デジモンワールド トラベル(111)
【デジモンワールド リ・デシタイズ】は面白いゲームだったのです。
トレーニングシステムは良改変だったし、新アイテムもワールドらしかったし
でも、何でこのデジモン出てないんだ?とか何でこのデジモン育てられないの?とか不満があることも確かなのでした
という訳でオリジナルのデジモンワールドをssで書いてみたいと思いました
「以下注意事項」
・舞台がデジモンワールドなのでどんなに大きくても3m前後、舞台に合わせてサイズが縮小されてます
・舞台が(中略)水棲系デジモンは浮きます
・作品を書くに当たって調べた時、知らなかったデジモンもいました。作中で使用する際は最低限調べてから書きますが、間違いがあるかもしれません
・アーマー体は成熟期扱いとさせていただきます
・時間的に自分があまり見てないのもありますが、そもそも扱いが難しすぎるので、クロスウォーズのデジモンは僅か一部しか出せません
・主人公はオリキャラです
・最重要項目としてオリジナル要素(設定、技、アイテム、進化系統図、ファイル島魔改造等)が強めです
・作者の文章力は皆無。その上、遅筆です
ご拝読の際は以上の項目の了承をお願いいたします
では、デシタケでも齧りながら、ごゆっくりお楽しみ下さい
―――暑い
夏の日差しというのこんなに眩しいものだったのかと、私は感動してしまう
私、和田ミライは病人である
生まれつき身体が弱く、人生の半分を病院で過ごしてきた
何でも運動神経に障害があるらしく、病院以外の生活でも外へ出たことはあまりない
「鳥籠の鳥は、鳥籠以外では生活できない」と昔見たアニメで言ってた気がするけど、私はこの鳥籠の生活が酷く退屈で拷問だった
たまには羽根を伸ばして外へ出てみたい
tvや雑誌などから得る外の風景は、確かにいいものではないと思う
だけど、一度でいいから誰の目も自分の身体も気にせずに外を歩いてみたい
そう、段々とその思いを募らせた私は遂に行動に移してまったのだ
看護婦さんの目をそっと掻い潜り、母さんが買ってきた麦わら帽子と白いワンピースを身に纏い、愛用の松葉杖を携えて病院からこっそりと抜け出してしまったのだ
抜け出したはいいものの普段金なんか使わないから、財布なんて持ってないし遠くには行けない
帰れば両親とお医者様と看護婦さんのお叱りが待ってるだろう
なんという無計画
それでも、見慣れた白い床が灰色の道路になっただけで凄く嬉しかったのだ
スキップさえできない身体が恨めしくなるが、自由に外を歩くのがこんなに楽しいと思わなくて、つい胸が弾んでしまった
そうして知らぬ間に羽目を外してしまったのだろう
「暑い」
慣れない外、あんまり運動慣れしてない身体、そして夏の日差し
端的に言えば私はバテてしまったのだ
後から考えれば、もっと落ち着いて行動すべきだったのだ
水が欲しいけど、お金もないし近くに水道のありそうな公園もない
スポーツドリンク一本くらいはくすねてくればよかった
せめて最低でも携帯だけは持ってくるべきだったか
後悔先に立たずとはよく言ったものである
だが、失敗は成功の元とも言う
次に抜け出す時はこの反省活かして外出しよう
今日は諦めて帰ることにする
十字路の交差点の信号が青に変わったのを見て、私は横断歩道に足を進めた
――――こんなに疲れてるのに帰ったら説教の嵐だろうな
もしかすると連絡を受けた両親は私の前で泣き出してしまうかもしれない
そう遠くない未来を予想すると胃が痛い
ああ、帰りたくないな
本当はもっと遠くへ、山とか海とか行きたいんだけど
可能ならば外国にだって行きたい
地の果てでも、空の向こうでも遠くに………そう遠くに行きたいのだ
そう考えに耽りながら歩いてたのがよくなかったのか
白黒の何かが目の前を通り過ぎたような気がした
一瞬だった
視点の先が青になった信号から一瞬で青空と眩しい太陽になった
私の麦わら帽子が宙を舞っていた
遅れてtvドラマで聞いたような急ブレーキの音が聞こえた
―――ああ、お母さん明日の朝まで泣きやまないだろうなぁ
自分の身に起きた事が何だったのか分かったのと同時に、私は安全運転を守らなかった運転手を恨めしく感じて
青空を眺めながら、私は地面に叩きつけられた
「さあ、冒険だ」
喧騒の中、何故かそんな声だけが聞こえた気がした
何でそんな声が聞こえたのか分からないまま、私はそのまま意識を手放す他なかったのだけど
ただ、焼けたアスファルトがとても心地よかった気がした
【1年1日 迷わずの森】
目が覚めると、病院の白い天井…………
「じゃない!?」
私は眩しい青空に目を細めながら、ゆっくり上体を起こした
周りを見渡せば木々が、手の柔らかい感触に地面を確認すれば草が繁っていた
私自身の格好を確認すると出掛けた時の格好のまま麦わら帽子に白のワンピース、それと足元には松葉杖
………確認しよう
私は青信号を渡ってたはずなのに車にひかれた
信号の確認しなかった運転手に沸々と沸き上がる苛立ちは感じるが、それはひとまず置いておく
生きているなら、病院でワンワンと泣き喚くお母さんに起こされて、その後厳格なお父さんの怒鳴り声に肩を震わせる羽目になると思った
でもそうじゃないなら、私は死んだのだろうか?ここはあの世なのだろうか?
…………でも
あの世がどんなものか知らないが、この草の感覚はリアルすぎる
何て言うか私はまだ死んでない気がする、確信はないけど。
でも生きていない感じもする………なんか凄く中途半端
じゃあ、ここは何処?
松葉杖を持ちながら私はのっそりと立ち上がって周囲を見渡す
やっぱり森しかなった
車に森まで撥ね飛ばされたのだろうか?などと馬鹿なことまで考えてしまうと後ろから声がかかった
「お前誰だ?」
後ろを振り返ると、黄色いトカゲみたいな生き物しかいなかった
トカゲというには私の腰くらいまでの大きさがあってちょっとデカ過ぎる気もするけど
ちょっと爪も大きすぎる気がして怖いけど
でも、声の主は何処にいるんだろう
「おい、答えろよ」
そんな風にボーッとしていると、また、声が聞こえた
さっきと同じ声………でも見渡してもやっぱり誰もいない
私が不思議そうにしていると、今度は目の前のトカゲがジタバタし始めた
「おい、無視すんなよ!?」
――――まさか
その声に込められた感情と黄色いトカゲの行動が一致した気がした
だから、つい、そう、つい不躾な質問で返してしまったのだ
「あなた………喋れるの?」「馬鹿にするなぁ!!」
突如として飛び上がったトカゲは私に体当たりしてくる
運動が出来ない私は、避ける事もできず、当然のように倒されてしまった
悲鳴を上げる暇もない
尻餅をついた格好の私は視線の高さがトカゲのそれと一緒になっていた
緑色の瞳でじっと睨んで来るトカゲ
トカゲの表情読むなんて私には出来ないけど、グルルと唸っているところを見ると怒っているのは間違いないみたいで
あの大きすぎると思った爪が白く光った気がした
―――ああ、私殺されるな。生きてるのか死んでるのか分からないけど
何故か恐怖は感じなかった
これ書くのかなりの労力だったろうに、最初に注意書きという名の言い訳しちゃうとは勿体無い
そして、トカゲが前足を振り上げる
その時だった
丁度トカゲの真横からだろうか水色の小さな影が躍り出る
黄色と水色が交錯する
鈍い打撃音が森に響く
そして――――
トカゲが吹き飛んでいった
「へ?え、何?何が起きたの?」
水色の何かは黄色のトカゲと同じくらいの大きさだった
勇ましいファイティングポーズを取るが何処か可愛らしい
少し垂れた大きな耳、尻尾、着ぐるみでもない限り人間の子供ということはないのだろうけど………
どちらかと言えば、黄色と何処か似通った雰囲気を感じる
そう思った時、何か違和感を感じた
似てる?
いや、似てるけど違うんだ。あれは違う
でも、似てる
「え、え、本当に何?これ?」
今、私、凄く興奮してる
凍りついた心臓が急にバクバクと動き始めた感じ
でもなんで、外見違うのに似てるって感じるの?
なんで、その感覚の違和感を感じるの?
あの子と黄色の違いが分からずに目が白黒する
そもそもなんであの子は私を守ったの?
何か何まで分からなくなってきた
ここは何処で、今、何が起きてるのか
私は何故ここにいるのか
ただ、一つ確信を持てたのは――――
きっと、これが遠くへ行きたいと願い続けた私の冒険の始まりなんだ
とりあえずアドバイス
不必要な前宣言はスレ荒れの元
1スレに文章を詰め過ぎない
改行や空間を空ける等の工夫をする
(読みにくくて仕方がない)
そこら辺り気をつけて頑張ってくれ
駆け足だった気がするけど、プロローグ書きました
明日までに正体モロバレな水色の垂れ耳vs黄色いトカゲのイベントバトル書ききります
>>8
ごめんなさい
デジモンとなると必殺技以外のスキルとか出ると違和感覚える人もいるかな、って思ったので
別に良いと思うよ
自分の書きたいように書き終わってくれ
どうせフロンティアに出番なんてないのさ……
投下します
【イベントバトル:迷わずの森】
黄色いトカゲが吠えて跳ね起きる
水色の垂れ耳が拳に更に力を込める
黄色と水色が互いに向かって突進を始める
黄色の爪が水色の顔を弾き、水色の拳が黄色の腹に叩き込まれる
黄色はくの字に曲がり、水色はのけぞる
が、水色の方が体勢を直すのが早い
ボディへのパンチから、顔面へのフック、ストレートパンチとコンビネーションと、トカゲにダメージを与える
だが、トカゲも負けてはいない
よろめいた体勢から、垂れ耳の肩に噛み付く
水色は「キュー」と鳴きながら、手足をジタバタさせながら、トカゲの頭を引き離そうともがくがなかなかなか離れない
「キューキュー」と鳴きながらもがく垂れ耳は必死に頭と下顎を掴む
激しいもつれ合いの中、トカゲが牙を抜くと、偶然か作戦なのか垂れ耳が投げられる形で吹き飛ばされてしまう
しかし、垂れ耳はすぐに立ち上がって突進を開始する
トカゲも当然のように迎え撃つ
その後も何度も何度も水色と黄色は磁石のように近付いては片方を吹き飛ばし、近付いては片方に吹き飛ばされる
水色が拳をぶつけては、黄色が爪と牙で反撃する
あれほどのぶつかり合いにも関わらず、なぜか血こそ出ていないが、あまりにも凄絶な格闘戦に私は声を失ってしまった
――――ただ、水色の子がこんなにも戦う理由だけは分かっていた
私を守るためだ
証拠なんて何一つない、ただ確信だけがそこにあった
そんな確信だけは確実にあったのだ
再び二匹が弾かれ合ったところで、右隣から声がした
「助けなくていいのかの?」
いつの間に近づいていたのか、私の右隣のいたのはこれまた私の腰くらいの大きさしかない老人だった
髭で覆われた顔と、大きな肉球(?)が先端についた杖が特徴的だった
「貴方は?」
思わず驚いて口をついた質問に老人はのんびりとした口調で答える
ただ、その答えは私の予想の外だった
「ワシはジジモン。お主達、人間に近い姿をしておるが、あの子達と同じデジモンじゃな」
…………デジモン?そんなアニメ昔見たような気がする
いや、それよりもこのおじいちゃんが人間じゃなくて、今戦ってるあの子達と同じ存在というのに違和感を覚えないのが不思議でならなかった
「お主を守ったのはブイモン、黄色いのはアグモンという。分かるかの?」
………ブイモン。あの子はブイモンっていうんだ
すんなりとその言葉が心の中に入っていた
前々からずっと近くにいたのを思い出したような……………
「まあ、そんなことはどうでもいい。お主、ブイモンを助けなくてよいのか?」
そう私の中で、さっきからずっと渦巻いていたものだ
あの子を助けるべきではないのか、助けなくていいのかという気持ち
私に何が出来る訳でもない
ただ、何かしなくてはいけない気がしてならない
「このままならブイモンは負けるぞ」
「え?」
「互角に見えるかの?攻撃力と防御力はアグモンの方が上じゃ。ほれ、ブイモン見てみい」
その言葉に私はブイモンの姿を再び見た
ブイモンの身体が揺れてる?
いや、違う………何か電波の悪いtvみたいな感じで、ブレてる?
「hpの消耗がアグモンより大きいのじゃ。じゃからノイズが入っとる」
「ジジモンさん、ここはゲームの世界なの?」
だって、ノイズはともかくhpなんてrpgでしか聞かないし、ゲームの世界に来てしまったとしか思えないし
ただ、ここが仮にゲームの世界だとしても私は何かに必死になってることは間違いなかった
「ふむ。そうとも言えるし、そうじゃないとも言えるの」
ジジモンの言葉は曖昧で不明瞭だった
だけど、なんとなく、その言葉に私は自分にも出来ることを感じた
「なら、ブイモンを回復させる手段はあるはずでしょ?何か薬草とか回復魔法みたいなのないの?」
そう、ここがゲームの世界とも言えるなら何らかの回復手段はあるはずなのだ
そして、それはブイモンを助ける手段になるはずなのだ
その考えは正しかったのか
ジジモンは無言で赤い正方形みたいな機械物を何枚か差し出してきた
「何、それ?」
「いいから受けとらんか」
私の質問に何も答えず、ジジモンさんは薦めてきた
仕方なしに私が受けとると、その機械物は微かに光り…………
「カード?」
カードになってしまった
どういう理屈なのか全く分からないけど、ゲームの世界とも言えるなら、きっとそういうシステムなんだろう
カードにはさっきの機械物の画像と「回復フロッピー」と書かれた文字が記されている
ただ、これをどう使えばいいのか分からない
カードになったのにも、きっと意味はあるのだろうけど
ただ、どうすればいいんだろう?
かざせばいいのだろうか?叫べばいいのだろうか?
気付けばブイモンがアグモンに再び噛み付かれていて、ノイズが酷くなっていた
最早一刻の猶予もない
「ジジモンさん、私、どうすれば」
「答えはすでにお主が持っておる」
「へ?」
私が焦ってたのが気に入ったかのようにジジモンは私の右手を杖で指した
いつの間にか、私の右手には白いクリスタル色の携帯電話があった………携帯電話?
携帯電話というにはちょっと大きすぎるような気がするんだけど
「ふむ。それがお主のデジヴァイスか」
デジヴァイス………なんだろう、さっきから違和感を覚えるべき事が多いのにしっくり来ることばかり
このデジヴァイスが私の手元にいつの間にかあったことも、このデジヴァイスという名前も
まるで、私の中に最初からあったような………
それにこれがカードに変わったアイテムの答えだってジジモンさんは言ってたのも何となく分かった気がする
――――そうだ、このカードの使い方は…………
ノイズの走ったブイモンが吹き飛ばされたのを見て、私は深く息を吸った
もうこれ以上は迷えない―――それならやってやる
「対象:ブイモン!!」
デジヴァイスの左側には深い溝があった
そこにカードを走らせる
そして、叫んだ
「カードスラッシュ!回復フロッピー!!」
次の瞬間、ブイモンの全身は眩い緑色の光に包まれ――――目を開けば
「ノイズが消えてる………」
そこにいたのは、私を助けに来たままの姿の水色の垂れ耳だった
ノイズは完全に消えている
流石に全回復までいかなかったのは何となく分かる
それでも大分回復している
見れば、hpを回復したブイモンも優勢だったアグモンも時が止まったように固まっている
アグモンもブイモンも何が起きたのか分からずに驚いているのだろう
―――だから私は叫んだ
「ブイモン!思いっきり!!」
その言葉を聞いて即座にブイモンは跳ね飛び、そのまま反応が遅れたアグモンをパンチで吹き飛ばす
上手くアグモンの虚を突いた
でも、ジジモンさんは攻撃力・防御力はアグモンの方が有利だといった
なら、体勢を立て直させてはいけない
「ブイモン!もう一回!!」
ヨロヨロと立ち上がるアグモンを再びアッパーで吹き飛ばす
今度はアグモンの方にノイズが走ったのが確認できた
―――勝てる
私はそう確信した
「もう一か………」
だけど、私が再び指示を出そうとした瞬間、アグモンの口から閃光が放たれ、ブイモンに直撃した
ブイモンはのけぞり膝をつく
「………口から火を吐いた?」
「まあ、デジモンじゃからの」
驚く私を尻目にジジモンさんはのんびりとそんなことを言った
「じゃが、必殺技ではないのう。恐らくスキルプログラムじゃろう」
「必殺技?スキルプログラム?」
ブイモンを襲った火の正体をジジモンさんは知ってるみたいだった
「うむ。あれは恐らくスピットファイヤー。炎のスキルプログラムの中でも一番威力の低い技じゃ。×効果もないし、△効果も1対1じゃあまり意味がないものじゃしな」
言ってることがまるで分からないけど…………ただ威力が一番低いなら、なんとかなるかもしれない
そう判断した私は一つの決断を下した
「ブイモン!突っ込んで!!」
その言葉にブイモンは駆け出す
アグモンは小さく唸ると口から橙色の発光を見せた
恐らくさっきのスキルプログラムだ
それに上手くタイミングを合わせれば、なんとかなる
アグモンが再び火を放つ
その瞬間、私は声を張り上げた
「ブイモン、がまん!」
その言葉にブイモンは突進する脚に急ブレーキをかけて腕をクロスする
アグモンのスピットファイヤーを受け止める
だが、のけぞらない
膝もつかない
スピットファイヤーの反動か、硬直しているアグモンにそのまま突撃する
「ブイモン!顎を狙って!吹き飛ばさない程度に………そう、ほどほどに!」
懐に入り込んだブイモンの右フックがアグモンの頭をそらす
「もう一回!」
今度は左フックで逆に
「もう一回!!」
アッパーで上向きにする
「離れて!!」
苦し紛れに放たれたアグモンの爪での反撃の直前に、私の指示が届く
ブイモンは後ろにステップしてアグモンの爪をかわした
――――絶対に負けない
気付けばブイモンの身体が青く輝いていた
「デジソウルが溜まったか!!」
その輝きの正体をジジモンさんが教えてくれる
なんだかよくわからないけど、それはけして悪くないことだってすぐ分かった
「ブイモンの代わりにお主が叫ぶのじゃ!必殺技を!!」
ジジモンさんの叫びに私は合わせる
「行くよ………ブイモン!!」
ブイモンが頷いた
思いっきり、叫ぶ
「ブイモン…………ヘッド!!」
私の声にブイモンはアグモン目掛けて跳躍する
ブイモンの身体のバネと体重の全てがアグモンに激突する
アグモンは吹き飛ばされ
地面を二度三度転がり
そして背中を木に激突させ
項垂れたまま沈黙した
「勝ったの…………?」
私の声に誰も答えない
だけれども
―――勝敗は決した
本日ここまで
やっぱり急ぎ足ですね
改行も下手だし
設定の説明をしてない部分がありますが、次回以降で必ず説明します
後、あれだ、アグモンへのフォローもちゃんとします
>>15
本編でも多分説明しますが、デジモン及びスキルの性質はフロンティアの十属性を採用してます
その分、格闘性質とか汚物性質とか使いにくくて扱わないのですが…………
とりあえず、現時点でフロンティア関連で話せるのはここまでです
デジモンカードアリーナはよく出来たゲームだったと思う
アグモンとの戦いが終った後、私は迷わずの森から「じまりの町」と呼ばれる場所に案内された
町と呼ぶには多少建物が少ないが、それ以前に丸っこい生き物たちがポヨポヨと跳ねてたりフヨフヨと浮いてたりしているのが、印象的だった
あれもデジモン?だったのだろうか
その一方でまるで人間がいないのが気になった
もし、これがゲームの世界なら魔王とか悪役側の勢力に拾われ勇者とかと敵対する羽目になったりするのではないのだろうかと、意味の分からない心配をしてしまう
とはいえ、ほのぼのとした空気はどうにも悪役のアジトとも思えないのだが
ちなみに、結構な数の魔王型と呼ばれるデジモンがこの世界に存在することを私が知ったのは大分遠い未来のことだったりする
【1年1日 ジジモンの家】
そして、現在、私はジジモンさんの住んでいるという家の椅子に腰かけていた
ジジモンさんは私に話すことがあるらしい
その家主であるジジモンさんはアグモンを病院に連れていっている
なんでも、野生に戻ったデジモンというのは戦いに負けても直ぐ様死ぬように出来ている訳ではないらしい
私は一緒についてきたブイモンを腰に座らせると、戯れに顎を撫でてやったり耳の後ろ側を掻いてやったりした
その度に「キュ~」と甘えるように鳴くのが可愛らしくて、ついついエスカレートしてしまう
このブイモン、最初見たときは「水色」という印象が強かったが、近くで見ると額の黄色いvの字が結構気になる
身体も全身水色かと思いきや、お腹だけ白くて「ドラえもんカラー?」なんてバカなことを思ってしまった
これで尻尾が赤ならと思いつつその白いお腹をくすぐっていると、何やら視線を感じた
その気配の主を探すと部屋の奥の扉が半開きになっており、4つの光が私を覗いていた
その4つの光が誰かの瞳ということはすぐに分かった
ドアの向こうは灯りがついてないのか、真っ暗でそれだけに爛々と光る瞳はそれはそれで不気味だった
怖いとは思わないが、お化けか幽霊かが、脅かそうとしてるのだろうか?
しかし、私がじっとドアの隙間を見ているとドアの裏に隠れたのか光は消えてしまう
かと思えば、再び隙間から覗いてくる
しかし、やっぱりすぐに隠れてしまう
流石に興味を惹かれた私は正体を確かめようとブイモンを腰から降ろした
さて、立ち上がろうとしたところで、入り口のドアが開き、アグモンとジジモンさんが帰ってきた
黄色い影が入ってきた時、立ち上がろうとしていた私の身体は緊張で固まっていた
いきなり体当たりされたのがややトラウマになってるし、ブイモンに指示してとはいえあれだけボコボコにしたのが心の片隅で引っ掛かってるのもある
そうして、私が固まっているとアグモンはピョコピョコとこちらの前まで歩み寄って来る
また、いきなり体当たりでもされるのではないだろうかと身構えていると、いきなり頭を下げた
「へ?」
思わず素っ頓狂な声が出る
「いきなり殴りかかっちまって、すまなかった!オイラってば、頭に血昇ると形振り構わなくなっちまう性格で!」
「その上短気じゃしな」
アグモンの謝罪に茶化すように重ねられたジジモンさんに気が抜けてしまった
構えてたのが馬鹿らしい
「ううん、私の方こそ怒らしてしまってごめんなさい」
元はと言えば、私の不用意な発言が問題だった訳だし、こちらも謝罪しない訳にはいかない
「おう、お前デジモン知らなかったんだってな。ジジモンから話は聞いたぞ」
幸いにもアグモンは笑って許してくれた
「ただ、悪いって思ってくれてるなら頭撫でてくんねーかな。人間に撫でられるのは気持ち良いって前に聞いたんだ」
「まあ、そんなのでいいならいくらでも」
アグモンの頼みを快諾して、私が撫で始めるとアグモンは緑色の瞳がゆっくりと細くなっていった
気持ちいいなら気持ちいいでそれに越したことはないんだけど、アグモンもよく見ると可愛らしい顔してるんだと、私は感心してしまう
私はアグモンの頭を撫でながら、気になった事をジジモンさんに尋ねた
「ジジモンさん、私の他にも人間ってこの町にいるんですか?」
「今、ファイル島にはお主しかおらんよ。昔なら何人か来たことがあったが」
「というと、皆デジモンなんでしょうか?」
私のその言葉にジジモンさんは頷いた
人間はいない。私はその事実に寂しさと不安を覚えた
そもそもここは何処なのか、彼らは何者なのかはっきりとしていないのだ
アグモンを撫でる手がぶるりと震えたような気がした
「ふむ、お主なんと言ったか」
ジジモンさんの質問に未だ自分が自己紹介してないことを思い出す
焦った私は早口で捲し立てた
「あ、ごめんなさい。和田ミライっていいます」
「そうか、ミライか。いい名前じゃの」
髭で表情が見えないがその顔は笑ってるように見えた
「さて、聞きたいことも山ほどあるじゃろうから、きちんと話そうか」
そういうとジジモンさんはアグモンに向き直った
「ほれ、アグモン。もう満足じゃろうて、これから込み入った話をするから森へ帰らんか」
「ちぇっ、急かすなよ」
ジジモンさんの台詞にそう返しながらアグモンは私の手から離れて入り口のドアまで小走りで駆けてく
「じゃあな、ミライ、ブイモン。また会おうぜ」
そういうとそのままジジモンさんの家を出ていった
「素直でいい子なんですね」
「まあの。さて、話すことが山ほどあるのじゃが………ふむ、まずお主は何が聞きたい」
何が聞きたいかと言われても困るけど、ジジモンさんも何から話せばいいのか悩んでいるのだろう
だから、私は真っ先に身近にある問題について尋ねた
「えっと、あの奥にいるのって何なんですか?」
さっきからチラチラ見ては引っ込み、覗いては隠れる二対の瞳の正体が私にはとても気になっていた
なんとなく、小さな子供って印象は受けるけど
少なくとも私を食べようとするような巨大な怪物だとかお化けだとかそういう類いではないと思う
「ああ、あやつらか。おい、お前達出てこんか」
ジジモンさんがドアに向かって呼び掛けるが、何かが出てくる様子はない
その後も三度に渡ってジジモンさんは呼び掛け続けるがやはり応じる様子はない
「全く人見知りが激しい奴等じゃの。ミライ、ちょっと待っててくれるか」
痺れを切らしたジジモンさんはズカズカと奥の部屋へと入っていく
ドタドタと物音が聞こえてきたと思ったら、私を見ていた何かが飛んできた
どうやらジジモンさんがこの子達を放り投げたようだった
それは目の周りが赤い丸で囲まれた黒い鳥と花を頭に乗せた緑色の生き物で、丁度私の目の前に着地していた
大きさはやはりというべきかブイモンやアグモンと同サイズほどで、私を見て何やら固まっているみたいだった
――――さっきのアグモンを見た私と同じく緊張しているのだろうか
そう思うと何やら無性に可愛らしく見える
クスクスと私は笑って、腰を椅子から降ろす
膝をついた私が手を二匹の頭に翳すと二匹ともビクリと身体を強張らせる
私がそのまま二匹を撫で続けても、固く強張ったままだった
それでも、私は丹念にじっと黙ったまま撫で続けた
何故だか怖くないよ、と無性に伝えたくなった
やがて、それが二匹に伝わっていくのが分かる
黒い鳥も花の子も表情が和らぎ、身体は弛緩していく
それが私は無性に嬉しかった
黙って見てくれてたジジモンさんはそれを見てようやく口を開いた
「そっちの鳥はファルコモン、花を頭に乗っけとるのはパルモンという。これから長い付き合いになるから挨拶しとくとよいかの」
ファルコモン、パルモン
その名前にもやっぱり心が覚えていた
けして聞き覚えのある名前ではないはずなのだけど
「うん、よろしくね。ファルコモン、パルモン」
――――私の挨拶に二匹のデジモンは笑顔で返してくれた気がした
こうして、私が二匹の警戒を解いた一方で、無視された形になってしまったブイモンは部屋の隅で拗ねていた
宥めるのが大変だったのは、ちょっとした余談
本日分の投下終了です
早く迷わずの森の探索をさせたいのですが、中々上手く書けないです………
>>32
ラスボスのチートプレイに焦りましたが、初期手札にハッキングが来たのはいい思い出です
【ジジモンの家】
ようやく宥めすかと、ブイモンは先程のが気に入ったのか膝の上に再び腰を下ろした
けど、機嫌は直っていない
その理由は私の頭の上に乗っかっているファルコモンのようだった
正直人より体力のない私にしてみればこの体勢はきついのだが………まあこうやってなついてくれるのは嬉しい
問題があるとすれば…………
「キュー!!」
「ピー!?」
ブイモンがファルコモンに威嚇しては、ファルコモンが私の肩にしがみついて背中に隠れてしまうことだった
その度にブイモンの小さな角を左手の指でつついて制止しているが、何度も繰り返してしまう
ブイモンとしては、私を独り占めしたいのかもしれないし、もしそうなら嬉しいけど、だからと言って喧嘩腰なのはどうかと思う
本当の喧嘩になる前に怒った方がいいかもしれないけど、果たしてこの子は言うことを聞くだろうか
ちなみに右手はパルモンの手を握っている
当初、この子は私の肩によじ登ろうとしていたが、流石にそれは私がバランスを崩して倒れかねないので慎んでご遠慮した
とはいえ、この子だけ仲間外れというのも可哀想なので、今の形に落ち着いた訳である
パルモンもファルコモンもまだ少しおっかなびっくりな点は変わらないけど、心を開いてくれてるのかな?
まあ、ブイモンがちょっと五月蝿いけど
「キュー!!」
「ピー!?」
この子達はもしかしてマヨネーズの宣伝でもしたいのだろうか?
私はブイモンの角を押さえて最終通告を渡した
「これ以上喧嘩するならブイモンここから降りてもらうよ?」
「キュー!キュー!!」
「嫌だったら、仲良くすること。出来る?」
「キュ~……」
納得できたブイモンに「よしよし」と頭を撫でてやる
全く不満がないという訳ではないようだが、言われてきちんと大人しくできるあたりはこの子もきっと「いい子」である
後、ジジモンさん、呑気に笑ってないで助けて欲しかったです
「じゃあ、次の質問なんですけど、まずここは何処なんでしょうか?」
ようやくの話の再開である
自分がどのような状況に置かれてるのか、早く把握したかった
「ここはファイル島。デジタルワールドに位置する島の一つじゃ」
「……………デジタル?ワールド?」
ワールドの意味は世界だとして、デジタルの意味がよく分からない
言葉自体は聞いたことはある
昨年まで散々地デジ化だとtvが叫んでいたし
代わりにアナログ放送終了とも宣伝してたし、少なくともアナログより新しい世界だということなのだろう
ただ、デジタルもアナログ言葉の意味は分からないのだけど
私がファルコモンを頭に乗せたことを忘れて首を捻ると、頭の上でファルコモンが慌てて体勢を立て直したのが気配で分かった
………ごめん、ファルコモン
「ミライはインターネットをやったことはあるかの?」
「………少しだけ、たまにですけど」
「そのインターネットの発展とともに出来上がったのがこの世界なのじゃ」
………えっと、意味が分からない
「つまり、ここはパソコンの中ということ?」
「…………少し違うの。いや、確かに最初はそうだったかもしれんが」
「え、えーと………?」
「お主達人間の住む現実と、人間が作り上げた0と1という仮想の空間………その狭間に独立した次元がこのデジタルワールドじゃ」
…………やっぱり、よく分からないや
「ワシとて、詳しい事を説明できるほどは知らん。ただ分かっておることは、この世界は人間の技術の進歩によって生み出され、広がっていく。そして人が滅べば、この世界も滅ぶということじゃ」
なんか、世界の始まりと終わりを聞かされるとちょっと怖いと感じるのは私だけだろうか?
自分の存在が曖昧になってしまうかのような浮遊感を感じてしまう
「…………じゃあ、さっき言ってたゲームの世界、というのは?」
「ゲームもお主達の作った仮想の空間が舞台じゃろう?特にワシらデジモンはゲームやアニメという形で現実世界に反映されることが多くての」
ああ、やっぱりアニメやってたんだ
「その、ジジモンさんがいう私達の世界からこの世界が影響を受けるだけじゃなくて、私達の世界にも影響を及ぼすんですか?」
「微力じゃがの。それにお主達にとってそれが良いことか悪いことかもワシらには分からん」
とにかく、この世界の成り立ちは分かったけど………「えーと、じゃあ私どうやって此処に来たんでしょうか?元いた世界に戻る方法はあるんですか?」
「………すまん、分からん」
何となくそんな気はしてたから、実際に聞いても、そんなにはがっかりしなかった
むしろ、常々遠くに行きたいと思ってた私としては、ほんの僅かだが、「嬉しい」とさえ感じてしまっていた
「じゃあ、デジモンって何なんですか?」
「簡単に言えばデータの塊じゃな」
「パソコンの文章や画像みたいな感じの?」
「それらを基にし生まれ、感情・知性といった自我を得て、自律活動をする情報生命体じゃ」
ごめんなさい私頭悪くて多分話の半分も呑み込めてません
私の反応を見てとって、ジジモンさんはこう付け加えた
「まあ、お主達の常識から外れた生き物と思ってくれればよい」
うん、それなら何となく理解できる
ただ、もう一つ今までの話を聞いて、新たに生まれた疑問があった
いや、不安というべきか
「あの、私は人間ですよね?この世界に来てデジモンになったー、なんてことはないですよね?」
「何故そんなことを?」
「ここに来る前、私トラックに跳ねられたんですよ。でも起きたら全く知らない場所だったし、怪我一つないし、もしかしたら生まれ変わっちゃったのかなーって」
この世界に来たことで、自分が自分でなくなるような感覚を朧気に感じていたのだ
そして、話を聞いてその感覚をはっきりて自覚した
自覚して恐怖を覚えた
「お主はデジモンではないよ。紛れもなく人間じゃ」
その言葉を聞いてホッとした
私は私だったのだ
でも、それは束の間だった
「………ただし恐らく改変がされとるじゃろうな」
その響きに重たいものを感じて安堵していた私は首を締め付けられような感覚を覚えた
不安が再び首をもたげた
そして、その不安は的中する
「一度お主の身体は情報に分解され、そこで何らかの手が加えられとる。人間が何もなしでこの世界で生きていける世界ではないからの」
自分の心臓の鼓動が遠い
「恐らくお主は物を食べたり寝たりすることは出来まい。そしてどのような環境でも、例え空気がなくても、極寒や灼熱の地獄でもお主は生きていけるじゃろう」
「は、はぁ。それは便利ですねー…………」
私の顔はきっと見るに耐えない顔になっているに違いない
自分が自分でなくなったということに私は強く動揺した
何処でも動き回れる健康な身体はずっと欲しかったけど、こんな身体になるとは夢にも思ってなかった
私は笑いながら泣いているのを自覚した
「だ、誰なんですかね?そん、なことしたの。一言お礼が言いたい、のですけど」
そう精一杯強がって見せた質問にジジモンさんは首を横に振った
知らないのか
本当は泣き喚きたかったのだけれど、なんとなくそれは憚られた
ただ、これ以上何か喋ると自分が崩れそうだった気がしたので、私は黙りこんだ
黙りこくった私の気持ちを汲み取ってくれたジジモンさんも、私の気持ちが落ち着くまで待っててくれた
触れている場所から、ブイモンもファルコモンもパルモンも私を気遣ってくれるのが分かった
「さて、人間であるお主に実は頼みたいことがある」
私の気持ちが落ち着いたのを見計らって、ジジモンさんが口を開いた
長い沈黙が開けて、重い空気は晴れなかったが、私の興味は「頼みたい」と言われたことに移った
「まずその前にデジモンの生態について説明せねばなるまい」
ジジモンさんはそういうと、咳払いをして説明を始めた
デジモンというのは成長を重ねると、それまでに重ねた経験と能力を反映して別の姿に進化する事
ただし、必ずしも自分の求める姿に進化するとは限らない事
そして、進化することによって自分の適応する環境が変わってしまう場合がある事
進化の順は例外があるものの、デジタマと呼ばれる卵から孵化し幼年期、成長期、成熟期、完全体、究極体といった順に進化していくこと
完全体・究極体に進化するデジモンはそう多くはないこと
それらの説明が一段落すると、ジジモンさんは咳払いをして説明を続けた
「ところがじゃ、そこのブイモン、パルモン、ファルコモンはもう進化してても可笑しくない時期じゃというのに、進化せんのじゃよ」
膝の上のブイモンは恥ずかしそうに頭を掻き、左手のパルモン項垂れて顔を下に向けた
ファルコモンに至ってはブイモンに睨まれた訳でもないのに私の背中に身体を隠してしまった
………それ、何の意味あるんだろう?
「しかも、成長期になれば、当然話せる言語を口にできんときた」
ああ、そういえば、さっきからこの子達マヨネーズの宣伝しかしてなかったっけ
「前例から考えられることは自力で成熟期以上に進化できないデジモンなんじゃろうな」
自力で進化できない………つまり他人が力を貸せば進化できる?
で、「頼み事がしたい」の流れからして
「えーと、つまり私がこの子達を進化させろ、ということですか?」
「単刀直入に言うとそうなるの」
いやいや、私デジモンの進化のさせ方なんて分からないし
「というか、自力が無理ならジジモンさんが進化させればいいんじゃないんですか?」
「ふむ、言葉が足りんかったか、言い方を間違えたか―――正確に言えばそこのデジモン達は人間の力を借りてようやく進化することができる」
私は「?」マークを頭の上に乗せながら、ジジモンさんの説明に耳を傾けた
「理由は分からんが、たまにおるんじゃよ。人間に会うまで時を止めてしまうデジモンが」
「ああ、さっき言ってた前例ですか」
「うむ」と頷くジジモンさんに私は考え込んでしまう
ブイモンやパルモンの期待のこもった視線に応えてやりたいけど、私ペットすら飼ったことないんだけど………
そんな私の葛藤を見て、ジジモンさんは更に言い募る
「何、難しく考える事はない。側にいて餌をやったりすればいいだけじゃ」
「いくら何でもそれだけってことはないんじゃ………」
「それに、ミライもそこのデジモン達も、もう既にパートナーとして認めてるのではないのか」
反論しかけた私を遮って伝えられた言葉に私は何だか納得してしまった
確かにブイモンに最初に助けられた時、生まれた時から一緒にいたような親近感を感じた
パルモンやファルコモンを初めて見た時、この子達と仲良くなりたいと思った
―――これがパートナーとして認め合うということなのだろうか?
そう思ったら胸の奥から込み上げてくるものがあった
だとしたら――――
「…………上手くやれるか分かりませんよ?」
「キューーッ!!」
「ピィーーーッ!!」
「ファーーーーッ!!」
ジジモンさんの答えを待たずしてデジモン達が喜びの声を上げて跳び跳ね始めた
ああ、今の言葉の裏で「この子達となら」と考えてた事がしっかりバレてたんだ―――なんか嬉しいな
まあ、この喜びよう見ると、「パートナー」という言葉がなくとも、ずっと訴えていた期待の視線に勝てなかったかもしれないな、なんてちょっと思ったりもした
話が唐突に纏まって、ジジモンさんは声を上げた
「ふむ、ミライ。お主、デジヴァイスはまだ持っておるな?」
アグモンとの戦いの時、いつの間にか手に握ってたあの携帯電話みたいなあの機械か
私はずっとしまっていたワンピースのポケットから左手で引っ張り出してみた
「これですか?」
「そのデジヴァイスは人間とデジモンを繋ぐ為のツールじゃ。恐らくデジタルワールドに来た後にお主の手に渡るようプログラムされておったのじゃろう」
重要なものなんだね、これ
私はぎゅっとデジヴァイスを握り締める
「くれぐれもなくさぬようにな」
「はい、大事にします」
ジジモンさんは髭と白髪だけの顔で微笑んだ気がした「うむ、今日はこの町と【迷わずの森】を歩き回るといいじゃろう」
アドバイスをしっかり聞いて、私はブイモン達を連れて玄関に向かう
その途中、ふとお母さんが親戚の子を預かった時の事を思い出した
「あの、つかぬ事をお聞きしますが」
「何じゃ?」
「この子達の親とかって会えますか?」
デジモンとはいえ、大事なお子さんを預かるのだ
きちんと挨拶しておくのが礼儀なんだろう
しかし、ジジモンさんの返事は予想もしてない方向だった
「デジモンは子を産めんのじゃよ。じゃから、親はおらん」
「え?」
唐突に放たれた言葉に私はドキッとして立ち止まる
「まあ、その内時間が経てば自ずと理解するじゃろうて」
―――私がデジモンの誕生と死別が表裏一体だということを知るのは当分先の話になる
本日の投下終了です
デジモンワールドの主人公ってマサルダイモンとは別ベクトルで人間辞めてるので独自解釈というか、設定付けしておきました
【はじまりの町 ショップ】
「ごめんくださーい」
私がその店のドアを開くと出迎えたのは大量のtvだった
最近見かける薄型液晶tvではなく、おばあちゃん家で見た古いtvだった
綺麗な立方体で色は緑色
確かブラウン型って言うんだっけ?
で、そのブラウン型のテレビの下には身体があって、手足が生えてて―――身体?手足?
「あ、どもです」
私に振り向いて喋ったのは何も映さない緑色のtv画面だった
私の後ろについてきたブイモン達は固まっちゃてるし………
「………着ぐるみとかじゃないよね」
「着ぐるみとは失礼な!?まあ、着ぐるみ着たデジモンもいますけれども!!」
そんな子もいるんだ、と私が感心してると、案の定私の後ろの子達は騒ぎ始めた
まず、パルモンとファルコモンはtvの声に驚いたのか泣き叫びながら、私の周りをグルグルと走り始め
ブイモンはtvが喋るのが面白いのか、チョンチョンと彼の身体をつついている
「貴方達も、デジモンでしょうが!?何を驚いたりしてるのですか!?あ、そこ、やめて、くすぐったい、キャハ、ハハッ!!」
tvのデジモンの第一印象―――忙しい人(?)
さて、面倒を見ると決めた以上、私がきちんとしなきゃいけない訳です
「パルモン、ファルコモン落ち着きなさい。店の中で暴れるとケガするよ?」
まず、走り回ってる子達を制止
「ケガする」という単語にすくみ上がったのか、意外とすんなり止まってくれた
まあ、その代わり私の影にビクビクとしながら隠れたけど
「ブイモンもやめなさい。その子、苦しそうだよ?」
次、ブイモン
しかし、これがすんなり行かない
行為自体はやめてくれたもののtvから離れず、こちらを見てくる
ああ、この目はおねだりしてる目だ、まだ続けたいんだな
tvの子はまだ続きそうな気配に気付いて怯えた様子を見せている
「ブイモン、もどりなさい」
私がちょっと強めに言うとようやく、ブイモンは渋々と言った具合にこちらに戻ってくる
うーん、悪い子じゃないけど、ちょっと我が儘?
幼年期、成長期と進化していくと言ってから、まだ子供なのかもしれないけど
私はブイモンの頭を軽く撫でてから、tvの子に向き直って頭を下げた
「ブイモンが変なことしちゃってごめんなさい。私も変なこと言っちゃってすいませんでした」
「全くなのです!大体あなた、アグモンの時も失礼を言ったのでしょう!?学習能力がないのですか!」
う、返す言葉もない…………
「ゴメンナサイ」
思わず縮こまった私に、怒りも収まったのか目の前のtvは「ふん」と言って胸を張った
少し可愛いかもしれない
あれ?そういえば、さっき「アグモン」って………
「私のこと知ってるんだ?」
「ジジモンから、アグモンへの失態は聞いていますよー?」
ああ、この子本当に忙しいな
この子に表情があったなら、今絶対ニヤニヤと笑われてる
「小さな町ですから、些細な情報でもすぐに伝わりますよ?あ、自己紹介してませんでした。私達モニタモンと言います」
そう言って胸を当てて自己紹介するモニタモン
「私は和田ミライ、よろしく」
「はい、それでは先ほどの無礼の代わりに頭を撫でるのを要求するのです!!」
勢いよく放たれたモニタモンの台詞に私は思わず苦笑してしまった
そういえば、「人間に撫でられるのは気持ちいい」ってアグモン言ってたっけ?
しかし、デジモンとはいえ、tvの頭撫でるなんてなんか変な感じだな
逆にお婆ちゃんがバンバンとtv叩いてるのは何度も見たことあるけど………あれは、怖かったな
そんなことを思い出しながら撫でてたせいかモニタモンが怒ってきた
「そこ!もっと、愛を込めてください!」
そう怒りながら、モニタモンは懐からいくつかの正方形を取り出す
アグモンとの戦いの時にもらった回復フロッピーだろうか?
ちょっと色が違うものもあるけど
後、飛行機や小さな和式トイレを象ったキーホルダーみたいなものもある
「ジジモンから代金は戴いているのです。なんでもこの世界に来たご祝儀だとか」
「…………至れり尽くせりでなんか悪いなぁ」
「町の外にはガラの悪いデジモンもいますから、フロッピーやオートパイロットはもらっておいた方がいいですよ?まあ、携帯トイレはサービスなのです」
正方形のものはフロッピーというのか、と回復フロッピーの前例から判断した
トイレのキーホルダーは携帯トイレだとして………オートパイロットはあの飛行機かな?
しかし、やっぱり来た早々にこんなにもらうのは………お年玉じゃないんだし
「ジジモンはミライに厄介を押し付けたのです。ミライは躊躇わずにこれを貰う権利があるのです」
「そうなのかな?」
「それに、ミライは引き受けた以上、後ろの子達を安全に育てる義務があるのです。だとしたら、これらは絶対に必要になります」
そう言われると、確かにそうなのかもしれない
少なくとも私はこのデジタルワールドの常識を全く知らない訳だし、素直にアドバイスを聞いた方がいい気がする訳だけど
「安心してください。次から適正価格からお売りするのですよ?」
「………うん、じゃあ戴くね」
モニタモンの説得に負け、撫でながら片方の手で受け取る
と、大半のものは光を放ちカードの体勢になるが、トイレのキーホルダーだけカードにならなかった
「なるほど、ミライが受け取ると、フロッピーはカードになるのですね」
「どういうこと?」
何やら納得してるモニタモンだが、私にはさっぱり分からない
私としては全部カードになるものだと身構えていたのだけど
「恐らくですが、フロッピーなどといったものはカードの方が都合がいいんでしょう」
「都合?」
「恐らくですがデジヴァイスの都合です。多分ですがデジコードにして保存しまうと、デジヴァイスを対象にフロッピーやプラグインが誤作動してしまうんじゃないですかね?」
ん?また、私の知らない単語が出てきたぞ?
「それかデジコードにしてしまうと戦闘中に使用できなくなるのか…………」
「あの」
「なんですか?」
推察を続けるモニタモンを遮り、思いきって質問してみた
「その、デジコードってなに?」
「ふむ、人間というのは全く無知なのですね?」
うう………頭の出来はいい方じゃないとはいえ、この返答はちょっと堪えるんですが
「貴方達は出来ないんですよね?」
モニタモンはブイモン達に問い掛けるが、三匹とも申し訳なさそうに首を縦に振る
「となると、貴女の持つデジヴァイスにスキャン機能があるはずです。恐らくこの世界に来る時に使い方はインプットされてるはずですよ?」
インプットって嫌な言われ方だな………まるで、生き物じゃなくなったみたい
そう思いつつ私はモニタモンを撫でるのをやめて、デジヴァイスをポケットから取り出した
モニタモンがちょっと寂しそうにしてるけど、無視して使い方を考える
―――デジコード、スキャン
それらの言葉を頭の内に並べると、無意識の内に私はデジヴァイスの背のレンズを和式トイレに向けて呟いていた
「携帯トイレ、デジコードスキャン」
次の時には、携帯トイレ青と僅かながらの紫の光に変化しデジヴァイスのレンズに吸い込まれていく
全部吸い込まれて、唖然として、そして放った私の第一声が―――
「光るバーコード?」
「デジコードですよ!?」
訂正するモニタモンに、今日三度「忙しい人」という感想を持つ私
「私達デジモンは見つけたエサや宝物などは、今みたいに一時的にデジコードという形に分解して自分の体内に保存するのですよ」
私はデジモンじゃないから、代わりにデジヴァイスが保存したんだ?
「分解って………元に戻せるの?」
「はい、みんな餌を食べる時などは、自分の体内に保存したデジコードを再構築してから食べてますし」
なんとも忙しい話だけど、自分の体内に保存するなら、盗まれたりなくしたりする心配はないのかな?
そういえば、今「エサ」って――――
思い至った疑問をすぐさま尋ねる
「何個も質問して悪いんだけど、この子達の食事どうすればいいかな?」
「私を忙しくしてるのは、貴女なんじゃないかと、私は愚考いたします?」
………あれ?さっきから私の心の中読まれてた?
返ってきた答えに私の背中に冷や汗が伝う
「モニタモン、なんで――――」
「そうですねー、エサに関しては私などよりも、町の北側で働いているバリスタモンに聞いた方がよいかと」
有無言わせぬモニタモンの喋り方に私は動揺が隠せない
今の私は完全に表情を凍りつかせているに違いない
モニタモンはそんな私に、感情のないその顔でニヤリと微笑んだ気がした
「さてと、そろそろ私は仕入れで外に出掛けなければなりませぬ。丁度、本格的に忙しくなる時間なので………」
そろそろ帰れ、と言うことだろう
私の心の中分かったネタ教えてくれないんだ、と少しガッカリする
「今後も是非ご贔屓にお願いしますねー。また撫でてくれるなら、お安くしますよー?」
ニヤニヤとした口調に私も笑みを取り戻してこう言い残した
「それはやめとく。さっきからこの子達の嫉妬の視線凄かったし」
「キュ!?」
「ファ!!」
あれだけ、ジトーとした視線くれれば、いくらなんでも気付くよ、なんて笑いながら私はショップを後にした
【はじまりの町 肉畑】
「肉?畑?」
目の前に広がる光景に私は愕然とした
骨のついた肉が大地に刺さっていた
いや、「肉畑」なんて書いてある看板があるから、肉が畑に植えられているんだろうけど
いくら、この世界が常識外れと言っても、肉が畑で出来るってのは想像しなかった
というか、出来ないでしょ、こんなの
ブイモン達は驚かないみたいだから、この世界では常識なのかもしれないけど
「あ、今日来たっていう人間ダナ?オイラ、バリスタモンっていうンだ。よろしくナ」
愕然としているところにカブトムシ?みたいなデジモンがやってきた
いや、ロボットだろうか?
区別のしようがなかったけど、聞くとまた失礼になりそうだったのでやめておく
妙な訛りが気になったが、ちょっとした愛嬌になっている気もする
「モニタモンからこの場所を聞かされて来たの。和田ミライといいます、よろしく」
代わりに型通りの自己紹介をして、頭を下げた
「おう、よろしくナ」
「この子達のエサの事ならここに来た方がいいって言われたんだけど」
そう言うと、バリスタモンはジロジロと私の方を見回す
ちなみに私の右手はブイモンに掴まれ、頭の上にはファルコモンが乗り、私の背中にはパルモンが裾を握って後ろに隠れていた
「おー、そう言えバ、ジジモンがお前に肉を支給しろって言ってたっケ?」
「大豆じゃなくて?」
「なンだ、それ?肉は肉ダゾ?」
前に大豆は畑のお肉なんだと聞いたことがあったので、質問したがやんわりと否定されてしまった
それにしても、忙しい性格のモニタモンと比べて、この子は何ともノンビリした性格だと思う
身長は私と同じくらいだし、他の子よりも身長が大きい分、ノンビリしてるのかな?
「性格と身体の大きサは関係ないゾ?」
「…………私って感情顔に出てる?」
「サテ、どうだろうナ?」
さっきのモニタモンといい、凄く気になるのだけど
うう………これ以上あんまり失礼なこと考えない方がいいかも
「ところで、バリスタモン支給って………ただでくれるの?」
「オウ。町ノ幼年期にだけタダで配ってるンだ。オ前らにハ、特別でくれてやるヨ」
特別扱いか、本当に至れり尽くせりで困惑してしまう
「いいの?」
「仕方ナイ。お前人間。俺達デジモン」
短いバリスタモンの言葉になんとなく納得するものがあった
多分前提が違う、と言いたいのだと思う
「本当ハ幼年期以外に配っちャいけないンだけど………お前、島のルール聞イタか?」
「ううん、多分まだ」
私が首を横に振ると、バリスタモンは指で顎をさすって説明を始めた
曰く、幼年期は一人でエサを取る力もなく、また他のデジモンに害される恐れがあること
その為、成長期に進化するまでは町がその身の安全を保護して守ること
成長期には進化してからはそれぞれ島の中でも自分の適した環境で育ち進化していくこと
「ふーん、そのルールは分かるけど、この子達は成長期だよ?もらっていいの?」
「うーン。本当は駄目なんだケど、お前のパートナー三体トモ同じ種類って訳じャないだろ?」
「うん、見ての通りだけど」
鳥に花、後よく分からないけどブイモンは竜ってことになるらしい
このドラえもんカラーの子が竜なんて言われてもしっくり来ないなぁ
「じゃア、縄張りなんテ選べないダろ?ダッタラ、仕方ないンじャないカ?」
「3匹とも好きな場所が違うってこと?」
「好きナ環境が違うと、そいつら全員が満足する縄張りヲ作るノも、大変だロう?」
「でも、ここ島なんだよね?そんなに環境って違うものなの?」
どれほど大きな島か知らないけど環境が激変するとは思えないのだけど…………
「んー、町の南にまず【迷わずの森】だロ?」
ああ、私が最初に来たところかな?
「森の西には【トロピカルジャングル】ダろ」
ジャングル?ジャングルって言うような植物あったっけ?
私のジャングルのイメージが片寄ってるのかな?
「そのまた南西に【ダイノ古代境】、北西に行くト【グレートキャニオン】」
「どんな所なの、そこって?」
「古代境は時間の流れが独特な場所ダナー。グレートキャニオンは荒野?渓谷?ッテいうのかナー」
時間の流れが独特の意味が分からないけど、同じ西なのになんか大分摩訶不思議な差があるように感じる
しかし、驚愕はここからだった
「グレートキャニオンを北上スると【フリーズランド】」
「フリーズ?」
「オオ、ずっと寒イ雪国だゾ」
…………うん、既に此処は島じゃない
「バリスタモン、ありがとう。私が間違ってた」
「ミライは頭イイな」
誉められて嬉しいというより、どんな島なんだろうという冷や汗の方が強かったり
「デ、肉だったナ」
「あ、うん」
「うーん、3体だしこんなもんカナ?」
何やら計算したのか、バリスタモンは青い光………多分デジコードを使って大量の骨付き肉を用意した
って、多すぎる気が………ひぃ、ふぅ、みぃ………
「15個って多くない?」
「うんニャ、多分足りナいと思うゾ?」
へ?足りない?いや、これだけあれば…………
「最低限って事で一匹一日5つずつで計算したケド、本当ハもう二個欲しい所ダナ」
さりげなくヨダレ垂らしながら肉に突っ込もうとしたブイモンの耳を掴んで制止しつつ、バリスタモンの言葉を聞く
「これ以上あげると、他の幼年期にアゲるのが大変になルから、増やすのは難シイな。ゴメン」
「ああ、うん、仕方ないよね…………」
とはいえ、これだけあって、まだエサが足りないとは………
「ソウダ、困ってルなら、迷わずの森行ッてみると良いゾ」
「迷わずの森?」
「迷わずの森にはデジタケっていうキノコが沢山落ちテるカラな」
…………早速次の予定が決まりました
ジジモンさんの「簡単だ」とかいう台詞を思い出し「騙されたかも」と恨みながらも私はそっと溜め息をついた
これにて投下終了
ちょっと改行変えてみました
迷わずの森に行く予定が挨拶回りで終わっちゃうのは自分としても予想外でした
【1年1日 迷わずの森】
「デジタケ デジコードスキャン」
私がブイモン達を引き連れてデジタケ狩り?を始めてから大体一時間
迷わずの森は開けた部分が多くて、木の根っこや石にぶつからなくて済むのはほっと安心した
更に「迷わず」というだけあって、大体私でも簡単に覚えられほど道は単純で、大体の道のりは覚えてしまった
単純な道のりなせいか、道中で何匹か他のデジモンにも会った
が、基本的に臆病なのか隠れてしまったり、無関心なのかそのまますれ違ったりと接触がないのが少し残念な気がする
もっとも、先程のアグモンのように怒らせてしまったりすることがないだけマシなのかもしれないけど
デジタケの収穫自体は順調でもう今のでもう七個め
バリスタモンの言う通り手に入れるのに、苦労しなかいのは嬉しい
ただ、デジタケが地面に生えてるのではなく、ポツンとそこらへんに置いてあるのが凄く不気味だった
「スーパーじゃないんだから……」とボソリと呟いたのはつい先程のこと
いくら、私が箱入りだからって、魚の切り身が海を泳いでる訳じゃないことも、牧場でステーキやハンバーグをそのまま育ててる訳じゃないことくらいは理解している
つまり、何が言いたいかというと――――この森は物凄く不自然だった
まあ、肉が畑にあるくらいだから、これくらいはこの世界の常識なんだと思う他ないけど
あ、8個目見つけた
「これ、食べられるよねぇ?」
さりげなく確認した私の質問に、パルモンは頷き、ファルコモンは首を傾げ、ブイモンは手を伸ばしておねだりのポーズを見せていた
「ブイモン、お腹空いてるの?」
フルフルと首を横に振るあたり、単に食欲がありあまってるだけだろう
「じゃあ、ダメ。ちゃんと規則正しく食べないとダメだよ」
と、教えてみるものの、そもそもデジモンがどういう食生活がベストなのか、分からないので、なんとも言えないのだが
きちんとジジモンさんに聞いてみればよかったかも、と少し後悔する
と、また、9個目確保
順調に行きすぎてて何か見落としてないか、怖い気がするけど………
そうこうしている手の中にあったデジヴァイスが、ピッと鳴って信号を発している事に私は気付かなかった
「………なんだろ?神様でもいるのかな?」
私が迷わずの森の奥に進むと、小さな鳥居と、白い紙で飾り付けた縄で縛った岩があった
その岩の横には、デジモンの文字で書かれたのか読めない紙が張られた立て札が立っていた
なんて書いてあるんだろ?―――そう思った瞬間に頭の中で「翻訳システム更新中」という電子音声が聞こえた気がした
本当に改造されてるんだなー、と感じ入る
納得も理解も全然足りないが、それでも自覚だけは増すばかりだった
浅く溜め息をつきながら、その翻訳プログラムとやらを信じ立て札の文字を追う
「黄金の奇跡纏いし聖騎士ここに眠る。邪悪なる者現れし時、眠りから目覚め、この地を守護す………?」
和風な見た目と違い、書かれた聖騎士という単語はえらく洋風な感じを受ける
何かこの島に曰くのある人のお墓なんだろうな、と思って手を合わせる
手を叩いた方がいいのかな、と疑問もあったけど、元々礼儀も作法も分からないし、本当にお墓なら静かな方がいいだろう
私だけが手を合わせるのも失礼かと思って、ブイモン達にもそうさせようかと思い、振り返った所で
「ちょ、ちょっとどうしたの!?ファルコモン!!」
ファルコモンが苦しそうにお腹を抱えてうずくまっていた
何か、私の見てないところで、悪いものでも食べたのだろうか
私が問い掛けても、返事をせずに首を横に振るだけ
どうしたら、いいのだろう?
この鳴き声を私は理解できないのだ
動揺して、視線を左右に揺らす私の手元でデジヴァイスが「ビーッ!!」と一際激しい音を鳴らした
画面を見ると画面の一部が真っ赤に点滅し、その点滅部分にはファルコモンという文字が書かれていた
ポカーンとした私の脳内に「チュートリアルモード起動」という先程と同じ高さの電子音声が流れた
一気に頭の中で情報が氾濫する
あまりにも短い時間、恐らく一秒にも満たない時間だろう
そのあっという間に流れた情報を私は頭を痛くしながらも、与えられた知識を整理する
この子達は言葉を喋れない
故にデジヴァイスがこの子達の声を代弁する
主に「トイレ」「空腹」「睡眠」「疲労」などの状態を伝えたい場合は黄色く画面が発光し、私に伝える
「ケガ」や「病気」などになった時は赤く発光し危険を伝える
デジヴァイスとは私とデジモンを繋ぐ機械―――ジジモンさんがそう言ったように、今このデジヴァイスは私を繋いでいるのだ
例え黄色い発光で私に何かを告げている時でも、私がその声に耳を貸さず放置していた場合、赤く光るらしい
「え、えっと、そもそもデジモンも病気になるの?」
動揺してたのか思わずファルコモンに尋ねてしまったが、その言葉に帰ってきたのは頭の中の電子音声だった
変わらず一瞬で情報を手渡されるため、整理に戸惑う
とはいえ、大体は分かった
ケガは激しい戦闘の後、病気は長期に渡って苦手な場所や空腹や疲労を無視すると発生するらしい
とはいえ、戦ったのはさっきのアグモンと戦ったブイモンくらいで、そのブイモン自体ピンピンしてる
この森だって、さっきまで機嫌良さそうにしてたし、ファルコモンにとって苦手な場所とも思えなかった
腹を空かせた様子もなければ疲れた様子もない
つまり、つまり、私がこの子からのサインを見逃しているということなのだろうけど………
眠そうにしてる訳でもない
となると―――
「………もしかしてトイレ?」
ファルコモンは苦しそうに、しかし、ゆっくり無言で頷いた
「えーと、トイレってどうすればいいの?」
今度は頭の中の電子音声に尋ねる
端から見れば一人言だ
パルモンやブイモンが「何してるのー?」「シッ、見ちゃいけません」みたいな視線を送ってくるが無視だ、無視
『トイレに連れていかなければ野グソしてしまいます』
帰ってきた答えは意外と簡潔なものだった
そして、野グソという単語にちょっと戸惑う
何となく女の子として、口にしちゃいけないような気が………
「うーん、美観に悪そうだねー」
などと呑気に愚痴ったけど、内心焦ってます
えーと、トイレって確か森の真ん中辺りだったから、今からじゃ間に合うかどうか…………
というか、野g………じゃなかった、外でしちゃ駄目なの?
この子達、特にファルコモンなんかは動物にしか見えないし、外で致してもおかしくない気がするのだけど
『野グソは育成ミスとして数えられ、進化に影響を及ぼします』
「っ………」
心の声にまで答えてくれるのは嬉しいけど、相変わらず電子音声の流れる速度は早すぎて、頭痛を感じる
ただ、育成ミスという響きに良くない印象は受けた
となると、やっぱり連れていってあげた方がいいかも
「ファルコモン走れる?」
「ピ~……」
「よし、いくよっ」
頷いたのを見て、私は駆け出す
だが、4歩前に進んだところで―――――
「きゃっ!」
私はコケてしまった
「へ?え?」
目が点になる
「改変されとる」というジジモンさんの言葉に、無意識の内に、ただ何となく当然のように、私の出来損ないの運動神経まで改善されてる
そう勘違いしてたのだけど、実際は何も改善されてなくて
折角遠いところに来たのに、と悔しくなる
思えば私が松葉杖を一切手放さなかったのは、自分の身体が何も変わってないことに本能で直感してたからかもしれない
いや、今はそんなことよりファルコモンだ
私が振り返ると、ファルコモンは冷たいような呆れたような視線で私を見ていた
「ピィ」
私から「走ろう」等と言ったにも関わらず、いきなりコケたのだから、まあ責めたくなる気持ちも分かるけど…………うぅ………
支援
しかし、そうも嘆いてばかりはいられない
ファルコモンの様子を見ると、崩壊はすぐそこまで来ているようだった
トイレに連れていけないにしても、お墓(?)の前でやるのもどうかと思うし………
かといって私は走れないし
何か、何かないのか
いや、もしかしたら、そんなに気にすることないのかもしれないけど
でも、やっぱり森の美観に悪そうだし…………
そう考えて、靄が晴れたように唐突に思い出す
はじまりの町の事を
「あ、あ、あったー!!」
「キュッ!?」
「ファッ!?」
驚いて思わず、と言った具合に飛び上がった他の二匹を尻目に、私はデジヴァイスを操作する
「アイテム」「ステータス」「スキル」などといったコマンドが展開され、私は「アイテム」のコマンドを選択する
同時に再び画面が展開され、今まで手に入れた僅かな品々とその数が表示される
私は躊躇なく肉の上にあったアイテムを選択した
「えっと、デシコードリリース!?」
自分の頭の中に浮かんだ言葉に確信が持てず疑問形で叫んでしまったけど、デジヴァイスはしっかり反応してくれた
青と紫の光――――デシコードが展開され、私の掌で卵の形を作る
やがて光が解けて、現れたのは小さな和式トイレのキーホルダー、モニタモンから貰った携帯トイレだった
携帯トイレというからには、きっとこの状況を打破できるはず!
そう勢いこんでみたはいいものの、どう使うか分からない
大きくなってトイレになるかと思って、ポンと地面に置いてみた
けど、やっぱり何も起きない
いくら、この世界が常識から離れてるからって都合よくsfやファンタジーみたいな事は起きないか、と冷静になる
じゃあ、どう使えばいいんだろう?
再び手に取って調べようと、腕を伸ばしたところで、ファルコモンがそれをヒョイと指先で持ち上げて
嘴の中に入れてしまった
「ちょっ、ダメ!ファルコモン、それどう見ても餌じゃないよっ、何考えてるの!?早く吐き出してってば!!」
「ピィッ!?ピーッピーッ!!」
急いでファルコモンの肩を揺さぶって吐き出させようとするが、中々吐き出さない
更に勢いを増して揺さぶる
「早く吐き出しなさい!!気持ち悪くなっても知らないから………って、あれ?」
手に持ってたデジヴァイスの画面が目に入り、赤くなってた部分は青くなっていた
…………もしかして、携帯トイレってそういう使い方?
でも、流石に食べて使うとは思わなかったよ…………
「なんだ~、そういう使い方だったんだー、もう早く言ってよー、焦っちゃったじゃん」
目を回してるファルコモンに誤魔化すように言う
頭を撫でて、ご機嫌を伺うのも忘れない
と、その横でデジヴァイスが再び光った
今度は何?と画面に目をやると、黄色く光った部分にブイモンの名前が表示されていた
ほぼ確信を持って、尋ねる
「ブイモン、お腹空いたの?」
「キュッ!!」
胸を張って答えたブイモンに苦笑しつつ、私はデジヴァイスを操作してアイテムの画面を呼び出した
とりあえず今回の投稿は終了です
文章力ないんだから、せめて筆の速度くらいは早くしたいものですが
>>80様、支援ありがとうございました
進化が楽しみだ
間が空きましたが投下します
【チュートリアル;戦闘】
―格闘―
そのデジモン固有の身体特徴を活かした攻撃方法です
基本的に相手に与えるダメージはデジモンの持つ攻撃力と体重によって決まります
また、格闘戦における防御や機敏性は年齢や戦闘回数などにも影響されてきます
―必殺技―
そのデジモンの本来の攻撃手段で、デジソウルを溜めることによって使用が可能になります
デジソウルは、デジモンが格闘攻撃によって相手のデジモンにダメージを与えることによって溜まります
また、相手からの攻撃を受ける事によっても溜まります
一度必殺技を使用すると溜まったデジソウルは全て消費されます
また一部、デジソウルを消費することで戦闘中に姿を変えるデジモンもいます
―スキルプログラム―
デジモンに効率的にダメージを与えるための第三の戦闘手段です
mpと呼ばれるステータスを消費することで発動されます
スキルプログラムには、それぞれ、炎・氷・風・雷・土・水・木・鋼・光・闇の性質が備わり、ワクチン・データ・ウィルスという属性とはまた別にデジモンの弱点を突く事が出来ます
スキルプログラムは戦闘前に編集することができ、○・△・×という三つのスロットにセットすることが可能です
○にセットされた場合、発動速度や攻撃範囲などの性能が強化されます
△・×にセットされた場合はスキルプログラム毎にに設定された以下の効果を使用できます
―△効果
牽制……相手のターゲット目標を変更する
妨害……相手のデジソウルを若干減らす
自爆……mp消費がなくなる代わりに自分もダメージを受ける
吸収……相手にダメージを与えたときhpを回復する
カウンター……選択したターゲットからの攻撃を跳ね返す
トラップ……場所を指定して発動することで、その場所に移動したデジモンに対して自動で発動する
フェイント……属性・性質に対する弱点と耐性を入れ換えて、ダメージを与える
―×効果
相手にランダムの確率で以下の状態異常を与える効果です
※ただし、状態異常はターゲットに選択されたデジモンしか与えられません
毒……一定時間僅かなダメージを受け続けます
麻痺……一定時間行動不能になります
退化……一定時間進化前の姿になる
混乱……一定時間スキルプログラムの敵味方の識別がなくなり、デタラメな行動を取ります
封印……一定時間スキルプログラムは使用不可能になります
スロウ……一定時間、格闘や移動などで動きにくくなります
スキルプログラムは敵のスキルプログラムを学習するか、トレーニングで習得可能です
また、一度覚えたスキルプログラムは進化後も引き続き使用可能です
スキルプログラムはデジヴァイスの操作によって確認及びセットできます
【1年1日 迷わずの森】
勝手に説明を始めた電子音声と赤い爆発の光に私は顔をしかた
爆発を引き起こしたのは「ゴブリモン」と名乗った緑色の小鬼だった
「ちょっ………大丈夫なの、ブイモン!?」
爆発に吹き飛ばされたブイモンに私は冷や汗をかく
ブイモンに駆け寄ると、ブイモンは私を押し退けて立ち上がった
ゴブリモンの攻撃がブイモンの闘志に火をつけたのか、単純に怒らせたのか
少なくともブイモンの瞳はゴブリモンに対する敵意に満ちていた
逸るブイモンを押さえながら私は吠える
「いきなり何するの!?」
「うっせぇ!やられたくなかったら、とっと持ってる物全部渡しやがれ!!」
発端は一通り森の中を散策し終わった夕方前のことだった
突如現れた小鬼のような緑色の子は現れるや否やいきなり私達に敵意を向けてきた
どうにも縄張りというものがあるらしく、私がその縄張りでデジタケを回収したのが「縄張りを荒らした」と文句を言われたのだ
それだけならまだしも、縄張りを勝手に荒らしたのだから、持ってるアイテムとお金を全て寄越せと求めてきた
つまり、カツアゲである
喧嘩なんてゴメンだし、正直なところ、そのまま脅迫に負けて手渡すのも考えた
けれど、私の持ってるのはブイモン・ファルコモン・パルモン3匹のデジモンの餌である
おいそれと簡単に手渡す訳にはいかない
そう僅かに決断を躊躇した瞬間にいきなりゴブリモンが攻撃を仕掛けてきたのだ
パルモンとファルコモンが怯えて私の背中に隠れ、私は先程の電子音声が戦闘について頭の中で流れるのをそのまま聞いた
―――そして、今に至る
ファルコモン・パルモンとは対照的に、ブイモンだけはすっかり臨戦態勢に入っている
けど、私はまだ決断を躊躇していた
理不尽な要求を呑むのも癪に触るけど、このまま喧嘩してブイモンが大ケガを負うなんてなったら、目も当てられない
私の運動神経や体力じゃ逃げるという選択もない
だけど迷ってる暇なんて私にはないみたいだった
「ハッ、痛い目見るか」
ゴブリモンが嘲笑って構える
「それとも言うこと聞くか」
ブイモンが私を突き飛ばして構える
「とっと決めやがれ!」
ゴブリモンは叫ぶとともに、赤い岩か粘土のような球体をブイモンに投げつけていた
恐らくは電子音声でも語っていたスキルプログラムという奴だろう
ブイモンは左に飛ぶが、球体が地面に落下したの際の爆風によって吹き飛ばされる
と、同時にノイズが走るのを見て、急いで私はカード化した回復フロッピーをデジヴァイスに滑らせ読み込んだ
ブイモンを吹き飛ばしたゴブリモンの表情は得意気だった
その表情をみて私は悟る
今、この場所は弱肉強食の世界だ
それが全てじゃないかもしれない
でも、今あるこの状況は弱肉強食以外の何者でもない
何よりこの食糧は大切なブイモン達の餌だ
あの子にあげる道理などない
―――覚悟を決めるしかない
「ハッ、やろうってのか、えぇ!?」
私の意思を見てとったのか、ゴブリモンが睨み付けてくる
パルモンとファルコモンはその視線に蛇に睨まれた蛙のようになった
とてもじゃないけど、戦いには参加できそうにない
そもそも、ブイモン達と違って戦う手段を持ってないのかもしれない
自然とブイモン一人に任せる状況になってしまう
問題はもう一つ、スキルプログラムとかいう技だ
ブイモンのhpは回復したけど、その威力は半端じゃない
ここに来て最初に出会ったアグモンのスピットファイヤーとかいう技よりもダメージが大きい
ゴブリモンの力なのか、技が違うのかは分からないけど、かなり強いい
何か対抗策を考えないと―――
「そうだ、スキルプログラム!ブイモン、スキルプログラムないの!?」
目には目を、歯には歯を
向こうが技を使うなら、こちらも使えるはずだ
威力がなくても、変てこな技でも今は構わない
何か、何か打開できるものがあればいい
私は急いでデジヴァイスを操作してブイモンのスキルプログラムを確認した
しかし、画面に表示されたのは、何一つない空白だけの画面だった
…………ブイモンは、スキルプログラムを使えない?
私が唖然としているのを見て、ブイモンは申し訳なさそうにこちらを見てくる
責めるつもりはないけど、ちょっと困ったかも…………
苦笑を浮かべる余裕もない
「へっ、スキルプログラム使えないのかよ?だせー奴だな!」
ゴブリモンが左手に赤い塊を作る
ごうごうと燃え盛っていて、とても熱そうな球体だった
だけど、少し重そう?
「スキルプログラムってのはこういうもんなンだぜ!?マグマボムを食らいな!!」
「ブイモン下がって!!」
球体が投げられるのを見て、同時にブイモンは後ろに跳ねる
私の直感は当たった
ブイモンの4歩くらい手前に球体は着地し爆発する
やっぱり、あの技………マグマボムは、そこまで距離が飛ばない
ブイモンにダメージはない
あのマグマボムは、作って投げるのに、僅かな間隔がある
そこを突けば、いけるはず!
「ブイモン突っ込んで!!」
私の声にブイモンは前に駆け出す事で応える
距離はあるけど、ブイモンの突撃する速度と、ゴブリモンがあの球を放つ時間なら、ブイモンの方が早い
いける!
そう確信してガッツポーズを取ろうとした瞬間
ブイモンの顔面に火の粉が舞って、失速する
「違う技………?」
確かアグモンの使ってたスピットファイヤーとかいう技
…………でもゴブリモンも使えた
ポカーンと呆けてるのは私だけでなく、ブイモンもだった
「マグマボムだけしか使えないとでも思ってたのかよ!?」
ゴブリモンが吠えて、逆にブイモンに接近する
「キュ、キュッ!?」
だけれど、当たるのはゴブリモンの攻撃だけで、一方的な展開だった
「ちょっと!武器なんて卑怯じゃない!?」
「ハァンッ!これも俺の身体の一部だってぇの!」
ゴブリモンは私の抗議を嘲笑で返す
そう、ブイモンはゴブリモンの持つ棍棒の攻撃によって、一定の距離から近付くこともできなかった
前に進もうとすればするほど、棍棒で殴られて邪魔される
ブイモンのダメージが蓄積するだけ
「キュ…………」
ブイモンの苦しむ喘ぎが聞こえる
「ブイモン一旦離れて!右から回り込んで!!」
>>98修正
「ブイモン!」
私の声にブイモンはハッと拳を握って構える
「キュ、キュッ!?」
だけれど、当たるのはゴブリモンの攻撃だけで、一方的な展開だった
「ちょっと!武器なんて卑怯じゃない!?」
「ハァンッ!これも俺の身体の一部だってぇの!」
ゴブリモンは私の抗議を嘲笑で返す
そう、ブイモンはゴブリモンの持つ棍棒の攻撃によって、一定の距離から近付くこともできなかった
前に進もうとすればするほど、棍棒で殴られて邪魔される
ブイモンのダメージが蓄積するだけ
「キュ…………」
ブイモンの苦しむ喘ぎが聞こえる
「ブイモン一旦離れて!右から回り込んで!!」
ゴブリモンの棍棒は右手に持ってる
でも、私から見て右の方向、左手には何も持っていない
しかし、ブイモンが後ろに一歩下がるのを見て、ゴブリモンも前に足を踏み出す
ブイモンを逃がさないようにゴブリモンは棍棒でタコ殴りにする
「キュ…………キュ……………」
「トロくせぇんだよっ!!」
ゴブリモンの叫びに私は震える
離れても近付いても一方的にやられる
何か………何ないの?
パルモンとファルコモンを見る
駄目、震えてる子を戦わせられない
もらった回復フロッピーを確認する
持ってる枚数は限られてるし、そもそもこれじゃ勝てない
ゴブリモンを見る
スキルプログラム、手に持った棍棒と言う二つの武器
対してブイモンはゴブリモンに勝ってる部分は何一つない
――――違う!考え方を変えるんだ!
スキルプログラムと棍棒、武器で負けてるなら、その二つがなくなれば…………
本当にインプットされていたのか、電子音声の教えてくれたことを一言一句思い出せる
私はスキルについて思い出した
気になった一文はこれ
「mpと呼ばれるステータスを消費することで」
mpを全部使いきったらどうする…………?
技は使えなくなるんじゃ…………
そう気付き、ブイモンに回避に専念するよう指示を出そうとして
―――やめた
マグマボムとかいう爆弾の爆風、スピットファイヤーの速度
ブイモンがいくら速くても上手く回避し続けられるとは思えない
でも、それしかないのなら……………
――――何か忘れてる気がする
何だろう?何を忘れてるんだろう?
その私の悩みを考えを遮るように重い打撃音が響く
見ればブイモンがゴブリモンに吹き飛ばされていた
「キュゥゥゥゥ」
「いけねぇ、吹き飛ばしちまったぜ!」
「ブイモン!!」
悔しそうに芝生の上で唸るブイモン、舌なめずりをするゴブリモン
その光景に悲鳴を上げながら私は別のことを考えた
芝生………?地面…………?
辺りを見回す
やっぱり何もない、何もないのだ
「もしかして………もしかしたら!!」
だからこそ私の考えは希望に繋がる
なら、後は実行あるのみ、そう足を踏み出そうとして、震えた
―――私の考えが間違っていたら、どうする?
間違ってたら大怪我どころじゃ済まない
下手したら死ぬかもしれない
恐怖で足がすくむ
ゴブリモンは左手に炎の塊を作り出していた
「マグマボム………」
思わず呟く
今度こそ本当にもう迷っている暇はない
私はかぶりをふって、息を大きく吸い込んだ
私の背をつかんでる、ファルコモンとパルモンの手を後ろ手でそっと剥がす
―――覚悟を決めろ、和田ミライ
ブイモンだけ戦わせるのが、私の覚悟か
そう自問して駆け出す
「う、わぁぁぁぁぁぁっ!!」
情けない叫び方で喚きながら、私はブイモンに向けて駆け出した
ゴブリモンがその叫びにギョッと私の方向を振り向くのが横目で見えたが、無視して駆ける
ほんの少しゴブリモンの攻撃に移る間が空いた
構わず、そのままの勢いで飛び込むように私は
「ブイモン、ごめん!」
コケた
「ムギュッ!?」
私に押し潰されて、ゴムボールから空気が抜けるようにブイモンは鳴く
私の麦わら帽子が空に舞う
その次の瞬間、爆発の光と音が私の背中で弾けた
……………………………………
息が止まる
鼓動が遠ざかる
そう錯覚しかけるほど、緊張と恐怖が私の心を縛り付けていた
ブイモンがペタペタと自分の頬を触ってくる
その表情が切羽詰まったものに見えて、私は安心させるように角を人差し指でチョンチョンとつついた
背中は痛くない
熱くもない
自分の背中を片手の甲でなぞる
服も燃えてない、破れてない
立ち上がってゴブリモンの方を見る
その表情は唖然としたまま固まっていて、憎らしいと思っていたあの顔がちょっと可愛らしいと思えるほどだった
私は…………生きてる
思い通りに賭けに勝ったのだ
「なんでピンピンしてやがるんだ!?」
私がその事に気づいたのは芝生を見たときだった
ゴブリモンがマグマボムと呼んだあの爆弾を3回も爆発させたのに、地面には芝生は焦げた様子は何処にもない
「そ、そうか、やせ我慢してんだな。だったら、これでどうだ!」
そして思い出したのは、スキルプログラムの説明
―――デジモンに効率的にダメージを与えるための第三の戦闘手段
ちょっとした言葉遊びだったのだ
スキルプログラムというのはデジモンにダメージを与えるための手段であって、デジモン以外のその他のもの、例えば芝生とか………私とか
理屈も理由も分からなかったけど、そういったものへダメージは与えられないのだ
「スピットファイヤーだ!」
だからゴブリモンの吐いた火の唾が私に当たっても、痛くも熱くも痒くもない
私にスキルプログラムは通じない
目に見えて狼狽するゴブリモン、よく分からずに尊敬の眼差しを見せるブイモンを尻目に私はぼんやりと考えた
スキルプログラムは封じた
互いに接近戦という手段しか残されていない
とはいえ、けして有利になった訳でもない
何しろ、ゴブリモンの棍棒へ解決策が出来た訳でもない
いっそのこと逃げてしまおうか
私の影にブイモン達を隠しスキルプログラムを遮りながら後ろに下がっていけば、逃げ切れる気がする
ゴブリモンも自慢のスキルが通じなくなって驚いているし、今ならなんとかなるかもしれない
そう呑気に構えてたのがいけなかった
「キュッ!」
注意を促すブイモンの声に私はそのままゴブリモンに向き直った
見ればゴブリモンか凄まじい形相で突撃してくる
ポカンとした私に構わず、ゴブリモンは飛び上がる
目の高さは私と同じになる
その視線に身体が僅かにすくみ、ゴブリモンはその隙を見逃さず右手を振り上げた
理解できないまま、私はポカンとした
「へ?」
グ シ ャ
今回の投下終了です
間が空いた上に>>98の投下ミスるとか申し訳ない
ミライにスキルが効かないのは、原作でヒートウェーブやヘビーレインが効かない事への独自解釈です
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