月まで届け、不死鳥の火(13)
私はうらやましくもあり、妬ましくもあり。それでも彼女の事を愛していたんだと思う。
それはもう、殺したくなるくらいに狂おしい思い。
輝夜「ちょ! あつっ!! ちょっと手加減しなさいよ」
妹紅「はっ。真剣勝負で手加減なんかするわけないだろ!」
輝夜「なによ! 頭来るわね!!」
妹紅「全力でかかってこいよ!」
輝夜「いったい私に何回負ければそういう減らず口が叩けなくなるのかしらね」
妹紅「いたっ」
輝夜「隙ありよ。神宝『ブリリアントバレッタ』!!」
妹紅「うわぁああああああ!!」
それでも私は彼女を殺すことはできないんだ
私の名前は藤原妹紅。死ぬことのできない愚か者だ。
あいたたたたたたた
妹紅「………………また、負けたのか」
父親に申し訳ないという気持ちは微量ながらあるが。それでもずっと前の恨みを持ち続けれるほど私は強くない。
ただ殺し合いをやめればもう輝夜に会えなくなってしまうんじゃないかという気持ちが私を殺す。
妹紅「服がぼろぼろだな、慧音の所行って服もらうか」
また怒られながらあきれられるのを思うと少し足が重くなるがこんな服じゃ人前に出れないのでしょうがない。
これでまたしばらくは寺子屋の授業を受け持つことになるのだろう。
子供自体は嫌いではないから文句はないけど。
竹林は景色が変わらないので私以外は迷いやすいし、迷わない私でも景色が変わらないのは少し辛い。
そんな竹林を歩いていると八目ウナギの匂いがした。そういえば最近は焼き鳥屋をやっていない。
妹紅「………くしゅん」
さすがに全裸に近い格好で夜を歩くのは肌寒く私は慧音の所に行く足を速めた
慧音「また、喧嘩してきたのか」
妹紅「………うん」
慧音「喧嘩しろとは言わんがそのたび服を破くのはどうにかならん物かな」
妹紅「………ごめん」
慧音「反省したなら良い。次からは気をつけてくれよ? まぁ言っても無駄かもしれんが、ははは」
妹紅「………ごめんなさい」
慧音「ははは、こんな私を頼ってくれるならうれしいさ妹紅。どうする今日は泊まってくか?」
妹紅「そこまでしてもらわなくてもいいよ、気持ちだけ受け取っとく」
慧音「ん、じゃあまた明日な」
妹紅「分かった」
慧音は今日も優しかった。その事実に少し涙が出る。
とりあえず今日は明日の授業に備えて早めに寝ることにしよう
竹林の中にある家に帰るとすぐに布団にもぐりこんだ。
風邪は引かないけれどこの薄い煎餅布団では寒さはどうにもならない。
妹紅「くちゅん」
布団を頭からかぶり寒さに耐える。
もうそろそろ炭を作っておかないと寒くて眠れなくなるだろう。
布団もあったかくなってきて少しはマシになった。
これで眠れるだろう。
妹紅「おやすみ」
当然返事は返ってこなかった
妹紅「ふわぁ、今何時だ?」
竹林の中は薄暗くて時間は分かりづらい。外に出てみると太陽はまだ上がりきっていなかった。おそらく9時か10時程度だろう
たしか授業は午後からだったはず。私はそれまでの時間をたけのこ探しで潰すことにした。
たけのこは地面から生えてるのではもう遅く、地面に生える前のを探さないといけない。なので基本的に足の感触に頼るしかない。
適当に歩いているといつの間にか永遠亭についていた。
鈴仙「あ、おはようございます妹紅さん」
門の前では優曇華がほうきを持って掃除をしていた。
鈴仙「姫様に御用ですか?」
妹紅「いや、別に用事はないんだ。ただ散歩していただけで」
鈴仙「そうですか。今姫様は中でゲームしてますから良かったら会われますか?」
ゲームというと。たまに輝夜がやってる遊びだろうか。原理は知らないがおそらくあれも月の技術なのだろう。
妹紅「いや、遠慮しておくよ。じゃあまた来る」
鈴仙「はい、それでは」
優曇華に別れを告げると、鈴仙は再びごみを集め始めた
結果的にたけのこは一本も見つからなかった。しょうがないし時間もそろそろなので寺子屋に向かう。
慧音「お、来たのか妹紅」
妹紅「うん、遅かったか?」
慧音「いや、今昼休みだからちょうど良いな」
妹紅「そうか」
慧音「そういえば妹紅はご飯食べたのか?」
妹紅「いや、いらないし」
死なないので食料は嗜好品と変わらない。なので基本的に私は何も食べない。
慧音「食べたほうが良いと思うぞ?」
妹紅「いや、遠慮しとくよ」
慧音は差し出したおにぎりを残念そうに引っ込めた。悲しそうな顔をするので食べたほうが良かっただろうかと少し後悔した
慧音「ん、もうそろそろ時間だな。おーいみんなーもどってこーい」
慧音は子供達を呼び戻しに教室を出て行った。
妹紅「そうやってこの江戸幕府というのはできたわけなんだが、この江戸幕府というのはしばらくの長い間続くことになる。その理由が分かる奴いるか?」
教室を10秒ほど見回してみたが手を上げる生徒はいなかった。しかたないので説明する。
妹紅「それは徳川家が全国全てを自分の物にしようという欲は出さずに徳川家繁栄だけを目標としたからだ。ようするに自分の領以外はその土地の大名にある程度まかせてたんだ。そして反逆とかをしないように定期的に城の修理や治水。あとは参勤交代などで資源や資金を使わせたんだ」
妹紅「そして次は各将軍について話をしようと思うんだが、結構時間が経ったので今日はここまでにしよう」
生徒「起立、礼、ありがとうございました」
休憩時間に入ると子供達は好き勝手に騒ぎ出した。それを眺めているといつの間にか慧音が横に立っていた。
慧音「子供は微笑ましいな」
妹紅「そうだな。無邪気で無垢だ。穢れてないからこんなに可愛らしいんだろうな」
慧音「授業教えるの上手だし、子供が好きならどうだ? 寺子屋の先生にならないか?」
妹紅「いや、遠慮しておくよ。私は人の成長に深く関われるような器じゃないよ。眺めておくだけで十分さ」
慧音「そうか、妹紅は私よりも長く生きるだろうから、死んだ後の寺子屋を任せたかったんだが」
妹紅「自分が死んだ後の話なんて縁起が悪いからするものじゃないよ」
慧音「すまんな」
妹紅「もう授業も終わったから帰るよ」
慧音「そうか、じゃあまた今度な」
もうちょい…もうちょい文の間隔空けようぜ
紫煙
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このSSまとめへのコメント
え・・・・おわり?