殺し合いハウス (17)

戦略こそが全て。:ニコニコ動画で8万人を熱狂させた動画の小説版! くろひ/DAI

ニコニコ動画版:
http://www.nicovideo.jp/watch/sm21772086
キャライラスト等HP:
http://houseseries.webcrow.jp/

<あらすじ>
デスゲーム×頭脳戦。
閉ざされた館に集まる10人のプレイヤー。行うは、殺し合いゲーム。
ここで必要なのは「頭脳」のみ。性別、体格、身体能力による得手不得手など存在しないのだ。
「戦略こそが全て」 他プレイヤーを出し抜いたプレイヤーが勝者となる。

プレイヤー達は、いかなる戦略で賞金を得ていくのだろうか。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1456746433

第1章:10の頭脳と最初の脱落者


「本日、見事にターゲット殺しを成功させ、1億円を獲得したプレイヤーがいらっしゃいますーーー!」

 司会進行を担う仮面の男が、背後の大型ディスプレイを仰ぐ。そこに映っているのは、首を吊っているプレイヤー。

 仮面の男は、背後で見られるショーに、面白くなりましたね、皆様楽しんでいますか? と言わんばかりに高らかな宣言をした。
 その場でディスプレイを見たプレイヤー達は、驚き、困惑、そして挑戦的な表情をそれぞれ見せる。
 その中でも、悲しみを浮かべる女子高生と思しき少女は、“なんでこんなゲームに参加してしまったの……!?”と、ゲーム初日にして、自らの過ちを悔いるしかなかった。

 ここは、『殺し合いハウス』と呼ばれる館。参加したプレイヤー達が、知略、戦略、策略を駆使して、相手を出し抜き大金を得るゲームを行う場所。

「ここがゲームの会場か……」

 緑豊かで広大で、随所で踊る白い石像達。庭師など見当たらないにも関わらず、そこは一点のくすみもない。端的には超豪華と表現できるそんな庭園の中、その洋館はそびえていた。そして、これまた無駄に大きな玄関の前には、こんな内容の封書を持った少女が一人。

『天海千恵あまみちえ様。
 あなたは大金が得られるゲームの参加権を得ることができました。
 おめでとうございます。
 つきましては、次ページの地図に従いまして、4日後に現地までお越しください』

 彼女は、胸元に校章が刻まれたブレザーと少しだけ短くしたスカートをまとっている。そう、誰が見たって学生服である。あまりに大きな館を前に、もともとタレ目気味な彼女だが、さらにタレ加減を大きくしていた。誰が見たって困り顔である。先ほどからドアノブに手を伸ばしたり、ショートかセミロングかその間程度の髪をいじってみたり、そこから動くことはない。本当に、誰が見たって分かりやすいに尽きる少女である。

「おい」

 カメもウサギもとっくにゴールに辿りついているような時が流れた頃、その少女、天海千恵あまみちえの背後から声が届く。

「ここにいるってことは、お前もゲーム参加者なんだろ? さっさと入れよ」
「す、すみませんっ……」

 その声に、消え入りそうになる返答をしつつ振り返ると、成人を少し過ぎたであろう女性が、腕を組んで仁王立ちしていた。
 天海がわずかに身を引くと、その女性は一部の躊躇ちゅうちょもなく館への扉を開ける。呆気にとられた天海の感想は、“すごい格好した人だな”である。全体的に黒い布で身を包むが、腰周りに布がない。上半身だけ見れば、これから海でも行くのかという出で立ちだ。もっとも、下半身は黒のジーンズで包んでいるのでその仮定は即座に否定したいところである。と同時に、女性というより男性に近く、あまりにキリリとした顔に目を奪われもしたのだが。

「あ! 待ってください!」

 ようやく周囲1センチにしか届かない声のボリュームをやめた天海は、そんな長い黒髪を揺らす女性についていく他なかった。

ほあ……」

 中に入ると、すでに女性の姿は見えなくなっていた。特別その女性の歩きが早かったのではない。
 天海が一歩一歩、

「すごい! あれもすごい!」

と、その洋館で目移りしていたからである。
 外観からして分かっていたが、内装もやはりそう。真っ赤な絨毯じゅうたんが広々と敷かれ、全ての壁が絵画になるような勢いで。下も横もそんな状態なら、見上げれば入るは光光光。今にも落ちてしまうのではというほどのシャンデリアが飛び込んでくる。どこを見たって、とてもとてもプライスレスの宝庫となっているのだ。

「よーうこそいらっしゃいました! あなた様が最後のプレイヤーとなります。こちらの席にお座りください」

 そんな彼女に、ニヤリと笑ったピエロのような仮面をつけた、長身の男が近づいてくる。そして、ビシッと決めたスーツに蝶ネクタイを締め直しながら、彼女にそう告げた。

「あ、はい……。失礼します」

 天海がたどり着いたその場所には、すでに数名のプレイヤーが縦長のテーブルに座っていた。
 この洋館のロビーか食堂かであろう空間は、10名程度が座れそうな長テーブルがいくつも並べられている。壁には、やはりプライスレスばかりが飾られていた。
 しかし、すでにいるプレイヤーは1箇所に固まっているのだ。これだけ広い会場であるのに、あまりに贅沢な使い方だ。恐らく他のプレイヤーも、先ほどの不気味仮面にそこに座るように促されたのだろう。

「……あ?」

 天海が席に座ろうとイスの横を通ると、わずかに手が、隣に座る男に触れてしまった。
 背もたれが壊れんばかりに体重をかけ、今すぐ飛び出しそうなほど足をテーブルの上に投げ出した男。そんなイカつい顔を持つメンズをメディアが取り上げるとすれば、イカメンという単語がたちまち世間に広がるだろう。

「ひ……す、すいません!」

 反対側からイスに座った天海は、彼と目を合わせないことを硬く誓った。
 そして、代わりに他プレイヤーを見やる。すると最初に目が合ったのは、天海の反対側の隣にいる、

「……あ……ど、ど、どうも……」

先ほどの男とは対照的な、少し目があっただけでそうおどおどと返す男性。
 スーツを着てビシッと、と行きたいところだが、黒縁メガネから覗く目線はくたびれている。それに合わせてか、スーツもやはりくたびれていた。ペットは飼い主に似ると言うが、着るものさえもそうなのか。

「どうも……」

 軽く会釈を返した天海は、すぐにそのくたびれスーツの胸元に目線が行く。そこには、⑥と書かれたバッチが付けられていた。
 同時に天海は、全員の前にひとつずつ封筒が置かれていることに気づく。中には、バッチと紙が何枚か入っているようだ。恐らく、他のプレイヤーも同様なのだろう。
 そして、“⑤か。付けておかないといけないのかな”と考えるが先か、隣のくたびれに習い胸元に装着した。

それでは皆様改めまして、ようこそいらっしゃいましたーー! 私、司会を勤めさせていただきます。どうぞ気軽にマスターと呼んじゃってくださいね!」

 天海が席に座って落ち着いたことを確認したのだろう。不気味仮面……マスターがテーブルの先に立ち、声高らかに宣言した後、さらに声を上げる。

「ここは、『殺し合いハウス』と呼ばれる館です! 皆様は選ばれたのです! この、大金を賭けたビッグゲームの挑戦者に!! 喜ばしい、ああ、喜ばしい!
 ここでは皆様に、あるルール、付与される特殊能力を以て、殺し合いを行ってもらいますが……ここで必要なのは、身体能力か? 殺し慣れた経験か? ノンノン、どちらも違います。
 皆様の、頭脳……戦略こそが全てなのです!」

 一瞬の静寂。しかし、本当にそれは、文字通り天海が一度の瞬きをしただけの時間であり、次の瞬間にはイスを跳ね飛ばして立ち上がって、

「こ、殺し合い!? 殺し合いをするんですか……!?」

と、マスターと他プレイヤーを交互に見た。

「は? お前知らなかったのかよ」

 そこに声をかけたのは、館の玄関で出会ったトンデモ服装のイケメン女性。

「大金をもらえるんだから、それくらいするよねえ」

 続いて、糸目いとめの青年が、優しい口調で声をかける。もっとも、優しい口調ながらその発言は厳しいが。

「え? あの! 殺し合いって……それに、特殊能力ってなんですか!?」
「はっ、質問は最後にまとめてしやがれってんだやかましい」

 さらに天海が畳み掛けるが、それを言い切るが前に、イカメンが遮った。金髪を持つ彼の獰猛どうもうっぷりは、サバンナでライオンとタメを張るに違いない。

「桐生様のおっしゃる通りにしていただけると私もありがたいですー!」

 そこにはマスターも同調し、天海はストンとイスにカムバックするしかなかった。どうやら今すぐ野生に放つべき猛獣は、桐生というらしい。

 下を向いたまま座った天海に、テーブル上にある用紙が目に入った。自分の名前を含む10の名前が書かれ、隣に顔写真が貼られている。それがゲームの参加者名簿だと理解するのに時間は要さなかった。
 確認すると、桐生京我(きりゅうけいが)、という名が書かれており、目を合わせてはいけない猛獣の名前が分かった。

「……」

 天海は一度顔を上げると、相変わらずのキリっと顔で腕組みをする女性を見やる。天海が玄関で出会った奇抜女性だ。こちらは、秋山あきやまみなね、というようで、天海はここで初めて会ったプレイヤーだからか、どうも気になっていた。

「さーて早速、ゲームのルールを説明したいところなんです、が! 汐音しおね様、汐音妃乃様! 私の話、聞いているのですかー!? 先ほどから全くこちらをご覧いただけていないようなのですがー!」
「……」

 汐音と呼ばれる、とにかく強調する女性らしい部分を持つプレイヤー。同じく目立つ金髪ロングや小奇麗なメガネを弄もてあそぶだけで、マスターの呼びかけがまるで聞こえていないような素振りだ。

「あら? 皆さん、私の方を見てどうかしましたか?」

 だが、さすがに目線に気づいたのだろう。ようやくプレイヤー達の顔をぐるりと一瞥いちべつした。そうしながら、両耳にそれぞれの手を運ぶ。聞こえていないような素振りをしていたのではない、本当に聞こえていなかったようだ。
 なぜなら、

「申し訳ありません。あまりに周りがうるさいので、耳栓をしていました。ピアニストの耳を、汚い声で汚さないで欲しいものです」

というわけである。 
 声で汚されてしまうということは、いったい普段はどのように生活をしているのだろうといささか疑問ではあるが。

「ルールを聞かなくても戦えてしまいそうなその意気やよし! しかし皆様、どうぞお耳をマンホールのようにして聞いてくださいね! 
さて! この『殺し合いハウス』におけるゲームのルールを、1日の流れを説明することでお話します!」

 マスターはポインターを取り出し、大型ディスプレイを用いてさらに高らかに話し始める。

「ゲームは10日間行われます。ただし、初日の本日はルール説明のみ、最終日の10日目は結果発表のみですので、ゲームは実質、8日間行われることになっています。
 まず皆様は、その日[ピーーー]べきターゲットを指定していただきます。これは非常おぉおおに重要な点ですので、今度はどうぞどうぞ耳をブラックホールのようにして確認してください!」

 マスターの適当な戯言はさておき、プレイヤーはディスプレイに注目している。そこには、このようなことが書かれていた。

 ターゲット指定はプレイヤーを直接指名するのではなく、プレイヤーに配布してある、①~⑩の番号で指定すること。ターゲット指定は、ルール説明後に案内される個室において、ノートパソコンで指定すること。そのプレイヤー番号は、現状本人にしか分からないこと。その番号は、各自の前に置かれた封筒内にあるバッチで確認できること。

「その個室は防音ですか? 雑音が聞こえるのは勘弁願いたいです」

 そこまで説明したところで、とっくに耳栓を仕舞いこんだ汐音が発言した。あいかわらず音に関してはうるさいピアニストである。

「完全防音となっていますので、ご安心ください! また、部屋に入るには皆様ごとに違うパスワードを用いなければなりません。さらに、蹴ろうが拳銃を使おうが壊れない頑強な扉ですゆえ」
「それはよかったですありがとうございます」

 マスターの回答に、ここまで気持ちがこもらないお礼は逆に難しいのではというほどの棒読みを、即座に汐音はお返しした。

ターゲットの指定は0時、日付が変わった後から行え、その日のターゲットを決めていただきます」

 そんな返しなど気にせず、質問がないことを確認して続きの説明をするマスター。

「皆様には、ターゲットを[ピーーー]ことを目標にしていただきますが……殺しが可能なのは、<マーダータイム>のみとなっています。このマーダータイムとは、12時~18時のことを指します」

 説明はいよいよ具体的になり、プレイヤー達が各日でやるべきことの説明に入っていった。

 まずプレイヤーは、今ルール説明を行っているこの場所、ロビーに、毎日昼12時までに集合しなければならない。万が一その時間にいないプレイヤーは、マーダータイムに参加することはできないものとなっているようだ。

「殺しを実行するのに使用して良いのは、個室に置かれ配布されている、拳銃、ナイフ、そして付与された特殊能力のみです。それ以外を用いた殺しは、一切認められておりませんのでご注意ください!

 恐らく皆様の中には、自身で武器を持参された方もいるでしょうが……それらの使用はできません。それらを使用した場合、問答無用で失格といたしまーーす残念でした!」

 人をイラつかせる目的の仕事があるとすれば、マスターは即座に入社面接を受けるべきだろう。そんなイラつかせのプロが話しをする中、最も反応を示していたのはミリタリーに身を包む大男。

「……」

 ……いや、訂正しよう。その大男、仙道玄矢は、目も眉も口もピクリとも動かない。この仙道は、いつだって反応が著しく乏しい、もとい全くないプレイヤー。そんな彼が、わずかながら口元をピクリとさせるほどに驚いているのだ。ゆえに、彼だけに限定してみれば、大きな反応といえるのである。
 仙道のその見た目からして、自衛隊か何なのだろうが、職業柄武器を手に入れることは容易なのだろう。

「繰り返しになりますが、12時~18時のマーダータイム以外、殺しは許されていません。ゆえに、その時間帯以外では、拳銃やナイフを携帯することもできず、個室に置いておかなければなりません。一部を除き、能力の使用もできなくなります」
「能力能力言ってるけど、それについての説明はまだか?」

 説明が続けば、当然さなる疑問点が出てくる。それを睨みつけながら投げかけたのは、秋山である。トンデモ服装に腕組みの組み合わせは、もともと大きな胸を強調することをやめない。

「能力は、すでに皆様に付与されています。皆様の前にある封筒、そこに、皆様の能力名、その効果、発動条件が書かれた用紙が入っています」

 マスターは、秋山の問いに封筒を指差しつつ回答する。封筒は、先ほどのプレイヤー番号が入っていたものと同じものだ。

「能力は全部で10種類。1人に1つ、ランダムで付与されています。では能力名だけ、ここで申し上げておきますね! その能力の効果については、ご自身の能力以外は当初は分かりません。どうぞ皆様、推理し予測し、ゲームに臨んでくださいねー!」

 そうマスターが言うと、ディスプレイには10の能力名が表示されていた。
その能力名とは、<絶対服従>、<仲間化>、<能力拝借>、<能力無効化>、<鍵師>、<番号把握>、<能力把握>、<拳銃携帯可能>、<ナイフ携帯可能>、<復活可能>である。

「皆様の中の常識を超えるであろう能力もあります……が、それは確実に起こる。それを理解することも、皆様の頭脳にかかっているのです!」

 誰しも思ったことだろう。
 能力名から内容が推測される能力のうち、本当にそんなものが起こりえるのか、という疑問を。そんなご他聞たぶんに漏れず、天海も“ぜ、絶対服従って何……!? 必ず命令聞かせるとか、そういうこと……!?”と、やはり効果が推測可能な能力についてハテナマークを大量に浮かべていた。
 そんなプレイヤー達の雰囲気を楽しむマスターは、能力については、

「それぞれの能力にはメリットデメリットがありますので、それをどう活かすかは、プレイヤー次第です」

と締めくくり、次の話題に移った。

「次に賞金についてのお話をいたします。これについては、指定したターゲットを殺せたか否かで決定します」
「賞金のお話! 待ってましたー♪」

 その話題に最初に食いつきあまりに高い声を響かせたのは、子供の幼さ持ってそのまま成長したような笑顔の、もう1人の女子高生。天海のまとうブレザーとは違い、この柚木優芽はセーラー服だ。マンガなら間違いなく、ワクワクという文字が浮かび、柚木のツインテールもうきうきと踊っていただろう。
 そしてもちろん、そんな反応を示したのは柚木だけではなく、マスターは意気揚々と続ける。

「指定したターゲットを無事殺せた場合、そのプレイヤーは……1億円を獲得できまーーーす! さらに! 殺したプレイヤーが賞金を持っていた場合、その全ても獲得できます!!」

 おお、と、プレイヤー達も意図しなかったであろう声が漏れる。

「逆に、殺しに失敗した場合は、翌日のターゲットを指定する権利を失います。つまり、翌日の殺しはできないのです!」

 先ほどの感嘆とは異なり、こちらのルールには当然不平がついて周り、

「翌日の殺しが出来ないだぁ? つまんねーな……そんなもん無視してやるぜ。それに、ターゲット以外も皆殺しだぁ!!」

 やはりお前かと言われそうな、桐生がそんな言葉で威嚇する。

「別に……それでもかまいませんよお?」

 対してマスター、さも想定どおりかの如く。

「えー? じゃあなんのためのルールだったの??」

 これには、先ほどの説明に不満がなかった柚木も、思わず口から疑問が出た。マスターは、いよいよ想定どおりだと仮面の中でもニヤリとして、

「別にルールを破っていただいてもかまいませんが……それ相応のペナルティを受けていただく、ということなのです! これまでのルール確認の意味でも、ペナルティを受けてしまう行動をお話ししましょう!」

とディスプレイに向き直り画面を進めた。

信者の方に「新スレあったの気づかなかったけど荒らしてくれたから気がつけたわ」と感謝されたので今回も宣伝します!

荒らしその1「ターキーは鶏肉の丸焼きじゃなくて七面鳥の肉なんだが・・・・」

信者(荒らしその2)「じゃあターキーは鳥じゃ無いのか?
ターキーは鳥なんだから鶏肉でいいんだよ
いちいちターキー肉って言うのか?
鳥なんだから鶏肉だろ?自分が世界共通のルールだとかでも勘違いしてんのかよ」

鶏肉(とりにく、けいにく)とは、キジ科のニワトリの食肉のこと。
Wikipedia「鶏肉」より一部抜粋

信者「 慌ててウィキペディア先生に頼る知的障害者ちゃんマジワンパターンw
んな明確な区別はねえよご苦労様。
とりあえず鏡見てから自分の書き込み声に出して読んでみな、それでも自分の言動の異常性と矛盾が分からないならママに聞いて来いよw」

>>1「 ターキー話についてはただ一言
どーーでもいいよ」
※このスレは料理上手なキャラが料理の解説をしながら作った料理を美味しくみんなで食べるssです
こんなバ可愛い信者と>>1が見れるのはこのスレだけ!
ハート「チェイス、そこの福神漬けを取ってくれ」  【仮面ライダードライブSS】
ハート「チェイス、そこの福神漬けを取ってくれ」  【仮面ライダードライブSS】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1456676734/)


「ペナルティとなってしまう行動は、4つございます!」

 マスターの声とタイミングを合わせ、ディスプレイにその4つが羅列される。
  1.マーダータイム以外での殺し
  2.マーダータイム以外で、拳銃やナイフを自分の個室から持ち出す
  3.ターゲット以外の殺し
  4.洋館から出る

「ただし3.の例外として、自分をターゲットとしたプレイヤーへの反撃は許されています。この場合、そのプレイヤーを[ピーーー]ことができれば、通常の殺し成功と同じく1億円獲得できるのです!」

 ディスプレイだけでは説明しきれていない部分を説明してから、マスターはトーンを落とし、

「これらを犯した場合、ペナルティとして……3日間の、ターゲット指定権の剥奪と能力使用停止処分をとらせていただきます。反撃も許されません。
 そして……ペナルティを死の数字……4回受けてしまった場合……そのプレイヤーは破棄されますゆえ……」

3日間の3、ペナルティ4回の4、の部分では指で数字を作りながら語る。本人は怪しさとペナルティの恐さを訴えたいのだろうが、そのニヤついた仮面のせいでいまいち締まらない。

「破棄……いいねえ! ねえ、誰か4回ペナルティをして破棄されてみてよ!」

 自分は生意気なガキです、と言わんばかりの発言を放つのは、参加者リストを見ると最年少。名を伊集院綾斗というようだ。
 伊集院は子供らしく止まらない好奇心を振りまくも、発言は誰にも相手にされず、好奇心は穴の開けた風船となった。せめてその、今すぐ運動場を駆けることができそうなハーフパンツを止めれば、少しはガキさ加減が減り、相手にされるのではないだろうか。

「最後に、最終的な結果についてお話しいたします。結果発表が行われる10日目……命があったプレイヤーには、それまで獲得した賞金が与えられます! つまり! 賞金を抱えたら絶対に生き残れ! ということなのでーーーす!!」

 これまでで最も大きく手を広げ、最も大きく高らかに叫んだマスターは、その手を振り下ろして封筒を差して、

「さて! 以上がルール説明となりまーす! 皆様の前の封筒には、今説明したルールがまとめてありますので、どうぞご確認ください!」

と封筒を開けることを促した。

 各々、改めて封筒を見る。
 つまりは最初からこの封筒には、プレイヤー番号とプレイヤーに与えられる能力カード、そしてこのルールBOOKが入っていたということである。そして、そのルールBOOKには先ほどまでマスターが説明していた内容がまとめられており、このように書かれていた。

ルールBOOK
【基本情報】
 ・大金をかけた殺し合いゲームを行う
 ・館の中では、配布された拳銃とナイフ、能力が配布される
 ・参加プレイヤーは10人

【能力について】
 ・プレイヤーは、それぞれ特殊な能力を与えられる
 ・能力は10種類。プレイヤーにランダムに割り振られている。それぞれ発動には条件がある
 ・プレイヤーは、自分以外の能力が誰のものか分かっておらず、効果や発動条件も分からない
 ・能力は下記の通り
  <絶対服従> <仲間化> <能力拝借> <能力無効化> <鍵師> <番号把握> <能力把握> <拳銃携帯可能> <ナイフ携帯可能> <復活可能>

【プレイヤー番号について】
 ・プレイヤーには、①~⑩の番号が割り当てられており、その番号を以ってゲームが進む
 ・番号は本人にしか分からない。番号の書かれた認識バッチが配布されている。

【1日の流れ】
 ・ターゲットを番号によって1人定める。当日0時から11時59分までの間に指定可能
 ・12時にロビーに集合する。集合しなければ、殺し合いが許される<マーダータイム>に参加できない。
 ・12時~18時の6時間をマーダータイムとする
 ・殺しには、配布された拳銃、ナイフ、特殊能力のみ使用が許されている
 ・18時を過ぎ、マーダータイムが終了したら当日の殺し合いの結果発表となる

【殺しの成功と失敗】
 ・成功:1億円獲得。殺したプレイヤーが賞金を持っていればそれも得られる。
 ・失敗:翌日のターゲット指定権をはく奪

【ペナルティとなる行為】
 ・マーダータイム以外での殺し
 ・マーダータイム以外で拳銃、ナイフを携帯すること。それらはマーダータイム以外自室に置かなければならない
 ・ターゲット以外の殺し ※例外:自分をターゲットとしたプレイヤーへの反撃
 ・洋館から出る

【ペナルティを犯した場合の処分】
 ・3日間の能力使用停止とターゲット指定権の剥奪をする。反撃も許されない
 ・4回以上ペナルティとなった場合、そのプレイヤーは廃棄される


【ゲームの最終結果】
 ・10日経過したらゲーム終了。その時点の賞金が生き残ったプレイヤーのものとなる
(1日目はルール説明、10日目は結果発表のみ)

「はっ、こんなもんがあるんだったら先に言え! テメェのクソつまんねー説明、長々と聞く必要なんてなかったのによォ!」

 天海や柚木らのJK組はルールBOOKを熟読しようとしている中、またしてもこの男。桐生が、テーブル上の足を組み替えルールBOOKを机に叩きつけ発言した。
 加えて、クレーマーがもう1人。

「本当にそうですね。前回のゲームでは、マスターと呼ばれるような無粋な方はいませんでした」

 金髪をなびかせる汐音である。

「! 前回のゲーム……? お前まさか……」

 そんな汐音に、その秋山がツリ目勝ちな鋭い目を見開いて、すぐに元に戻した。そのボリュームもつぶやき程度であり、その発言を聞いたものや変化に気づいた者は、周りにはいないようではあるが。

「桐生様、汐音様、失礼いたしました。しかし以前のゲームで、説明用紙だけでなく司会も用意しろとご指摘を受けましてね。本ゲームから、ようやくそれが実現したわけです!」

 クレーマー対処の鏡をマスターは見せ、場を落ち着かせる。落ち着かせたのだが。

「あ、あああああ、あの……」

 全く落ち着いてはいないプレイヤーが1人。天海と席が隣のくたびれたサラリーマン、赤木柊一だった。

「あ、秋山の隣は空席のようだが……」
「それ僕も気になってたよ。もう殺されちゃったとかかな? なーんて」

 赤木の疑問に同調したのは、態度は同じどころか対角線の先にあるといってもいい、飄々とした糸目いとめ。ルール説明の前に天海に声をかけた、優しい口調の常ににっこりしている系男子だ。しかしそのまま表情を崩さず、本人の意思は掴みにくい。この男が神崎晃という名前であることは、すでに天海は確認していた。

 この赤木と神崎の疑問は、ほぼ全員が感じていた。広い部屋の中、わざわざマスターの指定された席順なのに、空席があるのはいささか不自然だからだ。

「そちらはですねえ……福永というプレイヤーがいたんですが……逃げてしまったんですよ。その後どうなったか……ご覧になりたい方はいますかあ?」

 マスターは、どうですか? ねぇ見たいですか!? と言わんばかりにキョロつく。

「そんなことみーんな想像ついちゃうでしょ。殺し合いをしよう! なんて館なんだからさ! 赤木お兄さんも神崎お兄さんも、分かり切ったことを確認しなくてもいいじゃないか!!」

 このクソ生意気、臆病なくたびれ赤木や始終にっこりの神崎相手でなければ、瞬時に顔面殴打をくらっても文句は言えなかったことだろう。

「伊集院様のおっしゃる通りでございますねー! ではそちらは割愛いたしまします!
 さて皆様、この館にお越しいただいたばかりでお疲れでしょう。最後に個室にご案内いたします。なお、夕食は19時からとなっております。

 あ、そうそう、すでに皆様はお互いのお名前を出しているのでお気づきでしょうが、参加者名簿があるのでまたご確認をお願いいたしますね!」

 マスターに近い位置から時計周りに、獰猛な桐生京我、小心者の女子高生である天海千恵、くたびれた赤木柊一、ミリタリーの大男である仙道玄矢、糸目でにっこりした神崎晃、クソ生意気小学生の伊集院綾斗、幼い笑顔でツインテールなJKの柚木優芽、トンデモ服装な秋山みなね、空席の福永、そして金髪と巨乳を見せつける汐音妃乃。以上10人……いや、空席を除いた9人による殺し合い。

「それでは皆様……存分に殺し合いを、お楽しみください」

 そうして消えるマスターの通り、ここにいるプレイヤー達のゲームが、始まろうとしていた。

「……ふぅ」

 ルール説明から数十分後、各々個室に案内された。
 天海は後ろから3番目であり、ようやく一息つけたところである。もっとも、その心情はとても一息なんてつけるものではないが。“……疲れた……館に来るのに疲れたんじゃない……殺し合い、なんて……”と、永遠同じことを考えるばかり。
 せめてもの救いは、個室は豪華絢爛ごうかけんらんでも簡古素朴かんこそぼくでもなく、ちょっとお高めのホテル程度に留まるところか。これなら、派手な装飾に目のやりどころに困ることはない。

 が。
 天海は即座に目のやりどころに困るものを発見する。

「これ……!」

 拳銃。ナイフ。

 ドラマや映画でしか見たことのないそれを前に、天海は言葉を失った。箱に入っていたそれを取り出し、おそるおそるそれに触れると、あまりに冷たく、あまりに重い。それらが誘うのは、感じたことのない恐怖だ。殺し合いという狂気の言葉が、凶器によって一気に現実のものとなってしまった。

 天海は投げ捨てるようにそれを元の場所に戻すと、

「ひ、ひとまず、12時から18時の<マーダータイム>っていう、殺し合いができる時間以外は安全なんだよね。扉を開けることは自分しかできないし。あ! こっちがターゲット指定をするためのノートパソコンか。スカイプが入ってるけど、他の人皆恐いからいいや!」

現実逃避にもならないが、今度は早口に言葉をつなぎ始めた。

「なんの意味もないけど、ターゲットは①にしようかな。もちろん殺しなんてできないし、するつもりもないけど、何もしないよりはいいよね! それに、[ピーーー]気がある人だって、結局何もできないんじゃないかな。だって、ターゲットはプレイヤー番号で指定するけど、誰がどの番号なんて分からないし、違う番号の人を殺したらペナルティなんだから!」

 普段なら頭の中だけでの言葉であろうそれらが、次々と自分の口から漏れて溢れる。栓なんてないし、あってもすぐに外れてしまうだろう。

「あ、待って。そういえば、<番号把握>っていう能力があったけど、あれは他のプレイヤーの番号を知ることができるんじゃないかな。マスターがこのゲームを、必要なのは頭脳って言ったのはこういうことか……いかに相手の番号を知って、能力を知って、それを利用するか、っていうゲームなんだね……」

 と。

「……あれ……?」

 ここまで独り言を極めて、気づく。気づいたのは、

「ちょ、ちょっと待って……プレイヤーの番号って、まさか……このバッチ……!?」

自分の愚かさに、である。

「ということは……ということは……私の番号は他のプレイヤーに知られてるってことで……ターゲットにされやすいってことで……。しかもこのバッチをつけてたの、赤木さんと私だけだった、ってことは……」

 その気づきは、あまりに遅く、

「わ、私、狙われる……!?」

 なんとか封じ込めようとしていた恐怖も、

「そ、そんな……どうしたら、どうしたら……!」

 全て溢れ出てしまうのだった。

「どうしたらいいのおおおおおお!?」

翌日。
 最初にルール説明が行われたこの洋館のロビーに、天海は足を運ぶ。時は11時58分。マーダータイム開始の直前である。
      
「……」

 ロビーには、すでに天海以外の8名のプレイヤーが揃っていた。一睡も出来なかったため、普段の10分前行動に習えなかったのだ。
 ようやく席にたどり着き、座ったらそのままどこまでも沈みかねないオーラを放つ。

「おい、お前……なんでわざわざ来たんだ? お前の表情見れば分かる……気づいたんだろ? 自分の番号を晒さらしちまったヤバさに」

 そこまでかまってオーラを出していれば、さすがに反応するプレイヤーはいるもので。秋山が自分の口に手をやり、何か考えながら天海に声をかけた。このあたり、やはり女性にしておくのは勿体もったいないイケメンだ。

「はい、気づきました……」
「だったらここには来ず、自分の部屋に閉じこもっておけばよかっただろ? 個室のドアは頑丈だ、閉じこもっちまえば、誰もお前に手は出せない」
「……あ……!」

 気づく。だが、もう遅い。10分前行動がどれだけ重要だったのか、こんな場所にき来て思い知ることになるとは。
 なぜなら、

「皆様! お集まりいただきありがとうございます! それではいよいよ……楽しい楽しいマーダータイムをスタートさせていただきますー! 初のマーダータイム、全員参加ということで……存分に殺し合ってくださいねーー!」

その時間が、やってきたからである。マスターの宣言により、賞金のための殺し合いが、スタートしてしまったのだ。

「あ……」

 “下手に動いたら、本当に殺されちゃう!”と天海は思いつつ、実際のところ、足がすくんで何もできないのが正しい。思考停止で頭がすくむ、といったほうが良いのか。
 しかし、同時に疑問がわく。なぜ秋山は、そんなアドバイスをくれたのか、と。

 もっとも秋山は、そのアドバイスが100パーセント有効とは考えていない。なぜなら、特殊能力、<鍵師>が存在しているからだ。いかに頑強な扉、パスワードでセコムされようとも、その能力の前では紙にすらならないだろうからだ。能力の名称から、その効果が個室の扉を開けられるものであろうことは想像が付く。
 何より秋山は、“こんなアドバイスをしている私だって、必要とあらば誰だって[ピーーー]けどな……”と考えていた。

 当然である。いかに天海が、私は弱いので誰か助けてください~~と全身で表していても、ただの初対面で赤の他人で、さらにいえば賞金獲得のために[ピーーー]べき相手。そう簡単に真意を晒すはずがない。
 それでも秋山は、声をかけるコマンドを実行したあたり、他プレイヤーと比べてまだ天海にとって救いなのかもしれない。

「……ふぅ」

 しばし天海を見てその存在を意識していたが、“ま、無駄なことはしねーけどな……”と、彼女の口癖、思考癖で締めるのだった。

 一方、伊集院。
 これまでクソ生意気なガキ路線一直線な彼だが、それでも思考は冷静だった。彼の狙いは、天海千恵。
 現状、プレイヤー番号を晒してしまったのは、天海と赤木のみ。それぞれ⑤番と⑥番である。そこに属性を加えると、一方はか弱いオーラ全開の女子高生、一方はくたびれオーラ全開ながら長身のサラリーマン。小学生たる伊集院からすれば、後者を狙うことはありえない。
 では、即座に天海を[ピーーー]か、といえば否である。

 伊集院はこう予想していた。今日、天海が部屋に閉じこもる、と。
 残念ながらその2択は、天海の想像を超える愚かさによってハズレとなってしまっていたのだが。そしてこれが、殺しを否とするゆえんである。
 “ボクなら、天海お姉さんが部屋に閉じこもっていた所を狙えたのになぁ……”と、伊集院はこの状況を惜しみ考えていた。
 こんな全プレイヤーがいる場所で、初日から堂々と殺しはできないし、何より彼は、まだ武器を個室に置いたままなのだ。ルール上、マーダータイム以外で個室から武器を持ち出せないゆえである。

 初日の、しかもマーダータイムが始まって数分程度。こんなタイミングでは、誰も動かない、いや、動けない。

 秋山や伊集院と同じくして、神崎もあいかわらず笑顔なのか普通の顔なのか分からない表情で、この状況は当然だと考えていた。
 確かに、天海の⑤、赤木の⑥は割れている。しかし、そこに狙いが集中すれば厄介でしかない。銃撃を行った際、それらを狙うプレイヤーという壁が支障になってしまうかもしれない。その壁に銃弾が当たり、ターゲットでないプレイヤーが[ピーーー]ば、自分はペナルティとなってしまうからだ。

 そして何より。
 仮に動きターゲット殺しができたとしても、その時点で自分の能力が割れてしまうかもしれない。マーダータイムは全部で8回行われる。1回目からそんな状態では、中盤でぽっくりやられてしまうこと請け合いなのだ。

 他のプレイヤーも、彼らと同じような思考のもと、動きを見せないのだった。

 と。
 そうした空気を、プレイヤー全員が感じ始めた時である。
 天海以上に青ざめ、メガネまでもガタガタ揺らし始めた男が1人。青色LEDいらずとも思えるほどに混乱するのは、赤木である。

「あ、あばばばばばばば!」

 1人で奇声のような何かを上げながら立ち上がり、

「こ、こんな危険なところにいるなんて無理だ! わ、私は部屋に帰らせてもらう!!」

どこかで聞いたような捨てゼリフを吐いて、一目散に個室の方に消えていってしまった。
 そう、これは俗に言うところの、

「あは♪ そういうの、死亡フラグって言うんですよー?」

である。
 あまりに楽しげに言う柚木は、リアルではなくPCゲームをプレイし、その中のキャラクターに話しかけているかのうようだ。もし走り去った赤木がフラグを折ることが出来れば、拍手を送りたいところである。

 そんな赤木の様子を、呑気にテーブルにつっぷし寝ていた男が、目線だけで追っていた。その男、獰猛な金髪の桐生である。

「はっ! まぁ、こんな何も起きねぇツマンネー空間じゃ、いてもしょうがねぇよなぁ? 俺も戻って寝るわ。じゃーな」

 やれやれ、というポーズをわざとらしく作ってから去っていく。いよいよ以って、本格的に睡眠に入るようだ。
 その睡眠欲、どうか天海にも分けてほしいものである。もっともその天海は、あいかわらずの、もうダメだスタイルで頭を抱え、下を見続けているだけであった。

「……」

 沈黙。もともと誰か話すような空気ではなかったが、マーダータイム開始から3時間弱経っても、誰も動こうとしない。
 ただの殺し合いではこうはならなかっただろうが、これは、無鉄砲に動いていいデスゲームではないのだ。『こいつは考えが浅いぞ』、そう思われたが最後、食われに食われ、果たしてその後に何か残るのだろうか。
 それがこの場にいるプレイヤーの共通認識だと思われた時、空気ブレイカーが現れた。

「なーんか、なんにも起きないですねえ。トランプやります? あたし手品できますよ♪」
「ふふ、いいね。皆、殺し合いなんてする気ないんじゃないか、って思ってしまうし。特に、部屋に戻ってしまった2人なんてねえ」

 ツインテールJKと糸目笑顔系男子である。
 この柚木と神崎は、最初から殺し合いをしに来たとは思えないほどのにこやかっぷりで、ついに始まったゲームの中でも相も変わらず。異端者とも思えるが、そもそもこんな場所に来てしまった時点で、すでにそれなのだ。

「ねえ、皆ボクより大人だよねえ? バッカじゃないのお!?」

 しかし、その2人が作る和やかムードを、ガキんちょがぶち破る。

「……口の悪いガキだな」

 そんな伊集院に対して、同じくお口がよろしくないイケメン女子、秋山が反応した。糖分が足りていないのなら補給しろと言いたいところではあるが、すでに秋山の手には板チョコが2枚収まっていた。

「口が悪いなんて、秋山お姉さんに言われたくないけどね」

 秋山も自覚しているそれを指摘されるが、秋山は板チョコをパキッとやることで返答とした。伊集院は、それをグウの音も出ないとでも思ったのか、秋山だけではなく全員向かい、ガキな部分を前面に押し出していく。

「あのさちょっとバカな皆、このゲームのルール分かってる? 分かってないならバカだよ? 殺人には、拳銃、ナイフ、能力しか使えない。殺傷能力のある能力は多くないように見えるし、何より最初っから自分の能力を晒すなんてバカだよねえ?」

 やたらとバカバカ連呼するだけの見事なボキャブラリーだが、その伊集院の言い分は正しい。

「ってことは、拳銃かナイフを使うしかないわけだけど……それはマーダータイム以外部屋から持ち出せない。でも、マーダータイム前に一旦ロビーに集まらないと、マーダータイムに参加できない。
 ということは、だよ? マーダータイムが始まった後一度部屋に戻る……それはつまり、殺しの道具を取りに行く、ってことだ! だから、部屋に戻った2人こそ、[ピーーー]気マンマンってことじゃないか!」

 そう、正しいのだ、明らかなのだ。だからこそ、

「そんなこと、もちろん分かってますよ。お子様でも分かるんですから、気付かないはずがないでしょう。最初は観察が一番なんですよ、見ず知らずの馬の骨を相手にする時は」

と、罵倒を返されてしまうのである。
 それをお見舞いしたのは汐音。桐生といいこれといい、金髪2人組は獰猛に毒舌と、ろくなのがいない。そして、ろくなもんじゃない片割れ、毒舌の方の金髪はそのまま続ける。

「まず注意すべきは、<拳銃携帯可能>、<ナイフ携帯可能>能力ですね。これらは、マーダータイム以外でも武器を携帯できる能力です。さっきあなたが言ったように、武器を使うには一度部屋に戻らないといけないですが、それらの能力ならその必要がない。一見どうしようもなく使えない能力ですが、実は絶大な威力を持っています。お気付きでしたか?」

 伊集院の言い分は能力を度外視したものだったが、あえてそこに触れて針をちくちく突き刺していく。あわれ伊集院、もともと最も小さいのに、さらに小さくなっていく。そして汐音は、人差し指をビッと突きたて、こう宣言する。

「ということで、貧富の差がはっきりする大富豪を希望します」
「ってトランプやりたかったのかよおおおおお!」

 結果、小さくなっていた伊集院が、勢いを取り戻すことになった。

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