──────── 父は、嘘を吐いていたのだろう。
……僕の母は自殺した。
そう、父に聞かされたのが今から十二年も前の事。
当時の僕はまだ四つの幼い子供だった。
理由も、母が自殺した場所も、何も知らされていない。
それは父も知らない事だったから、本当に突然の事だった。
だから僕は泣いたりはしたかもしれないけど、どうしてか……みたいな事は考えなかった。
三つ上の姉も僕とそれは同じで……きっとこれは普通の、少しだけ普通より悲しい家にある事だと。
少なくとも僕は納得していた、そんな日々の何て事のない朝食の時だ。
父「転勤になってね」
少年「え?」
急に父がそんなことを言い出して、僕と姉は食事の手を止めた。
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父「お父さんな、医者の助手をしていると言ったろう?」
少年「結構前に言ってたよね、確かテレビに出てなかった? 父さんのいる医学会って」
父「ああそれだよそれ、ちょっとしたプロジェクトで人手が足りないらしくてな」
父「少し遠いけどまぁ、あれだ……村へ行くことになったんだ」
少年「村って……もしかして引っ越すの?」
僕の言葉に、姉が小さく不機嫌そうな息を漏らす。
視線は見なくても分かる、多分父を睨んでいるんだろう。
姉「…………」
父「あぁ、お前ら二人だけでここに残るのは嫌だろ? まだ少年も姉もバイトすらしてないしな」
少年「えー……まぁ、ね」
言えない。
姉は父が小遣いをくれなくて隠れてバイトをしているのを、僕は知っていた。
父「どうだ? 緑が多い所に住むってのも気分転換になるだろうし、一緒に来ないか?」
少年「僕はいいけど、姉ちゃんは?」
姉「……はぁ、アタシは別に構わないよ」
父「おおっ? じゃあ ─────
姉「部屋、ちゃんと広いところなんでしょうね?」
父「勿論だとも、お前は持っていく物が多いからな」
姉「それで? そもそもアタシとかは別にサボってた学校の卒業式なんかはどうでも良いんだけど」
姉「少年の学校はどうするつもりでいるわけ?」
父「小さい村だが少年が入れる高校はあるんだ、中高一貫のな」
姉「へぇ」
姉は父から視線を外すと、残っていた朝食を食べ尽くした。
それから僕の事を一度見てから、席を立って一言。
姉「じゃ、適当に楽しみにしとくから」
少年「……」
僕は寝起きの姉の、少し乱れた腰まである黒髪を目で追いながら……
A【立ち上がって追いかける】
B【何を思うわけでもなく朝食を食べる】
【下2】
A
姉想いにしたい
B
僕はその日、父の話を何気無く考えながらも朝食を取って一日を過ごした。
父もその朝に話をして、夜は帰ってきたのが遅かったから……引っ越しに関しては話すことも無かったからだ。
何て事のない一日を終えた僕は、当然の様に眠りにつく。
何もない。
その日は夢を見ることもなかった。
……何か、誰かと話すべき事を話忘れた気もするけど。
きっとそれに意味はないかもしれない。
だから僕は、ただ眠った。
眠ったんだ。
──────── 父から引っ越しの話がされた後日。
父「引っ越しの準備をするぞー! 少年はともかく、姉はとっとと片付けとけよー」
< 「業者に頼むんじゃないの?」
父「PCだの以外にもあるだろー? お前は仮にも女の子なんだからな、出てる所を隠す物とか色々あんだろー?」
< 「親父キモい!」
父「キモいなんて言うな! お父さん悲しくなるぞ!」
< 「悲しくなればぁ? アタシは痛くも痒くもないし!」
父「……娘は父に冷たい、泣きそうだ」グスン
少年「ぁはは…………」
引っ越し先が既に決まっていたのもあって、話をされてから直ぐに僕達は引っ越しの準備をした。
姉は父に部屋に入られるのが嫌だったから、『バイト』で使っている機材等の重いものも自分で片付けなければいけない。
それに、お世辞にも姉の部屋は綺麗とは言えなかったから余計に大変だろう。
少年(必要な物から片付けようかな、それとも……)
A【必要な物から選ぶ】
B【要らない物から選ぶ】
【下1】
B
イマイチ背景が分からないので過去が分かりそうな
引っ越しの準備をしようと段ボールを抱えて部屋の中にいると、父が入ってきた。
父「丁度いいから要らない物と分けて、処分する物は処分しろよ?」
少年「ん、そうしようかとは思ってたんだけど……母さんがくれた物もあるから捨てられなくて」
父「そうか、なら仕方ないよな」
少年「父さんは準備終わってるの?」
父「お前らみたいにかさばる物が無かったからな、もう終わった」
そう言って、父は僕の部屋の壁際にある棚に近付いて行く。
そこには母から貰った物の一つが置いてあった。
父はそれを手にとって僕に見せた。
父「これは要らないんじゃないか?」
黒い、外箱も内箱も黒いマッチ箱。
中に数本入っているマッチの火薬部分も黒い、よくわからない物だ。
母さんがそれを僕にくれた時の事はよく覚えていない、ただ何故かそれを見せられた僕は。
少年「後で考えるから、必要な物の段ボールに放り込んどいて」
父にそう言って、そのマッチ箱を捨てないでおいた。
面白い が エターのパターンかな
後は一人で大丈夫だと言うと、父は姉の部屋へ向かった。
何か手伝えないかと聞きに行ったのだろうが、直ぐに追い返されるのは間違いない。
少年(お姉ちゃん、あの機材全部が私用だなんて言っても誤魔化せないもんね)
黙々と要らない物をゴミ袋や段ボールに入れていきつつ、そんなことを思う。
姉のしているバイトは、厳密にはバイトとは言えない。
この時の僕が知っている事としては、姉は勉強や学校には真剣に向き合う事は無いものの……頭が良い事は確実だった。
自作のPCを筆頭とした様々な端末機とネットワーク機器。
それに加えて何処でどうやって得たのか分からない、その手の企業から受けたソフトを応用した作製技術。
姉はネットワークウイルスの除去やデバッグ用のソフトを開発して、正式に企業へ提出してお金を稼いでいたのだ。
最早バイトなんて域ではない、その辺のIT企業の社員よりよっぽど稼げているのだから。
少年(よくバレないよね、それだけやってたり口座とか色々あったら分かりそうなものだけど……)
少年「……あ」
ぼーっと片付けていた時、ベッドの下からそれは出てきた。
少し埃が被ったかぎ編みの花。
ピンの付いた、バッジらしきそれが上に置かれた小箱を僕は見つけた。
少年(これ……こんな所にあったんだ)
要らない物としてゴミ拾いをしていなかったらベッドの下に意識は向かなかった。
何処か誘われる様に手を差し入れると、僕はその小箱を取り出した。
よく見れば、バッジらしきかぎ編みの花はコサージュというものだ。
僕は少し埃を払うと、コサージュを必要な物の段ボールに優しく入れてから小箱を開けてみた。
少年(……これ、母さんが作ってくれたコサージュ)
少年(ならこの箱の中には……)
幼い時、姉にも作ってくれた母のコサージュはどれも綺麗だったのを覚えていた。
とっくに無くしたと思っていた物が出てきて、僕は何も考えずに埃を払って小箱を開けた。
中に入っていたのは白い羽根が一枚。
所謂、羽根ペンと呼ばれる物だ。
これは僕と姉が誕生日の際に母がくれたプレゼントだった。
尤も、父が教えてくれたから覚えているだけで僕自身は貰った時の事を全く覚えていない。
続きを期待しても意味ないな
このまま、エタるだけだ
sageつけんの忘れてた
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