注
初SSになるのでおみぐるしい面多々あるかと思います。
一部に独自設定があります。
このSSは>>1のプレイ回想録となります。プレイ中に艦娘とこんな会話を…みたいな妄想てんこ盛りです。
2013年4月
太平洋に出現した深海棲艦による被害が多発し、太平洋上の海路・空路がほぼ壊滅。
各国が深海凄艦に対抗するための艦娘を開発し、対応に当たったが世間、特に日本国内での注目度は高いとは言えなかった。
国内政治・経済こそ混乱したものの、東南アジア・中東のシーレーンはまだ無事だった事もあり、国内の民間人の生活自体には大した影
響も無かったのだ。
人々の興味はそれよりも意思のある少女型兵器を意図的に開発する事、その少女達を戦いに向かわせることの非人道さに集中、
国内では艦娘による深海凄艦対策への非難、しいては艦娘そのものへの非難が起こり始めており、艦娘の建造も艦娘を指揮する人材の募
集・育成も思うように捗らなかった。
私は丁度そのころ艦娘募集の張り紙を見て、応募。採用が決まり、当時唯一の艦娘の拠点である横須賀鎮守府に配属される事になった。
「アンタが私の司令官ね?さえない顔してるけど…まぁ、せいぜい頑張りなさい」
2013年5月26日。私が初めて艦娘と出会った日だった。
「アンタにはこの鎮守府近海の警戒をするよう上から指令が来てるわ。それと艦娘のイメージ向上のための宣伝活動もね」
叢雲と名乗った少女はめんどくさそうに説明をする。
「それって…俺と君の二人でかい?」
「この隊には艦娘は私しか配属されていないもの。成果に応じて新たな艦娘が配属される手はずになってるから。まあ、期待はしてない
わ、艦娘隊の司令なんて職につこうなんていう奴、マトモな人が居ないもの」
叢雲によると日本政府は当初の南西諸島海域奪還を半場諦める形で延期。それ以上に艦娘の増産と国民への周知を優先する事としたらし
い。
しかし、この当時艦娘に興味のあるものなどおらず、興味を持つ少数の物は大抵提督を非人道的な行為を行う悪、艦娘を作られただけの
殺人兵器と嫌う人が殆ど。
意思を持つ艦娘を柔軟に指揮するために100人程度の艦娘を一人の提督に預け、数千の艦娘部隊を編成、深海凄艦を撃滅すると言う計画
は見通しが立たず、そんな状況で着任する者など、興味本位で着任してすぐ逃げ出す者や、最初から艦娘への性的な行為を目的とした者
だけ、というのである。
「あなたは何日持つかしら?明日になったらさようなら、何て事はやめて欲しいわね」
「…努力するよ」
それからは哨戒と言う名の近海のマラソンと、宣伝をかねた輸送活動が毎日の日課だった。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1413383208
2013年8月
提督や艦娘達の活動の効果があったのか艦娘への批判が弱まり、提督も艦娘も増え、横須賀にしかなかった艦娘鎮守府も日本各地に設置
され始めた。
そして初めての艦娘による大規模作戦、南方海域強襲偵察作戦が開始された。
「なぁ、叢雲。俺たちはこの作戦、参加しないでいいのか?」
「その熱意は認めるわ、でもいまのこの隊の戦力で参加できると思ってる?」
「…だよな」
私たちの隊も活躍が認められ多数の艦娘が配属され、複数の隊を組んで作戦行動をとることも可能になった。
艦娘計画に反対していた野党も折れ、艦娘増産、提督の確保に多額の予算を投入する事が決定され、一気に増強。最近は提督募集者が多
過ぎて鎮守府の受け入れ態勢がままならない状態にまでなって居るらしい。
「それに提督さん、私たちの隊には沖ノ鳥海域奪還って仕事があるじゃない、忘れたの?」
「まさか、忘れてないよ瑞鶴。第一艦隊の皆と各艦隊の旗艦を集めてくれ。作戦会議をしよう」
「作戦は今までどおりに。第一艦隊が敵艦隊攻撃の中心を担い、第二艦隊は第一艦隊予備として後方警戒。第三・第四艦隊は第一艦隊不在時の鎮守府周辺の警備だ。質問は?」
「いいんじゃない?特に問題はないと思うわ」
伊勢。本部隊で初めての戦艦だ。叢雲と交代しながら第一艦隊の旗艦を務めてくれて今では一番錬度の高い主力艦になっている。
「私も問題はない。この部隊にとっては初めての決戦と言える戦いになる…腕が鳴るな」
長門。伊勢が航空戦艦になり、仕事が増えてからは最大の火力を発揮する艦隊の要だ。彼女が居なければ危なかったような戦いが何度もあった。
「一つ質問。艦載機の編成はどうするの?今までどうりに艦攻隊を主力にする?」
瑞鶴。本部隊で初めての正規空母だ、第一艦隊の航空戦力の要を担っている。
「他の鎮守府からの連絡に寄れば沖ノ鳥海域を制圧している敵艦隊には空母が多数確認されている。瑞鶴・瑞鳳共に戦闘機を多めに、瑞鶴には五二型二部隊、天山一部隊、九七式を一部隊、瑞鳳は二一型二部隊、彗星一部隊、彩雲一部隊だ」
「瑞鳳の艦爆隊で敵空母の発艦能力を奪い、瑞鶴の艦攻隊で止めを刺す、という流れを作りたい。今回の鍵は二人のチームワークだ。頼んだよ」
「いいかもね!、瑞鶴、よろしくね?」
「こちらこそ、いっそ二人で全滅させる気で行こう!」
瑞鳳。瑞鶴が最初の正規空母なら彼女は最初の空母だ。第一艦隊で一番小柄だが、しっかり物なのか瑞鶴のお姉さん分でもある。対潜・偵察・直援と正規空母の瑞鶴には手の届かないところをカバーしてくれる縁の下の力持ちだ。
「そして叢雲と摩耶だが…」
「わかってるって、戦艦が敵を叩いている中突撃して殴りこむ。だろ?」
「だな、その通りだ」
摩耶。彼女は初めての重巡洋艦だった。口が悪く最初は良く喧嘩したが、良く言えば素直な子で、他の艦娘がなかなか言いにくい事もズバッと言ってきてくれる私にとってはある意味ありがたい存在だ。
余談だが、彼女とは奇妙な縁がある。と思う。
私の祖父の出身地が、彼女の名前の元になった摩耶山の麓だというのだ。
つまり、私と彼女、両方のルーツが同じ所にあると言うわけで、艦娘の中でも一番打解けられる存在なのは正確の他にもそんな理由があるからなんだろう。
「それで、出撃時刻は?」
「明日の夜間だ。夜のうちに沖ノ鳥海域まで接近、夜明けと同時に攻撃を掛ける」
「ふふっ、いよいよ戦場ね、悪くない気分だわ」
そして叢雲。これが我が第一艦隊のメンバーだ。
ごめんなさい、改行がおかしくなっています。治して出直してきます…
横から悪いけどもうちょっと小刻みに投稿するとわかりやすくなると思うよ
応援してる
>>4
ありがとう。
こう言う場合、うまく出来たらこのスレに投下って事でいいのかな?
期待してる。頑張って
改行修正・誤字修正が終わって完成したので張って来ます
注
初SSになるのでおみぐるしい面多々あるかと思います。
一部に独自設定があります。
このSSは>>1のプレイ回想録となります。プレイ中に艦娘とこんな会話を…みたいな妄想てんこ盛りです。
2013年4月
太平洋に出現した深海棲艦による被害が多発し、太平洋上の海路・空路がほぼ壊滅。
各国が深海凄艦に対抗するための艦娘を開発し、対応に当たったが世間、特に日本国内での注目度は高いとは言えなかった。
国内政治・経済こそ混乱したものの、東南アジア・中東のシーレーンはまだ無事だった事もあり、国内の民間人の生活自体には大した影響も無かったのだ。
人々の興味はそれよりも意思のある少女型兵器を意図的に開発する事、その少女達を戦いに向かわせることの非人道さに集中、
国内では艦娘による深海凄艦対策への非難、しいては艦娘そのものへの非難が起こり始めており、艦娘の建造も艦娘を指揮する人材の募集・育成も思うように捗らなかった。
私は丁度そのころ艦娘募集の張り紙を見て、応募。採用が決まり、当時唯一の艦娘の拠点である横須賀鎮守府に配属される事になった。
「アンタが私の司令官ね?さえない顔してるけど…まぁ、せいぜい頑張りなさい」
2013年5月26日。私が初めて艦娘と出会った日だった。
「アンタにはこの鎮守府近海の警戒をするよう上から指令が来てるわ。それと艦娘のイメージ向上のための宣伝活動もね」
叢雲と名乗った少女はめんどくさそうに説明をする。
「それって…俺と君の二人でかい?」
「この隊には艦娘は私しか配属されていないもの。成果に応じて新たな艦娘が配属される手はずになってるから。まあ、期待はしてないわ、艦娘隊の司令なんて職につこうなんていう奴、マトモな人が居ないもの」
叢雲によると日本政府は当初の南西諸島海域奪還を半場諦める形で延期。それ以上に艦娘の増産と国民への周知を優先する事としたらしい。
しかし、この当時艦娘に興味のあるものなどおらず、興味を持つ少数の物は大抵提督を非人道的な行為を行う悪、艦娘を作られただけの殺人兵器と嫌う人が殆ど。
意思を持つ艦娘を柔軟に指揮するために100人程度の艦娘を一人の提督に預け、数千の艦娘部隊を編成、深海凄艦を撃滅すると言う計画は見通しが立たず、そんな状況で着任する者など、興味本位で着任してすぐ逃げ出す者や、最初から艦娘への性的な行為を目的とした者だけ、というのである。
「あなたは何日持つかしら?明日になったらさようなら、何て事はやめて欲しいわね」
「…努力するよ」
それからは哨戒と言う名の近海のマラソンと、宣伝をかねた輸送活動が毎日の日課だった。
2013年8月
提督や艦娘達の活動の効果があったのか艦娘への批判が弱まり、提督も艦娘も増え、横須賀にしかなかった艦娘鎮守府も日本各地に設置され始めた。
そして初めての艦娘による大規模作戦、南方海域強襲偵察作戦が開始された。
「なぁ、叢雲。俺たちはこの作戦、参加しないでいいのか?」
「その熱意は認めるわ、でもいまのこの隊の戦力で参加できると思ってる?」
「…だよな」
私たちの隊も活躍が認められ多数の艦娘が配属され、複数の隊を組んで作戦行動をとることも可能になった。
艦娘計画に反対していた野党も折れ、艦娘増産、提督の確保に多額の予算を投入する事が決定され、一気に増強。最近は提督募集者が多過ぎて鎮守府の受け入れ態勢がままならない状態にまでなって居るらしい。
「それに提督さん、私たちの隊には沖ノ鳥海域奪還って仕事があるじゃない、忘れたの?」
「まさか、忘れてないよ瑞鶴。第一艦隊の皆と各艦隊の旗艦を集めてくれ。作戦会議をしよう」
「作戦は今までどおりに。第一艦隊が敵艦隊攻撃の中心を担い、第二艦隊は第一艦隊予備として後方警戒。第三・第四艦隊は第一艦隊不在時の鎮守府周辺の警備だ。質問は?」
「いいんじゃない?特に問題はないと思うわ」
伊勢。本部隊で初めての戦艦だ。叢雲と交代しながら第一艦隊の旗艦を務めてくれて今では一番錬度の高い主力艦になっている。
「私も問題はない。この部隊にとっては初めての決戦と言える戦いになる…腕が鳴るな」
長門。伊勢が航空戦艦になり、仕事が増えてからは最大の火力を発揮する艦隊の要だ。彼女が居なければ危なかったような戦いが何度もあった。
「一つ質問。艦載機の編成はどうするの?今までどうりに艦攻隊を主力にする?」
瑞鶴。本部隊で初めての正規空母だ、第一艦隊の航空戦力の要を担っている。
「他の鎮守府からの連絡に寄れば沖ノ鳥海域を制圧している敵艦隊には空母が多数確認されている。瑞鶴・瑞鳳共に戦闘機を多めに、瑞鶴には五二型二部隊、天山一部隊、九七式を一部隊、瑞鳳は二一型二部隊、彗星一部隊、彩雲一部隊だ」
「瑞鳳の艦爆隊で敵空母の発艦能力を奪い、瑞鶴の艦攻隊で止めを刺す、という流れを作りたい。今回の鍵は二人のチームワークだ。頼んだよ」
「いいかもね!、瑞鶴、よろしくね?」
「こちらこそ、いっそ二人で全滅させる気で行こう!」
瑞鳳。瑞鶴が最初の正規空母なら彼女は最初の空母だ。第一艦隊で一番小柄だが、しっかり物なのか瑞鶴のお姉さん分でもある。対潜・偵察・直援と正規空母の瑞鶴には手の届かないところをカバーしてくれる縁の下の力持ちだ。
「そして叢雲と摩耶だが…」
「わかってるって、戦艦が敵を叩いている中突撃して殴りこむ。だろ?」
「だな、その通りだ」
摩耶。彼女は初めての重巡洋艦だった。口が悪く最初は良く喧嘩したが、良く言えば素直な子で、他の艦娘がなかなか言いにくい事もズバッと言ってきてくれる私にとってはある意味ありがたい存在だ。
余談だが、彼女とは奇妙な縁がある。と思う。
私の祖父の出身地が、彼女の名前の元になった摩耶山の麓だというのだ。
つまり、私と彼女、両方のルーツが同じ所にあると言うわけで、艦娘の中でも一番打解けられる存在なのは正確の他にもそんな理由があるからなんだろう。
「それで、出撃時刻は?」
「明日の夜間だ。夜のうちに沖ノ鳥海域まで接近、夜明けと同時に攻撃を掛ける」
「ふふっ、いよいよ戦場ね、悪くない気分だわ」
そして叢雲。これが我が第一艦隊のメンバーだ。
「では、第二艦隊は第一艦隊の後方から追従。警戒と退路確保に当たるわね」
愛宕。第二艦隊の旗艦でもある。提督である私が第一艦隊に掛かりきりの中、うまく第二艦隊を纏めてくれている。
「第三・第四艦隊は鎮守府の警戒につくわね。作戦中他の装備のデータを取ってもいいかしら?」
「構わんが、事故のないようにな?」
夕張。第三艦隊の旗艦で、実質同任務に着く事の多い第四艦隊の旗艦も兼任しているような状態だ。任務につかないときも積極的に装備開発などを手伝ってくれている。
これが我が部隊の編成だ。
今思えば私は運が良い部類に入るのだろう。
長門・瑞鶴・瑞鳳などは全国でも数の少ない稀少艦とも言われている。空母などは本来は赤城型が最初に配備されるのが慣例となって居るらしいが。
そんな艦が三人も大きな戦果を上げていない我が隊に配属されるのには何か理由があるんだろうか?
上層部が私に期待してくれているのか、何かの手違いか。
噂では建造できた艦娘を片っ端からくじ引きで配備する隊を決めているとも言うが…どちらにしろ、私は運が良かったのだろう。
知り合った他鎮守府の提督にうらやましいぞとちょっかいをかけられた事もある。
2011年11月
全国の艦娘達は日本の領海を取り戻し、東南アジアの海域も次々に開放して行った。
欧州では日本の次に艦娘開発に積極的と言われるドイツが大西洋をほぼ制圧、近いうちにドイツの艦娘が日本に移籍するという噂も出始めている。
日本の対深海凄艦作戦は順調だった。日本は、だ。
「ちょっとアンタ!今朝のニュース見た!?」
叢雲が執務室のドアを開けて飛び込んできた。後からぞろぞろといつものメンバーも続いて来る。このころになると叢雲の態度は変わらないものの、ところどころ私を信頼してくれている様子が感じ取れるようになってきた。
さいしょに「せいぜい頑張れ」と言われたのが半年前だとは思えないぐらいだ。
「あぁ、聞いている。オーストラリアが完全に孤立した、だろ?」
オーストラリア。世界で六番目に面積の広い国で、国一つが丸ごと大陸と言う国でもある。
しかし艦娘の開発に難航。深海凄艦に対して有効な手立てを取る事も出来ず、オーストラリア海軍も奮戦したが今では制海権を失い、物資の輸出入が完全にストップしてしまった。
「先ほど上から伝達が来た。オーストラリア解放および深海凄艦へ打撃を与えるため、日本はニューギニアの深海凄艦に対して攻撃をしかける事が決定した。」
「作戦内容は?」
伊勢が聞いてきた。第一艦隊の顔ぶれの中では長門と摩耶が好戦的に見えるが、実は次の作戦に一番興味しんしんなのは彼女だ。
「ニューギニアに建設された深海凄艦の飛行場…これが日豪通行のネックになっている。よって本作戦はこの飛行場の破壊が最重要目標となる」
「でも、たしかあそこには多数の航空機が…」
「あぁ、空母機動部隊を持ってしても敵哨戒網を突破して空襲をする前に返り討ちにあう可能性が高い。そこで夜間に飛行場に強襲、艦砲射撃で飛行場を粉砕するという作戦を採る事になった」
「よって今回愛宕と夕張を第一艦隊に編入する。旗艦長門、伊勢、愛宕、摩耶、夕張、叢雲の六隻が第一艦隊だ」
「今回は私たちはお休み?」
「いや、瑞鶴と瑞鳳は第二艦隊として出撃拠点となるラバウル泊地の防衛、昼間敵地に接近する第一艦隊の上空直援を行ってもらう」
「わかったわ!」
「本作戦は対地攻撃が主となる。長門、伊勢、愛宕、摩耶は砲撃訓練の徹底を、夕張は三式弾の開発を行ってくれ。叢雲は第二艦隊と共同で船団護衛の訓練を、砲撃中に敵に襲われたら一たまりもないからな」
『了解!』
艦娘達が解散した後、叢雲だけ戻ってきて私の耳元でささやいてくれた
「あんた…結構成長したじゃない、悪くないわ」
彼女が初めて私を認める言葉を口にしてくれた瞬間だった。
2011年11月1日
多数の深海凄艦、そして多数の艦娘が没する事になり、後に「アイアンボトムサウンド」と呼ばれる事になる海域での戦いの火蓋が切って落とされた。
2011年11月26日深夜
「作戦終了だ、第一艦隊、帰投した。報告書は…」
「報告は後だ長門、損傷艦は高速修復剤を使用して直ちに修理!」
第一艦隊が帰投、旗艦である長門一歩踏み出し報告に来た。しかし作戦の期限まで時間がない。こうしている間にも敵は着々と飛行場の修理を進めているのだ。
(少しでも早く再出撃せねば…)
「聞いてくれ、提督!」
長門が損傷しているとは思えない速さで私の肩を掴んだ
「このままでは出撃できなくなる、資源も修復剤も無限ではないんだ…!」
「判っている、だから少しでも早く出撃して…」
「違うのよ、提督」
私の言葉を愛宕がさえぎる。いつも微笑みを浮かべている彼女がいつにもまして真剣な表情だった
「道中で敵哨戒部隊に発見されてこちらの被害は甚大、飛行場までたどり着けないで撤退を何度も繰り返したんだ、侵入できるルートは限られているし、このままじゃ…」
摩耶がうつむく、いつも強気な彼女らしくもない
「ごめんなさい…私たちの足がもっと早ければ…」
伊勢がうつむく。
飛行場攻撃作戦は難航していた。飛行場からの激しい反撃。高速艦を有する敵哨戒部隊。
こちらがいくら隙を突こうとも、低速の長門と伊勢が捕まってしまい交戦。
そのまま損傷を受け、敵の主力の到着を許し、撤退にも時間が掛かり何度も大損害を負っているのだ
「だが、他に方法が…」
強行突破。そう言う手もある。
他の隊が担当している別の飛行場では、強行突破で敵飛行場の壊滅に成功しているところもある…何十人と言う艦娘を犠牲にして。
おそらく、全体で数千人の艦娘がこの狭い海に沈んでいることだろう。いつしかこの海域はアイアンボトムサウンドと呼ばれるようになっていた。
「テイトク!話しは聞きましたネー!」
「榛名は大丈夫です!出撃させてください!」
金剛と榛名が執務室に入ってきた。
「あんた達…本土に残ってたんじゃなかったの!?」
「ムラクモ!話しは後デス!」
「お姉さまと榛名の速力なら敵哨戒部隊を振り切れます!私達を第一艦隊に…」
「だめだ」
だめだ、それだけは許可できない
「ナゼデース!提督!」
「こう言うのもなんだけど…沈む事になるわよ…」
夕張が暗い顔で呟く
「たっ…確かに榛名達は錬度は低いですが…少しでもお力に…」
「許可できん、これは命令だ」
私の作戦ミスだった。夜間の飛行場攻撃。そのための訓練、対地攻撃に有効な三式弾の増産。そこまでは問題なかった。
しかし敵の哨戒網の深さを、敵の主力艦隊の火力を見誤っていた。
「確かに金剛型なら敵哨戒もうに捕まらず大火力を発揮できる。敵主力と遭遇しても振り切れるだろう」
「なら…!」
「だが…錬度の低いお前達を出撃させれば…みすみす二人を失うことになりかねん…それだけはダメなんだ…!」
金剛と榛名。長門の後に着任した艦娘だ。
しかしこの時、私の方針は一点集中。協力無比な第一艦隊を育て上げ、その第一艦隊に他の艦娘を育てさせるという方針を採っていた。
この二人は…訓練こそ十二分につんでいるが、実戦経験どころか実戦形式の演習の経験すらないのだ。
「君達を信頼しないわけじゃない、でも、だからこそまだ錬度の低い君達に…」
その時、ドアを蹴破らん勢いで小さな影が入ってくる
「提督!朗報よ!偵察隊からの報告に寄れば…後一回の攻撃で敵飛行場を使用不能に出来るって!」
瑞鳳だ、おそらく彩雲から連絡を受け取って走ってきたのだろう、額の汗をぬぐいもせず、ぜぇぜぇと肩で息をしている。
「ここが正念場よ、提督さん、どうする?」
後を追ってきた瑞鶴が問いかけてくる
「…第一艦隊は編成そのまま。整備・補給をしっかりやってくれ。次の出撃でケリをつける」
もとより、もう資源は全力出撃一回分しかないのだ。
2011年11月27日 未明
『全艦!この長門に続け!!他の艦隊は既に全滅か撤退している!私達以外にいないんだぞ!』
『夜の戦い…私得意なんだから!』
『邪魔よ!どきなさい!』
無線機から艦娘の怒号が聞こえてくる。
この海域に集結した他の提督と合同で、同時刻に攻撃をしかける。この作戦に望みを掛け、最後の出撃を行う。
しかし、後一歩のところで敵部隊に遭遇、進軍を指示し、ただ椅子に座って待つ。
この時、この瞬間。どれだけ緊張するか自分でもわかる。この瞬間だけは何度経験してもなれない。
『きゃあっ!やめってってば!』
(夕張…!)
『こちら夕張、被弾しました!でも大丈夫!』
艦娘から被害報告が入るだけで自分も殴られたようなショックを覚える。これでもし誰かが沈みでもしたら…私は狂うかも知れない。
『左舷!砲戦開始!』
『道が開けた!長門の姐さん!10時の方向に進め!おいてくぞ!』
『摩耶!左舷に魚雷だ!』
『くっそー!見てろよ!!』
『叢雲ちゃん!摩耶についてあげて!』
『提督!こちら長門だ!敵哨戒網部隊を撃退した、飛行場まで約10分だ』
「各艦、損害状況を」
『私と愛宕、叢雲は小破、伊勢と夕張が少し損傷が大きいが戦闘に支障はない』
「よし、艦隊は飛行場に向けて前進を…」
『でも摩耶が…魚雷の直撃を受けたわ、大破してる、これじゃあ戦闘は…』
『馬鹿野郎!叢雲てめぇ…黙ってろって…』
『…提督、指示を頼む…』
摩耶が大破。
敵哨戒部隊は撃退。
飛行場まで後少し。
ここは飛行場に向かうべきだろう。しかし。
(もし他の敵部隊が居たら…飛行場の破壊に失敗したらどうする…!?撤退時に追撃されて…摩耶は沈む…)
帰ろう、帰ればまたこれるから?バカを言うな。今帰れば資源はない。次にこれるのは何ヵ月後になる?その時は敵も戦力を整えてる!
それにこの飛行場を目指す艦隊で残っているのは俺の艦隊だけ、他の飛行場は破壊したとの報告があるが、この飛行場をここで残せば今後どれだけの被害がでる!?
「っ…」
『提督…あたしは大丈夫だ…前進を…』
「…」
『安心しろって、あたしはどっちに転んでも恨まないからよ…』
このとき、私は提督として、軍人として最低の判断を下した。
「撤退だ!全艦、摩耶を中心に輪形陣!」
『…糞がっ!』
戦いとは犠牲を抑えて最大の戦果を上げるもの。
しかしそれ以上に目的を達成する事が最優先だ。
たとえどんな被害を負おうとも、敵の目的を挫き、自らの目的を達成させればこちらが全滅し敵が無傷でも戦争には勝利できるのだ。
私の判断は、多大な犠牲をだし、戦果を無にし、敵の目的の達成を許し、自ら目的の達成の機会を失わせる。
「文句があるなら俺を恨め、いくら恨んでくれても構わん!可能な限り全速で離脱しろ!」
私の提督としての未熟さが、層の薄い艦隊を生み出し、敗北を生み出した。
2014年10月
「提督、となりいいか?」
「摩耶か?構わんよ」
「へへっありがとなっ?」
「…」
「しかし、最近は暇だなぁ…誰かさんが出撃させてくれないからからだがなまってしょうがないぜ」
「…文句を言うな、今は他の艦の強化で忙しいんだ。金剛と榛名はお前たちと肩を並べるまでにはなったが、飛龍、羽黒、川内、時雨…まだまだ育ててやらなきゃいけない奴は沢山居るさ」
「でもここ一番って時はあたしらに出番が来るんだろ?」
「…」
「…なぁ、提督。何であの時撤退したんだ?」
「…」
「今でも悔やんでいるんだろ?あの撤退のせいでオーストラリア解放は遅れたし、提督も責任を取らされて一時的に出撃禁止になったじゃないか」
「…これは叢雲しか知らない事なんだが…俺が赴任した翌日に事件があってな」
「事件?」
「俺の信頼する提督…提督になる前からも色々信頼していた人がいたんだが…俺が着任した翌日に艦娘を一人沈めてしまってな。彼の嘆きようは見て居られなかった。あぁ、艦娘を沈めるって、こう言う事なんだ。と思い知ってな」
「…なんだよ、それ」
「それ以来決めたんだ、一人の轟沈もだすものか、って。だからあの時はお前たちだけを強化してたんだが、それが裏目にでたなぁ…」
「…だから今はみんな平等に、ってか?変わったな、提督」
「…」
「いたいた摩耶~、提督も!あっちでお昼ご飯食べましょ?」
「うわっ愛宕!?いい加減あたしの頭にそのでかい物乗せるのやめろって!」
「瑞鳳ちゃんが卵焼き作ってくれたって、みんな奪い合ってて二人の分も無くなっちゃうわよ?」
「ハハハハ!それは行かん!急がねば!」
「待ちやがれ提督!愛宕はいい加減どけって!くそがっ!」
「フハハハハ!恨んでくれても構わんよ!」
(みんな大事な仲間達だ)
(絶対に沈めさせるもんか)
(たとえそれで非難されようと、俺の考えは変わってないから)
終
乙
会話文入る時は行間入れたほうが見やすいと思う
面白かったです
面白かった(KONAMI)
読み辛かった
あれ終わっちゃった 日付が時々おかしいから気をつけるといいね
読む気が失せる
読みづらい
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません