勇者「━━━━あれから長い年月が過ぎ去った。だから、今だからこそ思い出に成り果てた話をしようと思う」
勇者「僧侶と戦士と武道家と過ごした、365日の思い出を」
勇者「1日目、僕は勇者の称号と少しばかりの炉銀と数人の仲間を与えられ━━王様の命令により、世界を守るために魔王を倒す旅にでた」
勇者「あの時の僕は魔王を倒すという使命感に酔い、初めて見る国の外に胸を踊らせていた」
勇者「だが今になって気づく」
勇者「ただ繰り返されるあの日常が、どれだけ得難く、尊い物だったのかを」
勇者「2日目、近くの村でレベルを上げるため弱いモンスターを片っ端から襲った」
勇者「人を苦しめる強いモンスターには目もくれず、普通の人でも倒せる弱いモンスターをよってたかってなぶり殺した」
勇者「モンスターにだって親が/恋人が/子供がいるだろう。だけど、そんなことはどうでもよくて、ただ自分達が強くなれればそれだけでよかった」
勇者「世界を救うためには必要な事なんだと自分に言い聞かせて、手に残る"生き物を殺す"感触から目をそらした」
勇者「3日目、少しだけどレベルが上がり、金銭にも余裕ができた」
勇者「僕達は装備を整えて、次の国を目指す為に村をでた」
勇者「そして野宿を重ね、道中のモンスターを狩続け━━6日目にして漸く次の国にたどり着いた」
勇者「森の中心に城を構えた王国、その王様と国民は僕らを歓迎してくれた」
勇者「魔王を倒す勇者一行として、持て囃し、持ち上げて、歓迎してくれた」
勇者「そして僕らは勘違いしてしまったのだ」
勇者「その時点では何もしていないのに、自分達はとても凄い存在なのだと」
勇者「長旅で疲れていた僕らはその日、泥のように眠りについた」
勇者「7日目、森の国の王から依頼を受けた。近くの塔に魔物が住み着き困っている、是非勇者の力をもって倒して欲しい━━と」
勇者「僕らは即答した。喜んで承った。そしてその日から塔の攻略は始まった」
勇者「門番の魔物を倒し、ひたすら上を目指して階段を上った。塔の中で現れるモンスターを切り伏せて、屍の山を築いていった」
勇者「あぁ、そういえば僧侶がリレミトを覚えたのもここだっけ。帰り道が楽になると僕らは喜んだものさ」
勇者「塔の攻略は大変だった、搭自体は普通の単純な小さな物だったがモンスターの数が多すぎたんだ」
勇者「倒しても倒しても湧き出してくるモンスター」
勇者「8日目、溢れだすモンスターの原因を発見した。とある部屋に召喚の魔方陣があったのだ」
勇者「勇者一行/僕らを足止めするために魔王軍が用意したものだろう。僕らはそれを4人がかりで破壊した」
勇者「それから僕らは残党を狩尽くすべく、ただ無心でモンスターを倒した」
勇者「この日僕らは生き物を殺す感覚に馴れ、罪悪感を忘れた」
勇者「9日目、僕らはとうとう最上階へたどり着いた」
勇者「親玉のモンスターと対峙し、僕らは初めて上級モンスターと戦うことになった」
勇者「戦士の疾風突きで先制を取り、武道家の回し蹴りで体勢を崩し、僕の回転切りで体力を削った」
勇者「勿論僧侶だって良くやってくれた、傷付いた僕達を手早く治してくれた」
勇者「ただ、それでも━━━━親玉は強かった」
勇者「確かにダメージを与えていた筈なのに、あいつはビクともしなかった」
勇者「僕らは調子にのっていたのだ。いくら勇者といえ、旅を始めたばかりの━━━素人に毛が生えた程度の戦闘力しかないということを忘れていたのだ」
勇者「何度も床に叩きつけられ、ふと死ぬかもしれないと思った瞬間」
勇者「自分の中の何かが弾けた」
勇者「気が付いた時には親玉は死んでいた」
勇者「正直言って何が起きたのかは覚えていない。……仲間達に聞いても何も教えてくれなかった」
勇者「取り敢えずその場では追及するのを止めた、怖かったのかもしれない、何が起きたのかを知るのが」
勇者「僕らはその親玉が持っていた盗賊の鍵を手に入れると、何処と無く気まずくなりながら搭を降りた」
ふろはいる
覗いていい?
>>10
おまわりさんこいつです
>>10
男風呂を覗いて何が楽しいのか……
風呂入ったら眠くなってしまったので寝る。続きはまた後日
まだー?
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