ホッチ「FBIクビになったった」(112)
ホッチ「fbiをクビになってしまった…どうすればいいんだ…」
ギデオン「ティンときた!!」
ホッチ「…ギデオン?こんなところで何をしているんですか?」
ギデオン「ホッチには言っていなかったが…
私は人を信じる心を求めて旅に出たんだ
本当にすまないと思っている…」
ホッチ「……あんな仕事をしていれば、当然の結果ともいえます。誰もあなたを責めたりは…」
ギデオン「そこで私はその心を日本のアイドルに見出した!!」
ホッチ(この人は何を言っているのだろう…心の錯乱が見られるな
ストレス要因による妄想か?)
ギデオン「さぁ、日本にわたってアイドルをプロデュースしよう!!」
ホッチ「…はい?」
まさかのクリミナル・マインドw w
―――日本
ホッチ「あの、了承した覚えはないのですが…いつの間に日本に?」
ギデオン「動物病院から薬を拝借してきた」
ホッチ(いっつも思うけどこの人結構危ない橋渡ろうとするよな)
ギデオン「さぁ、事務所を作ろう」
ホッチ「はぁ…」
ギデオン「幸いなことに、こっちに知り合いもいる。その人に協力してもらおう」
ホッチ(リードはこのギデオンを見てどう思うのだろう…
いや、案外前と大差ないのかもしれないな
割と自分勝手なところも、その行動力も…)
リードはでるのかな…?
これは期待!
>>3
まさか元ネタわかる人がいるとは…
ギデオン「…わかった…あぁ、そういうことで
さぁ…プロデュース開始だ!!あ、私は社長だからアイドルのサポートはホッチに任せる」
ホッチ「…はい?」
ギデオン「あちらも人手不足らしくてな…余った人材をこちらに回してもらった」
ホッチ「はぁ…そうですか」
ギデオン「これがそのプロフィールだ」
ホッチ「はい……ん?犯罪歴のリストは?」
ギデオン「えっ」
ホッチ「あっ」
ギデオン「ホッチ…まだ癖が抜けきっていないようだな…」
ホッチ「申し訳ありません…何せ突然クビになったものですから」
(あれ?なんで私が謝っているんだ?)
ギデオン「そういえばホッチは日本語がわかるのか?」
ホッチ「はい。妻…いえ、元妻が日本通でして…
旅行にも何度か行っているので、聞く分には問題ありません…
ただ相手もいくらかは英語を理解していてくれないと…」
ギデオン「そういうことならおそらく心配はないだろう…
プロフィールから何か読み取れないか?」
…名前は、如月千早
年齢は16
高校の初等教育を受けている…と、いうことはある程度日本語に理解が?
ホッチ「ふむ…なるほど…専門家でなくともある程度あたりは付けられますね
気難しそうですが、その実、わかりやすく扱いやすいタイプではないかと思います」
ギデオン「人物像は?」
ホッチ「字が非常に洗練されていて、固いですね。
頭がよく、努力家で、頑固。常に結果に満足していないでしょう
そして非常にわかりやすく『アイドル』に対して不満を持っている…
歌手として成功したいとも書いてあることから、
いずれは世界進出が夢なのでしょうね。
アドレスは筆記体…よって世界共通語の英語に関してかなり理解があるとみていいでしょう」
ギデオン「正解だ…さすがだな、ホッチ」
ギデオン「さっそく事務所に移動しようか」
ホッチ(あれ?なんか楽しくなってきた…)
―――gjプロダクション事務所
ホッチ(なんというネーミングセンス。そしてぼろい)
「あなた方が、今日からお世話になるgjプロダクションの方ですか?」
ホッチ「…えぇ。英語でも大丈夫ですか?」
「はい…ある程度は把握できますし、会話も英語でできます」
ホッチ「確かにずいぶんお上手だ…ネイティブと比べて遜色ないでしょう」
「ありがとうございます…私の名前は、如月千早、と申します」
ホッチ「私はこうど…プロデューサーのアーロン・ホッチナーだ」
千早「はい。よろしくお願いします」
ホッチ「…とりあえず、事務所は信号の向こうだ…
ギデ…社長はさっさと行ってしまったからな
行こうか」
千早「…はい」
ホッチ(……ん?)
千早「?どうかされましたか?」
ホッチ「いや、事務所の前でもないのに…
よく私たちがgjプロの人間だと分かったな、と」
千早「あぁ、そのことですか。
社長からギデオンさんの写真を見せていただいたもので…
そのギデオンさんは私を無視してさっさと行ってしまわれましたが」
ホッチ「彼は礼儀を忘れがちなところがるから。
と、信号が赤になってしまったな」
千早「そう…ですね」
ホッチ(……明らかにptsdを患っているな…
自分がこれから担当するアイドルのプロファイリングなんて気が進まないが
かなり重度で長期にわたっているようだ…それにもかかわらず普通に出歩いているということは…
精神的な強さは私やギデオン以上か)
―――――事務所
ギデオン「やぁ、よろしく千早さん」
千早「先ほどは無視をしておいて…」
ホッチ「あきらめてくれ。こういう人なんだ…悪い人ではない」
千早「…あなたは頼りになりそうですね…」
ギデオン「さっそくで悪いんだが、カルテを持ってきてくれたかな?」
千早「あぁ、はい。最優先事項とのことでしたので」
ギデオン「ありがとう」
ホッチ「カルテ…ですか?」
ギデオン「君に必要かと思ってね」
ホッチ(見抜かれていたか…しかも私がそれを思いつく前から)
千早「プロデューサーが見るなら安心ですね」
ギデオン「はっはっはっ…では今日は軽くミーティングだけして帰りなさい
一か月ほどレッスンを積んだ後にオーディションを受けてもらう」
千早「はい!!」
―――――ミーティングルーム
ホッチ「ふむ…君は結構病院に行っているんだね」
千早「はい…まぁ」
ホッチ(…あまり触れられたくない様子だな…)
ホッチ「まぁ今後は本格的な活動も始まるわけだから、
体調管理には気を付けてくれよ」
千早「………はい」
ホッチ(かなり不満な様子だな…普段、体調管理を怠っていないのだろう)
ホッチ「世間受けを狙うならグラビアなどの仕事は必須だが…」
千早「…それが本当に必要なら、やって見せます」
ホッチ「大丈夫…必要でないことを君に強要したりはしない」
千早「そ、そうですか…」
ホッチ(あからさまに安心したな…)
ホッチ「だからと言って緩くいくつもりはない…やるからには厳しくいかせてもらう」
千早「は、はいっ!!」
ホッチ「君の趣味はなんだい?」
千早「あの、それって必要な質問ですか?」
ホッチ「あぁ、様々な角度から君を知ることで今後のプロデュースの指標になるんだ」
千早「趣味…ですか。音楽を聴くこと…ですかね。あと、ミュージカルも好きです」
ホッチ「なるほど…どんな音楽が好きなんだい?」
千早「クラシックです。ブラームスが特に」
ホッチ「ブラームスか。なかなかに渋い趣味だ…なんだったかな
ブラームス曰く、『愛している。だが」
千早「だが、足かせはごめんだ…です。恋人に向けて言った言葉…」
ホッチ「……じゃあ、明日は君の能力を見させてもらうから…10時ごろ、ここで」
千早「はい。わかりました…」
ギデオン「ホッチ、どうだった?」
ホッチ「…彼女は心に大きなストレスを抱え続けています…
おそらく友人も多くはないでしょう…嫌われるタイプではあるませんが」
ギデオン「いや、そういうことではないんだが」
ホッチ「安心してください。アイドルとしての素質は人一倍でしょう
ミュージカルに興味を示している…演劇関係の仕事も行けます。
グラビア関係に関しては…何とか口説き落として見せますよ」
ギデオン「いや、そういうことでもないんだが」
ホッチ「?」
ギデオン「彼女を救えそうか?」
ホッチ「まさかとは思いますが…それが目的だったのですか?」
ギデオン「…」
ホッチ「全く…まぁ、私もクビになった身ですから…
できる限りの手伝いはいたしますよ」
ギデオン「古い友人からの頼みだ…よろしく頼む」
ホッチ「彼女は明らかにptsdです…それも交通事故が原因でしょう
おそらくは身近で大切な何かを目の前で失った…
それがストレス要因で、妄想に取りつかれている…
可なり重度で時間はかかりますが、必ず何とかしましょう」
ギデオン「私も協力しよう…
おそらく彼女を芸能界のトップに立たせることがカギになるだろう…」
出演者によるcmだか宣伝番組で、デレク役とリード役のキャラが逆で噴いたなwww
ホッチ「当面で気になるのはこのカルテです」
ギデオン「…ふむ…確かに違和感があるな…」
ホッチ「彼女の体は細身ですが非常に均整がとれている。
筋力・体力面で不安はないでしょう…
おそらく本人も常日頃の体調管理を怠っていない」
ギデオン「…の割には通院回数が多いな…
間隔はバラバラだが、月二回は言っている」
ホッチ「そしてカルテの内容はいつも同じで簡潔…?」
ギデオン「どうかしたのか?」
ホッチ「…初回だけ診察内容が…失声症、となっています」
意外にクリミナル・マインド知ってる人が多いなー
まぁ面白いからか…
エルかわいいよエル
カムバック!!
ギデオン「彼女にはできる限りすべてのカルテを持ってくるようにと伝えてある」
ホッチ「…おそらく精神科病棟にいたことはないでしょうね」
ギデオン「……意外と大変かもしれないな」
ホッチ「えぇ…でも、必ず解き明かして見せますよ」
ギデオン「…それはそうと、どうして彼女がptsdだと?」
ホッチ「初対面の自己紹介によどみなく受け答えしていた彼女が、
横断歩道を渡る、という言葉に詰まりました…足を出すこともためらっていましたし」
ギデオン「なるほど」
ホッチ「…と、言ってもあなたはすぐに気づかれましたか」
ギデオン「………はっはっはっ…どうかな?」
ホッチ「さぁ…ではトップアイドルになるためには具体的にどうすれば?」
ギデオン「一時間で覚えられるか?」
ホッチ「リードほどではないにしろ、私だって優秀ですから」
―――――翌日
ホッチ「ではこの曲を今日の16時までには覚えてもらいたい…振付けも込みでだ」
千早「やってみせます」
ホッチ「………」
(迷いのない言動…これはおそらく…親元を離れているな…
しっかりしすぎている…原因があるとすれば…やはり交通事故か)
千早「あのー…」
ホッチ「どうかしたのかい?」
千早「一通り覚えました…一度、見ていただけませんか?」
ホッチ「…!…わかった。じゃあ見せてくれ」
(馬鹿な…まだ4分半ほどしか経っていないはず…!?)
………目と目が逢う瞬間好きだと気付いた~♪
ホッチ「…これは…!!」
(驚いた…
リードがいるせいで多少の自称『天才』には慣れたつもりでいたが…!!
まだ素人の私の目から見ても素晴らしい完成度だ…
まずいな…もっと目を肥えさせるべきか…
彼女において行かれるようではプロデューサー失格だ)
―――――終了後
千早「…どう、でしたか?」
ホッチ「おおむね良かったよ…初回としては上出来じゃないかな?
ただまだまだ改善できる点はあるね…君にはわかってるはずだ」
千早「…はい…っ!」
ホッチ「疲れたろう?何か飲み物を持って来よう」
千早「あ、ありがとうございます…」
―――――
千早「…ぷはっ…」
ホッチ「で、どこか納得いかなかったのかな?」
千早「……そうですね……まぁ、いろいろありますが…特に気になったのは…とある歌詞の部分でどうしても照れが出て…」
ホッチ「…あぁ、あの部分か。目と目が逢う瞬間好きだと気付いた。
発声には影響ないようだったけど?」
千早「でも…たぶん顔が赤くなっちゃってたと思うので…ヴィジュアル面の評価に支障をきたします…よね?」
ホッチ「いや、あの部分は特に問題ないだろう…むしろ、ありのままの君を見ることができる」
千早「そう、ですか…プロデューサーがそういうのでしたら。それにしても…ふふっ…気障ですね…こくっ…こくっ…」
ホッチ「…気に障ったなら謝るよ…なんてね。気障だけに「ぶほっ!」
ホッチ(あれ?日本でいうダジャレ未満のダジャレだったんだけど…)
千早「ちょ、なんなんですかプロデューサー!!や、やめてください!!あははっ…」
ホッチ(…これが多分、本来の君か…今の魅力の裏に隠れてしまった、本来の魅力…)
ホッチ「フトンガフットンダ」
千早「アハハッ…!!な、なんでわざわざ日本語なんですか!?」
ホッチ(なんだかんだで楽しい時間を過ごした…
なんだか、彼女とかかわっているのは非常に楽しい
自分がこんなに積極的に女性とかかわるのは人生でも三度目か…)
―――――千早帰宅後
ギデオン「…なるほど。人格が分離してしまっているのかもしれないな」
ホッチ「強烈な心的外傷と…おそらくですが、親から虐待…
精神的虐待を受けていたのかもしれません」
ギデオン「本人の口からきくまで、余計な先入観は捨てよう…
今はオーディションに全力を注いでくれ」
ホッチ「はい…営業は入っていますか?」
ギデオン「今プロデュース中の曲『目が逢う瞬間』の作詞家作曲家への挨拶
それと、pv撮影だな」
ホッチ「予算は出ますか?」
ギデオン「一曲目だからドカンと行こう。失敗は許されないが」
ホッチ「了解しました…」
―――――2週間後、pv撮影
千早「……」
ホッチ(やれやれ…乗り気ではない、か)
「千早」
千早「はい?」
ホッチ「pvとはなんだ?」
千早「…歌を乗せた、映像作品ですよね?」
ホッチ「今、不要だと感じたな?」
千早「…やっぱりわかりましたか…
プロデューサーはなんだか鋭すぎます…」
ホッチ「当然だ。それが仕事なんだから」
ホッチ「どうして不要だと感じる?」
千早「……いえ…私は…みんなに『歌』を聴いてもらいたいんです」
ホッチ「…なるほどな。映像が有ったらむしろ邪魔なのではないか、と
そう考えているのか」
千早「…はい」
ホッチ「決して間違ってはいない。
が、より多くの人に興味を持ってもらう入り口として、映像は間違いなく必要だ」
千早「…!!」
ホッチ「映像で興味を引き…
そこからファンになってもらえるかどうかは千早の歌次第だ」
千早「なるほど…歌への興味の入り口としての、映像…
そういう考え方もあるわけですか…」
ホッチ「やる気はでたかな?」
千早「はいっ!!」
続けてよ
ホッチ(…ふむ…いい表情に動きをしているな…
ただ荒削り感は否めないか?…いや、この程度なら十分通じる
素人目ではわからないだろう…が、彼女は納得しないだろうな
…やっぱりアドバイスを求めてきた)
千早「…すいません…」
ホッチ「アドバイスか?」
千早「はい」
ホッチ「そうだな…全部忘れてしまえ」
千早「…はい?」
ホッチ「今、この瞬間、この歌を楽しんでくれ。それで十分だ」
千早「…と、言われましても…」
ホッチ「本当はわかってるはずだ」
千早「…本当に、プロデューサーは…
簡単に心を読まれると、無意味に反発したくなりますから、やめてください」
ホッチ「じゃあ、頑張ってこい」
千早「…はいっ!」
―――――撮影終了後
お疲れ様でしたー!!
ホッチ「では、千早。いったん事務所に戻って…」
千早「ふぁい…?」
ホッチ「疲れたか…今日は直接送っていこう」
千早「しゅみません…あふぅ」
ホッチ「乗れ…」
――――
ホッチ「家にはついたが…」
千早「スー…スー…」
ホッチ「まぁ今日はずいぶん頑張っていたからな…部屋のベッドまで運んでやるか…」
―――――翌朝
千早「…んぴ?…いやだ……
昨日あのまま車で眠ってしまったのかしら…?ん?置手紙?」
ホッチナーより
明日から一週間はオフにする
その後3日間の調整ののちオーディションへと挑むことになる
しっかり体調を整えていてくれ
千早「…はぁ…じゃあ一週間はプロデューサーに会えないのか…」
(って…あれ?なんでプロデューサーと会うのが楽しみみたいに…っ!?)
―――――おねえちゃん、たのしそうだね……
rrrrrrrr……
ギデオン「…ホッチ、携帯が鳴っているぞ」
ホッチ「今ちょうど手が離せなくて…よし…?千早からだ」
ピッ
ホッチ「どうかしたのか?今日はオフで…」
千早「あっ…んっ…はぁ…プロッ…」
ホッチ(喘ぎ声…?いや、喘ぎ声には違いないが、これは…)
千早「こ…で…んっ…」
ホッチ「…いまからそっちへ行く…待っていろ」
ギデオン「どうかしたのか?」
ホッチ「緊急事態かもしれません」
―――――
ホッチ「千早!!」
千早「あっ…!」パァァ
ホッチ「大丈夫か?声、出ないんだな?」
千早「んっ…」コクコク
ホッチ「どこか病院に…」
千早「んーッ!」アッチアッチ
ホッチ(たしかカルテはすべて同じ病院からだったな)
「かかりつけの医師がいるのか?」
千早「んっ…」コクコク
ホッチ「よし、道案内を頼む」
千早「ンっ」フラフラ…
ホッチ「ほら、肩につかまれ」
―――――
医者「ふむ…急な疲労による一時的なのどの炎症だろう」
ホッチ「…そうですか」
医者「薬を出して2,3日休めばよくなるよ」
ホッチ「良かった…」
千早 コクコク
ホッチ(…この医者は明らかに嘘を言っている…
千早にしてもそうだ…どうやら失声症のことに触れるのは危険だな)
ホッチ「一応相談しますが…来週のオーディションには…」
医者「…問題ありませんよ」
ホッチ(大あり、ってほどではないがややありか)
「わかりました。ありがとうございます」
さすがホッチw鋭すぎるw w
ホッチ「ではこれで…千早、ちょっと先に行っててくれないか?」
千早 コクコク
ホッチ「さて…」
医者「どうかしたかね?」
ホッチ「単刀直入に聞くが、千早は重度の失声症ですね?」
医者「……いいえ?何の話ですか?」
ホッチ「隠すのは無駄ですからあきらめていただきませんか?
別に彼女から歌を奪うようなことはしません。
現状を聞かせていただければ、それで構いませんから」
医者「……だから、何の話か分かりません」
ホッチ「そうですか…こちらの勘違いのようです。申し訳ない」
医者「………」
ホッチ「では、これで。今日はありがとうございました」
――――車内
ホッチ「…元から一週間はオフの予定だったんだ…心配はいらないよ」
千早「んっ」コクコク
ホッチ「……一応聞くが、オーディションには?」
千早「んっ!」コクコク
ホッチ「わかった。楽しみにしておくよ」
千早「……」
―――――
ホッチ「ついたぞ?千早」
千早 ペコリ
ホッチ「お休み」
ホッチ「ただ今戻りました」
ギデオン「戻ったか!で、彼女の容体は?」
ホッチ「おそらく失声症です10年前からずっと患っていたのでしょう」
ギデオン「しかし、彼女は普通に歌も歌っていたぞ?」
ホッチ「『失声症の状態』で歌っていたのでしょう。
通常の人がその歌い方をするとなると、絶叫の状態ですね」
ギデオン「…なんと、精神的な病を力技で克服したのか」
ホッチ「ただ、当然のどにいい影響は出ていません。
今回しゃべれなくなったのは慢性的な炎症が精神的要因から
急激に強くなったものと思われます。
…彼女はそれほどまでに妄想によって追いつめられている…
彼女の妄想がなんなのか、それも解決の糸口です…
こんな時、モーガンがいればな…」
rrrrr……
ホッチ「はい、こちらgjプロダクションの…モーガン?」
モーガン『おいおい…g_jプロダクションってなんだよ?今どこにいんの?』
ホッチ「あー…とある事情があって、日本だ」
モーガン『日本!?ったく…心配して家に行ってやったってのに誰もいないと思ったら…』
ホッチ「ところで、モーガン。ちょうどよかった…聞きたいことがあるんだが」
モーガン『なんだよ?』
ホッチ「幼少期に交通事故で声が出なくなるほどのショックを受け、
親には精神的な虐待を受けていて、交通事故で自身はけがを負っていない。
それを10年引きづったままでも無理に歌おうとする女性がいるとする。
こんな状態になるには、どんな妄想に取りつかれていなければならない?」
モーガン『…ずいぶん唐突だな…歌…歌か。
目の前で弟か妹を亡くしたんじゃないのか?
おそらく両親の仲はそれで崩壊。これなら十分ストレス要因にもなる
きっと子守唄でも聴かせててあげたんだろう。
歌に対する責任感でもあるのかもな…だからそんな無茶なことをする
で、妄想の内容は
今ものうのうと人生を謳歌してる自分が許せなくて、自分を責める弟、とか
あいまいで悪いが…そっちのプロファイルもかなり雑だぞ?』
ホッチ「すまない…だが、助かった」
モーガン『あ、おい!いつごろ帰るんだ?』
ホッチ「さぁな、わからん」
モーガン『ったく…まぁいいや。んじゃな』
ホッチ「……よし。勝負に出ます」
ギデオン「…大丈夫なのか?」
ホッチ「彼女なら、必ず…乗り越えられると信じています」
―――――四日後
ケータイ取出しポパピプペ
ホッチ『デートしてくれますか?』
千早「………はい?」
千早『ぷっ…なんですか突然』
ホッチ「すまない、冗談だ」
千早『……プロデューサーでもそんな冗談いうんですね。
あ、前もカタコトでダジャレ言ってましたっけ…』
ホッチ「…単刀直入に聞くが、君は弟さんを亡くしているね?」
千早『…はい、そうです』
ホッチ(特に否定しないということは、自身では克服したと思っているな)
「……どうして話してくれなかった?」
千早「………あなたから言ってくれるのを、待っていました」
ホッチ「………千早。事務所にいたのか」
千早「えぇ、あまりにも暇でしたから、
プロデューサーのお手伝いを、と思いまして」
ホッチ「千早…弟さんのお墓に連れて行ってくれないか?」
千早「はい…」
――――――
ホッチ「これが日本の墓地…」
千早「あそこです…あそこに…優が」
ホッチ「優君か…初めまして。僕は君のお姉さんのプロデューサー…
アーロン・ホッチナーだ」
千早(日本語…凄く上手くなってる…)
ホッチ「君のお姉さんはとても歌が上手でね…
おっと、それは僕より君のほうがよく分かってるか
とにかく、僕が言いたいのは…君のお姉さんを、僕にくれないか?」
千早「えっ」
ホッチ「…千早。君は今、一人じゃない。
優君だって、君の幸せを願ってる。
いつまでも引きずられるべきではない…
優君だってそう思っているはずだ」
千早「……でも……私は…私のせいで…」
ホッチ「もうどうにもならないことで悩むのは…
悪いことではない。ただし、それは何も生まない…
だから、私についてきてほしい。
必ず君を頂点にして、優君に君の歌を届かせるから」
千早「…プロデューサー…」
チチチ…
千早「…ツバメだわ」
ギデオン「珍しいな…ツバメはめったに人になつかないのに」
ホッチ(なんで自然に溶け込んでいるんだ?いつからそこにいたんだ?)
千早「…きっと優からの贈り物かもしれませんね…私を励ましてくれているのかも」
ホッチ(…妄想を見ている様子はないな…
純粋に、前を向こうとしているのか。やはり女性はしたたかだな)
千早「…プロデューサー!オーディション、頑張りましょう!!」
―――――オーディション当日
ホッチ「…準備はできたか?」
千早「…万全です」
ホッチ(どうやら本当のようだ…よし。これなら確実に行ける)
「…あんた、元765プロの如月千早だろ?」
千早「?はい…」
ホッチ「…」
(なぜかいきなり恨みを感じるな)
「…ふん…まさか元とはいえ765のアイドルとなんか同じオーディションに出ちまうとはな」
ホッチ「……」
「まぁいいや…
せいぜい頑張りなよ?どうせいつかの竜宮なんたらみたいに無様に負けるんだろ?」
千早「!!律子たちが!?」
「なんだ、聞かされてなかったのか?圧勝も圧勝だよ!あいつら3人がかりで俺一人に」
ホッチ「くだらないな。その話が千早のこれからのステージと何の関係があるんだ?」
「ふん…なんだ?おっさんビビッてんのか?」
ホッチ「じきにわかる。千早、律子さんたちのことは置いておこう
実は…」ゴニョゴニョ
千早「!!本当ですか!?」
「あ、おい!!…クソ…行っちまったか」
審査員「じゃあ、次!71番の天ケ崎竜馬君!」
「ちょっとずつ間違えないでください。俺の名前は天ケ瀬冬馬ですから」
alice or guilty
嘘の言葉があふれ…
ホッチ(…あの程度でいきがっていたのか?
ただ目新しいという理由で
今まで勝ち残ってきたことに気付かないあたり…自信過剰なタイプか
今回の負けを気に一気に伸びるタイプでもあるな)
今!君の!裁きで!
審査員「おぉ!実にすばらしい!
特にその堂々としてかつダイナミックなパフォーマンスには風格も感じるよ!」
冬馬「…ありがとうございます」チラッ
ホッチ(してやったりって顔だな…)
審査員「ハイ、次は…72番の如月さん!緊張しなくても大丈夫だからねー!」
ホッチ(完全に甘く見られてるな…やれやれ)
「千早、全力でやってこい」
千早「ハイ!」
目が逢う瞬間(とき)
目と目が逢う、瞬間好きだと気付いた…
あなたは今、どんな気持ちでいるの?
戻れない二人だと…わかっているけど…
少しだけ…このまま瞳…そらさないで…
審査員「………」
ホッチ(審査員も唖然としているな…
当然だ、今回が初のオーディションでこのレベルだ。
…私でさえ、驚いている…前回見たときとも比較にならないほど上達した)
もう二度と…会わないと、さよならする…
審査員「いや…なんていうか…凄いね、君…
で、ではこれから審議に移りますので…
結果発表を待っていてください」
―――――結果発表
合格 72番 如月千早
冬馬「……悔しいが、完敗だった…
悪いが調子に乗っていたのは俺のほうだったようだな…
さっきのことは謝るよ、すまなかった」
ホッチ「自分の過ちを認められるものは、何者よりも強い…
君もいつかは頂点に立つことができるかもしれないな」
冬馬「おっさん……サンキュー…じゃあな」
ホッチ「あぁ、またいつか」
―――――
千早「プロデューサー!」
ホッチ「お疲れ、千早。さっきの話だが…」
千早「はい!喜んで!」
千早「765プロとの合同プロジェクト!参加させていただけるんですね!」
ホッチ「そんなにうれしいのか?」
千早「はい!成長した姿を皆に見せられることが…すごくうれしくて!」
ホッチ「…と、いうよりは親友の特定の一人に見せてあげたい…そんな感じだな」
千早「うっ」
ホッチ「まぁ嘘を言っているようでもないが…浮かれすぎないようにな
じゃあ、収録頑張ってこい」
千早「はいっ!」
メトメガアウ~
ギデオン「素晴らしいな…」
ホッチ「えぇ、本当に…」
千早「ちょ、恥ずかしいですから何度も再生するのやめてください」
ホッチ「合同プロジェクトの始動までまたしばらくオフだから…
学校に行って羽を伸ばしてこい」
千早「あ、はい…って
こんなに休んでばかりで大丈夫なんですか?
ホッチ「心配ない…むしろ量より質で攻める」
千早「まぁ…プロデューサーがそうおっしゃるのなら…では、今日はこれで」
ホッチ「あぁ…またな」
ギデオン「彼女に関しては…概ね大丈夫そうだな」
ホッチ「……いえ、おそらくですが…このままでは…」
ギデオン「何か問題か?」
ホッチ「彼女の失声症という症状は改善されましたが…
のどの慢性的な炎症はかなりひどいようです…」
―――――回想
千早「収録で…少し…いや、かなり体力使いました…」
ホッチ「空腹か?」
千早「はい…」
ホッチ「昼間の弁当が残っている…あーん」
千早「…はい?」
ホッチ「あーん」
千早「…それを私にやれと?…全く…変なとこでボケようとしますよね…
あ、あーん」
ホッチ(…やはり…うまく隠してはいたようだが、のどの腫れはかなりひどい…
これはもう手遅れかもしれない…)
―――――
ギデオン「なるほどな…」
ホッチ「私は、どうすればいいのでしょう?
彼女から歌を奪う代わりにトップへ立たせてあげればいいのか…
トップへの道を断って…彼女を無理にでも病院へねじ込むべきなのか…」
ギデオン「そんなもの、君に決められるわけがないだろう?」
ホッチ「……」
ギデオン「彼女のことは、彼女にしか決められない。そうだな?」
千早「…はい…」
ホッチ「千早…?…全く…ギデオン、あなたにはかないませんよ」
ギデオン「当たり前だ…年季が違う」
千早「やっぱり…気づいておられたのですね…プロデューサー」
ホッチ「まぁな…」
千早「…お医者さんの話だと…全力で歌えるのはあと…四回程度だと」
ホッチ「千早は、どうしたい?」
千早「…その四回を、使いたいです…
せっかくプロデューサーが開いてくれたトップへの道…閉ざしたくは、ありませんから」
ホッチ「……だが、まだ結果が…」
ギデオン「結果が出たようだぞ?」
どっとっぷtv!
3位 目が逢う瞬間
すごい人気どっと!
ホッチ「……結果は…初登場3位、か。
完全にアイドルアカデミーを圏内にとらえたか…」
千早「プロデューサー!お願いします…!」
ホッチ「わかった…千早。全力で応援しよう
新曲を収録で一回
合同プロジェクトで一回
アイドルアカデミーのノミネート発表は休む
アイドルアカデミー前のフェスティバルでは全力で歌うな
のどを温めるだけでいい…
アイドルアカデミー授賞式で…全力を出し切れ…わかったな」
千早「…はいっ…」
ホッチ「ファンの人数は営業で稼ぐ…必ず地方の部門賞まで取らせてやる」
(そしてお前を…責任から救ってやる…!)
「だから約束しろ…全部終わったら、必ずのどの治療に専念することを」
千早「……はいっ!」
ホッチ(明らかにそんなつもりがないことはわかっていた…わかりきっていた
それでも自分に彼女は止められなかった…)
―――――765プロ
ホッチ「…合同企画『パレスオブドラゴン』だ
竜宮小町の復活をかけた一大プロジェクト…
これが成功すれば、おそらくはアイドルアルティメイトには参加できるだろう」
亜美「お→!オッチャンsugeeeeeeeee!」
ホッチ「オッチャン言うんじゃない…
編成はセンターに伊織、二番に千早、三番にあずさだ」
伊織「当然ね」
千早「…全力を尽くします」
あずさ「あらあら~」
「え→亜美は亜美は→?」
ホッチ「四番が亜美、五番が律子のクインテット編成だ、何も問題は」
律子「あるわよ!!私はプロデューサーなのよ!?」
ホッチ「しょうがないよ、君は魅力的だから」
律子「……まぁ、あなたに一任されてるわけだからしょうがないわね」
亜美「律ちゃんチョロイyo」
―――――収録
知らぬが仏、ほっとけない
唇ポーカーフェイス
言わぬが花となり散りぬ
ホッチ(かなりの完成度だ…
特に伊織は千早に張り合おうと無理をせず努力をしていたようだ
あずさも歌のうまさだけなら千早より上かもしれないな…
亜美も特徴的な歌い方が決まっている
律子もなんだかんだでかなり動けるじゃないか…)
ホッチ「…よかったよ、みんな」
律子「そ、そうですか」
亜美「はーっ…やっとオッチャンのスパルタから解放か…」
あずさ「あらあら~」
伊織「ふん!伊織ちゃんがやったんだから完璧に決まってるでしょ!」
千早「プロデューサー、この企画に加えていただいて…えっ?」
「千早ちゃん!お疲れ様!」
千早「は、春香!?」
春香「久しぶりだね!千早ちゃん、今すっごい話題だよ!」
千早「そんな…私なんて…美希や春香に比べたら…」
「そんなことないって思うな。こないだテレビで見てた千早さん、すっごくキラキラしてたの!」
ホッチ(日本語って難しいな…)
千早「美希まで…」
美希「もちろん、今のステージでも!でも、千早さんのサポートのおかげで
でこちゃんのおでこはもっとキラキラしてたの!」
でこ「なんですってー!!」
美希「逃げるのー!」
春香「あははっ…」
千早「ふふっ…」
ホッチ(彼女たちを連れてきたのは正解だったか…)
―――――
ホッチ「では、私はこれで…もうすぐ、新曲の発表がありますから…
予定を組まないと」
高木社長「うむ!君はギデオンの言うとおり、非常に優秀だね!
また機会があれば頼むよ!」
―――――
ホッチ(…新曲、『眠り姫』…今の千早では、歌いきることも難しいかもしれない…)
千早「珍しいですね、プロデューサーがボーっとするなんて」
ホッチ「…これが、出来上がった新曲だ」
千早「家に帰って、さっそく聴いてみますね…では、これで」
ホッチ「…あぁ。千早…無理だけは、しないでくれよ?」
千早「…わかっていますよ」
ホッチ(頼むから、わかってくれ…)
――――― 一か月後 『眠り姫』の収録
ずっと眠っていられたら
この悲しみを忘れられる
そう願い眠りについた夜もある
二人過ごした遠い日々
記憶の中の光と影
今もまだ
心の迷路彷徨う…
ホッチ(…すばらしい…だが…これを聴けるのもあと、二回…
結果的に彼女を追いつめたのは私だ…本当に、これでよかったのか?)
あれは 儚い夢…そうあなたと見た泡沫の夢
たとえ百年の眠りでさえ いつか物語なら終わってく
最後のページめくったら
眠り姫
目覚める私は…今誰の助けも借りず
たった一人でも 明日へ たどり着くために
朝の光がまぶしくて涙…あふれても
瞳を上げたままで…
―――――
千早「どうでした?」
ホッチ「…一発収録か…さすがだな」
千早「プロデューサーの意見が聞きたいです」
ホッチ「…本当に、素晴らしかったよ」
千早「…そ、そうですか…面と向かって言われると…照れますね」
ホッチ「じゃあ、休もう…あとはしばらく営業であっちこっち回るだけだから」
千早「あ、このまま出るんですね…
だから収録前に荷物をまとめろと…」
ホッチ「すまない、言っていなかったな」
千早「大丈夫です。では一度家に」
ホッチ「あぁ」
―――――北海道老人ホーム
ホッチ「しばらくは軽く歌って、握手会…これで行こう」
千早「はい」
ホッチ「言い方は悪いが、こういった施設めぐりは注目にとまりやすい
全部の老人ホームを回る勢いで行こう」
千早「はいっ!」
―――――とあるデパートにて、握手会
ホッチ(地方の割には…と、いうか地方なのに首都並みの行列…
もう知名度はかなり高いのか…まぁ『眠り姫』も初週で
素顔をさらした覆面ユニット『ジュピター』を抑えて一位になったわけだしな
あの異様に背が高くて細長いのは外人か?…ん?)
「ああああのぼ、ぼくはすぺぺぺどくくくぁwせdrftgyふじこlp;@:」
ホッチ「…リードか?」
リード「…えっ…?ホッチ!?なんでここに!?」
ホッチ「いや、私はfbiをクビになった身だからともかく…なんでリードが?」
リード「いや、僕は休暇をもらったから…あの如月さんの握手会に来たんだけど…」
ホッチ(海外でも有名だとはな…)
千早「…積もる話もあるでしょうが、リードさん、後ろ詰まっているので…
すいません」
リード「いえ、こちらこそ…これからもがんばってください」
千早「ありがとうございます」
リード「…そっかーまさかギデオンとホッチが…
しかしプロファイリングの技術ってそっちにも生かせるんだね…」
ホッチ「おかげで『心を読めるプロデューサー』として恐れられているよ」
リード「僕たちは心を読むわけじゃないのにね
行動パターンや統計学とあてはめて相手の心理を予想してるだけなのに」
ホッチ「…あぁ、そうだな」
(こいつの話は聞き流すに限る)
リード「そうだ、ギデオンに会わせてよ」
ホッチ「あぁ…ここが事務所の住所だ。ギデオンもきっと喜ぶ」
リード「じゃあね」
ホッチ「あぁ、またいつか…」
――――― 一週間後 近畿地方 宿にて
ホッチ「今日もお疲れ」
千早「あ、はい…プロデューサーも」
ホッチ「君に比べればどうということはないよ」
千早「あの…」
ホッチ「…言ってごらん」
千早「…ふふっ…やっぱりオミトオシ、ですか」
ホッチ「…いや、ずっと待っていたから、君から話してくれるのを」
千早「いつぞやの仕返しというわけですか…じゃあ、ちょっと昔話を」
千早「10年ほど前…です。優が死んでしまったのは…
プロデューサーも気づいていると思いますが…交通事故です
私が…つないでいた手を離さなければ…
それから、何もかもおかしくなりました…歌は歌えなくなるし…
両親はいがみ合ってばかり…つい最近やっと離婚してくれて、助かりました…」
ホッチ「…トップのアイドルになりたいと思うのは…やっぱり、責任感から?」
千早「…はい。私だけが生きていることに、どうしても罪悪感を感じてしまって…」
ホッチ「…罪悪感なんて感じる必要はない」
千早「プロデューサー…」
ホッチ「俺が、君を必要としている。生きる意味なんてそれだけで十分だろ?」
千早「……私…」
ホッチ「さぁ、もう寝るんだ。明日も早い」
千早「はい…」
なんかホッチが口説いてるように見えるw w
―――――営業旅行 最終日
ホッチ(これで大部分の部門賞は取れるだろう…あとはフェスの結果次第…か
しかし…ジュピター……か。
cdの売り上げでは勝っているが、
それだけで油断していいわけではない…おそらく手加減して勝てる相手ではない…
個人個人の能力がずば抜けている…
特に天ケ瀬冬馬は…油断も慢心もなく、努力を重ねたようだ
竜宮小町のiuでのリベンジ後には
彼女たちのいいところを吸収してさらに進化している…
千早は…持つのだろうか…)
―――――数日前
リード「…ギデオン、久しぶりだね」
ギデオン「…リードか?いい髪型だな」
リード「…探し物は見つかった?」
ギデオン「……あぁ、見つかったようだ」
リード「実は、ホッチがfbiをやめさせられた件についてなんだけど…」
ギデオン「…ずいぶん唐突だな?」
(懐かしいな…リードと話すのも)
リード「調べたところ…fbiの権力争いに巻き込まれただけだったみたいなんだ」
ギデオン「…なるほどな」
リード「上の人間たちの仕業なんだけど…
だけど、そのさらに上の人たちは、ホッチの重要性を理解してる
今頃退職の取り消しが行われてるはずだよ
ホッチはたぶん、問題なくbauに復帰できる…」
ギデオン「だが、できれば復帰はしてほしくないか?」
リード「そう…だね。ギデオンもそうだけど…
あの仕事は本当に、いつ逃げ出しても誰にも責められないような仕事だよ」
ギデオン「………」
リード「今の職でも楽しそうにしてるホッチを見ちゃったら…とてもじゃないけど
戻ってこいなんて言えないよ…」
ギデオン「だが、それを決めるのはほかでもないホッチだ…一応は話すべきだろう」
リード「そう…だね」
―――――
ホッチ「ただ今戻りました…かなりいい仕事ができたと…
リード?まだいたのか?」
リード「うん。いまギデオンとショウギをやってて、あと少しで勝てそうなんだ」
ホッチ「…あと3手でお前の負けだよ」
リード「えっ」
ホッチ「で、なにか話が?」
リード「うん―――――」
―――――
リード「というわけで…たぶん来月には復帰できるよ」
ホッチ「なるほど…わかった。じゃあ授賞式が済み次第復帰する」
リード「…本当にいいの?ずっとここにいても誰も…」
ホッチ「…俺は、すべてをなげうって仕事に打ち込んできた…
愛していた妻でさえも結果的に捨てたんだ。今更引き返すことはできないよ」
リード「……そう」
ギデオン「……私も戻ろうか…」
リード「えっ?」
ギデオン「久しぶりにリードと仕事をしてみたくなった」
―――――
リード「じゃあ、僕は先にあっちに戻ってるよ」
ギデオン「じゃあ、また今度な」
ホッチ「……できる限り、すぐ行く」
リード「…じゃあ、みんなで待ってるよ」
―――――ある日 トーク番組の収録にて
ホッチ(歌の仕事ではないんだが…快く引き受けてくれた
……精神的に成長しつつあるな。老人ホームを回った効果はあったようだ)
千早「プロデューサー…トークって具体的にどんなことをすればいいんでしょう?」
ホッチ「大丈夫だ。流れに任せていけば何とかなる」
千早「…プロデューサーにしては無責任ですね」
ホッチ(だって流れ読むの得意だし…)
千早「まぁ、深く考えないでやってみます。
プロデューサーのこと信頼してますから。ふふっ、ではまたあとで」
ホッチ(………思ったほど私に依存はしていないようだな
今のも本心半分、冗談半分といったところか…)
ホッチ(やはり、普段との差がいい影響を与えているな…
クールな受け答えもなかなか客受けしているが、
話題によっては可愛らしい反応も見せる。
さっきの携帯電話のくだりも…)
司会『千早ちゃんはどんな携帯使ってるの?やっぱスマホ?』
千早『えっと…スマホ…?』
司会『今流行ってるスマートフォンって知らない?』
千早(名前からして…細いのかしら?)
ホッチ(あれは…スマートを『細い』ととらえたな…)
千早『い、いえ…私のは太いです』
司会『えっ』
千早『えっ…だから、私の携帯は太いです』
―――――
ホッチ(そのあとの笑いの渦と
スマートフォンが何かを説明された後の千早ときたら…かなり恥ずかしそうだったな)
「…千早ちゃんって面白いね?君がプロデューサー?」
ホッチ「あぁ、これはどうも…千早のプロデューサーのホッチナーです」
(そこそこ売れているアイドルのプロデューサーだったか)
p「いやー知らなかったよ…歌以外の仕事もできたなんて…」
ホッチ(…性犯罪者だな)
p「あのさ…俺って○×テレビのディレクターさんと仲良くてさー」
ホッチ(……性犯罪者だ…)
p「なぁー…千早ちゃん今晩俺に預けてくんない?そのかわり…」
ホッチ「いえ、お断りしておきます。千早は現在体調を崩していますので」
p「頼むって…優しくするからさー」
ホッチ「………」
p「つかさ、あんた立場分かってる?
俺がその気になればあんたなんてすぐ終わらせられるんだけど?」
ホッチ(親は有能で金持ち・・・それゆえ息子に期待をかけすぎたのか
親の期待に応えられず、その鬱憤を女性にぶつけているというわけか)
p「あのさー心を読めるとか噂になってるけどさーあんま調子のんなよ?
どうせ俺の靴下の色もわかんないんだからさー…」
ホッチ(これなんてデジャブ)」
ホッチ「…チャコール・ブラック」
p「あ?」
ホッチ「靴下の色はチャコール・ブラックだと言ったんだ」
p「………ちげーよ」
ホッチ「そうですか…しかし、優秀すぎるご両親というのも大変でしょう?
お子さんにはほどほどの期待をかけてあげてくださいね?」
p「なっ!?なんでそれを…」
ホッチ「……」
p「……くっそ…!お前、覚えてろよ?いい気になりやがって…!」
ホッチ(そろそろ千早が戻ってくるな…)
―――――千早の家
ホッチ「お疲れ様。来週はアカデミー前のフェスがあるから、ゆっくり休むといい」
千早「…あのプロデューサー…今日は泊まっていきませんか?
私…プロデューサと話がしたくて」
ホッチ(いい機会かも、知れないな…ちょうどやるべき仕事はないし…)
「…泊まっていくわけにはいかないが…少し、お邪魔しよう」
千早「ほ、本当ですか!?」
ホッチ(…依存ははないが…かなり好意を持たれてしまったな…
父性に飢えていると言えばそうなんだろうが…
その一言で彼女の気持ちを踏みにじるわけにもいかない)
ホッチ「…綺麗に整頓されているな…」
千早「そうですか?単に物がないだけなんですけど…」
ホッチ「…で、話をしたいと言っていたが…具体的にどんな話だ?」
千早「そうですね…プロデューサーのことが知りたいです」
ホッチ「私のこと?」
千早「たとえば、ご結婚はされているのか、とか」
ホッチ「…少し前まではな」
千早「…あ…っとすみません…」
ホッチ「…すみませんではすみません」
千早「…ぷっ…ふふっ…あの、まじめな顔で言わないでください」
ホッチ「大丈夫だ。私の自業自得で三行半を突き付けられただけだから」
千早「自業自得…ですか」
ホッチ「そう、その通り。だから千早は何も気にしなくていい」
千早「プロデューサー…あの…」
ホッチ「…千早。大事な話がある」
千早「えっ、は、はい!」
ホッチ「…私は、近いうち帰国することとなった」
千早「…えっ」
ホッチ「アイドルアカデミーまではこっちにいるし、
引き継ぎは765プロに任せているから問題はない…」
千早「……そう、ですか…そうですよね。
私には私の道があるし…プロデューサーにはプロデューサーの道がある…」
ホッチ(でも、)
千早「でも、」
ホッチ(納得なんてできるわけない、か)
千早「納得なんてできるわけないじゃないですか!
私は、あなたのことが好きなんです!ひとりの男性として!
いくら年が離れていたって、関係ありませんから!だから…!」
ホッチ「俺だって君を愛している…だが、君の感情とは全く違う
それに…君を一人の人間として愛し、尊敬しているからこそ…
君の足かせになるのはごめんなんだ」
千早「私の…足かせ、ですか」
ホッチ「俺はプロデューサーなどではない…
fbiの捜査官だったんだ…それも『行動分析課』
凶悪な犯罪者と最も接する機会の多い部署だ…
俺と一緒にいるならば、君は必ず危険な目に合う」
千早「そんなの、関係ありません!」
ホッチ「いや…大ありだ。
俺はこれからもずっと君に歌い続けてほしいからだ
俺が死ぬ時まで…ずっとだ」
千早「…!!」
ホッチ「…もし君が俺を愛してくれるなら…ずっと歌い続けてほしい
俺は必ずどこかで聴いているから」
千早「…そんなの、ずるいですよ…
でも…さすがはプロデューサーですね…
はっきり断られちゃったから…もう何の迷いも残ってません
未練は、あるかもしれませんが…」
千早「…プロデューサー…やっぱり今日は泊まっていってください」
ホッチ「………そうしよう」
千早「たくさん話しましょう?たくさん、たくさん…
私、プロデューサーのことずっと忘れずに歌い続けますから…
プロデューサーのこと、少しでも多く覚えていたいです」
ホッチ「あぁ…じゃあ赤ん坊のころの恥ずかしい話から話してやる…」
―――――
――――翌朝
千早「ん…ふぁ……もう…行っちゃったのか…」
ホッチナーより
今日から4日間はオフだ
しっかり体を休めるように
―――――フェス当日
ホッチ(……あれが黒井社長か)
黒井「?あぁ、貴様がgjとかいう弱小事務所のプロデューサーか
身の程も知らずにジュピターに挑むとはな
みろ、あのステージを…貴様のアイドルのいるステージの客は一切盛り上がって…
?な、なんだこれは…」
ホッチ(…全ステージが静まり返っているな…これは…
ステージ上のアイドル達までが聴き入っているな)
ずっと眠っていられたら
この悲しみを忘れられる…
ホッチ「千早の曲に…」
黒井「馬鹿な…レベルが違いすぎる…くそっ…高木の奴…」
ホッチ(彼は馬鹿というわけでもないらしい
プライドが異常に高いだけで、恐ろしく優秀だな…)
―――――
冬馬「…くっそ…悔しいが完敗だ…悪いな、みんな
さんざん一緒に練習に付き合ってもらったのに…」
翔太「いやー…あれはしょうがないでしょ…
むしろ負けてすがすがしい気分だよ
上には上がいるって、認識させられた…
これからもがんばっていこうね」
北斗「如月千早ちゃん…如月千早ちゃん…」ブツブツ
黒井「…私の力不足でもある…もう一年、チャンスをやる…精進しろ」
冬馬「…おっさん…」
―――――
ホッチ「…来たか」
千早「………」
ホッチ「大丈夫か?…薬はもらってきたから、飲むんだ…」
千早「…んっ…はっ…」
ホッチ(やはり全力で歌ったか…本当にもう限界だな…)
「明日のステージは、歌わなくても…」
千早「…いえっ……おうえんしてくださっ…た…ファンのみなさんっ…に…
もうしわけ…なっ…いですから…」
ホッチ(言いくるめるのは無理…かこのままでは…本当に歌えなくなってしまう…)
千早「…だいじょうぶ、ですよ…ぷろでゅーさー…きっと…」
ホッチ「…そうだな…君の体は、君に任せるしかない…
だが、無理だと判断したら悪いが止めさせてもらうよ」
千早 コクコク
ギデオン「……彼女は持つのか?」
ホッチ「…持たないかもしれません…
でも…私には、彼女は止められない…」
ギデオン「そうだな…彼女の意志の固さは折り紙つきだ」
ホッチ「………ですが、」
ギデオン「止める方法もあるのではないか、と?
無理だ。そんな方法があれば犯罪者なんか出ない」
ホッチ「……」
ギデオン「……もし、彼女が歌えなくなったらどう責任をとる?」
ホッチ「……彼女を引き取って、養子にします」
ギデオン(なに言ってんだこいつ。性犯罪者か?
エルを呼び戻さないと…)
ホッチ「ギデオン。冗談でもそんなこと考えないで下さい
撃ち殺されますから」
―――――翌日
部門賞
スノーホワイト賞受賞 如月千早
フォレストグリーン賞受賞 如月千早
フェニックスレッド賞受賞 如月千早
ブラックパール賞受賞 如月千早
オーシャンブルー賞受賞 如月千早
アイドルアカデミー大賞受賞―――――
―――――如月千早
千早「応援してくださったファンの皆様に深く感謝を申し上げます」
千早「では…聞いてください…新曲、『約束』」
ホッチ(…!?)
歩こう 果てない道
歌おう 天を超えて
想いが届くように
約束しよう 前を向くこと
涙拭いて
歩いて行こう 決めた道
歌って行こう
祈りを響かすように
そっと誓うよ 夢を叶える
君と仲間に
約束…
―――――
千早「……」
(もう…声が出ない…)
ホッチ「…千早。聞いてないぞ、新曲だなんて…
しかもあんなに長い曲を…!もう声が出ないんじゃないのか!?」
千早「……わたし、もっとうたいたかったです…ぷろでゅーさーに…
うた、きかせてあげたかった…
でも、もうむりってなんとなくわかったから…みんなでつくったきょく…うたいました
大好きな…アーロンさんに…捧げる曲…」
ホッチ「…千早…もう…しゃべるな…今から医者にいこう…」
千早 コク…
ホッチ(…クソ…やっぱり止めるべきだったのか…?
クソ…クソ…なにがfbiだ…何が…bauだ…彼女一人も救えないのに…!)
―――――結局…そのまま私たちは別々の道を歩むこととなった…
病院で目が覚めた私に彼は『すまない』と一言言って
私の額にキスをしたあと『さよなら』と言ってアメリカへ渡ってしまった
決心はとっくにできていたので特に悲しくはなかった
だけど、一言言わなくては気が済まない…
彼は私を頂点に導いてくれた
私に愛を教えてくれた、だから…
――――― 一年後 アメリカ
「謝るのはおかしいわ、プロデューサー」
「えっ」
…コーヒーショップでコーヒーを飲んでいた。
女性に声をかけられた。
そして私の読んでいた新聞には『世界的日本人歌手、復帰…そして渡米』と、
そう、書かれていた…
―――――完
乙
乙"乙♪
乙←これはポニーテールがどうたらこうたら
まさかの展開だなw w
楽しかった!乙!!
まさかのクリミナルマインドwwww
クリミナル・マインド男性陣になら掘られてもいいわ
ホッチって
男前
頭いい
強い(肉体的にも精神的にも)
抜群のリーダーシップ
仲間思い
ギャグセンス◎
何気に完璧だよな
ぼっちに見えた
>>110
私生活的に言えば
多分間違ってない……
>>109
リードのバブロケットに
「前より飛距離が伸びたな」
は不覚にも
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