スペースコブラ・ダークソウルクルセイダーズ (87)



古い時代。
世界はまだ分かたれず、霧に覆われ
灰色の岩と大樹と、朽ちぬ古竜ばかりがあった。

だが、いつかはじめの火がおこり
火と共に差異がもたらされた。

熱と冷たさと、生と死と、光と闇。

そして、闇より這い出た幾匹かが
光に寄る羽虫のように、偉大なるソウルを見出した。



最初の死者、ニト。
イザリスの魔女と、混沌の娘たち。
太陽の光の王グウィンと、彼の騎士たち。
そして、誰も知らぬ小人。



それらは王の力を得、古竜に戦いを挑んだ。


グウィンの雷が岩の鱗を貫き
魔女の炎は嵐となり
死の瘴気がニトによって解き放たれた。

そして、ウロコのない白竜、シースの裏切りにより、遂に古竜は敗れた。
火の時代の始まりだ。





だが、やがて火は消され、暗闇だけが残る。



今や、火はまさに消えかけ
人の世には届かず、夜ばかりが続き


人の中に、呪われたダークリングが現れ始めていた…








SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1444330506







コブラ「……………」





コブラ「……ダメだレディ。今回ばかりはお手上げだぜ」


レディ「あら、珍しいこともあったものね。いつもの貴方なら何とかなるさって言うところよ?」


コブラ「オレもそう思ってたよ。コイツを地球の美術館から盗み出す前まではな」


コブラ「実際この『古い時代の1節』については、てんで手詰まりさ」

コブラ「分かってるのはこの一文が地球で、しかも機械では計れない程の超古代に書かれたってコトと、人種や文化に関係無く、何故だか誰にでも読めるって事だけで、それ以外はサッパリだ」

コブラ「いつ、どこで、誰がなぜ書いたのか。何が記されているのか。そして何故この一文が記された金属板だけが、全く劣化せずに地球の地層奥深くに残っていたのか…」

コブラ「宇宙のありとあらゆる芸術品を知り尽くしたと思っていたんだが、そいつはとんだ自惚れだったみたいだ」

レディ「私はそうは思わないわ。 貴方に盗まれるものは、貴方の眼に適った物だけだもの」

コブラ「オレがコレに何かを感じたって?」

レディ「ええ。だから盗んだ。違うかしら?」


コブラ「いいやあ、違くないさ」

コブラ「ただ、こうまで人見知りされるのは初めてなんだ」フフッ

レディ「ようやく調子が出てきたみたいね。もうすぐ目的地よ」


草木一つ生えない不毛の地に、ところどころ穴が開いている。
その穴は全て深く大きいが、不毛の大地と同様に、暑い太陽に照らされても何があるわけでもない。
知識欲と発見欲に魅せられた者達がこの地を掘ったが、遂に一枚の金属片以外の発見がないまま、作業は惰性の中続けられている。

その不毛の地に、一隻の宇宙船が着陸した。
作業着に身を包んだ男は、宇宙船から降りてきた男に歩み寄り、握手を求めた。



コブラ「すみませんね。道が混んでたもので」

発掘責任者「いえいえ、よくぞ来てくれましたギリアン博士」

コブラ「ジョーで構わないですよ。こちらは私の助手のレディ。早速で悪いとは思いますが『古い時代の1節』が発掘された地点というのは?」

責任者「はい、こちらです。ついて来て下さい」



宇宙船から降りてきた男と女は、作業着姿の男との握手を終え、彼の後ろを付いて行く。



コブラ「話には聞いてましたが、遺跡というよりかは、まるで洞窟と言った風情ですね」

責任者「ええ。ここにあるどれもこれもが、長い年月の中で朽ちてしまっていましてね。意識的に見れば石畳や柱に見えない事もないような土塊や、ちょっとの風で崩れる灰の塊ばかりでして」

責任者「お偉い学者先生が例の金属板には計り知れない価値がある『かもしれない』と言い、更にはその金属板がもっと出てくる『かもしれない』らしいので、こうやって一応発掘作業は続けてますけどね…私のような者からしてみりゃとんだ赤字……おっと失礼。口が滑りましたな」

コブラ「いえ、お気持ちは分かりますよ。考古学なんてのは、言って見ればバクチみたいなものですからね。ハズレだって引くんですよ」

責任者「おお、話が分かる方で助かりますな!はっはっは!」



そうは言いつつも、コブラはあの金属板には何かがあると確信していた。
それが何なのか、形がしっかりと把握出来ていないため弱音こそ漏らしたが、見限ってはいない。



責任者「着きました。ここですよ。ここで例の金属板が見つかったんです」




期待


作業着姿の男がそう言って指差した場所には、黒々とした粘土状の窪みがあり、その窪みの中心には泥炭のような大きな板が敷いてあった。


責任者「この板……スキャンの結果、デカイ剣のような形をしていましたんで、我々は『剣』と呼んでいるんですが、その剣の刀身部分にはめ込まれるようにして、例の金属板があったんです。 まるで剣の一部のように」

コブラ「まさかとは思いますが、ここが鍛冶屋だったとでも?」

責任者「そうは思いませんが…なんにせよ、この有様じゃ用途の特定は不可能ですよ。触れば崩れる。太陽光並みの光であっという間に変質する。全くお手上げです」

コブラ「………いや、出来ることが全く無いってわけじゃ無いかもしれませんね」

責任者「え?」

コブラ「しばらく外に出てもらえませんかね?この調査には集中が必要でして」

責任者「!? そりゃ困りますよ!何かあったら…」

コブラ「お願いしますよ。それとも、私の代わりに宇宙考古学とその芸術史に長けた、専門的な調査ってものを貴方が代わりにやってくれるんですか?」

責任者「いえ…それは無理ですが…」

コブラ「だったらお願いしますよ」

責任者「は、はい…」


コブラの有無を言わさない物言いに、作業着姿の男はすごすごと退散した。
だが現場から離れたわけではなく、遠くからコブラとレディを見つめている。



コブラ「さーってと、ああは言ってはみたが、どうしたもんかねコレ」

レディ「考えてみれば何か思いつくかもしれないわよ?宇宙考古学と芸術が、貴方の味方になってくれるわ」

コブラ「それがなレディ、残念ながら散々考えたせいで、考古学も芸術も俺を見放しちまったらしい」

コブラ「今思い浮かぶのは、金星の美女達のスリーサイズ…」


コブラ「ん…まてよ」

レディ「どうしたのコブラ」

コブラ「触れただけで崩れるくらい、この剣とやらは脆い…」


サッ


コブラ「なのにこの金属板を剥がしたにも関わらず、この剣は形を保っている」

レディ「それは金属板?持ってきていたの?」

コブラ「念のためってヤツさ。とにかく、コイツとこの剣には、何か特別な関係があるように思える」

コブラ「なら、行き詰まってる以上、やる事は一つだ」

コブラ「まあ、何も起きないだろうが…」スッ…



カチッ…



コブラ「!」

レディ「はまったわ」

コブラ「ああ。しかもさっきの音から考えて、この剣は金属板を受け入れた瞬間にのみ、硬度をあげるらしい」

コブラ「……だが、何も起きない所を見ると、罠でも無い…」

責任者「ギリアン博士?一体何を…」

期待


ボッ…


レディ「あっ!」

コブラ (火が点いた!やはり罠かっ!)


ボボボッ…ボボ…


コブラ「………」

レディ「コブラ!何をしてるのっ!?手が焼けて…」

コブラ「いや…これは罠じゃない…この火には熱も煙も無い」

レディ「…じゃあ、これはホログラム?」

コブラ「そうとしか思えないが、こんな豆電球程度の明かりじゃ受験勉強も出来ないぜ」


責任者「ギリアン博士!その光は何なんですかっ!?」

コブラ「なに、ちょっと葉巻が吸いたくなってね」


ボウッ!


レディ「火が強くなったわっ!」

コブラ「あ、あら?」


ゴオオオッ!


コブラ「お、おいおい、確かに葉巻は吸いたかったがこりゃお節介だ…」

責任者「か、火事だ!おーい火事だーっ!誰か来てくれーっ!」タッタッタッ…

レディ「コブラ、本当に熱くないのっ?」

コブラ「ああ、熱くは…」


コブラ「いや…あっ!アチチッ!熱くなってきたっ!」


ゴワッ!!


コブラ「逃げろレディ!コイツはホログラムなんかじゃ…」



グ ワ ッ ! !









人間性を捧げよ

瞬間、小さな種火は大きな火の球となり、2人を飲み込む。
その炎の中で、実体を失くしたコブラに語りかけるものがあった。


「永らく待っていたぞ。稀なるソウルを持つ者よ」


コブラ「!」


「お前を待っていた」


コブラ「待っていたにしても歓迎が熱烈すぎるな」

コブラ「おたくにワープホールへ招待される覚えはないぜ」


「招待ではない。これは願いだ」


コブラ「願いならサンタにでもするんだな。オレの専門じゃない」


「それが通るのならば、そうも出来よう」

「だが、お前にしか出来ぬ」



炎の輝きが薄れていく。
コブラの実体が再び生を帯びはじめる。




コブラ「待ちなよ。人に願いを押し付けるんだ、せめて名前ぐらいは名乗ってもいいだろ?」

「火となった我が身に、もはや真名など無く、もはや語り名のみが遺される」



「我が名は薪の王」







「世界を救え!」
















炎はただそれのみを言い残し、消えた。
コブラは戻った感覚で辺りを見渡し、音を聴く。
足元には蛆が湧く石畳。周りは寒々しい石壁と鉄格子。
頭上から吹き込む風には雪が交じり、コブラの火照った体を冷やす。


レディ「コブラーっ!何処にいるのーっ!」

コブラ「ここだよレディ。牢屋の中だ」


ドグァーッ!!

コブラを見つけたレディは鉄格子を掴むと、力任せに引っ張って石壁ごと鉄格子を外した。

ドゴーッ!!

それと同時に、コブラは頭上から降ってきた干からびた死体を、サイコガンで蒸発させ、死体を蹴落とした騎士を驚かせた。

北の不死院か

上級騎士「なっ…!?」


レディ「どうしたのコブラ?」

コブラ「早速お出ましらしい。気をつけろレディ!」

レディ「分かったわ!」


ピシュッ カッ!


リストバンドからワイヤーフックを射出したコブラの照準は、騎士の足元に定められていた。
小型ウィンチが生む猛烈なパワーで引き上げられ、コブラは騎士に猛スピードで接近する。

サッ

そしてコブラは、接近と同時にサイコガンを放っていた。

ドウドウドウーッ!!
グ ワ ッ ! !

騎士「オオオーッ!」


3発のサイコエネルギーは騎士の足元の石積みを吹き飛ばし、剣と盾を弾き飛ばす。
騎士はもんどりを打って尻餅を着いたが、レディはその隙を見逃さなかった。

ササーッ!

上昇するコブラを追い越す程のスピードでかの女は駆け上がると…

ガキーッ!

プレートアーマー胸元がが捻れる程の力で、騎士の胸ぐらを掴み上げた。



騎士「まっ、待ってくれ!話を聞いてくれ!頼む!」ジタバタ

コブラ「そりゃ聞くだけ聞くさあ。なんで死体なんかを落としてきたのか、その訳を是非とも聞かせてほしいね」



コブラは葉巻をくわえると、ジッポライターで火を点けて、寒空に煙を吐いた。


コブラは「とりあえず中で話そうぜ。ここじゃ腹が冷える」

×プレートアーマー胸元がが捻れる程の力で、騎士の胸ぐらを掴み上げた。
○プレートアーマーの胸元が捻れる程の力で、騎士の胸ぐらを掴み上げた。

×コブラは「とりあえず中で話そうぜ。ここじゃ腹が冷える」
○コブラ「とりあえず中で話そうぜ。ここじゃ腹が冷える」
ミスが目立つな




レディ「……」ゴソ…

レディ「あったわ。確かにここの鍵のようね」

コブラ「やれやれ、鍵だけ落とそうとは思わなかったのか?」

騎士「すまない…」

コブラ「まあいいさ。オレもあんたを殺しかけた。これでおあいこにしよう」

コブラ「で、なんでオレを助けようとしたんだ?」

騎士「………話せば長くなるが、それでも聞いてくれるか?」

コブラ「分からない事は聞いて覚えろってママに言われてるんだ」ニッ

騎士「そうか…ありがとう…では聞いてくれ」


騎士「私の家の言い伝えに、不死の使命というものがある」

コブラ「不死の使命?」

騎士「そうだ。その使命を帯びた者には不死の印が現れ、この不死院から古い王達の住まう地への巡礼が定められる」

騎士「そして巡礼者となった不死は目覚ましの鐘を鳴らし、不死の使命を知る事になる…と」


コブラ「待ってくれ。不死ってのは、文字通りの不死身って事なのか?」

騎士「あ、ああ。不死に死は訪れない。死ぬ度に自分の全てを少しずつ失なっていくが、キミも私も消える事は出来ないんだ」

騎士「例え骨になり、灰になろうとも」


コブラ「………」


騎士「…まさかキミは、一度も死ぬ事なくここまで来たのか?」

コブラ「いや、そもそもオレは不死なんかじゃないんだ。不死身と呼ばれた事はあるがね」

騎士「驚いたな……まさか人の身のままこの地に来るなんて…一体どうやって…?」

コブラ「なあに、一眠りすれば直ぐだったよ」フフッ…



コブラ「それより、こりゃやるしかなさそうだな…」

騎士「やる…不死の使命を、キミが?」

コブラ「決まってるだろ」



コブラ「オレ自身、自分を不死身だと思ってるからな」












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コブラのリストバンド

さりげなく着用しているように見えるが実は多機能。
ライトが点いたり、ワイヤーが伸びて引っ掛けたり、
回転するカッターが収納されていたり、GPSや通信に使えたり。

もっとも活躍するのは爆弾などに反応する探知機であり、
様々な機能でコブラをサポートする。
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バキィ!


亡者「グエエーッ」ドターッ


コブラ「ふう…まるでB級ホラーだなこりゃ。不死というからどんなものかと思えば、これじゃゾンビだぜ」ガスッ!

騎士「 さっきからキミは何を言っているんだ?」ズバッ!

コブラ「別にい何も~?」ボグッ!

レディ「コブラ、この扉の向こうから音がするわ。何かの唸り声みたい」



グルルルル~ッ グルルルル~ッ



コブラ「開けてビックリ玉手箱って事か。そんな上品じゃなさそうだが」

騎士「………」

コブラ「レディ、準備はいいか?」

レディ「いつでもOKよ」

コブラ「じゃあ、あんたはどうなんだ?」

騎士「そうだな…少し怯えているよ」

コブラ「よし、じゃあ一二の三で扉を蹴破るぞ」


コブラ「1…」

騎士「………」

コブラ「2…」

レディ「………」

コブラ「3!!」ドガーッ!



グワォーッ!



不死院のデーモン「グアアアアアアアアアアア!!」


コブラ「あらら…」

騎士「一撃!?」


ドズーン……サアアァァァ…


レディ「死体が消えていくわ…」

コブラ「思った以上のバケモノだったな。一撃で倒せてなかったらと思うとゾッとするよ」

騎士「信じられない…あのデーモンが一撃で…」

コブラ「デーモン?」

騎士「この怪物の事だ…地の底から湧き出し、命ある者を襲い、ソウルを奪う者達…」

騎士「そのほとんどは人の手には負えぬ強さ…で、あったはずなんだが……」

コブラ「その人ってのが、サイコガンを構えたオレだったって事が、コイツの不幸だな」


コブラ「………」フラッ

レディ「コブラ?」

コブラ「…さあ、早いとここんな場所からはオサラバしようぜ」

ガコン…



コブラ「あたり一面雪景色で、おまけに断崖絶壁か……いよいよ異世界探訪の始まりか」

コブラ「…へっ…ヘーックショイッ!にしても、 この寒さってヤツには参ったね…」ズズッ

レディ「貴方が風邪?今日は珍しい事の連続ね」

コブラ「金属板とにらめっこしてるうちにインドア派にでもなったかな?」



騎士「この先の崖に立てば、王達の地に行ける」

コブラ「…不死の使命の始まりだな」

騎士「ああ。言い伝えが正しいのなら、そのはずだ」

騎士「そして、その崖に立てる者は、選ばれた者だけだ」

騎士「それには恐らく…認めたくないが、私は含まれないのだろうな」

コブラ「行かないつもりなのか?」

騎士「行かないのではなく、行けないんだ……私では、使命を見つける事も出来ない…」

騎士「キミに道を譲ろう」

コブラ「………」


恐らくは貴族階級にあったであろう騎士は、不死院を出てすぐの瓦礫に腰を降ろした。
デーモンと神々が跋扈する地に脚を踏み入れるには、力が全く至らない。
そう判断し、彼は苦渋の選択を受け入れた。
コブラはレディを連れて崖の際に立ち、そんな失意の中にある騎士に語りかける。


コブラ「そういやあ、あんたの名前を聞いてなかったな」

騎士「……オスカーだ」

コブラ「オスカーか…」


遥か遠くから、風を切る音が響く。
突風とも、鳥の羽ばたきとも取れる音が。


コブラ「オスカー。使命は授けられる物じゃない」

コブラ「使命ってのは、こっちから迎え撃つ物じゃないのかい?」

オスカー「………」

コブラ「授けられるのを待ってたんじゃ、それは使命なんかじゃないのさ」

バ サ ッ !

オスカー「!」



騎士へと振り向いたコブラとレディを、瞬間、巨大な鴉が連れ去った。



オスカー「…コブラ……」




こうして、不死院からまた2人の巡礼者が現れ
かの者らは、かの地へと向かう。

古き王達の地…


ロードランへと…




見てるぞ

ヒュォォ…






バサバサッ! ドサーッ!


コブラ「イッテテテ……ファーストクラスにしときゃ良かったかな」スリスリ

レディ「あそこに止まっている鳥が私達を運んできた鴉のようね。次の巡礼者を待ってるのかしら?」

コブラ「なんにしても、ここの飛行機じゃ割引は効きそうにないな」


「お、おい…なんなんだよ、あんたら…」

コブラ「ん~?」


心折れた戦士「………」


コブラ「おおっとぉ…」



身体に付いた土埃を落とすコブラの前に
鎖かたびらを着、帯刀をした男が、剣の鞘に手を掛けていた。
男の視線は二人に、特にレディに対して不信感を抱いているようで、それを隠そうともしていない。


コブラ「あ~…おたくの言いたいことも分かるが、その前にちょっと冷静に…」

心折れた戦士「なんなんだって聞いてんだ!」

コブラ「別の世界から来た宇宙海賊……なあんて言っても、信じる気にならないだろ?」

心折れた戦士「???」

コブラ「あー、まあ、分からないからこそ幸せって事で忘れてくれ」

コブラ「それよりあんた、ここいらに目覚ましの鐘ってヤツがあるらしいんだが、何処にあるか知らないかい?」

心折れた戦士「…それなら、こっから上に登って行けば、見つかるだろうけど…」

コブラ「ありがとよ」クルッ


タッタッタッ…


心折れた戦士「お…おい!何処に行くんだ!」

コブラ「賛美歌を歌いに行くのさ!」

心折れた戦士「さん、なに?」



心折れた戦士「………行っちまいやがった」

心折れた戦士「なんだったんだ?あいつら」

ダクソスレとは珍しいな、しかもコブラとかどんな組み合わせだよwww期待。

言い回しがコブラらしい

期待

ヒュー!


亡者達「ウオオォ…」


コブラ「ひーふーみー……こいつは素手でやるにはキツそうだな」

レディ「余計な心配じゃなくって?貴方にはサイコガンがあるのよ?」

コブラ「それなんだが、あの雪山から何となく気だるいんだ。本当にインドア派になったのかもなあ」

レディ「サイコガンの調子が悪いのね…タートル号があれば調整も出来るのだけれど」

コブラ「ま、なんとかなるさ」


ダッ


亡者「!!」

ガッ!


岩陰から飛び出したコブラは、反応の遅れた亡者から直剣を跳ね飛ばし、殴り倒すと、もう一人の亡者を倒すべく走る。
しかし、投げつけられた何かによって、進路を炎に阻まれる。

コブラ「爆弾…いや、火炎瓶か」

コブラ「レディ!上の不死を…」

レディ「任せて!」ヒュッ!

だが、コブラに向けて火炎壺を投げた亡者は、レディの投げた直剣を受けて事切れていた。


コブラ「さすがだなレディ!」

レディ「当たり前よ。いつから貴方の相棒をしてると思ってるの?」


投擲を受けた亡者に反応して、他の亡者達がコブラの存在を察知し、盾を構えはじめる。
コブラとレディはその中へ突貫していった。

亡者達を倒し、汚水路を抜けた2人は、更に襲いくる亡者達の群れを切り抜ける。
その途中でコブラは使えそうな剣を亡者から奪い取り、盾として使えそうな木の板も手に入れていた。
しかし、調子よく事が運ぶなど、コブラは考えもしない。
そして実際に、拍子よく事は運ばなかった。


ドドドドーッ!!


コブラ「おお!?」

レディ「こ、これは…!」


前触れなく降ってきた巨大な『赤い塊』には、大きな翼と爪があり、槍のような鱗があった。
胴体から伸びる尾は長くしなやかで、剣のような鋭さを持っている。


コブラ「悪魔の次はドラゴンか…」

コブラ「だが生憎、オレは天使役にはならないぜ!」



飛竜ヘルカイト「ゴオオオォォォ…」



レディ「竜の口がっ!」

コブラ「花火を撃つ気だ!潜り込めっ!!」

ド オ ッ ! !


大きく開かれた竜の口から、灼熱の炎が噴き出された。
コブラに討たれた亡者達の亡骸はその炎に焼かれ、瞬時に塵とかす。
しかし、竜は肝心の獲物を取り逃がし、懐を晒してしまった。

ガキィン!

だが、股下に潜り込んだコブラが腹に突き立てた剣は、硬い鱗に阻まれて折れた。
レディも拳を突き上げはしたが、やはり、鱗を貫くには至らない。


レディ「逃げるのよ!ここは危険だわ!」


グワッ…


腹部に生じた違和感に苛ついた竜は、大きく足を上げるが、既にコブラはワイヤーフックを民家の屋根に打ち込んでいる。

ド ゴ ン !

竜の足元から土埃が上がるのと、コブラとレディが屋根に着地するのは、ほとんど同時だった。



コブラ「なんて野郎だ。何食えばあんなに腹が硬くなるんだ?」

レディ「今回は逃げてみてもいいんじゃない?」

コブラ「いやあ、まだ手はあるさ。相手が竜なら、こっちも竜の気持ちになればいい」

レディ「えっ?」

コブラ「レディ!オレがあいつに躾をしてやる間、屋根の裏に隠れていてくれ!」

レディ「何をする気なのっ?」

コブラ「虫歯にしてやるのさ!」ニッ

レディ「?」


コブラはなにかを確信したように、不敵な笑みを浮かべると…


レディ「!? コブラーッ!?」


竜の首筋にワイヤーを引っ掛けて、棘状の鱗に飛びついた。

ヘルカイト「ギャアアアアアアアアアアアアア!!」

コブラ「カーッ!キンキンわめくんじゃねえや!口うるさいと女にモテないよぉ!」

犬が纏わりついてくる虫を振り払うように、竜は身体を捻ったり、声を張り上げるなどをして抵抗する。
コブラは右手で耳を塞いで苦い顔をしつつ、しかし両足でしっかりと鱗にしがみついており、左手のリストバンドはワイヤーを巻き戻していた。

バサァッ! バサァッ!

翼が起こす風は民家の瓦を吹き飛ばし、朽ちたドアや窓を割る。
しかし、足場を激しく揺すられる以外に、コブラにはなんの被害も無い。

コブラ「それーっ!」 ピシィ!

ヘルカイト「ギャウッ!」

それゆえに、再び放つワイヤーフックで竜の弱みを握る事も、容易かった。




ズ ズ ー ン …





コブラ「レディ、ゲームセットだ」



レディはコブラの合図を聞き、屋根の裏から身を乗り出す。

レディ「やったのね、コブラ!」

コブラ「ああ。」




コブラの放ったフックは竜の首に巻きつき、下顎の裏にある弱点に引っかかっている。
その部分を強く引っ張られているため、竜は火を吹く事も出来ず、痛みに身を丸めるばかり。

ヘルカイト「………」

コブラ「まさかと思ってやってみたが、こんなに大人しくなるとは思わなかったぜ」ギュウ…

ヘルカイト「!!」フルフル…

レディ「凄いわね……貴方、魔法は苦手じゃなかったかしら?」

コブラ「魔法だなんてとんでもない。オレは虫歯に爪楊枝を突っ込んだだけさ」

コブラ「竜には必ず弱点がある。酒だの美女だの宝石だのなんかより、よっぽど即効性があって確実な物だ」


コブラ「逆鱗だよ」


レディ「逆鱗…」

コブラ「地球の文明に古代から伝わってる伝説によれば、ドラゴンってのは逆鱗に触れられるだけで顔を真っ赤にして襲いかかってくるんだ。そこを刺して引っ張ってやれば、さぞかし堪えるだろう」

コブラ「まあ虫歯にしちゃあ、ちょっと度が過ぎてるが。へへ…」

レディ「でも、何故この竜に逆鱗があるなんて分かったの?」

コブラ「コイツの下を潜る時に、バッチリと」



コブラ「さてと、今度の飛行機の乗り心地はどうかな?」

レディ「チケットが無いのだけれどいいかしら?」

コブラ「構いませんよ、お姫様」



バサァッ! バサァッ!


コブラ「うおっとぉ!」

コブラ「少し荒っぽいが、まあイケるかあ」

コブラ「これでエイトビートのロックでも聞ければもっとマシ…」

ヘルカイト「ギャアアアアアアア!!」

コブラ「……なんだが、これじゃ期待できそうもないか…」



レディ「この子で鐘を鳴らしに行くのね?」

コブラ「それが出来りゃあ良いんだが、この分だと鐘を焼きそうだぜ」

コブラ「さてと、それじゃあ発進しますかあ!」グン!


ブ ワ ァ ッ ! !




コブラ「イヤッホォーーーイ!!」










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コブラのブーツ

コブラの強力な足腰に合わせて作られた特製のブーツ。

踵には強力なスクリューが仕込まれており、水中での移動に使用できる。
また、コブラは多くの場合、パイソン77マグナムをここに隠している。
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コブラらしくていいわ。絵が浮かぶ



太陽。


あるものは、それを神の力の象徴とも言い、あるものは、それそのものが神であるとも言う。
だが、それらの説にも、遥か昔には答えがあった。
太陽は火であるが、世界を支える火は別のところにあると。
その火に神々は惹かれ、その相克に人は惹かれるのだと。

しかしこの地に来た一人の男は、この地に来る多くの不死とは違い、火にも、その相克にも惹かれなかった。
彼の求めるもの、それは『偉大さ』だったからである。



太陽の戦士ソラール「………」



太陽の戦士ソラールは、考えに耽っていた。
鐘を鳴らし、偉大なる使命を帯びるためにこの地に来たまでは良かったが、
長く広い石橋を前にして、彼は立ち往生をしてしまっていた。


ソラール(あの橋から飛竜が去ってから、時間は経ったが…)

ソラール(再び俺が橋を渡ろうとすれば、竜はまた現れて、橋の上を焼き尽くすだろう)

ソラール(まあ橋を焼かれる前に渡り切れればいいのだが…脚には自信がないからなぁ…)

ソラール「………」


ソラール「……いや、ここはやるしかないだろう」

ソラール「我が偉大なる太陽よ。どうかご加護を!」シャリィーン!



覚悟を決め、太陽の戦士は自慢の剣を抜いた。
そして盾を構えて、橋の上に一歩踏み入る。

バサァッ!

その直後に、彼の頭上を巨大な影が飛び越えていった。


ソラール「もう来たのか!やはり走り抜けるしか…」

ソラール「…いや、あれはなんだ…?」


だがその巨大な影は、前に彼が見た影とは違い、奇妙なものを幾つかくっつけていた。


コブラ「あれだレディ!鐘だ!」


それは、風を切る飛竜の背に乗る、
全身赤ずくめの男と…



レディ「教会のようね。でもあそこまでたどり着けるかしら?」

コブラ「コイツに喘息の気でもあるんなら無理だろうが、喘息なら火なんて吹けないはずさ!」



その男の後ろに座って、
男の腰に手を回している、重鎧を着込んだ女と…



牛頭のデーモン「ムオオオオオオオオオオオオオ!!」



飛竜の脚にしがみついて、宙ぶらりんとなっている巨大なデーモンだった。
ソラールは咄嗟に脚を止めたが、数瞬考えた後に、
眼前にある光景に湧いた疑問を一旦棚に上げて、橋を渡ることに専念した。

ソラール「………」

進んでは退いてを繰り返させた大橋も、渡ってみれば呆気ないものと、彼は思った。

哀れなり牛頭ww

牛頭ってどんなデーモンだっけ?
犬のデーモンだっけ?

>>31
ロードラン入って最初のデーモン
リンチ切り抜けた先の塔の上の橋に出てくるアレ

ブワッ! ブワッ!

レディ「高度が下がってるわ。やっぱりくっついてきたみたいね彼」

コブラ「やれやれ大したジャンプ力だね。ドラゴンの脚に飛びつくあたり、趣味の方はちょっとイケないな」

レディ「またそんな事言って。どうするの?」

コブラ「乗捨てってのも手かな?」

牛頭「ブモオオオ!」ガリ!

ヘルカイト「ギャアアアアアアアアアアアアア!!」バサバサッ!

コブラ「おっ!?」


牛の頭と屈強な体躯を持つデーモンにとって、コブラとレディは魅力的な糧に見える。
この辺りの不死は絞り尽くし、新たな巡礼者も絶えて久しい今、
一度も死んでいない者の『ソウル』と、それに含まれぬ『何か』を、デーモンは渇望していた。
普段は決して挑まない飛竜の脚にしがみつき、牙をめり込ませるほどに。


バジィン!


飛竜が高度を下げ続け、デーモンの足が石畳に着く寸前、デーモンの背中に雷が突き刺さった。
その雷は、橋を渡りきった先の建物の入り口付近から発射されていたが、
コブラもレディも、飛竜の体勢の維持に気を取られており、発射の瞬間を見逃していた。


レディ「今の音…まさか、レーザーガン!?」

コブラ「レーザーガンだってえ?しっかりしてくれよレディ。そんなものどこにあるって…」

バジィン!

コブラ「!」


コブラ(いや…確かにレーザーガンの着弾音に聞こえる…!)

コブラ(しかもそれなりに強力な出力だ。しかしこんな世界でそんな代物をぶっ放すヤツが、オレ以外にいるとは思えない)

コブラ(そうすると…)

期待


理解しがたい光景にソラールは初めこそ怯んだものの、彼の正義感と人の良さが、怯みを打ち消した。

正体の分からない男女が、いかにして凶暴な飛竜を手懐けたのかは、彼には分からない。
二人が良いものなのか、それとも悪しきものなのかも、彼は知りようもない。
ただ太陽の戦士の目には、彼らが危機の中にあるという事だけが映っていた。


バジィン!


牛頭「グモオオオオオオオ!!」


牛頭のデーモンを、またしても雷が貫く。
デーモンは断末魔の叫びを一声上げると、飛竜の脚から手を離し、橋に墜落したが…

ボファアア!

石畳に激突する瞬間に、霞のようになって消えた。


コブラ「!」


それと全く同時に、コブラは何かを感じた。












ヘルカイト「グギャアアアアアアアアアアアアア!!!」

レディ「!」

牛頭のデーモンが消えた事により飛竜は浮力を取り戻したが、
デーモンを振り落とすために力を込めた翼が、過剰な推進力を作り出してしまっていた為に、
飛竜は空へ向かって垂直に飛び上がった後に、バランスを崩して背中から石橋に堕ちた。

レディ「あうっ!」ザザッ!

コブラとレディも空中に投げ出され、飛竜に押し潰されはしなかったものの、やはり墜落は免れず、
橋の終わりの左右両側にある出っ張りに、落とされてしまった。


コブラ「クソッ…油断したぜ…」

レディ「ワイヤーが外れたのね…」


背中から落ちたコブラは、レディに肩を支えらつつ、悪態をついて起き上がる。
しかしその悪態とは反して、彼の身体は再び軽快さを取り戻しており、気だるさも消えていた。
背中の痛みも既に無い。


コブラ(今のは一体なんだったんだ?……まるで夢から醒めたみたいだったが…)

レディ「コブラ、見て!」


自分に何が起きたのか、彼は一瞬考えたが、相棒に呼ばれて気を持ち直し、
彼女が目線を送る場所を、目で追った。
そして思いもよらない光景に出くわし、驚いたが、しかし彼の中で何かに合点が入った。


コブラ「フフッ…なるほどそういう事か」

コブラ「たしかに、プラズマではあったかな」




コブラの眼前には、巨大な竜と、それと対峙する『雷を持った男』が居た。



縛から解かれた飛竜は怒り狂い、猛っていた。
己を捕らえて痛みを負わせた者を焼き、ソウルを食らう事だけが、怪物の目的となっていた。


ヘルカイト「グギャアアアアアアアアアアアアア!!!」


だが、かの竜達の『出来損ない』としてこの世に生を受けた者には、知恵など無く、
ただ目の前の戦士にのみ、敵意を向けていた。


ゴワァ…


真っ黒に開かれた飛竜の口内から、熱がせり上がる瞬間、ソラールは雷を投擲する。


バジィン!

ヘルカイト「ギャウウウッ!」


放たれた雷は飛竜の右目を射抜き、黒煙と共に眼球を焦がした。
しかし飛竜は倒れず、頭を大きく振って痛みを紛らわせる。
ソラールは二投目を行う為に、掌にあるタリスマンに祈りを込める。


バッ!


ソラール「!!」


そしてソラールの手に雷の槍が現れはじめた時、
飛竜は予想を超えた速さで、ソラールに照準を向け…



ド ゴ ー ー ッ ! !




山と積まれた火薬が炸裂するような音を立てて、その鱗が密集した背中を爆発させた。


ソラール「おおっ!?」


おびただしい量の鱗を撒き散らしながら、飛竜は崩れ落ちる。
口からは火柱ではなく火の粉を散らせ、全身から黒煙を上げながら、竜の残骸は徐々に形を霞ませていく。

やがて霞が晴れる頃、太陽の戦士の視界に、
跪いた男と、その男を支える鎧姿の女が入った。


コブラ「よお…ちょっとタバコくれないか…?」ゼェゼェ…

ソラール「………タバコ?…」



顔色の悪い男はそう言うと、力なくニヤリと笑ったが…


スッ…


急に演技をやめた役者のように、みるみる元気になって立ち上がり、頭を掻いた。



コブラ「なんだぁ?急によくなっちまった」ポリポリ…

レディ「…なんか、だんだん貴方が仮病を使ってるように思えてきたわ」

コブラ「よせよぉ、そんな目で見ないでくれ。オレにもサッパリ分からないんだ」


コブラ「それにしてもアンタ、危なかったな。もう少しでバーベキューになるところだったぜ?」

ソラール「ん……あ、ああ…そうだが…」


奇抜としか言いようの無い格好をした男に無闇に話しかけられ、ソラールはまたしても困惑した。

違和感がないな

凄い面白い


レディ「あそこの建物の中に焚き火があるわ。少し休憩しましょう?」

コブラ「そうだな。さっきからオレも働き過ぎのせいか青くなったり赤くなったりで、少し休暇が欲しかったんだ」

コブラ「アンタはどうだい?」

ソラール「う、うむ。俺もあの篝火が目的だったんだ」

コブラ「そうかい。なんなら世間話の一つでも聞かせてくれると有り難いね」




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コブラのベルト

コブラが身につけている特製のベルト。

バックルにはカード状の物を収納するケース、カメラ、
着脱式双眼鏡といった機能が仕込まれている。
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パチパチ……



コブラ(不思議な炎だ……当たっているだけで心身の疲労が消えていく…)

コブラ(燃え方もおかしい……ただの炎じゃないってことか)

コブラ(…まさか、あの時オレたちを飲み込んだ炎ってのも、もしかすると…)

ソラール「温かいだろう」

コブラ「ん? 」

ソラール「この火は良い……俺のような不死ですら、太陽のように包んでくれる」

コブラ「………」



コブラ「そうかい、アンタは不死だったのか」

ソラール「……その口振りでは、まるで貴公は不死ではないような言いようだが」

コブラ「そういうおたくこそ現地人には見えなかったぜ。手からプラズマ砲を撃つなんて、未来人にしか出来ないはずだからな」

コブラ「ま、そのアテも外れちまったよ」

ソラール「………さっきからなんの話をしているんだ?ぷらずまとはなんだ?ばーべきゅうとは?」

コブラ「あー…アンタにとっては、遠い未来の話さ」

コブラ「…いや、そもそもここが過去なのか、それともどっか別の次元なのかってのも、オレたちには分からんがね」

ソラール「………そうか、貴公らも別の世界から来たのか」

コブラ「意外だなぁ。もっと驚くと思ってたが、案外話が通じるじゃないか」

ソラール「この地においてはさほど不思議でもない。このロードランには正しい時間などは存在しないからな」

コブラ「時間が存在しない?」

ソラール「ああ」


ソラール「この地の時間はすぐにズレていく。100年以上前の伝説が目の前に現れたかと思えば、見たこともない、貴公のような未来の者が姿を見せる事もある」


コブラ「………」


ソラール「なんといったら良いか……あらゆる時間や物事が、この地を中心に混然一体となってると言えば良いか……とにかく、俺と貴公が存在している世界が、いつまで繋がっているかも分からないんだ」


コブラ「ちょっと待ってくれ。じゃあ仮に俺達とアンタの世界が切れたら、俺達は元の世界に帰れるって事か?」

ソラール「帰れる。帰れはするが、そこは貴公が望む世界ではないだろうな」

コブラ「なに?」


ソラール「鴉に落とされた場所に、騎士が一人座っているだろう」

ソラール「彼は不死の使命を果たして自由になると言っていたが、飛竜や骸、仮面を被った恐ろしい闇霊などに阻まれて、希望を失ってしまった」

ソラール「だからなんだろうが、彼は使命を果たす事より、このロードランから抜け出す術を探し続けた」

ソラール「俺も力を貸した。助けになりたくてな」

ソラール「だが……」







戦士「お、おお…見ろ…俺の体が透けていく…」

戦士「どうなってるんだ…?」

ソラール「見当もつかない…痛みはあるか?」

戦士「いや、痛くはない……だが、どこか懐かしい感じがするんだ…」

戦士「俺は今度こそ帰れるのか…?」



試せる事を全て試した後に、彼はしばらく項垂れていたんだが、その彼に異変が起きたんだ。
今思えば、アレはただ彼と俺の世界が再び離れ始めただけだったのだが、
あの時の俺は、そんな事思いもしなかった。



戦士「見える…今見えてる景色に、別の景色が重なってる…」

戦士「あれは……俺の…」

ソラール「なんだ!何が見えるんだ!」

戦士「あれは俺の……俺の家…」



彼が何を見たのか、俺には想像しか出来なかったが、
彼が消える瞬間に言い残した言葉を聞いて、安心したよ。
少し寂しい気もしたが、彼は故郷に帰る事が出来たんだと思うと、その寂しさも消えた。

だが、彼は故郷には帰れなかった。



仮面を被った闇霊…あんな重装備着込んでるのに軽快にバク転や側転前転を繰り替えしビリビリするレイピアでケツを掘ってくるんだからそりゃあ絶望もするよな……

1

俺は、鐘を鳴らしにまた不死街に入った。
街の中は相変わらず亡者だらけだったが、あいつらを倒すのにも、もう慣れていたな。

ソラール「……?」

しかし、いつもと同じ景色の中にあって、一つだけ変化した物を見つけた。
開けたはずのない扉が開いていた程度のものだったが、用心するに越した事はないからな。
俺は剣を構えながら、足音を立てないように、民家に入った。


戦士「………」


そこには血塗れになった彼が立っていた。
棚や机は叩き壊され、壺は割られ、床で蠢く亡者は滅多刺しにされていた。
俺に背を向けて立っていたから、彼の顔は分からなかったが、
彼に何が起こったのかは、鈍い俺にも分かったよ。


ソラール「………」


俺は何も話しかけられなかった。
彼も何も話さずその家から出て、去って行った。
俺とは目も合わさずにな。




ソラール「あれ以来、彼はあそこに座ったまま、何もしようとしない」

ソラール「使命を見出し、それを果たさぬ限り、何をしようとロードランからは出られない………仮に他者の時の流れから抜け出しても、抜け出した先にある自分の世界はこの地のみだと、悟ってしまったんだ」

ソラール「この地にある偉大な力……その力がここに来る者達を縛り付ける。彼はそれに屈してしまい、今や俺の言葉には返事もしない」


コブラ「………」


ソラール「貴公らは、見るからにロードランでも俺の居た『人の世界』でもない、どこか別の世界から来たと見えるが、ここでは甘い希望は捨てた方がいい」

ソラール「ここで出来ることは、諦めて亡者になるか使命を果たすか、それだけしかないんだ」

コブラ「ふーん」

ソラール「………」


ソラール「ニヤつかないで真面目に聞いてくれ。不死ではない貴公にとっては…」

コブラ「ああ、スマンね。どうもこういうのには慣れっこなんでな」

ソラール「なに?」

コブラ「体に時限爆弾を仕掛けられるよりは気楽な話さ。なぁレディ?」

レディ「そうね。確かにいつも通りだわ。にやけ顏でそんな事言えるのは、貴方ぐらいなものって所もね」

ソラール「………そちらの騎士殿に聞きたいのだが、じげんばくだんとは一体…?」

レディ「いつ爆発するかを予め決めておく事ができる爆弾よ。簡単に言えば、導火線のついた火炎瓶の高級品ってところかしら」

ソラール「…うむ……」



コブラ「………」スッ パッパッ


レディ「どうしたの?」

コブラ「どうって、ズボンの埃を落としてるのさ。いつまでもここでアウトドアをしてる訳にもいかないだろ?」

レディ「それもそうね。行きましょう」

コブラ「アンタはどうする?一緒に来るか?」

ソラール「? いいのか?」

コブラ「よかなきゃ誘わないよ。こっちとしても戦力が欲しいからな。もっとも、来ないってんならそれもいいさ」

ソラール「いや、俺と貴公らの世界が重なったのも何かの縁だ。是非とも同行させてくれ」

コブラ「決まりだな。レディもいいだろ?」

レディ「ええ、OKよ」


ゴゴゴゴゴ… ガコォン



コブラ「レバーで開く城門が動くって事は、この先にも間違いなく何かいるな」

ソラール「それはどういう意味だ?」

コブラ「気付かないのか?錆まみれな城門にしては動きが滑らか過ぎる。最近まで誰かが整備していた証だ」

亡者戦士「グォア!」ブン

コブラ「おっと危ない」ヒョイッ

ソラール「ふん!」


ドカッ! ドシャアッ…


コブラ「ヒュウ……盾ごと叩っ斬るとは恐れいったな。今更だが、アンタ何者なんだ?」

ソラール「名はソラールと言う。太陽の戦士だ。太陽を信奉し、偉大なものを目指す者」

コブラ「ソラールか……古代スペイン語で太陽に依るという意味だ。アンタにピッタリだぜ」

ソラール(すぺいん語?)

コブラ「紹介が遅れたが、俺はコブラだ。彼女はレディ」

レディ「よろしくお願いね」スッ

ソラール「む、こちらこそ」ギュッ…



ソラール(なんと滑らかな手なんだ……これが手甲をつけた者の手だというのか?)

ソラール(それに鎧もやけに身体を浮き立たせて……いや、密着しているのか?瞳もまるで真珠のようだ)

ソラール(……大沼という地に住まう者が、呪術を用いて身体を鉄に変える術を編み出したと聞くが…この者らはもしや呪術師なのか?)

ソラール(そう考えれば、竜を焼いた巨大な爆発にも納得がいくが…)



コブラ「ん?」

レディ「分かれ道ね。どうするの?」

コブラ「空から見た限りじゃこのまま進んでも問題無いが、手ぶらで行くのも手元が寂しい。どこかでお土産でも買いたいなぁ。とびきりイカした剣とかね」

レディ「右に行くのはやめておいた方がいいと思うわ。なんだか嫌な臭いがするもの。もしかすると下水に繋がっているのかも…」

ソラール「いや、待て。この先を見てくれ」

レディ「?」



アーマードタスク「………」フーッ フーッ



レディ「サイボーグ!?なぜこんな所に!?」

ソラール「さい…なんだ?」

コブラ「おいおい勘弁してくれ……悪魔とドラゴンとミノタウロスと来たのにここでサイボーグはないだろ。いろいろ台無しじゃないか。しかもあの体格を見るに、やっこさんは相当に高出力だ。アイドリングもふかして準備も万端らしいぜ」

レディ「サイコガンで倒せないかしら?」

コブラ「倒せるだろうが後に続かないだろう。一発撃ってヘトヘトになってる所に、あいつらに撃たれておやすみしちまう」


弩兵亡者「………」


ソラール「狙撃兵……」

レディ「貴方の雷ではどう?」

ソラール「恐らく厳しいだろうな……破壊力はあるが練るのに手間取るから、先ほどコブラ殿の言ったような事になるだけ…」

コブラ「ソラール!レディ!後ろだ!」

レディ「えっ?」


ガッキィーーン!






ソラール「うおおおっ…!」ギリギリ…

黒騎士「………」ギリギリ…


3人の背後に忍び寄っていた黒い巨躯の騎士は、自身の身の丈ほどもある巨剣を振り下ろしたが、その剣はソラールの円盾に受け止められていた。
しかし、屈強な太陽の戦士に膝をつかせるほど、黒い騎士の巨剣は重く、その威力がソラールから体力を根こそぎ奪ってしまった。

ドガシャッ!

そして間髪を入れない黒騎士の剣勢は、ソラールを盾ごと吹き飛ばし、石壁に叩きつける。
コブラは黒騎士の側から飛び退くと、ブーツからマグナムを抜く。

ゴァン!

だが、マグナムが火を噴く前に、レディのダブルハンマーが黒騎士の兜の角を叩き折って、頭頂部に食い込んだ。
その勢いに体勢を崩され、黒騎士は白い灰を頭から吹きながら転倒する。
しかし、コブラは抜いたマグナムをしまわない。



アーマードタスク「ブゴオオオオオオ!!」


レディ「気付かれたわ!」

コブラ「サイボーグが来るぜ!レディ!ソラールを連れて右の通路に入れ!」

レディ「わかったわ!行きましょう!」ガシッ

ソラール「す、すまん…」



コブラは、レディとソラールが避難するのを見送ると、面倒な事態に気付いた。
未来においても、そして過去においても、パイソン77マグナムに使用される357マグナム弾の製造は、複雑な工程と器具を必要としている。
そんな工程をこなせる人間も、工程を簡易化する器具を用意する人間も、ロードランにはいないようにコブラには思えた。


コブラ「切り札ってのは、やっぱり最後に取っとくものって事か」フフ…


コブラはマグナムをゆっくりしまうと
倒れた黒騎士が手放した『黒騎士の特大剣』を担ぎ上げ、その剣で肩をトントンと軽く叩いた。
鉄の猪は一直線にコブラに向かって突進していく。


コブラ「つまり、お前は俺の最期じゃない」

待ってた

>コブラ「切り札ってのは、やっぱり最後に取っとくものって事か」フフ…
>コブラ「つまり、お前は俺の最期じゃない」
ここ好き

黒騎士の特大剣…ときたらやることは一つだな
期待

年末忙し杉内
続きはまた来年
あと保守

保守

すげぇ面白い

ところで前にコブラ×サムス書いてた人?

いいや、秒速5センチメートル×範馬刃牙書いた人だよ
まだ忙しいので保守して帰る


遥か彼方の世界に、ラグボールという競技がある。
いにしえから連綿と受け継がれし二つの球技を、宇宙的複雑さに至った人種の誰しもが享受しえる形に縫合し、先鋭化させたもの。
それはスポーツと呼ばれた娯楽の中でも一際過激であり、死人が出てさえも観衆は冷めず、競技者は情熱的な熱波となるものだった。
コブラはその球技を知り、楽しみ、そして参加の経験を持っていたからこそ、迫る鉄の猪に対しても冷静でいられた。
死を恐れぬ荒くれ者は、少なくとも凶暴さと重武装を兼ね備え、なおかつ上回るのだから。


コブラ「バッターコブラ、ボックスで構え…」ザッ!


アーマードタスク「ブゴオオオオオオオオオオオ!!」ドドドド!


ラグボールにはバッターという役割がある。
敵から放たれた豪速球を金棒で跳ね飛ばし、球が中空を舞っている間にバッターボックスから離れ、塁を制し、得点を手にする役割だ。
そのバッターボックスに立っている以上、欲深なコブラが狙う得点は鉄の猪である訳がなかった。
ホームランをかっ飛ばせば、余裕を持って塁を回れるのだ。


コブラ「もらったーーーッ!」


ズガーッ!!



コブラが渾身の力で振ったバットは、銀色の弾丸の額に命中し、大きな火花を散らした。
瞬時に絶命したアーマードタスクにとって不幸だったのは、コブラの振った得物が競技用に小型化されたバットではなく、芸術の域にまで鍛え上げられた重量100キロを超える巨大な鉄塊だった事だ。
猪の頭は針を刺された水風船のように炸裂し、猪の身体は塁に飛び込むバッターのように地面を滑り、槍を構えた亡者を轢き潰した。
鉄塊に打たれた獣牙の鉄兜は弾け飛んで、遠くの門番へ向かって飛んでいく。

門番の亡者「!」

門番は飛来する鉄兜に気付き、門を開閉するレバーに手を伸ばしたが…

グシャアァァ!

下顎から上を散らされ、息絶えた。




コブラ「フゥ、また客席を抜いちまったか」

ソラール「なん……なんと剛力……いかにしてこのような膂力を?…」

コブラ「知らないね。少なくともサプリメントのお陰じゃないぜ」

レディ「……」ヒュッ!


グサグサッ!


コブラ「あっ」

狙撃亡者達「……」ドサドサァッ

レディ「気を抜いちゃダメよ二人とも」

コブラ「スマンね。ついうっかり」

ソラール「今のは…?」

レディ「この猪の兜が弾けた時、牙が二本転がってきたから、丁度いいと思ったのよ」

ソラール「…………」



ソラール(猪の牙を投げつけて亡者を倒すとは……先ほどの騎士への立ち回りといい、なんと出鱈目な戦い方だ)

ソラール(それに、このコブラという男の力…人間のものではない。伝承にある勇者達、もしくは彼の王の騎士達の残した伝説に比肩し得る)

ソラール(断じてただの呪術師などではない。呪術に頼る者には腕力は不要なはずだろう。逆も然りだ)

ソラール(何者なのだろうか……)

ソラール(…いや、何者であろうと構わない)


ソラール(今まで俺を導いた太陽が、恐らくまた導いているのだ)

期待

まだかい!!!?

ゴォーン ゴォーン


レディ「? 鐘が…」

コブラ「おっ?」



ゴォーン ゴォーン



コブラ「妙だなぁ、俺はノックもしてないぜ」

ソラール「別の世界の誰かが、自分の世界の鐘を鳴らしたのだ。見てみろ」

コブラ「ああ、なるほどね。確かに鐘は止まったままだ」

レディ「じゃあ何故音だけが私達の世界に?」

ソラール「分からん。他の世界に何度か行き来した事はあるが、時間のずれに決まりがあるとは思えん」ポリポリ



バルデル騎士団「………」ゾロゾロ…


コブラ「?」

ソラール「気をつけろ。赤いマントの騎士達は手練れだ」チャキッ


バーニス騎士「………」ぬおおっ


コブラ「…騎士って言うには、ちっとばかし上品さに欠けると思うがね」


バーニス騎士「………」ブォーン!


コブラ「!」サッ

ドゴーン!


コブラ「ふぅー危ねえ。ホラ見ろ、騎士様のお戯れにしてもタチが悪いぜ」

ソラール「多勢に無勢か…」

レディ「それならやる事も一つね、コブラ」

コブラ「大当たり」


バーニス騎士「ヌオオオオオ!」


コブラ「逃げろ!」ダッ

ソラール「!?」

レディ「さあソラール!貴方も早く来て!」

ソラール「う、うむ」ダッ


タッタッタッタッ…



>>55
お前かよwwww
あのスレタイを見たときの衝撃は今でも忘れない

タッタッタッタッ…


ソラール「はぁ、はぁ…」

コブラ「頑張れソラール!一等に美女が付いてくると思えば力も湧くぜ!」

ソラール「そ、そういう事では…」

ガバッ

ソラール「ぬおっ!?」

レディ「私が抱えて走ればいいことよ。急ぎましょうコブラ!」


シュイーン! バシッ!


レディ「グッ!」ドサッ

ソラール「むぅ!」ゴロゴロ…

コブラ「!? どうしたレディ!」

レディ「せ…背中を撃たれたわ。でも、そんなに深手ではないみたいね…」フラッ…



伝道者「………」ヒュイイイ…



コブラ「レーザーライフル!?」

シュイーン!

コブラ「おわっ!」ヒョイッ

バシィン!


コブラ「まったくなんて奴だ。教会では銃を抜いちゃいけないって誰かアイツに教えなかったのか?」

コブラ「ソラール!レディを抱えて教会を出ろ!こいつらは俺の客にする!」

ソラール「しかし…!」

レディ「心配しないでソラール。彼の言う通りにして」

ソラール「わ、分かったっ!」

ガバッ タッタッタッタッ…



コブラ「さてと…」

バーニス騎士「………」

コブラ「マティーニは如何かな?」

バーニス騎士「………」ブン!


カーン カーン



ソラール「はぁ、はぁ、はぁ…」

ソラール「こ、ここまで来ればもう大丈夫だろう…」

ソラール「それで、怪我はどうなってるんだ?診させてくれ」

レディ「それは……構わないけれど、診ても分からないと思うわ」

ソラール「そうとは限らないだろう?これでも不死になる前も戦士だったんだ。傷の手当くらいは出来る。さ、見せてくれ」


レディ「………」スッ…


ソラール「………」


レディ「どう?」



カーン カーン カーン




ソラール「すまん…貴公の言う通りだ。力になれそうもない…」

レディ「いいのよ。その気持ちだけでも嬉しいわ」

コブラ「………」ズサーッ!

レディ「どうだったの?上手くいった?」

コブラ「それがもうキツイのなんのって……赤マントは全員倒したんだが、二階から亡者が雪崩れ込んできてね…」ゼーゼー

コブラ「尻尾を巻いて逃げてきたって訳……葉巻あるかい?」フゥー…

レディ「残念、葉巻はタートル号の中よ」

コブラ「なんてこった、まったく」フフ…


カーン カーン カーン


コブラ「で、この音はなんだ?試合終了の合図だと嬉しいね」



シーン…



コブラ「………」

レディ「止まったわね」

ソラール「ああ」



ギシッ… ミシッ…


ソラール「階段を登ってくる……貴公らも構えておけ」シャリン

コブラ「やれやれ、第2ラウンドか」


ミシッ…






鍛冶屋アンドレイ「おお、やっぱりか!まともな不死も久しぶりだぜ」

ソラール「…?」

アンドレイ「ここ最近は亡者も寄り付かなくてな。まぁ上がってくれ。篝火もあるんだ」

アンドレイさん!ロスリックの時代になっても鍛冶をし続けてるある意味最強の不死のアンドレイさんじゃあないか!

>>63
すばらしいよな

仕事もひと段落ついてダクソ3も全クリしたのでようやくまともに書けるかも。
ネタ増えたから筋書き変わるけどね。

コブラの言い回しって真似できるのもじゃないから凄いな、やって見ようにも上手くいかぬよ

天使関連とオセロットはDLCか?

今更ながら
>仮面を被った恐ろしい闇霊
木目仮面巨人先輩じゃねーかwww

亡者と化した騎士達の剣勢をすり抜け、打ち倒し、飛び交う矢をかわしつつ、コブラがやっとの思いで滑り込んだ廃墟の中には、白い髭を蓄えた筋骨隆々な男がいた。
その男はコブラ達を招き入れ、篝火の側まで案内すると、煤にまみれた掌をすりすりと擦り合わせて鉄粉を払い落としつつ、決めた誰かに言うわけでもなく喋り始める。


アンドレイ「外にいる亡者どもは誰彼構わず襲うが、此処までは来ねえんだ」スリスリ

アンドレイ「きっとこの火が大事なんだろうなぁ」スリスリ

ソラール「………」


アンドレイ「あんたらも不死の使命を知る為に来たんだろうがよ。あの教会の鐘を守ってるのは、牛野郎どころじゃねえ化け物だ」

アンドレイ「一本の剣と一枚の盾、それに全身鎧二着と素手じゃ、分が悪いってもんだぜ」


アンドレイ「俺はアストラのアンドレイ。ここで鍛冶をやってるんだが、どうだい」

アンドレイ「ここで武器を一式揃えるってのは」


アンドレイと名乗る男の提案に、ソラールの緊張した雰囲気が少し和んだ。
しかし、コブラは眉を潜めて自嘲し、両手をズボンのポケットに突っ込むと…


コブラ「せっかくのお誘いもありがたいんだが…」

アンドレイ「なんだ、どうした?」

コブラ「あいにく今は無一文でね。鼻毛一本ありゃしないんだ」


ポケットの内側をひっくり返して、ポケットの中の埃を床にパラパラと落とした。
ここの通貨単位を知る者はアンドレイを除いておらず、そもそも通貨があること自体、コブラには疑わしかった。
だが正に、予想を超えた返答が来て、コブラは困惑する。


アンドレイ「ウワッハッハッ!何言ってんだアンタ、ここでは金なんかよりソウルが大事なんだぜ?」

コブラ「ソウル?」

アンドレイ「ああ。不死人なら常識だと思うが、飯も睡眠もいらないかわりに、不死は何もしないでいるとソウルと人間性が枯れちまう」

アンドレイ「だから不死人同士の取引はソウルでやるんだ。ソウルがあれば亡者にもなりにくく、人間性も留めておける」

アンドレイ「まさか知らずにここまで来たわけでもないだろうが……そんな調子だと、アンタ、鐘を鳴らす前に亡者になっちまうぞ」

コブラ「亡者ねえ…確かに、あんな老け顔になるにはまだ早いかな」



コブラ「ま、不死じゃない俺には関係無いことだがね」



アンドレイ「なに?」

レディ「私と彼は不死じゃないわ。私達の中で不死はソラールだけなの」

ソラール「その通り。亡者になるとしたら、俺だけだ」

アンドレイ「………」



アンドレイ「そ…そいつは驚いた…」

アンドレイ「どうやってロードランに来た?不死人以外に巡礼が許されるなんざ稀にも稀だろう?」

アンドレイ「それにもし来れたとしても、とうに竜に焼かれてるだろうに…」

コブラ「その竜なんだが、多分もう出てこないだろうぜ」

コブラ「焼き鳥にして食っちまったからな」フフッ

アンドレイ「!?」

ソラール「貴公、嘘は良くないぞ」

コブラ「冗談だっつうのにもぉー、シャレが通じないってのは損するだけだぜ?」

ソラール「むぅ…」

コブラ「それにしても、魂ねえ………悪魔に魂を売った連中は何百と見てきたが、まさか俺が悪魔以外と魂の取引をする事になるとは思わなかったぜ」

アンドレイ「……妙な事言うなアンタ。デーモン共は取引になんか応じねえぞ。ヤツらは奪うだけだ」

ソラール「すまん、この男はなんというか…トボけたところがあってな」

レディ「トボけたところですって」ウフフッ

コブラ「やれやれ…会話教室に通っときゃ良かったな…」


アンドレイ「で、どうするんだ?鍛治仕事なら今からでも取り掛かれるぜ?」

コブラ「ん~…」

ソラール「俺はこの剣を預けよう。自己流に鍛え上げてはいるが、素人の技には限りがあるからな」

アンドレイ「おう、任せとけ。アンタは……なるほど、武器がねえのか」

コブラ「そういうこと。ただのしがない拳闘士さ」

アンドレイ「拳闘士っつうなら、このセスタスなんかは…」

コブラ「あーそういうことじゃないんだ。えーっと、どうしようかな~」

レディ「この剣ならどう?貴方もこういう形の剣は使った事があるでしょう?」

アンドレイ「ロングソードか。そいつは良いものだ」

アンドレイ「斬ってもいいし、突いてもいい。両手で持てば相手の盾もある程度なら跳ね除けられる」


コブラ「………うーん」


コブラ「いや、そいつはしまってくれ。確かに使った事はあるが、剣にはろくな思い出がないもんでね」

コブラ「それに俺は剣を使うよりも、剣に使われる方が気楽でいいんだ」

アンドレイ「呆れたヤツだな。武器に使われる戦士なんて聞いた事ないぜ。ウワッハハ!」

ソラール「じゃあコレはどうだ?」


レディ「斧?」


アンドレイ「それはただの斧じゃねえ。バトルアクスって名がついてる」

アンドレイ「腕っ節がありゃ誰でも扱えるが、ちゃんと殺傷力もある。まあ直剣よりは使いにくいが、その分威力が高い」

コブラ「………」

アンドレイ「どうだ?表にいる亡者で一発試すってのも」

コブラ「おいおい、俺は浪人じゃないぜ?試し斬りならここらの木で済むだろう」

アンドレイ「構いやしねえさ。不死共はもう痛みさえ感じず、なんで自分が剣を握って突っ立ってるのかも分からなくなっちまってる。いっその事斬りまくって骨片にしてやった方が、あいつらも休まるってもんだ」

コブラ「確かにいかにも寝不足ってツラしてるが……教会の前って事もあってなんだろうが、俺としちゃあ気が乗らないかなぁ」

アンドレイ「まあやってけよ。アンタをその亡者にしないために俺は言ってるんだ」

コブラ「うーん…」ポリポリ…






ズカーッ!


亡者戦士「グゥオ…」ドサァ



アンドレイ「どうだい。使えるかい」

コブラ「確かに…いい武器かもな、こいつは」

コブラ「で、料金はいくらだ?タダじゃあないんだろ?お支払いの方法にちょいと難ありだが」

アンドレイ「簡単だ。ソウルを分けてくれりゃいい」

コブラ「問題はそこなんだ。エクソシストを呼ぼうにも電話が通じなくてね。それに斧の一本のために命をくれてやれる程、俺は安くない」

アンドレイ「?……何言ってるのか分からんが、ソウルならアンタの中に残ってるじゃねえか」

コブラ「なんだ本当に死ねって言うのか?高い買い物だなぁ」

アンドレイ「そうじゃない。アンタがここに来るまでに倒した連中のソウルを、俺に分けてくれるだけで済むんだ」

コブラ「……確かに、ここに来るまでに結構派手にやったが……」


ソラール「手に入れたソウルの使い方がわからないのか?」

コブラ「それもあるが、俺はこういうオカルトな事は苦手なんだ……ほら居るだろ?雷が鳴ったらヘソを隠しちまうタイプとか。俺はそういう人種なんだ。へへ……」

ソラール「ヘソを隠す?そんな事で神の力である雷を防げるとは思えんが…」

レディ「いちいち気にしないでいいのよ。彼、心霊とか魔法とかに凄く弱いから、こう言って誤魔化してるの」

アンドレイ「そいつは難儀だな。この先苦労するぜ。ウワッハッハ!」

コブラ「あー分かった分かった!とりあえずそういう事だから……あー、なんだ、まずはソウルの使い方を教えてくれ」

ソラール「よし。じゃあまず………そうだな…」



ソラール「目を閉じて、ここに来るまでに殺した者達について、考えてみてくれ」



コブラ「…………」スッ…


ソラール「考えてるか?」

コブラ「バッチリさ。今は懺悔室に居る」ニィッ

ソラール「では次に、思い浮かべた者達を、左右のどちらでも構わないが、掌に追い詰めるんだ」

コブラ「掌ね。どーぞ」

ソラール「よし。目を開けて良いぞ」

コブラ「………」パチッ



ソラール「左手を見てみろ。今なら見えるはずだ」



コブラ「………」



コブラ「………この白く光ってるのが、ソウルなのか?」

ソラール「そうだ。貴公が亡者達から奪った、ソウルの集まりだ」

ソラール「しかし妙な事だ……あの飛竜を倒しておきながら、たったのコレだけとは…」

コブラ「人間ドックにしばらく行ってないのが祟ったかな」

ソラール「にん………まったく、つくづく分からん男だな」フフッ

コブラ「で、これをアンタに渡せば、取引成立ってわけか?」

アンドレイ「ああそうだ」

アンドレイ「まあ、全部はくれなくていい。こいつは………上半分くらいかなぁ」スッ…


フワッ


コブラ「!」



アンドレイがコブラの掌からソウルをすくい取った瞬間、コブラの中で小さな変化が起こった。

その変化は、ロードランに来て以来初めて経験するものではなく、今までのコブラの半生において、幾度となく顔を見せていた。
それも、決まって彼が窮地に追いやられた時だけに。




コブラ「………」


コブラ「…レディ」

レディ「なあにコブラ?」

コブラ「どうやらいつの間にか、俺は持病を抱えちまったらしい」

レディ「えっ…!?」

アンドレイ「?」

ソラール「?」


コブラ「ま、今は仮説の段階だ。確証を得るのに時間はかからんだろうがね」

コブラ「アンドレイさんよ。ここの取り決めどうりに、こいつは貰ってくぞ」

アンドレイ「ん、おお」

コブラ「じゃ、先に行ってるぜ」

ソラール「別れるのか?」

コブラ「ああ、悪いがそうさせてもらう。今の俺は他人と連携出来るほど強くはないかもしれんからな」

コブラ「なに、今生の別れじゃないんだ。目的が同じなら、また会うこともあるさ」


ソラール「そうか…そうだな…」


コブラ「あと聞き忘れてたが、アンドレイ」

アンドレイ「なんだ?」

コブラ「不死じゃないヤツ……例えば俺なんかが死んだ時、この世界ではどうなると思う?」

アンドレイ「細かい事は分からんが……そりゃあ、亡者になるんじゃねえか?……不死じゃないヤツが死んだところなんざ見た事ねえから分からんが…亡者以外になったヤツも見た事がねえ」

アンドレイ「まあなんにしてもだ。死ななけりゃいいのさ」

コブラ「ああ。そのとおりだよ」



コブラ「じゃ、ぼちぼち行きますかぁ」







70
アンドレイの「不死共はもう痛みさえ感じず」は「亡者共はもう痛みさえ感じず」に訂正

赤いマントを羽織った三人の騎士達は、みな教会の一階に設けられた信者席の近くで倒れている。
一人は骨と皮だけとなった顔を砕かれ、二人目は如何なる膂力によるものか、鎧ごと胴体を貫かれている。
三人目は教会を内部から支える石柱に後頭部を叩きつけられたせいか、へたり込んだまま、ただ目から血を流すばかり。

だが、彼らを助け起こそうとする者は誰一人としていない。
巨大な鎚を担いだ騎士は、顔を砕かれた騎士をゴミクズの如く踏みつけたまま微動だにせず、粗雑な布を纏った亡者達は皆一様に立ちすくみ続ける。
そしてその亡者達を見下ろす六目の伝道者も、彼らを諌めようとはしない。
その必要はないし、それらを肯定する倫理や道徳などもとうに失われていたからである。

だからこそ、彼らは敵の侵入を再び許してしまった。



ビュン!


バーニス騎士「!」


ガァン!


不意に飛んできた斧を、大鎚を持った騎士は咄嗟に、左手に持つ大盾を前面に押し出す事で防いだ。
彼が持つ大仰な盾は分厚く、一本の斧などは小石のように弾いた。
当然、それこそがコブラの目的だった事などは知る由もない。

コブラ「よぉ、元気かい」

二度目の不意は彼の背後からだった。
騎士はもはや本能的と言っていいほどの反応をコブラに示す。

ブォオオン!

振り向きざまに、顔面目掛けた一撃必殺を叩き込む。
はずだったが…

ガキーッ!! ドシャーッ



コブラ「……じゃなさそうだが、病院には一人で行ってもらうぜ」


勢いをつけた顔面にコブラの放つ全力の右ストレートがブチ込まれ、騎士は錐揉みに回転した後、地に伏せ、動きを止めた。
六目の伝道者はその一部始終を見て、侵入者に対しての値踏みを終わらせ、異形の矛を手に踊りを始める。

コブラ「その様子だと、降参って感じじゃあ無さそうだなぁ」

コブラはバーニス騎士に目掛け投げ込んだ斧を拾い上げ、刃の側面をそっと指でなぞる。
そんなコブラに隙ありとばかりに、一人の亡者が斬りかかった。

キィーン!

亡者の握った直剣とも呼べぬ粗悪な得物は、斧に弾き飛ばされてあらぬ方向を虚しく斬った。
しかしコブラはその手に残った感触に、ここに来るまでに防いできた亡者の剣撃とは違う、歪んだ強さを見た。
伝道者の踊りはより一層狂騒的となり、亡者達の眼は爛々とした輝きを放ち始める。
希望や生命力ではなく、闘争心一色に染められた輝きを。


コブラ「そうかい、シャーマンってヤツか」

コブラ「だが残念だな。西洋の教会じゃシャーマニズムは邪教扱いされるのがオチなんじゃないか?」


そして亡者達は湧き上がる闘争心に従い、一斉にコブラに襲いかかった。


ガッ!


だが亡者達の剣がコブラに届く事は無かった。
伝道者は自身のすぐ右横にある石柱に突き刺さった、細い金属製の紐に疑問を感じ、ふっと踊りをやめてしまった。

ドカッ!

伝道者「グエッ!」


コブラがその隙を見逃すはずも無く、伝道者は背後から蹴り飛ばされ一階の広間にある信者席に墜落した。
そしてコブラは二階に積まれた樽や椅子を急いでかき集め…

コブラ「そらーっ!」 ガシャーン!ガラガラ…

広間に向かってそれらを蹴り落とした。

きた!

ドガシャーン!ドォーン!


レディ(上手くいってるみたいね)


コブラが教会の敵を相手にしている間に、レディは教会の壁を登って二階に入り、樽と椅子を投げまくるコブラの背後を通って、三階へ向かう。
壁を登って直接教会の屋根まで行き、鐘を鳴らすという選択肢もあったが、構造上屋根の全景を見渡して様子を伺えるこちらのルートの方が安全だと、レディは判断していた。
その選択は正しかったようで、レディは教会の屋根へと続く梯子を登り、行く手を阻む謎の霧の手前まで来ていた。


レディ「コブラ、今時間あるかしら?」

コブラ「コイツらしだいさ!長い事暇だったんで欲求不満なんだろう!」ガガーッ!

コブラ「そおおりゃーっ!!」ブーン!


ドグワーッ!!


コブラ「ハァハァ…どうだい少しは満足したか…」

コブラ「で、俺に用ってのは?」

レディ「屋根へ行く入り口に霧が掛かってるんだけれど、それが妙なのよ。手で触れてもまるで低反発の衝撃吸収材みたいに弾くの」

コブラ「衝撃吸収材?ここは宇宙船なのか?」

レディ「一応、強く押してはみるけれど…」ズブブ…


霧は不可思議な粘性を持ち、レディの手を押し返しつつも、彼女の手に纏わりつくようにうねっている。
だが強固な壁というわけでは無く、力を込めるとその分だけ薄く、儚く散っていくようだった。


レディ「通れるみたいだわコブラ。貴方も来てくれる?」


レディはコブラにそう話しかけると、彼の元へ降りるために梯子に右手を掛けた。



ガシッ!


レディ「えっ?」


しかしその手を掴んだ者がいた。










闇霊「鉄の身体か……珍しい呪術を使うのだな」







その者は赤黒い光に包まれ、輪郭こそぼやけていたが、確かに人間の男だった。
上半身には何も着ておらず、腰にも布を一枚巻いただけという異様な出で立ちの男はしかし、レディの手を掴んだ右手に炎を宿らせ、炎はレディのライブメタル製の手を赤熱化させていた。

レディ「ぐううぅ…!」

レディは身を捩って男の手から右手を引っ張り出そうとしたが、男の尋常ではない握力はそれを許さない。


コブラ「その手を離した方がいいぜ」

闇霊「ん?」

コブラ「女性のエスコートの仕方は俺が教えてやる」


鼻につく声を聞いた男が下げた視線の先には、聞き慣れない声を聞いて駆けつけた、赤い衣装を纏った男が立っていた。

闇霊「なんだお前は。妙な格好をしやがる」

コブラ「自分に当てはまる事を人に言っちゃいけないぜ。口喧嘩が下手なタイプだなアンタは」

闇霊「分かってないようだな。俺はお前の仲間を人質に取ってるんだぞ」

コブラ「ほらこれだ。またアンタに当てはまったぞ」

闇霊「なに?」

コブラ「聞こえなかったか?」


コブラ「分かってないのはアンタの方さ」


バキーッ!



レディの水平チョップが男の鼻ツラに一閃され、男は顔面から赤い霧を吹きながら転倒した。
レディは梯子に掛かっていた右手を手すりから引き剥がすと、コブラのいる方へと飛び降りた。


タッ


コブラ「大丈夫かレディ」

レディ「右手の感覚が無いわ……どうやら面倒な事になったみたいね…」

コブラ「そいつはまずいな…アンドレイが古代の火星物理学に精通してりゃあ良かったんだが」

レディ「そんな事あるわけないでしょ」フフッ


ブォオオーッ!


レディ「あっ!」

コブラ「あら!?」


ボゴオオーン!


負傷を確かめ合う二人に向けて放たれた火の玉は、火炎壺とは一線を画す熱量の爆発を生じさせた。
しかし投擲物としては遅い弾速が二人に味方をし、コブラもレディも丸焼けになる事なく難を逃れていた。


コブラ「ケッ、今さら火の玉如きじゃ驚かないぜ。ドラゴンのブレスに比べりゃマッチみたいなもんだ」

レディ「それよりどうするの?あんな所に立て篭もられたら手出し出来ないけれど」

コブラ「いいや出来るさ。ただし、手を出すわけじゃないが」


闇霊「クソッ…やるなあの女…」


手痛い反撃を貰った男は、奇妙な緑色の瓶を口に着け、中に溜まったの太陽色の液体を一口飲んだ。
するとみるみる内に曲がった鼻が形を戻し、赤黒い霧の流出は止まった。


闇霊(鉄の身体にしては動きが速すぎる……それにあの身のこなし…)

闇霊(なるほど、東国の忍びか。それならあの奇妙な呪術もいくらか納得できる)


敵の戦力を推測し、胸に沸いた疑問と困惑を払拭した男は、今度は戦法について考えを巡らせる。
しかし、思考は完璧と言える程の己の戦績の前に、呆気なく崩れて消えた。
己が選ばれたと自惚れる不死達を、男は幾人も灰に変えてきた。
梯子の上で待っていれば今度もそうなる。

まさしく、今まで男が焼き殺してきた不死と同じく、男もまた自惚れていたのだ。



シュッ

闇霊「?」

クルクルッ ギューッ!

闇霊「ぐえっ!?」



しかし、自惚れていようがいまいが関係の無い理不尽が男を襲う。
人の手首から高速で撃ち出された鞭が、長距離を一直線に自分の首目掛け飛んできて巻きついてくるなど、突飛な想像家でもない限り考えない。
今まで一方的な攻勢にしか自分を置かなかった者は尚のこと。


コブラ「火遊びはおしまいさ」

闇霊「ググッ……き、貴様…」

コブラ「おおっと、遠くから文句言われてもこっちは聞こえやしなぜ」カチッ


キイイィーッ


闇霊(ひっ、引っ張られる…!)



コブラ(このウインチもいつまで動いてくれるんだか……この調子じゃ先が思いやられるってもんだな)キリキリキリ…!

コブラ「レディ、そこにいたらむさ苦しい親父に抱きつかれることになるぜ?」

レディ「それなら都合が良くってよ?この手の借りを返したいの」

コブラ「なんてこった、この先どうなるか読めちまった。今から線香でも上げといてやろうかな」


ズルッ


闇霊「うわぁーーっ!!」ヒューッ




ワイヤーの牽引力に堪えられず、男の足は床から離れた。
そのまま男は落下しつつ、ワイヤーの生む加速によってその速度を上げていった。
コブラは線香を上げる代わりに空いている手で十字を切ったが、切り慣れていないために逆十字を切った。


ゴワシャーッ!!


男の標高とレディの標高が重なる瞬間、レディのアッパーカットが男の下顎向け振り上げられ、男は身体中から赤い煙を吹きながら錐揉みに舞い上がり、銃口から吹かれた硝煙のように消えた。




コブラ「バカなマネをしたもんだ。レディを怒らせるなんて酔った俺でもしないぜ」

レディ「そんな事言って…貴方が思うより私は覚えてるのよ?」

コブラ「ほーらこれだ。だから女は怖いのさ」

細かいと思われるだろうけど…
無印では闇霊はエストを飲めない

コブラ「おっ!」

レディ「どうかしたの?」

コブラ「まただ。これで確信がいったぜ」

レディ「確信?」

コブラ「ああ。さっきの赤い幽霊みたいな奴が消えた時、ハッキリと感じたのさ」

コブラ「ヤツが消えた瞬間、俺の身体に溜まってた疲れが綺麗さっぱり無くなっちまった。一日中寝たってこうはならないだろう」

レディ「…それって、他人の活力……いや、サイコエネルギーを貴方が吸収してるって事?」

コブラ「ここじゃソウルと呼ばれてるがな」

レディ「驚いたわ…いつからそうなっていたの?」

コブラ「ここに飛ばされた時と同時だろう。それ以外に思い当たるものが無い」

コブラ「ま、ここの水が合わないだけとでも思えばいいのさ」

レディ「それで済めばいいんだけれど…」

コブラ「俺もそう願ってるよ」


コブラ「さ、教会の鐘まであと少しだ。さっさと鳴らしてランチにしようぜ」



支援

まだ時間がかかるのでもうちょい待ってくれ

わかった

ミス発見
>>48の357マグナム弾は77マグナム弾でした

あげ

ヤバいよヤバいよ
時間がないよ

最終は>>84なんだからまだまだ時間ある

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年05月27日 (金) 00:14:57   ID: AROqVOm_

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