切嗣「ゲルテナ展?」 (113)
切嗣「また、イリヤを取り戻す事が出来なかった……」
切嗣「僕はただ、娘を取り戻して、一緒に静かに暮らしたいだけなのに」
切嗣「くそっ……」
-
--
---
アハト「裏切り者にアインツベルンの敷居をまたがせるとでも思ったか?」
切嗣「そんなのはどうでもいい、イリヤを……娘を返せ!」
アハト「あれは次の聖杯戦争の貴重な駒だ。裏切り者にはやらん」
切嗣「ふざけるな!イリヤはお前達の駒なんかじゃない。イリヤは……イリヤは!!」
アハト「裏切り者の戯言等聞くつもりはない、帰れ!」
---
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-
切嗣「………」
切嗣「また、来よう。これ以上粘っても今回用意した手段じゃ結界は破れない」
ゲルテナー、ゲルテナハイカガデスカー
切嗣「?」チラッ
「あ、お兄さんもよければいかがですか?今博物館でゲルテナ展開催しているんですよ」スッ
切嗣「あ、あぁ」
切嗣「………」ペラッ
切嗣「期間限定でゲルテナ展開催、このパンフレットを持参すれば入場料50%OFF。場所は……近いな」
切嗣「せっかくだし、行ってみよう。士郎への土産話にもなる」
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ワイワイガヤガヤ
切嗣「これがゲルテナ展か……」
切嗣「(せきをする男、個性なき番人……こういうのを芸術っていうんだろうけど、僕にはよくわからないな)」
切嗣「(人もかなり多い所を見る限りだと、ワイズ・ゲルテナの作品は相当人気なんだろうけどね)」
切嗣「えっと、この一際大きな絵は……絵空事の世界」
ゾクッ
切嗣「!?」バッ
切嗣「(なんだ、今この絵からとんでもない魔力を感じたような……)」チラッ
シーン……
切嗣「人が……いない?まさか、人払いの結界か?」
きたい
絵空事の世界はゲルテナの固有結界だったのか
切嗣「(受付も無人か。どうやら、魔術師が僕を狙って結界を張ったようだ)」
切嗣「(だが、何の為に?アインツベルンが裏切り者である僕を始末する為にこんな事を?)」
切嗣「(いや、それならイリヤを取り戻そうとアインツベルンに向かった時に殺せばいい。なら一体誰が?)」
ガチャガチャ
切嗣「くそっ出入り口も開かない。結界の基点を破壊しなければだめか」
切嗣「(武器はコンテンダーと起源弾しか持ち込んでいない。心細いが、なんとかするしかない)」
ベチャッ
切嗣「!!」バッ
切嗣「果物……?どうしてこんな所に」
ニャーオ…
切嗣「今度は猫の声か。一体どうなっているのか」
切嗣「(待てよ、あの絵から魔力を感じたと思った瞬間から人が消えている。つまり、あの絵が基点か?)」
切嗣「……確かめる必要があるな」
これは期待せざるを得ない
………
切嗣「先程見た時とは絵が全然違う?だが、この絵から魔力を感じる」
切嗣「(どうする、起源弾を打ち込んでみるか?いや、一度結界の術式を調べてからにしよう。でなければ何が起こるかわからない)」
ドロ…
切嗣「(青の絵具が作品から垂れている?これは一体……)」
タ………ケ
切嗣「!?」
切嗣「今のは……一体?」
切嗣「いや、今はそんな事を気にしている場合じゃない。結界の基点を……」クルッ
ア ノ コ ヲ タ ス ケ テ
切嗣「なっ!?」
切嗣「(床に血でメッセージが!?あの子を助けて……僕に助けを求めているのか?)」
切嗣「やはりさっきの絵が……ん?」
切嗣「(垂れていた青の絵具が文字になっている。『したのかいにおいでよ、ひみつのばしょ おしえてあげる』)」
切嗣「どうやら、下の階に行かなければならなさそうだね」
切嗣「(罠の可能性もあるが……行ってみよう)」
もしかしてid?
違ったibだった
切嗣「(下の階に降りてみれば、怪しげな展示品の柵が取り除かれているとはね。しかもご丁寧に足跡でのご案内付きだ)」
切嗣「(いいだろう、どこの誰かは知らないが、誘いに乗ってやる。元は魔術師殺しと呼ばれた身、思い通りに行くと思うな)」
スッ
バチャン
切嗣「……ここは?」
切嗣「(先程とは全く違うどこか、と行った所か。建物の中みたいだが、油断する訳にはいかないな)」
切嗣「……ん?」
切嗣「これは、薔薇?黒い薔薇は初めてみるな」
切嗣「奥に扉があって、机を動かせない事から……恐らく、薔薇を取れという事か」スッ
切嗣「(だがこの薔薇、呪いにも似た魔力を感じる。下手に扱わない方がよさそうだ)」
切嗣「(薔薇を取った途端に机を動かせるようになったか。これで奥に進める)」
ガチャ
切嗣「(扉を開けた先には一枚の絵画か。笑顔の女性の絵……その下には青い鍵が落ちている
ガチャ
切嗣「(扉を開けた先には一枚の絵画か。笑顔の女性の絵……その下には青い鍵が落ちている。拾っておくか)」
スッ
クワッ
切嗣「!?」バッ
切嗣「(絵が不気味な表情になった!?一体どういう事だ)」
切嗣「(絵の下にはメッセージか……『そのバラ朽ちるとき、あなたも朽ち果てる』。どうやら、先程拾った薔薇が朽ちた時、僕も死ぬようだ)」
切嗣「(だが、それをわざわざ教えた理由はなんだ?一体何が目的なんだ)」
切嗣「とにかく、ほかには何もないようだし部屋を出るか」
ガチャ
カエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセ
カエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセカエセ
切嗣「!?」
切嗣さんなら余裕だな
切嗣「なんだ、これは!?」
切嗣「(まさか、この青の鍵を取ったからか?だがこれを戻した所で状況は変わらなさそうだ)」
ゾクッ
切嗣「!!」
切嗣「(嫌な気配がする。このままここに長居してはいけない)」
切嗣「くっ!」ダッ
…………
切嗣「はぁ……はぁ……」
切嗣「青い扉か。恐らく、ここでこの鍵を使えば」ガチャ
切嗣「やはりか。思った通りだ」キィ……
切嗣「今度は、緑色の部屋か」
切嗣「(虫の絵が並んでいる。左にはメッセージ)」
切嗣「(『はしにちゅうい』……これに隠されたヒントを解けなければ、恐らくよくない事が起きる)」
切嗣「とにかく、まずは調べて……ん?」
切嗣「床にいるのは……アリか?」
アリ「ぼく アリ」
切嗣「喋った!?」
アリ「ぼく 絵 だいすき ぼくの 絵 かっこいい」
アリ「ぼくの 絵 見たいけど ちょっと 遠い ところにある」
切嗣「」
切嗣「(アリの絵、か……連れて行って調べてみるか)」
一時離脱
ただ聖杯の泥に侵されてるから色々と不安、一瞬の油断でエンドだ
珍しいクロスオーバーやな
期待しとるで
珍しいクロスオーバーやな
期待しとるで
>>18
大事な事なので2回………だな
切嗣「(しかし端に注意とは一体……)」スッ
ガバッ
切嗣「!?」バッ
切嗣「壁から手が出てきた?……ぐっ!」ガクッ
切嗣「がっ……ぁ……!」
切嗣「はぁ……はぁ……ぐ……一体、何が」
『そのバラ朽ちるとき、あなたも朽ち果てる』
切嗣「まさか!?」ゴソッ
切嗣「薔薇が一枚欠けている。なるほど、それでこの痛みか」
切嗣「それに、はしに注意の意味もわかった。なら古風だが真ん中を通ればいい」
切嗣「通れたのはいいが、扉に鍵がかかっているな」
切嗣「だがアリの絵はここにあったのか。ほら、見たがっていたお前の絵だぞ」
アリ「あっ ぼくの 絵 かっこいい」
切嗣「…………」
切嗣「…………それだけかい?」
アリ「あっ ぼくの 絵 かっこいい」
切嗣「…………」イラッ
切嗣「この絵、少しの間借りて行くよ」ガコッ
切嗣「引き返してもう一つの扉を開いたのはいいが、地面が裂けているとはね」
切嗣「…………」
切嗣「アリの絵を橋にして進むか」
グシャ
切嗣「…………」
切嗣「(絵の中のアリが潰れたように見えたが、気のせいだ)」
……
切嗣「やはりここに緑の鍵があったか」
切嗣「(これであの扉を開く事が出来るはずだ」スッ
ガタッ
切嗣「!!」バッ
切嗣「マネキンが動いた?くっ、僕を捕まえるつもりか」
切嗣「タイムアルター……ダブルアクセル!!」ダッ
切嗣「ぜぇ……はぁ……なんとか、逃げ切ったか」
切嗣「はぁ……が……!!」
切嗣「(反動が思っていたよりもでかいな。僕の身体も相当ガタが来ているらしい)」
切嗣「……鍵のかかった扉を開けて、先に進もう」
△ △
(◎ω◎)ニャーン
………
切嗣「猫の壁にかくれんぼ、動く石像、嘘つきの部屋、猛唇、赤い服の女……」
切嗣「(いくつもの仕掛けを突破したが、未だに奥にはたどり着けない)」
切嗣「(この魔術の使用者は一筋縄ではいかなさそうだ)」
切嗣「(だが、こうなると本当に何が目的……ん?)」
切嗣「青い花びら……僕の薔薇と同じもの?」
切嗣「(だとしたら、僕と同じように巻き込まれた人間がいる?それとも罠か?)」
切嗣「(前者なら放ってはおけない、後者なら返り討ちにするまで。辿ってみよう)」
切嗣が心壊するのはあんま想像出来んな
最後まで平気か、最初から兎に見えるかなイメージ
切嗣「……ここで途切れているか」
切嗣「(恐らく、この薔薇の持ち主はここで力尽きたか。あるいは……)」
切嗣「(いや、今は憶測で決め付ける段階じゃない。それよりもここから脱出しなければ)」
切嗣「…………ん?」
切嗣「(あんな所に幼い子供が倒れている?)」
切嗣「(あらかさまな罠だが。無視しても問題はなさそうだが)」
(イリヤ「うん、私キリツグが帰ってくるの、良い子にして待ってる!」)
切嗣「……っ!」
切嗣「…………君、大丈夫か?」スッ
切嗣「…………脈は……なし」
切嗣「…………手遅れか」
切嗣「(また、僕は……助けられなかったのか)」
切嗣「(イリヤと同い年位の、小さな子供も)」
切嗣「くそっ!」ドンッ
ポロッ
切嗣「!」
切嗣「これは……薔薇の茎?」
切嗣「ほとんど燃えているけど、これがこの娘の……」
切嗣「…………」
スッ
切嗣「(何をしているんだ、僕は)」
切嗣「(もうこの娘は助からないと分かっているのに、何故この娘を背負って歩いている)」
切嗣「(何故…………)」
切嗣「石像をどかしたと思えば今度は嘆きの花嫁と花婿か」
切嗣「見た所、この仕掛けも解かなければいけないんだろうけど……手がかりがないとどうしようもない」
切嗣「道は続いているようだし、ここは後回しにしよう」
ガチャ
切嗣「今度は迷路か。不意打ちには注意しないと……」
バッ
切嗣「ね!」タァン
ドサッ
切嗣「マネキンか。……起源弾で屠る事が出来るのはわかったが、もったいないな」
切嗣「残弾が少ない以上、使用は控えないといけないな」
切嗣「とにかく、この迷路の仕掛けを解いてみよう」
ゴゴゴゴゴ
切嗣「……音がしたかと思えば、新しい扉か」
切嗣「(後一体、いくつの仕掛けを解けばいいんだろうね)」ガチャ
切嗣「ここは……オブジェの部屋か」
切嗣「(見た目はともかく、どれも完成度は高い)」
切嗣「……ん?木の葉の中で何かが光ったような」
切嗣「これは……結婚指輪か」
切嗣「(なるほど、これを先程の仕掛けに使用すればいいのか)」
切嗣「(…………そういえば、アイリに結婚指輪を渡せなかったな)」
切嗣「…………」
切嗣「感傷に浸っている場合じゃないか。早く進もう」
切嗣「(花嫁の仕掛けをクリアしてブーケを受け取り、目薬をとって目玉の炎症も治し、ブーケを変な絵に食べさせて扉を通ったが……)」
首マネキン「「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」」ズラッ
切嗣「これは……さすがに気味が悪いな」
切嗣「(この様子だと、この先も長そうだ。食べ物を持ち込んでおけばよかったな)」
切嗣「(昔なら、これよりもずっと危険な戦場をいくつもくぐり抜けてきたんだけどね。本当に衰えたよ)」
ガタンッ
切嗣「タイムアルター、ダブルアクセル!!」ダッ
………
切嗣「はぁ………はぁ………」
切嗣「(あの後、あの先にあるフロアの仕掛けを解いている内にフロア全体の展示物が襲いかかってくるとは思わなかった)」
切嗣「けど……はぁ……なんとか……逃げ切ったぞ…………」
切嗣「ふぅ……」
切嗣「(さすがに疲れたよ。動かないこの娘を背負ったまま移動していたし、どこかで休みたい)」
切嗣「そうだな……あの部屋で、少し休むか」
切嗣「(部屋の真ん中には水入りの花瓶か……意味がないのかもしれないけど、焦げっぱなしで放置しておくくらいなら)」スッ
切嗣「こうして、添えられていた方が茎もきっとマシだろう」
切嗣「(後は……そうだな、見た所周囲は安全だし)」
切嗣「少し暗い眠っても、罰は当たらないよね」ドサッ
一旦ここまで
いいね〜面白そう!
乙
乙
あつい
からだ が やけ る
いた い
なん で わた し そと でれない の?
イ も ギャ も わたし おいて い
わたしも そと でた い
そとの せかい である たい
でも わたし でれない
ふたりとも わたし おいて た
わたし もやし った
いた い い たい いたい いたい いた……い……
?
いた……い?
なんで痛かったんだっけ?
さっきまであんなに苦しかったのに、今は楽な気がする。
なんでだろう?どこか安心するような感じ
なんだか、眠く、なって、きたなぁ。
二人が脱出した後の世界か
「ん……ぅ…?」
切継「気がついたかい?」
「えっと……ここ、は?」
切継「残念ながら、僕にもここがどこなのか分からない」
「そう。……って、あなただれ!?」
切継「僕は衛宮切継、訳ありでこの怪異に巻き込まれた人間さ。君の名前を聞いてもいいかな?」
「私?私の、名前は……あれ?」
「なんで思いだせないの?ちゃんとあったはずなのに」
切継「(名前が思い出せない……記憶を失っているのか?)」
切継「(無理もない。むしろこんな幼い子供が、いきなりこんな事に巻き込まれて精神が無事な方がおかしい位だ)」
切継「(それにさっきまでの彼女の状態から考えると、彼女は一度……)」
切継「思いだせないか。じゃあ、他に覚えている事は?」
「えっと……」
切継「例えば、好きな食べ物は?」
「わかんない」
切継「じゃあ、お母さんの名前は?」
「……わかんない」
切継「……じゃあ、いちたすいちは?」
「2。さすがにそれくらいはわかるわ」
切継「計算能力は影響なし。となると失っているのは自分及び自分の周りに関する記憶がほとんどという事か」
「切継のいってること、むずかしくてよくわかんない」
切継「ごめんごめん、君には少し難しかったね。それより、僕達が今いるこの空間は危険だ」
切継「この部屋も何時得体の知れない何かが襲ってくるかわからないし、一歩外に出ればそこは危険地帯だ」
切継「僕はこの空間の元凶を倒して元の場所に帰るつもりだけど、君も一緒に来るかい?」
「……うん」
切継「よかった。……あぁ、そうだ。一つ言い忘れていた事があった」
「言い忘れていた事?」
切継「僕はね、魔法使いなんだ」
漢字間違ってるぞい
切嗣「さて、そうと決まれば早速行こう。立てるかい?」
「う、うん」
切嗣「この部屋を出る前にもう一度言っておくけど、一歩出れば危険地帯だ。身を守る武器がなければ何かあった時に身を守る事が出来ない」
切嗣「だから、決して僕から離れないようにね」
「切嗣はだいじょうぶなの?」
切嗣「僕は自衛手段を持っているからね。けど、万能じゃない」
切嗣「だから命を大事に行動するんだ、いいね?」
「わかった」
切嗣「よろしい。じゃあ、部屋を出ようか」ガチャ
>>23
言峰だらけの部屋を想像してしまったじゃないか!
切嗣「…………」
「…………」ギュッ
ガタガタッ
「ひっ!?」ビクッ
切嗣「下がって」スッ
切嗣「(あの部屋の扉が叩かれたのか。確実に何かがいる……僕一人ならともかく、この娘もいる。今は近づかない方がいい)」
切嗣「あの部屋は後回しにしよう。慎重に進まないと何が起こるかわからないからね」
「……うん」
切嗣「(さて、廊下の脇には3つのボタンとあらかさまに配置されている一つの本棚か。罠の可能性があるが、手がかりが隠されている可能性もある)」
「どうしたの?」
切嗣「ちょっとね考え事だよ。あの本棚を調べてくるから、ここで待っているんだ」
「わかった」
切嗣「(さて、鬼が出るか蛇が出るか)」スッ
ガシャン
切嗣「なっ!?」
切嗣「(くそ、やはり罠か!飛び越える事も出来ない)」
「切嗣、後ろ!」
切嗣「!!」クルッ
切嗣「(またマネキンか。だが避けられない間合いじゃない)タイムアルター、ダブルアクセル!」ダッ
切嗣「(3つのボタンの内恐らく二つは罠、一つが正解だろう)」
切嗣「(ここに配置してあるマネキンは赤、青、黄……動いているのは黄色のマネキン、赤と青は停止)」
切嗣「(そしてボタンは赤、青、緑。マネキンとの関連性を信じるなら押すべきボタンは緑!!)」ポチッ
青マネキン「」ガタッ
切嗣「何!?」
「切嗣、大丈夫!?」
切嗣「大丈夫だ……タイムアルター、ダブルアクセル!」ダッ
切嗣「(ダブルアクセルで奴らに反応出来ない速度で移動、押すボタンは……緑が罠だった以上、考える時間はない。青だ)」ポチッ
ガシャン
「切嗣、出口が開いたよ!」
切嗣「今向かう、だがその前に!」ゴソッ
切嗣「(よし、本を回収した。後は……)」
ブチッ
切嗣「しまっ……がぁ!!」
切嗣「タイムアルター……ダブルアクセル!」ダッ
ガシャン
切嗣「はぁ……はぁ……が……ぁ……あ……!!」
「しっかりして切嗣、どこか痛いの!?」
切嗣「ぐ……ぅ……大丈夫さ……少し、魔法を使った反動が来ているだけだ」
ポロッ
「これって……黒い薔薇?一枚しか花びらが残ってないけど」
切嗣「ごめんね、それは僕のなんだ。」スッ
「あっ……」シュン
切嗣「心配しなくても、君の分もちゃんとあるよ」スッ
「これって、私の薔薇?」
切嗣「あぁ、黄色い髪の君に似合う黄色い薔薇だ。大事にするんだよ」
「うん!」
切嗣「ふぅ……ごめんね、少し疲れてしまったからおじさん……は……ここ……で……休む……よ」ドサッ
「切嗣? しっかりして、切嗣!」
「どうしよう、切嗣が全然動かない。このままだと切嗣が死んじゃう」
「そういえば切嗣の薔薇……そうだ!」ダッ
「確か、この辺に……あった!」
「これの切嗣の薔薇を活ければ切嗣も元気になるはず」チャプッ
「……よかった、薔薇の花びらも元通りになってる」
「あれ、なんで私こんな事知ってるんだろう?」
切嗣「……ぅ……ぐ……」
切嗣「がはっ! はぁ……はぁ……ん?」ガバッ
切嗣「(ずっと続いていた痛みと苦しさが無くなっている?どういう事だ?)」
切嗣「…………!」ゴソッ
切嗣「僕の薔薇がない?それに、あの娘もいない」
切嗣「まさか!」ダッ
黒薔薇は霧の国からやって来た愛と勇気の親善大使を思い出す
「…………」
切嗣「よかった、ここにいたのか」
「あ、切嗣」
切嗣「目が覚めた時いなかったから心配したんだよ。……どうかしたかい?」
「ううん、なんでもない。それよりほら、切嗣の薔薇元気になったわ!」
切嗣「これは……確かに、僕の薔薇だ。でもどうやって?」
「そこの花瓶に活けて元気にしたの!」
切嗣「そうか。……ん?」
切嗣「(おかしい。そんな事実は今初めて知った。けどこの娘はまるで知っていたかのように行っている)」
切嗣「……少しだけ、僕の質問に答えてくれるかな?」
「うん、いいよ!」
切嗣「君は、ここに来たばかりだよね?」
「ううん、わかんない。気付いた時にはここにいたもん」
切嗣「そうか。じゃあ、記憶に関して、何か思い出したことはあるかい?」
「……ごめんなさい、わかんないの」
切嗣「じゃあ、どうして薔薇を活けるなんて行動に出たんだい?」
「それもわかんないの。ただ、切嗣が倒れて、薔薇を活ければ元気になるはずって思って……なんでそんな事知っているのかもわかんなくて」
切嗣「……そうか」
切嗣「大体わかった。問い詰めるような真似をしてごめんね」
「ううん、いいの。それより元気になったから大丈夫よね?」
切嗣「あぁ、僕はもう大丈夫だ」
「よかった!じゃあ早く行きましょう」
切嗣「(……記憶が無いにも関わらず薔薇の仕組みを潜在意識レベルで覚えている少女か)」
切嗣「(怪しい所はある。だが悪い考えを持っている訳ではなさそうだ)」
切嗣「(そうだ、僕の考えすぎだ。……もう、これ以上疑うのはやめよう)」
切嗣「(何より、ほとんどを失っている僕と違って、彼女は……)」
切嗣「…………」
「ねぇ切嗣、さっきから元気ないけど大丈夫?」
切嗣「いや、なんでもないよ。見ての通り僕は元気さ」
「……本当に?」
切嗣「あぁ、本当だ。それよりこの扉の暗号も無事見つかった事だし、扉を開けよう」
「うん、確か『深海の世』だったよね」
切嗣「正解だ」ガチャ
切嗣「ここは……一枚の絵画と本か」
「えーと……わたしはその[ピー]しく美しい[ピー]に指を[ピー]らせ、[ピー]を[ピー]えさせる彼女に、そのまま……」
パタン
僕は彼女から静かに本を取り上げ、本棚に戻した。
切嗣「こういう本は君にはまだ早い。大人になってから読みなさい」
「えー」
切嗣「えーじゃない。教育に悪い本を読ませる訳にはいきません」
「ケチ!」
切嗣「ケチで結構。……この絵画には特に変わった所はなさそうだな」
ブツンッ
切嗣「!!」バッ
「え?な、なに!?切嗣、どこなの!?」
切嗣「僕はここにいるよ」
「あっ……切嗣」
切嗣「いいかい、僕の傍を決して離れないように。今ライターを取り出すから」ゴソゴソ
切嗣「(ライターに魔術を加えて部屋一面を照らせば、様子が分かるはずだ)」シュボッ
た す け て
や め て
い や だ
し に た く な い
こ わ い
「ひっ!?」
切嗣「……暗くなっている間に壁や床にメッセージの落書きか。とんだ悪質な趣向だね」
切嗣「どうやら、ここも安全ではないらしい。行こう」ガチャ
『お客様に申し上げます。当館内では火気厳禁となっております』
『マッチ、ライター等の使用・持ち込みはご遠慮くださいますようお願いいたします』
『万が一館内でそれらの使用をスタッフが発見した場合、』
切嗣「……チッ」
「ね、ねぇ……このアナウンスって」
切嗣「行こう、この場に長居しない方がいい」
「はぁ……はぁ……」
切嗣「ここまで来れば大丈夫だろう」スッ
「あれ、その本って確か」
切嗣「あらかさまな場所にあった本棚から拝借してきた本だよ。手がかりが得られればいいんだけどね」ペラッ
「あ…………」
日誌
ヒトの想いがこもった物には魂が宿ると言われている
それならば作品でも同じことができるのではと私は常に考えている
そして今日も私は自分の魂を分けるつもりで作品作りに没頭している
切嗣「…………」
切嗣「(これは誰かの日誌?作り上げた空間に意味もなくこんなものを置いておくとは思えない)」
切嗣「(考えられるのは、黒幕が残したなんらかのヒントか……ワイズ・ゲルテナ本人の日誌か)」
切嗣「(どちらにせよ、ここで読みふける程の価値はなさそうだ)」パタン
切嗣「どうやら、そこまで急いで読む必要はなさそうだ。今は先を……」
「…………」
切嗣「おい、聞いているのか?」
「作品……魂…………わたしは…………メアリー……」
切嗣「おい……おい!しっかりしろ!!」ユサユサ
「ふぇ?……あれ、ここは?」
切嗣「よかった、正気に戻ったか」ホッ
「あれ、私どうして……あれ?」
切嗣「先程から妙な言葉をつぶやいていたよ。わたしはメアリーとか」
「メアリー……そうだ、思い出した!私、メアリーっていう名前なの!!」
切嗣「ほ、本当なのかい?」
メアリー「そうよ!今はまだそれくらいしか思い出せないけど……うん、私の名前はメアリー」
切嗣「そうか。なんにせよ、名前を思い出せたなら僕も嬉しいよ」
メアリー「どうして私が名前を思い出した事が嬉しいの?」
切嗣「何時までも君呼ばわりだと嫌だろう?名前の方が、誰の事を指しているかわかりやすいからね」
メアリー「そっか……そうだよね」
切嗣「そういう事だ。名前もわかった事だし……改めてよろしく、メアリー」
メアリー「えへへ……よろしくね」
切嗣「さて、何時までもここで話している訳にもいかないし……張り切っていこうか」
メアリー「おー!」
これは期待
『赤い目』
メアリー「わぁー、かわいいね。切嗣もそう思わない?」
切嗣「……本当に、これがかわいいと思うのかい?」
メアリー「思うけど、切嗣は思わないの?」
切嗣「僕はこんな君の悪いものをかわいいとは思えないかな」
メアリー「えー、切嗣って、変!」
切嗣「変、か……あはは」
メアリー「こんなにかわいいのに……」
パリン
メアリー「きゃあ!?」
切嗣「危ないから下がっていなさい……これは、鍵?」
メアリー「置物の中に鍵が入ってたのね」
切嗣「(ひとりでに置物が落下したのが気になるが……警戒はしておこう)」
切嗣「となりの部屋がこの鍵で開くはずだ。確かめてみよう」
メアリー「うん、わかった!」
ちょっとIb調べてくる
切嗣「…………?」
メアリー「どうしたの?」
切嗣「ちょっとこの絵の中から物音がしてね。離れていなさい」
メアリー「う、うん」
切嗣「(この音……何かが近づいてくる?まさか!)」
ボゴォッ
切嗣「(床から植物が!?)タイムアルター、ダブルアクセル!」バッ
ガゴォ
メアリー「切嗣、大丈夫!?」
切嗣「僕は無事だよ。しかし植物を操る魔術……ん?」
切嗣「(この植物、石でできている!?しかもご丁寧に壊れないよう強化されている)」
切嗣「参ったな、どうやらこれを壊して合流するのは無理そうだ」
メアリー「…………ねぇ、切嗣。さっきの部屋で拾ったカギ、あるよね?」
切嗣「あぁ、確かに持っている」
メアリー「そのカギでもしかしたら、私がいる方のドアを開けられるんじゃない?」
メアリー「もしかしたら違う部屋に、これを壊れる道具があるかもしれない」
メアリー「だから、カギをこっちにちょうだい?私も切嗣の役に立ちたいの」
切嗣「それは……ダメだ、身を守る術を持たないメアリー一人で単独行動は危険すぎる」
メアリー「でも、このままだと何時までも合流出来ないよ?」
切嗣「……責めて護身用の簡単な魔術を教える。幸い、魔力は人よりも多いから魔術は扱えるはずだ」
メアリー「護身用の魔術?」
切嗣「そうだ。時間がないから本当に簡易的なものだけどね。それを覚えてからじゃないと、鍵は渡せない」
メアリー「じゃあ、魔術を教えたらカギをくれるのね?」
切嗣「約束する。ただし、少しでも危険を感じたらすぐに戻ってくるように。いいね?」
メアリー「うん!」
切嗣「……行ったか」
切嗣「(本当に簡易的な魔術とはいえ、あそこまで簡単に覚えるとは思わなかった)」
切嗣「(メアリーから感じる魔力は並大抵のものじゃない。あの年まで怪異に命を奪われていないのがおかしい位だ)」
切嗣「(もし彼女が何も対策をしないまま外に出ればあっという間に怪異の餌食になる。それだけは避けなければならない)」
切嗣「(彼女の身を守る対策もする必要があるな)」
切嗣「(それも考えなければいけないが……こちらも何もしない訳にはいかない)」
切嗣「(さっきの部屋に戻って他に何かないか調べてみよう。手がかりがつかめるかもしれない)」
………
心壊
あまりに精神が疲弊するとそのうち幻覚が見え始め……
最後は壊れてしまうだろう
そして厄介なことに
自身が壊れていることを自覚することができない
切嗣「……心が壊れている事を自覚出来ない、か」
切嗣「(もしかしたら僕はとっくの昔に心が壊れているから、ここにあるものが不気味な人形に見えるのかもしれないな)」
切嗣「……ん?」
切嗣「これは……まさか」
ズッ
切嗣「やはりか。本棚の裏に扉があったとはね」
切嗣「僕は僕で、この先を調べないといけなさそうだ」
切嗣「5本の紐か……何か仕掛けがあるのか?」
クイッ
切嗣「……これは何も起きないか」
切嗣「これは……」クイッ
フッ
クイッ
パッ
切嗣「……消灯・点灯用か」
切嗣「これは……」クイッ
ベシャッ
切嗣「……人形が落ちてきたか。人が高いところから落ちた時の状態が見事に再現されているな」
ドサッ
切嗣「また何かが落ちてきたか。これは……重石か?」
切嗣「あのくぼみと一致するが……試してみるか」ゴトッ
ギィ
切嗣「これで、先に進めると。よくできた仕掛けだ」
切嗣「(今度は廊下か。あまり複雑じゃないといいんだけど)」
切嗣「……ん?」
”こんにちは 切嗣
わたし ひとりで さみしいの
だから いっしょに つれてって”
切嗣「また気味が悪い人形か。ご丁寧にメッセージ付きときた」
切嗣「(さすがにこんな不気味なものを連れて行く気にはなれない。無視して進もう)」スッ
切嗣「…………」
切嗣「……また人形か」
”ねぇ どうして
つれてって くれないの?”
切嗣「…………」スッ
切嗣「…………」
切嗣「…………またか」
”なんで むしするの?
わたしのこと きらいなの?”
切嗣「…………」スッ
切嗣「…………」
切嗣「…………チッ」
”ねぇ あそぼうよ
ここ おもしろいもの
たくさん あるんだよ”
切嗣「…………ついてくるな」スッ
切嗣「…………」
切嗣「…………クソッ」
”わたしの おともだちも
たくさん いるんだ
しょうかいして あげるね”
切嗣「何なんだ一体」スッ
切嗣「…………」
切嗣「…………今度は一体なんだ」
”えいえんに ここにいろ”
切嗣「!?」
切嗣「なんなんだこれは。一体何がどうなっている!?」ダッ
切嗣「はぁ……はぁ……」
切嗣「ここまで来れば……ん?」
切嗣「……」
切嗣「(今度は扉の前で待ち伏せか。どこまでついてくるつもりなんだ)」
切嗣「そっちがそのつもりならこちらにも考えがある」チャキッ
切嗣「(起源弾はもったいない。普通の弾で仕留める)」
タァン
切嗣「さっきの人形と同じように、血が流れ出たか」
”い た い よ ぉ
い た い よ ぉ”
切嗣「……先に進むか」
着々と死亡率を上げていく切嗣さん流石っす。
あと今はメアリーいい子だけれど、悪意を取り戻したら魔術を教えたことがアダとなるんじゃ…?
切嗣「今度は新しいフロアに到着したようだね」
切嗣「(このフロアには一体何があるか……ん?)」
切嗣「……今度は人形の生首か」
”あなたの せいで
くびが もげちゃった”
切嗣「自業自得だ」
切嗣「(もう人形に付き合うのは疲れた。まずはこの部屋から調べよう)」ガチャ
切嗣「この部屋は……台座が並んでいる?」
切嗣「また新しい仕掛けか。メッセージは……」
『七つの色彩……絵の具玉を集めよ
さすれば部屋は色づき
そなたの架け橋となるだろう』
切嗣「どうやら、絵の具玉とやらを集める必要がありそうだ」
切嗣「黄色の絵の具玉はなんなく回収出来たな。この部屋は……」ガチャ
切嗣「ぐっ……なんだこの部屋は!?」
切嗣「(かなり危険な毒ガスか。数秒居座るだけでも危険だ)」
切嗣「(新しい道具と絵の具玉、両方回収するには……)タイムアルター、トリプルアクセル!!」ダッ
切嗣「がっ……はぁ……ぜぇ……はぁ……ぁ……」ガクッ
切嗣「(まずい、魔術の反動が……しばらくは動けないか)」
切嗣「ぐ……ぁ……」ドサッ
切嗣「(意識が朦朧と……責めて壁際によって休もう)」
メアリー「うーん、何も見つからないなぁ」
メアリー「あれ、これってパレットナイフ?」
メアリー「これであのツル……削れないよね」
メアリー「でも、このナイフどこかで見た事があるような……念のため持っておこう」スッ
メアリー「他になにもなさそうだし、一旦戻rかな」
フッ
メアリー「わっ何!?」
パッ
メアリー「びっくりした、なんだったんだろう」
メアリー「……あれ、出口が」
メアリー「なんで!?さっきこの人形壁際にあったのに」
メアリー「うーん……!」
メアリー「だめだ、全然動かせないよ」
メアリー「どうしよう、切嗣が向こうにいるのに戻れない」
メアリー「…………」
メアリー「しょうがないからこっちから行こう」
メアリー「また廊下だ。でもなんで見覚えがあるんだろう?」
メアリー「何か思い出しそうな気がするけど、思い出しちゃいけないような……」
ベチャベチャベチャベチャッ
メアリー「なっ何!?」
メアリー「これって……壁に文字が書かれてる?」
”おともだちが まってるよ”
”はやく いこうよ”
”おとなのいない たのしいせかいへ”
”イヴ が きみを まってるよ”
メアリー「なに、これ……どういう事?」
メアリー「それにイヴって……確か…………」
メアリー「ぅぐ……頭が痛くて、思い出せない」
メアリー「わたしは、なにをわすれているの?」
一旦ここまで!
イヴは英霊になってもいいと思うんだ
乙!
おつー!
おつおつ!
………イヴ!?
ほほう、こいつはなかなかどうしてただ主人公を切嗣に当てはめただけじゃないらしいな
原作の後日談ってところもちゃんと設定が練られてて良いよね
期待
ある少女の末路
あるところに小さな女の子がいました
女の子は両親と一緒に美術館へ行きました
しかしふと気が付くと女の子は迷子になってしまい……
うす暗い美術館の中を探しましたが両親も出口も見つからず……
怖くて心細くてさみしくてお腹もへりノドが乾き転んでケガをして体力も限界になって……
……最期のページに小さな女の子が倒れている挿し絵で本は終わっている……
メアリー「この絵の女の子、見た事があるような……ぁ」
ねぇ イヴ…………ちょっと聞いていい?
ギャリーって……イヴのお父さん?
ちがうよ
ふーん……じゃあお父さんは別にいるのね
そっかぁ……
イヴのお母さんやさしい?
うん
へぇ……いいなぁ
早く両親に会いたいよね?私も早くここから出たいよ
………ねぇイヴ、あのさ
もしここから出られるのが2人だけだったら……どうする?
出られるのが2人だけだったら……ギャリーと一緒に出るかな
…………
……そう……ギャリーと一緒の方がいいんだ……
ま、今のはたとえ話だからいいけど……
出る時は一緒に出ようね?約束だよ!
メアリー「う……ぁ……!!」
メアリー「なに、これ……私の、記憶?」
メアリー「私は、この人を……知ってる?」
メアリー「それにこの記憶……私は、前にここを訪れた事があるの?」
メアリー「わからない。わからない。わからない……怖いよ、誰か助けてよ」
メアリー「誰か……お願いだから」
切嗣「(どうにか、絵の具玉を集めきる事が出来た)」
切嗣「薔薇を活ける事で体力を回復出来る事を知らなかったらここまで集めるのは無理だったのかもしれないけどね」
切嗣「それにしても、ここにも本があるとはね。メアリーが心配だけど、念のためここも調べておこう」スッ
メアリー ----年
ゲルテナが手がけた生涯最後の作品。
まるでそこに存在するかのように佇む少女だがもちろんのこと彼女も実在しない人物である。
切嗣「…………!!」
切嗣「どういう、事だ?」
切嗣「メアリーが実在しない人物……それに、この挿し絵」
切嗣「間違いなく彼女だ。なら……」
切嗣「彼女は一体、何者なんだ?」
切嗣「…………」
切嗣「閉まっていた部屋の扉が、開いている?」
切嗣「……調べてみるか」
切嗣「……君が悪い人形がこんなにもあるとはね」
切嗣「特に何もなさそうだが……ん?」
切嗣「これは……誰かの手記か?」
きづいた時から、わたしはここにいた。
外のせかいを私はしらない。
だれかひとりがのらないと出ることができないって、おともだちがおしえてくれた。
だから私は、私いがいのだれかがくるのをまっている。
だれかがのこらないと出ることができないなら、私いがいのだれかをのこして外にでればいい。
はやくだれかこないかなぁ
切嗣「…………」ペラッ
あたらしいひとがやってきた。
私とおなじ位の女の子はイヴ、男の人はギャリーっていうの。
イヴとはなかよくやっていけそう。そとにでたらイヴの所でいっしょにくらしたいな。
イヴと私のふたりで、ここから出るんだ。
切嗣「…………」ペラッ
ギャリーが私のひみつをしった。
あのへやからも出られた。しまつしにいかなきゃ
にんぎょうがじゃまだなぁ。なんでじゃまするかなぁ。
はやくあいつをころして、イヴといっしょに出るんだ。
切嗣「…………」ペラッ
さいごまでイヴはギャリーをえらんだ。
イヴは私をえらんでくれなかった。
もういい、イヴなら私といっしょに出てくれるとおもったのに。
私をおいていくなら、ふたりとも……
切嗣「…………」ペラッ
めありーが もやされた
ぼろぼろと くずれていった
でも めありー いきること のぞんでる
だから わたしたち めありー さいげんした
いまの めありー のこりかす
そとの こわいのに ねらわれたら
あっというまに しんじゃう
だれか あのこ まもって あげて
(あいつ男だったのか…!?)
切嗣「…………」
切嗣「これは……メアリーの、日記?」
切嗣「だが、最後のページ……これが事実ならあの娘は」
切嗣「…………」
切嗣「あの娘と会おう。自分の目で確かめなければ結論は出せない」
ガチャガチャ
切嗣「……扉が開かない?」
ベチャッ
切嗣「!」
"また たからさがし しようよ
だれがカギを もってるかな?"
切嗣「なんだと?」
ゴーン…ゴーン…
切嗣「……この部屋のどこかに鍵が隠されているという事か」
切嗣「急がなければ恐らく……チッ」ダッ
切嗣「違う、こいつも違う。こいつも違う」ゴソゴソ
切嗣「どいつだ……?どいつが鍵を持っている!?」
切嗣「(白い絵からは段々と化物が現れ出している。奴が出てきたらアウトだ)」
切嗣「こいつも違う……こいつも違う!」
切嗣「(くそっ早くしないと化物が……!)」
切嗣「(このままだと殺される。奴が魔術で動いているなら一か八か)」チャキッ
切嗣「起源弾……!!」ダァン
バシュッ
ボロボロ……サァアアアアア……
切嗣「ふぅ……危なかった」
切嗣「(思った通りだった。奴が魔力で生み出されたのなら、起源弾が有効)」
切嗣「(半分賭けだったけど、上手くいってよかった)」
切嗣「後は、人形の中から鍵を見つけ出せばいい」
メアリー「…………」
切嗣「メアリー、ここにいたのか」
メアリー「ぁ……切、嗣」
切嗣「君が無事でよかった。ここからは一緒に……メアリー?」
メアリー「ぁ……え……と」
切嗣「大丈夫か?顔色が悪いけど」
メアリー「ううん、大丈夫。……あのね、切嗣」
切嗣「なんだい?」
メアリー「もし、もしもだよ?……もし二人の内どちらかしか外に出れなかったら、切嗣はどうする?」
切嗣「…………」
切嗣「それは、場合によるな」
切嗣「例えば僕が死にかけで、外に出ても助からない状態だったら外に出る意味はないからメアリーを外に出す事を選ぶ」
切嗣「逆にメアリーが同じような事になった場合も、外に出る意味はないから僕が出る事を選ぶ」
メアリー「……そう」
切嗣「……少し、僕の話をしよう。休憩がてらにでも聞いてくれればいい」
切嗣「僕はね、正義の味方になりたかったんだ」
メアリー「正義の、味方?」
切嗣「そう、悪を倒してみんなを助ける、そんな存在になりたかった」
切嗣「けど、現実はそんな生易しいものじゃなかった」
切嗣「きっかけはアリマゴ島っていう小さな島での出来事だった。一人の少女を殺す事ができなかった結果、島全体が地獄と化した」
切嗣「そこで僕は、元凶となった父親を殺し、ある人と一緒に島を出た。
メアリー「お父さん、殺しちゃったの?」
切嗣「そうだ。父親を放っておけばまた別の所で同じことを繰り返す。それを防ぐ為に殺した」
切嗣「父親を殺した僕を拾ってくれた人は悪いことをする魔術師を狩る仕事をしていてね、僕はその手伝いをして成長していった」
メアリー「魔術師?魔法使いじゃなくて?」
切嗣「厳密に言うと、魔法使いと魔術師は違うんだ」
切嗣「魔力を使って人為的に奇跡・神秘を再現するのが魔術師、現代の如何なる資金・時間をかけても実現不可能な正真正銘の奇跡を扱うのが魔法使いだ」
切嗣「僕も本当は魔術師というカテゴリに振り分けられる。残念ながら魔法使いには至らないんだ」
メアリー「うーん、よくわかんない」
切嗣「まぁわからないのも無理はないよ」
メアリー「そういえば、切嗣のお母さんはどんな人なの?」
切嗣「お母さんは……僕が物心着く頃には死んでしまったから覚えていないんだ。お母さんと言えたのは、さっき行った僕を拾ってくれた人だ」
メアリー「そうなんだ。その人って優しいの?」
切嗣「厳しかった、かな。怒ると怖いし。そもそも戦場に優しさは必要なかったからね」
切嗣「けど、その人も死んでしまった。……僕が、殺した」
メアリー「え……何で殺しちゃったの?」
切嗣「その日、一人の魔術師を殺す依頼を受けて、彼女は同じ飛行機に搭乗して奴を殺した」
切嗣「けど、奴は自分の身体に使い魔を隠していたらしい。奴の死体から出てきた使い魔は乗っていた人達をグールに変えて、飛行機の中を地獄絵図に変貌させた」
切嗣「僕を拾ってくれた彼女はなんとか生き残って飛行機を操縦していたけど、飛行機が無事着陸すればその街に住んでいる人達が大量に死ぬ事になる」
切嗣「街に住む万の人間とたった一人の恩人、両方を天秤にかけて僕は街に住む万の人間を選んだ」
切嗣「飛行機を爆破した結果、飛行機が着陸するはずだった街の人達の命は守られた……僕の恩人と引換にね」
メアリー「……辛くなかったの?」
切嗣「辛かったよ。泣き叫んだりもした。その後僕はフリーの魔術師殺しとして、転々としていった」
切嗣「そんなある時、なんでも願いを叶える願望機がある事を知った僕は、それを手に入れる為にアインツベルンに婿入りした」
メアリー「婿入り?」
切嗣「要するに、お婿さんになりにいったんだ。お嫁さんの男性版だよ」
メアリー「じゃあ切嗣、結婚したの?」
切嗣「妻には結婚指輪も渡せなかったけどね。彼女も生まれてからの短い時間だったけど、娘も出来て幸せだったよ」
メアリー「幸せ……だった?」
切嗣「僕の妻、アイリスフィールは……さっき言った願いを叶える願望機を取り合う戦いで命を落としたんだ」
メアリー「そん、な……それじゃあまた大切な人がいなくなって切嗣が一人ぼっちじゃない」
切嗣「……そう、だね。でも結局は僕が殺したようなものだ」
メアリー「……切嗣は、その願いを叶える願望機を手に入れたの?」
切嗣「手に入れた、とは言えないかな。願望機は、僕が破壊しちゃったからね」
メアリー「え、なんで?壊しちゃったの!?」
切嗣「願いが叶う願望機は、その願いを破壊という形でしか叶えない呪われた欠陥品だったんだ」
切嗣「願望機を否定した僕は、それを破壊して……アインツベルンを追放された」
メアリー「……娘がいたって言ったよね。娘はどうなったの?」
切嗣「今も一人ぼっちで、アインツベルンに囚われているよ。何度も迎えに行ったけど、助けられなかった」
メアリー「そん、な……」
切嗣「今は願望機を巡る争いによって引き起こされた災害の中から助けた一人の子供だけが僕の希望だよ。名前は士郎っていうんだ」
切嗣「本当なら今日、娘のイリヤを迎えに行って……家族3人で暮らす予定だったんだけどね。また失敗したよ」
メアリー「…………」
切嗣「こんな生き方をしてきて、僕は後悔してるよ。どこかで道を変えれば、違う結末もあったのかもしれないとね」
メアリー「切嗣……」
切嗣「……そうだメアリー、手を出してごらん」
メアリー「?」スッ
切嗣「…………」スッ
切嗣「……うん、大体わかった」
メアリー「何がわかったの?」
切嗣「メアリーの事だよ。君の場合、怪異に対する耐性がほとんどついていない」
切嗣「だから、このままだと外に出た途端怪異に狙われて殺されてしまう」
メアリー「怪異?」
切嗣「そうだ。外の世界にはたくさんの怪異に満ち溢れている」
切嗣「怪異は君みたいに抗魔力の低い人や魔力をたくさん持っている人が大好物なんだ」
切嗣「だから、ろくな対抗の術もない状態で怪異に狙われたら大変な事になってしまう」
メアリー「じゃあ、私は外に出れないの?」
切嗣「それは違う。対抗の術を持ってないなら、身につければいい」
切嗣「僕が魔術を教えよう。対抗手段を身につければ、外に出ても平気なはずだ」
メアリー「切嗣が教えてくれるの?」
切嗣「もちろんさ。まずは簡単な魔術から教えていくよ」
メアリー「うん!」
切嗣「最初に、魔術回路を……」
切嗣「……うん、これだけ覚えれば並の怪異程度なら立ち向かえるはずだ」
メアリー「うぅ……身体中が痛い」
切嗣「ははは、いきなり魔術の訓練を始めたからね。むしろ教えた事をどんどん出来るようになった事に驚いている位だよ」
切嗣「もし魔術師として成長したら、世界有数の魔術師として大成出来るかもしれないね」
メアリー「うーん……でも、魔術師じゃなくて普通の人として生きる事は出来ないの?」
切嗣「メアリーの場合、怪異がある以上魔術と関わりなく生きていく事は不可能だろうね」
切嗣「でも、魔術を扱いつつ一般人として生きる事も出来る。僕と違って未来に満ち溢れているんだ、生き方は自分で決めるといいよ」
メアリー「そっか……そうだよね」
切嗣「さて、そろそろ進もうか。何時までものんびりしている訳にはいかないからね」
メアリー「うん!」
一旦ここまで!
エンディングは近い……
一旦乙!
もう終わってしまうのか………
乙です。最後にどうなるのか読めない
乙
おつ!
乙!
ケリィ……
ガチャ
カッカッカッ……
切嗣「……これは」
メアリー「景色が一変したね」
切嗣「心情風景の変化……まさかこの空間全体が、固有結界だというのか?」
メアリー「固有結界?」
切嗣「固有結界っていうのは、己の心情風景を反映する大魔術だ。並大抵の魔術師では発動すらできない代物だ」
メアリー「そうなんだ……」
切嗣「だが、これ程の固有結界の使い手となると……」
切嗣「(これ程の固有結界、今までの手がかり……)」
切嗣「(僕の予想が正しければ、この固有結界はワイズ・ゲルテナが作り出したもの)」
切嗣「(作り出した作品達を守る為の結界……と言った所か)」
切嗣「(だが、今は……)」
切嗣「景色が一変したが何が起こるかわからない。気を引き締めて進もう」
メアリー「うん」
切嗣「どうやら、ここでも謎解きをしなければいけなかったとはね」
メアリー「でも、あっという間に解けちゃったね」
切嗣「魔術を使ってショートカットしたからね。問題はこのおもちゃばこだ」
メアリー「この中にカギがあるって書いてあったよね。……底が見えないけど」
切嗣「どちらにせよ進むしかない。しっかり掴まっているんだ」
メアリー「うん」
バッ
ヒュウウウウ……
切嗣「(底が見えない。無事着地出来るかどうか……)」
バチッ
メアリー「きゃあ!?」パッ
切嗣「なっ……しまった!」
メアリー「きゃああああああああ!!」
切嗣「メアリィイイイイイ!!」
ドサッ
切嗣「……ぐ……ぁ…」
切嗣「(ここは……おもちゃばこの中か)」
切嗣「(メアリーと共に着地しようとした時に干渉が起きて離れ離れになったのか)」
切嗣「……!」
切嗣「(薔薇がない。あの時に落としたか。メアリーも見当たらない)」
切嗣「悩んでいる暇はない。早くメアリーと薔薇を探さないと」
メアリー「……ぅ……ん」
切嗣「メアリー!」
メアリー「あ……切嗣」
切嗣「メアリー、ケガはないか?薔薇はちゃんと持っているかい?」
メアリー「うん、私は平気。薔薇もちゃんと持ってるよ」スッ
切嗣「そうか……よかった」
ガタッ
切嗣「!!」スッ
メアリー「きゃあ!?き、切嗣!?何で急にお姫様抱っこ……」
切嗣「奴らが一斉に動きだした。全力で走るからしっかり掴まっていなさい」
メアリー「う、うん!」ギュッ
切嗣「(数が多い、出口も遠い。切り抜けるには……)タイムアルター、トリプルアクセル!!」ダッ
切嗣「はぁ…………はぁ…………ぐっ」
メアリー「き、切嗣……大丈夫!?」
切嗣「大丈夫……だ…………魔術の、反動が……返ってきている、だけだから」
メアリー「ほ、本当に?死んじゃったりしないよね?」
切嗣「…………大丈夫だよ、メアリー」
スキ……キライ……
切嗣「…………」
切嗣「先に行ってなさい、僕は少しここで休むから」
メアリー「え……でも」
切嗣「いいから。僕はしばらく動けそうにないからね」
切嗣「無事外に出たら、このチケットを使って飛行機に乗るんだ」
切嗣「空港までの道のりはこの地図に記してある」
切嗣「出来れば娘を取り戻して欲しいけど、今の君では無理だからね」
切嗣「だから、飛行機に乗って日本に行って、そしたらここに記された場所に向かなさい」
切嗣「そこに、僕の義息子がいる……出来れば、仲よくしてあげてほしい」
メアリー「切嗣……そんな遺言みたいに言わないで」
切嗣「……ごめんね」
メアリー「やだ、絶対に嫌!こんな別れ嫌!!」グッ
メアリー「私が、背負う。私が切嗣を背負って一緒に脱出する。だから……!!」
切嗣「メアリー……」
スキ……キライ……
切嗣「(ごめんよ……どうやら、僕は……)」
切嗣「…………」
一旦ここまで!
次回、最終回……!!
良いところで切るなあ…
続きは明日?
ここで切るとは………乙!
乙
メアリー「はぁ……はぁ……ここ、は?」
切嗣「……どうやら、この部屋には特に何もなさそうだね」
メアリー「うん……あれ?」
切嗣「……?」
メアリー「奥に何かある。なんだろう?」トコトコ
切嗣「あれは……絵画の欠片?ほとんど燃えてしまっているから断定はできないが」
メアリー「これ、なん…………ぁ……!!」ガクッ
切嗣「メアリー、どうしたん……!!」
メアリー「ぐ……ぁ……頭に……頭が!!」
切嗣「メアリー、しっかりしろメア……っ!」ガクッ
メアリー「ぁぐ……頭に、次々と……見た事ある、光景が……!!」
メアリー「これ……は……私……の……?」
絵空事の世界
閉ざされたその空間の中で、私はずっと外に憧れていた。
外の世界には私の知らないものがたくさんある。
外に行きたいけど、外に出るには他の人と入れ替わりでなければ出る事ができない。
だから私は、私以外の人がここに来るのを待った。
ひたすら待って、それで……
イヴとギャリーが迷い込んで来た。
イヴとお友達になって、仲よくなった。
でも、ギャリーが私の正体をバラして外で一緒に仲良く暮らす夢は砕け散った。
イヴを連れて行かれた後も、なんとかイヴと一緒に脱出できないかとあがいた。
けど、だめだった。
拒絶されて、絵を燃やされて……私は、そのまま燃え尽きた。
メアリー「あ…………あぁ…………嫌」
メアリー「嫌……嫌ぁああああああああああああああああああああ!!」
メアリー「私は、私……もう、私燃えて、燃えてなくなって」
メアリー「じゃあここにいる私は、何?私は燃えてなくなったのに、どうしてここに?」
メアリー「なんで?私は……でも……じゃあ……なんで」
切嗣「メアリー!!」ガシッ
メアリー「ぁ……」
切嗣「メアリー、落ち着くんだ」
メアリー「切……嗣?」
切嗣「君は今ここにいる。僕が保証する。だからまずは落ち着こう」ギュッ
メアリー「でも……私」
切嗣「確かに、今の君は残り火のような存在かもしれない。外に出ても長く生きられないかもしれない」
切嗣「それでも、僕と違って君には未来がある」
切嗣「君がなんであろうと、メアリーはメアリーだ」
切嗣「だから……自棄にならずに、前を向いて生きて欲しい」
メアリー「…………わた、し……私……っ」グスッ
切嗣「……落ち着いたかい?」
メアリー「……うん」
切嗣「……記憶が戻ったんだね?」
メアリー「……うん」
切嗣「……そうか」
メアリー「ねぇ切嗣、やっぱり外には貴方が出なきゃだめよ」
切嗣「……どうして、そう思うんだい?」
メアリー「私、知っちゃったの。私が今生きている事自体奇跡で、何時消えてもおかしくないって」
メアリー「そんな私が外に出るより、切嗣が外に出て子供達と一緒にいてあげた方がずっといいわ」
切嗣「……君は、それでいいのかい?」
メアリー「…………私だって、外に出たいけど」
メアリー「私は……拒絶された」
メアリー「外に出ても、きっと……」
切嗣「…………」
メアリー「……行こう、切嗣。外の世界はもうすぐよ」
メアリー「……見えた、外の世界へつながる絵画」
切嗣「……これが、元の場所に……つながる……出口」
メアリー「……とうとうここまで来たのね」
切嗣「……そう、だね」
メアリー「ここに辿り着くまでに色々あったね」
切嗣「あぁ…………色々と……あった」
メアリー「私、切嗣と出会えてよかった。貴方がいなかったらずっと恨みを抱いていたかもしれない」
切嗣「そうか……なら、よかった……かな」
メアリー「……」
切嗣「……」
メアリー「お別れだね、切嗣」
切嗣「そうだね」
メアリー「貴方との思い出は、消えるまでの間大事にとっておくわ。だから、切嗣も私の事絶対忘れないでね」
切嗣「あぁ、約束する。……けど、その前にこれを渡そう」スッ
メアリー「これ、は?」
切嗣「僕からのお守りだよ。それと、選別の品だ」
メアリー「切嗣……ありがとう」
切嗣「大事に、使うんだよ」
メアリー「うん……そろそろ、行かないと絵が閉じちゃうね」
切嗣「そうだね……ちなみに、どうしたら外の世界に出られるんだい?」
メアリー「絵画に飛び込めば外に出られるわ。飛び込むだけでいい」
切嗣「そうか…………わかった」
メアリー「……外に出たら、娘を取り戻せるといいね」
切嗣「…………」
メアリー「…………」
切嗣「……それじゃあ、お別れだ」
メアリー「うん……元気でね」
切嗣「あぁ……そうだね」ヒョイッ
メアリー「ふぇ?」
切嗣「外には君が出るんだ。未来の無い僕よりも、少しでも未来を生きる権利がある君がね」
メアリー「な、なんで!?いつ消えてもおかしくない私より切嗣が出た方が……!!」
スゥ……
切嗣「(絵が閉じる。時間がない!)」ブンッ
メアリー「きゃあ!?」スゥッ
切嗣「ごめんね、メアリー。僕はどちらにせよ生きる事ができないんだ」ガクッ
切嗣「(さっきから増している痛みと息苦しさ。恐らく、薔薇をむしられているんだろう)」
切嗣「(それに僕は、聖杯の泥に侵されている……もう余命幾ばくもない)」
切嗣「(同じ何時死んでもおかしくない身なら……責めてあの娘に外を楽しんで欲しい)」
切嗣「(そんなエゴだけど……許してほしい)」スッ
切嗣「(絵はやはり通れないか……どうやら、この結界を維持する為の人柱力が一人は留まらないといけないらしい)」ペタ……
切嗣「(でも、あの娘なら……そうだな、あの娘なら士郎とも仲よくしてくれる)」
切嗣「(それに、あの娘が成長すれば……僕に成し遂げられなかったイリヤの奪還も果たしてくれるかもしれない)」
切嗣「(そう思えば、少しは安心出来る……かな)」ドサッ
切嗣「(安心したら……眠く……なって…………)」
切嗣「…………」
メアリー「ぅ……ん……ここ、は?」
ワイワイガヤガヤ
メアリー「……外の、世界?」
メアリー「…………私、出られたんだ」
メアリー「本当に……外に」
メアリー「……」
メアリー「!!」ガバッ
メアリー「そうだ、切嗣! 切嗣はどこ!?」キョロキョロ
メアリー「切嗣……まさか」ダッ
メアリー「……忘れられた、肖像」
メアリー「間違い無い……これ、切嗣だ」
メアリー「やっぱり……私の、代わりに」
メアリー「なんでよ……なんでなのよ」グスッ
メアリー「なんで切嗣が……身代わりになるのよ」グスッヒック
メアリー「短い間しか生きられない私なんかの為に……どうして」
メアリー「どう……し……て……」
メアリー「ぐすっ……うわぁああああああああああああああああああああああああああああ!!」
こうして、私は外に出る事が出来た。
切嗣という、私に外で生きる術を教えてくれた人のおかげで。
あの人が何を思って私を外に出してくれたのかはわからない。
けど、外に出たという事はあの人が身代わりで残ったという事。
悲しいけど、あの人が代わりに残ってくれた以上外に出た私は立ち止まっているわけにはいかない。
メアリー「……修行しよう。魔術師として成長して、立派な魔法使いになって……そしたら、切嗣を助けに戻るんだ」
後に彼女は様々な怪異と遭遇し、やがて第五次聖杯戦争に巻き込まれ、切嗣の実娘と遭遇し……そして英霊へと至るが、それはまた別の話。
切嗣とメアリーの出会いの話は、ここで終わりである。
くぅ疲これにて完結です!
短めのSSでしたが読んでいただきありがとうございました。
ついでに前作品の宣伝。尚、当作品とは何の関連性もありません。
イリヤ「暇だからキリツグに会いに日本に行く」
イリヤ「暇だからキリツグを追いかけて日本に行く」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1414685418/)
イリヤ「暇だからキリツグに会いに日本に行く」ウェイバー「後編」
イリヤ「暇だからキリツグを追いかけて日本に行く」ウェイバー「後編」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1415320550/)
乙
面白かった
両方ともリアルタイムで見てたよ
乙乙
その作者の人だったのか
乙
過去作もこれから見てくるよ
乙です!しかしイリヤ旅行の人だとは気づかなかった…
乙でした
壁画に耳ありジョージにメアリー…
おつおつ!
あの作品の作者だったのか、楽しませてもらった!
タイトルに惹かれてみてよかった、面白かったよお疲れ様!
乙乙!面白かった!
その別のお話も見たいのですがねぇ・・
あんただったのか。おもしろかったぜ。おつ
この世界の士郎はケリィに願いを託されてないし正義の味方になることはないかな
今追いついた乙
出来ればメアリーとイリアが邂逅して切嗣助けに行く話も見たい。
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません