銀髪の吸血鬼 (16)

東暦3250年、地球上に極めて高い知能を持つ生命体はただ一つではなく、三つ以上存在していた。

そして、東暦3500年。長らくその生態系の頂点に存在していた人類は遺伝子の改革に成功した吸血鬼に相手に敗北を喫した。

その後、人類はニュータイプと呼ばれる亜人を筆頭に吸血鬼相手に善戦する。

そして、東暦3562年。吸血鬼陣営と人類側陣営の実力は拮抗していた。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1446562751

夜明け前、砂漠を武装したトレーラーが走る。重量はかなりのものだろう、しかしそのスピードは一般車両に引けを取らない。

それもこの30年において進化したエネルギー効率を良くする特殊ギアの発明によるものだ。

特殊ギアのおかげで燃費ははるかに向上し、
燃料問題もほとんどが解決した。
今では特殊ギアの技術はは自動車や、飛行機、工業機械、ロケットなど日常生活において必要なもののほとんどに取り入れられている。

武装トレーラーは砂漠のある村の前で速度を緩め、村の中で酔いつぶれかけている老人の前で止まる。

トレーラーのドアが開き、中からたくましい腕だけがすっと伸びて老人の顔の前で止まる。

「なあ、そこのじいさん、この村の周辺を金髪や茶髪、黒髪の吸血鬼が通らなかったか。」

腕の持ち主が老人に問う。

人類側陣営には亜人や人以外にも温厚派の血を吸わない吸血鬼もいる。
そういった吸血鬼は殆どが銀髪なのである。

「あぁ、しらな、いよ。」

老人が答える。

「おい、ジジイ。てめえ何か隠しているな。」

たくましい腕が老人の首元を押さえる。
老人の首には牙のあとがあった。
「ギィィラァァ!!」
途端に老人の眼が豹変する、瞳は真紅に染まり、牙が生え、腕の持ち主に襲いかかる。

「グールになったか、つまりはこの街はもう既に吸血鬼に襲撃されたってことだな。」
「悪く思うなよ老人。お前はもう人類じゃあない。」
腕の持ち主はドアの中から腕に装着した特製の弓を射る。
光る銀の矢はグールと成り果てた老人の頭に刺さった。

腕が老人の頭に刺さった銀の矢を回収するとトレーラーのドアは閉まり、再び走り出した。

とりまここまでで。

SS初めて書きます、もし良かったら見てください。
批判とか何でもどうぞ。

吸血鬼の性質は殆どが伝承通りであった。
違うことといえば宗教的な対処方法は効かず、吸血鬼は太陽の下あることが出来て、流水にも耐えることができるということだった。

しかし、吸血鬼は太陽の下にいると自慢の治癒能力は働かず、流水も然りだった。

トレーラーが去った村から東に80マイル程離れたところ、既に日は上がっている中銀髪の少女が深手の傷を負って岩陰に隠れていた。

少女の傷は僅かながら回復しているものの治癒能力の許容範囲を超えていた。

(まずい、このままだと意識が絶えてしまう。なんとかして生き延びないと)。

死にかけの少女を遠くから双眼鏡で覗いている男がいた。肌は浅黒く頭はスキンへッド、少し髭を生やした男だった。

側にはグールの老人を通ったあの武装トレーラーが止まっている。

「ロック、整備は終わった。そっちはどうだ。」

腕に特製の弓を着けた男がスキンヘッドの男に話しかける。
どうやら浅黒のスキンヘッドの男はロックと呼ばれているらしい。

「あれはもう長くないぞ。クーラ。回復しきれないほどのダメージを負ってる。」

「どうする放っておくか。」

「いや、待て。首に名札がついてる。それもかなりの地位を証明するような。」
「保護するぞ。」

「了解。」

(ハァハァ、ダメだ。回復を待つどころかひどくなってるじゃない、)

少女は益々血の気が引いて顔色が悪くなっている。

(後五分持つかさえ怪しそうだね。不幸中の幸い、奴らの目は上手くごまかせたはず。)

(希望は持たない、か。)

ゴゴゴゴゴゴ!!ガチャッ

「よう、そこのフロイライン。死にかけのようだが、生きたいか!!」

少女はロックの顔を見た途端に意識を落とす。

(…………ッ!?)ガバッ

少女は生死の境から目を覚ます。

「起きたかね、嬢ちゃん。」

「あなたが助けてくれたのかしら。」
「ありがとう。心の底から感謝するわ。」

「ああ、そうだ。どういたしまして。」
「俺の名前はロック。この小隊の隊長だ。」

「小隊?どこを見てもあなたと運転手の二人にしか見えないけれど。」

「アイツ名前はクーラ。昨日まではあと二人いたんだ。」
「嬢ちゃんと会う5時間前に命を落としたよ。」

「そうだったの。気を使えなくてごめんなさい。」

「気にするな。誰だっておかしいと思うさ。」

「そうだぞ嬢ちゃん、変に意識されると困る。」
「あと俺のことはクーラで呼び捨てでいいからな、歳は38だ。」

「ありがとう。私の名前は…」
「レベッカ・S・ギルサード、だろ。」
「なんで知って…ネームタグがあったわね。」
「それから、能力は"荊"で特性は"通信"と"侵入"。」
「ちょっなんで知ってるの!」

「君を追っていたのは金髪のオールバックと銀の長髪だった。」
「だからどうして…」
「銀髪の方は君たち穏健派の幹部だが寝返ったようだな。」
「……」

「俺は人間でも吸血鬼でも亜人でもない、悪魔憑き。それもうんと悪魔よりの。」

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom