スレタイ通り>>1がほのぼのに百合百合したい気分なので、安価でペアとお題を頂きたい!!というスレです。
短めの話をいくつか書いたら終わります。
キャラの範囲は1.2、ゼロ、ロン切、絶望少女…全部OKです!
と、言いたいところですが、ロン切3巻は未読です、済みません。それ以外の登場キャラでしたら問題ありません。
投下はゆっくりまったりでやっていきます。多分。
ひとり目の女子キャラを>>2
お相手の女子キャラを>>4
お題を>>6
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こまる
澪田
舞園
st
楽器と歌のコラボコンサート
こまるちゃんと、舞園ちゃんで“楽器と歌のコラボコンサート”に決まりました!
ほぉ期待
こまる 「まさか、こうしてまたアイドルのさやかちゃんと一緒に遊べるなんて! お兄ちゃんに感謝だよー!」
舞園 「ふふっ、私もこうして、こまるちゃんと遊びに行けるの、とても嬉しいですよ」
私の目の前にいるのは、国民的に支持を得ているアイドルグループでセンターを務める舞園 さやかちゃん。何で私のような平凡も平凡な女の子が、雲の上の存在である、さやかちゃんと遊べているのかというと、さっきの私の言葉通り、さやかちゃんと同じ学校に通うお兄ちゃんのおかげなのである。
さやかちゃんはスゴい才能を集めた学校《希望ヶ峰学園》に、《超高校級のアイドル》として通っている。一方、私のお兄ちゃんは一般人が選ばれる《超高校級の幸運》に当選して通っている。何の才能のない月並みなお兄ちゃんが通えるのはそのため。でも、これが私ともさやかちゃんと繋がる縁の始まり。
実をいうと、お兄ちゃん自体は中学の頃もクラスは違うけど、さやかちゃんと同じ学校に通ってはいたんだよね。
《希望ヶ峰学園》では、お兄ちゃんとさやかちゃんは同じクラスになって、私がさやかちゃん大好きなサヤカーだって話をしたら、さやかちゃんの方から会いたいって言ってくれたらしい! それがきっかけで、さやかちゃんと私は半年前にお兄ちゃんを交えて初対面した。
それから、個人的に2、3度一緒に遊んでいる。私から誘うのは迷惑だと思って誘ったことはない。つまりは、全部さやかちゃんからのお誘い! 夢のような話だけど、現実! 何度か遊んではいるけれど、アイドルのさやかちゃんからのお誘いメールを最初は現実味を感じることができずに、何度か疑ってからお返事を出す…というのが私の恒例になっている。それくらいスゴい存在なんだよ!
こまる 「でも、結構頻繁に遊んでる気がするんだけど…大丈夫なの?」
売れっ子のアイドルさやかちゃんのオフに、一般人だし、ましてや級友でもない私が半年の間に2、3度一緒に遊んでるって、結構スゴくない? 私何かと一緒に過ごしてくれるのは嬉しい。でも、他にやりたいこととかあるんじゃないかと心配になる。
舞園 「私がこまるちゃんと遊びたくて誘ってるんですよ? 問題ありませんっ」
にこりと私に微笑んでくれる。とっっっっても眩しい笑顔で! さやかちゃん可愛いよ!! 堪んないよ!!!
こまる 「さやかちゃん優しいなぁ! ますます好きになっちゃう!」
舞園 「私もこまるちゃん大好きですよ!」
今私がこうしてさやかちゃんを独占している時間…幸せだなあ……!
こまる 「えっと…さやかちゃん。お願いが…ある、ん、だけど……」
舞園 「なんですか?」
こまる 「腕組みして歩きたいなぁ……なんて」
すっごく贅沢で図々しいお願いなのは解ってる。でも! でも! さやかちゃんとの時間をもっとエンジョイしたい! 断られてもいい。こうして同じ空間で同じ空気を吸っている今でこそ、贅沢中の贅沢なんだし。
舞園 「うふふっ。もちろん、喜んで!」
さやかちゃんの腕が私の腕にするりと絡んで、肩と肩が触れ合った。ふわっといい香りがするし、女の子同士だけど、ドキドキしちゃう。
舞園 「こまるちゃん、ドキドキしてますね?」
こまる 「な、なんで解るの?!」
舞園 「私、エスパーなんです!」
こまる 「えええっ?!」
舞園 「ふふ、慌てるこまるちゃん可愛いです! 冗談ですよ、冗談っ」
慌てる私に、さやかちゃんは悪戯っぽく舌を出しながらそんなことを言う。ズルいよね! 可愛い子って何しても可愛い! これはもう世の男の子、果ては私みたいな女の子だってメロメロになるはずですよ!
こまる 「でも、さやかちゃんって鋭いよねぇ」
舞園 「そうですか?」
こまる 「隠しごとあってもバレちゃいそう」
舞園 「そうかも…知れませんね?」
さやかちゃんは意味あり気に目を細めて、私の目をまっすぐに見つめてきた。その視線に心臓はドクンと大きく跳ねて、ドクドクと胸を叩きはじめる。
こまる 「え? 私が何か隠しごとしてるとか解っちゃうの?」
今は大した隠しごとなんて…多分ないはずだけど。
舞園 「こまるちゃん自身も解っていないこと…今はほとんど私の一通になってるってことでしょうか」
こまる 「? どういうこと……?」
舞園 「ふふふっ」
舞園 「それはまた今度にして、どこに行きたいですか?」
こまる 「ええっ?! き、気になるよー!!」
頭にハテナで埋まる私の質問を、さやかちゃんはのらりくらりと躱して、目的の場所を目指した。
舞園 「文化祭で開く喫茶店でステージ…ですか」
こまる 「そうなんだよぉ……でね? 私がキーボードやらなくちゃならなくて……したことないのに」
コンセプトが、ガールズバンドとアイドルの融合!だとかで、勝手に選ばれた私達演奏組と、踊る子達とで、お客さんの前で演奏と踊りを披露しなくちゃいけなくなってしまった。ピアノなんてやったことないのに、無茶振りだよ。
舞園 「それで楽器屋さんなんですね」
こまる 「曲はね、舞園ちゃんのグループの曲なんだ!」
舞園 「それは嬉しいですね!」
こまる 「それで楽譜が欲しいんだけど、舞園ちゃんのグループの楽譜って沢山あるから、どれ選べばいいか解らなくて」
せっかくこうして本人がいるんだし、素人の私が選ぶよりプロの目で確かめてもらった方がいいよね。
舞園 「そうですね……」
さやかちゃんは何冊か楽譜を取ってペラペラと目を通して、一冊を私に手渡す。
舞園 「これが一番いいと思います。簡単だけど、いいアレンジがされていますよ」
こまる 「わあ! ありがとう!!」
さやかちゃん本人に選んでもらっちゃった! 練習するのが楽しみになってきた!!
舞園 「一度、私が弾いてみましょうか?」
こまる 「え! 本当?! わあ! 聴きたい!!」
さやかちゃんによる演奏まで聴けるなんて、幸せ過ぎて罰があたりそう…っ!
舞園 「じゃあ、楽譜いいですか?」
私から楽譜を受け取ると、さやかちゃんは一台の電子ピアノに楽譜を置いて、鍵盤に両手を添える。その指が鍵盤を押さえて沈むと、さやかちゃん達の曲が流れだす。
こまる 「おおーっ」
ピアノを弾くさやかちゃん、楽しそう。何だか私も楽しくなってきた! 音に合わせて体が動いちゃう!
舞園 「こんな感じです。どうですか? これでいいですか?」
こまる 「うんうん! すっごく楽しいアレンジ! それに、さやかちゃんが選んでくれた楽譜だもんね!」
こまる 「これ、払ってくる!」
舞園 「はい」
さやかちゃんに選んでもらった楽譜、これはもう私の宝物だよ! 何だか使うのもったいないなぁ。
でも、やらなきゃ選んでくれたさやかちゃんかに申し訳が立たないもんね。やるよ! 私はやる時はやる子なんだから!
―――――――――
放課後の教室。私とミニステージをするメンバーで鋭意練習中です。自分でいうのも何だけど、上手くなってきてる! 私天才かも!!
「こまるー、あんた最近ますますサヤカー度が上がってるよね」
「それだけじゃないよ。あんだけ“弾けるワケないよぉ”って泣き言いってたのに、突然“練習がんばる!!”って、言い出すんだもんね」
こまる 「いやぁ、さやかちゃんへの愛が私を動かしているんですよ!!」
「ま、おかげで間に合いそうだし、いいんだけどさ」
「上達早いよね。サヤカーの力恐るべし」
こまる 「まだちょいちょい失敗はしちゃうけど、曲を弾ききるまでになったもんね! この調子で失敗を減らして完璧に仕上げるぞー!!」
「うんうん。がんばれがんれ」
「いや、でもあたしらも負けてらんないね。こまるのがうまいなんて焦るわ」
「ね、許せない! 生意気だ!」
こまる 「な、何それ?! ヒドい!!」
ね? がんばれば結構やる子なんです、私! 好きな曲を自分で弾けるようになるのって楽しい!
こまる (当日にさやかちゃんはお仕事があるみたいだから、お披露目できないのは残念だけど…)
こまる (でもでも、さやかちゃんに私の想いを届けるつもりでやりきるんだ!!)
こまる 「んじゃ、もう一回!」
私は改めて気合いをいれて、練習を再開した。
サヤカーの力、見せてやるんだから!
こまる 「あ! さやかちゃんからメールだ!」
舞園『こんばんは! あれから練習はどうですか?』
こまる 「気にかけてくれてる! えへへー、嬉しいなーっ」
さやかちゃんからのメールに、逐一テンションが上がって舞い上がっちゃう私ってば気持ち悪い。でも仕方ないよね! さやかちゃん大好きなんだもん!
こまる 「まだちょいちょい失敗は…しちゃうけど…大丈夫だよー…っと」
送信して数十秒後、直ぐにさやかちゃんから返事がきた。
舞園『今度のお休みは空いてますか?』
こまる 「これは! 遊びのお誘い?!」
こまる 「もちろん! どこに行きたい?」
舞園『ステージを観にいけないかわりに、前に行った楽器屋さんで、こまるちゃんの演奏が聴きたいです!』
お、おお…な、なるほど! 次の休みまで後2日…これは何が何でも仕上げなければ…!!
こまる 「じゃあ…時間と待ち合わせは…前と同じで大丈夫?」
舞園『わかりました! こまるちゃんの演奏、楽しみです!』
こまる 「まさかこんな形で、さやかちゃんにお披露目することになっちゃうなんて……!」
本人の前で不甲斐ない、がっかりさせる演奏はできない!! ますますがんばらないとね……うう…プレッシャーが…緊張してきた。
―――――――――
こまる 「さやかちゃんに会えて嬉しいけど、今日は緊張のが大きいよー」
待ち合わせた場所から、今回もさやかちゃんと腕を組んであの時の楽器屋さんに向かっていた。再会した喜びより、緊張によるドキドキの方が勝っちゃってて、ちょっと損した気分かも。
舞園 「うふふっ、私はとっても楽しみです! こまるちゃんの努力の結果が観られるんですから」
ああ、今の私にそんな神々しい笑顔を向けないで!
こまる 「ううっ……さ、さやかちゃんをがっかりさせないように精一杯演奏します!!」
舞園 「気負わなくってもいいんですよ。まずは楽しむことが第一です」
優しい声色でさやかちゃんはそう言って、私の指に、自分の指を絡ませた。なんだか恋人がするみたいな手の繋ぎ方に、今度は別のドキドキが胸を打つ。
顔が熱くなってきた。
舞園 「そうすれば、失敗なんて二の次になっちゃいますから」
間近にまで、さやかちゃんの顔が近づいて、こつんとおでことおでこがぶつかった。
こまる 「~~~~っ!」
舞園 「こまるちゃんらしく、元気に演奏してください」
私は今、電子ピアノの前に立っている。いよいよ……さやかちゃんの前で私の練習の成果をみせる時が…来てしまった。
ちらりと横目でさやかちゃんを見ると、柔らかい笑顔で私が演奏するのを待っている。一度深呼吸して、心臓を落ちつける。
こまる 「よし!」
自分で自分への掛け声と一緒に、鍵盤を叩く。イントロが明けると、横にいたさやかちゃんが私の目の前に移動して、歌と振り付けを始めた。
こまる (さやかちゃんの生歌! ダンスまで!)
あまりの嬉しさに興奮で心が踊りだす。私とさやかちゃんによる特別なステージ。これは本番ではないけど、きっと本番より今の方が気合いが入っちゃって、本番ではできない演奏なんじゃないかと思うくらい、ミスもなく全力で弾き切った。達成感と高揚感に満たされる。
舞園 「スゴいです! ばっちり弾けるようになってるじゃないですか!!」
舞園 「これなら本番でも問題ないですね!!」
踊った後で息を弾ませながらも、さやかちゃんが私に賛辞をくれる。
こまる 「ありがとう! さやかちゃんはすっごく輝いてた! 素敵だった!! 元気にもらえたからやりきれたんだよっ!!」
舞園 「それはこまるちゃんの力です。私の力じゃありません」
そんなことないって…絶対。
こまる 「私、さやかちゃんには不思議な力があると思うんだ」
こまる 「元気にしてくれたり、安心させてくれたり……ドキドキしちゃったりして」
こまる 「さやかちゃん見てると…側にいると、スゴく楽しい。忙しい中こんなに時間をくれて、ありがとう」
言葉足らずで伝えきれてないけれど、ありったけの感謝と想いを込めたつもり。
舞園 「私こそ、ありがとうございます」
こまる 「え?」
舞園 「私が目指したアイドルは、誰かを元気にするアイドルなんです」
舞園 「私が欲しい大切な言葉をくれたから、こまるちゃんに感謝です」
またそんな優しい笑顔でそんなこと言われたら……。
こまる 「本当にズルいよぉ」
顔に地が巡ってるのが解る。きっとゆでダコみたいになっちゃってるんだろうなぁ…恥ずかしい!!
舞園 「耳まで真っ赤ですよ? 可愛いです、こまるちゃん」
くすくすと笑うさやかちゃん。意地悪だなぁ。でも可愛い! 許しちゃう!
舞園 「私の一通じゃ、なくなりましたね」
こまる 「え?」
舞園 「もう、解ってるんじゃないですか? 自分の気持ちと」
舞園 「私の気持ち」
さやかちゃんの大きな瞳が、私を真っ直ぐにみつめてくる。
鼓動が一際大きく高鳴る。それは確かに、私にさやかちゃんへの気持ちを理解させた。
そっか…私のさやかちゃんへの気持ちって、ただのファンとしての気持ちだけじゃなかったんだ――
舞園 「本番が成功するおまじないをしてあげます」
さやかちゃんは人差し指を自分の唇に充てて、その指を、私の唇に充てる。これが、アイドルのさやかちゃんにとっての今できる精一杯の私への告白なんだろうなと感じた。
愛おしくて、抱き締めたくて堪らなくなる。
舞園 「これで成功間違いなしです!」
子どもみたいにはしゃぎながら、さやかちゃんは笑った。
こまる 「これで本番がんばれる!!」
舞園 「その粋です! こまるちゃん!」
お互いに言い合えない言葉があるのは切ないけれど、言えなくてもお互いに解り合えているんだったら、それは逆に強い絆であるように思えるから――私はいちファンとして、アイドルさやかちゃんを支えていこうと思う。
言子
ksk
霧切
本当に優しいって何かを教えてトラウマを克服させるために奮闘する
上
言子ちゃんと霧切ちゃんで“本当に優しいとは何かを教えてトラウマを克服させるために奮闘する”でいきます!
後、言子ちゃん登場により絶望少女のネタバレが含まれますので、まだ未プレイだよ!しかしプレイする予定だ!という方はこの先の閲覧は非推奨です
霧切 「あなたが空木 言子さんね。はじめまして」
空木 「お姉さん誰ですか?」
霧切 「しばらくあなたの教育係になる霧切 響子よ。よろしく」
空木 「教育係なんて、えっちぃ響きですねー! 逆に私がキャワイイお姉さんを教育してあげたいところでーすっ!」
明るく楽し気に、いたいけな少女には似つかわしくない発言をする彼女は、塔和シティで大人と子供の対立をけしかけ、大人の虐殺、暴動に加担していた子供の内のひとり。空木 言子。
彼女と他に行動をともにしていた少年3人《希望の戦士》は大人、かつては操り味方だった子供も、制御していたリーダー格の少女が姿を消したことで制御が利かず敵となってしまい、そんな敵しかいない塔和シティでボロボロの状態で残っていた。大人や子供と闘っていたのだ。
自業自得であるとはいえ、まだ彼女達は幼い。大人を憎むのに充分な理由もあれば、リーダー格の少女に踊らされていたという部分も、苦しいがあった。放っておくわけにはいかない。未来機関で保護し治療を施した。
そして、暴動の件もあり《希望の戦士》達をどうするべきかという話が挙がる。彼女達は自分達を《希望の戦士》と謳っていた。つまりは、彼女達が望んでいるのは絶望ではなく、希望。私達が対立している絶望には染まっていないことから、まだ間に合うとふみ、交代制で彼女や彼らの面倒、教育をおこなうという結論に至った。
そうした経緯により、空木 言子に私が充てられたのだ。
霧切 「まず、あなたの話を聴きたいわ」
空木 「私の話? それは過去の話が聴きたいってことですか?」
空木 「他人の過去を根掘りするのがお姉さんの趣味なんですねー? 悪趣味です、キャワイくないです」
さきほどの可愛らしい笑顔から一転し、敵意を露わにした瞳で私を睨めつける。
空木 「私はお姉さんの過去を聴きたいところですね」
霧切 「構わないけれど……何から話せばいいのか解らないわね」
探偵という生業で生きていた過去。父を捜し、見つけた先の学園での事件…これは彼女も知っていることのはず。でも、話して楽しい話題かどうかは解らないけれど、私の半ばもきていない人生でも、案外話のタネが多いのだと気づいた。
空木 「もういいです。でもどうせ私達のこと調べてわかってるんじゃないですか?」
霧切 「ええ」
空木 「やっぱり」
まだ十にも満たないだろう幼い身体で、大人の欲を受け続けてきたという。汚れた大人の世界に放り込まれてしまったのだ。しかも、それを口利きしているのが実の母親だというのだから、信じられない。あまりにも残酷で耳が痛くなる話。
やはり自分から語ってはもらえないか…。それができるまでになるには、どんな人間にも時間が必要になる。私がそうであるように。
先の言葉の通り、彼女には恐怖の回帰…トラウマがある。それは“優しい”と言われたり、極度に優しくされること。普通ならば好意的なそれも、彼女にとっては嫌な行為の記憶を呼び起こす要因になる。私はそんな彼女に“本当の優しさ”を教えなければならない。かなり厄介だ。
しかし今、腐敗していた世界が息を吹き返そうとしている。その世界で彼女達の手が赤く染まることのないように、心を正してあげなければならない。
空木 「まあ、お姉さんはキャワイイので特別によろしくしてあげます」
霧切 「そう。ありがたいわ」
私は空木さんに手を差し出す。それを空木さんも躊躇いなくとる。小さく、暖かい柔らかな掌。何人もの大人を殺害してきた手には見えない。
空木 「それより、苗木 誠っていう人はここにいるんですか?」
霧切 「……それを知ってどうするの?」
空木 「中継でしか観たことがないので、実物を見てみたいだけです」
《希望の戦士》達はコロシアイ学園生活を生き延びた人物、特に苗木君に対しては怨みが強いということは解っている。彼女達に彼を対面させて、何が起こるとも限らない。今は会わせるわけにはいかない。
霧切 「あなた達を彼に会わせることはできないわ」
空木 「あら、残念」
言葉ほど残念な様子ではなさそうにしながら、空木さんは自分の髪の毛を一房とり指で遊びだす。
霧切 「私から質問していいかしら?」
空木 「答えられる質問だったら、答えますよ?」
霧切 「私の手を握るのには躊躇いがなかったようだけど」
霧切 「他人から触れられるのは嫌?」
空木 「……その時々によりけり…全部が全部ではありませんねー」
霧切 「そう」
空木さんの返答をきいて、彼女の頭に触れる直前にまで手をかざしてみる。
空木 「っ!!」
大きく体がびくりと跳ねて、弾かれたように私から離れようとする。
空木 「や、やめて……頭は…触らないで……っ!!!」
金切り声を発しながら小さな空木さんの体がカタカタと震え、顔は蒼ざめていく。頭に触れられることによほどのトラウマがあるようだ。幼い彼女にここまでの恐怖を植えつけた人間達に怒りが募る。
空木 「あいつら…いつも…優しく…頭を撫でてから…私を……っ」
ついには瞳から大粒の涙が溢れ出す。
どうすれば、彼女に“本当の優しさ”を教えてあげられるだろうか? 一度刷り込んでしまった恐怖を拭うことは難しい。楽しいことより、嫌なことの方が鮮明に覚えているのが人間だ。
安心させる手段である触れるという行為を、彼女に対しては逆効果であるのは痛い。触れられることを嫌う空木さんに、どうしてあげればいいのか解らない
霧切 「大丈夫。ここにはあなたに怖いことをする人はいないわ」
空木 「そんなの、解らないじゃないですかぁ!! 男は汚い視線を私に向けるヤツばかり!! ここのヤツらだってきっと隠してるだけで、私を陵辱する機会を狙い澄ましてるんだっ!!」
胸が裂けそうだった。子供の口から“陵辱”という言葉がでるという異常性。
私は構わず、彼女の頭に手をのせた。
空木 「嫌! やめて!!」
私の手をはたき落として、私から距離をとろうとする。
霧切 「私はなにもしないわ」
空木 「そんなの…解らないじゃないですか……っ! 大人はみんな嘘つきなんだから!!」
霧切 「人に触れられること、優しくされることは、あなたが受けたようなことだけが全てではないわ」
空木 「解ってるよぉ!! でも頭も体も拒否しちゃうんだよぉッ!!」
抱えているモノに押しつぶされ、壊れてしまいそうな軋んだ叫び。
空木 「私が知ってるのはそんなのしかないんだもん!!」
霧切 「……嫌な思いをさせて、ごめんなさい」
空木 「!!」
霧切 「でも私はあなたのその恐怖を、無くすことまでは無理でも、減らしてあげたいの」
霧切 「どれだけ時間が掛かろうとも救ってみせる」
まっすぐに空木さんの瞳を見据えて宣言する。交代制で面倒をみる予定だったけれど…私個人のわがままが通るかは解らないけれど…彼女が立ち直るまで、彼女のケアを、私がしたい。
空木さん達が幸せになり、不幸にさせない未来を作らなけばならないという、使命感が私の中で湧いた。
霧切 「あなたの未来、私が預かるわ」
大門 「なーなー! 探検しようぜー!!」
煙 「ここ広いから探検のしがいがありそうだよね」
新月 「でも、見張りつきだからな……」
大門 「鬱陶しいよなー……あ!」
「言子ちゃん!!」
空木 「やっとみんなに会えましたー! 元気そうで良かったです!!」
他に保護していた子供たちとの再会。歳相応のキラキラと眩しい、あどけない笑顔。空木さんや、他の子たちの笑顔に安心する。本来はこうあるべきなのだ。
霧切 「お待たせ」
先に来ていた子供たちが空木さんが混ざるのと同じく、私も先に来ていた仲間の方へと向かう。
朝日奈 「遅かったねー、霧切ちゃん」
霧切 「少し手間取ってしまったわ」
十神 「空木はどうだ? ある意味、一番難しい相手になると思うが」
霧切 「そうね…ふふ」
葉隠 「どうしたんだべ? いきなり笑いだしたりして?」
霧切 「いえ…空木さんを一番難しいと思えるほど、十神君も丸くなったんだって、感慨深くなっただけよ」
葉隠 「確かにそうだなっ! 丸くなったべ!!」
十神 「うるさいぞ」
朝日奈 「照れるな照れるな!」
ふたり足りないけれど、コロシアイ学園生活を生き抜き、絶望が蔓延する世界と戦っている私の仲間。
今、私と同じように救助した子供たちの教育係に充てられている。
朝日奈 「大門くん、生意気だけど元気ないい子だよ! 一緒にいるとなんか昔悠太と遊んでた頃思い出すなー」
葉隠 「朝日奈っちは仲良くできそうだな? 俺はあの蛇太郎とかいうのとやっていける気がしねーんだけど…交代制だからまだいいけどよー…十神っち、代わってくんね?」
十神 「お前だと、あの新月にいいように扱われるだけだ。やめておけ」
まだスタート地点だから、なんとも言えないところではあるでしょうけれど、とりあえず他のメンバーは良好な手応えを感じているようだ。安堵するのと同時に、彼女への対応をどうすべきかと、先の見えない不安を抱いた。
十神 「浮かない表情だな。問題があるなら聴いてやる」
霧切 「あら、ありがとう」
朝日奈 「おや? 十神ってば優しい!」
十神 「黙れ、朝日奈」
ふたりのやり取りに微笑ましく思いながら、少し間をおいてから、私は自分の悩みをこぼす。
霧切 「優しさって、何かしらね」
「……」
霧切 「優しさを怖がる彼女にそれを教えてあげることが、私にできるかって考えてしまって……さっきだって、泣かせてしまったわ」
朝日奈 「空木ちゃん、泣いちゃったの?」
霧切 「頭に触れたのが原因で……ね」
葉隠 「トラウマの内容が内容だかんな」
嫌がる彼女に一度。その一度だって、どれほど苦痛だったか。けれど、その傷を目の当たりにしたからこそ――
霧切 「それで、私は決めたの。交代の期限が来ても、私は代わらず、彼女にあたるわ」
十神 「何?」
霧切 「そうしたいの。彼女を中途半端にしたくないから」
葉隠 「ええっ?! 気持ちは解らなくねーけど、霧切っちの他の業務に色々支障が出てくんべ?!」
朝日奈 「……ねーねー、霧切ちゃん」
難しきを示す男性陣に対して、朝日奈さんは満面の笑顔を私に向ける。
朝日奈 「そう考えてあげられてることが、優しさだと思うよ?」
朝日奈 「霧切ちゃんは充分優しいよ! だから、普通に接してるだけで、いいんだよ! 無理な優しさは優しさじゃないもん! 空木ちゃんだってそれを理解してくれるはずだよ!!」
朝日奈 「私は霧切ちゃんに賛成! 応援するよ!!」
私の両手を取って朝日奈さんは励ましてくれる。
葉隠 「朝日奈っちの考えは能天気だとは思うけども」
朝日奈 「なによぅ! あんただって能天気でしょー!!」
葉隠 「まあ、霧切っちが個人をこんな気にかけるんて珍しいしな。俺も応援してやるぞ!」
十神 「丸くなったのはお前もだ。霧切…今のお前ならば、やれんことでもないだろう」
十神 「お前の穴埋めは俺がしてやる。やるならとことんやれ」
「……」ニヤニヤ
十神 「……ニヤニヤした顔で見るなバカ共!!」
霧切 「ふふっ…ありがとう、みんな」
一瞬みんながきょとんとして私を見た後、微笑みかけてくれる。
霧切 「少し自信がついた……明日、空木さんに専属で着けないか掛け合ってみるわ」
―――――――――
空木 「私に専属で着くぅ?! あなたがですかぁ?!!」
霧切 「ええ」
空木 「私、イヤですよ!! 期限があるなら我慢もできますけど、昨日泣かされた相手にずっと着いて回られるなんて最悪中の最悪です!!」
確かにそうだろう。彼女からしたら迷惑な話。
霧切 「改めてよろしく」
空木 「~~~~っ!」
納得いかない様子で私を睨む。しかし、それ以上何を言うでもなく黙りこむ。
霧切 「今日はあなたの好きなものを聴かせてくれるかしら?」
空木 「剥いてある栗。甘いものならなんでも好きです。後、キャワイイもの」
空木 「それと《希望の戦士》の……みんな……」
《希望の戦士》のみんな。みんなの部分で言い淀んでいたのは、リーダー格の少女の件があるからだろう。彼女を含めていいのかどうか考えた末の結論。彼女は“みんな”と答えた。
裏切られていたとはいえ、やはりどこか払拭はできないのだろう。
霧切 「そう…今度、ケーキでも一緒にどうかしら?」
空木 「ケーキはいいですけど、お姉さんと一緒っていうのはイヤですね!」
空木 「嫌いなものは、剥いてない栗、辛いもの、目の前にいるお姉さんッ!!」
霧切 「そう」
空木さんはまくし立てるように言い切って、私に指を突き指す。
私に釘を刺したのだとでも思っているのでしょうけれど、やはり子供ね。
霧切 「やりがいがあるわ」
私はにやりと空木さんに不敵に笑ってみせた。私はかつて《超高校級の探偵》と呼ばれていたのだから。食らいつき粘る長期戦は得意よ。
空木 「お姉さん、意地悪ですね。優しくない」
霧切 「優しくないのは、あなたのお好みじゃなくて?」
空木 「んんんっ! 可愛くない!! 大門くんに着いてるお姉さんと交換して欲しいです!!」
霧切 「無理よ。諦めなさい」
空木 「きぃーっ! そのドヤ顔ムカつくー!!」
変に“優しく”するというのはやめて、私は私が付き合い易いように、彼女に接することにした。朝日奈さんが普通に接すればいいと言ってくれた。
今の空木さんの様子からしても、その方がいいみたいだし。長い付き合いになりそうね。
霧切さんが相手を自分から攻略していくのは面白い
そして朝日奈さん菩薩ってレベルじゃねーぞ!?
>>25
泣いて泣いて悩んで苦しんで、最後は許しちゃうのが朝日奈ちゃんだと思うんです
新月 「頭を撫でられる訓練?」
空木 「そうです! あの意地悪女と早くおさらばしてやるためにです!」
大門 「なんでオレっちたちなんだ? あの姉ちゃんでもいいんじゃないのか?」
煙 「大人に触られたくないん…だよね?」
空木 「そうです! だから、気心の知れたみんなから慣らしたらどうかと思ったんです!」
監視つきではあるけど《希望の戦士》のみんなと会える時間帯。私はみんなに、頭を撫でられるのに慣れるための訓練をしたくて、協力してくれないか訊いてみる。
あのお姉さん、顔はキャワイくても中身はキャワイくないです!あんないけすかないのとずっといないといけないなんてムリ! ムリムリムリムリ!!
煙 「だだ大丈夫かなぁ……ボクちんはやめたほうがいいと思うなぁ」
蛇太郎くんは心配そうにもじもじと私を見つめる。気持ちは嬉しいですけど、私は私のためにやるんだ!
大門 「でも言子ちゃんはあいつと早く離れたいっていうなら、協力してやんなきゃだろー!!」
大門くんは解ってくれていますねー! 一刻でも早く! 善は急げです!
新月 「……どうしても無理だったら言ってくれよ」
新月くんまで、緊張した顔しちゃってますけど……。でもやらなきゃ、この先私に自由はないんだもん。
空木 「うん! お願い!!」
大門 「じゃ、オレっちからな!」
私は大門くんに頭を差し出す。気配で大門くんの手が近づくのが解る。そして、この段階から自分の鼓動が早くなっているのも解る。頭がぐるぐるする。あいつらじゃないのに。あんな汚いヤツらじゃないのに。
仲間なのに
友達なのに
汚くないのに
空木 「はぁ…っ……はっ……」
大門 「こ、言子ちゃん、だ、大丈夫か?」
煙 「ど、どうしちゃったのぉお?!」
新月 「これは…十神さんっ!!」
触られてもいないうちに息が詰まって、それを補おうとしているのか、勝手に空気を必死に吸い込んでしまう。息を吸い込む度に隙間風のような変な音が喉からして、頭がくらくらしてくる。
ダメだ…やっぱり…息を吸い過ぎて胸が痛くて吐きそう。頭に邪魔なノイズが走って、まともに思考できない。
膝ががくんと折れて、うずくまってしまう。
「言子ちゃん?!」
隙間風のような音がうるさくて、みんなの声が遠く聞こえる……
霧切 「空木さん!」
大門 「こ、言子ちゃんの様子が変なんだよ!! 助けてくれよ!!」
朝日奈 「大丈夫だよ! 大!」
煙 「や、やっぱりやめた方がよかったんだあああ」
新月 「落ち着け蛇太郎。十神さんたちがなんとかしてくれる」
煙 「う、うんん」
十神 「こういう時だけはしおらしいな、お前たち。後で空木 言子がどうしてこうなったかの説明をしてもらうからな」
《未来機関》のヤツらも集まって、私の周りを囲う。見世物みたいじゃない。
葉隠 「言子っちどうしたんだべ?」
十神 「過呼吸だ。そう心配せずとも大丈夫だ。霧切、呼吸を整えるように安心させてやれ」
霧切 「わかってるわ」
霧切 「空木さん。落ち着いて。息を吸い過ぎているから、今度は長く息を吐くことを意識してみて」
空木 「はっ、はっ……っ……はっ…はーっ」
お姉さんが私に意識的に呼吸を落ち着かせるよう促す。吸い込むばかりでなかなか吐き出せない。それでも、なんとか吐き出すことに成功する。
霧切 「そう。そのままゆっくり、くりかえして」
動悸はまだドクドクと早いけど、呼吸は鎮まってくる。
空木 「はー……みんな…ごめん…な、さい」
霧切 「無理にしゃべらなくていいわ」
朝日奈 「良かった!」
心配そうに私を見ていたみんなの顔が安堵の色にかわる。
私、何してるんだろ……。なんとかしようとしてこのありさまだなんてカッコ悪すぎ……。
でも、それより何より――
霧切 「まだ早いけれど、先に部屋に戻りましょう」
空木 「……」
大門 「ちゃんと休むんだぞ!? リーダー命令だかんな!!」
空木 「うん……」
霧切 「いきましょう」
こればかりは大人しく従うしかなかった。
空木さんの部屋に戻って、空木さんが平静を取り戻してから、ことの成り行きを聴いていた。
自分で頼んだことだから、彼らに非はないことを一生懸命に説明された。自分がしたことで、彼らが私たちに叱られてしまわないかと不安なのでしょう。そんな彼女の配慮はなんともいじらしい。
霧切 「あなたなりに頑張ろうとしていたのね」
空木 「……あなたと離れたいからです」
やっぱりそうなのね。彼女の答えに私は苦笑する。
今のままにしておくと、ますます彼女の問題は深刻化してしまうでしょう。だから、理由はどうあれ、空木さん自身が克服しようと動いていたことが嬉しい。結果は芳しくはないけれど、その一歩こそが大事なのだから。
空木 「……ショックです…大門くんをあんなに酷く拒絶してしまうなんて…私のためにしてくれようとしたのに」
さきほどの自分の状態を思い出してか、空木さんは沈痛な面持ちで俯いてしまう。
空木 「大門くん、新月くん、蛇太郎くん、みんな好きなのに、私の体はそんなの無視して震えて、まともに呼吸ができなくなって……」
空木 「私がみんなを嫌ってるみたいでイヤでした…そう思われてしまったかもしれないです…でも止まってくれなくて……」
空木 「自己嫌悪で死にたくなります」
今にも泣き出しそうに頭を抱えながら、弱々しくため息を吐く。
霧切 「気持ちは解る。だけど、空木さんは彼らを仲間だと認めていたからこそ、頭に触れることを許したということを、彼らも理解しているはずよ」
霧切 「気に病む必要はないわ」
あの敵しかいない街でずっと一緒に生き抜いてきた仲間なのだから、なおのこと。それをくみ取れない子たちではないだろう。そんなに脆い絆ではないはずだ。
空木 「気休めはやめてください……でも」
空木さんの重い表情が、顔をあげるのと同時に少し和らいていた。
空木 「少しだけですけど…“本当の優しさ”も理解できました」
ぽつりと零した空木さんの言葉……聞き間違いではないわよね?
空木 「卑らしい打算もなにもない、純粋に私の様子を心配するみなさんの姿で、これがそうなんじゃないかって、気づきました」
誰かが苦しんでいたのなら、心配し、気にかけるというのは普通のことだ。優しさに違いはない。けれど、彼女がそうおもうほど、それほど、彼女の周りは彼女に対して優しくなかったのだろうか。嬉しさよりも少し悲しくなった。
空木 「……お姉さんは頭を撫でられるの、好きですか?」
頭を撫でられることが好きかどうか……? 考えたこともなかった…というより、解らない。
霧切 「頭を撫でてもらった記憶がないから、解らないわ」
空木 「え?」
霧切 「祖父から探偵の教育を受けていた時間が長かったから……母が亡くなった後、父が姿を消してしまって以来、祖父に探偵としての教育が本格化していたし……それ以前にも撫でてもらったことがあったのかどうか……」
空木 「……」
空木さんは唖然としていた。私も唖然としてしまったわ。いまさら気付くだなんて……!
空木 「お姉さんも普通の家庭とは言い難いですね。私達に比べたら可愛いモンですけど」
霧切 「……そう、ね…?」
どうしよう……。なんだか自信がなくなってきたわ。
こんな私が空木さんに優しさを教えようだなんて、笑い話にもならないわ。
空木 「えっと…じゃ、じゃあ、私がお姉さんの頭を撫でてみてもいいですか?」
あたふたと慌てて私に気遣ってなのか、空木さんは言う。
私が空木さんを励まさなければならないのに、これでは立場が逆転してしまっているじゃない!!
霧切 「ええ、いいわ…」
空木 「落ち込み過ぎですよ、お姉さん…調子狂っちゃうじゃないですか」
本当にそうね。情けない。
隠しきれないほど落ち込む私に、空木さんは呆れながら立ち上がって、私の前に立つ。
空木 「いいですか?」
空木さんの言葉に頷いて待ち構える。触れられるということが解っているのに、ドキドキしてしまう。空木さんの顔をみると、彼女も緊張しているようだった。自分のように拒絶されてしまわないかの心配からか、そうでないのかは解らないけれど。
空木さんの様子を観察していると、ほどなくして頭部に何かが触れる。もちろん、空木さんの掌だ。小さい手が私の頭を撫でている。
空木 「……大丈夫…ですか?」
不安気な表情を浮かべながら、私の表情を伺う。私はそれに答えるように笑いかける。
霧切 「少し緊張するわ……でも」
緊張する、という言葉に空木さんは戸惑うように視線をうろつかせながら、身を引こうとする。
あなたは優しいわ。また泣いてしまうかも知れないから、口に出しては言えないけれど。
霧切 「同時に安心もする。あなたの温もりと、人となりも伝わるもの。いい娘ね、空木さん」
空木 「っ!!」
空木さんの手が強張るようにビクッと震え、茹で上がった蛸のように顔が真っ赤に、なっていた。照れているのかしら?
霧切 「可愛いわね、空木さん」
空木 「う、うるさいですよ! お姉さん!!」
しどろもどろになりながら怒る空木さんは、本当に可愛らしい。愛おしくなる。空木さんは恥ずかしい気持ちのやり場を探すように唸って、最終的にため息としてそれを追い出した。
空木 「でも…私が頭を触っても平気だっていうのが、嬉しいです」
さきほどの緊張は、やっぱり拒絶されてしまわないかの心配だったのね。
空木 「私が頭を触って安心するって言われて、嬉しい」
空木さんは私の頭を撫でながら続ける。
空木 「私が頭を触ることで、嬉しいって言ってくれるのが嬉しいんだっていうのが解ったのに、それなのに私は他人から頭を触れられることを拒絶してしまうのは……苦しい」
空木 「ごめんなさい……私、頑張るから……お姉さんに頭撫でてもらいたい……」
空木 「だから……」
霧切 「ええ」
今、空木さんの頭を撫でてしまいたい衝動を抑えて、代わりに彼女の言いたいことに笑って答える。
霧切 「大切なひと達に触れてもらえないなんて悲しいものね」
空木さんは黙って頷く。
霧切 「荒療治で無理をしてはいけないわ。ゆっくり、焦らずいきましょう」
空木 「……今度は私から…お願いします」
昨日と違い、空木さんから手を差し出してきた。その様子に、私は安堵し、高揚してくる。
霧切 「負けず嫌いで向上心もあって、何より人を思いやれる子ですもの」
霧切 「あなたは大丈夫」
私の言葉に、空木さんは気恥ずかしそうに頬を染めて笑った。
空木 「私の未来、しばらくお姉さんに託します」
霧切 「空木さん。ケーキがあるのだけど、食べる?」
空木 「私がケーキときいて食べないとでも思ってるんですかー? 食べるに決まってるじゃないですか!!」
あれから二年が経ち、彼女の背は大分伸びて、大人っぽくなった。子供の成長は早いというけれど、本当にそうね。
毎日のように一緒に過ごして、彼女との距離はかなり縮まって、互いに遠慮も壁もない関係にまでなっている。もう、家族だと言ってもいいくらいではないかしら? 彼女といると暖かな気持ちで満たされている。
空木 「美味しそう! いただきます!!」
霧切 「どうぞ」
幸せそうにケーキを頬張る空木さんを微笑ましく眺める。
空木 「響子さんは食べないんですか? 私がもらっちゃいますよー?」
空木さんは私を響子さんと呼ぶようになった。私を信頼してくれている証のようで、とても嬉しい。
空木 「ふふっ、何ですか? 響子さん」
霧切 「なんとなくよ」
私が空木さんの頭を撫でると、くすぐったそうに笑いながら受け入れる。そう。彼女はトラウマを克服できたのだ。
あれから、彼女は頑張った。一刻でも早くと、無茶をすることが何度かあったりもしたけれど、彼女は彼女の努力により身を結んだのだ。
空木 「私も響子さんにいい子いい子してあげちゃいます!」
霧切 「あら、ありがとう」
こんなやり取りができるようになったのだから、不思議なものね。あの頃より大きくなった掌から感じる暖かさと柔らかさは変わらない。とても心地がいい。
空木 「響子さんはとっくに気付いていると思いますけど」
霧切 「何かしら?」
空木 「私、好きなモノが増えたんですよ」
霧切 「それは、以前は嫌いだったモノかしら?」
空木 「あの時はごめんなさい」
そして、素直にもなった。本当にいい娘ね。
空木 「響子さん、大好きです」
霧切 「私もあなたと同じ気持ちよ」
私に預けてくれた空木さんの未来が、これから明るい道になるように、まだまだ世界と奮闘しなければならない。誰も悲しまず、苦しまない世界にしたい。
霧切 「あなたは私の未来であり、希望なのだから」
愛おしいあなたと、この先を歩くために。
良いね
霧切ちゃん、言子ちゃん終了!
うまく書けませんでしたが、組み合わせ的にはツボる!!
霧切ちゃんはノーマルより百合のが萌える>>1です。
関係ないですけど、ロンリミで舞園ちゃんと七海ちゃんが並んでるだけでキュンキュンする!!
内容的にはあまり百合百合してない感じではありますが、満足したのでスレも終了致します。
お付き合い頂きありがとうございました!
次は左右田君でやっていた青春謳歌スレの女子版をやる予定ですが、その前に短い安価スレをやってから立てたいと思います。
主人公はあみだで決めました。
では、またお見かけする機会がございましたら、その際はよろしくお願い致します。
乙!
おつ
ほのぼのホモホモはありますか?(ゲス顔)
めっちゃホモりてぇ!!って気分になればあります……!
現行のスレが終わったらやるかもしれないし、ないかもしれない…?と、曖昧に答えておきます。
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