【安価】着想散文 (190)
・安価で出た単語をもとに、>>1が簡単な文章を書いていきます
・申し訳ありませんが、人名、下ネタはNGとさせて頂きます
・一つの書き終わりに次の安価を出していきます
初めてなので拙い部分もあるかと思いますが、皆さんご協力よろしくお願いします
それでは、>>3
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1447764796
綿菓子
迷走
皮肉
>>3
「迷走」了解です!
暫くお待ちください
大凡の見当というやつは、それが外れたときにはひどい狼狽でもってのしかかる
自信満々に提示した俺の提案は、物の見事に打ち回され…まぁとどのつまり、彼女の返事はNOだった
曰く
「貴方をそんな風に見れない」
だ、そうだ
相手の居ないディナーテーブルと言うものはとにかく寒々しい
手のついていない料理が残っていれば尚のことだし、手付かずの理由が
『相手が帰ったから』
であるならばもう死ぬより辛い
無言で店員にカードを出して、とにかく他人の顔の向きが見えないように、視線を落として店を出たのは覚えている
肌色のシャンデリア光に浸る深紅の絨毯をじっと見ながら、
「赤の反対は青、真っ青な俺の顔、暖色に包まれたオトナなお店のオシャレな差し色」
なんて自虐的な連想ゲームをして、自分の見当外れに追い討ちをかける
「あぁ、振られた、もう会えない
もう二度と彼女の笑顔をる事がない」
オシャレな店のオシャレな玉砂利
そのオシャレな玉砂利の脇の、オシャレな植え込み
そのオシャレな植え込みで縁取られた、オシャレなアプローチ
嫌みな程にオシャレな三途の川を渡りきった頃に、肺胞は酸素をようやく取り込み始めた
絶望的な、実感とともに
どうやって帰ったのかすら定かではないが、一睡もしてないのは自覚しているという何とも奇妙な現実感
ベッドの上の禅宗者は、朝の光にどうにか自我を回復させた
夜は我から逃げられたが、太陽光と言うものはどうにも万象一切の陰影をはっきりさせる性質らしい
が、同時に活気を与えてもくれるので、まぁ家には居ないと言う選択も採る事ができる
車の鍵と財布だけを持って、今度は密室で一人きりと言う状況から逃げる事にした
薄汚い埠頭の公園で、雲でも見ようと思った
何か、失恋した者には似合いだと思った
着いてみて、ベンチに腰掛け、毛並みの良い柴犬に右足を嗅がれながら思った事は、「雲って面白くない」だった
飼い主のおばあちゃんは
「ごめんなさいね」
と
「こらやめなさい」
で忙しそうだったので、面白くない雲を眺めながら無視する訳にもいかず、愛想笑いで
「だいじょうぶですよ」
と返事して、自分からベンチを離れた
コンクリートを茶色く塗装した柵に肘でもたれ、今度は海を見てみる
まぁ汚い
もとより綺麗な海でもないし、季節変わりの強風にのって飛び込んだ様々な塵芥が、護岸に沿ってフラフラと水面をなぞっている
飛ばされて流されて、ぶち込まれて寄り集まって
なるほど人生か
随分ビンテージ感のある哲学が発想の貧弱さを笑った時、『迷走』という言葉が降ってきた
迷い、走る
迷いながら、走る
風に煽られ海に降った落ち葉は、自らの運命を知っていたか
あるいは焼き芋の燃料になった落ち葉は、知っていたか
降って湧いた迷走は、実物大の自分自身をシェイプしていく
選び取った目論見に、結果がついてくるとは限らない
見当を付けたところで、実現は確実性を伴わない
予定は、予定
目を瞑ると、眠れそうだ
吐き気を催す心の傷と、睡眠不足が折り合いそうだ
迷いの中で生きる俺の足元は、昨日と違って確かに固かった
申し訳ない、時間かかりました…
次>>9くらいかな?
思ったより長かったな
ぬばたま
カルマン渦流
統合失調症
>>9
統合失調症、了解です
また難しいですねこれ…笑
暫くおまちください
面白い
葉っぱ言うものは大抵緑色であるが、必ずしもその限りではない
例えば、若葉は黄色味を帯びている場合もあるし、枯葉は茶色くなるからである
ところで、葉っぱが紅くなる事があるのはご存知だろうか?
そんな馬鹿な!と思ったであろう諸君、これは事実である
では、どうして紅くなるかと言う話をしていこうと思う訳だが、そもそも『紅』とはどう言う色だろうか?
口紅、紅潮、紅芋、紅生姜
兎角雅びやかであったり、風情のある様、初々しい様こそが紅によって象徴されるのである
紅芋や紅生姜は、貴人の食膳のみ、特に婚礼において重点的に供される事からもお分かり頂けるであろう
では、葉っぱが紅くなる、この現象は何故起こるかという事である
これは即ち、「恋」なのである
諸君は植物に感情は無いと思われるであろうが、それ甚だ勘違いである
植物は、感情を持っている
正確には、感情を与えられているのである
私によって
私は生まれつき、植物に感情を齎す力をもっていた
それ故市井に隠遁していたのだが、私のいく先々で紅芋や紅生姜を見かける事実から鑑みても、どうやら日本国政府は確実に所在を把握しているようである
さて、些か話が逸れたが、樹木の恋に話を戻そう
樹木は大抵、感情を与えると感謝する
まぁこれは私が生来持つ気風の雅びやかさ故であるが、時に感謝を通り越し恋慕の情を抱くのである
故に、赤らめ、乙女のたおやかさをその身の宿すと言うわけだ
その紅の美しさたるやえもいわれぬ気品を備えたものであるのだが、それだけに、哀しい
私が『どれか一つ』を選ぶことは、その他にとって絶望であるのだから
これは然るに、これは全国の婦女子にも言える
なので、申し訳ないが私の事は諦めてほしい
誰かのものになってしまえば、日の本は乱れるのである
しかしながら、だ
私とて少しでも近くに居たい、身の回り世話をしたいと言う世の婦女子の心のうちは理解している
そんな女性の本心、いや本能を、私は自らの器でもって解したい
それが、せめてもの優しさであるから
なので、他の女性の嫉妬が怖くないと言う方のみ、私の許に駆け付ける事を許可する
では、連絡を待つ
うーん…難しいですね
つぎ>>13くらいで
ドべネックの桶
>>13
なん…だと…!?
この言葉知らないのでググりますね、暫しお待ちを
ドベネックの桶、了解しました
頑張りまーす
舟幽霊に出会った時のために、底の無い柄杓を用意する
柄杓を欲しがる幽霊に真面な柄杓を与えれば、たちまち船は海水で満ち、海に没する
人付き合いの苦手を自覚するとき、底なしのバケツを抽象的に、この怪談を具体的に思い出す
どれだけ注いでも満たない器
注げない、用具
感情を守る為に思考は悟られてはいけないので、ついつい饒舌になる
よく回る舌は本心のカムフラージュには有効なので…
裏を返せば、腹の知れない『私』を相手に差し出す
その代償に、自己嫌悪を受け取って
溜まらないはずの感情の器には、なみなみと悲しみが詰まっていた
ほんの少し勇気を出して、自信を注いでも、比重の重い悲しみは微動だにせず
澄んだ喜びがこぼれ落ちていく
ある時気付く、底はある
綺麗な柄杓も置いてある
これは、桶だったのだ
私を構成するこの桶は、不揃いな板で円を取る
そのつらつらとした連続の中で、一際背の低い、一枚の板
その高さは、一番深く重く沈んでゆく、悲しみの水平だった
そうだ、私は敢えて底なしの柄杓を選んでいたのだ
決してこのコールタールを、誰かに注いでしまわぬよう
いつか棄てる場所が出来た時、重みに軋む柄杓の柄が、ぼきりと折れてしまわぬよう
こんな桶ならいらないなぁとも思ったけれど、生憎箍は頑丈そうだ
頑張った…
次本日ラストでー
>>18
乙 面白い
ksk
乙
安価は澪標
巨乳少年
>>18
またわかんねぇw
ググってきます!
>>18
澪標了解です、がんばります!
肩の破れたTシャツを着た息子が、金色のトサカを振り回しながら熱弁している
熱気の篭った身振り手振りに付いてくる、ジャラジャラした音もうっとおしい
『だからよぉ!俺は音楽で生きていくんだよ!ギターを買ってくれ!それでなんもいらねぇ!』
うるさい
門限破りをかました14歳のクソガキに
「何時だと思ってんだ、受験どうすんだ」
と言っただけでなんでギターなんぞ強請られんといかんのか
意味がわからない
『レールの上を歩くのはうんざりなんだよ!!ヒロトの歌聴いてみろよ!!』
大変にうざったい
いっそぶん殴ってやろうかとも思ったが、それでは余りにも軽薄だとも思った
「あのな、高校ってのはレールじゃないぞ?」
キョトンとした大バカ者にこれしたり、と適当に話を継いでみる
「だいたいな?音楽が上手くいかなかったらどうするんだ?」
『いやそれは』
「いいから黙って聞け。俺もブルーハーツはよく聴いたよ。お前くらいの年の頃にな。確かにあれは、俺の気持ちを代弁してると思えたもんだ」
どうやら効果は抜群だ
伊達に管理職をやってるわけではない、クソガキをそれっぽく丸め込む事などお手のものだ
「いいか?お前は船だ。世の中は海だ。自由に何処へでも行ける。ただし、お前が座礁しなければ、だ」
「水面がどんなとこでも澄んでると思ったら大間違いだ。海底の見えない暗い浅瀬を、お前はどうやって進む?」
いい調子だ
こんなに冴えてるのはカミさんを口説いた時以来だ
「高校はな、そんなお前の船を沈めぬよう、峻別できる眼を養う所…言わば澪標だ」
『澪標?』
「そうだ。浅瀬に乗り上げれば船は動けない。その境を標す、海の標識だ」
「レールだと?バカ言っちゃいかん。お前は何にでもなれるんだよ。進む場所を俺は決めない。それはお前だけのものだからな」
「お前の夢は、高校なんぞに行った程度で霞んでしまう程ヤワなものか??」
『そんなわけねぇだろ!!』
ジャラジャラ、ドン
あ、うるせえ、失敗した
煽り耐性ねえなこいつ
「そうだろ、そうだろう。ならお前は、澪標をしっかり見ながら、夢を追えるようにならんといかんな。」
『……!』
完璧に決まった
「わかったらな、母さんに謝ってこい。お前の帰りが遅いから心配してたぞ」
『オヤジ…ごめんな…俺ちゃんと地に足つけて夢追いかけるよ…』
「おう、応援してるぞ」
ふふ、かわいいもんだ
『だからさぁ、ギター買ってくれよ」
「嫌」
『タバコと酒控えたらいいじゃん、母ちゃんと約束してたじゃん』
『身体に悪いじゃん。暗礁じゃん。お互い澪標ちゃんと見ようぜ?』
「……いや!!!!!」
つかれたーw
今日はここまでにします
お付き合い下さり有難うございました!
また明日の夜安価を出したいと思います
宜しければお題を下さいねー
それでは、おやすみなさい
乙
面白かった
読みやすいし分の量に比べて早いし面白かった
乙
中性専用車両
申し訳ありません、>>24以降のレスが表示されません(スレッド一覧のレス表示は増えている)
>>25 >>26
と連続の書き込みになってしまったのもそれが原因です
改善するまでお題が確認できないため、投稿できません
>>27の方、本当に申し訳ありません
てす
なんか表示がすぐに反映されない時ってあるよね…
みれました!笑
>>27把握しました、難しい…笑
暫くお待ちを
そういうときはF5リロードすればいいんやで
なんでもうちの会社はサービス残業を撲滅する事を今年度から目標にしているようで、事実、定時から1時間も過ぎればみんな家に帰るようになった
どっさりと仕事を鞄にしまいこんで
結局、会社に残れば出退勤の記録が残るって事で、その分ご自宅でどうぞって話だ
なぁにがサー残撲滅だ、代わりに私生活ぶっ殺せってか、ちくしょうめ
そんな生活を8ヶ月弱、商売柄年末は特に忙しい
真っ赤な目ん玉に無精髭
徹夜明けのとろけきった脳みそが指令を出さない分、染み付いた反射で行動をカバーするもんだからミスも起こる
目の前に来た電車のドアがぱかっと開いて、さっきまで仕事をしてたから…そうか、仕事しに会社行こ!と飛び込んだ
『ちょっと貴方!!ここ女性専用車輌ですよ!!!』
眠眠○破りよりは効果的だが、できれば常用したくない鼓膜&心臓破りが、何をしでかしたかをワンテンポ置いて自覚させる
「あぁ、すいません、ぼーっとしてまして…」
謝罪のつもりでひねり出した愛想笑いは、相手にとっては言い訳だったようで
「いいから!さっさと車輌を移ってくだい!!!」
火に油、波に台風、拍車に坂…女性専用車輌inおっさん
許されざる異分子に、大奥の取り締まりは厳しかった
すごすごと、隣に移ろうと連結部を見やると、普段あんなもんに詰まってるのか俺はゾッとするほど、まぁ酷い
瞬間、ガタンと電車が揺れた
よろめいて、ぶつかって、『あいたっ』て声が聞こえた時は、俺はどれだけ不幸なんだと思った
愛想笑いはNG、ビコーズを告げれば言い訳となる
ならば…
「すいません!」と潔く頭を下げる
どうよ、大奥方、これぞ現代の侍よ
だからもう…あの高密度な仲間達のとこに行かせて下さい…
『大丈夫ですよ、そんな大袈裟な』
切り捨て御免を覚悟した憐れな侍のつむじに降ってきたのは、なんとも落ち着いた優しさだった
「でも…乗ってしまって…貴方にも迷惑を…」
恐る恐る面をあげると、微笑む姫様だった
『ワザとじゃないんでしょ?お疲れみたいですし。それに、女性専用車輌って男性は乗っちゃいけない、なんてことないんですよ?』
超優しい、ヤバいカワイイ
もう俺一生分の優しさもらった、なんて内面でおちゃらけていたつもりが
気が付いたら、鼻の奥が痺れていた
堪え性のない涙腺持ちの、言葉も継げぬ30男に、彼女は怯えもせず
じっと見つめながら語りかける
『お疲れ様です、毎日大変ですよねえ』
ありがとう、と震える声で絞り出したら、すうっと気持ちが楽になった
純粋に誰かに優しくされる事は、当たり前だか嬉しい事だ
今更ながら自覚する
頭がゆっくりと覚醒していくのがわかる
クソくだらねえ毎日を生きながら、猛毒を腹のうちに溜め込んで
それでもそれを誰かにぶつけるわけにはいかないから、一生懸命中和して
愛想笑いとすいませんを何よりのツールに、毒にも薬にもならない、中性を必死に守っていた
何かが喉を通りすぎて、臍の真下でぐぅっと力に変わっていく
女性専用車輌の向こうに、中性達のサンクチュアリが見える
押さぬよう、押されぬよう
闘っている連中がいる
丁度ホームに停車したので、降りることとする
去り際振り向いてもう一度、臍の下から出る大きな声で
「ありがとう!俺今日休むことにします!」
と頭を下げた
バッ!と機敏に頭をあげると、まんまるい目をすぐに細めて
『がんばって!』
と彼女は言った
がんばりましたー
次>>35くらいかな?
たわし
目玉が爆発する奇病
>>35
造語ラッシュすげえな…
よし、がんばります!
暫くお待ちをー
いつからだろうか、私の目玉は無尽蔵の爆薬となった
街中で、トイレ中に、映画鑑賞、夕飯、読書
大凡睡眠時間以外全ての瞬間で、私の目玉は前触れなく爆発した
不思議なもので周囲には被害は出るが、私自身は全くの無傷、奇妙な事に目玉も無傷だった
初めのうちはもう狼狽えるなんてもんじゃなかったが、段々と付き合い方がわかってきた
こいつは「みたくないもの」に反応して爆発を起こす
そして、「みたくない度」つまり、対象への憎悪が強いほど爆発は強くなる
テレビでクリスマスのカップル特集を見た瞬間に、部屋が半壊したのには少し凹んだ
さて、こんな性質の病気なものだから、私は外にも行けなくなった
もちろん嫌いな物も食べられないし、悍ましいバイオレンス小説も読めない
ラブシーンのあるDVDもダメ
なので私は、私の好きな物にだけ囲まれて過ごした
嫌いな物もからとことん遠ざかる生活は、私をどんどん研ぎ澄ましていった
その集中力は、運動不足解消といつか来る外出の為に始めた白杖に、神経を通わせた
この部屋の中で唯一外部と繋がっているインターネットは、私にとって最大の娯楽…つまり好きなものだった
初めのうちはPCを何度も爆破してしまったものだが、今ではそのような事は殆どない
かわりに、私の中には「好きなもの」が溜まっていった
私は今日、アイマスクをつけて外出する
あるものを見に
インターネットで知ったのだ
この国は腐っていると
みんなが苦しい生活をするのも、悲しい思いもするのも、私がこんな病気になったのも、全部、国のせいなのだ
私は、私の好きなみんなの為に、国会議事堂を見に行く
やっつけたったw
すいません、発想力が貧弱なのです…
次ちょい縛りますね、「固有名詞」でおねがいします
>>40
新歓
頭頂部
ピンク髪
すいません、昨日寝てしまいました…
今日は休みなので昼からやっていこうと思います
>>40
ピンク髪…がんばります
暫くお待ちを
『似合う?』
と薄ピンクに染め上げた髪をかきあげ妻は笑う
『根元までしっかり染まってるでしょ?』
だと
「50も過ぎてなにやってんだ。だいたい…」
呆れの次の責めの句は、笑顔を崩さず連なって来た理由の部分のせいで、完全に宙に浮く
『私ね、癌ですって。末期で手の施しようがないんですって。』
『それでね、前からやってみたかった事やってみようって思って。アメリカとかの歌手さんみたいでしょ?』
絶句してはいけなかった
無言で仰天しては、現実は俺の心を食い尽くす
受け入れてはいけない
妻のこのあっけらかんとした発言を受け入れない為に、俺は何か喋らなくてはならない
「…なんで、黙ってた?体調に出てただろう」
選んだのは、遠回しな受容だった
50余年、生真面目である事が社会に対する奉公だと信じて生きて来た仕事人間は、こんな時の…現実を和らげるマニュアルを持ってなかった
『…あなた、忙しい人ですし、ほら、優しいから。心配かけたらいけないかなぁって。勘違いかも、って程度の痛みだったし』
優しい?伴侶の苦しみに気付かず、毎日を熟すだけの男がか?
『ほら、今も泣きそうな顔してる』
そうか、俺の本質はそうだったのか
親の葬式も神妙さを崩さず、厳かに執り行った
俺は、泣いてはいけないのだと思っていた
大勢の部下を導く社会人として
別れを告げに来てくれた列席者に、感謝を伝える喪主として
一家を支える大黒柱として
常に引率者として毅然と在るべきだと言う自覚は、主導権を取りこぼした時にはこんなにも脆い
怯懦は、彼女の優しさ故だった
『あなたも私もね、桜が好きでしょ?だからこの色にしてみたの』
『白髪染め以外で髪染めるなんてした事なかったからね、どうせなら外人さんみたいにね』
懊悩の末に、泣かない事を決めたんだろう
俺の本質を知っているからこそ、自身の振る舞いで守ってやろうと思ったのだろう
もともと明るい女だが、今日のこの日の強さは燦然としたものがある
『それにね、インパクトって言うかね。こんな髪型したおばちゃんが妻だった、って相当記憶に残るでしょ』
アイディアに対する自賛に遠慮がない
なんとも素晴らしい名案だと疑っていないようだ
稀代の発明家然とした自信満々な笑みで彼女は言うが、全くもって詰めが甘い
俺の内部を忖度しながら、俺の記憶に強く在る為にこの髪色なのだと言う
もう、我慢はできなかった
バカか、と言ったきり、右手で顔を覆い肩を震わせる俺を見て、彼女は狼狽えているようだった
それから半年後、彼女は逝った
できる限りの事をしたい、と言う俺の申し出に、会社も親族も友人も、大変に同情的だった
彼女が逝くまでの半年間、色々な話をした
一度、旅行にも行った
幸い結婚後すぐ子宝に恵まれたので、二人きりの旅は新婚旅行以来だった
旅先でも勿論そうだし、病室で外を見ながら話す時も、彼女は明るいピンク色だった
葬式で泣かなかった事を娘に責められたりもしたが、悲しくないわけないだろう、と言う言葉の説得力は、最後の半年の俺の振る舞いを見ているから納得できるらしい
八当たりしてごめんなさい、だそうだ
さみしいねぇ、と腫れた目で微笑む娘が妻に良く似ていて、危なかった
彼女がいなくなってから、気付いた事がある
春が、嫌いになった
柔らかな始まりの季節に溶け込んで行った彼女の終わりを、どうしても思い出してしまう
春風の暖かさに
浮かれる大学生の笑顔に
ゆっくりと地面を温める、和紙を透かしたような陽光に
桜の、花びらに
彼女の面影がそこかしこに散らばっている
また好きになる頃には彼女のピンク色の髪を忘れていそうで、その時は暫く来なくてもいいかな、と思った
安価忘れとった、次>>46にしますー
洋楽
あかり
靴が片方
面白い
すいません、ちょっと出かけてましたー
>>46
靴が片方 靴が片方、了解です
暫くお待ちをー
天稟
画才、商才、文才、学才
世の中に様々な才能は存在するが、ことこの男は戦の天才であった
戦場を駆ける黒豹、疾風の鷹爪
帝国の守護神、畏れを知らぬ蒙昧な者たちを裁く雷
人々は大いに渾名し、常勝無敗の将は決して期待を裏切らなかった
その将が、ついに宿敵を滅ぼし凱旋してくるのである
帝都の民は大いに喜び、帰りを待つ
騎乗の彼が見えたその時、歓声はまさに万雷となって彼を出迎えた
空は、曇っていた
国門の外に構築された人垣が近付くにつれ、彼は1人の男を双眸に認める
右脚の無いその男は、涙すら浮かべて将軍の為の【凱旋門】の一部になっていた
都への入城は下馬し、王の使者との儀礼を以って赦される
穢れを祓うこの儀式は、国の安寧ほ為に続いた伝統であった
もう幾度めか、例に倣い馬を降りる
自らの足で大地を踏み使者の到着を待つ
通過儀礼を待つ間、ふと、男と話してみようと将軍は思った
「その足は?」
よもや天下の大将軍に声を掛けられるとは思っていなかったのだろう、男は酷く恐縮し、片脚で器用に伏せると、面を下げた
『はっ!畏れながら、先の戦にて失いました。帝国の兵としてお役に立てませんこと、誠に申し訳ございません』
頭を垂れ、目を合わせぬまま男は謝罪の言葉を述べる
「そうか、謝る必要はない。顔を上げてくれ」
男は一瞬なんと言われたか解らなかったが、将軍が
「大変だったな、命あってよかった」
と続けたのを確かに聞き、大いに泣いた
確かに彼はその時救われた
兵卒としての役を果たせなくなった男は、せめて我らを守る軍神に、その感謝を伝えようと不自由な足で国門の外に居た
助かってしまった己が身を恥じ、戦えぬ自分を卑下していた
将軍の言葉は彼が自分自身の身にかけた呪いを解いたのである
「いつの戦で?」
『先の渡河決戦にて…敵将に挑みましたが、敢え無く』
もはや感涙を隠しもせず、まっすぐに将軍を見つめ男は答える
敵将
覚えている
手強い相手だった
敵国随一の武勇を誇り、忠に篤い武将だった
既に敗勢に在るにも関わらず、決して逃げず、説得も懐柔も聞かず戦場に果てた
そうだ、よく覚えている
その、今際の際の言葉も
男は続ける
ー帰りを待っていたー
ー貴方ならば必ず仇を討ってくれると思っていた ー
ー率いられた兵卒として、こんな冥利はないー
空は、より灰色を濃くしていく
将軍は思い出す
あの強敵が、敗北の側に立ちながら、説得を跳ね除けた言葉を
ー国に尽くしているのではない、民を守る、その正義にこそ尽くしているー
思い出す
彼の、末期の言葉を
ー必ずや、報いは来る。裁かれる。我々の安寧を脅かし、自らの欲望のままに戦の火を広げた貴様達の王に。その手足と成り果てた貴様達にー
己の鬱積を取り払ってくれたと喜ぶ男は、心から嬉しそうに話し続ける
「靴も片方でいいんです。私の無くした脚が、この国の礎になったならそれも安いものです」
自らの脚を喪い、戦場から永らえてしまった事を恥じる男
戦を嫌い、その禍から民を守る為に命を差し出した男
将軍の脳裏に、ぐるぐると思考が渦を巻く
ぽつりと一滴、雨が落ちる
敵将は、はっきりと指摘していた
将軍の正義は、敵国の災厄なのだと
お前は呪いを産み、それを植え付けたのだと
不遜で一方的な正義の代償は、怨みの縛鎖となるであろう、と
片脚の無い男は言った
[ピーーー]ぬ事は恥じであったと
親から貰った身体の一機能を喪い、戦えなくなった自分は死ぬべきだったと
脚を棄てて余りある、勝利の歓喜を貴方はくれた、と
人より少し膂力に優れ、頭が切れた
それが戦場で役に立ち、結果として国の覇業を担った
仇なす者を裁く雷神として
累々たる死者の堆積を、その道に残しながら
仇、とはなんであるのか
報いとは、なんなのか
【片脚の男】は、眼前のこの男だけでは無いはずだ
もし別の【片脚の男】が、亡国の民であったなら
彼らが無くしたもう片方の脚は、何の為に奪われたのか
靴の片割れは、どこに在るのか
帝国に向かい、散った魂はどこに昇っていったのか
或いは、散ったその場に染み込んでしまったのではないか
その身も焦がすような、恐ろしい憎悪を抱いて
使者が到着したようだ
群衆の歓声が一際大きくなる
地割れのように、雷鳴のように
その狂喜の声は、戦場の鬨となんら変わらない
地を割く狂乱の中で、遂に曇天は驟雨へと変貌する
瞬間、稲光
その轟音は、いったい何を裁いたのか
なんか改行注意されたのでわけました 笑
特に意味のある段落分けではありません
次>>53
汎用性
バット
>>53
バット、了解です
暫くお待ちをー
人生の岐路はその正体を前もって明かさない
過ぎ去ったのち、それがターニングポイントだったのだと振り返る事のみが、人生には許されている
俺の場合、【それ】は小学校6年の時だった
ある日、カツアゲに反抗したらボコボコにされた
挙句というか勿論、500円くらい入った財布も奪われた
三人組で、河川敷への移動時間も含めたら正味2時間
一人頭時給100円もいかない非効率な金儲けである
悔しくて悔しくて、バットを買った
原チャリに乗ったあいつらを探し回り、ついに通う高校を突き止め、授業中に連中の原チャをボッコボコにした
当然、そんな破壊活動が無音でできるわけもなく、教員がすっ飛んできた
観念して大人しく捕まって職員室に連れて行かれる時、ギャラリーの中にあいつらを見た
蒼白な顔面が気持ちよかった
勿論、その後で思いっきりチクりもいれてやったが
一通り説教をくらい、担任の迎えを待っている間、1人の先生が話しかけてきた
『お前、野球やれ。バットはな、野球に使うもんだぞ。腰の入ったいいスイングしとったわ』
そう言って、その先生は笑った
この高校の野球部の監督をしているそうで、野球の魅力を情熱的に、報復に使われたバットの哀れさを訥々と、俺のスイングの良いところを論理的に教えてくれた
今にして思えばクソガキを更生させる為の煽てだとわかるのだが、俺は正直、
「俺って野球の才能あるんだ!」
と信じて疑わなかった
家に連れ戻され、原チャと同じくらいひっぱたかれた後、親父に野球やりたい、と言ってみた
一瞬キョトンとしていた親父だったが、大爆笑の後に
『バットつかうならそれがええ』
と言って頭をガシガシと撫でた
げんこつでできたたんこぶが痛かったけど、あいつらの真っ青な顔より嬉しかった
そんなわけで、ボコボコに腫れた頭を翌日には丸坊主にして、【野球部、俺】は始まった
親父は丸刈りの俺を見て
『北海道産。ジャガイモ』
と笑っていた
かーちゃんにお前がやりすぎたんだろ、とビンタされるのを見て、俺も笑った
遅いスタートだったけど、野球部のみんなは快く迎えいれてくれた
6年の7月から9か月、中学の三年間
【才能ある俺のスイング】
を、しょっちゅう敵エースにやられながらも鍛えていった
高校はあの学校にした
中学2年で社交辞令と気づいた時に、決めた
怒るのではなく、示すために話してくれたあの先生のもとで野球をやろう、と決めた
新入部員の挨拶で
「もうバットを変な使い方しません!」
と言うと、先生は
『おう、ボールだけぶったたけよ』
と、あの時の笑顔で歓迎してくれた
野球を始めてから、居場所はどこにいっても必ずあった
そして、今、ワンナウトランナー二、三塁でネクストバッターズサークルに俺は居る
点差は、一点
先輩がスリーバントスクイズをしくじったので、ツーアウトランナー二、三塁のバッターボックスが、新しい居場所だ
ふうっ、と大きく息をして、相手のエースの目を見る
野球の大好きな、先生と仲間と同じ瞳
俺にもわかる、尊敬できる
でも、あの時よりずっとずっと強く、俺はバットでぶったたく
負けん気の強いだけのクソガキが、バットを握ったあの時、俺はこの未来を予想していただろうか?
ただあいつらの原チャをぶっ壊せればよかっただけで、時速130kmを超える小さな球をひっぱたく、なんて思いもつかなかった
あの後先生に逢って、小学校の野球部で親友ができて、同じ中学高校を経て、今に至る
振り返れば、暴力少年は沢山の経験を経てここに居た
思いっきり振り抜いた打球は、鋭い回転と球足で、センター前に抜けていった
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「打った、打ちました!打球は二遊間を抜ける!二塁ランナー帰ってくる!バックホーム間に合わない!--高校甲子園初出場!」
がんばりました!
次>>56
今日は次で最後にしますー
安価近いですね、>>58
に訂正します
kskst
クラマース・クローニッヒ解析
>>58
まーたわかんねぇw
ググッてきます!!
>>58
えーとですね…
ま っ た く わ か ら ん !
高卒にはキツイよーマジでー
〜を説明したって言われても〜がわかんねーもんマジでー
と、言うわけで、申し訳ない、最安価>>62で
クラマース・クローニッヒ解析
はちゃんと頭柔らかい時に読んでおきます、いつか書きますのでご容赦ください
kpkst
>>1に調べ物をさせるスレになりつつあるなw
まあ知らなかった事を知る事は何かの肥やしになるものだが
ラッダイト運動で
ラッダイト運動(´・ω・`)
>>62
さーせんw
勿論ググッてきます、暫しおまちをー
すまんな 仕事柄使う言葉だったんでな
>>62
アイエエエェ!?イッキウチコワシナンデ!?
よし把握!
これ系はなんとなーく歴史でなぞったの覚えてるので頑張ります!
暫くおまちをー
「私は非常に怒っている」
「この指輪の値段とは即ち、流通調整によって齎された架空の、この石の作られた希少価値であると言わざるを得ない」
「もちろん石を支える架台たる、プラチナの価値もそれに含まれる事は承知しているのだが、やはり得心がいかないわけである」
「本来的な資源としての価値や埋蔵量を背景に採らず、流通過程に当然在るべき採掘、加工の労働を意図的に隠し、煌びやかなイメージで以って、非論理的且つ一方的な価格を消費者に承諾させる」
「謂わば錯誤こそがこの指輪の価格の大部分である」
「誤解しないでいただきたい。私はなにも、石の美しさを否定するわけではない。そのプリズムの秀麗さは勿論のこと、それを引き出すべく研鑽を重ねた先人達の歴史には、最大の敬意を払っている」
「で、あればこそ!!この不適切な価格こそが、その歴史を毀損し、石の放つ光を濁らせる主体だとは思いはしないか!?」
「そう、私のこの主張は、歴史や光と言う非物質のその価値を。心より認めるからこそ採択されたラッダイト運動であると解釈して頂きたい。」
「美の価値とは、血の通わぬ決定作業には無い。収奪する事ではなく、理解し、与える事。それこそが美の真実を明らかにし、能動性を持つと思わんかね?」
「我々労働者の三ヶ月は、真に美しい歴史と光にのみ支払われるべきなのであって、緞帳の裏の小細工に与うものではないはずだ!」
………
「て事でね店員さん、もーちょい安くなんないですかね??」
『もう!別に安くてもいいよ!結婚してあげるから!!』
「…!マジで!?ありがとう!!」
よし、今日はここまでにします!
また明日の夜に来ますねー
お付き合いくださり、ありがとうございました!
乙ー
「労働者は物質でなく社会的な搾取形態を攻撃すべし」 やはりマルクスは正しかったなこれは
>>68
この男は、余剰価値の最たるものを批判しつつ値切る、みっともなさの権化ってとこですかねーw
コメディは苦手なので、精進します
それではおやすみなさい
乙
面白かった
次も期待
乙
凄く面白かった!
乙
組長
風呂桶
>>75
風呂桶、了解です
暫くお待ちをー
木の風呂桶ってさぁ、なんかやなんだよね
え?なんでかって
なんでだろうなぁ…
何かこうさ、「風情がありすぎる」んだよね
プラだとさ、汚れとかもすぐ落とせるじゃん?
ガシガシ洗えて
木だとさ、手入れをちょっとサボるとすぐ染むじゃん
あれがね、いやなんだよね
染みが残ってさ
それが風情なのかもしれないけどさ
今?それが木のやつ使ってんだよねー
いやさ、貰ったもん粗末にするのが嫌でさ
しまっとく?あぁ、まぁねぇ
最初におろす前にプラ買ってくりゃ良かったんだけどね
使っちゃったからさ、もう汚れてんの
汚れたもん仕舞いたくないだろ?
は?なんでだよ 笑
茶でも飲ませろって言うから上げたんだろ
風呂場なんざ見てもいいことねーだろうが 笑
おい、やめたほうがいいぞー、マジで汚いから
どうしても?多分後悔するよ?笑
まぁ別にそろそろ買い換えるからいいんだけどね
そんなに言うなら見てこいよ 笑
人が見せたくないっつってんのにお前は…
……………! ?……!!!
うるせーよ 笑
だから見るなっつったろ 笑
うるせーって…
うるせえんだよ!!!!!!
あーあーあー
タイルはいいんだよ、流せるからなー
この染み落ちねーんだよな、きったねえ
な?汚れてるだろ?
聞こえてねーか 笑
なんとなく和物ってそう言う雰囲気ありません?笑
次>>80でー
ちはやふる
オッカムの剃刀
>>80
オッカムの剃刀了解です
暫くお待ちをー
水平線の境目、蒼穹の底
境目から継ぎ目なく広がる夏の色合い
ブルーハワイを山盛りにした器を、下から眺める事
サファイヤの煌めきを見つめる事
最小限の光源で、サファイヤ自身が輝き始めるのを待つこと
幽玄の光に、まどろみを見ること
ウユニの水鏡の中で浮翌遊すること
足元に広がる天空に、たったひとり
目を閉じても広がる無限の中心に、佇むこと
ぷつりと没した太陽の、その残りが、橙色から段々と夜に変わっていく様
黄昏を背景に、影絵の中に灯りが灯っていく様子
北極の分厚い氷に閉じ込められた酸素の色
かじかんだ両手にホッカイロを握りしめ、時間が消えるまで眺めること
栄養の少ない海の、分厚いガラスを溶かし込んだような、ほんのりとグリーンを帯びた水色
その中に点々と散らばる深緑のアクセント
坂を登りきった先に開ける、楽園の姿
硫黄を焼く大地の血
灼熱の冷光を嗅ぐこと
死の淵そのものが放つ強烈な誘惑を、本能の怠惰を感じること
私の一番好きな色、たましいの色
回りくどいですかね?笑
青が好きなので極力剃刀を使わないでポエムってみました
たまにはって事で、ご容赦ください
今日は次でお終いにしますねー
>>84
タンポポ
乙~
安価は枕で
今日は休みかな?
こんばんわー、今帰りました
それでは遅まきながら、今日も少しだけ書いて行こうと思います
宜しければ、お付き合い下さい
>>84 枕、了解です
暫くお待ちください
『おい、起きろ!!』
自分以外誰もいないはずの部屋に怒号が響く
暗室にゆっくりと馴染んだ瞳孔が捉えたのは、凡そ人ならぬ何かの姿だった
ざんばら頭に仁王のような眼光
耳は尖り、肌着は纏わず素肌に袈裟懸け、大袴
何より異様なのは真っ赤な体色と額と頭の丁度境とでも言うだろうか、所謂生え際の辺りから突き出た一本の角だった
「あなたは?」
人外の者に対する第一声にしては随分頓狂な声掛けである
瞬時に人ではないと判断したにも関わらず、男がこの様な言を採るには勿論理由がある
部屋の主は、よく言えば物怖じせぬ、真実を言うなら浮世離れした落伍者だった
物盗りも復讐者も寄り付くわけがない
世の中と関わらず生きてきたのだ、金の匂いも買った恨みもあるはずがない
億劫な日常を自分で精算するのもまた億劫なので、凪いだ泥沼のように生きているだけ
男は豪胆なのではなく、諦めの極地に居ただけだった
『恐れ知らずではないな。ただの抜作か』
人外もまた瞬時に看破したようである
『まぁいい。儂は枕返しと言う。あやかしの類よ。』
来訪者の身証から、真夜中の会談は始まった
『儂はな、その名の通り褥の中にいる奴らの枕を返すのが仕事よ。儂に枕を返された者は忽ちに悪夢を見る。その苦悶を食ろうて生きておるわけよ』
「はぁ…。確かに夢は見ましたが…」
『そう、それよ。貴様は何故へらへらと笑う。儂とて1日2日食わずとも生きては居れる。居れるがだ、沽券というものがある。枕を返して尚怖じぬもののおれば、他ならぬ儂の名前に傷がつくのよ』
妖怪は得心の行く答えを聞くまで部屋に居座ると言う
男はほとほと困り果てる
この場合困ったのは勿論話す事が億劫であったからだが、眠らせぬと言われれば致し方ない
何年ぶりかに、自分の為に行動する事とした
安眠を買う為に、話し始める
「見ての通り…人と関わることもないですし、親もとっくに死に別れました。今は遺した金で細々と食い、眠る日々です。」
「貴方が僕に見せた夢は、両親に延々と叱責される夢でした。僕は怒鳴られる代わりに閉じこもりを得ていた。その昔を思い出して、つい懐かしかったんです」
絶句
今までこんな事があったろうか
この男にとっては現実こそ無味無臭、なんの色気もない絶望そのもので、悪夢の方がより居心地がいいと言うわけだ
枕返しにとってこんな腹立たしい話は無かった
存在意義そのものにとっての天敵、生まれながらにしての仇
許してはならないと心底思った
『貴様…このまま生きて行くつもりか?』
真っ赤な顔を真紅に染めながら枕返しは尋ねる
「はぁ、まぁ、生きれるうちは。そのうち死ぬでしょうから、今日の出来事は事故に遭ったとでも思ってください。貴方が思案する価値もないような人間ですので」
無気力だが馬鹿ではない
枕返しの心のうちを瞬時に理解して、男は返答する
が、それは多分に失敗でもあった
打ち捨てて次の食事に向かえばいいものを、わざわざ矜持の為に叩きおこすようなたちである
『ならん!!!ぜったいにゆるさん!!!』
耳もつんざかんばかりの大声は、先程のそれとは比べ物にならない、激憤の現れだった
そして、怒りに我を忘れた枕返しは口走る
『貴様を幸福にしてやる!!!』
深夜、三時
心底怒り狂った妖怪は、暫く待て!!と怒鳴りつけると一目散に飛び出して、また何者かを連れて戻ってきた
『こやつは座敷童と言う!!』
かの有名な幸福の使いを引き連れてきた枕返しは、鎮火する事なく唾を飛ばす
『こやつに憑かれれば、貴様はどう足掻いても幸せになる!貴様が幸せを掴み、その無気力を脱した時に、儂はまた来る!絶対に貴様の苦しみを食ってやる!いいか、死ぬ事は罷りならんからな!』
先述した通り、男には別段生への執着は無い
然りとて勿論、死ぬ理由もない
現世の幸福は生者のものならば、男は座敷童によって生きる事の確約を得た事になる
それならば、と男は生きていくわけだ
「はぁ、わかりました。」
とあくまでらしい返事をした辺りで、台所から火の手があがった
必ず幸福になるはずの男の部屋は、見る見る炎に包まれる
ニコニコと微笑む座敷童と、がははと笑う枕返し
奇妙に輪をかけた奇妙に、男もさすがに疑問符をつける
「必ず、幸せになるはずでは?」
枕返しは答える
『これが幸せの始まりよ!!ざまぁみさらせ、貴様は先々、儂に枕を返されて泣き喚くのよ!首を洗って待っていろ!』
なんとも豪快な笑い声を残して枕返しは炎の中に消えて行った
つまるところ男の不幸は、なまじ家がある事だったのだ
誰とも関われぬ密室は、魂の牢獄に等しかった
事実、焼け出された後の男の成功譚は目をみはるものだった
人情味溢れる警官が渡りをつけた福祉行政の役人は、熱血を体現したような世話焼きだった
男に職を宛てがった後も、ちょくちょく様子を見に来るような
勤め先の工場主は、男の傍らに立つ座敷童のような、温かい笑顔を崩さぬ人だった
技術一徹の好々爺とその伴侶は、時折亡くした息子が帰って来たようだと涙ぐむ以外は、常にニコニコと笑って男の成長を見守った
やがて人との関わりの中で、男が喜怒哀楽を取り戻した頃
昼休みにワゴンで弁当を売りに来る娘に、男は恋をした
今日はこれが上手くできましたよ、明日のおかずは何がいいですか?と聞く娘に、精一杯の勇気で、
出来たてを食べたい、うちの台所で作ってくれないか
と尋ねたら、枕返しのように真っ赤な顔ではいと応えた
枕返しもどき2人は、こうして恋路を共にした
やがてこじんまりとした祝言を挙げた頃、大企業から声がかかった
老人の技術を継いだ若い職人と、一緒に素晴らしいものをつくりたいと
有名な海外のメディアが男の技術を取材したいと申し入れて来た頃、老夫婦は工場を譲りたいと男に告げた
もうすぐ産まれる「孫」と遊んで、余生を過ごしたい、と
あの夜会から十余年、満帆に幸せの烈風を受け続け、男は歩んできた
新しく建てた自分の城に、老夫婦を呼んで共に暮らした
日中は数十の従業員に忙しく指示を出し、家に帰れば笑顔の「親」が2人揃って、料理自慢の妻の夕餉を食卓に並べている
最近つかまり立ちした娘は聡く、おかえりなさいをはっきり言う
これあの頃の自分が最早思い出せないほど、男は幸福の只中にいた
晩酌を終え、先に寝付いた妻のそばに息を殺して潜り込む
腹を出して大の字を決め込む娘を、起こさないように
幸せな一日が、今日も終わった…
深夜、男は妻に揺り起こされた
不安そうに覗き込む妻が言うには、とても魘されてたようだ
砕けるほど歯をきしませて、涙を流し呻いていたと
目を開けて不安そうな妻を見たとき、男は悟った
枕元では座敷童が、こんなにおかしい事は無いという風に笑っていた
「悪夢を見れるって、幸せだな」
と男が妻に言うと、怪訝な表情を更に曇らせてどうしたの?と訪ねてくる
「なんでもないよ。それより枕元に置き手紙をしたいんだ。ペンと紙はどこだったかな?…ん?食事をね、しに来る奴がいてね。感謝を書いて置いておくのさ。まぁそいつはそんな手紙を見たら怒るだろうがね」
いやはや、長くなりました 笑
言い訳させてもらうと、少々お酒が入ってます
やっぱり取り止めがなくなりますねー、反省します…
次
>>92
なんですが、さすがにみなさんおやすみだと思うので、明日の日中にでもやりたいと思います
こんばんは
お題は人魚で
日焼け止め
こんばんわー
それでは今日も書いて行こうと思います
宜しければ、お付き合いください
>>92 日焼け止め 了解です
暫くおまちを
「彼女ほしいなぁ…」
『海行こうぜ!ナンパだよやっぱ!』
独り言をしっかり拾った上に、校内でさっぱりモテない俺にとっての正解まで用意してくれる
やはりこいつは出来のいい友人である
問題は、こいつもモテない上に、二人してナンパなんぞ一度もした事がないと言う点だった
が、やはりそこは17歳童貞
若さと意欲、瞬発力こそが最大の武器なのだ
勝算なんぞクソくらえ
【海に行く、ナンパする、彼女できる】
この穴だらけの方程式を行動原理に据えて、チャリを飛ばした
「お前からいけよ…」
『彼女欲しいって言ってたのお前だろ!』
ここまで来てイモを引きやがる
やはりこいつは出来損ないのチキンヤローだ
キラキラ輝く水面と水着の女の子
友人が声をかけ、反応を確かめたところで俺の巧みな話術でノリを勝ち取る
どうやらこの方程式は前提から崩れたようだ
海に着いた途端、顔面に下心が張り付いているような気がして、それをモロに見透かされる気がして
結局のところ断られる事にビビった童貞2人は、何をするでもなく砂浜に腰掛け、カキ氷を溶かし飲んだ
すっかり不戦敗にうちのめされて、とぼとぼと自転車を押しての帰り道、もう一度彼女欲しいと言ってみると
それなー、と返ってくる
やはりこいつは価値観を共有できる、素晴らしい友人である
『あっ!』
「ん?どうした?」
何か思いついたらしい友人にその中身を尋ねる
『日焼け止めだよ!俺らみたいなガキがさ、エロいおねーさんに塗りましょうか?って聞いたら可愛がられたんじゃね!?』
バカかこいつは
『あーあ、そしたらこの心のヤケドもさぁ…今頃はなかったはずなんだよ』
上手い事言った、みたいなツッコミ待ちの顔がうっとおしい
「飲んでみたら?効くんじゃね」
と俺が言うと、次は日焼け止めとプラカード用意してから行こうな!とはしゃいでいた
風鈴、浴衣、花火と彼女
夢見る17歳の、夏の1日
ガキの頃はえねーさん大好きだったなぁ…笑
次>>97で
こういうの好きだわ
マジックショー
『それでは皆さん、ご注目ください!!』
『3…2…1!』
マタドールよろしく大仰に除けられた布の中
鎖に縛られた美女が水槽に沈んでいる
つまり、先程と何ら変わりない光景なわけである
魔術師が慌てて舞台の袖に何やら指示を出すと、俄かにステージ裏からバタついた足音が聞こえてきた
足音が奈落に移動する否や、会場の照明が落とされた
一瞬の静寂ののち、客席はざわざわと色めき立つ
女性の安否を気遣う者、失敗をあげつらう者
各々連れとの会話に持論を白熱させ、客席のざわめきは大きくなっていく
『皆さん、大変失礼致しました。これより、ショーを再開いたします』
とアナウンスが入った直後、バチン!と乾いた音、『ぎゃっ!』と短い悲鳴、ガンッ!と鈍い音
照明がつくと、舞台には鬼の形相の美女が1人
消えたのは魔術師の方だったわけだが、存外すぐに見つける事ができた
舞台下の柵に、台風の中の鯉のぼりよろしく絡みついていた
白目を剥いて
問題はその距離である
どう贔屓目に見ても、舞台前端から柵まで5mはくだらない
先程の音と悲鳴からして、美女に制裁を食らったのは間違いないのだが、人間程の質量があそこまで飛ぶ衝撃を想像するとゾッとする
それになりより、道理が合わない
思わず
「飛びすぎだろ…」
と呟くと、隣のおっさんが
『いや、マジックだね』
だと
突然入って来た事よりもおっさんのセンスに驚いていると、視界の端に更なる驚愕がもそもそと動いた
なんと、魔術師が立ち上がったのである
「マジかよ!?」
思わず声が大きくなる
他の連中も同様なようで、ざわめきは最高潮に達する
よろよろとし立ち上がり、客席に向きなおり、一礼
半ば神々しくすらあるプロフェッショナルの所作に、個々の見解を話し合うだけだった有象無象は、拍手で以って観客としての統一感を得る
僕も思わず拍手してしまった
隣のおっさんは
『魔法や…!』
と呟いていた
なんとか書きあげてみました…
期待に添えましたでしょうか?
次で今日はおしまいにしますねー
>>102
いいね!
安価下
岬
>>102
岬、了解ですー
暫くお待ちを
波濤はもしかしたら、何万回、何億回のうちに同じ形をとるのかも知れない
果てしない繰り返しの中で、いつか在りし日の自分自身に立ち戻って
がむしゃらにやってきた
高校を出てすぐ親を亡くし、後ろ盾を無くした俺は大学を辞め建設業に就いた
古い体質の業界は、凡そ社会人らしからぬ暴力を指導と称する輩の巣窟だった
耐えに耐え、仕事を身につけ
やがて25で、新たな船出を決意した
独立し、人を雇った
口うるさかった事は自覚しているが、決して手を上げはしなかった
若い連中は良くついて来てくれた
オヤジ、オヤジと慕うバカに、本当に感謝していた
やがて登記も済ませ、一介の技術屋は総合建築業の資格を取った
現場は下請けに任せ、オヤジはスーツを着て営業に回る日々
何もかも順調だった
崩壊は音もなく忍び寄った
業界では日常茶飯事のダンピング
その内実を、同業者が大いに酔って、スナックで大声で話していたそうだ
運が悪かったのは、隣の席に敏腕で鳴らす新進気鋭の記者が座っていた事
JVを組んでいた俺の会社にも、批判と疑惑は向けられた
手抜き工事をやらかした大手がテレビに連日吊るし上げられているタイミング
あっという間に仕事は引いていった
あとはお決まりで、そこから2年
俺の会社は跡形もなくなった
仕事一筋、女房も子供もつくらなかった中年に残された財産は、
【自己破産できる権利】
だった
11月の岬は、冬へ駆け込んでいく寒風が渦を巻く
窶れた今の俺なら巻き上げてくれるかとも思ったが、どうにもまだ重いらしい
打ち寄せる波を見ていると、その儚さに憧れすら湧いてきた
振り返るのならば、今来た道が、会社があった国道が
俺の人生がそこには横たわっている
楽になりたい
踵を返す事が苦難と絶望との鉢合わせならば、このまま進んであの波のように岬の根元で砕けてしまいたい
そう思った
『あの…』
不意に後ろから声を掛けられ、思わず振り返ってしまう
金髪の若者がセンスの悪い甘ったるい缶コーヒーを持って立っていた
『おじさん、寒くないっすか?これどうぞ』
たどたどしい敬語でコーヒーを差し出す若者に、昔を思い出す
「ありがとう」
好意を無碍にする訳にもいかず、受け取ってプルタブを起こす
一足先にベンチに座った若者は、じっとこちらを見ている
恐らく、気がついているだろう
『あの…』
二度目のあのう、も気まずそうだ
『なにがあったか知らないすけど、死ぬのはダメですよ』
真っ直ぐに本質を抉るその言葉は、否が応にも現実に引き戻す
夢うつつのまま逃げていた俺にとって、一番聞きたくない言葉だった
「はは…そんな気はないよ。悩み事はあるがね」
思わず嘘をつく
現実が本心を抉る凶器だからこそ、俺は今日この場に逃げに来た
ならば、現実的な最善策を説くこの若者に、本心を告げてはならないのであって
咄嗟の嘘は、何もかも剥ぎ取られた中年男の最後の抵抗でもあった
「ここの荒々しい波が好きでね、たまに眺めにくるんだよ。ちょうど今の君のように、何人かに声をかけられたがね」
営業で鍛えた作り笑いは、この若者には見破れなかったようだ
しかし、目論見通りのはずなのに
『そうだったんすか!俺もここ好きっすよ!』
と破顔する素直さに、羨ましさを感じてしまう
偶然見かけたオヤジが身投げ客でない事に安心したのか、若者はきゃらきゃらと身の上話を始める
『彼女に子供できたんすよ!そんで、もう籍入れよ、って話になってて。自分ここに願掛けに来たんですよねー。いい親父になれますようにって』
『したらおじさんが下見てぼーっとしてるから、うおっ!?て思って声かけました』
『これから親父になるのに、死のうとしてる人無視したらダメだと思って。でも違いますもんね。なんかすいません、しゃしゃりました』
自分の心の整理がつかない
救いのない現実と決別する為の岬、救いの崖
あとは飛び込むだけなのだ
しかし、その上で足止めされている今に、彼のその素直さに
輝かしい前途を想う事に救いを感じるのだ
「おじさんは会社ダメにしちゃってねぇ」
思わず本音が口を突く
『そうなんすか…でも大丈夫ですよ、もっかい頑張ればいいじゃないすか!』
単純明快かつ、何よりの真理
それを信じられなくて逃げようとした
しかし、目の前の若者は堂々と真理の傍に立っている
涙が溢れる
『泣かないでくださいよ、あれなら仕事紹介しますよ!自分鳶ですけど、うちのオヤジめっちゃいい人っすよ!』
大きく音を立てて、何かが頭の中で弾ける
自分の人生が、誰かを救ったのかも知れない
一途に職務を全うし、真摯に個人と向き合う
その姿勢だけを売りものに頑張ってきた
従業員の結婚式も、出産報告も、共に喜んで酒を飲んだ
目の前の若者は、自分の雇い主が尊敬に値するとはっきりと言い切った
恐らく面と向かっては言えない事だが、見ず知らずの俺には恥ずかしさはないんだろう
きっと、あいつらも
俺への感謝を誰かに繋げてくれたんだろう
自分一人で抱え込み、味方なんぞいないと大いに拗ねた哀れな中年
救いの言葉は、自分の人生から湧いて来たのだ
目の前の若者の口を借りて
手にしていた財産は、くだらない法の助けなんかでは決してない
脳内で響いた轟音は、再スタートの鐘の音だった
「ありがとう、元気が出たよ。でも建築はもう懲り懲りだなぁ」
と涙を拭いて笑って見せると、若者は
『そっすか!』
と笑顔を返した
彼と別れ、もう一度波を見てみる
その飛沫は同じ方向には飛ばないし、数もきっとバラバラだろう
それでも、何度も繰り返す事に意味はあるのだろう
諦めこそは、人生の最大の敵である
岬に一礼し、車へ向かう
背中に波濤のエールを聞きながら
また長くかかりました、ごめんなさい…
明日はお休みしますねー
明後日の夜、また来ます
今日もありがとうございました
それでは、お休みなさい
乙!
期待しとるやで
すいません、随分と日を置いてしまいました
もし手伝って頂けるのでしたら、再開したいと思います
それでは、>>111
キマシタワー!
白百合
来たか
安価はカノッサの屈辱
蛍
膝を折り、こうべを垂れ、凍りついたアスファルトに肉薄する
視界の奥行きは僅か5cm
東京の新雪は、薄汚い鼠色だ
阿漕な商売、阿漕な人間関係
それでも金は凄まじい力を持った
人でなしとの罵りも、俺にとっては成果を通達するアラームでしかなかった
全て、力の為に
母一人子一人、豪雪の集落での村八分
そんな家庭を救う為に、何よりも必要なのが権力であったから、俺はがむしゃらに金を稼ぎ、国政に出た
当選3回、北国の星は、道路族の宿命とも言える憎悪をついに写真週刊誌にスッパ抜かれたのだった
知っていた事だが、金の傘は横風に弱い
何故ならそれは、潜った者の欲望を叶える為のものでしかなく、決して血の通わない道具だからだ
「先生」と呼び俺を慕った者たちは、次々とより大きな力の傘に身を移した
午前6時、「御大」が銀座の女の家に寄り、自宅に帰るその時間に、初雪は降った
聞きなれたエンジン音が近づいてくる
ドアが開く音がする
「この度の失態、申し開きもございません」
「何卒先生のお力におすがりしたく、恥を忍んで参った所存です」
『帰りなさい』
しめた、口をきいた
無視される事も覚悟していたが、中々どうして
俺の金脈はまだ、魅力的なものであるわけだ
重い木造りの扉が閉じる音がする
こんな生温い雪なぞ屁でもない
田舎の冬に比べれば、適温に等しい
正味6時間、執念の炎が救いを聴く
眼前のアスファルトに散りばめられた生き残りの融雪
舐めるさ、いくらでも
地獄は、もっと寒い
『中へ入りなさい、話を聞いてやる』
待っていろ、貴様の首もいずれ獲る
政治判断は腹黒い!って雰囲気ですかね 笑
次>>117でー
ユニコーン
どこのコンピュータ付きブルトーザーなんだろう
見えざるピンクのユニコーン
>>117
www
まぁあの人は人情家だとは思うので別人です
一面的なモデルではありますがw
安価は構成からして何か固有的な修辞でしょうか??
またしても分からないのですが、イメージで書きますか?ググった方がいいですか?
>>118
それなら調べてみてくれ面白いからww
『貴方って全然わたしの気持ちわかってない!』
「いや、だからね?仕事だったんだよ。本当にごめん」
『そんなのわかってる!!そこには怒ってないの!!』
「じゃあどうして?」
『貴方がわたしの気持ちわかってない事に怒ってるの!!』
「いや、ドタキャンしたからでしょ?ごめんね?」
『仕事ならしょうがないじゃん。そこは怒ってないの!』
…………
「愛してるよ、本当にごめん」
『ほんと?』
「ホントだよ」
『仕事はしょうがないの。でも楽しみにしてたのにダメになった事はムカつくの』
『だからね、貴方がちゃんと謝ってくれたならいいの』
「今僕は、君の気持ちに対して誠意を見せた、って事?」
『そう』
「………一個聞いていい?」
『なに?』
「仕事はしょうがない、んだよね?」
『うん』
「でも俺には怒ってたんだよね?」
『うん』
……………………
結局のところ、拠り所を毀損する事は許されないのであって
論理と感情は不可分でありながら、感情より先に立つ論理はない
論理性の確からしさは、感情論を駆逐し得ない
そんな彼女はかわいいので、僕が今感じる脱力感は、彼女に対する愛情が目減りする理由にはならない。多分
うーん…なんか回りくどくなりましたね、反省します
次
>>123でー
モトロフのパン籠
モトロフでなくモロトフだっわ
>>123
わっかんねえwwwすいません…
知らない固有名詞含んでるのでモロトフさん(?)を調べないといけないですね
イメージで書けないのでググります!
しばらくお待ちをー
>>123
モロトフのパン籠、了解です
暫くお待ちをー
独善的な感情の奔流は、影響を与える事を目的としての発露であるなら殊更タチが悪い
子供の駄々となんら変わりないからである
今日も部長がキレまくっている
内容を要約すると
・成果が上がってない
・お前らの怠慢
・故に俺が怒られる
だ
恒例行事かつ不愉快なものであるが、この支社の営業成績が悪いのは事実ではある
しかしまぁここまで朝イチで罵られれば、やる気が失せて余計悪循環だと思うのだが
そろそろ〆だ
大抵終わりは
お前達の事を思っているからこそ厳しい事を言う、的な自己弁護だ
会社に貢献する人材になれるよう、俺はお前達に厳しい事を言う!いくら憎まれてもそれがお前達の将来の為だからな!
ほらな
テレビの引きのタイミングより先読みが容易だ
浅はかな人間
隣にいる同僚に声をかけてみる
「いい加減にすればいいのになぁ。怒るだけの方がまだ親しみ湧くよな」
『部長は俺たちの事を考えてくれてるから怒ってるんだろ!?』
こいつマジか
鬱憤の焼夷弾が、同僚の心に火を灯していた
成る程、影響を与える目的も、受け手次第で恫喝にも激励にもなるわけだ
早く転職しよう
ほんとにパン齧った人もいたかも知れないって事で
次で今日は終わりにしますねー
>>129
マリアナ海溝
>>129
マリアナ海溝、了解です
暫くお待ちをー
深淵の最奥に見出すもの、願いの最果て
ロマンとは想像力の導いた希望であり、未知を暴く事はロマンの正体を知る事に他ならない
例えばそこに太古の竜が居ればロマンの権化となるし、極大の圧に耐える動物の存在もまた、未知の正体だ
神々の頂たるネパール、チョモランマ
その神々の座より遥か2000mも『高い』、最深の頂点
呼吸すら儘ならぬ海の底は、長く神秘の蔵として、人の歴史を、ロマンを彩った
六畳で寝転ぶ僕の瞼の裏の、大西洋
その大西洋の真下の、地球最後の秘境
人は、大いに旅をする
グレートジャーニーは、いずれこの世から未踏峰を消すだろう
やがてそこに住むどの生物よりも頑強な鎧を纏い、LEDに照らされた1万mの底を肉眼で見るだろう
ありとあらゆる出来事の中で、ロマンほど勇気を奮い立たせるものはない
人の夢が、この星のあらゆる凹凸を覆う日を待ちわびながら、僕は静かに眠りについた
本日もありがとうございました
みなさんに伺いたいのですが、そろそろ〆て長編を書いてみようかなぁ、なんて思っています
しかし、安価をとって下さる方への感謝と喜びも大変大きく、正直ここが廃れるまでは続けようかなとも思うのです
宜しければ、方針に対する提案や意見をお願いできないでしょうか?
明日の夜、お返事頂いた内容を見て決めようかと思います
自分自身の決断を人に委ねることの卑しさは承知しているつもりなのですが、何分優柔不断なので、協力していただけると嬉しいです
それでは、おやすみなさい
掛け持ちでいいんじゃない?
こればかりはお気に召すままとしか
まあ放置しなければ平行で良いような
隔日にするとかか?
このスレは気にいっているので無くなるとそれはそれで寂しいが
興味がないジャンルで長編やられると読み続けられるかはわからない。
しかし今までアイディアを人任せにしてた主が発案から全てやるとなるとどんな物語ができるのだろうと楽しみな気もする。
どちらでも期待
もう少し続けても良いような気はするな
みなさん本当にありがとうございます
大変嬉しく、ありがたいです
自分自身よく考えてみて、方針を決めようと改めて思いました
本当に、ありがとうございます
長編の箸休め的気分で書き続けてくれてもいいのよ
面白いな
こんばんわ、>>1です
こんな拙い思いつきを応援して頂き、本当に嬉しいです
皆さんのありがたいお言葉に甘えさせて貰いながら、もう少し書いて行こうと思います
少し忙しくしていまして、今日も書けないのですが、明日こそは再開します
よければまた、お付き合いください
それでは、おやすみなさい
乙
一日一つとかのペースでもいいのでコンスタントにやればいいと思う。
乙
明日は待っとるやで
こんばんわ、短い時間ではありますが、お付き合いいただけたら嬉しいです
それでは、よろしくお願いします
>>145
ストロベリーサンデー
>>145
ストロベリーサンデー、了解です
暫くお待ちをー
すいません、書いてたのが消えてしまいました…
もう一度書き直しますので、おまちください
申し訳ない
真っ白なソフトクリームを伝うベリーソースを見ていると、なんだか山を思い出す
真っ白な、冬山
上手な店員さんが切ったソフトクリームの穂先はさながら槍
峻厳な冬は下に降るにつれ柔らかく、ソースの氷河は裾野を広げていく
「そう言えばさ」
石材を切り出す重機のバケットよろしく、壮麗な単独峰に彼女のスプーンが切り込もうとしたので、咄嗟に声をかけてみる
ずぶり
ああ、遠慮ない
無慈悲、殺生、オニアクマ
お前の耽溺なぞ知るかと言わんばかりに、彼女の匙はサンデーを叩き壊す
バケットのそのおもてを口に運びつつ、なに?の返事
まぁ僕が勝手にうっとりしていただけなので、勿論そういえばの続きは考えていない
山かぁ、飛騨かぁ、と0.5秒で連想を済ませ、君の実家、長野だったよね
となんとか絞り出した
途端に輝く彼女の瞳
『そうだよ!なに??行ってみたいの??』
そりゃそうか
結婚願望の強い彼女に実家の話を振れば、親への挨拶に結びつけるのも当たり前だ
これそれが美味しくてね
お父さんもお母さんも貴方に会いたがっててね
空気がきれいで、山が綺麗で
陸の魚がどれほど不自由なのかは解り得ないけど、水の中の溌剌さを喩えるなら、水を得た魚と言うのはしっくり来る表現ではある
彼女の瞳のきらめきを見ながら心からそう思う
『…ごめん、そんなつもりじゃなかった?』
じっと見つめるだけの僕が不安だったらしい
自分から甲板に飛び込んで来た魚の狼狽は、こんな感じだろうか?
たまらなく気持ちよくて、思わず跳ねたら水に戻れなかった
そんな思いを彼女にさせるわけにはいかないので
「いや、違うよ。会おう。君との将来のこと、御両親に聞いてもらいたい」
水を得た、魚のように
銀雪を征くスキー板のように
薫風に泳ぐ鯉のぼりのように
地球の青さに震えた人のように
真っ赤に熟れた苺を頬張る子供のように
彼女はその喜びを満面の笑顔で表現した
日曜日、雨上がりのファミリーレストラン
水族館の予定と、思いがけずつくった別の予定
『苺、美味しかった。今までの人生で一番』
雲を払った太陽が、歩道をキラキラと照らす
僕らの前途を祝福する光の道、苺の日曜日
次
>>150でー
みたらしだんご
ハーバー・ボッシュ法
上手いこと書くなー
>>150
安価来てたんですね…
申し訳ありません、一昨日寝落ちしてしまいました
みたらしだんご、了解です
暫くお待ちをー
足かけ5年、お互いの夢は関係には障害だったようで
話し合って、納得して
笑顔でさよならした
彼女は今頃機上の人で、隙間の増えたアパートに残った僕は、ここから自分の道を踏み固めていかなければならない
冷蔵庫には彼女が作って詰めたタッパーが沢山入っているので、開ける気にはならない
数少ない面影を見るのは、今は辛い
1人でスーパーに出掛け、惣菜と強めのウイスキー、あんこのかかった団子を買った
夕飯を無心で流し込み、晩酌にはウイスキーを湯で割ってみる
今までやったことの無い飲み方で、新しい僕を主張してみる
鼻を近づけるだけで薫るアルコール
香水を吹きかけられた犬の真似
よし、楽しい
新生・僕は和菓子をアテにしてウイスキーのお湯割りを飲む、君の知らない人だ
それでも
思い出がしっかりと握った後髪を切るハサミは無くて
ウイスキーの温かみとは別に、ジンジンとした響きが心臓の側辺りから広がっていく
あんこの甘味はなんだかぼんやりしていていて、適度な塩気はやっぱり必要なんだと実感する
僕は、みたらし団子の方が好きで
彼女は片栗粉と醤油と砂糖でよく餡をつくってくれて
妙な意地では解決できない僕の嗜好を辿れば、必ず君がそこにいるわけで
いっそ涙でもあんこに垂らしてやろうかとも思うわけだが、さすがに汚い
これから、ゆっくりと忘れていこうと思う
自分の夢を選んだ、お互いの為に
お菓子が連続で来たので、対照的な感じにしてみました
うまいこといったでしょうか??笑
次は
>>156で
クール・ジャパン
>>156
クールジャパン、了解
…なんですが、申し訳ない、すこし出てきます
後で書きますので、待ってください
ごめんなさい
面白い
申し訳ありません、今日仕事が終わらず書けそうにありません…
明日の夜、クールジャパンは書き上げますので、御容赦下さい
応援していただいた皆さんには重ね重ねご迷惑をおかけします
明日って何時さ
まぁ無理矢理書いてもらってもクオリティ落ちるだけだし、適当にやられるくらいなら待つんやで
目を覚ますと、灰色の壁に四方は囲まれていた
恐らく真四角の部屋の、恐らく対角線の交わるところ
つまり部屋の中心で、私は椅子に縛られていた
ああ、どうしよう
私の最後の記憶がもし昨日の出来事ならば、明日である今日の10時には大事な商談がある
今は何時だ
社員たちはちゃんと仕事をしているのか
状況を把握した私がいの一番に考えた事は、命より大事な会社の事だった
私の後頭部から、なんとも不愉快な鉄が軋む音がする
重々しく、手入れもされていないだろう錆びたドア
叫び声にも似た余韻が薄らぐにつれ、靴がリズミカルにコンクリートを叩いているのがわかる
私に、近付いてきている
『漸くお目覚めか』
真後ろで止まった足音の主は男だった
「今、何時だ?今日は何曜日だ?」
『あいにくと君への義理を持ってない。親切な人間がこんなところに監禁すると思うか?』
腹の底で暴力性が一気に目覚める
「ふざけるな!!!大事な仕事があるんだ!!!さっさと解放しろ!!!」
それが理性的な行動、論理的な近道では無いと頭ではわかっていても、止まらない
「絶対に許さんぞ!お前のせいで仕事がフイになってみろ!!絶対に許さんからな!!!」
あらん限りの罵倒を、怒りの明滅のまま投げつける
激しく瞬く感情の中、明瞭にならない頭脳をフルに使って
私の息切れを待って、男が話始める
『聞きしに勝る弁舌だな』
侮蔑と皮肉を大いに含んだ調子
恐らくこの男の口角はつり上がっている
また怒りが立ち上がってくる
胃の裏側あたりが灼熱する感覚
しかし、大声で叫び倒した功名とでも言うのだろうか、体内に少なくなった酸素残量のお陰で、どうにか理性が勝利する
「こんなことをするからには金が目当てだろう?どうだろう、解放してくれれば今すぐに手形を切ろう。君の事も警察には絶対に言わん」
『ほぉ…続けてくれ』
「なんなら財布の中にあるカードの暗証番号も全て教える。会社までのタクシー代だけ残してくれればそれでいい」
畳み掛ける
「頼む、私には仕事があるんだ」
最後に、懇願
数秒の沈黙の後、男は口を開いた
『次は俺が喋っていいかい?』
此の期に及んでまだ何か条件をつける気か
怒りを通して呆れてくる
が、男の話す内容は、私の予想を大きく裏切るものだった
『最近、あんたのとこの社員が自サツしただろう?』
絶句
『まさか恨みのセンだとは思わなかったかい?』
思わず返事に詰まった私を見透かしたように、男はまた嘲笑的なニュアンスで挑発する
『聞きしに勝る、と言ったんだがな、俺は。まぁいいや。裁判になってるだろう?あんたのとこと』
彼女は母子家庭の一人っ子だった
父親とは早くして死別、親戚関係も希薄で、母親と親子2人きりで生きていたはず
なら、なら今喋っている男は?
『交際相手かも知れんし、誰かが雇ったヒットマンかも知れん。もしかしたら義賊なのかもな、あんたの行いに怒る』
『が、俺の素性を詮索したところで何にもならんよ。質問に答えて貰えればいいんだ』
またも、押し黙る私に透徹した言葉が飛んでくる
「何が…聞きたい?」
漸く絞り出した言葉は、男の意向に全面的に沿う判断だった
『いやなに、何故過労死を認めてやらんのかと思ってね』
「彼女の仕事の仕方なんぞ知らん。自主的にやってたんだ」
『彼女はそうじゃない、って母親に言ってたらしいぞ?』
「私はやれる限りの事をした」
『なら死んだりせんだろう』
「労務管理は適切だった!!!」
思わず、声を荒げる
『それはあんた達が裁判で主張してる事そのままだな。俺は、あんたの本音が聞きたいのさ』
男の声に、今度は侮蔑入っていなかった
ただただ怜悧で、しかし無機質で
まるで感情の不在を告げるような、そんな声だった
私がこの場で、初めて恐怖を感じるほどに
「…どこの企業だってやっているんだ」
『そうだな』
「タイムカードを切らせた後で働かせるなんて事は、日常的にあることだ」
『そうだな』
男の声に、感情が戻ってくる様子はない
「そうやって働かせないと、競争には勝っていけないんだ…」
『そうだな』
心底、怖い
「何故、私なんだ?やっぱり君は、彼女の関係者なのか?」
『それはどうでもいい事なんだよ』
まるでこの空間に、永遠にひとりきりでいるかの様な孤独感
素直に恐れを口にしても、男の金属のような言葉には、熱は宿らない
『それは、おかしい事だとはわかっているんだよな?』
「しかし…法を守れば商品の値は跳ね上がる。そうなれば売れない。仕事にならない」
『諦めていると?』
「現実的な話だ」
『そうか。なら少し、話を変えよう。あんたは非常に辛辣な言葉を部下達に投げかけると有名なんだが、その自覚はあるか?』
あぁ、そうか
やっぱり私を意図的に攫ったのだ、この男は
ネットで中傷され、ブラック経営者の代表格として叩かれる、この私を
「ああ…」
『それは何故だ?あんたは、部下の事を本当に想っているから言えるのだ、って何かの取材に答えていたけど』
恐らく、この男にはお為ごかしは効かないだろう
私は人情家だと
その有り余る情熱が少し行き過ぎただけだと言ったところで、絶対に通用しない
「…ムカつくんだ」
「仕事の量云々でなしに、済ましていない事に腹がたつ。給料を払っているのに、って」
『なるほど。でもあんた自身、さっきも言っていたな?仕事量に対する適切な給料は払ってないんだよな?』
「……………私の、金だ」
「私が作り上げた会社の、私の財産だ!!雇ってやったのに!少し暴言を吐かれた程度で!!!私がブラック経営者なら、世の中はブラック企業だらけだ!!!!」
『ありがとう、やっと本音がきけたよ』
久しぶりに見えた男の感情は、嘲笑ではなく本当に心から嬉しがるような…にこやかさだった
『さて、最後の質問になるんだが』
「なんだ…?」
漸く終わる
心を丸裸にされるこの拷問から、漸く解放される
『俺が思うに…あんたは随分と情熱的に見えるんだが』
「どう言う意味だ?」
『腹の底から自分の為だけに怒って怒鳴って、ってできるだろ?』
意味だけとれば大いに皮肉だ
しかし、また言葉からは感情が失せている
鳥肌が立つような、恐怖
『何故その情熱を、システムに対して燃やさないんだ?』
「………………」
『答えてくれ』
「…そんな事をしても、儲からん…」
『本心かい?』
「…………社会の、仕組みのその悪さを。変えるために努力する…くらいなら」
『なんだ?』
「迎合して、儲けたほうがいい。俺は、少なくともそうだ」
『…あっはっはっはっ!!!!』
突然のバカ笑いを聞いて、心臓が竦みあがる
しかし、本心を憚らず話す事は奏功したようだ
男は心から嬉しそうだ
『なるほどなぁ。見切って流れに任せれば、得するわけだもんな』
「…あぁ」
男の感情が手に取るようにわかる事は、とても私を安堵させる
どうやら私は、男の望みを叶えたようだ
やっと、帰れる
『俺が、喜んでるように感じたかい?』
息が、止まりそうになる
『俺の感情が見えなくて不安だったか?俺はありったけの憎悪を込めてあんたに質問していたよ』
『俺が嬉しそうに見えたか?絶望して笑うしかなかったんだよ』
『あんた、自分の正しさにしか興味がないんだよ。人の気持ちが、わからない』
『社会の歪みそのもの、って言われる自分が不思議でならなかったんだろ?何故周りもやってる事をして、自分だけが叩かれるんだろう?って』
早鐘は、肋骨を叩き割らんばかに
『自分にだけ情熱的で、人には…社会に対しては最高に、クール』
『思った通りの人間で良かったよ。ほんの僅かにあったためらいが消えた』
後頭部に何か硬いものが
『誰よりも責任感が強くて、誰よりも優しかった彼女の性質を』
『おまえは、利用したんだ』
はっきりとわかる
この男は、私を全身全霊で憎んでいる
『あんたに、俺の感情が伝わるとは思えないが…でも。許せないし許すわけにはいかないんだ』
私がこの男に感じていた恐怖はもしかしてー………
『速報です。〜日から行方がわからなくなっていた○○代表の△△氏を殺害したとして、・・・・県警は出頭してきた男の身柄を確保しました。男は○○を相手取った裁判の原告の一人で……』
>>156
さん、本当に申し訳ありませんでした
沢山の応援を頂きながら、挨拶もなく離れた事、申し開きもございません
みなさん本当にすいませんでした
どうにか年末のデスマを乗り越えたので、なんの償いにもなりませんが、
「クールジャパン」、書いてみました
今週末までは少し時間がありそうなので、もし安価を頂けるなら、少しずつ書いていこうかと思います
次、>>168でー
よろしくお願いします
ハッピーエンド
>>168
ありがとう!!
ハッピーエンド、了解です
しばらくお待ちをー
小さい頃、夜が嫌いだった
何もかもが見えなくなることが、底知れぬ恐怖だったし、なにより自分の1日の終わりの正体である事を、嫌悪していた
日中は退屈な授業を何とかこなし、学校終わりに友達と駄菓子屋に寄る
50円で最高効率を叩き出す為に、みんな苦悩した
その戦果を味わいながら、今日この後の予定を話し合う
サッカー、野球、ケイドロ、64
どれをとっても俺には魅力的な選択肢で
そしてそれは友達みんなも同じことで、大抵ここで議論は白熱、紛糾する
10分の激論ののち、やがて何かを選んだ俺たちは、目的地に向かって歩き出す
学校のグラウンドであったり、母親が今日はいないと言う友人宅a.k.aワンダーランドであったり
俺が夏生まれのせいか、思い出す風景はいつも入道雲の真下の黒ガキ連中だ
青々とした草木の艶やかさと、近所の小川を泳ぐテナガエビや鯉
堪えきれず飛び込んだ事や、最後の友達と別れたあと、ドロドロについて母になんて言い訳しようかと考えながら歩いた、夕餉の匂いの立ち込める住宅街
真っ赤な、本当に真っ赤な、熟したミカンが、稜線で潰れていく姿
どれもキラキラとしていて、胸の奥には涙の源泉があるんだって事を、思い出す度に実感する
そんな1日の終わりである夜が、とても嫌いだった
大人になって、夜は待ち遠しいものになった
激務の終わりであり、同僚と一杯やれる事、嫁さんが夕飯を支度して待っててくれる夜が好きになった
ある日、日中が太陽の仕事だとしたら…なんて事を考えた
もし太陽が休みなく働けば、それは過酷すぎるなぁ、と
夜は、太陽にとって疲れを癒す時間である
毎日お疲れ様、今日もつつがなく明るかったですよ
終わりあればこそ、俺も夜の幸せを今こうして享受できるわけだ
昔、居なくなる事があんなに恨めしかったのに
同僚と飲みに行くよ、と嫁に電話を入れると、涙声で今日は帰ってきてほしいと言われる
あまりにもびびったので、そのまま電話で問い詰める
『…二ヶ月みたい』
と告げたのち、嫁は大声をあげて泣いた
同僚に詫びをいれ、駅へと走る
あんなに太陽に恋していた季節にはもう戻れないけれど、美しい過去との別離は、時間の経過そのものであって
その流れが新しく運んできた幸せを見つめながら、今日も1日が終わって行く
新しい、明日に向かって
書いてみましたー
次>>172でー
5日後
人狼ゲーム
>>170良かった。
戻ってきたか、待ってたぞ
路は、白日下にあればそのゆくさきを見つめる事ができる
では、夜はどうか
一寸先も見えない新月の、山路であったならば
勤勉で実直、誠実を絵に描いたよう
これが若者の評価だった
病床の年老いた父を支え、畑仕事に汗を流す若者を、村の誰もが好いていた
それは領主の耳目にも例外ではなく、働き者の若者をとみに可愛がり、父について村を見て回る領主の美しい娘はやがて、その穢れない心に彼の居場所を作った
はじめは、娘の率直な想いに、若者は応えなかった
身分が違う、僕では貴女に釣り合わない、と
しかし彼女の真摯な心に、健気な想いにやがて二人は人目を忍んで逢瀬を重ねるようになった
悲恋であることを、承知の上で
ある日、娘が泣き腫らした目で訪れた
父に結婚を言い渡された、と
顔も知らぬ別の領主に嫁ぐのだと
仕方のない事だ、僕では貴女を幸せにできないと諭す若者の胸で、娘は私を連れて逃げてと言った
惚れた女の涙の頼みを聞く事は、父を捨てる事だった
誠実に生き、誰よりも優しい男であったからこそ、若者は悩んだ
大いに悩んだ
明日の晩、また逢おう
それまでしっかり、考えてくれと娘に告げ、臥せる父の横で眠れぬ夜を過ごす若者に、背を向けた戸板からの報せは届いた
とんとん、とん
微かな
しかし何度も聞いた符号は、若者の耳にはっきりときこえた
夜更けの来訪者は、書置きをして来たと言う
明日まで待てぬ、貴方と結ばれねば死ぬと言う娘の手を引いて、若者は決断した
ああ、あの時逃げおおせていれば
彼女が書置きなどしていない昼の森で、彼女を攫い走っていれば
夜中に娘がいない事に気付いた母親が、父に告げる事はなかっただろう
娘の居ない部屋で、父が書置きを見る事もなかっただろうし、早馬が関に先回りする事もなかっただろう
連れ戻された彼女が身を投げー…
娘の死を嘆く賢君が、怒りの矛先を若者に向ける事も無かっただろう
やがて領主から畑を取り上げられ、糧を失い
あらぬ噂は人の口に戸を立てず、あっという間にひろがり
村人から蔑まれ、石を投げられ
病床の父を絶望の淵で看取り
やがて食物は尽き、土塀の中に練られた藁は食えるかとうわの空に想ったとき、若者の獣性は目覚めた
庄屋の蔵の鍵を石で壊し、貢ぐ俵の中に手を差し入れ、生米をぐっと握りしめたその時
老女中の叫び声は背後から劈いた
新月の山路は、あの日も通った
関に辿り着いた時、待ち構えた兵に取り押さえられるその時まで、確かに路は延びていたのだ
今はどうだ?
女中の叫びを聞いた家の者が、ドタバタと飛び出してくるのを聞いた
警笛と怒号を、聞いた
思わず蔵から飛びだしたとき、竦んだ女中に身体が当たった
痩せた老婆は仰向けに倒れ、ごきり、と響いたのち動かなくなった
蔵の前には踏石が、敷かれていた
生米を握りしめたまま、山路を駆ける自分の足元は見えやしない
背後にちらつく里の松明の群れ、馬の嘶き
ほうほうとどこからともなく聴こえる梟の声は、まるで自分の居場所を山狩衆に告げているようで
心のうちで瞬間大声をはりあげた獣は今や姿なく、恐ればかりが若者をゆっくりと包んでいく
叫び声をあげたくなる恐怖の中で、先ほど山路の入り口にあった松明の群れを確認する為に若者が振り向いた時、汚泥の様な足元の闇から、地面が消えた
何度身体をぶつけたかわかりはしない
薄らぐ意識の中で、狼の息遣いだけは聴こえる
真っ赤に染まった生米を手放すことなく、彼は獣の糧となった
「あの押し込み強盗、山の中でそれらしいのが見つかったらしいわよ」
『それらしい?』
「…それがねぇ、なんでも…まぁ狼なんでしょうけど。獣に食われて誰だかわかりゃしない感じだったんですって」
『そいつはまた…』
「まぁでも畜生にふさわしい最期よね。お姫様に岡惚れして、手篭めにして。挙句身投げでしょ?そればかりかお女中さんを殺して盗賊働きですもの」
『まぁねぇ。同じ村に住んでるだけでも嫌だったんだ、清々すらぁね』
「ほんとよねぇ。真面目なふりして何考えてたんだか…今にして思うと怖いわね」
村人は、鬼畜が死んだ事を、憚る素振りをしながら話し合う
井戸端で、畦道で、夕餉を囲みながら安堵したと嘲笑う
やっぱりお姫様が死んだ後、関わらないようにしていて正解だった、と
若者のこれまでの姿に騙されず、厳しく罰したお殿様はやっぱり慧眼の持ち主だ、と
白昼堂々と路を歩く事を許された、品行方正な者たちは言う
若者を喰った狼は、腹を満たし幸せな眠りについただろう
獣には理性も矜持もありはしない
人を喰らう事に、僅かばかりの躊躇もない
腹をすかし、己の理性を食い殺し、蔵を破ったあの日の若者は確かに獣であった
しかし村人が口々に言う、人の皮を被った獣とはいったい誰の事だろうか
曰く、若者は本性を人の皮で覆い隠した獣であったと
それは、獣が人の皮を被るだけで人語を解し、さも親切に振舞う事ができる、という事にほかならない
果たしてそれは事実だろうか?
人面獣心とは…鬼畜とは
獣でも人でも無い、悍ましい何かの事ではないだろうか
命の欲求に応えるべく、悪逆に身をやつした若者
彼の行いのそのすべては、悪に繋がっていたのだと謗る村人
遠く山中、新月の山路に遠吠えが響く
それは、挽歌に似て
若者よ、汝は人狼なりや?
>>177
ありがとう!そしてすいませんでした
人狼ゲーム、実はよくわかってないのでググって書きました 笑
趣旨と違っていても許してください
「汝は人狼なりや?」
この台詞がなんかすごく印象的だったので使わせてもらいましたー
次
>>181で
マクスウェルの悪魔
>>181
マクスウェルの悪魔翌了解です…なんですが、ぼんやりとしかわかってないのでググって書きますねー
熱力学の話でしたよね??
しばらくお待ちをー
>>181
はーっ!!
ちんぷんかんぷんですwww
文系脳では情報もエネルギーの一種として捉えていいよ、て事で理解(←?)したんですが、合ってますか??
なにぶん説明に出てくる数式が全くと言っていいほどわからないもので…
もし違うなら申し訳ないですが、最安価とさせてもらおうかと…
>>183
あー、エントロピーの話だからなー 熱力学と情報理論重なるわな
難しいなら再安価で
アキレスと亀
>>186
緑色の赤ちゃ…もとい、アキレスと亀了解ですー
しばらくお待ちをー
俺とあいつの関係は、まさにアキレスと亀そのものだった
一般的なパラドックスよりずっと明快な、コンプレックスとして
あいつは、俺と等間隔を保つスピードを持った、亀だった
常に学年一位、スポーツも万能
俺はいつでも二位のスポーツ万能、ただし、あいつのようにスカウトが来るほどではないと説明文をつけなければならない
追いつこうともがく俺は、ついにあいつの背中しか見ることができなかった
過去形なのはあいつが死んだからだ
部活帰りに事故にあって
振り返って、頑張ろうぜ!と声をかける夢は一生叶わぬまま、超亀は突然加速して、先行逃げ切りを完璧にこなした
こんな言い方をすると俺はあいつといがみ合っていたように聴こえるかもだが、あいつの完璧っぷりは人格にも充分反映されていて
悔しい思いを常に抱えるの俺の心を、遥かに上回る快活さでほぼ占拠していて、俺にとって親友と呼べるやつもまた、あいつなのだった
葬式で泣く同級生を見ていると、なんだか実感がこみ上げてくる
でもやっぱり泣いてしまうとあいつが嫌がりそうなので、なんとか堪えて乗り切った
帰り際、あいつのお母さんに呼び止められた
仲良くしてくれてありがとうね、と鼻を啜りながら言うおばさんに、こちらこそ、と言うと、力なく微笑んでくれた
あいつは、しょっちゅう俺の事を話していたそうだ
『あいつが頑張ってるのわかるから、俺も一生懸命頑張れる』
『あいつがいなかったら、俺はこんな生成を残せていない』
だ、そうだ
まぁなんだ、直接言えばいいのに
こんなとこでおばさんに口を借りる辺りも卑怯っちゃあ卑怯ではある
輝かしい足跡を追える事は幸せなんだと実感する
あいつは、追ってくる俺の足音が聞こえるからこそ先導者として頑張れたんだと、そう言っていたんだそうで
先に走る者もいない道を、後ろを気にしながら征けるその強さは、やっぱりあいつらしい
あいつが、綺麗な、わかりやすい残光をつけていてくれたから
その一歩一歩をめがけて足を踏み出すだけでよかったから
俺の歩みはこれまで堅調だったというわけだ
しばらくは背中を追いかける事をやめない事にした
抜いた後振り返る事しか考えなかった俺にはまだ早い
いつかあいつを置き去りにするその時
追っていた背中のその先が見えるその時まで
俺はあいつを見据えて、走る
ちょっとありきたりでしたかね…すいません
今日はここまでにしますー
不義理をしたにもかかわらず、安価頂けてほんとに嬉しかったです
年末年始とペースは落ちるかとは思いますが、少しずつ書いていきたいと思いますので、よければまたおつきあいください
それでは、おやすみなさい
乙乙
このSSまとめへのコメント
面白かった