拳銃が置いてある国でもないし、もちろんハーブで怪我や感染が治ったりもしない。

「雨さえ降らなければゾンビに負ける事もない。下手に大きな武器を持つと体力が無くなってしまうよな」

 正直食料と薬さえあれば何とかなる気がしてきた。ここからなら施設まで歩いて一日で行ける距離だし食料もさほど必要ではない。

「この双眼鏡は使えそうだな」

 結局、職員室では双眼鏡とライター数本を得ただけで終わった。持ってきた荷物で大体事足りるしな。

現在の持ち物

主人公
・水
・食料
・タオル
・ライター10本
・ハンターハンター一冊
・包丁
・ハサミ
・乾電池
・アルミホイル
・懐中電灯
・サランラップ
・ガム
・刀


涼香
・薬(絆創膏なども含む)
・水
・食料
・下着(他人の)
・懐中電灯
・乾電池
・インスタントコーヒー

明日葉
・弓矢
・水
・食料
・下着(兄が持ってきた分)

藍子
・金属バット
・水
・食料
・下着
・果物ナイフ


 他に必要そうな物(ガソリンとか食用油とか)は全部車のトランクに放り込んだ。

 僕としては運転を失敗した時にガソリンや油に引火したら危ないと言ったのだが、涼香が「大丈夫」と言い切るのでしぶしぶ持って行く事にした。

「車からバッテリーも抜いておくか」

 付け替えが出来るとは思えないけど、ホームセンターにはバッテリーから電気を得る道具もあるはずだ。

 いずれ遠くに行くとしたらガソリンとバッテリーは多数必要になるだろう。

(何で僕はこんなにも遠くに行こうとしてるんだろう)

 街が死んでいるのは確かだが、それは日本全体に言えた話で、いまさらどこかへ移動したら助かるという話でもないだろうに。

(それとも海外はゾンビパニックになっていない?)

 唯一の希望を見いだすならそこだろう。だが、もしそうなら今頃海外からの救助隊が来ているはずだ。楽観視はできない。

「兄さんが運転を?」

「まぁ、覚えたてだけど」

「……もしかして、涼香さんをすでに乗せました?」

「うんまぁ、ここに来るためにね」

「……兄さんの初めてが」

 何にショック受けてんだか、このブラコンは。

「やはりゾンビは車を避けている様子ですね」

 学校から駅へ続く道路。以前よりも少なくなっているゾンビ達が車から逃げるように壁際へ移動する。

「考えられるとしたら、鉄が苦手なのか、車から発せられる熱が苦手なのか、エンジンが動く事によって何か電波のようなものが発生しているのか」

 僕は電波のような気がしていた。強い根拠はないけど雨に影響されるとしたら熱か電波だ。ゾンビが熱を感知できるとは思えない。

「まぁでも雨さえ降らなければすぐに施設へ行けそうだね」

「兄さん、そんなフラグを立てちゃ駄目」

「確かに」

 僕の隣、助手席には家族特権と称して明日葉が座っている。

 最初は藍子と揉めるかと思っていたが、彼女は涼香がキルリアである事を知ってすっかり懐いている。

「あの百戦錬磨のキルリア様が女性でしかも先輩だったなんて!」

「……ブータはいつか殺します」

 ゲーム実況をしていたのはブータだ。どうやら僕には許可を求めていたけど、暴言ばかりで会話にならないキルリアには許可を取っていなかったようだ。

 もちろん彼が生きている可能性は限りなく低いだろうけど、もし生きていたら涼香から逃げるように言ってあげよう。


ドイツ某所

「今こそ強きドイツの復活だ!!」

「おぉおおおおお!!」



「ビエラー博士、例のプログラムは……」

「もちろん出来とるよ。後は押すだけじゃ」

「この間まで地球上を走っていた九割は次世代モデルのアシスト自動車だ。運転の大半がコンピューター制御で、電波の受信機が着いている」

「うむ、このプログラムを実行すれば世界中の車が……ボン! じゃな」

「中国やロシア、アメリカには大きな勢力が残っているらしい。EU圏だって何がいたって不思議じゃない」

「じゃから移動手段を壊して主導権を握ろうと?」

「我がニアナティス軍の装備は全て旧型だ。車も戦闘機も。そんな我々が主導権を握るだけで終わるはずがない」

「……ふむ」



「世界の頂きに立つのは我々だ」



 

主人公視点

「後はこの道を真っすぐ行けば施設だ」

 運転にすっかり慣れた僕は40キロの速度で北に向かっていた。

 住宅地から離れている為、ゾンビは少ない。その為か皆の緊張感が薄らいでいた。


 瞬間、それは起きた。


 ――バツンッ!!


「えっ?」

 ブレーカーが落ちたような音が車内に響き、アクセルペダルが軽くなる。

 踏み込んでも反応がなく、良く見るとカーナビの電源が落ちていた。

 車はゆっくりと速度を落としていき、道の半ばで完全に停止した。

「今の音は何?」

「いや、俺にもさっぱり……」

「エンジンがかからないんですか?」

「うん、原因はよく分からないけど無理みたい」

 何度か鍵を回してみるが、反応はなかった。

「近くに車もないし、残りは歩いて行くしかないか……」

 せっかく積んだガソリンやバッテリーも無駄になってしまった。

「雨が降る前に向こうに辿りついた方が良さそう」

「そうだな。急ごう!」

 僕達は車を降りて徒歩で向かおうとした。


 山や森が目の前の道路で、何が起きるかも想像せずに――。


「……あれ、何?」


 明日葉の指差す先、そこにいたのは犬のようなイノシシのような四足の動物だった。

「……何か、でかくねぇか?」

 藍子の言う通り、五十メートルほど離れた場所からこちらを見るそれは、車のように大きな体格をしていた。

 身体の至る所から黒い塊が飛び出しており、まるでもののけ姫に出てくる化物のような雰囲気だ。

「こっちに走って……?」

 ドスッ! 地面を蹴る音が響く。

 この状況になってまだ楽観視する者など一人もいない。

「と、とりあえず――」



1、車の中へ!
2、森の中へ!
3、車の影へ!
4、施設の方へ走れ!!



安価下1

「森の中へ!」

 僕はとっさに指示を出した。

「森の方が危なくない!?」

「いや、あの巨体なら木々を避ける事は出来ないはず!」

「!! わ、分かった!」

「危ない!!」


 ゴォッン!! 不気味で甲高い音が響き、大型車が横転した。


「ふしゅるるるるるるっ」

「ば、化物……」

 近くで見ると、どうやらイノシシの化物のようだ。

 突起した鼻に刀のように鋭い牙、全身を赤黒い体毛が覆っており、黒い血の塊のようなものがうねうねと動いている。

「に、逃げ……」

「ブォオオオオオオオオオンッ!!」

 地響きさえ起きそうな叫び声に、


1、藍子が尻もちをついた。
2、明日葉が尻もちをついた。
3、涼香が尻もちをついた。


 安価下1

1

「……あ」

 突風のような叫び声に藍子は尻もちを着いてしまった。

 彼女はまだ女子中学生で、動揺してしまうのも無理ない。

(くそ、刀とか通るのか!?)

 イノシシが赤黒い涎を垂らしながら、藍子へと突進する。

 大型車よりも大きな身体が真っすぐと、真っすぐと、


「あ……ぐっ」


 藍子の腹部に牙を突き刺して走り去って行った。

「藍子!!?」

「アギト!? 追いかけるのですか!? あれに!?」

「っ!!」



1、追いかける
2、諦める


安価下1

2

これ藍子は連れてかれたってこと?いいキャラだし早々に離脱はイヤだなぁ…

「……くそっ、僕はゲームの主人公なんかじゃない…」

 あのスピードで走られたら追いつく事もできやしない。例え追いついても勝てる気がしない。

「藍子……」

 明日葉が茫然と化物の走り去った方向を見ていた。

「あれが帰ってくる前に行こう。もしかしたら他にいるかもしれな……」



 ギィイイイイイッ!!

 ガァァァァッ!



「ひっ!?」

「やっぱり森の中も駄目だ! 道路を走ろう!!」

 僕達は森から逃げるように道路を走った。

 藍子を連れた化物は南に向かっている。



 僕は彼女を見捨ててしまったのだ。



「はぁはぁはぁ……、着いた……」

 二十分ほど走り続けてようやく辿りついた施設。

 駐車場を囲っているフェンスは所々が倒されている。雨が降った時にゾンビに壊されたのだろうか。

「あまり人気はないですね」

「ゾンビの姿もほとんどないし、もしかして誰も生き残ってないのか?」

 不安と後悔で吐き気が催してくる。

 誰でも良い、誰かいてくれ。


 そうすれば二人を預けて僕は――。



 第三章 複合施設編


『あなた大丈夫?』

「え、あ、えっと……」

『やっぱ中国語は通じないか……。花村さんはバイリンガルだったからなぁ』

「あなたは……その……」

『手当は終わってるけど、すぐに動いて良い状態じゃない。今はゆっくりと休みなさい』

「……はい」

『……まさか、動物にまで影響を与えるなんて』

(いえ、人間も動物も心臓がある。心臓さえあれば電波に影響されるんだわ……)

『人間はゾンビになり、動物は化物になる。その違いさえ分かれば……』

(……ううん、それよりも適合者を探した方が良い)

『でも、この子を放っておけないわね……』

生きてた…(°ω°)

「頼む! 行かせてくれ!」

「駄目だ! 絶対に許可できない!」

 藍子を探す為に施設を出ようとする僕をリオンが邪魔をする。実質的に彼が生き残り11人のリーダーらしいが、僕はまだ仲間になった覚えはない。

「悪いけど僕は僕のしたいようにする」

「したい事ってのがイノシシ狩り? あのトラックみたいなイノシシを? 無茶だ!」

 どうやらここにいる人達は双眼鏡で以前からイノシシの存在について知っていたらしい。話を聞くとあの化物イノシシはゾンビでさえ襲うらしく、大半のゾンビがイノシシにやられてしまった。残り数十人になった所で雨が降り、イノシシは逃げるように去って行ったらしい。

「人が一人襲われて行方不明になってるんだ! 知り合いの僕が行かなくてどうする!?」

「行方不明!? そんなの何千万人といるよ! 今は生きている人の命が優先だろう!」

「藍子を死人扱いするのか!?」

「あんな化物の牙が腹に刺さって生きる人間がいるのか!?」

 その後もずっと説得し続けたが、彼はとうとう「君が好きにするなら、僕も彼女達を追い出す」と言いだしたので僕は一旦諦めた。

 だが決して忘れる訳じゃない。隙を見つけて、きっと……。



主人公達が拠点にする施設


●ショッピングモール棟●
・スーパー×1
・服屋×5
・赤ちゃん用品×1
・本屋×1
・ゲームセンター×1
・ボーリング場×1
・駐車場四階まで(入口は東西)
・フードコーナー店舗×10
・ペットショップ×1
・靴屋×1
・美容院×1

●ホームセンター棟●

●電気屋●
・天田電機
・ジョーシキ

●テニスコート●

●噴水公園●


安価下1

どれかお選びください。

安価下1

ペットショップ

ペットショップ……だと?

了解です! ご飯食べたら変態した小動物達との命の取り合いをお届けします!では!

芝刈り機入手しなきゃ(使命感)

ドッグフード食べなきゃ(使命感)


 総勢11名の男女が暮らしている総合施設。

 僕達は誰も使っていない二階東エリアを好きに使って良い事となった。

 二階東エリアには安くて良い布を使っていると評判のヌ二クロや、赤ちゃん用品売り場、本屋やペットショップがある。

「一応家みたいにしてるから防火シャッターで隔ててるけど、いつでも往来していいからね」

 リオンはにっこりと笑うと入口に戻って行った。ゾンビが来てないか見張りをするためであり、今は僕が出て行かないための見張りでもある。

「ペットショップにワンちゃんいますかね」

 どうやら涼香は犬が好きらしい。僕達は防火シャッターを開けて奥へと進む事にした。

「電気が通ってるせいか、寂れたモールに感じますね」

 人が一人もいない通路、もちろん店舗内にも。

「涼香さんがいなければ貸切デートなのですが……」

 妹がボソリと呟く。どうやら冗談を言って気を紛らわせているらしい。

 恋人関係を築いていたくらい仲の良い同級生がイノシシに連れて行かれたのだ。心に傷を負っていない訳がない。

「もちろん、それはこちらの台詞でもありますけどね。“実の”妹さん」

 ふふふ、と涼香が笑った。妹がガンッと頭を打たれたようにショックを受ける。

 もしかして二人は仲が悪いのだろうか……。



 ガサッ



「ん?」

 ヌ二クロの中から物音がしたような……。

「アギト!! あそこ!!」

 涼香の指差す方向には、


1、巨大な蛇
2、巨大な犬
3、巨大な鳥


 安価下1

2
窓からガシャーンじゃないのか…


 それはまるで地獄の番犬のような巨大な犬だった。

「ぐるるるるるる……」

 化物イノシシと同様に赤黒い体毛で覆われ、ところどころ血の塊のようなものが飛び出している。

「防火扉を締め切っていたから気付かなかったのですね……」

「同じような犬が倒れてるから、きっと殺し合いをして生き残ったのが……この犬」

 イノシシは猪突猛進なイメージのおかげかまだ助かる気がした。

 だが、巨大な犬を目の前にすると、逃げられる気がしない。

「がぁああああああ!!」

 前足を高く上げ、こちらに向かって振り下ろす。

「避けろ!!」

「くっ……」


 間一髪で避ける事ができたが、逃げられた訳じゃない。

「俺が囮になる! 二人ともその隙に戻れ!」

「それでは貴方が!!」

「全滅よりましだ! 行けっ!」

「っ!!」

 僕は犬の脇を通って奥へと進んだ。二人は隙を見て逃げ――、


1、犬の牙が妹に襲いかかった。
2、犬の牙が涼香に襲いかかった。
3、何が起きたかすぐには分からなかった。


 安価下1

2

「……あっ」

 犬の牙が涼香に襲いかかった。

 それは一瞬の事で、彼女が噛みつかれたのだと気付いた時には犬は力いっぱい彼女を振りまわしていた。

「……や、めろ」

 僕は右手を犬の後ろ脚に当てる。

 だんだんと身体に熱がこもっていく。あの時と同じだ。

「涼香を……離せ!」


 バツンッ!!


「ぎゃんっ!!」

 犬が甲高い悲鳴を上げて涼香を放した。

 僕は右手の指が全て折れ曲がっている事を感覚で察知していたが、怒りを納める事ができなかった。


 藍子を護れなかった事、涼香を護れなかった事、その弱さ。


「うぉおおおおおおお!!」

 折れ曲がった指を力いっぱい握りしめ、犬の腹部へ解き放つ。

 柔らかいシャボン玉のような膜が一気に破れる感覚。

「きゅうぅんっ!!」

 大量の血と内臓を落としながら、犬が倒れこむ。

「涼香! 涼香!!」

 首の骨が……折れて……。

「あ、ああ……ああぁあああああああああ!!」

「兄さん! 肩が!!」

 妹が僕の腕を抱きかかえた。見ると肩から骨が飛び出していた。

 でもそんな事は些細な事で、

「キルリアを護るって誓ったんだ。僕は彼女に助けられてここまでこれた! それなのに!!」

「兄さんっ! やめて……っ」

 僕はなりふり構わず犬の腹部に左手をうちこんだ。さっきまでの力は出ず、内臓にペチペチと当たるだけだった。

「あぁあああああああぁああああああ!!」

 抑えきれない感情が、溢れる。



 ――ガァンッ!!



「……あ、え?」

 後頭部に走る強い痛み。

 きららが思い切りフライパンを振り下ろした事が原因だと知る前に――僕は気絶した。

今日はここまで!安価置いて行きます!

涼香は……

1、死んだ
2、首の骨が折れてると思ったのは勘違いで、かろうじて生きている。


安価下1

>>201
良くやった!

主人公の能力見て仮面ライダーV3の力の制御ができなくされるの思い出した

待ってる

待つともさ

a

('A`)

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom