美女しかいない世界のありふれた日常 (67)
ピピピピピピピピピピ。冷え切った空気に響く目覚まし時計の音。
気怠い体に鞭を打ち、重たい瞼をこじ開け、今何時なのかを確認する。
「んー……」
七時二十分。もう少し寝ててもよさそうだ。
そして私はゆっくりと浅い眠りについた。
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~~~~~~~
『へー、立花さんて結構面白い人だったんだ』
『結構って何さ』
『じゃあ、以外、に』
『あ、うん、そっか……』
『ま、これからよろしくー』
『うん』
『――起きて』
『え?』
~~~~~~~
「キリ、起きて」
ゆさゆさと私の体が母に揺すられた。
「うーん……」
「あら、今日は素直に起きるのね」
変な夢を見た。
友人と仲のいいあの子と仲良くなる夢。意識したことは無いが、可愛いな、と思っているあの子。
もしかしたら、というか多分、友人と付き合っているだろうから、なんだか悪い気分がした。
なんて呟きながら時計を見ると七時五十分と表示されていた。
うちの学校は八時三十五分に門を越えていないと遅刻になる。
私は自転車通学で、のんびり行くと十五分以内に着いて、急いで行くと十分ほどで着く。
体力が無いので急ぐのはごめんだ。早めに家を出よう。
制服に着替えて洗面台へ。
口をゆすいだ後、髪の毛を整え、顔を洗ってからリビングに向かう。
「朝ごはん。おにぎりでいい?」
母がせわしく動きながら私に尋ねた。
「うん」
朝にパンを食べると気持ちが悪くなるという謎の体質を持っているのでおにぎりは有り難い。
「おはよう」
新聞を読みながら私に挨拶をしたのはママ。
母とママは違う人なのであしからず。
「うん、おはよう」
「楓もう行っちゃったわよ」
「んー」
寝起きなのでおにぎりが食べづらい。
まだ数分は余裕があるのでゆっくり食べよう。
何気なくテレビを付けて、朝の情報番組を見てみた。
人気のアナウンサーと有名な司会者、その他ゲストが出演している。
『痴漢交際が年々増加しているようです』
『へえー』
『痴漢は犯罪よ。もっと他の出会い方をして欲しいわ』
『え~、でもあたしは全然OKですよ~』
『いくらなんでも美人しかいないからって、そんなの駄目よ』
『ですね。中身が大事なんですよ』
『まあタイプじゃなかったら即通報しますけどね~」
『いやそうじゃなくて……』
痴漢。私は自転車通学だから縁の無い話題だ。
でももしいずれ痴漢に会ったらどうしよう。そして万が一、有り得ないけど、そいつと付き合うことになったらどうしよう。
何故か不安になってきた。
「そろそろ仕事に行くよ」
「あら、もう行くのね……」
「ふふ、そんな寂しい顔しないで」
「ごめんなさい……」
母とママが抱き合ってキスをし始めた。教育上悪いので説教した。
少し長引いたので急ぐ羽目になってしまった。最悪。
~~~~~~~~~~~~~
「はぁ、はぁ、おはようございます……」
「おはようございます」
校門に立っている教師に挨拶して時計を確認する。
八時三十四分。危なかった。
自転車をとめて下駄箱へ。
「うわ」
見たくない二人を見てしまった。
私の元友人とその彼女(一応言うが夢の子ではない)。
なぜ元なのかというと、その彼女に束縛され、人との交流を禁止されているからだ。
それでも元友人はそいつの事が好きらしい。呆れる。
なるべく見ないように、気づかれないようにして教室へ。
「よっ」
席に着いて荷物を下ろしていると親友がやってきた。
「何」
「何じゃないでしょー。お、は、よ、う」
「おーはーよーうー」
「うざっ」
「うざいのは新藤でしょ」
心地いい。こうやってからかい合うのがとても楽しい。
「ていうか一時限目の英語、単語テストあるじゃん」
「あ、ヤバ」
残り三分ほどしかない。急いで鞄から単語帳を取り出して机に置く。
ページを開き、頭を近づけて一緒に見る。
「えーと、づんぷ……」
「ダンプでしょ」
「ありゃ、そう読むのか」
顔が近いのでこいつの吐息が鼻に来る。甘い匂い。
こんな奴でも綺麗な顔してるんだもんな、なんて思いながら眺める。
薄いピンク色の可愛らしい唇。整った鼻、長い睫とこっちを見ている目。
「あ」
「え、えっと、何で私の顔見てんの……?」
「…目糞ついてるよ」
「うお、マジか」
危なかった。勘違いされたら困る。友達から恋人なんてごめんだ。
というか
「顔赤くなってるよ」
「え、嘘」
チャイムの音が学校内にこだまする。皆急いで自分の席に帰っていく。もちろん新藤も。
そしてそのまま悶々としながら授業を受けた。
ちなみに単語テストは満点だった。
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お昼休み。人と一緒に食べるのがあまり好きじゃない私は自分の席で一人昼食をとる。
「うわっヤバ! エロ!」
「ちょ、あたしにも見せて見せて!」
「おぉ……」
スクールカースト上位のクラスメイト達が騒いでる。
またエロ本でも読んでいるのだろうか。皆で共有する意味が分からない。
昼食を食べ終えた私は暇になったのであたりを見渡す。
ほとんどがスマホをいじっている。病気か。
仕方なくスマホでクソゲーをしている新藤の席に行く。
「またしてる」
「楽しいいいい」
「可哀想に」
「何がじゃ」
「何でもない」
「殺すぞ!」
「やるの?」
「上等じゃー!」
なんて言いながらパズルをする新藤。ムカツク。
だけどすることなんかないし、じーっと新藤のパズル捌きを眺める。
けど耐えられなくなったので他の友人の席へ移動。
「ハロー」
「ハーイ」
「弁当食べるの遅いよね三人とも」
「スマホしながらだからね」
朝の夢の子の、多分、彼女である白井。なんか気まずい。
「スマホやめて勉強したら?」
「いいじゃん別に。人それぞれでしょ」
性格に難があって、かなり面倒臭い。
「木山はスマホあんまりしないよね」
と尋ねる白井。
「うん。学校には持って来ないから」
「おーさすがー、スマホする暇あったら勉強してるもんねぇ」
「真田も持ってきてないよね。勉強してるの?」
「んー? 3DSしてるー」
「ああ、そう」
三人とも中学からの同級生で割と仲のいい方だと思う。私が思うには。
余計な情報が多すぎですね。すみません…
次からは百合重視したいと思います。それではまた
いいじゃんいいじゃん
女性は美女しかいないとかじゃなくて、男性がいない世界ってこと?
はい、そうです
ええな
>>4修正です
「……何でもない何でもない……」
なんて呟きながら時計を見ると七時五十分と表示されていた。
うちの学校は八時三十五分に門を越えていないと遅刻になる。
私は自転車通学で、のんびり行くと十五分以内に着いて、急いで行くと十分ほどで着く。
体力が無いので急ぐのはごめんだ。早めに家を出よう。
はよ
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放課後、自転車置き場で新藤と暇つぶし。
「新藤、陸上部は?」
「今日は休みー」
「へえ」
「顧問の先生が出張でさ」
「自主練は?」
沈黙。
「…まあいいっしょ。多分」
「大会近いんじゃないの?」
「んー、休みも大事だよ。うん」
髪の毛をいじりながらなんともいえないような表情をする新藤。
「じゃあ遊ぶ?」
「お、いいねー! 家行っていい?」
「ん、いいよ」
「んじゃまずコンビニ寄って食べ物買ってこーよ」
「自分の分は自分で買ってね」
「わ、わかってるわい」
マフラーを巻いた後、自転車に跨ってペダルに足を掛ける。
新藤も急いで自分の自転車を持ってくる。その途端
「コンビニまで競争な!」
「ちょっ、待って!」
「私が勝ったら奢れよー!」
結局そのあとコンビニで奢らされた。
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「お邪魔しまーす」
新藤を私の部屋に行かせた後、リビングへ行く。楓が帰ってきてるはずだから、友達が遊びに来たと伝えておこう。
ドアを開けると、楓がヨガをしていてる最中だった。
「おかえりー」
「ん」
「誰か来たの?」
信じられないような体勢で私にそう尋ねる楓。
「うん。新藤」
「え、茜先輩? 久しぶりじゃん」
「部活休みだったから」
「へえー」
後は楓の学校での出来事を少し聞いたりした。機嫌が良くてよかった。
サイダーをコップに入れて持っていく。確かあいつサイダー好きだったはず。
お盆に乗せてゆっくり慎重に階段を上る。こういう時一階の部屋が良かったとか思う。
階段を上って少し廊下を歩いて行くと楓の部屋がある。「かえで」と書かれた可愛らしいプレートがドアに張ってある。
その横にある私の部屋のドアにももちろん張られている。「キリカ」と。友達が家に来るたびに毎回何故か恥ずかしくなる。
「飲み物持ってきた」
「お、サンキュー!」
なんて言いながら私のパソコンを勝手に使用している。
「何してんの」
「んふふ」
履歴を見ていたようだ。終わった。
「ああああああああああああああああああああああ!!!!」
「おっぱい大好きなのかーそうかー」
「やめて…!」
「いやー、立花もエロイこと興味あったんだね。なんか安心したわー」
「…死ね……」
最悪だ。よりにもよってこんな奴に。しかもフェチまで知られた。
もう縁切りたい。あ、でも言いふらされたら御仕舞だ。その時は殺してやる。
「まっ、いいじゃん! 思春期の女子がこれくらい見てないと不健全だよ」
ムカツク。ぶん殴ろうと思った、けど、良い事を思いついた。
「……新藤は? 新藤は何フェチなの。どんなの見てんの」
硬直する新藤。動き始めたかと思うと目を泳がせ、無駄な動きをとったりしているので動揺しているように見える。
「…まあ、私は、うん、えーと……」
少し頭にきた私はすぐに
「言え」
新藤は少し考え込んだ後、堰を切ったように話し始めた。
「…ちょっと暗めで、髪の毛は黒で、人形かと思うくらい綺麗な顔で……あ、胸は平凡なサイズで……」
「え、細か」
少しだけ引いたが、ある事に気付いてしまった。
とても大事な、危険な、事。
「……もういい?」
「あ、うん…」
微妙な空気が流れる。新藤の顔が赤に染まってきている。
どうしようもない私は冗談で空気を良くしようと考える。
そして、つい言ってしまった。
「…それ、ほぼ私に当てはまるよ。そんな綺麗じゃないけどさ」
沈黙。沈黙。沈黙。
伏し目がちの新藤が口を開こうとしている。だが思いとどまっているのか、新藤の口は少し開いたり閉じたりしている。
それを何度か繰り返すと、ついに口を開いた。
「……もうちょっと、胸大きくなんないかな……」
注意して聞かないと聞こえない位小さな声だった。
だけど静寂な部屋の中、それははっきりと聞こえた。
「……やめてよ」
「…うん。ごめん」
「なんか、意識するじゃん」
「ごめん」
その後もずっとごめんと繰り返す新藤。
なぜこうなってしまったのか。私は私を責めた。
ついに泣き始めた新藤。それを見た私は自責の感情が昂ぶって、本音を語り出す。
「……あー、まあ、私も結構、新藤のこと……すきだよ」
え? と顔を上げる新藤。涙と鼻水で顔がぐちゃぐちゃだ。
それが見てられなかったので、ティッシュで顔を拭いてやると、新藤も落ち着き始めたので話の続きをした。
「恋愛感情の好きってわけじゃないけどさ」
「うん」
「いや、ほんとよくわかんないけど、新藤以外の奴と付き合えないし、結婚もできないかも、なんて」
「…それって喜んでいいの?」
「んと…あくまでも友情だと私は思ってるから…」
「そっか……」
ああ、そんな顔しないで。お前は笑っている方が可愛いよ。
でもそんな顔にさせているのは私で、本当に申し訳ない。
「あーあ。ふられちまった。残念」
無理矢理笑顔を作ってみせる新藤。
もう言うしかない。こっぱずかしいけど、頑張る。
「…だからさ」
「……ん?」
「…私が新藤にメロメロになるまで努力、して」
そういった瞬間新藤の顔が明るくなった。曇り雲が消えて快晴になるように。
「私、頑張る! 頑張って私なしじゃ生きていけないくらいにしてやる!」
「望むところ」
良かった。やっぱり笑顔が一番だと心から思える。
だがこの提案は不味いんじゃないかとも同時に思った。
なんて考えている私に振動が抱きついてきた。そして一言。
「キ・リ・カ」
「……さっそく?」
「大好き」
止めろ。沸騰するくらい恥ずかしい。
「……あほの新藤」
「茜」
「…どあほの茜」
「やば、濡れたかも」
「サイッテー」
何て事を延々と三時間ほどした後、新藤、じゃなくて茜は帰った。
夕食を終えてお風呂の中、これから起こることを考えるとお湯の中なのに寒気がした。
嫌ってわけじゃないけど。
>>41 振動→新藤でお願いします
今日はここまで。急ぎ過ぎたかも…
あと、先に言っておきますが登場人物全員のパートを書くつもりです。あくまでもつもり、です…
それではまたー
全員分だと…やったぜ
いちおつ
すばらし
――――――
朝。薄暗い部屋にカーテンの隙間から白い光が差し込む。
布団の中でうずくまる私。あまりにも眠くて外に出たくない。寒いだろうし。
その状態のまま数分感、学校の事や、勉強の事、そして昨日のことを考えていたりした。
今日どんな顔して会えばいいんだろう。アプローチしてくるんだろうか。
ああもう休みたい。明日でいいだろう。今日は駄目。今日は本当に
「おきろー」
「え」
目の前に茜がいて、私を起こしてて、あれ、抱きついてきて、いつもと髪型が違ってて、え、どうなっているの?
「よっ!」
「……おはよう」
「おはよー」
~~~~~~~~~~~~
登校中。朝の出来事を問いただすと、どうやら彼女っぽいことがしたかったらしい。ていうかお前彼女じゃないだろ。
「家から三十分位かかるでしょ」
「まーね」
茜は満足そうな顔をして遠くの方を眺めた。
朝の空と澄んだ空気が彼女の横顔をより一層綺麗に見せている。
「これから毎日?」
「嫌?」
「勘弁して」
そう言うと、彼女は小さく笑ってペダルを漕ぐ足に力を入れた。
私の制止の声も無視して彼女は前へ前へ進む。綺麗な髪の毛が風になびいている。
私にはそれが何故か生き急いでいるように見えた。
いのち短し恋せよ乙女。今の彼女にはこの言葉が似合う。
~~~~~~~
午前の授業が終わって昼休みの時間。
皆自分の弁当をカバンから取り出して、友達、あるいは彼女のもとへ向かう。
仲良くおしゃべりしたりして楽しそうだ。
一方私は。
「あんた私の彼女に色目使ったでしょ」
私は今絡まれている。例の元友人の彼女、桐本さんに。
どうしてこうなったのか、教えてほしい。
「え、使ってないよ」
「嘘ばっかり。あこ、いつも貴女の方見てる」
「ないない。元友人だから、なんか見ちゃうんでしょ」
「意味わかんないんですけど」
「私も分かんないんですけど」
何て言うと桐本さんが私の耳元に口を寄せて
小さく
「殺すよ?」
とぽつりと一言。
背筋が震えた。もしかしたら本当に殺されるかもしれないという恐怖。
何て言えばいいのかどうすればいいのか分からない。頭が真っ白になった。
「おい」
「は? 何?」
茜の声。助かった。茜が何とかしてくれる。
アピールチャンスだよ。お願いします。
「色目使ったって、本当?」
信じた私が馬鹿だった。ポイント-100
そのあと何とか二人を信じさせ、許して貰えた。
ああ、弁当食べたかった。
~~~~~~~~
放課後の教室。まだ数人の生徒たちが勉強したりゲームしたりして暇を潰している。
グラウンドからは運動部の声。叫び声が聞こえたりする。何があったんだ。
これからそこに行く茜がたくましく思えた。
「んじゃ私部活行くから。また明日ね」
「ん」
帰りの挨拶はしたものの、茜はその場にとどまっている。正確に言うと私の正面で。
そして気まずそうな、寂しいような顔をしてから、それじゃあ、とだけ言って振り返る茜。
その理由を朝から知っている私はその表情と行動が面白く思えた。
「その髪型似合ってるよ」
すぐに振り返る茜。白い肌を赤く染めて、涙が溜まっていたのか、キラキラと輝いている目。
ハッとしたのか、私が少し笑っているからか、恥ずかしそうに縮こまった。
「やっぱ大好きだわ」
「そっか」
「結婚したい」
「早いわ」
「あー、結婚したい!」
周りに聞こえるくらいの大きさで言う茜。
そして私に抱きついて、頬に軽くキスをする。
何て事をしてくれたんだ。
~~~~~~~~~
あの後恥ずかしさで死にそうになりながらもなんとか帰路に着いた私は今パソコンの前でうなだれている。
「入るよー」
楓が部屋に入ってきた。ていうか入ってきてから言うな。
「おわ。どしたの」
数秒のタイムラグ。
「何でもない」
「ふーん」
その声が怪しげに聞こえた私はちらりと楓の顔を見る。
案の定気味の悪い笑顔をしていた。もしかして何か知っているのか?
「彼女さんの事? もとい、茜さんの事?」
飛び起きる私。楓の悲鳴を無視して楓を押し倒す。
「ちょ、どいて!」
「母さんとママには言わない?」
「う、うん! 言わないから! 重いって!」
重いというワードにさらにむかついたのでわざと体重をかけてやった。
これで親にばれないだろう。あの人たちにばれるとやっかいだ。絶対に馬鹿にしてくる。
その後夕食の時に母とママに質問攻めされた。楓は絶対にひっぱたこうと誓った。
今日はここまで
この二人の話が終わってから別の話書いた方が良いですかね
途中で挟んだりして良いのかな…。モチベあげたいだけですけど
ということでそれではまたー
おきに召すままにどうぞ
最高
つ、つかれた
はよ
はよ
だめか…
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