『スマイルプリキュア!』第2期を SS で作るスレ (952)

〜 ごあいさつ 〜

こちらは、『スマイルプリキュア!』の SS となっております。
投稿の作法や文体などに至らない点がありましたら、随時ご指摘いただけますと幸いです。



好評を博し、惜しまれつつも終了した『スマイルプリキュア!』。
新しい『ドキドキ! プリキュア』も放送され、出だし好調なようで何よりです。


が、『スマイル』が大好きであった自分としては、放送終了はとても残念なことでした。。

"2年目は無いのか!" "『スマイル』のみんなをもう1年見たいぞ!"
年が明けてからというもの、そんなことばかり考えていました。


そうこう考えているうちに、自分の中で一つの想いがむくむくと育っていきました。


「『スマイル』2年目がないなら、自分で作ればいいじゃない」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1360385907

前置きが長くなりましたが、
こちらでは『スマイルプリキュア!』の第2期を想定した自作のストーリーを SS形式で展開していきたいと思っています。
主なルールは以下の通り。


 ・地の文無し(基本的にセリフと擬音のみ)

 ・内容はあくまで『プリキュア』シリーズっぽく作成します
  キャラ崩壊や、シリーズを著しく逸脱する内容 (エロとか残酷描写とか) はありません

 ・設定は基本的に原作『スマイルプリキュア!』を踏襲します
  ※意図的に崩す場合は注釈を入れます

 ・本作では原作終了後、中学3年生となったみゆき達を描いていきます
  新しい設定・キャラ・敵を盛り込んだ完全オリジナルストーリーとなります

 ・タイトルは『スマイルプリキュア レインボー!』とします

 ・目標:週1本 1年間! ※毎週日曜更新予定


"自分も『スマイル』が大好きだ!" という方いらっしゃいましたらぜひお付き合いください。
その上で楽しんでもらえたなら幸いです。


それでは、本編を開始します。
よろしくお願いいたします。

〜 メルヘンランド ロイヤルクイーンの宮殿 ポップ自室 〜

ポップ「——ふぅ。メルヘンランドの建て直しもタイヘンでござるなぁ……」

ポップ「やることが山積みで、やってもやっても終わらないでござる……」


ポップ「……いや、せっかくプリキュアのみんながガンバって作ってくれた平和。弱音を言ってる場合ではないでござる!」

ポップ「ちょっと一休みして、それからまた一気にガンバるでござる!」


ポップ「——キャンディ、みんな、元気でやってるでござろうか」

トランプの兵隊「ポップさま! 宮殿宛に荷物が届いていたであります!」

ポップ「おお、かたじけのうござる。して、どちらから?」

トランプの兵隊「それが……、差出人の名前も無く、この小包と手紙だけが届いておりまして……」

ポップ「うーむ、面妖な……。とにかく、ありがとうでござる。後はこちらで確認しておくでござる」

トランプの兵隊「はっ! 失礼するであります!」


ポップ「さて、一体なんでござろうか……。まずは手紙から……」パサッ

ポップ「…………!! こ、これは! そんなバカな!?」

ポップ「タイヘンなことになったでござる……! こうしてはいられないでござる!」

ポップ「兵隊どの! 兵隊どの! まだおられるか!」


トランプの兵隊「はっ、ポップさま! いかがされたでありますか!?」

ポップ「大至急、あの三人をここへ呼んで欲しいでござる!」

トランプの兵隊「は……、あの三人、と言いますと、あの三人でありますか? またどうして——」

ポップ「とにかく急ぐでござる! 事は一刻を争うのでござる!」

トランプの兵隊「は、はっ! かしこまりましたであります!」

ポップ「頼むでござる!」


ポップ「キャンディ……、みんな……。彼女らの身に良からぬ事が起こらねば良いでござるが……!」




スマイルプリキュア レインボー!

第1話「スタート! わたし達の新しい物語」


〜 七色ヶ丘中学校 通学路 〜

みゆき「うーん、今日も良いお天気! お日様キラキラ! 何か良いことありそうな予感!」


みゆき(ナレーション)「わたしの名前は星空 みゆき。七色ヶ丘中学校に通う、絵本が大好きな中学生です!」

みゆき(ナレーション)「今日は始業式なので、わたしもいよいよ3年生!」

みゆき(ナレーション)「これからの1年、どんなハッピーが待っているのか、ワクワクが止まりません!」

みゆき(ナレーション)「2年生の時は、わたしの人生の中で一番すごい、大事件がありました」

みゆき(ナレーション)「多分、……ううん、絶対、一生忘れられない出来事だと思います」


みゆき(ナレーション)「なんとわたし、2年生の時……、世界を守る伝説の戦士 "プリキュア" だったのです!」

みゆき(ナレーション)「絵本の世界 "メルヘンランド" に伝わる伝説の戦士 "プリキュア"」

みゆき(ナレーション)「わたしはそのプリキュアとして、他のプリキュアの仲間達と力を合わせて、メルヘンランドやわたし達の世界を夢も希望も無いバッドエンドにしようとする悪い人達、"バッドエンド王国" と戦いました」

みゆき(ナレーション)「そして、わたし達はもの凄い戦いの末、バッドエンド王国とその王様・皇帝ピエーロをやっつけたのです!」


みゆき(ナレーション)「こうして無事に 3年生になれたのも、みんなが笑顔でいられるのも、わたしの大切な仲間——友達と一緒にガンバれたおかげです」

みゆき(ナレーション)「絶対に忘れられない 1年間……。あの時の事を思えば、きっとどんなことだって乗り越えていける! そんな強い気持ちをくれました」

みゆき(ナレーション)「これからどんなことが起こるかわからないけれど——」


みゆき「絶対にガンバってウルトラハッピーな 1年にするぞー! おーっ!」

キャンディ「みゆきぃ、何をガンバるクル?」ヌッ

みゆき(小声)「キャ、キャンディ! ダメだよ、カバンの中でじっとしてて!」

キャンディ「あっ、ゴメンクル!」サッ

キャンディ「でも、みゆきがいけないんだクル。急に叫んだりするからビックリしたクル」

みゆき(小声)「あ、あはは……、ゴメンね、キャンディ」

みゆき(ナレーション)「わたしのカバンの中にいるこの子はキャンディ」

みゆき(ナレーション)「絵本の世界、メルヘンランドの妖精さんで、わたし達をプリキュアにしてくれたんです」


みゆき(ナレーション)「しかもそれだけじゃなく、なんとメルヘンランドの次のクイーン様でもありました!」

みゆき(ナレーション)「バッドエンド王国の王様・皇帝ピエーロとの戦いでわたし達が全部をあきらめかけていた時、クイーン様としての力でわたし達を精一杯助けてくれました」

みゆき(ナレーション)「一緒に戦った仲間でもあり、わたしの大切なお友達です!」

みゆき(ナレーション)「キャンディは皇帝ピエーロとの戦いで力を使い果たし、もうわたし達の世界には来られなくなったはずだったのですが……」

みゆき(ナレーション)「わたし達に会いたい一心でたくさん修行をして、何とか自分だけならこちらの世界に来られるようになったそうです!」

みゆき(ナレーション)「その後、"クイーン様になるためには色々経験や成長が必要" とのことで、わたし達の世界でまた暮らすことになりました」

みゆき(ナレーション)「なんにしても、また大好きなキャンディと一緒に暮らせてわたしはウルトラハッピーです!」

※作者注
 キャンディが再び人間界に来られるようになった理由は
 本作では "修行してクイーンの力をちょっと使えるようになったから" ということにしておいてください

 "星にお願いしたら——" というのはさすがに。。

みゆき(ナレーション)「そうこうしているうちに、見えてきました! 我が七色ヶ丘中学校の校門です!」


あかね「おーい、みゆきぃー!」


みゆき(ん、向こうから走ってくるのは……!)


みゆき「あかねちゃん! おはよう!」

あかね「おはようさん!」

みゆき(ナレーション)「この子の名前は日野 あかねちゃん。いっつも明るく元気でとっても面白い、ちゃきちゃきの大阪っ子です」

みゆき(ナレーション)「バレーボール部に所属していて、3年生になった今では念願だったエースアタッカーになったそうです!」


みゆき(ナレーション)「このあかねちゃんもまた、わたしと同じ伝説の戦士プリキュア、炎の戦士・キュアサニーでした」

みゆき(ナレーション)「2年生の時、転校したてだったわたしにとっても明るく接してくれて、プリキュアとしても始めての仲間で……、とにかく、大切なお友達です!」

あかね「みゆき、今来たん? そしたら、クラス分けまだ見てへんやろ。どんなんなったか教えたろか?」

みゆき「あ、うん。実はわたし、そのことがちょっと心配で……」

あかね「せやろなぁ。わかるわぁ、その気持ち。うちも、発表見るまで心臓バックバクやったもん」

みゆき「で、で? どうだったの?」

あかね「うん、それがな……。ちょっと、タイヘンなことになってもーたんや……」

みゆき「え……、タイヘン、って……?」


みゆき(もしかして、みんなバラバラになっちゃったのかな……。プリキュアとして一緒にガンバってきたみんなと……)


あかね「…………(ニヒッ)」

あかね「なんとタイヘンなことになぁ…………、またみんな同じクラスになったんやー!」

みゆき「…………え??」

あかね「せやから、やよいも、なおも、れいかも、みんなまた同じクラスなんや! もちろん、うちとみゆきもや!」

みゆき「……えええぇぇぇっ!?」

みゆき「何それぇ! タイヘン、っていうから、みんな離れ離れになっちゃったかと思ったよ! はっぷっぷー!」

あかね「あはははっ! みゆきがあんまり深刻そうな顔しとるもんやから、ちょーっとからかってみたんや! かんにんなぁ」

みゆき「んもー……」


あかね「ほな新しい教室行こ! 教室まで競争やで!」

みゆき「あ! 待ってよあかねちゃーん!!」

〜 七色ヶ丘中学校 3-1教室 〜

あかね「3-1、3-1、と……、お、ここやここや」ガラッ

やよい「あ、あかねちゃん! おはよう! またおんなじクラスだね!」

あかね「おー、やよい! これからまた 1年、よろしゅーな! あ、あとみゆきもおるで」

やよい「え、みゆきちゃん……? いないみたいだけど……」

あかね「ありゃ……? 速く来すぎてもーたかな……」


みゆき「あ、あかねちゃん……速く走りすぎ……。つ、疲れたぁ……」ヘニャ

あかね「そりゃー、バレー部の練習で走りこんどるもん。運動オンチのみゆきにはちーとキツかったかなー?」

やよい「み、みゆきちゃん! だ、大丈夫!?」

みゆき「あ……、おはよー、やよいちゃん……。また一緒のクラスだね……。よろしくねー……」

やよい「あ、う、うん。また一緒になれてうれしいけど……、ちょっと休んだ方がいいんじゃないかなぁ……」

みゆき「う、うん……。そうするー……」

みゆき(ナレーション)「この子の名前は黄瀬 やよいちゃん。ちょっと臆病なところもあるけれど、とってもがんばり屋さんな子です」

みゆき(ナレーション)「すっごく絵が上手で、前に描いた漫画が雑誌の賞を取ったこともあるくらいです!」


みゆき(ナレーション)「やよいちゃんもプリキュア、雷の戦士・キュアピースとしてわたし達と一緒に戦いました」

みゆき(ナレーション)「怖くても絶対に諦めない強い心に何度も助けてもらったことを憶えています」

みゆき(ナレーション)「これからもお互いに支えあう、いい友達でいられたらいいなと思います!」

ガラッ

なお「みんな! おは——み、みゆきちゃん!? どうしたの、床にへばりついて!」

れいか「みゆきさん!? 朝からどうしたんですか? 何か事件でも……」

あかね「お! なおにれいか! おはよーさん! みゆきなら心配いらへんで。ちょーっと朝から張り切って疲れてもーただけやから」

みゆき「やらせたのあかねちゃんじゃないー……。なのにその言い草……」

あかね「なはは……、ゴメンゴメン」


れいか「大丈夫ですか? もし深刻なようなら保健室に行きましょうか?」

なお「あ、そしたらあたしが肩貸すよ」

みゆき「あ、大丈夫、大丈夫! 少し休んだら元気出てきたから! ほらっ、ウルトラハッピー!」

れいか「そうですか……? あまりムリはしないでくださいね」

なお「なんかあったら何でも言いなよ?」

みゆき「うん、ありがと!」

みゆき(ナレーション)「この二人は緑川 なおちゃんと、青木 れいかちゃん」


みゆき(ナレーション)「なおちゃんはとっても勇気があって、面倒見もいい、お姉さんみたいな頼りになる子」

みゆき(ナレーション)「元々サッカー部で大活躍していたんだけど、3年生になってからはキャプテンに! みんなをまとめ上げて張り切っています」


みゆき(ナレーション)「れいかちゃんは頭がすごく良くって、いっつも優しいみんなのまとめ役」

みゆき(ナレーション)「2年生の間に生徒会長になってからというもの、学校を良くするために日々ガンバっているそうです」


みゆき(ナレーション)「この二人もプリキュアとしてわたし達と一緒に戦っていました」

みゆき(ナレーション)「なおちゃんは風の戦士・キュアマーチとして。れいかちゃんは氷の戦士・キュアビューティとして」

みゆき(ナレーション)「なおちゃんの勇敢に立ち向かう姿からは勇気をもらいましたし、れいかちゃんの冷静な判断にはいつもチームのピンチを助けてもらってきました」

みゆき(ナレーション)「二人とも大切な仲間で、大切な友達です!」

キーンコーン カーンコーン


あかね「あ、予鈴や。席着いといた方が良さそうやな。みゆき、ほんまに大丈夫か?」

みゆき「あ、うん! 大分元気になってきたよ」

あかね「ゴメンなー……。みんなと一緒になったのがうれしくて、ついはしゃいでもーた……。うちの悪いクセやねん」

みゆき「もういいよ! ハッピーなのはわたしも一緒だし」


みゆき「それより、今度は席が隣だね! これからもよろしく!」

あかね「こっちこそよろしゅーな! 授業で分からんところあったらこっそり教えてや」

みゆき「あ、あはは……。それはこっちがお願いしたいかも……」


ガラッ

佐々木先生「みなさん、おはようございます! これから始業式が始まりますので、講堂の方に移動してください!」


あかね「やって。ほな行こか、みゆき」

みゆき「うん!」

〜 始業式終了後 七色ヶ丘中学校 3-1教室 〜

佐々木先生「さて、始業式も終了し、今日から皆さんも七色ヶ丘中学校の最高学年となりました」

佐々木先生「後輩のみんなのお手本となるよう、清く正しい学校生活を送ってください」

生徒達「はい!」


佐々木先生「また、3年生と言えば、高校受験を控えた大切な年でもあります」

佐々木先生「皆さん、自分の将来のことをしっかり考えて進路を決められるように、これからの日々を大切に過ごしてくださいね」

生徒達「はい!」

みゆき(進路……かぁ……)


みゆき(そういえば、全然考えてなかったなぁ……)


みゆき(わたしは、これから何をしていきたいんだろう……。何になりたいんだろう……)

〜 お好み焼き屋「あかね」 〜

みゆき(ナレーション)「ここはあかねちゃんのおうちがやっているお好み焼き屋「あかね」」

みゆき(ナレーション)「今日は進級のお祝いということで、あかねちゃんちでお好み焼きパーティです」


あかね「いい感じに焼けてきたでぇー! ほれっ、じゃんじゃん食べや!」

やよい「相変わらずあかねちゃんのお好み焼きはおいしいねー! はい、キャンディも、あーん」

キャンディ「あーん、クル。もぐもぐ……おいしいクルぅ!」

あかね「せやろせやろ。もっとホメたってや!」


れいか「あ、あかねさん! そっち、ちょっとコゲてますよ!」

あかね「はっ! あ、あかん、また調子乗ってもた……」

なお「はい、それあかねのね。あたしはこっちのコゲてない方もーらおっと。んー、おいしー!」

あかね「とほほやで……」

3人・キャンディ「あははははっ!」


みゆき「…………」

やよい「あれ? みゆきちゃん、どうかした? あんまり食べてないね? 元気、ないみたいだけど……」

みゆき「……え? あ、ううん、そんなことないよ」

あかね「おかしーなー。みゆきにやったのはコゲとらんはずやけど……。生焼けやったか?」

みゆき「ち、違うよ! あかねちゃんのお好み焼きはおいしいよ? ただ、ちょっと考え事してただけ」

れいか「考え事……?」

みゆき「……みんな、今日、先生が言ってた将来についての話って、どう思った?」

みゆき「みんなって、将来の夢とか、あるのかな?」

なお「考え事、って、そのこと?」

みゆき「うん……」

みゆき「わたし、良く考えたら将来の夢とかって無いなぁ、って思って」

みゆき「みんなはどう?」

あかね「せやなぁ……。うちはやっぱりこのお店の繁盛やな。どんどんでっかくして、いずれは全国チェーンに! ……っちゅーのは調子乗りすぎやな」

あかね「ああでも、バレーボールもちゃんとやりたいなぁ。今年で中学最後やし。地区予選突破ぐらいはしたいわぁ」

あかね「ああー、色々あって決められへんわ!」


やよい「ねえねえ、あかねちゃん、ボーイフレンドのブライアンのことはいいの?」ニヤニヤ

あかね「なっ……(///)、や、やっかましわ。いらんこと言わんでええねん」

あかね「そっちは……、まあ……、ぼちぼちやるわ……(///)」

やよい「あははっ! あかねちゃん照れてる! かわいいー!」

あかね「やかまし、ゆーとるやろ!」

あかね「せやったら、やよい! あんたの夢はなんや——って、聞かんでももうわかっとるけどな」

やよい「うん! わたしはもちろん漫画家!」

やよい「前に佳作賞取ったから編集さんもついてくれたし、色々相談しながらガンバってるよ!」

やよい「目指せ、中学生作家デビュー! アンド週間連載!」

れいか「今はやよいさんが一番夢に近いところにいるみたいですね。うらやましいです」

やよい「れいかちゃんにうらやましがられるなんて、なんだか照れちゃうな……」

やよい「そう言うれいかちゃんは? 将来の夢ってあるの?」

れいか「……実は、私もまだみゆきさんと同じで見つかってはいないのです」

れいか「3年生に進級するに当たって、おじい様を初めとして、身近な方々に相談したりもしているのですが、」

れいか「毎回、"焦って探さなくても、自ずと自分だけの道が見えてくる" といった話になってしまっています」

れいか「ですので、今はムリに夢を探すよりも、日々を懸命に生きて、その中で見えてくることをじっと待とうと思っています」

れいか「みゆきさんも、そのうちご自分にピッタリの夢が見つかりますよ。焦ることはないと思います」

みゆき「そっかぁ……。れいかちゃんはしっかり考えててすごいなぁ……」

みゆき「じゃあ、なおちゃんはどう?」

なお「あたしは……、とりあえず、今はサッカーに向かって直球勝負かな」

あかね「とりあえず? なおのことやから、サッカー選手目指しとんのかと思とったけど」

あかね「ほら、今女子サッカー注目されてるやん? なんちゅーたっけ。なで……なで……、なで肩ジャパン?」

やよい「"なでしこジャパン" じゃない?」

あかね「ああ、それや、それ。それ目指さへんの?」

なお「……試してみたい気持ちはあるんだけど、将来一生の仕事、って考えると、ちょっと違う気もするんだよね。サッカーは好きだからやってるだけだし」

なお「だから、あたしもれいかやみゆきちゃんと一緒で探し中、ってことになるのかな」

みゆき「そうなんだ……」

あかね「でも、みゆきかて、最近絵本書き始めた、ってゆーとったやん。絵本作家とかじゃダメなん?」

キャンディ「あんまり上手じゃないけどクルー」

みゆき「も、もう、やめてよキャンディ! メルヘンランドのクイーンさまに言われたら自信無くなっちゃうよ」


みゆき「……っていうのは冗談だとしても、それこそなおちゃんと同じで、ただ趣味でやり始めただけなんだよね……」

みゆき「将来の夢、って、もっとこう……やるぞーっ! って思えるようなものじゃないとダメなような気がしてて……」

みゆき「わたしにとって、絵本はまだそこまで言えるほどのものじゃないんだぁ……」

れいか「そうですか……。随分、深刻に悩んでらっしゃるようですね」

あかね「ふぅん……」ジュージュー

あかね「ほれ、みゆき。次の焼けたで。食べや」

みゆき「あ、あかねちゃん。悪いんだけど、今はあんまり……」

あかね「いいから食べやって」

みゆき「う、うん……」パクッ


みゆき「……おいしい……! さっきのよりおいしいよ」

あかね「せやろ。今のはうちの気持ちをたっぷり込めた特製品や。"みゆき、元気出してや!" ってな」

あかね「みゆきの夢を見つけてあげることはでけへんかもしれんけど、元気付けてあげるくらいならうちらかて出来るで」

あかね「ここに頼りになる友達が5人もおるんや。元気が欲しくなったらいつでも相談したらええねん」

なお「そうだよ。落ち込んでるなんてみゆきちゃんらしくないよ」

やよい「"笑ってないとハッピーが逃げちゃう!" でしょ?」

れいか「私達にできることならお手伝いしますから。元気を出して」

キャンディ「そうクル! キャンディだって、メルヘンランドのクイーンクル! みゆきを元気にするくらいカンタンクル!」

あかね「お、ゆーようになったなぁ、キャンディ!」


みゆき「……みんな……! ありがとう! なんだか元気が出てきたよ!」ニコッ

あかね「よっしゃ! みゆきにスマイルが戻ったところで、お好み焼きパーティ再開といこか!」

なお「今度は焦がさないようにね、あかね」

あかね「せっかく気合入れたのにチャチャ入れんといてやー……」

4人・キャンディ「あはははははっ!」

〜 お好み焼き屋「あかね」前 〜

れいか「あかねさん、今日はごちそうさまでした」

なお「おいしかったよ! ごちそうさま!」

みゆき「それじゃ、みんな、また明日!」

やよい「うん! バイバーイ!」

あかね「帰り道気ぃつけやー!」

〜 星空家 帰路 〜

みゆき「……ねぇ、キャンディ」

キャンディ「クル? みゆき、どうしたクル?」

みゆき「わたしね、今とってもハッピーな気持ちだよ」

みゆき「元気付けてくれる友達があんなにいっぱいいる」

みゆき「それだけで、何でもガンバれる気がするよ!」

キャンディ「クルぅ! その意気クル! みゆきはやっぱり元気な方がいいクルぅ!」

みゆき「そうだね! ありがとう、キャンディ!」

キャンディ「クル!」

〜 七色ヶ丘市 公園 〜

青髪・長身の女性画家「——もうじき日が暮れる。だんだん人が少なくなってきたわね」

青髪・長身の女性画家「あまり人が少なくなっては意味が無い。そろそろ始めた方が良さそうだわ」


青髪・長身の女性画家「画題は……そうね、あの樹がいいかしら」


青髪・長身の女性画家「闇の絵の具よ! 闇の絵筆よ! キャンバスに絶望を描き出せ!」


シュババババッ


青髪・長身の女性画家「実体を持ってキャンバスから現れよ、"アキラメーナ"!」


ズズズズズズ…


アキラメーナ(樹木型)「アキラメーナァッ!」

〜 七色ヶ丘市 公園近くの歩道 〜

キャンディ「クル!!?」

みゆき「わっ!? ど、どうしたの、キャンディ? 急に騒いだらビックリしちゃうよ」

キャンディ「クル……クル……」

みゆき「……キャンディ? 震えてる……? 本当にどうしたの? 何かあった?」

キャンディ「何か……、何か良くないものが近くにいるクル……。この感じ……アカンベェとそっくりクル……!」

みゆき「!!? アカンベェ!? って、あの、バッドエンド王国の怪物!?」

キャンディ「こっちクル! 公園の中クル!」ピョーン

みゆき「あっ! 待ってキャンディ!」

〜 七色ヶ丘市 公園 〜

青髪・長身の女性画家「さあ、アキラメーナ。初仕事よ。お前の力で周りの人間の心を吸い取りなさい」

アキラメーナ(樹木型)「アキラメーナ!」


ズワァァァァァッ…


カップル(女性)「あっ……、何……? 急に……力が……」

カップル(男性)「お、おい、大丈夫か!? ——あ……、オレも、ダメだ……。力が……抜けていく……」

おばあさん「な……なにかしら……。急に……どっと……疲れが……、ああ……」

ポチョン ポチョン


青髪・長身の女性画家「なるほど。確かにアキラメーナが吸い取った心はこのボトルに絵の具として保存されるようね」

青髪・長身の女性画家「それにしても……濁った色。"ハズレ" なのは間違いないわね。他の所で別の人間の心を吸い取ってみようかしら」

みゆき「……な、何あれ……。樹の怪物……!?」

キャンディ「みゆき、タイヘンクル! 周りの人達がみんな元気ないクル!」

みゆき「あの怪物のせい……!?」


カップル(女性)「うう……」

カップル(男性)「ああ……」


みゆき「ひどい……! こんなの……、許せない!」ダッ

キャンディ「あ! みゆき! 待つクルー!」

みゆき「やめてぇっ! 町の人達にひどいことしないで!」

アキラメーナ(樹木型)「アギ?」

キャンディ「みゆき、ムチャクル! みゆきはもうプリキュアじゃないクル! 危ないクルぅ!」

みゆき「でも……、みんなから笑顔が消えてる……! 放っておけないよ!」


青髪・長身の女性画家「何、あの子供は……!? アキラメーナがいるのに心を吸い取られていない……!?」

青髪・長身の女性画家「……何故かはわからないけれど、邪魔なことは確かね」

青髪・長身の女性画家「アキラメーナ! 枝の腕でその子供を叩き潰してしまいなさい!」

アキラメーナ(樹木型)「アキラメーナァッ!」ブンッ


ドォォォォン!


みゆき「ひゃあぁぁぁっ!?」

みゆき「何とか……何とかしたいけど……! やっぱりムリぃっ!」


ダダダダダッ…

青髪・長身の女性画家「…………」


青髪・長身の女性画家「……逃げた? 何なの、あの子供は。邪魔をしたり、逃げたり……」

青髪・長身の女性画家「でも、心を吸い取れないのは気になるわね……」

青髪・長身の女性画家「アキラメーナ! あの子供を追いかけなさい!」

アキラメーナ(樹木型)「アキラメーナァ!」ドドドドドッ!

キャンディ「お、追っかけてきたクルぅ!」

みゆき「やった! 町の人達からは引き離せた!」


みゆき「でも……、これからどうしよぉーっ!? キャンディ、どうにかならない!?」

キャンディ「できるかわかんないけど、やってみるクル!」

キャンディ「ふんにゅにゅにゅにゅ……!」パァァッ…

みゆき「おおっ! キャンディすごい! 光ってる! 何か起こりそうだよ!」

キャンディ「ふんにゃーーっ!!」


ポンッ


みゆき「あっ、こ、これって……」

みゆき「スマイルパクト!」

キャンディ「へぇっ、へぇっ、何とか、それだけ、出せたクルぅ……」

みゆき「すごいよキャンディ! さっすがクイーンさま! よぉし、これなら!」


ザッ!


青髪・長身の女性画家「逃げるのをやめた? 今度は何?」

みゆき「町の人達を苦しめて……! 良くわかんないけど、絶対許さないんだから!」


みゆき「プリキュア! スマイルチャージ!!」


シーーーーーン…


みゆき「…………」

青髪・長身の女性画家「…………」

みゆき「…………あ、キュアデコルがないや。これじゃあ変身できない、よね」

アキラメーナ(樹木型)「……アギ?」

みゆき「あ、あははは……」


青髪・長身の女性画家「……アキラメーナ。やってしまいなさい」

アキラメーナ(樹木型)「アキラメーナァ!」ドドドドドッ!

みゆき「うひゃあぁぁぁぁぁっ!」ダダダダダダッ



青髪・長身の女性画家「……何だか疲れるわ……。何なの、一体……」

みゆき「キャンディキャンディキャンディ!! キュア! キュアデコルも出してぇっ!」

キャンディ「そ、それはムリクル……。デコルは元々お母さん——前のロイヤルクイーンさまが作った物クル……。キャンディにはまだデコルは作れないクルぅ……」

みゆき「ええええええっ!? じゃ、じゃあ変身できないじゃない! ど、どうしよう!!?」


アキラメーナ(樹木型)「アガァ!」ブンッ ブンッ


ドンッ! ドォォン!


みゆき「わっ! ひゃっ!」

みゆき「な、何とか逃げ切れてはいるけど……これじゃそのうち捕まっちゃう!」

ガッ


みゆき「あっ!」ドタッ

キャンディ「みゆき!!」

みゆき「あいたた……、転んじゃった……」

みゆき「あ……」

アキラメーナ(樹木型)「アキラメーナァ……」

青髪・長身の女性画家「全く、手間ばかり取らせて。追いかけっこはもうお終いよ。諦めなさい」

みゆき「……イヤ……」

青髪・長身の女性画家「何?」

みゆき「さっきから "諦めな" "諦めな" って……」

みゆき「そんなのイヤ……! わたし、絶対諦めたくない……!」

みゆき「みんなの笑顔を奪われたままなんて……絶対イヤ!!」


青髪・長身の女性画家「でもあなたには何もできないわ。それが現実よ。受け入れなさい」

青髪・長身の女性画家「さあ、アキラメーナ。トドメよ」

アキラメーナ(樹木型)「アキラメーナァッ!」ブンッ

みゆき「わたしは絶対……わたしは絶対……!」

みゆき「わたしは絶対! 諦めたりなんてしないんだからぁっ!!!」

キャンディ「みゆきぃぃぃっ!!!」パァァァァァッ!!


ドバァァァァァァッ!!


アキラメーナ(樹木型)「アガァッ!」ドォォォン!

青髪・長身の女性画家「アキラメーナが吹きとばされた!? これは……桃色の光!? 何が起こったの!?」

〜 桃色の光の中 〜

みゆき「——あれ? わたし、無事なの……?」


みゆき……みゆき……


みゆき「キャンディ? あれ? キャンディ、どこ? 見えないよ?」

キャンディ(デコル)「みゆき! ここクル!」

みゆき「えっ!? このちっちゃい羽の形のデコル……キャンディなの!?」

キャンディ(デコル)「そうクル! "みゆきを助けるクル!" って思ったら、キャンディがデコルになっちゃったクル!」

キャンディ(デコル)「みゆき! キャンディをスマイルパクトにはめてみるクル! もしかしたら、変身できるかもしれないクル!」

みゆき「え!? そ、そんなことしても大丈夫なの?」

キャンディ(デコル)「わからないけど……やってみるしかないクル!」

キャンディ(デコル)「みゆきは、みんなを助けたいクル? キャンディも同じ気持ちクル! きっとうまくいくクル!」

みゆき「キャンディ……」


みゆき「……わかった。やってみる!!」

パチンッ!

レディ!

みゆき「プリキュア! スマイルチャージ!!」

ゴー!

ゴーゴー! レッツゴー、ハッピー!!


ハッピー「キラキラ輝く、未来の光! キュアハッピー!!」

ハッピー「……できた……」

ハッピー「やったぁ! やったよ、キャンディ! またプリキュアになれたぁっ!!」

キャンディ(デコル)「やったクルぅ!」

ハッピー「しかもこれ! 前とちょっとカッコが違うね!」

ハッピー「フリフリが増えたり、所々に羽のアクセサリが付いたりして、ちょっと豪華なカンジ! かわいくなってるーっ!」


青髪・長身の女性画家「姿が……変わった……!? 一体何が……!」

青髪・長身の女性画家「わけがわからないけれど……! アキラメーナ! 行きなさい!」

アキラメーナ(樹木型)「アキラメーナァッ!」ブンッ

ハッピー「もう好き勝手にはさせないんだからぁっ!」


ガシッ!


青髪・長身の女性画家「アキラメーナのパンチを受け止めた!? ただの人間が……!?」

ハッピー「んんんんんんっ! でぇぇぇぇいっ!」ブンッ

アキラメーナ(樹木型)「アガァァッ!?」ドシィィィン!


青髪・長身の女性画家「今度は投げた!? あの巨体を!?」

キャンディ(デコル)「ハッピー! 今クルぅ!」

ハッピー「よぉーし! 久しぶりのぉっ!」

ハッピー「気合だ気合だ気合だぁーっ!!!」


パァァァァッ!


ハッピー「プリキュア! ハッピー・シャワーァァッ!!」

アキラメーナ(樹木型)「アガァァァァァ……」シュワァァァァ…


青髪・長身の女性画家「バカな……、アキラメーナが消えていく……! キャンバスまで……!」

青髪・長身の女性画家「浄化、したとでもいうの……!?」

青髪・長身の女性画家「くっ……!」

ハッピー「はぁー、よかったぁ……。ドタバタしたけど、何とかなったぁ……」


カップル(女性)「う……、私、一体どうしてたのかしら……」

カップル(男性)「あ、力が……戻ってきた……。おい、大丈夫か?」

カップル(女性)「うん、私は大丈夫」


おばあさん「あ、ああ、良かった、ちゃんと立てるわ。一時はどうなることかと……」


ハッピー「町の人達も元に戻ったみたい。よかった」

キャンディ(デコル)「みゆき、おつかれさまクル!」

ハッピー「あ、でもまだ、あの怪物を操ってた感じの人が残ってる……!」

ハッピー「あなたは……あなたは一体何者なの?」

青髪・長身の女性画家「……私の名前は "シアンナ"。絶望の国・"デスペアランド" からの使い」

シアンナ「そういうあなたこそ何者? ただの子供ではなさそうね」


ハッピー「わたしは、みんなの笑顔を守る伝説の戦士・プリキュア。キュアハッピー」

シアンナ「プリキュア……、キュアハッピー……。その名前、憶えたわ」

シアンナ「今日のところは引き上げるわ。あなたの得体が知れないからね」

シアンナ「でも、次に会う時は容赦はしない。覚悟しておきなさい」シュバッ


ハッピー「消えちゃった……」

ハッピー「絶望の国・デスペアランド……。バッドエンド王国とは違うのかな。キャンディ、何か知ってる?」

キャンディ(デコル)「キャンディもわからないクル……。おにいちゃんなら何か知ってるかも知れないけど……」

ハッピー「そっか……。また、新しい悪い人達がわたし達の世界を狙ってるのかな……」

ハッピー「でも……わからないことだらけだけど……」

ハッピー「みんなから笑顔を奪おうとしているなら、わたしが絶対にみんなを守ってみせる!」

ハッピー「だから、これからもよろしくね、キャンディ!」

キャンディ(デコル)「クル! キャンディこそよろしくクル、みゆき!」

ハッピー「うんっ!」

ハッピー「よぉーし! ガンバるぞーっ!!」

キャンディ(デコル)「クルぅ!!」



つづく

次回予告

みゆき「せっかく平和が戻ったと思ったのに、また新しい悪い人達がやってきちゃった!」

みゆき「わたしだけでもガンバりたいけど、やっぱり一人じゃ大変! あのシアンナって女の人に襲われて大ピンチ!」

みゆき「と、その時、わたしを助けてくれた一つの光! もしかして、白馬の王子様——じゃない! あ、あなたは!」


みゆき「『スマイルプリキュア レインボー!』 "復活! 太陽サンサン・キュアサニー!"」


みゆき「みんな笑顔でウルトラハッピー!」

こんなカンジで週1本ずつ上げていきたいと思います。
実際の番組よろしく、日曜朝 8:30 から上げていければいいなと考えています。
(明日はちょっとムリそうですが。。 ペースが軌道に乗るまで少しかかるかも)

よろしければ今後ともお付き合いをお願いします!


>>1は「スマイル」以外のシリーズも見たことあるの?

おっつおっつ
非常にそれっぽかった。期待してる!

期待

とても面白かったです。次回を期待しています。

おお、、好意的なご感想の数々、、感謝です!
これからもよろしくお願いします!
せいいっぱい、がんばるわ!


>>69
恥ずかしながら『スマイル』から入ったド俄かですが、
本作を書くにあたって今過去作を急いで視聴しているところです。

まだ未見のシリーズもありますが、
今のところ、特に『S☆S』と『フレッシュ』が好きです。

不定期更新でスミマセンが、『スマイルプリキュア レインボー!』再開します。
早く日曜に追いついて定期更新ができるようになりたい。。

〜 日野家 居間 〜

テレビ(ニュースキャスター)「先日の選挙で政権交代が行われました。新しい政権に期待が高まっています」


あかね「ふぅん……。世の中、なんか大変なことになっとんのかなー。うち、ようわからんけども。父ちゃん、わかる?」

大悟(あかね父)「んー……。実は、父ちゃんにも難しいことはわからんわ。ハハハ」

あかね「ハハハ、やないやろ……。ええんか? いい大人がそんなんで」

大悟「せやけどな、あかね。そんなわいでも、一つだけわかることがあるで」

あかね「? なに?」

大悟「それはな、世の中がどんなに変わっても、うちらお好み焼き屋にできることは、そない多くない、っちゅーことや」

大悟「わいらに出来ること。それは、うまいお好み焼きをぎょーさん焼いて、できるだけ多くのお客さんに笑顔になってもらうことや!」

大悟「要は、自分にできることを精一杯ガンバればええねん。いつだって、それがいっちゃん大事なんや」

あかね「おおおー……。さっすが父ちゃん! 言うことちゃうで! よっ、日本一! お好み焼き屋のカガミ!」

大悟「だははは! やめーや、照れるやないか!」


げんき(あかね弟)「……親子揃ってお気楽やなー……」

正子(あかね母)「あかねー! 電話やでー! みゆきちゃんからや!」

あかね「ほんまー!? わかったわ、今行くー!」

〜 日野家 廊下 〜

あかね「はいはーい、毎度おーきに、あかねちゃんでございますぅー」


みゆき(電話)「————」


あかね「!!? ……それ、ほんま? ——うん——うん」

あかね「その話、もう誰かにした?」


みゆき(電話)「————」


あかね「そっか。じゃあ、みゆきはこれからやよいに連絡頼むわ。うちからはなおとれいかに連絡しとく」


みゆき(電話)「————」


あかね「わかった。明日、みゆきんちに集合やな。そこで詳しい話、聞かせてや。——うん、ほな、またな」カチャッ

あかね「…………」


あかね「……また、悪い連中が来てもーたんやな……」


あかね「でも、今のうちに何ができるんやろか……」




スマイルプリキュア レインボー!

第2話「復活! 太陽サンサン・キュアサニー!」


〜 星空家 みゆき自室 〜

みゆき「ゴメンね、みんな。急に集まってもらっちゃって」

やよい「ううん、平気だよ。……それより、本当なの? 昨日言ってた話……」

れいか「絶望の国・"デスペアランド" ……。昨日の電話ではそこの人に襲われた、と聞きましたが」

みゆき「うん。わたしの目の前で怪物を操ってた "シアンナ" って女の人はそう言ってた」

なお「……せっかく、皇帝ピエーロをやっつけて平和になったと思ったのに……!」

あかね「また新しい戦いが始まるんかな……」


5人「…………」

やよい「ところで……、キャンディはどうしたの? 大丈夫? すっごく疲れてるみたいだけど……」


キャンディ「へぇっ……へぇっ……」グデーン


みゆき「あっ、キャンディはね、昨日からガンバってこれを作ってくれてたの!」


ゴト ゴト ゴトッ


なお「あ、これって、スマイルパクト!」

れいか「しかも 5つ……、全員分ありますね!」

キャンディ「つ、疲れたクルぅ……。1個だけでも疲れるのに、5個も作るのは大変だったクルぅ……」

あかね「へぇぇ、大したもんやなぁ! ちゃんとクイーンとして成長しとるんやな、キャンディ!」

キャンディ「え、えへへクル……」

あかね「せやけど、これならまたみんなで一緒に戦えるやん!」

やよい「そうだよ! なんってったって、わたし達はあの皇帝ピエーロもやっつけちゃったんだから! どんな悪い人が来ても大丈夫だよ!」

みゆき「……それがね、ダメなんだぁ」

れいか「え? どうしてですか? 以前と同じようにみんなで戦えばいいのでは?」

みゆき「キャンディから聞いたんだけど、デコルとか、プリンセスキャンドルとか、ロイヤルクロックとか……、」

みゆき「前に使ってたプリキュア用のアイテムはみんな、前のロイヤルクイーンさまが作ったものだから、クイーンさまがいなくなっちゃった時に一緒に消えちゃったんだって……」

キャンディ「ミラクルジュエルもそうクル……。皇帝ピエーロとの最後の戦いで消えちゃったクル……」


やよい「そ、そういえばそうだよね……。前の戦いの後、パクトもキュアデコルもみんな無くなって、わたし達プリキュアじゃなくなっちゃったもんね……」

れいか「それでは、今までの力は使えなくなってしまった、ということでしょうか……」

みゆき「う、うん、そういうことみたい……」

あかね「あ、あれ? 何かおかしない? 昨日、みゆき襲われたんやな? そしたら、どうやって悪いやつ追い払ったんや?? 変身でけへんのに」

みゆき「その時は本当にタイヘンだったんだけど、キャンディが何とかプリキュアに変身させてくれたの!」

なお「えっ? そうなの? キュアデコルも無いのに、どうやって?」

みゆき「キャンディ、あの時と同じこと、もう一回できる?」

キャンディ「わかったクル!」

キャンディ「デコル・チェーンジ! クル!」


ポンッ


あかね・やよい・なお・れいか「!!?」

あかね「キャ、キャ、キャンディがデコルになってもーたで!?」

みゆき「そうなの! このデコルをスマイルパクトにセットしたら、またプリキュアに変身できたんだぁ!」

キャンディ(デコル)「そうクル! キャンディにはまだデコルは作れないけど、キャンディの力全部を使えばプリキュアに変身させてあげられるクル!」

みゆき「だから、心配ごむよう! わたしがガンバって、悪い人を追い払ってみせるよ! まっかせて!」

あかね・やよい・なお・れいか「…………」

みゆき「……あ、あれ? みんな、どうしたの? 元気ないね……」


なお「それだと、今プリキュアとして戦えるのは、みゆきちゃんだけ、ってことになるよね……」

れいか「みゆきさんだけに負担がかかりすぎてしまうのではないですか……?」

やよい「そ、そうだよぉ! 今までだって、みんなで力を合わせたから何とかやってこれたのに、一人でだなんて……!」

キャンディ「だいじょうぶクル! きっとおにいちゃんが何とかしてくれるクル!」

れいか「ポップさんが?」

キャンディ「そうクル! おにいちゃんはとっても頭がいいクル! 新しい悪い人達が出てきたこともきっとわかってるクル!」

キャンディ「今もきっと、みんながプリキュアになれる方法も探してくれてるはずクル! キャンディはおにいちゃんを信じてるクル!」

キャンディ「だから、キャンディもガンバってスマイルパクトを作ったクル! その時までこれを大事に持っててほしいクル!」

みゆき「そうだよ! わたし一人じゃタイヘンかもしれないけど、だいじょーぶ! そのうち何とかなるよ!」

みゆき「だからね、もしまた、みんながプリキュアになれたら、その時に力を貸してほしいんだ」

みゆき「それまではわたしが何とかするから、何か困ったことがあったらわたしを呼んで! プリキュアに変身して、ぱぱーんと解決しちゃうから!」

あかね「……みゆき……」


あかね「…………」

あかね「……わかった。みんな、ここはみゆきに任せよ」

なお「あかね!? でもそれじゃあ、みゆきちゃん一人が大変じゃない! それでいいの!?」

あかね「そう言うても、うちらプリキュアになれへんし、協力しよ、思ても足手まといになるだけやで」

れいか「確かにそうですね……。私達が余計なことをしたら、かえってみゆきさんに迷惑をかけてしまうかも……」

やよい「そっか……、そうだよね……」

あかね「そういうことやから、ちょっとの間頼むで、みゆき!」

やよい「ゴメンね、みゆきちゃん……、力になれなくて……」

れいか「プリキュアになれるようになったら、私達も全力で一緒に戦いますから」

みゆき「うん! 任せて!」


なお「…………」

〜 星空家 前 〜

れいか「それではみゆきさん、今日のところは失礼します」

やよい「みゆきちゃん! 絶対、絶対ムリしないでね!」

みゆき「ありがとう、やよいちゃん!」


あかね「ほなみゆき、また明日なー! ガンバりやー!」

みゆき「うん! また明日ー!」

〜 日野家 帰路 〜

なお「……あかね、ちょっといい?」

あかね「あれ? どしたん、なお? 帰り道、こっちやったっけ?」

なお「あかねのことが気になってこっちに来たんだ」

あかね「へ? うちが? 何で??」

なお「あかね、ムリしてない? ホントはみゆきちゃんのこと、心配でしょうがないんじゃないの?」

あかね「!!」


あかね「……な、なんでやねん……。うちは別にそんなこと……」

あかね「さっき言うたとおりやで? 今何してもみゆきの足手まといになるだけや、って……」

なお「本当に? あたしには、そう言ってムリヤリ自分を納得させようとしてるようにしか見えないんだ」

なお「あたし、心配だよ……。みゆきちゃんはもちろんだけど、いざとなったらみゆきちゃんのためにムチャしそうなあかねのことも」


あかね「…………」

なお「…………」

あかね「……なおにはかなわんなぁ……。母ちゃんみたいによう見とるわ……」


あかね「なおの言う通りや。うち、みゆきの力になれないのが悔しくてしゃーないねん……!」

あかね「"みゆき、ほんまは一人で怖いんやないやろか" って、そんな風に思うと、心配で胸が締め付けられるようになるわ……!」

あかね「何でそんな時にうちは何もでけへんの……! 大事な友達が大変な目にあっとるのに……!」


なお「……あかね……」

なお「あかね。あたし達は、あたし達にできることでみゆきちゃんをサポートしていこうよ」

なお「一緒に戦うってだけがみゆきちゃんに対してしてあげられることじゃない。あたしはそう思うよ」

あかね「なお……」

なお「だから、約束して。絶対ムチャはしないって。あたし達がプリキュアになれるまでは、つらくっても全部みゆきちゃんに任せるって」

あかね「…………」

あかね「……わかったわ。約束する」

なお「あかね……!」

あかね「これ以上、なお母ちゃんのお説教くらいたくないもんなー! にひひ」

なお「あかね! あたしはホントに心配して——」

あかね「じょーだん! じょーだんやって! 心配してくれて、おおきにな、なお」

なお「……うん。あかねが元気になったんならよかったよ」

あかね「ほな、うちもう帰るわ! ほんま、おおきになー!」

なお「うん! 帰り道、気をつけて!」

あかね「はいはーい! ほななー!」

あかね(みゆきのためにできることは一緒に戦うだけやない、か……)


あかね(うちがみゆきにしてあげられること……、他になんかあるやろか……)

〜 翌日の放課後 七色ヶ丘中学校 3-1教室 〜

みゆき「んんーっ! やっと授業終わったー! さぁーて、今日は何をしようかなー?」


あかね「みーゆきっ!」ガシッ

みゆき「わっ! な、なに、あかねちゃん! 急に抱きついて!」

あかね「みゆき、この後ヒマ? 良かったら一緒にどっか遊び行かへん?」

みゆき「え? わたしはいいけど……、あかねちゃんの方こそ、部活はだいじょうぶなの?」

あかね「今日は部活お休みやねん。な、それよりどや? パーッと遊ばへんか?」

みゆき「そうなんだ。うん! それなら全然ウルトラオッケーだよ!」

あかね「よっしゃ! ほんなら駅前の繁華街でも行こか! しゅっぱーつ!」

みゆき「わ、わ! あかねちゃん、押さないでよぉ!」

なお(……あかね、自分なりのガンバり方を見つけたんだね)

れいか「なお、今日は一緒に帰——どうかしたの? 何だか嬉しそうだけど」

なお「ん? へへへ、べっつにー」

れいか「……? ヘンななお……」

〜 駅前 繁華街 ゲームセンター もぐら叩きゲーム機 〜

みゆき「ほっ! むっ!? このっ!」

キャンディ「みゆき、そこクル!」

みゆき「えっ!? どっち!? もー、全然追いつかなーい!」


もぐら叩きゲーム機「30てーん! 全然ダメダメー!」


みゆき「うえー、ホントにダメダメだぁー!」

あかね「にひひ、それじゃあかんなぁ。ちょっと貸してみ? うちが見本見せたるわ!」

あかね「うりゃっ! うりゃりゃりゃりゃっ!」

みゆき「わ、すごい! 速いよ、あかねちゃん! どんどん叩いてく!」


もぐら叩きゲーム機「85てーん! まいったぁ!」


あかね「ま、こんなもんやな! いつもお好み焼きのコテ振るうとるんや、これくらいおちゃのこサイサイやで!」

キャンディ「あかね、すごいクル!」

みゆき「ホントにすごいよ、あかねちゃん!」

あかね「ふふーん。もぐら叩きクイーンとでも呼んでや!」

〜 駅前 繁華街 ゲームセンター エアホッケーゲーム機 〜

みゆき「それっ!」

あかね「あっ!?」


ガコンッ!


みゆき「あっ、7点入った! やったぁ! これってわたしの勝ちだよね!」

あかね「う、うそやぁー……、うちがみゆきにスポーツで負けた……」

みゆき「ふふーん。エアホッケークイーンと呼んでもよろしくてよ?」

あかね「ま、まだや! 3本勝負やで! 2回勝つまではまだ終わっとらんわ!」

みゆき「えぇー!? 何それー! あかねちゃんズルい!」

あかね「なんとでも言いや! ほれ来い!」

みゆき「んもー! こうなったら何回でも勝っちゃうんだから!」

〜 駅前 繁華街 ゲームセンター プリクラ機 〜

みゆき「えっと、フレームは……あっ、シンデレラがあるよ! ねぇねぇ、あかねちゃん、これでいい!?」

あかね「おっ、かわいくてええんちゃうか? それにしよか!」

みゆき「この中だったらキャンディ出してもだいじょうぶだよね。一緒に撮ろう!」

キャンディ「クルぅ!」


プリクラ機「それでは撮影します! 3、2、1…」

あかね「(にひっ)」


あかね「そりゃっ!」ブニュッ

みゆき「はぷっ!」


パシャッ!


みゆき「な、何するの、あかねちゃん! ……あーっ、わたしの顔がつぶれてるー!!」

あかね「あっはっはははは! ヘンな顔やなー!」

みゆき「ひどいよー! はっぷっぷー!」

みゆき「こーなったら……、あかねちゃんの顔もヘンにしてやるぅー!」

あかね「あははは! ゴメンゴメン! けど、せやったらみんなでヘンな顔して撮ってみんか? その方がおもろいで!」

みゆき「えぇー、わたしまたヘンな顔で撮るのー!?」

キャンディ「でも面白そうクル! みゆきも一緒にやろうクル!」

みゆき「んー……、しょうがないなぁ……」

あかね「じゃあ、みんなでこうやって顔つぶして」ブニュッ

みゆき「ぶにゅっ」ブニュッ

キャンディ「ふにゅっ」ブニュッ


プリクラ機「それでは撮影します! 3、2、1…」


みゆき・あかね・キャンディ「はっぷっぷ!」


パシャッ!

〜 駅前 繁華街 カフェテラス 〜

みゆき「あーっ、楽しかったー! 笑いすぎてほっぺた痛いよー!」

あかね「そっか、ほんま良かったわ」

みゆき「でも、なんで今日、わたしだけ急に遊びに誘ってくれたりしたの? いつもだったらみんなで遊ぶのに」

あかね「え? あ、うん……それはやな……」

みゆき「……もしかして、気を遣ってくれてる? わたし一人だけまたプリキュアになっちゃったから」

あかね「え!? あー、いや、そんなことー……」

あかね「みゆきにまでわかってまうなんて……、なおが鋭いんやなくてうちがロコツなだけなんかな……?」

みゆき「? なおちゃんがどうかした?」

あかね「ああー、実は、やな……、昨日の帰り、なおと相談したんや。一人で戦わなあかんみゆきのために、何かできることないかな、って」

あかね「そん時、なおにも言ったんやけど、ほんまはな、うちも一緒に戦えんのが悔しいんや」

あかね「みゆき、ほんまに大丈夫か? 怖いことないか? 一人で戦うなんて、心細いんやないか?」

あかね「もしそうなら、うちもみゆきを助けてやりたい。けど、今はそれができへん。それが悔しゅーてたまらんのや……」

みゆき「……あかねちゃん……」


あかね「だから、今うちにできることは、こうやってみゆきを笑かして、一緒に笑って、元気付けてあげることだけや」

あかね「しょーもないことやけど、これが今うちにできる精一杯や。ゴメンな。大したことでけへんで……!」

みゆき「……あかねちゃん」ギュッ

あかね「……みゆき? どないしたん、うちの手握って」


みゆき「しょうもなくなんてないよ! そんなこと、全然ない!」


みゆき「……ホントはね、あかねちゃんの言う通り、昨日までは一人で戦うの、ちょっと怖かったんだ……」

みゆき「でも、あかねちゃんがこんなに一生懸命にわたしのことを応援してくれてる! みんなも、すっごく心配してくれてる! わたし、それだけでガンバれるよ!」

みゆき「もうちっとも怖くないよ! あかねちゃんが元気をいっぱいくれたから! 本当に、ありがとう、あかねちゃん!!」


あかね「……みゆき……!」

あかね「……あはは、これじゃああべこべや。うちがみゆきを元気付けるはずやったのに、うちがみゆきの笑顔に元気もろてもーたわ……」

みゆき「何言ってるの! 笑って、笑いあって、元気をあげて、元気をもらって。それがわたし達、"スマイルプリキュア" だよ!」

みゆき「変身できなくたって関係ない! わたし達はいつだって仲間で、友達だよ!」

あかね「……うん……せやな! おおきにな、みゆき!」

みゆき「わたしの方こそ、ありがとう! あかねちゃん!」

〜 七色ヶ丘町駅 駅前広場 〜

シアンナ「ここは本当に人が多いわね。"あれ" を探すのなら、最初からこのくらい人の多いところでやればよかったわ」

シアンナ「さて、今日の画題は——」


駅ホームのアナウンス「2番線に電車が参ります。危ないですので、白線の内側にお下がりください」


ガタン ガタン


シアンナ「——あれにしようかしら」ニヤッ

シアンナ「闇の絵の具よ! 闇の絵筆よ! キャンバスに絶望を描き出せ!」


シュババババッ


シアンナ「実体を持ってキャンバスから現れよ、アキラメーナ!」


ズズズズズズ…


アキラメーナ(電車型・2両編成)「アキラメーナァッ!」


シアンナ「さあ、アキラメーナ。この場所の近くにいる者全員の心を吸い取りなさい!」

アキラメーナ(電車型・2両編成)「アキラメーナァ!」


ズワァァァァァッ…

〜 駅前 繁華街 カフェテラス 〜

ウェイター「……うっ……」バタッ

カフェ女性客「えっ……何……力が、抜けて……」


あかね「!? な、なんやこれ!? 周りの人が急にバタバタ倒れていくで!?」

みゆき「これ……、この間の時と同じ……!」

あかね「例のなんちゃらランドってやつか!?」

みゆき「うん、多分……! 行くよ、キャンディ!」

キャンディ「わかったクル!」

キャンディ「デコル・チェーンジ! クル!」

パチンッ!

レディ!

みゆき「プリキュア! スマイルチャージ!!」

ゴー!

ゴーゴー! レッツゴー、ハッピー!!


ハッピー「キラキラ輝く、未来の光! キュアハッピー!!」

あかね「……もう何も言わへん。頼むで、ハッピー!」

ハッピー「うん! 行ってくる!」


バッ!

〜 七色ヶ丘町駅 駅前広場 〜

ポチョチョチョチョン ポチョチョチョチョン


シアンナ「……絵の具の量は多く取れているけど、また濁った色ばかり……。"あれ" は望むべくもないわね。探し方をもう少し考えないとダメかしら……」


ハッピー「そこまでだよ!」シュタッ


シアンナ「また会ったわね。プリキュア、だったかしら」

ハッピー「こんなに多くの人達を苦しめて……! 早く元に戻して!」

シアンナ「私も仕事なの。そう言われてすぐに戻すわけにもいかないわ。やめてほしければ力ずくで止めてみなさい」

シアンナ「ただし、この子を倒せれば、の話だけど」パチンッ!


アキラメーナ(電車型・2両編成)「アキラメーナァ!」

ハッピー「遠慮なんて、しないんだからぁっ!」

ハッピー「ハッピー・キィーック!」ドガッ!

アキラメーナ(電車型・2両編成)「アガァッ!」ドシィィン!


キャンディ(デコル)「ハッピー! チャンスクル!」

ハッピー「うんっ! プリキュア! ハッピー・シャワーァァッ!!」


シアンナ「(ニヤッ)」

シアンナ「前と同じ手は通用しないわ」パチンッ!


アキラメーナ(電車型・1号車)「アキラメーナァ!」
アキラメーナ(電車型・2号車)「アキラメーナァ!」


ハッピー「えっ!? 電車が分かれた!? そんなのありぃっ!?」

キャンディ(デコル)「ああっ! ハッピー・シャワーが外れちゃったクルぅ!?」

シアンナ「プリキュア。確かにあなたはアキラメーナを上回る力を持っているようね。それは前回の戦いで分かっていたわ」

シアンナ「でも、例え力で上回っていたとしても——」


アキラメーナ(電車型・1号車)「アキラメーナァ!」
アキラメーナ(電車型・2号車)「アキラメーナァ!」


ハッピー「うひゃぁっ! 2ついっぺんに……!」


シアンナ「—— 1 対 2 ならどうかしら?」


ドガァァァァン!


ハッピー「きゃあぁぁぁっ!?」

キャンディ(デコル)「ハッピー! だいじょうぶクル!?」

ハッピー「う、うん、なんとか……!」

キャンディ(デコル)「! ハッピー! 前クル!」

アキラメーナ(電車型・1号車)「アキラメーナァ!」グワッ

ハッピー「これくらいなら、受け止めてみせるっ!」ガシッ


ザザザザザザッ


ハッピー「んんんんんんんん!」

シアンナ「アキラメーナの突進を受け止めるとは、さすがにやるわね。でも……」


アキラメーナ(電車型・2号車)「アキラメーナァ!」グワッ

キャンディ(デコル)「ハッピー! 今度は横クル!」

ハッピー「えっ!?」


ドガァァッ!


ハッピー「うあぁぁぁっ!?」

〜 駅前 繁華街 カフェテラス 〜

あかね「……なんやねん、あれ……! 寄ってたかって……あんなんどうしよもないわ……!」

あかね「……何とか……、何とかならへんの……!?」

あかね「何とかでけへんの……!?」

なお(回想)『だから、約束して。絶対ムチャはしないって。あたし達がプリキュアになれるまでは、つらくっても全部みゆきちゃんに任せるって』


あかね「…………」


あかね「なお、スマン。約束、やぶるで」

〜 駅前 繁華街 上空 〜


バサッ バサッ バサッ


????「やっべぇ、もう始まってやがる……!」

????「頼むぜ、間に合ってくれ……!」

〜 七色ヶ丘町駅 駅前広場 〜

ハッピー「はぁっ……はぁっ……!」

キャンディ(デコル)「ハッピー……! どうするクル……!?」

ハッピー「な、何とか、お互いにぶつけたり、できないかなぁ……」


アキラメーナ(電車型・1号車)「アキラメーナァ!」ガガガガガガッ
アキラメーナ(電車型・2号車)「アキラメーナァ!」ガガガガガガッ


キャンディ(デコル)「すごく速いクル……! むずかしそうクル……」

ハッピー「でも、やらなきゃ……! 一人でガンバるって、みんなと約束したんだから……!」

あかね「おぉーい! こっちや! こっちに動けるのがもう一人おんでぇー!!」

ハッピー「!? あ、あかねちゃん!!?」


シアンナ「まただわ……! あの子供も、アキラメーナがいるのに心を吸われていない……」

シアンナ「と、いうことは、あの子供もプリキュア……? "プリキュア" は一人ではないのかしら」


シアンナ「……まあ、どちらでもいいわ。邪魔をするのなら叩き潰すのみよ」

シアンナ「アキラメーナ! その子供も突き飛ばしてしまいなさい!」

アキラメーナ(電車型・2号車)「アキラメーナァ!」ガガガガガガッ


あかね「そや、その調子やで! こっちやこっち!!」

あかね(ハッピー、今や! うちが引きつけとる間にもう一匹の方、頼むで!)

シアンナ「…………」

シアンナ「姿を変える様子は無い……。どうやらあっちはプリキュアと違って普通の子供のようね」

シアンナ「ただの人間が、なんのつもりかしら。アキラメーナから逃げ切れるとでも思うの?」


アキラメーナ(電車型・2号車)「アキラメーナァ!」ガガガガガガッ


あかね(まずいわ……、思ってたよりずっと速いで……! いつまでも逃げ回ってられへん……!)

あかね(でも、でも……!)

あかね「うちは絶対負けへん! ハッピーのためにガンバるんやぁっ!!」

ハッピー「あかねちゃん……、もしかして、わたしを助けに……!?」

キャンディ(デコル)「でもあぶないクル! ハッピー! あかねを助けるクル!」

ハッピー「うんっ!」

シアンナ「あなたの相手はこっちよ」パチンッ


アキラメーナ(電車型・1号車)「アキラメーナァ!」ガガガガガガッ


ハッピー「! ど、どいてよぉ! このままじゃ、あかねちゃん……あかねちゃんが!!」

シアンナ「うまく逃げ回っているけど、ここまでね。諦めなさい」

アキラメーナ(電車型・2号車)「アキラメーナァ!」ガガガガガガッ


あかね「!!?」

あかね(あかん……追いつかれ——)


ハッピー「あかねちゃぁぁぁぁん!!」

????「ちょっと待ったぁぁぁっ!!」


カァァァァァッ!


シアンナ「何!? 光が、降ってきた!?」


あかね「うわっ! まぶしっ……!」


アキラメーナ(電車型・2号車)「アガァ!?」ズザァァァッ


あかね「電車が……それたん……? 今の光で目がくらんだんかな」

ハッピー「あかねちゃん! 大丈夫!? どこもケガしてない!?」

あかね「あ、うん、うちは大丈夫や」


あかね「ゴメンな、ハッピー。やられとるハッピー見てたらいてもたってもいらんなくなって、結局ムチャしてもた……」

あかね「"足手まといになる" 言うたの、うちなのにな……ハハハ」

ハッピー「ううん。あかねちゃんが無事ならよかったよ。助けてくれて、ありがとう!」

あかね「ハッピー……」

ガンッ


あかね「あたっ!? な、何や? 何か降ってきよったで!?」

ハッピー「あれ? あかねちゃんの頭に当たったの、これ、絵本だよ。『赤ずきん』……?」


????「よお、お前ら! 久しぶりウル! 何とか間に合ったウル!」

ハッピー・あかね「!!?」

あかね「あ、あんたは……!」

ハッピー「ウ、ウルフルン!!?」


????「……そいつは昔の名前ウル」

ウルルン「今のおれは、メルヘンランドの戦士・ウルルンだウル!」

ウルルン「お前らが危ねえ、って知って、その本に乗って飛んできたウル!」

ウルルン「おい、あかね!」

あかね「な、なんや!?」

ウルルン「おれが力を貸すから、プリキュアに変身するウル!」

あかね「! できんのかいな、そんなこと!?」

ウルルン「事情は全部わかってるウル! 新しい敵が来たって事も、おれ達、メルヘンランドの妖精が力を貸せば、お前達がまたプリキュアに変身出来ることも!」

ウルルン「……でも、あかね、お前はおれのことが信用できねえかもしれねえウル……」

ウルルン「おれも、お前らには言わなきゃいけねえことがあるウル……」

ウルルン「それでも、今だけは……黙っておれに力を貸させてくれウル!!」


あかね「……何言うとんねん……!」


あかね「うち、プリキュアにまたなれんなら……ハッピーの力になれんなら、何だってすんで!」

あかね「むしろうちから頼むわ! 力、貸してや、ウルルン!」


ウルルン「あかね……!」

ウルルン「よっしゃあっ! それじゃあ、行くウル!」

あかね「おう! やったんで!」

ウルルン「デコル・チェーンジ!」

パチンッ!

レディ!

あかね「プリキュア! スマイルチャージ!!」

ゴー!

ゴーゴー! レッツゴー、サニー!!


サニー「太陽サンサン、熱血パワー! キュアサニー!!」

サニー「……やった……! また、またプリキュアになれたでーーっ!!」

サニー「しかもカッコちょっと変わっとんな! あちこちモフモフっとしてて、何やオオカミっぽくなっとるで!」

ウルルン(デコル)「そいつぁ、おれの力が混ざってるからウル。パワーも今までより上がってるはずウル!」

サニー「ほんまか!? ほんなら……負ける気せえへんな!」

シアンナ「やはり、あなたもプリキュアだったのね」

シアンナ「でも、一人増えたところで、数の上ではまだ互角!」

シアンナ「アキラメーナ! 2人まとめて突き飛ばしなさい!」


アキラメーナ(電車型・1号車)「アキラメーナァ!」ガガガガガガッ


サニー「……互角、やて?」

サニー「いい機会や、教えたる。"プリキュア" っちゅうもんがなんなのか」スッ


ドガンッ!!


アキラメーナ(電車型・1号車)「アガァ!?」

シアンナ「!!? そっ、そんなバカな! アキラメーナの突進を片手で止めた!?」

サニー「うちらプリキュアの力は、1 + 1 の単純な算数やあらへん」

サニー「大好きな仲間と一緒に戦う時、うちらの力は何倍にも、何十倍にもなるんや!」

サニー「ただおんなじのが並んどるだけの、あんたらと一緒にせんといてや!!」


ハッピー「サニー……!」


サニー「ハッピー! 一気に決めるで! もう一匹の動きを止めてや!」

ハッピー「あっ、うん! わかった!」

ハッピー「ハッピー・パァーンチッ!」ガンッ!

アキラメーナ(電車型・2号車)「アギッ!?」


ガシャァァン!


サニー「よっしゃ! ええで、ハッピー! 後は、こいつを……! んんんんんん……!!」


ググググググッ


アキラメーナ(電車型・1号車)「ア、ア、アギッ!?」

シアンナ「アキラメーナを持ち上げた!?」


サニー「そいつに向かって、ブン投げたるっ! おりゃああああああっ!!」ブンッ


アキラメーナ(電車型・1号車)「アガァァァァッ!?」


アキラメーナ(電車型・2号車)「アギッ!? アッ、アッ、アッ……!」


ドガァァァァァァン!!


アキラメーナ(電車型・1号車)「アガァァァァッ!」
アキラメーナ(電車型・2号車)「アガァァァァッ!」

サニー「今や、ハッピー! 一緒に行くで!」

ハッピー「うんっ!」


サニー「プリキュア! サニー・ファイヤーァァッ!!」
ハッピー「プリキュア! ハッピー・シャワーァァッ!!」


ドォォォォォォォォンッ!!


アキラメーナ(電車型・1号車)「アガァァァァァ……」シュワァァァァ…
アキラメーナ(電車型・2号車)「アガァァァァァ……」シュワァァァァ…


シアンナ「くっ、またしても……!」

シアンナ「……ここは一度本国に帰って報告した方が良さそうね……」

シアンナ「プリキュア! 次は邪魔はさせない。憶えてなさい」シュバッ


サニー「へーん! おととい来ぃやー!」

市民・男性「う……オレ、どうしたんだ……」

市民・女性「あ、動ける……。何だったの……?」


サニー「あ……、ハッピー、このままここにおったらマズくない?」

ハッピー「そ、そうだね。気付いた人達にプリキュアのカッコ見られたら大騒ぎになっちゃう……!」

サニー「したらひとまず……スタコラサッサやでー!」

〜 七色ヶ丘市 河川敷 高架下 〜

サニー「……この辺なら大丈夫やろ。パクト開けて、っと」カパッ


ポンッ!


ウルルン「ぷはぁっ! デコルになるっつーのも、結構窮屈なもんだウル!」


ハッピー「はい、キャンディも。今日もありがとね!」カパッ


ポンッ!


キャンディ「みんな無事でよかったクル!」


ウルルン「よぉ、クイーン! お前も久しぶりウル! 元気してたウル?」

キャンディ「ウルルンも元気そうクル! でも、なんで急にこっちに来たクル?」

あかね「あ、そや。それ聞きたかったんや。"事情わかっとる" みたいなこと言うとったけど」

ウルルン「ああ、そりゃあ全部ポップのおかげウル」

キャンディ「! おにいちゃんが!?」

ウルルン「急に血相変えたポップに呼び出された、と思ったらよぉ、"プリキュアのみんなが危ないから助けに行ってくれ" って言われたウル」

ウルルン「あいつのところに妙な手紙が届いたみたいで、それで何かとんでもないことになってる事を知ったみてぇウル」

ウルルン「デコルになってお前らをプリキュアにする、ってのもアイツのアイデアウル」


キャンディ「おにいちゃん……、やっぱり、やっぱり、みゆき達を助けようとしてくれたクル……!」

みゆき「キャンディ……、よかったね!」

キャンディ「クルぅ!」

ウルルン「あー、それでな、あのな、お前らによ、ちょっと、言わなきゃなんねえことが……あるウル。聞いてくれウル」

あかね「? さっきもそんなこと言っとったけど。なんや、急にモジモジして」

ウルルン「あのな、その、な……」

ウルルン「あかね! みゆき! ゴメンウル!」


みゆき・あかね「!!?」

あかね「な、なんやねん、急に!? ビックリしたわ!」

みゆき「"ゴメン" って、なんで? なんで謝るの?」

ウルルン「……おれ達は、あの時、ハッピーのおかげで元の姿に戻れたけどよ……」

ウルルン「バッドエンド王国の幹部だった頃のこと、全部憶えてんだウル……」


ウルルン「メルヘンランドに帰ったおれ達は、クイーンやポップがかばってくれたおかげで、イジメられることもなく、平和に過ごせるようになったウル」

ウルルン「でも、幸せになればなるほど、バッドエンド王国の時のことを思い出して、ツラくなるウル……」

ウルルン「"今まで、なんてひでえことをしてきたんだ" って……」

ウルルン「特にあかね。お前にはひどいことしちまったウル……」

ウルルン「大事にしてたもんぶっ壊して、笑って……!」

ウルルン「謝っても謝りきれねえウル……!」


あかね「…………」

ウルルン「どんなに謝っても、許してもらえねえかもしれねえウル……」

ウルルン「でも、でも、どうしてもお前らには謝りたかったウル!」

ウルルン「そんで、できることなら……これからも一緒に——」


ギュッ


あかね「ウルルン、もうええ。ウルルンの気持ちは十分伝わったわ」


あかね「あれは元々ウルルン達のせいやなかったし、今、こうしてちゃんと謝ってもろた」

あかね「ケンカしたって、謝って、許して、仲直りできたら友達や!」

あかね「みゆきも、それでかまへんよな?」

みゆき「もっちろん! みんな笑顔の方が、ウルトラハッピーだもん!」

ウルルン「あかね……みゆき……!」

あかね「それに、ウルルンのおかげでみゆきを助けることができた」

あかね「うちもプリキュアに変身できれば、みゆき一人につらい思いさせんで済むんや。今はそれが嬉しゅーてたまらんわ」

あかね「せやから、ウルルンにはこれからも力を貸してほしいねん」


あかね「っちゅーわけやから、よろしゅーな、相棒!」ニカッ


ウルルン「うっ、うぅ……。あかね……あかねぇぇっ! ゴメンなぁっ!」

あかね「おお、おお、よしよし。こうもちっこくなってまうとカワイイもんやなぁ」

みゆき「(ニコニコ)」

あかね「ん? どしたん、みゆき? 妙にニコニコして」

みゆき「うん。去年のことを思い出してたんだぁ」

みゆき「わたし達、"スマイルプリキュア" の始まりは、やっぱりわたしとあかねちゃん、このふたりだったな、って」

あかね「……そーいえば、そやな」

みゆき「だからわたし、あかねちゃんとまた一緒にプリキュアやれて、すごく嬉しいの」

みゆき「あかねちゃんがいてくれれば、どんな時でも元気が湧いてくるもん!」

みゆき「ひとりじゃないって……いいな、って思えるんだ!」

あかね「……せやな!」


あかね「うちだけやない。やよいも、なおも、れいかも、きっとすぐ力貸してくれる」

あかね「また一緒にガンバってこーや! うちら 5人揃えば、絶対誰にも負けへんで!」

みゆき「うんっ!」


あかね「よっしゃーっ! 悪いヤツどんと来いや! これからもハリキって行くでーっ!」

みゆき「おーっ!」

グゥゥゥゥゥゥ…


みゆき・あかね「…………」


あかね「……誰や、お腹鳴らしたの。うちやないから、みゆき?」

みゆき「えへへ……。プリキュアになったらお腹空いちゃったみたい」

あかね「ぷっ。まったく、しまらんなぁ」

あかね「まっ、"腹が減っては戦はできぬ" ゆーからな! 帰りにウチに寄っていきや。お好み焼きおごるで!」

みゆき「ほんとに!? 昨日食べたばっかりでなんか悪い気もするけど……」

あかね「遠慮すんなや! うちとみゆきの仲やろ!」

みゆき「えへへ、うんっ!」


ウルルン「おっ、オコノミヤキって、あの丸くてウマイやつウル!? あかね! おれにもくれウル!」

あかね「あーん? あんた、ウルフルンだった時、うちのお好み焼き食べて "腹に入ればみんな一緒" とか言うとらんかった? そんなこと言うやつには作りたかないなぁ」

ウルルン「いや、だからそれは、バッドエナジーのせいで……(ゴニョゴニョ)」

あかね「……なーんて、ウソやって! ウルルンにも作ったるわ! これからバリバリ働いてもらわんとあかんからな! 腹いっぱいになるまで食いや!」

ウルルン「ホントウル!? ぃやったウルーっ!」

あかね「何や、急に元気になりよって……。ゲンキンなやっちゃで」


みゆき・あかね・キャンディ「あはははははっ!」



つづく

次回予告

みゆき「ウルルンと一緒にやって来た他の妖精さん達を探すことになったわたし達」

みゆき「やよいちゃんがその妖精さんを見つけたんだけど、妖精さんは隠れちゃったみたい……」

みゆき「そんな時に限ってまた新しい悪い人がやってきちゃった! やよいちゃんと妖精さんはどうなっちゃうの!?」


みゆき「次回、『スマイルプリキュア レインボー!』 "閃け! ぴかぴかぴかりん・キュアピース!"」


みゆき「みんな笑顔でウルトラハッピー!」

今回はここまでです!
お読みいただいた方、ありがとうございました。
やっぱりあかねちゃんはいい。。ホントに良く動いてくれる。


あ、それと更新についてなんですが、
来週から日曜朝 8:30 にアップしていくことにします。

ホントは『ドキドキ!』の話数に合わせたかったんですが、、
遅れを取り戻すために不定期更新が続いてもなんなので。。


それでは、よろしければ次回もまたよろしくお願いします!

乙ー

中々面白いな

三幹部来るとか熱い展開だな。


普通にスマプリっぽくて面白いわ

スマプリ史上最長のSS、是非完成させてください。
僕達、めちゃくちゃ応援しています。

この長さだとこのスレに12話まで書けそうですね

スーパーマリオブラザーズ・wiiの人sageるの忘れてるよ!

うひゃー。。
こんなに応援していただき、ありがたい限りです!
せいいっぱい、がんばるわ!

だんだんペースできてきたので、この調子でやっていければ、と思います。

『スマイルプリキュア レインボー!』

このあとすぐ!

〜 黄瀬家 やよい自室 〜

やよい「——すー、すー……」


千春(やよい母)「——よい、やよい——起きなさい——」

やよい「ん……、あと一日……待って……くらさい……。むにゃ……」

千春「寝ぼけてないで! 早く起きないと、遅刻しちゃうわよ!」

やよい「んー…………、はっ!」


やよい「えっ!? あれ!? わたし、寝ちゃってたのぉ!?」

千春「もう、また遅くまで漫画描いてたの? いくら起こしても全然起きないんだから。机で寝ちゃったりして、風邪ひいちゃうわよ。それより、早く起きなさい!」

やよい「あっ、ママ。おはよう」

千春「だから! のんきなこと言ってる場合じゃないわよ! ほら、これ見て!」

やよい「これ、って、太陽マンの時計……」


8:12


やよい「!!?」

やよい「わぁぁっ! まずいよ遅刻しちゃうよどうしようー!?」

千春「ほら、だから急いで支度なさい!」

やよい「でもでもぉ! もうダメだよ間に合わないよぉー!」

千春「もう、慌てないの。ほら、制服、そこにかけておいたから、まず先に着替えちゃいなさい。で、その後すぐ歯を磨いて」

千春「それが終わったら、朝ごはんを食べなさい。もう準備はできてるから」

千春「急げばまだ間に合うわよ、きっと。だから、あきらめちゃダメ。落ち着いて、ね?」

やよい「うぅー……、ママ、ありがとう……!」

やよい「(パサッ)(シュルッ)」(着替え中)


やよい「(シャコシャコシャコシャコ)」(歯磨き中)


やよい「ああっ、やっぱりもうダメ! パンだけもらってくね!」ダッ

千春「あっ、ちょっとやよい! お行儀悪いわよ!」

やよい「でも食べてたらもう間に合わないもん! 行ってきまーす!」


バタンッ


千春「……もう、そそっかしいんだから」

バタンッ


やよい「ただいまー!」

千春「って、何? どうしたの? 忘れ物?」

やよい「あ、うん。忘れ物、というか、忘れ事……?」


やよい「パパ、行ってきます」


勇一(やよい父:故人) の写真「」


千春(……やよい……)

やよい「それじゃ、ママ! 今度こそ行ってきまーす!」


バタンッ


千春「……行ってらっしゃい」ニコッ

〜 七色ヶ丘中学校 通学路 〜

やよい「いほげいほげいほげーっ! ひほふひひゃうぅーっ!(急げ急げ急げーっ! 遅刻しちゃうぅーっ!)」


やよい(あっ、でも、パンくわえながら登校って、漫画だと出会いの王道パターンだよね!)

やよい(もしかしたら……何かステキな出会いがあるかも!?)

やよい(そこの角を曲がったら、とってもカッコイイ男の子とぶつかっちゃったり——)

ガッ


やよい「ひゃっ!?」


ドタッ


やよい「あいたた……、転んじゃった……」

やよい「あーっ! パンが落ちちゃった!? もう食べられないよぉ……」

やよい「……あれ? 今、何かにつまずいた……?」

????「あいててて……。何かに蹴っ飛ばされたオニ……」

やよい「!!?」


やよい「あ、あなたは……!」




スマイルプリキュア レインボー!

第3話「閃け! ぴかぴかぴかりん・キュアピース!」


〜 デスペアランド 王宮 玉座の間 〜

シアンナ「デスペア国王陛下。シアンナ、ただ今帰還いたしました」

"デスペア国王" と呼ばれた青年「ご苦労。それで、成果はどうだった」

シアンナ「はっ、"心の絵の具" の入ったボトルはこちらになります。お受け取り下さい」

デスペア国王「うむ」

チャポン チャポン

デスペア国王「……何と醜い色だ……! 本当にこんなものしか採れなかったのか?」

シアンナ「はい。"リアルランド" にて 2度ほど "心の絵の具" の回収を試みましたが、結果はご覧の通りです。お望みのものではないのは明白かと」

デスペア国王「当たり前だ……! 私が望む物がこんな汚らわしいものであるはずがない……! 今すぐ破棄してくれる」


??「お待ち下さい、国王陛下。その "心の絵の具"、私めにお預けくださいませんでしょうか」

デスペア国王「大臣……」

"大臣" と呼ばれたローブの男「そのような汚らわしい物……、いえ、汚らわしいからこそ、良い "闇の絵の具" の材料となりましょう」

大臣「そちらの絵の具の処置、何とぞこの私にお任せくださいませ」

デスペア国王「いいだろう、好きにするがいい。……このようなもの、見たくもないわ……!」

大臣「ありがとうございます、陛下」

シアンナ「……ところで陛下。ぜひともお耳に入れておかなければならない事がございます」

デスペア国王「何だ? 言ってみよ」

シアンナ「はっ」


シアンナ「実は、"心の絵の具" の回収を行っている最中、妙な連中に邪魔をされました」

デスペア国王「妙な連中、だと?」

シアンナ「はい。その者達は自らのことを "伝説の戦士・プリキュア" と名乗っておりました」

シアンナ「普段は何の変哲も無い "リアルランド" の子供なのですが、姿を変えることにより、私の作り出したアキラメーナをも上回るパワーを得るのです」

シアンナ「あのプリキュアなる者達、必ずや、今後我々の目的にとって障害になるものと思われます」


デスペア国王「プリキュア……。どこかで聞いたような覚えがあるが……。大臣、何かわからぬか」

大臣「はい、存じております、国王陛下」

大臣「シアンナ様がおっしゃるプリキュアとは、メルヘンランドに伝わる伝説の戦士達のことかと思われます」

大臣「メルヘンランド・"リアルランド" が危機に陥った時に現れ世界を救う……、そのように聞き及んでおります」

デスペア国王「なるほど……」

デスペア国王「シアンナ。その者達がお前の邪魔をしたのだな」

シアンナ「はい。そのことをお伝えするために一度戻って参りました」

シアンナ「ですが、ご安心を。予想外の事態に不覚を取りましたが、必ずや奴らを退け、我らの目的を達成してご覧にいれます」

デスペア国王「期待しているぞ。お前とは行き違いになったが、すでに "ビリーズ" を "リアルランド" に送った。あの者と共に目的を達成せよ」

シアンナ「……失礼ですが、陛下。今、"ビリーズ" とおっしゃいましたか?」

デスペア国王「そうだが。それがどうかしたのか?」


シアンナ「何と……! あのような馬鹿者と共に任務に当たれとおっしゃるのですか……!?」

デスペア国王「……私の決定に不服があるとでも?」

シアンナ「いえ、決してそのようなことは……! しかし、あの者は……」


デスペア国王「……シアンナ」ギロリ

シアンナ「(ビクッ)」

デスペア国王「お前の任務は何だ? 言ってみよ」

シアンナ「……"リアルランド" の住人達の心が生み出す、とされる伝説の道具 "夢の絵の具" を手に入れ、陛下に献上することでございます」

デスペア国王「その通りだ」

デスペア国王「だが、"夢の絵の具" がどのような人間から取得できるのか……、その条件は未だ謎のままだ」

デスペア国王「であればこそ、その任務に障害があるのであれば、手段を問うべきではないと思わないか?」

シアンナ「まことに……おっしゃるとおりでございます」


デスペア国王「わかったならもう行け。二度と私に口答えをするな。いいな」

シアンナ「……はっ」

デスペア国王「それに、"ビリーズ" だけではない。じきにもう一人送る。以後はお前達 3人で任務を遂行せよ」

シアンナ「はっ。……ちなみに、閣下、その者とは……」

デスペア国王「"セルリア" だ。お前があの者達をまとめ、必ず "夢の絵の具" を入手せよ。よいな」

シアンナ「はっ。それでは、行ってまいります」

デスペア国王「吉報を待っている」

〜 デスペアランド 王宮 廊下 〜

カッ カッ カッ カッ


シアンナ(……まさか、"ビリーズ"と、あんな馬鹿な男と行動することになるなんて……!)

シアンナ(それにもう一人は "セルリア" ですって……!? "ビリーズ" に比べれば大分マシだけど……)

シアンナ(……いえ、大して変わらないわね……。あの二人をまとめる……? 私が……!?)


シアンナ(……考えるだけで頭が痛いわ……。前途多難ね……)

〜 七色ヶ丘中学校 3-1教室 〜

やよい「結局間に合わなかったぁー……、大遅刻……」

あかね「佐々木センセに大分怒られてもーたな」

なお「宿題倍、だなんて、災難だったね、やよいちゃん」

れいか「それにしても、やよいさんが遅刻だなんて珍しいですね」

みゆき「そうだよねー。わたしなんかしょっちゅうだけど。えへへ」

れいか「みゆきさんはもう少し反省をしてください。遅刻は決して良いことではありませんよ」

みゆき「うっ……、ご、ごめんなさい……」

やよい「実は、昨日遅くまで漫画を描いてたんだぁ……。締め切りが明日だから、徹夜でがんばろうと思ってたらいつの間にか寝ちゃってて……」

なお「えっ、徹夜!? 漫画描くのも大変なんだね……」

あかね「ひえー……。うち、今度からもうちょっと丁寧に漫画読むわ……。お菓子食べながら読んだりして、すぐ食べかすだらけにしてまうからなあ……。描いてる人に申し訳なくなってきたわ……」

やよい「あっ、そうだ。それよりみんな、お昼休み、校舎の屋上に集まれる? 相談、したいことがあるんだ……」

みゆき「お昼休み? わたしは大丈夫だけど」

れいか「私も大丈夫ですよ」

なお「あたしも」

あかね「うちもや!」

やよい「良かった……。それじゃあ、よろしくね」タタッ

みゆき「あ、それはいいけど、どこ行くの? やよいちゃん」

やよい「あ、えへへ、ちょっとおトイレに……。じゃあ、また後で!」タタタタッ

れいか「……なんでしょう。何か様子がおかしかったですね?」

あかね「せやな。言いづらいことなんやろか」

なお「まあ、とりあえずお昼休みを待とうよ。その時になったら自然にわかることだし」

みゆき「うーん、何なんだろう。ちょっと心配かも……」

〜 七色ヶ丘中学校 3F 女子トイレ 〜

やよい(やっぱり、あの人にあったこと、言わないとダメだよね……)


やよい(みんな、どんな反応するかな……)

〜 昼休み 七色ヶ丘中学校 校舎 屋上 〜

やよい「ゴメンね、みんな。急に集まってもらっちゃって」

あかね「ええて、ええて、水臭い。うちらの仲やないの!」

みゆき「それで、相談したいことって何?」

やよい「う、うん。それはね……」(キョロキョロ)

れいか「? どうしたんですか、やよいさん。辺りを見回して」

やよい「……誰もいないよね」

やよい「おーーーい! もう出てきてもいいよーーーっ!」

みゆき・あかね・なお・れいか「!!?」


シーーーーーーン…


やよい「…………あ、あれ?」

あかね「"あれ?" ちゃうわ! 何やねん、急に叫んで! ビックリしたわ!」

みゆき「誰か呼んだの? 誰もいないみたいだけど……」

ウルルン(デコル)「(クンクン) なるほど、ここにいたのはオニニンだウル? ニオイでわかるウル」


やよい・なお・れいか「!!?」


れいか「今の声、まさか……!?」

なお「聞き間違えるはずないよ、ウルフルンだ!」

やよい「えっ、えっ、えっ!? ウルフルンもここにいるの!?」


みゆき・あかね「……あ」


みゆき「そ、そういえば、まだみんなには説明してなかったね、あかねちゃん……」

あかね「せやったな……。ウルルン、ポケットに入れっぱなしやったわ。ほれっ」ポーイ


ポンッ


ウルルン「よう! やよい、なお、れいか! 久しぶりウル!」

やよい・なお・れいか「!!」

なお「や、やっぱりウルフルン! どういうこと!? とにかくみんな離れて!」

あかね「あっ、あっ、ちゃうねん、なお! このウルルンはもううちらの敵ちゃうんや!」

みゆき「そうなの! 説明するから、みんな落ち着いて!」

ウルルン「そうだウル! もうおれは悪いヤツじゃないんだウル! その反応はひでえウル!」

あかね「ややこしゅーなるから、あんたはちょっと黙っとき!」

(説明終了)


あかね「——っちゅーわけやねん」

れいか「つまりまとめると、そのウルルンさんはもう完全に改心していて、あかねさんと共にプリキュアとして今後も戦ってくれる、ということですか?」

あかね「せやねん。このとーり、反省もしとる。だから、そないに怖がらんといてや」ギュウウウウ

ウルルン「おい、あかね! 痛ぇ痛ぇウル! 頭、地面に押し付けんなウル! 自分で謝れるから離すウル! 痛ぇウルぅ!」

みゆき「でも、さっきのウルルンの言葉で、ここに誰がいたか、やよいちゃんが何を相談したかったのかはわかったね」

あかね「せやな。やよい、あんたがうちらに会わせたかったのはアカオーニ……ちゃうな、オニニンやな?」

やよい「うん……。実は、登校する時に——」

〜 七色ヶ丘中学校 通学路(回想) 〜

やよい(回想)『……あれ? 今、何かにつまずいた……?』

オニニン(回想)『あいててて……。何かに蹴っ飛ばされたオニ……』

やよい(回想)『あ、あなたは……! アカオーニ!? ……じゃない、今はオニニン、だったっけ……』

オニニン(回想)『あっ! や、やよい……』

やよい(回想)『どうしてこんなところにいるの? メルヘンランドからこっちに来たの?』

オニニン(回想)『そ、そうオニ……』

やよい(回想)『……? 何だか元気ないね……。アカオーニの時と全然違うみたい』

オニニン(回想)『…………』

やよい(回想)『あーっ!』

オニニン(回想)『(ビクッ) な、なんだオニ!?』

やよい(回想)『そうだった、急がないと遅刻しちゃうんだった!』

やよい(回想)『ねぇ、オニニン、で、いいのかな……。学校まで連れて行くから、お昼まで校舎の屋上で待っててくれない? ゆっくり話がしたいの』

オニニン(回想)『お、おれは話すことなんて——うわっ!』

やよい(回想)『ゴメンね! 今時間がないから抱えていくよ! お昼まで屋上で待っててね!』

オニニン(回想)『ひ、人の話を聞くオニーっ!』

ウルルン「なるほど、おれとオニニンとマジョリンは一緒にこっちの世界に来たんだけどよ、移動がうまくいかなくてはぐれちまったウル。そんなとこにいたんだな」

あかね「で、屋上来たら、そのオニニンはおらへんかった、と」

やよい「……うん。どこかに行っちゃったのかなぁ……」


ウルルン「……あいつ、多分逃げたウル」

あかね「そうなん? 何で?」

ウルルン「あいつよぉ、アカオーニだった時はバカみてぇに豪快だったくせに、バッドエナジーが抜けたら途端に弱気になっちまったんだよ」

キャンディ(デコル)「そうクル!」


ポンッ


やよい「あっ、みゆきちゃんのポケットからキャンディが出てきた」

れいか「なるほど、ウルルンさん同様、デコルになれるようになったおかげで、そうやって連れて行けるようになったんですね」

みゆき「キャンディ、その話本当?」

キャンディ「ホントクル。オニニンはとってもおとなしくて、いっつもおどおどしてたクル」

ウルルン「そうそう。まるで意気地なしになっちまってよぉ。しばらくメルヘンランドに馴染めなくて大変だったウル」

あかね「へーっ、意外やな」

ウルルン「さっきあかねも話してたけどよ、おれ達はバッドエンド王国三幹部だった時のことを悔やんでるウル」

ウルルン「弱気なオニニンのこった。余計バツが悪くて顔合わせらんねぇんだウル。特にやよい、おめぇとは色々あったみてぇだからよ」

やよい「そっか、だからどこかに行っちゃったんだ……」


やよい「…………」

やよい「わたし、オニニンのこと探したい」

あかね「あー、その方がええやろな。オニニンおったらやよいもプリキュアになれるかもしれへんし」

やよい「……ううん、違うの。プリキュアになりたいから探すんじゃないの」

みゆき「そうなの? じゃあなんで?」

やよい「さっきのウルルンの話を聞いて、わたし、オニニンに言いたいことができたの」

やよい「だから、もう一回会って、ちゃんと話がしたいの」

れいか「……何か、彼に対して思うところがあるみたいですね」

やよい「……うん」

みゆき「わかった! そしたら、わたしもオニニン探すの手伝うよ!」

やよい「みゆきちゃん! ……いいの?」

みゆき「もちろん! やよいちゃんが困ってるのに放っておけないよ! ね、みんな!?」

あかね「当ったり前や! ……と、言いたいとこやけど……」


あかね「今日は部活の練習日やから行かれへんわ……。やよい、スマン!」

なお「……あたしもだ。今日は部活だから、ムリかな。ゴメンね、やよいちゃん」

れいか「ごめんなさい……。私も、今は生徒会の方が忙しくて……。本当にごめんなさい」

やよい「あ、ううん! 全然気にしなくっていいよ! こっちこそ、急にお願いしたみたいになってゴメンね……」

みゆき「あ、あれ? じゃあ結局、一緒に行けるのってわたしだけ??」

あかね「二人だけじゃタイヘンやろ。コイツ、貸したるわ」

ウルルン「おい、物みてえに言うなウル!」

みゆき「え? いいの? でも、ウルルンいなかったらあかねちゃん変身できないんじゃあ……」

あかね「んー、もしあのなんちゃらランドが襲ってきたら、そん時はテキトーに逃げるわ」

あかね「オニニンみたいなちっこいの、二人だけで探すのムリやろ? コイツの鼻、使うてや」

やよい「あかねちゃん……、ありがとう!」


ウルルン「おれの意思は無視かウル……。ひでえウル……」

キャンディ「でも、みんなウルルンをたよりにしてるクル。ガンバるクル!」

ウルルン「クイーン……! そう言ってくれんのはおめえだけだウル……!」

みゆき「それじゃあ、やよいちゃん! 放課後になったら、ガンバってオニニン探そうね!」

やよい「うんっ! ありがとう、みゆきちゃん!」

〜 七色ヶ丘市 公園 ベンチ 〜

緑髪・チャラい青年画家「今日はいい天気だぜぇ……」

緑髪・チャラい青年画家「だからか? 人間も結構いんなぁ。そろそろ始めた方がいいかぁ……?」

緑髪・チャラい青年画家「うーん……」


緑髪・チャラい青年画家「ああ、でもデスペアランドからの移動で疲れたしなぁ……。何かめんどくさくなってきた……」

緑髪・チャラい青年画家「……ちょっと一眠りすっかぁ。日差しも "今はやめとけ" って言ってる気がするぜ」

緑髪・チャラい青年画家「よし! ここは一発昼寝して、起きたらやろう! そうしよう!」


緑髪・チャラい青年画家「……zzzz」

〜 放課後 七色ヶ丘中学校 校門前 〜

みゆき「オニニン捜索隊、しゅっぱーつ!」

やよい「ウルルン、お願いね」

ウルルン「おう、任せとけウル!」


ウルルン「……と、言いてえところだけどよ。時間が経っててニオイも大分薄くなってるウル。正確に探せるかどうかはわかんねえウル」

みゆき「それでもいいよ! 何にもわからないで探すより全然いいもん! ウルルン、ガンバって!」

ウルルン「ん……そ、そう言われちゃあ、やらねえわけにはいかねえウル。ちょっと待ってるウル」


クンクン クンクン


ウルルン「——多分、あっちの方だウル」

みゆき「わかった! やよいちゃん、行ってみよう!」

やよい「うん!」

〜 七色ヶ丘市 公園 草むらの陰 〜

オニニン「……はぁ……、結局、逃げてきちゃったオニ……」


やよい(回想)『ねぇ、オニニン。ゆっくり話がしたいの』


オニニン「……やよい、多分怒ってるオニ……」

オニニン「当たり前だオニ……。みんなにさんざんヒドいことをしてきたんだから……」

オニニン「今さら、どんな顔して会えばいいんだオニ……。どうせ許してなんてもらえないオニ……」

〜 七色ヶ丘市 商店街 〜

やよい「ウルルン、次はどっち?」

ウルルン「ちょっと待ってくれウル」


クンクン クンクン


ウルルン「——むっ!? こ、こいつは……!?」

みゆき「えっ!? もしかしてオニニン見つかった!?」

ウルルン「あっちだウル!」

みゆき「よぉーしっ!」タタタタタタッ

〜 七色ヶ丘市 商店街 お団子屋「大洗屋」〜

ウルルン「ここだウル! さっきっからすげえいいニオイがしてたウル! これ何ウル!? 食いてえウル!」


みゆき「…………」
やよい「…………」


キャンディ(デコル)「ウルルン! マジメにやるクル! ちゃんとオニニン探すクルぅ!!」

ウルルン「……はっ! し、しまったウル。ウマそうなニオイがしたもんでつい……」


みゆき「ウルルン。怒ったのがキャンディでよかったね。あかねちゃんだったらゲンコツ飛んでたよ」

やよい「暗くなっちゃうと探しづらくなるから、できればもう少しガンバってほしいなあ」

ウルルン「お、おう……。悪いウル……」


ウルルン(二人とも顔が笑ってねえウル……。怖えウル……!)

〜 七色ヶ丘市 公園 ベンチ 〜

緑髪・チャラい青年画家「……zzzz」


緑髪・チャラい青年画家「……ん……。ふあぁーっ、よく寝たぜーっ」

緑髪・チャラい青年画家「さぁーて、ぼちぼち始めるとする……か……って」


緑髪・チャラい青年画家「……おい、夕日出てるじゃねーか……。どんだけ寝てたんだオレ……。人間も大分減ってんぞ……」

緑髪・チャラい青年画家「……やっべぇ、マジやべぇよ……。初仕事でこれとか……、怒られるだけじゃ済まねえ……!」

緑髪・チャラい青年画家「……こ、この際少なくてもいい! とりあえずやらねーと! 手ブラだけはダメだ!」


緑髪・チャラい青年画家「ええと、ええと、画題は……、あぁもう! あの電灯でいいか!」

緑髪・チャラい青年画家「闇の絵の具よ! 闇の絵筆よ! キャンバスに絶望を描き出せ!」


シュババババッ


緑髪・チャラい青年画家「実体を持ってキャンバスから現れよ、アキラメーナ!」


ズズズズズズ…


アキラメーナ(電灯型)「アキラメーナァッ!」


緑髪・チャラい青年画家「アキラメーナ! この辺の連中の心を手当たりしだい吸え! 早くしろ!」

アキラメーナ(電灯型)「ア、アキラメーナァ!」


ズワァァァァァッ…


サラリーマン「うぅ……何だ……力が抜ける……」

買い物帰りの主婦「あぁ……立ってられない……」

ポチョ… ポチョ…

緑髪・チャラい青年画家「よし、何とか "心の絵の具" は取れた……けど……」

緑髪・チャラい青年画家「す、少ねぇー……。おまけに汚ねぇー……。ぜってーハズレだ、コレ……」

緑髪・チャラい青年画家「せめてもうちょっと量を稼がねーと……! 移動するぞ、アキラメーナ!」

アキラメーナ(電灯型)「アキラメーナ!」

〜 七色ヶ丘市 公園 草むらの陰 〜

オニニン「あ、あれはなんだオニ……!? 電灯の怪物……!?」

オニニン「もしかして、あれがポップの言ってた "新しい敵" オニ……!?」

オニニン「で、でも……」


オニニン「お、おれ一人じゃ何もできないオニ……! と、とりあえず逃げるオニ!」タタタタタタ…

〜 七色ヶ丘市 公園近くの道 〜

ウルルン「——むっ!? こ、こいつは……!?」

みゆき「今度は何? "たこ焼きのニオイ" とかだったらわたしも怒るよ?」

ウルルン「違うウル! これは……、昔よく嗅いだニオイ……。間違いねぇ、"闇の絵の具" のニオイウル!」

やよい「えっ? "闇の絵の具"って何?」

ウルルン「ほら! おれ達がバッドエンド王国だった時、バッドエナジーを吸い取るためによく使ってたウル! 思い出すウル!」

みゆき「ウルフルンだった時のこと……?」

〜 回想中 〜

ウルフルン(回想)『世界よ! 最悪の結末、バッドエンドに染まれ!』


グジャッ!


ウルフルン(回想)『白紙の未来を黒く塗りつぶすのだ!!』


ベタッ!


〜 回想終了 〜

みゆき「——っていう、あれ?」

ウルルン「そうウル! その "グジャッ!" と "ベタッ!" のところの絵の具ウル!」

ウルルン「あれは "闇の絵の具" っつって、バッドエナジーの塊なんだウル! 今、それと同じニオイを感じたウル!」

やよい「でも、それってどういう——」


アキラメーナ(電灯型)「アキラメーナァ!」ドシン ドシン ドシン


やよい「……こ、公園の中に怪物がぁ!」

みゆき「あ、あれは!」

キャンディ「デスペアランドの怪物・アキラメーナクルぅ!」

やよい「あ、あれがそうなの!?」


ウルルン(どういうこった……? 前の時は慌ててたから気付かなかったが、よく嗅いだらあの怪物から "闇の絵の具" のニオイがするウル……。デスペアランドの連中はあれと同じもんを使ってるウル……?)

ウルルン「——むっ!? こりゃあ……!」クンクン

みゆき「まだ何かあるの!?」

ウルルン「見つけたウル! オニニンのニオイだウル! 間違いねぇウル!」

ウルルン「ほら、いたウル! あそこウル!」


オニニン「はっ、はっ、はっ……!」タタタタタタ…


やよい「ほ、ホントだ!」

みゆき「オニニン、もしかしてアキラメーナから逃げてるのかな……。このままだとまたどこかに行っちゃう!」

キャンディ「でも、アキラメーナもほっておけないクル!」

やよい「ど、どうしよう……!」

みゆき「……わたしが変身してアキラメーナと戦うよ! やよいちゃんはその間にオニニンを追いかけて!」

やよい「えっ!? で、でも、みゆきちゃん一人で大丈夫? あかねちゃん呼んできた方がいいんじゃ……」

みゆき「その間にもっと多くの人達がヒドい目にあっちゃうよ! すぐに止めないと! それに……」

みゆき「やよいちゃん、オニニンとお話がしたいんだよね? わたし、それを手伝いたいの!」

みゆき「だからわたしのことは気にしないで! ねっ?」

やよい「……みゆきちゃん……!」

やよい「……わかった! わたし、オニニンのところに行ってくる! ゴメンね、みゆきちゃん……!」

みゆき「だいじょーぶ! 困った時はお互い様だよ!」

やよい「ありがとう……! 行ってきます!」タタタタタタ…


みゆき「……ガンバって、やよいちゃん!」


みゆき「じゃあ行くよ、キャンディ! ウルルンはその辺に隠れてて!」

キャンディ「わかったクル!」

ウルルン「おう! 気をつけるウル!」

みゆき「うんっ!」

キャンディ「デコル・チェーンジ! クル!」

パチンッ!

レディ!

みゆき「プリキュア! スマイルチャージ!!」

ゴー!

ゴーゴー! レッツゴー、ハッピー!!


ハッピー「キラキラ輝く、未来の光! キュアハッピー!!」

〜 七色ヶ丘市 公園内 〜

緑髪・チャラい青年画家「くそーっ! 人いねぇー! これじゃ心を吸えねーぞ!」


ハッピー「ちょっと待ったぁっ!」


緑髪・チャラい青年画家「あん!? んっだよ、誰だ!?」

ハッピー「キュアハッピー、参上! ……って、あれ? いつものシアンナって人じゃない……!?」

緑髪・チャラい青年画家「シアンナ? 何でお前シアンナの事知ってんだ?」

緑髪・チャラい青年画家「っていうか、何でアキラメーナがいんのに心吸われねぇんだ?」

緑髪・チャラい青年画家「っていうか、そのカッコ何だ? 他のヤツとファッション違いすぎねえ?」


ハッピー「い、いっぺんに聞かれても答えられないよぉっ!」


緑髪・チャラい青年画家「……まあ、いっか、別に。お前が誰でもどーでもいい! こっちは忙しいんだよ! 邪魔すんな!」


ハッピー「じゃあ最初っから聞かないでよぉ!」

キャンディ(デコル)「ヘンな人クル……」

緑髪・チャラい青年画家「やっちまえ! アキラメーナ!」

アキラメーナ(電灯型)「アキラメーナァ!」


ビビッ! バチバチッ!


ハッピー「わっ! な、なに!? 電気飛ばしてきた!?」

キャンディ(デコル)「あぶないクル!」


緑髪・チャラい青年画家「よぉーし、その調子だ! さっさと片付けちまえ! とにかく急げ!」

アキラメーナ(電灯型)「アキラメーナァ!」


バチバチィッ!


ハッピー「うひゃっ!」

ハッピー「パンチとか体当たりだったらどうにかできるけど……!」

ハッピー「電気じゃはね返せないよぉっ!」

キャンディ(デコル)「それじゃ近づけないクルぅ!」

ハッピー「うぅーっ! こうなったら直接いっちゃえ!」

ハッピー「気合だ気合だ気合だぁーっ!!!」


ハッピー「プリキュア! ハッ——」

アキラメーナ(電灯型)「アキラメーナァ!」


バチバチィッ!


ハッピー「ハッビャビャッビャビャッ!?」ビリビリッ

キャンディ(デコル)「クルルルッルルッル!?」ビリビリッ


ハッピー「……けほっ……」

キャンディ(デコル)「黒コゲ……クル……」

アキラメーナ(電灯型)「アキラメーナァ!」


バチバチィッ!


ハッピー「わぁっ!」バッ

キャンディ(デコル)「ハッピー・シャワーをそのまま当てるのはムリクル! ちょっとでも動きを止めないとダメクル……!」

ハッピー「で、で、でも (バチィッ!) わひゃっ! どうやって!?」

キャンディ(デコル)「それはハッピーが考えるクルぅ!」

ハッピー「そんなこと (バチィッ!) ひえっ! 言われても!」

ハッピー「どうしよう……!? 大ピンチだよーっ!」

〜 七色ヶ丘市 公園内 〜

オニニン「はっ、はっ、はっ」タタタタタタ

やよい「オニニーン! 待って、オニニン!」

オニニン「や、やよい!? な、なんでこんなところにいるオニ……!?」

やよい「はぁっ、はぁっ、や、やっと見つけた! "屋上で待ってて" って言ったのに、いなかったから探しに来たんだよ!」

オニニン「い、今までずっと、おれを探してた……オニ?」

やよい「うん」

オニニン「……なんでおれなんか探してたオニ。おれは、お前達にいっぱいひどいことしてきたオニ……。顔も見たくないんじゃないオニ……?」

やよい「…………」


やよい「……確かに、色んなことされたよね。痛かったり、つらかったりしたことも、いっぱいあった」

オニニン「そうだオニ。だから、おれなんかもう放っといて——」

やよい「でもね、一言だけ、一言だけ、オニニンに聞いてもらいたい事があるの」

オニニン「……なんだオニ?」


やよい「オニニン、ありがとう」ニコッ

オニニン「……!!?」


オニニン「な、なんでだオニ! ひどいことされて、なんで "ありがとう" なんだオニ! そんなのおかしいオニ!」

やよい「だって、わたしが今のわたしになれたのは、オニニンのおかげでもあるんだもん」

やよい「わたし、一年前は自分一人じゃ怖くて何もできない、弱虫で、泣き虫だった……」

やよい「オニニンがアカオーニだった時も、よくわたしに "弱虫!" って言ってたよね」

オニニン「…………」


やよい「でも、そんなわたしも、プリキュアになれて、みんなと出会えて、変われたんだ」

やよい「今でもまだ弱虫で、臆病なところはあるけど……」

やよい「でも、"自分のやりたいこと、やらなきゃいけないことは、絶対にあきらめないんだ" って、思えるようになった」

やよい「そのきっかけをくれたのはアカオーニ……オニニンなんだよ」

やよい「オニニンがいたから……、みゆきちゃん、あかねちゃんを守ろうと思ったから、わたしはプリキュアになれたんだもん」

やよい「だから……。ひどいこといっぱいされたのにヘンな話なんだけど……、だから、"ありがとう" なの」


オニニン「……やよい……!」

やよい「オニニンが、アカオーニだった時のこと憶えててつらい、って話、ウルルンから聞いたよ」

やよい「でも、もうオニニンは悪い人じゃない。つらい思いをすることなんてないんだよ!」

やよい「わたし、オニニンを元気付けてあげたくて、ここまできたの」

やよい「わたしを強くしてくれたオニニンを、今度はわたしが元気にしてあげたいの!」


オニニン「……でも……、でも、おれは……!」

やよい「……ねえ、オニニン。笑ってみない?」

オニニン「……え?」

やよい「アカオーニだった時、いっつも "ガッハッハ!" って、胸を張って笑ってたよね」

やよい「オニニンも、"ガッハッハ!" って、笑ってみようよ。元気出るかもしれないよ!」

オニニン「……そんなことしたって……」

やよい「やってみようよ! やってみたら、何か変わるかもしれないよ!」

やよい「笑うことってすごいんだよ! 落ち込んだりしてる時でも、とっても元気になれるの!」

やよい「弱虫のわたしだって、みんなと笑い合えたから強くなれたんだもん! オニニンならきっと元気になれるよ!」

オニニン「…………」

オニニン「……ガ……ガッハッハ……」

やよい「もっと大きな声で!」

オニニン「……ガッハッハ……!」

やよい「もっとだよ!」

オニニン「ガッハッハ……!」

やよい「ガッハッハ!」

オニニン「ガッハッハ……!」

やよい「ガッハッハ!!」

オニニン「ガッハ…………くっ……くくくっ……!」

オニニン「ガーッハッハッハッハ!!」

やよい「!!」


オニニン「そうだったオニ! おれ様、元々細かい事考えるのニガテだったオニ! つらいことなんて、笑ってごまかしちゃえばいいオニ!」

やよい「オニニン……! やったね、元気になれたね!」

オニニン「いじけてたおれ様をあきらめずにはげまし続けてくれた、やよいのおかげオニ」

オニニン「やよい達にしたことは本当に悪いと思ってるオニ」

オニニン「でも、だからこそ、やよい達に力を貸したいオニ! それで、"ごめんなさい" の代わりにさせてほしいオニ!」

やよい「うんっ! 行こう、オニニン! わたし達といっしょに!」

オニニン「おうオニ! おれ様達の力、見せてやるオニ!!」

オニニン「デコル・チェーンジ!」

パチンッ!

レディ!

やよい「プリキュア! スマイルチャージ!!」

ゴー!

ゴーゴー! レッツゴー、ピース!!


ピース「ぴかぴかぴかりん♪ じゃん・けん・ポン!(パー) キュアピース!!」

ピース「わぁ、みゆきちゃん達が言ってたとおり、今までとちょっとカッコウ変わってるね!」

ピース「トラみたいな縞々が入ってたり……あと、ちっちゃいツノが生えてる!」

オニニン(デコル)「おれ様の力が入ってるからだオニ」

ピース「へぇーっ! なんだか新鮮——」


ピース「——って、言ってる場合じゃない……! わたし達のために、ハッピーが一人で戦ってくれてるんだ! 助けないと!」

オニニン(デコル)「そうオニ!? わかったオニ! ピース、急ぐオニ!」

ピース「うんっ!」


ピース(待ってて、ハッピー! すぐ行くよ!)

ハッピー「はぁっ、はぁっ、バ、バテてきちゃった……!」

キャンディ(デコル)「ハッピー! しっかりするクル!」


緑髪・チャラい青年画家「よぉーし、大分動きが鈍くなってきたな。もうちょいで倒せそうだ、けど……」キョロキョロ


シーーーーーーン…


緑髪・チャラい青年画家「……誰もいなくなっちまった……。もう "心の絵の具" 取んのムリだ……」

緑髪・チャラい青年画家「あーあ……マジやべぇよ……。なんて言い訳しよう……」

緑髪・チャラい青年画家「アキラメーナ。オレ、言い訳考えてるから、その間にそいつやっちまえ」

アキラメーナ(電灯型)「アキラメーナァ!」


バチバチィッ!


ハッピー「あっ……!?」

キャンディ(デコル)「あ、当たっちゃうクルぅ!?」

ピース「そこまでだっ!」バッ


ビリビリビリィッ!


ハッピー「…………っ!? ……あ、あれ? 何ともない?」


ピース「このキュアピースがいる限り、悪の好きにはさせないぞっ!」ビシィッ


ハッピー「ピース! っていうことは、オニニンも!」

キャンディ(デコル)「ピースがかばってくれたクルぅ!」

ピース「……ねぇ、ハッピー。今のわたし、ヒーローみたいでカッコよくなかった?」キラキラ

オニニン(デコル)「お前……、こんな時になに言ってるオニ……」


ハッピー「うんっ! ピースはいつだって、スーパーヒーローだよっ!」ブイッ

ピース「えへへ、ありがとう!」ブイッ

オニニン(デコル)「……お気楽なヤツらオニ……。そういえば、こいつらはこんな感じだったオニ……」

緑髪・チャラい青年画家「"日差しがあまりに暖かくてつい……"。……ダメだ、これじゃそのまますぎ——」


緑髪・チャラい青年画家「——あれ? なんだ? いつの間にか増えた? あの黄色いの、さっきいなかったよな……」

緑髪・チャラい青年画家「でも、まあいいか。何人いようが、このアキラメーナの前じゃ一緒だ! やっちまえ、アキラメーナ!」

アキラメーナ(電灯型)「アキラメーナァ!」


バチバチィッ!


ピース「そうはさせないよっ! ええいっ!」バリバリッ


ビリビリビリィッ!


緑髪・チャラい青年画家「!? な、なんだありゃ! 電気で電気を受け止めてやがる!」


キャンディ(デコル)「! 動きが止まったクル! 電気出してる間は動けないみたいクル!」

ピース「ハッピー、今だよっ!」

ハッピー「ありがとう、ピース!」

ハッピー「プリキュア! ハッピー・シャワーァァッ!!」


ドォォォォォォォォンッ!!


アキラメーナ(電灯型)「アガァァァァァ……」シュワァァァァ…


緑髪・チャラい青年画家「!!? え!? な、な、何? アキラメーナ、やられちゃったの? キャンバスも消えちまった……! な、何だそりゃあ!」

緑髪・チャラい青年画家「ク、クソッ! お前ら、一体何モンだ!?」


ハッピー「みんなの笑顔を守る伝説の戦士・プリキュア。キュアハッピー!」

ピース「同じく! キュアピース!(ピース)」


緑髪・チャラい青年画家「プ、プリキュアぁ? なんだそりゃ……! ち、ちくしょう、初仕事だってのに邪魔しやがって……!」

緑髪・チャラい青年画家「オレは "ビリーズ"! デスペアランドのビリーズだ! 憶えとけ!」

ビリーズ「次会ったら、ギッタンギッタンにしてやるからな! この……、この……っ、バァーーカっ!」シュバッ


ピース「消えちゃった……」

オニニン(デコル)「……子供みたいなヤツオニ……」

オニニン「おう、ウルルン! 元気そうだなオニ!」

ウルルン「……あ、ああ? お前、ホントにオニニンウル? こっち来る前はもっとおどおどしてたウル?」

キャンディ「すっかり元気になったみたいクル! よかったクルぅ!」


みゆき「ねえ、やよいちゃん、オニニンとどんな話したの?」

やよい「え? えへへ、それは……わたしとオニニンだけのヒミツ! ねっ」

オニニン「オニ!」

みゆき「それにしても、オニニン見つけられてよかったね! 大分暗くなってきちゃったから、もうちょっと遅かったら探すのタイヘンになるところだったよ!」

やよい「うん、そうだね。もうこんなに暗く——」

やよい「…………」


やよい「……ね、ねえ、みゆきちゃん。今、何時?」

みゆき「え? あ、時計してないからわかんないや。えーっと……、あ、やよいちゃん、あそこ! 時計あるよ!」


18:32


やよい「…………!!」

みゆき「でも、なんで急に時間なんて——や、やよいちゃん? だ、大丈夫!? 顔真っ青だよ!?」

やよい「……しめきり……」

みゆき「えっ?」

やよい「漫画の締め切り、明日までだったぁー……!」

やよい「しかも、宿題も倍だったぁ……! うぇーん、今日もまた徹夜だぁ!」

みゆき「あっ、そういえば、そんなこと言ってたね……」

みゆき「だ、大丈夫、やよいちゃん? 何か、手伝えること、ある?」

やよい「あ、ありがとう、みゆきちゃん……」

やよい「……でも、ガンバるって決めたんだもん! やり抜いてみせるよ!」


やよい「それじゃ、急ぐから! また明日ね!」

みゆき「あ! 急に走ると危——」

やよい「え? ひゃっ!?」ガッ


ドタッ


みゆき「——ないよ、って言おうとしたのに……! やっぱり転んじゃった……。大丈夫!? やよいちゃ——」

スッ


オニニン「……ホレ。手、貸してやるから、さっさと立つオニ」

やよい「オニニン……」


ガシッ


オニニン「ふんっ!」グイッ

やよい「わっ! ……立っちゃった。オニニン、ちっちゃいのに、すごい力持ちだね。ありがとう」

オニニン「さっきやよいに助けてもらったから、これでアイコオニ」

やよい「えー? だって、さっきのはわたしからアカオーニへのお礼だったんだよ? またお礼されたら、いつまでたっても終わらないよぉ」


やよい「……でも……」

やよい「とってもステキなことだね、それって」ニコッ

やよい「これからもこうやって、助けたり助けられたり、していこうね、オニニン!」

オニニン「おう! よろしくオニ!」



つづく

次回予告

みゆき「わたし達の世界に来た妖精さんも、次が最後のひとり!」

みゆき「でも、その妖精さんとパートナーになるはずのなおちゃんは、なんだかむずかしい顔……。怒ってるの……?」

みゆき「他のみんなと妖精さんみたいに仲良くできればいいんだけど……何とかならないかな……!?」


みゆき「次回、『スマイルプリキュア レインボー!』 "疾(はし)れ! 勇気リンリン・キュアマーチ!"」


みゆき「みんな笑顔でウルトラハッピー!」

今回はここまでです!
お読みいただいた方、ありがとうございました。

よろしければ次回もまたよろしくお願いします!

あ、それと、今回から最後の締めに各話の最初のレス番号をつけておきます。
よーく考えたら、このアップ形式だと最新話とか、途中から読むのが面倒なんじゃないかと思って。。


第1話 >>3 から
第2話 >>75 から
第3話 >>166 から


これで多少は読みやすくなる、、かな?
もしご意見ありましたらお願いします!

乙ー

乙でした

シアンときたらマゼンタ・イエローかと思ったがそんなことはなかった

『スマイルプリキュア レインボー!』

このあとすぐ!

〜 緑川家 居間 〜

けいた(なお弟・長男)「えぇーっ!? なおねーちゃん、明日のお休み遊べないのー!?」

なお「ゴメン、けいた! みんな! 明日、急にサッカー部の練習が入っちゃってさ……。キャプテンだから休むわけにもいかないし……」

はる(なお妹・次女)「久しぶりになおねーちゃんと遊べると思ったのになぁ……」

ひな(なお妹・三女)「楽しみにしてたのに……」

ゆうた(なお弟・次男)「なおねーちゃん、最近部活ばっかりなんだもん……。寂しいよ……」

こうた(なお弟・三男)「やくそく……ひっく……したのに……」

なお「ホントにゴメンね……」

なお「けいた、悪いんだけどさ、あたしの代わりにみんなと遊んであげてくれない?」

けいた「えっ!? おれが?」

なお「けいたはあたしの次におにいちゃんなんだから、あたしがいない時は代わりにみんなを引っ張ってあげてほしいんだ。できるよね?」

けいた「…………」

けいた「おれだって、なおねーちゃんと遊ぶの楽しみにしてたんだ……。そんな気になれないよ……」


なお「けいた……。……はぁ……、しょうがないなぁ……」

なお「……よし! それじゃ、明日はみんなと遊んでくれる助っ人を呼んであげる! それで許してくれないかな?」

なおの弟妹達「……すけっと……?」

なお「れいかねーちゃんに、あかねーちゃん、みゆねーちゃんにやよねーちゃん。みんなに遊びに来てもらえないかどうか、頼んでみるよ!」

なおの弟妹達「……わぁ……!」

ひな「やったぁ! ひな、れいかねーちゃんとあそぶー! おままごとするのー!」

ゆうた「なに言ってんだよ! れいかねーちゃんはおれと遊ぶんだ!」

はる「おままごとならあかねーちゃんの方が上手だよ! お好み焼き屋さんだもん!」

けいた「おれはやよねーちゃんと遊ぶ! ヒーローとかすげー詳しいから、色々教えてもらうんだ!」

こうた「ぼくみゆねーちゃん! おいかけっこするぅー!」


なお(……良かった。みんな機嫌直してくれたみたい)

なお「それじゃあ、ねーちゃん達に頼んでみるね! 悪いんだけど、あたしとはまた今度遊ぼう! みんな、それでいいかな?」

なおの弟妹達「はぁーい!」

なお「うん! みんな、ありがとう!」

〜 翌日 緑川家 前 〜

なお「みんな、ゴメン! 急にムリ言って集まってもらっちゃって!」


みゆき「何言ってるの、なおちゃん! 全然ウルトラオッケーだよ!」

あかね「せやで、水臭い。こんくらいやったらなんぼでも手伝ったるわ!」

やよい「なおちゃんにはいつも助けてもらってるもん! 今度はわたしがお助けするよ!」

れいか「……と、言うわけだから、なお。部活、行ってらっしゃい。がんばってね」


なお「みんな……! ありがとう! 恩に着るよ!」

なお「それじゃ、行ってきます! 兄弟達をよろしくね!」


れいか「あっ、やっぱりちょっと待って、なお!」

なお「な、何、れいか? もうそろそろ行かないと遅刻しちゃうよ」


れいか「この間、やよいさんがオニニンさんを連れ戻した後の話のことなんだけれど……」

なお「……!!」


みゆき「……あっ……」

あかね「…………」

やよい「…………」

れいか「やっぱり、まだ——」

なお「ゴメン、れいか。その話はもう少し考えさせてほしいんだ」

なお「みんなに迷惑がかかることもわかってる。でも……でも、あたしは……っ!」


なお「……ゴメンっ! あたし、もう行くね!」タタタタタッ…

れいか「あっ、待って、なお!」


あかね「……行ってもーたな」

やよい「何とか……ならないのかな……」

みゆき「……なおちゃん……」




スマイルプリキュア レインボー!

第4話「疾(はし)れ! 勇気リンリン・キュアマーチ!」



〜 緑川家 居間 〜

とも子(なお母)「おやまぁ、皆さんおそろいで! なおの代わりにありがとうね!」

れいか「いえ、なおにはいつも大変お世話になっていますから」

とも子「いつもすまないねぇ、れいかちゃん。私もゆいの世話さえなければ子供達と遊んでやれるんだけど……」

ゆい(なお妹・四女)「だーうー」

みゆき「気にしないでください! わたし達、みんなと遊ぶの大好きですから!」

やよい「それにしても、ゆいちゃんカワイイー……! ずいぶん大きくなりましたね!」

とも子「もう 6ヶ月よ。おかげさまですくすく育ってねぇ。いつもながら、子供の成長の早さには驚かされるわぁ」


ゆい「あははっ」

みゆき「あっ! 今わたし見て笑ったよ! カワイイぃーっ!」

あかね「何言うとんねん! うち見て笑たんや! ほれ、べろべろばーっ!」


けいた「ねーちゃん達! ゆいばっかり構ってないで、おれ達と遊ぼーぜ!」

あかね「おっと、せやった。ゴメンゴメン。ほなら、何して遊ぼーか?」

けいた「えっとねー、おれ、やよねーちゃんとれいかねーちゃんとヒーローごっこがしたい!」

はる「じゃあ、わたしとひなはみゆねーちゃんとあかねーちゃんとおままごとする!」

みゆき「オッケー! じゃあ、みんなで楽しく遊ぼーっ!」


全員「おーっ!」

〜 緑川家 屋根の上 〜

オニニン「みんな楽しそうだオニ。うらやましいオニ……」

オニニン「そうだ! おれ様も混ざってくるオニ! みんな一緒の方が楽しいオニ!」

キャンディ「ダメクル! キャンディ達のことは、こっちのヒト達にはナイショクル。みゆき達にメイワクかかるクル」

オニニン「そんなぁー……、つまらんオニ……」


ウルルン「クイーンの言う通りだぜ、オニニン。いいじゃねぇかウル。こうやって気持ちよーく日向ぼっこしてりゃあ……」

オニニン「犬のお前はそれで満足でも、おれ様はもっと遊びたいんだオニ!」

ウルルン「犬じゃねぇウル! オオカミだウル! なんだ、元気になったとたん調子に乗りやがって! メルヘンランドじゃへなちょこだったくせに!」

オニニン「だ、誰がへなちょこオニ! お前だってメルヘンランドにいた時はお菓子食べたりしてぐうたらしてただけオニ!」

ウルルン「なんだとウル!?」

オニニン「やるかオニ!?」

キャンディ「二人ともケンカはやめるクル!」

ウルルン「おい、マジョリン! こいつに何か言って——」


シーーーーン…


ウルルン「…………」

オニニン「……ウルルン、マジョリンはまだいないオニ」

ウルルン「……ちっ、わぁーってるウル。ちょっといつもの調子で言っちまっただけウル」

キャンディ「クルぅ……」

ウルルン「……あいつ、今どこで何してるウル」

オニニン「わからんオニ。でも……」

ウルルン「ああ。なおのあの様子じゃあ……、おれ達もう、三人一緒にはなれねぇかもしれねえウル……」


キャンディ・ウルルン・オニニン「…………」

〜 七色ヶ丘中学校 サッカーグラウンド 〜

サッカー部員・A「パスもっと速く回してーっ!」

サッカー部員・B「ディフェンス! もっと圧力かけて!」


なお「…………」


れいか(回想)『この間、やよいさんがオニニンさんを連れ戻した後の話のことなんだけれど……』


なお(…………)

なお(……わかってるんだ、あたしだって。このままじゃいけないことくらい)

なお(でも……、やっぱりあたしは……)

〜 回想 星空家 みゆき自室 〜

やよい(回想)『——と、いうわけで、無事わたしとオニニンはパートナーになれました!』

みゆき・あかね・れいか(回想)『おおーっ!』パチパチパチ

なお(回想)『…………』


オニニン(回想)『みんなには本当に迷惑をかけてしまったオニ。スマンオニ』

オニニン(回想)『でも、やよいとも約束したオニ! やよいと力を合わせてみんなを助けることで、"ごめんなさい" の代わりにさせてほしいオニ!』

みゆき(回想)『うんっ、こっちこそ仲良くできるのはうれしいよ! よろしくね、オニニン!』

れいか(回想)『私はまだプリキュアにはなれませんが……、一緒に頑張っていきましょう!』

あかね(回想)『うちらにピースが加われば、文字通り "オニに金棒" やー! なんてな』

ウルルン(回想)『とにかく、これで残る妖精はマジョリンだけになったってわけウル』

ウルルン(回想)『あいつもこっちの世界に来てるはずなんだが……、どこほっつき歩いてるんだか』

みゆき(回想)『あれ? そしたら、こっちに来てる妖精さんって、キャンディも入れて全部で 4人ってこと? プリキュアの数に足りないんじゃない?』

あかね(回想)『ああ、そういえばそやな。うちら 5人やで。一人足らんのとちゃう?』

ウルルン(回想)『ああ、最後の一人はポップウル』

キャンディ(回想)『おにいちゃんクル!?』

ウルルン(回想)『おうウル。何か "調べ物がある" とか言ってたから、こっちに来るのは少し遅れそうだけどウル』

ウルルン(回想)『そういえばれいか。ポップはお前のパートナーになりてえ、って言ってたウル』

なお(回想)『……!!?』

れいか(回想)『えっ、私、ですか?』

ウルルン(回想)『"前に一緒に戦った事もあるから、またぜひ力になりたい"、みたいなこと言ってたウル』

れいか(回想)『そうですか、ポップさんが……』

れいか(回想)『私も、ポップさんはとても頼もしく思っています。パートナーになってもらえるならとてもうれしいです! 楽しみに待っています』

ウルルン(回想)『そっか。アイツもそれ聞いたら喜——』


なお(回想)『……ちょっと待って』

ウルルン(回想)『——ん? なお、なんだウル?』

なお(回想)『じゃあ、あたしがプリキュアになるためのパートナーは……マジョリンってことなの……?』

ウルルン(回想)『そういうことになるウル』

なお(回想)『…………!』


ウルルン(回想)『あぁ、一応話しておくとな、実は、誰が誰のパートナーになるかは、メルヘンランドにいるうちに話合って決めてたウル』

ウルルン(回想)『おれはあかね、オニニンはやよい、んで、マジョリンがなおウル』

ウルルン(回想)『結果として、何か成り行きでそうなっちまったけどな』


ウルルン(回想)『おれ達がそのパートナーを選んだ理由は、"バッドエンド王国時代に一番迷惑をかけた相手にしよう" ってことだったウル』

ウルルン(回想)『何度も言うようだが、おれ達はバッドエンド王国時代のことを悔やんでるウル』

オニニン(回想)『そうオニ。自分達がやってきた悪い事を思い出す度に、つらくてつらくてたまらなかったオニ……』

ウルルン(回想)『だから、せめて迷惑をかけた代わりに、力を貸す事で謝りたい。そう思ったウル』


ウルルン(回想)『あかね。おれはこの間お前に受け入れてもらった時、うれしくてたまらなかったウル……。"これでやっと謝れる" って』

あかね(回想)『ウルルン……』


オニニン(回想)『おれ様もウルルンと同じ気持ちオニ。本当にありがとうオニ、やよい』

やよい(回想)『オニニン……』

ウルルン(回想)『だから、なお。お前のところにはいつかマジョリンが行くはずウル。できれば、温かく迎えてやって——』


なお(回想)『……あたしはイヤ……。あかねややよいちゃんみたいにはなれない……!』


やよい(回想)『……なおちゃん……?』

あかね(回想)『ど、どないしたんや、なお? プリキュアになるの、イヤになってもーたんか?』

なお(回想)『違うよ! 違う……! でも、マジョリンは……マジョリンとだけはイヤなの!!』


シーーーーン…


なお(回想)『……! ゴ、ゴメン、みんな、大声出したりして……』

れいか(回想)『なお……、もしかして、あの時のことを……』

やよい(回想)『あっ……、そういえば……』

あかね(回想)『思い出したわ……。マジョリーナ、なおの家族を人質に取って戦いを仕掛けてきたことあったな……。引っかかってるの、それなん?』


ウルルン(回想)『ん……? そんなことあったかウル?』

オニニン(回想)『あ……! もしかしたらあの時かもしれないオニ。おれ様達がジョーカーに "次が最後だ" って脅かされた時』

ウルルン(回想)『ああ……! 多分そうだウル。最後に出たのがマジョリンだったウル。その時の話かウル……』

オニニン(回想)『おれ様達は失敗した後しばらくバッドエンド王国には帰ってなかったから、マジョリンがその時何したかは知らなかったオニ……』


みゆき(回想)『あの時のなおちゃん、もう少しで大切な家族を失くすところで……』

みゆき(回想)『みんなが無事に戻ってきた後も、"すごく怖かった" って泣いてたよね……』


なお(回想)『…………』

なお(回想)『……ウルルンやオニニンはまだいいよ。そこまでひどい事はしなかった』

なお(回想)『でも、でも、マジョリンは……あたしの大切な家族を傷つけようとした! 奪おうとした!』

なお(回想)『あたしはそれが許せない……! どんな理由があったとしても、絶対に……!』


なお(回想)『……だから、あたしはマジョリンとはパートナーにはなれない。プリキュアにもなれない』

なお(回想)『みんなに迷惑がかかるのもわかってるけど……、これだけは譲れないんだ……。ゴメン……』


れいか(回想)『なお……』

〜 七色ヶ丘中学校 サッカーグラウンド 〜

サッカー部員・フォワード・村田 ともか「——テン、キャプテン! 聞いてますか!?」

なお「—ーあっ! ゴ、ゴメン、ちょっとぼーっとしてた……。どうしたの、村田さん」

フォワード・村田「わたしとゴール前のコンビプレーの練習をして欲しかったんですけど……、もしかして、お邪魔でした?」

なお「ううん、そうじゃないけど……」

なお「ゴメン、今日ちょっと調子悪くて……。一旦休憩にして、その後でもいいかな?」

フォワード・村田「あ、そうなんですか? そういうことでしたら、また後でお願いします!」

なお「うん、ゴメンね」


なお「一旦休憩にするよーっ! 30分各自ゆっくり休むように!」

部員達「はいっ!」

〜 七色ヶ丘中学校 サッカーグラウンド脇の草むら 〜


ガサッ


?????「……マジョ……」

〜 七色ヶ丘市 公園 ベンチ 〜

ビリーズ「うぅーん、今日も太陽ポカポカ……。絶好の昼寝日和だぜ……!」

????「随分気持ちよさそうね」

ビリーズ「おお、いい天気の時の昼寝はサイコーだぜ。どうだ? あんたも、いっ……しょに……!」

シアンナ「ふうん。仕事をしないでする昼寝がそんなに気持ちいいとは知らなかったわ。今度試してみようかしら」

ビリーズ「……シアンナ……! な、なんでここに……。本国に帰ったんじゃ……!」

シアンナ「成果を報告しに帰っただけよ。すぐに任務を再開するわ」

シアンナ「それより、あなたはいい気なものね。誰も見ていないと思って、"鬼の居ぬ間に洗濯" ならぬ、"鬼の居ぬ間に昼寝" とはね」

ビリーズ「おっ、さっすがシアンナ! うまいこと言うねぇ、ハハハ……」

シアンナ「(イラッ)」


ガンッ!


ビリーズ「(ビクッ!)」

シアンナ「全くあなたは……! 皮肉も通じないほど馬鹿だとは思わなかったわ。とりあえず立ちなさい、話があるの」

ビリーズ「わ、わかった、立つからベンチ蹴るのはやめてくれ……。怖ぇよ……!」

〜 七色ヶ丘市 公園 人気のない草むら 〜

シアンナ「話というのは他でもないわ。私達の任務についてよ。あなた、こちらの世界についてからもう仕事はした?」

ビリーズ「あ、ああ、"心の絵の具" の回収だな。一回だけやったぜ、ホレ」


ピチャ… ピチャ…


シアンナ「……何、このボトル。絵の具が全然入ってないじゃない。ちゃんとやったの?」

ビリーズ「そ、それがさぁー! 聞いてくれよ! 仕事の最中、"プリキュア" とか言う連中に邪魔されて、うまく取れなかったんだよ!」


ビリーズ(……ホントの原因は昼寝しすぎて寝過ごしたからなんだけど……、ウソは言ってねーぞ!)


シアンナ「"プリキュア"……!? ……そう、あなたの時も現れたのね」


ビリーズ(あれ……、意外とすんなり納得しそう……。ラッキー!)

ビリーズ「そ、そーなんだよ! ったく、いい所で邪魔しやがってぇー! アイツら何者なんだ!?」

シアンナ「本国で国王陛下と大臣に聞いてきたわ。"世界を救う伝説の戦士" だそうよ」

ビリーズ「伝説の戦士……? そういえばそんなこと言ってたような、言ってなかったような……」

ビリーズ「まあ、とりあえず邪魔者、ってことでいいんだよな?」

シアンナ「……全く理解しようとしてないように思えるけど、それでいいわ」

シアンナ「……ただ、今のところはそこまでの脅威ではないわ。こちらから仕掛ける事はせず、ひとまず任務に専念するのよ」

ビリーズ「へ? なんで? 邪魔なら先に潰しておいた方がいいんじゃねーの?」

シアンナ「私達の目的はあくまで、"リアルランド" の住人の心が生み出すとされる伝説のアイテム "夢の絵の具" の取得」

シアンナ「そのために必要な心の吸収は、私達がアキラメーナを召喚した時点で達成されるわ」

シアンナ「心の吸収が済んだ後であれば、アキラメーナを倒されてもそれほど痛手ではない。強いて言うなら、行動範囲を増やして更なる吸収ができなくなる、ということくらいね」

ビリーズ「?? い、いっぺんに言うからよくわからなくなってきた……。つまり?」

シアンナ「……はぁ……。つまり、心の吸収ができればそれでいいの。プリキュア打倒はついででいいわ」

ビリーズ「おお、そうか! わかったぜ! 最初っからそう言ってくれればいいんだ!」


シアンナ(……疲れるわ……)

シアンナ「でも、私達は未だに "夢の絵の具" はどのような人間から手に入れられるのか、わかっていないわ。国王陛下でさえも」

シアンナ「その謎を探るためには、少しでも多くの人間から心を吸い取る必要があるの」

シアンナ「もしかしたら、誰でも持つ "心の絵の具" ではなく、"夢の絵の具" をその身に宿している人間がいるかもしれない。……この仮説さえも正しいかどうかはわからないけれど」


シアンナ「だからビリーズ。今すぐ一仕事行ってきなさい。少しでも多くの人間から心を吸うのよ」

ビリーズ「えぇー、今からぁー? こんないい天気なのに……」

シアンナ「(イラッ) ……いい加減にしなさいよ。どこまで馬鹿なの? 私を怒らせたいのかしら?」ギロッ

ビリーズ「わかった……。わかったからにらまねーでくれ……。怖ぇんだってば……! 冗談だよ……!」

シアンナ「冗談に聞こえないのよ、あなたの場合。それじゃあ、頼むわね。私は別の仕事があるからここで別れましょう」

ビリーズ「あいよー。……って、別の仕事ってなんだ?」

シアンナ「今度会った時に教えてあげる。それまでは自分の仕事に専念なさい」

ビリーズ「……まあ、いいけどな、何でも。んじゃあ、行ってくるわ」シュバッ

シアンナ(全く……。国王陛下に遣わされるほどだから多少マシになったのかと思えば……、相変わらずいい馬鹿っぷりだわ)

シアンナ(これから一緒に任務に当たるのかと思うと、先が思いやられるわね……)


シアンナ(……愚痴を言っても仕方がない、か。私は私のやるべきことをやるまで)

〜 七色ヶ丘中学校 サッカーグラウンド脇 休憩所 〜

なお「……はぁ……」

なお(マジョリンは許せない。でも、プリキュアとしてみんなを助けたい)

なお(どうしたらいいんだろう……、あたし……)


?????「なお……!」


なお「誰? まだ休憩時間は……っ!?」


マジョリン「なお……、久しぶりマジョ。ずっと探してたマジョ……!」

なお「マジョリン……!!」

マジョリン「なお、聞いてほしいことがあるマジョ! あたしは——」


なお「帰って」


マジョリン「マジョ……!?」

なお「あたしはあんたと話す事なんてないよ。帰って」

マジョリン「で、でも、なお! 今とっても大変なことに——」

なお「気安く呼ばないで!」

マジョリン「!!」

なお「知ってるよ。新しい悪いやつらが来て、あたし達の世界を狙ってること」

なお「あんた達、元バッドエンド王国の妖精があたし達を助けに来たこと」

なお「あんた達の力を借りれば、あたしもまたプリキュアに変身できる、ってことも、全部知ってる」

マジョリン「だ、だったら何で話を聞いてくれないマジョ!? わからないマジョ!」


なお「……わからないのはあんたの方だよ、マジョリン」

なお「どうしてまた、あたしの前に出てこられるの? 自分が何をしたか、忘れたわけじゃないよね」

マジョリン「マジョ……!」

なお「あんたはあたしの家族を奪おうとした! あたしの、大切な家族を!」

なお「あの時、あたしが、あの子達が、どれほど怖かったか分かる!?」

なお「何も見えない真っ暗な穴の中に落ちていくようなあの感覚……! 思い出したくないのに、時々思い出すんだ……!」

なお「怖かった……、本当に怖かったんだよ!!」

マジョリン「…………」


なお「……悪いけど、どんな理由があっても、そんな事をした人とはパートナーにはなれない」

なお「どうしても、っていうなら、れいかのパートナーになって。まだれいかはプリキュアになれてないから。代わりにあたしがポップと組む」


なお「マジョリン、あんたとだけは、組めない」

マジョリン「……な……」


マジョリン「…………」ショボン


トボトボトボトボ…


なお「…………」

ウルルン(回想)『おれ達はバッドエンド王国時代のことを悔やんでるウル』

オニニン(回想)『自分達がやってきた悪い事を思い出す度に、つらくてつらくてたまらなかったオニ……』

ウルルン(回想)『せめて迷惑をかけた代わりに、力を貸す事で謝りたい。そう思ったウル』


ウルルン(回想)『なお。お前のところにはマジョリンが行くはずウル。できれば、温かく迎えてやって欲しいウル』


なお(……ホントはわかってるんだ、あたしだって)

なお(悪いのはバッドエナジーと、それを作った皇帝ピエーロだって。頭では)

なお(でも、ああ言わずにはいられなかった……! 家族を危ない目に合わせたことがどうしても許せなかった……!)


なお(……やっぱり、あたしは……)

なお(……30分、経った。休憩終わりだ)

なお(……っ!)


パンッ


なお(切り替えていこう! できないことを悩んでてもしょうがない! 今、目の前にあることに直球勝負だ!)


なお「さあ、みんな! 休憩終了だよ! 練習再開しよう!」

部員達「はいっ!」

〜 七色ヶ丘中学校 サッカーグラウンド横 道路 〜

ビリーズ「さぁーて、今日はどこから取ってくるかな、と。……ん?」


サッカー部員・C「カウンター! ディフェンス下がって!」

サッカー部員・D「ドリブルドリブル! そのまま上がって!」


ビリーズ「おーおー、いっぱい人間いるじゃねーか!」

ビリーズ「にしても、こんなに集まって何やってんだ? わーわー走り回って疲れないのかぁ? よくやるぜ」

ビリーズ「ま、いっか、何でも。ここにすっか!」

ビリーズ「さてと、画題は……」


ビリーズ「よくわかんねーが、あの山ほどある球にするか」

ビリーズ「闇の絵の具よ! 闇の絵筆よ! キャンバスに絶望を描き出せ!」


シュババババッ


ビリーズ「実体を持ってキャンバスから現れよ、アキラメーナ!」


ズズズズズズ…


アキラメーナ(サッカーボール型)「アキラメーナァッ!」


ビリーズ「アキラメーナ! あそこにいるやつらの心、ありったけ吸っちまえ!」

アキラメーナ(サッカーボール型)「アキラメーナァ!」


ズワァァァァァッ…

サッカー部員・A「あっ、何……急に力が……抜けて……」バタッ

サッカー部員・B「うっ……めまいが……」バタッ

フォワード・村田「キャ……プテン……」バタッ


なお「えっ!? 何!? み、みんな! どうしたの!? みんながどんどん倒れてく……!」


なお「な、何あれ……! サッカーボールの怪物!? もしかして、あれがみんなが言ってたデスペアランドとかいう……」

なお「ど、どうしよう……! 何とかしないと——」


マジョリン(回想)『……マジョ……』


なお「…………」


なお(マジョリンがいれば、あたしもプリキュアになれる。でも……)


なお「……みゆきちゃん達を呼ぼう。今のあたしにできるのは、それしか……ないよ」

ポチョン ポチョン

ビリーズ「んんー、さすがにこの間より全然量が多いぜ。やっぱ人が多いと違う……って! ちょっと待て、こいつは……!」


キラキラキラ


ビリーズ「おっ、おっ、おぉーっ……! 中の絵の具、なんか光ってんぞ!? この間のと色が全然違え!」

ビリーズ「おい、マジか! これ、ひょっとして "当たり" なんじゃねーの!?」

ビリーズ「うひょーっ! やったぜ! オレ超ラッキー!」

ビリーズ「あれ? あいつ……」


なお「はっ、はっ、はっ」タタタタタタタッ


ビリーズ「あの逃げてるヤツ、また心吸えてねーみたいだな。あれも "プリキュア" ってやつなのか? よくわかんねーけど」

ビリーズ「シアンナは "別に倒さなくてもいい" とは言ってたが……なんか……」

ビリーズ「逃げられると追っかけたくなるなぁ!」ニヤッ


ビリーズ「行け、アキラメーナ! あの子供をやっちまえ!」

アキラメーナ(サッカーボール型)「アキラメーナァ!」ゴロゴロゴロゴロ

ゴロゴロゴロゴロ


なお「えっ!? こっちに向かって転がってくる! 狙われてる……!?」

アキラメーナ(サッカーボール型)「アキラメーナァ!」ゴロゴロゴロゴロ

なお「わっ!」バッ


ビリーズ「かーっ、惜しい! もうちょっとだったのに、避けやがった!」

ビリーズ「まあいい! アキラメーナ、どんどん行け!」

アキラメーナ(サッカーボール型)「アキラメーナァ!」ゴロゴロゴロゴロ

なお「くっ!」バッ


ビリーズ「くわーっ! また外した! すばしっこいヤツだ!」

ビリーズ「おい、アキラメーナ! お前、転がる以外に何かできねーのか!? 何かあんならそれやれ!」

アキラメーナ(サッカーボール型)「アーーーッ……キラメーナァ!」プププププププッ


なお「く、口からサッカーボールがいっぱい飛んで……!?」


ダダダダダダダダッ!


なお「うあぁぁぁぁっ!?」


ビリーズ「おお! 当たった! さすがオレ作! やればできるじゃねーか!」

アキラメーナ(サッカーボール型)「アキラメーナ!」エッヘン

なお(うっ……転んだ時に足ひねった……!? これじゃ、走れない……)


ビリーズ「おっ、アイツ動けないみたいじゃねーか! チャンスだ、一気にキメろ!」

アキラメーナ(サッカーボール型)「アーーーッ……キラメーナァ!」プププププププッ


なお(ダメ……もう、かわせない……っ!)


マジョリン「マジョーーーッ!」シュバッ

なお「!?」


ダダダダダダダダッ!


ビリーズ「……あん? 何だ今の。何かちっこいのが子供さらって飛んでった?」

マジョリン「なお、だいじょうぶマジョ!?」

なお「マジョリン……なんで……」

マジョリン「さっき離れた後も、なおの事が心配でずっと見てたマジョ!」

マジョリン「間に合ってよかったマジョ」


なお「…………」

なお「……お礼なんて、言わないよ。あたしは、あんたを——」

マジョリン「……もう、それでいいマジョ」

なお「え……」


マジョリン「元々、あたしはイジワル魔女だマジョ。キラわれるのが仕事マジョ」

マジョリン「許してもらおうと思ったのが、そもそも間違いだったマジョ」

マジョリン「でも、でもね……」


マジョリン「キラわれたままでもいいマジョ! それでもあたしは、あんたを守るマジョ!」

なお「……!」


マジョリン「来るマジョ、バケモノ! この大魔女、マジョリン様が相手マジョ!」

ビリーズ「え? 何あのちっこいの。アキラメーナとやる気だっての?」

ビリーズ「ぷぷーっ! お前みたいなのに何ができんだっつーの! アキラメーナ! やっちまえ!」

アキラメーナ(サッカーボール型)「アーーーッ……キラメーナァ!」プププププププッ


マジョリン「マジョッ!(バッ) マジョッ!(バッ) マジョーッ!(ババッ)」

ビリーズ「なんだ!? ホウキで空飛びながら全部かわしてやがる!」

マジョリン「そんなへなちょこ攻撃、当たらないマジョ!」

マジョリン「次はこっちの番だマジョ! 出でよ、マジョリンステッキ!」ポンッ

マジョリン「マジョリンビーム!」


ビビビッ!


アキラメーナ(サッカーボール型)「アガッ!?」

マジョリン(うっ……、あんまり効いてないマジョ……!)

ビリーズ「何がへなちょこ攻撃だ! そっちも大したことねーじゃねえか!」

ビリーズ「おい、アキラメーナ! そんなんにビビってねーでガンガン行け!」


アキラメーナ(サッカーボール型)「アーーーッ……キラメーナァ!」プププププププッ

マジョリン「何回やっても当たらないマジョ!」バババッ

ビリーズ「がぁーっ! ムカつくぅー! チョロチョロしやがってぇ!」

ビリーズ「アキラメーナ! 当たんねーなら、もっと出せ! 増量だ!」

アキラメーナ(サッカーボール型)「アーーーーーーッ……キラメーナァ!」プププププププププププッ

マジョリン「ひえっ、量が増えたマジョ……!」バババババッ


ビリーズ「もっとだ、もっと! 当たるまで出せ!」

アキラメーナ(サッカーボール型)「キラメーナァ!」ププププププププププププププププッ

マジョリン「ど、どんどん増えていくマジョ……!」バババババババババッ


ビリーズ「もっともっともっともっとぉー! お前の全部を出し尽くせぇ!」

アキラメーナ(サッカーボール型)「メーナァ!」ププププププププププププププププププププププププッ

マジョリン「もっ、もうムリ——」


ダダダダダダダダッ


マジョリン「ああぁぁぁぁっ!」ポテッ


ビリーズ「よっしゃぁ! やったぜ、ヒューっ! ざまーみろってんだ!」

アキラメーナ(サッカーボール型)「ゼェッ、ゼェッ、ア……キラ……メーナァ……」

ビリーズ「さぁーて、邪魔者もいなくなったことだし。あっちの子供の方に戻るとするか」

アキラメーナ(サッカーボール型)「アキラ……メーナァ……!」ズシン ズシン

なお(……!)


マジョリン「ま、待つマジョ……!」


ザッ


ビリーズ「ああん? なんだまだやんのかよ。さっきのでボロボロのくせに」

ビリーズ「ほら、そこどけよ。痛い目にあうのヤだろ?」

マジョリン「ぜ、絶対、どかないマジョ……!」

ビリーズ「……はぁ、めんどくせーなぁー……。アキラメーナ」

アキラメーナ(サッカーボール型)「アキラメーナ!」プッ


ガンッ!


マジョリン「うっ!?」

マジョリン「ま、まだまだ……マジョ……!」

アキラメーナ(サッカーボール型)「アキラメーナ!」プッ


ガンッ!


マジョリン「あうっ!?」


アキラメーナ(サッカーボール型)「アキラメーナ!」プッ


ガンッ!


マジョリン「うくっ!?」


アキラメーナ(サッカーボール型)「アキラメーナ!」プッ


ガンッ!


マジョリン「うっ……!?」


なお「……マジョリン……」

なお(なんで……、なんでそこまでするの……)


なお(なんでそこまで、あたしを助けようとするの……)


なお(あたし、あんたに向かってあんなひどいこと言ったのに……!)


なお(許さない、ってずっと言ってるのに……!)

アキラメーナ(サッカーボール型)「アキラメーナ!」プッ


ガンッ!


マジョリン「あっ……!?」


なお(……あたしには関係ない……)

アキラメーナ(サッカーボール型)「アキラメーナ!」プッ


ガンッ!


マジョリン「うっ……!?」


なお(……マジョリンは……ひどい事をしたんだから、どうなったって……)

マジョリン「はぁっ……はぁっ……はぁっ……!」

ビリーズ「…………」


ビリーズ「……あのさぁ、なんでそこまでガンバるわけ?」

ビリーズ「もうどうしようもねーの、わかってんだろ? いい加減諦めろよ」

ビリーズ「つらくてつらくてたまんねーだろ? もうそいつ放っぽって逃げた方がいいんじゃねーの?」


マジョリン「はぁっ……はぁっ……、へ、平気マジョ……!」

マジョリン「こんなツラさ……痛さなんて……」


マジョリン「あたしがなおにしてきた事に比べれば全然大したことないマジョ!」


なお(……!!)

マジョリン「だからせめて、なおのツラい思いを少しでも味わわないと、申し訳なくて仕方ないんだマジョ!」

マジョリン「せめて、今なおが危ないなら、あたしが代わりにつらい目にあうマジョ!」


マジョリン「それがあたしの……あたしの……! 精一杯の "ごめんなさい" なんだマジョ!!」


なお(……マジョリン……っ!)

ビリーズ「……?? え? どういうこと?? 意味が全くわかんねぇ……」

ビリーズ「聞いただけムダだったなー……。もういいや。アキラメーナ、一発ドカンとパンチしておしまいにしよーぜ」

アキラメーナ(サッカーボール型)「アキラメーナァッ!」グワッ

マジョリン「…………っ!」


なお「ダメぇぇぇっ!!」バッ


ドカァァァァン!


ビリーズ「あーっ! 今度は子供の方がちっこいの助けやがった! っんだよ、もう! 終わんねーだろっ!」

マジョリン「……な、なお……。助けてくれた……マジョ……?」

なお「…………」


なお「……マジョリン。何度も考えたんだけど、やっぱり、あの時のことは許せそうにないよ……」

マジョリン「…………」


なお「……でも……っ!」

なお「あたしのためにここまでしてくれる誰かを見捨てるなんて……」

なお「そんなあたしは……もっと許せない!!」

マジョリン「……!! なお……っ!」

なお「あたしは戦う。誰であっても、あたしの前では傷つけさせないっ!」

マジョリン「……それなら、これを使うマジョ」サッ

なお「これって……スマイルパクト!」

マジョリン「もしかしたら……もしかしたら使ってくれるかも、って思って、なおの荷物から持ってきたマジョ」

マジョリン「あたしにも、人を守るなおの手伝いをさせてほしいマジョ……!」

なお「…………」


なお「……わかった! やろう、マジョリン!」

マジョリン「マジョっ!」

マジョリン「デコル・チェーンジ!」

パチンッ!

レディ!

なお「プリキュア! スマイルチャージ!!」

ゴー!

ゴーゴー! レッツゴー、マーチ!!


マーチ「勇気リンリン、直球勝負! キュアマーチ!!」

ビリーズ「かっ、変わりやがった!? やっぱアイツもプリキュアだったのかよ!?」


マーチ「いつもと格好が違う……。小さいマントみたいのが付いてる。スカートのすそもちょっと伸びたかも」

マジョリン(デコル)「あたしの力が加わってるからマジョ。きっと、今までよりも速く動けるマジョ!」

マーチ「そうなんだ。よぉしっ!」シュバッ


ビリーズ「あん!? 消えやがった!?」


マーチ「こっちだよ!」

ビリーズ「! アキラメーナ、後ろだ!」

マーチ「遅いっ! マーチ・キック!」


バキィッ!


アキラメーナ(サッカーボール型)「アガァッ!」ドタァァァン

ビリーズ「速ぇっ……! なんだありゃあ……!」

ビリーズ「アキラメーナ! さっきのいっぱい出すヤツやれ! あれなら一発ぐらい当たんだろ!」

アキラメーナ(サッカーボール型)「アーーーッ……キラメーナァ!」プププププププッ


マーチ「……サッカー部キャプテンのあたしに! そんな攻撃効くもんかっ!!」

マーチ「だらららららららっ!」ドカドカドカドカドカドカッ


ビリーズ「ウソだろ!? 全部蹴り返しやがった!?」


ダダダダダダダッ!


アキラメーナ(サッカーボール型)「ア……ガァッ……」フラフラ… ドタァァァン

マジョリン(デコル)「マーチ! 今だマジョ!」

マーチ「うんっ!」


マーチ「プリキュア! マーチ・シュートォォッ!!」

アキラメーナ(サッカーボール型)「アガッ!」ギュルルルルッ ズザァァァァッ


ドォォォォォォォォンッ!!


マーチ「えっ!? 転がって逃げた!?」


ビリーズ「うおぉぉっ!? お、お前……! お前、マジでデキるヤツだな!」

ビリーズ「っしゃあっ! まだまだ勝負はわかんねーぜっ!」


???「——と、思ったら大間違いやで!」バッ

ビリーズ「……あん?」

マーチ「あっ……!」

マーチ「ハッピー! サニー! ピース!」


ハッピー「遅くなってゴメンね! キャンディとウルルンがアキラメーナに気付いて、急いで来たの!」

サニー「っちゅーわけや! 遅なった分、一気に行くで! ふんっ!」ガシッ

アキラメーナ(サッカーボール型)「ア、アガガッ!」ギュルルルルッ

サニー「持ち上げてまえば、もういっくら回ってもムダやで! そのまま上に放り上げたるっ! ほれ、トスやっ!」ドガッ

アキラメーナ(サッカーボール型)「アガァァァッ!」


マーチ「ナイス、サニー! これでもう逃げられないね!」

ハッピー「よぉーし! じゃあみんなで一緒に行こう!」

サニー・ピース・マーチ「うんっ!」

ハッピー「プリキュア! ハッピー・シャワーァァッ!!」

サニー「プリキュア! サニー・ファイヤーァァッ!!」

ピース「プリキュア! (ピシャァン!) ひゃぁっ! ピース・サンダーァァッ!!」

マーチ「プリキュア! マーチ・シュートォォッ!!」


ドドドドォォォォォォォォンッ!!


アキラメーナ(サッカーボール型)「アガァァァァァ……」シュワァァァァ…


サニー「たーまやーっ、てなもんや!」

ビリーズ「くぅぅっそぉぉっ! またやられたぁっ!」

ビリーズ「っつーか、なんだよ! プリキュアって、この間は二人だったじゃねーかよ! 何でいきなり倍に増えてんだよ! せめて一人ずつ増えろよ!」

ビリーズ「……けっ、まあいい。今回はいい収穫があったからいいもんねー。悔しくなんかないもんねー」


ビリーズ「…………ホントだぞ、悔しくなんかねーぞ! くっ……、バァーーカ!」シュバッ


サニー「……なんや、アイツ……。一人でやかましいやっちゃなあ……」

マーチ「サニーに言われたらおしまいだね……」

〜 サッカー部練習終了後 七色ヶ丘中学校 サッカーグラウンド脇 休憩所 〜

なお「…………」

マジョリン「…………」


あかね「さっきっから一っ言もしゃべらへんな、二人とも」

やよい「変身してたから、仲直りできたのかと思ったのに……」

みゆき「と、とりあえず、ここは見守ろう! 二人ならきっと仲良くなれるよ!」

マジョリン「……さて、と。あたしはそろそろどこかに行くマジョ」

なお「……マジョリン……?」

マジョリン「今日は、なおを守れてよかったマジョ。……でも、やっぱりなおは、あたしのことが許せないマジョ?」

マジョリン「なおにイヤな思いさせるくらいなら、あたしが離れるマジョ」


マジョリン「さっきは、助けてくれてありがとうマジョ。本当にうれしかったマジョ」

マジョリン「もしまたプリキュアに変身したくなったら、いつでも呼ぶマジョ。力を貸すマジョ!」


トテトテトテトテ…


なお「……待って、マジョリン!」

マジョリン「……マジョ?」

なお「どこか、って、行くあて、あるの?」

マジョリン「マジョ……。どこか適当な草むらでも寝床にするマジョ」

なお「…………」

なお「ねえ、マジョリン」


なお「ウチに、来ない?」


マジョリン「……!! なお……!?」

マジョリン「いいマジョ……!? あたしは、あんたの家族を……!」

なお「……ホントはね、わかってたんだ。もうマジョリンは悪い人じゃないんだ、ってこと」

なお「でも、マジョリンのこと見たら……、あの時の事を思い出したら、ついカッとなって……、ひどい事、言っちゃった。ホントにゴメン」

なお「だから、そのお詫びと、さっき助けてもらったお礼、ってことで、さ」

なお「あれだけ助けてもらったんだもん。それくらいしないとあたしの気が済まないし、スジが通らないよ」

なお「……それに、マジョリンに改めて知ってもらいたいんだ」

なお「"家族" っていうのが、どんなものか。どんなにあったかくて、大切なものか」

なお「自分のした事が申し訳ない、っていうなら、それを知った上で、守るためにこれからも戦ってほしい」

なお「……あたしと、いっしょに」


マジョリン「……な……お……!」


マジョリン「なおぉぉっ!」バッ

なお「まだ少し、ほんの少しだけ、許せない気持ちがあるけど……」

なお「たくさん話して、少しずつでもなくしていければ、って思う。そのための時間はいっぱいあるよ」

なお「だから、これからよろしくね、マジョリン」


マジョリン「マジョ!」

あかね「……何とか、うまく収まったみたいやな」

やよい「まだちょっとぎこちないみたいだけど……」

みゆき「……でも、なおちゃんも、ホントはマジョリンを許してあげたかったんだね。仲良くなるきっかけが必要だっただけなんだよ、きっと」


みゆき「こうやってちょっとずつ笑顔が増えていって、みんなでウルトラハッピーになれたらいいね!」

あかね「せやな!」

やよい「うんっ!」

〜 七色ヶ丘市 公園 ベンチ 〜

ビリーズ「おぉーい、シアンナ! やっと見つけたぜ! こんなところにいたのか」

シアンナ「何よ、騒々しいわね。目立つからあまり大声出さないでもらえる?」

ビリーズ「ふっふっふ。そんな冷たい態度取ってられるのも今のうちだぜ……! このボトルを見ろっ!」


キラキラキラ


シアンナ「……!? こ、この "心の絵の具" は……! わずかだけど輝いている……。今までのくすんだものとは明らかに色が違うわね……!」

ビリーズ「だろ!? もしかして、これがその "当たり" なんじゃねーか!?」

シアンナ「可能性はあるわね……! 早速本国に送って鑑定してもらいましょう。……ビリーズ、見直したわ」

ビリーズ「へっ! オレが本気になりゃー、ざっとこんなもんよ!」

シアンナ「それで、これはどういう人間から吸収した心なの?」

ビリーズ「えっ? どういう、って?」

シアンナ「だから、何か特殊な行動をしていた、とか、何かその人間に特徴はなかったの? それがわかれば、今後の活動のヒントになるのよ」

ビリーズ「……特殊な行動……」


ビリーズ「……そういえば、何か大勢で集まってわーわーやってたな」

シアンナ「わーわー……? 何それ。もっと具体的なことはわからないの?」

ビリーズ「……わりぃ。その絵の具取れたのに夢中で良く憶えてねえ……」


シアンナ「…………」


シアンナ「……まあ、この世界特有の文化かもしれないし、こちらに来たばかりのあなたがわからなくても無理ないかもしれないわね」

シアンナ「それなら、せめて場所を教えて。時間を見つけて私が見に行ってみるわ」

ビリーズ「……場所……。場所……?」

シアンナ「……ビリーズ、あなたまさか……」

ビリーズ「……テキトーに歩いてたんで、そこまでの道憶えてねえ……」


シアンナ「…………」

シアンナ「ビリーズ、見損なったわ。いえ、評価が元に戻っただけね。しばらくここで座って反省してなさい」スタスタスタ

ビリーズ「ちょっ、待てよ! どこ行くんだよ!」

シアンナ「さっき言ってた仕事の続きよ。一人でやるから付いてこないで」

シアンナ「いい? 私達の任務は重要なの。今度からそこのところを忘れないで、良く考えて行動しなさい。それじゃあ」シュバッ

ビリーズ「お、おい、シアンナ!」


ビリーズ「……反省って、いつまでしてりゃあいいんだよ……」

ヒュウゥゥゥゥ…


ビリーズ「……へぷしっ。暗くなって冷え込んできやがった……」

ビリーズ「今日このままここで一人? マジで? わびしすぎる……!」


ビリーズ「せっかく頑張ったのに……! あんまりだぁぁぁっ!!」



つづく

次回予告

みゆき「生徒会長としてガンバるれいかちゃん! でも、みんなをまとめるには色々タイヘンみたい……」

みゆき「ポップも来て応援してくれてるけど、そこにまた新しいデスペアランドの人が来て大騒ぎ!」

みゆき「れいかちゃん、負けないで! わたし達が付いてるから!」


みゆき「次回、『スマイルプリキュア レインボー!』 "煌(きらめ)け! 清き心・キュアビューティ!"」


みゆき「みんな笑顔でウルトラハッピー!」

今回はここまでです!
お読みいただいた方、ありがとうございました。

動かせるキャラが増えて、大分わちゃわちゃできるようになってきました。
これからもっと『スマイル』らしくわちゃわちゃさせていきたいですね!

よろしければ次回もまたよろしくお願いします!


第1話 >>3 から
第2話 >>75 から
第3話 >>166 から
第4話 >>252 から

乙乙
スマプリらしくていいね

プリキュアへの愛を感じる。

唐突でスミマセンが、これから第5話をアップします!
日曜朝から急な用事が入ってしまったので、、

よろしくお願いします!

〜 青木家 廊下 〜

れいか「…………」スタスタ


曾太郎(れいか祖父)「——か」


れいか「…………」スタスタ


曾太郎「——いか」


れいか「…………」スタスタ


曾太郎「れいか!」

れいか「! は、はいっ! 申し訳ありません、おじい様。すれ違ったのに挨拶もせず……」

曾太郎「いや、そのような事は良い。それよりも、大丈夫か、れいか。心、ここにあらず、といった様子であったぞ」

れいか「そう……でしたか? 自分では気付きませんでした……」

曾太郎「……また何か、悩みを抱えているのだな」

れいか「……はい……」

曾太郎「お前も悩み多き年の頃、詮索はせん」

曾太郎「だが、もし自分が許すのであれば、遠慮なく周りの者を頼りなさい。必ずやお前の助けとなるであろう」

れいか「……ありがとう、ございます。それでは、考えることがありますので、失礼いたします」

曾太郎「……うむ」


スタスタスタ…


曾太郎(……この場でわしを頼っても良いものを……。迷惑をかけまい、としておるのだな)

曾太郎(それはあの子の優しさではあるが、同時に悪い癖でもあるな)

曾太郎(だが、れいかよ。一人で悩む、というのであれば、それでも良い)


曾太郎(今は存分に悩むがいい。迷うがいい。いずれ、自ずと自らの "道" が見えてくることだろう)


曾太郎(それまでは苦しく、つらい思いをするかもしれんが、決して諦めることなく、見事耐え抜いてみせるのだぞ、れいかよ……)




スマイルプリキュア レインボー!

第5話「煌(きらめ)け! 清き心・キュアビューティ!」



〜 昼休み 七色ヶ丘中学校 中庭 〜

やよい「じゃーんっ! 今日は、オニニンの顔のお弁当を作ってみましたー!」

みゆき「おおぉーっ! すごーい、そっくり!」

れいか「これは……確かにすごいですね!」

なお「ホントだね! あたしも料理は結構自信あるけど、こんなにキレイにはできないなぁ……!」

あかね「前にもキャンディの顔したお弁当作ってたことあったけど、やよい、ほんま器用やなぁ!」


ウルルン(デコル)「オニニンの形の弁当? おい、あかね! 出してくれウル! おれも見てぇウル!」

あかね「わかったわかった。出したるけど、あんま騒いだらあかんで?」ポイッ


ポンッ


マジョリン(デコル)「あたしも見たいマジョ! なお、出してほしいマジョ!」

なお「はいはい」ポイッ


ポンッ

ウルルン「ふぅっ、やっぱりデコルになるのはキュークツウル。どれどれ……」


ウルルン「……ほーう、こりゃあ確かに良くできてるウル。特にこの、間の抜けた目元なんかそっくりウル!」

マジョリン「こっちのだらしの無い口もいい出来してるマジョ!」

やよい「ほ、ほめられてる、のかなぁ……? あはは……」


オニニン(デコル)「ぬっ、ぬぬぬぬ……!」


ポンッ


オニニン「おまえ達! さっきから聞いてれば言いたい放題言ってくれるオニ!」

ウルルン「へん! ホントのことだろウル!」

マジョリン「ほら、そのおっぴろげた口! そっくりだマジョ! ひゃっひゃっひゃ!」

オニニン「うがーっ! もう怒ったオニ!」バッ


ボカスカ ボカスカ

みゆき「あ、あわわ、ケンカ始まっちゃったよ!」

れいか「大変……! 周りに人はいないので見つかる心配はないとは思いますが……」

やよい「オ、オニニン! ダメだよ、騒いじゃあ!」


オニニン「コイツらが悪いオニ! おれ様をバカにしたら許さんオニ!」

ウルルン「くやしかったらもうちょっとキリっとするウル!」

マジョリン「そうだマジョ! いつもぼけーっとしてるからいけないマジョ!」


ボカスカ ボカスカ


あかね「……はぁ……」

なお「しょうがないなぁ……」

ガンッ!


ウルルン「いてっ!」
マジョリン「マジョっ!?」


あかね「騒いだらあかんってゆーたやろ!」
なお「騒いだらダメって言ったでしょ!」


ウルルン「いててて……。あかね! なぐる事ないウル!」

あかね「言ってわからんヤツにはこーするしかないやろ。まだわからんよーなら……もう一発いくでぇ?」グッ

ウルルン「うわっ! わ、わかったウル! もう騒がねえウル!」


なお「全く。マジョリン、あんたもだよ。他の人に見つかったら大騒ぎになるから、気をつけないと」

マジョリン「ご、ごめんマジョ……。ついはしゃぎすぎたマジョ……」


オニニン「やーい、怒られたオニ!」

やよい「オニニンも! またケンカになっちゃうからそういうこと言わないの!」

オニニン「や、やよい……。ゴメンオニ……」

みゆき「(ニコニコ)」

あかね「みゆき、どしたん? ニコニコして」

みゆき「みんな、もうすっかり妖精さん達と仲良くなっててすごいなぁ、って思って。ね、キャンディ?」


ポンッ


キャンディ「クル! おにいちゃんも言ってたクル! "ケンカするほど仲がいい" って!」


あかね「あはは……、仲良いっちゅーか、なんかできの悪い弟が一人増えた、みたいな感じやけどな」

ウルルン「できが悪い、は余計ウル!」


なお「あたしもそんな感じかな。今さら面倒みるのが一人増えてもあんまり変わらないよ」

マジョリン「ホントはあたしの方が年上なのにマジョ……」


やよい「オニニン、さっきはあんなに怒っちゃったけど、家だとすっごく優しいんだよ! いろいろ手伝ってくれるし」

オニニン「や、やめるオニ、やよい。テレくさいオニ……」


みゆき「ふふふっ」

キャンディ「みんな楽しそうでよかったクル!」


れいか「…………」

れいか(パートナー……)

なお「れいか? れいか?」

れいか「……えっ? な、何? どうしたの、なお?」

なお「どうしたの、はこっちのセリフだよ。ぼーっとしちゃって」

れいか「あ、ううん。大したことじゃないの」

れいか「ただ、皆さんがうらやましいな、と思いまして……」

みゆき「うらやましい?」

れいか「なおにはマジョリンさんが、みゆきさんにはキャンディが、あかねさんにはウルルンさんが、やよいさんにはオニニンさんが」

れいか「それぞれ、気心知れたパートナーが近くにいる、というのがうらやましく思えてしまって……」

やよい「そっか、れいかちゃんのパートナーのポップはまだ来てないもんね……」


なお「…………」

なお「……れいか、ホントにそれだけ? もしかして、何か悩み事抱えてない?」

れいか「えっ……!?」

なお「その悩み事を相談したいからパートナーがほしい、ってことだったりしない?」

れいか「なお、どうして……」

なお「あ、やっぱりそうなんだ。わかるよ、れいかがぼーっとしてる時は大体悩んでる時だもん」

あかね「え、そーなん? うち、全然気付かんかったわ……。なお、よーわかるなあ」

なお「まあ、れいかとは付き合いも長いからね!」

みゆき「れいかちゃん! 悩み事があるなら相談してよ!」

やよい「そうだよ! パートナーがいなくても、わたし達がいるよ!」

あかね「せやせや! 困ったら助け合うのが友達やで?」

れいか「皆さん……!」

なお「ね、話してみてよ、れいか。もちろん、れいかさえよければ、だけど」

れいか「ええ……!」


れいか「では皆さん、聞いてください。あれは昨日、生徒会が参加する町内会主催のフリーマーケットについて話し合っていた時のことです」

〜 前日 七色ヶ丘中学校 生徒会室 〜

れいか(回想)『それでは多数決により、生徒会がフリーマーケットで販売する物は美術部や手芸部など、文化部手製の品々に決まりました』


パチパチパチ


れいか(回想)『それでは皆さん、各部に協力をお願いするようご連絡をお願いします』

生徒会役員達(回想)『はい!』

生徒会会計・寺田 るな(2年)(回想)『(小声) ……ねえ、倉田くん、いいの? あんなにやりたがってたのに……』

生徒会書記・倉田 なおき(2年)(回想)『(小声) しかたないよ……、多数決で決まった事だし……』

生徒会会計・寺田(回想)『(小声) ……でも……!』

れいか(回想)『それでは、他に意見がなければ今日の会議は終了と——』


生徒会会計・寺田(回想)『か、会長! 待ってください! 聞いてもらいたいことがあるんです!』

れいか(回想)『寺田さん? どうかしましたか?』

生徒会書記・倉田(回想)『て、寺田さん!』


生徒会会計・寺田(回想)『倉田くんのアイデアのこと、もう一度考えてもらいたいんです!』

れいか(回想)『倉田くんのアイデア? 確か、生徒の皆さんがいらなくなった、おもちゃや絵本の販売でしたね』

生徒会会計・寺田(回想)『そうです!』

生徒会会計・寺田(回想)『倉田くん、町内会のフリマには前に何度か参加してて……、小さな子供達もたくさん来るってことを知ってたんです』

生徒会会計・寺田(回想)『中学生になったらおもちゃや絵本もいらなくなるだろうし、生徒のみんなから集めて安く売れば、子供達も喜ぶんじゃないか、っていうアイデアだったんです』

れいか(回想)『なるほど……、そういう理由があったんですね』

生徒会書記・倉田(回想)『はい……』


生徒会書記・倉田(回想)『ぼく、子供が好きだから……。来てくれた沢山の子供達に喜んでほしいな、って思ったんです』

れいか(回想)『そうですか、それは素晴らしいことですね……』

れいか(回想)『この件はもう一度考えた直した方がいいかもしれません。そのことを踏まえて再度多数決を——』


生徒会副会長・板野 まさお(2年)(回想)『いけません、会長。一度決まった事項を変更するのは良くないと思います』

生徒会会計・寺田(回想)『板野くん……!』

生徒会副会長・板野(回想)『これは、皆の意見を出し合って決めた事です。決定が納得いかないからといってその度に変えていてはおかしくなってしまうと思います』

れいか(回想)『副会長、ですが、倉田くんの考えはとても素晴らしいものです。もう一度考えてみてもいいのではないでしょうか』

生徒会副会長・板野(回想)『そうは言いますが、文化部手製の品々を販売する、というアイデアは会長のものではないですか』

生徒会副会長・板野(回想)『文化部の活動を町の皆さんに広く知ってもらいたい、という会長のお考えが素晴らしいと思ったからこそ、ぼくも含めて多くの人が賛成したんです』

生徒会副会長・板野(回想)『倉田くん一人のために変えてしまっては、今度は会長のアイデアに賛成した人達の気持ちがないがしろになってしまうのではないでしょうか』

れいか(回想)『……確かに、そう……ですね……』

生徒会会計・寺田(回想)『で、でもフリマって二日あるじゃないですか! 一日は会長のアイデアで、もう一日は倉田くんのアイデアにしたら……』

生徒会副会長・板野(回想)『忘れたのかい、寺田さん。このフリマは参加希望者が多いから、生徒会は一日しか参加できないんだよ』

生徒会会計・寺田(回想)『あっ……』

生徒会副会長・板野(回想)『それに、仮に二日出られたとしても、両方出ていたら休みがなくなってしまうよ。君は、みんなに休みを潰してでも働けっていうのかい?』

生徒会会計・寺田(回想)『それは……』


れいか(回想)『……でも、どうにかできないでしょうか。このまま倉田くんのアイデアをダメにしてしまうのは……』

生徒会副会長・板野(回想)『会長がそのような事では困ります。自分の意見には責任をもっていただかなくては』

れいか(回想)『…………』

れいか(回想)『……副会長。それに皆さん。私に、少し時間をいただけないでしょうか』

れいか(回想)『どうにかして私のアイデアと倉田くんのアイデア、両方実現できないかどうか考えさせてもらいたいんです』

生徒会副会長・板野(回想)『……時間って、どのくらいでしょうか』

れいか(回想)『……明後日。明後日まで保留にさせてください』

生徒会副会長・板野(回想)『……わかりました』

生徒会副会長・板野(回想)『ですが、早めに結論を出してください。文化部の方々に出品を依頼しなくてはならないので』

れいか(回想)『はい』

〜 七色ヶ丘中学校 中庭 〜

れいか「——と、いうことなんです」

なお「……そっか。難しい、問題だね……」

みゆき「寺田さんと倉田くんって、去年読み聞かせ会を一緒にやった人達だよね。できれば力になってあげたいけど……」

あかね「にしても、その副会長、イヤーな感じのやっちゃなぁ! れいかにイジワルしたいんとちゃうの?」

れいか「そんなことはありません。副会長は生徒会全体のことを考えているだけで、悪気があるわけではないんです」

やよい「確かに、言ってることも間違ってないもんね……」


なお「でも、れいかは何とかしたいんでしょ?」

れいか「ええ……」

みゆき「両方いっぺんに売ったらダメなの? 文化部の作品とおもちゃ」

れいか「できればそうしたいのですが……、生徒会のスペースは小さく、そう多くは置けないんです……。両方置いたら中途半端になってしまうでしょう」

あかね「そうなんかー……、あかんなぁ……。なあ、ウルルン、何かいいアイデアあらへん?」

ウルルン「きゅ、急に振るなウル! んなこと言われても、全然わかんねえウル……」

ウルルン「オニニン、は、聞いてもムダだろうから、マジョリン。何かないウル?」

オニニン「な、なんでオニ!? ……って言っても、何もアイデアないけどオニ……」

マジョリン「……れいかには悪いけど、あたしゃ、そのフクカイチョーとかの言ってることの方が正しいように思えるマジョ」

マジョリン「さっきのパートナーの話じゃないけど、こういう時こそあいつの力がほしいところマジョ……」


キャンディ「おにいちゃん、クル? そうクル! おにいちゃんならきっとれいかを助けてくれるクル!」

みゆき「でも、そのポップはいつ来るの? 明日までに何とかしないといけないのに……」

キャンディ「クルぅ……」


れいか「…………」

れいか「……皆さん、ありがとうございました。この問題はやっぱり生徒会の者でないと解決は難しいと思います。もう少し、私一人で考えてみます」


みゆき「……れいかちゃん」

あかね「ゴメン、れいか。助ける、なんてエラソーなこと言うといて、何もでけへんかったわ……」

れいか「そんなことはありません! 皆さんに相談に乗ってもらって、とてもうれしかったです!」

れいか「もし何かいい案が思いつきましたら教えてください。よろしくお願いします」

やよい「うんっ! 絶対連絡するよ! いいアイデアが浮かべば、だけど……」


なお「れいか、今回は力になれなかったけど、あたし達にできることだったら何でもするよ。だから、何かあったら相談してね」

れいか「……ありがとう、なお。それでは皆さん、失礼します」


スタスタスタ…


なお(……れいか……ガンバれ……!)

〜 七色ヶ丘市 商店街外れ 〜

ビリーズ「なぁ、シアンナぁ。急にこんな所に呼び出して何の用だよ?」

ビリーズ「っていうか、あっちの方、結構人間いるぜ? オレら目立っちゃマズイんじゃねーの?」

シアンナ「その通りよ。これからあなたに見せるのは、私達が目立たないようにするためのものなの」


シアンナ「着いたわ。ここよ」

ビリーズ「ここって、この店のことか? 看板になんか書いてあるな。えーっと、"ギャラリー・D"……」

シアンナ「私が作ったものよ。これから私達はここを拠点にして、身分を隠しつつ活動していくことになるわ」

シアンナ「幸い、私達の外見は "リアルランド" の住人と大差ない。普段はここで絵を売っている画家、として振舞っていくようにするのよ」

ビリーズ「お、おぉー……! つまりアジトか! こ、これで寝る時も夜風を気にしないでよくなるんだな!? くぅーっ、キツい野宿ともおサラバだぜぇ!」

シアンナ「喜んでもらえて良かったわ」

ビリーズ「あ、もしかして、この間言ってた "別の仕事" ってこれ作ってたのか?」

シアンナ「ええ、そうよ」

ビリーズ「しかし、こんなもん、よく用意できたな。何したんだ?」

シアンナ「ああ、それは——」


不動産屋「ちょっとキミ達! ここで何をしてるんだね!? ここは空き地だったはずだろう! 何で勝手に家を建ててるんだ!」

ビリーズ「うえ、何か来たぞ。どーすんだよ、シアンナ」

シアンナ「まぁ、見てなさい。……出番よ、"D"」パチンッ

ギャラリー・D「アキラメーナ!」ポワワワワワワ

不動産屋「なっ、なんだ、これ……は……」

ビリーズ「おおっ? 店から出た光を浴びたらオッサンがおとなしくなったぞ?」

不動産屋「……これは大変失礼しました、オーナー! この土地はあなた様のものです、ご自由にお使い下さい! それでは!」


タタタタタタ…


ビリーズ「オッサン行っちまった……。何したんだ??」

ビリーズ「っていうかこの店、もしかして……」

シアンナ「そう、私が作ったアキラメーナよ」

シアンナ「ただ、ちょっと特殊な描き方をしていてね、近くの人間に催眠術をかける能力を持っているわ」

シアンナ「その代わり心を吸うことができないから、仕事では役に立たないけど、隠れ住むにはうってつけのはずよ」


ビリーズ「はーっ……、お前、すげえな。こっち来てからそんな経ってねえってのに、ここまでできるんだからよ」

シアンナ「私もあなたにそんな言葉を言ってみたいわ。お膳立てはしたんだから頑張ってちょうだい」

ビリーズ「へいへーい。イヤミ言われなくてもやりますよー、っと」

バサッ バサッ バサッ


ビリーズ「……ん? 何だ? 何かこっち来るぞ? 鳥……?」

シアンナ「いえ、あれは……」


アキラメーナ(小鳥型)「アキラメーナ!」


シアンナ「やっぱり。伝書アキラメーナだわ。足に手紙がくくってある。ここの事はすでに本国には連絡してあるから、おそらく本国からのメッセージだわ」ガサガサ

ビリーズ「おお、マジだ。手紙だな。何て書いてあんだ?」


シアンナ「……"セルリア" をこちらに送ったそうよ。"協力して任務に当たれ" と書いてあるわ」

ビリーズ「…………は? "セルリア"? マジで!? アイツと組むのかよ!? オレ、アイツ苦手なんだけど……」

シアンナ「珍しく意見が合ったわね。私もよ」

シアンナ「でも、これは命令よ。従う他無いわ」

ビリーズ「うへー……、マジかよ……」

シアンナ「もう、彼女はすでにこの町のどこかに来ているはず。二人で手分けして探すのよ。見つけたら彼女を連れてここに戻ってくるように」

ビリーズ「しょうがねえなぁー……。でも、見つかんねぇ方がオレ的にはありがたいぜ」

シアンナ「……ビリーズ……!」ギロッ

ビリーズ「わかったって! やる、ちゃんとやるから! にらむなよ!」

シアンナ「……全く。それじゃあ頼むわよ」シュバッ


ビリーズ「はぁー、やれやれだな……」シュバッ

〜 放課後 七色ヶ丘市 公園 フリーマーケット会場 〜

れいか「あのーっ、このダンボールはこちらでよかったでしょうか!?」

フリマ実行役員長「ああ、大丈夫だよ! そこに置いてくれるかい!?」

れいか「わかりました!」


フリマ実行役員長「いやー、手伝ってもらっちゃって悪いね」

れいか「いえ、私達七色ヶ丘中学校生徒会も出店させていただくので、せめて何かお力になれれば、と思いまして」

フリマ実行役員長「そうかいそうかい。このフリマは結構大掛かりだろう? 早いうちから準備しないといけないし、人手も沢山ほしいんだ」

フリマ実行役員長「本当に助かるよ、ありがとう」

れいか「恐縮です」


フリマ実行役員長「しかし、結構働いて疲れたろう? この辺りで切り上げたらどうだい? 学校帰りじゃあ大変だろうし」

れいか「いえ、私はまだ大丈夫ですが……」

フリマ実行役員長「キミは十分働いてくれたよ。後はオジサン達に任せなさい! まだまだ若い子には負けてられないからね、はっはっは!」

れいか「……わかりました。それでは、今日のところは失礼させていただきます」

フリマ実行役員長「うん。今日はありがとうよ。当日もうまくいくといいな」

れいか「はい! ありがとうございます!」

〜 七色ヶ丘市 公園 フリーマーケット会場近くのベンチ 〜

れいか(……会場の間取りを見ても、余分なスペースはなし。生徒会の区画を広げるのは難しそうだわ……)

れいか(フリマ会場の様子を見れば何か良い案が浮かぶかと思ったけれど、難しそう……)

れいか(やっぱり、両方の意見を実現するのは難しいのかしら……)

れいか(私は生徒会長で、みんなのリーダー。より良い結果になるようみんなを導かないといけない)

れいか(でも、全ての意見にはその人の大切な気持ちが込められている。できれば、その気持ちをムダにはしたくない……)

れいか(それでも、一つだけを選ばなければいけない時は、他の意見を切り捨てないといけないのかしら。副会長の言うように)


れいか(私は、どうすれば……)

???「——お困りのようでござるな」

れいか「……!? この声、もしかして……」


ポップ「お久しぶりでござる! れいか殿!」

れいか「ポップさん! どうしてここに……!?」

ポップ「本当はキャンディに会いにみゆき殿の家に行くつもりだったでござるが、絵本に乗って飛んでいる最中れいか殿の姿が見えたので立ち寄ったのでござる」

れいか「そうだったんですね……」


ポップ「ところで、何かとても困っている様子でござるな。何かあったでござるか? 拙者でよければ相談にのるでござるよ」

れいか「……ありがとうございます、ポップさん。実は——」

ポップ「——なるほど。みんなの願いを叶えたいけれど、一つだけを選ばなければならない。リーダーの悩みでござるな」

れいか「……はい」

ポップ「難しい問題でござる……」


れいか「キャンディやウルルンさん達から、ポップさんはメルヘンランドを立て直そうと、リーダーとして頑張っている、という話を聞きました」

れいか「ポップさんなら、こういう時はどうしますか……?」

ポップ「そうでござるなぁ……」


ポップ「その質問の答えになるかはわからないでござるが、ちょっと拙者の話をさせてもらうでござる」

ポップ「皇帝ピエーロを倒した後、拙者は次期クイーンであるキャンディの兄ということもあって、メルヘンランドを治めることになったでござる」

ポップ「最初はタイヘンでござった……。右も左もわからず、ただ、みんなが良くなるようにと、それだけを考えて一生懸命働いたでござる」

ポップ「でも、自分ひとりではどうにもできない問題もたくさん出てきて……。途方に暮れることもあったでござる」

ポップ「そう、ちょうど、今のれいか殿のように」

れいか「…………」


ポップ「そんな時でござった。困った拙者を見かねたのか、周りの仲間達が声をかけてくれたでござる」

ポップ「"困ってはいないか"、"何か手伝えることはないか"、と」

ポップ「恥ずかしながら、拙者、その時初めて気付いたのでござる」

ポップ「"仲間達の力を借りれば、できないこともできるようになる" ということに」

ポップ「拙者は、何でもかんでも自分一人でやろうとしすぎたのでござるな」

ポップ「れいか殿は、"一つのことを選ばなければならない" と言っていたでござるが、果たして本当にそうでござろうか?」

れいか「えっ……?」

ポップ「自分だけではなく、周りに協力してもらえば、一つだけと言わず、二つでも、三つでも、選ぶことができるようになるかもしれないでござる」

ポップ「幸い、れいか殿の周りには頼りになる仲間がたくさんいるではござらぬか!」

れいか「仲間……」

みゆき(回想)『れいかちゃん! 悩み事があるなら相談してよ!』

やよい(回想)『そうだよ! パートナーがいなくても、わたし達がいるよ!』

あかね(回想)『せやせや! 困ったら助け合うのが友達やで?』


なお(回想)『あたし達にできることだったら何でもするよ。だから、何かあったら相談してね』


れいか「……はい……!」

ポップ「れいか殿、もう一度、良く考えてみてくだされ。今、何ができるのか」

ポップ「自分一人の力だけではなく、周りの人々の力も借りたら、何ができるのかを。きっと、より多くのことができるはずでござるよ」

ポップ「その時は、及ばずながら拙者も力をお貸しするでござる!」


れいか「ポップさん……、ありがとうございます!」

れいか「私、もう少し頑張って考えてみます。諦めずに、少しでも、自分の願いに近づけるように」

ポップ「……元気になったようで何よりでござる。早速、力になれたようでござるな。良かったでござる!」

ザワッ


ポップ「…………!?」

れいか「ポップさん? どうかしましたか? お顔が急に険しく……」

ポップ「体中の毛が逆立つような感覚……。何か、近くに良くない者がいるでござる……!」

れいか「"良くない者" ……?」

ポップ「あそこでござる!」


藍色の髪・猫背の女性画家「…………」

れいか「あの草陰にいる女性ですか? 腰まである長い髪で顔が隠れて、確かにただならない雰囲気はありますが……」

ポップ「とても不気味な気配がするでござる……!」

れいか「! もしかして、デスペアランドの!?」

ポップ「おそらくそうでござる……。れいか殿、気をつけるでござる!」

藍色の髪・猫背の女性画家「…………」


藍色の髪・猫背の女性画家「……仕事……しよう……」


藍色の髪・猫背の女性画家「……画題は……この箱に……詰まっているもので……いいかな……」


藍色の髪・猫背の女性画家「……闇の絵の具よ……闇の絵筆よ……。キャンバスに……絶望を描き出せ……」


シュババババッ


藍色の髪・猫背の女性画家「……現れよ……アキラメーナ……」


ズズズズズズ…


アキラメーナ(パンダのぬいぐるみ型)「アガァッ!」

アキラメーナ(うさぎのぬいぐるみ型)「アガァッ!」

アキラメーナ(クマのぬいぐるみ型)「アガァッ!」

アキラメーナ(ひつじのぬいぐるみ型)「アガァッ!」

アキラメーナ(男の子の人形型)「アギャギャギャギャッ!」


藍色の髪・猫背の女性画家「……アキラメーナ……、心……吸って……」

アキラメーナ達(人形型)「アギャァッ!」


ズワァァァァァッ…


フリマ実行役員長「うっ、なんだ……急にめまいが……」バタッ

フリマ実行役員・A「体が……動かな……」バタッ

フリマ実行役員・B「ああ……」バタッ

れいか「これは……! 周りの方々の体から何かもやのようなものが出て、あの人の持つボトルに吸い込まれていく……!?」

ポップ「なるほど……、彼らはこうやって "あれ" を探しているのでござるか!」

れいか「"あれ" ……? ポップさん、何か知っているのですか?」

ポップ「本当はその事について話すためにこちらの世界に来たのでござるが……」

ポップ「詳しい話は後でござる! 今はあの者を止めるでござるよ!」


れいか「わかりました! ポップさん、私に力を貸してください!」

ポップ「承知でござる!」

ポップ「デコル・チェーンジ!」

パチンッ!

レディ!

れいか「プリキュア! スマイルチャージ!!」

ゴー!

ゴーゴー! レッツゴー、ビューティ!!


ビューティ「しんしんと降り積もる、清き心。キュアビューティ!!」

ビューティ「これは……、獅子のたてがみのようなマフラーが付いていて、服装も若干変わっていますね」

ポップ(デコル)「拙者の力が加わっているからでござる! 力も前より上がっているはずでござるよ!」

ポップ(デコル)「さあ、ビューティ殿、これ以上被害が大きくなる前に、あの者を止めるでござる!」

ビューティ「はいっ!」バッ

スタッ


ビューティ「そこまでです! これ以上の悪事は許しません!」

藍色の髪・猫背の女性画家「……誰……?」

ビューティ「私は伝説の戦士、プリキュア。キュアビューティ!」

藍色の髪・猫背の女性画家「……"プリキュア"……。……ああ……、知ってる……。……邪魔な……やつだ……」

セルリア「……私……"セルリア"……。……デスペアランドの者……」

ポップ(デコル)「名乗った……? 正体を隠す気はないのでござろうか」

セルリア「……関係……ない……。……何を知られても……。……だって……どうせ、あなた……」


セルリア「もう帰れないんだから」ギョロッ


アキラメーナ達(人形型)「アギャァッ!」バババッ


ポップ(デコル)「来るでござるよ、ビューティ殿!」

ビューティ「……大丈夫です、ポップさん。このくらいの小さな相手なら!」

ビューティ「はぁぁっ!!」


ドドドドドカッ!!


アキラメーナ達(人形型)「アギァァァッ!」バタ バタ バタッ


ポップ(デコル)「5体の怪物を一瞬でなぎ倒してしまった……! さすがでござる!」

セルリア「……だらしない……」

アキラメーナ(パンダのぬいぐるみ型)「アギギッ……」グググ…

セルリア「……立て……!」

アキラメーナ(パンダのぬいぐるみ型)「(ビクッ)アギッ……!」


アキラメーナ(パンダのぬいぐるみ型)「アギャァァッ!」バッ

ビューティ「何度来ても……同じですっ!」

ビューティ「ビューティ・キック!」ドカァッ

アキラメーナ(パンダのぬいぐるみ型)「アガァッ!」


ガシャァァァン!


ビューティ「……! いけない、フリマの方に蹴飛ばしてしまったわ……!」

ポップ(デコル)「ここで戦っては会場がメチャクチャになってしまうでござるな……! あの者達をここから引き離すでござる!」

ビューティ「その方がよさそうですね……!」


セルリア「……ふうん……」

セルリア「……アキラメーナ……。……あれを……狙って……」


アキラメーナ(うさぎのぬいぐるみ型)「アガァッ!」ブンッ


ガシャァァァン!


アキラメーナ(クマのぬいぐるみ型)「アギャァッ!」ブンッ


バキャァッ!


ポップ(デコル)「あやつら、会場を攻撃し始めたでござる!?」

ビューティ「なんてことを……! おやめなさい! 狙うなら私を狙えばいいでしょう!?」

セルリア「……イヤ……。……だって……この方が……困るでしょ……?」ニタァッ


ビューティ「……っ!」

ポップ(デコル)「なんと卑劣な……!」

ビューティ「……ここでは……たくさんの方達が、頑張って準備をしていました……。町の人々を喜ばせるために……一生懸命……!」

ビューティ「それを踏みにじるようなことをして……っ!」


ビューティ「絶対に、許しません!!」

バッ


ビューティ「はぁぁぁっ!」ドガッ!

アキラメーナ(ひつじのぬいぐるみ型)「アガァッ!?」

ビューティ「一つ!」


バッ


ビューティ「たぁぁっ!」ドガッ!

アキラメーナ(男の子の人形型)「アギャッ!?」

ビューティ「二つ!」


バッ


ビューティ「三つ目!」


セルリア「……今だ……!」


アキラメーナ(パンダのぬいぐるみ型)「アガァッ!」バッ
アキラメーナ(うさぎのぬいぐるみ型)「アガァッ!」バッ
アキラメーナ(クマのぬいぐるみ型)「アガァッ!」バッ


ビューティ「えっ!?」

ポップ(デコル)「残りの三体がいっぺんに飛び掛ってきたでござる!」


ドカァァァン!


ビューティ「きゃあぁぁぁっ!?」

セルリア「……ふっ……ふふっ……、引っかかった……!」

ビューティ「う……くっ……」

ポップ(デコル)「ビューティ殿! しっかりするでござる!」

ポップ(デコル)「会場を狙ったのは、ビューティ殿に隙を作るための罠だったでござるか……!?」


セルリア「……5対1……。……自分一人だけで……何とかなると……思ったの……?」

ビューティ「…………!」

セルリア「……一人だけじゃ……何も……できない……。……守れやしない……。……諦めなよ……」

ビューティ「…………」

ビューティ「……確かに、私一人でできることは……そんなに多くありません……」

ビューティ「私一人だったら、諦めてしまっていたと思います……。でも……!」


ポップ(回想)『れいか殿の周りには頼りになる仲間がたくさんいるではござらぬか!』

ビューティ「……そう、私には仲間がいます……! 苦しくなった時、助けてくれる仲間が……!」


セルリア「……何……言ってるの……。……いないじゃない……、……誰も……」

ビューティ「すぐに来ます、必ず!」

セルリア「…………付き合って……られない……。アキラメーナ……トドメ……」


アキラメーナ達(人形型)「アギャァッ!」バババッ


ポップ(デコル)「ビューティ殿! 来るでござる!」

ビューティ「大丈夫です、ポップさん。信じていれば、必ず……


ビューティ「必ず……、みんなが助けに来てくれます!」

ビューティ「はぁっ!」ドガッ!

アキラメーナ(男の子の人形型)「アギャッ!?」

セルリア「……残り4体……。……でも……もう……止められない……!」


ポップ(デコル)「ビューティ殿っ!!」

ビューティ「……っ!」

ババババッ


ドカァッ!

アキラメーナ(パンダのぬいぐるみ型)「アガァッ!?」


バキィッ!

アキラメーナ(うさぎのぬいぐるみ型)「アギィッ!?」


ドガッ!

アキラメーナ(クマのぬいぐるみ型)「アガガァッ!」


ドゴッ!

アキラメーナ(ひつじのぬいぐるみ型)「アギャッ!」


セルリア「…………!?」


ポップ(デコル)「ああっ……!」

ビューティ「……皆さん……!」

マーチ「ビューティ、大丈夫!?」

サニー「間一髪やったな! 結構危なかったんとちゃう!?」

ピース「ガンバって走ってきてよかったね!」

ハッピー「キャンディが悪い気配がする、っていうから急いできたの! 間に合ってよかったぁ!」

キャンディ(デコル)「キャンディたちが来たからには、もう大丈夫クル! おにいちゃん! ビューティ!」


ビューティ「はいっ……!」

ポップ(デコル)「キャンディ……、皆の衆……!」


セルリア「……増えた……?」

サニー「……さぁーて、うちらがいない間、ようも好き勝手やってくれたなぁ」

マーチ「ビューティをこんなに傷つけて……! この落とし前、高くつくよ」

ピース「わたし達が 5人揃えば……!」

ハッピー「どんな時でも絶対負けないんだからっ!」


セルリア「…………うっとうしい……! ……アキラメーナ……!」


アキラメーナ達(人形型)「アギャァッ!」バババッ


ビューティ「皆さん、彼らはフリマを狙ってきます! どうか守ってください! ここは、多くの人の想いがこもった、大切な場所なんです!」

マーチ「オーケー、任せといてっ!」

ハッピー「がってん承知っ!」

5人「はぁぁぁっ!」ドカァッ!

アキラメーナ達(人形型)「アガァッ!?」


セルリア「……! ……アキラメーナ達が……相手に……ならない……?」

ピース「こんなちっちゃい子達じゃ、わたし達は止められないよっ!」

ビューティ「皆さん、今です! 一気にいきましょう!」

サニー「よっしゃぁっ! ハデに行くでぇっ!!」

ハッピー「プリキュア! ハッピー・シャワーァァッ!!」

サニー「プリキュア! サニー・ファイヤーァァッ!!」

ピース「プリキュア! (ピシャァン!) ひゃぁっ! ピース・サンダーァァッ!!」

マーチ「プリキュア! マーチ・シュートォォッ!!」

ビューティ「プリキュア! ビューティ・ブリザァァードッ!!」


ドドドドドォォォォォォォォンッ!!


アキラメーナ達(人形型)「アガァァァァァ……」シュワァァァァ…


セルリア「……全滅……!」

ビューティ「……セルリア、と言いましたね。見ましたか? 私達の力を」

ビューティ「苦しい時にはお互いに助けあう。その絆が、私達 5人の……プリキュアの力なのです!」


ビューティ「だから私達は、5人いる限り、どんな時でも絶対に諦めませんっ!!」


セルリア「…………(ギリッ)」

シュバッ


シアンナ「そこまでよ。やっと見つけたわ、セルリア。一旦落ち着きなさい」

サニー「あ! あんた、あの時の……えーっと……何やったっけ」

ハッピー「デスペアランドのシアンナ! ……だったよね?」

シアンナ「……一応、憶えてもらえていたようで嬉しいわ」


マーチ「何? 今度は二人がかり、ってわけ? 何人でも相手になるよ!」

シアンナ「鼻息の荒い子ね。何もしないわ。私の目的はこのセルリアとの合流。今日のところは引き上げさせてもらうわ」

セルリア「……待って……! ……私……まだ負けて……ない……!」

シアンナ「落ち着きなさい、と言っているでしょう。闇雲になっては勝てるものも勝てないわ。ここは一度退く。いいわね」

セルリア「…………(コクン)」

シアンナ「それにしても、プリキュア。5人もいたとはね。それで全部かしら?」

ピース「そ、そうだよ! わたし達 5人揃ったら、絶対負けないんだから!」

シアンナ「そう。それ以上増える事はないのね。安心したわ」


シアンナ「私達の目的に、本来あなた達は関係ないの」

シアンナ「でも、邪魔をするのなら……次からは本気で相手をさせてもらうわ」

シアンナ「覚悟することね、プリキュア」シュバッ


ポップ(デコル)「二人とも、消えてしまったでござる」

ビューティ「次からは本腰を入れてくる、ということでしょうか。今後は激しい戦いになりそうですね……」

ハッピー「……でも、きっと大丈夫だよ!」

サニー「せやで! ようやっと 5人揃ったんや!」

ピース「わたし達、どんなピンチでも乗り越えてきたよね!」

マーチ「そういうこと。だから、心配なんてする必要ないよ、ビューティ!」

ビューティ「ええ……! 遅くなりましたが、私も共に戦います。これから、よろしくお願いします!」

〜 七色ヶ丘市 公園 フリーマーケット会場近くのベンチ 〜

なお「そういえば、れいか。フリマの件、何かいいアイデア浮かんだ?」

みゆき「あ、そうだ! 明日までに何とかしないといけないんだよね!? ごめーん……、わたし何も思いつかなかったー……」

れいか「いえ、ありがとうございます。そのお心遣いだけでも十分です!」

れいか「実は、一つだけ案を思いついたんです」

れいか「ですが、その案は皆さんのご協力がどうしても必要で……。少し頼みづらいのですが——」

なお「れいか、ストップ。そういうのなし」

れいか「なお……」


あかね「そや! うちらの間で遠慮なんて無しやで?」

やよい「そうだよ! いっつもれいかちゃんにはお世話になってるし……、恩返しさせてよ!」

みゆき「うんっ! れいかちゃんのためだったら頑張っちゃうよ!」

キャンディ「キャンディもお手伝いするクル!」

ウルルン「まあ、ちょっとくらいなら手伝ってやってもいいウル!」

オニニン「力仕事なら任せるオニ!」

マジョリン「じゃあ、あたしはこの天才的な頭脳を貸してあげるマジョ!」

れいか「みなさん……! ありがとうございますっ!」


ポップ「良かったでござるな、れいか殿」

れいか「はい! 皆さん、よろしくお願いします!」

みゆき「よぉーしっ! それじゃあ、みんなでれいかちゃんをお助けしようっ!」


全員「おぉーっ!」

〜 フリーマーケット二日目 七色ヶ丘市 公園 フリーマーケット会場〜

女の子「ねえ、おねえちゃん。この絵本って面白い!?」

みゆき「あっ、『ピーターパン』だね! すっごく面白いよ! "ピーターパン" っていうとっても強くてカッコイイ男の子が出てきて、悪い海賊さん達をやっつけちゃうの!」

女の子「へぇーっ……! ねえ、ママ! これほしい! 買ってぇ!」

母親「はいはい。それじゃあそれ、下さるかしら?」

みゆき「はいっ! ありがとうございます!」


やよい「いーい? 見てて! ここのボタンを押して……ロボッター・パァーンチ!」ピヨーン

男の子「うわぁっ! すっげー! かっこいいっ!」

やよい「でしょ!? ロボッターはとってもかっこいいんだよ! なんてったって、正義のヒーローロボットなんだから!」

生徒会書記・倉田「すごい……、こんなにお客さんがたくさん……!」

フリマ実行役員長「いやあ、随分繁盛してるみたいだね! 結構結構。これ、キミのアイデアなんだって?」

生徒会書記・倉田「はい! 子供たちがたくさん来るから、喜んでもらえたら、と思って」

フリマ実行役員長「そうか……。キミは優しいな。あの子達が一生懸命になるわけだ」

生徒会書記・倉田「えっ……?」

フリマ実行役員長「キミ、生徒会長さんとそのお友達に感謝しないといけないよ」

フリマ実行役員長「本当だったら七中は一日目しか出店できないところを、何度も何度も私達のところに頼みに来たんだ」

フリマ実行役員長「区画整理もし直さないといけなかったから私達も渋ってしまっていたんだけど、生徒会長さんには準備を手伝ってもらった手前、断りきれなくてね」

フリマ実行役員長「その区画整理も、生徒会長さんとお友達が手伝ってくれたんだ」

フリマ実行役員長「あの子達は、それを全部、キミの願いのためにやってくれたんだよ」

生徒会書記・倉田「皆さんがそんなに……」


生徒会書記・倉田(そういえば、あの日の生徒会でも——)

〜 先日 七色ヶ丘中学校 生徒会室 〜

生徒会副会長・板野(回想)『フリマ二日目におもちゃを出品する、ですって!?』

れいか(回想)『はい』


生徒会副会長・板野(回想)『フリマには一日目しか参加できないのではないのですか?』

れいか(回想)『役員の方々に何とかお願いして、二日目も参加できるようにしてもらいます』


生徒会副会長・板野(回想)『しかし、それでは二日連続での仕事となります。生徒会の皆にも負担がかかるのでは?』

れいか(回想)『このアイデアに賛成している倉田くん・寺田さん以外は、一日目に専念してください。私のみ、二日とも参加します』

れいか(回想)『それに、私の友達にも助っ人として参加してもらうよう頼んであります。人手は問題ありません』

生徒会副会長・板野(回想)『会長のお休みが無くなってしまうではありませんか』

れいか(回想)『構いません』


生徒会副会長・板野(回想)『……どうしてそこまで……』

れいか(回想)『……色々考えたのですが、やはり私には少数派の意見を切り捨てる事はできませんでした』

れいか(回想)『惜しくも採用されなかった意見にも、提案した方の大切な気持ちが込められていると思ったからです』

れいか(回想)『その願いを叶えるためなら、私はどんな事でもする覚悟です』

れいか(回想)『それが私の考える、生徒会長としての理想の道です』


生徒会副会長・板野(回想)『…………』


生徒会副会長・板野(回想)『……そこまでおっしゃるなら、今回は止める事はいたしません』

生徒会副会長・板野(回想)『ですが、ルールに従うことも必要なことだとぼくは考えます』

生徒会副会長・板野(回想)『次からは無茶をせず、整然と事に当たっていただくことを望みます』


れいか(回想)『わかりました。ありがとうございます、副会長』

〜 フリーマーケット二日目 七色ヶ丘市 公園 フリーマーケット会場〜

生徒会書記・倉田「……そっか。全部、会長のおかげだったんだ。やっぱりすごいな、会長は……!」

生徒会会計・寺田「会長にお礼しないといけないね、倉田くん」

生徒会書記・倉田「そうだね。でも、寺田さんも、ぼくのためにガンバって意見してくれて、ありがとう」

生徒会会計・寺田「えっ!? わ、わたしは別に……。倉田くんが一生懸命だったから、わたしもつられただけだよ……」

生徒会書記・倉田「あはは。それでも、ありがとう」

生徒会会計・寺田「……うん!」


生徒会書記・倉田(会長、みなさん。本当に、ありがとうございます!)

あかね「いやー、商売繁盛、大成功やで!」

れいか「はい! 皆さんが手伝ってくれたおかげです。本当にありがとうございます!」

なお「何言ってるの! あたし達が手伝ったのだって、れいかの熱意があってこそなんだから! 胸張っていいよ!」

れいか「なお……ありがとう」


れいか「それに……、ポップさん」

れいか「あの時、くじけそうな私を励ましてくれて、本当にありがとうございました」

ポップ「いや、何。パートナーとして当然のことをしたまででござる!」

れいか「パートナー……。そうか、そうですよね。私達、もうパートナーなんですね」

ポップ「そうでござる! これからは、困った事があったら何でも相談するでござるよ! いつでもお助けするでござる!」

れいか「はいっ! これからも、よろしくお願いします!」



つづく

次回予告

みゆき「ポップが教えてくれたんだけど、デスペアランドって本当にコワい国なんだって……」

みゆき「でも、わたし達 5人が揃えば絶対だいじょうぶ! どんなピンチも乗り越えてみせるよ!」

みゆき「輝け! スマイルプリキュア!!」


みゆき「次回、『スマイルプリキュア レインボー!』 "集合! 未来を導く 5つの光!"」


みゆき「みんな笑顔でウルトラハッピー!」

今回はここまでです!
お読みいただいた方、ありがとうございました。

今回で原作からの引継ぎである序章が終了し、
次回からはオリジナルの設定を交えた "本編" が始まります。

よろしければ次回もまたよろしくお願いします!


第1話 >>3 から
第2話 >>75 から
第3話 >>166 から
第4話 >>252 から
第5話 >>339 から

あと、少しだけごあいさつを。

書くのに精一杯でいただいたレスに返事ができていませんが、
一つ一つのレスが本当に励みになっています! ありがとうございます!

せいいっぱいガンバりますので、今後ともよろしくお願いします!

設定が良く出来てますね。
展開もスマイルっぽくて楽しく読ませて頂きました。
続きも期待してます。

第一話から一気に読みました。
キャラクタの台詞回しとかが、原作に忠実でいいですね。
大好きです。楽しみに日曜日を待っていますね。

乙でした

次回あたりからレインボーの残りの紫と赤(オレンジだっけ?)が出てくるのかな


毎週楽しみにしてるわ

vipでスマプリの面白いss大量に書いてた人いたよな?同じ人?

>>416
いやいや、メンバーは増えんやろ…
(なおストーカーのあの子を思い出しつつ)
増えんよな…(恐怖)

>>414-417
ありがとうございます!
これからもせいいっぱい、がんばるわ!


>>418
失礼ながらその方のことは存じ上げないのですが、多分違う人です。。
このシリーズ書く前は、スマイル終了前に 2作ほど書いてただけなので
今後ともよろしくお願いします!


>>419
ところがどっこい……増えます!
詳しくは今回のお話をご覧ください

が、"スト子" こと金本 ひろこちゃんではありません。
言葉と裏腹に期待されてたのであればスミマセン (;^ ^


『スマイルプリキュア レインボー!』

このあとすぐ!

※念のためのご注意

今回の『スマイルプリキュア レインボー!』では、
原作『スマイルプリキュア!』の世界観について言及するような表現がありますが、
もちろん後付け捏造設定でございます。

本作のみの設定ですので、そのつもりでお読みいただければ、と思います。

〜 星空家 居間 〜


trrrrr...

ガチャッ


育代(みゆき母)「はい、星空です」

育代「ああ、青木さん、こんにちは。——みゆき? ええ、いるわよ。すぐ変わるから少し待っててね」


育代「みゆきぃー! 青木さんから電話よー!」

みゆき「はーい! 今行くぅー!」

みゆき「もしもし? どうしたの、れいかちゃん?」

れいか(電話)『ああ、みゆきさん。すみません、突然お電話してしまって』

みゆき「そんなの気にしなくっていいよー! 何かあるなら何でも言って!」

れいか(電話)『ありがとうございます』


れいか(電話)『実は、ポップさんから皆さんにとても大事なお話があるそうですので、明日、一度みゆきさんのお宅に集まりたいのですが、大丈夫でしょうか?』

みゆき「うん、もっちろんウルトラオッケーだよ!」

みゆき「……でも、"とても大事な話" って何かな? れいかちゃんは何も聞いてないの?」

れいか(電話)『はい。"みんな集まってから話す" とのことで。どうやら、重大な話のようですね』

みゆき「そうなんだぁ。どんな話だろ」

れいか(電話)『では、この件は私の方から皆さんに連絡しておきますね。明日、よろしくお願いします』

みゆき「うんっ! こちらこそよろしくね!」


ガチャッ ツーツー

〜 星空家 みゆき自室 〜

キャンディ「みゆき、れいかからの電話、なんだったクル?」

みゆき「明日、ポップが大事な話をしてくれるから、みんなで集まろう、って話になったの!」

キャンディ「! おにいちゃんが来るクル!? 楽しみクルぅ!」

キャンディ「みゆき、明日はめいっぱいおめかししてほしいクル! おにいちゃんにいいとこ見せるクル!」

みゆき「うん、わかった! とびっきりカワイくしてあげるね!」

キャンディ「ありがとうクルぅ!」




スマイルプリキュア レインボー!

第6話「集合! 未来を導く 5つの光!」



〜 翌日 ギャラリー・D(デスペアランド アジト) 〜

シアンナ「ようやく 3人揃ったわね。これからはこのメンバーで "夢の絵の具" を探していく事になるわ」

シアンナ「ビリーズ、セルリア、目的達成のため、お互いに協力し合っていくのよ。いいわね」

ビリーズ「へーい」

セルリア「…………」


シアンナ(……やる気あるのかしら、この二人……)

シアンナ「ところでセルリア。この間あなたが採取してきたこの "心の絵の具" だけれど」


キラキラキラ


ビリーズ「おお、光ってやがる! オレがこの間取ってきたのと同じだな」

シアンナ「そうね。私は、この輝きに "夢の絵の具" のヒントがあるのではないか、と思っているわ」

シアンナ「セルリア。この絵の具を採取した時の状況を教えてくれる?」


セルリア「…………」

セルリア「……人間が……いた……」

ビリーズ「……え?」

シアンナ「……ええ、それはそうね。そうでなければ "心の絵の具" は採取できないものね」


シアンナ「質問を変えるわ。どのような人間がいたの?」

セルリア「……たくさんの……人間が……いた……」

ビリーズ「…………」

シアンナ「……ええ、そうでしょうね。このボトルには多くの絵の具が入っているものね。たくさんの人間から採取したんでしょうね」

セルリア「……うん……」

ビリーズ「(小声) ……おい、シアンナ」

シアンナ「(小声) ……何?」

ビリーズ「(小声) こいつ、本当に役に立つのかよ!? ボソボソとしかしゃべんねーし、何考えてんのかよくわかんねーし!」

ビリーズ「(小声) 今のだって会話成り立ってねーだろ!? 本当にこいつと仕事していくつもりかよ!?」

シアンナ「(小声) ……命令だって言ったでしょう。多少気に入らなくても我慢しなさい」

ビリーズ「(小声) って言ってもよぉ……!」

シアンナ「(小声) それに、性格に難があっても仕事はできるわ。少なくとも、初めての仕事ではあなたよりいい成果を出しているじゃない」

ビリーズ「(小声) う……。それ言われっと……」

セルリア「……あ……」

シアンナ「? どうかした、セルリア?」

セルリア「……心……吸い取った人間……楽しそう……だった……」

シアンナ「楽し……そう?」

セルリア「……たくさんで……笑ってた……」

シアンナ「笑って……」


シアンナ「…………」

シアンナ「ビリーズ、あなたが輝く絵の具を手に入れた時、人間の様子はどうだった?」

ビリーズ「へ? あぁ、そうだなぁー……」

ビリーズ「楽しそう、とかって感じじゃなかったけど、何つーか、こう……一生懸命、だったかな……」

シアンナ「……一生懸命……」

シアンナ「……もしかすると、"心の絵の具" の輝きは、採取する人間の心の状態によって変わるのかもしれないわね」

ビリーズ「あん? どーゆーことだ?」

シアンナ「今まで、私は人間それぞれによって "心の絵の具" の色が決まっているものかと思っていたわ」

シアンナ「でも、人間には感情があるわ。笑ったり、喜んだり、怒ったり、泣いたり」

シアンナ「その時々によって、"心の絵の具" の色が変化するのだとしたら……」

セルリア「……活気のある人間の…… "心の絵の具" は……輝く……?」

シアンナ「ええ、その可能性は高いわ……!」

シアンナ「……ビリーズ、セルリア。私は一度この事を確認するために本国に戻るわ。前に送った輝く絵の具の鑑定結果も気になるから」

シアンナ「その間、あなた達は引き続き仕事をしていて」

シアンナ「狙うのは、"活気のある人間" よ。そうすれば、また輝く絵の具が採れるかもしれないわ。いいわね?」

ビリーズ「え!? お、おい、ちょっと待——」


シュバッ


ビリーズ「……行っちまった……」

ビリーズ(おいおい、シアンナがいない、っつーことは……、このクラーい女と二人きりかよ……!)


セルリア「…………」


ビリーズ(うっわ、気まず……。この辛気臭いムード……耐えられねぇ! 何か、何か話題は……!)


ビリーズ「し、仕事しとけ、だってよ、セルリア。どうだ? 仕事するなら一緒に行くか?」

セルリア「……いい……一人で……行く……」

ビリーズ「…………」


ビリーズ「で、でもよ! お前、こっち来たばっかだろ? 場所とかわかんねーんじゃねーの? 案内してもいいぜ?」

セルリア「……いらない……邪魔……」

ビリーズ「…………」


ビリーズ(……なんかこいつ、シアンナとオレで態度違くね……?)

セルリア「……仕事……行ってくる……。……ついて……来ないで……」

ビリーズ「お、おい! セルリ——」


シュバッ


ビリーズ「…………」ポツーン…


ビリーズ「……っんだよ、もう! 人がせっかく気遣ってやってんのに!」

ビリーズ「あーあー、もうやってらんね! 勝手に一人でやってろ! オレは寝る!」


ビリーズ「……zzzz」

〜 星空家 みゆき自室 〜

キャンディ「おにいちゃぁーん!」

ポップ「おお、キャンディ! 何だか少し見ない間に大きくなったような気がするでござる!」

キャンディ「おにいちゃん、今日、キャンディ、みゆきにいっぱいおめかししてもらったクル! どうクル?」

ポップ「うむ、クイーンにふさわしい気品が出てるでござるよ」

キャンディ「ホントクル!? うれしいクルぅ!」


ポップ「みゆき殿、いつもキャンディの世話を焼いていただき、かたじけのうござる」ペコリ

みゆき「あ、ううん! こっちもキャンディにはプリキュアにしてもらったりでお世話になってるもん! このくらい昼飯前だよ!」

あかね「それを言うなら "朝飯前" や!」

みゆき「あ、あれ? そうだっけー」

ポップ「ふふ、相変わらずでござるな」

あかね「ところでポップ、大切な話って何なん?」

やよい「そうそう。わたし達、それを聞くために集まったんだもん」

なお「もしかして、今回の事件に深く関わること?」

ポップ「うむ、なお殿の言う通りでござる。拙者は、それを伝えにこちらの世界に来たのでござる」


れいか「それでは、話していただけますか? ポップさん」

ポップ「承知でござる。が、その前に、ちょっとやる事があるでござる」

みゆき「やる事……?」


ポップ「プリキュアの皆の衆。これからやる事には靴が必要になるでござる。各自、持ってきてほしいでござる」

なお「靴? 靴なんて何に……。……あ! もしかして!」

あかね「せや! 室内で靴の準備言うたら!」

やよい「もしかして、また "あそこ" に行けるの!?」

ポップ「その通りでござる! さあ、皆の衆。準備をお願いするでござる!」

みゆき「うんっ!」

みゆき「みんな靴持ってきたよ!」

ポップ「うむ、バッチリでござる!」

ポップ「ではキャンディ。デコルになって、みゆき殿のスマイルパクトに入るでござる」

キャンディ「わかったクル!」


キャンディ「デコル・チェーンジ! クル!」ポンッ

みゆき「キャンディデコルをスマイルパクトにはめて、っと」パチンッ


ポップ「では、みゆき殿、本棚のどこでもいいので本を両側に広げて、その間のスキマにパクトをかざすでござる」

みゆき「あれ? "あそこ" に行く方法ってそんなんだったっけ?」

ポップ「事情が変わって手順も変わったでござるよ。さあ、とにかくやってみるでござる!」

みゆき「うん、わかった!」

みゆき「本を両側に広げて——」


ザッ


みゆき「そのスキマにパクトをかざす、っと」

ポップ「キャンディ! 今でござる! 力を込めるでござる!」

キャンディ(デコル)「わかったクル! ふんにゅうぅぅぅぅぅぅ!」


パァッ…!


あかね「おおっ! パクトと本棚が光っとるで!」

みゆき「わ、わわっ、本棚に吸い込まれる!?」

みゆき「久しぶりぃ、この感覚ぅぅぅー……——」


れいか「みゆきさんが本棚の中に消えてしまいました……!」

なお「ホントにまた "あそこ" に行けるみたいだね!」

やよい「なんだかドキドキしてきちゃった!」


ポップ「さぁ、皆の衆! 同じ手順でみゆき殿に続くでござる!」

〜 ?????? 〜


ドテッ

みゆき「あいたっ! たたー……。久しぶりだから着地失敗しちゃったよー……」


みゆき「ああ、でも、やっぱりここは……!」


ポンッ


キャンディ「そうクル! ここは……!」


みゆき・キャンディ「"ふしぎ図書館" だーっ!!・クルーっ!!」

あかね「よっと」スタッ

やよい「わっ、わわわっ!」ドテッ

なお「ほっ」スタッ

れいか「ふう」スタッ


れいか「ポップさんが言っていたのは、このふしぎ図書館に来る事だったんですね!」

あかね「いやーっ、久しぶりやなぁ! どれくらいぶりやろか?」

なお「皇帝ピエーロとの戦いの後、本棚のワープができなくなっちゃったから、それ以来じゃない?」

やよい「あいたたた……。でも、全然変わってないね! わたし達の秘密基地もそのまま残ってる!」

ポンッ


ポップ「ここは世界中のメルヘンが集まる大切な場所でござる。そうカンタンに無くなったりはしないでござるよ」

ポップ「先代のロイヤルクイーン様のお力が消えてしまい、プリキュアの皆の衆自身では本棚ワープはできなくなってしまったでござるが、拙者達メルヘンランドの妖精の力をお貸しすれば、それも可能になるのでござる!」

ポップ「なので、次からここに来る時は拙者達の力を使うでござる!」


ポポポンッ


ウルルン「ほぉーっ、ここがふしぎ図書館ってやつウル? メルヘンランドにいた頃に話だけは聞いてたが、でっけぇウル!」

オニニン「プリキュアは前、ここを秘密基地にしてたオニ?」

マジョリン「そうみたいマジョ。バッドエンド王国だった時、時々プリキュアがどこに行ったのかわからなくなる時があったマジョ。こんなところがあったマジョ!」


みゆき「あ、そっか! ウルルン達はここに来るの初めてだよね! わたし達の秘密基地を案内するよ!」

キャンディ「あそこのおうちがそうクル!」

〜 ふしぎ図書館 秘密基地 〜

ウルルン「こりゃ、中々広くて過ごしやすそうだウル!」

あかね「せやで。あの時のうちらは何かあったらここにたまっとったなぁ」


やよい「ここで母の日のプレゼントを作ったり、七夕の短冊を飾ったり、色々したよね!」

オニニン「ほお、楽しそうオニ!」


マジョリン「本もたくさんあって面白そうマジョ! これからも時々来たいマジョ!」

なお「うん、いいよ。あたし達もまたここに集まることがあるだろうから、その時は力を貸してね」


みゆき「ふふっ、気に入ってもらえたみたいでよかった!」

キャンディ「クルぅ!」

ポップ「……さて、皆の衆。楽しそうなところ悪いのでござるが、本題に入らせてもらいたいでござる」

れいか「あ、そうでした。ポップさんから大事なお話があるんでしたね」

ポップ「うむ。皆の衆にここに来てもらったのは他でもない。これからする話を他の誰にも聞かれたくなかったからでござる」

なお「そこまでするなんて……、よっぽど大事な話なんだね」

やよい「……ごくり……」

あかね「それじゃあ、聞かせてや、その話」

ポップ「わかったでござる」

ポップ「今回、皆の衆の世界を襲っているのが "デスペアランド" という国であることはすでにわかっていると思うでござる」

みゆき「うん。町の人達を襲ってた人はみんなそう言ってたね」

ポップ「そのデスペアランドでござるが……」

ポップ「メルヘンランド中の書物を読んでみたのでござるが、どこにもその情報が無かったのでござる」

ウルルン「ああ、そういやあ、おれ達がこっちの世界に来る前に調べ物してたウル。そのことだったウル?」

ポップ「……調べ物は他にもあったでござるが、デスペアランドについての調査もその一つでござった」

れいか「では、結局デスペアランドがどのような国かはわからない、ということでしょうか」

ポップ「その通りなのでござるが、たった一つだけわかっている事があるでござる。それは……」


ポップ「プリキュアの皆の衆の世界が住む世界 "リアルランド"」

ポップ「拙者達の住む世界 "メルヘンランド"」

ポップ「そして、そのどちらでも無い第三の世界 "ピクチャーランド"」


ポップ「デスペアランドはその "ピクチャーランド" に深く関わったようなのでござる」


みゆき「"ピクチャーランド" ……? 初めて聞く名前だね」

れいか「ピクチャー……絵画という意味ですね。名前から察するに、絵に深く関わっている国なのでしょうか?」

ポップ「さすがれいか殿。察しが早いでござる」


ポップ「そのピクチャーランドが今回の事件にどう関わっているか話す前に、ピクチャーランド自体についての説明を先にさせてもらうでござる」

ポップ「ピクチャーランドは、先ほどれいか殿が言ったとおり、絵や色、道具など、絵にまつわる妖精たちが住む国だそうでござる」

ポップ「拙者は実際に行ったことがないので書物でしか知らないのでござるが、メルヘンランドと同様、皆が仲良く暮らす、平和な国らしいでござる」


ポップ「このピクチャーランドでござるが、実は皆の衆の世界 "リアルランド" と深い関わりがあるのでござる」

やよい「深い関わり?」

ポップ「そうでござる」


ポップ「ピクチャーランドは、リアルランドの住人達の心、つまり、皆の衆を初めとするこの世界の人々の心の影響を強く受ける世界なのでござる」

なお「あたし達の心がその世界に影響……? どういうこと?」

ポップ「リアルランドの人々が喜びや希望といったプラスな感情を抱くと、その感情がほんの少しずつピクチャーランドに送られる仕組みになっているのでござる」

ポップ「ピクチャーランドに着いたプラスな感情は "心の絵の具" というエネルギーを秘めた特殊な絵の具に変えられ、ピクチャーランドにある "絵の具の泉" に湧き出てくるのでござる」

ポップ「ピクチャーランドの妖精達はその "心の絵の具" からエネルギーをもらって生活しているのでござるよ」


あかね「つまり、うちらの楽しい気持ちや嬉しい気持ちが、その世界の妖精達のごはんになっとる、っちゅうわけやな」

ポップ「そんなところでござる」

ポップ「その他にも、ピクチャーランドは拙者達のメルヘンランドにも深く関係しているのでござる」

ポップ「実は、メルヘンランドの妖精達の多くはピクチャーランドで描かれた絵を元にして産まれたのでござる」

ポップ「その絵にロイヤルクイーン様が命を吹き込む事で、拙者達メルヘンランドの妖精が誕生するのでござる」

キャンディ「そうクル! だから、お母さんはキャンディだけじゃなくて、メルヘンランドみんなのお母さんなんだクル!」

みゆき「あ……、そういえば、キャンディがわたし達みたいな姿になった時、そんなこと言ってたね」


ロイヤルキャンディ(回想)『ロイヤルクイーン様は、メルヘンランドの……みんなのお母さんクル!』


みゆき「あれってそういうことだったんだ……」


ポップ「そうして産まれたメルヘンランドの妖精達は、元となったキャラクターがいる物語に、人を感動させる力を与えるのでござる」

ポップ「その物語を読んだリアルランドの人々が喜びや楽しさを覚えることで、その感情がピクチャーランドに流れ込む」

ポップ「その感情が "心の絵の具" となって、ピクチャーランドの妖精達のエネルギーになったり、メルヘンランドの妖精の元となる絵に使われる」

ポップ「ピクチャーランドで描かれた絵にメルヘンランドで命が吹き込まれ、リアルランドの人々が読む物語に感動する力を与える」


ポップ「そうして三つの世界がお互いに支えあう事で、メルヘンランドもピクチャーランドも存在しているのでござる」

れいか「なるほど。メルヘンランドにはそのような仕組みがあったのですね」

あかね「あれ? せやけど、おかしない? 前、バッドエンド王国と戦っとった時は、ピクチャーランドの話は一個も出てこんかったやん」

あかね「そんなに大切なとこなら、ちょっとくらい話に出てもよかったんちゃう?」

マジョリン「そうだマジョ。あたし達がバッドエンド王国にいた頃にも、ピクチャーランドなんていうところの話は聞いた事がなかったマジョ」

ポップ「……それは、ロイヤルクイーン様が最後の力でピクチャーランドの存在自体を隠していたからでござる。バッドエンド王国はもちろん、メルヘンランドにさえも」

ポップ「拙者も、バッドエンド王国との戦いが終わってメルヘンランドを治める立場になるまで、ピクチャーランドのことを知らなかったのでござる」


ポップ「そして、ロイヤルクイーン様がピクチャーランドの存在を隠していた理由こそが、今回の事件の最大の原因となったのでござる」

ポップ「それは、拙者がメルヘンランドの建て直しに励んでいた、ある日のことでござった」

ポップ「メルヘンランド宛に一通の手紙と、小包が届いたのでござる」

ポップ「早速読んだその手紙には、こう書いてござった」


手紙『我が世界、ピクチャーランドは "闇の絵の具" に飲み込まれてしまった。絶望の闇に包まれる前に、ピクチャーランドの秘宝を我が友、メルヘンランドとその希望、プリキュアに託す』


ポップ「……差出人はピクチャーランドの主、"テンペラ国王" でござった……!」

れいか「……ちょっと待ってください。ピクチャーランドの国王様からその手紙が届いた、ということは……!」


ポップ「……そうでござる。ピクチャーランドは……すでに滅亡してしまったのでござる……!!」


全員「!!?」


みゆき「じゃあ、もしかしてピクチャーランドを襲ったのが……!」

やよい「デスペアランド、っていうことなの……!?」


ポップ「おそらくは……」

ポップ「テンペラ国王は国が滅亡する寸前、最後の力で荷物を送ったのでござろう……。その手紙には、先ほどの他に、あと一文しか記されていなかったでござる」

れいか「それは……?」


ポップ「『"レインボーパレット" 、それに、共に包んだ "新たな希望" を使い、リアルランドとメルヘンランドを守ってほしい』と……」

ポップ「これが、小包に包まれていたものでござる」


コトッ

パサッ


やよい「絵の具を入れるパレットみたいなものと……」

あかね「青色と紫色の紙やな」

れいか「こちらは、正確には青ではなく、"藍色" のようですね」

ポップ「この報せを受けた時、拙者は大きなショックを受けたでござる……」


ポップ「老齢ながらも寛大なお心でピクチャーランドを治めておられた "テンペラ国王"」

ポップ「その国王を支える、若く勇敢で、聡明な "フレスコ王子"」

ポップ「国民や家族を愛する心優しい "マティエール王女"」


ポップ「そのような素晴らしい方々と協力し合い、メルヘンランドを復興させていきたいと思った矢先の出来事であったのでござるから……」

ポップ「しかし、落ち込んでばかりもいられなかったでござる」

ポップ「リアルランドとメルヘンランドを守る。そのような重大な使命を受けたからには、何としてでも果たさなければならぬ」

ポップ「そう考えた拙者は、必死にメルヘンランド中の書物を読み漁ったのでござる」

ポップ「テンペラ国王から授けられた物の意味を知るために」


ポップ「そして、ついに見つけたのでござる。厳重に封印されていた書物から、ピクチャーランドの秘宝の秘密、そして、プリキュアの秘密を」

みゆき「プリキュアの……秘密?」

ポップ「今度の事件の発端であり……」

ポップ「先代ロイヤルクイーン様がピクチャーランドをそのお力で隠した理由であり……」

ポップ「プリキュア誕生の鍵でもある、その書物に記されていたピクチャーランド最大の秘宝」


ポップ「それこそが、"夢の絵の具" と呼ばれる伝説のアイテムだったのでござる」


なお「夢の……」

れいか「絵の具……」

やよい「あれ? さっき、わたし達の嬉しい気持ちが元になった "心の絵の具" っていうものの話もしてたよね?」

みゆき「あっ、そうだよね。その "心の絵の具" と "夢の絵の具" って違うものなの?」

ポップ「うむ。その二つはまた別物なようでござる」


ポップ「"心の絵の具" はリアルランドの人々なら誰でも持っている心の力なのでござるが、」

ポップ「"夢の絵の具" は "心の絵の具" とは比べ物にならないほど強力なエネルギーを秘めた秘宝なのでござる」

ポップ「その書物によると、"夢の絵の具" によって描かれたものはどんな事でも実現させてしまう程の力があるそうでござる」


ウルルン「なるほど……、つまり、先代クイーンがバッドエンド王国にピクチャーランドの存在を知られないようにしたのも……」

ポップ「おそらく、そのあまりに強大な力を秘めた "夢の絵の具" を悪用されないようにするためでござろう」

ポップ「実は、その "夢の絵の具" の力を現している身近な実例が一つあるでござる」

あかね「実例? なんやそれ?」

ポップ「これを見るでござる」トンッ

みゆき「あ、それって……!」

キャンディ「"プリキュアの絵本" クル!」

ポップ「そう、以前にもお見せした、プリキュアの伝説が描かれた絵本でござるな」

ポップ「この本の……(ペラペラ) このページを見てくだされ」


みゆき「あ、キュアハッピーのページ!」

あかね「その後、うちのサニー・ピース・マーチ・ビューティ、と続くんやったな」

ポップ「そうでござる」


ポップ「実は、この "プリキュアの絵本" のプリキュアのページのみ、"夢の絵の具" で描かれているのでござる」


全員「えっ!!?」

なお「描いたものを実現する "夢の絵の具" でプリキュアのページが描かれている、っていうことは……」

れいか「"プリキュア" とは、もしかして……!」

ポップ「そう、プリキュアは、"夢の絵の具" によって描かれた "希望" を元に、メルヘンランドの力であるデコルが合わさる事によって実体化した "希望の戦士" なのでござる」


ポップ「"夢の絵の具" は全部で七色あるそうでござる。皆の衆の力はその夢の絵の具を一色ずつ使っているのでござる」

ポップ「その七色とは、"赤"・"橙"・"黄"・"緑"・"青"・"藍"・"紫" でござる」

れいか「その色……、一般的に言われている虹の七色ですね」

ポップ「そうでござるな」


ポップ「そこで、皆の衆のスマイルパクトを見てほしいでござる。ちょうど、同じ色の宝石があるでござろう?」

みゆき「どれどれ……(パカッ)、あっ、ホントだ!」

ポップ「変身する際、それぞれに対応した色の宝石が光っているはずでござる。それは、プリキュアを産み出した "夢の絵の具" の力なのでござる」

あかね「はーっ、そういえばそうやったかも。全然気にしてへんかったわ……」




※作者注
 原作『スマイルプリキュア!』におけるスマイルパクトの宝石の色は "桃・赤・橙・黄・緑・青・紫" なのですが、
 本作『レインボー!』では、最初っから上記の通り虹の七色だった、ということにさせてください


あかね「それぞれの絵の具の色がプリキュアの色になっとるんなら、うちは "橙の戦士" っちゅーことになるんかな?」

やよい「それなら、わたしは "黄色の戦士" だね!」

なお「あたしは "緑の戦士" かな」

れいか「私は "青の戦士" のようですね」


みゆき「……あれ? じゃあわたしは? "ピンク" ってないよ?」

あかね「あ、そういえばそやな。藍や紫じゃあらへんし……。じゃあ、一番近い "赤の戦士" ってことになるんちゃう?」

みゆき「えぇー? そうなの? なんかナットクいかない感じぃ……」

れいか「……? 待ってください」

なお「ん? どうしたの、れいか?」

れいか「"夢の絵の具" の色、スマイルパクトの宝石の色がそれぞれプリキュアの色に対応している、というのなら……もしかして……!」


ポップ「……れいか殿は本当に鋭いでござるな。さすがでござる」

ポップ「皆の衆、先ほどお見せした、この 2枚の紙を見てくだされ」ガサッ

やよい「あっ、それって、ピクチャーランドの国王さまから送られてきた、藍色と紫色の紙だったっけ」

ポップ「うむ。こちらの紙についても調査をした結果、どうやら……この紙には "夢の絵の具" が使われているようなのでござる」

ポップ「おそらく、テンペラ国王が窮地の中、手元にあった "夢の絵の具" を使ってこちらの紙を作ったのでござろう」

ポップ「テンペラ国王からの最後の支援、ということでござろうな……」


ポップ「最初は何に使うのかわからなかったこの紙でござるが、どうやらこれは "プリキュアの絵本" の 1ページのようなのでござる」

ポップ「ためしに、キュアビューティの次のページにこの2枚の紙を入れてみるでござる」スッ


パァァッ!


オニニン「うおっ! まぶしいオニ!」

キャンディ「"プリキュアの絵本" が、光ってるクル!?」

スゥゥゥッ…


マジョリン「光が……おさまってきたマジョ?」

ポップ「……どうやら、うまくいったようでござるな」

ポップ「見てくだされ、皆の衆」パラパラパラ


みゆき「ビューティの次のページに藍色のページと紫色のページが増えたね!」


なお「……あ。さっき、れいかが何を言いたかったのか、あたしにもわかってきたかも……」

あかね「……うちもや……。まさか……!」


ポップ「そうでござる。"プリキュアの絵本" にある "夢の絵の具" のページが 7つになったこと。それはつまり……」


ポップ「プリキュアは全部で 7人存在するようになった、ということでござる」


全員「!!!」

みゆき「じゃあ、わたし達 5人以外にも……」

やよい「あと二人仲間が増えるんだ……!」

れいか「"夢の絵の具" の色に従うなら、"藍の戦士" と "紫の戦士"、ということになりますね……!」

ポップ「……拙者が見つけた書物には、"夢の絵の具" についてこう書いてござった」


ポップ「"七つの色が一つになる時、全ての闇を払う光とならん"」

ポップ「おそらく、今回の敵、デスペアランドは非常に危険な相手でござる」

ポップ「ロイヤルクイーン様と同等の力を持つとされるテンペラ国王がなす術も無く敗れてしまったのだから……」


ポップ「だからこそ、拙者達には "夢の絵の具" の力と、残り二人のプリキュアの力が絶対に必要になるはずでござる!」

ポップ「両方とも、プリキュアの皆の衆にとって、平和を守るための更なる力を与えてくれるでござろう」


ポップ「七色の "夢の絵の具" と、7人の "プリキュア" を集める」

ポップ「そして、デスペアランドの脅威からリアルランド・メルヘンランドを守る」

ポップ「それが、拙者達がこれからやらなければならない事なのでござる!」

れいか「……今のポップさんのお話で、私達の今後の方針が見えましたね」


なお「"夢の絵の具" を 7色集めて……」


やよい「残り二人のプリキュアを探して……」


あかね「全部の力を合わせて、デスペアランドをやっつけるんやな」

みゆき「あ、でも、ポップ。ちょっとわからないことがあるんだけど」

ポップ「なんでござるか? みゆき殿」

みゆき「"夢の絵の具" を探す、っていう話だったけど、"夢の絵の具" ってどうやったら手に入るものなの?」

あかね「あ、せやな。それがわからんと集めるどころやないな」

ポップ「うむ……。それが、でござるが……」

ポップ「実は……困った事に、"夢の絵の具" がどのようにして手に入るものなのかは、どの書物にもほとんど記されていなかったのでござる……」

ポップ「ただ一つわかることは、"リアルランドの人々の心が産み出すもの" ということだけでござる」

れいか「先ほどの、ピクチャーランドの国王様の手紙にも書いていなかったのですか?」

ポップ「……"夢の絵の具" の入手方法は一切書いてはござらんかった……。おそらく、国が襲われている最中、そこまで書く余裕がなかったのでござろう」

ポップ「おそらく、デスペアランドの目的も "夢の絵の具" を手に入れることでござる」

ポップ「先日、れいか殿といた時に偶然彼らの活動を目撃したでござるが、彼らはリアルランドの人々の心を吸い取り、手持ちのボトルに絵の具として保存していたでござる」

なお「あ、そうなんだ。だから、あいつらが来ると周りの人たちがぐったりしちゃうんだね」


ポップ「"夢の絵の具" はリアルランドの人々の心が産み出すもの、ということは彼らも知っていると思われるでござる」

ポップ「だから手当たり次第人々の心を吸い取ることで "夢の絵の具" を探しているのでござろう」

れいか「と、いうことであれば、最悪の場合、今までの彼らの活動で "夢の絵の具" が得られていた、ということも……!」

ポップ「……その可能性はあるでござる……」

みゆき「じゃあ、とりあえず今わたし達がしないといけないことは……」

あかね「あいつらにこれ以上人の心を奪わせない、っちゅーことやな」

やよい「結局、今までどおり戦っていくしかできないんだね……」

なお「なんだかじれったいね……。せめて "夢の絵の具" の探し方がわかればあたし達も行動することができるのに……」

れいか「そうですね……。今回の事件に関しては、まだまだ多くの謎があるように思えます……。それがわからず戦うしかできない、というのはなんとも……」

ポップ「そうでござるな……」


ポップ「この "レインボーパレット" の使い方も、調べてもわからなかったでござるし……」

ポップ「"夢の絵の具" とはなんなのか? "デスペアランド" とはなんなのか?」

ポップ「わからないことだらけでござる……」


全員「…………」

みゆき「……でも、不安になることなんてないと思うよ!」

あかね「……みゆき?」

みゆき「だって、そうじゃない! わたし達がやらなきゃいけないことは、最初っから一つだけなんだから!」


みゆき「みんなのハッピーを、みんなの笑顔を守ること!」

みゆき「それがわたし達、"スマイルプリキュア" でしょ!?」ニコッ


あかね・やよい・なお・れいか「……!!」

あかね「……せやな。急にいろんなこと聞いたから混乱してもーたけど」

やよい「みゆきちゃんの言う通りだね……!」

なお「みんなの笑顔を体を張って守る」

れいか「それさえ忘れなければ、迷う事はありませんね……!」

みゆき「そうだよ! だから——」


スッ


みゆき「ほら! みんなも手を出して!」


あかね「うん」スッ

やよい「これからも……」スッ

なお「みんなで一緒に……!」スッ

れいか「頑張っていきましょう!」スッ

スッ


キャンディ「キャンディたちもいるクル!」

みゆき「キャンディ……!」


ウルルン「そうだウル。何てったって、おれ達の力が無いと変身できねぇんだからな」スッ

あかね「ウルルン……!」


オニニン「おれ様達も一緒に戦うオニ!」スッ

やよい「オニニン……!」


マジョリン「しょうがないから、あたし達も力を貸してあげるマジョ!」スッ

なお「マジョリン……!」


ポップ「……皆の衆。拙者達、メルヘンランドの者達も、気持ちは同じでござる」スッ

れいか「ポップさん……!」

みゆき「わたし達 10人と……」


みゆき「いつか会えるあと二人のプリキュア……」


みゆき「みんなで力を合わせて……未来に進もう!」


全員「うんっ!!」

ピクッ


キャンディ「クル……!?」

みゆき「キャンディ? どうかした?」

あかね「耳ピンッピンやで?」


キャンディ「イヤな感じがするクル……! この感じ……きっと、デスペアランドクル!」

ポップ「本当でござるか……!? 拙者は何も感じないでござるが……」

キャンディ「でもキャンディには感じるクル! どこかでまた悪いことをしてるクル!」


ポップ(驚いたでござる……。キャンディ、しばらく見ない間にクイーンとしての力が強くなったのでござろうか……!)


みゆき「わかった! キャンディ! "本の扉" でその近くまで連れてって!」

みゆき「私たちが何とかするよ!」

キャンディ「わかったクル!」


キャンディ「それじゃあ、みんな……行くクルぅ!」

全員「うん!」

〜 七色ヶ丘市 オフィス街 〜

若いサラリーマン「う……ああ……」

中年サラリーマン「体が……動かな……」


ポチョチョチョチョン ポチョチョチョチョン


セルリア「……おかしい……」

セルリア「……人多いから……活気……あると……思ったのに……。……心の絵の具……光らない……」

セルリア「……よく……わからない……」


あかね「そこまでや!」バッ


セルリア「……プリキュア……。……また……邪魔するの……」

れいか「何度だって防いでみせます! あなた方が人々に迷惑をかける限り!」

みゆき「よぉーし! みんな! 久しぶりに "あれ" やろうよ!」

やよい「あっ、"あれ" だね!」

なお「久しぶりだとちょっと恥ずかしいね……!」

あかね「ゆーとる場合かいな!」

れいか「行きましょう、皆さん!」


ポップ「拙者達も行くでござるよ、皆の衆!」

ウルルン「おう! わかってるウル!」

オニニン「おれ様達の力、見せてやるオニ!」

マジョリン「やってやるマジョ!」

キャンディ「みんな……行くクルぅっ!」

妖精達「デコル・チェーンジ!」

パチンッ!

レディ!

5人「プリキュア! スマイルチャージ!!」

ゴー! ゴーゴー! レッツゴー!!


ハッピー「キラキラ輝く、未来の光! キュアハッピー!!」

サニー「太陽サンサン、熱血パワー! キュアサニー!!」

ピース「ぴかぴかぴかりん♪ じゃん・けん・ポン!(グー) キュアピース!!」

マーチ「勇気リンリン、直球勝負! キュアマーチ!!」

ビューティ「しんしんと降り積もる、清き心。キュアビューティ!!」

5人「5つの光が導く未来!」


5人「輝け! スマイルプリキュア!!」

ハッピー「……くぅーっ! やっぱりこれがないとねっ!」

サニー「よっしゃぁっ! 気合も入ったし、いっちょやったんで!」

マーチ「さあ! あのアキラメーナって怪物を出しなよ! あたし達がやっつけるから!」


セルリア「……何……言ってるの……。……もう……いるよ……」

セルリア「……ほら……後ろ……」


ピース「後ろ、って……ビルしかないけど……」


??????「アキラメーナァ……」


ビューティ「!? ……いえ、これは……ビルではありません!」


アキラメーナ(高層ビル型)「アァキラメーナァ!」


5人「…………」

サニー「……でかっ……」


セルリア「……倒して……みれば……? ……倒せるなら……ね……。……ふふっ……ふふふ……」

ビューティ「100……150m くらいはありそうですね……」

ハッピー「……どうしよう、これ……」

マーチ「サ、サニー、怪力でどうにかならない?」

サニー「何言うとんのや……。ムリに決まっとるやろ……!」

マーチ「だよねー……」

ピース「こ、こんなのズルいよぉっ!」


セルリア「……困ってる……困ってる……。……くふっ……くくっ……」

アキラメーナ(高層ビル型)「アキラメーナァ!」ズシン!


5人「わぁぁっ!?」


マーチ「歩いただけで地面が揺れて……!」

ピース「た、立ってられないよぉ!」

サニー「こ、こんなんどないせっちゅーんや!」


ハッピー「で、でも、このままじゃ……! "心の絵の具" が、どんどん吸われちゃう……!」

ハッピー「……えぇーい! ダメでもともと! やってみるよ!」

ハッピー「プリキュア! ハッピー・シャワーァァッ!!」


ドォォォォォォォォンッ!!


サニー「あれだけデカかったら外さへんな! これはやったんとちゃうんか!?」


アキラメーナ(高層ビル型)「アキラメーナァ……!」


ハッピー「……あれぇ? き、きいてないのぉ!?」

ビューティ「……一応、そういうわけでもないようです。あそこを見てください!」


ペコッ


ピース「……へこんでるね。ちょっとだけ」

マーチ「結局きいてないのと同じだよ、これじゃあ……!」

ズワァァァァァッ…


サニー「ああ、あかん! 周りの人たちの心が吸われてまう……!」


セルリア「……アキラメーナ……倒されないから……心を……吸い放題……。……みんな……最初から……こうすれば……よかったのに……」


ビューティ「…………」

ビューティ「……皆さん、私にいい考えがあります。お耳を貸してください」

ハッピー「えっ? なになに?」


ビューティ「ごにょ……ごにょごにょ……ごにょごにょ」


マーチ「……ビューティ、それ、ホントにやるの?」

サニー「でも、それしかなさそうやな……!」

ピース「コ、コワいけど……ガンバるよ!」

セルリア「……何……するつもり……。……無駄なのに……」


ビューティ「……ムダなどでは、ありません」

ビューティ「大きい、というだけで私達が諦めると思ったら、大間違いです」

ビューティ「それを……今から証明してみせます!」


セルリア「(ギリッ) ……やれるなら……やってみろ……!」


ビューティ「今回は私達のチームワークが鍵です。皆さん、よろしくお願いします!」

4人「うんっ!」

サニー「ハッピー、ピース、行くで!」

ピース「任せて!」

ハッピー「う、うんっ……!」


サニー「やーい! このデカブツー! こっち来てみぃや! そんなでかかったら追いつけへんやろけどなーっ!」

アキラメーナ(高層ビル型)「アガッ!?」

ピース「ほらほらーっ! オニさんこちら! こっちだよーっ!」

ハッピー「な、何か言わなきゃ……! え、えぇーっと……! ばっ、ばーか!」

サニー「……ハッピー……他に何かないんか……」


アキラメーナ(高層ビル型)「アギギギギ……!」ムカムカッ

アキラメーナ(高層ビル型)「アガァァッ!」


サニー「おっ、でも引っかかったわ! このまま、ビューティの言ってたところまで連れてくで!」


ビューティ(回想)『ハッピー・サニー・ピースは、あのアキラメーナの気を引いて下さい。少し離れたところに大きな空き地があるはずなので、そこに誘い込んでください』

ダダダダダッ


マーチ「よっ!」ヒョイッ

若いサラリーマン「うぅ……」


ダダダダダッ スッ


マーチ「ここでじっとしてて。すぐ助けるから!」

若いサラリーマン「…………」

マーチ「さ、次、急がないと!」


ビューティ(回想)『マーチは足の速さを活かして、おびき出されたアキラメーナに人々が巻き込まれないよう、安全なところに避難させてあげてください』


マーチ「結構タイヘンだなぁ、これ……!」

マジョリン(デコル)「ボヤいてないでガンバるマジョ!」

マーチ「分かってるよ! もう、人使い荒いんだから!」

〜 七色ヶ丘市 オフィス街近くの空き地 〜

ハッピー「おぉーっ! ホントに空き地あったよ! さっすがビューティ!」

サニー「ここなら、ビューティの言う通りになっても大丈夫そうやな!」


アキラメーナ(高層ビル型)「アガァァァッ!」


ピース「こっこまでおいでーっ! ……アキラメーナ、すっごい怒ってる! ふふっ、たまにはこういうのも面白いね!」

サニー「ピース……。さりげなくヒドいこと言うとらんか?」

〜 七色ヶ丘市 オフィス街近くの空き地の物陰 〜

ビューティ(もう少し……)


ズシン! ズシン!


ビューティ(あと、3歩くらい……)


ズシン! ズシン! ズシン!


ビューティ「……! 今です!」バッ


ビューティ「プリキュア! ビューティ・ブリザァァードッ!!」


バキバキバキバキッ!

〜 七色ヶ丘市 オフィス街近くの空き地 〜

ハッピー「あっ、ビューティがやったね!」

ピース「予定通り!」


ビューティ(回想)『うまく空き地におびき出せたら、私が頃合を見計らってアキラメーナの足元を凍らせます。そうすれば……』


ツルッ


アキラメーナ(高層ビル型)「アガッ!? アッ、アッ!?」ジタバタ


サニー「よっしゃ! アキラメーナが滑ってコケるで!」

ハッピー「で、でも……!」


アキラメーナ(高層ビル型)「アガァァァッ!?」グラァッ


ピース「わぁぁっ! こ、こっちに倒れてくるよ!」

ハッピー「だっ、だっ、だっ、だいじょうぶだよピース! 予定通りならきっと——」


ズシィィィィィィィンッ!

ズザァァァァッ!


マーチ「……ふぅっ! 危機一髪! 間に合ってよかった!」


ビューティ(回想)『……ただ、もしアキラメーナの転倒に三人が巻き込まれそうになったら、マーチが三人を抱えて助け出してください。お願いします』


ハッピー「マァーチィ……! ありがとぉー……!」

ピース「コ、コ、コワかったよぉ……!」

サニー「う、うちも、さすがにアセったわ……!」

ビューティ「……うまくいったようですね」


ハッピー「ビューティ!」

サニー「バッチリやったで! さっすがビューティやな!」

ビューティ「いいえ、皆さんの力があればこそ、です。特にマーチ、おつかれさま」

マーチ「走り回ってヘトヘトだよ……。でも、やったね、ビューティ!」

ビューティ「ええ!」

セルリア「……何、勝った気で……いるの……。……まだ……終わってない……」

ビューティ「……いいえ、もう勝負はついています。そのアキラメーナの手足を見てください」


アキラメーナ(高層ビル型)「アガッ! ガッ!」ジタバタ ジタバタ


ビューティ「そのアキラメーナは体が大きい代わりに手足が短いですね。つまり……」

ビューティ「倒れたら、もう起き上がれないでしょう!」ビシィッ

セルリア「…………!」


サニー「勝利宣言バッチリ決まっとるけど……、なんかマヌケやな……」

セルリア「……アキラメーナ……そうなの……?」

アキラメーナ(高層ビル型)「アガァッ……」ジタバタ ジタバタ

セルリア「…………」


セルリア「…………役立たず……!」

アキラメーナ(高層ビル型)「アガッ……!?」ガーン

セルリア「(スッ)」


バリッ! バリバリッ!


ピース「! キャンバス、やぶっちゃった……!」


アキラメーナ(高層ビル型)「アギャッ……!?」


ブワァァァッ…


ハッピー「アキラメーナ、黒い煙になって……消えちゃった……」

ビューティ「アキラメーナが描かれたキャンバスが破壊されると、アキラメーナは存在できないのですね……」

サニー「何てことするんや……! 仲間とちゃうんか!?」


セルリア「……使えない道具は……いらない……」


マーチ「"道具" って……!」

セルリア「……そんな……ことより……」

セルリア「……また……お前……、……邪魔をした……! ……この間も……今日も……!」

セルリア「……キュアビューティ……、……忘れない……!」シュバッ


マーチ「……なんか、因縁つけられちゃったね」

ビューティ「構いません。あの方が私の前に現れるというなら、何度でも立ち向かうのみです」

ポップ(デコル)「使えぬものは容赦なく切り捨てる……、デスペアランド、恐ろしい相手でござる……!」

サニー「……うち、好かんわ、そういうの。ヒドいことしよって……」


ピース「それに、今日のアキラメーナ、とっても強かったね……」

マーチ「ビューティの機転が無ければどうなってたか……」

ビューティ「シアンナという方の言っていた "次からは本気" という言葉、偽りはなかったようですね」


5人「…………」

ハッピー「……でも、何とかなったよ。みんなで、力を合わせたから!」


ハッピー「ビューティのかしこさ!」

ハッピー「マーチの足の速さ!」

ハッピー「サニーとピースのド根性!」

ハッピー「わたしは……、あんまり役に立てなかったけど……えへへ」

ハッピー「みんなのいいところが合わさったから、今日のピンチも乗り切れたんだよ」


ハッピー「だから、今までどおりスマイルスマイルで、頑張っていこう! ねっ!?」ニコッ


4人「……ハッピー……」

サニー「……ハッピー。"みんなのいいところ"、っちゅーんなら、大事なもんが一つ抜け取るで」

ハッピー「えっ?」

サニー「ハッピーのその "笑顔" や」


サニー「ハッピーの笑顔は、いつだってうちらに元気をくれるし、不安も吹き飛ばしてくれる。うちらもつられて笑顔になるんや」

サニー「うちらは "スマイルプリキュア" やで。笑顔でガンバるのがポリシーやろ?」

サニー「せやから、ハッピーのその笑顔がうちらにとって一番のパワーなんや!」

サニー「"役に立っとらん" 言うとったけど、そんなことあらへんて! もっと胸張ってええんやで!」


ピース・マーチ・ビューティ「うん」


ハッピー「……みんな……!」

ハッピー「そうだよ! 不安なんて、笑顔で吹き飛ばしちゃおう!」

ハッピー「一人じゃ難しくっても、みんながいれば、みんなで笑顔でいれば、何でもできるよ!」

ハッピー「私たちみんなのハッピーのために……!」


ハッピー「Let's go! スマイルプリキュア!」

全員「おーっ!!」



つづく

次回予告

みゆき「ある日、いやがらせをされて困っていた学校の女の子を助けたわたし」

みゆき「落ち込んだその子に何とか笑ってほしかったんだけど、逆に "どうしていつも笑っていられるの?" って聞かれちゃった」

みゆき「わたしが笑っていられるわけ。それは——」


みゆき「次回、『スマイルプリキュア レインボー!』 "教えてみゆき! 笑顔のひみつ!"」


みゆき「みんな笑顔でウルトラハッピー!」

今回はここまでです!
お読みいただいた方、ありがとうございました。

昨日、AS NS2 で久しぶりに動いてしゃべるスマイル勢を観てテンション上がっております!
この調子で張り切っていければと思います。

よろしければ次回もまたよろしくお願いします!


第1話 >>3 から
第2話 >>75 から
第3話 >>166 から
第4話 >>252 から
第5話 >>339 から
第6話 >>422 から

また、ここからは完全に余談ですが、"プリキュア新聞" を買いました。

その中に『スマイル』の声優さん方の座談会があったのですが、その中に、
"『スマイル』が終わったのがさみしくて、『ドキドキ!』 がまだ見られない"
というご意見がいくつかあったのがとても印象的でした。


それを見て、なんというか……燃えました。
おんなじような気持ちで続きなんてものを書いてる身としては。

これからも『スマイル』への感謝と愛を忘れずに、
原作に恥じないものにしていければいいなぁ、と思います。

あと、↑の話とちょっと関係してくるんですが、
もしかしたらまた投稿予定日時が変わるかもしれません。

自分としては、「『スマイル』まだ終わってないぞ!」という体にしたかったんで
プリキュアタイム(日曜朝 8:30) に上げていければ、と思ったんですが、
よく考えたら、この時間に vip ssスレ見てる方あまりいらっしゃらないと思うんですよね。。

当然、多くの方に見てもらいたい、という気持ちはありますので、
土曜の夕方 〜 夜の更新の方がいいのかなー、と思ったり。。

ちょっとしばらくはいろいろ試させてもらえれば、と思います。


ただ、遅くても日曜昼前には上がってるはずなので、
続いて見てくださってる方いらっしゃいましたら、そのくらいの時間以降にお越しください。


以上、ちょっとしたご連絡でした。
それではまた来週、よろしくお願いします!



続きものには追加戦士がつきものだよね!



自分がやり易いようにしたらいい

乙乙。

スト子じゃないんやね、安心したような残念なようなwwww
出たら大爆笑してたことは間違いないわ


説明回だったな
あれっ? もしかして追加戦士って・・・?( ・`ω・´)



追加戦士は大抵異世界の住人で今回の追加戦士のうちの一人は紫のプリキュアってことは…
ニコさん期待してるぞ

嫌な、事件だったね…
笑顔の理由を鏡に横取りされたんだろう?

 おはようございます。いつも、楽しく読ませて頂いております。益々、面白い展開になってきましたね。次回も楽しみにしています。
しかし、「ここの展開はこうした方が良いのではないか?」「キャンディはデコルチェンジしなくても良いんじゃないか?」「この子とこの妖精の組み合わせがイメージし辛い」と読んでいてつくづくそう思いました。全体的に本編(アニメ)を見ても『5人の復活/覚醒が早すぎるな』と感じました。プロローグは『形の復活から真の復活へ』という流れにして進行していったらもう少しアニメ版とは違うドラマ性のある展開になったと思います。でも、個人の妄想作品ですから他人がとやかく言うことでは無いのですが、常に気になっていたので勇気を出して自分なりの正直な感想を書いてみました。
 お気持ちを傷つけてしまいましたらごめんなさい。でも、私はあなたの作品が大好きです。これからも応援しています。それでは、失礼致します。

>> 514
ご丁寧にご意見いただき、ありがとうございます!

自分ひとりで世界観設定からストーリー構成からやっているので、
自分では気づけないいろんな綻びがあったりするかと思います。
ですので、こういうご意見はありがたいです!

いただいたご意見の中にも考えさせられるところがありましたので、
今後の参考とさせてもらえればと思います。


それでは、よかったら今後もよろしくお願いいたします!

『スマイルプリキュア レインボー!』

このあとすぐ!

〜 放課後 七色ヶ丘中学校 教室棟前 〜

みゆき「んんーっ! 今日の学校も終わったぁーっ! 早く帰って昨日買った絵本の続きでも——」


1年女子A「ほらぁー、早くゴミ運びなよ! 遅れたら、あたし達まで怒られんだからね」

1年女子B「まったくもう、どんくさいなぁ! そんなだからクラスでも浮いちゃうんだよ」

三つ編みの気弱そうな 1年女子「…………」フラフラ


みゆき「…………」


みゆき(……なんだかヤな感じ……。あの子、困ってるのかなぁ……)

みゆき(何とかしてあげたいけど……! 誰か呼んだ方がいいのかな……)

みゆき(でも……)

みゆき(もしなおちゃんがここにいたら、素通りしたり……しないよね……!)


みゆき(……よし! わたしも 3年生なんだもん! できるかどうかわかんないけど、なおちゃんみたいにやってみよう!)

1年女子A「もっと急いでよねー! あたし達これから遊び行くんだか——」

みゆき「ちょ、ちょっと待って!」


三つ編みの気弱そうな 1年女子「…………?」

1年女子A「——何ですかぁ? そのタイカフス、3年生のものですよね?」

1年女子B「あたし達になんか用ですかぁ、センパイ?」


みゆき(うぅー……、いざとなると言いづらいよー……! やっぱりいつでもハッキリ言えるなおちゃんはすごいなぁ……!)

みゆき(でもガンバる! あの子困ってるもん! 助けてあげなきゃ!)


みゆき「ど、どうしてあなた達、その子一人にゴミ箱持たせてるの? 重そうだよ? 手伝ってあげたら?」


1年女子A・B「…………」




※作者注
 『レインボー!』の七色ヶ丘中学校では、ネクタイを留めてるタイカフス(で、いいんですかね?) の模様か何かで、
 学年がわかるようになっている、ということにさせてください。
 制服のデザインによる学年判別の設定はなさそうだったので、多分捏造設定です。



1年女子A「……えっとぉー、なんでセンパイがそんなこと言うんです? 関係なくないですかぁ?」

1年女子B「そうですよー。大体、この子が持つって言ってるんだから別にいいんですよぉ」

三つ編みの気弱そうな 1年女子「えっ……? わたしは、別に……」

1年女子B「持つ、って言・っ・た・よ・ね?」

三つ編みの気弱そうな 1年女子「……うん……」

1年女子A「ほらぁー、こう言ってるじゃないですか。分かってもらえましたぁ? センパイ」


みゆき「……分からないよ」

みゆき「だってその子、笑ってないもん。自分からやってるようには見えないよ」

みゆき「だからさ、その子のこと、手伝ってあげようよ! 困ってる時は助け合わないと!」


1年女子A「……どうする?」

1年女子B「なぁんか、めんどくさいことになっちゃったねー」

三つ編みの気弱そうな 1年女子「…………」

タタタタッ


1年担任教師「おい、キミ達! ゴミ捨てに随分時間かかってると思って見に来たら、まだやってたのか!」

1年女子A「げっ、センセイ!」

1年女子B「やばっ!」

1年担任教師「早くしなさい! まだ時間かかるようなら、来週も当番をやってもらうぞ!」


1年女子A「……しょーがないなぁ……! ほら、貸しなよ! あんたにやらせてたらまた掃除当番にさせられちゃうし!」バッ

三つ編みの気弱そうな 1年女子「あっ……!?」

1年女子B「ほら、早く行くよ! さっさと終わらせないといけないんだから、もたもたしないでよね!」

三つ編みの気弱そうな 1年女子「う、うん……」チラッ

みゆき「…………」


タタタタタタッ…

みゆき(一応、手伝ってはくれたみたいだけど……)

みゆき(あの先生が来てくれなかったら、うまくいかなかったよね……。人助けって難しいなぁ……)


みゆき(でも……)


三つ編みの気弱そうな 1年女子(回想)『(チラッ)』


みゆき(あの子、最後まで困った顔してたなぁ)

みゆき(笑えないなんて悲しいよ……。何だか気になっちゃうな……)




スマイルプリキュア レインボー!

第7話「教えてみゆき! 笑顔のひみつ!」



〜 翌朝 七色ヶ丘中学校 3-1教室 〜

あかね「みゆきぃ、おはよーさん!」

みゆき「……はぁ……」

あかね「……ん? おーい、みゆきぃ? 生きとるかー?」

みゆき「……ふぅ……」

あかね「みぃーゆぅーきっ!!」


みゆき「わっ!? な、何、あかねちゃん?」

あかね「"何" ちゃうわー! おはよー、ってさっきから何度もゆーとるやん!」

みゆき「あ、あっ、そうだった? ゴメーン。おはよう、あかねちゃん!」


あかね「どないしたん? いっつも元気印のみゆきが落ち込むなんて、めずらしやん。何かあったん?」

みゆき「あっ、ううん! 別になんでもないよ! ちょっとぼーっとしてただけ! ほらっ、春の日差しがぽかぽかで気持ちよくってさー」

あかね「……そ? ほんならええけど……」

みゆき「心配させちゃってゴメンね、あかねちゃん! ありがと!」

〜 2, 3時限目の間休み 七色ヶ丘中学校 3-1教室 〜

みゆき「……はぁ……」


あかね「——とか、今朝ゆーとったのに、またすぐあれや。授業中もずーっとぼーっとしとったし。みんな、何か知らん?」

なお「直接聞けばいいのに。あかねらしくないね」

あかね「んー……、なーんかごまかしとったような感じしたから、知られたないんかなー、思て……」

れいか「なるほど。それで、みゆきさんが私達に何か相談などしていないかどうか、お聞きしたいわけですね」

あかね「そーゆーこっちゃ。何か聞いとらん?」

なお「うーん……。あたしは何も聞いてないよ」

れいか「私もですね。残念ながら……」

あかね「そっかー……。何なんやろなー……」


やよい「…………」

やよい「……わたし、わかっちゃったかも!」

あかね「え? ほんま?」


やよい「つきっぱなしの頬杖……」

やよい「あの遠くを見るようなまなざし……」

やよい「時々もらすため息……!」


やよい「あれは……きっと恋だよ! 間違いないよっ!」キラキラ


れいか「……まあ……!」

あかね・なお「……えぇー……?」

れいか「や、やよいさん! そうなのでしょうか!? みゆきさんが、こ、恋を!?」

なお「れいか食いつきすぎ……。まぁ、ホントにそうなら、気持ちはわからなくも、な、ないけど」

やよい「きっとそうだよ! 見てて! みゆきちゃんの心の声を予想してみるから!」

あかね「やよい、こういう話になるとほんっまイキイキすんなぁ……」

みゆき「……はぁ……」

やよい「"あぁ……あの人は今どうしているのかしら……"」


みゆき「……ふぅ……」

やよい「"あの人のことを想うと、胸がキュンと切ないの……"」


みゆき「……うーん……」

やよい「"伝えたい、この想い……! でも、もし受け入れてもらえなかったらと思うと……!"」


みゆき「……はぁ……」

やよい「"わたしは……わたしはどうしたらいいの……!?"」

やよい「ねっ!? 今のみゆきちゃんの様子とぴったり合ってるでしょ?」

あかね「いや、"ねっ" 言われても……。みゆき、そんな少女漫画みたいなキャラちゃうやろ」


なお「た、確かに言われてみるとそんな風に見えるね……!」

れいか「本当にみゆきさんの気持ちを代弁しているように聞こえました……!」


あかね「え!? 納得するん!? 今ので!?」

やよい「ねぇ、わたし達で、みゆきちゃんの恋を応援してあげようよ!」

なお「そ、そうだね……! 困ってる時は、助け合わないと!」

れいか「私達でみゆきさんの、こ、恋を、成就させてあげましょう!」


あかね「……やめとき」

なお「……あかね?」

あかね「まあ、一万歩譲って、みゆきがほんまに誰かに恋しとったとしよ」

あかね「せやけどな、なんちゅーか、うまく言えへんけど……。そーゆー気持ちって、あんまり人に触れられたくないんやないやろか」

あかね「胸の奥に大切にしまっておきたい気持ち、って、あると思うねん」

あかね「せやから、みゆきが何か言ってくるまでは黙ーって見守るべきやないか、と、うちは思うんや」


やよい・なお・れいか「お、おぉー……!」


なお「さ、さすがボーイフレンドがいるだけあるね……、言うことが違う……!」

れいか「それが恋する乙女心……! 私、まだまだ精進が足りませんでした……!」

やよい「そういえば、あかねちゃん、ブライアンとはその後どうなの? うまくいってる?」

あかね「それは今関係ないやろ!(///) そのテの話ならなんでもええんか!」


あかね「……ま、ともかく、や。みゆきが言いたないんなら、そっとしといてやるのがええんやないかな」

れいか「……あかねさんの言うことは分かりました。ですが……」

なお「落ち込んでるみゆきちゃんをそのままほっとく、ってのもね……」

あかね「ん……、まあ、それもそやな」

やよい「何か、邪魔にならないくらいの応援ならしてもいいんじゃないかな?」


なお「……あ、いいこと閃いた! こういうのはどうかな? 次の家庭科の時間で——ごにょごにょ」

やよい「あ、それいいかも!」

あかね「せやな! それくらいやったら迷惑にならなそうやし!」

れいか「いいアイデアね、なお!」

なお「へへへっ」


あかね「じゃあ、みゆき応援作戦、開始やで!」

やよい・なお・れいか「おーっ!」

〜 ギャラリー・D 〜

セルリア「……シアンナ……、話って……何……?」

シアンナ「この間、本国に帰って "夢の絵の具" について検証した時の話よ。とりあえず、セルリアだけにでも話しておくわ」

シアンナ「ビリーズは……まだ戻ってないみたいだけど、どうせまだ寝てるだろうし。放っておいてもいいわね。私から折を見て話すわ」

〜 昨日 デスペアランド 王宮 玉座の間 〜

シアンナ「デスペア国王陛下。本日は、以前お送りさせていただいた、輝きを持つ絵の具についてご報告したく戻ってまいりました」

デスペア国王「……"心の絵の具" は採取した時のリアルランド住人の心情に影響される、ということか?」

シアンナ「……!? その通り、でございますが……なぜそれを?」

デスペア国王「以前、お前によって送られた輝く絵の具を大臣に鑑定させたのだ。その際にわかったことだが……」

デスペア国王「大臣。その時のことをシアンナに話せ」

大臣「かしこまりました、国王陛下」

大臣「シアンナ様。残念ながらあなた様が採取した輝く絵の具でございますが……」

大臣「あれは全て、ただの "心の絵の具" でございます」

シアンナ「! "夢の絵の具" では……ない、と……?」

大臣「はい。確かに輝く絵の具には多少高いエネルギーがあるのですが、"夢の絵の具" の伝説にあるような絶大な力はありませんでした」

デスペア国王「"心の絵の具" の性質については私も理解している」

デスペア国王「リアルランド住人の心情が "喜び" "希望" など、プラスの感情に傾けば、採取した "心の絵の具" は輝く」

デスペア国王「逆に、マイナスの感情に傾けば "心の絵の具" は黒く濁るのだ」

デスペア国王「そのため、輝く絵の具も濁った絵の具も、どちらも本質は同じ。プラスかマイナスか、というだけの違いでしかない」

デスペア国王「"夢の絵の具" は、それらとは全く次元の異なるものだ。おそらく、通常の方法では手に入るまい」


シアンナ「そうで、ございますか……」

シアンナ「おそれながら、国王陛下。一つ、お尋ねしたいのですが……」

デスペア国王「言ってみよ」

シアンナ「……では、我々はどのようにして "夢の絵の具" を探せばいいのでしょうか。皆目見当がつかず……」

デスペア国王「ふむ……」


デスペア国王「それではしばらく、"夢の絵の具" ではなく "心の絵の具" の採取を重点的に行え」

デスペア国王「それも、お前たちが送ったような輝く絵の具ではない。濁った絵の具を多く採取するのだ」

シアンナ「濁った絵の具、でございますか? 以前、濁った絵の具を見てお怒りになられていたようですが、よろしいのでしょうか」

デスペア国王「……確かに、私個人としては見たくもないものだがな」

デスペア国王「大臣、説明をせよ」

大臣「はい、国王陛下」

大臣「濁った "心の絵の具" が、我々が用いる "闇の絵の具" の材料になる、ということは以前お話したと思いますが……」

大臣「実は、国王陛下の目的の一つを達成するために "闇の絵の具" が不足してきそうだということがわかりまして」

シアンナ「国王陛下の目的……? それは一体……」

デスペア国王「まだ始まってもいない計画だ。今は知る必要はない」

デスペア国王「大臣、続けよ」

大臣「はい」


大臣「私自身、無からでもある程度 "闇の絵の具" を作り出す事ができるのですが……」

大臣「やはり、リアルランド住人から直接採取した濁った絵の具という材料があった方が、より多く、質のよい "闇の絵の具" ができるのでございます」

大臣「ですので、シアンナ様を初めとするお三方にはしばらく、濁った "心の絵の具" の収集を主な任務としていただければ、と思います」

大臣「"夢の絵の具" の入手は現段階では困難かと思われますので、その濁った絵の具収集のついでにでも入手方法を探ってください」

大臣「国王陛下。今の説明に誤りはありませんでしたでしょうか」

デスペア国王「問題ない。……"夢の絵の具" の探索を中止せねばならんのは歯がゆくはあるがな」

大臣「それでは、引き続きリアルランドでの任務に精を出していただきますようお願いします」

シアンナ「わかりました、国王陛下。目的さえ明らかであれば、このシアンナ、以下二名。かならずや結果を出してみせましょう」

デスペア国王「うむ。では行け」

シアンナ「はっ。失礼いたします」

〜 現在 ギャラリー・D 〜

セルリア「……じゃあ……、……濁った絵の具の方が……いいの……?」

シアンナ「そのようね」

シアンナ「私は今まで輝く絵の具が "夢の絵の具" か、それに近いものではないかと思っていたのだけれど、それは間違いだったのよ」

シアンナ「国王陛下が所望されているのは、輝く絵の具よりも濁った絵の具。今後は、そちらを中心に集めるの。いいわね」

セルリア「……うん……」

〜 現在 デスペアランド 王宮 玉座の間 〜

大臣「……それにしても国王陛下。"夢の絵の具" とはいったいどのようにして手に入れるものなのでしょうな」

大臣「シアンナ様の言葉ではありませんが、私も全く見当がつきませぬ」

デスペア国王「……それがわかれば苦労はしない」スクッ

大臣「おや、国王陛下。お立ちになられて、一体どちらへ?」

デスペア国王「……少し外す。すぐに戻る」

大臣「かしこまりました。行ってらっしゃいませ」

〜 デスペアランド 王宮 地下牢獄 〜

デスペア国王「…………」


デスペア国王「……全く。さっさと "夢の絵の具" の秘密を語ればいいものを」

デスペア国王「自らに強固な封印などかけて……、おかげでいらぬ苦労を強いられているぞ……!」

デスペア国王「いずれ封印を解き、その口から "夢の絵の具" のありかを語らせてみせよう」


デスペア国王「……ピクチャーランド国王・テンペラよ」


ピクチャー国王・テンペラ(封印状態)「—————」

〜 七色ヶ丘市 公園 草むら 〜

ビリーズ「……zzz……」


ビリーズ「……ん……、もう朝、か……? いや、昼か……? どっちでもいいか……。……ふあぁぁーっ……」

ビリーズ「……あれ? 何でオレ、こんなところで寝てんだっけ……」


ビリーズ「……あ、そうだ、思い出した!」

ビリーズ「シアンナに追い出されたんだった!」

〜 昨日 ギャラリー・D 〜

セルリア「……シアンナ……ごめん……。……また……負けた……」

シアンナ「いえ、いいわ。"心の絵の具" が手に入ったんだもの。上出来よ」

シアンナ「あまりプリキュアとの勝ち負けは気にしないでいいわ。絵の具の採取に専念しなさい」

セルリア「……うん……」

シアンナ「……ところで……」


ビリーズ「……zzzz……」


シアンナ「……いつから寝てるの?」

セルリア「……知らない……。……多分……私……出た後……」

シアンナ「…………全く……!」


ガンッ!


ビリーズ「うぉっ!?」ビクッ


シアンナ「おはよう、ビリーズ」

ビリーズ「おう、シアンナ。いつ帰ってきたんだ?」

シアンナ「ついさっきよ」

ビリーズ「ふーん。ところでシアンナよぉ。前も言ったけど、椅子の足蹴んのやめてくれって。ビックリするからよ」


シアンナ「(イラッ)」

シアンナ「……あなた、仕事もせずによくそんなこと言ってられるわね。セルリアはちゃんと仕事をしてきたわよ」

シアンナ「リアルランドに慣れないセルリアを一人で行かせて、よくものんきに寝てられるわね」ギロリ


ビリーズ「……え?」


ビリーズ「……お、おい、待て、シアンナ。誤解してるぞ」

ビリーズ「オレはセルリアを手伝う、って言ったんだぜ!? なのに、そいつが "邪魔だ" っつーから任せたんだよ! サボってたわけじゃねーって!」

ビリーズ「セルリア! お前も何とか言えよ!」


セルリア「……そんなこと……知らない……」


ビリーズ「はぁぁ!? 何でウソつくんだよ!」

シアンナ「嘘をついているのはあなたじゃないの? いい加減にしなさいよ……!」

ビリーズ「ちょ、ちょ、ちょっと待て! 落ち着け! 話せばわかる!」

シアンナ「問答無用よ。そんなに寝るのが好きなら、いくらでも寝ればいいわ。外でね」


ビリーズ「……へ?」

〜 昨日 ギャラリー・D 前 〜

バタン


ビリーズ「…………」

ビリーズ「……また野宿? ウソだろ?」

ビリーズ「おい、シアンナ! 入れてくれよ! 誤解だっての! 野宿はイヤなんだよぉーーっ!!」

〜 七色ヶ丘市 公園 草むら 〜

ビリーズ「……思い出したら腹立ってきた……! なんでオレがこんな目に……!」


ビリーズ「クソーっ! 腹いせにどっかでまた暴れてやるぜーっ!」

〜 七色ヶ丘中学校 家庭科教室 〜

みゆき「……はぁ……」ムリュムリュムリュ

クラスメイト・岡田 まゆ「ちょ、ちょっと、星空さん!? これクッキーだよ!? 出しすぎ出しすぎ! 絞り袋ちゃんと持って!」

みゆき「……え? あっ! ご、ごめんね岡田さん! ぼーっとしちゃってた!」

あかね「クッキー焼けたで!」

れいか「それでは……参ります!」


チュルッ! チュルルルッ!


やよい「おぉーっ、お見事っ!」

あかね「へぇー! チョコの搾り出し器でもうまく字かけるもんやなぁ!」

れいか「書道家であるおじい様直伝の書です」

なお「さっすがれいか! これならきっとみゆきちゃんも喜んでくれるよ!」


あかね「後は、いつ渡すか、やな」

〜 昼休み 七色ヶ丘中学校 3-1教室 〜

なお「昼休みだったら、渡しやすいでしょ。ほら、あかね! 行っといで」

あかね「え? うちが渡すん?」

やよい「隣同士だから渡しやすいでしょ?」

れいか「それに、みゆきさんを一番心配されていたのはあかねさんです。あかねさんこそふさわしいと思います」

あかね「んー……、わかったわ。じゃあ、ちょっと行って——」


みゆき「(ガタッ!)」


あかね「——な、なんや? 急に立ち上がりよったで?」

みゆき(……やっぱり、あの子のことが気になる! あんな困った顔、そのままにしておけないよ!)


みゆき(1年生の誰かもわかんないけど……とにかく探して、もう一度会って話してみよう!)


タタタタタッ

あかね「……どっか行ってもーた」

やよい「……行っちゃったね」

れいか「……行ってしまいましたね」


なお「ちょっと! 何ぼーっとしてんの! 追いかけないと見失っちゃうよ!」

あかね「はっ、せ、せや! 待ちやーっ、みゆきーっ!」

〜 七色ヶ丘中学校 1-1教室 前 〜

みゆき「あっ、ねえ! ちょっといいかな? 聞きたいことがあるんだけど」

1-1 男子A「はい? なんすか?」

みゆき「このクラスに、三つ編みの女の子っている? ちょっと大人しい感じの」

1-1 男子A「三つ編み? うーん……、なあ、いたっけ?」

1-1 男子B「いや、いなかったんじゃねーかなー、多分」

みゆき「そっかぁ……。他のクラスはどうかな?」

1-1 男子A「あー、すんません。おれ達、まだ入学したばっかりなんで、他のクラスのやつまではわかんないっす」

みゆき「ああ、そうだよね。ゴメンね、急に聞いちゃって! ありがとう!」

〜 七色ヶ丘中学校 1-2教室 前 〜

1-2 女子A「三つ編みの女子、ですか?」

みゆき「うん! このクラスにいないかな?」

1-2 女子B「あ、もしかして戸田さんかなぁ? ほら、教室の中で話してるあの子じゃないです?」


1-2 女子・戸田「えーっ、それホント!? あははははっ!」


みゆき「ああー……、ゴメン、違うみたい」

1-2 女子A「そうですかぁ……。スミマセン、力になれなくて……」

みゆき「あ、ううん! すごく助かったよ! ありがとう!」

〜 七色ヶ丘中学校 教室棟 1F 物陰 〜

あかね・やよい・なお・れいか「…………」コソコソ


なお「みゆきちゃん、さっきからずっと 1年生の教室の前にいるね」

れいか「どうやら、どなたかを探しているようですね」

やよい「も、もしかして、それがみゆきちゃんの好きなコ!? 1年生なのかなっ!?」

あかね「どうやろな? ……ってゆーか、まだそうと決まったわけやないんやで?」


1年生 男子A「……なあ、あの人たち、スミにコソコソして何してんだろうな……」

1年生 男子B「よくわかんねーけど、あんまり関わんない方がよさそうだな……」

1年生 女子A「先生呼んだ方がいいのかなぁ……」

〜 七色ヶ丘中学校 1-3教室 前 〜

1-3 女子C「三つ編み……? あ。もしかしてあの子じゃん?」

1-3 女子D「え? いたっけ、そんな子?」

1-3 女子C「ほらぁー、いるじゃん。すっごい地味な子」

1-3 女子D「……あー、そういえばいたかも……。えーっと、名前……なんだっけ?」

1-3 女子C「あたしもぜーんぜん思い出せないんだよねー。その子、とにかく地味なんですよー。いるかいないかわかんないくらい」

みゆき「探してるの、その子かも! ねえ、今教室にいるのかな?」

1-3 女子C「多分いないと思いますよー。その子、昼休みになるとふらっと出てっちゃうんで。どこかでお弁当食べてるんじゃないですか?」

みゆき「どこに行ってるかってわかる?」

1-3 女子D「いやー、全然。いっつも一人だから、誰も知らないんじゃないかと思いますよ?」


1-3 女子C「……あ! 名前、思い出した! "木下" さんだ、確か!」

1-3 女子D「あー、そうそう! そんなだった!」

みゆき「木下さんっていうんだ! 名前が分かっただけでも大助かりだよ! ありがとう! 後は自分で探してみるね!」

1-3 女子C「あ、はーい」


タタタタタタ…


1-3 女子C「……でも、あのセンパイ、木下さんなんか探してどうするんだろ?」

1-3 女子D「さあ? なんだろうね。あの子暗いし、面白いことなんにもないのにね」

〜 七色ヶ丘中学校 教室棟 1F 物陰 〜

なお「あ! みゆきちゃん、どこか行っちゃうよ!」

やよい「追っかけようっ!」

れいか「はいっ!」


あかね「……うちら、完全にヤジ馬やな……」

〜 七色ヶ丘中学校 校門 〜

ビリーズ「テキトーにぶらついてたら着いちまったけど、ここって見覚えが……」

ビリーズ「あ! そーだ! こないだ光る絵の具が出たところじゃねーか!?」

ビリーズ「ラッキー! ここならまた光る絵の具取れんじゃねーの!? したらシアンナの期限も直るかもな!」


ビリーズ「さぁーてと! "心の絵の具" を集めるのにいい場所を探すとすっか!」

〜 ギャラリー・D 〜

シアンナ「…………」


シアンナ(ビリーズ、戻ってこないわね。これじゃあ、濁った絵の具の必要性を教えられないわ)

シアンナ(知らないまま輝く絵の具を探そうとしてなければいいけど)

〜 七色ヶ丘中学校 中庭 ベンチ 〜

三つ編みの気弱そうな 1年女子・木下「…………」モグモグ

みゆき「やっと見つけたよ! 木下さん、だよね?」

木下「わっ!? ……な、なんですか、急に……」


木下「あ……、昨日、ゴミ捨ての時に会ったセンパイ……」

みゆき「憶えててくれたんだ! わたし、3年の星空 みゆきっていうの。よろしくね!」ニコッ

木下「え……。あ、はい、よろしく……お願いします……」

木下「……それで、何か用ですか……?」

みゆき「この間、ゴミ捨てしてた時、ずーっと困った顔してたよね? それが、ちょっと気になっちゃって……」

木下「……別に……。いつものことなんで……」

みゆき「えっ……、いつも、って……。いつもあんな風に一人でゴミ捨てやってる、ってこと?」

木下「はい……」


木下「他にもありますよ……。教室の花びんの水換えとか、チョークの片付けとか、わたしが当番メンバーにいる時は大体一人でやってます……」

みゆき「そうなんだ……。みんなのためにガンバるのが好きなの?」

木下「いえ……。別に、そういうわけではないです……」

みゆき「え、そうなの? じゃあどうして……」

木下「……みんな、ラクしたいからじゃないですか……? わたし一人にやらせれば自分はやらなくて済むし……」

みゆき「それじゃあ……、木下さんは気が進まないのにみんなにいろいろ押し付けられてる、ってこと、なの……?」

木下「…………」コクン


みゆき「そんな……。ひどいよ、そんなこと……!」

みゆき「木下さんはそれでいいの? イヤなことムリヤリさせられて」

木下「……別にいいんです……。小学校の時からそうだったんで……」

みゆき「小学校の時から、って……。じゃあずっと、他のみんなに押し付けられたりしてた、ってこと?」

木下「……はい……」

みゆき「そう、なんだ……」

みゆき「……木下さん、実はね、わたしが木下さんとお話したかったのはね、木下さんに笑顔がなかったのが気になったからなんだ」

木下「……笑顔……ですか……?」

みゆき「うん」


みゆき「この間、最後はゴミ箱運ばなくてよくなったけど、その後もずっと困った顔してたし……」

みゆき「もし木下さんがあんな風にずっと落ち込んだままだったら……笑顔でいられなかったら、それはとってもツラそうだなぁ、って思って……」

みゆき「だから、そうだったら木下さんに笑顔になってもらいたいな、と思って、もう一回お話するために探してたの」

木下「わたしを、笑顔に……?」

みゆき「うんっ!」ニコッ

木下「…………」

木下「……どうしてなんですか?」

みゆき「……えっ?」

木下「どうしてわたしを笑顔にしたいんですか……? 別にわたしとセンパイはなんの関係もないのに……。わたしが笑ったら、センパイに何かいいことがあるんですか?」

みゆき「え、えーっと……。木下さんが笑顔になれたらいいな、と思っただけだから、あんまり深く考えてなかったよ……。ゴメン! ちょっと待ってね、考えるから」


みゆき「うぅーん……!」

みゆき「んんんん……!」

みゆき「うううぅぅーん……!」


木下「…………」

みゆき「…………」

みゆき「……わたしが、笑顔を見るのが好きだから、かなぁ」

みゆき「ゴメンね。木下さんに納得してもらえるかわからないんだけど、本当にそれだけなんだぁ」

みゆき「わたし、笑顔が大好きなの。自分が笑うのも、誰かに笑ってもらうのも、大好き」

みゆき「だって笑顔を見ると、心の中が暖かくなって、とってもハッピーな気分になれるんだもん!」

みゆき「誰かの笑顔があれば、苦しくても、つらくてもガンバろう、って気になれる。勇気と、元気と、ハッピーをもらえる」

みゆき「そんな笑顔が、私は大好き」


みゆき「だから、木下さんにも笑顔になってもらえたら、わたしにとってはそれだけでハッピーなことなんだ!」


みゆき「木下さん、この間のゴミ運びの時、ずっと困ったような顔してた」

みゆき「その困った顔がもし笑顔になったら、それはとってもステキなことだなぁ、って思って。それでこの間は声をかけたの」

みゆき「今もそう。木下さんの笑顔が見られたら、わたしがハッピーになれるから。だからこうしてお話させてもらってるの」

みゆき「それにね、笑う事は、木下さんにとってもすごくいいことだと思うよ?」

木下「わたしにも……?」


みゆき「ホラ見て!(ニコッ) 誰かの笑顔を見ると、つられて笑顔になっちゃわない? なんだか暖かい気持ちになってこない?」

木下「…………少し」

みゆき「ねっ!?」


みゆき「今、木下さんがちょっと思った嬉しさ、木下さん自身が笑えば、周りの人にあげることができるんだよ!」

みゆき「そしたら、周りの人も木下さんに笑ってくれるかもしれない!」

みゆき「周りの人が笑顔になってくれれば、木下さんももっと嬉しくなれる!」

みゆき「そうやって、みんなでどんどん笑い合っていけたら、それってウルトラハッピーなことだと思わない!?」


木下「…………そう、かもしれないですね……」

みゆき「うんっ! きっとそうだよ!」

木下「……でも……」

木下「……笑う、って、どうしたらいいんでしたでしょうか……」


みゆき「……へ?」

木下「……わたし、ここのところずっと、笑った覚えがないんです……」


木下「……小学校のころから周りのみんなの言いなりになってて……。イヤなことにもイヤ、って言えないで……」

木下「……ウチは、両親が共働きですから、家に帰っても誰もいなくて……。家にいてもずっと一人で……。学校のことも誰にも話せないで……」

木下「そんな風に暮らしてるうちに、だんだん自分で考えることをしなくなっていって……」


木下「……笑い方、忘れちゃったみたいです……」


みゆき「……そんなこと、あるの……?」

みゆき「……で、でもさ! テレビとか見て、面白かったら "あははっ" って笑わない?」

木下「……テレビ、あんまり見ないです……」

みゆき「本とか、漫画読んだりとか!」

木下「……たまに、漫画読んだりするくらいで、あんまり……」

みゆき「えーっと……、趣味とか、好きな事とかって、ないの?」

木下「……はい……」


みゆき「そ、そうなんだ……。それは、困った……ね」

木下「…………センパイは、どうして笑ってられるんですか?」

みゆき「……え?」

木下「センパイ、さっきからずっと笑顔ですよね……」


木下「センパイが笑顔でいられるわけって、なんですか……?」

みゆき「わたしが笑顔なわけ? う、うぅーん……急に聞かれると困っちゃうな……」

みゆき「わたしが笑顔になる時っていうと——」


あかね・やよい・なお・れいか・妖精達(回想)『(ニコッ)』


みゆき(…………!!)


みゆき(——そうだ。答えるのに困る事なんて全然ないよ。分かりきってることだもん)

みゆき(わたしがいつも笑顔で、ハッピーでいられるわけ、それは——)


みゆき「——あのね、木下さん。わたしが笑顔でいられるのはね——」

キャンディ(デコル)「(小声)! みゆき! イヤなかんじがするクル! 何か近くにいるクル!」

みゆき「(小声)!? キャ、キャンディ!? しゃべっちゃダメだってば!」

木下「……? どうかしたんですか?」

みゆき「あっ、ううん! 何でもないよ、何でも——」


スタスタスタ


ビリーズ「この辺あんま人間いねーなぁ……。これじゃあ "心の絵の具" 集めらんねーぞ……。もうちょい向こう行ってみるかな」

みゆき「…………え?」


みゆき(あ、あの人確か……デスペアランドの人ぉぉっ!? ホントにいたぁっ! な、なんで学校にいるの!??)

みゆき(ど、ど、どうしよう……!? 追い払わないといけない……よね、やっぱり……!)

みゆき(で、でも……!)


木下「センパイ、どうかしました……? あわててるみたいですけど……」


みゆき(ここで変身したら木下さんが……!)

ババババッ


あかね「あーっ! あんた、デスペアランドのヤツやん! なんで学校におんねん!」

やよい「ホントだ! 見たことある人だよ!」

なお「もしかして、学校で "心の絵の具" を取る気なの!?」

れいか「白昼堂々、学校で悪事を働こうとは……! 生徒会長として、この青木 れいか、見過ごせません!」

みゆき(えっ、みんな!? みんなこそなんでいるの!?)


ビリーズ「あん? 何だよぎゃーぎゃーと……、って」

ビリーズ「……あ! そこの緑の髪の毛のヤツ! 見覚えあんぞ! プリキュアだろ!」

ビリーズ「ってことは、他のヤツもそうか! ったく、行くところ行くところで邪魔しやがってぇぇ!」


キョロキョロ


ビリーズ「……くーっ……! 人間全然いねーけど、しょうがねぇ! やるしかねぇか!」

ビリーズ「闇の絵の具よ! 闇の絵筆よ! キャンバスに絶望を描き出せ!」


シュババババッ


ビリーズ「実体を持ってキャンバスから現れよ、アキラメーナ!」


ズズズズズズ…


アキラメーナ(中庭の日よけ屋根型)「アキラメーナァッ!」


ビリーズ「アキラメーナ! とりあえず心吸え!」

アキラメーナ(中庭の日よけ屋根型)「アキラメーナァ!」


ズワァァァァァッ…


木下「うっ……。なに……力が……」バタッ

みゆき「木下さんっ!」


あかね「あーっ! また心吸われてもーたぁ!」

れいか「事前に阻止するのは難しいですね……!」

タタタタタッ


みゆき「みんなーっ!」

あかね「あ、みゆき……!」

みゆき「ねぇ、なんでみんな揃ってここにいるの? 中庭で何かしてたの?」

やよい「あっ、えっとね、それはね……!」

なお「そ、そんなことはいいでしょ! とにかく、あいつやっつけないと!」

みゆき「あ、うん、そうだね! 行くよ、みんな!」

4人「うんっ!」


ウルルン(デコル)「よっしゃあ! ようやく出番だウル!」

マジョリン(デコル)「学校じゃしゃべれないから、このまま出番無しかと思ったマジョ!」

オニニン(デコル)「思いっきり暴れてやるオニ!」

ポップ(デコル)「頑張るでござるよ、皆の衆!」


キャンディ(デコル)「みゆき、行くクルぅ!」

みゆき「お願いね、キャンディ!」

パチンッ!

レディ!

5人「プリキュア! スマイルチャージ!!」

ゴー! ゴーゴー! レッツゴー!!


ハッピー「キラキラ輝く、未来の光! キュアハッピー!!」

サニー「太陽サンサン、熱血パワー! キュアサニー!!」

ピース「ぴかぴかぴかりん♪ じゃん・けん・ポン!(グー) キュアピース!!」

マーチ「勇気リンリン、直球勝負! キュアマーチ!!」

ビューティ「しんしんと降り積もる、清き心。キュアビューティ!!」


5人「5つの光が導く未来!」

5人「輝け! スマイルプリキュア!!」

ビリーズ「そういや、プリキュア 5人になったってシアンナが言ってたな……。ったく、ぽこぽこ増えやがって、めんどくせー!」

ビリーズ「まぁ、いい! 何人増えても同じだ! やっちまえ、アキラメーナ!」

アキラメーナ(中庭の日よけ屋根型)「アキラメーナァ!」バッ


ビヨォーン! ビヨォーン!


ピース「わっ、なに!?」

ビューティ「4本の柱を脚にして、まるでバッタのように跳び回っています!」

サニー「ちょこまかしよって! 大人しくぅー……せーや!」バッ

アキラメーナ(中庭の日よけ屋根型)「アキラメーナァ!」ビヨォーン!


スカッ!


サニー「わっ!? た、た、たたっ……!」ドテッ

ビリーズ「ぷーっ! バランス崩してコケてやんの! だっせー!」


サニー「やかましわ! うぅー、ピョンピョンしてるせいでパンチも当たらーん!」

ビリーズ「あ、待てよ……。もしかして、プリキュアほっといて他のところ行けば、もっと心吸えんじゃねーの!?」

ビリーズ「それだ! オレ頭いぃーっ! アキラメーナ! ジャンプして他のところの人間からも心吸って来い!」

アキラメーナ(中庭の日よけ屋根型)「アキラメーナァ!」ビヨォーン!

マーチ「そうは問屋が……おろさないよっ!」バッ

マーチ「マーチ・キック!」ドカッ!

アキラメーナ(中庭の日よけ屋根型)「アガァッ!」


ドシィィィン!


マーチ「あたしなら何とか追いつけそうだね! 他のところには行かせないよ!」

ハッピー「さっすがマーチ! やるぅっ!」


ビリーズ「かぁーっ! また緑のアイツか! この間といい、今といい、邪魔してくれやがって!」

ビリーズ「しっかし……、他のところ行けないとなると、今回の稼ぎはこれだけか……」


チャポッ チャポッ


木下「うぅ……」

ビリーズ「倒れてる人間一人だけだから、これアイツだけの分だよなぁ……。少なすぎるぜ……」


ビリーズ「しかもこの絵の具の色、きったねーなぁ……。濁りまくりじゃねーか」

ビリーズ「"活気があると絵の具が光る" って話だったけどよぉ、こんだけ濁ってるってことは、そいつよっぽどつまんねー生活してんだろーなぁ」


ハッピー「…………!!」


ビリーズ「ったく。こんな濁った絵の具じゃあ、またシアンナにどやされちまう。もうちっとマシな色を出せってーの」

ハッピー「……今の言葉、取り消して……!」

ビリーズ「あん?」

ハッピー「"木下さんの生活がつまらない" って言葉、取り消して!!」


サニー「……ハッピー?」

ビリーズ「っんだよ、急にキレやがって。んなこと言ったって、見ろよこの "心の絵の具" の色」

ビリーズ「汚く濁っちまってよぉ。やる気ゼロじゃねーか。つまんねー、っつって何が悪いんだよ?」


ハッピー「誰だってやる気が出ない時はあるよ! 笑えない時はあるよ!」

ハッピー「木下さん、笑えないことを悩んでた……! きっと、笑いたい、喜びたいって気持ちはあるんだよ!」

ハッピー「それができなくて苦しんでるっていうのに、そんな言い方して……!」

ハッピー「そんなの……そんなの……っ!」


ハッピー「絶対許さない!!」


カッ! バァァァァッ!

ビューティ「こ、これは!?」

ピース「ハッピーが……ピンク色に光ってる……!」


ビリーズ「なんだなんだ!? どうなってんだ、こりゃあ!?」

ビリーズ「な、なんだかよくわかんねーが、アキラメーナ! やっちまえ!」


アキラメーナ(中庭の日よけ屋根型)「アキラメーナァ!」ビヨォーン!


サニー「あいつ、また跳び上がったで!」

マーチ「性懲りもなく! 何回でもあたしがはたき落として——」

ハッピー「……っ!」グッ


バッ!


オニニン(デコル)「ハッピーも跳んだオニ!」

ウルルン(デコル)「しかも……追いついちまったウル!」


アキラメーナ(中庭の日よけ屋根型)「アガァッ!?」

ビリーズ「ああん!? あのピンクのにまで追いつかれんのかよ!? おい、アキラメーナ、もっとやる気出せよ!」


マーチ「違う……。相手が遅いわけじゃない。ハッピーがいつもよりずっと速いんだ……!」

マジョリン(デコル)「マーチと同じくらい速いマジョ……。どうなってるマジョ……!?」

ハッピー「ハッピー・キィィィックッ!!」ドガッ!

アキラメーナ(中庭の日よけ屋根型)「アガァァァッ!?」


ズドォォォォン!


サニー「うわ……、なんちゅうパワーや……! いつもと全然ちゃうで!」


ハッピー「……決めるよ、キャンディ!」

キャンディ(デコル)「ク、クルぅ……!」


ハッピー「プリキュア! ハッピー・シャワーァァッ!!」


ズドォォォォォォォォンッ!!


アキラメーナ(中庭の日よけ屋根型)「アガァァァァァ……」シュワァァァァ…

ビリーズ「あぁーっ! やられちまったぁ!? な、何だったんだよ、急に強くなりやがって!? あっという間でワケわかんねーよ!」

ビリーズ「……ま、まぁ、やられちまったもんはしょうがねぇ。今日のところはこの辺で勘弁しておいて——」


ハッピー「……(キッ)」ダッ

ビリーズ「……う、うわっ!? こっち来やがった!?」


バッ!


ビリーズ「……っ! ……あれ? 攻撃すんのかと思ったけど何ともねぇ」

ビリーズ「……あ! と、思ったらボトル取られてやがる! 何すんだよ! 返せよ!」


ハッピー「……濁ってても、これは木下さんの大切な心なんだよ……。あなたなんかに、渡さない!」


ビリーズ「……ぐっ、ぐぅぅぅっ……!」ムカムカ

ビリーズ「けっ! そんな汚ねーもん、誰がいるか! そんなに欲しけりゃくれてやんよ! 覚えてやがれ!」シュバッ

〜 七色ヶ丘中学校 中庭 〜

あかね「いやー、それにしても、さっきのハッピー、すごかったなぁ。何したん?」

みゆき「うーん……、わたしにもわかんない……。木下さんのことをバカにされて、カッとなったらああなったの」

キャンディ「きょ、今日はいつもより……つ、つかれたクルぅ……」ポテッ

みゆき「わっ!? キャ、キャンディ、どうしたの、急に倒れて!? だいじょうぶ!?」

ポップ「……どうやら、みゆき殿のあの子に対する想いがハッピーの力を強くした代わりに、よりキャンディのエネルギーを使ってしまったのでござろう」

みゆき「そっか……。キャンディにムリさせちゃったんだね。ゴメンね、キャンディ……」

キャンディ「みゆきの力になれたんならよかったクルぅ……」ニコッ


木下「う、うぅん……」


やよい「あっ、あの子、目覚ますよ! みんな、隠れて隠れて!」


ポップ「まずいでござる! キャンディ、デコルになるでござる!」ポンッ

キャンディ「ク、クルっ!」ポンッ


木下「……あ、あれ……。わたし……」

みゆき「木下さん、だいじょうぶ? 急に倒れたからビックリしたよ!」

木下「……あ、そうなんですね……。倒れてる間、見てもらってたんですか……? すみません……」

木下「……あれ? その人たちは……」

みゆき「ああ! みんな、わたしの友達だよ! 倒れた木下さんを心配して、見ててくれたんだ!」


あかね「うちは日野 あかね。よろしゅーな!」

やよい「わたしは黄瀬 やよいっていうの。よろしくね」

なお「あたしは緑川 なお。サッカー部でキャプテンやってるんだ。よろしく!」

れいか「青木 れいかといいます。この学校で生徒会長をやっています。よろしくお願いします」


木下「あ、はい、よろしく……お願いします……」

みゆき「そういえば、さっきも聞いたけど、なんでみんなここにいたの?」

やよい「えっ!? あ、そ、それは、その……」

なお「……もうごまかさなくていいよ、やよいちゃん。素直に謝ろう」


なお「実は、あたしたちみんなで、みゆきちゃんのことつけ回してたんだ。黙っててゴメン!」

みゆき「へ? わたしを? なんで??」

れいか「お恥ずかしいのですが……、みゆきさんに元気が無い原因が……その……どなたかにこ、恋をしているからではないか、と勝手に想定してしまいまして……」

みゆき「こ、恋ぃ!? わたしが!?」

あかね「つまり、それでな、みゆきをつけてたのはそれがほんまかどうか確かめたかった、っちゅーのと、あと……これを渡したかったんや」


スッ


みゆき「あ、この包み紙……。もしかして、さっきの家庭科の授業で作ったクッキー?」

あかね「せや。元気のないみゆきを応援したい、思て、みんなで一緒に作ったんや。開けてみ」

みゆき「う、うん」


ガサッ


みゆき「あ、このクッキー、何か文字が書いてある……!」

れいか「私が皆さんの気持ちをまとめて書いてみました。いかがですか?」

みゆき「い、いかが、って言われても……。えーっと……」


みゆき「"き ん イト ! ちゃ み ファ ゆ" ……。……何これ……?」


4人「……え?」

なお「あ! このクッキー割れちゃってるよ! 文字バラバラになってる!」

あかね「……あ。もしかして、あん時——」


サニー(回想)『わっ!? た、た、たたっ……!』ドテッ


あかね「うちがクッキー持っとったから、転んだ拍子に割れてもーたんや……!」

やよい「ゴ、ゴメン、みゆきちゃん! ちゃんと元に戻すから、ちょっと貸して!」

みゆき「あ、う、うん。いいけど……」


4人「えーっと、あれがああだから……、これがこうなって……」


4人「……できた!」

あかね「お待ちど、みゆき! これがほんまの、うちらからのメッセージや!」

みゆき「メッセージ……なんだろ?」


みゆき「……! これって……!」


みゆきちゃん ファイト!


なお「それがあたし達の気持ちだよ。それでちょっとでも元気になってもらえたらうれしいな」

みゆき「みんな……! ……ありがとう!」


あかね「……まぁ、恋の悩みやなかったんやから、"ファイト" も何もあらへんけどな」

あかね「さっきの話、聞いてもーたんやけど、その木下さん、っちゅー子、元気付けたかっただけなんやろ?」

みゆき「うん、そうなんだ。恋じゃなくてごめんねー、へへっ」

なお「ううん、こっちこそ勝手に勘違いしてゴメンね」

れいか「落ち込んだ方を元気付けてあげたい……、みゆきさんらしいですね」

あかね「大体、元はと言えばやよいが悪いんやで? みゆきの元気無いとこ見て "恋してるに違いない" ってハッスルなんてするからや」

やよい「た、確かにそうだけど……、みんなだって納得してたよね!? なおちゃん、れいかちゃんだって!」

なお「うっ……」

れいか「た、確かに、必要以上に浮き足立ってしまいましたが……」

やよい「あかねちゃんだって、"恋する乙女には大切にしたい気持ちがあるんや…(キリッ)" って言ったりしてたじゃない! 得意げに!」

あかね「わぁ、わぁ! 余計なこと言わんでええねん!」


みゆき「…………」

みゆき「……ぷっ」


みゆき「あはははははっ! あかねちゃん、そんなこと言ったの? おっかしーい!」


あかね「な、なんやみゆき! 笑う事ないやろ!」

みゆき「……木下さん」

木下「あ、はい……」

みゆき「ゴメンね。さっきから、お話途中になっちゃってたよね」

木下「いえ、気にしないで下さい……」

みゆき「さっき、わたしに聞いたよね? "笑顔でいられるわけって、なに?" って」

木下「はい……」

みゆき「今見てもらったのが、"わたしが笑顔でいられるわけ" だよ!」

木下「え? それってどういう……」

みゆき「(ニコッ)」


みゆき「"友達" だよ!!」

木下「とも……だち……」

みゆき「みんな、わたしに元気がないから、ってはげましてくれようとしてたんだって」


みゆき「実際、わたしは落ち込んでたわけじゃなかったけど、みんなが勘違いで頑張ってくれたのがちょっとおかしくて……とってもうれしかった」


みゆき「そんなみんなが、大好きな友達がいてくれるから、わたしは笑顔でいられるの!」


木下「…………」

みゆき「木下さんにはいない? そんな友達」

木下「…………」


木下「……わたしには……友達なんていません……。いつも一人で……」

みゆき「……それだったらさ」

みゆき「わたし達、これから友達になろうよ! わたしと、木下さん!」

木下「…………!!」

みゆき「友達と一緒にいれば、面白いことがいーっぱい起きるよ! そしたら、木下さんだって笑顔を思い出せるよ、きっと!」


木下「……わたしと……センパイが……友達……」

あかね「……みゆきだけやないで」

木下「……えっ……?」

やよい「そうだよ! わたし達だって、きっとお友達になれるよ!」

なお「二人より三人、三人より四人」

れいか「たくさんの人と仲良くなった方が、より楽しい時間を過ごせると思いますよ」

みゆき「だから、ねっ? 木下さん」


木下「…………」

みゆき「……あ。そういえば、木下さん、下の名前ってなんていうの?」

木下「え、下の名前、ですか……?」

みゆき「うん」

木下「ゆかり……。木下 ゆかり っていいます……」

みゆき「……もし友達になれるなら、"ゆかりちゃん" って呼んでもいい? ダメかな?」

木下「え!? え、えっと、それはあの、さすがに……、は、恥ずかしいので……。"木下" でお願いします……」

みゆき「……そっかぁ、ダメかぁ……。残念……」

キーンコーン カーンコーン

みゆき「あ、チャイム鳴っちゃった。お昼休みももう終わりだね」

木下「あ、あの……、それではみなさん……失礼します……!」バッ


タタタッ


みゆき「あっ、木下さーん! わたし達、よくここでお昼食べてるから、今度良かったら一緒に食べよーねーっ!」


タタタタタタタッ…


やよい「行っちゃったね……」

あかね「あの子、結局最後まで笑ってくれへんかったな」

みゆき「うん、そうだね……」

みゆき(でも、きっと笑いたくない、なんてことはないと思う。だから……)


みゆき(いつか、気持ちよく思いっきり、笑顔になってもらえたら、いいなぁ……!)


みゆき(それに、木下さんだけじゃなくて、他にも落ち込んでる人がいたら、その人たちみんなも笑顔になってもらえたらうれしいな)


みゆき(それがわたしのウルトラハッピーだから……!)



つづく

次回予告

みゆき「やよいちゃんが "学校に漫画研究部を作る" って言い出したの!」

みゆき「でも、部員を募集してもなかなか人が集まらないよー! どうしたらいいんだろ……」

みゆき「でも、やよいちゃんはめげないでガンバってる! よぉーし! わたし達も精一杯応援しちゃうんだから!」


みゆき「次回、『スマイルプリキュア レインボー!』 "やよいがんばる! 作ろう、漫画研究部!"」


みゆき「みんな笑顔でウルトラハッピー!」

今回はここまでです!
お読みいただいた方、ありがとうございました。

いよいよ花見シーズン到来ですね。
ですが、"春の悪魔" こと花粉のせいで常時ハナミズターレ状態の自分にとっては地獄のようなイベントです。。
皆様には代わりに楽しんでいただければ、と思います。。

よろしければ次回もまたよろしくお願いします!


第1話 >>3 から
第2話 >>75 から
第3話 >>166 から
第4話 >>252 から
第5話 >>339 から
第6話 >>422 から
第7話 >>517 から

乙でした 花粉はつらいね…

えーと…原作でのやよいの「家庭科部・漫画研究部掛け持ち」設定は、ボツ設定だったんだっけ?

アニメでは描写のなかったみゆきの「チアリーディング部所属」設定は、アニメではなく児童向けの着ぐるみショーで
「バレーの試合を明日に控えて緊張するあかねを、みゆき達が応援」って形で使われてたけど…



花粉じゃないけどこっちも鼻水がつらい……気温差め。

今回のゲストは木下ゆかりちゃんね。ふむ……


シリアス路線か
面白くなってきたな

乙です。

めちゃくちゃ好評ですね。僕達もこのSSは好きですので応援しています。

ゆかり→紫


ほう・・・



そういや3年に進級してたな

つまり5gogoみたいにサザエさん時空に突入してるってわけじゃないんだな

 こんばんわ。514です。正直不安でした。感想を書いた後、中々更新が無かったので「もしかして、創作意欲を奪ってしまったかな?」と、心配になりました。でも、いつも通りに更新されていたのでホッとしましたし、自分の意見を前向きに受け止めてくれたのは嬉しかったです。 こんなアマチュア編集者の言葉で宜しければこれからもどんどん気になったことを素直に書いていこうと思っています。これからもどうぞ宜しくお願い致します。
 さて、今回の感想ですがストーリの流れは悪くありません。起承転結がきちんとされていて良かったです。リアルな中学生がかけていたと思います。特に今回のゲストキャラの子が自分(少し異なる)と似ていて少し感情移入しながら読みました。
 それから、読んでいて「一人のキャラクターのセリフは一行にまとめたほうがより読みやすいのではないか?」「561行目の場面はこういう感じのほうが良いのではないか?」「569行目のセリフはこんな感じのほうがスッキリするのではないか?」と、思いました。


例1 
  木下「(モグモグ)・・・」
  
  みゆき「やっと見つけた!」
  
  木下「わっ!?」
  
  みゆき「木下さん、だよね?」
  
  木下「・・・な、なんですか、急に・・・あ・・・昨日、ゴミ捨ての時に会ったセンパイ・・・」

例2
  木下「・・・でも・・・笑うってどうしたらいいんでしたっけ・・・」



最後に、もし、嫌でなかったら名前の欄にも書きましたがこれからあなたのことを『レインボー』さんとお呼びしても宜しいでしょうか?次回も楽しみにしています。それでは、失礼致します。

トリップのテストですよ

>> 605

> えーと…原作でのやよいの「家庭科部・漫画研究部掛け持ち」設定は、ボツ設定だったんだっけ?

ありましたっけ!?
"家庭科部所属" という初期設定はどこかで見た気がしましたが、
"漫画研究部所属" は知りませんでした。。

やよいちゃんの部活所属設定はなかったことにさせてください。
本編で描写無かったし。。

ついでに、みゆきちゃんのチア部設定、れいかさんの弓道部・美術部掛け持ち設定も無しでお願いします。

>>612

またもやのご意見、ありがとうございます!
書き方については完全に我流なので、色々アレなところもあると思います。。
何が気づいたことがあれば、随時ご指摘してもらえるとありがたいです。

あと、レスが遅れたことについてはスミマセンでした。。
基本的に、次の話が完成するまではレス見ないようにしているんです。
いただいたレスへのご返事が毎回更新直前になっているのはそのためです。

なので、ご意見の反映は少し遅れるかもしれませんが、
参考にさせていただいているので、今後ともよろしくお願いします!


それと、せっかく名前つけてもらったので、
今回から "レインボー" を名乗らせていただきます!

引き続きよろしくです!



『スマイルプリキュア レインボー!』

このあとすぐ!

〜 七色出版("週刊スマイル" 出版社) 待合室 〜

やよい「梅沢さん、この間お話してた新しい作品を描いてきました!」

やよい担当編集・梅沢「おっ、もうできたのかい? "ミラクルピース" の新エピソードだったね。見せてもらうよ」

やよい「はい!」


梅沢編集「…………」ペラッ


やよい「…………」ドキドキ

梅沢編集「……うん。ストーリーはいい感じだね。力を合わせる主人公達の友情が良く描けてると思うよ」

やよい「……! あっ、ありがとうございます!」


梅沢編集「……ただ、画力が少し伸び悩んでる感じがするね」

やよい「えっ……。画力、ですか……?」

梅沢編集「例えばこの、主人公がみんなの想いを受けて単身敵のボスに戦いを挑むシーン。もう少し迫力が欲しいところなんだよね。大事なところだからさ」

やよい「あ、言われてみると……」


梅沢編集「練習してる、っていうのは伝わるよ。確実にうまくなってはいるし」

梅沢編集「ただ、最初に投稿してもらった時から比べると、段々画力の伸びに勢いが無くなって来てるように思えるんだよね」

梅沢編集「壁にぶつかってる感じ、するね」

やよい「壁……」

梅沢編集「黄瀬さん、一人でずっと描いてるって言ったよね?」

やよい「あ、はい。漫画を描く時は家で一人で描いてます」

梅沢編集「だからかもしれないな……。一人だと、練習しても自分では上達具合がわかりづらいんだよね」

梅沢編集「周りに漫画描く友達や、知り合いの人がいればなあ。日ごろからお互いに見せ合ったりできれば、成長も早くなるかと思うんだけど」


梅沢編集「……あ、そうだ! 黄瀬さん、学校に漫画研究部とかってないの? そういうのがあれば、刺激を受けるにはいい環境なんだけどな」

やよい「漫画研究部、ですか? そういうのは、わたしの学校にはないです……」

梅沢編集「んー、そっか……。困ったね」

やよい「……できるだけ、一人で練習ガンバってみます……」

梅沢編集「それしかないか。持ち込みの頻度、上げてもいいよ。画力に不安があったら、持ってきてもらえばできるだけアドバイスするから」

やよい「はい、ありがとうございます……」

〜 七色出版 前 〜

やよい「…………」


やよい(……伸び悩んでる、かぁ……)

やよい(誰かと見せ合ったりできればうまくなる、っていう梅沢さんの話はわかるんだけど、そんな人、あんまりいないし……)

やよい(やっぱり、一人で描き続けるのはムリがあるのかなぁ……)


やよい(……"漫画研究部" か。そういうのがあったら、誰かと楽しく練習できて、もっとうまくなれるかな……)




スマイルプリキュア レインボー!

第8話「やよいがんばる! 作ろう、漫画研究部!」



〜 昼休み 七色ヶ丘中学校 中庭 〜

みゆき・あかね・なお・れいか「漫画研究部!?」

やよい「うん、そういうのがあったらいいな、って思って」

やよい「今、学校にはそういうのないから、自分で作ってみたいの」


キャンディ「マンガケンキュウブ? って、何クル?」

オニニン「漫画の研究、ってくらいだから、漫画ずっと読んでるじゃないかオニ? 楽しそうオニ!」

やよい「ち、違うよ! 漫画の描き方とかを練習して、自分で漫画を描く人が集まる部活なの!」

ポップ「なるほど。やよい殿はそこで、同じく漫画を描く人と腕を磨きあいたいのでござるな」

やよい「うん」

なお「……でも、"部活を作る" なんて、そうカンタンにできるのかな? れいか、どう?」

れいか「できますよ」ニコッ

やよい「えっ!? ホント!?」

れいか「この学校では、生徒の色んな可能性を育てるために、生徒による部活の新設を可能な限り許可しています」

れいか「もちろん、いくつかの条件を満たす必要はありますが」

あかね「へーっ、案外カンタンにできるんやな」

やよい「条件ってなに? 教えて、れいかちゃん!」

れいか「はい、それでは。こほん」

れいか「まずは "顧問の先生がいること"」


れいか「あとは、"学生として問題のない内容であること"」


れいか「最後に、"部員が最低 5人いること"」


れいか「この 3つですね」

みゆき・あかね・なお・やよい「へぇーっ」

れいか「これらの条件を満たせるかどうか、一つ一つ考えていきましょう」

れいか「最初に顧問の先生ですが……」

やよい「いい先生いるかなぁ?」


あかね「……ふっ、ふっふっふ」

みゆき「あ、あかねちゃん……!? どうしたの、急に」

なお「な、なんか悪そうな顔してるよ?」


あかね「漫画研究部の顧問の先生なら、うってつけの人がおんで! うち、ええこと知っとるんやー。ふふふ」

やよい「そ、その "ふふふ" って笑いが気になるけど……。どの先生なの?」

あかね「これから行ってみよか。昼休みならちょうどええんやないかな」


4人「…………?」


みゆき「"昼休みならちょうどいい" ってどういうことだろ?」

なお「さぁ……」

〜 七色ヶ丘中学校 3-1教室 〜

3-1 生徒・野川 けんじ「…………」コソコソ


3-1 生徒・野川「……ふふっ、くくく……!」


3-1 担任・佐々木 なみえ先生「はーい、そこまで」ヒョイッ

3-1 生徒・野川「あっ! さ、佐々木先生……!」

3-1 担任・佐々木先生「野川くん、ダメじゃない。学校に漫画持ってきちゃ。没収です」

3-1 生徒・野川「せんせーい……。もう読まないから返してよー……!」

3-1 担任・佐々木先生「ダ・メ・で・す。放課後になったら返してあげるから、取りにいらっしゃい。それまでは預かります」

3-1 生徒・野川「そ、そんなぁ……!」

〜 七色ヶ丘中学校 教室棟 3F 物陰 〜

3-1 担任・佐々木先生「…………(キョロキョロ)」

3-1 担任・佐々木先生(……誰も、いないわね)


3-1 担任・佐々木先生「……ふふっ、くくく……!」ペラッ

3-1 担任・佐々木先生(やっぱり『足タコナンジャ』は面白いわぁ……! 好きなのよねー、コレ)

3-1 担任・佐々木先生(生徒から没収した漫画読むなんてホントはいけないけど、ちょっとだけなら——)


あかね「佐々木センセ。何してるんですかぁー?」ニヤニヤ

3-1 担任・佐々木先生「っ!! ひ、日野さん!? 青木さん、緑川さん、黄瀬さん、星空さんまで! い、いつの間に!?」

3-1 担任・佐々木先生「な、何って、さっき生徒から没収した漫画の内容を確認してたの! 生徒がどんなものに興味持つか、教師としては知っておかないと!」

あかね「センセ、ごまかしたりしたらあかんのと違います?」

あかね「うち、知ってますよー。この前、見てもーたんです。昼休みにうちから没収した漫画、センセが陰で読んどるの」

3-1 担任・佐々木先生「……!」

あかね「いつも "漫画持ってきたらあかん" っちゅーといてそれじゃ、示しがつかんのやないですか?」

3-1 担任・佐々木先生「……うっ、うぅ……!」


3-1 担任・佐々木先生「ご、ごめんなさい! 出来心なの! 私、実は漫画が好きで……つい……。この事はみんなに内緒にして!」


あかね「だいじょーぶですよ、センセ。誰にも言ったりしませんて」

あかね「ただ、ちょーっとお願い、聞いてもらえません?」


3-1 担任・佐々木先生「えっ?」

あかね「——っちゅーわけで、漫画研究部の顧問の先生ゲットやで!」

みゆき「よかったね。佐々木先生が顧問引き受けてくれて!」

やよい「なんかおどかしたみたいになっちゃったのが気になるけど……」

あかね「ちゃうって! 人聞きの悪いこと言わんといてや! うちが佐々木センセに頼みに来たのは、漫画好きやって知っとったからやで? せやからノリノリで引き受けてくれたやん」


あかね「それに、さっきも言うたけど、さすがに没収した漫画読むのはあかんと思うでぇ、うちは。これで止めてもらえるならええことやないの」

なお「……あかねさぁ、偉そうに言ってるけど、さっき "うちから没収した漫画" って言ってたよね」

なお「自分だって学校に漫画持ってきてたんじゃない。よくそういうこと言えるね……」

あかね「…………あ」

あかね(しもた……。余計なことゆーてもた……)

れいか「あかねさん……。確かに佐々木先生の行いはよろしくないと思いますが、あかねさんもほめられたものでは……」


あかね「……あ、あははは! ま、まぁ、顧問の先生見つかったから良かったやないの! さ、次行こ、次!」


タタタタタタ…


みゆき「あかねちゃん、ごまかした……」

なお「まったく……」

〜 七色ヶ丘中学校 中庭 〜

やよい「れいかちゃん、他の条件ってなんだっけ?」

れいか「他は、"学生として問題のない内容であること"、"部員が最低 5人いること" ですね」

れいか「"学生として問題のない内容であること" という条件は、漫画研究部として真面目に活動していれば問題ないでしょう」


やよい「じゃあ、後は……」

れいか「はい。"部員が最低 5人いること"。この条件のみですね」

なお「やよいちゃん以外にあと4人集めないといけないね。やよいちゃん、一緒に部に入ってくれそうな人に心当たりないの?」

やよい「ふふふっ。実は、誘おうと思ってた人がいるんだぁ」

やよい「漫画描くの上手な人だから、頼んだらきっと OK してくれると思うの!」

みゆき「へーっ、そんな人がいるんだ!」

あかね「よっしゃ! ほんなら早速行ってみよか!」

〜 七色ヶ丘中学校 3-3教室 〜

3-3 生徒・美川 すず「……ごめんなさい、黄瀬さん。わたし、漫画研究部には入れないの……」

やよい「へっ……? そ、そうなの……?」


みゆき「あれ? あの子って確か……」

あかね「そういや、やよいが校内美化ポスター描いた時、一緒にポスター描いとったライバルの一人やな」

みゆき「そうそう! 確か、少女漫画を描くのがすっごい上手、って言ってたような……」

あかね「なるほどなー。確かに漫研にはピッタリやけど——」


やよい「どっ、どうして!? わたし、遠くで見てるだけだったけど、知ってるよ! 美川さん、漫画描くのが大好きだって!」

やよい「"漫画研究部を作ろう" って考えた時も、美川さんと一緒に漫画が描けたらいいな、って思ってたのに……」

美川「ごめんなさい……」

美川「実は、わたし、"中学3年になったら漫画はやめて、受験勉強に専念する" って親と約束してたの……」

美川「今も学校が終わったら塾に通ってて……。漫画を描く時間はないの……」

美川「本当に、ごめんなさい……」


やよい「あ、ううん! 全然だいじょうぶだよ? 勉強も大事だもんね……。残念だけど、あきらめるよ……。こっちこそ、ムリに誘おうとしてゴメンね……」

やよい「それじゃあ、勉強、ガンバってね!」

美川「うん……」


ガラッ バタン


美川(…………)


美川(漫画研究部……かぁ……)

〜 七色ヶ丘中学校 教室棟 3F 廊下 〜

なお「今の美川さん、って子、本命だったんだよね? アテが外れちゃったね……。どうする、やよいちゃん?」

やよい「……とりあえず、もう一人入ってくれるかもしれない人がいるから、その人のところに行ってみるよ」

〜 七色ヶ丘中学校 3-2教室 〜

やよい「——と、いうわけで、漫画研究部っていうのを作ろうと思うんだけど、いっしょにどうかな?」

3-2 生徒・成島 ゆういち「……漫研かぁ」


あかね「あの男子も確か、校内美化ポスターの時のライバルやな」

みゆき「あの人は確か、モデルの女の子をすごくカワイくかけるって評判なんだっけ」

れいか「ですが、漫画を描くというのとは少し違う感じですね。どうでしょうか……」

成島「ああ、いいよ。漫研、ぼくも入るよ」

やよい「えっ!? ホントに!?」

成島「ぼくが女の子をキレイに描くのが好きっていうのは知ってると思うけど、最近限界を感じててね……。ぜひ、漫画の技法を学んでみたいと思ってたんだ!」

成島「その練習を学校でさせてもらえるなら大歓迎さ!」

成島「だってぼくの使命は……、全ての女の子をキレイに描くことだからね……!」

やよい「やったぁ! ありがとう! いっしょにガンバろうね!」

成島「こちらこそよろしく!」


あかね「あの成島って男子、あんなキャラやったんか……」

なお「世の中、いろんな人がいるもんだね……」

〜 七色ヶ丘中学校 教室棟 3F 廊下 〜

れいか「さて、これで部員はやよいさん・成島さんの二人になりましたね」

みゆき「まだ二人かぁ……。あと三人も必要なんだよね? 先は長いなぁ……」

あかね「他にはもう誘う人おらへんの?」

やよい「……実はもうネタ切れ……なの」

なお「じゃあ、普通の生徒から募集するしかなさそうだね」

みゆき「でも、全然知らない人にお願いするって、どうしたらいいのかなぁ……?」


みゆき・あかね・やよい・なお「うぅーーーーん……」

れいか「……それでしたら、私にいい考えがあります」

やよい「えっ!? ホント、れいかちゃん!」

れいか「はい! 私に任せてください」

なお「さっすが、れいか! いざって時に頼りになるね! ……で、何するの?」

れいか「ええ、それは——」

〜 七色ヶ丘中学校 教室棟 前 〜

2年男子A「あれ? あそこにいるの、生徒会長じゃないか?」

2年女子A「ホントだ。他にも何人か人が集まってるね。何か始めるのかな?」


やよい「あ、あの、れいかちゃん、これは……」

れいか「人に呼びかけるには、直接語りかける事が一番。つまり、演説です!」

やよい「え、演説……!?」

れいか「これから私が人目を集めますので、やよいさんはその後に部員募集の呼びかけをお願いします」

やよい「れ、れいかちゃん! ちょ、ちょっと待っ——」

れいか「ご通行中のみなさま、こんにちは! 生徒会長の青木 れいかです!」

れいか「今日は、私の友人である、こちらの 3年生、黄瀬 やよいさんから皆様にお願いがありまして、こうして呼びかけさせていただきました!」

れいか「よろしければ、ぜひお時間をいただければと思います!」


生徒達「なんだなんだ?」


ザワ ザワ ザワ


れいか「……大分人も集まってきたようですね。さ、やよいさん。どうぞ」

やよい「ど、どうぞ、って言われても……!」


生徒達「じーーーーーっ……」


やよい「…………」


生徒達「じーーーーーーーーーっ……」


やよい「…………っ!」

やよい「……ごめんなさい! やっぱりムリだよぉっ!」ダッ

れいか「あ、や、やよいさん!? どちらに!?」


タタタタタタッ…


みゆき「やよいちゃん、走ってっちゃった……」

れいか「や、やよいさん! やよいさぁーーんっ!」

〜 七色ヶ丘中学校 中庭 〜

あかね「れいか……。やよい、人見知りするの忘れとったやろ……。あーんな大勢の前でしゃべるのはちっとハードル高すぎんで」

やよい「人いっぱいいるの見たら、声出なくなっちゃった……。……れいかちゃん、ゴメンね……。せっかく手伝ってくれたのに……」

れいか「いえ、私こそ無神経だったかもしれません……。つらい想いをさせてしまい、すみませんでした……」


なお「ふっ……、それじゃあ、次はあたしの出番だね!」

あかね「おっ、なんや、なお。ええ考えあるん?」

なお「大勢の人に話すのがダメなら、一人ひとり話せばいいんじゃないかな!」

みゆき「一人ひとり、って言うと?」

なお「ズバリ、手当たり次第、直接勧誘! 直球勝負だよ!」


4人「え……?」


なお「まあ、見ててよ! ちょっと声かけてくるね!」


タタタタタタッ…


あかね「……それ、"考え" って言うん?」

2年女子A「——でさー、その子がね——」


なお「あ、そこのあなた達、ちょっとお話したいことがあるんだけど、いいかな?」


2年女子B「えっ? どちら様で……って!」

2年女子A「うそぉっ!? 女子サッカー部の緑川キャプテン!?」

2年女子B「女子達のあこがれのセンパイ No.1! やだ、声かけられちゃった……どうしよう……!」

なお「あたしのこと知っててくれたんだ。ありがと。それで、実はお願いしたいことがあるんだけど——」


2年女子A「おいしいケーキ屋さんの場所ですか!? 知ってますよ! センパイ、ケーキ大好きなんですよね!」

2年女子B「えっ、そうなんですか!? それなら、わたしもオススメのところ知ってます! 今度一緒に行きませんか!?」


なお「え!? ち、違うよ! いや、ケーキは好きだけど、そうじゃなくて——」


2年女子A「それじゃあ、ドーナッツ屋さんですか!? あぁー、それは知らないなぁ……! ねぇ、誰か知らなかったっけ!?」

2年女子B「マキとミッコだったら詳しいよ! あたし、呼んでくるね!」

2年女子A「そういうことなんで、センパイ! あっちに行ってゆっくりしましょうよ! 色々お話聞かせてください!」


なお「ちょ、ちょっと! 違うんだってば! あたしがお願いしたいのは……、あぁ! 引っ張らないでよーっ!」


4人「…………」


あかね「……何やっとんねん……」

〜 30分後 七色ヶ丘中学校 中庭 〜

なお「ぜぇっ……ぜぇっ……。ひ、ひどい目にあった……!」

あかね「……で? 結局勧誘はできたん?」

なお「……ゴメン……。あの後、ケーキ屋やらドーナッツ屋やらの話をずーっとされて、言い出せなかった……」

なお「……でも、すごくおいしいみたいなんだよねー……。今度行ってみたいなぁ……」ジュルリ

あかね「何ゆーとんねん……。目的、完全に忘れとるやん」


みゆき「でも、そもそも、一人ずつお話ししていって、漫画研究部に入りたい人をうまく見つけられるものなのかなぁ……」

あかね「せやなぁ。その人が漫画描きたいかどうかは話してみるまでわからへんし」

れいか「ちょっと効率が悪いんじゃないかしら……」

なお「うっ、れいかまで……」

マジョリン「まったく、なおはいっつもそうマジョ! たまには、動く前にもう少し考えるマジョ!」

なお「くっ……、返す言葉がない……」


やよい「ゴ、ゴメン、なおちゃん。他の方法考えてみるよ」

なお「あ、こ、こっちこそゴメンね、やよいちゃん! 全然役に立てなくて……」

あかね「あ、そや! ええこと閃いたで!」

みゆき「えっ、また!? 今日のあかねちゃんすごいね!」

なお「さっきの佐々木先生の時といい、あかね、珍しくさえてるね!」

あかね「"珍しい" は余計や!」

やよい「それでそれで? いいこと、って何?」

あかね「ふふーん、それはやな……」


あかね「ビラ配りや!」

4人「ビラ?」


あかね「せや。ウチのお好み焼き屋でも時々やっとんで。なんぼ味が良くても、知ってもらわんことにはしゃーないからな」

あかね「呼びかけやと最後まで話聞いてもらわなあかんけど、ビラやったら、受け取ってもらえれば言いたいこと全部伝わるし、ええんやないかな」

みゆき「あっ! いいこと考えたぁっ!」

みゆき「そしたらさ! そのビラに、やよいちゃんの絵を描いたらいいんじゃないかな!?」

みゆき「"こんな絵が描けるようになりますよ!" って書けば興味持ってくれるかも!」

なお「なるほど、それいいね!」

れいか「やよいさんの熱意を込めて書けば、きっと素晴らしい宣伝になりますよ!」


やよい「……ビラかぁ……いいかも! 今日、家に帰ったら作ってみるよ!」

みゆき「できたら、わたし達も配るの手伝うよ! みんなでガンバろう!」

やよい「うん! みんな、ありがとう!」

〜 黄瀬家 やよい自室 〜

やよい「——できたぁっ!」

オニニン「お、ビラできたオニ? ちょっと見せてみるオニ」


オニニン「"あなただけのヒーローを作りませんか? 漫画研究部 部員募集中!" ……」


オニニン「いい感じオニ! 一緒に書いてあるヒーローもカッコいいオニ! やよい、ガンバったオニ!」

やよい「ありがとう、オニニン!」


やよい「……でも、ガンバるのはこれからだよ! このビラをいっぱい配って、漫画研究部を作らなきゃ!」

オニニン「その意気オニ! やよい、応援してるオニ!」


やよい「よぉーっし、ガンバるぞーっ!」

〜 翌日 昼休み 七色ヶ丘中学校 3-1教室 〜

やよい「これが昨日話してたビラなんだけど……どうかな?」

4人「おぉーっ!」


みゆき「いい! すっごくいいよ、これ!」

れいか「これでしたらたくさんの方が興味を持ってくれそうですね!」

あかね「しっかし、さすがやな、やよい。一晩でこんなスゴイもん作れるなんて。うちには逆立ちしてもムリやわ……」

なお「じゃあ、あたし達はこれを配ればいいのかな?」

やよい「うん! よろしくね!」

〜 七色ヶ丘中学校 教室棟 前 〜

みゆき「漫画研究部に入りませんかー!?」

あかね「漫研でーす! よろしゅう頼んますー!」

やよい「よろしくお願いしまーす!」

なお「やよいちゃん! ちょっとちょっと!」

やよい「? どうしたの、なおちゃん? ……あっ……! もしかして、その子……!」

なお「うんっ! 漫画研究部に入りたいんだってさ!」

1年男子・河村 ゆうや「ぼく、小学校のころにも漫画クラブに入ってて。色々教えてもらえるならぜひ入りたいです! よろしくお願いします!」

やよい「……! うん! こちらこそ、よろしく!」

れいか「やよいさん。こちらもです」

やよい「えっ? れいかちゃんも!?」

れいか「はい。入部希望だそうです。とても情熱的な方ですよ」

2年女子・稲上 りょうこ「わっ、わたし! ずーっと漫画家にあこがれてて……! このチラシの "自分だけのヒーローを作ろう" っていう言葉に感銘を受けました! ぜひ入部させてくださいっ!」

やよい「もちろん! 一緒に漫画家目指して頑張ろうね!」

あかね「なんや、もう二人も集まったん!?」

みゆき「あと一人で部活ができるんだよね!? この調子ならあっという間に集まっちゃうよっ!」

なお「もっと人が来て、五人どころの騒ぎじゃなくなっちゃったりしてね!」

れいか「そうなるよう、たくさんビラを配りましょう!」

やよい「うん! 目標まであと一人……。よぉーし! ガンバるよっ!」

〜 数十分後 〜

キーンコーン カーンコーン


なお「あ、チャイム鳴っちゃったね。お昼休みも終わりかぁ……」

れいか「今回はここまでですね」

あかね「でも二人も集まったんやから上々やん! この分ならラクショーやで!」

やよい「そうだね! 放課後もやればすぐに集まりそう! よろしくね、みんな!」

みゆき「うんっ、もちろん! ガンバっちゃうんだからーっ!」


なお「あっ……。ゴメン。あたし、放課後はダメ、かな……。部活あるし……」

れいか「やよいさん、スミマセン。私も生徒会の会議があるので、放課後にお手伝いするのは難しいかと……」

やよい「あ、そうだよね。二人ともキャプテンと生徒会長さんだもんね。だいじょうぶだよ! わたしたちだけでもガンバれるから!」

なお「ゴメンね! 明日のお昼休みには手伝うから!」

やよい「ううん、気にしないで! 今日は手伝ってくれてありがとう!」

〜 放課後 七色ヶ丘中学校 教室棟 前 〜

あかね「さぁーて! 今日うちは部活休みやから手伝ったるわ! このチャンスにどんどんビラ配るでぇ!」

みゆき・やよい「おぉーっ!」


みゆき「漫画研究部、部員募集中でーす!」

あかね「カッコええ絵やカワイイ絵が描けるようになりますよーっ!」

やよい「一緒に楽しく漫画を描きませんかーっ!?」

スタスタスタ


美川(あ、黄瀬さん。それに、星空さんと日野さん。漫画研究部の募集、やってるんだ……)

美川(……どのくらい集まったんだろう……。漫画描きたい人って、結構いるのかな……)


美川(…………)

美川(……わたし、何考えてるんだろう。もう漫画は描けないんだから、わたしには関係ないよ、ね……)


スタスタスタ…

〜 1時間後 〜

あかね「結構ねばったけど……、収穫なしやったなぁ……」

みゆき「うん、そうだね……。ビラは結構受け取ってもらえるんだけど、入部します! って人はいなかったね……」

やよい「でも、もうちょっとだもん! ガンバるよ! みゆきちゃん、あかねちゃん、明日もよろしくね!」

みゆき「おーっ! ……って、あれ? あかねちゃん、どしたの?」

あかね「……スマン、やよい! 明日以降はちょっとムリやねん……。バレー部休みなんは週一回だけなんや……」

やよい「えっ、そう、なんだ……」

みゆき「そっかぁ……。じゃあしょうがないね! 二人でガンバろう、やよいちゃん!」

やよい「……うん、そうだね!」

〜 翌日・放課後 七色ヶ丘中学校 教室棟 前 〜

みゆき「……ふぇー……。今日も人来てくれなかったねー……。昼休みもダメだったし……。結構ガンバってるんだけどなぁ……」

やよい「うん……」


やよい「でも、みゆきちゃんが手伝ってくれて、ホントにうれしいよ! 一人だったらタイヘンだし、……心細いもん……」

みゆき「あったり前だよ! やよいちゃん、ガンバってるもん! わたしもガンバって応援するからさ、ファイト! でいこうよ!」

やよい「うんっ! ありがとう、みゆきちゃん!」

〜 翌日・放課後 七色ヶ丘中学校 3-1教室 〜

みゆき「やよいちゃん、ゴメン! 今日、お母さんにどうしてもお買い物手伝ってほしい、って頼まれちゃって……、今日はビラ配り手伝えないの……」

やよい「えっ……」

みゆき「ホントにゴメンね! 明日はちゃんとお手伝いするから!」

やよい「……あ、ううん! 全然気にしないで! それより、お母さんのお手伝い、ガンバってね!」

みゆき「うん、ありがとう! あっ、じゃあわたし行かなきゃ! また明日ね!」

やよい「うん、また、明日……」


ガラッ バタン

やよい「…………」ポツン


ヒョコッ


オニニン「やよい……。どうするオニ……? 一人になっちゃったオニ……」

やよい「……やるよ、一人でも。だって、わたしのやりたいことのため、だもん……」

やよい「一人でも、ガンバらなきゃ……!」

〜 放課後 七色ヶ丘中学校 教室棟 前 〜

やよい「……漫画研究部ですー……。部員募集中でーす……」

やよい「……よろしくお願いしまーす……」


やよい(……どうしたんだろう……、声が出ないよ……。みんながいる時はあんなに心強かったのに……。一人だと、すごく、心細い……)

やよい(……これじゃあ、入部希望の人なんて集まってくれないよ……)


やよい(……そうしたら、漫画研究部も作れない……。漫画も、うまくならない……)

やよい(……やっぱり、わたし一人じゃムリなのかな……)


やよい(…………)

やよい(……でも、わたしのことなんだもん……。わたしがガンバらないと……!)


やよい「ま、漫画研究部ですっ! よろしくお願いしまーす!」

スタスタスタ


美川(黄瀬さん、今日はひとりなんだ……。ひとりだとタイヘンそう)

美川(あんなにガンバれるなんて、ホントに漫画が好きなんだなぁ……)


美川(……わたし、また漫画のこと考えちゃってる。もう、描けないのに……)

美川(塾、行かなきゃ……)


スタスタスタ…

〜 ギャラリー・D 〜

シアンナ「ありがとうございました。またのご来店をお待ちしております」


バタン


シアンナ(リアルランドで身分を隠すためだけに画業を始めたのに……。結構売れるものね)


ビリーズ「なあ、シアンナぁ。なんでオレ、客来る度にいちいち隠れなきゃなんねーんだよ?」

シアンナ「正直に言って邪魔なのよ。あなたに接客ができるとは思えないわ」

ビリーズ「ああ、ハイハイ、そーですか。どーせオレはバカですよ」


セルリア「……私……は……? ……私も……隠れないと……駄目……なの……?」

シアンナ「あなたは仕事はできるかもしれないけど容姿に難があるわ」

ビリーズ「だはっ! そりゃそーだ! 髪の毛バッサバサの上にそのギョロ目だもんな! 客が逃げるわ! だーははははっ!」

セルリア「…………(ギリッ)」


ガンッ


ビリーズ「痛ぇっ! 足……踏むんじゃ……ねーよ……っ!」

セルリア「……お前……腹立つ……!」


シアンナ「全く。ケンカはそこまでにしなさい」

シアンナ「セルリア。ギャラリーの仕事ができないからって気にしなくていいわ。元々本来の仕事ではないんだから」

シアンナ「私達の本来の仕事は別にあり、あなたにはそれができる。だから、それでいいのよ」


セルリア「……シアンナ……」


セルリア(…………)

シアンナ「さて、それでは私達の本来の仕事、濁った "心の絵の具" の採取について考えましょう」

シアンナ「まず考えるべきは、最大の障害である "プリキュア"。彼女らがいる限り、私達の活動は大幅に制限されてしまうわ」

シアンナ「だから、彼女らをどうすべきか、しっかりと考えてから行動を取るべきだと——」


セルリア「……私……行ってくる……」


シアンナ「——セルリア? 待ちなさい、話はまだ途中——」

セルリア「行ってくる」シュバッ


シアンナ「…………」

ビリーズ「……行っちまったな」

シアンナ「……しかたないわ。私達だけで話し合いましょう」

ビリーズ「げ。作戦とか、そういうの、オレ苦手なんだよなぁー……。テキトーでいいじゃねーか」

シアンナ「……さっきの私の話、聞いてたの? 呆れて物も言えないわ」


シアンナ(……ビリーズが馬鹿なのはわかりきったことだけど……。あの子はあの子で、何を考えてるのかつかめないわね……)

シアンナ(やれやれ……、二人とも、扱いづらいったらないわ……)

〜 七色ヶ丘市 学習塾前 〜

塾生徒の女子「美川さん、さよならー」

美川「あ、うん。また明日ね」


美川(塾終わったから早く帰ろう。帰って……復習、しなきゃ……)


トボトボトボ…

〜 七色ヶ丘市 学習塾近くの物陰 〜

セルリア「……あの子供……活気……無い……。"心の絵の具" ……濁ってそう……」

セルリア「……人は……少ないけど……仕事……しよう……」


セルリア(……濁った絵の具を……確実に……持って帰る……。……それが……私に……できる事……だから……)

バッ


セルリア「……こんにちは……」

美川「!? きゃあっ!?」ドテッ


ガシャッ バサバサッ


美川「あ……、カバンの中身が……! あ、あなた、誰ですか……!? わたしに、何の用ですか……!?」

セルリア「……何も……知らなくて……いい……。……こっちで……勝手に……やるから……」


セルリア「……画題は……この子供の……カバンに入ってた……これにしよう……」


セルリア「……闇の絵の具よ……闇の絵筆よ……。キャンバスに……絶望を描き出せ……」


シュババババッ


セルリア「……現れよ……アキラメーナ……」


ズズズズズズ…


アキラメーナ(雲形定規型)「アキラメーナァッ!」

セルリア「……アキラメーナ……、心……吸って……」

アキラメーナ達(雲形定規型)「アキラメーナァッ!」


ズワァァァァァッ…


美川「えっ、何……。力が、抜けて……」ガクッ


ポチョン ポチョン


セルリア「……やっぱり……濁ってた……。……狙い通り……!」ニヤァッ

〜 七色ヶ丘市 黄瀬家 帰路 〜

トボトボトボ…


オニニン「ふぅ、カバンの中はキュウクツオニ」ヒョコッ

オニニン「……結局、今日もダメだったオニ」

やよい「うん……」

オニニン「やよい、元気出すオニ! 明日はきっとうまくいくオニ!」

やよい「……ホントに……そう思う……?」

オニニン「……やよい?」

やよい「オニニン、わたしね、漫画のことだけは、何があっても自分でやろう、ガンバろう、って思ってやってきたの……」

やよい「でも、気がついたらわたし、またみんなに頼っちゃってた……」

オニニン「それでいいオニ! 困ったら助け合うのがお前達オニ?」

やよい「……うん……。みんなが助けてくれれば、わたし、何でもできそうな気がするよ」


やよい「でも……、今日、一人になった時、すごく心細かったの……。みんながいなくて、とっても不安な気持ちになっちゃって……」

やよい「それでもガンバってみたけど、その心の中の不安な気持ちが消えないの……」

やよい「わたし一人じゃ部活も作れないんじゃないか、漫画もうまくならないんじゃないか」


やよい「このまま、一人じゃ何もできない人になっちゃうんじゃないか、って……」

やよい「ねぇ、オニニン。わたし、本当にできるのかな……。部活を作る事も。漫画家になることも……」

やよい「何だか、すごく不安で……どうしたらいいのか……わからないよ……!」


オニニン「やよい……」

オニニン「——? や、やよい! あれを見るオニ!」

やよい「えっ……?」


美川「————」


やよい「美川さんっ! 倒れちゃってる……!?」

オニニン「それにアイツは……セルリアってヤツオニ!」


セルリア「……私を……知ってる……? ……ということは……プリキュア……?」


オニニン「……やよい、不安な気持ちはひとまず置いておくオニ。今は——」

やよい「……うん。美川さんを助けないと!」

オニニン「デコル・チェーンジ!」

パチンッ!

レディ!

やよい「プリキュア! スマイルチャージ!!」

ゴー!

ゴーゴー! レッツゴー、ピース!!


ピース「ぴかぴかぴかりん♪ じゃん・けん・ポン!(グー) キュアピース!!」


ピース「待ってて美川さん……! すぐ助けてあげるからね!」

セルリア「……やっぱり……プリキュア……」

セルリア「……アキラメーナ……やって……」

アキラメーナ(雲形定規型)「アキラメーナァッ!」


バッ グルグルグル!


ピース「えっ、何!?」

オニニン(デコル)「空に浮いてグルグル回りだしたオニ!」


アキラメーナ(雲形定規型)「アキラメーナァッ!」ブゥゥゥゥン!


ピース「と、飛んできた! ひゃぁっ!」バッ

オニニン(デコル)「ナイスオニ、ピース! うまく避けられたオニ!」


セルリア「……でも……一度かわしただけじゃ……終わらない……」


アキラメーナ(雲形定規型)「アキラメーナァッ!」ブゥゥゥゥン!


オニニン(デコル)「ピース、後ろオニ! 戻ってきたオニ!」

ピース「えっ!?」


ドカァッ!


ピース「きゃあぁぁっ!」ドシャァッ

オニニン(デコル)「ピース!」

ピース「はぁっ……はぁっ……」グググ…


セルリア「…………」

セルリア「……なんだ……。……プリキュア……一人だけなら……大したことない……じゃない……」


セルリア「……キュアビューティが……言ってた……。……"5人いる限り、絶対に諦めない"……」


セルリア「……でも……それって…………一人じゃ何もできない……ってこと……じゃないの……?」


ピース「……っ!!」

ピース「……そんなこと、ないもんっ……!」

ピース「ひ、一人だって、ガンバれば、どんなことだってでき——」

セルリア「嘘」

ピース「っ!」ビクッ


セルリア「……声……震えてる……。……本当は……そう思って……ない……」

ピース「そ、そんな……こと……」


セルリア「……アキラメーナ……!」

アキラメーナ(雲形定規型)「アキラメーナァッ!」ブゥゥゥゥン!


ピース「…………」

オニニン(デコル)「ピース……? ピース! 何ぼーっとしてるオニ!? また突っ込んできてるオニ! 避けるオニ!」


ドガァッ!


ピース「きゃあぁぁぁっ!」ドシャァッ

ピース「……うぅっ……」


セルリア「…………怖いなら……痛いなら……つらいなら……」

セルリア「……逃げれば……? ……全部……諦めて……」

ピース「……!?」

オニニン(デコル)「お前、何言ってるオニ! ピースが逃げるなんてするはずないオニ!」

セルリア「……でも……その子供は……そうしてる……」

ピース「え……、美川さん、が……?」

セルリア「……見て……。……この……"心の絵の具" ……」


チャポ チャポ


ピース「それ……美川さんの……?」


セルリア「……シアンナが……言ってた……。……"心の絵の具" は……"不安" や……"恐怖"……。色々な……マイナスな感情で……濁るって……」

セルリア「……その子供は……マイナスの感情を……持ったままで……、……そのことを……仕方ないって……諦めてる……。……だから……心が……濁ってる……」


ピース「美川さんが、あきらめてる……? 何を……?」


ガサッ


ピース「あっ……。これ、美川さんのカバンの中に入ってた、紙……。倒れた時に散らばっちゃったんだ……」

ピース「…………! これって……!」

漫画のキャラクター・A『どうして!? どうして、彼の告白断っちゃったの!? せっかく、わたしがあきらめたのに……!』

漫画のキャラクター・B『……だって、わたしには恋より、えみと友達でいる事の方が大事なんだもん……!』

漫画のキャラクター・A『……みお……!』


ピース「……描きかけの漫画……。美川さんの……?」

ピース(……そっか……。美川さん、"勉強しなきゃ" って言ってたけど、本当は……漫画が描きたいんだ……!)


ピース(……そうだよね……、描きたいよね……。だって、漫画を描くのって……楽しいもんね……!)


ピース(美川さんに比べたら……わたしは漫画が描けるのに……! 漫画のために、いろんなことができるのに……!)


ピース(あきらめてなんか、いられない……っ!)ガバッ


オニニン(デコル)「ピース……、立てたオニ……!」


セルリア「…………」

セルリア「……立って……どうするの……? ……一人じゃ……何もできないのに……。……頑張っても……無駄なのに……」


ピース「…………」


ピース「……うん……。わたし、今やってることが、"ガンバってもできないかもしれない" って思い始めてた」

ピース「今だって、不安で、怖くて……体が、ふるえちゃってる……!」


ピース「でも……ガンバってもできないかもしれないけど……!」

ピース「それでも、一生懸命ガンバるの! あきらめることだけはしちゃダメなの!」

ピース「だって、わたしの大好きなことなんだもん!」


ピース「……わたし、そのことを美川さんに伝えたい」

ピース「どんなに不安でもガンバって、"わたしは好きな事をあきらめないから、美川さんもあきらめないで" って」

ピース「だから、ここで負けちゃうわけにはいかないのっ!!」

セルリア「……何を言っても……結局……勝てなければ同じ……」

セルリア「……アキラメーナ……トドメ……!」

アキラメーナ(雲形定規型)「アキラメーナァッ!」ブゥゥゥゥン!


オニニン(デコル)「ピース! また飛んできたオニ!」

ピース「……っ!」グッ

バッ


マーチ「マーチ・キィィック!」ドカァッ!

アキラメーナ(雲形定規型)「アガァッ!?」ガクッ

セルリア「…………!? ……他の……プリキュア……!?」

ピース「みんな……!? 来てくれたの……!?」


アキラメーナ(雲形定規型)「アガガッ……!」フラフラ

マーチ「くっ、一発じゃ落とせない!?」


バッ


ビューティ「ならば、もう一度! はぁぁぁっ!」ドカァッ!

アキラメーナ(雲形定規型)「アガァァァッ!」


ガシャァン!


マーチ「ナイス、ビューティ!」

ビューティ「動きは止めました! ハッピー、サニー、今です!」


サニー「よっしゃぁ! 行くで、ハッピー!」

ハッピー「うんっ!」

サニー「また飛ばれたらかなわんからなー。ハッピー、そっち持って、キレイに縦になるようにしてや」

ハッピー「うん、こう?」

サニー「ええで、ええで! そんな感じや!」


ググググッ


アキラメーナ(雲形定規型)「ア、アガッ……!?」


サニー「そのまま下に勢い良く落とすで!」

ハッピー「わかった! 1、2の、3、で行くよっ!」


ハッピー・サニー「1、2の、3っ!」ブンッ


ザクッ!


アキラメーナ(雲形定規型)「アガッ!? ア、アガガガッ……!?」ジタバタ

セルリア「……アキラメーナを……地面に……突き刺した……!?」


サニー「ふぅっ、これでチョロチョロでけへんやろ!」

ハッピー「ピース! 今だよ、思いっきりやっちゃって!」


ピース「う、うん! みんな……ありがとう!」

ピース「プリキュア! (ピシャァン!) ……っ! ピース・サンダーァァッ!!」


ドォォォォォォォォンッ!!


アキラメーナ(雲形定規型)「アガァァァァァ……」シュワァァァァ…

セルリア「……やられた……! ……また……邪魔を……っ!」

セルリア「……でも……キュアピース……。……結局……自分一人じゃ……何もできなかった……。……勝てなかった……」

セルリア「……それじゃ……、本当に……一人になった時……何も……できやしない……!」

ピース「……!」

セルリア「……くくく……」


ピース「…………」

オニニン(デコル)「ピース……」

サニー「……何ゆーとんの? ピースが一人でもガンバってくれたから、うちらが間にあったんやないの」

マーチ「そうだよ。もしピースがここで逃げ出してたら、もっと多くの人がヒドい目にあってたよ」

ビューティ「そうならなかったのは、ピース。あなたが頑張ってくれたからに他なりません」

ハッピー「だから、ピースが何もできなかったなんてことは全然ないよ! わたし達がみんなを守れたのは、ピースのおかげなんだもん!」

ピース「みんな……!」


セルリア「…………」

セルリア「……まあ……いい……なんでも……。……絵の具は……手に入った……」

セルリア「……プリキュア……! ……次は……邪魔させない……!」シュバッ

美川「うっ、うぅ……」

5人「!!」


マーチ「美川さん、起きちゃうよ!」

ハッピー「わっ、わっ、どうしよう!? プリキュア見られちゃったら、マズいよね!?」

ビューティ「ひとまずここを離れましょう!」

サニー「せやな! ピースも、行くで」

ピース「う、うんっ!」


ピース(……美川さん。わたし、部活作るの、あきらめないから。美川さんも、自分のやりたいこと、あきらめないでね)


タタタタタタ…

美川「……あれ……。わたし、どうして……こんなところで……。寝ちゃってたの……?」

美川「あっ……! カバンの中身全部出ちゃってる! 片付けないと……」


ガサッ


美川「あ……これ……。描きかけの、わたしの漫画……。カバンの奥にしまっておいた……」


漫画のキャラクター・A『どうして!? どうして、彼の告白断っちゃったの!? せっかく、わたしがあきらめたのに……!』

漫画のキャラクター・B『……だって、わたしには恋より、えみと友達でいる事の方が大事なんだもん……!』

漫画のキャラクター・A『……みお……!』


美川「…………」

美川「……っ……」ポロッ


美川「……わたし……わたし……!」

美川「……漫画……描きたいよぉ……!」

美川「……うっ……うぅっ……!」

〜 数日後 放課後 七色ヶ丘中学校 教室棟 前 〜

やよい「漫画研究部でーす! よろしくお願いしまーす!」


1年女子A「あの漫研のセンパイ、ここのところずーっとビラ配りやってるよねー」

1年女子B「そうだねー。たまに他の人が手伝ってるの見るけど、いつも一人だもんね。よくガンバれるなぁ、って思うよ」

1年女子A「でもさぁ……何だか、楽しそうだよね。イキイキしてる、っていうか」

1年女子B「うん。あたし達も、あんな風にガンバれること、見つけられるかな……」


やよい「漫画研究部、部員募集中でーす! よろしくお願いします!」


??「あの……、ビラ、一枚もらえますか?」

やよい「あっ、はい! ありがとうござい——」


やよい「……! あなたは……!」

タタタタタタ


あかね「今日は部活も早く終わったし、やよいのこと手伝ったんで! ダッシュや!」

なお「うん! ここのところ、忙しくて手伝えなかったからね! その分今日はガンバろう!」


あかね「あれ? あそこにおるの、みゆきとれいかやん」

なお「ホントだ。二人で陰に隠れて、何してるんだろ」


あかね「ふーたりとも! どうしたんや、こんなところで?」

みゆき・れいか「しーーっ!」

あかね「(小声) わっ、な、なんやねん、二人して」

みゆき「(小声) あかねちゃん、静かに! 今いいところなんだから!」

なお「(小声) いいところ?」

れいか「(小声) 私達もやよいさんの手伝いに来たのだけど、今まさにやよいさんの頑張りが実を結ぼうとしていたので、見守る事にしたの」

やよい「……美川さん……!」

美川「…………」

やよい「このビラをもらってくれた、ってことは、もしかして……!?」

美川「……うん。わたしも、漫画研究部に……入れてほしいの」

やよい「……! ホントに!?」パァッ

やよい「あ、でも、勉強はいいの? "受験勉強するから漫画は描かない" って約束してたんじゃ……」

美川「……お母さんは説得したの。勉強もちゃんとやるから、空いた時間だけでもいいから、漫画を描かせて、って」

美川「だから、毎日はムリだけど、時々だったら漫画研究部に顔出せることになったの」

やよい「そうなんだ……! 美川さんと一緒に漫画描けるんだね! わたし、うれしいよ!」

美川「わたしも……! 同じ夢を持ってる人とガンバれるのがホントにうれしいよ」


美川「……これも全部、黄瀬さんのおかげなんだよ」

やよい「えっ? わたしの?」

美川「……わたし、漫画描くの、あきらめちゃってた。"お母さんの言う通りにしなきゃ" って。自分の大好きなことなのに」

美川「でも、同じ漫画が大好きな黄瀬さんが、一人でも頑張って漫画研究部を作ろうとしてるのを見て、思い出したの。"漫画が大好き" って気持ちを」

美川「だから、ガンバってお母さんを説得したの! また大好きな漫画を描きたいから!」

美川「ホントに、ありがとう、黄瀬さん!」


やよい(…………!)

やよい(……わたしの気持ち、他の人に伝わってたんだ……)

やよい(……わたしがガンバったのは、ムダじゃなかったんだ……っ!)ジワッ


美川「き、黄瀬さん……!? な、泣いてるの……? だいじょうぶ……?」

やよい「……う、ううん! 泣いてなんかないよ! とってもうれしいんだもん! 泣いてなんかいられないよ!」ニコッ

れいか「……やよいさん、とてもうれしそうですね……!」

なお「そうだね……。すごくガンバってたもん」

あかね「うちらも手伝ったけど、ほとんど一人でやっとったもんな。そら、うれしいわ」

みゆき「うん……。ホントによかったね、やよいちゃん!」

やよい「よぉーし! 部員も 5人揃ったし、これで漫画研究部、完成だよ! 明日からガンバろうねっ!」

美川「うんっ! 漫画、いっぱい描こーっ!」


やよい・美川「おーっ!!」





つづく

次回予告

みゆき「いつも落ち着いてるれいかちゃんが、なんだかとってもウキウキしてるの」

みゆき「聞いてみたら、れいかちゃん憧れの人が海外から帰ってくるんだって!」

みゆき「とってもすごいれいかちゃんが憧れちゃうような人……どんな人なんだろう!?」


みゆき「次回、『スマイルプリキュア レインボー!』 "れいかの憧れ! 私の目指す道の先!"」


みゆき「みんな笑顔でウルトラハッピー!」

今回はここまでです!
お読みいただいた方、ありがとうございました。


『ぜんいんしゅうごう☆レッツダンス!』届きました! 今夜はサンデーナイトフィーバーだ!
曲数が少ないのが残念ですが、バンダイカーン様なら DLC で増やしてくれる、って、わたし、信じてる!

いや、マジでお願いしますよバンダイカーン様。。せめて『ガンバランス de ダンス』だけでも。。
全12曲中、鷲キュア 5作品で 3曲って、、しみるわぁー。。


よろしければ次回もまたよろしくお願いします!


第1話 >>3 から
第2話 >>75 から
第3話 >>166 から
第4話 >>252 から
第5話 >>339 から
第6話 >>422 から
第7話 >>517 から
第8話 >>615 から


やっぱり朝8:30に出てた方がいいね



この話のピースvsセルリアみたいに、本編でのピースvsアカオーニも、1人で戦って心が折れかけてた気がするけど、
ピースにはこういうシーンが似合う?

『スマイルプリキュア レインボー!』

このあとすぐ!

〜 昼休み 七色ヶ丘中学校 中庭 〜

れいか「〜〜〜♪ 〜〜〜♪」ニコニコ


みゆき・あかね・やよい「…………」


あかね「(小声) ……なんや、今日のれいか、随分ゴキゲンやな……」

みゆき「(小声) れいかちゃんが鼻歌歌ってるところなんて、始めて見たよ……」

やよい「(小声) 何かいいことあったのかなぁ……」

ポップ「(小声) 昨日からずっとあの調子でござる……。何やら、家で手紙を受け取っていたようでござったが……」


なお「手紙? ああ、もしかしたら——」

みゆき「? 何か知ってるの、なおちゃん?」


なお「れいか、明日なんだっけ? "あの人" が帰ってくるの。ちょっと前から "もう少しで帰れそう" って言ってたもんね」

れいか「ええ! 久しぶりに会えるので、私……もう楽しみでっ!」


あかね「……ほんま、えらいはしゃぎようやな……」

みゆき「"あの人" ってどんな人なの? れいかちゃん」

れいか「はい、とても素敵な方で、私の……憧れの人なんです……!」

やよい「あ、あ、あこがれ!? もしかしてその人って……男の人!? ま、まさか、れいかちゃんがその人に恋を……!」キラキラ

あかね「やよい、またそれかいな……。こりんやっちゃなぁ……」


れいか「やよいさんには申し訳ありませんが、男性ではありません。女性の方ですよ」

なお「そ。昔、あたしやれいかの面倒をよく見てくれた、お姉さんみたいな人なんだ」

れいか「成績優秀でスポーツ万能、その上とてもキレイで優しくて……。小さい頃からずっと憧れていたんです」

なお「2年前から海外に留学してたんだけど、その人が明日のお休みに日本に帰ってくるんだって。だかられいかもウキウキしっぱなし、ってわけ」


やよい「へぇーっ、そんな人がいたんだぁ」

あかね「なんや、エラいスゴそうな人やなぁ……」

みゆき「わたしから見たられいかちゃんだってとってもスゴいのに、そのれいかちゃんが憧れる人かぁ。わたしも会ってみたいなぁ……!」

れいか「ではみなさん、明日、一緒に空港に行ってお迎えしませんか?」

みゆき「えっ!? いいの!?」

あかね「待ちや、みゆき。そんな大切な人と会うんなら、うちらジャマになってまうやろ」

れいか「そんなことありません! 私もぜひ皆さんを紹介したいと思ってましたから」

やよい「行くよ! 行く行く! わたしも会ってみたいもん!」

なお「じゃあ、あたしも行こうかな。後で会おうと思ったけど、どうせならお迎えしたいからね。れいか、いいかな?」

れいか「ええ、もちろん! では、皆で一緒に行きましょう! 明日、午前10時に七色ヶ丘国際空港に集まってください」

みゆき「うんっ、わかった!」

〜 翌日 七色ヶ丘国際空港 〜

なお「来たはいいけど……、見当たらないね」

れいか「そうね……。もう到着していてもおかしくないのだけれど……」キョロキョロ

なお「到着、遅れてるのかな?」


れいか「……私、ちょっとその辺りを探してきます。すみませんが、皆さんはここで待っていてくれませんか?」

みゆき「うん! 全然オッケーだよ!」

なお「あ、れいか! あたしも行くよ。一緒に探そう」

れいか「ありがとう、なお。それでは、行ってきます!」


タタタタタタ…


やよい「れいかちゃん、すごくソワソワしてるね」

あかね「せやな。よっぽどその人と早く会いたいんやろ」

みゆき「れいかちゃん、いつもすっごく落ち着いてるのに……。あんなところもあるんだねー」

タタタタタタ


ショートカット・サングラスの女性「はぁっ……はぁっ……!」


あかね「……ん? なんや? 誰かこっちに走ってくんで?」


ショートカット・サングラスの女性「あなた達! ゴメン、ちょっとかくまってくれない!? 追われてるんだ!」

みゆき「え!? え? え? お、追われてる、ですか!?」

やよい「空港で追われる女の人……! スゴい! 映画みたぁい!」キラキラ

あかね「ゆーとる場合かいな! な、なんやようわからんですけど……、そこの植木の陰に隠れたらええんやないですか!?」

ショートカット・サングラスの女性「サンキュー! 恩に着るよ! あ、誰か来たら、"あっち行った" って言っといて! よろしく!」ササッ


みゆき「……な、なんだろね、この人……」

あかね「みゆき、しっ! ほんまに誰か来たで!」

やよい「……って、いっぱい来たよぉ!?」


ドドドドドドッ

新聞記者A「ねえ、君達! ここにサングラスをかけた女の子が来なかった!?」

みゆき「あ、その人なら……あの、えっと……!」

あかね「ああ、その人ならあっちに走っていきましたよー」

新聞記者B「そうか! ありがとう!」

新聞記者C「まったく……! さすがに足が速いな! 取材できやしない!」

新聞記者A「ぼやいてるヒマがあったら走るぞ! 日本のホープのインタビュー……、こんなスクープ逃がすわけにいくか!」


ドドドドドドッ…


やよい「……行っちゃった……」

あかね「みゆきぃー……、ほんまウソつくのヘタやなぁ……。ヒヤっとしたで?」

みゆき「ご、ごめーん……。ウソつくのニガテで、つい……」

あかね「ま、それがみゆきのええとこでもあるんやけどな」

ヒョコッ


ショートカット・サングラスの女性「……みんな行った? もう誰もいない?」

みゆき「だいじょうぶ! みんなあっち行っちゃいましたよ!」

ショートカット・サングラスの女性「……ふぅ、助かったぁ……。大勢に囲まれるの、ニガテなんだよねー……」


カチャッ


ショートカットの女性「急なお願いだったのに、聞いてくれてありがとう。ホントに助かったよ!」

やよい「わ……! サングラス外すとスゴいきれい……!」

あかね「ほ、ほんまやな……。めっちゃ美人やん……!」

ショートカットの女性「あら、ありがと!」ニコッ

みゆき「……あれ? でも、どこかで見たことあるような……」

れいか「"はるかお姉さん"! こんなところに……。探してしまいました!」

ショートカットの女性「え? この声……。もしかして、れいかちゃん!? 久しぶり! 随分大きくなったね!」

れいか「はいっ! はるかお姉さんも、お元気そうで何よりです!」

ショートカットの女性「そっちはなおちゃん!? 2年ぶりだもんねー、見違えたよ!」

なお「お久しぶりです、はるかさん!」


みゆき「え……。"はるかお姉さん" ?」

あかね「っちゅーことは……」

やよい「この人が……?」


れいか「はい! 今日帰国してきた私のいとこのお姉さん、"藍沢 はるか" さんです!」

藍沢 はるか「あ、この子達、れいかちゃんの友達だったんだ。初めまして、藍沢 はるかです。よろしく!」




スマイルプリキュア レインボー!

第9話「れいかの憧れ! 私の目指す道の先!」



〜 お好み焼き屋「あかね」 〜


ジュージュー…


はるか「うぅーん、お好み焼きなんて何年ぶりかな! この香ばしい香り……、たまんないっ!」

れいか「すみません、あかねさん。押しかけるような形になってしまって……」

あかね「ええて、ええて! いつも世話になっとるれいかの憧れの人やもん! たっぷりサービスしたんで!」

はるか「え? 憧れ? 私が、れいかちゃんの? あははっ、何かテレるなぁー」

れいか「ちょ、ちょっと、あかねさん!? ひ、秘密にしてたんですから、そ、そういうことはあまり言わないでくださいっ!(///)」

みゆき「おぉー……、れいかちゃん、赤くなった……!」

やよい「なんだかいつものれいかちゃんじゃないみたい……! かわいいー……!」

れいか「もう! やよいさん! からかわないでください!」

はるか「えー、では改めて自己紹介を。私、"藍沢 はるか"。高校2年生で、れいかちゃんとはいとこ同士なの」

れいか「そうなんです。はるかお姉さんのお母様が、私のお父様の妹に当たります」

なお「はるかさんもずっと七色ヶ丘市に住んでたから、小さい頃ははるかさんとれいかのお兄さんの淳兄ちゃん、それにれいかとあたしでよく遊んだんだ」


みゆき「……あっ! そっか、だからだぁ!」

あかね「わっ、な、なんやねん、みゆき! 急に大声出して?」

みゆき「藍沢さんの素顔見た時、誰かに似てるなー、って思ったんだけど……、れいかちゃんに似てるんだ! いとこだからだったんだね!」

やよい「あ、言われてみれば……。目の辺りとか、雰囲気が少し似てるかも」

あかね「せやったら、れいかももうちょいしたらこんな美人になるんやな! 良かったやないの、にししっ」

れいか「あかねさんっ! もう……!」

あかね「ほいっ、焼けましたでー! どーぞ!」

はるか「ありがと! それじゃ、早速……(モグモグ)」


はるか「……おいしい……! おいしいよ、これ! もっとくれる?」

あかね「ほんまでっか!? おーきに! れいかの憧れの藍沢さんにほめてもろて、なんやうれしーですわ! じゃんじゃん焼きまっせ!」

はるか「あ、そうだ。みんな私のこと "藍沢さん" って呼んでくれてるけど、"はるか" でいいよ」

やよい「えっ? でも、年上の人だし……。お名前で読んだら失礼じゃ……」

はるか「気にしない、気にしない! れいかちゃんの友達なら私の友達だもん、気楽に呼んでよ! その代わり、私も "みゆきちゃん" "あかねちゃん" "やよいちゃん" って呼ばせてもらうからさ」

みゆき「わっかりました! はるかさん!」

はるか「そうそう、そんな感じ! みゆきちゃん、Good job!」


あかね「(小声) ……はるかさんって、エラい気さくな人やな……。もっと、なんちゅーか……大人しーいカンジの人かと思っとったわ」

れいか「(小声) 誰にでも親しげなのも、はるかお姉さんの素敵なところなんです」

〜 1時間後 〜

はるか「ふぅー、ごちそうさまでした。お腹いっぱい、しあわせー……」


みゆき「……って、スゴイ量……」

やよい「5人前くらい食べちゃった……!」

あかね「なおとええ勝負やなぁ……」


なお「昔はよく大食い対決とかしましたよね。"どっちがご飯何杯食べられるか勝負ー!" とか言って」

はるか「ああ、あったね、そんなこと! お互いムキになっちゃってさぁ。で、どっちも食べすぎで動けなくなっちゃうの。れいかちゃんと淳くんにはよく呆れられたっけ」

あかね「なるほどなー。なおの胃袋はそん時に鍛えられたんやな」

れいか「さて、はるかお姉さん、昼食も済んだ事ですし、どこか遊びにでも出かけませんか?」

はるか「あ、いいね! そういえば手紙で "新しいショッピングセンターができた" って言ってたっけ。せっかくだから、そこ行ってみない?」

れいか「わかりました! よろしければ、皆さんも一緒にどうですか? 大勢の方が楽しいですし」

みゆき「えっ、行く行くーっ! わたしもあそこ行ってみたかったんだぁー!」

はるか「それじゃあ、みんなでショッピングといきますか!」


5人「おーっ!」

〜 ギャラリー・D 〜

シアンナ「(ペタペタ)」

セルリア「……シアンナ……。……絵……描いてるの……?」

シアンナ「ええ。思った以上に売れ行きがいいから、補充しておかないと、と思って」

セルリア「……上手……」

シアンナ「そう? ありがとう。でも、あなたの絵も結構売れてるのよ。暇があったら描いておいてくれるかしら」

セルリア「……うん……!」


シアンナ「さて、もう少しで完成——」


バタンッ!


ビリーズ「おいっ! シアンナ、セルリア! 見ろよ、これ! いい情報ゲットしてきたぜ!」

シアンナ「(ビクッ)」


ズルッ!


シアンナ「……!」

セルリア「……筆……ずれた……」

シアンナ「……あと一息だったのに……!」

シアンナ「……で、何かしら、ビリーズ。いい情報って」ギロリ

ビリーズ「……ん? 何? 何か怒ってね? 何で? オレ、何かした?」

シアンナ「いいから早く言いなさい。今、気が立ってるの」

ビリーズ「んーだよ、カリカリしやがって……。まあいいか。ホラ、これ見ろって!」パサッ


シアンナ「これは……、広告のチラシ?」

セルリア「…… "七色ヶ丘市の新名物! 巨大ショッピングセンター "Rainbow" 堂々オープン!" ……」

シアンナ「新しい施設の宣伝のようね。これがどうしたの?」

ビリーズ「おっと、シアンナさん、珍しくニブいじゃねぇか。こんだけデカい物が新しくできるんならよ、人間もすげぇ数集まるんじゃねーの!? 稼ぎ時、ってことだよ、"心の絵の具" のよ!」

シアンナ・セルリア「!」


シアンナ「……なるほど。確かにその通りだわ。ビリーズ、あなたにしては冴えてるわね」

ビリーズ「へっ! ちょっとは見直したか?」

シアンナ「少しだけね」


セルリア「……それに……人間……たくさんいれば……プリキュアも……手が出しづらい……。……くくくっ……」

シアンナ「……私はあまりそういう手段は好きではないけれどね」

シアンナ「……まあいいわ。今回は私が行ってくる。セルリア、悪いけど、絵の補充は任せるわね」

セルリア「……わかった……。……行ってらっしゃい……」

シアンナ「ええ」シュバッ


ビリーズ「絵の補充? って、何の話だ?」

セルリア「……お前も……手伝え……!」グイッ

ビリーズ「おわっ!? 何だよ、腕引っ張るなよ!」

セルリア「……これ……見ろ……! お前の……せいで……シアンナの絵が……台無しになった……!」

ビリーズ「オレのせい、って何だよ? オレ、何もしてねーぞ!」

セルリア「……いいから……黙って描け……! ……今日中に……10枚……! ……それまでは……寝かせない……!」

ビリーズ「はぁ!? なんだそりゃ! 何でオレがそんなこと——」

セルリア「……言う事……聞かないなら……!」ザワザワ

ビリーズ「……! おい、髪の毛動かすのやめろ……。それ痛ぇんだよ……! わかった、やる。やるから落ち着け!」

セルリア「……ならいい……」


ビリーズ「ったく、せっかく情報持ってきたのに、何でオレがこんな目に……ぶつぶつ……」ペタペタ

〜 七色ヶ丘市 ショッピングセンター "Rainbow" 前 〜

みゆき「着いたー! ショッピングセンター! でっかぁーいっ!」

あかね「うちも来るの初めてやけど、ほんまにでっかいなぁー!」

やよい「どんなお店があるんだろう!? 行ってみようよ! 早く早くっ!」ダッ

なお「あ、待ってよ、みんな!」ダッ

れいか「皆さん!? あまり急ぐと危ない——」


タタタタタタ…


れいか「……行ってしまいました」

はるか「ホント、みんな元気だね。見てるこっちまで元気になるよ!」

〜 七色ヶ丘市 ショッピングセンター "Rainbow" 店内案内ボード前 〜

みゆき「うわーっ、色んなお店があるね! どこ行っていいのか迷っちゃうよー!」

あかね「せやなぁ、どこから行こか!?」


外国の中年女性『(英語) あ、そこのあなた達、ちょっといいかしら?』

みゆき・あかね・やよい・なお「……!」

外国の中年女性『(英語) ちょっと道を尋ねたいんだけれども……』


みゆき「(小声) が、が、外国の人だよ! 声かけられちゃった……!」

やよい「(小声) 英語だよね!? 何言ってるのかぜんぜんわかんないよぉ!」

なお「(小声) あかね! ブライアンとはまだ文通してるんでしょ!? 何とかしてよ!」

あかね「(小声) なっ、何ゆーとんねん! 文通はしとるけど、こっちから送る時は日本語や! 英語なんてでけへんて!」

なお「(小声) いいからほらっ!」ドンッ

あかね「(小声) お、押さんといてや!」


外国の中年女性『…………』

あかね「あ、え、えーっと……。マ、マイネーム イズ アカネ ヒノ!」

外国の中年女性『(英語) ああ、これはご丁寧に。ではヒノさん、道を教えてもらえるかしら? アクセサリーショップを探してるんだけれども』

あかね「あう、あう、あう……!」


あかね「……やっぱ、ムリやって……! これで精一杯やぁ……!」ウルウル

みゆき「ど、どうしよう……!」

はるか「あ、いたいた! もう、みんな先行っちゃって、探しちゃ——どうしたの? 固まっちゃって」

あかね「あ、れいか! はるかさん!」

やよい「この外国の人に何か話しかけられてるんですけど、さっぱりわからなくって……!」

はるか「……なるほど。大丈夫。任せて」


はるか『(英語) どうされました? 私が代わりにお聞きしますよ』

外国の中年女性『(英語) まあ! あなた英語が話せるのね! 助かるわ! アクセサリーショップを探してるんだけれども、ここ広いでしょう? どこに行ったらいいか、全然わからなくって……』

はるか『(英語) ああ、わかりました! 私もここは初めてなので、調べてみます。ちょっと待ってくださいね』


はるか『(英語) ……ありました! 2F のここ、"Natts Tree" というお店がそうですね。こちらに行ってみてはどうでしょう?』

外国の中年女性『(英語) あら、本当!? 早速行ってみるわ! ありがとうね!』

はるか『(英語) どういたしまして! 良いショッピングを』ニコッ

みゆき「……すごーい……。英語ペラペラ……」

れいか「はるかお姉さんが海外留学していた、というのはお話ししたと思いますが、その行き先はロサンゼルスだったんです。だから、英語もとっても得意なんですよ」

みゆき・あかね・やよい「ロサンゼルス!」


あかね「(小声) ……ロサンゼルスってどこやったっけ?」

やよい「(小声) えっ!? あ、えーっと……どこかの国じゃないかな?」

みゆき「(小声) でも、外国ってだけでなんだかとってもスゴいカンジだよね!」


れいか「……皆さん。ロサンゼルスは国ではなく、アメリカの都市ですよ……」

はるか「さーて! 問題も解決したし、どこに行こ——」


チンピラ風の男「なぁ、ねーちゃん、いいじゃねぇか! "案内係" ってくらいなんだから、オレの案内してくれよ! へへへ!」

案内係の女性「や、やめてください、お客様……! 困ります……!」


みゆき「わ、あの女の人、からまれてるよ……!」

やよい「ど、どうしよう……。人、呼んできた方がいいのかな……!?」

なお「困ってる人をムリヤリだなんて……、あたし、ああいうの許せないよ。止めてくる!」ダッ


ガシッ


はるか「待って、なおちゃん。危ないから私が行くよ」

なお「え、でも、はるかさん……」

はるか「大丈夫。任せて」

はるか「ねえ、あなた。その人、困ってるよね。やめてあげてもらえない?」

チンピラ風の男「何だよ、今急がしいんだからジャマすんな——って、おおっ! こっちの方がイケてんじゃねーか! 何だよ、あんたが代わりに案内してくれるってのか? へへへ」スッ

はるか「(ギラッ)」


ガッ クルッ


チンピラ風の男「へっ? 景色が回って——」


ビタァンッ!


チンピラ風の男「……っ!?」


クルッ ギュッ


チンピラ風の男「!? いででででっ!?」


みゆき・あかね・やよい・なお「…………」ポカーン

れいか「さすが、はるかお姉さん。お見事です……!」

あかね「な、なんや今の……。兄ちゃんが伸ばしてきた手をはるかさんがつかんだ途端、兄ちゃんがすっ転んだで……」

やよい「倒れた人の腕をそのまま締め付けてる……。痛そう……」

れいか「私のお母様直伝の合気道です。留学前まではよく習っていたので、技を憶えていたのでしょう」

なお「そういえばそうだったね……。合気道の技、昔はれいかの家でよく見たけど、久しぶりに見たからびっくりしたよ……」

はるか「みんな、ルールを守って楽しくショッピングしてるの。あなたもそうして欲しいんだけどな」ギュッ

チンピラ風の男「あいだだだだっ! わかった、わかったよ! もうしないから許してくれーっ!」

はるか「……もうこんなことしないでね。(スッ) あなたも、大丈夫でした?」

案内係の女性「は、はい! ありがとうございました! 助かりました……!」

はるか「そう、良かった!」ニコッ


パチパチパチパチ


男性客A「いいぞー、ねーちゃん!」

男性客B「スカっとしたぜーっ!」

はるか「あ、あははっ、どーもどーも!」


やよい「……カ、カッコいいー……!」

れいか「私もそう思います……!」

はるか「お待たせ! さて、どこに行こっか?」

やよい「あ、わたし気になってるところがあるんです! そこでもいいですか?」

はるか「私はどこでもいいよ! みんなはどうかな?」

みゆき「私もだいじょうぶだよ!」

あかね「ほんなら、そこ行ってみよか!」

〜 七色ヶ丘市 ショッピングセンター "Rainbow" 内 ファッションショップ "Fairy Drop Rainbow支店" 〜

やよい「じゃーん! ここでーす! ママが会社でお世話になってるお店で、カワイイ服がいっぱいあるの! さっき案内で見つけてから来てみたかったんだぁ!」

あかね「おぉーっ、ほんまやな! カワイイ服いっぱいあんで!」

なお「あっ、これなんか良さそう! あかね! これ着てみたら?」

あかね「えっ、そのフリフリ、うちが着るん!? 見る分にはええけど、自分が着るっちゅーのは……」


はるか「…………」

はるか「……あれと……これと……ぶつぶつ……」


はるか「あかねちゃん! その服に合いそうなコーディネート見繕ってみたよ! ちょっと着てみない?」

あかね「えっ? せやからはるかさん、うちが着ても似合わへんって……」

はるか「大丈夫、任せて! 絶対イケる! ほらほら、だまされたと思って!」

あかね「ああ、わかりました! わかりましたから、押さんといてください!」

〜 試着室前 〜

シャッ


あかね「……どやろ」シャラーン


みゆき・やよい・なお・れいか「…………」


あかね「……ああ、ほら、やっぱりや……。みんな呆れとるわ。せやから、こんなカワイイカッコ、似合わへんって——」

みゆき・やよい「かっ、カワイイぃぃぃーっ!」

あかね「——へっ?」

れいか「見違えました……」

なお「別人かと思った……」

はるか「うんうん、やっぱりね! イケると思ったんだよねー。あかねちゃん、元がいいんだから、もっとオシャレしてもいいと思うよ」ニコッ

あかね「な、なんやみんなして……。テレてまうわ……!」

なお「はるかさんスゴいね……。オシャレにも詳しいんだ」

れいか「そういえば手紙に "オシャレが好きな友達がいて、その方から習った" とありました」

なお「へぇー、そうなんだ……」


みゆき「あかねちゃん、すっごいカワイイよーっ!」

あかね「せやから、あんまカワイイ、カワイイ言わんといてって!」

やよい「はるかさん! わたしの服も見てもらえますか!?」

はるか「うん、もちろん! とびっきりカワイイコーディネートしてあげるね!」


なお「…………」

なお「……あ、あたしも見てもらおうかな?」

れいか「ふふ、じゃあ、一緒にお願いしましょう」

〜 七色ヶ丘市 ショッピングセンター "Rainbow" 内 大通り 〜

やよい「カワイイお洋服いっぱい買えて大満足! ありがとうございます、はるかさん!」

はるか「どういたしまして!」

みゆき「それじゃあ、次はどこに——」


男の子「あぁーん! あぁーん!」

父親「もう泣くなよ。新しいのもらってやるから」

男の子「やだぁ! あれがいいのぉ!」

父親「全く……、そうは言ってもなぁ……」


なお「あの、すみません。どうかしましたか?」

父親「ああ、騒がしくてごめんね。いや、大したことじゃないんだけど、この子が持ってた風船が飛んでいってしまって……」

やよい「あっ、風船ってあれかな? キャラクターの像に引っかかってる……」

あかね「あちゃー……。ちょっと高すぎるなぁ。あれは取れへんで……」

男の子「う……うわぁーん!」

あかね「ああ、余計なことゆーてもた! ゴメンなぁ、泣かんといてー」

はるか「…………」

れいか「はるかお姉さん、どうかしましたか? 風船をじっと見て」

はるか「……あれくらいだったら届くかも」

父親「えっ? でも、随分高いよ? 手伸ばしたくらいじゃとても……」

はるか「やってみます。だって、キミはあの風船がいいんだもんね?」

男の子「……うん……」

はるか「わかった! 大丈夫、任せて。お姉ちゃんが取ってあげるから!」

はるか「すぅー……はぁー……」

はるか「(キッ)」


ダッ


みゆき「はるかさんが勢いよく走って——」


ガッ! バッ


あかね「ゴミ箱を踏み台にしてジャンプして——」


ギュッ


やよい「そのまま風船を取っちゃった!」


スタッ


はるか「……ふぅっ! うまくいった!」


シーーーーーーン…


はるか「……あれ? 周りがずいぶん静かに——」

ワァァァァァッ!


女性客A「すごいすごいすごいっ! 今の見た!? すっごい跳んだよ!?」

男性客C「ああ、ビックリしたな! ショーか何かかな?」

男性客A「……あれ? よく見たら、あんた、さっきチンピラやっつけたねーちゃんじゃねぇか! ホントスゴイな、あんた!」


はるか「あ、あはは、また騒ぎになっちゃった……」


みゆき・あかね・やよい・なお・れいか「…………」


あかね「ビ、ビックリしたわ……。バレー部エースアタッカーのうちでもあんなには跳べへんで……!」

れいか「い、今のは私もさすがに驚きました……!」

れいか「……そういえば、手紙に書いてありました。留学中、陸上競技で優秀な成績を収めて、オリンピック日本代表の誘いがあった、と」

みゆき・あかね・やよい・なお「オ、オリンピックぅ!!?」

れいか「はるかお姉さんは辞退したがっていたようでしたが……」


やよい「あ、そういえば、空港ではるかさんを追っかけてた人達、新聞記者さんっぽかったよね」

みゆき「あっ、そうだね! スクープがなんとか、って言ってたし……」

なお「じゃあ、オリンピック出場選手として、はるかさんを取材しようとしてた、ってこと?」

あかね「英語もしゃべれて、強くて、オシャレもできて、しかもオリンピック候補って……。どんだけスゴいねん……」

はるか「はい、風船取れたよ。今度は離さないように気をつけてね」

男の子「わぁ……! ありがとう、おねえちゃん!」

はるか「どういたしまして!」ニコッ


みゆき「…………」

〜 1時間後 〜

はるか「——あ! もうこんな時間! ゴメン、みんな。私、そろそろ行かないと」

れいか「え? もう行ってしまうんですか? もう少し、一緒にいられませんか……?」

はるか「ゴメンね、れいかちゃん。これからは実家に住むから、部屋の整理もしなくちゃいけなくて……。ホントは、私ももう少しれいかちゃんやみんなといたいんだけどね」

れいか「そういうことなら、仕方ありません……ね」

はるか「あんまりしょげないで。これからはいつだって遊びに行けるんだから、ね!」

れいか「……はい!」


はるか「それじゃ、みんな! 今日は楽しかったよ、ありがとう!」

みゆき「わたしも楽しかったです! また遊びに行きましょうねっ!」

やよい「はるかさん、かっこよかったです! 漫画の参考にしたいので、今度取材させてくださいっ!」

あかね「今度はスポーツでもしまへんか? 色々教えてください!」

なお「いいね、それ! はるかさん、今度はサッカーやろうよ! サッカーだったら負けないですから!」

はるか「うん! 私も、またみんなと遊べるのを楽しみにしてるよ! じゃ、またねっ!」


スタスタスタ…


あかね「……行ってもーたな」

やよい「ホントにスゴい人だったね……」

なお「うん。昔よりずーっとスゴくなってたよ……」

みゆき「……わたし、れいかちゃんがはるかさんに憧れる理由、ちょっと分かった気がするなぁ……」

れいか「えっ?」

あかね「そやなぁ。そりゃ、あんだけ色々スゴかったら誰だって憧れてまうわなー」

みゆき「うん、スゴいっていうのも、もちろんそうなんだけど……」

やよい「? 他に何かあるの、みゆきちゃん?」


みゆき「はるかさん、今日は色々スゴいことをしてたけど、全部誰かのためだったんだよね」

みゆき「英語で話したのも、困ってたわたし達や外国のおばさんを助けるためだったし……」

みゆき「案内係のお姉さんの時とか、男の子の風船を取った時も、困った人を助けるためだったよね」

みゆき「だから、れいかちゃんは、はるかさんのスゴいところよりも、そんな優しいところに憧れたんじゃないかなー、って思ったんだ」


れいか「……その通りです」

れいか「はるかお姉さんは昔から、私やなおが困っていると、いつも優しく助けてくれました」

れいか「まだ幼かった私は、そんなはるかさんを見るたびに好きになって、憧れていったのです」

れいか「……私はどうして勉強するのか、悩んだ事もありました。私の歩む "道" がどこにあるのかわからず、迷う時もありました」

れいか「でも、今日久しぶりにはるかさんに会って、改めて思い出せた気がします」

れいか「どうして私は勉強をするのか」

れいか「どうして私は生徒会で学校のために働いているのか」


れいか「私は、はるかさんのようになりたかったんです。いつも笑顔で誰かを助けてあげられる。そんな人に。だから、色んなことに励んでいたんです」


なお「……そっか。はるかさんは、れいかの言う、自分の "道" の先にいる人なんだね」

れいか「ええ。とても身近だけれど、とても遠くにいる……、私の目指す目標なんです」

〜 七色ヶ丘市 ショッピングセンター "Rainbow" 内 大通り 〜


スタスタスタ


はるか(今日は、ホントに楽しかったな。久しぶりに羽を伸ばせた気がする)

はるか(みんな元気で明るくて……。れいかちゃんもなおちゃんも、いい友達に出会えたんだなぁ)

はるか(……こんなに気持ちよく笑ったの、いつくらいぶりだったかな……)


ドンッ


はるか「あっ! す、すみません、ぶつかってしまって……。ぼーっとしてました」

シアンナ「いえ。こちらこそ失礼」

はるか「……!?」ゾッ


スタスタスタ…


はるか「…………」

はるか(な、何、あの人の目……。見た途端、背筋が寒くなった……。留学先でいろんな人に会ったけど、あんな目をした人は一人もいなかった……! あの人は一体……)

はるか(わからない……、全然わからないけど……、何、この感じ……。すごく……すごくイヤな予感がする……!)


はるか「あ、あなた! ちょっと待って!」ガシッ

シアンナ「……何? 謝ったと思ったけど。肩、離してもらえるかしら」

はるか「ごめんなさい、私の勘違いだったら謝ります。けど……、あなたからは、何かただならない感じがするの……!」

シアンナ「……!?」

はるか「あなた……何者?」


シアンナ(この子、私の正体に気づいている……? まさかプリキュア……!?)

シアンナ(……でも、もしそうなら他の子たちのようにうかつには近づいてはこないはず。疑ってはいるけど確証はない。そんなところかしら)

シアンナ(それならば律儀に付き合う必要はないわね)


シアンナ「何者、と言われても……。人に説明するような者ではないわ。いい加減、離してちょうだい。急いでるの」バッ

はるか「あっ!? ちょっ、ちょっと待っ——」


スタスタスタ…


はるか(行っちゃった……)

はるか(何だろう、この胸騒ぎ……。あの人を放っておいたら、何か……良くないことが起こりそうな気がする……!)

はるか(でも、本当に良くない人かどうかわからないし……。これ以上乱暴な事はできない……。どうしよう……、どうすれば……!)キョロキョロ


はるか(……! そうだ、あれだ!)

シアンナ(プリキュアでもないのに私の事に感づくなんて。色々な人間がいるものね)

シアンナ(突然の事で驚いたけれど、ただの人間であれば気にする事もない)


ザワ ザワ ザワ


シアンナ(ふふ、ビリーズの言う通りね。これだけ多くの人間がいればたくさんの "心の絵の具" が取れるわ)

シアンナ(それに、賑わうところにいる人間からは濁った絵の具が出やすい傾向があるようだし……、確かに "稼ぎ時" ね)


シアンナ(じゃあ、始めようかしら)

シアンナ「闇の絵の具よ!」


ジリリリリリリリ!!


シアンナ「!?」


女性客B「えっ、なになに!?」

女性客C「これ、火災報知機のベルじゃない!? もしかして——」


はるか「火事よぉーっ! 店から火が出てる! みんな、早く逃げてぇーっ!」


客達「…………!」


男性客D「うわぁーっ! 逃げろーっ!」

女性客D「は、早く出ないと!」

男性客E「おい、押すなよ!」


ドドドドドドドド…


シアンナ「…………」

シアンナ「……誰も、いなくなってしまった……!」


はるか「……みんな、逃げてくれたみたいね」

シアンナ「あなたはさっきの……」

シアンナ「随分と無茶なことをするのね。火事だなんて嘘をついて。これであなたの勘違いだったら大事になるんじゃないの?」

はるか「勘違いだったらその時はちゃんと怒られるよ。それより、あなたをそのままにしておいた方が大変なことになりそうな気がしたから」


シアンナ「…………」

はるか「…………」

シアンナ「……ふっ、ふふふ、大したものだわ、あなた。本当なら、逃げた人間を追ってから始めるところだけれど……」

シアンナ「あなたの勘の良さに敬意を表して、見せてあげるわ。あなたが感じていた脅威がどんなものかを」


シアンナ「闇の絵の具よ! 闇の絵筆よ! キャンバスに絶望を描き出せ!」


シュババババッ


シアンナ「実体を持ってキャンバスから現れよ、アキラメーナ!」


ズズズズズズ…


アキラメーナ(ショッピングカート型)「アキラメーナァッ!」


はるか「!!? ……え……? 何、これ……!? 怪物……!?」


シアンナ「さあ、アキラメーナ。この子の心を吸い取りなさい」

アキラメーナ(ショッピングカート型)「アキラメーナァ!」


ズワァァァァァッ…


はるか「うっ……!? 何……? 体から……力が……抜け——」バタッ


シアンナ「……心は吸えるわね。やはり、プリキュアではなかったようだけど……」

シアンナ「私の正体に気づいた勘の良さ。あれだけいた人間を手際よく避難させた機転。恐れを感じつつも私と向かい合う度胸」

シアンナ「こんな人間もいるのね……」

シアンナ「でも、このような子からでは濁った絵の具は出なさそうね。やはり、逃げた人間達を追った方が——」


チャプ チャプ


シアンナ「……! この "心の絵の具" の色は……」

シアンナ「……人間は、見かけではわからないものね」

れいか「はるかお姉さんっ!」ダッ

シアンナ「! この声は……プリキュア!? どこにでも現れるわね……!」

キャンディ「やっぱりいたクル! デスペアランドクル!」

みゆき「うんっ! キャンディの言った通りだったね! でも……!」


れいか「はるかお姉さん! はるかお姉さんっ! しっかりしてください!」

はるか「————」


なお「はるかさん、心吸われちゃったんだ……!」

やよい「れいかちゃん! はるかさん、大丈夫なの!?」

れいか「……はい。気を失っているだけ、のようです……」


れいか「……ですが……っ!」グッ

れいか「……ポップさん。変身の準備をお願いします」

ポップ「れいか殿……。震えてるでござる……。大丈夫でござるか?」

れいか「私は大丈夫です」


れいか「ですが……、優しいはるかお姉さんをこのような目に合わせたこと……」


れいか「絶対に、許す事はできませんっ!!」


あかね「れいか、ほんまに怒っとんな……!」

ポップ「れいか殿のこのような険しい表情……、始めて見たでござる……!」


れいか「みなさん、変身しましょう!!」

4人「うんっ!」

パチンッ!

レディ!

5人「プリキュア! スマイルチャージ!!」

ゴー! ゴーゴー! レッツゴー!!


ハッピー「キラキラ輝く、未来の光! キュアハッピー!!」

サニー「太陽サンサン、熱血パワー! キュアサニー!!」

ピース「ぴかぴかぴかりん♪ じゃん・けん・ポン!(チョキ) キュアピース!!」

マーチ「勇気リンリン、直球勝負! キュアマーチ!!」

ビューティ「しんしんと降り積もる、清き心。キュアビューティ!!」


5人「5つの光が導く未来!」

5人「輝け! スマイルプリキュア!!」

バッ


ビューティ「はぁぁぁぁっ!!」ドガッ!

アキラメーナ(ショッピングカート型)「アガァッ!?」グラッ

ビューティ「はるかさんから奪った心、返してもらいますっ!」


ハッピー「ビューティ、スゴい迫力……!」

マーチ「珍しいよ、ビューティがあんなに怒るの。ああなるとしばらく収まらないよ……!」

サニー「今日はビューティ一人で十分かもしれへんな!」

シアンナ「……キュアビューティ。そんなにこの子の "心の絵の具" が欲しいのかしら」

ビューティ「もちろんです! その "心の絵の具" は、はるかお姉さんの優しい心! 勝手に奪わせはしません!」

シアンナ「……ふふ。"優しい心" ね」


チャプッ


シアンナ「この濁った絵の具が?」

ビューティ「……え……?」


ハッピー「ど、どういうこと? あれが、はるかさんの心の絵の具なの……?」

ピース「じゃ、じゃあ、はるかさんの心が濁ってる、ってことなの、かな……?」

ビューティ「……そんな……そんなはずはありません! はるかお姉さんは、いつも笑顔で、優しくて……。そんなはるかお姉さんの心が濁っているはずはありません!」


シアンナ「……正直に言うと、私も意外だったわ。その子の心が濁っているのはね」

シアンナ「その子の心はとても強く見えた。ただの人間なのに、私を止めようとしたくらいだから」

シアンナ「でも、実際に心を吸ってみたら、輝いてはおらず、濁っていた」

シアンナ「あなた達も知っているわね。人間の心が濁る時はどういう時か」

シアンナ「不安や恐怖を感じ、それらマイナスの感情を消すことを諦めた時、"心の絵の具" は黒く濁る。つまり、理由はわからないけれど、その子の心は諦めで満ちている」

シアンナ「キュアビューティ。もしあなたの言う通りその子に "優しい心" が強く存在するなら、"心の絵の具" は輝くはずよ」


ビューティ「で、でも……、はるかお姉さんは……本当に優しくて——」


シアンナ「事実、"心の絵の具" は黒く濁っているわ。ということは……」


シアンナ「あなたに見せていた優しさも笑顔も、ニセ物なんじゃないかしら」


ビューティ「!!」


はるか(回想)『れいかちゃん』ニコッ


ビューティ「……あの笑顔が……優しさが……ニセ物……?」ガクッ

ポップ(デコル)「ビューティ殿……!? どうしたでござる! 立つでござる!」

シアンナ「よほどショックだったようね。戦う気力も無くなったのかしら」

シアンナ「……弱みにつけこむのは趣味ではないけれど、これも仕事。遠慮なくやらせてもらうわ。アキラメーナ!」パチンッ


アキラメーナ(ショッピングカート型)「アキラメーナァッ!」ガァァァァッ


ハッピー「わ、わっ! こっちに向かってくるよ!?」

サニー「速いで! このままやとひかれてまう! みんな、避けるんや!」バッ

ピース「ひゃぁっ!」バッ


ビューティ「…………」

ポップ(デコル)「ビューティ殿! 避けるでござる! ビューティ殿っ!」

マーチ「ビューティ、危ない!」バッ


ガァァァァッ!


シアンナ「惜しい……。キュアマーチが助けさえしなければ当たっていたのに」


マーチ「ビューティ! 大丈夫!? しっかりして!」

ビューティ「…………」

ポップ(デコル)「ダメでござる……。はるか殿のことが、よほどショックだったようでござるな……」

マーチ「……しょうがない。ビューティはしばらくあたしが抱えてるよ」

ポップ(デコル)「マーチ殿……。頼むでござる……!」

アキラメーナ(ショッピングカート型)「アキラメーナァッ!」ガァァァァッ


ハッピー「うひゃぁっ!」バッ

ピース「ひゃあぁぁっ!」バッ

サニー「うわたっ!」バッ

マーチ「くっ!」バッ


シアンナ「さすがに闇雲に突っ込むだけでは当たらないようね。アキラメーナ! 攻撃を変えなさい!」

アキラメーナ(ショッピングカート型)「アガッ!」ガシッ

サニー「な、なんや? カートの中の商品をつかみ出したで?」


アキラメーナ(ショッピングカート型)「アガッ!(ブンッ) アガッ!(ブンッ) アガッ!(ブンッ) アガァッ!(ブンッ)」


ピース「わぁっ!? 商品投げてきたよ!?」

ハッピー「(バフッ!) はぷっ!」

サニー「あ、ハッピー当たってもた!? だいじょぶか!?」

ハッピー「あ、うん。当たったのシュークリームだからだいじょうぶ! やわらかくてよかったぁ……」

マーチ「でも気をつけて! 危ないのも混じってるよ!」

サニー「みたいやな……! ジュースの缶とかはシャレにならへんで!」

アキラメーナ(ショッピングカート型)「アガッ!(ブンッ) アガッ!(ブンッ) アガッ!(ブンッ) アガッ!(ブンッ)」


ピース「一個一個なら……ひゃっ! 何とかかわせるけど……!」

サニー「こうも数が多いと……やっかいやで……!」

マーチ「ビューティ、まだ立ち直れないの……!? 5人なら反撃できるかもしれないのに——」

マジョリン(デコル)「マーチ! 前マジョ! 飲み物のボトルが!」

マーチ「えっ!?」


ドカァッ!


マーチ「うぁっ……!?」ドサッ

ビューティ「……うっ……」ドサッ

ハッピー「マーチ!」

サニー「ビューティも投げ出されてもーた!」

マーチ「しまった……ビューティ……!」


シアンナ「チャンスね。アキラメーナ。動けないキュアビューティを狙いなさい」

アキラメーナ(ショッピングカート型)「アキラメーナァッ!」ガァァァァッ


マーチ「ビューティーっ!」

はるか(…………)

はるか(……わた……しは……どう、したの……。全然……動けない……。目も……かすむ……)


ボヤァッ…


マーチ「ビューティーっ!」

ビューティ「…………」


はるか(……あれ……? あれって……れいかちゃん……? 大きいショッピングカートに……ひかれちゃう……)

はるか(……れいかちゃんが……危ない……の……?)


はるか(……助けなきゃ……)


はるか(……れいかちゃんを……助けなきゃ……!)

はるか「……れいか……ちゃんっ……!」ダッ


バッ


ビューティ「……え?」


アキラメーナ(ショッピングカート型)「アガッ!?」スカッ


マーチ「はるかさん……!? はるかさんが、ビューティを助けた……!?」

シアンナ「……!? バカな……! 心を吸われた人間が、動いたの……!?」

ビューティ「はるかお姉さん……!」

はるか「……れいかちゃん……助けなきゃ……。れいか、ちゃ——」ガクッ

サニー「また、気失ってもーたな……」

ハッピー「でも、はるかさん、ビューティを助けてくれたね……。動けないはずなのに……!」

ピース「それに、"れいかちゃん" って言ってたね。ビューティのこと、れいかちゃんに見えたのかな……」


ビューティ「…………!」グッ

ザッ


ピース「ビューティが……立った……!」

マーチ「ビューティ……! もう、大丈夫なの?」

ビューティ「ええ。……皆さん、肝心な時に動けなくなってしまい、ご迷惑をおかけしました。ですが、私はもう大丈夫です」

ビューティ「私の憧れるはるかお姉さんの優しさが、ニセ物でないことがわかりましたから」

ビューティ「……はるかお姉さんの心が濁っているのは事実かもしれません。何か悩みを抱えていたり、何かを諦めているのかもしれません」

ビューティ「その理由が何なのか、私にはわかりませんが……これだけはわかります」

ビューティ「はるかお姉さんの優しさや心の強さは、決してニセ物などではありません! もしニセ物であれば、危険をかえりみず人を助けることなど、できないはずです!」


ビューティ「はるかお姉さんは体が動かなくても、私を助ける事を諦めませんでした」

ビューティ「だから私も諦めません。はるかお姉さんを、信じる事を!」


マーチ「……ビューティ……。良かった、立ち直ったんだね……!」


シアンナ「でも、立ち直ったところで振り出しに戻っただけ。このアキラメーナを止められるかしら?」

アキラメーナ(ショッピングカート型)「アキラメーナァッ!」ガァァァァッ


ビューティ「……止める必要は、ありませんっ!」バッ

ビューティ「ビューティ・キック!」ドガッ!

アキラメーナ(ショッピングカート型)「アガッ!?」

シアンナ「側面からアキラメーナを蹴った……? でも、その程度の威力では——」


アキラメーナ(ショッピングカート型)「アガッ!? アッ、アッ……!?」グラッ

シアンナ「これは……!? 進むほど、徐々にアキラメーナのバランスが崩れていく……!」


アキラメーナ(ショッピングカート型)「アガァァァッ!」ドシィィィィン!

ハッピー「わっ! やったぁ! アキラメーナが転んじゃったよ!」

シアンナ「なぜ……!? あの程度の攻撃で……!」


ビューティ「……時に、大きすぎる力は欠点にもなります」

ビューティ「そのアキラメーナの突進は、ほんの少し違う方向への力が加われば、その力強さゆえにたやすくバランスを保てなくなってしまうでしょう」

ビューティ「これは、相手の力を利用し、また、最小の力で相手を制する、合気道の極意。はるかお姉さんの姿が、私に教えてくれた事です」


シアンナ「くっ……! ならば、また物を投げれば……!」

アキラメーナ(ショッピングカート型)「アッ……!?(スカッ) アガッ(スカッ)、アガッ!?(スカッ)」

サニー「にししっ。もう空っぽみたいやで?」

ピース「さっきので使い切っちゃったみたいだね!」

シアンナ「……!」


ハッピー「よぉっし! みんな! 今のうちにいくよっ!」

ハッピー「プリキュア! ハッピー・シャワーァァッ!!」

サニー「プリキュア! サニー・ファイヤーァァッ!!」

ピース「プリキュア! (ピシャァン!) ひゃぁっ! ピース・サンダーァァッ!!」

マーチ「プリキュア! マーチ・シュートォォッ!!」

ビューティ「プリキュア! ビューティ・ブリザァァードッ!!」


ドドドドドォォォォォォォォンッ!!


アキラメーナ(ショッピングカート型)「アガァァァァァ……」シュワァァァァ…


シアンナ「プリキュア……! またしても邪魔を……!」

シアンナ「一応濁った絵の具は手に入ったとはいえ、あまりに少量……。このままでは国王陛下のご期待にも応えられない……!」

シアンナ「……これは本当に対策を練る必要がありそうね。次を楽しみにしていなさい」シュバッ

〜 七色ヶ丘市 ショッピングセンター "Rainbow" 内 休憩所 〜

はるか「……う……ん……」

れいか「はるかお姉さん! 気がつきましたか!? ……良かった……!」

はるか「……あれ、れいか、ちゃん……? それに、みんなも……。私、どうしてたんだっけ……」


はるか「……あ! そ、そうだ! 確か、みんなと別れて帰る途中、何だかアブない感じの人を見つけて問い詰めたら、その人がショッピングカートの怪物を出して!」

はるか「……えっと……、それから、どうしたんだっけ……。全然憶えてない……」

みゆき「き、きっと夢でも見てたんですよぉ! そんなこと、あるわけないじゃないですか!」

やよい「そ、そうですよ! 怪物だなんて、漫画じゃないんですから!」

はるか「……夢……? うぅーん……、夢、だったのかなぁ……。よくわかんなくなってきた……」

なお「あたし達、帰る途中で倒れてるはるかさんを見つけて、今までずっと見てたんです。きっと、旅の疲れが出ちゃったんだと思いますよ」

はるか「……そっか、そうかもね。みんなが介抱してくれてたんだ。ありがとう!」

れいか「はい……! 本当に無事で良かったです!」

はるか「それじゃ、私行くね! なんか、知らない間に随分時間経ってるし……。早く家に帰って荷解きしなきゃ!」

れいか「はい! また一緒に遊んでくださいね!」

はるか「もちろん! じゃあね、みんな!」


タタタタタタタ…


あかね「……うーん……、やっぱ明るい人やなぁ。心が濁っとるとは思えへんのやけど……」

れいか「そうですね……。でも、もし本当にそうでも、私のはるかお姉さんに対する気持ちは変わりません」

れいか(私、あの時はるかお姉さんが体を張って助けてくれた事、絶対に忘れません)


れいか(はるかさんの心の内がどうであれ、あの姿こそが私の憧れであり、目指す目標なのですから)


れいか(私はこれからも、勉強、生徒会の仕事、色んなことを頑張ります)


れいか(はるかさんのように、笑顔で人を助けられる、そんな人になるために……!)





つづく

次回予告

みゆき「いっつも元気なあかねちゃんが、珍しく悩んでる……」

みゆき「お父さんに、お好み焼きとバレーボール、本気でやるならどっちか選べ、って言われちゃったんだって」

みゆき「でも、あかねちゃんにとってはどっちも大切なんだよね……? どうするの、あかねちゃん!?」


みゆき「次回、『スマイルプリキュア レインボー!』 "あかねの選択! 本気でやりたいことは何!?"」


みゆき「みんな笑顔でウルトラハッピー!」

今回はここまでです!
お読みいただいた方、ありがとうございました。

よろしければ次回もまたよろしくお願いします!


第1話 >>3 から
第2話 >>75 から
第3話 >>166 から
第4話 >>252 から
第5話 >>339 から
第6話 >>422 から
第7話 >>517 から
第8話 >>615 から
第9話 >>700 から


れいかは可愛いな

スミマセン、、本当は今回の話の前に書こうと思ってたんですが、
うっかり忘れてしまったので後付けで捕捉します。


※念のためのご注意

今回もそうですが、『スマイルプリキュア レインボー!』では原作『スマイルプリキュア!』のキャラクタの過去を掘り下げる場面があります。
これからもそういった場面があるかと思いますが、世界観設定同様の後付け捏造設定でございます。

本作のみの設定ですので、そのつもりでお読みいただければ、と思います。


では、そういうことで、今後ともよろしくお願いします!

乙でした

みゆき「いっつも元気なあかねちゃんが、珍しく悩んでる……」
父親のお好み焼き味を再現しようとした時も、ブライアンが国に帰るときも悩んでたのに、みゆきさんひどいです

『スマイルプリキュア レインボー!』

このあとすぐ!

〜 お好み焼き屋 "あかね" 〜

大悟(あかね父)「あかね! もうええ時間や。お客さんもおらんし、ボチボチ店じまいにしよか!」

あかね「ほーい! いやぁー、今日もよう働いたわぁ!」

大悟「せやな……」


大悟「……あかね、ほんま、お前はようやってくれとるで。最近はお前のお好み焼き目当てで来てくれるお客さんもおるくらいや」

あかね「え……。な、なんや父ちゃん。どしたん、急に? いっつもそんなホメたりせえへんのに……。テレてまうやないの」

大悟「お前ももう中学3年生やろ? ええ機会やから、ちゃんと話しとこ、思てな。こっち来て座りや」

あかね(……? なんやろ、今日の父ちゃん……。ミョーにマジメな顔して、なんやいつもと様子ちゃうなぁ)

ガタッ


あかね「座ったで。で、話って何なん?」

大悟「お前の将来についての話や」

あかね「うちの将来……? どーゆーこと?」


大悟「あかね。わいはな、お前にこの店を継いでほしい、思とる。せやから、お前にその気があるか、確認しときたかったんや」


あかね「!! ……うちが、この店を……?」


大悟「もし、やる気あるんなら、今のうちから本気でお好み焼きの修行つけたる。早いうちからやっとくに越した事ないからな」

あかね「ほんま!? 父ちゃんに、焼き方教えてもらえるんか……!?」

大悟「お前にやる気があれば、の話や」

あかね「……もちろん、うち、やりたいわ! 父ちゃんみたいにおいしいお好み焼き焼けるようになりたいんや! こっちから頼みたいくらいやで!」

大悟「……そうか、お前の気持ちはようわかったわ」

あかね「じゃあ、教えてくれるん!?」

大悟「ええで、みっちり仕込んだる。……ただな、一つだけ条件がある」

あかね「条件? 何?」

大悟「…………」

大悟「あかね。お前、バレーボール辞めえや」


あかね「…………え?」

あかね「……ちょ、ちょお待って。なんでそういう話になるん?」

大悟「お好み焼きの修行するんやったら集中してやらんと駄目や。この商売、"ついで" でできるほど甘かないで」

あかね「せ、せやけど……、バレーかてうちにとっては大切なもんなんや……。そんなカンタンに辞めたりでけへん……」

大悟「せやったらこの話は無しや。お好み焼きに本気になれんヤツにこの店は任せられんわ」

あかね「そ、そんなこと言うたかて、まだ店任せてもらえるわけちゃうやろ? うち、まだ中学生やで? 今からそんなこと言って、気ぃ早いんとちゃうの?」

大悟「なら聞くけどな、このまま高校行っても大学行ってもバレー続けて、いざ店継ぐ、ってなった時、スッパリ辞められるんか? かえって辞めづらくなるんやないか?」

あかね「…………!」

大悟「辞めるんなら今のうち。そう思たから今この話をしたんや。修行するにしたって、一本に絞った方がええに決まっとるからな」

あかね「…………」

あかね「……うち……うちは……」


大悟「……まあ、すぐに決められるとは思てへんかったわ。ゆっくり考えて決めぇ」

大悟「そんで、本気でお好み焼き屋やりたい、思うんならまたわいに言いや。そん時はちゃんと修行つけたるわ。ほなな」


ガタッ スタスタスタ…


あかね「…………」

あかね(……うちは、お好み焼き焼くんがうまくなりたい……。父ちゃんが修行つけてくれんなら、めっちゃ嬉しい)


あかね(せやけど、そのためにバレー辞めなあかんやなんて……そんなんイヤや……。今まで一生懸命やってきたのに……)


あかね(……うちは、どないしたらええんや……!)




スマイルプリキュア レインボー!

第10話「あかねの選択! 本気でやりたいことは何!?」



〜 七色ヶ丘中学校 バレーボールコート 〜

2年バレー部員A「軽く投げるから、とりあえずレシーブしてみて。当てるだけでいいから!」ヒョイッ

1年バレー部員A「は、はいっ」ボスッ

2年バレー部員A「いい感じ! うまくやろう、って思わなくっていいからね。当てる事だけに集中して!」


あかね(…………)


あかね(みんな、楽しそうに練習しとるわ……。うちも、昨日まではああやったはずやったんやけど……)

あかね(もし本気でお好み焼き屋目指す事になったら……、こんなみんなの姿も見られへんようになってしまうんやろか……)

バレー部 キャプテン・名倉 ゆか「——かね——あかね!」

あかね「……へ? (ガンッ) ぶっ!?」

バレー部 キャプテン・ゆか「あーあー、ボール、顔にモロに当たっちゃって……。大丈夫?」

あかね「いたたた……。いやー、ぼーっとしとったうちが悪いねん。ゴメンな、ゆか」

バレー部 キャプテン・ゆか「ホントだよ。せっかくトス上げたのに、顔面ブロックしてどうするの。今スパイクの練習中だよ? スパイクしなきゃ!」

あかね「せ、せやな! ゴメンゴメン、今度はちゃんとやるて!」

バレー部 キャプテン・ゆか「せっかくエースアタッカーの座を譲ったんだから、しっかりしてよね、あかね!」

バレー部 キャプテン・ゆか「じゃ、行くよ! はい、トスっ!」ポスッ

あかね「よっしゃっ!」バッ


ペシッ ポテン


あかね「……ありゃ……?」

バレー部 キャプテン・ゆか「スパイクのタイミング全然合ってなーい! ヒョロヒョロスパイクじゃん! もう一回!」ポスッ

あかね「今度こそっ!」バッ


ペシッ ポテン


あかね「……あ……またや……。タイミング外してもーた……」

バレー部 キャプテン・ゆか「……うーん、力みすぎてるっぽいね。あかね、どうしたの? 今日、調子悪い?」

あかね「ん……、そう、みたいやな……。ゴメン……」

バレー部 キャプテン・ゆか「ま、そういう時もあるか。どうする? 体調良くないようだったら、今日もう上がる?」

あかね「……そやな、そうさせてもらうわ……。ちょっとまともに練習できそうやないし……」

バレー部 キャプテン・ゆか「ん、わかった。みんなにはわたしから言っとくから。ムリしないでゆっくり休みなよ」

あかね「おおきに、ゆか。ほんじゃ、今日はもう上がるわ……」


トボトボトボ…


バレー部 キャプテン・ゆか「…………」

2年バレー部員・宮下 なみ「日野センパイ、どうしたんですか?」

バレー部 キャプテン・ゆか「今日、調子悪いんだってさ。だから先に上がってもらったよ」

2年バレー部員・なみ「そうですか……。いつも元気な日野センパイが調子悪いと、チーム全体の活気がなくなっちゃいますね……」

バレー部 キャプテン・ゆか「ホントにね……。いっつも声張り上げてるから、いなくなると静かになっちゃうね……」


バレー部 キャプテン・ゆか「……まあでも、あかね一人のために練習中断できないし、わたし達はやることやろ。なみはレシーブ練習。わたしがスパイク打つから、ちゃんと止めてね」

2年バレー部員・なみ「わかりました!」

〜 七色ヶ丘中学校 校門 〜

トボトボトボ…


ウルルン「どうしたウル? 今日は随分調子悪かったウル。いつもだったらもっとこう、バシーッ! とやんのによぉ」

あかね「……うちかて調子悪い時くらいあるわ」

ウルルン「あ、わかったウル! またテストで悪い点でも取ったウル? 普段アタマ使わないからそうなるウル! ウルッフッフッフ!」

あかね「……そんな悩みやったら良かったけどな」

ウルルン「……なんだぁ? いつもだったら "やかましわ!" とか言うのによ。張り合いが無くてつまんねーウル」

あかね「……そりゃ悪かったなぁ」


あかね(……あかん、バレーだけやなく、しゃべりも調子出えへんわ……)

大悟(回想)『お好み焼きの修行するんやったら集中してやらんと駄目や。この商売、"ついで" でできるほど甘かないで』


あかね(……父ちゃんの言うこともわかるんや)

あかね(父ちゃんは新しいお好み焼きのトッピング考えたりして、お客さんを少しでも楽しませよ、て毎日ガンバっとる。せやから、あんなおいしいお好み焼きが焼けるんや)

あかね(そんな父ちゃんに近づこ、思たら、そら他の事やっとる余裕なんてないわ)


あかね(せやけど、バレーかて 3年間、一生懸命やってきたんや。念願やったエースアタッカーにもなれた。こんなところで辞めたない……)


あかね(どうしてもどっちか選ばなあかん、ってなったら、うちはどうやって決めたらええんやろか……。選ぶんやったら、どっちがどう大切かで決まると思うんやけど……)


あかね(うちにとって、お好み焼きの大切さ、バレーボールの大切さ、って、なんなんやろか……)

みゆき「おーい、あかねちゃーん!」

あかね「……ん? なんや、みゆきか。どしたん? 今帰り?」

みゆき「うん! あかねちゃんも?」

あかね「あー、せやな……。そろそろ帰ろか、思とったとこや」

みゆき「そうなんだー。今日、あかねちゃんはバレー部の練習かと思ってたんだけど、早く終わったんだね」


あかね(……!)ギクッ


あかね「……ああ、うん、まあな」


あかね("バレー部辞めなあかんのか、と思たら調子出んで早退した" ……なんて言えへんな……。いらん心配させてまう……)

みゆき「あ、そうだ! そしたら、あかねちゃん。これからふしぎ図書館行かない? れいかちゃんがおいしいお茶もらったっていうから、みんなでお菓子持ってきてお茶会するんだぁ!」

あかね「そうなん? 楽しそやなぁ……」

みゆき「ねぇー、行こうよ行こうよぉー!」

あかね「うーん……」


あかね(ほんま、楽しそうや……。せやけど……)


あかね「……ゴメン、みゆき。今日はちょっとパスするわ」

みゆき「えぇ!? なんでぇー?」

あかね「ちょっとやらなあかんことがあんねん。ほんまは行きたいんやけど……、今回はみんなだけで楽しんでや」

みゆき「そっかぁ……。じゃあ、しょうがないね……」

あかね「せっかく誘ってもろたのに、ゴメンな」

みゆき「ううん! 気にしないでよ! また今度遊ぼうね!」

あかね「うん。ほんじゃ、またな」


スタスタスタ…


あかね(……今は、お好み焼きとバレーの問題をどうするか考えなあかん。とてもやないけど、遊ぶ気になれへんわ……)

みゆき「…………」

キャンディ「みゆき……。あかね、何だか元気なかったクル?」

みゆき「キャンディもそう思う?」

キャンディ「クルぅ……。いつものスマイルがなかったクル……」

みゆき「うん、そう、だよね……。何かあったのかな……」

〜 お好み焼き屋 "あかね" 〜

あかね「ただいまー……」

正子(あかね母)「ああ、おかえり、あかね! ……ん? どしたんや? 元気ないなぁ」

あかね「んー、ちょっと、な……。でもま、手伝いはするわ。母ちゃん、エプロン出してくれる?」


大悟「……待ちや、あかね。今日は手伝いはいらへんわ。部屋に戻っとき」

あかね「……! 何で……?」

大悟「何でもヘチマもあるかい。そんなしょぼくれた顔で鉄板の前に立っとったら、せっかくのお好み焼きもマズくなってまうわ。引っ込んどき」

あかね「……わかったわ……」


トボトボトボ…

正子「どしたんやろ。元気が取り得のあかねが、あんなしょぼくれてもーて……」

大悟「……昨日の話が大分こたえたんやろ」

正子「昨日の話? 父ちゃん、あかねに何か言うたん?」

大悟「うちの店継ぐなら、バレーボール辞めて修行に専念せえ、ってな」

正子「なっ……!? そんなこと言うたん!? そりゃ悩んで当たり前やわ! あかね、まだ中学生やで!? 色々やりたい盛りやのに……!」

大悟「せやけどな、母さん。いつかは何とかせなあかん話や。あいつが本気でお好み焼き屋やりたいんなら、避けては通れへんことや」

正子「そうかもしれへんけど……、キツすぎるわぁ、そんなん……」

大悟「それでも、ちゃんと悩んで、しっかり考えて、答えを出さんとあかんのや。あいつが一人前になるにはな」

〜 日野家 あかね自室 〜

バフッ


あかね「はぁー……」

ウルルン「帰ってくるなりベッドに飛び込んでため息たぁ……重症ウル。ホントにどうしたウル、あかね? 何かあったウル?」

あかね「……別に。なんでもあらへん」

ウルルン「それが何でもない、ってツラウル? どよーんとした顔しやがって。……お前らしくねぇウル」

あかね「何でもない、ゆーとるやろ。どうせ言うたってどうにもならへん。……ええから、ほっといてや」

ウルルン「……!」カチン

ウルルン「……あー、そうかいそうかい! 人が心配してやってんのに、いらん、ときたウル! そんなら、もういいウル!」


トテトテトテ


ウルルン「他のヤツらはふしぎ図書館にいるって言ってたウル。おれも行ってくるウル。ここでシケたツラしてるお前といるよりはずーっと楽しそうだウル!」

あかね「……そか、勝手にしいや」

ウルルン「〜〜〜っ! けっ!」


ウルルン「本棚にスキマ作って……」


ザッ


ウルルン「気合を入れる、と……ふんっ!」


パァッ…! シュンッ


あかね(妖精一人でもふしぎ図書館行けるんやな。まあ、これで静かになってええわ。……ゆっくり考えよ)

〜 ふしぎ図書館 〜

れいか「はい、皆さん、お茶が入りましたよ」

なお「お茶請けに羊かんも持ってきたよ! 一緒に食べよう!」

やよい「あ、でも、お茶って日本のお茶なんだぁ……。お砂糖入れられる紅茶だったら飲めるんだけど、日本のお茶ってニガくてニガテなんだよね……」

れいか「ふふふ。やよいさん、だまされたと思って飲んでみてください。きっとおいしいですよ」

やよい「うーん、じゃ、じゃあ……、えいっ」グイッ


やよい「……あれ? 甘ぁい! このお茶甘いよ!? どうしてぇ!?」

れいか「これは "玉露" という特別なお茶なんです。玉露にも色々種類はあるのですが、特に味が甘かったので、皆さんのお口に合うかと思って持ってきました」

やよい「うんうん! これならいっぱい飲めちゃうよ!」

オニニン「甘いお茶? ホントオニ? やよい、ちょっとくれオニ!」

やよい「うん、いいよ! はい!」

オニニン「(グイッ) ……おおっ、ホントに甘いオニ! おいしいオニーっ!」

れいか「喜んでもらえてよかったです!」

みゆき「…………」

なお「あれ? みゆきちゃん、どうしたの? お茶もおやつもいらないの?」

マジョリン「ひっひっひ! いらないんならあたしが——」ソーッ


ペシンッ


マジョリン「あいたっ!」

なお「こら、マジョリン! 人のもの勝手に取ったらダメでしょ!」

マジョリン「だからって手たたく事ないマジョ!」

みゆき「マジョリン、欲しかったらあげる。食べていいよ」

マジョリン「ホントマジョ!? それじゃあ遠慮なくいただくマジョ!」モグモグ

なお「あーっ、結局羊かん食べちゃった!」

マジョリン「みゆきがいい、って言ったんだからいいんだマジョー」モグモグ

なお「まったく、もう!」

れいか「でも、みゆきさん、お茶も羊かんもキライなわけではありませんよね? どうかしたんですか?」

みゆき「うん……。ちょっと気になることがあるの……。さっきからそのことばっかり考えちゃうから食べづらくって……」

やよい「気になること?」


なお「……もしかして、あかねのこと?」

みゆき「えっ!? そうだけど、なおちゃん、なんでわかったの……?」

なお「みゆきちゃんが考え込んでる時は、大体誰かのことを気にしてる時だもん。だから、今いないあかねのことかなー、って」


なお「……それに、実はさ、さっきからあたしもちょっと思ってたんだよね。こうしてても、"何か物足りない" って」

れいか「確かに……。あかねさん、とてもにぎやかですものね」

ポップ「そうでござるなぁ……。あかね殿がいないだけで、火が消えてしまったようでござる……」

やよい「うん。ちょっと……さびしいね」

みゆき「…………」

あかね(幻)『おっ、なんやみゆき、羊かんいらへんのかいな? ほんならうちがもろたろー! ぱくっ』


やよい「…………」

あかね(幻)『にししー。やよいお子ちゃまやからなぁー。甘いお茶がピッタリや!』


なお「…………」

あかね(幻)『なお、その羊かん貸してや! うちのホットプレート使て、"あんこ巻き" ならぬ "羊かん巻き" 作ったる! ウマいかどうかは知らへんけどなー』


れいか「…………」

あかね(幻)『へぇー……、さっすがれいか! いろんなこと知っとんなぁー! うち、甘いお茶なんか知らんかったわ!』

やよい「そういえば、どうして今日はあかねちゃんいないの?」

みゆき「うん、実はさっき誘ったんだけどね、"やることがあって行けない" って断られちゃって……」

キャンディ「その時のあかね、なんだか元気なかったクル……」

れいか「そうなのですか? 何か、困っているのでしょうか……」

なお「……ちょっと気になるね」

バタンッ


ウルルン「おーっす、お前ら! ウルルンさまが来たウルー!」

みゆき「あっ、ウルルン! っていうことは、あかねちゃんも!?」

ウルルン「あん? あかね? あかねはいないウル。おれだけウル」

みゆき「……なぁんだ……」

ウルルン「なんだ、はないウル! ったく、せっかく遊びに来たのに、こっちでもヒドい扱いウル! やってらんねーウル!」プンスカ

なお「"こっちでも" ? ウルルン、どういうこと? あかねとなんかあったの?」

ウルルン「おお、そうだウル。聞いてくれウル! あかね、昨日からずーっと元気ないんだけどよ、理由聞いたら "言うたってどうにもならへん" って言われたウル! ひどいと思わねーウル!?」

みゆき「そっか……。……あかねちゃん、やっぱり元気ないんだ……」


なお「…………」

ポンッ


みゆき「? なおちゃん……?」

なお「あかねの事、心配なんでしょ? ならさ、会いに行ってみようよ!」

れいか「そうですね。あかねさんに元気がないのなら、気になりますし」

やよい「あかねちゃんに直接聞いてみよう? わたし達にできることがあるかもしれないよ」

みゆき「……うん、そうだね!」


みゆき「じゃあ、これからあかねちゃんちに行ってみよう!」

やよい・なお・れいか「おーっ!」

ウルルン「……お、おい、ちょっと待つウル。あかね誘った時にみゆきが言ってたお茶とお菓子はどうしたウル? おれはそれが楽しみで来たってのに……」

マジョリン「お前の分はもうないマジョー。羊かん全部あたしが食べちゃったマジョ」

オニニン「お茶も全部おれ様が飲んじゃったオニ」

ウルルン「お、お前ら……! じゃあ何しにこっち来たのかわからねーウル! どうしてくれんだウル!」


ポップ「ほら、皆の衆! 早く来ないと置いてくでござるよ!」

キャンディ「そうクル! みんなであかねのところに行くクル!」


マジョリン「……だってマジョ。ほら、さっさと行くマジョ」

オニニン「運が悪かったと思ってあきらめるオニ」

ウルルン「……ふんだりけったりだウル……」

〜 お好み焼き屋 "あかね" 〜

ガラッ


大悟「へい、らっしゃ——」


大悟「——母さん、部屋行って、あかね呼んできてくれへんか? わい、ちょっと食材の買出し行ってくるから、店番、あかねにやらせや」

正子「はいはい。……ふふふ。全く、あかねのために席外すのに、わざわざ言い訳まで作って。素直やないんやから」

大悟「……やかましわ。ほな、頼んだで。ちゅーわけやから、皆さん、ちょっと待っとってな」

〜 日野家 あかね自室 〜

あかね(…………)ボーッ


正子「あかねーっ! お客さん来たで! 父ちゃん今、外出てもーたから、代わりに店番したってやー!」


あかね(……店番? ええけど、なんやねん、さっきは "引っ込んどけ" 言うといて……)

正子「あかねーっ! 早よ頼むわーっ!」

あかね「……わかったわかった! 今行くわー!」

〜 日野家 廊下 〜

正子「いやー、ゴメンなぁ、あかね。母ちゃんもちょっと外すから、後よろしゅーな」

あかね「え? じゃあうち一人でやるん? 別にええけど」

正子「まあ、そんなにお客さん多ないから、あかね一人でも大丈夫やろ。ほな、頼むわ」

あかね「……ん、わかったわ。うちがやっとく」


スタスタスタ…


正子(……一人にしたるから気兼ねなく応援してもらいや、あかね)

〜 お好み焼き屋 "あかね" 〜

あかね「……いらっしゃ——」


みゆき「おーい、あかねちゃーん! 来ちゃった!」

やよい「おジャマしてまーす!」


あかね「——! みんな……なんで……。ふしぎ図書館でお茶しとったんやないの?」


なお「そうだったんだけどね。なんか、あかねがいないとさびしいね、って話になってさ」

れいか「それで、みんなでこちらに来てみよう、という話になったんです」

みゆき「と、いうわけだから、お好み焼き一丁! お願いしまーす!」


あかね「……はは。わかったわ」

ジュージュー…


なお「……ところであかね。みゆきちゃんから聞いたよ。なんか、元気ないんだって?」

あかね「みゆき、そんなことゆーとったの?」

みゆき「うん……。お誘い断られた時、そんな風に見えたから、気になっちゃって……」

あかね「……気のせいちゃうか? 別にうち、落ち込んだりしてへんで?」

なお「あかね。隠したってダメだよ。"元気ない" って顔に書いてあるから」

あかね「…………」


あかね「……全く、ほんまなおにはかなわんなぁ。何でもお見通しやな」

れいか「では、やはり何か原因があるのですね」

やよい「何か悩んでるなら聞かせてよ。わたし達、お手伝いするから!」


あかね「……おおきに、みんな。……せやけど、これだけは言えへんのや。ゴメンな、わざわざ来てもろたのに」

なお「あかね……。あたし達にも言えないことなの?」

あかね「…………(コクン)」

あかね「確かにみんなの言う通り、うちは今、ある事で悩んどる」

あかね「そんなうちを心配してくれんのは、ほんまうれしいねん。ほんま、ありがたいねん……!」

あかね「せやけど、こればっかりはみんなを頼るわけにはいかへんのや。うちにとって、めっちゃ……めっちゃ大事なことやから、自分だけで考えて答え出さんとあかん。そう思うんや」

あかね「せやから……ほんまゴメン! しばらく、一人で考えさせてほしいんや」


一同「…………」

なお「……わかった。もう何も聞かないよ」

れいか「……そうですね。あかねさんがそこまで言うのでしたら、私達は黙って見守りたいと思います」

やよい「うん。一人でガンバらないといけないことがある、っていうのは、わたしもよくわかるもん」


あかね「なお……、れいか……、やよい……」

なお「それじゃ、今日のところはもう帰ろうか。あかねのジャマになっちゃうし」

やよい「うん、そうだね。お好み焼き、ごちそうさまでした」

れいか「あかねさん、何か力になれる事がありましたら、いつでも私達に言ってくださいね」

あかね「わかった。みんなが来てくれて、元気湧いてきたわ。ほんま、おおきにな!」

みゆき「……うん。じゃあね、あかねちゃん。また……明日」

あかね「うん。ほなな」

〜 お好み焼き屋 "あかね" 前 〜

やよい「……それにしても、あかねちゃんの悩みってなんだろう? 人にも言えないだなんて……」

れいか「人それぞれ、抱える悩みは違いますから……。私達にはわかりかねますね」

なお「あかねの様子からして、れいかの言う通り、見守ることしかできなさそうだね……」

みゆき「うん……、そう、だね……」


みゆき(…………)


みゆき(……本当に、ないのかな……。わたし達が、今のあかねちゃんにしてあげられること……)

〜 1時間後 お好み焼き屋 "あかね" 〜

あかね(今日、お客さん来ぃへんなぁ……。父ちゃんも戻ってこんし。お好み焼きの練習でもしよかな……)


ガラッ


あかね「あ、いらっしゃ——」


みゆき「…………」


あかね「……みゆき……!? なんでまた来たん? 帰ったんちゃうの?」

みゆき「……また、お好み焼き食べたくなっちゃって。もう一回、焼いてくれないかなぁ?」

あかね「せやけど、さっき食べたばっかりやん。ええの?」

みゆき「うん。お願い」

あかね「……わかったわ」

ジュージュー…


あかね「——ほい、焼けたで。食べや」

みゆき「うん、ありがと」


モグモグ


みゆき「……やっぱり。あかねちゃん、さっき "元気になった" って言ってたけど、まだちょっと、元気ないよね」

あかね「……みゆき……?」

みゆき「わかるんだ。お好み焼きの味から、あかねちゃんの元気が伝わってこないから」

みゆき「……ねぇ、あかねちゃん。わたし達が 3年生になった時の、始業式の日のこと、憶えてる?」

あかね「ああ、みんなでここ来てお好み焼き食べた時のことやろ? それが、どうかしたん?」

みゆき「あの時、元気なかったわたしのために、特製のお好み焼き焼いてくれたよね。"元気出して" って」


みゆき「……わたしね、あの時のお好み焼きの味が忘れらないんだぁ。あかねちゃんの気持ちが、とってもおいしくて……うれしかったから」

みゆき「それに、あの時だけじゃないよ。わたしが落ち込んだり、元気ない時は、いっつもあかねちゃんが元気づけてくれた。あかねちゃん、憶えてるかなぁ?」


みゆき「…………」

みゆき「……あかねちゃんっ!」

あかね「わっ! な、なんや、急に大きな声出して!?」


みゆき「わたし、わたしね、なんにもできないかもしれないけど……、力になれないかもしれないけど……っ」

みゆき「あかねちゃんが元気ない時は、わたしが元気づけてあげたい! 応援してあげたいの!」

みゆき「それでね……、またおいしいお好み焼きを焼いてほしいの! あかねちゃんの元気の出るお好み焼きが、わたし……大好きだから!」


あかね「みゆき……!」


あかね「…………」

あかね「……みゆき、お好み焼き、もう一枚どや?」

みゆき「えっ? うん、作ってもらえるなら食べるけど……」

あかね「ん。ほんなら、ちょっと待ってな」


ジュージュー…


あかね「——できたで。みゆき、食べてみてや」

みゆき「うん、いただきます」モグモグ


みゆき「……! あかねちゃん、これ……!」

あかね「うまいやろ? ……"元気の味"、するか?」

みゆき「うんっ! さっきと全然違う! すっごくおいしいよ!」

あかね「せやろせやろ。みゆきの応援に元気いっぱいもろたからな。……うちを想ってくれるみゆきの気持ち、バッチリ伝わったで」

みゆき「……あかねちゃん……!」

あかね「さっき、みゆき、言うてたな。"うちにはいつも元気づけてもろとる" って」

あかね「それ、うちも同じやで。うちも、みゆきの笑顔にはいつだって元気もらっとるんや」


あかね「……正直、みゆきの言う通り、さっきまではカラ元気やったわ」

あかね「せやけど、今はちゃう。みゆきにはげましてもろて、つらい悩み事にもガンバって立ち向かって行こ、って気がバンバン湧いてきた。うまくいくかどうかはわからへんけど、精一杯やってみるわ!」

あかね「そう思えるのも、みゆきのおかげやで! ほんま、おおきにな!」ニコッ

みゆき「……!」


みゆき「それだよ、あかねちゃんっ! やっぱり、あかねちゃんはスマイルじゃないと!」

あかね「せやな! 太陽みたいにサンサンとしとるんがうちやもんな! 落ちこんどるなんて、うちらしくあらへんわ! 熱血パワー全開でいくでぇっ!」

みゆき「その意気だよ、あかねちゃん! ガンバって!」

あかね「うんっ!」

〜 日野家 廊下 〜


コソコソ


大悟「……どや、あかねの様子は」

正子「ええ感じみたいやわ。って、父ちゃん。わざわざ勝手口から入ってきてまでコソコソせんでもええやないの」

大悟「せやから、わいが関わったら意味ない、言うとるやろ。あくまで、あいつが自分で何とかせなあかんのや」

正子「ふふっ。ほんまはあかねが心配でしゃーないんやないの? ムリしちゃって」

大悟「……やかましわって」


大悟「……にしても、困った時にお互いに助け合える、なんて……、ええ友達持ったな、あいつ」

正子「そやな……。あれならきっと、ええ答えが出せるんやない?」

大悟「ああ。楽しみに待っとるわ」

〜 七色ヶ丘中学校 バレーボールコート 〜

あかね「よっ!」バッ


バシッ! ズバァンッ!


あかね「ぃよっしゃぁっ! どやっ!」

2年バレー部員・なみ「すごいスパイク……!」

バレー部 キャプテン・ゆか「……どうしたの、あかね。昨日はあんなに調子悪そうだったのに……」

あかね「にししっ、ちょっとええことあったんや。昨日、あかんかった分、今日は気合入れていくで! みんなも、声出してこーや!」

バレー部員達「はいっ!」


あかね(辞めるのなんのは一旦抜きや! 本気で当たって、自分にとってのバレーの大切さ、確かめるんや!)

3年バレー部員A「あたし達もあかねに負けてらんないね! みんな、走りこみ行くよ!」

2年バレー部員A「はい!」

3年バレー部員A「七中バレー部! ファイッ、オーッ!」

2年バレー部員A「ファイッ、オーッ!」


バレー部 キャプテン・ゆか(あかねの声でみんなにやる気があふれてく……)


バレー部 キャプテン・ゆか(やっぱり、あかねは——)

〜 練習終了後 七色ヶ丘中学校 バレーボールコート 〜

あかね(ふぅ、今日はええ感じやったわ。……みゆきにもろた元気のおかげかな。にししっ)


バレー部 キャプテン・ゆか「あかね、ちょっといい? 話があるんだけど」

あかね「ん? 何や、ゆか。改まって」


バレー部 キャプテン・ゆか「あかね、気付いた? 今日、部員みんながやる気満々で練習してたよ」

あかね「そうやった? いつもこんな感じやない?」

バレー部 キャプテン・ゆか「……やっぱり気付かないよね。あかねから見ると」

あかね「?? ゆか、何の話しとんの? ようわからんのやけど……」

バレー部 キャプテン・ゆか「みんながやる気になれるのって、あかねがいるからなんだよ」

あかね「……へ? うちが?」

バレー部 キャプテン・ゆか「そ。あかねの元気がみんなに伝わるから、みんなハリキって練習できるんだよ」

バレー部 キャプテン・ゆか「昨日なんて、ひどかったんだから。あかね一人いないだけでみーんな元気なくなっちゃって。練習にならないから、結局、あかねが帰った後すぐに解散しちゃったんだよ」

バレー部 キャプテン・ゆか「……その時、わかったんだ。七中バレー部には、あかねが必要なんだ、って」

あかね「……ゆか……」

バレー部 キャプテン・ゆか「……わたし達 3年だから、今年で中学最後のバレーでしょ。最後の大会も近づいてきてる」

バレー部 キャプテン・ゆか「わたしがいて、みんながいて、あかねがいて。今のチームって最高だな、ってわたし、思ってるんだ。だから最後まで思いっきりやりたい」

バレー部 キャプテン・ゆか「あかね、力を貸して。わたし達が精一杯ガンバりきれるように」


スッ

あかね(……ゆかの手。これ取ったら、うちバレーボールを選ぶことになるな)

あかね(お好み焼きか、バレーか。今、ちゃんと決めなあかんな)


あかね(……うちは……)

みゆき(回想)『あかねちゃんの元気の出るお好み焼きが、わたし……大好きだから!』


バレー部 キャプテン・ゆか(回想)『七中バレー部には、あかねが必要なんだ、って』


あかね(…………)

ガシッ


あかね「……もちろんや、ゆか! 悔いが残らんよう、全力で駆け抜けようや! うちら、みんなで!」

ゆか「あかね……! ありがとう!」

あかね(……何を迷っとったんや、うちは。最初っから答えは一つだけやったんや)


あかね(みゆき、ゆか、プリキュアのみんな、バレー部のみんながやっと気付かせてくれた。うちにとってのお好み焼きの大切さ、バレーボールの大切さを)


あかね(もう、ハラは決まったわ。後は全力でぶつかるだけや!)

〜 ギャラリー・D 〜

シアンナ「…………」ガサッ


ビリーズ「何してんだ、シアンナ? そりゃ手紙か?」

シアンナ「……ええ、そうよ。本国からの、ね」

セルリア「……何て……書いてあるの……?」

シアンナ「お叱りの言葉よ。"濁った絵の具の集まりが悪い。もっと励むように" ですって」

ビリーズ「はぁー……、オレらもサボってるわけじゃねーんだけどな……。もうちょっとさぁ、なんつーかこう……はげましてくれてもよくね?」

シアンナ「仕事だもの。成果が出なければ意味が無いわ」

ビリーズ「……わかってんけどよ」

ビリーズ「……っつーか、オレらがうまくいってねーのって、全部あいつらのせいじゃねーか! プリキュア!」

ビリーズ「あいつらさえいなきゃ、今頃 "心の絵の具" ガッポガッポどころか、"夢の絵の具" だってゲットできてるかもしれねえのによ!」

シアンナ「ええ、そうね……、その通りね。プリキュア……彼女達さえいなければ……」


セルリア「……でも……あいつら……悔しいけど……手ごわい……」

ビリーズ「そうなんだよなぁ! 認めたくねーけどよ!」

セルリア「……せめて……数が……少なければ……何とか……なるのに……」

ビリーズ「でも、一人の時を狙ってもどっかから他のが集まってくんだろ? うっとおしいったらねーな!」

シアンナ「…………」

シアンナ「……今回は私が行くわ。考えがあるの」

ビリーズ「考え? 何する気だよ?」

シアンナ「まあ、見てなさい。それじゃあ、行ってくるわね……」シュバッ



セルリア「…………」

ビリーズ「考え、ってなんだろーな? セルリア、わかるか?」

セルリア「……少なくとも……お前には……思いつかないような……ことだと思う……」

ビリーズ「……なぁ、なんでお前、そんなオレにつっかかんの? オレ、何かした?」


セルリア(……出る前の……シアンナ……。……顔が……暗かった……。……どうしたんだろう……)

〜 日野家 帰路 〜

シアンナ(確かに、プリキュアは 5人集まれば厄介な力を発揮する。ならば……今回はその分断に全力を注ぐ。一人ずつなら倒せるはず)

シアンナ(今回は "心の絵の具" の回収は考えない。狙うは、その邪魔をするプリキュアの排除……!)


シアンナ(……本当は、こんな作戦なんて使いたくない。"実力では勝てない" と認めることになってしまう……)

シアンナ(けれど、仕方がない。これも全ては任務のため……!)

シアンナ(さて……じゃあ、まずは一人で行動しているプリキュアを探して——)


あかね「————」スタスタスタ


シアンナ(! 言ってるそばから現れたわ。……運があるわね)

シアンナ(でもここで見つかっては意味が無い。一旦身を隠さなければ)ササッ


あかね「————」スタスタスタ…


シアンナ(……行ったわね。じゃあ、作戦開始よ)

シアンナ「闇の絵の具よ! 闇の絵筆よ! キャンバスに絶望を描き出せ!」


シュババババッ


シアンナ「実体を持ってキャンバスから現れよ、アキラメーナ!」


ポンッ ポポポポポンッ


兵隊型アキラメーナ達「アキラメーナ!」


シアンナ「いい? あなた達は他のプリキュアを探して足止めをするのよ。行きなさい!」


兵隊型アキラメーナ達「アキラメーナ!」トテテテテテテ…


シアンナ(力は無いけど数は多いあのアキラメーナ達なら、時間稼ぎには最適だわ)

シアンナ(その隙に私は、一人でいるキュアサニーを……倒す!)

〜 お好み焼き屋 "あかね" 〜

ガラッ


あかね「ただいま!」

大悟「おぉ、おかえり」

あかね「……お客さん、おらへんな」

大悟「ん? ああ、まだちょい時間早いからな。もうぼちぼち来るやろ」

あかね「なら、ちょうどええわ。父ちゃん、話したいことがあんねん」

大悟「……例の話か。答え、出たんか?」

あかね「うん」

大悟「……わかった、聞いたろ。……せやけど、話の途中でお客さん来てもなんや。あかね、"準備中" にしてきや」

あかね「わかったわ」

〜 お好み焼き屋 "あかね" 前 〜

ガラッ


シアンナ「こんにちは」

あかね「!? あんた……! なんでここに!?」


大悟「あちゃ、間ぁ悪いなぁ……。お客さん来てもーたんか? あかね、話はまた後で——」

あかね「父ちゃん! こいつ、お客さんちゃう! 危ないからどこかに隠れてや!」

大悟「はぁ? 何ゆーとんのや、お前?」


シアンナ「……もう遅いわ」ニヤッ

シアンナ「闇の絵の具よ! 闇の絵筆よ! キャンバスに絶望を描き出せ!」


シュババババッ


シアンナ「実体を持ってキャンバスから現れよ、アキラメーナ!」


ズズズズズズ…


アキラメーナ(割りばし型)「アキラメーナァッ!」


大悟「な、なんやあれ……! 割りばしの、オバケ……!?」

シアンナ「アキラメーナ。一応、心を吸い取りなさい」

アキラメーナ(割りばし型)「アキラメーナァ!」


ズワァァァァァッ…


大悟「うっ……、な、なんや……。立ってられへ……」バタッ

あかね「父ちゃんっ!」

チャポ チャポ キラキラキラ


シアンナ「…… "心の絵の具"、輝いているわね。できれば濁った絵の具が欲しかったのだけど」

あかね「当たり前や! 父ちゃんがお好み焼き焼くのにどんだけガンバっとると思ってんねん! 心が濁っとるわけないやろ!」

シアンナ「そう。でも、今回はそれはどうでもいいのよ。なぜなら、私の狙いはキュアサニー、あなたなのだから」

あかね「え……? うちが狙い……?」


トテトテトテ


ウルルン「あかね! ぼーっとしてる場合じゃないウル! あいつが何したいかわかんねーけど、変身してさっさとやっつけるウル!」

あかね「……せやな! 行くで、ウルルン!」

ウルルン「おうウル!」

ウルルン「デコル・チェーンジ!」

パチンッ!

レディ!

あかね「プリキュア! スマイルチャージ!!」

ゴー!

ゴーゴー! レッツゴー、サニー!!


サニー「太陽サンサン、熱血パワー! キュアサニー!!」

シアンナ「今日は最初から全力で行かせてもらうわ。アキラメーナ!」

アキラメーナ(割りばし型)「アキラメーナァ!」


バチンッ!


ウルルン(デコル)「!? なんだ、あいつ! 2つに割れたウル!」

サニー「まあ、割れてなんぼの割りばしやしなぁ」

アキラメーナ(割りばし型・右側)「アキラメーナァッ!」ゴォッ!

ウルルン(デコル)「のんきな事言ってる場合ウル!? 突っ込んでくるウル!」

サニー「大丈夫やって! 前も同じようなことしとったけど、2つになるようなヤツはその分弱なるから、大したことあらへん! こんくらい、受け止めたるわ!」

シアンナ「……そううまくいくかしら?」ニヤッ


ドガッ!

ズザザザザザッ!


サニー「……!? な、なんや、すごい……パワーや……! 止まらへん……!」

アキラメーナ(割りばし型・右側)「アキラメーナァッ!」


ドカァァァン!


サニー「うぁっ!?」

ウルルン(デコル)「サニー!」

サニー「……なんでや……? 前に戦った電車のヤツはカンタンに止められたのに……!」

シアンナ「そういえば、言ってなかったわね。私達はアキラメーナを作れば作るほど経験が蓄積されて、より強力なアキラメーナを作り出せるようになるのよ。前のものと同じ強さだとは思わないことね」

サニー「くっ……! そんなら、受け止める前にこっちから叩き落としたるわ!」ダッ

サニー「だぁぁぁっ!」ブンッ

アキラメーナ(割りばし型・右側)「アガガガガッ!」ヒョイッ

サニー「パンチ避けた!? うぅーっ、このっ! このっ!」ブンッ ブンッ

アキラメーナ(割りばし型・右側)「アガッ! アガッ!」ヒョイッ ヒョイッ

サニー「なんやねん、チョロチョロしよって! やる気あんのかい!」

ウルルン(デコル)「!? サニー! 後ろだウル!」

サニー「えっ!?」

アキラメーナ(割りばし型・左側)「アキラメーナァッ!」ゴォッ!


ドカァァァン!


サニー「うあぁぁぁぁっ!?」ドサァッ


シアンナ「計算通り。やはり、一人で 2体を相手にはできないわね。あの時のキュアハッピーのように」


サニー「う……くっ……」

サニー「……へへっ。せやけど、それならオチも一緒やろ……! うち一人じゃかなわなくても、すぐにみんなが来てくれるわ!」

シアンナ「……ふふっ、それはどうかしら。今日、彼女達は助けに来られないと思うわ」

サニー「……? なんや? どういうことや」

シアンナ「なぜなら、彼女達は今頃——」

〜 七色ヶ丘市 道路 〜

兵隊型アキラメーナ達「アキラメーナ! アキラメーナ!」ピョン ピョン

ハッピー「えいっ! このっ!」スカッ スカッ

兵隊型アキラメーナ達「アキラメーナ! アキラメーナ!」ピョン ピョン

ハッピー「もーっ! ちっちゃい上にピョンピョンしてて当たんないよー!」

ピース「もう少しで……捕まえ——(スカッ) られなーい! ……ひゃっ!?」ドテッ


マーチ「下校中に突然現れたから変身したはいいものの……、さっきっから逃げ回ってばっかり! 何がしたいの!?」

ビューティ「心を吸うわけでもなければ、特に攻撃を仕掛けてくる様子もない……。と、なると、これは……」

ビューティ「……はっ! 皆さん! これはおそらく時間稼ぎです! 私達をここに足止めするための!」

マーチ「時間稼ぎ、って、何のために……!?」

ビューティ「推測ですが……、今ここにいないサニーが一人で襲われているのかもしれません!」

ピース「じゃあ、時間稼ぎって、わたし達がサニーを助けられないようにするためなの!?」

ビューティ「おそらく……!」

ハッピー「そんな……! じゃあ、急いでやっつけてサニーのところに行かなきゃ!」

ビューティ「そうしたいのはやまやまですが……!」


兵隊型アキラメーナ達「アキラメーナ! アキラメーナ!」ピョン ピョン


マーチ「この数であのすばしっこさじゃ、大分時間かかっちゃうね……!」


ハッピー「でも……、でもガンバらなきゃ! サニーを一人にしておけないよ!」

ビューティ「……そうですね。では、皆さん! タイミングを合わせて、一つ一つ地道に仕留めましょう!」

ピース「うん、わかった!」


ハッピー(サニー……! 待ってて、すぐ行くからね……!)

〜 お好み焼き屋 "あかね" 前 〜

アキラメーナ(割りばし型・左側)「アキラメーナァッ!」ドカァッ!

サニー「うっ!? ……このっ!」ブンッ


スカッ


アキラメーナ(割りばし型・右側)「アキラメーナァッ!」ドカァッ!

サニー「うあっ!?」

ウルルン(デコル)「サニーっ!」

サニー「……はあっ……はぁっ……」

ウルルン(デコル)「他のみんなは足止めされて助けに来られねえ……。おまけに、敵は 2体で次々攻撃してきやがる……! 大ピンチだウル……!」


サニー「……まだ……まだや……! うちは、まだやれんで……!」グググ…

シアンナ「……呆れるわね。まだやる気なの? アキラメーナのコンビネーションは完璧よ。一方が退けば、一方が押す。この 2体を一人で倒すのは無理だわ」

サニー「……勝負は……終わるまで……わからんやろ……!」

シアンナ「諦めの悪い子。……そういえば、この世界には今のあなたに丁度いい言葉があるわね」


シアンナ「"二兎を追う者は一兎をも得ず"」

サニー「!」

シアンナ「確か意味は、"二羽の兎を同時に追えば、両方とも捕まえられない" というたとえ話から転じて、"二つの事を同時にやろうとするとどちらもうまくいかない" ……だったかしら」

シアンナ「一人で二つの事をやるのなんて無理なのよ。大人しく諦めなさい」


アキラメーナ(割りばし型・左側)「アキラメーナ!」

アキラメーナ(割りばし型・右側)「アキラメーナ!」


サニー「…………」

サニー「……いやや。うち、絶対にあきらめへん」

シアンナ「そう。……まあ、いいわ。諦めないのはあなたの勝手。こちらはやるべき事をやらせてもらうわ。アキラメーナ! トドメよ」


アキラメーナ(割りばし型・左側)「アキラメーナァッ!」ゴォッ

サニー「…………っ!」グッ


ドガッ!

ズザザザザザッ!


サニー「……くっ……! だぁぁぁぁぁぁっ!」


ザザザザザ… ピタッ


アキラメーナ(割りばし型・左側)「ア、アガッ!?」

シアンナ「アキラメーナの突進を止めた……!? まだそんな力が……!」


サニー「…… "二兎を追う者は一兎をも得ず" か。確かに、ウサギを二匹いっしょに追いかけたら、どっちも捕まえられへんな」

サニー「せやけど、その二匹のウサギがどっちもほんまに大事なもんやったら、どないしたらええんやろな? どっちかあきらめなあかんのかな」

シアンナ「……? 何を言ってるの?」

サニー「うち、自分の好きな二つのことのうち、どっちかしかガンバれなあかんことになって、めっちゃ悩んどった」

サニー「でもな、そんな時、それぞれのことでうちに言葉をかけてくれた友達がおったんや」


サニー「片っぽじゃ、"うちのおかげで元気になれるからガンバってほしい" って言われた」

サニー「もう片っぽじゃ、"うちがおると活気が出るから力を貸してほしい" って言われた」


サニー「それで気付いたんや。うちにとって大切なこと……本気でやりたいことは、"うちのおかげで他のみんなが元気になれることや" って」

サニー「お好み焼きも、バレーボールも、うちがやるとみんなが元気になってくれるから大切やった、ってこと、思い出せたんや」

サニー「みんなを元気にしたい……。そのためやったら、どんなツラくてもガンバりたい、って、そう思った」

サニー「せやからうち、決めたんや。"自分が本気でやりたいことは、どれも絶対にあきらめへん" って」


サニー「"二兎を追って二兎とも得る" ! それがうちの出した答えや!!」

シアンナ「……何の話をしているのかわからないけれど、それが無理だ、という話をしていたのよ? 実際、どうやって二兎を得る気なの?」

サニー「決まっとるやろ……! ド根性でめいっぱいガンバるんや! ほんまに大切な事のためやったら、根性なんてなんぼでも出してみせるわ!!」

シアンナ「……呆れた。結局何も考えてないじゃない。考えのなさじゃあ、うちのビリーズといい勝負だわ」


シアンナ「じゃあ、その "根性" とやらで、今のこの状況をどうにかできるのかしら。片方を抱えて動けない状況で、もう片方が攻撃してくる、この状況を」

アキラメーナ(割りばし型・右側)「アキラメーナァッ!」ゴォッ


サニー「やったるわ……! うちにとって大事な事をやるために……こんなところでやられるわけには……いかへんのやぁっ!!」グアッ

アキラメーナ(割りばし型・左側)「アガガッ!?」

シアンナ「アキラメーナを担ぎ上げた……!? バカな……そんなことができる重量ではないはず……!?」

サニー「見とき……! これが……これがうちの……ド根性やぁぁぁぁっ!!」ブンッ!


ドガァァァァァン!!


アキラメーナ(割りばし型・左側)「アガァァァッ!?」
アキラメーナ(割りばし型・右側)「アガァァァッ!?」


シアンナ「アキラメーナの片方でもう片方を叩いた……!? 本当に一人で 2体を制してしまった……!」


シアンナ「……でも……」ニヤリ

サニー「(フラッ) ……!? うっ……」ガクッ

ウルルン(デコル)「サニー! 大丈夫ウル!?」

サニー「さ……さすがにちょっと……しんどいわ……」


シアンナ「あれだけ無理をすれば当然だわ。ふふふ、あと少しだったのに、残念だったわね。では、遠慮なくトドメを——」


ハッピー「そこまでだよっ!」


ババババッ


シアンナ「他のプリキュア……!? しまった……時間がかかりすぎた……!」


サニー「……みんな……! ジャマされてた、って聞いてたのに、来てくれたんか……!」

ピース「もちろんだよ! ……ここまで来るのはちょっとタイヘンだったけど」

マーチ「ゴメン、サニー! 遅くなっちゃった!」

ビューティ「大丈夫ですか、サニー?」

サニー「正直……キツかったわ……。ナイスタイミングやで、みんな……! おおきに……!」

アキラメーナ(割りばし型・左側)「ア……アガガ……!」
アキラメーナ(割りばし型・右側)「ア……アガガ……!」


ビューティ「もうすでに大分弱っているようですね」

マーチ「サニー……一人でもガンバったんだね!」

ピース「よぉっし! 後はわたし達に任せて!」(ピース)

ハッピー「行くよ、みんなっ!」

ハッピー「プリキュア! ハッピー・シャワーァァッ!!」

ピース「プリキュア! (ピシャァン!) ひゃぁっ! ピース・サンダーァァッ!!」

マーチ「プリキュア! マーチ・シュートォォッ!!」

ビューティ「プリキュア! ビューティ・ブリザァァードッ!!」


ドドドドォォォォォォォォンッ!!


アキラメーナ(割りばし型・左側)「アガァァァァァ……」シュワァァァァ…
アキラメーナ(割りばし型・右側)「アガァァァァァ……」シュワァァァァ…


シアンナ「くっ、プリキュア……! またしても……!」

シアンナ(……何てこと……ここまでしても勝てないなんて……! 一人を狙って、その一人に複数をけしかけて……。任務のため、と割り切ってやりたくないことをあえてやったのに、それでも負けた……!)

シアンナ(…………(ギリッ))


シアンナ(…………もう、こんなことはしない。私は、実力で勝ってみせる……っ!)シュバッ

〜 お好み焼き屋 "あかね" 前 〜

大悟「……う……ん……。ん……? わい、どうしたんや……?」

あかね「父ちゃん! だいじょぶか? 急に倒れるからビックリしたで! 疲れとったんやない?」

大悟「んー、そうかなあ……。なんや、割りばしのオバケ? みたいの見た気がするんやけど……」

5人「!」


れいか「き、きっとお疲れでしたから幻を見たんですよ!」

なお「そ、そうですって! 少し休んだ方がいいんじゃないですか?」

大悟「……そうかもなぁ。最近働きづめやったから……。じゃ、ちょっと休ませてもらおかな。……あかねの話のこともあるし」

あかね「父ちゃん……、うちの話、聞いてくれるん? 休んどらんでだいじょぶか?」

大悟「……お前の、大事な話やからな。こんくらい、へでもないわ。さ、店に入り」

あかね「……うん、わかった」


ガラッ

やよい「お父さんとのお話って……、もしかして、それがあかねちゃんの悩みごとなのかな?」

なお「そうかもね」

れいか「あかねさんが無事問題を解決できるといいですね」

みゆき「うん……!」


みゆき(あかねちゃん……、ガンバって……!)

〜 お好み焼き屋 "あかね" 〜

大悟「それじゃ、聞かせてもらおか。お前の答え」

あかね「うん」


あかね「……うち、やっぱりバレーボール辞めへんわ」

大悟「……そうか、わかったわ。じゃあ、修行の話も無しやな」

あかね「待って父ちゃん! うち、お好み焼き屋もあきらめるつもりはないんや。バレーは辞めへんけど、修行、つけてもらえへんか?」

大悟「何言うとんねん。言うたやろ、そんな中途半端な気持ちじゃ務まらへん、って」

あかね「中途半端なんかやない! うちはどっちに対しても本気なんや!」


あかね「お好み焼きも、バレーボールも、どっちも大切にしたい……! どっちにも、うちがガンバることで喜んでくれる人がおるから……!」

あかね「その人らを元気づけてあげられるんやったら、うちどんだけでもガンバれる!」

あかね「そんな大切なもん……、どっちかをあきらめることなんてしたくないんや! だから父ちゃん、お願いや! うちの本気の気持ち、認めてほしいねん!」


大悟「…………」

あかね「…………」

大悟「……毎晩 0時までや」

あかね「……え?」

大悟「店閉まってから 0時まで修行つけたる。ただし、病気でもない限り毎日やるで。"バレーで疲れた" なんて理由で休むんは許さへんからな」

あかね「……父ちゃん……!」

大悟「"どっちも本気や" 言うなら、こんくらいやってみせや」

あかね「……もちろんや! うちのド根性見せたる! おおきにな、父ちゃん!」

大悟「ま、ガンバりや」

あかね「うんっ!」


正子(ふふふ、父ちゃんったらムリしとるわ……。あかねの真剣さがほんまはうれしいくせに、そっけない態度取って。ほんま、素直やないんやから)

正子(よかったな、あかね。ガンバりや)

〜 10分後 お好み焼き屋 "あかね" 〜

あかね「っちゅうーわけで、あかねちゃんお悩み解決パーティや! 今日もお好み焼きおごったるで!」

れいか「ありがとうございます、あかねさん!」

なお「でもいいの? こんな毎日毎日おごっちゃって」

あかね「かまへんかまへん! うちの悩みが解決できたのは、みんながおってくれたからやもん! ……なっ、みゆき!」

みゆき「……! うんっ!」


やよい「え? え? みゆきちゃん、あかねちゃんと何かあったの?」

みゆき「えへへー、ナイショ!」

やよい「えーっ!? ずるーい! 教えてよ、みゆきちゃーん!」

みゆき「やよいちゃんでもダメー。あかねちゃんとの秘密だもーん!」

あかね「あはははっ! せやな! うちとみゆきだけの秘密や!」

あかね(みゆき……ほんまにおおきにな。うちが納得いく答え出せたんは、みゆきが元気くれたおかげや。あの時言ってくれた言葉、忘れへんで)


あかね(これからもお互い、助け合っていこうな!)





つづく

次回予告

みゆき「普段は勇気があってカッコイイのに、実は虫やオバケがニガテななおちゃん」

みゆき「でも、そういうのがキライになっちゃったのには理由があるみたい。なんだか、れいかちゃんと関係があるみたいなんだけど……」

みゆき「何か、二人だけしか知らないヒミツがあるのかな?」


みゆき「次回、『スマイルプリキュア レインボー!』 "なおとれいか! ヒミツの絆!"」


みゆき「みんな笑顔でウルトラハッピー!」

今回はここまでです!
お読みいただいた方、ありがとうございました。

よろしければ次回もまたよろしくお願いします!


第1話 >>3 から
第2話 >>75 から
第3話 >>166 から
第4話 >>252 から
第5話 >>339 から
第6話 >>422 から
第7話 >>517 から
第8話 >>615 から
第9話 >>700 から
第10話 >>772 から


シリアス成分多めだね
だがそれがいい

次の話でレス数が 1000 近くになりそうなんですが、こういう場合どうしたらいいんですかね??

話割ってスレまたぎたくはないし、
かといって、テキトーに何か書き込んで 1000 まで埋めてもいいものか。
それとも、大人しく HTML化依頼を出すべきなのか。。
こんなに書くの初めてなんで勝手がわからんです。。

アドバイスもらえるとありがたいです!

こっちが感想レス自重して次回投下までもたせるか、
さもなければ埋め気味に番外編をやるって手もある(流石に150レス近く埋めるのはしんどいから…)。
まあ一番手っ取り早いのはスレ跨ぐことなんだけど、まあHTML依頼出してもいいんでない?
次回投下にレス数が足りないので次のスレを立てましたこっちは落としてください、でいいと思うよ

 おはようございます。作品のタイトルから取った安易な名前ですが、気に入ってもらえて嬉しいです。只今、今回の作品を読ませて頂きました。ストーリーに関して文句はありません。「お好み焼き」か「バレーボール」のどちらをとるかというアカネの葛藤もよく書けていました。前回、前々回もキャラクターの心理描写がよく書けていました。

 これは最近あなたの作品を読んでいて・・・「プリキュアには『運命の相性で結ばれた妖精』がいて、今の組み合わせは実は間違いかもしれない」という事実に直面した時どういう展開になるかな?というエピソードが頭にふとうかんできました。コレについては次回具体的に説明をしたいのですが、きいてもらえますか?もし、嫌でしたら普段どおり感想だけにします。
 次回も楽しみにしています。それでは、今日はこの辺で失礼致します。

  

>>862さん
なるほど、了解です!
今回投下してどんぐらいになるか、ってとこですかね。
それ次第で決めます

アドバイス、どもです!


>>863さん
いつもご意見ありがとうございます!

>「プリキュアには『運命の相性で結ばれた妖精』がいて、今の組み合わせは実は間違いかもしれない」
なるほど、、そういうのもありますね。。
こちらに関しては後程ちゃんと返事させていただきます。



『スマイルプリキュア レインボー!』

このあとすぐ!

……では、ありません! スミマセン!
急用で出なくてはいけなくなりまして。。
帰宅してからアップします。
早くて午後すぎくらいになると思います。

ではまた後ほど

遅くなりましたが、『スマイルプリキュア レインボー!』 再開します。

このあとすぐ!

〜 緑川家 居間 〜

なお「ふぅ……。あぁー、いいお湯だった。けいた! お風呂入っちゃいな」

けいた(なお弟・長男)「後ではいるー。今いいところなんだよー」

なお「いいところ……って、テレビ? 後にしな! けいた入んないとみんなつかえちゃうでしょ!?」

けいた「やだっ! もうすぐ CM 終わるからあとちょっとだけ待ってよ!」

なお「まったくもう、言う事聞かないんだから……! 一体何を見て——」


ジャーン!


テレビ『恐怖……、心霊スポットレポート 〜 後編 〜 ……』


なお「…………!」

なお「……ちょ、ちょ、ちょっと、け、けいた……。リモ……リモコンよこしな……」

けいた「えぇー!? なんでだよ! だからいいところなんだってば!」

なお「い、いや、だから……こんなの見てないで、早くお風呂に——」


テレビの語り部『深夜、近所でも怪現象が噂される某トンネルにやって来たスタッフ達……。彼らが撮影したテープには、世にも恐ろしいモノが入っていた……』

なお「(ビクッ)」


テレビの語り部『スタッフが解析した結果、明らかにありえない音が紛れ込んでいたのだ……。皆様には、ぜひそれをお聞きいただきたい……』

なお「…………」ドキドキ…


テレビ(テープの音声)『……(ザザッ)…………す………ぇぇ…………』

テレビの語り部『……おわかりいただけただろうか……。音声を拡大して、もう一度再生してみよう』

なお「…………!」バクバク

テレビ(テープの音声)『たぁすけてぇぇぇぇぇ!!』


なお「イヤーーーーーッ!!」


ダダダダッ スラッ ピシャンッ!


けいた「……なおねーちゃん、隣の部屋に逃げちゃった。やった! これでガミガミ言われなくて済むぜ!」


ドタドタドタ


とも子(なお母)「ちょっとちょっと! 今の声なに!? どうしたの!?」

けいた「テレビの怖い話見てたら、なおねーちゃんがビビって叫んだだけだよ」

とも子「なんだ……、何事かと思ったわよ……。……ところでけいた! 風呂、次あんたの番でしょ!? 早く入っちゃいな!」

けいた「うわぁーっ! 結局それかよー!」

〜 緑川家 床の間 〜

なお「(ガクガクブルブル)」

マジョリン「なお、布団アタマまでかぶって、情けないマジョ……。あんな作り話で怖がりすぎマジョ。"勇気リンリン" はどこいったマジョ?」

なお「……ダメなものはダメなの……! もうこのまま寝る……!」

マジョリン「……やれやれだマジョ」

〜 深夜 緑川家 床の間 〜

けいた「……すー……すー……」

はる(なお妹・次女)「……すー……すー……」


なお「…………」

なお(……ね……眠れない……!)


テレビ(テープの音声)(回想)『たぁすけてぇぇぇぇぇ!!』


なお「…………(ブルッ)」


なお(……と、とにかく寝れるようガンバろう……。ゴロゴロしてればそのうち寝れるはず……!)

〜 数十分後 〜

なお「……すー……すー……」


なお「……う……ううん……」

〜 なおの夢 〜

幼いなお『……ひっく……ひっく……。……怖いよぉ……助けてよぉ……!』


ギュッ


幼いれいか『だいじょうぶだよ、なおちゃん』

〜 翌朝 緑川家 床の間 〜

なお「…………!」パチッ


なお「……夢、か……」

なお(昨日、コワいテレビ見たせいかな……、懐かしい夢見たなぁ……)

なお(……そういえば、"あの日" からオバケとか虫がキライになっちゃったんだっけ……。あの時はホントに怖かった……)


なお(……けど、思い出した。"あの日" は、あたしにとってすごく大事な日でもあったんだ)


なお(……れいか、憶えてるかな……)




スマイルプリキュア レインボー!

第11話「なおとれいか! ヒミツの絆!」



〜 昼休み 七色ヶ丘中学校 中庭 〜

やよい「ねぇねぇ! 昨日の怖いテレビ見た!?」

あかね「ああ、見たで! お好み焼きの修行しとったから、休憩中にちょっとだけやけどな! "たぁすけてぇぇぇぇぇ!!" ……やろ?」

やよい「あははっ! あかねちゃん、うまーい!」

みゆき「やめてよ、あかねちゃーん! わたし、あのテレビがコワくて寝られなくなっちゃったんだからーっ!」

あかね「あはははっ! みゆきは相変わらずコワがりやなぁ!」

なお「…………」モグモグ

あかね「……ありゃ? いっちばんコワがりのはずのなおは平気みたいやな……」

なお「そ、それくらいなんてことないよ。もう中3 だよ? いつまでも怖い話なんてコワがってられないって」

れいか「……なお。足、震えてるわよ」

なお「れいか! なんで言うの!? ごまかそうとしてたのに!」

あかね「なんや! やっぱりオバケコワいまんまなんやん!」


4人「あははははっ!」

みゆき「……そういえば、なおちゃんって何でオバケニガテなの? わたしが言うのもなんだけど」

やよい「あ、わたしも気になってんだぁ。普段はコワいものなし! って感じなのに」

なお「……昔、ちょっとね」

あかね「へー、そうなんか。なんか理由あったんやな。何があったん?」

なお「言わないよ! 人にそんな話するの恥ずかしいって」

あかね「ほんなら、れいか! れいか、なおの幼なじみやから、なんか知っとるんちゃう?」

なお「あかね! 人が言いたくないって言ってるそばから詮索しないでよ!」

れいか「そうですね……。そういえば、なおのオバケ嫌いも虫嫌いも、何か理由があったような気が……」

なお「れいかも! 答えなくていいから!」


れいか「…………すみません。記憶があいまいで、詳細までは……」

なお「……えっ? れいか、憶えてないの……?」

れいか「え? え、ええ。ごめん……なさい?」

あかね「ん? 何? 言ってほしくなさそうやったのに、何で残念そうなん? れいか憶えてへんなら、バレなくてよかったやん」

なお「う、うん。そうだね。じゃあ、この話はここでおしまい!」

あかね「あっ、ムリヤリ終わらせよった!」

やよい「ざんねーん……。なおちゃんの昔話、聞きたかったなぁ」

なお「また今度、機会があったらね」

あかね「それ、うやむやにして結局言わないパターンやん」


なお(そっか。れいか、憶えてないんだ、あの日のこと。……まあ、あたしも昨日まで忘れてたし、ムリないか)

なお(……あの日のことで、れいかには言いたいことがあったんだけど……、忘れてるんじゃなぁ……)


なお(……そうだ。忘れてるなら、思い出してもらえば……!)

なお「ねえ、れいか。放課後、空いてる? 今日はサッカー部も休みだし、ちょっと付き合ってほしいんだけど」

れいか「え? ええ。今日は生徒会も弓道部もないから大丈夫だけど……、何をするの?」

なお「ふふっ、放課後になったら話すよ」


みゆき「えっ、なになに? 二人だけでどこか遊びにいくの? わたしも行きたーい!」

やよい「わたしもわたしも!」

なお「ああ、ゴメンね、みゆきちゃん、やよいちゃん。今日はれいかと二人だけで行きたいんだ」

あかね「なんやー、気になるやん! 今日のなおはヒミツばっかりやな!」

なお「まあ、たまにはね! 今日のあたしは "ミステリアスな女" ってことで」

あかね「……うわー、似合わへんなぁ……。自分でゆーてて恥ずかしくないん?」

なお「う、うるさいなぁ! 冗談なんだからほっといてよ! ……じゃあ、れいか、また放課後ね」

れいか「ええ。よく分からないけれど、楽しみにしてるわ」

〜 放課後 七色ヶ丘中学校 校門 〜

れいか「なお、お待たせ」

なお「ううん、あたしも今来たとこだよ。じゃ、行こうか」

れいか「ええ。……でも、どこに行くの? "放課後になったら話す" ということだったけれど」

なお「そうだね。"思い出めぐり" ……ってとこかな?」

れいか「思い出……めぐり?」

なお「そ!」


なお「あたし達、小さい頃からずっとこの町に住んでたよね。色んな場所に、色んな思い出があると思うんだ。それを二人で探すの!」

なお「……昼休みの時、昔の話をしようとしてたでしょ? そしたら色々思い出しちゃって、そういうのもいいかなー、って思ってさ。どうかな?」

れいか「……それで "思い出めぐり" なのね」


れいか「わかったわ。とても楽しそう! 行きましょう!」

なお「よし、決まり! それじゃ、行ってみようか、れいか!」

れいか「ええ!」

〜 ギャラリー・D 〜

ビリーズ「……で、シアンナはプリキュア達を一人にして追い詰めたはいいものの、それでも勝てなかった、と」

シアンナ「ええ、その通りよ」

セルリア「……シアンナの作戦は……完璧だったのに……。……プリキュア……!(ギリッ)」

シアンナ「でも、手ごたえはあったわ。以前は私のアキラメーナを簡単に倒してしまったキュアサニーを、あそこまで追い詰める事ができた。私達の力は着実に成長しているはずよ」

セルリア「……アキラメーナは……呼び出せば呼び出すほど……強くなっていくから……ね……」

シアンナ「ええ」

ビリーズ「え!? そうなのか!? 全然気付かなかったぜ……。オレの作ったヤツ、結構すぐやられちまうからなぁ……」


シアンナ・セルリア「…………」

シアンナ「……呆れた。このことについては以前、デスペア国王陛下から説明があったでしょう……。忘れたの?」

ビリーズ「あ、そういえば国を出る前になんか言われた気がする。めんどくさいんで、ぼーっとしてて聞いてなかったけどよ」

シアンナ「……どうしようもないほど馬鹿ね……」

セルリア「……お前だけ……もしかしたら……能力が成長してない……かもしれない……。……頭が……成長してない……くらいだから……」

ビリーズ「なんだそりゃ! オレも強くなってるとわかれば、プリキュアなんてバシっと倒してみせるっつーの!」

シアンナ「そう? そこまで言うなら、何か作戦があるのかしら。彼女達は一筋縄ではいかないわよ」

ビリーズ「……作戦? ねえよ、んなもん! あいつらにあったらバーッと強えアキラメーナ出して、ドカーッとやっちまえばいいだけだろ」


シアンナ・セルリア「…………」


セルリア「……シアンナ……。……私が……行く……」

シアンナ「……そうね。やはりビリーズでは駄目そうだし、頼むわね」

ビリーズ「おぉい! 無視すんなよ!」

シアンナ「無視されたくなかったらもう少しまともに考えてから話しなさい」

セルリア「……それに……今回は考えが……あるの……」

シアンナ「そうなの? 聞かせてもらえるかしら」

セルリア「……プリキュア達を……変身させなければ……いい……。……そうすれば……簡単に倒せるはず……」

シアンナ「……それはそうね。でも、プリキュアに会ってからアキラメーナを作ったのでは、同時に変身されてしまって間に合わない。そこはどうするの?」

セルリア「……プリキュアに……会わないよう……こっそりと……アキラメーナを作る……。……先に……アキラメーナがいれば……変身を……防げるかもしれない……」

セルリア「……もし……失敗しても…… "心の絵の具" だけは……採れる……。……これなら……どう……?」

シアンナ「なるほど……。確かに私達の第一の目的は "心の絵の具" の採取。最悪敗れても問題ないわね。わかったわ、それで試してみて」

セルリア「……うん、わかった……」シュバッ


シアンナ「ビリーズ、今の話、聞いてた? 作戦っていうのはああいうのを言うのよ」

ビリーズ「……え? あ、悪ぃ。ちょっと眠くなってきてたんでぼーっとしてた」

シアンナ「…………」

〜 七色ヶ丘商店街の外れ 駄菓子屋 "うめや" 〜

なお「まずはここ、"うめや" さん! れいか、憶えてる?」

れいか「ええ! 大きくなってからはあまり来なくなってしまったけれど……、懐かしいわね」

なお「よく二人でアイス買って食べたよね。それで当たりが出たりすると——」


みゆき「おおーっ! やったぁ、当たりだぁーっ! おばあちゃん、当たり、当たり! もう一本ちょうだーい!」


なお「——そうそう、こんな風に大喜びして……って」


なお「みゆきちゃん!?」
れいか「みゆきさん!?」


みゆき「……あれ? なおちゃん、れいかちゃん!」

あかね「あ、ほんまや。なおとれいかや。二人もここ来たん? やよいのゆーた通りやな」

やよい「でしょー? バッチリ当たってたね!」(ピース)

なお「あかねとやよいちゃんまで! みんな、何でここにいるの!?」

あかね「いやー、昼休み、なおの昔の話になるとこやったやん? その後なおがれいかを誘ったもんやから、"二人でどっか思い出の場所にでも行くんかなー" みたいな話をみゆき、やよいとしとったんや」

れいか「ええ、確かにその通りです。二人で、色々な思い出の場所をめぐろうとしていました」

みゆき「そういう話になったら、どこに行こうとしてたのか気になっちゃって。それで、やよいちゃんにこの町の思い出の場所を案内してもらってたんだ」

やよい「この町の子どもはみんな一回はここに来るもんね! "なおちゃんとれいかちゃんも来るかもね" っていう話をしてたら……大当たり! ってわけなの」

なお「そっか、やよいちゃんもこの町出身だもんね。ここに来たことあったんだ」

やよい「うん!」

ノソノソ


駄菓子屋店長・うめ「……おやぁ? その声、もしかして……、緑川さんとこのなおちゃんと、青木さんとこのれいかちゃんかい?」

なお「うめおばーちゃん! 久しぶり!」

れいか「私達のこと、憶えていらっしゃるのですか? こちらには随分来ていませんでしたが……」

駄菓子屋店長・うめ「当たり前だよ! あたしゃ、ここに来た子のことは忘れないよ。みーんな、あたしの孫みたいなもんだからね」

あかね「へぇー! おばーちゃん、大したもんやなぁ!」

駄菓子屋店長・うめ「ああ、ところで、そっちのクルクル髪の毛の子……みゆきちゃん、かね? ほれ、当たりの分のアイスだよ」

みゆき「わぁっ! ありがとう、おばあちゃん!」

あかね「……あれ? でもなんか多いんやない? 5本ある。おばーちゃん、当たったのみゆきだけやで?」

駄菓子屋店長・うめ「……あんたら、みんな友達だろ? そしたら、一人だけ幸せってのはなんか寂しいじゃないか。ばばあのおごりだよ、みんなで食べな」

みゆき「おばあちゃん……! ありがとう! ウルトラハッピーだよ!」

駄菓子屋店長・うめ「そうそう! "はっぴ" はみんなで着ないとお祭りにならないから……なーんてね! ひゃっひゃっひゃ!」

れいか「うめおばあさま……。もしかして、"ハッピー" とお祭りの時に着る "法被(はっぴ)" をかけてらっしゃるのですか?」

なお「このダジャレ……。うめおばーちゃん、昔っからこういうことよく言ってたよね。なんだか懐かしいよ」

駄菓子屋店長・うめ「そうかい。あたしゃ、いつだって変わんないよ。懐かしみたくなったらあたしんとこ来な」

なお「……うん!」

駄菓子屋店長・うめ「それにしても、なおちゃんとれいかちゃん。あんたらホントに仲がいいねえ。昔っからずーっと一緒だったけど、まだ仲良くしてんだね」

れいか「ええ、おかげさまで」

駄菓子屋店長・うめ「……二人並んでると、思い出すよ。よく二人で少ないこづかい持ってきては、これを買ってたねえ」ガサッ

あかね「なんや、またアイスかいな。二人ともアイス好きやったんやなぁ」

やよい「あ、でもこれ、今わたし達が食べるのと違うものだ。二つに割れるアイスだよ」

駄菓子屋店長・うめ「一本分のお金しかないけど、どっちかだけ食べるのはイヤだ、って、これを買っては二つに割って、二人で食べてたねえ……」

なお「……そういえばそうだったね……」

れいか「ええ……」


駄菓子屋店長・うめ「あたしゃね、嬉しいんだよ。あの時とっても仲が良かった二人が、今でもこうして並んでるのを見てるとね」

なお「……なんだか、そういうこと言われるとテレくさいなぁ……」


あかね「……でも、なんかええな、そういうの。うらやましいわ……」

みゆき「うん、そうだね……」

れいか「みゆきさん、あかねさん? 少し表情が暗いようですが、どうかしましたか?」

みゆき「え? そんなこと……ちょっとあるかも」

なお「何? 悩み事か何かだったら相談に乗るよ?」

あかね「ああ、そういうんちゃうねん」


あかね「ほれ、うちやみゆきはこの町には転校して来たやろ? うちらはこの町に小さい頃の思い出とかないんや……」

みゆき「だから、思い出の場所にすぐ行ける二人がうらやましいな、って思って……」


なお「そういえば……そっか」

れいか「お二人は昔を懐かしみたくても、なかなかできないわけですね……」

あかね「……せやけど、ええ話も聞けたし、うちらはここらで行こか」

みゆき「そうだね」

駄菓子屋店長・うめ「おや、なんだい、せっかちだね。もうちょっとゆっくりしてけばいいのに」

みゆき「そうしたいけど……、これ以上いたら、なおちゃんとれいかちゃんのジャマになっちゃうから」

あかね「せやな。二人の思い出は二人だけのもんやもんな。……ほな、思い出めぐり、楽しんできてや! 行くで、やよい」

やよい「あっ、ちょ、ちょっと待って。アイスもうちょっとで食べ終わるから……」

あかね「なんや、まだ食べとったん?」

やよい「だって、急いで食べると頭キーンってなっちゃうんだもん」

みゆき「あははっ、そうだよね。じゃあ食べ終わるまで待ってるよ。ゆっくりでいいよ」


なお「…………」

れいか「……なお、あなたさえよければ、だけど——」

なお「うん、わかってる、れいか。多分、同じ事考えてた」

なお「……ねえ、みんな。もしよかったら、あたし達の思い出めぐりに付き合わない?」

みゆき「え? いいの?」

あかね「せやけど、なお、昼に二人だけで行きたい、ってゆーとったやん」

なお「最初はそのつもりだったんだけどね。でも、さっきのあかねとみゆきちゃん、"この町の思い出がない" って言ってたよね。それがなんだか寂しそうに見えてさ」

れいか「私達の思い出を通してお二人にもっとこの町を好きになってもらえば、ふるさとに対して寂しい思いをしなくてよくなる、と思ったんですが、いかがでしょうか」

みゆき「なおちゃん……、れいかちゃん……! ありがとう! 二人の昔話、とっても聞きたいよ! よろしくね!」

やよい「あ、あのー、わたしはこの町に色んな思い出あるけど……一緒に行っても……いいのかな?」

なお「もちろんだよ! やっぱりあたし達は、5人揃わないとね!」


あかね「あれ? ちゅーことは、もしかしてなお、オバケキライになった思い出についても話してくれるん?」

なお「え!? あ、あー、まあ、うん、気が向いたらね」

あかね「ほんま!? それ、めっちゃ気になっとったんや! ほんじゃ聞かせてもらうでぇ、なおちゃんの恥ずかしい話」

なお「まだしゃべるとは言ってないよ! 気が向いたら、って言ったでしょ!?」

なお「それじゃ、うめおばーちゃん、今日はもう行くね! 今度また兄弟達連れて来るよ!」

みゆき「おばーちゃん! アイス、ありがとう! すっごくおいしかったよ!」

駄菓子屋店長・うめ「はいはい。気をつけて行っといで」

なお「うん! じゃあ、また!」


なお「次はどこ行こうか? れいか、思い出の場所ってある?」

れいか「そうね……。それじゃあ、あそこがいいかしら」


スタスタスタ…


駄菓子屋店長・うめ「…………」

駄菓子屋店長・うめ(ありがとう、か。お礼を言うのはこっちの方さ)

駄菓子屋店長・うめ(大きくなっても仲が変わらないどころか、友達たくさん増えて……。仲のいいところいっぱい見せてもらえて、あたしゃ幸せだよ。ありがとうね、みんな)

〜 七色ヶ丘市 公園 〜

れいか「私の思い出の場所はここです」

あかね「……って、なんや。いつもの公園やん」

なお「でもね、あかね。あたし達、ここでよく遊んだから、この公園には思い出がいっぱいあるんだ。例えば……このすべり台」


カン カン カン カン


なお「こうしてすべり台の上に登ると、自分がとっても大きくなったような気がして、とっても気持ちがよかったんだ」

やよい「あ、それ、わたしもわかるよ! 小さい頃、よくすべり台の上に登ってヒーローごっこしてたから!」


ヒョコッ


オニニン「やよいは今でもたまにそういうことやるオニ。周りに誰もいないと、よく高い所に登ってはポーズ取ってるオニ」

やよい「オ、オニニン、言わないでよ! カバンの中に入ってて!」

あかね「なんや! やよいは大きくなってもやることは小さい頃と変わらんなぁ!」

やよい「そ、それは漫画のための気分作りなの! 小さい頃はごっこ遊びだったけど、今は真剣なの!」

なお「し、真剣にヒーローポーズっていうのも、それはそれでどうなのかな……」


4人「あはははっ!」


やよい「もうっ! 笑わないでよぉっ!」

みゆき「あ、すべり台と言えば、わたしよく逆に登ったりしたなぁ! 階段じゃなくて、滑るところから登るの!」

あかね「あー、やったわやったわ! ツルツル滑って難しいんやけど、登りきった時がまた気持ちええんや」

やよい「わたしも! ……登りきれなかったけど」

なお「それはあたしも良くやったなぁ!」

れいか「私もです」

みゆき・あかね・やよい「え!?」


れいか「……みなさん、どうかしましたか? 私の方をじっと見て」

みゆき「いや、だって……、れいかちゃんってそういうことしなさそうだから……」

あかね「せ、せやな。ベンチとかでおとなしーく本とか読んでるかと思ったわ」

なお「れいかはこう見えて、小さい頃は結構やんちゃだったんだよ。すぐにあんまりやらなくなっちゃったけどね」

やよい「へぇー……、そうだったんだぁ。ちょっと意外……」


れいか「……今と違う昔の自分を話す、というのはちょっと恥ずかしいですね……」

あかね「したら、それがれいかの公園での思い出なん?」

れいか「……いえ、実は別にあるのです。忘れられない思い出が」

みゆき「えっ、なになに!? 聞かせて、れいかちゃん!」


れいか「はい。……あれは、私となおが小学校低学年くらいの時だったでしょうか。この公園に遊びに来た時、他の方が連れていた犬に吠えられてしまって、私、泣いてしまったのです」

あかね「それも意外やな……。今のれいかやったら、にらみつけて追い返しそうや」

なお「昔のれいかはやんちゃだったけど、結構臆病なところもあったんだ。今でこそキリッとしてるけどね」

やよい「それで、どうなったの?」

れいか「私が泣いてしまっても、犬は吠えるのをやめてくれなくて……。私、怖くなって大声で泣いてしまいました」

れいか「その時、泣いている私と犬の間に、なおが割って入ってくれたんです。まだ小さかった体を目いっぱい広げて」

なお「……あ! あの時の話かぁ……」

れいか「なおも小さかったし、怖かったはずなのに、私のために一生懸命かばってくれて……。私、その時に改めて、なおのことが好きになったんです」

れいか「だから、なお。私の忘れられない思い出は、なおに助けてもらった時のことなの」

みゆき「そっかぁ……。なおちゃんは、そんなに小さい頃から "勇気リンリン" だったんだね」

れいか「ええ。なおは昔からとっても勇気があって、かっこよかったんですよ」


なお「…………」

なお(…… "昔から勇気があって"、か……)

なお「……ねえ、みんな。そろそろ次に行かない?」

あかね「ええで。どっか行きたいとこあるん?」

なお「れいかに大切な思い出の話を聞かせてもらったから、あたしも大切な思い出の場所に行きたくなったんだ。……あたしが、オバケや虫がキライになった原因の場所に」

あかね「お! その話、してもらえるん!?」

なお「うん。れいかにも聞いてもらいたいしね、あたしの気持ち」

れいか「なおの気持ちを、私に……?」


やよい「……あれ? でも、なおちゃん、オバケや虫がニガテなんだよね? そうなっちゃった原因の場所が、"大切な思い出の場所" なの?」

なお「そうなんだ。そのことについては……歩きながら話すよ」

〜 七色ヶ丘市 道路 〜

なお「……実は、これから行こうとしてるのは、この町にある心霊スポットの廃病院なんだ」

れいか「……あ! そういえば昔、そこにお兄様やはるかお姉さんと一緒に行った事がありました」

あかね「はるかお姉さんって、れいかのいとこのあの人やな。そういえば、小さい頃よく遊んだってゆーとったっけ」


やよい「し、心霊スポット!? ど、どんな話があるの?」キラキラ

みゆき「や、やよいちゃんそういうの好きだね……。わたしはあんまり聞きたくないかも……」

れいか「ええ、それではお話しましょう……。忘れられた廃病院に伝わる、恐ろしい話を……」

なお「え!? その話は別にしなくていいんだけど!?」

あかね「……れいか、結構ノリノリやな」

れいか「その廃病院は、現在の七色ヶ丘総合病院になる前に使われていた建物であったそうです。総合病院ができてからはみんなそちらの方に移ってしまい、古い病院には次第に誰も出入りしなくなりました」

れいか「もちろん、何度も取り壊そうと試みられたそうですが……、不思議な事に、壊そうとすると必ず決まって事故が起きるのです。機械が故障したり、作業員の方が病気になったり……」

れいか「そのうち取り壊しが中止され、その病院は放置されるようになりました。それが、現在の廃病院となったのです」


れいか「しかも、この廃病院にはそれだけではなく、恐ろしい噂があるのです……」


れいか「ある日の夜、大学生の方々が肝試しに、とその廃病院に入ったそうです。お酒を飲まれていたようで、全く怖がることなく中を散策したとか」

れいか「その廃病院には、かつて使われていた器具やカルテが置き去りにされており、その大学生の方々の一人が面白半分でカルテを持って帰ったそうです」

れいか「結局、特に不思議なことが起きる事はありませんでした。……そう、その日は……」


れいか「しばらくしたある日、そのカルテを持って帰った方の家に電話がかかってきました。その電話に出ると、涸れた女性の声でこう言われました」


れいか「"カルテ、かえしてください。いまからうけとりにいきますので"」


れいか「青ざめたその方は、一緒に廃病院に行った方々に連絡しようと、慌てて電話番号を押しました。ですが、どうしてか一向に通じません……」

れいか「恐ろしくなり、部屋を飛び出そうとしたその方がドアノブに手をつかんだその時……!」


れいか「コンコン」


れいか「と、ドアをノックする音が響きました……」

れいか「震える手でドアを開くと、見知らぬ女性が笑いながらその方を見ていたそうです……」

れいか「——と、いうお話です。聞いた話ですので、本当かどうかはわかりませんが」

あかね「……怖ぁー……」

やよい「いい、いいよ! そういうお話大好き! この町にそんなウワサがあったんだぁ……!」キラキラ

あかね「やよい、大興奮やな。それに比べてあっちの二人は……。途中から耳ふさいどったで」


みゆき・なお「…………」ブルブル


あかね「おーい、話、終わったで」

なお「……え? 終わった? もう耳ふさいでなくても平気?」

あかね「へーきへーきや。……っちゅーか、そんなんでその病院行けんのかいな……」

なお「別に入るわけじゃないよ! 前まで行くだけ。……入ろうにも、怖くて、入れないし……」

やよい「でも、れいかちゃんの話だと、なおちゃんとれいかちゃんはそこに入ったんだよね?」

なお「……うん。そこから先は、あたしが話すよ。あたしにとって、とっても大事な思い出だから」

なお「さっきれいかが言ったとおり、あたし達がまだ幼稚園だった頃、淳兄ちゃんとはるかさんに連れられてその廃病院に入ったんだ」

みゆき「えっ!? っていうことは、子どもだけで行ったの? アブナイね……」

なお「今思うとそうだね。でも、その頃はみんな小さかったから、そういうこともわかんなくって……。あたし自身、"怖い" ってこともよくわかってなかったんだ」

なお「あの時のあたしはただ無邪気で……、その病院に入ってすぐ、あたし走り出しちゃったんだ。なんだか冒険してるみたいで、すごく楽しかったんだと思う」


なお「でも、そのせいでみんなとはぐれちゃって……すぐに思い知った。"怖い" ってどういうことか」

なお「淳兄ちゃんを呼んでも、はるかさんを呼んでも、……れいかを呼んでも、誰も応えてくれない。一人ぼっちになって、あたしは初めて "怖い" とすごく強く思った」


れいか「……だんだん、思い出してきました。その時、私も先に行ってしまったなおを追いかけて奥に進んでいったんです。お兄様やはるかお姉さんは、慌てて大人の方を呼びに行ったと、後で聞いた覚えがあります」

れいか「でも、そのおかげですぐになおを見つけることができたのよね」

なお「うん。……でも、子ども二人じゃどうしようもなくって……。不安な気持ちはちっともなくならなかった……」

なお「そこからは、もう散々だったよ。廊下の奥からうなり声みたいなのが聞こえてきたりしてさ」

なお「今思えば風か何かだったんだろうけど、その時のあたしには怪物か何かの声に聞こえて、とても怖かった」

なお「他にも、上から落ちてきた虫か何かが背中に入って、それがすごく気持ち悪くて、大声で泣きながら暴れたりしたっけ」


あかね「……もしかして、なおのオバケギライや虫ギライの原因って……」

なお「……多分、その時の体験が元になってるんだと思う。怖かった思い出が心に刻まれてたんだね、きっと」

みゆき「そうだったんだ……。同じことになったら、わたしもきっと泣いちゃうと思う……」


れいか「私の方は、その時の体験のことをほとんど憶えていないんです。子どもの私には耐えられなくて……、自分で忘れてしまったのだと思います」

やよい「そっかぁ……。だかられいかちゃんは同じ体験をしててもオバケとかが平気なんだね」

あかね「……なるほど、なおのオバケギライや虫ギライの謎は解けたわ。ツラい思い出やったんやなぁ……。ゴメンな、なお。ムリに話させてもーて」

なお「……ううん、いいんだ、あかね。話してるうちに、どんどんハッキリ思い出してきたから。その時、怖い気持ちと一緒に知った、大切な気持ちを」

やよい「"大切な気持ち" ……?」

みゆき「そういえば、なおちゃん、その病院のことを "大切な思い出の場所" って言ってたね。そんなにコワい目にあったのに……。もしかして、他にもなにかあるの?」

なお「うん、実はそうなんだ。この話には続きがあってね。……れいかは憶えてないみたいだけど、この後——」

キャンディ「!! みんな、イヤな感じがするクル!」
ポップ「!! 皆の衆、良くない気配がするでござる!」
ウルルン「!! おい、イヤなニオイがするウル!」


5人「…………?」


あかね「……なんて? みんないっぺんに言うから、何ゆーとんのかわからんのやけど」


ウルルン「……ポップ、お前先に言ってたウル。お前が言うウル」

ポップ「それを言ったら、キャンディが一番早かったでござる。さ、キャンディ、今度は声が重ならないように、キャンディが代表して言うでござる」

キャンディ「わ、わかったクル」


キャンディ「みんな、イヤな感じがするクル! きっとデスペアランドクル!」


5人「!!」


やよい「もー! なおちゃんのお話、いいところだったのにー!」

あかね「ゆーとる場合かいな!」

みゆき「また誰かの心が吸われちゃう……! 急ごう! キャンディ、案内して!」

キャンディ「わかったクルぅ!」

〜 七色ヶ丘市 工事現場 〜

アキラメーナ(工事資材合体型)「アキラメーナァ!」


ズワァァァァァッ…


工事スタッフA「うぅ……力が……抜ける……」

工事スタッフB「……あぁ……」


チャポ チャポ


セルリア「……濁った絵の具と……輝く絵の具が……半分くらい……。……まあ……これなら……いいか……」


みゆき「そこまでだよっ!」


ザッ


セルリア「……来たな……プリキュア……」

セルリア(……ここまでは……予定通り……。……プリキュアに……会う前に……アキラメーナを……作れた……。……これなら……)

なお「また関係のない人を苦しめて……! 許さないっ!」

れいか「皆さん、変身しましょう!」


セルリア「そうはさせない」

アキラメーナ(工事資材合体型)「アキラメーナァッ!」ブンッ


ポップ(デコル)「! アキラメーナが左腕の鉄骨を振り上げて……! 皆の衆、危ないでござる!」

5人「プリキュア! スマイ——えっ!?」


ドカァァァァン!


5人「わぁぁぁっ!?」

カチャッ カチャッ


なお「しまった! パクトが……」

れいか「今の衝撃で手から落ちて——」


セルリア「……二人……変身できない……! ……上出来……! ……アキラメーナ……、……あの二人を……狙え……!」

アキラメーナ(工事資材合体型)「アキラメーナァッ!」ブンッ

れいか「…………!」

なお「れいか、危ないっ!!」バッ


ドカァァァァン!


セルリア「……外した……もう少し……だったのに……」

なお「……れいか、大丈夫? ケガない?」

れいか「……なお、かばってくれたの? ありがとう……。でも、パクトが……」

なお「あたし達、狙われてるみたい……。今からじゃ拾いに行けないよ。ひとまず物陰に隠れよう」

れいか「……ええ、わかったわ」


ヨロヨロ

セルリア「……逃がさない……!」

アキラメーナ(工事資材合体型)「アキラメーナァ!」ジャキッ


ドンッ! ドンッ!


ポンッ


マジョリン「ああっ、アキラメーナの右手からネジが飛んで——」

ポップ「二人を狙ってるでござる!」

みゆき「なおちゃん、れいかちゃん! 危ない!!」


なお・れいか「えっ!?」


ドガッ! ドガァァン!


なお「わぁっ!?」

れいか「今の振動で……資材が崩れる……!?」

なお「くっ、れいか……!」ギュッ


ガシャァァァァァン!

あかね「……二人が、資材の下敷きになってもた……」

やよい「……そんな……!」


セルリア「……くっ……くくくっ……やった……二人……仕留めた……! ……やっぱり……変身できなければ……こんなもの……! ……くくくく……!」


ウルルン(デコル)「……残念だなウル、デスペアランドの何とか。二人は無事ウル」

あかね「! ほんまか、ウルルン!?」

ウルルン(デコル)「おおウル。二人の息づかいが聞こえるウル。オオカミの耳をナメてもらっちゃ困るウル!」

みゆき「……そっか……。よかった……ホントに……!」


セルリア「……そう……。……でも、何も問題は……ない……。……アキラメーナ……トドメを……」


やよい「そうはさせないよ!」

キャンディ(デコル)「みんな、変身してなおとれいかを助けるクル!」

みゆき・あかね・やよい「うんっ!」

パチンッ!

レディ!

みゆき・あかね・やよい「プリキュア! スマイルチャージ!!」

ゴー! ゴーゴー! レッツゴー!!


ハッピー「キラキラ輝く、未来の光! キュアハッピー!!」

サニー「太陽サンサン、熱血パワー! キュアサニー!!」

ピース「ぴかぴかぴかりん♪ じゃん・けん・ポン!(チョキ) キュアピース!!」

ハッピー「サニー! アキラメーナはわたしとピースで食い止めるよ! その間になおちゃんとれいかちゃんを!」

サニー「わかったわ!」ダッ

セルリア「……させない……」

アキラメーナ(工事資材合体型)「アキラメーナァ!」ドンッ! ドンッ!


ドガッ! ドガァァン!


サニー「わっ!? またネジかいな!? これじゃ助けに行けへん!」

セルリア「……あの二人は……助けさせない……。……先に……お前達から……倒す……!」


マジョリン「……あわわ、あたし達はどうしたらいいマジョ……?」

ポップ「拙者達がやられてしまっては、いくられいか殿となお殿が無事でも変身できなくなってしまうでござる……! ひとまず身を隠すでござる!」

マジョリン「わ、わかったマジョ……!」

〜 崩れた資材の中 〜

れいか「……うっ……」

なお「れいか! 気が付いた?」

れいか「なお……。また、かばってくれたの?」

なお「何度だってかばうよ。れいかは、あたしの大切な友達だもん。それより、ケガはない?」

れいか「ええ……。大丈夫みたい。ありがとう……」


れいか「それにしても、どう、なったの……? 真っ暗で、何も見えない……」

なお「アキラメーナの攻撃でパイプとかの資材が倒れてきたんだ。お互いに重なりあったおかげで下敷きにはならなかったみたいだけど……、閉じ込められちゃったみたい。それに……」


ギギギ…


れいか「……きしむ音がする……。今にも崩れそう……」

なお「……うん……」

〜 七色ヶ丘市 工事現場 〜

ハッピー「ハッピー・パァーンチっ!」

ピース「ピース・キィーックっ!」


ドカッ! ドカッ!


アキラメーナ(工事資材合体型)「アキラメーナァ……!」グググ

ハッピー「!? 受け止められちゃった!?」

ピース「倒れてくれないよ……っ!?」

サニー「ほんなら……これでどうやぁ……!」グググッ

サニー「ハッピー! ピース! どきや! 鉄骨、ぶん投げるでぇ!」


ハッピー「オッケー、サニー!」バッ

ピース「わわっ!」バッ


サニー「行っ……けぇぇぇぇっ!」ブンッ!

セルリア「……はじき返せ……」

アキラメーナ(工事資材合体型)「アキラメーナァ!」バキャッ

サニー「!? カンタンに弾かれてもた……!」


アキラメーナ(工事資材合体型)「アキラメーナァ!」ドンッ! ドンッ! ドンッ! ドンッ! ドンッ!


ドドドドドガァァン!


ハッピー・サニー・ピース「わぁぁぁっ!?」

ハッピー「うっ……いたた……」

キャンディ(デコル)「ハッピー! しっかりするクル!」

ハッピー「う、うん……って、言いたいけど……」

ピース「な、なんだか、いつもより強いよ……」


サニー「……そういえば、こないだシアンナが言うとった……。アキラメーナは、作れば作るほど強くなる、って……」

ハッピー「じゃ、じゃあ……」

ピース「パワーアップしてる、ってこと……なの……!?」


セルリア「……本当に……強くなってる……。……くくく……これなら……勝てる……!」


アキラメーナ(工事資材合体型)「アキラメーナァ!」ドンッ! ドンッ! ドンッ!


ドドドガァァン!


ハッピー・サニー・ピース「うわぁぁぁぁっ!?」

〜 崩れた資材の中 〜

ハッピー・サニー・ピース「うわぁぁぁぁっ!?」


れいか「……! みんな……みんなが危ない……! 早く、ここを出ないと……!」ガシッ

なお「れいか、危ないよ! ヘタに資材を触ったら崩れるかも……!」

れいか「でも……でも、みんなが! 私達が助けないと……、みんなが……!」

なお「……れいかっ!」


ガシッ


れいか「……なお……?」

なお「れいか、握った手が震えてる。落ち着いて。らしくないよ」

れいか「…………」

なお「今、ムリしたら危ないよ。一旦落ち着こう?」

れいか「……ええ」

なお「……れいか、まだ手が震えてる。……怖い?」

れいか「……ええ、少し……」

なお「そうだよね。こんなところに閉じ込められて、みんなが大変な目にあって。怖いよね」

れいか「…………」


れいか「……なおはすごいわね」

なお「えっ?」

れいか「なおの手、全然震えてない……。怖くないのね……。なおは昔から勇気があって……すごいわ……」

なお「…… "昔から勇気があって"、か……」

なお「……ふふっ」

れいか「……? どうしたの、なお、笑って」

なお「さっき、廃病院の話、してたでしょ? その時のことを思い出してたんだ」

なお「狭くて、暗くて、あたしとれいかの二人っきりで。……あの時に似てるな、って思って」

れいか「そういえば……」


なお「さっき、"廃病院の話には続きがある" って言ったよね。……れいか、その時のこと、憶えてる?」

れいか「……ごめんなさい。さっきも言ったけれど、私は怖くて、その時のことをほとんど忘れてしまったみたい……」

なお「……じゃあ、その時のことを話すよ。どうせ、今は動けないし。それに、その話を通して、れいかに伝えたい事があるんだ」

れいか「そういえば、さっきも "気持ちを伝えたい" って言ってたわね」

なお「うん。聞いてくれるかな」

れいか「ええ」

〜 七色ヶ丘市 工事現場 〜

サニー「……あかんわ……。これじゃなおとれいかを助けに行くどころやない……。うちらが危ないわ……!」

ピース「このままじゃあ……!」

ハッピー「…………」


セルリア「……アキラメーナ……トドメ……!」

アキラメーナ(工事資材合体型)「アキラメーナァッ!」ブンッ

オニニン(デコル)「また鉄骨パンチオニ! 避けるオニ!」


ハッピー「……だぁぁぁぁぁっ!」


ガシィッ!


サニー「ハッピー……、鉄骨、受け止めよった……!」

ハッピー「……サニー……っ! わたしが……受け止めてるうちに……なおちゃんとれいかちゃんを……お願い……っ!」


セルリア「……悪あがきを……。……振り払え……!」

アキラメーナ(工事資材合体型)「アキラメーナッ!」グィッ

ハッピー「ぐぅぅぅぅっ!」ググググッ

セルリア「……離れない……!?」

ハッピー「離す……もんかぁっ……!」ググググッ

サニー「……ハッピー。そのド根性、無駄にせえへんで!」ダッ

セルリア「……他の……二人を……助けるつもり……? ……させない……!」

アキラメーナ(工事資材合体型)「アキラメーナァ!」ジャキッ

ウルルン(デコル)「おい、サニーっ! またネジが飛んでくるウル!」

サニー「……っ!?」


ピース「ピース・パァーンチッ!」ドカァッ!

アキラメーナ(工事資材合体型)「アガッ!?」

セルリア「……ネジを撃つ……右腕が……払われた……!?」

ピース「サニー、お願いっ! 今のうちに!」


サニー「ピース……! わかったわ! なお、れいか、待っとってや……。今助けんで!」ダッ

〜 崩れた資材の中 〜

なお「……れいか、"昔から勇気があって" って、さっき言ってくれたよね。……でも、実は違うんだ。あたしは……最初っから勇気があったわけじゃなかった」

れいか「そう、だったかしら……。私の知ってるなおは、いつでも勇気があったけれど……」

なお「廃病院のあの日、二人で中に置き去りになった後のあたしには、とても勇気なんてなかった。とっても、怖くて、怖くて、泣いてることしかできなかった……」

なお「……でもね、その時、れいかがあたしの手を優しく握って、こう言ってくれたんだ」


なお「"だいじょうぶだよ、なおちゃん。おててあったかいからひとりぼっちじゃないよ。こわくないよ" って。目にいっぱい涙溜めながら」

なお「……あたしはあの日、"怖さ" を知った。でも、いっしょに、"勇気" も知る事ができたんだ。自分も怖いのに、一生懸命あたしをはげましてくれた、その時のれいかの姿から」

なお「あたしはその時、思ったんだ。大切な人……友達や家族が怖がってたら、今度はあたしが勇気を出して助けよう、って」

なお「……だから……」


なお「今でもあるあたしの勇気は、その日のれいかにもらったものなんだよ」

れいか「…………!」


なお「……れいかが怖がってる時は、今度はあたしが勇気付けてあげたい。れいかからもらった、この勇気で」

れいか「……なお……」

なお「……れいか。あたしの手、温かいの、わかる?」

れいか「……ええ。なおの手、温かい……」

なお「お互いの手が温かいってわかるなら、一人じゃない。一人じゃないなら、何も怖くない」

なお「だから……こうして手を握っていれば、どんな時でも大丈夫だよ、れいか」ニコッ


れいか「…………」

れいか「……でも、オバケや虫は怖いままなのね、なお?」

なお「……えっ……?」


なお「……も、もう、れいか! なんでそういうこと言うの!? せっかくいいこと言ったのに! 台無しだよ!」

れいか「ふふふ、ごめんなさい。でも、その話の後に虫やオバケを見た時のなおの怖がりぶりを思い出したら、なんだかおかしくなって」

なお「……コワいものはコワいんだもん……」

なお「……でも、れいか。手の震え、止まったね」

れいか「ええ。なおの勇気のおかげね。ありがとう」

なお「……こっちのセリフだよ、れいか。廃病院の事を思い出してから、ずっとれいかに言いたかったセリフ」


なお「あたしに、勇気をくれて、ありがとう」

ガシャァァァン!


なお「えっ!? 何!?」

れいか「資材が開いた……!?」


サニー「二人とも、無事か!?」

なお・れいか「サニー!」

サニー「この資材はうちが支えとく。せやから、その間に早く外に出るんや!」

なお「ハッピーとピースは!?」

サニー「うちが二人を助けられるようにガンバって食い止めとる! 早よ行って、助けてあげてや!」

れいか「わかりました!」ダッ

サニー「ふう……、良かったわ。二人が無事助かって」


ギギギッ


ウルルン(デコル)「……ん? お、おい、サニー! 資材が……崩れるウル!」

サニー「へ? わぁぁっ!?」


ドガッシャァァァン!


なお「サニー!?」

れいか「サニーが、資材の下敷きに……!」


サニー(声のみ)「うちは大丈夫やー! 自分で何とかしたる! それより、後の事頼むでーっ!」

なお「……わかった!」

〜 七色ヶ丘市 工事現場 〜

トテテテテ


マジョリン「なおーっ!」

ポップ「れいか殿!」


なお「マジョリン、ポップ!」


マジョリン「無事で良かったマジョ! ほれ、スマイルパクトマジョ!」

ポップ「助けに行けず、すまんでござる……。パクトを守るので精一杯でござった……!」


れいか「いいえ、ポップさん、マジョリン、ありがとうございます!」

なお「そうだよ! おかげで、これであたし達も戦える! 行こう、れいか!」

れいか「ええっ!」

パチンッ!

レディ!

なお・れいか「プリキュア! スマイルチャージ!!」

ゴー! ゴーゴー! レッツゴー!!


マーチ「勇気リンリン、直球勝負! キュアマーチ!!」

ビューティ「しんしんと降り積もる、清き心。キュアビューティ!!」

セルリア「……キュアマーチ……キュアビューティ……。変身……したの……。……でも……もう遅い……!」ニヤァッ


ハッピー「うっ……くっ……」

ピース「うぅ……」


マーチ「ハッピー! ピース!」

セルリア「……後は……お前達……二人だけ……。……二人だけじゃ……このアキラメーナには……勝てない……。……そこに倒れてる……二人が……その証拠……」

アキラメーナ(工事資材合体型)「アキラメーナァ……!」ズンッ

セルリア「……怖がれ……震えろ……。……無駄なことはやめて……諦めろ……!」


マーチ・ビューティ「…………」

マーチ「……だって、ビューティ。怖い?」

ビューティ「いいえ、全く」ニコッ

マーチ「だよね!」ニコッ


ギュッ


マーチ「行くよ、ビューティ!」

ビューティ「ええ!」


ダッ


セルリア「……手をつないだまま……走りだした……。……まだやる気……? ……まあいい……アキラメーナ……!」

アキラメーナ(工事資材合体型)「アキラメーナァ!」ドンッ! ドンッ! ドンッ!

マーチ「ビューティ、速く走るよ! しっかりつかまって!」ダッ

ビューティ「ええっ!」ギュッ


ドドドガァァン!


セルリア「……ネジが……当たらない……!?」

アキラメーナ(工事資材合体型)「アガ!?」

マーチ「あいつら、戸惑ってる! 行くよ、ビューティ!」

ビューティ「任せて!」

マーチ「んんっ……てぇぇいっ!」ブンッ

セルリア「……キュアマーチが……キュアビューティを……投げた……!? ……アキラメーナの……頭の上へ……! ……アキラメーナ、撃ち落せ……!」

アキラメーナ(工事資材合体型)「アキラメーナ!」ジャキッ

ビューティ「これだけ近づければ……っ!」


ビューティ「プリキュア! ビューティ・ブリザァァードッ!!」ゴォォォォッ!


バキバキバキッ


アキラメーナ(工事資材合体型)「ア、アガッ!?」

ビューティ「右腕を凍らせました! これでもうネジは撃てませんっ!」

マーチ「やった! さすがビューティ! 後はあたしが、決めるっ!」バッ

セルリア「……調子に……乗るな……! ……まだ……左腕は……生きてる……!」

アキラメーナ(工事資材合体型)「アキラメーナァ!」ブゥン

マジョリン(デコル)「マーチ! 鉄骨が!」

マーチ「っ!?」


サニー「どぉりゃあぁぁぁっ!」バッ


ガシィッ!


マーチ「サニー!」

セルリア「……キュアサニー……いつの間に……!」

サニー「うちが鉄骨止めとく! マーチ、その間に決めてや!」

マーチ「うん! ありがとう!」

マーチ「マーチ・キィーックッ! だぁぁぁぁっ!」ドカァッ

アキラメーナ(工事資材合体型)「アガァッ!?」ドタァァァン!


サニー「よっしゃ! 倒れたで!」

ビューティ「今です! 皆さん、一斉に行きましょう!」

マーチ「うんっ!」

サニー「プリキュア! サニー・ファイヤーァァッ!!」

マーチ「プリキュア! マーチ・シュートォォッ!!」

ビューティ「プリキュア! ビューティ・ブリザァァードッ!!」


ドドドォォォォォォォォンッ!!


アキラメーナ(工事資材合体型)「ア……ガァ……ッ!」ブスブスブス


マーチ「……耐えた……!?」

サニー「なんや……三人やとパワー不足なんか……!?」

ビューティ「……いえ、そうでもないようです」


アキラメーナ(工事資材合体型)「ア……ガァァァァ……」シュワァァァァ…


マーチ「……やっつけた……!」

サニー「ふぅ……。おどかしよって」

ビューティ「何とか……なりましたね」

セルリア「……また……負けた……。……でも……ふふ……これなら……次は勝てる……!」

セルリア「……私達は……どんどん……強くなる……。……お前達は……どんどん……つらくなる……。……覚悟しておけ……プリキュア……!」シュバッ


サニー「なんや、負け惜しみかい……って、言いたいとこやけど……」

マーチ「確かに、今回は結構危なかったね……」

ビューティ「ええ……。気を引き締める必要がありそうですね……!」


キャンディ(デコル)「よかったけど、誰かハッピーとピースを助けてほしいクルぅ!」

マーチ「あ、そうだった! ゴメンね、ハッピー。あたし達のせいで……」

ハッピー「ううん……だいじょうぶ! 二人が無事でウルトラハッピーだよ!」

ビューティ「ピースも、ありがとうございました。お二人のおかげで勝てました!」

ピース「うん! 役に立ててよかった!」

〜 七色ヶ丘市 道路 〜

あかね「……そういえば、さっきの病院の話、続きがあるってゆーとらんかったっけ?」

やよい「あ、そうだ! なおちゃん、続き教えてよー!」

みゆき「わたしも聞きたい聞きたいーっ!」


なお「えっ!? あー、えっと、それは、その……。……やっぱりヒミツってことで!」

みゆき・あかね・やよい「えぇーっ!?」

なお「れいかにはもう言っちゃったからさ。もう一回言うのはちょっと……恥ずかしくって……」

あかね「ほんなら、れいかは知っとるんやな!? どんな話やったん!?」

れいか「ふふっ。さすがにこれだけは、私となおだけのヒミツです」

やよい「そんなぁー……、残念……」

みゆき「あ、わたしの家こっちだ。あーあ、肝心なところ聞きそびれちゃったなぁ……」

なお「また機会があったら話すよ」

あかね「せやから、それうやむやにするパターンやろ……。うちもこっちやから、今日のところは引き下がるわ」

やよい「あ、わたしもこっちだ。それじゃーね! なおちゃん、れいかちゃん!」

れいか「はい! また明日!」


スタスタスタ…

なお「……れいか」

れいか「なに? なお」

なお「今日、思い出めぐりしてよかった。改めて、自分が色んな思い出に支えられてきたんだ、ってことを実感できたよ」

れいか「それは私も同じよ、なお」

なお「れいか、これからも、たくさんたくさん、思い出作っていこうね!」

れいか「ええ、もちろん! よろしくね、なお!」

なお「うんっ!」





つづく

次回予告

みゆき「いつも通り、アキラメーナをやっつけたわたし達!」

みゆき「でも、その後のみんなの様子がヘンなの。あかねちゃんは関西弁じゃないし、わたしは目の前にいるし……って、なんでわたしがいるの!?」

みゆき「これって、もしかして……みんなの姿が別々に変わっちゃった!?」


みゆき「次回、『スマイルプリキュア レインボー!』 "なにこれー!? みゆきがなおで、あかねがやよい!?"」


みゆき「みんな笑顔でウルトラハッピー!」

今回はここまでです!
お読みいただいた方、ありがとうございました。

よろしければ次回もまたよろしくお願いします!


第1話 >>3 から
第2話 >>75 から
第3話 >>166 から
第4話 >>252 から
第5話 >>339 から
第6話 >>422 から
第7話 >>517 から
第8話 >>615 から
第9話 >>700 から
第10話 >>772 から
第11話 >>866 から

残りレス数が少なくなってきたので、こちらへの投稿は第11話までとさせていただきます。
次スレ立てましたので、第12話以降はそちらへ投稿いたします!
今後ともよろしくお願いいたしますー!


次スレ:『スマイルプリキュア レインボー!』 Part 2
『スマイルプリキュア レインボー!』 Part 2 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1366529393/)


なお、こちらのスレは来週まで残しておこうと思います。
感想書いていただくなり、雑談していただくなり、適当に埋めていただくなり、ご自由にどうぞ。
来週まで残っていた場合は作者が HTML依頼を出します。

そんな感じでよろしくお願いします!

>>863さん
投稿前にお返事できなかったので、これからお返事させていただきます。

実はこのシリーズは、すでにテーマと終着点が決まっています。(まだ大っぴらには描けていませんが)
そのテーマに則ってこのまま進めると、あまり妖精達にはフォーカスを当てられなさそうなんですね。。
(できるだけ活躍させてあげたい、とは思ってますが、、悩みの種です)


> 「プリキュアには『運命の相性で結ばれた妖精』がいて、今の組み合わせは実は間違いかもしれない」という事実に直面した時どういう展開になるかな?というエピソードが頭にふとうかんできました。

それを踏まえた上でこちらのいただいたアイデアの話になるのですが、
面白そうではあるものの、ちょっと現行のままでは組み込むのは難しいかな、と思いました。。
大きなネタなので、ヘタに入れると話の内容が変わってしまいそうで。。

なので、せっかくご意見いただきましたのに大変心苦しいのですが、
今回いただいたアイデアの採用はご遠慮させていただく、ということでお願いします。。スミマセン!


と、いうことでアイデアをそのまま使わせていただくことはできませんが、
内容については興味がありますので、もしよろしければ書いてみていただけますでしょうか。
参考にさせていただければ、と思います。


以上です。今後ともよろしくお願いします!

乙でした
>>946 「あまり妖精達にはフォーカスを当てられなさそうなんですね。。」ってことはかなり話数キツキツな感じ?

確か2年目のやつは他に「MH」と「5GoGo!」だったはずで、
追加戦士がどちらも1人で、初登場(変身後の姿で)した話がそれぞれ「5話」と「10話」(違ったっけ?)。
この「レインボー!」は追加戦士が2人で、今11話時点で2人とも変身前の顔出し1回のみなのだけど、話数的に大丈夫?
追加戦士が初登場する前後の話も、結構そのキャラのために割かれてたりするし(例:フレッシュのキュアパッション)。
余計な心配だとは思うけど。

こんばんは。そうですか。無理なことを言ってすみませんでした。う〜ん・・・上手く説明出来る自信はありませんが・・・以前から「妖精がデコルに変身する」という設定が面白いなと思っていたので「プリキュアと妖精たちの色々な組み合わせ(パートナーだけではなく)が、あったらもっと面白くなるんじゃないのかな?」と常に考えていましたし、「妖精たちが敵に『お前たちはプリキュアがいなくちゃ何も出来ないやつらだ』と言われ悩む(特に、三幹部妖精はキャンディ・ポップとは事情が違うから)エピソードがあったらもっと読者(というより自分が読みたい)を物語の世界に引き込めるのではないか?」と、思ったり「三幹部妖精が、バッドエンド王国時代の姿(やはり、あの子達はあのビジュアルで人気を博したから)になれるようになる(=プリキュアのパワーアップのフラグ)エピソードも読んでみたい。その時は女の子がきゅんとする方法(例えば、ミユキがウルルンにキスするとウルフルンになることが出来る・・・私は世に言う『ウルみゆ派』なもので・・・)そんなような展開があったらアニメとは違う面白さが生まれてくるのではないか?」と、色々アイデアが浮かんできました。
 え〜と・・・少し、雑な感じになりましたが・・・ご理解頂けましたでしょうか?正直、書いてるこちらも何が何だか分からなくなっていますが、これが今の自分の頭の中にあるスマイルのアイデアです。
 もし、何かご不明な点がございましたらいつでも御連絡下さい。今日は少し長くなりましたが、ここで失礼させて頂きます。これからも頑張ってください。応援しています。

 おはようございます。一晩寝てよくよく考えたら少しわかりづらい書き方になっているのが気になったので昨日の訂正(一部)をさせて頂きます。本文をよく読むと「内容を教えて下さい」でしたね。簡単ですが以下のような感じです。





起:敵側に新幹部がやって来る。

承:敵の罠にかかり、妖精たちがつかまってしまう。「この時、敵に『お前たちはプリキュアがいないと何も出来ない役立たずな連中だ』と、言 われてしまう。その言葉に反応する三幹部妖精たち(キャンディ・ポップとは事情が違う)・・・返す言葉が無く胸に突き刺さる」

転:プリキュアたちが助けにやって来る。苦戦はしたが、何とか敵を倒すことが出来た。

結:再会を喜び合うプリキュアと妖精たち。しかし、敵に言われた言葉が気になり素直に喜べないウルルン。そんな、彼の様子に「?」となる ミユキ。



                                               次回へ続く


起:「最近、ウルルンの様子がおかしい」と皆に相談するアカネ。

承:ウルルンがいなくなり、皆で捜すが何処にもいない。「この時、オニニン・マジョリンがこの間(=捕まった時)の出来事を話す」

転:ミユキ、ウルルンを発見する。時を同じくして敵も登場。変身するミユキ。だが・・・敵の勢力に負け、変身が解除されパクトを奪われて しまう。パクトを取り返そうとするウルルン・・・しかし、歯が立たずボロボロにされてしまう。隙を突いて彼を助け、逃げるミユキ。

結:気を失っているウルルン・・・なかなか目覚めない。涙目のミユキ。キャンディが助言を出す「『チューしたら起きるかもしれないク   ル』と」。半信半疑ながら実行してみるミユキ。すると、ウルルンのからだが光りだし・・・ウルフルンの姿に変身する(=プリキュアのパ ワーアップのフラグ)。


                                              次回へ続く

起:ウルフルンを見て驚く敵(最初は誰だか分からないといった様子)。パクト争奪戦の幕が開く。苦戦しながらもパクトを奪い返すウルフル ン。

承:パクトを受け取り、再度変身するミユキ。敵を倒す。

転:チカラを使い果たし、ウルルンに戻るウルフルン・・・気絶している。4人がやって来る。

結:ふしぎ図書館で目を覚ますウルルン。涙目のアカネに黙っていなくなったことを謝罪する。「これからは、何でも話してくれ」と言うアカ ネ。約束をするウルルン。「ミユキと話したいことがあるから二人きりにさせてくれ」と頼むウルルン。承知して出て行く4人と4匹。ウル ルン、ミユキに「何で自分はまたウルフルンになれたのか?」と、理由を問う。「知らない」と答えるミユキ。腑に落ちない様子のウルル  ン。



                                              完

  






これを日常回の端端(ごくたま)に、からませ・・・何回目かで皆にばれてしまい(最初は秘密で)、その事に疑問を持ったポップがメルヘンランドに帰って、プリキュアのことを調べると驚きの事実(=「プリキュアには元々『運命の相性で結ばれた妖精』がいて、今の組み合わせは実は間違いかもしれない」)ということを発見する。

以上が自分の考えた進行内容です。


>>949 いやウルフルンとかアカオーニに戻ったら女児泣くんじゃね?
って、バッドエンド3幹部ってあのビジュアルで子供たちに人気だったの!? 遊園地のショーとかだと、子供怖がってた気がするけど。

ゴメン。私、ショーは見ていないからネットや二次創作の評判や影響で物事みていたかもしれない。でも、やっぱり「惜しいな」って感じるんだよね(色々とグッズが出てたから)。それに、ここの作者さんが「女児向けに作品を書いている」のかは本人に聞かないと分からないことだし、考えたこともなかった。だから、大人(又は中高生)目線で色々アドバイスや感想をかいていたのかもしれない・・・。

本編の延長で読み応えがあって、43の自分(おやじ)でも嵌まった、どう言う展開になるか楽しみになって来た。作者様体調に気を付けてシナリオを書いてください。

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