幼馴染「遅いっ!」 男「すまん」(136)
幼「約束は8時でしょ?」
男「悪かったよ、ちょっと仕事がな…」
幼「普段は仕事なんてやっつけで良いって言ってるやつが何を言ってるのよ」
男「今日のはやっつけられないヤーツだったんだよ」
男「得意先に呼び出されちまってさ」
幼「先に始めちゃってますけど!」
男「あぁ、それは……」
幼「2人席に1人で居るのって気まずくてしょうがないんだから」
幼「まぁ、急に呼び出したのは悪かったけど」
男「で?……今日はどうした」
幼「ちょっとね、嫌な事があったのよ」
ゴクッ
男「なぁ、俺は明日休みだから良いけど……お前、酒飲んで大丈夫なの?」
幼「あー、明日は非番の日だから大丈夫」
男「へぇ……週末休みって珍しいな」
幼「友人の為に一肌脱いだら、返ってきた恩が明日の休みって訳なの」
男「じゃあ俺も車置いて帰るぜ」
幼「もちろん。徹底的に飲んで貰うよ、今夜は」
幼「なにせ30分も一人で飲んでたんだから」
男「だから悪かったって」
幼「それじゃ今から私の愚痴を聞いて。超聞いて!」
男「おう、超聞いてやるよ。あ、すいませーん!こっち生ビール1つ!」
ハイー ヨロコンデー
男「で?今回は何があったんだ?」
幼「色々あったんだけど……取り敢えず昨日の出来事を聞いて」
男「承った」
幼「昨日、少年課と地域課合同でね」
幼「夜の見回りがあったのよ」
男「へぇ、夜勤だったのか?」
幼「違う。頼まれたから仕方なく」
男「ほうほう、そんな事もあるのかー」
幼「それでね」
男「おう」
幼「私が幼友と見回りに行ったのは上落合だったんだけど」
男「ウチの近くじゃん」
幼「あのさ、斉藤君って覚えてる?」
男「斉藤?」
幼「あのほら、高校で3年間同じクラスだったじゃん」
男「ん?斉藤って確か二人いただろ……どっち?太ってた方?」
幼「違う、痩せてた方」
男「あぁー。あの斉藤って言えば……」
幼「待って!思い出話は後にして!」
男「お、おぅ」
幼「あの斉藤君の家って覚えてる?」
男「覚えてるよ。笹野屋の通りだろ?」
幼「そう、その斎藤君の家の横から東中野方面に抜ける横道って覚えてる?」
男「覚えてるよ、あの時は……」
幼「思い出話は後で!」
ナマビール イッチョウ オマタセシャシター
男「あ、どうも」
幼「一旦乾杯しようか」
男「おう、仕事お疲れ」
幼「そっちもね」
カンッ
ゴクッゴクッ
男「ぷはーーーっ。仕事後のビールうめぇな!」
幼「異論無し」
男「そんで?あの横道で何かあった?」
幼「あったのよ、それが」
男「ひったくりとか?」
幼「違う」
男「痴漢とか?」
幼「違う……けどひったくりよりは近い」
男「は?」
幼「あのね、心して聞いてよ?」
男「何だよ、勿体ぶるなよ」
幼「高校生くらいの男女がね……」
男「ん、まさか!?」
幼「地面に寝っ転がって、キスしてたのよっ!!」
男「道でか!?」
幼「道でよ!びっくりでしょー?」
男「あそこ、人通りは少ないけど夜でも十分明るいだろ?」
幼「うん」
男「あんな所でなぁ……若さかなぁ」
幼「ショックだったわよ……」
男「そりゃそうだろうな」
幼「あんな若いのに、あの二人きっと恋人同士よ!?」
幼「私には彼氏が居た事も無いって言うのに!」
男「え、そっち!?」
幼「晩婚化が叫ばれている昨今、高校生で男女交際とか10年早いと思わない?」
バンッ
ハイ オヨビ デスカー
男「あー、違います、なんでもないです」
ハイ
男「おい、落ち着けよ」
幼「ふぅ……ごめんごめん。テーブル叩くのは良くないわよね」
男「……で、お前どうしたの?」
幼「何が?」
男「その高校生くらいの男女に対して」
幼「あぁ、ちゃーんと一言言ってやったわよ」
男「ちゃんと注意したのか、そりゃそうだよな」
幼「爆発しちゃえ、リア充っ!って叫んだ後、走って逃げた」
男「……」
ゴクッゴクッゴクッ
男「ぷはーーーっ」
幼「ちょっと!何で黙ってビール一気飲みなのよ!何?何か言いたいでも事あるの?」
男「あ、店員さんすいません、これ同じものもう一つお願いします」
5バンサン ナマイッチョウ ハイリマース
幼「……」
男「あのさ」
幼「何?」
男「引っかかる事があるんだが……」
幼「でもそれは後で!私の愚痴はまだ続くの!」
男「聞いといてそれかよ……他にも何かあったのか?」
幼「その事で課長にめっちゃ怒られた!」
男「そりゃ怒られるだろ……てか課長さんに話したのかよ」
幼「幼友に話してるのを聞かれた」
男「……」
幼「何よ、その目」
男「別に。お前は昔からそうだもんな」
幼「それでね」
男「まだあんのかよ」
幼「母にも怒られてさ」
男「へぇ……おばさん元気?」
幼「元気過ぎるくらい元気だよ」
男「おばさんにはなんで怒られたんだ?」
幼「今の話をしたら怒られた」
男「自分がミスした事をよく親に話せるな」
幼「解ってくれるかなと思ったら、逆に言われてしまったって訳よ」
男「?」
幼「リア充爆発すれば良いのにって言ったらさ」
幼「アンタはいつリア充になって爆発するのよ!ってさ」
男「……」
幼「そりゃあね、私ってば今丁度27歳な訳なんですけどね」
男「丁度27歳って……何の丁度だよ」
幼「余計なお世話だと思わない?」
幼「人の縁って、どこでどうなるかわからないじゃない!」
幼「いくら親だからって……ねぇ?」
男「親に心配されなくなったら、それこそ終わりだと思う」
幼「なっ!?」
ナマビール イッチョウ オマタセシャシター
男「あ、どもども」
幼「ちょっと!今のどう言う意味よ!」
男「……」
ゴクッゴクッ
幼「あんたまで私に説教する気?」
男「別に説教じゃねぇよ……説教じゃないけどさ」
幼「何よ」
男「親が子を心配すんのは当たり前だろ?」
男「そりゃおじさんもおばさんも孫の顔見たいって思うだろ?」
男「お前一人っ子なんだし」
幼「それはっ!……まぁそうだけど……」
男「まぁ、色々言われて肩身が狭いって気持ちは解るけどな」
幼「あんたも色々言われてるの?」
男「ウチは兄貴が結婚したからな。孫が出来てからはそんなに言われなくなったな」
男「でもまぁ3年位前までは色々言われてたよ」
男「一人暮らし始めてからは全然言われなくなったな」
幼「へぇー」
男「……俺の話はいいさ。今日はお前の愚痴を聞きに来たんだからな」
幼「そうね。まだビールも2杯目だしね」
男「そう言う事だ。しかしここのポテトフライはいつ食べても美味しいな」
モグモグ
幼「あんたが来る直前にもうひと皿頼んでおいたから…」
コチラ ポテトフライニナリマスー
男「あぁ、ナイスタイミング店員さん」
ハイ
男「ビール…で良いよな?」
幼「うん、今日はビールな気分だから」
男「それじゃ生一つと……雪ふわ揚げ出し豆腐まだありますか?」
ハイ ダイジョウブデスヨ
男「それじゃ雪ふわ一つください」
ハイ アリャッシャー 5バンサン ナマイッチョウー
男「…で?もっと愚痴る事あるんだろ?」
ゴクッゴクッ
幼「まぁ……実は最近職場でもそういう話が多くてさー」
男「ん?何の話?」
幼「結婚の話とか。めちゃくちゃ言われるんだよね」
幼「なんだかバカにされてるみたいで嫌なのよね」
男「……結婚とまでは言わんけど、まずは誰かと付き合ったりすればいいだろ」
幼「あんたまで年齢=彼氏居ない歴の私をバカにするつもり?」
男「別にバカにする訳じゃないけどよ」
男「お前、今まで何度かそう言うチャンスあったろ?」
幼「……」
男「それこそさっき話に出た斉藤とかさ」
幼「斉藤君はナシでしょ」
男「あれ、ちょっとした話の行き違いでさ」
男「お前がちゃんとしてたら、上手く行ってたかもしれん話だぜ?」
幼「ストーカーと付き合うとか怖すぎるんですけど」
男「だから……あれは結局勘違いだっただろ?」
幼「……でも私が警察官になるきっかけになったんだから」
幼「斉藤君も本望よね、きっと」
男「自分勝手な理論展開だな」
ハイ オマタセシヤシター ナマイッチョウ ト コチラ ユキフワニナリマスー
男「ども…ほい」
幼「ん、ありがと」
ゴクッ
モグモグ
男「…ん、ここの揚げ出し豆腐はいつ食べても最高だな」
幼「あんた毎回食べるよね、確かに美味しいけど」
男「ほれ、お前も食えよ」
幼「ありがと」
モグモグ
幼「ま、実はあんたが来る前にひと皿食べたんだけどね」
男「……分けて損した」
幼「まぁまぁ……そんで食べ終わったら、だし巻き玉子頼むんでしょ?」
男「そうだな」
幼「たまには別の頼みなよ」
男「この店の食事メニューは完全網羅した」
男「結果、この組み立てが最高だと確信している」
幼「はいはい」
男「…そんじゃ話戻すか」
ゴクッゴクッ
幼「うん……どこまで話したっけ」
ゴクッゴクッ
男「斉藤の話。あいつがお前の彼氏になってたかもって話だよ」
幼「……だって、ぶっちゃけ斉藤君タイプじゃなかったし」
男「顔が?」
幼「顔は別に……って言うか、人の事を尾行するのが趣味な人を好きにはなれないし」
男「それは斉藤がお前を守ろうとしてたって……」
幼「それこそ自分勝手でしょ」
幼「私はジロジロ見られてるとしか感じなかったわけだし」
幼「私が取り押さえるまで、向こうから話しかけられた事もなかったのよ?」
男「あいつはまぁ、やや内向的だったから…」
幼「私とは合わないでしょ?」
男「いやいや、付き合ってみないと解んないだろ?」
幼「私のどこが好きなの?って聞いた時さ」
男「ほう」
幼「全部です…って言われたのね」
男「へぇ、そんな事言われたのか」
幼「反応に困るわ!ふわっとし過ぎで!」
ゴクッ
男「2年くらい片思いだったんだから、仕方無いだろ」
幼「私のせい?」
男「……違うけど」
幼「最初からもっとビシッと話しかけてくれれば良かったのよ」
男「それはそうだな」
男「会話なくして理解は得られないもんな」
幼「……まぁ、多すぎても困るけどね」
男「ん?あぁ、藤吉の事?大学の」
幼「そうそう」
男「一時期、めっちゃ話しかけられてたもんな?」
幼「私あの手のタイプ、苦手ー」
男「そうなのか?あいつ顔は良かっただろ?」
幼「顔は問題じゃないのよ。まぁチャラチャラしててもね?」
男「あぁ、確かにチャラチャラしてたな、あいつ」
幼「ん、一見チャラチャラしてても中身があれば良いのよ」
男「あいつ中身空っぽだったのか?俺はあんまり絡んだ事無いからよく知らないんだが」
幼「大学時代、1度だけ二人で食事に行ったんだけどね」
男「ほう?初耳だな、それは」
幼「ホテルの最上階にある、高級レストランだったよ」
男「高級なぁ……」
ゴクッゴクッ
幼「料理は美味しかったんだけどさ」
男「へぇ……」
幼「あいつ、ご飯の食べ方が雑な上に、ずーっと自分の事ばかり話しててね」
男「楽しい話?じゃないよな、今の流れだと」
幼「ずっとブレずに自慢話だった」
幼「私の話を遮りまくってひたすら自慢話を続けたんだよ?」
幼「それって会話って言えないよね?」
男「まぁ、一方的な自慢話だけだと会話とは言わんなぁ」
幼「その上、お酒飲ませて酔わせてお持ち帰りするって言う……下心丸見えー的な」
男「……全部あいつの奢りだったんだな?」
幼「私は割り勘って言ったんだけどね」
男「見栄張ったなぁ、藤吉……さぞかし高くついただろう」
幼「酒の呑み合いで遅れをとる私じゃないわよ」
男「知ってるよ……で?どうなったんだ?」
幼「結構お高いワインを2本空けたんだけど、そこであいつベロンベロンだったの」
男「あちゃー、藤吉ベロンベロンかー」
幼「で、お会計済ませた後、真っ青な顔して休んで行こうって言ってきたんだけど」
幼「実はそのホテルに部屋取ってあったんだよね、予め」
男「……ほぅ?」
ゴクゴク
幼「部屋に入って最初は一所懸命私の事を好きだーとか愛してるーとか言ってたんだけど」
幼「3分もしない内にトイレでゲーゲー吐き始めてさ」
幼「5分待ったけど、トイレから出てこなかったから、置いてそのまま帰った」
男「……ふーん、そんな事があったのか」
ゴクッゴクッ
幼「それからほとんど話しかけてこなくなったわね」
男「……つくづく思うんだが」
幼「何?」
ゴクッゴクッ
男「お前、酒強い方で良かったよな」
幼「そう?あ!お酒弱い方が女の子らしいんじゃないかしら?」
男「女の子って……歳考えろよ、アラサー」
幼「……ちょっと、今のかなり失礼じゃない?」
男「事実だろ?」
幼「事実でも今は言われたくなかった!」
男「もっと現実と向き合えよ」
幼「……」
ゴクッゴクッ
男「あ、店員さん、すいません!こっち注文いいですか?」
ハイ
男「ビールで良いんだよな?」
幼「うん」
男「じゃ、生ビール2つと、だし巻き玉子一つお願いします」
幼「あとたこわさも一つ~」
ハイ ヨロコンデー
男「たこわさ食うのか」
幼「最近ハマってるのよね」
男「最近?お前、一人でこの店来てるの?それとも誰かと……」
幼「悪かったわね、ボッチ飯で!良いでしょ、ここの料理美味しいし」
男「家で食わねぇの?」
幼「まぁ、1人でご飯食べたくなる事もある訳よ」
男「料理とか……実家に居たらやんねぇか」
幼「そんな事無いわよ、日勤の時の朝と休みの日は私がご飯作ってるわよ」
男「そうなのか」
幼「母からきつーく言われてるのよね」
男「何を?」
幼「せめて料理だけは出来るようになりなさいって」
男「腕前は?」
幼「親から苦情が出た事は無いわね」
男「そうか……」
幼「何よ、言いたい事でもあるの?」
男「いや、どんな料理を作るのかなぁって……」
幼「あら?私の手料理に興味がおあり?」
男「お前、大学卒業するまでは料理全然出来なかったろ?」
幼「う……まぁ、カレーしか作れなかった……かな?」
男「そんなお前が、今現在どんな料理を作るのか、ちょっとだけ気になって、な」
幼「今度の休みにウチに来なさいよ、食べさせたげるから、タダで」
男「……おぅ、まぁその内な」
幼「それにしても……私のモテ期は短かった……はぁ……学生の頃に戻りたい」
男「無茶言うな」
幼「……でもよく考えたら変なヤツにしかモテなかったから、やっぱりいいや……戻りたくない」
男「いや、社会人になってからもそんな話はあっただろ?」
幼「んー?……あったような、なかったような」
男「就職したての頃さ、言い寄られて困ってる~的な事言われたぞ」
幼「あぁうん、確かに困ってたね、あの頃の私は」
男「その人とは……進展しなかったんだよな?」
幼「そうね、残念ながら全然だったわね」
男「その人は何がダメだったんだ?」
幼「刑事課だったのよ」
男「へぇ…ま、警察署内なんだからそんな事もあるか」
男「でも刑事って格好良くないか?」
幼「全然」
ハイ、ナマニチョウ ト タコワサ ニ ナリマスー
男「ども」
幼「どうもー」
男「ほら、乾杯だ」
幼「ほいほい」
カンッ
ゴクッゴクッ
男「俺が来る前、何杯飲んだんだ?」
幼「1杯よ、我慢してた」
モグモグ
幼「たこわさ美味っ」
男「そっか」
ゴクッ
男「で、刑事って恰好良くないか?」
幼「だから、全然だってば」
幼「刑事ドラマみたいな事は滅多になくて」
幼「いっつも領収書がどうの、報告書がどうのって」
男「へぇ……」
ゴクッ
幼「ていうか、この話はもうおしまいっ」
男「そうか……まぁ別にいいんだけどよ」
ゴクッゴクッ
幼「あぁあー……リア充になりたいなあ!」
幼「そのためにコンパにも参加してるんだけどなぁ」
男「……それな、もうやめな」
幼「え?」
男「幼友が言ってたぜ」
幼「何を?」
男「お前、ガツガツしすぎで男勢が引くって」
幼「えー?嘘でしょ!?」
男「心当たりは無いのかよ」
幼「私めっちゃ丁寧に仕切ってんのに!?」
男「……例えば何をするんだ?コンパで」
幼「料理を綺麗に取り分けたり……」
男「ふんふん?」
幼「誰かのグラスが空きそうになったら、そっとおかわりを注文したり……」
男「ほう」
幼「2次会への流れを自然に作ったり……」
男「それだけ聞くと、気遣い出来る人に聞こえるな」
幼「でしょ?そうでしょ?」
男「だけどなぁ……例えばアドレス等を聞き出すのに、少々強引な手を使ったりしてないか?」
幼「え?」
男「私可愛いでしょ、健気でしょってアピール過多になってないか?」
幼「……」
男「若い女子と男子がうまく行きそうになった時、変な妨害工作をしたりしてないか?」
幼「……な、なんの事だか」
男「最近コンパに呼ばれないだろ?」
幼「……なんで知ってんの?」
男「俺がアドバイスしたから。幼友から相談されたんだよ」
幼「マジ?あいつめー……」
男「幼友も、幹事として心苦しいんだとさ」
幼「へ?何がよ?」
男「……必死になってるお前を見るのが、だな」
幼「……」
男「……」
幼「そうよね、幼友には友君が居るもんね」
幼「同棲してて、籍入れてないだけだもんね」
幼「私と違って余裕あるもんね……」
男「……お前さぁ」
幼「何よ」
男「そんなに彼氏が欲しい訳?」
幼「……彼氏って言うか、子供が欲しいのよ、実は」
男「そうなのか?初めて聞いたな、それ」
幼「あら、小さい頃からの夢よ?」
幼「可愛いじゃない、子供」
男「まぁ可愛いな、子供」
幼「早く子供が欲しい……出来れば女の子!」
男「ん?それは何でだ?」
幼「成長したら、一緒に買物とか行けるでしょ?」
男「ふむ」
幼「そう言うのに憧れてるんだよね、実は」
男「じゃ、まずは結婚しないとだな」
幼「そうなのよ……相手が居ないと叶わぬ夢なのよね……はぁ……」
男「じゃ、俺と結婚する?」
幼「はい?」
男「だから、結婚。どう?」
幼「いやいやいや。え?何でそんな重大な事を、ポッキー食べる?くらいの感覚で簡単に言うの?」
男「ん、簡単じゃないけど」
幼「え?え??」
男「俺、実は初恋継続中なんだよなー、この歳で」
幼「はい?」
男「まだちゃんと振られてないからなー」
男「最初に告白したのは幼稚園の時で」
男「次は中学の卒業式の日で、高校の卒業式の時もしたし」
男「大学の卒業式の日も告白したんだが、返事をもらえてないんだよなー」
幼「え?何の事よ、それ。全然身に覚えが無いんだけど?」
男「……気付いてさえいなかったんだな。ちょっとショック」
幼「私の27年と言う、年齢の重みを……重みを……」
幼「……重い」
ガクッ
男「言ってヘコむくらいなら、最初から言うなよ」
ゴクッゴクッ
幼「私、27歳だよ?」
男「奇遇だな、俺だって丁度そうだよ」
幼「年齢=彼氏居ない歴だよ?」
男「俺だって年齢=彼女居ない歴だよ」
幼「……いやいやいや」
幼「………………」
幼「冗談でしょ?」
男「冗談言ってる様に思うか?」
幼「……思わない。こんな冗談言うタイプじゃないもんね、たとえ酔ってても」
男「……」
ゴクッゴクッ
幼「……」
ゴクッゴクッ
男「ぷはー……」
幼「ふぅ……」
男「…………」
幼「…………」
男「……ちょっとトイレ行ってくる」
幼「……行ってらっしゃい」
・
・
ジャーバシャバシャ
男(……さっきのはタイミング的にどうだったんだ?)
男(駄目だったんじゃないか…?)
男(あいつ、引いてたよなー……)
男(しくった……席に戻り辛い……)
男(……でも酔ってないとは言えないけど、本心だし)
男(やっぱちゃんと返事聞かねーとなぁ)
男(はぁ…戻るか……)
男(あ…………今日はもう帰るって事にすっかなー……)
男(俺ってつくづくヘタレだよなぁ……)
・
・
男「すいませーん、5番席の会計お願いします」
店員「はい、計算しまーす」
ピッピッピッ
男「……」
店員「……男さん、何かあったんすか?」
男「ん?なんで?」
店員「さっきだし巻き玉子持って行ったら、幼さんが席でゴロゴロしてたもんで」
男「ゴロゴロ?」
店員「すっごく嬉しそうにしてたんですよー。だから何かあったのかなーと思って」
男「嬉しそうだった?マジで?」
店員「すっげーニコニコしてたんでビビりましたよ」
男「そっか……ありがとう、店員ちゃん」
店員「え?どういたしまして?ん?」
男「そっかそっか……へへ…」
店員「はいーおあいその方、4740円になります」
男「ほい、とりあえずこれで……」
店員「ポイントは……お!これで丁度っすね!」
男「マジ?そんなに貯まってたか」
店員「はい!ではこれ、次回ご来店の際にお使い下さい」
店員「感謝の気持ち、1000円割引券です」
男「ありがと」
店員「いえいえー、こちらこそ毎度ご贔屓いただきありがとうございます!」
男「あー……ひょっとすると今日もう少し飲むかもしれない」
店員「わっかりましたーどうぞどうぞー」
ピッピッ
男「手間かけてごめんね」
店員「いえいえ、なんか良かったっすね?」
男「え?何で?」
店員「男さんもすっげー笑顔じゃないすか」
男「……そうかな?俺ニヤけてる?」
店員「何か良い事あったんですよね?」
店員「あ!ひょっとしてプロポーズとか?」
男「……そんなに解りやすいかな、俺達って」
店員「常連さんっすからねー」
男「まぁ、そういう感じなんだよ」
店員「早く戻って上げて下さい。待ってますよ、絶対」
男「おう、ありがと」
・
・
幼「遅いっ!」
男「すまん」
幼「私がどれだけ待ったと……」
男「トイレ混んでおったのじゃよ」
幼「お手洗いの話じゃないっ!」
男「……なんだよ、じゃあなんで怒ってんの?」
男(あれ?機嫌良いんじゃなかったのか?)
幼「……」
プイッ
男「…?なんだよ」
幼「あんた、酔ってるでしょ?」
男「は?いやまだそんなには……」
幼「いいや、あんたは酔ってるね」
男「酔ってねぇって……俺がいつもどれくらい飲むか知ってるだろ?」
幼「あんたは、雰囲気に酔ってる!」
男「ん?どういう意味だ?」
幼「腐れ縁で売れ残り気味のアラサー女子を……お持ち帰れるかもしれないって…」
男「……」
幼「で、なし崩し的にホテル入って、食っちゃおう的な…」
男「おい、お前は俺の事をそう言う目で見てんのか?」
幼「……」
男「……あのな」
幼「……」
男「ちょっとこっち見ろっつの」
幼「……」
男「俯かないで、ちゃんと俺の顔見ろよ」
幼「……何?」
男「俺今どんな顔してる?」
幼「ニヤけて見える」
男「理由はなんでだと思う?」
幼「…知らんっ!」
プイッ
男「おいー、ちゃんと見ろよー」
男「そんで、ちょっと考えてくれよ」
幼「……じゃあ」
男「ん?」
幼「私がさっき遅いって言った意味、解ってる?」
男「ん?」
幼「……」
男(遅い…?遅い…………トイレの事じゃないとすると…………あっ!)
男「……」
幼「どうなのよ?解るの?解らないの?」
男「あのー……もし外れてたらめっちゃ格好悪いんだけど」
幼「……格好悪くて良いから、言ってみて」
男「もしかして、好きだって言うのが遅かったって事か?」
幼「……」
コクン
男「……あのな、さっきも言ったが」
男「俺はずっとずーっと、幼に、俺の傍に居て欲しいって思ってたんだぜ?」
幼「!?」
ビクッ
男「だからこうして愚痴も聞いてきたし……って何だよ、何でビックリした顔してんだよ」
幼「いや、あの……あんたに……男に名前呼ばれたのって久しぶりで……その……」
男「あ……」
幼「……」
男「……」
男・幼(ヤバイ、気まずい)
店員「お二人共っ!飲み物のおかわりはいかがっすか?」
男・幼「!?」
ビクッ
店員「ビール冷えてますよっ!」
男「じゃあ、2つください」
店員「あいっ!5番さん生2丁追加でーす!」
男・女(店員ちゃん、グッジョブ!)
男「と、まぁ、そんな訳でな?」
幼「……ねぇ、本当に私なんかで良いの?」
男「俺、お前の事だいたい解ってるぜ?」
男「一番付き合いの長い友人だもんな」
幼「まぁ腐れ縁よね」
男「俺の数回の告白に気付いてもいなかった事はショックだが」
男「今日ちゃんと言えたから、それで良いだろ?」
幼「……うん」
幼「私もね……本当は男とそうなれたら良いなってずっと思ってたよ」
男「何だよ、両想いだったのかよー」
幼「ふふふ、そうなるわね」
店員「生2丁、おまたせしましたー」
男「ども」
幼「ありがとね」
店員「あと、これどうぞ」
男「ん?頼んだ?」
幼「なにこれ!メニューにあったっけ?美味しそう!」
店員「これ、私が考えた新しいやーつっす」
男「あぁ」
店員「今度メニューに載せようか店長と話してるやつなんすよ」
店員「また試食して感想聞かせて下さいっす!」
男「店員ちゃん、ありがとな」
幼「私達は辛口だよー?」
店員「もちろんいつも通り辛口批評でお願いするっす!へへっ…それじゃごゆっくり!」
④
男「店員ちゃん、いい娘だよな」
幼「ここの店員はみんな良い人よ」
幼「だから何度も来たくなるのよね」
男「だな。それじゃこれ食べながら今後の話でもしてみるか?」
幼「良いわね、望む所よ」
男「とりあえず乾杯」
幼「うん」
カンッ
ゴクッゴクッ
男「ふぅ…それじゃまずは、コンパなんぞに行って、俺をやきもきさせていた件から話すか?」
幼「生産性が無い!却下!これからの事を話そうよ」
幼「男のアパートに転がり込んで、同棲しても良い?」
男「おいおい急展開だな……良いのかよ」
幼「ウチの両親は賛成してくれると思うよ」
幼「それに……責任取ってくれるんでしょ?」
男「上目遣いでこっちを見るなよ」
幼「可愛いでしょ?」
男「理性が持たん!」
幼「ふふっ」
男「ん?」
幼「なんか、愚痴で始まった話なのに、こんな話になるなんてね」
男「そうだな……路上でキスしてた子達に感謝だな」
幼「何がどう転ぶか解らない……だから面白いよね、人生って」
男「人生語り出したら、歳取った証拠だと思うなぁ」
ゴクッゴクッ
幼「うっさい、同い年のクセに!」
ゴクッゴクッ
幼「ぷはーーっ……これで私もリア充の仲間入りって訳よ!ね?」
男「まだそうと決まった訳じゃねえだろよ」
幼「いいや、あんたは……お、男は私の事をリア充にしてくれるって信じてる!」
男「おぉ…そうか……まぁ、努力はするよ」
・
・
・
店員「それじゃ、追加で3450円頂きます」
男「あいよ、じゃあ5000円で」
店員「はい!ありがとうございます」
ピッピッピ
幼「え?途中で一回払ったの?」
男「おう」
店員「はい、お釣りとレシートっす」
男「はい、ごちそうさまね」
幼「店員ちゃん、これ。感想ビッシリ書いといたから」
店員「あざまっす!」
幼「ねぇちょっと、割り勘でいくら?」
男「今日は俺のおごりだ」
幼「えー?いつも通り、割り勘にしてよ」
男「まぁその……付き合った記念によ」
男「今日はおごらせてくれ」
幼「フフフ、あんた可愛い所あるわよねー」
男「うっせ」
幼「それじゃあ今日はごちそうになりますっ」
男「おう」
幼「それじゃ店員ちゃん、ありがとね!」
店員「ありがとうございっしたー!」
・
・
幼「……ね、この後どうする?」
男「ん?帰って寝るだろ」
幼「……」
男「ん?二軒目行くか?久しぶりにヴァンガードでも……」
幼「わ、私も……私も男の部屋に……行って良い?」
男「!?」
幼「……付き合った記念の日に、ね?」
男「お、おう」
男・幼(どうなるんだろう……今夜……)ドキドキ
おわり
だけど短編・中編・長編のおまけあり
支援ありがとうございます
おまけは夜投下します
乙
幼馴染みはやはりいい
俺にはそんな幼馴染はいない
訴訟
おいおい
早くR-18宣言しておいた方が良いんじゃないの?
Wktkwktk
最高やな
レスありがとうございます
R18展開には……
ではおまけを3本投下します
『店員ちゃんと店長さん』
店長「…どうだった?あの2人」
店員「なんか2人でニコニコしてましたよ」
店員「多分上手く行ったんじゃないすかね?」
店長「はぁ…そうかぁ……まぁ、幼さんが幸せならそれで良いかぁ」
店員「店長、あの2人が来ると隠れますよね。なんでっすか?」
店長「昔ちょっとあってね」
店員「え?知り合いなんすか?挨拶しなくていいんすか?」
店長「俺、彼女に背負投げされて、振られたんだ…」
店員「あ、その話、ちょっとだけ聞いた事あるっすよ」
店員「高校生の頃、ストーカーを背負投げしたって……」
店員「あれ、店長の事だったんすか?」
店長改め斉藤店長「あはは、実はそうなんだよね……初恋だったんだけどな」
店員「今度来たら声かけてみたらどうっすか?」
斉藤店長「迷惑じゃないかなぁ、多分」
店員「大丈夫っすよ、店長!昔の事は知りませんけど、今の店長なら大丈夫っす!」
斉藤店長「そうかなぁ……」
店員「店長の事、ほとんど毎日見てる私が言うんだから、間違い無いっす!」
店員「きっとその時の話も笑い話になるっすよ」
斉藤店長「そっか、ありがとね、店員ちゃん」
斉藤店長「いつも本当に助けてもらって、感謝してるよ」ニコッ
店員「……そっすか、へへ」
店員「……私にも春が近いって思っても良いんすかね?」
斉藤店長「ん?今何か言った?」
店員「なんでもないっす!ささ!仕事に戻りましょう!」
斉藤店長と店員ちゃんが結婚するのは4年後の話である
おまけその1 おわり
『酒と泪と藤吉君と幼馴染』
とある日
藤吉「ねぇねぇ幼ちゃん、今ちょっといい?」
幼「ん?藤吉君……なぁに?なにか用事?」
幼(今ちょっと忙しいんだけどなぁ)
藤吉「今度ご飯食べに行かない?2人でさ」
幼「え?2人で?」
藤吉「幼ちゃんって皆で食事に行く時さ」
幼「ん?」
藤吉「ほら、酔っちゃう事が多いじゃない?」
幼「……」
藤吉「僕、幼ちゃんときちんと話したいなってずっと思っててさ」
藤吉「だから、2人で食事行きたいなって。どう?」
幼「えーーーっと……」
・
・
一週間後 レストラン前
幼「え?食事って、ホテルのレストランなの?」
藤吉「そう!すっごく美味しいって先輩が言っててさー」
藤吉「絶対幼ちゃんと来たかったんよ」
藤吉「さぁさぁ、予約はちゃんと取ってあるから大丈夫」
藤吉「ここの予約ってなっかなか取れないんだよー」
藤吉「何回も電話してやっと取れたんだよねー」
幼「そ、そうなんだ」
幼(うーわー……お金足りるかなー)
藤吉「さ、入ろうよ」
幼「うん」
幼(もし足りなかったら、最悪電話で幼友を呼んでお金借りよう……)
・
・
食事中
藤吉「それでね、このワインは知り合いのソムリエと相談して決めたんだよね」クッチャクッチャ
幼「あ、あのさ藤吉君、食事するか喋るかどちr」
藤吉「そのソムリエっていうのが、あの世界の田崎氏の孫弟子なんだよね」クッチャクッチャ
藤吉「僕、ワインには結構うるさいからね、どう?美味しいでしょ?」ゴクッゴクッ
藤吉「んーーーー。この鼻から抜けていく暖かな春の日差しの様な香り!」
幼「あの…」
藤吉「この色!この香り!そして味!三拍子揃ったワインだよね」
藤吉「このエチケットも良いよね、渋くて」
藤吉「あ、もちろん知ってると思うけどエチケットって言うのはワインのラベルの事で」
藤吉「ほら、ここが年代で、ここが生産者名で……あ!幼ちゃん、グラスが空だね」
藤吉「どんどん飲んでよ!」
トクトクトク
藤吉「幼ちゃん、お酒好きでしょ?どんどん!どんどん飲んでよ!」ニヤリ
幼「……」イラッ
藤吉「大丈夫、もし酔っちゃってもぉ、僕がちゃあんと家まで送るからさ」ニヤニヤ
幼「…………」イライラッ
結局、ワイン2本の8割は幼馴染が飲みました
・
・
会計時
藤吉「いやぁ……結構ヒック…飲んじゃったねぇ……ヒック」
幼「藤吉君大丈夫?」
藤吉「だ、大丈夫ヒック、だいじょ………ヒック」
ウェイター「失礼します、お会計でございます」
スッ
藤吉「あぁ、うん、どうもどうもヒック……」
ピラッ
藤吉「いち、じゅう、ひゃく、せん、ま……じゅっ!?」
幼「藤吉君、割り勘でいくら?」
幼(今、十って言った!ヤバい、お金足りない……この時間だと幼友はバイトだから……)
藤吉「なーにを言ってるのっ、幼ちゃんっ!」
幼「え?」
藤吉「ここはー、僕のー、おごりでーーーす……ヒック」
幼「いやいや、割り勘にしてよ。ワインほとんど私が飲んだし」
藤吉「幼ちゃん、奢られるのもぉ……ヒック、マナーなんだよぉ?」
幼「いや、でも……」
藤吉「いいからいいから、ちょっとお会計ヒックしてくるね」
幼(なんか、負けた気がして嫌だなぁ)
・
・
レストラン 外
幼「本当に大丈夫なの?」
藤吉「大丈夫だってばぁ……ヒック」
幼「それじゃそろそろ帰ろうよ」
藤吉「う……」
幼「う?」
藤吉「ごめん、幼ちゃんヒック……ちょっとだけ休んで行かない?」
幼「うん、別にいいけど」
藤吉「実はこのホテルにヒック……部屋を取ってあるんヒック…だ」
幼「え?」
藤吉「お願いっ……僕今日はちょっと悪酔いしたヒック…みたいで」
藤吉「少しの間だけ、お願いっ……ヒック」
幼「……」
藤吉「このままじゃ、僕、ここで吐いちゃうかもしれヒック……なので……」
藤吉「ちょっと、肩貸してもらってヒック……いいかな?」
幼「解った。何号室?」
藤吉「1208号室でね、夜景がとっても……ウォォォエップ」
幼「ちょっと、藤吉君!少なくとも部屋までは我慢して!」
藤吉「ウン……」
・
・
ホテル 1208号室 部屋に入ってから約5分後
コンコン
幼「あの……藤吉君、私もう帰るね?」
藤吉のようななにか「マ…マッテ……」
幼「お酒は程々にした方が良いわよ。じゃあね」
藤吉のようななにか「…………オェェ」
ガチャッ
バタン
幼「確かに店は最高だったけど、藤吉君とは二度と2人で食事しない!」
・
・
数日後 大学構内
幼「あ、藤吉君!丁度良かった!ちょっと聞きたい事が」
藤吉「ひっ……お、幼ちゃん、や、やあ!」
幼「どうしたの?」
藤吉「な、なんでもないよ、うん。あ!僕用事があるんで先行くね!ごめん」
タタタッ
幼「……なんなのよ、こっちは急ぎの用なのに」
幼友「聞いたわよ、幼」
幼「何を?何のこと?」
幼友「藤吉を酔わせて、ホテルに連れ込んだんだって?」
幼「はぃぃ?」
幼友「野獣のようなあんたの攻めに、藤吉君懲り懲りだって噂だよ」
幼「あいつが勝手に飲めもしないワイン飲んで酔っ払って、それを介抱してやったのに、何なのよそれ!」
幼友「まぁ、そんな事だろうと思ったけどね」
幼「……この噂、結構広まってるの?」
幼友「いやー、ウチのサークル内だけだねー」
幼友「みんな藤吉と幼の性格知ってるからね、あはは」
幼「あははじゃないって!全く……」
幼(男には知られたくないな……)
幼(きっと怒られるだろうし)
おまけその2 おわり
『幼馴染捜査網』
男「おい、本当にウチ来るのか?」
幼「い、嫌……なの?」
男「嫌ではねぇけどさ……」
幼「……何?今何考えてるの?」
男「何でもない、じゃあタクシー拾うか」
幼「えー?頑張って歩いて帰ろうよ」
男「マジで言ってんのか?」
幼「昔はよくそうしてたじゃない」
男「昔はな。でも今は違うだろ」
幼「はぁ……じじ臭い事言ってないで、ほら!」
・
・
男のアパート前
幼「ふぅ……け、結構歩いたわね」
男「だから運転代行かタクシー呼べば良かったんだよ」
幼「でも疲れたがでっかい物を得た」
男「?」
幼「あんたと腕組んで歩く日がくるなんてね」
男「まぁそうだな、それは良かった点だな。疲れたけど」
幼「フフフ、リア充っぽいわよね」
男「リア充なぁ……まぁそうかなぁ……」
男「…………」
幼「どうしたの?入らないの?」
男「ちょっとだけ、ここで待っててくんね?」
幼「部屋が散らかってるとか?」
男「おう」
幼「別に気にしないけど?」
男「いやーまさか今日こんな事になるとは思って無かったんでな」
幼「……5分だけ待つ」
男「おう、ぱぱっと片付けてくる」
・
・
幼「この部屋に来るの久しぶりだけど……なぁんだ、結構片付いてるじゃない」
男「今片付けたんだよ」
幼「ふーん……へぇー……」
男「な、何だよ……あ、言っておくが、押入れだけは開けるなよ?」
幼「なんで?」
男「放り込んだ荷物が雪崩起こすぞ」
幼「……ま、押入れは開けないわよ」
男「とりあえず座ってくれ。もうちょいビール飲もうぜ」
幼「オッケー」
幼「開けないわよ、押入れはね……フフフ」
・
・
男「ほら、つまみは柿ピーとキューちゃんしかないけどいいだろ?」
幼「フフフフ」
男「何だよその不敵な笑みは」
幼「やっぱあんたもこんなの見るんだね」
ヒラヒラ
男「んなっ!?」
幼「隠す場所は昔と変わらずなのね」
男「……」
幼「すっごいタイトルだわね、コレ」
幼「なになに?『小さな頃から一緒だった幼馴染が俺のベッd」
男「わーわーわーーーー」
幼「ちょっと、近所迷惑よ?」
男「お前なぁ……」
幼「何よ、押入れは開けてないわよ?」
男「そうじゃなくてだな」
幼「大丈夫よ。こう見えても27歳ですからね」
幼「こういうの見るのダメとか、器の小さな事は言わないわよ」
幼「高校生の頃だって、何も言わなかったでしょ?本当は知ってたのよ?」
男「あのな……昔とは……色々と違うだろ?」
幼「?」
男「……ここは俺が一人暮らししてるアパートで」
男「ついさっき付き合いだした、ほろ酔いの男女が居てだな」
男「その……もう少しだけ飲んで、場を和ませようとしていたのに……」
幼「何?」
男「得意気にそんな物掘り出しやがって……」
男「どんな空気になるのかは、考えなかったのかよ」
幼「あっ……」
男「だから急いで隠したっつーのによ……」
男「これはお前あれだぞ、お前」
幼「お前お前言わないでよ、昔みたいに名前でどうぞ」
男「……俺に襲われても文句言えない状況だぞ、これ」
幼「……」
幼「ま、まぁドンマイ!」
男「なにがドンマイだよ……ったくよぅ」
プシュッ
ゴクッゴクッ
幼「わ、わーい、私も飲むー」
プシュッ
ゴクッ
男「…………」
幼「…………」
男「あぁ……こうなるのが怖かったんだよなぁ」
幼「しょうがないじゃない!そんな、恋愛とかした事無いんだし!」
幼「そ、それに私はその……覚悟を持って、この部屋に来たのよ?」
幼「そこんとこ、ちゃんと解ってる?」
男「わ、解ってるよ……俺だって覚悟はあるさ」
ゴクッ
男「でも順番って物がだな……」
幼「男は、その……私を見て……興奮とか、するの?」
男「あたぼうよ。何年片想いだったと思ってんだ」
男「こちとら丁度27歳なんだぜ?考えない訳ないだろ」
幼「あ、あぁそうなんだ……へぇ……」
男・幼「…………」
男「……あのさ」
幼「な、なに?」
男「勢いで部屋まで来たけど、ちょっと後悔してるんじゃないか?」
幼「そ、そんな事ないわよ」
男「本当に?」
幼「しつこいわね!覚悟があるって言ったでしょ!」
ゴクッゴクッ
男「じゃあ、それ飲み終わったら先に風呂入れよ」
幼「!?」
男「多分それが一般的な流れだろ?」
男「俺も仕事帰りだったから汗かいてるし」
幼「そ、そうね。汗は流したいわね」
男「ちょっとビール飲んでろよ、お湯張ってくるからよ」
幼「う、うん……」
男「た、確か買ってから一度も着た事ないジャージがあったよなー」
ガサッ
スッ
幼(ん?今なにか……)
・
・
幼「ふぅ……お先にお風呂頂きました」
幼「ブカブカだけどジャージありがとね、ふふ」
男「お、おう……じゃあ俺も入るかな」
幼「……その前に」
男「ん?なんだよ」
幼「これなーんだ?」
ヒラヒラ
男「!?」
幼「あら、さっきよりびっくりした顔したわね。って事はやましい物なのね?」
幼「ラベルも何も無い、真っ白なDVDの中身はなーんだ?」
男「……なんで解った?」
幼「あんたがお風呂に立った時、何かを手に取ったのを見逃さなかったてわけよ」
男「隠し場所……」
幼「あんな狭いお風呂に隠せる場所なんてそんなに無いわよ」
男「探偵かよ」
幼「警官です」
男「あのな、違うんだよそれは」
幼「へぇ、珍しく言い訳するのね」
男「友の奴が置いていったもので、決して俺の趣味ではないんだよ」
幼「あ、これがいかがわしい物だって事は認めるんだ」
男「どうせ見せろって言うだろ?」
幼「ラベルも何もないんじゃあね。見るしかないじゃない」
男「俺が何言っても絶対見るって言うんだろ?」
幼「もちろんよ。気になるし、興味もあるし」
男「重ねて言うが、それは俺の趣味では」
幼「わかったから、ほら、早く」
サッ
男「……後悔するなよ?」
・
・
幼「あ、あはは…………ねぇこれって」
男「言うな」
幼「女優さんがいつまでたっても出てk」
男「何も言うなって。俺の趣味じゃない」
幼「じゃあ友君の趣味なの?」
男「知らん」
幼「……こうなってくると、あんたが結婚してない理由も変わってk」
男「だから!俺の趣味じゃないっての!」
幼「そう……あはは、そうだよね、あはは、あは……」
男「はぁ……だから隠したっつーのに……」
ピッ
男・幼「……」
幼「プッ!あははははは!」
男「な、何だよ」
幼「あんたと友君が2人並んでこのDVD見てる姿を想像したら、笑えるわー」
幼「2人見つめ合って、良い雰囲気になってたりして?あははは」
男「2人じゃねえよ、その時は確か……5人で鍋してて、友のヤツが」
幼「鍋しながら、こんなもの見てたの?ますます滑稽だわー」
男「ぐっ……」
幼「まぁ、そんな事はどうでもいいわ」
男「どうでもいいのかよ」
幼「……別に無理して雰囲気作らなくても良いわよ」
男「そうか?」
幼「長い付き合いだしね、いつも通りで良いわよ」
男「そうか……」
幼「ま、まぁ……男がどうしても、そういう事したいって言うなら」
男「いや、正直な話な」
幼「ん?」
男「このアパート案外壁薄いんだよ」
幼「……」
男「とりあえず今日は幼と付き合えたって事に酔って、気分良いまま寝たいぜ」
幼「ふふ、そうね、お互い初心者だもんね」
男「ほら、付き合った記念に乾杯だ」
幼「うん、乾杯っ」
カンッ
ゴクッゴクッ
幼「……ねぇ、明日って車取りに行くでしょ?」
男「そうだな」
幼「そのままドライブしましょうよ」
男「あぁ、良いな。久しぶりに行くか」
幼「私、まず着替えたいからウチに寄ってもらっても良い?」
男「おう」
幼「……つ、ついでに、ウチの親に挨拶でもする?」
男「おう、久しぶりだからな」
幼「……挨拶の意味、解ってる?」
男「……ん?」
幼「…………」
男「…………」
男「……あっ!あ、挨拶か……挨拶な!」
幼「遅いっ!」
男「すまん」
幼「で、どうなのよ、挨拶。行く?」
男「そうだな……行くか!」
幼「ほ、本当に!?良いの?」
男「自分から言っといて、なんだよ」
幼「急展開過ぎて夢みたい」
男「夢じゃねぇよ、馬鹿め」
幼「バカとはな…」
ぎゅうっ
幼「に……よ」
男「まぁ、そんな事があっても良いだろ」
男「俺たちのペースでさ」
幼「……うん」
男「おっと、俺汗臭いよな!風呂入ってくるわ」
ぱっ
幼「……ビール飲んで待ってる」
男「お、おう」
男(とは言え、幼が俺の部屋で、俺のジャージ着て……)
男(今日泊まって行くんだよな……)ゴクリ
男(布団は来客用のがあるから大丈夫だな)ブツブツ
男(俺が布団で幼がベッドかな?いや、逆か……)ブツブツ
男(いやいや、普段友の奴らが泊まりに来た時に使ってる布団に幼を寝かせたくないな……)ブツブツ
幼「何ブツブツ言ってるの?早くお風呂入ってきなさいよ」
男「おう!」
・
・
チャプン
男「……俺は幼とお付き合いをしている」
男「しかも結婚を前提に……前提で良いんだよな?」
男「それなら、そういう事があっても……あっても?」
男「あっ!ウチにアレなんて無いぜ……急な話だったし……」
男「しまったなー、さっき寄ったコンビニで……いやでも傍には幼がいたし……」
男「でも幼は覚悟を持って来たって言ってたし……」
男「良いのか?今日、良いのか?」
男「あー、でも壁薄いのはなぁ……」
・
・
30分後
男「お、お待たせ幼……って、おいおい、俺のベッドで何して……」
幼「……」スースー
男「寝て…るのか?」
男「げっ、俺30分も風呂入ってたのか……長すぎたな……」
男「ふぅ……ホッとしたような、残念なような」
男「……」
男「……幼の寝顔見るなんて、何時以来だろうな」
男「…………」
男「……さて、俺も布団敷いて寝るかな」
幼「オソイ…」
男「ん?今声が……」クルッ
幼「遅いっ!」ガバッ
男「うわっ!」
幼「本当に寝る所だったわよ!」
ぎゅっ
男「何だよ、狸寝入りかよ」
幼「んふふ、久々に男のベッドの匂いでも嗅ごうかと思ってね」
男「変態かよ」
幼「失礼ね。好きな人の匂いを嗅ぎたくなるのって普通でしょ?」
男「それはまぁ……そうか?」
幼「それにこーんなお宝も出てきたしね」
ヒラヒラ
男「あっ!」
幼「枕の下に私の写真がありましたわよ?」
男「くっそ、酔っぱらいめ……そこは見て見ぬふりをだな」
幼「うふふ、あんたホントに可愛い所あるわよねー」
幼「夢の中では私に会えた?」
男「ぐっ……まじで幼には隠し事出来ねーな……」
幼「これって、みんなで行った卒業旅行の時の写真よね」
男「2人で一緒に写真撮ったの、それが最後だからな」
幼「大丈夫」
男「何が?」
幼「おまじないなんてしなくても、これからはずっと傍に居るし」
幼「写真も撮り放題よ?」
男「……そうだな」
幼「布団なんて敷かなくてもいいじゃない」
男「……」
幼「一緒のベッドで寝ましょ?」
男「……なぁ、今日はもう酒は飲まないよな?」
幼「そうね、今夜はもう飲まないわ」
幼「明日は出来るだけ早い時間から行動したいし」
男「あの、ちょっと一緒にやって欲しいことがあるんだが」
幼「……え?」
・
・
シャコシャコシャコシャコ
男・幼「……」
幼「あいおううあおおおああ」(なにするかと思ったら)
男「あっえひははあいあおう」(だって仕方ないだろう)
幼「ブクブクブク……ペッ……ふぅ」
男「ブクブクブク……ペッ……」
幼「ふふっ、それにしても付き合って初めてのお願い事が歯磨きとはね」
男「寝る前にはちゃんと歯は磨かないとだろ?虫歯怖いだろ」
幼「フフ、本当の理由は違うでしょ?」
幼「男の事だから、ファーストキスがビールの味なのが嫌なんでしょ?」
男「ぐっ……」
幼「図星でしょ?」
男「本当に何でもお見通しだな」
幼「男の事は大体ね。なにせ長い付き合いですから」
男「さっきも言ったけどよ」
幼「うん?」
男「ゆっくりで良いよ、そういうのは」
幼「ふふ、そうね……でも、折角歯も磨いた事だし?」
幼「キスくらいは、ね?」
男「だったら……ちょっと目、閉じてくれよ」
幼「んっ!」
チュッ
男・幼「…………」
幼「け、結構恥ずかしいわね?」
男「そうだな……てかめっちゃ恥ずかしいな……」
幼「で、どうだった?キスのお味は?」
男「柔らかかったけど、クリアクリーンの味がした……」
幼「まぁまぁ、これから色んな味のキスを沢山するんだから……ね?」
男「だな」
幼「じゃ、寝よ寝よ!明日はなるべく早起きね!」
男「おう!」
幼「明日からの人生がバラ色に感じちゃうわ」
男「守れるように最大限努力するよ」
幼「よろしくね!未来の旦那様っ」
ぎゅっ
おまけその3 おわり
これで全部終わりです
レスくださった方、ありがとうございます
おまけが長い上に尻切れトンボで申し訳ありません
次スレは
幼馴染「ひねもすのたりでお願いします」 男「ん?」
ってタイトルで立てると思います
3月3日に間に合えばそれっぽいスレを立てるかもしれません
では。
乙
よかった
おつおつ
今回も素晴らしかった!
うらやまけしからん
乙
乙!
ウチの歯磨き粉クリアクリーンなんだ、つまりこれを
おもしろい
すばらしい
今更だけどこの幼、『たまたま近くに居た年齢=彼氏居ない歴のちょっと可哀想な婦警さん(27歳)』か
あれ?
翌日編は???
待機
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません