インディーズ(10)

とりあえず最初に。
展開は自由気ままです。
とんでもなくワクテカ展開になる事もあれば、
ダルい、早く終わらせろと思う展開にもなるでしょう。
また、投下も不定期、のんびり。書き溜め無しです。
気付いたら居なくなってるかもしれません。
では、始めます。


Ba.「ドゥ・シェイヌでしたー!センキュー!」

ドドドドドドドドドド...バアアアァァァン!!!

ウオオォォォォォワアアァァァァァァ!!!

Vo.「ありがとう!またねー!バーイ!」

Gu.「愛してるぜ!お前ら!」

Dr.「……」ペコッ ササッ

~~~%%%~~~

今日もやっとライブが終わった。

とりあえずまずはメンバーを落ち着かせなければ。

なんて事を毎回思い、楽屋に戻るともう既に彼らは

汗を拭き、着替えを終え、椅子に座っている。

ライブ終了後の彼らの切り替えの早さはちょっとした凄技だ。

マネージャーの私がする仕事は無いに等しい。


マネージャー、と言っても、彼らは事務所だの何だのに所属したりしてる訳ではない。

自分達でライブを企画し、自分達で予約を取り、自分達だけでライブをする。

私はそれの運営全般のまとめ役だ。

ライブの片付けは何処からかBa.が連れて来た専属のローディーがやる。

この時点での私の仕事と言うのはやはり無いのだ。


ドゥ・シェイヌ、それは非常に不思議なバンドだ。奇跡と言い換える事も出来る。

彼らはまず事務所に所属していない。自分達が完全に個人でバンドを運営している。

ライブをすれば全部その儲けは稼ぎに直結するし、その分広告だとかの力が殆ど無に等しい。

だが、非常に(本当に非常に)不思議な事に、結成から今日まで財政難だとか、

解散の危機だとか、そう言った類いに当たった事は何故か一度もない。

理由、と言うか、原因は分からなくもない。

Ba.だ。


Ba.。彼はドゥ・シェイヌと言うバンドを語る時に絶対外す事は出来ない存在だ。

素材に拘った牛丼の話をする時、牛肉の話をせずには居られないのと同じように、

ドゥ・シェイヌと言うバンドの話をする時、Ba.の話をせずには居られないのだ。

彼はこのバンドのリーダーでベーシストだ。そして、私の恋人だ。

因みにかなり長い付き合いだ。

彼の話をする時、何処から話せば良いか分からない、と言う事がままある。

彼のベーススタイルについて話すにしても、スラップだとか、

ピック弾きだとか、指弾きだとか、独自の弾き方だとか、とにかくネタに尽きない。

彼の人間性について等話そうものなら彼の幼少期の話からせねばならない。

そして、大抵その話は朝まで掛かる(事実、酒の肴にして朝まで話す事になった事もある)。

それだけ彼と言う人間は面倒で、複雑で、とにかく情報が詰まっているのだ。


よって彼ではなく、彼のバンド、及びそのメンバーの話をしよう。

ドゥ・シェイヌ。リーダーはBa.である。中心となってメンバー集めをしたのは私と彼だった。

何故か私がメンバー集めを手伝う事になったのだ。理由は忘れてしまった。

まず、私が知り合いのVo.を紹介した。彼女はとにかく声域が広かった。

地声の最高音はhihiF。最低音はlowD。とりあえず、人間ではなかった。

最高音はさておき、最低音は女性では考えられなかった。

普段の彼女は至って普通に喋る若干チャラいだけの女の子だったのだから。

彼女はV系が大好きだった。X、ルナシー、黒夢、ディル、ダイイン、ラルク、グレイ等。

音楽はV系なら何でも好きだった(勿論、V系以外も聴くが、結局一番はV系だそうだ)。

その点で、彼女とBa.は驚く程馬があった。彼女が一昔前(勿論今も活動しているが)の

バンドを聴くのに対し、Ba.は若手のV系を聴いた(ただし、その上で昔の方が良いと言った)。

音楽の趣味があまりにも合った(シンクロしたと言って良い)二人は、

一度一緒に飲んだだけでバンドを組む事を決断した。

Vo.は既にバンドを組んでいたが、Ba.と話してから一気にそのバンドが

つまらなくなったらしく、バンドを組む事を決めた次の日に抜けることを宣言した。


ギターとドラムは一気に引き抜いた。Gu.とDr.はスリーピースのバンドを組んでいた。

ベースがヴォーカルを兼任するスタイルで、Gu.とDr.は彼のオマケと言った扱いだった。

これに二人は勿論不満を抱いていたが、抜けて次のバンドが組めるかは分からなかったので、

とりあえず今のバンドでやっていこう、と言うことになっていた。

Ba.は彼らのライブを見た後、すぐに二人を誘った。理由は勿論、二人の演奏が

良かったのもあったが、何より扱いに不満を持っているのが一目瞭然だったからだ。

Ba.がバンドの話をすると、二人はすぐにOKを出した。

Ba.はある程度上手ければ何でも良いと思っていたし、

二人は次のバンドを見つけられれば何でも良いと思っていた。

そう言う意味で、彼らはピッタリとあっていた。

後に最高のメンバーとなるとは誰も(Ba.は分からないが)予想出来ていなかった。


メンバーは全員趣味があった。洋楽邦楽、若手古手の違いはあったが、

皆V系やニューロマンティクス等の音楽を好んだ。バンドの方向性は直ぐに決まった。

最初こそVo.は女がV系、と言うのに疑問を抱いていた様だが、

一度歌えばその違和感もすぐに消えていった。そうして彼らはセッションを重ねていった。

その中で、Ba.の演奏能力が異様に目立つようになっていった。


彼のベースは煩い訳ではない。むしろ静かすぎる位だ。

だが、彼の演奏のレベルは非常に高かった。バンド内のフォロー能力が非常に高かったのだ。

コーラスはほぼ全て彼が担当していたし、それは殆どツインボーカルに近かった。

また、彼は非常に全てにおいて安定していた。

彼はルート音を刻むタイプのベースを好んだが曲によってはそうは行かないものもある。

歌うような、つまり指が動くベースラインだ。

その際ベースは本来のベースの役割を果たせない事がままある。

だが、彼のベースはそれをしっかり果たした。

彼がどんなに暴れたベースラインを弾いても曲にはベース特有の厚みがあったし、

Gu.がたまに何処を弾いてるか分からなくなった時に、彼はベースラインに

ルート音を一音混ぜ込んで音を教えた。それでも彼のリズムは崩れなかったし、

元のベースラインの音が崩れる事は決してなかった。

彼は完璧だった。彼が入ればメンバーのミスはミスではなく味になった。

そういう意味で、Ba.は完璧なベーシストだった。

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