【すずね☆マギカSS】カガリ「change my mind」 (26)

・地の文だらけ

・すずマギ三巻までの読了推奨

・過去とキャラに関する妄想オリジナル設定多量

・序盤キス描写とかがあるので注意

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~☆

 ――ママが死んだ。

 その事実を突然知らされたとき、私は、自分も彼女と一緒に死んでしまったような気持ちになった。
それどころか、時間が経つにつれて、いっそこの世に生まれてこなかった方がよかった、とさえ思うようになった。

 生前のママは、私の双子の妹であるマツリにことさら深い愛情を注いでいた。
マツリは、生まれつき目が見えない、親にとって実に手のかかる子供だった。そして、誰の目から見ても、純粋に良い子だった。

 彼女は、笑顔がお日さまみたいに朗らかな子供だった。
彼女に面と向かって笑われると「笑顔なんて見たことないはずなのに……」と大人たちは感動するか、痛ましい顔になるかする。

 これは、私以外知らないはずのことだけど、彼女の笑顔は、私が笑ってるとき、ほっぺを触らせてあげたりして生まれたものなのだ。
マツリ本人も、きっと知らない。私が彼女に笑顔を教えてあげたのは、私たちが凄く小さいころだった。だから、覚えてない。知らない。

 私は、マツリのことを可愛いと思っていた。妹として、大好きだと思っていた。良い子だと思っていた。だけれども、妬んでもいた。
なんて不幸な子供。両親はそういう素振りを見せつつ、せめて私たちは、と彼女ばかりを一生懸命甘やかすのだ。



「お姉ちゃんでしょ、我慢しなさい」


 ママやパパがそう言うとき、その頭の中にあったのは、マツリは目が見えないことと、マツリが良い子であること、だったと思う。
別に、マツリ本人がそういう贔屓を期待したわけではなかった。彼女は、私が知っている限り、一番の良い子だったから。

 マツリは、両目に関して自分が不運だとは一応思っていたようだけど、私や両親、そういう周囲の手助けを受け、充分満足して生きていた。
目が見えないことと、楽しみや喜びを見つけられるかどうかは、関係ないと感じていた。

 一方私はといえば、良く言えば年の割にとても優秀な幼子、悪く言えばませた小生意気なガキ、だったと思う。
せめて頭の中身くらいマツリに勝ちたいと願っていた。良い子って価値を比べあっても絶対勝てない。だったら、優秀さを見せつけて、勝つ。

 マツリは目が見えない。だから、目で見ること、それを感じそこから学ぶことでは、無条件で勝つことができた。
だから私は相当小さいころから、率先して文字を読む努力を始めたし、それが好きだった。

 音楽や、おいしい物を食べることとかは、あまり好きじゃなかった。どうしてもマツリと感性に差が出て、負けてしまうから。

 でも、それでも、私は本当にマツリのことが、好きだった。

すずマギSS始めてみる期待


 何かでマツリに負けて、私は悔しくてたまらなくなる。
そうすると、たまに苛立ちを抑えきれず、彼女に辛く当たってしまう。
しかし、しばらくが経つと、決まって自分からマツリの元へ行って、一緒に絵本を読もうと言った。

 そう言うとき読むのは、点字の本か、普通の文字の本か、その時々で違っていた。
点字のときは、マツリの右手に手のひらを乗っけて、一緒に点字をなぞった。マツリが声を出して、私がその後に続く。
普通の文字の本のときは、私が目で読む。そして、声を出して、マツリがその後に続く。

 マツリの右手に手を乗っけるとき、いつもドキドキした。汗ばんでいたら嫌だから、服の裾で拭いてから乗せたものだ。
私は、女の子が好きだった。声だったり、あの体の線だったり、触り心地だったり、雰囲気だったり。

 私が女の子を好きなのは、マツリに限った話ではなかったけれど、心にざわつきを感じる際には、いつもいつも同じ罪悪感が伴った。
そういうとき、思い出すのはマツリの顔だった。彼女はあんなに良い子なのに、私はまるで何かに呪われているようだ、と。

 マツリじゃなくて、私の目が見えなかった方が、みんな喜んだんじゃないか? 成長するにつれ、そう考えることが徐々に増えて、辛かった。
そのぶん私は、優秀になって、両親にマツリ以上に認めてもらおうと躍起になったけど、結局失敗し通しだった。


 両親には、優れた子よりも、手がかかって良い子であるマツリの方が、可愛がり甲斐があったのだ。
もちろん、彼らは私たち両方を可愛いと思ってる。それはわかってた。
でも、それだけじゃ、私にとっては全然足らなかった。

 私は、自分は生きてるんだ、とわかりやすく感じるための意味を当時強く欲していた。
私とマツリの外見は、まさに瓜二つと言うにふさわしい似方をしていた。だけど、私と違って、マツリは良い子だった。
だから私も何か、彼女みたいな私固有の価値が欲しい、と思った。

 にもかかわらず、ママが、私以上にマツリを可愛がったままポックリ不意に死んでしまった。
私は知った。これで、マツリに最後まで勝てなかったことが一つ、できてしまった、と。

 ママが死んで、私は、単純にとても悲しかった。もう会えないのがとても辛かった。
そして、マツリに負けたことが、とても悔しかった。

 私は、どうしようもなく良い子じゃない。それを生まれてこの日ほど実感したことはなかった。
ふと隣のマツリを見ると、彼女は無心でただ悲しんで泣いていた。


 あれは、ママが死んだと知らされた日、それともその次の日か、明後日だったか、数日後だったか。

 そこら辺はよく覚えてないけど、私は夜、パパが眠ったことを確認してから、マツリの寝室にこっそり忍び入った。
当時、普段からべったりだった私たちは、自立心を育てるとかなんとか、夜一人で寝る訓練をさせられていた。

 その夜、雨が降っていたか、降っていなかったか。記憶はない。私は、マツリのベッドに潜り込んだ。
すると、マツリの私と同じく小さい両手が、私の髪や、肩、腕、手に触れた。私だってことを確かめているのだ。


「どうしたの……?」


小さい声で、マツリが言った。私は黙って彼女を抱きしめた。私は震えていた。


「大丈夫だよ……」


 そう耳元で囁いて、マツリが私を撫でてくれた。ああ、なんて良い子なんだろう。
私は、身体を密着させた状態で、彼女のパジャマのお腹を手探りして、すっと手を服の中に入れた。



「く、くすぐったい」


 彼女は、すぐに身をよじり始めた。マツリは目が見えないから、触ったり触られたりにかかわる体の感覚が人よりも敏感だった。
私は彼女のもぞもぞに一切構うことなく、手を服の中で遊ばせた後――

 彼女が私の行為を本気で変に思い始める前に、一気に指をズボンの中へ突っ込んだ。

 いつだったか偶然知った、男の人と女の人が好きあってるときやる行為の真似を、私はそのときマツリにやろうとしていた。
マツリがそう意味で好きだったわけじゃない。ただ、大切な双子の妹に、そういうことをするのは凄く悪いことだから、ぞくぞくしていた。

 こういうことは、私にとってはマツリじゃない誰か他の女の子にするべきことだ、とやる前からわかっていた。
これをちゃんと楽しむには、まだ私は幼すぎる、ということもちゃんとわかっていた。
しかし私は、これがとっても悪くて、普通じゃないことだから、凄く興奮していたし、やるつもりだった。


「どうしたの、カガリ」

 
 マツリが言った。純粋に、私のことを心配していた。


 私は唇を噛みしめて、それから彼女の首筋にキスをした。
吸ってやった。そして、またぐらの際どいところをさわさわと触る。
何が起こっているのかよくわからないにせよ、きっとそろそろ彼女は不安や恐怖を覚えるはずだった。

「ねえ、大丈夫……?」


 依然として人の心配を続けるマツリ。

 私は、苛立って、言葉の次を塞ぐように、問答無用で彼女の唇に自らの唇を重ねた。
鼻と鼻をくっつけて、そして舌を入れてみようとしたが、上手く入れられなかった。

 もぞもぞと自分の身体の下で微かにうごめくマツリの身体を、ベッドに押さえつける。
そうしていると、マツリのすべてを支配したようで、気分が良かった。思う存分堪能したあと、唇を離す。
終わった瞬間、達成感めいたものがあったことを覚えている。

 マツリの反応を、私は待った。



「大丈夫だよ」


 マツリは震えながら、私の背中に両腕を回し抱きしめて、肩に頬をそっとのせてきた。

 私は抵抗した。なのに、振りほどけなかった。
このときほど、いっそ生まれてこなければよかったのに、という自己嫌悪を感じたことはそれまでなかった。

 もう、取り返しがつかない。

 暴れる私に構わず、マツリは言った。


「一緒に寝よ……? 一緒に寝たら、怖くないよ……」


 ポン、ポン、と背中を数度、叩かれる。

 私は、マツリに言われるまま、素直に彼女と一緒に眠った。
一緒に眠ったせいで、かえって心が苦しかったけど、ずっとずっと黙っていた。
マツリも、その夜のことについて、それから一度も口にすることはなかった。

 私は、自分が心の底まで悪い子にはなれない、ということを初めてその夜知った。

今日はここまで

三巻発売されたら、元からマツリ主人公で何かすずマギSS書きたいなとは思ってたけど、こっちからまず先に片付ける。

すずマギ読んでてカガリのキャラというかバックボーンにちょっとついていけなかったので
過去こんな感じだったんじゃね? ってあえてこじらせた妄想した結果というか

おーつ


すずマギSSは初めて見るな。
期待

>>3 九行目 訂正

×だから私は相当小さいころから、率先して文字を読む努力を始めたし、それが好きだった。

○私は、相当小さいころから、誰から言われるでもなしに文字を理解する努力を始めたし、それが好きだった。

~☆

 ママが死んだという事実を、家族三人がようやく現実のものとして受け止めつつあった頃だ。
美琴椿さんという家政婦さんを、突如パパは雇った。

 彼女を初めて見て私がまず抱いた印象は、ママに似てる、だった。
顔つき、髪の質感、身体の線、透明な凛とした声……。

 私とマツリが椿と外で一緒にいるとき、まったくの第三者は、私たち三人を血の繋がった姉妹だと判断していたかもしれない。
しかしながら、彼女と出会ってすぐの私は、パパはママからこの人に乗り換えようとしてるんじゃないか、なんて疑って穏やかではなかった。

 ママより若い。綺麗。家事は完璧。このままじゃ、死んでしまったママの居場所がなくなる、と私は思った。
私はママを椿から守ろうとした。家政婦として子供たちとの仲が上手くいかなければ、パパもお付き合いや結婚はしないだろう、そう考えた。

 それとも、私こそが、邪魔者として家族から切り捨てられるだろうか? パパは、私よりも家政婦を選ぶだろうか?
絶対にありえない、と考えることは私にはできなかった。それでも私は、これが私のやるべきことなんだと信じて、抵抗した。


 けれど椿は、そんな意地の悪い子供だった私に対してであっても、いつも優しかった。
例外なく、マツリと対等に扱ってくれた。それこそ私が、生まれてこのかた欲してやまなかったことそのもの。

 だというのに、私は彼女にそうやって優しくされると、心が嫌な動きをして、不快になった。
心が動くと、まるで、死んだママを裏切っているように感じてしまう。

 私が自分から、彼女のことを新しいママとして見てしまっている気分だった。
事実、椿はママの生まれ変わりなんじゃないか、時々そういう突拍子のない思いに取りつかれることすらあった。

 年齢から考えて、そんなはずはない。ありえない。
ちゃんと頭ではわかっているのだけれど、どこかにそれは正しいと思いたがっている私がいた。

 すごく、イライラした。

 一方、マツリは私と違って良い子だったから、ツバキとすぐに仲良くなった。
毎日甘えて、抱きしめてもらっていた。あの笑顔で、椿に笑いかけていた。

 私は、マツリと一緒にいることすら、ままならなくなりつつあった。
マツリといると、椿と顔を合わせることになるからだ。

 すごくすごく、イライラした。


 色々と荒れていたせいで、家族の輪から自然に浮いていくのが肌でわかって、日々が辛かった。
私の疑念は間違っているんだろう、ということもそろそろわかり始めていた。

 パパは、椿とそういう関係になるつもりはない。パパの最愛の人はいまだにママだった。
ただ、私たち二人の心の穴が少しでも早く埋まるようにと、そのために絶好の人材を用意しただけ。

 その頃、ポツリ、ポツリ、こんなことを思った。

 もう死んでしまったママに、なんでこんな無意味な義理立てをしているんだろう。
ママは、私が幸せになることを望んでるはずで、パパにとって、椿はただの家政婦。
なら、私が椿と仲良くしない理由なんて、本当はないはずじゃないか。

 でも、現に私は椿とは仲良くできていない。ママに対して、言い知れぬ後ろめたい感情もある。
後ろめたいということは、私はもう既に心のどこかで、椿を新しいママだと見てしまっているのかもしれない。

 私が椿と仲良くするのを妨げる、チクチク鋭い棘となっているものは、つまりこういうことだった。

 ――私はママを、ママとしてはもう見てないってこと?


 それからイライラする日々がとんとんと続き、無意味に私は傷つけて、傷つけられて、とある日のことだ。
夜、椿が帰り際に機会を見つけて、私ただ一人を招き外へと連れ出した。

 椿は、

「外にちょっと来てくれませんか」

 と言った。

 私は、

「うん」

 と答えた。

 いつもみたいな不躾な態度で断ろうと思えばできたはずだけど、そのときの私は、たまたま他に考え事をしていたのだった。
だけど、具体的に何を考えていたのかは、ちょっと忘れてしまった。

 玄関を出て、壁に沿ってすぐのところ。我が家の窓からの明かりが、私たち二人を照らしていた。


 私と向かい合って立った椿は、単刀直入に言った。


「私と、どうして打ち解けてくれないのか、教えてくれませんか?
どこか私に悪いところがあるなら、私、頑張って治しますから」


 打ち解けない理由? あなたが私のママじゃないから、嫌なんです。
私はそう言おうとして、やめた。これじゃ私は椿にママになって欲しいみたいだった。

 私は何も言わない。椿は、腰を曲げて私に目線を合わせてきた。
目と目が合う。そのときまで、私は彼女の顔を長々とまともに見た覚えがなかった。

 彼女を見ていると、嫌でもママを彷彿とするから、ちょっと見たら、すぐに目を逸らしてしまっていた。
だけどこうしてその顔は近くで改めて眺めると、似てはいるけれど、やっぱりママとはだいぶ違っていた。

 ママとは違うとわかると、ちょっとだけほっとした。
それでも見続けるのは耐えられなくて、すこし視線を下げた。

 すると服の首元から覗く鎖骨が、ふと、私の視線を吸い寄せる。
その色白さとなだらかな起伏が、どこか艶めかしく見えた。首元を見ただけなのに、ソワソワした気持ちになる。

 ママも綺麗な人だったけど、ママに対しては、感じたことのない気持ちだった。



「なんでも……?」

「ええ、できることならなんでも」

「じゃあ、キスしてよ」


 私は言った。試すつもりだった。

 どうして「キスして」だなんて無茶苦茶を言い出す気持ちになったのか、これだという踏ん切りは、今となってはもうよくわからない。
でも、その一因が美しい鎖骨に見惚れたことであるのは確かで、もしかしたら、理由としてはそれで充分なのかもしれない。


「え?」

「私、女の子だけど、椿のことがそういう意味で好きなの。だから、キスして」


 椿は目に見えて、困った顔をした。急に何を言い出すんだろう、この子は、って顔。
でも、できることは何でもするって言葉は守ってくれて、私のおでこにキスしてくれた。嫌な顔一つせずに。

――大人のキス。

 そういう重大な意味を持つキスじゃないのは百も承知だったけど、椿からキスをされて、私は間違いなくドキドキしていた。
今の私、きっと顔が赤いだろう、と思った。


「……椿、家に入ろう。ご飯、食べたい」


 そう言って、答えも聞かず、玄関に向かった。後ろで、椿が驚いた顔をしたのが、目に見えるようだ。
それまでいつも私は、彼女を呼ばざるをえないとき、美琴さん、と一々「さん」を強調して呼んでいた。

 玄関前で、彼女を待つ。


「わかりました。何が食べたいですか?」


 椿がついてきた。


「なんでもいいよ」


 椿が今日まで作ってくれた料理、全部美味しかったから。
その言葉は口に出して言えなかったけど、なんだか見透かされているような気がした。

 私は顔を下向けていた。
だけど上を見れば、彼女が私の方へあの柔和な笑みをニコニコと浮かべていた、かもしれない。

 二人で、家に入った。

 その日から、とんとん、とん、と私は椿と仲良くなっていた。
椿と仲良くなると、家族の輪にもまた馴染めるようになって、マツリとの楽しい毎日が戻ってきた。パパは、優しかった。

 時折突っぱねた態度を椿にとってしまうこともあった。
しかし、それを私の中から打ち消して、素直に謝るための魔法もあった。

 椿は、ママじゃない。


 そう思えば思うほど、椿と話すのが、彼女を見つめるのが、楽になっていくのがわかった。
それに、椿のおかげで、私の足りなかった心のピースが、欠けたぶんも含め毎日徐々に埋められていくことも実感できた。

 l心の隙間を埋められていくにつれ、これが、私が幸せでいることが、天国のママが今も望んでいることだ。
そう真剣に思えるように、なりつつあった。

 でも、それでも、心のどこかでこう思うこともしばしばあったのは、覚えてる。



 ――私は、死んだママじゃなくて、椿のことを選んだんだ、と。

今日はここまで

昨日先を書こうと思ったら全然書けなかったので
一昨日辺り書き始め作ったストックがもうなくなってしまった

あと、投稿というか文章の手直しもっと素早くやれるようになりたい

べつにすずねマギカが好きじゃないってことは分かった

カガリちゃんのおなか暖めたい(意訳:すずマギss来た!期待してますね)

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